まゆ「プロデューサーさんは乳首が弱いそうですねぇ」
1: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:11:07.50 ID:1TZnIt4Mo
モバマスSSです
過去作
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1482595280/
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490889977/
過去作
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1482595280/
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490889977/
2: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:11:50.17 ID:1TZnIt4Mo
凛「ふーん、それ本当?」
まゆ「この間プロデューサーさんと一緒に寝た時、プロデューサーさんが寝言で言ってたんですよ。「ぐぅ…うーん……乳首はやめてぇ……」って」
凛「まゆがプロデューサーと寝てたってのは後で話を聞くとして、ふぅん、そうなんだ」
まゆ「…ただ、それだけだと単にプロデューサーさんが乳首を責められる夢を見てたってだけじゃないですかぁ」
凛「そうだね」
まゆ「だから、凛ちゃん、プロデューサーさん乳首弱い説を一緒に立証してみませんか?」
凛「魅力的な提案だね。後学のためにも…その話、乗った」
まゆ「この間プロデューサーさんと一緒に寝た時、プロデューサーさんが寝言で言ってたんですよ。「ぐぅ…うーん……乳首はやめてぇ……」って」
凛「まゆがプロデューサーと寝てたってのは後で話を聞くとして、ふぅん、そうなんだ」
まゆ「…ただ、それだけだと単にプロデューサーさんが乳首を責められる夢を見てたってだけじゃないですかぁ」
凛「そうだね」
まゆ「だから、凛ちゃん、プロデューサーさん乳首弱い説を一緒に立証してみませんか?」
凛「魅力的な提案だね。後学のためにも…その話、乗った」
3: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:12:34.82 ID:1TZnIt4Mo
凛「まずは一番確実な方法で確かめてみない?」
まゆ「…寝込みを襲うんですね?」
凛「流石まゆ、私より長生きしてるだけあって勧がいいね?」
まゆ「その言い方やめてもらえませんかぁ?1年しか歳離れてないじゃないですかぁ」
凛「ごめんごめん。…で、今こうやってプロデューサーの家の押し入れに隠れてる訳だけど」
まゆ「そろそろプロデューサーさんが帰ってくるころですねぇ」
モバP「ただいまーっと…まぁ誰も居ないんだけどな」
凛(いるよ)
まゆ(いるんですよねぇ…うふふ)
モバP「…ん?なんかさっきまで誰かが居たような気配が……まぁ気のせいか」
凛まゆ(………)
モバP「はぁ…疲れた…歯磨きしてさっさと寝るか……」
まゆ「…寝込みを襲うんですね?」
凛「流石まゆ、私より長生きしてるだけあって勧がいいね?」
まゆ「その言い方やめてもらえませんかぁ?1年しか歳離れてないじゃないですかぁ」
凛「ごめんごめん。…で、今こうやってプロデューサーの家の押し入れに隠れてる訳だけど」
まゆ「そろそろプロデューサーさんが帰ってくるころですねぇ」
モバP「ただいまーっと…まぁ誰も居ないんだけどな」
凛(いるよ)
まゆ(いるんですよねぇ…うふふ)
モバP「…ん?なんかさっきまで誰かが居たような気配が……まぁ気のせいか」
凛まゆ(………)
モバP「はぁ…疲れた…歯磨きしてさっさと寝るか……」
4: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:14:48.93 ID:1TZnIt4Mo
モバP「ぐぅ……」スヤスヤ
まゆ「プロデューサーさん、寝ましたね」
凛「よし、押し入れを出るよ」
まゆ「…うふふ、プロデューサーさんの寝顔素敵ですねぇ…いつも凛々しい表情でお仕事をされてるのに、寝るときはこんなに可愛いあどけない表情で…」
凛「……はぁ好き……、ぁ、まゆ、本来の目的を忘れてるよ」
まゆ「そうでしたね。ではプロデューサーさん、失礼しますねぇ…?」ゴソゴソ
凛「…よし、プロデューサーのシャツを胸元まで捲ったよ」
まゆ「素敵な胸板ですねぇ」ドキドキ
凛「………じゃ、プロデューサーの乳首に触るよ」ツンッ
モバP「ひゃっ」
凛まゆ「!?」
まゆ「プロデューサーさん、寝ましたね」
凛「よし、押し入れを出るよ」
まゆ「…うふふ、プロデューサーさんの寝顔素敵ですねぇ…いつも凛々しい表情でお仕事をされてるのに、寝るときはこんなに可愛いあどけない表情で…」
凛「……はぁ好き……、ぁ、まゆ、本来の目的を忘れてるよ」
まゆ「そうでしたね。ではプロデューサーさん、失礼しますねぇ…?」ゴソゴソ
凛「…よし、プロデューサーのシャツを胸元まで捲ったよ」
まゆ「素敵な胸板ですねぇ」ドキドキ
凛「………じゃ、プロデューサーの乳首に触るよ」ツンッ
モバP「ひゃっ」
凛まゆ「!?」
5: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:16:17.72 ID:1TZnIt4Mo
モバP「……うーん……」スヤスヤ
凛「…いま」
まゆ「女の子みたいな声出しましたねぇ」
凛「まゆの説は本当かもしれないね」
まゆ「次はちょっと引っ掻いてみますねぇ」カリッ
モバP「あああっ」
凛まゆ「!?!?」
モバP「……んんっ……ん……?」
凛「まずい、プロデューサーが起きる!」
まゆ「口惜しいですけど、ここはひとまず退散しましょう」タタタッ
モバP「…んー…、……あれ、なんで俺腹丸出しで寝てんだ……?ふぁーあ……」ゴソゴソ
凛「…いま」
まゆ「女の子みたいな声出しましたねぇ」
凛「まゆの説は本当かもしれないね」
まゆ「次はちょっと引っ掻いてみますねぇ」カリッ
モバP「あああっ」
凛まゆ「!?!?」
モバP「……んんっ……ん……?」
凛「まずい、プロデューサーが起きる!」
まゆ「口惜しいですけど、ここはひとまず退散しましょう」タタタッ
モバP「…んー…、……あれ、なんで俺腹丸出しで寝てんだ……?ふぁーあ……」ゴソゴソ
6: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:16:47.18 ID:1TZnIt4Mo
翌日
まゆ「おはようございます凛ちゃん。昨夜の件ですが」
凛「おはようまゆ。私はあまり詳しくないけど、正直男の人が乳首を少し触られただけであんなに反応するとは思えないんだよね」
未央「…朝から事務所の真ん中で何の話してるのさ」
凛「おはよう未央。何って、プロデューサーの乳首の話だよ」
まゆ「未央ちゃんはプロデューサーさんの乳首に興味ないんですか?」
未央「無いよ!君ら自分を中心に世界を回し過ぎだよ!!」
凛「不思議なこともあるんだね」
まゆ「ですねぇ」
未央「クソッ多勢に無勢か」
まゆ「おはようございます凛ちゃん。昨夜の件ですが」
凛「おはようまゆ。私はあまり詳しくないけど、正直男の人が乳首を少し触られただけであんなに反応するとは思えないんだよね」
未央「…朝から事務所の真ん中で何の話してるのさ」
凛「おはよう未央。何って、プロデューサーの乳首の話だよ」
まゆ「未央ちゃんはプロデューサーさんの乳首に興味ないんですか?」
未央「無いよ!君ら自分を中心に世界を回し過ぎだよ!!」
凛「不思議なこともあるんだね」
まゆ「ですねぇ」
未央「クソッ多勢に無勢か」
7: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:17:27.18 ID:1TZnIt4Mo
凛「プロデューサーのあの反応が普通なのかどうか確かめる必要があるね」
まゆ「そうですねぇ。となると他の男の人の乳首サンプルが必要ですね」
未央「乳首サンプルって」
凛「ただ、私達にはそんなに親しい男性が居るわけじゃないし……」
まゆ「ですねぇ…」
凛「…!そうだ、未央」
未央「…な、何」ビクッ
凛「未央ってお兄ちゃん居たよね?」
未央「嫌だよ!!!!!」
まゆ「そうですねぇ。となると他の男の人の乳首サンプルが必要ですね」
未央「乳首サンプルって」
凛「ただ、私達にはそんなに親しい男性が居るわけじゃないし……」
まゆ「ですねぇ…」
凛「…!そうだ、未央」
未央「…な、何」ビクッ
凛「未央ってお兄ちゃん居たよね?」
未央「嫌だよ!!!!!」
8: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:18:27.10 ID:1TZnIt4Mo
モバP「おっ、おはようまゆ、凛、未央。…ん?まゆと凛は今日はフリーのはずだけど」
凛「私は、暇だったからちょっと事務所に顔を出そうと思って」
まゆ「まゆはプロデューサーさんと少しでも一緒に時間を過ごそうと思って来たんですよぉ、うふふ」
モバP「そうか~、俺は嬉しいぞまゆぅ」
未央「ほんとプロデューサーはまゆには甘いなぁ、未央ちゃんもプロデューサーに甘々な対応されたいなぁ?」
モバP「そうかそうか……おらっ未央~っ」ワシャワシャ
未央「わっ、ちょっとっ!プロデューサ~っ、あははっ!待ってっ、くすぐったいっ、やめてっ!」
モバP「ほら、ここがええのんか?ここがええのんか~?」コショコショ
凛「…」ギロッ
まゆ「…」ハイライトオフ
未央「ちょっと待って!本当に命の危険を感じてきたから!待ってやめてお願い!!!」
凛「私は、暇だったからちょっと事務所に顔を出そうと思って」
まゆ「まゆはプロデューサーさんと少しでも一緒に時間を過ごそうと思って来たんですよぉ、うふふ」
モバP「そうか~、俺は嬉しいぞまゆぅ」
未央「ほんとプロデューサーはまゆには甘いなぁ、未央ちゃんもプロデューサーに甘々な対応されたいなぁ?」
モバP「そうかそうか……おらっ未央~っ」ワシャワシャ
未央「わっ、ちょっとっ!プロデューサ~っ、あははっ!待ってっ、くすぐったいっ、やめてっ!」
モバP「ほら、ここがええのんか?ここがええのんか~?」コショコショ
凛「…」ギロッ
まゆ「…」ハイライトオフ
未央「ちょっと待って!本当に命の危険を感じてきたから!待ってやめてお願い!!!」
9: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:20:59.34 ID:1TZnIt4Mo
凛「もう、プロデューサー。小さい子ならまだしも、未央のエロボディにそれはセクハラだよ?」
未央「エロボディ言うな」
モバP「ああ、そうだったな。すまなかったな未央」
まゆ「凛ちゃん凛ちゃん」ボソッ
凛「どうしたのまゆ」ボソッ
まゆ「ここでまゆ達がプロデューサーさんをくすぐって、そのときにさりげなく乳首を刺激したらプロデューサーさんの反応を確認できそうじゃないですか?」ボソッ
凛「なるほど…流石まゆ。私より長生きしてr「それさっきやったくだりなのでもういいんですよ?」ボソッ
モバP「…?まゆ、凛?急にどうしたんだ?」
まゆ「うふふ、なんでもないですよぉ」
凛「プロデューサー、覚悟っ!」コショコショ
モバP「うわっ!ちょ、凛っ!?あはははっ、やめ…わひゃははは!」
凛(まゆ、今だ!)
まゆ「ぇ…えいっ!」乳首ツンッ
モバP「ひゃあああっ」ビクビクゥ
凛まゆ未央「!?!?!?」
未央「エロボディ言うな」
モバP「ああ、そうだったな。すまなかったな未央」
まゆ「凛ちゃん凛ちゃん」ボソッ
凛「どうしたのまゆ」ボソッ
まゆ「ここでまゆ達がプロデューサーさんをくすぐって、そのときにさりげなく乳首を刺激したらプロデューサーさんの反応を確認できそうじゃないですか?」ボソッ
凛「なるほど…流石まゆ。私より長生きしてr「それさっきやったくだりなのでもういいんですよ?」ボソッ
モバP「…?まゆ、凛?急にどうしたんだ?」
まゆ「うふふ、なんでもないですよぉ」
凛「プロデューサー、覚悟っ!」コショコショ
モバP「うわっ!ちょ、凛っ!?あはははっ、やめ…わひゃははは!」
凛(まゆ、今だ!)
まゆ「ぇ…えいっ!」乳首ツンッ
モバP「ひゃあああっ」ビクビクゥ
凛まゆ未央「!?!?!?」
10: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:23:08.38 ID:1TZnIt4Mo
凛「……やっぱりプロデューサーは乳首が弱かったんだね」
モバP「…はい」
まゆ「どうして…どうしてそれをまゆ達に隠してたんですか…?」
モバP「…すまん」
未央「なんでプロデューサー怒られてんのコレ?」
モバP「俺は乳首が弱い…プロデューサー失格だよ…」
凛「プロデューサー…、私達は、プロデューサーが乳首の弱い男でも…、それでも、プロデューサーを信じてる」
まゆ「まだやり直せますよ、プロデューサーさん…乳首が弱くても、まゆ達はプロデューサーさんじゃなきゃトップアイドルになれません」
未央「プロデューサー業と乳首は関係ないよね?」
モバP「お前ら…!俺が乳首弱くても許してくれるのか…!?」
凛「うん、プロデューサーがプロデューサーであることに、乳首の弱さなんか関係ない…!」
未央「未央ちゃん今そう言ったんですけど…むーりぃー…」
まゆ「まゆの乳首もプロデュースしてください…!」
未央「わけわかんないよ!!」
凛「乳首乳首…!!」
未央「言うこと思いつかなくなってんじゃん!!!」
モバP「…はい」
まゆ「どうして…どうしてそれをまゆ達に隠してたんですか…?」
モバP「…すまん」
未央「なんでプロデューサー怒られてんのコレ?」
モバP「俺は乳首が弱い…プロデューサー失格だよ…」
凛「プロデューサー…、私達は、プロデューサーが乳首の弱い男でも…、それでも、プロデューサーを信じてる」
まゆ「まだやり直せますよ、プロデューサーさん…乳首が弱くても、まゆ達はプロデューサーさんじゃなきゃトップアイドルになれません」
未央「プロデューサー業と乳首は関係ないよね?」
モバP「お前ら…!俺が乳首弱くても許してくれるのか…!?」
凛「うん、プロデューサーがプロデューサーであることに、乳首の弱さなんか関係ない…!」
未央「未央ちゃん今そう言ったんですけど…むーりぃー…」
まゆ「まゆの乳首もプロデュースしてください…!」
未央「わけわかんないよ!!」
凛「乳首乳首…!!」
未央「言うこと思いつかなくなってんじゃん!!!」
11: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:24:06.88 ID:1TZnIt4Mo
後日
凛「あっまゆ。実はこの間、プロデューサーのジャケットと一体化してたときに知ったんだけど」
未央「変態を超越して遂に悪妖と化したか」
凛「プロデューサーって首筋も弱いらしいよ」
まゆ「そうなんですねぇ。じゃあまた確かめないと……あ、後でジャケットとの一体化の方法教えて下さいね?」
未央「助けてくれ」
ライラ「おわりですよー」
凛「あっまゆ。実はこの間、プロデューサーのジャケットと一体化してたときに知ったんだけど」
未央「変態を超越して遂に悪妖と化したか」
凛「プロデューサーって首筋も弱いらしいよ」
まゆ「そうなんですねぇ。じゃあまた確かめないと……あ、後でジャケットとの一体化の方法教えて下さいね?」
未央「助けてくれ」
ライラ「おわりですよー」
12: ◆b72I1I/FhE 2017/05/13(土) 17:25:03.85 ID:1TZnIt4Mo
以上です。僕もまゆに乳首責められたいです。依頼してきます
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/13(土) 17:48:46.06 ID:spkL6rloO
乳首感じるんですよね?
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/13(土) 18:34:33.14 ID:diHOwPhTO
これには師匠も苦笑い
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494663067/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ モバマス | Comments (0)
【SS】 プロデューサー 「これがシンデレラガールズ総選挙の投票箱か」
1: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:09:37.10 ID:CQQeyQF90
P 「…せっかくだし、ちょっと覗いてみるか。別に不正とかしようってわけじゃないし」
P 「どれどれ…」
P 「どれどれ…」
2: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:10:17.83 ID:CQQeyQF90
『一番カワイイ輿水幸子』
P 「なるほどね、ただ名前を書くだけじゃなくてこういう形容詞を付けて他の人にもアピールできるようにしてるんだな」
P 「…でも投票用紙に書いたら意味ないけどな」
P 「なるほどね、ただ名前を書くだけじゃなくてこういう形容詞を付けて他の人にもアピールできるようにしてるんだな」
P 「…でも投票用紙に書いたら意味ないけどな」
3: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:10:59.14 ID:CQQeyQF90
P 「これはどうかな」
『一番カワイイボク』
P 「これもしかして幸子本人じゃないか?一応アイドル自身も一票だけは入れられるし…」
P 「名前書いてないからただの無効票だけどな!」
『一番カワイイボク』
P 「これもしかして幸子本人じゃないか?一応アイドル自身も一票だけは入れられるし…」
P 「名前書いてないからただの無効票だけどな!」
4: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:11:28.90 ID:CQQeyQF90
P 「ならこれはどうだ?」
『一番カワイイボクを抱いたのはあなたでしょう』
P 「違ぇわ!つーか誰だよこれ書いたの!アイドルは1人1票だから少なくとも幸子じゃないし」
P 「だいたいなんで中島美嘉なんだよ!だったら幸子じゃなくてギャル姉妹の姉のほうにしとけよ名前的に」
『一番カワイイボクを抱いたのはあなたでしょう』
P 「違ぇわ!つーか誰だよこれ書いたの!アイドルは1人1票だから少なくとも幸子じゃないし」
P 「だいたいなんで中島美嘉なんだよ!だったら幸子じゃなくてギャル姉妹の姉のほうにしとけよ名前的に」
5: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:12:03.19 ID:CQQeyQF90
P 「今度はこれいってみようか」
『大槻唯』
P 「これは普通だな…ってあれ?これ他の票とまとめてあるのか」
P 「ってことは多分同一人物のだから全部唯の票だろうな。まあ一応確認しておくか」
『大槻唯』
P 「これは普通だな…ってあれ?これ他の票とまとめてあるのか」
P 「ってことは多分同一人物のだから全部唯の票だろうな。まあ一応確認しておくか」
6: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:12:33.19 ID:CQQeyQF90
『大槻唯』『大槻唯』『大槻唯』
『大槻唯』『大槻唯』『大槻唯』
『大槻唯』『大槻唯』『大槻唯』
『おにぎりとババロアが大好きなアイドルは?』
P 「星井美希!」
7: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:12:58.34 ID:CQQeyQF90
P 「間違えるか!こういうのは名前が似てる奴でやらないと意味ねぇんだよ!」
P 「あいつら若干見た目が似てるだけだからな!」
P 「あいつら若干見た目が似てるだけだからな!」
8: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:13:27.13 ID:CQQeyQF90
P 「後はどんなのがあるかな…」
『高峯のあさんに、"STARS"お願いします』
P 「え、何これ…あ、これもしかして『jewelries』のカバー曲リクエストのやつが間違えて紛れ込んだのかな」
P 「…ちょっと待て、今カバー曲の募集はやってねぇぞ!結局これなんだよ!」
P 「あと今気づいたけど、また中島美嘉じゃねーか!アイドルの総選挙の開票で2回も中島美嘉が出てくるってどういう事態だ!」
P 「まあ開票っていうか勝手にやってるだけだけどさ!」
『高峯のあさんに、"STARS"お願いします』
P 「え、何これ…あ、これもしかして『jewelries』のカバー曲リクエストのやつが間違えて紛れ込んだのかな」
P 「…ちょっと待て、今カバー曲の募集はやってねぇぞ!結局これなんだよ!」
P 「あと今気づいたけど、また中島美嘉じゃねーか!アイドルの総選挙の開票で2回も中島美嘉が出てくるってどういう事態だ!」
P 「まあ開票っていうか勝手にやってるだけだけどさ!」
9: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:13:56.63 ID:CQQeyQF90
P 「後は何があるかなー…」
『櫻井桃華さん、100万円ほど貸してくださいお願いします』
P 「どこで頼んでんだよ!貸すか!」
P 「俺だって事務所が大変でどうしても必要だってウソついて50万円借りるのがやっとだったんだぞ!」
『櫻井桃華さん、100万円ほど貸してくださいお願いします』
P 「どこで頼んでんだよ!貸すか!」
P 「俺だって事務所が大変でどうしても必要だってウソついて50万円借りるのがやっとだったんだぞ!」
10: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:14:23.84 ID:CQQeyQF90
『渋谷凛さんって誰ですか?教えてくださいお願いします』
P 「うちの所属アイドルだよ!総選挙に投票するくらいには興味あるのに知らねぇのか!」
P 「うちの所属アイドルだよ!総選挙に投票するくらいには興味あるのに知らねぇのか!」
11: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:14:54.31 ID:CQQeyQF90
P 「今度はこれ見てみるか」
『砂漠に雪が降ってるのをじっと眺めているアイドルってだれだ?』
P 「え、何これなぞなぞ…?『砂漠』『雪』…」
P 「分かった!砂の上で雪を見てるから…『佐城雪美』(砂上雪見)!」
P 「……なぞなぞ使うなら答えは礼さんにしとけよどうせなら!」
『砂漠に雪が降ってるのをじっと眺めているアイドルってだれだ?』
P 「え、何これなぞなぞ…?『砂漠』『雪』…」
P 「分かった!砂の上で雪を見てるから…『佐城雪美』(砂上雪見)!」
P 「……なぞなぞ使うなら答えは礼さんにしとけよどうせなら!」
12: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:15:22.76 ID:CQQeyQF90
P 「次は…」
『ナナちゃん 応援してます!』
P 「やっと普通のが出てきたよ良かった…あ、票の裏にもまだ何か書いてある」
『よく聞いてます"GLAMOROUS SKY"!』
P 「ナナ違いだわ!そんでまた中島美嘉じゃねーかよ!まさかの3回目!」
『ナナちゃん 応援してます!』
P 「やっと普通のが出てきたよ良かった…あ、票の裏にもまだ何か書いてある」
『よく聞いてます"GLAMOROUS SKY"!』
P 「ナナ違いだわ!そんでまた中島美嘉じゃねーかよ!まさかの3回目!」
13: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:16:48.35 ID:CQQeyQF90
『問題:空欄に入る文字は? 佐久間○ゆ』
P 「懸賞のクイズか!何がしたいんだこいつは!」
『佐久間みゆ』
P 「なんで答えてるやつがいるんだ!しかも間違えてるし!」
『単勝 本田未央 10000円』
P 「賭けてんじゃねーよ!」
P 「懸賞のクイズか!何がしたいんだこいつは!」
『佐久間みゆ』
P 「なんで答えてるやつがいるんだ!しかも間違えてるし!」
『単勝 本田未央 10000円』
P 「賭けてんじゃねーよ!」
14: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:17:24.19 ID:CQQeyQF90
P 「次は…って、今のでこの箱の票は全部か。見事にヒドいのばっかだったな」
P 「今度はこれか…あれ、何か紙が貼ってある」
『この投票箱には、全て同じ方から贈られた票が入っています』
P 「すげぇなこれ、この人の票だけでも上位に入れるんじゃないのか?まあとりあえず開けてみるか」
P 「今度はこれか…あれ、何か紙が貼ってある」
『この投票箱には、全て同じ方から贈られた票が入っています』
P 「すげぇなこれ、この人の票だけでも上位に入れるんじゃないのか?まあとりあえず開けてみるか」
15: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:17:53.79 ID:CQQeyQF90
P 「えっと何なに…」
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』『ぴにゃこら太』『ぴにゃこら太』
P 「…全部無効票!」
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』
『ぴにゃこら太』『ぴにゃこら太』『ぴにゃこら太』
P 「…全部無効票!」
16: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:18:40.72 ID:CQQeyQF90
以上です。
なんとか総選挙の結果発表までに上げられた…
なんとか総選挙の結果発表までに上げられた…
17: ◆HuQnK/LyHo 2017/05/13(土) 18:22:44.81 ID:CQQeyQF90
それと、今までのトリップがあまりに簡単すぎたので変えました
以前上げてたSS
「立てこもり犯人」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466005197/
早坂美玲 「プロデューサー!天井に誰かいるぞー!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478791092/
以前上げてたSS
「立てこもり犯人」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466005197/
早坂美玲 「プロデューサー!天井に誰かいるぞー!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478791092/
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/13(土) 18:29:47.82 ID:MLHKOmN7o
面白い!
ピン芸人のネタみたいだった。何か元ネタあるのかな?
ピン芸人のネタみたいだった。何か元ネタあるのかな?
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494666576/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ モバマス | Comments (0)
ダイヤ「鞠莉さんったらまた服を散らかして…」
1: 鶯団子 2017/08/27(日) 17:58:24.43 ID:r+V7Ji2B0
鞠莉「ダイヤ~~!!行ってきますのkiss!」グイグイ
ダイヤ「…はいはい分かりましたわ。」チュッ
鞠莉「んードライなkissね!でもマリーがんばっちゃう!!行ってきまーす!」フリフリ
ダイヤ「ただ大学に行くだけでしょうに、まぁ車に気を付けてくださいな。」フリフリ
~~~
ダイヤ「まさか鞠莉さんが突然一緒に住むなどと言うとは思いもよりませんでしたが…、やかましい人でも隣にいてくれる…独りじゃないのはいいことですわね。」クスッ
2: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:02:20.01 ID:r+V7Ji2B0
ダイヤ「さて…私はお休みですし、鞠莉さんの部屋まで掃除してあげませんとね。」
ガチャッ
ダイヤ「失礼しますわよ…ってなんなんですのこれは!!?」
ダイヤ「雑誌をしまってないうえに就寝用の服はちらかしっぱなし…飲みかけのペットボトルは冷蔵庫に入れなさいとあれほど言っているのに…。」ブツブツ
ダイヤ「はぁぁぁ……本当、私がいないと鞠莉さんは何もできないんですから…。とりあえず雑誌とペットボトルは片づけて…」ヨイショ
ダイヤ「…あとは服…ですわね。」ヒョイ
ガチャッ
ダイヤ「失礼しますわよ…ってなんなんですのこれは!!?」
ダイヤ「雑誌をしまってないうえに就寝用の服はちらかしっぱなし…飲みかけのペットボトルは冷蔵庫に入れなさいとあれほど言っているのに…。」ブツブツ
ダイヤ「はぁぁぁ……本当、私がいないと鞠莉さんは何もできないんですから…。とりあえず雑誌とペットボトルは片づけて…」ヨイショ
ダイヤ「…あとは服…ですわね。」ヒョイ
3: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:08:42.85 ID:r+V7Ji2B0
ダイヤ「…」スッ
ダイヤ(あ、鞠莉さんの香り…)
ダイヤ「……はっ!?私は今何を…!?ちゃんと畳まないといけませんわ。」
ダイヤ「畳まないと…」スンスン
ダイヤ「…」
ダイヤ「たまには…いいですわよね?」
ダイヤ「本人にはまだ恥ずかしくて簡単には出来ませんが…」
4: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:14:42.40 ID:r+V7Ji2B0
ダイヤ「こう…服に顔をうずめれば…」ボフッ
ダイヤ(あぁぁぁ!!鞠莉さんの香りですわ!!)
ダイヤ「すぅぅぅぅ…、はぁぁぁぁぁ落ち着きますわぁ…」はふぅ
ダイヤ「ふふ、果南さんのように昔からハグでコミュニケーションを取っておけばこうやって隠れて鞠莉さんの香りを堪能する必要もなかったのかもしれませんわね。」
ダイヤ「…でも、これはこれで…、というのも変態に思われてしまいますわ…。」
ダイヤ「自分で言うのもなんですが…鞠莉さんの香りに包まれているときが一番安心して落ち着きますし、なるべく鞠莉さんのそばにいたいのに…」
ダイヤ「どうしてまぁいつもあんなに意地を張ってしまうのか…。」
ダイヤ「いや、そもそもなぜ私はあんな相性の合わなさそうな人に恋をしてしまったのでしょうか…。」ハァ
ダイヤ(あぁぁぁ!!鞠莉さんの香りですわ!!)
ダイヤ「すぅぅぅぅ…、はぁぁぁぁぁ落ち着きますわぁ…」はふぅ
ダイヤ「ふふ、果南さんのように昔からハグでコミュニケーションを取っておけばこうやって隠れて鞠莉さんの香りを堪能する必要もなかったのかもしれませんわね。」
ダイヤ「…でも、これはこれで…、というのも変態に思われてしまいますわ…。」
ダイヤ「自分で言うのもなんですが…鞠莉さんの香りに包まれているときが一番安心して落ち着きますし、なるべく鞠莉さんのそばにいたいのに…」
ダイヤ「どうしてまぁいつもあんなに意地を張ってしまうのか…。」
ダイヤ「いや、そもそもなぜ私はあんな相性の合わなさそうな人に恋をしてしまったのでしょうか…。」ハァ
5: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:20:13.09 ID:r+V7Ji2B0
_________________________________
高校一年の時、鞠莉さんと果南さんとで、Aqoursとして活動していた時はそんな思いは感じていなかったはず…。
果南「ワン、ツー、スリー、フォー…はい、だいぶいい感じだよ。ちょっと休憩にしようか?」チラッ
ダイヤ「はぁ…はぁ…ふぅぅ…いえ、休憩の必要はありませんわ。」
鞠莉「汗ダラダラたらして説得力ないわね?そこまで激しい動きもないのに…」
ダイヤ「代謝がいいのですわ!!代謝が!!」クワッ
果南「はいはい、ダイヤ、本番が近くて練習をしていたいって気持ちはわかるけど…、それで怪我したりしたら元も子もないんだからね?ちゃんと休まないと。」
鞠莉「そうよダイヤ。あんまり無理したっていいパフォーマンスにはならないわ。せっかくだしおしゃべりしながら休憩しましょ?」
ダイヤ「…仕方ないですわね。」
えぇ…、確かにあの頃にそんな感情はなかったはず…。結局怪我をしてしまったのは鞠莉さんで…それから、現在のAqoursの皆さんも巻き込んでしまった二年に渡るすれ違いが…
6: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:22:02.55 ID:r+V7Ji2B0
鞠莉さんが、海外へ行ってしまった。
大切なものは失ってはじめて気づくとはよく言ったもので、鞠莉さんのいない教室や、秘密の合図が光ることもないあの場所も、気持ちのいい場所ではなくなってしまって。
初めて鞠莉さんと会った場所で人知れず涙を溢すこともありましたわね…。
あの涙はなぜ流れたのでしょう?鞠莉さんがいなくて寂しいから、なんて簡単なものではないはず…。あの時はっきり何かをしてやれなかった自分への責めの気持ち、後悔の念、果南さんやルビィにひどく迷惑をかけてしまっていること、様々な思いが絡んでいた気がします。
7: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:26:57.64 ID:r+V7Ji2B0
ダイヤ「うぅ…ぇぐっ、ぐす…」
鞠莉「ねぇ、なんで泣いてるの?」
ダイヤ「鞠莉…さん…?」
鞠莉「なんで泣いてるの?」
ダイヤ「分からないのです…自責の念とも、申し訳なさからとも、泣く理由がいっぱいで分からないのですわ。」
鞠莉「ふぅ~ん、ダイヤはもっと素直にならないとね。」
ダイヤ「…?」
鞠莉「ねぇ、なんで泣いてるの?」
ダイヤ「鞠莉…さん…?」
鞠莉「なんで泣いてるの?」
ダイヤ「分からないのです…自責の念とも、申し訳なさからとも、泣く理由がいっぱいで分からないのですわ。」
鞠莉「ふぅ~ん、ダイヤはもっと素直にならないとね。」
ダイヤ「…?」
8: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:32:04.40 ID:r+V7Ji2B0
鞠莉「簡単なことよ。ダイヤはこの時にはもう私の事、そういう意味で好きだったのよ。」
ダイヤ「いえ、そんなはず…再会してから、貴女に想いを伝えた少し前から恋い慕う想いがあったはずで…。」
鞠莉「ダイヤのloveは再会してちょっとでコクっちゃうほど薄っぺらなloveじゃないよ。勿論複雑な気持ちもあったろうけど。単純に、ダイスキな私と離れ離れだから泣いてたのよ。」
ダイヤ「そんな…昔はドキドキしたりすることもなかったんですのよ?」
鞠莉「うーん、思うんだけどね?普通の友達関係なら、出来ることなら離れたくないなって関係だと思うの。でも、この人だけは離したくないって思うのってさ、どんな時だと思う?」
ダイヤ「…それが恋、と言いたいわけですのね。」
鞠莉「そゆこと♪べつにドキドキしちゃうばかりが恋の形じゃないのよ?ダイヤは昔から、ずーっと昔から、私の事そう想ってくれてたんだよ?」
ダイヤ「筒抜け…でしたの?」
9: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:37:13.88 ID:r+V7Ji2B0
鞠莉「どうかな、それは本当の私に聞かないとだよ。」
ダイヤ「…またなにか問答ですか?」
鞠莉「ううん、なんでマリーはここにいるんだろうね?」
ダイヤ「あぁ…これは…夢を見ているのですね。」
鞠莉「うん、だから伝えてあげて、ダイヤがどれだけ私のことを好きか。それから気になるなら昔話でもすればいいんじゃないかしら?」
ダイヤ「やけに大人しい鞠莉さんだと思ったのですわ。ありがとうございます。それでは。」
鞠莉「なんか失礼しちゃう…ま、私によろしくね。大好きよダイヤ。」
ダイヤ「ええ、私もですわ。」
そうですのね。この恋にはっきりとした発端はなくて…好きになった理由もあるわけではない…。まぁ、夢物語のような恋ではないのですから、そういうものなのですわ。
10: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:45:01.28 ID:r+V7Ji2B0
_________________________________
ダイヤ「んっ…んぅぅ…」パチッ
ダイヤ「いつの間にか寝てしまったみたいですわね…。」
鞠莉「…」ニヤニヤ
ダイヤ「あ、鞠莉さんの服を畳まずじまいでしたわ…」
ダイヤ「……もうちょっとだけ…」スンスン
鞠莉「…」ニッコニコ
ダイヤ「はふぅ……ってあああああ!!!!???鞠莉さん!!?なんでいるんですの!?」ガバッ
11: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:50:36.75 ID:r+V7Ji2B0
鞠莉「えぇ~?講義が終わったから家に帰っただけよ?そしたらぁ~、私のベッドにかわいい彼女がいたから見守ってただけよ♪」
ダイヤ「あぁぁっぁぁ!!!ああああああ!!!!」ゴロゴロゴロゴロ!!!
鞠莉「ルビィが見たらイメージが崩壊しそうね…、いや誰でもかな?」
ダイヤ「はぁ…はぁ…。あ、鞠莉さん…。」
鞠莉「ん?なぁにダイヤ?」
ダイヤ「好きですわよ。」
鞠莉「っ…」キュン
ダイヤ「あぁぁっぁぁ!!!ああああああ!!!!」ゴロゴロゴロゴロ!!!
鞠莉「ルビィが見たらイメージが崩壊しそうね…、いや誰でもかな?」
ダイヤ「はぁ…はぁ…。あ、鞠莉さん…。」
鞠莉「ん?なぁにダイヤ?」
ダイヤ「好きですわよ。」
鞠莉「っ…」キュン
12: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:53:28.28 ID:r+V7Ji2B0
ダイヤ「ちょっと変わった夢を見たんです。そこでしっかり好きを伝えないとという印象だけが強く残っていて…」
鞠莉「え…あ…、私もダイスキよ??」カーーー
ダイヤ「それと…、鞠莉さんはどうして私のことを好きになったのでしょうか?」
鞠莉「」
ダイヤ「昔話でもと思いましたが、無理に答える必要は「秘密!!!」
ダイヤ「だから秘密でいいと」
鞠莉「絶対絶対秘密なんだから~~~~!!!!」ムギュ
13: 鶯団子 2017/08/27(日) 18:58:00.85 ID:r+V7Ji2B0
ダイヤ「ちょっと鞠莉さん!!のしかからないでくださいな!!おも…苦しいですわ!!」
鞠莉「もうーーー!!ニヤニヤしてダイヤをからかう予定だったのになんなのよ~~~!!!」モッギュー
ダイヤ「ちょ!鞠莉さん!!落ち着いて…」
ダイヤ(というか鞠莉さんの香りが濃すぎて頭が…!!)
ルビィ「お姉ちゃん~~!内浦から救援物資だよぉ!」ガチャリ
ダイヤ、鞠莉「」ビクッ
鞠莉「もうーーー!!ニヤニヤしてダイヤをからかう予定だったのになんなのよ~~~!!!」モッギュー
ダイヤ「ちょ!鞠莉さん!!落ち着いて…」
ダイヤ(というか鞠莉さんの香りが濃すぎて頭が…!!)
ルビィ「お姉ちゃん~~!内浦から救援物資だよぉ!」ガチャリ
ダイヤ、鞠莉「」ビクッ
14: 鶯団子 2017/08/27(日) 19:01:04.35 ID:r+V7Ji2B0
ルビィ「うゅ?お姉ちゃん~?」キョロキョロ
ルビィ「あ!お姉ちゃん!!…と鞠莉ちゃんが…ベッドの上で抱き合ってる…」
鞠莉「待ってルビィ、これにはちょっとlong storyがあって…」
ルビィ「あ、えと…、頑張ルビィ!!」ソソクサ
ダイヤ「ルビィ!!待ちなさいルビィ!!アポなしで来るから…!!」
15: 鶯団子 2017/08/27(日) 19:02:02.77 ID:r+V7Ji2B0
ダイヤ「ルビィィィィィィィィィ!!!!!」
16: 鶯団子 2017/08/27(日) 19:05:25.37 ID:r+V7Ji2B0
鞠莉(なんであの一件でこんなシスコン好きになっちゃったのかなぁ…。)
おしまいですわぁ!!
おしまいですわぁ!!
17: 鶯団子 2017/08/27(日) 19:05:55.72 ID:r+V7Ji2B0
お退屈様でした。HTML化依頼を出してきます。
過去作です。
ダイヤ「ただいま帰りました…」鞠莉「あ、お帰りダイヤ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499607558/
鞠莉「今日は絶対ご飯!」ダイヤ「絶対パンですわ!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1498225953/
過去作です。
ダイヤ「ただいま帰りました…」鞠莉「あ、お帰りダイヤ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499607558/
鞠莉「今日は絶対ご飯!」ダイヤ「絶対パンですわ!!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1498225953/
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 21:52:12.75 ID:5bvQ4JnSO
これは続くな(確信)
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503824304/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ ラブライブ | Comments (0)
【ガルパン】フードファイト・ウォー!
1: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:44:50.70 ID:kmgbljoxo
フードファイト。
それは伝統的な文化であり、世界中の女子の嗜み。
喰えば完食、馳走は早く、食す姿は零れなし。
膳の掟、料理の心―――
これは、食の戦場を駆け抜ける少女たちの物語であるッ!
________________________
フードファイト・ウォー! 第1話 『開幕!フードファイト!』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
審判「両者、礼っ!」
ローズヒップ「いただきますでございますわっ!」ペコリ
エリカ「……いただきます」
審判「位置について、用意っ!」
\パパパパパウアードドンッ!/
2: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:46:00.19 ID:kmgbljoxo
【まえがき】
このお話の世界では特殊なカーボンにより選手たちの肉体の安全には十分配慮されています。実際に行うと非常に危険ですので絶対にマネしないでください。料理はよく噛んでゆっくり味わいながら食べましょう。
このお話の世界では特殊なカーボンにより選手たちの肉体の安全には十分配慮されています。実際に行うと非常に危険ですので絶対にマネしないでください。料理はよく噛んでゆっくり味わいながら食べましょう。
3: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:47:36.54 ID:kmgbljoxo
王「両者一斉に駆けだしました! スタートランを制し、先にサンドイッチに手を伸ばすのはどちらだーっ!?」
ローズヒップ「聖グロいちの俊足が走りで負けるわけがねぇのですわー!」ドドド!
エリカ「くっ!」タッタッタッ!
<イケークルセイダー! ガンバレー! フウキヲマモッテオウエンシナサイ!
王「さぁー始まりました! 戦車道連盟主催フードファイトォッ!」
王「実況はわたくし、大洗の天に輝く五つ星こと、王大河がお送りします!」
<イイゾー! ウォンタイガー!
愛里寿「解説の島田愛里寿。好きな食べ物は牛丼、アタマの大盛り」
<アリスステキヨー! タイチョーカワイー!
王「パンツァージャケット映える晴天に恵まれた本日、茨城県立カシマサッカースタジアムよりお届けして参ります」
4: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:48:35.91 ID:kmgbljoxo
王「Aグループ第1試合は聖グロリアーナvs黒森峰という好カード! 白熱した試合展開が予想されます!」
愛里寿「えっと、『礼儀を持ちて誇りを懸けよ』? 合ってる?」
<アッテマスタイチョー! カワイー!
愛里寿「よかった! 私もボコのフードファイト回を思い出しながら頑張るけど、3人ともお手伝いよろしくね」ニコニコ
王「カンペを用いた4人羽織のバミューダ解説、期待しております!」
王「さあ! そうこうしているうちにローズヒップ、テトラーク並みの素早さでサンドイッチが大量に置かれた大テーブルへと到着ゥ!」
愛里寿「あのテーブル、TOGⅡの形してるんだね」
ローズヒップ「先手を取りましたわー! サンドイッチがよりどりみどりでございますのよー!」ブイッ
王「ローズヒップ、余裕のVサイン! アルデンヌの森は自然の要塞だったか!? 聖グロが電撃戦で黒森峰に勝利だァーッ!」
5: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:49:35.02 ID:kmgbljoxo
愛里寿「これで食事時間を稼げた。けどローズヒップさんは早く走った分、体力を消耗したはず」
王「犠牲を払いながらも黒森峰からの逃げ切りを図ったわけですね! サンドイッチのダイナモ作戦、ダンケルクだいてったぁーいっ!」
ローズヒップ「ダージリン様の作戦通り、きゅうりサンドを独占してやりますわ-!」スッスッスッ
エリカ「くそっ!」タッタッ!
ローズヒップ「ごめんあそばせでございますわーっ!」スススッ
王「おーっとローズヒップ! 見事にきゅうりサンドばかりを自らの手中に納めた! フードファイトの空中戦、バトル・オブ・ブリテンを制します」
王「少し遅れて黒森峰逸見が到着! 既に残っているのはハムサンド、エッグサンド、ツナサンドとお腹に溜まりやすいものだけだが!?」
愛里寿「この試合は食べたサンドの数で勝敗がつく。食べやすいものを優先する方が圧倒的に有利」
王「もはやアシカは上陸不可能! チェーンホームを前にして戦車砲は届かなーい! これは早くも勝負がついてしまったかぁー!?」
6: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:51:48.57 ID:kmgbljoxo
ローズヒップ「大家族で育ったわたくしの食事スピードを舐めるんじゃねぇでございますわー!」パクパクパクッ!
ダージリン「見事な食べっぷりよ、ローズヒップ。はい、どんどん。はい、じゃんじゃん」ニコニコ
まほ「エリカ、相手にペースを乱されるな!」
エリカ「はい、隊長っ!」パクッ パクッ
王「本試合、選手のセコンドには聖グロリアーナ女学院戦車道チーム隊長ダージリンさんと、黒森峰女学園戦車道チーム隊長西住まほさんがついております」
王「セコンドは開始時点からテーブル横で待機しており、選手のプレイングのサポートをします!」
愛里寿「セコンドの補佐は何人居ても構わないルール。聖グロ側はオレンジペコさんたちも控えてる」
愛里寿「それと、貸してほしいって言われたからセンチュリオンも待機中」
王「あちらに停めてあるのは島田さんの戦車だったんですね」
愛里寿「スタジアムに許可も取ったよ」
王「聖グロは戦車を何に使うつもりなんでしょうか! 楽しみです!」
7: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:52:47.53 ID:kmgbljoxo
王「本試合のサンドイッチに使用されているパンは10枚切り食パンの耳落としとなっております」
愛里寿「けっこう薄いね」
王「なんでも、薄ければ薄いほど上品なんだそうです」
ダージリン「こんな格言を知ってる? サンドイッチはね、パ―――」
オレンジペコ「挟まれた方が良いお味を出すんですよね。でも今は関係なくないですか?」
ダージリン「まあ見てなさい」ンフ
ローズヒップ「んまーいっ! しっとりしたパンの間に挟まれたシャキシャキきゅうりと絡み合うたっぷりバターの風味が"まいうー"ですわー!」パクパク!
オレンジペコ「……格言というか、そのままですね」ハァ
王「ローズヒップ、ものすごい勢いでサンドを殲滅していくーっ!」
愛里寿「俊足と戦車の操縦のみならず、その摂食嚥下も拙速を尊んでいる模様」
王「無心ッ! 食卓<テーブル>という名のバックストレッチを反射神経で疾駆する姿はまさにアスコットのエクリプスだぁーっ!」
ダージリン「"Eclipse first, the rest nowhere."」ドヤッ
8: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:54:02.19 ID:kmgbljoxo
王「対する逸見は―――」
エリカ「はむっ! はむむっ!」ガブッ ガブッ
ローズヒップ「なんとっ!」
まほ「いいぞエリカ!!」グッ
王「おおっ!? 大口を開けてサンドを一度に3つ重ねて食べています!?」
愛里寿「まるでワニ。アニマルシリーズ?」
王「砂漠の狐かカプッツォの獅子か!? トブルク陥落ッ! めざせエジプトーッ!」
<シキカンタルモノゼンセンデメシヲクエ! オチツケエルヴィン!
ルクリリ「所詮ネズミよ! 爆弾を詰めてから石炭に混ぜて差し上げますわ!」
オレンジペコ「チャーチルはトーチ作戦の説明にワニの絵を使い、固い鼻と柔らかい腹の同時攻撃を提案しました」
ダージリン「ロンメルサンドの出来上がりというわけね。頑張って、モンゴメリー」クスクス
ローズヒップ「ダージリン様? わたくしの名前はローズヒップでございますわ?」モグモグ
王「聖グロは余裕のようですが、黒森峰のこの追い上げ! 時間当たりの食べた数としては黒森峰の方が多いのではないのでしょうか?」
愛里寿「だけど顎や食道に負担がかかる。制限時間いっぱいこのペースは無理かも」
9: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:55:08.65 ID:kmgbljoxo
ダージリン「それにしても、レディーのすることではなくってよ」
アッサム「そろそろ第2戦線展開のタイミングかと、ダージリン」
ルクリリ「マンシュタインプランをシュリーフェンプランに書き換えてやりましょう! 逆メヘレン事件よ!」
ダージリン「そうね。ペコ」
\キュポラッ/
オレンジペコ「お紅茶の用意できています」スッ
王「おやぁ? センチュリオンの車長ハッチから出てきたオレンジペコさんが持っているのは―――ティーポットだーっ!」
愛里寿「確かにセンチュリオン砲塔内部にはBoiling Vesselがあるけど、普通の給湯器を用意すればよかったんじゃ……」
ダージリン「だって使ってみたかったんだもん」
オレンジペコ「こういう機会じゃないとセンチュリオンに乗れませんもんね」トポポ
アッサム「それに通常の湯沸かしよりも温度が低くなるので、より飲みやすいお紅茶になります」キリッ
王「わたくしも一度聖グロにお邪魔して紅茶とサンドイッチをいただきましたが、あれは素晴らしい味わいでしたよ!」
愛里寿「いいなぁ。私も飲んでみたい」
王「さて、この大量の紅茶をどうするのでしょうか。わたくし、てっきり戦車から空砲を撃って黒森峰を妨害するのかと思ってました」
愛里寿「それだと敵味方両方に甚大な被害」
ダージリン「どこかのチームはうちとの親善試合の前、ブーム海軍大将のように空砲を目覚まし代わりにしたみたいだけど」フフッ
<ワタシタチノコトデスヨ,ニシズミドノ エェッ!?
10: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:56:15.25 ID:kmgbljoxo
ダージリン「準備はよろしくて? それじゃ、コッパーヘッド(まむし)作戦、開始」
ローズヒップ「わっかりましたでございますわー!」ゴクゴクゴクッ!
王「な、な、なんとぉっ! 聖グロのクルセイダー、大量の紅茶でサンドイッチを流し込む作戦に出ました!」
愛里寿「本大会は外部から飲食物の持ち込みを一切制限してない。ルールの穴をついた上手い作戦」ムフーッ
まほ「待て! これは邪道食いじゃないのか!?」
ダージリン「あら? サンドイッチを重ね食べさせている人が何かおっしゃっているようで」
オレンジペコ「邪道食いとは、食べ物本来の味を損なう行為のことです。むしろお紅茶とサンドイッチのセットは王道中の王道ですね」
アッサム「何よりルール上問題ありません。貴女も黒森峰なら規則を遵守してください」
まほ「くっ……」
愛里寿「聖グロの皮肉、ちょっと怖い」
11: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:57:35.75 ID:kmgbljoxo
王「ローズヒップ、次々と標的サンドを撃滅させる様はオーストラリア製センチネルの連射攻撃のようです!」
エリカ「水分摂取は死亡フラグよ! 勝手に自滅するがいいわ!」ガブリガブリ!
ダージリン「それはどうかしら?」フフン
オレンジペコ「この試合は短期決戦型。喉に詰まらせることなく胃に入れることが何より重要です」
オレンジペコ「それだけじゃありません。このお紅茶は我が校独自のフレーバーをベースに改良を加えたもの」
オレンジペコ「士気向上のみならず、興奮しやすいローズヒップさんの冷静さを保つよう調合された特殊なお紅茶なんです!」
ローズヒップ「ぬるめのお紅茶のマジカルパワーがチョークールでございますわッ!」バクバクッ!
愛里寿「カヴェナンターみたいにならないといいけど」
王「場内に魔法のような爽やかな香りが漂います」
エリカ「そんな精神論、私には通用しないわッ!」モグモグ!
ダージリン「そろそろ紅茶がキいてきたはず。ローズヒップ、エンジンキャブレターのガバナーを外しなさい」
ダージリン「……常に動き続けて、食し続けるのよ」ニヤリ
ローズヒップ「リミッター外しちゃいますわよー!」ゴクゴクゴクッ!
エリカ「ッ!?」
オレンジペコ「は、早いっ!」コポポポ
王「聖グロの快速戦車、ここでトップギアァーッ! 紅茶装填手のスピードが追い付かなーいッ!」
12: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:58:33.64 ID:kmgbljoxo
愛里寿「でも逸見さんの指摘通り胃の内容量が増えるから諸刃の剣。スピードに自信がないと普通はできない」
王「黒森峰に衝撃走る! コマンド部隊ノルウェー上陸を目前に、大西洋の壁は間に合うのかーッ!?」
まほ「なんだあれは!? ホントにただの紅茶なのか!?」
ダージリン「ルクリリ、ペコを手伝ってあげて」
ルクリリ「お任せくださいっ!」コポポポ
愛里寿「装填手が2人……チャレンジャー」
王「これが聖グロの秘策! 英国面! ロンドンの霧のように深く厚いベールが今あらわになりましたーッ!」
愛里寿「FIDO、滑走路バーナー?」
<シルバーストーン? ウッドコートシケインダネ! イヤカンケイナイカラ
王「もはや彼女はクルセイダーではありません! ミーティアエンジン搭載のクロムウェルッ! 探していた、見失っていた光は、ロンドンの風の中にありましたーッ!」
<ラッキーガールスパイクアウトォ! マッテマシタコノシュンカン! アリガトー! アヒルサンチームドウシタ?
ローズヒップ「きゅうりサンド、お紅茶、きゅうりサンド、お紅茶でございますのよー!」ゴクゴクッ!
ルクリリ「はーっはっはっは! 黒森峰など敵ではないわっ!」トポポポ
ダージリン「大事なことはポイントを一突きすること」
オレンジペコ「チャ、チャーチルですね」トポポポ
ダージリン「ここにおいては、そう。『速さ』ですわ」キリッ
王「大蛇のように呑み込んでいくーッ! サンドイッチのノルマンディー上陸作戦だぁーッ!」
13: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 15:59:46.81 ID:kmgbljoxo
王「さあ制限時間は残り2分を切りましたが、対する黒森峰は……むむッ!?」
愛里寿「えっ……!?」ガタッ
エリカ「―――はむむっ! はふふっ!」ガブッ ガブッ!
ローズヒップ「マジですのッ!?」ビクッ
王「ご、ご、5個重ねーッ!?!? 人間の限界に挑戦していますッ!!」
愛里寿「パン1斤を丸かじりしてる……」プルプル
王「女を捨てた肉食獣ッ! ミドガルドシュランゲッ! 奴に噛み砕けないものは無いというのかーッ!?」
ダージリン「落ち着きなさい、ローズヒップ。食べられるかどうかを疑った瞬間、永遠に食べられなくなってしまうわ!」
ローズヒップ「ッ!!」
ダージリン「貴女は騎士道精神で優雅に勝負すればいいの。そう、マッド・ジャックのようにね」ニコ
オレンジペコ「バグパイプ演奏でもする気ですか!?」トポポポ
ダージリン「世界が成長とともに堕落したのよ」
ローズヒップ「がんばりますでございますのよォ~っ!」モグモグ
王「ローズヒップ、この試合で何かを感じているようです! 成長が止まらなーいっ!」
王「両者一歩も譲らず! この勝負、一体どちらに軍配が上がるのかぁーッ!?」
14: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:00:24.93 ID:kmgbljoxo
王「さあ残り時間30秒ッ! 会場では過酷なデッドヒートならぬフードヒートが繰り広げられていますッ!」
愛里寿「ふたりとも少しペースが落ちてきた」
王「途中経過ですが、現在のところ聖グロがわずかにリード! これはコッパーヘッド作戦が功を奏したか!?」
まほ「エリカッ!」
エリカ「…………」ピタッ
王「おや!? 逸見、手が止まりましたが、まさかここでギブアップなのかぁーっ!?」
愛里寿「ううん、これは……」
エリカ「胃袋よ、ほら、サンドイッチだわ……! ハァァァ……!」コォォォォ!
王「か、彼女は一体なにをしているんでしょうか!? なにやら強烈なオーラを放っております!」
愛里寿「これは、"自律神経系"」
王「自律神経系!?」
15: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:03:20.99 ID:kmgbljoxo
愛里寿「人間は、口、消化器官、肛門といった、食事にかかわる器官の働きが副交感神経に左右されている」
愛里寿「内臓筋は意志によって動かせない不随意筋。だから副交感神経の支配は食の支配と同じ」
愛里寿「彼女は瞬間的に脳内麻薬を放出、胃酸と蠕動を自在にコントロールしている」
愛里寿「そして交感神経を刺激し幽門を開放することで、胃から十二指腸へ食べ物を送り出している……」
王「で、ですが交感神経と副交感神経はシーソーのような存在! 両方を活性化させるなど―――」
愛里寿「もちろん同時には無理。だけど、それが交流電流のように変化するとしたら?」
王「彼女は今日のために肉体改造を行ってきたとの情報ですが……おーっと! 逸見、信じられなーいッ!」
エリカ「ガブッ! ガブブッ!!」グルン グルン
ローズヒップ「ヒィッ!?」ビクッ
まほ「っ!?」ビクッ
王「全身をひねっていますっ! 噛み千切る補助動作として身体をツイストしていますッ!」
愛里寿「デスロール……」
<バケモノゼヨ!? オニシマヅ!? アポカリプスビースト!? イヤ、P1500モンスターダロ! ソレダ!
王「今までの倍の速さで手当たり次第にサンドイッチを撃破ァーッ! 戦いの歓喜を無限に味わっているかのようだぁーッ!」
ダージリン「っ……」
ルクリリ「た、助けて東部戦線っ!」ウワーン!
アッサム「は、挟まれた方が良い味出すのよ」プルプル
オレンジペコ「それは血の味というブラックジョークでは……」ビクビク
王「聖グロに恐怖の味を思い出させていくッ! 食のフランケンシュタインコンプレックス逸見エリカーッ!」
16: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:04:24.46 ID:kmgbljoxo
王「聖グロを制す様はまさにヴィレル・ボカージュ! ティーガーの騎士、ここに見参ッ!」
<ヴィットマンキュウハウチノタイチョウダゾ! エルヴィンサンオチツイテ!
王「小手先のテクニックではなく、己の肉体の圧倒的なパワーで英国貴族の嗜好品を蹂躙するッ!」
王「胃袋の報復兵器ッ! 食欲の陸上戦艦ッ! これが真の西住流なのかぁーッ!?」
<チガウヨ!?
ダージリン「あれが、ロイヤル・タイガー……」
まほ「エ、エリカ……」
エリカ「ハムッ! ハムムムッ!!」グルン グルン
ローズヒップ「お~の~れぇ~ッ!」パクパクパクパク
王「聖グロ、ATシリーズのごとき守備力で防衛なるか!? それともマーケットガーデン作戦となってしまうか!? 残りあと3秒ッ! 2、1……ッ」
ビーーーーーーーーーーーッ!
王「し~あ~い~しゅ~~りょ~~~~ッ!! 勝ったのは、どっちだぁ~~ッ!?」
審判「勝者―――」
黒 森 峰 女 学 園 ッ !!
17: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:05:27.03 ID:kmgbljoxo
王「やりましたァーッ! 勝者、黒森峰副隊長、逸見エリカーッ!!」
エリカ「―――私の胃袋は、宇宙よッ!!」
ローズヒップ「ごちそうさまで……ございますわ……」バタッ
<ワーワー! ドレスデンボウエイ! チュウケンー! カペルスウェイトー!
王「逸見、勝利のガッツポーズ! 黒森峰、Aグループ準決勝進出決定ッ!」
王「ここに巡航戦車、歩兵戦車の歴史が幕を閉じる! ローズヒップ、試合終わっての一言め……まさに"ごちそうさま"、と言った感じでした!」
王「情報によりますと、黒森峰の追い上げ逆転勝利。しかもサンドイッチ1つ分という僅差とのことです」
王「いやー解説の島田さん。今試合、直接的な勝因はなんだったでしょうか」
愛里寿「試合の組み立て方。ギリギリまで敵に手の内を晒すのを我慢できた黒森峰の作戦勝ち」
王「なるほどー。ですが、手の内を見せれば次戦以降は対策を立てられてしまうのでは?」
愛里寿「それはどこのチームも同じ。あるいは次の策を用意してるのかも」
王「次の試合が楽しみです! なお、余ったサンドイッチは会場にご来場のお客様に無料で振る舞われます」
愛里寿「一旦CM」
18: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:06:11.96 ID:kmgbljoxo
―CM―
♪パーパパパッパッパッパッパパパーパッ! ~
この度、大洗ボコミュージアムがリニューアルオープンしました!
♪やってや~るやってや~るやぁ~てやるぜ~
『おう! よく来やがったなお前たち!』
♪い~やなあ~いつをボ~コボコに~
可愛いボコたちが大集合! アトラクションで大冒険!
♪け~んかは売~るものど~うどうと~
『ボッコボコにしてやるぜ!』
♪か~たでか~ぜ切りタ~ンカ切る~ ジャン!
ボ コ ミ ュ ー ジ ア ム
(株)島田コーポレーション
19: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:07:45.93 ID:kmgbljoxo
―CM裏―
<聖グロベンチ>
救護班「バイタルチェック終わりました。何かありましたらいつでも救護テントまでどうぞ」
ローズヒップ「ゴポッ……お、お紅茶で溺れそうですわ……」クターッ
ダージリン「ローズヒップ、貴女はよく頑張ったわ。戦い方に気品が現れていてよ」ナデナデ
オレンジペコ「とっても素敵でした。ゆっくり休んでください」ニコ
ルクリリ「でも悔しいですぅ! 今日はVEデーになるはずだったのにぃ!」
アッサム「私のデータによれば勝率は90%を超えていました。黒森峰の暗号は解読していたのに、一体どうして……」
ダージリン「あら? ホームズさんは黒森峰が何か不正を働いたとお考えですの?」
アッサム「い、いえ、そういうわけでは……」
ダージリン「例えそうだとしてもルールは穴だらけ。不正を指摘できないこちらが悪いのです」
アッサム「はい、ダージリン……」
20: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:08:18.01 ID:kmgbljoxo
ダージリン「それに、私はローズヒップの方がサンドイッチをおいしく召し上がっていたと思いますわ」
ダージリン「バーナード・ショー曰く、食物を愛するよりも誠実な愛はない」
オレンジペコ「愛の深さでは私たちは負けていない、ということですね」
アッサム「空爆を受けてもなお鳴り響き続けたウェストミンスターの鐘のような心の強さですわ」
ダージリン「そもそもサンドイッチは一度に3個も重ねて食べるものではありませんっ」プンプン
オレンジペコ「お紅茶で流し込むように食べたことは棚上げなんですね……」
アッサム「サンドイッチなのにイチド3個……3個イッチ……」フフッ
ダージリン「あらおかしい。そのジョークをエリカさんに送っていたら勝てていたかも」
オレンジペコ「……それはモンティ・パイソンです」
ローズヒップ「ぷっ! アッサム様サイコーですわ、あはは―――ごぽっ、ごほっ、がはっ! くるしっ!」バンバン
21: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:09:11.79 ID:kmgbljoxo
<黒森峰ベンチ>
まほ「……よくやった、エリカ。周りは色々言っているが、勝ちは勝ちだ」
エリカ「まだ初戦です。優勝するまで気を抜けません」
まほ「あ、ああ。そうだな」
救護班「あ、あの、バイタルチェックを……」
エリカ「必要ないわ。この通り、問題なしよ」
救護班「ですが一応――」
エリカ「今からトイレに行くの。ついてこないで」キッ
まほ「エリカ……」
エリカ「心配しないでください、隊長。私は大丈夫です」
まほ「……そうか」
エリカ「……失礼します」クルッ スタスタ
「――あ、あの、エリカさん!」タッタッ
22: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:10:39.30 ID:kmgbljoxo
エリカ「っ、あなた……」
みほ「はぁ……はぁ……」
エリカ「……ここは黒森峰ベンチよ。大洗のところへ帰りなさい、みほ」
みほ「で、でも、心配になっちゃって……」
エリカ「敵の心配をしているヒマがあったら自分たちの心配をすることね」フンッ スタスタ
みほ「あぅ……」
まほ「……みほ。エリカのことは私に任せてくれ」
みほ「……うん」
23: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:11:15.73 ID:kmgbljoxo
<通路 女子トイレ前>
エリカ「…………」スタスタ
ローズヒップ「あら」
エリカ「げっ」
ローズヒップ「エリカ様はお尻からサンドイッチをデファイアントでございますの? わたくしはお紅茶をロックですわ!」
エリカ「その下品なお口をBf109してあげましょうか? というか、せめて陸軍の話をしなさいよ」
ローズヒップ「アーチャー自走砲の方がよろしくて?」
エリカ「それ、トイレ間に合うの?」
ローズヒップ「ハッ! そうでしたわ! お先に失礼致しますわ!」ダダダ
エリカ「……ほかのところに行きましょ」クルッ
エリカ「…………」スタスタ
エリカ(……私は)
エリカ(―――私は、間違ってないわよね……)グッ
24: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/06(土) 16:11:59.56 ID:kmgbljoxo
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
ついに始まった戦車道フードファイト。
エリカさんが勝ったけど、どこか様子がおかしい? 心配だな……。
次の試合はアンツィオ対継続。食材は"安斎さん"!?
次回! フードファイト・ウォー。『アンチョビのスペシャリテ』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
27: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:14:09.85 ID:WQ2YdWceo
_________________________
フードファイト・ウォー! 第2話 『アンチョビのスペシャリテ』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
愛里寿「―――ってやるやぁ~ってやるぜ♪」
<タイチョー、ウツッテマス! ハジマッテマスヨ! オウタガジョウズ!
愛里寿「い~やな―――こほん。第2戦目、Bグループ第1試合はアンツィオvs継続」
王「は、はいっ! かつてのどんぐり小隊対決となります!」
王「今大会優勝候補と目されるアンツィオ高校からは副長ペパロニ選手が出場。セコンドにはドゥーチェ・アンチョビがつきます」
アンチョビ「負けるな……じゃなかった、勝て! ペパロニ! アンツィオのノリと勢いをここで見せないでどうするんだっ!」
ペパロニ「任せてくださいッス、ドゥーチェ! もうお腹減って死にそうッスよー!」
カルパッチョ「この日のために3度のメレンダ(おやつ)を1度に減らしましたものね」ウフフ
ペパロニ「感触が違うんスよ、普通に食った時と空腹時ってのは」チッチッチ
ペパロニ「料理の食いごたえが2倍伝わってくる。飯食ってるって実感沸くんスよ!」ニヤリ
王「飢えた狂犬、ペパロニ選手の活躍に期待です!」
愛里寿「そのポテンシャルは出場校中随一。いかにノリと勢いを維持できるかが勝負の分かれ目」
王「対する継続高校からは操縦手ミッコ選手が出場、セコンドにはミカ隊長がつきます」
ミッコ「お腹空いて、裏と表がひっくり返りそう。いっぱい食べるぞーっ!」
アキ「私たちの分も残しておいてよ?」
ミッコ「アキとミカはさっきサンドイッチ食べてたじゃん」
ミカ「食べられる。それだけで食べ物は尊いのさ」ポロロン
王「アンツィオの補給線を寸断できるか!? 世紀の腹ペコ対決がここに始まるーッ!!」
28: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:15:27.21 ID:WQ2YdWceo
王「本大会の優勝賞品、『戦車道CM出演権』をかけて両校とも本気のようですね!」
愛里寿「今年度、文科省は世界大会誘致のため日本にプロリーグを発足させようとしている」
愛里寿「当然、国民に広く戦車道を知ってもらい、イメージアップを図る必要がある」
王「その広報CMに出演すれば学園艦の知名度はうなぎ登り! 来年度の戦車道新入生および義捐金の3割増しが約束されます!」
愛里寿「大学選抜チームに勝利した大洗連合チームの学校をCMに起用しようという文科省のツラの皮の厚さには―――」
王「あーっ!! そ、それにしても、島田流師範がボコミュージアムのスポンサーになってくださってよかったですね!」アセッ
王(何言わせようとしてるんですかルミさん!)※小声
愛里寿「うん。試合には負けたからお母様との約束は果たせなかったんだけど、お母様もボコを気に入ってくれたみたい」ニコ
29: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:15:57.93 ID:WQ2YdWceo
王「そ、そうですね! さて! 気になる対決食材ですが、今試合はなんとぉ~……『アンチョビ』ですっ!」
愛里寿「うわ」
王「島田さんは苦手ですか?」
愛里寿「うん」
ペパロニ「ドゥーチェを食べるんスか? いただきますッス!」ガブッ
アンチョビ「いててて! こら、やめろペパロニ! 私を食べるなぁ~!」
カルパッチョ「半額セール品じゃないなんて夢のようです!」パァァ
アキ「アンチョビってイワシの塩辛のことだっけ」
ミッコ「魚介なら任せろーっ!」
<バリバリ! ヤメテ! アリクイサンチームハナニヲヤッテルンダ?
30: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:16:54.72 ID:WQ2YdWceo
審判「セコンドの皆さんはテーブル側へ移動してください!」
王「さて、島田さん。本試合、島田さんはどのようにご覧になられますか?」
愛里寿「塩味の強い食材ゆえ、全体のペース配分の上手い方が勝つ。肉体より頭脳、脳漿を絞った戦いを期待する。けど……」
ペパロニ「あっれー? ドゥーチェのウィッグ、噛みついても取れないッスねー」カジカジ
アンチョビ「地・毛・だぁっ! 冗談きついぞお前!?」
ミカ「食事の量と速さを競うことに意味があるとは思えない」ポロロン
アキ「タダ飯食べられるなら参加するって言ったのミカじゃん」
ミカ「風と一緒に流れてきただけさ」ポロロン
審判「早く移動を!」
カルパッチョ「ほ、ほら、みなさん? 向こう行きますよ?」
愛里寿「大丈夫かな?」
王「さ、さあ! まもなく試合開始のホイッスルが鳴ります!」
31: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:17:53.89 ID:WQ2YdWceo
ミッコ「よっ! どんぐり小隊以来だね!」
ペパロニ「あんときは大活躍だったな! こっちからは見えなかったけどさー」
ミッコ「ホントはあの後も一緒に戦いたかったんだけどねー」
ペパロニ「試合終わったら居なくなってるなんて、つれないじゃんかよー」ウリウリ
ミッコ「んまあ、今日こうして会えて良かったじゃん!」
ペパロニ「そうだなっ!」ニカッ
審判「両者、礼っ!」
ミッコ「いっただっきまーす!」
ペパロニ「いただきます! あっ、アタシらはアペリティーヴォで乾杯もしていいッスか?」
審判「軽く胃を刺激させるためですね。構いませんよ」ニコ
ペパロニ「それじゃ、ノンアルコールワインで……Salute!」ニコ
ミッコ「Kippis!」チンッ
<プロージット! ティンティン! オマンラハセンデイイゼヨ
ペパロニ「お互い頑張ろうぜ!」ゴクッ
ミッコ「おうっ!」ゴクッ
審判「両者位置について。用意ッ!」
\パパパパパウアードドンッ!/
32: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:18:51.55 ID:WQ2YdWceo
ミッコ「天下のクリスティー式、舐めんなよーっ!」ドドド!
ペパロニ「アヴァンティ……って、早ェーッ!? おーい、食事の時はもっとゆったり構えるもんだぞー!」タッタッタッ!
ミッコ「急がないといつも誰かさんに食べられちゃうからねーっ!」ドドドド!
アキ「ミカ、テーブルに置いてあるやつ、まだ食べちゃダメだからね?」
ミカ「それは風が決めることさ」ポロロン
アンチョビ「ペパロニ! もっと早く走れぇ~ッ!」
ペパロニ「腹減り過ぎて力が出ないッスよー、姐さぁーん!」タッタッタッ!
王「うむむ、溶接からリベットへと逆進化したC.V.33系列のような……なんだかわたくしも不安になってまいりましたぁ……」
愛里寿「一緒にがんばろう?」
33: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:20:03.58 ID:WQ2YdWceo
<イケー! ムーミン! カーベータンカエシナサーイ!
<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ヒナチャーン! ドゥーチェ!
カルパッチョ「たかちゃーん!」フリフリ
王「大歓声がスタジアムを包みます! おっと、やはりというべきか、継続が先に食材テーブルへと到着しました!」
王「テーブルにはアンチョビパニーニ、アンチョビリゾット、アンチョビソースカプレーゼ、そして―――」
王「アンチョビスパゲッティなどなど、アンチョビを使った料理が小分けにずらっと並んでおります!」
愛里寿「今回は食器の枚数勝負。小皿の上に乗ってる重さはグラム単位で同じだけど、食べやすさの取捨選択が鍵」
王「んーっ! しかしなんとも素晴らしいオリーブオイルベースの香りが食欲をそそります!」
ミッコ「はむっ! ぅんまぁっ! あっつつつつ! でも、ぅおいっしーっ!」パクパク
アキ「いいなぁ……」グゥ
ミカ「他人を羨んでもお腹は膨れないよ」ポロロン
王「ミッコ、小エビのしっぽまで綺麗にペロリと食べています! ほとんど噛まずに飲み込んでいく様はまさに鳥類! 鳥人ミッコネン!」
愛里寿「本試合は両校の強い要望により少し試合時間が長い。舌と脳に飽きがこないよう調整するのも重要」
王「さあ、すでに2皿を平らげた継続ですが、ここでアンツィオペパロニが大テーブルへ到着だーッ!」
ペパロニ「お味のほどはどうなってっかなっと……んー、なるほど。んで、こっちは……」パク パク
王「あーっとぉ! "吟味"していますッ!!」ズルッ
愛里寿「職業病?」
34: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:21:07.81 ID:WQ2YdWceo
アンチョビ「ペ・パ・ロ・ニィィ~~ッ!!」バンバンッ!
ペパロニ「わ、わかってますって! ちゃんと勝ちますから、ちゃんと!」
アンチョビ「この勝負、絶対に負けられないんだぞ!? 戦車の整備費のためにも我が校の知名度を上げる必要があるんだぞぉ!?」
アンチョビ「食べ物勝負でアンツィオが負けたら、何に勝てばいいんだぁっ!!」ウルッ
カルパッチョ(言っちゃったぁ……)
ペパロニ「ドゥーチェ、信じてくださいって! このアタシを誰だと思ってるんスか?」ドヤ
アンチョビ「お前だから心配なんだよぉーーッ!!!」ウガーッ!
王「なにやらアンツィオサイドがもめておりますが、試合は着実に継続がリードしていきます」
王「本命アンツィオ、ここにきてM11/39のようなもどかしさ、M13/40のようなあと数歩足りない感じです。カンガルーに捕えられてしまったのか!?」
愛里寿「ううん、ペパロニさんの態度は余裕の現れかも。何か策が?」
ペパロニ「よしっ。だいたいの味付けは覚えたかな。それじゃ……」
ペパロニ「―――"ペパロニ流フルコース"の始まりだぜッ!!」バァーン!
35: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:23:43.92 ID:WQ2YdWceo
ペパロニ「もぐっ、んむっ! んまいっ! はむっ! はむっ!」パクパクパクッ!
ミッコ「!?」
王「おーっとぉ!? ペパロニ、各種料理の小皿を手あたり次第に食べていきます! ものスゴイ速さだぁーッ!」
愛里寿「いや、あれは一見ランダムだけど……?」
カルパッチョ「私が解説しますね!」
王「ふおっ!? カルパッチョさんが放送席に!?」
愛里寿「マイク取られた」
カルパッチョ「我が校アンツィオはご存じの通り、お昼時には屋台が立ち並びます」
カルパッチョ「食堂のランチもありますが、多くの生徒たちは毎日屋台を利用するわけです」
王「な、なるほど? そう言えば最近は放課後も屋台を出すようになったのでしたね」
カルパッチョ「色んな屋台の色んな料理を毎日おいしく食べるにはどうしたらベストか。それはアンツィオ生徒最大の命題」
愛里寿「そんなに?」
カルパッチョ「そこでペパロニさんが生み出したのが"ペパロニ流フルコース"!」
カルパッチョ「その日の気温や湿度、自分の体調や食材の状況、料理人のコンディションや提供までにかかる時間など、総合的に判断して最適な食事の順番を算出し……」
カルパッチョ「その瞬間の自分にとってのベストを得るためのルートを構築するんです!」バァーン!
王「ディ・モールトベネッ! アンツィオの料理にかける情熱は、その食し方にも向けられていたーッ!」
36: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:25:03.82 ID:WQ2YdWceo
ペパロニ「はむっ! 塩が足りないっ! はむっ! こっちは多すぎっ!」パクパク!
王「ペパロニ、味付けの微妙な差までも評価しながら次々と小皿を完食していくッ! 食欲の不発手榴弾ッ! まさにイタリアの赤い悪魔ァ!」
愛里寿「それは褒めてないような……今までの余裕は諸々のデータを算出するための時間稼ぎ?」
カルパッチョ「も、もちろんです! たぶん!」アセッ
王「その変速猛追ぶりは本場スーパーカーの如し! フードファイト界の跳ね馬、フランチェスコ・バラッカだーッ!」
<ナマエカライエバ458イタリア? イヤ、ソレナラ458スパイダージャナイ? クーペカブリオレッポイヨネ! デモチームハミナダヨネ
王「人間食品加工工場ッ! フードファイトの通り魔ッ! 食べる豆戦車が火を噴いたぁーッ!」
カルパッチョ「もうすぐ継続を追い越しますよ、ペパロニさんっ!」パァァ
ミッコ「―――ッ!?」クルッ
ペパロニ「戦いは火力じゃない。オツムの使い方だ」ドヤァ
アンチョビ「お、おおっ!? なんだかわからないが、すごいぞペパロニッ!!」パァァ
ペパロニ「ドゥーチェが喜んでくれて何よりッス!!」パクパクパク!
アンチョビ「ってゆーか、そんな秘策があるならなんで教えてくれなかったんだよっ! んもう……私にこんなに心配させて!」ホロリ
ペパロニ「あっれー、言ってなかったでしたっけ? おっかしーなー、まぁいいや!」パクパクパクパク!
アンチョビ「……あ、うん。あれだよな、敵を騙すにはまずなんとかって」ガクッ
37: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:25:42.22 ID:WQ2YdWceo
王「まさかのペパロニ、700ps級の覚醒超加速ッ! 継続の枚数を追い越しましたぁーッ!」
アキ「ミッコ! やばいって!」
ミッコ「はむっ! はふふっ! はむっ!」パクパク!
ミカ「焦ることに意味は無い。勝利の女神は気まぐれなのさ」ポロロン
アキ「もう! ミカも応援してよーっ!」
アキ「義捐金たっぷりもらうんでしょ! パンツァージャケット作るんでしょ!?」
アキ「ミッコが負けちゃってもいいのっ!?」
ミカ「……でも、私はミッコを信じてる」
アキ「ミカァ……!」パァァ
ミカ「行くぞっ」スッ
38: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:27:29.23 ID:WQ2YdWceo
♪ズンチャ ズンチャ ズンチャ ズンチャ ~
ミッコ「いよっ、待ってましたぁーっ!!」ニッ
♪ズンチャ ズンチャ チャッ!
王「おおーっ! これは対大学選抜戦で見せたカンテレ演奏ですッ! わたくし王大河、生で聴けて感激ですッ!」クーッ!
愛里寿「楽器の持ち込みはルール上問題ない。音による相手選手への妨害も可能」
王「同時に相手を狙い撃つ! 白い死神! 無傷の撃墜王! 湖の守護者ーッ!」
♪~
ペパロニ「うっ!? か、体が、踊りたく……」プルプル
アンチョビ「だぁっ!? 今は食べることだけに集中しろーっ!!」
カルパッチョ「片方でもいいから耳を塞いで~!」
ミッコ「~~~♪」パクパクパクッ!
王「北欧の漂流者、1人ウィーン少女合唱団、白夜の国の王女様、その名は、ミ~~カ~~ッ!」
王「Sakkijarven polkkaの追い風受けて、継続ミッコは全開走行ッ! まさにハンドルを得たBT-42ッ!」
愛里寿「変な諺」
王「一方、音楽に誘われ踊り出したいペパロニは集中力が途切れてしまった! もはやクラッシュ寸前だーッ!」
愛里寿「味方に薬、敵に毒の上手い作戦」ンフー
ミカ「だろう?」フフン
39: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:28:36.57 ID:WQ2YdWceo
♪~
ミッコ「あんたたちが食事に関してすっげぇ情熱を持ってるのはよく知ってるよ」モグモグ
ミッコ「だけど、私たちのそれは、そんな生ぬるいものじゃあないんだ……!」モグモグ
ミッコ「キッチンなんてない。調理器具も、食器だって無いそんな状況でも……」モグモグ
ミッコ「常に飢えていて、常に欲していて、目に映る全てが食材に見えるほどにねッ!」モグモグ!
ペパロニ「な、なにィッ!?」
ミッコ「このバトルフィールドにおいて、空腹こそが力の源……」モグモグ
ミッコ「獲物を前にした獣は、飢えた者ほど強いッ!」モグモグ
ミッコ「つまり、今の私は最強ということだァーッ!!!」モグモグッ!
ミカ「トゥータ!」
王「勢いづいたミッコ、ここでペパロニを煽っていくーッ! マンネルヘイム線は重武装だったぁーッ!!」
アンチョビ「―――本当にそうか?」
40: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:29:25.27 ID:WQ2YdWceo
ミカ「……っ」ピタッ
王「ア、アンチョビさん、どうしたのでしょう? 謎のオーラでカンテレ演奏の手を止めたが……?」
ミッコ「な、なんだよっ?」モグモグ
アンチョビ「いくら腹ペコだろうと、食欲の矛先が"自分"にしか向いていないのでは意味が無いッ!」ドンッ!
ミッコ「ッ!?」ビクッ
アンチョビ「飯ってのはなぁ、誰かのために存在してるからウマいんだよォッ!!」ダッ! タッタッタッ…
王「おおっとぉ!? ドゥーチェ・アンチョビが調理テントの方へ駆けていきます!?」
愛里寿「セコンドのバックヤードへの干渉は……うん、ルールにないからセーフ」
王「カメラさん! アンチョビさんを追いかけてっ! はーやーくー!」
41: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:30:22.12 ID:WQ2YdWceo
【2カメ】
<調理テント>
アンチョビ「邪魔するぞっ!」バサッ!
調理班1「っ!?」
調理班2「こ、困りますっ!」
アンチョビ「いいかお前たち、よく聞け! 料理で大事なのは、人の心を感動させることだ!」
アンチョビ「人の心を感動させることが出来るのは、人の心だけなんだ! 材料や技術だけでは駄目なんだっ!」
調理班3「安斎先輩、いったい何を!?」
アンチョビ「おなじ素材でもっとうまい料理を食わせられるって言ってるんだよぉ!」
調理班3「え!! おなじ素材で料理を!?」
アンチョビ「コックコート借りるぞっ! 今から私がこの厨房の料理長<カポ・クオーコ>アンチョビだッ!!」キュッ!
調理班一同「「「なんだってぇー!?」」」
42: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:30:58.62 ID:WQ2YdWceo
アンチョビ「まず盛り付けっ! 食べる人間のことを考えろ! 口に入った時の温度変化と香りの鼻への抜け方もな!」
調理班1「は、はいっ!」
アンチョビ「次に味付けっ! そんなんじゃムラが出ちゃうだろ! 重戦車の操縦みたいに優しく!」
調理班2「す、すいませんっ!」
アンチョビ「それから! ああもう、お前代われっ! 私の料理を体で覚えろ!」
調理班3「了解ッス、アンチョビ料理長!」
アンチョビ「料理も恋愛も戦車道も一緒だッ! 自分の想いを一発のタマに込めろッ!」
調理班一同「「「はいッ!!!」」」
43: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:32:14.26 ID:WQ2YdWceo
【1カメ】
<会場>
王「試合時間は残り2分。いよいよアンチョビ料理対決も大詰めです!」
王「状況は継続側が防衛的勝利、気がつけばタリ=イハンタラの様相を呈してまいりました」
王「なにやら調理テントではアンチョビ料理長による料理指南が行われている模様ですが……」
愛里寿「セーフ」
王「ちなみに調理班は各校の栄養科などから集結した女子生徒たちにより構成されております」
王「アンチョビさんの行動が、既に引き離されてしまったアンツィオにとって吉と出るのか、凶と出るのかっ!」
愛里寿「今、新規の配膳が追加されたみたいだけど、どうなるかな」
王「あの新しい料理は、キャベツのスパゲッティでしょうか? 両選手ともに口へと運びます」
ペパロニ「姐さん、アタシのために……!」モグッ
ミッコ「食えれば一緒でしょ!」モグッ
モグモグ…
ペパロニ「―――ふ、ふおわぁ!?!?」ビクッ
ミッコ「―――な、なにこれっ!?!?」ドキッ
王「おっとぉ!? 両選手、固まっています! いったい、どぉーしたぁーッ!?」ガタッ
愛里寿「これは……?」
44: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:32:57.43 ID:WQ2YdWceo
ペパロニ「姐さんの味だァァァーーーーッ!!!!!」モグモグモグモグッ!!!
王「ぬゎぁーっ!? ペパロニ、信じられなぁーい! 前半のモーレツな超スピードが復活しましたァッ!」
ペパロニ「旨さの砲撃が次から次へと飛んでくるぜーーーーッ!!!!」パクパクッ!
ペパロニ「ボーノ、ボーノ、ボーノボーノボーノボォォォォッノォォォォッ!!!」バクバクッ!
ペパロニ「うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!!!!!!!」ポロポロッ!
王「泣いていますッ!! ペパロニ、セコンドの献身的サポートに感激しておりますっ!!」
愛里寿「料理は言葉にならない感動を与えてくれる。たぶん、今ここにある料理は彼女にとって完璧な味」
愛里寿「真に美味しく愛のこもった料理を食べた時、食欲は無限大となり胃袋は小宇宙と化す!」フンス
王「アンツィオ猛追! グラン・サッソへと光速を超えて突き進むーッ!」
45: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:33:44.44 ID:WQ2YdWceo
王「対する継続、先ほどからストップしたまま! ピクリとも動かなぁーい! 戦意喪失かッ!?」
アキ「ミッコ!? どうしたの!? どうして止まってるの!?」アセッ
ミカ「……風が止んだんだね」ポロロン
ミッコ「……っ」プルプル
ミッコ「―――うまぁいよぉぉぉっっ……」ポロポロ
王「こ、こちらも泣いております!? いったい何があったんだぁっ!?」
ミッコ「ぐすっ、えぐっ……こんなにおいしい料理、初めて、食べた……」ポロポロ
ミッコ「飢えをしのげれば、なんでも一緒だと、思ってたのに……っ」ポロポロ
ミッコ「ほどける麺にふわーっと香るアンチョビ……それは幸福の味……っ」ポロポロ
ミッコ「おい……し……すぎる……よぉ……っ!!」ポロポロッ!
王「これは、一体……?」
愛里寿「ただのスパゲッティじゃない……?」
アンチョビ「いや、ただのスパゲッティだよ」
王「おっと! アンチョビ料理長、解説をお願いします」
愛里寿「お願いします」ペコリ
46: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:34:18.32 ID:WQ2YdWceo
アンチョビ「私が作ったのはただのスパゲッティだ。おいしいキャベツとおいしいアンチョビを使っただけのな」
アンチョビ「2人も一口食べてみるか?」スッ
王「あ、ありがとうございます! いただきますパクッ……こ、これはぁぁっ!?!?」キラキラ
愛里寿「お、おいしい。見た目のシンプルさに反して、とてつもなくおいしい……」キラキラ
王「島田さん、苦手なアンチョビ料理を食べても大丈夫なんですか?」
愛里寿「うん。勢いで食べちゃったけど、こんなにおいしいとは知らなかった。私、少し大人になった!」ンフー
アンチョビ「なんでおいしいのか。色々理由はあるけど、一番の理由は愛情だ」
王「あ、愛情ですか!?」
アンチョビ「言っとくがこれ、マジメな話だぞ?」
47: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:35:08.17 ID:WQ2YdWceo
アンチョビ「私は本気であのBT-42の操縦手に旨いモンを食わせてやりたいと思って作った」
アンチョビ「もちろん私の料理のクセは抜けないから、ペパロニにとっては食べ慣れた味になったけどな」
アンチョビ「人を喜ばそうと懸命になって調理する。心を込めて作れば必ず人を感動させることができる」
アンチョビ「……だから、私はキャベツを手にした。フィンランド料理でよく使われるキャベツを」
王「っ!!」モグモグ
愛里寿「っ!!」モグモグ
アンチョビ「マジノ女学院の校長は、フィンランド料理は最悪でイギリス料理より少し美味い程度とバカにしたが」ケッ
アンチョビ「誰でも母の味が最高なんだよ。母親の、母校の、母なる大地の。どんな高級レストランでもかなわないぐらいに」
アンチョビ「だから私は、ミッコの母になるために、ペパロニの姐さんであり続けるために、このスパゲッティを作ったんだッ!」ドンッ!
