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赤城「お願いですからアイスを食べさせてください…」

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:10:44.34 ID:3KoTy2UWo

「提督はずるい人です」

そういうとその人はいつも苦笑した

休んでくださいといっても朝方まで仕事をやる

もう休めと私たちには言うくせに自分は倒れるまで仕事をやる

提督はいつだってそういう人だった

戦いにでない自分にはこれぐらいしかできないから

その人は決まってこう言い返した



2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:12:43.75 ID:3KoTy2UWo

「まぁ仕方ないですよ、あの人はそういう人ですから」

そう言うと吹雪は食事を続けた

他の艦娘たちのがやがやとした声と音だけが食堂には響いていた

「けれど私達としてはもっと頼ってほしいというか…」

吹雪はなま返事を返した

まるでもうその話は聞き飽きたと言わんばかりだ

「お?なになに~何の話ー?」


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:13:54.88 ID:3KoTy2UWo


「提督への愚痴話ですよ」

「へぇー面白そうだねぇ」

隼鷹は食器を下ろしながら席に着いた

どうやら話に関心をもったようだ

「あたしも提督には不満があるね」

「どんなですか?」

「晩酌に付き合ってくれないとこ!」

「それは提督が正しいですね」

吹雪が苦笑いしながら返答した


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:19:54.62 ID:3KoTy2UWo


「戦わせろ…ですか?」

執務の最中に天龍が訪ねてきた

「いいかげん戦いたいんだ!」

「そういわれても…」

この鎮守府に艦娘は20人程度しかいない

過激な前線地区から離れた場所にあるからだ

もっぱら仕事は警戒任務と民間船護衛任務

他の鎮守府の雑用ばかり回ってくる

「もう遠征任務は飽きたよ」

そういって天龍はしゅんと溜息をついた

とにかくしばらくは自分の仕事をこなしてほしい

そういうと天龍はしぶしぶと遠征任務へ出かけて行った

元気なのも困りものだ


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:23:04.22 ID:3KoTy2UWo

休日の昼食を一緒に食べる

いつも約束をやぶるあの人だがこの約束だけはいつだって守ってくれた

運ばれてきたご膳を私に勧める

そうして私は食事を始める

おいしいかいと提督が尋ねてくる

えぇとっても、と微笑みながら答える

こんな日常がうれしく思う


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:24:15.06 ID:3KoTy2UWo

食事の後は一緒にアイスを食べる

アイスを一個だけ買いそれを分け合う

おいしいかいと提督が尋ねる

えぇとっても、と笑いながら答える

そんな私たちにとっては当たり前の休日


7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:24:58.84 ID:3KoTy2UWo

「お熱いですねぇ~」

青葉がにやにやとしながらメモ帳に何事かを書き込んでいる

「それでお二人はいつからおつきあいを?」

「いいえしていませんよ」

青葉が驚いた顔をしてメモ帳を取り落した
あら珍しい

「そんな事までしてまだ付き合ってもいないんですか!?」

…なんだかいろいろと失礼な子ね


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:25:59.63 ID:3KoTy2UWo

「何が言いたいのかしら」

「男女が二人でいちゃいちゃしているんですよ」

いちゃいちゃって…

「これをカップルと言わずしてなんと言うんですか!」


「実際提督の事好きなんでしょう~」

「いいえ別に」

「…はい?」


9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:27:55.54 ID:3KoTy2UWo

「好きじゃない?」

「嫌いではないですよ」

「恋愛感情は?」

「ありませんねぇ」

青葉がなんとも言えない表情をしている

「…はぁ鈍感なのかわざとなのか…」

おしい特ダネを逃した
そんな顔をしながら青葉は部屋を出ていった


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:46:44.07 ID:3KoTy2UWo

「最近忙しそうね」

加賀が語りかけてくる
今は朝の鍛錬の真っ最中だ

あらまた当たった、相変わらず凄いわね

「えぇまあね」

そう答えて私は矢先を構える

ビュンッ

「赤城さんもお見事ね」

「加賀さんほどではないわ」

「さっきの話だけれど」

そう言って彼女はまた矢を構えた

「体には気を付けて」

「ふふ、ありがとう」

やっぱり加賀は優しい


