【デレマスSS】佐城雪美とウワサの鏡
1: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 22:38:52.17 ID:iAuUYnVxO
佐城雪美ちゃんのSSです。
2: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 22:44:22.73 ID:iAuUYnVxO
「そういえばさ、第四レッスン室の隅に布が被せられた大きな鏡あるだろ?あれ、見つめ続けたらやばいんだって」
休日の昼下がり、アイドル達は事務所でレッスン後の火照った体を覚ましていた。
レッスン室の前に設けられたロビーには同じようにレッスンの終わったアイドル達が思い思いに休憩時間を過ごしていた。
スポーツドリンクをものすごい勢いで飲むもの。
服の胸元をパタパタと仰ぎ風を送り込むもの。
そしてそれを鋭い眼光で見つめるものもいた。
雪美は自分の顔より一回りも大きなペットボトルを両手で持ち上げるようにして飲みながら、隣に座っている晴の話に耳を傾けている。
「何よそれ、意味わかんない。ってかやばいって何なのよ。は~、アンタも案外子供ね」
梨沙はやれやれといった様子でご自慢のツインテールを左右に振った。
休日の昼下がり、アイドル達は事務所でレッスン後の火照った体を覚ましていた。
レッスン室の前に設けられたロビーには同じようにレッスンの終わったアイドル達が思い思いに休憩時間を過ごしていた。
スポーツドリンクをものすごい勢いで飲むもの。
服の胸元をパタパタと仰ぎ風を送り込むもの。
そしてそれを鋭い眼光で見つめるものもいた。
雪美は自分の顔より一回りも大きなペットボトルを両手で持ち上げるようにして飲みながら、隣に座っている晴の話に耳を傾けている。
「何よそれ、意味わかんない。ってかやばいって何なのよ。は~、アンタも案外子供ね」
梨沙はやれやれといった様子でご自慢のツインテールを左右に振った。
3: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 22:49:22.13 ID:TacVh/AEO
「あ、でも小春も聞いたことあります~。違う世界に吸い込まれちゃうって」
「ありえないわよ。雪美だってそう思うでしょ?」
「うん…、……大丈夫…。吸い込まれない…よ……」
「もしかして見たことあるのか?あの鏡」
雪美の瞳を覗き込むように晴は雪美に詰め寄る。
「違う……鏡………、よく……おはなしの…練習してる……」
「なんだ、違う鏡かよ」
「どの鏡だって同じよ」
「でもあの鏡だけ布が掛かってるから、気になっちゃいます~」
「ありえないわよ。雪美だってそう思うでしょ?」
「うん…、……大丈夫…。吸い込まれない…よ……」
「もしかして見たことあるのか?あの鏡」
雪美の瞳を覗き込むように晴は雪美に詰め寄る。
「違う……鏡………、よく……おはなしの…練習してる……」
「なんだ、違う鏡かよ」
「どの鏡だって同じよ」
「でもあの鏡だけ布が掛かってるから、気になっちゃいます~」
4: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:12:03.48 ID:fxUBpFXw0
「今度こっそり見に行ってみるか」
「こっそりレッスン室に入ったらだめよ」
後ろから、美優が優しい声で4人をたしなめる。
「残念ですぅ」
「小春、本当にいくつもりだったの!?」
「正直オレも興味あった」
「……私も……」
「あんた達結構そういうの好きなのね」
「懐かしい。今はそんなウワサがあるのね」
「美優さんが子ども頃もウワサってあったの?」
「そうね、私が子どものときは…トイレの花子さんとか?」
「ハナコ………、…凛…犬………どうしたの……?」
「ハナコじゃなくて花子!」
「そういえばトイレの花子さんって、小春のお母さんも言ってました〜」
「…お母さん……」
「ほら、花子さんは年代が幅広いから…」
「晴ちゃん、いいのよ」
「なんか…ごめん……」
諦め半分悲しみ半分といったような目で美優に見つめられた晴は、収まりが悪そうに頭をかいた。
「こっそりレッスン室に入ったらだめよ」
後ろから、美優が優しい声で4人をたしなめる。
「残念ですぅ」
「小春、本当にいくつもりだったの!?」
「正直オレも興味あった」
「……私も……」
「あんた達結構そういうの好きなのね」
「懐かしい。今はそんなウワサがあるのね」
「美優さんが子ども頃もウワサってあったの?」
「そうね、私が子どものときは…トイレの花子さんとか?」
「ハナコ………、…凛…犬………どうしたの……?」
「ハナコじゃなくて花子!」
「そういえばトイレの花子さんって、小春のお母さんも言ってました〜」
「…お母さん……」
「ほら、花子さんは年代が幅広いから…」
「晴ちゃん、いいのよ」
「なんか…ごめん……」
諦め半分悲しみ半分といったような目で美優に見つめられた晴は、収まりが悪そうに頭をかいた。
5: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:13:12.35 ID:fxUBpFXw0
「美優さんじゃない。お仕事の前なのにそんなにレッスンして大丈夫?」
汗だくの美優を見て、心配そうに留美が駆け寄る。
「大丈夫です」
「貴女らしくないわね、どうしたの?」
「次の水着のお仕事に向けて身体を絞らないといけませんから……」
「美優……水着……。泳ぐ………?…まだ………寒い………」
「流石に泳いだりはしないわ。それに私、泳ぐの苦手だから」
「………そう……………」
「美優さん、そろそろ行くわよ」
「はい」
留美は美優の手を取り、仕事場へ向かった。
「なんかさ、留美さんと美優さんってカップルみたいだよな」
「両方女の人じゃない!」
「わかります~。なんだか留美さんは美優さんの彼氏って感じがします~」
「…………わかる……」
「なんかいいよなああいうの、頼れる相棒みたいな感じで」
「頼れる相棒ねぇ、アタシの場合は世話のかかる相棒かしら?」
「オレのことか!? どこがだよ!」
「どこって、色々よ」
(晴…梨沙……仲良し……、…ふふっ………カップル……みたい………)
幼い二人の痴話喧嘩を見て、雪美は微笑んだ。
汗だくの美優を見て、心配そうに留美が駆け寄る。
「大丈夫です」
「貴女らしくないわね、どうしたの?」
「次の水着のお仕事に向けて身体を絞らないといけませんから……」
「美優……水着……。泳ぐ………?…まだ………寒い………」
「流石に泳いだりはしないわ。それに私、泳ぐの苦手だから」
「………そう……………」
「美優さん、そろそろ行くわよ」
「はい」
留美は美優の手を取り、仕事場へ向かった。
「なんかさ、留美さんと美優さんってカップルみたいだよな」
「両方女の人じゃない!」
「わかります~。なんだか留美さんは美優さんの彼氏って感じがします~」
「…………わかる……」
「なんかいいよなああいうの、頼れる相棒みたいな感じで」
「頼れる相棒ねぇ、アタシの場合は世話のかかる相棒かしら?」
「オレのことか!? どこがだよ!」
「どこって、色々よ」
(晴…梨沙……仲良し……、…ふふっ………カップル……みたい………)
幼い二人の痴話喧嘩を見て、雪美は微笑んだ。
6: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:20:03.28 ID:fxUBpFXw0
――――――――――
その日はしとしとと雨が降っていた。
しかし、屋外での撮影でも限りアイドルに天候は関係ない。
分厚い雲が重くのしかかるときこそ、テレビやラジオなどで人々にハレを振りまくのがアイドルだ
親しいアイドル仲間はみんな仕事に行ってしまい手持無沙汰な雪美は、ペロとかくれんぼをすることにした。
事務所に人が多い時は雪美に同情した"オニ"が増えてしまったり、白熱のあまりPからのカミナリが落ちることがある。
そのため、今日のような事務所に人が少ない日は絶好のかくれんぼ日和であった。
秒針が二回転するまで時計を見つめる。
かくれんぼが始まった。
「今日も………勝つ……。……飼い主…、…意地……見せる………」
今回は雪美の10連勝が掛かった勝負だけに、双方とも気合十分だ。
猫というと棚の裏や花瓶の中などに隠れそうなものだ。
しかしそんな初歩的な定位置にはペロは居ないし彼女も探さない。
付いて回るのだ。
ペロは大胆にも、しかし慎重にペロを探す雪美の後をつける。
しかしそこはやはりペロの飼い主、雪美もつけられていることは理解している。
曲がり角を曲がっては急に立ち止まって振り返るなどしてみるのだ。
ゆきみを感じすぎず気配を感じさせぬよう後ろから雪美をつけるペロ。
後ろからペロの気配を感じる雪美。
執務室から出て廊下を左に曲がる。
いつもならこの角ですぐに振り返ってペロを見つけようとしたり、角にあるゴミ箱に隠れてペロをおびき寄せたりするが今日はいきなり走り出す。
給湯室の前を全速力で走り抜け、次は右に曲がる。
飼い主の奇手にびっくりしたペロは雪美を見失ってしまった。
かくれんぼにおいて、鬼から離れるのはメリットだ。
しかし、彼女らのかくれんぼにおいては致命的なのだ。
ペロは仕方なく、屈辱的であったが、ロビーにあった大きな植木鉢の影に隠れることにした。
その日はしとしとと雨が降っていた。
しかし、屋外での撮影でも限りアイドルに天候は関係ない。
分厚い雲が重くのしかかるときこそ、テレビやラジオなどで人々にハレを振りまくのがアイドルだ
親しいアイドル仲間はみんな仕事に行ってしまい手持無沙汰な雪美は、ペロとかくれんぼをすることにした。
事務所に人が多い時は雪美に同情した"オニ"が増えてしまったり、白熱のあまりPからのカミナリが落ちることがある。
そのため、今日のような事務所に人が少ない日は絶好のかくれんぼ日和であった。
秒針が二回転するまで時計を見つめる。
かくれんぼが始まった。
「今日も………勝つ……。……飼い主…、…意地……見せる………」
今回は雪美の10連勝が掛かった勝負だけに、双方とも気合十分だ。
猫というと棚の裏や花瓶の中などに隠れそうなものだ。
しかしそんな初歩的な定位置にはペロは居ないし彼女も探さない。
付いて回るのだ。
ペロは大胆にも、しかし慎重にペロを探す雪美の後をつける。
しかしそこはやはりペロの飼い主、雪美もつけられていることは理解している。
曲がり角を曲がっては急に立ち止まって振り返るなどしてみるのだ。
ゆきみを感じすぎず気配を感じさせぬよう後ろから雪美をつけるペロ。
後ろからペロの気配を感じる雪美。
執務室から出て廊下を左に曲がる。
いつもならこの角ですぐに振り返ってペロを見つけようとしたり、角にあるゴミ箱に隠れてペロをおびき寄せたりするが今日はいきなり走り出す。
給湯室の前を全速力で走り抜け、次は右に曲がる。
飼い主の奇手にびっくりしたペロは雪美を見失ってしまった。
かくれんぼにおいて、鬼から離れるのはメリットだ。
しかし、彼女らのかくれんぼにおいては致命的なのだ。
ペロは仕方なく、屈辱的であったが、ロビーにあった大きな植木鉢の影に隠れることにした。
7: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:22:39.25 ID:fxUBpFXw0
一方の雪美はペロが追いかけるのに夢中になって姿を現すことを期待していたが、見事に裏切られた。
振り返っても、誰もおらずただ薄暗い廊下とエナドリの並んだ自販機があるだけだった。
せっかく考えに考え抜いた作戦が台無しになった雪美は、落胆して近くの椅子に座り込んだ。
走っている間にレッスン室の前にあるロビーに来ていたようだ。
いつもはたくさんのアイドルで活気が溢れているこの場所も、静かに雨の音が響いているだけだった。
「今日……誰も……会わない……、……不思議…………」
周りを見渡しても誰も居らず、まるで世界に自分とペロしか居ないような感覚。
ふと、この前晴の話していた噂を思い出した。
思い出した瞬間、雪美はまるで操り人形のようにすっと立ち上がり第四レッスン室へあるき出す。
防音のされた重たい扉をあけて、扉へと歩み寄る。
鏡にかけらたカーテンのような重たいワインレッドの布を引っ張る。
黒い木の枠で囲まれた、地味な鏡が姿を現した。
鏡の中から小さく可愛らしいアイドルがこちらを見つめていた。
しばらくして、彼女は誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやいた。
「………………かくれんぼ……忘れてた……」
戦いの最中であったことを思い出し、雪美は再びペロを探しに向かう。
レッスン室を抜けて、もと来た道をたどる。
振り返っても、誰もおらずただ薄暗い廊下とエナドリの並んだ自販機があるだけだった。
せっかく考えに考え抜いた作戦が台無しになった雪美は、落胆して近くの椅子に座り込んだ。
走っている間にレッスン室の前にあるロビーに来ていたようだ。
いつもはたくさんのアイドルで活気が溢れているこの場所も、静かに雨の音が響いているだけだった。
「今日……誰も……会わない……、……不思議…………」
周りを見渡しても誰も居らず、まるで世界に自分とペロしか居ないような感覚。
ふと、この前晴の話していた噂を思い出した。
思い出した瞬間、雪美はまるで操り人形のようにすっと立ち上がり第四レッスン室へあるき出す。
防音のされた重たい扉をあけて、扉へと歩み寄る。
鏡にかけらたカーテンのような重たいワインレッドの布を引っ張る。
黒い木の枠で囲まれた、地味な鏡が姿を現した。
鏡の中から小さく可愛らしいアイドルがこちらを見つめていた。
しばらくして、彼女は誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやいた。
「………………かくれんぼ……忘れてた……」
戦いの最中であったことを思い出し、雪美は再びペロを探しに向かう。
レッスン室を抜けて、もと来た道をたどる。
8: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:24:34.36 ID:fxUBpFXw0
「おっ、雪美ちゃんじゃん。何か探してるの?」
「………心…………」
「はぁとって呼んでね☆」
「………はぁと…様……」
「様つけると逆に悪意を感じるぞ☆ってか雪美ちゃん一体何歳だよ」
「………シン……、アイリの……お兄ちゃん…………?」
「それはレイだよ。ってか北◯の拳ネタはやめろって☆」
「呼んだかしら?」
「呼んでません」
「……レイ…………なぞなぞ………して…………」
「ネタにしたあげく無茶振りかよ!容赦ねーな!」
「なぞなぞよ、舐められると立ってしまうものな~んだ」
「おい☆」
「…………………………ペロ……?」
「もはやそれ言いたいだけだろ!」
「……ペロ………ヒョウ……舐められる……。………毛………立つ………」
「正解よ。ちなみに他の答えは腹よ」
「優しいな、礼さんのそういうところ好きだぞ☆」
「あと男根もそうよね、それじゃぁね」
「なんでそういうこと言うんだよ!!!」
心の怒号から逃げるように、礼はその場から立ち去った。
「………心…………」
「はぁとって呼んでね☆」
「………はぁと…様……」
「様つけると逆に悪意を感じるぞ☆ってか雪美ちゃん一体何歳だよ」
「………シン……、アイリの……お兄ちゃん…………?」
「それはレイだよ。ってか北◯の拳ネタはやめろって☆」
「呼んだかしら?」
「呼んでません」
「……レイ…………なぞなぞ………して…………」
「ネタにしたあげく無茶振りかよ!容赦ねーな!」
「なぞなぞよ、舐められると立ってしまうものな~んだ」
「おい☆」
「…………………………ペロ……?」
「もはやそれ言いたいだけだろ!」
「……ペロ………ヒョウ……舐められる……。………毛………立つ………」
「正解よ。ちなみに他の答えは腹よ」
「優しいな、礼さんのそういうところ好きだぞ☆」
「あと男根もそうよね、それじゃぁね」
「なんでそういうこと言うんだよ!!!」
心の怒号から逃げるように、礼はその場から立ち去った。
9: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:27:07.31 ID:fxUBpFXw0
「……はぁと……ツッコミ……、………上手…………」
「好きでやってるんじゃないぞ☆」
「……………?」
「なんで首をかしげるんだよ!」
「……はぁと…………大阪人………、……違う………?」
「はぁとはしゅがしゅが星から来たしゅがみん聖人だぞ☆」
(しゅがしゅが星………?……初めて……聞いた……)
聞きなれない惑星の名前に、雪美は少し疑問を覚えた。
「ってそういえば雪美ちゃんは何か探してるの?」
「……ペロ……探してる………」
かくれんぼ中に何をしているか聞かれたら素直に答えるのが、彼女らのルールだ。
「そっかー、はぁとは見てないや☆ごめんね」
「……うん……ありがとう……。……またね…………」
「おう、またな☆」
雪美はまた歩き出し、ペロを探し始めた。
更衣室、カフェ、果てはトイレまでくまなく探した。
しかし、いくら探したりまた振り返ったりしてもペロは居なかった。
途方に暮れる雪美。
歩き疲れた雪美は誰も居ないエントランスのソファに深く腰掛けた。
なんとなくテレビに目をやると普段事務所で見るアイドル達が出ており雪美は少しほっとした。
「好きでやってるんじゃないぞ☆」
「……………?」
「なんで首をかしげるんだよ!」
「……はぁと…………大阪人………、……違う………?」
「はぁとはしゅがしゅが星から来たしゅがみん聖人だぞ☆」
(しゅがしゅが星………?……初めて……聞いた……)
聞きなれない惑星の名前に、雪美は少し疑問を覚えた。
「ってそういえば雪美ちゃんは何か探してるの?」
「……ペロ……探してる………」
かくれんぼ中に何をしているか聞かれたら素直に答えるのが、彼女らのルールだ。
「そっかー、はぁとは見てないや☆ごめんね」
「……うん……ありがとう……。……またね…………」
「おう、またな☆」
雪美はまた歩き出し、ペロを探し始めた。
更衣室、カフェ、果てはトイレまでくまなく探した。
しかし、いくら探したりまた振り返ったりしてもペロは居なかった。
途方に暮れる雪美。
歩き疲れた雪美は誰も居ないエントランスのソファに深く腰掛けた。
なんとなくテレビに目をやると普段事務所で見るアイドル達が出ており雪美は少しほっとした。
10: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:29:40.49 ID:fxUBpFXw0
「雪美ちゃん…浮かない顔してどうしたの?」
雪美がぼーっとしていると、いつの間にか美優が隣に座っていた。
「…………ペロ……見つからない………」
「今日はお留守番じゃないの?」
「……………?」
「ごめんなさい、私の勘違いだったみたいね」
「うん…………」
少しの間、二人は黙ってテレビを見ていた。
新しく出来たプールの宣伝だろうか、画面の向こうでは水着を着たアイドルがはしゃいでいた。
「………美優………………泳ぐの………得意…………?」
「えぇ、得意よ…ふふっ」
「………そう……」
静かに、しかし決意めいた目で雪美は立ち上がる。
「どうかしたの?」
「うん……。もう………行く…………」
「そう、またね」
「…………またね…………」
何かがおかしい。
しかし何がおかしいか、よくわからない。
得体の知れない違和感を抱えた雪美はまたあても無く歩き始める。
雪美がぼーっとしていると、いつの間にか美優が隣に座っていた。
「…………ペロ……見つからない………」
「今日はお留守番じゃないの?」
「……………?」
「ごめんなさい、私の勘違いだったみたいね」
「うん…………」
少しの間、二人は黙ってテレビを見ていた。
新しく出来たプールの宣伝だろうか、画面の向こうでは水着を着たアイドルがはしゃいでいた。
「………美優………………泳ぐの………得意…………?」
「えぇ、得意よ…ふふっ」
「………そう……」
静かに、しかし決意めいた目で雪美は立ち上がる。
「どうかしたの?」
「うん……。もう………行く…………」
「そう、またね」
「…………またね…………」
何かがおかしい。
しかし何がおかしいか、よくわからない。
得体の知れない違和感を抱えた雪美はまたあても無く歩き始める。
11: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:30:58.25 ID:fxUBpFXw0
「……雪美。あなた、雪美であって雪美でないわね」
突然、どこからともなくヘレンが雪美の眼前に姿を現す。
雪美はびっくりして一歩後ずさる。
「………どういうこと…………?」
「あなたは佐城雪美であって、佐城雪美でない。つまり、そういうこと」
「…………………………………またね………」
雪美は回れ右をする。
「雪美、待ちなさい」
「…ペロ………探す………」
振り返らずに雪美はそうつぶやいて歩き出す。
「第四レッスン室の鏡」
ぴたり、と雪美の足が止まる。
「見たわね?」
今度は回れ右をする。
「鏡を見た後、違和感を感じたでしょう?」
「…………うん………」
「貴方は私が注目しているアイドル、故に世界レベル」
「…………そう………」
「だから全ては言わないわ。3階の倉庫にある鍵の付いたクローゼット、そこに答えがある」
「答え………?」
「リトルアイドルモンスター・佐城雪美のアイドル哲学を見せて来なさい」
「…………?」
「それじゃぁ雪美、またね」
ヘレンはそう言い残して去っていった。
何も無いところでこけそうになったヘレンを見て見ぬふりをして、雪美は反対方向に歩き始めた。
突然、どこからともなくヘレンが雪美の眼前に姿を現す。
雪美はびっくりして一歩後ずさる。
「………どういうこと…………?」
「あなたは佐城雪美であって、佐城雪美でない。つまり、そういうこと」
「…………………………………またね………」
雪美は回れ右をする。
「雪美、待ちなさい」
「…ペロ………探す………」
振り返らずに雪美はそうつぶやいて歩き出す。
「第四レッスン室の鏡」
ぴたり、と雪美の足が止まる。
「見たわね?」
今度は回れ右をする。
「鏡を見た後、違和感を感じたでしょう?」
「…………うん………」
「貴方は私が注目しているアイドル、故に世界レベル」
「…………そう………」
「だから全ては言わないわ。3階の倉庫にある鍵の付いたクローゼット、そこに答えがある」
「答え………?」
「リトルアイドルモンスター・佐城雪美のアイドル哲学を見せて来なさい」
「…………?」
「それじゃぁ雪美、またね」
ヘレンはそう言い残して去っていった。
何も無いところでこけそうになったヘレンを見て見ぬふりをして、雪美は反対方向に歩き始めた。
12: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:32:47.65 ID:fxUBpFXw0
普段はたくさんのアイドルが宿題やおしゃべりに勤しむ談話室をちらりと覗き込む。
今日はペロはおろか、人さえおらずがらんとしていた。
鍵の付いたクローゼット、アイドル哲学。
意味不明な単語が何故か雪美の頭の中でぐるぐると回っていた。
雪美はふとどうしてアイドルをしているのか渡り廊下を歩きながら考え始めた。
ペロのご飯代のため。
応援してくれるファンのため。
色んな理由を思い出しながら階段を登る。
「でも……一番。………Pのため………」
いつの間にか雪美は鍵付きクローゼットの前に立っていた。
顔の付いた大きな植木鉢や不細工な緑のぬいぐるみなどが乱雑に置かれた薄暗い部屋。
その中でクローゼットの鍵だけがほんのすこしの灯りを反射して怪しく光って見えた。
薄暗くて静かな部屋。
それはまるでペロの居ない夜に留守番をするような心細さを感じさせる空間だった。
ガチャという音がしてひとりでにクローゼットの鍵が開く。
「………!」
雪美は無意識にクローゼットの取っ手に手をかけ、ゆっくりと開く。
クローゼットの中には何も無く、ただただ暗闇が広がっていた。
不意に、クローゼットの暗闇から細くて黒い腕が伸びて雪美の手を掴む。
腕が雪美をクローゼットの暗闇に引き寄せる。
「ペロやファン、ダーリンのためだけなの? ホントに?」
暗闇はそう囁やいて雪美を飲み込んだ。
倉庫にはただ扉が開いたままのクローゼットが静かに佇んでいた。
今日はペロはおろか、人さえおらずがらんとしていた。
鍵の付いたクローゼット、アイドル哲学。
意味不明な単語が何故か雪美の頭の中でぐるぐると回っていた。
雪美はふとどうしてアイドルをしているのか渡り廊下を歩きながら考え始めた。
ペロのご飯代のため。
応援してくれるファンのため。
色んな理由を思い出しながら階段を登る。
「でも……一番。………Pのため………」
いつの間にか雪美は鍵付きクローゼットの前に立っていた。
顔の付いた大きな植木鉢や不細工な緑のぬいぐるみなどが乱雑に置かれた薄暗い部屋。
その中でクローゼットの鍵だけがほんのすこしの灯りを反射して怪しく光って見えた。
薄暗くて静かな部屋。
それはまるでペロの居ない夜に留守番をするような心細さを感じさせる空間だった。
ガチャという音がしてひとりでにクローゼットの鍵が開く。
「………!」
雪美は無意識にクローゼットの取っ手に手をかけ、ゆっくりと開く。
クローゼットの中には何も無く、ただただ暗闇が広がっていた。
不意に、クローゼットの暗闇から細くて黒い腕が伸びて雪美の手を掴む。
腕が雪美をクローゼットの暗闇に引き寄せる。
「ペロやファン、ダーリンのためだけなの? ホントに?」
暗闇はそう囁やいて雪美を飲み込んだ。
倉庫にはただ扉が開いたままのクローゼットが静かに佇んでいた。
13: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:34:02.24 ID:fxUBpFXw0
――――――――――
気がつくと雪美はソファーに座って眩しいほどの光を浴びていた。
眼前にはたくさんのお客さんとたくさんのカメラ。
カラフルなスタジオのセット、雪美はテレビで見たトーク番組を思い出した。
アイドルがサイコロで出たお題に沿ってトークを行う番組「ダイス DE シンデレラ」のセットだった。
ちなみに雪美はまだ出演したことがない。
しかし今、まさに出演者の席に座っているのだった。
「ダイスDEシンデレラ、今日の司会の黒川千秋よ。よろしくね」
「今日はいつもとは違うスタイルでお送りするわ。その名もダイスDEロワイヤル」
何度かこの番組を見ている雪美だったが初めて聞いたコーナーだった。
「今回はあるお題に対して二人のアイドルがトークを行い、よりアイドルらしさを競うというもの」
「今回競ってもらうのはこの二人」
「メアリー・コクラン」
「ハァーイ! メアリーよ。アタシのスーパーなトークに勝てるかしら?」
雪美が声のする方に目をやると金髪碧眼の少女がオーディエンスに向かって眩しいほど精一杯にアピールをしていた。
「対するは…佐城雪美!」
まるで脊髄反射のごとく雪美はとっさに立ち上がる。
会場から歓声が沸き上がる。
「………………」
一瞬の歓声の後の一瞬の静寂。
身体から捻り出すように声をだす。
「………よろしく……ね……」
また、歓声が鳴り響く。
「ふたりとも気合充分ね。今回のテーマはこちら」
いつの間にか千秋の手にあったフリップがくるりと回る。
『私がアイドルになった理由』
「それでは会場の皆さんも一緒に……ガールズビーアイドル!」
「ガールズビーアイドル!!」
千秋の掛け声に併せて会場が叫ぶ。
気がつくと雪美はソファーに座って眩しいほどの光を浴びていた。
眼前にはたくさんのお客さんとたくさんのカメラ。
カラフルなスタジオのセット、雪美はテレビで見たトーク番組を思い出した。
アイドルがサイコロで出たお題に沿ってトークを行う番組「ダイス DE シンデレラ」のセットだった。
ちなみに雪美はまだ出演したことがない。
しかし今、まさに出演者の席に座っているのだった。
「ダイスDEシンデレラ、今日の司会の黒川千秋よ。よろしくね」
「今日はいつもとは違うスタイルでお送りするわ。その名もダイスDEロワイヤル」
何度かこの番組を見ている雪美だったが初めて聞いたコーナーだった。
「今回はあるお題に対して二人のアイドルがトークを行い、よりアイドルらしさを競うというもの」
「今回競ってもらうのはこの二人」
「メアリー・コクラン」
「ハァーイ! メアリーよ。アタシのスーパーなトークに勝てるかしら?」
雪美が声のする方に目をやると金髪碧眼の少女がオーディエンスに向かって眩しいほど精一杯にアピールをしていた。
「対するは…佐城雪美!」
まるで脊髄反射のごとく雪美はとっさに立ち上がる。
会場から歓声が沸き上がる。
「………………」
一瞬の歓声の後の一瞬の静寂。
身体から捻り出すように声をだす。
「………よろしく……ね……」
また、歓声が鳴り響く。
「ふたりとも気合充分ね。今回のテーマはこちら」
いつの間にか千秋の手にあったフリップがくるりと回る。
『私がアイドルになった理由』
「それでは会場の皆さんも一緒に……ガールズビーアイドル!」
「ガールズビーアイドル!!」
千秋の掛け声に併せて会場が叫ぶ。
14: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:35:21.46 ID:fxUBpFXw0
「先手必勝!先行はもらったワ!」
メアリーは奪うように千秋からマイクを受け取り話し始める。
「このセクシーでアダルティな魅力あふれるアタシがアイドルになるのはアタリマエのこと」
「だけど、今日は特別にアイドルになるリーズンを教えてあげるワ!」
「アタシはアメリカの学校ではスターだったの」
「もちろんジャパンに来たってアタシは周りのスターだったわ」
「でもそれだけ。学校の外ではなんでもなかったしジャパンで目立ってるのはアタシがアメリカンだから」
「それじゃぁダメなの。アタシの本当の魅力をわからせなきゃ」
「ジャパン中、ううん、ワールドをシスターを超えるアタシの魅力で夢中にするの」
「それが、アタシのアイドルになった理由よ」
最後のトドメと言わんばかりにウインクをするメアリー。
その瞬間、会場は総立ちで惜しみなく拍手を送った。
彼女をたたえて其の名を叫ぶもの、指笛を吹くもの、ただただ叫ぶものもいた。
のけぞりそうになるほどの大歓声を聞き、雪美に緊張が走った。
メアリーに勝てるほどのトークができるだろうか。
そもそも、メアリーのように明確なアイドルを続ける理由が話せるだろうか。
そんな不安が自分の尻尾を追いかけ続ける猫のようにぐるぐると回っていた。
「佐城さん…?大丈夫?」
気がつくと千秋が雪美の肩に手をおいていた。
「うん…………大丈夫……」
震える手でマイクを手に取り、観客を見る。
メアリーは奪うように千秋からマイクを受け取り話し始める。
「このセクシーでアダルティな魅力あふれるアタシがアイドルになるのはアタリマエのこと」
「だけど、今日は特別にアイドルになるリーズンを教えてあげるワ!」
「アタシはアメリカの学校ではスターだったの」
「もちろんジャパンに来たってアタシは周りのスターだったわ」
「でもそれだけ。学校の外ではなんでもなかったしジャパンで目立ってるのはアタシがアメリカンだから」
「それじゃぁダメなの。アタシの本当の魅力をわからせなきゃ」
「ジャパン中、ううん、ワールドをシスターを超えるアタシの魅力で夢中にするの」
「それが、アタシのアイドルになった理由よ」
最後のトドメと言わんばかりにウインクをするメアリー。
その瞬間、会場は総立ちで惜しみなく拍手を送った。
彼女をたたえて其の名を叫ぶもの、指笛を吹くもの、ただただ叫ぶものもいた。
のけぞりそうになるほどの大歓声を聞き、雪美に緊張が走った。
メアリーに勝てるほどのトークができるだろうか。
そもそも、メアリーのように明確なアイドルを続ける理由が話せるだろうか。
そんな不安が自分の尻尾を追いかけ続ける猫のようにぐるぐると回っていた。
「佐城さん…?大丈夫?」
気がつくと千秋が雪美の肩に手をおいていた。
「うん…………大丈夫……」
震える手でマイクを手に取り、観客を見る。
15: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:36:48.94 ID:fxUBpFXw0
いつもLIVEで気が狂ったようにサイリウムを振る観客たちも、今日はしかめつらで雪美を睨みつけていた。
数百の視線が雪美を突き刺す。
思わず、できるだけ遠くの一番奥の席へ視線を逃がす。
1人だけ、暖かな視線を送るものがいた。
薄暗く遠くにいるため、ぼんやりとしか見えなかったが、雪美はあれが誰でもないプロデューサーだと確信した。
がんばれ。
その人の声はおろか表情も見えるはずもなかったが、確かに雪美の耳に、心に、そう聞こえた。
手の震えを止めて、息を大きく吸い込む。
観客の喧騒が彼女に吸い込まれやがて静寂が場を包み込んだ。
「…私……アイドル……なった……。約束の……ため………」
「でも……うた……声……小さい……。身体……かたい………ダンスも……」
「アイドル………………むずかしい……けど……たのしい……。」
「うた……ダンス……笑顔……ちょっとずつ……できるよう………なった……」
「みんなの………おかげ………。アイドル……楽しい………」
「楽しい……だから………、アイドル………やる………」
「これからも………みんな……楽しませる……。だから……楽しませて……ね……。」
負けじと、雪美もウインクをする。
しかし先程の大歓声とは打って変わって、会場は水を打ったように静まり返っていた。
静寂の余韻だけが鳴り響く。
少しした後、パチ、パチと小さな拍手が響き始めた。
止水に石が投げ込まれて波紋が生まれるように、拍手は瞬く間に広がり大きくなった。
メアリーのときに勝るとも劣らない大歓声の激流が雪美を包み込んだ。
歓声が一通り止んだ頃、千秋は重々しく口を開く。
「それでは、お手元のボタンでどちらのトークがよりアイドルらしかったか投票して頂戴」
観客が、思い思いにボタンを押す。
かなりの手応えを感じていた反面、果たしてトークでメアリーの勝てるのかという不安も雪美は抱えていた。
数百の視線が雪美を突き刺す。
思わず、できるだけ遠くの一番奥の席へ視線を逃がす。
1人だけ、暖かな視線を送るものがいた。
薄暗く遠くにいるため、ぼんやりとしか見えなかったが、雪美はあれが誰でもないプロデューサーだと確信した。
がんばれ。
その人の声はおろか表情も見えるはずもなかったが、確かに雪美の耳に、心に、そう聞こえた。
手の震えを止めて、息を大きく吸い込む。
観客の喧騒が彼女に吸い込まれやがて静寂が場を包み込んだ。
「…私……アイドル……なった……。約束の……ため………」
「でも……うた……声……小さい……。身体……かたい………ダンスも……」
「アイドル………………むずかしい……けど……たのしい……。」
「うた……ダンス……笑顔……ちょっとずつ……できるよう………なった……」
「みんなの………おかげ………。アイドル……楽しい………」
「楽しい……だから………、アイドル………やる………」
「これからも………みんな……楽しませる……。だから……楽しませて……ね……。」
負けじと、雪美もウインクをする。
しかし先程の大歓声とは打って変わって、会場は水を打ったように静まり返っていた。
静寂の余韻だけが鳴り響く。
少しした後、パチ、パチと小さな拍手が響き始めた。
止水に石が投げ込まれて波紋が生まれるように、拍手は瞬く間に広がり大きくなった。
メアリーのときに勝るとも劣らない大歓声の激流が雪美を包み込んだ。
歓声が一通り止んだ頃、千秋は重々しく口を開く。
「それでは、お手元のボタンでどちらのトークがよりアイドルらしかったか投票して頂戴」
観客が、思い思いにボタンを押す。
かなりの手応えを感じていた反面、果たしてトークでメアリーの勝てるのかという不安も雪美は抱えていた。
16: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:37:45.27 ID:fxUBpFXw0
緊張の一瞬、しかし結果はすぐさま集計された。
「結果を発表するわ。505対495で……佐城さんの勝利!!」
両者の健闘を讃える歓声が鳴り響く。
「悔しいけどアタシの負けね。いいバトルだったわ、ユキミ」
メアリーは雪美に近づき、手を差し出す。
「うん……ありがとう……。メアリー………」
メアリーの手をにぎる雪美。
「どちらも自分のためにアイドルをやるというポイントがよかったわ」
「誰かのためにアイドルをやるのもいいけど、やっぱり自分自身が輝いてなければいけないものね」
「佐城さんはそれに加えて成長点が感じられたわ」
「それはまるでシンデレラストーリーのようで、聞いている私達を魔法使いにしてくれた」
「そこが佐城さんの勝因ね」
「さぁ佐城さん、貴女の世界への出口はあっちよ」
千秋は上手を指差した。
「………?」
「お行きなさい佐城さん。絶対に振り返ってはダメよ」
千秋がもう一度促す。
雪美は全てを理解したように、ゆっくりと薄暗い出口へ向かって歩きだす。
「今日のダイスDEシンデレラはここまで。次回も是非見てね」
「シーユアゲイン!」
「結果を発表するわ。505対495で……佐城さんの勝利!!」
両者の健闘を讃える歓声が鳴り響く。
「悔しいけどアタシの負けね。いいバトルだったわ、ユキミ」
メアリーは雪美に近づき、手を差し出す。
「うん……ありがとう……。メアリー………」
メアリーの手をにぎる雪美。
「どちらも自分のためにアイドルをやるというポイントがよかったわ」
「誰かのためにアイドルをやるのもいいけど、やっぱり自分自身が輝いてなければいけないものね」
「佐城さんはそれに加えて成長点が感じられたわ」
「それはまるでシンデレラストーリーのようで、聞いている私達を魔法使いにしてくれた」
「そこが佐城さんの勝因ね」
「さぁ佐城さん、貴女の世界への出口はあっちよ」
千秋は上手を指差した。
「………?」
「お行きなさい佐城さん。絶対に振り返ってはダメよ」
千秋がもう一度促す。
雪美は全てを理解したように、ゆっくりと薄暗い出口へ向かって歩きだす。
「今日のダイスDEシンデレラはここまで。次回も是非見てね」
「シーユアゲイン!」
17: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:39:16.66 ID:fxUBpFXw0
段々と舞台が暗くなる。
雪美が一歩一歩歩きだすごとに、段々と照明が消える。
やがて照明が全て消えて、あたりは真っ暗になった。
それでも雪美は、前に向かって歩き続ける。
突然、目の前に扉が現れた。
雪美は勢い良く、扉を開く。
眩しい光が暗闇に慣れた雪美の目を刺激する。
鋼鉄公演で使われたきらりんロボ。
幻想公演で千秋や法子が使った武器や防具。
様々な見覚えのあるアイテムが光に慣れ始めた目に飛び込んできた。
「ここにいると思ったわ、小さな冒険者さん」
きらりんロボの後ろから、ヘレンが姿を現す。
「雪美ちゃんここに居たのね。探したのよ……」
美優も現れて雪美に寄り添う。
「みんな探してるわ、早く戻りましょう」
「美優…………泳ぐの…得意……?」
「えっ、私は泳ぐの苦手よ。急にどうしたの?」
「ううん……、……なんでも…ない…………。みんなのとこ……戻る………」
雪美はそう言って、また歩き始めた。
終わり
雪美が一歩一歩歩きだすごとに、段々と照明が消える。
やがて照明が全て消えて、あたりは真っ暗になった。
それでも雪美は、前に向かって歩き続ける。
突然、目の前に扉が現れた。
雪美は勢い良く、扉を開く。
眩しい光が暗闇に慣れた雪美の目を刺激する。
鋼鉄公演で使われたきらりんロボ。
幻想公演で千秋や法子が使った武器や防具。
様々な見覚えのあるアイテムが光に慣れ始めた目に飛び込んできた。
「ここにいると思ったわ、小さな冒険者さん」
きらりんロボの後ろから、ヘレンが姿を現す。
「雪美ちゃんここに居たのね。探したのよ……」
美優も現れて雪美に寄り添う。
「みんな探してるわ、早く戻りましょう」
「美優…………泳ぐの…得意……?」
「えっ、私は泳ぐの苦手よ。急にどうしたの?」
「ううん……、……なんでも…ない…………。みんなのとこ……戻る………」
雪美はそう言って、また歩き始めた。
終わり
18: ◆yz988L0kIg 2017/04/30(日) 23:41:43.95 ID:fxUBpFXw0
以上です。
これからも膝の上の恋人こと佐城雪美ちゃんをよろしくお願い申し上げます。
前作です。
【モバマスSS】雪美「マクド…………?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491923515/
これからも膝の上の恋人こと佐城雪美ちゃんをよろしくお願い申し上げます。
前作です。
【モバマスSS】雪美「マクド…………?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491923515/
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/01(月) 00:47:22.15 ID:5b7W15Tl0
おつ
まさかの前作どっひゃぁで笑った
まさかの前作どっひゃぁで笑った
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493559532/
Entry ⇒ 2017.12.31 | Category ⇒ モバマス | Comments (0)
【ミリマス】P「おーい、志保―」
1: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 13:08:22.30 ID:Uw+dEf5P0
2: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 13:21:32.02 ID:Uw+dEf5P0
志保「はい」
P「今時間いいか?」
志保「大丈夫です。お仕事の話ですか?」
P「そうだ。真面目な話だし、場所を変えようか」
志保「分かりました」
P「そうだな、気分転換がてら喫茶店にでも行こう」
志保「仕事を放り出してもいいんですか?」
P「今日はずっと事務仕事で机とにらめっこだったんだ。これくらいは見逃してくれ」
志保「冗談です。プロデューサーさんが頑張ってくれているのは、その、知ってますから」
P「嬉しいこと言ってくれるな」
志保「っ、あくまで、客観的に見てですからっ」
P「それでも嬉しいものは嬉しいさ。ありがとな」
志保「~もうっ、打ち合わせするんですよね!早く行きましょう!」
P「お、おい、待てって。あ、音無さん。少し出てきますね」
小鳥「はい、いってらっしゃい。プロデューサーさん」
P「今時間いいか?」
志保「大丈夫です。お仕事の話ですか?」
P「そうだ。真面目な話だし、場所を変えようか」
志保「分かりました」
P「そうだな、気分転換がてら喫茶店にでも行こう」
志保「仕事を放り出してもいいんですか?」
P「今日はずっと事務仕事で机とにらめっこだったんだ。これくらいは見逃してくれ」
志保「冗談です。プロデューサーさんが頑張ってくれているのは、その、知ってますから」
P「嬉しいこと言ってくれるな」
志保「っ、あくまで、客観的に見てですからっ」
P「それでも嬉しいものは嬉しいさ。ありがとな」
志保「~もうっ、打ち合わせするんですよね!早く行きましょう!」
P「お、おい、待てって。あ、音無さん。少し出てきますね」
小鳥「はい、いってらっしゃい。プロデューサーさん」
3: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 13:30:02.50 ID:Uw+dEf5P0
喫茶店
志保「プロデューサーさん」
P「も、もうちょっと待ってくれ」
志保「いつまで迷ってるんですか」
P「いや、フレンチトーストかホットケーキかどっちにしようかと思ってな」
志保「店員さん呼んだら決まりますよ。すいませーん」
P「ちょっ」
店員「はい、お決まりでしょうか?」
志保「この紅茶をホットで。あと…フレンチトーストください」
P「! 志保」
志保「ほ、ほら。プロデューサーさんはホットケーキを頼めばいいんじゃないですか」
P「そうだな。すいません、コーヒーのブラックをホットで。あと、ホットケーキください」
店員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
志保「プロデューサーさん」
P「も、もうちょっと待ってくれ」
志保「いつまで迷ってるんですか」
P「いや、フレンチトーストかホットケーキかどっちにしようかと思ってな」
志保「店員さん呼んだら決まりますよ。すいませーん」
P「ちょっ」
店員「はい、お決まりでしょうか?」
志保「この紅茶をホットで。あと…フレンチトーストください」
P「! 志保」
志保「ほ、ほら。プロデューサーさんはホットケーキを頼めばいいんじゃないですか」
P「そうだな。すいません、コーヒーのブラックをホットで。あと、ホットケーキください」
店員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
4: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 13:39:39.76 ID:Uw+dEf5P0
P「志保」
志保「な、なんですか」
P「ありがとな」
志保「べ、別に。私がフレンチトースト食べたいと思っただけですから」
P「それでもだよ」
志保「まぁ、プロデューサーさんと半分こする、なんて一言も言ってませんし」
P「半分こ」
志保「っ、二等分する、なんて一言も言ってませんから!」
P「もう一回『半分こ』って言ってくれないか」
志保「プロデューサーさん?」ギロリ
P「わかった、俺が悪かった」
志保「ったく、すぐ調子に乗るんだから…」
志保「な、なんですか」
P「ありがとな」
志保「べ、別に。私がフレンチトースト食べたいと思っただけですから」
P「それでもだよ」
志保「まぁ、プロデューサーさんと半分こする、なんて一言も言ってませんし」
P「半分こ」
志保「っ、二等分する、なんて一言も言ってませんから!」
P「もう一回『半分こ』って言ってくれないか」
志保「プロデューサーさん?」ギロリ
P「わかった、俺が悪かった」
志保「ったく、すぐ調子に乗るんだから…」
5: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 13:55:42.71 ID:Uw+dEf5P0
志保「プロデューサーさん」
P「ん。あ、そろそろホットケーキと交換するか?」
志保「あ、いただきます。…じゃなくて」
P「仕事の話だろ?」
志保「…分かってるんじゃないですか」
P「それが目的だったしな」
志保「それで、お仕事はどんな内容ですか?」
P「ドラマのオファーが来てる。それも志保をご指名だ」
志保「! ドラマ、ですか」
P「あぁ。以前、少しだけ出演したドラマあったろ。そこのディレクターさんが志保を覚えていてくださってな」
志保「光栄ですね」
P「本当にな。どうする?受けるか?」
志保「もちろんです。受けさせてください」
P「即答だな」
志保「はい。せっかくいただいたお仕事ですから」
P「志保の意思は分かった。じゃあここからが本題だ」
志保「? ここからが本題、ですか?」
P「あぁ、実はなーーーー」
P「ん。あ、そろそろホットケーキと交換するか?」
志保「あ、いただきます。…じゃなくて」
P「仕事の話だろ?」
志保「…分かってるんじゃないですか」
P「それが目的だったしな」
志保「それで、お仕事はどんな内容ですか?」
P「ドラマのオファーが来てる。それも志保をご指名だ」
志保「! ドラマ、ですか」
P「あぁ。以前、少しだけ出演したドラマあったろ。そこのディレクターさんが志保を覚えていてくださってな」
志保「光栄ですね」
P「本当にな。どうする?受けるか?」
志保「もちろんです。受けさせてください」
P「即答だな」
志保「はい。せっかくいただいたお仕事ですから」
P「志保の意思は分かった。じゃあここからが本題だ」
志保「? ここからが本題、ですか?」
P「あぁ、実はなーーーー」
6: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 14:08:21.51 ID:Uw+dEf5P0
北沢家
志保母「志保ー」
志保「あ、えっと。なにお母さん」
志保母「どうしたの、ぼーっとしちゃって。なにか悩み事?」
志保「…うん。悩み事、かな」
志保母「お仕事のこと?」
志保「そう、だね。仕事のことで、悩むことがあって」
志保母「そうなの。お母さん、アイドルのお仕事のことは分からないけど、話を聞くことぐらいはできるわよ?」
志保「…うん、ありがとうお母さん。…実はね、ドラマの出演のオファーを受けてるの」
志保母「まぁ、凄いわね志保。それはおめでとう」
志保「ありがとう。でも、そのオファーには、条件があってね」
志保母「条件?」
志保「うん、その条件っていうのがーーーー」
志保母「志保ー」
志保「あ、えっと。なにお母さん」
志保母「どうしたの、ぼーっとしちゃって。なにか悩み事?」
志保「…うん。悩み事、かな」
志保母「お仕事のこと?」
志保「そう、だね。仕事のことで、悩むことがあって」
志保母「そうなの。お母さん、アイドルのお仕事のことは分からないけど、話を聞くことぐらいはできるわよ?」
志保「…うん、ありがとうお母さん。…実はね、ドラマの出演のオファーを受けてるの」
志保母「まぁ、凄いわね志保。それはおめでとう」
志保「ありがとう。でも、そのオファーには、条件があってね」
志保母「条件?」
志保「うん、その条件っていうのがーーーー」
7: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 14:32:23.69 ID:Uw+dEf5P0
喫茶店(回想)
志保『一か月間、一人暮らしをすることが条件…ですか?』
P『あぁ。志保がオファーを受けているのが、女優になるという夢を叶えるために、高校入学と同時に上京してきた女の子、っていう役柄でな』
志保『高校入学、って、私の年齢より上の役柄ですけど』
P『あぁ、まぁそこは志保の大人っぽい言動を評価してくれてのことだろう。問題はそこじゃない』
志保『役作りのために、一人暮らしを実際にしなければならない、というところですか』
P『そう。このドラマの監督さんの意向でな。リアリティが欲しいそうだ』
志保『年齢はいいんでしょうか』
P『年齢なんてものは努力しても変えられないからな』
志保『それもそうですね』
P『それで、改めて志保の意思を聞きたいと思うが、すぐには決められないだろ。明日、また聞いてもいいか?』
志保『…あの、一つ質問してもいいですか?』
P『どうした?』
志保『この話、お母さ、いえ、母には、もう通してあるんですか?』
P『いや、連絡してないよ。一般的には親御さんの許可を取るのが先のほうがいいんだが、守秘義務とかいろいろあってな』
志保『…分かりました」
志保『一か月間、一人暮らしをすることが条件…ですか?』
P『あぁ。志保がオファーを受けているのが、女優になるという夢を叶えるために、高校入学と同時に上京してきた女の子、っていう役柄でな』
志保『高校入学、って、私の年齢より上の役柄ですけど』
P『あぁ、まぁそこは志保の大人っぽい言動を評価してくれてのことだろう。問題はそこじゃない』
志保『役作りのために、一人暮らしを実際にしなければならない、というところですか』
P『そう。このドラマの監督さんの意向でな。リアリティが欲しいそうだ』
志保『年齢はいいんでしょうか』
P『年齢なんてものは努力しても変えられないからな』
志保『それもそうですね』
P『それで、改めて志保の意思を聞きたいと思うが、すぐには決められないだろ。明日、また聞いてもいいか?』
志保『…あの、一つ質問してもいいですか?』
P『どうした?』
志保『この話、お母さ、いえ、母には、もう通してあるんですか?』
P『いや、連絡してないよ。一般的には親御さんの許可を取るのが先のほうがいいんだが、守秘義務とかいろいろあってな』
志保『…分かりました」
8: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 14:57:01.46 ID:Uw+dEf5P0
再び北沢家
志保「----っていう感じなんだけど」
志保母「なるほどね」
志保「うん」
志保母「志保の考えていること、当ててあげようか」
志保「えっ?」
志保母「せっかくのオファーだし受けてみたいけど、お母さんは忙しいし、あの子の面倒も見ないといけない。一か月も家を空けて、二人は大丈夫かな。こんなところかしら?」
志保「…凄い、お母さん」
志保母「伊達に十四年間、志保の母親やってないからね」フフン
志保「…うん」
志保母「志保」
志保「! なに?」
志保母「あなたは本当にいい子で、あの子や私に気を使ってくれているけど、時には自分の気持ちを優先してくれてもいいのよ?」
志保「自分の気持ち…」
志保母「そう、うちのことはお母さんに任せておけばいいの。あなたは、どうしたいんだっけ?」
志保「…ありがとう、お母さん。私はーーーー」
志保「----っていう感じなんだけど」
志保母「なるほどね」
志保「うん」
志保母「志保の考えていること、当ててあげようか」
志保「えっ?」
志保母「せっかくのオファーだし受けてみたいけど、お母さんは忙しいし、あの子の面倒も見ないといけない。一か月も家を空けて、二人は大丈夫かな。こんなところかしら?」
志保「…凄い、お母さん」
志保母「伊達に十四年間、志保の母親やってないからね」フフン
志保「…うん」
志保母「志保」
志保「! なに?」
志保母「あなたは本当にいい子で、あの子や私に気を使ってくれているけど、時には自分の気持ちを優先してくれてもいいのよ?」
志保「自分の気持ち…」
志保母「そう、うちのことはお母さんに任せておけばいいの。あなたは、どうしたいんだっけ?」
志保「…ありがとう、お母さん。私はーーーー」
9: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 15:03:57.93 ID:Uw+dEf5P0
事務所
志保「プロデューサーさん」
P「お。おはよう志保」
志保「おはようございます」
P「うん。その顔つきを見ると、答えは出たみたいだな」
志保「はい。ドラマのオファー、受けさせていただきたいと思います」
P「分かった。先方には連絡しておく」
志保「はい、よろしくお願いします。私はレッスンに行ってきますね」
P「あぁ。頑張りすぎるなよ」
志保「分かってます。では」
志保「プロデューサーさん」
P「お。おはよう志保」
志保「おはようございます」
P「うん。その顔つきを見ると、答えは出たみたいだな」
志保「はい。ドラマのオファー、受けさせていただきたいと思います」
P「分かった。先方には連絡しておく」
志保「はい、よろしくお願いします。私はレッスンに行ってきますね」
P「あぁ。頑張りすぎるなよ」
志保「分かってます。では」
10: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 15:32:26.03 ID:Uw+dEf5P0
P「音無さん」
小鳥「はい?」
P「音無さんって、マンション住まいでしたよね」
小鳥「そうですね」
P「空いている部屋があるか、確認していただいてもいいですか?」
小鳥「それって、私と同じマンションに住みたいっていう遠回しの告白ですか?」
P「違いますよ。志保とのやりとり、聞いていたでしょう」
小鳥「半分冗談ですよ」フフッ
P「残りの半分は聞かないでおきますね」
小鳥「聞いてくれても構いませんけどね。それで私のマンションですか?」
P「はい。できたら、音無さんと同じマンション。欲を言えば、同じ階に空室があれば理想ですね」
小鳥「こちらで志保ちゃんの住居を指定して構わないんですか?」
P「えぇ。先方からは、未成年だし、信頼関係のある事務所の方々と相談して住居を決めたほうがいいだろう、と」
小鳥「それもそうですね」
P「音無さんのマンションに空室がなければ、このみさんに相談したいところですね」
小鳥「なるほど。生活上の不便が出た場合に、頼れる人物が近くにいたほうがいい、ということですね」
P「話が早くて助かります」
小鳥「優秀な事務員ですから」エッヘン
P「ほんとにそうですね」
小鳥「今のは百パーセント冗談なんですけど…」カァァ
P「いえいえ、ご謙遜を」
小鳥「そ、それで!条件としては、信頼できる人物が近辺に住んでる住居であれば問題ない、ということですね?」
P「はい、できたら同じ階が好ましいですね」
小鳥「分かりました。じゃあその手続きとかはこちらで進めておきますよ」
P「いいんですか?」
小鳥「はい。プロデューサーさんは他にもやることがたくさんあるでしょう?」
P「…そうですね。スイマセン、志保の住居の件はお願いしてもいいですか?」
小鳥「はい♪あと、志保ちゃんのお母さまへの説明にも私が伺いますね」
P「いや、そこまで任せるわけには…」
小鳥「女同士のほうが、話がスムーズに進むこともあるんですよ?」ニコッ
P「…それもそうですね。失礼しました。すいませんが、よろしくお願いします」
小鳥「はい♪」
小鳥(ふふっ、せっかくの機会だし、志保ちゃんにはご褒美をあげなきゃね♪)
小鳥「はい?」
P「音無さんって、マンション住まいでしたよね」
小鳥「そうですね」
P「空いている部屋があるか、確認していただいてもいいですか?」
小鳥「それって、私と同じマンションに住みたいっていう遠回しの告白ですか?」
P「違いますよ。志保とのやりとり、聞いていたでしょう」
小鳥「半分冗談ですよ」フフッ
P「残りの半分は聞かないでおきますね」
小鳥「聞いてくれても構いませんけどね。それで私のマンションですか?」
P「はい。できたら、音無さんと同じマンション。欲を言えば、同じ階に空室があれば理想ですね」
小鳥「こちらで志保ちゃんの住居を指定して構わないんですか?」
P「えぇ。先方からは、未成年だし、信頼関係のある事務所の方々と相談して住居を決めたほうがいいだろう、と」
小鳥「それもそうですね」
P「音無さんのマンションに空室がなければ、このみさんに相談したいところですね」
小鳥「なるほど。生活上の不便が出た場合に、頼れる人物が近くにいたほうがいい、ということですね」
P「話が早くて助かります」
小鳥「優秀な事務員ですから」エッヘン
P「ほんとにそうですね」
小鳥「今のは百パーセント冗談なんですけど…」カァァ
P「いえいえ、ご謙遜を」
小鳥「そ、それで!条件としては、信頼できる人物が近辺に住んでる住居であれば問題ない、ということですね?」
P「はい、できたら同じ階が好ましいですね」
小鳥「分かりました。じゃあその手続きとかはこちらで進めておきますよ」
P「いいんですか?」
小鳥「はい。プロデューサーさんは他にもやることがたくさんあるでしょう?」
P「…そうですね。スイマセン、志保の住居の件はお願いしてもいいですか?」
小鳥「はい♪あと、志保ちゃんのお母さまへの説明にも私が伺いますね」
P「いや、そこまで任せるわけには…」
小鳥「女同士のほうが、話がスムーズに進むこともあるんですよ?」ニコッ
P「…それもそうですね。失礼しました。すいませんが、よろしくお願いします」
小鳥「はい♪」
小鳥(ふふっ、せっかくの機会だし、志保ちゃんにはご褒美をあげなきゃね♪)
13: ◆mLDidKKbwk 2017/11/18(土) 17:15:44.87 ID:Uw+dEf5P0
小鳥「志保ちゃん」
志保「はい?あ、お疲れ様です、小鳥さん」
小鳥「お疲れさま。今、時間いいかしら?」
志保「はい。大丈夫です」
小鳥「志保ちゃんが一か月の間住むところが決定したわ。アパートなんだけどね」
志保「もうですか。話があってから一週間くらいしか経っていませんが」
小鳥「ドラマの他の出演者の人たちも、それぞれ役作りの期間に入り始めてるみたいようだし。早いに越したことはないからね」
志保「他の方たちも私のような条件が?」
小鳥「えぇ。入院患者の役を演じる主演の俳優さんなんて、一か月間本当にベッドの上で生活しなければならないそうよ」
志保「それは…嫌ですね」
小鳥「監督さん、すごいこだわりよね」フフッ
志保「あ、それでいつからそのアパートに引っ越せばいいんでしょうか?」
小鳥「そうだったわね。えーとね、四日後よ。生活に必要な家電とかは用意されてるところだから、洋服とか普段使いの物を持ってくだけでいいからね」
志保「分かりました」
小鳥「なにかと不便もあるだろうけど、同じ階にこの事務所の人が住んでるから、困ったらその人を頼ってね」
志保「この事務所の人?」
小鳥「えぇ。その人が誰かは、会ってのお楽しみ♪」
志保「はぁ」
志保(誰だろう…風花さんとかかな?)