アンチョビ「―――アンチョビのスペシャリテ。さぁ、た~んと食べてくれっ!」ニコ
48: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:35:46.42 ID:WQ2YdWceo
アキ「そんなぁっ!! ミッコ、ミッコォォォッ!!」
ミカ「アキ。彼女の作った料理の歌が聞こえるかい?」
アキ「……え?」
ミカ「それは、人生にとって大切な歌なんだ」
アキ「ミカ……」
ミカ「なに、嵐の中にボートを出すばかりが勇気じゃないさ」ポロロン
ビーーーーーーーーーーーッ!
王「こ~こ~で~し~あ~い~しゅ~~りょ~~~~ッ!! 無情にも継続に逆転のチャンスは与えられなかったァーッ!!」
審判「勝者―――」
ア ン ツ ィ オ 高 校 ッ !!
49: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:38:01.76 ID:WQ2YdWceo
ペパロニ「ごちそうさまでしたァァッ!! いよっしゃああああっ!!!」グッ!
カルパッチョ「すごいっ! すごいわ、ペパロニさぁんっ!!」キラキラ
アンチョビ「よくやったぞぉぉぉペパロニィィィィッ!!」キラキラ
<ペーパーロニ! ペーパーロニ! ペーパーロニ!
王「会場はアンツィオ高校生徒一同の歓喜の声で満たされています! アンツィオ、Bグループ準決勝進出決定ッ!」
ミッコ「……ホントに、ごちそうさま……でした……っ」グスッ
アキ「そんな……」
ミカ「…………」ポロロン
王「いやーとんでもない試合展開になってしまいましたねー!」
愛里寿「どっちも全力だった。どっちの想いも強かった」
愛里寿「ただ、アンチョビさんのそれは全てを包み込むラビオリのような存在だった」
王「感動的な試合でした! なお、余った料理は会場にご来場のお客様に無料で振る舞われます」
愛里寿「私、アンチョビさんのスパゲッティをもっと食べたい!」ンフー
王「会場の皆さんもそう思われていることでしょう。アンチョビさん?」
アンチョビ「い、いや、ある分しかないぞ? 早い者勝ちだぞ?」
王「ということなので皆さま、お急ぎくださいませ! アンツィオ高校名物、お昼の大争奪戦の、始まり始まりーっ!」
王「それではCMの前に一旦カメラをベンチサイドへと移します。どうぞっ!」
50: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:38:47.75 ID:WQ2YdWceo
<アンツィオベンチ>
ペパロニ「姐さん、ほんっとーにありがとうございましたぁっ!!」ペコリ
アンチョビ「バカ、私は料理を作っただけだ。フードファイトに勝ったのはペパロニの実力だ!」
ペパロニ「姐さぁぁぁんっ!!」ダキッ
アンチョビ「よくやったな、ペパロニ。よし、3人で継続のとこ行くぞ!」
ペパロニ「ハイッス!」
カルパッチョ「はいっ!」
51: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:39:35.01 ID:WQ2YdWceo
<継続ベンチ>
ミッコ「ごめん……っ……」グスッ
アキ「もう大丈夫?」サスリサスリ
ミカ「ミッコの勇気、見せてもらった」ポロロン
アキ「……負ける勇気ってこと?」ムッ
ミカ「本当の勇気とは自分の弱い心に打ち勝つことだよ」
ミカ「包み隠さず本当のことを正々堂々と言える者こそ本当の勇気のある強い者なんだ」ポロロン
ミッコ「でもっ、でもぉっ……」グスッ
ミカ「……風が来たみたいだ」
ペパロニ「邪魔するぜ」
カルパッチョ「失礼します」ニコ
アンチョビ「…………」
アキ「な、なによあんたたち……」
ペパロニ「てめぇらに話があってよぉ。よくも演奏で妨害してくれたな? あん?」
アキ「う……」
52: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:40:18.75 ID:WQ2YdWceo
ペパロニ「―――なんてな! 冗談だ、冗談! 試合楽しかったぜ、ミッコ!」ダキッ
ミッコ「わわっ!?」
ペパロニ「なんだよー、楽しくなかったのかー?」ムーッ
ミッコ「い、いや、そうじゃなくて……そっちの隊長の料理食べたら、なんか頭真っ白になっちゃってさ……」
ミッコ「今まで、自分のために食べるのが食事だと思ってた。でも、私のために作ってくれた料理が、こんなにも……」
ミッコ「こんなにも、うまいんだって、知らなかったから……」モジモジ
ペパロニ「ったりめーだろ! 姐さんの料理は世界一なんだからなッ!」フッフーン
53: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:40:57.15 ID:WQ2YdWceo
アンチョビ「なあ、ミッコ。スパゲッティ、うまかったんだよな?」
ミッコ「……っ」コクッ
アンチョビ「なら笑え。元気いっぱい笑ってくれ。私は、お前の笑顔が見たくて料理を作ったんだから」
アンチョビ「本当においしい料理があるってことを、知ってほしかっただけなんだ」ニコ
ミッコ「……う、うんっ……!」ニカッ
アンチョビ「ペパロニ! ミッコ! ちょっとこっちこいっ!」グイッ グイッ
ミッコ「うわっ!」
ペパロニ「っとと!」
アンチョビ「お前たち、よく頑張った! とっても偉いぞっ!」ダキッ
ミッコ「ね、姐さん……!」トクン
ペパロニ「苦しいッスよー、姐さーん」
ミッコ「……ペパロニ! 今日、楽しかった!」ニッ
ペパロニ「おう! アタシも楽しかったぜ!」ニッ
54: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:41:30.32 ID:WQ2YdWceo
アキ「ちょ、ちょっと! ミッコをアンツィオに引き込む気!?」グイッ
ミッコ「うおっと! 引っ張らないでよ、アキ!」
アンチョビ「いや、そんなつもりは無かったんだが……そうだ!」ポンッ
アンチョビ「お前たち、今度アンツィオに遊びに来い! 私が直々に旨いモノを作ってやろう!」
アキ「ええっ!? いいのっ!?」キラキラ
ミッコ「ま、またあの味が食べられるのっ!?」キラキラ
ペパロニ「アタシの鉄板ナポリタンも楽しみにしとけよ!」ヘヘッ
ミカ「皆さんの料理が歌う歌たちを、今度はじっくり聞きたいな」ポロロン
アンチョビ「ああ! 今日、我らは友になった! そのお祝いをみんなでやろう!」
アキ&ミッコ「「やったぁーーーっ!!!」」
55: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:42:13.40 ID:WQ2YdWceo
アンチョビ「おいしいご飯に歌と踊りだっ!」
ペパロニ「あのPolka、踊りたかったんだ! 演奏、よろしく頼むぜ!」
ミカ「私たちのはPolkkaだけど、それは些末なことだね」ポロロン
カルパッチョ「踊った後はローマっぽいお風呂にみんなで入りましょうね」ニコ
アキ「サウナも準備しといてよね!」
ミカ「美味しい食事は人生にとって大切なものなんだね」ポロロン
アンチョビ「そうとも! うまいメシは人生をサイッコーに輝かせるからな!」
ミカ「準決勝進出、おめでとう。皆さんの健闘を祈ります」
アンチョビ「おう! よし、お前たち、次に向けての作戦会議だぁーっ!」
ペパロニ「ハイ、姐さんっ!」
カルパッチョ「はーい!」
56: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:43:00.79 ID:WQ2YdWceo
<放送席>
王「……画面には美しい映像が流れていました」ホロリ
王「それにしても島田さん。わたくし、てっきり継続高校が食材を盗んで不戦勝になるかと思っていましたよ」
愛里寿「実はそうならないように裏で交渉していた」
王「と、いいますと?」
愛里寿「このフードファイトで余った食材は全て継続に提供することと引き換えに、一生懸命頑張ることを約束させた。大洗の会長さんの発案で全会一致」
王「ははー、なるほどぉ! 最初から余った食材は継続のものだったわけですね! それで彼女たちは優勝賞品に一途になれたと!」
王「ですが、食品衛生法とか大丈夫なんですか?」
愛里寿「細かいことは裏方任せ」
王「有能なスタッフさんに期待しましょう! それでは次の試合をお楽しみに!」
愛里寿「一旦CM」
57: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:43:57.90 ID:WQ2YdWceo
―CM―
母「はい、まさお。戦車道リーグカレーよ」コトッ
まさお「いっただっきまーす」パクッ
母「もりもり食べて強くなってね」
まさお「」モグモグ
母「おいしい?」ニコ
まさお「」メキメキメキ…
父「ん?」
母「まさお?」
♪ムゲンキドウデ ボカージュコエテ ~
父「まさお……」
まさお(CV38豆戦車)「おかわり」
母「は、はい」
ドカァン! ズバァン! パパパパ!
体を作る栄養素入り! 長谷園、戦車道カレー! 新発売
58: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:44:50.50 ID:WQ2YdWceo
―CM裏―
<黒森峰控室>
モニタ『―――画面には美しい映像が』
ピッ
エリカ「……チッ」
エリカ「なによこの試合、グダグダもいいところだわ」フン
エリカ「美味しい料理が出てきたから食べられませんとか、舐めてるの?」
エリカ「フードファイトは孤独との戦いよ。馴れ合っていいモノじゃない」
エリカ「こんなの、私は認めない……」
エリカ「絶対に勝ってやるんだから……」
エリカ「勝たないと、いけないんだから……っ」グッ
ガチャ パタン
まほ「エリカ、紅茶をもらった。聖グロからエリカによろしく、と」コトッ
エリカ「……隊長、わざわざすいません」
まほ「いや、今回私はお前のサポートに徹すると決めている。だからこれでいいんだ」トポポ
エリカ「……もうひとつすいません。今、紅茶を飲む気分じゃなくて……」
まほ「そうか。なら、これは私が頂くとしよう」スッ
まほ「エリカには次戦も控えているのだから、万全の体調になってもらわないとな」ニコ
エリカ「……ありがとうございます」
59: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/07(日) 06:45:43.75 ID:WQ2YdWceo
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
ミッコさん、ペパロニさんと仲良くなれて良かったね!
次の試合はプラウダ対知波単。メニューはまさかのカキ氷!
日本の夏の風物詩も、雪女には関係ない!?
次回! フードファイト・ウォー。『Remember 八甲田』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
61: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:43:56.35 ID:hlpw2F9/o
_______________________
フードファイト・ウォー! 第3話 『Remember 八甲田』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
杏「もうちょいそっち詰めて~。そうそう」
王「あっ! 角谷会長、始まってます!」
杏「オッケー。やぁやぁ皆さん。この度戦車道フードファイトを提案させてもらった大洗女子の生徒会長、角谷です」
王「はいっ! では、このフードファイト開催に至った経緯を教えていただけますでしょうか!」
杏「うん。最初は西住しh……ゴホン。プロリーグ設置委員会から大洗に戦車道の広報CMに出て欲しいって言われたんだけど、あの時うちらは混成チームだったじゃん?」
王「そうですね。8校による合同チームでした」
杏「だから、それじゃ不平等だって役にn……ゴホン。ある人から指摘があってさ」
62: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:45:00.54 ID:hlpw2F9/o
杏「確かに出演の権利はみんなにあるべきだと思ったんだけど、8校全部を出演させるほど枠も無いみたいで」
王「ちなみに先ほど流れたカレーCMとは別のCMです」
杏「それだったら、私ら生徒会のお得意な"なんとか大会"を開催して、交流と実益を兼ねたものができないかと思ってさ」
王「それでフードファイト大会の運びになったわけですね!」
杏「ついでに放映しちゃえばさらなる戦車道のイメージアップにもなるしね。連盟の理事長や陸自の人、島田流や西住流と会議を重ねて今日に至るってわけ」
愛里寿「私が解説に選ばれたのも母上の推薦あってのこと。日本戦車道ここにありと知らしめるため」
<タイチョーニホンイチー! ニンジャセンポー! コクミンテキアイドルー!
王「現在ラジオ放送、衛星放送のみならず、インターネット放送としてもライブ配信されております」
愛里寿「茨城の地方テレビ局は?」
杏「存在しないんだなーこれが」
63: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:46:22.08 ID:hlpw2F9/o
王「というわけで、本大会実行委員学生代表、大洗女子学園生徒会会長の角谷杏さんでしたー!」パチパチ
杏「補足情報があったらまたあとでくるね~」ヒラヒラ
王「さぁ! 3戦目、Aグループ第2試合はプラウダ高校vs知波単学園! この試合での勝者が準決勝で黒森峰と当たります!」
王「対決メニューは、夏と言えばこれ! カキ氷だぁーっ!!」
愛里寿「カキ氷! 好き!」ンフー
<タイチョーカワイー! ワタシガツクリマスー! ワタシヨ! イヤ、ワタシ!
王「ちょ、ちょっと! 3人とも落ち着いてくださいっ! んー、イエローカード!」ピーッ!
王「えー失礼しました。プラウダ高校からは"ブリザードのノンナ"こと、副隊長ノンナさんが出場されます! おぉー怖い! 私事ですが怖いですこの人!」
愛里寿「セコンドは"地吹雪のカチューシャ"こと、カチューシャちゃん……じゃなかった、カチューシャ隊長」
カチューシャ「誰がカチューシャちゃんよ! しゅくせーするわよ!」
ノンナ「おや? これを機会に彼女と仲良くしたいとおっしゃっていたのはわたしの聞き間違いだったのでしょうか」
カチューシャ「う……べ、別に、怒ってなんかないわよ。ふんっ!」
ニーナ「わんども居ます!」
アリーナ「ノンナ副隊長、けっぱれぇ!」
クラーラ「ノンナ様、わたくしたちも応援しております」ニコ
64: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:47:41.01 ID:hlpw2F9/o
王「対する知波単学園からは西絹代隊長がフードファイターとして名乗りを上げました!」
愛里寿「セコンドは知波単の皆さん」
<ドンドンドンドン ドン! パフパフ! フレー! フレー! タ・イ・チョー!
西「このような誉れ高き舞台に私のような者が上がっていいものだろうか……いや、いい!」バサッ!
福田「隊長! かっこいいであります! 決まったであります!」
細見「バンザーイ! バンザーイ!」
王「おや? 西選手、そのOD色のマントと軍帽はどうされたのですか?」
西「うむ。今日の天気予報は晴れではありましたが、もしかしたら食闘に必要かも知れないと思いまして」
福田「転ばぬ先の杖が役に立ちましたでありますな!」
愛里寿「カキ氷を食べ続けたら体温を奪われる。身体を少しでも温かくして臨むのは良いこと」
西「サムライ戦車隊長、じゃなかった、ニンジャ戦車隊長殿にお褒め頂き、恐悦至極に存じます!」ビシッ
王「心なしか西隊長がいつもよりたのもしく見えます!」
福田「隊長殿はいつでも逞しく美しい大和撫子でありますぅ!」
65: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:48:31.85 ID:hlpw2F9/o
西「乙女は食わねど高楊枝! 据え膳食らうは乙女の恥! 本日の上覧試合のため、私はニューギニアもかくやの飢餓に耐えたっ!」バサッ!
細見「隊長殿にとっては朝ご飯を抜いただけで地獄なのだ。いつもにぎり飯10個はぺろりと撃破してしまわれるからな!」ナッハッハ
玉田「その上、我が知波単学園の鉄則は早寝早飯! しっかり噛んで喰らうため顎も強いのだっ!」
王「西選手は普段から大食い早食いであるとのこと。これは期待できそうです!」
愛里寿「でもちょっと心配」
王「と、言いますと?」
愛里寿「甘味大食いは満腹感との戦い。血糖値が上がると胃に余裕があっても満腹中枢が働いて食べられなくなる」
愛里寿「朝ご飯を抜いた西さんは今血糖値が低い。血糖値の急上昇は避けられない」
王「確かに心配です! このハンデを知波単魂でカバーできるのか!」
66: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:49:38.44 ID:hlpw2F9/o
西「知波単戦車隊の誇りにかけてェ! 身命を擲ち勝利を掴まんッ!」バサッ!
カチューシャ「誇りで飯が食えたら世話ないわよ」フン
審判「セコンドの皆さんはテーブル側へ移動してください!」
細見「遂に此の食闘を以て年来の仮想好敵手ぷらうだと一戦交える事喜ばざるべからず也!」
西「福田、私の軍帽を預かっていてくれ」スッ
福田「隊長殿の武運長久を祈るでありますっ!」ウルッ
玉田「バンザーイ! バンザーイ!」
カチューシャ「ほら、ノンナ。私を降ろしなさい。……絶対に迎えに来てよね」
ノンナ「Mig-25よりも速く駆けつけます」ニコ
<プラウダハドンナマシンカシッテルノカ? ボウメイスルキカ?
西「むむっ。ならば私は、神鷲疾風(はやて)の如く空駆けるであります!」
<フアンダナ… ニホンサイリョウノセントウキデハアルガ…
王「お互いのスペックに期待です!」
67: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:50:25.39 ID:hlpw2F9/o
王「さあ、島田さん。風雲急を告げるこの試合、どうご覧になりますか?」
愛里寿「今回は忍耐勝負。いかにカキ氷の冷たさを克服できるかにかかっている」
愛里寿「プラウダも知波単もその校風から耐え忍ぶことには強いはず」
王「壮絶な雪上戦がここに始まる! 氷の世界を制するのは一体どちらだーっ!」
審判「両者、礼!」
西「いた~~だき~~ますっ!」パンッ!(※柏手)
ノンナ「いただきます」ペコリ
審判「位置について、用意っ!」
\パパパパパウアードドンッ!/
68: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:51:38.18 ID:hlpw2F9/o
西「ハイッ! ハイヤッ!」タッタッタッ!
ノンナ「Ураааааа!!」タッタッタッ!
福田「突撃でありまぁーすっ!! 吶喊ーっ!!」
カチューシャ「ノンナッ! 負けたら許さないんだからねッ!」
王「両者とも速い! 先頭は西か! ノンナだ! ノンナだ! 超音速の末脚が炸裂する! ノンナ! 勝ったのはノンナ!」
王「そして2着に西絹代! 今、今、1つの戦車道の常識が覆されました!」
愛里寿「もう2人ともカキ氷を食べ始めた。は、早い!」
ノンナ「はぁっ! んぐっ! ヒンナヒンナ!」シャクシャク!
西「はむっ! んむっ! 懐かしい味っ!」シャクシャク!
<oh, It'sゲダンクバー! アイスクリームジャナイデスヨ?
<ハボクック? ハリアワナイデクダサイ、ダージリン
69: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:52:18.28 ID:hlpw2F9/o
王「今回も立食スタイルです! 容器はプラスチック製ではありますが、あまり長く持つと指がかじかんできます!」
愛里寿「色んな味のシロップがかかったものが用意されてるけど、2人とも手近なものから平らげてる」
王「好みの味ではなく手近なものから、というのは?」
愛里寿「目の前のカキ氷を消費していくのは良い戦術。視覚による満腹中枢の刺激を少しでも和らげる工夫」
王「なるほど! ですが意外でしたね。プラウダのことですから、わざと2位になるのかと」
愛里寿「確かにプラウダの得意な戦法、消耗戦では自分たちが消耗しないのも重要」
愛里寿「だけど今回の相手はあの知波単。常に全力で突撃する相手を徹底的に消耗させるには、こっちが追い抜くのが一番」
王「そういうことでしたか! 両校、この世界史上希に見る大規模な乳酸菌地獄に耐えられるのかっ!」
愛里寿「でも、見て。知波単、すごい追い上げ」
70: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:53:14.98 ID:hlpw2F9/o
西「足りないモノは知波単魂でなんとかするッ!!」シャクシャクシャク!
ノンナ「っ!」シャクシャク!
王「おぉ~と! 先手を取られた西、ここでプラウダのペースを上回りましたっ! U字回復! トウゴウターンだぁーっ!」
<コンジョー! ホンジツテンキセイロウナレドモナミタカシ! ノギタイショウノゴトシゼヨ!
浜田「見たか"ぷら助"! 此れが誠の203高地だッ!」ドヤッ
名倉「難攻不落の旅順要塞、陥落ッ! 知波単の興廃この一戦にありィ!」
久保田「スズメ、メジロ、ロシヤ!」
玉田「浮かれるな貴様らァ! 最前線の隊長殿には、生きるか死ぬか、それだけだ! 極寒地獄の底で鬼となって凍てつく苦痛があるだけだ!」
福田「隊長は、前のみを見つめながらあるく! のぼってゆく坂の上の青い天の雲をみつめて!」ウルウル
71: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:53:48.40 ID:hlpw2F9/o
優花里「おおっ! バルチック艦隊、見事撃破ですっ!」
王「あ、秋山さん!? 何故放送席に!?」
優花里「わわっ、すいません! 福田殿のセリフに感動してしまってつい……あ、お父さん! お母さん! このあと私も頑張りますよ!」
王「秋山さんにはまた後程ご登場をお願いしたいと思います! ところで島田さん、知波単のペースが速すぎると思うのですが」
愛里寿「前半にこれだけ飛ばしてるのは、有利な立場を先に取って勝負を仕掛けようとしてるから、だと思う」
王「期を見て突撃する浸透戦術ということですね! さすが島田隊長殿であります!」
愛里寿「口調、移ってる」
72: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:54:37.27 ID:hlpw2F9/o
細見「よぉ~し、このまま"ぼりしえびき"打倒っ! 西伯利出兵だぁーっ!」
浜田「北進北進! 日本の首都を秋田に!」
カチューシャ「何やってるのノンナ! とっとと極東共和国を併合しなさい!」
王「遅れるノンナを尻目に快調に飛ばす西―――お、おやっ!? これはどうしたことだぁっ!?」
西「ぐっ……! つぁ……!」プルプル
福田「た、隊長殿っ!?」
王「と、止まりました! 西、完全に停止しましたっ!」
愛里寿「来た……『アイスクリーム頭痛』」
王「あ、あいすくりいむですか!?」
愛里寿「その原因は主に2つ。喉の三叉神経が刺激され、この時の信号を脳が勘違いして関連痛として痛む」
愛里寿「もう1つは口腔内の温度が急激に低下することで、反射で体温を上昇させるため血管が膨張して一時的に炎症が起こって痛む」
王「で、ですが、対するプラウダは頭痛が起こっていません!」
愛里寿「この頭痛を引き起こさない方法はただ1つ……それは、"ゆっくり食べること"」
王「っ!!!」ガタッ
73: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:56:30.68 ID:hlpw2F9/o
ノンナ「ふふふ……痛いですか? 痛そうですね。痛くて動けないですよね」フフ
西「な、なに、を……!」プルプル
ノンナ「わたしがスタートランで先行したために、あなたには焦りが生じていた。一刻も早くわたしに追いつき追い越さねばと」
西「ま、まさ、か……!?」プルプル
ノンナ「わたしは今まで早く食べている"フリ"をしていただけ……自分の口腔温度をゆっくりと下げるために、です」ニコ
王「これはぁーッ!! 西、既にプラウダの術中だったぁーッ!! 正面から突撃してくる知波単のウィークポイントを突いた欺瞞作戦です!!」
愛里寿「おもしろい展開」ンフー
カチューシャ「ノンナぁっ!!」パァァ
ノンナ「黙っていてすいません、同志カチューシャ。ですが、どんな時もわたしは偉大なる指導者カチューシャと共にあるのです」
細見「隊長殿ぉっ!! 衛生兵、衛生兵ーっ!!」
玉田「転進転進!! 戦略的後退的突撃でありまーすっ!!」
西「食う物があっても、戦いをしなければならないのだ……! 食う物があるなどは戦いを放棄する理由にならぬ……!」プルプル
西「我らには知波単魂があるということを忘れちゃいかん……ッ!」プルプル
<シボウフラグダ! インパールサクセンデモヤルツモリカ!?
福田「こうなったら、我らが肉弾三勇士となりて隊長の突撃路を確保するでありますぅ!!」ウルウル
愛里寿「選手への直接的妨害はさすがにルール違反」
王「間接的にはOKなんですけどね」
福田「あゝ、長山号が完成していれば……っ」ガクッ
<ナンダソレ テツジン28ゴウデショウカ? シッテルミポリン? エエット…? ゴリアテミタイナヤツデスネ
74: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:57:22.25 ID:hlpw2F9/o
王「さぁ西の履帯が破断している間にノンナが防衛線突破! 逆転していくーっ!」
西「すまぬ……もはやこれまで。潔く、散るよりほかに、道は無し。乙女の本懐、大志を遂げん―――」
福田「ゆ、ゆきーの、しんぐんっ! こおりをっ、ふんでぇっ!!」ポロポロ
細見「福田ッ!?」
玉田「福田ァ!!」
福田「どぉ~れが、かわやら、みちさえしれ、ず~うっ!!」ポロポロッ!
西「……おおっ? おおっ! なんだか福田の歌で力が湧いてきた! いざ、雪中行軍!!」シャクシャク!
王「立て、立て、立て、立ってくれ~~、立ったぁ!! 知波単、これは先の一戦でも用いられた音楽ドーピングですっ!」
愛里寿「痛みを感じるのは脳。意識を外に逸らしてしまえば痛みを忘却できる」
細見「連隊、福田に続けぇーっ!!」
<♪ウマーハタオレル ステテモオケズ! ~
西「疲労がポンととれる突撃錠のようだ! 不思議と痛みが引いていくっ!」シャクシャクシャク!
玉田「隊長殿がおっしゃっておられるのは玉露の豆仁丹のことであります! 危ない薬ではないであります!」
75: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:58:02.39 ID:hlpw2F9/o
福田「やった、やったであります! よし、このまま皆で歌い続けるでありますっ!」パァァ
<♪コーコハイズクゾミナテキノクニー! ~
ノンナ「…………」シャクシャク!
カチューシャ「好き勝手やってんじゃないわよ! ニーナ、アリーナ、クラーラ、こうなったらこっちも歌で勝負よ!」
クラーラ「カチューシャ様、既に準備はできています」
ニーナ「んだんだ~」
カチューシャ「え、そうなの?」
クラーラ「はい。スタジアムの観客席にプラウダの生徒を一定間隔で配置し、周囲のお客さんに歌詞カードを配りました」
アリーナ「したはんで、行くべ!」
クラーラ「それでは皆さん、ご一緒に」ニコ
76: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:59:09.32 ID:hlpw2F9/o
♪前奏 ~
♪ラスツヴィターリ ヤーブラニ イ グルーシ ~
王「なんとぉ~っ! 四方八方から合唱の絨毯砲撃! 歌声のカチューシャロケット! スタジアム全体が赤い風に包まれております!」
愛里寿「60万の大包囲網、神算鬼謀の四面露歌……えと、この解説、聞こえてる?」
王「まさにここは中華大陸満蘇国境ノモンハン―――えっ!? なんですか島田さんっ!?」
♪パプルィリー トゥマーヌィ ナード リコーイ ~
カチューシャ「今よっ! 永久凍土の果てまで追いかけなさいっ!」
ノンナ「これがプラウダの団結力です!」シャクシャク!
西「うっ、"雪の進軍"がかき消されてしまった……!」グヌヌ
細見「くそっ! 亀の子爆雷さえあれば!」グッ
福田「我らが部隊は全滅しましたぁっ!」ビシッ
玉田「何が全滅しましただ! 貴様が生きておるではないか、貴様が!」
王「ノンナ、BT-7の如き侵攻力で追い上げていきます! まさに合唱団のタンクデサント!」
王「プラウダのお家芸、人海戦術! いや、縦深攻撃で知波単を包囲殲滅だぁーっ!」
77: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 10:59:54.18 ID:hlpw2F9/o
福田「あ、あれ? よくよく聞けばこの旋律、異国の言葉にして故郷の歌の如し……もしや!?」
細見「どうした福田!? 何か妙案が!?」
福田「い、いかがいたしましょう! 進むべきか、退くべきか!」
玉田「……福田ァ! 思うがままに突撃せよ! 今こそ戦車夜襲の時ッ!」ビシッ
福田「ハッ!――――り~んご~の、はなほころ~びっ!!」
<♪ミーナモーニ カースミタチー!
西「お、おおっ? これはしたり! 大和言葉の調べとあらば、此れより頼める物はなしっ!!」シャクシャク!
ノンナ「っ!?」シャクシャク!
王「おおっとぉ!? 外来語に弱いことで有名な知波単学園、ロシア音楽"カチューシャ"を歌い始めたっ!?」
愛里寿「ビルマの竪琴?」
カチューシャ「ちょっとどうなってんのよ!? ストップ、ストーップ!」
78: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:00:54.32 ID:hlpw2F9/o
玉田「そうか、思い出したぞ! この旋律、歌声喫茶で同胞と歌ったではないか!」
王「歌声喫茶? 知波単の学園艦にはカラオケの走りとも言える歌声喫茶があるのですか?」
玉田「うむ。近年できたばかりだが、昭和25年頃風の店が設けられている」
細見「思想の自由の範囲内でだが学園生徒皆歌謡曲を嗜んでいるのだ!」
福田「まあ中には店内で秘密結社〇〇〇団や○○○○部!なるものを作って"てれび漫画"歌曲による洗脳布教や同人誌?なる小冊子を出版配布する思想活動を行う者達が、学園の治安維持のためという理由で特別高等生徒会により一斉検挙される事案もあったりなかったり―――」
玉田「福田ァ!」
細見「福田ァ゛!」
西「この好機、逃してなるものか! さすれば吶喊ッ!」シャクシャクシャク!
王「誰がこの展開を予想できたでしょう! 西、逆風と追い風のトルネードのど真ん中を勇猛果敢に突撃していく!」
王「西ガンバレ! 西ガンバレ! ガンバレ、ガンバレ! 西ガンバレ! あと少し! あと少し! わずかにリード! わずかにリード! 西、西ガンバレ! ガンバレ! ガンバレ! 西ガンバレェ~~~~!!」
愛里寿「あの、公平性」
王「一度言ってみたかったであります」エヘヘ
79: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:02:31.07 ID:hlpw2F9/o
福田「この隙に乗じて知波単学園校歌を斉唱しましょうぞ! 突撃心は父心、押せば命の泉沸く!」
知波単一同「「「♪ち、ち、知波単学園~。アー、アー、世界で一番、電話は二番」」」
カチューシャ「ムキーッ! だったら曲を変えるまでよ! クラーラ!」
クラーラ「はい、カチューシャ様。観客席の同志も、一緒に!」
<♪Полюшко, поле, Полюшко, широко поле,
福田「これなら任せろであります!」
<♪ノヲユクヒヅメノオーーート オオ、タクマシツワモーノーー
カチューシャ「クラーラ!」
クラーラ「ノンナ様の好きな曲ですっ!」
<♪В воскресенье я на ярмарку ходила,
福田「しゅらしゅらしゅらら! であります!」
<♪イトトー アサヲー カーッテキター
カチューシャ「クラーラぁっ!」
クラーラ「Да!」
<♪У моря у синего моря
福田「ザ・ピーナッツであります!」
<♪アナータノクーチヅケーニー
王「最後のは日本の歌謡曲では?」
クラーラ「いえ、ロシア音楽ですよ?」
ノンナ「え?」
クラーラ「え?」
80: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:03:39.66 ID:hlpw2F9/o
王「スタジアム全体を巻き込む巨大な作戦が、まさかまさかの裏目に出てしまったーっ!」
王「銀盤の復活劇! これが西絹代です! 西絹代のフードファイトです! なんというすごいフードファイターでしょう!」
寺本「快挙であります! 大戦果であります!」パシャ!
細見「帝国の稲妻の威力、思い知ったか! 極東の鉄の美少女、地獄の大車輪! 知波単、バンザーイ!」
玉田「この粘り強い徹底抗戦の記念に日付と部隊名を彫った石をここに埋めておこう!」
愛里寿「スタジアムに怒られるからやめて」
王「さぁ知波単西、プラウダの妨害を何度となく?い潜り、数も勢いもリードしています! まだ続く、繋いだ、繋いだ、知波単西の冬はまだ終わらな~いっ!」
81: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:04:26.89 ID:hlpw2F9/o
西「恥ずかしながら帰って参りました! 我が戦車連隊の獅子奮迅の大活躍、痛み入る次第! かたじけない!」シャクシャク!
久保田「残地諜者命令下達! 隊長殿、よう生きて帰ってきてくれたであります! 『視点を変えれば不可能が可能になる』を体現されましたな!」
西「うむ。可能なら実行する。不可能でも断行する。それが知波単魂だ!」シャクシャク!
福田「無事御帰還の由、祝着至極に存じますでありますっ!」
名倉「堅忍持久の精神、感服仕りましたっ! いざ、撃ちてし止まむ! であります!」
西「合点承知の助! よし、今こそ我らが秘密兵器100トン戦車の威力を見せる時!」
西「粉骨砕身ッ! 神仏照覧ッ! 予は常に諸子の先頭に在りッ!」スッ スッ
王「あーっとぉ! こぉ~こぉ~でぇ~、さらに西が畳み掛けるぅ~! 両手に匙を持ちぃ~~?」
西「―――二天一流ゥゥゥッ!!!」シャクシャクシャクシャク!
82: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:05:11.34 ID:hlpw2F9/o
細見「ややっ! あれは禁断の両手持ちッ!?」
王「やはりかーっ! やはりそうきたかーーっ! 自身の多砲塔を巧みに使いカキ氷を口の中へと放り込んでゆくーっ! 遅いぞ第二号艦!」
愛里寿「もう痛覚は麻痺してるから、あとはいかに氷を溶かせるか。ロスを少しでも減らすための良い作戦」
福田「某は今まであの石の一つでござった。今からはいくつかの石を動かして天地を作って見たい……という隊長殿の気持ちが伝わってくるであります!」ウルウル
玉田「ムトキンもかくやの大奮闘であります! もはや大捷を博したも同然だな!」
名倉「敵は砲や機銃で撃つものではない! 気迫で倒すものだ!」
細見「破邪顕正の活人剣を受けてみよ!」
寺本「蓋し"ぷらうだ"は敗色濃厚! 降伏せよ! "いえす"か"のう"か!」
王「知波単、もう勝った気でいます!!」
愛里寿「い、いや、あれはプレッシャー攻撃だと思う。たぶん」
カチューシャ「くぅ~~~っ……ノンナぁ……っ!」ポロポロ
ノンナ「…………」
ノンナ「カチューシャに涙を流させてしまったのは、他でもないわたしなのですね……」
ノンナ「仕方ありません。本当はこの手は使いたくなかったのですが……」スッ
83: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:06:09.21 ID:hlpw2F9/o
ノンナ「…………」トン トン トン
王「お、おっと? ノンナ、プラスチックスプーンの腹でテーブルを叩いています。これは一体?」
愛里寿「……?」
ノンナ「西さん、西さん。イメージしてみてください。あなたはだんだんイメージしたくなる」トン トン トン
西「い、今それどころでは―――」シャクシャク!
ノンナ「所詮、人の胃袋には限界があります」トン トン トン
ノンナ「例えカキ氷でも満腹感は脳に伝わり、体が食べることを拒否します」トン トン トン
ノンナ「ですが、カチューシャ以外に感覚が働かないわたしの舌は、脳には何も伝えません」トン トン トン
西「何っ!? そんな馬鹿なッ!」ビクッ
84: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:06:50.29 ID:hlpw2F9/o
ノンナ「胃袋も大腸も小腸も、それぞれが全く個別に機能し、脳に満腹感など伝えることなく」トン トン トン
ノンナ「ただ機械的に、食べ物を消化していくだけです。それも人よりも何倍も早く」トン トン トン
西「そんな、それでは人間ではないっ! 悪鬼羅刹、いや雪女の如き―――」
ノンナ「西さん」トン トン トン
西「なっ、なんでありましょう!」ビクッ
ノンナ「あなたはわたしには絶対に勝てません」トン トン トン
西「そ、そんなこと、無いでありま―――」
ノンナ「あなたはわたしには絶対に勝てません」トン トン トン
西「…………」
ノンナ「あなたはわたしには絶対に勝てません」パチンッ!
西「ひ、ひぃぃぃっっ!!!!!」ガクガクブルブル
85: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:07:56.61 ID:hlpw2F9/o
西「寒いぃッ! 寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い―――さむいぃぃぃぃぃっっ!!!」ガチガチガチガチ!
王「ぬぁーっ!?!? 西、全身を痙攣させ、歯をガタガタと鳴らしています!? 見るからに凍えているぅーっ!」
愛里寿「あれは"催眠術"! 西さんは今、全身が氷雪に覆われているかのような錯覚に陥ってる!」
王「超能力ッ! プラウダの超能力者開発計画、まさか完成していたのかぁっ!?」
愛里寿「ソ連軍10003部隊……」
王「ラスプーチン、ヴォリフ・メッシング、いやニーナ・クラギーナ! プラウダ、知波単西を大雪原に抑留してしまったぁーーっ!!」
ニーナ「おっがねぇ……」プルプル
カチューシャ「すごいわノンナ! ご褒美にプラウダの学園艦内を自由に旅行できる許可証を与えるわ!」キャッキャッ!
アリーナ「それっきゃ、副隊長にはたぶん必要ねぇびょん」
ノンナ「カチューシャの笑顔が一番の褒美です」ニコ
玉田「おいコラァ! 神通力は反則ではないのか!? 条約違反ではないか!!」
福田「催眠術は科学に非ず、でありますぅ!」ウルウル
愛里寿「えっと……ルールにないからセーフ」アセッ
86: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:08:52.60 ID:hlpw2F9/o
細見「ふ、ふん! たかが手品に騙される隊長殿では無いわ!」
玉田「そ、そうだ! ぷらうだの策は姑息偸安(とうあん)の一日を弥縫(びぼう)しているに過ぎん!」
福田「そ、そうであります! 隊長殿には暖かい"まんと"が―――」
西「―――あ、熱い暑いアツいぃぃぃぃぃっ!!!!!!」ヌギッ
福田「隊長殿ぉっ!?」
細見「気でも狂ったか!?」
玉田「なぜ上着を脱ぐんですか!?」
王「こ、これは一体どうしたことでしょう!?」
愛里寿「……"矛盾脱衣"!」
王「む、矛盾脱衣!?」
愛里寿「一種の錯覚。寒すぎて暑く感じる現象……思い込みのはずなのに」ブルッ
王「に、西、ブラウス1枚の状態で停止……いや、凍結しました……」プルプル
87: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:10:37.97 ID:hlpw2F9/o
福田「こうなったらヤスリで隊長殿の氷を削るしかっ!」スッ
細見「ダメだ!」
池田「ええい、卑劣極まりないアカ(※プラウダ校旗の色)め! 吶喊ッ! 士魂戦車大隊、玉砕覚悟で突撃だァーッ!」ダッ!
福田「戦車隊の神様の御下知とあらば! 前進せよ、前進せよでありまーすっ!」ダッ!
審判「セコンドは選手に突撃してはダメです! ちょっと、ダメっ!」ガシッ
浜田「貴様知波単を愚弄するかァ!」
審判「私が貴女たちを侮辱した証拠があるならお腹いっぱいになるまで食べて謝ります! 無かったら、貴女たちがお腹いっぱい食べなさい!」
浜田「ぐぬぬ……!」
王「スタンドは非常に底冷えがします! 信じられませんが、気温が一気に下がっております! 冬将軍到来! このままではプラウダのワンサイドゲームだぁーっ!!」
細見「森羅万象までをも操るというのか!?」ビクッ
玉田「天に抗する気力があればなんとかなる! 必ず天に勝てぇーっ! か、勝ってくれぇ……!」プルプル
浜田「天は我々を見放した……っ」ガクッ
西「あ……うぅ……あぁ―――――・・・・
88: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:11:37.75 ID:hlpw2F9/o
・・・ ・・・ ・・・
西「――――こ、ここは……?」キョロキョロ
「絹代……絹代……」
西「そ、その声は……辻つつじ先代隊長殿でありますか!?」
つつじ「後退は許さんと言ったな……よくぞ約束通りに……」
西「隊長殿ぉ……ええ、茨城の地で……っ」ポロポロ
つつじ「色々と苦労しただろう……」
西「いや、苦労は、本当の苦労は、不肖西絹代を育て上げた、つつじ隊長殿、貴女です……!」ポロポロ
つつじ「本当の敵は、強い相手では無く、無能な上官……貴様には苦労をかけたな……」
西「隊長殿……?」
つつじ「雪とは……いったい、何なのだろうな……」スーッ…
西「隊長殿っ、隊長どのぉぉぉぉっっ!!!!」
・・・ ・・・ ・・・
89: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:12:53.22 ID:hlpw2F9/o
西「」カチコチ
王「た、立ったまま気絶しています! これぞ乙女の矜持、なんという精神力でありましょうか……」プルプル
愛里寿「武蔵坊弁慶……ううん、八甲田雪中行軍……」プルプル
クラーラ「いやぁ、映画って本当にいいものですね」ニコ
カチューシャ「あれがカブキ……見得は映画の技法でいうクロースアップね。今度うちの映画に取り入れましょう!」
ニーナ「そったらごと言って、わんどの作った映画っこ、ペケ入れまぐったでねがっ!」
カチューシャ「大階段にコサック兵が一列で進撃してくる絵が欲しいわ! 大勢の人が階段で混乱する中、戦車から政府に向かって砲撃がドーン!」キャッキャッ
ノンナ「……ふふっ」シャクシャク
王「観客は、ホイッスルよ早く鳴ってくれ、という面持ちでピッチを見つめています。プラウダノンナ、縦深防御の如くゆっくりとカキ氷を食していき――――」
ビーーーーーーーーーーーッ!
王「……試合、終了です」
審判「勝者―――」
プ ラ ウ ダ 高 校 ッ !!
90: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:15:56.67 ID:hlpw2F9/o
ノンナ「あなたは目を覚まします……わたしの合図で夢から現実へ……はいっ」パチン
西「ハッ!? わ、私はいったい……?」キョロキョロ
ノンナ「いい試合でした。あなたの忍耐力、素晴らしかったです」チュッ チュッ
西「ふおおおっ!?!? な、な、何をするでありますかぁ!?!?」ボンッ
ノンナ「ロシア式挨拶ですよ。それだけ元気ならすっかり大丈夫ですね」ニコ
西「ほ、頬に接吻などと……///」カァァ
ノンナ「では、わたしはこれで」スタスタ
西「ロシアの挨拶、恐ろしや……」ドキドキ
玉田「突撃ィ~~~ッ!!」ダッ!
西「えっ、うわ、なっ!?」
細見「急いで隊長殿を担いで救護室へ運べ!」ダッ!
西「ちょ、待って! 自分で歩ける、歩けるからぁ!」
福田「このまま戦車(たんく)で鹿島の海へと突撃でありますぅ!」ポロポロ
久保田「違う! 救護室だっ!」ダッ!
西「あ~~れ~~~――――」
寺本「善戦敢闘参拾分におよび人間に許されたる最大の忍耐を経て、しかも刀折れ矢尽きたり!」ダッ!
池田「此度のいくさ、確かに我らは降伏した! だが、戦いでは勝ったのだッ!」ダッ!
91: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:17:01.98 ID:hlpw2F9/o
<プラウダベンチ>
カチューシャ「フン、負け犬が何か言ってるわ」ドヤァ
ノンナ「戦った相手に敬意を示すことも名将の素養ですよ。みほさんとの戦いでそれを学んだはずでは?」
クラーラ「あとで一緒にお見舞いに行きましょうね、カチューシャ様」ニコ
カチューシャ「うっ……わ、わかってるわよ!」
ダージリン「あれが知波単の武士道精神……今度遊びに行こうかしら」
カチューシャ「なぁに? 紅茶でも飲みに来たの?」
ダージリン「そうそう。映画を撮ると言っていたけれど、うちのシネマトグラフをお使いになってはいかが? マジノ女学院から頂いたものだけれど」
ケイ「あら? だったらうちのバイオスコープの方がいいんじゃない? 世界最初の戦争記録映画みたいに!」
カチューシャ「自転車戦争なんか撮らないわよ!? ってゆーかサンダースはお呼びじゃないわ!」
92: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:18:01.77 ID:hlpw2F9/o
ケイ「そんなつれないこと言わないでよぉ、カチューシャ。帰りにスーパーギャラクシーに乗せてあげるから!」
ノンナ「あれなら誰よりも高いところから景色を見渡せますね」
カチューシャ「ふ、ふぅん……ま、考えてあげなくもないわ!」
クラーラ「Вы вытащили различные КАТЮША-подобных чувств. Я ценю это(カチューシャ様の色んな表情を引き出してくださり感謝します)」ニコ
ノンナ「Пожалуйста, покажите мне фотографию. Я надеюсь. (わたしにも写真を見せてください。お願いします)」
カチューシャ「日本語で話しなさいよっ!」
<放送席>
王「プラウダ、Aグループ準決勝進出決定。黒森峰の対戦校が確定しました!」
王「いやー島田さん。なんというか、やはりプラウダは恐ろしかったですねー」
愛里寿「あったかいスープが飲みたい」
<ワタシガツクリマス! イヤ、ワタシガ! ワタシヨ!
王「それでは一旦CMです!」
93: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:18:39.28 ID:hlpw2F9/o
―CM―
♪ハーンケーイ ジューウメーーターノセーカイー~
女子校生A「私、戦車乗りになる」
女子校生BC「「マジで!?」」
女子校生A「うん」ニコ
女子校生A「……決めたんだ!」
―――その気持ちが、学園を守る力になる。
\第 6 4 回 戦 車 道 全 国 大 会 出 場 校 募 集 !/
なぜ?戦車道 【戦車道全国大会】[検索]
94: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:19:41.36 ID:hlpw2F9/o
―CM裏―
<黒森峰控室>
モニタ『―――それでは一旦CMです!』
ピッ
エリカ「……っ」ブルッ
エリカ「正直、プラウダとはやり合いたくないわね。見てるこっちまで寒くなってきたわ」ハァ
エリカ「気温が下がったのはさすがに偶然だと思うけど、それを味方につけるなんてさすがプラウダ……」
エリカ「催眠……敵にしたら厄介ね。なにか対策を立てておかないと……」ブツブツ
ガチャ パタン
まほ「コーヒー淹れたぞ。エリカの好きな、とびきり苦いやつだ」コトッ
まほ「身体が冷えただろう。これを飲んで暖まってくれ」ニコ
エリカ「……ありがとうございます。いただきます」ズズッ
まほ「次戦のプラウダ戦にむけて防寒用装備の供給も打診しておこう」
まほ「外套、長靴、手袋、防寒帽……橇は居るか? いやスキーの方がいいか。ヴィンターケッテとツィンメリット・コーティングに冬季迷彩、七年戦争を鑑みて冬営の準備も―――」
エリカ「あ、あの、隊長。お気持ちだけで十分ですので」
95: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/08(月) 11:21:45.01 ID:hlpw2F9/o
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
うぅ、見てるだけで寒気がしたよぅ。
次の試合はいよいよ大洗が出場! 対する相手はサンダース!
ホットドッグの早食い勝負は向こうのホームグラウンド!?
次回! フードファイト・ウォー。『進撃の華』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
96: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:17:36.00 ID:WChMGvJdo
___________________
フードファイト・ウォー! 第4話 『進撃の華』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
王「せんしゃどぉっ! フ~ド、ファイトぉっ! 皆さん、楽しんでますかーっ!」
<イェーイ! ワーワー! キャーキャー!
愛里寿「うん。テンション上げて、会場を温め直さないと」
王「はいっ! そんなわけで次戦の前にひとつ、戦車道とフードファイトの関係について、島田さんに解説していただきます!」
愛里寿「えっと、軍隊は胃袋で動く、って言葉、知ってる?」
王「ナポレオンの有名な言葉ですよね!」
<ハラガヘッテハイクサガデキヌデゴザル! ソレハトモカク,カルタゴホロブベシ イチジクガオイシイカラナ
愛里寿「それほど兵站は重要ってことだけど、同時に食べ方も重要」
愛里寿「いつ相手が出てくるかわからない。でもお腹は減る。だから迅速かつ大量に食事をする必要がある」
優花里「1日の行軍距離は補給所間の距離を限度とするのは当然ですからね! それが兵士1人1人の胃袋で伸びるのなら伸ばすに越したことはありません!」
王「うわっと! 秋山殿、お疲れ様であります!」ビシッ
優花里「横から失礼します! 県立大洗女子学園あんこうチーム装填手、秋山優花里です! 今回の試合のために王大河殿にミリ知識を伝授させていただきました!」
<ソレデニワカネタマンサイダッタンダ
王「ちょ!? アズミさんですか今の!?」
97: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:18:29.24 ID:WChMGvJdo
王「ともかく、一度にたくさん食べられる胃袋を持っているというのは戦車道においても重要なんですね!」
優花里「厚い脂肪より速い食、ですぅ!」
愛里寿「プラウダ高校みたいに持久戦に持ち込まれたら空腹で白旗を上げることになる」
優花里「悲しいっ! お腹が減って負けましたというのは本当に悲しいですぅ!」
王「いやー、そう考えると全国大会準決勝の大洗は実に相当なピンチだったわけですよねー」
優花里「相手はそれを見越した上でのストラテジー構築でしたから、私たち以上に多くの苦境を乗り越えてきたことがよくわかります」
愛里寿「空腹と体温低下という士気減退の中、起死回生の作戦を実際に遂行できるだけのマンパワーを引き出せたみほさんは本当にすごいと思う」
優花里「そのガンバリズムに至っては学園中第一であると級友たちが語っております!」
王「軍神の軍神たる由縁ですね!」
<チガウヨ!?
愛里寿「もちろん、食べ過ぎて寝ちゃったり、動けなくなっちゃったら本末転倒」
優花里「あー。どこの学校とは言いませんが、気をつけないといけないところですね」
<ドコノガッコウノコトッスカネー,ドゥーチェ? …サアナ
王「つまるところ戦車道に必要なのは、無限軌道のような胃袋と鋼鉄装甲のような意志、ということですね!」
98: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:19:50.39 ID:WChMGvJdo
王「さぁ! 早くも4戦目となりましたがBグループ第2試合、ついに我らが大洗女子の登場です!」
愛里寿「対する相手校はサンダース大学付属高校」
王「因縁の対決ッ! サンダースはリベンジマッチとなるのでありましょうか!」
愛里寿「この試合の勝者が次の準決勝でアンツィオと戦う」
王「そしてそしてぇっ! 気になる食材は~~ッ!」
王「HOT DOOOOOOG!!!!!!!!」クイ
愛里寿「なんで顎を出してるの?」
優花里「しゃくれというやつですね」
王「んー! これぞ本場フードファイト! という感じの食材に実況のわたくしも興奮してまいりました!」
優花里「というか、ホットドッグ早食いは確か……」
アリサ「うちの大学の学園祭の名物、だけど?」ニヤリ
99: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:21:21.93 ID:WChMGvJdo
王「選手入場です! サンダースからはかの一戦でフラッグ車M4A1シャーマンの戦車長を務めたアリサ選手が名乗りを挙げたぁーっ!」
優花里「あれ? アリサさんが出場するんですか?」
アリサ「悪い?」イラッ
優花里「だって、確かサンダース大の学園祭で毎年行われているホットドッグファイトで、大学生を押しのけてここ2年連続優勝していた高校生は……」
ナオミ「私よ」クッチャクッチャ
王「なんと!? 名狙撃手ナオミさんが優勝者! しかしサンダースこれを起用せず! 一体どういうことなんでしょう?」
愛里寿「温存?」
ケイ「アタリよ、アリス! 私たちはもうすでに次の一戦まで視野に入れている、ってわけ!」イェイ!
ナオミ「次戦は優勝候補のアンツィオと当たるからね。少しでも余裕があった方が良い」
アリサ「大洗なんて敵じゃないってこと。ホットドッグファイト6位の実績を持つ私で十分なのよ」ククッ
愛里寿「6位……参加者何人だろう?」
王「試合ごとに出場選手は代わってもよい、というルールのもとに築かれたサンダースの作戦のようです! これはサンダース大幅有利かぁ!?」
100: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:21:56.64 ID:WChMGvJdo
メグミ「まあ、それだけじゃないでしょうけど。ねっ」
王「うおっ!? サンダースOGのメグミさん!?」
メグミ「どうせケイのことだから、ナオミをここで出したら大会があまりにもつまらなくなるって思ったんじゃない?」
王「え? 勝ちをひとつ確実に狙えるのにですか?」
ケイ「ワンサイドゲームはナンセンス。このファイトはティーヴィーショー! エンターテイメントをリスペクトしなきゃね!」
ナオミ「私たちはアリサのサポート役、コーパイに徹するわ」
アリサ「ま、せいぜい楽しませてもらうわよ? 大洗女子?」ニヤリ
愛里寿「フェアプレー精神というよりエンタメ精神?」
王「サンダース、余裕を見せつけています! この試合、果たしてどちらに転ぶのか!?」
101: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:23:11.27 ID:WChMGvJdo
王「そう言えば、今回秋山さんはサンダースに偵察に行かれなかったんですか?」
愛里寿「一応ルールでは許可してる」
優花里「いえ、それがですね。行くには行ったんですが、船中に検問が敷かれていまして……」
―――回想―――
モブサンダース「……ちょっとあなた。ここを通るにはサンダース学園艦横断クイズに答えてもらうわ」
優花里「ク、クイズですか?」
モブサンダース「イリノイ州の州都は?」
優花里「ほっ。それならスプリングフィールドです」
モブサンダース「えっ……!?」
優花里「え、えっ? 合ってるはずですが?」
モブサンダース「サンダース生ならシカゴって間違えるに決まってるでしょ! あんた、他校のスパイね!」
優花里「ハッ!?」
――回想終了――
102: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:23:59.10 ID:WChMGvJdo
優花里「……ということがありまして。まさかこの私がバルジの戦いを失念していたなんて」ガックリ
アリサ「そう何度もさせるわけないでしょ! ってか落ち込むところそこなの!?」ウガーッ
ケイ「アリサが聞かなくて。ゴメンね、オッドボール! 普段はいつでもウェルカムなのよ?」
王「ということは、逆にサンダースも大洗にスパイを送ったり?」
アリサ「してないわよ! この大会が私たちの汚名返上のチャンスなんだから!」
ナオミ「"アリサの"チャンス、でしょ。巻き込まないでくれる?」
アリサ「い、いいでしょ別に!」
ケイ「マジックは使ってないわ。そんなことしなくても、アリサならヴィクトリーを掴めるって信じてるから!」
アリサ「隊長ぉ……」グスッ
ナオミ「ところで、事前に敵の情報を仕入れるのは基本中の基本なんだけど? M24チャーフィー?」ニヤニヤ
アリサ「うぐっ!?」
ケイ「HAHA! ナオミのキレッキレジョークがこっちの新兵器よ!」
優花里(ということは、五十鈴殿のことは全く知られていないのですね……)
103: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:24:58.62 ID:WChMGvJdo
優花里「それではそろそろ私もセコンドとしてフィールドへ行きますね。失礼しました」ペコリ
王「はい、ありがとうございました。大洗女子あんこうチーム、秋山優花里さんでした!」パチパチ
王「続きまして、同じく大洗女子あんこうチーム、砲手五十鈴華選手の入場です!」
/パッ!\ /パッ!\ /パッ!\
♪Damn. I would have never thought it ever would have been like this ~
王「スポットライトにBGM!?」
愛里寿「演出すごい」
スタ スタ スタ …
華「…………」ニコ
<ワーワー! カッコイー! スゲェー! パチパチパチ!
おりょう「すごい恰好ぜよ。背から頭から花が咲いている」
カエサル「ケントゥリオの羽飾りか?」
左衛門佐「旗指物か?」
エルヴィン「いや、あれは有翼重騎兵フサリアだろう」
歴女「「「それだ!」」」
エルヴィン「自分で言っておいてなんだが、タンカスロンでもやるつもりか?」
104: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:26:04.43 ID:WChMGvJdo
アリサ「な、なによそのカッコ!? バカじゃないの!?」
華「わたくし、頭にピッケルハウベ、背を剣山にしてお花を生けてみました。テーマは『荒野に咲く大輪の花』」ウフフ
優花里「エリカ行進曲の正式名称から取ったオマージュですね! まるで砲口発光のような煌びやかさですぅ!」
王「その派手やかな出で立ちたるやレッド・バロンの如し! 五十鈴選手、これにはどういった意図が?」
華「あ、いえ。実は会長からド派手に登場してくれと頼まれまして」
杏「この方が視聴率あがるっしょ? 相手へのプレッシャーにもなるしね」フフ
ケイ「Hey、アンジー。そのエンタメ精神は称賛に値するけど、見くびってもらっちゃ困るわね。うちのアリサがこんなことでビビるとでも?」
アリサ「そ、そうよ! こんなノーズアート、所詮張り子の虎のジークフリート線でしょう!?」フンッ
ケイ「アリサの食べっぷりを見たら、さしものアンジーも"驚愕"のスペルをキャピタルレターで書き記すことになるわ!」
王「ちなみにBGMの選出は?」
華「本大会実行委員長の蝶野さんからです」ニコ
<ゲキハリツ120%ヨ!
105: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:27:02.93 ID:WChMGvJdo
沙織「華、がんばってね!」
麻子「喉につまらせんようにな」
華「はい、頑張ります。それでみほさん、作戦に変更は?」
みほ「うん、予定通りで大丈夫かな」
アリサ「圧倒的パワーで作戦ごとひねりつぶしてあげるわ!」
ケイ「特訓の成果を見せなきゃね!」
ナオミ「腹の虫の加護があらんことを」
審判「セコンドの皆さんはテーブル側へ移動してください!」
王「さぁ注目の一戦、いよいよ準備が整ったようです! 島田さん、この試合も楽しみですね!」
愛里寿「うん。エンタメとして面白そう」
アリサ「ってゆーか意外ね。やせ型のあんたが相手になるなんて。てっきり西住流あたりが出るのかと思ってたわ」
華「みほさんは私のセコンドとして指揮を担当します。Ⅳ号に乗ってる時と一緒ですね」
アリサ「ま、いくら指揮官が優秀でもスペックが足りてなきゃ意味無いわね、アハハ!」
アリサ「さぁ……戦争を終わらせるための戦争を始めましょう?」ニヤリ
華「…………」ニコォ
審判「両者、礼!」
アリサ「"Let's rock'n roll!"」
華「いただきます」ペコリ
\パパパパパウアードドンッ!/
106: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:28:31.02 ID:WChMGvJdo
王「観衆の見守る中、開始のホイッスルが鳴りました! おおっ! アリサ、スーパーダッシュだぁー!」
アリサ「ふっ! 毎日隊長のランニングに付き合ってる私にとってはこんなの朝飯前よ!」ダダダッ!
杏「文字通りってか! うーん、座布団一枚!」
柚子「もうお昼前ですけどね」
王「私がサンダース校を訪れた時はアリサ選手、ずっと息切れしてましたが特訓の成果が出たようで―――お、おやぁっ!?」
愛里寿「あ、あれは!?」
華「…………」スタスタ
アリサ「――ッ!?!?」ビクッ
王「五十鈴、まさかの徒歩だぁーーっ!! しかも例の過剰装備はヘルメット以外脱いでいません!!」
みほ「華さん、その調子です! 呼吸をしっかり整えてください!」
アリサ「ハァ!? 何してんの大洗!?」
ナオミ「司令部へ報告! 敵は戦車を捨て徒歩で進撃中!」
ケイ「へえ……面白いじゃない。これが作戦?」
王「一体何が起こっているのでありましょうか!? サンダースアリサの独走、というより、大洗五十鈴の花道ランウェイパフォーマンスだぁー!」
ナカジマ「1969年のル・マン、ジャッキー・イクスの大芝居を彷彿とさせるね」
スズキ「スタートの危険を避けて精神を落ち着かせる……並大抵の度胸がなきゃできないな」
ツチヤ「あれって結果はどうなったんだっけ?」
ホシノ「ル・マン最多優勝者、キングの初勝利だよ」ニッ
107: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:29:39.42 ID:WChMGvJdo
アリサ「先に到着したはいいけど、何がどうなって……」ハァハァ
ナオミ「っ、気にせず食べ始めるんだ!」
アリサ「……バカにしてくれちゃってぇっ!」モグモグッ!
王「テーブルにHALO降下し、先にホットドッグを食べ始めたのはアリサ! 当然でしょう! 煽りを受けて勢いがついている!」
愛里寿「これ、ちょっとわからなくなった。もしかしたらサンダース勝つかも」
王「ここで情報が入ってきました! 大洗五十鈴は体育の授業が苦手とのことです!」
みほ「はい。それを考慮して、無理をせず彼女の力を最大限出せる作戦にしました」
王「あえてドーリットル空襲を受け入れた大洗の奇策、吉と出るか凶と出るか!」
アリサ「ホットドッグファイト6位の実力、舐めんじゃないわよぉーッ!」モグモグ!
王「おおっ、これは思ったより速い! M18ヘルキャット並みの機動力です!」
愛里寿「噛ませ犬かと思ったら意外とやる」
ケイ「それだけじゃないわ! シレイラ並みの攻撃力だってあるんだから!」
ナオミ「隊長、それじゃ信頼性が下がります」
愛里寿「レギュレーションは守って」
王「アリサ、次々にホットドッグという名の対戦車ミサイルを装填していくーッ!」
アリサ「私が、私こそがコマンドーケリーよっ!」モグモグ!
108: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:30:22.21 ID:WChMGvJdo
華「…………」トコトコ
王「徒歩とは言え着実にテーブルへと近づいてくる五十鈴! 恐怖! その笑顔の下に隠し持っているものは何なのか!」
愛里寿「普通ならこの差はもうひっくり返せないけど……?」
優花里「"普通なら"そうかもしれません。ですが私たちは大洗、あんこうチーム!」
沙織「今までだってたくさんの不可能をみぽりんのムチャ振りで乗り越えてきた!」
麻子「少しでも油断したら足元をすくわれるのは相手の方だ」
華「目標地点に到着します!」
アリサ「もう手遅れよっ!」モグモグ!
みほ「それじゃ、対象を射程範囲から駆逐してください」
華「はいっ、みほさん!」スッ
アリサ「今更何をやっても―――あ、あれ?」
アリサ「さっきまでここにあったホットドッグが……無い!?!?」
109: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:31:22.62 ID:WChMGvJdo
王「み、見間違いでしょうか。今、食材テーブル上からホットドッグの山がひとつ消滅したように見えたのですが……」プルプル
愛里寿「地形が変わるほどの戦車砲なんて、聞いたこと無い……」
華「すいません、おかわりを」ニコ
スタッフ「は、はい! 只今!」
アリサ「あ、あんた、今、何を……」プルプル
華「何って、おかわりですが?」キョトン
アリサ「は……?」
華「今日は遠慮しなくてもいいんですよね?」ニコォ
アリサ「――――ッ!?」ゾワワッ
ケイ「なにこれ!? ジャパニーズホラームービー!?」
ナオミ「OMG! 彼女は"捕食者<プレデター>"だ!!」
王「五十鈴、その砲撃能力をターレットダウンしていた! ここで新たな情報です!」
王「情報によりますと、五十鈴は大洗の旅館『いそや』で出される夕食をペロリと平らげてしまうほどとのこと!」
梓「あの『いそや』の夕食を!? 鍋三つあるよ!?」
沙織「それでも足りなくておかわりしてたけどね」アハハ
杏「あそこのあんこう鍋はサイコーだよねぇ」
アリサ「聞いてないわよぉ!?」ガーン!
110: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:32:33.13 ID:WChMGvJdo
みほ「華さん、ぱっくん作戦は成功です! あとは味わって食べてください」
アリサ「マジで"食べてる"の!? あれが"食事"なの!?」
華「パンとソーセージとケチャップとマスタードのハーモニー、シンプルながらおいしいですねぇ」モグモグ
王「あれで本当に味がわかるのでしょうか!? 彼女はギャグマンガの住人ではないのか!?」
愛里寿「フードファイトの歴史がまた1ページ」
王「このままではいずれアリサに追いつきます! 猛追! 家庭用冷蔵庫が走ってくる! 先ほどの心配は完全に杞憂だったーッ!」
みほ「華さん、そのままのペースを維持して進軍してください!」
アリサ「ハッ! いくら名将軍神って呼ばれても、まるで人間を機械か何かだと勘違いしているようね!」モグモグ
アリサ「維持しろって言われて維持できるなら苦労しないわよ! そんなの人間には不可の……う……!?!?」ビクッ
華「はい、みほさん!」モグモグ!
アリサ「んなぁぁっ!?」
王「止~ま~ら~な~い~~っ!! 彼女の乗る戦車のマニュアルに障害物の3文字はありませんッ! その風格たるやT28超重戦車の如し!!」
愛里寿「それはアメリカの試作戦車」
111: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:33:25.16 ID:WChMGvJdo
王「客席は何が起こっているんだと言わんばかりの驚きに包まれています! 飢えと渇きのモンロー・ノイマン効果、食い意地のHEAT弾が炸裂する!」
愛里寿「私も初見は驚いた。今大会、スペックだけで言えば五十鈴さん無双」
優花里「サンダースは私たち大洗を偵察してこない、という西住殿の読みは大当たりでしたね! もう完全にこっちのペースですぅ!」
辻(役人)「お、おい! 実況! 大洗にあんなバケモノが居るなんて聞いてないですよ!」
王「ちょ!? なんですか急に!? 放送席は部外者立ち入り禁止です!」
愛里寿「それは今更な気がする」
辻「貴女、自分が大洗だからって黙ってたんじゃないでしょうね!?」
王「はいっ! 公平を期するために黙っておりました! フェアプレー精神で行きましょう!」
<ソウダソウダー! オッサンハオヨビジャナインダケド ムチハツミヨ
辻「ぐぬぬ……!」
王「さあ! フードファイトの時間ですッ!」
112: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:34:02.88 ID:WChMGvJdo
ナオミ「こうなったらコーラにホットドッグを浸けて食べるしかない! 抜かれたら最後だ、何としても守れ!」
アリサ「陣地を死守するなんて我が軍にはありえない! 攻撃あるのみよ! ガチョウの糞のようにメタメタにしてやるわ!」
ケイ「アリサ、アメリカンジャンボサイズよ! 受け取って!」スッ
アリサ「"I feel the need,the need for speed!"」ジャボジャボ モグモグ!
王「出ました! 邪道食いの代名詞、コーラでビチャビチャ! 特にルール上問題ありません!」
愛里寿「絵的に汚いけど確かに早い」
王「やるなら炭酸より水でやった方が、とは思いますが、そこは好みの問題でしょう!」
桃「まるで犬のエサですね。ホットドッグだけに」
杏「んー、こっちも座布団一枚!」
ケイ「名付けてマッドドッグ作戦よ! 特に元ネタは無いけどね!」
113: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:36:04.53 ID:WChMGvJdo
王「一方、五十鈴は背中から花々の後光を浴びてホットドッグ大隊を一網打尽にしています! ホットドッグは五十鈴華の砲口の為に産まれてきたのか!」
ナカジマ「まさにホッケンハイムリンク、オーバーテイクの代名詞だ!」
ホシノ「多重接触事故も無くぶっちぎったな」ウンウン
スズキ「これはシケイン設置しないとマズイね」ニヤニヤ
ツチヤ「それってフランクフルトじゃ?」
華「ホットドッグ対決でドイツ戦車がアメリカ戦車に負けるわけには行きません」スッ
みほ「華さん、そろそろ射程圏内に入ります。体調は大丈夫?」
華「シュトリヒ計算はバッチリですよ、みほさん!」スッ
みほ「あと少し……撃てっ!」
華「はいっ!」スッ スッ!
王「ぬわーっ!? 試合中盤で大洗、まさかのペースアップ! 恐ろしく速い食事、もはや目視できなーいッ!」
愛里寿「このタイミング、サンダースを一番心理的に揺さぶれる。さすがみほさん」
アリサ「信っじられない! あんな細い体のどこに入るっていうのよ!?」
優花里「茨城県人、ここにあり! ですね!」
ケイ「まさか本物のイバラキケンジン!? MIB呼ばなきゃ!」
ナオミ「フー・ファイター!? エイリアン!?」
114: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:37:43.84 ID:WChMGvJdo
王「サンダース側は混乱しております。コテージ作戦、いや、ロサンゼルス空襲でしょうか?」
愛里寿「見えない敵と戦って同士討ちするのは良くない」
王「五十鈴、アリサのマッドドッグ作戦を物ともしておりません! ここはエリア88、戦場のド真ん中! サンダースに次の一手はあるのか!?」
アリサ「最低でも弓と槍に勝てる銃、リベレーターでもジャイロジェットピストルでもいいから私に逆レンドリースしてちょうだい! 火事を消さないと!」
ナオミ「XB-70ヴァルキリーで衛星軌道上から攻撃しよう」
アリサ「とても無理だわ!?」
ナオミ「わかった。じゃあプランBで行こう……プランBは何?」
アリサ「あ!? ないわよ、そんなもん!」
ナオミ「ホットドッグがレバノン料理に見えてきた……」ゴクリ
ケイ「私に良い考えがあるわ! アリサ、逆噴射よ!」
ナオミ「キャプテンやめてください!」
王「アリサ、このマッハの恐怖の中、F-4戦闘機パイロットばりのハドソン川の奇跡を起こせるか!」
ナオミ「大丈夫! 抜かれない限り、勝機はまだある!」
愛里寿「あ、大洗が抜いた」
ナオミ「今はもうない」
王「急減圧! 油圧喪失! みるみるうちに引き離されて行きます! 何のための前進守備だッ! これはいけませーんッ!」
アリサ「好き勝手言ってんじゃないわよ! いいわ、私がDC-10じゃないってとこ見せてあげる! 第4エンジンに愛着はないわ!」
ナオミ「DC-10は3発機だぞ?」
アリサ「だから違うってば! ホットドッグになりたいのかしら!?」
ケイ「Haha…」
王「アリサ、ハウランド島付近で消息を絶ってしまったー! 大洗のあまりの凄さにサンダースも苦笑い!」
115: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:38:36.96 ID:WChMGvJdo
王「さぁここまでですが一方的な展開になっています。ちょっとこの差は予想していなかったでしょう」
華「あふれる肉汁がパンに染み込んで、ケチャップの酸味がそれを引き立てています」スッ スッ
ナオミ「抜かれた以上、大洗を妨害するしか無いわね。あのぴょこぴょこ動くアホ毛が強さの源なんじゃない?」
ケイ「それじゃあアホ毛脱毛作戦よ!」
カエサル「旧約聖書のサムソンか?」
左衛門佐「山内一豊の妻かも知れん」
エルヴィン「いや、OSSが狙ったヒトラーのヒゲだろう」
歴女「「「それだ!」」」
アリサ「それだ! じゃないわよぉ! テキトー言わないでっ!」モグモグ!
ナオミ「じゃあどうすんの!? 鳩ミサイルやコウモリ爆弾でも使う!?」
ケイ「ポパイ作戦やA119計画も捨てがたいわね」ウーン
エルヴィン「一番有効なのは同性愛爆弾じゃないか?」
ナオミ&ケイ「「それだ!」」
アリサ「それだ! じゃなぁいっ! 大洗じゃなくて私を恐れるようにしてやるわよ!?」
ナオミ「正直すまなかった……」
アリサ「どうしてうちはこんなに泥縄なのよぉ!!」ウワァン!
116: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:39:37.18 ID:WChMGvJdo
みほ「華さん、もう十分です。ペースを抑えましょう」
華「あら残念。わかりました」モグモグ
王「残り時間1分。現在大洗が10個差でリードですが、もはやこの状況、どれだけサンダースが足掻こうと大洗は勝ち確定の状況と思われます」
愛里寿「それでも健闘したと思う。アリサさんには賛辞を贈りたい」
王「とのことですが、アリサ選手は―――」
アリサ「全部タカシが悪いのよぉぉぉっ!!!」モグモグ!
王「まるでストーブのように燃えております!」
杏「勝負あった。無理するこたぁないよ、サンダースの」
ナオミ「ハハ、ザカライアス大佐の心理戦争をされるとはね。たしかにもう勝ち目はない、か」ハァ
ケイ「ここまで、ね。ナイスガッツだったわ、アリサ」
アリサ「……返事は"Nuts"よ!」
ケイ「アリサ……」
ナオミ「このウォーモンガーめ……」
117: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:40:27.67 ID:WChMGvJdo
アリサ「何も終わっちゃいないのよ! 私にとってはあの日から戦いは続いたままなの!」モグモグ
アリサ「全国大会第一回戦、必死で戦ったのに勝てなかった! そして帰ったら空港で非難轟々よ!」モグモグ
アリサ「盗聴魔だとかストーカーだとか悪口の限りを並べられたわ! あいつらは何? 戦車道のせの字も知らないくせに!」モグモグ!
アリサ「どうせわかりゃしない。奴らには理解できない、仲間のために戦うってことが。それだけ……それだけよ……!」モグモグ…
杏「そこまでして何を求めてるのさ?」
アリサ「尊重よ! 誰にもバカにされない権利の尊重!」モグモグ
桃「貴様、会長に敬語を―――」
柚子「桃ちゃん、ステイ!」
桃「がるる……」
杏「どうどう。それで、アリサちゃんはそんなつまらないもののために戦ってたのか」
アリサ「あ゛ぁっ!?」
118: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:41:32.82 ID:WChMGvJdo
杏「今はもう、私たちと肩を並べてお茶を飲める。笑い話にできる。それでいいじゃん」
アリサ「いいわけ、ないでしょ……戦車道は遊びじゃないのよ……」モグモグ
杏「同情はしないよ。それがアリサちゃんの選択だったんだから。だけどね」
杏「戦車道をやってる人間が一度でもアリサちゃんを非難した?」
アリサ「――ッ!!」
杏「過去にだって無線傍受が行われた試合は何度もあった。それを知ってたからこそ西住ちゃんはサンダースの作戦を逆手に取れたわけだし」
杏「戦車道を知ってるって言うバカに限って戦場を知らないもんだ」
杏「アリサちゃんが守るべきものはさ、戦車道の外にあるの?」
アリサ「……そうね。たしかに、そう。戦車道は―――」
アリサ「―――私の家よ」グスッ
ビーーーーーーーーーーーッ!
王「し~あ~い~しゅ~~りょ~~~!! ディス! イズ! フードファイトォ!」
審判「勝者―――」
大 洗 女 子 学 園 ッ !!
119: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:42:29.52 ID:WChMGvJdo
沙織「華ってば! もう試合は終わったの! 勝ったの!」グイグイ
麻子「あれだけ食べててまだ食うのか」
華「病みつきになってしまって」モグモグ
みほ「残りは皆さんで分け合いましょう?」
華「そういうことでしたら……」
優花里「勝者とは思えない残念そうな顔ですね」アハハ
アリサ「……ハァ。また大洗に負けたのね」
優花里「もしサンダースが大洗に偵察に来ていたらどうなっていたかわかりませんでしたよ、アリサ殿」
優花里「あんまり悲観的にならないでくださいね。未来に希望を持ってください!」
アリサ「……そうね、情報戦も戦車道。次こそは負けないわよ、オッドボール軍曹」フッ
ナオミ「これで私は実戦を経験せずに退役、ファイティングモンスターM103重戦車ってわけね」
アリサ「ナ、ナオミ……その、ごめん……」
ナオミ「アリサが謝るなんて、脳にまでそばかすが出来た?」
アリサ「は、はぁ!? んなわけないでしょーが!」
ナオミ「フッ。グリズリーは全世界に愛されなくていいの」
ナオミ(無鉄砲だけど勇敢な灰色熊を、私たちは尊敬してるんだから)ニッ
ケイ「いい試合だったわ! アリサもなんだか吹っ切れたみたいだしね!」ダキッ
アリサ「ちょっ!? た、隊長! 苦しいっ! 出る、出ちゃうっ!」ジタバタ
杏「終わりよければ全てオッケイ! おケイだけにね」ニッ
120: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:43:23.26 ID:WChMGvJdo
王「それでは本大会のダークホース、五十鈴華選手へのヒーローインタビューです! 今試合の作戦はどのようなものだったのでしょうか!」
華「お恥ずかしい話なんですが、わたくし、おいしいものが目の前にあるといくらでも食べてしまうので、みほさんにペース管理をお願いしたんです」
優花里「最悪、対戦相手を開始数秒で戦意喪失させるほどのものですからね」
杏「それは運営としてはダメだからねぇ。一応スポンサーついてるし」
みほ「それだったら中盤以降で勝負を仕掛けようってことになったんです」
王「となると、基本的には黒森峰の戦略と一緒だったわけですね!」
みほ「え……っと……。そうなるの、かな」
王「やはり王者の戦法! 西住みほ隊長は黒森峰出身であり、西住流の家柄だけあって―――」
優花里「あーっと! それより準決勝以降は試合の流れが変わるんでしたよね!?」
王「えっ? あ、はいっ! 次戦からは準決勝となります!」
愛里寿「尺が無いから巻きで? だって」
121: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:45:06.32 ID:WChMGvJdo
王「それでは準決勝以降のルールについてご説明させていただきます!」
王「まず、初戦出場の選手とは別の選手の出場が可能です!」
王「胃袋の負担を考えれば選手交代をすると思いますが、チーム内に高いスペックの人材が他に居ない場合は一人に負担がかかることになるかもしれません」
愛里寿「その意味でアンツィオは優勝候補と目されている。メンバー全員が腹ペコモンスターだから」
王「次に、スタートランは廃止され着席スタートとなります!」
愛里寿「純粋に食べることだけで勝敗がつくようになる。シンプルだからこそ究極のフードファイト」
王「最後に、セコンドからのサポートは掛け声のみとなります!」
愛里寿「選手に声をかける以外の全ての行為が禁止される。信じられるのは己の身体一つ」
王「Aグループ準決勝は黒森峰vsプラウダ。前年の全国大会決勝カードとなっております!」
愛里寿「激しそう」
王「Bグループ準決勝はアンツィオvs大洗。今年の全国大会第2試合と同じですね!」
愛里寿「楽しそう!」
王「それでは一旦CMでーす!」
122: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:45:46.44 ID:WChMGvJdo
―CM―
パンツァーセット♪
今度のパンツァーセットは中国戦車!
ジャケットと砲弾を買うと
①ルノーNC型 ②ヴィッカース Mk.E ③九七式中戦車チハ(功臣号仕様)
どれかのミニ戦車がもらえるよ!
せんしゃ
倶楽部
123: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:47:23.88 ID:WChMGvJdo
―CM裏―
<黒森峰控室>
モニタ『―――それでは一旦CMでーす!』
ピッ
エリカ「コーラ浸けホットドッグ……考えただけで気持ち悪くなってくるわね。しばらくは炭酸飲めそうにないわ」ウップ
エリカ(それとあの役人……取り乱すんじゃないわよ……)チッ
ガチャ
まほ「エリカ。ファンタ持ってきたが、要るか?」
エリカ「い、いえ、お気持ちだけ頂いておきます……」
まほ「そうか、次はすぐエリカの出番。ファンタなど飲んでる場合ではない、か」
まほ「次期隊長として良い判断だ」ニコ
エリカ「……次期隊長、ですか」
まほ「ああ。これからエリカには次期隊長としての自覚を持ってもらうことになる。今の私の持つ全権を委任することになるからな」
まほ「お母様をはじめとする歴代黒森峰隊長の『古き偉大さ』と、エリカという『新しい力』のシンボルが結合するんだ」
まほ「次のプラウダ戦も、私とエリカとでならタンネンベルクの戦いのように大勝利をおさめることができるだろう」
エリカ「……頼もしい限りです、隊長」
まほ「応援しかできないことがもどかしいよ。この気持ちがヒンデンブルク号のように爆発しないよう気をつけておこう」フフッ
124: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:47:53.91 ID:WChMGvJdo
コンコン ガチャ
クラーラ「失礼します。次戦の前にご挨拶に来ました」ニコ
エリカ「貴女はプラウダの?」
まほ「敵兵が何の用だ。アイスピックは持っていないだろうな?」
クラーラ「ご心配なら身体検査をしていただいても構いませんよ」
まほ「ならば折角だ、させてもらおうか」ペタペタ
クラーラ「下着も脱ぎましょうか?」
まほ「……いや、いい。特に硬いものは無かった。それで、用件は?」
クラーラ「一つはエリカさんにご挨拶と、もう一つはまほさんの招聘です」
まほ「私を? カチューシャか?」
クラーラ「なるべく急いでくださいね。カチューシャ様のご機嫌の良いうちに」
まほ「仕方ない。少し席を外す」ガチャ
クラーラ「…………」チラッ
エリカ「…………」
125: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:48:49.98 ID:WChMGvJdo
クラーラ「話は手短に。こちらをどうぞ」スッ
エリカ「下着の中に隠してたのね……って、これは、隊長の写真!?」ガタッ
エリカ「しかも幼少期の!? 貴女、これを一体どうやって……!?」
クラーラ「私の父に頼んで入手しました。それより、この写真、欲しいですか?」
エリカ「……八百長はしないわ。そういうことはしない」
クラーラ「ええ、構いません。ただノンナ様に対するあらゆる妨害をしないとさえ誓っていただければ、あとはノンナ様の実力で貴女に勝ちます」ニコ
エリカ「へえ、プラウダも出場選手の変更は無しなのね」
エリカ(どうして私が続投することを知ってるのかは聞かないけど)
エリカ「にしても、なんか怪しいわ。うちの隊長にこの取引のことバラすつもり?」
クラーラ「大丈夫です、この行動は私の独断専行ですから。取りあえず前金としてこちらを」スッ
エリカ「どうだか……嘘だったらタダじゃおかないから」スッ(※写真を懐に忍ばせる音)
クラーラ「交渉相手が貴方で良かったです」ニコ
126: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:49:47.81 ID:WChMGvJdo
クラーラ「成功報酬はこの倍で」
エリカ「ま、どの道? 私の考えた作戦じゃどれもブリザードに腕押しになりそうだったし、こっちは自分の身を守るので精一杯」
エリカ「決勝戦のことも考えての2方面作戦は苦手よ。だから、直接的にも間接的にも妨害攻撃はしないってちゃんと約束するわ」
クラーラ「この辺が私たちのカーゾン線、クラーラ=エリカ協定締結ですね」
エリカ「いいえ、これは不可侵条約の秘密協約。公にする必要はないでしょ」
クラーラ「それもそうですね」フフッ
エリカ「ほら、隊長が戻ってくる前に」
クラーラ「次はなにかお土産を持ってきます」ガチャ
エリカ「パン籠だけはお断りよ」
エリカ(さてと……)
エリカ「癪だけど、"あの人"にレンドリースを受けに行こうかしら」
127: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/09(火) 11:50:56.02 ID:WChMGvJdo
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
ナオミさんが出てたら経験の差で負けてたかも!
華さんお疲れ様! 大洗のみんなもありがとう!
次の試合は黒森峰対プラウダ。嫌な予感しかしないよぉ……。
次回! フードファイト・ウォー。『目指せモスクワ』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
128: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:12:45.36 ID:+vxOi8Wqo
_____________________
フードファイト・ウォー! 第5話 『目指せモスクワ』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
王「皆さんこんにちは、ご機嫌いかがでしょうか。王大河です。今大会第5試合目を迎えております」
王「お昼をまわりましてこれより午後の部、準決勝の模様をお送りしてまいります」
王「放送席での解説は、日本戦車道ここにあり! でおなじみ。島田流から、島田愛里寿さんです!」
愛里寿「よろしくお願いします」ペコリ
<タイチョーカワイイー! オベントウツイテマスヨー! アリス,ガンバルノヨ!
