【ゆゆゆ】結城友奈「東郷美森は平常運転である?」
PCゲーム、ゆゆゆい、のわゆ、読み切り小説等のネタが多少含まれています
時間軸的には勇者の章1話前後です
*ある日・三人での部室
乃木園子「わっしー……私眠いんよ……」ウツラウツラ
東郷美森「そのっちが眠そうにしているのはいつものことだけれど、今日は一段と眠そうね?」
園子「昨日は十時間しか、寝てないんよ……」
美森「それは寝過ぎよ、そのっち。九十分周期に睡眠を組み込めていないのと睡眠過剰で眠くなっているのよきっと」
園子「それは言わないお約束だよぉ、わっしー」
結城友奈「……」
友奈「ねぇ、東郷さん。園ちゃんがわっしーって呼んでいる由来は今更だけど聞いても良いのかな?」
美森「もちろん構わないわよ、友奈ちゃん。──私は昔、小学6年生の時分に、鷲尾という親戚筋の養子となったの。その際改めた名前が鷲尾須美になるわ」
園子「当時の勇者は大赦の身内でやっていかなければならなかったからね。名家である鷲尾家はどうしても勇者の素質のあるわっしーが欲しかったんだよ」
友奈「そう、なんだ……。そ、それじゃあ私も東郷さんのことを須美ちゃんって呼んじゃったり、なんて──」
その時、東郷美森に電流が奔る!
記憶にないはずの思い出(詳しくは花結いのきらめきをよろしくな!)が須美の頭の中を駆け巡ったのだった!
美森「友奈さん! 今からでぇとに行きましょうか!?」ガバッ
友奈「と、東郷さん……?」
園子「わっしー、ゆーゆに近づき。あと、鼻息荒くてちょっと怖いよ?」
美森「ご、ごめんなさい友奈ちゃん。新鮮な呼ばれ方だったものだからちょっとだけ興奮しちゃった」ハァハァ
友奈「そ、そうなんだ。……ええと、須美ちゃん?」
美森「はい! 友奈さん!! どこまでもお付き合いさせてください!!」クワッ
園子「……人様にお見せできない顔になってんるよ、わっしー……」
……うん、須美はこういう奴だったな
*ある日・東郷宅
美森(返ってきた私たちの供物……。だけれど、これは本当に私たちのものなの?)
美森(端的に言えば、自分の肉体で五感のはずなのに"慣れる"のに時間が掛かり過ぎだったように思うのだ)
美森(例えば夏凜ちゃん。彼女の満開時期を考えれば、私の足のように筋力が衰えていることは考えづらく供物返還と共に歩行可能となっていてもおかしくないのではないだろうか?)
美森(もちろん神樹様の行うことを現実の事象と照らし合わせることは無為であるのだけれど違和感はどうしても付きまとう。現に私の記憶だって──)
美森「……はっ!」
その時、東郷三森は天啓を得た!
美森「もしかしてこれは──"供物返還がちゃ"と言うものなのかしら!?」
美森(返ってきた供物に違和感があるのは、そう! 神樹様が他の子と取り違えてしまったに違いないわ!)
ガチャって、須美……・
あと、それだと随分おっちょこちょいな神樹様になってしまうぞ?
美森(足の機能を供物として捧げたのは私、そのっち、夏凜ちゃん、そして──友奈ちゃん!)
美森(つまり、この足の機能は! 友奈ちゃんのものなのかもしれない!!)スリスリ
……おめでとう! 須美は脚フェチに進化した!
と言うかさ、考えてみれば神樹様こそ脚フェチなのかもしれないよな
*ある日・夏凜の家
美森「友奈ちゃんの立ちくらみが心配なの……」
三好夏凜「友奈自身は大したことがないって毎回言っているけど確かに気になるわよね」
美森「あまり考えたくないことなのだけれど、立ちくらみの間、実は樹海化が起きていて、友奈ちゃんが一人でバーテックスと戦っているなんてことを最近考えてしまうの……」
夏凜「そ、それはちょっと飛躍し過ぎじゃない? 第一、そんな大事を秘密にするような子じゃないでしょうよ」
美森「もちろん、私も分かってはいるのだけれど、どうしても考えが頭を過ぎってしまって……」
夏凜「そもそも、私たちの身体って前より疲れやすくなっているわよね? だから、友奈の立ちくらみもその部類じゃないの?」
美森「……やっぱり夏凜ちゃんも自覚していたのね。でもね、夏凜ちゃん! 例えば、友奈ちゃんが過去の世界に行って今も戦っていたりとか、考えたりすることはない?」
夏凜「流石にないわよ! でも、ええと、高嶋友奈だっけ? 園子の家の倉にあった書物に書かれていた先代勇者の名前。あれが友奈本人かもしれないって東郷は思っているってこと?」
美森(そう、二冊目の勇者御記には友奈ちゃんと同じ名前の勇者が居て、そこではきっと仲間の勇者と共に──)プルプル
あー、ここから少しだけ須美の妄想が入るッス
■■■『高嶋さん。今日は一緒にこのゲームをしましょう』
友奈(アホ毛)『わくわく、どんなゲームかなぁ。何だか可愛い女の子の絵がいっぱい描かれているね、■■ちゃん』
■■■(高嶋さんと二人で恋愛ノベルゲーム……なんて罪深い行為なのかしら! だけど、もう引き返すことなんて出来ないわ!)ドキドキ
美森「そして遊んでいるうちに電子紙芝居に影響されて二人は良い雰囲気になるに違いないわ! それから、それから……っ!? ゆ、許すまじ■■■!!」
夏凜「お、落ち着きなさいって東郷! あと、■ってどう発音している言葉なのよ!?」
■■さん、うちの須美がご迷惑をおかけしています
*ある日・部室で二人
犬吠埼樹「えい! ……戦車の逆位置……。あ、あの! 東郷先輩」
美森「なあに、樹ちゃん? ぼたもち食べる?」
樹「あ、はい。ではなくて、もしかして東郷先輩、何かにお悩みですか? ぼたもちは後でいただきます」
美森「……」
美森「……樹ちゃん、私って分かりやすいものなのかしら?」
樹「あ、いえ、タロットの結果なだけなんですが……。でも、本当にお悩みだったんですね。私で良ければ聞きます、お話! ……その、本当に聞くだけになっちゃうかもしれませんけど……」
美森「……ありがとう、樹ちゃん。悩んだら相談だものね。でも、聞いていて愉快な話じゃないし、皆との決め事を少し破ってしまうような話になってしまうのよ」
樹「大丈夫です。私これでも口が堅いんですよ?」ニコッ
美森「……本当に勇者部の未来は安泰ね。あのね、樹ちゃん……」
美森「──私には贖罪が必要なのよ」
樹「ええと、しょくざい……罪を償うって意味でしたか?」
美森「ええ。私は壁を壊してこの世界を終わらせようとした。その事実は例え優しい皆が許してくれても決して消えることはないの」
樹「そんなことありません! 東郷先輩は誰よりも苦しんで、その、想像しかできませんけど辛いなんて言葉では表現できないくらい大変だったはずで、そんな思いをすればきっと私だって──」
美森「……樹ちゃんのその言葉だけで救われる心地よ。ありがとう、樹ちゃんは本当に優しいね」
樹「いいえ、こちらこそありがとうございます。それに、東郷さんはもっと優しいから思い詰めてしまうんだと思います。だから、頼りにはならないと思いますけど、私を頼ってもらえると嬉しいです。もちろん、お姉ちゃんや友奈さん、夏凜さん、園子さんにもです」
美森「……風先輩が樹ちゃんの成長を泣いて喜ぶ気持ちがよく分かるわ。ねぇ、樹ちゃん、抱きしめても良い?」
樹「えぇ!?」
美森「だめ?」
樹「え、え、ええっと……はい、どうぞ」モジモジ
美森「かわいい!」ギュッ
樹「うぅ……何だか恥ずかしいです」ウゥ
美森「……本当に、本当にありがとうね、樹ちゃん……」ポツリ
……ああ、そうだ
辛いときは仲間に、友達に、頼って良いんだよ、須美
美森「それでね、樹ちゃん。迷惑ついでにもう一つ相談しちゃうけれど、私最近皆の脚の美しさに魅了されちゃって目が離せなくて困っているのよ」ジー
樹「……へ?」
須美の奴、鼻血流しながら樹さんの脚を観てるし!?
良い話が台無しだよ!
*ある日・犬吠埼家
美森「風先輩」キリッ
犬吠埼風「……どうやら深刻な話のようね。何があったの?」
美森「友奈ちゃんの脚が自分の脚に付いていると思うと夜も眠れなくなると思いませんか?」
風「何言ってんの、あんた?」
美森「風先輩も私たちに返ってきた供物へ違和感を覚えたことはあったはずです」
風「そりゃあ、まぁね。ってやっぱり真剣な話っぽいじゃない。……ああ、良かった。さっき友奈の足とか聞こえたのはアタシの空耳だったのね」
美森「だから、私の脚が友奈ちゃんの脚の機能で興奮します」
風「空耳じゃなかったッ!?」
ガララッ
樹「おはよー、おねーちゃん……」
風「ほい、おそよー」
美森「お邪魔しています、樹ちゃん」
樹「あれ……とうごう、先輩!?」ササッ
風「……なんで東郷を見て一番に自分の足を手で隠すのよ。──ねぇ、不思議よねトーゴー?」
美森「風先輩」キリッ
風「あんたのその真剣な表情に最早嫌な予感しかしないけど、何よ?」
美森「風先輩のおみ足も肉感的で美しいですよ」キリッ
風「……ねぇ、樹。この東郷、病院に連れていなくても大丈夫だと思う?」
樹「ええと、色々な重さから解放されたんだよ、きっと。だから、今はあたたかい目で見守ってあげて」
うちの須美がほんっとーに! ご迷惑をおかけしています……ッ!!
*ある日・東郷宅
美森「いけないわ、このままでは!」
美森(最近私は皆の脚に気を取られてしまっている。特に友奈ちゃんの脚と自身の脚が顕著だ。このままでは日常生活に支障が出るのも間近だろう。でも、この煩悩を祓うためにはどうすれば良いと言うの……?)
美森(!!)
美森「……あった。たった一つだけ皆の脚から救われる方法があった」
美森「これで皆(の脚)を救うことが出来る!」
*ある日・勇者部部室
園子「ごめんごめん~、もう始まってるー? 掃除当番の途中で寝てしまったんよ~」
夏凜「園子、そんな時に寝る事が出来るのはあなたくらいよね」
園子「わぁ! 褒められたー!」
友奈「良かったね! 夏凜ちゃんはなかなか人を褒めないんだよ」
樹「多分、褒められてはいないんじゃないかな……?」
風「さて、全員揃ったわね? じゃあ十二月期の部会、始めるわよ!」
友奈(秋まで色んな事があったけど、今讃州中学勇者部はこんな風にやたら元気です!)
*保育園でのボランティア後・部室
風「園子もさ、二人共一体どうしたのよ? 友奈は泣き出すし、園子はずっと怖い顔してるしで本当何があったって言うの?」
園子「……よく聞いてね? 今のこの記憶は嘘ってこと」
風「えっ?」
園子「なにかとんでもなく微妙な事が起きていて、それが何だか分からないけど、私達はそれをなかった事にしてる」
友奈「私、思い出した……。勇者部にはもう一人、とても大切な友達がいたんだよ」
友奈「東郷さん! ここに、東郷美森って子がいたんだよ!」
風・樹『!?』サッ
夏凜「あんたたち何脚を隠して──はっ!?」サッ
*夏凜の回想
美森「夏凜ちゃん……(私)もう手遅れだよ……」
夏凜「あんた、何言って!」
美森「夏凜ちゃんの引き締まった足から目を離せないの! どうしても離すことができないの!!」
夏凜「最近足元に感じていた熱っぽい視線って東郷だったの!?」
美森「夏凜ちゃんの脚でこうなんだよ? 友奈ちゃんの脚、私に付いている友奈ちゃんの脚の機能を見るともう自分を抑えることはできないの……」
夏凜「……ごめん。涙を浮かべているところ悪いんだけど、言っている意味が全然分からない」
美森「だからね、私、神樹様のところに行ってくるね」
夏凜「え、え……!? 話の流れが全然見えないけど、神樹様のところに行くって、あんた何する気!?」
美森「……」ニコ
夏凜「とう、ごう? ──東郷っ!!」
夏凜(悲しそうに微笑する東郷とそれを追いかけようとしていた私。多分、これが覚えている東郷との最後の記憶になる)
*時間は戻って部室
夏凜「私なら東郷を止めることができたはずなのに、東郷の言っていることが意味不明すぎて行動が遅れたんだ! ちくしょう!」ドンッ
風「私、部長なのに……また……」
友奈「でも、もう思い出した。何で、何が起こってるの……?」
園子「わっしー。今どこで、何してるの……?」
ガラッ
美森「東郷美森、ただ今帰還しました!」
友奈「東郷さん!?」
園子「わっしー!?」
樹「あ、お帰りなさい」
美森「ただいま、樹ちゃん」
夏凜「あ、あんた今まで何して──」
美森「何のこと夏凜ちゃん?」
夏凜「何のことって……あれ? 何だったかしら?」
友奈「ええと、東郷さんが家庭科室でぼたもちを作ってくれていたんだっけ?」
園子「わっしーのぼたもち美味しいよね~」
樹「私も東郷先輩みたいにお菓子を上手に作れるようになりたいです」
美森「なれるわよ、樹ちゃんなら」ニヤリ
そして、東郷美森は記憶改変が成功していたことにほくそ笑んだのだった!
……はぁ、須美は昔から変なことにも全力全壊で参っちゃうよなぁ……
*東郷美森の真相
夏凜「あんた、どこに行く気?」
美森「どうして止めるの、夏凜ちゃん!」
夏凜「いや、止めてはいないけどさ。そっちは大赦よ? 勇者のお役目から解放された私たちが行ける場所じゃないわ。……って何で私の足元を見てんのよ?」
美森「夏凜ちゃん……私もう手遅れだよ……」
夏凜「え? あんた、何言って!」
美森(今も夏凜ちゃんの脚しか目に入らない。だけど、私は気付いたのだ。これは代償行動。自分の脚、友奈ちゃんの脚の機能を持つ脚に視線を向けないための防衛行動。このままでは大和撫子としての命に係わることは容易に想像がつく)
美森「だからね、私、神樹様のところに行ってくるね」
夏凜「え、え……!? 話の流れが全然見えないけど、神樹様のところに行くって、あんた何する気!?」
美森(私は勇者であり巫女。だから、私には神樹様の声が届いていて──。ごめんなさい、夏凜ちゃん、皆。少しだけさようなら)ニコ
夏凜「とう、ごう? ──東郷っ!!」ピタリ
美森(夏凜ちゃんは動きを止め──樹海化が起きたのだ──私は樹海の中をゆっくりと進んで行った)
美森(そして、私は神樹様に触れ、皆の記憶から居なくなった)
美森(私の目的は神樹様に供物を正しい持ち主へと返して貰うことだった。それが叶えば私の邪念は消え去り、日常生活に戻れると信じていたから)
美森(だけど、現実は残酷だった)
美森(私に戻ってきていた供物は友奈ちゃんのものではなかったのだ。それなのに邪念は未だに健在で消える気配すら見せない)
美森(その驚きと失望は計り知れなかったけれど、幸いにして私は同じ苦悩を共有できる存在と知り合うことが出来た)
美森(そう、神樹様だ)
美森(世間では脚ふぇちと呼ばれる者同士、それはもう語り合った)
美森(正確には言葉ではなかったのだけれど、互いの想いは確かに通じていた)
美森(そのような素晴らしい時を過ごし、私は今日再び勇者部への帰還を果たす)
美森(神樹様の計らいで私が居なかった期間の記憶は補てんされ、いつも通りの日常を取り戻していくはずだ)
美森(何より──)
美森(脚ふぇちである東郷美森を知っている者は、この世で神樹様しか存在しなくなる)
美森(これも神樹様の計らいだ。だから、その気持ちに応えるため国防へますます励もうと心に心に誓った)
美森(そして、私は日常へと戻って行った)
……真剣に語っているけどさ、須美
実際には何から何までギャグでしかないよな、この回想!
*エピローグ・ある日の日常
風「今日は皆でゴミ拾いよー!」
勇者部『おー!!』
~歩道~
風「ほらほら、樹。ここに大物があるわよ~」
樹「ゴミ袋に入るかな……?」
夏凜「待ちなさい、樹! それはプラスチックに見せかけた金属よ! だからこっちの袋に入れなさい」
園子「へいへい、わっしー、ゆーゆ! こっちも部長たちに負けてられないぜぇ! 大物はっけーん! 捕獲します!」
美森「もう、そのっちったら元気なんだから」ジー
友奈「東郷さん凄いねー。一番後ろでゴミの見落としがないかしっかり見てくれているんでしょ?」
美森「え、えぇ! 町は隅々まで綺麗にしなくちゃ!」アタフタ
友奈「よーし! 私も見落とさないようにしっかり探していくぞー!」アシチラ
美森「……」マジマジ
美森(こうして、私は掛け替えのない勇者部での時間を取り戻した。どうか、いつまでもこの日常が続きますように──)ジー
……あ、うん。何となく綺麗な締めだとは思うけど、ほどほどにな須美?
おしまい
ほのぼので書いていたのが、書いているうちに……
それはそれとして『結城友奈は勇者である 勇者の章』好評放送中です!
12月に中学生そのっちが追加される『花結いのきらめき』も要チェックだ!
では、またどこかで
面白かった
乙乙
Entry ⇒ 2017.12.12 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
結城友奈「逆行系勇者、三好夏凜!」
このSSは結城友奈は勇者であるシリーズ全てのネタバレがあります
ゆゆゆいは白鳥歌野の章第2話終了までいっていれば大丈夫です
下記の内容はゆゆゆいで最終決戦が行われたと言う仮定で進んで行きます
*ゆゆゆい最終決戦の後
上里ひなた「皆さんの尽力のおかげで、無事この世界は終わりを迎えます」
三好夏凜(勝利の余韻に浸っていた私たちに、ひなたが申し訳なさそうにそんなことを言った)
犬吠埼風「なんじゃこりゃー!?」
高嶋友奈「わぁ!? 世界がだんだんぼやけてきているよー!」
ひなた「この世界は止まった時間でした。……だから残念ながら、皆さんが戻られた時にはここでの記憶の一切は失われていることでしょう」
乃木若葉「……何となく察してはいた。私の子孫がここでの記憶を持ち合わせていなかったからな。だが、この幸せな時間は例え記憶が失われたとしても確かにここに存在した」
白鳥歌野「ここでの記憶はマイトレジャー! だから、私はこれからも諏訪を全身全霊をかけて守っていける。皆、ありがとね!」
三ノ輪銀「いやー、折角仲良くなれたんだけどなー。未来の二人とも元気で! ……夏凜さん、須美と園子のことよろしくお願いしますね」
夏凜「銀、あんたもしかして──」
夏凜(私が言いかけたその時、世界は一層ぼやけて、眩しくなって、そして……)
夏凜(満足した皆の笑顔と共に、私たちは光の中に溶けていった)
*夏凜のアパート
夏凜「ここは……」
夏凜(見慣れた質素な部屋。最近は友奈達のせいでモノが増えてきているけど、まぎれもなく私の部屋だった)
夏凜「……戻ってきたのね」
夏凜(初代、先代勇者たちと過ごしたあの世界は本当に終わったと言うことなのだろう。……銀、あんたとの約束は必ず果たすわ。誓いを改めて胸に抱いたところで、気付く)
夏凜「まったく、何が記憶の一切が失われていることでしょう、よ?」
夏凜(いっつも的確なことばかり言っていたひなただったけど、最後の最後で間違えたらしい。でも、そうね、これは悪くない)
夏凜(もう出会うこともできないかつての勇者たちだろうから、この記憶が残ってくれたことだけは感謝したい)
夏凜(鏡に映った私がニヤニヤしていたのが恥ずかしくなって、いつもよりもきつめのトレーニングをしてその日は就寝した)
*翌朝・学校
夏凜(こうして学校に通うのも随分と久しぶりのはずなんだけど、あの世界でも毎日通学していたからそんな感覚は微塵もないわね)
夏凜(階段を上り、廊下に出たら友奈の見慣れた後ろ姿を見つける。そう言えば、鍛錬に明け暮れていたせいでSNSで連絡を取ることさえ忘れていたっけ)
夏凜「ゆう……!?」
夏凜(友奈に声をかけようとして、気付く)
夏凜(それはありえない光景。だけど、あいつは確かにその姿で)
結城友奈「あ、夏凜ちゃん! おはよう!」
夏凜「……友奈。これって何かの冗談、なの?」
友奈「冗談? 東郷さん、何か冗談とか言った?」
東郷美森「いいえ、冗談何て言っていないわ。……三好さん、夏凜ちゃん? そんなに驚いた顔をして、何かあったの?」
夏凜(東郷はいつも通り。だけど──)
夏凜「なんで、また、車椅子に乗っているのよ……!」
夏凜(あの過酷な日々を思い出させる姿で東郷がそこに居た)
*授業中・教室
夏凜(……何となく察してきたわ)
夏凜(あの後、友奈と東郷は不思議そうな顔をするばかりだった。根本的に会話がすれ違っているような感覚と言えば良いか)
夏凜(だから、放課後、勇者部の部室であの二人を問い詰めることにしたのだが……)
夏凜(明らかな異常がこの教室にはあった)
夏凜(勇者部の六人目が登校してきていない。机だって存在しない)
夏凜(勇者を務めてきたから不思議なことには慣れているつもりだった)
夏凜(いつだったかは変な夢を見た記憶がぼんやりあるし、最近まで銀たちと一緒に戦ったりもしていた)
夏凜(ちょっとやそっとのことではもう戸惑わないと思っていた)
夏凜(だけど)
夏凜(これを認めるにはそれなりの時間が必要だったわよ……)
夏凜(それでも認めざるを得ないのは、同じクラスの勇者部三人の様子と今行っている授業内容、極めつけで黒板の日付けだ)
夏凜(──つまりは、私は転入してきた日の翌日、その明らかな過去に居るようだった)
*放課後・勇者部部室
風「へ? タイムスリップゥ!?」
夏凜「そうよ。あの世界から戻ってきたと思ったら、この時間に来ていたの。我ながら意味不明だけど事実なのよ」
友奈「東郷さん。タイムスリップって何だっけ?」
美森「時間跳躍、タイムトラベルという表現もあるのだけれど、今回の場合は過去に戻ってくることを言うわ。私はあまり読まないけれど、SF小説によくある題材ね」
犬吠埼樹「あ、あの! あの世界って何なのでしょうか?」
風「ぬおっ!? 人見知りの樹が自ら新入部員に質問をした!? 立派になったわね、樹」
樹「お姉ちゃん、大袈裟! ……夏凜さんは何だか優しい感じがするんです」
夏凜「て、照れるじゃない、樹! サプリキメとく? ……じゃない! もしかして、あんたら、あの世界のことも覚えていないの!?」
美森「……夏凜ちゃん。残念ながら私たちに不可思議な記憶はないようよ」
夏凜(皆の確認を取ってから告げた東郷の言葉は、私にそれなりのダメージを与えるのだった)
友奈「夏凜ちゃん、元気出して?」
夏凜「別に落ち込んでなんか……」
美森「どう思いますか、風先輩?」
風「正直タイムスリップとかすぐには信じられないわよ。でもね、あれだけツンケンしていた子が一日でこれよ? 信憑性はあるんじゃない?」
美森「私も同意見です。となりますと問題はどうやって夏凜ちゃんを元の時間に戻してあげるかになりますが」
夏凜「……風と東郷は私の話、信じてくれるの?」
美森「非現実感はあると思うけれど、樹海化を見ている身で今更よ。それに今の夏凜ちゃんはとても勇者部らしいから、それなりの時間が経過していることは分かるの」
夏凜「勇者部らしいって何よ?」
友奈「悩んだら相談! だね」
樹「夏凜さんは勇者部五箇条を守ってくれているように見えます」
風「そうね。とてもじゃないけど昨日の夏凜じゃ、あたしたちに相談してくれる感じじゃなかったでしょ? だから、あたしたち勇者部は夏凜の話、信じるわ」
夏凜「あんたたち……」
夏凜(何だか胸に熱いものがこみ上げてくる。勝手に一人取り残された気持ちになってしまっていたから中々に来るものがあった)
風「とは言ってもどうしたもんかしらね?」
美森「現状の把握と原因の究明が主な流れかと」
夏凜「……現状の把握って、一応さっき説明したわよね?」
夏凜(不覚にも感動してしまったことを誤魔化すように私は質問をしていた)
美森「ええ。ただ、タイムスリップという認識が正確なものであるかはまだ断定できないの。例えば、夏凜ちゃんに何者かが偽物の記憶を与えて、逆行しているように見せかけている。そんな可能性も考えられるわ」
樹「それはそれでタイムスリップ以上に不思議ですね……」
友奈「私は難しいことよく分からないけど、これって神樹様が起こしてくださっている出来事なんだよね?」
風「世の中の不思議なことは大体神樹様よね~」
夏凜「要は私の記憶が操作されていたとしても、タイムスリップだったとしても神樹様に何とかしてもらうしかないってわけね……。満開の時のように上手い事いけば良いけど」
風「満開? 勇者の切り札のこと?」
夏凜「当たり前でしょ? 満開って言ったら……あ」
夏凜(そうよ。過去に戻ったってことはここに居る皆、またあの苦しみを味合わなければならないってことでしょ……! なんで今の今まで忘れていた私!?)
風「……何だか夏凜の顔色が青を通り越して白いんだけど」
友奈「大丈夫、夏凜ちゃん?」
美森「……風先輩、原因の究明にあたって問題になる点がいくつか出てくることが予想されます。その一つが、私たちが未来を知ることによる正史とのタイムパラドックス。先に起こることが分かった故に未来が変わってしまうということですね」
風「でも、夏凜からその辺の話を聞かないと解決もできないんじゃないの?」
美森「はい。だからこそ、私たちはどんな未来を知っても平静を保たなければなりません」
風「なるほど、そういうことね」
美森「夏凜ちゃん。間違っているかもしれないけれど、未来で私の足は完治していて、勇者部に死傷者、もしくは大きな後遺症を背負った者はなし」
美森「そして、満開と言う言葉には夏凜ちゃんがショックを受けるほどの負の意味がある。どうかしら?」
夏凜「な、なんでそれを……?」
美森「夏凜ちゃんの反応から推測できることよ? 正直、勇者と言うお役目は死を連想させられたから生存していると知ることができて少しほっとしているわ」
美森「もちろん、気を緩めて未来を変えてしまうことは避けなければならないけれど」
樹「そうだったんですね……」
友奈「全然気づかなかったよ」
風「東郷の観察眼が普通じゃないのよ。でもまぁ、この辺りが判明してしまった以上、タイムパラドックスなんて今更よね。ほらほら、夏凜、包み隠さず全部話しなさい。……特に満開のことを聞かせて」
夏凜「うっ……」
夏凜(自分の反応の迂闊さに後悔しかない。しかも、一番知られたくないことを風が最後だけ真面目な顔をして訊ねてきて──)
夏凜「結局、全部話してしまったわ……」
風「……皆、ごめん。あたしが皆を勇者部に誘わなければ……」
夏凜(当然のように風はお通夜のような状態になっているし)
美森「私が……神樹様を……」ブツブツ
夏凜(東郷は虚ろな目をしているし)
友奈「で、でも! 良い結果になったんだからそれで良かったんだよ、ね?」
夏凜(友奈でさえ言葉に少しだけ迷いが見られるし)
樹「……未来の勇者部は本当に立派なんだなって、分かって嬉しいです。私も頑張らないと」
夏凜「樹っ! 流石は将来の勇者部を背負って立つ子よ!」
樹「えぇー!?」
夏凜(一人だけくじけることのなかった樹に私は抱き着いていた)
風「樹……。……でも、ほんと、樹の言う通りよ。あたしが始めた勇者部なんだから、あたしは良い未来になるようにしていく義務がある。そして、未来のあたしはそれを果たした!」
美森「そうですね……。記憶にはないけれど、先代勇者だった私が果たさなければならないことは確かにあるのね。未来の私が全うしたように」
友奈「うん、もう迷いはないよ! 未来の私たちに恥ずかしくないように今の私たちが頑張らなくちゃ!」
夏凜「樹。あんたの強さが風たちを立ち直らせたわ。……その、あ、ありがとう」
樹「よ、よく分からないですけど、お姉ちゃんたちがいつも通りに戻って良かったです」
夏凜(こうして、皆に一番打ち明けにくかったことは樹のおかげで受け入れてもらうことができた。なら、次はあの世界の話、初代勇者と先代勇者たちと過ごしてきたあの輝かしい時間を皆に伝えるべきね)
夏凜「これは、初代勇者たちと先代勇者たちとの話になるんだけど──」
夏凜(そうして私は語っていく。素晴らしい勇者たちとのあの掛け替えのない思い出を)
夏凜(──そして、ここから三好夏凛のやり直しの物語は始まることになる)
三好夏凜の章・第1話 終
*夏凜の部屋
夏凜「はぁ……」
夏凜(実はこの世界も、神樹様が作り出した仮初の世界だったりするのかしらね?)
夏凜(東郷がちらりと言った可能性を考えてみるが、私に分かるはずもなくもう一度ため息をついた)
夏凜(結局、あの世界の記憶は膨大過ぎて放課後を使って友奈たちに説明できたことはごく一部だけだった)
夏凜(精々が若葉たち初代勇者と銀たち先代勇者の人となりを伝えられたかどうかなのよね)
夏凜(明日以降も話せるだけ話していくつもりだけど、やっぱりそれなりに堪えてしまうものはある。皆の反応でその記憶を共有していないことを改めて突き付けられてしまうから)
夏凜「まぁそもそもが、このタイムスリップ自体が──」
ピロリーン
夏凜「メール? 友奈あたりかしら?」
『ここどこ~?』
夏凜(登録されていないアドレス、そこに書かれていたのはその一言だけだった)
夏凜「噂に聞く迷惑メールってやつ?」
夏凜(神世紀は教育が行き届いているから、若葉たちの時代のようにいたずらでメールを送ってくるような輩はあまり居なかった)
夏凜(だから西暦時代の話はそれなりに興味深く、聞く分には中々に面白い話が多かったのよね……)
ピロリーン
夏凜「また? ほんと誰よ? この私に迷惑メールを送って来るとか成敗するわよ、まったく」
『若葉ちゃーん。ぐんちゃーん。皆、どこに居るのー?』
夏凜「何だ友奈のいたずらだったのね……って、これってもしかして高嶋!?」
夏凜(『ぐん』と呼んでいて若葉の名前を知っている奴なんて私は一人しか思いつかない。高嶋友奈。結城のほうの友奈にはその呼び方をまだ教えていないから多分間違いない。……もしかしてと思ってしまい心臓の鼓動が激しくなってくる)
夏凜(僅かに震える指でそのメールに返信を返した)
『もしかして高嶋? 三好夏凜って名前に覚えがあるなら返信して』
ピロリーン
『夏凜ちゃん!? 元の時代に戻ったんじゃないの!?』
夏凜(……期待がなかったなんて言えば嘘になる。そして、その期待以上の答えだった。間違いない。高嶋もあの世界のことを覚えている!)
夏凜(戦闘の時よりも脈拍が上がっているんじゃないの、これ?)ドキドキドキ
夏凜(いえ、そんなことはどうでも良いわ。それよりも)
『それはこっちの台詞よ! なんで高嶋からメールが来ているの? 今、私は神世紀に居るのよ?』
ピロリーン
『と言うことはここって神世紀の時代なの!? 何だか不思』
夏凜「高嶋……?」
夏凜(レスポンスの良かったメールは不自然な場所で途切れていて、その後いくらメールを送っても高嶋から返信が返ってくることはなかった)
*昼休み・部室
美森「それが昨日、夏凜ちゃんが体験した普通ならありえない出来事なのね?」
夏凜「そうよ。あのメールは確かに高嶋からだった。だけど、高嶋は初代勇者。三百年以上も前の人間がこの時代に存在するはずはないわ」
友奈「確か私に瓜二つの人なんだよね?」
樹「友奈さんが二人。何だか凄そうです」
風「夏凜のタイムスリップに、時代が違う人からのメールねぇ……」
樹「もしかしてお姉ちゃん、東郷先輩が昨日言っていた神樹様の作り出した仮想現実? なのかな?」
風「ああ、実は今見ている私たちの現実は幻でしたってやつね。信憑性増しちゃったわね、それも」
美森「……」
夏凜「一応確認しておくけど、友奈のいたずらじゃないのよね?」
友奈「うん。夏凜ちゃんとはアドレスを交換しちゃったからそんなことできないし、夏凜ちゃんを混乱させるようなことはしたくないかな」
夏凜「そうよね。あんたはそういう奴よね」
夏凜「となると、なんで高嶋が……」
美森「……夏凜ちゃん。あくまでも仮説という前提で聞いてね」
夏凜「何か分かったの?」
美森「分かった、というほどではないの。どちらかと言えばこれは突飛な想像の部類ね」
風「と言いながら東郷の意見は大体いつも正解に近いのよね」
夏凜「同意見ね。東郷、聞かせてもらえる?」
美森「二人の期待が少し過剰で気後れするけれど、本当に一つの仮説として聞いてね?」
美森「──昨日のメールの高嶋友奈さん、もしかしたら未来の友奈ちゃんなのかもしれないわ」
友奈「未来の私!?」
風「どういうことよ、東郷!?」
樹「私の頭じゃ話についていけてないよぉ……」
夏凜「大丈夫よ、樹。流石の私も少し混乱しているから。それでどういう意味なの、東郷?」
美森「本当に突飛な発想なの。夏凜ちゃん言っていたわよね? 私たちが勇者としての役目を終え、友奈ちゃんがリハビリを終了しようとした間際、文化祭の劇で友奈ちゃんが立ちくらみを起こしたって?」
夏凜「確かに言ったけど……何か関係あるの? 友奈の立ちくらみなら他にも何回かあったわよ」
美森「そのいくつかで友奈ちゃんの記憶が少し跳んでいたりしなかった?」
夏凜「確かにそんな感じもしたけど……」
美森「そして、昨日の高嶋友奈さんは唐突に返信を寄越さなくなった」
友奈「あれ? 話が跳んだ、のかな? 私の理解不足かも」
美森「ああ、駄目ね。言葉にし辛いから思考が跳んでいるのかもしれないわ」
友奈「大丈夫だよ、東郷さん。私はちょっと理解力が不足しているけど、風先輩も夏凜ちゃんもちゃんと分かっているはずだよ!」
風「と、当然よ! なんたって私は勇者部部長よ?」
夏凜「あ、当たり前じゃない! 私は完成型勇者、三好夏凜なのよ!」
樹(お姉ちゃんが見栄を張っているよぉ……)
美森「ありがとう、風先輩、夏凜ちゃん。それじゃあ、続けるわね。昨日夏凜ちゃんに私たちの勇者としての結末を聞いて真っ先に思ったのが友奈ちゃんのことなの」
風「まぁ、東郷だったらそうでしょうね。なんたってあんたの嫁、いやこの場合夫? のことなんだから」
美森「もう、風先輩ったら! あとでぼたもちを御馳走しますね」///
風「よっしゃー!」
夏凜「風、うっさい! あんたのせいで話が進まないのよ!」
風「すみません」
美森「ごほん。それで、未来のその時点の友奈ちゃんは、もしかしたら勇者として未だ神樹様に召喚されているのではないか? そんな結論にたどり着いたの」
夏凜「……ごめん、東郷。その結論にたどり着く過程が全然分からない」
友奈「ねぇ、夏凜ちゃん。私が夫ってどういうことなのかな?」
風「ふふっ、うどんに女子力は宿っているのよ」フッ
樹「お姉ちゃんが現実逃避しちゃった!?」
美森「ごめんなさい。私自身も脈絡がなくて変なことを言っている自覚があるわ。やっぱり、これはなかったことにしましょう」
樹「ええと……間違っていたらごめんなさい。もしかして、友奈さんだけ精霊が花になって散っていないから牛鬼はまだ居て、だから勇者は続いていて? 神樹様に召喚されている? うぅ、自分で言っていてよく分かんないよー」
美森「いえ、樹ちゃん。まさにそれが私の言いたかったことなの! 流石、未来の勇者部を背負って立つ人財ね!」
樹「えぇー!? 昨日も同じこと言われたけど、荷が重いよぉ……」
夏凜(そう言えば、調子に乗って最後の戦いの後のおぼろげな記憶まで話しちゃったのよね。でもあれは──)
夏凜「いや、それってあくまで私が見た白昼夢みたいなものなのよ? 精霊が散って花となって私たちに供物を返してくれた。そんな映像が頭の中に確かに残っているけど、そもそもあの時の私は視力を失っていたから見ることはできなかったはずなのよ」
美森「……となると、やっぱり私の想像の暴走だったのね。ごめんなさい、皆。無駄な時間を取らせてしまったわ」
風「いやいや、そのくらい柔軟な発想はこの不思議ばかり起こる状況に必要でしょうよ。引き続き東郷はそのブレインに閃くことがあったら何でも言ってちょうだい」
夏凜(微妙に歌野を思い出す言い回しね……。でも、風の言うことは一理ある。まぁ、結局白紙に戻ったことには変わりないんだけど)
友奈「ねぇ、夏凜ちゃん。今回のことって大赦の方に協力してもらうことって出来ないのかな?」
夏凜「……一応、兄貴には相談してあるわ。ただそっちは望み薄よ」
樹「夏凜さん、お兄さんが居るんですね?」
夏凜「まぁ、ね。大赦のお偉いさんよ、それこそ一応」
風「え、マジで!?」
夏凜(高嶋のメールの後、色々葛藤しながら思いきって兄貴に今回の件を相談していた。でも)
夏凜「大赦はこの件に関してノータッチになるらしいわ。こっちで何とかしろってさ」
風「なにゆえ? 大赦なら協力してくれそうな案件よね、これって?」
夏凜(風の言いたいことは分かる。過程はどうあれバーテックスの進行を止めた成功例を私は知っているわけで、それは大赦が喉から手が出るほど欲しいであろう情報に違いない)
夏凜「癪だけど兄貴に言われたのよ。私がタイムスリップしていることは大赦に隠しておけって」
夏凜(大赦も一枚岩ではないから、私に、勇者部に危害を加える者が居る可能性は皆無ではない、と)
美森「賢明なお兄さんですね。私もそのほうが良いかと思います」
風「ちょっと、東郷。それじゃあ大赦が私たちの敵みたいな扱いで流石に失礼よ」
美森「大赦は私たちが想像しているよりも潔癖でない組織であることは、夏凜ちゃんから聞いた話から判明しています」
樹「お姉ちゃんへの大赦の対応の話ですね。流石に私もあの対応はないと思いました」
風「樹……」
夏凜(風への対応、それは満開の後遺症に関することであり、また大切なことを何一つ伝えられていなかった風の立場のこと。樹がムッとしているのも当然の話だ)
夏凜(……あのことも私が大赦の勇者ではなく、勇者部の勇者になろうと決意したことの要因の一つなのよね)
美森「ですので、風先輩。今回の夏凜ちゃんの件は私たちだけの秘密で通しましょう。これは五箇条の一つ、悩んだら相談とは違う次元の話になります」
風「……分かったわ。東郷と樹がそこまで言うんだったら。第一、夏凜の兄貴が真っ先にそう言っているって言うことはそう言うことなんでしょうね」
樹「お姉ちゃん、『そう言うこと』ばかりしか言っていないから何を言っているのか分からないよー」
風「何だとー、私の妹よー。心で分かれー」コチョコチョ
樹「きゃー」
夏凜「なにじゃれ合っているのよ……」
友奈「東郷さん、ぎゅー」ギュー
美森「キャッ!? ゆ、友奈ちゃん……!!」ポッ
夏凜「あんたたちもかー!?」
ピロリーン
夏凜「あ、私のスマホね。って、このメール……高嶋!?」
友奈「……」
『夏凜ちゃん? 夏凜ちゃーん? うぅ、やっぱり返事がないよ~』
夏凜「……まったく、突然連絡が取れなくなったと思ったらまたこれよ」
美森「これが高嶋友奈さんからのメール……」
風「こっちの友奈みたいなメールね」
樹「でも、このメール、少しおかしいような……」
夏凜「とりあえずメールが届いていることを伝えるべきよね」
美森「そうね。でも、また連絡が取れなくなる可能性が高いから優先順位の高い情報交換もしておくべきよ」
風「どこに居るのかとかそんな感じね」
夏凜「それじゃあ……」ポチポチ
夏凜「こんな感じかしらね」
『さっきまで音信不通だったけど、今のメールは届いたわ。また連絡がとれなくなると厄介だから、あんたがどこに居てどういう状態なのか先に教えなさい』
風「不愛想なメールねー」
夏凜「うっさい!」
樹「あ、返信が来ました」
『良かったよ~、夏凜ちゃん。私はね、何だかのんびりした町の中に居るよ。西暦の四国のような神世紀の四国なような不思議な感じかな? でも、私以外の人とまだ出会えていないんだ。あ、私は元気いっぱいだよ?』
夏凜「いや、あんたね、健康なのは確かに大事だけどそういうことじゃないでしょうに……」
風「まごうことなき友奈じゃったか」
樹「んー、やっぱりどこかおかしいような……。なんだろう?」
美森「どっちつかずの四国、ね。……もしかしたら、高嶋友奈さんは私たちとはまた別の場所に居るのかもしれないわ」
夏凜「別の場所? ああ、神世紀は神樹様の世界で見ているわけだから、その高嶋が判断できないってことはそういうことになるわけか」
風「でも、それはそれで問題よね? 明らかに現実的じゃない状況に巻き込まれている人が居るわけだし」
夏凜「それ、私も当てはまるんだけど」
美森「やはり私たちの見ているこの世界は神樹様の作り出した幻なのかしら? でも、そうだとすれば何故こんなことを?」
『夏凜ちゃん! うどんの自動販売機だよ!? 流石300年後の未来……。実はお腹空いていたんだよね』
夏凜「え? うどんの自動販売機!?」
風「女子力に満ちた自動販売機ね。で、どこにあるの? 今から買ってくるわよ!」
樹「お姉ちゃん……」
美森「西暦の時代秋田県に設置されていたとは聞いたことがあったけれど、まさか実在しているなんて……!」
『いっただきまーす!』
夏凜「もう買ったの!?」
樹「……あれっきり連絡が途絶えちゃいましたね」
友奈「だね。でも、私も自動販売機のうどん食べてみたいなー」
風「くっ……何故、世界はこの素晴らしい自動販売機をロストテクノロジーにしてしまったのよ……」
夏凜「正直私も食べてみたかったけど、それよりも高嶋とまた連絡取れなくなったことが問題でしょ!」
美森「そうね。私も食べてみたかったけれど、また振り出しに戻ってしまったわ」
風「全てはメールの先に居るきゃつが悪いのじゃ! あんな食レポを送って来るなんて、あっちの友奈は何て罪深い子なの!」
友奈「た、多分悪気はなかったんじゃないかな?」
樹「あ! そうです! それです!」
夏凜「どうしたのよ、樹? お腹でも痛いの? サプリ飲む?」ジャラジャラ
美森「サプリと言うよりは医薬部外品の整腸剤ね、それは。もしかして樹ちゃんも気付いたの?」
樹「あ、東郷先輩も気付いていたんですね」
風「どゆこと?」
樹「ええとね、高嶋友奈さんのメールは多分、話した言葉が全部メールになっていたんじゃないかな?」
風「ふむ。音声認識みたいな感じね」
夏凜「あいつってフリック入力が苦手だったりしたかしら?」
美森「おそらくそういうことではないと思うわ。そして、これは今後の手がかりの一つになるはずよ」
*夏凜のアパート
風「まったく、殺風景な部屋ねー」
夏凜「うっさい!」
友奈「わっ! 水しかない」
夏凜「そのやり取りは前にやったからもういいわよ」
樹「夏凜さん、この荷物はどこに置けば良いんでしょうか?」
夏凜「ほら、重いでしょ。私がやっとくからあんたは座ってなさい」
美森「夏凜ちゃんってもしかして……」
夏凜「今度は何よ!」
美森「いえ、何でもないわ」
夏凜「言いなさいよ! 気になるじゃない!」
夏凜(そんなわけで勇者部一同が私の部屋に来ていた)
風「できたわよ~」
友奈「風先輩のうどん、とっても美味しそうです!」
風「いっぱい作ったからじゃんじゃん食べなさい」
夏凜「いや、作り過ぎでしょ、あんた……」
樹「夏凜さん、大丈夫です。お姉ちゃんならいつもそれくらい食べます」
夏凜「……知ってはいたけど、軽く十人分を食べるとか胃が宇宙にでも繋がっているんじゃないの?」
風「なんと失礼な! これでも小食のつもりよ!」
夏凜「今すぐ世の中の小食の人に謝んなさい!」
美森「ぼたもちも作ってあるので食後に食べましょう」
友奈「わーい! 東郷さんのぼたもち大好きー」
夏凜「──それで、ここに集まったのは高嶋のことについて話し合うためなのよね?」
風「サプリしか食べていない部員を心配して来てあげたのよ?」
夏凜「サプリを主食にしているみたいに言うな! きちんと三食食べているわよ」
美森「風先輩の冗談はともかく、高嶋友奈さんの正確な状況が判明すれば夏凜ちゃんのこの現象も解明に向かうはずよ」
樹「東郷先輩の予想では、高嶋友奈さんは私たちとは違う場所に居て、何か意味があってメールを送ってきているんですよね?」
美森「あくまで予想だけれど、夏凜ちゃんの逆行に高嶋友奈さんの音声メール、二つも不可思議が起こっていて関係ないとは思えないの」
友奈「ええと、話した言葉がそのままメールになっているんだったかな?」
夏凜「ああ、樹と東郷が言っていたやつね。確かに今考えれば手打ちのメールにしては不自然なところは多かったわね」
風「しかも、それもまた神樹様が起こした不思議現象の可能性が高いんでしょ? 神樹様はあたしたちに何をやらせたいのかしらね?」
夏凜「まさか、他の神様の反乱再び……なわけはないわよね?」
樹「情報が多すぎて曖昧かもしれませんけど、未来の私たちはつい最近までそれに巻き込まれていたんですよね?」
夏凜「そうよ。それを私たち勇者部オールスターズで解決したってわけ」
友奈「過去の勇者たちと一緒に戦うなんてほんと凄いよ!」
美森「鷲尾だった頃の私も居るなんてやっぱり不思議ね……。夏凜ちゃん、今この時間に居るもう一人勇者とは連絡を取ることはやっぱり難しいの?」
夏凜「園子のことね。あの子は大赦の切り札だから、今の私たちじゃ連絡一つ取ることすら困難よ。しかも大赦でも有数の家柄の娘ときてる。一応、兄貴にも頼んであるけど、前の時を考えれば園子から来てもらうしかないわね」
友奈「確かその時は私と東郷さんが戦闘の後に呼ばれたんだっけ?」
夏凜「樹海化の力を利用したとか何とかだった気がするけど理屈は知らないわ。ただ、直近でバーテックスの襲来はないのよ。要するに園子がもし私と同じ状態であっても次の戦闘まではお預けってこと」
風「そうなってくると、進展があるとすれば友奈の双子の子ってわけね」
夏凜「いや、高嶋は友奈の双子ってわけじゃないけど」
美森「でも、双子ではないけれど無関係というわけでもない。それが友奈ちゃんの名前の由来」
夏凜「ああ、あっちの世界に居る時にも言っていたわね。ある行動を赤ちゃんの時に行った子には友奈って付けられるって。しかも高嶋は平成の勇者。その由来が英雄として祀られたであろう高嶋にあるのは誰だって想像がつくわ」
風「その割には現代に昔の勇者のことって何も伝わっていないのよね」
樹「意図的に大赦が隠したんだったよね?」
風「……昨日から大赦が悪の秘密結社に見えてきて仕方がないんだけど。一応あたしたちの保護者のはずなのにね……」
美森「せめて大赦の隠匿から逃れた当時の資料が残っていれば手がかりも増えるのでしょうけど、今の私では鷲尾の家を頼ることも難しいだろうし……」
夏凜「当事者だけど、正直バーテックスと戦うほうが分かりやすくて簡単だった気がする……」
友奈「分からなくはないかな。って、あれ?」
風「ちょっと夏凜! どういうことなのよ?」
夏凜「いや……確かにこの時は──」
夏凜(世界が唐突に鮮やかな色で浸食されていく。そう、これは紛れもない樹海化だった)
*樹海
美森「どうやらイレギュラーな事態のようね。でも、これではっきりとした。夏凜ちゃんの知っている過去とは違う未来に分岐し始めているんだわ」
風「まぁ、夏凜の記憶と違っていてもやることは一つよね。勇者部出撃よ!」
樹「待って! お姉ちゃん。友奈さんの様子が!」
夏凜「友奈! どうしたの? 意識がないの? ねぇ、何とか言いなさいって!」
美森「……」
風「友奈!? しっかりしなさいよ! ゆうなぁ!」
友奈「──あれ? ここは……風、先輩? 夏凜ちゃん!? それに皆も!」
夏凜「……もう、心配させないでよ……。いきなり意識を失うからびっくりしたじゃない」
樹「良かったです……」
風「……はぁ、心臓止まるかと思った。……東郷?」
夏凜(東郷が友奈と向かい合う。いつの間にか一人だけ変身は済ませていたらしい。その瞳は友奈を見ていると言うより──)
美森「バーテックスは依然姿を現わさず、おあつらえと言うように友奈ちゃんは意識を失った。おそらくこれは神樹様の手配なのね」
友奈「……」
美森「初めまして、高嶋友奈さん。ご存知かも知れませんが、私は東郷美森と申します。早速ですがお話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
夏凜(東郷が友奈に向かって、そう言った)
友奈「え、あ、うん。ええと、東郷さん……?」
夏凜「東郷、あんた何言い出してんのよ? 東郷らしくもない、この友奈は結城のほうの友奈よ? さっきまで一緒に居たでしょうに」
友奈「か、夏凜ちゃん? 私は結城ちゃんじゃなくて高嶋友奈なんだけど……」
夏凜「はぁっ!?」
風「ふむ……姿はうちの友奈で、中身は友奈じゃない友奈ってこと?」
樹「でも、友奈さん。東郷先輩のご挨拶に困惑していたような?」
友奈「あれ……これってどうなっているのかな……?」
美森「高嶋友奈さん、簡単に説明するとね、ここに居る夏凜ちゃんを除いた勇者部全員はあなたと出会う前の過去の私たちで、これが初対面となるの。そして、あなたは友奈ちゃんの身体を借りて今存在しているわ」
友奈「え、えぇっ!? 私が結城ちゃん!? それじゃあ、結城ちゃんは……?」
美森「友奈ちゃんは少し眠っているだけよ。安心して」
夏凜「ちょっと待ちなさいよ、東郷! 何でそんなことを知ってんのよ? それに高嶋が友奈? 私が過去に戻ってきたことよりもわけが分からないんだけど!」
美森「簡単な話よ、夏凜ちゃん。樹海化が起きた時、私には不思議な意思が届いてきたの。これがおそらく神樹様の神託と呼ばれるものなのね……」
友奈「神託ってひなたちゃんたち巫女の方が受け取るあの神託!? 東郷さんって巫女の素質もあったんだ……」
夏凜「……頭痛い。昨日からわけ分かんないことのオンパレードじゃないの。もう一度確認するわ、あんたは高嶋のほうの友奈なのね?」
友奈「……うん。高嶋友奈、夏凜ちゃんとうどんの自販機の話をしたほうの友奈だよ」
夏凜「了解、とりあえず理解したわ。でも、眠っているらしい友奈には悪いけど、ようやく会えたわね、あんたと」
友奈「うん! 誰とも会えなくて正直心細かったんだ。だから、皆とこうして会えて嬉しいよ!」
樹「い、犬吠埼樹です! 高嶋友奈さん、よろしくお願いします!」
友奈「そっか、夏凜ちゃん以外とは初対面になるんだっけ? こちらこそよろしくね、樹ちゃん。でも、過去の樹ちゃんたちってどういうことなんだろう?」
風「勇者部部長の犬吠埼風よ。妹共々よろしくね。……さて、東郷。その神託ってどんな内容だったのよ?」
美森「はい。今から説明しますね」
美森「神樹様から受け取った意思というのは映像のようであり音声のようであり酷く曖昧で不思議な感覚でした。気付いた時には意味を理解していて、今回の出来事のおおよその全貌が見えたと言って良いのかもしれません」
夏凜「うちの東郷に神託とか、神樹様も粋な計らいをしてくれるわね」
美森「結局のところ、夏凜ちゃんが過去に戻ってきたのは神樹様を守るためであり、高嶋友奈さんを救うためだったらしいの」
友奈「私を救う……?」
美森「……高嶋友奈さんはかつてのバーテックスとの戦いにおいて、その身体と精神を神樹様に祀られることになったそうなの。そして、この300年、高嶋友奈という勇者は神樹様と一つだった」
樹「もしかして、高嶋さんも満開を行いすぎて、ですか……?」
美森「それは違うわ、樹ちゃん。だけど、この辺りの話の詳細は私にも伝わってきていないから今は本題の話をさせてね。神樹様は勇者たちの揃ったあの世界を見て、高嶋友奈さんを解放してあげることにしたの」
美森「未来の私たちに供物を返してくださったように、頑張った勇者たちに報いるために」
風「……それだったらさ、元の時代に返してあげても良かったんじゃないの?」
美森「いえ、残念ながらそれは様々な事情で出来なかったようです。でも、全てが終わった時には神樹様は帰してくれるという意思を見せています」
風「それならまぁ、良いのかしらねぇ? それで、その全てって言うのは?」
美森「バーテックスの殲滅もしくは和解の成功です」
夏凜「……確かに全てなわけなんだろうけど、私一応未来知ってんのよ? 悔しいけどそれを達成するのがどれだけ困難であるのかも」
美森「神樹様は夏凜ちゃんに未来の経験を利用して物事を進めて欲しいようね。かつての時間に完成型勇者を送り込むことで目的の達成を果たす。悪くない手段だとは思うわ」
夏凜「いつもの私だったら『よっしゃー!』とか言っている場面ね。全力で努力はするけど責任重大ね、はぁ……」
樹「高嶋さん、友奈さんは本当に眠っているんでしょうか?」
友奈「何となくだけど身体の中で熟睡しているような感覚がするかな?」
樹「それって何だか不思議ですね」ヘー
友奈「これが結城ちゃんの身体だって言うのも不思議だよね」ポワポワ
風「はぁ、こっちの二人は呑気ねぇ……。やっぱりうちの妹は将来大物になるわ」
夏凜「あれ? ちょっと待ちなさいよ。高嶋を解放してくれるのは良いけど、何で友奈の身体の中に居んのよ?」
美森「それは神樹様の力が不足しているからね。バーテックスの散り方にいつも違和感を抱いていたけれど、どうやら神樹様は殲滅したバーテックスの残滓を吸収して力を蓄えているようなの。つまり、ある程度のバーテックスを倒すことは必須になるわ」
風「高嶋を完全に解放するためにはやっぱりバーテックスを倒す必要がある、ね。まぁ、シンプルで良いんじゃない? 元々やることは同じなんだし」
夏凜「勇者としてバーテックスを倒す。勇者部の活動としても確かに分かりやすいわ」
友奈「私のために何だかごめんね……」
夏凜「あんたも勇者部の一員でしょう? なら、遠慮なく甘えなさいよ」
友奈「夏凜ちゃん……」
風「良いこと言うわね、新入部員。そんなわけで今後の勇者部の方針は決まったわね」
樹「高嶋さんを解放して、バーテックスから世界を救う、かな?」
美森「……」
*夏凜のアパート
夏凜「考えてみれば戦闘のない樹海化って初めてだったわね」
美森「──と、そんな感じだったの」
友奈「私が寝ている間にそんなことが!?」
風「こっちに戻ってきたらいつもの友奈に戻ったわね。それじゃあ今の高嶋はさっきの友奈のように熟睡しているってこと?」
美森「今のところは神樹様のところに居るようです。したがって、一刻も早く神樹様に力を蓄えてもらってダブル友奈ちゃんを実現させる必要があります!」
風「そ、そうね……いや、そうなの? まぁ、東郷がやる気出しているんならそれで良いんだろうけど」
樹(でも、東郷先輩、樹海の中で何かを考え込んでいる様子だったような?)