小鳥「あ、あと」
志保「はい?」
小鳥「志保ちゃんの住むお部屋ね、扉を正面に見て右側には人が住んでないんだけど、左側には男性の方が住んでるみたいなの」
志保「はい」
小鳥「一応、一か月間は隣に住ませてもらうわけだから、引っ越し初日に挨拶だけはしておいてね。もちろん変装は忘れずに」
志保「分かりました」
小鳥「じゃあ、これで説明は以上かしら。なにか質問ある?」
志保「いえ、特には」
小鳥「そう?じゃあこれで話は終わりね。お疲れさま」
志保「はい。お疲れ様でした」
小鳥(……♪)
志保「はい?あ、お疲れ様です、小鳥さん」
小鳥「お疲れさま。今、時間いいかしら?」
志保「はい。大丈夫です」
小鳥「志保ちゃんが一か月の間住むところが決定したわ。アパートなんだけどね」
志保「もうですか。話があってから一週間くらいしか経っていませんが」
小鳥「ドラマの他の出演者の人たちも、それぞれ役作りの期間に入り始めてるみたいようだし。早いに越したことはないからね」
志保「他の方たちも私のような条件が?」
小鳥「えぇ。入院患者の役を演じる主演の俳優さんなんて、一か月間本当にベッドの上で生活しなければならないそうよ」
志保「それは…嫌ですね」
小鳥「監督さん、すごいこだわりよね」フフッ
志保「あ、それでいつからそのアパートに引っ越せばいいんでしょうか?」
小鳥「そうだったわね。えーとね、四日後よ。生活に必要な家電とかは用意されてるところだから、洋服とか普段使いの物を持ってくだけでいいからね」
志保「分かりました」
小鳥「なにかと不便もあるだろうけど、同じ階にこの事務所の人が住んでるから、困ったらその人を頼ってね」
志保「この事務所の人?」
小鳥「えぇ。その人が誰かは、会ってのお楽しみ♪」
志保「はぁ」
志保(誰だろう…風花さんとかかな?)
小鳥「あ、あと」
志保「はい?」
小鳥「志保ちゃんの住むお部屋ね、扉を正面に見て右側には人が住んでないんだけど、左側には男性の方が住んでるみたいなの」
志保「はい」
小鳥「一応、一か月間は隣に住ませてもらうわけだから、引っ越し初日に挨拶だけはしておいてね。もちろん変装は忘れずに」
志保「分かりました」
小鳥「じゃあ、これで説明は以上かしら。なにか質問ある?」
志保「いえ、特には」
小鳥「そう?じゃあこれで話は終わりね。お疲れさま」
志保「はい。お疲れ様でした」
小鳥(……♪)
21: ◆mLDidKKbwk 2017/11/19(日) 22:53:45.75 ID:x8/xhC9x0
四日後・志保のこれから住むアパート
志保「ふぅ…荷物はこれで全部かな」
志保「あっ、そうだ。先にお隣さんに挨拶しておかなくちゃ」
志保「左隣…ここよね。帽子も被ったし、メガネもしたし…よし」ピンポーン
ガチャ
?「…はい」
志保(明らかに寝起きよね…スウェットだし、髪ボサボサだし。メガネとマスクしてるから表情はよく分からないけど」
?「…あの、なにか御用ですか?」
志保「あっ、お休み中のところすいません。短い間ではあるのですが、隣に引っ越して来ました。北沢と申します」
?「…キタザワ?」
志保「はい、北沢ですがなにか…?」
?「……志保??」
志保「あ、えーと。そうですね。ご存知みたいですが、一応アイドルをやらせていただいてます。北沢志保と申します」
?「………」
志保「あの…?」
?「……あー、なるほどな。音無さんの仕業か。まったくあの人は何を考えて…」ブツブツ
志保「あ、あの…なにか……?」
志保(なにかブツブツ言ってるし、怪しい人かも…)
志保「でっ、では、挨拶も済みましたので、これで失礼しますっ」ペコリ
?「あー、待て待て志保」
志保「ッ」
志保「すいませんが、初対面の方に下の名前で呼ばれたくはありません!…では、改めて失礼します」
?「あー、もう。まだ気づいてないのか?」
志保「…なにを言って」
?「あ、そうか。普段髪の整えてるし、マスクなんてしてないしな」
志保「……??」
?「おはよう、志保。って言ってももう昼近くになるか」スッ
志保「ぷっ」
志保「プロデューサー!!?」
志保「ふぅ…荷物はこれで全部かな」
志保「あっ、そうだ。先にお隣さんに挨拶しておかなくちゃ」
志保「左隣…ここよね。帽子も被ったし、メガネもしたし…よし」ピンポーン
ガチャ
?「…はい」
志保(明らかに寝起きよね…スウェットだし、髪ボサボサだし。メガネとマスクしてるから表情はよく分からないけど」
?「…あの、なにか御用ですか?」
志保「あっ、お休み中のところすいません。短い間ではあるのですが、隣に引っ越して来ました。北沢と申します」
?「…キタザワ?」
志保「はい、北沢ですがなにか…?」
?「……志保??」
志保「あ、えーと。そうですね。ご存知みたいですが、一応アイドルをやらせていただいてます。北沢志保と申します」
?「………」
志保「あの…?」
?「……あー、なるほどな。音無さんの仕業か。まったくあの人は何を考えて…」ブツブツ
志保「あ、あの…なにか……?」
志保(なにかブツブツ言ってるし、怪しい人かも…)
志保「でっ、では、挨拶も済みましたので、これで失礼しますっ」ペコリ
?「あー、待て待て志保」
志保「ッ」
志保「すいませんが、初対面の方に下の名前で呼ばれたくはありません!…では、改めて失礼します」
?「あー、もう。まだ気づいてないのか?」
志保「…なにを言って」
?「あ、そうか。普段髪の整えてるし、マスクなんてしてないしな」
志保「……??」
?「おはよう、志保。って言ってももう昼近くになるか」スッ
志保「ぷっ」
志保「プロデューサー!!?」
22: ◆mLDidKKbwk 2017/11/19(日) 23:17:18.17 ID:x8/xhC9x0
P「音無さん」
小鳥『はい?』
P「謀りましたね」
小鳥『さて、なんのことでしょう♪』
P「とぼけないでください」
小鳥『失礼ですね。私はちゃーんと、プロデューサーさんが言った条件を満たしましたよ?』
P「なにを言って…」
小鳥『〈信頼できる人物が近辺に住んでる住居〉であり、かつ〈同じ階が望ましい〉、でしたよね?』
P「…その通りです」
小鳥『ほら!だから、信頼できるプロデューサーさんが住んでるアパートで、同じ階の隣の部屋に決めたんじゃないですか』
P「だからと言って」
小鳥『志保ちゃんのお母さまにも許可をいただいてますよ?』
P「なっ」
小鳥『なにか万が一の事があった時に、男手があった方がいいだろう、と』
P「……」
小鳥『なにか他に質問などはありますか?』
P「いえ…」
小鳥『そうですか♪』
P「…本当に優秀な事務員ですね、音無さん」
小鳥『今のは百パーセント褒め言葉として受け止めておきますね♪』
P「皮肉ですよ…」
小鳥『小鳥、だけにですか?プロデューサーさんは冗談がお上手ですね』
P「…音無さんには敵いませんね」
小鳥『またまたご謙遜を♪』
P「百パーセントの本音ですよ…」
小鳥『そうですか。では、そろそろ失礼しますね。志保ちゃんによろしくお伝えください。プロデューサーさんは休みを満喫してくださいねー♪』ピッ
P「はぁ……」
志保「あの、小鳥さんは、なんと」
P「本気でここに志保を住まわせる気らしい…」
志保「そ、そうですか…」
P「…」
志保「…」
P「…まぁ、玄関先で話すのもなんだし、とりあえず上がってくれ」
志保「あ、はい。お邪魔します…」
小鳥『はい?』
P「謀りましたね」
小鳥『さて、なんのことでしょう♪』
P「とぼけないでください」
小鳥『失礼ですね。私はちゃーんと、プロデューサーさんが言った条件を満たしましたよ?』
P「なにを言って…」
小鳥『〈信頼できる人物が近辺に住んでる住居〉であり、かつ〈同じ階が望ましい〉、でしたよね?』
P「…その通りです」
小鳥『ほら!だから、信頼できるプロデューサーさんが住んでるアパートで、同じ階の隣の部屋に決めたんじゃないですか』
P「だからと言って」
小鳥『志保ちゃんのお母さまにも許可をいただいてますよ?』
P「なっ」
小鳥『なにか万が一の事があった時に、男手があった方がいいだろう、と』
P「……」
小鳥『なにか他に質問などはありますか?』
P「いえ…」
小鳥『そうですか♪』
P「…本当に優秀な事務員ですね、音無さん」
小鳥『今のは百パーセント褒め言葉として受け止めておきますね♪』
P「皮肉ですよ…」
小鳥『小鳥、だけにですか?プロデューサーさんは冗談がお上手ですね』
P「…音無さんには敵いませんね」
小鳥『またまたご謙遜を♪』
P「百パーセントの本音ですよ…」
小鳥『そうですか。では、そろそろ失礼しますね。志保ちゃんによろしくお伝えください。プロデューサーさんは休みを満喫してくださいねー♪』ピッ
P「はぁ……」
志保「あの、小鳥さんは、なんと」
P「本気でここに志保を住まわせる気らしい…」
志保「そ、そうですか…」
P「…」
志保「…」
P「…まぁ、玄関先で話すのもなんだし、とりあえず上がってくれ」
志保「あ、はい。お邪魔します…」
23: ◆mLDidKKbwk 2017/11/20(月) 00:03:09.20 ID:QHzf7PZM0
Pの部屋
志保「プロデューサーさん」
P「ん?」
志保「思ったより、部屋キレイですね」
P「まぁな。忙しくて帰って寝るだけの日とかもあるし」
志保「男の人の部屋って、もっと汚いようなイメージでした」
P「間違ってはないな。実際、俺の友達の家とか割と汚いし」
志保「そうですか」
P「あ、そこのベッドの上にでも座っててくれ」
志保「あ、はい」
P「なにか飲むか?」
志保「いえ、お構いなく」
P「いや、大切なアイドルのことなんだから構うよ。なに言ってんだ」
志保「…ありがとうございます」
P「ん。牛乳とコーヒーがあるから、カフェオレとかでもいいか?」
志保「はい、大丈夫です」
志保(大切なアイドル、か。悪い気はしないかも)
志保「プロデューサーさん」
P「ん?」
志保「思ったより、部屋キレイですね」
P「まぁな。忙しくて帰って寝るだけの日とかもあるし」
志保「男の人の部屋って、もっと汚いようなイメージでした」
P「間違ってはないな。実際、俺の友達の家とか割と汚いし」
志保「そうですか」
P「あ、そこのベッドの上にでも座っててくれ」
志保「あ、はい」
P「なにか飲むか?」
志保「いえ、お構いなく」
P「いや、大切なアイドルのことなんだから構うよ。なに言ってんだ」
志保「…ありがとうございます」
P「ん。牛乳とコーヒーがあるから、カフェオレとかでもいいか?」
志保「はい、大丈夫です」
志保(大切なアイドル、か。悪い気はしないかも)
24: ◆mLDidKKbwk 2017/11/20(月) 00:17:25.13 ID:QHzf7PZM0
P「志保」
志保「はい」
P「そういえば、荷解きはもう終わったのか?」
志保「いえ。でも、洋服とかしか持って来てないので、そんなに手間がかかることでもないです」
P「そうか。ここ家電とかは備え付けだもんな」
志保「そうですね」
P「じゃあ、荷解きを終えたら連絡してくれ」
志保「…なんでですか?」
P「あぁ、いや。志保も今日はもうオフだったろ」
志保「はい。それがなにか」
P「時間があるなら、ここら辺を案内しようかと思ったんだが。迷惑だったか?」
志保「いえ、そんなことは…ありがとう、ございます」
P「どういたしまして」
志保「じゃあ、荷解きしてきますね」
P「わかった」
志保「カフェオレ、御馳走様でした」
P「いえいえ」
志保「お邪魔しました」
P「ん。また後でな」
バタン
志保「……」
志保「…なんかこういうの、悪くないかも」ボソッ
志保「はい」
P「そういえば、荷解きはもう終わったのか?」
志保「いえ。でも、洋服とかしか持って来てないので、そんなに手間がかかることでもないです」
P「そうか。ここ家電とかは備え付けだもんな」
志保「そうですね」
P「じゃあ、荷解きを終えたら連絡してくれ」
志保「…なんでですか?」
P「あぁ、いや。志保も今日はもうオフだったろ」
志保「はい。それがなにか」
P「時間があるなら、ここら辺を案内しようかと思ったんだが。迷惑だったか?」
志保「いえ、そんなことは…ありがとう、ございます」
P「どういたしまして」
志保「じゃあ、荷解きしてきますね」
P「わかった」
志保「カフェオレ、御馳走様でした」
P「いえいえ」
志保「お邪魔しました」
P「ん。また後でな」
バタン
志保「……」
志保「…なんかこういうの、悪くないかも」ボソッ
32: ◆mLDidKKbwk 2017/11/21(火) 02:57:07.67 ID:wyKtZ9ay0
志保「プロデューサーさん」
P「ん?」
志保「当たり前って言えば当たり前なんですけど」
P「うん」
志保「私服はスーツじゃないんですね」
P「当たり前だな」
志保「そういえば寝間着もスウェットでしたね」
P「寝るときにスーツを着てるやつはいないと思うぞ」
志保「それもそうですね」
P「志保は…いや、やめた」
志保「なんですか」
P「なんでもないよ」
志保「気になります」
P「忘れてくれ」
志保「……プロデューサーさんって」
P「うん」
志保「いえ、なんでもありません」
P「……」
志保「……」
P「…気になるな」
志保「ですよね」
P「いや、でもなぁ…」
志保「往生際が悪いですよ」
P「分かった、言うぞ」
志保「はい」
P「志保って、寝るときの恰好って」
志保「セクハラです近づかないでもらえますか」ススッ
P「だから言わなかったんだよ」
P「ん?」
志保「当たり前って言えば当たり前なんですけど」
P「うん」
志保「私服はスーツじゃないんですね」
P「当たり前だな」
志保「そういえば寝間着もスウェットでしたね」
P「寝るときにスーツを着てるやつはいないと思うぞ」
志保「それもそうですね」
P「志保は…いや、やめた」
志保「なんですか」
P「なんでもないよ」
志保「気になります」
P「忘れてくれ」
志保「……プロデューサーさんって」
P「うん」
志保「いえ、なんでもありません」
P「……」
志保「……」
P「…気になるな」
志保「ですよね」
P「いや、でもなぁ…」
志保「往生際が悪いですよ」
P「分かった、言うぞ」
志保「はい」
P「志保って、寝るときの恰好って」
志保「セクハラです近づかないでもらえますか」ススッ
P「だから言わなかったんだよ」
33: ◆mLDidKKbwk 2017/11/21(火) 03:34:25.84 ID:wyKtZ9ay0
P「志保」
志保「なんですか、セクハラプロデューサーさん」
P「悪かったって」
志保「誠意が感じられません」
P「分かった、今度なんか絵本一冊買ってやる」
志保「買ってやる?」
P「買わせていただきます」
志保「仕方ないですね。プロデューサーさんがそこまで言うのなら、今回の件は水に流します」
P「いや、今のは志保が」
志保「なんですか?」
P「なんでもない」
志保「…ふふっ」
P「?」
志保「いえ、プロデューサーさんって、仕事のときとプライベートで随分雰囲気が変わるなって」
P「まぁ、そうかもな」
志保「打ち合わせをしてるときとかって、もっと冷静沈着って感じですけど」
P「仕事のときは効率とか結果が求められるし、どうしても理性的にはなるな」
志保「今とか、普段の様子はけっこう抜けてるとこがあったりしますね」
P「言われてみれば、仕事のときに気を張ってる分、気が緩んでるのもあるかもな」
志保「この前行った喫茶店でもーーーー」
志保(そういえば、仕事以外でプロデューサーさんと二人で出かけるのって初めてかも…)
志保「なんですか、セクハラプロデューサーさん」
P「悪かったって」
志保「誠意が感じられません」
P「分かった、今度なんか絵本一冊買ってやる」
志保「買ってやる?」
P「買わせていただきます」
志保「仕方ないですね。プロデューサーさんがそこまで言うのなら、今回の件は水に流します」
P「いや、今のは志保が」
志保「なんですか?」
P「なんでもない」
志保「…ふふっ」
P「?」
志保「いえ、プロデューサーさんって、仕事のときとプライベートで随分雰囲気が変わるなって」
P「まぁ、そうかもな」
志保「打ち合わせをしてるときとかって、もっと冷静沈着って感じですけど」
P「仕事のときは効率とか結果が求められるし、どうしても理性的にはなるな」
志保「今とか、普段の様子はけっこう抜けてるとこがあったりしますね」
P「言われてみれば、仕事のときに気を張ってる分、気が緩んでるのもあるかもな」
志保「この前行った喫茶店でもーーーー」
志保(そういえば、仕事以外でプロデューサーさんと二人で出かけるのって初めてかも…)
39: ◆mLDidKKbwk 2017/11/22(水) 02:41:24.83 ID:CnTaD6Qq0
志保「プロデューサーさん」
P「ん?」
志保「そういえば、これどこに向かってるんですか?」
P「行ってからのお楽しみだな」
志保「それ流行ってるんですか?」
P「流行ってないと思うけど」
志保「小鳥さんも言ってましたよ」
P「音無さんはイタズラ心からだろ」
志保「プロデューサーさんは違うんですか?」
P「さぁな」
志保「なんですかそれ?」
P「まぁ、なんでも先が知れてるっていうのはつまんないだろ」
志保「それはそうかもしれませんけど…」
P「例えばさ」
志保「はい?」
P「俺が、志保の楽しみにしていた絵本の内容を事細かにネタバレしたらどうする?」
志保「そうですね。とりあえず美奈子さんにプロデューサーさんがお腹空いたと言っていた、と連絡を入れます」
P「容赦がないな」
志保「その後に、朋花さんとまつりさんに、プロデューサーさんに酷いことをされた、と泣きつきますかね」
P「想像するだけで怖いな」
志保「それだけのことをしていますから」
P「ん?」
志保「そういえば、これどこに向かってるんですか?」
P「行ってからのお楽しみだな」
志保「それ流行ってるんですか?」
P「流行ってないと思うけど」
志保「小鳥さんも言ってましたよ」
P「音無さんはイタズラ心からだろ」
志保「プロデューサーさんは違うんですか?」
P「さぁな」
志保「なんですかそれ?」
P「まぁ、なんでも先が知れてるっていうのはつまんないだろ」
志保「それはそうかもしれませんけど…」
P「例えばさ」
志保「はい?」
P「俺が、志保の楽しみにしていた絵本の内容を事細かにネタバレしたらどうする?」
志保「そうですね。とりあえず美奈子さんにプロデューサーさんがお腹空いたと言っていた、と連絡を入れます」
P「容赦がないな」
志保「その後に、朋花さんとまつりさんに、プロデューサーさんに酷いことをされた、と泣きつきますかね」
P「想像するだけで怖いな」
志保「それだけのことをしていますから」
43: ◆mLDidKKbwk 2017/11/22(水) 23:53:44.90 ID:CnTaD6Qq0
P「志保」
志保「なんですか?」
P「そろそろ目的地に着くぞ」
志保「ホントですか」
P「そこの角を曲がったらもう見えるぞ」
志保「意外に近いんですね」
P「ほら、見えたぞ」
志保「…へぇ、こんなところに商店街があったんですね。知りませんでした」
P「まぁ、アパートを挟んだら事務所とは逆方向にあるからな」
志保「ここが私を案内したかった場所ですか」
P「そうそう。あ、帽子とメガネ取っていいぞ」
志保「なんでですか?」
P「顔を覚えてもらったほうが得だからな」
志保「…?」
志保「なんですか?」
P「そろそろ目的地に着くぞ」
志保「ホントですか」
P「そこの角を曲がったらもう見えるぞ」
志保「意外に近いんですね」
P「ほら、見えたぞ」
志保「…へぇ、こんなところに商店街があったんですね。知りませんでした」
P「まぁ、アパートを挟んだら事務所とは逆方向にあるからな」
志保「ここが私を案内したかった場所ですか」
P「そうそう。あ、帽子とメガネ取っていいぞ」
志保「なんでですか?」
P「顔を覚えてもらったほうが得だからな」
志保「…?」
44: ◆mLDidKKbwk 2017/11/23(木) 00:24:43.31 ID:DW7wGKds0
商店街
志保「プロデューサーさん」
P「ん?」
志保「どうして私をここに連れて来たかったんですか?」
P「ここの人たちが、志保の助けになってくれると思ったからな」
志保「ここの人たち…?」
「おい、Pじゃねぇか!」
P「あ、お久しぶりです」
「最近ぜんぜん顔も出さねぇで。ついに捕まったかと思ってたぜ」
P「近頃忙しくて。っていうかついに、ってなんですか」
志保「あの、プロデューサーさん。この方は…?」
「おっ、よく見たら隣に可愛い子がいるじゃねえか!なんだ、P。今日のナンパは上手くいったみてぇだな?」
P「ナンパじゃないですよ。スカウトだって何回も言ってるじゃないですか」
志保「あの…?」
P「あぁ、悪い。この人は商店街にあるお肉屋さんのご主人だ」
「おぅ、かわいこちゃん。Pのヤツになんかされたら俺に言いな。とっちめてやるよ」
志保「は、はぁ…」
「あら!Pくんじゃない!」
P「お久しぶりです、八百屋のおかみさん」
「…あら?あらあらあらあら」
P「…なんですか」
「随分と可愛い女の子を隣に連れてるのね。今日のナンパは上手くいったみたいね?」
P「だからナンパじゃないって何回いったら分かってくれるんですか」
「ねぇ、あなた名前はなんて言うの?歳はいくつ?」
志保「あ、えっと。北沢志保と言います。年齢は十四歳です」
「へぇ、志保ちゃんって言うの。…Pくん?」
P「はい?」
「あなたの趣味をとやかく言うつもりはないけど、年が下すぎない?」
P「お願いですから話を聞いてください」
志保「プロデューサーさん」
P「ん?」
志保「どうして私をここに連れて来たかったんですか?」
P「ここの人たちが、志保の助けになってくれると思ったからな」
志保「ここの人たち…?」
「おい、Pじゃねぇか!」
P「あ、お久しぶりです」
「最近ぜんぜん顔も出さねぇで。ついに捕まったかと思ってたぜ」
P「近頃忙しくて。っていうかついに、ってなんですか」
志保「あの、プロデューサーさん。この方は…?」
「おっ、よく見たら隣に可愛い子がいるじゃねえか!なんだ、P。今日のナンパは上手くいったみてぇだな?」
P「ナンパじゃないですよ。スカウトだって何回も言ってるじゃないですか」
志保「あの…?」
P「あぁ、悪い。この人は商店街にあるお肉屋さんのご主人だ」
「おぅ、かわいこちゃん。Pのヤツになんかされたら俺に言いな。とっちめてやるよ」
志保「は、はぁ…」
「あら!Pくんじゃない!」
P「お久しぶりです、八百屋のおかみさん」
「…あら?あらあらあらあら」
P「…なんですか」
「随分と可愛い女の子を隣に連れてるのね。今日のナンパは上手くいったみたいね?」
P「だからナンパじゃないって何回いったら分かってくれるんですか」
「ねぇ、あなた名前はなんて言うの?歳はいくつ?」
志保「あ、えっと。北沢志保と言います。年齢は十四歳です」
「へぇ、志保ちゃんって言うの。…Pくん?」
P「はい?」
「あなたの趣味をとやかく言うつもりはないけど、年が下すぎない?」
P「お願いですから話を聞いてください」
45: ◆mLDidKKbwk 2017/11/23(木) 00:59:12.45 ID:DW7wGKds0
商店街(回想)
P『あの』
女子高生『はい』
P『今、少しだけお時間よろしいですか?』
女子高生『はい。なんでしょう』
P『私、こういう者です』
女子高生『名刺…アイドル事務所のプロデューサーさん、ですか?』
P『はい。その名刺に書かれているとおり、アイドルが所属する事務所でプロデューサーをしている者です』
女子高生『そのプロデューサーさんが私になんの用でしょう?』
P『単刀直入にお伺いします。アイドルに興味はありませんか?』
女子高生『あ、アイドルですか?』
P『はい。あなたならきっと、アイドルとして大成すると思ったんです』
女子高生『え、えっと…』
P『今すぐに返事を欲しい、なんてことは言いません。気が向いたら、その名刺の電話番号かメールアドレスにご連絡くだ…』
『おいアンタ』
P『はい?』
『こんなとこでナンパたぁ感心しねぇな』
P『あ、いえ。ナンパしていたわけではなく』
『別にナンパすんな、とは言わねぇけどよ、この商店街の中では勘弁してくれや』
P『いえ、ですから、ナンパしていたわけではなく』
トントン
P『はい』
『とりあえず、署までご同行いただいても構いませんか』ニコッ
P『……はい』
女子高生『行っちゃった…。これ、どうしたらいいんだろう』
P『あの』
女子高生『はい』
P『今、少しだけお時間よろしいですか?』
女子高生『はい。なんでしょう』
P『私、こういう者です』
女子高生『名刺…アイドル事務所のプロデューサーさん、ですか?』
P『はい。その名刺に書かれているとおり、アイドルが所属する事務所でプロデューサーをしている者です』
女子高生『そのプロデューサーさんが私になんの用でしょう?』
P『単刀直入にお伺いします。アイドルに興味はありませんか?』
女子高生『あ、アイドルですか?』
P『はい。あなたならきっと、アイドルとして大成すると思ったんです』
女子高生『え、えっと…』
P『今すぐに返事を欲しい、なんてことは言いません。気が向いたら、その名刺の電話番号かメールアドレスにご連絡くだ…』
『おいアンタ』
P『はい?』
『こんなとこでナンパたぁ感心しねぇな』
P『あ、いえ。ナンパしていたわけではなく』
『別にナンパすんな、とは言わねぇけどよ、この商店街の中では勘弁してくれや』
P『いえ、ですから、ナンパしていたわけではなく』
トントン
P『はい』
『とりあえず、署までご同行いただいても構いませんか』ニコッ
P『……はい』
女子高生『行っちゃった…。これ、どうしたらいいんだろう』
46: ◆mLDidKKbwk 2017/11/23(木) 01:29:00.77 ID:DW7wGKds0
商店街
「なーんてこともあったっけな」
志保「プロデューサーさん、なにやってるんですか…」ジト
P「いや、スカウトも職務なんだから仕方ないだろ」
「いえ、あの時のPくんの目は獲物を狙う獣の目だったわ」
P「そんな本気っぽいトーンで言わないでくださいよ」
「ま、そんなこともあって、Pのやつはこの商店街ではちょっと顔が知れてんだよ」
志保「そうなんですね」
P「まぁ、いつもからかわれてばっかだけどな」
「で?志保ちゃんがPが担当してるアイドルってわけか」
P「そうですね」
「はぁー。ホントにPくん、アイドル事務所で働いてたのね」
P「信じてなかったんですか」
「まぁ、アイドルの子を連れて来られたら認めざるを得んわな」
P「なんでそんな嫌々なんですか…」
志保「…ふふっ」
「Pが自分のアイドルの子を連れてくるなんて初めてじゃねぇか。なんか要件でもあんじゃねぇのか?」
P「あ、はい。そうなんです。実は志保…北沢がこの近辺に住…」
「あ!もしかして!!」
P「…はい?」
「Pくんと志保ちゃんが結婚するからその報告とか!?」
志保「は、はぁ!?ぷ、ぷ、プロデューサーと結婚!?」カァァァ
ザワッ
「ついにPも一人の女に決めたか!」
「相手はあの子なの!?」
「ずいぶん可愛い子を捕まえたなぁ」
「あのナンパ師のPさんがついに結婚だって!?」
P「……」
P「とりあえずナンパ師って言ったヤツ出てこい!!!」
「なーんてこともあったっけな」
志保「プロデューサーさん、なにやってるんですか…」ジト
P「いや、スカウトも職務なんだから仕方ないだろ」
「いえ、あの時のPくんの目は獲物を狙う獣の目だったわ」
P「そんな本気っぽいトーンで言わないでくださいよ」
「ま、そんなこともあって、Pのやつはこの商店街ではちょっと顔が知れてんだよ」
志保「そうなんですね」
P「まぁ、いつもからかわれてばっかだけどな」
「で?志保ちゃんがPが担当してるアイドルってわけか」
P「そうですね」
「はぁー。ホントにPくん、アイドル事務所で働いてたのね」
P「信じてなかったんですか」
「まぁ、アイドルの子を連れて来られたら認めざるを得んわな」
P「なんでそんな嫌々なんですか…」
志保「…ふふっ」
「Pが自分のアイドルの子を連れてくるなんて初めてじゃねぇか。なんか要件でもあんじゃねぇのか?」
P「あ、はい。そうなんです。実は志保…北沢がこの近辺に住…」
「あ!もしかして!!」
P「…はい?」
「Pくんと志保ちゃんが結婚するからその報告とか!?」
志保「は、はぁ!?ぷ、ぷ、プロデューサーと結婚!?」カァァァ
ザワッ
「ついにPも一人の女に決めたか!」
「相手はあの子なの!?」
「ずいぶん可愛い子を捕まえたなぁ」
「あのナンパ師のPさんがついに結婚だって!?」
P「……」
P「とりあえずナンパ師って言ったヤツ出てこい!!!」
47: ◆mLDidKKbwk 2017/11/23(木) 01:44:54.54 ID:DW7wGKds0
帰り道
P「志保」
志保「どうかしましたか、ナンパ師さん」
P「勘弁してくれ」
志保「まぁ、今日のところは見逃してあげます」
P「助かる」
志保「…今日は」
P「ん?」
志保「今日は、ありがとうございました。その、すごい、楽しかったです」
P「どういたしまして。って言っても、俺が絡まれてるだけだったけどな」
志保「いえ。プロデューサーさんが、あたふたしてる様子が新鮮で面白かったです」
P「あの人たちはすぐに悪ノリするからな…」
志保「いい人たちでしたね。色々と安くしてくれましたし」
P「それは志保が可愛いからだろ」
志保「…ありがとうございます」
志保「…さりげなくそういうこと言うんだから」ボソッ
P「事実だしな」
志保「こっ、こういう時は聞き流してくださいっ」カァァ
P「悪い悪い」
志保「まったくもう…」
P「志保」
志保「どうかしましたか、ナンパ師さん」
P「勘弁してくれ」
志保「まぁ、今日のところは見逃してあげます」
P「助かる」
志保「…今日は」
P「ん?」
志保「今日は、ありがとうございました。その、すごい、楽しかったです」
P「どういたしまして。って言っても、俺が絡まれてるだけだったけどな」
志保「いえ。プロデューサーさんが、あたふたしてる様子が新鮮で面白かったです」
P「あの人たちはすぐに悪ノリするからな…」
志保「いい人たちでしたね。色々と安くしてくれましたし」
P「それは志保が可愛いからだろ」
志保「…ありがとうございます」
志保「…さりげなくそういうこと言うんだから」ボソッ
P「事実だしな」
志保「こっ、こういう時は聞き流してくださいっ」カァァ
P「悪い悪い」
志保「まったくもう…」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/23(木) 01:51:28.74 ID:DW7wGKds0
アパート・それぞれの部屋の前
志保「プロデューサーさん」
P「うん?」
志保「今日は、本当にありがとうございました」
P「俺こそいい息抜きになったよ。ありがとうな」
志保「いえ、こちらこそ」
P「なにか困ったことがあったら、連絡するか訪ねて来てくれ」
志保「分かりました。それでは、失礼します」
P「あ、そうだ志保」
志保「はい?」
P「今日の恰好、志保に似合ってて可愛かったぞ。それじゃ」
バタン
志保「…やっぱりナンパ師と変わらないじゃないですか」ボソッ
志保(…顔熱っ)
志保「プロデューサーさん」
P「うん?」
志保「今日は、本当にありがとうございました」
P「俺こそいい息抜きになったよ。ありがとうな」
志保「いえ、こちらこそ」
P「なにか困ったことがあったら、連絡するか訪ねて来てくれ」
志保「分かりました。それでは、失礼します」
P「あ、そうだ志保」
志保「はい?」
P「今日の恰好、志保に似合ってて可愛かったぞ。それじゃ」
バタン
志保「…やっぱりナンパ師と変わらないじゃないですか」ボソッ
志保(…顔熱っ)
58: ◆mLDidKKbwk 2017/11/24(金) 23:14:02.59 ID:t+mOt+zm0
志保の自室
志保「ふぅ…おかずはこんなものかな」
志保(思ったより時間かかっちゃった…)
志保「少し遅くなっちゃったけど、ご飯にしよ…」
志保「……」
志保「しまった…」
志保「ふぅ…おかずはこんなものかな」
志保(思ったより時間かかっちゃった…)
志保「少し遅くなっちゃったけど、ご飯にしよ…」
志保「……」
志保「しまった…」
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/24(金) 23:21:34.97 ID:t+mOt+zm0
ピンポーン
ガチャ
P「志保か」
志保「…こんばんは」
P「こんばんは。どうかしたか?」
志保「…プロデューサーさんに、お願いしたいことがあります」
P「多分だけど、ご飯関係のことか」
志保「…よく分かりましたね」
P「まぁ、一人暮らしで最初に躓くことと言えば、ご飯関係か掃除洗濯くらいだし」
P「お米を炊き忘れでもしたか?」
志保「……」
P「図星みたいだな」
志保「わっ、悪いですか!?」キッ
P「悪いなんて誰も言ってないぞ」
志保「…すみません。取り乱しました」
P「いいさ。ちょうど俺もご飯を食べようと思ってたところだし、一緒に食べよう。おかずは作ってあるんだろ?」
志保「…はい」
P「じゃあ、おかずをタッパーかなにかに入れてまた来な。呼び鈴は鳴らさないでいいから」
志保「分かりました」
ガチャ
P「志保か」
志保「…こんばんは」
P「こんばんは。どうかしたか?」
志保「…プロデューサーさんに、お願いしたいことがあります」
P「多分だけど、ご飯関係のことか」
志保「…よく分かりましたね」
P「まぁ、一人暮らしで最初に躓くことと言えば、ご飯関係か掃除洗濯くらいだし」
P「お米を炊き忘れでもしたか?」
志保「……」
P「図星みたいだな」
志保「わっ、悪いですか!?」キッ
P「悪いなんて誰も言ってないぞ」
志保「…すみません。取り乱しました」
P「いいさ。ちょうど俺もご飯を食べようと思ってたところだし、一緒に食べよう。おかずは作ってあるんだろ?」
志保「…はい」
P「じゃあ、おかずをタッパーかなにかに入れてまた来な。呼び鈴は鳴らさないでいいから」
志保「分かりました」
65: ◆mLDidKKbwk 2017/11/26(日) 00:10:57.82 ID:M/3MpCW70
Pの自室・夕食後
志保「プロデューサー」
P「んー?」
志保「料理、できたんですね」
P「まぁ独り暮らしし始めて割と長いしな」
志保「いつも外食とかしてるイメージがあったので」
P「そりゃ、忙しいときは外食とかコンビニで済ませちゃうけどな」
志保「身体に良くないですからね」
P「そういうこと。さて、と。ついでだから、明日の予定の確認していいか?」
志保「あ、はい」
P「先に洗い物だけ済ませるから、テレビでもみながら寛いでてくれ」
志保「あっ、いえ、私が…」
P「まだ慣れない環境で疲れてるだろ。ゆっくりしてろって」
志保「…では、お言葉に甘えて」
P「おう」
志保(プロデューサーさんと結婚したらこんな感じなのかな……って!何考えてるの私っ)カァァァ
志保「プロデューサー」
P「んー?」
志保「料理、できたんですね」
P「まぁ独り暮らしし始めて割と長いしな」
志保「いつも外食とかしてるイメージがあったので」
P「そりゃ、忙しいときは外食とかコンビニで済ませちゃうけどな」
志保「身体に良くないですからね」
P「そういうこと。さて、と。ついでだから、明日の予定の確認していいか?」
志保「あ、はい」
P「先に洗い物だけ済ませるから、テレビでもみながら寛いでてくれ」
志保「あっ、いえ、私が…」
P「まだ慣れない環境で疲れてるだろ。ゆっくりしてろって」
志保「…では、お言葉に甘えて」
P「おう」
志保(プロデューサーさんと結婚したらこんな感じなのかな……って!何考えてるの私っ)カァァァ
70: ◆mLDidKKbwk 2017/12/09(土) 23:02:00.12 ID:BNMr6hDs0
翌日・朝
ガチャ
P「お」
志保「あ」
P「おはよう、志保」
志保「おはようございます、プロデューサーさん」
P「奇遇だな」
志保「隣に住んでて、奇遇もなにもないと思いますけど」
P「それもそうだな」
志保「はい」
P「事務所まで一緒に行ってもいいか?」
志保「別に断る理由もないのでいいですけど」
P「ありがとな」
志保「お礼を言われるようなことでもないですけどね」
P「確かに。さ、立ち話もなんだし行くか」
志保「はい」
ガチャ
P「お」
志保「あ」
P「おはよう、志保」
志保「おはようございます、プロデューサーさん」
P「奇遇だな」
志保「隣に住んでて、奇遇もなにもないと思いますけど」
P「それもそうだな」
志保「はい」
P「事務所まで一緒に行ってもいいか?」
志保「別に断る理由もないのでいいですけど」
P「ありがとな」
志保「お礼を言われるようなことでもないですけどね」
P「確かに。さ、立ち話もなんだし行くか」
志保「はい」
71: ◆mLDidKKbwk 2017/12/09(土) 23:21:57.74 ID:BNMr6hDs0
P「志保」
志保「はい」
P「朝ごはん、何食べた?」
志保「なんですかその質問」
P「いや、ご飯を炊き忘れてないかなって」
志保「も、もうあんなミスはしませんっ」
志保「だいたい、朝はパン派なんです」
P「奇遇だな、俺もだ」
志保「そんなことを言ってたら、プロデューサーさんは日本の半分くらいの人とは気が合いますね」
P「言われてみれば確かに」
志保「まったくもう。仕事以外では抜けてるんだから」
P「あー、でも俺も人と好みが合わないものがあるぞ」
志保「へぇ。それはなんなんですか?」
P「志保って、目玉焼きになにをかける?」
志保「塩こしょうですかね。今朝もそうでした」
P「やっぱ塩コショウは定番だよな」
志保「プロデューサーさんは定番じゃないんですか?」
P「俺、目玉焼きにはぽん酢派なんだよ」
志保「なるほど。私とは気が合いませんね」
P「美味いんだけどなぁ…」
志保「はい」
P「朝ごはん、何食べた?」
志保「なんですかその質問」
P「いや、ご飯を炊き忘れてないかなって」
志保「も、もうあんなミスはしませんっ」
志保「だいたい、朝はパン派なんです」
P「奇遇だな、俺もだ」
志保「そんなことを言ってたら、プロデューサーさんは日本の半分くらいの人とは気が合いますね」
P「言われてみれば確かに」
志保「まったくもう。仕事以外では抜けてるんだから」
P「あー、でも俺も人と好みが合わないものがあるぞ」
志保「へぇ。それはなんなんですか?」
P「志保って、目玉焼きになにをかける?」
志保「塩こしょうですかね。今朝もそうでした」
P「やっぱ塩コショウは定番だよな」
志保「プロデューサーさんは定番じゃないんですか?」
P「俺、目玉焼きにはぽん酢派なんだよ」
志保「なるほど。私とは気が合いませんね」
P「美味いんだけどなぁ…」
78: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 11:55:00.86 ID:D5IRu/ZK0
事務所
ガチャ
P「おはようございます」
志保「おはようございます」
小鳥「おはようございます。プロデューサーさん、志保ちゃん」
小鳥「あら、今日は二人仲良く一緒に来たんですね♪」
P「音無さん…」
小鳥「はい♪」
P「……」
小鳥「♪」ニッコリ
P「いえ、なんでもないです。今日も仕事がんばりましょう」
小鳥「はい、がんばりましょう」
志保「じゃあ、私はレッスンに行ってきますね」
P「がんばりすぎるなよ」
志保「小鳥さんに言ってたことと矛盾してませんか?」
P「俺らはいいんだよ」
志保「まったく…プロデューサーさんたちもがんばり過ぎないでくださいよ」
P「前向きに検討する」
志保「それはズルい大人のセリフです」
P「ずるい大人だからな」
志保「っもう。倒れても知りませんからね」
P「そのときは看病でもしてくれ」
志保「食べ物くらいは買ってきてあげますよ」
P「そこは手作りとかじゃないのか」
志保「プロデューサーさんには市販のもので十分です」
P「残念だ」
志保「まぁ、そうならないように気を付けてくださいね」
P「志保もな」
志保「分かってますよ。では」
P「あぁ」
ガチャ
P「おはようございます」
志保「おはようございます」
小鳥「おはようございます。プロデューサーさん、志保ちゃん」
小鳥「あら、今日は二人仲良く一緒に来たんですね♪」
P「音無さん…」
小鳥「はい♪」
P「……」
小鳥「♪」ニッコリ
P「いえ、なんでもないです。今日も仕事がんばりましょう」
小鳥「はい、がんばりましょう」
志保「じゃあ、私はレッスンに行ってきますね」
P「がんばりすぎるなよ」
志保「小鳥さんに言ってたことと矛盾してませんか?」
P「俺らはいいんだよ」
志保「まったく…プロデューサーさんたちもがんばり過ぎないでくださいよ」
P「前向きに検討する」
志保「それはズルい大人のセリフです」
P「ずるい大人だからな」
志保「っもう。倒れても知りませんからね」
P「そのときは看病でもしてくれ」
志保「食べ物くらいは買ってきてあげますよ」
P「そこは手作りとかじゃないのか」
志保「プロデューサーさんには市販のもので十分です」
P「残念だ」
志保「まぁ、そうならないように気を付けてくださいね」
P「志保もな」
志保「分かってますよ。では」
P「あぁ」
79: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 12:07:56.47 ID:D5IRu/ZK0
小鳥「プロデューサーさん」
P「はい?」
小鳥「昨日はどうでしたか?」
P「どうでした、とは?」
小鳥「志保ちゃんが引っ越してきて、なにかあったんじゃないかなぁって」
P「なにもありませんよ」
小鳥「またまた」
P「本当ですよ」
小鳥「一緒に買い物に行ったり、一緒に夜ごはんを食べたりしたんじゃないですか?」
P「…どこかから見てたんですか?」
小鳥「あ、ホントにそうなんですね」
P「……」
小鳥「♪」ニコニコ
P「…本当に、音無さんには敵いませんね」
小鳥「女性は強かですからね」
P「音無さんが敵じゃなくて心から良かったと思いますよ」
小鳥「敵、だなんて物騒な」
P「本心ですよ」
小鳥「ま、褒め言葉として受け取っておきます」
P「そうしてください」
小鳥「そうしますね」
P「さ、事務処理のほう進めてしまいましょうか。俺も外に出なきゃならないので」
小鳥「はい」
P「はい?」
小鳥「昨日はどうでしたか?」
P「どうでした、とは?」
小鳥「志保ちゃんが引っ越してきて、なにかあったんじゃないかなぁって」
P「なにもありませんよ」
小鳥「またまた」
P「本当ですよ」
小鳥「一緒に買い物に行ったり、一緒に夜ごはんを食べたりしたんじゃないですか?」
P「…どこかから見てたんですか?」
小鳥「あ、ホントにそうなんですね」
P「……」
小鳥「♪」ニコニコ
P「…本当に、音無さんには敵いませんね」
小鳥「女性は強かですからね」
P「音無さんが敵じゃなくて心から良かったと思いますよ」
小鳥「敵、だなんて物騒な」
P「本心ですよ」
小鳥「ま、褒め言葉として受け取っておきます」
P「そうしてください」
小鳥「そうしますね」
P「さ、事務処理のほう進めてしまいましょうか。俺も外に出なきゃならないので」
小鳥「はい」
80: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 12:24:05.30 ID:D5IRu/ZK0
P「音無さん」
小鳥「はい」
P「そろそろいい時間ですし、キリのいいところで終わりましょうか」
小鳥「そうですね」
P「今日中には片付けておきたい案件はありますか?」
小鳥「えーと、今やってるこれだけです」
P「俺が手伝えることなら手伝いますよ」
小鳥「いいんですか?」
P「もちろん」
小鳥「じゃあ、お言葉に甘えて――」
ガチャ
志保「お疲れ様です」
P「お、志保お疲れ様」
小鳥「志保ちゃんお疲れ様」
志保「お二人ともお疲れ様です」
P「志保は今日これでもう上がりだったよな?」
志保「そうですね」
P「じゃあ、三十分ほど待っててくれないか。一緒に帰ろう」
志保「別に一人でも大丈夫ですけど」
P「もう結構暗いしな。まぁ、無理強いはしないけど」
志保「それじゃ、少し待ってますね」
P「助かる。それじゃ音無さん、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」
小鳥「はいっ」
小鳥「はい」
P「そろそろいい時間ですし、キリのいいところで終わりましょうか」
小鳥「そうですね」
P「今日中には片付けておきたい案件はありますか?」
小鳥「えーと、今やってるこれだけです」
P「俺が手伝えることなら手伝いますよ」
小鳥「いいんですか?」
P「もちろん」
小鳥「じゃあ、お言葉に甘えて――」
ガチャ
志保「お疲れ様です」
P「お、志保お疲れ様」
小鳥「志保ちゃんお疲れ様」
志保「お二人ともお疲れ様です」
P「志保は今日これでもう上がりだったよな?」
志保「そうですね」
P「じゃあ、三十分ほど待っててくれないか。一緒に帰ろう」
志保「別に一人でも大丈夫ですけど」
P「もう結構暗いしな。まぁ、無理強いはしないけど」
志保「それじゃ、少し待ってますね」
P「助かる。それじゃ音無さん、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」
小鳥「はいっ」
81: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 12:50:32.93 ID:D5IRu/ZK0
帰路
志保「プロデューサーさん」
P「なんだ?」
志保「そういえば、私が一人暮らしをしてることを事務所のメンバーに言ってないんですね」
P「まぁな」
志保「なにか理由があるんですか?」
P「志保はどう考えてる?」
志保「…スキャンダルを避けるため、ですか?」
P「分かってるじゃないか」
志保「まぁ、そんなところかなと」
P「ウチのアイドルたちが口外してしまうなんて、露ほどにも思ってないけどな」
志保「無邪気な子たちも多いですからね」
P「そういうことだ。外の現場で何気なくその話題を口にして、それがどこかにリークしないとも限らない」
志保「なるほど」
P「音無さんが素直に、このみさんとかのマンションに手続きをしてくれたら全然言っても良かったんだけどな」アハハ
志保「……」
志保「…プロデューサーさんは」
P「ん?」
志保「プロデューサーさんは、私が隣に引っ越してきて、迷惑だったりしませんか?」
志保「私のせいで、気苦労が増えたりしてませんか?」
P「……」
P「俺最近忙しくて、事務所に泊まる日とかも多かったんだよ」
志保「…はい?」
P「時間もあまりないから、ご飯もコンビニとかで済ませたりしてな」
志保「…なんの話ですか?」
P「でも。」
P「志保が昨日引っ越してきて、久しぶりに自分でご飯を作ったよ。今日もこうやって残業せずに、やるべきことだけやって帰って来てる」
志保「……」
P「ま、なにが言いたいかと言うと、志保が引っ越してきてくれた『おかげ』で健康的な生活が送れそうってことだ」
志保「っ」
P「そりゃ、驚きはしたけどな」
志保「……」
P「志保?」
志保「…回りくどい言い方ですね。気障ったらしいです」
P「酷い言われようだな」
志保「…でも、嫌いじゃない、です。少し、すっきりしました」
P「それはなにより」
志保(…よかった)
志保「プロデューサーさん」
P「なんだ?」
志保「そういえば、私が一人暮らしをしてることを事務所のメンバーに言ってないんですね」
P「まぁな」
志保「なにか理由があるんですか?」
P「志保はどう考えてる?」
志保「…スキャンダルを避けるため、ですか?」
P「分かってるじゃないか」
志保「まぁ、そんなところかなと」
P「ウチのアイドルたちが口外してしまうなんて、露ほどにも思ってないけどな」
志保「無邪気な子たちも多いですからね」
P「そういうことだ。外の現場で何気なくその話題を口にして、それがどこかにリークしないとも限らない」
志保「なるほど」
P「音無さんが素直に、このみさんとかのマンションに手続きをしてくれたら全然言っても良かったんだけどな」アハハ
志保「……」
志保「…プロデューサーさんは」
P「ん?」
志保「プロデューサーさんは、私が隣に引っ越してきて、迷惑だったりしませんか?」
志保「私のせいで、気苦労が増えたりしてませんか?」
P「……」
P「俺最近忙しくて、事務所に泊まる日とかも多かったんだよ」
志保「…はい?」
P「時間もあまりないから、ご飯もコンビニとかで済ませたりしてな」
志保「…なんの話ですか?」
P「でも。」
P「志保が昨日引っ越してきて、久しぶりに自分でご飯を作ったよ。今日もこうやって残業せずに、やるべきことだけやって帰って来てる」
志保「……」
P「ま、なにが言いたいかと言うと、志保が引っ越してきてくれた『おかげ』で健康的な生活が送れそうってことだ」
志保「っ」
P「そりゃ、驚きはしたけどな」
志保「……」
P「志保?」
志保「…回りくどい言い方ですね。気障ったらしいです」
P「酷い言われようだな」
志保「…でも、嫌いじゃない、です。少し、すっきりしました」
P「それはなにより」
志保(…よかった)
82: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 14:38:03.09 ID:D5IRu/ZK0
とある日
P「志保―」
志保「はい」
P「今日は遅くなるから、ご飯先に食べといてくれ」
志保「分かりました。帰ってきた頃に、おかずを持っていきましょうか?」
P「いいのか?」
志保「一人分だけ作るのは面倒ですから」
P「分かった。あまり遅くならないようにする」
志保「お願いしますね」
P「志保―」
志保「はい」
P「今日は遅くなるから、ご飯先に食べといてくれ」
志保「分かりました。帰ってきた頃に、おかずを持っていきましょうか?」
P「いいのか?」
志保「一人分だけ作るのは面倒ですから」
P「分かった。あまり遅くならないようにする」
志保「お願いしますね」
83: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 14:49:26.23 ID:D5IRu/ZK0
別の日
志保「プロデューサーさん」
P「どした?」
志保「今日は早く上がれそうですか?」
P「うーん、何件か持ち帰れば。どうかしたか?」
志保「お肉屋さんが、最近顔を出さなくなったアイツを連れて来てくれ、と」
P「肉屋の親父さんか」
志保「はい」
P「確かに最近顔を出せてなかったな」
志保「行くたびにプロデューサーさんはどうしてる、ってあそこの人たちに聞かれますよ」
P「分かった。今日なんとか早く上がる」
志保「はい。じゃあ夕方の六時頃でも」
P「了解」
小鳥「…」
志保「プロデューサーさん」
P「どした?」
志保「今日は早く上がれそうですか?」
P「うーん、何件か持ち帰れば。どうかしたか?」
志保「お肉屋さんが、最近顔を出さなくなったアイツを連れて来てくれ、と」
P「肉屋の親父さんか」
志保「はい」
P「確かに最近顔を出せてなかったな」
志保「行くたびにプロデューサーさんはどうしてる、ってあそこの人たちに聞かれますよ」
P「分かった。今日なんとか早く上がる」
志保「はい。じゃあ夕方の六時頃でも」
P「了解」
小鳥「…」
84: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 14:56:46.46 ID:D5IRu/ZK0
また別の日
P「志保」
志保「はい」
P「今日の夕飯の献立、もう決まったか?」
志保「いえ、決めてませんけど」
P「お、じゃあ鍋なんてどうだ」
志保「お鍋ですか」
P「寒くなってきたしな」
志保「いいですよ」
P「なに鍋にしようか」
志保「それは買い物しながら決めればいいんじゃないですか」
P「それもそうだな」
小鳥「……」
P「志保」
志保「はい」
P「今日の夕飯の献立、もう決まったか?」
志保「いえ、決めてませんけど」
P「お、じゃあ鍋なんてどうだ」
志保「お鍋ですか」
P「寒くなってきたしな」
志保「いいですよ」
P「なに鍋にしようか」
志保「それは買い物しながら決めればいいんじゃないですか」
P「それもそうだな」
小鳥「……」
85: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 15:14:02.84 ID:D5IRu/ZK0
またまた別の日
志保「Pさ…」
志保「…コホン。プロデューサーさん」
P「どした?」
志保「今日の天気予報、確認しましたか?」
P「いや、してないな」
志保「夕方頃から雨が降るそうですよ」
P「そうなのか」
P「…あー、洗濯物ベランダだ」
志保「もしよければ、私が取り込んでおきましょうか?」
P「いいのか?」
志保「はい。今日は午前に一本取材があるだけなので、早く帰れますし」
P「すまん、頼んでいいか?鍵渡しとく」チャリン
志保「確かに受け取りました」
P「鍵はポストにでも入れといてくれ」
志保「分かりました。美味しいデザート、期待して待ってますね」
P「…抜け目ないな」
志保「世の中はギブアンドテイクなので」フフッ
小鳥「………」
志保「Pさ…」
志保「…コホン。プロデューサーさん」
P「どした?」
志保「今日の天気予報、確認しましたか?」
P「いや、してないな」
志保「夕方頃から雨が降るそうですよ」
P「そうなのか」
P「…あー、洗濯物ベランダだ」
志保「もしよければ、私が取り込んでおきましょうか?」
P「いいのか?」
志保「はい。今日は午前に一本取材があるだけなので、早く帰れますし」
P「すまん、頼んでいいか?鍵渡しとく」チャリン
志保「確かに受け取りました」
P「鍵はポストにでも入れといてくれ」
志保「分かりました。美味しいデザート、期待して待ってますね」
P「…抜け目ないな」
志保「世の中はギブアンドテイクなので」フフッ
小鳥「………」
86: ◆mLDidKKbwk 2017/12/11(月) 15:32:06.64 ID:D5IRu/ZK0
小鳥「プロデューサーさん」
P「はい」
小鳥「志保ちゃんと仲良くなり過ぎじゃないですか?」
P「否定はしません」
小鳥「否定もしないんですね…」
P「俺の自惚れでなければ、だいぶ心を開いてくれるようになりましたからね」
小鳥「もう会話が同棲してるカップルみたいでしたよ」
P「音無さんもそんな経験がおありで?」
小鳥「ノーコメントで」
P「失礼しました」
小鳥「というか、いつから志保ちゃんはプロデューサーさんのことを名前で呼ぶようになったんですか?」
P「んー、引っ越してきて一週間くらい経ったときでしたかね」
P「プライベートでもプロデューサー呼びだと、外部の人間に、芸能人だと気づかれやすいだろうって」
小鳥「志保ちゃんが?」
P「えぇ、志保が」
小鳥(すっかり心を許してるわね志保ちゃん)
P「まぁ、事務所内では今までどおりですけど」
小鳥「この前はボロが出てましたけどね」
P「確かに」ハハ
小鳥(こんな感じになったら面白いな~とは思ってたけど、実際にあの二人の空気に当てられ続けるのはつらいものがあるわね…)ピヨヨ
P「はい」
小鳥「志保ちゃんと仲良くなり過ぎじゃないですか?」
P「否定はしません」
小鳥「否定もしないんですね…」
P「俺の自惚れでなければ、だいぶ心を開いてくれるようになりましたからね」
小鳥「もう会話が同棲してるカップルみたいでしたよ」
P「音無さんもそんな経験がおありで?」
小鳥「ノーコメントで」
P「失礼しました」
小鳥「というか、いつから志保ちゃんはプロデューサーさんのことを名前で呼ぶようになったんですか?」
P「んー、引っ越してきて一週間くらい経ったときでしたかね」
P「プライベートでもプロデューサー呼びだと、外部の人間に、芸能人だと気づかれやすいだろうって」
小鳥「志保ちゃんが?」
P「えぇ、志保が」
小鳥(すっかり心を許してるわね志保ちゃん)
P「まぁ、事務所内では今までどおりですけど」
小鳥「この前はボロが出てましたけどね」
P「確かに」ハハ
小鳥(こんな感じになったら面白いな~とは思ってたけど、実際にあの二人の空気に当てられ続けるのはつらいものがあるわね…)ピヨヨ
94: ◆mLDidKKbwk 2017/12/16(土) 16:35:08.28 ID:XyRZBiXw0
「志保ちゃん」
志保「はい?あ、八百屋さん。こんにちは」
「こんにちは。今日もP君はお仕事?」
志保「はい。忙しいみたいで」
「そう…最近また見なくなっちゃって寂しいわ」
志保「またここへ顔を出すように伝えておきますね」
「そうしてくれる?」
志保「はい、もちろん」
「お願いね」
志保「はい。…それにしても」
「?」
志保「Pさん、ここの商店街の方々に本当に気に入られてますね」
「そうね」フフッ
「この商店街でPくんのことを好ましく思っていない人はいないんじゃないかしら」
志保「それって凄いことですよね」
「そうね。Pくんはなんていうか、人の懐に入るのが上手なのかも」
志保「そうかもしれません」
「思い当たる節が志保ちゃんにもあるのかしら?」
志保「…少し、ありますね」
「たまに会うだけの私たちですら好意的なんだもの。事務所のアイドルのみんなからも好かれているんじゃない?」
志保「はい…スキャンダルを心配するぐらいに」
「志保ちゃんもそうなのかしら?」フフッ
志保「あっ、いえ、私はそんなっ…」
志保(私は…どうなんだろう?)
志保「はい?あ、八百屋さん。こんにちは」
「こんにちは。今日もP君はお仕事?」
志保「はい。忙しいみたいで」
「そう…最近また見なくなっちゃって寂しいわ」
志保「またここへ顔を出すように伝えておきますね」
「そうしてくれる?」
志保「はい、もちろん」
「お願いね」
志保「はい。…それにしても」
「?」
志保「Pさん、ここの商店街の方々に本当に気に入られてますね」
「そうね」フフッ
「この商店街でPくんのことを好ましく思っていない人はいないんじゃないかしら」
志保「それって凄いことですよね」
「そうね。Pくんはなんていうか、人の懐に入るのが上手なのかも」
志保「そうかもしれません」
「思い当たる節が志保ちゃんにもあるのかしら?」
志保「…少し、ありますね」
「たまに会うだけの私たちですら好意的なんだもの。事務所のアイドルのみんなからも好かれているんじゃない?」
志保「はい…スキャンダルを心配するぐらいに」
「志保ちゃんもそうなのかしら?」フフッ
志保「あっ、いえ、私はそんなっ…」
志保(私は…どうなんだろう?)