王「さあ、島田さん。黒森峰対プラウダということで今試合も厳しい戦いが予想されるんですが、いかがですか」
愛里寿「怖い」
王「……その一言に尽きると思います。なお救護班は万全の状態で待機しておりますのでご安心を!」
王「さて、気象情報をお伝えしましす。現在気温が29℃、湿度が59%、ご覧の通りの快晴です」
愛里寿「良い天気」
王「そしてスタジアムなんですが、なかなかの盛り上がりですよね!」
愛里寿「人、増えてる?」
王「はいっ! なんとですね、午前の試合の様子がSNSを通じて拡散され、現在ぞくぞくとスタジアムにお客さんが集まって来ています!」
王「この放送をご覧の皆さま! まだまだ空席は残っておりますのでスタジアムにお急ぎください!」
愛里寿「くださいっ」
129: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:13:40.76 ID:+vxOi8Wqo
王「Aグループ準決勝、黒森峰からはなんと逸見エリカ選手が続投! 対するプラウダからは……な~んと! こちらもノンナ選手続投です!」
愛里寿「おぉ~」パチパチ
王「お2人には既に卓に着いてもらっています。そこへ料理が次々と運ばれてくるわけですね!」
愛里寿「カメラに向かって横並び」
ノンナ「エリカさん。続投だなんて、無理していませんか?」
エリカ「その言葉、貴女にそっくりそのまま返します」
ノンナ「あなたにも前戦のダメージが蓄積しているはず。サンドイッチとカキ氷、どちらが軽いのでしょう」
エリカ「フン。私にそんなものはありません」
ノンナ「……?」
王「島田さん。お2人のダメージ、どうご覧になりますか?」
愛里寿「普通なら固形物を大量に摂取してる逸見さんの方が不利……だけど、水分をたっぷり吸収したノンナさんは全体的に動きがにぶくなるはず」
王「なるほど! この試合もおもしろくなりそうです!」
130: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:15:06.55 ID:+vxOi8Wqo
王「さて! 気になる対戦食材はぁ~~っ!! ジャガ―――っとぉ?」
スッ
愛里寿「あれ? カンペ?」
王「え、えーっと? 本当ならジャガイモ料理対決になるはずでしたが? 北海道地方天候不良のため? 食材のジャガイモが大洗港に入港せず!?」
愛里寿「そうなんだ。残念」
王「えぇっ!? これ、どうするんですか!? 大会大丈夫なんですかぁ!?」
辻「そ、そんなバカな! この時期に天候不良だとぉ!?」
王「うわっと!? あなたはまたぁ!」
愛里寿「誰か放送席に鍵かけて」
辻「ええい、トラックでも輸送機でも使って持って来なさい!」
「その必要はありません」
131: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:16:32.15 ID:+vxOi8Wqo
王「あ、あなたは……プラウダ高校、クラーラさん!」
クラーラ「こんなこともあろうかと、こちらで料理をご用意させていただきました」ニコ
辻「なんだと!?」
クラーラ「既に調理テントへ搬入中です。時間、押しているのでしょう?」
辻「そのような変更は認められませ―――」
杏「いいよー。許可許可」
クラーラ「ありがとうございます、大会実行委員学生代表様」ニコ
辻「くっ……」
まほ「津軽海峡はプラウダの庭。何かやったな?」
カチューシャ「あら? なんのことかしら」フフン
ノンナ「同志カチューシャが天候不良と言えば天候不良なのです」
エリカ「なるほど。2+2=5ってことですか」
ノンナ「そちらこそこのタイミングでジャガイモ料理。元々何か仕込んでいたのでは?」
エリカ「…………」フンッ
まほ「何を根拠に」
132: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:17:10.30 ID:+vxOi8Wqo
ノンナ「空腹状態の第1戦はともかく、第2戦以降はフードファイターの精神力がより重要」
ノンナ「そんな状況で食べ慣れた食事が可能というのは、暴力的なまでに有利でしょう?」
エリカ「まあいいわ。たとえ食材が何であろうと、私が勝ちます」
カチューシャ「こんな諺をご存知? 弱い犬ほどよく吠える」ドヤァ
エリカ「チッ……」
<アラ,カチューシャニパクラレマシタワ フンイキブチコワシデス,ダージリンサマ
王「食卓という名のリング上ではメンチの斬り合いが行われています! ここに不可侵条約は破られた!」
愛里寿「ノンナさんの言う通り、準決勝以降は気力の闘い。舌戦でリードすることも重要」
王「2人の暗黒の帝王が、平和のパイ包みを破壊し始めました! 独ソ開戦は避けられなぁーいッ!」
133: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:19:08.04 ID:+vxOi8Wqo
王「果たしてェ! 雪の王国プラウダが用意した料理とは一体何なのでありましょうか!?」
みほ「あ、この匂い……パン? 美味しそう!」
クラーラ「そう。準決勝の料理は"ピロシキ"です!」
王「なんとぉ! 臆面もなく自分たちのホームフードを用意してきたプラウダ! その鉄面皮のラジエーターは不凍液完備だァ!」
<ピロシキッテ? ピーラッカノコトサ ポロロン♪
王「このピロシキが、隊長カチューシャによる黒森峰への撤退命令となるのか! はたまたプラウダがスタジアムを去る際の捨て台詞となってしまうのか!」
カチューシャ「うるさいわよ実況! ノンナー! 負けたら空挺戦車の降下訓練なんだからね!」
ノンナ「Да. そう言えばエリカさん、催眠術対策はしてきましたか?」
エリカ「耳を塞げばいいだけです」
ノンナ「ですが、ルールには五感を遮断する道具の使用は禁止とあります」
エリカ「だったらこうすればいい」スッ
ノンナ「両手を使って? でも、そうしたらどうやって食べるんです? 犬喰いでもするつもりで?」
エリカ「…………」フンッ
ノンナ「それは楽しみですね」ニコ
審判「準備、整いました。両者、礼!」
ノンナ「いただきます」ペコリ
エリカ「…………」ペコリ
審判「用意っ!」
\パパパパパウアードドンッ!/
134: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:19:55.44 ID:+vxOi8Wqo
エリカ「はむっ! はむっ! はむむっ!!」
ノンナ「はふっ! はふっ! はふふっ!!」
王「さぁ両者一斉に食べ始めた! どちらも速い! ノンナ有利と思われたがそれに食らいつく逸見! 一度噛みついたら離さなーいっ!」
愛里寿「ノンナさんの戦い方は無駄に戦力を浪費させてから突破を図る縦深攻撃。わざとペースを落としてるのかも」
王「総菜パンのバルバロッサ作戦! 小麦粉、ひき肉、タマゴに野菜の大生産地、レーベンスラウムを獲得することができるのかァ!」
ノンナ(スタートは様子見……やはりあなたは黒森峰。不文律でも律儀にルールを守ろうとする)
ノンナ(ふふ。クラーラから情報は得ていますよ。あなたはわたしに攻撃することができない)ニヤ
ノンナ(であれば、先手必勝ということ!)ピタッ
王「あぁーとぉ!? どうしたノンナ!? ピロシキ4個を平らげたところで止まったぁー!」
愛里寿「これは!」
エリカ(来たか……!)ハムッ!
135: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:20:49.93 ID:+vxOi8Wqo
ノンナ「あなたはわたしに勝てません」トン トン トン
エリカ「…………」ハムッ! ハムッ!
王「で、出たぁーっ!! プラウダ印の秘密兵器、ハイプノシスっ!!」
愛里寿「スプーンは持ち込み」
王「待ち構えていた鬼戦車! ヴォルガを超えて、食欲のタイフーンはモスクワに届くのかぁーっ!?」
まほ「エリカ! 耳を貸すな! 食べることに集中しろ!」
カチューシャ「無駄よ! ピロシキを食べてる間は耳を塞げない! 赤ん坊だって知ってるわ!」
ノンナ「あなたはわたしに勝てません」トン トン トン
エリカ「…………」ハムッ! ハムッ!
ノンナ「あなたはわたしに―――ッ!?」トン トンッ ガチャーン!
エリカ「…………」ハムッ! ハムッ!
愛里寿「……効いてない?」
王「これはどうしたことだ!? 逸見、ノンナの催眠術に全く耳を貸していません!」
ノンナ「そんな!? あなた、いったい、なんで……!?」
エリカ「……あら? もう終わりなの? じゃぁこれ、外そうかしら」キュポッ
ノンナ「そ、それは……耳栓!?!?」
王「な、な、なんとぉ! 黒森峰逸見エリカ、耳栓をしていたぁーっ!」
136: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:23:30.92 ID:+vxOi8Wqo
王「換装対応したⅣ号潜水戦車、無音の川底より渡河ッ!」
カチューシャ「潜水戦車って?」
クラーラ「ZIL-29061やBe-2500 ネプトゥヌスのようなものです」
アリーナ「いや全然違うべな」
<ジンルイサイゴノキボウ,ゴウテンゴウダ! カリナ!?
ノンナ「一体いつの間に―――あの時!」
――回想――
エリカ『だったらこうすればいい』スッ
――――――
カチューシャ「ってちょっと待ちなさーいッ! この薄っぺらいルールブックには耳栓ダメって書いてあるわよ! 反則負けよ!」
エリカ「同時に飲食物の持ち込みは可、とも書いてあるわ。しかも第1条にね」
まほ「エ、エリカ……。そんな策を立てていたとは……!」
エリカ「紅茶やコーラで見てきたように、飲食物を使ってのサポートはアリ、ということ」
カチューシャ「だから何なのよ! 耳栓はどっちにしろダメじゃない!」
ノンナ「それに、あなたは入場検査で持ち込み飲食物を何も申請していなかったはずですが?」
エリカ「やっぱり調べてたんですね。その貴女たちの諜報能力への強い自信を逆に利用させてもらいました」
カチューシャ「ふぇ?」
エリカ「確かに私は何も申請していない。私は、ね」
ノンナ「―――ッ!!」
エリカ「これ、サンダースからもらったガムですから」ニヤリ
137: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:24:57.96 ID:+vxOi8Wqo
王「まさかの独米レンドリース! 逸見選手の耳栓は、サンダースナオミ選手が常備しているチューインガムだったぁ!」
エリカ「隊長の持ってきてくれたファンタを渡したら快く交換してくれました。ありがとうございます、隊長」
まほ「エリカ……!」
王「避弾経始で相手の攻撃を逸らした逸見選手! Ⅴ号パンターここにあり!」
愛里寿「持ち込み申請したモノの譲渡は、うん、ルールにないからセーフ。だけど……」
カチューシャ「はぁ!? ガムだろうがなんだろうが耳を塞いじゃ危ないでしょ!? それにガムは飲食物とは言い難いわ!」
エリカ「催眠術とかいう反則技を使ってる貴女たちに言われたくないわよ!」
まほ「いいぞエリカ! 言ってやれ!」
カチューシャ「傾斜装甲はこっちが最初なのにぃ……ノンナぁ!」
ノンナ「カチューシャ、残念ながら一理あります。それに、プラウダが己の諜報力にあぐらをかいていたというのも事実」
カチューシャ「えっ」ウルッ
ノンナ「ですがカチューシャ、安心してください」ニコ
ノンナ「どんな状況下であろうと、勝つのはこのわたし、"ブリザードのノンナ"ですから」ゴォォォ…
王「恐ろし気なオーラを放っておりますプラウダノンナ! えぇー、ここで運営からの場内説明が入ります」
愛里寿「これ読むの? えっと、"只今のプレーですが、判断に困るものは試合の進行に問題が無い限りセーフとします"」
カチューシャ「なっ!? アリーシャ、あなた黒森峰の味方をするのっ!?」ジワッ
愛里寿「ち、違うよカチューシャちゃん!」アセッ
カチューシャ「ちゃん付けするなぁ!」ウガーッ!
王「戦車道連盟をはじめとする面々のモンロー主義に助けられました黒森峰逸見! フードファイト続行です!」
138: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:25:30.04 ID:+vxOi8Wqo
エリカ「はむっ! はむっ! はむむっ!!」
ノンナ「はふっ! はふっ! はふふっ!!」
王「さぁここで逸見がリードする展開となりました! 神聖ローマ帝国復活ッ! 大ゲルマン帝国の腹の虫の音が聞こえるかーっ!」
王「対聖グロ戦でのダメージを全く感じさせない逸見の電撃戦! 消化液のマンシュタインバックブロウ! 兵站線がみるみるうちに伸びていきます!」
カチューシャ「西部戦線は何やってるのよ!」
ニーナ「もうサンダースも聖グロも敗退したべさ」
カチューシャ「これだから敗北主義者は!」
愛里寿「食べるスピード、催眠術対策、そして無尽蔵の胃袋……完璧な布陣」
王「北方は一路レニングラード、中央はモスクワ守勢、南方はキエフ・コノトプラインで包囲殲滅! プラウダ、総退却を強いられている!」
愛里寿「でもどうして? サンドイッチはどこへ……」
139: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:26:27.26 ID:+vxOi8Wqo
王「しかしやはりここはプラウダノンナ! ピロシキの輸送量はエクラノプラン、カスピ海の怪物並み! セヴァストポリが陥落しようと、じわじわその差を詰めていきます!」
ノンナ「エリカさん。あなたはピロシキというものをやはりわかっていない」ホフッ!
エリカ「な、なんですか? 丸かじりじゃなく、手でちぎって食べろとでも?」ハムッ!
ノンナ「日本で作られる大抵のピロシキは揚げパンですが、比較的暖かいモスクワのような地域では焼いたパンなのです」ホフッ
エリカ(モスクワって暖かいって認識なのね……)ハムッ
ノンナ「当然プラウダでは本場モスクワに倣った焼きパンのピロシキ。極寒のシベリア平原のように、油を摂取して脂肪を蓄える必要はありませんから」ホフッ
エリカ「だからなんです? これ、揚げパンですよね?」ハムッ
ノンナ「そう。この試合のための特注なのです。なぜだと思います?」ホフッ
エリカ「……?」ハムッ
ノンナ「脂肪を蓄え、寒さに備えるためですよ……」ビュォォォォ…
エリカ「―――ッ!? さ、さむっ!? え、なに!?」プルプル
王「こ、これはぁ! 知波単戦で見せた"冬将軍"ッ!! まさか、あれはただの偶然ではなかったというのかっ!?」ガタガタ
愛里寿「これは、何か仕掛けがあるのかも……?」ブルブル
140: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:27:22.72 ID:+vxOi8Wqo
エリカ「うっ、寒いっ! 手が、かじかんで……!」プルプル
まほ「エリカッ! クソ、今防寒装備を持ってくる!」クルッ
クラーラ「おっと。セコンドの選手への干渉は掛け声のみですよ、西住まほ様」ニコ
まほ「……畜生ッ!!」ダンッ!
カチューシャ「ノンナ! どうしてだかわからないけど気温が下がった今がチャンスよ! 奴ら、寒さ対策をしてないわ!」キャッキャッ
ノンナ「寒さという苦痛の中で食べる……そう、これでこそピロシキ。これこそがピロシキの食べ方の真実」
ノンナ「ピロシキさえ与えれば、人間はひれ伏すのです。なぜなら、ピロシキより明白なものはないのですから」ニコ
エリカ「あ、貴女……おかしいわよ……!」プルプル
ノンナ「カチューシャへの愛があれば、わたしは無尽蔵に食べることができます」
ノンナ「あなたにもウラル山脈のように高い理想とバイカル湖のように深い思慮を持つカチューシャの素晴らしさを教えてあげましょう」ニタァ
王「ここは鹿島ではありません! 茨城ではありません! スターリングラード! スターリングラード! 冬の嵐が吹き荒れるゥ!」
<タイチョー! コレキテクダサイ! イイエコッチヲ! ソレワタシノヨ!
愛里寿「みんなありがとう。これであったかい」
カチューシャ「ノンナ! 黒森峰が1個食べる間に10個食べなさい!」
ノンナ「はい、偉大なる同志カチューシャ!」ハフッ! ハフッ!
141: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:30:01.27 ID:+vxOi8Wqo
王「あっと言う間に形勢が逆転しました! 春の目覚めは遠のいてしまった! ツァーリ・ボンバは落とされた! もはや勝負あったか!?」
愛里寿「ううん。今のノンナさんは防御をなげうっての攻撃全振り。全周ショットトラップ」
愛里寿「もしここで逸見さんが反攻に転じたら、打つ手がない」
<観客席 大洗サイド>
典子「根性! ここで根性だ逸見ーッ!」
ねこにゃー「でもこれ、もう勝ちようがないぞな」
ナカジマ「勝負において重要なのは勘だよ。こうすれば勝てるというゆるぎない直感」
ナカジマ「そして、勘を研ぎ澄ませるために必要なものは孤独だ」
園「孤独?」
ホシノ「F1レーサーだってそうだよ。0.1秒に命をかけてアクセルを踏み込む勝負の世界」
ホシノ「だけど、そんなレーサーも守る者ができれば命が惜しくなりアクセルが踏めなくなる。ジャン・アレジがいい例だ」
左衛門佐「あーゴクミの。差し詰めフランスの伊達政宗か」
ホシノ「2人の間には子どももでき、何不自由ない生活を始めたが……さっぱり勝てなくなった」
ホシノ「それに比べて、レース中に事故で死んだアイルトン・セナはどうだ?」
忍「音速の貴公子ですね!」
ホシノ「セナには恋人は居たが、結婚せず家族を持たなかった。彼が事故死する前に恋人に言った言葉はこうだ」
『心配しなくていい、僕はとっても強いんだ』
おりょう「漢ぜよ……」
ホシノ「プラウダの副隊長は、自分が無理できないことを知ってしまっているんだ。なぜなら、そんなことをすればカチューシャが悲しむから」
エルヴィン「だが、黒森峰は違う。逸見エリカは、その自己犠牲が西住まほを悲しませるなどとつゆも思っていないだろうな」
カエサル「むしろ逆……結果を示すことでしか、その忠誠を表現できないというのであれば」
ホシノ「勝負に勝つためアクセルを踏むことしか知らない黒森峰の副隊長は、強い」
142: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:31:02.03 ID:+vxOi8Wqo
エリカ「私は……負けられない……」プルプル
まほ「エ、エリカ……」
エリカ「JS-2なんかに負けるわけには、いかない……ッ!」プルプル
カチューシャ「今更何をしたって無駄よ! バグラチオン作戦は成功したの! 銃の代わりにパンツァーファウストでも支給して待ってなさい!」
エリカ「フ……フフ。最高の戦車以外に必要なのは、経験と用心深さだけよ……」
ノンナ「地下壕に籠り過ぎて状況が把握できていないのでしょうか」
エリカ「こんな状況、想定済みってことよ……! 頭を冷ましてくれて感謝するわ……!」ゴゴゴ
ノンナ「―――ッ!?」ゾワッ
エリカ「さぁ目覚めなさい、私のティーガー……"食事の時間"よ……!!」コォォォ
カチューシャ「ひっ!?」ビクッ
まほ「立った……?」
王「おおっ!? 逸見、席から立ち上がった! これは第1試合でも見せた"自律神経系"でしょうか!?」
愛里寿「でもなんで立ったんだろう?」
王「車高を高くしたその姿はビゾン自走砲のような威圧感です! 一体なにを―――」
エリカ「ガブッ!!! ガブブッ!!!」
ノンナ「!!」
まほ「!!」
カチューシャ「!!」
143: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:32:17.25 ID:+vxOi8Wqo
王「あ、あ、あ、ありえな~~~いッ!!! 手当たり次第にピロシキを口の中へと詰め込んでいく~~~ッ!!!」
エリカ「ングッ!!! ングググッ!!!」
王「まだ入る!! まだ入る!! これが宇宙の胃袋ハウニヴ!! ゼンガー計画は完成していたァ!」
クラーラ「アツアツのピロシキを……いえ、今はもう十分に冷まされて……でもっ!!」
ノンナ「―――息を止めている!?」
まほ「そうか! 呼吸を止めることで食事時間のロスを最大限に減らしている!」
王「なんとぉ!! し、しかし、呼吸せず食事など可能なのでしょうか!?」
愛里寿「まるでワニのパニッツァ孔」
王「ワ、ワニ……パニ……なんですか?」
愛里寿「ワニの心臓は陸上では哺乳類と同じような循環だけど、潜水中はパニッツァ孔というバイパスを使うことで肺循環をある程度省略する」
王「たしかに水中で肺を使う必要はないですからね」
愛里寿「これによって体内の血液に残された酸素を効率よく使い切ることができるようになる。中には1時間近く息を止めることのできるワニも居るという」
王「それを人間の体で実現していると!?」
愛里寿「ヒトの胎児は羊水の中で肺呼吸ができないから肺循環はしていない」
王「究極の幼児退行!! 生命の起源まで遡っていくぞ逸見エリカァ!!」
144: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:33:12.59 ID:+vxOi8Wqo
愛里寿「いや、それだけじゃない。あれはおそらく……気道にピロシキを詰め込んでる」
王「気道に!? そんなことが!?」
愛里寿「普通気道に物が詰まれば3~6分で酸素濃度が低下し危険な状態になるはずだけど、それをもろともしない肉体であれば理論上は可能」
愛里寿「しかも立ち上がることで少しでも多く気道に詰め込もうとしている……まさに水中のワニの立ち姿」
王「戦うクロコダイル・レディ、逸見エリカ! スコルツェニーより危険な女! 人類最強の爬虫類ィーッ!!」
カチューシャ「何よそれ……何よそれ! もう、ただの化け物じゃない!」プルプル
ノンナ「……我が手と我が胃袋に、戦う力を!」ハフッ! ハフッ!
王「実はわたくし、個人的に逸見選手とメル友なのですが、彼女の黒森峰隊長へのラブには凄まじいものがありまして」
愛里寿「まほさんの期待に応えたいという強い想いが彼女をモンスターにしてしまったのかも」
145: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:34:44.32 ID:+vxOi8Wqo
王「もはやナルヴァの戦いなんてものじゃない! ティーガーⅡのようなオーバーヒートをせずに食べ続ければこのまま勝負は決まってしまうが!?」
カチューシャ「そんなぁ!? ダメよ、だめぇっ!!」ウルウル
まほ「……っ」
<ノンナ! ノンナ! ノンナ! ノンナ! ノンナ!
王「ここでノンナコールだ! 渇ききった時代に送る、まるで雨乞いの儀式のように、ノンナに対する悲しげな、プラウダ校生徒の声援が飛んでいる!」
ノンナ「はふっ! はふっ! はふふっ!!」
エリカ「んぐっ! んぐっ! んぐぐっ!!」
王「意地と気合の雪崩が衝突するッ! 残り時間3秒!! 2、1ッ!!!」
ビーーーーーーーーーーーッ!
審判「勝者―――」
黒 森 峰 女 学 園 ッ !!
146: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:37:36.08 ID:+vxOi8Wqo
王「勝者、黒森峰副隊長、逸見エリカーッ!! フードファイトの国家社会主義革命ーッ!!」
エリカ「―――私の胃袋は、宇宙よッ!!」グッ
ノンナ「私は……カモメ……」バタッ
<ワーワー! ドクソコウワ! スウジクショウリ! トウホウヘノショウドウ!
王「逸見、かすれ声での勝利宣言! グスタフ級の巨大なかすれ声! AMX40のように膨れたボディから発せられるのは勝者にのみ許された栄光! 黒森峰、決勝進出決定ッ!!」
カチューシャ「わ、私が、出るわ……ノンナの、代打よ、私が……」プルプル
アリーナ「か、カチューシャ様!? 落ち着いてけろ!?」
カチューシャ「だって銃は2人で1丁でしょ!? 前進する兵士が倒れたのなら、後方の兵士が代わりに銃をとるの!」プルプル
愛里寿「さすがにそれはルール違反……誰か、カチューシャちゃんを正気に戻してあげて」
クラーラ「カチューシャ様……。一緒に救護テントへ行きましょう」
カチューシャ「ピ……ピロ……ッ」
カチューシャ「ピロシ、キ……ィ……ぁ……っ……」ポロポロ
147: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:39:01.27 ID:+vxOi8Wqo
王「いやぁ蓋を開けてみればやはりとんでもない展開となってしまいましたAグループ準決勝黒森峰対プラウダ! 島田さん、どうでしたか」
愛里寿「うん……うん、やっぱり。そう」
王「島田さん?」
愛里寿「えっとね、調べてもらってわかったんだけど……会場のあらゆるところに冷気発生装置が仕掛けられてた」
王「ななっ!? 確かに"直接妨害"とは言い難いですがこれは……」
愛里寿「即失格、とはいかないけど、セーフにはならないと思う」
王「このような場合は審議入りの後なんらかのペナルティを課される形になる、とルールブックにあります」
愛里寿「2回も使ったら偶然性を疑われて当然。だから、あの時のノンナさんはそれを覚悟で戦ってた」
王「それほどまでに逸見選手に負けられなかったわけですね。カチューシャ隊長の居る目の前で、ピロシキ勝負で……」
愛里寿「死力を尽くしていたはずのノンナさんを破った逸見さんは、想定以上だった」
王「本当に凄まじい戦いでした! それでは逸見選手にお話を……って、逸見選手? ピッチにもベンチにも居ませんが……?」キョロキョロ
愛里寿「とりあえずCM」
148: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:39:56.35 ID:+vxOi8Wqo
―CM―
L O V E T A N K
I will not make it overseas in time!
WORLD → → JAPAN
3 2 1
SENSYA-DO World Congress
Coming soon…
149: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:41:36.96 ID:+vxOi8Wqo
―CM裏―
<女子トイレ>
エリカ「う゛ぅっ!! おぇ、お゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛っ!!!」
ビチャビチャ!
エリカ「ごふっ……はぁ、はぁ……」
まほ「……そうやって、食べたものを全て吐いていたのか。聖グロとの戦いの後も」
エリカ「……吐いてはいけない、という規則もありません」
まほ「なあ、エリカ。やはり次の試合、私に出場させてもらえないか? 選手の変更は直前でも可能だという事だから」
エリカ「いえ、隊長に無理はさせられません。初期登録通り、私が」
まほ「だが、それではエリカの身体が……」
エリカ「問題ありません、隊長。私が必ず勝ちます」
エリカ「来年度以降、黒森峰が絶対王者に返り咲くために」グッ
まほ「エリカ……」
エリカ(あとでクラーラから隊長の写真もらおう……)
150: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/10(水) 04:43:04.64 ID:+vxOi8Wqo
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
エリカさん、どうしてそんなに強いの……?
次の試合はアンツィオ対大洗。今回は会長が出場します。
食材はパスタだけど、なにこのパスタ!? これパスタなの!?
次回! フードファイト・ウォー。『マウンテンパスタ』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
151: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:20:53.76 ID:ZgIUfqTIo
______________________
フードファイト・ウォー! 第6話 『マウンテンパスタ』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
王「全国の戦車道ファンの皆さん、お待たせ致しましたァ! Bグループ準決勝、アンツィオ高校対大洗女子学園! これを見なけりゃ戦車道ファンじゃない!」
王「実況はわたくし、奥茨城の気伝獣こと王大河。解説は変幻自在のくノ一戦法、島田愛里寿さんでお送りいたします」
愛里寿「いたします」
王「フードファイトにかける女たちが、この1戦に人生の変わり目を予感しています。負けられない戦いが、ここにある!」
王「さて、この場をお借りして広報さんから何やら発表があるようですが!」
桃「はい。現在戦車道フードファイト、視聴率は軒並み想定以上。ネット配信に関しては海外からのアクセスも集中し祭り状態となっているとのこと」
王「おお! 大成功じゃないですかぁ!」
柚子「これを記念して、大会主催から視聴者プレゼントをご用意致しました! ぜひぜひ振るってご応募ください!」
桃「応募方法は番組の最後に。豪華賞品が10名様に当たります」つ[国内限定]
愛里寿「もしかして干し芋?」
桃「…………」
柚子「…………」
王「カメラ止めて! ストップストップ!」
152: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:21:46.82 ID:ZgIUfqTIo
王「えー、はい! 気を取り直してまいりましょう! アンツィオ高校からは、出場選手はペパロニ選手に代わりまして、"食卓は私の遊園地"、ドゥーチェ・アンチョビ!」
<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
アンチョビ「うおっし! 気合い入れていくぞ!」
カルパッチョ「はい、ドゥーチェ!」
アンチョビ「って、ペパロニのやつはどうした?」
カルパッチョ「それが……ペパロニさんはお腹いっぱいになったみたいで、お昼寝してます」
アンチョビ「……そうか。まあ、アイツ頑張ったからな。次は私が頑張る番だぁーっ!」
<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
王「会場はドゥーチェコールに揺れております! セコンドにはカルパッチョさんとペパロニさん(予定)がつきます」
愛里寿「楽しみ」
153: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:23:22.08 ID:ZgIUfqTIo
王「続きまして大洗女子からは五十鈴華選手に代わり生徒会会長、"干し芋食べて50年"、角谷杏選手の出場です!」
愛里寿「セコンドはあんこうチームの皆さん」
沙織「華は控室で休憩中だけどね」
みほ「よ、よろしくお願いします!」ペコリ
杏「西住ちゃんたち、よろしくね」
王「さぁこの試合も因縁の対決! アンツィオ高校にとってリベンジマッチとなるのでありましょうか!」
愛里寿「これがホントのアンツィオ戦、というところを見せてほしい」
王「芝の匂いがしてきます。そこに広がるのは、私たちの戦車の歴史、20世紀を締めくくる戦場です」
王「アンツィオはここで終るのではありません。戦車道フードファイトBグループ準決勝、アンツィオ対大洗。勝つために戦います!」
154: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:24:33.73 ID:ZgIUfqTIo
杏「やぁやぁチョビ子。お互いがんばろうねー」
アンチョビ「チョビ子言うな。しっかしまぁ、舐められたもんだな」
杏「んー? なにがさ」
アンチョビ「例の隠し玉、五十鈴華を出さないってことは、決勝戦に温存ってことだろ?」
杏「まぁね。思ったより黒森峰がやるみたいだし」
優花里「ちょ、会長殿! あんまり手の内を晒しては……」
アンチョビ「それはつまり、お前でもこの私に勝てるってことか?」
杏「私も料理にはちょっと覚えがあるんでね」
杏「……そっちこそ、私のこと舐めてるんじゃないの?」
アンチョビ「はあぁ?」
王「フィールドでは既に舌戦が始まっておりますが、お二方ちょっと待ってください! 料理の紹介をさせてくださーい!」
杏「おっとそうだった。ごめんね、よろしく~」
アンチョビ「すまんすまん! 紹介頼んだぞ!」
愛里寿「Aグループと違って進行しやすい」
王「本当にそうですね(笑」
155: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:27:06.43 ID:ZgIUfqTIo
王「さてさて! 今試合、気になる食材はぁ~っ! こちらッ! ドンッ!」
\ 甘 口 パ ス タ (提供:喫茶マウンテン)/
愛里寿「電光掲示板に大きく出たね。でも今までこんな演出あった?」
王「今回はスポンサー様によるレシピ提供なので大々的になりました!」
杏「パスタか~。アンツィオのお家芸、こりゃ私が出たのは失敗かもね」
アンチョビ「マ、マウンテンの、甘口パスタ……だと……!?」プルプル
麻子「あのマウンテンってのは何だ」
アンチョビ「知らないのか!? パスタはパスタでも、マウンテンのパスタってのはなぁ……!」
カルパッチョ「名古屋の奇食。"喫茶マウンテン"で出される甘口スパのことですね」
カルパッチョ「その料理は挑戦的で激情的なカラヴァッジョ、あるいは新技法で人情的なダラピッコラのような芸術性があります」
沙織「奇食? 甘口?」
156: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:29:54.11 ID:ZgIUfqTIo
158: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:36:38.89 ID:ZgIUfqTIo
王「そのとーり! Bグループ準決勝は"登山"対決となります!」
愛里寿「行こう、行こう、火の山へ~♪」
<コンナカクゲンヲシッテル? ソコニヤマガアルカラ ジョージマロリーデスネ
王「何故人は山に登るのか。その問いに答えてはならない。とにかく登りに行け、とにかく登りに行け! フードファイトの山岳戦がここに始まるッ!」
左衛門佐「三増峠の戦いか?」
おりょう「いやいや。稲葉山、白河口の戦いぜよ」
カエサル&エルヴィン「「モンテ・カッシーノ=アンツィオの戦いだろ」」
愛里寿&歴女「「「それだ!」」」
カエサル「おお!? オクシュアルテスもそう思うか!」
愛里寿「モンテ・カッシーノ……ヴォイテク!」ニコ
159: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:37:31.20 ID:ZgIUfqTIo
杏「名古屋ってことはチョビ子の出身地じゃん。ますます私らには不利だ」
アンチョビ「いやいやいや! そうじゃない! むしろ、私だからこそあの恐怖を知っている!」
みほ「きょ、恐怖?」
アンチョビ「"遭難"、よくて"途中下山"……小さい頃、何度"登頂"を目指して失敗したことか……」プルプル
沙織「そんなに?」キョトン
アンチョビ「甘いものは嫌いじゃない。嫌いじゃないが、あれだけは……」
王「安心してください! なんと今回喫茶マウンテン様には特別に高校戦車道仕様の甘口スパゲティをご用意していただきました!」
アンチョビ「せ、戦車道仕様!?」
王「詳細は試合進行とともに説明いたします! 常に状況が変化する様はまるで戦車道ですね!」
愛里寿「お楽しみに」
160: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:40:01.94 ID:ZgIUfqTIo
審判「それでは、両者、礼!」
アンチョビ「い、頂きます……うぅ、不安だ……」ペコリ
杏「頂きますっと」ペコリ
審判「用意っ!」
\パパパパパウアードドンッ!/
王「さぁー最初の1品目は聖グロリアーナ女学院とスコットランドハイランドをイメージして作られた、"お紅茶スコーンスパ"だぁっ!!」
アンチョビ「ブフォ!! スパゲティにパッサパサのスコーンなんか入れるんじゃないッ!!」
沙織「うわぁ、食べにくそう」
カルパッチョ「サランラップをした上でにおいを嗅がされているような味気ない料理、って感じですね……」
杏「麺は見事に紅茶色……うん、味も紅茶の味がする」モキュモキュ
王「なお、これらの料理は試合終了後、観客の皆さまもお求めいただけます」
愛里寿「今大会限定商品」ンフー
<ドウスル? キネンニタベトク? ウーン…
161: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:41:08.14 ID:ZgIUfqTIo
杏「ん、おかわり!」
王「おおっと! 一抜けしたのはまさかの大洗角谷っ! パスタの国の王女様、今日はご機嫌斜めか!?」
アンチョビ「はぁ!? なんでそんなに早いんだ!?」
杏「まあ、いつも乾いたもの食べてるしね」ニッ
麻子「関係あるのかそれ」
王「さあ角谷の目の前に運ばれてきた2品目! 黒森峰女学園とブロッケン山のブロッケン現象をイメージして作られた"バームクーヘンスパ"だぁー!」
アンチョビ「殺す気かぁーっ!!」
みほ「お水もしっかり飲んでください!」
杏「おっ、これ麺にビールが練り込んである?」
アンチョビ「マジでか……」プルプル
愛里寿「黒森峰の学園艦で生産されているノンアルコールビールを使用とのこと」
王「どうやら美食のグルメマスターには少々刺激が強すぎるようです」
アンチョビ「私の口の中は砂漠地帯になってしまったぞ……」
杏「これがホントの砂漠パスタってか」ニシシ
カルパッチョ「ドゥーチェ! そろそろ本気出さないとマズいですよ!」
<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
アンチョビ「ええい、こうなったら第2次エル・アラメインだっ! うがーっ!」モグモグッ!
王「鉄のフォルゴレ! 無敵フォルゴレ! 角谷を抜き返した! イタリア軍最強伝説ここにありィーッ!」
162: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:42:33.52 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「うおおおっ!! 3品目寄越せぇっ!!」ハァハァ
王「ここにきて獅子奮迅の追い上げを見せたアンチョビ! 3品目はアンツィオ高校とマッターホルンをイメージして作られた"パスタスパ"だぁーっ!」
アンチョビ「……は?」
愛里寿「スパゲティの上にペンネ、ラザニア、マカロニなど、色んな形のパスタが乗ってる。たべっこどうぶつみたい」
王「その上からミルクジェラートが乗っているので、甘口スパの定義は守っています!」
アンチョビ「いやいやいや! 全体の味を考えろよ全体の味を!」
杏「そばめしとか、たこ焼きご飯のたぐいでしょ?」
麻子「イタリア版ライス定食だな」
アンチョビ「ほぼ小麦粉の塊だぞこれ!?」
163: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:43:38.52 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「よ、4品目ぇ……」ゼェゼェ
王「そろそろツッコミ疲れが溜まってきたドゥーチェアンチョビ! 待望の4品目は、継続高校とハルティ山をイメージして作られた―――」
アンチョビ(嫌な予感しかしなーーいっ!!)
王「―――"サルミアッキスパ"だぁーーっ!!」
アンチョビ「アホかぁーーーっ!!!!」
沙織「うわ、スゴイ臭い」
杏「くっさー」ニヤニヤ
アンチョビ「塩化アンモニウムの塊だぞ!? 本当に食うのか!? ハルティ山要素どこだよ!?」ウルッ
愛里寿「ガンバッテ(鼻声)」
王「場内に独特のフレーバーが漂います(鼻声)」
164: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:45:14.62 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「なんだよこれぇ……フードファイトというか、食欲減退競争じゃないかぁ……」ウップ
王「などと言いながらも現在アンツィオがリード! やはり4合目付近で差が歴然としてきました! アンチョビの胃袋はヴェスヴィオ山の火砕流の如く全てを呑み込んでいく!」
カエサル「ちなみにあの有名なポンペーイィーを呑み込んだウェスウィウスの山に開通した登山列車のCMソングこそがフニクリ・フニクラだ! これは世界最初のCMソングで、うーむ、どこから蘊蓄を垂らすべきか……」
カルパッチョ「たかちゃん、ちょっとあっちでプリニウスの話でもしない?」
カエサル「おお! 火山に死んだ男、不滅の名誉の男ではないか! 奴は軍人でありながら博物学者で……」
おりょう「早くその鈴木を連れて行くぜよ」
王「次の5品目は、知波単高校と富士山をイメージして作られた"あんこスパ"です!」
愛里寿「円錐のあんこの上に生クリームが乗ってる」
アンチョビ「お……おお? これは意外とまともなものが出てきたんじゃないか!?」
王「おっと? アンチョビ選手的にあんこスパはアリですか?」
アンチョビ「アリもアリ、大アリだ! 嘘だと思うなら一度食ってみろ!」
沙織「そうなの? 私も後で食べたい!」
愛里寿「でも、マウンテンの甘口スパゲティであんこ乗せは普通な気がする」
王「はい! なので今回は特別に"乾パンと氷砂糖"が入っております!」
アンチョビ「だぁーかぁーらぁーっ!!!」バンバンッ!
杏「あまあま♪」モキュモキュ
165: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:46:00.43 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「歯が折れる……硬ったぁ……」ジンジン
桂里奈「すごい! 地底戦車マグマライザーみたい!」
王「丈夫そうなアゴですねぇ~。きっと小さな頃からカタクチイワシをボリボリ食べたらこんな風になるのでしょう」
愛里寿「何言ってるの?」
王「6品目はプラウダ高校とエルブルス山をイメージして作られた、"シベリアスパ"です!」
愛里寿「有り体に言うと、ようかんカステラスパゲッティ」
アンチョビ「その3食品を全部別々に食べられたらどれだけ幸せだろうな!」クワッ
エルヴィン「なるほど。ブラウ作戦中にもかかわらずエルブルス山に登頂したドイツ軍山岳部隊をヒトラーが怒ったという、関係ないモノをくっつけてはいけない戒めが込められた一品なのだな」
優花里「それは無いと思いますぅ」
166: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:48:16.68 ID:ZgIUfqTIo
王「7品目はサンダース大付属とダイアモンドヘッドをイメージして作られた、"ドーナツアイスクリームスパ"です!」
愛里寿「おいしそう! 生クリームとチョコにバニラに、ミント、シナモン、クッキー、レーズン、ストロベリー!」キラキラ
優花里「確かに小さい子の目はダイアモンドのようにキラキラ輝くこと間違いなしですが……」
沙織「すごい色……」
麻子「目に悪い」
アンチョビ「もぐもぐ……うぅ、もう口が甘々だし、それに脂が重い……」オエッ
杏「あれ? チョビ子、まだそれ食べてるの?」モキュモキュ
アンチョビ「さすがの私でも舌と胃袋が拒絶反応をだな……って、ええっ!?」
王「な、なんと!? ここで大洗角谷が抜いた! ドゥーチェを抜いた! これはいったいどういうことでしょう島田さん!?」
愛里寿「カキ氷の時も言ったけど、甘味大食いは満腹感との戦い。シェフの舌を持つアンチョビさんよりも、女子高生の舌を持つ角谷さんの方が"別腹"を多く持っていた」
王「食に対するプロ意識が裏目に出てしまったアンチョビ! パスタ対決で敗北してしまうのか!?」
167: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:49:39.82 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「い、いや、ダメだ! この私がパスタ対決で負けるなんて、それだけはダメだ!」
アンチョビ「パスタにかける想いで、この私が負けるわけにはいかないんだーッ!」モグモグッ!
王「さぁ8品目は我らが大洗女子と筑波山をイメージして作られた、"干し芋スパ"です!」
愛里寿「芋アイスを中心にして、紅はるかの干し芋が中央に山状に盛り付けされてる」
アンチョビ「ほ、干し芋!?」
杏「え? なにこれご褒美?」
辻「ちょっと待ちなさい! いくらなんでも偏りすぎじゃないですか!?」
王「またあなたですか……で、何がご不満なんです?」
辻「パスタ勝負と言いながら、圧倒的に大洗が有利なのでは!?」
王「いや、作ったのは喫茶マウンテンのマスターですし……」
愛里寿「こちらが行なったのは、パスタ勝負が決まった後にお店を探して依頼しただけ。むしろパスタ勝負と決めたのはそちらでは? だって」
辻「せ、先生……。くっ、仕方ない……」
王「西住流宗家の一喝、効果はばつぐんのようです!」
168: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:50:23.50 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「……ひとつ聞かせてもらっていいか?」
王「はい、なんでしょう?」
アンチョビ「8校目が出たってことは、これで最後ってことなんだよな?」
王「そうなります! 今後は今までに出た甘口スパの中から自由に選んでいただく形になります」
アンチョビ「そういうことは試合が始まる前に言えよ……まあ、それはいいんだが」
アンチョビ「この干し芋パスタ、普通に美味い」
王「なんとっ!!」
アンチョビ「今まで私の力が全然発揮されなかったのは単に味がヤバかったり食べにくかったり甘すぎたりしたからだ」
アンチョビ「だがこれは、甘さも控えめだし、何より美味い」
アンチョビ「芋が歯につくこともなく、スパゲティが邪魔することもなく」
アンチョビ「なんていうか、素朴だ。田舎の味、と言ったら誤解されるが、旅先で偶然出会って安心するタイプの味」
アンチョビ「派手すぎず、あか抜けないやさしさ。そんな美味さだ」
169: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:51:57.20 ID:ZgIUfqTIo
――――――
ミーンミンミンミーン …
「おねーちゃーん! あっちに畑があるー! お芋畑ー!」キャッキャッ
「もう、そんなに走ったら危ないぞ」
「へーきへーき! あぷっ!」ベチャッ
「だから言ったろう? ほら、これで畑の泥を拭きなさい」
「いいの? このハンカチ、お姉ちゃんがお母さんからもらって大事にしてた……」
「ハンカチは洗えばいい。それよりも大事なものが、私にはある」
「お姉ちゃん……」
「お芋さん達に感謝しないとな。妹をケガから守ってくれてありがとう、って」
ミーンミンミンミーン …
――――――
170: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:53:40.96 ID:ZgIUfqTIo
愛里寿「あれ、なんでかな……パスタなのに懐かしい。日本人の心のふるさとの味」モグモグ
王「茨城鹿島のサッカースタジアムの空の向こうに、里山の青い空が近づいてきているような気がします……」モグモグ
沙織「って放送席でも食べてるんだ」
カエサル「共和政ローマの哲学者キケロの言は間違っていたようだ。汝は食うために生きるべし、生くるために食うべからず!」
杏「なぁーチョビ子ぉ。私が前に作ってやった干し芋パスタと、そのパスタと、どっちが美味い?」
アンチョビ「んーそうだな。あれはあれで美味かったが」
アンチョビ「―――すぐに飽きが来た」ニヤリ
杏「言うねぇ……」ニヤリ
アンチョビ「はむっ! んぐんぐ! ごくん! おかわり!」
杏「んっ! ちゅるちゅる! ぷはぁ! おかわり!」
王「ここに来て両者干し芋スパのおかわりのみを選択! 試合は干し芋パスタ対決の様相を呈してまいりました!」
愛里寿「今までの戦いはなんだったの」
王「ここまでくると純粋なフードファイトの地力が試されます! パスタ王国の王位継承者アンチョビが有利か!? はたまた干し芋の皇太子妃角谷が有利か!?」
愛里寿「角谷さんも全然負けてない。リードを譲る気なんて、無い」
王「勝ち残るのはアンツィオか、それとも大洗か。勝利の女神は時に厳しい選択を迫ります! パスタのサンベルナール峠を越えるのはどちらだァーッ!!」
171: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:56:18.37 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「はむっ! くそぉっ! ごくん! どうして私が負けてるんだぁ!」
杏「んっ! もぐもぐ! 奇襲成功だねっ!」
左衛門佐「桶狭間か」
おりょう「池田屋事件ぜよ」
エルヴィン「パールハーバーだな」
カエサル「いや、ハンニバルのアルプス越えだろ」
歴女「「「それだ!」」」
カエサル「進もう! 胃袋の神の待つところへ! アーレア・ヤクタ・エスト!」
王「アンチョビ抜けない! 抜けない! すごいフードファイトになりました! 泣いても笑ってもここがラスト3分! この戦いの果てには一体何が待っているんでしょうか!」
ホシノ「完全にテール・トゥー・ノーズ。会長がアンチョビさんを押さえてる!」
ツチヤ「ドリフトが出来ればなあ!」
王「安斎千代美と、角谷杏の差はこれだけ! たったこれだけ! 信じられないような凄い戦いになりました!」
愛里寿「これは妨害しない限り抜けない」
王「さあここはモナコモンテカルロ! 絶対に抜けない!」
172: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:57:11.12 ID:ZgIUfqTIo
アンチョビ「もぐっ! やるねぇ、意外に! はむっ!」
杏「意外なんかじゃっ! んくっ! ないよっ!」
アンチョビ「はぁ!? そんな小さい体のどこに入ってるってのさ!」モグッ!
杏「私がどうして四六時中干し芋を食べてると思う?」ングッ!
アンチョビ「……?」
杏「そう、燃費が悪いんだよねぇ。38(t)とは真逆でさぁ」
杏「私はモノを食べた瞬間、吸収しちゃうんだ」
杏「食べても食べてもエネルギーとして燃焼してしまう。そのせいで背も胸も小さいまま」
杏「だから腹持ちのいい干し芋をいつも食べてるってわけ」
アンチョビ「なにっ!? 好きだから食べてたんじゃなかったのか!?」
杏「そりゃまあ干し芋は好きだけどさ、あれがないと死んじゃうんだよ」
杏「私の趣味が料理なのも、自分のお腹を満たすために自然に身についたもの……必要から生まれたものだったんだ」
カエサル「他の人々は食わんがために生き、己れ自身は生きんがために食う、と」
杏「私にとって、食事は呼吸と一緒なんだよ」ニヤリ
アンチョビ「そんな……ことが……!」
173: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 09:59:08.29 ID:ZgIUfqTIo
杏「うちの次期生徒会長が誰だか知ってる?」
アンチョビ「はぁ? 知るわけないだろ」
杏「五十鈴華だよ。チョビ子もさっき見たでしょ、あの食べっぷりを」
アンチョビ「だからどうした!」
杏「どうしてこの私が、生徒会長の座をあの子に譲ることになったと思う?」
アンチョビ「そ、それは、選挙とかじゃないのか? 3年なんだし引退だろ?」
杏「……勝ったんだよ。あの子。この私にさ」
杏「"大洗の無限食欲"と呼ばれたこの私に、フードファイトで勝ったんだ!」ドンッ!
アンチョビ「なんだってぇーーっ!? 待て待て! ってことは、お前はあいつよりも弱いってことじゃないか!」
杏「チョビ子。五十鈴ちゃんに勝てると思った?」
アンチョビ「い、いや、全く思わなかった。この試合、出てこないと聞いて心底安心したくらいだ」
杏「そう。本来なら優勝候補とぶつかるこの試合、ホットドッグのダメージを考えても五十鈴ちゃんが出るべきだ」
杏「なのに出てない……。もうこれ以上説明しなくてもわかるだろ?」ニヤリ
アンチョビ「―――ッ!?!?」
杏「もひとつオマケにいいこと教えてあげる」
杏「私は1週間、干し芋を食べていないッ!!!」バァーン!
アンチョビ「なにぃ~~~~ッ!?!?」
王「全くもって意味がわかりません! フードファイターの極限状態は、言語を超越した意志疎通となっていた!」
愛里寿「アンチョビさん、ノリと勢いに付き合ってるだけのような」
優花里「本当は選挙が無効になったので会長自ら五十鈴殿を指名しましたよー」ヒソヒソ
カルパッチョ「そうなんですねぇ」
174: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:04:00.46 ID:ZgIUfqTIo
杏「だからチョビ子は勝てないよ。"チョビっとチョビ子"にはね!」モグモグ!
アンチョビ「―――ッ!!」カッチーン
カルパッチョ「ああっ!? 言ってはいけないあだ名を……」プルプル
アンチョビ「……おい審判。担架をひとつ用意しておいてくれ」
審判「は、はい?」
杏「へ?」
アンチョビ「私は"チョビっとチョビ子"じゃない。ドゥーチェ・アンチョビだ」
アンチョビ「お前、わざと言っただろ」
杏「……からかってんの?」
アンチョビ「いや、違う。ふざけてたってのは私にはわかるんだが、"私のドゥーチェ"は怒ってる。謝れば許すだろうけどな……」
杏「"私のドゥーチェ"? ドゥーチェはチョビ子じゃん。面白い冗談だねぇ」アハハ
アンチョビ「笑うのはやめた方がいい。"私の中のドゥーチェの魂"は、ドゥーチェを笑うやつが嫌いだっ! 自分がバカにされてると思うからなァッ!」ガバッ! シュババッ! シュババッ!
杏「―――いいィッ!?」
王「ひ、ひぇーッ! 電光石火のフォークさばき! セルジオ・レオーネが訴訟で勝ってしまうほどの早抜きです! パスタのファニングショットだぁー!」
<Oh! It'sスパゲッティセイブゲキ! セカイノクロサワデアリマス!?
175: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:07:24.36 ID:ZgIUfqTIo
王「アンチョビ猛追! しかしながら無情にも時は過ぎていた! アンツィオの勝利に黄色信号が灯りました!」
アンチョビ「うおおおおおっ!!!!」シュババッ! シュババッ!
杏「ぃよっしゃぁぁぁっ!」モグモグ
<ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!
王「残りあと10秒! アンツィオ高校あと10秒! 間に合うか! アンツィオはアンチョビ、間に合うか! 後ろではカルパッチョが声を掛けている!」
ビーーーーーーーーーーーッ!
審判「勝者―――」
大 洗 女 子 学 園 ッ !!
176: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:08:51.49 ID:ZgIUfqTIo
王「今、マウンテンの神、ここに降臨! その名は、角谷杏ゥッ!」
<ワーワー! クカンシン! カイチョォォォォォォォ! モモチャンハナミズデテルヨ
杏「やっぱ強いな、チョビ子は……っ」バタンッ
アンチョビ「どの口が言うんだ……ったく」
審判「あ、あの担架は……?」
アンチョビ「増えたぞ。2つだっ」バタンッ
カエサル「テルモピュライを守ったスパルタ兵のような勇敢な戦いぶりだったよ」
カルパッチョ「たかちゃん……。ううん、カエサル。また負けちゃった」
カエサル「いずれまた戦うこともあるだろう。その時を楽しみにしている!」バサッ!
おりょう「なんであいつが戦ったみたいになってるぜよ?」
左衛門佐「さあ?」
177: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:11:50.00 ID:ZgIUfqTIo
救護班「それではお2人とも運びますね」ヨイショ
ペパロニ「アンチョビ姐さぁぁぁぁんっっっ!!!!」ポロポロ
アンチョビ「ああ、今頃来たのか。次期ドゥーチェ」
ペパロニ「なんでっ!? こんな、ことに……ッ!」ポロポロ
杏「チョビ子の敗因はただひとつ。それはパスタに対する想いでも、チームを想う気持ちの差でもない……」
杏「干し芋の食べ方、だよ」
ペパロニ「た、食べ方……ッスか?」グスッ
アンチョビ「ああ、正直言って干し芋は食べにくい。食べ慣れてるかどうかが勝敗を分けたな」ニッ
杏「そゆことっ」ニッ
王「私たちは忘れないでしょう。アンツィオ高校という非常に強いチームがあったことを。カシマサッカースタジアム、空にはまだ、アンツィオ高校の太陽<オー・ソレ・ミオ>が輝いています」
愛里寿「廃校にはならないよ?」
178: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:12:34.61 ID:ZgIUfqTIo
王「さて、島田さん。優勝候補アンツィオの敗因はなんでしょうか。やはり干し芋ですか?」
愛里寿「……角谷さんのハッタリに呑み込まれたこと」
王「ハ、ハッタリですか?」
愛里寿「角谷さんが言ったことは全部嘘だと思う。干し芋の食べ方も含めて」
王「え、ええっ!?」
愛里寿「本当だったとしても、アンチョビさんの精神を動揺させ、ノリと勢いを完全に奪った角谷さんの作戦勝ち」
愛里寿「もしアンツィオが大洗の作戦を見抜いていたら戦局は大きく変わっていたかも」
王「そこのところどうなんですか西住みほさん!」
みほ「え、ええっと……でも、身体の負担をできるだけ減らす、というのは重要なことだと思います」
王「奥義、欺瞞作戦返し! 騙された方が悪いのだ! いやぁ、蓋を開けてみればとんでもない試合でした!」
愛里寿「視聴者プレゼント用の干し芋は全て使い切ってしまいました、だって」
王「んー残念! それでは、CMの前に現在の救護テントの様子、どうぞ!」
179: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:16:33.35 ID:ZgIUfqTIo
<救護テント>
救護班「困ります! まだ安静にしていてください!」
杏「いや、もう大丈夫だって。この後色々仕事もあるし」
柚子「私が会長のことをそばで見ておきますので……でも、本当に大丈夫なんですか?」
桃「会長が大丈夫だとおっしゃっているのだから大丈夫なのだろう」
杏「そそ。消化が良いのは本当だしね。それより、アンツィオに挨拶に行かないと」
柚子「そうですね。行きましょうか」
桃「このカーテンの向こうです」スッ
杏「あー、カルパッチョちゃん? ドゥーチェ・アンチョビに謝りたいんだけど」
カルパッチョ「大洗の会長さん。ドゥーチェは怒ってるようなことを言ってましたけど、ノリでああ言っていただけですのでお気になさらなくとも」
杏「んー、まあそうだろうなーとは思ってたけどね。それでもちょっと思うところがあってさ」
カルパッチョ「でも、あれはそういう勝負だったわけですし……」
杏「……最後の干し芋、持ってきたんだけど、食べる?」
カルパッチョ「ささ、どうぞどうぞ! ドゥーチェがお待ちです!」ニコニコ
杏「ども~」
180: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:18:18.89 ID:ZgIUfqTIo
杏「よっ、チョビ子」
アンチョビ「チョビ子って呼ぶな! って、よく来たな! 我が友よ!」ダキッ ホッペスリスリ
杏「なんだ、思いのほか元気そうじゃん。ベッドに居るって聞いたからもうぐっすり眠ってんのかと思ったよ」
アンチョビ「あのくらいでぶっ倒れてたらドゥーチェは務まらないからな! わかったか、ペパロニ!」
ペパロニ「勉強になるッス!」
杏「……それで、チョビ子。心の中のドゥーチェは、燃え尽きたか?」ニッ
アンチョビ「……いいや。燃え尽きるどころか燃え盛ってるさ。私の中じゃなく、ペパロニの中でな」ニッ
ペパロニ「へ? なんのことッスか?」
アンチョビ「台無しだぁっ! お前が次期ドゥーチェとして頑張っていくって話をしてるんだよっ!」
ペパロニ「そぉーだったんすかぁー!」
杏「こりゃ将来有望だねぇ」ニヤニヤ
181: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:19:21.15 ID:ZgIUfqTIo
―CM―
・・・協賛各社紹介・・・
ロイヤルサンドイッチ
アドリアーノ水産
昭和製氷
スターストライプフーズ
お惣菜のロマノフ
喫茶マウンテン
阿蘇ミート
(※実在の企業・団体とは関係ありません)
182: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:20:07.29 ID:ZgIUfqTIo
―CM裏―
<黒森峰控室>
エリカ「…………」
まほ「いよいよ決勝だな。緊張しているのか?」
エリカ「いえ……」
コンコン ガチャ
辻「失礼します。調子はどうですか、逸見さん」
まほ「貴方は、たしか……」
エリカ「上々です、お陰様で」チッ
辻「大洗の妨害はすべて失敗に終わってしまったが……まあ、例の薬さえあれば余裕でしょう」
まほ「ま、待て。何の話を? 薬……?」
辻「何、ちょっとした援助ですよ。私の援助は青師団のようなものと思ってください。基本的に中立を保ちます」
辻「では、正々堂々と頑張ってください」
ガチャ バタン
まほ「……エリカ。話してくれるな?」
エリカ「……申し訳ありませんでした、隊長」
183: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:21:58.66 ID:ZgIUfqTIo
―回想・数日前―
<文科省 とある一室>
辻「こちらが自律神経系を操れる薬。そしてこちらは胃酸の分泌量が3倍になる薬です」スッ
エリカ「……何ですか、これ」
辻「とある筋から手に入れた新薬ですよ。何、副作用などは気にしなくてもいい。貴女はまだ若いのですから」ククッ
エリカ「……それで、話とは何ですか」
辻「もし来年度、第64回高校戦車道大会で黒森峰が大洗に負けるようなことがあれば」
辻「その時は、黒森峰には廃校とまでは行きませんが、しかし、なんらかの然るべき処置はしなければならない」
エリカ「なんですって……!?」ガタッ
辻「それはそうでしょう。考えても見てください」
辻「62回大会では10連覇の王座を逃し、63回大会では急造チームに敗退。64回大会では天才西住まほは卒業済みだ」
辻「正直言って今後の黒森峰に期待すべきところは何もない、というのが世間の評価です」
エリカ「……っ」
184: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:23:20.43 ID:ZgIUfqTIo
辻「その凋落ぶりは火を見るよりも明らか。結果を出せない古い体制を維持させるほど、世の中は優しくないのです」
辻「ですが、私は違う」
エリカ「……?」
辻「天才の背中を常に見てきた貴女なら、きっと黒森峰を再建できると信じている」
辻「大洗を下し、王者の栄光を再びその手につかむのだと」
エリカ(ああ、なるほど。この人、大洗を潰したいのね。その意味では敵は同じってこと……)
エリカ「……へえ? それで?」
辻「今次のフードファイト、私が貴女に援助をしましょう。優勝すれば、黒森峰第三帝国の夢に確実に一歩近づくことができる」
エリカ「CMに出ただけで、新入生と義捐金がどれだけ集まるか怪しいところですが」
辻「黒森峰が優勝したら戦車道CMの出演だけでなく、それにかこつけてその他の宣伝にも使わせてもらいましょう」
辻「大洗が優勝したら……大洗が全面的に応援されるでしょうね。話題性はたっぷりですから。その時黒森峰は確実に噛ませ犬扱いだ」
エリカ「……っ!」
辻「逸見さん。貴女には、フードファイトでも大洗に勝つ以外の選択肢が無いんですよ」
辻「それだけじゃない。ここで勝てば、貴女には "大洗に勝った"という強い自己肯定感が芽生えることになる」
辻「例え戦車道ではなくフードファイトだとしても、今の貴女を支える精神的支柱は1本でも多く欲しいはず」
辻「西住まほ隊長を失った貴女には、喉から手が出るほどに、ね……」
エリカ「…………」
辻「さぁ。長年の黒森峰の名声を地に堕とした西住まほに代わり、貴女が全てを取り戻すのです。"逸見隊長"」ニヤ
185: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:24:01.65 ID:ZgIUfqTIo
辻「具体的には食材と対決カードを操作しましょう。黒森峰に有利なように、大洗に不利なように」
エリカ「できるんですか?」
辻「それと、こちらの薬を」スッ
エリカ(……なるほど。こんなヤバいものまで用意してくるなんて、相当本気みたいね)
辻「このことはくれぐれも内密に。もちろん、黒森峰の誰にも言ってはいけませんよ、傍受やスパイが得意な学園に情報が漏れてしまうかもわかりませんからね」
エリカ「……私からもいくつか条件があります」
辻「ほう?」
エリカ「まず、第1戦目は黒森峰対聖グロリアーナにしてください。食材は……そう、サンドイッチで」
辻「なに? それでは貴女が不利になってしまう」
エリカ「聖グロごときも倒せないなら、元々私には優勝する能力なんてないってことです」
エリカ「そのくらい、自力で勝ってみせる」
186: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:24:59.39 ID:ZgIUfqTIo
辻「まるでヴィルヘルム2世のような矜持だが、まあいいでしょう」
辻「もしもの時はこの薬を使ってくだされば」
―回想終了―
エリカ(聖グロに自力で勝てる自信はあった。あった、けれど……)
エリカ(私は、奴から貰った最初の薬を飲んでしまった)
エリカ(私は間違いなく、私が、勝てると信じていた)
エリカ(なのに、それ以上に、絶対に勝ちたかった)
エリカ(だって、私は"逸見隊長"になる必要があるから……)
エリカ("黒森峰の隊長"にならなければいけないから……)
エリカ(勝利を信じることと、絶対に勝つことは……)
エリカ(こんなにも、違うのね……)グッ
187: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/11(木) 10:25:40.11 ID:ZgIUfqTIo
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
ついに迎えた決勝戦。ま、またエリカさんなんですか!?
華さんにも陰謀の影が! 裏で糸を引いてたのはやっぱりあの人だった!
次回! フードファイト・ウォー。『みんな大好きハンバーグ!』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
188: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:03:05.98 ID:/nAi68fDo
___________________________
フードファイト・ウォー! 第7話 『みんな大好きハンバーグ!』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<廊下>
まほ「はぁっ……はぁっ……!」タッタッタッ
ガチャッ
<大洗控室>
まほ「みほっ!!」
華「はいっ?」モグモグ
まほ「はぁ、はぁ……五十鈴華1人か。みほはまだ戻ってないか?」
華「まほさん。ええ、皆さん間もなくピッチからお戻りになられると思いますが」モグモグ
ワイワイ ガヤガヤ
カエサル「いやー燃えたな。ローマ大火の如く燃えた」ツヤツヤ
桂里奈「次は決勝! 楽しみ!」
園「でも大洗だけ試合間隔が短いのは不公平だわ!」
ねこにゃー「きっと何かの陰謀だにゃ!」
みほ「あはは……って、お姉ちゃん?」
まほ「みほ……」
189: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:03:42.56 ID:/nAi68fDo
優花里「むっ。敵情視察ですか?」
まほ「いや、違う。そう思われても仕方ないと思うが、信じて欲しい」
みほ「うん。疑ってなんてないよ。それで?」
まほ「……エリカの現況について、報告に来た」
左衛門佐「敵に塩を送りに来たのか」
おりょう「獅子身中の虫か?」
カエサル「和平工作をしに来たわけではなさそうだが」
エルヴィン「欺騙による敵軍指導部の撹乱により心理的優位を保持しようということだな」
沙織「カバさんチームは話をややこしくしないで!」
みほ「エリカさんがどうかしたの?」
まほ「ああ。このままでは……」
まほ「エリカが、危ない……!」
190: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:05:02.38 ID:/nAi68fDo
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
まほ「―――というわけなんだ」
桃「またアイツか! 何度も何度も大洗の邪魔をしてくれおって!」
園「しかも今度は逸見さんまで巻き込むなんて! 天が許してもこの風紀委員長園みどり子が許さないわ!」
梓「これ、公にしちゃえば試合放棄できますよね?」
杏「いや、話はそんなに簡単じゃない」
優花里「会長!」
まほ「ああ。もしそんなことをすれば黒森峰の……逸見エリカの評判は地に落ちる。良くて戦車道出場停止処分だ」
柚子「既に共謀しているわけですからね」
典子「でもそれは半ば脅されてたわけで!」
まほ「脅しがあったとしてもエリカは薬を飲んだ上、食材や対戦カードの操作を依頼した」
麻子「プラウダの冷気発生装置による妨害とはわけが違う。あれはただの"反則"だが、こっちは"不正"。大会を根本的に否定することになる」
みほ「エリカさん……」
191: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:07:15.16 ID:/nAi68fDo
まほ「みほ……すまない。結局エリカの暴走を止めることはおろか、その不安定さに気付くことすらできなかった」
まほ「私は道をふさいだ岩石、小さな障害物にすぎず、流れを食い止めることはできなかった」
まほ「もう、どうしたらいいか……」クッ
華「……だったら、私が勝てばいいだけです」
まほ「なに……?」
麻子「あの役人も逸見さんも大洗打倒のために色々こそこそやった。だが、それでも大洗が勝ってしまえば」
沙織「あそっか! こそこその部分はどうでも良くなっちゃう!」
優花里「いやいや待ってください! 西住まほ殿の話によれば逸見殿は食べたものを全て吐いていたとのこと! 一方五十鈴殿にはホットドッグのハンデがあります!」
ねこにゃー「五十鈴さんでも勝てるかどうか……」
カエサル「まるで古代ローマ貴族のような食べ方だが、それはそれで体力を消費しているはず」
エルヴィン「いや、どうだろうな。その胃液3倍薬を使われたら、やはりこちらに勝ち目は無いのかも知れない」
優花里「それに仮に勝ったとして、こそこその部分は隠し通せるとしても、その後の黒森峰や逸見殿はどうなってしまうのですか!?」
みほ「……そこは、エリカさんと話し合ってみる。お姉ちゃんと一緒に」
まほ「みほ……」
「ククク……取らぬアンコウの皮算用、ですか」
優花里「あ、貴方は!」
192: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:08:27.99 ID:/nAi68fDo
杏「よくもまあいけしゃあしゃあと顔を出しますね……逆に感心しますよ」
辻「西住まほさんが逸見さんから聞いたという妄想話の証拠は何もないでしょう?」
まほ「っ……!」
柚子「フードファイトに薬物検査は無いですからね……」
園「それで、大洗に何の用ですか」
辻「そろそろスタンバイをお願いしますという事務連絡ともう1つ……五十鈴華さんにお菓子の感想を聞きたくてね」
沙織「お菓子の?」
みほ「感想?」
華「―――っ!?」ドキッ
まほ「……そう言えば先ほど彼女は1人でなにやらお菓子を食べていたようだったが」
優花里「って、何ですかこのお菓子の空き袋の量!? これ全部食べちゃったんですかぁ!?」
沙織「そんな大げさな……って、ええ!? こんなに!?」ビクッ
麻子「試合前だぞ!? 何考えてるんだ!?」
華「つ、つい……」
193: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:10:03.02 ID:/nAi68fDo
桃「これも貴方の差し金ですか……っ、やることがこすいぞ!」
辻「何のことでしょう。そもそも彼女には"食べない"という選択肢があった。いや、常人であればフードファイト中に間食など食べるわけが無い」
みほ「どうして食べちゃったの!?」
華「……手紙が同封されていたんです。"応援してます、頑張ってください"と」
華「お気持ちのこもったものなら頂かないわけにはいきません。それで、少しだけ、と思ったら、これが存外おいしくて……」
沙織「ブレーキが利かなくなっちゃった、と」ハァ
優花里「そこが唯一の五十鈴殿の弱点でしたね……」
麻子「西住さんが居ないタイミングを狙っての犯行。計画性がある分タチが悪い」
まほ「急ごしらえでよくそこまで悪知恵が働くものだ」
華「あのお手紙は、嘘、だったのですね……」
辻「とにかく。今五十鈴華の胃袋にはホットドッグだけじゃない。大量のお菓子も詰まっている」
辻「本当に大洗が勝てるんですかねぇ?」ニタァ
華「……わたくしから1つ、貴方に言いたいことがあります」
辻「ほう? なんでしょう」
華「―――お菓子、大変おいしゅうございました」ペコリ
194: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:10:35.39 ID:/nAi68fDo
辻「……っ!? つ、強がりを!」
華「いいえ、これは本心です。強がりでもなんでもありません」
華「美味しいものを食すことは、わたくしにとってなんら苦ではないのです」ニコ
辻「……ふんっ。なに、すぐに結果が出る。楽しみに待っていますよ」クク
ガチャ バタン
桂里奈「やなかんじィー!」イーッ
華「皆さん、お見苦しいところを見せてしまい、大変申し訳ありません」
沙織「何言ってんの! あの人、華の善意を利用したんだよ!?」
麻子「沙織、その話はあとだ。さすがに時間がない」
優花里「行きましょう。私たちの戦場へ」
みほ「……行こう!」
195: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:13:09.29 ID:/nAi68fDo
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
王「戦車道、そしてフードファイトを愛してやまないファンの皆さま、こんにちは。王大河です」
王「戦車道フードファイト決勝、最終試合の模様をお届けしてまいります! いやーもう、ここまでの激戦ぶりで既にお腹いっぱいですが! で・す・が!」
王「視聴者の皆さま、メインディッシュはこれからです! よだれを拭いてお待ちください!」
王「解説は、おいらボコだぜ! でおなじみ。島田愛里寿さんですっ!」
愛里寿「そ、そんなにおなじみかな?」
王「そんな島田さんから、決勝へ向けての檄をお願いします!」
愛里寿「うん。すぅ、はぁ……」
愛里寿「―――フードファイト。それは、魂の扉」
196: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:16:49.36 ID:/nAi68fDo
ただひたすらに食べる。それがフードファイト
戦略があろうと、個人の技能があろうと、結局は食うか食われるか
シンプルにして、それでいて真理……そこにあるのは、純粋な勝負の世界
わずかでも曇れば食われると同時に、隙さえあれば射抜くことができる
ここは、神が与え給うた極上のコロッセオ
顕現せしは、人類が創り出した料理文明の深淵
その勝負の味は、何を食べても得ることができない至福の頂き
さあ……今こそ、精神の極限まで食らい尽す時!
197: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:21:07.30 ID:/nAi68fDo
<ワーワー! イイゾー! ヤレヤレー! コロシアエー!
王「さぁ大きな歓声です! スタジアムが一斉に揺れています! 場内今日一番の盛り上がり!」
愛里寿「すごい」
王「決勝は奇しくも黒森峰vs大洗という今年の全国大会と同じカードとなりました! またしても大洗が勝利に酔いしれるのか、それとも黒森峰が溜飲を下げるのか!」
王「それでは選手紹介です! 黒森峰女学園からはまさかの3連続登板! 胃袋の宇宙開発競争、いつ~~~み~~~ッ、エ~~~~リカ~~~ッ!!!」
エリカ「…………」
まほ「…………」
王「大洗女子学園からは史上最強のフードファイター! お腹がいっつも空薬莢、いす~~~ず~~~ッ、は~~~~な~~~ッ!!!」
華「よろしくお願いします」ニコ
みほ「よろしくお願いします」ペコリ
王「決勝戦、セコンドは1名のみ! それぞれ西住まほ、みほ姉妹がついております!」
愛里寿「決勝の審判は蝶野1等陸尉」
<グッジョブベリーナイス!
王「さあ! 2人が優勝を懸けてチャレンジする料理はッ! 決勝にふさわしい王者の料理は~~~ッ!!」
王「ハンバァァァァァァァァァァァァァァァァグ!!!!!!!」
ハンバァァァァァァァァァァァァァグ
ハンバァァァァグ (※エコー)
198: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:21:53.60 ID:/nAi68fDo
<観客席>
辻「おおっありがたい! 私はハンバーグが大好物なのだ! たっぷりソースのハンバーグは男の子の味だ!」
おりょう「しらじらしいぜよ……」
<放送席>
王「五十鈴選手はよく学食でハンバーグ定食を食べているとの情報ですが、島田さんはハンバーグはお好きですか?」
愛里寿「好き。目玉焼き乗せたのとか。この間、メグミたちにハンバーグ作ってもらったの、とってもおいしかった!」ンフー
<タイチョー! アイシテマス! ソノエガオデオナカイッパイデス!
王「みんな大好きハンバーグ! 最終試合に限りまして、"総カロリー"による勝負となります!」
愛里寿「総カロリー?」
王「それではご説明いたしましょう!」
199: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:24:05.25 ID:/nAi68fDo
王「本試合、メイン料理はハンバーグですが、付け合わせのポテトやコーン、ソースやバター、そしてライスも含めてのカロリーの累計で計算されます!」
王「例えば! 150gのレギュラーハンバーグ・中ライスの場合783kcalですが、ライス大盛では+168kcal、ライス小盛では-134kcalとなります」
愛里寿「なるほど」
王「制限時間内により多くのカロリーを平らげることができた方が勝利! そこに皿の枚数やハンバーグのグラム数は関係ありません!」
愛里寿「お米ばっかり食べてもいいの?」
王「残念ながらライスのみの注文はできません。しかし、1gあたりのカロリーはおよそ炭水化物が4kcal、脂質が9kcalなので、ハンバーグを中心に食べた方が若干有利と思われます!」
200: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:24:50.57 ID:/nAi68fDo
愛里寿「ってことは、お肉の多いメニューを選べば効率が良いのかな」
王「今回特別に用意された料理の種類も豊富です!」
王「チーズハンバーグ、和風ハンバーグを始めとして、目玉焼きハンバーグ、ビーフハンバーグ、ハンバーグカレー、ロコモコ丼、オムハンライスなどなど、対戦者の舌を飽きさせない仕様となっております!」
愛里寿「各料理が大テーブルにずらっと並んでる! すごい、夢みたいな会場!」キラキラ
王「精鋭スタッフが選手の注文した料理を全速力で運んできます! なおスプーン、フォーク、ナイフやお箸のたぐいは大小各種取り放題、交換し放題となっております」
王「制限時間いっぱい、このハンバーグの桃源郷を満喫し、カロリークイーンの座を手にするのは一体どちらなのでありましょうか!」
201: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:26:52.47 ID:/nAi68fDo
王「それでは各選手に意気込みを伺ってみましょう! 黒森峰、逸見エリカ選手。今の心境は!」
エリカ「……現在、我が黒森峰には先の大戦の敗北機運が蔓延しています」
エリカ「私の目標は、この空気感から脱却し、黒森峰を頂点とするニューオーダーの樹立」
エリカ「そのための第1歩となるこの1戦……大洗を倒し、必ずや勝利を掴んでみせます!」
王「逸見エリカこそはこの世に比類なき勇者であり、彼女が掴むのはフードファイトの戦闘旗であります!」
王「続きまして、大洗女子、五十鈴華選手。いかがでしょう!」
華「聞こえます。彼らの声が」
華「お皿の上で、私を味わって食べてくださいと訴えているのです」
華「ならば、わたくしのすべきことはただ1つ」
華「頂きますと、感謝を捧げることだけです」ニコ
王「五十鈴華が五十鈴華であることを証明すれば大洗は勝ちます! まもなく試合開始ッ!」
202: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:27:36.04 ID:/nAi68fDo
華「逸見さん。わたくし、勝ちに行かせてもらいます」
エリカ「……? 当然でしょ? そのためにここまで来たんじゃない」
華「言い方を変えましょう。大洗は必ず黒森峰を負かします」
エリカ「へえ。らしくないわね、挑発なんて」
華「挑発ではありません。事実を述べているだけです」
エリカ「……何がしたいの」
華「わたくしはまた黒森峰と、逸見さんと、戦車に乗って戦いたいのです」
華「笑顔のままで」ニコ
エリカ「……だったら」
エリカ「だったら譲りなさいよ……っ」
エリカ「黒森峰が笑って戦うためには、大洗に勝たれるとダメなのよ……!」プルプル
華(逸見さん……。わたくしが必ず、貴女をその呪縛から解き放ってみせます!)
蝶野「両者、礼!」
エリカ「……いただきます」ペコリ
華「いただきます」ペコリ
蝶野「2人とも頑張ってね。……用意ッ!」
\パパパパパウアードドンッ!/
203: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:29:15.06 ID:/nAi68fDo
王「さぁ戦いの火ぶたが切って落とされたァ! スタートダッシュを決めるのはぁ~っ!?」
エリカ「悪いけど、最初から全開で行かせてもらうわッ! ハァァァァ……!」コォォォォ!
王「で、出たーッ! 逸見選手の"自律神経系"! 厚みのある肉に喰らいついていく! ヴェルダンのミートグラインダーエリカッ!」
愛里寿「逸見さんの食べ方は縦方向に特化している。薄いものより厚みのあるもの、丼ものなどを優先的に消化していく戦法」
王「やはり最大グラムの300g肉厚ハンバーグを狙っていく逸見! 効率重視で高カロリー摂取を企んでいる!」
華「付け合わせのポテトもおいしいです。良いジャガイモですね」ホクホク
王「しかーしッ! ここは絶対君主五十鈴華! スタート開始から既に殲滅戦理論を展開! 歴史を逆行していくーッ!」
愛里寿「たぶん、法則性無く食べてる。ライスも食べてるから、気の向くまま?」
王「あぁ、なんということでしょう。なんの罪もない料理たちが腹ペコ連合に爆撃されていきます! ハンバーグのゴモラ作戦だぁー!」
エリカ「はむっ! はむむっ! はっ! むっ!」モグモグッ!
華「お速いですね……!」スッ スッ
エリカ「マジックショーやってる貴女に言われたくないわ!」モグモグッ!
華「聖グロ戦の時より"3倍"速いのでは……?」スッ スッ
エリカ(まさか知ってる? 隊長が話したの……?)モグモグッ!
まほ「…………」
エリカ(いや、構わない。勝ちさえすればどうとでもなる!)モグモグッ!
204: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:30:22.71 ID:/nAi68fDo
王「島田さん! 大洗サイドには何か戦略のようなものはあるのでしょうか?」
愛里寿「ペースの調整をする必要がないから……もしかしたら作戦なんて無いのかも」
王「そこんところどうなんですか西住タイチョー!」
みほ「わ、私のことだよね。えと、華さんには自分のペースでってお願いしてあります」
王「マイペェス! 華道で培われた究極の集中力が食事の時間を支配するっ!」
王「智謀をかなぐり捨て、己が身ひとつで肉の機甲師団に突っ込んでいく五十鈴華! 彼女はご存知の通り人間ではありません! 人間の皮を被ったパンツァーシュレックです!」
華「粗挽きで肉の触感が強く、噛むとじゅわ~っと肉汁が……」ホフホフ
エリカ(くっ、やはり化け物か五十鈴華!)モグモグ
エリカ(この悔しさが、惨めさが、悲しさが私を強くする。そして強大な敵こそが、真に私を偉大にしてくれる……)モグモグ
エリカ(だったら……私だって!!)モグモグ!
205: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:31:29.96 ID:/nAi68fDo
エリカ「バレてるみたいだから教えてあげるわ! 今の私の胃袋には3倍の消化液が出てる! 消化力は100キロトンカロリーよ!」ドンッ!
華「っ!」
エリカ「食器は使い放題って言うから、使わせてもらうわ!」パシッ!
みほ「ナイフとフォークを2本ずつ!? 計4本!?」
まほ「それを交互に!?」
王「あ~~っと、ここで二天一流の改造版! 逸見、知波単西の技を盗みましたっ!」
華「に、二刀流……」
エリカ「100+100で200キロトンカロリーッ!」シャキーン!
王「それだけじゃないッ! これは、ソ連の超人の……!」
エリカ「さらに今の私は自律神経系を刺激し、通常の2倍の消化量!」
エリカ「そして3倍の回転デスロールを加えれば……!!」グルングルン!
エリカ「五十鈴華ッ! 貴女をうわまわる1200万キロトンカロリーよぉーッ!」シュバババッ!
優花里「威力増大のゲルリッヒ理論!? 完成していたんですか……」
エルヴィン「いや、むしろフラー理論の1919計画に基づいた多砲塔戦車NbFzだろう」
歴女&優花里「「「「それだ!」」」」
206: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:40:02.67 ID:/nAi68fDo
エリカ「うおおおおおっ!!!!」シュバババッ!
王「両腕と回転を用い、全身でハンバーグを壊滅させていきます逸見! 彼女が通った後には肉汁1滴残らない! 1人民族強制移動!」
愛里寿「えっ!? 摂取ペース、五十鈴さんを追い越した!?」
みほ「っ!?」
まほ「っ!?」
王「ここで逸見が五十鈴のペースを上回ったーッ! 総力戦! 総力戦です! トート機関の24時間営業!」
王「我々は生物進化論の最先端研究に立ち会っているのでありましょうか! このままでは五十鈴の合計摂取カロリー量を追い越すのも時間の問題だーッ!」
エリカ「今のうちにベルゲパンターでも用意しておくといいわッ!!」シュババッ!
華「は、速い! このままでは……っ」アセッ
みほ「華さん!」
華「はい、みほさん!」
みほ「―――そのまま、ペースを維持してください!」
207: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:45:05.36 ID:/nAi68fDo
華「ッ!?」
まほ「ッ!?」
エリカ「―――ッ!?」
王「ぬゎーッ! 血迷ったか軍神西住ィッ! 砲身を突き付けられ、それでもなお平然としていられる人間がこの世のどこに居るのでありましょうか!」
愛里寿「ど、どういうこと……?」
みほ「華さん、お願い!」
華「……了解です!」スッ スッ
エリカ「明らかな失策ね! 軍神などと呼ばれながら、学校で習ったのはナイフとフォークの持ち方だけだったのかしら!?」シュババッ!
エリカ(いや。みほのことだから何かあるのかも……ッ、何を心配してるのよ私!ああ、鬱陶しい!)シュババッ!
エリカ(いつも私の邪魔ばかりして……考え付く限りの手段で妨害してぇ……ッ!)シュババッ!
エリカ「この戦争はァッ!! 私の勝ちよォッ!!」シュバババッ!!
王「こぉこぉでぇ逸見が五十鈴を超えたぁーッ!! 生身で戦車を撃破しやがりました! このまま大洗はフレンスブルグと成り果ててしまうのかぁーッ!?」
みほ(私のすべきことは、エリカさんを救うこと。黒森峰が辛い時でも、乗り越えられるように支えてあげること)
みほ(だって、私がそうやってみんなに支えてもらったから……!)
みほ(お願い、私を信じて……! 私の戦車道は、みんなの戦車道だから!)
208: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/12(金) 23:49:28.87 ID:/nAi68fDo
―次回予告―
♪エンター エンター ミッショーン ~
エリカさん、ごめんね。私、貴女の想いを大切にできなかった……
ううん、でも、だからこそ……!
次回! フードファイト・ウォー最終回。『それぞれの決意を胸に』
みんなで一緒に、パンツァー・フォー!
♪ダカライッショ カモン!
209: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 16:46:08.75 ID:MagdSq8Bo
_________________________
フードファイト・ウォー! 最終回 『それぞれの決意を胸に』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【LIVE】 ―戦車道フードファイト―
王「こぉこぉでぇ逸見が五十鈴を超えたぁーッ!! 生身で戦車を撃破しやがりました! このまま大洗はフレンスブルクと成り果ててしまうのかぁーッ!?」
エリカ「私は隊長の夢を叶えるッ! 隊長だって、自分の夢を私に託したはずよッ!」シュババッ!
<観客席>
エルヴィン「世界首都クロモリミネアでも作るつもりか?」
おりょう「言ってる場合じゃないぜよ!」
沙織「ちょっと!? これマズいんじゃない!?」
ホシノ「どうしたコ・ドライバ―! どうしてそこでアクセルを踏ませないんだ!」
優花里「もしや例のお菓子がここにきて邪魔を!?」
典子「こ、根性が、出ない……!」
梓「まさか隊長、わざと負ける気じゃ!?」
左衛門佐「確かに、例の不正を知ってるのは私たちと西住の姉だけ。わざと負けて黙ってるのが一番手早い」
カエサル「だがそうなればあの役人が逸見の弱みを握ることになる。傀儡国家黒森峰の誕生だ」
桃「もうダメだぁ!!」ウワァン!
杏「まぁ信じてみようよ。西住ちゃんと次期会長を、さ」
ねこにゃー「あ、あの、ちょっといいかな……?」
園「どうしたの? もしかして、西住さんの真意がわかった!?」
210: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 16:46:57.96 ID:MagdSq8Bo
ねこにゃー「前に、アリクイさんチームでクックファンに行ったんだ」
柚子「ああ、戦車カツのお店ですね! 大きなとんかつにコロッケが乗った」
ねこにゃー「筋トレの後にお肉を食べて、筋肉を強化しようって」
ももがー「せっかくだからフードファイトしようってことになったナリ」
ぴよたん「そしたら、一番食べるのが遅かったねこにゃーが一番多く食べたぴよ」
麻子「ほう……何故だ?」
ももがー「ちょっと最初から飛ばし過ぎたモモ。お腹が重くなっちゃって」
ぴよたん「私はお肉ばっかり食べてたからかな……」
ねこにゃー「ボクはわりと普通に食べてたにゃ。ご飯も、お野菜も」
梓「じゃ、じゃあ、ゆっくり食べた方が結果的に多く食べられるってことですか!?」
優花里「マズルブレーキでガスを逃がすことにより少しでも大口径高初速の弾を撃てる、ってことですね!」
「みほは経験的にそれを知っていたのでしょうね」
優花里「あ、貴女は……!」
211: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 16:48:14.49 ID:MagdSq8Bo
沙織「みぽりんのママ!!」
しほ「…………」
優花里「に、西住流宗家、西住しほ殿ではないですか。えっと、つまり、どういうことですか?」
しほ「逸見エリカはカロリーの最大効率で食事をしている。一方、五十鈴華はいわゆる"三角食べ"を実践している」
しほ「適度に米や野菜を胃袋に入れることで肉の消化を促しているのよ。そうしないと胃袋にはダメージが蓄積してしまう」
しほ「制限時間はあと3分。逸見エリカはあのペースで最後まで食べ続けることはできない」
大洗一同「「「ッ!!」」」
しほ「必ず限界が来る。今、彼女の胃袋は悲鳴を上げていることでしょう」
優花里「最強戦車のティーガーといえども欠陥を背負わざるを得ない構造になってしまった、ということですか……」
麻子「ああ、転輪が外れたアレか。この戦いも、楔を打ち込んで浸透突破などというのは悪手だということだな」
しほ「胃液が増えようと、代謝が増えようと、"時間当たり"の吸収力の限界値はそう簡単には引き上げられない」
桂里奈「でも逸見さん、すごい必殺技でしたよ!?」
しほ「強さにロマンなど要りません。必要なのは堅実さだけ」
優花里「ポルシェじゃなくヘンシェル、シュペーア的ということですね」
しほ「己の肉体<スペック>への過信・慢心を犠牲にせずして、真の勝利はあり得ないのです」
212: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 16:54:05.69 ID:MagdSq8Bo
王「逸見エリカ独走ォォ~ッ! メッサーシュミット Me262でさえ彼女の前に出ることは許されません! 奴の胃袋はヴンダーヴァッフェンだ!」
<ヴーヴァナドソンザイシナイ!
エリカ(勝った……っ)
エリカ(勝ったッ!!! 勝った、勝った、勝った、勝った―――)シュバッ!
エリカ(勝ったぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!)シュババッ!
エリカ「アハ、アハハ! やった、やった! ホントに勝ちを譲ってくれるなんて! 優しいのねぇ五十鈴華ァ!」
華「まだ試合は終わっていませんよ、エリカさん。美味しいお料理は最後まで味合わないと」
エリカ「おい……しい……?」
華「わたくし、ハンバーグは大好きですのでいくらでも食べられます」ニコ
エリカ「ハッ、たわ言を! だったらどうして貴女は負けてるのかしら!?」シュババッ!
エリカ「もはやこの差は覆せない! これで黒森峰は――――」ドクン
エリカ(―――あれ?)