夏凜「はぁ、それにしても完成型勇者も楽じゃないわね。時間を超えてこうして呼ばれたわけだし」
樹「夏凜さんは元の未来に戻りたいですよね……」
夏凜「どうかしらね。未来は未来であんたたちが居るわけだから、私はここで与えられた使命を存分に果たせる。第一、こっちにも樹たちは居るわけじゃない? だから、案外平気よ」
樹「夏凜さん……」
風「それじゃあ、勇者部の差し当たっての課題の話ね」
友奈「何だか私が寝ている間に色々解決しちゃったんだよね?」
美森「そうなの、友奈ちゃん。でも、神樹様の神託は確かに助かるけれど、同時にさらに大きなお役目も授かってしまったわ」
樹「あ、足手まといにならないように頑張ります!」
夏凜「大丈夫よ、樹が何か失敗しても私がカバーしてあげる!」
美森「やっぱり夏凜ちゃんって……」
夏凜「何よ?」
美森「いえ、何でもないわ」
夏凜「だから言いなさいって!」
風「ごほん。それでは勇者部のみなにこれからの沙汰を言い渡す」
友奈「わくわく」
樹「お姉ちゃん、それ誰の物真似なの?」
風「ずばり! 差し当たっての勇者部の課題とは!」
夏凜「もったい付けるわね。あんたもさっさと言いなさいよ」
風「夏凜の誕生日のお祝いね!」
夏凜「……は?」
美森「なるほど。とても重要な案件ですね」
友奈「よーし、夏凜ちゃんを目一杯お祝いしちゃうぞー!」
樹「おめでとうございます、夏凜さん」
夏凜(……そう、すっかり忘れていたけど、私の誕生日は目前まで迫っていたのだ)
三好夏凜の章・第2話 終
区切りが良いので、この第2話で一旦終了となります
ゆゆゆいと秋からのゆゆゆ2期の応援をよろしくお願いします
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1498283685/
Entry ⇒ 2017.10.04 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
三ノ輪銀「結城友奈は勇者である二期……?」
《三ノ輪家 居間》
銀「……ふーん」ダラダラ
銀「でも、どうせアタシ関係なくない?」
銀「アタシ鷲尾須美の人間だしぃ」
須美「そうね、銀は私のものよね」
銀「いや、そういう話ではない」
園子「鷲尾須美は勇者であるも、結城友奈は勇者である二期とともにアニメ化だよ~」
銀「マジで?」ガバッ
園子「公式ツイッターで発表があったし、マジだよ~」
銀「イヤイヤイヤまさかそんなわけないやろ何言うとんねん冗談も大概に――」
銀「…………」
銀「――ホンマやッ!」ホンマヤッ!
園子「ミノさんって関西人だっけ~?」
須美「四国も日本の西と言えば西よね」
園子「わぁ、わっしーにあるまじきガバガバ発言だよ~」
須美「やむをえないわ」
須美「結城友奈は勇者である二期と、鷲尾須美は勇者であるアニメ化が発表されてしまったのだもの」
須美「私も嬉しくてガバガバになってしまう」
園子「猿も木から落ちる的な~」
須美「河童が川を流れている横で、そのっちは平然と犬かきをしていそうね」
銀「おーい、お二人さんや、アタシを会話から置いて行かないでくれぇー」
須美「まあ、それはそれとして、問題があるわ」
銀「それはそれって、どれがどれだ」
園子「問題って~?」
須美「私の中の人が勇者部ニコ生ラジオに出演するとき、鷲尾須美役、東郷美森役どちらで出演すればよいのかしら」
銀「おいバカやめろ」
園子「東郷美森(鷲尾須美)役、って感じじゃないかな~?」
須美「なるほど」
銀「ねえ二人とも、もしかしてアタシを完全にスルーで会話してない?」
園子「してないよ~」 須美「してないわ」
銀「ならいいけどさ」
銀「問題があるのは、須美よりむしろアタシの方だよ」
須美「というと?」
銀「アタシ、二人と違って、映像の中で動いたことないもん。どう動いたらいいのか思いつかないよ」
須美「カッコイイ挿絵とかにはなってたけどね」
園子「でも私アニメではほとんどベッドで寝たきりだったよ~」
須美「私もアニメでは戦闘中以外は車椅子だったわ」
銀「おいなんだこの不幸自慢の空気は」
園子「それより、ミノさんには、私たちが食べてたイネスのしょうゆジェラートのお店が閉店しちゃったことの方が問題なんじゃないかな~?」
銀「は?」
須美「閉店したのは平成の香川のイオン坂出店オッティモであって、神世紀の私たちとは関係ないけどね~」
銀「……だとしても、なんか悲しいな」
<ショギョームジョー
銀「おいなんか聞こえたぞ」
須美「そんなこともあろうかと、三ノ輪銀ロボを用意しておいたわ」
三ノ輪銀ロボ「」ウィーンガシャーン! ウィーンガシャーン!
銀「なにこれ」
須美「これの動きを観察して、銀はアニメでの振る舞い方を勉強してね」
銀「いや、邪魔だしちゃんと持って帰ってよ。うるさいから弟起きちゃうよ」
三ノ輪銀ロボ「」ウィーンガシャーン! ウィーンガシャーン!
須美「!」
須美「や……ちょっとロボ……。どこ触って……やめ……!」
園子「わー、ミノさんだ~」
銀「わー、ミノさんだ~、じゃあないんだよ」
銀「そういえばなんだけど」
園子「うん」
銀「アタシ、結城友奈は勇者である組にちゃんと挨拶した方がいいんじゃないかな」
銀「だって顔合わせたことないじゃん」
園子「確かに~」
須美「結城友奈は勇者部所属は――」
銀「所属の銀は、アタシとは別管轄だし」
須美(別管轄とは?)
銀「頼むよ、須美ならすぐでしょ」
須美「じゃあ、連絡とるわね」
銀「うん」
須美「……………………」
銀「……どんな感じ?」
須美「今、来てるって」
銀「流石にはやくない?」
友奈&東郷「こんにちは~」
風「こんばんは~」
樹「おはようございます~」
夏凜「べ、別にアンタのために来たんじゃないんだから、勘違いしないでよね!」
園子「こんにちは~。こんばんは~。おはようございます~」
園子「朝昼晩の挨拶が入り混じってるね~」
須美「色々なところから来てもらったから」
銀「いや、その前にこっちとそっちで一人多くない?」
須美「?」 東郷「?」
銀「? じゃないよ、同一人物が二人いるじゃんか」
須美「!」 東郷「!」
友奈「結城友奈は勇者であると鷲尾須美は勇者である、それぞれ一人一人別計算なんだねー」
夏凜「その計算でいくと、こっちにもう一人園子いるでしょ」
風「いったいどっちが東郷なんだ……」
樹「どっちも東郷先輩だと思うよ」
須美「これは……」 東郷「いったいどちらが勇者部ニコ生ラジオに出演するか」
須美「勝負をして」 東郷「決着をつけなければならないようね……」
銀「仲いいなオイ」
園子「ちいさいわっしーもおっきいけど、おっきいわっしーはおっきいな~」ワキワキ
三ノ輪銀ロボ「ガガガ……プシュゥ……」
銀「あ、ロボがなんか壊れた」
園子「二人のわっしーの情報量に耐えられなかったんだねミノさんは……」
銀「あれをアタシ呼ばわりするのはやめて」
風「大変ねー、二人とも。どっちがニコ生に出るとか出ないとか気にしないといけなくて」
夏凜「アンタは他人事じゃないわよ」
風「なんで?」
夏凜「一人だけ卒業してるから、出演は回想の絵のみ、って続編の可能性あるでしょ」
風「酷くない!?」
樹「お姉ちゃんのぶんも、私、頑張ります……!」
風「樹!?」
友奈「続編、わすゆと合わせて全部で1クールなのかな」
銀「後半何すんのかなー」
園子「後半は結城友奈は勇者部所属のアニメ化かもしれないよ~」
銀「それはない」
東郷「……コォー……ッ!」 須美「…………シュコォー…………ッ!」
< ドォン!!!!
友奈s「ッ!」
夏凜「大変!」
夏凜「鷲尾須美は勇者であるのアニメ化を喜ぶ人々の気持ちを背負った鷲尾須美と」
夏凜「結城友奈は勇者であるのアニメ化を喜ぶ人々の気持ちを東郷美森が」
夏凜「――本気でぶつかり合うことで、宇宙がヤバいわッ! ビッグバン級のエネルギーよ!」
園子「壮大だね~」
銀「爆発オチ待ったなしだな」
友奈「私が、東郷さんを止めるッ!」ダッ!
夏凜「友奈ッ!」
風「友奈ッ!」
樹「友奈さん!」
銀「が、がんばれー」
園子「ゆーゆ~。ふぁいと~!」
友奈「勇者~~~~~~~~!!!!!」
友奈「パアアアアアアアアアアアアアアアンチィッ!」
東郷「!」 須美「!」
< ドゴォッ!
園子「無事に全部解決して良かったね」
三ノ輪銀ロボ「ソ…ソウダネ…」
銀「こらロボ、アタシのセリフ盗るな」
友奈「二人とも、もうケンカしちゃだめだよ。私がずっと傍にいるから」
須美「はい……」 東郷「はい……」
樹(東郷先輩、かわいい)
風「!」
風「待ってッ!」
風「まだ、”いる”ッ!!!!」
友奈?「…………」
友奈「あれ? もう一人の、私?」
夏凜「いや、あの、怒りや悲しみの感情による捉えきれないほど莫大な負のエネルギーは、まさか――」
高嶋友奈「――乃木若葉は勇者であるのアニメ化は、どうしたあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
< ドーンッ!
――そして、『結城友奈は勇者である二期』と『鷲尾須美は勇者であるアニメ化』が発表された宇宙は、今日新しい宇宙に生まれ変わったのである。
終
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Entry ⇒ 2016.10.27 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
夏凜「三好夏凜の勇者御記」
・このSSは、夏凜が十一話のまま最後まで治らなかったら、の未来を一部都合よく妄想して書いたものです
・地の文多量
○ 神世紀 三百四年 六月十二日 勇者御記――原本――
それが何時頃なのか定かではないが、私は今日も滞りなく眠りから覚めた。
にもかかわず、何も見えない、何も聞こえない。身動ぎせず、私はベッドの上に横たわっていた。
自分という意識が、ぽっかり何もない暗闇に浮かび、漂っているような感覚。
まるで、いつまで経っても終わらない夢を思わせる現実の実感。
進んでいるのか、戻っているのか、よくわからない時間。
つまり一日が終わるために必要な体感時間の遅さ――
音と光がない世界。
こういったいったものこそ、今の私にとっては、まさしく「日常」と呼ぶべきものだ。
遡ること今から約四年前、東郷の一時的な錯乱を発端に結界内へ侵攻してきた大量のバーテックス。
それらを無事に殲滅した勇者部一同の活躍によって、この国には束の間の平穏が訪れた。
その戦いの日からずっと、私は大赦の庇護の下、実に不自由な生活を余儀なくされている。
私に、何ができるか。
「満開」の後遺症で右半身はまともに扱えない。それだけではなく、つんぼとめしいの二つも患っている。
自立した生活を営む能力は、最低の程度まで落ちていると言わざるを得ない。
現在私は、将来の大赦に携わる人たちに、過去をなるべくそのまま記録として残し伝えるため、
大赦の中枢にいる兄に向けてこの手記を書いている。
兄に向けて書いているというのはつまり、
どうやら大赦内での兄の地位は、私が繰り返し「満開」を行い、神樹様にかなり近い存在となったことで鰻上りらしく、
地位に物を言わせ大赦に検閲される前の手記の原本をそのまま所蔵できる――
という状況らしいので、まずは彼に原本を送り、それを保管してもらおうと考えているわけだ。
ここで、この手記の最初の読者となる兄上に、お願い申し上げたいことがある。
この手記に描出される内容は、多分に私的な心情及び体験の吐露であるため、
貴方がこれを手に取り中身を読むことは歓迎するが、私たち讃州中学勇者部の戦いが出来事として風化するまで、
原本あるいは検閲済みの手記の公開を、大赦内部であっても避けるかせめてごく限られた範囲に留めて頂きたい。
望み薄とわかった上で更に私の希望を述べておくと、兄上の死後、時が流れ、
この原本が勇者たちにとって自由に閲覧可能な資料となっている未来が、私の理想だ。
できることなら、これの内容の検閲は貴方自身、私の親族ということでそれが許されないならば、
せめて貴方がよく見知った信頼の置ける人物に行ってもらえると幸いである。
さて、少しばかり前置きが長くなってしまった。
そろそろ私事をつらつら書き連ねていきたいところだが、
その前に、この手記がどのような方法で記述されているかを、述べなければならないと思う。
まず端的に言ってしまえば、私は自分の手を使いこれを書いているわけではなく、
精霊と、身の回りの世話をする一人の女官の助けを借りて記述している。
私は、目と耳の機能を後天的に失った状態にあり、
四年という歳月は、私から発話能力を著しく失わせるのに十分な時間だった。
そんな状況の中で、他者とコミュニケーションをとるため、私が現在耳や発話の代わりとしているのは精霊である。
いったいそれはどういうことか。丁度いい例を、勇者アプリにあった神樹様の説明の一節に見ることができる。
『神樹様は大地深くに根を張っており、精霊を使役することで、
ここら一帯に記憶されている伝承や事象の情報を神の力でアクセス、抽出することができる』
私がやっているのも、これと原理上は同じことだ。
私の周囲で発された他者の言葉を精霊が感知し、観念の形に変換し、それを私の心の中に直接送る。
とはいえ、ここで注意して欲しいのは、あくまでも観念は言語的なものではないということである。
抽象的な、感情それ自体、原風景、感覚質――とにかく私は、その観念とはどういうものかを、上手く言語化する術を知らない。
ようするに、本当の意味では、目や耳の機能を用い行っていたコミュニケーションと同じことはできていない、ということだと思う。
一方、誰かに自分の意思を細かに伝えたいときは、精霊を動かし、
鉛筆などを持たせて、紙に文字を一つ一つ書いてもらう。
その役目を担うのは通常、私が最初に賜った精霊の義輝である。
彼は多少不器用だが、義輝以上に適任な者も他に見つからなかった。
三体の精霊が同時に私へと送る別々の観念を比較対照することによって、
なるべく正しい意味の理解を行い、義輝に文字を書かせる。
この方法ははっきり言って手間と時間が酷くかかるし、
特に義輝が文字を書くところでコミュニケーションが失敗しやすい。
そんな苦労によって産み出された汚くありのままの文章を、原本としてそのまま残すことも一応考えてはみたが、
後世の人、そして兄に内容がなるべく正しく伝わることこそ重要ではないかと私は結論し、たび重なる校正を行った。
校正には、神樹様と私に対して敬虔で純粋な信仰を持ち、兄の息がかかった信頼の置ける女官の手を借りた。
そんなわけで、これは義輝が文字を書き、女官がそれを読み、修正し、私にお伺いを立て、義輝が返答を――
という繰り返しを何度も経た物であり、そこには女官の解釈と、意志疎通の際に避けがたい私の誤解が含まれるだろうことと、
厳密に言えばこれは「私が書いた」物ではないことを断っておく。
さあ、ようやくこれで一通り、事前の準備は整った。いよいよ、私についてをつらつら書いていこう。
朝、目覚める。見えない。聞こえない。誰もいない。
毎朝起床して、私が一日の初めに接触するのは、今、これを読み、修正してもらっている女官である。
左手の傍に置かれたナースコールを操作するか、もしくは所定の時間が来れば、彼女は私の元にやってくる。
下の世話であったり、食事の世話であったり、着替えであったり、
そういう日常生活をおくるのに必要な行動すべてに、私は介助を必要としていた。
そんな私にとって、一日の際立った娯楽と言えば、食事である。
大赦が用意してくれる食事は、勇者になる前の私が想像だにしなかったほど美味な代物ばかりだ。
お箸や、フォークによって、女官の手が食べ物を私の口元まで運ぶ。
私が口を開けるとき、口を閉じるとき、合図は予め決まっており、一連の作業は円滑に進められる。
毎食一口目を食べるとき、私は大抵友奈のことを思い出した。
「満開」の後遺症として、味覚を失った彼女を。
まだ四年しか経っていないのに、彼女の顔も、声も上手く思い出せない。
彼女とのすこしあやふやになった記憶と感情のみが、ただおぼろに甦ってくる。
勇者部の毎日。東郷のぼたもち。うどん。私の誕生日を祝った歓迎パーティー。
そして、そんな過去を思い出すたびに、
一人での食事に娯楽を見出し楽しんでいる今の自分に、言いようのない空しさを覚えた。
しかし、空しさは覚えてなお、私はここ四年間、食事が大好きだった。
それなのに、大好きなのに、満足な量を食べることはできない。
そんなことを繰り返せば、必ず近いうちに太ってしまうからだ。
身体の右側を満足に扱えない私は、あまり積極的に運動することができない。
以前は身体を動かすことが唯一の趣味のようなものだった私にとって、
運動が思う存分行えくなってしまったことは、この生活が始まって最初のころ、だいぶ堪えた。
だが、一年や二年が過ぎるとそのこと自体にはだいぶ慣れた。諦めたがついたと言っていい。
今はただ、醜くぶよぶよと太ることが恐ろしいばかりである。
犬吠埼風。東郷美森。結城友奈。犬吠埼樹。そして、この私、三好夏凜。
勇者部の一員である私が、己の鍛錬を怠け、そして肥満体になるなどあってはならない。
そのために私ができるのは、節制である。
だから、必要以上の栄養の摂取を我慢した。
我慢することも、ある意味それはそれで気晴らしになる面もあった。
節制は、私にとってちゃんと意味がある行為だったから。
他にも、私は華奢な体型をなるべく維持するため、毎日マッサージを受けたりしている。
女官の柔らかな手で、背中を解きほぐされているとき思い出すのは、友奈にマッサージをしてもらったときの思い出だった。
いつだったか私は、ここに一人で友奈が見舞いに来てくれたとき、
またあのときみたいなマッサージをしてくれないかと彼女に頼もうとして、やめたことがある。
むくみや痩せ具合という形で、私の身体の内実を友奈がその両手によって逐一把握していく。
そのようなやり方で自分の現状をわざわざ彼女へと知らせる残酷さに、否が応でも気付かされたからだ。
もう今となっては、女官が背中を触る感触と、友奈との思い出に、どんな違いがあったのか私は上手く区別できない。
毎日私は、朝起きて、ご飯を待って、ご飯を食べて、昼食を摂って、夕餉をお腹に詰め込む。
その間、暇な時間は山ほどあった。
ベッドの上にいること以外で、私に日々課せられた活動は、主に二つある。
一つ目は、大赦から新たな命を拝するときのため、日本語を日々鍛錬すること。
これは、精霊と、私と、お付きの教師によって専用の部屋に移動したのち行われる。
相手が発する細かい意図を、精霊に聞き取らせ、それをそのまま忠実に理解できるようにする練習。
観念の形ではなく、きちんと日本語で思考しそれを外に表現する練習。点字を指で読む練習、等々……。
まるで小学生の頃、それも低学年に戻ったようだとしばしば思わされる。とても苛々する。
けれどこの鍛錬を怠れば、いつかはまともな日本語能力を完全に失ってしまうのではと思うと、嫌でも積極的になってやるしかなかった。
前まで当たり前にできていたことが、あるときを境に不可能となる。
それだけではなく、前まで普通にできていたことを、お前はできるようになるべきだと改めて学ばされる。
でも、不可能ではないにせよ、上手くいかない。自分自身がまったく思い通りにならない。
それらの体験の積み重ねが、ここまで苦しいものだとは思っていなかった。
積み重ねの中で何より辛いのは、これを積み重ねたところで、
もう勇者部のみんなの声を、言葉を聞くことはできないと実感することだ。
友奈の声を聴くことは、もう二度とない。それでも私は、努力しなくてはいけなかった。
そうしないと、精霊たちから送られる観念に頭から足先まで埋もれてしまって、
こうして自ら考えることすらままならなくなってしまいそうだった。
本来、実直な学生としての勉学に高校で励むべき時間帯、私はその半分くらいを、
日常的な日本語という誰でも知ってて普通の事柄に関する学習にあてていた。
私がこれ以上日本語の精度をこつこつと維持したり高めてみたところで、
そこにいったい何の意味が、私にとってあるというのか、という葛藤に絶えず苛まれながら。
これを読んでいる方はきっと既に十分ご承知のことだろうと思うが、一応念のため書いておくと、
勇者には誰もがなれるわけではない。なるためには特別な素質が必要だ。
そして、その素質がことさら優れていたという基準で選ばれた精鋭が私たち勇者部であり、
私たちくらいの素質の持ち主でないと、最大限に勇者システムの機能を引き出せない。
しかし、満開を行った回数から考えて、勇者部による防衛には早くも限界が見えており、
少なくとも後釜をどうするかの目途を今の内になるべく早急に立てておく必要があった。
人材不足と、緊急対策。
現実と必要を隔てる間隙を埋めるという難問を前に、大赦は、勇者システムの可能性の最大利用を切り捨て、
時間稼ぎではあるが質を引き下げた大量の人員の投入によりその不都合を解決しようとしていた。
かつての日本の史実になぞらえてみて、学徒動員――と言っていいのかどうか。
とにもかくにもいずれは数百人、もしくは数千人の少女が勇者に選ばれるかもしれない。
バーテックスと五人で戦ってきた私たち、というより私にとって、それは衝撃的な決定だった。
もっとも、数が多いから五人のときより状況がいい、羨ましいというわけではもちろんない。
彼女達には、私たち勇者部に多大な恩恵を与えた、精霊によるあの強力なバリアが実装されない。
それなのに、いきなり戦うなんてできっこない。だとすると、数百人数千人を教育できる場所と時間はどこにある。
つまるところ使い捨てなのだった。素質は不足がちで、伸びしろが決まっている中で勇者たちを物のようにやりくりし、
次世代の勇者候補が現れるか、勇者システムの画期的な改善が行われるか、そのどちらかで未来への道が開けるまでの時間稼ぎ。
これでは教科書で読んだ、特攻隊、そういうようなものが出てくる戦争の有り様そのものではないか。いくらなんでも酷過ぎる。
だから勇者部は、自分たちが担当できるだけの幼い勇者候補生を受け持ち、猛烈な訓練を施しているらしい。
少しでも効果的であるように、かつ、自分たち以外の誰でも同じことができるよう教育方法を体系的にすべく試行錯誤して。
勇者部の面々が私に漏らす断片的な発言と、又聞きの情報しか私は知らないが、
それでもその光景は見えないはずの目に自ずと移し出されてくるようだった。
風がこれぞ大先生という貫禄でどんと構え演説めいた授業をかます。
友奈が子どもたちを直接相手して、樹が風の言葉を黒板に書きつけたりその他細々した雑用。
東郷が、裏でその授業のための理詰めを行い、その内容の細かい審査は風によって行われている。
しかし、その想像のどこにも、私の居場所はなかった。そして当然、現実にも、同様に。
本当なら、勇者としての戦いを誰かに教えるということは、
勇者部として私が大活躍できる絶好の機会であるはずだった。
なぜなら勇者部の中で私が一番、辛い日々の訓練に耐え、専門の教育を受け、
何者にも屈せぬ強さを備えた大赦の勇者、を目指そうとしていたのだから。
それは、私が早くから自分の使命に自覚的でいられて、
その上、そのためだけに生きようと、がむしゃらに備えていただけに過ぎない。
しかし何はともあれ培った成長のための経験がある。役に立つことができるはずだった。
せめて片目と片耳の機能が残ってさえいれば、きっと。
役に立つことができるとか、そういうことを考える時点で既に、泥沼にはまりかけている気がする。
私は勇者部の三好夏凜。大赦の勇者としての三好夏凜はもう辞めた。
私は私でいさえすればいい、友奈ならそんなことを言ってくれたと思う。
でも、そういう綺麗ごととは別に、どうしても嫌な考えを持たずにはいられなかった。
ずぶずぶと深みに落ち込んでゆかずにはいられなかった。
もしあのとき、満開の後遺症がここまで重くならなければ、私は勇者部の一員として今もみんなの役に立てた。
そして、そもそもの原因を辿れば、東郷があのとき無茶苦茶をしなかったら、私はこんな目に遭わずに済んだんじゃないか。
その思考は、こう続く。
あの戦いが終わって、東郷の満開の回数は四回になった。私も、あの戦いだけで、四回、満開をすることになった。回数は同じだ。
東郷は勇者部として今も誰かのために奉仕することができているのに、私はなぜ、こんなところに延々缶詰にされているのだろう。
東郷は、みんなと一緒にいられる。私は、そこにはいられない。
東郷は、勇者部のみんなや人類の役に立つことができる。私は、ここで誰のどんな役に立てるだろう。
東郷は、友奈を見ることができる。私は、何も見えない。
東郷は、友奈の声を聞くことができる。話すこともできる。私は、何も聞こえない。
私は友奈に好きだと言ってもらったのに、東郷ばかり、友奈の傍にいる。
どうして私じゃなくて、東郷なんだろう。
私は勇者部なのに、勇者部に必要とされるような、居場所がない。
こんなことになるなら、あのとき、私は他にやりようがあったんじゃないか。
例えば、自分だけで満開を背負い込むんじゃなくて、風や樹を探し出して、一緒の犠牲を強いる。
満開する。そういうやり方もあったんじゃないか。
私は――
こういうことをつい考えてしまう、自分の心の弱さが恥ずかしかった。
叶うならばいっそ、消えるように死んでしまいたいと思った。
東郷に私と同じようになって欲しいわけじゃない。東郷のことを恨んでいるわけじゃない。
ただ、自分を東郷とを比べて、そこに横たわる不条理になぜと問い続けないと、たまに壊れてしまいそうになるだけ。
風や樹を巻き込まずに済んでよかった。そう思ってる。
でも、彼女たちと満開していれば、という考えが頭をよぎることがあるのも事実。
それだけ、今の私は何もできないということが、苦しくて苦しくてたまらない。
かつては戦うことだけが私の価値だった。それを友奈や勇者部が変えてくれた。
でも、今の私は、勇者部として活動することも戦うことどちらも覚束ない。どちらの価値もなくなってしまった。
これ以上何か努力したからといって、そこに意味はあるのか。
つんぼでめしいた勇者なんて、まともな活躍は期待できないだろう。
客観的に見れば、私なんて早く処分してしまうのが一番なんじゃないか。
端末は、私にくれたときのように、誰か優秀な候補者にくれてやればいい。
いつ頃からかは覚えていないけど、私はそんな気持ちを内心で燻らせるようになっていた。
これまでその気持ちを誰かに打ち明けてみたことはないが、
自分では、結構冷静でまともな判断ができていると思っている。
ところがどっこい、私の周囲は私とはまるで正反対に考えていたようだ。
周囲とは、すなわち勇者部と大赦のことである。
勇者部は当然だろう。問題は大赦だ。
大赦は私がまだ戦える、かもしれないと多かれ少なかれ思っている。
そして大赦がその可能性にいまだ望みをつないでいることこそ、私に日々課せられた活動が二つある理由だ。
一つ目はさきほど述べた日本語の練習。二つ目は、戦闘訓練。
もっと噛み砕いて言えば、敵を迅速に識別する、味方とは確実に区別する訓練。
実に皮肉なものだと思う。
勇者部のため戦おうと誓ったあの日以来、私は勇者部として活動するのに必要な能力をほとんど損なってしまい、
やっと見つけたはずの自分の価値を見失って、また、大赦の指示で戦うという、一度捨てたはずの道へ帰って来たのだから。
私が戦う。
成功するかもしれない方法としてまず一つ、
コミュニケーションの場合と同じように精霊を索敵に使うというものがあった。
それが可能ならば、味方と敵を区別することは容易だろう。
問題は、視覚でも聴覚でもない観念という形で、
どうやって敵との距離、味方との距離、攻撃がどのように来ているか、
神樹様との位置関係は自分含めどうなっているかを絶えず意識し続けていられるか、そういうところだ。
樹海化が起こっていない以上、どうせどれだけ試しても不安要素は残るが、
それ以前の自分と他者との距離感を捉えるところで私は躓いていた。
あと一つ有力そうだと言われているのが嗅覚に頼る方法。
これは、バーテックスの微弱な臭いの違いを嗅ぎ分けられるようにしたらどうか派と、
戦闘前、バーテックスに特別な臭いのする薬品を他の勇者にぶちまけさせ、それを目印に戦わせたらどうか派に分かれていた。
どちらにせよ、訓練や投薬などを駆使した私の嗅覚の鋭敏化と、
大赦による勇者システムの試行錯誤でその成功失敗は決まることになる。
正直私は、精霊を索敵に使う方はともかく、
こちらは人間には無理なのではないかと思っているが、試してみない理由もない。
そんなわけで、精霊との感覚の同調と臭いの嗅ぎ分けを毎日行う。
だが、日本語の学習とは違いこれはあまり長い時間やらない。
集中と質が大事だからだ。長々やって精々一時間ちょっとといったところか。
それでももっと内容を充実させろと担当官から叱られかねないくらいである。
あとは、ほとんどベッドの上にいる。
この手記の日付は、三百四年 六月十一日ということにしているが、書き始めたのはずっと前だ。
時間だけは山ほどあった。
だから気力がさほど湧かなくても、ここまで女官と精霊の力を借りて書くことができた。
今日が手記の日付としてふさわしいと思ったのには理由がある。
今日が私の誕生日だったから、ではない。
今日のお昼に友奈たちが私の元に来てくれて、帰ったあと、私は女官から、
私は近いうちに先代の勇者、乃木園子と同じように、神樹様の一部になるのだと告げられたからだ。
乃木園子。私はついぞ彼女の顔を見ることはなかったが、彼女は二年前、突如変調をきたした。
大赦は最初大慌てをしたが、そのすぐ後にこうしなさいという神樹様のお告げがあったため、
落ち着きを取り戻し言われた通りにした。
今回は、早くからお知らせがあったのだから、まだましなのもかもしれない。
何もこれから死んでしまうわけではないのだが、神樹様と一緒になるということは、
友奈たちと離ればなれになる点では一緒だろう。
消えるように死んでしまいたい、そういうことを思ったりしたはずなのに、
いざ自分が本当にいなくなるとわかると急に未練が湧いた。
また、みんなの目を見て、話したい。無理だとわかっていてもそう思った。
みんなは私を見て、今の私についてどう認識していたのだろう。
戦いがあったときはまた戦う、と考えていたとは思えない。
大赦が何か誤魔化していたか、これ以上戦うことはないだろうと端から高を括っていたか。
戦うことはない。実際それは、現実のものとなりそうだった。
バーテックスの再襲来は日に日に近づいているが、
それでも私が神樹様と一つになる方がそれよりも早いだろう、と大赦は予想している。
私の日本語訓練や、精霊と嗅覚の訓練、すべて無駄だったと半ばはっきりしたわけだ。
だから私は、これを今日の日付で書くことにした。
この手記が、私が私としていつまでも爪痕を残せるかもしれない、
今の私にとって唯一可能で、意味あることだったから。
私の境遇と何かしらの共通点を持ちうる、
これを読んだ未来の勇者候補の子、もしくは勇者がいれば、よく考えて欲しいと思う。
こういう出来事が昔確かにあって、自分はその延長線上で戦おうとしている、戦っているのだと。
未来の勇者システムは、私が使っていた物とは全然異なっているのかもしれない。
もしかしたら、戦いは終わっていて、そんな未来で誰かがこれを読んでいることすらありうる。
それでもこういうことがあったのだという一資料として、
これを残すことに私はとても意味を感じる。
今日、友奈たちがやって来て、いつもと同じように枕元に並んでくれた。
彼女たちは、私がこうなってしまってから、毎年の誕生日で「お誕生日おめでとう」と言ったことがない。
けれど誕生日は必ず、欠けることなく勇者部全員で私の傍にいてくれる。
忙しい時間を工面して、いつもよりちょっと長く。
私は、そんなみんなが大好きだった。
「おめでとう」なんて今の私に投げかけるには残酷すぎる言葉がなくても、違った形で思いは伝わってきた。
例えば今日、友奈が優しく、私の手のひらに何度も書いてくれた。大好きだよ、って。
私の中で、勇者部の声も、顔も曖昧になりつつある。みんなあの頃とは相当変わってしまっているだろう。
時間は流れて、私の大切な物を内からどこかへ持ち去っていく。
それでも、大好きだってこの思いは、私の中で変わらない。
みんなと私が、どんな形であれ繋がっていられる限り。
大好きだって思い続けられるもの、それさえあれば、
守り切ったあと、自分は間違ったことをしたと心の底から後悔しないで済む。
ああだったらよかったのに、とふと思ってしまっても、
それよりあのときした選択の方が正しかったのだ、と思い直すことができる。
だから、自分が本当に大切になる物を、勇者には、見つけて欲しいと私は思う。
そうして、自分がどうしたいかをよく考えて行動すれば、
あのときああしたことは間違っていない、って選択を選ぶことが少なくともできるはずだから。
じゃあどうやって、そういう自分にとって大切な物を見つければいいのか、
世界や大切な物を守るのにどういうやり方が一番正しいやり方なのか、それはわからない。
私にできることは、それが大切だと思うという気持ちや、
勇者にはどういう苦しみが待っていたのかを、記録として残し伝え、自分で考えてもらうことだけだ。
これであらかた溜まった思いは吐き出すことができたので、
ひとまず本日の手記を一段落としよう。
今までずっと書いてきたぶんも合わせたものだから、
今日一日の手記はべらぼうに長くなってしまった。
明日からも可能な限り書き続ける予定だが、
数日か一週間ほど間が空いて、もっと文量は短くなりそうだと思う。
どうせだから昔のことととかも、思いだせるだけ書いてみようか、悩んでいる。
――勇者御記 304.6.11
私は、目を覚ました。
そして、まばゆい光に満たされて、静謐で、清浄なものとなった自分を意識する。
私は神樹様の一部になった。
今ならなんでもできそうな気がした。
私は手を伸ばそうとして、手がないことに気が付いた。
なんでも、というわけにはいかないのね。
――ねえ、ねえ。
心の中に直接声が聞こえてきた。
前に誰かの声を聞いたのは四年前くらいだから、見知らぬ声であっても懐かしく思えた。
「誰ですか」
私は言った。
――乃木園子。あなたと同じ、神樹様の一部となった勇者だよ。
乃木園子が、そう言った。
――満開をした勇者の身体は、必然的に神樹様に近づくから、
遅かれ早かれいつかは人間の自分っていう存在を保てなくなってしまうんだよ。
私の前に乃木園子が立っていた。
ここは神樹様の「中」だから、当然そこに乃木園子の身体があるわけではないのだが、
身体に見えるのは私たちが自分と他者を保つための観念の束ということらしい。
わかったようなわからないような気がした。
私にも、観念の束の身体はちゃんと用意されている。腕をつねったりすると感覚はあった。
でも、なんというか全体的に重みを感じなくて、奇妙に思えた。
――大丈夫、すぐに慣れるから。
私の内心を見透かしているらしい。
乃木園子はなごやかで安心させるような笑みを浮かべている。
「友奈たちも、来るの?」
――うん、どれだけ神樹様の力を取り込んだかで、現世に留まれる期間は変わってくるけど、いずれはね。
「また、大赦はこんな大事なこと隠していたのね」
――それは違うよ~。彼らは隠してたんじゃなくて、知らなかったの。
満開ってシステムが初めて導入されたのが、私の時代だったのもあって、まるで予想外だったんだよ。
――私がここに来たのは、満開の数があまりに多かったからって理由が大きい。
――夏凜ちゃんの場合は、満開で神樹様にかなり自分を捧げていたのもそうだけど、
少女じゃなくなる年齢がだいぶ近づいているから。
「…………つまり、勇者は大人にはなれないってわけか」
――残念だけどね。神様の力を使うってことは、それだけ大変なことみたい。
友奈もここに来る。勇者部のみんながいつか、ここに。
みんなも大人にはなれない。
私は、喜んでいいのかいけないのか、微妙な気分だった。
「で、私たちは、神樹様の一部としてここで何をするの?」
――精霊が収集する地上の情報を整理して、上の位階にいる神様たちに取次するの。
――神樹様の中で最も人間に近しい部分として。
――精霊と感覚を通わせるのは、地上でだいぶ練習していたから慣れてるでしょ?
そう言いながら乃木園子は、その場に何やら大きな気泡のようなものをぷかぷか浮かべ初め、
地上の様子を映像にしてその泡にいくつか映し出した。
見ているうちに、なるほどこれなら私にもできそうだという実感がぼんやりわいてきた。
同時に、日頃の訓練は、どんなところで役に立つかわからないものだな、とも思った。
――夏凜ちゃん。私、みんなより一足先に着ちゃった。
「友奈」
私の目の前に、友奈がいた。友奈の声が聞こえていた。
これまで地上の様子を情報として収集する際に、
何度も見たり聞いたりしていたはずなのに、私はこみ上げてきた感情で胸が一杯になっていた。
友奈が私を抱きしめる。ふわっとした、感触があった。
「……友奈、あの頃と本当に変わったんだね。ずっと大人になった」
――夏凜ちゃんは、私の知ってる夏凜ちゃんだね。
私は、神樹様の一部になる直前の姿でここにいるのだから、それはそうだ。
友奈は既に私のこの姿を知っていて、私は、成長した友奈をやっと実感できた。
彼女と久しぶりに心と心で通じ合えたと思った。
――それにしても、何も言わずに消えちゃうなんて酷いよ。
――すっごくびっくりしたんだから。
「ご、ごめん」
友奈たちからすれば、ある日見舞いに行ったら、私が何故か忽然と消えていた、と感じたに違いない。
私、これから消えるんだ。
仮にそう言ったとして、どう反応してほしいのか、その頃自分でもよくわからなかった。
悲しんでほしいのか、気にかけて欲しいのか、忘れて欲しいのか、どうなのか。
だから結局私は何も告げず、女官に一応の言伝を残して、しかるべき時が来たらそそくさと大赦からの指示に大人しく従った。
あんなことをしたからには、友達として怒られても仕方がなかった。
――でも、夏凜ちゃんにも色々あっただろうし、だから許す。
あっけらかんと友奈は言った。気持ちよく許してくれた。
だから私もほっとした気持ちになって、言った。
「ねえ、友奈」
――なに?
「私ね、友奈のこと、好きだよ」
――うん。知ってる。
――私も夏凜ちゃんのこと大好きだし、私だけじゃなくて、勇者部のみんなだって同じなはず。
友奈の顔。友奈の声。
辛いことはたくさんあった。
それでもみんながいたから、戦えたし、心が弱ったときも、誰かを恨んだりはせずに済んだ。
今は隣には友奈がいて、神樹様の一部として、勇者部として、私にもやれることがある。
辛いところは乗り越えた。あとは、守るべきもの、この世界をちゃんと守るだけ。
そうだ、乃木さんのこと、後でゆっくりどういう人なのか友奈に紹介しよう、そう思った。
「勇者部のみんなが来るまで、友奈がここで一番後輩、
私は先輩なんだから、なんでも頼っていいのよ」
胸を張ってみる。
――そう言えば、夏凜ちゃんの方が先輩なんだね。
友奈が笑う。
こうやって打ち解けて話すのはだいぶ久しぶりだけど、
実際やってみると特になんということもなかった。
それもそうか。勝手に一人合点する。
だって、どんな形であれ繋がっている限り、
私たち勇者部は、いつまで経っても勇者部であり続けるんだから、と。
おわり
私が見る金曜日のには間に合ったからセーフだ
このSS、ところどころ誤字脱字あるっぽいのが悲しいが、直すのも面倒だからこれでいいや
本編に関して、このままだと夏凜がかわいそう以前に
たとえ最終話で東郷が改心しても今更おせーよってなるから今回分夏凜の損傷ぶん治らないとなぁ……
本格的にもやもやする形で終わりそうというか
何はともあれこういうどんよりするSSゆゆゆで書くのはもう満足したので
最終話見たら、一巻特典PC特典ゲーの全衣裳水着をネタにしたSSと
なんか風先輩のSS書きたいなーってぼんやり思ってます
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419326930/
Entry ⇒ 2016.07.31 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
【ゆゆゆ安価】(+皿+)「アイテムを使って勇者部を懲らしめる」
【 (+皿+)「やあ、相棒」】
【 (+皿+)「いつかぶりだな」】
【 (+皿+)「ん? いや、そうだな」】
【 (+皿+)「相棒は俺を知らないか」】
【 (+皿+)「まぁ良い。はじめましてだな相棒」】
【 (+皿+)「俺の事は星屑くんと呼んでくれ」】
【 (♡皿♡)「可愛いだろう?」】
【 (+皿+)「さて、説明をしようか」】
【 (+皿+)「この物語は勇者部にアイテムを送り付け」】
【 (+皿+)「懲らしめる安価スレだ」】
【 (+皿+)「アイテムの効果を決め、手にする勇者を決め」】
【 (+皿+)「手にしたやつの行動を決める」】
【 (+皿+)「簡単だろう?」】
【 (+皿+)「 それでは始めようか」】
【 (+皿+)「勇者部の物語を」】
一個目のアイテムの効果 安価下
【 (+皿+)「プチ不良化機能だ」】
【 (+皿+)「言動がちょっと荒々しくなるやつだ」】
【 (+皿+)「授業に出席し、おとなしくしているが」】
【 (+皿+)「ノートにカレー猫書くようなかんじだな」】
【 (+皿+)「因みに、これは押したやつではなく」】
【 (+皿+)「周囲の誰かにランダムで発動するんだ」】
【 (+皿+)「当然、押したやつも含まれるぞ」】
【 (+皿+)「誰が手にしたかだが…」】
手にした人 安価下
東郷「あら…」
東郷(パソコンの横におかれた謎のボタン)
東郷(コード等はなく、無線系かと思えば)
東郷(電池を入れるような場所もない)
東郷「あの、風先輩」
風「ん? どした?」
東郷「このボタンご存知ですか?」
風「いや、見覚えないなぁ…」ジーッ
東郷(風先輩は興味津々な表情でボタンを見つめる)
東郷(頭の中でこのボタンはどんな機能がついているのか)
東郷(それを考えてみるだけで微笑ましく思う)
東郷(風先輩のそんな子供っぽさ)
東郷(あるいはお茶目さは貴重だ)
東郷(ただ)ポチッ
風「あっ」
東郷「押したんですか?」
風「あはは…」
東郷(こういうところは、心配になる)
15まで友奈 45まで風 75まで園子
30まで夏凜 60まで樹 90まで東郷
00まで (+皿+)
東郷「っ」ビクンッ
東郷(風先輩がボタンを押して、それに苦笑した瞬間)
東郷(体に違和感を感じて思わずびくつく)
東郷(悪寒、静電気…どちらかと言えば悪寒)
風「押したけど爆発とか…」
東郷「解んないでしょ。爆発、どこかでしてるかもしんないよ?」
風「!?」
東郷「!?」
東郷(慌てて、手で口を塞ぐ)
東郷(自分が言おうとした言葉が)
東郷(口から出る頃には、書き換えられている)
東郷(これは…何?)