11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:48:51.90 ID:3KoTy2UWo

「たしか加賀さんはもう少ししたら…」

「えぇしばらく他の鎮守府へ」

共同作戦のために一時的に異動するらしい
今回の作戦はずいぶんと長期になるそうだ

「加賀さんはとっても優秀だから」

加賀はとても強い
彼女程戦闘に長けた艦娘もそういないだろう

「あなただって強いでしょうに」

「私は…この鎮守府が気に入っているから」

苦笑で答える

それに対して加賀は何も言わなかった

そうして彼女はまた矢先を構えた


彼女の矢は的をきれいに射抜いた


12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:54:02.22 ID:3KoTy2UWo

「司令官さんの事どう思っているのですか?」

ある日突然背後から声をかけられた

抱えていた書類を落しそうになりながら私は後ろを振り向いた

「どうなのですか?答えてください!」

少女は手先を震わしながら問いかけた
たしかあの子はこの間着任した…

「電…だったかしら?」

「…私のことなんてどうでもいいのです」

「提督の事が好きなの?」

「……あぅ」

電は顔を真赤に染めながらうつむいた

とてもかわいらしい子だ


13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 22:57:43.74 ID:3KoTy2UWo

「大丈夫よ」

「え?」

「私は提督の事なんて好きじゃないわ」

彼女は驚いたように私を見た

「好きじゃないんですか?」

「えぇそうね」

信頼しているし好いてもいる

けれど恋愛感情とは別物よ


そういうと私は彼女の頭を撫でた

電は呆けた顔をしている

「だから私はあなたの恋を応援するわ」

するとしばらくして彼女は安堵の息を吐いた

ありがとなのです、と電はぺこりと頭を下げて廊下を走って行った

彼女に言ったことに偽りはない


14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:01:47.20 ID:3KoTy2UWo

「聞いてください赤城さん」

昼下がりの午後訓練の最中に話しかけられる
軽空母、瑞鳳とは訓練仲間だ

「この間は重巡リ級を2隻もやっつけたんですよ」

瑞鳳はとても嬉しそうに私に話しかける

「そう、お手柄ね瑞鳳」

そういって頭を撫でてあげると彼女はうれしそうに微笑んだ

とても愛らしい子だ

「私もっと頑張っていっぱい敵をやっつけちゃいます!」

そういうと瑞鳳は鍛錬を再開した
まだまだ技術は未熟だが見どころがある

私はなんとも言えない気持ちで彼女を見つめ続けた


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:08:26.81 ID:3KoTy2UWo

「あの噂は聞きましたか?」

ある日の食堂で青葉は私たち二人にこう語りかけた

「なんの噂かしら」

「近頃私達の間で流行っている噂ですよ」

「どんな噂?」

「変な行動を取る深海棲艦の話です」

「それはおかしいわ」

加賀もいぶかしげな表情だ

「奴らは決められた命令をこなすだけよ」

「えぇですが」

ごくまれに笑う深海棲艦がいるらしいです

「笑う?」

「えぇ自分が沈みゆくときににんまりと」

そうして青葉は自分の口に手をやり『いーっ』という形にした

「こんな風に不気味に笑う深海棲艦がいるみたいですよ」


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:09:54.42 ID:3KoTy2UWo

「どういう事かしら?」

加賀は不審な表情をした

「さぁ私には」

「憎しみの嘲笑という事かしら?」

「いえきっと『ぐへへ私を倒しても第二第三の~』みたいなー」

そういってあははと青葉は笑った

おちゃらけた雰囲気でその日の食事は終わった



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:11:57.28 ID:3KoTy2UWo

ある夜更けに一人の艦娘が訪ねてきた

「よう邪魔するぜ」

そう言うと隼鷹は部屋に上がり込んできた

「なにかあったの?」

「いや、たまには一緒に晩酌でもどうかなってさ」

「あなたが?珍しいわね」


18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:15:43.02 ID:3KoTy2UWo

「なぁ最近何かあったのか?」

お酒を酌み交わしてだいぶ経った頃
突然隼鷹がつぶやいた

「…いきなりどうしたの?」

「いやなんとなく」

辛そうにみえたから

そう言うと隼鷹はまた杯に酒を注いだ

「それを聞きにわざわざ来たの?」

「図星かい?」

「…少し悩んでいることがあってね」

「悩みねぇ」

「誰にも言えない悩みよ」

「…そっか」


19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:18:18.85 ID:3KoTy2UWo


私たち二人は会話もなく飲み続けた

息苦しさすら感じる沈黙に隼鷹が口を開いた

「なぁ」

「なに?」

「赤城はなんのために生きてるんだ?」

…え?