エリカ(おいしいって……)
エリカ(なんだっけ……?)プルプル
213: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 16:55:49.42 ID:MagdSq8Bo
エリカ「うぅっ!? うぇっ、っぷ、んぐ!!」ギュッ
まほ「エリカッ!?」
みほ「エリカさん!?」
王「もはや優勝は――――っとぉ!? 逸見、両手で口を押さえている! ここにきて履帯破損! 食事の手が停止してしまったぁーッ!」
<観客席>
優花里「まさかホントに!?」
しほ「胃袋が脳に指令を出したようね。もう食べられない限界だ、と」
麻子「この状況では脳を胃袋が支配しているのか……」
しほ「もはや彼女は何も口にできない。何を食べても砂を噛むようなもの」
<放送席>
愛里寿「こ、こんなことが……まさか、みほさんはこれを読んでいたの?」
みほ「そ、そんなことできないよ! エリカさん、しっかりして!」
エリカ(くそ! くそくそくそぉっ! こんなところで、こんなところで立ち止まってる場合じゃないでしょ、逸見エリカッ!)ウルッ
エリカ(どうしたって言うのよ私の身体!? 肉ぐらい無理にでも詰め込みなさいよ!! なんで、どうして言うことを聞かな―――)
エリカ(――――吐き癖がついてる……)
214: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 16:58:21.25 ID:MagdSq8Bo
まほ「エリカ、大丈夫か!? 救護班! 救護班ッ!」
エリカ(ああ、隊長……また私は、隊長のもとへ駆けつけることが叶わないのですね……)ポロポロ
まほ「もういい! お前はよく戦った! それで十分だ!」
王「しかし大洗五十鈴! 既に開いたこの差をあと1分で埋めることができるのかぁっ!?」
エリカ「!!!」
エリカ「まだ、負けてない……まだ、戦える……」ユラッ
まほ「やめろエリカ! もうやめてくれっ! 頼む……っ!」
エリカ「隊長の……名誉の、ために……!」ギリッ
王「ぬゎーっんとぉーっ!? 逸見、フラフラになりながらもハンバーグに手を伸ばします! 残りあと40秒! これでは五十鈴も成すすべ無しかぁ!?」
華「いいえ。あと1皿でいいはずです」モグモグ!
エリカ「このぉ……っ!」
215: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 16:59:10.16 ID:MagdSq8Bo
エリカ「五十鈴―――」
『わたくし、ハンバーグは大好きですのでいくらでも食べれます』
エリカ「華―――」
『ハンバーグは大好きですのでいくらでも』
エリカ「貴女の―――負けよ―――!」
『ハンバーグは大好きですので』
216: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:03:49.60 ID:MagdSq8Bo
―――回想―――
<黒森峰女学園 食堂>
まほ「副隊長就任、おめでとう。今後ともよろしく頼む」
エリカ「……ご期待に添えるよう精いっぱい務めます」
まほ「そんなに固くならなくていい。ティーガーⅡの……いや、エリカの活躍には既に十分信頼を置いている」
エリカ「あ、ありがとうございます」テレッ
まほ「確かにみほの抜けた穴を埋める形になってしまったことは申し訳ないと思う」
まほ「だが、我々はチームだ。組織の勝利は団結と連帯で……っ」
エリカ「た、隊長?」
まほ「すまない、説教臭くなってしまった。本当はエリカの就任祝いをしようと思っていたんだ」
エリカ「ええっ!?」ドキッ
まほ「下級生からエリカの好きなものを聞いてな……作ってみた」スッ
エリカ「これは、お弁当、ですか?」ドキドキ
217: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:04:33.45 ID:MagdSq8Bo
パカッ
エリカ「かわいいハンバーグ……」ニヘラ
まほ「ハンバーグ弁当。幸いここは黒森峰だ、栄養科を訪ねたらハンバーグの材料から調理法からすべてが揃っていた」
まほ「ま、まぁ、だからと言って上手くできるわけではないが」
エリカ「でも、どうしてです? だって、みほの就任の時は何も……」
まほ「理由は後で答える。取りあえず食べてみてくれ」
エリカ「は、はいっ! いただきますっ!」パクッ
エリカ「…………」モグモグモグ
まほ「ど、どうだ?」
エリカ「…………」モグモグ
エリカ「…………」モグ ゴクン
エリカ「美゛味゛し゛い゛っ゛」ブワッ
218: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:05:37.10 ID:MagdSq8Bo
まほ「そうか。良かった」ホッ
エリカ「世界で一番美味しいです! 人生で一番美味しかったですッ!」ウルウル
まほ「……これが黒森峰の味だ。もし辛い時、苦しい時は、この味を思い出してほしい」
エリカ「た、隊長?」グスッ モグモグ
まほ「これからエリカは副隊長として、さまざまな困難に立ち向かわなくてはならない」
まほ「そういう時、常に原点は黒森峰にあってほしいんだ」
まほ「黒森峰のハンバーグを美味しく食べるため……そのためならどんな苦境も乗り越えられる。そういう気概を持て」
エリカ「は、はいっ!」ビシッ!
まほ「まぁ、これはアンツィオの隊長からの受け売りだが」
まほ「黒森峰の良さも思い出すことで、黒森峰から"離れないように"してほしいんだ……」
エリカ「……っ」
219: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:06:47.02 ID:MagdSq8Bo
エリカ「約束します。私が隊長の側に居ます」
エリカ「いついかなる時でも、絶対に、隊長のお側を離れるようなことはしません」
エリカ「ハンバーグは大好きですので!」
まほ「……ふっ、力が入り過ぎているな。もう昼が終わる、早く弁当を食べてくれ」
エリカ「す、すいませんっ! 只今食べ、んぐっ! けほ! ごほ!」
まほ「大丈夫か?」トントン
エリカ「すいません……あ、あの、隊長!」
まほ「なんだ?」
エリカ「全国大会、黒森峰が優勝したら、その時は―――」
エリカ「―――またハンバーグが食べたいです」ニコ
まほ「エリカ……」
まほ「ハンバーグ定食なら学生食堂で買えるぞ?」
エリカ「…………」
―――回想終了―――
220: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:07:25.73 ID:MagdSq8Bo
そうだった。私は―――
―――ハンバーグが大好きなんだった。
221: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:11:48.73 ID:MagdSq8Bo
ビーーーーーーーーーーーッ!
蝶野「勝者―――」
大 洗 女 子 学 園 ッ !!
222: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:12:48.07 ID:MagdSq8Bo
エリカ「――――っ」バタッ
まほ「エリカァッ!! 救護班、早く担架を! 急いで運べッ!」
華「ごちそうさま……でした……っ」クラッ
みほ「華さん!? 大丈夫!?」
華「ええ。みほさんの的確な指示のおかげで大丈夫ですよ」ニコ
みほ「良かった……」
華「あそこで焦っていたらどうなっていたか……それよりも、みほさん。エリカさんのところへ」
みほ「う、うん!」タッ タッ
華「……エリカさん。貴女の胃袋が無限の宇宙だと言うのなら」
華「―――わたくしの胃袋は永遠の愛です」ニコ
223: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:13:52.35 ID:MagdSq8Bo
<救護テント>
エリカ「……んぅ?」パチクリ
エリカ「ここは……そっか。運び込まれたのね、私……」
エリカ(黒森峰は負けた。大洗にまた勝てなかった―――)ウルッ
みほ「エ、エリカさん? 大丈夫ですか!? どこか痛いんですか!?」
エリカ「って、えぇっ!? ちょ、なんでみほがここにいるのよ!」ビクッ
みほ「良かった、元気そうで……エリカさんのバカ!!」
エリカ「っ!?」
みほ「どうしてこんなにボロボロになるまで戦ったんですか! どうして、そこまでしてっ!」ポロポロ
エリカ「なんで貴女が泣くのよ……」
エリカ「…………」
エリカ「……だって、約束したじゃない。忘れたの?」
みほ「ふぇ?」グスッ
『次は負けないわよ』
『はい!』
224: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:14:37.31 ID:MagdSq8Bo
みほ「あ……」
エリカ「まぁ、もちろんCMに出て多少なりとも黒森峰に貢献したいとは思ってたけど」
みほ「で、でも、だからって、あんな戦い方は……」
エリカ「"犠牲なくして大きな勝利を得ることはできない"」
みほ「っ」ビクッ
エリカ「……貴女が一番よくわかってるでしょ? "西住"みほ」
みほ「で、でも、私たち大洗は―――」
エリカ「大洗の勝利は、戦車道が嫌で転校してきた西住みほという少女の想いを犠牲にして成立した。違う?」
みほ「……違い、ます。私が、選んだんです」
エリカ「結果オーライだったからなんとでも言えるのよ。もし大洗が負けて廃校になってたら、貴女の人生、終わってたわよ」
みほ「……終わって、ないです」
エリカ「強がりね」
みほ「……いいえ。私は、たとえ川の中でも、火砕流の中でも、進んでいったと思います」
みほ「……私の心が、私のものとして、生きている限り」
みほ「でも、もし、体を、心を大事にしないのなら……それが、本当の終わり、です」プルプル
エリカ「…………」
225: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:15:42.47 ID:MagdSq8Bo
<聖グロ控室>
ダージリン「"兵士たちよ、あなたたちは機械じゃない。心に愛を持った人間だ"」
オレンジペコ「チャップリンの『独裁者』でのスピーチですね」
ダージリン「私たちは戦車乗りではあるけれど、戦車に乗られてしまってはいけないの」
オレンジペコ「えっと……?」
ダージリン「こんな言葉を知ってる? 人生は一局の将棋なり、指し直す能わず」
オレンジペコ「菊池寛ですね。人生に『待った』、やり直しは無い、という意味です」
ダージリン「戦車道もまた然り。やり直しなんてできない」
ダージリン「だけど、誰かの人生を犠牲にして勝利したら、その人の人生もやり直しはできないの」
オレンジペコ「みほさんの戦車道ですね!」パァァ
ダージリン「本当に大事なことは、悔いの残らない戦い方をするということ。これが案外難しいのよね」
オレンジペコ「ですね」
ダージリン「やっぱり騎士道精神が一番ってことで」
オレンジペコ「えぇ……。でも、これから武士道精神を見学しに行くのでは?」
ダージリン「そうだったわね。それじゃ、キングスクロスへ向かいましょうか」
226: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:17:31.46 ID:MagdSq8Bo
<救護テント>
エリカ「わかってるわよ。それこそ大洗みたいに、揃いも揃ってド新人の急造チームでさえ優勝した」
エリカ「本当に大事なことはそういうものじゃない。貴女が身をもって教えてくれたものね」
みほ「……えっと」
エリカ「でも、私は貴女じゃない。逸見エリカは、西住みほじゃないの」
エリカ「私には、貴女みたいな生き方はできないのよ……」
まほ「負けたのはエリカのせいじゃない。背後の一突き……私の至らなさのせいだ」
エリカ「隊長……テントの外で聞いてたんですね」
まほ「勝利が全てではない。たったひとつの勝利のために手段を選ばないというのは、戦車道の理念から最も外れた行為だ」
みほ「お、お姉ちゃん?」
まほ「犠牲無くして勝利無しという西住流の教え……これは誤解を与えるので、私が師範となった暁には文言を改めようと思っている」
まほ「真に犠牲にすべきは己の怠惰や慢心であって、道義や愛情ではないんだよ」
227: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:18:49.00 ID:MagdSq8Bo
まほ「去年の大会の後、お母様がみほを怒ったのは、他でも無い、自分の大切な愛娘が危険な行為をしたからだ」
みほ「――っ!」
まほ「ただそれだけのこと。人の親ならば当然に持つだろう感情。深い意味なんて無い」
まほ「Ⅲ号戦車の救助に向かったみほの優しさは、お母様にだって当然わかっていた。だが、その無鉄砲さがある限り、いずれ戦車道がみほの身を滅ぼしてしまうと思ったんだ」
まほ「我が身を顧みない戦車道……それは、西住流ではない」
みほ「……うん」
エリカ「……っ」
まほ「犠牲無くして勝利無し……。言い訳がましく聞こえるかもしれないが、そうだとしても、自己犠牲で得る勝利など真の勝利ではない、と今の私は信じている」
まほ「負けてもいい、といえば、これも語弊があるし、無理をするな、というのも違うんだ」
まほ「限界を超えるような努力をすることは勇ましく逞しい行為だ。だが、だがな」
まほ「自らを含め、人間を粗末に扱うようなことだけは絶対にするな」
まほ「その先に得るものは何もない。私たちの生きる道は、私たちの心の中にしか無いんだよ」
228: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:19:38.57 ID:MagdSq8Bo
まほ「これが真の西住流だ。エリカ、納得できたか?」
エリカ「……はい」
まほ「エリカがそんなにも不安を抱えていると気付けなくてすまなかった。隊長失格だな」
エリカ「い、いえ! そんなことは―――」
まほ「確かに来年度、黒森峰に私は居ない。無論、みほも居ない」
まほ「だが、私もみほもこの世から消えるわけじゃない」
みほ「そうだよ、エリカさん。別の学校だからって関係ないよ」
エリカ「みほ……」
まほ「いつでも連絡しろ。大切な後輩が悩んでいるとあらば、私は飛んで駆けつける」
エリカ「……いえ。隊長のお手を煩わせるなど、私には……」
まほ「……そうだったな、エリカはそういう性格だ。なら、OG訪問を定期的に開催させよう」
エリカ「え、ええっ!?」
まほ「規則にしてしまえば、エリカが気負うことはなくなるだろう?」
エリカ「そ、それは……」
みほ「ふふふっ」
229: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:20:20.39 ID:MagdSq8Bo
まほ「上の代には私から連絡しておこう。それに、まだ時間はある。隊長の引継ぎはゆっくり時間をかけてやればいい」
まほ「これからの黒森峰のリーダーは確かにエリカだ。だが、これからの黒森峰を作るのは、エリカ1人だけじゃない」
まほ「エリカは独りじゃないんだよ。たくさんの仲間に支えられているだろう?」
「「そうですよ"隊長"!」」
エリカ「あ、貴女たち……!」
赤星「エリカさんはいつも前に出過ぎなんです! 次からは私たちが先陣を切りますからね!」
直下(仮名)「何でも自分でやろうとしない。エリカの履帯が切れたら私たちが直すっての」フッ
エリカ「バ、バカね……独断専行は、ご法度よ……」ウルッ
230: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:21:16.13 ID:MagdSq8Bo
みほ「……エリカさん。約束してください」
エリカ「な、何を?」
みほ「次は負けないって。その次も、その次も私に負けないって」
エリカ「……ぷっ。なにそれ、ずっと負けられないじゃない」
みほ「そうです。だから、ひとつの戦いに勝つだけじゃなく、その次も、その次も勝てるような、大局的な戦略を立てないといけません」
エリカ「……相変わらず甘いわね、みほ」
エリカ「わかったわよ、次からはこんな戦い方はしない。貴女に心配されると虫唾が走る」
みほ「エリカさん……!」ニコ
エリカ「ほら、早く大洗に戻りなさい。連れが待ってるんでしょ?」
みほ「は、はいっ!」
タッ タッ
エリカ「……優勝おめでとう、みほ」
231: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:22:40.05 ID:MagdSq8Bo
救護班「こ、困りますッ! ちょっと!」
辻「どういうことですか!? どうして黒森峰が大洗に負けているんです!?」グイッ
まほ「……また貴方か。失礼ですが、今エリカは病床の身。安静の為にもご退室願いたいのですが」
エリカ「…………」
辻「あれだけお膳立てをしたのに、なんですかこの結果は!? 私の努力は何だったんですか!?」
辻「こんなことならホンモノの薬物でも渡しておくべきだった……!」
エリカ「本物の? それ、どういう意味です?」
辻「貴女に渡した白い粉はただの小麦粉です。たかがお遊びに危ない橋を渡るわけにはいかないですから」
エリカ「なっ……!?」
辻「しかし、プラシーボ効果だけであそこまでやるとは思っていませんでしたよ。これなら黒森峰の優勝は確実! と、思ったんですがね!」
まほ「失礼」ガシッ
辻「な、なんです!? 私は納得のいく説明を求めに―――」
まほ「帰っていただきたい」ギロッ
辻「……ふ、ふん。まあいいでしょう。来年度大洗に戦車道で勝てるよう、せいぜい頑張ってください!」クルッ スタスタ
赤星「悪は去りました!」
直下「はいはい、めでたしめでたし」
232: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:24:15.80 ID:MagdSq8Bo
<放送席>
王「と、言う訳でェ! 戦車道フードファイトォッ! 優勝は、大洗女子学園~ッ!」パチパチ
愛里寿「これから優勝カップ授与式」
王「はい、そうなんですねー。現在ピッチには"休戦の客車2419号"が用意されており、車内でカップと優勝賞品の授与が行われます」
愛里寿「賞品は"CM出演権"って書かれたおっきなプラカード」
王「それではカメラさん、授与式の様子を、どうぞッ!」
<客車内>
蝶野「優勝おめでとう。頑張ったわね!」スッ
華「ありがとうございます」ニコ
沙織「優勝カップっていうか、これ何!?」
優花里「金メッキのシュタールヘルムですかね……なるほど、これを鍋として使えと」
麻子「鍋は戦争と言うからな」
杏「ウマいねぇ~。あんこう鍋くらいウマい」
柚子「プラカードは私たちが受け取るねー。はい、桃ちゃん」ニコ
桃「お、重いぃっ! 助けて柚子ちゃん!」
<パチパチパチパチ ワーワー!
<放送席>
王「以上! 戦車道フードファイトでしたーッ!」
愛里寿「バイバイ」
233: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:25:15.09 ID:MagdSq8Bo
<K2形蒸気機関車>
シュッシュッシュッシュッ ポッポー
福田「隊長殿! 日の丸弁当であります! 駅弁であります!」
西「うむ! なんだかんだでまともな飯にありつけていなかったからな。栄養補給も訓練のうち!」
ダージリン「お茶もご用意しましたわ。うちのローズヒップが」
西「おお、これはかたじけない! では一杯……ブフォ!!」
細見「隊長殿!?」
玉田「貴様ら! まさか茶に毒を盛ったな!?」
西「い、いや、つい渋めの日本茶かと思って飲んだのだが、砂糖たっぷりで驚いてしまって……」フキフキ
福田「これが世に聞く"てー"というものでありますか!?」
ローズヒップ「いえ? 知波単の皆様のお口に合うよう、麦茶にお砂糖をいっぱい入れて差し上げたのですわ?」
細見「麦茶に!?」
玉田「砂糖だと!?」
ペコ「ほ、ほら。やっぱり皆さん怒ってらっしゃいますよ」ビクビク
福田「なんと贅沢なのでありましょう!」
細見「懐かしい、これぞ日本の味だ!」
玉田「よし! この喜びに歌を歌おう! 一緒に帰ろう!」
知波単一同「「「♪おお わが宿よ 楽しとも たのもしや」」」
ペコ「えぇ……」
234: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:25:51.77 ID:MagdSq8Bo
<フィアットSpa38>
ブロロロロ…
ペパロニ「姐さん……もう食べられないッス……」グゴー
アンチョビ「次期ドゥーチェ……負けるな……いや、勝て……」スピー
カルパッチョ「ふふふ。2人ともお腹いっぱいになってよく寝てます。寄りかかられて少し運転しにくいですが」
カルパッチョ「余った食材ももらえましたし、帰ったら大宴会ですね」ニコ
<荷台>
ポロロン♪
ミカ「そうして、命は巡っていくんだね。だから私たちは、命を感じるんだ」
ミカ「そうは思わないかな、アキ。ミッコ」
ミッコ「おいしい……おかわり……」グゥ
アキ「もう……ミカってば……」スゥ
ミカ「…………」ポロロン
235: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:28:00.57 ID:MagdSq8Bo
<C-5Mスーパーギャラクシー>
ゴォォォォォォォォォォォォォォ…
ケイ「アリサ、また太ったんじゃない?」
アリサ「Jeeeeeeeeez!!!! 隊長、それは言わない約束でしょう!?!?」ウガーッ
ナオミ「帰ったらエクササイズだね」クッチャクッチャ
アリサ「わ、わわ、わかってるわよ! それくらい織り込み済みよ!」
ケイ「そういや、ナオミがあの子のサポートをしてあげてたなんてね」
ナオミ「……私は飢えた子供にガムをあげただけですよ」
カチューシャ「ホーント、余計なことしてくれちゃって。これだからサンダースは」
ノンナ「おや? その件についてはもうお許しになられたのでは?」
ケイ「HAHA! まあ、私たちはそのくらいの方がいいんじゃない?」
アリサ「ってゆーかコクピットから出て行きなさいよ! 狭いのよ!」
クラーラ「それではプラウダの皆さん、そろそろ降下地点です」
ニーナ「ホントにやんべか!?」
アリーナ「いくら負けたからって罰ゲームでエアボーンはやり過ぎでねが!?」
カチューシャ「私を批判するなら全校集会でやりなさい! それとも、パラシュート無しで飛び降りたいのかしら?」
ノンナ「きっと積雪による安全な着地が期待できますよ」ニコ
ニーナ&アリーナ「「ひぃぃぃぃっ!!!」」
236: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:30:16.73 ID:MagdSq8Bo
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
―翌日―
<日本戦車道連盟本部 プロリーグ設立対策会議室>
児玉(理事長)「いやはや、これは壮観ですな」
蝶野「はい。高校戦車道有名校のうち、8校の代表者が揃い踏みしています」
まほ「この度は我々にこのような機会を頂き、ありがとうございます」
しほ「…………」
千代「…………」ニコ
辻「…………」グヌヌ
児玉「それで、学生の皆さん。ご用件は?」
まほ「―――はい」
237: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:31:10.49 ID:MagdSq8Bo
まほ「我ら高校戦車道連盟は、文科省を含めたあらゆる外部組織に起因する」
ダージリン「言論の自由」
ケイ「校風の自由!」
アンチョビ「貧乏からの自由!」
杏「横暴からの自由」
まほ「を、宣言します」
児玉「ほお……」
まほ「つまり、今後文科省からの提案は、戦車道連盟さんと当事校との合議の上で検討する、ということです」
杏「今までがおかしかったんだよねぇ。廃校だって言われて、はいそうですか、なんて、奴隷じゃないんだから」
まほ「国の政策に従わないとは言っていません。ただ、事前の十分な情報公開と状況説明、並びにそれを前提とした対話が必要ではないかと」
ケイ「そういう場を設けるべきだと思わない? ネーミングは、そう! 戦車道連合!」
ミカ「勇気と銃剣だけでは戦に勝てない。講和の機会は逃してはならない」
ダージリン「密約や秘密協定、地下工作や口約束の反故等々、とぉんでもないことを平然とされてきたようですからね。そういうのは良くないと思いますわ」
西「かような考え方でこの文書に調印し、その上でこの文書を誠実かつ完全に実行することによってのみ戦車道の未来を開拓すべきであり、またそれはできることと思われます!」
児玉「いやあ、高校生の意見とは思えないほど立派だ。どうですかな、学園艦教育局長殿」
辻「っ……」
238: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:32:15.01 ID:MagdSq8Bo
しほ「これから戦車道にはプロリーグが設立され、世界大会も誘致される」
しほ「日本の若手となる彼女たちがこのような自主独立と公平の精神を持っていることを誇りに思うべきです」
千代「娘たちの将来が楽しみですね」
辻「し、しかし、学生にそのような権限を与えるなどと言うのは……」
児玉「会議で学生に発言させるくらいの権限も与えないというのですかな?」
辻「ですが、中には何をしでかすかわからないような学園もあるわけで……」
杏「へえ? なんでも自分の思い通りにならないと気が済まないってわけですか。まるで独裁者ですねぇ」
カチューシャ「もちろんプラウダの学園艦は16個ある分校舎の分まで発言権を持つのよね?」
ケイ「それはちょっとフェアじゃないよ、カチューシャ。んーでも、拒否権はあった方がいいかもね!」
まほ「その辺は後々決めていくこととしよう。とにかく、以上が私たちからの最後通牒です」
まほ「辻さん」
辻「な、なんです?」
まほ「……今度エリカに手を出してみろ。その時は、これだけでは済まないぞ」ボソッ
辻「……っ」ゾクッ
児玉「どうしました?」
辻「ゴホン、わ、わかりました。そのような会議の場を設けられるよう、前向きに検討してみます……」
児玉「よろしく頼みましたぞ! はっはっは!」
239: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:34:43.19 ID:MagdSq8Bo
―同日―
<大洗女子学園生徒会室>
コンコン ガチャ
みほ「失礼します。あの、ご用件ってなんでしょう?」
華「何かあったんですか?」
柚子「ちょっとお届け物が、ね」
桃「これだ、西住」ピラッ
みほ「これは……聖グロからの電報?」
優花里「あっ、ダージリン殿からですね」
沙織「えー、なになに? なんて書いてあるの?」
みほ「えっとね―――――」
240: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:35:20.21 ID:MagdSq8Bo
本日、我々共通の敵は降伏した。最後の敵はついに屈服したのである。
大洗女子学園各位においては、今日は勝利を祝う日として喜び、明くる日よりさらに新たなる英気をもって来たるべき諸問題に果敢に挑まれたい。
しかししばらくは、自己の成し遂げためざましい業績を思い起こし、心からの安らぎをもって休養せられんことを望む。
平和は再び世界に訪れた。
戦車道はこれから新たなる光の差す方へと進む。その向かう先は必ずや人生の素晴らしきものであると確信す。
なぜならばそこでは、大洗西住みほより生まれし多くの光が輝き続けているからだ。
241: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:36:18.35 ID:MagdSq8Bo
沙織「これは……なにかの引用かな? ゆかりんわかる?」
優花里「これは、えぇーっとぉ……冷泉殿ぉ!」
麻子「1945年8月15日、英国アトリー首相のラジオ放送だな」
みほ「へぇー」
優花里「さすが博識ですね、冷泉殿!」
麻子「いや、あの人が引用しそうなものから長さと内容をヒントに候補を絞って検索しただけだ」
華「最後の2行も何かの格言でしょうか?」
麻子「……わからん。それらしいのはないな……」
みほ「きっとダージリンさん本人の言葉じゃないかな」
優花里「それは、なんというか、貴重ですね……」
みほ「うん。でも、なんだか嬉しいなぁ」エヘヘ
242: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:40:07.17 ID:MagdSq8Bo
華「せっかくですので、以前頂いたティーセットでお茶の準備をしますね。お茶請けは……」
桃「こっちの棚だ、次期会長。あと、茶請けくらい部下にやらせろ」
華「ふふっ。河島先輩もご一緒にいかがです?」
桃「わ、私は、会長のご帰還を待つという任務がだな……」
沙織「お菓子食べながらでもいいじゃないですかー、桃ちゃん先輩!」
桃「桃ちゃんって呼ぶな!」
麻子「紅茶が冷めてしまうぞ、桃ちゃんさん」
優花里「そうですよ、桃ちゃん先輩殿!」
桃「貴様らぁ……CM出演はやっぱり取り消しだぁっ!!」
みほ「えぇーーーっ!?」
ガチャ
杏「いや、んなわけないでしょ。話はもうちょっとだけ続くんだからここで落とすなよなぁ、かぁしまぁ」
桃「か、か、か、かいちょぉぉーっ! よくぞご無事でぇっ!」ビェェ
柚子「お疲れ様でした、会長」ニコ
杏「よぉし! 大洗女子学園、生徒会会長、角谷杏から、最後の会長令をだーすっ!」
杏「フードファイト祝勝記念パーティーやるぞーっ!!」
♪アイジャスフィマイウィー アイジャスフィマイシャー ソラニー レザラー
243: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:42:44.48 ID:MagdSq8Bo
<大洗女子学園 演習場>
スタッフ「本番いきまーす! 5秒前、3、2……」
沙織「キャー! キャー! カメラ入ってる! 私たち映ってるよ! 全国のお茶の間にお届けだよ!」
優花里「正確には私たちの乗ったⅣ号が映っているだけですが」
沙織「あはは……尺の都合で人間は隊長だけCM出演の予定だったなんてね……私のタレント化モテモテ計画がぁ……」
優花里「クラッぺからでは中が薄暗いので顔までは見えませんからね」
麻子「仮に地上波に乗ったとしても沙織は沙織のままだから安心しろ」
沙織「うん……って、何気にひどい!?」
華「それにしても、みほさん大丈夫でしょうか。緊張してないといいのですが……」
244: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:43:47.41 ID:MagdSq8Bo
<Ⅳ号戦車前>
スタッフ「それでは、最後に何か一言お願いします!」
みほ「ひ、ひとことですか!?」ガチガチ
監督「何でもいいよ。みほちゃんの思いのたけをカメラにぶつけちゃって!」
みほ「え、えっとぉ……」モジモジ
杏「西住ちゃん、リラックス。ほら、深呼吸」
みほ「は、はい! すぅ……はぁ……」
みほ(……大洗は全国優勝して、CMにも起用されて、知名度が上がる)
みほ(エリカさんみたいに大洗に勝ちたいっていう人がますます増えるかも知れない)
みほ(私たちはこれから、色んな戦いを挑まれるかも知れない)
みほ(だったら、私にできることは、誠心誠意戦うこと)
みほ(勝つためじゃなく。一緒に戦って、一緒に前に進むために!)
245: ◆T98fjJVZhQMf 2017/05/13(土) 17:44:32.53 ID:MagdSq8Bo
沙織「みぽりん!」
華「みほさん!」
優花里「西住殿!」
麻子「西住さん」
『次は負けないわよ』
みほ(これが私の……ううん。私たちの戦車道!)
みほ「や、やってやるぜー!」
一同「「「えぇーっ!?」」」
―後日―
<島田家>
愛里寿「これ、最高のCM! またフードファイトやろう!」キラキラ
おわり
276: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/17(水) 15:50:06.73 ID:YVRDYkZ40
乙乙
凄い!
こんなにあったのかwww
凄い!
こんなにあったのかwww
277: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/18(木) 16:47:07.88 ID:MQCpoxXF0
乙っしたー
最近ガルパンSS少ないからまた書いてね
最近ガルパンSS少ないからまた書いてね
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494053090/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ ガールズ&パンツァー | Comments (0)
唯「たいふう!」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 06:14:05.19 ID:OVfktLQvO
『ふぁみりー!』
唯「ねぇ、あずにゃんあずにゃん」
梓「なんですか唯先輩?」
唯「あの子にもお父さんやお母さんがいたりするのかな?」
梓「台風一過ってそういう意味じゃないですから」
律(梓のヤツ、今のでよくわかったな・・・)
唯「ねぇ、あずにゃんあずにゃん」
梓「なんですか唯先輩?」
唯「あの子にもお父さんやお母さんがいたりするのかな?」
梓「台風一過ってそういう意味じゃないですから」
律(梓のヤツ、今のでよくわかったな・・・)
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 06:19:23.84 ID:OVfktLQvO
『ぶるーあい!』
唯「あずにゃんあずにゃん!」
梓「はいはい、なんですか唯先輩?」
唯「台風の目ってあるよね!」
梓「まぁ、台風の中心部をそう呼びますね」
唯「台風って目が青いからきっとガイジンさんだねっ!」
梓「どんな発想ですか・・・。青いのは天気図の海の色ってだけですよ」
唯「陸地では緑色の目になるね~」
梓「はいはい。そうですねっ」
唯「あずにゃんあずにゃん!」
梓「はいはい、なんですか唯先輩?」
唯「台風の目ってあるよね!」
梓「まぁ、台風の中心部をそう呼びますね」
唯「台風って目が青いからきっとガイジンさんだねっ!」
梓「どんな発想ですか・・・。青いのは天気図の海の色ってだけですよ」
唯「陸地では緑色の目になるね~」
梓「はいはい。そうですねっ」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 06:29:38.14 ID:OVfktLQvO
『おやじ!』
唯「ねぇねぇあずにゃん!」
梓「なんですか唯先輩?」
唯「『地震雷火事親父』って言葉あるよね?」
梓「ありますねぇ」
唯「その『親父』って『台風』のことだって説があるんだって!」
梓「あ、それなんか聞いたことあるかもしれません」
唯「やっぱり台風一家ってお父さんが居たんだね~」
梓「それは違うと思いますが・・・。確かに、台風は地震雷火事に並ぶ大変な災害ですもんね」
唯「ふふっ、台風が来たらたいふん(大変)ですなっ!」どやぁ
梓「・・・」
澪(親父ギャグだな)
律(親父ギャグだな)
紬(親父ギャグね)
唯「ねぇねぇあずにゃん!」
梓「なんですか唯先輩?」
唯「『地震雷火事親父』って言葉あるよね?」
梓「ありますねぇ」
唯「その『親父』って『台風』のことだって説があるんだって!」
梓「あ、それなんか聞いたことあるかもしれません」
唯「やっぱり台風一家ってお父さんが居たんだね~」
梓「それは違うと思いますが・・・。確かに、台風は地震雷火事に並ぶ大変な災害ですもんね」
唯「ふふっ、台風が来たらたいふん(大変)ですなっ!」どやぁ
梓「・・・」
澪(親父ギャグだな)
律(親父ギャグだな)
紬(親父ギャグね)
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 06:31:00.88 ID:OVfktLQvO
短いけどこれで終わり
台風にまつわる小ネタ3作でした
台風にまつわる小ネタ3作でした
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 07:14:45.86 ID:WVdkqzy5o
乙
ちょっとクスっと来た
ちょっとクスっと来た
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 10:34:30.79 ID:e5aMz8uH0
乙
ほのぼの良いね
ほのぼの良いね
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503782045/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ けいおん! | Comments (0)
熊野「花火大会…ですの?」
1: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:32:09.49 ID:6lj/y0GI0
キャラのコレじゃない感は許してください。
遅筆&書き溜めを投稿する形になります。
遅筆&書き溜めを投稿する形になります。
2: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:32:55.28 ID:6lj/y0GI0
提督「あぁ、お前の名前の付いた花火大会が開催されているんだ」
熊野「はぁ?それがどうかなさいまして?」キョトン
提督「いや、さ。ここ最近お前も頑張ってるし、一緒に花火大会行かないかって」
熊野「そうですか…」
提督「あ、別に嫌なら…無理しなくて良いんだぞ?」
熊野「別に一言も嫌とは言っていませんわ!わたくしの名前の付いた花火大会ですね?是非行かせて貰いますわ!」
熊野「それはそうと、それはこの鹿屋から近いのでして?」
提督「そこが問題なんだよ!」
熊野「何故威張るんですの…?」
熊野「はぁ?それがどうかなさいまして?」キョトン
提督「いや、さ。ここ最近お前も頑張ってるし、一緒に花火大会行かないかって」
熊野「そうですか…」
提督「あ、別に嫌なら…無理しなくて良いんだぞ?」
熊野「別に一言も嫌とは言っていませんわ!わたくしの名前の付いた花火大会ですね?是非行かせて貰いますわ!」
熊野「それはそうと、それはこの鹿屋から近いのでして?」
提督「そこが問題なんだよ!」
熊野「何故威張るんですの…?」
3: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:33:33.50 ID:6lj/y0GI0
提督「ここ鹿屋は九州の南部鹿児島県に位置している、因みに熊野大花火大会は三重県の熊野市で行われる」
熊野「凄く遠いですわね…わたくしは海からでも行けますが提督はそうもいきませんわね」
提督「それに数日とは言え鎮守府を開けることになる、勿論休みにする予定だが敵は休みなど関係なしにやってくるしな」
熊野「もっと近くの花火大会ではダメですの?確かにわたくしの名前の付いている花火大会は気になりますわ、でもそこまで無理していく必要ありませんのよ?」
提督「いいんだよ、ここで」
熊野「そう…わかりましたわ」
提督「じゃあ3日後に出発するから、数日分の衣類とか準備しておいてくれ」
熊野「了解ですわ!」
熊野「凄く遠いですわね…わたくしは海からでも行けますが提督はそうもいきませんわね」
提督「それに数日とは言え鎮守府を開けることになる、勿論休みにする予定だが敵は休みなど関係なしにやってくるしな」
熊野「もっと近くの花火大会ではダメですの?確かにわたくしの名前の付いている花火大会は気になりますわ、でもそこまで無理していく必要ありませんのよ?」
提督「いいんだよ、ここで」
熊野「そう…わかりましたわ」
提督「じゃあ3日後に出発するから、数日分の衣類とか準備しておいてくれ」
熊野「了解ですわ!」
4: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:36:47.31 ID:6lj/y0GI0
―13:39―最上型の部屋―
熊野「ふんふふん~♪」
鈴谷「ん~ぁ、ねっむーい」
熊野「あら、鈴谷」
鈴谷「ちぃーっす、熊野は何してるの?」
熊野「準備ですわ」
鈴谷「あー昼寝の準備ね」
熊野「それだけでは無いのだけれど…まあいいですわ」
鈴谷「ん~鈴谷もねっよかな~」
熊野「それが良いと思いますわよ、仮眠も美容には必要ですわ」
鈴谷「じゃあ寝るね~おやすみ、熊野」
熊野「えぇ、お休みなさい鈴谷」
熊野「っと…どうせですし浴衣も持って行きましょうか」ブツブツ
熊野「ふんふふん~♪」
鈴谷「ん~ぁ、ねっむーい」
熊野「あら、鈴谷」
鈴谷「ちぃーっす、熊野は何してるの?」
熊野「準備ですわ」
鈴谷「あー昼寝の準備ね」
熊野「それだけでは無いのだけれど…まあいいですわ」
鈴谷「ん~鈴谷もねっよかな~」
熊野「それが良いと思いますわよ、仮眠も美容には必要ですわ」
鈴谷「じゃあ寝るね~おやすみ、熊野」
熊野「えぇ、お休みなさい鈴谷」
熊野「っと…どうせですし浴衣も持って行きましょうか」ブツブツ
5: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:37:27.31 ID:6lj/y0GI0
ガチャリ―。
最上「熊野はいるかい?」
熊野「どうかしたんですの?熊野に何かご用?」
最上「提督が伝え忘れたことがあるって言ってたよ」
熊野「あら…そうですか、ありがとうですわ」
最上「うん!ってそこで寝ているのは鈴谷かい?」
熊野「えぇ、眠たかったようですわ」
最上「んーじゃあボクもちょっと寝るね、熊野が帰ってきたときにまだ寝ていたら起こして欲しいな」ノビ-
熊野「わかりましたわ、それではおやすみなさい」
最上「うん!お休み熊野」
最上「熊野はいるかい?」
熊野「どうかしたんですの?熊野に何かご用?」
最上「提督が伝え忘れたことがあるって言ってたよ」
熊野「あら…そうですか、ありがとうですわ」
最上「うん!ってそこで寝ているのは鈴谷かい?」
熊野「えぇ、眠たかったようですわ」
最上「んーじゃあボクもちょっと寝るね、熊野が帰ってきたときにまだ寝ていたら起こして欲しいな」ノビ-
熊野「わかりましたわ、それではおやすみなさい」
最上「うん!お休み熊野」
6: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:38:04.73 ID:6lj/y0GI0
―13:42―執務室―
熊野「それで伝え忘れとは何ですの?わたくし14:00位から食事の後の仮眠を取るのが日課なので早くして欲しいですわ」
提督「あぁ、すまんな。色々と考えたんだがな、新幹線でちょくちょく降りて色んな所観光しながら行きたいんだがそれで問題ないか?」
熊野「別に良いですわよ、わたくし以外に他に誰かいらっしゃるんですの?」
提督「え?お前と俺の二人だけど?」
熊野「えっ?二人きりですの?」
提督「ああ、お前を労うためだしお前だけで良いかなって。本当は間宮さんも誘いたかったけどな」ハハハ
熊野「そう、二人きりですのね」
提督「嫌だったか?」
熊野「それで伝え忘れとは何ですの?わたくし14:00位から食事の後の仮眠を取るのが日課なので早くして欲しいですわ」
提督「あぁ、すまんな。色々と考えたんだがな、新幹線でちょくちょく降りて色んな所観光しながら行きたいんだがそれで問題ないか?」
熊野「別に良いですわよ、わたくし以外に他に誰かいらっしゃるんですの?」
提督「え?お前と俺の二人だけど?」
熊野「えっ?二人きりですの?」
提督「ああ、お前を労うためだしお前だけで良いかなって。本当は間宮さんも誘いたかったけどな」ハハハ
熊野「そう、二人きりですのね」
提督「嫌だったか?」
7: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:39:01.28 ID:6lj/y0GI0
熊野「い、いいえ!提督が折角!わたくしの為に企画してくださったんですから行かせて頂きますわ!」
提督「そう言ってくれて嬉しいよ」ニコ
熊野「ふふ、ではわたくしはそろそろ仮眠を取らせていただきますわね」
提督「あぁ、変に呼び出したりしてすまなかったな」
熊野「あなたは提督でわたくしはあなたの部下ですわ、謝ったりしてほしく無いですわ」
提督「ははっ、確かにその通りだ」
熊野「ではこれで、失礼しますわ」
提督「おう、おやすみ」
提督「そう言ってくれて嬉しいよ」ニコ
熊野「ふふ、ではわたくしはそろそろ仮眠を取らせていただきますわね」
提督「あぁ、変に呼び出したりしてすまなかったな」
熊野「あなたは提督でわたくしはあなたの部下ですわ、謝ったりしてほしく無いですわ」
提督「ははっ、確かにその通りだ」
熊野「ではこれで、失礼しますわ」
提督「おう、おやすみ」
8: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:39:42.59 ID:6lj/y0GI0
バタン―。
提督「…っと…青葉」
青葉「はいはーい青葉です!」スッ
提督「やっぱり居たか…」ハァ
青葉「提督が青葉をこんな体にしたんですよ?」ウルウル
提督「誤解を招くようなことを言うな…誰もお前に忍者みたいな潜伏スキルを持たせた覚えは無い」
青葉「まあそれは置いておいて何かご用ですか?」
提督「どうせ知ってると思うが花火大会に行くんだよ」
青葉「要するに青葉に花火を見る二人を撮れってことですね???」
提督「よく分かったな」
提督「…っと…青葉」
青葉「はいはーい青葉です!」スッ
提督「やっぱり居たか…」ハァ
青葉「提督が青葉をこんな体にしたんですよ?」ウルウル
提督「誤解を招くようなことを言うな…誰もお前に忍者みたいな潜伏スキルを持たせた覚えは無い」
青葉「まあそれは置いておいて何かご用ですか?」
提督「どうせ知ってると思うが花火大会に行くんだよ」
青葉「要するに青葉に花火を見る二人を撮れってことですね???」
提督「よく分かったな」
9: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/22(火) 15:40:41.44 ID:6lj/y0GI0
青葉「アレ?マジですか?冗談のつもりだったんですけど」
提督「…すごいな、お前」
青葉「えへへ、それほどでもです」
提督「因みに旅費は取材費として俺がなんとか工面してやるから最高の1枚を撮れよ?」
青葉「了解!」
提督「あと"ついで"に言っておくが新聞には旅が終わってから書けよ??もし先に書いたら…その時は分かるな?」ニコニコ
青葉「…い、いやだなぁ、て、提督は青葉を疑うんですか??」
提督「うん、一番しそうだし」
青葉「酷い!!!!」
提督「さあ散った散った」
青葉「むぅ…(´・ω・`)」
提督「…すごいな、お前」
青葉「えへへ、それほどでもです」
提督「因みに旅費は取材費として俺がなんとか工面してやるから最高の1枚を撮れよ?」
青葉「了解!」
提督「あと"ついで"に言っておくが新聞には旅が終わってから書けよ??もし先に書いたら…その時は分かるな?」ニコニコ
青葉「…い、いやだなぁ、て、提督は青葉を疑うんですか??」
提督「うん、一番しそうだし」
青葉「酷い!!!!」
提督「さあ散った散った」
青葉「むぅ…(´・ω・`)」
15: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 19:58:01.73 ID:IDULw38c0
―3日後―10:36―鎮守府入り口―
熊野(提督遅いですわね…この熊野を待たせるなんて)
提督「…ハァハァハァ、待ったか?」
熊野「えぇ、待ちましたわ。すごーく待ちました」
提督「因みにどれくらい待った?」
熊野「レディは遅れてくるものですから、せいぜい20分位ですわね」
提督「そっか…すまん」
熊野「いいですわ、別に怒ってなどいませんし……それでも罪悪感を感じるなら、楽しい旅にしてくださいね?」
提督「!? ああもちろんだ!」
熊野「それで最初はどうなさるおつもりで?」
提督「ん?あぁ、タクシーがそろそろ来るはずだからそのタクシーで駅まで向かおうと思う」
熊野「え?駅ってもしかして鹿児島中央までですの?」
提督「うん、まあ」
熊野「そうですか、わかりましたわ」
熊野(提督と狭い車内で密着…照れますわ///)
熊野(提督遅いですわね…この熊野を待たせるなんて)
提督「…ハァハァハァ、待ったか?」
熊野「えぇ、待ちましたわ。すごーく待ちました」
提督「因みにどれくらい待った?」
熊野「レディは遅れてくるものですから、せいぜい20分位ですわね」
提督「そっか…すまん」
熊野「いいですわ、別に怒ってなどいませんし……それでも罪悪感を感じるなら、楽しい旅にしてくださいね?」
提督「!? ああもちろんだ!」
熊野「それで最初はどうなさるおつもりで?」
提督「ん?あぁ、タクシーがそろそろ来るはずだからそのタクシーで駅まで向かおうと思う」
熊野「え?駅ってもしかして鹿児島中央までですの?」
提督「うん、まあ」
熊野「そうですか、わかりましたわ」
熊野(提督と狭い車内で密着…照れますわ///)
16: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 19:58:47.44 ID:IDULw38c0
熊野「そ・れ・で?何か言うことはありませんの?」
提督「ん?……あぁ、その服凄く似合ってるよ。なんか珍しいなお前がそういう格好するの」
熊野「…20点ですわね」
提督「採点式かよ…一応聞くけど何点満点中?」
熊野「1000点ですわ!」ドヤァ
提督「マジかよ…」
熊野「マジもマジ、大マジですわよ?」
提督「じゃあ満点目指せるように頑張るわ」
熊野「せいぜい頑張って欲しいですわね」クスクス
提督「ん?……あぁ、その服凄く似合ってるよ。なんか珍しいなお前がそういう格好するの」
熊野「…20点ですわね」
提督「採点式かよ…一応聞くけど何点満点中?」
熊野「1000点ですわ!」ドヤァ
提督「マジかよ…」
熊野「マジもマジ、大マジですわよ?」
提督「じゃあ満点目指せるように頑張るわ」
熊野「せいぜい頑張って欲しいですわね」クスクス
17: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 19:59:42.81 ID:IDULw38c0
ブロロロロ。
提督「っと、このタクシーだ」
運転手「いやぁ、すいませんね。ウチの若いもんが色々迷惑掛けたんでしょう?」
熊野「…?」
提督「あはは、別に良いですよ。今こうして来て貰ってるわけですし」
運転手「そうですかねぇ…あ、お荷物はトランクにどうぞ」
提督「ほら、熊野荷物寄越しな」
熊野「あ、はい分かりましたわ」
運転手「…どちらまで?」
提督「鹿児島中央まで」
運転手「分かりました、助手席に座られます?」
提督「あぁ、お気遣いありがとうございます。じゃあお願いします」
熊野(提督と密着じゃないのですわね…よかった)
提督「っと、このタクシーだ」
運転手「いやぁ、すいませんね。ウチの若いもんが色々迷惑掛けたんでしょう?」
熊野「…?」
提督「あはは、別に良いですよ。今こうして来て貰ってるわけですし」
運転手「そうですかねぇ…あ、お荷物はトランクにどうぞ」
提督「ほら、熊野荷物寄越しな」
熊野「あ、はい分かりましたわ」
運転手「…どちらまで?」
提督「鹿児島中央まで」
運転手「分かりました、助手席に座られます?」
提督「あぁ、お気遣いありがとうございます。じゃあお願いします」
熊野(提督と密着じゃないのですわね…よかった)
18: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:00:24.29 ID:IDULw38c0
―11:54―タクシー内―
運転手「そういえばどこにご旅行に行かれるんですか?」
提督「三重県の熊野大花火大会を見に行くんですよ」
運転手「三重県ですか、いいですねぇ。こういう職業をしてるのでやっぱりこの地を離れることが出来ないんですよね」
提督「奇遇ですね、私も出張以外であんまり離れられないんですよ」
運転手「もしかして軍人さんですか?」
提督「えぇ、まあ」
運転手「やっぱり!鎮守府前と言われたので軍人さんなのかなと思っていたんですよね」
提督「あはは、バレてましたか~」
運転手「そういえばどこにご旅行に行かれるんですか?」
提督「三重県の熊野大花火大会を見に行くんですよ」
運転手「三重県ですか、いいですねぇ。こういう職業をしてるのでやっぱりこの地を離れることが出来ないんですよね」
提督「奇遇ですね、私も出張以外であんまり離れられないんですよ」
運転手「もしかして軍人さんですか?」
提督「えぇ、まあ」
運転手「やっぱり!鎮守府前と言われたので軍人さんなのかなと思っていたんですよね」
提督「あはは、バレてましたか~」
19: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:01:13.71 ID:IDULw38c0
運転手「後ろの可愛らしいお嬢さんは彼女さんですか?」
提督「! まさか、ただの…友人ですよ」
運転手「あ、着きましたよ」
提督「ありがとうございます」
運転手「8700円ですね~」
提督「はい、これで…あ、領収証貰えます?鹿屋基地で」
運転手「はい、っとこれですね。私は荷物出しておくのでお嬢さん起こしてあげてください」
提督「おーい熊野、起きろー」ペシペシ
熊野「んぅ…提督?…もう着いたんですの?」
提督「あぁ、次は新幹線だぞ」
熊野「ん~~~」ノビ-
運転手「じゃあお荷物ですね。ありがとうございました」
提督「こちらこそ じゃあ行こうか」
熊野「ええ」
提督「! まさか、ただの…友人ですよ」
運転手「あ、着きましたよ」
提督「ありがとうございます」
運転手「8700円ですね~」
提督「はい、これで…あ、領収証貰えます?鹿屋基地で」
運転手「はい、っとこれですね。私は荷物出しておくのでお嬢さん起こしてあげてください」
提督「おーい熊野、起きろー」ペシペシ
熊野「んぅ…提督?…もう着いたんですの?」
提督「あぁ、次は新幹線だぞ」
熊野「ん~~~」ノビ-
運転手「じゃあお荷物ですね。ありがとうございました」
提督「こちらこそ じゃあ行こうか」
熊野「ええ」
20: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:02:22.61 ID:IDULw38c0
―12:38―新幹線内―
提督「そういえば熊野は新幹線初めてか?」
熊野「ええ、すごくわくわくしますわ」
提督「博多まで一時間とちょっとで行けるんだから驚きだよなぁ」
熊野「そんなに早く着くんですの?!」
提督「俺も最初乗ったときは驚きだったよ」
熊野「わたくしが35.36ノットが最速ですのよ?それにしたって早すぎじゃありませんの?」
提督「そんなに顔赤くするなって、こっちは陸でお前は海だろ?大きさだって違うし仕方ないじゃないか」
熊野「そ、そうですわよね…」
提督「そうだ、これ買っておいたから食べな」っ駅弁
熊野「これは駅弁というやつですわね?灰干し…とは何ですの?」
提督「火山灰を使って魚の水分やアンモニアなどを抜くんだよ、そうすることで時間が経っても魚の嫌な匂いがしないんだ」
熊野「…スンスン、確かに生臭さはありませんわね」
提督「フフフ、美味いか?」
熊野「………それ天龍さんの真似ですの?全く似てないですし、少し…いえかなり気持ち悪いですわ」
提督「泣きそう」
熊野「知りませんわ!」
提督「そういえば熊野は新幹線初めてか?」
熊野「ええ、すごくわくわくしますわ」
提督「博多まで一時間とちょっとで行けるんだから驚きだよなぁ」
熊野「そんなに早く着くんですの?!」
提督「俺も最初乗ったときは驚きだったよ」
熊野「わたくしが35.36ノットが最速ですのよ?それにしたって早すぎじゃありませんの?」
提督「そんなに顔赤くするなって、こっちは陸でお前は海だろ?大きさだって違うし仕方ないじゃないか」
熊野「そ、そうですわよね…」
提督「そうだ、これ買っておいたから食べな」っ駅弁
熊野「これは駅弁というやつですわね?灰干し…とは何ですの?」
提督「火山灰を使って魚の水分やアンモニアなどを抜くんだよ、そうすることで時間が経っても魚の嫌な匂いがしないんだ」
熊野「…スンスン、確かに生臭さはありませんわね」
提督「フフフ、美味いか?」
熊野「………それ天龍さんの真似ですの?全く似てないですし、少し…いえかなり気持ち悪いですわ」
提督「泣きそう」
熊野「知りませんわ!」
21: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:03:18.67 ID:IDULw38c0
―13:20―熊本辺り―
提督「うーん、熊本は地震があったから少し様子とか気になってたけどそこまでなのかな?」
熊野「単純に被害が少ない地域を見ているだけなのではなくて?」
提督「そうか…確かにそうかもしれない」
熊野(提督の目…凄く真剣ですわ)
提督「あ、そうそう。今から30分位したら一度乗り継ぎのために博多で降りるぞ」
熊野「了解ですわ」
提督「うーん、熊本は地震があったから少し様子とか気になってたけどそこまでなのかな?」
熊野「単純に被害が少ない地域を見ているだけなのではなくて?」
提督「そうか…確かにそうかもしれない」
熊野(提督の目…凄く真剣ですわ)
提督「あ、そうそう。今から30分位したら一度乗り継ぎのために博多で降りるぞ」
熊野「了解ですわ」
22: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:04:18.85 ID:IDULw38c0
―13:58―博多駅構内―
熊野「んん~、暑いですわね」
提督「とか言いながら日傘取り出すところは流石だな」
熊野「紫外線はお肌を傷めますわ、対策するのは当たり前でしょう?」
提督「お、おう…」
熊野「提督、わたくしショッピングに出掛けたいですわ」
提督「ん、じゃあ行こうか」
熊野「え、付いて来られるんですの?」
提督「お前が一人で迷わずここまで帰ってこられるなら一人で行かせるんだが…」
熊野「…返す言葉もありませんわ」
提督「それで行きたいところに目星は付いてるのか?」
熊野「天神へ!!」
提督「ほいほい、じゃあバスで行くか」
熊野「へぇ、一律100円ですのね」
提督「良心的だよな」
熊野「提督のお財布に…ですわね?」フフッ
熊野「んん~、暑いですわね」
提督「とか言いながら日傘取り出すところは流石だな」
熊野「紫外線はお肌を傷めますわ、対策するのは当たり前でしょう?」
提督「お、おう…」
熊野「提督、わたくしショッピングに出掛けたいですわ」
提督「ん、じゃあ行こうか」
熊野「え、付いて来られるんですの?」
提督「お前が一人で迷わずここまで帰ってこられるなら一人で行かせるんだが…」
熊野「…返す言葉もありませんわ」
提督「それで行きたいところに目星は付いてるのか?」
熊野「天神へ!!」
提督「ほいほい、じゃあバスで行くか」
熊野「へぇ、一律100円ですのね」
提督「良心的だよな」
熊野「提督のお財布に…ですわね?」フフッ
23: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:05:20.86 ID:IDULw38c0
―14:12―福岡PARCO―
提督「ほえー、パルコなんて初めて来た」
熊野「わたくしもあまり来たことはありませんわ」ドヤァ
提督「ドヤるなドヤるな」
熊野「もう…少し位良いじゃありませんか」
提督「そういえば福岡と言えば軍艦防波堤と呼ばれるやつがあったな」
熊野「なんですの?それは」
提督「旧海軍の駆逐艦3隻が防波堤になってるんだよ『桃』型駆逐艦の『柳』と『秋月』型駆逐艦の『凉月』『冬月』の3隻で防波堤が作られているんだ」
熊野「いい話ですわね」
提督「ああ、軍艦としての役目を終えてからも国のために尽くしてるっていい話だよな」
熊野「あ、提督。この服を頂きますわ」
提督「それ俺が出すの…?」
熊野「ダメですの?」ウルウル
提督「うっ…いいけどさ…」
熊野「ありがとうですわ」
提督「てか、そろそろ戻らないと新幹線間に合わないし行こうか」
熊野「んっ、もう少し見たかったですが仕方ないですわね」
提督「ほえー、パルコなんて初めて来た」
熊野「わたくしもあまり来たことはありませんわ」ドヤァ
提督「ドヤるなドヤるな」
熊野「もう…少し位良いじゃありませんか」
提督「そういえば福岡と言えば軍艦防波堤と呼ばれるやつがあったな」
熊野「なんですの?それは」
提督「旧海軍の駆逐艦3隻が防波堤になってるんだよ『桃』型駆逐艦の『柳』と『秋月』型駆逐艦の『凉月』『冬月』の3隻で防波堤が作られているんだ」
熊野「いい話ですわね」
提督「ああ、軍艦としての役目を終えてからも国のために尽くしてるっていい話だよな」
熊野「あ、提督。この服を頂きますわ」
提督「それ俺が出すの…?」
熊野「ダメですの?」ウルウル
提督「うっ…いいけどさ…」
熊野「ありがとうですわ」
提督「てか、そろそろ戻らないと新幹線間に合わないし行こうか」
熊野「んっ、もう少し見たかったですが仕方ないですわね」
24: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:06:00.14 ID:IDULw38c0
―14:33―新幹線内―
熊野「それで?次はどこで降りるおつもり?」
提督「広島駅だ、今日はここで一泊するからな」
熊野「そうですの。どこか行きたいところでもあるんですの?」
提督「大和ミュージアムって言えばわかるか?」
熊野「…ええ、なんでも色々わたくし達が軍艦だった時代のものがあるとか」
提督「まあそういうことだ」
熊野「…んぅ、わたくし眠くなっちゃいました、寝てもよろしくて?」
提督「ああいいよ、着いたら起こす」
熊野「ありがとう、ございます…提督」
熊野「それで?次はどこで降りるおつもり?」
提督「広島駅だ、今日はここで一泊するからな」
熊野「そうですの。どこか行きたいところでもあるんですの?」
提督「大和ミュージアムって言えばわかるか?」
熊野「…ええ、なんでも色々わたくし達が軍艦だった時代のものがあるとか」
提督「まあそういうことだ」
熊野「…んぅ、わたくし眠くなっちゃいました、寝てもよろしくて?」
提督「ああいいよ、着いたら起こす」
熊野「ありがとう、ございます…提督」
25: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:06:43.12 ID:IDULw38c0
―15:38―広島到着―
提督「おーい、着いたぞ」
熊野「ん…ふぁあぁ…おはよう…ございます」
提督「このあと呉まで電車で行くから」
熊野「わたくし少し緊張しますわ」
提督「へぇ、熊野でも緊張することあるんだな」
熊野「なんですの?そのわたくしは緊張しないみたいな物言い」ムス-
提督「いやさ、凄い意外だったからさ」
熊野「むぅ…」
提督「あんまり怒らないでくれ」
熊野「別に怒ってなんか居ませんわ!」
提督「えぇ…」
提督「おーい、着いたぞ」
熊野「ん…ふぁあぁ…おはよう…ございます」
提督「このあと呉まで電車で行くから」
熊野「わたくし少し緊張しますわ」
提督「へぇ、熊野でも緊張することあるんだな」
熊野「なんですの?そのわたくしは緊張しないみたいな物言い」ムス-
提督「いやさ、凄い意外だったからさ」
熊野「むぅ…」
提督「あんまり怒らないでくれ」
熊野「別に怒ってなんか居ませんわ!」
提督「えぇ…」
26: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:07:10.90 ID:IDULw38c0
―16:02―大和ミュージアムチケット売り場―
熊野「ここが大和ミュージアムですのね」
提督「ああ、来てみてどうだ?」
熊野「なんか凄く…力強い力を感じますわ」
提督「中に入ったら多分もっと凄いと思うぞ」
熊野「では、入りますわね」
熊野「!! これは戦艦大和…」
提督「10分の1で再現した模型だそうだ」
熊野「やはり大きいですわね…」
提督「俺がお前をここに連れてきたのは、この大和の模型を見るためじゃないんだ」
熊野「ここが大和ミュージアムですのね」
提督「ああ、来てみてどうだ?」
熊野「なんか凄く…力強い力を感じますわ」
提督「中に入ったら多分もっと凄いと思うぞ」
熊野「では、入りますわね」
熊野「!! これは戦艦大和…」
提督「10分の1で再現した模型だそうだ」
熊野「やはり大きいですわね…」
提督「俺がお前をここに連れてきたのは、この大和の模型を見るためじゃないんだ」
27: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/23(水) 20:08:15.49 ID:IDULw38c0
熊野「他に何があるのですの?」
提督「ここだよ、大型資料展示室」
熊野「あら、零式艦戦六二型ですわね」
提督「これを見て欲しいんだ」ユビサシ
熊野「これは?」
提督「人間魚雷『回天』」
熊野「…っそんな…」
提督「旧日本海軍は不必要に多くの命を奪った。それは紛れもない事実だし、決して変わることの無い不変の歴史だ。この人間魚雷『回天』もそうだし、人間ロケットの『桜花』もだが…様々な特攻兵器を作り出した」
提督「『桜花』なんて駆逐艦を一瞬で沈められる兵器だ。それでも…どんなに優れた兵器でも人間の命を使ってまで使用してはいけないだろう?でも、したんだよ俺たち人間の先祖は…。軍艦の魂を有す艦娘のお前達からすれば憎いかもしれない」
提督「熊野、お前と共に日本に帰りたいと願った乗組員は犬死にだったと思うか?言い方は悪いが様々な船に見捨てられたと言っても差し支えのないお前は、それでも共に戦った乗組員の死は犬死にと言えるか?」
熊野「………わかりませんわ…そんなのわかりません…わたくしは確かに日本に帰りたかったですわ…でも…わかりませんわ」ポロポロ
提督「っす、すまん!泣かすつもりは無かったんだ」
熊野「だ、大丈夫ですわ…」
提督「今日はもう旅館に行こう、疲れてるだろ?」
熊野「少し回らせて欲しいですわ…ここにはわたくしが知らなくてはならないことが多い気がするので…」
提督「……熊野…」
提督「ここだよ、大型資料展示室」
熊野「あら、零式艦戦六二型ですわね」
提督「これを見て欲しいんだ」ユビサシ
熊野「これは?」
提督「人間魚雷『回天』」
熊野「…っそんな…」
提督「旧日本海軍は不必要に多くの命を奪った。それは紛れもない事実だし、決して変わることの無い不変の歴史だ。この人間魚雷『回天』もそうだし、人間ロケットの『桜花』もだが…様々な特攻兵器を作り出した」
提督「『桜花』なんて駆逐艦を一瞬で沈められる兵器だ。それでも…どんなに優れた兵器でも人間の命を使ってまで使用してはいけないだろう?でも、したんだよ俺たち人間の先祖は…。軍艦の魂を有す艦娘のお前達からすれば憎いかもしれない」
提督「熊野、お前と共に日本に帰りたいと願った乗組員は犬死にだったと思うか?言い方は悪いが様々な船に見捨てられたと言っても差し支えのないお前は、それでも共に戦った乗組員の死は犬死にと言えるか?」
熊野「………わかりませんわ…そんなのわかりません…わたくしは確かに日本に帰りたかったですわ…でも…わかりませんわ」ポロポロ
提督「っす、すまん!泣かすつもりは無かったんだ」
熊野「だ、大丈夫ですわ…」
提督「今日はもう旅館に行こう、疲れてるだろ?」
熊野「少し回らせて欲しいですわ…ここにはわたくしが知らなくてはならないことが多い気がするので…」
提督「……熊野…」
32: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:54:09.22 ID:52Ol0HaX0
―18:18―旅館に向かう道中―
提督「熊野、あのさー」
熊野「?」
提督「どうだった?大和ミュージアムは」
熊野「……正直見ていて辛かったですわ。もちろん面白いところもありましたが…」
提督「旅館に行ったら飯食ってそのあと少し散歩しないか?」
熊野「えぇ…わたくしも少し提督と落ち着いて話したいと思っていましたので」
提督「そうと決まれば旅館に早く行って飯食おうぜ」
熊野「あの…その、こちらのご当地の料理を頂きたいですわ」
提督「何が食べたいとかはあるか?」
熊野「お好み焼きを!」
提督「熊野、あのさー」
熊野「?」
提督「どうだった?大和ミュージアムは」
熊野「……正直見ていて辛かったですわ。もちろん面白いところもありましたが…」
提督「旅館に行ったら飯食ってそのあと少し散歩しないか?」
熊野「えぇ…わたくしも少し提督と落ち着いて話したいと思っていましたので」
提督「そうと決まれば旅館に早く行って飯食おうぜ」
熊野「あの…その、こちらのご当地の料理を頂きたいですわ」
提督「何が食べたいとかはあるか?」
熊野「お好み焼きを!」
33: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:54:54.05 ID:52Ol0HaX0
―19:49―散歩中―
提督「ふぅ…食べたな」
熊野「美味しかったですわね、わたくしには少し量が多かったですが」
提督「俺が食べるハメになったしなぁ」
熊野「あら?美味しかったでしょう?」
提督「まあそうだけどさぁ」
提督(熊野と事実上間接キスしててそんなのどうでもいいくらい恥ずかしいわ)
熊野「ところでどこに向かっているんですの?荷物を旅館に置いてすぐ出掛けましたが」
提督「この近くに公園があるんだよ」
熊野「公園にわざわざこの熊野を連れてくるためだけに散歩を?」
提督「ふぅ…食べたな」
熊野「美味しかったですわね、わたくしには少し量が多かったですが」
提督「俺が食べるハメになったしなぁ」
熊野「あら?美味しかったでしょう?」
提督「まあそうだけどさぁ」
提督(熊野と事実上間接キスしててそんなのどうでもいいくらい恥ずかしいわ)
熊野「ところでどこに向かっているんですの?荷物を旅館に置いてすぐ出掛けましたが」
提督「この近くに公園があるんだよ」
熊野「公園にわざわざこの熊野を連れてくるためだけに散歩を?」
34: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:55:38.12 ID:52Ol0HaX0
提督「ただの公園じゃ無いさ、この長迫公園は」
熊野「知りませんわよ、わたくしに関係などないでしょう?」
提督「あるよ」
熊野「え?」
提督「ほら、これを見てくれ」
熊野「これは…」
提督「熊野、お前の軍艦だったときの慰霊碑だ」
熊野「……っ」
熊野「知りませんわよ、わたくしに関係などないでしょう?」
提督「あるよ」
熊野「え?」
提督「ほら、これを見てくれ」
熊野「これは…」
提督「熊野、お前の軍艦だったときの慰霊碑だ」
熊野「……っ」
35: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:57:12.47 ID:52Ol0HaX0
提督「なあ、熊野。もう一度聞いて良いか?お前は、『熊野』に乗って共に戦い日本に帰れぬまま死んでいった乗組員を犬死にだと思うか?」
熊野「…っずるいですわよ…提督は…わたくしがここで…こんなところで答えないなんて出来ないじゃありませんか」
提督「すまない…だがそれでもお前には答えて欲しいんだ」
熊野「負けると分かっていて戦争に行き、戦死する…確かに後世の人間から見れば愚かですわね。ただそれでも…『至烈ノ闘魂、至高ノ練度』の身を挺した行動を『犬死に』『無駄死に』なんてわたくしは思いませんわ」
提督「そうか…ありがとうな」ギュッ
熊野「て、提督!?」
提督「…俺の爺さんはな『熊野』に乗っていたんだよ」
熊野「そう…でしたのね」
提督「あぁ、お前に犬死にじゃないと言って貰えて嬉しかった」
熊野「そんなの…わたくしじゃなくても艦娘なら誰でもそう言いますわよ」
提督「…でも俺はお前に言って欲しかったんだ」
熊野「案外提督も甘えん坊ですのね」ナデナデ
提督「っこ、こら何をする!」
熊野「今位は気張らなくて良いですわ、自然なあなたで居てください」
提督「…ぅう…」
熊野「…っずるいですわよ…提督は…わたくしがここで…こんなところで答えないなんて出来ないじゃありませんか」
提督「すまない…だがそれでもお前には答えて欲しいんだ」
熊野「負けると分かっていて戦争に行き、戦死する…確かに後世の人間から見れば愚かですわね。ただそれでも…『至烈ノ闘魂、至高ノ練度』の身を挺した行動を『犬死に』『無駄死に』なんてわたくしは思いませんわ」
提督「そうか…ありがとうな」ギュッ
熊野「て、提督!?」
提督「…俺の爺さんはな『熊野』に乗っていたんだよ」
熊野「そう…でしたのね」
提督「あぁ、お前に犬死にじゃないと言って貰えて嬉しかった」
熊野「そんなの…わたくしじゃなくても艦娘なら誰でもそう言いますわよ」
提督「…でも俺はお前に言って欲しかったんだ」
熊野「案外提督も甘えん坊ですのね」ナデナデ
提督「っこ、こら何をする!」
熊野「今位は気張らなくて良いですわ、自然なあなたで居てください」
提督「…ぅう…」
36: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:57:56.64 ID:52Ol0HaX0
―21:57―旅館―
提督「今日は楽しかったか?」
熊野「そうですわね…確かに楽しかったですがそれ以上に考えてる気がしますわ」
提督「確かにそうかもしれないな…明日も多分そんな感じだけど大丈夫か?」
熊野「またわたくしに関係のある場所へ?」
提督「お前の艦内神社はどこが分霊元か知っているか?」
熊野「確か…熊野大社だった気がしますわ」
提督「そうだな、だから明日はその熊野本宮大社に行こうと思う」
熊野「参拝ですわね!」
提督「そういうことだ、もう明日も早いし寝ろよー?」
熊野「あら、提督はどちらへ?」
提督「流石に艦娘と二人きりで寝る度胸は持ち合わせてないよ」
熊野「ふふ、わたくしは別によろしいのに」
提督「あんまりからかうなよ?」
熊野「わかりましたわ、ではおやすみなさい」
バタン―。
提督「今日は楽しかったか?」
熊野「そうですわね…確かに楽しかったですがそれ以上に考えてる気がしますわ」
提督「確かにそうかもしれないな…明日も多分そんな感じだけど大丈夫か?」
熊野「またわたくしに関係のある場所へ?」
提督「お前の艦内神社はどこが分霊元か知っているか?」
熊野「確か…熊野大社だった気がしますわ」
提督「そうだな、だから明日はその熊野本宮大社に行こうと思う」
熊野「参拝ですわね!」
提督「そういうことだ、もう明日も早いし寝ろよー?」
熊野「あら、提督はどちらへ?」
提督「流石に艦娘と二人きりで寝る度胸は持ち合わせてないよ」
熊野「ふふ、わたくしは別によろしいのに」
提督「あんまりからかうなよ?」
熊野「わかりましたわ、ではおやすみなさい」
バタン―。
37: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:58:27.99 ID:52Ol0HaX0
提督「…ふぅ…青葉、どうせ見てるんだろ?」
青葉「あはは、バレてました?」
提督「付いてこいって言ったの俺だしな」
青葉「それで何かご用ですか?」
提督「少し外で話さないか?」
青葉「了解でーす」
青葉「あはは、バレてました?」
提督「付いてこいって言ったの俺だしな」
青葉「それで何かご用ですか?」
提督「少し外で話さないか?」
青葉「了解でーす」
38: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:59:11.91 ID:52Ol0HaX0
―22:02―旅館外―
青葉「それで青葉に何かご用ですか?」
提督「ここはお前にとっても思い入れのある地だろう?」
青葉「そうですねー、呉軍港で空襲によって沈んじゃいましたし」
提督「それでもお前を庇って沈んだ古鷹の名前の付いた山は拝めただろう?」
青葉「…そうですね…」
提督「お前にも考えて欲しいんだ、お前と共に沈んだ乗組員達のことを…そしてお前の腕で伝えて欲しいんだ」
青葉「…わかりました!青葉頑張ります!」
提督「引き受けてくれて嬉しいよ」
青葉「それで青葉に何かご用ですか?」
提督「ここはお前にとっても思い入れのある地だろう?」
青葉「そうですねー、呉軍港で空襲によって沈んじゃいましたし」
提督「それでもお前を庇って沈んだ古鷹の名前の付いた山は拝めただろう?」
青葉「…そうですね…」
提督「お前にも考えて欲しいんだ、お前と共に沈んだ乗組員達のことを…そしてお前の腕で伝えて欲しいんだ」
青葉「…わかりました!青葉頑張ります!」
提督「引き受けてくれて嬉しいよ」
39: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/24(木) 19:59:47.09 ID:52Ol0HaX0
青葉「そりゃぁ…まあ記者ってのは伝えることが仕事ですし」
提督「ははっ、そりゃそうだ」
青葉「なので提督、早く熊野さんのところで一緒に寝てきてください」
提督「えぇ…それ絶対記事にするよな?お前」
青葉「あったり前じゃ無いですかー」
提督「いや、でもなぁ」
青葉「知ってますよ?提督が手違いで一部屋しか取れてないこと」
提督「…わかったよ、ただ何も無いからな?」
青葉「流石に何かあっても困りますよー、行為を激写するわけにもいきませんし」
提督「ん、まあ熊野が寝る前に一応事情話しに行くわ、じゃあおやすみ」
青葉「はい、おやすみなさい!」
提督「ははっ、そりゃそうだ」
青葉「なので提督、早く熊野さんのところで一緒に寝てきてください」
提督「えぇ…それ絶対記事にするよな?お前」
青葉「あったり前じゃ無いですかー」
提督「いや、でもなぁ」
青葉「知ってますよ?提督が手違いで一部屋しか取れてないこと」
提督「…わかったよ、ただ何も無いからな?」
青葉「流石に何かあっても困りますよー、行為を激写するわけにもいきませんし」
提督「ん、まあ熊野が寝る前に一応事情話しに行くわ、じゃあおやすみ」
青葉「はい、おやすみなさい!」
42: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 00:37:54.95 ID:+SfzFCtC0
―07:34―旅館部屋内―
熊野「…んんぅ…ふぁぁあぁ…」
熊野「ん~~」ノビ-
熊野「…あ、てい…とく…」
熊野(そうでした、提督と同じ部屋で寝ていたのですわ)
熊野「ふふ、起きない提督には悪戯しちゃいますわよ?」
熊野(そうですわね…ここにあるお湯を提督のこ、股間に垂らしておきましょうか)
熊野(人肌くらいの温度にして…ふふっ)
熊野「さて、顔を洗いに行きましょうか」
熊野「…んんぅ…ふぁぁあぁ…」
熊野「ん~~」ノビ-
熊野「…あ、てい…とく…」
熊野(そうでした、提督と同じ部屋で寝ていたのですわ)
熊野「ふふ、起きない提督には悪戯しちゃいますわよ?」
熊野(そうですわね…ここにあるお湯を提督のこ、股間に垂らしておきましょうか)
熊野(人肌くらいの温度にして…ふふっ)
熊野「さて、顔を洗いに行きましょうか」
43: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 00:38:26.77 ID:+SfzFCtC0
―08:12―
提督「んぁ~…ん?」
提督(この股間に感じる湿り…もしかして俺…失禁してる?)
提督(熊野は…いないな、よし)ヌギヌギ
提督(マジでこの歳になって粗相をすることになるとは…)
ガチャ―。
熊野「………すいません…」
提督「ちょ、ちょっと待って!熊野!」
熊野「…いえ、あのせめてズボンを…」
提督「あっ、す、すまん…」
提督「んぁ~…ん?」
提督(この股間に感じる湿り…もしかして俺…失禁してる?)