95: ◆mLDidKKbwk 2017/12/16(土) 17:00:42.88 ID:XyRZBiXw0
同日・夜・風呂場
志保(Pさんは最初は頼りなかったし、1人でも大丈夫、なんて言ってしまってたけど)
志保(今は…Pさんがいないなんて考えられない)
志保(この気持ちは…恋、なのかな?)ブクブク
志保(今まで男の人を好きになったことなんてなかったから分からない…)
志保「……よしっ」
志保(Pさんは最初は頼りなかったし、1人でも大丈夫、なんて言ってしまってたけど)
志保(今は…Pさんがいないなんて考えられない)
志保(この気持ちは…恋、なのかな?)ブクブク
志保(今まで男の人を好きになったことなんてなかったから分からない…)
志保「……よしっ」
96: ◆mLDidKKbwk 2017/12/16(土) 17:16:31.62 ID:XyRZBiXw0
志保「…もしもし、可奈?」
可奈『あっ、志保ちゃん!こんばんはー!』
志保「こんばんは。えっと、こんな時間にゴメンね」
可奈『ぜんぜん大丈夫だよ~』
志保「ありがとう、可奈」
可奈『ううん!あ、それでなにか私に用事?』
志保「えぇ、そうなんだけど…」
可奈『…志保ちゃん?』
志保「可奈。これは可奈にだから聞きたいんだけど…」
可奈『うん!』
志保「笑わないで、真剣に聞いてくれる?」
可奈『もちろん!大切な志保ちゃんからの話だもん!」
志保「…ありがとう。えっとね…」
可奈『うん』
志保「可奈は、Pさ、プロデューサーさんのこと、どう思ってる?」
可奈『あっ、志保ちゃん!こんばんはー!』
志保「こんばんは。えっと、こんな時間にゴメンね」
可奈『ぜんぜん大丈夫だよ~』
志保「ありがとう、可奈」
可奈『ううん!あ、それでなにか私に用事?』
志保「えぇ、そうなんだけど…」
可奈『…志保ちゃん?』
志保「可奈。これは可奈にだから聞きたいんだけど…」
可奈『うん!』
志保「笑わないで、真剣に聞いてくれる?」
可奈『もちろん!大切な志保ちゃんからの話だもん!」
志保「…ありがとう。えっとね…」
可奈『うん』
志保「可奈は、Pさ、プロデューサーさんのこと、どう思ってる?」
100: ◆mLDidKKbwk 2017/12/17(日) 09:47:59.38 ID:13CEEHvd0
可奈『プロデューサーさん?』
志保「えぇ、可奈はどう思ってるのかなって…」
可奈『大好きだよ!』
志保「えっ」
可奈『あ、もちろん志保ちゃんのことも、事務所のみんなのことも大好きだよ!』
志保「なんだ、そういうこと」ホッ
可奈『志保ちゃんは違うの?』
志保「私は…分からない」
可奈『わからないって?』
志保「プロデューサーさんのことは信頼してるし、た、大切に思っているけど、これが好きって気持ちなのかが分からないの」
可奈『う~ん』
志保「考えすぎ、なのかな」
可奈『私は志保ちゃんみたいに頭よくないから、難しいことわかんないけど』
志保「別に、頭良くなんて…」
可奈『そこまで真剣にがんばって、プロデューサーさんのことを考えられるってことは』
可奈『やっぱり志保ちゃんはプロデューサーさんのことが好きなんだと思うよ!』
可奈『だって、好きでもないもののためにがんばれないでしょ?』
志保「えぇ、可奈はどう思ってるのかなって…」
可奈『大好きだよ!』
志保「えっ」
可奈『あ、もちろん志保ちゃんのことも、事務所のみんなのことも大好きだよ!』
志保「なんだ、そういうこと」ホッ
可奈『志保ちゃんは違うの?』
志保「私は…分からない」
可奈『わからないって?』
志保「プロデューサーさんのことは信頼してるし、た、大切に思っているけど、これが好きって気持ちなのかが分からないの」
可奈『う~ん』
志保「考えすぎ、なのかな」
可奈『私は志保ちゃんみたいに頭よくないから、難しいことわかんないけど』
志保「別に、頭良くなんて…」
可奈『そこまで真剣にがんばって、プロデューサーさんのことを考えられるってことは』
可奈『やっぱり志保ちゃんはプロデューサーさんのことが好きなんだと思うよ!』
可奈『だって、好きでもないもののためにがんばれないでしょ?』
101: ◆mLDidKKbwk 2017/12/17(日) 09:49:25.26 ID:13CEEHvd0
志保「――――えぇ、また明日。おやすみ」
志保「ふぅ…」
志保(自分の中ではもう答えは出てたのかも)
志保「もしかしてがやっぱりに、か。歌の中の女の子みたい」フフッ
志保「ふぅ…」
志保(自分の中ではもう答えは出てたのかも)
志保「もしかしてがやっぱりに、か。歌の中の女の子みたい」フフッ
102: ◆mLDidKKbwk 2017/12/17(日) 09:51:16.57 ID:13CEEHvd0
一人暮らし終了から数日後・事務所
小鳥「プロデューサーさん」
P「はい」
小鳥「志保ちゃんが実家に戻って数日経ちますけど」
P「そうですね」
小鳥「実のところ、寂しいんじゃないですか?」
P「寂しいですよ」
小鳥「…随分と正直ですね」
P「こんなところで嘘をついても仕方ありませんから」
小鳥「なるほど」
ガチャ
茜「茜ちゃん、ただいま到着―!」
麗花「ぱんぱかぱーん!」
静香「お二人は元気ですね…」
星梨花「私も少し疲れちゃいました…」
志保「今日のレッスン、ハードだったものね」
小鳥「噂をすれば、ですよ」
P「今日はクレッシェンドブルーがユニットレッスンだったか」
茜「ねぇねぇプロちゃん!茜ちゃん今日のレッスンがんばったよ!ゴホービないの!ねぇねぇ!」
P「はいはい。よくがんばったな」ナデナデ
茜「うんうん、くるしゅうない!」
星梨花「茜さんうらやましいです!私も…いいですか?」
麗花「じゃあ私もー!静香ちゃんも一緒になでなでしてもらお?」
静香「わっ、私は結構です!」
麗花「えぇ~、プロデューサーさんのなでなで、結構気持ちいいよ?普通って感じで♪」
静香「それは褒めてるんですか…?」
ワイワイ
志保「Pさん」
P「茜、もういいだろ。志保どうした?」
志保「お昼ご飯、なにか用意がありますか?」
P「いや、特に」
志保「ちょうどよかったです」スッ
P「これは…お弁当?」
志保「それ以外の何かに見えますか?」
P「見えないな」
志保「都合さえ合えば、今日一緒に食べませんか?」
P「喜んで」
茜「あれ、しほりんがプロちゃんにお弁当渡してる!」
麗花「えー!私も志保ちゃんのお弁当たべたーい!」
志保「麗花さんのぶんはありませんよ」
静香「志保って、プロデューサーのこと名前で呼んでたかしら…?」
志保「最近からね」
星梨花「なでなで…」シュン
小鳥「プロデューサーさん」
P「はい」
小鳥「志保ちゃんが実家に戻って数日経ちますけど」
P「そうですね」
小鳥「実のところ、寂しいんじゃないですか?」
P「寂しいですよ」
小鳥「…随分と正直ですね」
P「こんなところで嘘をついても仕方ありませんから」
小鳥「なるほど」
ガチャ
茜「茜ちゃん、ただいま到着―!」
麗花「ぱんぱかぱーん!」
静香「お二人は元気ですね…」
星梨花「私も少し疲れちゃいました…」
志保「今日のレッスン、ハードだったものね」
小鳥「噂をすれば、ですよ」
P「今日はクレッシェンドブルーがユニットレッスンだったか」
茜「ねぇねぇプロちゃん!茜ちゃん今日のレッスンがんばったよ!ゴホービないの!ねぇねぇ!」
P「はいはい。よくがんばったな」ナデナデ
茜「うんうん、くるしゅうない!」
星梨花「茜さんうらやましいです!私も…いいですか?」
麗花「じゃあ私もー!静香ちゃんも一緒になでなでしてもらお?」
静香「わっ、私は結構です!」
麗花「えぇ~、プロデューサーさんのなでなで、結構気持ちいいよ?普通って感じで♪」
静香「それは褒めてるんですか…?」
ワイワイ
志保「Pさん」
P「茜、もういいだろ。志保どうした?」
志保「お昼ご飯、なにか用意がありますか?」
P「いや、特に」
志保「ちょうどよかったです」スッ
P「これは…お弁当?」
志保「それ以外の何かに見えますか?」
P「見えないな」
志保「都合さえ合えば、今日一緒に食べませんか?」
P「喜んで」
茜「あれ、しほりんがプロちゃんにお弁当渡してる!」
麗花「えー!私も志保ちゃんのお弁当たべたーい!」
志保「麗花さんのぶんはありませんよ」
静香「志保って、プロデューサーのこと名前で呼んでたかしら…?」
志保「最近からね」
星梨花「なでなで…」シュン
103: ◆mLDidKKbwk 2017/12/17(日) 09:53:33.74 ID:13CEEHvd0
志保「Pさん」
P「ん?」
志保「それじゃ、お昼頃にまた伺いますね」
P「分かった」
志保「あ、それともう一つ」
P「なんだ?」
志保「私Pさんのこと、ちゃんと男性として好きですから」
P「…え?」
静香「は!?」
茜「えっっ!?」
麗花「志保ちゃんダイターン♪」
小鳥「あらー…」
星梨花「なでなで…。あ、え?え?」
志保「Pさんからの告白、ずっと待ってますからね」ニコッ
P「ん?」
志保「それじゃ、お昼頃にまた伺いますね」
P「分かった」
志保「あ、それともう一つ」
P「なんだ?」
志保「私Pさんのこと、ちゃんと男性として好きですから」
P「…え?」
静香「は!?」
茜「えっっ!?」
麗花「志保ちゃんダイターン♪」
小鳥「あらー…」
星梨花「なでなで…。あ、え?え?」
志保「Pさんからの告白、ずっと待ってますからね」ニコッ
104: ◆mLDidKKbwk 2017/12/17(日) 09:56:03.94 ID:13CEEHvd0
これにて完結となります。
見直してみたら1スレ目を立てたのは一か月も前のことだったんですね…
大変お待たせしました。
見直してみたら1スレ目を立てたのは一か月も前のことだったんですね…
大変お待たせしました。
105: ◆mLDidKKbwk 2017/12/17(日) 10:04:49.09 ID:13CEEHvd0
次で10作目になります。
このSSの形式が気に入っているので、次は瑞希か星梨花か百合子か、それともいろんなアイドルを短編みたいな感じでまとめて作品にするか考え中です。
蛇足ですが。今回一人暮らしという題材を扱ったのは、以前に読んだ志保が一人暮らしをするSSが、私の予想外の展開だったため、自分が好きな展開で書き直そうと考えたためです。
では、html依頼を出してきます。
このSSの形式が気に入っているので、次は瑞希か星梨花か百合子か、それともいろんなアイドルを短編みたいな感じでまとめて作品にするか考え中です。
蛇足ですが。今回一人暮らしという題材を扱ったのは、以前に読んだ志保が一人暮らしをするSSが、私の予想外の展開だったため、自分が好きな展開で書き直そうと考えたためです。
では、html依頼を出してきます。
106: ◆mLDidKKbwk 2017/12/17(日) 10:11:45.18 ID:13CEEHvd0
過去の拙作
グリP「もしもアイドルが妹だったら」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436054435/
グリP「けもみみ!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437175995/
グリP「胸キュンをプレゼント?」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443977876/
グリP「赤面する朋花を見てみたい」https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459427692/
【ミリマス】P「おーい、杏奈ー」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459711427/
【ミリマス】P「おーい、桃子ー」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462973829/
【ミリマス】風花「甘くて苦いチョコレート」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470050136/
【ミリマス】P「おーい、翼ー」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493473819/
グリP「もしもアイドルが妹だったら」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436054435/
グリP「けもみみ!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437175995/
グリP「胸キュンをプレゼント?」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443977876/
グリP「赤面する朋花を見てみたい」https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459427692/
【ミリマス】P「おーい、杏奈ー」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459711427/
【ミリマス】P「おーい、桃子ー」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462973829/
【ミリマス】風花「甘くて苦いチョコレート」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470050136/
【ミリマス】P「おーい、翼ー」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493473819/
107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 10:28:26.35 ID:OPEscvcEO
しほすき
乙
乙
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 15:53:04.03 ID:kti4w1H5o
おつ、よかった
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/18(月) 12:29:04.07 ID:3NtwG9UEO
多分、その志保一人暮らしのSS読んだなぁ…あれは衝撃的だった
111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/18(月) 17:32:06.18 ID:CGx7qoSqO
乙乙
当初ホラーの人だった人のアレか…w
当初ホラーの人だった人のアレか…w
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510978102/
Entry ⇒ 2017.12.31 | Category ⇒ ミリマス | Comments (0)
大井「北上さん、世界一素敵だわぁ…」龍田「…」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 19:27:30.42 ID:RH3UgpBC0
※いろいろとキャラ崩壊してます
~食堂~
大井「はぁ、北上さんがいないと暇ね。世界に色がなくなったみたいだわ…」ブツブツ
大井「それにしても、どうして北上さんはあんなにも素敵なのかしら…」
大井「ホント、北上さんは世界一素敵だわぁ」(恍惚)
龍田「…あら~、大井ちゃん、こんにちは」
大井「あら、龍田さん、こんにちは」
龍田「席、ご一緒してもいいかしら~?」
大井「もちろんですよ、さ、どうぞ」
龍田「それじゃ、失礼するわね~」ストン
大井「そういえば、今日、天龍さんはいらっしゃらないんですね」
龍田「えぇ、天龍ちゃんは遠征なのよ~」
大井「そうですか、それは寂しいですね…」
龍田「そうねぇ…でも、しょうがないわね。だって、天龍ちゃんはカッコよくて面倒見がいい素敵な子だから、遠征によく駆り出されちゃうのよ」
龍田「本当、天龍ちゃんは世界一素敵な艦娘だわ~」ニコッ
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 19:30:27.50 ID:RH3UgpBC0
大井「…」ピキッ
大井「あの、世界一素敵というのはちょっと言い過ぎじゃないですか?」
龍田「え~、言い過ぎじゃないと思うけどなぁ」
龍田「駆逐艦の子達にもすごい慕われているし~、あとあと~」
大井「それなら、北上さんだって、駆逐艦の子達に慕われてます!」
大井「北上さんなんて、駆逐艦の子なんてウザいって言っているにもかかわらず、そのあまりの素敵さで、駆逐艦の子に慕われちゃうんですよ」ニッコリ
龍田「そうなのぉ~、でも、なんというかそれってちょっと子供っぽくないかなぁ~?」
大井「ぁ゛?」(低い声)
大井「あの、世界一素敵というのはちょっと言い過ぎじゃないですか?」
龍田「え~、言い過ぎじゃないと思うけどなぁ」
龍田「駆逐艦の子達にもすごい慕われているし~、あとあと~」
大井「それなら、北上さんだって、駆逐艦の子達に慕われてます!」
大井「北上さんなんて、駆逐艦の子なんてウザいって言っているにもかかわらず、そのあまりの素敵さで、駆逐艦の子に慕われちゃうんですよ」ニッコリ
龍田「そうなのぉ~、でも、なんというかそれってちょっと子供っぽくないかなぁ~?」
大井「ぁ゛?」(低い声)
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 19:32:40.04 ID:RH3UgpBC0
龍田「だって~、スマートな子だったら、年下の子にウザいなんて普通言わないわよ~」
龍田「その点、天龍ちゃんはホントに素敵で~大井「ま、まぁ、北上さんの本当の素敵な所はそういう所じゃないですからね!」
大井「北上さんの魅力はとても語りつくせるようなものではないですけど、まずはやはりあの強さですよね!」
大井「普段はあんなに気怠い感じを醸し出してるのに、いざ戦場に出れば、一転して、凛々しい姿に…」(恍惚)
龍田「…」
大井「そして、戦いが終わってみれば、戦艦や正規空母がいるにもかかわらず、ほとんど北上さんがMVP…あぁ、本当に素敵だわ…」
龍田「ん~、でもさ~、よく考えると北上ちゃんがそうやって戦えるのも天龍ちゃんが遠征で資材を取って来てくれるからよね~?」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 20:03:16.08 ID:RH3UgpBC0
龍田「つまり、北上ちゃんの活躍は天龍ちゃんあってのものなのよ~」
大井「なっ…!」
龍田「うふふ~、やっぱり世界一素敵なのは天龍ちゃんね~」ニコニコ
大井「ち、違います! 確かに天龍さんも素敵ですが、世界一素敵なのは北上さんです!」
龍田「ちがうわ、一番素敵なのは天龍ちゃんよ」
大井 バチバチッ 龍田
筑摩「二人とも、大きな声を出してどうしたの?」
大井「あ、筑摩さん…」
龍田「こんにちは~」ニコッ
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:23:57.19 ID:RH3UgpBC0
筑摩「こんにちは、二人ともすごい熱くなっているみたいだけど、何を話していたの?」
大井「それが…龍田さんが、強情でして…」
龍田「強情なのは大井ちゃんよ~。だって、世界一素敵なのは天龍ちゃんだもの~」
筑摩「あら…?」(聞き間違いよね)
大井「いえ、世界一素敵なのは北上さんです! 筑摩さんも龍田さんに言ってあげてください!」
筑摩「二人とも…何を言っているの?」
筑摩「世界で一番素敵なのは、利根姉さんでしょ?」ニッコリ
大井龍田「「えっ」」
筑摩「確かに、天龍ちゃんはカッコよくて、駆逐艦の子に人気があるし、北上ちゃんも飄々としていて、自分を持っている感じが素敵よね」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:28:35.13 ID:RH3UgpBC0
筑摩「でもね…やっぱり世界一素敵なのは利根姉さんよ」
筑摩「利根姉さんはね…すっごく可愛いの…♡」
筑摩「ちくまぁ~、ちくまぁ~って私の事を呼んでね。ちょっとわがままで子供っぽいところがあるけど…そこがまた可愛いのよ」
筑摩「それに最近、こたつを出したんだけどね? そのこたつに入って丸まっている姉さんが可愛くて可愛くて…」(恍惚)
筑摩「まぁ、利根姉さんの魅力はこれだけじゃないけど、この可愛さだけでも、もう世界一になれるだけの魅力は持っているわよ」
龍田「…可愛さなら、天龍ちゃんの方が上だと思います~」
大井「い、いいえ! 可愛さに置いて北上さんの右に出る者はいません!」
大井「北上さんの、あの飾らない髪型に素朴だけど端正な顔立ち…」
大井「そして、何より私が一番かわいらしいと思うのはあの間延びしたような話し方…あの独特な話し方がとっても可愛いんです…///」
筑摩「…間延びした話し方、龍田ちゃんと同じね」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:35:00.01 ID:RH3UgpBC0
龍田「あら~、ということは、大井ちゃんは私の事も可愛いと思ってくれているのね~」
大井「なっ…! ち、違う…というか、確かに龍田さんも可愛いと思いますけども…」(うぅ…どうして私がこんなに恥ずかしい想いを…!)カァァ///
龍田「うふふ~、照れなくていいのよ~」ニヤニヤ
大井「…」(こいつ…!!)ギリッ
筑摩「まぁまぁ、二人とも。天龍ちゃんも北上ちゃんも、利根姉さんの可愛さには敵わないんだから、無駄な争いはやめて、ね?」
龍田「…天龍ちゃんは、普段はカッコいいキャラですけど、時折見せる乙女な顔がとっても可愛いんですよ?」
龍田「それに、天龍ちゃんったら照れ屋さんだから、ちょっとからかうと顔を真っ赤にしちゃうんです、それがまた可愛くて~」
大井「なっ…! ち、違う…というか、確かに龍田さんも可愛いと思いますけども…」(うぅ…どうして私がこんなに恥ずかしい想いを…!)カァァ///
龍田「うふふ~、照れなくていいのよ~」ニヤニヤ
大井「…」(こいつ…!!)ギリッ
筑摩「まぁまぁ、二人とも。天龍ちゃんも北上ちゃんも、利根姉さんの可愛さには敵わないんだから、無駄な争いはやめて、ね?」
龍田「…天龍ちゃんは、普段はカッコいいキャラですけど、時折見せる乙女な顔がとっても可愛いんですよ?」
龍田「それに、天龍ちゃんったら照れ屋さんだから、ちょっとからかうと顔を真っ赤にしちゃうんです、それがまた可愛くて~」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:38:17.72 ID:RH3UgpBC0
龍田「やっぱり天龍ちゃんが一番かわいいわね~」
筑摩「いえいえ、利根姉さんが一番よ」
大井「いいえ、北上さんです!」
大井 バチバチッ 龍田 バチバチッ 筑摩
山城「…口論しているみたいだけど、どうしたの? あまりいがみ合っていると不幸になるわよ」
筑摩「あぁ、山城さん」
龍田「こんにちは、山城さん」
大井「どうも、こんにちは」
山城「こんにちは。いきなりだけど、扶桑姉様を見なかったかしら?」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:41:49.72 ID:RH3UgpBC0
筑摩「いえ、ここには来てないようですよ」
山城「そう…あぁ、はやく姉様に会いたいわ」
山城「今日は、姉様が遠征から帰ってくる日…不幸ばっかりだった私にもついに幸運が…」
大井(す、すごい悲哀オーラね…)
山城「ふふ、今日は姉様と二人でお部屋でほっこり…」
山城「あ、あぁ、ごめんなさい。愛しの姉様の帰りを待たないといけないんだったわ」
山城「ふふ、待っていてくださいね…世界一の私の姉、扶桑姉様…」
大井龍田筑摩「「「…世界一の姉?」」」ピク
山城「そうよ…姉様は、私の事をいつも気にかけてくれている世界一の姉よ」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:46:11.97 ID:RH3UgpBC0
山城「扶桑姉様は、私の事なら何でも分かってくれているの…そして、いつも山城、と、優しい声で私を呼んでくれて…あぁ、扶桑姉様…」
筑摩「山城さん、お言葉ですが…世界一の姉は扶桑さんではなく利根姉さんですよ」
山城「…なんですって」
龍田「何を言っているんですか~、世界一の姉は天龍ちゃんですよ~」
大井「はぁ…たくっ、分かってないわね、世界一の姉は北上さんよ」ボソッ
山城「…あまり、おかしなことを言っていると、沈めるわよ?」
筑摩「利根姉さんの名誉を守れるなら、私は沈んでもいいですよ」
山城「…ちっ」ボソッ
筑摩「山城さん、お言葉ですが…世界一の姉は扶桑さんではなく利根姉さんですよ」
山城「…なんですって」
龍田「何を言っているんですか~、世界一の姉は天龍ちゃんですよ~」
大井「はぁ…たくっ、分かってないわね、世界一の姉は北上さんよ」ボソッ
山城「…あまり、おかしなことを言っていると、沈めるわよ?」
筑摩「利根姉さんの名誉を守れるなら、私は沈んでもいいですよ」
山城「…ちっ」ボソッ
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:48:48.49 ID:RH3UgpBC0
龍田「あの~、二人で盛り上がってる時に悪いんですけど、世界一の姉は天龍ちゃんですよ~」
大井「はっ…。さっきから好き勝手言ってるようだけど、皆さん何もわかってないようですね」
大井「扶桑さんも天龍さんも利根さんも…もちろん球磨姉さんも多摩姉さんも素敵なお姉さんです。でもやっぱり…世界一の姉は北上さんです!」
大井「いつも私を引っ張てくれて、いざという時は、私の事を守ってくれる…こんなに素敵なお姉さん他にはいません!」
龍田「その程度で素敵だなんて、北上ちゃんはまだまだね~。天龍ちゃんならそのくらい当たり前にしてくれるわよ~」
大井「…尻の穴に魚雷ぶち込んでやがりましょうか?」
龍田「あら~、大井ちゃんは私のお尻の穴に興味があるの~? でも、ごめんね~、私のお尻の穴は天龍ちゃんのモノなの~」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:51:34.72 ID:RH3UgpBC0
山城「不潔な会話ね…扶桑姉様がここにいなくて良かったわ、穢れ一つない扶桑姉様が穢れてしまうもの」
筑摩「本当ですね、利根姉さんは純粋ですから」
四人「「「「…ちっ」」」」
大井 バチバチッ 龍田 バチバチッ 筑摩 バチバチッ 山城
千代田「あれ、4人そろっていがみ合ってどうしたの?」
大井「千代田さん…これは、私たち4人の譲れない戦いなので、横やりは不要です」
千代田「そうなの? でも、あんまり怖い雰囲気出したらダメだよ?」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:54:30.23 ID:RH3UgpBC0
千代田「ここは食堂で、駆逐艦の子達だって来るんだから」
筑摩「大丈夫ですよ、すぐに終わらせる予定なので」
千代田「そう? じゃあ、私は行くわね。い、愛しの千歳お姉が待ってるから…///」チラチラ
大井「い、愛しの…?」
千代田「えっ、やだ…千代田、声に出てた? で、でもバレちゃったならしょうがないなぁ」
千代田「じ、実は、前々からの私の想いを千歳お姉に告げたら…その、受け入れてもらえてね…///」
大井「なっ、なっ…ま、まさか、まさか…」ワナワナ
千代田「そ、その、まさかだよ」カァァ///
龍田「千代田さんおめでとうございます~」(聞いてほしかったのね~)ホッコリ
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 21:55:42.65 ID:RH3UgpBC0
大井「そ、そんな…わ、私だってまだ北上さんとそういう関係になってないのに…」
龍田「あら~、大井ちゃんはまだ北上ちゃんとそういう関係になってなかったの~?」
大井「ええっ!? ま、まさか龍田さんも…?」
龍田「もちろんよ~、天龍ちゃんは、もう私の身体のほくろの位置まで正確に答えられるはずよ~」
大井「う、うらやまし…い、いや、ふ、不潔ですっ!」
大井「わ、私と北上さんは心で繋がっているので、そんな関係は要らないんですっ!」
龍田「心で繋がっているなんて当たり前よ~。その上で、身体での繋がりもあるのよ」
大井「なっ…ち、筑摩さん、山城さん、どう思いますかっ!?」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 22:00:18.40 ID:RH3UgpBC0
筑摩「うーん、別に私はいいと思うわよ。そもそも、私は、利根姉さんとそういう関係になることは望んでないから」
筑摩「私は利根姉さんを姉として慕っているからね」
山城「私もよ。扶桑姉様にそんなこと…いや、したくないと言ったら嘘になるけど…」ブツブツ
大井「…ち、千代田さんっ! あ、あの…ち、千歳さんとはどうやって、そ、そういう関係に…?」
千代田「え、えぇ…あ、改めて聞かれるとちょっと恥ずかしいなぁ」
筑摩「大井ちゃんは、北上さんとそういう関係になりたいの?」
大井「うっ…そ、そうですっ! 私は北上さんの事をお慕いしているんです!」
大井「だけど、北上さんは私の事を親友って…」
大井「いや、親友というポジションに居させてもらうだけでもとても嬉しいのですが、やっぱり私は…」
筑摩「そういうことなのね…それなら早く言ってくれれば良かったのに」
大井「えっ…?」
山城「そうよ、そういう事なら協力するわよ…あなたの気持ち、とてもよく分かるわ」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 22:02:03.66 ID:RH3UgpBC0
大井「筑摩さん、山城さん…」ジーン
千代田「私も応援するよ!」
大井「千代田さんも、ありがとうございます…!」
龍田「大井ちゃん」
大井「龍田さん…」
龍田「北上ちゃんとの恋…応援するわ」
大井「みなさん…」
龍田「…でも、その後で私の悩み事も聞いてもらってもいいかしら~?」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 22:03:42.86 ID:RH3UgpBC0
龍田「実は、最近、天龍ちゃんと木曾ちゃんがね…」
大井「き、木曾が…どうしたんですか?」
龍田「…いえ、この話は大井ちゃんの相談を受けたあとね~」ニコッ
大井「は、はいっ!」パァァ
筑摩「そうよね…私たちは、皆、姉の事を慕う、いわゆる同士…」
山城「そうね、今までは、打ち明けられなかった悩みとかも貴方たちになら…」
5人「「「「「ふふっ、ふふふふふっ」」」」」
大井「あ、それなら、今度、皆さんで一緒にお茶でもしませんか?」
龍田「いいわねぇ、お話しましょう~」
筑摩「いいわね」
千代田「楽しみね! …それじゃあ、私は千歳お姉が待っているから」
山城「私も、扶桑姉様が帰ってくる前に準備をしないと…」
大井「そういえばそうでしたね…では、また次、五人で集まれる日を楽しみにしてますね」ニコッ
大井「ふふっ、待っていてくださいね、北上さん…♡」
艦
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/17(日) 22:44:47.26 ID:xdiFZX72o
おつ
キソーがどうしたんだよ…
キソーがどうしたんだよ…
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/18(月) 00:46:27.66 ID:I6BGHyGHo
よかった、俺の嫁である比叡はノンケなんだね
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513506450/
Entry ⇒ 2017.12.31 | Category ⇒ 艦隊これくしょん | Comments (0)
久「清澄高校の端緒」【咲】
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:04:55.24 ID:NR0jmhWOo
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:05:26.54 ID:NR0jmhWOo
『全国大会で優勝できたきっかけですか?』
『はい。失礼ですが、無名だった清澄高校が、優勝まで辿り着いたきっかけがあれば是非とも教えて頂けないかと。』
『それは、簡単ですよ。ある1人の部員が入部してからです。
そこから、清澄高校麻雀部は始まったと言っても過言ではありません。』
『それは、―――』
今でも、鮮明に思い出せる。昨日のことのように。
それは、晴れた春の出来事だった。
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:06:28.27 ID:NR0jmhWOo
若い草の芽ものび、桜の咲き始める、季節が今年もやってきた。
我が清澄高校には新たに320名が入学した。
その中から、麻雀部に興味を、関心を持ってくれる人は何人いるのだろうか?
議会長権限でどうにか廃部は免れているが、今年入部希望者がいなければ、廃部となってしまう。
そうなれば、夢でもある全国制覇にも手が届かない。
「はぁ。弱気になっちゃ駄目ね。まだ、入部希望者が0っていう訳でもないのに。」
そう言って、自分に活を入れる。
でも、心の何処かでは諦めている自分がいる。
我が清澄高校には新たに320名が入学した。
その中から、麻雀部に興味を、関心を持ってくれる人は何人いるのだろうか?
議会長権限でどうにか廃部は免れているが、今年入部希望者がいなければ、廃部となってしまう。
そうなれば、夢でもある全国制覇にも手が届かない。
「はぁ。弱気になっちゃ駄目ね。まだ、入部希望者が0っていう訳でもないのに。」
そう言って、自分に活を入れる。
でも、心の何処かでは諦めている自分がいる。
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:07:25.94 ID:NR0jmhWOo
去年はやっとの思いで、実家が「Roof-top」という雀荘を営んでいる“染谷まこ”を入部させられることができたのだ。
今年はいないのかもしれないという暗雲に包まれる。
長野で麻雀をやるならば強豪校―――名門風越女子か龍門渕―――に向かうだろう。
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:09:50.02 ID:NR0jmhWOo
部室がある旧校舎から少し距離がある所からは、部活勧誘の声が聞こえる。
今日で、4日も経ったというのに、戸が叩かれる気配がない。
部員が少ない上に、生徒議会で忙しく十分な勧誘もできていないので、
叩かれる事自体が稀有なのだが。
それでも、期待というもの人はしてしまうものだ。
今日で、4日も経ったというのに、戸が叩かれる気配がない。
部員が少ない上に、生徒議会で忙しく十分な勧誘もできていないので、
叩かれる事自体が稀有なのだが。
それでも、期待というもの人はしてしまうものだ。
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:10:52.94 ID:NR0jmhWOo
権限で強制的に入部させても、意味がない。
それでは、2年前と同じ轍を踏むことになる。
それだけは、避けたい。
何よりも、目標であり、夢でもある全国制覇を成し遂げるためには、経験者のほうが望ましい。
と、物思いに耽っていた時だった。
何か視線を感じる。
入部希望者か見学者かしら?と思い、振り返ってみる。
そこには、金髪の少々あどけなくも、体付きはしっかりとした、青年が佇んでいた。
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:11:44.19 ID:NR0jmhWOo
「部活動見学者かしら、それとも入部希望者? 」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:12:43.04 ID:NR0jmhWOo
そうであって欲しいという願いで聞いてみる。
只の希望的観測でしかないが。
この際、男子生徒だからといって拒否をしてはいけない。
仲の良い女子生徒を連れてきてくれるかもしれないという思いにフタをする。
只の希望的観測でしかないが。
この際、男子生徒だからといって拒否をしてはいけない。
仲の良い女子生徒を連れてきてくれるかもしれないという思いにフタをする。
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:13:46.62 ID:NR0jmhWOo
「いや、違うんです。迷子を探していて。」
現実というものは非情で
世知辛いものである。
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:15:45.83 ID:NR0jmhWOo
「そうなの。」
表情が変わっていないか不安になる。
残念そうな表情を見せるわけにはいかない。
あからさまに目の前でがっかりされると辛いのだ。
私にも経験があるので、そんな思いをさせたくはない。
さて、どうしようかと頭を悩ませていると、向こうから質問が飛んできた。
「此処は一体何をするんでしょうか。」
先程、迷子を探していると言っていたからか、よく確認もせずに入ってきたのだろう。
意外とおっちょこちょいというか、可愛らしい所があるものだ。
表情が変わっていないか不安になる。
残念そうな表情を見せるわけにはいかない。
あからさまに目の前でがっかりされると辛いのだ。
私にも経験があるので、そんな思いをさせたくはない。
さて、どうしようかと頭を悩ませていると、向こうから質問が飛んできた。
「此処は一体何をするんでしょうか。」
先程、迷子を探していると言っていたからか、よく確認もせずに入ってきたのだろう。
意外とおっちょこちょいというか、可愛らしい所があるものだ。
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:17:15.04 ID:NR0jmhWOo
「麻雀よ。知ってるかしら?」
現代の大人気競技となった麻雀。今や知らない人はいないとでも言えるモノ。
「耳にしたことはある程度ですね。細かいルールは知りません。」
男子麻雀の黄金期から結構な時が経った今では、男子が麻雀から離れていても可笑しくはない。
実際に、男性雀士の数は年々減少傾向にある。
「そう。なら、教えて上げるわ。其処の卓の椅子に座って。」
あわよくば、このまま麻雀に興味を持ち、入部してくれたらという思いを秘めつつ話を進める。
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:18:49.57 ID:NR0jmhWOo
>>1
正確には久視点のようなものになります。
正確には久視点のようなものになります。
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:20:20.59 ID:NR0jmhWOo
「麻雀は、四人制で行うの。その中で一番得点が高い人の勝利。
使うものは雀牌と言われる萬子、索子、筒子、字牌の四種類、百三十六枚を使用するの。そして、役を作って和了る。ここ迄は良いかしら?」
そういえば、麻雀の説明って初めてじゃないかしら、
中学時代は、他の子がやっていたし、高校に進学してからは言わずもがな。
「はい。」
物覚えはいい方なのかしら?
「ふふっ、続けるわね。萬子、索子、筒子は数牌と呼ばれ各種に一~九まで区別されているの。
字牌はそれぞれ東、西、南、北の四風牌、白、發、中の三元牌に分けられるのよ。
これらを様々に組み合わせていく競技よ。分かったかしら?」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:21:21.25 ID:NR0jmhWOo
私って、教師に向いているのかもしれない。
そう思うほどに良く出来ている。我が事ながら自分の才能が恐ろしいわね。
「はい。あの、その役って何種類あるんですか?」
「良い質問ね。一般的に採用されているのは三十八種類よ。ローカル役を含めると大凡九十近くね。」
役の数を教えると、驚いた表情を見せてくれる。
慣れてる此方からすれば、何てことはないが、初心者でもある彼からすれば驚天動地なのも頷ける。
「そんなにあるんですか!?」
実際に大会で採用されているのは、一般に普及してる38種類。
国際大会ともなると、話はまた別となるが。
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:22:42.35 ID:NR0jmhWOo
「といっても一般的な三十八個だけで十分よ。本当なら、体験させてあげられたらいいんだけど……」
本当に、惜しい。
まこが居てくれたら、彼にも実際に触れさせてあげれるのに。
麻雀の楽しさを教えてあげられる絶好の機会を逃してしまうなんて。
「ごめんなさいね。本当なら二年生の娘がもう一人居るんだけど、今日は家庭の事情で来れなくて。
せめて三麻だけでも体験させてあげられたら良かったのに。」
幸運の女神は前髪しかない。それを掴み損ねた者に次はない。
「なら、明日はその先輩は居るんですか?」
「え?」
逃したと思っていた幸運の女神は私にもう一度微笑んでくれるらしい。
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:23:53.79 ID:NR0jmhWOo
「ですから、明日はその、三麻?でしたっけ。それは出来るんですか?」
思い掛けず彼を抱きしめてしまいたい感情に駆られるも、それを押さえ込む。
「えぇ!明日なら出来るわ!私が、どんな事をしてでも、らt,連れてくるわ!」
「今なんか、不穏な言葉が聞こえた気が……」
「気のせいよ。気のせい。」
どんな事をしてでも明日は、まこを連れてこなくてはならない。
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:25:21.99 ID:NR0jmhWOo
「俺、一年生の須賀京太郎って言います。」
彼が、自己紹介をしてくる。
もしや、私自己紹介してない?
「へ?……そうね、自己紹介がまだだったわね。
麻雀部部長で生徒議会長を務めてる三年の竹井久よ。
よろしくね、須賀くん。」
思いがけず興奮して、失敗したわ。という囁きは聞こえていないだろうか?
聞かれていたら、結構恥ずかしい。
「それでは、また明日来ます。」
「えぇ、待ってるわね。明日こそ須賀くんに麻雀の楽しさをお姉さんが教えてあげるわね。」
ウィンクをしながら彼―――須賀くん―――を見送る。
明日は大きな仕事ができた。
思わず笑みが零れそうになるのを抑える。
事がうまく運べば、部員が増えることになる。
まぁ、女子じゃないのがネックだけど。それには目を瞑りましょう。
我儘を言える立場ですらないのだから。
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:27:19.25 ID:NR0jmhWOo
「あぁ、まこ。丁度良かったわ。今日は部室に顔を出しなさい。」
「いきなり、何を言うとるんじゃ?」
探していた相手は、見つかった。まこを、部室に来るようにしなければいけない。
「何って、言ったままよ? 今日は、部室に顔を出しなさい。」
「なんでじゃ。まさか、入部希望者でも来たとか言うんじゃなかろうな?」
「惜しいわね、見学者よ。その子は麻雀をやったことのない、初心者なのよ。
昨日来てくれたんだけど、流石に打たせることはできなかったわけ。
それで、今日も来るみたいだから。三麻でも、ってね。」
昨日起きたことを説明する。
「ほんまか?」
疑い深いわね。
「本当よ。だから、本日は部活にくるように。分かったわね?」
「あぁ、了解じゃ。これで、おんしの夢じゃった女子団体での全国制覇に近づいたのぅ。
楽しみが増えたのぅ。なぁ、部長。」
「そうかもしれないわね。それじゃ、放課後に会いましょう。じゃーね。」
嘘は言っていないわね、嘘は。
「おう。放課後な。」
まぁ、誰も女子生徒だなんて言ってないんだけどね。
さてと、まこは今日は来る。
あとは、須賀くんの為に簡単な役一覧表を完成させないとね。
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:29:27.27 ID:NR0jmhWOo
「どんな奴なんじゃ、その女子は?」
「んーー。そうね、見ての楽しみね。きっと、驚くわ。」
「そうか?驚くほどか。」
「えぇ。」
驚くでしょう、女子だと思ったら来るのは、男子生徒なんだから。
というか、本当に須賀くんは今日来るのかしら。
昨日のあれはリップサービス所謂、お世辞だったのかしら。
あ、ヤバイ。舞い上がってたのかしら私って。
ドアがノックされ、昨日の声が聞こえる。
「失礼します。」
そこには、昨日の彼―――須賀京太郎―――がいた。
笑みが零れそうになる。来てくれるかどうかで不安になってた私がなんだか阿呆みたいだ。
「待ってたわ、須賀くん。こっちが昨日言っていた二年生の染谷まこよ。」
「おい、部長。わしは、一年生の初心者と三麻やるっちゅうから来たんじゃが、男子生徒とは聞いとらんぞ。」
「だって、言ってないもの。昨日来た一年生と三麻を今日やるから、と言っただけよ。」
「はぁ、お主は。わしの名前は、染谷まこじゃ。よろしくの。」
「は、はい。一年生の須賀京太郎です。よろしくお願いします。」
「自己紹介も終わったみたいだし、早速三麻を打ちましょう。」
まこがぶつくさ言いつつ、手伝ってくれる。
なんだかんだ、手を貸してくれるまこは、出来た可愛い後輩だ。
「あの、俺にも何か手伝えることはありますか?」
そんな折、須賀くんが手伝いを申し出てくれる。
とは言っても、手積みではないので準備なんてすぐに終わる。
「いいから、須賀くんは座って待ってて。」
「京太郎は、待ってんしゃい。準備は先輩たちに任せときぃ。」
まこと、ハモる。
中々のコンビネーションじゃない?と目で訴えるも、まこはこちらを見向きもしない。
ぐぬぬ。なんて可愛げのない後輩なのかしら。
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:30:56.65 ID:NR0jmhWOo
さて、須賀くんに飲み物を渡したことで、準備が終わる。
競技中に食事は許されていないが、飲み物を飲むことまでは却下されていない。
長丁場となる麻雀では集中力を維持するために。
また、脱水症状を防ぐという理由で飲料の持ち込みは許可されている。
「それじゃ、三麻のルールを説明するわ。三麻の場合昨日教えた萬子の二~八が除外されるわ。また、北牌については今回、共通役牌として使用するわ。
それで、須賀くんにはこれを渡しておくわ。」
そして、ここで登場するのは、竹井久が手作り、『初心者でも理解る、麻雀役一覧』
創作期間1日を費やして創った大作よ。
「これは、なんですか?」
「役の一覧よ。例も載ってるわ。これを参考に打ってみてちょうだい。」
「なに、今回はゆっくり慌てず打ってみるとえぇ。時間はたっぷりとあるけぇ。」
三麻 が 始 ま る 。
競技中に食事は許されていないが、飲み物を飲むことまでは却下されていない。
長丁場となる麻雀では集中力を維持するために。
また、脱水症状を防ぐという理由で飲料の持ち込みは許可されている。
「それじゃ、三麻のルールを説明するわ。三麻の場合昨日教えた萬子の二~八が除外されるわ。また、北牌については今回、共通役牌として使用するわ。
それで、須賀くんにはこれを渡しておくわ。」
そして、ここで登場するのは、竹井久が手作り、『初心者でも理解る、麻雀役一覧』
創作期間1日を費やして創った大作よ。
「これは、なんですか?」
「役の一覧よ。例も載ってるわ。これを参考に打ってみてちょうだい。」
「なに、今回はゆっくり慌てず打ってみるとえぇ。時間はたっぷりとあるけぇ。」
三麻 が 始 ま る 。
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:33:25.51 ID:NR0jmhWOo
須賀くんは、初めての麻雀ということもあってか視線を私お手製の役一覧と手牌を行ったり来たりしたり、長考したりする。
仕方がないのかもしれない。
他にも部員がいたら、実際に須賀くんの前で打つことができるのに。
彼はろくにルールを教えれていない。
心配である。彼はちゃんと楽しめているだろうか。
ある程度のルールは把握してくれただろうか、と不安が積もる。
小さい子をみる母親というのはこういう気持ちなのだろうかと思っていると、此方をニヤニヤと見てるまこと視線が合う。
―――何かしら?
―――いや、何も。
―――何も無いっていうことではないでしょ。ニヤニヤして。
―――ほんに、気にすることじゃないんじゃ。
アイコンタクトで会話をしていると、不意に須賀くんが声を上げる。
「あ。」
何かしらの役が出来たのかしら。
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:34:41.23 ID:NR0jmhWOo
「どうかしたの、須賀くん。」
「何か役でもできたんか?」
「はい、出来ました。」
何ができたのかしら。ちょっと、興味がある。
そして、須賀くんは先程渡した、役一覧の一つを指す。
「えーっと、この、国士無双って奴ですね。」
指したのは一番上のモノだった。
まさか、初麻雀で役満それも、国士無双を和了るなんて。
「嘘。凄いじゃない、須賀くん!」
「初めての三麻で、というか、初麻雀で国士とはのぅ。」
私は須賀くんを褒め、まこは国士で和了ったことに驚いている。
そんな彼は、喜びを噛みしめるように小さくガッツポーズをしていた。
そして彼の口元には、小さな微笑が浮かんでいた。
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:36:26.80 ID:NR0jmhWOo
切りが良い所で、休憩を入れる。
先程の国士で味を占めたのか、役満ばかりを狙う須賀くん。
うーん。仕方がないとは言え、そればかり狙っていては、分かり易い。
狙い撃ちとまでは行かないものの、中々和了ることができない時間が続いた須賀くん。
嫌気が差さなければ良いのだけど。
けれども、やはり。
須賀くんには悪いとは思うが、この部室で麻雀を囲えるのは嬉しい。
「やっぱり、三麻とはいえ、麻雀を打てるって良いわね。」
「そうじゃのう。家とは違い、学校で部活として打つのでは何とも言えない嬉しさっちゅうもんがあるのぅ。」
まこも、同じようだった。
私にとって、長い長い時間が過ぎて、漸く私はちゃんと麻雀を打てている。
雀荘で顔馴染みになった面子でも、知り合いのプロとでもない。
清澄高校の麻雀部として部室で打てるという喜ばしさが湧き出てくる。
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:37:31.67 ID:NR0jmhWOo
「あの、この麻雀部って何か目標とかあるんですか?」
須賀くんが此方に質問を投げかけてきた。
「えぇ勿論。目標は、団体での全国制覇よ!
と言っても、五人制だから只の夢なんだけどね。」
そう、団体戦の必要最低限の人数は、5人となっている。
個人戦で、応募申し込みをしても意味は無いのだ。
私は、竹井久は、『清澄高校麻雀部』として、全国制覇を夢見ているのだから。
「まぁ、言うのは勝手じゃけぇ。減るもんでもないしのぅ。」
まこが、言うように言うだけならタダである。
勿論、言うだけで終わらせるきは毛頭無いのも自膣なのだが。
私とまこは、顔を合わせて笑い合う。
そうだ。まだ、何も終わっていない。
なにしろ、まだ何も始まってはいないのだから。
そう、意気込んでいると、須賀くんから衝撃の言葉が聞こえた。
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:38:04.52 ID:NR0jmhWOo
「俺。この麻雀部に入部します。今日しか、まだ麻雀は打ってないですけど、楽しかったですし。」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:39:52.96 ID:NR0jmhWOo
あまりの展開に言葉が出てこない。
人はあまりにも驚くと言葉は出ないし、呼吸を忘れるようだ。
思考が再開される。
これは、本当に現実なのだろうか?
最近の生徒議会の多忙さ故に見える幻聴・幻覚の類ではないのだろうか?
そう思えるほどに、眼の前にいる彼の発言は予想を上回っていた。
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:42:11.14 ID:NR0jmhWOo
「本当に?本当に入部してくれるの?」
私にとっては、棚から牡丹餅だ。
この後、如何に麻雀の楽しさを教え、素晴らしさを刷り込み、
麻雀部に所属した場合のメリットを示すかを考えていたというのに。
世の中はそんなに甘くはない。
本当のことなのかという不安に押しつぶされそうになる。
「そんな簡単に決めてしまってええんか?まだ、体験入部期間はある。
色々と周って見てから決めたほうがええんじゃないか?」
まこは、まこで、彼を労っている。
彼女の気持ちも分からなくはない。
まこは条件付きでこの麻雀部にいる。
このまま他に1年生が入部してこなければ、彼はこの部に1人になってしまう可能性がある。
私にとっては、棚から牡丹餅だ。
この後、如何に麻雀の楽しさを教え、素晴らしさを刷り込み、
麻雀部に所属した場合のメリットを示すかを考えていたというのに。
世の中はそんなに甘くはない。
本当のことなのかという不安に押しつぶされそうになる。
「そんな簡単に決めてしまってええんか?まだ、体験入部期間はある。
色々と周って見てから決めたほうがええんじゃないか?」
まこは、まこで、彼を労っている。
彼女の気持ちも分からなくはない。
まこは条件付きでこの麻雀部にいる。
このまま他に1年生が入部してこなければ、彼はこの部に1人になってしまう可能性がある。
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:42:57.95 ID:NR0jmhWOo
今でこそ2人でも麻雀部として存在できているのも、廃部になっていないのも
私の、生徒議会長という肩書を十二分に活用してこその現状なのだ。
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:45:16.46 ID:NR0jmhWOo
「いいんです。決めたんです。俺は、麻雀部に入部します。
久々にこんなに楽しいって思えたんです。
それに竹井先輩の夢である全国制覇を手伝いたいんです。」
そう、楽しそうに笑って言う彼に私たちは何も言えなかった。
「だから、これから、よろしくお願いします!竹井先輩、いや、部長!染谷先輩!」
何が同じ轍を踏むか、だ。
私は彼を、須賀京太郎を、策略を以て入部させようとしていた。
そんな事を思考させていた自分自身が恥ずかしい。
それでは、意味がないじゃないか。何れ、あの時のように幽霊部員になってしまう。
麻雀を楽しむことが大事じゃないか。楽しむという気持ちが大事なのに。
彼は、何かを忘れていた私にソレを思い出させてくれた。
「ううん。此方こそ宜しくね、須賀くん。入部したからには厳しくいくわよ。」
「わしにとっては、初めての後輩じゃ。頼もしくはないかもしれんが、宜しくのぅ京太郎。」
私達はその日握手を交わし、活動を終えた。
久々にこんなに楽しいって思えたんです。
それに竹井先輩の夢である全国制覇を手伝いたいんです。」
そう、楽しそうに笑って言う彼に私たちは何も言えなかった。
「だから、これから、よろしくお願いします!竹井先輩、いや、部長!染谷先輩!」
何が同じ轍を踏むか、だ。
私は彼を、須賀京太郎を、策略を以て入部させようとしていた。
そんな事を思考させていた自分自身が恥ずかしい。
それでは、意味がないじゃないか。何れ、あの時のように幽霊部員になってしまう。
麻雀を楽しむことが大事じゃないか。楽しむという気持ちが大事なのに。
彼は、何かを忘れていた私にソレを思い出させてくれた。
「ううん。此方こそ宜しくね、須賀くん。入部したからには厳しくいくわよ。」
「わしにとっては、初めての後輩じゃ。頼もしくはないかもしれんが、宜しくのぅ京太郎。」
私達はその日握手を交わし、活動を終えた。
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:45:51.95 ID:NR0jmhWOo
『全国大会で優勝できたきっかけですか?』
『はい。失礼ですが、無名だった清澄高校が、優勝まで辿り着いたきっかけがあれば是非とも教えて頂けないかと。』
『それは、簡単ですよ。ある1人の部員が入部してからです。
そこから、清澄高校麻雀部は始まったと言っても過言ではありません。』
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:49:00.06 ID:NR0jmhWOo
『それは、大将を務めた宮永咲さんでしょうか?
それとも、副将を務め昨年のインターミドル覇者の原村和さんでしょうか?』
『いいえ、違います。
私達の、私の、清澄高校の麻雀部は、1人の男子生徒が部室に迷い込んだ所から始まりました。』
そう、それは桜が舞う季節のこと。
あの出会いから私の青春という幕が上がったのだ。
そして、私が知らず知らずのうちに彼―――須賀京太郎―――に、恋に落ちていた瞬間でもある。
カンッ
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/25(火) 22:54:31.72 ID:NR0jmhWOo
これにて、久視点は終わりです。
知らず知らずのうちに京太郎を目で追ってしまうヒッサとか
キャップとか、全国のおもちの雀士にデレッとする京太郎に不機嫌になる部長とか
合同合宿の際にパソコンを持ってくるように頼んだものの、
膝を壊した事を知って甲斐甲斐しく世話を焼こうとするおさげの似合う年上の女性とか
冗長になるので割愛しましたが。
だから、京久もっと増えろ。
知らず知らずのうちに京太郎を目で追ってしまうヒッサとか
キャップとか、全国のおもちの雀士にデレッとする京太郎に不機嫌になる部長とか
合同合宿の際にパソコンを持ってくるように頼んだものの、
膝を壊した事を知って甲斐甲斐しく世話を焼こうとするおさげの似合う年上の女性とか
冗長になるので割愛しましたが。
だから、京久もっと増えろ。
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 16:15:47.55 ID:UhgkLEe3o
私―――竹井久―――は、気になるヒトがいる。
そのヒトとは、とある麻雀部員で清澄高校の転機となった人物。
「だぁぁー。また、負けちまった。」
その人物は唯一の男子麻雀部員こと、須賀京太郎である。
1年生同士で打っていたが、決着はついたようだ。
「疲れたじぇー。京太郎、悪いがタコスを買ってきてくれー。」
「こら!ゆーき、駄目ですよ。今日初めて会った、須賀君にそのようなこと頼んでは。」
「そんな硬いこと言いっこなしだじぇ、のどちゃん。」
「ふふっ。二人共仲が良いのねぇ。流石同じ中学出身なだけあるわね。」
実際問題、この二人―――原村和と片岡優希―――は、仲が良い。
思いつき振り回す優希と振り回されつつも意外と面倒見が良い和。
非常に相性が良い二人だ。
「いえ、そんなことは。」
「私とのどちゃんはベストフレンドだじぇ。」
「それじゃぁ、俺はタコスでも買ってきますね。学食のメニューにありましたし、ずっと気になってたんですよねー。」
そして、気になってる子も思いの外気が利くというか、面倒見が良い。
そのヒトとは、とある麻雀部員で清澄高校の転機となった人物。
「だぁぁー。また、負けちまった。」
その人物は唯一の男子麻雀部員こと、須賀京太郎である。
1年生同士で打っていたが、決着はついたようだ。
「疲れたじぇー。京太郎、悪いがタコスを買ってきてくれー。」
「こら!ゆーき、駄目ですよ。今日初めて会った、須賀君にそのようなこと頼んでは。」
「そんな硬いこと言いっこなしだじぇ、のどちゃん。」
「ふふっ。二人共仲が良いのねぇ。流石同じ中学出身なだけあるわね。」
実際問題、この二人―――原村和と片岡優希―――は、仲が良い。
思いつき振り回す優希と振り回されつつも意外と面倒見が良い和。
非常に相性が良い二人だ。
「いえ、そんなことは。」
「私とのどちゃんはベストフレンドだじぇ。」
「それじゃぁ、俺はタコスでも買ってきますね。学食のメニューにありましたし、ずっと気になってたんですよねー。」
そして、気になってる子も思いの外気が利くというか、面倒見が良い。
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 16:16:48.49 ID:UhgkLEe3o
理由を聞いたら、
「幼馴染の面倒見てたら、こういうことができるようになっちゃいまして。」
と言っていた。
いいなぁ、その幼馴染。私も面倒見てほしいなぁ。
グヘヘ。そしたら、あーんな事やこーんな事も。
「おおぅ。京太郎は話がわかるじぇ。頼んだぞ。」
「ゆーき!もう。申し訳ありません須賀君。」
「良いって、良いって。飲み物買う序だし。和は何か飲むか?」
「いえ、そんな。私は結構です。」
「私は、オレンジジュースが良いじぇ。」
「優希もああ、言ってるし。な。」
「……それでは、お茶をお願いしても良いですか。」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 16:17:55.87 ID:UhgkLEe3o
―――ほら、部長どうして欲しいんですか?教えて下さいよ。
―――よく出来ました。ご褒美をあげますよ。
―――部長、いや、久さん。俺、もう……我慢……出来ないッ
「任せろって。部長はどうします。」
ハッ。ヤバイ、妄想で話の半分も聞いてなかった。
落ち着くのよ、私。クールになりなさい。
恐らく、飲み物の話題。そして、何か欲しいものはあるか。
「私?私は、須賀くんにお任せするわ。」
正解の選択肢はこれね。
「一番難しいじゃないですか、ヤダー。」
「須賀くんのセンスが物を言うわねぇ。」
あ、ヤバイ。こんな軽口の応酬が、すっごい楽しいし、嬉しい。
こういうタイプじゃないって思ってたんだけどなぁ、私って。
「私も手伝います。任せっきりなのも嫌なので。」
「サンキュー、和。助かるよ。それじゃぁ、行ってきます。」
「行ってきますね。」
「タコス待ってるじぇー。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
やるわね、和。
さり気なく手伝うことで高感度を上げ、同時に、二人っきりになれる。
ぬかったわね、私が行けばよかった。
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 16:18:58.15 ID:UhgkLEe3o
「それにしても疲れたじぇー。」
「フフッ。お疲れ様。調子は中々よさそうね。」
「うおっ。流石は部長。よく見てるのは、京太郎のことだけじゃないんだな。」
え?何と言ったのかしら、優希は?
え?もしかしてだけど、気づかれてる?
すごい、恥ずかしいんだけど。
「どいうことかしら?」
「いやーそのまんまの意味だじょ。部長は京太郎の方よく見てるし。
対局中も視線を京太郎と行ったり来たりしてるし。」
嘘。私ってそんなに須賀くんのこと見てるのかしら。
バレない程度に抑えてると思ってたんだけど。
「フフッ。お疲れ様。調子は中々よさそうね。」
「うおっ。流石は部長。よく見てるのは、京太郎のことだけじゃないんだな。」
え?何と言ったのかしら、優希は?
え?もしかしてだけど、気づかれてる?
すごい、恥ずかしいんだけど。
「どいうことかしら?」
「いやーそのまんまの意味だじょ。部長は京太郎の方よく見てるし。
対局中も視線を京太郎と行ったり来たりしてるし。」
嘘。私ってそんなに須賀くんのこと見てるのかしら。
バレない程度に抑えてると思ってたんだけど。
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 16:20:05.75 ID:UhgkLEe3o
「そんなことは無いと思うけど。」
「いーって。気にすることないし。それより、部長は京太郎のこと好きなのか?」
意外と直球で来るわね。
「……そうね。きっと好きよ。1人の男性として。そいう優希はどうなの?」
「私?うーん、嫌いではないじぇ。
すごい美味いタコスを作れるようになったら考えてやらんでもないじょ。」
そんな人日本にいるのかしら?
「優希を唸らせる程のタコスを作れる人なんているのかしらね?」
「きっといるじょ。本場のメキシコとかになら。
そんなことより、部長は、京太郎の何処を好きになったんだ?」
須賀くんの何処を好きになったのか、かぁ。
「そうねー。私にも分からないわね。気付いたら須賀くんのことを目で追ってたわね。
これが、一目惚れなのかもしれないわね。」
柄でもないのは自分が良く分かってるし。
「部長って思ってたより乙女なんだな。のどちゃんも大変だじぇ。」
「それは、どういう意味かしら?そして、どうして和の名前がでるのかしら?」
「気にすることないじぇー。」
ちょっと気になるんだけど。
え?和もなのかしら? 嘘でしょう。
「買ってきました。」
「只今、戻りました。」
「お帰りだじぇ。さぁ、京太郎!私に、一刻も早くタコスを渡すんだッ!」
「はいはい。分かりましたよー。」
「ちゃんと、お礼を言うんですよ、ゆーき。」
うーん、そんな感じには見えないわねぇ。
「部長には、此方を購入してきました。」
「……水とは、まぁまぁね。」
「何でも良いって言ったじゃないですかー、ヤダー。」
和がどうなんて関係ないわね。
今は部活を楽しんで須賀くんと一緒にいれる時間を満喫しましょう。
カンッ
「いーって。気にすることないし。それより、部長は京太郎のこと好きなのか?」
意外と直球で来るわね。
「……そうね。きっと好きよ。1人の男性として。そいう優希はどうなの?」
「私?うーん、嫌いではないじぇ。
すごい美味いタコスを作れるようになったら考えてやらんでもないじょ。」
そんな人日本にいるのかしら?