20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:23:05.92 ID:3KoTy2UWo


政治家は人類の尊厳のためにと
科学者は自由と権利のためにと

そのために敵である深海棲艦と戦えという

「けれど私は間違ってるって思うんだ」

「だってそうだろう?実際に戦うのは私たちだ」

「……」

「戦って傷つくのは…私たちだ」

「……」

「私は好きなんだ」

みんなと笑いながら帰還する日常が

「友達と一緒に酒を飲む…こんな今みたいな時間が」

そんな瞬間が私の幸せなんだ

その幸せのために私は戦うんだ

「……」

「だからさ、なんていうか…その…」

「…ふふ」

私は思わず吹き出してしまった

「わ、笑う事ないだろう」

「だって…急に的外れなこと言うんだもん」

私はあははと大きな声で笑った

隼鷹はお酒で真赤になった顔でうらめしそうに私を見る

「とにかくやりたいようにやれって事さ」

そういって彼女はまた杯を傾ける

「でもありがとう、元気が出たわ」

「…そうかいならよかったよ」



21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:23:50.56 ID:3KoTy2UWo


「あなたって優しいのね」

「よせやい照れる」

「ただの酒喰らいじゃなかったのね」

「おい怒るぞ!」

あははと気持ちよく笑いあう

その夜はとても楽しい時間を過ごした

なんだか肩の荷が下りた気がする


22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:24:57.94 ID:3KoTy2UWo


海が一望できる素敵な場所 
夜空には星々が瞬いている

「あら加賀さんもきたのね」

「赤城さんも」

そういうと彼女は私の隣に座った

石縁に腰かける私たち二人の間を夜風が通り抜けていく

「とってもきれいでしょう?」

「えぇとっても」

夜空には美しい満月が出ていた


23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:26:16.40 ID:3KoTy2UWo


「ここは誰も知らない場所だと思ってた」

「私もよ」

「知らずに同じ秘密を共有していたのね」

私は思わずくすりと笑った

「月を見ながらお酒を飲むのがすきなの」

「加賀さんは月見酒はきらい?」

「いいえ好きよ」

そう、と私は微笑んだ


24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:28:24.82 ID:3KoTy2UWo


夜海が遠く広がっている

どこまでも続く海だけがそこにあった

どこかから汽船の音がする

「今夜は月がとってもきれいね」

「そうね」

「素晴らしい満月ね」

「絶景ね」

星が照らす夜空

満月が上々に輝いている

そのままずっと二人で月を眺めていた


25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:31:27.98 ID:3KoTy2UWo


「とても風情があるわね」


「そうね」


「月は好きよ」


「私もよ」


「……」


「おいしいわね加賀さん」


「えぇとっても」


「……」



26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:32:21.88 ID:3KoTy2UWo


「……」


「………」


「ねぇ加賀」

「なにかしら?」

「私提督の事が好きみたい」


27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:35:19.50 ID:3KoTy2UWo


「………そう」

長い沈黙の末ようやく彼女は口を開いた

「でもどうしたらいいか分からないの」

「分からない?」

「だって私たちは艦娘なのよ?」

「……」

「人ですらない…ただの兵器よ…」

「……」


とっくに気づいていた

けれど気づかないふりをした

好きだという気持ちを持ってはいけない

兵器と結ばれて幸せになれる人間がどこにいるだろうか

この恋はきっとあの人を不幸にしてしまう

だから私は望まない

決して想いが実ることはない恋なのだから

「…あはは急にごめんなさいね加賀さん」

「…いえ気にしないでください」


28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:36:06.54 ID:3KoTy2UWo


「……」

「……」

二人でまたお酒を飲み続ける
無言で飲み続ける

彼女がようやく口を開いた


『別に構わないんじゃないかしら』


29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:37:53.55 ID:3KoTy2UWo


「え?」

「あなたの気持ちを大事にするべきよ」

私たちは艦娘だけれど

恋をしてはいけないだなんて事はない

想いを持つということは

誰にも止めることはできないのだから


「報われない恋だなんて悲しすぎるもの」


そういって彼女はお酒を飲んだ

彼女の手は少し震えていた


30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:39:39.99 ID:3KoTy2UWo


「赤城さん」

「なぁに加賀さん」

「私はあなたの事を応援するわ」

たとえそれがどんな選択であれ

そういうと彼女はまた夜空を見上げた

「…ありがとう加賀」

「いいえ気にしないで」

私は本当にいい友人を持った
ありがとう


31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:41:37.85 ID:3KoTy2UWo


私は提督の事が好きなのだろう

けれどこの思いを告げることは無い

人と艦娘が結ばれて幸せになんてなれない