提督(熊野は…いないな、よし)ヌギヌギ
提督(マジでこの歳になって粗相をすることになるとは…)
ガチャ―。
熊野「………すいません…」
提督「ちょ、ちょっと待って!熊野!」
熊野「…いえ、あのせめてズボンを…」
提督「あっ、す、すまん…」
44: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 00:39:07.29 ID:+SfzFCtC0
熊野「お漏らし提督…」ボソッ
提督「はぅっ…」
熊野(どうしましょう、悪戯って言いだし辛いですわ…)
提督「と、とりあえずだな…そのごめんな?」
熊野「別に良いですわよ、その…ノックしなかったわたくしも悪かったので」
提督「あ、ありがとう」
提督「はぅっ…」
熊野(どうしましょう、悪戯って言いだし辛いですわ…)
提督「と、とりあえずだな…そのごめんな?」
熊野「別に良いですわよ、その…ノックしなかったわたくしも悪かったので」
提督「あ、ありがとう」
45: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 00:41:23.75 ID:+SfzFCtC0
―10:36―新幹線内―
熊野「そうそう、提督」
提督「ん?」
熊野「朝の失禁の件ですが…気にしないでいいですわよ?」
提督「ごっふごほんごほん」
熊野「誰しも生理現象に逆らえないことだってありますわ」
提督「お、おう…」
熊野「その…わたくしは気にしてませんわ」
提督「まあ気にしないようにするよ」
熊野「そうそう、提督」
提督「ん?」
熊野「朝の失禁の件ですが…気にしないでいいですわよ?」
提督「ごっふごほんごほん」
熊野「誰しも生理現象に逆らえないことだってありますわ」
提督「お、おう…」
熊野「その…わたくしは気にしてませんわ」
提督「まあ気にしないようにするよ」
46: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 00:41:55.13 ID:+SfzFCtC0
―12:04―新大阪到着―
提督「そういえば神戸の造船所には行かなくてよかったか?」
熊野「そうですわね…確かに行ってみたい気がしますがわたくしだけ行くのは違うでしょう?他にも色んな軍艦があそこで生まれましたから」
提督「そうか…」
熊野「なのでいつか連れて行って欲しいですわ」
提督「おう、任せとけ」
熊野「それで提督、わたくしたこ焼きが食べたいですわ」
提督「たこ焼きか…うん、いいな」
熊野「じゃああちらで売ってるものを頂きましょう」
提督「そういえば神戸の造船所には行かなくてよかったか?」
熊野「そうですわね…確かに行ってみたい気がしますがわたくしだけ行くのは違うでしょう?他にも色んな軍艦があそこで生まれましたから」
提督「そうか…」
熊野「なのでいつか連れて行って欲しいですわ」
提督「おう、任せとけ」
熊野「それで提督、わたくしたこ焼きが食べたいですわ」
提督「たこ焼きか…うん、いいな」
熊野「じゃああちらで売ってるものを頂きましょう」
47: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 00:42:26.29 ID:+SfzFCtC0
―16:19―本宮大社前―
提督「なんてこった…」
熊野「時間がびっくりな時間ですわね…」
提督「どうしてこうなった」
熊野「提督がしっかりとシュミレーションしないからですわ」
提督「だよなあああああああ」
熊野「もう…しっかりして欲しいですわ…まあいつか来ることがあるでしょうし別に今参拝しなくても良いですわよ」
提督「ほんとごめんな」
熊野「確かにしっかりとした計画は大事ですが、ハプニングがあるのも楽しいじゃありませんか」
提督「そう言ってくれると助かる…」
熊野「ということで本日は早めに旅館に行きましょう?」
提督「あぁ」
提督「なんてこった…」
熊野「時間がびっくりな時間ですわね…」
提督「どうしてこうなった」
熊野「提督がしっかりとシュミレーションしないからですわ」
提督「だよなあああああああ」
熊野「もう…しっかりして欲しいですわ…まあいつか来ることがあるでしょうし別に今参拝しなくても良いですわよ」
提督「ほんとごめんな」
熊野「確かにしっかりとした計画は大事ですが、ハプニングがあるのも楽しいじゃありませんか」
提督「そう言ってくれると助かる…」
熊野「ということで本日は早めに旅館に行きましょう?」
提督「あぁ」
51: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:12:52.81 ID:+SfzFCtC0
―18:26―旅館内―
熊野「わぁ、凄い…露天風呂付きのお風呂ですわ」
提督「少し奮発したからな」
熊野「でも奮発しすぎて一部屋しか取れてないんですよね」ジトッ
提督「そ、それは悪いと思ってる」
熊野「まあこの露天風呂に免じて許して差し上げますわ」
提督「よかったよ」
熊野「それで提督?何故あなたは服を脱ごうとしているのかしら?」
提督「そりゃもちろん露天風呂に入るからだが…?」
熊野「レディーファーストって言葉をご存じ?」
熊野「わぁ、凄い…露天風呂付きのお風呂ですわ」
提督「少し奮発したからな」
熊野「でも奮発しすぎて一部屋しか取れてないんですよね」ジトッ
提督「そ、それは悪いと思ってる」
熊野「まあこの露天風呂に免じて許して差し上げますわ」
提督「よかったよ」
熊野「それで提督?何故あなたは服を脱ごうとしているのかしら?」
提督「そりゃもちろん露天風呂に入るからだが…?」
熊野「レディーファーストって言葉をご存じ?」
52: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:13:24.62 ID:+SfzFCtC0
提督「知ってるぞ」
熊野「では露天風呂に入るのはレディのわたくしが先ということで」
提督「だが断る」
熊野「なんでですの!?」
提督「俺はお前の上官だ、上官が先だろう」
熊野「こんな時だけ上官ぶらないで欲しいですわ」
提督「じゃあお前こそレディぶるなよ」
熊野「わたくしはいつだってレディですわ!」
提督「俺だって上官だから!」
熊野「どうしても譲る気はありませんの?」
提督「ない!」
熊野「では露天風呂に入るのはレディのわたくしが先ということで」
提督「だが断る」
熊野「なんでですの!?」
提督「俺はお前の上官だ、上官が先だろう」
熊野「こんな時だけ上官ぶらないで欲しいですわ」
提督「じゃあお前こそレディぶるなよ」
熊野「わたくしはいつだってレディですわ!」
提督「俺だって上官だから!」
熊野「どうしても譲る気はありませんの?」
提督「ない!」
53: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:14:01.69 ID:+SfzFCtC0
熊野「では提督こういたしましょう、わたくしも提督も同時に入るということで」
提督「なるほど!その手があったか…ってそれはないわ~」
熊野「じゃあわたくしがお先に入らせて頂きますわね」
提督「ちょっと待て…お前に先に入られる位なら一緒に入ってやる」
熊野「じゃあ提督、お先に入っていいですよ、わたくし少し時間がかかりますので」
提督「わかった……せめて体にタオルは巻いてくれよ?」
熊野「あ、当たり前ですわ!」
提督「それならいいんだが」
提督「なるほど!その手があったか…ってそれはないわ~」
熊野「じゃあわたくしがお先に入らせて頂きますわね」
提督「ちょっと待て…お前に先に入られる位なら一緒に入ってやる」
熊野「じゃあ提督、お先に入っていいですよ、わたくし少し時間がかかりますので」
提督「わかった……せめて体にタオルは巻いてくれよ?」
熊野「あ、当たり前ですわ!」
提督「それならいいんだが」
54: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:14:47.87 ID:+SfzFCtC0
―18:58―露天風呂―
提督「ふぅ…自然に溢れてると癒やされて気持ちが良いな」
ガララララ―。
熊野「す、少し恥ずかしいですわ…」
提督「お-、熊野来たか~」
熊野「て、提督!?こっち見ないでくださいまし」
提督「あ、すまん…」
熊野「わたくし体を洗いますからこちらを見ないでくださいね?」
提督「あ、あぁ…」
提督「ふぅ…自然に溢れてると癒やされて気持ちが良いな」
ガララララ―。
熊野「す、少し恥ずかしいですわ…」
提督「お-、熊野来たか~」
熊野「て、提督!?こっち見ないでくださいまし」
提督「あ、すまん…」
熊野「わたくし体を洗いますからこちらを見ないでくださいね?」
提督「あ、あぁ…」
55: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:15:38.12 ID:+SfzFCtC0
熊野「そういえば提督ー」
提督「どうした?」
熊野「ここ数日鎮守府を留守にして大丈夫だったんですの?」
提督「あーそれなー長門に任せてきたけど大丈夫かな?」
熊野「少し駆逐艦の子達が心配ですわ」
提督「んー確かにそうだよなぁ…」
熊野「まあ信じて差し上げたらどうですの?」
提督「そうするわ」
提督「それで熊野、俺はいつまでこうしてればいいわけ?」
熊野「………わたくしの裸を見たいのですか?」ドンビキ
提督「どうした?」
熊野「ここ数日鎮守府を留守にして大丈夫だったんですの?」
提督「あーそれなー長門に任せてきたけど大丈夫かな?」
熊野「少し駆逐艦の子達が心配ですわ」
提督「んー確かにそうだよなぁ…」
熊野「まあ信じて差し上げたらどうですの?」
提督「そうするわ」
提督「それで熊野、俺はいつまでこうしてればいいわけ?」
熊野「………わたくしの裸を見たいのですか?」ドンビキ
56: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:16:26.59 ID:+SfzFCtC0
提督「どうしてそうなる!」
熊野「だってわたくしの体を見たくて聞いたのでしょう?」
提督「断じて違う!」
熊野「あら、そこまで全力で否定されると流石に傷つくのですが…」
提督「いや俺はお前のことを凄く魅力的に…ってあぁあぁあああああなんでもない忘れてくれ」
熊野「わ、忘れること何て出来ませんわ…」
提督「く、熊野?」
熊野「わたくしも湯船に入れて頂いても?」
提督「あ、ああじゃあ俺は上がるから…」
熊野「待ってくださいまし」ギュッ
熊野「だってわたくしの体を見たくて聞いたのでしょう?」
提督「断じて違う!」
熊野「あら、そこまで全力で否定されると流石に傷つくのですが…」
提督「いや俺はお前のことを凄く魅力的に…ってあぁあぁあああああなんでもない忘れてくれ」
熊野「わ、忘れること何て出来ませんわ…」
提督「く、熊野?」
熊野「わたくしも湯船に入れて頂いても?」
提督「あ、ああじゃあ俺は上がるから…」
熊野「待ってくださいまし」ギュッ
57: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:17:13.58 ID:+SfzFCtC0
提督「熊野…?」
熊野「少しだけ…こうさせて貰ってもいいですか…?」
提督(なにこの状態、あすなろ抱きって言うの?控えめな胸が押しつけられてるしなんか色々と下半身的にやばい)
熊野「てい、とく…?」
提督「あ、あぁ。はい提督は大丈夫です」
熊野「次は榛名さんの真似ですか…?少し似てたのがイラッときますわね」
提督「いや別に真似したつもりは無いんだがな…」
熊野「こうやって提督とお風呂に入るなんて旅行に行く前のわたくしに伝えてみたいですわ」
提督「そう…かもな」
熊野「ふふ、提督は温かいですわね」
提督「そんなことないさ…」
熊野「少しだけ…こうさせて貰ってもいいですか…?」
提督(なにこの状態、あすなろ抱きって言うの?控えめな胸が押しつけられてるしなんか色々と下半身的にやばい)
熊野「てい、とく…?」
提督「あ、あぁ。はい提督は大丈夫です」
熊野「次は榛名さんの真似ですか…?少し似てたのがイラッときますわね」
提督「いや別に真似したつもりは無いんだがな…」
熊野「こうやって提督とお風呂に入るなんて旅行に行く前のわたくしに伝えてみたいですわ」
提督「そう…かもな」
熊野「ふふ、提督は温かいですわね」
提督「そんなことないさ…」
58: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:17:48.57 ID:+SfzFCtC0
熊野「…ずっと一緒に居てくれますか?」
提督「あぁ、俺はお前達艦娘とずっと一緒に居るさ、提督になった日からそれは変わらないよ」
熊野「そういうことじゃないのですが…」ボソッ
提督「なんか言ったか?」
熊野「逆上せたのでそろそろ上がろうかと思いまして、あ、こちらを見ないでくださいね?」
提督「分かってるよ」
提督「あぁ、俺はお前達艦娘とずっと一緒に居るさ、提督になった日からそれは変わらないよ」
熊野「そういうことじゃないのですが…」ボソッ
提督「なんか言ったか?」
熊野「逆上せたのでそろそろ上がろうかと思いまして、あ、こちらを見ないでくださいね?」
提督「分かってるよ」
59: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/26(土) 22:18:40.50 ID:+SfzFCtC0
―22:37―部屋内―
熊野「あら、提督…どこへ行かれてたので?」
提督「少し売店に飲み物を買いに行ってただけだよ」
熊野「なにか面白いものは売ってまして?」
提督「んーアイス売ってたぞ、一応買ってきたけどいる?」
熊野「頂きますわ!」
提督「ほい」
熊野「んっ…甘くて美味しいですわね」
提督「それにしても熊野は浴衣も似合うんだな」
熊野「…少し照れてしまいますわ」
提督「俺こっちの端っこで寝ていいか?」
熊野「あら、わたくしと一緒のお布団でもよろしくてよ?」
提督「それは遠慮しておくわ!」
熊野「(´・ω・`)」
熊野「あら、提督…どこへ行かれてたので?」
提督「少し売店に飲み物を買いに行ってただけだよ」
熊野「なにか面白いものは売ってまして?」
提督「んーアイス売ってたぞ、一応買ってきたけどいる?」
熊野「頂きますわ!」
提督「ほい」
熊野「んっ…甘くて美味しいですわね」
提督「それにしても熊野は浴衣も似合うんだな」
熊野「…少し照れてしまいますわ」
提督「俺こっちの端っこで寝ていいか?」
熊野「あら、わたくしと一緒のお布団でもよろしくてよ?」
提督「それは遠慮しておくわ!」
熊野「(´・ω・`)」
63: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:14:06.37 ID:IxjJ3hVy0
―08:47―部屋内―
熊野「んっ…あら、おはようございます提督」
提督「おう、起きたか」
熊野「今日はお早いですわね」
提督「まああんまり眠れなくてな」
熊野「どうかなさいましたか?」
提督「いや別に少し今日の花火大会が楽しみでな」
熊野「少年ですわね」クスクス
提督「少年の心を持ち続けるのは大事なんだぞ」
熊野「ええ、わかっていますわ。勿論褒めているのですわよ?」
提督「あ、そうなの?」
熊野「わたくしはレディですわ、それくらいわかっております」
提督「わーすごいレディって言葉すげぇ便利」
熊野「もうっ、馬鹿にしないでくださいまし」
熊野「んっ…あら、おはようございます提督」
提督「おう、起きたか」
熊野「今日はお早いですわね」
提督「まああんまり眠れなくてな」
熊野「どうかなさいましたか?」
提督「いや別に少し今日の花火大会が楽しみでな」
熊野「少年ですわね」クスクス
提督「少年の心を持ち続けるのは大事なんだぞ」
熊野「ええ、わかっていますわ。勿論褒めているのですわよ?」
提督「あ、そうなの?」
熊野「わたくしはレディですわ、それくらいわかっております」
提督「わーすごいレディって言葉すげぇ便利」
熊野「もうっ、馬鹿にしないでくださいまし」
64: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:14:41.87 ID:IxjJ3hVy0
―12:21―会場近く―
提督「ふぅこの辺だな」
熊野「結構皆さん位置取りをされているのですわね」
提督「相当大きい花火大会だしな~」
熊野「わたくし達は場所取りをしなくてもいいので?」
提督「安心しろ、事前に有料スペースを確保している」
熊野「そこまでしているなんて結構前から準備していましたわね?」
提督「まあな、だから一緒に来てくれて嬉しいよ」
熊野「別に…少し気になったからですわ。色んなこともしれましたし悪くない旅行でしたわ」
提督「そう言ってくれると勇気を出して誘った甲斐があるよ」
熊野「あら、勇気を出すことですの?」
提督「出すから!めちゃくちゃ必要だから!」
提督「ふぅこの辺だな」
熊野「結構皆さん位置取りをされているのですわね」
提督「相当大きい花火大会だしな~」
熊野「わたくし達は場所取りをしなくてもいいので?」
提督「安心しろ、事前に有料スペースを確保している」
熊野「そこまでしているなんて結構前から準備していましたわね?」
提督「まあな、だから一緒に来てくれて嬉しいよ」
熊野「別に…少し気になったからですわ。色んなこともしれましたし悪くない旅行でしたわ」
提督「そう言ってくれると勇気を出して誘った甲斐があるよ」
熊野「あら、勇気を出すことですの?」
提督「出すから!めちゃくちゃ必要だから!」
65: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:15:09.88 ID:IxjJ3hVy0
熊野「ふふっ、いつでも誘ってくれて構いませんわよ?」
提督「そんなずっと鎮守府を開けるわけにもいかんだろ」
熊野「いいえ、そうではなく…お買い物でも雑用でもなんでもばっちこい?ってやつですわ」
提督「およそその言葉はレディの使う言葉じゃ無いけどな…まあ今度色々頼むよ」
熊野「えぇ!」
友人「お、提督来てたか」
提督「おー、久々だな」
熊野「提督…このお方は?」チョンチョン
提督「そっか熊野は初めてだよな、俺の士官学校時代の友人だよ」
提督「そんなずっと鎮守府を開けるわけにもいかんだろ」
熊野「いいえ、そうではなく…お買い物でも雑用でもなんでもばっちこい?ってやつですわ」
提督「およそその言葉はレディの使う言葉じゃ無いけどな…まあ今度色々頼むよ」
熊野「えぇ!」
友人「お、提督来てたか」
提督「おー、久々だな」
熊野「提督…このお方は?」チョンチョン
提督「そっか熊野は初めてだよな、俺の士官学校時代の友人だよ」
66: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:15:49.38 ID:IxjJ3hVy0
友人「君が提督のお気に入りの艦娘かい?こいつ変なところでヘタレで鈍感だけどよくしてやってくれな」
提督「おう、どういうことだよそれは、熊野気にしなくて良いからな?」
熊野「いえ、提督はわたくしが確りと支えますわ」
友人「良い娘じゃないか、提督お前この子とケッコンカッコカリしろよ」
提督「いや、流石にそういうのはもっと練度が上がってからの話だろ」
熊野「……///」
友人「あーまだ練度足りてないのか」
提督「とりあえずお前はどっか行け」
友人「ひでぇ…」
提督「これくらいの扱いの方がお前にお似合いだよ」
提督「おう、どういうことだよそれは、熊野気にしなくて良いからな?」
熊野「いえ、提督はわたくしが確りと支えますわ」
友人「良い娘じゃないか、提督お前この子とケッコンカッコカリしろよ」
提督「いや、流石にそういうのはもっと練度が上がってからの話だろ」
熊野「……///」
友人「あーまだ練度足りてないのか」
提督「とりあえずお前はどっか行け」
友人「ひでぇ…」
提督「これくらいの扱いの方がお前にお似合いだよ」
67: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:16:19.29 ID:IxjJ3hVy0
友人「言ってろ…じゃあな提督と…えっと…」
熊野「最上型重巡洋艦4番艦熊野ですわ!」
友人「熊野ちゃんね、ばいばい~」
熊野「失礼しますわ」
提督「変な奴だろ?」
熊野「いえ?結構いい人だと思いますが?」
提督「まあ良い奴なのは違いないけどなぁ」
熊野「そんなことより提督、わたくし屋台を見て回りたいですわ!」
提督「お、じゃあ行くか」
熊野「最上型重巡洋艦4番艦熊野ですわ!」
友人「熊野ちゃんね、ばいばい~」
熊野「失礼しますわ」
提督「変な奴だろ?」
熊野「いえ?結構いい人だと思いますが?」
提督「まあ良い奴なのは違いないけどなぁ」
熊野「そんなことより提督、わたくし屋台を見て回りたいですわ!」
提督「お、じゃあ行くか」
68: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:16:54.77 ID:IxjJ3hVy0
―15:57―射的屋―
熊野「提督、わたくし自信があるのですがやってもよろしくて?」
提督「お、おう…ただあんまり本気だすなよ?」
おっちゃん「おっ、お嬢ちゃんやるかい?5回200円だよ」
熊野「ではこれで」っ200エン
おっちゃん「はいよ~、じゃあこの銃を…」
熊野「要りませんわそんなの」ガチャン
おっちゃん「…えっ」
熊野「安心してくださいまし、空砲で撃ちますわ」
熊野「提督、わたくし自信があるのですがやってもよろしくて?」
提督「お、おう…ただあんまり本気だすなよ?」
おっちゃん「おっ、お嬢ちゃんやるかい?5回200円だよ」
熊野「ではこれで」っ200エン
おっちゃん「はいよ~、じゃあこの銃を…」
熊野「要りませんわそんなの」ガチャン
おっちゃん「…えっ」
熊野「安心してくださいまし、空砲で撃ちますわ」
69: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:19:09.07 ID:IxjJ3hVy0
ドゴーン。
提督「お前は…なんで艤装を今ここで装備できるんだよ!」
熊野「妖精さんにお願いしたら普段は見えない艤装を作って頂きましたの」
提督「妖精さんを不当に使ったらいけません!!!それにどうやってここまで持ってきたんだよ!見えなくても相当重いだろ」
熊野「妖精さんが運んでくださいましたわ!」
提督「妖精さんが過労死しないか心配になるようなことさせるなよ…」
おっちゃん「あんちゃんがこの嬢ちゃんの保護者か?お前どうしてくれるんだよこれ…」
熊野「あら?わたくしの20cm主砲の放つ力が何か問題でも?」
おっちゃん「おおありだわ!」
提督「まあまあ彼女はお嬢様で全然世間を知らないのでどうか許してあげてください」
提督「お前は…なんで艤装を今ここで装備できるんだよ!」
熊野「妖精さんにお願いしたら普段は見えない艤装を作って頂きましたの」
提督「妖精さんを不当に使ったらいけません!!!それにどうやってここまで持ってきたんだよ!見えなくても相当重いだろ」
熊野「妖精さんが運んでくださいましたわ!」
提督「妖精さんが過労死しないか心配になるようなことさせるなよ…」
おっちゃん「あんちゃんがこの嬢ちゃんの保護者か?お前どうしてくれるんだよこれ…」
熊野「あら?わたくしの20cm主砲の放つ力が何か問題でも?」
おっちゃん「おおありだわ!」
提督「まあまあ彼女はお嬢様で全然世間を知らないのでどうか許してあげてください」
70: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:19:40.46 ID:IxjJ3hVy0
熊野「提督、そのような失礼な方に頭を下げる必要はありませんわ。確かにわたくしも"少し"やり過ぎてしまいましたが」
おっちゃん「少し…だぁ?」
熊野「あら、少しではないと?なら今ここで実弾による弾着観測射撃でもして差し上げましょうか?」
おっちゃん「……」ブルブル
熊野「分かればよろしいですわ、ふふっ提督行きましょう?」
提督「あっ、ちょっ…熊野待ってくれよ」
おっちゃん「少し…だぁ?」
熊野「あら、少しではないと?なら今ここで実弾による弾着観測射撃でもして差し上げましょうか?」
おっちゃん「……」ブルブル
熊野「分かればよろしいですわ、ふふっ提督行きましょう?」
提督「あっ、ちょっ…熊野待ってくれよ」
71: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:20:15.38 ID:IxjJ3hVy0
―19:05―有料浜席―
提督「ほら早く来いよ」
熊野「ここに座るんですの?」
提督「なんか不満か?」
熊野「いえ、そうではなくて…」
提督「?」
熊野(この狭さだと自然と体が触れてしまいますわ…ってよく見ると周りは良い雰囲気…もしかしてカップル席?)
熊野「提督、ここはカップル席だったりいたしますの?」
提督「あー確かにカップル多いな、まあ気にしないで良いだろう」
提督「ほら早く来いよ」
熊野「ここに座るんですの?」
提督「なんか不満か?」
熊野「いえ、そうではなくて…」
提督「?」
熊野(この狭さだと自然と体が触れてしまいますわ…ってよく見ると周りは良い雰囲気…もしかしてカップル席?)
熊野「提督、ここはカップル席だったりいたしますの?」
提督「あー確かにカップル多いな、まあ気にしないで良いだろう」
72: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:20:49.91 ID:IxjJ3hVy0
熊野「そ、そうですわよね」
ヒュー―――ドン。
提督「ほら始まったぞ」
熊野「綺麗ですわね、こんなに海を近くに感じながら花火を見られるなんて思っても居ませんでしたわ」
提督「帰ったら鎮守府のみんなで花火でも買って遊ぶか」
熊野「えぇ、みんな喜びそうですわね」
ヒュー―――ドン。
提督「ほら始まったぞ」
熊野「綺麗ですわね、こんなに海を近くに感じながら花火を見られるなんて思っても居ませんでしたわ」
提督「帰ったら鎮守府のみんなで花火でも買って遊ぶか」
熊野「えぇ、みんな喜びそうですわね」
73: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:21:38.52 ID:IxjJ3hVy0
―20:40―三尺玉海上自爆―
熊野「綺麗……」ウルウル
提督「…熊野?泣いているのか?」
熊野「な、泣いてなんかいませんわ…」
提督「いやでも…泣いてるじゃないか」
熊野「…ダメですわね、好きな殿方の前で涙を見せるなんて」
提督「…えっ」
熊野「この際だから言っておきますがわたくしは提督のこと異性として好きですわよ」
熊野「綺麗……」ウルウル
提督「…熊野?泣いているのか?」
熊野「な、泣いてなんかいませんわ…」
提督「いやでも…泣いてるじゃないか」
熊野「…ダメですわね、好きな殿方の前で涙を見せるなんて」
提督「…えっ」
熊野「この際だから言っておきますがわたくしは提督のこと異性として好きですわよ」
74: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:22:19.84 ID:IxjJ3hVy0
提督「…熊野」
熊野「別に返事は要りませんわ、わたくしは艦娘。あなたは提督。身分不相応ですもの」
提督「俺も…お前のこと凄く魅力的に思ってるよ」
熊野「……返事は…グスッ、聞きたくありませんわ…」
提督「熊野、大事な話だから聞いて欲しい。俺はお前達艦娘の提督だし部下に恋なんてしたらダメだと思ってた」
提督「それでもな、やっぱり抑えられないよ…好きだもん、お前のこと好きだもん。他の誰にも渡したくないよ」
熊野「てい…とく…」
提督「俺と…一緒の道を歩んでくれるか?」
熊野「……はいっ!」
熊野「別に返事は要りませんわ、わたくしは艦娘。あなたは提督。身分不相応ですもの」
提督「俺も…お前のこと凄く魅力的に思ってるよ」
熊野「……返事は…グスッ、聞きたくありませんわ…」
提督「熊野、大事な話だから聞いて欲しい。俺はお前達艦娘の提督だし部下に恋なんてしたらダメだと思ってた」
提督「それでもな、やっぱり抑えられないよ…好きだもん、お前のこと好きだもん。他の誰にも渡したくないよ」
熊野「てい…とく…」
提督「俺と…一緒の道を歩んでくれるか?」
熊野「……はいっ!」
75: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:23:26.48 ID:IxjJ3hVy0
提督「…熊野」
熊野「提督……」
チュッ―――。
青葉(はわわ、青葉見ちゃいました!これはシャッターチャンスです!)
青葉(…いえ、やめておきましょう、流石に無粋ですね。それに記事にするにはページが足りません)
青葉「さて青葉もこの花火を楽しみましょうかねぇ」ボソッ
熊野「提督……」
チュッ―――。
青葉(はわわ、青葉見ちゃいました!これはシャッターチャンスです!)
青葉(…いえ、やめておきましょう、流石に無粋ですね。それに記事にするにはページが足りません)
青葉「さて青葉もこの花火を楽しみましょうかねぇ」ボソッ
76: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:27:01.37 ID:IxjJ3hVy0
とりあえず本編はここまでになります。
この話を書くに当たって
「帝国海軍と艦内神社 神々にまもられた日本の海」(著 久野潤 祥伝社刊)
「帝国海軍の航路-父祖たちの証言-」(著 久野潤 青林堂刊)
を参考文献として活用しました。
この話を書くに当たって
「帝国海軍と艦内神社 神々にまもられた日本の海」(著 久野潤 祥伝社刊)
「帝国海軍の航路-父祖たちの証言-」(著 久野潤 青林堂刊)
を参考文献として活用しました。
77: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/27(日) 21:28:21.12 ID:IxjJ3hVy0
続編に関しては需要があるようならば後日談を書きます。
80: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/28(月) 10:26:02.76 ID:mqu0CHv80
後日談1
鈴谷「おかえりー熊野」
熊野「あら、お出迎えなんて嬉しいですわ」
鈴谷「一刻も早く熊野に逢いたかったからね~」
熊野「わたくしも鈴谷に逢いたかったですわ」
提督「仲良いなお前ら」
鈴谷「あったり前じゃん!」
鈴谷「それよりも提督!これ!どういうことさ!」
提督「なにそれ」
熊野「なんですの?」
鈴谷「熊野は見なくてもいいのー」メカクシ
熊野「もぅ…なんなんですの」
提督「あーぁあ…俺と熊野なぁ付き合ったんだよ」
熊野「………///」
鈴谷「むぅ…それは見れば分かるの!熊野が提督のこと好きなのも知ってたの!」
熊野「え…?バレてましたの?」
鈴谷「うん、多分鎮守府のみんな結構気がついてるし」
熊野「…///…うわああああああああああああ」ガンガン
鈴谷「ちょっ…熊野…」
熊野「恥ずかしすぎて死んでしまいたいですわ!」
提督「それは困る!」
熊野「じゃあ提督も一緒に死にましょう!」
提督「鎮守府の指揮は誰が執るんだよ!」
熊野「鈴谷にでもさせておきましょう!」
鈴谷「鈴谷はやんないよ?」
鈴谷「おかえりー熊野」
熊野「あら、お出迎えなんて嬉しいですわ」
鈴谷「一刻も早く熊野に逢いたかったからね~」
熊野「わたくしも鈴谷に逢いたかったですわ」
提督「仲良いなお前ら」
鈴谷「あったり前じゃん!」
鈴谷「それよりも提督!これ!どういうことさ!」
提督「なにそれ」
熊野「なんですの?」
鈴谷「熊野は見なくてもいいのー」メカクシ
熊野「もぅ…なんなんですの」
提督「あーぁあ…俺と熊野なぁ付き合ったんだよ」
熊野「………///」
鈴谷「むぅ…それは見れば分かるの!熊野が提督のこと好きなのも知ってたの!」
熊野「え…?バレてましたの?」
鈴谷「うん、多分鎮守府のみんな結構気がついてるし」
熊野「…///…うわああああああああああああ」ガンガン
鈴谷「ちょっ…熊野…」
熊野「恥ずかしすぎて死んでしまいたいですわ!」
提督「それは困る!」
熊野「じゃあ提督も一緒に死にましょう!」
提督「鎮守府の指揮は誰が執るんだよ!」
熊野「鈴谷にでもさせておきましょう!」
鈴谷「鈴谷はやんないよ?」
81: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/28(月) 10:27:42.93 ID:mqu0CHv80
後日談2
電「あ、熊野さん。おめでとうなのです」
暁「流石、一人前のれでぃね!」
響「…ハラショー」
雷「司令官と付き合っても雷を頼ってくれて良いのよ?」
熊野「あら、ありがとうございますわ」
熊野(青葉さんの新聞でわたくしと提督のことが載ってからというものの会う人会う人に祝福の言葉を言われるのにも慣れましたわ)
熊野「でも……耐えられませんわ!」
提督「お、おう…いきなりどうした」
熊野「実は…」カクカクシカジカ
提督「あー確かになぁ…でも俺の場合よく会う度に涙流されることの方が多いんだが…」
熊野「知りませんわ、そんなの。おおかた提督の顔が怖いのでしょう」
提督「え、俺ってそんなに顔怖い?」
熊野「まず目の下にある隈ですわね」
提督「隈なんて出来てるか?」
熊野「いえ、全然」
提督「平然と嘘をつくな!嘘を!」
熊野「だってそういった方が提督は面白いですもの」フフッ
提督「~~~ッ!あー、もう我慢ならん」
熊野「どうか致しまして?」
提督「キスしたい」
熊野「え?何ですって?」
提督「キスしたい」
熊野「聞き間違いじゃなかったですわね…」
提督「ダメか…?」
熊野「もぅ…ずるいですわ提督。そんな聞き方されてわたくしが断れないの知ってる癖して…」
提督「まあまあ」ナデナデ
熊野「少しだけですわよ?」チュッ
明石(うわぁ…この二人ここが執務室なことも私が居ることも忘れてるよ…)
電「あ、熊野さん。おめでとうなのです」
暁「流石、一人前のれでぃね!」
響「…ハラショー」
雷「司令官と付き合っても雷を頼ってくれて良いのよ?」
熊野「あら、ありがとうございますわ」
熊野(青葉さんの新聞でわたくしと提督のことが載ってからというものの会う人会う人に祝福の言葉を言われるのにも慣れましたわ)
熊野「でも……耐えられませんわ!」
提督「お、おう…いきなりどうした」
熊野「実は…」カクカクシカジカ
提督「あー確かになぁ…でも俺の場合よく会う度に涙流されることの方が多いんだが…」
熊野「知りませんわ、そんなの。おおかた提督の顔が怖いのでしょう」
提督「え、俺ってそんなに顔怖い?」
熊野「まず目の下にある隈ですわね」
提督「隈なんて出来てるか?」
熊野「いえ、全然」
提督「平然と嘘をつくな!嘘を!」
熊野「だってそういった方が提督は面白いですもの」フフッ
提督「~~~ッ!あー、もう我慢ならん」
熊野「どうか致しまして?」
提督「キスしたい」
熊野「え?何ですって?」
提督「キスしたい」
熊野「聞き間違いじゃなかったですわね…」
提督「ダメか…?」
熊野「もぅ…ずるいですわ提督。そんな聞き方されてわたくしが断れないの知ってる癖して…」
提督「まあまあ」ナデナデ
熊野「少しだけですわよ?」チュッ
明石(うわぁ…この二人ここが執務室なことも私が居ることも忘れてるよ…)
82: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/28(月) 10:28:29.00 ID:mqu0CHv80
後日談3
熊野「鎮守府納涼祭?」
提督「あぁ、開きたいんだけど」
熊野「却下ですわね」
提督「なんで!?」
熊野「予算が足りません」
提督「どうして予算が足りないんだ!」
熊野「今回の旅費を経費で落とそうとしたからでしょう!?バカなんですの?」
提督「バカとまでは言わなくて良いだろう!」
熊野「いいえ、この際ですから言っておきますが提督はバカですわ、バカもバカ、大馬鹿者ですわ」
提督「ちょっと提督怒ったんだから!」
熊野「……わたくし今からでも遅くない気がしてきましたわ」
提督「何を?」
熊野「こうしてこうすることですわ」サスモーション
提督「多分それされた提督死んでるよね?流石に刺されたら死ぬよ」
熊野「……ダメですの?」
提督「ダメだよ?!可愛く言ってもダメだよ?!」
熊野「可愛いだなんて…そんな…///」
提督(ちょろい)
熊野「鎮守府納涼祭?」
提督「あぁ、開きたいんだけど」
熊野「却下ですわね」
提督「なんで!?」
熊野「予算が足りません」
提督「どうして予算が足りないんだ!」
熊野「今回の旅費を経費で落とそうとしたからでしょう!?バカなんですの?」
提督「バカとまでは言わなくて良いだろう!」
熊野「いいえ、この際ですから言っておきますが提督はバカですわ、バカもバカ、大馬鹿者ですわ」
提督「ちょっと提督怒ったんだから!」
熊野「……わたくし今からでも遅くない気がしてきましたわ」
提督「何を?」
熊野「こうしてこうすることですわ」サスモーション
提督「多分それされた提督死んでるよね?流石に刺されたら死ぬよ」
熊野「……ダメですの?」
提督「ダメだよ?!可愛く言ってもダメだよ?!」
熊野「可愛いだなんて…そんな…///」
提督(ちょろい)
83: ◆5Yy.rC7Gbc 2017/08/28(月) 10:29:25.25 ID:mqu0CHv80
さて多分きっとこの二人はこんな風にイチャイチャしながら笑って過ごしてくれるだろうと私は信じています。
HTML依頼出してきます
HTML依頼出してきます
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503383529/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ 艦隊これくしょん | Comments (0)
安部菜々「夢売る家畜」
1: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:20:36.88 ID:aMqWbp8N0
地の文注意。
やや閲覧注意。
やや閲覧注意。
2: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:23:15.09 ID:aMqWbp8N0
アイドルってなんでしょうか。
ナナはずっとずっと考えていました。
ブラウン管の小さい画面に映る彼女らはナナにとってとても眩しいものに思えました。
薄汚れている現実世界に光を授ける天使たち。
今思うと美化しすぎかもしれません。
それでも、ナナにとっては、当時のナナにとっては。
本当にかけがえのない素敵な存在だったんです。
ナナはずっとずっと考えていました。
ブラウン管の小さい画面に映る彼女らはナナにとってとても眩しいものに思えました。
薄汚れている現実世界に光を授ける天使たち。
今思うと美化しすぎかもしれません。
それでも、ナナにとっては、当時のナナにとっては。
本当にかけがえのない素敵な存在だったんです。
3: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:24:55.11 ID:aMqWbp8N0
「すみません。安部には私の方からも言っておきますので」
「あぁ、いいよいいよ。ウサミンにはパワーがいるからね。そういう時だってあるさ」
「本当に申し訳ございません!」
今日はバラエティ番組の収録でした。
スタジオでVTRを見てそれについて感想を言い合う時のことです。
普段はワイプに抜かれていることを意識していろんな表情を作るのですが、最近全然うまくできなくて。
それを強く自覚したのは一週間前くらいの放送を見た時でした。
テレビ画面に映るナナの表情はどれも嘘っぽくて、ぎこちなくて、不自然でした。
ナナは嘘をついています。
仕事なら嘘の表情だって作らなきゃいけません。
それが……作れなくなってしまいました。
ペコペコと頭をさげるプロデューサーの背中を見ながら、ナナはぼんやりと考えていました。
この人に、こんなことをさせたかったはずじゃないのに。
ウサミンの看板は、いつからかナナに重くのしかかるようになっていました。
「あぁ、いいよいいよ。ウサミンにはパワーがいるからね。そういう時だってあるさ」
「本当に申し訳ございません!」
今日はバラエティ番組の収録でした。
スタジオでVTRを見てそれについて感想を言い合う時のことです。
普段はワイプに抜かれていることを意識していろんな表情を作るのですが、最近全然うまくできなくて。
それを強く自覚したのは一週間前くらいの放送を見た時でした。
テレビ画面に映るナナの表情はどれも嘘っぽくて、ぎこちなくて、不自然でした。
ナナは嘘をついています。
仕事なら嘘の表情だって作らなきゃいけません。
それが……作れなくなってしまいました。
ペコペコと頭をさげるプロデューサーの背中を見ながら、ナナはぼんやりと考えていました。
この人に、こんなことをさせたかったはずじゃないのに。
ウサミンの看板は、いつからかナナに重くのしかかるようになっていました。
4: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:31:16.59 ID:aMqWbp8N0
このプロダクションに拾ってもらって数年が経ちました。
敵情視察と生活費の工面の意味合いでウェイトレスとして面接を受けたのですが、
いつのまにかアイドルの面接へと変わっていました。
厳密に言うとプロデューサーさんに引き抜かれただけなので形ばかりの面接でしたが。
路上でセルフプロデュースしていた時や、他事務所の面接でアピールした時に散々笑われたナナのキャラに真剣に付き合ってくれたのが彼でした。
もともと選べる立場ではありませんでしたが、それでもこの人についていこうと決心したことは確かです。
ココロって、目に見えないからこそキレイだと思うんですが、この時ばかりははっきりと見えたんです。
この人は絶対に裏切らないっていうキモチと、ナナ自身が彼についていきたいって言うキモチが。
思えばそこからボタンは掛け違っていたのかもしれませんね。
自分自身の気持ちを見誤っていたんですから。
こんなことになるくらいなら、ナナは一生埋もれたままでよかったのかもしれません。
ナナは自分で自分の夢を踏みにじりました。
敵情視察と生活費の工面の意味合いでウェイトレスとして面接を受けたのですが、
いつのまにかアイドルの面接へと変わっていました。
厳密に言うとプロデューサーさんに引き抜かれただけなので形ばかりの面接でしたが。
路上でセルフプロデュースしていた時や、他事務所の面接でアピールした時に散々笑われたナナのキャラに真剣に付き合ってくれたのが彼でした。
もともと選べる立場ではありませんでしたが、それでもこの人についていこうと決心したことは確かです。
ココロって、目に見えないからこそキレイだと思うんですが、この時ばかりははっきりと見えたんです。
この人は絶対に裏切らないっていうキモチと、ナナ自身が彼についていきたいって言うキモチが。
思えばそこからボタンは掛け違っていたのかもしれませんね。
自分自身の気持ちを見誤っていたんですから。
こんなことになるくらいなら、ナナは一生埋もれたままでよかったのかもしれません。
ナナは自分で自分の夢を踏みにじりました。
5: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:34:13.58 ID:aMqWbp8N0
「はぁ……」
事務所でついた大きな溜息。ナナの視線は空のデスクにあります。
プロデューサーさんは今はご不在です。
嬉しいような、残念なような不思議なキモチ。
「あら、どうしたの菜々ちゃん。ため息なんてついて」
少し離れた場所で雑誌に目を通していた瑞樹ちゃんに声をかけられました。
瑞樹ちゃんは素敵な女性です。
いろいろなところに気が利くし、何より自分の魅せ方というものをわかっている気がします。
「プロ意識ってなんでしょうね……?」
「プロ意識?」
「はい。瑞樹ちゃんは女子アナ時代に何か教わりませんでしたか?」
「んー、そうねぇ。これといって何かお話を受けたことはないわ」
聞いていて思いました。たぶん彼女は当たり前のことを当たり前にこなしているだけなんです。
男性から好かれる女性が好かれ方を学ばないように、
仕事を徹底できる人はその方法を他人から学んだりしない。
その最低水準が人より高いだけで、特別何か心がけていなくてもそれができてしまう。
私だってどれだけバカにされようともウサミンでいることが正しいと思っているから貫いているはずなのに。
「まぁ悩みたくなる気持ちはわかるわ。最近、いろいろと”物騒”だから」
よく見ると瑞樹ちゃんが手に持っている雑誌には恋するアイドルたちにとっては毒々しい文言が飾られていました。
「私の場合は『結婚はまだかー』だなんてファンから揶揄されるから、菜々ちゃんの気持ちはわからないけど」
「な、なぜそれを……?」
「あら? 図星だったかしら?」
ペロリと舌を出す瑞樹ちゃんは小悪魔というよりも魔女に見えました。
事務所でついた大きな溜息。ナナの視線は空のデスクにあります。
プロデューサーさんは今はご不在です。
嬉しいような、残念なような不思議なキモチ。
「あら、どうしたの菜々ちゃん。ため息なんてついて」
少し離れた場所で雑誌に目を通していた瑞樹ちゃんに声をかけられました。
瑞樹ちゃんは素敵な女性です。
いろいろなところに気が利くし、何より自分の魅せ方というものをわかっている気がします。
「プロ意識ってなんでしょうね……?」
「プロ意識?」
「はい。瑞樹ちゃんは女子アナ時代に何か教わりませんでしたか?」
「んー、そうねぇ。これといって何かお話を受けたことはないわ」
聞いていて思いました。たぶん彼女は当たり前のことを当たり前にこなしているだけなんです。
男性から好かれる女性が好かれ方を学ばないように、
仕事を徹底できる人はその方法を他人から学んだりしない。
その最低水準が人より高いだけで、特別何か心がけていなくてもそれができてしまう。
私だってどれだけバカにされようともウサミンでいることが正しいと思っているから貫いているはずなのに。
「まぁ悩みたくなる気持ちはわかるわ。最近、いろいろと”物騒”だから」
よく見ると瑞樹ちゃんが手に持っている雑誌には恋するアイドルたちにとっては毒々しい文言が飾られていました。
「私の場合は『結婚はまだかー』だなんてファンから揶揄されるから、菜々ちゃんの気持ちはわからないけど」
「な、なぜそれを……?」
「あら? 図星だったかしら?」
ペロリと舌を出す瑞樹ちゃんは小悪魔というよりも魔女に見えました。
6: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:39:05.79 ID:aMqWbp8N0
「うぅぅ……卑怯です」
「ひっかかった菜々ちゃんが悪いんじゃない。私のせいじゃないわ」
「で、ですけど!」
「いろいろと気をつけてね」
それだけいうと、瑞樹ちゃんは仕事に行ってしまいました。
アイドルとしてのプロ意識。
パフォーマンスには手を抜かない。
それ以外にも何か求められているんでしょうか。
眼前の立ちふさがる答えに目を瞑って、ナナはしばらく考えるふりをしていました。
「ひっかかった菜々ちゃんが悪いんじゃない。私のせいじゃないわ」
「で、ですけど!」
「いろいろと気をつけてね」
それだけいうと、瑞樹ちゃんは仕事に行ってしまいました。
アイドルとしてのプロ意識。
パフォーマンスには手を抜かない。
それ以外にも何か求められているんでしょうか。
眼前の立ちふさがる答えに目を瞑って、ナナはしばらく考えるふりをしていました。
7: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:46:06.95 ID:aMqWbp8N0
以前、面接に行った別のアイドルプロダクションでのお話です。
そのプロダクションのアイドルの方が俳優とのスキャンダルを起こして事務所が荒れている中、ナナは面接に行きました。
その時に聞こえてきた罵声や、見えてしまった光景が今でも脳裏に焼き付いています。
事務所の一室。土下座をしている男性の頭を踏みつけ、形だけの謝罪をしているアイドルを睨みつける社長の顔。
『お前は夢売る家畜なんだよ! 与えた夢には責任を取れ! 貫き通せない夢なら最初から見せるなっ!』
家畜という単語にアイドルの子は怒りを覚えたのでしょうか。
『私だって……私だって女です! 恋をすることってそんなに悪いことですか!?』
『女でいるならアイドルをやめろ。お前はいつからそんなに偉くなったんだ? 歌って踊れるだけの小娘に群がるほど他人は暇じゃない』
『お前の喜びの下にはお前を支持する人の努力があるんだ。お前はその信頼を最悪な形で裏切った』
社長さんの口調は高圧的でした。
言葉も選ばず、アイドルの子に対しても容赦がない。
聞く人が聞けば最低でしょう。
でも、それでも。
ナナはその言葉を当然だと思っていましたし、そのアイドルの子を軽蔑していたことも自覚していました。
そのプロダクションのアイドルの方が俳優とのスキャンダルを起こして事務所が荒れている中、ナナは面接に行きました。
その時に聞こえてきた罵声や、見えてしまった光景が今でも脳裏に焼き付いています。
事務所の一室。土下座をしている男性の頭を踏みつけ、形だけの謝罪をしているアイドルを睨みつける社長の顔。
『お前は夢売る家畜なんだよ! 与えた夢には責任を取れ! 貫き通せない夢なら最初から見せるなっ!』
家畜という単語にアイドルの子は怒りを覚えたのでしょうか。
『私だって……私だって女です! 恋をすることってそんなに悪いことですか!?』
『女でいるならアイドルをやめろ。お前はいつからそんなに偉くなったんだ? 歌って踊れるだけの小娘に群がるほど他人は暇じゃない』
『お前の喜びの下にはお前を支持する人の努力があるんだ。お前はその信頼を最悪な形で裏切った』
社長さんの口調は高圧的でした。
言葉も選ばず、アイドルの子に対しても容赦がない。
聞く人が聞けば最低でしょう。
でも、それでも。
ナナはその言葉を当然だと思っていましたし、そのアイドルの子を軽蔑していたことも自覚していました。
8: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:49:14.70 ID:aMqWbp8N0
アイドルだから可愛いのではなく、可愛いからアイドルになるのだと思っています。
自惚れているわけではなく、ナナも容姿には自信がありました。
それに世の男性方は若い女の子の方が好きです。
ナナが17歳を貫き通しているのにも、その理由があったことは否定できません。
たくさん恋愛したい気持ちを抑えて、アイドルたちは夢を売ることを強要されるのです。
全国からかき集められた可愛い女の子たちは誰一人として恋愛を許されていないのです。
そんなの当たり前です。
歌えば歌手には敵わず、踊ればダンサーには敵わない。
そうなると今度は夢を売るしかない。
その夢に、たくさんのお金が動いている。
「はぁ…………」
溜息がもう一つ。
あの日、ブラウン管に映ったアイドルたちもこんな悩みを抱えていたのでしょうか。
自惚れているわけではなく、ナナも容姿には自信がありました。
それに世の男性方は若い女の子の方が好きです。
ナナが17歳を貫き通しているのにも、その理由があったことは否定できません。
たくさん恋愛したい気持ちを抑えて、アイドルたちは夢を売ることを強要されるのです。
全国からかき集められた可愛い女の子たちは誰一人として恋愛を許されていないのです。
そんなの当たり前です。
歌えば歌手には敵わず、踊ればダンサーには敵わない。
そうなると今度は夢を売るしかない。
その夢に、たくさんのお金が動いている。
「はぁ…………」
溜息がもう一つ。
あの日、ブラウン管に映ったアイドルたちもこんな悩みを抱えていたのでしょうか。
9: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:53:19.89 ID:aMqWbp8N0
「菜々? 最近お前変だぞ?」
お仕事帰りのことです。
最近のナナの異変にプロデューサーさんが気づきました。
いつもなら楽しいはずの時間も、いまは胸を蝕む毒にすぎません。
「あは、あははは……。ちょっと疲れているだけで……」
「仕事の量減らすか?」
「い、いえ! 逆に増やして欲しいくらいです!」
嘘です。本当はこんな気持ちのまま仕事なんかしたくありません。
「嘘だろ」
「そうですよ! だからもっと…………え?」
車と一緒に時間も止まりました。
「どうした?」
お仕事帰りのことです。
最近のナナの異変にプロデューサーさんが気づきました。
いつもなら楽しいはずの時間も、いまは胸を蝕む毒にすぎません。
「あは、あははは……。ちょっと疲れているだけで……」
「仕事の量減らすか?」
「い、いえ! 逆に増やして欲しいくらいです!」
嘘です。本当はこんな気持ちのまま仕事なんかしたくありません。
「嘘だろ」
「そうですよ! だからもっと…………え?」
車と一緒に時間も止まりました。
「どうした?」
10: ◆oeRx5YHce. 2017/08/26(土) 23:57:44.30 ID:aMqWbp8N0
優しい優しいプロデューサー。
アイドルに対して怒鳴ることはなく、ミスがあったら一緒に解決して、二人三脚で頑張ってきました。
王子様に憧れる少女の気持ちは今でもありますが、ナナは彼の懐の深さに魅力を感じています。
一人の人間としてではなく、異性として。
この人と家庭を築きたい。
この人のお嫁さんになりたい。
この人と一生を添い遂げたい。
夢売る家畜。なんてひどい言葉なんでしょうか。
ナナはあの日軽蔑したアイドルと全く同じ存在になり果てました。
ナナの歌にどれだけの価値があるのでしょうか。
ナナの踊りにどれだけの価値があるのでしょうか。
ナナは一体、何を売っているのでしょうか。
アイドルに対して怒鳴ることはなく、ミスがあったら一緒に解決して、二人三脚で頑張ってきました。
王子様に憧れる少女の気持ちは今でもありますが、ナナは彼の懐の深さに魅力を感じています。
一人の人間としてではなく、異性として。
この人と家庭を築きたい。
この人のお嫁さんになりたい。
この人と一生を添い遂げたい。
夢売る家畜。なんてひどい言葉なんでしょうか。
ナナはあの日軽蔑したアイドルと全く同じ存在になり果てました。
ナナの歌にどれだけの価値があるのでしょうか。
ナナの踊りにどれだけの価値があるのでしょうか。
ナナは一体、何を売っているのでしょうか。
11: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:02:56.73 ID:7QdG1JtO0
「プロデューサーさん……」
ナナは思い切って呼んでみます。
「プロデューサーさんは……その、なんでプロデューサーになったんですか?」
「そうだなぁ…………こんなこというと不愉快かもしれないが、俺は誰かのことをずっと見守っていたかったんだよ」
「……見守る?」
「そうだ。すでに出来上がったものじゃなくて、一から作り上げていく。その過程をずっと見守っていたかった」
「昔さ、大好きな漫画があったんだ。俺はその漫画を世界で一番好きだっていう自信があった」
「でも違うんだよ。確かに俺の好きは嘘じゃないんだけどさ、でもその作品を一番愛してるのは作者なんだろうなって気づいたんだ」
「なんかすごく、こう、胸が苦しくなったよ。『俺はどうあがいてもそこにはいけないんだ』って子供ながらに思ったんだよな」
「だから俺は俺が胸を張って愛せるようなものが欲しかった。独占欲かもしれないな」
「でも俺は絵が下手くそだし、小説だって書いたこともない。そうして悶々としてる時にたまたまテレビを見てたんだ」
「菜々よりもちょっと年下の子達かな。その子たちが楽しそうにテレビで踊ってて、それが俺にも眩しく見えたんだよな」
「だからこうしてプロデューサーになったのかもしれない。俺は俺のアイドルたちを一番に愛していたいし、それこそ昔の俺みたいに『世界で一番〇〇が好きだ!!』って言われるようなアイドルを育てたいのかもな」
過去と夢を語るプロデューサーさんはとても素敵で、その横顔はどこか見覚えがありました。
それが誰なのかナナは知っています。
いつも応援をくれるあの真っ直ぐな眼差し。
会場に鳴り響く地鳴りのような歓声。
共通点が多すぎて、ナナは自然とファンのみんなとプロデューサーさんを線で結んでいました。
ナナは思い切って呼んでみます。
「プロデューサーさんは……その、なんでプロデューサーになったんですか?」
「そうだなぁ…………こんなこというと不愉快かもしれないが、俺は誰かのことをずっと見守っていたかったんだよ」
「……見守る?」
「そうだ。すでに出来上がったものじゃなくて、一から作り上げていく。その過程をずっと見守っていたかった」
「昔さ、大好きな漫画があったんだ。俺はその漫画を世界で一番好きだっていう自信があった」
「でも違うんだよ。確かに俺の好きは嘘じゃないんだけどさ、でもその作品を一番愛してるのは作者なんだろうなって気づいたんだ」
「なんかすごく、こう、胸が苦しくなったよ。『俺はどうあがいてもそこにはいけないんだ』って子供ながらに思ったんだよな」
「だから俺は俺が胸を張って愛せるようなものが欲しかった。独占欲かもしれないな」
「でも俺は絵が下手くそだし、小説だって書いたこともない。そうして悶々としてる時にたまたまテレビを見てたんだ」
「菜々よりもちょっと年下の子達かな。その子たちが楽しそうにテレビで踊ってて、それが俺にも眩しく見えたんだよな」
「だからこうしてプロデューサーになったのかもしれない。俺は俺のアイドルたちを一番に愛していたいし、それこそ昔の俺みたいに『世界で一番〇〇が好きだ!!』って言われるようなアイドルを育てたいのかもな」
過去と夢を語るプロデューサーさんはとても素敵で、その横顔はどこか見覚えがありました。
それが誰なのかナナは知っています。
いつも応援をくれるあの真っ直ぐな眼差し。
会場に鳴り響く地鳴りのような歓声。
共通点が多すぎて、ナナは自然とファンのみんなとプロデューサーさんを線で結んでいました。
12: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:06:53.21 ID:7QdG1JtO0
「で、どうしたんだ? 悩みは解決…………しそうにないな」
「え……?」
「涙、拭けよ」
ポロポロと気づけば涙が溢れていました。
どうしましょう。
このままウサミンで切り抜けることもできます。
すこしだけすっきりしたナナにならそれくらいのことはできるんです。
でも、でも。
今ここで吐き出さなかったら一生溜め込んだままです。
ナナの胸の奥底で、腐臭を漂わせながらナナの笑顔を曇らせ続けます。
それが嫌で、そんな姿でファンのみんなの前に立ちたくなくて。
気づけばプロデューサーさんの胸に飛び込んでいました。
「え……?」
「涙、拭けよ」
ポロポロと気づけば涙が溢れていました。
どうしましょう。
このままウサミンで切り抜けることもできます。
すこしだけすっきりしたナナにならそれくらいのことはできるんです。
でも、でも。
今ここで吐き出さなかったら一生溜め込んだままです。
ナナの胸の奥底で、腐臭を漂わせながらナナの笑顔を曇らせ続けます。
それが嫌で、そんな姿でファンのみんなの前に立ちたくなくて。
気づけばプロデューサーさんの胸に飛び込んでいました。
13: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:08:31.05 ID:7QdG1JtO0
涙を流しながら男の人の胸に飛び込むなんて、それがどういうことを意味するのかわからない歳ではありません。
もちろんそれはプロデューサーさんにとっても同じで、彼の鼻から漏れる小さな吐息がナナの身体を震わせました。
呆れられたらどうしよう。
見捨てられたらどうしよう。
大好きなプロデューサーさんに。
ナナのことを拾ってくれた大事な大事なファンに。
そんな人に突き飛ばされたらどうしよう。
「菜々」
名前を呼んでもらっただけ。
それだけでも充分でした。
もらった勇気を握りしめて、言葉を塞がられる前に吐き出してしまいます。
もちろんそれはプロデューサーさんにとっても同じで、彼の鼻から漏れる小さな吐息がナナの身体を震わせました。
呆れられたらどうしよう。
見捨てられたらどうしよう。
大好きなプロデューサーさんに。
ナナのことを拾ってくれた大事な大事なファンに。
そんな人に突き飛ばされたらどうしよう。
「菜々」
名前を呼んでもらっただけ。
それだけでも充分でした。
もらった勇気を握りしめて、言葉を塞がられる前に吐き出してしまいます。
14: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:10:29.37 ID:7QdG1JtO0
「プロデューサーさんもう限界です菜々はあなたのことを愛しています」
不特定多数から浴びる脚光よりも、
一人の雄に愛されることを望んでしまいました。
ここにいるのはウサミンではなく、ただの一人の雌。
ファンのみんなの喜びよりも自分の悦びを取った雌。
不特定多数から浴びる脚光よりも、
一人の雄に愛されることを望んでしまいました。
ここにいるのはウサミンではなく、ただの一人の雌。
ファンのみんなの喜びよりも自分の悦びを取った雌。
15: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:15:53.24 ID:7QdG1JtO0
「菜々のこともらってください菜々のこと愛してください菜々を…………お嫁さんにしてくださいっ!!!」
それは絶叫にも似た告白でした。
甘やかな愛の言葉というよりも、金切り声を上げているだけ。
ムードもへったくれもありません。
それでも彼は、優しく菜々を撫でていてくれました。
頭を、髪を、肩を、背中を。
全てを理解してくれていたようでした。
どこまでも懐の深い人です。
今はただ、何も言わずに菜々を受け止めてくれます。
二人を連れて夜の街へと消え去る車が、プロデューサーさんの覚悟を示していました。
それは絶叫にも似た告白でした。
甘やかな愛の言葉というよりも、金切り声を上げているだけ。
ムードもへったくれもありません。
それでも彼は、優しく菜々を撫でていてくれました。
頭を、髪を、肩を、背中を。
全てを理解してくれていたようでした。
どこまでも懐の深い人です。
今はただ、何も言わずに菜々を受け止めてくれます。
二人を連れて夜の街へと消え去る車が、プロデューサーさんの覚悟を示していました。
16: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:18:24.67 ID:7QdG1JtO0
一夜明けて翌朝。
モバPさんの家のベッドの上で目をさますと、隣にはすっかり冷え切ったシーツがありました。
もうお昼時。目が少し腫れぼったい。
彼と結ばれ、身体を許した、アイドル失格1日目。
モバPさんからのメッセージが携帯に届いていました。
『社長がこれからのことで話があるらしい。16時に事務所まで来てくれ』
愛しの彼からの連絡は淡白なものでした。
はだけた寝間着を正しながら、シャワーを浴びようとベッドを降りたその時。
「————痛っ」
股関節や太ももに鈍い痛みを感じます。
一人で目をさますことより、
隣で眠る彼がいないことより、
生々しい現実がそこに在りました。
「そっかぁ……」
口の中がしょっぱくて、お腹がひくひくと動き出します。
急ぎ足のマリッジブルーと途方もない喪失感が胸に広がりました。
モバPさんの家のベッドの上で目をさますと、隣にはすっかり冷え切ったシーツがありました。
もうお昼時。目が少し腫れぼったい。
彼と結ばれ、身体を許した、アイドル失格1日目。
モバPさんからのメッセージが携帯に届いていました。
『社長がこれからのことで話があるらしい。16時に事務所まで来てくれ』
愛しの彼からの連絡は淡白なものでした。
はだけた寝間着を正しながら、シャワーを浴びようとベッドを降りたその時。
「————痛っ」
股関節や太ももに鈍い痛みを感じます。
一人で目をさますことより、
隣で眠る彼がいないことより、
生々しい現実がそこに在りました。
「そっかぁ……」
口の中がしょっぱくて、お腹がひくひくと動き出します。
急ぎ足のマリッジブルーと途方もない喪失感が胸に広がりました。
17: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:20:34.45 ID:7QdG1JtO0
約束の時間の10分前。
事務所に着くとちひろさんが「プロデューサーさんならもう社長室ですよ」と一言。
口から心臓が飛び出そうになりながらも、不思議と感情は形を成しませんでした。
どんな形になっていいのかわからない、遊び途中で放置された粘土のように不定形。
気がつくと扉の前です。
————夢売る家畜。
食用に適さない家畜は殺処分されるでしょう。
夢のない家畜もきっと処分されるでしょう。
この扉を開けようが開けまいが、菜々はもうナナとして表舞台に出ることはありません。
…………ごめんなさい。なんて偽善的な言葉なのでしょう。
誠意からでる謝罪ではなく許しを請うための言葉。
苛まれることから逃れるための儀式。
しかもそれはきっとナナの口から告げられることはありません。
なんて卑怯で、なんて冒涜的で、なんて身勝手な振る舞い。
それでも、菜々はあの人に添い遂げることを決めました。
例えその先がアウシュヴィッツへと続いていようと、
あなたとなら幸せになれると本能が告げています。
事務所に着くとちひろさんが「プロデューサーさんならもう社長室ですよ」と一言。
口から心臓が飛び出そうになりながらも、不思議と感情は形を成しませんでした。
どんな形になっていいのかわからない、遊び途中で放置された粘土のように不定形。
気がつくと扉の前です。
————夢売る家畜。
食用に適さない家畜は殺処分されるでしょう。
夢のない家畜もきっと処分されるでしょう。
この扉を開けようが開けまいが、菜々はもうナナとして表舞台に出ることはありません。
…………ごめんなさい。なんて偽善的な言葉なのでしょう。
誠意からでる謝罪ではなく許しを請うための言葉。
苛まれることから逃れるための儀式。
しかもそれはきっとナナの口から告げられることはありません。
なんて卑怯で、なんて冒涜的で、なんて身勝手な振る舞い。
それでも、菜々はあの人に添い遂げることを決めました。
例えその先がアウシュヴィッツへと続いていようと、
あなたとなら幸せになれると本能が告げています。
18: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:22:13.93 ID:7QdG1JtO0
ごめんなさい。
夢の残骸に埋もれてください。
ごめんなさい。
菜々の幸せはあの人と共にありました。
ごめんなさい。
いつか言わせてもらえるなら、しっかりと言わせてください。
ごめんなさい。
ナナを愛してくれた全ての人に。
こうして夢売る家畜は処分され、素敵な人と結婚しましたとさ。
終わり
夢の残骸に埋もれてください。
ごめんなさい。
菜々の幸せはあの人と共にありました。
ごめんなさい。
いつか言わせてもらえるなら、しっかりと言わせてください。
ごめんなさい。
ナナを愛してくれた全ての人に。
こうして夢売る家畜は処分され、素敵な人と結婚しましたとさ。
終わり
19: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:23:36.80 ID:7QdG1JtO0
お疲れちゃんです。
以前凛でも書いたんですが、アイドルの恋愛について菜々に悩ませたかっただけです。
暴力的な言葉が多いので、気分を害されたら申し訳ないです。
以上です。
多分明日も来ます。
なんかあったらどうぞ。
以前凛でも書いたんですが、アイドルの恋愛について菜々に悩ませたかっただけです。
暴力的な言葉が多いので、気分を害されたら申し訳ないです。
以上です。
多分明日も来ます。
なんかあったらどうぞ。
20: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 00:25:42.35 ID:7QdG1JtO0
前スレ忘れてました。よければどうぞ。
響子「旦那さんが凛ちゃんと浮気するエロ本を隠し持ってました……」
速水奏「…………むぅ」
明日はまゆと美優さんにする予定です
響子「旦那さんが凛ちゃんと浮気するエロ本を隠し持ってました……」
速水奏「…………むぅ」
明日はまゆと美優さんにする予定です
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 01:33:36.56 ID:sZSzxoRX0
おつ よかった
しかし繋がりのない(?)過去作は前スレとは言わないんじゃ いやべつにいいんだけど
しかし繋がりのない(?)過去作は前スレとは言わないんじゃ いやべつにいいんだけど
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 07:15:37.51 ID:vwd47lRqo
乙、前作だな
23: ◆oeRx5YHce. 2017/08/27(日) 12:01:37.55 ID:7QdG1JtO0
なるほど
単に自分が言葉の意味を勘違いしてただけですね。
それなら前作であってると思います。ありがとうございます
単に自分が言葉の意味を勘違いしてただけですね。
それなら前作であってると思います。ありがとうございます
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1503757236/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ モバマス | Comments (0)
【艦これ】提督「間宮をメイド喫茶にしたい?」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 18:44:05.06 ID:u9WavQ4X0
間宮「はい、期間限定ですけど」
提督「何でそんなことを? 本土にも店を作ってから大盛況じゃないか」
間宮「あ、いえ……お客さんを呼ぶための策略とかではないんです。ただ、そういうイベントを月ごとに開いたら面白いかなと思って」
間宮「お店の内装や接客のスタイルを変えたりして。今回はたまたまメイド喫茶というだけです」
提督「なるほどな……まあいいんじゃないか? そもそも間宮の経営は全部お前に任せてるし、好きにしてもらって構わないよ」
間宮「ありがとうございます!」
間宮「それと、もう一つお願いがあるんです」
提督「?」
間宮「接客するメイドさんなんですけど、艦娘の中から引き抜きたいなと」
提督「艦娘から?」
間宮「出撃や演習で忙しいのは承知なんです! でも、お願いできるのはやっぱり艦娘の娘たちしかいなくて」
間宮「ワガママを言ってすみません」
提督「んー……そうだな。深海棲艦とも和解してるし、貸したところで差支えはないだろう」
提督「何でそんなことを? 本土にも店を作ってから大盛況じゃないか」
間宮「あ、いえ……お客さんを呼ぶための策略とかではないんです。ただ、そういうイベントを月ごとに開いたら面白いかなと思って」
間宮「お店の内装や接客のスタイルを変えたりして。今回はたまたまメイド喫茶というだけです」
提督「なるほどな……まあいいんじゃないか? そもそも間宮の経営は全部お前に任せてるし、好きにしてもらって構わないよ」
間宮「ありがとうございます!」
間宮「それと、もう一つお願いがあるんです」
提督「?」
間宮「接客するメイドさんなんですけど、艦娘の中から引き抜きたいなと」
提督「艦娘から?」
間宮「出撃や演習で忙しいのは承知なんです! でも、お願いできるのはやっぱり艦娘の娘たちしかいなくて」
間宮「ワガママを言ってすみません」
提督「んー……そうだな。深海棲艦とも和解してるし、貸したところで差支えはないだろう」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 18:46:53.13 ID:u9WavQ4X0
間宮「じゃあ……!」
提督「よろしく頼む」ニコッ
間宮「本当にありがとうございます!」ペコリ
――一一週間後――
提督「ということがあって、艦娘たちが1日交代で『メイド喫茶間宮』のメイドをやっているらしいんだが」
提督「どんなものか上司として見守る必要があるよな」
提督「ちゃんと接客できてるかとか、変な客にセクハラされないだろうかとか……色々不安だし……」ソワソワ
女「あのー」
提督「!」
男「店の入口に立たれると入れないんですけど」
提督「すみません」ササッ
提督「よろしく頼む」ニコッ
間宮「本当にありがとうございます!」ペコリ
――一一週間後――
提督「ということがあって、艦娘たちが1日交代で『メイド喫茶間宮』のメイドをやっているらしいんだが」
提督「どんなものか上司として見守る必要があるよな」
提督「ちゃんと接客できてるかとか、変な客にセクハラされないだろうかとか……色々不安だし……」ソワソワ
女「あのー」
提督「!」
男「店の入口に立たれると入れないんですけど」
提督「すみません」ササッ
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 18:49:43.17 ID:u9WavQ4X0
女「軍人のコスプレかな?」ヒソヒソ
男「本物かもよ」ヒソヒソ
提督「……」
提督(しまった、この格好だと目立つか。私服に着替えて出直そう)スタスタ
――――
提督(よし、これでオーケー。いざ入店)スタスタ
ウィーン
漣「お帰りなさいませご主人様♡」ニコッ
提督「!?」ビクッ
漣「って本物のご主人様! なんでここに?」
提督「ちょっと様子を見に来たんだよ」
漣「ふむふむ、漣たちの可愛いメイド姿を目に焼き付けに来たと」
提督「勝手な変換はやめてくれ」
男「本物かもよ」ヒソヒソ
提督「……」
提督(しまった、この格好だと目立つか。私服に着替えて出直そう)スタスタ
――――
提督(よし、これでオーケー。いざ入店)スタスタ
ウィーン
漣「お帰りなさいませご主人様♡」ニコッ
提督「!?」ビクッ
漣「って本物のご主人様! なんでここに?」
提督「ちょっと様子を見に来たんだよ」
漣「ふむふむ、漣たちの可愛いメイド姿を目に焼き付けに来たと」
提督「勝手な変換はやめてくれ」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 18:52:45.08 ID:u9WavQ4X0
漣「えー? でもメイド姿の漣、可愛くないですかー?」ニコニコ
提督「そうだな、すごく似合ってるよ。というかそろそろ席に案内して欲しい」
漣「もー淡白な反応ー! こっちですよ!」スタスタ
提督(フランクだな……)スタスタ
――――
漣「はい、魔法のお水です♪」スッ
提督「は?」
漣「魔法のお水です。漣が魔法をかけたので、とっても美味しいですよ」
提督「お冷だよな」
漣「魔法のお水です」
提督「……そうか」
漣「では、こちらのメニューから選んでください」
提督「……」
提督(お絵かきオムライス、なぽりたん、うさうさハンバーグ)
提督(実際のメイド喫茶もこんな感じなのか?)
提督「そうだな、すごく似合ってるよ。というかそろそろ席に案内して欲しい」
漣「もー淡白な反応ー! こっちですよ!」スタスタ
提督(フランクだな……)スタスタ
――――
漣「はい、魔法のお水です♪」スッ
提督「は?」
漣「魔法のお水です。漣が魔法をかけたので、とっても美味しいですよ」
提督「お冷だよな」
漣「魔法のお水です」
提督「……そうか」
漣「では、こちらのメニューから選んでください」
提督「……」
提督(お絵かきオムライス、なぽりたん、うさうさハンバーグ)
提督(実際のメイド喫茶もこんな感じなのか?)
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 18:55:45.17 ID:u9WavQ4X0
提督「じゃあこの『にゃあにゃあパフェ』で」
漣「はいっ、かしこまりました! 少々お待ちください!」スタスタ
提督「ふぅ……しかし……」
男「あの、写真撮ってもいいですか?」
朧「いいですよ。他のメイドさんが写らないようお願いしますね」ニコニコ
潮「お嬢様、お好きな動物はなんですか?」
女「犬!」
潮「ワンちゃんですね。では潮、オムライスに一生懸命お絵かきします」ドキドキ
女「わー! 描いて描いてー!」
提督「今日は七駆の手伝いか。頑張ってるみたいだな」フフッ
提督「そういえば曙の姿が見えないな……」キョロキョロ
漣「はいっ、かしこまりました! 少々お待ちください!」スタスタ
提督「ふぅ……しかし……」
男「あの、写真撮ってもいいですか?」
朧「いいですよ。他のメイドさんが写らないようお願いしますね」ニコニコ
潮「お嬢様、お好きな動物はなんですか?」
女「犬!」
潮「ワンちゃんですね。では潮、オムライスに一生懸命お絵かきします」ドキドキ
女「わー! 描いて描いてー!」
提督「今日は七駆の手伝いか。頑張ってるみたいだな」フフッ
提督「そういえば曙の姿が見えないな……」キョロキョロ
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 18:59:29.23 ID:u9WavQ4X0
曙「お待たせしましたー!」ニコニコ
提督「!」
曙「こちら可愛いネコさんをイメージして作った、にゃあにゃあパフェでs…」
曙「ってクソ提督!? なんでここにいるのよ!!」ガーン
漣「ちょっとぼの、営業中だよ」ヒソヒソ
提督「ただの様子見さ。お前たちがちゃんと仕事してるかどうか見に来ただけだよ」
曙「……」ジー
提督「疑いの目を向けるな」
漣「んじゃ、漣は他のご主人様にご奉仕してくるから♪ よろしくね、ぼの」スタスタ
曙「えっ、ちょっ!? くっ……私をここに呼んだのはこのためか……!」
提督「……」
曙「……」
提督「えっと、まだ何かあるのか」
曙「ある。魔法かけないといけないの」
提督「は? 魔法?」
提督「!」
曙「こちら可愛いネコさんをイメージして作った、にゃあにゃあパフェでs…」
曙「ってクソ提督!? なんでここにいるのよ!!」ガーン
漣「ちょっとぼの、営業中だよ」ヒソヒソ
提督「ただの様子見さ。お前たちがちゃんと仕事してるかどうか見に来ただけだよ」
曙「……」ジー
提督「疑いの目を向けるな」
漣「んじゃ、漣は他のご主人様にご奉仕してくるから♪ よろしくね、ぼの」スタスタ
曙「えっ、ちょっ!? くっ……私をここに呼んだのはこのためか……!」
提督「……」
曙「……」
提督「えっと、まだ何かあるのか」
曙「ある。魔法かけないといけないの」
提督「は? 魔法?」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:03:45.84 ID:u9WavQ4X0
曙「い、いい? これからすることは、あくまで接客の一部だから」
曙「私の意思じゃないから、それだけは忘れないで」モジモジ
提督「ああ……」
提督(一体何が始まるんだ)
曙「……コホン」
曙「それでは! 今から私が、も~っと美味しくなる魔法をかけますね!」ニコッ
提督(声が高くなった)
曙「ご主人様も一緒に、手でハートを作ってください!」
提督「……」
曙「作ってください!」
提督「……」スッ
曙「では、行きますよー?」
曙「私の意思じゃないから、それだけは忘れないで」モジモジ
提督「ああ……」
提督(一体何が始まるんだ)
曙「……コホン」
曙「それでは! 今から私が、も~っと美味しくなる魔法をかけますね!」ニコッ
提督(声が高くなった)
曙「ご主人様も一緒に、手でハートを作ってください!」
提督「……」
曙「作ってください!」
提督「……」スッ
曙「では、行きますよー?」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:08:33.12 ID:u9WavQ4X0
曙「おいしくな~れ、萌え萌えきゅんっ♡」
提督「……」
曙「ご主人様も一緒に! おいしくな~れ」
提督「……おいしくなーれ」
曙「萌え萌えきゅんっ♡」
提督「もえもえきゅん」
曙「これでこのパフェは、と~っても美味しくなりました! どうぞお召し上がりください!」
提督「……」
曙「……」
提督「可愛かったぞ」
曙「う、うるさい……!」カァァ
提督「さて、美味しくなったんだよな?」
曙「食べて確かめたら? 私もう行くから」スタスタ
提督「そうか。頑張れよ」
提督「……」
曙「ご主人様も一緒に! おいしくな~れ」
提督「……おいしくなーれ」
曙「萌え萌えきゅんっ♡」
提督「もえもえきゅん」
曙「これでこのパフェは、と~っても美味しくなりました! どうぞお召し上がりください!」
提督「……」
曙「……」
提督「可愛かったぞ」
曙「う、うるさい……!」カァァ
提督「さて、美味しくなったんだよな?」
曙「食べて確かめたら? 私もう行くから」スタスタ
提督「そうか。頑張れよ」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:12:45.19 ID:u9WavQ4X0
提督(思えば、こういう仕事先に顔見知りが来るのは恥ずかしいものがあるよな)
提督(配慮して変装した方がよかったかな)パクッ モグモグ
提督「美味いなこれ」
鈴谷「あれー? 誰かと思ったら提督じゃーん♪」スタスタ
提督「ん? 鈴谷か。お前も今日働いてるんだな」
提督「熊野もいるのか?」
鈴谷「いるよ! 向こうで萌え萌えきゅんってやってる」
提督「……想像できない」
鈴谷「だよねー!どっちかというと、奉仕する側じゃなくされる側だよねー!」クスクス
鈴谷「ところで、ここにいるってことは鈴谷メイドを見に来たカンジ? どうご主人様、似合ってるっしょ♪」クルクル
提督「ああ、可愛いよ」
鈴谷「でしょでしょ! 写真撮っちゃう? 鈴谷スマイルメイドver見せちゃうよ?」
提督「写真か。まあ思い出の一つとして……」ガサゴソ
提督「……スマホ置いてきた……」
提督(配慮して変装した方がよかったかな)パクッ モグモグ
提督「美味いなこれ」
鈴谷「あれー? 誰かと思ったら提督じゃーん♪」スタスタ
提督「ん? 鈴谷か。お前も今日働いてるんだな」
提督「熊野もいるのか?」
鈴谷「いるよ! 向こうで萌え萌えきゅんってやってる」
提督「……想像できない」
鈴谷「だよねー!どっちかというと、奉仕する側じゃなくされる側だよねー!」クスクス
鈴谷「ところで、ここにいるってことは鈴谷メイドを見に来たカンジ? どうご主人様、似合ってるっしょ♪」クルクル
提督「ああ、可愛いよ」
鈴谷「でしょでしょ! 写真撮っちゃう? 鈴谷スマイルメイドver見せちゃうよ?」
提督「写真か。まあ思い出の一つとして……」ガサゴソ
提督「……スマホ置いてきた……」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:16:52.02 ID:u9WavQ4X0
鈴谷「え、マジ?」
提督「着替えた時に気づくべきだった」
鈴谷「はー、仕方ないなぁ。じゃあこのデジカメで撮ろ!」スッ
提督「デジカメ? 用意がいいな」
鈴谷「ここのサービスだよ。メイドさんと記念撮影して、あとでデータとか送ってもらえるの」
鈴谷「じゃ、熊野も呼んでくるから待っててね!」スタスタ
提督「そこまでしなくても……」
――――
熊野「萌え萌えきゅん☆ ですわ!」ウインク
提督「顔を合わせて早々に何してるんだ」
熊野「何って、ご主人様へのご挨拶ですけれど」キョトン
鈴谷「あははは! 萌えきゅん披露しまくりじゃーん!」
提督(こいつ、間違った知識を吹き込んだな。可愛いには可愛いけど)
熊野「では提と……ご主人様。私と写真撮影を……」
鈴谷「え? ちょっと待って、鈴谷が先だってー!」
提督「着替えた時に気づくべきだった」
鈴谷「はー、仕方ないなぁ。じゃあこのデジカメで撮ろ!」スッ
提督「デジカメ? 用意がいいな」
鈴谷「ここのサービスだよ。メイドさんと記念撮影して、あとでデータとか送ってもらえるの」
鈴谷「じゃ、熊野も呼んでくるから待っててね!」スタスタ
提督「そこまでしなくても……」
――――
熊野「萌え萌えきゅん☆ ですわ!」ウインク
提督「顔を合わせて早々に何してるんだ」
熊野「何って、ご主人様へのご挨拶ですけれど」キョトン
鈴谷「あははは! 萌えきゅん披露しまくりじゃーん!」
提督(こいつ、間違った知識を吹き込んだな。可愛いには可愛いけど)
熊野「では提と……ご主人様。私と写真撮影を……」
鈴谷「え? ちょっと待って、鈴谷が先だってー!」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:19:14.42 ID:u9WavQ4X0
熊野「どっちが先でも同じですわ」
鈴谷「じゃあ熊野が後!」
熊野「構いませんけど……あ、そうですわ! 3人で一緒に撮るというのはどうでしょう?」
鈴谷「おー! ナイスアイディア!」
提督(他の客の視線が痛い)
――――
鈴谷「あはは! 提督可愛い!」
熊野「上手に撮れましたわね!」
提督「……」
提督(強制的にネコミミをつけさせられた。写真を直視したくない……)
鈴谷「じゃ、後で送るねー!」スタスタ
熊野「ごゆっくりお楽しみくださいませ」ペコリ
提督「ああ」
鈴谷「じゃあ熊野が後!」
熊野「構いませんけど……あ、そうですわ! 3人で一緒に撮るというのはどうでしょう?」
鈴谷「おー! ナイスアイディア!」
提督(他の客の視線が痛い)
――――
鈴谷「あはは! 提督可愛い!」
熊野「上手に撮れましたわね!」
提督「……」
提督(強制的にネコミミをつけさせられた。写真を直視したくない……)
鈴谷「じゃ、後で送るねー!」スタスタ
熊野「ごゆっくりお楽しみくださいませ」ペコリ
提督「ああ」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:21:22.44 ID:u9WavQ4X0
提督(ゆっくりとは言ったけど、俺もまだ仕事があるんだよな)パクパク
提督(みんな上手くやってるようだし、変な客もいなさそうだ。パフェを食べたら失礼するか)モグモグ
鈴谷「それでは今から、メイドさんとの萌え萌えジャンケンゲームを始めまーす!」
提督「ん? ジャンケンゲーム?」
熊野「最後まで勝ち残った方には、このお店のメニュー全品半額チケットをプレゼントですわ!」
オー! マジカヨー!
提督「へえ、こんなイベントもあるんだな」
鈴谷「あとメイドさんとハグができまーす!」
提督「……は?」
ウォォォォォォォ!!
提督(ハ、ハグって……何を考えてるんだあいつ!?)
男1「鈴谷ちゃんにギュってしてもらいたいなー」
男2「俺は潮ちゃんかな」
提督「!?」
提督(みんな上手くやってるようだし、変な客もいなさそうだ。パフェを食べたら失礼するか)モグモグ
鈴谷「それでは今から、メイドさんとの萌え萌えジャンケンゲームを始めまーす!」
提督「ん? ジャンケンゲーム?」
熊野「最後まで勝ち残った方には、このお店のメニュー全品半額チケットをプレゼントですわ!」
オー! マジカヨー!
提督「へえ、こんなイベントもあるんだな」
鈴谷「あとメイドさんとハグができまーす!」
提督「……は?」
ウォォォォォォォ!!
提督(ハ、ハグって……何を考えてるんだあいつ!?)
男1「鈴谷ちゃんにギュってしてもらいたいなー」
男2「俺は潮ちゃんかな」
提督「!?」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 22:25:00.56 ID:4orPPOJ80
提督(い、いや……待て冷静になれ。ハグくらいなら許容範囲内だ、うん)
男1「潮ちゃんって、お前どうせおっぱい目当てだろ」
男2「そんなことないって」ニヤニヤ
提督「……」
提督(俺も参加するぞ!! 阻止してやる!!)
鈴谷「じゃ、あとは漣よろしくね」
漣「ほいさっさー! ご主人様とお嬢様、漣の掛け声通りにジャンケンしてくださいね」
漣「いいですか? 『萌え萌えジャンケン、ジャンケンポン』ですよ!」
熊野「ネコの手の動きもお忘れなく! にゃんにゃんですわ!」ニャンニャン
男1「にゃんにゃん、だって」
男2「はー萌えるわー。熊野ちゃんも可愛いなぁ」
男1「鼻の下伸びてるぞ」
提督「……」
提督(阻止する!!)
漣「いきまーす!」
漣「萌え萌えジャンケン、ジャンケン……――」
男1「潮ちゃんって、お前どうせおっぱい目当てだろ」
男2「そんなことないって」ニヤニヤ
提督「……」
提督(俺も参加するぞ!! 阻止してやる!!)
鈴谷「じゃ、あとは漣よろしくね」
漣「ほいさっさー! ご主人様とお嬢様、漣の掛け声通りにジャンケンしてくださいね」
漣「いいですか? 『萌え萌えジャンケン、ジャンケンポン』ですよ!」
熊野「ネコの手の動きもお忘れなく! にゃんにゃんですわ!」ニャンニャン
男1「にゃんにゃん、だって」
男2「はー萌えるわー。熊野ちゃんも可愛いなぁ」
男1「鼻の下伸びてるぞ」
提督「……」
提督(阻止する!!)
漣「いきまーす!」
漣「萌え萌えジャンケン、ジャンケン……――」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 22:27:22.54 ID:4orPPOJ80
――――
漣「――……ジャンケンポン!」
男1「あー負けた」
男2「くそー残念だなー」
提督「や、やった」
提督(生き残った! 勝ったぞ!)グッ
鈴谷「はい、そちらの喜びを噛み締めてるご主人様! どうぞこちらへ!」
クスクス
提督「あ……」
男「入口を塞いでた男の人だ」ヒソヒソ
女「参加してたんだね」ヒソヒソ
提督「ど……どうも」ハハハ…
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 22:30:22.97 ID:4orPPOJ80
熊野「おめでとうございます! こちらこのお店の全メニュー半額チケットですわ!」スッ
提督「ありがとう」
漣「まさかご主人様も参加するなんて思わなかったですよ」ヒソヒソ
提督「漣……違うんだ。俺はお前たちの身を……」ヒソヒソ
鈴谷「さあご主人様! どのメイドさんとハグしますか?」
提督「!」
提督「いや、俺は……」
熊野「恥ずかしがらずに仰ってください」
提督「そんなつもりは無かったんだが」
ハヤクシロー メイドサンコマッテルゾー
提督「……」
鈴谷「えい」ギュッ
提督「!!」
提督「ありがとう」
漣「まさかご主人様も参加するなんて思わなかったですよ」ヒソヒソ
提督「漣……違うんだ。俺はお前たちの身を……」ヒソヒソ
鈴谷「さあご主人様! どのメイドさんとハグしますか?」
提督「!」
提督「いや、俺は……」
熊野「恥ずかしがらずに仰ってください」
提督「そんなつもりは無かったんだが」
ハヤクシロー メイドサンコマッテルゾー
提督「……」
鈴谷「えい」ギュッ
提督「!!」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 22:34:03.51 ID:4orPPOJ80
鈴谷「時間切れでーす! 問答無用で鈴谷メイドとハグー!」
提督「お前……!」
鈴谷「仕方ないじゃん、他のお客さん待たせてるんだし」ヒソヒソ
提督「……ごめん」
鈴谷「ま、理由はそれだけじゃないんだけどね」ボソッ
提督「えっ」
漣「では、以上で萌え萌えジャンケンゲームを終了します!」
熊野「ゲームは毎日行うので、ぜひまた参加してくださいませ!」
鈴谷「ほらほら、席に戻ってご主人様!」
提督「? あ、ああ……」
――――
提督「ふぅ、ごちそうさま」
提督(美味しかったな、さすが間宮のメニュー。さてと)スッ
漣「あっ、ご主人様! もうお出かけですか?」
提督「お出かけ?」
提督「お前……!」
鈴谷「仕方ないじゃん、他のお客さん待たせてるんだし」ヒソヒソ
提督「……ごめん」
鈴谷「ま、理由はそれだけじゃないんだけどね」ボソッ
提督「えっ」
漣「では、以上で萌え萌えジャンケンゲームを終了します!」
熊野「ゲームは毎日行うので、ぜひまた参加してくださいませ!」
鈴谷「ほらほら、席に戻ってご主人様!」
提督「? あ、ああ……」
――――
提督「ふぅ、ごちそうさま」
提督(美味しかったな、さすが間宮のメニュー。さてと)スッ
漣「あっ、ご主人様! もうお出かけですか?」
提督「お出かけ?」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 22:39:28.22 ID:4orPPOJ80
漣「『店から出る』ことです、察してください。そういう設定なんですよ」ヒソヒソ
提督「お前、雰囲気を壊すようなことを……」
漣「説明させたご主人様が悪いです」
提督「……そうだな、悪かった。もう出かけるよ」
漣「分かりました! ではレジへご案内しますね」スタスタ
提督(そこは現実的なのか)スタスタ
――――
艦娘メイドたち「「「行ってらっしゃいませご主人様♡」」」
ウィーン
提督(メイド総出で見送りとは)スタスタ
提督(……しかし)
提督(外に出ると、夢から覚めたような感覚になるな)
提督(艦娘たちの視察に来たつもりが、途中からすっかり客になってた)
提督「メイド喫茶間宮。人気が出そうだな」フフ
提督「まあ俺は、今日一日体験しただけで充分だけどな」
スタスタ
提督「お前、雰囲気を壊すようなことを……」
漣「説明させたご主人様が悪いです」
提督「……そうだな、悪かった。もう出かけるよ」
漣「分かりました! ではレジへご案内しますね」スタスタ
提督(そこは現実的なのか)スタスタ
――――
艦娘メイドたち「「「行ってらっしゃいませご主人様♡」」」
ウィーン
提督(メイド総出で見送りとは)スタスタ
提督(……しかし)
提督(外に出ると、夢から覚めたような感覚になるな)
提督(艦娘たちの視察に来たつもりが、途中からすっかり客になってた)
提督「メイド喫茶間宮。人気が出そうだな」フフ
提督「まあ俺は、今日一日体験しただけで充分だけどな」
スタスタ
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 22:44:24.27 ID:4orPPOJ80
――翌日・メイド喫茶間宮の前――
コソコソ
提督(……昨日はあんなこと言ってしまったが、撤回だ)
提督(メイド喫茶間宮はもう一度行ってみたいと思わせる魅力がある。艦娘たちも可愛かったし、楽しかったし)
提督(その気持ちを抑えきれず、こうしてこっそり来てしまった)
提督(これも曙の言っていた魔法の一部か、なんてアホなこと考えつつ……)キョロキョロ
提督「よし、顔見知りはいないな。変装もしたし今日は1人の客として楽しんでみよう」
大淀「提督」
提督「!!」ギクッ
提督「お、大淀! 何で!?」
大淀「変装したつもりですか? バレバレですよ」
提督「本当か。いや、そうじゃなくて……何でここにいるんだ?」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:24:28.86 ID:rI4nitOq0
大淀「一週間後の作戦についてお話ししようと探していたら」
大淀「こそこそしながら本土へ向かう姿を見かけたので、跡をつけて来たんです」
提督「つける必要はないだろ……」
大淀「まだお仕事が大量に残っているじゃないですか。それなのに本土へ行くなんて」
提督「大丈夫だよ終わらせる」
大淀「一体何が目的なんですか。お仕事を中断してまでやらなければいけないことでも?」
提督「……」
提督(どうする、本当のことを言うか)
大淀「提督?」
提督「あれを見てくれ、大淀」
大淀「……間宮さんのお店ですね」
大淀「こそこそしながら本土へ向かう姿を見かけたので、跡をつけて来たんです」
提督「つける必要はないだろ……」
大淀「まだお仕事が大量に残っているじゃないですか。それなのに本土へ行くなんて」
提督「大丈夫だよ終わらせる」
大淀「一体何が目的なんですか。お仕事を中断してまでやらなければいけないことでも?」
提督「……」
提督(どうする、本当のことを言うか)
大淀「提督?」
提督「あれを見てくれ、大淀」
大淀「……間宮さんのお店ですね」
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:26:45.33 ID:rI4nitOq0
提督「そうだ。今はメイド喫茶になって艦娘たちも働いている」
大淀「ええ知ってます」
提督「あれが俺の目的だ」
大淀「は?」
提督「これからあそこに行くんだよ」
大淀「……」ゴゴゴゴ
提督(み、眉間にシワが! 顔がどんどん怖くなっていく)
提督(これは説得できそうにないぞ……)
提督「分かったよ大淀。すぐに鎮守府に帰るから、その顔やめて…」
大淀「私も行きます」
提督「え」
大淀「実は一度行ってみたかったんです、メイド喫茶」
大淀「ええ知ってます」
提督「あれが俺の目的だ」
大淀「は?」
提督「これからあそこに行くんだよ」
大淀「……」ゴゴゴゴ
提督(み、眉間にシワが! 顔がどんどん怖くなっていく)
提督(これは説得できそうにないぞ……)
提督「分かったよ大淀。すぐに鎮守府に帰るから、その顔やめて…」
大淀「私も行きます」
提督「え」
大淀「実は一度行ってみたかったんです、メイド喫茶」
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:29:26.78 ID:rI4nitOq0
提督「いや、あの……仕事を放っておいてもいいのか」
大淀「いいわけないじゃないですか! 帰ったらちゃんと全部終わらせてもらいますよ!」
提督「もちろんだ」
提督(や、やったぞ。思わぬ形だが許可をもらえた)
大淀「へー、外装も可愛い感じになってますね」
提督「……でも意外だな。大淀がメイド喫茶に興味を持っていたなんて」
大淀「興味というほどではないです。社会勉強の一環ですよ」
提督「お前らしい理由だな」
大淀「では入りましょうか」
提督「え? 別々にじゃないのか?」
大淀「どうしてそんなことする必要があるんですか」スタスタ
提督「……そうだな」スタスタ
提督(1人で楽しみたかったが、仕方ないか)
大淀「いいわけないじゃないですか! 帰ったらちゃんと全部終わらせてもらいますよ!」
提督「もちろんだ」
提督(や、やったぞ。思わぬ形だが許可をもらえた)
大淀「へー、外装も可愛い感じになってますね」
提督「……でも意外だな。大淀がメイド喫茶に興味を持っていたなんて」
大淀「興味というほどではないです。社会勉強の一環ですよ」
提督「お前らしい理由だな」
大淀「では入りましょうか」
提督「え? 別々にじゃないのか?」
大淀「どうしてそんなことする必要があるんですか」スタスタ
提督「……そうだな」スタスタ
提督(1人で楽しみたかったが、仕方ないか)
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:33:22.65 ID:rI4nitOq0
――――
ウィーン
陸奥「お帰りなさいませ、ご主人様とお嬢様♡」
大淀「!? え、えっと……!」
提督(こんな反応になるよなぁ)
陸奥「あら? 提督と大淀じゃない。冷やかしにでも来たのかしら」フフ
提督「客として来たんだよ。仕事お疲れ様。メイド服、意外と似合ってるな」
陸奥「ふふ、ありがとう♡ 意外とっていうのが引っかかるけど」
提督「ところで、陸奥がいるということは……」
スタスタ
長門「陸奥、何をしている。お客様が来たなら早く案内を…」
提督「やっぱり長門もいたか」
長門「ん? 提督、それに大淀。冷やかしに来たのか」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:37:31.27 ID:rI4nitOq0
提督「違うよ。客として入店したんだ」
長門「そうか、じゃあご主人様だな」
長門「それとお嬢様、どうぞこちらへ」ニコッ
大淀「へっ? あ、はい」スタスタ
提督(なんか、メイドというよりホストだな。格好は可愛いのに)スタスタ
――――
陸奥「はい、魔法のお水よ♡」
大淀「へ? これお冷じゃ……」
提督「そういう設定だよ」ヒソヒソ
大淀「は、はあ……」
長門「私と陸奥の魔翌力を注入したから美味いはずだ」
陸奥「長門、もっと可愛い表現にしてって言ってるでしょ」
長門「私なりに頑張っているぞ」
提督「ははは……」
長門「そうか、じゃあご主人様だな」
長門「それとお嬢様、どうぞこちらへ」ニコッ
大淀「へっ? あ、はい」スタスタ
提督(なんか、メイドというよりホストだな。格好は可愛いのに)スタスタ
――――
陸奥「はい、魔法のお水よ♡」
大淀「へ? これお冷じゃ……」
提督「そういう設定だよ」ヒソヒソ
大淀「は、はあ……」
長門「私と陸奥の魔翌力を注入したから美味いはずだ」
陸奥「長門、もっと可愛い表現にしてって言ってるでしょ」
長門「私なりに頑張っているぞ」
提督「ははは……」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:40:23.82 ID:rI4nitOq0
長門「それで、何を注文するんだ」
提督「待ってくれ……そうだな。昼飯はまだだし、この『うさうさハンバーグ』ってのを頼む」
大淀「……」
提督「大淀はどうする?」
大淀「!」
提督「注文だよ」
大淀「あ、えっと……『お絵かきオムライス』をお願いします」
陸奥「かしこまりました」
長門「少々お待ちを」
スタスタ
大淀「……」
提督「ここに入ってから、ずっとボーッとしてるな」
大淀「ボーッとはしてないですよ」
提督「待ってくれ……そうだな。昼飯はまだだし、この『うさうさハンバーグ』ってのを頼む」
大淀「……」
提督「大淀はどうする?」
大淀「!」
提督「注文だよ」
大淀「あ、えっと……『お絵かきオムライス』をお願いします」
陸奥「かしこまりました」
長門「少々お待ちを」
スタスタ
大淀「……」
提督「ここに入ってから、ずっとボーッとしてるな」
大淀「ボーッとはしてないですよ」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:42:56.55 ID:rI4nitOq0
大淀「ただ、メイドさんの接客が思っていたより本格的というか」
大淀「単にメイドのコスプレをしてるだけと思ってたので。それに」
大淀「お……お嬢様と言われたのも、初めてで……」モジモジ
提督「その気持ちはよく分かる。俺も昨日そうだったし、今も慣れてない」
提督「なんかこっちまで畏まってしまうよな」
大淀「はい……」
――――
スタスタ
川内「お待たせしましたー! こちら『うさうさハンバーグ』と」
那珂「『お絵かきオムライス』でーす☆」
提督「川内と那珂か」
大淀「神通さんも一緒ですね」
神通「はい、お水のおかわりを持ってきました」
大淀「単にメイドのコスプレをしてるだけと思ってたので。それに」
大淀「お……お嬢様と言われたのも、初めてで……」モジモジ
提督「その気持ちはよく分かる。俺も昨日そうだったし、今も慣れてない」
提督「なんかこっちまで畏まってしまうよな」
大淀「はい……」
――――
スタスタ
川内「お待たせしましたー! こちら『うさうさハンバーグ』と」
那珂「『お絵かきオムライス』でーす☆」
提督「川内と那珂か」
大淀「神通さんも一緒ですね」
神通「はい、お水のおかわりを持ってきました」
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:47:05.81 ID:rI4nitOq0
川内「へへ、提督と大淀さんが来たって聞いたから、料理持っていくの代わってもらったんだ」
那珂「那珂ちゃんのメイドさんどう? レアだよレア!」エヘヘ
大淀「とても可愛いですね」
提督「3人とも似合ってるな」
提督(まあ艦娘は美人美少女揃いだし、似合わないはずは無いか)
神通「お水はどうですかお嬢様」
大淀「えっ……あ、はい、お願いします」ポッ
川内「赤くなった!」
那珂「大淀お嬢様カワイイ!」
提督「お前ら、他のお客さんのところへ行かなくていいのか?」
川内「おっと、そうだね早くしないと。じゃあまずはご主人様の料理に魔法をかけますね!」
那珂「3人分の愛情を込めるから、すっごく美味しくなるよ!」
神通「や、やっぱり私もやるんだ……」カァァ
那珂「那珂ちゃんのメイドさんどう? レアだよレア!」エヘヘ
大淀「とても可愛いですね」
提督「3人とも似合ってるな」
提督(まあ艦娘は美人美少女揃いだし、似合わないはずは無いか)
神通「お水はどうですかお嬢様」
大淀「えっ……あ、はい、お願いします」ポッ
川内「赤くなった!」
那珂「大淀お嬢様カワイイ!」
提督「お前ら、他のお客さんのところへ行かなくていいのか?」
川内「おっと、そうだね早くしないと。じゃあまずはご主人様の料理に魔法をかけますね!」
那珂「3人分の愛情を込めるから、すっごく美味しくなるよ!」
神通「や、やっぱり私もやるんだ……」カァァ
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:17:22.52 ID:uCTVnG+V0
提督(パフェ以外の料理でもかけるんだな)
川内「まずは手でハートを作ります! ご主人様もご一緒にどうぞ!」
提督「よし」スッ
川内「私たちに続いてくださいね! 準備はいいですか? せーの」
川内・那珂・神通「おいしくな~れ、萌え萌えきゅん♡」
提督「おいしくなーれ、もえもえきゅん」
大淀「……」
川内「あれ、提督手馴れてるね」
提督「馴れってほどじゃないが、昨日曙と一緒にやったからな」
那珂「曙ちゃんが!? 見たかったー!」
神通「2人とも、また脱線しかけてる」
川内「まずは手でハートを作ります! ご主人様もご一緒にどうぞ!」
提督「よし」スッ
川内「私たちに続いてくださいね! 準備はいいですか? せーの」
川内・那珂・神通「おいしくな~れ、萌え萌えきゅん♡」
提督「おいしくなーれ、もえもえきゅん」
大淀「……」
川内「あれ、提督手馴れてるね」
提督「馴れってほどじゃないが、昨日曙と一緒にやったからな」
那珂「曙ちゃんが!? 見たかったー!」
神通「2人とも、また脱線しかけてる」
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:21:26.22 ID:uCTVnG+V0
那珂「ごめんごめん! 次は大淀お嬢様だね!」
大淀「……?」
那珂「この『お絵かきオムライス』はね、私たちメイドが最後の仕上げに」
那珂「ケチャップで愛情いっぱいにお絵かきするんだよ!」
提督「そのまんまだな」
神通「お嬢様、なにかご希望はありますか?」
那珂「頑張って描くよ!」
大淀「そ、それじゃあ……んーと……」
――――
川内「じゃ、私たちは戻るね」
神通「どうぞごゆっくり」ペコリ
那珂「楽しんでねー!」
スタスタ
提督「まるで嵐が去っていったようだな」
大淀「はい。ふふ……でも」
大淀「すごく可愛かったですね」ニコッ
提督「そうだな」
大淀「……?」
那珂「この『お絵かきオムライス』はね、私たちメイドが最後の仕上げに」
那珂「ケチャップで愛情いっぱいにお絵かきするんだよ!」
提督「そのまんまだな」
神通「お嬢様、なにかご希望はありますか?」
那珂「頑張って描くよ!」
大淀「そ、それじゃあ……んーと……」
――――
川内「じゃ、私たちは戻るね」
神通「どうぞごゆっくり」ペコリ
那珂「楽しんでねー!」
スタスタ
提督「まるで嵐が去っていったようだな」
大淀「はい。ふふ……でも」
大淀「すごく可愛かったですね」ニコッ
提督「そうだな」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:26:32.84 ID:uCTVnG+V0
提督「ところでお前、ケチャップの絵がメガネって」
大淀「いいじゃないですか! 思いつかなかったんです」
大淀「那珂ちゃんメイドも一生懸命描いてくれましたし、ゆっくり堪能しますよ」ニコニコ
提督「……」
提督(満喫し始めたか?)
