fc2ブログ

真姫「別れ」

1: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/11(金) 17:13:59.94 ID:uD15H3tAO

・地の文あり
・亀更新
・2作目(保険)


以上を踏まえて読んで下さればありがたいです

長くはしません



2: まきりんぱなは3年生です 2016/03/11(金) 17:34:01.66 ID:uD15H3tAO

いよいよ卒業式が明日に迫ってきた。


「もう…卒業しちゃうんだね」


瞳を伏せながら、花陽はぽつりと呟いた。私と凛は何を言うでもなく、ただ、その言葉の意味を噛み締めていた。


「まだ実感はわかないんだけどね」


困惑するように、また受け入れられないといった様子で笑った凛。

…私は何も言わない。言葉が出てこない。脳が認めない―



――ふと顔を上げると、窓から差し込む夕日の色と凛の綺麗な髪の毛が、不思議とマッチングしていた。

窓の桜と花陽が重なって見え、言葉を失った。


3: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/11(金) 18:04:47.87 ID:uD15H3tAO

私は人生で一番密な3年間を過ごしてきた…と思っている。
今までが楽しくなかった、という訳ではないが、仲間と――μ’sとして過ごした日々は、私を、煌びやかで壮麗でそれでいて個性豊かな色に染めあげてくれた。

感謝…というと変なのかもしれないけど、私は間違いなく感謝している。


「寂しくなる…ね」

この仲間――もとい大切な友達に。


4: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/11(金) 18:15:54.91 ID:uD15H3tAO

「それでも二度と会えなくなるわけじゃないんだし、そこまで悲しむことはないんじゃないの?」


強がって嘘を吐いた。

この感情を知られたくない。なぜなら……恥ずかしいから。


「真姫ちゃんはいつでも真姫ちゃんにゃあ~」


なんとか隠せたようだ。



……花陽の顔が上がらないのが気になる。


5: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/11(金) 18:31:05.00 ID:uD15H3tAO

「………」


「…私ね、凛ちゃんと真姫ちゃんと同じ学年で本当に良かった」

花陽の目が光る。
直接顔は見ない。


「だからね…もう、当たり前のようにおはよう、って言ったり…話せたりできないんだって考えてしまうと…」

何かが頬を伝う。


「耐え…られなくて…」


花陽の頬を涙が伝った。凛の目も光っていた。


――なぜだか、私の口の中はしょっぱかった。


6: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/11(金) 18:57:21.92 ID:uD15H3tAO


―――――――


歩くのは最後の帰り道。花陽が真ん中だ。


「今日ラーメンいこ~」


「いや急すぎでしょ…」

いつものことだが、一応ツっこんでおく。…このやり取りも
………

いや、やめておこう。


そうして私達は影を重ねながら、3人で鼻歌を歌いながら、いつものラーメン屋へ向かった。


見上げた空は、どこか憂いを帯びているように見えた。


7: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/11(金) 21:46:10.71 ID:uD15H3tAO


―――――


「「「ごちそうさまでしたーっ」」」



「やっぱり美味しいにゃあ~」


「そうだね」



幾らか気分も紛れ、私達には明るい笑顔が戻っていた。


「凛、あんまり食べると太るから食べ過ぎちゃだめよ」


「了解!」


これからは止める者がいなくなるので釘を差しておく。…まぁ、ビシッと敬礼してたし大丈夫だろう。


「花陽もね?」


「わ、わかってるよぉ」


花陽が心配だ。私は心の中で、フフっと笑った。


8: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/12(土) 10:21:21.54 ID:qdaAcIqAO


―――――


店の外に出ると、もうすっかり暗くなっていた。頬を撫でる夜風が気持ちいい。

「じゃあそろそろ帰ろうか」


なぜか心がズキッとした。


「そうだね。明日のためにしっかり休むにゃ!」


「ええ、そうね…また明日」


花陽達とは帰り道が反対なのでここで別れる。軽く手を振って歩き出した。


独りの夜道を。


9: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/12(土) 10:31:05.07 ID:qdaAcIqAO