それはきっといけないことなのだ

それにきっと提督もこんな私に好意を向けられては困ってしまうだろう

私は提督の幸せを望む

あの人が幸せでいてくれればそれでいい

たとえその隣に私がいなくても


32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:45:25.00 ID:3KoTy2UWo


『聞きましたかあの噂』

『なんの噂?』

『別の海域で現れ始めた深海棲艦の噂です』

『どんな深海棲艦なの?』

『恐ろしく強い深海棲艦だって話ですよ』

『うちの鎮守府は大丈夫かしら』

『それは大丈夫そうです、遠い鎮守府の話らしいので』

『そうなんだ』


33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:48:04.78 ID:3KoTy2UWo


穏やかな毎日

提督に思いを告げることは無かった

けれどこれでいい

あの人のそばにいる

ただそれだけで私は満足なのだから

こんな日がいつまでも続くと信じて疑わなかった


「大変です赤城さんっ!!」

青葉が泣きそうな顔で扉を開けた

「提督が…ていとくがぁ……」

交通事故により意識不明

私は膝から崩れ落ちた


34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:49:14.46 ID:3KoTy2UWo


私たち艦娘ではありえないこと

艦娘は風邪もひかないしケガもしない

けれど提督は違う

日常に潜むほんのささいな出来事

ただそれだけで命を失ってしまう

階段をかけあがる

まだ見えない

廊下をがむしゃらに駆けていく

まだまだ遠い


35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:51:12.66 ID:3KoTy2UWo


嘘だ

うそだうそだうそだ

鼓動は早鐘のように打ち続けた

「提督……」

全身の震えがとまらない

「提督っ!!」


パァーーーーンッ!


36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:52:40.57 ID:3KoTy2UWo


「……へ?」

「あはは、引っかかったね」

提督が笑っていた
ほかの艦娘たちも笑っていた

「ひっかりましたねぇ赤城さん」

青葉がおなかを抑えて笑っていた

「え?…えぇ?」

「嘘ですよ!う・そ!」

「だって…事故…」

「そもそもいつも執務室にいる提督が交通事故にあうわけがないでしょう?」

そういって青葉はけらけらと笑った

「…はぁ…」

私はまた膝からくずれおちた


37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/29(月) 23:54:20.15 ID:3KoTy2UWo


「ごめんね赤城」

「ぜったいにゆるしませんっ!!」

しばらくしてようやく落ち着いてきた私に提督はただただ平謝りした

「どうか許してくれ」

「謝ってもだめです!許しません」

「どうしても赤城に伝えたかったんだ」

「さぞかし重要なことなんでしょうね」

私は思わずむくれてしまった
あの人は困ったように苦笑いしている

「あぁとても重要な事だ」


きみのことがすきだ
ぼくとけっこんしてほしい


その言葉はまるで念仏のように私の頭をすり抜けた


38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:00:59.81 ID:0/2ASQ7Vo


この先いろんな事があるだろう

けれど俺はいつだってここにいるから
帰ってくる君をここで出迎えてあげるから

戦いに出る君を支えてあげたいんだ

君のそばにいさせてくれ


「これを受け取ってくれないか?」

「これは…?」

「指輪だよ」

どうか僕と結婚してほしい

そういってあの人は私に指輪を手渡した

私はただ泣くことしかできなかった

こうしてこの日私は幸せを手に入れた

まわりのみんなが拍手して祝福してくれた

「提督」

「私は今…最高に幸せです!」


39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:08:05.66 ID:0/2ASQ7Vo


幸せな毎日だった

好きな人と一緒にいる

それがこんなにも素晴らしい事だったなんて

ふとした瞬間にあの人と目が合う

あの人が微笑む

それを見て私も微笑む

そんな私たちにとっての幸福な日々

ただ毎日が幸せだった


40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:10:48.63 ID:0/2ASQ7Vo


もちろん業務だってきちんとこなした

いろんな任務を行った

撃退任務や輸送船護衛だって

ある時長期の出撃任務へ出かけた

仲間たちが笑って見送った

お土産を忘れないでねなんて軽口をたたきながら

すぐにもどりますよと笑ってそれに答えた


鎮守府が敵の奇襲を受け壊滅した
その知らせを受け取ったのはそれから二日後の事だった


41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:11:47.87 ID:0/2ASQ7Vo


そこには何も残っていなかった

何一つ残っていなかった

「あははうそですよね…」

ただ瓦礫と残骸だけが散らばっていた
血と鉄くずのにおいだけが充満していた

「冗談はやめてくださいよ」

ガラスの破片をかき分ける
瓦礫の山を手でくずす

いつのまにか手は血だらけになった

「かくれんぼですか?またいたずらですか?」

おかしいなぁ

掘り起こしても誰もでてこないなぁ

「あ、赤城さん…」

「……そっとしておいてやろう」


42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:12:54.53 ID:0/2ASQ7Vo


ねぇ



ねぇ



どうしてみんな隠れているの?