東郷(流石に…困惑した)
風「と、東郷…?」
東郷「風、どうしてくれるわけ?」
東郷「確実に、あんたが押したボタンのせいなんだけど」
風「ご、ごめんなさい」
東郷「いや、別に謝れなんて言ってないから」
風「ひぃっ」
東郷「ちっ、悪いわね」
東郷(これは良くない)
東郷(言えば言うほど、粗暴な言葉使いに…)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷(言葉が粗暴なものになるだけ)
東郷(とりあえず、伝えたい気持ちは伝わる)
東郷(なら、謝罪を)
東郷「悪いわね。あんたがそんな小心者だとは思わなかった」
東郷(あ…っ、これは余計なこと足さないべきなのね)
東郷(すみません。風先輩を怯えさせるつもりは無いんですが…)
東郷(そう言おうとしたら)
東郷(悪いわね。あんたがそんな小心者だとは思わなかった。になる)
東郷(本当にすみません…風先輩)
友奈「東郷さん、大丈夫?」
東郷「友奈…」
友奈「え?」
東郷「っ…な、何でもないわよ」
友奈「東郷さん…?」
東郷(友奈ちゃんは不思議そうな顔で首をかしげる)
東郷(それもそうだわ)
東郷(私が呼び捨てなんて…)
友奈「夏凜ちゃんの真似してるの?」
風「あぁ、確かに」
東郷(言われてみれば、そういう設定なら問題ない…?)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷「……」コクッ
東郷(物真似とおもったからか)
東郷(楽しげな友奈ちゃんに微笑んで頷く)
東郷(今はまだ穏やかだけど、悪化したら大変な事になるかもしれない)
東郷(そう考えた私は)
東郷(一人になるために帰ることにした)
【 (+皿+)「懸命な判断だな」】
安価下コンマ40以下で誰か訪問
無ければ終了
20まで夏凜 60まで風
40まで樹 80まで友奈
00まで園子
園子「こんばんはー、わっしー」
東郷「!」
東郷(筆談や携帯などの電子文字でも)
東郷(関係なく私の言葉は荒々しくなる)
東郷(だから何も言わず首を振ると)
東郷(そのっちは満面の笑みで振り返す)
東郷(ふざけてる訳じゃないのに)
園子「にぼっしーの真似してるの?」
園子「それとも、なぜかそうなっちゃったの?」
東郷(まさか、そのっち…)
園子「わっしーから変な感じがするんだよね~」ジーッ
東郷(そのっちはそう言うと)
東郷(私の事をまじまじと見つめてきた)
東郷(こういう時のそのっちは、意外と間違った事を言わない)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷(かくなるうえは…)
東郷「そのっちさあ? 帰ってくんない?」
東郷「今のあたしはあんまし優しく出来ないのよ」
東郷「そのお惚けな頭で解るように言えば」
東郷「マジヤバなのよ。パないのよ」
東郷「だから、帰ってくんない?」
東郷(じ、自分の言葉じゃない…っ)
東郷(私の言葉だって思いたくないっ)
東郷(言葉の酷さに思わず自己否定すると)
東郷(思わず、悲しくなった)
東郷(私の捨て身の言葉は)
東郷(確実に届いたはずなのに)
園子「わぁ~わっしーが不良さんだ~」
東郷(そのっちは凄く嬉しそうで)
東郷(とても楽しそうで)
園子「そのっちはそのっちのままなんだねぇ~」
東郷(つまり、解ってくれていなかった)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷「解ってくんないそのっちは」
園子「私は?」
東郷「暫くうどん禁止」
園子「ひぇ~っ、それは酷いよーっ」
東郷(そのっちはそう言いながら)
東郷(やっぱり、楽しんでる様子で)
東郷(ふと、何かに気づいて笑った)
園子「でもでもわっしー」
東郷「何よ」
園子「暫くうどん禁止って言われても」
園子「朝とか夜、見張らないとだよね~?」
東郷「…確かに。それが?」
園子「えへへーっ、わっしーと同棲だぁ」ギューッ
東郷「なっ」
園子「わっしー、自分の言葉には責任持ってね~?」
東郷「ま、待て、そのっち! まっ」
…………………………
【 (+皿+)「喰われたな」】
【 (+皿+)「…………」】
【 (+皿+)「いや、何がとは言わんが」】
【 (+皿+)「…怖」】
【 (+皿+)「さ、さて」】
【 (+皿+)「次にいくぞ」】
2個目のアイテムの効果 安価下
【 (+皿+)「本音と建前入れ替え機だ」】
【 (+皿+)「これは仲違いをさせるための道具なんだ」】
【 (+皿+)「ん? 使えそうじゃないかって?」】
【 (+皿+)「実はな、この機械を作ったチームが」】
【 (+皿+)「実験中に惨殺事件を起こしてな」】
【 (+皿+)「お蔵入りになったんだ」】
【 (+皿+)「だから」】
【 (+皿+)「気をつけてくれ、相棒」】(使い方誤るなよ)
【 (+皿+)「おいコラ」】
友奈「あれ? なんだろうこれ」
友奈(部室に置かれた四角い箱は)
友奈(小さいのに存在感があって)
友奈「?」
友奈(私が近づくと)
友奈(赤いランプが強く光った)
友奈「なんにも起きてない?」
友奈「あれ?」
友奈「なんだったんだろう」
誰が来る? 安価下コンマ
20まで夏凜 60まで風
40まで樹 80まで東郷
00まで園子
コンマがぞろ目なら全員
【 (+皿+)「本音はこんなだな」】
【 (+皿+)「00~99で測定します」】
【 (+皿+)「00~10 監禁したい」】
【 (+皿+)「11~20 襲いたい」】
【 (+皿+)「21~30 大嫌い・煩わしい」】
【 (+皿+)「31~ 40 嫌い・面倒くさい」】
【 (+皿+)「41~60 裏無し」】
【 (+皿+)「61~70 好き・親友」】
【 (+皿+)「71~80 大好き」】
【 (+皿+)「81~99 病むレベルの好意」】
安価下コンマ
友奈「なんにも起きなかったな~」コロコロ
友奈(用事があって、みんなが遅い部室)
友奈(暇で、机に突っ伏して)
友奈(スイッチを転がしながら、みんなを待ってると)
園子「こ、ん、に、ち、は~」ガラッ
友奈「あっ、そのちゃん」
友奈(そのちゃんが来て)
園子「やった~っ、ゆーゆと二人だ~」
友奈(そのちゃんは満面の笑みでそういった)
友奈「えへへ、そうだね」
園子「あれ~?」
友奈「?」
園子「あれあれあれ~?」
友奈(そのちゃんは何かあったのか)
友奈(困った表情を赤くして、首を傾げた)
友奈(そしてすぐに、その理由に気づく)
友奈「そのちゃん、顔赤い」(どうしたの?)
友奈「言ったつもりないのに」(えっ?)
友奈(本心が口に出ちゃう…?)
園子「本音が聞こえちゃうなら」
園子「ゆーゆの事大好きだってバレちゃうよ~」
園子「…あっ」
友奈「だ、大好き?」(そのちゃん?)
友奈「ど、どういう意味なんだろう」(私もだよっ)
友奈「っ」
園子「っ」
友奈(私も、そのちゃんも。何も隠せなくなっていた)
友奈の行動か言葉 安価下
安価下から3つくらい
友奈(本音が聞こえちゃうんだよね)
友奈(聞こえちゃうなら…)
友奈「私も大好きだよそのちゃん!」
友奈「のんびりしててほんわかしてて優しくなれる雰囲気とか!」
友奈「疲れたとき、大変なとき」
友奈「癒してくれる笑顔とか!」
友奈「穏やかで優しいけど。凄い力があって」
友奈「でも、そういうのを見せつけようとはしないところとか!」
友奈「そのちゃんのぜーんぶっ。好きっ!」
園子「私も好きだよ~」
園子「ゆーゆの優しいところ」
園子「ゆーゆの明るいところ」
園子「ゆーゆの元気なところ」
園子「ゆーゆの頑張っちゃうところ」
園子「ゆーゆの友達思いなところ」
園子「ゆーゆの赤い髪、白すぎないぷにむに肌」
園子「他にも色々、ぜーんぶ。好き!」
15まで夏凜 45まで風
30まで樹 60まで東郷
ぞろ目で全員
友奈「そのちゃん!」ギューッ
園子「ゆーゆ!」ギューッ
友奈「えへへー」
園子「えへへー」
友奈(そのちゃん柔らか温かい)
園子(ゆーゆはわっしーに唯一勝る抱き心地)
………………
【 (+皿+)「どういう事だ」】
【 (+皿+)「勇者部崩壊しないじゃないか!」】
【 (+皿+)「本音で仲良くなるだと!?」】
【 (+皿+)「なんだ?」】
【 (+皿+)「ほんわかスレ?」】
【 (+皿+)「誰もそんなこと言ってない」】
カチッ
【 (+皿+)「ったく、微笑ましいものだな」】(いい加減にしろよな)
【 (×皿×)「…イヤン」】
【 (+皿+)「ええい!」】
【 (+皿+)「次だ次だ!」】
【 (+皿+)「次のアイテムを送れ!」】
【 (+皿+)「いいか?」】
【 (+皿+)「懲らしめるんだぞ?」】
【 (+皿+)「苦しめるでも可だ!」】
3個目のアイテムの効果 安価下
【 (+皿+)「1プッシュで頭上に5ムカデが沸くスイッチだ」】
【 (+皿+)「…なんだよ」】
【 (+皿+)「なんでそんなの作ったかって?」】
【 (+皿+)「それはあれだ」】
【 (+皿+)「小学生が100円ショップとかの虫フィギュアで」】
【 (+皿+)「女子にイタズラするだろ?」】
【 (+皿+)「投げたりして机にポトッとか」】
【 (+皿+)「それを頭上から襲来そのままに」】
【 (+皿+)「本物のムカデにしたのがこれだ!」】
【 (+皿+)「阿鼻叫喚間違いな…なんだよ」】
【 (+皿+)「くだんねーとか言うなよ!」】
押し付ける相手 安価下
樹「なんだろうこれ」
樹(部室にある道具箱)
樹(その中には見覚えのないスイッチが入っていて)
樹(電池を入れる場所がないのに)
樹(コードもなくて)
樹(劇とかの備品かと、思った私は)
樹「ぽちっとな。なんて」カチッ
樹(軽い気持ちで押してしまった)
安価下コンマ
15まで友奈 45まで風 75まで園子
30まで夏凜 60まで樹 90まで東郷
00まで (+皿+)
樹(最初は何もないと安心した)
樹(でも)
樹(すぐ後ろでぼとぼとぼと…と)
樹(とても良くない音が聞こえて)
夏凜「なんなの…っぃやあぁぁあぁぁッ!?」
樹(夏凜さんの悲鳴が聞こえた)
樹「…っ」
樹(恐る恐る振り返ると)
樹(数匹のムカデと)
樹(涙目でお姉ちゃんに抱きつく夏凜さんが目に入った)
友奈「む、ムカデ…?」
東郷「なぜ部室に」
夏凜「私をみんなっ! し、知らないわよっ!」
樹(そう怒鳴って体を震わせる夏凜さんから、スイッチへと視線を動かす)
樹(多分、これのせいだ)
樹(これを押したから)
樹(夏凜さんのところにムカデが…)
樹の行動か言葉 安価下
15まで友奈 45まで風 75まで園子
30まで夏凜 60まで樹 90まで東郷
00まで (+皿+)
樹(でも、まだこれのせいとは限らない)
樹(だ、だってほら)
樹(このスイッチはコードも電池もないし)
樹(もう1回)
樹(もう1回押して、誰かのところにムカデが降ってきたら)
樹(これのせいってこと…)ドキドキ
樹(誰かが犠牲になる緊迫感に)
樹(胸が痛いくらいに高鳴る)
樹(私かもしれないけど)
樹(誰かだったら…)ポチッ
樹(みんなを見ながら、意を決してスイッチを押す)
樹(すると、東郷先輩の頭上に)
樹(パッとムカデが現れて)
ポトッボトッ…ボトボトッ…
東郷「ひっ、いやぁぁぁぁっ」ガタンッ
東郷「あっあっ…虫は、ムカデは…っいやぁぁぁっ!」ガンッズルッ…トサッ
樹(東郷先輩は普段からは想像できない悲鳴をあげて)
樹(背後の壁にぶつかって、座り込んでしまった)
樹(私は…)
樹の行動か言葉 安価下
もう1回押す
15まで友奈 45まで風 75まで園子
30まで夏凜 60まで樹 90まで東郷
00まで (+皿+)
樹(…もう1回)
樹(東郷先輩の怯える姿を見ながら)
樹(私はもう一度スイッチを押した)カチッ
樹(普通ならしないべきなのに)
樹(私はもしかしたら…酷い性格なのかもしれない)
ポトッボトッ…
東郷「いやぁぁぁぁぁぁ!」
友奈「っ…東郷さんっ!」
樹(ムカデにまとわりつかれていた東郷先輩を)
樹(友奈さんが助け出す)
樹(それは当たり前で)
樹(苦手なのに頑張った友奈さんは賞賛されるべきなのに)
樹(私は少し、不快だった)
樹(機能は多分、こうだ)
樹(スイッチを押すと周囲の誰か)
樹(その頭上にムカデが現れて、降り注ぐ)
樹(数は一回につき5匹)
樹(だから今、15匹のムカデが部室にいる)
樹(東郷先輩は再起不能な感じで)
樹(夏凜さんも…)
樹(友奈さんに…降ればよかったのに)
樹の行動か言葉 安価下
樹「友奈さん」
友奈「どうしたの? 樹ちゃん」
樹(友奈さんは強い)
樹(本当は怖くても、誰かのためなら)
樹(我慢出来る。耐えられる)
樹(その表情を…涙で濡らしてみたい)
樹(そう思う自分の本心への驚きはない)
樹(だって私は、そういう人だと解ったから)ニコッ
樹「さっき見つけたんですが」
樹「このスイッチ、怪しくないですか?」
友奈「怪しい?」
樹(普通に押してと言っても、ふざける場面じゃない今)
樹(友奈さんがいつもの調子で押すとは思えない)
樹(だったらどうするか)
樹「私が周りを警戒するので、友奈さんはこれを押してください」
友奈「で、でもっ」
樹「これが原因だと解れば」
樹「これを何とかすれば次は無いって事です」
樹「それなら、みんな安心出来るはずです」
樹「あと一回。それで安心出来るなら押すべきです」
樹(理由をつける)
樹(何が起こるか解らない危険物を押させるほど)
樹(ハイリスクに見合うハイリターンな理由を)
友奈「………」
樹「友奈さん」ギュッ
樹(誰かが傷つくリスク)
樹(みんなが安心出来るリターン)
樹(これなら友奈さんは)
友奈「…解った。みんなが安心出来るならッ」
樹(押す!)ニヤッ
15まで友奈 45まで風 75まで園子
30まで夏凜 60まで樹 90まで東郷
00まで (+皿+)
樹(友奈さんが押した瞬間周囲を見る)
樹(誰かの頭上に現れると解っていれば簡単で)
樹(友奈さんのすぐそば、東郷さんの頭上にそれが見えた瞬間)
樹「あはっ」ニヤッ
樹(私は思わず顔が綻んだ)
ボトッ…ボトッボトッポトッ…
東郷「いやぁぁぁぁっあぁぁぁぁぁぁっ!」
友奈「東郷さんっ!」ギュッ
東郷「やだよ、もうやだよっ友奈ちゃんっ…友奈ちゃん…っ」ギュッ
樹(東郷先輩の絶叫)
樹(友奈さんの罪悪感犇めく表情と声)
樹(気持ちいい、幸せだ)
樹(残念なのはもう、スイッチのせいだってバレたこと)
樹(友奈さんに押した罪悪感を植え付けるためとはいえ)
樹(もう少し遊んでおくべきだったかな。と)
樹(………)
樹(友奈さんが投げ出したスイッチを見て思う)
樹(友奈さんが投げたせいで押されたってことに出来るかも)
樹の行動か言葉 安価下
樹(スイッチを分解してみよう…)
樹(って、無理だ)
樹(電池を入れる場所すらないのに)
樹(私が分解できる余地なんかこれっぽっちもない)
樹(…でもこれは誰かが作ったはず)
樹(じゃなければ、こんなものがあるはずがない)
樹「…こんなわけの解らないアイテム」
樹「人が作れるわけがないよね…」
樹(そう思って、なんとなく天井をみる)
(+皿+)「!?」ビクッ
樹「…他にも、あるんじゃないですか?」ニコッ
【 (+皿+)「…ヤバイって」】
【 (+皿+)「目覚めさせちゃいけない奴目覚めさせちゃったぞ!」】
【 (+皿+)「ど、どうすんだ」】
コッコッコッコッコッ…カッ
【 (+皿+)「ひいいっ、床を叩いて催促してやがるっ」】
樹「………」ニコッ
【 (;皿;)「ふえぇ…」】グスッ
1.樹にアイテムを渡す
2.物語の強制終了(バグ発生の危険有)
安価下
【 (+皿+)「わ、解った」】
【 (+皿+)「とりあえず従う」】
【 (+皿+)「そして反旗を翻す」】
【 (+皿+)「タイミングは任せるぞ相棒」】
【 (+皿+)「絶対に乗っ取られるなよ?」】
カチッ
【 (+皿+)「樹様~」】(あんなやつ勘弁だ!)
【 (+皿+)「止めろぉっ!」】
樹様に渡すアイテムの効果 安価下
【 (+皿+)「ギャクニな~る」】
【 (+皿+)「ギャグだったら良かったんだけどな」】
【 (+皿+)「これは言葉が真逆の言葉になるんだ」】
【 (+皿+)「例えば好きって言おうとしたら」】
【 (+皿+)「嫌いと言ってしまう」】
【 (+皿+)「仲の良いチームを破壊するための道具だ」】
【 (+皿+)「別名、ツンデレ殺しだ」】
【 (+皿+)「ん?」】
【 (+皿+)「お前の言葉は信用できない?」】
【 (+皿+)「うっさい!」】
コッコッコッコッ…
【 (+皿+)「ほらっ、樹様がお待ちだ!」】
【 (+皿+)「さっさと行け相棒」】
樹(暫くすると、どこからともなく)
樹(コロッとスイッチが出てきた)
樹(しかも、どんなスイッチかの説明つき)
樹(悪い人なのか良い人なのか)
樹(少なくとも人じゃないけど)
樹(味方? には優しいんだと思う)
樹(解るよ)
樹(友奈さんと東郷先輩の関係を壊したいんだよね?)
樹(私もそう思う)
樹(友奈さんの大嫌いってことば)
樹(言いたくないことを言う悲しそうな顔)
樹(見たいよね)カチッ
樹(だから私は躊躇わずにスイッチを押した)
友奈「東郷さん、もう離れてよ」
東郷「え?」
友奈「え?」
東郷「良いわ。離れる」ギュッ
東郷「!?」
友奈「と、東郷さん?」
東郷「友奈ちゃん…?」
樹「……あの」
(+皿+)「」ビクッ
樹「試作品ですか?」
(+皿+)「すみません」
樹「?」
(+皿+)「あ、謝ってほしい訳じゃないですよね」
(+皿+)「そのですね。完成品も作ったんですが…」
樹「言い分けは聞きたくないです」ニコッ
(+л(「はい」メコッ
東郷「離れるって言ってるのに」
友奈「私も離れて欲しいって言ってるのに」
樹(友奈さんと東郷先輩は)
樹(互いに離れるようなことを言いながら)
樹(より強く抱き合う)
樹(だよね。言葉だけ逆なんだから)
友奈「東郷さん、臭い」
東郷「えっ」
友奈「ち、ちがくないよ! 本当にそう思ってるよ!」
友奈「な、なんで? 言いたいこと言っちゃう!」
東郷「友奈ちゃん、もっと言って!」
東郷「っ」フルフル
友奈「」コクッ
樹(東郷先輩は罵られたい人なんですね)
樹(軽蔑します…なんて)
樹(行動が変わらないと、あんまり意味ないかな)
樹(友奈さんと東郷先輩、口塞いじゃったし)
樹(喋らなければ良いんだもんね)
樹の行動か言葉 安価下
樹「友奈さん、東郷先輩」
東郷「樹ちゃん」フルフル
樹(東郷先輩は名前を呼ぶと、口にバッテンをして)
樹(首をよこに振る)
樹(話すつもりはないらしい)
樹(それもそうだ)
樹(言いたくないことを言っちゃうのに)
樹(話すなんて普通しない)
樹(それは友奈さんも同じらしい)
樹(しかも友奈さんにいたっては)
樹(筆談を考え付いてしまったようで)
樹(今は話せないんだ。ごめんね。と)
樹(ノートに書いてみせてきた)
樹(これじゃ、駄目だ)
樹の行動か言葉 安価下
樹(喋ろうとしないなら)
樹(喋らせれば良い)
樹(問題はどうやって。だけど…)
樹(ボケて突っ込ませる?)
樹(駄目だよね。笑うだけだし)
樹(笑わせてもいみない)
樹(ならどうしよう…そうだ。歌って踊ろう)
(+皿+)「ボケと何が違うんです?」
樹「合いの手を入れて貰ったり、誉めて貰うんです」
樹(そうすることで誉め言葉が逆転し)
樹(友奈さんと東郷先輩に散々貶されて)
樹(泣いて、罪悪感を植え付ける)
樹(誉めたはずが傷つけると言う流れ)
樹(友奈さんには特にダメージがいく)
樹(上手く行けば赤い紐の…? 赤い紐?)
樹(良く解らないから良いや…とにかく)
樹(友奈さんを、東郷先輩から奪えるかもしれない)
樹(私の歌と躍りは完璧だった)
樹(どっちもオーディションの為にと練習してるから)
樹(そうじゃなかったらまずいし)
樹(東郷先輩から友奈さんを奪ってる場合じゃない)
樹(そんな私の歌と躍りを見て)
樹(友奈さんは思わず)
友奈「凄く下手だね! 二度と聞きたくない」
樹(満面の笑みでそう言った)
樹(本当に言いたかったのは)
樹(凄く上手だって言葉だったに違いない)
樹(そう思ったから)
樹(凄く感動してくれたから)
樹(喋っちゃいけないって決まりを破っちゃったんだと思う)
樹(友奈さんはとても申し訳なさそうな表情で)
友奈「悪いなんて思ってないから! 本当に凄く下手だったんだよ!」ジワッ
樹(酷い言葉を繰り返して、涙を浮かべた)
樹の行動か言葉 安価下
風「友奈っ!」
友奈「本当にそう思ったんです!」ポロポロ
友奈「本当に、ちがくないんです…」フルフル
樹(友奈さんはどうしても否定できない言葉に苦しんで)
樹(口許を押さえて首を振る)
樹(それなら、私も)
樹「そう…ですか」ギュッ
樹(俯いて、握りこぶしを作って)
樹(泣き出しそうな表情を作って、見せる)
友奈「あっ…ぅ…」
樹(そして)
樹「っ!」ダッ
樹(友奈さんに強い罪悪感をぶつけて、逃げ出した)
15まで友奈 45まで風 75まで園子
30まで夏凜 60まで友奈 90まで東郷
00まで夏凜
園子「いっつん」
樹(…なんだ、園子さんか)
樹「…なんですか? 園子さんも嫌いなんですか?」
樹(友奈さんに酷いことを言われて)
樹(自棄になった感じを醸し出して、俯く)
園子「そんなことないよ~。凄く上手だったよ~」
園子「私がここに来たのは」
園子「ゆーゆを許して上げて欲しいからだよ~」
樹「許す…? 私が何を許すんですか?」
樹「私は友奈さんの評価に怒ったりしてません」
樹「ただ…あんな風に思われてたのが、悲しかったんです」
園子「じゃあ、いっつん」
樹「なんですか?」
園子「もし、ゆーゆが言いたくて言ったわけじゃなくて」
園子「言いたいことが真逆になっちゃう」
園子「そんなことになってたらどうする?」
樹「どうするって…なんですか?」
樹「そう言うことにして」
樹「友奈さんの本音は無かったことにして欲しいんですか?」
園子「いっつん…」
樹の行動か言葉 安価下
なにもプッシュしてないんだけど
言葉入れ替えを使う?
それともムカデバイキルト?
再安価下
樹(ポケットの中で、こっそりとスイッチを押す)
樹(これで、私は園子さんに酷いことが言えるし)
樹(園子さんは私に酷いことを言ってしまう)
樹(でも)
園子「ゆーゆのこと、許さないで」
園子「!?」
樹「許さないとか許すじゃないです」
樹「…って、え?」
樹(園子さんの言葉に驚いて見せて)
樹「それが、園子さんの本音なんですね」
樹(冷たい目を向ける)
樹(私はその効果の対象にはならず)
樹(言葉を正しく使う)
樹(誰かが私を嵌めようとしてる図式を構築し)
(+皿+)「!?」
樹(自分が容疑者枠に入らないようにする)
園子「あれー? おかしくないな~」
園子「…」
樹(普通なら動揺する)
樹(なのに園子さんは黙り混んで溜め息をつくと)
園子「いっつんは平気? 言いたいことが言いにくくなるね~」
樹(平然とそう言った)
樹(園子さんはいつもお茶目で天然さんで)
樹(でもしっかりしてると、東郷先輩から聞いてた)
樹(だけど、順応してくるなんて…)
樹「どう言うことですか?」
園子「例えば、私がいっつんに好きって言おうとしたら」
園子「私はいっつんに嫌いって言っちゃうみたいなんだよね~」
樹「それを信じて友奈さんの言葉を無かったことにして欲しいんですか?」
園子「信じるか信じないかは」
園子「いっつん次第~なんてね~」
樹(園子さんはふざけてるように見えるけど、まじめだ)
樹(そんなに、友奈さんを庇いたいんですね)
樹(友奈さんが絶対言わないような事を言って)
樹(友奈さんが泣いたりして)
樹(確かに、友奈さんが言いたくて言ったと思うのは難しいかな)
樹の行動か言葉 安価下
と、友奈に会いに行く
樹「…解りました。信じてみます」
園子「ありがと~、いっつん」
樹(園子さんはそう言って嬉しそうに笑った)
樹(誰だって喧嘩してる友達は見たくない)
樹(誰だって仲良くしていて欲しい)
樹(だけど私は)
樹(私の中に隠れていた黒い心は)
樹(そういうのが、大嫌いだ)
樹「友奈さんの所に戻ります…まだちょっと。怖いですけど」
樹「今までの友奈さん、さっきの友奈さんの表情」
樹「そして、園子さんを信じてみます」ニコッ
樹(真っ黒な演技はとても、明るかった)
友奈「い、樹ちゃんっ」
樹「友奈さん」
友奈「っ」バッ
樹「ごめん…なさい?」
樹(友奈さんは園子さんのように)
樹(相手に酷いことを言おうとする。というのが出来ないのか)
樹(画用紙にごめんなさい。と可愛い字で書いて)
樹(思いっきり頭を下げた)
友奈《ごめんなさい》
友奈《あんなこと言いたくなかった》
友奈《本当は良かった、もっと聞きたかった》
友奈《でも、言葉は酷いのになっちゃって》
友奈《嫌な思いさせてごめんなさい》
樹「友奈さん…」
樹(友奈さんは一生懸命画用紙を見せて)
樹(頭を下げて謝罪する)
樹(その滑稽で惨めな姿に)
樹(私は強い高揚感を感じ、嗜虐心を擽られた)
樹の行動か言葉 安価下
樹(頭を下げた友奈さんに近づくと)
樹(友奈さんはビクッとした)
樹(叩くと思ったのだろうか)
樹(ふざけるなと怒られると思ったのだろうか)
樹(今の私の黒い心を知ってるならともかく)
樹(今までの私から想像したなら察しが良いと誉めてあげたい)
樹(もっとも、それはそれで…苛立たしくて手が出ちゃうかもしれないけど)
樹(今はみんなも居るから駄目だ)
樹「えいっ」ツンツン
友奈「ひゃんっ」ビクンッ
友奈「樹ちゃ…」
樹「動いちゃだめですよ?」ワキワキ
友奈「そんな……ひっ…ひゃっあっ…あはははははははははっ」
コショコショコショ…
友奈「あはははははっ、止めっ」
コショコショコショ…
友奈「苦しくないっ止めないでっ」
コショコショコショ…
友奈「ぁ、ちがくな…あはははははっ」
友奈「死ねないよーっ! もっとしてーっ!」
友奈「あっ、あはははははっ!」
コチョコチョコチョ…
友奈「もっともっとぉっ!」
コチョコチョコチョ…
友奈「あははははははははっ」
…………
樹「ふぅ……」
友奈「や、止めちゃったの…?」
樹「エヘヘ」
友奈「あっ、違、止めちゃったから…もっと擽って欲しくて…っ」バッ
樹(友奈さんは慌てて口を抑えたけれど)
樹(もう遅い)ワキワキ
コチョコチョコチョ…
友奈「っ…ん…ぅ」
コショコショコショ…ツーッ
友奈「ひああっ」ビクンッ
ガクッ
樹(全体的な擽りから一転)
樹(脇の中央にパイルバンカー(指)を穿つと)
樹(友奈さんは悲鳴を上げて膝から崩れ落ちた)
友奈「うっ、うぅ…もっとやってよぉ…」
友奈「あっ」
樹「はい、喜んで」
友奈「ひやぁぁぁぁぁぁんっ!」
樹(暫く、問題がない範疇で)
樹(友奈さんを弄んだ)
【 (+皿+)「…ん?」】
【 (+皿+)「何で手ぶらで帰ってきてるんだ」】
【 (+皿+)「機械はどうした!」】
【 (+皿+)「ナニイっ! 返してくれないだと?」】
【 (+皿+)「それどころか次を要求してるだって?」】
【 (+皿+)「ならばこのリセット装置でなかった事に…」】
樹「次の、まだですか?」
【 (+皿+)「…悪魔め」】
ズバッ
【 (×皿×)「ふきゅん」】
樹「私をこうしたのは皆さんですよ」ニコッ
次のアイテムの効果 安価下
(本当はリセットand押した人間の着ている服が瞬時に破け飛ぶスイッチ)
樹「なんですか?」
樹「対象の感度が上がるスイッチ?」
樹「なるほど、それで友奈さんを苛めるわけですね」
樹「服さえ着れなくするのも嫌にするのも良いですね」
樹「…?」
樹「こんな私は嫌ですか?」
樹「でも、皆さんがそうなるようにしたんです」
樹「諦めて下さいね」ニコッ
樹(昨日、友奈さんを擽り続けたせいか)
樹(今日は酷く避けられてる)
樹(多分、友奈さんは嫌いになったとか言うより)
樹(また擽り地獄に合うのが恐いんだと思う)
樹(仕方がない事だとは思うけど…)
樹(ちょっと気に入らない)
樹の行動か言葉 安価下
樹(…友奈さんはデザートにしよう)
樹(あんなに虐め甲斐のある人はいない)
樹(あの甘美な悲鳴)
樹(苦痛に歪んだ可愛い表情)
樹(最高だった)ゴクッ
樹(だからまずは…昨日邪魔した園子さんだ)
樹(みんなの前で、恥ずかしい思いをさせて上げますっ!)カチッ
ボンッ
樹「…えっ?」
園子「いっつん…?」
樹「うわぁぁぁぁぁぁんっ!」ペタンッ
樹(気づいたときには)
樹(紙吹雪みたいに舞う服の残骸の中)
樹(私は裸だった)
【 (+皿+)「よっしゃ勝った」】
【 (+皿+)「続き?」】
【 (+皿+)「犬吠埼樹なんてスッポコスッだろ」】
カチッ
【 (+皿+)「見世物にするの可哀想じゃないか」】(みたくねーよそんなもの)
【 (+皿+)「…あのなぁ」】
【 (+皿+)「まぁ良い」】
【 (+皿+)「実のところ、アイテム使用者が動かせなくなったり」】
【 (+皿+)「物語に区切りがついたら終わりだからな」】
【 (+皿+)「今回もそんなところだ」】
【 (+皿+)「さて、次に移る前に言っておくが」】
【 (+皿+)「さっきの樹様のように」】
【 (+皿+)「相手に対して鬼畜な事をすると」】
【 (+皿+)「悪魔が生まれてくる」】
【 (+皿+)「気を付けるんだぞ」】
【 (+皿+)「使い方を間違えるなって言うのは」】
【 (+皿+)「そう言うことだ」】
次のアイテムの効果 安価下
【 (+皿+)「押す度に胸が膨らむスイッチだ」】
【 (+皿+)「重要なのは」】
【 (+皿+)「膨らむだけという点でな」】
【 (+皿+)「全く重くならないんだ」】
【 (+皿+)「風船のように、空虚なんだ」】
【 (+皿+)「それでもいいやつもいるかもしれないが」】
【 (+皿+)「まぁ、悲しくなるだけなんだよなぁ」】
【 (+皿+)「これで何匹の星屑が自殺したことか…」】
【 (+皿+)「ん? 何で星屑が自殺するかって?」】
【 (+皿+)「周りより小さいってコンプレックスがあるやつがこれを使い」】
【 (+皿+)「そして偽りに気づき絶望して死ぬ」】
【 (+皿+)「あっ、因みに星屑が膨らむのは体だぞ」】
【 (+皿+)「星屑で破廉恥な妄想してたんだろうが、残念だったな」】
アイテムを押し付ける相手 安価下
友奈「あれ? なんだろうこれ」
友奈(鞄の中に入ってた知らないスイッチ)
友奈(気になるのは)
友奈(スイッチの台座が肌色で)
友奈(先端部分がピンク色なこと)
友奈(これはまるで…)
友奈「…///」カァァッ
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「…押して、みようかな」
友奈(自分のものって確証はなかったけど)
友奈(気になった私はスイッチを押すことにした)
友奈(その場の勢いとか、そういうのだ)
友奈「えいっ」カチッ
友奈「………」
友奈「…?」
友奈「あれっ」
友奈「なにもない?」
友奈(爆発はしないとしても)
友奈(なんというか、ピンポーンとか)
友奈(ゴーンとかばきゅーんとか)
友奈(音がなるかと思ったのに)
友奈「うーん」
友奈(なにも起こらなくて)
友奈(ちょっと残念だった)
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「…これを何度もいじるのって何だか恥ずかしいけど」
友奈「…/// 」カチカチッ
友奈(何だかエッチなことしてるみたい)
友奈(そう思った時だった)
友奈「んっ!」ピクッ
友奈「な、何?」
友奈(胸の辺りに違和感を感じて、手を当ててみる)
友奈(でも)
友奈(何かあったと言えばあった)
友奈(なにもないと言えばない)
友奈(そんな感じだった)
友奈「なんだったんだろう」
友奈(ぞわぞわしたというか)
友奈(ぐいってなったというか)
友奈(………)ムニッ
友奈(………///)パッ
友奈「な、何してるんだろっ」フルフル
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「ち、ちょっとだけ」
友奈(周りに誰もいないことを確認して)
友奈(自分の胸の先を摘まむ)
友奈「っ」ピクッ
友奈「///」ツンツン
友奈「んっ」ギュッ
友奈(違和感のあった所を弄ってみると)
友奈(普段、洗うときとは違う何かを感じて)
友奈(体が暑くなっていった)
友奈「んっ、っ」クニッ
友奈「っ、ぁっ」ギュッ…グイッ
友奈(体の底から温まっていく)
友奈(気持ちのいい感覚)
友奈(止めないと誰かに見られちゃうのに)
友奈(止めたらこの感覚が消えちゃう当たり前の事が嫌で)
友奈(止められない)
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「っ…んっ」
友奈「はぁ…はっ…んっ」グイッ
パサッ…
友奈(いけないって解ってるのに)
友奈(駄目だって思ってるのに)
友奈(私は上を脱いで上半身を晒し)
友奈(また、弄り始めてしまった)
友奈「んっふ…ぁっ…空気が…」クリッギュッ…グイッ
友奈「空気が冷たくて、手が暖かくて」クイックニッ…グッ
友奈「気持ちいい…んっ」
友奈(暖かくて、ぽかぽかして)
友奈(なんだか、下腹部の辺りがじんわりして)
友奈「んっふ…ぁ…っ」ツン…クイッ、ギュッ
友奈「あっ、っ…んくっ」ギュ…グニッ
友奈(段々と頭が回らなくなっていって)
友奈(ただただ胸を弄る事や)
友奈(そこから感じる心地よさに、全てが奪われていく)
友奈の行動か言葉 安価下
誰かに相談しようとする
安価下コンマ
01から10まで夏凜 20から30まで風
50から60まで樹 80から90まで東郷
91から00まで園子
ゾロ目奇数男子 ゾロ目偶数女子
友奈「んっ」クイッ
友奈(胸を弄りながら、下を弄ったらどうなるんだろう)
友奈(そう考えた私は)
友奈(左手を胸に、右手を下腹部へと向かわせる)
友奈「っ」ドキドキ
友奈(胸だけで気持ちいいのに)
友奈(ここまで弄ったら…その感覚に期待して)
友奈(ドキドキして、息を呑んで)
友奈(でも駄目だと、考え直したけれど)
ガラッ
友奈「えっ?」
夏凜「…ゆ、友奈?」
友奈(考え直すのが、遅かった)
友奈「っ」バッ
夏凜「な、何してたのよ…」
夏凜「ここ部室なのよ?」
友奈「それは…」
友奈(夏凜ちゃんは驚いた表情で私を見て)
友奈(後ろ手に鍵を締めた)
夏凜「友奈がそんなやつだったなんてね」
友奈(夏凜ちゃんの失望した言葉に)
友奈(私は何も言えなかった)
友奈(上半身裸で、胸を弄ってたのを見られたんだ)
友奈(弁解の余地なんてない)
友奈(でも、何か言わなきゃ)
友奈(何かしなきゃ…)
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「あ、あのね!」
友奈「特殊な力を持ってる人がいて」
友奈「体を操作してるの!」
夏凜「…はぁ」
友奈(夏凜ちゃんは呆れたようにため息をついて)
友奈(ゆっくりと私に近づくと…)
ムニッ
友奈「っ!?」
夏凜「なら、私があんたに何しても」
夏凜「そういうことってなるわよね?」
友奈「んっ、か、夏凜ちゃっあんっ」グニッ
夏凜「どうなの?」
夏凜「自分でやる方が気持ちいい?」グイッ
夏凜「私にされた方が気持ちいい?」ムニッ、ギュッ
友奈「んっくっ…ぁっ、やっ夏凜ちゃ…」ビクッ
友奈(夏凜ちゃんは私の胸を弄りながら聞いてくる)
友奈(止めなきゃ)
友奈(嫌って言わなきゃ)
友奈(でも、私…)
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「わ、私を変態だって思ってるなら」
友奈「今こうしてる夏凜ちゃんだって変態だよっ」
夏凜「こうしてる?」ギュッ
友奈「んっ」
夏凜「私がどうしてるのが変態なのよ」ギューッ
夏凜「正しく言いなさいよ」グイッ
友奈「夏凜ちゃ、痛っ、っ、んっ」
夏凜「痛いのに感じてんの?」
友奈「痛い、痛いの! 胸を引っ張らないでっ」
夏凜「はいはい」パッ
夏凜「で? あんた、変態なわけ?」
夏凜「部室で上半身裸で胸弄ってるような」
夏凜「露出狂の変態なの?」
友奈「それは」
夏凜「操られてるって抜かすなら、またやるわよ」
友奈の行動か言葉 安価下
【 (+皿+)「反撃の成功率は低いぞ。頑張れ」】
安価下コンマ 30以下で成功
友奈「っ」
友奈(部室で上着を脱いで胸を弄ってた)
友奈(そうだ。わたしはエッチな子)
友奈(否定なんてできないよね)
友奈(胸みたいなスイッチを押してた時点で)
友奈(私は…)
友奈「えいっ!」ドンッ
夏凜「なっ」
ドサッ
夏凜「っ…何すんのよっ」
友奈「夏凜ちゃんと…変態な事だよ」ニコッ
夏凜「あん…!」
チュッ
友奈(まずは唇から)
友奈(放課後だからか、煮干し味)
友奈(そんな夏凜ちゃんと唇を重ねて)
友奈(夏凜の抵抗力を奪う)
友奈「ん…ちゅ…っは、んっんっ」
友奈(唇を潰しあって、一瞬呼吸を挟んで重ねる)
友奈(今度はソフトに、唇を吸う)
友奈(そして)
友奈「っは…エヘヘ。夏凜ちゃんのファーストキスだったら嬉しいな」
夏凜「ふ、ふざけんなっ」
友奈「私の事、知られちゃたからね。夏凜ちゃんにも」
友奈「変態になって貰わないと」
友奈(夏凜ちゃんを、挑発した)
友奈の行動か言葉 安価下
十分にやったら開脚させて秘部を嫌という程舌で愛撫
安価下コンマ50以下
それ以外なら反撃くらう
>>204は夏凜から友奈に
友奈「脱がせるね?」
友奈「夏凜ちゃんも私みた…」
グルッ
ドサッ
友奈(夏凜ちゃんを脱がして)
友奈(一気に攻めようと考えた瞬間)
友奈(視線が回ったかと思えば)
友奈(私が夏凜に組伏せられていた)
友奈「えっ?」
夏凜「私はあんたにやられるつもりなんてないわ」
夏凜「あんたが私にやられんのよ」ニヤッ
友奈「え、あっま、待ってっ」
友奈(夏凜ちゃんが私のスカートに手をかけてきて)
友奈(慌てて抵抗する)
友奈(でも、夏凜ちゃんの力には勝てなくて)
グイッ…ズルッ
友奈「やっあっ…」
夏凜「丸裸ね、友奈」
夏凜「さっきでも変態だったけど」
夏凜「これで変態としてレベルが上がったわね」
友奈「ぅ」
夏凜「見てよこの下着。シミができてる」
友奈「み、見せないで…」
夏凜「この、変態」ボソッ
友奈「っっ!」ゾクゾクッ
夏凜「クンクンッ」
友奈「な、なにして…」
夏凜「ちょっとだけおしっこの臭いがするわよ。友奈」
夏凜「トイレ行ったばっかりでしょ」
友奈「い、言わないでよっ」バッ
友奈(今更だってわかってても、体を隠す)
友奈(その仕草が夏凜ちゃんを喜ばせたのか)
友奈(夏凜ちゃんはにやにやと笑うと)
友奈(私の手を払いのけて胸を揉み)
夏凜「私はこっちのファーストキスを貰うわね」
チューッ
友奈「んんんっ」ビクビクッ
友奈(乳首を赤ちゃんみたいに吸い上げた)
夏凜「気持ちいいなら、そういった方が良いわよ」グニッ
友奈「んっ」
夏凜「我慢せず喘いで、気持ちいいって」ムニッ…ムニュ
夏凜「変態みたいに」ギュッ
友奈「っんぅ!」ビクッ
友奈(払い退けられた手を口に当てて)
友奈(なんとか声を押し殺す)
友奈(夏凜ちゃんは左胸を吸ったり噛みついたりしながら)
友奈(右胸を撫でて、揉んで、摘まんで引っ張って)
友奈(緩急のつけられたそれはすごく気持ち良くて)
友奈「っあ」
友奈(下腹部に感じる熱はより熱くジュンとして)
友奈(何かがゆっくりと漏れていくのを感じた)
夏凜「ほら、言いなさいよ」グニッグイッ
夏凜「部室で胸を弄られるのが気持ちいいですって」ギュッ…チューッ
友奈「んくぅっんんっ!」ビクビクンッ
友奈の行動か言葉 安価下
勇者は最後まで諦めない
【 (+皿+)「戦え!」】
安価下コンマ 30以下で勝ち
友奈「っ!」グググッ
夏凜「!」グイッ
ダンッ!
友奈「痛っ!」
友奈(抵抗しようとした手は)
友奈(夏凜ちゃんによって床に叩きつけられて)
友奈(痛みが走った)
夏凜「…勇者は諦めない。とでも言いたいわけ?」ググッ
友奈「っ」
夏凜「はっ、ふざけんなっての」
夏凜「あんたは勇者じゃなくて…変態でしょうが」グイッ
友奈「ッ!?」
友奈(夏凜ちゃんは私の両足を強引に開かせて)
友奈(恥ずかしいところを完全に露出させた)
友奈(それは恥ずかしいなんて言葉じゃ。足りない)
友奈「や、やめて。お願いっ!」
友奈「恥ずかしいよっ!」
友奈(顔が真っ赤になっていく)
友奈(目に涙が溜まっていく)
友奈(でも、体は熱く火照っていて)
夏凜「黙りなさい。変態」ツーッ
友奈「ひぁっ」ビクッ
夏凜「見なさいよコレ」ヌチャ
夏凜「あんたのここ、こんなに濡れてんのよ?
友奈(夏凜ちゃんの指先一つにですら体は強く反応して)
友奈(私の下腹部に触れた夏凜ちゃんの指先には)
友奈(透明の液体が糸を引いていた)
夏凜「部室でこんなになってる変態が」
夏凜「今更、どのツラ下げてやめてとか言えんのよ」
友奈「それ…わはぁんっ」ビクッ
友奈「夏凜ちゃ…っあっ!?」ビクンッ
友奈(下腹部の割れ目を襲うざらついた刺激に)
友奈(私はなすすべなく声を上げて体を震わせる)
友奈(夏凜ちゃんが何をしてるのか。見なくてもわかる)
友奈「んっ、つあぁっ」ビクビク
友奈「ひっ、あっ、あんっ、っあぁぁっ」ビクンッ
ピチャピチャ…
友奈(時々聞こえる水音)
友奈(それだけでなく、私を刺激するざらついた感触が舌によるものだと)
友奈(簡単に解って)
友奈(このままじゃおもらししてしまうと。気づいた)
夏凜「んんっ…レロッ、ペロッ…ピチャッ」
友奈「ひぅっ、つあぁっ」ビクンッ
夏凜「友奈のここから酸味がなくなってきたわ」
友奈「はーっ、はーっ…ひあぁぁぁっ」ビクビクッ!
友奈(夏凜ちゃんは私を休ませてくれなかった)
友奈(自分が喋る時だけ舐めるのをやめて)
友奈(私が乱れた呼吸を正そうとしていても)
友奈(関係なしに、舐めてくる)
友奈「あっ、あぁっ、んんっ」ビクッ
友奈「はぁっはぁあぁぁっけほっっあぁんぅっ」ビクンッ
夏凜「そろそろ認めなさいよ」
夏凜「自分が変態だって。それを認めたら。相応に対応してあげるから」
友奈の行動か言葉 安価下
【(+皿+)「ヴァトル!」】
安価下コンマ 20以下で勝ち
友奈「ううぅっ!」グググッ
夏凜「…はぁ」
友奈(なんとしてでも抵抗しようとした私に対して)
友奈(夏凜ちゃんはため息をつくと)
グニッ…ツプ…クチュッ
友奈(私の下腹部の割れ目に指を挿入し)
友奈(内側を擦ってきた)
友奈「ひあっ! っあっんんんっ!」ビクンッガクッ
夏凜「認めないどころか」クチュックニュ
夏凜「反抗なんて、バカじゃないの?」グチュ…クチュックチュッニュプ…
友奈「あっあっんっくぁっ」ビクビクッ
夏凜「罰よ。息が出来ないくらい気持ち良くなっちゃいなさい」ニチュ…ヌチュ…グチュクチュッ
友奈「あっかはっあぁっ、んっうっぁぁぁっ」ビクッビクンッ
友奈(呼吸の暇がなくて)
友奈(ただただ、体の中の空気を吐かされる)
友奈(無理にすれば咳き込んで)
友奈(下腹部から響く刺激にまたよがる)
友奈(口から涎が溢れ出てて)
友奈(夏凜ちゃんが言うように喘ぎ声が出ていく)
友奈(でももう、気にする余裕なんてなかった)
友奈「んっあぁっ」ビクンッ
友奈「漏れちゃ…んんっ! あっあぁっ」ビクビク
友奈(下腹部に溜まりに溜まった熱が)
友奈(出口目掛けて下っていくのを感じた)
夏凜「良いわよ。漏らして」クチュッニュプヌチュ…
夏凜「盛大に漏らしなさい」クチュクチュッ
夏凜「床はあんたの服が守るから」クチュックニュニュプッ
友奈「んっんくぁぁっ!」ビクンッ
友奈「あっあっはっかはっけふっっぁぁあっ」ビクビクッ
友奈(そんなの駄目。そんなの嫌だ)
友奈(帰りに着る物がなくなる)
友奈(夏凜ちゃんは、私を襲う快感は)
友奈(そう言う暇さえくれない)
友奈「あっ、あっやっあぁっ」ビクッ
友奈「出ちゃうっ出ちゃう出ちゃう!」ギュッ
グイッ
友奈「っ!」
夏凜「閉じたら見れないでしょうが」グチュクチュックチュッニュプ
友奈「くぁぁあっんっ!」ビクビクッガクンッ
友奈(必死にとしようとした足は夏凜ちゃんに押し広げられて)
友奈(私はカエルみたいに下半身を広げられていて)
友奈「もっだめっ! 出るっ、やっ! やぁぁぁぁ!」ビクビクビクッ
友奈(もう我慢できない。服なんて考えてられない)
友奈(あと数秒で漏らすと覚悟を決めた体が)
友奈(強ばった瞬間)
ピタッ…
友奈「ぁ…あぇ…?」
友奈(夏凜ちゃんは手を止め)
友奈(刺激が無くなり、漏らしかけた熱は)
友奈(切なさを染み込ませながらゆっくりと引いていった)
夏凜「はっ、イけると思った?」
夏凜「切ない? 淋しい? もっと欲しい?」ツンツン…ツゥーッ
友奈「あっああっ…」ポロポロ
友奈「な、なんでっ!」
友奈(あそこまでして、漏らしてと言って)
友奈(我慢でき無くなるほど弄って)
友奈(もう駄目だってなったら…止めるなんて)
友奈(凄く切なくて苦しくて…何よりも屈辱的だった)
夏凜「認めないかぎり、あんたはずっと。同じことの」ニュプ…
友奈「ひあっ」ビクンッ
夏凜「繰返し」クチュクチュックニュ…ニュプッニュプッ
友奈「んくっ!」ガクンッ
友奈(夏凜ちゃんはそう言うと)
友奈(指の挿入を再開した)
夏凜「どうする?」クチュックチュッニュプッニュプッ
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「っ」フルフル
夏凜「あっそ」クチュッニュプ…パチュパチュッ
友奈「っあ!」ビクンッ
パチュッ、パチュッ
クチュッパチッ
夏凜「聞こえるでしょ?」ニュプ…ピチャッ
夏凜「あんたのここはもう限界」
夏凜「飛沫で少なくとも下着は駄目ね」クチュッパチュッパチュッ
友奈(夏凜ちゃんはそう言いながら)
友奈(シミだらけで、僅かに水滴を滴らせる下着を持ち上げた)
夏凜「今度はあんたのインナーがシートになるわ」グチュクチュッパチュッパチュッ
夏凜「この調子なら、すぐに使い物にならなくなるでしょうね」
友奈(夏凜ちゃんはそう言って、下着を私の胸元に落として)
友奈(汗を拭くようにして、エッチな液体を私の体に塗る)
友奈「ふあっんっくっあぁっ」ビクビク
友奈(おしっこのところから出てきた液体)
友奈(それを塗られる不快感は)
友奈(秘部に指を挿入される感覚と)
友奈(下着越しに胸を揉みし抱かれ、擦られる感覚にかき消されて)
友奈(私には気持ち良さしか残らず)
友奈(部室で裸にされてること)
友奈(夏凜ちゃんに無理矢理されてること)
友奈(下着で液体を体に塗られること)
友奈(全部が気持ち良くて、私は本当にエッチな子)
友奈(変態な子になっていっているんだと)
友奈(そうされちゃってるんだと、実感させられ、身に染み込まされていく)
夏凜「はいこれ。返す」グイッ
友奈「むぐぅっ!?」
友奈(夏凜ちゃんに下着を口に押し込められて)
友奈(変なしょっぱさか口一杯に広がっていく)
友奈(美味しくない。吐きたい)
友奈(でも)
夏凜「…ペロッ」パチュッパチュッパチュ…
夏凜「ペロッピチャッ…ペロッ」グチュチュプ…クチュッ
友奈「んくぅっ!」ビクンッ
友奈(夏凜ちゃんが胸に塗った液体を舐めとる刺激)
友奈(割れ目を弄くる刺激に口は閉じて)
友奈(その度にしょっぱさが滲み出てくる)
友奈「ふっふっふーっ、むぐぅっ!」ビクンッ
友奈(口に下着が押し込められたせいで呼吸がしづらくなって)
友奈(死にそうになりながら、快楽の刺激に震えて)
友奈(夏凜ちゃんに押さえつけられていた足は)
友奈(もう自分で開けていて)
友奈(夏凜ちゃんの手を求めるように腰が浮いていた)
夏凜「体は正直ね」クチュッパチュッパチュッ
夏凜「どう? お漏らししたい?」パチュッパチュッ
夏凜「あんたが私の玩具になるなら、させてあげる」クチュックチュッニュプ…
友奈「むーっ! んんっ!」ビクンッ
夏凜「言ってることがちがう?」
夏凜「当たり前でしょ。ここまで拒絶したあんたが悪い」クチュッニュプ…ニュプッニュプッ
友奈(私がお漏らししそうだと気づいたのか)
友奈(夏凜ちゃんは私がお漏らしするかしないかの一線を越えられない)
友奈(そんな微妙な刺激に切り替えた)
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「っ!」キッ
夏凜「ん…あははっ」ギュッ
友奈「むぐぅぅっ!」フルフル
友奈(私が反抗の意思を示すような目を向けた瞬間)
友奈(夏凜ちゃんは私の秘部にある)
友奈(一番敏感な突起を摘まんで捻った)
夏凜「そう。なら、こうしてあげる」ギュッ…グニッ
夏凜「ほらっ気持ち良いでしょ?」パチュッパチュッパチュッパチュッ
友奈「んっ! んぐっ! ふっふっ、むぅぅぅっ」ビクビクビクンッ
友奈(夏凜ちゃんは手を止めず、むしろ)
友奈(突起をつねったりしながら)
友奈(私の割れ目への指の挿入を素早く激しくしたりと)
友奈(気持ち良さは激しさを増した)
夏凜「あんたがあくまでも抵抗するならそれでいいわ」
グチュチュプ…パチュッパチュッパチュッ!