「それでねぇ…」


「あはは」


だんだんと楽しそうな声が私から離れていく。


――なぜだか知らないが、後ろ髪を引っ張られるように振り返ってしまった。


「あ」


見るべきではなかった。彼女たちの楽しそうな姿は、忘れようとしていた――明日のことを思い出させたのだ。


「まっ…」


――待って




私を置いてかないで――


10: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/12(土) 10:37:05.96 ID:qdaAcIqAO


――やがて二人の背中は闇に消えていった。

私は…私は何も考えずに帰った。いや…何も考えたくなかった、というほうが正しいだろう。




私には――何人にも埋められない、心の穴がポッカリと空いていた――


11: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/12(土) 10:49:08.82 ID:qdaAcIqAO


――――――

「あら、お帰りなさい」


私はママの声を無視して、部屋に引きこもった。…ママも何かを感じ取ったのか、何も言ってこなかった。



バタンと。無造作に体をベッドへ投げ出した。


「…………」


私は猛烈な寂しさを感じていた。―さっきまで楽しくしていた友が、今、いない。


それは何とも形容し難いが…普段会えない従兄弟と遊んだあとの感覚に似ている。……我ながらよくわからない。



とにかく――この体を友達で満たしていたい。私を全て、友達で満たしていたい――



この、ポッカリ空いた穴も。


12: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/12(土) 11:01:08.54 ID:qdaAcIqAO


――卒業式、当日


私は安定していた。少なくとも、昨夜のように気持ちは乱れていない。


ただ――そわそわする。体が、脳が、ジッとしていることを拒んでいる。


まぁ、今日は答辞を言わなくてはいけないからそのせいもあるだろう。



――なんてことを車中で考えながら、学校へ向かった。


空は晴れていた――


13: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/12(土) 11:13:49.50 ID:qdaAcIqAO


「おはようっ」


花陽の太陽のような笑顔が覗いた。私も、自然とあたたかい気持ちになった。


「おはようにゃっ!」


凛には元気を貰った。凛の笑顔が、私の背中を押してくれるような気がする。



「花陽、凛。おはよう」


そう言った私の顔には笑顔が広がっていた。


私達は変に気分が高翌揚しながらも、三人でしばらく笑いあった――


21: >>20ありがとうございます 2016/03/13(日) 11:42:11.89 ID:IvG/wgZAO

――――――――


22: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 12:01:30.19 ID:IvG/wgZAO

「ご卒業おめでとうございます」


理事長の言葉によって卒業式が始まった。…廃校を阻止しなかったら、最後だったはずの卒業式だ。
それが…こんなに後輩達が、私達の門出を祝って、悲しんでくれている。


いわば、私達が繋いできた“希望の子”たちだ。
私達がやってきたことが、これに繋がったのだ。


……………


来訪挨拶を聞きながら、3年間を振り返ってみると……鮮烈で色褪せない思い出が走馬灯のように頭の中を踏みしめる。

初めてできた友達。大好きだった音楽。μ’sとしての輝かしい毎日。


それらが全て組み合わさって、今の私があるのだ。



大切な友に囲まれた――この私が。


23: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 17:23:18.94 ID:IvG/wgZAO

チラリと花陽達の様子を伺ってみる。

フフっ、花陽ったら、あんなに背筋張って緊張し過ぎね。
…凛は欠伸してるけど。




「それでは、在校生からのお別れの言葉です」


現生徒会長の雪穂が前に出てきた。


雪穂は本当に“生徒会長”という重い役目を、弱音を吐かずに頑張っていると思う。

…もしかしたら姉の穂乃果より頑張っているかもしれない。

うん、前生徒会長の私が言うんだから間違いないわ。


そう思いながら雪穂の凛々しい顔を見つめると、ニコっと微笑んでくれた。



彼女の微笑みは、私に安心感とやり切った、という充実感をもたらす。



「これからも、未来へ向かって、羽ばたいて行ってください。…平成××年×月××日」


「卒業からのお別れの言葉です。卒業生代表、西木野真姫さん」



はいっ、と返事する。…高まる気持ちを抑えながら。


雪穂達の想いをしっかりと繋がなくてはならない。



ゆっくりと私は壇上へ上がった。


24: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 17:29:52.67 ID:IvG/wgZAO