大淀「そういえば提督、メイドさんと一緒に魔法かけてましたけど」
大淀「もう一度やってもらっていいですか?」クスクス
提督「やらない!」
――――
大淀「ごちそうさまでした」
提督「美味しかったな……ん?」
ポーラ「えへへぇ、ご主人さまぁー♡ お酒飲みませんかー」ニコー
男「え……き、急に何ですか……」
ポーラ「お酒の良さを分かちあいたいんですよー!」
ポーラ「ちょっとだけですからー、ホントにちょっと。ねー? ポーラと仲良く楽しく…」
スタタタッ
ザラ「このバカぁぁぁ!!」スパーン!!
ポーラ「いたい!!」
大淀「いいじゃないですか! 思いつかなかったんです」
大淀「那珂ちゃんメイドも一生懸命描いてくれましたし、ゆっくり堪能しますよ」ニコニコ
提督「……」
提督(満喫し始めたか?)
大淀「そういえば提督、メイドさんと一緒に魔法かけてましたけど」
大淀「もう一度やってもらっていいですか?」クスクス
提督「やらない!」
――――
大淀「ごちそうさまでした」
提督「美味しかったな……ん?」
ポーラ「えへへぇ、ご主人さまぁー♡ お酒飲みませんかー」ニコー
男「え……き、急に何ですか……」
ポーラ「お酒の良さを分かちあいたいんですよー!」
ポーラ「ちょっとだけですからー、ホントにちょっと。ねー? ポーラと仲良く楽しく…」
スタタタッ
ザラ「このバカぁぁぁ!!」スパーン!!
ポーラ「いたい!!」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:32:31.68 ID:uCTVnG+V0
ポーラ「何するんですかザラ姉さまぁ」ウルウル
ザラ「あなた自分がやってること分かってるの!?」
ザラ「申し訳ございませんご主人様! この子お酒が大好きで、でもお仕事中は飲まないようにって厳重注意してたんですけど」ペコペコ
ザラ「隙を見て飲んだみたいで……! こんなこと言っても何にもならないんですけど」ペコペコ
男「いえ、気にしないでください」
ザラ「そういうわけにはいきません! メイドがご主人様に絡み酒なんてありえないです!」
ザラ「ほら、一緒にドゲザしてポーラ!」ササッ
ポーラ「すみませんでした……」ササッ
男「大丈夫です! 大丈夫ですから頭を……!」
提督(大変そうだなザラ……。というか間宮の奴、何でポーラを採用したんだ)
大淀「次は何を頼もうかしら」
提督「は? まだ食べるのか?」
大淀「デザートですよ! こんなに可愛くて美味しそうなもの、いただかないわけにはいきません」
提督「そ、そうか」
ザラ「あなた自分がやってること分かってるの!?」
ザラ「申し訳ございませんご主人様! この子お酒が大好きで、でもお仕事中は飲まないようにって厳重注意してたんですけど」ペコペコ
ザラ「隙を見て飲んだみたいで……! こんなこと言っても何にもならないんですけど」ペコペコ
男「いえ、気にしないでください」
ザラ「そういうわけにはいきません! メイドがご主人様に絡み酒なんてありえないです!」
ザラ「ほら、一緒にドゲザしてポーラ!」ササッ
ポーラ「すみませんでした……」ササッ
男「大丈夫です! 大丈夫ですから頭を……!」
提督(大変そうだなザラ……。というか間宮の奴、何でポーラを採用したんだ)
大淀「次は何を頼もうかしら」
提督「は? まだ食べるのか?」
大淀「デザートですよ! こんなに可愛くて美味しそうなもの、いただかないわけにはいきません」
提督「そ、そうか」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:37:47.65 ID:uCTVnG+V0
那珂「はーい! それでは今から、メイドさんミニライブを始めまーす!」
提督「! へぇ、そんなイベントもあるのか」
大淀「お客さんのリクエストでできるらしいですよ。メニューに書いてあります」
那珂「まずはメンバー紹介です! センターの那珂ちゃんとー?」
川内「川内! そして!」
神通「神通です……よろしくお願いします」カァァ
オー! カワイイー!
提督「川内と神通って、歌って踊れたのか」
大淀「見たことないですね」
川内「精一杯踊るので、ご主人様もお嬢様も楽しんでくださいね!」ニカッ
神通「よければペンライトも振ってください」モジモジ
那珂「いっきまーす☆ 『初恋! 水雷戦隊』!」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:42:23.04 ID:uCTVnG+V0
――――
女「3人共かわいいー!」
男「最高ー!」
那珂・川内・神通「ありがとうございましたー!」
パチパチパチ ワーワー!
大淀「ふー……良かったですね」ニコニコ
提督「お客さんもすごく盛り上がってたな」
提督(大淀もペンライトぶんぶん振ってたし)
大淀「あっ、デザート頼むの忘れてました! 何にしようかなー……」
大淀「……って、え? あれ!? もうこんな時間!?」
大淀「大変です提督! 時計見てください、そろそろ鎮守府に戻らないと!」アセアセ
提督「うお、そうだな。仕事が終わらないかも」
大淀「それじゃマズいんです! 名残惜しいですけど出ましょう!」グイグイ
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:46:40.99 ID:uCTVnG+V0
提督「分かったから引っ張るな! すまない陸奥、そろそろ出かける!」
陸奥「お出かけですね。ではレジへどうぞ♡」
提督(やっぱりそこは現実的なのか)
――――
艦娘メイドたち「「「行ってらっしゃませご主人様♡ お嬢様♡」」」
ウィーン
大淀「メイドさんのお出迎えもいいですね」フフ
大淀「って言ってる場合じゃないです! さあ早く!」
提督「分かってr……大淀!? お前頭にネコミミつけたままだぞ!」
大淀「えっ!? 本当ですか!?」カァァ
提督「早く戻して来い、俺は先に行ってるから!」
大淀「すみません!」スタタタッ
提督「はぁ……あいつ、予想以上にハマったんじゃないのか」
提督「気持ちは分かるが……っと、急がないと」
スタタタッ
陸奥「お出かけですね。ではレジへどうぞ♡」
提督(やっぱりそこは現実的なのか)
――――
艦娘メイドたち「「「行ってらっしゃませご主人様♡ お嬢様♡」」」
ウィーン
大淀「メイドさんのお出迎えもいいですね」フフ
大淀「って言ってる場合じゃないです! さあ早く!」
提督「分かってr……大淀!? お前頭にネコミミつけたままだぞ!」
大淀「えっ!? 本当ですか!?」カァァ
提督「早く戻して来い、俺は先に行ってるから!」
大淀「すみません!」スタタタッ
提督「はぁ……あいつ、予想以上にハマったんじゃないのか」
提督「気持ちは分かるが……っと、急がないと」
スタタタッ
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 22:50:22.52 ID:uCTVnG+V0
――翌日・メイド喫茶前――
提督(あー……昨日は結局終わらず、遅くまで書類とにらめっこだ)
提督(そのせいで少し睡眠不足だが……)
提督(今日もここに来てしまったか)
提督(楽しいから仕方ないな。昨日よりは長くいられるはず……だが……?)
大淀「……」キョロキョロ
大淀「……」コソコソ
提督「あれは大淀か」
大淀「……知り合いはいない、と」
大淀「昨日は提督に付き合って、大量のお仕事を涙目で終わらせましたけど」
大淀「今日は大丈夫! プライベートでゆっくりメイドさんたちと…」
提督「もう虜みたいだな」
大淀「!?」
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 01:46:20.03 ID:mIYTZT6D0
大淀「て、提督! 何故ここへ!」
提督「恐らくお前と同じだ」
大淀「私と同じ……。艦娘たちの仕事ぶりを見に来たんですか?」
提督(ごまかす気か)
提督「嘘はつかなくていいぞ。お前も俺のことを分かっているはずだ」
提督「昨日一緒にメイド喫茶を体験した仲間だからな。プライベートで楽しみに来たんだろう?」
大淀「ち、違います!」
提督「正直になろう大淀」
大淀「……」
大淀「だ……だって、仕方ないじゃないですか」
大淀「メイドさんは可愛いし、お嬢様扱いしてくれて」モジモジ
提督「うん」
大淀「食べ物も美味しくて、一緒にゲームしたり踊ったり、すごく楽しくて」カァァ
提督「分かる」
提督「恐らくお前と同じだ」
大淀「私と同じ……。艦娘たちの仕事ぶりを見に来たんですか?」
提督(ごまかす気か)
提督「嘘はつかなくていいぞ。お前も俺のことを分かっているはずだ」
提督「昨日一緒にメイド喫茶を体験した仲間だからな。プライベートで楽しみに来たんだろう?」
大淀「ち、違います!」
提督「正直になろう大淀」
大淀「……」
大淀「だ……だって、仕方ないじゃないですか」
大淀「メイドさんは可愛いし、お嬢様扱いしてくれて」モジモジ
提督「うん」
大淀「食べ物も美味しくて、一緒にゲームしたり踊ったり、すごく楽しくて」カァァ
提督「分かる」
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 01:49:17.83 ID:mIYTZT6D0
大淀「昨日仕事している時も、メイド喫茶のことを少し考えてしまって」
大淀「もう一度行ってみたいなぁって」
提督「魅力があるよなここって」
大淀「はい」
提督「だから俺も昨日足を運んでしまったんだ」
提督「一昨日に艦娘たちの様子を見に行っただけのつもりが、気がついたら楽しんでいる自分がいてな」
大淀「そうだったんですか……」
伊勢「あのー、せめて中に入ってから話をしてもらえませんか」
大淀「!」
提督「伊勢、それに日向。メイドの格好で何をしてるんだ?」
日向「宣伝していたんだ」
提督「お客さんは充分いるのにか」
伊勢「大切なことですよ。それより、入るなら入ってください。さっきから通行人に変な目で見られてますよ」
大淀「もう一度行ってみたいなぁって」
提督「魅力があるよなここって」
大淀「はい」
提督「だから俺も昨日足を運んでしまったんだ」
提督「一昨日に艦娘たちの様子を見に行っただけのつもりが、気がついたら楽しんでいる自分がいてな」
大淀「そうだったんですか……」
伊勢「あのー、せめて中に入ってから話をしてもらえませんか」
大淀「!」
提督「伊勢、それに日向。メイドの格好で何をしてるんだ?」
日向「宣伝していたんだ」
提督「お客さんは充分いるのにか」
伊勢「大切なことですよ。それより、入るなら入ってください。さっきから通行人に変な目で見られてますよ」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 01:55:33.12 ID:mIYTZT6D0
大淀「そ、そうですねすみません」スタスタ
提督「悪かった」スタスタ
ウィーン
伊勢「……さて」
伊勢「お帰りなさいませご主人様♡ お嬢様♡」
提督・大淀「!?」
提督「その切り替えはなんだ」
日向「ここへ入ってしまえば私たちは瞬く間に主人に使えるメイドと化す」
伊勢「すぐにお席にご案内しますね!」
提督「あ、ああ……よろしく」
大淀(日向さんはテンション全く変わらないのね)
――――
伊勢「では、他のメイドがメニューを持ってくるので少々お待ちください」ペコリ
大淀「え?」
提督「今日はテーブルに置いてないのか」
日向「実は提督が来るかもしれないという話が艦娘たちに広まっていてな」
日向「入店したら絶対に呼んでくれと、ある艦娘たちに念を押されたんだ」
提督「悪かった」スタスタ
ウィーン
伊勢「……さて」
伊勢「お帰りなさいませご主人様♡ お嬢様♡」
提督・大淀「!?」
提督「その切り替えはなんだ」
日向「ここへ入ってしまえば私たちは瞬く間に主人に使えるメイドと化す」
伊勢「すぐにお席にご案内しますね!」
提督「あ、ああ……よろしく」
大淀(日向さんはテンション全く変わらないのね)
――――
伊勢「では、他のメイドがメニューを持ってくるので少々お待ちください」ペコリ
大淀「え?」
提督「今日はテーブルに置いてないのか」
日向「実は提督が来るかもしれないという話が艦娘たちに広まっていてな」
日向「入店したら絶対に呼んでくれと、ある艦娘たちに念を押されたんだ」
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 01:58:22.88 ID:mIYTZT6D0
提督「誰だ?」
伊勢「すぐに来ると思います」
日向「私と伊勢は他のお嬢様のもとへ行くから、楽しみにしていてくれ」
スタスタ
提督「秘密にするほどのことか?」
大淀「気になりますね」
日向「あ、そうそう」
日向「ご主人様とお嬢様。あとでこの日向メイドが作る特製デザートを用意するぞ」
大淀「特製デザート!? ありがとうございます!」
提督(瑞雲が関係している確率95%)
――――
???「お待たせしました! ご主人様とお嬢様♡」
提督「……ふふ、なるほどお前たちか」
暁「メニューをお持ちしました!」
雷「どれも美味しいからオススメよ!」
響「魔法のお水も飲んでね」
伊勢「すぐに来ると思います」
日向「私と伊勢は他のお嬢様のもとへ行くから、楽しみにしていてくれ」
スタスタ
提督「秘密にするほどのことか?」
大淀「気になりますね」
日向「あ、そうそう」
日向「ご主人様とお嬢様。あとでこの日向メイドが作る特製デザートを用意するぞ」
大淀「特製デザート!? ありがとうございます!」
提督(瑞雲が関係している確率95%)
――――
???「お待たせしました! ご主人様とお嬢様♡」
提督「……ふふ、なるほどお前たちか」
暁「メニューをお持ちしました!」
雷「どれも美味しいからオススメよ!」
響「魔法のお水も飲んでね」
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 02:00:27.93 ID:mIYTZT6D0
大淀(か……かわっ……!)ドキドキ
提督「可愛らしいメイドさんだな」
大淀「あれ、でも1人足りないような」
雷「もー、電? せっかく可愛い服を着たんだから、見せないともったいないわよ」
電「……恥ずかしいのです……」コソコソ
暁「響の後ろに隠れてないで、姿を見せなさい!」グイッ
電「はわわ……!」カァァ
提督「おお、すごく似合ってるじゃないか」
大淀「控えめに言って可愛すぎですね」
電「あ、ありがとうなのです……ご主人様、お嬢様……」モジモジ
提督・大淀(かわいい)ホッコリ
――――
提督「じゃあ俺は……この『ふーふーカレー』? ってやつで」
大淀「私は『なぽりたん』を」
暁「かしこまりました!」
響「できるまで少々お待ちください」
スタスタ
提督「可愛らしいメイドさんだな」
大淀「あれ、でも1人足りないような」
雷「もー、電? せっかく可愛い服を着たんだから、見せないともったいないわよ」
電「……恥ずかしいのです……」コソコソ
暁「響の後ろに隠れてないで、姿を見せなさい!」グイッ
電「はわわ……!」カァァ
提督「おお、すごく似合ってるじゃないか」
大淀「控えめに言って可愛すぎですね」
電「あ、ありがとうなのです……ご主人様、お嬢様……」モジモジ
提督・大淀(かわいい)ホッコリ
――――
提督「じゃあ俺は……この『ふーふーカレー』? ってやつで」
大淀「私は『なぽりたん』を」
暁「かしこまりました!」
響「できるまで少々お待ちください」
スタスタ
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 02:03:31.05 ID:mIYTZT6D0
大淀「あの、提督」
提督「ん?」
大淀「提督が頼んだ『ふーふーカレー』って料理……」
提督「辛そうな名前だろ。どんな見た目なんだろうな」
大淀「えっ」
提督「俺辛いの好きなんだよ、言ってなかったっけ」
大淀「……いえ」
大淀(ふーふーってそういう意味じゃないのに。言った方がいいのかしら)
――――
スタスタ
赤城「お待たせしました!」
加賀「ご注文の料理、持ってきました」
大淀「一航戦のお二人じゃないですか」
提督「お前らも働いてたんだな」
赤城「ええ、働くと美味しい『まかない』が……じゃなくて」
赤城「ご主人様やお嬢様の笑顔が見られるので!」キラキラ
提督(間宮にそう言うよう仕込まれたのかな)
提督「ん?」
大淀「提督が頼んだ『ふーふーカレー』って料理……」
提督「辛そうな名前だろ。どんな見た目なんだろうな」
大淀「えっ」
提督「俺辛いの好きなんだよ、言ってなかったっけ」
大淀「……いえ」
大淀(ふーふーってそういう意味じゃないのに。言った方がいいのかしら)
――――
スタスタ
赤城「お待たせしました!」
加賀「ご注文の料理、持ってきました」
大淀「一航戦のお二人じゃないですか」
提督「お前らも働いてたんだな」
赤城「ええ、働くと美味しい『まかない』が……じゃなくて」
赤城「ご主人様やお嬢様の笑顔が見られるので!」キラキラ
提督(間宮にそう言うよう仕込まれたのかな)
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 02:06:17.17 ID:mIYTZT6D0
加賀「お嬢様、『なぽりたん』です」スッ
大淀「ありがとうございます」
加賀「ではこれで」スタスタ
大淀「え?」
赤城「加賀さん、まだ魔法が残ってますよ」
加賀「……すみません。私は生まれつき魔力が弱くて使えないんです」
赤城「何ですかその設定!?」
提督(要するに恥ずかしいんだな)
赤城「言い逃れはダメですよ! 練習の時はあんなに上手くできてたじゃないですか」
加賀「……」
大淀「いえ赤城さん、そんな無理に…」
加賀「分かりました」
提督・大淀「!」
加賀「お嬢様、これから私が料理をもっと美味しくする魔法をかけさせて頂きます」ペコリ
大淀「あ、はい。よろしくお願いします」ペコリ
大淀「ありがとうございます」
加賀「ではこれで」スタスタ
大淀「え?」
赤城「加賀さん、まだ魔法が残ってますよ」
加賀「……すみません。私は生まれつき魔力が弱くて使えないんです」
赤城「何ですかその設定!?」
提督(要するに恥ずかしいんだな)
赤城「言い逃れはダメですよ! 練習の時はあんなに上手くできてたじゃないですか」
加賀「……」
大淀「いえ赤城さん、そんな無理に…」
加賀「分かりました」
提督・大淀「!」
加賀「お嬢様、これから私が料理をもっと美味しくする魔法をかけさせて頂きます」ペコリ
大淀「あ、はい。よろしくお願いします」ペコリ
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 02:09:21.05 ID:mIYTZT6D0
提督(加賀の魔法……)
大淀(一体どんな?)
加賀「……」コホン
加賀「まず、手でハートをつくります」スッ
加賀「お嬢様もぜひ一緒に」
大淀「はい」スッ
加賀「そしてこれから言う呪文を、私に続いて唱えてください。いきます」
加賀「オイシクナーレーモエモエキュン」
提督・大淀(棒)
赤城「加賀さん、もっと元気よく流暢に」
加賀「赤城さんには伝えてませんでしたが、これが私のスタイルなんです」
加賀「これでちゃんと、なぽりたんは美味しくなりました」
赤城「そんなこと言って、もう……ごめんなさい大淀さん」
大淀「いえいえ! 心なしか見た目もさっきより良い感じですし!」
大淀(一体どんな?)
加賀「……」コホン
加賀「まず、手でハートをつくります」スッ
加賀「お嬢様もぜひ一緒に」
大淀「はい」スッ
加賀「そしてこれから言う呪文を、私に続いて唱えてください。いきます」
加賀「オイシクナーレーモエモエキュン」
提督・大淀(棒)
赤城「加賀さん、もっと元気よく流暢に」
加賀「赤城さんには伝えてませんでしたが、これが私のスタイルなんです」
加賀「これでちゃんと、なぽりたんは美味しくなりました」
赤城「そんなこと言って、もう……ごめんなさい大淀さん」
大淀「いえいえ! 心なしか見た目もさっきより良い感じですし!」
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 02:11:58.41 ID:mIYTZT6D0
赤城「仕方ないですね。こうなったら私が加賀さんの分の魔法もかけます!」
赤城「手でハートを作って頂けますか!」スッ
大淀「は、はい」スッ
赤城「私の魔法に続いてくださいね……」ハァァァァ
提督(これは……赤城に周囲の気が集まっている……!?)
大淀「………」ゴクリ
赤城「いきます!」
赤城「おいしくなぁ~れ♡ 萌え萌えきゅんっ♡」ウインク
提督・大淀「……」
提督・大淀(すごく可愛い!)
赤城「お嬢様も一緒に!」
大淀「へ? あ……おいしくなーれ、萌え萌えきゅん」
赤城「ありがとうございます! 加賀さんの分もカバーできたでしょうか」フゥ…
大淀「愛情がいっぱい詰まってて美味しいです」モグモグ
赤城「本当ですか? よかった」ホッ
赤城「手でハートを作って頂けますか!」スッ
大淀「は、はい」スッ
赤城「私の魔法に続いてくださいね……」ハァァァァ
提督(これは……赤城に周囲の気が集まっている……!?)
大淀「………」ゴクリ
赤城「いきます!」
赤城「おいしくなぁ~れ♡ 萌え萌えきゅんっ♡」ウインク
提督・大淀「……」
提督・大淀(すごく可愛い!)
赤城「お嬢様も一緒に!」
大淀「へ? あ……おいしくなーれ、萌え萌えきゅん」
赤城「ありがとうございます! 加賀さんの分もカバーできたでしょうか」フゥ…
大淀「愛情がいっぱい詰まってて美味しいです」モグモグ
赤城「本当ですか? よかった」ホッ
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 21:55:44.60 ID:mIYTZT6D0
加賀「赤城さん、ご主人様にも」
赤城「あっ、そうでした! ごめんなさい提督! じゃなくてご主人様!」
提督「気にしないでくれ」ハハ
赤城「では、ご主人様の頼んだ料理は『ふーふーカレー』なので」
赤城「私がふーふー冷まして食べさせてあげますね!」
提督「……?」
提督「意味が分からないんだが」
赤城「え? メニューの説明読んでないんですか?」
加賀「ふーふーカレーとは、私たちメイドがご主人様、お嬢様のために」
加賀「熱い料理をふーふーして適温まで冷まし、食べさせるものです」
提督「は? 嘘だろ……本当だ、よく見たら書いてあった」
提督「大淀、何で間違いを指摘してくれなかったんだ……」
大淀「いいじゃないですか。メイドさんに食べさせてもらえるんですから」モグモグ
赤城「あっ、そうでした! ごめんなさい提督! じゃなくてご主人様!」
提督「気にしないでくれ」ハハ
赤城「では、ご主人様の頼んだ料理は『ふーふーカレー』なので」
赤城「私がふーふー冷まして食べさせてあげますね!」
提督「……?」
提督「意味が分からないんだが」
赤城「え? メニューの説明読んでないんですか?」
加賀「ふーふーカレーとは、私たちメイドがご主人様、お嬢様のために」
加賀「熱い料理をふーふーして適温まで冷まし、食べさせるものです」
提督「は? 嘘だろ……本当だ、よく見たら書いてあった」
提督「大淀、何で間違いを指摘してくれなかったんだ……」
大淀「いいじゃないですか。メイドさんに食べさせてもらえるんですから」モグモグ
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 21:58:18.61 ID:mIYTZT6D0
提督「それはそうだが、恥ずかしさが……」
加賀「まずは魔法をかけます」
赤城「おいしくなぁ~れ♡ 萌え萌えきゅんっ♡」
加賀「オイシクナーレモエモエキュン」
赤城「さあご主人様! ふー、ふー」
赤城「はい、あーんしてください♡」スッ
提督「……わ、分かった」
アーン
赤城「……」
提督「……」
赤城「……」
パクッ
加賀「まずは魔法をかけます」
赤城「おいしくなぁ~れ♡ 萌え萌えきゅんっ♡」
加賀「オイシクナーレモエモエキュン」
赤城「さあご主人様! ふー、ふー」
赤城「はい、あーんしてください♡」スッ
提督「……わ、分かった」
アーン
赤城「……」
提督「……」
赤城「……」
パクッ
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 22:00:59.94 ID:mIYTZT6D0
提督「!? お前、何して……」
赤城「す、すみません……あまりにも美味しそうで、体が言うことを聞かず……」モグモグ
加賀「分かりますその気持ち」
大淀(まさか自分で食べるなんて。赤城さんなら可能性はありましたけど)
提督「いや、いいんだよ。よかったらそのカレー食べてくれ、実はあまり腹が減ってないんだ」ハハ…
赤城「いいんですか!? ってダメです! これはご主人様のお料理なので」ゴクン
赤城「メイドが横取りするなんてありえません! さあもう一度!」スッ
提督「使ったスプーンでやるのか!?」
赤城「私は気にしません」ニコッ
提督「俺が気にする!!」
大淀(長引きそうですね)モグモグ
――――
提督(……結局違うスプーンで一度だけ食べさせてもらったが)
提督(ふーふーする意味ないくらい適温になってたな。まあ良い経験ができた)
大淀「提督、デザートは何にしますか?」
赤城「す、すみません……あまりにも美味しそうで、体が言うことを聞かず……」モグモグ
加賀「分かりますその気持ち」
大淀(まさか自分で食べるなんて。赤城さんなら可能性はありましたけど)
提督「いや、いいんだよ。よかったらそのカレー食べてくれ、実はあまり腹が減ってないんだ」ハハ…
赤城「いいんですか!? ってダメです! これはご主人様のお料理なので」ゴクン
赤城「メイドが横取りするなんてありえません! さあもう一度!」スッ
提督「使ったスプーンでやるのか!?」
赤城「私は気にしません」ニコッ
提督「俺が気にする!!」
大淀(長引きそうですね)モグモグ
――――
提督(……結局違うスプーンで一度だけ食べさせてもらったが)
提督(ふーふーする意味ないくらい適温になってたな。まあ良い経験ができた)
大淀「提督、デザートは何にしますか?」
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 22:04:09.28 ID:mIYTZT6D0
提督「もう食べるのか。今日は時間あるんだし、ゲームをしてからでもよくないか」
大淀「んー、それもそうですね。じゃあこれに挑戦してみましょう!」
提督「なになに……『天龍メイドと腕相撲対決』?」
提督「メイドらしさの欠片もないゲームだな」
大淀「でもほら、勝ったご主人様、お嬢様には豪華商品ですよ」
提督「それが目当てか」
大淀「えへへ。メイドさん、すみません! このゲームにチャレンジしたいんですけど!」
提督「勝手に話を進めるな!」
スタスタ
日向「日向メイド、ここに」
大淀「このゲームお願いします」
日向「承った。天龍を呼んでくる……と、その前に」
日向「約束のデザートだ、食べてくれ」スッ
大淀「んー、それもそうですね。じゃあこれに挑戦してみましょう!」
提督「なになに……『天龍メイドと腕相撲対決』?」
提督「メイドらしさの欠片もないゲームだな」
大淀「でもほら、勝ったご主人様、お嬢様には豪華商品ですよ」
提督「それが目当てか」
大淀「えへへ。メイドさん、すみません! このゲームにチャレンジしたいんですけど!」
提督「勝手に話を進めるな!」
スタスタ
日向「日向メイド、ここに」
大淀「このゲームお願いします」
日向「承った。天龍を呼んでくる……と、その前に」
日向「約束のデザートだ、食べてくれ」スッ
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 22:06:37.75 ID:mIYTZT6D0
大淀「ありがとうございます」
提督「包み紙の……チョコレートか?」
日向「ただのチョコじゃない。瑞雲の形をしているんだ」
日向「型を作るのが大変だったが、納得の出来だ」
大淀「わー、本当! すごく細かいですよ提督!」カサカサ
提督「……すごいな。ここまで来ると芸術の域だ」
大淀「食べるのがもったいないです」
日向「型さえあればいくらでも作れるからな。味わってくれ」スタスタ
提督「ありがたく頂くよ」
――――
大淀「甘さも絶妙で美味しかったですね」
提督「ああ。あとでもう一度お礼を言おう」
スタスタ
天龍「よお提督、それに大淀」ヘッヘッヘ
提督「天龍、来たな」
提督「包み紙の……チョコレートか?」
日向「ただのチョコじゃない。瑞雲の形をしているんだ」
日向「型を作るのが大変だったが、納得の出来だ」
大淀「わー、本当! すごく細かいですよ提督!」カサカサ
提督「……すごいな。ここまで来ると芸術の域だ」
大淀「食べるのがもったいないです」
日向「型さえあればいくらでも作れるからな。味わってくれ」スタスタ
提督「ありがたく頂くよ」
――――
大淀「甘さも絶妙で美味しかったですね」
提督「ああ。あとでもう一度お礼を言おう」
スタスタ
天龍「よお提督、それに大淀」ヘッヘッヘ
提督「天龍、来たな」
75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 22:08:44.03 ID:mIYTZT6D0
龍田「ダメでしょ天龍ちゃん、ご主人様とお嬢様って言わないと~」
大淀「龍田さんも一緒ですか」
龍田「私は審判よ~」
天龍「へへ、前からやってみたかったんだよなぁ。提督と腕相撲を」
提督「……」
天龍「どうした、戦う前から怖くて声も出ねえか」
提督「いや……可愛いなと思って」
天龍「!?」
大淀「ですね。メイドの天龍さん、可愛いです」ニコニコ
天龍「か、からかうんじゃねえ!!」カァァ
龍田「やっぱりそう思うでしょ~? 写真いーっぱい撮ったから、提督と大淀ちゃんにもあげるわ~」
提督・大淀「ほう」
天龍「ばっ、やめろよ龍田!? 渡したら承知しねえぞ!!」
大淀「龍田さんも一緒ですか」
龍田「私は審判よ~」
天龍「へへ、前からやってみたかったんだよなぁ。提督と腕相撲を」
提督「……」
天龍「どうした、戦う前から怖くて声も出ねえか」
提督「いや……可愛いなと思って」
天龍「!?」
大淀「ですね。メイドの天龍さん、可愛いです」ニコニコ
天龍「か、からかうんじゃねえ!!」カァァ
龍田「やっぱりそう思うでしょ~? 写真いーっぱい撮ったから、提督と大淀ちゃんにもあげるわ~」
提督・大淀「ほう」
天龍「ばっ、やめろよ龍田!? 渡したら承知しねえぞ!!」
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 22:14:17.78 ID:mIYTZT6D0
提督「あともちろん、龍田のメイドも可愛い」
大淀「素晴らしいですね」
龍田「うふふ、ありがと~」
天龍「ったくよ……気を取り直すぞ! ルール説明だ!」
提督「特別ルールなのか」
龍田「いいえ、一般的な腕相撲のルールと変わらないわ~」
龍田「勝負は三回で、先に二勝した方の勝ちよ~」
大淀「頑張ってくださいね提督!」
オー ナンダナンダ
提督(他のお客さんも集まってきた……やりにくいな)
暁「がんばって天龍さん!」
電「電は司令……ご主人様を応援するのです!」
伊勢「どっちも頑張ってー!」
大淀「素晴らしいですね」
龍田「うふふ、ありがと~」
天龍「ったくよ……気を取り直すぞ! ルール説明だ!」
提督「特別ルールなのか」
龍田「いいえ、一般的な腕相撲のルールと変わらないわ~」
龍田「勝負は三回で、先に二勝した方の勝ちよ~」
大淀「頑張ってくださいね提督!」
オー ナンダナンダ
提督(他のお客さんも集まってきた……やりにくいな)
暁「がんばって天龍さん!」
電「電は司令……ご主人様を応援するのです!」
伊勢「どっちも頑張ってー!」
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/18(金) 22:15:33.48 ID:mIYTZT6D0
天龍「いくぜ提督」スッ
提督「よし」スッ
龍田「それじゃあいくわよ~。一回目の勝負、よーい……」
龍田「スタート!」
提督「ふっ! ぐぐぐ……!」
天龍「うぎぎぎぎ……!」
ザワザワ
女「ねえあの人、メイドさんと良い勝負してるけど」
男「体格いいのは見掛け倒しか?」クスクス
提督(そ、そりゃ相手は艦娘だからな……予想以上の力だ)
天龍「やるじゃねえか……そうこなくっちゃな……!」
天龍「でも、これならどうだ!」グググ
提督「!?」
提督「よし」スッ
龍田「それじゃあいくわよ~。一回目の勝負、よーい……」
龍田「スタート!」
提督「ふっ! ぐぐぐ……!」
天龍「うぎぎぎぎ……!」
ザワザワ
女「ねえあの人、メイドさんと良い勝負してるけど」
男「体格いいのは見掛け倒しか?」クスクス
提督(そ、そりゃ相手は艦娘だからな……予想以上の力だ)
天龍「やるじゃねえか……そうこなくっちゃな……!」
天龍「でも、これならどうだ!」グググ
提督「!?」
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:09:10.18 ID:KLUDENfO0
提督(マズい、押されている……!)
大淀「提督ファイト!」
響「熱い勝負だね」
雷「手に汗握る戦いよ!」
赤城「この瑞雲チョコおいしい」モグモグ
日向「だろう?」
提督(くっ……確かに相手は艦娘だが……)
提督(俺も軍人だ。艦娘たちを率いている立場なんだ!)
提督(負けてたまるか……!)
提督「うおおおお……!!」グググ
天龍「げっ……ま、まだこんな力が……!?」
天龍「このっ……!」グググ
提督「はあああああ……」グググ
提督「おりゃああああ!!」
ダンッ
大淀「提督ファイト!」
響「熱い勝負だね」
雷「手に汗握る戦いよ!」
赤城「この瑞雲チョコおいしい」モグモグ
日向「だろう?」
提督(くっ……確かに相手は艦娘だが……)
提督(俺も軍人だ。艦娘たちを率いている立場なんだ!)
提督(負けてたまるか……!)
提督「うおおおお……!!」グググ
天龍「げっ……ま、まだこんな力が……!?」
天龍「このっ……!」グググ
提督「はあああああ……」グググ
提督「おりゃああああ!!」
ダンッ
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:10:54.55 ID:KLUDENfO0
龍田「はい、ご主人様の勝ち~」
天龍「嘘だろ……? く、くっそー!」
提督(ギリギリだった)ハァ ハァ
天龍「悔しい……さすがだぜ。オレたちの提督なだけあるな」
天龍「でもまだ勝負はこれからだぜ!」
提督「の、望むところ!」ハァ ハァ
大淀(息が上がってるけど大丈夫かしら)
男1「提督? 何のことだ?」ヒソヒソ
男2「呼び方を変えられるサービスがあるのかな」ヒソヒソ
――――
提督「か、勝った……」
ガクッ
大淀「大丈夫ですか提督!?」
提督「燃え尽きたよ……」
天龍「チックショーもう一回だ!! 勝負しろぉぉぉ!!」
龍田「落ち着いて天龍ちゃん、二回負けちゃったでしょ~?」
天龍「嘘だろ……? く、くっそー!」
提督(ギリギリだった)ハァ ハァ
天龍「悔しい……さすがだぜ。オレたちの提督なだけあるな」
天龍「でもまだ勝負はこれからだぜ!」
提督「の、望むところ!」ハァ ハァ
大淀(息が上がってるけど大丈夫かしら)
男1「提督? 何のことだ?」ヒソヒソ
男2「呼び方を変えられるサービスがあるのかな」ヒソヒソ
――――
提督「か、勝った……」
ガクッ
大淀「大丈夫ですか提督!?」
提督「燃え尽きたよ……」
天龍「チックショーもう一回だ!! 勝負しろぉぉぉ!!」
龍田「落ち着いて天龍ちゃん、二回負けちゃったでしょ~?」
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:13:51.87 ID:KLUDENfO0
提督「うう……そ、それで……豪華賞品は……?」
龍田「そうね~、用意してあるけど~」
龍田「ご主人様、ボーナスチャレンジはどうかしら~?」
提督「何だそれ」
天龍「龍田と一回勝負して勝ったら、おまけの賞品がもらえるんだよ」
大淀「本当ですか!?」キラキラ
提督「やめろ大淀! 俺のライフはもう0だ!」
大淀「分かってますよ……と言いたいところですけど」
大淀「私が挑戦すれば文句はないですよね」グッ グッ
提督「お前が?」
大淀「私も艦娘ですからね。訓練は怠っていません。そのチャレンジ、引き受けました!」
提督(どうせなら最初から引き受けてくれ……)
龍田「そうね~、用意してあるけど~」
龍田「ご主人様、ボーナスチャレンジはどうかしら~?」
提督「何だそれ」
天龍「龍田と一回勝負して勝ったら、おまけの賞品がもらえるんだよ」
大淀「本当ですか!?」キラキラ
提督「やめろ大淀! 俺のライフはもう0だ!」
大淀「分かってますよ……と言いたいところですけど」
大淀「私が挑戦すれば文句はないですよね」グッ グッ
提督「お前が?」
大淀「私も艦娘ですからね。訓練は怠っていません。そのチャレンジ、引き受けました!」
提督(どうせなら最初から引き受けてくれ……)
84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:17:07.21 ID:KLUDENfO0
天龍「よっしゃ、じゃあ今度はオレが審判を引き受けるぜ」
天龍「準備はいいか2人とも?」
大淀「はい」スッ
龍田「うふ、よろしくね~」スッ
提督(大淀と龍田の力比べ……レアだな)
男「今度は女の子対決か」
女「どうなるんだろう」
天龍「いくぜ!」
天龍「よーい……」
大淀(メガネをかけているからって、侮ってはいけませんよ)フフフ
大淀(初っ端から決めにいきます! 私のありったけを、龍田さんにぶつける!)
龍田「大淀お嬢様~?」ヒソヒソ
大淀「何ですか。そんなグッとくる呼び方で惑わしたって無駄ですよ」
龍田「……」
天龍「準備はいいか2人とも?」
大淀「はい」スッ
龍田「うふ、よろしくね~」スッ
提督(大淀と龍田の力比べ……レアだな)
男「今度は女の子対決か」
女「どうなるんだろう」
天龍「いくぜ!」
天龍「よーい……」
大淀(メガネをかけているからって、侮ってはいけませんよ)フフフ
大淀(初っ端から決めにいきます! 私のありったけを、龍田さんにぶつける!)
龍田「大淀お嬢様~?」ヒソヒソ
大淀「何ですか。そんなグッとくる呼び方で惑わしたって無駄ですよ」
龍田「……」
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:20:08.94 ID:KLUDENfO0
龍田「優しく……してくださいね……」ポッ
大淀「えっ」ドキッ
天龍「ドン!!」
龍田「えい」
パタン
大淀「……へ?」
天龍「勝者、龍田!!」
オー! スゲー! ザワザワ
大淀「……」
提督「速攻で負けたな」
大淀「だ、だって……今の龍田さん見てなかったんですか?」
大淀「すっごく可愛くて……気が抜けてしまって……」
提督「同じ女だよなお前」
大淀「女でも可愛い女の子にグッときますよ」
提督「そういうもんなのか」
龍田「じゃあ、これで腕相撲対決は終わり~。観戦してくださった皆さん、ありがとうございました~」
大淀「えっ」ドキッ
天龍「ドン!!」
龍田「えい」
パタン
大淀「……へ?」
天龍「勝者、龍田!!」
オー! スゲー! ザワザワ
大淀「……」
提督「速攻で負けたな」
大淀「だ、だって……今の龍田さん見てなかったんですか?」
大淀「すっごく可愛くて……気が抜けてしまって……」
提督「同じ女だよなお前」
大淀「女でも可愛い女の子にグッときますよ」
提督「そういうもんなのか」
龍田「じゃあ、これで腕相撲対決は終わり~。観戦してくださった皆さん、ありがとうございました~」
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:24:26.70 ID:KLUDENfO0
――――
提督「賞品はウォーターテーマパークの招待券って、豪華すぎじゃ……」
大淀「いいじゃないですか。今度みんなで行きましょうよ」
提督(でもこの距離だと、車を運転しなきゃいけない予感がする)ハァ
戦艦棲姫「ヘエ、カワイイオミセダナ」
提督「ん?」
北方棲姫「メイドサン、イル! カワイイ!」タタタッ
港湾棲姫「ホッポ……ハシッチャダメダト、イッテルノニ……」
提督(深海棲艦。あいつらも来てるんだな)
ドンッ
北方「!」
扶桑「あら、大丈夫?」
山城「誰かと思ったら、ほっぽちゃんじゃないですか」
港湾「イワンコッチャナイ! ゴメンナサイ、コノコガブツカッテシマッテ」ペコリ
北方「ゴメンナサイ……」
扶桑「いえ、いいんですよ。元気なお嬢様ね」ナデナデ
山城「でもこれから気をつけてね」ニコッ
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:26:48.38 ID:KLUDENfO0
北方「ウン」
戦艦「アノ、サンニンナンデスケド、ハイレマスカ?」
山城「はい。お嬢様方、席へご案内しますね」
スタスタ
男1「なあ、今の見たか?」
男2「すごいコスプレだ。外人さんかな?」
提督(まあそう思われるよな。ずっとあの服のままだし)
大淀「提督、もうデザートを頼んでもいいですよね」
提督「? ああ、っていうかどんだけ楽しみにしてるんだよ」
大淀「楽しみにもなりますよ! これ見てください」スッ
提督「……『ツンデレパフェ』?」
大淀「それに『クーデレパフェ』や『デレデレパフェ』なんてのもありますよ」
大淀「どうやらこれを頼むと、メイドさんがそれぞれのデレをやりながら」
大淀「パフェを食べ終わるまで付き添ってくれるらしいですね」
戦艦「アノ、サンニンナンデスケド、ハイレマスカ?」
山城「はい。お嬢様方、席へご案内しますね」
スタスタ
男1「なあ、今の見たか?」
男2「すごいコスプレだ。外人さんかな?」
提督(まあそう思われるよな。ずっとあの服のままだし)
大淀「提督、もうデザートを頼んでもいいですよね」
提督「? ああ、っていうかどんだけ楽しみにしてるんだよ」
大淀「楽しみにもなりますよ! これ見てください」スッ
提督「……『ツンデレパフェ』?」
大淀「それに『クーデレパフェ』や『デレデレパフェ』なんてのもありますよ」
大淀「どうやらこれを頼むと、メイドさんがそれぞれのデレをやりながら」
大淀「パフェを食べ終わるまで付き添ってくれるらしいですね」
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 22:29:30.64 ID:KLUDENfO0
提督「どういうことだ?」
大淀「頼めば分かりますよ。すみません!」
伊勢「はい!」スタタタッ
大淀「注文なんですけど、『ツンデレパフェ』をお願いします」
伊勢「かしこまりましたお嬢様! ご主人様は?」
提督「俺は……パフェ食べたいだけだし、何でもいいな」
提督「大淀決めてくれ」
大淀「私が?」
提督「ああ。ちょっとトイレ行ってくる」スタスタ
大淀「……それじゃあ提督にはこれを。私も見てみたいので」
伊勢「かしこまりました。少々お待ちください」スタスタ
――――
提督「ふー」スタスタ
大淀「頼んでおきましたよ」
提督「ん? ああ、ありがとう。何を頼んだんだ?」
大淀「来てからのお楽しみです」フフ
大淀「頼めば分かりますよ。すみません!」
伊勢「はい!」スタタタッ
大淀「注文なんですけど、『ツンデレパフェ』をお願いします」
伊勢「かしこまりましたお嬢様! ご主人様は?」
提督「俺は……パフェ食べたいだけだし、何でもいいな」
提督「大淀決めてくれ」
大淀「私が?」
提督「ああ。ちょっとトイレ行ってくる」スタスタ
大淀「……それじゃあ提督にはこれを。私も見てみたいので」
伊勢「かしこまりました。少々お待ちください」スタスタ
――――
提督「ふー」スタスタ
大淀「頼んでおきましたよ」
提督「ん? ああ、ありがとう。何を頼んだんだ?」
大淀「来てからのお楽しみです」フフ
94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:05:44.78 ID:LwscMYO20
提督「嫌な予感がするんだが」
大淀「変わったものは頼んでないので安心してください」
提督(ツンデレ以外はほぼ変わってると思うんだが)
――――
スタスタ
???「やっほー、持ってきたよー」
大淀「北上さん!」
提督「ということは……」
大井「はぁ……何で私が提督のデザートを……」スタスタ
提督(大井もいるよな)
大淀「お二人とも、メイド服を着こなしてますね」
北上「ありがと」ニコッ
大井「ですよね! 私はともかく、北上さんは完璧だわ!」キラキラ
提督(テンションが急上昇)
大淀「変わったものは頼んでないので安心してください」
提督(ツンデレ以外はほぼ変わってると思うんだが)
――――
スタスタ
???「やっほー、持ってきたよー」
大淀「北上さん!」
提督「ということは……」
大井「はぁ……何で私が提督のデザートを……」スタスタ
提督(大井もいるよな)
大淀「お二人とも、メイド服を着こなしてますね」
北上「ありがと」ニコッ
大井「ですよね! 私はともかく、北上さんは完璧だわ!」キラキラ
提督(テンションが急上昇)
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:09:16.14 ID:LwscMYO20
北上「はい、ツンデレパフェ」スッ
大淀「ありがとうございます。可愛くて美味しそう」
北上「か、勘違いしないでよね! あんたの喜ぶ顔が見たかったからとか」
北上「そんな理由で運んだんじゃないんだから!」ツーン
大淀「おー! これがツンデレですか」
大井「北上さんヤバいくらい可愛いですね」エヘヘ
提督「あの、俺のデザートは……」
大井「!」
北上「大井っちが持ってるよ」
大井「……」
北上「さあ大井っち、早く渡さないと」
大井「くっ」
大井「ご、ご主人様。こちら……ニャンデレパフェになります……にゃ」
提督「え」
大淀「ありがとうございます。可愛くて美味しそう」
北上「か、勘違いしないでよね! あんたの喜ぶ顔が見たかったからとか」
北上「そんな理由で運んだんじゃないんだから!」ツーン
大淀「おー! これがツンデレですか」
大井「北上さんヤバいくらい可愛いですね」エヘヘ
提督「あの、俺のデザートは……」
大井「!」
北上「大井っちが持ってるよ」
大井「……」
北上「さあ大井っち、早く渡さないと」
大井「くっ」
大井「ご、ご主人様。こちら……ニャンデレパフェになります……にゃ」
提督「え」
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:11:26.09 ID:LwscMYO20
北上「大井っちかわいいー」
大井「……」カァァ
提督「大淀、ニャンデレパフェって?」
大淀「語尾に『にゃん』をつけたり、ネコのように甘えるものです」
大淀「可愛いですよね」
提督(可愛いには可愛いけども)
大井「はい、もういいですよね! 私はもう行きます!」スタスタ
北上「え、ちょっとダメだよ。まだやること残ってるじゃん」
大井「耐えられないんですよ! 大体なんで私が提督担当なんですか!?」
北上「しょうがないよ、他の娘はたまたま別のお客さんのとこだし」
大井「うう……」
提督「いいよ北上、嫌がってるし。もう充分だ」
北上「でも仕事だしさ」
大井「……」カァァ
提督「大淀、ニャンデレパフェって?」
大淀「語尾に『にゃん』をつけたり、ネコのように甘えるものです」
大淀「可愛いですよね」
提督(可愛いには可愛いけども)
大井「はい、もういいですよね! 私はもう行きます!」スタスタ
北上「え、ちょっとダメだよ。まだやること残ってるじゃん」
大井「耐えられないんですよ! 大体なんで私が提督担当なんですか!?」
北上「しょうがないよ、他の娘はたまたま別のお客さんのとこだし」
大井「うう……」
提督「いいよ北上、嫌がってるし。もう充分だ」
北上「でも仕事だしさ」
97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:13:26.35 ID:LwscMYO20
提督「可愛いところも見られた。仕事はちゃんと果たしてくれたよ」
大井「……」
北上「んー……提督がそう言うなら……」
大井「……」
大井「隣、失礼しますにゃ」スッ
提督「!」
提督「大井、無理しなくてもいいんだぞ」
大井「北上さんの言う通り、これは仕事ですにゃ」
大井「嫌だとか言ってられにゃい。反省して最後まで責任を持ちますにゃ!」
提督「……そうか」
北上「よし、じゃああたしも」
北上「ここ座るけどいい?」
大淀「どうぞ」
北上「ひ、一つ言っておくけど……あんたの隣に座りたくて座るんじゃないんだから!」スッ
提督(北上のツンデレ、あざといというか何というか)
大井「……」
北上「んー……提督がそう言うなら……」
大井「……」
大井「隣、失礼しますにゃ」スッ
提督「!」
提督「大井、無理しなくてもいいんだぞ」
大井「北上さんの言う通り、これは仕事ですにゃ」
大井「嫌だとか言ってられにゃい。反省して最後まで責任を持ちますにゃ!」
提督「……そうか」
北上「よし、じゃああたしも」
北上「ここ座るけどいい?」
大淀「どうぞ」
北上「ひ、一つ言っておくけど……あんたの隣に座りたくて座るんじゃないんだから!」スッ
提督(北上のツンデレ、あざといというか何というか)
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:16:45.07 ID:LwscMYO20
大淀「んー! イチゴの甘酸っぱさと、なめらかアイスの組み合わせが最高!」
北上「当たり前でしょ? あたしが愛情込めて作ったんだもん」
大淀「え」
北上「あ……今のは嘘! 口が滑った、じゃなくて!」
大淀(可愛い)
提督(作りこんでるな北上)パクッ モグモグ
大井「すー、はー……よし」
大井「ご主人様」
提督「?」
大井「もしよかったら、パフェを食べさせてあげますにゃー♡」
提督「!?」
提督(本格的になった)
提督「いや、そこまでしなくても」
大井「スプーン貸してくださいにゃ?♡」
提督「いいって」
北上「当たり前でしょ? あたしが愛情込めて作ったんだもん」
大淀「え」
北上「あ……今のは嘘! 口が滑った、じゃなくて!」
大淀(可愛い)
提督(作りこんでるな北上)パクッ モグモグ
大井「すー、はー……よし」
大井「ご主人様」
提督「?」
大井「もしよかったら、パフェを食べさせてあげますにゃー♡」
提督「!?」
提督(本格的になった)
提督「いや、そこまでしなくても」
大井「スプーン貸してくださいにゃ?♡」
提督「いいって」
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:20:16.46 ID:LwscMYO20
大井「早くしてくださいにゃ」
提督「大丈夫だから!」
大井「ちっ、往生際の悪い……強行手段!!」パシッ
提督「あっ」
提督(無理やりスプーンを!)
大井「さあ、あーんしてくださいにゃ」
提督「違うスプーンで食べるからいいよ」スッ
大井「……」
提督「分かったよ、そんな顔しないでくれ」
提督(はぁ……仕方ない)アーン
パクッ
大井「どうですにゃ?」
提督「美味い」モグモグ
提督「大丈夫だから!」
大井「ちっ、往生際の悪い……強行手段!!」パシッ
提督「あっ」
提督(無理やりスプーンを!)
大井「さあ、あーんしてくださいにゃ」
提督「違うスプーンで食べるからいいよ」スッ
大井「……」
提督「分かったよ、そんな顔しないでくれ」
提督(はぁ……仕方ない)アーン
パクッ
大井「どうですにゃ?」
提督「美味い」モグモグ
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:23:15.85 ID:LwscMYO20
大井「よかったですにゃー」
大井「よし……! 次は……」ボソッ
大井「あ、あの」
提督「ん?」
大井「私も一口、食べてみたいにゃ♡」
提督「……もしかして、俺に食べさせてくれとか言い出すんじゃ」
大井「さすがご主人様、察しが良いにゃ」
提督「なあ大井、お前ちょっとやりすぎじゃないか」
大井「そんなことないにゃ。私は口を開けて待ってるので、早くパフェを食べさせてくださいにゃ」アーン
提督「分かったよ……スプーンは変えるからな」スッ
大井「は? なに当たり前のこと言ってるんですか! ……にゃ!」
提督「赤城がやろうとしたんだよ、カレーのスプーンを変えずにな」スッ
パクッ
大井「よし……! 次は……」ボソッ
大井「あ、あの」
提督「ん?」
大井「私も一口、食べてみたいにゃ♡」
提督「……もしかして、俺に食べさせてくれとか言い出すんじゃ」
大井「さすがご主人様、察しが良いにゃ」
提督「なあ大井、お前ちょっとやりすぎじゃないか」
大井「そんなことないにゃ。私は口を開けて待ってるので、早くパフェを食べさせてくださいにゃ」アーン
提督「分かったよ……スプーンは変えるからな」スッ
大井「は? なに当たり前のこと言ってるんですか! ……にゃ!」
提督「赤城がやろうとしたんだよ、カレーのスプーンを変えずにな」スッ
パクッ
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:32:49.39 ID:W8697yMt0
大井「あ、本当に美味しい」モグモグ
大井「じゃなくて、すっごく美味しいにゃー♡」
提督「だよな。さすが間宮だ」
大井「ご主人様の愛情もこもってるにゃ♡」
大井「さあ、今度は私の番ですにゃー」スッ
提督「いやいや、さすがにもういいよ。普通にパフェを楽しませてくれ」ハハ…
大井「でも、そうしたら他にすることが……」
提督「無理に何かしようとしなくてもいいんじゃないか?」
大井「そうはいきません、にゃ! えっと、猫のように甘える……猫のように……」
大井「……」ススス
ピトッ
提督「何でくっついたんだ」
大井「ほら、猫って気に入ったものに匂いをつけるため、スリスリするじゃないですか」
大井「それを参考にしたんです……にゃ」
提督「えっ。お前、俺のこと気に入ってくれてたのか」
大井「じゃなくて、すっごく美味しいにゃー♡」
提督「だよな。さすが間宮だ」
大井「ご主人様の愛情もこもってるにゃ♡」
大井「さあ、今度は私の番ですにゃー」スッ
提督「いやいや、さすがにもういいよ。普通にパフェを楽しませてくれ」ハハ…
大井「でも、そうしたら他にすることが……」
提督「無理に何かしようとしなくてもいいんじゃないか?」
大井「そうはいきません、にゃ! えっと、猫のように甘える……猫のように……」
大井「……」ススス
ピトッ
提督「何でくっついたんだ」
大井「ほら、猫って気に入ったものに匂いをつけるため、スリスリするじゃないですか」
大井「それを参考にしたんです……にゃ」
提督「えっ。お前、俺のこと気に入ってくれてたのか」
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:35:05.27 ID:W8697yMt0
大井「!!」
提督「いつも当たりがキツイから嫌われてるのかと」
大井「か、勘違いしないでくださいっ! これは仕事で仕方なくやってるだけです!」カァァ
大井「提督のことを好いてるとかそんなことは微塵もないですから!!」
提督「お、おう……」
北上(さすが大井っち。本物のツンデレは格が違うぜ)
大井(可愛い)
――――
大淀「いやー、よかったですね!」ニコニコ
提督「すっかり満喫してるな」
大淀「本当ですね、自分でもビックリです。皆さんは毎日顔合わせしてる仲間ですけど」
大淀「メイドの格好がこんなにも魅力をアップさせるなんて」
提督「……ふと気になったんだが、大淀はここで働かないのか?」
大淀「お話はいただいてたんですけど、恥ずかしくてお断りしました。でも」
大淀「今となってはちょっと後悔ですね。可愛い服も着れるし」
提督「いつも当たりがキツイから嫌われてるのかと」
大井「か、勘違いしないでくださいっ! これは仕事で仕方なくやってるだけです!」カァァ
大井「提督のことを好いてるとかそんなことは微塵もないですから!!」
提督「お、おう……」
北上(さすが大井っち。本物のツンデレは格が違うぜ)
大井(可愛い)
――――
大淀「いやー、よかったですね!」ニコニコ
提督「すっかり満喫してるな」
大淀「本当ですね、自分でもビックリです。皆さんは毎日顔合わせしてる仲間ですけど」
大淀「メイドの格好がこんなにも魅力をアップさせるなんて」
提督「……ふと気になったんだが、大淀はここで働かないのか?」
大淀「お話はいただいてたんですけど、恥ずかしくてお断りしました。でも」
大淀「今となってはちょっと後悔ですね。可愛い服も着れるし」
107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:36:43.79 ID:W8697yMt0
提督(大淀のメイド服か……似合いそうだな)
大淀「あ、提督! 次はこれを注文しませんか?」
提督「まだ頼むのか。もう充分楽しんだだろ」
大淀「いいじゃないですか! すみませーん!」
提督「やれやれ……」
――――
大淀「あー私の負けかー!」
暁「お嬢様よわーい!」クスクス
響「ババ抜き、これで3敗だね」
電「罰ゲームなのです!」
提督(本当に満喫しまくってるな)
雷「ご主人様! 耳かきして欲しくない? 今なら膝枕もセットよ!」
提督「気持ちだけもらっておくよ。ありがとう」ナデナデ
大淀「あ、提督! 次はこれを注文しませんか?」
提督「まだ頼むのか。もう充分楽しんだだろ」
大淀「いいじゃないですか! すみませーん!」
提督「やれやれ……」
――――
大淀「あー私の負けかー!」
暁「お嬢様よわーい!」クスクス
響「ババ抜き、これで3敗だね」
電「罰ゲームなのです!」
提督(本当に満喫しまくってるな)
雷「ご主人様! 耳かきして欲しくない? 今なら膝枕もセットよ!」
提督「気持ちだけもらっておくよ。ありがとう」ナデナデ
108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:40:16.61 ID:W8697yMt0
提督(というか、そろそろ鎮守府に帰ってもいい頃合かな。長く居すぎてもあれだし)
提督「大淀」
大淀「何ですかワン?」
提督「……」
大淀「あ、すみません。罰ゲームで犬のモノマネをしてたんです」
提督「そうか……楽しそうなところ悪いけど、もう出てもいいんじゃないか?」
大淀「え」
提督「また来ればいいだろ。今日はここまでにしよう」
大淀「……分かりました」
暁「えー、お出かけしちゃうのー?」ウルウル
電「もっと遊んで欲しいのです」ウルウル
提督(父性本能が……メイドというか娘っぽい)
大淀「うう、ごめんなさい! また必ず帰ってくるからね!」
提督「大淀」
大淀「何ですかワン?」
提督「……」
大淀「あ、すみません。罰ゲームで犬のモノマネをしてたんです」
提督「そうか……楽しそうなところ悪いけど、もう出てもいいんじゃないか?」
大淀「え」
提督「また来ればいいだろ。今日はここまでにしよう」
大淀「……分かりました」
暁「えー、お出かけしちゃうのー?」ウルウル
電「もっと遊んで欲しいのです」ウルウル
提督(父性本能が……メイドというか娘っぽい)
大淀「うう、ごめんなさい! また必ず帰ってくるからね!」
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:42:44.96 ID:W8697yMt0
――――
艦娘メイドたち「「「行ってらっしゃいませご主人様♡ お嬢様♡」」」
ウィーン
大淀「はー、艦娘の皆さん萌え萌えでしたねー」フフ
大淀「次はいつにしますか提督? 明日?」
提督「お前どっぷりハマりすぎじゃないか。来週末にしとこう、加減は大事だ」
大淀「了解です! 次は誰がメイドになるんだろ」エヘヘ
提督「……」
提督(虜も虜だな)
メイドサンモエー! バカ、コエガオオキイ!
――――
――――――
――――――――
提督(それから俺たちは、メイド喫茶間宮のイベントが終わるまで)
提督(そこそこ通って艦娘たちとの交流を楽しんだ)
金剛「ヘイご主人様ー! 金剛メイドがたくさんご奉仕するネー」ヘヘヘ
榛名「どんなご命令にも従います、ご主人様♡」
提督「お前ら方向性が間違ってないか!?」
比叡「お嬢様、紅茶のお味はどうですか?」
霧島「腕によりをかけて淹れさせていただきました」
大淀「香りも味も最高です!」
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:45:03.43 ID:W8697yMt0
――――
鹿島「わわ!」ガシャーン
香取「鹿島、何やってるの!」
香取「すみませんお嬢様。ご注文のケーキセット、もう少しだけお待ち頂けると……」ペコリ
鹿島「すみません!」ペコリ
香取「お詫びにサービスいたしますので」
大淀(ドジっ娘メイドと先輩メイド……)
提督(ザラとポーラの時とダブる。大変そうだな)
――――
妙高「お帰りなさいませご主人様、お嬢様」
提督「妙高、様になってるな」
妙高「ありがとうございます」ニコッ
大淀「あれ? あとの3人は?」
足柄「ここにいるわよ。ほら、恥ずかしがらないの!」グイグイ
111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:47:08.94 ID:W8697yMt0
羽黒「うぅ……そんなこと言ったって……」モジモジ
那智「くっ……いっそ殺せ……!」カァァ
大淀「2人とも可愛いですね!」
足柄「でしょ? なのに見せるのが嫌みたいで」
那智「お、お前が普通の喫茶だと言ったから引き受けたんだぞ」
那智「なのに、来てみればメイド喫茶だったとは……!」
羽黒「足柄姉さんのウソつきぃ……」ウルウル
足柄「んー、でも本当に嫌ならメイド服を着ずに帰ればよかったじゃない」
足柄「そこまで強制はしてなかったわよ?」
那智・羽黒「……」
妙高「つまり、ちょっとやってみたい気持ちがあったってことよね」ニコニコ
那智・羽黒「……」
提督(図星みたいだな)
那智「くっ……いっそ殺せ……!」カァァ
大淀「2人とも可愛いですね!」
足柄「でしょ? なのに見せるのが嫌みたいで」
那智「お、お前が普通の喫茶だと言ったから引き受けたんだぞ」
那智「なのに、来てみればメイド喫茶だったとは……!」
羽黒「足柄姉さんのウソつきぃ……」ウルウル
足柄「んー、でも本当に嫌ならメイド服を着ずに帰ればよかったじゃない」
足柄「そこまで強制はしてなかったわよ?」
那智・羽黒「……」
妙高「つまり、ちょっとやってみたい気持ちがあったってことよね」ニコニコ
那智・羽黒「……」
提督(図星みたいだな)
112: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:48:40.40 ID:W8697yMt0
――――
大淀「今日の吹雪ちゃん、可愛かったですね」
提督「初雪はあれで接客ができるのか不安だったが、あいつなりに頑張ってたな」
大淀「また来週も行きましょう! 今から楽しみです!」
提督「だな。メイド喫茶間宮も、来週で終わりだからな」
大淀「あ……そうですね。そっか、来週までなんだ」
大淀「もうちょっと伸ばして欲しい気もしますけど。お客さんの数もすごいですし」
提督「またやるんじゃないか?」
大淀「だといいですね」
提督(この言葉の通り、メイド喫茶間宮は再び開かれることになるが)
提督(それはまた別の話で)
おわり
113: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:50:16.41 ID:W8697yMt0
おまけ
――メイド喫茶が大盛況の中、居酒屋鳳翔にて――
鳳翔「メイド喫茶、ですか」
鳳翔「私なんかには縁のないものですね。メイド服も似合わないし」
鳳翔「でも艦娘のみんなが着て働いてるところ、見てみたい」
鳳翔「明日抜け出して行ってみましょうか」
鳳翔「……」
鳳翔「……」キョロキョロ
鳳翔「……コホン」
鳳翔「お帰りなさいませご主人様♡」ペコリ
鳳翔「って、私ったら1人で何を……ん?」
龍驤「……」ジー
鳳翔「!!」
鳳翔「龍驤さん……いつからそこに……?」カァァ
――メイド喫茶が大盛況の中、居酒屋鳳翔にて――
鳳翔「メイド喫茶、ですか」
鳳翔「私なんかには縁のないものですね。メイド服も似合わないし」
鳳翔「でも艦娘のみんなが着て働いてるところ、見てみたい」
鳳翔「明日抜け出して行ってみましょうか」
鳳翔「……」
鳳翔「……」キョロキョロ
鳳翔「……コホン」
鳳翔「お帰りなさいませご主人様♡」ペコリ
鳳翔「って、私ったら1人で何を……ん?」
龍驤「……」ジー
鳳翔「!!」
鳳翔「龍驤さん……いつからそこに……?」カァァ
114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:51:24.82 ID:W8697yMt0
龍驤「ちょうど今来たところやで」
鳳翔「え」
鳳翔「今、ですか?」
龍驤「せや」
鳳翔「私の行動を見てなかったんですね」
龍驤「何のこと? それより焼き鳥が食べたいわー」
鳳翔「よかった」ホッ
鳳翔「はい、分かりました。ちょっと待っててくださいね」
龍驤「……」
龍驤(今の何?)
龍驤(え、え、何? 何あれ、めっちゃ可愛いんやけど!)
龍驤(くっそー動画に撮っておきたかった……! もう一回やらんかな)
鳳翔「どうぞ焼き鳥です……どうしました?」
龍驤「何でもないよ。ありがとー」
鳳翔「え」
鳳翔「今、ですか?」
龍驤「せや」
鳳翔「私の行動を見てなかったんですね」
龍驤「何のこと? それより焼き鳥が食べたいわー」
鳳翔「よかった」ホッ
鳳翔「はい、分かりました。ちょっと待っててくださいね」
龍驤「……」
龍驤(今の何?)
龍驤(え、え、何? 何あれ、めっちゃ可愛いんやけど!)
龍驤(くっそー動画に撮っておきたかった……! もう一回やらんかな)
鳳翔「どうぞ焼き鳥です……どうしました?」
龍驤「何でもないよ。ありがとー」
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:52:30.04 ID:W8697yMt0
龍驤(マジで惜しいことしたわ。はぁ……)
鳳翔「元気ないですね。何かありましたか?」
龍驤「気にせんといて」
鳳翔「?」
青葉「……ふふふ」コソコソ
青葉「お宝ゲットー♪ これは艦娘のみんなが鼻血を出す一品ですよー!」
スタタタッ
おわり
鳳翔「元気ないですね。何かありましたか?」
龍驤「気にせんといて」
鳳翔「?」
青葉「……ふふふ」コソコソ
青葉「お宝ゲットー♪ これは艦娘のみんなが鼻血を出す一品ですよー!」
スタタタッ
おわり
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 22:53:44.51 ID:W8697yMt0
急な終わらせ方ですみません
本当は艦娘1人1人に注目してやる予定だったのですが、知識不足で同じようなシチュばっかになりそうだったのでやめました
読んでくださってありがとうございました
本当は艦娘1人1人に注目してやる予定だったのですが、知識不足で同じようなシチュばっかになりそうだったのでやめました
読んでくださってありがとうございました
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 03:03:12.08 ID:268D9iCA0
乙、ほっこりした
他に何か書いてた?
他に何か書いてた?
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1502531044/
Entry ⇒ 2017.08.31 | Category ⇒ 艦隊これくしょん | Comments (0)
梨子「カードキャプター」善子「さくらうち?」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:13:11.75 ID:i5gu9J0q0
梨子(私、桜内梨子、16歳。好きな食べ物、サンドイッチ。今日内浦に引っ越してきたんだ)
梨子「……」クイックイッ
梨子(え、何をしているのかって? 一日一万回、感謝の壁クイが私の日課なんです)
梨子「……」クイックイッ
梨子(無心、無心。明鏡止水、ううん、明壁止水の心構えが大切なの。そう、たとえ――)
梨子「……」
梨子「……」チラッ
梨子(たとえ、セイウチの化け物が目の前にいたとしても)
うちっちー(原寸大)「ねえ聞いてる? さくらうち! ねえったら!」
梨子「……」クイックイッ
梨子(ああ、どうしてこうなったんだっけ――――)
☆ ☆ ☆
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:14:19.81 ID:i5gu9J0q0
CCさくらクロス
設定改変注意
設定改変注意
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:15:04.50 ID:i5gu9J0q0
第1話
「はじまりの風はイチゴの香り」
梨子ママ「梨子ー! 早く荷物あけちゃいなさいよー!」
梨子「あ、はーい!」
梨子(いけないいけない、もうすぐ夜ごはんだもんね)
梨子(引っ越してきて、部屋は段ボールだらけ。こっちには本がたくさん。そしてこっちには――)
梨子「楽譜……。コンクール、結局ダメだったな」
梨子「ううん、ダメダメ。せっかく引っ越したんだもん。切り替えなくちゃね」
梨子(ついため息がでちゃうけど、大丈夫。私にはこのお守りがある。ただの拾い物だけど、何だか不思議と落ち着く、カードのお守り――)
コツン
梨子「痛っ! 何か、上から……?」
梨子「これ何だろう……。何かの鍵、みたいな……」
梨子(ピンクの持ち手に白い羽根の飾り。なんだかくちばしみたいな形……)
梨子「子どものおもちゃかな? ふふっ、かわい――」チョンチョン
―――キイイイイイイィィィィィィン
梨子「きゃあっ!」
梨子「なにこれっ! 急に、光が……っ!」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:15:32.06 ID:i5gu9J0q0
梨子(ど、どこから!? もしかして、あの鍵から……?)
梨子「ひっ、な、何か床から出てくる……っ!」
梨子(茶色い何か……。まあるい頭に、真っ黒な目に、白い……牙?)
梨子(ひっ! ば、化け物!)
梨子「あっ、や、やだ、助け――っ」ガタガタ
ゴゴゴゴゴ
うちっちー(原寸大)「こにゃにゃちわーーっ!」クワッ
梨子「いやあああああっ!!」
☆ ☆ ☆
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:16:14.40 ID:i5gu9J0q0
梨子(というわけなんだけれど、いつまでも放っておくわけにもいかないよね……)
梨子「そ、それで? あなたは……?」
うちっちー「うん、君が壁から目を離してくれて嬉しいよ」
うちっちー「ボクはカードの妖精、うちっちー」
梨子「よ、妖精……」
うちっちー「そう。君みたいな女子高生をどすけべ魔法少女にするためにボクはいるのさ」
梨子「どすけ……え?」
うちっちー「どすけべ魔法少女さ。ちゃんと聞いてた?」
梨子「あなた、変態なの?」
うちっちー「まさか。人聞きが悪いね。ボクはただ少し――そう、不純なだけさ」
梨子「不純」
うちっちー「うん、不純。さて、と……」シュルルル
梨子「わわっ、ちっちゃくなってる!」
うちっちー(ミニ)「妖精だからね、大きさも自由自在だよ」
梨子(最初から小さくなって出てきたらよかったのに)
うちっちー「いやあ、こんな濃密なフェロモ――いや、魔力は初めてだからさ、テンション上がっちゃって」
梨子「……」
うちっちー「オスの性さ」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:17:15.66 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「それで、さくらうち」
うちっちー「君には今日から、カードキャプターになってもらう」
梨子「カードキャプター……?」
うちっちー「そう。魔力の宿りしカードを集める少女。それがカードキャプター」
梨子「カード……」
うちっちー「君はもうその1枚を持っているんだ」
梨子「それって、このカードのお守り?」
梨子(去年拾って以来、私がいつも持ち歩いている不思議なカード。黒い煤だらけで、文字も読めなくて、どれだけ拭いても汚れがとれなかったんだよね……)
うちっちー「でも、不思議と手放せない。そうでしょ?」
梨子「……!」
うちっちー「それはカードが君を持ち主だと認めているからさ。君、カードに名前を書いたでしょ」
梨子「か、書いた……! 拾った時に、なんだか書かなきゃって思って、カードの下の方にローマ字で……」
うちっちー「そう、君が書いた『SAKURAUCHI』の文字。これがそのカードの所有者の証なんだ」
うちっちー「カードに好かれていなければ、そもそも名前なんて書けないからね」
梨子「カードの、所有者……」
うちっちー「そう、君は魔法のカード―――『クロウカード』の所有者になったんだ」
梨子「『クロウカード』……それがこのお守りの名前……。で、でも魔法だなんて、そんな……!」
うちっちー「ボクを見てまだ信用できない?」
梨子「……」
うちっちー「本来なら別の世界で、1冊の本にまとまって存在するはずのものなんだ。でも、この世界に……9枚だけ、紛れ込んでしまった」
梨子「9枚も……」
うちっちー「それでボクが生まれたのさ。この世界でカードキャプターを探して、カードをもとの世界に帰すために」
梨子「それが私なの?」
うちっちー「そうだよ。君は強い魔力を持っているんだ」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:18:15.43 ID:i5gu9J0q0
梨子「私、魔力なんて持ってないよ」
うちっちー「いいや、あるさ。君はどすけべ魔法少女になれる」
梨子「そのどすけ……っていうの、何とかならない? それに魔法少女って、私もう16歳なんだけ――」
うちっちー「そこがいいんじゃないかっ!!」クワッ
梨子「」ビクッ
うちっちー「ああ、失敬」ゴホン
うちっちー「それで、どうかな、手伝ってもらえないかな」
梨子「どうして今までの会話でOKしてもらえると思ったの?」
うちっちー「そ、そんなっ! ボクの『マスコットキャラポジションを確保して女子高生の谷間に入れて持ち運んでもらう作戦』はどうなるのさ!?」
梨子「もっと嫌だよ!」
うちっちー「あー、真面目な話、君しかあてがないんだ。なんとか考えてもらえないかな。この通り!」
梨子「そんなこと言われても……」
うちっちー「お願い! さくらうち!」
梨子「……」
梨子「……」
梨子「ち、ちょっと壁と相談してみるね」
うちっちー「あのね、君も相当だと思うんだけどね」
☆ ☆ ☆
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:18:47.17 ID:i5gu9J0q0
梨子「……」クイックイッ
うちっちー「……」
うちっちー「さあ、決心はついたかい?」
梨子「……やっぱり、無理だよ」
うちっちー「どうしてさ? 君ほどのエロ――ゴホン、失敬――魔力を持っているなら、きっとできるよ」
梨子「私なんてダメダメだよ。得意なこと、壁クイくらいで」
うちっちー「そんなの誰だって同じじゃないか! ……いや、同じじゃないか」
梨子「それに私、すっごく怖がりなの。去年はピアノのコンクールだって失敗しちゃったし」
うちっちー「ピアノとカードキャプターは関係ないさ」
梨子「関係あるよ……。とにかく私には無理だよ。ほら、日課がまだ残ってるの。だから他の人を――」
うちっちー「願いが叶うとしても?」
梨子「え……?」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:19:48.19 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「9枚全部集めたら、願いが叶う」
梨子「……何でも?」
うちっちー「そう、何でもさ」
うちっちー「超絶イケメン彼氏でも、一生使いきれないほどのお金でも、君の名前と同じさくら色のナース服でもいい。ああ、最後のはボクのおすすめね」
うちっちー「それに、ピアノを弾けるようにだって、なれる」
梨子「……」
梨子「本当に、何でもなの……?」
うちっちー「うん」
梨子「どんなものでも……?」
うちっちー「どんなものでも、さ」
梨子「私……、私……っ!」
梨子「灰色がかった濃い赤茶色で凹凸少なめのレンガの壁が欲しい……! 落書きされてないやつ!」キラキラ
うちっちー「ああ、うん、ボクたちいいコンビになれるって、そう思うよ」
うちっちー「何はともあれ――」
うちっちー「君は今日から、カードキャプターだ!」
☆ ☆ ☆
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:20:33.47 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「さて、今から君には契約をしてもらう」
梨子「契約?」
うちっちー「そうさ。君はすでに魔力を持っているわけだけど、それだけじゃあ魔法は使えない」
うちっちー「『鍵』と契約して、魔力を解放してあげないといけないんだ」
梨子「ど、どうやるの?」
うちっちー「契約の呪文を唱えるのさ。さあ、そこに立って――」
うちっちー『封印の『鍵』よ――』スウウッ
鍵「」フワリ
梨子(あ、あのおもちゃが『鍵』だったんだ……!)
うちっちー『汝との契約を望む者がここにいる……。少女、名をさくらうち。「鍵」よ、少女に力を与えよ!』
うちっちー『レリーーーーーズ!!!!』
パアアアアアアッ
鍵「」ググッグググッ
梨子「鍵が伸びて、杖になった……!?」
うちっちー「さくらうち! 杖を取るんだ!」
梨子「う、うん!」パシッ
―――フワアア
梨子「なんだか身体の奥が温かい……。これが……契約……!」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:21:05.40 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「その通り! よし、さくらうち、君衣装とか持ってない? できれば露出度高めの魔女っ娘っぽいやつ」
梨子「も、もってないけど――って、ほんとに不純……」
うちっちー「いやあ、それほどでも」
梨子「褒めてません」
梨子「それで、カードキャプターになったはいいけど、どうすれば――」
ヒュオオオオオオッッ
梨子「きゃ!? すごい風! ま、まだ何かあるの?」
うちっちー「いや、契約はもう終わったはず……」ハッ
うちっちー「さくらうち! 窓の外に!」
梨子「へ?」
グオオオオオッ、バサッバササッ
梨子(なんか鳥の化け物が飛んでるんですけど―――っ!)
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:21:36.89 ID:i5gu9J0q0
梨子「な、な、ななな、なにあれ!? 何あの大きな鳥……!?」ガクガク
うちっちー「クロウカードさ。あれは『FLY』のカードだね」
梨子「カードぉ!? どう見たって鳥だよ! 知ってる? カードってね、こうやってぺらっとして……!」
うちっちー「クロウカードは、大昔にクロウ・リードっていうすごい魔術師が作ったんだ」
うちっちー「その一枚一枚が生きていて、自分の意志で動き回ることができる……」
うちっちー「カードキャプターは、それをカードに封印しなおす人のことなんだ」
梨子「ちょ、そういうことは先に言ってよぉ!」
うちっちー「聞かれなかったからね」
うちっちー「どうするさくらうち? 壁は諦めるかい?」
梨子「ううう、ううううぅぅーーーっ!」
梨子「や、やる! 灰色がかった濃い赤茶色で凹凸少なめの落書きされてないレンガの壁のためなら、やる!」
うちっちー「本当に壁が好きだね……」
梨子「それほどでもっ!」フンッ
うちっちー「褒めてないよ」
うちっちー「ま、とにかく初仕事だ!」
☆ ☆ ☆
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:22:17.13 ID:i5gu9J0q0
梨子(うう……、こんな時間に出歩いてるところ見られたら怒られちゃうよ……)
うちっちー「うん、いいね。いい服装のチョイスだ。やっぱり女子高生には制服だよ」
梨子「ちょっと黙ってて! 急いでるんだから!」タッタッタッ
うちっちー「じゃあ学生鞄なんか置いて、ボクを谷間に入れてくれたっていいじゃないか。走りやすいよ?」
梨子「それも嫌!」
うちっちー「……おっと、こっちだ。『FLY』はあの学校の方に向かっているみたいだね」
梨子「うっ」
うちっちー「どうかしたかい?」
梨子「学校の前には急な坂が……」
うちっちー「急な坂……?」ハッ
うちっちー「よしわかった。ボクは少し後ろからゆっくりついていくよ。放っておいてくれていい」
梨子「スカート覗かないならいいよ」
うちっちー「そんな! それじゃあ意味ないじゃないか!」ガクッ
梨子「ほんっと不純なんだね……」
うちっちー「とか何とか言ってる間に坂の前だ。ん? あれは――」
梨子「学校の近くに人がいる! あ、危ないよ!」
うちっちー「同じ制服みたいだ! 女子高生が2人……いい……」
梨子「言ってる場合!? 助けに行かなきゃ!」ダッ
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:22:49.25 ID:i5gu9J0q0
梨子「はあっはあっ……! やっと、学校前……! ちょっと、そこのあなた……!」
善子「へ……?」
梨子(うわっ、美人さん……!)
梨子「もう遅いのに、こんなところで何してるの?」
善子「あなたも同じじゃない。私はね、アレを追いかけてきたのよ」
梨子「アレって……」
善子「あのでっかい鳥よ! あなたも追いかけてきたんでしょ? クク…ッ、このヨハネのしもべにふさわしいわ……!」
梨子(ヨハネ?)