「優希を唸らせる程のタコスを作れる人なんているのかしらね?」
「きっといるじょ。本場のメキシコとかになら。
そんなことより、部長は、京太郎の何処を好きになったんだ?」
須賀くんの何処を好きになったのか、かぁ。
「そうねー。私にも分からないわね。気付いたら須賀くんのことを目で追ってたわね。
これが、一目惚れなのかもしれないわね。」
柄でもないのは自分が良く分かってるし。
「部長って思ってたより乙女なんだな。のどちゃんも大変だじぇ。」
「それは、どういう意味かしら?そして、どうして和の名前がでるのかしら?」
「気にすることないじぇー。」
ちょっと気になるんだけど。
え?和もなのかしら? 嘘でしょう。
「買ってきました。」
「只今、戻りました。」
「お帰りだじぇ。さぁ、京太郎!私に、一刻も早くタコスを渡すんだッ!」
「はいはい。分かりましたよー。」
「ちゃんと、お礼を言うんですよ、ゆーき。」
うーん、そんな感じには見えないわねぇ。
「部長には、此方を購入してきました。」
「……水とは、まぁまぁね。」
「何でも良いって言ったじゃないですかー、ヤダー。」
和がどうなんて関係ないわね。
今は部活を楽しんで須賀くんと一緒にいれる時間を満喫しましょう。
カンッ
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 16:20:37.04 ID:UhgkLEe3o
外で体育をしてるのは1年生かしら。元気ねー。
あの金髪の頭は須賀くんね。やっぱり格好いいわね。
此方に気づかないかしら。2階だし、無理かしら。
あっ、此方見た。手でも振ってみようかしら?
手を振ると、須賀くんもちょっと照れたように手を振り返してくれる。
やっぱり、可愛い所もあるなー。
「……ッ!……イッ!?」
もう、五月蝿いわね。もう少し静かにしてもらえないかしら?
「……けいッ!竹井ッ!?聞こえているか!」
「ハッ、ハイッ。」
「きちんと授業に集中するように。」
「はい、分かりました。」
怒られちゃった。
それにしても、須賀くんは楽しそうだなー
もいっこカンッ
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 16:23:09.13 ID:UhgkLEe3o
以上です
なんかグダってごめんよ~
なんかグダってごめんよ~
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/01(月) 18:13:32.89 ID:K/l1jAAlo
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493125494/
Entry ⇒ 2017.12.30 | Category ⇒ 咲-Saki- | Comments (0)
周子「あたしの魔法使いさん」
1: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:04:15.67 ID:80fZfBBj0
周子誕生日記念&ジュエルドノエル実装記念のモバマスSS、地の文ありの周子とそのプロデューサーのお話
若干ジュエルドノエルのネタバレも含むので念のため注意
しゅーこかわいいよ、しゅーこ
次から投稿していきます
若干ジュエルドノエルのネタバレも含むので念のため注意
しゅーこかわいいよ、しゅーこ
次から投稿していきます
2: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:05:50.33 ID:80fZfBBj0
――暗くなった事務所
あれほど賑やかに開催された誕生日パーティの熱ももうすっかり冷めてしまっている。
にも関わらず今日の主役であるあたしは1人ポツンと手持ち無沙汰にしていた。
こうして待ち続けてどれくらい経ったのだろうか?
もうそろそろ時計の長針と短針が真上を向いて重なり合おうとした時に一人の男がやっとあたしの前に現れた。
「――遅れて本当にすまない!」
男は目の前に現れるなり平謝りしだした。
一切言い訳をせずに謝罪から始めたことには一定の評価をしよう。
そしてまるで100m走の後のように肩で息をして、冬なのに汗だくな姿をみれば、全速力で間に合わせてきたこともわかる。
またそんな状態なのに謝罪したまま頭を上げない姿勢や仕事でも見たことがない申し訳なさ漂う雰囲気を見れば、彼の心中は自ずとも察することができる。
ただ、折角の今日という日なのにその手に荷物が全く見当たらないのはどうなのさ?
3: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:07:17.45 ID:80fZfBBj0
あたしは頭の中でそんなことを思いつつ、男の姿を尻目に如何にも『超不機嫌ですよ』というオーラを醸し出した。
……まあ本当のところはこの人が今日の日のためにどれだけ尽力し、師走に入ってから今日まで息つく暇もないくらいだったのはあたしが一番良く分かっている。
だから実際は『まあ仕方がないか』と思っており、それほどは怒ってはいない。
それどころか本来であれば尽力した彼を労い、感謝の気持ちを伝えねばならないところだ。
が、例えそうだったとしても今日は、今日だけはあえて怒るフリをしなくてはならない。
また他の誰でもなく、彼が彼だからこそ、あたしは怒るフリをしなくてはならないのだ。
アイドルになってから輝き始めた演技力をフルに用い、それを生粋の京女の魂であたしなりのアレンジをしてみる。
「ほ~、Pはん流石の気遣いやなぁ~。この時間ならいくら今日忙しいあたしでも二人っきりになれるもんなぁ~」
「…………すまない、周子……」
なんであたしが怒るフリをしてPさんが謝っているかだって?
何故なら今日はあたし、塩見周子の誕生日なのだ。
そんでもってPさんの両手はすっかり空で、プレゼントの類が見当たらなかったのだ。
シンデレラを迎えに来た魔法使いなら魔法くらいちゃんと使ってよね。
4: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:08:04.08 ID:80fZfBBj0
ポーンポーンポーン
あ、時計の音がなった。訂正、昨日はあたしの誕生日だったのだ。
5: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:10:52.09 ID:80fZfBBj0
――話は少し前に戻る
今日はあたしの誕生日ということで、夜に事務所での誕生日パーティーが企画されていた。
季節柄、忘年会も兼ねていたのもあったが、事務所の大方の人が参加してくれ大賑わいとなった。
パーティーの間、みんなが代わる代わるあたしを祝福してくれるもんだから、嬉しいような、むず痒いような、でもやっぱりほっこりとした感覚にずっと浸っていた。
……居場所ができるってホント良いことだねぇ。
6: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:13:11.14 ID:80fZfBBj0
楽しい時ほどあっという間に過ぎるということは事実のようで、始まったばかりと思ってたパーティーも
『宴もたけなわだが、未成年も多いから夜も更ける前に……』
ということで先ほど解散している。
未成年組は自宅や寮へ帰され、大人組はまだ年が忘れられないのか直ぐに二次会へ繰り出している。
そのため、今はもう事務所には殆ど人が残ってない。
そんな事務所であたしは人を待っていた。
何故かっていったらそりゃぁ……と頭の中で自問自答しかけたところで、入口の方から誰かがやってくる気配を感じた。
待ち人来たるかな?でもちょっと早い気もする。
7: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:13:59.22 ID:80fZfBBj0
「あら?周子はん、まだおったん?一緒に帰りまへんか?」
そこにひょっこり現れたのは待ち人ではなかったが、同じくらい大事な可愛い妹分だった。
「あぁ、紗枝はん。いや、ちょっと野暮用があってね……」
「ほー……今日の周子はんへ用がある人はぎょーさんおっても、周子はんの方が用のある人なんて……あぁ……そないなことか」
「ん、そういうこと」
特にこちらから何か言ったわけではないけど、紗枝はんは合点がいったようだ。
この娘はこういうところでやけに聡い。
「……しかしPはんもいけずやなぁ……折角の周子はんの誕生日やのにパーティーにも出ーひんで……」
そう、さっきのパーティーには肝心のPさんがいなかったのだ。
というの今日のために、年末の忙しい時期にも関わらず、予定を調整したツケを絶賛一括払い中だったのだ。
パーティーを盛り上げるためにあたしだけでなく、みんなの予定も調整したのだからツケは相当なものだろう。
それを示すように朝からずっと仕事にかかりきりで、こんな遅い時間でもまだ外出しており、今日は一度も顔を見てない有様だ。
8: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:14:50.82 ID:80fZfBBj0
「んー、まあ元から出られないって言ってたし。あたしのせいでPさんが忙しくなったのを考えるとあんまりワガママをいうのも、ね?」
「そないなこというて、ほんまはなぁ……?今日くらいワガママになってもええやない?」
理解の深いオンナを演じようとするも付き合いの深い妹分には即座に見抜かれる。
紗枝はんの言う通り、折角の誕生日なのにPさんから祝ってもらわなければ片手落ちなのも確かだ。
だからこそみんなが居なくなる中、ウダウダとここに残っていたのだ。
「そないなこというて、ほんまはなぁ……?今日くらいワガママになってもええやない?」
理解の深いオンナを演じようとするも付き合いの深い妹分には即座に見抜かれる。
紗枝はんの言う通り、折角の誕生日なのにPさんから祝ってもらわなければ片手落ちなのも確かだ。
だからこそみんなが居なくなる中、ウダウダとここに残っていたのだ。
9: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:15:48.25 ID:80fZfBBj0
「まぁ事務所で待ってりゃ、帰ってきたPさんにきっと会えるでしょ。会えないなら会えないって連絡くれるはずだし。気長に待つとするわ」
「いじらしいなぁ……なら馬に蹴られんよう、お邪魔虫はさっさと退散するとしよか~」
「ちょ……お邪魔虫なんて……!しかも馬に蹴られるって……Pさんとはそんな仲じゃ……!」
「あら、ちゃいますの?……あぁそういや、"まだ"ちゃいましたなぁ……」
妹分の思わぬカウンターが見事にハマり、一発KO。あたしから出たのは"グッ"という声にならない声だけだった。
違う違う!違わないのはそうなんだけどさ!違うんだよ!まだ言えてないだけなんだよ!
10: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:16:33.65 ID:80fZfBBj0
「…………全く」
とはいえ、発破をかけられたんじゃあ、姉貴分としては恥ずかしいところを見せられない。
Pさんから貰う物を貰って、ついでに貰うべき言葉も貰ってやろうじゃないの!
「さて……それじゃあ少し待つとしますかね」
とはいえ、発破をかけられたんじゃあ、姉貴分としては恥ずかしいところを見せられない。
Pさんから貰う物を貰って、ついでに貰うべき言葉も貰ってやろうじゃないの!
「さて……それじゃあ少し待つとしますかね」
11: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:17:10.15 ID:80fZfBBj0
誰かが言ってたのをよく覚えてる。待てる女はいいオンナだと。
まあ遅くなるといっても、なんだかんだもう少しで来てくれるっしょ。
なんていったって優しいあの人があたしの誕生日を祝ってくれないはずがない。
……来て……くれる、よね……?
12: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:17:36.07 ID:80fZfBBj0
――そうして冒頭に戻る
今はもう魔法は解けてしまう時間帯だけど、あたしの怒りは解けずにいる。まあ所詮フリなんだけどね。
「Pはん、聞いてな。こないな時間になってしもたけど、実は帰れへん理由があったんよ~」
「………………」
「あたし、今日こ~んなにプレゼントがもろてな。持って帰るのがえらいなぁと困ってたんやわぁ~」
「………………」
「やから、これ以上プレゼントが増えたらどないしよと思ってた所なんやわぁ~。」
「………………」
13: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:18:13.93 ID:80fZfBBj0
「そしたらPはんが両手を開けてきてくれはってな。困っている担当アイドルを助けに来てくれはったんやんやねぇ~。」
「………………」
「流石の気遣いのお人やなぁ~。その気遣いに感謝してプレゼントを分けてあげたいくらいやわぁ~。」
「……………………本当に……すいませんでした周子さん……」
一通りPさんをいじめて怒ったフリを続ける。
実のところ途中から楽しくなってきたのは内緒ね。
14: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:19:02.71 ID:80fZfBBj0
……だけどもう頃合いだろう。あたしはわざとらしくため息をついた。
「……まあ、Pさんが忙しいって重々承知だしね……」
「それは、その――」
「ただそんな話をする前にさ、あたしはずっと待っててすっかり凍えちゃったってわけ。あったまらせてよPさん」
「……あったまるってどうやって?」
「あたしの隣空いてるからさ、ほらはやく!」
そういってあたしはPさんを隣に促し、座った瞬間くっつきだした。
今日は沢山の人と会ったにも関わらず、この人だけは特別な温かさを感じる。
こんなに温かいなんて、やっぱりこの人は魔法を使ってるに違いない。
15: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:19:46.56 ID:80fZfBBj0
「はぁ……Pさん、ぬくいわ~」
「まあさっきまでずっと走ってたからな」
「暖房替わりでよいよい~♪」
「ほいほい、いくらでも温めてやるから」
Pさんはそういってくっついてきたあたしをハグして迎え入れてくれた。
そうしてあたしの機嫌が少し直ったのを見て、少しホッとした表情を見せる。
平謝りが功を奏し、もう一押しすればあたしを宥めるのに成功するんじゃないかという希望を抱いているのだろう。
多分この後は甘い言葉を囁いて、宥めすかそうという思惑に違いない。
それこそがあたしの思惑通りだとも気が付かずに……。
16: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:20:35.52 ID:80fZfBBj0
「……その……周子……ほんとごめんな……いくら忙しかったからってプレゼントも用意できずに……」
「いいよ、Pさん。ただでさえ冬の稼ぎ時で忙しいのに、パーティーのためにみんなの予定を調整してたらね……。とてもじゃないけど時間なんてないよね」
「いや……そうだとしてもお前の特別な日だからな……。タイミングすぎちゃったけどプレゼントだってちゃんと用意するし、この埋め合わせは必ずするから」
17: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:21:23.94 ID:80fZfBBj0
「ほんと?!」
「本当だ」
「プレゼント用意してくれる?」
「用意する」
「埋め合わせしてくれる?」
「絶対する」
「何でもしてくれる?」
「何でもする……って、あー!そこまではいってないぞ!!」
「えっ……」
「ウッ……」
18: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:22:34.85 ID:80fZfBBj0
あたしは不安げな顔で上目遣いをしながらPさんの顔を覗き込んだ。
長い付き合いだ、Pさんがあたしの上目遣いに弱いのは良く知っている。
これを使って奢ってもらったことはPさんにスカウトされてから数えきれないくらいだ。
さらに今日に関していえば、Pさんに後ろ暗い気持ちだってあるはず。
だから、これが効果覿面じゃないはずがない。
Pさんも顔を背けたり、目を泳がしたりして、僅かばかりの抵抗をしようと試みていたけど、
最終的にどっちに軍配が上がるかなんて火を見るよりも明らかだった。
動揺しているPさんをもう少し見続けたい気持ちが湧き出てきた。
ただ動揺から立ち直られても困るので、今のうちに畳みかけるようにダメ押しておこう。
19: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:23:09.63 ID:80fZfBBj0
「何でも、する?」
「…………何でもします……」
「やったーん!言質とったりー!」
やったね、作戦大成功!無事、白紙の小切手を手に入れられた!
これで冬が近づいてきてからきてからずっと『どうしよう…』と胸でつっかえていた悩み事が解決できる!
嬉しくてつい、前にお仕事でやった時代劇みたいな口調になっちゃった。
20: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:23:59.46 ID:80fZfBBj0
「……で?何がご所望でしょうか、姫様?」
そんな心中を知ってか知らずかPさんは話を促してくる。
いきなり本題に行ってもいいけど、それじゃ流石に突拍子なさすぎるか。
それじゃあ、元々考えていた作戦も使ってみるとしますかね。
ずっと温め続すぎて腐っちゃうとこだったし。
21: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:25:36.30 ID:80fZfBBj0
「話は変わるけどさー。ほら、これから寒い季節じゃん。冬の撮影とかって大変なんだよね~」
「あー、寒くても衣装は決まってるからなぁ…しかも場合によっては季節先取りで撮影したりするし……」
「そんな時は『これ終わったら自分にご褒美あげよー』とか思ってるわけよ」
「なるほどな、まあそういうのは励みになるよな」
「逆にご褒美がなきゃ、もっと凍えちゃうな~。これから冬本番だし、もっとご褒美があったら頑張れるんだけどなぁ~」
「ほぅほぅ、つまりはそのご褒美が欲しいわけだな。さっきも言ったけど何でもするぞ。どんとこい!」
「さっすがー♪男らしいねPさん!惚れちゃうよ!」
「はっはっはー、よせやい照れるだろ!」
22: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:26:04.22 ID:80fZfBBj0
「ということで、埋め合わせは一緒にクリスマスのお出かけとか。そんな感じで、よろしゅーこ♪」
「はいはい!お安いごy…………え?今なんて言った?」
「寒い季節を乗り切るには、ほっこり気分をいっぱいためておかなきゃねー」
「周子、さっきなんて言った?なんかクリスマスって言葉が聞こえた気がするけど、気のせいだよな?」
「さあさあ、すっかりあったまったし帰ろうよPさん!あ、荷物多くて困ってたのは本当だからプレゼントは持つの手伝ってね!」
「おい、周子、なに帰り支度してるんだよ!待てよおい!」
「じゃあ先に下で待ってるよ、あんまり待たせるとまた冷えちゃうから早くしてねー。よろしゅーこ♪」
23: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:26:46.89 ID:80fZfBBj0
そう言いながらまだ騒ぎ続けてるPさんを尻目にあたしは事務所からさっさと退散する。
ドアを開けて外に出た瞬間、事務所のソレとは明らかにレベルの違う寒さが襲ってきた。
ただ、一人で事務所で待っていた時とは打って変わって、あたしの体はバカみたいに熱く、寒さなんて感じる余裕は全くなかった。
24: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:29:12.02 ID:80fZfBBj0
それからの約2週間は人生で一番長くて短く感じた2週間だったかもしれない。
単に稼ぎ時で忙しいっていうものあったけど、それよりなにより25の数字に大きく赤マルをつけたカレンダーを毎日見つめて、1日の終わりのバツをつけていく作業が楽しすぎたからだろう。
1日はあっという間にすぎるのに、25日が楽しみすぎて、心は『まだか、まだか』と焦るものだから、毎日もどかしくってしょうがなかった。
でもそんな気持ちも今日までのこと。
ついにクリスマス当日がやってきたのだ。
25: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:30:05.64 ID:80fZfBBj0
正直言うと本当にクリスマスを二人っきりで過ごせるだなんてこれっぽっちも期待してなかった。
あたしもPさんも忙しすぎて、どうせ時間が合わないと思ってたしね。
せいぜいお仕事の合間で事務所のみんなといる時にちょっと話すとかだとかね。
あるいは二人っきりになれても全然別の日になってクリスマス気分を味わうのが関の山だろうーって。
ところがどうだ、クリスマス当日にあたしはイルミネーション煌めく街中にいる。
Pさん、流石仕事のできる男♪
その仕事っぷりに免じて、あたしを待たせているのは許してあげよう。
オシャレするために冬にしては若干薄着で我慢しているから、早く来てくれた方がありがたいのは確かだけど。
26: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:30:32.15 ID:80fZfBBj0
「って浮かれて早く来すぎたのあたしが悪いんだけどね~」
「悪い、待たせた……ってなに一人でブツクサいってるんだ?」
「ひゃっ?!」
いきなりのPさんの登場に思わず飛びのいてしまった。
やばっ……楽しみにしすぎてニヤニヤしてたのバレちゃったかな……?
27: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:31:03.87 ID:80fZfBBj0
「驚きすぎじゃないか……?どうした……?」
「い、いや、なんでもあらへん、何でもあらへんよ!」
「いや、でも顔も赤いし……どうかしたのか?」
「だ、大丈夫……大丈夫だってば……」
必死に誤魔化そうとするけど、すればするほど逆に怪しくなってしまう。
「ってもしかして寒いのか?なら、これやるから早くあったかい恰好しろ」
ただPさんはあたしの大根役者っぷりを不思議と思わなかったらしい。
何か勘違いしたようで、Pさんは持っていた包装箱をあたしに差し出してくれた。
28: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:31:46.07 ID:80fZfBBj0
「これって……?」
「遅くなったけどな……誕生日プレゼントだ」
「え……?!やったーん!開けていい?!」
「いいぞ、開けてみてくれ」
箱から開けてみるとあたしのイメージカラーとほぼ同じの青みがかかったマフラーが出てきた。
それはそれはとてもあったかそうに見えて、すぐさま首に巻く。
29: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:32:58.29 ID:80fZfBBj0
「あったかいか?すぐ着れるようにしておいたんだが」
「うん♪ありがとPさん。はぁ〜、温いわ〜」
マフラーを巻いただけなのにそこだけ熱を帯びたように暖かくなり、そこから全身に熱が移っていく。
きっとこんな魔法を使えるのはPさんしかいない。
途中、やっぱ似合うなぁ……というPさんの声も聞こえてきて、さらに体がポカポカしてくる。
30: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:34:00.40 ID:80fZfBBj0
って思わぬ喜びに2週間悩みに悩んで考え抜いた作戦を全部忘れるところだった。
……いけないいけない。これじゃ小悪魔の名が廃ってしまう。
周子「ア、アー。マフラーはあったかいけど、寒空の下で待ってたから身体の端から端まで冷え切っちゃったなー」
P「あ、あぁ……待たせて本当にすまなかった……」
周子「ところで、Pさんってあたしの保護者みたいなもんでしょ?だから冷え冷え周子ちゃんを保護してちょーだい」
P「保護って……なにすりゃいいんだ?」
周子「ふふふ、それはね。なんとあたしの隣を歩く権利を授けよーう!可愛いしゅーこちゃんを保護できるぞー、苦しゅうないぞー」
P「ってなんだそりゃ……」
とか言って苦笑しつつもPさんはあたしのすぐ近くまで来て一緒に歩いてくれる。
こういうことにノッてくれるPさんにはホント感謝しかない。
31: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:36:32.20 ID:80fZfBBj0
しまった……上に名前が入ってた…下で訂正します
32: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:37:09.82 ID:80fZfBBj0
って思わぬ喜びに2週間悩みに悩んで考え抜いた作戦を全部忘れるところだった。
……いけないいけない。これじゃ小悪魔の名が廃ってしまう。
「ア、アー。マフラーはあったかいけど、寒空の下で待ってたから身体の端から端まで冷え切っちゃったなー」
「あ、あぁ……待たせて本当にすまなかった……」
「ところで、Pさんってあたしの保護者みたいなもんでしょ?だから冷え冷え周子ちゃんを保護してちょーだい」
「保護って……なにすりゃいいんだ?」
「ふふふ、それはね。なんとあたしの隣を歩く権利を授けよーう!可愛いしゅーこちゃんを保護できるぞー、苦しゅうないぞー」
「ってなんだそりゃ……」
とか言って苦笑しつつもPさんはあたしのすぐ近くまで来て一緒に歩いてくれる。
こういうことにノッてくれるPさんにはホント感謝しかない。
33: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:37:50.14 ID:80fZfBBj0
そしてあたしは最後にLiPPSのユニットでよく歌う歌から発想を得た、とっておきの作戦を繰り出す。
「……そういやしゅーこちゃん、手袋忘れてきてさー。……ね?」
「……ほらよ」
昔『冬が寒くてホントに良かった』と歌っている歌を聞いたことがあった。
その時は全然意味が分からなかったけど、今ならよくわかる。
冬が寒くてホントに良かった。この温もりを感じたらもう二度と離れられない。
34: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:38:23.57 ID:80fZfBBj0
――それからはまるで魔法にかかったかのような時間だった。
キラキラ街を彩る幻想的なイルミネーションに見惚れ、
クリスマス一色の街中でウインドウショッピングに興じ、
たまたま見かけた和菓子屋に立ち寄って、
オシャレなレストランで普段食べられないようなコース料理に舌鼓を打って、
そうして今は綺麗な夜景を一望できる展望台で幸せな時間に浸っている。
35: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:39:09.78 ID:80fZfBBj0
もちろんそれぞれが素晴らしいのもあるが、"二人で過ごすクリスマス"というだけでさらに格別な思いとなる
結局『なにをするか』じゃなくて『誰といるか』が大事なんだろう。
そんな風に思いながら幸せを噛みしめていると、魔法使いさんがおもむろに口を開いた。
展望台に着いてからずっと黙り込んで緊張しているみたいだったけど、急にどうしたんだろう?
36: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:40:32.12 ID:80fZfBBj0
「……そういえばな、実はもう一つプレゼントがあるんだ」
ほらよ、といってPさんがポケットから小箱を取り出す。
決して重くはないはずの小箱をまるで献上品のように慎重に扱う。
「……開けていい?」
「あぁ……もちろん。是非この場で開けてくれ」
開けてみると箱の中から暗い夜の中でも一際銀色に輝く指輪が顔を覗かせた。
え……?これって……?
37: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:41:06.22 ID:80fZfBBj0
「……俺だっていい大人だからな……。覚悟がなきゃ、クリスマスにデートなんか誘わないよ」
「……それって……!」
「……立場もあるから今はまだ本物を用意できなかったけどな。いつか絶対本物を用意するから、今日の所はそれで許してくれないか?」
「……うぅん……。凄く嬉しい……」
早速左手の薬指につけ、いろんな角度からそれを何度も眺める。
眺める度に様々な色を覗かせたけど、そのどれもが綺麗でいつまでも見飽きなさそうだった。
あたしとPさんの間に気恥しく、何とも言えない空気が流れる。
ただそれは決して不快ではなくて、逆に心地よい雰囲気だった。
Pさんには色んな魔法をかけてもらったけど、その中でも最高の魔法だった。
38: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:41:55.12 ID:80fZfBBj0
その雰囲気のまましばらく時間がたったけど、流石に恥しくなったのかPさんが照れ隠しのように口を開く。
「……まぁ、なんだ。クリスマスプレゼントってことで一つよろしく頼む」
「クリスマス……プレゼント……?」
「ああ、そうだ。……ん?どうした周子?」
39: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:42:26.81 ID:80fZfBBj0
『クリスマスプレゼント』
その言葉を聞いた瞬間、アタシは今までの熱さが嘘のように体から血の気が引いてくのがよく分かった。
どうしよう……。誕生日から今日までずっと浮かれてて『クリスマスはプレゼントを贈る』っていう風習があるのをすっかり忘れてた……。
あたし、Pさんへプレゼント何も用意できてない……!
こんな素敵なもの貰っておいて、いつものように『ありがとーん』と言うだけじゃ、流石のあたしでもいくらなんでも締まりがなさすぎる……!
40: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:43:02.77 ID:80fZfBBj0
「周子どうしたんだ?……もしかして……イヤだったか……?」
赤くなったり青くなったり忙しいあたしの顔色を見てPさんがあらぬ心配をする。
「……えっと……いや……そうじゃなくて……、あの、その……Pさん……」
ごめんなさい……と消え入るような声で謝罪し、たどたどしく全てを自白する。
『昨日に戻れたら』とどれだけ思ったことだろうか。
今日のために拙いながら作戦を練りに練り、それが無事に成功して、折角Pさんから最高の答えをもらえたのに…!
あぁ……最後の最後でなにしてるんだろあたし……。これじゃ小悪魔どころかオンナとして失格だ……。
41: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:45:06.15 ID:80fZfBBj0
「そんなに気に病むなって」
「……でもあたしだけプレゼントがないなんて……」
「……もう一度聞くけど、渡したプレゼントが嫌だったわけじゃないんだよな?」
「それはもちろん!!……むしろ、こんなに素敵なもの貰ったのに何にも返せないなんて……」
何もか……とボソっと呟いたPさんは少し考えこんだ後、ニヤっと白い歯を見せる。
あ、これ仕事の最中に悪いことを思いついた時と同じ顔だ……。
地獄のレッスンだとか、ドッキリだとか、突拍子もない企画だとか。
この笑顔の後にどれだけあたしを振り回されてきたことか……。
なんだか非常に嫌な予感がする。
42: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:45:38.70 ID:80fZfBBj0
「それなら、まぁいいか……。それならプレゼントなんてこれからもらえばいいわけだし」
「え……?だからあたし何も用意してないって……」
「…………夜はまだまだこれからだからな。丁度良いことに今夜は一年に一度の聖夜ときている」
そう言ってPさんはあたしの手を引き、グイグイどこかへ引っ張っていく。
……聖夜?……夜はこれから?
……え?これってもしかして……。もしかしなくても、これって……!!
43: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:46:06.57 ID:80fZfBBj0
「えっ?ちょっ……?Pさん?待って!いや、決してイヤってわけじゃないんだけど。まだ心の準備が……!Pさん?ねえ、Pさんってば……!Pさーん?!」
ポーンポーンポーン
どこかで12時を告げる鐘が鳴った。
ただ、そんなものお構いなしに今日のアタシは魔法にかけられっぱなしらしい。
全く……悪い魔法使いさんもいたもんだ。
44: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:46:32.85 ID:80fZfBBj0
シンデレラと魔法使いの二人っきりの舞踏会はまだまだ続いていく。
叶うことならこの幸せがいつまでも続きますように。
45: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:46:59.90 ID:80fZfBBj0
おわり
46: ◆ukgSfceGys 2017/12/12(火) 01:48:18.70 ID:80fZfBBj0
周子と一緒に誕生日とクリスマスを迎えたい人生だった
月末実装に阿鼻叫喚したけど、エピソード見たら最高すぎて感極まったよ!
真正面からクリスマスデートを誘うなんて……
エピソードでは余裕たっぷりに誘ってるけど、きっと周子も誘うまでに色々葛藤したり、
当日までドキドキして過ごしたりして、きっと心が落ち着かなかったんじゃないかと思います
そんな気持ちを自分なりに想像してSS書いてみました
なおSS書いてる時に開催されてた4th復刻アニバと6thアニバの順位
自分史上最高に走ってもランキング入りの足元にも及ばなかったので報酬なんて到底むーりぃー
おとなしくスタドリためてお迎えします
月末実装に阿鼻叫喚したけど、エピソード見たら最高すぎて感極まったよ!
真正面からクリスマスデートを誘うなんて……
エピソードでは余裕たっぷりに誘ってるけど、きっと周子も誘うまでに色々葛藤したり、
当日までドキドキして過ごしたりして、きっと心が落ち着かなかったんじゃないかと思います
そんな気持ちを自分なりに想像してSS書いてみました
なおSS書いてる時に開催されてた4th復刻アニバと6thアニバの順位
自分史上最高に走ってもランキング入りの足元にも及ばなかったので報酬なんて到底むーりぃー
おとなしくスタドリためてお迎えします
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/21(木) 05:22:51.26 ID:/Bct/A4Bo
乙です
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513008255/
Entry ⇒ 2017.12.30 | Category ⇒ モバマス | Comments (0)
ガヴリール「ヴィーネ…すき……」ヴィーネ「!?」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 20:56:56.00 ID:Ez3Zx8LA0
カタカタカタ……タンッ
カチッ…カチッ…
ガヴリール「ちょっ、死んじゃうじゃん!早くヒールしろって!」カチカチ
ガヴリール「あー!ほら死んだ!」
ガヴリール「あー……」
ガヴリール(……今日はダメだ、何か違うこと……ニコニコでも見るか)
ガヴリール「お、この実況者復活してんじゃん、10ヶ月も何してたんだよ、まったく――」カチッ
『にーっこにこ動画♪』
ガヴリール「うおっびっくりした!?」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 21:00:43.09 ID:Ez3Zx8LA0
ガヴリール「なんだ、時報か……ていうかもう0時なのか」
ガヴリール(まあいいや、とりあえずこの動画見よ)カチカチ
ガヴリール(…………)
ガヴリール(……読み込み遅いな…)
[読み込めませんでした]
ガヴリール「!?」
ガヴリール(まあいいや、とりあえずこの動画見よ)カチカチ
ガヴリール(…………)
ガヴリール(……読み込み遅いな…)
[読み込めませんでした]
ガヴリール「!?」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 21:10:52.60 ID:Ez3Zx8LA0
ガヴリール「は!?どっか設定いじった!?」カチカチ
ガヴリール(…………)
ガヴリール(……なんか……)
ガヴリール(原因探す気力も出ない……)
ガヴリール「…………」
ガヴリール(……もう寝るか…)ゴロン
ガヴリール(…………)
ガヴリール(………………)
ガヴリール「…………寝れない」
ガヴリール(やる気出ないけど暇だし寝れない……)
ガヴリール(……あ、そうだ)
ガヴリール(…………)
ガヴリール(……なんか……)
ガヴリール(原因探す気力も出ない……)
ガヴリール「…………」
ガヴリール(……もう寝るか…)ゴロン
ガヴリール(…………)
ガヴリール(………………)
ガヴリール「…………寝れない」
ガヴリール(やる気出ないけど暇だし寝れない……)
ガヴリール(……あ、そうだ)
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 21:20:32.49 ID:Ez3Zx8LA0
プルルルル……
ヴィーネ「……もしもし?」
ガヴリール『あー、ヴィーネ?私だけど』
ヴィーネ「こんな時間に電話かけてくるのあんたしかいないわよ……今から寝るところだったんだけど」
ガヴリール『そうなの?悪いねー』
ヴィーネ「1ミリも悪いと思ってないのが滲み出てるわよ」
ガヴリール『バレた?』
ヴィーネ「あのね……それで、どうかしたの?」
ガヴリール『何が?』
ヴィーネ「だから、なんで電話をかけてきたの?」
ガヴリール『暇だったから』
ヴィーネ「おやすみガヴ、また明日学校でね」
ガヴリール『ちょっ!待ってって!』
ヴィーネ「……もしもし?」
ガヴリール『あー、ヴィーネ?私だけど』
ヴィーネ「こんな時間に電話かけてくるのあんたしかいないわよ……今から寝るところだったんだけど」
ガヴリール『そうなの?悪いねー』
ヴィーネ「1ミリも悪いと思ってないのが滲み出てるわよ」
ガヴリール『バレた?』
ヴィーネ「あのね……それで、どうかしたの?」
ガヴリール『何が?』
ヴィーネ「だから、なんで電話をかけてきたの?」
ガヴリール『暇だったから』
ヴィーネ「おやすみガヴ、また明日学校でね」
ガヴリール『ちょっ!待ってって!』
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:03:49.91 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ「寝ればいいじゃない」
ガヴリール『寝れなくなった』
ヴィーネ「目を瞑ってればそのうち寝れるし、寝れなくっても目を休めてるだけでだいぶ違うのよ?」
ガヴリール『そういう話をしてるんじゃないんだよ』
ヴィーネ「私はそういう話をしてるんだけど…」
ヴィーネ「でもあんたからかけてくるなんて珍しいし、少しだけなら付き合ってあげるわ」
ガヴリール『そんな珍しかったっけ?たまにかけてるでしょ』
ヴィーネ「あー、確かにたまに深夜にかかってきた着信履歴が残ってるわね…」
ガヴリール『あの時間いっつも起きてないよな』
ヴィーネ「逆になんでいつも起きてるのよ」
ガヴリール『寝れなくなった』
ヴィーネ「目を瞑ってればそのうち寝れるし、寝れなくっても目を休めてるだけでだいぶ違うのよ?」
ガヴリール『そういう話をしてるんじゃないんだよ』
ヴィーネ「私はそういう話をしてるんだけど…」
ヴィーネ「でもあんたからかけてくるなんて珍しいし、少しだけなら付き合ってあげるわ」
ガヴリール『そんな珍しかったっけ?たまにかけてるでしょ』
ヴィーネ「あー、確かにたまに深夜にかかってきた着信履歴が残ってるわね…」
ガヴリール『あの時間いっつも起きてないよな』
ヴィーネ「逆になんでいつも起きてるのよ」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:08:49.78 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ「夜更かしばっかりして……明日は学校来なさいよ?」
ガヴリール『最近よく行ってるじゃん』
ヴィーネ「確かに昔と比べれば来てるけど……普通は毎日行くものでしょ」
ガヴリール『あーわかったよ、明日は行くよ』
ヴィーネ「そういえば明日小テストあったわよね?ちゃんと勉強した?」
ガヴリール『…………』
ヴィーネ「…こら、都合悪いからって黙らないの」
ガヴリール『……えっ?あぁ、勉強?してるしてる…』
ヴィーネ「いかにもしてない人の反応……まあでも、ガヴは成績悪いわけじゃないもんね」
ガヴリール『…………』
ヴィーネ「……無視するな!」
ガヴリール『…………』
ヴィーネ「あれ?ガヴ?……もしもーし?」
ガヴリール『……すー………すー……』
ヴィーネ「寝た!?」
ガヴリール『最近よく行ってるじゃん』
ヴィーネ「確かに昔と比べれば来てるけど……普通は毎日行くものでしょ」
ガヴリール『あーわかったよ、明日は行くよ』
ヴィーネ「そういえば明日小テストあったわよね?ちゃんと勉強した?」
ガヴリール『…………』
ヴィーネ「…こら、都合悪いからって黙らないの」
ガヴリール『……えっ?あぁ、勉強?してるしてる…』
ヴィーネ「いかにもしてない人の反応……まあでも、ガヴは成績悪いわけじゃないもんね」
ガヴリール『…………』
ヴィーネ「……無視するな!」
ガヴリール『…………』
ヴィーネ「あれ?ガヴ?……もしもーし?」
ガヴリール『……すー………すー……』
ヴィーネ「寝た!?」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:18:07.44 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ「こ、こんな時間に電話かけといて……!」
ヴィーネ「……はぁ、まあいいわ……おやすみ、ガヴ」
ガヴリール『…ヴィーネ……』
ヴィーネ「えっ……なんだ、寝たフリなら早く言いなさ――」
ガヴリール『ヴィーネ…すき……』
ヴィーネ「!? な、なっ…」
ガヴリール『……んんぅ……むにゃむにゃ……』
ヴィーネ(…………これは…)
ヴィーネ(寝言……!?)
ヴィーネ「……はぁ、まあいいわ……おやすみ、ガヴ」
ガヴリール『…ヴィーネ……』
ヴィーネ「えっ……なんだ、寝たフリなら早く言いなさ――」
ガヴリール『ヴィーネ…すき……』
ヴィーネ「!? な、なっ…」
ガヴリール『……んんぅ……むにゃむにゃ……』
ヴィーネ(…………これは…)
ヴィーネ(寝言……!?)
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:19:49.64 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ(ね、寝言だけど、私のこと、好きって……!?)
ヴィーネ(……いや、ガヴのことだし、きっと夢の中で『ヴィーネ、すき焼き食べたい』って言ってるだけよね……!)
ガヴリール『ヴィーネ……だいすき……』
ヴィーネ(……と、特大ステーキって言ったのよね?)
ガヴリール『ぎゅってして…』
ヴィーネ(ぎゅ、牛のステーキ?よね?そうよね?)
ガヴリール『ちゅーして…』
ヴィーネ(……しないわよ!!)////
ヴィーネ(……いや、ガヴのことだし、きっと夢の中で『ヴィーネ、すき焼き食べたい』って言ってるだけよね……!)
ガヴリール『ヴィーネ……だいすき……』
ヴィーネ(……と、特大ステーキって言ったのよね?)
ガヴリール『ぎゅってして…』
ヴィーネ(ぎゅ、牛のステーキ?よね?そうよね?)
ガヴリール『ちゅーして…』
ヴィーネ(……しないわよ!!)////
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:21:14.89 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ(そ、そりゃガヴは可愛いし、たまに抱きつきたくなることくらいはあるんだけど……)
ヴィーネ(……ちゅーはダメでしょ、色んな意味で…)////
ガヴリール『んぅ……ヴィーネ…すき…』ムニャムニャ
ヴィーネ(……好き、って…)///
ガヴリール『すごいすき…』
ヴィーネ(言い回し変えなくていいから!)
ガヴリール『だいすき…』
ヴィーネ(…………)
ガヴリール『ねえ…ちゅーして……?』
ヴィーネ「しないって言ってんでしょ!どんな夢よ!!」
ガヴリール『ふぇ!?』ビクッ
ヴィーネ「あっ」
ヴィーネ(……ちゅーはダメでしょ、色んな意味で…)////
ガヴリール『んぅ……ヴィーネ…すき…』ムニャムニャ
ヴィーネ(……好き、って…)///
ガヴリール『すごいすき…』
ヴィーネ(言い回し変えなくていいから!)
ガヴリール『だいすき…』
ヴィーネ(…………)
ガヴリール『ねえ…ちゅーして……?』
ヴィーネ「しないって言ってんでしょ!どんな夢よ!!」
ガヴリール『ふぇ!?』ビクッ
ヴィーネ「あっ」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:27:32.52 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ「お、思わず大声を…」
ガヴリール『ごめん寝てた……なに?』
ヴィーネ「いや……なんでもないのよ?ちょっとね…?」
ガヴリール『そなの……』
ヴィーネ(起こしちゃって、悪いことしたわね……まあこんな時間にかけてくるのが悪いし、それに…)
ヴィーネ(あっ、あんな寝言……///)
ガヴリール『……ヴィーネ?』
ヴィーネ「え!?な、なに?」
ガヴリール『いや、急に静かになったから寝たのかと思って…』
ヴィーネ「寝てない…けど、そろそろ寝ようかしら」
ヴィーネ「ガヴも早く寝なさいよ?」
ガヴリール『へいへい』
ヴィーネ「へいは一回」
ガヴリール『へーい』
ヴィーネ「じゃあ電話切るけど、今日の電話一つ貸しだから、明日宿題教えないから」
ガヴリール『えっ!?ちょっ待っ――』
ツー……ツー……
ヴィーネ「……まったく…」
ガヴリール『ごめん寝てた……なに?』
ヴィーネ「いや……なんでもないのよ?ちょっとね…?」
ガヴリール『そなの……』
ヴィーネ(起こしちゃって、悪いことしたわね……まあこんな時間にかけてくるのが悪いし、それに…)
ヴィーネ(あっ、あんな寝言……///)
ガヴリール『……ヴィーネ?』
ヴィーネ「え!?な、なに?」
ガヴリール『いや、急に静かになったから寝たのかと思って…』
ヴィーネ「寝てない…けど、そろそろ寝ようかしら」
ヴィーネ「ガヴも早く寝なさいよ?」
ガヴリール『へいへい』
ヴィーネ「へいは一回」
ガヴリール『へーい』
ヴィーネ「じゃあ電話切るけど、今日の電話一つ貸しだから、明日宿題教えないから」
ガヴリール『えっ!?ちょっ待っ――』
ツー……ツー……
ヴィーネ「……まったく…」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:35:18.58 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ(早く寝なきゃ、授業中眠くなったら大変…)
ヴィーネ(…………)
ヴィーネ(…………)
ヴィーネ「……………ん…」ウトウト
『ヴィーネぇ……』
ヴィーネ「へ!?」バサッ
ヴィーネ(………夢?)
ヴィーネ(もう、ガヴが変な寝言言うせいで寝れなくなったんだけど…!)
ヴィーネ(…………)
ヴィーネ(…………)
ヴィーネ「……………ん…」ウトウト
『ヴィーネぇ……』
ヴィーネ「へ!?」バサッ
ヴィーネ(………夢?)
ヴィーネ(もう、ガヴが変な寝言言うせいで寝れなくなったんだけど…!)
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:36:14.84 ID:Ez3Zx8LA0
ヴィーネ(こういう時は何かを数えると寝られるって、前何か試したわよね?なんだっけ…)
ヴィーネ(……ってそれがガヴじゃないの!余計に寝れなくなるわ!)
ヴィーネ「……はぁ」
ヴィーネ(それにしても、ガヴってそんなに寝言言う方だったかしら……家に泊まった時は確か……)
ヴィーネ(そっか、いつも私の方が先に寝ちゃうから分からなかったのね……)
ヴィーネ(……ガヴが寝るまで起きてれば……)
ヴィーネ(…………)
ヴィーネ(……ってそれがガヴじゃないの!余計に寝れなくなるわ!)
ヴィーネ「……はぁ」
ヴィーネ(それにしても、ガヴってそんなに寝言言う方だったかしら……家に泊まった時は確か……)
ヴィーネ(そっか、いつも私の方が先に寝ちゃうから分からなかったのね……)
ヴィーネ(……ガヴが寝るまで起きてれば……)
ヴィーネ(…………)
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:45:19.12 ID:Ez3Zx8LA0
ガヴリール「……教えてもらえないとかマジか……」
ガヴリール「あ、今日の宿題は答えのプリントもあるじゃん、残念だったなヴィーネ」
ガヴリール「えーと……プリントプリント…」ガサガサ
『~~の実況ちゃんねるぅ!』
ガヴリール「わっ!?なに!?」
ガヴリール「ってPC直ってんじゃん!変に表示されてただけか?」
ガヴリール「まあいいや、とりあえず実況見よ」カチカチ
『はいどーもー!お久しぶりですっ!今日もやっていきたいと思いまーす!』
ガヴリール「おいおい、こんな期間空けといて謝罪なしかよ」
プルルルル……
ガヴリール「うおっ!?……なんだ、電話か」
ガヴリール「……あれ、ヴィーネじゃん」
ガヴリール「あ、今日の宿題は答えのプリントもあるじゃん、残念だったなヴィーネ」
ガヴリール「えーと……プリントプリント…」ガサガサ
『~~の実況ちゃんねるぅ!』
ガヴリール「わっ!?なに!?」
ガヴリール「ってPC直ってんじゃん!変に表示されてただけか?」
ガヴリール「まあいいや、とりあえず実況見よ」カチカチ
『はいどーもー!お久しぶりですっ!今日もやっていきたいと思いまーす!』
ガヴリール「おいおい、こんな期間空けといて謝罪なしかよ」
プルルルル……
ガヴリール「うおっ!?……なんだ、電話か」
ガヴリール「……あれ、ヴィーネじゃん」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:47:24.39 ID:Ez3Zx8LA0
ガヴリール「もしもし?」
ヴィーネ『もしもし……あのさガヴ、さっきうとうとしてた時、どんな夢見てた?』
ガヴリール「覚えてないけど……もしかして、なんか寝言言ってた?」
ヴィーネ『い、いや、そういうわけじゃないのよ?うん…』
ガヴリール「おう……」
ヴィーネ『うん……』
ガヴリール「……え、なんで電話かけてきたの?」
ヴィーネ『えっと……明日泊まりに来ない?』
おわり
ヴィーネ『もしもし……あのさガヴ、さっきうとうとしてた時、どんな夢見てた?』
ガヴリール「覚えてないけど……もしかして、なんか寝言言ってた?」
ヴィーネ『い、いや、そういうわけじゃないのよ?うん…』
ガヴリール「おう……」
ヴィーネ『うん……』
ガヴリール「……え、なんで電話かけてきたの?」
ヴィーネ『えっと……明日泊まりに来ない?』
おわり
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:49:04.18 ID:Ez3Zx8LA0
見てくれた方いたらありがとうございました
似たようなSS見たことあるって方いたら多分同じ人なので大丈夫です
似たようなSS見たことあるって方いたら多分同じ人なので大丈夫です
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:49:11.70 ID:C4MNittKo
おわるな
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:57:47.47 ID:bI6HwQ5Lo
お泊り編を…どうか…
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:58:20.26 ID:653wrSUAo
まだ続きあるんじゃない?ちょっとジャンプしてみて
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512993415/
Entry ⇒ 2017.12.30 | Category ⇒ ガヴリールドロップアウト | Comments (0)
【モバマス】 速水奏「ゴーゴーカレーには人生がある」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 04:49:45.80 ID:VkMJYx3kO
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 04:53:21.79 ID:VkMJYx3kO
P(そいつが俺の前へ現れたのは、突然のことだった)
P(速水奏……。ビジュアル、歌唱力、キャラクター性、そしてカリスマ力。どれをとっても申し分ない、アイドルという言葉そのものなアイドル)
P(ゆくゆくはこの世界の象徴になるような、そんな可能性を秘めた存在)
P(一言で表すならば天才)
P(そんな彼女を、敏腕でも著名でも実力者でもないプロデューサーの俺が担当することになった)
P(初めて会ったあの日からいくつか時は流れたが、俺のもとへ転がり込んで来た理由が未だに掴めない)
P(風の噂ではうちの系列の別の事務所でひと悶着あり、移籍という形でここへ流れ着いたらしい)
P(そして、上からの命令で俺が担当することになったと)
P(どうして俺なのか……。仕事である以上、正当な理由もなしに拒否することはできない)
P(正直、俺は彼女という天才をアイドルとしてどのように運用するか、それを計り兼ねている)
P(やがて、鈍い俺はようやく気付いたのだ……)
P(これはもしや、いわゆる『左遷』というものなのかと)
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 04:57:59.65 ID:VkMJYx3kO
P(17歳……。いたいけな少女が見えない制裁に気付くはずもない)
P(しかし、彼女の場合は違う……。聡明な彼女なら薄々気付いている)
P(生殺しにされて、彼女自身から『辞めたい』と言わせるまでが戦略だ)
P(しかし俺がいるこの事務所では、表立って彼女を排除させようという動きは見られない。なんなら、社長でさえ当初は歓喜の声を上げ上裸で逆立ちを始めるくらいだった)
P(系列事務所の中でも一番小さく、まだまだ駆け出しであるこの場所へ期待のニューカマーが現れたと)
P(だから、うちの事務所はそういった裏の意図に気付いていないのかもしれない。伝えられていないのかもしれない)
P(だったら、もしかすると左遷というよりただの『火消し』の可能性もある……)
P(プロダクション全体を巻き込むようなものではなく、個人間の問題があって、そのほとぼりが冷めるまでこの場所にいさせる)
P(それでもし彼女自身が『辞めたい』と言えば、天才を失うのは惜しいが『火種を抱え続けるよりかは……』と、その意思を尊重させる)
P(そんな意図があるのかもしれない)
P(ともかく、そんな彼女を担当している俺にとってはがんじがらめの状態だ)
P(なにより『無能なあいつらならこちらの意図に気付かないだろう』と、そうして彼女を押し付けて来たように思えて、無償に腹が立つのだ)
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:09:22.29 ID:VkMJYx3kO
P「……」
ちひろ「プロデューサーさん? どうしました?」
P「あ、いや……。今日の業務を全てこなしたので、一息ついてました……」
ちひろ「お疲れ様です」
P「ありがとうございます。ちひろさんは……?」
ちひろ「私も、ちょうど終わったところです」
P「お疲れ様です」
ちひろ「いえいえ――あ、そうだ。楓さんが拗ねてましたよ?」
P「……え?」
ちひろ「最近日高屋に行ってくれないって」
P「いや、あれは……。あいつと行くとつい乗せられて豪遊しちゃうんで、あっという間に破綻しちゃうんですよ。だから、最低でも週に一度か月に数回と上限を決めました」
ちひろ「あはは……、なるほど。でも、たまには行ってあげてくださいね? あと、次回は私も誘っていただければありがたいです♪」
P「勘弁してください(0.5秒)」
ちひろ「えぇ!? なんですかそれひどーい(棒)」
P「あ、一服行ってきます」
ちひろ「もう、お先に帰っちゃいますよ?」
P「お疲れ様でーす!!」
ちひろ「もう……。お先に失礼しますっ!!(毎日のお約束ネタ)」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:16:33.78 ID:VkMJYx3kO
P「設備に不良なし。忘れ物なし。施錠も完了」
P「今日も一日お疲れ様ァッ!!(独り言)」
P「クソお世話になりましたァッ!!」バァン!!←ドア破壊
P「……」
P「さて、今日の夕食は何にしようかなぁ~」
P「日高屋……。いや、駄目だ」
P「あいつのせいで日高屋中毒に……」
P「ちょ、マテヨ……。最近『アレ』食ってなかったな」
P「食べなきゃ……(使命感)」
P「……」
奏「――プロデューサーさん」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:19:29.99 ID:VkMJYx3kO
P「アイオワァッ!?(戦艦)」バァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!
P「驚かすなよっ!? オラ死ぬかと思ったぞぉ!!(悟空)」
奏「ふふっ……! ごめんなさい……!」
P「笑いごとじゃないから(真顔)」
奏「……」
P「……」
P「というかこの寒空の下、ずっとここにいたのか……?」
奏「……」
P「俺を驚かすために……?」
奏「……ええ」
奏「ふふっ……、傑作だったわ……! あなたの驚く顔……!」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:25:55.71 ID:VkMJYx3kO
P(速水奏……。俺は彼女を掴みきれない)
P(17歳にしてはやけに大人じみて、こちらの手をスルリとかわしてみせる)
P(俺を、この世界を煙に巻いて、そうして現実と幻想の狭間で常に微笑をたたえているのだ)
P(この世界にいながら、この世界にいない……。彼女という概念だけが霧のように漂っている……。そんな存在)
P(いつか俺が朝を迎えた時、この世界から霧散しているのではないかと、そんな危機感すら覚える存在)
奏「プロデューサーさん、怒ってる?」
P(彼女の外見からは想像できない、子供じみた悪戯)
P(ここのところ、いつもこうだ)
P(いや、よくよく思い返してみれば、初めからこんな場面はあった)
P(それ以前の彼女がどんな人間だったかは知らない)
P(ただ、この彼女は本来の彼女ではない……。心なしかそんな気がしていた)
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:28:53.48 ID:VkMJYx3kO
P「……」
奏「怒らせちゃった、かしら……?」
P「――これでも巻いてろ」
奏「え? これあなたのマフラー……」
P「ただでさえ制服で生足出して寒そうなのに、首元もスカスカじゃねぇか」
P「マフラーくらい巻いてこい。体調管理は基本中の基本だぞ」
奏「……タバコくさいわ」
P「じゃあ返せ」
奏「うそよ……。ありがと」
P「……」
奏「……」
P(そうして俺たちは歩き出す。彼女は俺の後ろをついて来る――何も言わずに)
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:31:26.00 ID:VkMJYx3kO
P「――なあ」
奏「……?」
P「俺を驚かすために、こんな寒空の下ずっと待ってたのか?」
奏「……」
P「違う理由があるんだろ?」
奏「……」
P(いつもうまくかわしてみせる彼女。しかし、今回ばかりは必ず捕まえてみせる)
奏「……」
P(黙秘を貫く……。しかし、沈黙は時に肯定を意味する)
P「――ついてこい」
奏「……え?」
P「いい所に連れてってやる」
P(かたや制服の少女。かたやスーツ姿のサラリーマン。正直言ってこの発言を他人に聞かれたらとんでもねぇことになる)
P(しかし、こんな状態の彼女を捕まえるには『アイツの力』が必要だと思った――)
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:36:38.67 ID:VkMJYx3kO
奏「私、アイドルを辞めようと思うの――」
P(俺が『いい所』に連れて行く間、彼女は全てを語った)
P(――この世界には、持つ者と持たざる者がいる)
P(自分が後者だと気付いた時、そいつはどうするか)
P(嘆き崩れる者、妥協して別の道を行く者、世界を呪う者、様々だ)
P(持つ者であった彼女は、持たざる者からの呪いを受けた)
P(よくある話――他のアイドルからの嫉妬、妬みを一身に受けたのだ)
P(そうして、彼女を担当していた以前のプロデューサー――そいつはプライドが高く、支配欲も高い出世頭な人間だったようだが)
P(彼女を陥れようとする者たちの工作活動にまんまと嵌められ、やがて『自分の手に負えないような人間はいらない』と、その活動に加担するようになったそうだ)
P(そうして彼女は無実の罪を着せられ、魔女裁判にかけられ、やがて俺たちの場所へ流れついたと)
P(ただ、向こうの社長だけは味方になってくれたらしく、『独自に調査をする間、移籍という体であの事務所へ行ってもらう』と約束して、俺たちの場所へ送り出したらしい)
P(普段は決して見せない、初めて見る弱気な彼女)
P(このような事実を知らず、頭を下げて営業に出る俺の姿を見て、心を痛めたらしい彼女は遂に真実を語ったということだ)
P(これ以上誰かに迷惑をかけたくないから――そんな心情が見て取れる)
P(洗いざらい語って、そして『辞めたい』とこぼした彼女)
P「――行くぞ」
奏「……」
P(俺はそれについて肯定も否定もせず、彼女をとある場所へ誘った)
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:40:51.72 ID:VkMJYx3kO
[ゴーゴーカレー店内]
奏「ここは……」
P「カレー屋だ。来たことないか?」
奏「……ええ」
P「ゴーゴーカレーっていってな。石川県は金沢発のカレーチェーンだ」
P「海外にも出店してるんだぞ。凄いだろ」
奏「あなた、このお店の回し者……?」
P「さて、券売機の前にやって来ましたっ!!(無視)」
P「どれを選ぶっ!? 俺はチキンカツカレーだっ!!」
奏「……」
P「ロースカツカレーもいいんだけど、おじさんのお腹には重すぎるなっ!! HAHA☆」
奏「あなた、まだ20代じゃなかったかしら……」
P「アラサーは立派なおじさんだZO!!」
P「よし、チキンカツカレーのファーストクラス、君に決めた!!」
P「ちなみに、サイズは小さい順からソフト、ヘルシー、エコノミー、ビジネス、ファーストだ。ファーストが特盛ってわけだな。飛行機の座席みたいだろ? 目的地は黄土色の空だ!! テイクオフッ!!(激寒)」
奏「……」
P「……お前はどれにする?」
奏「プロデューサーさん……」
P「よし、お前も同じやつ食え」
P「――よし。この食券を持って、あそこの席に座ろう」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:44:18.80 ID:VkMJYx3kO
店員「チキンカツカレーノファーストデスネ。ショーショーオマチクダサイ」
P「お願いします」
P「見ろ。彼は一見留学生のように見えるが、カレーマスターだ。失礼のないように」
奏「プロデューサーさん……」
P「このBGM、やばくないか?」
♪ゴーゴーカレー ゴーゴーカレー、ゴーゴーカレー ゴーゴーカレー♪
P「最初は鬱陶しいと思ったが、もう電子ドラッグよ」
P「ゴーゴーカレーにはまっちまった奴は、腹が空いたら頭ん中にこれが流れるんだ」
P「そしたらもう『食べなきゃ』って使命感に駆られるんだよね。もう洗脳よ洗脳」
奏「……」
P「それから、あのスクリーンを見てくれ。繰り返されるコマーシャル。もう『いい加減にしろよ』と突っ込みたくなるが、終盤の外国人店員に対するインタビュー、これがもう癖になっちゃってさぁ」
P「いやぁすげぇな、頑張ってんなって、こっちまで元気にさせてくれるんだよね」
P「それからさ、あれを見てくれ。ゴーゴーカレーにはな、『メジャーカレーワールドチャンピオンクラス』ってメニューがあって、なんと総重量2.5kg!! 一日限定5食だが、チームプレイで食うことも可能だ。そして、完食した奴はああやって写真に撮られて掲示してもらえるんだぞ!」
奏「プロデューサーさん」
P「……」
奏「ねえ……。お願いだから答えて……」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:46:59.67 ID:VkMJYx3kO
P(俺たち以外誰もいないゴーゴーカレー。その店内に彼女の悲痛な声が響いた)
P(速水奏――彼女が俺に初めて見せた涙)
P(外国人の店員が不穏な空気を察して、出来上がったカレーを持ったまま静止している。困惑気味の表情がかわいい♂)
P(――などと言っている場合ではない)
P「……」
奏「私、どうしたらいいの……」
P(17歳とは思えない、大人びた雰囲気を纏った彼女)
P(しかし今ここにいる速水奏その人は、歳相応の女子だった)
P(彼女も一人の少女であったのだ。今になって、俺はようやく気付く……)
P(モラトリアムを抱え、進路に迷う、どこにでもいる一人の少女だったのだ)
P「まずは、カレーを食え」
店員「オマタセシマシター……」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:50:52.28 ID:VkMJYx3kO
P「……」
奏「……」
P「いただきます……」
P(俺の前に、チキンカツカレーが届けられる)
P(眩い銀皿……。片側ではなく、全体に黒色のルーがかけられ、その上にはカットされたチキンカツが並ぶ)
P(そして、俺から見て左端には千切りのキャベツが盛ってある)
P「美しい……。美しすぎる……」
P(言うなればそれは芸術品。この一皿は一種の美術品である。そう、全てが完成されている)
P(カレーと言ったらスプーンであるが、ゴーゴーカレーはフォークで頂くのが特徴的である。それもそのはず、キャベツとチキンカツを容易にすくうことができる。この配慮は最早『さすが』というしかないだろう)
P(ロースカツカレー、エビフライカレー、ウインナーカレー、そしてロースカツとチキンカツとウインナーとエビフライと卵が乗ったメジャーカレーなどがあるが、俺は長い旅路の果てに、このチキンカツに辿り着いた)
P(トッピングもできる……。しかし、俺はノートッピングのこれに落ち着いた)
P(ファーストクラスでトッピングをすると千円を超えるからトッピングしない……。そんな貧乏くさい理由もあるが……。しかし、俺は悟ったのだ。この一皿で全てが完結していると)
P(この一皿以外何も必要ないのだ)
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:53:39.95 ID:VkMJYx3kO
P「……」スッ
奏「……?」
P(しかし、一つだけ付け加えるとするならば……)
P「――すみません。マヨネーズ借ります」
店員「アイヨッ」
P(これだ……!!)