いざ壇上へ上がると、空気が全然違うことに気付いた。
椅子に座っていたときは感じなかったが、肌がピリピリする。


それに――ここだと全員の顔が見渡せる。

緊張した花陽。珍しくシャキッとした凛。羨望の眼差しを向ける雪穂達。



それらを全て受け止め、ゆっくりと語りかけるように喋りだした。


25: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 17:57:58.25 ID:IvG/wgZAO


――――――


「私が一年生のとき…この学校は廃校の危機にありました」

「知っている人も多いと思いますが、私達は“スクールアイドル”として廃校阻止するために活動してきました」


「以前の私は…“仲間”というものとは縁が無い生活を送っていました」



「しかし、今は違います」


「私は今、最高の仲間達に囲まれています」


「私を変えてくれたのは…μ’sと…そして、この学校です」

「私は音ノ木に入学して、そしてここで過ごすことができて、本当に良かったと思います」


26: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 18:02:22.00 ID:IvG/wgZAO


「今、ここで言いたいことがあります」

「私は…音ノ木が、大切な仲間達が、…そして私をここまで見守り、育ててくれたパパとママが…」

息を吸い込む











『大好きですっ!』

不意に涙が伝った。


27: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 18:12:03.24 ID:IvG/wgZAO

―――――


在校生の見送りも終わり、私達は校門前まで来ていた。


「いや~真姫ちゃん…あそこであんなこと言うなんて…泣かせるにゃ…」


「ほんとだね。普段あんなこと言わないからびっくりしたよ~」


「もう、その話はいいじゃない!」


改めて言われると恥ずかしい。



「もう…本当に最後…だね」


私達はそれぞれ別の大学へ行く。未来へ向かって。



「もう…こんなときまで泣くのはなしよ?」


「こんなときにこそ、泣くんだにゃあ」

「…まったく」


三人の目に涙が浮かんだ。

凛と花陽は泣いているが、私は涙を流さない。


28: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 22:46:03.52 ID:IvG/wgZAO

不意に花陽が近づいてくる。


「っ~~~!」


いきなり花陽が抱きついてきた。首の斜め後ろですすり泣く音が聞こえる。

「凛も~」


…凛まで抱きついてきた。そして――結果的に三人で抱き合う形になってしまった。

…嫌では、ない。



「っす…ぐすっ…」

「真姫ちゃん…本当に今までありがとうね」


まるで今生の別れのように、花陽は言った。


「凛も…三人で過ごせて、とても楽しかった」


そう言われたら、抱きしめられる力が強まった。

私も、それに応じる。


「もう二人ったら…ほら、泣き止んで?」

あくまで冷静に返すが、頭の中は大洪水だった。目は氾濫しそうだった。


「真姫ちゃあああん」




私が…こんなことで…泣かない…んだから…




堰が崩れた私の目からは、大粒の涙が流れていた。


29: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 22:52:05.01 ID:IvG/wgZAO


――十分ほどたっただろうか。三人の目はすっかり赤くなっていた。


別れが近づいて、くる。


私は言おうと決めた。今まで表に出さなかった、この想いを。

伝えられなくなってしまう、前に。
会えなくなってしまう前に。


30: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 22:57:46.82 ID:IvG/wgZAO

「…花陽」


そっと、話しかける。花陽はキョトンとしている。


「私はあなたと会えて…その…とても、充実した日々を過ごせた。」


「全てあなたのお陰よ?」


花陽は黙って聞いている。



「だから…」






「ありがとう」


「…うんっ!」


31: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 23:03:05.42 ID:IvG/wgZAO

「凛」


「………」


「私は…あなたのお陰で明るくなれたわ。あなたのその、はじける笑顔でね」


凛は頬を赤くして、上目遣いでこっちを見る。……照れてる?