善子「クククッ…! 私は堕天使ヨハネ……。いずれ世界中を虜にするモノ、よ……」
梨子「……」
うちっちー「……」
うちっちー「……内浦は変な子ばっかり?」
善子「やめて! 恥ずかしいでしょっ!」
梨子(恥ずかしいなら言わなきゃいいのに……)
善子「もう、失礼な人形ね……」
善子「……」
善子「……ん゛!?」
梨子「あっ」
うちっちー「あっ」
善子「なな、なにそれ! せ、セイウチのぬいぐるみがしゃべってる……!」
うちっちー「うーん、これには海よりも深いわけがあってね、セイウチだけに」
梨子「そう、そうなの。あー、えーっと、ヨハネちゃん、それじゃあ後でね」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:23:39.32 ID:i5gu9J0q0
善子「ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ! 気になるじゃない!」
梨子「でも、危ないし……私は魔法使えるから大丈夫だけど」
善子「え……」ヒキ
梨子「あ、ちょっと待って引かないで!!」
うちっちー「……さくらうち。カードキャプターになっても身体能力は上がらないよ?」
梨子「えっ」
うちっちー「君の身体能力はこれまでのままさ」
梨子「えっ、嘘、じゃあ私なんのアドバンテージもないままあの鳥と戦うの?」
うちっちー「うん」
梨子「そっかぁ、ふーん、そうなんだ……」
梨子「はあああ!?」
善子「」ビクッ
うちっちー「ど、どうしたんだいさくらうち……!」
梨子「どうしたもこうしたもないよ! 生身でアレと戦えって? 無理無理、絶対死んじゃう! 空を飛べるとかそういうのあると思ったのに!」
うちっちー「あー、空かあ。空は、うん、そのうち飛べるようになるっていうか、今はそれが目標っていうか……」
梨子「魔法は!? 何かできることないの?」
うちっちー「とは言っても君の『カードのお守り』は汚れで名前がわからないしなぁ。うん、無理」
梨子「え、えええ……」
善子「……」
梨子「あっ、ヨハネちゃん、これはね、えっとね」
善子「空……」
うちっちー「ん、なんだい?」
善子「空を飛ぶなんて、すっごく堕天使っぽいわね! 私も――」
うちっちー「あ、まずい」
善子『私も空を飛びたいっ!!』
グオオオオオオオオオオオオッッッッ
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:24:26.55 ID:i5gu9J0q0
梨子「きゃあああっ! 鳥が急にこっちに来た!?」
うちっちー「ヨハネ! 危ないっ!」
善子「ぇ――」
―――バクン
梨子「へ―――」
うちっちー「しまった……!」
梨子「よ、ヨハネちゃん……?」
グオワアアアアアアア
梨子「う、嘘、だよね……? た、食べ――」
うちっちー「……さくらうち」
梨子「や、やだ……嫌、いやあああああっ!!」
うちっちー「お、落ち着くんださくらうち!」
梨子「だって、だって! さっきまでお話してて! さっきまで――」
うちっちー「ヨハネは死んでない!」
梨子「へ……?」
うちっちー「よく見るんだ」
善子『あははっ、これすっごいっ!』バサッバサッ
梨子「え……ヨハネちゃん、羽が生えてる……」
善子『ねえ、私飛んでるわ! これで本物の堕天使ヨハネよっ! あはっあははははははっ!!』ビュンッ
うちっちー「『同化』したんだ……!」
梨子「ど、同化?」
うちっちー「カードがヨハネの中に入って願いを叶えたんだ! たぶん、あの娘も少しだけ魔力を持ってて、それで……」
梨子「そ、そんな…っ!」
うちっちー「カードの魔力が大きすぎて自制が効いていない! 最悪の事態だよ……」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:25:05.95 ID:i5gu9J0q0
善子『あははははっ! さくらうちーっ! 堕天使ヨハネを捕まえてみなさい!』
うちっちー「ああ、砂浜で追いかけ合う美少女2人が見える……っ」
梨子「現実逃避しないで! ど、どうすればいいの?」
うちっちー「どうにかしてヨハネから『FLY』を引き剥がさなきゃいけないんだ」
梨子「どうやって……!」
うちっちー「ヨハネに『空を飛びたくない』って思わせるんだ。願いが消えれば『FLY』は『同化』を維持できなくなる」
梨子「そ、そんなの……!」
うちっちー「さくらうちっ! 来るよ!」
善子『あははははははっ!!』ブンッ
梨子「きゃあああっ!!」ズザザ
善子『あーっ、惜っしい!』
梨子「あ、あぶ、危なっ……!」
うちっちー「冷静になるんださくらうち!」
梨子「む、無理だよぉ!」ガクガク
うちっちー「どうにか方法を考えないと……」
梨子「い、一旦逃げて……」
うちっちー「このままだと被害が広がる一方だ! ヨハネが内浦中の壁を壊して回るかもしれないよ!」
梨子「な、なんですって!」クワッ
うちっちー(単純だなあ)
うちっちー「そうだ! 壁を守るんださくらうちっ!!」
梨子「壁を……守る……っ!」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:25:45.62 ID:i5gu9J0q0
梨子(そう、私にとって壁は大切な友達だった……!)
梨子(つらい時、悲しい時、傷ついた時、いつもそばには壁がいてくれた……!)
梨子(友達と喧嘩した時、物を失くした時、コンクールで失敗した時……私が頼ったのは、いつも壁だった……!)
梨子(今度は私の番だ……。私が壁を守って、恩返しするんだ……!)
梨子「私、やるっ! 守って見せるっ!」グッ
うちっちー「気高い判断だよ、さくらうち……」ツー
梨子(でもどうすれば……、考えなくちゃ……!)
校門の白い壁『さくらうち……聞こえますか………』
梨子「!!」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:26:24.94 ID:i5gu9J0q0
梨子「こ、声が聞こえる……!」
校門の白い壁『私は浦の星女学院校門の白い壁……。さくらうち……貴方の想い、確かに受け取りました……』
梨子「私の、想い……」
校門の白い壁『彼女の言葉を、性格を思い出すのです……。そして、貴方の大切なパートナーの言葉も……』
梨子「ヨハネちゃんの言葉……。パートナーって、もしかして……」
校門の白い壁『信じていますよ、さくらうち……貴方の未来に、幸多からんことを……』スウウウッ
梨子「浦の星女学院校門の白い壁さん……っ!!」ウルッ
梨子「善子ちゃんの、性格……! うちっちーの言葉……!」
―――『やめてよ! 恥ずかしいでしょっ』
―――『急な坂? 後ろからついていくよ』
梨子「思い、出した!」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:27:01.86 ID:i5gu9J0q0
善子『あははっ! もう終わり、もう終わりっ?』ビュンビュン
梨子「ヨハネちゃんっ!」
善子『私は止められないわ! だって、こんなにっ! 楽しいんだものっ!!』ビュンッ
梨子(今よ! ヨハネちゃんの下に潜り込んで――)ザザッ
梨子「見えたっ!」キッ
善子『これで、おしま―――』
梨子「……」スウウッ
梨子「ヨハネちゃんのいちごパンツ丸見えーーーーーっ!!」
善子『……』
善子「きゃ、やだ、恥ずかしい//////」ボンッ
パアアアアアッ
うちっちー「やった! 『FLY』が剥がれたっ!!」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:27:37.37 ID:i5gu9J0q0
善子「///」ヒュー
梨子「ヨハネちゃんが落ちちゃうっ!」
うちっちー「ボクがっ!」ボンッ
善子「きゃっ!」ボヨヨン
梨子「クッションになった……! すごい、うちっちー!」
うちっちー「後は……」
梨子「『FLY』……!」
グ、グオオ……
梨子「な、何だか苦しそうだよ……?」
うちっちー「無理矢理剥がされて弱ってるんだ! さくらうち、今のうちに封印を!」
うちっちー「家を出る前に教えたとおりにやるんだ!」
梨子「う、うんっ」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:28:11.68 ID:i5gu9J0q0
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』
鍵「」ググググッ
梨子「よしっ」ギュ
グ、ググオオ……
梨子『汝の在るべき姿に戻れ――』クルクル
梨子『クロウカーーーーード!!』パアアアア
―――シュルシュルシュル
梨子「『FLY』が、カードに吸い込まれていく……!」
うちっちー「ふぅ、なんとかなったか……!」
――――シュウウン
カード「」フワッ
梨子「わわっと…!」パシッ
梨子「これが、クロウカード……」
うちっちー「おめでとう、さくらうち。初仕事は見事完遂だよ」
梨子「うちっちー……」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:29:01.66 ID:i5gu9J0q0
善子「あ、あの……」
梨子「あっ、ヨハネちゃん! 大丈夫!?」
善子「ごめんなさい!!」
梨子「え……?」
善子「迷惑かけちゃったみたいで」
うちっちー「ヨハネのせいじゃないさ。クロウカードの多くはいたずら好きなんだ」
善子「でも……」
梨子「……」
梨子「ね、うちっちー、クロウカードって、名前を書いたら使えるんだよね」
うちっちー「そうさ、君が所有者になるんだ」
梨子「じゃあ……『SAKURAUCHI』っと……」
善子「……?」
梨子「ヨハネちゃん」
善子「う、うん」
梨子「空、飛びたかったんだよね」
善子「え……?」
うちっちー「なるほどね、夜空のドライブと洒落こもうか。ボクは下で―――」
梨子「はいはい不純なうちっちーは私の鞄ね」
うちっちー「そ、そんなっ!」
善子「え、え……?」
梨子「ふふっ、ヨハネちゃん、しっかりつかまっててね」
梨子『――― FLY!』キイイイン
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:29:36.94 ID:i5gu9J0q0
ヒュオオオオ、バサッバサッ
善子「うわあ……っ! すっごいっ! この杖、羽が生えてる!」キラキラ
梨子(内浦の景色が、遥か下に……。月明かりでぼんやり光って――)
梨子「とっても、綺麗……」
うちっちー「ボクは鞄の底しか見えないよ……ぐすん」
梨子「もう、出してあげるって、ほら」
うちっちー「さくらうち……! それでこそカードキャプター……!」
梨子「はいはい」
善子「ねえっ」
梨子「なあに?」
善子「私ね、津島善子っ! 貴方の名前は?」
梨子「桜内、梨子っ!」
善子「りこ、りこ……。それじゃあ『リリー』ねっ!」
梨子「え、何だか恥ずかしいよ善子ちゃん」
うちっちー「善子、チェリーじゃなくていいのかい、ああ、これは男性で言うところの――」
梨子「あなたは黙ってて」
善子「私のことはヨハネって呼んでよね!」
梨子「それも恥ずかしいかな」
善子「もうっ、さっきまでそう呼んでくれてたのに……」
梨子「名前、知らなかったから。うーん、じゃあ『よっちゃん』で、どうかな?」
善子「よっちゃん……」
善子「……わ、悪くないわね!」プイッ
梨子「よかった」フフッ
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:30:14.77 ID:i5gu9J0q0
善子「ねえ、リリー!」
梨子「なあに、よっちゃん」
善子「私、忘れないからっ! 助けてくれたことも、この景色も――」
善子「パンツ見られたことも……///」
梨子「ご、ごめんね……」
善子「だ、だからっ!」
善子「これからもこういうことするなら、呼びなさいよね! 責任、とってもらうんだからっ!」ギュウッ
梨子「わわっ、そんなくっついたらバランスが……!」
善子「え、わっ、きゃあああ!」
梨子(あ……)フワッ
梨子(ふふっ、よっちゃん、イチゴみたいに甘ーい香り……)
梨子「何だかカードキャプターも悪くないかも、なんてね」
第1話「はじまりの風はイチゴの香り」終
♪ ♪ ♪
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:30:55.51 ID:i5gu9J0q0
ザザア…… ザザア……
果南「……」ボー
千歌「……」ボー
果南「釣れないねえ……」
千歌「そうだねえ……」
千歌「あ、千歌そろそろ帰るね。今日は手伝いがあるって志満姉が」
果南「そっかー、頑張ってね」フリフリ
千歌「果南ちゃんはどうするの?」
果南「んー、私はもう少し粘ってくよ」
千歌「果南ちゃんも頑張って! じゃあねー!」
果南「うん、またね千歌!」
タッタッタ……
果南「……」ボー
果南「……かからないなあ……」
果南「……お腹すいた」グゥ
果南(大きい魚が釣れたら今晩食べよう)
果南「あ、ダメだ、ますますお腹空いてきた」グウウウウ
果南「都合よく魚を捕まえられないかな……」
果南「なんかこう、ほら、魔法みたいに――」
果南『好きなだけ魚を獲って食べたいなぁ……』
???「……キャハ」
☆ ☆ ☆
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:31:36.73 ID:i5gu9J0q0
第2話
「飛び散るしぶきは欲の味」
梨子(私、桜内梨子。地味で普通な高校生の女の子)
梨子「……だったはずなのになぁ」
うちっちー「さくらうち! 晩御飯のにぼしはまだかい!」
梨子(私がカードキャプターになったあの日以来、うちっちーったら引き出しを占拠しちゃうんだから)
梨子「なんかペットを飼ってるみたい」ハア
うちっちー「ほうっ……! 興味深いプレイっ……!」ズイッ
梨子「あ、ごめんやっぱり今のなしで」
梨子(相変わらず、不純だけど)
梨子(あ、そうそう、変わったことと言えばもう1つ)
梨子の部屋の壁『さくらうち……聞こえますか……今日の分はまだでしょうか……』
梨子(壁の声が聞こえるようになりました。これはもう究道者と言っても過言ではないのかも……)
梨子の部屋の壁『さくらうち……?』
梨子「あ、ごめんね。今日はイチゴの香りのスプレーにしてあげるね」クイッ
梨子の部屋の壁『や、優しくお願いしますね……』
梨子「う、うん///」ドキドキ
うちっちー「なーんかボクと対応違うんだよなあ……」
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:32:22.63 ID:i5gu9J0q0
千歌「梨子ちゃーん! 今日もお話しようよー!」ガララ
梨子「あ、千歌ちゃん」
梨子(高海千歌ちゃん。隣のお家に住んでいて、同じクラスなの)
千歌「ねー、聞いてよ! この前ね、果南ちゃんと釣りに行ったんだけどさー!」
梨子「果南さんって、幼馴染だったんだよね」
千歌「そうなの! 曜ちゃんと果南ちゃんとはしょっちゅう遊んでたんだ!」
千歌「それでね、それでね!」
梨子「はいはい、聞いてます」
梨子(これが私の日常。浦の星女学院のみんなと、うちっちーと、壁と)
梨子「そういえば千歌ちゃん、明日の小テストの勉強は?」
千歌「……えへ」
千歌「梨子ちゃん助けて!」
梨子「もうっ」
梨子(なんだか世話が焼ける子が多いんだけどね)
☆ ☆ ☆
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:32:57.69 ID:i5gu9J0q0
千歌「うぅ~、ダメだったよぉ……」グデー
梨子「だからちゃんとやった方がいいって言ったのに」
曜「お、千歌ちゃんぐったりだね」
千歌「曜ちゃああん……!」
曜「安心して千歌ちゃん! 私も全然ダメだったであります!」
梨子「全然安心できないんだけど……」
千歌「ほら、今日は切り替えてさ、梨子ちゃん一緒に――」
ピンポンパンポン
理事長『1年生の津島善子さん、2年生の桜内梨子さん、至急理事長室まで来てクダサイ☆ 繰り返しまーす――…』
ピンポンパンポン
梨子「……え?」
千歌「うわっ、梨子ちゃん呼び出しくらってるぅー!」ケラケラ
梨子「や、やめてよ人聞きの悪い……」
曜「でも、どうしてだろうね。理事長ってあの小原家のお嬢様だよね」
梨子「え、そうなの?」
千歌「そうだよ! あそこのでっかーいホテルの子! うちの商売敵なのだ……!」ムムム
梨子「はあ……何言われるんだろう……。とりあえず先帰っててね」
千歌「敵情視察は任せたぞ、梨子隊員!」
曜「無事に帰還することを祈っているでありますぞ、梨子隊員!」
梨子「はいはい、了解しました」
梨子(よっちゃんも一緒、か……)
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:33:39.53 ID:i5gu9J0q0
テクテクテク
善子「あっ、リリー!」パアア
梨子「よっちゃん、理事長室に行くところ?」
善子「そうよ。この堕天使ヨハネを呼び出しだなんて、よほど力に自身があるみたいね!」ギラン
梨子「小原家のお嬢様なんだって」
善子「え゛っ、マジモンじゃない……」
梨子「私たち、何かしたかなあ……」
梨子「ここみたい」
善子「ちょ、ちょっとリリー! 先開けなさいよ」コソコソ
梨子「え、ええ!? 放送で先に名前呼ばれてたのはよっちゃんでしょ!?」
善子「ただの学年順よっ!」
――ガチャ
鞠莉「Hmm……なかなか元気がいいみたいね! シャイニー☆」
梨子「……」
善子「……コンニチハ」
鞠莉「不思議少女2名様、理事長室へご招待……なんてね」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:34:42.10 ID:i5gu9J0q0
梨子「……えっと」
鞠莉「ほら、座って座って」
善子「シ、シツレイシマス」
鞠莉「もう、緊張してる? 別に怒ろうって呼び出したわけじゃないわ。あ、かき氷あるけど食べる?」シャクシャク
善子「なんで理事長室にかき氷器が……。まだ春なのに」
鞠莉「好きなものを好きなときにが私のモットーなのよ! 何の味が好き?」
善子「……堕天使の血の涙は雲の海を流れる」
鞠莉「んー、マリーちゃんちょっと意味わかんない」
梨子「……いちごみるくです。あ、私もそれで」
鞠莉「OK! 今作るわね!」ゴリゴリ
梨子(あ、つくってくれるんだ)
鞠莉「Here you are! たくさん食べてね!」
よしりこ「「あ、ありがとうございます……」」
梨子「それで、その、さっきの不思議少女って……」サクッ
鞠莉「んー、見てもらった方が早いわね。ほら、これ」モグモグ
梨子(何かの動画? あ、ちょっとキーンと来た)シャクシャク
鞠莉「小原家が開発中のドローンがとらえた映像よ。よーく見てね!」シャクシャク
梨子(なんだろう、綺麗な月だけど……。何か飛んでる……?)
善子「あ、こ、これ……!!」
梨子「あ、ああああ!!」ブフッ
鞠莉「んふふ、小さかったから解析に時間がかかったけど、何かに跨って空を飛んでるこの人影……」サクサクッ
梨子(杖で飛んでる私たちだーーーっ!)
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:35:47.95 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「That's funny, おかしいわ」
鞠莉「あんな形状で2人も支えているだなんて、公開されたら世界中の物理学者は全員クビね」
梨子「そ、それは……何かの見間違いかも」
鞠莉「小原家秘蔵のドローンが? NonNon、ありえないわ」
鞠莉「それに1回だけじゃないのよ。全部で3回、同じような映像が撮れたわ」
梨子(あぁ、たまに夜中に家を抜け出して一緒に飛んでたから……)ダラダラ
善子「ね、ねえリリー、もう話しちゃっても……」コソ
梨子「で、でも、よっちゃんまで変なことに巻き込まれたら……」コソ
善子「リリー……私のこと……」
鞠莉「んー、ごほん」
梨子「あ、何でもないんです、何でも!」
鞠莉「とにかくね、あなたたちには事情を説明してほしいのよ。真面目な話、危なくてヘリだって飛ばせないわ」
梨子「あ、そ、そうですよね。でも――」
鞠莉「津島善子さん、よね」
善子「へっ? は、はい」
鞠莉「あなた、学校を休みがちね」
善子「それは……」
梨子「そうだったの?」
善子「ち、ちょっとお腹が痛かっただけよ! 自己紹介でやらかしてなんかないわ!」
梨子(よっちゃん……)ハア
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:36:25.84 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「あんまり休みが多いと、進級できないかも」
善子「えっ、まだそんなには……」
鞠莉「いいえ、進級、できないかもしれないわね」
善子「なっ、まさか!」
梨子「脅しですか?」キッ
鞠莉「可能性の話よ。私だって人間だもの。数え間違いくらいするわ」
鞠莉「それで、『リリー』さんはどうするのかしら?」
梨子「うっ……!」
善子「ううっ、ごめんなさいリリー……」
梨子「気にしないでよっちゃん。私が不注意だったから……」
梨子「小原理事長」
鞠莉「マリーって呼んでね☆」
梨子「……ま、マリーさん」
梨子「私だけでは、お話しするのが少し難しいので……この後、うちに来てくださいませんか?」
鞠莉「おうちデートってやつね! OK!」
善子「え、ちょっ、わ、私も行くっ!」
鞠莉「That's great! じゃあリリーちゃんのお家に出発シャイニー☆」
梨子「梨子でお願いします……」ハア
☆ ☆ ☆
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:37:03.30 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「お、大きい……っ!」
鞠莉「んー、どこを見て言ってるのかしら」タユン
梨子「ごめんなさい、この子ちょっとおかしくて」
うちっちー「少し不純なだけさ。それに君には言われたくないんだけど」
梨子「今晩にぼし抜きね」
うちっちー「理不尽だよ……」グスン
梨子「えーっと、何から話せばいいのかな……」
鞠莉「あー、だいたいはわかったわ。梨子は魔法のカードを集めてるセクシー魔法少女、そういうことよね?」
うちっちー「いいや、違うね。正しくはどすけ――」
梨子「にぼし」
うちっちー「わかった、うん、今黙るさ」
善子「あ、あのね、リリーは悪くないの。私が迷惑かけちゃって、それで……」シュン
鞠莉「あー、いいのよ、別に何もしないわよ」
善子「え……?」
鞠莉「何も2人のロマンチックな空中デートを邪魔しようだなんて、そんな無粋なことしないわ」
善子「デっ……! いや、ちがっ///」
梨子「デートじゃありませんよ、マリーさん」
善子「……そうよ」プイッ
鞠莉「ふーん?」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:37:41.35 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「まあいいわ。さっきはちょっぴり驚かせたけれど、悪いようにはしないわよ」
梨子「じゃあなんでわざわざ……」
鞠莉「1つは純粋な興味ね。だって、だれが見ても変よ、これ」
善子「もう1つは?」
鞠莉「もう1つは……頼みたいことがあるのよ」
梨子「頼みたいこと?」
鞠莉「ええ。果南のことよ」
梨子「果南さんって……」
うちっちー「たしか千歌の幼馴染だったね」
鞠莉「私とも小さい頃から一緒なのよ!」フンス
梨子「そうなんですか……。それで、果南さんが何か?」
鞠莉「最近学校を休んでいるのよ」
梨子「はぁ」
鞠莉「……」
梨子「……」
善子「それだけ?」
鞠莉「だって果南よ!? いっつもバカみたいに元気なのに!」クワッ
梨子「体調を崩すことくらいあるんじゃ……」
鞠莉「それだけじゃないわ。そもそも音信不通なのよ」
善子「高熱で寝込んでるとか」
鞠莉「それも考えたんだけどね。果南の家の様子がおかしいのよ」
梨子「様子がおかしい?」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:38:10.75 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「そう。たまに学校を抜け出して様子を見に行くの。でも、いつも誰も出てこないから、私、中に入ろうとしたのね」
善子「……つっこまないわよ」
鞠莉「何かおかしなこと言った? ……それでね、入れなかったの」
梨子「と、言うと?」
鞠莉「なぜだか、奥に進めないのよ。前には何もないはずなのに、見えない壁があるみたいに……」
梨子「壁……」ピクッ
うちっちー「さくらうち、抑えて抑えて」
鞠莉「ね、不思議でしょ? 今の技術じゃありえない。そしてこの映像もありえない。こんなに近くでありえないことが2つも起こるなんて、何か関係があると思わない?」
梨子「……」
善子「……」
鞠莉「あなたたちの話を聞いて確信したわ。これはその『クロウカード』の仕業なんじゃないかってね!」ビシッ
うちっちー「さくらうち。君の学校の理事長はすこぶる優秀みたいだね」
梨子「う、うちっちー! じゃあ、ほんとにこの話……!」
うちっちー「ああ、おそらく『クロウカード』が絡んでいる」ウム
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:38:58.40 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「やっぱり、そうなのね。それじゃあ梨子、善子、調査に協力してくれないかしら」
鞠莉「……」
鞠莉「この通りよ」
善子「ちょっ!? そ、そんな土下座までしなくても……! あとヨハネよ!」
鞠莉「大事な人のためなの。脅しだって土下座だって、なんだってするわ」
鞠莉「果南が、何か危ないことに巻き込まれているかもしれない。家で苦しんでいるかもしれない、だから、だから――」ジワ
梨子「わかった、わかりました! もともと断るつもりなんてありませんって!」
鞠莉「本当?」ウル
うちっちー「もちろんさ。それにボクたちの目的はカードの回収。利害だって一致してる」
鞠莉「あ、ありがとう! 本当に……!」
梨子「今から果南さんの家に?」
鞠莉「ええ、小原家の車と船を回してあるわ! さっそく行くわよ!」
梨子「よっちゃんは、危ないかもしれないけど……」
善子「わ、私も一緒に行く! リリーの助けになりたいの!」
梨子「よっちゃん……」
梨子「ありがとう、それじゃあ、出発しよっか」
うちっちー「カードキャプターのお仕事開始だ!」
☆ ☆ ☆
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:40:15.61 ID:i5gu9J0q0
梨子(E:衣装)「やけに大きい車だと思ったけど、マリーさん、これ……」
鞠莉「え? どうかした?」
梨子「どうかした、じゃありませんよ! 何ですかこの衣装!!」
鞠莉「だって、梨子はセクシー魔法少女なんでしょ? だったら衣装が必要じゃない。似合ってるわよ」
うちっちー「さくらうち、君の学校の理事長はすこぶる優秀だね……っ!! あ、ちなみにセクシーじゃなくてどすけ」
梨子「うちっちーは黙ってて」
梨子「うう、なんか足がスースーするし……。それにこれ、いつの間に」
鞠莉「ふふん、このマリーは常に2手3手先を見据えているのよ!」ドヤ
梨子(もう1回土下座させてやろうか……)グヌヌ
鞠莉「青を基調とした衣装にしてみたわ! これから行く果南の家にぴったりね!」
梨子「何ですかその無駄なこだわり!」
梨子(うぅ、ツインテールみたいな帽子とか、星形のスカートとか、黄色いポンポンとか……動きにくそうだし恥ずかしいよ……)
梨子「ね、よっちゃんも変だと思うよね」
善子「……」ポー
梨子「よっちゃん?」
善子「……えっろ」ボソ
梨子「よっちゃん!?」
鞠莉「ほら、梨子! この辺りからは小原家の権力を使って人払いを済ませてあるわ! 果南の家に突入するわよ!」
うちっちー「これもレンガの壁のためさ、諦めるんださくらうち!」キラキラ
梨子「ううっ、無駄遣い反対ぃ!」ダッ
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:40:57.79 ID:i5gu9J0q0
梨子「ここがマリーさんが言ってた玄関だね……。特に変わった様子はないけど」
善子「見えない壁があるのよね」
鞠莉「もう少し前よ。進めばわかるわ」ジー
梨子「はい、やってみま――ってカメラ構えてるし。もう、何でもいいですけれど……」ハア
テクテク
グニュン
梨子「!?」
善子「ぎゃあああ! 何かぐにゅってした! ぐにゅってした!」
鞠莉「それが見えない壁よ。妙に弾力があって、変な感じね」
梨子「あ、でもゆっくりなら通れるかも……」
鞠莉「嘘っ!?」
うちっちー「さくらうちは『クロウカード』の保有者だからね。きっとカードの方から招かれているのさ。今のうちについていこう」
うちっちー「しかし、この壁……。おそらく作り出しているのは……」フーム
善子「す、すごい湿気ね」
梨子「進めば進むほどベタベタだよ……」
鞠莉「服は防水性だから大丈夫よ!」
善子「私も欲しい……」
鞠莉「今度から善子の分も作ってくるわ!」
善子「ほんと!? あ、ヨハネよ!」
うちっちー「『水』―――『WATERY(ウォーティ)』のカードだ。これは手ごわいぞ」
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:42:01.00 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「玄関についたわね」
カチャリ
梨子「あれ、何で鍵を持って――」
鞠莉「果南と私の仲だもの。果南は合い鍵のこと知らないみたいだけど」
善子「つっこまない、つっこまないわよ」
鞠莉「それじゃあ、1、2の3でOpen the Door、ね!」
梨子「わ、わかりました。じゃあ――」
善子「1、2の……」
「「「3!」」」バンッ
「「「……」」」
梨子「……とりあえず、何もないみたい」
善子「待って、何か音が聞こえない?」
……シャ…シャ
鞠莉「ほんとね。この音、キッチンからだわ」
うちっちー「慎重に行くんだよさくらうち。相手はあの『WATERY』だ」
梨子「強いの?」
うちっちー「『クロウカード』の中でも上位の攻撃カードなんだ。こっちに風の『WINDY』や火の『FIREY』がいればまだ違ったんだろうけど……」
うちっちー「『FLY』だけで捕まえるのは難しいかもしれない」
梨子「そんな……」
うちっちー「でも思い出して。はじめての時はカードなしで『FLY』を捕まえたんだ。今度だってできるさ」
梨子「……うん、頑張らなきゃ、ね」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:42:47.89 ID:i5gu9J0q0
梨子「とにかく、ゆっくりゆっくり……」
善子「音がどんどん大きくなってくる……」
シャ……ムシャムシャ……
鞠莉「何かを食べる音かしら」
梨子「な、なんだか怖いね」
善子「だだだ大丈夫よ、ヨハネがついてるわ!」
鞠莉「果南、いるの?」
果南『……ムシャ……ムシャ……』
鞠莉「開けるわよ」ガチャ
梨子(うっ、魚臭い……!)
鞠莉「果南、いるのよね? 返事して、果南!」
梨子(キッチンの奥に人影が……。その脇には、骨の山?)
果南『オイシイ……モット……サカナ……』ムシャムシャ
果南『ア、鞠莉来たんだ。ねえ鞠莉も食べようよ。たくさん獲れたんだ、美味しいよ?』デップリ
善子「ち、ちょっと、この魚の骨の山……。全部1人で……?」
鞠莉「か、果南っ、どうしたの!? そ、そのお腹の贅肉……っ!」
果南『鞠莉、ほら早く』タプタプ
鞠莉「ああっ、食べ過ぎで果南がお腹でかなんに……っ」クラリ
梨子「ま、マリーさんしっかり!」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:43:40.26 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「あー、言いにくいんだけどね、ボクは女子高生は大好きだけど、あの子は、そのー、うん、ボクは理事長がデブ専でも何も言わないよ」
鞠莉「失礼なこと言わないで! 果南はいつもはただのグラマラスな女の子なのよ!」クワッ
うちっちー「ほうっ!」ズイッ
梨子(不純が漏れてる)
うちっちー「ということは、今の状態はカードの仕業か。理由はわからないけれど、魚をたくさん獲って食べたいと言う欲求を過剰に満たしているみたいだ」
梨子「ってことは、また……」
うちっちー「ああ、『同化』している」
善子「私の時と同じ……」
鞠莉「どうすれば助けられるの!?」
梨子「えっと、確か――」
果南『ねえ鞠莉、来ないの? ねえ、魚なくなっちゃったよ? 鞠莉?』ハイライトオフ
鞠莉「か、果南、あのね、ちょっと待って――」
果南『ア! 獲りに行けばいいのか! 私賢い!』
鞠莉「果南?」
果南『ちょっと待ってて鞠莉、イマ獲ってきてアゲル!』
うちっちー「まずい! 外に出ようとしている!」
梨子「と、止めなきゃ!」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:44:20.03 ID:i5gu9J0q0
果南『ね、あなたたち誰? ジャマするの?』
果南『だったら――』スッ
ズガンッッッッ!!
梨子「きゃあああああ!」
善子「な、何、今の!? 床に穴が……!」
うちっちー「水鉄砲だ! な、なんて威力なんだ……。当たればひとたまりもない!」
果南『ドイテ』ダダッ
うちっちー「しまった、外に! さくらうち!」
梨子「うん!」バッ
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』
鍵「」グググッ
梨子「よしっ」パシッ
鞠莉「Oh! これが梨子の魔法なのね!」
梨子「み、見られてると恥ずかしいけど……!」クルクル
梨子『―――― FLY!』キイイイイン
梨子「私が先に追いかけます!」ビュンッ
善子「あ、ちょっと! って、飛んでいっちゃった……」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:45:09.33 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「ボクのことも置いていったね……」
善子「あ、うちっちー」
うちっちー「それにしてもさくらうち、大丈夫だろうか……」
鞠莉「あなたさっき、果南にとり憑いているカードは強いって言ってたわよね」
うちっちー「うん、そうなんだ。あのカードは攻撃カード。気性が荒いんだ」
うちっちー「『FLY』は『同化』を解いた衝撃で動けなくなったけど、『WATERY』はそうはいかない」
善子「それって、傷ついても攻撃を続けるかもしれないってこと?」
うちっちー「そうなるね」
善子「リリーが危ないわっ!」ダッ
うちっちー「待つんだ! 今君が行っても状況は変わらない!」
善子「……っ」ギリ
うちっちー「『WATERY』の強さは気性の荒さだけじゃない。水を捕まえるのは本当に難しいんだ。そのままだと形を変えてすぐに逃げてしまう」
鞠莉「水を捕まえる……」
善子「その方法を考えないとリリーを助けられない……」
鞠莉「でも、どうしたら……」
善子「と、とにかく向かいながら考えないと―――うっ!」
うちっちー「よ、善子? どうしたんだい?」
善子(き、急にお腹が……! どうして……?)イタタ
善子「ハッ!? わ、わかったわ!」
鞠莉「善子?」
善子「クク、ククク…ッ! 私はヨハネだと何度言ったらわかるのかしら?」ギラン
善子「まあいいわ……。ヨハネが古の謎を解いたのよ! ぜーんぶ、堕天使に任せておきなさい!! アーッハッ―――あいたたたた」
☆ ☆ ☆
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:45:47.12 ID:i5gu9J0q0
果南『ジャマ、するな!』
ズガアアアンッッッ!!
梨子「ひいいいいいいっっ!!」ガクガク
梨子「無理無理無理! 死んじゃう死んじゃう! 飛んで逃げるのも限界だよ!」ヒュンヒュン
梨子「でも、やらなきゃ! だってマリーさん、ううん、鞠莉さんが泣いてたから……!」
梨子「魔法少女は、きっと希望を与える存在だから!」グッ
果南『うるさい! 海はすぐそこなのに! イイから魚を食わせろ!』スウッ
ズガガガガガガッ
梨子「くっ……! 避けるしか……!」
梨子(右、左、上、また左……! 躱しきれない……!)
ダイビングショップの木目調の壁『さくらうち、右に旋回です!!』
梨子「み、右っ!」ギュインッ
グシャアアアッ
梨子「え……?」
ダイビングショップの木目調の壁『』
梨子「ダイビングショップの木目調の壁さんんんんんんっっ!!!」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:46:20.33 ID:i5gu9J0q0
梨子「そんなっ、どうして私なんか、助けて……!」
ダイビングショップの木目調の壁『……いいの、です……。私は、所詮は無生物……あなたの、命には……代えられません……ゴホッ!!』
梨子「無生物はむせたりなんかしない!!」
ダイビングショップの木目調の壁『……ふふっ……そう、なのでしょうか……』
ダイビングショップの木目調の壁『さくら、うち………自分を、信じて…………助け、て……あげて………』
梨子「ダイビングショップの木目調の壁さん、ダメっ! 逝かないで!!」ポロポロ
ダイビングショップの木目調の壁『……………べと……ともに…………んことを……』
梨子「き、聞こえないよ!」
ダイビングショップの木目調の壁『………May walls be with you―――』スウ
梨子「う、ううっ、うわああああああっ!!」ポロポロ
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:46:48.87 ID:i5gu9J0q0
果南『茶番は終わっタ?』スッ
梨子「ぁ……」
梨子(こんな、近くに……。私、殺されるのかな……)
果南『今楽にしてあげるよ』
梨子「あ、やだ、やだあっ! 来ないで!!」ブンッ
ポヨン
梨子(なっ、お肉に弾かれた!?)
果南『フフ……無駄だよ』
果南『コノ身体に攻撃したって意味なんかない。壁に攻撃しているようなものだよ』
梨子「か、壁……」チラッ
ダイビングショップの木目調の壁『』グシャア
梨子(違う……っ! 壁は、そんなものじゃない……!)
梨子(私にとって壁は、壁は――っ!!)
☆ ☆ ☆
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:48:08.02 ID:i5gu9J0q0
梨子(10)『ねえ壁さん、今日もね、先生におこられちゃったの。りこにがっかりしたんだって』
梨子(10)『おかあさんもね、悲しそうなの。なにも言わないけど……がっかりしてるのかな』
梨子(10)『壁さんは、わたしにがっかりしない?』
幼い頃の梨子の家の壁『……』
梨子(10)『えへへ、ありがとう。わたし、壁さんのこえは聞こえないけど、なに言ってるかなんとなくわかるなあ』
梨子(10)『……ずっといっしょだよ』
☆ ☆ ☆
梨子(壁は、全部受け止めてくれた! ただ弾くんじゃない! ただ跳ね返すんじゃない!)
梨子「壁は、あなたの余分なお肉とは違うっ!!」キッ
果南『お、お肉……随分はっきり言うね……』グラリ
梨子(き、効いてる!? そ、そうか、よっちゃんの時と同じ―――。願いがなくなると、『同化』が解ける!)
梨子「お腹でかなんさん!」
果南『……ッ!!』
果南『ソノ名で……呼ぶなッッ!!』ドゴォッ
梨子「ぐっ……! でも、負けない!」フラフラ
梨子「あなたの大切な鞠莉さんがそう言ったの! そう言って涙を流したの! あなたはそれでもいいの!?」
果南『……ま、鞠莉……っ! チガう……! 私は、ただ……』
梨子「あなたのお肉は壁なんかじゃない! あなたの堕落の象徴! あなたの大事な人を傷つけているだけ!」
果南『う、ぐ、うううううう!』
梨子「……お腹でかなんさん」
梨子「『ただの肉壁』と『壁』を、はき違えないで」キッ
果南『ぐっふうううううううううっ!!!』
パアアアアア
梨子「やったっ! 『同化』が解けたっ!」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:48:44.34 ID:i5gu9J0q0
WATERY『………グ、ググ……マダ……』スッ
ズガンッ
梨子「ま、まだこんな力が……! 剥がすだけじゃダメなの!?」
梨子「どうにか動きを止めないと、どうにか……!」
善子「リリーーーーーー!!」ブンブン
梨子「よっちゃん!? そんな大きな船どこから……!」
鞠莉「私もいるわよーーー! 果南は無事ーーー!?」
梨子「鞠莉さんまで! 小原家って漁船まで持ってたの?」
うちっちー「さくらうち、『WATERY』を船まで誘導するんだ!」
梨子「うちっちー! 何か策があるの?」
うちっちー「ああ! ちょっぴり調子の悪い堕天使さんのね!」
善子「ちょっとお腹痛かっただけじゃない!」
梨子「わ、わかった! やってみるっ!」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:49:23.49 ID:i5gu9J0q0
梨子「WATERY!」
WATERY『………?』
梨子「悔しかったら私を倒してみなさいっ!」
梨子「ほら、こっちよ!」タタッ
WATERY『……ッ!』ギュンッ
梨子(よし、ついてきた!)
梨子「行くよ、FLY!」ビュンッ
WATERY『……ッ! ……ッ!』スッ
ズガガガ……ッ
梨子「また攻撃……! でもっ!」クルンッ
梨子(攻撃も弱まってきてる……! あとちょっと!)
善子「リリー……杖に跨ってくるくる回って、まるで踊っているみたい……」
鞠莉「マリーのつくった衣装は大正解ね! セクシー☆」
うちっちー「あ、パンツ見えた」
善子「リリーに言いつけるわよ」
梨子「よっちゃん! そろそろ……!」
善子「ええ! 今扉を開けるわ! この中にっ!」バッ
プシュウウウ――
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:50:17.26 ID:i5gu9J0q0
梨子「漁船の冷凍機……! そっか、凍らせれば!」
梨子「WATERY! こっち!」
WATERY『……ッ!!』
梨子(ギリギリまで引き付けて………回避っ!)ギュン!!
シュポンッ!!
うちっちー「入った! 扉を閉めるんだ!」
善子「せーのっ」
鞠莉「えいっ!」
バタンッ
よしまり「「やったあっ!!」」ハイタッチ
梨子「ふぅ、なんとかなった……」シュタッ
善子「リリー! 怪我はない?」
梨子「うん、大丈夫。よっちゃん、助けてくれてありがとう」ニコ
善子「え、えへ、えっと、その///」
善子「たまたま! たまたまだからね!!」プイッ
梨子「もう、よっちゃんったら……」フフ
梨子「鞠莉さんも、ありがとうございます。こんな漁船まで」
鞠莉「NonNon! お礼を言うのは私の方よ。果南を助けてくれて、ありがとう。それで果南は――」
梨子「浜辺で倒れています。今運んできますね………『FLY』!」ビュン
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:50:55.24 ID:i5gu9J0q0
果南「」スゥ…スゥ…
うちっちー「善子と違って数日間『同化』しっぱなしだったみたいだから、しばらく寝かせておいた方がいいだろうね」
鞠莉「OK! そうと決まればうちのホテルに運び込むわ!」
うちっちー「さくらうち、そろそろ『WATERY』も凍り付いているはずだよ」
梨子「大丈夫かな……」オソルオソル
WATERY『』カチコチ
梨子「よかったあ……」ホッ
梨子「じゃあ……」
梨子『汝の在るべき姿に戻れ――』クルクル
梨子『クロウカーーーーード!!』パアアアア
―――シュルシュルシュル
――――シュウウン
カード「」フワッ
梨子「これでよしっと」パシ
うちっちー「お疲れ様、さくらうち」
梨子「うん、うちっちーもありがとう」
梨子「じゃあ帰って――ぁ、れ……?」クラリ
善子「リリー!?」ダキッ
梨子「あはは……、安心して力が抜けちゃったみたい……」ヘナヘナ
鞠莉「お疲れ様、梨子……。あのね、皆よかったらなんだけど――」
☆ ☆ ☆
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:51:39.51 ID:i5gu9J0q0
「「「いただきまーすっ!」」」
鞠莉「獲れたての魚を小原家の板前さんに捌かせたわ! 好きなだけ食べてね!」
うちっちー「ああ……! ボクのために個室で……! 君は何てできる女性なんだ……!」ツー
梨子「ええ、泣くほど……? あ、この魚美味しい!」
善子「本当ね! それにしても、私まで頂いちゃってよかったのかしら」
鞠莉「何言ってるのよ。善子の閃きがなくちゃどうにもならなかったでしょ?」
善子「ヨハネよ。あれは、かき氷でおなか壊したのかなって思って、それで……」テレ
果南「……」
鞠莉「あら果南、顔色悪いわよ?」
果南「私、皆に迷惑かけて、なのにこんな……」
鞠莉「さっきから皆いいって言ってるのに!」
梨子「そうですよ。木目調の壁さんだってちゃんと直せましたし、果南さんの体型だって元通りじゃないですか」
果南「もくめ……何て?」
梨子「あ、なんでもないです」
果南「……とにかく、助けてくれてありがとう。今度必ずお礼するよ」
梨子「はい、ダイビングショップにも遊びに行きますね。せっかくですし、千歌ちゃんも誘って」
果南「あ、そういえば同じクラスって言ってたっけ。美人さんが来たって、千歌がやけに興奮してたなあ」
梨子「そ、そんなこと……」テレテレ
善子「リリー……」ムー
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:52:21.10 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「ね、果南、大丈夫でしょ? ほら、食べて食べて!」
果南「でも、こんなに……」
鞠莉「もうっ、うじうじうじうじ、果南らしくないわよ! ほらさっさと口開けて!」
果南「いや、ちょっと、とにかくダメ……!」
鞠莉「どうしたのよ。味が気に入らなかった?」
果南「ごめっ、鞠莉、その、怒らないで聞いてほしいんだけど……」
果南「しばらく魚、無理。見たくない……」ウップ
鞠莉「え、えぇ……」ガク
梨子「ふふっ、欲をかいたら損をする、ってね」ウインク
第2話「飛び散るしぶきは欲の味」終
♪ ♪ ♪
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:56:18.74 ID:i5gu9J0q0
ホーッ……ホーッ……
梨子「じゃあおやすみ千歌ちゃん」フリフリ
千歌「おやすみ! 家族旅行のお土産ありがとう! 大事にするね!」
梨子「すぐ壊さないでよ?」
千歌「もちろん!」
梨子「ちゃんと勉強もすること」
千歌「も……もちろん! おやすみ!」
梨子「あっ、ちょっと千歌ちゃんっ!」
ガラララ
千歌「……」
千歌「うへえ……明日も小テストかあ……」グデー
千歌(勉強嫌だなあ。でもやらないと梨子ちゃんが怒るんだもん)
千歌(今日だって、せっかく窓開けてお話してるのに、前の結果がどうのって……)
千歌「勉強勉強って、お母さんかっ!」ビシッ
千歌「……」チラッ
千歌「聞こえてないね、よかった」
千歌「この万華鏡、綺麗だなあ……梨子ちゃん、やっぱりおしゃれだなあ」
千歌(そういうところは、優しいんだけどな……)
千歌「……」
千歌「うーーーー」ゴロゴロゴロ
千歌「勉強したくないいいいい!」
千歌「はあ……。気づいたら小テストが終わってたとか、ないかな……」
千歌「なんかさ、こう―――」
千歌『誰か代わりに受けてくれるとかさー……』
???『……フフッ』
☆ ☆ ☆
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:57:01.96 ID:i5gu9J0q0
第3話
「うすだいだいの万華鏡」
梨子「ね、ねえ曜ちゃん……」ガタガタガタ
曜「な、何でありますか梨子ちゃん……」ガタガタガタ
千歌「……」カリカリカリ
梨子「おかしくない、ねえ!?」
曜「そんなこと言われても、私にもなにがなんだか!」
千歌「……」ペラッペラッ
ザワ……ザワザワ……チカチャンドウシタンダロ……
曜「ね、ねえ千歌ちゃん……」オソルオソル
千歌「何、曜ちゃん、私勉強してるんだけど」
曜「うーん」バタリ
梨子「曜ちゃんんんん!!」
千歌「私、次の授業の予習するから」プイッ
梨子「え、あ、うん。頑張って……」
梨子(千歌ちゃんがおかしくなっちゃったーーー!)
☆ ☆ ☆
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:57:48.72 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「千歌がおかしい?」
梨子「そうなの。今日は学校で勉強ばっかりしていて」
梨子の部屋の壁『それはいいことなのではありませんか?』
梨子「それは、そうなんだけど……」
うちっちー「さくらうちは『クロウカード』が関わっているんじゃないかって思ってるわけだ」
梨子「うん。さすがに変かなって」
うちっちー(失礼なこと言ってるって気づいてるのかな、この娘)
梨子「うちっちーは何か感じたりしない?」
うちっちー「お、下ネタ?」
梨子「……」ジト
うちっちー「わかった、わかったって。その目もそそるけど今はやめとくよ」
うちっちー「この前『WATERY』を封印して、ボクの力も少し戻ったけど……」
梨子の部屋の壁『確か泳げるようになったんですよね』
梨子「セイウチなのに泳げなかったことの方が驚きだよ……」
うちっちー「聞いて驚き、妖精なのに飛べもしないのさ!」
梨子「いいところないね」
うちっちー「」グサッ
うちっちー「ま、まあそれは置いておいて、まだ『カード』の気配を感じ取れるまでにはなっていないんだ」
梨子「そっかぁ……」
うちっちー「しばらくは観察しかないね」
梨子「うん、何かわかったら報告するね」
梨子(その日から私は、千歌ちゃん観察日記をつけはじめました)
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:58:30.68 ID:i5gu9J0q0
千歌ちゃん観察日記♪ さくらうちりこ
「1日目
今日も小テストがありました。千歌ちゃんは朝からずうっと単語帳を眺めていました。
私や曜ちゃんが話しかけても、単語帳から全然目を離しません。
授業中の態度がいいと先生に褒められていました。
ちょっと嬉しそうでした。
なんだか複雑な気分」
梨子「……」ジーッ
千歌「……」ペラッペラッ
曜「……」ソワソワ
ザワザワ……アレドウシタノ……ケンカカナア……
曜「ちょっと! 梨子ちゃんまで何やってるの!」
梨子「ひゃあ! ご、ごめんね曜ちゃん!」
曜「なにこれ……『千歌ちゃん観察日記♪』?」
曜「……」
曜「うわあ……」
梨子「ちょっと引かないで! これはアレだよ! 千歌ちゃんが調子悪くないかって……!」
曜「確かに様子が変だよね……」
梨子「でしょ!?」
曜「……」
曜「うん、決めた! それ私もやる!」
梨子「へ……? いいの?」
曜「千歌ちゃんの様子、気になるし。私でよければ力になるよ」
梨子「ありがとう!」
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:59:06.04 ID:i5gu9J0q0
「2日目
ヨーソロー! 今日は私、渡辺曜が担当します!
今日はね、マラソンがあったんだ。千歌ちゃんは単語帳は置いてきたみたい。
そのかわり、朝からずうっとストレッチしてた。マラソンのためなんだって。
そんなにやったら逆に痛めると思うんだけどなあ……。
梨子ちゃんが止めてもどこ吹く風。
いつもやりたいことに一直線なところが素敵な千歌ちゃんだけど、やっぱり変じゃないかなあ」
曜「」カリカリカリカリッ!!
梨子「す、すごい書いてるけど……そんなに?」
曜「……」ブツブツ
梨子「……?」
曜「えーっと、今日の千歌ちゃんは、汗で少し制服が透けて素敵でし――」
梨子「そういうのは書かなくていいの!」
曜「え、そう? 大事だと思うけどなあ」
梨子の部屋の壁『汗、ですか……。少々変わった嗜好をお持ちなのですね』
うちっちー「よくわかってるじゃないか、その娘。今度うちに呼んできなさい」
梨子「もうやだ内浦……」グスン
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 22:59:53.85 ID:i5gu9J0q0
「3日目
梨子担当です。
今日は調理実習がありました。私は千歌ちゃんとは違う班だったので、こっそり校舎のかb――じゃなくて、友達に観察をお願いしました。
いわく、特に変なところはなかったそうです。
皆とも楽しそうに会話をして、ちょっぴりドジもして。
曜ちゃんが泣きそうになりながら喜んでいました。
このまま元に戻るといいんだけどな。ちょっと厳しくしすぎたのかも。
でも、私が『最近どうしたの』って聞いたら、なんだか焦ったみたいに笑っていたのが気になります」
梨子「本当に大丈夫?」
千歌「あ、あはは! 大丈夫、大丈夫だよ!」アセアセ
梨子「それにしては様子が変だったけど……」
千歌「うんうん、よく言っておくから」
梨子「え?」
千歌「あ、違う! ほら、しいたけにね?」アセ
千歌「じゃ、じゃあね!」タタタッ
梨子「……」
梨子「今日は普通だったんだよね?」
浦の星女学院調理室の壁『いつもさくらうちが見ていた彼女と変わりませんでしたよ』
梨子「うーん……」
曜(梨子ちゃんが独り言を……)ガタガタガタ
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:00:36.05 ID:i5gu9J0q0
「4日目
曜ちゃんは書けそうにないので今日も梨子が書きます。
また千歌ちゃんがおかしくなっちゃった。
今日は千歌ちゃんが苦手な数学の先生の授業でした。
それなのに、千歌ちゃんは朝からずうっと教科書を読んで、問題を解いていました。
今日はとうとう曜ちゃんが泣いてしまいました。
話しかけても反応が薄いことが堪えたそうです。
なんとかしなきゃ。
でも、うちっちーに話しても難しい顔しかしないんだよね……」
曜「……」
梨子「よ、曜ちゃん」
曜「梨子ちゃんごめんね。今日は帰るね」
梨子「でも……!」
曜「私は……っ!」
梨子「曜ちゃん……」
曜「私はっ!!」
曜「今日まだ千歌ちゃんの匂い嗅いでないんだよっ!!」ウルッ
梨子「え、うん。……え?」
曜「どれだけつらいか梨子ちゃんにわかるの!?」ポロポロ
梨子「わからないけど。え? いつもは嗅いでたの?」
曜「あっ」
梨子「……」
曜「……」
曜「ほら、こうさ、あるじゃん、ふわっと来る時がさ。梨子ちゃんもあるでしょ? 仲良くしてる、善子ちゃんだったっけ」
梨子(何となくわかってしまう自分が嫌だ……)
曜「……とにかくさ、限界なんだ、私」トオイメ
曜「ねえ梨子ちゃん、この地獄、いつまで続くのかな……」ツー
梨子(曜ちゃん……)
梨子(早くなんとかしないと……。色んな意味で)
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:01:36.85 ID:i5gu9J0q0
梨子「……はぁ」グデン
善子「最近よくため息ついてるわよね。何か悩み事?」
梨子「悩み事といえば、そうなのかなあ」
鞠莉「ほらほら、せっかく優雅なお茶会なんだから、何でも話してみなさい!」
果南「そうそう、多少のことなら解決してくれるよ、鞠莉が」
鞠莉「That's right ! 小原家の力を舐めちゃいけませーん!」
果南「冗談のつもりだったんだけどな」アハハ
梨子(果南さんの事件以来、放課後に理事長室でのんびりお茶を頂く日課ができました)
ダイヤ「梨子さん、うるさい方々は放っておいて、話してみては?」フフッ
梨子「ダイヤさん……」
ダイヤ「詳しくは知りませんが、先日何か不可思議なことに巻き込まれたのでしょう? 生徒の苦労を慮るのも、会長の義務ですので」
梨子(やっぱりダイヤさんは優しいなあ。おまけに綺麗。鞠莉さん経由で知り合ったばかりだけど、憧れの会長さんです)
梨子「見てもらいたいものがあるんですけど……」
ダイヤ「観察日記、ですか」
鞠莉「Oh……いくらその千歌って子が好きだからって、梨子、これは……」
善子「え、そ、そうだったの……?」
梨子「違いますぅ! そういうのじゃありませんっ!」アセアセ
梨子「えっとね――」
☆ ☆ ☆
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:02:35.94 ID:i5gu9J0q0
善子「そういえばその曜って人、昨日バスで凹んでたみたいだった……」
果南「千歌の様子が変、かあ。私のこともあったし、心配だな……」
ダイヤ「果南さんは何も気づきませんでしたか?」
果南「ごめん……最近は一緒に出掛けてないし、わかんないや」
果南「でもさ、ちゃんと会話ができる日もあるんだよね?」
梨子「はい、調理実習の日はいつもの千歌ちゃんでした」
果南「うーん……」
果南「『カード』に憑かれている時ってさ、もっとこう、ぼんやりするんだ」
善子「あ、それわかるかも。自分が自分じゃなくなって、夢を見ているみたいな……」
果南「うんうん、1つのことしか考えられなくなるんだ」
梨子「1つのことしか……」
梨子(勉強している千歌ちゃんも、ストレッチしている千歌ちゃんもそうだった……)
果南「でも調理実習の時に普通なんだったら違うかもね」
鞠莉「その時だけカードの『同化』が解けてたっていうのは?」
善子「そんなことあるの?」
「「……」」
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:03:18.96 ID:i5gu9J0q0
ダイヤ「わたくしは何がなにやら……」
梨子「ごめんなさい、いずれ……」
ダイヤ「いえ、事情があるのなら構いません。しかし、もったいないような気もしますね」
梨子「もったいない?」
ダイヤ「その『カード』とやらに憑かれると、1つのことしか考えられなくなってしまうのでしょう?」
ダイヤ「喜び、悲しみ、つらさ、幸せ……勉学に恋に、様々な想いを抱いてこそ一人の人間というものですのに」
ダイヤ「わたくしたちはそうした葛藤の渦の中で過ごしているというのに」
梨子「ダイヤさん……」
鞠莉「romanticなこと言うのね、ダイヤ!」
ダイヤ「う、うるさいですわね!」
梨子(もったいない、か……そうなのかな)
梨子「帰ったら、うちっちーに話を聞いてみないと」ボソ
善子「私も行くわ。いいでしょ、リリー?」
梨子「え、うん。でもいいの? 今日は飛ばないし、楽しくないかも」
善子「構わないわ! リトルデーモンにあれだけため息つかれたら、堕天使ヨハネの名が廃るもの」
梨子「リトルデーモンじゃないけど、ありがとう」フフッ
☆ ☆ ☆
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:04:30.51 ID:i5gu9J0q0
梨子「……と、いうことなんだけど」
うちっちー「確かに妙な話だね。1日だけ『同化』が解けるなんてありえない」
善子「やっぱり? 私も果南さんもそこが気になって」
うちっちー「それに『カード』が持つ力は1つだけ。勉強とマラソンと調理実習、三股なんてかけられないさ」
梨子「言い方」
善子「1人にたくさんの『カード』が入ってるとか」
うちっちー「いや、『同化』できるのは1枚までだよ」
梨子「そうなんだ……。じゃあ、千歌ちゃんどうしちゃったんだろう」
うちっちー「考えられるのは……」
梨子の部屋の壁『複数の力を使っているように「見せる」カード、ですね』
梨子「そんなカードがあるの?」
うちっちー「ああ、いくつかある。クロウカードには『WATERY』とは違う変則タイプも多いんだ」
梨子の部屋の壁『たとえば『ILLUSION』であれば、可能かもしれませんね』
梨子「イリュージョン、幻かあ……そんな感じはしなかったけどなあ」
善子「ね、ねえ、誰と話してるの……?」ビクビク
梨子「壁さんだけど」クルッ
善子(大丈夫……リリーだったら大丈夫……受け入れられる……たぶん)
梨子「それで、どうやって見分けたらいいの?」
うちっちー「こればっかりは直接見るしかないだろうね」
梨子「ってことは、また……」
善子「家に突入、ね」
うちっちー「いいじゃないか、すぐ隣さ」
☆ ☆ ☆
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:05:02.46 ID:i5gu9J0q0
梨子「よし、じゃあ千歌ちゃんの家に……」
ブッブー
梨子「ん? クラクション……」
鞠莉「はあい、梨子!」
梨子「鞠莉さん! どうしてここに!」
鞠莉「善子が呼んでくれたのよ。聞いてない?」
梨子「え、そうなの?」
善子「だってマリー、次は私の分も衣装作ってくれるって……」モジモジ
うちっちー「そうこなくっちゃ!」
鞠莉「ほら、乗って乗って! お着替えTimeよ!」
梨子「ええ、ちょっと、やっぱり恥ずかしいよ!」
善子(E:衣装)「堕天使ヨハネ、降臨っ!!」ギラン
梨子(E:衣装)「どう考えても変だよこんなの……」
うちっちー「すけべだ……」
鞠莉「Great! 小原家の仕立て屋はいい仕事するわね! 赤と青のコントラストがとっても素敵よ!」
鞠莉「善子のは特別に袖をなくしてあるの! 動きやすいでしょ?」ドヤ
善子「ええ、何だか着慣れた感じがするわ」
梨子「なんでなの……」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:05:55.61 ID:i5gu9J0q0
ピンポーン
梨子「……」
善子「出ないわね」
鞠莉「どうする?」
うちっちー「前みたいに合い鍵を――あれ? 鍵が開いてる」
梨子「ぶ、不用心だね。うぅ……大丈夫かな……」
うちっちー「こっちは衣装で万全の体制を整えているんだ、問題ないさ」
梨子「露出度は増えてるんだけど」
うちっちー「お、自覚が出てきたじゃないか、さくらうち」
梨子「防御力は下がってるって言いたいの!」
うちっちー「まあまあ。今回の相手は攻撃カードじゃなさそうだし、前みたいに危ないことにはならないさ」
梨子「それならいいけど……」ガチャリ
千歌4『あはははは! たのしー!!』クルクル
千歌6『ちょっと、勉強の邪魔なんだけど』
千歌3『早く走りに行きたーい!』
千歌2『私なんて……私なんて……』
千歌5『ああああイライラするうううぅぅっ!!』
『『『あ、梨子ちゃんだ』』』
梨子「お邪魔しました」バタン
梨子「……」
善子「……」
鞠莉「……」
梨子「で、うちっちー?」
うちっちー「危ないことにはならないさ……たぶん」
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:06:36.94 ID:i5gu9J0q0
梨子「千歌ちゃんがたくさんいた……どういうこと?」
うちっちー「あれだけじゃ何とも……」フーム
善子「人を増やせるカードに心当たりはないの?」
うちっちー「あるにはある。『TWIN』ならできるだろうね」
鞠莉「ツイン、双子って意味ね!」
うちっちー「そうさ、でもそれはあくまで『双子』なんだ。増やせても2人になるところまでだ」
善子「4、5人はいたわね……」
鞠莉「んー、マリー頭痛くなってきちゃった」
うちっちー「何とかして原因を探らないと。相手が5人ならまだ大丈夫だ」
梨子「よしっ、もう1回突入だね!」ガチャ
ワラワラワラ
千歌8『羨ましい羨ましい羨ましいいい!』
千歌9『えへへ、ケーキ、曜ちゃん喜んでくれるかなあ///』
千歌15『漢字なら私に任せて!』
千歌23『これだからぶんけーは! 私は物理!』
千歌35『はあ……不幸だなあ………』
『『『『あ、梨子ちゃん!』』』』
梨子「お邪魔しました」バタン
梨子「……」
善子「……」
鞠莉「……」
うちっちー「あー、さくらうち」
梨子「はい、行きます……」グスン
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:07:14.32 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「さて、突入したはいいものの……」
千歌3『梨子ちゃーん、走りに行こうよっ!!』グググ
梨子「ちょっと待ってね千歌ちゃん、私やることが……」グググク
千歌6『そうだよ。梨子ちゃんは勉強しなきゃ。ほら、√3が無理数であることを――』クイクイ
梨子「ごめんね、千歌ちゃんがやる気なのうれしいんだけど、私……」
千歌2『私なんてダメダメだよ、私なんて、私なんて、鬱だ死のう』シャッ
梨子「ダメダメダメっ!! 早まらないでっ!」
善子「何ていうか……」
鞠莉「大変ね、梨子」
梨子「見てないで手伝って!!」クワッ
善子「こっちもきついのよ!」
千歌26『わああああっ! ガイジンさんだ! どこから来たの? 英語しゃべって?』グイグイ
鞠莉「あ、あのね、千歌っち?」タジタジ
千歌8『ひっ……変質者……っ、腋なんか露出してるし……っ、頭に変なの付けてるしぃ………っ!』ガタガタ
善子「これはただのお団子よっ!」
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:08:03.18 ID:i5gu9J0q0
梨子「だ、誰も身動きが取れない……! どうすれば……!」
うちっちー「さくらうちっ! 新しい千歌が――いや自分でも何を言ってるのかわかんないけど――階段から下りてくる!」
梨子「え、どういうこと!?」
うちっちー「階段の上だ! 上の階に何かがあるんだ!」
梨子「上の階ってことは……」
うちっちー「そうさ、さくらうちがいつも見ている……千歌の部屋だ!」
梨子「でも……!」
『『梨子ちゃん梨子ちゃん!』』
梨子(何とかして千歌ちゃんたちの注意を逸らさなきゃ……!)
梨子「……」
梨子「あ、曜ちゃん!」ユビサシ
『『曜ちゃんっ!?』』パッ
梨子「よしっ、離れた!」
うちっちー「ナイスだ、さくらうち!」
梨子「今のうちに千歌ちゃんの部屋に!」ダダッ
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:09:16.31 ID:i5gu9J0q0
ガチャリ
梨子「千歌ちゃんっ」
千歌『あ、梨子ちゃん』ゴロゴロ
千歌1『来ちゃったんだ』
梨子(漫画を読んでる千歌ちゃんと、もう1人は、立ってるだけ……?)
梨子「こ、これは……?」
千歌1『梨子ちゃん、見てくれた? 千歌がいーっぱい!』ニコー
千歌『びっくりしたでしょ』ペラ
梨子「ここには2人だけなの?」
千歌『そうだよー。皆は下に行っちゃった。ねえねえ、梨子ちゃんも一緒に漫画読もうよー。あれ、変な格好』
梨子「うぐっ」グサッ
千歌1『ほらほら、オリジナルの私がこう言ってるんだよ! ね、梨子ちゃん! 一緒にゴロゴロしてあげて?』
梨子「オリジナル……! グータラしてる方の千歌ちゃんが……!?」
うちっちー「さくらうち! オリジナル千歌の隣に!」
万華鏡「」ポウ……
梨子「あれ、私があげた万華鏡……?」
うちっちー「万華鏡、万華鏡、そうか! 鏡かっ!」
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:10:04.52 ID:i5gu9J0q0
梨子「鏡?」
うちっちー「そうだ! 千歌は鏡を使って、自分にそっくりな像を生み続けているんだ!」
千歌『だって、小テスト嫌だし、マラソンも嫌だったんだもん。調理実習は楽しみだったけど』
うちっちー「その願いに反応したんだな……『MIRROR』は」
梨子「ミラー……。それが、今回のカード。千歌ちゃんが嫌なことを代わりにやってあげていた……」
千歌1『それにね、嬉しい時は嬉しい千歌が喜ぶの! 悲しい時は悲しい千歌が悲しむんだ!』
千歌1『全部全部、代わりにやってあげるんだよ!』
梨子「か、感情まで……!?」
うちっちー「やっぱり暴走してるみたいだ。千歌の『代わりになってほしい』という願いを過剰に叶えている」
梨子「ど、どうして……」
うちっちー「そもそも『MIRROR』は鏡のカード。誰かにそっくりな姿に化けることができる」
うちっちー「ほんとは1体だけのはずなんだけど……千歌の近くに万華鏡があったのが不運だった」
うちっちー「鏡によって無数に模様を変える万華鏡……生み出される千歌も、無制限だ」
梨子「そんなっ! 私のせいで!」
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:10:48.67 ID:i5gu9J0q0
梨子「どうすれば封印できるの!?」
うちっちー「『MIRROR』は特殊カード。千歌から引き剥がしさえすれば、名前を呼ぶだけで封印できる」
梨子「引き剥がしさえすれば……」
うちっちー「でもそのためには……」
梨子「千歌ちゃんの『願い』を消さないと!」
うちっちー「そうだ! 千歌に1人に戻りたいと思わせるんだ!」
梨子(1人に戻りたいと思わせる……!)
千歌『あははっ、この漫画おもしろーい!』ケラケラ
梨子「千歌ちゃん! お願い、1人に戻って!」
千歌『どーして? 勉強も運動もぜんぶ代わりにやってくれるんだよ?』
梨子「そんなのダメだよ!」
千歌『なんでダメなの? ねえなんで?』
梨子「そ、それは……っ」
梨子(うぅ、上手い言葉が見つからないよ……!)
梨子(誰か、誰か助けて――――――)
千歌の部屋の壁『聞こえますか、さくらうち――――』
梨子「!!」
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:12:18.25 ID:i5gu9J0q0
千歌の部屋の壁『さくらうち、貴女の友を想う気持ち、しっかりと伝わっています……』
梨子「千歌ちゃんの部屋の壁さん……!」
千歌の部屋の壁『あとは、言葉にするだけですよ』
梨子「でも、どんな言葉をかけたらいいか……」
千歌の部屋の壁『貴女が今考える必要はないのです。今まで見て、聞いた言葉を思い返して……』
梨子「今までの、言葉……」
―――ダイヤ『もったいない』
―――ダイヤ『喜び、悲しみ、つらさ、幸せ……勉学に恋に、様々な想いを抱いてこそ、一人の人間というものですのに』
千歌の部屋の壁『そう。そして貴女の力を、今までやってきたことを、信じて――』
梨子「私の、力……」
☆ ☆ ☆
梨子(11)『ねえ壁さん、また期待外れだって言われちゃった』
梨子(11)『私がダメなのかな。私が足りないのかな……』
幼い頃の梨子の部屋の壁『……』
梨子(11)『ごめんね、いつも愚痴ばっかり。でも、壁さんは何でも聞いてくれるもんね』
梨子(11)『わたし、強くなるね。壁さんのおかげで、毎日ちゃんと進めてる、そんな気がするんだ』クイックイッ
☆ ☆ ☆
梨子「そうだ! 私は続けてきたんだ……! 感謝の壁クイ……! 何年も、毎日毎日―――」
梨子「それが私の力……! 私は、雨の日も風の日もへこたれることはなかった……!」
うちっちー「そりゃ屋内だからね」
梨子「今は黙って」
うちっちー「……」
梨子(これを、千歌ちゃんにぶつける……。千歌ちゃんの部屋の壁さんはそう言うんだ……!!)
75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:13:05.89 ID:i5gu9J0q0
梨子「千歌ちゃん」
千歌『なあに、梨子ちゃん』
梨子「ね、私も漫画読んでいいかな」
千歌『うん、もちろん! 何読むー?』
梨子「千歌ちゃんのおすすめを取ってもらってもいい?」
千歌『いいよ! えーっと、それじゃあこれを……ううん、こっちかな』ガサガサ
梨子「……」
梨子「ねえ千歌ちゃん、ちょっとこっちむいて?」
千歌『え、なに――』クルッ
梨子「千歌ちゃん」ドンッッッ
千歌『ぇ―――』
うちっちー(いったあああああ!!)
千歌『り、梨子ちゃん……?』
梨子「ねえ、千歌ちゃんのおすすめ、どこ……?」ササヤキ
梨子「おでこ? ほっぺ? それとも――」ツー
千歌『ひゃっ……』
梨子「こっち―――?」クイッ…
千歌『あ、ぁぁ……///』
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:14:11.99 ID:i5gu9J0q0
梨子「千歌ちゃん」
千歌『う、うぅ……』
千歌『うっ、うぐっ、ううっ』ポロポロ
梨子「どうして泣いてるの、千歌ちゃん」
千歌『だって、だってぇっ! びっくりしたのに! ドキドキするのに! もっとときめいていたいのにっ!』
千歌『そう思うとすぐに、すぅって気持ちが薄れて、別の千歌のところに行っちゃうんだもん!』
千歌『そんなの、そんなの、悔しいじゃん!』ギュッ
梨子「そうだね、壁ドンは、ドキドキして嬉しくて、怖くて、でも幸せで―――とっても複雑なものだもの」
千歌『そ、そうだ梨子ちゃん、他の千歌にもやってよ、そうすれば――』
梨子「でもね」
梨子「壁ドンは、おひとり様向けなの」
梨子「色んな感情を一度に抱ける……1人の人間じゃないと、真の壁ドンはできないのよ」
千歌『ぅ……』
梨子「だからね千歌ちゃん」
梨子「1つになった後で、もっとしましょう……?」ササヤキ
千歌『………ハイ///』
パアアアアアア
千歌1『あア……もう……おわ……り……かア……』シュウウウ……
うちっちー「し、信じられないっ! 『同化』が解けたっ!!」
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:16:40.20 ID:i5gu9J0q0
千歌「……」クラリ
梨子「わわっ、千歌ちゃん!?」ダキッ
うちっちー「果南の時と同じさ。寝かせておこう」
うちっちー「さて、と」
MIRROR『……』ニコ
梨子「封印……されてくれるよね、MIRROR」
MIRROR『……』コクン
うちっちー「さくらうち、あれを」
梨子「……うん」
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』パシッ
うちっちー「よしっ、封印だ!」
梨子『汝の在るべき姿に戻れ―――』クルクル
梨子『クロウカーーーード!!』パアア
MIRROR『……』スゥ
シュルシュルシュル
シュウウウウン……
カード「」フワッ
梨子「な、なんとかなったぁ……」パシッ
ドタドタドタ
善子「り、リリー、やったのね!」バンッ
鞠莉「あの娘たちが急にシュンって消えたから……!」
梨子「2人とも! 無事だったんだね!」
善子「って、なんか千歌さん顔赤いんだけど……大丈夫?」
梨子「う、うう、思い出したら――」
梨子「は、恥ずかしいよぉっ!」アタマカカエ
善子「え、ちょっとリリー!?」
うちっちー「……今さらなんだよなあ」ヤレヤレ
☆ ☆ ☆
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:17:37.65 ID:i5gu9J0q0
善子「リリー……あなたねえ……」ジトー
梨子「ちょっと! どうして言っちゃうのうちっちー!」ガクガク
うちっちー「ゆ、揺らすのは胸だけにしてよさくらうち」
梨子「この不純妖精!」
うちっちー「今回ばかりは君に言われたくないよ」
鞠莉「はー……、あのdiaryはやっぱり……」
善子「リリー、千歌さんのこと好きなの?」ウルッ
梨子「違います違います! そんなんじゃありません!」
うちっちー「ほんとにー? あの時の君ったら、ほんとにどすけ――」
梨子「うちっちーは黙っててっ!」
鞠莉「とにかく、皆無事でなによりね! またご飯でもいきましょ! 千歌っちも一緒に!」
梨子「そうですね……。はあ、千歌ちゃんにも説明しなきゃ……」
善子「私あんまり活躍できなかった……」シュン
うちっちー「何を言ってるんだい。善子と鞠莉が下で抑えてくれていたからこそじゃないか」
善子「うちっちー……!」
鞠莉「Thank you! うちっちーは紳士なのね!」
うちっちー「だろう? ほら、お礼にボクを挟んでくれたまえよ。その豊満ボディでね」
善子「台無しよ!」
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:18:22.17 ID:i5gu9J0q0
千歌「ん……んぅ……?」パチクリ
梨子「あ、千歌ちゃん、目が覚めたんだね! ごめんね、私のあげた万華鏡が――」
千歌「あ……」
千歌「……」
千歌「梨子ちゃん///」テレッ
鞠莉「……」
うちっちー「……」
梨子「」ダラダラ
善子「リリー」ジト
梨子「他意はなかったのぉぉーーー!!」ダダッ
千歌「あっ、梨子ちゃん待って! 梨子ちゃーーん!!」ダダッ
鞠莉「これは波乱の予感……なんてねシャイニー☆」キラッ
第3話「うすだいだいの万華鏡」終
♪ ♪ ♪
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:19:06.34 ID:i5gu9J0q0
スゥ……スゥ……ゴロン……
ルビィ(今日も失敗しちゃったなあ……)
ルビィ(どうしていつもこうなんだろう……)
ルビィ(明日は……きっと……もっとちゃんと……)
ルビィ「……」スゥ…スゥ……
ルビィ『……』
ルビィ『……あれ? ルビィ布団に入ったはずなのに……なんだろう、この黒い場所……』
『……ガ………シイカ……』
ルビィ『ぴぎっ!? な、なにかいるよぉ……!』
『チカラガ……ホシイカ……』
ルビィ『ち、力……?』
『アネニ……カテルヨウナ……スベテヲ……テニデキルヨウナ……』
ルビィ『すべてを、手に……?』
『ソウダ……チカラガ……ホシイカ……』
ルビィ『うゅ……う、うん! もう弱いルビィは嫌だもん! 強くなりたいんだもん! だから――』
ルビィ『力がほちい!!』
『……ククッ』
☆ ☆ ☆
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:20:23.69 ID:i5gu9J0q0
第4話
「仁義なきエンドレス・ラグナロク」
梨子「ふんふんふーん♪」
うちっちー「なんだかご機嫌じゃないか、さくらうち」
梨子「そう見える?」ニコニコ
うちっちー「……気持ち悪いくらいそう見えるよ」ヒキ
梨子の部屋の壁『今日はご友人とお出掛けでしたね』
梨子「そうなの! よっちゃんでしょ、鞠莉さんと果南さんでしょ、そしてなんと――」
梨子「ダイヤさんも来るんだって!」キャー
梨子(今日は土曜日。前々からお茶会メンバーで出掛ける予定だったんです)
梨子「あ、お土産買ってきてあげるね!」ニコニコ
うちっちー「うへえ、ほんとにご機嫌だね。……ダイヤって、いつも話に出てくる生徒会長か」
梨子の部屋の壁『随分と熱を上げているようですね』
梨子「うん、知り合ってからしばらく経つし、仲良くなりたいな」
うちっちー「お得意のフェロモン攻撃を仕掛けてやればいいじゃないか」
梨子「そういう意味じゃありません! それにフェロモンって何?」キッ
うちっちー「千歌の件は?」
梨子「うっ……」
梨子の部屋の壁『最近は毎晩のように千歌さんとお話していますね』
うちっちー「善子に刺されないようにね」
梨子「よっちゃんが? どうして?」ポカン
うちっちー「あー、可哀想に。さくらうちの色気にあてられたばかりに……」オヨヨ
梨子「ちょっと、変なこと言わないで」ジト
梨子「とにかく、ダイヤさんは常識人枠なの! ほんとに貴重なんだから……」
うちっちー「おや、まるで自分が常識人側にいるかのような口ぶり」
梨子「……もう、やっぱりお土産なし!」フン
うちっちー「わかった、悪かった、悪かったからそこは頼むよさくらうち!」
☆ ☆ ☆
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:21:35.02 ID:i5gu9J0q0
ザワザワ……ザワザワ……
梨子「えっ……ダイヤさん途中で帰っちゃうんですか?」
鞠莉「そうなのよ、このお馬鹿さん、せっかくのお出掛けなのにSweetsがどうたらって……」
ダイヤ「今日発売の限定プリンですのよ!! 買わずにいられますでしょうか、いやいられますまい! 反語ですわ!」クワッ
鞠莉「ちょ、ダイヤ近い近い……」
梨子(ダイヤさん、こんなにテンション高かったっけ……)
果南「ダイヤはプリンに目がないんだよ。あとシスコン」
梨子「姉妹がいるんですか?」
ダイヤ「ええ! ルビィというのですが、それはそれは珠のよう――いえ、不肖の妹ですわ」キリッ
善子「今さら真面目な顔しても遅いわよ」
ダイヤ「う、うるさいですわね!」
鞠莉「ルビィと言えばね、ダイヤったら、すっごい量の写真を手帳に入れて持ち歩いてるのよ」
梨子「へえ……! せっかくなので妹さん、見たいです!」
ダイヤ「なんだかお恥ずかしいので……少し見たらすぐ返してくださいね」ハイ
ペラッ
梨子(うわあ、可愛い! すごく大人しそうだし、なんだか小動物みたい)
善子「ちょっと、ルビィの写真、私にも見せてよ!」グイッ
梨子「あ、そんな引っ張ったら……!」グラッ
手帳「」ポトッ
写真「」バサササササアアアアア
ダイヤ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:22:20.47 ID:i5gu9J0q0
善子「ご、ごめんなさいダイヤさん! って、これ……」
果南「うわっ、ルビィの写真ばっかり」
梨子「でも、何だかアングルが変な気が……」
鞠莉「これ盗撮ね。いつもドローンで果南の写真を撮ってるからわかるわ」
果南「えっ」
ダイヤ「と、盗撮ですって!? ちちちちが、ちが、違いますわ!」アセアセ
梨子(誤魔化すの下手すぎるよ……)ホロリ
ダイヤ「わた、わたくしはこの辺で! 限定抹茶プリンが店頭で待っておりますので!」タタッ
善子「……行っちゃったけど」
梨子「ああ、ダイヤさんのイメージが……」
鞠莉「うふふ、ダイヤも可愛いところあるわよね!」
鞠莉「じゃあ、気を取り直して私たちも――」
果南「鞠莉はこの後大事な話があるから」ガシッ
鞠莉「」
梨子「ご愁傷さまです、鞠莉さん」
善子「ドローンとお金の無駄遣いね」
☆ ☆ ☆
84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:23:16.95 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「それで、結局善子と2人でカフェに行ってきたってわけだ」
梨子「そうなの。はあ……ダイヤさんも変な人だった……」ガックリ
うちっちー「妹相手とはまた業が深いね。ところでさくらうち、そのルビィって娘の写真、取ってきてくれただろうね」
梨子「え、全部返したけど」
うちっちー「君がそんなに無能だとは思わなかった」
梨子「ほんっと不純」
うちっちー「褒め言葉さ」
梨子の部屋の壁『しかし残念でしたね。せっかくの土曜日でしたのに』
梨子「あはは……でも、よっちゃんとのお話も楽しかったし、大丈夫」
梨子「あ、そうだ。お土産があるの。前から欲しがってた柑橘系のスプレーだよ」
梨子の部屋の壁『ありがとうございます、さくらうち……! さっそくかけて頂けますか?』
梨子「うん!」
シュッシュッ
梨子の部屋の壁『ああ……いいですよ……もう少し下に……ええ、最高です……』
梨子「そ、そう? よかった///」ドキドキ
うちっちー「……何回見てもさっぱりわからないよ」ハア
うちっちー「さくらうち、ボクにはお土産はないのかい?」
梨子「うちっちーにはあげないって言ったでしょ?」
うちっちー「なっ!? あれ本気だったのかい!? なんてむごい……」
梨子「うそうそ、買ってきたよ。ほら、これ」ガサッ
うちっちー「プリン?」
梨子「帰りに寄ったの。限定のは売り切れてて、普通のプリンなんだけどね」
うちっちー「ああ、信じてたよさくらうち!」ジーン
梨子「もう、いちいち大袈裟なんだから」クス
梨子「冷蔵庫に入れておくから、食べたいときは言ってね」
☆ ☆ ☆
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:24:14.08 ID:i5gu9J0q0
チュンチュン……チュンチュン……
梨子「あれ、ない、ない!」ガサゴソ
梨子ママ「どうしたの梨子? 何か探し物?」
梨子「お母さん、冷蔵庫に入れてあったプリン知らない?」
梨子ママ「プリン……? そんなの入ってたかしら」
梨子「え、食べないでねって昨日の夜に言ったよ!」
梨子ママ「そ、そうだったかしら……」
梨子(どういうことなの……?)
梨子「と、いうことなんだけど――」
うちっちー「プリンがないって!? それは一大事だ!」
梨子「うん、お母さんも食べてないって言うし、絶対なくなるはずないんだけど……」
うちっちー「不可解な事件……むむ、これはひょっとして……」
梨子「え、嘘、『クロウカード』の仕業ってこと?」
うちっちー「可能性の話さ」
梨子の部屋の壁『プリンだけじゃありません。昨日いただいたスプレーもなくなっているようです……』
梨子「あれはこの部屋から動かしてもいないはずなのに……」
うちっちー「これはいよいよ怪しくなってきたね」
梨子「でも、気づかれずに物を盗るクロウカードなんてあるの?」
うちっちー「『SHADOW』あたりの悪戯かな?」
梨子「その『SHADOW』っていうのは―――」
ピコンッ
梨子の部屋の壁『さくらうち、何やら携帯電話が光っているようですが』
梨子「え、あ、うん……よっちゃんからだ」スッスッ
堕天使†ヨハネ『ちょっとリリー、もう待ち合わせの時間よ。どうしたの?』
りじちょー☆『寝坊かしらー?』
梨子「え、待ち合わせ……?」
うちっちー「今日も約束をしていたのかい?」
梨子「ううん、してない……」
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:25:03.35 ID:i5gu9J0q0
ピコンッ
堕天使†ヨハネ『体調悪かったりしないでしょうね。大丈夫?』
果南『もししんどかったら無理しちゃだめだよ』
梨子「ど、どういうこと?」スッスッ
さくらりこ『ごめんなさい、今日も出掛けるんでしたっけ?』
堕天使†ヨハネ『何言ってるのよ。今日は初めて生徒会長と一緒に出掛けるんだってはしゃいでたじゃない』
りじちょー☆『まあまあ、忘れることくらいあるわよ、ね?』
果南『うん、特に予定があるわけでもないし、ゆっくり待ってるよー』
梨子「……」
梨子「初めてダイヤさんと出掛ける……? だって昨日も……」
うちっちー「……もしかして」
梨子「うちっちー?」
うちっちー「さくらうち、携帯で日付を確認してみてくれるかい?」
梨子「え、うん……今日は……ど、土曜日!? いやいや、土曜日は昨日だったよね?」
うちっちー「やっぱりだ」
うちっちー「今回のカードは『TIME』」
梨子の部屋の壁『時間を司るカードですね』
梨子「それって……っ! じゃあ、ひょっとして……!」
うちっちー「ああ。時間が、巻き戻っている!!」
☆ ☆ ☆
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:25:57.02 ID:i5gu9J0q0
梨子「お、お待たせしました……!」ゼエゼエ
善子「遅いわよリリー!」
梨子「ごめんなさい!」
果南「お店にいたし、大丈夫だよ。でも、予定忘れるなんて梨子も案外おっちょこちょいだね」アハハ
梨子「いやあ、その……あはは」
梨子(うちっちーは「昨日と違う行動をとる人を探せ」って言ってたけど……)
――うちっちー『時間が巻き戻ったことを、普通の人は覚えていないんだ』
――うちっちー『魔力の多いさくらうちと、『TIME』を使った人を除いて、ね』
――うちっちー『だから何もなければ、普通の人は全く同じ行動をとり続けるはずなんだ』
――うちっちー『「昨日」と違う行動をする人間……そいつが犯人さ』
梨子(そんなこと言われても、遅刻した時点で状況も全部変わっちゃってるよ……)
鞠莉「ほらほら、せっかく揃ったんだから行きましょ」
梨子「あれ、ダイヤさんは?」
善子「先に帰っちゃったわよ。プリンを買いたいって」ハア
果南「ごめんね梨子。ダイヤったら、プリンのことになると見境ないんだ」
梨子「そ、そうなんですね……」
梨子(ここは変わってない……ダイヤさんじゃなかったってことかな)
鞠莉「準備はOK? じゃあ皆で果南の家にGO GO!」
梨子「果南さんの家?」
☆ ☆ ☆
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:27:02.50 ID:i5gu9J0q0
果南「皆ー、ウェットスーツはちゃんと着られた? 手伝うよー」
梨子「う、うぅ……恥ずかしい……」ピチピチ
善子「そう? 衣装の方がよっぽどじゃない?」
梨子「あれも恥ずかしいんだってば!」
果南「おー、梨子似合ってるね」ピチピチボイン
鞠莉「やっぱり梨子はエロスを持ってるわよね!」ピチピチボイン
梨子「……よっちゃん」
善子「ええ、言いたいことはわかるわ、それじゃあ、せーのっ」
よしりこ「「えっろ」」
ザザア……ザザア……
果南「ボンベがこれで、使い方は――」
梨子(ダイビング、か……。何もかも昨日と違う……)
梨子(私が遅れちゃったから、ダイヤさんは盗撮がばれないし、鞠莉さんも口を滑らさないし)
果南「梨子、聞いてる? 安全に関わるから、ちゃんと聞くんだよ」
梨子「あ、ご、ごめんなさい!」アセ
果南「今が3時だから、だいたい30分くらい潜って、3時半には戻ってこようね」
鞠莉「OK! 果南についていけばいいんでしょ?」
果南「そういうこと! 善子と梨子は初めてだから、ゆっくりいくね」
善子「ヨハネよ。そうしてもらえると助かるわ」
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:29:10.11 ID:i5gu9J0q0
果南「よーしっ! じゃあ海へ飛び込むぞーっ!」バシャン
善子「え、えいっ」バシャ
梨子「わわっ、2人とも勇気あるなぁ……」ビクビク
梨子(色々考えないといけないんだけど、ここまで来たら行くしかないよね)
鞠莉「なーに怖がってるの、梨子!」ドンッ
梨子「え、わっ、きゃあああああ――――」
梨子(もう、鞠莉さんってば乱暴なんだから! せめて痛くないといいなあ―――)
梨子「ああああああ―――――」
梨子(――あれ、海面が、全然近づいてこない……え、私浮いてる?)