P(俺は店内の冷蔵庫からマヨネーズを引っ張り出し、チキンカツカレーへぶちまける)
P「フンッ!!」
P(一見すると、完成された絵画に絵具をぶちまけるような愚行である……)
P「――できたっ!!」
P(しかし、俺にとっての芸術品はこれをもって完成へと達するのだ!)
奏「プロデューサーさん……。マヨネーズかけすぎじゃない……?」
P(常軌を逸した俺の奇行を目前にして、奏の涙はいつしか止まっていた)
P「俺はマヨラーじゃない……!! しかし、このカレーとマヨネーズのコンビは麻薬だっ!!」
P「お前もかけろ……!!」♂
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 05:57:39.47 ID:VkMJYx3kO
奏「ちょっと……!! プロデューサーさん……!?」
P「ハハッ!! 奏(のチキンカツカレー)を犯すッ!!」
P(俺は今、完全なるカレー〇チガイと化した)
P(普段は悪戯されている人間だが、今回は俺が奏を困惑させている)
P「チョー気持ちいいッ!!(北島)」
P「よし、全ては整った……。改めて、いただきます……」
P(まずはカレーのみ。俺は楽しみを後にとっておく人間だ。チキンカツをどかし、マヨネーズとルーでくたくたになった物質へフォークを入れる)
P(それはまるで結婚式のケーキ入刀のような幸福感)
P(そして遂に、俺の口内へカレーが――)
P「……ッ!!」
P(これだ……!! これだよこれ……!!)
P(俺は、辛い物が苦手である)
P(しかし、このカレーに至っては例外だ)
P(辛い物好きで狂った〇チガイのような馬鹿舌を持つ人間にとっては辛くないんだろうが、俺にとってはこのルーでさえもなかなか辛い)
P(しかし、この辛さはスパイスとしてしっかりと機能している……!! ただ辛いだけではない!! 食欲を増進させ、発汗など気にせず次の一口を求めてしまう辛さ……!!)
P(そして、料理下手なクソみたいな彼女が作るジャバジャバルーじゃない……!! ドロドロの粘度が高い、うま味が凝縮されたルーなのだ!!)
P(例えるならば『二日目のカレー』。あの、寝かせることでうま味が詰まったカレー……!! それそのもの!!)
P(マヨネーズをぶちまけたことでマイルドになり、コクや深みが増すッ!!)
P「う゛ん゛め゛ぇ゛ッ!!(RED中村)」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:01:16.52 ID:VkMJYx3kO
奏「……」
P(ふと顔を上げると、奏がこちらを凝視していた)
P(〇チガイを前にしてドン引きしているのか、それとも圧倒されているのか……。そんな表情)
P「お前も食ってみろ」
奏「え、えぇ……」
P(奏は俺と同じように、チキンカツをどけてカレーをすくう)
P(お前も俺と同じタイプか……)
P「……愛してるぜ」ボソッ
奏「えっ?」
P(いかん。同志を見つけた喜びをつい口にしてしまった。ロリコンおじさんと思われてはいけない……。俺はそっちの気はない。なんなら年上好きだ。ちなみに人によっては60代までは――)
奏「――ッ!?」
P(などと自己弁護をしていたら、いつの間に奏はカレーを口へ運んでいた)
P「どうだ?」
奏「……おいしい」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:03:36.40 ID:VkMJYx3kO
奏「やばい、かも……」
P(いただきました、『星三つ!!』)
奏「私、あんまり辛いものが得意じゃないんだけど……。この辛さは、好きだわ……」
P「オイオイオイ……」
P(死ぬわアイツ――じゃなくて、お前は俺か!? お前は俺か!!)
P「おら、もっとマヨネーズかけるとうまいぞ」
奏「ちょっと……!! かけすぎよ……!!」
P(普段は大人ぶってる癖に、マヨネーズかけられて困惑してやんの)
P「KAWAII☆(ブロリー)」
奏「ちょっと……// プロデューサーさん……//」
店員「死ね(ネイティブ)」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:06:58.92 ID:VkMJYx3kO
P(奴が困惑している隙に、俺はとうとうチキンカツに手を伸ば――)
P(おっと、忘れちゃいけねぇよ。キャベージ!!)
P(マヨネーズでくたくたになったキャベツ!! 口内をリセットし、フレッシュな状態にしてくれる……!!)
P(そして、満を持してチキンカツだ!!)
P「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛~(MSO)」
P(一見、かさ増しのために薄切りにされていると思うが――違うんだなこれが!!)
P(この絶妙なサイズにカットされたチキンカツ……!! 口内で音を立てるサクサク音……!!)
P(このカットでのみ、このクランチーさ、クリスピーさを再現できる!!)
P(そう、食感と味を考慮して辿り着いた結論なのだッ!!)
P「うまい、うますぎる……!!(十万石饅頭)」
P「……む」
奏「……?」
P「奏、キャベツがないな」
奏「え、ええ……。もう全部食べてしまったわ」
P「……」
奏「……?」
P「 す み ま せ ん !! 」
店員「ハイ」
P「キャベツ、おかわりっ!!」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:09:33.04 ID:VkMJYx3kO
店員「カシコマ」
奏「え……? どういうこと……?」
P「聞いて驚くな……。ゴーゴーカレーは……」
P「キャベツのおかわりが可能だ――しかも無料」
P「食いたいなら何度でも食え!! 草食動物のようになっ!!」
店員「オマタセシマシタ」
P「そして、こうだ」マヨネーズ噴射
奏「あ……!!」
P「もう、これなしじゃいられない体になっちまったんだろ?」
奏「……」
奏「え、えぇ……//」
P「工事、完了です(達成感)」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:11:43.32 ID:VkMJYx3kO
P「さて、俺もキャベツをおかわりして……」
P「名残惜しいが――これで仕上げだ」
P(本能のままにカレーを平らげた。特盛であったが、今の気分は『カレーは飲み物』だ。それくらいスルっと入ってしまった)
P(最後のチキンカツで残ったルーをスワイプし、口の中へ……。名残惜しいが、これでフライトは終わり……)
P「腹減った……。カレー食いたい」
P(そう。食ったばかりなのに、俺はもうこのカレーを欲している)
P(これこそがゴーゴーカレーの神髄。魔力)
P「……ごちそうさまでした」
奏「ごちそうさまでした」
P「おっと、お前も全部平らげたな」
奏「ええ。美味しかったから……」
P「……」
奏「……」
奏「なんか、どうでもよくなってきたわ」
P「……?」
奏「あなたって、本当に面白い人ね……!」
奏「もうどうでもいい……」
奏「なんか、すっきりした……!」
P「――どうするんだ?」
奏「……」
奏「やめ――」
P「涙とともにカレーを食べた者でなければ、人生の味は分からない」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:13:47.02 ID:VkMJYx3kO
奏「……?」
P「なんてな」
P「人に説教できるような立場じゃねーけど」
P「人生とカレーは同じだ」
P「カレー一つをとっても派閥があり、それですら人間は争える」
P「例えば『ルーは全体ではなく片側のみだろ』とか、『シャバシャバなカレーは邪道だ』とか……」
P「そんな些細な好みの違いでも、人は争えるんだ」
P「つまりだな、この世界の全員から好かれるなんて無理だ」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:16:35.18 ID:VkMJYx3kO
奏「……!!」
P「話を聞く限り、もちろんお前に罪はない」
P「それでも、お前を嫌う人間はいる」
P「そういった奴は、お前が何をしようがしなかろうが、お前の足を引っ張ろうと手を伸ばす」
P「それはどんな理由だっていいんだ。例えば『息を吸っているのが気に入らない』って理由でもいい。とにかく、どんな事象もその材料になる」
P「だから、外野の声なんて気にするな」
奏「……」
P「気にするなっていうのも無理かもしれない。だけど、一つだけハッキリしていることがある」
奏「……?」
P「それらの嫉妬、妬み、批判には、等しく価値がない」
P「なぜなら、それらの言葉には責任がないから」
P「奴らはお前と同じ土俵にはいない」
P「責任がないから、外から言いたい放題できる」
P「そんな言葉は、雑音と同じ。自分にとって何の意味もなさない」
P「お前が心を痛め、涙を流す必要などない」
P「だからお前は、責任を持った言葉だけ信じればいい」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:19:37.24 ID:VkMJYx3kO
奏「責任……?」
P「ああ。それは目には見えないが、確かにあるはずだ」
奏「どういうこと……?」
P「大切なものは目に見えない。だけど、必ずお前も持っている」
P「俺はこのカレーが好きだが、ココイチのカレーの方が好きなやつもいる」
P「奏を嫌いな奴もいるが、応援している奴もいる」
奏「――ッ!!」
P「目には見えないかもしれない。けど、気付けばきっとそこにあるはずだ」
P「お前が何をされようと、何を奪われようとも、お前の価値は消えない」
P「お前という存在自体に価値がある」
奏「プロデューサー、さん……」
P「お前は、応援してくれている人間のために頑張ればいい」
P「そしてお前というポジションを確立できたら、お前の勝ちだ」
P「……このカレーのようにな」
P「目に見えるものだけを信じるな」
奏「……」
奏「プロデューサーさん」
P「……?」
奏「責任って、言ったよね……?」
P「ああ」
奏「プロデューサーさんの言葉には、それがあるの……?」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:23:54.44 ID:VkMJYx3kO
P「……」
P「ああ」
P「お前が俺の担当でいる限り、俺はお前と正面から向き合う」
P「もしお前が本当に限界で、『一緒に死んでくれ』と言ったら」
P「一緒に死んでやる」
奏「……!!」
P「信じてくれとは言わない」
P「だが、俺はこの言葉に責任を持つ」
奏「……うん」
P「だから、後はお前の自由だ」
奏「私は……」
P「――そうだ」
奏「……?」
P「今のお前にピッタリの仕事を取ってきたんだが」
P「……どうする?」
奏「え……?」
奏「……」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:25:59.89 ID:VkMJYx3kO
♪ゴーゴーカレー、ゴーゴーカレー ゴーゴーカレー、ゴーゴーカレー アアアアアアアアアア♪
P「ふう……。食った食った」
P(カレーを連想させる黄色い塗装、イメージキャラクターのインパクトのあるゴリラと看板)
P(ある日の仕事終わり、気付くとここへ足を運んでいた)
P(もはや無意識だ。俺はこのゴリラに洗脳されている)
P(こいつは西ローランドゴリラか東ローランドゴリラか、一体どっちだ……?)
P「……カレー食べたい」
P(ゴーゴーカレーにはテイクアウトもある。今度お昼に利用してみるか……。いや、事務所がカレー臭くなるしな……)
P「……」
P「帰るか」
P(週末、夜の繁華街。道行く集団はどことなく浮足立って、その表情も綻んでいる)
P(そんな人間とは裏腹に、空模様は雨。冬の訪れを告げるような冷たい雨)
P(通り過ぎていく人々は身を縮め、恋人たちは寄り添う……)
P「一服していくか……」
P(交差点前の一角にある屋外の喫煙スペース。臭い物には蓋といわんばかりにつめしこまれた喫煙者の群れ。その合間を縫ってスタンド式の灰皿の前に位置取る)
P「ふぅ……」
P「……」
♪僕らが手にしている 富は見えないよ♪
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:30:29.98 ID:VkMJYx3kO
P「……?」
♪彼らは奪えないし 壊すこともない♪
P(雑居ビルに埋め込まれた巨大な街頭スクリーン……)
P(音楽情報サービスを提供している大手配信会社によるシングルCDの週間売り上げランキング)
P(それがアーティストのプロモーション映像とともに紹介されている)
♪世界はただ 妬むばっかり♪
P(とある少女の歌声が、底冷えする夜の街に響き渡る……)
P(静まり返る喫煙所。紫煙をくゆらせて皆一様に歌声の発生源を探り、その視線をスクリーンへ向けている)
♪もしも彼らが君の何かを盗んだとして♪
P(スクリーンをスライドする『アイドルが名曲をカバー』の文字)
♪それはくだらないものだよ 返してもらうまでもないはず なぜなら♪
P(降りしきる冷たい雨、立ち止まりスクリーンを見上げる群衆、喧騒にかき消されることなくどこまでも響き渡る少女の歌声……)
P(それは確かに――)
♪価値は生命(いのち)に従って付いている♪
P(誰かの内側に染み込んでいく恵の雨)
P(カレーで汗ばんだ額を、冷たい外気と雨と、そして少女の歌声が冷やしていく)
P(それはただ冷たいだけではなく、火照った体を癒すような、そんな心地よい冷気だった)
P(速水奏――ウィークリーランキング一位)
P(曲名の後に、その文字がスクリーンを流れていく……)
P(それを確認して、俺は喫煙所を後にした)
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:33:55.79 ID:VkMJYx3kO
ちひろ「お疲れ様です、プロデューサーさん」
P「お疲れ様です」
ちひろ「――聞きましたよ」
P「……?」
ちひろ「なんでも、明日は『日高屋の日』みたいじゃないですか♪」
P「もしや、楓が何か言ってたとか……」
ちひろ「楓さんに誘われちゃったんですよぉ~♪」
P「――お二人で楽しんできて下さい」
ちひろ「なぁ~んでですかぁ~!? 一緒に行きましょうよ~」
P「断るッ!!(0.3秒)」
ちひろ「それも断るッ!!(0.1秒)」
P「……」
ちひろ「……」
ちひろ「そういえば――良かったですね、本当に」
P「……?」
ちひろ「奏ちゃん、この事務所に残ってくれるって……」
P「あぁ……。はい……」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:36:44.06 ID:VkMJYx3kO
P(奏が言っていた通り、前の事務所の社長から『調査が終わった』と彼女へ連絡が来たそうだ)
P(なんでも奏の無実が証明され、また、彼女を陥れた人間への処分も済み、彼女を迎え入れる準備が整ったらしい)
P(そして、うちの事務所の社長へも『奏をうちへ戻してほしい』との連絡があったそう)
P(なんとも理不尽極まりない要求だが、うちのような小さな事務所に対して、向こうは遥かに規模がデカい。同じ系列の事務所であるが、立場は向こうの方が上だ……)
P(一応『奏の意思を尊重する』ということであったが、表面上の言葉に過ぎないことは明白)
P(そんなわけで、俺を含め事務所の人間全員はその対応に困窮していた)
P(しかし……)
奏「――おはようございます」
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:39:26.37 ID:VkMJYx3kO
ちひろ「あら奏ちゃん、おはよう」
奏「おはようございます、ちひろさん」
P(奏はこの場所に留まった)
P(交渉に訪れた向こうの社長に、奏がうちへ来た理由など全ての顛末を説明させたり、緊迫した応酬が色々あった。正直言って、俺やこちらの社長の首が飛ぶかと思った)
P(そしてそこへ、奏が『ここ以外ではアイドルはやらない』と乗り込んできて……)
P(マジでどうなるかと思ったが……)
P(結果、『彼女の意思を尊重する』として、向こうの社長は引き揚げた)
P(そうして奏の残留が決まったのだ)
P(報復とかに怯えている今日この頃ですが……。まあ、なんにせよ良かった……)
奏「プロデューサーさん、おはよう♪」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:42:01.48 ID:VkMJYx3kO
P「あ、おう……」
奏「どうしたの? 私に見惚れてた?」
P「ないです(即答)」
奏「もう、ほんと鈍感よね……」
P「……え?(難聴)」
奏「そういえば、明日は『日高屋の日』なんですってね」
P「えぇ……(困惑)。何で知ってるんですかね……」
奏「大人組だけずるいわ。私も連れて行って?」
P「子供は駄目です。それに私は行きません」
ちひろ「はっ?(威圧)」
P「行きますけどぉ、時間帯的に未成年は、ほら、ね……?」
奏「……」
奏「もう知らない……。私、移籍しちゃおうかな……」
P「勘弁ッ!!」ドゲザァアアアアアア!!
奏「冗談よ♪」
奏「……分かった」
P「……?」
奏「それじゃ、私たちも『カレーの日』作りましょ?」
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:45:35.19 ID:VkMJYx3kO
P「カレーの日……?」
奏「ええ、ゴーゴーカレーに行くの。それで許してあげる」
P「それは、いつほど……?」
奏「そうね。それじゃ今夜行きましょう?」
P「いや、実は俺昨日食ったばかりでして……」
奏「ゴーゴーカレーゴーゴーカレー……(囁き)」←テーマソング
P「あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
P「♪元気をあ~げ~りゅううううううううううううう♪」
P「――行くか」
奏「ええ♪」
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:47:45.61 ID:VkMJYx3kO
P「ふう……。食った食った(Déjà vu)」
奏「本当に良かったの? 奢ってもらって……」
P「それは気にすんな。まあ、色々とあったしな」
奏「……ええ。そうね」
P「今度、正式にお前が来た歓迎会でも開こうかなぁと思うんだが」
P「まあ、それの前祝いってことで」
奏「ふふ……。それ、私に言っちゃっていい情報なの?」
P「――あ」
奏「あなたって、お馬鹿さんね……!」
P「聞かなかったことにしてくれませんかね……?」
奏「ええ、そうしてあげる。可愛いお馬鹿さんのために♪」
P「クソ……。いつからこんな立場に……」
奏「でも、その代わりお願いがあるの」
P「……え?」
奏「目、瞑って……//」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:50:46.53 ID:VkMJYx3kO
P「目を、瞑る?」
奏「えぇ……」
P「なんだよ。こんな街中で『だるまさんが転んだ』でもやろうってのか?」
P「俺、あれにトラウマあるからやめてくれ。目を開けたら誰もいないっていう……」
奏「いいから瞑って」
P「はい」
P「……」
奏「……//」
奏「――ッ」
P「――ッ!?」
P「ちょ、おま……!!」
奏「カレーの味がする……//」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:53:10.55 ID:VkMJYx3kO
P「……!!」
奏「私、あなたにスカウトされたかった……!!」
奏「でも、時間は巻き戻せないから……。だから……!!」
奏「今、私をスカウトしてくれませんか……?」
P「……」
P「……奏」
奏「はい……」
P「俺のところで、アイドルやってみないか?」
奏「……」
奏「お願いします……//」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:55:11.76 ID:VkMJYx3kO
P(どこか掴めない彼女)
P(しかし、俺はようやく……。今、彼女を捕まえた)
奏「そ、それじゃあ私はこっちだから……// またね、プロデューサーさん//」
P「ああ、またな……」
P「……」
警官「あの、すみません」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:57:00.18 ID:VkMJYx3kO
P「――へ?」
警官「あなた、さっきの女の子とはどういったご関係で?」
P「いや、あの……」
警官「ちょっとそこの交番でお話を伺ってもよろしいですか?」
P「……」
P「\(^q^)/ウジュジュ」
終
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/19(日) 06:58:07.35 ID:VkMJYx3kO
ありがとうございました。
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 15:56:29.90 ID:w1MEvD3vo
気がついたら何度も読み返してる
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:16:10.68 ID:LM0QMAQpO
乙
タイトルで日高屋と同じやつだろうなとおもったらやっぱり同じだった
タイトルで日高屋と同じやつだろうなとおもったらやっぱり同じだった
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:43:38.10 ID:rVnvdk8tO
ファーストクラス完食できる奏すごい
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511034585/
Entry ⇒ 2017.12.29 | Category ⇒ モバマス | Comments (0)
八幡「気の向くまま過ごしてた二人だから」雪乃「そうね」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/31(土) 19:56:02.59 ID:BhSZj49p0
三月某日
総武高校
その教室には二人しかいない。
俺、比企谷八幡と、元奉仕部部長、雪ノ下雪乃。
この教室で、この二人が出会ったことから、全てが始まった。
いろんなことがあって、何度もこの関係は壊れかけた。
それでも俺たちはここまでたどり着き、俺は答えを選び出した。
由比ヶ浜には既に俺がこれからすることを伝えてきたから。あとは実行あるのみ。
――その日は、俺たちの卒業式だった。
総武高校
その教室には二人しかいない。
俺、比企谷八幡と、元奉仕部部長、雪ノ下雪乃。
この教室で、この二人が出会ったことから、全てが始まった。
いろんなことがあって、何度もこの関係は壊れかけた。
それでも俺たちはここまでたどり着き、俺は答えを選び出した。
由比ヶ浜には既に俺がこれからすることを伝えてきたから。あとは実行あるのみ。
――その日は、俺たちの卒業式だった。
2: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 19:57:00.53 ID:BhSZj49po
数年後
とあるアパート
八幡「ただいま」ガチャッ
雪乃「おかえりなさい」
八幡「夕飯、悪いな。急用で遅くなっちまって」
雪乃「いえ、いいのよ。私は今日は終わるの早かったから」
八幡「土日はちゃんと俺が飯作るよ」
雪乃「なら、お言葉に甘えようかしら」
とあるアパート
八幡「ただいま」ガチャッ
雪乃「おかえりなさい」
八幡「夕飯、悪いな。急用で遅くなっちまって」
雪乃「いえ、いいのよ。私は今日は終わるの早かったから」
八幡「土日はちゃんと俺が飯作るよ」
雪乃「なら、お言葉に甘えようかしら」
3: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 19:57:28.84 ID:BhSZj49po
卒業式の日、俺は雪ノ下雪乃に告白をした。何ヶ月も悩んでようやく出した答えがそれだった。
それから今までずっと、俺は雪乃と付き合っている。
俺が一人暮らしするようになってからは、雪乃がここにいることが多い。所謂半同棲状態である。
八幡「お、今日は秋刀魚か」
雪乃「ええ、スーパーで安かったから」
八幡「お前そんなに金に困るような立場でもねぇだろ」
雪乃「何を言っているの? 私はこう見えてもちゃんとお金の管理はする方なの。それに、後先考えずにあれもこれも買ってたら、お金なんていくらあっても足りないわ」
八幡「へいへい、そうですか」
それから今までずっと、俺は雪乃と付き合っている。
俺が一人暮らしするようになってからは、雪乃がここにいることが多い。所謂半同棲状態である。
八幡「お、今日は秋刀魚か」
雪乃「ええ、スーパーで安かったから」
八幡「お前そんなに金に困るような立場でもねぇだろ」
雪乃「何を言っているの? 私はこう見えてもちゃんとお金の管理はする方なの。それに、後先考えずにあれもこれも買ってたら、お金なんていくらあっても足りないわ」
八幡「へいへい、そうですか」
4: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 19:57:59.61 ID:BhSZj49po
雪乃「そう言えば来週――」
八幡「学祭だろ? 行くよ、もちろん」
俺と雪乃の通う大学は別だが、たまにお互いの大学に遊びに行くことがある。
来週の土日は雪乃の学校の大学祭だから、俺が行くことになる。
……正直、俺はあまり雪乃の大学に行くのは好きではない。
雪乃「いいの? あなたあそこに行くといつも顔色悪いじゃない」
八幡「俺の顔色が悪いのはいつものことだろ」
雪乃「そうね……。ってそうじゃなくて――」
八幡「大丈夫だから、お前は心配すんな」
八幡「学祭だろ? 行くよ、もちろん」
俺と雪乃の通う大学は別だが、たまにお互いの大学に遊びに行くことがある。
来週の土日は雪乃の学校の大学祭だから、俺が行くことになる。
……正直、俺はあまり雪乃の大学に行くのは好きではない。
雪乃「いいの? あなたあそこに行くといつも顔色悪いじゃない」
八幡「俺の顔色が悪いのはいつものことだろ」
雪乃「そうね……。ってそうじゃなくて――」
八幡「大丈夫だから、お前は心配すんな」
5: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 19:58:28.42 ID:BhSZj49po
一週間後
ワーワー
八幡「相変わらずすげぇな、お前んとこ」
雪乃「そうね」
八幡「で、お前が出る演劇は何時からなんだ?」
雪乃「午後の二時から……って、どうして私が劇をやるのを知っているのかしら?」
八幡「いや、練習してたの見てたし」
俺の見えないところでやろうとしても、何だかんだ見えてるもんだぞ。
雪乃「そ、そう……。恥ずかしいから、あなたには内緒にしておこうと思ったのだけれど……」
八幡「何言ってんだ。お前のその容姿で恥ずかしがってたら、俺なんかただ歩いてるだけで顔真っ赤だぞ」
雪乃「どうしてもっと素直に褒められないのかしら」
八幡「うっせ」
ワーワー
八幡「相変わらずすげぇな、お前んとこ」
雪乃「そうね」
八幡「で、お前が出る演劇は何時からなんだ?」
雪乃「午後の二時から……って、どうして私が劇をやるのを知っているのかしら?」
八幡「いや、練習してたの見てたし」
俺の見えないところでやろうとしても、何だかんだ見えてるもんだぞ。
雪乃「そ、そう……。恥ずかしいから、あなたには内緒にしておこうと思ったのだけれど……」
八幡「何言ってんだ。お前のその容姿で恥ずかしがってたら、俺なんかただ歩いてるだけで顔真っ赤だぞ」
雪乃「どうしてもっと素直に褒められないのかしら」
八幡「うっせ」
6: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 19:58:54.56 ID:BhSZj49po
八幡「じゃあまだ時間あるし、その辺適当にまわるか」
雪乃「……ええ、そうしましょう」ニコッ
俺と一緒にいる時だけに見せてくれるこの笑顔。これを見るためだけに、ここに来ていると言ってもいい。
この笑顔にドキッとする度に「俺って本当にこいつのことが好きなんだなぁ」と思う。高校の時の俺だったら考えられないような思考回路だ。
結論を言ってしまうと。
俺は雪ノ下雪乃が好きだ。
だから、ここに来た。
クスクス…
――たとえ、誰に笑われたとしても。
雪乃「……ええ、そうしましょう」ニコッ
俺と一緒にいる時だけに見せてくれるこの笑顔。これを見るためだけに、ここに来ていると言ってもいい。
この笑顔にドキッとする度に「俺って本当にこいつのことが好きなんだなぁ」と思う。高校の時の俺だったら考えられないような思考回路だ。
結論を言ってしまうと。
俺は雪ノ下雪乃が好きだ。
だから、ここに来た。
クスクス…
――たとえ、誰に笑われたとしても。
7: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 19:59:23.45 ID:BhSZj49po
知っての通り、雪ノ下雪乃はかなりの美人である。彼氏の俺が言うのもなんだが。
だから、彼女に憧れを抱く者は多い。そういう奴らからの中傷の笑いや声が聞こえるのは当然の話だ。
もしも雪乃の彼氏が葉山であったなら、きっと話は別なのだろうが。
これは半年ほど前の話だが、雪乃が俺のアパートに忘れ物をして、それを届けにここに来たことがあった。
その時に、俺は見知らぬ男に話しかけられた。
男『お前さ、雪ノ下さんの何なの?』
八幡『……一応、彼氏っすけど』
男『彼氏! 彼氏って言ったのか!?』
その声には嘲笑の意が込められているのがわかった。
八幡『だから何だよ』
男『お前、雪ノ下さんに騙されてるんだよ』
だから、彼女に憧れを抱く者は多い。そういう奴らからの中傷の笑いや声が聞こえるのは当然の話だ。
もしも雪乃の彼氏が葉山であったなら、きっと話は別なのだろうが。
これは半年ほど前の話だが、雪乃が俺のアパートに忘れ物をして、それを届けにここに来たことがあった。
その時に、俺は見知らぬ男に話しかけられた。
男『お前さ、雪ノ下さんの何なの?』
八幡『……一応、彼氏っすけど』
男『彼氏! 彼氏って言ったのか!?』
その声には嘲笑の意が込められているのがわかった。
八幡『だから何だよ』
男『お前、雪ノ下さんに騙されてるんだよ』
8: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 19:59:51.63 ID:BhSZj49po
八幡『はっ?』
男『雪ノ下さんには他に男がいるんだよ。お前はただのおもちゃなんだ』
八幡『んなわけねーだろ』
雪ノ下雪乃はそんな嘘をつかない。それは何年も一緒にいた俺だから嫌というほどにわかっている。
だからこの男が俺にこう言うのは、ただ単に俺の中に雪乃に対する疑念を生むためだろう。甘いな、その程度じゃ俺は雪ノ下雪乃を疑ったりはしないんだよ。
ただ――。
男『雪ノ下さんには他に男がいるんだよ。お前はただのおもちゃなんだ』
八幡『んなわけねーだろ』
雪ノ下雪乃はそんな嘘をつかない。それは何年も一緒にいた俺だから嫌というほどにわかっている。
だからこの男が俺にこう言うのは、ただ単に俺の中に雪乃に対する疑念を生むためだろう。甘いな、その程度じゃ俺は雪ノ下雪乃を疑ったりはしないんだよ。
ただ――。
9: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:00:20.42 ID:BhSZj49po
雪乃「どうかしたの?」
ハッと我に返る。いかんいかん、雪乃が一緒なのに何を考えているんだ。
八幡「いや、何並ぶ?」
雪乃「そうね……、そこのりんご飴とかはどうかしら?」
八幡「りんご飴か、いいんじゃ――」
『ね、ね、何から食べる? りんご飴? りんご飴かな?』
ふいに脳裏にそいつの顔が浮かぶ。
くそ……、どうして今になってもまだ忘れられないんだ。
そう自問する。
でも、その答えだってわかっている。
ずっとずっと前から、わかっているんだ。
ただ、あの奉仕部での空間が、俺にとって大切なものであったからに、他ならない。
ハッと我に返る。いかんいかん、雪乃が一緒なのに何を考えているんだ。
八幡「いや、何並ぶ?」
雪乃「そうね……、そこのりんご飴とかはどうかしら?」
八幡「りんご飴か、いいんじゃ――」
『ね、ね、何から食べる? りんご飴? りんご飴かな?』
ふいに脳裏にそいつの顔が浮かぶ。
くそ……、どうして今になってもまだ忘れられないんだ。
そう自問する。
でも、その答えだってわかっている。
ずっとずっと前から、わかっているんだ。
ただ、あの奉仕部での空間が、俺にとって大切なものであったからに、他ならない。
10: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:00:47.33 ID:BhSZj49po
卒業式一週間前
総武高校
八幡『由比ヶ浜』
結衣『な、何かな?』
言うのがためらわれる。今ならまだ引き返せる。これから伝えようとしている言葉を発さなければいい。それでも、俺はもう決めたんだ。
八幡『俺は――』
結衣『……言わないで』
結衣『わかってるから……。ずっと前から……』
八幡『ずっと……?』
結衣『うん。ヒッキーのこと見てたからね、もうわかってた』
八幡『……マジかよ』
結衣『うん、マジ』
八幡『…………』
結衣『……だから、最後にこれだけ、言わせてもらうね』
結衣『あたしは、ヒッキーのことが……』
結衣『ヒッキーのことが……っ』
結衣『……だいっきらいっ!』タタタ
総武高校
八幡『由比ヶ浜』
結衣『な、何かな?』
言うのがためらわれる。今ならまだ引き返せる。これから伝えようとしている言葉を発さなければいい。それでも、俺はもう決めたんだ。
八幡『俺は――』
結衣『……言わないで』
結衣『わかってるから……。ずっと前から……』
八幡『ずっと……?』
結衣『うん。ヒッキーのこと見てたからね、もうわかってた』
八幡『……マジかよ』
結衣『うん、マジ』
八幡『…………』
結衣『……だから、最後にこれだけ、言わせてもらうね』
結衣『あたしは、ヒッキーのことが……』
結衣『ヒッキーのことが……っ』
結衣『……だいっきらいっ!』タタタ
11: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:01:16.38 ID:BhSZj49po
あの時の彼女の泣き顔が、今でも目に焼きついて離れない。
もしも。
もしも、俺がもっとうまくやっていたら、あんなことにはならなかったのだろうか。
ifの話をしたって意味はないから、思考はここでストップ。
もしも。
もしも、俺がもっとうまくやっていたら、あんなことにはならなかったのだろうか。
ifの話をしたって意味はないから、思考はここでストップ。
12: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:01:43.87 ID:BhSZj49po
八幡「…………」
雪乃「やはり体調悪いのかしら?」
八幡「いや、昔りんご飴食って腹痛になったのを思い出してよ」
雪乃「……そう、じゃあ別の物にしましょう」
八幡「助かる」
雪乃「……八幡くん」
八幡「ん?」
雪乃「何かあったら、その時は私に相談してね?」
八幡「あ、ああ……」
……やっぱりこいつには隠し事とかできねぇな。浮気とかしたらすぐにバレそう。する気もねぇけど。
雪乃「やはり体調悪いのかしら?」
八幡「いや、昔りんご飴食って腹痛になったのを思い出してよ」
雪乃「……そう、じゃあ別の物にしましょう」
八幡「助かる」
雪乃「……八幡くん」
八幡「ん?」
雪乃「何かあったら、その時は私に相談してね?」
八幡「あ、ああ……」
……やっぱりこいつには隠し事とかできねぇな。浮気とかしたらすぐにバレそう。する気もねぇけど。
13: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:02:10.26 ID:BhSZj49po
雪乃が劇の準備ということで、俺はその辺を一人でぶらつくことになった。
とりあえず、人の少ない木陰のベンチに腰掛ける。小さな一人用だから友人や恋人と来るリア充どもはやって来ない。ぼっちに優しいな、この学校。
ふと、またあのことが頭にちらつく。
あの男の言っていたことだ。
当の彼氏本人にこう言う人間がいるくらいだ。雪乃に直接俺の悪口を言う人間はさらに多いだろう。
たとえどんなに雪乃が強いとは言えども、大人数という数の暴力の前では敗れざるを得ない。
きっと、この学校中に広まっている『雪ノ下雪乃の彼氏』とは、相当に捻じ曲げられた人物像になっているはずだ。
でなければ、道行く人々が俺の姿を見る度に、あんなに表情を歪ませるわけがない。
それは、雪乃にとっての重荷となっているのではないだろうか。
とりあえず、人の少ない木陰のベンチに腰掛ける。小さな一人用だから友人や恋人と来るリア充どもはやって来ない。ぼっちに優しいな、この学校。
ふと、またあのことが頭にちらつく。
あの男の言っていたことだ。
当の彼氏本人にこう言う人間がいるくらいだ。雪乃に直接俺の悪口を言う人間はさらに多いだろう。
たとえどんなに雪乃が強いとは言えども、大人数という数の暴力の前では敗れざるを得ない。
きっと、この学校中に広まっている『雪ノ下雪乃の彼氏』とは、相当に捻じ曲げられた人物像になっているはずだ。
でなければ、道行く人々が俺の姿を見る度に、あんなに表情を歪ませるわけがない。
それは、雪乃にとっての重荷となっているのではないだろうか。
14: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:02:37.46 ID:BhSZj49po
誤解とは言え解は出ている。一度出来上がってしまったイメージを払拭するのが難しいのは、この二十年くらいの人生で実感している。
なら、ならば、どうすればよいのだろう。
雪乃に相談する?
それはダメだ。
『俺がこの大学内での自分の評判が、地に落ちていることを知っている』ということを知れば、その時は全力でその人間たちを潰そうとするだろう。
あの頃とは違い、今の雪乃は俺のことを心から大切に思ってくれている。たとえ俺が傷ついていないと言い張っても、彼女はこの大学内で戦争紛いのことを起こしかねない。
そしたら勝敗はどうであれ、確実に雪乃が傷つく結果が待っている。
そんなの、本末転倒だ。
俺が知らないと思っているなら、雪乃は動かない。
ならば、知らないふりをしているのがベストだろう。
だが、それをいつまで続けるつもりだ?
なら、ならば、どうすればよいのだろう。
雪乃に相談する?
それはダメだ。
『俺がこの大学内での自分の評判が、地に落ちていることを知っている』ということを知れば、その時は全力でその人間たちを潰そうとするだろう。
あの頃とは違い、今の雪乃は俺のことを心から大切に思ってくれている。たとえ俺が傷ついていないと言い張っても、彼女はこの大学内で戦争紛いのことを起こしかねない。
そしたら勝敗はどうであれ、確実に雪乃が傷つく結果が待っている。
そんなの、本末転倒だ。
俺が知らないと思っているなら、雪乃は動かない。
ならば、知らないふりをしているのがベストだろう。
だが、それをいつまで続けるつもりだ?
15: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:03:19.71 ID:BhSZj49po
八幡・雪乃「「いただきます」」スッ
基本的に俺たちの間に会話はない。が、それは二人にとって苦痛ではない。
雪乃「……八幡くん」
八幡「ん?」
雪乃「あなたは、本当は知っているんじゃないの?」
八幡「何をだよ」
雪乃「……いいえ、何でもないわ」
八幡「そうか」
雪乃「……!」ガタッ
瞬間、雪乃の目の色が変わる。なぜだ、俺は今ミスを犯していないはずなのに。
基本的に俺たちの間に会話はない。が、それは二人にとって苦痛ではない。
雪乃「……八幡くん」
八幡「ん?」
雪乃「あなたは、本当は知っているんじゃないの?」
八幡「何をだよ」
雪乃「……いいえ、何でもないわ」
八幡「そうか」
雪乃「……!」ガタッ
瞬間、雪乃の目の色が変わる。なぜだ、俺は今ミスを犯していないはずなのに。
16: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:03:45.48 ID:BhSZj49po
八幡「どうしたんだよ?」
雪乃「やはりあなたは……」
その声は震えている。しまった。俺の最も恐れていたことが起こってしまったらしい。
八幡「だから何を――」
雪乃「本当に知らないなら、あなたはそんな風に言わない……」
八幡「はっ?」
雪乃「あくまでも知らないふりを突き通すのね。でも無意味よ。あなたともう何年の付き合いだと思っているの?」
八幡「……知っていたら、お前はどうするつもりだ?」
雪乃「決まっているでしょう? あなたを傷つけた人間にそれ相応の罰を与えるだけ」
八幡「やめろ」
雪乃「……えっ?」
雪乃「やはりあなたは……」
その声は震えている。しまった。俺の最も恐れていたことが起こってしまったらしい。
八幡「だから何を――」
雪乃「本当に知らないなら、あなたはそんな風に言わない……」
八幡「はっ?」
雪乃「あくまでも知らないふりを突き通すのね。でも無意味よ。あなたともう何年の付き合いだと思っているの?」
八幡「……知っていたら、お前はどうするつもりだ?」
雪乃「決まっているでしょう? あなたを傷つけた人間にそれ相応の罰を与えるだけ」
八幡「やめろ」
雪乃「……えっ?」
17: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:04:14.48 ID:BhSZj49po
八幡「こっちだって長い付き合いだから、お前がどう思ってどう行動するかも多少はわかっているつもりだ」
雪乃「…………」
八幡「だから、言わなかった」
雪乃「でも――」
八幡「それでも嫌なんだ。俺が周りからどう思われようが痛くも痒くもないが、お前が傷つくのは、嫌だ」
雪乃「私はそんなので傷ついたりしない」
八幡「それは嘘だ。……いや、お前は嘘をついているつもりはないのだろうが、たとえどんな結果に終わろうとも、お前に傷が残る」
八幡「だから、やめてくれ」
雪乃「……わかったわ」
雪乃「…………」
八幡「だから、言わなかった」
雪乃「でも――」
八幡「それでも嫌なんだ。俺が周りからどう思われようが痛くも痒くもないが、お前が傷つくのは、嫌だ」
雪乃「私はそんなので傷ついたりしない」
八幡「それは嘘だ。……いや、お前は嘘をついているつもりはないのだろうが、たとえどんな結果に終わろうとも、お前に傷が残る」
八幡「だから、やめてくれ」
雪乃「……わかったわ」
18: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:04:44.22 ID:BhSZj49po
八幡「…………」
八幡「やけに――」
雪乃「?」
やけに物分りがいいな、と思ったが口に出すのはやめた。
八幡「――いや、何でもない」
雪乃「……?」
胸の中にわずかに残るモヤモヤ感。それは恐らく俺の中に雪乃に対する疑念があるからなのだろう。
問い直してみるべきだろうか。
――いや、それは今の雪乃の言葉を疑ったことをはっきり形にしてしまうことだ。
彼女はそんなくだらない嘘をつかない。それを誰よりも知っている俺だからこそ、疑ってはならないのではないだろうか。
猜疑心をあらわにするのは、彼女と過ごした数年間の否定だ。
八幡「やけに――」
雪乃「?」
やけに物分りがいいな、と思ったが口に出すのはやめた。
八幡「――いや、何でもない」
雪乃「……?」
胸の中にわずかに残るモヤモヤ感。それは恐らく俺の中に雪乃に対する疑念があるからなのだろう。
問い直してみるべきだろうか。
――いや、それは今の雪乃の言葉を疑ったことをはっきり形にしてしまうことだ。
彼女はそんなくだらない嘘をつかない。それを誰よりも知っている俺だからこそ、疑ってはならないのではないだろうか。
猜疑心をあらわにするのは、彼女と過ごした数年間の否定だ。
19: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:05:10.73 ID:BhSZj49po
八幡「お前がそう言うなら、信じるよ。さ、食おうぜ」
雪乃「……そうね」
雪乃を信じようと思い、彼女との思い出を思い返す。どこを見ても雪ノ下雪乃はいつだってまっすぐで正直だった。
だから、心配する必要などないはずなのだ。
――なのに、頭の端には霧のようなはっきりしない何かが、早朝の靄のように留まり続けた。
雪乃「……そうね」
雪乃を信じようと思い、彼女との思い出を思い返す。どこを見ても雪ノ下雪乃はいつだってまっすぐで正直だった。
だから、心配する必要などないはずなのだ。
――なのに、頭の端には霧のようなはっきりしない何かが、早朝の靄のように留まり続けた。
20: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:05:36.83 ID:BhSZj49po
数週間後
雪乃「……ただいま」ガチャッ
八幡「おう、おかえり。今日は遅かったな」
雪乃「ええ、少し用事があって」
八幡「そうか、飯は出来てるぞ。先に食うか?」
雪乃「いえ、先にお風呂に入るわ。……ちょっと疲れたし」
八幡「そうか」
変だな、と思った。何がおかしいのか、明確な理由はわからないが、何かがおかしい。
八幡「……気のせいか?」
雪乃「……ただいま」ガチャッ
八幡「おう、おかえり。今日は遅かったな」
雪乃「ええ、少し用事があって」
八幡「そうか、飯は出来てるぞ。先に食うか?」
雪乃「いえ、先にお風呂に入るわ。……ちょっと疲れたし」
八幡「そうか」
変だな、と思った。何がおかしいのか、明確な理由はわからないが、何かがおかしい。
八幡「……気のせいか?」
21: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:06:03.49 ID:BhSZj49po
――
――――
雪乃「……あら、待っててくれたの?」
八幡「一人で先に食うのもなんかあれだろ」
雪乃「そう……。今日は、野菜炒めなのね」
八幡「おう、スーパーでいろいろ安かったからな」
雪乃「一応私の言ったことを実行してくれているのね」
八幡「ああ。冷める前に食おうぜ」
雪乃「そうね。出来上がった瞬間の最高の味は、その瞬間から逃げていってしまうもの」
――――
雪乃「……あら、待っててくれたの?」
八幡「一人で先に食うのもなんかあれだろ」
雪乃「そう……。今日は、野菜炒めなのね」
八幡「おう、スーパーでいろいろ安かったからな」
雪乃「一応私の言ったことを実行してくれているのね」
八幡「ああ。冷める前に食おうぜ」
雪乃「そうね。出来上がった瞬間の最高の味は、その瞬間から逃げていってしまうもの」
22: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:06:33.31 ID:BhSZj49po
雪乃「……おいしい」パクパク
八幡「まだまだお前には敵わんが、着々と腕は上がってきてるだろ?」
雪乃「ええ。カレーしか作れなかった時とは大違いだわ」
八幡「家事レベルが小学生で止まってたからな。今思うとあのレベルで専業主夫目指すとか無謀だわ」
雪乃「その夢自体が無謀だと思うのだけれど」
八幡「くっ……!」
いつも通り。俺から見た今の雪ノ下雪乃はいつも通りだ。だから、さっき抱いた違和感は気のせいだと、そう思うことにした。
八幡「まだまだお前には敵わんが、着々と腕は上がってきてるだろ?」
雪乃「ええ。カレーしか作れなかった時とは大違いだわ」
八幡「家事レベルが小学生で止まってたからな。今思うとあのレベルで専業主夫目指すとか無謀だわ」
雪乃「その夢自体が無謀だと思うのだけれど」
八幡「くっ……!」
いつも通り。俺から見た今の雪ノ下雪乃はいつも通りだ。だから、さっき抱いた違和感は気のせいだと、そう思うことにした。
23: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:06:59.86 ID:BhSZj49po
休日
八幡「zzz…」
雪乃「まだ眠っているの? 昼過ぎまで寝ているなんてだらしない」
八幡「うぅーん……。まだ正午過ぎか……。ならあと一時間……」
雪乃「そう言ってもう二時間経つのだけれど」
八幡「別にいいだろ……休みなんだし……」
雪乃「あなたが寝ていると布団が干せないのよ。せっかくいい天気なのに」
八幡「……わかった」ムクッ
八幡「zzz…」
雪乃「まだ眠っているの? 昼過ぎまで寝ているなんてだらしない」
八幡「うぅーん……。まだ正午過ぎか……。ならあと一時間……」
雪乃「そう言ってもう二時間経つのだけれど」
八幡「別にいいだろ……休みなんだし……」
雪乃「あなたが寝ていると布団が干せないのよ。せっかくいい天気なのに」
八幡「……わかった」ムクッ
24: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:07:26.94 ID:BhSZj49po
八幡「ふぁーあ……」
雪乃「あれだけ寝ておいてまだあくびが出るのね。驚くのを通り越してあきれるわ」
八幡「んー、ちょっとSS読んでたら陽が昇ってきてた」
雪乃「ただの夜更かしじゃない。身体に悪いわよ」
八幡「ふぁ……、あまりにも面白くてな……。久々にあたりを引いたわ」
雪乃「そう。……今日は、どうするの?」
八幡「……どっか行きたいのか?」
雪乃「……!」
雪乃「あれだけ寝ておいてまだあくびが出るのね。驚くのを通り越してあきれるわ」
八幡「んー、ちょっとSS読んでたら陽が昇ってきてた」
雪乃「ただの夜更かしじゃない。身体に悪いわよ」
八幡「ふぁ……、あまりにも面白くてな……。久々にあたりを引いたわ」
雪乃「そう。……今日は、どうするの?」
八幡「……どっか行きたいのか?」
雪乃「……!」
25: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:07:53.29 ID:BhSZj49po
八幡「俺も欲しい新刊あるし、出かけるか。どこがいい?」
雪乃「そういうことなら、私はどこでもいいわ」
八幡「ふむ」
この感じだと雪乃も欲しい本があるようだ。なら本屋がある場所……。
グゥウー
八幡「……朝食まだだし、ついでに何か食える場所か」
雪乃「私もお昼はまだだから、何か食べたいわね」
八幡「ふむ……」
……ん、お昼『は』?
八幡「……なぁ、お前何時に起きたんだ?」
雪乃「六時には起きていたわね」
八幡「Oh……」
俺が寝た一時間後に起きたのかこいつ。
雪乃「そういうことなら、私はどこでもいいわ」
八幡「ふむ」
この感じだと雪乃も欲しい本があるようだ。なら本屋がある場所……。
グゥウー
八幡「……朝食まだだし、ついでに何か食える場所か」
雪乃「私もお昼はまだだから、何か食べたいわね」
八幡「ふむ……」
……ん、お昼『は』?
八幡「……なぁ、お前何時に起きたんだ?」
雪乃「六時には起きていたわね」
八幡「Oh……」
俺が寝た一時間後に起きたのかこいつ。
26: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:08:28.80 ID:BhSZj49po
at 津田沼
雪乃「それで……どうして津田沼なの?」
八幡「久々になりたけに行きたくなってな」
あそこの超ギタマジで美味いんだよ。一回行ったら当分行きたくなくなるくらい背脂ヤバイけど。てか朝に食べるものじゃねぇ。あ、今は昼か。
麻雀を覚えたエースの近くを通り抜けて、なりたけへ向かう。
八幡「おっ、よかった。今日は行列出来てねぇな」
雪乃「普段はそうなの?」
八幡「タイミングが悪いと結構並んでたりする。あっ、そうだ。お前はさっぱりにしとけ」
雪乃「どうして?」
八幡「お前の場合初見でふつう選んだら、多分戻すから」
雪乃「それは食べ物と言えるの……?」
雪乃「それで……どうして津田沼なの?」
八幡「久々になりたけに行きたくなってな」
あそこの超ギタマジで美味いんだよ。一回行ったら当分行きたくなくなるくらい背脂ヤバイけど。てか朝に食べるものじゃねぇ。あ、今は昼か。
麻雀を覚えたエースの近くを通り抜けて、なりたけへ向かう。
八幡「おっ、よかった。今日は行列出来てねぇな」
雪乃「普段はそうなの?」
八幡「タイミングが悪いと結構並んでたりする。あっ、そうだ。お前はさっぱりにしとけ」
雪乃「どうして?」
八幡「お前の場合初見でふつう選んだら、多分戻すから」
雪乃「それは食べ物と言えるの……?」
27: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:08:55.83 ID:BhSZj49po
アリガトーゴザイマシター
八幡「ふぅ~、食った食った~」
雪乃「…………」
八幡「ん、大丈夫か?」
雪乃「私は大丈夫なのだけれど……、あなたはどうなの? あんな、その……物体を食べて……」
ラーメンとは言わないんですね、わかります。
八幡「まぁ、昔から慣れ親しんだ味だからな」
雪乃「……人の食べるものではないわね」
それならあれを週一ペースで食ってる材木座は何者なんだ。……あ、豚か。しかも飛べない豚。それはただの豚。
八幡「ふぅ~、食った食った~」
雪乃「…………」
八幡「ん、大丈夫か?」
雪乃「私は大丈夫なのだけれど……、あなたはどうなの? あんな、その……物体を食べて……」
ラーメンとは言わないんですね、わかります。
八幡「まぁ、昔から慣れ親しんだ味だからな」
雪乃「……人の食べるものではないわね」
それならあれを週一ペースで食ってる材木座は何者なんだ。……あ、豚か。しかも飛べない豚。それはただの豚。
28: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:09:22.31 ID:BhSZj49po
ある朝
雪乃「今日は先に出るわね」ガチャッ
八幡「おう」
雪乃「あなたもちゃんと学校に行くのよ? ただでさえサボり気味なのだから」
八幡「俺のかーちゃんかお前は」
雪乃「ふふっ」
そう言うと雪乃は微笑んで扉を閉める。
雪乃「いってきます」ガチャッ
八幡「ああ、いってら」
雪乃「今日は先に出るわね」ガチャッ
八幡「おう」
雪乃「あなたもちゃんと学校に行くのよ? ただでさえサボり気味なのだから」
八幡「俺のかーちゃんかお前は」
雪乃「ふふっ」
そう言うと雪乃は微笑んで扉を閉める。
雪乃「いってきます」ガチャッ
八幡「ああ、いってら」
29: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:11:48.54 ID:BhSZj49po
八幡「さてと、何か面白いまとめでもあるかな……」スッスッ
八幡「むー……」
アザヤカニーソマールーソラーノイーロ♪
八幡「ん? これは、雪乃の……?」
八幡「携帯忘れてったのか?」
前にも似たことがあったな、と思う。あの時のことは正直あまり思い出したくない。
八幡「……でも、ないと困るだろうし」
あまり気は進まないが届けに行ってやろう。あの視線は俺が我慢すればいいだけだし。
八幡「むー……」
アザヤカニーソマールーソラーノイーロ♪
八幡「ん? これは、雪乃の……?」
八幡「携帯忘れてったのか?」
前にも似たことがあったな、と思う。あの時のことは正直あまり思い出したくない。
八幡「……でも、ないと困るだろうし」
あまり気は進まないが届けに行ってやろう。あの視線は俺が我慢すればいいだけだし。
30: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:12:14.89 ID:BhSZj49po
――
――――
八幡「…………」テクテク
八幡「……?」
視線を、感じない?
――いや、違う。
相変わらず俺は視線の的だ。ただ、見る目が変わったんだ。
八幡「…………」スッ
男「ひっ!」サッ
振り返ると俺を見ていたのであろう男が、不自然に目をそらした。
八幡「…………」
――――
八幡「…………」テクテク
八幡「……?」
視線を、感じない?