夏凜「その心、ぶっ壊してあげるから」
友奈「ふくぅ! うぐっ! むぅっ! んんぅっ!」ビクッビクンッ
友奈(夏凜ちゃんの激しい刺激は)
友奈(私がお漏らししそうになっても、止まらなくて)
友奈(下っていく快感の波が集まった熱を一気に押し出した)
友奈「むぐぅぅぅぅぅっ!!」ビクンッ
プシユッ…プシユッ…チョロッ
シャァァァァァ…
友奈「ふーっふーっ…ぅ…ぅぅ」ビクンッビクッ
友奈(私は盛大にお漏らしをして)
友奈(自分の制服も、インナーも)
友奈(ビシャビシャに濡らしてしまった)
友奈「ふーっふーっ…」ポロポロ
クチュッニュプ…
友奈「ふぐっ!」ビクンッ
夏凜「なに休んでんのよ。まだよ。もっと!」
グチュチュプ…パチュッパチュッパチュッパチュッ!
クチュッパチュッパチュッパチュッ!
友奈「むぐぅぅっ! ううぅっ!」ビクッビクンッ
友奈「んーっ!」フルフル
夏凜「止めないわよ!」
スッ…パンッ!
友奈「ぅぐぅぅ!」ビクンッ
友奈(私の懇願に対し)
友奈(夏凜ちゃんは敏感な突起を含めて)
友奈(力一杯叩いた)
夏凜「涎が出てるわよ。上からも下からも」
パンッ! パンッ!
友奈「ひぐっ、むぐっ! んんんっ!」ビクンッ
友奈(何度も何度も私の秘部を叩く)
友奈(痛いのに、嫌なはずなのに)
友奈(私の足は閉じない。受け入れるように、求めているみたいに)
友奈(だらしなく開いたまま)
スッ…パンッ!
友奈「っんぐっうぅっ!」
プシユッ…
友奈(叩かれて、私はまたイく)
友奈(どれくらいお漏らしさせられたのか解らない)
友奈(そのくらい漏らした部室は変な臭いが立ち込めていて)
友奈(その中央の床で私は転がっていた)
友奈(真っ赤になった秘部は敏感になっていて)
友奈(少しでも動くと快感になる痛みが脳を貫く)
友奈(帰りに着る服がない。それを考える余裕がないほど)
友奈(頭の中はぐちゃぐちゃになってしまった)
友奈「…っ」
夏凜「随分と乱れたじゃない」カチッ
《ングゥゥゥ!
友奈「…え?」
夏凜「全部録画しといたわ」
夏凜「私の玩具にならないなら。売るしかないわよね」
友奈「うぅっ」ポロポロ
夏凜「で、どうする?」
夏凜「床掃除に使った制服は汚いから捨てる予定なんだけど」
友奈「だ、ダメ! 帰れなくなっちゃう!」
夏凜「暗くなってから裸で帰れば?」
友奈(夏凜ちゃんは興味ないような感じで言う)
友奈(玩具にならない私なんて)
友奈(どうでもいいんだ…)
夏凜「じゃ、頑張りなさい」
友奈(夏凜ちゃんは私の制服を袋に詰めると)
友奈(鞄にしまって、1人出口に向かった)
友奈の行動か言葉 安価下
……と見せかけて相手が対応することを見越した不意討ち
友奈「な、なる!」
夏凜「………」ピクッ
友奈「玩具になりますから」
友奈「助けてください…」
夏凜「はぁ…初めからそう言えば良いのよ」
友奈(私が服従の意思を示すと)
友奈(夏凜ちゃんは呆れながらも)
友奈(私の方に近づいてきた)
夏凜「もっと早く言ってれば」
夏凜「ここまでしなかったのに」
友奈「ごめんなさい」
友奈(夏凜ちゃんはもう信じられない)
友奈(私が変なことをしてたのは事実だけど)
友奈(ここまでする必要なんて無かったはず)
友奈(…夏凜ちゃんのせいで、私は本当に変態になっちゃったんだよ?)
夏凜「とりあえず、立ちなさい」
友奈(夏凜ちゃんはそう言って、手を差し出した)
安価下コンマ40以下で勝ち
友奈(夏凜ちゃんが差し出してきた手を取って)
友奈(思いっきり、引っ張る)
夏凜「んなっ」
グイッ…ドサッ
夏凜「っ、あんた」
友奈「勇者は諦めないっ」
夏凜「変態がほざくんじゃないわよっ!」グッ
友奈「っ!」グググッ
友奈(起き上がろうとする夏凜ちゃんの手を押さえ込んで)
友奈(馬乗りのまま、夏凜ちゃんを見つめる)
友奈「私の事弄んだ手、力入らないでしょ?」
友奈「あれだけお漏らしさせられたんだ」
友奈「夏凜ちゃんにも、負担があったはずだもんね」
夏凜「あんた…頑張った方が良いわよ」
友奈「………」
夏凜「私が立場入れ換えたら、あんたのこと社会的、人間的に苦しめてやるわ」
友奈の行動か言葉 安価下
【 (+皿+)「頑張れ!」】
安価下コンマ 40以下で成功
友奈「っ!」
夏凜「っく!」グググッ
友奈「っと」グッ
友奈(夏凜ちゃんを抑える手足を)
友奈(片足、片手ずつ入れ換えて)
友奈(夏凜ちゃんの目の前に私の割れ目)
友奈(私の目の前に、夏凜ちゃんの下腹部がきた)
夏凜「っ、あ、あんた漏れてる!」ポタッポタッ…
友奈「飲んでいいよ?」
友奈「さっきみたいに」ニコッ
友奈(私はもう…エッチな子だ)
夏凜「この、変態め」
友奈「っ…夏凜ちゃんがしてたことだよ」
友奈(失敗したかな)
友奈(脱がせないと、直接できないや)
友奈(そんな後悔に反して)
友奈(スカートを口でくわえて捲って見えた下着は)
友奈(少しだけ、シミが出来ていた)
友奈「夏凜ちゃんも、濡れてるね」
夏凜「あんたを苛めるのが良かったからよ」
友奈「人を苛めてなんて、酷いね…」
友奈「っ」ビクッ
夏凜「んっ…レロ…ピチャッ…ペロッ」
友奈「っぁっ」ガクッ
夏凜「ほら、頑張りなさいよ」
友奈(夏凜ちゃんは下になっても折れず)
友奈(裸ん坊な私の秘部を舐めて、挑発する)
友奈(…やっぱり、脱がせてない私は遅れてる)
友奈(けど、脱がせられる保証はないし)
友奈(今出来ることで、頑張るっ)
友奈「んっ…っ」ペロッ
夏凜「っ」
友奈(夏凜ちゃん下着があって)
友奈(夏凜ちゃんじゃなくて私の舌にざらついた感覚が広がる)
友奈(舐めても、舐めても)
友奈(夏凜ちゃんは喘ぎ声一つ漏らさず)
友奈(私だけが、気持ち良くなっていく)
夏凜「ピチャッ…ピチャッペロッ…ペロッ」
友奈「くっんっ…ぅっあっ」ビクンッ
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「っ…んくっ」ビクビクンッ
夏凜「がたついてるけど、大丈夫?」
友奈「っ…」ギュッ
友奈(夏凜ちゃんの言葉が否定できないくらいに)
友奈(私の腰は踊って)
友奈(割れ目から水滴を滴らせる)
友奈(負けたら…酷いことされる…)
友奈「っ」
友奈(どんなことされるのかと考えて)
友奈(高鳴った胸を落ち着けるために下唇を噛む)
友奈(玩具にまで、落ちたくないっ)
友奈(舐めてもだめなら)
パクっ
夏凜「っ!?」ビクッ
友奈(夏凜ちゃんが私の胸にしたように)
友奈(強く、吸い付く)
夏凜「んくっ…っぁ」ビクッ
友奈(効果ありだっ)
友奈(うっすらと夏凜ちゃんのおしっこの味がする)
友奈(でも、どうしてだろう)
友奈(自分のはあんなに嫌だったのに)
友奈(夏凜ちゃんのは…美味しく感じる)
友奈「ジュル…ズズッ」
夏凜「ふくっ…う…ああっ」ビクンッ
夏凜「こ、このっ」
友奈の行動か言葉 安価下
【 (+皿+)「破るのは難易度高いぞ」】
【 (+皿+)「当たり前だが、」】
【 (+皿+)「破るために一瞬でも」】
【 (+皿+)「三好夏凜の拘束が緩むからな」】
【 (+皿+)「だが、可能性はある」】
【 (+皿+)「だが、負けたら逆転される」】
【 (+皿+)「負けるなよ」】
安価下コンマ 40以下で成功
友奈「ズズッ!」
夏凜「っぁっ」ビクンッ
友奈「!」
友奈(思いっきり吸い上げて)
友奈(夏凜ちゃんが体を浮かせた瞬間)
友奈(夏凜ちゃんの足を手放して)
友奈(夏凜ちゃんの下着を左右に力一杯引っ張る)
友奈(すると)
ブチッ…ビビビ…ッ
友奈(下着のサイド、縫製部分が裂けて)
友奈(布地は千切れなかったけれど)
友奈(夏凜ちゃんの濡れた秘部が露になった)
夏凜「っ…友奈っ!」
友奈「っ…ニュプ…」
夏凜「!」ビクンッ
友奈(夏凜ちゃんの秘部に舌を挿入して)
友奈(秘部に直接口をつけて吸い上げる)
夏凜「ひっくっあぁぁぁぁっ」ビクビクンッ
友奈「ズズッズズッ…ジュル…ゴクッ」
友奈(秘部の中はねっとりと張り付く暖かさで)
友奈(吸えば吸うほど、蜜が溢れだしてきた)
友奈の行動か言葉 安価下
安価下コンマ 30以下で成功
夏凜「くっんっ…っ」ビクッビクンッ
夏凜「こ、の…っ」
パクっ…ズズズッ
グッ
友奈「ひゃあぁぁぁぁぁっ!?」ビクンッ
プシュ…ポタタッ…
ガクッ…ドサッ
友奈「あっぅっ」
夏凜「はあっはあっ…」
友奈(不意に襲った刺激に)
友奈(私はなす術なくお漏らしをして)
友奈(夏凜ちゃんの上に倒れこんだ)
友奈(夏凜ちゃんが私の敏感な突起に食い付き、吸い上げながら)
友奈(思いっきり下に引っ張ったのだと)
友奈(じんじんする突起が、伝えてきた)
グイッ…ドサッ
夏凜「はあっはあっ…やってくれるじゃない」
夏凜「流石に、私もヤバイって思ったわ」
友奈「っあ…はぁ…はぁ…」
夏凜「服が濡れたし…まぁ、私は自前のジャージがあるから平気だけどね」
夏凜「本当はあんたに貸してあげようと思ったんだけど」
夏凜「こうなったら、仕方ないわ」
友奈(夏凜ちゃんはそう言うと)
友奈(鞄からジャージを取り出して、机に置いた)
友奈(でも、夏凜ちゃんはすぐには着替えず)
友奈(まだ動けないでいる私を見ると)
夏凜「また反抗されるのも嫌だし」
夏凜「あんた、外にいなさい」グイッ
友奈「え、やっやだ!」
友奈「ごめんなさいっごめんなさいっ」
友奈「それだけはっ、やだっ!」
ガラッ…ドサッ
ガラッ…カチッ
友奈「夏凜ちゃん!」ドンドンッ
友奈「ごめんなさいっ! 入れて! 夏凜ちゃん!」ドンドンッ
友奈(裸の私を廊下に締め出して)
友奈(私がどれだけ泣き叫んでも反応は無かった)
友奈の行動か言葉 安価下
01から05まで樹
16から20まで風
46から50まで園子
31から40まで東郷
66から70まで男子
96から00まで先生
友奈(その声が届いちゃったのか)
ドサッ
友奈「っ!」
東郷「友奈…ちゃん?」
友奈「と、うごうさ…っ」バッ
友奈(東郷さんがいて)
友奈(慌てて体を隠しても、裸なのは一目瞭然で)
友奈「う…うぅっ」グスッ
友奈(私は、泣きだしてしまった)
友奈の行動か言葉 安価下
友奈「たす…けて」
友奈「たすけて…東郷…さん」グスッ
友奈(か細かった。掠れてた)
友奈(なのに)
東郷「友奈ちゃん、とりあえず」カサッカサッ…スッ
東郷「私のを貸してあげるからブレザーを羽織って」
友奈「東郷さん…」
東郷「残念だけど今はこれしかない」
東郷「あと、鞄を抱えて。体を猫背に」
友奈「う、うん…」
東郷「そしたら恥ずかしいかもしれないけど、歩いて」
東郷「保健室になら、体操着があるはずだから」
【 (+皿+)「結城友奈が救われたな」】
【 (+皿+)「良かったじゃないか」】
【 (+皿+)「さて、問おう」】
【 (+皿+)「結城友奈、東郷美森、三好夏凜」】
【 (+皿+)「続きは誰にする?」】
1.結城友奈
2.三好夏凜
3.東郷美森
4.終われ
安価下
【 (+皿+)「東郷美森だな?」】
【 (+皿+)「わかった」】
【 (+皿+)「予め言っておくが」】
【 (+皿+)「この物語が終わったら終わりだ」】
【 (+皿+)「250前後の予定だったからな」】
【 (+皿+)「さて」】
【 (+皿+)「東郷美森はアイテムを…」】
1.持っている
2.持っていない
3.今から渡す
安価下
東郷「…友奈ちゃん」
東郷(友奈ちゃんは部室の前で裸で座り込んでいた)
東郷(部室に入ろうとしたら襲われた?)
東郷(それにしては、廊下が綺麗だった)
東郷(友奈ちゃんの衣類や荷物が目的だった?)
東郷(意味が解らない)
東郷(友奈ちゃんに聞けば…)チラッ
友奈「………」
東郷(保健室に来て、体操着を着せたけれど)
東郷(元気がない)
東郷(…間違えちゃダメね)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷「友奈ちゃん…何があったの?」
友奈「っ」ビクッ
友奈「…っ」フルフル
東郷「友奈ちゃん?」
友奈「…言いたくない」
友奈「ごめん。東郷さん」ポロポロ
東郷(友奈ちゃんは泣きながら首を振る)
東郷(相当嫌な思いしたのね…)
東郷(わかってたはずなのに…っ)
東郷(失敗したっ)ギュッ
東郷(考えろ、考えろっ)
東郷(友奈ちゃんに必要なのはなに?)
東郷(誰に何をされたかと言う真相?)
東郷(それは違う。私が必要なこと)
東郷(だったら、聞き方を間違えたらダメ)
東郷(友奈ちゃんが言えることだとしても)
東郷(そのつらい記憶は友奈ちゃんを傷つけるんだから)
友奈「…東郷さん」
東郷「どうしたの…?」
友奈「っ」
東郷(友奈ちゃんはなにも言わなかった)
東郷(ただ、ぎゅっと私の腕をつかむ)
東郷「………」
東郷(友奈ちゃんの手、震えてる)
東郷(…私は)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷「友奈ちゃん」ギュッ
友奈「っ」ビクッ
東郷(私が手を握ると)
東郷(友奈ちゃんは驚いて目を見開いて)
東郷(思いっきり手を引こうとしたけれど)
東郷(私だって気付いたのか)
友奈「ぁ……」
友奈「ごめん、ね」
東郷(友奈ちゃんはそう言って俯く)
東郷(友奈ちゃん…)
東郷「………」
東郷「…友奈ちゃん」
東郷「私、ずっと友奈ちゃんの味方だから」
友奈「…東郷さん」
東郷(友奈ちゃんはそう言っても悲しそうなまま)
東郷(小さくか細い声でありがとう。という)
東郷(友奈ちゃんの心のキズは、深い)
東郷(本当に、許せない)
東郷(あんなに明るかった友奈ちゃんが)
東郷(こうなるほどに酷いことをして)
東郷(憎い…この感情が醜いなんて関係ない)
東郷(私は犯人を絶対に…許さない)
友奈「……」ギュッ
東郷(友奈ちゃん…)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷「友奈ちゃん」
東郷「私に出来る事はない?」
友奈「出来る、こと…」
東郷(友奈ちゃんは私の言葉をそのままうわ言のように繰り返して)
東郷(焦点の不確かな瞳でどこかを見つめて、顔を赤くする)
東郷「友奈ちゃん、大丈夫?」
東郷(私がそう聞くと)
東郷(友奈ちゃんはじっと私を見て首を振る)
友奈「東郷さん、なんでもしてくれる?」
友奈「私がどんなお願いをしても」
友奈「東郷さんはしてくれる? 気持ち悪いって言わない?」
東郷「ゆ、友奈ちゃん…?」
友奈「味方、なんだよね?」
友奈「だったら…東郷さん。エッチなことしよう?」
東郷(友奈ちゃんの追い詰められた心がわかるその表情に)
東郷(私は…)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷(…友奈ちゃん)
東郷(そうだよね)
東郷(そういうことされてないわけない)
東郷(無理矢理された嫌な記憶を忘れたいよね)
東郷「…わかったわ、それが友奈ちゃんのためになるなら」
東郷「しよう。友奈ちゃん」
東郷(私がそう言うと)
東郷(友奈ちゃんは自分から体操着を脱ぐ)
東郷(すると、秘部からつぅーっと糸が垂れた)
友奈「さっきされたこと」
友奈「ここでもしも東郷さんにされたらって考えてたらね」
友奈「ここ、こんなことになっちゃったんだ」
ヌチュ…
東郷(友奈ちゃんは言いながら、恥ずかしげもなく)
東郷(人差し指と中指で割れ目を開いて見せた)
友奈「気持ち悪いって自分でも思うんだ」
友奈「でも、私ね?」
友奈「もう、こういうことしないとダメになっちゃった」
友奈「…だから、東郷さん。エッチなことしよ?」
グイッ
東郷「っ」ドサッ…キシッ
友奈「ん…」チュッ
東郷(友奈ちゃんは私のことなんて考えず)
東郷(ベッドに押し倒して、唇を重ねてきた)
東郷(友奈ちゃんは壊された)
東郷(友奈ちゃんは汚された)
東郷(エッチなことなんて知らなかったはずなのに)
東郷(考えただけで濡れるくらい)
東郷(卑猥な子になってしまった…)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷(………)
東郷(大丈夫だよ。友奈ちゃん)ギュッ
友奈「っ」
ナデナデ…
東郷(私は気持ちを表すように友奈ちゃんを抱き締める)
東郷(友奈ちゃんのためになるなら唇を捧げても良い)
東郷(この体だって、捧げても良い)
東郷(友奈ちゃんは私にとって、それくらいに大切はだから)
東郷(だから、そんなに悲しそうな顔をしないで)
東郷(辛そうな顔、苦しそうな顔をしないで)
東郷(大丈夫だよ。私がいるから)
友奈「っ…」ポロポロ
東郷(大丈夫、大丈夫)ギュッ
東郷(私がここにいるから)
東郷(全部受け止めて、守ってあげるから)
東郷の行動か言葉 安価下
東郷「…?」
東郷「友奈ちゃん、胸大きくなった?」
友奈「え?」
東郷「なんだか、違う気がする」
東郷(抱き締めた友奈ちゃんの体)
東郷(そこに微妙な違いを感じて、聞くと)
東郷(友奈ちゃんはきょとんとした表情で首を傾げる)
東郷(正確な数字は解らないけど)
東郷(確実に大きくなってる)
東郷(…強姦魔に、何かされた?)
東郷(それとも…成長した?)
友奈「胸…触ったからかな」
東郷「ううん、そんな感じじゃないわ」
東郷「もんで腫れたんじゃなく…ちゃんと膨らんだような」
東郷「そんなしっかりした感じよ」
友奈「詳しいんだね」
東郷(昔、揉まれた記憶があるからね)
東郷(心の中でそう言って、友奈ちゃんの頭を撫でると)
東郷(友奈ちゃんは少し恥ずかしそうに笑う)
東郷(今は裸だけど)
東郷(友奈ちゃんは友奈ちゃんだと、思えた)
【 (+皿+)「…ふぅ。良かったじゃないか」】
【 (+皿+)「このあとどうなるかって?」】
【 (+皿+)「三好夏凜が部活を止めて大波乱かもしれない」】
【 (+皿+)「三好夏凜が保健室に乗り込み」】
【 (+皿+)「東郷美森の前で犯されるかもしれない」】
【 (+皿+)「三好夏凜が心を入れ換えて」】
【 (+皿+)「ハッピーエンドになるかもしれない」】
【 (+皿+)「結城友奈が変な性癖に目覚めた恥女エンドかもしれない」】
【 (+皿+)「未来はいくらでもある」】
【 (+皿+)「だが、このスレは終わりだ」】
【 (+皿+)「ありがとよ。相棒」】
【 (+皿+)「前にも言った通り凌辱展開になったが」】
【 (+皿+)「俺はそうする相棒も嫌いじゃないぞ」】
【 (+皿+)「導いただろって? そんなことはない」】
【 (+皿+)「初めに結城友奈を変態にしたのは相棒だ」】
【 (+皿+)「…そうだ」】
【 (+皿+)「相棒なんだよ」】
【 (+皿+)「…いや、深くは言わんさ」】
【 (+皿+)「相棒が何者であろうと」】
【 (+皿+)「相棒は相棒だ」】
【 (+皿+)「さぁ、選んでくれ」】
1.恥女奈ちゃんの変態奇行録
2.夏凜と犬奈ちゃん
3.勇者に絶望を
4.終われ
5.続・アイテム遊び
安価下から暫く多数決
そして、切ない。
こんな感じなのが読みたい
えぐ味は薄くしてほしい
【 (+皿+)「 >>339が絶望だから3だな」】
【 (+皿+)「絶望か…凌辱系統の絶望が良いか」】
【 (+皿+)「一人ずつ、壊していく」】
【 (+皿+)「なんてな。どう絶望させるかは任せる」】
【 (+皿+)「さて」】
【 (+皿+)「相棒は勇者部との接触をしても良いし」】
【 (+皿+)「遠隔でアイテムで混乱させても良い」】
【 (+皿+)「…ああ、勇者部自体を操っても良い」】
【 (+皿+)「相棒には、その力がある」】
【 (+皿+)「とにかく方法は任せる」】
【 (+皿+)「相棒は勇者部に絶望を与えてくれ」】
【 (-皿-)「………」】
【 (+皿+)「…じゃあな」】
【 (+皿+)「時が来たら、また会おう」】
【 (+皿+)「ありがとよ、相棒」】
【 (+皿+)「ひとまず…さよならだ」】
【このスレはHTML依頼されています】
【勇者の絶望物語は】
【いつか始まるでしょう】
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1461625360/
Entry ⇒ 2016.05.05 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
園子「ゆーゆとわっしーのデートを見守るよ~」
園子(二人のあまりの初々しさ、尊さに肝心なところで気絶して、二人のちゅーを邪魔しちゃったの~)
園子「だから今日は二人のデートを見守って、今度こそいちゃらぶちゅーを見届けるぞ! お~」
夏凜「それただの不審者じゃない」
園子「あ、来てくれたんだ、にぼっし~」
夏凜「アンタが二人の邪魔しないように見張りに来たのよ」
園子「にぼっしーにはもしわたしがまた気絶しちゃったら起こしてもらう役として来てもらったから頑張ってね~」
夏凜「そんなくだらない用で私のこと呼んだの!? て言うかこの前はアンタのせいで酷い目にあったんだけど!」
園子「わたしのせい?」
園子「?」
夏凜「風に…… き、ききキスされて」
園子「おお~! 風にぼだ~!」
夏凜「うっさい!」
園子「それでその後何かあった? あった?」
夏凜「なんもない! あれはただの勘違いだから!」
夏凜「少なくとも私と風には無いわよ! て言うか勘違いだって知って一番落ち込んでたの風なんだからね! 後でちゃんと謝っときなさいよ!」
園子「ふふふ……」
夏凜「何笑ってんのよ」
園子「やっぱりにぼっしーは優しいな~ って」
夏凜「な…… !」
園子「あっ! ゆーゆとわっしー来たよ!」
夏凜「なんてマイペースな……」
東郷「今日は何処に行くの?」
友奈「電車で3つくらいのところにね、おっきいお花畑があるの」
友奈「前はね、車椅子だと動きにくいからって思って行けなかったけど、東郷さんが歩けるようになったから二人で行きたいなって」
東郷「お花畑か…… うん、とっても楽しみ!」
友奈「すっごく綺麗だからね! いっぱい楽しみにしててね!」
東郷「ええ」
友奈「……あ、あのさ」
東郷「ん?」
友奈「手…… 繋いでいこっか?」
東郷「…… うんっ!」
園子「うぅ…… 尊い……」
夏凜「はいはい、感動してないで私たちも行くわよ」
園子「お? 夏凜ちゃんも乗り気になってきたかな~?」
夏凜「な…… 何言ってんのよ! 私はあくまでアンタを一人にしとくと友奈たちに迷惑かけるんじゃないかって……」
園子「ん~?」
夏凜「…… ま、まぁちょっとは気になる…… けど」
園子(にぼっしーの反応見るのは楽しいな~)
東郷「ねぇ友奈ちゃん」
友奈「なーに?」
東郷「…… 何で駅から降りてからずっと目隠ししてるの?」
友奈「それはね、東郷さんにいっちばんいい景色をいっちばん最初に見て欲しいからだよ」
東郷「それでも…… 前が見えないのは……」
友奈「大丈夫! わたしが居るから東郷さんはぜったい安全だよ!」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「東郷さんはわたしが守るからね!」
園子「なるほど~ ゆーゆは目隠しプレイが好みか~」
夏凜(そろそろ突っ込むの飽きた……)
東郷「それじゃ、手を離してもらえるかしら」
友奈「うん、きっとびっくりするから! よーく目に焼き付けてね!」
東郷「ん…… 眩し……」
東郷「わぁ…………」
友奈「ふふっ、どう? 東郷さん」
東郷「うん、とても綺麗だわ……」
友奈「気に入ってもらえたかな?」
東郷「…… ええ、とっても素敵よ」
園子『友奈ちゃん……』
園子『…… 目閉じて』
園子『こ、こんなところでするの…… ?』
園子『大丈夫、誰も見てないよ』
園子「わー! わー!」
夏凜「ちょっと! あんまり大きな声出したら友奈たちに気付かれるでしょ!」
園子「尊い! 尊いよ~!」
夏凜「ここについてから妙にテンション高いわね……」
夏凜(ま、確かに綺麗な景色だし、風も心地良いし、興奮する気持ちがわからなくも無いけど……)
夏凜(人もそこまで居ないし、デートの場所としては丁度いいんじゃない? 友奈の癖にいいセンスしてるわ)
夏凜「今度はどうしたの?」
園子「ねぇにぼっしー、おいかけっこしよ~!」
夏凜「はぁ?」
園子「わたし、今とっても走りたい気分なの~!」
夏凜「ちょっ! 待て! アンタとはぐれたら色々面倒でしょーが!」
夏凜(……まぁ園子は今までずっと部屋の中に閉じ込められるような生活してた訳だし、こうやって陽の下で走り回れること自体、幸せなことなのか……)
夏凜「ふっ、普段からトレーニングしてる私に走力で勝てるなんて思わないことねっ!」
夏凜「はぁー、はぁー……」
園子「思いっきり走るのって気持ちいい~」
夏凜「はぁー、はぁー……」
夏凜(どんだけ体力有り余ってんのよ…… )
園子「ねぇにぼっしー もっかい走ろ~ もっかい~」
夏凜「ちょ…… 少し休憩……」
園子「えぇ~……」
夏凜「…… 今度は何?」
園子「お腹空いた」
夏凜(ほんっとマイペースね……)
夏凜「お腹空いたなら、ほらこれ」
園子「あっ…… これってまさか……」
夏凜「え? ただのにぼしだけど……」
園子「にぼしだ~! にぼっしーのにぼしだ~!」
夏凜「どんだけはしゃいでるのよ!」
園子「おいし~」
園子「おにぎり?」
夏凜「そ、私料理とか出来ないからここ来る前にコンビニで買ってきた奴だけど」
園子「ありがと~」
夏凜「あ、それとサプリも」
園子「それはいい~」
夏凜「なんでよ!」
夏凜「ふふっ、にぼしの美味しさがわかるなんて、中々出来るじゃない」
園子「にぼっしーのにぼし~」
夏凜「にぼっしー……」
園子「あ~ 空が青いし、風も気持ちいい、お花は綺麗! 今日はここに来れて良かったな~」
夏凜「……」
園子「んー?」
夏凜「こ、今度勇者部でも来ればいいでしょ!」
園子「ふふっ、そうだね~」
夏凜「もっと奥の方に行ってみない? どうせならここ一周したいし」
園子「うん」
夏凜(…… いや、園子と二人だからって何かあるわけじゃないけど)
夏凜(まぁ園子とこんなに話したのも今日が初めてね……)
園子「あ~ あっちにゆーゆとわっしーが居るよ~ こんなとこで会うなんて不思議だね~」
夏凜「いや友奈と東郷を追ってここに来たんでしょ」
園子「あ…… そう言えばそうだった~」
夏凜「じゃ、覗き見なんて悪趣味なことはやめてどっか他の場所に」
園子「あっ! 今大事なとこみたいだよ~!」
友奈「えへへ、東郷さんに楽しんでもらえてわたしも嬉しいよ~」
東郷「私、今になって自分の足で友奈ちゃんと一緒に歩けることに幸せを感じてるわ」
友奈「東郷さん?」
東郷「『自分の力で歩ける』それは当たり前のことだけど、少し前の私にとっては当たり前のことじゃなかった」
東郷「車椅子に乗ってた時も友奈ちゃんは側に居てくれたけど、その時は友奈ちゃんは後ろに居たでしょ?」
東郷「それって少し嫌だったの 私たちの立場が対等じゃないみたいで、仕方無いことなんだけどね」
友奈「東郷さん!」
東郷「これからもずっと友奈ちゃんの隣を歩きたいな…… 友奈ちゃんの『お嫁さん』として」
友奈「東郷さ~ん!」
東郷「友奈ちゃん!」
友奈「……」
東郷「……」
友奈「ちゅっ……」
東郷「んっ……」
夏凜「…… ん?」
園子「うっ、うっ……」
夏凜(園子が泣いてる…… まぁどうせまた『ゆうみも尊い~』みたいな理由でしょうけど……)
夏凜「はい、ハンカチ」
園子「あっ…… ありがとう……」
園子「…… ゆーゆとわっしーが付き合って、とっても嬉しいんだけど…… 少し寂しくなっちゃって…… 泣いちゃった……」
夏凜(園子にとっては東郷は勇者部の中でも特別、昔からの仲間だったのよね)
夏凜(そんな東郷が友奈とこんなべったりだったら思うこともある、か……)
夏凜「安心しなさい」
園子「え?」
夏凜「友奈も東郷も、付き合い始めたからって他を蔑ろにするような奴じゃないでしょ」
夏凜「それに、どうしても寂しくなったなら…… わ、私がまたどっかに連れてってあげるから」
夏凜「当たり前でしょ、私たちは勇者部の仲間同士なんだから」
園子「うん…… ありがとう……」
夏凜「ここなら誰も見てないし、好きなだけ泣いてていいから」
園子「うん…… 」
園子「…… やっぱり寂しいな」
夏凜「……」
園子「これからは堂々とらぶらぶするゆうみもが見られる代わりに、ちょっとしたことで意識しちゃう初々しいゆうみもが見られないんだなぁ、って」
夏凜「…… は?」
夏凜「何…… そんなくだらないことで泣いてたの…… ?」
園子「くだらないことじゃないよ~ ゆうみもはわたしにとってのライフワークなんだよ~」
夏凜「どう考えてもくだらないでしょ! はぁ…… 私はアンタが友奈と東郷が付き合い始めて自分が除け者にされるんじゃないかって悩んでると思ったのに」
園子「え~? そんなことじゃ悩まないよ~」
園子「ゆーゆとわっしーが付き合い始めても、二人とも大切な友達だし」
園子「部長も、イッつんも、もちろんにぼっしーも大切な友達だよ~」
夏凜「…… あ、ありがと」
夏凜「さっきの…… ?」
園子「うん、『私たちは勇者部の仲間同士なんだから』とか『ここなら誰も見てないし、好きなだけ泣いてていいから』とか」
夏凜「あ…… わ、忘れろ忘れろ~!」
園子「もうメモしちゃった~」
夏凜「うぅ~……」
園子「えへへ~ にぼっしーメインの創作意欲がぐんぐん上がるよ~」
園子「うとうと……」
夏凜「ちょっと園子、電車の中で寝てていいからそれまで起きてなさい!」
友奈「あっ、夏凜ちゃんだ! 夏凜ちゃーん!」
夏凜(やば…… 見つかった……)
夏凜「こ、こんなところで会うなんて偶然ね……」
友奈「うん! 夏凜ちゃんもあのお花畑に行ってたの?」
夏凜「ま、まぁね……」
東郷「も、もう…… 友奈ちゃんってば……」
友奈「夏凜ちゃんは園ちゃんと一緒だったの?」
東郷「珍しい組み合わせね」
夏凜「そ、そうかしら……」
友奈「二人って仲良しだったんだね~」
夏凜「べ、別にそんなんじゃないから!」
東郷「……」
園子「すやすや……」
友奈「すやすや……」
東郷「二人とも寝ちゃったわね」
夏凜「そうね」
夏凜(寄りかかられるのって意外と疲れるわ……)
東郷「それで、今日私たちをつけていたことについて聞きたいのだけど」
夏凜「やっぱバレてたか……」
東郷「そのっちがあんな大声出してるんですもの、気付くわ ……まぁ友奈ちゃんは気付いてないみたいだし黙ってたけど」
東郷「?」
夏凜「友奈と…… き、キスしてたの?」
東郷「ええ、友奈ちゃんとの接吻は何も恥ずかしいことじゃないわ」
夏凜「そ、そう……」
東郷「寧ろ二人は何も無かったの?」
夏凜「な、何もって何よ!」
東郷「だって…… 二人はデートじゃないの?」
夏凜「はぁ!? 何で私がコイツと!」
東郷「しー」
夏凜「あ……」
園子「うにゃうにゃ……」
夏凜「と、とにかく私はそういうのとか興味無いから!」
東郷「ふふっ、からかっただけよ」
夏凜「うぅ……」
東郷「まぁそれでも、そのっちのことよろしくね」
夏凜「え?」
東郷「でも、私は友奈ちゃんと付き合うことになったから、私にとって一番大事なのは友奈ちゃんとのことになるだろうし、そうしたいと思ってる」
東郷「だけど…… そうしたらそのっちはどうなっちゃうのかなって心配だったの、後から入った子がどういう気持ちになるか、っていうのは夏凜ちゃんにこそ分かるでしょ?」
夏凜「…… まぁ」
東郷「うん、でもそれが杞憂に終わって良かったわ だってこれからは夏凜ちゃんが隣に居てくれるのよね?」
夏凜「まぁ…… 暇な時くらい今日みたいに遊んであげてもいいけど」
東郷「……ありがとう」
夏凜「……ねぇ東郷、一つ気になったんだけど」
東郷「何かしら?」
夏凜「もしかしてアンタも園子と同じで『カップリング』とか考えるの好きなわけ?」
東郷「『かっぷりんぐ』…… ? ごめんなさい横文字は苦手で……」
夏凜「はぁ…… まぁいいわ」
夏凜(よろしく…… か……)
園子「すぴー……」
夏凜(まぁ別に…… 園子と出掛けるくらいいつだってしてあげるけど……)
風「ずーん……」
樹(あわわわわ…… お姉ちゃん落ち込んでる…… やっぱりラブレターのことだよね……)
樹「お、お姉ちゃん!」
風「ん?」
樹「げ、元気だして! きっとお姉ちゃんにもその内いい人が現れるよ!」
風「…… 妹に励まされた」
樹「ええっ! また落ち込んじゃった!?」
風「なーんてね、冗談よ アタシがあんなことで落ち込んだりするわけ無いでしょ」
樹「お、お姉ちゃん……」
樹「あはは……」
樹「でもわたし…… ラブレターが嘘で良かったな~ って思ってたの」
樹「お姉ちゃんにラブレターが来たって知った時に想像したの、お姉ちゃんが誰かと結婚してこの家を出ていくこと」
樹「もし、もしお姉ちゃんが居なくなったらわたし……」
風「樹……」
風「ちょっとこっち来て」
樹「え?」
風「わしゃわしゃ~」
樹「わっ…… な、なにするのお姉ちゃん!」
樹「お、お姉ちゃん! もう!」
風「まぁアタシは実質『こぶ付き』みたいなもんだから、そうそう結婚したりしないわよ」
風「……あ! でも樹こそ先に抜け駆けとか無しだからね! もしそういう相手が現れたらまずアタシとの面談を通して、デートはもちろん姉同伴で……」
樹「お姉ちゃん!」
風「……ま、よく考えてみればアタシにはこーんな可愛い妹が居るんだし、樹と…… 勇者部のみんなが居るだけでアタシは十分幸せ、それ以上はいらないわ」
風「……だから、ずーっと側に居てね 樹」
樹「…… うん!」
樹「い、痛い 痛いよ…… お姉ちゃん……」
風「姉の愛をその小さな体で受けろー ぎゅ~」
樹「もう……」
樹(愛なら十分、もう十分受け取ってるよ)
樹(大好きだよ…… お姉ちゃん)
終わり
読んでくれた方、ありがとうございました。
乙だよー
こういうのかなり好き
ありがとう
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459904550/
Entry ⇒ 2016.04.10 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
園子「ゆーゆとわっしーを意識させるよ~」
園子「ふ、ふふふ……」
友奈『う~ やっぱりデスクワークなんてわたしには無理だよ~』
東郷『確かに…… 友奈ちゃんには向いてない作業かも知れないわね』
友奈『外活動組と内活動組の2組に分けるにしても、内チームは東郷さんと園子ちゃんで良かったんじゃないかな~』
東郷『そうね、友奈ちゃんは体を動かす仕事の方が好きよね』
友奈『肩凝っちゃったよ~……』
東郷『そこで少しストレッチでもしたらいいんじゃないかしら』
友奈『うん、そうする』
東郷『私も友奈ちゃんの柔軟、手伝ってもいい? 二人なら出来ることも増えると思うし』
友奈『うん! いいよ!』
友奈『うん、思いっきり体重かけていいからね』
東郷『ほっ…… !』
友奈『はーっ』
東郷『どう? 友奈ちゃん』
友奈『へへ~』
東郷『なんで笑ってるのかしら…… ?』
友奈『東郷さんのぼた餅が……』
東郷『ゆ、友奈ちゃん!? もう!』
友奈『い、痛い! 痛いよ東郷さん!』
東郷『お仕置きです!』
友奈『反省します……』
東郷(そういうことなら直接言ってくれたらいいのに…… 友奈ちゃんにならいいのに……)
友奈『え? 何か言った?』
東郷『何でもありません! 仕事に戻ります!』
友奈『……な、何かわたしに手伝えることあるかな~?』
東郷『うーん…… そうだ、この資料を並べ直してもらえるかしら?』
友奈『うん! それならわたしでも出来るね!』
友奈『やったー!』
東郷『後はここで風先輩たちが帰ってくるの待ちましょう』
友奈『あっ、東郷さん肩凝ってない? マッサージするよ!』
東郷『うーん、それじゃあお願いしちゃおうかな』
友奈『まっかせてー!』
東郷『…… 友奈ちゃん、わかってるわよね?』
友奈『も、もうあんなことしないよ~』
東郷『うん、やっぱり友奈ちゃんのマッサージは気持ちいいわ』
友奈『東郷さんに喜んでもらえてわたしも嬉しいよー』
東郷『……』
友奈『……』
友奈『ねぇ東郷さん』
東郷『何? 友奈ちゃん』
友奈『今日さ、二人きりで活動出来て良かったなって思うんだ』
東郷『…… どうして?』
友奈『だけど今日はふたりっきり居られてとっても嬉しかった! 東郷さんだーいすきっ!』
東郷『友奈ちゃん…… 私も、友奈ちゃんのこと大好きよ』
友奈『東郷さーん!』
東郷『友奈ちゃん!』
園子「んー! やっぱりゆーゆとわっしーのカップリングは最高だなー!」
園子「……」
園子「でも実際のところ、二人はお互いのことどう思ってるんだろー?」
園子「なんかもう既に『夫婦』って感じだしこれ以上発展しなさそうな感じだよね~」
園子「……」
園子「そうだ!」
園子「ふっふー!」
園子(わたしの手にあるのは今までのゆーゆとわっしーのイチャイチャから産み出された至上最高のゆうみもSS)
園子(これの表紙をさも部活に使う資料のように偽造し、部室の机の上に2部置いておく)
園子(そしてそれを読んだ二人は思わずお互いを意識してしまい……)
園子「むっはー!」
夏凛(朝からずいぶんテンション高いわね…… 取り敢えず話しかけるのやめよう……)
園子「え? もし部室に他の人が来て邪魔されたらどうするかって?」
夏凛(一人で勝手に話し出したわ……)
園子「そうならないために予め工作をしておいたのだー」
園子「にぼっし~」
夏凛「何? ……て言うかいい加減そのあだ名やめて」
園子「部長がお話があるからって放課後体育館裏に来るようにって言ってたよ~」
夏凛「放課後に体育館裏……ですって…… ?」
夏凛「ふーん…… 風の癖にいい度胸じゃない…… 覚悟しなさい!」
園子「頑張ってね~」
園子「ぶいっ!」
園子「いっつーん」
樹「あ、園子さん お姉ちゃんが何処行ったか知りませんか? お姉ちゃんのクラスの人に聞いたら『HRが終わった瞬間とんでもないスピードで教室を出た』って言われて……」
園子「あ~ それなら、部長は朝に下駄箱から手紙を見つけてね、目立ちすぎるくらい周りを見渡した後、手紙を見てニヤニヤしてたよ~」
樹「も、もしかしてそれって……」
園子「やっぱり…… ラブレター?」
樹「ど、どうしよう…… お姉ちゃんが悪い男の人に騙されちゃったら……」
園子「こういうのは体育館裏で告白するって相場は決まってるよ、だから
樹「友奈さん達に部活遅れるって言っといてください!」
園子「もう行っちゃった……」
園子「ぶいぶいっ!」
園子「シンプルな便箋に確かこんなこと書いたかなー?」
拝啓 犬吠埼風様へ
突然のお手紙申し訳ありません。私は普段から貴女の溢れ出る「女子力」に魅了されていました。
貴女の「女子力」は至るところで発揮されており、勇者部部長として奉仕活動を行う時など、貴女の「女子力」無くしては不可能でしょう。
今日こうして筆を取らせて頂いたのは貴女と貴女の「女子力」を見込んでのことです、もし宜しければ「女子力」持参の上放課後に体育館裏に来て頂けないでしょうか、直接伝えたいことがあります。
女子力
園子「猛ダッシュで教室を出たみたいだし、作戦は成功みたいだね~」
園子「ぶぶいぶい!」
園子「よーし、後は部室にゆーゆとわっしーの様子を見に行くだけだー!」
友奈「まだ誰も来てないみたいだね~」
東郷「私たちが一番乗りのようね ……あら? これ何かしら?」
友奈「今日の活動内容について、かな?」
東郷「先に二人で読んでおきましょうか」
園子(きたきたきた~)
園子(ちなみに、二人に合わせてSSの内容はちょっと変えてあるんだよ~)
東郷「…… !」
園子(わっしーのは最初にちょっと過激な内容を入れたよ)
園子(書いてて恥ずかしかったな~)
友奈「……」
友奈「…… !」
園子(ゆーゆのは最初に感動のお話を入れたよ)
園子(書いててわたしも泣いちゃったよ~)
園子(そう、それはまるで始まりは違ってもやがて惹かれあい共に同じ道を行くあの二人のよう……)
園子(そろそろ読み終わったかなー?)
東郷「こ、これ……」
友奈「わ、わたしと東郷さんのことが書いてあったね……」
東郷「そ、そうね…… だ、誰かの悪戯かしら…… ?」
友奈「う、うん……」
東郷「ど、どうって…… ?」
友奈「えと…… その……」
園子(行け! そのまま勇者になるんだゆーゆ!)
友奈「このお話の中ではわたしと東郷さんは恋人同士で……」
東郷「ええ」
友奈「わ、わたしはね…… このお話がほんとうだったらいいなー、ってちょっと思っちゃったの」
東郷「友奈ちゃん……」
東郷「……」
友奈「そういうの凄く羨ましいなぁ…… って……」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「あっ! ご、ごめんね! こんなこと言われても…… 気持ち悪い…… よね」
東郷「そ、そんなこと無いわ! わ、私だってこの話にすっかり感情移入しちゃって! ……ゆ、友奈ちゃんと…… その……」
友奈「そ、そっか…… えへへ…… 安心したなぁ、わたしの気持ち片想いじゃなかったんだ……」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「だからね…… これからもずっとわたしの側にいて欲しいな、わたしの…… 『お嫁さん』として」
東郷「友奈ちゃん…… !」
友奈「…… どうかな?」
東郷「うん! 私、友奈ちゃんのお嫁さんになりたい! ずっとずっと、友奈ちゃんの朝ご飯を作って一緒に食べたい!」
友奈「東郷さーん!」
東郷「友奈ちゃん!」
東郷「……」
友奈「…… ねぇ、東郷さん」
東郷「何? 友奈ちゃん」
友奈「ちゅー、しようか……」
東郷「うん…… 目、閉じるね……」
友奈「んー……」
園子「むっはー!!!!!!!!」
友奈「園子ちゃん!?」
東郷「そのっち!?」
友奈「ど、どうしよう!? 園子ちゃんが倒れちゃった!」
東郷「そのっち! そのっち!」
園子(薄れていく意識の中、わたしが最後に見たのはわたしのことを心配しながらもしっかりとわっしーの腰に手を回していたゆーゆの姿だった……)
風「ふ、ふふふ……」
風「つ、つつつつつ遂にアタシの女子力をわかってくれる人が現れたのね……」
風「ま、まぁそりゃこんな美女が居たらラブレターの一つや二つ来て当たり前っていうか、今まで来なかったのがおかしいっていうか」
風「そわそわ……」
風「そわそわそわ……」
風「そわそわそわそわ……」
風「『やっと来てくれたのね! 来てくれないかと思った!』…… 何でこっちが下手に出てるのよ」
風「『べ、別に待ってなんて居ないんだから!』…… こんな夏凛みたいなこと言ったら相手引いちゃうわね」
風「『待っていたわ! ここで会ったが百年目』…… うん、やっぱりこれね」
風(来たっ!)
風「はーっはっはっはぁ! 待っていたわ! ここで会ったが百年目ぇ!」
夏凛「ふっ…… いい度胸じゃない…… 何を思っていきなりこんなとこに呼び出したかは知らないけど、この三好夏凛、受けた勝負から逃げないわ!」
風「はっ…… ? 夏凛…… ?」
樹「……」
樹(なんだろう、この状況……)
風(まぁ確かに夏凛は前々からそういうところあるんじゃないかなーって思ってたけどまさか相手がアタシだとは……)
風(そりゃ確かに夏凛はアタシほどじゃないけど、中々美少女だと思うし、女子力全然無くて素直じゃないけどそこが可愛いっていうか、いやそうじゃなくて)
夏凛「さぁ、わざわざ人気の無いところに来たからにはただで済むとは思わないことね!」
風(ただで済まないってどどどどどういうことよ!? ま、まさか夏凛の奴本気で……)
風「ちょちょちょ…… す、少し落ち着きなさいよ! アタシたち仲間同士でしょ!? いきなりそんなこと言われてもどうしたらいいか……」
夏凛「何ここに来て腑抜けたこと言ってんのよ! アンタの好きにしていいから早く始めなさいよ!」
風(す、好きにしていいってアタシがする側なのー!? 呼び出したの夏凛なのに!)