「凛と会えなかったら、いつまでたっても私は暗いままったわ。」







「…ありがとう」


「こちらこそだよっ!」


32: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 23:21:15.69 ID:IvG/wgZAO

それからしばらく、三人で笑いあった。

心が温かくなり、何か、三人の中で“つながり”みたいなものが出来たと感じた。


心が繋がりあってると、感じることができた。



ポッカリ空いた心の穴も、すっかり、温かいもので満たされていた。


そして私達は新たな一歩を踏み出す。眩しい未来へ向かって。


――誰もが輝ける、未来へ向かって。





~~Fin~~


33: ◆aujQ5B6q.2XT 2016/03/13(日) 23:23:13.99 ID:IvG/wgZAO

これで終わりです。

2作目ということで、これからの参考にしたいので意見があれば、是非お願いします。m(_ _)m

ありがとうございました。




掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1457684039/
関連記事

コメント欄

プロフィール

amnesia

Author:amnesia
ゆっくりまったり見ていってください( ´▽`)


相互リンクrss大歓迎




Twitterやってます( ̄▽ ̄)

トップ絵紹介

新規キャンバス (1) ぽむ様より頂きました!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
お知らせ (3)
未分類 (24)
アイドルマスター (1174)
悪魔のリドル (44)
Another (21)
甘城ブリリアントパーク (3)
インフィニット・ストラトス (79)
アルドノア・ゼロ (11)
オリジナル (1609)
俺の妹がこんなに可愛いわけがない (6)
終わりのセラフ (12)
空の境界 (3)
ガールズ&パンツァー (526)
ガールフレンド(仮) (14)
艦隊これくしょん (1605)
ガンダムビルドファイターズ (4)
きんいろモザイク (66)
黒子のバスケ (13)
けいおん! (120)
コードギアス (44)
ご注文はうさぎですか? (281)
冴えない彼女の育てかた (15)
咲-Saki- (683)
桜Trick (6)
シドニアの騎士 (3)
SHIROBAKO (23)
STEINS;GATE (80)
ジョジョの奇妙な冒険 (95)
進撃の巨人 (279)
新世紀エヴァンゲリオン (122)
涼宮ハルヒの憂鬱 (281)
生徒会役員共 (16)
ソードアートオンライン (35)
たまこまーけっと (2)
ダンガンロンパ (211)
中二病でも恋がしたい (7)
とある魔術の禁書目録 (194)
NARUTO (68)
ニセコイ (31)
のんのんびより (40)
化物語 (43)
はたらく魔王さま! (2)
氷菓 (37)
Fate/stay night (105)
Fate/Zero (43)
Fate/EXTRA (1)
ペルソナ3 (7)
ペルソナ4 (15)
BLEACH (16)
僕は友達が少ない (9)
ポケモン (52)
魔王・勇者 (392)
魔法科高校の劣等生 (22)
魔法少女まどか☆マギカ (391)
みなみけ (29)
ミリマス (455)
モバマス (4514)
名探偵コナン (182)
めだかボックス (5)
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (460)
結城友奈は勇者である (70)
ゆるゆり (405)
ラブライブ (2037)
リトルバスターズ! (99)
私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! (5)
ひなビタ♪ (43)
響け!ユーフォニアム (15)
グリザイアの果実 (3)
がっこうぐらし (22)
干物妹!うまるちゃん (21)
幸腹グラフィティ (2)
Charlotte(シャーロット) (5)
食戟のソーマ (25)
Fate/GrandOrder (110)
天体のメソッド (4)
ヒーローアカデミア (7)
月刊少女野崎くん (63)
ハナヤマタ (4)
魔法使いの夜 (1)
蒼穹のファフナー (8)
うたわれるもの (1)
だがしかし (16)
グラブル (31)
東京喰種 (1)
ゴッドイーター (3)
甲鉄城のカバネリ (5)
キルラキル (6)
ラブライブ!サンシャイン!! (2)
working (1)
NEWGAME! (21)
君の名は。 (4)
ペルソナ5 (13)
マギ (1)
マクロスΔ (3)
ストライクウィッチーズ (5)
ブレイブウィッチーズ (9)
Re:ゼロから始める異世界生活 (3)
フリップフラッパーズ (1)
小林さんちのメイドラゴン (10)
ガヴリールドロップアウト (319)
けものフレンズ (75)
鉄血のオルフェンズ (10)
ファイアーエムブレム (5)
バンドリ (28)
この素晴らしい世界に祝福を! (4)
グラップラー刃牙 (1)
エロマンガ先生 (1)
アズールレーン (5)
アクセスランキング
フリーエリア
アマゾンランキング
Powered by amaprop.net
タグクラウド

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
フリーエリア
Powered by amaprop.net
全記事表示リンク