――いや、違う。
相変わらず俺は視線の的だ。ただ、見る目が変わったんだ。
八幡「…………」スッ
男「ひっ!」サッ
振り返ると俺を見ていたのであろう男が、不自然に目をそらした。
八幡「…………」
31: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:13:14.52 ID:BhSZj49po
今までこの大学内で俺を見る目には、所謂嘲笑と軽蔑の意が込められていた。
『雪ノ下雪乃に騙されている哀れな男』
あるいは
『雪ノ下雪乃を脅している最悪な男』
恐らくこんなところだろう。
だが今、ここにいる人間は、明らかに俺に『恐怖』している。さっきの男の動作がその証拠だ。
つまり、この短期間に、この大学での『俺』という存在が正反対のものに変わってしまったのだ。
そんなことができる人物は一人しかいないし、する人物も一人しかいない。
八幡「……なんでだよ」
だが俺はそれを信じたくなかった。
『雪ノ下雪乃に騙されている哀れな男』
あるいは
『雪ノ下雪乃を脅している最悪な男』
恐らくこんなところだろう。
だが今、ここにいる人間は、明らかに俺に『恐怖』している。さっきの男の動作がその証拠だ。
つまり、この短期間に、この大学での『俺』という存在が正反対のものに変わってしまったのだ。
そんなことができる人物は一人しかいないし、する人物も一人しかいない。
八幡「……なんでだよ」
だが俺はそれを信じたくなかった。
32: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:13:40.58 ID:BhSZj49po
――
――――
八幡「……よぉ」
雪乃「八幡くん? どうしてこんなところに――」
八幡「これ」スッ
雪乃の携帯を取り出し、渡す。
八幡「忘れてたぞ」
雪乃「あ……。私としたことが迂闊だったわね。あなたのような人間に携帯を触れるような状態にしてしまうなんて」
八幡「ああ……そうだな……」
雪乃「……?」
――――
八幡「……よぉ」
雪乃「八幡くん? どうしてこんなところに――」
八幡「これ」スッ
雪乃の携帯を取り出し、渡す。
八幡「忘れてたぞ」
雪乃「あ……。私としたことが迂闊だったわね。あなたのような人間に携帯を触れるような状態にしてしまうなんて」
八幡「ああ……そうだな……」
雪乃「……?」
33: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:14:06.88 ID:BhSZj49po
八幡「今日は……」ボソッ
雪乃「えっ?」
八幡「今日は何時くらいに帰ってくるんだ?」
雪乃「夕飯の当番は私だから早めに帰るけれど」
八幡「そうか」
雪乃「……どうしたの?」
八幡「……いや、なんでもない」
雪乃「えっ?」
八幡「今日は何時くらいに帰ってくるんだ?」
雪乃「夕飯の当番は私だから早めに帰るけれど」
八幡「そうか」
雪乃「……どうしたの?」
八幡「……いや、なんでもない」
34: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:15:41.07 ID:BhSZj49po
その夜
八幡・雪乃「「いただきます」」
八幡「…………」パクパク
雪乃「…………」パクパク
八幡「…………」パクパク
雪乃「……ねぇ」
八幡「ん?」
雪乃「……どうか、したの?」
雪乃「今日のあなた、どこかおかしいわ」
八幡「…………」
八幡・雪乃「「いただきます」」
八幡「…………」パクパク
雪乃「…………」パクパク
八幡「…………」パクパク
雪乃「……ねぇ」
八幡「ん?」
雪乃「……どうか、したの?」
雪乃「今日のあなた、どこかおかしいわ」
八幡「…………」
35: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:16:11.82 ID:BhSZj49po
言葉にすべきだろうか。
今や俺の疑念は最早その枠を超えて確信となってしまった。
このまま黙っていることは欺瞞か、それとも本物か。
わからない、わからない、わからない。
今の俺には、わからない。
八幡「…………」
雪乃「どうして黙っているの? 何かあるなら言ってと前にも言ったでしょう?」
八幡「……なぁ」
雪乃「なに?」
八幡「どうして、破ったんだ……?」
八幡「あの時の、約束を……」
雪乃「……!」
今や俺の疑念は最早その枠を超えて確信となってしまった。
このまま黙っていることは欺瞞か、それとも本物か。
わからない、わからない、わからない。
今の俺には、わからない。
八幡「…………」
雪乃「どうして黙っているの? 何かあるなら言ってと前にも言ったでしょう?」
八幡「……なぁ」
雪乃「なに?」
八幡「どうして、破ったんだ……?」
八幡「あの時の、約束を……」
雪乃「……!」
36: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:16:39.85 ID:BhSZj49po
八幡「言ったよな、何もしないでくれって。それでお前が傷つくのは嫌だって」
雪乃「それは……」
弁解しようとする口が止まる。なかなか再開しないのに痺れを切らして俺は続ける。
八幡「俺との約束は守るに値しないものだったのか?」
雪乃「そういうわけじゃ――」
八幡「じゃあ教えてくれよ。どうしてなのか」
雪乃「……っ」
何も言えずにただ下を見つめるだけの雪乃の姿は、俺を苛立たせるのに十分すぎた。
八幡「……わかった。もういい」
雪乃「えっ?」
雪乃「それは……」
弁解しようとする口が止まる。なかなか再開しないのに痺れを切らして俺は続ける。
八幡「俺との約束は守るに値しないものだったのか?」
雪乃「そういうわけじゃ――」
八幡「じゃあ教えてくれよ。どうしてなのか」
雪乃「……っ」
何も言えずにただ下を見つめるだけの雪乃の姿は、俺を苛立たせるのに十分すぎた。
八幡「……わかった。もういい」
雪乃「えっ?」
38: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:17:06.84 ID:BhSZj49po
いつの間に空になっていた茶碗を置き、上着を羽織る。
雪乃「ちょっと、どこに行くの!?」
八幡「……今日は帰らねぇから」
それだけ言い放って玄関を出た。いつものくせでドアに鍵をかける。妙なところで冷静な自分が可笑しかった。
八幡「……さみぃ」
もう少し着込んでくればよかった。そう思って漏れるため息が白くなる。
八幡「……何も考えてなかったな」
ともかくあの場にいたくなかった。きっと居続けたなら、雪乃を傷つける言葉をさらに吐き出していたであろうことがわかっていたから。
俺はそれから、冬の寒さに震えながら目的もなくただ歩いた。
こんなことをしている自分が理解できない。何よりも不思議なのは、今の自分が明らかに感情に流されていることだ。
どこぞの誰かさんに『理性の化け物』と言われる程に、俺は徹底的に理性的に理屈的に考えてきた。だからこそ『感情を理解できていない』などとも言われたわけだが。
そんな俺がこんなに感情的になるなんて、どうしてだろう。
雪乃「ちょっと、どこに行くの!?」
八幡「……今日は帰らねぇから」
それだけ言い放って玄関を出た。いつものくせでドアに鍵をかける。妙なところで冷静な自分が可笑しかった。
八幡「……さみぃ」
もう少し着込んでくればよかった。そう思って漏れるため息が白くなる。
八幡「……何も考えてなかったな」
ともかくあの場にいたくなかった。きっと居続けたなら、雪乃を傷つける言葉をさらに吐き出していたであろうことがわかっていたから。
俺はそれから、冬の寒さに震えながら目的もなくただ歩いた。
こんなことをしている自分が理解できない。何よりも不思議なのは、今の自分が明らかに感情に流されていることだ。
どこぞの誰かさんに『理性の化け物』と言われる程に、俺は徹底的に理性的に理屈的に考えてきた。だからこそ『感情を理解できていない』などとも言われたわけだが。
そんな俺がこんなに感情的になるなんて、どうしてだろう。
40: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:18:21.04 ID:BhSZj49po
――
――――
男『雪ノ下さんさ、彼氏とかいんの?』
雪乃『ええ、お察しの通りにね』
男『あの変な男か?』
雪乃『変な男と言われても、あまりにも抽象的すぎるわね。現に今、私の前にもいるわけだし』
男『……っ! あんな男の何がいいんだよ? 目はドロドロに濁っているし、服のセンスはねぇし、ずっとキョドっているし』
雪乃『ええ、その特徴は何一つ間違っていないわね』
男『ならなんで――』
雪乃『別にあなたが理解する必要はないわ』
男『……脅されてんのか?』
――――
男『雪ノ下さんさ、彼氏とかいんの?』
雪乃『ええ、お察しの通りにね』
男『あの変な男か?』
雪乃『変な男と言われても、あまりにも抽象的すぎるわね。現に今、私の前にもいるわけだし』
男『……っ! あんな男の何がいいんだよ? 目はドロドロに濁っているし、服のセンスはねぇし、ずっとキョドっているし』
雪乃『ええ、その特徴は何一つ間違っていないわね』
男『ならなんで――』
雪乃『別にあなたが理解する必要はないわ』
男『……脅されてんのか?』
41: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:18:49.19 ID:BhSZj49po
雪乃『……?』
男『何か弱みでも握られてるんじゃないのか? じゃなきゃ雪ノ下さんみたいな美人があんなやつと――』
その時に、頭の中でプツンと、何かが切れる音がした。
雪乃『あなたのような薄っぺらい人間に、八幡くんの何がわかると言うの?』
そこから先のことは、あまり覚えていない。ただ、これまでずっと胸の中にわだかまっていたものを、全てその人にぶつけていたことだけは覚えている。
それだって日常茶飯事のことで、無視すれば良いだけだったのに、たまりにたまった怒りは、私を押さえつけていた何かを取っ払ってしまった。
男『何か弱みでも握られてるんじゃないのか? じゃなきゃ雪ノ下さんみたいな美人があんなやつと――』
その時に、頭の中でプツンと、何かが切れる音がした。
雪乃『あなたのような薄っぺらい人間に、八幡くんの何がわかると言うの?』
そこから先のことは、あまり覚えていない。ただ、これまでずっと胸の中にわだかまっていたものを、全てその人にぶつけていたことだけは覚えている。
それだって日常茶飯事のことで、無視すれば良いだけだったのに、たまりにたまった怒りは、私を押さえつけていた何かを取っ払ってしまった。
42: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:19:28.72 ID:BhSZj49po
――
――――
雪乃「……どうして、こんなことに」
してしまったことを後悔をしたって仕方がない。それでもあの時に耐えていればと思ってしまう。
……いや、それも無駄なのかもしれない。あの時に耐えていたとしても、きっといつかああなっていただろう。
私が耐えられなかったのは、へんな男たちに付きまとわれることではない。そんなのは今までずっとあったことだから。
ただ、八幡くんのことを悪く言われるのが、ひどく許せなかった。
何も知らないくせに、ただ見た目から、外見から、雰囲気から判断して、決して本質を見据えようとせずに、さも自分の方が上であるかのように貶す。
それがどうしようもなく腹立たしく、許せなかった。
ならば彼と付き合う以上、こうなるのは必然だったのだろうか。もっと他にこうならない現在をむかえる方法があったのではないだろうか。
雪乃「でも……」
もしも自身の存在が今の私を追い込むものであると知ったなら、彼はきっと私から離れるという選択肢を選んだはずだ。
だから、彼の前ではそんな弱いところを見せてはならなかった。強い『雪ノ下雪乃』でないとならなかった。
――――
雪乃「……どうして、こんなことに」
してしまったことを後悔をしたって仕方がない。それでもあの時に耐えていればと思ってしまう。
……いや、それも無駄なのかもしれない。あの時に耐えていたとしても、きっといつかああなっていただろう。
私が耐えられなかったのは、へんな男たちに付きまとわれることではない。そんなのは今までずっとあったことだから。
ただ、八幡くんのことを悪く言われるのが、ひどく許せなかった。
何も知らないくせに、ただ見た目から、外見から、雰囲気から判断して、決して本質を見据えようとせずに、さも自分の方が上であるかのように貶す。
それがどうしようもなく腹立たしく、許せなかった。
ならば彼と付き合う以上、こうなるのは必然だったのだろうか。もっと他にこうならない現在をむかえる方法があったのではないだろうか。
雪乃「でも……」
もしも自身の存在が今の私を追い込むものであると知ったなら、彼はきっと私から離れるという選択肢を選んだはずだ。
だから、彼の前ではそんな弱いところを見せてはならなかった。強い『雪ノ下雪乃』でないとならなかった。
43: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:19:56.11 ID:BhSZj49po
――いや、そうではない。
それもまた私の思い込みであって、本当にそうなのかはわからない。もっと言ってしまえば、私が彼を信じきれなかったことの方がよっぽど問題だったのだ。
彼がそのような選択肢を選ばない可能性だって十分にあり得た。彼だってあの頃とはまた違っているのだから。なのにそれを信じられず、自分から離れていく未来を恐れたのが、きっと間違いだったのだ。
雪乃「せっかく、MAXコーヒーを二本買っておいたのに……」
雪乃「これじゃ一緒に飲めないじゃない……」
冷たくなっていく缶の感触が、まるで『終り』を暗示しているように感じられた。
それもまた私の思い込みであって、本当にそうなのかはわからない。もっと言ってしまえば、私が彼を信じきれなかったことの方がよっぽど問題だったのだ。
彼がそのような選択肢を選ばない可能性だって十分にあり得た。彼だってあの頃とはまた違っているのだから。なのにそれを信じられず、自分から離れていく未来を恐れたのが、きっと間違いだったのだ。
雪乃「せっかく、MAXコーヒーを二本買っておいたのに……」
雪乃「これじゃ一緒に飲めないじゃない……」
冷たくなっていく缶の感触が、まるで『終り』を暗示しているように感じられた。
44: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:20:22.60 ID:BhSZj49po
――
――――
勝手に期待して勝手に理想を押し付けて勝手に理解した気になって、それでいざ違うとわかると人はこう言う。
裏切られたと。
どうしてこんなにも精神的に参っているのかと言えば、きっと雪乃に裏切られたと感じているからだ。その思いはいくら理屈でねじ伏せようとしても消えてくれない。
あの時、確かに約束したのだ。
しかし雪乃はそれを破った。
だからそれに俺は深く失望している。
雪ノ下雪乃に、失望している。
彼女にとって俺は、その程度の存在だったのかと。
約束など、守るに値しない存在だったのかと。
いつも通り理屈ではどうもこうもできる。理性では納得できる。
しかし心はそう簡単には説得できないものらしく、胸の痛みは消えてくれない。
そうやって痛みを抱え、寒さに震えながら、行く当てもなく、ただ俺は、歩いた。
――――
勝手に期待して勝手に理想を押し付けて勝手に理解した気になって、それでいざ違うとわかると人はこう言う。
裏切られたと。
どうしてこんなにも精神的に参っているのかと言えば、きっと雪乃に裏切られたと感じているからだ。その思いはいくら理屈でねじ伏せようとしても消えてくれない。
あの時、確かに約束したのだ。
しかし雪乃はそれを破った。
だからそれに俺は深く失望している。
雪ノ下雪乃に、失望している。
彼女にとって俺は、その程度の存在だったのかと。
約束など、守るに値しない存在だったのかと。
いつも通り理屈ではどうもこうもできる。理性では納得できる。
しかし心はそう簡単には説得できないものらしく、胸の痛みは消えてくれない。
そうやって痛みを抱え、寒さに震えながら、行く当てもなく、ただ俺は、歩いた。
45: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:20:49.03 ID:BhSZj49po
――
――――
八幡「…………」ガチャッ
雪乃「……おかえりなさい」
八幡「……ずっと起きてたのか?」
雪乃「ええ、あんな状態で眠れるわけないでしょう?」
八幡「そうか……わりぃな……」
雪乃「いえ。私も……その……悪かったのだし……」
八幡「いやいい。そのことはもう」
雪乃「それでも――」
八幡「寝てないんだろ? ならとりあえず寝ろ。眠いのに話したってなんにもならない」
雪乃「……そうね」
――――
八幡「…………」ガチャッ
雪乃「……おかえりなさい」
八幡「……ずっと起きてたのか?」
雪乃「ええ、あんな状態で眠れるわけないでしょう?」
八幡「そうか……わりぃな……」
雪乃「いえ。私も……その……悪かったのだし……」
八幡「いやいい。そのことはもう」
雪乃「それでも――」
八幡「寝てないんだろ? ならとりあえず寝ろ。眠いのに話したってなんにもならない」
雪乃「……そうね」
46: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:21:23.23 ID:BhSZj49po
数週間後。
八幡「……なぁ」
雪乃「何かしら?」
八幡「……今度、どっか行こうぜ」
雪乃「あなたから誘うなんて、珍しいこともあるのね」
八幡「……。まぁ、たまにはな」
雪乃「それで、どこに行くのかしら?」
八幡「そうだな。今度の土日のどっちかにららぽにでも行くか?」
土日、と言った瞬間に雪乃は表情を曇らせる。
雪乃「……ごめんなさい。今週はどちらも予定が入っていて……。来週なら空いているのだけれど」
八幡「げっ、マジかよ。来週どっちもバイトだわ」
雪乃「代わってもらえないの?」
八幡「それが無理そうなんだよな時期的に……。最悪バックレようかな……」
雪乃「せっかく条件がいいって喜んでいたのに、やめることもないでしょう。そうね、出かけるのはまた今度にしましょう」
八幡「そうだな」
八幡「……なぁ」
雪乃「何かしら?」
八幡「……今度、どっか行こうぜ」
雪乃「あなたから誘うなんて、珍しいこともあるのね」
八幡「……。まぁ、たまにはな」
雪乃「それで、どこに行くのかしら?」
八幡「そうだな。今度の土日のどっちかにららぽにでも行くか?」
土日、と言った瞬間に雪乃は表情を曇らせる。
雪乃「……ごめんなさい。今週はどちらも予定が入っていて……。来週なら空いているのだけれど」
八幡「げっ、マジかよ。来週どっちもバイトだわ」
雪乃「代わってもらえないの?」
八幡「それが無理そうなんだよな時期的に……。最悪バックレようかな……」
雪乃「せっかく条件がいいって喜んでいたのに、やめることもないでしょう。そうね、出かけるのはまた今度にしましょう」
八幡「そうだな」
47: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:21:50.15 ID:BhSZj49po
あれから俺たちは、『あの事』について話すことはなかった。一度機会を逃してしまったせいで、一種の禁句に近いものとなってしまったのだ。
いつか話そう。その時は別に今でなくてもいいはずだと。そう自分に言い聞かせていた結果がこれだ。
そのせいもあってか、ここ最近は話すのも、どこかぎこちなくなっているように思える。互いに触れてはならない事柄を避けることが頭の中にあるからなのだろうか。
こんなの、大したことではないと思いながらも、不安感は日々強くなる。
そんな風に毎日を過ごすうちに、二人の間にあった歯車が少しずつ狂い始めたような気がした。
いつか話そう。その時は別に今でなくてもいいはずだと。そう自分に言い聞かせていた結果がこれだ。
そのせいもあってか、ここ最近は話すのも、どこかぎこちなくなっているように思える。互いに触れてはならない事柄を避けることが頭の中にあるからなのだろうか。
こんなの、大したことではないと思いながらも、不安感は日々強くなる。
そんな風に毎日を過ごすうちに、二人の間にあった歯車が少しずつ狂い始めたような気がした。
48: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:22:16.97 ID:BhSZj49po
――
――――
八幡「…………」ペラッペラッ
雪乃「…………」ペラッペラッ
八幡「……はぁ」スッ
雪乃「…………」ペラッペラッ
本の内容がさっぱり頭に入ってこない。同じ行を読んでしまうことも数度あった。結論を言うと、本を読むことに全く集中できない。
八幡「…………」テクテク
コップに水を注いで喉に流し込む。冷たい流体が身体の中に入り込んでくるのを感じる。
八幡「…………」テクテク
また元の場所に戻って続きを読む。いや、正確には読もうとする。実際には読めていないのだから、そう言う方が正しいだろう。
――――
八幡「…………」ペラッペラッ
雪乃「…………」ペラッペラッ
八幡「……はぁ」スッ
雪乃「…………」ペラッペラッ
本の内容がさっぱり頭に入ってこない。同じ行を読んでしまうことも数度あった。結論を言うと、本を読むことに全く集中できない。
八幡「…………」テクテク
コップに水を注いで喉に流し込む。冷たい流体が身体の中に入り込んでくるのを感じる。
八幡「…………」テクテク
また元の場所に戻って続きを読む。いや、正確には読もうとする。実際には読めていないのだから、そう言う方が正しいだろう。
49: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:22:44.49 ID:BhSZj49po
八幡「…………」
いつからだろう。
沈黙を苦痛と感じるようになったのは。
いつからだろう。
雪乃といる空間が重苦しいと感じるようになったのは。
そんなことを思っている自分を否定しようとしても、それでも不快感は消えずに残り続ける。
いま自分がいるのは、一ヶ月前と同じ部屋のはずなのに、全く違う場所に見える。
そこでようやく俺は、ずっと薄々勘付いていて、目をそらしていた現実を認めた。
俺たちは変わってしまったのだと。
俺たちの間にあった何かが、変わってしまったのだと。
それが何なのかは、はっきりとした実体を持たないから言葉にはできないが、それでもその事実は言える。言えてしまう。
その時、『終り』という言葉が頭の中にチラついた。
……何を考えているんだ、俺は。
俺はその不吉な言葉を飛ばすように頭を振ったが、飛んだのは数本の髪の毛だけで、不穏な予感は頭の中にこべりついたままだった。
いつからだろう。
沈黙を苦痛と感じるようになったのは。
いつからだろう。
雪乃といる空間が重苦しいと感じるようになったのは。
そんなことを思っている自分を否定しようとしても、それでも不快感は消えずに残り続ける。
いま自分がいるのは、一ヶ月前と同じ部屋のはずなのに、全く違う場所に見える。
そこでようやく俺は、ずっと薄々勘付いていて、目をそらしていた現実を認めた。
俺たちは変わってしまったのだと。
俺たちの間にあった何かが、変わってしまったのだと。
それが何なのかは、はっきりとした実体を持たないから言葉にはできないが、それでもその事実は言える。言えてしまう。
その時、『終り』という言葉が頭の中にチラついた。
……何を考えているんだ、俺は。
俺はその不吉な言葉を飛ばすように頭を振ったが、飛んだのは数本の髪の毛だけで、不穏な予感は頭の中にこべりついたままだった。
50: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:23:11.47 ID:BhSZj49po
――
――――
どんな崩壊も、初めの原因は極めて小さなズレだ。二本の直線もわずかコンマ数度のズレが原因で、伸ばし続けた先ではいずれ交わってしまう。
きっと俺たちはどこかで間違えた。それはきっと気づかないほどに小さなズレだった。
だがそれは放って置いてしまうと、重大な損失を招くのだということを、俺は知らなかった。恐らく雪乃も同じだろう。
きっと心のどこかで俺たちなら大丈夫だと、そう、思っていたのだ。それこそが最大のミスなのだと気づかずに。
そしてそれは気づいた時にはもう手遅れで、どうしようもない状態になっていた。
いつからか二人ともそれがわかってしまっていたから、そう遠くない未来にある『終り』も見えていた。
でもその未来が来るのが恐いから取り繕おうとした。しかし結局やることなすこと裏目に出て、さらにすれ違いを加速させる結果となったのだが。
――――
どんな崩壊も、初めの原因は極めて小さなズレだ。二本の直線もわずかコンマ数度のズレが原因で、伸ばし続けた先ではいずれ交わってしまう。
きっと俺たちはどこかで間違えた。それはきっと気づかないほどに小さなズレだった。
だがそれは放って置いてしまうと、重大な損失を招くのだということを、俺は知らなかった。恐らく雪乃も同じだろう。
きっと心のどこかで俺たちなら大丈夫だと、そう、思っていたのだ。それこそが最大のミスなのだと気づかずに。
そしてそれは気づいた時にはもう手遅れで、どうしようもない状態になっていた。
いつからか二人ともそれがわかってしまっていたから、そう遠くない未来にある『終り』も見えていた。
でもその未来が来るのが恐いから取り繕おうとした。しかし結局やることなすこと裏目に出て、さらにすれ違いを加速させる結果となったのだが。
51: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:24:01.69 ID:BhSZj49po
数週間後。
八幡「いただきます」
今晩の夕食は俺が作ったカレーだ。いつか初めて雪乃に作ってやった料理もカレーだったな、なんてことを思い出して、妙に可笑しくなる。そしてそれが遠い昔のことのように思ってしまう自分が、悲しくなる。
雪乃「……いただき、ます」
そして食事の時に二人の間に流れる沈黙。しかしそれは、一ヶ月前のそれとは全く異質のものになってしまっていた。
――もう、限界だ。
そう、強く思った。
どうせ言うなら男である自分から言うべきだと思い、スプーンを皿の上に置く。
雪乃「……どうしたの?」
ひとつ、深呼吸。
もうダメなんだとわかっていながらも、言葉にする勇気が出ない。
雪乃「…………」
沈黙から何かを悟ったのか、雪乃は何も言わずにうつむいている。
八幡「……なぁ」
雪乃「何かしら……?」
八幡「…………」
八幡「……もう、別れよう」
八幡「いただきます」
今晩の夕食は俺が作ったカレーだ。いつか初めて雪乃に作ってやった料理もカレーだったな、なんてことを思い出して、妙に可笑しくなる。そしてそれが遠い昔のことのように思ってしまう自分が、悲しくなる。
雪乃「……いただき、ます」
そして食事の時に二人の間に流れる沈黙。しかしそれは、一ヶ月前のそれとは全く異質のものになってしまっていた。
――もう、限界だ。
そう、強く思った。
どうせ言うなら男である自分から言うべきだと思い、スプーンを皿の上に置く。
雪乃「……どうしたの?」
ひとつ、深呼吸。
もうダメなんだとわかっていながらも、言葉にする勇気が出ない。
雪乃「…………」
沈黙から何かを悟ったのか、雪乃は何も言わずにうつむいている。
八幡「……なぁ」
雪乃「何かしら……?」
八幡「…………」
八幡「……もう、別れよう」
52: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:24:47.63 ID:BhSZj49po
その言葉を口にした瞬間、二人の時が止まった。
俺も、雪乃も動かない。
机の上にあるアナログ時計だけが、止まっている俺らをバカにするように動いている。
言った。
言ってしまった。
時計の針は止まらない。
喉が渇いて、痛い。
全身から汗が吹き出る。
秒針の音が二人の間を流れていく。
どこか、ずっと遠くのどこかで、何かが割れたような音がした。
53: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:25:14.90 ID:BhSZj49po
雪乃「……そうね」
その雪乃の言葉が俺の言葉のどれほど後のものかわからない。十秒ほどしかなかったのかもしれないし、一時間以上ずっと黙ったままのような気もする。
雪乃「きっと、それが一番いいのかもしれないわね」
八幡「…………」
雪乃「それを言うってことは、あなたもわかっていたのでしょう?」
雪乃「私たちはもう、『終わっていた』のだと」
八幡「……ああ」
ひどく残酷な言葉が俺の胸を貫く。わかっていたのに、いざ言葉にされると、それはナイフのように鋭い凶器となった。
その雪乃の言葉が俺の言葉のどれほど後のものかわからない。十秒ほどしかなかったのかもしれないし、一時間以上ずっと黙ったままのような気もする。
雪乃「きっと、それが一番いいのかもしれないわね」
八幡「…………」
雪乃「それを言うってことは、あなたもわかっていたのでしょう?」
雪乃「私たちはもう、『終わっていた』のだと」
八幡「……ああ」
ひどく残酷な言葉が俺の胸を貫く。わかっていたのに、いざ言葉にされると、それはナイフのように鋭い凶器となった。
54: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:25:41.72 ID:BhSZj49po
雪乃「……ねぇ、八幡くん」
八幡「ん?」
雪乃「どうして、こうなってしまったのでしょうね……」
わからない。今までずっと考えてきたのに、わからなかった。
一つ一つはあまりにも軽いのに、その数が多すぎて何が原因と断言できない。
雪乃「今も、私はあなたのことが好き」
雪乃「……なのに、あなたと一緒にはいられない」
八幡「…………」
雪乃「この一ヶ月、私はここにいるのがずっと苦痛だったわ」
雪乃「でも、それでも、あなたから離れるのが恐かった」
雪乃「あなたと別れることによって、今よりもずっと辛くなるのが恐かった」
八幡「ん?」
雪乃「どうして、こうなってしまったのでしょうね……」
わからない。今までずっと考えてきたのに、わからなかった。
一つ一つはあまりにも軽いのに、その数が多すぎて何が原因と断言できない。
雪乃「今も、私はあなたのことが好き」
雪乃「……なのに、あなたと一緒にはいられない」
八幡「…………」
雪乃「この一ヶ月、私はここにいるのがずっと苦痛だったわ」
雪乃「でも、それでも、あなたから離れるのが恐かった」
雪乃「あなたと別れることによって、今よりもずっと辛くなるのが恐かった」
55: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:26:28.16 ID:BhSZj49po
雪乃「でも、私もあなたも、もう限界ね」
雪乃「好きという感情を、苦痛が超えてしまった」
八幡「……ああ、そうだな」
全くもってその通りだ。俺と雪乃にはどこか近い部分があったから、共にこの結論にたどり着いたのだろう。
その事実がまた俺の心を悲しませる。
八幡「……だからもう、『終り』だ」
雪乃「ええ、『終り』ね」
そこで一呼吸おいて、雪乃は言い放つ。
雪乃「……八幡くん、別れましょう」
雪乃「好きという感情を、苦痛が超えてしまった」
八幡「……ああ、そうだな」
全くもってその通りだ。俺と雪乃にはどこか近い部分があったから、共にこの結論にたどり着いたのだろう。
その事実がまた俺の心を悲しませる。
八幡「……だからもう、『終り』だ」
雪乃「ええ、『終り』ね」
そこで一呼吸おいて、雪乃は言い放つ。
雪乃「……八幡くん、別れましょう」
56: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:26:56.91 ID:BhSZj49po
――
――――
ガチャッと玄関の扉が開く音がする。俺はさっきからテーブルの前から離れられずにいる。
雪乃「必要な私物は全て持ったから、あとは使うなり捨てるなり好きにして」
八幡「ああ、わかった……」
雪乃の方を向かずに背中で返す。今さら現実逃避なのか、振り向きたくなかった。
雪乃「……八幡くん」
八幡「……ん」
雪乃「こっちを向いて、こっちに来て。そんなんじゃ、出て行こうにも出て行けないわ」
それも、わかっていた。だから、振り向けずにいるのだ。
――――
ガチャッと玄関の扉が開く音がする。俺はさっきからテーブルの前から離れられずにいる。
雪乃「必要な私物は全て持ったから、あとは使うなり捨てるなり好きにして」
八幡「ああ、わかった……」
雪乃の方を向かずに背中で返す。今さら現実逃避なのか、振り向きたくなかった。
雪乃「……八幡くん」
八幡「……ん」
雪乃「こっちを向いて、こっちに来て。そんなんじゃ、出て行こうにも出て行けないわ」
それも、わかっていた。だから、振り向けずにいるのだ。
57: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:27:36.11 ID:BhSZj49po
雪乃「…………」キィーバタン
八幡「…………」
言い出したのは自分なのに、どうして最後の最後で踏ん切りがつかないのだろう。最後くらいカッコよくはなくても、カッコ悪い姿は見せたくないのに。
雪乃「…………」
雪乃が俺の前に来る。泣きそうになって崩れている顔が見られたくなくて、顔を背けた。
雪乃「……ねぇ、覚えているかしら?」
八幡「?」
雪乃「私とあなたが初めて、ちゃんと会った時のこと」
ちゃんと、と付けたのはその前のことがあるからなのは、すぐにわかった。
八幡「ああ、忘れられるわけがない」
雪乃「そうよね」クスッ
八幡「……あ」
雪乃「どうしたの?」
八幡「いや……」
今の一瞬、俺は雪乃に見惚れていた。
――初めて会った時と同じように。
八幡「…………」
言い出したのは自分なのに、どうして最後の最後で踏ん切りがつかないのだろう。最後くらいカッコよくはなくても、カッコ悪い姿は見せたくないのに。
雪乃「…………」
雪乃が俺の前に来る。泣きそうになって崩れている顔が見られたくなくて、顔を背けた。
雪乃「……ねぇ、覚えているかしら?」
八幡「?」
雪乃「私とあなたが初めて、ちゃんと会った時のこと」
ちゃんと、と付けたのはその前のことがあるからなのは、すぐにわかった。
八幡「ああ、忘れられるわけがない」
雪乃「そうよね」クスッ
八幡「……あ」
雪乃「どうしたの?」
八幡「いや……」
今の一瞬、俺は雪乃に見惚れていた。
――初めて会った時と同じように。
58: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:28:15.84 ID:BhSZj49po
『……そんなところで気持ち悪い唸り声をあげていないで座ったら?』
『え、あ、はい。すいません』
最初の会話はこんな感じだったっけ。我ながらマヌケなセリフだとつくづく思う。
雪乃「平塚先生に連れられて来て、更生だなんだって――」
雪乃「――今思うと本当に唐突よね」
八幡「ようやくそこに気づいたのかよ。俺なんか奉仕部の存在すら知らなかったから、頭ん中がクエスチョンマークで埋め尽くされてたわ」
雪乃「ええ、あなたのあの時の間抜けな顔と言ったら――」
そこで言葉が止まり、急に思いつめたような表情に変わり、歯を食いしばる。必死に涙を堪えているように見えた。
『え、あ、はい。すいません』
最初の会話はこんな感じだったっけ。我ながらマヌケなセリフだとつくづく思う。
雪乃「平塚先生に連れられて来て、更生だなんだって――」
雪乃「――今思うと本当に唐突よね」
八幡「ようやくそこに気づいたのかよ。俺なんか奉仕部の存在すら知らなかったから、頭ん中がクエスチョンマークで埋め尽くされてたわ」
雪乃「ええ、あなたのあの時の間抜けな顔と言ったら――」
そこで言葉が止まり、急に思いつめたような表情に変わり、歯を食いしばる。必死に涙を堪えているように見えた。
59: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:28:48.95 ID:BhSZj49po
雪乃「……いろんなことがあったわね」
八幡「そうだな……」
雪乃「……大変なこととかたくさんあったけれど、楽しかった」
雪乃「あなたと出会えて、よかった」
八幡「…………」
雪乃「こんな終わり方で……っ」
雪乃「こんな風に終わってしまって、すごく胸が痛くて、辛いけれど、それでも……」
雪乃「……あなたと一緒にいられて、よかった」
雪乃はそう、涙を流さずに言い切った。
雪乃「……あなたは?」
八幡「そうだな……」
雪乃「……大変なこととかたくさんあったけれど、楽しかった」
雪乃「あなたと出会えて、よかった」
八幡「…………」
雪乃「こんな終わり方で……っ」
雪乃「こんな風に終わってしまって、すごく胸が痛くて、辛いけれど、それでも……」
雪乃「……あなたと一緒にいられて、よかった」
雪乃はそう、涙を流さずに言い切った。
雪乃「……あなたは?」
60: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:29:45.98 ID:BhSZj49po
八幡「まぁ、悪くはなかったな」
雪乃「ふふっ、あなたらしいわね」
八幡「……俺も、お前といて楽しかったし、それ以上に……」
すぐそこにある終わりの刻が、言葉を詰まらせる。
嫌だ、言いたくない。終わらせたくないんだ。
まだ俺は雪乃と一緒にいたいんだ。
一緒に行きたいところも、一緒に食べたいものも、一緒に見たいものもたくさんあるんだ。
こんなわがままが通じるわけがないのがわかっているのに、それでもまだこんなことを考えてしまう自分がひどく醜い。
でも、最後だから、ちゃんと、伝えなくては――。
八幡「……雪乃」
雪乃「なに?」
雪乃「ふふっ、あなたらしいわね」
八幡「……俺も、お前といて楽しかったし、それ以上に……」
すぐそこにある終わりの刻が、言葉を詰まらせる。
嫌だ、言いたくない。終わらせたくないんだ。
まだ俺は雪乃と一緒にいたいんだ。
一緒に行きたいところも、一緒に食べたいものも、一緒に見たいものもたくさんあるんだ。
こんなわがままが通じるわけがないのがわかっているのに、それでもまだこんなことを考えてしまう自分がひどく醜い。
でも、最後だから、ちゃんと、伝えなくては――。
八幡「……雪乃」
雪乃「なに?」
61: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:30:14.06 ID:BhSZj49po
八幡『「俺はお前が好きだ」』
62: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:30:44.95 ID:BhSZj49po
雪乃「それって……」
そう、俺が自分の気持ちを伝えた時の、あの言葉だ。
八幡「だから、お前と一緒にいて俺は、幸せだったんだ」
必死に涙をかみ殺しながらそう言った。
雪乃「そう……。なら、よかった」
八幡「ああ」
俺はゆっくりと立ち上がり、玄関の前まで歩く。後ろから雪乃がついてくる。
ドアを開き、外に出ると、冷たい風が部屋の中に流れ込んできた。
八幡「さむ……」
横から雪乃が外に出る。薄着の俺と違って上着を着ている雪乃はあったかそうだ。
さっきからずっと泣きそうになるのを堪えているから、そろそろ顔中の筋肉が辛い。それでも最後まで泣かずにいたかったから、グッと拳を握りしめた。
そう、俺が自分の気持ちを伝えた時の、あの言葉だ。
八幡「だから、お前と一緒にいて俺は、幸せだったんだ」
必死に涙をかみ殺しながらそう言った。
雪乃「そう……。なら、よかった」
八幡「ああ」
俺はゆっくりと立ち上がり、玄関の前まで歩く。後ろから雪乃がついてくる。
ドアを開き、外に出ると、冷たい風が部屋の中に流れ込んできた。
八幡「さむ……」
横から雪乃が外に出る。薄着の俺と違って上着を着ている雪乃はあったかそうだ。
さっきからずっと泣きそうになるのを堪えているから、そろそろ顔中の筋肉が辛い。それでも最後まで泣かずにいたかったから、グッと拳を握りしめた。
63: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:31:33.39 ID:BhSZj49po
八幡「……ょく」
雪乃「?」
八幡「体力ねぇんだから、体だけはお大事にな」
雪乃「あなたもその捻くれた思考、もう少しどうにかした方がいいと思うわ」
八幡「うっせ」
そんなやり取りに二人で少しだけ笑って、また会話が途切れた。
うつむいたままで何をしたらいいかわからない。何を言えばいいのかわからない。
するとその時、雪乃が一歩だけ俺に寄り、その顔を俺の顔に近づけた。
一瞬焦ったが、俺はそれに応じて、雪乃の唇にそっとキスをする。
雪乃「?」
八幡「体力ねぇんだから、体だけはお大事にな」
雪乃「あなたもその捻くれた思考、もう少しどうにかした方がいいと思うわ」
八幡「うっせ」
そんなやり取りに二人で少しだけ笑って、また会話が途切れた。
うつむいたままで何をしたらいいかわからない。何を言えばいいのかわからない。
するとその時、雪乃が一歩だけ俺に寄り、その顔を俺の顔に近づけた。
一瞬焦ったが、俺はそれに応じて、雪乃の唇にそっとキスをする。
64: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:32:27.22 ID:BhSZj49po
やわらかく、あたたかい感触。
そして、これが最後だと告げているような雪乃の潤んだ瞳が、さらに胸をしめつける。
永遠にも感じられる数秒が過ぎて、互いの唇は自然に離れた。
雪乃「……じゃあ」
八幡「……」
何も言わずにただ頷く。
雪乃「……さよなら」
八幡「ああ。…………さよなら」
そして、これが最後だと告げているような雪乃の潤んだ瞳が、さらに胸をしめつける。
永遠にも感じられる数秒が過ぎて、互いの唇は自然に離れた。
雪乃「……じゃあ」
八幡「……」
何も言わずにただ頷く。
雪乃「……さよなら」
八幡「ああ。…………さよなら」
65: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:33:27.61 ID:BhSZj49po
背中を向けて歩き出す。
決して振り返ることなく。
通り慣れた道を歩いていく。
俺は何もできずに突っ立っている。
その小さくなる背中をただ見つめている。
そして人ごみに紛れて見えなくなってしまっても、
俺はそれを見続けていた。
――いつまでも。
66: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:33:55.94 ID:BhSZj49po
一ヶ月後。
ゴーインゴーインアロンウェーイ
八幡「……む、メール」
八幡「って、材木座かよ……」
八幡「朝からなんだよ……って昼か」
【FROM:材木座】
【TITLE:久しぶりだな】
【どうだ、八幡。
共になりたけに行こうではないか?】
八幡「うぇ……なりたけかよ……」
寝起きにはちょっとキツくない? まぁ一度行って割と大丈夫だったけど。
【TITLE:RE:久しぶりだな】
【了解。一時間後にエースの前で】
八幡「……久々だな、なりたけ」
ゴーインゴーインアロンウェーイ
八幡「……む、メール」
八幡「って、材木座かよ……」
八幡「朝からなんだよ……って昼か」
【FROM:材木座】
【TITLE:久しぶりだな】
【どうだ、八幡。
共になりたけに行こうではないか?】
八幡「うぇ……なりたけかよ……」
寝起きにはちょっとキツくない? まぁ一度行って割と大丈夫だったけど。
【TITLE:RE:久しぶりだな】
【了解。一時間後にエースの前で】
八幡「……久々だな、なりたけ」
67: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:34:34.90 ID:BhSZj49po
――
――――
材木座「むーーーー、やっはろーーー!!!」
八幡「うるせぇよ、あとうるさい」
材木座「八幡とラーメンとは久々だからな。テンションも上がるというものよ!!」
八幡「えー、なんか気持ち悪い」
材木座「さて、行くとしよう」
八幡「ノーダメージか。どんだけ守備力たけぇんだよ。千年の盾か」
材木座「八幡は捻デレだと聞いておるからな」
八幡「おいそれはどこ情報だ」
――――
材木座「むーーーー、やっはろーーー!!!」
八幡「うるせぇよ、あとうるさい」
材木座「八幡とラーメンとは久々だからな。テンションも上がるというものよ!!」
八幡「えー、なんか気持ち悪い」
材木座「さて、行くとしよう」
八幡「ノーダメージか。どんだけ守備力たけぇんだよ。千年の盾か」
材木座「八幡は捻デレだと聞いておるからな」
八幡「おいそれはどこ情報だ」
68: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:35:40.00 ID:BhSZj49po
材木座「うむ、やはりここに来たなら超ギタだな。ん~。この膨大な背脂がたまらん!」
八幡「超うめぇな。一回食ったら当分食えねぇくらいボリュームたっぷりだし」
材木座「甘いな。我は週一で来ているぞ」
八幡「知ってる。そのまま血管詰まらせてしまえ」
材木座「けっか……えっ?」
困惑する材木座を無視して食べ続ける。
八幡「…………」ズズー
前に来たのは、まだ雪乃と付き合ってた時か。
隣を見るとその席は空いている。前はここにいた人間が、今はいない。
少しだけまた寂しくなって、それを頭から追い払うように麺をむさぼる。やっぱうめぇやこれ。
八幡「超うめぇな。一回食ったら当分食えねぇくらいボリュームたっぷりだし」
材木座「甘いな。我は週一で来ているぞ」
八幡「知ってる。そのまま血管詰まらせてしまえ」
材木座「けっか……えっ?」
困惑する材木座を無視して食べ続ける。
八幡「…………」ズズー
前に来たのは、まだ雪乃と付き合ってた時か。
隣を見るとその席は空いている。前はここにいた人間が、今はいない。
少しだけまた寂しくなって、それを頭から追い払うように麺をむさぼる。やっぱうめぇやこれ。
69: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:36:21.88 ID:BhSZj49po
――
――――
材木座とはあの後ゲーセン行って、格ゲーやって別れた。てかあいつすげー腕上がってんの。ずっとゲーセンにいたんじゃないかと疑うレベル。
で、今は家でゴロゴロ漫画タイムである。笑ゥせぇるすまんめちゃくちゃ怖え。
八幡「……マッ缶飲も」
たまに来るマッ缶をとてつもなく飲みたくなる衝動。ただのコーヒーに練乳を入れたなんちゃってMAXコーヒーじゃ満足できないやつが来た。
だから俺は、本物が欲しい(自虐)。
八幡「マッ缶マッ缶~」
八幡「……がない!?」
しまった、昨日の夜に飲んだのが最後だったか。しかし今はマッ缶が飲みたい。
だから俺は(以下略)。
八幡「……コンビニ行くか」
――――
材木座とはあの後ゲーセン行って、格ゲーやって別れた。てかあいつすげー腕上がってんの。ずっとゲーセンにいたんじゃないかと疑うレベル。
で、今は家でゴロゴロ漫画タイムである。笑ゥせぇるすまんめちゃくちゃ怖え。
八幡「……マッ缶飲も」
たまに来るマッ缶をとてつもなく飲みたくなる衝動。ただのコーヒーに練乳を入れたなんちゃってMAXコーヒーじゃ満足できないやつが来た。
だから俺は、本物が欲しい(自虐)。
八幡「マッ缶マッ缶~」
八幡「……がない!?」
しまった、昨日の夜に飲んだのが最後だったか。しかし今はマッ缶が飲みたい。
だから俺は(以下略)。
八幡「……コンビニ行くか」
70: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:37:30.65 ID:BhSZj49po
イヤホンを耳に着けて部屋を出て、鍵を閉めたか確認して歩き出す。
ふと、一ヶ月前に同じ道を通った彼女のことを思い出した。
あの時、彼女の目には何が映っていたのだろうか。それが知りたくなって前を見てみる。
俺の目にはいつもと同じ風景しか映らない。
――その瞬間、ある光景がフラッシュバックした。
俺の前から遠ざかっていった、あの小さな背中。
あの時にも気づいていたが、彼女の肩は震えていた。
その寄る辺のない手も、同じように震えていた。
本当は彼女だって嫌だったはずなのだ。
でもそんな素ぶりを俺に見せてはならないと、必死に感情を押し殺していたのだ。
だから、もしかしたらあの時、彼女には何も見えていなかったのかもしれない。
どうしてか、そう思った。
ふと、一ヶ月前に同じ道を通った彼女のことを思い出した。
あの時、彼女の目には何が映っていたのだろうか。それが知りたくなって前を見てみる。
俺の目にはいつもと同じ風景しか映らない。
――その瞬間、ある光景がフラッシュバックした。
俺の前から遠ざかっていった、あの小さな背中。
あの時にも気づいていたが、彼女の肩は震えていた。
その寄る辺のない手も、同じように震えていた。
本当は彼女だって嫌だったはずなのだ。
でもそんな素ぶりを俺に見せてはならないと、必死に感情を押し殺していたのだ。
だから、もしかしたらあの時、彼女には何も見えていなかったのかもしれない。
どうしてか、そう思った。
71: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:38:14.56 ID:BhSZj49po
今の自分に合いそうな曲を探して再生ボタンを押す。まぁ、なんだ。たまにはセンチメンタルになったっていいだろ。
少し遅れて、切なげなギターのイントロが始まる。
――いつか雪乃が何かの小説を読んだ時に、好きなのに別れる理由がわからないと言ったことを思い出した。その時は俺も同じようにわからなかった。
お互いが好き合っているのに、別れるという選択肢を選ぶ心理が、感情が理解できなかったのだ。
別れる原因はお互いが、またはどちらか一方が相手を嫌うからなのだと、それが全てだと思っていた。
けれど、今は何となく、それがわかる気がする。
少し遅れて、切なげなギターのイントロが始まる。
――いつか雪乃が何かの小説を読んだ時に、好きなのに別れる理由がわからないと言ったことを思い出した。その時は俺も同じようにわからなかった。
お互いが好き合っているのに、別れるという選択肢を選ぶ心理が、感情が理解できなかったのだ。
別れる原因はお互いが、またはどちらか一方が相手を嫌うからなのだと、それが全てだと思っていた。
けれど、今は何となく、それがわかる気がする。
72: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:39:03.06 ID:BhSZj49po
彼女は今頃どこで何をしているだろうか。
笑っているだろうか。それとも彼女もまた、俺と同じように立ち直れていないのだろうか。
――笑ってくれていたらいいと、そう思う。
俺の知らない何処かで、俺の知らない誰かと、俺の知らない服を着て、幸せに日々を過ごしていて欲しいと、素直に思う。
なぜならそれは、俺自身が彼女にしてあげられなかったことだから。
笑っているだろうか。それとも彼女もまた、俺と同じように立ち直れていないのだろうか。
――笑ってくれていたらいいと、そう思う。
俺の知らない何処かで、俺の知らない誰かと、俺の知らない服を着て、幸せに日々を過ごしていて欲しいと、素直に思う。
なぜならそれは、俺自身が彼女にしてあげられなかったことだから。
73: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:40:16.44 ID:BhSZj49po
八幡「気の向くまま 過してた二人だから そう……」
八幡「終る事感じてた 割にミジメネ……」
八幡「いつも一緒 何をするにでも 二人だった……」
八幡「あんな日は もう二度と来ない様な気がして……」
イヤホンから流れてくる曲を口ずさむ。
彼女が歩いた道をたどりながら、少しだけ思い出して、懐かしんで、最後には寂しがって。
そして今はまだ少しだけ痛む胸を抱えながら、歩いていく。
八幡「……元気でな」
そうつぶやいた俺の声は、風に流されどこかへ飛び去っていった。
八幡「終る事感じてた 割にミジメネ……」
八幡「いつも一緒 何をするにでも 二人だった……」
八幡「あんな日は もう二度と来ない様な気がして……」
イヤホンから流れてくる曲を口ずさむ。
彼女が歩いた道をたどりながら、少しだけ思い出して、懐かしんで、最後には寂しがって。
そして今はまだ少しだけ痛む胸を抱えながら、歩いていく。
八幡「……元気でな」
そうつぶやいた俺の声は、風に流されどこかへ飛び去っていった。
74: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:41:10.25 ID:BhSZj49po
【Epilogue】
ここは千葉で最も有名な某テーマパーク、その名もディスティニィーランドである。
娘「おとうさーん」タッタッタッ
八幡「おう。どうした?」
娘「なににのるのー?」
八幡「んー、そうだな。あんまし並ばなさそうなチキルームでも行くか」
娘「なにそれー?」
八幡「鳥さんが歌うんだよ」
娘「えー、それつまんなさそー」
八幡「ぐぬっ!?」
ここは千葉で最も有名な某テーマパーク、その名もディスティニィーランドである。
娘「おとうさーん」タッタッタッ
八幡「おう。どうした?」
娘「なににのるのー?」
八幡「んー、そうだな。あんまし並ばなさそうなチキルームでも行くか」
娘「なにそれー?」
八幡「鳥さんが歌うんだよ」
娘「えー、それつまんなさそー」
八幡「ぐぬっ!?」
75: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:41:36.86 ID:BhSZj49po
妻「こら、娘相手に手を抜こうとしない」
八幡「いやだってここ並ぶやつはめっちゃ並ぶし……」
妻「あの子が今日を楽しみにしてたの、あんただって見てなかったとは言わせないよ?」
八幡「ぐっ……、まぁ、そうなんだが……」
でも二時間待ち、三時間待ちとかまず無理だろ。俺じゃなくて子どもの方が。
八幡「おーい」
娘「なにー?」
八幡「何に乗りたい?」
娘「んーとね……、じゃあー……、あれ!」
その指差した先にあったのは――。
八幡「パンさんのハニーハント……だと……!?」
八幡「いやだってここ並ぶやつはめっちゃ並ぶし……」
妻「あの子が今日を楽しみにしてたの、あんただって見てなかったとは言わせないよ?」
八幡「ぐっ……、まぁ、そうなんだが……」
でも二時間待ち、三時間待ちとかまず無理だろ。俺じゃなくて子どもの方が。
八幡「おーい」
娘「なにー?」
八幡「何に乗りたい?」
娘「んーとね……、じゃあー……、あれ!」
その指差した先にあったのは――。
八幡「パンさんのハニーハント……だと……!?」
76: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:43:02.91 ID:BhSZj49po
娘「……ダメ?」ウルッ
八幡「いやダメじゃないダメじゃない。全然ダメじゃない。ただ、あれは並ぶのを覚悟しないとだな」
娘「んー?」
妻「ファストパスは?」
八幡「あー、別に取ってもいいんだが、今からだと多分乗れるの夕方以降になるんだよなぁ。パンさんのはめちゃくちゃ人気だし」
娘「むー……」
八幡「……夕方まで待てるか?」
娘「…………」
八幡「パンさんのアイス買ってやるから」
娘「まてる!」
八幡「よし、いい子だ」ナデナデ
娘「えへへー」
八幡「いやダメじゃないダメじゃない。全然ダメじゃない。ただ、あれは並ぶのを覚悟しないとだな」
娘「んー?」
妻「ファストパスは?」
八幡「あー、別に取ってもいいんだが、今からだと多分乗れるの夕方以降になるんだよなぁ。パンさんのはめちゃくちゃ人気だし」
娘「むー……」
八幡「……夕方まで待てるか?」
娘「…………」
八幡「パンさんのアイス買ってやるから」
娘「まてる!」
八幡「よし、いい子だ」ナデナデ
娘「えへへー」
78: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:43:29.46 ID:BhSZj49po
――
――――
八幡「……まぁファストパス取るのにも並ぶんですけどね」
娘「おかーさんつかれたー」
妻「えぇー? でもこの辺に座れるところないし……」
八幡「……ほら、乗れ」スッ
娘「うん!」
八幡「うん、しょと」グオオオオオ
娘「うわーーーー!! たかいたかい!」
妻「…………」
八幡「これならいいだろ?」
妻「……うん。たまには父親らしいね」
八幡「そのたまには、が余計だ」
――――
八幡「……まぁファストパス取るのにも並ぶんですけどね」
娘「おかーさんつかれたー」
妻「えぇー? でもこの辺に座れるところないし……」
八幡「……ほら、乗れ」スッ
娘「うん!」
八幡「うん、しょと」グオオオオオ
娘「うわーーーー!! たかいたかい!」
妻「…………」
八幡「これならいいだろ?」
妻「……うん。たまには父親らしいね」
八幡「そのたまには、が余計だ」
79: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:44:23.40 ID:BhSZj49po
八幡「しかしなげぇなぁ……。どうしてこんなにも人が多いんだ……」
少し列の横に首を出して長さを見てみる。……うわ、まだあんなにあるのかよ。
ここからだと出口が見えて、そこからカップルや家族連れや友達同士の集まりが一定間隔を空けて出てくる。こんなに並んでて出るのがあの間隔って、考えてみるとあれだな。ヤバいな。
子ども「おかーさーん。パンさんおもしろかったねー」
??「ええ、そうね。やっぱりパンさんが一番可愛いわ」
――この声は。
一瞬それが誰の声だかわからなかったが、耳に入った瞬間に体に電流が走ったように動けなくなった。
ゆっくりと、その方へ振り向く。
そこにいたのは――。
――雪ノ下雪乃だった。
少し列の横に首を出して長さを見てみる。……うわ、まだあんなにあるのかよ。
ここからだと出口が見えて、そこからカップルや家族連れや友達同士の集まりが一定間隔を空けて出てくる。こんなに並んでて出るのがあの間隔って、考えてみるとあれだな。ヤバいな。
子ども「おかーさーん。パンさんおもしろかったねー」
??「ええ、そうね。やっぱりパンさんが一番可愛いわ」
――この声は。
一瞬それが誰の声だかわからなかったが、耳に入った瞬間に体に電流が走ったように動けなくなった。
ゆっくりと、その方へ振り向く。
そこにいたのは――。
――雪ノ下雪乃だった。
80: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:45:02.05 ID:BhSZj49po
小さな男の子の手を繋ぎながら、こっちの方に歩いてくる。男の子をはさんで背の高い、なかなか格好いい男が歩いている。
彼女が浮かべる笑顔はとても自然で幸せそうだ。それを見て俺は、少し嬉しくなる。
ふと、彼女の目線がこっちに向く。娘を肩車している俺と目が合う。
彼女が俺の存在を知覚する。
すると、そんな俺を見て彼女は微笑みを浮かべた。
その笑顔で俺は確信した。
あんな風に微笑むことができるということは、彼女に俺以上に大切な誰かが出来たということと同義だ。
ああ、よかった。
心からそう思う。
彼女はもう、あの過去に縛られていない。
過去は思い出となり、傷はカサブタを経て消えた。
それが嬉しくて、俺も口元が緩む。
彼女が浮かべる笑顔はとても自然で幸せそうだ。それを見て俺は、少し嬉しくなる。
ふと、彼女の目線がこっちに向く。娘を肩車している俺と目が合う。
彼女が俺の存在を知覚する。
すると、そんな俺を見て彼女は微笑みを浮かべた。
その笑顔で俺は確信した。
あんな風に微笑むことができるということは、彼女に俺以上に大切な誰かが出来たということと同義だ。
ああ、よかった。
心からそう思う。
彼女はもう、あの過去に縛られていない。
過去は思い出となり、傷はカサブタを経て消えた。
それが嬉しくて、俺も口元が緩む。
82: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:45:29.10 ID:BhSZj49po
俺たちは行列に並んでいたから、彼女たちはすぐに俺たちの横を通り抜けた。
お互いに声をかけない。振り返らない。
言葉なんていらない。
ただ、あの笑顔だけで十分だ。
楽しそうな声が遠ざかって、小さくなって、やがて、消えた。
お互いに声をかけない。振り返らない。
言葉なんていらない。
ただ、あの笑顔だけで十分だ。
楽しそうな声が遠ざかって、小さくなって、やがて、消えた。
83: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:46:13.13 ID:BhSZj49po
八幡「…………」
娘「どーしたの?」
八幡「……なんでもない。そらっ」グッ
娘「きゃっ!?」
八幡「どうだー? よく見えるかー?」
娘「こわい! たかい! おろして!」バタバタ
八幡「わりぃわりぃ」スッ
妻「恐がらせてどうする」
八幡「いや、なんか、こう……、はい、すいません」
目が恐いから。高いのよりもよっぽど恐いから。
娘「どーしたの?」
八幡「……なんでもない。そらっ」グッ
娘「きゃっ!?」
八幡「どうだー? よく見えるかー?」
娘「こわい! たかい! おろして!」バタバタ
八幡「わりぃわりぃ」スッ
妻「恐がらせてどうする」
八幡「いや、なんか、こう……、はい、すいません」
目が恐いから。高いのよりもよっぽど恐いから。
89: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:49:12.03 ID:BhSZj49po
あれからもう二度と恋なんかしないと思いながら、懲りもせずまた他の誰かを好きになって、フラれたり、付き合ったり、別れたりして、そうして今がある。
しっかり者の妻と、目に入れても痛くないレベルに可愛い娘。てか娘は特にヤバい。小町よりも可愛い生物がこの世にいるとは思わなかった。
そんな人と出会えて、子どもも生まれて、毎日が騒がしいくらいに賑やかな生活。
自分には贅沢すぎるくらい幸せだ。
きっと、彼女もそんな日々を送っているのだろう。
真っ青な雲一つない青空を見上げる。
神様なんてものは信じちゃいないが、それでもいるのならこう願わせてもらおう。
――どうか、彼女のこの先の人生にも、幸多からんことを。
ビュウっと心地よい風が吹く。
それはもうすぐ春がくることを告げるような、そんな風だった。
おわり
しっかり者の妻と、目に入れても痛くないレベルに可愛い娘。てか娘は特にヤバい。小町よりも可愛い生物がこの世にいるとは思わなかった。
そんな人と出会えて、子どもも生まれて、毎日が騒がしいくらいに賑やかな生活。
自分には贅沢すぎるくらい幸せだ。
きっと、彼女もそんな日々を送っているのだろう。
真っ青な雲一つない青空を見上げる。
神様なんてものは信じちゃいないが、それでもいるのならこう願わせてもらおう。
――どうか、彼女のこの先の人生にも、幸多からんことを。
ビュウっと心地よい風が吹く。
それはもうすぐ春がくることを告げるような、そんな風だった。
おわり
90: ◆.6GznXWe75C2 2015/01/31(土) 20:50:17.29 ID:BhSZj49po
読んでくださりありがとうございました。
なんかいろいろ強引ですね。
やっぱり恋愛ものって難しい。
BOOWYのCLOUDY HEARTという曲を基に書きました。すごい好きな曲なので、よかったらそちらも聞いてくださったら嬉しいです。
http://www.youtube.com/watch?v=OlrSIZBJ7Jw
なんかいろいろ強引ですね。
やっぱり恋愛ものって難しい。
BOOWYのCLOUDY HEARTという曲を基に書きました。すごい好きな曲なので、よかったらそちらも聞いてくださったら嬉しいです。
http://www.youtube.com/watch?v=OlrSIZBJ7Jw
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/31(土) 20:52:08.11 ID:2y7lML79O
リアルタイムで読んでた
おつ
良かったよ
おつ
良かったよ
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/31(土) 20:53:28.68 ID:XL0R41rq0
乙いい雰囲気だった
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/31(土) 20:53:32.29 ID:r2dtiKnLO
おつ
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422701762/
Entry ⇒ 2017.12.29 | Category ⇒ やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 | Comments (0)
鷺沢文香「過去と回顧とこれからと」
1: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:36:51.60 ID:1t1+je8o0
初投稿です
鷺沢文香「あなたの知らない物語」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1488462506/
↑世界線が同じ前作ですが、読まなくても平気です
2: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:40:03.53 ID:1t1+je8o0
長野県のとあるビジネスホテルの一室。
俺は酒の入ったグラスを、文香さんはソフトドリンクの入ったグラスを持って。俺たちはそれらを当て合って、グラスはカチリと音を鳴らした。
「誕生日おめでとう、文香さん。」
「…ありがとう…ございます。」
10月27日、文香さんの誕生日。奇しくもこの日は、俺と文香さんが出会ってからちょうど一年の日でもあった。
「色々あったよね、この一年。」
「ええ…本当にいろいろなことが。今日のことも、良い思い出になりました。」
今日は文香さんの誕生日に合わせた、地元長野でのライブがあった。結果は大盛況。文香さんもいきいきしていた。最高のライブと言って差し支えないだろう。
…まぁ、そのせいで、文香さんの誕生日を祝える人間が、この俺しか居ないんだけど。ホテルの一室でする二人だけの誕生日会は、どこか寂しく感じた。
「…もっと大勢で祝いたかったな。」
二十歳の誕生日というこの日は二度と来ない。だから文香さんには、少しでも楽しい思い出を残してもらいたかった。こんな野郎一人だけって言うのはイヤだろう。
「…え、えぇ、そうですね…。」
明日と明後日はオフ。文香さんに「地元でゆっくりしてもらおう」という、ちひろさんのはからいだ。だから東京に戻るのは2日後。これじゃあ何日も遅れた誕生日会になっちゃいそうだな。
でも、まったく祝わないよりも、プレゼントなり話なりした方がいいだろう。だから、俺の部屋でライブの打ち上げと誕生会を兼ねた、ちいさなパーティをすることになった。
本当は、地元の店でするつもりだった。でも、文香さんは有名になりすぎた。店に入るやいなや、「サインをください!」、「歌ってください!」と酔っ払いとファンの集団に絡まれた。
避難した結果が、このホテルの一室。アイドルが男と二人っきりというのマズいだろう。しかし、やましいことが全くなければ問題もないだろう。
そもそも、俺と文香さんがそんなことになるわけないし。
3: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:42:12.34 ID:1t1+je8o0
「一年か…。」
不意に口を言葉がついた。一年。12ヶ月。365日。人が何かをなそうとするには、十分で短い時間だ。
「一年…ですね。」
この一年で、文香さんの人生は大きく変わった。
「全てのことが…昨日の事のように、はっきりと思い出せます…。それほど、この一年は私にとって、衝撃的で…。」
そうだな。本当にこの一年は色々あった。良いことも、悪いことも、嬉しいことも、苦しいことも。
「……。」
ぐいっと、酒を口に流し込む。が、味はよく分からなかった。
「…プロデューサーさんは、覚えていますか?私が、スカウトされたときのこと…。」
「うん…覚えてるよ。」
文香さんの言葉を借りるなら、それこそ昨日の事のように、出会いを思い出せる。
「忘れられるわけ、ないよ。」
あの日、今がまだ未来だった頃、鷺沢文香という人間の人生は大きく変わった。
4: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:43:33.09 ID:1t1+je8o0
―――
――
―
一年前の10月27日。この数日前から、ついに俺もアイドルをプロデュースすることになっていた。
「と、いうことでアイドルの卵をプロデュースしてきてください!」
ちひろさん曰く、プロデューサー自身がスカウトした娘の方が、そうでない娘の方とくらべ活躍しているんだと。そう聞いた俺は、熱心に熱心にスカウトに励んだ。
街に繰り出し、道行く人々に声をかけまくった。
「すいません、ちょっとお話を…」「自分はこういう者ですが。」「時間はとらせませんので。」「いや怪しい者じゃないです!」「え、職質ですか?」「すいませんでした…」
結果は失敗。失敗。失敗。大失敗。ついには警察の人に色々書かれて、謝ることにもなった。
「はぁ…。」
数日、そんなこんなあって、ちょっと自信をなくしかけた頃。休憩ついでに入った、あるカフェで、彼女と出会った。彼女は顔を伏せ、読書にふけっていた。
一目彼女を見た瞬間、稲妻に撃たれたような感覚が体を駆け巡った。
「この娘と仕事がしたい、この娘がアイドルになった姿を見たい」。体が自然と動いた。ずかずかと彼女に歩み寄り、少し上ずった声で、告げる。
「アイドルに興味はありませんか?」
これが、俺と鷺沢文香の出会い。
5: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:44:15.58 ID:1t1+je8o0
しかし、最初の結果は失敗だった。だが、断られたワケではない。
「…」
そもそも、俺の方を彼女は一切見ようとしなかったのだ。
「あ、あのー…」
彼女は、俺の言葉など何処吹く風、ただ文字を追う目線とページをめくるための手だけを動かし続けた。
長丁場になることを恐れた俺は、とりあえずコーヒーを注文し、席に着いた。コーヒーを飲みながらチラチラと一人の女性を見続けた。巡り合わせとか悪かったら、捕まってたと思う。
コーヒーの他にサンドイッチも追加注文してから30分たった後。ようやく彼女は本を読み終えた。
「…ふぅ……。」
今だ。本を読み終わったタイミングを見計らい、彼女に声をかける。滅茶苦茶怪しまれたし、彼女はどことなくおびえていた。
多分あのとき、人生で一番ヤバい顔をしていたと思う。実際文香さんに「あのときはとても恐ろしかった」って言われたし。
「…私を、アイドルに……ですか?」
彼女の警戒心をとくため、そしてスカウトのため、自分の身の上や仕事内容を、自分の語彙力をフル活用して彼女に精一杯の説明をした。
「…話が、よく………すみません、今日はこのあたりで、失礼します……。」
結果は、失敗。ちゃんと話を聞いてもらった上で、ちゃんと断られた。
6: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:48:09.32 ID:1t1+je8o0
しかし、俺はあきらめたくなかった。俺にとって彼女は、金鉱脈よりも価値があるのように感じたからだ。
ダメ元で何度かあのカフェに通ううちに、なんどか彼女を見にすることが出来た。
どうやら彼女の行きつけの店らしい。だから俺は足繁く通い、彼女に会うたびにスカウトをした。
手を変え品を変え、時にはライブ映像を、時には歌を。とにかく、アイドルの世界に触れてもらえるようにした。そして、彼女にアイドルの世界に興味を持ってもらえるように話をした。
最初は疑っていた彼女も、先輩となるアイドたちの話や映像を見聞きするうちに心に変化があったらしく。
2週間ほどこんな日々が続くと、彼女の方から切り出してきた。
「……一度、その事務所に、お伺いしても、よろしいでしょうか?」
「…と言うことは…!!」
「はい…アイドルというお仕事に…」
アイドルの世界に、彼女は興味を示してくれた。なんだか、嬉しくなった。泣きそうになった。カフェの店内ということを忘れて喜んだ。店員さんに怒られた。すいませんでした。
7: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:48:43.58 ID:1t1+je8o0
―――
――
―
「あのときは本当に嬉しかったなぁ…」
苦い記憶もあるが、それを補って余りあるほどの嬉しい記憶たち。つい口角が上がってしまうし、酒はまだそれほど入っていないのに気分は上がる。
「実はあのとき…怒られているプロデューサーさんをみて、少し、後悔したんですよ…。『本当に大丈夫なのか』って…。」
笑みをこぼしながら文香さんは言う。ちょっと待って初耳なんだけど。
「杞憂…でしたが。」
さらに顔をほころばせて文香さんは続ける。よかった。
「でも…情けなかったかな、俺。」
「………少し。」
やっぱり。
「…というか、なんか今日の文香さん、いつもと違うね。」
「そう…でしょうか?」
「うん。」
いつもとは違った、どこかしらのちょっとした違和感。文香さんもやっぱり高揚しているのだろうか?