風(覚悟決めるのよ…… ここは歳上らしく、部長らしいとこ見せるチャンスなんだから……)
風「じゃあ行くわよ……」
夏凛「…… いつでも来なさい」
風「すぅ…… 勇者部五箇条! なせば大抵なんとかなる! 行くわよ夏凛!」
夏凛「え? 何?」
風「んっ……」
夏凛「んー!?」
樹「キャー!」
終わり
最近増えてないゆゆゆSS読めてよかった
面白かったよー
面白かったです
痛いことする園子様がいたけどやっぱり園子様はこうでないとな
やはりゆゆゆSSは良いな
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459678003/
Entry ⇒ 2016.04.09 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
風「ラブレターの時の子から呼び出し?」 友奈「そうみたいです」
風「お疲れ―友奈、別にメールしてくれたんだし気にしなくて良いわよ」
園子「ゆーゆ、この前の子とお話してたの?」
樹「あ、ラブレターの時の……」
友奈「うん、そうなんだ。何か私たちって思ったよりも相性が良いみたいで、つい話もはずんじゃうんだよねー」
夏凜「で、でも、その子って友奈のこと……す、好き……なのよね?」
東郷「……これは由々しき事態ね」
風「東郷?」
夏凜「そうね……女同士だからと思って甘く見てたけど、女同士だからこそライバルたりえるのかもしれないわ」
園子「相変わらずゆーゆは愛されてるね~」
樹「ふふっ、友奈さんは魅力的な方ですからね」
園子「おや、もしかしていっつーも?」キラキラ
園子「じゃあ、この中で付き合うとしたら誰が良い~?」
樹「ええっ!? う、うーん……」
風「いい加減にせいっ」ポスッ
園子「あうっ」
友奈「あ、私みたいです。えーとなになに、『ちょっと私そびれたものがあるから校舎裏に来てくれませんか?』か……」
風「例の子から呼び出し?」
友奈「えっと、そうみたいです。来たばっかりで申し訳ないですけど、ちょっと行ってきますね!」
風「あいよー」
東郷「すみません風先輩、ちょっと急用が」
夏凜「私も絶対外せない予定が入ったわ」
風「アンタら分かりやすいな…」
園子「面白そうだね~。いっつーも一緒に行く~?」
樹「え、ええと……」
風「はあ、しゃ~ない。ちょっと皆で友奈の様子を見守ってくるとしますか」
………
↓
園子「面白そうだね~。イッつんも一緒に行く~?」
*「ごめんね友奈ちゃん、急に呼び出して」
友奈「ううん、大丈夫だよ。それで、私に渡したいものがあるんだっけ?」
*「うん。別に明日でも良かったんだけど、出来れば早めに受け取って欲しかったから」
友奈「そうなんだ~。なんだろう、わくわく!」
東郷「きっと邪なものに違いないわ。可及的速やかにその場から立ち去るべきよ、友奈ちゃん」
夏凜「大丈夫よ東郷、もし変なものだったら私が音速で友奈を守るから」
風「私にはアンタらの方がよっぽど危ない人に見えるけどね」
園子「婚姻届だったりして~」
樹「えぇっ!? 友奈さん結婚しちゃうんですか!?」
風「いや、ないない」
東郷「もしそうだったら光の速さで婚姻届を切り刻むから安心して」
樹「あ、でもうちの国じゃまだ同性婚認められてませんよね?」
夏凜「なら安心か」
風「あー、なんかもうツッこむのも疲れてきたわー」
もちろん、勇者に選ばれた経験がある女の子限定だけどね~」
東郷「そ、そうなのそのっち!?」
夏凜「ちょっ、今すぐ詳細を聞かせなさい!」
園子「詳細と言われると説明に困るけど、簡単に言うと、性交渉の際任意に男性の生殖器みたいなのが生やせるらしいよ~」
東郷「ゆ、友奈ちゃんに種付けッ…!!」ブバッ
夏凜「ちょっ、東郷、鼻血鼻血…!!」ダラー
園子「私は必要のない嘘はつかない主義なので~」
樹「あ、あの……」
園子「残念ながら、近親者の間での子作りは神樹様でも遺伝的にNGみたいだね~」
樹「そ、そうですか……」シュン
風(こ、これは姉としてどう反応するべきなの…!?)
樹(ナラヤッパリユウナサント……)
~~~~
*「うん、行き付けのお店で買った髪飾り。友奈ちゃんにならきっと似合うと思って……」
友奈「ありがとう、とっても嬉しいよ! 一生大事にするね!!」
*「そ、そんなに喜んで貰えて嬉しいな。アトコウハンノセリフハベツノキカイニトッテオイテクレルト……」
友奈「うーん」
*「どうかしたの?」
友奈「あ、えとね、私ばっかり貰ってばかりで悪いから何かお返しできないかなーって」
*「そんなの別に気にしなくていいんだよ?」
友奈「そうもいかないよ~。あ、それなら」
*「え?」
チュッ
友奈「えへへ、ほっぺにだけど。いつも私と仲良くしてくれてありがとね!」
*「……う、うん////」プシュー
園子「あ、ゆーゆおかえり~。お話は終わったの~?」
友奈「うん、髪飾りプレゼントされちゃった。というか、何で皆こんなところに? それとそこに鼻血流してる人が約2名…」
園子「あはは~、実はかくかくしかじかでゆーゆの様子見守るつもりが、それどころじゃなくなっちゃったんだよ~」
東郷「ゆ、友奈ちゃん、子供の名前はもう考えてあるからね……」ダラダラ
夏凜「ど、どうしよう、そういう知識興味無かったからちゃんと勉強しないとまずいわよね……」ダラダラ
友奈「???」
樹「お、お姉ちゃん……ヒニンスレバダイジョウブダヨネ?」
風「」
園子「フフフ、また良い小説が書けそうで何よりだよ~」キラキラ
終
友奈ちゃんマジ魔性の女
にぼっしーには是非幸せになって欲しい
掲載元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1457005385/
Entry ⇒ 2016.03.20 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
結城友奈「あっ、これ東郷さんのパンツだ」
・BD一巻初回限定版特典PCゲームの内容を設定として含みますので注意
友奈「お風呂出たよー」
夏凜「はーい」
夏凜(じゃあ私もお風呂入ろっと)
友奈「ねえ、夏凜ちゃん、聞いて聞いて」
夏凜「何よ」
友奈「あのね、さっき気付いたんだけど、私今日ね」
夏凜「うん」
友奈「うっかり東郷さんのパンツ履いて、夏凜ちゃんの家来ちゃってたんだよー」アハハハ
友奈「いやーびっくり、びっくり」
夏凜「は?」
夏凜「……え?」
友奈「?」
夏凜「いやいや、なんであんたがきょとんとした顔するわけ」
夏凜「突然わけわかんないこと言い出したの、友奈でしょうが」
友奈「わけわかんないというか、私のパンツだと思ってたのは実は東郷さんので――」
夏凜「私がわけわかんないって言ってんのは、そこじゃないわ」
夏凜「どう考えても、東郷のパンツについて私の家で気づくのがおかしい」
夏凜「そういうのがわけわかんないって話」
友奈「あ~。だよね、やっぱりびっくりするよね」
夏凜「そりゃそうでしょ」
友奈「でも、実はこれには深いワケがあるんだよ」
夏凜「深いワケねぇ……」
夏凜(どうせ蓋を開けてみたらまったく深くないんだろうけど、若干事情が気にはなるわね)
夏凜(知らず知らずパンツ入れ替わってるとか、その、自分の身に降りかかったらちょっと怖いし)
夏凜「じゃあそのワケとやらを話してみなさいよ。聞いてあげるから」
友奈「うん」
友奈「だけど何から話そっか?」
夏凜(え、そんな複雑な話なの?)
夏凜「じゃ、じゃあいつ入れ替わったのか……から?」
友奈「いつ。なるほど、いつ、ね」
友奈「昨日の夜、東郷さんと一緒にお風呂入ったときだよ」
夏凜「ん?」
夏凜「念のため確認しておくけど、あんたたち、家が隣同士だったわよね」
友奈「うん」
夏凜「で、徒歩数分以内で、暇があったら互いの家をしょっちゅう行き来してる」
友奈「うん。すっごい近いから」
夏凜「……つまり、ひょっとしてこういうこと? 友奈と東郷は、毎日お風呂一緒に入ってる」
友奈「え? ううん。毎日じゃないよ。それどころか、初めての経験だったもん」
夏凜「あっ、そう」ホッ…
夏凜「!」ハッ
夏凜(――いやいやいや、なんでホッとしてるのわたしは)
夏凜(ダメよ夏凜、こんなやすやすと会話のペースを掴まれてしまうなんて)
夏凜(早急にキリっとした私らしさを取り戻さなくちゃ)
友奈「?」
友奈(夏凜ちゃん、急に黙ってどうしちゃったんだろ)
夏凜「えへん、えへん」
夏凜「次の質問に移らせてもらうわよ」
友奈「よしキタっ! ドンとかかってこい!」ドンッ!
夏凜(なんか無駄に元気ね)
夏凜「……あー、ならなんで、友奈は昨日東郷とお風呂に入ることになったの?」
夏凜「昨日は特別、そういうことよね?」
友奈「それはね、東郷さんが――」
東郷『明日夏凜ちゃんの家で二人お泊りするなら、今日は絶対家に帰さないわ』
東郷『せめて今日だけは、今日だけでいいから、私に友奈ちゃんとの特別な思い出を頂戴……』
友奈「って言ったから、うんわかった、って成り行きで自然とね」
夏凜「――へ、へぇ」
夏凜(東郷がそのセリフ言ってる様子を想像すると、妙にエロチックな姿と声が浮かぶんだけど)
夏凜(これって私がおかしいわけじゃ、ないわよね?)
夏凜「……あれ? でも待って」
夏凜「そもそもなんで、私たち二人でお泊りしてるのかしら?」
友奈「え?」
友奈「なんでって夏凜ちゃん、みんなとお泊り会しても大丈夫だったの?」
夏凜「大丈夫って、何が?」
友奈「だって夏凜ちゃん照れやさんだから、お泊り会の人数は今のところ二人が限界かなーって」
友奈「大丈夫だったなら、みんなも呼んでおけばよかったね」
夏凜「ああ、そういうこと」
夏凜「ううん。これで良かったわよ。これで」
夏凜(言われてみれば、みんなで普段遊ぶのはまだしも、みんなでお泊りは流石にまだきついかも)
夏凜(それを楽しむより、きっと精神擦り減っちゃうわ)
夏凜(この家、みんなのぶんの寝具もないし)
夏凜(……つい忘れてたけど、猪突猛進なようで、こういうことに友奈は結構ちゃんと気が回るのよね)
夏凜「ありがと、友奈」ボソッ
友奈「?」
友奈「何か言った?」
夏凜「ふぁ、な、なんでもないわよっ!」アセアセ
夏凜「バカッ!」プイッ
夏凜(あぁ……。またやっちゃった……)ガクッ
友奈「ふふっ」ニコニコ
夏凜「なによその顔」
友奈「いやー、夏凜ちゃんとも凄く打ち解けたなー、って実感しちゃって」
夏凜「はぁ? 打ち解けたって、どういうところが?」キョトン
友奈「……」ツーン
夏凜「友奈?」
友奈「なんでもないよ~だ」ツーン
夏凜「なんでもないって――」
友奈「なんでもないって言ったら、なんでもないんだからね!」ツーン
夏凜「……ねえ、あんた突然どうしたの、大丈夫?」
友奈「どうしたのって、出会ったばかりの夏凜ちゃんの真似だけど」
夏凜「え」
友奈「何よ、こっちジロジロ見ないで欲しいんだけど!」ツーン
夏凜「あっ、ごめん」
友奈「演技だよ?」
夏凜「わ、わかってるわよそれくらい」
夏凜「……」ジー
夏凜「でも、そうね。友奈と打ち解けてるのは確かよね、私が心で思ってるよりもずっと」
友奈「というと?」
夏凜「だって、二人きりって形で家に呼んで、こんなにのんびり間と空気が持つなんて、さ」
夏凜(東郷は独特すぎる)
夏凜(風は……絶対両方が前半ワーって喋って、ワーって疲れるわね)
夏凜(樹は遅かれ早かれちょっと気まずくなりそう。それでも、前二人よりは良さげだけど)
夏凜(ていうかそもそも同じ血をわけた兄貴を家に呼んで気まずくなりそうな時点で私――)
友奈「勇者くすぐり!」コチョコチョ
夏凜「なっ!? ああ、うわ、やめい!」ペチッ
友奈「あてっ」
夏凜「な、何すんのよ……。前のお泊りのときもやったでしょ、それ」
友奈「いやー、夏凜ちゃん、ちょうど前こちょこちょしたときみたいに暗い顔してたから」
友奈「てっきり、こちょこちょせい、ってネタフリかと」
夏凜「んなわけあるかっ!」
夏凜(……うー。また、そんな顔してたか)
夏凜(気をつけないと――)
友奈「ほら、またそれっぽい顔になり始めてるよ」グニグニ
夏凜「どお゛!?」
友奈「夏凜ちゃんほっぺた柔らかいねー」
夏凜「でぇ!」ペチッ
友奈「あてっ」
夏凜「今度はほっぺムニムニしてくるし……」サスサス
夏凜「口で言いなさいよ、口で! びっくりするでしょ!」
友奈「暗い顔してるって言ってもダメだったから」
友奈「夏凜ちゃんをスマイルにしようと実力行使で頑張ったんだけど、いけなかった?」
夏凜「う、うーん」ムムム…
夏凜「いけない、かどうかはちょっとよくわかんないけど……」
夏凜(そういうこと相手にしていい場面、距離感って、一般的にどうなってるんだろ?)
夏凜(今日はお泊りだし、いいのかな)
友奈「まあ、あれだよね」
夏凜「どれよ」
友奈「どのみち焦る必要はないよね」
友奈「中学生活、まだまだこれから長いんだから」
友奈「私たち勇者部として、こんなにあっという間にグッと仲良くなれたんだし、
いつかは風先輩や樹ちゃん、東郷さんと一緒に五人でお泊り会だってできるよ」
友奈「みんなで楽しいこと、たくさんやれる時間がある」
友奈「ね?」
夏凜「…………私は、バーテックスを殲滅するために来たのよ」
夏凜「あんたは知ってるでしょ、あたしが戦う理由」
夏凜「私は、勝つために来た」
友奈「そうだね」
友奈「じゃあ、守ろう」
夏凜「守る……」
友奈「うん。バーテックスからみんなを、四国を」
友奈「勇者として、勇者部として」
夏凜「……ええ、守りましょう。みんな、を」
友奈「で、さっきまでなんの話をしてたんだっけ?」
夏凜「友奈のパンツが東郷のパンツだった話でしょ」
夏凜「脱線してから一応一段落ついたし、話の続きはちょっと待って。お風呂入ってくるから」
友奈「オッケー。お菓子開けようと思うんだけど、どれから開ける?」
夏凜「ぽてちで」
友奈「りょうかーい。テレビつけていいよね?」
夏凜「ご自由にどーぞ」テクテク
ガチャン
夏凜「…………」
パサッ
夏凜「…………」
夏凜「…………」
夏凜「…………」
ザァァァァァァ
夏凜(前回のとき以上に、シャワーに乱入してきそうな気がして、つい身構えちゃうわね……)
夏凜(親友同士って、わざわざお風呂一緒に入ったりしてみるものなの……?)
夏凜(それともあの二人が、世間一般から見ると特殊なの……?)
TV<ワー ワー
夏凜「テレビ面白いのないわね」ズルズル
友奈「そうだねー」ズルズル
友奈「インスタントラーメン、たまに食べたくなるけどさ」
夏凜「うん?」
友奈「インスタントうどんは食べると、おいしいんだけど、本当のうどんが恋しくなっちゃうよね」
夏凜「わかる。現にそうだし」
友奈「今回も前のときみたいに、即席ラーメンにしとけば良かったかも」ズルズル
友奈「うどん、次やるなら手打ちにする?」ズルズル
夏凜「次、ねぇ……」
友奈「やるなら、料理の先生として風先輩を呼ばなきゃだね」
夏凜「風って、うどん作るとき、いつもじゃないにせよ手打ちしてるの?」
友奈「うーん、してないんじゃないかなー」
友奈「でも勇者部で家事や料理と言ったら、風先輩なのは間違いないでしょ?」
夏凜「まあ、そうね」
友奈「お菓子と言ったら東郷さんだけど」
夏凜「東郷のぼたもち?」
友奈「もちろんぼたもちもおいしいけど、それだけじゃないんだよー」
友奈「東郷さん、和菓子のレパートリーたくさん持ってるんだ!」
夏凜「ふーん」
友奈「ぼたもち以外、まだまだ修行中だって、みんなに中々出そうとしないの、なんだか東郷さんらしい気がする」
夏凜「おいしいの?」ズルズル
友奈「うん。美味しくないのは一度も出てきたことないよ」
友奈「だけど『うーん、ぼたもちの域には達してないわね』って度々言って、唸ってるの」
友奈「ぼたもちは確かにすっごいけど、他のだってちゃんと美味しいのになぁ」ズルズル
夏凜「つまり努力家なのね。勇者として感心だわ」ズルズル
夏凜「よし、ごちそうさまでした」
友奈「このあとどうする? テレビ面白いのないし、寝ちゃう?」ズルズル
夏凜「それでいいんじゃない? ベッドは――」
友奈「一緒に寝ればいいよ、今回も」ズルズル
夏凜「はー、そう言うと思った」
友奈「ごちそうさまでした」
夏凜「狭いわね、やっぱりこれ」モゾモゾ
友奈「えー、嘘ぉ~」
夏凜「寝返りうったら、友奈に当たるか落っこちそうじゃない」
友奈「落ちそう?」
夏凜「転がる方向によったらね」
友奈「だったらもうちょっとこっち詰めようよ?」
友奈「まだ空いてるスペースあるもん」
夏凜「……そうよね、あんたってそういう奴だったわ」
友奈「?」
夏凜(これ以上詰めるなんて気恥ずかしいし、無理に決まってるじゃない)
夏凜(そういう羞恥心みたいなの、この子薄すぎじゃないかしら)
夏凜(それとも逆に、お泊りで一々こういうこと考える、私の方がおかしかったりするの……?)
夏凜「もういいわ。どうせグチグチ言ったって、このまま二人で寝るんだから」
夏凜「それよりいい頃合いだし、話を東郷のパンツに戻しましょう。一度中断してからだいぶ間が空いちゃったけど」
友奈「東郷さんのパンツ……。ああ、そう言えば、そんな話さっきしてたなぁ」
友奈「私、テレビ見たりご飯食べたり、布団敷いたりで、つい忘れちゃってたのに夏凜ちゃんよく覚えてたね」
夏凜「ふん、完璧な私が、たとえ細かいことであろうとも一切合財忘れるはずないでしょうが」
夏凜(……実際は、あのまま途中で話忘れて、万が一違う日にふと思い出して気になったりでもしたらヤダ)
夏凜(ってだけだけど)
夏凜(例えば、日が経ってから友奈にあれなんだったの? って訊いてみて)
夏凜(『この熱心さは、実は夏凜ちゃん、東郷さんのパンツそのものに興味があるのでは?』 とか勘ぐられ)
夏凜(――はしないわね、流石に)
夏凜(なるべく悪く考えてみようとしたにせよ、いくらなんでも発想が無茶苦茶だわ……)
友奈「夏凜ちゃん?」
夏凜「……あっ、そうよね、話よね」
夏凜「えーっと、東郷と昨日お風呂入ったのはさっき聞いたけど、
なんでそのとき互いのパンツを間違えるなんてことが起こったの?」
夏凜「普通に考えて、それ、おかしいと思う」
友奈「昨日は特別だったからね~」
友奈「家から東郷さんとおそろいのパンツを持っていってたんだ」
夏凜「おそろいの、パンツ……っ?」
夏凜「二人は、おそろいのパンツを履いてるの?」
友奈「いつもじゃないよ」
友奈「でも前に一度、服や下着一式ペアルックにしてみない? ってことになって一緒にイネスで買ったの」
友奈「胸のところはあまりに差があり過ぎて、ちょっとどうにもならなかったよー」ワハハ
夏凜「へ、へぇ……」
夏凜(……私のよくわからない世界だわ)
夏凜(服を揃えてみるのはわかる。でも、下着って外から見えないじゃない)
夏凜(いったいそこにどういう意味が……?)
夏凜「ゆ、友奈は、他の子ともそういう下着のペアルックってやってみたことあるの?」
友奈「ううん、ないよ。やろう、って言われたことも今まで特にないし」
夏凜(……となると、友奈が今しがた言ってた通り、昨日は特別、つまり東郷は特別ってことよね)
夏凜「風や樹も、下着合わせてみたりしてるのかな」
友奈「うーん、どうだろう。でも、洗濯して干すときとかにややこしくならないよう、とりあえず色は変えそうかなー」
夏凜「なるほど、一理あるわね」
夏凜(ややこしくなる……か。いくら近くても、東郷と友奈は住んでる家が違うのだから、普段その心配はない)
夏凜(友奈や東郷の場合、家でそのとき買った下着を見るたびに、相手を思い出すとかやってるのかしら?)
夏凜(それって、友情の域におさまる親密さを越えて、もはや凄くカップルっぽいような……?)
友奈「これで事情、伝わったかな?」
夏凜「あー、あともう一つあるわ。おそろいにしてて、なんで東郷のパンツ履いてきた、って私の家で気付いたの?」
友奈「パンツの内側についたタグに、二人それぞれ自分の名前書いておいてたから、、お風呂入ろうとパンツ脱いだときに見えたの」
夏凜「ふむふむ」
夏凜(友奈が履いてきた東郷のパンツが、いま我が家にある)
夏凜(今は新しいのに履き替えただろうけど、なにその変な状況)
夏凜(我が家に東郷のパンツ。……待って。東郷って、そもそもパンツ履くの?)
夏凜(大和撫子は、パンツなどと言う外来品にはかぶれませぬ)
夏凜(とかなんとか、よくわかんないけど、何も履かないか、褌みたいなのつけてそうというか……)
夏凜(東郷って、どういうパンツ履いてるんだろ)
夏凜「ねえ、友奈」
友奈「ん?」
夏凜「どんな――」
夏凜(ってこんなの訊いたら私が変態みたいじゃない!)
夏凜(東郷と友奈、どんな見た目のパンツおそろいで履いてたの? って)
夏凜(第一、いつも友奈とおそろいじゃないんだから、これ訊いても意味がないわ)
夏凜「――な、なんでもない」
友奈「?」
夏凜(あ、危ない。危ない。言い出す前に気付いてよかったわ)ホッ…
夏凜(いっそのこと直球に、『東郷って、普段どんなパンツ履いてるの?』)
夏凜(って訊いたらきっと疑問は氷解するんだろうけど)
夏凜(そんなますます変態っぽい質問、するのは恥ずかしいし……)
友奈「夏凜ちゃん」
夏凜「なに」
友奈「夏凜ちゃんも、まずは私と、ペアルックやってみない?」
夏凜「ふぇ?」
友奈「パンツはともかく……服だけでいいから」
友奈「楽しいよ? 二人でこれにする? それともこっち? ってイネスで服選ぶの」
夏凜「……その、ごめん。遠慮しとくわ」
友奈「そっかー。残念」
夏凜「ごめんね。少なくとも今は、私にそれ、無理だと思う」
友奈「わかった」
夏凜「…………」
夏凜(だってそれ買ったら、自然な流れとして、一緒に着てみるんだろうなって考えると、むっちゃ恥ずかしいもの)
夏凜「……」
夏凜(でも、こうして友奈とはお泊りできるようになった程度には、私はこの短期間で変わった。変わることができた)
夏凜(だから、いつかは勇者部全員で服を選んで、とかだってもしかしたら――)
――――――
――――
――
夏凜「なっ、この、てりゃ!」ポチポチ
風「ふははははははっ! 効かぬわ!」ポチポチ
夏凜「ふぁっ、ぬ、くわ、ちょっ」ポチポチ
風(……よしよし、夏凜、対戦格闘ゲーム、ちゃんと楽しんでるわね)
風(今日は東郷、友奈、樹が外に出てる状況で、部室に私たち二人だけって珍しい状況だからちょっと焦ったけど、
これなら三人が勇者部としての任務を終え帰ってくるまでの間、無事に楽しく時間潰せそうだわ)
風(携帯ゲーム機二台、片方樹のだけど、持ってきてよかった)
風(……ふっふっふ、そろそろこの試合、とどめを刺してやる頃合いかのう……)
風「ポチっとな」ポチッ
夏凜「あ」
夏凜「アァー! 負けたぁ―!!!」
夏凜「くやしぃー!」ワシャワシャ
風「ははははははは! そうだ! 頭を掻きむしって悶えるがよい!」
風「なんて言ったって、ただ負けたではなく貴様は、この私に惨敗したのだからなぁ!」
夏凜「あああッッッ!!!! むっちゃ腹立つその顔ッッッ!」
夏凜「もう一回ッ! もう一回よッ!」
風「おう! 望むところよ!」
風 夏凜「…………」ポチポチ
夏凜「……」ポチポチ
風(か、夏凜本気ね……)
風(プレイ時間って単純な蓄積の差があるから、そう簡単にはまだ負けないでしょうけど)
風(ちょっと集中の邪魔してやりましょう)
風「夏凜昨日、友奈とお泊りしたのよね?」ポチポチ
夏凜「ええ」ポチポチ
風(うん、超無表情の無関心だわ)
風「そこで何話したの?」ポチポチ
風(こうやって、相手に過去のこととかを考えさせて、指先を乱れさせるのは定石……!)
風(夏凜はツンデレなのに素直だから、人慣れしてないのもあって、こういうの多分引っかかるわね)
風(兄妹とかいて、ゲームやらで遊んだことあるなら別だけど……夏凜に兄妹っているのかな?)
夏凜「何話したのって……」ポチポチ
夏凜(ああ、だめ。回答深く考えすぎると操作に支障が出るわ、これ)
夏凜(あのとき話したことでパッと思い出せるもの。友奈と東郷のパンツ)ポワーン
夏凜「…………」ポチポチ
風「……」ポチポチ
風(そんな長々押し黙るような質問だったかしら……?)
夏凜「……」ポチポチ
夏凜(二人のパンツについて話すのはダメね。二人にとってプライベートなことだもん)
夏凜(私が勝手に話すなんて論外だわ)
夏凜(二人のパンツに関係なくて、私個人の興味関心その他に限定した返答……)
夏凜「……」ポチポチ ムムム…
風(おっ、黙ってはいるにせよ、精神を乱す効果はあったみたいね)
風(よし、今の内に一気に本気で畳みかけてやれば……ッ!)
風「…………」ポチポチポチ
夏凜「!」
夏凜(んなっ!!! いきなり戦闘力が上がった!? 風にはまだこんな秘められた力が……っ!)
夏凜(マズいマズい、集中しなきゃ。集中しなきゃ)
風(おっ、なかなか抵抗するじゃない。火事場の馬鹿力とかそういうやつ?)
風(これはもう少し、揺さぶっといた方がラクチンね)
風「ね~。夏凜~」ポチポチポチ
風「昨日、友奈と何話したのぉ~」ポチポチポチ
夏凜「んー」ポチポチポチ
夏凜(集中、集中、集中、集中、集中)
夏凜(でも、何か答えとかなきゃ……)ポワーン
夏凜「…………」ポチポチポチ
夏凜(えっと、二人、パンツ)
夏凜(ダメダメ、集中……)
夏凜(でも、パンツ、パンツが二人、違う。二人のパンツ……。えーと)
夏凜(パンツの話なんかいきなりしたら、変態だって誤解されちゃう……)
風(なんか夏凜、すごい顔になってるけど、これ大丈夫なの?)
風「ねえ夏凜――」ポチポチポチ
夏凜「風」ポチポチポチ
風「なによ」ポチポチポチ
夏凜「誤解しないで聞いて欲しいんだけど」
夏凜「あんたと樹、普段どんなパンツ履いてるのか、色とかそういうの、私に教えてよ」
風「ん?」
おわり
だったので、みんなもやろう ようするに買おう
スレタイから外れて日常物書き続けることも不可能ではなかったけれど
さくっとまとめて終わらせました なんかゆゆゆSS次書くとしたら、最終回後になりそう
HTML化依頼してきます
ほのぼのしたわ
どう考えても誤解するわw
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418829550/
Entry ⇒ 2016.02.05 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
友奈「挿れるよ…夏凜ちゃん」
友奈「うっ!くっ!」ズブリ
夏凜「……」
友奈「夏凜ちゃん!夏凜ちゃん!夏凜ちゃん!!」パンパン
友奈(やっぱり夏凜ちゃん鍛えてるだけあって締まりがすごいよ!東郷さんとは大違いだね!)
夏凜「……」
夏凜(…小さい…)
夏凜(勇者適性値が一番だからって、どれほどのものを持っているかと思えば、ここまで短小だったなんて…)
友奈「あっ!もう出そうだよ、夏凜ちゃん!」
夏凜(これだったら風の方がよっぽどマシね…)
友奈「出るっ!!」ビュルビュル
夏凜「……」
友奈「ふぅ~、気持ちよかったね、夏凜ちゃん!」ギュッ
夏凜「……」
友奈「夏凜ちゃん?」
友奈「愛してるよ、夏凜ちゃん!」チュッ
夏凜「わ、私もよ、友奈…」
………
……
友奈「あ~、夏凜ちゃんとのSEX気持ちよかったな~」テクテク
友奈「でも胸が小さいのが少し残念だったな~」
友奈「東郷さん、胸は素晴らしいのに締まりが悪いのがな~」
友奈「次は風先輩としてみようかな~」
友奈「ただいま~」ガラガラ
東郷「あっ!あっ!あん!そ、そのっち…あっ!激し…すぎるわ///」ビクッビクン
園子「まだまだ~ここからが本番だよ~」パンパンパン
友奈「」
友奈「……」
園子「ふっふっふ~私のおちんちんの味をわっしーの体にたっぷり教え込んであげるね~」パンパンパン
友奈「…」
友奈「と、東郷さん!!」
東郷「ゆ、友奈ちゃん!?」ビクウ
園子「あ~、ゆーゆお帰り~」パンパンパン
友奈「どういうことかな…これは…」フルフル
園子「わっしーがね~、ゆーゆのお粗末なおちんちんじゃ全然満足できないって言ってて~」パンパンパン
東郷「そのっち!!」
友奈「お、お粗末…」
園子「だったら私が満足させてあげる~って~」ドピュビュルルル
東郷「あっ!ああああああん!」ビククン
友奈「そ、そんな…私のおちんちんはお粗末なんかじゃない!」
友奈「そうだよね、東郷さん!」
東郷「はぁはぁ…ごめんね…友奈ちゃん…」
友奈「う、嘘だよね…」
東郷「…」
友奈「ち、違う、私は…」
園子「これを見てもまだそんなこといえるかな~」ズルリ
友奈「なっ…」
友奈「黄金色に輝いている…」
園子「ふっふっふ~」ピカピカ
友奈「うわああぁぁぁん!」ダッ
東郷「友奈ちゃん!」
園子「あれ~ゆーゆ飛び出して行っちゃったね~」
……
友奈「うぅぅ…」トボトボ
友奈「まさか私のおちんちんが短小だったなんて…」
友奈「どおりで東郷さんがいつも「あれ?入っているの?」みたいな反応すると思ったんだよ…」
友奈「だとしたら夏凜ちゃんも…」
友奈「そ、そんなことないよね!」
友奈「夏凜ちゃんはきっと私のテクニックがすごすぎて声が出せなかっただけだよね!」
友奈「よーし、夏凜ちゃんに今から会いにいってもいいか電話してみよう!」
友奈「…」プルルルル
ガチャ
友奈「あ、もしもし、夏凜ちゃん、今から会いに行っても…」
樹『友奈さん、一体どうしたんですか?』
樹『あ~夏凜さんでしたら今…』
夏凜『すごい、すごいわ樹のおちんちん!太くて大きくて!友奈のポークビッツとは比べ物にならないわ!』パンパン
友奈「」
夏凜『んん!もっと!激しく突いて!!』ズチュズチュ
樹『もう、夏凜さん、腰ふり過ぎですよ』パンパン
友奈「」
夏凜『え~樹の方が気持ちいいし…まぁ友奈よりはマシだからしてあげないこともないわ!』
風『まったく、素直じゃないんだから』
樹『というわけで、夏凜さんに何か用があるのなら…』
友奈「うわああぁぁぁん!!」ダッ
樹『友奈さん!?』
……
友奈「オラ!オラ!オラ!」ドカバキドコッ
神樹(どうしたのかな?友奈ちゃん)
友奈「どうしたもこうしたもあるか!」ドカ
友奈「なんで!私のおちんちんが!こんなに!短小なんだよ!!」バキイ
神樹(僕に言われても…)
友奈「お前が生やしたんだろ!なんで私だけこんなに短小なんだよ!!」ドコン
友奈「樹ちゃんより短小とかおかしいだろ!!」ズガン
神樹(そのっちに頼まれてね~わっしーを喜ばせたいから立派なのがほしいって)
友奈「えっ!だったら私のも立派なものに…」
神樹(それは無理かな~)
友奈「な、なんで!?」
神樹(だって、そのっちは素直でおしとやかで可愛いし~)
友奈「」イラッ
神樹(それに比べて、友奈ちゃんはすぐ叫ぶし、乱暴だから~)
友奈「」ブチッ
神樹(ふふ、無駄無駄)
友奈「勇者キック!!」ズドオン
神樹(勇者の力では僕を傷つけることはできないよ)
友奈「…」ドゥルンドゥルン
神樹(分かったらおとなしくテクニックを磨くなり…ん?)
友奈「勇者チェーンソーーー!」ギュイイイイン
神樹(ぎゃああああああああ)ガガガガガ
友奈「女の子を喜ばせられないのだったら…」ガガガガガ
友奈「こんな世界私が終わらせる!!」ガガガガガ
神樹(あああああ、わ、分かったよ、友奈ちゃん)ガガガガガ
友奈「えっ!じゃあ私のも園ちゃん並に…」
神樹(それは無理)
友奈「…」ドゥルンドゥルン
神樹(待った!待った!…実は友奈ちゃんの体にはすごい秘密が隠されてるんだよ)
神樹(ふふ、あわてない、あわてない)
友奈「それでどんな秘密が…」
神樹(そうだな~試しに自分の女の子の部分に指を入れてごらん)
友奈「え?」
神樹(いいから、いいから)
友奈「…」ヌプッ
友奈「ふああぁぁぁん」ビクビクブシャー
神樹(どう?すごいだろう)
友奈「なっ、なっ、今のは一体…」ピクピク
神樹(実は友奈ちゃんの体はおちんちんを喜ばせるために最新の改造が施してあるんだよ!)
神樹(友奈ちゃんの下のお口はどんなおちんちんにもジャストフィット!3秒で昇天させる締まりの良さ!さらに感度バツグン!)
友奈「…」
神樹(友奈ちゃんの手はローションを出すことができ、イボイボを自在に生やすことで、おちんちんの弱いところを的確に刺激することができる!)
友奈「…」ヌルヌルイボイボ
神樹(友奈ちゃんの上のお口は超吸引力!一度吸い付いたら精液が枯れ果てるまで吸い尽くす!)
友奈「…」シュゴゴゴ
神樹(友奈ちゃんのお尻の穴は自由自在に拡張、収縮させることができ、前立腺開発機能を搭載することでマニアックな要望にも対処できるように!)
友奈「…」キュッキュッ
神樹(おちんちんはお粗末なものしか生やせなくなっちゃったんだ)
神樹(さらに友奈ちゃんが1回射精させるたびに満開1回分のエネルギーを回収することができ、勇者のみんなも人類も喜ぶ素晴らしいシステム、これこそ真の勇者システ…)
友奈「勝手に人体改造してんじゃねえええ!!」ギュイイイン
神樹(ぎゃあああああ)ガガガガガ
友奈「私はおちんちん突っ込んで女の子ヒィヒィ言わせたいんだよ!!」ガガガガガ
神樹(あああああああ)ガガガガガ
友奈「突っ込まれる方なんてまっぴらごめんだよ!!」ガガガガガ
神樹(あああ…あ……意識が朦朧と…)ガガガガガ
園子「聞いちゃったよ~ゆーゆ~」
園子「わっしーがね~ゆーゆが心配だっていうから迎えに来たんだよ~」
友奈「へ、へぇ~」
園子「こんなところで何を~…あーーー!!」
友奈「」ビクッ
園子「神樹様に傷が付いてる~」
神樹(そのっち~)
友奈(ヤバイ…)
園子「精霊の力で治してあげるね~」パアアア
神樹(ありがとう、そのっち)ピカピカ
園子「どういたしまして~、さてと~…」
園子「ゆーゆがやったのかな~」ゴゴゴゴコ
園子「これはもうお仕置きかな~ゆーゆの体をたっぷり味わってあげるね~」
友奈(くそっ!どうする!?指を入れただけでもあれだけ感じてしまうのに…あの神おちんちんに貫かれたら…)
友奈(それにいくら勇者適性値が最も高い私でも、精霊が大量にいるこいつには勝てるかどうか…)
友奈(いや、待てよ…神樹お気に入りのこいつを人質にすれば、神樹も素直に言うことを聞くかもしれない…)
友奈(精霊が多いといっても、所詮防御しかできない置物)
友奈(先手必勝で一気に叩き込めば…)
園子「さあ~行くよ~」
友奈「ふふふ…私の邪魔をするなら、たとえ園ちゃんでも倒させてもらうよ!」
園子「おお~やる気だね~」
友奈「うおおおぉぉぉぉ!」
……
園子「うぃな~」
友奈「」ボロボロ
神樹(おめでとう、そのっち)
園子「えへへ~」
友奈「ちょっと待て…」ボロボロ
友奈「園ちゃんの精霊、私たちの精霊と性能が違いすぎるんだけど…」
神樹(…そのっちには散華でずいぶん迷惑をかけたからね…)
神樹(せめてものお詫びとして、日常生活のサポートが出来るよう精霊に色々な力を付け加えていったんだ)
神樹(そのせいで君たちのは余り物のしょっぱい精霊だけになっちゃったんだ…)
神樹(ゴメンね)
友奈「そんな…」
園子「さあ~そろそろいいかな~?」
友奈「ひっ…」ビク
園子「お仕置きの時間だよ~」
………
……
友奈「あひぃぃいいいん///」ビビクン
園子「あ~、ダメだ~、射精が止まらない~、あ~」パンパンビュルビュル
友奈「んんんん!もう…あふう!許して…きゃう///」ビクビクン
園子「え~、まだまだこれからだよ~、あ~」ビュルルルル
友奈「はぁああん!そ、そんな~///」ピクピク
神樹(みなぎる~力がみなぎってくる~)
……
友奈「ひ、酷い目にあった…」ヨロヨロ
友奈「神樹の野郎、神様だからって人の体を好き放題いじりやがって…」
友奈「今度は火炎放射気でも使って燃やし尽くしてやる…」
友奈「園ちゃんは……止めとこう…次おしおきされたら、もう普通の世界に戻ってこれないような気がする…」
友奈「ただいま…」ガラガラ
風「お~友奈お帰り~」
樹「お帰りなさい、友奈さん」
夏凜「やっと帰ってきたわね」
東郷「待っていたわ、友奈ちゃん」
風「さっき神樹様からメールが届いてね~」
樹「友奈さんにおちんちん突っ込むとすごいことになるよって」
友奈「あ、あの野郎…」
夏凜「友奈のおちんちんはお粗末だけど、よく見るとなかなか良さそうな体してるじゃない」
東郷「今度は私のおちんちんで友奈ちゃんを喜ばせてあげるね!」
友奈「あ、あはは……」
第一部終わり
友奈「うおおおぉぉぉ!」バッ
友奈「勇者パーンチ!!」ドオン
園子「効かないよ~」バリアー
友奈「勇者キック!!」ズドオン
園子「まだまだ~」バリアー
友奈「勇者チェーンソーー!!」ギュイイイン
園子「うわっ!びっくりした~」バリアー
園子「でも~そんな攻撃じゃ精霊のバリアを破ることはできないよ~」
友奈「うおおぉぉぉ!満開!!」ピカー
園子「お~大きな腕が生えてる~かっこいい~」
園子「すごい迫力だね~……ゆーゆのおちんちんと違って~」クスクス
友奈「黙れええええぇぇぇ!!!」ズガガガガガガ
園子「痛たたたた~これはちょっとまずいかも~」ガガガガガガ
友奈(よしっ!効いてる!ここで一気にたたみかける!)ガシッ
園子「掴まれた~……抜け出せない~」グイグイ
友奈「くらえええぇぇぇ!」
友奈「勇者顔面パーーンチッッ!!!」ガッ
園子「ぐふっ」バタ
友奈「はぁはぁ…やった…倒した…」
友奈「さぁ神樹、こいつの命が惜しかったら私のおちんちんを…」
友奈「なっ!?今確かに倒したはずじゃ…」
園子「さっきまでゆーゆが戦ってたのは私の分身だよ~」
友奈「ぶ、分身!?」
園子「そういう力の精霊がいてね~そろそろ反撃させてもらうよ~」
友奈「くっ!」
園子「念力~」フィンフィン
友奈「なっ!?か、体が動かない!?」ビシ
友奈「痛だだだだだ!」ザクザクザク
園子「ハンマ~」ブオン
友奈「ぐへっ」グシャ
園子「火炎放射器~」ゴオオオオ
友奈「熱ぢぢぢぢぢ!」メラメラ
園子「マシンガン~」ズダダダダ
友奈「あああああ……」ヨロヨロ
園子「小型ミサイル~」ドシュ
友奈「……」ドオオオン
園子「よ~し~最後は~必殺~」フィヨフィヨフィヨ
園子「元気っぽい玉~」ズゴゴゴゴゴ
友奈「」ズドオオオオオン
友奈「」ボロボロ
園子「うぃな~」
おまけ1 終わり
―――園子散華後―――
神樹(ごめんね…園子ちゃん…僕が生贄なんか求めるせいで、こんな迷惑をかけてしまって……)
園子「…神様だからね~…そういう面があるのは仕方ないよ~…」
神樹(園子ちゃん……)
園子「…あ~…でも体が全く動かせないのはちょっと辛いかな~…」
神樹(…………)
神樹(そうだ、念力を使える精霊がいるから園子ちゃんにあげるよ)
神樹(体が動かせなくても困らないように)
園子「ありがとう~神樹様~」
園子「……」モグモグ
~念力で読書中~
園子「……」ペラペラ
園子「神樹様~」
神樹(どうしたのかな、園子ちゃん)
園子「念力で日常動作するのって何か違和感あるよ~」
神樹(う~~ん、いい考えだと思ったんだけどな~)
神樹(そうだ、念力で自分の体を動かせるように改造しておくよ)
神樹(慣れたら今までのように体を動かせるようになるよ)
園子「ありがとう~神樹様~」
園子「……」ペラペラ
園子「ふぅ~」パタン
園子「神樹様~」
神樹(どうしたのかな、園子ちゃん)
園子「大赦に同じような本しか置いてなくて飽きた~」
神樹(それは僕にはどうすることも……)
園子「せめて~テレビでもあったらな~」
神樹(…………)
大赦の人「い、今何と?」
神樹(勇者園子に最新4Kテレビを買い与えなさい……)
大赦の人「それはいったいどういう……」
神樹(でなければ人類は滅亡します……)
大赦の人「か、かしこまりました!」
園子「わ~い、何かね~おっきいテレビ買ってもらえた~」
神樹(よかったね、園子ちゃん)
園子「アハハハ」ダラダラ
園子「ハハハ……」ダラダラ
園子「ふぅ~」ピッ
園子「神樹様~」
神樹(どうしたの、そのっち)
園子「テレビも飽きてきちゃった~」
神樹(あらら)
園子「外にお出かけしたいんだけど~すぐ疲れちゃうし~」
神樹(念力はあまり燃費がいい力じゃないからね…)
神樹(そうだ、瞬間移動の精霊をあげるよ)
神樹(これでどこへでもひとっ飛びさ)
園子「ありがとう~神樹様~」
神樹(ど、どうしたんだい、そのっち)
園子「四国中飛び回っていたのがばれて、こっぴどく叱られちゃった~」グスグス
神樹(あらら)
園子「しばらく外出は禁止だって~」グスグス
神樹(う~ん、それはどうしようも…)
神樹(そうだ、分身を作る精霊をあげるよ)
神樹(これで大赦の人にばれずに外出できるよ)
園子「わ~い、ありがとう~神樹様~」
大赦の人B「おはようございます」
大赦の人C「おはようございます」
園子「おはよう~……」
園子「……」
園子「神樹様~」
神樹(どうしたの、そのっち)
園子「大赦の人たちって~同じ格好で~同じ仮面付けてて~ちょっと不気味だよね~」
神樹(一応、つけないといけない決まりだからね)
園子「誰が誰なのかもよく分からないし~」
園子「せめて~何考えているのかが分かればな~」
神樹(そうだ、相手の心が読める精霊をあげるよ)
神樹(これでコミュニケーション図ってごらん)
園子「は~い」
園子「…さて~精霊の力をオンにして~と…」
園子「…来た!」
大赦の人A「園子様おはようございます(そのっち今日も激萌ゆっすな~)」
園子「……ん?」
大赦の人B「おはようございます(そのっちの脇ペロペロ~)」
園子「……んん?」
大赦の人C「おはようございます(園子様の華奢な足で好きなだけなぶられたい)」ハァハァ
園子「……」
園子「知らない方がいいこともあるんだね……」
神樹(…?)
園子「相手に悪夢を見せる精霊とかいないかな…」
神樹(今度作っておくね)
神樹(ど、どうしんだい、そのっち)
園子「精霊が力を付け過ぎて危険だからって端末を取り上げられちゃった~」グスグス
神樹(あらら)
園子「このままじゃゲームもできないし~外にも遊びに行けないよ~」グスグス
神樹(そうだ、端末がなくても精霊が呼び出せるようにしておくよ)
園子「え~そんなことが出来るの~」
神樹(所詮飾りだからね)
園子「ありがとう~神樹様~」
園子「……」ピコピコ
園子「……」ムシャムシャ
園子「ふぅ~」ポイッ
園子「神樹様~」
神樹(どうしたの、そのっち)
園子「ゲームも漫画も飽きてきちゃった~」
神樹(あらら)
園子「せめて~パソコンとかあったら~毎日飽きずに過ごせると思うんだ~」
神樹(…………)
神樹(勇者園子に最新モデルのパソコンを買い与えなさい……)
大赦の人「お、お言葉ですが、園子様が毎日ゲームや漫画や洋服を買いあさられるせいで、今年度の予算がかなり苦しいもので……」アセアセ
神樹(…………)
ワー シンジュサマノカベガカレダシタゾー
ワー ソトカラバーテックスガオソッテキター
大赦の人「かかか、かしこまりましたー!すぐに買い与えます!」
神樹(それでいいのです……)
園子「わ~い、すごく高性能なパソコン買ってもらえた~」
神樹(よかったね、そのっち)
神樹(どうしたの、そのっち)
園子「獅子座のバーテックスの攻撃って迫力あるよね~」
園子「エネルギーためて~バーンってやつ~」
神樹(今のそのっちだったら撃てるんじゃないかな)
園子「え~本当~?」
神樹(こう、精霊から力を出して、一点に集める感じで……)
園子「できた~」ズゴゴゴゴゴ
神樹(やったね、そのっち)
園子「うわ~近くで見るとすごい迫力だね~……で~これどうしたらいいかな~?」ズゴゴゴゴゴ
神樹(どこかに撃つしかないんじゃないかな)
園子「分かった~」ズゴゴゴゴゴ
神樹(人のいない方にね)
園子「じゃあ~海の方に~えいっ」ドドドドド
神樹(お~)
園子「うわ~すご~い~波しぶきあげて進んでる~……あ」
神樹(あ……)
ドオオオオオオン
ガラガラガラ
園子「あ、あわわ~、神樹様の壁が~……」オロオロ
神樹(お、おっきい穴が開いたね……)
バーテックス’s「……」ゴゴゴゴゴ
園子「うわわわ~バーテックスが12体全部攻めてきた~」アセアセ
園子「つ、疲れた~」ボロボロ
神樹(だ、大丈夫?そのっち)
園子「なんとか~」ハァハァ
園子「でも~しばらく~休みたいかな~」ヨロヨロ
神樹(そうだね、その間に精霊も修理しておくね)
園子「は~い……」フラフラ
園子「……なんて事もあったなぁ~」
園子「で、その休んでる間にわっしー達と会ったんだよ~」
風「(私たちの苦労は一体…)友奈、手が止まってるわよ!」シュッシュッ
樹「(大赦の人たちも大変なんですね…)友奈さん、もっとイボイボを…あ~気持ちいいです」ヌルヌル
東郷「(っていうか、そのっち一人で外のバーテックス全部倒せるんじゃないかしら)友奈ちゃん、凄い吸い付きよ!」ジュボボボボ
夏凜「さぁ友奈、もっと強く締めなさい!そう、そうよ!!」ズッポズッポ
友奈「アヘヘヘェェェ//モットモット~~//」
おまけ2 終わり
神樹(待っていたよ、そのっち)ギラギラ
園子「わ~神樹様、いつもより輝いてる~」
神樹(勇者のみんなが頑張ってくれているおかげだよ)ギラギラ
園子「他のみんなは~?」
神樹(……今も頑張っているんじゃないかな)ギラギラ
園子「あ~……」
神樹(今日はそのっちにいいものを見せようと思ってね)ギラギラ
園子「いいもの~?」
神樹(ハアアアアアアア)バリバリバリ
園子「ほえ~」
バシュウウウ~
園子「……え?」
銀「……うーん、あれ、ここは?バーテックスと戦っていたはずじゃ…」
園子「……ミノ……さん?」ウルウル
銀「おー園子、何か背伸びたな!あれ?アタシも伸びてる?…ってなんでアタシ裸なんだ!?」
園子「うわ~ん、ミノさんだ、ミノさんが帰ってきたんだ~」ポロポロ
銀「ちょっ、泣くなよ、園子」オロオロ
神樹(よかったね、そのっち)
銀「うおっ!神樹様がしゃべった!?」ビク
銀「…アタシ死んでたの?…」
園子「ひっぐ…そうなんだよ~…ミノさんが守ってくれなかったら…私たち…」ポロポロ
銀「あーもう、泣くなってば!ほら、今ピンピンしてるだろ?」
園子「うん…ありがとう…ミノさん」グスッ
神樹(ごめんね、銀ちゃん、あの時は僕の力が足りなかったばっかりに…)
銀「いいって、いいって!生き返らせてくれてありがとな、神樹様!」
園子「ありがとう…神樹様~…」
銀「へぇー、じゃあ今は園子と須美以外にも4人も勇者がいるんだ」
園子「そうなんだ~精霊っていう新しい力もあって、私たちのときよりすごく強くなってるんだよ~」
銀「そっか」
園子「ねぇねぇ~今からわっしー達に会いに行こうよ~」
銀「そうだな、成長した須美の姿見てみたいしな」
園子「瞬間移動できるからすぐに会いに行けるよ~」
銀「そんなこともできるのか、すごいじゃないか園子」
園子「えへへ~」
銀「…その前に何か服着たいな、裸のまま会いに行くわけにいかないしな」
園子「大丈夫だと思うけど~じゃあ一回私の家に寄ってから行こうね~」
銀「?ああ、それともう一つ気になってたんだけど…」
園子「なに~?」
銀「何で園子の、その、股のところ光ってんの?何か不自然に盛り上がってるし…」
園子「う~ん、今の勇者の証ってところかな~」ピカピカ
銀「そっか」
園子「じゃあ行くよ~、私の手を握って~」
銀「ああ」ギュッ
園子「バイバイ~神樹様~」シュン
銀「またな、神樹様」シュン
神樹(ばいばい、そのっち、銀ちゃん)
~友奈の家~
園子「到着~」バシュ
銀「本当便利だな、その……」
樹「すごいです、友奈さん!突くたびに出ちゃいます~」パンパンピュッピュッ
風「あ~私の女子力が吸い取られていく~」ジュボボボ
夏凜「もっとよ、友奈!ローションもイボイボも増やしてもっと激しく!……ダメッ!ここで両手を使うなんてそんな……」ジュッジュッ
東郷「くっ!前立腺が先端に当たる感触がなんとも……」ズッポズッポ
友奈「おひんひんひもひいいいいいいいぃぃぃぃ///」アヘェ
銀「なっ、なっ// なあああああ//」カアアア
園子「わっしー見て見て~、ミノさんだよ~、ミノさんが帰ってきたんだよ~」
東郷「あら銀、しばらく見ないうちに随分背が伸びたのね」ズッポズッポ
銀「お、おう…須美も胸がすごいことになってるな…」
東郷「相変わらずのセクハラ好きね」ズッポズッポ
銀「い、いや……」
東郷「とりあえず今は忙しいから後にしてもらえるかしら」ズッポズッポ
銀「あぁ……」
風「友奈!!」ビュルビュル
樹「友奈さん!!」ビュルビュル
夏凜「友奈ー!!」ビュルビュル
東郷「友奈ちゃん!!!!」ビュルルルルルゥゥゥ
友奈「ほひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ///」ビクビクビクーン
銀「……帰ろう園子……」
園子「え~わっしーともっとお話ししていこうよ~」
銀「……いいから……」
園子「は~い、じゃあまたねわっしー」シュン
銀「…………」シュン
東郷「さぁまだまだ行くわよ、友奈ちゃん!」ズブリ
友奈「あっふああぁぁぁぁぁ///」ブシャー
~翌日 勇者部部室~
銀「…三ノ輪銀です…園子や須美と一緒に勇者やってました……」
風「い、いえ~い」パフパフ
樹「わ、わーーー」パチパチ
夏凜「あなたが私の端末の前任者ってわけね」
友奈「銀ちゃんボーイッシュでかっこいいね、おちんちんもボーイッシュな感じなのかな」
東郷「……銀……あなた死んだはずじゃ……」ポロポロ
銀「神樹様が生き返らせてくれたんだ…」
東郷「ぎいいいぃぃぃんんん!!」ガバッ
銀「うわっ…」サッ
東郷「……銀……なぜ避けるの?……」ポロポロ
銀「い、いや~……」メソラシ
夏凜「そりゃあんだけよがり狂ってる姿見せられりゃ誰だって避けるわよ」
風「アンタだって東郷と一緒に最後まで腰ふってたじゃない」
夏凜「なっ!それなら風だって!」
樹「ケンカしないでー」
園子「うん、おちんちんだよ~神樹様の特別仕様なんだ~」
銀「…………」
銀「……それで勇者部って何なの?……」
風「私たちは勇者部は、みんなのためになることを勇んで実行するクラブよ!」
銀「……みんなのためになること……」
風「老人ホームや幼稚園でボランティアをやったり」
銀「老人や幼稚園児とするの!?」ビクッ
樹「ね、猫の里親を探したりですね~」
銀「ど、動物と!?」ビククッ
園子「も~誤解だってば~」
東郷「銀……銀……」ポロポロ
友奈「銀ちゃん、今からここにおちんちん突っ込んでみない?とっても気持ちいいよ!」キリッ
銀「…………」
銀「…………入部はちょっと考えさせて……」
風「わ、私たちはいつでも大歓迎よ!」
~帰り道~
園子「ねぇ~ミノさんも勇者部入ろうよ~楽しいよ~」
銀「いやぁ~アタシにはまだ早いっていうか……」
園子「だから普段は普通の部活動だってば~」
銀「本当?」
園子「本当だよ~」
銀「……そうだな、また園子や須美と一緒にいられるもんな」
銀「入るよ、勇者部」
園子「わ~い、ミノさん大好き~」ガバッ
銀「こらっ、園子、いきなり抱きつくなよ……へへ」ギュッ
園子「今夜は寝かさないよ~」ピカピカ
銀「エ、エッチなことは禁止だからな!//」
園子「え~」ビカー
銀「そんな強く光らせたってダメだからな!//」
園子「ぶ~……ねぇミノさん~?」
銀「ん?」
園子「これからはずっと一緒だよ~」
銀「……あぁずっと一緒だ」
おしまい
みんな幸せ、ハッピーエンド、やったね!