あはは



あははははは


43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:16:23.43 ID:0/2ASQ7Vo


「いつのまにかこんな風になっちゃいましたね」

目の前には墓標が立っている

墓標に刻まれた名は何も答えない

潮風が私の頬をなでていく

「ねぇどうしてですか?」

涙が頬をつたった

「何とか言ってくださいよ」

約束はどうしたんですか

あの時の勝負は?

また一緒に逢おうっていう約束は?


私と一緒にいてくれるんでしょう

「約束したじゃないですかぁ…っ!」

涙がどうしようもなくあふれてくる


「お願いですからまた…一緒に…っ!」

またみんなと…貴方と…


「うわぁあああああああああああああああああああああ!!!!」


喉をひきさかんばかりに声を上げた

心臓が張り裂けそうなくらい声を挙げた


けれどあの人は帰ってこない


44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:18:16.24 ID:0/2ASQ7Vo


何がいけなかったんだろう

艦娘である私が愛など求めたことが間違いだったのだろうか

神様がいるのなら呪いたい

自分の運命を呪いたい

突如物音がした

前方に深海棲艦の集団がいるのが見えた

そうだ

やつらだ

奴らが壊したんだ

わたしの大切な物を

「―――達が」

わたしの大切な人達を

「お前達がぁああああっ!!!!」


そうして私は海へ飛び込んだ

もう理性など残っていなかった

ただ目の前の"モノ"をめちゃくちゃに壊してやりたかった

本能のままひたすらにあばれ尽くす

ただそれだけしか私にはできなかった


45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:20:29.83 ID:0/2ASQ7Vo

~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~

最後の敵空母が沈んでいく

私はそれを呆然と眺めた

もう力は残っていない

そのままわたしは倒れこんだ

あぁもういいだろう

もう涙もかれはてた

そして私は艤装をそっとはずした

提督、今からそちらにいきます

そうしてゆっくりと深海の中へ沈んでいった


46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:21:42.30 ID:0/2ASQ7Vo


凍てつくような水の冷たさが私の身体に染み込んでいく

とっても深く…どこまでも暗い海

暖かさも

命も

思い出も

全てを奪っていく

あぁ…これでいい

ようやくわたしは…


47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:24:12.89 ID:0/2ASQ7Vo



ふしぎなゆめを見た

まっしろな場所にあの人が居た

あの人は席に腰かけて私にあるものを勧めた

そうしてあの人は微笑んだ

あの時と同じように微笑んだ

私は泣きながら食べ続けた

おいしいかいと尋ねる

えぇとっても、と泣きながら答える

ただそれだけの不思議な夢


アイスからはとてもおいしい優しい味がした


48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:26:05.51 ID:0/2ASQ7Vo


「気が付いたか?」

「…ここは」

目を覚ましたらとある鎮守府の病室にいた

顔なじみの駆逐艦達に抱き付かれる

どうやら数人は無事だったようだ

当時遠征任務で出ていてここに保護されたのだと日向から伝えられた

泣きながら大丈夫ですかと聞かれる

「心配したぞ何日も寝たきりだったんだ」

「……そうですか」

「おい大丈夫か?」

「えぇ」

とっても不思議な夢をみたから

そういうと部屋にいる皆はきょとんとした顔をした


49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:34:13.04 ID:0/2ASQ7Vo


「今度配属される新人の元で勤めて欲しい」

目の前には男性が何人も座っている

「頼めるかい」

本部の元帥が直々に尋ねた

「えぇ任せてください」

私は笑顔でそう答えた


こうして私の新たな人生は始まった

もうこの世界に私の愛した人はいない

けれど私は生きていこうと思う


『初めまして、あなたが新任の提督ですね』


あの人が望んだ世界のために




―――――――終わり――――



50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:40:03.09 ID:0/2ASQ7Vo

――――P.S.――――

「どこへ行くんですか赤城さん?」

「ちょっとアイスを買いに」

「今は真冬よ?おかしな人ね」

「大切な人との約束ですから」

「約束?」

「えぇ、約束です」


51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 00:59:40.27 ID:fIur3fRV0



52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 23:58:43.72 ID:CPKyYYHmo

Nice story!




掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419858644/
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