8: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/23(日) 23:49:18.15 ID:1t1+je8o0
「ですが、情けなさで言えば…初レッスンの…あのときの、私に比べると…」
「あー…あのときの」
文香さんが事務所の正式なアイドルになってから、しばらくして基礎のダンスレッスンがあった。
「文香さん倒れちゃったもんね」
「はい…あのときは…自分自身が情けなく…恥ずかしく…」
「いや、初めてのレッスンだったんだし…それに、あのときも言ったけど、最初から何でも出来る人なんて居ないし…情けなくも、恥ずかしくもないよ」
そうだ、文香さんは情けなくも、恥ずかしくもない。むしろ誇るべき行為をしていた。だがそれを、驕りも何もなく、全く人に言わないあたりが文香さんらしいともいえるけれど。
俺は、いまでも、あの光景は胸に刻み込んでいる。
あの姿だけは、多分、絶対に忘れちゃいけない。
13: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:39:21.43 ID:Lsqy+rty0
―――
――
―
鷺沢さんの初レッスンが終わった。レッスン場には、疲弊しきったその姿があった。
「…すみません、でした……。」
「謝らなくていいよ…初めはみんなこんな感じなんだし。」
初レッスンはダンスの基礎レッスンだった。鷺沢さんは体力に自信がないらしく、レッスンが終わるとそのままへたり込んでしまった。
「体を動かすことが…ここまで辛いとは…。」
「これから、これからだから、頑張っていこう。」
そうだ、まだこれから。向き不向きはさておき、最初から何でも出来る人間は少ない。出来ないことを恥じる必要もないのだ。
「…はい。」
もしダンスが鷺沢さんに向いていなくても、それを考慮した売り出し方も魅せ方も考えてあるし。
「それじゃ、今日はお疲れ様。」
「…はい、お疲れ様、でした。」
これから、これから。
14: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:39:49.92 ID:Lsqy+rty0
鷺沢さんのレッスンが終わった後、事務所に戻って残った仕事をしていたときに。
「アレ?」
手帳が手元にないことに気づいた。どこかに落としたらしい。あれにはこれからの日程なり連絡先など、中々に重要な事を書いていた。
「ちひろさん、ちょっと、すいません。」
ちひろさんに事情を説明し、手帳を探しに出た。心当たりはある。レッスン場で鷺沢さんに明日の予定を告げたときには手にあった。
今思い返すと、鞄に入れるときに落とした気がする。そうだとしたらかなり間抜けだけど。
15: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:40:20.60 ID:Lsqy+rty0
レッスン場に続く廊下にて。
「あった!」
ドアの近くに手帳は落ちていた。記憶では、ドアを開けてすぐに手帳をしまおうとしていたから、入らず落としてしまったという推理は見事に当たっていた。
「間抜けすぎるだろ俺。」
鞄に入れずに落とすって。
「…?」
手帳にばかり気をとられ気が付かなかったが、だれもいないはずのレッスン場にまだ明かりがついている。消し忘れか?
「…ふぅ、…ふぅ。」
なかから声が聞こえる。その声はとても苦しそうだった。
声の主は、鷺沢さんだった。
16: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:40:55.05 ID:Lsqy+rty0
すでに帰っているはずの彼女が、どうしてまだレッスン場にいるのだろうか。気になり俺は中を覗いた。
「…まだ、まだ……!」
まさか、俺と別れたあの時からやり続けているのだろうか?黙々と、熱心に、ダンスの基礎ステップを反復し続ける彼女の姿がそこにはあった。まだ動きは拙く、お世辞にも上手だとは言えないレベルだ。
だが俺は、その姿を、かっこよく思った。ひたむきに努力する鷺沢さんの、その姿は、俺にとって、たまらなく格好良いものだったのだ。
17: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:41:27.09 ID:Lsqy+rty0
でも、流石に、
「はぁ、はぁ…」
フラフラだった。見とれている場合じゃない。これ以上続けさせるのはまずいだろう。
「鷺沢さん」
「!!…プロデューサーさん?」
ドアを開け、レッスン上の中に入り、彼女に駆け寄る。
「どうして…ここに…。」
「あぁ、それは…」
鷺沢さんに尋ねられたが、あの間抜けな理由を話すのはなぜか忍びなかったので、適当にごまかしておいた。
「鷺沢さんこそ、まだ帰ってなかったの?」
「はい…その………ダメでしたか?」
「いや、ダメなんかじゃないよ。」
ダメなわけあるもんか。仮にダメだったとしても、あそこまで頑張っていた人にダメなんて言えるもんか。
「自主レッスンはダメじゃない。けど、やり過ぎはダメだ。」
それで体を壊したりしたら目も当てられない。鷺沢さんには、そうなって欲しくなかった。
「…すみません、でした………。」
「だから、謝る必要ないよ。」
謝る必要もあるもんか。
「…………。」
申し訳なさそうに顔を伏せる鷺沢さんは、さっきとは別人のようだった。
18: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:41:58.23 ID:Lsqy+rty0
鷺沢さんを送り届ける途中も、その後も、事務所に戻ってからの仕事中も。あの光景が頭から離れることはなく、仕事もあまり進まなかった。ちひろさんにすこし諭された。
あの姿。俺が知らなかった鷺沢さんの一面。自分が知り得ない鷺沢さんの一面を見ることが出来て、俺は何故か嬉しく思った。と、同時に、自分を少し恥じた。
これまでの数日、俺は鷺沢さんのことを知ろうとしなかったからだ。これから仕事をしていこうって相手のことについて俺はあまりにも疎かった。これこそ間抜けだ。大間抜けだ。
鷺沢さんだって、アイドルになったばかりでまだ不安だらけなはずだ。そんなときってのに、俺が鷺沢さんの事を理解してなくてどうする。
「知らなきゃな。」
鷺沢さんについて、彼女の事について。
19: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:42:32.21 ID:Lsqy+rty0
そうとなれば早速行動をするべきだろう。
「オススメの、本…ですか?」
「うん。」
翌日。俺は手始めに、鷺沢さんに好きな本を尋ねることにした。
「鷺沢さんが好きなものを、俺も知っておきたいから。」
とにかく、鷺沢さんとの共通の何かが欲しかった。
「…でしたら、今読んでいる、これなども…」
鷺沢さんは何故か少し恥ずかしそうだったが、快く勧めてくれた。この日から、俺の日課に読書が追加された。
歴史、推理、恋愛、冒険、ホラー、フィクションにノンフィクションも。未知の領域に踏み込むときにしか得られない快感を、何度も何度も味わうことができた。同時に、鷺沢さんの見てきた世界を、自分も追体験できたような気分がして嬉しかった。
「この前のあれだけど…」
「どうでしたか?」
いつからか、俺たちは互いに本を勧め合い、感想を言い合うようになった。自分が探し出してきた本を、鷺沢さんはだいたい知っていたけど。
それでも、鷺沢さんと共通の話題を持てたことがたまらなく嬉しかったから、余り問題ではなかった。
20: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/24(月) 22:46:27.47 ID:Lsqy+rty0
それよりも、もっと大きな問題を抱えてしまった。
本について語る鷺沢さんは、楽しそうだった。レッスンに励む鷺沢さんの姿は、美しかった。たまにみせる鷺沢さんの笑顔を、たまらなくいとおしく感じた。
鷺沢さんについて知れば知るほど、魅力を感じずには居られなくなった。
ふとしたときに、鷺沢さんの顔が浮かぶようになった。
俺は、鷺沢さんのプロデューサーの身でありながら、鷺沢さんに惚れてしまったのだ。
愚かにも、間抜けにも。心を奪われた。
24: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/25(火) 22:46:30.35 ID:6FnxdBDe0
しかし、この思いは封印しなければならない。俺はプロデューサーだぞ、担当の娘にそんな感情を抱いてみろ。そんなの足枷にしかならないだろ。
それに、鷺沢さんも、自分を好いてくるようなプロデューサーなんか気持ち悪くて、仕事も一緒にしたくないだろうし。彼女の気持ちを考えると、いたたまれない。
鷺沢さんに悟られないように、神経をすり減らして、細心の注意を払って。ビジネスライクな関係を保ち続けるよう心がけた。
今でもきっと、バレてないだろう。ちひろさんには、3日くらいでバレた。
25: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/25(火) 22:47:55.32 ID:6FnxdBDe0
―――
――
―
「…情けねぇなあ、俺。」
「どうか…されましたか?」
「ううん、こっちの話。ちょっと昔を思い出してね。」
今も昔も、俺はたまらなく情けないのだが。グラスの酒は、半分ほどに減っていた。
「でも…いまの文香さんのダンスはすごいよ。ステップのキレも、最初とは比べものにならないくらいに。」
あれからも、文香さんは努力をし続けた。特にダンスレッスン時の、気合いの入りようはすさまじい。いまではダンスが、彼女の大きなアピールポイントの一つだ。
「そうまっすぐに褒められると…困ります…。」
文香さんは口角を少し上げ、顔を伏せた。この仕草一つ一つが心臓の拍動を早くさせる。グラスの酒が全部なくなったら自分の部屋に戻ろう。でないと気が狂いそうだ。
26: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/25(火) 22:48:26.13 ID:6FnxdBDe0
「そういえば…プロデューサーさんが大けがなさったときも…そんなときも、ありましたね。」
「ああ、チンピラに絡まれたときのヤツだっけ?」
嘘だけど。でも、この嘘はつくべき嘘だ。
「あれは痛かったなぁ…。」
自嘲するようにつぶやく。文香さんが事務所に所属してから4ヶ月が過ぎようとしていた頃、俺は顔に大けがを負ったことがある。
「…。」
「…?」
やはり、文香さんの様子はいつもと違っていた。どこか、と言われるとはっきりとは言えないのだが、彼女には違和感があった。
「…どうかした?」
「…いいえ。」
そう言いながら、文香さんはグラスのドリンクを一気に飲み干した。
27: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/25(火) 22:49:03.36 ID:6FnxdBDe0
―――
――
―
鷺沢さんが所属してから4ヶ月がたち、ついに仕事の話が舞い込んできた。
「…俺には、あなたのおっしゃることの意味が、分からないのですが。」
「何度も説明させるなよ。」
最悪の形で。
「だから、あの娘に仕事をやるといっているだろう。」
「…あなたと、夜を共に過ごすことが、仕事なんですか?」
「勘違いするな。それはあくまで手段だ。」
テレビ局への営業から帰る途中、俺はある人間に呼び止められ、滅多に人が来ないという倉庫へ連れてこられた。その人間は、ある番組のディレクターだったらしい。
俺はそこで、そいつから、鷺沢さんへの枕を提案された。
28: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/25(火) 22:49:42.85 ID:6FnxdBDe0
そいつは、いつかうちのレッスン場に来たことがあるらしい。そこで鷺沢さんを目にし、気に入ったそいつは、仕事をエサに鷺沢さんを抱こうと考えついた。
「一目見てすぐに分かった。あの娘はいい。たまらなくな。」
ここまで吐き気のする褒め言葉は初めてだった。ここまで人に不快感を覚えたのも初めてだった。
「…お言葉ですが、そんなことをしなくても、鷺沢さんは」
「たった一度、そんなことをすれば、売り出せるんだぞ。」
そいつは自信たっぷりに、口の片側だけをいやらしそうにあげる。
「チャンスがあれば売り出せる。だが、そのチャンスがないがために、日の目を見ずに消えていく人間が何人も居ることを君も理解していないわけじゃないだろう?」
正論だ。実際、そんな人間を俺は何人も知っている。無論CGプロにも、表に出ていないだけで、そんな人間がうじゃうじゃといる。
だが。
「そのチャンスは…俺が作ります。作ってみます。だからこの話は…!」
こんな手段を、鷺沢さんに選択させたくはない。
「まだ新人の君と、彼女は、手段を選べる立場なのか?」
そいつは少し苛立ちながら話を続ける。いつのまにか、額には青筋があった。どうしても鷺沢さんを抱こうと必死なのだろうか?人間としての恥尊厳など、こいつには関係のない話なのだろうか?だとしたら、さっきの褒め言葉も口から出任せ言っただけなのか?
たまらなく腹が立ってきた。だがしかし、目の前に居るこの人は、まだ、仕事をくれる立場の人間だ。穏便に穏便に。事を荒立てずにこの場を納めるしかない。
「あんな女くらいなら、掃いて捨てるほど居るだろうに。なぜそんなに渋るんだ?」
やっぱり嘘だったのか。好きになった人を侮辱されるのがここまで腹立たしいとはな。だが、怒りにまかせて言葉を吐き捨てるワケにはいかない。あくまで穏便に、だ。
「…彼女の人生と、経歴に、大きな影を落としたくはありません。」
「一人の女の人生なんぞ、そこまで大切でもなかろうに。」
食い気味で、嘲笑しながら、言われた。
次の瞬間、俺はそいつの頬に拳をたたき込んだ。
29: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/25(火) 22:50:27.04 ID:6FnxdBDe0
そいつは尻餅をついてその場に倒れた。すかさず俺はそいつの胸ぐらをつかむ。ここまで、半分俺は無意識だった。しかし、自覚した瞬間、怒りがフツフツとわき上がる。
鷺沢さんの魅力を、努力を、人生を、全てをけなされた気がしてならなかった。これで怒ることのない人間が居たら教えて欲しい。
「人生賭けさせてやってんだよ!こっちは!お前が!お前に!鷺沢さんの何が分かる!!」
殴ったのもマズかった。激高し、相手に暴言を吐いたのもマズかった。でも、こうせずには居られなかった。処分なら後で、なんだって、いくらでも受けてやる。俺の首たった一つで鷺沢さんが守れるかどうかは分からないが。
「調子に乗るなよ!」
そう思うのも束の間、処分はわりかし早めに来た。後から聞いた話だが、この人はラグビーとか格闘技とか色々やっていたらしくて。瞬時に仰向きにされて、マウントポディションをとられて、顔面を集中的に殴られた。
「新人のくせに!手を上げやがって!」
一発一発がイヤに重かった。一分一秒が永遠のように感じられた。口の中は、自分の歯で傷だらけになって、鉄の味がする。まぶたが腫れ、相手の顔は見えなくなっていた。
それに、初めて知ったよ。鼻って折れると血が止まらなくなるんだな。
「ふぅ…ふぅ…!覚えてろよ、二度と仕事できないようにしてやるからな…」
疲れ切ったそいつは、捨て台詞を吐き去って行った。
30: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/25(火) 22:51:33.11 ID:6FnxdBDe0
・・・
「う、うぅ…」
しばらくしてから立ち上がろうとしても、うまく踏ん張ることが出来なかった。頭の後ろ側がガンガンとする。脳震盪にでもなったのだろうか?なったことないから分からないけど。
「うう゛、おえう゛ぇええええぇぇぇぇ…」
戻してしまった。吐瀉物特有の酸っぱい匂いがあたりに立ちこめる。鼻は血で詰まって、口はゲロで詰まって、まさに生き地獄のよう。
「…。」
ビチャリと。急に視界がぼやけ、その場に倒れる。自分のゲロに、顔の半分が浸る。自前のスーツはもうダメだろう。
「…あぁ。」
鷺沢さんは、無事だろうか?そう思ったところで、俺の記憶は途絶えた。
34: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:45:29.46 ID:VCOLUwrw0
・・・
夢を見た。暗い場所で、鷺沢さんがあの男について行く夢。手を伸ばしても届かず、名前を叫んでも届かず。ふいに、鷺沢さんが俺の方へ振り返った。その目は虚ろで、何処も見てはいなかった。
35: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:46:13.76 ID:VCOLUwrw0
・・・
「あ゛あぁ!!」
「ひゃっ!」
気がつくと、ベッドの上にいた。いつの間にか、服はスーツから病院の患者用の服になっている。左目の視界は、上半分が暗い。顔の筋肉は満足に動かせない。
「もう…驚きましたよ。」
固まって動かしにくい首を、ゆっくりと声の方へ向ける。そこには、ベッドの横にあるイスに腰掛けたちひろさんの姿がそこにあった。
「目が覚めて安心しましたよ…それじゃ、早速事情を聞かせてもらいますね。」
いつもと変わらない笑顔で、ちひろさんは俺に尋ねた。
36: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:47:53.72 ID:VCOLUwrw0
・・・
「そうですか…そんなことが…。」
「…すいませんでした。」
昨日のことを包み隠さず話した。気絶していた時のことも教えてもらえた。ゲロの異臭に不審がった警備員さんが見つけてくれ、そのまま病院に運び込まれ、今に至るらしい。
「あの…鷺沢さんは今…。」
さっきの夢が頭の中で再生される。まさか、という一抹の不安が自分の中でどんどんと大きくなっていく。
「心配しなくて良いですよ、今日もいつものようにレッスンに励んでいます。…少なくとも、そう言う話は一切ないです。」
良かった、と胸をなで下ろす。
「…その…今回のこと…鷺沢さんには…。」
「内密に、ですか?」
「どうか、お願いします。」
顔の怪我は、チンピラに絡まれたとでも言っておけばいい。とにかく、鷺沢さんに一切の不安も感じさせたくはない。
「わかりました、文香ちゃんのためですもんね!」
「にやにやしないでくださいよ…。」
37: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:50:41.30 ID:VCOLUwrw0
ちひろさんに尋ねたいことがもう一つあった。
「…あの…俺の処分とか…。」
相手を殴り飛ばしたんだ。それなりの処分は下るだろう。
「……。」
「いや、無言でニコニコしないでくださいよ…。」
あなたのそれは他の何よりも怖いんですから。
38: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:53:02.44 ID:VCOLUwrw0
・・・
この後、ちひろさんはやることがあると言い、帰って行った。俺は、大きな怪我は鼻の骨折くらいで、その日のうちに退院して家に帰ることが出来た。出社は明日にするよう言われた。
翌日。目の上の腫れは少し引いたし、口の中も少ししみる程度。まだボコボコだが、人前になんとか出せる顔になっていた。
「おはようございまーす…。」
たった一日、間を開けただけなのに、久方ぶりの出勤に感じられた。
「あ、おはようございま…」
鷺沢さんは、いつもの朝の時間と変わらず、コーヒーを飲もうとしていた。変わらない鷺沢さんの姿が、ここまで安心できるとは。
「…プロデューサーさん!?」
まあ俺のせいでいつものようにはなくなってしまったが。鷺沢さんはコーヒーカップを乱暴に置くと、俺に駆け寄ってきた。
「その怪我は…昨日は体調不良でお休みなさったのでは…!」
ちひろさんはそういう風に誤魔化していたのか。微妙に乗っかりにくい。
…嘘なら、とことん吐こう。
「…鷺沢さんには本当のこと言っておくと、チンピラに絡まれたんだよ。でも、余り大事にしたくなくてさ、ちひろさんには電話で体調不良って事に…」
「そう…ですか…………あの、大丈夫ですか…?かなり酷いように…」
「見た目よりは痛くないから、心配しないで。」
「……と、言われましても…。」
鷺沢さんは、本気で心配してくれているようだ。さっきから泣き出しそうな目で俺の事を見てくれている。こんな鷺沢さんを騙すのは心苦しい。心が握り潰されそうだ。
「被害届などは…」
「もう出したよ。」
「…その…。」
でも、騙し続けなくてはならない。決めたのは自分だ。鷺沢さんに、一切の心配もかけさせないためにも。
39: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:53:53.27 ID:VCOLUwrw0
「プロデューサーさん、私に嘘をついたんですか?」
「…ちひろさん?」
「ちょっと、お話があります。来てください。」
ちひろさんが助け船を出してくれた。ありがたい。
「はい…鷺沢さん、今日のレッスンも頑張ってね!様子見に行くから!」
俺はちひろさんの後をついて、部屋を後にした。
「…。」
去り際にちらっと見た鷺沢さんの顔は、うつむいていてよく見えなかった。
40: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:54:47.16 ID:VCOLUwrw0
・・・
「ありがとうございます、助かりました。」
「…本当にあれで、良かったんでしょうか?嘘をついているときのプロデューサーさん、とても苦しそうでしたよ。」
「…。」
俺だって、これが最適解なのかどうか分からない。本当のことを素直に言った方が良かった可能性もゼロではない。
「でも、鷺沢さんを傷つけない方法を、俺はこれ以外思いつきません。」
あの話自体を、鷺沢さんにとってなかったことにすればいい。鷺沢さんが傷つかないんなら、どれだけ苦しくてもいい。そのための嘘くらい、いくらだってついてやる。
41: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:55:14.79 ID:VCOLUwrw0
・・・
2日後、鷺沢さんに仕事の話が来た。初仕事は、あるバラエティ番組のアシスタント。
その番組は、あの枕を提案してきた男が担当していたものだった…が、そいつは今誰も知らない遠い所に飛ばされたらしい。そしてその直後に、件の番組から仕事の話が来た。
何か裏があるのは明白だが、病院から去るちひろさんの「ちょっとやることがある」、という発言と、オファーの電話を受けたときの得意そうな顔を見て、深く考えるのをやめた。
俺の処分は、一日の謹慎。でもそれは、あの休んだ日に終わらせたことになっていた。あまりにも軽すぎる気がするが、深く考えるのをやめた。
当の鷺沢さんはと言うと、少し困惑していた。
「...せめて、なにか助言をいただけないでしょうか。」
「…とにかく顔を上げて」
うつむいてさえ居なければ、鷺沢さんは何だってできる。どうにかなる。あのときの、レッスン場で一人輝いていた鷺沢さんなら。
42: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/26(水) 23:55:42.53 ID:VCOLUwrw0
そして迎えた収録当日。
鷺沢さんは、大成功を収めた。
46: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/27(木) 22:30:10.59 ID:RH/8wXHw0
・・・
「ありがとうございます…プロデューサーさんのおかげで…。」
「ううん、鷺沢さんの実力だよ。」
たった一言のアドバイスで、鷺沢さんは個性を発揮し、大きな成果を上げた。これをとっかかりとして、これから飛躍させるのは俺の役目だ。
「あ、そうだ。はいこれ。」
俺は鞄から一冊の本を取り出し、鷺沢さんに手渡した。今朝、収録前に買っておいたものだ。
「…これは。」
「前に言ってた新刊。…初仕事お疲れ様ってことと、怪我で心配かけさせたお詫びってことで」
「私が、いただいても…よろしいのでしょうか…?」
「もちろん、というか、もらってほしくて渡したんだから。遠慮しないで。」
「…すいません、ありがとうございます。」
「なんで謝るの。」
鷺沢さんは、少し申し訳なさそうに、でもそれ以上に、嬉しそうに顔をほころばせた。
47: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/27(木) 22:30:38.44 ID:RH/8wXHw0
それからの鷺沢さんの躍進は目を見張るほどものだった。CDデビュー、ライブ、ドラマ…全てのことで、大きな成果を上げる。そして、仕事をこなせばこなすほど、更に上のステージへ行く。
「鷺沢文香ちゃんだっけ?あの綺麗な歌声の!今度うちの歌番でも頼むよ!」
営業先でこんな風に言ってもらえることも多くなった。俺はたまらなく嬉しかった。だって、鷺沢さんの魅力がいろんな人に伝わっていることの証明のようだったから。あのレッスン場の、あの姿を、多くの人に認知してもらえた気もしたから。
48: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/27(木) 22:31:39.51 ID:RH/8wXHw0
仕事を通して、鷺沢さんにも親しい人たちが出来たようだ。主に、ユニットとして一緒に活動した人たち。速水さん、橘さん、新田さん、藤原さん、さらにもっともっと多くの…。
友人と呼べる彼女らと接してるときの鷺沢さんの笑顔は、また違ったものに見えた。年相応で、かわいらしくて。鷺沢さんの新しい一面を発見することが出来た。嬉しかった。
でも、それは良いことばかりじゃなかった。
「バレバレよ、あなた。」
「へ?」
速水さんに、鷺沢さんへの好意を感づかれた。ちひろさんに次ぐ二人目だ。どうか誰にも言わないよう、死ぬ気で頼み込むことになってしまった。
「…じゃ、これからは『文香』って呼ぶようにして。」
すると、条件を出された。どうして?、と尋ねるといつまでも他人行儀じゃ良くないからだそうだ。
それと、その方が面白そうだから、と言う理由もあった。
49: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/27(木) 22:32:15.95 ID:RH/8wXHw0
・・・
ある日、事務所での昼休憩。俺とちひろさんは休憩室で自販機のコーヒーを飲み、食後の時間を潰していた。
「最近の文香ちゃんの活躍はすごいですね!プロデューサーさんの頑張りのおかげですよ!」
先にコーヒーを飲み終えたちひろさんが、最近の文香さんの活躍を褒めてくれた。
「俺はたいしたことないですよ、文香さんがすごいだけなんです。」
謙遜じゃない。近くで文香さんを見てきたからよく分かる。
そうだ、すごいのは文香さんだ。今の実力にあぐらをかくことなく、更に上へ更に上へ。トレーナーさんからは「初期とは別人のようだ、しかも本人がそれに満足してないのが恐ろしい」と言われたこともある。
「…。」
あのときの、レッスン場で一人踊り続けていた文香さんを思い出す。かっこよかったあの姿。苦しそうだったあの姿。
「…ちひろさん、俺、時々思うことがあるんです。」
「?、どうしたんですか?急に神妙な顔と声で」
あのとき。あの男を殴ってしまったとき。俺が言った言葉が、『人生を賭させてやっている』という言葉が、文香さんが頑張るたびに俺の心臓を縛り付ける。
「俺は、文香さんをスカウトして良かったんでしょうか。」
「…………は?」
ちひろさんが素っ頓狂な声を上げる。その目は、今にでも「何を言ってるんですか。」とでも言いたげだ。
「何を言っているんですか。」
言われた。
50: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/27(木) 22:35:11.25 ID:RH/8wXHw0
俺は、俺が出会うまでの文香さんを知らない。今の文香さんは、アイドルだ。でも、過去の文香さんは違う。
「俺は、文香さんの将来を、ぶち壊して、この道に引きずり込みました。」
文香さんも夢を持っていたのかもしれない。目標もあったのかもしれない。でも俺は、それをぶち壊した。不可能にしてしまった。
「文香さんが、頑張ってる姿を見るたびに思ってるんです。」
アイドルとして、上に行くためにしている文香さんの頑張りを、本来持っていた将来の夢に向ければ、どうなっていたのだろう。向上心の塊のような文香さんなら、困難な夢でも叶えられたのではないのだろうか。
「それに、枕を持ちかけられたときも…本来なら、俺がスカウトしなかったら、そんなこととは微塵も関係のない人生を、文香さんは送っていた筈なんです。」
あの夢は、ふとしたときにフラッシュバックする。何度も何度も、虚ろな目をした文香さんが脳内を埋め尽くす。
人生そのものをねじ曲げた上で、更にずたずたに踏み潰すような。そんなことになる可能性だってあった。実際枕はなかったから良いものを、もし実現していたらと思うと、ぞっとする。
「取り返しのつかないことを…いや、もう実際、取り返せないことを俺はしているんです。」
先の話だが、アイドルを引退した後も、文香さんの人生は続いていく。そのとき、アイドルだった文香さんの生活はどうなるのだろうか。アイドルだったと言う過去は消せない。周りの人間から、一生、いや、それ以降も注目されながら生きていかなければならなくなる。
日常生活を送る上で、それは大きな、あまりにも大きな枷となる。
「恨まれても仕方ないような…。」
「何を言ってるんですか。」
51: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/27(木) 22:35:47.23 ID:RH/8wXHw0
「何ですかさっきから。黙って聞いていればかもしれないかもしれないって。」
「ちひろさん…。」
「スカウトしたのは、文香ちゃんのプロデューサーのあなたでしょう。なのに、そんなに文香ちゃんが活躍するのがイヤなんですか?頑張ってくれるのがイヤなんですか!?」
「違います…!…違います…でも…。」
活躍してくれるのも、頑張ってくれるのも嬉しい。嬉しい、だからこそ、不安になる。『本当に、文香さんはこれで良かったのだろうか?』と。ネガティヴ過ぎる思考だ。でも、一度考え出すと、止まらなかった。
「…とりあえず、文香ちゃんには絶対に思っていることを言わないでください。私に言えるのはそれだけです。」
「……はい。」
そのままちひろさんは、ドアを強く閉め休憩室を後にした。
コーヒーは、3分前よりも苦く感じた。
55: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:09:25.63 ID:tUySYBDI0
・・・
それからも、文香さんは輝き続けた。その輝きが増せば増すほど、自分の中にある、不安の影の色は濃くなっていく。思っても仕方のないことを、思わずには居られなかった。
文香さんにとっての、正しい道はなにか、正解も不正解もない答えに頭を悩ませ続けた。それは、考えれば考えるほど泥沼にはまっていくようで。
文香さんへの好意と、不安。隠すものが二つに増え、気がつけば、出会ってから一年がたった。
答えは、まだ見つからない。
56: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:10:21.23 ID:tUySYBDI0
―――
――
―
気がつくと、グラスは空になっていた。
「…んじゃ、俺はそろそろ戻るよ。また明日ね、文香さん。」
「待ってください。」
文香さんは俺を呼び止めた。空になっていた筈の文香さんのグラスは、いつの間にか酒で満たされている。
「話があります…どうか、座り直してくれませんか…。」
「あ、うん…。」
促されるまま、俺は再び椅子に座る。と同時に、文香さんはぐいっと、酒を一気に飲み干した。
「!!、ごほっ、ごほ!」
そして、吹き出した。
「ふ、文香さん!」
二十歳になったから、もう飲酒の制限はない…けど、初めての酒を一気に飲んだら誰だってこうなるだろう。というより、文香さんは酒を一気飲みするような人じゃないはずだ。やっぱり、今の文香さんはおかしい。
「だ、大丈夫?どうしてこんな事を…」
「も、申し訳ありません…」
文香さんは近くにあったティッシュで、吹き零したものを拭いている。よく見ると、耳まで真っ赤だ。それは酒のせいか、それとも恥ずかしさのせいか。
57: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:10:56.12 ID:tUySYBDI0
零した酒を片付け終わった後。
「どうしたの?急にこんなことして。」
疑問を文香さんにぶつけた。違和感の事もあったし、なにより、文香さんがこんな事をする理由を知りたかった。
「…こうでもしないと、言えない気がして…。」
文香さんはグラスにわずかに残った酒を、ちびちびと飲んでいる。どんどんと顔は赤くなっていっている。酒に余り強くないのだったら、もう飲んでほしくないけど…。
「…言えない?俺に何か言うことでもあるの?」
「はい…私がずっと、胸に抱えていること、です。」
文香さんは一度、大きく息を吸い、吐くと、俺の方をまっすぐ見て。
「プロデューサーさん。私は、貴方に怒っています。」
こう言った。
「私の…これまでの事を、聞いてください。」
58: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:11:51.37 ID:tUySYBDI0
―――
――
―
貴方に合う前の私は、夢も目標もない、本を読むことが出来れば幸せな、ただの一人の人間でした。将来は、叔父の古書店を継げればよいと、そうとだけ思っていて。
時間の流れに身を任せ、ただのうのうと送る日々は、心地良いほど無味無臭で。このまま何もなすことなく、生きていくのだろうと自分で決めつけてました。
あのとき、一年前の誕生日に、貴方と出会うまでは。
59: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:13:14.39 ID:tUySYBDI0
失礼ですが、初めは面倒な人に声をかけられてしまったと、そう思ってしまいました。…初めだけですよ。
アイドルというものに興味も関心もなく、話をされても遠い世界の事のように感じました。ですが、会話を重ねるごとに、貴方の話は、私の心を掴んで離さず、とどまり続けました。
いつからか、画面の向こうの姿に憧れ。いつからか、歌の作り出す世界の虜となっていて。いつからか、私もこうなりたいと思うようになり。
そしていつからか、貴方と出会えたことが、何かの縁のようにも感じていて。気がつくとアイドルになりたいと、なろうと決意していました。
私に、夢と目標が出来ました。
60: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:14:11.87 ID:tUySYBDI0
初めてのレッスンも、鮮明に覚えています。辛くて、厳しくて、悔しくて。自分に納得も出来ずに、遅くまで無理をしてしまいました。
「あの憧れた姿に近づきたい」…その思いでいっぱいでした。だからこそ、ダメだった自分が、情けなくて情けなくて。
あの未熟なダンスしか出来なかったときは、本当に私はアイドルとしてやっていけるのか不安でした。
それでも、続けていくうちに、少しずつ少しずつ、出来るようになっていって。そんなわずかな進歩でも、あの姿に近づけた気がして、嬉しくて、レッスンが楽しいものに変わりました。
困難にぶつかり、それを乗り越える。…これまでの私が、知らなかったこと。
貴方に出会えなければ、知ることもなかったこと。
61: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:14:49.34 ID:tUySYBDI0
「鷺沢さんが好きなものを、俺も知っておきたいから。」
これが、今まで続く私たちの関係の、きっかけの言葉でしたね。実を言うとかなり困りました。好きな本を他人に薦めたことが、私にはなかったのです。
初めての本の推薦に、私はどうしたら良いか分からなくて。戸惑いながら薦めたあの本が、気に召さなかったらどうしようかと、しばらくの間、落ちつけなかったのですよ。
だから、私の薦めた本を「面白かった」と言ってもらえるのは嬉しかったです。安心と、なぜか少しの恥ずかしさが同居していました。そして、それ以上に嬉しさが。
自分の好きなものを認めてもらえるのが、ここまで嬉しいなんて。これも、私が知らなかったことです。
貴方の薦めてくれた本も、多くの新しい世界を、私に見せてくれました。知らなかった書に出会う喜びは、何にも代えがたいものですからね。
貴方にも、それを体験してほしくて、多くの本を貴方に薦めてしまいました。ある一つの書に対する貴方の感想は、私のものとは違いました。
同じものに違う感想を抱き、それを共有する。今までしなかったこと。しようとも思わなかったこと。初めてだったこと。
その初めてだったことは、いつしか私の日常の一部になっていました。何度も交わした言葉の一つ一つは、私にとって、全てがかけがえのないものになっています。
62: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:16:00.41 ID:tUySYBDI0
レッスンと、感想会。新鮮で、心地良い日常。そんな日が、しばらく続いていた時でしたね、貴方が傷だらけになって出社してきたのは。
「…鷺沢さんには本当のこと言っておくと、チンピラに絡まれたんだよ。でも、余り大事にしたくなくてさ、ちひろさんには電話で体調不良って事に…。」
すぐに、貴方が嘘をついていることが分かりました。…苦しそうな、とても苦しそうな顔でしたので。
「見た目よりは痛くないから、心配しないで。」
痛そうな顔を、無理矢理綻ばせていた貴方は、悲しそうに私の目に映りました。でも、貴方は嘘を無意味につくような人ではない。…これまでの重ねてきた会話から、私はそう思っていました。
だから、よほどの理由があるのだろう。嘘をつかなければならない何かが、あったのだろう。
そして、それは私が知ってはならないことだろう。
だから私は、騙されることにしました。今はまだ、知らなくていい。知らないままで、貴方に騙されないと、でないと、その悲しそうな顔が、更に悲しくなってしまうと…私は恐れたのです。
貴方のそんな顔は、見たくない。
そのときは、その一心で、貴方の嘘に乗りました。
63: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:20:21.31 ID:tUySYBDI0
それからしばらくして、初めてのお仕事の話が。…バラエティ番組は、私には出来ないと思いました。出来るわけないと、勝手に不安になって、まだ臨んでもないことに恐れて。
「…とにかく顔を上げて」
ですが、貴方のアドバイスが、そんな私の不安だらけの心を支えてくれました。うつむかず、前を向く。そうすれば、出来ることもある。うつむいていたら、出来ることも出来なくなってしまう。
また貴方に、一つ教わりました。
そして私は、初めてのお仕事で、初めての成功をおさめることが出来ました。仕事の後に、ご褒美として貴方からもらった本を読みかえす度、このアドバイスを心に刻みます。
辛いとき、弱音を吐きそうなとき、決まって私はこのときの本を開き、前を向くことにしています。今でも、そうなんですよ。
64: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/29(土) 02:20:56.52 ID:tUySYBDI0
初めての成功から、私の日常はめまぐるしく変わっていきました。CDデビュー、ライブ、ドラマ…全てが未知のことで、ついて行くのに精一杯でした。
でもその中で、貴方はいつも変わらず私のそばにいてくれて。新しい世界をどんどん見せてくれて。更に上へ、更に上へと私を導いてくれました。
私が立ち止まってしまったときは、一緒に立ち止まって悩んでくれる貴方。私が進むときは、後ろから背中を押してくれる貴方。私以上に、私のために頑張っている貴方。
気づけばそんな貴方に、アイドルであるにもかかわらず、私は恋をしてしまいました。
もっと貴方と一緒に居たい。もっと貴方と新しい世界を見たい。
もっと貴方の事を知りたい。
だからこそ、あのときの傷だらけの顔と、嘘が、余計に気になってしまいました。ですが、真実を知ることが果たして良いことなのか、分からず。
貴方の意思を踏みにじることを私は恐れ、結局は聞くことが出来ず。
真相は、意外にあっけなく、発覚しました。
68: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 00:59:01.85 ID:JYUonGPx0
・・・
その日、私は翌日に控えた収録についての相談のため、貴方の元を訪ねました。休憩中だと聞いたので、ちょうど読み終わったばかりの本の感想も、そのまま伝えようと、心を踊らせてもいました。
「俺は、文香さんをスカウトして良かったんでしょうか。」
そんな考えは、その言葉で、一気に吹き飛んでしまいました。どうして貴方がそんなことを口走ったのか、私はこの急すぎる事態に対応出来なかったのです。
頭の中はぐちゃぐちゃになって、でも姿の見えない貴方の、苦しそうな声は、イヤになるほどほど耳に入ってきて。
「俺は、文香さんの将来を、ぶち壊して、この道に引きずり込みました。」
一つ一つの言葉が。
「それに、枕を持ちかけられたときも…本来なら、俺がスカウトしなかったら、そんなこととは微塵も関係のない人生を、文香さんは送っていた筈なんです。」
私の心を。
「取り返しのつかないことを…いや、もう実際、取り返せないことを俺はしているんです。」
ひどく、ひどく。
「恨まれても仕方ないような…。」
何度も殴りつけるように。
69: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:01:03.13 ID:JYUonGPx0
混乱は一切収まることなく。
「…とりあえず、文香ちゃんには絶対に思っていることを言わないでください。私に言えるのはそれだけです。」
私は、休憩室から出てきたちひろさんに話を聞かずにはいられませんでした。
「…聞いても…後悔しませんか?」
貴方のことを、知りたい。…返答は、決まっていました。
70: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:02:23.40 ID:JYUonGPx0
それからちひろさんは、これまでのことと、先ほどのことを話してくれました。話すな、と言われても話さずには居られなかったようです。
私に枕営業の話が来ていたこと。貴方がそれを断り、怪我したこと。心配させまいと、それを私に隠すために嘘をついたこと。
私の人生を壊していると思っていること。私が人生に不満だと感じていないか心配していること。私の道を閉ざしてしまったと感じていること。
私に恨まれていると、そう思っていること。
71: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:03:03.04 ID:JYUonGPx0
話を聞き終えたとき、私は貴方に、ある種の怒りを覚えました。
嘘をついたことにではなく、話してくれなかったことにでもなく。
私が貴方を恨んでいると、思われていたことにです。
72: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:03:30.20 ID:JYUonGPx0
―――
――
―
「私が…貴方のことを恨むわけ、ないじゃないですか…!」
文香さんは所々つっかえながら、話してくれた。
「夢も、目標も…教えてくれた、貴方を…変えてくれた、貴方を…!恨むなんて事、そんなこと…!」
声も、肩も、グラスを持つ手も、震わせて。
「そう思っていた、貴方に…そう思わせてしまった、私に…」
俺への好意と、怒りを、話してくれた。目からは、大粒の涙がぼろぼろと、止まることなく落ち続けている。
73: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:04:25.64 ID:JYUonGPx0
「ひぐっ…ひぐっ…。」
全てを語り終えた文香さんは、鼻をすすり、涙をぬぐう。
「…。」
馬鹿だ、俺は。勝手に不安がって、心配して、そのせいで今文香さんに涙を流させている。
本音で語ることを恐れて、文香さんから直接聞いたわけでもないのに、嫌われているんじゃないかって、自分勝手に怖がって。文香さんの事を、知ろうとしなかった。
あの悪夢の、あの虚ろな目をしていたのは、自分自身だ。嫌われたくなくて、今の関係を壊したくなくて、距離を置いてそっぽを向いて。目を背け続けた。
「…っ!」
大きく息を吸い、二度、自分の頬を挟むようにして叩く。
「…ごめん、文香さん。俺、文香さんの事、知らなかった。」
これは、情けなくて、愚かで、臆病で、馬鹿な俺が招いてしまった事態だ。でもまだ、間に合うのなら。
「…一緒に、話をしよう。」
今からでも、遅くないなら。本当のことを、知りたい。本当の俺を、知ってもらいたい。
74: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:05:29.52 ID:JYUonGPx0
・・・
それから、俺たちはこれまでのことを話した。文香さんの本音も、俺の本音も、一緒にして。
一緒に経験したことも、違う風に記憶していたことが多かった。話し合って、おそろいの記憶がどんどん積み重なっていった。
俺が文香さんに好意を持っていたことも、包み隠さず話した。文香さんも俺の事を好きだと言ってくれた。たまらなく嬉しかった。
話をするうちに、恨まれているって思っていたことが馬鹿らしくなった。文香さんがそう思うわけないって、心の底から思えた。もっと早くに、こうしておけば良かった。
文香さんは、俺が引き込んだ今の人生に満足している。
だから俺が、これから先の人生を、もっともっと満ち足りたものに、もっともっと素晴らしいものにするんだ。
それが俺にできる、文香さんへの精一杯のお返しだ。
75: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:05:58.12 ID:JYUonGPx0
・・・
「…でも、まさか文香さんが俺の事ねぇ……。」
「……はい。」
夢にも思っていなかったことだ。速水さんは、両方のことに気づいていて、面白がっていたらしい。
「…普通に問題だよなぁ、アイドルとその担当プロデューサーが両思いって。」
「…そう、ですね。」
そうだ。今こうして同じ部屋にいることも良くないことだ。一刻も早く退室した方が好ましい。
頭の中のちひろさんが言った。『据え膳、喰わねば男の恥。』と。でも今の俺に、恥も尊厳も関係ない。文香さんのアイドル人生と、体が第一だ。
「それじゃ、文香さん、また明日。」
「…プロデューサーさん!」
背を向けた俺の服の裾を、文香さんはつかむ。
「今は…今はまだ無理でも…いつか、いつか一緒になれる日まで…一緒にいてくれますか?」
文香さんの声は上ずっていた。ちらっと見えた手は、小刻みに震えている。
これが文香さんの本心なら、俺も本心で返そう。
「うん…一緒になれるまで、ずっと一緒に。そのときが来たら、俺から、言わせてほしい。」
文香さんは手を離した。振り返った俺が見たのは、顔を真っ赤にした文香さんの姿。
「ありがとうございます…でも、その前に、私から言わせてください。…今、貴方に、どうしても言いたいことがあります。」
文香さんは一度目を閉じ、開き、目尻に少しの涙をためながら、満面の笑みでこう言った。
「…死んでもいいわ。」
76: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:06:53.82 ID:JYUonGPx0
・・・
一夜明けて。
今日は息抜きのためのオフ。俺たちは、これまでの活動のことをご両親に伝えるために、
文香さんの実家へと向かっていた。
「行こう、文香さん。」
「…はい…失礼します。」
文香さんが、俺の手を握る。俺は、その手を握り返す。
『文香さんにとっての、正しい道はなにか?』正解も不正解もないこの問いの答えを、俺はきっと導き出せない。
答えるのは、文香さんだ。
出会う前の、彼女に。出会った後の、鷺沢さんに。語り合った、文香さんに。これからの、君に。
『俺と出会えて良かった』と言ってもらう。そのために、君に応え続ける。
だから今は、この道を。
足幅を合わせて、手を取り合って。ずっと一緒に、歩いて行こう。
77: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:07:24.54 ID:JYUonGPx0
ここまでです、お付き合いいただきありがとうございました。
本当に美しいよ…鷺沢文香。
君ほど目隠れが素晴らしいアイドルはいない。
初めて会ったときから君は…透き通るように純粋だった…。
その水晶の輝きがァ…私の創作意欲を刺激してくれた。
君は最高のアイドルだぁ!!
君のその輝きは全てッ……私の…この…心の…!
ッヘゥー光となっているんでゃよッ!!
ヴァ↑ーーーーハハハハハァァッ!!う゛ァ゛ーははははははァッ!
ぷぅ゛ぅ゛ぅ゛ん゛!!
78: ◆U.8lOt6xMsuG 2017/04/30(日) 01:12:16.35 ID:JYUonGPx0
元ネタ→
「宇宙飛行士への手紙」
https://www.youtube.com/watch?v=x6pzZ_IGQAg
前作→
【デレマス】黒いアイツの倒し方
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491657100/
時間とお暇があれば。
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/30(日) 11:43:04.37 ID:TdVOOqyDo
乙です
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492958211/
Entry ⇒ 2017.12.29 | Category ⇒ モバマス | Comments (0)
【艦これ】酒匂「一年前のあたし」
1: ◆Lsw27IvP02kT 2017/11/28(火) 00:37:43.35 ID:p5+XO8Bs0
このSSを読む前に
・物語は去年の秋刀魚漁の時期です
・間違いなく不定期更新(イベントの為)
では始めます
・物語は去年の秋刀魚漁の時期です
・間違いなく不定期更新(イベントの為)
では始めます
2: ◆Lsw27IvP02kT 2017/11/28(火) 00:38:41.05 ID:p5+XO8Bs0
酒匂「そろそろ年末かぁ 意外と早いものだったねー」
酒匂「それといっしょに寒くなってきた・・・ぴゃっ」
酒匂「・・・・この鎮守府に着任してからもう1年なんだね」
酒匂「あれは酒匂が着任した時だったっけ・・」
――――1年前 執務室
酒匂「ぴゃん!阿賀野型4番艦 酒匂です!司令!よろしくね!」
提督「よろしく!ようやく・・ようやく会えたよ・・」
酒匂「どうしたの司令?酒匂にそんなに会いたかったの?」
古鷹「これで阿賀野型が全員揃いましたね」
酒匂「それといっしょに寒くなってきた・・・ぴゃっ」
酒匂「・・・・この鎮守府に着任してからもう1年なんだね」
酒匂「あれは酒匂が着任した時だったっけ・・」
――――1年前 執務室
酒匂「ぴゃん!阿賀野型4番艦 酒匂です!司令!よろしくね!」
提督「よろしく!ようやく・・ようやく会えたよ・・」
酒匂「どうしたの司令?酒匂にそんなに会いたかったの?」
古鷹「これで阿賀野型が全員揃いましたね」
3: ◆Lsw27IvP02kT 2017/11/28(火) 00:42:08.05 ID:p5+XO8Bs0
ガチャ
阿賀野「提督さん!本当なの?!」
提督「うん、今目の前にいるよ」
酒匂「ぴゃ?」クルッ
阿賀野「わぁ!酒匂ー!会いたかった―!」ギュー
酒匂「ぴゃー・・・苦しいよぉ・・」バタバタ
能代「阿賀野姉離してあげて・・・ようやく会えたわね」
矢矧「長い長い道のりだったね」
酒匂「ぴゃー・・みんな泣かないで・・」オロオロ
阿賀野「よぉーし!これから歓迎会開くわよ!」
能代「もう!すぐそんなこと思いつくんだから!」
提督「まぁまぁ、いいと思うよ僕は。これからよろしくね、酒匂」
酒匂「ぴゃん!」
こうして 酒匂の鎮守府生活が始まった
阿賀野「提督さん!本当なの?!」
提督「うん、今目の前にいるよ」
酒匂「ぴゃ?」クルッ
阿賀野「わぁ!酒匂ー!会いたかった―!」ギュー
酒匂「ぴゃー・・・苦しいよぉ・・」バタバタ
能代「阿賀野姉離してあげて・・・ようやく会えたわね」
矢矧「長い長い道のりだったね」
酒匂「ぴゃー・・みんな泣かないで・・」オロオロ
阿賀野「よぉーし!これから歓迎会開くわよ!」
能代「もう!すぐそんなこと思いつくんだから!」
提督「まぁまぁ、いいと思うよ僕は。これからよろしくね、酒匂」
酒匂「ぴゃん!」
こうして 酒匂の鎮守府生活が始まった
4: ◆Lsw27IvP02kT 2017/11/28(火) 00:44:19.96 ID:p5+XO8Bs0
―――――数日後
能代「よし、じゃあ行ってくるね」
酒匂「行ってらっしゃい!」
矢矧「酒匂、演習に遅れないようにね」
阿賀野「鹿島さんの言う事もしっかりと聞くのよ?」
酒匂「うん!わかった!」
バタン
酒匂「・・・・酒匂一人かぁ・・」
酒匂「みんなと一緒に出撃したかったなー・・」
酒匂「・・・・演習場に行かなきゃ!ぴゃん!」
能代「よし、じゃあ行ってくるね」
酒匂「行ってらっしゃい!」
矢矧「酒匂、演習に遅れないようにね」
阿賀野「鹿島さんの言う事もしっかりと聞くのよ?」
酒匂「うん!わかった!」
バタン
酒匂「・・・・酒匂一人かぁ・・」
酒匂「みんなと一緒に出撃したかったなー・・」
酒匂「・・・・演習場に行かなきゃ!ぴゃん!」
5: ◆Lsw27IvP02kT 2017/11/28(火) 00:46:25.14 ID:p5+XO8Bs0
―――――演習場
酒匂「ねぇ、いつになったら出撃できるの?」
鹿島「出撃ですか?まだ酒匂さんは練度も低いですし、今は演習漬けの日々ですよ」
鹿島「出撃できるのは酒匂さんの練度が十分な頃合いの時からですね」
酒匂「ぴゃー・・・。それっていつぐらい?」
鹿島「酒匂さんの砲撃の命中率は合格ラインではありませんし、まだまだ先の話だと思います」
酒匂「ぴゅーん・・演習だけじゃつまらないよぉ」
香取「最初はみなさんそうでしたが、今出撃されてる方たちもこの演習で練度を上げて出撃できるようになりました」
香取「一つ一つの努力が結果に結びつくので酒匂さんもこのまま頑張ればできますよ」
酒匂「うーん・・・。わかった、酒匂。がんばる!」
鹿島「はい。では次の実践ですが・・」
酒匂「ねぇ、いつになったら出撃できるの?」
鹿島「出撃ですか?まだ酒匂さんは練度も低いですし、今は演習漬けの日々ですよ」
鹿島「出撃できるのは酒匂さんの練度が十分な頃合いの時からですね」
酒匂「ぴゃー・・・。それっていつぐらい?」
鹿島「酒匂さんの砲撃の命中率は合格ラインではありませんし、まだまだ先の話だと思います」
酒匂「ぴゅーん・・演習だけじゃつまらないよぉ」
香取「最初はみなさんそうでしたが、今出撃されてる方たちもこの演習で練度を上げて出撃できるようになりました」
香取「一つ一つの努力が結果に結びつくので酒匂さんもこのまま頑張ればできますよ」
酒匂「うーん・・・。わかった、酒匂。がんばる!」
鹿島「はい。では次の実践ですが・・」
6: ◆Lsw27IvP02kT 2017/11/28(火) 00:48:32.89 ID:p5+XO8Bs0
――――阿賀野型の部屋
酒匂「ぴゃーん!ただいま!って・・まだ誰も帰ってきてない・・」
酒匂「矢矧ちゃん達、まだ出撃してるのかな・・」
ピラッ
酒匂「なんだろ?これ・・何かの絵?」
ガチャ
阿賀野「ただいまー・・って酒匂!まだ見ちゃダメぇ!」バッ
酒匂「ぴゃっ?!びっくりした・・」
能代「酒匂には隠す必要ないんじゃないの?」
阿賀野「だってぇ・・恥ずかしいじゃない!」
矢矧「まだ形だけ決めたばかりでしょ・・」
酒匂「ぴゃーん!ただいま!って・・まだ誰も帰ってきてない・・」
酒匂「矢矧ちゃん達、まだ出撃してるのかな・・」
ピラッ
酒匂「なんだろ?これ・・何かの絵?」
ガチャ
阿賀野「ただいまー・・って酒匂!まだ見ちゃダメぇ!」バッ
酒匂「ぴゃっ?!びっくりした・・」
能代「酒匂には隠す必要ないんじゃないの?」
阿賀野「だってぇ・・恥ずかしいじゃない!」
矢矧「まだ形だけ決めたばかりでしょ・・」
7: ◆Lsw27IvP02kT 2017/11/28(火) 00:50:23.22 ID:p5+XO8Bs0
酒匂「それって結局何なの?」
能代「これはね、秋刀魚漁の大量旗の絵なのよ。まだ構図だけ書いてるだけだけど」
酒匂「人の絵が4人いる・・・」
阿賀野「ふっふーん!実はこの4人は・・・私たち"阿賀野型4姉妹"を描くんです!」
酒匂「ぴゃあああ!ほんと!?」
能代「ええ、みんなで秋刀魚を獲ってる絵を描こうと思うの」
矢矧「とは言っても、作業する機会は中々ないだろうけど完成させるわよ!」
阿賀野「そーです!というわけでみんな頑張ってねー!」
能代「阿賀野姉もやるの!」
阿賀野「阿賀野はプロデューサーだってばー!」
能代「これはね、秋刀魚漁の大量旗の絵なのよ。まだ構図だけ書いてるだけだけど」
酒匂「人の絵が4人いる・・・」
阿賀野「ふっふーん!実はこの4人は・・・私たち"阿賀野型4姉妹"を描くんです!」
酒匂「ぴゃあああ!ほんと!?」
能代「ええ、みんなで秋刀魚を獲ってる絵を描こうと思うの」
矢矧「とは言っても、作業する機会は中々ないだろうけど完成させるわよ!」
阿賀野「そーです!というわけでみんな頑張ってねー!」
能代「阿賀野姉もやるの!」
阿賀野「阿賀野はプロデューサーだってばー!」
10: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/06(水) 00:02:01.24 ID:FwKNL4vA0
――――食堂
酒匂「うーん・・・」
長門「酒匂ではないか、どうした?」
酒匂「あ、長門さん。実はね・・」
-----
矢矧「秋刀魚漁で出撃もあるし、準備はしとかないとね」
酒匂「ぴゃあ!酒匂も出撃できる?」
矢矧「それを決めるのは提督だし・・まだわからないわ」
酒匂「ぴゅーん・・」
-----
長門「ふむ・・・酒匂も秋刀魚漁に出撃したいというわけか・・」
酒匂「うん・・でも酒匂、出撃もまだ一回もないしずっと演習だし・・」
酒匂「もしかしたら秋刀魚漁にも参加できないんじゃないかって・・」ションボリ
酒匂「うーん・・・」
長門「酒匂ではないか、どうした?」
酒匂「あ、長門さん。実はね・・」
-----
矢矧「秋刀魚漁で出撃もあるし、準備はしとかないとね」
酒匂「ぴゃあ!酒匂も出撃できる?」
矢矧「それを決めるのは提督だし・・まだわからないわ」
酒匂「ぴゅーん・・」
-----
長門「ふむ・・・酒匂も秋刀魚漁に出撃したいというわけか・・」
酒匂「うん・・でも酒匂、出撃もまだ一回もないしずっと演習だし・・」
酒匂「もしかしたら秋刀魚漁にも参加できないんじゃないかって・・」ションボリ
11: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/06(水) 00:10:20.49 ID:FwKNL4vA0
長門「確かに、今の酒匂の練度では出撃するのも難しいと思うが・・」
長門「可能性はないとも言えない」
酒匂「ぴゃっ?!本当?」
長門「うむ、鎮守府近海でも秋刀魚が獲れるらしい」
長門「つまり、今の酒匂でも近海なら出撃できるかもしれないという事だ」
酒匂「ぴゃあ!酒匂、がんばる!」
長門「まだ決まったわけじゃないんだ、数日後にでも報告はされるだろう」
酒匂「まだ先かぁ・・・出撃できると良いなぁ」
長門「指名されたら、しっかりと準備はしておくんだぞ」
酒匂「ぴゃん!じゃあ演習に行ってくるね!」
長門「ああ、頑張るんだぞ」
長門「可能性はないとも言えない」
酒匂「ぴゃっ?!本当?」
長門「うむ、鎮守府近海でも秋刀魚が獲れるらしい」
長門「つまり、今の酒匂でも近海なら出撃できるかもしれないという事だ」
酒匂「ぴゃあ!酒匂、がんばる!」
長門「まだ決まったわけじゃないんだ、数日後にでも報告はされるだろう」
酒匂「まだ先かぁ・・・出撃できると良いなぁ」
長門「指名されたら、しっかりと準備はしておくんだぞ」
酒匂「ぴゃん!じゃあ演習に行ってくるね!」
長門「ああ、頑張るんだぞ」
12: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/06(水) 00:21:51.09 ID:FwKNL4vA0
――――演習場
酒匂「ぴゃああ!頑張る!」ドーン
鹿島「酒匂さん、今日は張り切ってますね」
香取「ええ、この調子なら短期間でかなりの成長が期待できそうです」
鹿島「でもどうして・・?」
香取「ふふ、彼女にとって何か嬉しいことがあったのでしょう」
酒匂(この調子なら・・・司令もきっと出撃させてくれるはず!)