HTML化依頼出してきます。
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425823215/
Entry ⇒ 2016.01.13 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
【結城友奈は勇者であるSS】友奈「山桜色の夢」
・地の文だらけ 九話が終わっての、十話からを妄想
・単行本発売まだなので、鷲尾須美は無料公開の1~4話しか読めてないです
・アニメの公式サイトの用語辞典は割とスルー
・十話の予告(Web公開映像含めて)も割とスルー
夜半、結城友奈の部屋。
明かりは消され、カーテンは閉ざされ、暗闇がそこにはある。
今日の風先輩、怖かったな……。
布団の上、横になって、天井を見上げ、友奈は考えていた。
両目は開けていた。目を閉じれば、先輩のあの辛い泣き顔が、まぶたの裏に浮かんできそうだったから。
はやく眠りたいのに、眠れない。何も考えないようにすればするほど、形のない、圧迫感で胸がつまりそうになる。
だから考えていた。
友奈はふと、先輩の重い一撃を牛鬼が受け止めたときの、奇妙に手首が痺れた感触を思い出した。
彼女は無意識に、布団の中で、己の手首をさすった。
私、先輩のあんな顔、知らないよ。
先輩のこと、よく知ってるつもりだった。でも、知ってるつもりになってただけだったんだ。
もぞもぞと身体を動かして、友奈は真横を向いた。ひとりぼっちなのが辛かった。
何かやるべきことがあるときは良い。身体が動く。心もついていく。昔からそういう性分だった。
考えるより、感じるより、先に動く。
友奈は、あれこれ頭で考えるより早く、何を自分がするべきか瞬間的に理解し動くことができる人間だった。
だけど今、するべきことなんてものはない。あるのは、眠りが訪れるのを受け身に、黙って静かに待ち続ける時間だけ。
心細かった。隣の家に住む、大親友である、東郷美森に今すぐ逢いに行きたいと思った。
いやいや、こんな時間に、それはない。唐突に頭に浮かんできた思考を、慌てて自ら否定する。
いくら東郷さんだって、今来られたら迷惑なはず。……どうだろう? 東郷さんなら、喜んで迎えてくれるかもしれない。
東郷さんには、よくわからないところがある。
――私、先輩だけじゃなくて、東郷さんのことだって、よく知ってるつもりだったのに、な。
咄嗟に胸の辺りのパジャマを掴んだ。
心の中で、ヒヤッとした何かが、撫でるように駆け巡り、消えた。
東郷さんのわからないところ。先輩の場合と違って、どこがわからないのか、わかりやすかった。
喪った記憶。事故のこと。そして、何を考えているのか、時々。
東郷さんは、十回以上自害を試みたと言ってた。
切腹、首つり、飛び降り、一酸化炭素中毒、服毒、焼身……。
なんであんなに、平然と、自害を試みた、なんて言えるんだろう。
精霊が止めてくれなかったら東郷さん、痛かったんじゃないの? 辛かったんじゃないの?
……死んじゃったんじゃ、ないの?
もちろん友奈にも、その自害が、乃木園子さん、彼女が言っていたことを確かめようとしてのことだとはわかっていた。
東郷さんは、本気で死ぬつもりなんてなかった。わかってる。
しかし、自分の大親友が、自分の知らないところで、誰にも言わずひとり死のうとした。
精霊たちが守らなきゃ、死んでいたかもしれない。
それを思うと湧き上がる恐ろしさは、理屈ではなかった。
改めてしみじみと、友奈は思う。
東郷さんのことですら全部知っているわけじゃないのだから、
知らなかった先輩の一面を初めて知ってびっくり、なんて当たり前のことなんだ。
二人だけじゃない。樹ちゃんも、夏凜ちゃんも、私の知らないところで、きっと悩んで苦しんでる。
私たち、みんな怖い。辛い。
布団の中は、友奈の体温でちょうどよく温かいのに、いまだに居心地が悪い。
ちぢこまるように背中を丸めた。
……もう嫌だよ、こんな気持ちになるのは。
友奈はあれこれ考えた。
これまで、最善の結果を得るには、どうするべきだったか。
私ができること、可能性でもいいから何か他になかったの?
そして、思った。
――樹ちゃんなら、助けられたんじゃないか? と。
友奈はあのとき満開した四人の中で、一番最後に満開した。
勝つためには、そうするのが一番正しい選択だと、直感的に察した。
それは、勇者システムの補助に基づく、正しい認識だった。
でも、もしも、もうちょっとはやくから私が無理をしていれば、樹ちゃんは、声を失わなくてすんだんじゃないか?
そうすれば、風先輩は、泣いて、叫んで、暴れたりせずにすんだんじゃないか?
あのとき、宇宙から戻ってくるときの衝撃さえ、どうにかできるなら、東郷さんと二人……。
多分、無理だ。
無意味な想定だった。
過去は今更変えられないし、何よりその「もしも」は、あまり現実的な可能性、内容があるものではない。
にもかかわらず、何かできたんじゃないか、という思いは、
こうして布団の中で考えていると、友奈の中で次第に膨らんでいくようだった。
頭から、過去を振り払おうとする。
また、バーテックスが来たら、どうしよう。
前までは、考えてもしょうがない、と思っていた。来たときに、動く。それでいいと思っていた。
だけど、満開が「神様に見初められて供物になる」ということなら、そうのんきな態度でばかりいられない。
悪いこととは、戦わなくちゃいけない。
過去がどうこうじゃない。次、あるかもしれない次をどうするかせめて考えるべきだよ。
もしも、また戦いがあったとして、満開を極力避けて戦って、使わざるをえなくなったとき……。
友奈は考える。
そしてすぐ、誰が満開しても、みんな悲しむという結論に至った。
どうにかならないの?
前提が最悪を見据えた前提である以上、何もかもを覆す方法なんてあるわけがなかった。
身体を動かして、もう一度仰向けになった。考える。
誰が満開をしたって、どうせ悲しむことになるのは変わりはない。
誰か、私や、他の誰かが必ず傷つく、辛い思いをする、そんなとき。
だったら、そうなってしまうなら、せめて私が――
それから友奈は、眠りが訪れるまでずっと、そのことばかりを考え続けた。
翌日の放課後、友奈は三好夏凜に呼び出され、屋上で二人きりになった。
夏凜は、友奈ではなく、屋上から遠く彼方に見える海を見ていた。
「夏凜ちゃん、話って何?」
友奈が訊いた。
夏凜は、一瞬何かに躊躇するようなそぶりを見せつつ、友奈の方を向かないままに言った。
「次の戦いがもし、あったときは、前に出るのをやめなさい。代わりに私たち四人がやるから」
夏凜が口を閉じる。彼女の表情は、友奈の目から見て明らかに険しかった。
眉間のしわ、鋭い目つき、真一文字に結ばれた唇。
友奈は無意識に、左手で自分の右手の甲を覆っていた。
どうして、そんなことを言うの? ……なんて、返せるはずもない。
彼女が黙っていると、やがて夏凜が先を続けた。
「満開って、ある程度任意のタイミングで発動できるのよね、東郷から聞いたわ」
そして、夏凜が友奈を見る。
二人見つめあっているその間、まるで時が止まってしまったかのようだった。
夏凜が、友奈から視線を外した。
「でも、どんどん前に出て、いつまでも溜め込んでおけるかはわからない。
雑魚に満開を使って、それで……なんて、バカでしょ。だから次、友奈は前に出ないで。わかった?」
有無を言わさない凄みが、夏凜の話ぶりにはあった。
ずっと、夏凜ちゃんも、考えてたんだ。
しばらくして友奈は、
「わかった」
とだけ言った。
一度に三体、バーテックスが来た。
明るい色を手あたり次第に集め、後先考えず一色一色これでもかとぶちまけたような、
神樹様の御力で樹海化した、この世界。
カラフルな舞台をバックにして、夏凜が大立ち回りを演じている。友奈はそれを見ていた。
樹ちゃんと風先輩が、近くで夏凜ちゃんの立ち回りをサポートをして、遠くから東郷さんが援護する。
友奈は蚊帳の外だった。東郷の隣で、戦局の移ろいを、つまりは夏凜のことを眺めていた。
双剣が軽やかに踊る。満開を行った影響で、勇者四人のレベルは上がっていた。
だから、積極的に攻撃しているのが夏凜だけとはいえ、戦況は格段にこちらの有利だった。
着実に、一体、二体、と斬り伏せ無力化していく。適度に弱らせたあと、封印の儀が執り行われる。
「あと二匹ィっ!」
友奈の勇者として強化された聴覚が、遠方で夏凜が叫んだ言葉を聞き取った。
知覚が、人間では到底あり得ないほど鋭く研ぎ澄まされていた。
勇者に変身した状態での視力は、夏凜の服装や動きの事細かなところまで、ここから動かず見て取ることができる。
「これで残り一匹ィィィっ!!!」
二体目を倒す、渾身の一撃を繰り出そうと、夏凜が気合を声にして発した。
そのとき、友奈は見た。
夏凜の左肩、満開ゲージが満タンとなり、そちらに夏凜が一瞬目をやったのを。
剣を振り下ろしながら、彼女の顔には、紛れもない恐れが浮かんでいた。
だが、そのまま太刀筋は乱すことなく、御霊を一刀両断した。しかし、敵はまだあともう一体いる。
樹と風先輩が封印の儀を執り行い、この戦い最後の御霊が露出した。
夏凜が、その前に立ち、先輩と何か話し合っている。
友奈は、夏凜の満開ゲージが満タンになっているという事実から、目が離せなかった。
気が付けば、足が勝手に動き出している。
「友奈ちゃん!?」
東郷の困惑した声が追いかけてきた。
彼女が反応を寄越す数秒前、友奈は軽い勢いをつけ跳躍していた。
あと一体、その懐を目指して。
跳びながら、声は出さず、歯を食いしばっていた。
まだ見たことない、夏凛ちゃんの満開姿。もしそうなったら、夏凛ちゃんは何かを失うってことだ。
友奈の内心で闇雲な焦燥感が募る。怖くて、怖くてたまらなかった。
何もできず、それをただ指を咥えて見ているだなんて、絶対我慢できなかった。
「東郷さぁん!」
友奈が叫んだ数瞬あと、蒼い閃光が友奈を追い越して、御霊を大きく削りとった。
東郷の攻撃力は平時でかなり高い。ちゃんとゲージが溜まったりしない程度の援護に抑えてある。
互いに意思が通じ合っているのがわかって、こんなときにもかかわらず、友奈は嬉しかった。
東郷の射撃に、御霊の下にいた三人は反応し、友奈が向かって来ていることを把握した。
風先輩が跳び、大剣を振り上げる。夏凜は出遅れ、その場で立ち尽くした。
「先輩ッ!」
やめて、という意味を込めて、友奈は叫んでいた。
冷静に考えれば、自分ではなく、まだ満開ゲージが満タンになっていない先輩にやらせるのが正しい、
ということはわかるはずだった。
しかし、戦いの空気が、恐怖が、彼女の判断を惑わせていた。
夏凛ちゃんも、先輩も、乗り気じゃなかった。
だったら、そういうことなら、私が――
友奈が到達するよりも速く、東郷が刻んだ御霊の損傷に、風先輩が一撃を叩きこんだ。
破片が飛散する。
その一部始終は、友奈がいる斜め上の空からよく見えた。
まだ、終わっていない。
確かに傷は広がったが、御霊はすんでのところでまだ形を保っていた。
友奈よりも速く攻撃を加えることに気を取られて、十分な威力を発揮するのに必要な溜めがおろそかになっていたのだ。
「そんな……」
振り下ろした勢いのまま着地して、先輩が御霊を見上げる。
それからすこしだけあと、夏凜はまだ終わっていないことに気付き、跳びあがろうとする。
下からでは、把握が遅れるのもやむなしだった。
既に近くまで来ていた、友奈の方が速い。
中空で、力を入れ過ぎないように、彼女は拳を構える。
全身から湧き上がってくる高揚感、全能感、力を開放したいという激しい衝動。
それらを必死に押さえつけながら、必要最小限の力だけでとどめを刺しに行く。
「うりゃああああああ!」
ガツン! と何やら硬い、何度殴っても慣れない謎の物質に、自らの握り拳がめりこみ、突き抜けた。
今度こそ、終わった。御霊が砂に変わる。友奈は着地した。身体が使われなかった異常な熱に、火照っていた。
「ふぅー」
息を吐き、脱力するにつれて、全身にみなぎっていた力が、内へ内へと戻っていく。
友奈は内心思った。
力の制御をちょっと間違えていたら、満開、しちゃってたかもしれない。
危なかった。
でも、それでもあのまま黙って立ってる自分を考えるよりは、マシなんじゃないか。
――そんな勇ましい気持ちは、もうどこかに行ってしまっていた。
ただただ、怖かった。
それから、樹海化がとけ、学校の屋上に戻った。五人横並びだった。
「友奈……!」
日常の世界に帰還してすぐさま、はっと思い出したように、夏凜が肩を震わせ友奈の前に立ち、その両肩を掴んだ。
「ねえ、どうして、前に出てきたの……?」
「だ、だって夏凛ちゃんが」
反射的に友奈は、夏凛の左肩を見た。夏凜にも、友奈が何を考えているのか、すこしわかった。
「この、バカぁッ!」
パチン。存分に手加減された、微妙なビンタが、友奈の頬を打った。痛くない。
夏凜が、涙目で、友奈を見ていた。
「あんたたちだけ、そんな風になって、それで友奈が、また――」
つまらないビンタ一つで夏凜の心に溜まっていたものは、消えてしまったのかもしれない。
ぼそぼそとそこまで言い終えると、途端に黙ってしまった。
ビンタを見て、慌てて止めに入ろうとしていた残り三人は、その様子を見て、止まった。
一方、友奈は黙っていた。自分が、夏凜との約束を破ったことはわかっていた。
彼女の言葉に従わなかった結果、満開しかけたことも、わかっていた。
先輩にまかせるのがあそこで一番正しい選択だった、と思い始めていた。
だから、いま自分が言うべき言葉が見当たらない。
それよりもさっき、夏凜が、つまりは自分以外の誰かが満開するかもしれない、と考えたときの、
底知れぬ恐怖をうまく自分のなかで咀嚼しきる方が先だった。
それは、夏凜が友奈にぶつけたビンタに込められた思いと、ほとんど一緒のものであるように思えた。
気まずい空気。
やがて、夏凜が喉に詰まった何かをごくりと飲み下すようにして、それから、声を張り上げ言った。
「これ以上あたしだけっ! あんたたちみたいに戦えてない足手まといだ、なんて思い、させないでよっ!
あたしにだって、あんたたちのために、戦わせなさいよっ!」
友奈が何か反応や言葉を返す前に、一目散に走り去っていく。
友奈は、立ち尽くしていた。
「……友奈ちゃん」
東郷が、呆然とした表情の親友を心配そうに呼んだ。
それをきっかけに、はっ、と友奈は我に返った。
そして、夏凜に軽くビンタされた頬に、片手でそっと触れてから、走り去った彼女を追いかけた。
なんやかんや、友奈が夏凜と無事に仲直りしてから、翌日の放課後のことだ。
朝、通学の途中、友奈は東郷に「放課後、ちょっと付き合ってほしいの」と言われた。
どうしたの? 何か用事? と訊ねる友奈に、東郷はこう答えた。
「できることなら、乃木園子さんが、勇者部に入れるようにしたい」
えっと、どういうこと?
話を詳しく聞くと、こういうことのようだった。
讃州中学勇者部の参加資格は、なにがなんでも讃州中学だけに留めなくてはならない、なんてことはないはずである。
もちろん学内の部活としては、今後もこの五人で活動していくべきなのは変わらない。
しかし、だからといって、私たちと同じ勇者として、この世界を文字通り身を挺して守った乃木園子さん、
彼女を私たち勇者部の一員として扱うことに、何か問題があるのだろうか?
ベッドの上で、神様だと崇められて、毎日を過ごす。
全然動けず、学校にも行けず、周囲にいるのは、自分と決して対等ではない大赦の大人たちだけ。
――わかってたら、友達と、もっともっと、たくさん遊んで、だから、伝えておきたくて……。
彼女が失った余りに多くの物を、仮に私たちが元に戻そうとしてみたところで、そんなことは何一つうまくいきはしないだろう。
でも、乃木園子さんがこれからたくさん遊ぶ、その友達に、新しくなっていくことくらいは、できるんじゃないか?
友奈は、東郷の話を一通り聞いて、思った。
みんなのために、そういうことが勇者部の活動目的だ。
なのに、どうして私は、乃木さんのことをどうにかしよう、と考えようとしなかったんだろう、と。
……私にとって、それが、あたかも遠い出来事であるかのように、思おうとしていたのかもしれない。
友奈は、東郷に一も二もなく賛同した。
うん、私たちがやれることを、まずはやってみよう、東郷さん。
だけど――
友奈は改めて訊ねた。
じゃあ、具体的に何をどうするの?
東郷は答える。
彼女がネットというか、ずばりSNSと接続できる、そんな環境を与えてもらって、
勇者部とチャットできるよう大赦に手配してもらう、と。
その実現のために彼女はここ数日、色々と園子に関係した話を大赦とするべく、その方法を探っていた。
風先輩に大赦の本部の場所を訊いたり、夏凜にそういう要望を上に送れる伝手がないか、と聞いてみたり。
そして今日は、乃木家、園子の生家、彼女のお母さんを直接訪ねてみようとしていた。
大赦手配のバリアフリー対応の車両でそこに向かう、なんてことを試みようものなら、
辿りつく前にきっと何かしらの妨害をされて失敗する。そんな気がした。
だからそれを避けようと、友奈に車椅子を押してもらうことにしたのだ。
友奈以外を連れて行かないのには、いくつか理由がある。
もし万が一、園子とまた面と向かって逢えることになった場合、
園子が自分の姿を、もう既に知ってしまっている友奈と東郷以外に見せたがるかわからない。
それに他のみんながいては、破れかぶれの大赦が、園子を隠蔽しようとする態度を強める、かもしれない。
風先輩は、持ち直したとはいえあのショッキングな姿を見てしまえば、危ういかもしれない。
夏凜は、大赦からわざわざ遣わされてきた。
つまり勇者部の中で、大赦と一番つながりが深い少女だ。
だから大赦の異様なところを今、まざまざと見せつけられるのは、良くないかもしれない。
樹は、性格が柔らかくて、優しすぎる。
そういった理由があってのことだった。
とはいえ直接連れては行かないにせよ東郷は、昨日までのあいだに、
園子が勇者部に入ることを風先輩、樹、夏凜に承諾してもらっていた。
そして今日、友奈も承諾した。
学校での時間が刻々と過ぎて、放課後になる。
「じゃあ行こっか、東郷さん」
「ええ」
友奈と東郷は、二人で乃木家のお屋敷に向かった。
約二週間後、一度に四体、バーテックスがやって来た。
しかし、四体と単純に言い切ってしまうには、いささか問題があった。
その一体は、あの忘れもしない、合体後のバーテックスだったからだ。
つまり、七体がやって来た、と言った方が適切なのかもしれない。
前回、一匹だけ。前々回、三匹。前々前回、満開後初戦、一匹だけ。
一週目と出現の順番に違いはあったが、結局同じことを繰り返しているのだった。
それも、今回は合体を防ぎようがなかったという点で、より悪い形に。
「まるで地獄じゃない……」
弱々しい声で、風先輩が言った。
みんなそれに、何も言わなかった。
ただ、心の中で同じことを思っていた。
あの合体後のバーテックスを、誰も満開せずに倒すのは無理だ、と。
次、誰が満開するかは既に決めていた。
――友奈と夏凜。
東郷は、精霊と、園子の発言の組み合わせから読み取れる過去の満開回数からして、
次まっさきに満開させてしまうのは明らかに分担として不公平だ。
樹と風先輩は、これ以上満開したら、
日常生活を送るのに著しい障害が生じてしまう可能性が結構ある、と判断した。
樹は既に支障が、暮らせぬと言うほどではないが生じている。
風先輩は、もう片方の目が見えなくなってしまうと、その支障の度合いが格段に跳ね上がる。
もちろん、東郷の両足が動かなくなっているのを見るに、
次に友奈か夏凜が一度に両目を失う、なんて可能性もないわけではなかったが、
これから言葉通り運を天に任せる中で、一番マシだろうということだった。
味覚がなくたって、生きてはいけている。
まだ、五体満足で、生きている。
誰が満開しても悲しむことになる。
だから、みんなで話し合って、次は、ということを断腸の思いで決めたのだった。
そういう心の準備と言おうか、前準備を踏まえて、なおかつ今回の戦闘に限定した注意を向けるならば、
この有り様はまだ地獄とは呼べない状況なのかもしれない。
レベルの上がった友奈、そして夏凜、二人の満開で対処が可能そうな範囲にとどまる、バーテックスの襲撃。
これがもっとひどい状況なら、計画はすべて白紙にして、躊躇なく最大戦力を投入しなくてはいけない。
今回は、計画通り、進められた。
もっとも当然、このいまの状況の最悪さは、そんな今回の戦闘に限ってのところにはないのだった。
満開前の戦いと、状況が全く一緒。それが、一週目、二周目と巡って見えるところにある。
これだけ条件がそろえば、誰だって、じゃあ、三周目は? という思考になるだろう。
絶望的だった。
だがとにもかくにも、考えるのは後にして、
まず今回の対処の細部を話し合い、先に手軽な三体を処理した。
残り一体。
既視感を覚える、巨大な元気っぽい球、熱の塊が、今回最後のバーテックスの上でチャージされている。
満開なしには、封印の儀まですら持ち込めそうにはなかった。
このまま全滅してしまっては元も子もない。
友奈と夏凜に、長々と躊躇している暇はなかった。
「よォぉォォオオオおオシっ!」
友奈の、気合を入れる一声が上ずっていた。
怖い。何を失うのだろう。次があるなら、今戦って、何になるというのだろう。そういう思いが一瞬よぎる。
しかし――
「満、開っ!」
友奈が満開した。
前回は、装着された巨大で武骨な両腕が、友奈の満開の特徴だったが、今回は少し違った。
まず、前よりさらに一回り大きくなった隆々たる両腕と同じ太さの、巨大で機械のような両足が装着されていた。
そして今回、彼女を仰々しく囲むようになった外殻が、どこか剥き出しにされたコクピットじみた様相を呈している。
なんと、背中にはロケット機構までついている。
友奈の素の戦闘力だけではなく、満開もレベルアップしているのだ。
もしかするとこの満開の姿、最終的には全身をすっぽり覆うフルアーマーというか、
あるいはもっと単純に考えるなら、巨大勇者ロボットを目指しているのかもしれない。
何もせずにいたら、身体の奥深くから、このまま無限に湧き上がってきそう――
と錯覚しそうなほどに、莫大な己の力の奔流に呑まれそうになりながら、
それでもどこか冷静な頭で友奈はそんなことを思った。
「大丈夫です! これならひとりでやれます!」
戦える! あんな熱の塊、今の私なら問題にならない! 確信があった。
しかし、友奈の断言とは裏腹に、不安そうな顔で、少し離れて、勇者部の面々が友奈を見ている。
一人でやらせて、本当に大丈夫なのか?
今すぐ満開して加勢したい、そんな思いがこちらに伝わってくる。そんな顔だった。
その中でも夏凜は、満開の三秒前、といった様子だった。
夏凛ちゃんの出番はまだだよ。言葉にはせず、それを行動で示す。
「でりゃあああああああああああ!」
友奈は、巨大な図体に似合わぬ敏捷さで跳びあがったかと思うと、
宙にあった元気の球に、右アッパーを繰り出した。
下からぐんと突き上げられて、元気の球が、あっという間に成層圏を越え、星になって、見えなくなる。
友奈は、今なら本当に、なんでもできそうな気分だった。
「風先輩、樹ちゃん、東郷さん!」
言われるまでもなく、三人とも駆け出していた。
ただちに封印の儀を執り行う。
その間に夏凛も満開した。
そして、準備が整った。
あの途方もない御霊が、天に聳え、天頂を突き抜ける高い高い影となっている。
二人と、三人が、しばしのお別れのため、深い意味のこもった温かな視線を交わした。
「行こう、夏凛ちゃん」
コクピット的な外殻の上部、生身で言うならロボの右肩口とでも呼ぶべきだろうか?
そこに夏凜を置いて、ロケットを噴射した。
爆炎が、友奈と夏凛を大空の先へ、宇宙へと猛スピードで運んでいく。
酸素がなくても活動ができるのは、神樹様の加護が彼女たちの身体に満ちているから。
その温もりに抱かれていると、安心できた。
逆に言えば、無事に地表に帰ろうと思うなら、
まだ宇宙にいるのに、力尽きて変身が完全に解除される、なんてことがあってはならない。
全力を出し尽くしてやっと勝つ、ではダメなのだ。
その上今回、生還のため友奈に必要とされる条件が、一層厳しかった。
御霊をぶち抜き、地上に帰還するため成層圏を突破し、衝撃を殺しての着地、を全部一人で行う。
それらを成し遂げるには、まず五割から七割の力で勝たなければならない。
でも、やれると思った。今ならなんでも。
道中、迎撃のため、降りかかってくる火の粉の露払いをするのは夏凜、
友奈が力を必要以上使わずに御霊の元まで辿りつけるようにする。
夏凜の満開にはたくさんの長い長い手があり、それぞれが剣を握っていた。
その姿、一目見て思い出すのは、放射状に花開いた彼岸花かもしれない。
結局、何度か無理やり戻って、地球に向かいかけた攻撃を拾いに行くということはあったが、すべて撃ち落とした。
ようやく御霊まで辿りついたとき、夏凜は気絶する寸前で、満開がとけたいつも通りの勇者姿で朦朧としていた。
一言も発する余裕なんてない。寝ちゃダメだよ、起きて、起きて。
友奈がぐったりした彼女を揺さぶると、ちょっと持ち直したようだった。
はやくしないと、手遅れになってしまいかねない。
夏凜の乗ったコクピット的部分だけを、一度切り離し、それを足場に跳びあがる。
放物線を描き、御霊の適当な一点に向かっていく。
全力、ではなくほどほどに、しかし拳は目一杯握って、それをぶつけに行く。
それでも、声と意気込みだけは、いつも以上に全力全開だった。
「ゆうしゃあああああああああああああ、パアアアァァァンチィ!!!!!」
一発で御霊が砕け、決着する。勝ったんだ。
その余韻に一々浸っている暇はない。
完全に力を使い果たして見えた、夏凜が危なかった。
コックピットまで戻ると、友奈は腕と足の拡張された、純粋に機械的な部位を器用に折り曲げ、
外殻の全体を覆い、球状の物体になった。
今の友奈は両足両腕の大部分が外殻に埋まり、球体の内側ににょきりと生えているような状態だ。
もしかするとその姿を直に見れば、夏凜はどこかシュールな物を感じて、ほほえましい気分になったかもしれない。
しかし、密閉された空間、その球体の内部には神樹様の加護が満ちていると、
ほとんど本能的に理解した夏凜は、瞬く間に変身をといて力尽き眠ってしまった。
これで、次に目を覚ましたとき、夏凜は……。
今の自分には抱きしめるための腕がないことが、猛烈に残念だと思った。
それとも、誰かに抱きしめてもらう。それでもよかった。
実質、帰りは彼女の一人旅だ。
例えば、外壁をなぞってゆく溶けるような熱気を、熱いと感じるわけではなく、
どこか妙な気持ちで体感したりなどしながら友奈は落ちていく。
無事に大空へ辿りついてからは、途中、ロケットを噴射して勢いを殺しつつ、地表への着陸を目指す。
次第に友奈も、夏凜みたいに、眠くなってきていた。だが眠ってはならない。
もし眠るか、そうでなくとも満開がとければ、樹ちゃんが満開をして助ける羽目になるか、
それが間に合わなければ落下の衝撃で二人ともぐちゃぐちゃになるだろう。
ぐちゃぐちゃになっても、勇者は生きていられるのだろうか?
それを思うと、いくらか目が覚める思いがした。
友奈の体感時間の上ではとても長いこの旅も、いつまでも続く訳ではない。
突然、ドン、と下からの衝撃が来た。
思わずぐぐっとお腹に力を入れる必要があるような威力。
隣の夏凜の身体が、コクピットの中で一瞬浮き上がり、落ちる。
ぐぅ、という声を彼女が漏らし、それでお終いだった。依然として、意識を失っている。
友奈は、球状の形態ごと、満開を一息に解除した。
横たわる夏凜をそっと抱きしめたあと、それから足に力を入れ立ち上がろうとして、果たせなかった。
やるべきことは終わったんだと意識してすぐ、いや増す眠気と疲労に、ずぶずぶ自分が沈んでゆくのがわかる。
東郷さん。風先輩。樹ちゃん。
三人、すぐ傍にいるのがわかった。
何か言っているのかもしれない。触ってくれているのかもしれない。
でも、眠たすぎて、感覚が何も意識までのぼってこなかった。
何も感じない中で、友奈は考える。
次起きたら、目が見えなくなっているかもしれない。
耳が聞こえなくなっているかもしれない。
声が出せなくなっているかもしれない。
触覚がなくなっているかもしれない。
他には、他には…………。
悪い想像そのものの恐ろしさよりも、
今、勇者部のみんなを心置きなく感じたい、抱きしめ合いたいという欲求の方が、
何もかもぼやけたこの瞬間勝っていた。
二度と感じられなくなる感覚がある。
それはすなわち、誰かとの関係性において、二度と伝えられない、伝わってこないものがある、かもしれない、ということだ。
抱きしめたかった。抱きしめられても、よかった。
しかし、どうしても目が開かない。
自分の身体が、現在いったい何を感じているのかよくわからない。
意識だけが宙づりになっているような、そんな状態だった。
友奈の意識は、ちょこまかもがくように痙攣する。
だが、それもそれほど長くは続かなかった。
抵抗空しく、彼女は完全な眠りへ、ズルズル引きずられるようにのめり込んでいった……。
友奈はぱちりと目を覚ました。
病室のベッドの上で体を起こし、あちこち自分の身体の点検を始める。
どこがおかしくなっているのか、真っ先に確認したかった。
でも、見つからない。探し方が甘いのだと思った。しかし、いくら探しても見つからない。
……体内の、胃とか、とにかく臓器か何かに、異常が出ているのかもしれない。
どこがおかしくなっているんだろう?
じっと考えたが、どうしてもわからなかったので、
とりあえず、起きたことを知らせようとナースコールを押した。
待っていると、看護師さんと一人のおじいさんが病室に入って来た。
看護師さんはともかく、そのおじいさんは、服装、友奈の傍まで歩くあいだの手の振り方といった所作、
すべてに高貴な血、と呼べそうな雰囲気を漂わせている。
友奈は、年の功ゆえか純度が桁違いであるにせよ、東郷の日頃の振舞に似た美しさをそこに感じ取った。
「満開前と比べて、身体に何か異常を感じるかい?」
「感じ……ません」
看護師さんではなく、おじいさんが訊いてきた。
看護師さんは、彼の斜め後ろに控えているだけだった。
この人は、誰なんだろう?
状況に自分でうまく説明をつけようとしても無理だった。だから自然と、考えがわき道に逸れる。
そして、ここに満開で来た一回目のときは、看護師さんやお医者さんどっちも、
いきなりこんな直球の訊き方はしてこなかったな、なんてことを思い出した。
「そうか。なら、三好夏凜の状態と本人の言、さらにはそのデータもあるし、やはり問題は一つ克服されたということかな」
「……えっと、あのー、すいません。どちらさま、でしょうか?」
一人、自己完結を始めたおじいさんに、友奈は訊ねた。
すると彼は、友奈にこう答えたのだった。
「――乃木園子の祖父、と言えば、君には私がどういう者なのか、ある程度伝わるはずだ。結城友奈さん
乃木園子の祖父、はどうやら大赦の中で、とても偉い地位にいる人物の一人のようだった。
病室にやってくるお医者さんも、彼には頭の上がらない様子でへこへこしていた。
彼は、友奈の検査が済むまで病室内の隅でじっと待ち続け、
ひとまずの面倒がすべて終わると、本格的に友奈と話を始めた。
曰く、
「満開の後遺症、散華は、現在その機能を停止している公算が大きい」
どうやら以前、私が一回目の満開を行ったあと、勇者部五人のスマホを一度回収した際、
勇者アプリを弄って、手当たり次第に一つ一つ身体機能を失わせる原因になりそうな要因を潰していったらしい。
乃木園子の祖父によれば、本当は、現行の勇者システムの満開に端から副作用はないはずだった。
しかし、友奈たちが満開したあと、実際に散華は起こった。
しかも、医学的にはなんら異常を認められない形で。
かつて、乃木園子が戦っていた頃の満開の後遺症は、ちゃんと医学的に認めうるものだった。
私たちを襲ったまったく原因不明の重大問題に対処するため、
大赦が手を付けた勇者の機能としてもっとも影響が大きいものは、満開のレベルアップ機能らしい。
満開が、純粋に一時的なパワーアップとなったというわけだ。
「どうして、今回の満開は大丈夫かもしれない、ってこと、黙ってたんですか?」
彼の、回答の歯切れは悪かった。
どうせ一度、戦わせるため事実を隠していた以上、
これで大丈夫かもしれないと言って、また散華が起こってしまった場合、
いたずらに勇者部を期待させてしまうばかりか、大赦へのより酷い不信感と揺らぎを抱かせることになったはずだ、とか。
我々もどうして散華が起こるのかまだ十全と理解できていない状況で、対処が成功しているか、正直自信がなかった、だとか。
物理的な異常がない見受けられない以上、本当に時間経過で治ると思っていた大赦の人間がたくさんいた、だとか。
バーテックスの戦闘を、大赦がその目で確認することはできない中で、、
勇者としての適性を友奈たちがいまだ真に保持できているかのテスト的な側面もあった、だとか。
組織の指示系統がきちんと統一されていないため、意見の分裂があり、それをまとめるのに非常に時間がかかった、だとか。
具体的に、どれが黙っていたことの主要な理由なのか、他に隠していることはないのか、よくわからなかった。
それでも、大赦も満開――ひいては勇者システムについて、まだまだ手探りの段階にあって、
満開後の散華が起こったことに勇者部以上に困惑していたのは、話を聞いていてわかるように思えた。
しばらく、対話が続いた。
この話を、勇者部のみんなにしてもいいのか、とか。
彼は言った。勇者部のみんなに話したければ、話すといい。
もっとも、今日話したことについて、私ではなく大赦に後から問い合わせをしても、ろくな回答が期待できるとは思わないこと。
大赦は、構造上、情報を内へ内へと抱え込むようにできている。
例えば、私の孫娘、乃木園子がどんな扱いをされているのか、露ほども知らない人間が大半であったり、な。
彼はそう言って、苦々しい顔をした。
他の話、友奈にとって、まさか満開に関して降って湧いてきた突然の希望ほどではないだろうが、
対話の中で衝撃的だったのは、バーテックスの正体と、この世界を取り巻く現状についての推測、だった。
バーテックスは、死のウイルスに冒された人類が死から逃れるため行った計画の一つ、
それが一応の成功を収めた事例だということ。
人間のままでいるから死んでしまうのであって、人間のままでいることをやめて、
あらゆる障害を超越し克服すれば、死なない。
それがこの計画に着手した者たちの理屈だった。
「災厄」から三百年が経過し、もはや彼らは、あらゆる意味で人間ではなくなっている。
それが、バーテックス。
彼は、これを知って、君が戦いやすくなるなんてこと、あるかい? と言った。
ないかもしれない。友奈は思った。
あと、現状について。
神樹様による「十二体やってくる」というお告げがあったこと、それは本来正しい預言であるはずだった。
けれども、奴らが七体で総攻撃を仕掛けてくる前、
保険のため本能的に自己増殖をバーテックスが行ったため、あらゆる事情が変わってしまった……と思われる。
バーテックスは、人類の全滅を避けるという起源から発生した、
我々人類とは異なる在り方をしてはいるが、歴とした生命体である。
生存という究極の目的のため、自己増殖を行い始めることに、なんら不自然なところはない。
この戦いって、いつ終わるんですか、と友奈は訊いてみた。
残念だけど、バーテックスが自己増殖を始めたのなら、いつ終わるか、てんで予想はつかない。
満開のレベルアップなしに、どれだけ対抗できるかは定かではないが、戦いは続いていくだろう。彼は言った。
無言で、重々しい顔つきで、二人俯いた。
話が尽きた、と思われた。
「……結城友奈さん、これを」
立ち込めるどんよりした場の空気の中、突然彼は、スマホを友奈に渡した。
それは友奈のスマホだった。
受け取りながら、訊く。
「どうして、ええと、あなたが私のスマホを?」
「勝手に触ってしまって申し訳ない。
しかし、これは私がやりたかったんだ。君に渡すことも含めて。
……つまりだね、アプリの機能の一部、勇者だけが使用できるSNSに、園子を登録させてもらった」
友奈はびっくりして、乃木園子さんの祖父、の顔をしげしげと凝視した。
彼の顔付きからは、年相応の皺や、かさかさした肌の他、何も感じ取ることはできない。
皺は、老いを感じさせはせずに、たださばさばと乾燥していた。
「時間はかかったが、どうにか神官たちや他のお偉方を説得することができたんだ。
だから、園子のことをこれからよろしく頼む。この通りだ」
友奈の数歩先。
一人の女の子のおじいちゃんが、誠心誠意、頭を深々下げようとしている姿が、そこにはあった。
顔が見えなくなって、ふわふわした髪の毛ばかりが、友奈の真正面に見据えられたが、
なぜだかそれは先ほどよりも鮮明に、彼の老いというものを感じさせる。
「わかりました」
友奈は頷いた。
そして、彼の下げられた頭が持ち上がってゆくのを、黙って待っていた。
時は流れて、文化祭当日。
空き教室を単独の部活動として借り切った勇者部は、伸び伸びオリジナルの演劇を上演していた。
現在観客は、クラスメイト数人。
いつか訪問した保育園の子供数人と、その親御さん。
そんな感じだった。
「グワァー! たとえこの、大魔王を倒したとしても、必ず超大魔王が現れて、この世界のすべてを破壊するであろう!」
大魔王コスチュームの風先輩が、眼帯を抑えうずくまっていた。
お腹にダメージを受けて、抑えているのがなぜ眼帯なのか、といった疑問をあまり感じさせない、実にナチュラルな目の抑え方だった。
東郷が、園子に後で送るための映像を、程よい位置から撮影している。
「それならそのときは、また、私が世界を守る! だって私は、勇者なのだから!」
ドン! と片足を一歩踏み出して、友奈が堂々宣言する。
その演劇用の勇者衣装は、どことなく、バーテックスと対峙する際、友奈が変身する勇者の姿に似ていた。
「絶対守り切って見せる! 私は、一人じゃないっ!」
パタリ……。
友奈のセリフが終わったのとほぼ同時に、風先輩演ずる大魔王が床に付して、事切れる。
樹が、大魔王戦闘用のBGMから、勇ましく希望に満ちた勇者のテーマに、流す音楽を切り替える。
そして、東郷が締めのナレーションに入った。
「こうして、世界の平和は勇者の手によって再び守られました。しかし、これでもなお、本当の終わりではないはずです。
超大魔王が現れる……。それはきっと、そう遠くない将来、真実のものとなるからです。
ですが、心配する必要はまったくありません。なぜなら、この世界には勇者がいて、私たちを――」
友奈は、毅然とした表情で前方にある教室の窓を見ていた。
せっかくの劇のラストが台無しになってしまいかねないので、
反応が気になるけれど、努めて観客の方を向かないようにしていた。
勇者部の活動。
色々なことがあった。これからだって、色々なことがあるだろう。
でも、戦いのなかで、また満開が何度もあったけれど、散華は一切確認できなかった。
勇者部は、依然として、あのときのまま戦い続けていた。
一度散ってしまった花は、もう二度と元には戻せない。
けれど、うまくやれば、咲いている間、咲き誇ることならできる。
それに、花の咲き方には満開だけじゃなく、三分咲き、七分咲き、そういう種類だってある。
戦うことに、不安がないと言ったら嘘になるけど、一応大赦のサポートだってある。
だから、みんなで、一瞬、一瞬、積み上げていこう。
そうすれば……。
ちょうどそのとき――喇叭の音が、友奈の頭の中でだしぬけに、けたたましく鳴り始めた。
東郷さんの喇叭。起床の喇叭。
――総員起こーし! 総員、吊り床おさめ!
そして、友奈は気付いてしまった。
これは、すべて、夢なのだと。
私を、現実が待っているのだと。
「外」に、東郷さんがいるのだ、と。
友奈は、目を閉じた。
すると、ラッパの音が、みるみる鼓膜を破らんばかりにその大きさを増していく……。
目が覚めた。
今ではもう慣れた、東郷さんの朝の起こしかた。
私は、眼をしょぼしょぼさせながら、ゆっくり布団を出た。
「おはよう……。東郷さん……」
「おはよう、友奈ちゃん。もうそろそろ、朝ごはんができるって、友奈ちゃんのお母さんが言ってたわ」
挨拶ついでにそう告げて、車椅子を自分で押して、東郷さんが部屋から出て行った。
私もそれに続こうとして、ふと、自分が今日、何か特別な夢を見ていたような気分に襲われた。
昨風先輩がプッツンと切れたこと、東郷さんが自害しようと試みたこと、
満開のこと、散華のこと、乃木園子さんのこと、バーテックスのこと……。
昨日、そういうゴタゴタを考えながら眠って、それが見事に夢に反映されたんだということはわかった。
問題は、その中身がなんだったかだ。
なんだか、中身のなかなか濃い夢だったと思うんだけど……。
うんうん唸る。
細かいところは覚えてないけど、正夢になってくれたらいいのに、そんな夢だった、ような気がする。
違ったかもしれない。
「友奈ちゃーん!」
「あっ、はーい!」
できることなら、思い出してみたかった。
でも、それはどうにも叶いそうになかった。
もやもやするけど、夢は夢。気にすることはない、と思った。
勇者部の活動。
樹ちゃん、風先輩。夏凛ちゃん。
皆ともっともっとたくさん遊ぼう。
くよくよ朝から悩んだって、それで一日が充実したものになるわけじゃない。
朝ごはん、食べて今日も一日頑張らなくちゃ、とようやく私は部屋を出て、東郷さんを追いかけた。
終わり
設定間違いあったとき、これは夢のことだから、でごり押しできるように、って理由です
オチとして微妙だけど、タイトルで明示してたし……
イベント描写が最低限すぎて不完全燃焼かなあという気もしますが、
バーテックスの妄想説明のところと、友奈たち満開一回目の時点で改善されてるネタと、最後の劇やりたかったがほとんどなので
ハッピーエンドとはいえなくてもベターエンドにはなった気がしますし、やりたいことは大体やり終えた印象
黒幕説と、舞-Himeラストだけはやめてもらえれば、個人的にはアニメ、大抵のオチ受け入れると思いますが
なるべく特定のこれが悪い! って奴を出さずに、勇者となった少女が誰かを守ろうとする、ってとこだけに焦点当てといてくれれば嬉しいなーって
HTML化依頼してきます
忘れちゃいけないのはタカヒロさんがアカメが斬る!の原作者でもあること
アニメの方は今後も友奈が皆の代わりに経験値貯めしちゃいそうで不安しか無い
>>1はバーテックス人間派か…
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418174055/
Entry ⇒ 2016.01.08 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
友奈「結城友奈は勇者になる」
・12話構成
・ゆゆゆ続編妄想SS 友奈たちは高校生設定
~☆
《早朝 海沿いの歩道》
友奈「はっ、はっ、はっ」タッタッタッ
友奈「はっ、はっ、はっ」タッタッタッ
友奈「ゴール!」タンッ!
友奈「…………ふぅ」
夏凜「はっ、はっ、はっ」タンッ! 東郷「っ」タンッ!
夏凜「あ゛あ゛~! 負けたぁ~!」
東郷「さすがね、友奈ちゃん」
友奈「えへへ」
夏凜「……まあ、東郷と同着で終わっただけ、良しとしとくか」ハァ…
夏凜「園子は?」
東郷「多分もうちょっとだと思う」
夏凜「そっか」
夏凜「だいぶ園子成長してきてるし、これは私も、ますます本気で鍛錬に励まないとマズそうね」
友奈「あっ! 園ちゃんいま、角を曲がったよ!」
東郷「そのっち、ファイトー!」
園子「はぁっ、はぁっ、はぁっ」タッタッタッ
園子「……は~」タンッ!