梨子(むしろ、だんだん遠ざかって―――)
キイイイィィィィィィン……
梨子「―――――ああああああああ!」ガバッ
うちっちー「さくらうちっ!」
梨子「えっ、うちっちー!? ど、どうなったの!? 私、さっきまでウェットスーツで――」
うちっちー「まずは落ち着いて、周りを見るんだ。あとそのウェットスーツについて詳しく」
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:29:38.02 ID:i5gu9J0q0
梨子(周り、周り……って!)
梨子「私の部屋? しかも夜だし……」
うちっちー「そうさ。今は夜の0時。しかも『土曜日の0時』さ。あとそのウェットスーツについて詳しく」
梨子「土曜日の……って、それって!」ハッ
梨子の部屋の壁『また、時間が……』
梨子「巻き戻った……!」
梨子「で、でも昨日は、いや『前回』は何も気づかなかったよね?」
うちっちー「ああ、たぶん寝ている間に時間が巻き戻ったんだ。……ねえ、ウェットス――」
梨子「黙って」
うちっちー「はい」
梨子「前回は夜だった。それなのに、今回はこんな昼間に……」
うちっちー「さくらうち、巻き戻った時間は覚えているかい?」
梨子「確か、3時ごろだったよ」
うちっちー「3時ごろ……その時間に何かがあったんだ」
梨子「何か……」
梨子の部屋の壁『カードを使った人物が、時を巻き戻したくなるような「何か」ですね』
うちっちー「ああ、さくらうちは3時までにおかしな行動をする人を見つけるんだ!」
梨子「ってことは、また待ち合わせ……?」ハア
☆ ☆ ☆
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:30:33.30 ID:i5gu9J0q0
果南「よし、全員集まったね」
梨子(3回目……。最初はあんなに楽しみだったのに、なんだか気が滅入っちゃうな)
善子「あれ、生徒会長は?」
梨子「……え?」
梨子(本当だ! ダイヤさんがいない!)
鞠莉「なんだか今朝すごい剣幕で電話が来たのよ」
果南「何でもプリンがどうとか……」
梨子(今日は私は遅刻していない。でも、ダイヤさんの行動だけが変わってるんだよね)
梨子「じゃあ、犯人はダイヤさん……?」ボソッ
善子「……犯人?」ピク
梨子「え、あっ、えっと、そのー……」
果南「何だか物騒だね。何かあったの?」
梨子「そういうわけじゃないんですけど」
鞠莉「梨子、あなたひょっとしてまた……」
善子「クロウカード! そうなのね!」
梨子「えっと、いやあ、まあ」
善子「やっぱり! 何かあったらちゃんと言ってって言ってるでしょ!」プンプン
果南「そうそう。私たちに隠したって、いいことないよ」
梨子「でも、迷惑が……」
鞠莉「Oh、まだそんなこと言ってるのね! 迷惑なんて思ったことないわ!」ビシッ
善子「そうよ。マリーなんて、勝手に衣装作って来てるだけじゃない」
鞠莉「あら、そんなこというなら、今回は善子の衣装はなしね」
善子「ごめんなさい。……あ、それとヨハネよ!」
梨子「皆……!」ウルッ
果南「それで、今度はダイヤなの?」
梨子「まだわからないんですけど―――」
☆ ☆ ☆
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:31:41.11 ID:i5gu9J0q0
善子「時が巻き戻ってる?」キラキラ
梨子「本当に大変なんだからね! 興奮しない!」
果南「記憶がないからわかんないなあ……。それで、その『TIME』ってカードが、ダイヤに憑いてるかもしれないってこと?」
梨子「それはまだわかりません。でも、ダイヤさんの行動が変わってて……」
鞠莉「なるほど。記憶がないなら行動は変わらない、そういうことね!」
梨子「はい、ダイヤさんが3時ごろ何をしているかわかればいいんですけど」
鞠莉「OK! 電話してみるわね!」
プルルルル
鞠莉『シャイニー☆ プリティボン――』
ブツッ、ツー…ツー…
梨子「真面目にやってください」
鞠莉「Oh, sorry」
プルルルル
鞠莉「小原と申します」
善子「んふっ」
鞠莉「―――ええ、えっ? ……ええ、わかったわ」
ピッ
梨子「何かわかりましたか?」
鞠莉「ダイヤ、プリン食べるって。それしか言わなくて少し怖かったんだけど」
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:32:41.34 ID:i5gu9J0q0
梨子「プリンって限定の……?」
鞠莉「ええ、今日発売らしいのよ。だから買いたかったみたい」
果南「ダイヤはプリンに目がないからね」
梨子(限定プリンを買うことは変わらないんだ……)
善子「それでそれを馬鹿正直に3時に……? どこの小学生よ」
梨子「でも、何で時を巻き戻さないといけなかったんだろう」
果南「何度も食べたいとか?」ウーン
鞠莉「欲張りお腹でかなんと一緒にしちゃ Non Non よ!」
果南「それ言うのやめて……」ガク
善子「それか、食べられなかったとか」
梨子「そんなに食べたかったのかな……」
果南「でも、プリンのことしか言わないっていうの、気になるね」
善子「そうね。『カード』に同化されてるとき、そうなるもの」
「「うーん……」」
鞠莉「これ以上は考えても仕方ないわね! いつものよ!」
善子「いつものって、やっぱり……」
梨子「私たち、色んなお家に乗り込みすぎじゃないかなあ」ハア
☆ ☆ ☆
94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:33:36.92 ID:i5gu9J0q0
ピンポーン……
ダイヤ『はい、どちら様でしょうか』
鞠莉「シャイニー☆」キャハ
ブツッ
ガチャ
ダイヤ「何しに来たんですの?」
鞠莉「私たちよりプリンが大事な薄情ダイヤちゃんに会いに来たの!」
ダイヤ『……』
ダイヤ『プリン……プリン……』ボー
梨子「……!」ゾワ
梨子(プリンの話になった途端、何だか雰囲気が変わった!)
ダイヤ『わたくしは食べねばなりません。プリン愛好家として、いえ、黒澤家長女として!』
善子「そんなに食べたいならすぐに食べればいいじゃない」
ダイヤ『いいえ! 古今東西おやつは3時と相場が決まっておりますの!』クワッ
梨子(そんなことないと思うけど……)
ダイヤ『とにかく! わたくしは3時に限定抹茶プリンを食べねばなりません』
ダイヤ『だと言うのに、何度繰り返しても、何度繰り返してもあの「影」が―――!!!』
梨子「うっ……」ゾワワワワ
梨子(なんだか、怖い……)
果南「梨子、大丈夫?」
梨子「は、はい、なんとか」
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:34:44.56 ID:i5gu9J0q0
ダイヤ『―――ふぅ』
ダイヤ『ああ、ちょうどいいところに。あなたたちは、わたくしを手伝ってくれますのよね?』ニコニコ
梨子「手伝う……?」
ダイヤ『ええ。抹茶プリンを守りし、選ばれし少女たち―――輝きの勇者たちよ!』ビシッ
「「「……」」」
善子「は?」
ダイヤ『ええ、あなたたちが来た理由はわかっています。わたくしのプリンを守ってくれるのでしょう?』
果南「ちょっと、話が見えないんだけど……」
ダイヤ『わたくしのプリンは冷蔵庫にあります。これを3時までに死守してわたくしはプリンを食べるのです』
ダイヤ『それなのに、いつも……いつもあの憎き影に盗られてしまうのですわ!』
鞠莉「よくわからないけど、その『影』からプリンを守ればいいのね!」
ダイヤ『ええ、わたくしは何をしてでもプリンを食べなければなりませんの』
梨子(ダイヤさんはプリンを食べるために時間を巻き戻している……『TIME』を使って)
梨子(じゃあ、プリンを食べることができたら……?)
梨子(きっと「願い」はなくなる。時間を巻き戻す必要はなくなる! カードの『同化』が解ける……?)
善子「リリー、これって……」
梨子「うん、今はダイヤさんに協力した方がいいみたい」
果南「冷蔵庫を見張っていればいいんでしょ? そんなに難しくないんじゃ……」
鞠莉「油断は禁物よ。梨子の話が正しければ、ダイヤは2回も失敗してるんだから」
ダイヤ『とにかく、プリン防衛作戦、開始ですわぁ!』
☆ ☆ ☆
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:36:00.17 ID:i5gu9J0q0
カチッコチッ……カチッコチッ……
果南「スゥ……スゥ……」
鞠莉「……」ソワソワ
善子「……」スマホポチポチ
梨子「……」
梨子(暇だなあ……。このお家、壁も和風でお洒落だし、お話したいなあ)
梨子(でも、流石に皆の前では、ね)
梨子「ね、ねえ皆」
果南「何!? なんかあった!?」ガバッ
梨子「い、いえ、まだ……」
果南「なーんだ、びっくりした」グデン
善子「何も起きないわね」
梨子「もうすぐ3時なんだけど……」
鞠莉「まあ、これでダイヤがプリンを食べられるならいいんじゃない?」
果南「っていうかさ、ほんとに3時になるまで待たなきゃダメなの?」
ダイヤ『さっきも言いましたわ! おやつは3時ですの! 3時前に口をつけるなど言語道断っ!』
果南「あ、そうっすか……」ガクリ
ダイヤ『そろそろ時間ですわね……』
善子「ねえ、影がプリンを盗るって言ってたわよね。心当たりある?」
梨子「うちっちーが『SHADOW』ってカードがあるって言ってたから、それかなあ」
果南「とにかく、これが最後の瞬間だね」
鞠莉「ええ! ダイヤがスプーンを口に運んでMission終了ね!」
ダイヤ『ああ……っ、麗しき抹茶プリン様……っ、緊張の一瞬ですわぁ……っ!!』ゴクリ
ダイヤ『それでは、いただきま――――』
ドゴオオオオオオォォォォォォッッッ!!!
97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:37:34.60 ID:i5gu9J0q0
梨子「きゃああああああっ!!」
果南「な、なに、爆発!?」
鞠莉「あ、ああ、あれ……!」
善子「壁に、穴が……!」
黒澤家の水墨画が描いてある壁『』グシャア
梨子「あ、あああ、あああああああ……!!」ガクッ
梨子「まだ、まだお話できてなかったのに……っ!」ポロポロ
果南「え、な、何の話!?」
善子「たぶん壁の話」
鞠莉「えぇ……」
ダイヤ『クッ……! 来るなら来なさい! わたくしは、このプリンを――』
――瞬間、風が吹いた。
壁に開いた穴からびゅうと飛び込んだつむじ風が、紅い弧を描く。
余談であるが、梨子の最近のお気に入りは同級生の曜が作るオムライスである。
毎日昼休みにおかず交換をしているうちに、すっかりトリコリコになってしまったのだ。
今、眼前で閃く紅い影は、まさにそのケチャップの如き紅であった。
知らず知らずのうちに、梨子の舌は記憶の中のケチャップを舐めとっていた。
トマトのような青臭さと、砂糖のように甘い紅。
梨子は「影」の正体について、嗚呼、年下の小さな可愛い女の子なんだろうな、と期待せずにはいられなかったのである。
ダイヤ『ぴぎゃあああああああ!!』
梨子「だ、ダイヤさん!」ハッ
ダイヤ『ああ、ああああ……! わたくしの抹茶プリンんんんんんっ!!』
果南「あ、し、しまった!」
ダイヤ『許せません、許せませんわあああ! こうなったら、もう一度――――!』
梨子「だ、ダメえええ!」ダッ
ダイヤ『アアアアアァァァァァッッッ!!!』
キイイイィィィィィィン………
梨子「……」ナミダメ
うちっちー「おかえり、さくらうち。何かわかったかい?」
梨子「うん、一応……」
☆ ☆ ☆
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:38:30.24 ID:i5gu9J0q0
うちっちー「色付きの影……? それはたぶん『SHADOW』じゃないな」
梨子「え、そうなの?」
うちっちー「ああ。『SHADOW』は文字通り影なんだ。人の影に潜むことはできても、そんなカラフルにはなれないよ」
梨子「じゃあ、なんだったんだろう……」
うちっちー「うーむ、直接見てみないとね」
梨子「それに、あの場にカードが2枚あったってことなのかな」
うちっちー「そうかもしれない、どちらにしても厄介そうだ。今回はボクもついていくよ」
梨子「行ってきます……」ガチャリ
梨子ママ「気を付けてねー」
梨子「これで待ち合わせ4回目だよ……」
うちっちー「いいじゃないか。今回は最初から作戦会議だ」
梨子「まあ、それはそうだけど。場所も変えたから気分も変わるかな……」
テクテク
千歌「あっ、梨子ちゃん!!」パアア
梨子(え、千歌ちゃん……? あ、そうか、待ち合わせ場所を変えて、通る道が変わったから……)
梨子「千歌ちゃん、どうしたの? って、その犬近づけないで!」
千歌「えー、散歩してただけなのになあ。ひどいよ、ねー、しいたけ?」
しいたけ「バウッ」
梨子「ひいぃっ」ビクッ
うちっちー「あれ、さくらうちは犬が苦手なのかい?」ヒョコ
千歌「あーっ! うちっちーだ!」
うちっちー「やあ千歌。この前の事件以来だね」
千歌「久しぶり、うちっちー! でも梨子ちゃんがうちっちーを連れて出掛けるってことは……」
千歌「事件の香り、なのだ!」ピョコン
☆ ☆ ☆
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:39:13.66 ID:i5gu9J0q0
善子「それで、千歌さんを連れてきたってわけね」ムー
千歌「私は梨子ちゃんのお隣さんで友達だもん」ムー
果南「こらこら、喧嘩しないで」
鞠莉「そうよ。梨子の話を聞く限り、私たち4人とダイヤでもどうしようもなかったらしいじゃない」
梨子「壁を壊されて、驚いてたから……」
善子「1回見たから、今度はびびっちゃだめってことね」
うちっちー「そうさ。冷静に相手を見極めれば、きっと勝機が見える。大事なのは信じる心さ」
梨子「うちっちー、たまにはいいこと言うね」
うちっちー「だろう? そういえば鞠莉。今回の衣装は?」
鞠莉「梨子に連絡もらってすぐ手配したわ! 安心して、善子の袖はないわよ!」
うちっちー「ああ、勝ったな」
善子「台無しよ! あとヨハネ!」
ピンポーン……
ダイヤ『はい、どちら様でしょうか』
鞠莉「シャイニー☆」
ブツッ
ガチャッ
ダイヤ『お待ちしておりました、輝きの勇者たちよ!』
善子「それ、私の専売特許だと思うのよね」
☆ ☆ ☆
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:40:00.81 ID:i5gu9J0q0
カチッコチッ……
果南「さて、そろそろ3時だね」
鞠莉「じゃあ、作戦通りに!」
千歌「だ、大丈夫かなあ……」
梨子「千歌ちゃんは初めてだから、後ろの方に。私たちに隠れててね」
千歌「梨子ちゃん……///」
善子「むー……私たちも記憶ないんですけど……」
梨子「でも、よっちゃんは一緒に戦ってくれるんでしょ?」ニコ
善子「それは、そうだけど……///」
千歌「むー……」
善子「リリー! 『カード』の準備は?」
梨子「うん、そろそろ―――」
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』パシッ
うちっちー「よし、これでいつでもカードが使える!」
果南「そろそろだよ……」
鞠莉「ええ。3時まであと3、2―――」
ダイヤ『今度こそプリンを食べますわ! いただきま―――』
ドゴオオオオオオォォォォォォ!!
101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:40:44.69 ID:i5gu9J0q0
千歌「ひ、ひゃあああああああ!!」
果南「ほ、ほんとに壁が……!」
梨子「果南さんもこの前壊してましたよね」
果南「うっ、ごめん」
鞠莉「言ってる場合!? 作戦開始よ!」
梨子(まずは……)
梨子『FLY!』キイイイン
梨子「杖の羽ばたきで煙を晴らす!」バサッバサッ
ヒュオオオオオオ……
影『』シュババッ
梨子「見えた! よっちゃん!」
善子「ええ、プリンはこっちよ!!」ヒラヒラ
影『!!』バシュンッ
梨子(飛んでるわけではない、みたい。地面を走ってる……? でも―――)
善子「速っ……!」
鞠莉「善子伏せなさい! 私が相手―――きゃあああ!!」ドゴオッ
梨子「よっちゃん! 鞠莉さん!」
梨子(2人とも跳ね飛ばされた……! でも、時間を稼いでくれたから!)
梨子『WATERY!』キイイイイン
梨子(攻撃カードで動きを止める!)
WATERY『……オオォォォッッッ!!』シュルシュル
影『……ッ』ググッ
うちっちー「少しスピードが落ちた!!」
梨子「で、でも『WATERY』が速さについていけてないよ! どうしよう!」
102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:42:00.57 ID:i5gu9J0q0
千歌(あわわわ、身体が動かないよ……! でも、皆はあんなに頑張ってる……!)
千歌「わ、私だって何かできるもん……!」フラフラ
影『ッ!』ヒュオオオオ
梨子「千歌ちゃん! 危ないっ!!」
千歌「いやあああああ」ズササッ
ポロポロコロコロ……
影『……?』
千歌「あ、千歌がいつも持ち歩いている飴が……!」
影『……アメ……アメ……ワタシノ……ルビィノ……』
―――それは、ほんの一秒にも満たない時間だった。
千歌の落とした飴が、彼女―――黒澤ルビィの琴線に触れた。
飴。大人が子どもに与える無償の愛の証。
幸運なことに、ルビィはそれを受け取ることのできる家庭に生まれ落ちた。
両親と姉妹の幸せな生活。その中で飴を独り占めするのは、先に生まれた姉だろうか。
否、妹である。
ルビィは容赦なく姉から飴を収奪し続けてきた。それは下の子だからという倫理観の暴力であった。
そんな環境下で醸成されるのは、名前の通り、宝石色の愛され体質。そして―――鈍く光る独占欲。
飴は全て私のもの。傲慢にも似たその感覚が、黒澤ルビィの足を止めた。
ダイヤ『る、ルビィ……?』
ルビィ『あはっ』
103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:42:33.04 ID:i5gu9J0q0
果南「なっ……! 影はルビィだった……?」
鞠莉「ちょっとまって! あの足の筋肉! 普通じゃない!」
うちっちー「そうか! 『POWER』だ!」
梨子「『力』……?」
うちっちー「ああ、あのルビィって娘、カードの力で足の筋力が上がっているんだ!」
梨子「『POWER』はどうやって封印したらいいの?」
うちっちー「力比べと勝負事が好きなんだ! きっとルビィの目的を失敗に終わらせれば、『POWER』は諦めて出てくるはずだ!」
梨子(ルビィちゃんの目的……ダイヤさんのプリンを盗ること!)
梨子(ダイヤさんの目的は、プリンを食べること!)
梨子(それじゃあ、ダイヤさんがプリンを食べられれば、2枚とも封印できる!)グッ
ルビィ『うゅ……っ!』ダダッ
梨子『うぉ、WATE………』
梨子(と、止めなきゃ……! でも、間に合わ―――)
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:44:07.27 ID:i5gu9J0q0
ガガガッッッ
ルビィ『え……っ?』
果南「見えてしまったら怖くない。悪いけど、ここからは私が相手だよ」シュウウウ
ルビィ『―――うゅゅっ!!』ドゴオ
果南「くっ……重い蹴りだね!」
果南「プリンくらい、後で買ってあげる、よっと……!」ガシッ
ルビィ『お姉ちゃんのものはルビィのものだもん! 絶対渡さない!』ブンッ
ズガガガ゙ッ、バキィッッ
果南「どうして足技ばっかり……。舐めてるの?」キッ
ルビィ『ううん、ルビィは力をもらったの。全てを手に入れる力なんだよ』
ルビィ『だから、手は空けておかなくちゃ』ニコ
ドゴオオオッッ
果南「ぐうぅっ……!」ザザッ
善子「す、すごい、手が出せない……!」
梨子「ダイヤさん! 今のうちにプリンを……!」
ダイヤ『え、ええ、でも手が震えて、うまくフタが……!』
果南「ダイヤ早く! 抑えておくのも限界がある!」グググ
ルビィ『プリンはルビィが食べるんだもん!』サッ
果南「ルビィ! ごめんね……!」ブンッ
スカッ……
果南「え……?」
ルビィ『あはっ、そっちは残像だよ』フッ
果南「やられたっ!!」
善子「果南さんが抜かれたっ!!」
梨子「ダイヤさん! 早く!」
ダイヤ『もう駄目ですわ。もう1回、もう1回やりなおせば……』
梨子「そんな……っ!」
梨子(ああ……ルビィちゃんが近づいてくる! ダイヤさんも諦めてる! どうしたら、どうしたら―――)
黒澤家の水墨画が描いてある壁『さくら……う……ち……』
梨子「!!」
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:44:40.58 ID:i5gu9J0q0
水墨画の壁『諦めるのは……まだ……はやいですよ……』
梨子「水墨画の壁さん! まだ意識が……!」ヒシッ
水墨画の壁『黒澤ルビィに対抗する手段を、あなたはまだ持っています……』
梨子「そ、それって、何なの!? わかんない、わかんないよ!」
水墨画の壁『古代からの……言い伝えがあります……』
水墨画の壁『古代人は……壁や柱に文を書きますからね……よく知っています……』
水墨画の壁『目には目を……歯には歯を……』
梨子「目には目を、歯には歯を……!」
水墨画の壁『ええ、あなたなら大丈夫……きっと、対抗できる……』
水墨画の壁『未来へ一歩踏み出すことを、信じて……いま………す……』
水墨画の壁『』
梨子「う、うぐ、うううぅぅぅ……! でも、泣いてる暇なんてない……っ!」ポロポロ
うちっちー「……強くなったね、さくらうち」
梨子「まだ、戦える! 目には目を、歯には歯を! そして残像使いのルビィちゃんには―――」
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:45:26.24 ID:i5gu9J0q0
ルビィ『オラァッ!!』ドカアッ
千歌「きゃあああぁぁ!」
善子「ちょっと! キャラ変わっちゃってるじゃない! もう限界よ!」
梨子「あと少しだけ! 私に考えがあるの!」
鞠莉「何でもいいからすぐ試すわよ!」
梨子「わかった、じゃあ―――『WATERY』!」キイイイィィィン
シュウウウウゥゥゥゥ
果南「わっ! 部屋全体に、霧みたいな……!」
善子「これでダイヤさんを隠そうって言うのね!」
ダイヤ『手元が見えませんわぁ! プリンが食べられません!』
鞠莉「くっ、このわがまま撫子……!」
ルビィ『声のする方……こっち!』バシュンッ
千歌「わわっ、また来たよ!」
果南「行かせない!」ガシッ
ルビィ『うゅ……』ムッ
梨子「皆! ダイヤさんを移動させるよ!」
ルビィ『移動……無駄だよ、ルビィすぐ追いつくもん』ググッ
シュバババッ
果南「また行ったっ! だんだん霧も晴れてきてる!」
107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:46:16.39 ID:i5gu9J0q0
鞠莉「止めて見せる!」
善子「私だって、リリーの相棒なんだから!」
ルビィ『ふふっ、善子ちゃん、教室で見るのと違うなあ』
善子「こっちだって必死なのよ!」ブンッ
ルビィ『あたらないよ』ヒョイ
ルビィ『それにルビィ、知ってるんだぁ。2人は囮。果南さんも囮。本命は奥の――』
千歌「ダイヤさん! 口開けて! ほら、あーん!」
ダイヤ『はい、あ――――』
ルビィ『あの人だって』シュバッ
ルビィ『プリン貰ったッッ!!』ガッ
スカッ……
ルビィ『え……』
梨子「ごめんね。それ、鏡像なの」バサッバサッ
ルビィ『て、天井近くに3人で……!』
千歌「あーん!」
ダイヤ「あーん……」パクッ
ダイヤ「ンまああああぁぁぁぁ!!!」キラキラ
ルビィ『……』
ルビィ『あ……ルビィ……負けちゃったんだ……』
ルビィ『やっぱり、お姉ちゃんのものは、お姉ちゃんのものだったんだね……』ホロリ
パアアアアアアア
うちっちー「やった! 2人の『同化』が解けるぞ!」
108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:47:03.33 ID:i5gu9J0q0
善子「リリー、今のうちに!」
梨子「うんっ!」
梨子『汝の在るべき姿に戻れ―――』クルクル
梨子『クロウカーーーード!!』パアア
TIME『……』
POWER『……』
シュルシュルシュル……
シュゥゥゥウン
カード『』フワッ
梨子「2枚とも、封印完了!」パシッ
果南「あ゛ーーーーーー! 疲れたああああ!」バタン
鞠莉「お疲れ様、果南!」
梨子「本当にありがとうございます……! 果南さんがいてくれなかったら……」
果南「松浦家は代々武闘派でさ。これくらい平気平気」
梨子「よっちゃんたちも、ありがとね」
善子「打ち身ばっかりよ、あいたたた……でも、何とかなってよかったわ」
うちっちー「まったくだ。それにしてもやるじゃないか、さくらうち」
うちっちー「『WATERY』で作り出した霧に、『MIRROR』で偽の像を映し出すなんて」
梨子「壁さんが教えてくれたんだ。残像には、残像で返さないとねって」
うちっちー「『FLY』と合わせて3枚同時展開か、成長してるなあ。このまま胸も――」
梨子「隙あらばそれだよね、ほんと」
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:47:49.45 ID:i5gu9J0q0
ダイヤ「スゥ……スゥ……」
千歌「……」ポケー
梨子「千歌ちゃん、どうしたの?」
千歌「ね、ねえ梨子ちゃん、さっきの見てた?」
梨子「さっきの?」
千歌「私、私……!」
千歌「『あーん』ってしちゃった! ダイヤさんに! きゃー///」
梨子「へ?」
善子「んん?」
千歌「だって『あーん』だよ! 千歌そういうの曜ちゃんにしかしたことなかったのに!」
千歌「それに今だって膝枕だよ! ダイヤさん、生徒会長で網元さんだよ! それを千歌が膝枕!」キラキラ
千歌「この前の壁ドンとはまた違うんだけどさー……。うわあ、ダイヤさんの顔見るの恥ずかしい……っ!」カオマッカ
うちっちー「あー、えーっと、千歌ってそういう感じ?」
鞠莉「もう、恋に恋するって感じ? ウブでcuteね!」
千歌「そんなんじゃないよー! あ、そうだ! 放課後のお茶会、梨子ちゃんもダイヤさんもいるんだよね! 私も行っていいかなあ……」チラッ
鞠莉「Of course! 大歓迎よ! ね、善子!」
善子「ヨハネよ。あー、うん、いいんじゃない?」ポカン
千歌「やったあ! じゃあ月曜日からね!」クルクル
梨子「月曜日……。そっか、月曜日、ちゃんと来るんだ……」
梨子「はあ、なんかどっと疲れたかも……」グッタリ
☆ ☆ ☆
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:48:30.37 ID:i5gu9J0q0
ダイヤ「本当に申し訳ございませんでしたああっっ!!」ドゲザ
ルビィ「でしたあああっっ!」ドゲザ
梨子「いや、そこまでしなくても……」
千歌「そうだよ、頭上げて……?」
ダイヤ「しかし! 皆さんに怪我まで負わせて、それもプリンなどのために……」
善子「あ、普段はそこの理性は働くのね。よかった」
果南「まあまあ。私もやっちゃったしさ。お互い様だよ」
鞠莉「果南がそれ言うのおかしくなーい?」
梨子「あはは、私は本当に気にしてないので……」
ルビィ「お姉ちゃんと一緒にお詫びしますっ!」ボロボロ
善子「いいわよ別に」
ルビィ「うう、でも……!」
梨子(この前暴れてたのが嘘みたい)クス
ダイヤ「あ、で、では今度の土曜日に出掛けるなんていかがでしょうか! 何かご馳走させてくださいな」
ダイヤ「ほら、駅前の洋菓子屋で限定スイーツが―――」
「「「遠慮します」」」
善子「こんな週末戦争は、二度とごめんよ、なんてね!」ウインク
第4話「仁義なきエンドレス・ラグナロク」終
♪ ♪ ♪
111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 23:59:50.44 ID:i5gu9J0q0
モグモグ……モグモグ……
果南「美味しいっ!」パア
鞠莉「当然ね! このマリーの手作りマフィンだもの!」
果南「でも鞠莉、何で急に手作りのお菓子なんか……」
鞠莉「だ、だって……」
果南「だって?」
鞠莉「果南に食べてほしくて…///」
果南「そっか。ありがと!」ニシシ
鞠莉「うふふ」ニコニコ
果南「じゃあ、帰るね!」
鞠莉「えっ」
果南「え、どうかした?」
鞠莉「いや、帰るって、もう? まだ来たばかりじゃない」
果南「だって、食べ終わったし……。あ、美味しかったよ!」
鞠莉「あ、う、うん」
果南「じゃあ、また今度お返しするね!」フリフリ
鞠莉「OK……」フリフリ
鞠莉「……」
鞠莉「……はあ」ウツムキ
鞠莉「……ぁぁぁああああーーーーーーもうっ!!」
鞠莉「あのバカナン!! バカ! バーカ!」プンプン
鞠莉「せっかく頑張ったのに! 美味しく食べてもらって、いい雰囲気にって思ったのにぃ……っ!」バンバン
鞠莉「……」
鞠莉「はぁ……。全く進展ないんだから」ジワ
鞠莉「もっと、こう―――」
鞠莉『Sweetな世界に浸りたいわよね……』
???『クスッ……』
☆ ☆ ☆
112: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:00:21.55 ID:C0VN0tby0
第5話
「スイーツ・パラダイスへようこそ」
うちっちー「……」ボー
梨子「うちっちー」
うちっちー「……」ボー
梨子「うちっちーったら!」
うちっちー「え、あ、何だい、さくらうち」ビクッ
梨子「もう、さっきからずっとぼーっとしてるよ。どうしたの?」
うちっちー「あー、『カード』もだいぶ集まって来たなと思ってね」
梨子「『FLY』『WATERY』『MIRROR』『POWER』『TIME』……5枚だもんね」
うちっちー「ああ、それと……」
梨子「私の『カードのお守り』、かあ」
梨子(去年拾ったカードのお守り……相変わらず模様の所が真っ黒なままなんだよね)
梨子「何のカードなんだろう……。ずっと汚れが取れないままなのかなあ」ペラッ
うちっちー「……」
梨子の部屋の壁『……』
梨子「でも、もう名前は書いてあるし、別にいいんだよね?」
うちっちー「……ああ、他の8枚さえ封印できれば大丈夫さ。封印されたカードが9枚になることに変わりはない」
梨子「カードが元の世界に戻ったら、この汚れもちゃんと取れるの?」
うちっちー「そのはずだよ」
梨子「よかった、ずっと汚れたままは、可哀想だもんね」フフ
うちっちー「……ああ、そうだね」
☆ ☆ ☆
113: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:00:53.73 ID:C0VN0tby0
千歌「美味しーーーい!」キラキラ
善子「もう少し落ち着いて食べなさいよね」
梨子「千歌ちゃん口の周りベタベタだよ……」フキフキ
千歌「ありがと梨子ちゃん! でもずるいよー、毎日放課後にこんな贅沢してたなんて!」
梨子「ごめんね。果南さんたちとは、『カード』がきっかけだったから……」
善子「よく考えたら、ずっとおごってもらってるわけなのよね。いいのかしら」
鞠莉「いいのよ、皆の幸せが私の幸せだもの! ねー、果南♪」
果南「ねー♪」ダキッ
ダイヤ「……」
梨子「……」
善子「……」
千歌「……ほぇー」
曜「あ、あ、あのさ! 私まで呼んでもらっちゃって、よかったの?」
梨子「今日は飛び込みお休みなんでしょ? 大丈夫だよ、曜ちゃん」
鞠莉「そうそう、relaxしていいのよ! ねー、果南♪」
果南「ねー、鞠莉♪」ニコニコ
ダイヤ「……」
梨子「……」
曜「……」
千歌「……ほわぁ」
善子「…………あっま」ボソッ
梨子(梨子です。果南さんがおかしくなりました。……また)
114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:06:57.54 ID:C0VN0tby0
鞠莉「果南! あーん!」キャッキャッ
果南「あーん♪ わ、美味しいケーキ! ね、鞠莉……今すぐお礼、したいな」ササヤキ
鞠莉「きゃっ、もう、果南ったら!」デレデレ
曜「千歌ちゃん、見ちゃダメだよ」メオサエ
千歌「曜ちゃん放してぇ!」ジタバタ
善子「口の中がじゃりじゃりする……甘いぃ……」
梨子「よく食べられるね、よっちゃん。私、甘いのはもういいや……」
ダイヤ「確か鞠莉さんは紅茶はストレート派でした。ポットを取ってきましょうか」
梨子「ありがとうございます……」
鞠莉「はい果南、Sweetsの後にTeaはいかが?」
果南「ありがと鞠莉! わっ、甘い!」
鞠莉「今日はお砂糖たっぷりよ! 甘い気持ちになってほしくて……どうだったかしら?」ウワメヅカイ
果南「そんなの……朝、鞠莉に会ったときから私はずっと甘い気持ちだよ」イケボ
鞠莉「やぁん///」クネクネ
ダイヤ「……」
善子「……フッ、私は絶望の堕天使、ヨハネよ……」
梨子「現実逃避しないで!」
ダイヤ「いいですわね、我慢、我慢ですわよ……!」ボソボソ
善子「つっこんだら負け。それくらい私にだってわかるわよ」ボソボソ
梨子「でも、これはどう考えても―――」
「「「クロウカードのせいだよね……」」」
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:07:37.95 ID:C0VN0tby0
トントン
梨子(お客さん? こんな時に……!)
ダイヤ「はい、どなたでしょうか?」
ガチャ
ルビィ「お姉ちゃんいる……?」
ダイヤ「あらルビィ、それと花丸さんも」
梨子(ルビィちゃんのお友達かな? 手に持ってるのは……のっぽパン?)
花丸「えーっと、ルビィちゃんと善子ちゃんと同じクラスの国木田花丸です! よろしくお願いするずら!」ペコリ
梨子「ずら?」
花丸「あっ、お、オラまた……あっ///」
ルビィ「花丸ちゃんはそのままでいいんだよ」ニコニコ
花丸「で、でもぉ……」
ダイヤ「ルビィの言う通りですわ。自分に自信を持ちなさいな」
ダイヤ「……それで、どうしたんですの? 今日は帰りが遅れると伝えてあったはずですが」
ルビィ「これ持ってきたんだぁ!」ガサッ
曜「あ、ブラウニー! 去年私たちも作ったよね!」
千歌「ほんとだ、懐かしー!」
梨子「へえ……そんなお洒落な物つくるんだ」
曜「あ、そっか! 梨子ちゃん知らないもんね。毎年恒例でさー」
ルビィ「ルビィ、お姉ちゃんに食べてほしくて。あ、もちろん皆さんの分もあります!」
花丸「マルのはちょっと焦がしちゃって、苦くなっちゃって……。でもでも、ルビィちゃんのは甘くできたから、食べてあげてほしいずら!」
鞠莉「かなーん!」イチャイチャ
果南「鞠莉♪」イチャイチャ
「「「……」」」
「「「花丸ちゃんので」」」
花丸「えっ」
☆ ☆ ☆
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:08:06.69 ID:C0VN0tby0
ダイヤ「さて、あの2人は放っておいて黒澤家にお越しいただいたわけですが……」
梨子「ほら、うちっちーも。せっかく連れてきたんだから挨拶して」
花丸「わわっ、しゃべるぬいぐるみずら! 未来ずらー!」ツンツン
うちっちー「まったく、さくらうちはすぐにけしからん娘を見つけてくるね……! 最高だよ!」ジー
花丸「え、え、何のこと……?」タユン
梨子「気にしないで」ハア
ルビィ「ごめんなさい梨子さん、うっかり花丸ちゃんに少し話しちゃって……」
梨子「ううん、秘密って言ってなかったから、仕方ないよ」
曜「それにしても魔法少女かあ、梨子ちゃんだいたーん」ニヤニヤ
千歌「だいたーん!」ニヤニヤ
梨子「千歌ちゃんは前から知ってたでしょ!」
ダイヤ「わたくしたちの多くは梨子さんに救われたのです」
ルビィ「善子ちゃんもすごかったんだよ!」
花丸「へえ~、善子ちゃんが」
善子「だからヨハネよ! 私はちょっと手伝うだけよ。リリーみたいに『カード』が使えるわけでもないし」
梨子「でも、いつも助かってるよ、ありがとう」ニコ
善子「……ぅ///」
花丸「善子ちゃんがいつも話してる「リリー」って、梨子さんのことだったずらね」
梨子「え、そんな話してるの……? ちょっとよっちゃん、変なこと言ってないよね?」
ルビィ「大丈夫です! いつもすっごく楽しそうに――」
善子「た、ただ名前出しただけよ、ね、ね!?」アセアセ
うちっちー「君たちも大概だと思うんだけどね」
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:08:45.63 ID:C0VN0tby0
うちっちー「それで、果南と鞠莉の豹変が『カード』のせいじゃないかって?」
梨子「うん。だって果南さん、あんなことしないと思うし……」
ダイヤ「ええ。間違っても『ねー♪』などと」
うちっちー「今のもう1回」
梨子「変なこと言わないで」
うちっちー「冗談じゃないか、冗談」
善子「……何のカードかとか、わからないの?」
うちっちー「情報が少なすぎる。ただ、『カード』のせいなのは間違いない」
千歌「どうして?」
うちっちー「カードがだいぶ集まって来たからね。ボクにも力が戻ってきているのさ」
花丸「力……」
うちっちー「ああ、ボクの感覚では、今活動しているカードが1枚ある」
曜「1枚なの? 2枚じゃなくて?」
うちっちー「1枚さ。おそらくその1枚が、果南と鞠莉、両方に影響しているんだ」
梨子「じゃあ、もう少し2人を観察してみるしかないってこと?」
うちっちー「ああ、それしかない。だからボクも学校に行―――そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃないか、さくらうち」
梨子「ちゃんと静かにしててよ?」
梨子(このとき私たちは知らなかったんです。浦女が、もう私たちの知っている学校ではなくなってしまったことを……)
☆ ☆ ☆
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:09:27.94 ID:C0VN0tby0
テクテクテク……
うちっちー「こちらうちっちー。夢にまで見た女子高に潜入します、どうぞ!」キャッキャッ
梨子「ふんっ!」ゴスッ
うちっちー「い、痛いじゃないか!」
梨子「『どうぞ!』じゃないよ『どうぞ!』じゃ! 静かにしてって言ったよね?」
千歌「でもさー、千歌たちの前なら大丈夫でしょ?」
梨子「それはそうだけど……」
梨子「とにかく、学校に着いたら静かにしててね?」
うちっちー「もちろんさ」
ザワザワ……ザワ……
千歌「……あれ、あんなの浦女にあったっけ? ほら、校門の横に……」
梨子「え、何あのやけに豪華なワゴン車」
梨子(何だか、甘い匂い……。お菓子が焼けるみたいな――)
鞠莉「あ! 2人ともー! Welcome to Mary's Kitchen!」ブンブン
梨子「ま、鞠莉さん!? その、これは……?」
鞠莉「うふふ、クレープ屋さん始めちゃった☆」
梨子「」
鞠莉「ほら買って買って!」
梨子「ど、どうして急に?」
鞠莉「やりたかったんだもの! 果南と2人でお菓子屋さん、私の夢だったのよ!」
梨子「学校は……?」
鞠莉「私は理事長なのよ? ねー、果南!」
果南「ねー♪」
梨子「ええ……」
果南「あ、千歌これ食べる? 焼きたて包みたてのみかんクレープだよ!」
千歌「み、みかんクレープ……!」ジュルリ
梨子「ちょっと千歌ちゃん!」
鞠莉「あら、千歌っち食べてくれるの? だったらマリーの魔法の粉で―――」サラサラ
梨子「―――っ」ゾワゾワ
119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:10:08.81 ID:C0VN0tby0
梨子(え、い、今の悪寒は……?)
うちっちー(さくらうち、クロウカードだ! 気配が一瞬強くなった!)ボソッ
梨子「え……」
梨子(悪寒がしたのは鞠莉さんが粉を振った瞬間……! ってことは!)
千歌「いただきま――」
梨子「千歌ちゃんっ! ダメぇ!」バシッ
千歌「痛っ!」ベチャリ
梨子「はぁ……はぁ……っ!」
千歌「ちょっと梨子ちゃん何するの! せっかくのクレープが!」
梨子「それは食べちゃダメなの!」
果南「梨子、それはひどいんじゃない?」
鞠莉「ど、どうして……? せっかく作ったのに……」ウルウル
梨子「ぁ……」
果南「―――梨子」マガオ
梨子「ひぅ……っ!」
果南「鞠莉を泣かせたね?」ハイライトオフ
梨子「あ、あの、その―――」
果南「」ユラリ
うちっちー「さくらうち! 走れっ!」
梨子「……っ!」ダッ
果南「……」
果南「鞠莉」クルッ
果南「もう大丈夫。私が守ってあげるからね」
鞠莉「かなぁん……」ダキッ
果南「ほらほら、よしよし」
果南「あ、そうだ千歌」
千歌「へ?」
果南「クレープ、作り直すよ。食べていくよね?」
☆ ☆ ☆
120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:10:48.37 ID:C0VN0tby0
梨子「はあっ、はあっ……!」
梨子(ど、どうしよう……! 千歌ちゃんおいてきちゃった……!)
うちっちー「あのままだったら果南と争いになっていたさ。さくらうちのせいじゃない」
梨子「で、でも……」
ガラララッ
曜「た、たすけてえええええっ!!」ダダダッ
梨子「曜ちゃん!?」
うちっちー「さくらうち! 危ない! そこをどくんだっ!」
ズドドドドドッ
ヨウチャーーーーーンッ マッテエエエエエエエ
アイヲウケトッテエエエエエエ……
梨子(クラスの子たちが曜ちゃんを追いかけてる!?)
ドドドドドドド……
梨子「……行っちゃった」
うちっちー「あー、さくらうち、君は随分とアグレッシブな学校に通ってるんだね」
梨子「いつもはこんなんじゃないの!」
グチャア……
梨子「うわ、教室がクレープの包み紙だらけ……ちゃんと捨てておかないと」サッサッサ
121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:11:36.22 ID:C0VN0tby0
先生(♀)「あら? 桜内さんじゃない」
梨子(あ、あれは美人で有名な国語の先生! あの人なら真面目だから――)
梨子「せ、先生! 助かりました! 皆どこかに行っちゃって――……先生?」
先生(♀)「恋愛って、人生で最も大事なものだと思わない?」
梨子「へ……?」
先生(♀)「あの子たちはね、そういうものに一所懸命なの。先生として見守ってあげなきゃね」ウフフ
梨子「あ、あの、何を言ってるんですか?」
先生(♀)「ああっ、でも私もいい歳なのに……あっ」
梨子(『あっ』……?)
先生(♀)「ねえ、桜内さん……」スッ
梨子「えっ」ビクッ
先生(♀)「先生と生徒の禁断の恋って、いいと思わない……?」ササヤキ
梨子「」
うちっちー「……ほう」
梨子「し、し、失礼します///」ダッ
先生(♀)「あ、桜内さん!?」
梨子「ちょっと! 今のは逃げろって叫ぶところだったでしょ!!」
うちっちー「いやあ、見てるのも悪くないかなって」
梨子「この不純妖精!」
122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:13:03.87 ID:C0VN0tby0
ロウカ トボトボ
梨子「うう、クラスがめちゃくちゃだよ……授業も始まらないし」
うちっちー「早いところまともな人を探した方がいいね」
梨子「皆どうしちゃったんだろう……」ハア
ルビィ「あ、梨子さん……っ!」
梨子「ルビィちゃん!」
タタタッ
ダキッ
ルビィ「よ、よか、よがっだでずううぅぅぅぅ」ポロポロ
梨子「ちょ、る、ルビィちゃん!? どうしたの!?」
ルビィ「お姉ちゃんがおかじくなっぢゃっでえぇぇ……」ポロポロ
梨子「ダイヤさんが……」
うちっちー「詳しく話してくれるかい?」
ルビィ「は、はいぃ……」グスッ
ルビィ「お姉ちゃんと一緒に登校してたんですけど……」
☆ ☆ ☆
123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:13:40.81 ID:C0VN0tby0
ダイヤ「な、なんですの、あの派手なワゴン車は!?」
ルビィ「まりーずきっちん?」
ダイヤ「ま、ま、ま、鞠莉さんんんっ!!」タッタッタッ
鞠莉「Oh! ダイヤじゃない! ほらこれ、食べて?」
果南「美味しいよ!」
ダイヤ「果南さんまで! どういうことですか! こんなところでこんなこと!」
鞠莉「いいじゃない、ほら、甘ーいクレープよ?」
ダイヤ「よくありません! 全部片づけてさっさと教室に―――むぐっ」
鞠莉「ダイヤうるさーい」
果南「うんうん♪」ニコニコ
ルビィ(うゅ……果南さんが変な笑顔……)
ダイヤ「……」モグモグ
ルビィ「お、お姉ちゃん?」
ダイヤ「……」
ダイヤ「」
ダイヤ「……ルビィ」ハアハア
ルビィ「」
ルビィ「お、お姉ちゃん顔怖いよ……?」ビクビク
ダイヤ「ねね、お姉ちゃんと手繋ぎましょ?」
ルビィ「え、やだよ」
ダイヤ「そう言わずに、ほらその可愛らしいお手々を出して?」ハアハア
ルビィ「」ゾワリ
ダイヤ「ルビィ?」ハアハアハア
ダイヤ「ほら……お姉ちゃんに全部任せて……?」フーッ
ルビィ「ぴ、ぴ、ぴぎいいいいいいいいいっ!!!」ダダダッ
☆ ☆ ☆
124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:14:28.93 ID:C0VN0tby0
ルビィ「う、うぅ……っ、ほんとに、怖くて……っ」グスグス
うちっちー「さすがに不憫だと言わざるを得ない」
梨子(そういえばダイヤさん、ルビィちゃんを盗撮してる変態さんだった……)
ルビィ「あのクレープ、どういうものなんですか……?」
梨子「たぶん『クロウカード』が絡んでいるんだと思うけど……」
うちっちー「ああ、諸君の尊い犠牲により、たぶん正体はわかった」
梨子「ほんとに!?」
うちっちー「おそらく『SWEET』のカードだ」
梨子「『甘い』カード? そんなのがあるの?」
うちっちー「ある。効果は単純だ。料理を甘くできる」
ルビィ「料理を、甘く」
梨子「あっ、クレープをつくるとき、鞠莉さんが「魔法の粉」って!」
うちっちー「『SWEET』の能力のことだろうね」
うちっちー「あのカードはただ味を甘くするだけじゃないんだ。さくらうち、教室の机の上を見たかい?」
梨子「机の上?」
梨子(確か、机の上には『Mary's kitchen』って書かれた包み紙があって……)
梨子「ということは、あのクレープを食べた人がおかしくなった?」
うちっちー「そうさ、『SWEET』の力でつくったお菓子は、それを食べた人間を甘い雰囲気に誘って、惚れやすくするんだ」
梨子「そ、そんな効果が……」
うちっちー「そして、鞠莉と『同化』して暴走した『SWEET』は、食べた人間を―――」
梨子「食べた人間を……?」ドキドキ
千歌「あ、梨子ちゃんみーつけた!」
梨子「」ビクッ
千歌「ひどいよ梨子ちゃん、置いていっちゃうなんて」
千歌「でもいいの。だって、恋愛に障害はつきものだもんね……///」
梨子「は?」
うちっちー「恋愛至上主義のスイーツ脳にしてしまうんだ!!」
ルビィ「えぇ……」
126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:15:38.44 ID:C0VN0tby0
千歌「梨子ちゃん、つかまえた」
梨子「ちょ、千歌ちゃん落ち着いて!」
千歌「ね、ね、運命のちゅー、いいでしょ? 私と梨子ちゃんは相性抜群だって占いで出たもん!」
梨子「ダメダメダメ! だいたい千歌ちゃんには曜ちゃんとかダイヤさんが、ね?」
千歌「よ、曜ちゃん……! ダイヤさん……! ああ、そんなの千歌どうしたら……!」
千歌「これが……愛の試練……」ガクッ
うちっちー「ほらね、見事にピンク色だろう?」
梨子「もともと千歌ちゃんそういうところあったから……」
ルビィ「それよりルビィはお姉ちゃんの恋愛観があんなのだったことに絶望しています」
「「……」」
ルビィ「何か言ってくださいぃ!」グスン
梨子「へたり込んでる千歌ちゃんは置いておいて、曜ちゃんを助けに行かなきゃ」
うちっちー「いや、その前に大元を封印するのが手っ取り早い」
梨子「『SWEET』はどうしたら封印できるの?」
うちっちー「辛いのが極端に苦手なんだ。塩をかければ一発さ」
梨子「そんなナメクジみたいな」
ルビィ「塩なんて学校にあるかなあ……?」
ルビィ「調理実習でも、わざわざ家から調味料まで持ってこないといけなかったし……」
梨子「確かに……」
うちっちー「それに、鞠莉から『SWEET』を引き剥がさなきゃならないって問題もある」
梨子「それはいつもの――」
うちっちー「そうさ。鞠莉の願いを解消してやらなきゃならない」
梨子「願い、か……。全然わからないけど……」
ルビィ「まずは塩の捜索、がんばるびぃ……!」
☆ ☆ ☆
127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:16:22.82 ID:C0VN0tby0
ガララッ
梨子「手っ取り早くこの調理室にあるっていうのが一番ありがたいんだけどね」
うちっちー「見たところ何もなさそうだね」
ルビィ「あの大きな棚にあるのかもしれません! ルビィはこっちを見てみます」
梨子「お願いね、ルビィちゃん」
テクテクテク
ガチャ
曜「……あ」
梨子「」
バタン
梨子「……」
ガチャ
梨子「何してるの、曜ちゃん」
曜「あ、あはは……」
ピギィ!
梨子「る、ルビィちゃんどうしたの!?」
ルビィ「こ、こっちの棚から花丸ちゃんが……」
梨子「えぇ……」
128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:17:05.55 ID:C0VN0tby0
梨子「ええっと、2人して逃げてたらこうなった、と」
曜「そうなんだ。何だか皆がすごい勢いで追いかけてきてさ、ひどい目に遭ったよ……」トホホ
花丸「マルは途中で曜さんに会って、巻きこま、いや、被害に、じゃなくて――」
曜「巻き込みましたごめんなさい」
ルビィ「花丸ちゃんも大変だったんだね……」
梨子「あれ、花丸ちゃんその包み紙は……」
花丸「これずらか? 鞠莉さんたちが作ってたクレープずら! 美味しかったあ……」ペラッ
りこるび「「!?」」
梨子「なっ、曜ちゃん離れてっ!」
曜「へ?」
花丸「え、マル何かした……?」ポカン
ルビィ「え? 花丸ちゃん、何ともないの?」
花丸「何ともって、何が?」
うちっちー「驚いたな、『SWEET』が効かない人間がいるとは」
梨子「そういう体質?」
うちっちー「どうだろう、ボクにはわからないな。とにかく、ここには塩はなさそうだし先を―――」
ズドドドドドドトッ!!
曜「ひっ」ガタガタガタ
花丸「ま、また来たずらぁ……!」ガタガタ
ズドドドドッ ピタッ……
ガララララッッ
「「「曜ちゃんみーつけた♪」」」
曜「ひいいぃぃぃ!」
ルビィ「り、両側の扉からたくさん……!」
「もう逃げ場はないよ、曜ちゃん。私たちの愛の言葉、受け取ってくれるよね」
曜「あ、愛って……」
「「曜ちゃん」」
「「曜さん」」
「「曜先輩」」
ワラワラワラワラ
梨子(曜ちゃんどれだけ人気なの……)
129: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:17:55.12 ID:C0VN0tby0
うちっちー「くっ、逃げる隙がない……!」
ルビィ「塩があれば、塩があれば……!」
梨子(何か探さなきゃ! この場にあるもので、使えそうな何かを……!)
「「曜ちゃん」」グイグイ
曜「嫌、いやあっ、怖いよぉ!」
「「ふふっ、泣いてる曜先輩も素敵……」」ペロ
曜「いやそれは本当に怖いよ!」
梨子(何でもいい、何でも―――あ、あれは花丸ちゃんの鞄……?)
曜「ああ、もう駄目だ、梨子ちゃん、千歌ちゃんに遺言が――」
梨子(私は、諦めないっ!!)
梨子「あ、あったっ! 塩があるよっ!」
うちっちー「何だって!?」
梨子「これっ! のっぽパン! 花丸ちゃんの鞄にたくさん入ってたっ!」
ルビィ「だ、ダメです梨子さん! のっぽパンは甘いんです……!」
うちっちー「そうだ、のっぽパンはクリーム、チョコ、ピーナッツ味が基本なんだ! いくら塩分があるとはいえ、その味じゃあ――」
梨子「違う! 花丸ちゃんが持ってるのは―――――」
梨子「のっぽパン塩キャラメル味(サンシャインコラボ版)っ!!」
花丸(買ってくれましたか?)
130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:18:55.85 ID:C0VN0tby0
うちっちー「そ、そうか! 花丸は自分でそれを食べたから『SWEET』の効果が解除されてるんだ!」
うちっちー「いける! これがあれば乗り越えられる! 早くあの子たちの口にこれをねじ込むんだ!」
梨子「曜ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃん!」シュババ
曜「うん、梨子ちゃん!」パシッ
ルビィ「ルビィ、闘います!」パシッ
花丸「うぅ、マルのパン、あげちゃうのかぁ……」パシッ
梨子「いくよ! のっぽパンブレード、レリーーーーズ(開封)!!」ガサッ
ようるびまる「「「レリーーーズ(ら)!」」」ガサッ
「「曜ちゃん曜ちゃん曜ちゃん」」ワラワラワラ
梨子「これを!」ブン
「むぐっ!?」
「……」モグモグ
「……」
「あれ、私たち、何でこんなところに……」
梨子「やった!」グッ
うちっちー「さくらうち! 数が多すぎる! 道が開けた今のうちに!」
梨子「うん!」バッ
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』グググッ
梨子「皆捕まって! ―――『FLY』!」キイイインッ
うちっちー「よしっ! 調理室から脱出だ!」
131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:19:31.30 ID:C0VN0tby0
――――バサッバサッバサッ
曜「た、助かったぁ……」ハア
花丸「これがカードキャプターの力……未来ずらぁ」
梨子「今日は衣装じゃないけどね」
うちっちー「何を言ってるんだい。学校が舞台なんだ。制服以上の衣装なんてないさ」キリッ
梨子「はいはい」
ピコンッ
ルビィ「梨子さん、携帯が……」
梨子「ほんとだ。誰だろう―――っ!?」
曜「ど、どうしたの?」
梨子「―――理事長室に、行かなくちゃ」
堕天使†ヨハネ『たすけて、いま、りじちょうし』
☆ ☆ ☆
132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:20:22.91 ID:C0VN0tby0
鞠莉『よく来たわね』
梨子(うっ、朝よりもカードの気配が強まってる……!)ゾワゾワ
梨子「よっちゃんはどこ?」
果南「……そこだよ。手は縛ったけど、跡は残らないようにしてあるから」
善子「リリー///」
善子「えへへ、来てくれるなんて嬉しい! やっぱり惹かれ合う運命なのね!」テレテレ
梨子「よっちゃん……」
うちっちー「遅かったか……。もうクレープを食べさせられた後だ……」
鞠莉『私たちがクロウカードに操られてるなんて、失礼なことを言うんだもの』
果南「私と鞠莉を引き離そうとするんだよ。そんなことあるわけないのにね」ダキヨセ
鞠莉『きゃっ、もう、果南ったら大胆なんだから』フフ
梨子「鞠莉さん、どうしてこんなこと……」
鞠莉『どうして? 果南と私が甘ーい世界を作るのに理由が必要?』
梨子「果南さんと、甘い世界……。それが『願い』なんですね」
鞠莉『あたりまえのことを聞くのね? 恋は女の子みんなの夢でしょ?』
133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:21:09.27 ID:C0VN0tby0
うちっちー「がっかりだよ、鞠莉」
果南「何だって?」
うちっちー「君は何もわかっちゃいない」
梨子(うちっちーが、怒ってる……?)
鞠莉『面白いじゃない。聞いてあげるわ』
うちっちー「じゃあ、僭越ながら」ゴホン
うちっちー「もっと恥じらうべきだ!」クワッ
うちっちー「手だってさあ! そんながっしり繋いじゃうんじゃなくてさあ! もっと不安そうに! 白百合が絡むように!」
うちっちー「数秒ごとに名前を呼び合うんじゃなくてさあ! ここぞって時に耳元で囁くように!」
うちっちー「理事長室でおおっぴらにいちゃつくんじゃなくてさあ! 夕暮れの教室の片隅で身を寄せ合うように!」
うちっちー「ボクはそういうのを見にこの学校まで来たのにっ!!」
うちっちー「君たちは何もわかっちゃいないっ!!」
鞠莉『……』
果南「……」
うちっちー「どうだい、さくらうち?」ドヤ
梨子「私の方ががっかりだよ、うちっちー……」ハア
134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:21:52.41 ID:C0VN0tby0
鞠莉『くふ、あっはははは! 面白いこと言うわね、このアザラシ!』
うちっちー「セイウチだよ」
鞠莉『幸せで何が悪いの? 甘々で何が悪いの? 私も果南も幸せなんだから、それでいいじゃない!』
梨子「果南さんを操ってまで?」
鞠莉『……』
梨子「鞠莉さんがしていること、そういうことだよ。果南さんに、学校の皆に無理させてる」
鞠莉『……』
鞠莉『果南、私、嫌』
果南「わかったよ、鞠莉」ポンポン
果南「梨子」スッ
果南「ごめんね」ダッ
梨子「……ッ!!」
梨子「ぱ、『POWER』!」キイイイン
梨子(やば、間に合わな―――)
果南「ふっ……!」ドゴオオオ
梨子「がはああっ!!」
うちっちー「な、何て速い……! 今の一瞬で3発も……!」
梨子「がっ……あっ……」ガクガク
梨子(壁に、叩きつけられて……)
梨子(だめ、意識が……)
善子「リリーーーー!!」
果南「松浦は内浦にて最強……」スウゥゥ
梨子「」グラッ
梨子「」バタリ
135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:22:35.26 ID:C0VN0tby0
花丸「くっ、鞠莉さん、のっぽパンブレードを食らうずら!」ブンッ
鞠莉『あら、美味しいわね』モグモグ
ルビィ「ふ、普通に食べてる……」
曜「そんな……っ! 効かないなんて!」
うちっちー「他の生徒たちとは違うんだ! 鞠莉の『願い』を消さない限り『SWEET』に塩は届かない!」
花丸「で、でも……! 梨子さんも……!」
梨子「」グッタリ
善子「リリー! 起きてよ! リリーったら……!」ポロポロ
うちっちー「信じるしかない、カードキャプターを、信じるしかないんだ!」
梨子(身体が、重い……)
梨子(頭もぼんやりする……)
梨子(果南さん、あのままでいいのかな。よくないよね)
梨子(でも、全く敵わなかった。これ以上、どうすることも……)
梨子(ダメだな、私。力もなくて、すぐ諦めて)
梨子(でも、もうダメだよ。どうにもできないよ。もう、もう―――)
理事長室の荘厳な壁(さくらうち―――)
136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:23:48.25 ID:C0VN0tby0
梨子「り、理事長室の……荘厳な壁さん……?」
理事長室の荘厳な壁『さくらうち、あなたはそれでいいのですか……? 松浦果南が、小原鞠莉があのままで……』
梨子「そ、それは……。ダメだよ、だって、前にダイヤさんが言ってたんだもん」
梨子「様々な想いを抱いてこそ一人の人間だって。今の2人は……見てられないよ。でも―――」
理事長室の荘厳な壁『ああ……それが真理なのです、さくらうち』
理事長室の荘厳な壁『人間だけではありません。この世の全てのものには、表と裏がある。2つの面がある。ちょうどこの私のように―――』
梨子「こ、この世の全ては壁だった……? 壁が、世界だった……?」ゴクリ
理事長室の荘厳な壁『ええ、近づいていますよ。そして、あの2人も、壁なのです。表と裏がある、いや、なければならない』
梨子「鞠莉さんは、甘い世界を願ってた……。それじゃあ、私は苦い世界を見せればいいのかな。でも……」
理事長室の荘厳な壁『発想の転換ですよ。そう、壁の中の仕掛け扉を回すのと同じ』
理事長室の荘厳な壁『彼女は今、逃げているのです。冷たい世界から、身を切る風から、肩を縮こまらせて……』
梨子「発想の転換、逆に考える……鞠莉さんは、逃げてる……」ハッ
梨子「そ、そっか! 『北風と太陽』!」
理事長室の荘厳な壁『……』ニッコリ
梨子「わかるっ! 理事長室の荘厳な壁さんが笑っているのが!」
梨子「苦い世界を見せるんじゃない! 太陽を、太陽を見せるんだ!」
理事長室の荘厳な壁『ええ、あなたならできます、さくらうち』
理事長室の荘厳な壁『私は、いつもあなたの傍にいますよ――――』
スウウ……
137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:24:24.79 ID:C0VN0tby0
梨子「」パチリ
善子「お、起きたのね!」グスン
果南「あれ、まだやるの?」
梨子「……」
ズリ……ズリ……
梨子(身体が、痛い……! でも、行かなくちゃ!)
梨子「よっちゃん、じっとしててね……」ニコ
善子「何を……」
梨子(簡単だったんだ……。鞠莉さんは甘い世界を欲してる……)
梨子(苦い現実を直視できずに、夢を見てる……)
梨子(願いを消すなら、甘い世界はいらないって思わせるには―――)
―――善子『口の中がじゃりじゃりする……甘いぃ……』
梨子『よく食べられるね。私は甘いのは、もういいや……』
―――花丸『マルのはちょっと焦げて、苦くなっちゃって』
「「「花丸ちゃんので」」」
梨子(お腹いっぱいにすればいいって、そういうこと、だよね)
ズリ……ズリ……
善子「ダメよ、リリー……。私のことなんて放っておいて、逃げて……?」
梨子「こんなに泣いて……。ふふ、涙の味で『SWEET』の魔法もすっかり解けちゃってるね」フフ
138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:25:04.33 ID:C0VN0tby0
梨子「鞠莉さん、見ていてください……」
鞠莉『なあに? 現実を見ろとでも言うつもり?』
梨子(ううん、逆……今から見せるのは、甘い夢……)
梨子「よっちゃん」
善子「ひゃっ、私、手が縛られてて……って、何で押し倒されて―――」
梨子「……」スッ
善子「り、りー……? あ、手が、髪に……柔らかい――……」
梨子(白百合が絡むように、そうだよね。うちっちー)
梨子「私のために泣いてくれて、ありがとう」
梨子「いつもいつも、助けてくれて、ありがとう」
梨子「嬉しいよ、よっちゃん」ササヤキ
善子「……ぁ……///」
梨子(名前は耳元で囁くように)
善子「そんな、の、あたりまえよ……だって、だって……」
梨子「ううん、大丈夫。言わなくてもいいんだよ」ギュッ
梨子(身を寄せ合うように)
善子「リリー……」
139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:26:11.19 ID:C0VN0tby0
梨子(よっちゃんの目が、潤んでる。怖くて、不安だったんだ……。でもね、苦さがあるから、甘さが引き立つんだよ)
梨子(色んな気持ちがある方が、甘いだけの世界より、ずっとずっと甘いはずだよ)
梨子(だよね、よっちゃん)
梨子「目、閉じて?」
善子「―――っ」ギュ
梨子(ごめんね、もっと好きな人とが良かったよね。ほっぺだから、許してね)
梨子「よっちゃん……」
梨子「んっ」チュ
鞠莉『ぁ……ぁ……』
鞠莉『甘ーーーーーーーーーーいっ!!』
パアアアアアアア
うちっちー「やった! 『同化』が解けた!」
SWEET『……!』オロオロ
うちっちー「曜、ルビィ、花丸! 今だ!」
ようるびまる「「うん!」」
ようるびまる「「トリプルのっぽパンブレーーーード!!」」
SWEET『』キュゥゥ
140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:27:26.75 ID:C0VN0tby0
梨子「あとは、私が!」
梨子『汝の在るべき姿に戻れ―――』クルクル
梨子『クロウカーーーード!!』パアア
SWEET『』
シュルシュルシュル
シュウウウウン……
カード「」フワッ
梨子「……よかった」パシッ
善子「……リリー? あの……///」
梨子「あ、よっちゃん、その、ごめんね///」
梨子「怪我はない? あ、縄解いてあげるね!」アセアセ
善子「……」
うちっちー「……」
曜「……」
ルビィ「……」
花丸「……」
梨子「え、なんで皆黙ってるの?」
うちっちー「いやあ、まあ結果的に封印できたからいいんだけどさあ」
ルビィ「えっと、少し気になるっていうか、何ていうか……うゅゅ……」
花丸「うんうん、マルでもわかるずら」
曜「梨子ちゃんさあ、あれだよね、あれ」
善子「ねえ、リリー、どうしてほっぺだったの……?」
梨子「え、だって、ファーストキスは好きな人とがいいかなって……」
「「「……」」」
善子「リリーの、バカ」ジワッ
梨子「え、ええ、えええっ!?」
うちっちー「……はあ、幸せそうだなあ」
うちっちー「でも、それでもボクは―――……」トオイメ
☆ ☆ ☆
141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:28:13.42 ID:C0VN0tby0
鞠莉「すいませんでした」
果南「重ねてすいませんでした」
ダイヤ「ほんっとうですわ!! 一日学校を崩壊させるなど、理事長の威厳はどうなるのですか!!」
ルビィ「お姉ちゃんの威厳はどうなったんですか……」ボソッ
花丸「ルビィちゃん、抑えて抑えて」
千歌「んー……、何か気づいたら廊下で寝てて、よく覚えてないなあ」
曜「あはは、梨子ちゃんが解決してくれたからね」
千歌「あー! 曜ちゃんは全部知ってるの!? ずるいよー!」
曜「ちょっと! 引っ張らないで千歌ちゃ―――あ、いい匂い……」スン
梨子(クロウカードがなくても大概あれな人たちだよね)
鞠莉「で、よく覚えてないんだけど、善子はどうして不機嫌なの?」
善子「ヨハネよ」プクッ
梨子「あー……、そのー……ね、よっちゃん」
善子「なんですか、桜内さん」
梨子「うっ、ぐっ……」ポロポロ
うちっちー「うわあ、泣いてるよ……」
曜「あー、平たく言うと……」
花丸「梨子さんが少し、その……」
うちっちー「へたれた」
「「それです」」
梨子「ちょっと、へたれたってどういう――あ、よっちゃん待って! 待ってえええ!!」
ルビィ「うゅ……魔法なんてなくても、甘ーいままです。善子ちゃん、がんばるびぃ!」グッ
第5話「スイーツ・パラダイスへようこそ」終わり
♪ ♪ ♪
142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:28:53.29 ID:C0VN0tby0
テクテクテク
千歌「でさー、美渡姉すっごく怒ってくるんだよねー」
曜「あはは! 千歌ちゃんらしい話だね!」
千歌「そうかなー?」
千歌「この前、梨子ちゃんにもそう言われたんだ!」
曜「……」ズキ
曜(まただ……また梨子ちゃん……)
曜(家が隣だからって、毎晩おしゃべりして)
曜(いつもいつも、私が千歌ちゃんの話を聞くのは梨子ちゃんの後だ)
千歌「曜ちゃん、聞いてる?」
曜「あ、うん、聞いてるよ」
曜(カードキャプターのことだってそうだよ。千歌ちゃんだけ、前から知ってて)
千歌「あ、もうこんな所かあ。曜ちゃんと話してるとすぐ着いちゃうね!」
曜「ほんとほんと! また明日、たくさんお話しようね!」
千歌「うん! ばいばーい!」フリフリ
曜「ばいばい!」フリフリ
曜「……」
曜(あんなこと、他の人にも言ってるのかな。あんな笑顔を、梨子ちゃんにも見せているのかな)
曜「ダメだよね、こんなこと考えちゃ」
曜(でも、でもね千歌ちゃん、私ほんとは―――)
???『アハッ』
☆ ☆ ☆
143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:29:28.10 ID:C0VN0tby0
第6話
「恋の本心 火の用心」
梨子「はあ……大丈夫かなあ。変じゃない?」クルクル
うちっちー「今の君を変だっていうやつは、目が見えてないか、ものを考えられないかのどちらかだね」
梨子の部屋の壁『ええ。お似合いですよ、さくらうち』
梨子「そ、そうかなあ。浴衣なんて久々に着たから……」
うちっちー「破壊力抜群さ、さすがどすけ――」
梨子「褒めてくれるのは嬉しいけど黙って」
うちっちー「はい」
梨子の部屋の壁『その調子で仲直りもできるといいですね』
梨子「……うん」
うちっちー「大丈夫。花火にも誘ってくれたんだろう?」
梨子「そ、そうだよね……」
梨子(私、桜内梨子。地味で普通な高校生の女の子――のはずでした)
梨子(カードキャプターになってからは、たくさん友達もできて、楽しい日々を過ごしてたんだけど……)
うちっちー「しかしあれだね、善子もなかなか強情だね」
梨子「よっちゃん……」ウル
梨子(『SWEET』の事件以来、よっちゃんが機嫌をなおしてくれません)
梨子の部屋の壁『ですが、前回の騒動のすぐ後はそんなに怒っているわけではなかったんですよね?』
梨子「そうなの。すぐに機嫌なおしてくれると思ったんだけど……」
梨子(原因は、つい1週間前、ケーキ屋さんに行ったときのことだと思います)
☆ ☆ ☆
144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:30:08.21 ID:C0VN0tby0
梨子「よっちゃん、ごめん!」ペコリ
善子「もう、『SWEET』騒動から何日経ってると思ってるのよ。もう怒ってないわ」
梨子「で、でも、罰としてケーキ食べに行こうだなんて……」
善子「そ、それは! 口実というか、何というか……」プイ
梨子「……?」クビカシゲ
善子「……っ///」
善子「ほ、ほら、さっさと食べなさいよ! 冷めるわよ!」
梨子「冷めるって、これ普通のケーキなんだけど……」モグモグ
鞠莉「あら? 梨子と善子じゃない」
果南「こんなところで会うなんて、奇遇だね」
善子「マリーに果南さん! って、ヨハネだって言ってるでしょ!」
果南「はいはい。それで、2人はどうしてここに?」
鞠莉「Date、かしら?」キラキラ
善子「そ、そんなんじゃ……///」
鞠莉「そんなんじゃ?」
善子「うるさいわね!」
鞠莉「ふふっ」
梨子「よっちゃんにこの前のお詫びをしに来たんです。ほら、ほっぺに、その……」
鞠莉「Kissしたから?」
梨子「そ、そうです。よっちゃんに嫌な思いさせちゃったみたいで」
善子「別に嫌だったってわけじゃ……」
梨子「ううん、わかってる、本当にごめん。でも『仕方なくて』……」
善子「…………は?」
善子「……仕方、ない?」カチャリ
鞠莉「Oh……」アタマカカエ
145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:30:49.58 ID:C0VN0tby0
善子「どういうこと?」ジト
梨子「その、あの場ではそれしか思いつかなくて、よっちゃんが嫌がることはわかってたんだけど! でも、その、近くに――」
善子「近くにいたから?」
鞠莉(か、果南! 帰るわよ、今すぐ!)ヒソヒソ
果南「え? あ、うん、え?」ズルズル
カランコロン……
善子「……」
梨子「えっと」
善子「ねえリリー。近くにいたから私にしたの?」
梨子「え、それは、その……」
善子「はっきりしてよ」
梨子「よっちゃんが、目に入って……」
善子「……そう、だったんだ」
梨子「よっちゃん?」
善子「……バッカみたい」
梨子「そ、そうだよね、ごめんね」アセアセ
善子「私がってことよ……っ!!」ガタッ
梨子「へ……?」
善子「何よそれ! 誰でもよかったんじゃない! 期待してケーキ屋さんなんか誘った私がバカみたいじゃない!」
146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:31:34.56 ID:C0VN0tby0
ザワザワ……ケンカダ……ザワ……
梨子「え、えっと、店内だから落ち着いて、ね?」
善子「……リリーは、誰にでもああいうことするの?」
梨子「そ、そういうわけじゃないよ! よっちゃんに感謝してるのは本当で、だから――」
善子「感謝なんて、一言伝えてくれれば満足だった!」
梨子「え……?」
善子「あんなことしなくても伝わったわ! 休み時間だって、夜一緒に飛ぶ時だっていいじゃない! 一言もらえれば、私わかったわ!」ジワ
梨子「でも、あの時は……!」
善子「わかってるっ!!」ポロ
梨子「よっちゃん、泣いて……」
善子「泣いてない!」グス
善子「……帰る」ゴソゴソ
梨子「待って! ごめんなさい、ごめ――」
善子「もういい」
善子「……わかってる。リリーは悪くない。仕方なかった」ウツムキ
善子「ただちょっと、ほんのちょっとだけ、私は自分が惨めになった………それだけよ」ポロポロ
カランコロン……
梨子「……よっちゃん」
☆ ☆ ☆
147: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:32:26.14 ID:C0VN0tby0
うちっちー「ああぁぁ……何回聞いてもさくらうちが悪いし胃が痛い」
梨子の部屋の壁『さすがに、言葉選びがまずかったかと』
梨子「……わかってるよ」ムス
うちっちー「それで、一昨日LINEが届いたってわけだったね」
梨子「うん、そうなの」スッスッ
堕天使†ヨハネ『今週末、9人で夏祭りに行くじゃない?』
堕天使†ヨハネ『そのとき、花火の時だけ、2人で話がしたいの』
堕天使†ヨハネ『私の大事な話を、聞いてほしい』
梨子「……」
うちっちー「……さくらうち」
梨子「流石に、わかるよ。そこまで鈍くないもん」
うちっちー「どうするんだい?」
梨子「……」
梨子の部屋の壁『……』
梨子「……私は、よっちゃんのこと―――」
うちっちー「……」
うちっちー(気づいているかい、さくらうち……?)
うちっちー(自分が、今までしたこともないような表情をしていることに)
うちっちー(そしてボクは、どうするつもりなんだい)
うちっちー(もうすぐ終わりだって知っていながら、お節介のつもりかい)
―――梨子『いいから黙って』
―――梨子『この不純妖精!』
―――梨子『うちっちーもありがとう』
うちっちー(ああ、それでもボクは――――)
☆ ☆ ☆
148: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:33:22.86 ID:C0VN0tby0
梨子「早く来すぎちゃったかなあ……」ボー
梨子(約束の夏祭りだけど、よっちゃんのこと考えてたら寝不足だよ……)ハア
善子「……リリー」カラコロ
梨子「あ、よっちゃん……。まだ余裕あるのに、早いね」
善子「リリーだって早いじゃない」
梨子「今来たところだよ」
善子「そう……」
梨子「……」
梨子(気まずい!)
梨子(それにしても、よっちゃん、すっごい綺麗……。白地に薄紅色の牡丹柄が柔らかく映えてて……)
梨子「よっちゃん、浴衣、すっごい可愛いよ。それに髪型も似合ってる。今日はポニーテールなんだね」
善子「う……。リリーだって、髪あげてるの初めて見るし、簪も素敵だし……」プイ
梨子「……え、えへ」テレ
善子「……///」ウツムキ
鞠莉「あら、私たちはお邪魔だったかしら?」
ダイヤ「もう、茶化すのはやめなさいと言ったばかりですのに」
梨子「あ、皆さんも……」
ルビィ「善子ちゃん、浴衣可愛いー!」
善子「ヨハネよ! ま、まあ堕天使なら当然ね! リトルデーモンも似合ってるわよ」テレテレ
ルビィ「りと……? でも、ありがとう善子ちゃんっ!」ダキ
善子「だからヨハネって言ってるでしょ!」マッタクー
梨子「……」ズキ
梨子(あ、あれ……?)
ダイヤ「ルビィ、喜ぶのは結構ですが、静かに動きませんと、浴衣がはだけてしまいますわよ」
ルビィ「あ、お姉ちゃんはルビィに近づかないでね」
ダイヤ「えっ」ガーン
花丸「あとは千歌さんと曜さんだけずら……」
果南「あ、あれじゃない?」
鞠莉「あらまあ、手なんか繋いじゃって」フフ
善子「あの2人、本当に仲いいのね」
149: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:33:54.82 ID:C0VN0tby0
千歌「みんなー!」タタッ
曜「ち、千歌ちゃん! 走らないで!」
千歌「わっ、ごめん曜ちゃん! ……それにしても、梨子ちゃんひどいよ!」
梨子「へ?」
千歌「一緒に行こうと思ったのに! 曜ちゃんが迎えに来てくれなかったら、私1人だったよ!」
梨子「えーっと、ごめん?」
千歌「むー」
曜「……」
千歌「はー……でも梨子ちゃん、浴衣綺麗だなあ。千歌なんて美渡姉に子どもみたいって言われたのに……」
千歌「やっぱ梨子ちゃんはすごいなあ……」
曜「……千歌ちゃん」ボソッ
梨子「」ゾワ
梨子(―――え?)
梨子「ち、ちょっと千歌ちゃん離れて!」
千歌「ほぇ?」
梨子(間違いない! 今、ほんの一瞬だったし、強くはなかったけれど、あの感覚がした!)
梨子「今のは―――」
うちっちー「そう、クロウカードだ!」ヒョコ
梨子「ひゃあっ!」ビクッ
150: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:34:56.53 ID:C0VN0tby0
梨子「うちっちー! ど、どうして私の巾着の中に!?」
うちっちー「夏祭りと聞いて、ボクが黙ってると思ったのかい?」
梨子「ああ、浴衣を見たかっただけ……」
うちっちー「浴衣じゃない! ボクが見たいのは浴衣を着た女の子さ! ここは大事なところだよ、さくらうち!」
うちっちー「鮮やかな浴衣! 薄くひいた口紅! 袖をつまむ白い指! ちらりと覗くうなじ!」
うちっちー「劣情がなんだ! うなじがなんだ! ポニーテールを禁止したって、浴衣や夏祭りは禁止するかい? 否!!」
うちっちー「みんなは気づいているはずなんだ! もう決して止められないんだって! それこそが青春の輝きを与えてくれるんだって!」
うちっちー「そう……うなじは文化なんだ」
ダイヤ「話ずれてますわよ」
梨子「聞き流せばいいんですよ、ダイヤさん」ハア
善子「それより、さっきクロウカードがどうとか言ってなかった?」
うちっちー「ああ、さくらうちも気づいただろう?」
梨子「さっき、一瞬クロウカードの気配がした……」
うちっちー「ついてきて正解だったね、うん」
梨子「結果的にね」
うちっちー「手厳しいね。君たちも、警戒しながら歩くんだよ」
鞠莉「OK! いざとなったら小原家の力でなんとかしてやるわ!」
うちっちー「いや、この前まで暴れてたの君だからね?」
鞠莉「I don't know what you mean」
アハハハ
ネードコイクー?
キンギョスクイ!!
ヤキソバガイイズラ!
曜「……」
☆ ☆ ☆
151: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:35:32.26 ID:C0VN0tby0
果南「千歌、集中して……」ゴクリ
ルビィ「精神統一です……!」ゴクリ
千歌「……」
千歌「……」スッ
千歌「とおおりゃあああ!!」バシッ
梨子「きゃっ! 千歌ちゃん振り回さないで!」
千歌「ふっふーん、金魚すくいには集中力と勢いが大事なのだ!」ニコニコ
曜「もう千歌ちゃん、梨子ちゃんにくっつきすぎだよ」グイ
善子「そうよそうよ」ムー
千歌「えー、そう? じゃあ、えいっ!」ギュ
曜「あっ」
梨子「ちょっと、なんでもっとくっつくの?」
千歌「高海アタック! なんちゃって」エヘヘ
善子「もうっ、仲いいんだから……」ハア
曜「……」ジー
梨子「―――っ」ゾク
梨子(ま、また……!)
うちっちー「気づいたかい、さくらうち?」
梨子「うん……。さっきも、千歌ちゃんが近くに来たら気配が強くなった……」
うちっちー「千歌から目を離さないようにしたほうがいいね」
152: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:36:10.12 ID:C0VN0tby0
花丸「焼きそば買ってきたずらぁ!」
鞠莉「んー! たまにはこういう庶民的なのもGoodね!」
果南「もう、嫌みっぽいよ鞠莉」
鞠莉「失礼ね! そんなこと言う口には……えいっ!」
果南「むぐっ! って熱い熱い!!」
うちっちー「いやあ、むぐむぐ、平和、はふっ、だね!」
梨子「食べるか話すかどっちかにして。えっと、千歌ちゃんは……」
千歌「はい、ダイヤさんあーん!」
ダイヤ「は……? いきなりなんですの?」
千歌「だって、この前もプリン食べさせてあげたし……」テレテレ
ダイヤ「あれは不可抗力ですわ!」
千歌「ええ、あんなに情熱的に千歌のスプーンを咥えたのに……?」
ルビィ「お姉ちゃん……」ヒキ
ダイヤ「」
ダイヤ「誤解を招くような言い方をしないでください!」ガシッ
千歌「あはは! ごめ、ごめんなさい、冗談、冗談だから! 痛い!」
曜「千歌ちゃん、やっぱり……」ジー
梨子(曜ちゃん……何だか怖い顔してる……?)
梨子「っ!」ゾワゾワ
梨子(また来たっ!)
うちっちー「さくらうち! 今の!」
梨子「うんっ! うちっちー、あのね……」
☆ ☆ ☆
153: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:36:48.46 ID:C0VN0tby0
ガヤガヤ……
梨子「ここなら聞かれないかな」
うちっちー「それで、怪しい人を見つけたって?」
梨子「うん、曜ちゃんなの」
うちっちー「曜が? どうして?」
梨子「そこまではわからないけど……千歌ちゃんがダイヤさんと話してるのを、怖い顔で見てて……」
うちっちー「その直後のカードの気配がした、というわけか」
梨子「曜ちゃんは、何を願ったんだろう?」
うちっちー「曜と千歌、か……」フム
千歌「あれー? 2人とも、何してるの?」テクテク
善子「急にいなくなるんだもの、探したわよ」
曜「……」
梨子「あ、ごめんね3人とも……」
善子「いったいどうしたのよ?」
梨子「えっと」チラ
曜「……何、梨子ちゃん?」
梨子「う、ううん! 何でもないの! ほら、みんなのところに戻ろう?」アセアセ
千歌「もう、梨子ちゃんいないからびっくりしたよー」
千歌「逃げないように、こっちの腕捕まえた!」ギュ
梨子「ひゃっ!」
梨子(って、千歌ちゃんがくっついたら、曜ちゃんが……!)
曜「……」
曜『……マシイ』
梨子「―――っ!!」ゾワゾワゾワ
梨子(この気配……! 今までで一番強い……!)
154: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:37:43.93 ID:C0VN0tby0
曜『――――シイ、――ヤマしい』ブツブツ
善子「ち、ちょっと曜さん?」
梨子「よっちゃん! 離れてっ!!」
曜『――――ウラヤマシイッ!!』ゴウウウウッッッ
千歌「……え?」
善子「曜さんが……燃え……っ!?」
千歌「曜ちゃんんんんっ!!」
うちっちー「炎……! あ、あれは……!」
曜『千歌ちゃん千歌ちゃん千歌ちゃん千歌ちゃん―――ッ』シュインシュインシュイン
千歌「は、早く火を消さなきゃっ! 曜ちゃんがぁ! 曜ちゃんが死んじゃう……!」ポロポロ
うちっちー「大丈夫だ! 曜自身に害はない!」
千歌「ほ、ほんと?」
梨子「ど、どういうことなのうちっちー?」
うちっちー「『FIREY(ファイアリー)』だ! 『WATERY』と同じ、攻撃カードだ!」
善子「火の、攻撃カード……!」
曜『……千歌ちゃんから、ハナレロ』スッ
ボウウウッッッッ
バチバチバチッ
梨子「きゃあっ!! 屋台が焼けちゃう……!」
155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:38:26.33 ID:C0VN0tby0
ザワザワ……カジ……?
ダレカ……ショウボウシャ……
うちっちー「まずい、騒ぎになる!」
梨子「とにかく消化しなきゃ!」バッ
梨子『闇の力を秘めし「鍵」よ! 真の姿を我の前に示せ――』
梨子『契約のもとさくらうちが命じる―――』
梨子『レリーーーーーズ!!』
鍵『』グググッ
梨子「よしっ、あとは……」クルクル
梨子「お願い! 『WATERY』!!」キイイイン
シュワアアアアアア……
善子「な、なんとか鎮火できたわね……」
曜『……』シュウシュウ
梨子「曜ちゃんの火の勢いも弱まってる……」
うちっちー「『WATERY』だけのおかげじゃないな。千歌がさくらうちから遠ざかったからだ」
千歌「私が?」
うちっちー「そうさ。さっきの曜の言葉を聞いたかい?」
梨子「うらやましい、って」
うちっちー「ああ。曜の炎は、千歌を愛するが故の妬みの炎……」
うちっちー「いわゆる、嫉妬ファイヤーなんだっ!」ビシッ
千歌「嫉妬、ファイヤー……!」
156: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:38:57.65 ID:C0VN0tby0
千歌「じ、じゃあ曜ちゃんは私が梨子ちゃんにぎゅってしたから、羨ましいって……?」
うちっちー「そういうことだね」
千歌「……曜、ちゃん」
曜『……千歌ちゃん』シュウウウ
千歌「……」ギュ
梨子「な、なんでまた私に!?」
曜『―――ッ!』ゴウウウッッ
千歌「……」パッ
曜『……』シュウウウ
千歌「……」ギュ
曜『―――ッ!』ゴウウウッッ
千歌「……」パッ
曜『……』シュウウウ
千歌「ほんとだ!!」
梨子「遊ばないでっ!」
157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 00:39:34.37 ID:C0VN0tby0
曜『ウ……ぐ……っ!』
梨子「よ、曜ちゃんが苦しんでる?」