酒匂「ぴゃあ!まだまだ頑張る!」
鹿島「この調子なら出撃も早いと思いますよ!」
酒匂「ぴゃん!」
香取(しかし、少し粗削りなところが目立っていますね・・今のところ出撃できるかは微妙なラインですが・・)
香取(次の作戦では提督はどうなさるのでしょうか・・)
酒匂「ぴゃああ!頑張る!」ドーン
鹿島「酒匂さん、今日は張り切ってますね」
香取「ええ、この調子なら短期間でかなりの成長が期待できそうです」
鹿島「でもどうして・・?」
香取「ふふ、彼女にとって何か嬉しいことがあったのでしょう」
酒匂(この調子なら・・・司令もきっと出撃させてくれるはず!)
酒匂「ぴゃあ!まだまだ頑張る!」
鹿島「この調子なら出撃も早いと思いますよ!」
酒匂「ぴゃん!」
香取(しかし、少し粗削りなところが目立っていますね・・今のところ出撃できるかは微妙なラインですが・・)
香取(次の作戦では提督はどうなさるのでしょうか・・)
13: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/06(水) 00:25:21.62 ID:FwKNL4vA0
―――――数日後 執務室
提督「じゃあ、秋刀魚漁のメンバーを発表していくよ」
酒匂(呼ばれますように・・呼ばれますように・・)ワクワク
阿賀野「酒匂、目がキラキラしてるわね・・」ヒソヒソ
矢矧「まぁ、出撃したがってたし・・」ヒソヒソ
提督「――――以上が北方海域メンバーだよ。次に鎮守府近海の・・」
酒匂(あ!酒匂が出撃できるかもしれないところだ!)ワクワク
能代(今の酒匂に出撃は任せられるのかしら・・)
提督「山城、磯風、龍鳳、そして・・・夕張」
提督「以上が鎮守府近海のメンバーだよ」
酒匂「・・・・・え?」
提督「じゃあ、秋刀魚漁のメンバーを発表していくよ」
酒匂(呼ばれますように・・呼ばれますように・・)ワクワク
阿賀野「酒匂、目がキラキラしてるわね・・」ヒソヒソ
矢矧「まぁ、出撃したがってたし・・」ヒソヒソ
提督「――――以上が北方海域メンバーだよ。次に鎮守府近海の・・」
酒匂(あ!酒匂が出撃できるかもしれないところだ!)ワクワク
能代(今の酒匂に出撃は任せられるのかしら・・)
提督「山城、磯風、龍鳳、そして・・・夕張」
提督「以上が鎮守府近海のメンバーだよ」
酒匂「・・・・・え?」
14: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/06(水) 00:28:44.20 ID:FwKNL4vA0
山城「私が選ばれたのね・・・」
扶桑「山城?疲れたら私と交代してもいいのよ?」
山城「そ、そんな!姉さまと交代だなんて・・!」
磯風「ふむ、またこの季節がやって来たのだな。磯風がここに来たのも秋刀魚の時期だったしな」
磯風「どれ、また秋刀魚を調理してやろうではないか」
浦風「磯風、あんたは獲るだけの役目じゃ」
龍鳳「今年も頑張りますね」
瑞鳳「頑張ってね!龍鳳ちゃん!」
伊58「秋刀魚、楽しみにしてるでち!」
酒匂「ね、ねぇ司令!酒匂は?」
扶桑「山城?疲れたら私と交代してもいいのよ?」
山城「そ、そんな!姉さまと交代だなんて・・!」
磯風「ふむ、またこの季節がやって来たのだな。磯風がここに来たのも秋刀魚の時期だったしな」
磯風「どれ、また秋刀魚を調理してやろうではないか」
浦風「磯風、あんたは獲るだけの役目じゃ」
龍鳳「今年も頑張りますね」
瑞鳳「頑張ってね!龍鳳ちゃん!」
伊58「秋刀魚、楽しみにしてるでち!」
酒匂「ね、ねぇ司令!酒匂は?」
15: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/06(水) 00:29:36.25 ID:FwKNL4vA0
提督「残念だけど、今回は見送りという事にしたんだ」
長門「提督よ、鎮守府近海なら今の酒匂でも出撃できるのでは・・?」
提督「とはいっても、着任したてだし今回の作戦にはまだまだだと思って・・」
提督「酒匂を入れることはできなかったんだ、ごめん・・」
長門「提督!一度だけでも―――」
酒匂「いいよ、長門さん」
長門「酒匂・・」
酒匂「酒匂、まだまだ勉強や演習しないと出撃できないんだってわかったんだし、仕方ないと思う」
酒匂「司令もそう決めたんだから酒匂、お留守番しとくね」
長門「提督よ、鎮守府近海なら今の酒匂でも出撃できるのでは・・?」
提督「とはいっても、着任したてだし今回の作戦にはまだまだだと思って・・」
提督「酒匂を入れることはできなかったんだ、ごめん・・」
長門「提督!一度だけでも―――」
酒匂「いいよ、長門さん」
長門「酒匂・・」
酒匂「酒匂、まだまだ勉強や演習しないと出撃できないんだってわかったんだし、仕方ないと思う」
酒匂「司令もそう決めたんだから酒匂、お留守番しとくね」
16: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/06(水) 00:34:22.72 ID:FwKNL4vA0
提督「酒匂・・・ごめん」
酒匂「ううん、司令は悪くない!じゃあ酒匂は演習に行ってくるね!」バタン
長門「酒匂!」
提督「長門、もしかして酒匂に何か言ったのかい?」
長門「ああ・・酒匂も近海なら出撃できるのではないかと思って・・」
提督「香取が言うには、まだ荒削りの所があるらしく十分に出撃できる状態じゃないらしいんだ」
長門「そうだったのか・・・私の早とちりか・・・」
提督「でもあの娘はしっかりすれば十分戦力になれるはずなんだ、演習をしっかりとこなして早く大規模出撃のメンバーに入れてあげたいけどね・・」
酒匂「・・・・・」グスッ
酒匂「酒匂、泣いちゃダメ。泣いちゃ・・・」
酒匂「ううん、司令は悪くない!じゃあ酒匂は演習に行ってくるね!」バタン
長門「酒匂!」
提督「長門、もしかして酒匂に何か言ったのかい?」
長門「ああ・・酒匂も近海なら出撃できるのではないかと思って・・」
提督「香取が言うには、まだ荒削りの所があるらしく十分に出撃できる状態じゃないらしいんだ」
長門「そうだったのか・・・私の早とちりか・・・」
提督「でもあの娘はしっかりすれば十分戦力になれるはずなんだ、演習をしっかりとこなして早く大規模出撃のメンバーに入れてあげたいけどね・・」
酒匂「・・・・・」グスッ
酒匂「酒匂、泣いちゃダメ。泣いちゃ・・・」
20: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:21:36.04 ID:+YpLRAP70
―――――翌日 演習場
ヨッシャー サンマトリニクゾー
酒匂(あれは・・北方海域で秋刀魚漁するメンバー・・)
酒匂(酒匂も出撃したかったなぁ・・)
鹿島「酒匂さん?あのー・・聞いてます?」
酒匂(近海にも出撃できなかったって・・もしかしたらこのまま・・)
鹿島「あのー!酒匂さん?」
酒匂(ううん!そんなことはない!そんなことは・・・)
鹿島「さーかーわーさん!」
酒匂「ぴゃあ!?」ビクッ
鹿島「どうしたんですか?ボーっと突っ立って・・ちゃんと話を聞いてましたか?」
酒匂「ぴゃあ・・・ごめんなさい・・」シュン
ヨッシャー サンマトリニクゾー
酒匂(あれは・・北方海域で秋刀魚漁するメンバー・・)
酒匂(酒匂も出撃したかったなぁ・・)
鹿島「酒匂さん?あのー・・聞いてます?」
酒匂(近海にも出撃できなかったって・・もしかしたらこのまま・・)
鹿島「あのー!酒匂さん?」
酒匂(ううん!そんなことはない!そんなことは・・・)
鹿島「さーかーわーさん!」
酒匂「ぴゃあ!?」ビクッ
鹿島「どうしたんですか?ボーっと突っ立って・・ちゃんと話を聞いてましたか?」
酒匂「ぴゃあ・・・ごめんなさい・・」シュン
21: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:27:14.22 ID:+YpLRAP70
香取「酒匂さん、あなたが出撃できなかった気持ちはわかります」
香取「しかし、皆さんが出撃してる間に演習をこなして力を付けることができるので頑張りましょう」
酒匂「・・・はーい」
香取(やはり・・ショックが大きかったのでしょうか・・前程とは大違いですね・・)
――――数時間後
鹿島「酒匂さん?どうしたのですか?前回より砲撃や雷撃の命中率が下がっていますよ?」
酒匂「・・・・・ごめんなさい」
香取「・・・・今日の演習はこれで終了にしましょう」
香取「酒匂さん、少しの期間演習を無しにするよう提督に伝えます」
酒匂「えっ!?そんな・・」
香取「酒匂さんの気持ちが落ち着いた頃に私の所へ話してくれれば演習は再開いたします」
香取「それまではゆっくりと休んでください」
酒匂「・・・・」
香取「しかし、皆さんが出撃してる間に演習をこなして力を付けることができるので頑張りましょう」
酒匂「・・・はーい」
香取(やはり・・ショックが大きかったのでしょうか・・前程とは大違いですね・・)
――――数時間後
鹿島「酒匂さん?どうしたのですか?前回より砲撃や雷撃の命中率が下がっていますよ?」
酒匂「・・・・・ごめんなさい」
香取「・・・・今日の演習はこれで終了にしましょう」
香取「酒匂さん、少しの期間演習を無しにするよう提督に伝えます」
酒匂「えっ!?そんな・・」
香取「酒匂さんの気持ちが落ち着いた頃に私の所へ話してくれれば演習は再開いたします」
香取「それまではゆっくりと休んでください」
酒匂「・・・・」
22: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:30:57.53 ID:+YpLRAP70
鹿島「香取姉・・・いいんですか?」
香取「・・今の酒匂さんの状態を見る限りでは練度も上がるとは思えない傾向です」
香取「今は心身の休養を取ってもらい、落ち着いたころにもう一度演習を行いましょう」
鹿島「はい・・・でも、酒匂さんがあんなに落ち込んでるのは何故・・・?」
香取「原因としては、不安を募らせる要素が酒匂さんの中にあるのかもしれません」
香取「その不安要素は分かりませんが・・・」
鹿島「とりあえず、提督さんに報告しに行きますか?」
香取「そうですね」
香取「・・今の酒匂さんの状態を見る限りでは練度も上がるとは思えない傾向です」
香取「今は心身の休養を取ってもらい、落ち着いたころにもう一度演習を行いましょう」
鹿島「はい・・・でも、酒匂さんがあんなに落ち込んでるのは何故・・・?」
香取「原因としては、不安を募らせる要素が酒匂さんの中にあるのかもしれません」
香取「その不安要素は分かりませんが・・・」
鹿島「とりあえず、提督さんに報告しに行きますか?」
香取「そうですね」
23: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:33:57.53 ID:+YpLRAP70
――――阿賀野型の部屋
酒匂「・・・・」
ガチャ
能代「酒匂、ちょっといいかしら?」
酒匂「能代お姉ちゃん・・」
能代「提督と鹿島から聞いたわよ、演習を長期期間休みにしてもらったって」
酒匂「・・・・ごめんなさい」
能代「酒匂・・何か悩み事でもあるのなら相談してくれてもいいのよ?」
阿賀野「演習のサボリはいけないのよ!」
矢矧「阿賀野姉は黙ってて・・」
酒匂「・・・・」
ガチャ
能代「酒匂、ちょっといいかしら?」
酒匂「能代お姉ちゃん・・」
能代「提督と鹿島から聞いたわよ、演習を長期期間休みにしてもらったって」
酒匂「・・・・ごめんなさい」
能代「酒匂・・何か悩み事でもあるのなら相談してくれてもいいのよ?」
阿賀野「演習のサボリはいけないのよ!」
矢矧「阿賀野姉は黙ってて・・」
24: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:36:17.42 ID:+YpLRAP70
能代「阿賀野姉の言うとおりよ。演習を頑張らないと酒匂はいつまでたっても出撃できないままよ?」
酒匂「・・・じゃあ酒匂はどうして頑張ってるのに出撃できないの?」
能代「え・・・?」
酒匂「演習だってがんばってきたのにメンバーにも選ばれなかったのは何で?!」
能代「そ・・それは・・」
矢矧「酒匂、私たちだって演習で練度を高めて出撃できるようになったの」
矢矧「だからね、もう一度気を取り直して演習を――」
酒匂「お姉ちゃん達は出撃してるからそんなこと言えるだけだよ!けれど酒匂はいつも置いてけぼり!」
酒匂「演習なんかしたって意味なんかないよ!ずーっと独りぼっちなんだよ!」
酒匂「・・・じゃあ酒匂はどうして頑張ってるのに出撃できないの?」
能代「え・・・?」
酒匂「演習だってがんばってきたのにメンバーにも選ばれなかったのは何で?!」
能代「そ・・それは・・」
矢矧「酒匂、私たちだって演習で練度を高めて出撃できるようになったの」
矢矧「だからね、もう一度気を取り直して演習を――」
酒匂「お姉ちゃん達は出撃してるからそんなこと言えるだけだよ!けれど酒匂はいつも置いてけぼり!」
酒匂「演習なんかしたって意味なんかないよ!ずーっと独りぼっちなんだよ!」
26: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:41:31.88 ID:+YpLRAP70
能代「いい加減にしなさい!」
バシッ
酒匂「痛っ・・うぅ・・」
酒匂「・・・お姉ちゃんの馬鹿!もう知らない!」
矢矧「あっ!酒匂!」
バタン
能代「・・・・・・」
矢矧「・・・・・・」
阿賀野「えっと・・・えーっと・・・酒匂ー!待ちなさーい!」ダッ
矢矧「能代姉・・」
能代「・・・ごめん。今はひとりにさせて・・」
矢矧「・・・・」
バシッ
酒匂「痛っ・・うぅ・・」
酒匂「・・・お姉ちゃんの馬鹿!もう知らない!」
矢矧「あっ!酒匂!」
バタン
能代「・・・・・・」
矢矧「・・・・・・」
阿賀野「えっと・・・えーっと・・・酒匂ー!待ちなさーい!」ダッ
矢矧「能代姉・・」
能代「・・・ごめん。今はひとりにさせて・・」
矢矧「・・・・」
27: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:45:17.14 ID:+YpLRAP70
酒匂(お姉ちゃんの馬鹿馬鹿!酒匂の気持ちなんて知らないくせに!)
酒匂(私なんて・・・私なんて・・・!)
ドンッ
酒匂「ぴゃっ!?」ドテッ
阿武隈「いたた・・・廊下は走っちゃダメ!・・って酒匂さん?」
酒匂「あなたはえっと・・・阿武隈ちゃん?」
阿武隈「そうですけど・・廊下は走っては駄目ですよ!」
酒匂「ごめんなさい・・・」
阿武隈「・・・?どうしたの?何やら訳ありみたいだけど・・相談にならのるよ?」
酒匂「・・・ここで話すより部屋で話したい・・お願い・・」
阿武隈「うーん・・・じゃあ私の部屋で話してみて。私に付いてきて」
酒匂(私なんて・・・私なんて・・・!)
ドンッ
酒匂「ぴゃっ!?」ドテッ
阿武隈「いたた・・・廊下は走っちゃダメ!・・って酒匂さん?」
酒匂「あなたはえっと・・・阿武隈ちゃん?」
阿武隈「そうですけど・・廊下は走っては駄目ですよ!」
酒匂「ごめんなさい・・・」
阿武隈「・・・?どうしたの?何やら訳ありみたいだけど・・相談にならのるよ?」
酒匂「・・・ここで話すより部屋で話したい・・お願い・・」
阿武隈「うーん・・・じゃあ私の部屋で話してみて。私に付いてきて」
29: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:47:38.66 ID:+YpLRAP70
――――長良型の部屋
鬼怒「なるほどなるほど・・演習ばっかりで出撃できなくてしょんぼりしてたんだね」
酒匂「お姉ちゃん達は演習をこなせば出撃できるとか言ってたけど全然ないし・・」
酒匂「出撃してるからあんなこと言えるものだと思う」
阿武隈「うーん・・出撃したい気持ちは分かるけど・・やっぱり演習で練度をあげて出撃した方が良いと思うなぁ」
酒匂「・・・・やっぱりみんなもそうなんだ」
五十鈴「まぁ酒匂ぐらいの練度なら鎮守府近海も行けそうだけど・・あそこは稀にしか行かないしね」
鬼怒「秋刀魚も北方海域メインで獲るらしいからね」
阿武隈「それはそうと 阿賀野さんたちに謝りに行かないの?」
酒匂「酒匂、今日は部屋に戻らない」プイッ
阿武隈「ええ・・じゃあどうするの?」
鬼怒「なるほどなるほど・・演習ばっかりで出撃できなくてしょんぼりしてたんだね」
酒匂「お姉ちゃん達は演習をこなせば出撃できるとか言ってたけど全然ないし・・」
酒匂「出撃してるからあんなこと言えるものだと思う」
阿武隈「うーん・・出撃したい気持ちは分かるけど・・やっぱり演習で練度をあげて出撃した方が良いと思うなぁ」
酒匂「・・・・やっぱりみんなもそうなんだ」
五十鈴「まぁ酒匂ぐらいの練度なら鎮守府近海も行けそうだけど・・あそこは稀にしか行かないしね」
鬼怒「秋刀魚も北方海域メインで獲るらしいからね」
阿武隈「それはそうと 阿賀野さんたちに謝りに行かないの?」
酒匂「酒匂、今日は部屋に戻らない」プイッ
阿武隈「ええ・・じゃあどうするの?」
30: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/11(月) 00:51:37.96 ID:+YpLRAP70
鬼怒「今日はここに泊まればいいじゃん」
阿武隈「えっ」
酒匂「ぴゃー・・いいの?」
鬼怒「同じ軽巡の仲間なんだし、これぐらい軽いもんよ!」
五十鈴「そうね、ちょっとの間だけここに居座ればいいと思うわ」
酒匂「で、でも寝るところが・・」
鬼怒「あぶぅの布団で寝ればいいと思うよ」
阿武隈「どうしてそうなるの!?」
五十鈴「だって阿武隈が相談相手になるって言ったんでしょ?」
鬼怒「二人で一緒に寝ればいいじゃん!」
酒匂「うーん・・じゃあそうする!ぴゃっ!」
阿武隈「まぁ、ちょっとの間ならいいか・・」
阿武隈「えっ」
酒匂「ぴゃー・・いいの?」
鬼怒「同じ軽巡の仲間なんだし、これぐらい軽いもんよ!」
五十鈴「そうね、ちょっとの間だけここに居座ればいいと思うわ」
酒匂「で、でも寝るところが・・」
鬼怒「あぶぅの布団で寝ればいいと思うよ」
阿武隈「どうしてそうなるの!?」
五十鈴「だって阿武隈が相談相手になるって言ったんでしょ?」
鬼怒「二人で一緒に寝ればいいじゃん!」
酒匂「うーん・・じゃあそうする!ぴゃっ!」
阿武隈「まぁ、ちょっとの間ならいいか・・」
36: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/15(金) 00:16:33.49 ID:yAZblF1E0
――――夜
名取「そんなことが・・・」
長良「けどまぁ、一人増えても大丈夫!安心していいよ!」
酒匂「ぴゃん!ありがとう!」
由良「阿賀野さん達は酒匂ちゃんがここにいることは知ってるの?」
阿武隈「阿賀野さんには教えて、能代さんと矢矧さんに事情を伝えるように頼んだから大丈夫 だと思う・・」
名取「酒匂さん・・・お姉さん達に謝る気は・・?」
酒匂「・・・・」プイッ
長良「これはなさそうだねー・・」
鬼怒「まま、酒匂が謝る気になるまで待つしかないよ」
酒匂「ぴゅううう!酒匂はそんなつもりはない!」
鬼怒「えー・・おにおこ・・?」
五十鈴「ふぅ・・長くなりそうね・・」
名取「そんなことが・・・」
長良「けどまぁ、一人増えても大丈夫!安心していいよ!」
酒匂「ぴゃん!ありがとう!」
由良「阿賀野さん達は酒匂ちゃんがここにいることは知ってるの?」
阿武隈「阿賀野さんには教えて、能代さんと矢矧さんに事情を伝えるように頼んだから大丈夫 だと思う・・」
名取「酒匂さん・・・お姉さん達に謝る気は・・?」
酒匂「・・・・」プイッ
長良「これはなさそうだねー・・」
鬼怒「まま、酒匂が謝る気になるまで待つしかないよ」
酒匂「ぴゅううう!酒匂はそんなつもりはない!」
鬼怒「えー・・おにおこ・・?」
五十鈴「ふぅ・・長くなりそうね・・」
37: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/15(金) 00:20:50.48 ID:yAZblF1E0
―――――阿賀野型の部屋
阿賀野「・・・ということで酒匂は阿武隈ちゃんと同じ、長良型の部屋で一緒に寝ることになりました」
矢矧「そう・・・鎮守府から出て行ったとかじゃなかったから安心したわ」
阿賀野「けど戻ってくる様子はないみたいよ」
能代「酒匂・・・」
阿賀野「能代、心配するのはわかるけど今はあの娘が戻ってくるまで待ちましょ?」
阿賀野「大丈夫。酒匂ならきっと間違いに気づいて、許してくれるわよ」
能代「阿賀野姉・・」
能代「良いこと言ってるけど、私のおやつを勝手に食べたことは許さないわよ?」
阿賀野「ま、待って!能代の物とは思わなかったのー!」
矢矧(やっぱりそうなるのね・・・)
阿賀野「・・・ということで酒匂は阿武隈ちゃんと同じ、長良型の部屋で一緒に寝ることになりました」
矢矧「そう・・・鎮守府から出て行ったとかじゃなかったから安心したわ」
阿賀野「けど戻ってくる様子はないみたいよ」
能代「酒匂・・・」
阿賀野「能代、心配するのはわかるけど今はあの娘が戻ってくるまで待ちましょ?」
阿賀野「大丈夫。酒匂ならきっと間違いに気づいて、許してくれるわよ」
能代「阿賀野姉・・」
能代「良いこと言ってるけど、私のおやつを勝手に食べたことは許さないわよ?」
阿賀野「ま、待って!能代の物とは思わなかったのー!」
矢矧(やっぱりそうなるのね・・・)
38: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/15(金) 00:24:07.01 ID:yAZblF1E0
――――???
酒匂「・・・ここはどこだろ・・?」キョロキョロ
ヨシ シュツゲキダ!
酒匂「あっ!待って!酒匂も一緒に連れてって!」
酒匂「待ってよぉ!みんな!置いてかないで!」
酒匂「ぴゃっ?!」ドテッ
酒匂「いてて・・・みんな待っ―――」
シーン
酒匂「・・・酒匂、また置いてけぼり・・もう嫌だよぉ・・」
酒匂「長門さん・・プリンツちゃん・・矢矧ちゃん・・お姉ちゃん・・」
酒匂「・・・ここはどこだろ・・?」キョロキョロ
ヨシ シュツゲキダ!
酒匂「あっ!待って!酒匂も一緒に連れてって!」
酒匂「待ってよぉ!みんな!置いてかないで!」
酒匂「ぴゃっ?!」ドテッ
酒匂「いてて・・・みんな待っ―――」
シーン
酒匂「・・・酒匂、また置いてけぼり・・もう嫌だよぉ・・」
酒匂「長門さん・・プリンツちゃん・・矢矧ちゃん・・お姉ちゃん・・」
39: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/15(金) 00:26:17.77 ID:yAZblF1E0
――――長良型の部屋
酒匂「!!」ガバッ
酒匂「・・・・またあの夢・・」
酒匂「・・・・・」チラッ
阿武隈「みなさん・・アタシの指示を聞いてください・・」ウーン
酒匂「・・・・ちょっとだけお散歩してこよっと」
――――軽巡寮 廊下
矢矧「図書室で本を読み漁ってたらもうこんな時間・・そろそろ寝ないと・・」
矢矧「ん・・?あれは・・」
酒匂「静かだなぁ・・みんなもう寝ちゃったのかな?」
酒匂「どうせだしお外にでもいこーっと」
矢矧「酒匂?どこにいくのかしら・・」
酒匂「!!」ガバッ
酒匂「・・・・またあの夢・・」
酒匂「・・・・・」チラッ
阿武隈「みなさん・・アタシの指示を聞いてください・・」ウーン
酒匂「・・・・ちょっとだけお散歩してこよっと」
――――軽巡寮 廊下
矢矧「図書室で本を読み漁ってたらもうこんな時間・・そろそろ寝ないと・・」
矢矧「ん・・?あれは・・」
酒匂「静かだなぁ・・みんなもう寝ちゃったのかな?」
酒匂「どうせだしお外にでもいこーっと」
矢矧「酒匂?どこにいくのかしら・・」
40: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/15(金) 00:28:08.43 ID:yAZblF1E0
―――鎮守府 運動場
酒匂「静かだなぁ、なんかちょっと不気味・・」
酒匂「ぴゃああ・・・寒くなってきた・・そろそろ戻ろうかな・・」
フンッ フンッ
酒匂「・・・?誰の声だろ?」
長門「フンッ!フンッ!」
酒匂(長門さんだ・・・懸垂かな?すごいなぁ・・)
長門「ふぅ・・次は・・ん?」
酒匂「あ・・長門さん・・」
長門「酒匂・・・」
酒匂「静かだなぁ、なんかちょっと不気味・・」
酒匂「ぴゃああ・・・寒くなってきた・・そろそろ戻ろうかな・・」
フンッ フンッ
酒匂「・・・?誰の声だろ?」
長門「フンッ!フンッ!」
酒匂(長門さんだ・・・懸垂かな?すごいなぁ・・)
長門「ふぅ・・次は・・ん?」
酒匂「あ・・長門さん・・」
長門「酒匂・・・」
43: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:23:54.01 ID:/bTIVqaL0
長門「酒匂・・前の件についてはすまなかった・・」ペコ
酒匂「ううん、長門さんは悪くないよ」
長門「しかし、酒匂は何故こんな夜に外へ出たんだ?」
酒匂「嫌な夢をまた見てしまって目が覚めちゃったんだ」
長門「嫌な夢・・?どんな夢だ?」
酒匂「・・・皆が出撃する中で酒匂が置いてけぼりにされて、独りぼっちになる夢・・」
長門「・・・・それは悲しいな」
酒匂「だから酒匂は早くみんなと出撃したいのにずっと演習でつまらない・・・」
酒匂「能代お姉ちゃんは演習を頑張れば出撃できるとか言ってるけど嘘ばっかり・・」
長門「・・・・」
酒匂「ううん、長門さんは悪くないよ」
長門「しかし、酒匂は何故こんな夜に外へ出たんだ?」
酒匂「嫌な夢をまた見てしまって目が覚めちゃったんだ」
長門「嫌な夢・・?どんな夢だ?」
酒匂「・・・皆が出撃する中で酒匂が置いてけぼりにされて、独りぼっちになる夢・・」
長門「・・・・それは悲しいな」
酒匂「だから酒匂は早くみんなと出撃したいのにずっと演習でつまらない・・・」
酒匂「能代お姉ちゃんは演習を頑張れば出撃できるとか言ってるけど嘘ばっかり・・」
長門「・・・・」
44: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:25:33.55 ID:/bTIVqaL0
長門「・・・私は能代が正しいと思うな」
酒匂「長門さんまで!どうして!」
長門「酒匂、話を聞け。・・・ここにいる艦娘全員すぐに出撃という事はない。誰しもが演習は通る道だ」
酒匂「違う違う!演習なんか頑張ったって意味なんかないよ!」
酒匂「酒匂、いつも頑張ってるのに出撃できないんだよ!!」
長門「それは違うぞ酒匂」
酒匂「お姉ちゃん達は演習すれば出撃できるとか言ってるけど出撃もなしでいつも一人なんだよ!」グスッ
酒匂「・・・夢の中でも・・・今も・・もう独りぼっちは嫌なの・・・」ポロポロ
長門「酒匂・・・」
酒匂「長門さんまで!どうして!」
長門「酒匂、話を聞け。・・・ここにいる艦娘全員すぐに出撃という事はない。誰しもが演習は通る道だ」
酒匂「違う違う!演習なんか頑張ったって意味なんかないよ!」
酒匂「酒匂、いつも頑張ってるのに出撃できないんだよ!!」
長門「それは違うぞ酒匂」
酒匂「お姉ちゃん達は演習すれば出撃できるとか言ってるけど出撃もなしでいつも一人なんだよ!」グスッ
酒匂「・・・夢の中でも・・・今も・・もう独りぼっちは嫌なの・・・」ポロポロ
長門「酒匂・・・」
45: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:28:00.04 ID:/bTIVqaL0
長門「落ち着いたか?」
酒匂「うん・・・」
長門「・・・・私も昔は演習漬けの日々だった」
長門「私だけではない、金剛や榛名 阿武隈 そして提督が一番信頼している古鷹もだ」
長門「みんな数多くの演習をこなして、出撃するようになった」
酒匂「みんな、文句とか言わなかったの・・?」
長門「ごく一部は夜戦したい!とかいたが、文句を言うものはあまりいなかった」
長門「全員、熱心に演習をしていたぞ」
酒匂「・・・・・」
酒匂「うん・・・」
長門「・・・・私も昔は演習漬けの日々だった」
長門「私だけではない、金剛や榛名 阿武隈 そして提督が一番信頼している古鷹もだ」
長門「みんな数多くの演習をこなして、出撃するようになった」
酒匂「みんな、文句とか言わなかったの・・?」
長門「ごく一部は夜戦したい!とかいたが、文句を言うものはあまりいなかった」
長門「全員、熱心に演習をしていたぞ」
酒匂「・・・・・」
46: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:31:26.16 ID:/bTIVqaL0
プリンツ「わぁ!」
酒匂「ぴゃ!?」ビクッ
プリンツ「えへへ、吃驚した?」
酒匂「プ、プリンツちゃん・・」
長門「どうした?お前も散歩していたのか?」
プリンツ「眠れないから気分転換に外歩いてたら長門さん達を見つけたんで・・」
プリンツ「ところで、二人で何の話してたの?」
長門「酒匂の出撃について話し合っていたところだ」
長門「せっかくだプリンツ、お前の昔の話をしてやれ」
プリンツ「え?私の昔ですか?」
酒匂「ぴゃ?プリンツちゃんも出撃してなかったの?」
酒匂「ぴゃ!?」ビクッ
プリンツ「えへへ、吃驚した?」
酒匂「プ、プリンツちゃん・・」
長門「どうした?お前も散歩していたのか?」
プリンツ「眠れないから気分転換に外歩いてたら長門さん達を見つけたんで・・」
プリンツ「ところで、二人で何の話してたの?」
長門「酒匂の出撃について話し合っていたところだ」
長門「せっかくだプリンツ、お前の昔の話をしてやれ」
プリンツ「え?私の昔ですか?」
酒匂「ぴゃ?プリンツちゃんも出撃してなかったの?」
47: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:36:57.05 ID:/bTIVqaL0
プリンツ「あのね、私も酒匂と同じ、着任当初からずっと演習だったんだ」
酒匂「そうなんだ・・」
プリンツ「当時はビスマルク姉さまと一緒に出撃したいがために毎日提督に言い続けたんだ。"出撃させて"って」
酒匂「それで、どうだった?」
プリンツ「まだ着任当初だし、出撃はできなかったよ。私も限界が来てもう演習なんかやらないって叫んじゃった」
プリンツ「そのことを知ったビスマルク姉さまが私を部屋に呼んだんだよ。その後どうしたと思う?」
酒匂「んーと・・・慰めた?」
プリンツ「まさか!頬をひっぱ叩かれて、説教だったよ」
プリンツ「私も泣いちゃったし、長い説教だったよ」
プリンツ「でも最後に優しい顔でこう言ってくれたんだ」
"まだ焦る時じゃないわ 出撃する時までたくさん力を付けておいで いつでも待ってるから"
酒匂「そうなんだ・・」
プリンツ「当時はビスマルク姉さまと一緒に出撃したいがために毎日提督に言い続けたんだ。"出撃させて"って」
酒匂「それで、どうだった?」
プリンツ「まだ着任当初だし、出撃はできなかったよ。私も限界が来てもう演習なんかやらないって叫んじゃった」
プリンツ「そのことを知ったビスマルク姉さまが私を部屋に呼んだんだよ。その後どうしたと思う?」
酒匂「んーと・・・慰めた?」
プリンツ「まさか!頬をひっぱ叩かれて、説教だったよ」
プリンツ「私も泣いちゃったし、長い説教だったよ」
プリンツ「でも最後に優しい顔でこう言ってくれたんだ」
"まだ焦る時じゃないわ 出撃する時までたくさん力を付けておいで いつでも待ってるから"
48: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:40:23.87 ID:/bTIVqaL0
酒匂「いつでも待ってる・・・」
プリンツ「それから演習をするようになって、しばらくして出撃できるようになったんだ」
プリンツ「だからね、酒匂も演習頑張ろ!」
酒匂「・・・・・」
長門「酒匂、お前はもう独りぼっちではない。ここに来たからには仲間がたくさんいる」
長門「阿賀野達や私やプリンツ、そして大勢の艦娘、提督もいる」
長門「まだ焦らなくていい、出撃の機会が来るまでは演習をこなして練度を上げて来ると良い」
長門「私たちはいつでも待ってるぞ」
酒匂「でも、酒匂・・練度上げれるのかな・・?」
プリンツ「それから演習をするようになって、しばらくして出撃できるようになったんだ」
プリンツ「だからね、酒匂も演習頑張ろ!」
酒匂「・・・・・」
長門「酒匂、お前はもう独りぼっちではない。ここに来たからには仲間がたくさんいる」
長門「阿賀野達や私やプリンツ、そして大勢の艦娘、提督もいる」
長門「まだ焦らなくていい、出撃の機会が来るまでは演習をこなして練度を上げて来ると良い」
長門「私たちはいつでも待ってるぞ」
酒匂「でも、酒匂・・練度上げれるのかな・・?」
49: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:44:01.30 ID:/bTIVqaL0
プリンツ「大丈夫!酒匂ならきっとできるよ!」
プリンツ「ほら!よく言うでしょ?"山の上にも三年"って!」
長門「それを言うのなら"石の上にも三年"だろう」
プリンツ「あれ?そうだっけ・・。ビスマルク姉さまに教えてもらったんだけどなぁ・・」
酒匂「ビスマルクさんが間違ってる?」
長門「ああ、そうだな」
プリンツ「ま、まぁ!"猟虎の川流れ"って言うし!」
長門「"河童の川流れ"だろう」
プリンツ「う、うーむ・・・」
プリンツ「ほら!よく言うでしょ?"山の上にも三年"って!」
長門「それを言うのなら"石の上にも三年"だろう」
プリンツ「あれ?そうだっけ・・。ビスマルク姉さまに教えてもらったんだけどなぁ・・」
酒匂「ビスマルクさんが間違ってる?」
長門「ああ、そうだな」
プリンツ「ま、まぁ!"猟虎の川流れ"って言うし!」
長門「"河童の川流れ"だろう」
プリンツ「う、うーむ・・・」
50: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/17(日) 22:49:22.53 ID:/bTIVqaL0
酒匂「えへへ・・確かにそうかもしれないね」
酒匂「酒匂の我儘をお姉ちゃん達にぶつけちゃって怒らせたんだと思う」
酒匂「謝りに行きたい・・・けど・・」
長門「大丈夫だ、素直に謝れば許してくれるはずだ」
酒匂「うん・・それと!酒匂はもう独りぼっちとか考えない!」
酒匂「司令や長門さん、プリンツちゃん、そしてお姉ちゃん達がいるから!いつでもいるから!」
酒匂「だから・・酒匂、演習頑張る!ぴゃん!」
プリンツ「そうだよ酒匂!」
長門「私たちも協力しよう」
酒匂「みんな・・ありがとう!」
矢矧(良かったわね・・酒匂・・頼れる仲間がいて・・)
矢矧(私たちも全力でサポートするわ)
酒匂「酒匂の我儘をお姉ちゃん達にぶつけちゃって怒らせたんだと思う」
酒匂「謝りに行きたい・・・けど・・」
長門「大丈夫だ、素直に謝れば許してくれるはずだ」
酒匂「うん・・それと!酒匂はもう独りぼっちとか考えない!」
酒匂「司令や長門さん、プリンツちゃん、そしてお姉ちゃん達がいるから!いつでもいるから!」
酒匂「だから・・酒匂、演習頑張る!ぴゃん!」
プリンツ「そうだよ酒匂!」
長門「私たちも協力しよう」
酒匂「みんな・・ありがとう!」
矢矧(良かったわね・・酒匂・・頼れる仲間がいて・・)
矢矧(私たちも全力でサポートするわ)
53: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/23(土) 13:13:36.97 ID:fDv9nHKT0
――――翌日 阿賀野型の部屋
コンコン
阿賀野「はぁーい。・・・能代、能代」チョイチョイ
能代「どうしたの?阿賀野姉・・・あ・・」
酒匂「・・・・」モジモジ
阿武隈「さ、酒匂さん」
酒匂「う、うん・・・あのね・・能代お姉ちゃん・・」
酒匂「この前は勝手に出て行っちゃってごめんなさい・・」
能代「酒匂・・」
酒匂「酒匂、出撃できなくても文句は言わないし、演習頑張るから・・その・・」
能代「・・・ううん。私の方こそ、叩いちゃってごめんね」
コンコン
阿賀野「はぁーい。・・・能代、能代」チョイチョイ
能代「どうしたの?阿賀野姉・・・あ・・」
酒匂「・・・・」モジモジ
阿武隈「さ、酒匂さん」
酒匂「う、うん・・・あのね・・能代お姉ちゃん・・」
酒匂「この前は勝手に出て行っちゃってごめんなさい・・」
能代「酒匂・・」
酒匂「酒匂、出撃できなくても文句は言わないし、演習頑張るから・・その・・」
能代「・・・ううん。私の方こそ、叩いちゃってごめんね」
54: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/23(土) 13:30:57.88 ID:fDv9nHKT0
能代「むしろ謝るのは私のほうよ」
能代「・・・ずっと悩んでたことに気づけなくて、姉として失格よね・・」
酒匂「ううん。能代お姉ちゃんは悪くないよ。それとね、酒匂はもう独りぼっちじゃない」
酒匂「お姉ちゃん達や長門さん、プリンツちゃん 他の艦娘に司令もいるから!」
酒匂「だから、演習頑張って出撃できるようになるまで見守っててね!」
能代「・・・・ええ!もちろんよ!」
矢矧「私たちにできることなら何でもするわ!」
阿賀野「よぉーし!阿賀野型の本領発揮するわよー!」
酒匂「ぴゃー!」
能代「・・・ずっと悩んでたことに気づけなくて、姉として失格よね・・」
酒匂「ううん。能代お姉ちゃんは悪くないよ。それとね、酒匂はもう独りぼっちじゃない」
酒匂「お姉ちゃん達や長門さん、プリンツちゃん 他の艦娘に司令もいるから!」
酒匂「だから、演習頑張って出撃できるようになるまで見守っててね!」
能代「・・・・ええ!もちろんよ!」
矢矧「私たちにできることなら何でもするわ!」
阿賀野「よぉーし!阿賀野型の本領発揮するわよー!」
酒匂「ぴゃー!」
55: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/23(土) 13:34:21.76 ID:fDv9nHKT0
――――演習場
香取「では、演習を再開しましょうか」
能代「ごめんなさい、私たちも指導する側に入っちゃって・・」
香取「構いませんよ、これも酒匂さんの願いでもありますし。姉妹から教えを貰うのも一つです」
阿賀野「鹿島さんも香取さんから教えて貰ってそうね」
鹿島「わ、私は大丈夫ですから!」
香取「話は戻りますが、砲撃の時に別の方向を見たりして命中率が安定してないんです」
阿賀野「駄目よ酒匂!砲撃するときは敵艦をじーっと見て、ドーンと撃つのよ!」
酒匂「じーっと見てドーンと撃つ?」
能代「もう・・阿賀野姉ったら・・。いい?酒匂。敵の先の動きを見てしっかりと狙って撃つのよ」
酒匂「うん、わかった!・・・・あ!長門さんだ!」
能代「キョロキョロしない!」
酒匂「ぴゃああ・・・」
矢矧(鬼教官みたいね・・)
香取「では、演習を再開しましょうか」
能代「ごめんなさい、私たちも指導する側に入っちゃって・・」
香取「構いませんよ、これも酒匂さんの願いでもありますし。姉妹から教えを貰うのも一つです」
阿賀野「鹿島さんも香取さんから教えて貰ってそうね」
鹿島「わ、私は大丈夫ですから!」
香取「話は戻りますが、砲撃の時に別の方向を見たりして命中率が安定してないんです」
阿賀野「駄目よ酒匂!砲撃するときは敵艦をじーっと見て、ドーンと撃つのよ!」
酒匂「じーっと見てドーンと撃つ?」
能代「もう・・阿賀野姉ったら・・。いい?酒匂。敵の先の動きを見てしっかりと狙って撃つのよ」
酒匂「うん、わかった!・・・・あ!長門さんだ!」
能代「キョロキョロしない!」
酒匂「ぴゃああ・・・」
矢矧(鬼教官みたいね・・)
56: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/23(土) 13:37:53.38 ID:fDv9nHKT0
酒匂「次は雷撃だね!」
矢矧「じゃあ私が教えてあげる。雷撃の場合は構えの準備をして敵の動きを見るの」
矢矧「そして敵が移動する位置を予測してその方向に魚雷を撃つ!」ACモーション
酒匂「ぴゃああ!かっこいい!」
矢矧「そ、そうかな//。でも、酒匂は自分の撃ちやすいようにすればいいよ」
酒匂「わかった!・・・構えをして・・敵の動きを見て・・その先に撃つ・・・」ジーッ
酒匂「・・・・」ウズウズ
矢矧(何かしら・・・これ・・)
酒匂「今だ!ぴゃあ!」ACモーション
能代(獲物を狙ってる猫みたいね・・)
鹿島(猫じゃらしでも見てそうな猫みたいです・・)
矢矧「じゃあ私が教えてあげる。雷撃の場合は構えの準備をして敵の動きを見るの」
矢矧「そして敵が移動する位置を予測してその方向に魚雷を撃つ!」ACモーション
酒匂「ぴゃああ!かっこいい!」
矢矧「そ、そうかな//。でも、酒匂は自分の撃ちやすいようにすればいいよ」
酒匂「わかった!・・・構えをして・・敵の動きを見て・・その先に撃つ・・・」ジーッ
酒匂「・・・・」ウズウズ
矢矧(何かしら・・・これ・・)
酒匂「今だ!ぴゃあ!」ACモーション
能代(獲物を狙ってる猫みたいね・・)
鹿島(猫じゃらしでも見てそうな猫みたいです・・)
57: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/23(土) 13:52:54.59 ID:fDv9nHKT0
鹿島「対潜実践を行いましょう。今回は伊58さんにも協力してもらいます」
伊58「練度上がれど、初心忘れるべからずでち!」
酒匂「ぴゃー!」
阿賀野「いい?まずソナーをパァーってして潜水艦を見つけたら爆雷をポイッって発射してドーンとするのよ!」
能代「阿賀野姉・・擬音が多すぎよ・・」
酒匂「ぴゃあ!ソナーをパァーって爆雷ポイしてドーンだね!」
伊58「さぁ!当ててみるが良いでち!」ザブン
酒匂「酒匂、負けない!・・・そこだね!ぴゃん!」ボンッ
酒匂「あわわわ・・・ぴゃー」スイー
香取(フィギュアスケーターでしょうか・・・)
伊58「練度上がれど、初心忘れるべからずでち!」
酒匂「ぴゃー!」
阿賀野「いい?まずソナーをパァーってして潜水艦を見つけたら爆雷をポイッって発射してドーンとするのよ!」
能代「阿賀野姉・・擬音が多すぎよ・・」
酒匂「ぴゃあ!ソナーをパァーって爆雷ポイしてドーンだね!」
伊58「さぁ!当ててみるが良いでち!」ザブン
酒匂「酒匂、負けない!・・・そこだね!ぴゃん!」ボンッ
酒匂「あわわわ・・・ぴゃー」スイー
香取(フィギュアスケーターでしょうか・・・)
61: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 18:02:37.19 ID:vAb4Z35w0
――――運動場
長門「行くぞ酒匂!私たちが目指すのは!暁の水平線に勝利を刻むことだ!」ダッダッ
酒匂「ぴゃあああ!頑張る!」タッタッ
能代「これはどうなのかしら・・・?」
矢矧「まぁトレーニングしてるようにみえるし・・」
阿賀野「酒匂ー!頑張れー!」
長門「このランニングが終わったら腹筋だ!」
酒匂「ぴゃん!酒匂、長門さんみたいに強くなりたい!」
長門「その意気だ!」
長門「行くぞ酒匂!私たちが目指すのは!暁の水平線に勝利を刻むことだ!」ダッダッ
酒匂「ぴゃあああ!頑張る!」タッタッ
能代「これはどうなのかしら・・・?」
矢矧「まぁトレーニングしてるようにみえるし・・」
阿賀野「酒匂ー!頑張れー!」
長門「このランニングが終わったら腹筋だ!」
酒匂「ぴゃん!酒匂、長門さんみたいに強くなりたい!」
長門「その意気だ!」
62: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 18:12:25.11 ID:vAb4Z35w0
――――ドイツ艦の部屋
ビスマルク「酒匂・・来たわね」
酒匂「ぴゃああ・・・」ドキドキ
ビスマルク「プリンツから聞いたわ、特訓をしてほしいと」
酒匂「う、うん!」ドキドキ
ビスマルク「いいわ、このビスマルクの特訓についてこられるかしら・・?」
酒匂「・・・」ゴクリ
ビスマルク「じゃあ・・まずは"納豆を食べて精神を鍛える"訓練よ!」バーン
酒匂「ぴゃ?納豆?」
プリンツ「ビスマルク姉さまが最初にそれを出すなんて・・本気だよ!」
ビスマルク「酒匂・・来たわね」
酒匂「ぴゃああ・・・」ドキドキ
ビスマルク「プリンツから聞いたわ、特訓をしてほしいと」
酒匂「う、うん!」ドキドキ
ビスマルク「いいわ、このビスマルクの特訓についてこられるかしら・・?」
酒匂「・・・」ゴクリ
ビスマルク「じゃあ・・まずは"納豆を食べて精神を鍛える"訓練よ!」バーン
酒匂「ぴゃ?納豆?」
プリンツ「ビスマルク姉さまが最初にそれを出すなんて・・本気だよ!」
63: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 18:22:17.87 ID:vAb4Z35w0
ビスマルク「この納豆を食べて精神を鍛える・・戦場ではどんなに苦しい状況でも決して諦めないメンタルが必要なのよ!」
ビスマルク「まずはこの私が手本を見せてあげるわ!」パクッ
グラーフ「大丈夫か・・?ビスマルク・・?」
ビスマルク「・・・・・・うぐぐ。まだよ!まだいけるわ!」パクッ
プリンツ「ビスマルク姉さま!頑張って!」ヤンヤヤンヤ
呂500「がんば!ですって!」
ビスマルク「完食は・・してみせるわ・・!」パクッパクッ
Z3「相変わらず変な特訓ね・・」
Z1「酒匂さんは納豆好きなの?」
酒匂「うん 大好きだよ」モグモグ
ビスマルク「まずはこの私が手本を見せてあげるわ!」パクッ
グラーフ「大丈夫か・・?ビスマルク・・?」
ビスマルク「・・・・・・うぐぐ。まだよ!まだいけるわ!」パクッ
プリンツ「ビスマルク姉さま!頑張って!」ヤンヤヤンヤ
呂500「がんば!ですって!」
ビスマルク「完食は・・してみせるわ・・!」パクッパクッ
Z3「相変わらず変な特訓ね・・」
Z1「酒匂さんは納豆好きなの?」
酒匂「うん 大好きだよ」モグモグ
64: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 18:28:37.97 ID:vAb4Z35w0
――――執務室
阿賀野「提督さん!じゃーん!見てみて!」
提督「へぇ、立派にできた旗だね!」
能代「私たち阿賀野型四姉妹で作りました」
古鷹「船に乗ってるのは阿賀野さん達ですね」
矢矧「ええ 可愛く描けてるかしら?」
酒匂「酒匂も頑張ったよ!」
提督「ほんとにご苦労様!・・次の秋刀魚漁の時は酒匂も出撃させてあげたいよ」
酒匂「今回は参加できなかったけど・・次はぜーったい参加したい!」
阿賀野「提督さん!じゃーん!見てみて!」
提督「へぇ、立派にできた旗だね!」
能代「私たち阿賀野型四姉妹で作りました」
古鷹「船に乗ってるのは阿賀野さん達ですね」
矢矧「ええ 可愛く描けてるかしら?」
酒匂「酒匂も頑張ったよ!」
提督「ほんとにご苦労様!・・次の秋刀魚漁の時は酒匂も出撃させてあげたいよ」
酒匂「今回は参加できなかったけど・・次はぜーったい参加したい!」
65: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 18:32:56.44 ID:vAb4Z35w0
提督「それじゃ ご褒美に集めた秋刀魚をみんなで食べようか」
酒匂「ぴゃあ!酒匂お魚だーい好き!」
阿賀野「阿賀野!塩焼きが良い!」
能代「それじゃあ私は刺身で・・」
矢矧「蒲焼にするのもいいわね」
赤城「私は何でもいいです!」
提督「ちょっと待った!」
赤城「どうしたんですか?!提督!?」
酒匂「ぴゃあ!酒匂お魚だーい好き!」
阿賀野「阿賀野!塩焼きが良い!」
能代「それじゃあ私は刺身で・・」
矢矧「蒲焼にするのもいいわね」
赤城「私は何でもいいです!」
提督「ちょっと待った!」
赤城「どうしたんですか?!提督!?」
66: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 18:49:19.14 ID:vAb4Z35w0
提督「赤城・・どうして君が阿賀野型の制服を着てここにいるの?!」
赤城「私は阿賀野型軽巡五番艦の赤城です!ぴょん!」
提督「いやいやいや!無理があるしぴょんはキャラが被ってるよ!」
酒匂「司令、みんなで食べた方がおいしいから赤城さんにも分けてあげて!」
赤城「ありがとうございます!酒匂姉さん!」
酒匂「ぴゃあ・・・姉さんだって!」エヘヘ
提督「・・・わかったよ。じゃあみんなで食べようか」
提督「準備を始めよっか」
一同「はーい!」
赤城「私は阿賀野型軽巡五番艦の赤城です!ぴょん!」
提督「いやいやいや!無理があるしぴょんはキャラが被ってるよ!」
酒匂「司令、みんなで食べた方がおいしいから赤城さんにも分けてあげて!」
赤城「ありがとうございます!酒匂姉さん!」
酒匂「ぴゃあ・・・姉さんだって!」エヘヘ
提督「・・・わかったよ。じゃあみんなで食べようか」
提督「準備を始めよっか」
一同「はーい!」
68: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 21:15:53.71 ID:vAb4Z35w0
こうして酒匂の特訓は続いた 酒匂の努力もあってかすぐに練度も上がっていった
そして...
提督「じゃあ最終作戦、"渚を越えて"のメンバーを発表するよ」
提督「・・・第一艦隊は以上 続いて第二艦隊・・・酒匂」
酒匂「ぴゃっ!?酒匂を呼んだ?」
提督「うん、酒匂はこの作戦の第二艦隊のメンバーだよ」
酒匂「酒匂が・・」ドキドキ
能代「酒匂、落ち着いて。あなたならきっとできるわ。もう独りじゃない」
酒匂「・・・うん!みんながいるからね!」
能代「いい?ちゃんと旗艦の人の言うことを聞くのよ?大破しちゃったらすぐ帰ってくるのよ?後、ハンカチも」
矢矧「ハンカチはいらないんじゃ・・」
阿賀野「能代は心配性ね、もう!酒匂、思いっきりやっちゃいなさい!」
酒匂「ぴゃあ!頑張る!」
そして...
提督「じゃあ最終作戦、"渚を越えて"のメンバーを発表するよ」
提督「・・・第一艦隊は以上 続いて第二艦隊・・・酒匂」
酒匂「ぴゃっ!?酒匂を呼んだ?」
提督「うん、酒匂はこの作戦の第二艦隊のメンバーだよ」
酒匂「酒匂が・・」ドキドキ
能代「酒匂、落ち着いて。あなたならきっとできるわ。もう独りじゃない」
酒匂「・・・うん!みんながいるからね!」
能代「いい?ちゃんと旗艦の人の言うことを聞くのよ?大破しちゃったらすぐ帰ってくるのよ?後、ハンカチも」
矢矧「ハンカチはいらないんじゃ・・」
阿賀野「能代は心配性ね、もう!酒匂、思いっきりやっちゃいなさい!」
酒匂「ぴゃあ!頑張る!」
69: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 21:20:38.40 ID:vAb4Z35w0
長門「酒匂、よくここまで頑張ったな」
酒匂「長門さん・・一緒に出撃したかったなぁ・・」ションボリ
長門「ふっ、前の作戦で暴れさせてもらったからな。今回はお前達に任せるとしよう」
阿武隈「酒匂さん!あたしの分まで頑張ってね!」
酒匂「・・・・うん!」
長門「古鷹、ビスマルク、プリンツ。酒匂をよろしく頼む」
古鷹「わかりました」
プリンツ「まっかせてよ!」フン
ビスマルク「このビスマルクに任せなさい!」フフン
提督「よし・・じゃあみんな頼んだよ!」
最終作戦はプリンツ 酒匂の活躍もあり深海海月姫の撃破に成功した
そして航空母艦サラトガを出迎えた鎮守府では盛大な歓迎会が行われた
初めての出撃が最終作戦 "渚を超えて"だった酒匂は歓迎会ではぐっすりと眠っていた
酒匂「長門さん・・一緒に出撃したかったなぁ・・」ションボリ
長門「ふっ、前の作戦で暴れさせてもらったからな。今回はお前達に任せるとしよう」
阿武隈「酒匂さん!あたしの分まで頑張ってね!」
酒匂「・・・・うん!」
長門「古鷹、ビスマルク、プリンツ。酒匂をよろしく頼む」
古鷹「わかりました」
プリンツ「まっかせてよ!」フン
ビスマルク「このビスマルクに任せなさい!」フフン
提督「よし・・じゃあみんな頼んだよ!」
最終作戦はプリンツ 酒匂の活躍もあり深海海月姫の撃破に成功した
そして航空母艦サラトガを出迎えた鎮守府では盛大な歓迎会が行われた
初めての出撃が最終作戦 "渚を超えて"だった酒匂は歓迎会ではぐっすりと眠っていた
70: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 21:27:25.25 ID:vAb4Z35w0
――――現在 鎮守府 運動場
酒匂「・・・いろんなことがあったなぁ」
ヒュウウ...
酒匂「ぴゃああ・・・本当に寒くなってきた・・・」
プリンツ「あ!酒匂!今から長門さん達と写真撮ろうとしてたんだ!一緒に来て!」
酒匂「ぴゃっ!わかった!」
――――鎮守府 中庭
サラトガ「Hello. 酒匂さん。こちらですよ」
酒匂「長門さん、サラトガさん!こんにちわ!」
長門「ああ。この4人も出会ってもう一年か」
青葉「はーい!みなさん撮りますよー!」
酒匂「・・・いろんなことがあったなぁ」
ヒュウウ...
酒匂「ぴゃああ・・・本当に寒くなってきた・・・」
プリンツ「あ!酒匂!今から長門さん達と写真撮ろうとしてたんだ!一緒に来て!」
酒匂「ぴゃっ!わかった!」
――――鎮守府 中庭
サラトガ「Hello. 酒匂さん。こちらですよ」
酒匂「長門さん、サラトガさん!こんにちわ!」
長門「ああ。この4人も出会ってもう一年か」
青葉「はーい!みなさん撮りますよー!」
71: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 21:34:18.35 ID:vAb4Z35w0
酒匂「あ!ちょっと待って!」
酒匂「司令!こっちにきてー!」
提督「やぁ酒匂。どうしたの?」
酒匂「青葉さんに写真撮ってもらうんだ!司令達も入ってよ!いいよね、みんな?」
長門「ああ、構わないさ」
プリンツ「古鷹も!一緒にね!」
サラトガ「みんなで記念撮影も良いですね」
提督「じゃあお言葉に甘えて入ろうかな」
青葉「え?!司令官と古鷹さんも入るんですか?!なら青葉も・・ってうわぁ!」ドテッ
古鷹「あ、青葉?!」
カシャ
―――酒匂はもう独りじゃない みんながいるから寂しくない!ぴゃん!
酒匂「司令!こっちにきてー!」
提督「やぁ酒匂。どうしたの?」
酒匂「青葉さんに写真撮ってもらうんだ!司令達も入ってよ!いいよね、みんな?」
長門「ああ、構わないさ」
プリンツ「古鷹も!一緒にね!」
サラトガ「みんなで記念撮影も良いですね」
提督「じゃあお言葉に甘えて入ろうかな」
青葉「え?!司令官と古鷹さんも入るんですか?!なら青葉も・・ってうわぁ!」ドテッ
古鷹「あ、青葉?!」
カシャ
―――酒匂はもう独りじゃない みんながいるから寂しくない!ぴゃん!
72: ◆Lsw27IvP02kT 2017/12/24(日) 21:37:07.30 ID:vAb4Z35w0
以上でこの話は終わりです
阿賀野型では酒匂が一番好きです
四姉妹全員可愛いですけど酒匂が一番可愛いと思うんです
阿賀野型では酒匂が一番好きです
四姉妹全員可愛いですけど酒匂が一番可愛いと思うんです
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/25(月) 00:44:25.61 ID:KCPFF6RX0
好きな子をssで好きに書く。簡単な様でムズイよね。おつかれー
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511797063/
Entry ⇒ 2017.12.29 | Category ⇒ 艦隊これくしょん | Comments (0)
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