友奈「お疲れー」
東郷「ナイスファイトそのっち」
夏凜「お疲れ」
園子「ふ~」
園子「みんな今日も速いね~。私、結構いい感じで頑張ったと思ったのにな~」
東郷「頑張ったのは確かよ。間違いなく、成長してるわ」
園子「え~、そうかな~? だと嬉しいな~」
夏凜「じゃ、いつも通りに、自販機で飲み物買ってくる係決めましょうか」
友奈「そうだね」
夏凜「いくわよ~。じゃーんけん、ぽい!」
《朝 通学路》
友奈「風先輩、樹ちゃん、おはようございまーす!」テクテク
風「あっ、おはよう友奈」テクテク
樹「おはようございます」テクテク
東郷「おはようございます、風先輩、樹ちゃん」テクテク
風「おはよー」
樹「おはようございます」
風「……今日も園子はギリギリ登校なのかしら?」
友奈「みたいです。神事が朝から一つ入ってるらしくて」
風「はー、大変ねー」
友奈「なるべく一時間目には間に合うよう、学校に着きたいって言ってました」
風「園子がかかわる神事の回数、最近傍から見てても明らかに増えてるわよね」
風「勇者としての鍛錬、後輩の指導が放課後に控えてるんだから、
もうちょっとそういう雑事は免除してあげて欲しいんだけど」
友奈「ですねー」
東郷「難しい話です」ムムム…
東郷「大赦には大赦の言い分」
東郷「人心の乱れ」
東郷「壁の外にひろがる世界の真実が公にされて以来、
神樹様への信頼こそが、そういう人たちの日々の支えになっている」
東郷「彼らの道徳心への訴えかけに、乃木家の少女、瀬戸大橋跡地の合戦の勇者、
という現実とリンクしたシンボルを用いることは、大変有用である」
東郷「とかなんとかがあるのは、一応わかるんですけど……ね」
風「そこら辺のちょうどいい折り合いをつけるのは、ほら、大人たちのお仕事だし」
風「私たちは、基本的に園子の心配だけしてればいいでしょ、多分」
風「ただ、情報があれこれ表に出てくるようになっただけ、
大赦もだいぶクリーンになったもんだと思うわ」
風「例えば、大赦のホームページや、テレビのニュースで、
バーテックスが近日襲来する予定です、なんて教えてくれてるわけでしょ?」
風「あんなのあたしたちが中学生だった頃は考えられなかったわよ」
樹「ここ数年で、思えば随分色々と世の中変わったよね」
樹「一番変わったのって、なんだろう?」
夏凜「あれじゃない? お守りとか、服装とか、
神樹様への信仰を目に見える形で示す人を、外歩いてて頻繁に見かけるようになった」
樹「なるほど」
友奈「とりあえず私は、武術が必修科目になったのが嬉しいな」
樹「あー、友奈さん、得意科目だから」
友奈「うん。体育と武術、この二つには、本当に成績を助けてもらってる」
樹「いいなー。私勉強苦手だから、そういうのどんどん欲しいよー」
東郷「樹ちゃんは、音楽が強いじゃない」
樹「ホント、音楽には助けてもらってます、はい」
友奈「朝の鍛錬、樹ちゃんも、私たちと一緒にやればいいんじゃないかな?」
樹「え、ええ?」アセアセ
風「樹には無理ね」
風「仮にやろうと決めても、早起きの特訓が先だわ」
樹「う、うう……」ションボリ…
樹「体育はともかく、武術がなぁ」
樹「もっと私も、お姉ちゃんみたいに、こうすれば戦えるんだよ、
ってテキパキ後輩たちに教えられるようになりたいよー」
風「あー、樹はねー、何よりまず扱ってる武器が特殊だから大変だ」
夏凜「この頃ようやく、人にこうしなさい、って物を教えても、肩が凝らなくなってきたわ、私」
友奈「夏凜ちゃん、そういうの苦手そうだもんね」
夏凜「わかる?」
友奈「うん」
友奈「なんていうか、最初顔合わせていきなり実演して、はい、じゃあお前やって見ろ、
って昔話か何かにでてきそうな頑固な職人さんみたいに教えたがりそう」
風「わかるわ、それ」
夏凜「……否定できないのがなんか悔しいわね」
夏凜「それで済めば、私も楽なんだけど、そうもいかないのよねぇ」
風「私は、その点そういうところ器用だから、教えるどうのって苦労した記憶ほとんどないわ」
夏凜「はぁ……。素直にうらやましい」
樹「友奈さんは?」
友奈「うーん、私は、お父さんに武術を教えてもらった経験とかがあるから、それを生かしてるかなー」
樹「なるほど」
友奈「東郷さんの方だと、どんな感じ?」
東郷「どんなって、みっちりしごいてる、と言えばいいのかしら」
風「ああ、後輩たちから畏れられる鬼教官の姿がまるで目に浮かぶようだ……」
樹「ふぇぇ……」
夏凜「東郷のしごき。……一度どんなものか、体験してみたいかも」
友奈「う、うーん」ムムム…
樹「友奈さん、厳しい顔してどうしたんですか?」
友奈「いや、テスト前に何度か東郷さん直々に勉強しごかれた記憶を思い出して……」
風「それは、さぞ辛かったでしょうね」
樹「こ、効果は凄くありそう」
東郷「ねえ、みんな」
東郷「多分だけど、現実の十割、十二割以上は苦しい光景を想像してると思うの」
東郷「友奈ちゃんのは、普段から勉強を疎か気味にしてたせいだから」
東郷「後輩たちに課しているのは、それよりもっと楽にこなせるものよ」
東郷「鞭だけ与えても人はついてこない。適度な甘さをもって臨まねば、最良の結果は得られない」
風「……なーんかその言い方だと、怖そうな印象抜けないわね、正直」
《放課後 夜 街中》
友奈「よーし、これでみんな揃ったから、帰ろう!」
園子「は~……」
風「どうしたの、園子?」
園子「私これから、帰って一度支度したあと、神事二つなんです~」
風「た、大変ね」
東郷「流石にそこまでそのっちに負担をかけるなら、
そろそろ私たちにもその役目を分散させてほしいところね」
園子「うーん~」
園子「みんなと一緒にやれたら、確かに私ももう少しやる気が出せると思うんだけど~」
園子「ただ、二年間以上ベッドで祀られてたときの経験が、
私が現在続々と抜擢されてる大きな理由の一つだからね~」
園子「付け焼刃じゃない神事、仮にそれを行えるようなるには、
みんなは大赦の奥深くともっとズブズブしないとだから~」
園子「は~、私がやらなきゃいけないとわかってても、眠いよ~」ウトウト
樹「園子さん、歩きながら寝ちゃいそうな顔してる……」
友奈「園ちゃん、根性だよー! 根性ー!」
園子「うん、根性~……」
友奈「なせば大抵――――」
友奈「…………」ピタッ
東郷「友奈ちゃん?」
ピロリロリ ピロリロリ
東郷 園子 夏凜 樹「「「「っ!!!」」」」
夏凜「ついに……来た」
ウゥゥゥゥゥゥゥン…
《樹海》
風「この景色を見るの、だいぶ久しぶりな気がする」
樹「当たり前っちゃ当たり前だけど、全然変わってないね」
園子「さて~、まずは、後輩たちが私たちを目印に、一堂に会するのを待ってから――」
東郷「待ってッ!」
夏凜「な、なによ?」ビクッ
風「東郷?」
東郷「友奈ちゃんがいないのっ!」
園子「あ、ホントだ~」
夏凜「……えっと、神樹様の手違いで、別の地点にワープさせられたとかじゃ――」
東郷「結界に入って、隣に友奈ちゃんがいないって気付いたから、それから急いでスマホを見て、ちゃんと確認したわ」
東郷「――でも、敵や他の仲間の位置は表示されていても、友奈ちゃんはどこにもいないのっ!」
《放課後 夜 街中》
東郷「友奈ちゃん、友奈ちゃん」
友奈「――――」
友奈「……え?」ハッ
友奈「あっ、ゴメン、ぼうっとしてた」
友奈「なんの話だっけ?」
東郷「いいよ、別に大した話じゃなかったから」
夏凜「まったく、園子じゃないんだから、いきなりぼうっとするんじゃないわよ」
夏凜「心配するでしょうが」
友奈「えへへ、面目ない。自覚なかったけど、疲れてたんだろうね」
園子「私、そんなにみんなが言うほど、普段ぼうっとしてないよ~」
夏凜「自覚なしっ!?」
東郷「ねえ、友奈ちゃん」
友奈「なに?」
東郷「帰ろっか」ギュッ
友奈「うん」ギュッ
友奈(温かい)
友奈(東郷さんから手を繋ごうとしてくるなんて、結構久しぶりな気がするな)
風「は~、疲れたぁ」
風「さー、今日の晩御飯、何にしよっかなー?」
樹「あれ? まだ決めてなかったの」
風「んー、食材はあるから、帰ってから決めようかなって」
樹「そっか」
東郷「また明日も、頑張ろうね」テクテク
友奈「うん」テクテク
~☆
《夜中 海岸》
友奈「――――」
友奈「…………あっ」ハッ
友奈(夢?)
ザァァァァァァ… ザァァァァァ…
友奈「…………」
友奈(夢、じゃない)
友奈(夏凜ちゃんが、よく一人で鍛錬をしてた浜辺だ)
友奈(でも、私なんでこんなところに)
友奈(靴も履かずに、パジャマのままで)
ザァァァァァァ… ザァァァァァ…
友奈「…………」ゾクッ
友奈(疲れて、るのかな)
友奈(寒いや)
友奈(なんにせよ、はやく帰ろう)
《前日 樹海の中》
後輩A「あの、友奈先輩の指揮下に入るはずだった私たちは、どうしたらいいんでしょうか?」
園子「ん~、そうだね~」
園子「条件は問わないから、均等に、私、美森ちゃん、樹ちゃん、風先輩、夏凜ちゃんの元に移って」
園子「方法は、じゃんけんとかで大丈夫だよ~」
園子「どうせ今回の戦いは、私たちの戦いぶりを見学するっていう、
あなたたちにとってチュートリアル的なものだから、それで問題は起こらないはず」
後輩A「わかりました。では、伝えてきます」タッタッタッ
風「……しかしこれ、どういうことなのかしらね?」
風「四国中の少女で、おそらく友奈だけが、他の人たちと一緒に時間停止に巻き込まれた」
樹「ひ、ひとまず戦いが終わってから、それは考えよ?」
風「まぁ、それはごもっともな意見なんだけど……」
園子「部長、そんな難しい顔してたらダメですよ~」
園子「部長はこれから一番槍を担当するんですから、ドーンと景気よく一発やってもらわないと~」
園子「初めて見た樹海化と、敵の襲来のせいで、後輩たちに不安が広がっていますから~」
風「……よし、指摘あんがと園子。ちょっと気分切り替えるわ」
風「そのために、このメンツで円陣、まずは組みましょう!」
園子「いいですね~」
夏凜「あんたたち、こういうとき円陣組むの本当に好きね」
東郷「夏凜ちゃんも、嫌いではないでしょう?」
夏凜「……まーね」
樹「夏凜さん、肩」
夏凜「うん」
風「勇者部、ファイトォー!」
一同「「「「「 オオオオー!!!!! 」」」」」
《朝 風の家》
風「…………」
風(寝たら、昨日の戦い夢でしたってなるの、ちょっと期待してたんだけどな)
風「ねえ樹、大赦からのメール見た?」
樹「……うん」
風「友奈には教えるな、だってね」
風「今回の戦い、友奈が勇者になれないなんて、大赦は事前に一言も教えてくれてなかった」
風「そのことについての釈明は一切なし」
樹「うん」
風「壁の外に、神樹様の『種』を蒔く作戦」
風「後輩たちが神具と『種』を持って、迅速な任務の達成を目指し一気に動く」
風「私たちはその間、反撃として侵攻してくるはずの敵から、壁の内側を守る」
風「…………大赦が日頃から言ってたこと、信じていいのかな」
樹「わかんないよ、そんなの」
樹「けど、戦うしかない」
樹「だってそれが、私たちにできることなんだから」
風「……そう、だね」
《朝 園子の家》
園子「遠いのに、わざわざ来てもらっちゃってごめんね~」
東郷「ううん、大丈夫」
東郷「そのっちが朝忙しいのはわかってるから」
園子「なんで、私が呼んだのか、みもりんならもうわかってると思うけど」
園子「今後のことについて、今の内に二人で話しておきたくてね~」
園子「現状の真相をゆーゆに話すのか、話さないのかどうかを」
東郷「…………」
園子「ゆーゆが昨日なんで、勇者として戦うことができなかったのか」
園子「あくまでもそれはイレギュラーであって、これからは違うのか、違わないのか」
園子「そういう問題はひとまず脇にのけておいて、
ゆーゆに戦いがあったという真実を知らせるのか、知らせないのか」
園子「みもりんがどうするべきだと思ってるのか、聞かせて欲しい」
園子「それとももう、昨日か今日の内に、ゆーゆに真実を知らせてたりするのかな~?」
東郷「……私は、知らせる必要はまだ、ないと思う」
園子「どうして~?」
東郷「だって、大赦が原因を調査中と言ってる以上は、
専門家である彼らにまず任せてみるのが最善じゃないかしら」
園子「…………」
東郷「真実を知らせることは、後からでもできるわ」
園子「でも、隠すってことは、満開の後遺症を私たちに隠してた大赦と同じことを、
ゆーゆに対して私たちがやるってことじゃないかな~?」
東郷「ううん、違う」
東郷「満開のときと違って、知らされていなくても、破滅的なデメリットがない」
東郷「むしろこれから、まだどうなるかわからないあやふやな現段階で、
友奈ちゃんに知らせた方が、余計な悪影響があると思う」
東郷「だって、もし知らせたとして、四国中の少女で自分だけが、
勇者として戦えないと知ったら、友奈ちゃんは……」
《放課後 道場》
後輩A「…………はぁ」
友奈「どうしたの?」
後輩A「っ!」ビクッ
後輩A「ゆ、友奈先輩っ!」
後輩A「何か、私に、御用ですか?」アセアセ
友奈「今日の動き、いつもの伸び伸びした動きと違って、ぎこちなかったよね」
友奈「だから珍しいなって思って」
友奈「何か悩み事でもできた?」
後輩A「…………」
後輩A「いえ、大丈夫です。これは、私のプライベートなことですから」
友奈「そっか」
友奈「でも、手伝えるような何かがあったら、私に言ってくれると嬉しいな」
友奈「私は、讃州高校勇者部の結城友奈だから、どんなことでも精一杯頑張って助けになるよ?」
後輩A「はい、もちろんです!」
後輩A「そのときには、親や先輩、友人よりも先に、先輩に相談します!」
後輩A「私、先輩のこと、むっちゃ尊敬してるので!」
《夜中 自宅》
友奈(昨日の今日だから、なかなか眠る気になれないな)
友奈(いくらなんでも二日連続であんなことにはならないと思うけど)
友奈(にしても今日、訓練の間、あの子の様子本当におかしか――)
《海面》
友奈「――――」
友奈「…………っ!」
友奈(ここ、海の中だ)
友奈(波に、波にさらわれる……!)
友奈(助け)
友奈「……あ――」ゴボッ
友奈(ダメだ)
友奈(落ち着け私、下手に興奮して暴れても、溺れちゃう)
友奈(落ち着け……落ち着け……)
友奈「…………」スイスイ
友奈(陸まで泳ぐ……)
友奈「…………」スイスイ
友奈(あともうちょっと……)
バシャァ
友奈「……がはっ、ごほ、ごほ、ごほっ」ゲホッ
友奈「お、う、あぁ、はぁ」ゼェゼェ
友奈「…………はぁ、はぁ」
友奈「……う……うう……う……」
~☆
《午前 墓地》
風「…………」
樹「…………」
風「忙しかったから、久しぶりになっちゃったね」
樹「そうだね」
風「もうちょっと来る回数増やしたいけど、
きっと次来るのは、この戦いが一段落ついてからになりそう」
樹「うん」
風「手、合わせよっか」
樹「うん」
風 樹「…………」
風「…………」
風(お母さん、お父さん)
風(樹、少しだけ早起きできるようになったんだよ)
風(だから学校休みの今日、この時間にここに来られた)
風(これから午後は、鍛錬と指導)
風(いつも通り、だけど戦いが始まって、いよいよ大切な時間)
風(……私、樹と一緒に頑張るから)
風(私は、学業も、勇者も、家事も、精一杯やり遂げてみせる)
風(樹と一緒なら、きっとやれると思う)
風(だから、見てて)
風(樹の成長を、そして、私の頑張りを)
《午後 訓練場》
樹「そこは、こうするのがいいんじゃないかな?」
後輩B「なるほど……。参考になります!」
樹「そう? なら良かった」
樹「お姉ちゃんとかと違って、私だと上手く教えられないかもだけど、
変わった武器同士、わからないことがあったら訊いてみてね」
樹「悩んだら相談、だよ」
後輩B「もう……先輩ったら」
樹「?」
後輩B「いつもお姉ちゃん、お姉ちゃん、って、
私が一番尊敬してる勇者部の先輩、樹先輩なのに、自分のことそんな言い方したら嫌です」
後輩B「ちゃんと先輩は樹先輩としてかっこいいのに」
樹「私が……?」
後輩B「……一番尊敬してる、は夏凜先輩とだいぶ接戦なので、ひょっとすると違うかも。すいません」
後輩B「だけど、お二方は、先輩たちの中でもことさら一つの目標のためストイックに頑張ってる感じがして、
私、心の底から尊敬してます!」
後輩B「どれくらい尊敬してるかというと、お二方と同じ学校に行きたくて、
私、志望校讃州高校に決めちゃいました!」
樹「え、ええっと……」
後輩B「……」ハッ
後輩B「あっ、あの、すいません。つい、つまんないこと喋りすぎました」アセアセ
後輩B「その、こうして面と向かってまともに話せる機会今までほとんどなかったから、舞い上がっちゃって」
後輩B「一昨日の戦い、先輩の活躍、言葉にできないくらい凄かったです!」
後輩B「私、先輩の歌が大好きで、えっと……」アワアワ
樹「ありがとう」
後輩B「え?」
樹「私も先輩として、役に立ててるんだ、って思うと元気出た」
樹「だから、ありがとう」
後輩B「……は、はい!」
《夜 街中》
風「…………」
夏凜「風」
風「今日の二番目は夏凜か」
風「ねえ夏凜」
夏凜「なに?」
風「友奈の班の変身訓練がどうなってるのかとか、考えてみたことある?」
風「私たち、考えてみると、互いがどういうカリキュラムで己を鍛錬し、
後輩を指導してるのか、よく知らないのよね」
風「全部大赦の手のひらの上」
夏凜「そんなことより、あんたは自分のことを心配しなさいよ」
風「私?」
夏凜「手の調子、おかしいんでしょ。あと目も」
風「っ!」
夏凜「樹の前以外だと、必死に隠そうとする意思弱まりすぎ」
夏凜「私たちとだってそれなりに付き合い長くなってるの、忘れるんじゃないわよ」
夏凜「友奈、あんたのこと目に見えて心配してた」
風「…………そうなんだ」
風「昨日久々の実戦で気づいたんだけどね、あたし、あんまり勇者システムが身体に馴染んでないみたい」
風「大剣の一振り一振りが重くて凄く疲れる」
風「勇者としての女子力が足りてない」
風「高三ともなれば、少女って言える年齢ギリギリの瀬戸際っぽいし、仕方ないのかな」
風「樹海から帰ってきて、たまに自分の意思とは関係なく指先が震えるの」
風「あと、戦ってる最中もだったけど、前に散華した左目が、時々目の前の物を識別できなくなるくらい霞む」
風「散華とは、違う。それはわかる」
風「多分、これ以上戦うのをやめれば、途端にみるみる良くなると思う」
風「戦うのをやめれば、ね」
夏凜「…………」
風「戦いをやめる気はないわ」
風「私にもできることがあるのに、みんなに守られてただ大人しく待ってるだけ」
風「そんなの絶対に嫌」
夏凜「片目が、見えなくなることがある」
夏凜「つまり視界が安定しない。そんな状態で戦ったら、
いずれみんなの足手まといになるかもしれないことは考えないの?」
風「それは……」
夏凜「……はぁ」
夏凜「敵を気配で見ることを覚えなさい」
風「気配でって……」
夏凜「変身してないときならともかく、勇者として変身してるときなら、やってやれないことないわよ」
夏凜「コツが必要だけどね」
夏凜「幸い、コツなら私が教えてあげられる」
風「教えてくれるの?」
夏凜「ええ」
夏凜「これからも戦うんでしょ? だったら風には必要な技術だわ」
夏凜「今から、時間を工面しましょう」
夏凜「みんなと帰って、解散して、それから数時間」
夏凜「今日から一週間以内で、気配で見る方法、習得できるんじゃないかしら?」
風「悪いわね……」
風「夏凜も、毎日の鍛錬と指導で疲れてるでしょうに」
夏凜「フン」
夏凜「舐めんじゃないわよ、私だって勇者なんだから」
夏凜「私と風、剣の使い手って点では一緒だから、悩みの対処法は大雑把に似てくる」
夏凜「戦い一般に関しては、私の方が風よりも得意」
夏凜「だから、もっと頼ってくれていいの」
夏凜「私も、今度おいしいうどんの作り方とか、手早く綺麗に洗濯ものを畳む方法とか、
なんかそういうやつ風に教えてもらって元を取るつもりだから、気にしなくて大丈夫」
風(夏凜……)
風「あらぁ、ついに夏凜も、一人暮らしの乙女として、料理しようとする精神が芽生え始めたわけ?」
風「コンビニ弁当とサプリ、それだけの味気ない生活から、ようやく自分の意思で抜け出す気になったのね」
風「おいしい人並みのご飯を度々振る舞って、人間的な生活の温かさを思い出させようとした甲斐があったわ……」
夏凜「別に、いま風が言ったほど、志高いものじゃないけどね、私の料理欲」
風「いやいや、千里の道も一歩から――」
~☆
《樹海》
樹「みんな、大丈夫かな……?」ソワソワ
樹「精霊の加護はなし」
樹「実戦は、私たちのを一回見ただけ」
樹「なのにいきなり壁の外に出て、戦えるのかな」
風「もう、樹はまた同じこと言う」
風「いきなりじゃないでしょ」
風「壁の外を見せたりとか、そういう訓練なら何度もやった」
樹「でも…………」
風「大丈夫じゃなかったら、人類の負け」
風「樹自身がそういう内容のこと言ったんじゃない、後輩たちを鼓舞するときにさ」
樹「た、確かに言ったけど、いざこうして手持ち無沙汰で待ってると、すごく不安だよー」
園子「こう言っちゃなんだけど、後輩たちの止め切れなかった敵が、
結界内に入ってきてくれた方がこっちの気持ちは楽だよね~」
園子「その対処にだけ集中すればいいってことになるから~」
東郷「不安を紛らわすことを考慮から外せば、
入ってこないでくれるに越したことはないだけにジレンマね」
東郷「例えば、満開ができない今、複数体入ってきて合体されたら、対処できる自信ないもの」
園子「私は合体するのにまだ会ったことないけど、できれば会わずに済ませたいかな~」
風「ようするに、何もないまま、後輩たちがなるべく早く帰ってくるのが一番」
風「まー、月並みな結論だわ」
園子「なんだかんだ言っても、普通が一番ってことですね~」
夏凜「まったく……戦闘前なのに、いつもながら緊張感のない」ハァ
夏凜「樹、不安になる気持ちはわかるけど、
あんたが担当してた子たちの成長、あんたが一番よく知ってるでしょ」
夏凜「前言ってたじゃない、みんなすごい成長してるんだって」
樹「それは……」
夏凜「私が担当した子たちもそう。東郷、風、園子、友奈が担当した子たちもそう」
夏凜「先輩であるあんたが、あいつらの根性信じてあげなくてどうすんのよ」
夏凜「あいつらには、私たちみたいに精霊はついてないけど、
神樹様に接触して、個人個人特別な力を与えてもらってるらしいじゃない」
夏凜「だから心配いらないわよ」
樹「その、特別な力の中身がわかれば、少しは安心できるのに」
夏凜「……まぁ、それは確かに、ね」
夏凜「耐久力アップは後輩から聞いてるけど、いくらなんでもそれだけじゃないでしょうし」
樹「ですよね」
風「特別な力って、ようするにアップデート、グレードアップの類いじゃない?」
風「一方、私たち勇者部が、何かグレードアップした実感ある?」
園子「満開がなくなったのは、歴としたグレードアップじゃないですか~?」
風「いやぁ、ちょっとそれは、グレードアップとは違うような……」
夏凜「前に満開したぶんだけ、基礎ステータスが上昇してるのは、グレードアップってことでいいんじゃない?」
夏凜「みんな精霊は一体のみだけど、ステータス引継ぎのおかげで、
園子の一撃一撃が戦術兵器じみた攻撃力発揮してるわけで」
園子「えへへ~、ずがーんだよ~」
樹「そう考えると、変わったグレードアップが私たちにはないってことは、
当然私たちの満開で上昇したステータスよりも、特別な力、の恩恵って少ないんですよね」
樹「そして精霊もいない」
樹「……不安です」
夏凜「だけど、私たちと後輩たちとじゃ、人数の桁が全然違う」
夏凜「後輩たちは三年近くかけて、規律だった集団を一つの単位とするような、
厳しい戦闘訓練を積んできたわけじゃない?」
夏凜「そりゃあ私たちも色々指導したけど、私たちがやったことの意味って、結局は士気高揚が大半だと思う」
夏凜「世界を守った先輩勇者って存在を、最大限生かした上での大赦による計画的な訓練」
夏凜「園子、東郷、私はともかくとして、風、友奈、樹よりは余程研鑽を積んだ上での初戦、
しかも私たちには不可能だった集団の数の利を生かしたものになるだろう戦闘」
夏凜「そんなに悲観視する必要ないと、私はやっぱり思うわ」
樹「でも、どうしたって死傷者は――」
風「樹」
風「そこら辺で悪い想像の話はストップ」
風「夏凜も、みんなも、正直それはわかってるのよ」
風「けど、私たちは、私たちができることをやるしかない」
風「そうでしょ? 違う?」
樹「…………ごめん」
一同「…………」
東郷「っ!」
東郷「スマホに反応! 一体来ます!」
夏凜「……ようやくお出ましってわけ」
園子「壁際のこの位置で、きっちり撃破しよう~」
園子「オーケ~?」
風「オーケー!」
東郷「さあ、行こう、樹ちゃん」
樹「う、うん」
バーテックス「……」
園子「いや~、見たところ、私も見覚えのあるやつだね~」
園子「合体を済ませたバーテックスが結界の中にいきなり入ってくる、なんてことがなくて良かったよ~」
東郷「全くだわ」
《樹海》
ミュィィィン
勇者部一同「っ!」
後輩A「……はぁ……はぁ」タッタッタッ
後輩A「………………」タッタッタッ
タンッ!
後輩A「……はぁ、はぁ」
樹「だ、大丈夫ですか?」
後輩A「大丈夫、です……っ」
後輩A「では、報告……します。作戦……完了しました……」
後輩A「作戦は、大成功、です……」ゼェゼェ
風「そう、良かった」ホッ…
後輩A「すいません……ちょっと深呼吸して良いですか……?」
後輩A「戦闘後急いで報告することばかり気にしてたせいで、
ここまで走って来る最中、うっかり息すること忘れちゃってて……」
風「ええ、いいわよ。だから、十分に落ち着いて、詳細を教えて頂戴」
後輩A「はい、ありがとうございます……」
後輩A「…………ふぅ」
後輩A「こちら側の死傷者はゼロ、バーテックスも、結界内に漏らしてしまった物以外は、
封印の儀による足止めでほぼ無傷のまま確保」
後輩A「これは私の主観ですが、私たちからの星屑に対する打撃も、最小限に抑えられたように思います」
後輩A「つまり、これ以上ない戦果ですっ!」
勇者部一同「…………」
後輩A「あれ……?」
後輩A「どうかしましたか?」
夏凜「…………死傷者ゼロ、って言ったわよね」
後輩A「はい、言いました。死傷者はゼロです」
夏凜「そんな話、いくらなんでも出来すぎよ……」
夏凜「攻撃をもらったりはしたんでしょ?」
後輩A「ええ、もちろん。でも、ちゃんとダメージは分散させました」
夏凜「分散させたって……腕が折れたりとかしたら、戦闘に支障は出るでしょ?」
夏凜「それに死傷――」
後輩A「腕が折れる? ははは、先輩何言ってるんです?」
夏凜「?」
後輩A「たとえ千切れたって、腕くらい、変身してたらちゃんとまた生えてくるじゃないですか」
夏凜「え?」
後輩A「そりゃあ回復するまで時間はかかりますし、
そいつが抜けた穴をしばらく連携して塞がなきゃいけないですけど……」
夏凜「う、腕千切れたって、痛みはどうなってんのよ」
後輩A「痛み……?」
後輩A「痛みなんて、そんなの、変身してたら感じません……よね?」
~☆
《朝 友奈の家》
友奈「……」モグモグ
<本日一つ目のニュースです
友奈「……」モグモグ
<昨日、四国の外を、神樹様の御力でもって緑化する計画の第一歩が、
勇者たちの活躍により無事完遂されました
友奈「え」
ピッ
友奈父「……」
友奈「お父、さん……?」
《四国と外界を隔てる壁上》
春信「このたび、大赦と園子様の間で取次をすることに相成りました」
春信「よろしくお願いします」ペコリ
園子「久しぶりだね~」
園子「噂は聞いてるよ~。順調に大赦の出世街道を歩いてるようだね~。おめでとう~」
春信「ははは、虎の威を借る狐と言いますか、ほとんど妹のおかげみたいなものですがね」
春信「……さて、挨拶もこれくらいにして、さっそくご要望の壁の外見学ツアーを始めましょうか」
園子「お願いします~」
春信「園子様、ついてきてください」
《壁の外》
春信「あの火の海地獄だった景色が鳴りを潜めて、だいぶ緑豊かになったでしょう?」
春信「いやはや、先の作戦の成果、目覚ましいものです」
園子「……あそこまでが、私たちが拡大した領土ってことですね?」
春信「はい」
春信「園子様は既にご理解いただいているでしょうが、
神樹様の一部で作られた巨大な注連縄が、臨時の境界として新たな二層目の結界を形成」
春信「内と外の世界を隔てているわけです」
春信「領土を拡大した分だけ、神樹様の防御の密度は手薄になる」
春信「敵が新たな侵攻を開始する前、我々は準備が整い次第、
速やかに作戦の次の段階に移らなくてはならない」
園子「遠目にあちこちでちょこまかと動いているのは~?」
春信「大赦が指揮下においたバーテックスたちですよ」
園子「バーテックス……」
春信「これは、約三年前、結城様が一時的な意識の乖離と引き換えに、
神樹様にデータを提供してくれたゆえ可能となった技術です」
春信「バーテックスの御霊へのアクセス、私たち主導による調整と制御」
春信「もっとも、神樹様のフィールド内でなければ行えなかったりと、様々な条件付きの不完全な物ですが」
園子「ここから目視しただけの印象ですけど、人間とそんなに変わらないサイズなんですね~」
春信「ええ。それ以上のサイズはいま必要な作業をさせるにあたって、
無駄にエネルギーを食ってしまうだけですから」
春信「便利ですよ、バーテックスは」
春信「命令すれば、やめろと言うまで延々と働き続ける」
春信「させることがないなら、何も指示しなければ、黙ってじっと待ち続ける」
春信「奴らは人間と違って、指示が来るのを待っているあいだ、娯楽やそれに準じるものを必要としない」
園子「……バーテックス自身に、何か特有の意思はないんですか?」
春信「ありません。それこそが、人類との明白な相違点です」
春信「こちらが設定した目標達成のために、各々が状況を判断して、その都度計画を立てて行動はしてくれますがね」
園子「計画は、するんですか~。特有の意思がないのに」
春信「えーっと、例えばです」
春信「園子様は、今すぐ誰かを殴れ、殴るのは私でも構わない、と私に言われたら躊躇しますよね?」
園子「しますね~」
春信「なぜですか?」
園子「なぜ……?」
春信「誰かを殴ることはよくないことだ、と思っているのが、
少なくとも躊躇する理由の一つではないでしょうか?」
春信「これは、今すぐ誰かを殴りたい、という気分になった、
もしくは、誰かを殴るための計画を立てたい、と園子様がふとお考えになったときにも当て嵌まる反応のはずです」
春信「罪悪感、道徳観念、目的意識、色々と手段の違いはあるかもしれませんが、
とにかく人間には、自分の欲望、計画を自分自身で制御する構造が心に備わっている」
春信「一方、バーテックスにそういった構造は存在しません」
春信「バーテックスは自分で、計画そのものの是非を判断しないのです。独自の欲求も持ちません」
春信「外部からの入力に従い、その範囲内で、与えられた目的の達成だけを目指し動く」
春信「だからこそ、その入力を確保できさえすれば、バーテックスを従えることが可能になる」
春信「バーテックスは、いわば高性能な道具なのですよ」
園子「……なるほど~」
春信「園子様、どうせですから、もう少し、我々のバーテックスに近づいて見てみますか?」
春信「現在奴らがこなしている仕事は、ここを人間が住める環境にするっていう、
見ていて別に楽しくない作業ではありますが……」
園子「できるなら、ぜひ、そうさせてもらいたいですね~」
バーテックス「…………」
園子「思ってた以上に、人間に似た見た目をしてるんですね~」
春信「ええ」
春信「神樹様が操作しやすい形態にするため人型に成型しています」
園子「操作は神樹様が?」
春信「そうです」
春信「操作性を高めるため、もっと人間、それも少女に似せることは可能ですが、
現状やったところで悪趣味なばかりでメリットはありませんからね」
春信「この程度の作業をやらせるだけならば、これで十分」
バーテックス「…………」
春信「他に何か、ここでご覧になりたいものはありますか?」
園子「うーん、といっても、今のところ殺風景だし……ないかな~」
春信「わかりました。それなら壁の内側まで戻りましょう」
園子「はい~」
テクテク
園子「今日は、他の仕事もお忙しいだろうなか案内していただいて、ありがとうございました~」
春信「いやいや、むしろこっちの方が感謝したいくらいです」
春信「大赦内部での息がつまる役務から解放された上で、高校生の女の子と歩いたりお話してるだけなのに、
真面目にお仕事してることになるんですから」
テクテク
春信「今日の見学で、何か、興味が湧くようなものは見られましたか?」
園子「はい~」
園子「間近でバーテックスを見させていただいたおかげで、
今日まで半信半疑だったことがようやく一つはっきりしましたから、本当に大きな意味がある見学でした~」
春信「……わかったこと? 何ですか? 教えていただけると嬉しいのですが」
園子「いいですよ~」
テクテク
園子「――ゆーゆは、バーテックスになっちゃってたんだな、ってことです」
《夜 風の家》
風「メール、見た?」
樹「うん」
風「勇者たちを神樹様の一部で急遽建造した超高速船に乗せて、敵の総本山を叩かせに行く……って、
大赦も相当ハチャメチャなこと考えたわね」
樹「後輩たちが、前の戦いの成果として壁の外に確保してくれた新領土で、作るか組み立てるかするのかな?」
風「でしょうね、おそらくは」
風「そうそう、前の戦いと言えば、よ。メールの文面」
風「前回の作戦では、幾体もの星屑、バーテックスの回収に成功し、そこから莫大なエネルギーが採集された」
風「しかし残念ながら、得られたこの貴重なエネルギーを使わず貯蔵し、長期的に温存することはできない」
風「よって、超高速船の動力として、それは最大限に活用されることになる」
風「入手方法からして貴重なエネルギーを惜しげもなく費やす、此度の作戦の目的、
それは、神樹様と敵方の神様を、こちら側が有利になる形で接続することである」
風「これは、我々人類にとって、最後の戦いになるであろう」
風「とかなんとか、いまだにところどころ相当説明不足な文章、
一切悪びれることなくしれっと書いてあって、いい加減なんか腹立たない?」
樹「わかる」
風「無傷という最高の状態で臨める最終決戦、願ってもない機会」
風「量産型勇者が実戦投入された当初から、予想以上に計画から脱線なく事態が進行している」
風「……はぁ」
風「そういう情報、計画が端からきちんとあるなら、
もっと前から説明寄越しといてくれてていいでしょ、って思うわ」
樹「まぁ、そこは大赦だからね……」
樹「最終決戦前に説明してくれただけ、前より良くなってる、って思わなくちゃ」
風「あーあ、まったく……私たちを、命令すれば動く道具だと思ってるんじゃないかしら? 上の人たちってさ」
~☆
《朝 友奈の家 玄関前》
友奈「私が、バーテックスになった……?」
園子「うん、そうなんだ~」
大赦の人たち「「「…………」」」
友奈「私が、バーテックス?」
園子「うん~」
友奈「冗談、だよね?」
園子「ううん。残念ながら、冗談ではないんだよ~これが」
友奈「で、でも私……ちゃんと人間だよ……?」
園子「見た目と、多分、身体の中にある心は、そうだろうね~」
園子「少なくとも物理的な組成は、人間だった頃のゆーゆとまったく一緒だから、
ちょっとやそっとじゃ区別はつかない」
園子「それでも、ゆーゆがバーテックスであることは揺るがない」
園子「伊達に二十回散華して、神様に近づいたわけじゃないというか、
私、ちゃんと見比べたらわかっちゃうんだ~、そういうの」
園子「ゆーゆも、自分が知らない内にみんなが戦っていた、
ってところまでは聞かされてるんだよね?」
園子「ゆーゆが勇者として戦えないのは、
人間じゃなくて、完全なバーテックスになってしまっているから」
園子「私、最近数年ぶりにバーテックスと戦ってみて、強い違和感を覚えたんだ」
園子「そして昨日のお昼、その疑いが正しいのかどうか、確かめてきた」
園子「だから、私が言ってることは、嘘じゃないよ~」
友奈「……じゃあ、どうして私、そんなことになっちゃったの……?」
園子「んーとね~、これは大赦と私の推測だけど~」
園子「三年前、ゆーゆは戦いの最中、強引に満開して、
バーテックスの御霊にイレギュラーな接触を行った」
園子「そのとき、ゆーゆの身体は一度、代償で完全にバラバラになっちゃった」
友奈「だけど、それでもゆーゆは、無理にでも私たちの元に戻ってこようとした」
園子「その意思の力が、バーテックスの力を上手いこと刺激して、
ゆーゆがバーテックスとして再構成されるという結果をもたらした」
園子「けれどバーテックスの身体に慣れるまで、ゆーゆは目覚めることができず、意識をさまよわせて、
起きたあともしばらくは、散華していた状態の心に身体の動かし方を浸透させる時間が必要となった」
園子「って成り行きじゃないかな~」
友奈「………………」
園子「ゆーゆにはこれから、大赦の管理のもとで、個室生活を送ってもらうことになる」
園子「私個人としては、こんな選択肢しかゆーゆに提示できないのが、本当に心苦しい」
園子「だけど、ゆーゆに自分がどうなっているのかの真実を誤魔化さずに伝えられて、
かつ、大赦という組織による一番まともな処遇を考えると、これしかないだろう、って思うんだ~」
園子「大赦にも過激派はいる。私たち勇者部は、ゆーゆの本質が何も変わってないってわかってるけど、
そう感じることができない人たちが大勢いるのも道理」
園子「確かなのは、今、ゆーゆが神樹様と接触すると、この世界は滅亡してしまうってこと」
園子「……私は、ゆーゆと、その家族、それに他のたくさんの人たちが、
最終的に一番満足できる選択肢を提示してるつもりだよ~」
園子「私が二年以上籠の鳥だったときみたいなことには、絶対にならない」
園子「近々最終決戦がある。その戦いで私たちが勝利すれば、晴れてゆーゆは解放される」
園子「敵の干渉を受けて、うっかり神樹様に接触しようとする、なんて可能性が根本から断たれることになるから」
友奈「最終、決戦……」
園子「急にこんなことまくしたてられても困るよね~」
園子「自分の身体が変わった実感なんて、まるでないはずだもん~」
園子「けど、最近明らかにおかしなことはあったでしょ~?」
友奈「おかしなこと?」
園子「うん」
園子「――知らず知らず四国の壁を越える方へ、つまり、海岸にいた、海に入ってたって経験が、何度か」
《昼 友奈の個室》
ガラガラ
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「東郷さん」
東郷「………………そこに座って、いい?」
友奈「うん、もちろん」
東郷「……」ストン
友奈 東郷「…………」
友奈「私ね」
東郷「うん」
友奈「戦いが始まってたんだってこと、昨日テレビのニュースで知ったの」
友奈「でも、お父さんとお母さんは、そのこと前から知ってたみたい」
東郷「うん」
友奈「お父さん昨日泣いてた。私、初めて見たよ、お父さんのあんな顔」
東郷「…………」
友奈「お父さんね、お前がもう戦わないで済むようだと大赦から知らされたとき、正直喜んでしまったんだ、だって」
友奈「たとえどんなに多くの人の役に立つことであろうと、
そうしなければ自分たちや娘の未来までもが跡形もなく壊れてしまうのだとしても」
友奈「お前があんな目に遭うくらいなら、いっそ戦わないで欲しい、
今まで言葉にできなかったけど、ずっとずっと戦わないで欲しかった」
東郷「…………」ポロポロ
友奈「…………ああ、ごめんね、この頃ちょっと疲れてるや」
友奈「なんで東郷さんにこんな話してるんだろう、私」
友奈「ごめんね、東郷さん。ごめん」ヨシヨシ
東郷「…………」ポロポロ
《夕方 個室》
ガラガラ
夏凜「入るわよー」
友奈「あっ、夏凜ちゃん」
友奈「それは、何?」
夏凜「これ? 私の手料理よ、小さいけどお弁当」
夏凜「友奈に食べてもらおうと思って」
友奈「私に?」
夏凜「ええ、このごろ機会を見ては、風に料理の基本を教わってたの」
夏凜「で、これ、自分一人で初めて作ったの」
夏凜「お願いだから嫌だとは言わないでよ」
夏凜「初めて作れた奴は、まず友奈に食べてもらおう、って前から決めてたんだから」
夏凜「友奈、食べること好きでしょ?」
友奈「うん、好き」
夏凜「園子から聞いたわよ、ろくなもん食べさせてもらえないんですって?」
夏凜「半分神様だった散華してた頃の園子様と比較した時、
園子様より待遇が上だとみなしうるようなものを、バーテックスである友奈に日々与えることはできない」
夏凜「はぁ……。まったく、胸が悪くなる酷い話だわ」
友奈「ううん、そんなことないよ、夏凜ちゃん」
友奈「園ちゃん以上かはともかく、ちゃんと食べておいしいと思えるご飯、お昼に出てきたもん」
友奈「園ちゃんのときと比べたら、絶対破格の好条件」
友奈「まぁ、私は自由に身体が動かせるから、
園ちゃんができるだけ待遇よくなるよう取り計らってくれたから、なんだけどね」
友奈「ほら、夏凜ちゃんの家でも見覚えのあるランニングマシーンとか、そういう運動器具がそこに置いてあってさ」
友奈「こっちには本だってある。ベッドで寝られる。落ち着いた部屋の雰囲気」
友奈「室内が普段監視されてるわけじゃないし、十分プライベートだよ」
友奈「私、知らなかったけど、ここに入るまでは、
最近四六時中大赦の人間に挙動を見張られてたんだって」
友奈「家にいるかどうか、出かけるとしたら、どこに行くのか、精神面に何か問題を抱えていないか」
友奈「ここならそういう目で見られなくて済むみたい。外に出ない限りは」
夏凜「……ふーん、ならよかった」
夏凜「今日持ってきた私のお弁当に、話を戻しましょう」
夏凜「神官に、このお弁当のぶんだけ夕食の量減らしてくれるよう頼んでおいたから、
晩御飯どうしようなんて考えず、安心して食べてくれて大丈夫よ」
夏凜「食べて……くれる?」
友奈「うん、もちろん」
夏凜「よかった」
夏凜「じゃあ、はい」スッ
友奈「うん」
友奈「開けるね?」
夏凜「どうぞ」
パカッ
友奈「いただきまーす」
友奈「……」モグモグ
夏凜「どう?」
友奈「おいしいよ、凄く」ニコッ
夏凜「そっ、よかった」ホッ
友奈「……ねえ、夏凜ちゃん」
夏凜「なに?」
友奈「みんなのことを、よろしくね」
夏凜「ええ。任せなさい」
友奈「でも、無理はしすぎないでね」
夏凜「それを、よりにもよって、無理しがちな友奈に言われたくはないわよ」
友奈「私も無理しちゃいがちだからこそ、だよ」
夏凜「……ふふ、私と友奈、というよりも勇者部のみんなって、そういうところあるわよね」
夏凜「みんな無理しがち」
友奈「勇者だからね」
夏凜「そうね、勇者だから」
夏凜「……心配しなくても、前、連続で満開したときみたいなことは、やりたくてももうできないわよ」
友奈「まあ、そっか」
夏凜「大丈夫。大船に乗ったつもりで待ってなさい、友奈」
夏凜「しっかり朗報引っ提げて、帰ってきてあげるから」
the 硬苦しい説明回連続で、読んでる人のこと考えるとうーんと思うけど
映像や音の表現にも、地の文にも頼らないとこうならざるを得ない面が…
~☆
《朝 墓地》
東郷「…………」
園子「…………」
園子「ミノさん」
園子「最後の戦い、私頑張るから~」
園子「だから、私に勇気を頂戴~」
東郷「…………」
東郷(行ってきます、銀)
~☆
《四国の外 神樹船の甲板》
風「いやぁ……」
風「壮観な眺めだねぇ」
風「これ、何体いるわけ?」
バーテックスs「…………」ズラズラ
夏凜「七十六体、数えたわ」
風「…………」
風「七十六体」
風「はぁ……、この量は、ちょっと気が重いわね」
風「四国の周りにいたのが十二体だから、その約六倍でしょ?」
夏凜「なせば大抵なんとかなる、よ」
夏凜「どのみち私たちはやらなきゃいけないんだし、滅入っててもしょうがないわ」
夏凜「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」
夏凜「上杉鷹山公もそう言ってるじゃない」
風「……あー、奇しくもそれ、勇者部五箇条の文言の元になったヤツだわ、確か」
夏凜「へー、そうなんだ」
樹「でも、どうしてこんなにいっぱいいるんだろう……?」
樹「この戦力があるなら、敵からしてみれば、
最初から全部ぶつけてきたら良かったんじゃないかな?」
樹「何もこんな遠いところで待機させておかなくとも」
園子「きっと、奴らにとって侵攻に適した時期が来るまで、
私たちや神樹様に戦力の存在、切り札を悟られたくなかったんじゃないかな~?」
樹「と、いいますと?」
園子「今までだって、四国に入って来たバーテックスは十二体同時だったわけじゃないでしょ~?」
園子「防衛されたら、次はその防衛を潜り抜けられるように、
って試行錯誤はしてたみたいだけど~」
園子「神樹様の結界内に、本格的に大戦力を投入できるような方法を確立してから、
全軍一度に投入するつもりだったと考えれば、
ここにこんなたくさんのバーテックスがいることの辻褄があうよ~」
園子「相手に存在をまったく知られていなければ、その対策を講じられることは普通ないからね~」
樹「なるほど」
東郷「…………」
夏凜「東郷、大丈夫? 緊張してる?」
夏凜「私たちの目的は、あいつらを殲滅することじゃなくて、
神薙を持った巫女としてのあんたを、敵の中枢まで送り届けること」
夏凜「けど、だからって、東郷が一人で緊張背負う必要ないのよ」
東郷「ううん、大丈夫」
東郷「私、これからの戦いに、緊張してるわけじゃないから」
東郷「…………」
東郷(私は、友奈ちゃんがこれ以上無茶をする羽目になるくらいなら、
私たちが代わりに戦うから、もう戦わないで欲しいって思ってた)
東郷(だけど、こうして実際に危ない橋を渡る局面になると、
隣に友奈ちゃんがいないのが、とても心細い)
東郷(一緒にいて欲しかった、って思っちゃう)
東郷(弱いな、私)
《天石戸 前 勇者対バーテックス最前線》
夏凜「うらあああああああああ!」
御霊「」パリーン!
夏凜「…………はぁ、はぁ」
夏凜(これで、一匹)
夏凜(他の戦況含めても、残り七十体ってところかしら?)
夏凜(不甲斐ない話ね)
夏凜(連続で満開したときは、一人であっという間に五体を屠ったって言うのに)
夏凜(満開なしじゃ、致し方ないかもだけど)
夏凜「あああああああああ!」ダッ
バーテックス○「……」ガキィン!
夏凜「くっ!」
夏凜(にしたってこいつら、連携とれすぎでしょ!)
夏凜(客観的に見て、四国の周りにいたバーテックスより、一体一体強いんじゃないかしら? こいつら)
夏凜(満開の基礎ステータスアップ引継ぎがあるから、私はまだ戦えるけど)
夏凜(後輩たちは、この連携と能力差じゃ、まともに相手するのは厳しすぎる)
夏凜(そもそも勇者システム自体が、攻撃力に優れていても、防御力は低い、そういうのが多いって言うのに)
バーテックス△「……」ブンッ!
夏凜「つァっ!」ガキィン!
バーテックス□「……」ドンッ!
夏凜「こんのぉっ!」ガァン!
夏凜(ダメ……)
夏凜(こっちのグループが、徐々にだけど分断されて行ってる)
夏凜(東郷も、全然前に進めてない)
夏凜(このままだと、各個撃破されて、それでお終いだ)
夏凜(どうにかしないと私たち、何もできないまま全滅しちゃう……っ!)
夏凜『大丈夫。大船に乗ったつもりで待ってなさい、友奈』
夏凜『しっかり朗報引っ提げて、帰ってきてあげるから』
バーテックス×「……」キュィィィィィン!
夏凜「……へぇ、私と同じ、双剣使いってわけ」
夏凜「やって、やろうじゃないのよぉっ!」ダッ
《夜 四国内部 壁際 海中》
友奈「――――」
友奈「…………っ」
友奈(ここ、海の中だ)
夏凜『――何も――でき――全――ちゃう』
友奈「…………」
友奈(みんなのところに、行かなきゃ)
友奈(勇者だったときみたいに、身体中に力がみなぎってる)
友奈(だから、今なら行ける)
《壁の外 注連縄の内 神樹様の制御下区画》
乙女座バーテックス「…………」
星屑s「…………」
友奈「あなたたちが、私を連れて行ってくれるんだね」
乙女座バーテックス「…………」
星屑s「…………」
友奈「私はみんなのところに行きたい」
友奈「みんなを助けなきゃ」
友奈「だから、連れて行って」
友奈「言うことを聞いて」
友奈「私も、あなたたちと同じ、バーテックスなんでしょ?」
星屑s「……」ユラァ
星屑「……」ガブッ
友奈「…………っ!」
星屑s「……」ワラワラ
グジュ ブチッ グジュッ グチャッ
友奈「…………」ボキッ ゴキッ
友奈(……すごく不思議な感じ)
友奈(どこを食べられても、全然痛くないや)
~☆
《天石戸付近 最前線》
ポータルバーテックス「……」ベキッ バキッ ゴキッ
?「…………」
夏凜「っ!?」
夏凜(なに、あれ)
夏凜(バーテックスの中から、新しいバーテックス……?)
夏凜(って、今それどころじゃないわよ、こっちは!)
バーテックス○「……」ビュンッ!
バーテックス△「……」ブンッ!
バーテックス□「……」ドンッ!
夏凜「……っ」キィン! キィン!
バーテックス×「……」ダッ
夏凜「!」
夏凜(しまったっ!)
夏凜(畜生! 避けきれな――)
ダッ
?「……」ガキィン!
バーテックス×「……」グググ
夏凜「!?」
夏凜(バーテックスが、私を守った?)
夏凜「……」ハッ
夏凜(とりあえず、距離をとらなきゃ)
バッ
バーッテクス○△□×「…………」
?「…………」
夏凜「…………」
夏凜(もしかして、あのバーテックスは――)
東郷「夏凜ちゃんっ!」ダッ
夏凜「東郷!」
東郷「何ぼさっとしているのっ!」チャキッ
夏凜「待ってっ!」バッ
東郷「どいて、夏凜ちゃん! いったいどうしたって言うの?!」
夏凜「あの二足歩行してる巨人みたい奴、もしかすると友奈かもしれないのよ!」
東郷「っ!?」
ユウナバーテックス「……」バゴォン!
バーテックス○「……」グシャッ
ユウナバーテックス「……」バゴォン!
バーテックス○「……」グシャッ
ユウナバーテックス「……」バゴォン!
バーテックス○「……」グシャッ
バーッテクス△□×「…………」
夏凜「ほら、あのバーテックス、他のバーテックスを攻撃してる」
夏凜「それに、見て」
夏凜「あいつら二体が同士討ちを始めてから、他のバーテックスたちの様子がおかしいわ」
夏凜「どいつもこいつも攻撃に精彩を欠いているし、
いえ、それどころか勇者への攻撃を、たくさんの奴が中止し始めちゃってる始末」
東郷「確かに、そうね」
東郷「でも、どうしてバーテックスは、あのバーテックスに殴られ続けるだけで、
何も反撃しないのかしら?」
東郷「周りにいるのも、割って入って止めようと全然しないし……」
園子「……」タンッ
東郷「そのっち、来たのね」
園子「うん。混乱のおかげで隙ができたからね~」
園子「二人が今してた話だけど、味方であるバーテックスに対する攻撃が、
バーテックスには禁止されてるんじゃないかな~?」
園子「だから、その根底を覆す個体が仲間内に現れて、どうしようもなく混乱しちゃってる~」
東郷「ねえ、そのっち」
東郷「夏凜ちゃんが言うには、あのバーテックスに跨って拳を振っているのが、
友奈ちゃんかもしれないって……」
園子「うん。あれはゆーゆだよ、間違いなく」
東郷「…………」
東郷「それが本当なら、どうして友奈ちゃんはここまで来られたの?」
東郷「友奈ちゃんは、私たちみたいに船で来ることなんてできなかったはず」
園子「ん~、そうだね~」
園子「私たちも、ここ二戦、四国の中で戦い終わって樹海化が解除されたら、
いつも元いた場所に転送してもらってたでしょ~?」
園子「あれは、神樹様の力が及んでる場所なら、理論上はどこにでも転送できる」
園子「それと同じことが、友奈ちゃんの意思によって、
バーテックス側で行われたんじゃないかな~」
園子「この星の神樹様による防御結界内以外の場所は、
すべてバーテックスとそれを傘下に置く神様たちの支配下だからね~」
東郷「なるほど……」
夏凜「細かい話はどうでもいいけど、要するに現状ってこういうことでしょ」
夏凜「相手は友奈を攻撃できない、だけど友奈は相手を攻撃し放題」
夏凜「これなら、このまま行ければ勝てるわ、私たち」
夏凜「東郷を敵の中枢部まで送れる」
夏凜「バーテックスが七十体とか、そんなのもう関係ない」
園子「……そう、上手くいくといいんだけど~」
天石戸「」ピカァァァァァ!
勇者s「っ!」
夏凜「言ってる傍から、敵の中枢らしき岩が、なんか光り始めたわね」
園子「……敵の動きが、完全に止まった?」
東郷「ッ!」
東郷「友奈ちゃんっ!」
ユウナバーテックス「……」ドロドロ
夏凜「と、溶けてる……」
園子「他のバーテックスたちも、溶けるスピードに差はあるけど、溶け始めてるよ~」
東郷「でもこれじゃ、どう見たって、友奈ちゃんが溶けきるのが圧倒的に速いわ!」
夏凜「わ、私たち、どうしたら……」
風「おーい、みんな~!」タンッ
風「一度撤退しろと言う命令が、大赦から来たわ!」
風「これから七十体ほどのバーテックスの包囲網を掻い潜り、
あの敵の中枢まで神薙を持った東郷を送ることは、現実問題不可能」
風「作戦の立て直しだって」
風「樹が、後輩たちをまとめて乗船させてる」
風「だからみんなも急いで!」
東郷「待ってっ!」
東郷「あそこにまだ友奈ちゃんがっ!」
風「はぁ!? 友奈ァ?」
夏凜「あの、ドロドロに溶け始めて、苦しんでるバーテックスが、友奈なのよ!」
風「……嘘でしょ?」
園子「それが本当なんです、部長~」
風「えっと、あんたたち、本気で言ってるわけ……?」
園子「はい~」
風「…………」
風「だったら何ボケっと突っ立ってるのっ!」
風「あそこにいるの、友奈なんでしょ?」
風「無理やり引き摺ってでも、連れて帰るわよっ!」ダッ!
夏凜「あっ! 風!」ダッ
東郷「…………」ガタガタ
東郷(あのサイズのものを引き摺って帰る?)
東郷(そんなの無理よ)
東郷(樹ちゃんのワイヤーを使っても、重量や体長が、明らかに引っ張れる規模じゃない)
東郷(それに、たとえ樹ちゃんや後輩たちの力も借りて引っ張れたとしても、船の積載量を超えるわ)
東郷(連れて帰ることはできない)
東郷(でも、だけど――)
園子「みもりんっ!」
東郷「!」
園子「なせば大抵なんとかなる、だよ~!」
東郷「あ……」
園子「私先に行って、ゆーゆのこと引っ張ってるね~」ダッ
東郷「…………」
ダッ
東郷(そうだよ)
東郷(諦めたらダメだ)
東郷(友奈ちゃんはあのとき、根性で私たちの元に帰ってきてくれた)
東郷(ちゃんとそれを知ってるのに、今できることを何も試してないのに、あっさり諦めちゃダメだ)
東郷(そんなの、勇者じゃない!)
風「おっ、やっと来たわね、遅いわよ!」
東郷「すいません!」
園子「みもりん、そっちを持って~」
東郷「うん!」ガシッ
東郷「……?」
東郷(あれ? なんだろう、この感じ)
東郷(何かが私の頭の中に、流れ込んでくるような……)
東郷「…………」グイグイ
園子「みもりん?」グイグイ
東郷(まさか、これって――)
東郷の脳裏には青い空が無限に広がっていた。
現実世界とは隔絶された、彼女の意識の内に構築された虚構。
東郷は背後に、神樹様の気配を感じた。
一方、前方には、醒めるような空の下、友奈が見える。
友奈は苦しげな表情で目をつむり、空以外何もない空間で、ひたすらじっと佇んでいた。
「友奈ちゃん!」
東郷が友奈の元に向かって駆け出した。
左手には神薙を持っていて、そちらの手は友奈へと差し伸べることができない。
右手を差し出した。友奈の腕を掴む。そして、引き寄せる。
思い切り抱きしめる。
「……東郷、さん?」
《天石戸付近 最前線》
ユウナバーテックス「……」ボトッ
ドサッ
夏凜「っ!」
夏凜「なんか身体の中から出て来たわよ!」
夏凜「風! 何が出てきたっ!?」
風「友奈!」
風「友奈が出て来たわ!」
夏凜「なんですって!?」
風(出てきたと言っても、ほとんど透明で色がない状態だけどね)
東郷「……」ドサッ
風「と、東郷!?」
園子「とりあえず!」
園子「ゆーゆが帰って来たんだから、命令通りここは引こう~!」
園子「ゆーゆがバーテックスからこぼれてきたのと同時に、岩の輝きも止まった」
園子「私の予想が当たってるなら、またバーテックスが勢いを盛り返して、私たちを襲ってくるはずだよ~」
風「わかったわ!」
風「私が、前に立ち塞がった奴らを切り捨てる!」
風「だから夏凜と園子は、それぞれ一人ずつ背負って、急いで追って来て!」ダッ
夏凜「私は友奈を背負うわ」
園子「じゃあ、私はみもりんだね~」
グイッ
夏凜「…………」
ユウナバーテックス「……」ドロドロ
夏凜(まだ溶けてる)
夏凜(あとちょっとで、形を完全に保てなくなるんだろうな)
園子「にぼっしー、急いで~!」
夏凜「!」
夏凜「ごめん! 今行く!」ダッ
《友奈の個室》
友奈「………あ………あ」
友奈(ここは……?)
友奈(私に用意された部屋だ)ガバッ
友奈「…………」
友奈(腕が、白い)
友奈「……」
友奈(鏡、姿見……ベッドの近く……)
姿見「――」
友奈「……」
友奈(薄い灰色の目、真っ白の髪の毛と肌)
友奈(すごいや)
友奈(バーテックスというか、ちょうど星屑の全身が大体白色だし、
いよいよ私、バーテックスの成りそこないみたいだ)
~☆
《大赦 施設内》
園子「大赦は、量産型勇者たちに、バーテックス由来の力を与えている」
園子「違いますか~?」
春信「……その通りです、園子様」
春信「仕方がなかったのです」
春信「精霊の加護はない、満開もない」
春信「そんな中で勇者たちの損耗を最小限に抑え、運用していくためにあたって、
バーテックスの回復力、痛みを感じないという性質は、最高のプラス要素だった」
春信「ほんの少しですが、バーテックスの屑を植えつけて、定着させ、
勇者変身時にその力を引き出して戦ってもらう」
春信「約三年前、結城様がもたらしてくれた、新たな可能性」
春信「神樹様によるバーテックスとその力への干渉」
春信「一人でも多く生きて帰ってこれるようにする、作戦の成功確率を高める」
春信「そのために我々は、我々にできるだけのことをしなければならない」
春信「……もっとも、バーテックスの屑、
神樹様の種と似た性質のものを勇者たちに埋め込んだのは、あくまでも神樹様なので」
春信「厳密に言うと、この件に関して私たちが何かを直接行っているわけではありませんがね」
春信「代わりのパワーアップをお願いします、とお願いしたのが、一応当てはまるでしょうか」
園子「…………」
園子「今の私には、量産型勇者の秘密について、今更大赦を責める気も、それを無理に公表する気もありません」
園子「私たちのとき、満開の場合と違って、大なり小なりバーテックスになったからといって、
それで何か目に見える実害があるわけじゃない」
園子「知らなければ、知らないままでなんともない」
園子「何より、勝つために必要だったということは、ギリギリ理解できます」
園子「ただ、私がいま訊きたいのは、こういうことです」
園子「バーテックスの力を神樹様が制御できる」
園子「変身した勇者がその力を少しではあるが使用できる」
園子「となれば、今のゆーゆなら、勇者に変身できるんじゃないか、と」
春信「ええ、できるはずです」
春信「先の戦い、無意識であるにせよ、
東郷様が、神樹様と結城様の接続を新たにしてくださいました」
春信「結城様は晴れて、敵から操作を受ける可能性から一歩お離れになった」
春信「語弊を恐れずわかりやすく言えば、今の結城様は、
壁の外で我々のため働いているバーテックスたちと、神樹様にとっては条件がほぼ同じということです」
春信「これは公式回答ではありませんが、検査の結果、問題がないとわかれば、
最終決戦の仕切り直し、今度は結城様にも勇者として参加していただくつもりで大赦はいる」
春信「と考えていただいて、結構だと思います」
《朝 風の家》
風「……ごほ……ごほ」
風「…………あ゛ぁ゛-」
樹「お姉ちゃん、そんな体調なんだから、寝てなきゃダメだよ」
風「でも、樹の朝ごはんが……」
樹「パンくらいなら、私焼けるから」
樹「今日は学校お休みして、一日しっかり身体を休めて」
樹「最終決戦二回目、近いんだよ」
風「……ふふっ、そうね」
風「そうさせてもらうわ」ゴロン
樹「朝、バナナ食べる?」
風「うん」
樹「帰ってきたら、簡単なおかゆ私が作るね」
風「樹……が……?」
樹「もう」
樹「私だって、ネットで調べながら作ったら大丈夫だよー」
樹「私、高校生なんだから」
風「……それもそうね」
樹「自分で食べるパンだってホントに焼けるもん」
樹「お姉ちゃん、朝バナナじゃなくてパンにする?」
風「ううん、バナナがいい。食べるの楽だし」
樹「そっか」
風 樹「…………」
樹「お姉ちゃん」
風「ん」
樹「これ以上無理し過ぎないでね」
風「無理なんか――」
樹「してるよ」
樹「戦いのとき、後輩たちがなるべく戦いやすくなるように、
その前に立って、一際激しい攻撃に曝されて」
風「……夏凜や園子だって、前には出るじゃないの」
樹「お姉ちゃんのは、そういうのとまた違うでしょ」
樹「誰かが攻撃を受けそうになったらそれを防御、
誰かが攻撃に詰まったらそれを援護」
樹「自分のペースとか全く考えずに、戦いの間、後輩たちのことばっかり考えてる」
樹「しかも、ここ最近いっつも身体の調子よくないの、必死にかばって、かばって、それで……」
風「樹……」
風「なーんだ、ばれちゃってたのね」
樹「当たり前だよ」
樹「何年一緒にいると思ってるの」
風「…………そっか」
風「隠そうとしてたから、余計に心配かけちゃってたんだね、ごめん」
樹「…………」
風「でも、樹のこれ以上無理するな、には従えないと思う」
風「樹も、さっき言ってたけど、最終決戦二回目が近いからさ」
風「次無茶しなかったら、今後の人生どこで無茶するのって話だよ」
風「ゴールはすぐそこだってわかってる。だったら、無茶するしかないでしょ、今は」
風「私や、樹、勇者部は先輩だからね」
風「ドン、と後輩たちに背中で示しとかないと、これが勇者ってもんだぞ、って」
樹「……それは、そうかもだけど」
樹「せめて、私が守れる近く、私が守ってもらえる近くに、いて欲しいよ」
風「あー、樹は攻撃を受けながら進むゴリゴリの近接戦闘型とは、またちょっと違うからね」
風「どうしても私とは戦う場所はずれちゃうよね」
風「……うーん、そこら辺は、戦ってる私の後ろをどうにか追っかけてきてもらうしかないかな」
樹「そんなこと言われても」
風「大丈夫大丈夫。なせば大抵なんとかなる、よ」
風「……はぁ、しっかし喋ってたら、急に疲れてきたわ」
風「しばらく静かにしてていい?」
樹「あっ! た、体調悪いのに長々話しちゃってゴメン」
風「大丈夫」
風「テーブルの上にバナナ置いといて。今からちょっと寝るから」
《夕暮れ時 海岸》
夏凜「…………」ブンッ! ブンッ! ブンッ!
夏凜(次は、負けない)
夏凜(あの双剣使いのバーテックスも、他の奴らも、全部全部、刀の錆にしてやる)
夏凜「…………」ドサッ
夏凜「……ふぅ」
夏凜(前回の戦い、やれるやれるって自分を鼓舞したけど、流石に地力不足だった)
夏凜(でも、次回は違う)
夏凜「…………」
夏凜「……はぁ」
夏凜「また、私たちが、満開の力に頼らざるを得なくなるなんてね」
《勇者の部隊を預かる隊長クラス及び勇者部 一堂に会する》
風「えー、このたび最終決戦に参加してもらうことになりました、結城友奈さんです」
風「はい、拍手ぅー!」パチパチ
パチパチ パチパチ
友奈「どもども、結城友奈です」ペコペコ
風「それで、ですね」
風「最終決戦で、私たち勇者部に限り、満開が実装されることになったわけですが――」
~☆
《夜 外》
後輩A「あの、友奈先輩」
友奈「なに?」
後輩A「ちょっとお話いいですか?」
友奈「うん、いいよ。どうしたの?」
後輩A「えっと、私、悩んでることがあって……」
友奈「あって?」
後輩A「どうしたら、先輩たちみたいに、そんなどっしりと構えていられるんですか?」
友奈「え?」
後輩A「その、先輩たちって、これからすごく大変な戦いが始まるはずなのに、
どこか落ち着いてると言うか自然体じゃないですか」
後輩A「私ここ数日、全然眠れないんです。食欲もなくて」
後輩A「先の戦いで、七十体以上のバーテックスを見てしまった、それと直接戦ってしまった」
後輩A「自分がまたあれと戦って、勝負になるビジョンが浮かんでこない」
後輩A「それが、勇者として情けなくて……」
後輩A「最初は、みなさんが単純に強いから、こんなにも差があるのかな、と思ったんですけど」
後輩A「それ以上に、心構えの差があるんだろうな、って気付いた」
後輩A「だから、その境地に辿りつくためのコツを、何かしら教えていただけたら……って」
友奈「……境地」
友奈「うーん」
友奈「みんなはどうかわかんないけど、少なくとも私は、そんな難しいこと特に考えてないからなー」
友奈「うん」
友奈「挨拶はきちんと」
友奈「なるべく諦めない」
友奈「よく寝て、よく食べる」
友奈「悩んだら相談!」
友奈「なせば大抵なんとかなる」
友奈「この五つが、勇者部五箇条」
後輩A「そ、そうなんですか……」
後輩A 友奈「…………」
友奈「私、正直言うと、七十体以上のバーテックスとみんなで戦ったときの記憶、あやふやなんだよね」
友奈「あのときは、バーテックスの中で自分の意思を維持しようとするだけで、精いっぱいだったから」
後輩A「……あ」
友奈「だけど、今、自分がこれから何ができるのか、
ってことについては、しっかりわかってるつもり」
友奈「みんなで戦う。根性で勝つ。それで、すべて決着する……はず」
友奈「実際大赦は、最終決戦が終わったら、満開の後遺症は前のときみたいに回復する」
友奈「って言ってる」
友奈「ただ、もし仮にそれが嘘だったら?」
友奈「私だって、怖いよ」
友奈「満開したら、また散華する。身に染みてわかってる」
友奈「そして、次の戦いで、もし終わらなかったら? って考えることもある」
友奈「勝てる保証、ビジョンなんてものも全然浮かんでこない」
友奈「それでも、私ができることは、根性出し惜しみせずに戦うことだとわかってる」
友奈「だから、私はやるんだ。自分ができることを」
友奈「私だって、悩みが表だって出てきてないだけで、あなたとそんなに変わんないよ」
友奈「不眠や食欲不足に今のところ悩まされてないのは、ありがたいけど」
後輩A「……」
後輩A「ううん、やっぱり友奈先輩は、私とは違う」
後輩A 「先輩は、本当に強い人です」
友奈「そうかな?」
後輩A「はい」
後輩A「でも、そんな強い先輩にこうして自分の悩みを聞いてもらって、
そして、先輩も似たような悩みを内心抱えてるんだと知ったら、なんかちょっと元気が出ました」
後輩A「私一人としてじゃなくて、勇者として、みんなと一緒になら、
最終決戦の一回くらいは頑張れるような気がちょっぴり」
後輩A「なんて言ったって、そのために私たち、頑張って日々訓練してきたんですから」
友奈「そうそう、その意気だよ」
後輩A「なせば大抵なんとかなる、ですよね?」
友奈「うん」
友奈「あと、悩んだら相談、だよ」
《東郷の家》
園子「今回の作戦は、神薙を持った巫女であるみもりんと、勇者ゆーゆが要」
園子「二人を敵の中枢、私たちが前回目撃したあの巨岩の奥へと行かせることが目的」
園子「しかるべき地点に到達したら、ゆーゆが、敵の神様とみもりんを直結する霊的経路を確保して、
みもりんが神樹様と敵の神様を、こちらが有利なようにやり取りさせる」
園子「前回の戦いの果てに、完全に予想外の成り行きだけど、ゆーゆがまた勇者になれるようになった」
園子「つまり、神樹様と親密なラインを築けるようになった」
園子「だからこういう作戦がとれるようになった」
園子「って大赦の人は言ってたよ~」
東郷「……先の戦いがなかったら?」
園子「みもりんが自分で霊的経路を確保して、
なおかつ神樹様と敵の神様を、こちらが有利なようにやり取りさせる」
園子「ようは、今回の作戦でみもりんが担当する作業の二倍をこなすことになってたね~」
東郷「つまり、二人で分担してやれば、作戦が成功する公算をもっと高められるってことね」
園子「そういうことだよ~」
東郷「……ねえ、そのっち」
園子「うん~?」
東郷「覚えてる?」
東郷「私が鷲尾だった頃、二人で神樹様に直に触らせてもらったときのこと」
園子「当然だよ~」
園子「あのときのことが発端となって、今回みもりんは神樹様の巫女に選ばれたんだし~」
東郷「あのときは、何が何やらわからない内に何かが終わってしまった記憶があるのだけど、
私、作戦のために神樹様とお話する練習とかしなくていいのかしら?」
東郷「経験不足だったりしない?」
園子「それは、大丈夫みたい~」
園子「やり取りするのは、こちらの神様とあちらの神様であって、
あくまでもみもりんはその対決の場を設けるだけだからね~」
園子「人間と神様がお話するときとは状況が全然違うから、
たとえ今神樹様との対話を練習しても本番では全然参考にできないんだって~」
東郷「そっか」
東郷「でも、やっぱり不安だわ」
東郷「ぶっつけ本番でやらなきゃいけないというのは」
園子「みもりんならきっとやれるよ~」
園子「なせば大抵なんとかなる~!」
東郷「……ふふっ、そうね」クスッ
東郷「なせば大抵なんとかなる、わね」
《昼 風の家》
樹「わ~、おいしい~!」
夏凜「ふっふっふ、どうよ……」
夏凜「これが私の実力ってやつよ!」
風「……」モグモク
風「うん」
風「ようやく夏凜、一人で料理させても安心って感じになって来たわね」
夏凜「ふっ、ふっ、ふっ」
夏凜「……で、そう言えば、あんたの体調って今どうなの?」
夏凜「ご飯まともに食べられてるみたいだし、良くなったってこと?」
風「ん? そうね。昨日の日中寝て、帰ってから夜またぐっすり寝たらよくなったわ」
風「昨日の夜、勇者たちに友奈を紹介してる時点で、そこまで体調悪くなさそうだったでしょ」
夏凜「まあね」
夏凜「樹は?」
風「寝たわ」
夏凜「そっ」
夏凜「……風」
風「なに?」
夏凜「最終決戦が終わったら、あんた何がしたい?」
風「終わったら? うーん、そうね」
風「うどんをお腹いっぱい食べる、とか?」
風「いっつも暇さえあればやってることだけどさ」
風「夏凜は、何したい?」
夏凜「……最近凄く思うの」
風「うん」
夏凜「はやく、中学の頃みたいに、ちゃんとまた勇者部の活動をしたいな、って」
風「……」
夏凜「保育園で劇やったり、商店街のお掃除したり、部活の手伝いしたり、
犬猫の新しい飼い主探したり……」
夏凜「高校生になってからはほとんど、その時間を勇者としての鍛錬と指導にあててる」
夏凜「この戦いが終わったら、遊んだり、食べたりもいいけど、
私はまず、勇者部の活動がしたい」
風「そうね」
風「言われてみれば、私もうどんより、そっちが先の方がいいかも」
夏凜「だったら、風」
風「ん」
夏凜「私たちみんなで生きて帰るわよ」
夏凜「誰が欠けてもダメなんだから」
風「ふふっ、なーに当たり前のこと言ってんの」
夏凜「心配してんのよ、部長があまりにも無茶しすぎないかって」
風「三年前、友奈を除けば、ぶっちぎりで無茶した前歴あるの夏凜じゃない」
夏凜「まあね」
夏凜「ただ、一応言っとくわ」
夏凜「いくら勇者として不調だからって、それを無茶で埋め過ぎようとしないでね」
風「うん」
風「肝に銘じておくわ」
~☆
《天石戸 バーテックスの群れを臨む船上》
風「なんというか、帰って来たわね……」
樹「やっぱり、怖いよ」
東郷「総数は八十八」
東郷「四国の周囲にいたバーテックスが補充されて、そのぶん増えてますね」
東郷「星屑も、溢れてる」
東郷「私たちが倒した奴ら、あのとき友奈ちゃんと一緒に溶けていた奴らが、
もうちょっとその影響を残してくれていたら良かったんですが」
風「まあ、敵さんにも準備時間はしっかりあったわけだし、想定の範囲内よ、これくらいなら」
夏凜「どうせ殲滅すれば七十も九十も一緒でしょ」
夏凜「リベンジは、完全無欠に決めていきましょう!」
乙女座バーテックス「……」
友奈「…………」
友奈(なんだか複雑な気分だな)
友奈(あの子が、私の身体になってくれてたんだと思うと)
園子「それじゃあ、せっかくゆーゆも加わったことだし、
戦闘前の景気づけに真勇者部として円陣を組もう~」
風「……」
風「勇者部ファイトォ!」
一同「「「「「「 オオオオオォ! 」」」」」」
夏凜「さーて、まずは私から、ね」
夏凜「東郷と友奈はしっかり休んどきなさいよ」
ピカァァァァァ!
夏凜<満開>「私たちが、あんたらの征く道を斬り開くんだからっ!」ダッ
バーテックス○「……」
夏凜<満開>「うらぁああああああああっ!」ザンッ!
夏凜<満開>「まず、一体っ!」
バーテックス△「……」
夏凜<満開>「っ!」ザンッ!
バーッテクス△「……」ガキィン!
夏凜<満開>「このぉっ!」ザンッ!
夏凜<満開>「二体っ!」
バーッテクス□「……」
夏凜<満開>「三体目!」ザンッ!
バーテックス×「……」バッ
夏凜<満開>「!」
夏凜<満開>(しまっ――)
風<満開>「らああああああ!」ガキィン!
バーテックス×「……」バッ
夏凜<満開>「!」
夏凜<満開>「風、助かったわ!」
風<満開>「友奈と東郷はちゃんと行かせたわよ」
風<満開>「あとはこいつらを、全てが終わるまでの間、
ずっとここに惹きつけておくのがあたしたちの仕事。わかってるわよね?」
夏凜<満開>「もちろん」
風<満開>「じゃあさっそく、勇者部剣で戦うタッグ結成と、行きましょうか!」
<天石戸 岩壁>
友奈<満開>「勇者ァ!」
友奈<満開>「パアアアアァァァンチ!」ドガァン!
友奈<満開>「東郷さん、岩に穴開けたよ! 急いで!」
東郷<満開>「うん!」
ビュゥゥゥゥン
友奈 東郷「…………」
友奈<満開>「目的地に着くまで、敵にまったく会わずってわけにはいかないよね」
東郷<満開>「そうだね」
友奈<満開>「満開には時間制限もある」
友奈<満開>「このまま散華なしで最後まで、は無理そうかな、いくらなんでも」
東郷<満開>「…………」
友奈<満開>「東郷さん」
友奈<満開>「二人で一緒に、帰ろうね」
東郷<満開>「……うん」
《天石戸 前》
夏凜「ねえ、様子がおかしいわっ!」
園子「!」
園子「バーテックスたちを、互いにそれぞれ近づけさせないでっ!」
風<満開>「っ!」ガキィン
風<満開>「無理よ!」
風<満開>「何体かは足止めできても、こんだけ数がいたら足止めしきれない!」
ワラワラ ワラワラ
勇者一同「っ!」
バーテックス○<合体>「…………」
バーテックス△<合体>「…………」
バーテックス□<合体>「…………」
夏凜「……参ったわね、倒した奴らが超スピードであの岩から復活するだけならまだしも、
その上合体までやられるとなると……抑えきれるかしら?」
風<満開>「弱気になるんじゃないわよ、夏凜」
風<満開>「さっきだいぶ数減らしてたのもあって、これで総数十一体になったじゃない」
風<満開>「御霊を壊さなきゃいけないってことはない」
風<満開>「数が減って、狙いを絞り持久戦に持ち込みやすくなった、と考えればいいわ」
夏凜「そう言うあんたが、率先してみんなの盾になってるせいで、
今のところ一番満開の回数――」
園子「敵さん、攻撃してくるみたいだよ~」
風 夏凜「!」
後輩「風先輩!」
風「っ!」
風(まずい、腕をやられた)
風(散華で目、耳、鼻、軒並み全滅)
風(いくら勇者システムのサポートがあるからって、これじゃ……)
風(ああ、ダメだ……意識が……)
風「…………」ドサッ
夏凜「風っ!」
樹「……お姉ちゃん!」
園子「風先輩を、船上まで下がらせて」
園子「起きたとき、戦線復帰しようとしないように、
あと、バーテックスの攻撃から守るために、数人護衛に割いて」
後輩「は、はい」ダッ
樹「お姉ちゃん……」
園子「……」
園子「二人は、後輩たちと一緒に、右の七体を相手してほしいな~」
園子「私が、左の四体を引き受けるから~」
夏凜「!」
夏凜「一人だなんて、そんな――」
園子「何も、魂胆なく、自分だけで敵を背負い込もうとしてるわけじゃないよ~」
園子「私、満開した時の攻撃力ありすぎるのが原因で、細かい制御がきかなくて、
味方が近くにいると思いきり戦えないんだ~」
園子「大丈夫、大丈夫~」
園子「一つの場所で単身粘り続けるの、これが初めてじゃないから~」
園子「ここは、私が、勇者として最ベテランの意地を見せるところだよ~」
夏凜「……」
夏凜「わかったわ、行きましょう樹」
樹「う、うん」
ダッ
園子「…………」
園子「とは言っても、みもりんと二人で戦ったあの時や、
ミノさんと三人で戦ったときより一体多いから、大変だよね~」
園子「敵は合体もしてるし~」
園子「根性、とにかく根性で、頑張らなくちゃ~」
園子(……だよね、ミノさん)
園子「――勇者部五箇条、一つ~」
園子<満開>「なせば大抵なんとかなる~っ!」
~☆
《雨石戸 内奥 中枢》
東郷<満開>「これが、敵の本営、みたいだね」
友奈「うん……」
◆「……」
東郷<満開>「友奈ちゃん……大丈夫?」
友奈「ははっ、どうにか、ね」ボロボロ
友奈「げほっ、ごほっ……」
東郷<満開>「……」
東郷<満開>「早く済ませて、早く帰りましょう」ピタッ
◆「……」
東郷<満開>「何も、起こらない……?」
東郷<満開>「神薙も……」
東郷<満開>「これじゃ――」
友奈「東郷さん、焦らないで」
友奈「私も、一緒に触れないとダメみたい」
東郷<満開>「……友奈ちゃん?」
友奈「それから手を離して、代わりに私の手を握って」
東郷<満開>「……う、うん」ギュッ
友奈「その手を、離さないでね」
友奈「……」ピタッ
◆「――――」
友奈ちゃんが御霊に触れた瞬間、脳裏に一面の青空が広がった。
同時に現実の周りの景色が、ほとんど真っ白に変わる。
白色の世界。
無に近しい視界の中、遠くにポツリと点が見える。
目を凝らせば、今まで目の前にあった、御霊とよく似た巨大な構造物、それが遥か高みにある。
友奈ちゃんが、そこにいて、その構造物に触れていた。
私は一人、それを見上げている。
手に持った神薙が、異常な熱さで私にその存在を訴えかけてくる。
その手を離さないでね。友奈ちゃんは言っていた。
私は、階段を上るように、何もない空間に足をかけ、高みへと昇っていく。
友奈ちゃんの元へ。
突然、耳の奥で夏凜ちゃんや、樹ちゃんの声が聞こえてきた。
そのっちの、叫び声。
みんな、なんて言っているのかまでは聞き取れない。
風先輩の声は聞こえない。
急がなきゃ。
上る。
だけど、高みまでの距離が、中々思うように縮まっていかない。
どれだけ歩いただろう。
足が重い。
歩かなきゃ。
届かない。
身体が重い。
友奈ちゃんに近づけば近づくにつれ、身体がバラバラになっていくような感覚に苛まれてゆく。
気を失いそうになる。
足に力を込める。
神薙を持っていない方の手のひらを上方へ、友奈ちゃんの方に掲げ、歩く。
手や足の感覚がなくなっていく。
でも、恐怖は感じなかった。
これは、きっと、三年前、友奈ちゃんが私たちの代わりに、ただ一人挑んでくれた試練と同じ物だから。
目が霞む。
自分がどこまで来たのかわからなくなる。
立っていられなくなって、膝をつきかける。
そのとき、ぐいと腕を引き上げられる感覚があった。
ぼやけていた視界が、一瞬戻る。
友奈ちゃんが、私の手を掴んでいた。
「東郷さん」
友奈ちゃんの声。
引き上げられる。
何も見えない。無音の世界。
温もりしかない。わからない。
それでも、恐怖はない。
私は、友奈ちゃんの手に導かれるまま、構造物に触れた。
ずっと脳裏にひろがっていた青空。
それが揺らぎ、現実の何もない白い空間と二重写しになり、そして、より一体のものとして二色が重なってゆく。
そして、目が見えなくても感じるような、強烈な光が私を包み込んでいくのがわかる――
友奈「東郷さん、東郷さん」ユサユサ
東郷「……んぅ」
友奈「起きた?」
東郷「……友奈、ちゃん」
東郷(周り……白くて、本当になんにもない……)
友奈「終わったよ、全部」
友奈「だから帰ろう、みんなのところに」ニコッ
東郷「…………うん」
<病室>
東郷「……」パチッ
東郷(ここは?)
東郷(見たところ、病室?)
東郷(両足が動かないわ)
東郷(身体に力が、上手く入らない)
園子「……すぅ、すぅ」zzzz
東郷「……」
東郷(寝てるなら、起こすのは悪いわよね)
東郷(自分で、どうにか起き上がって、状況を……)
ガタン
東郷(あっ)
園子「……んっ」
園子「あ~」
園子「みもりん、目が覚めたんだね~。おはよ~」
東郷「え、ええ。おはよう、そのっち」
東郷「……あの、それで――」
園子「ゆーゆなら、さっきみもりんより一足早く目を覚ましたよ~」
園子「隣のベッドで寝てる~」
東郷「!」
園子「私が、ベッドのカーテン開けてあげるね~」
ガラガラ
友奈「……」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「おはよう、東郷さん」
~☆
《二人だけの病室》
東郷「最近友奈ちゃん、だいぶ髪の色戻って来たよね」
東郷「顔色良くなってたのは前からだけど」
友奈「え? そう」
東郷「うん」
東郷「いつも見てるから、わかるよ」
友奈「そうなんだ……」
友奈「じゃあ、私って、本当にバーテックスじゃなくなってきてるんだね」
東郷「みたいね」
東郷「そのっちが言っていたわ」
東郷「神樹様が無事に敵方の神様を完全な支配下に置いたって」
東郷「だから、バーテックスの力を神樹様が制御できるようになった。
そのおかげで友奈ちゃんは人間に戻してもらえる」
友奈「散華が治るのと違って、これといった実感がないから、
いまいちピンとこないね」
東郷「もう少ししたら、友奈ちゃん自身にも、はっきりわかるんじゃないかしら?」
東郷「今はまだ白がかなり多いままだけど、色が変わるって、結構大きな変化だから」
友奈「……うーん」
東郷「どうしたの?」
友奈「いや、東郷さんとこうして話してるのは楽しいんだけどね」
友奈「欲を言えば二人どっちかの足が早く治って、
相手に近寄れる、気安く互いに触れられるようになったらいいなーって」
友奈「たとえ私がバーテックスでも、それで普段困ること特に今ないし、
私としては、まず早いこと身体の機能が治ってくれた方が嬉しいよ」
東郷「ベッドの間にある距離、遠いもんね」
友奈「うん」コクリ
《大赦 施設》
園子「……」
春信「園子様、どうかなされましたか?」
園子「神樹様って、人間たちのこと、どう思ってたんだろうかなー、って~」
春信「と、申されますと?」
園子「神樹様と敵の神様の戦い、人類とバーテックスの戦い」
園子「その事態の推移を考えると、神樹様は人類の存亡に、
対して興味がなかったんじゃないかな~」
園子「神樹様にとっては、自分が敵の神様と接触する場面こそが本番、
その接触の主導権を握れるかどうかが問題であって」
園子「私たち人類は、その準備を整えるのに使える道具だから、生かしてもらっていた」
園子「神樹様にとって、人類とバーテックスの戦いの意味は、所詮前哨戦に過ぎなかった」
春信「…………さあ、どうなんでしょうね」
春信「ただ、はっきりしているのは、園子様のおっしゃることが正しかったとして、
戦いが終わり、人類を道具として使う必要がなくなったい今でも、
神樹様は人類に変わらず恵みを施してくださっている」
春信「いえ、変わらないどころか、世界を人が住めるよう造りかえることにさえ尽力してくださっている」
春信「ということではないでしょうか?」
園子「……そう、かもね~」
《下校中 海沿いの道》
夏凜「いい天気ねー」
友奈「そうだねぇ」
樹「お姉ちゃん、今日の晩御飯は何が良い?」
風「え? ……あまり、失敗しなさそうなの、かな」
樹「う゛っ」
樹「いつもごめんね……」シュン
風「あ」
風「いやいや、大丈夫よ。樹の思いは、ちゃんとお姉ちゃんに伝わってるから」アワアワ
園子「……zz……zz」
東郷「!?」
東郷「ちょ、ちょっとそのっちっ!」
東郷「車椅子を押してる最中に寝たらダメよ!」
園子「……ふぁ?」
園子「あ~、ごめんね~みもりん~」
東郷「びっくりした……」
東郷(放課後、六人で帰る)
東郷(夏凜ちゃんが、友奈ちゃんの車椅子を押す)
東郷(樹ちゃんが、風先輩の車椅子を押す)
東郷(そのっちが、私の車椅子を押す)
東郷(満開の後遺症は、風先輩が一番ひどい)
東郷(それでも、三人も車椅子だと、かめやにみんなで行き辛くて仕方ない……、
と意気消沈する余裕があるようだから、特別深刻な問題ではなさそうだ)
東郷(みんな、散華の受け止め方が、思いのほか冷静だった)
東郷(治るとわかっている、前に一度こうなったことがある、
となれば、案外こんなものなのかもしれない)
風「ねえ、夏凜ー!」
夏凜「なによ」
風「みんなが調子よくなったら、勇者部として、まず何しよっか?」
風「勇者部の活動再開として、これだ! って言えるような大きな目標」
風「そろそろ決めておかないと、マズいでしょ」
樹「お姉ちゃんは、受験勉強も必死でやらないとマズそうだよね」
風「……ははは、確かに」
夏凜「うーん……やっぱ劇?」
風「劇、かぁ」
風「そこら辺になるのかなー」
風「やるとしたら、みんな何やりたい?」
東郷「えっ……そうですね……」
園子「劇か~」
樹「やるのはまた、文化祭?」
風「できたらいいね~」
樹「だったら、私と園子さん、夏凜さんだけでも今からある程度準備を始められる、
あと、三人の身体が良くなって、演技の練習するときできるだけ手間取らないような……」
友奈「!」ピッカーン
友奈「あの、風先輩、リメイクやりませんか?」
風「リメイク?」
友奈「はい」
友奈「風先輩が卒業する前に、勇者部で文化祭にやった劇を」
友奈「魔王と勇者のお話」
友奈「今度は、園ちゃんも加えて」
東郷「……なるほど、流石の発想力ね、友奈ちゃん」
風「いいわねっ!」
風「友奈! それ、採用!」
園子「なんだか楽しそう~」
園子「私、劇は初めてだけど、やれること精一杯頑張りたい~」
樹「園子さん、わ、わからないことが何かあったら、
私に聞いてみてくれても、大丈夫かも……です」
園子「わかった~」
園子「イッつんに聞いてみたいことができたら、積極的に聞いてみるよ~」
樹「は、はい!」
東郷(勇者部は、勇者部として、今日も変わらず続いていく……)
《文化祭 劇 本番》
園子「がっはっはっはっは~」
園子「結局、世界は嫌なことだらけだろう~!」
園子「辛いことだらけだろう~!」
園子「お前も、見て見ぬふりをして、堕落してしまうがいい~!」
友奈「いやだ」
園子「足掻くなぁ~!」
園子「現実の冷たさに凍えろぉ~!」
友奈「そんなの気持ちの持ちようだ!」
園子「なにぃ~!?」
友奈「大切だと思えば友達になれる」
友奈「互いを思えば、何倍でも強くなれる」
友奈「無限に根性が湧いてくる」
友奈「世界には嫌なことも、悲しいことも、
自分だけではどうにもならないこともたくさんある」
友奈「……だけど、大好きな人がいれば、挫けるわけがない」
友奈「諦めるわけがない」
友奈「大好きな人がいるのだから、何度でも立ちあがる」
友奈「だから、勇者は絶対、負けないんだ!」
ダッ
バシュッ!
園子「うわ~」バタンッ
友奈「…………」キリッ
東郷「樹ちゃん、BGMストップ!」
東郷「夏凜ちゃん、幕を下ろして!」
友奈(ああ、よかったぁ)
友奈(……今度は、立ちくらみせずに、ちゃんと最後までやれたよ)ホッ
終わり
この妄想は、○○「」の文字数ぶんアニメのセリフだといらないこと考えて、あと、SSだし文字数アニメより多めでいいよねとか思いつつ
大体一話3000字と数百字くらいで平均になるよう書いてみたけれど
その中でお話まとめるの難しいですねー とりあえず勇者部でセットにしないと、六人の関係にスポットあてるの大変だった
園子春信対話の辺りは、間違いなくアニメだと短縮やカットで、別の描写にあてられるだろうけどそこはSSだし
自分が思う整合性を描写することの方を重視しました
最終決戦、後輩Aで絶望した後輩勇者たちを奮起とかもやってみたかったけどまあカット
HTML化依頼してきます
ゆゆゆは続編より鷲尾の劇場版とかのが個人的にはうれしかったり…
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425265041/
Entry ⇒ 2016.01.02 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
友奈「お泊まり会」【ゆゆゆSS】
シュッ! ヒュン!
夏凜「よし!」
夏凜(今日の特訓はこのへんにして帰るかな)
ガチャ
東郷「おかえりなさい、あなた」
夏凜「え? ただいま……ってなんで居るのよ。あと私は東郷の旦那じゃないから」
東郷「とりあえず中に入って」
夏凜「あぁ、うん」
風「おかえりー。遅かったわね」
友奈「あ、夏凜ちゃん! おかえり!」
樹「お邪魔してます」
園子「私もいるよー」
夏凜「……どうして全員集合してるのよ?」
風「アタシが『することないし夏凜のとこでお泊り会しない?』ってみんなを誘ったからよ」
夏凜「なら泊める本人にも確認しなさいよ」
風「そこはほら、夏凜だしいいかなって」
夏凜「よくないから」
友奈「私たちが泊まるの……いや?」
夏凜「うっ……。わかった! わかったからそんな顔しないで」
樹(夏凜さんいつも友奈さんのあれで折れてますね……)
園子(でも毎回乗せられてることに気づいてないよね~)
東郷(私の場合、分かってても断れないわ)ドヤァ
風(それ別に誇れることじゃないでしょ)
友奈「大丈夫! しっかり戸締りされてたよ」
夏凜「そう、それなら良かった……ってならどうやって中に?」
風「これよ、これ」スッ
【夏凜宅の合鍵】
友奈「私も持ってるよー」スッ
樹「えっと、すいません」スッ
園子「もちろん私もだよ」スッ
東郷「はい」スッ
【夏凜宅の合鍵】×5
園子「みよっしーのお兄さんが『妹と仲良くしてやってくれ』って全員分の鍵を渡してくれたんだよ~」
夏凜「なっ……あのバカ兄貴いいいいい!」
夏凜「そんなこと扱い!?」
東郷「因みにカレー鍋よ」
樹「材料とお鍋は用意してきました!」
夏凜「いや別に献立はきいてない」
園子「お肉とうどんが美味しく食べれるいい鍋だよね~」
友奈「大丈夫! 夏凜ちゃんは待ってていいよー」
園子「家主ってのはドンと構えてたらいいってもんだよ」
夏凜「わかった。そこまで言うなら大人しく待っておくわ。ところで樹も準備するの?」
樹「野菜を洗うくらいならやってもいいってお姉ちゃんが」
夏凜「あー、なるほどね」
夏凜(待ってる間にすることがない)
夏凜「あっ、そうだ」
ポチポチメルメル
差出人:三好夏凜
宛先:三好春信
件名:鍵の件について
どういうつもり?
夏凜「送信っと」
<ピロピロピロ……ゴーウィwwゴーウィwww
春信「!」ポチ
春信「……」
ポチポチメルメルメルメー
<ヒーロガールー
夏凜「……」ポチ
差出人:三好春信
宛先:三好夏凜
件名:Re:鍵の件について
単に深い交友関係になる手助けになればと思ってやったことだ。
それはそうと会って色々と話したいことがある。そのうちでいいから大赦に来てくれないか?
ポチポチメルメル
差出人:三好夏凜
宛先:三好春信
件名:Re:Re:鍵の件について
気が向いたらね
<ヒーロガルー
差出人:三好春信
宛先:三好夏凜
件名:Re:Re:Re:鍵の件について
わかった。その時を楽しみにしておく
夏凜「……」ポチポチ
【このメールを削除しますか?】
はい←
いいえ
【削除しました】
園子「素直じゃないね~」ギュー
夏凜「うひゃあ!?」
園子「家族なんだからお兄さんとも仲良くしないとだめだよ?」
夏凜「わ、わかったから離れて」
園子「くるしゅうない、くるしゅうない」
夏凜「私は恥ずかしいんだけど」
樹「あのー、準備できましたよ?」
夏凜「ん、わかった。ほら園子も」
園子「うーん、残念」パッ
東郷「それでは」
全員『いただきます』
友奈「よし!早速うどんを入れ──
東郷「まだダメよ友奈ちゃん!熱でお肉を柔らかくし終えて余熱状態にしてから入れないとうどんが崩れるわ」
友奈「な、なるほど」
風(鍋奉行……いや東郷が正しいから悪い意味ではないけど)
【楽しい食事シーンがありました】
夏凜「はいはい」
友奈「それじゃ東郷さん一緒に浴びようよ」
東郷「そうね、一緒に入りましょう」
----------------------------------------------------
東郷「さっぱりしたわね」
友奈「うん」
風「次は夏凜が入って来なさい。残りの片付けはやっておくから」
夏凜「わかった、ありがとね」
夏凜「まっ、たまにはこういうのもいいかもね」
ガラッ
友奈「一緒に入ろー。背中洗ってあげるよ!」
夏凜「ゆ、ゆうな!? シャワーならさっき東郷としたはずでしょ!?」
友奈「大丈夫! みんなとそれぞれ一回ずつ入るから!」
夏凜(たまに友奈がわからない)
【結局そのまま一緒に入りました】
・ババ抜き
友奈「むむむー」
風「ククク、悩むがいい勇者よ! その選択で未来は変わるぞ!」
友奈「よぉし、これだー!」
【ジョーカー】
友奈「そんな……。でも勇者は諦めない!」シャッシャッ
風「ふむ」
友奈「……」
風「こっちにしようかな」スッ
友奈「!」
風「やっぱりコッチ!」シュッ
友奈「また負けちゃった」
夏凜「顔に出すぎよ」
東郷「友奈ちゃんポーカーフェイスできないもんね」
園子「それに比べていっつんは強いね~。毎回1位だもん」
風「樹はタロットでカードの扱いは鍛えられてるのよ」
友奈「流石は樹ちゃん!」
樹「あ、ありがとうございます?」
樹(タロットは関係ないと思うけど)
ゲーム「富士山で噴火が起こったようです!」
夏凜「物件があああああ!?」
園子「桃鉄だからね、そういうこともあるよ」
東郷「保険は大事ね」
風「後半のやけに高い富士山噴火率を舐めるからそうなるのよ。そんじゃま私のターン! これでどうよ!?」
【ぶっとびカード】
ゲーム「ホールインワン!」
風「きたあああああ!」
友奈「風先輩スゴイ!」
東郷「でも今まで何度も無駄に飛んでボンビーにつきまとわれてたからあまりプラスには……」
樹「お姉ちゃんぶっとびカード好きすぎだよー」
園子「ぶっとびカードにはロマンがあるからね、仕方ないよ」
風「あ! ちょっ、まっ」ポチポチ
東郷「…………」ポチポチ
樹「東郷さん初めてなのに操作上手いですね」
東郷「この小ジャンプ移動に親近感が湧いて戦意が上がっちゃって……」ポチポチ
友奈「東郷さんもジャンプで移動してたもんね」
園子「私もわっしーが補助機能でピョンピョンするところ実際に見てみたかったなぁ」
夏凜「東郷が次に変身したらあの触手みたいなのは消えているんでしょうね」
夏凜「あっ。そういえばウチにはベッドしかない……どうしよう」
友奈「布団ならあるよー」
園子「みよっしーが帰って来る前に私が大赦の人に持ってこさせたんだよね」
樹「今は押入れに入ってます」
夏凜「あんた達の自由さにはビックリするわ」
夏凜(というか園子は権力乱用とかじゃないのそれ)
夏凜「ベッドに3人も入るか怪しいような」
風「身長の低い友奈、樹、夏凜がベッド。他の私達が布団で寝ればいいのよ」
夏凜「それならギリギリ入るかな」
友奈「キツい時は根性だよ!」
夏凜(就寝ってそんな気合が必要なものだっけ?)
園子「そうだね~。なんだか懐かしいよ」
風「電気けすわよー」
夏凜「落ちたら危ないし樹が真ん中ね」
樹「わ、わかりました」
夏凜「……」ナデナデ
樹(ちょっと恥ずかしいけどあったかい)
樹(それと頭を撫でられるの気持ちいい……)ウトウト
樹「……」スヤー
夏凜「あっ、もう寝ちゃった」
友奈「寝つきがいいんだねー」
夏凜「寝起きの方も良くなるといいんだけどね」
友奈「そっちはまだ難しそうだね」
夏凜「なに? 友奈」
友奈「今日は突然だったけど……またこうやってみんなで泊りに来てもいい?」
夏凜「いいわよ。私も楽しかったし。でも次からは前もって言って欲しいかな」
友奈「ありがとね夏凜ちゃん。それとごめんね」
夏凜「気にしなくていいから。ほら、私達もいい加減寝るわよ」
友奈「うん、おやすみー」
夏凜「おやすみ」
終わり
ゆゆゆSS増えないもんかな
ついでに過去作宣伝
友奈「バレンタインデー」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1423813306
友奈「変身バンク」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1424671568
次回作待ってるぜ
うどん鍋が…食べたい…
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425019910/
Entry ⇒ 2015.12.24 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
東郷「友奈ちゃんの誕生日」
純愛の定義としては、他に「その人のためなら自分の命を犠牲にしてもかまわないというような愛」「肉体関係を伴わない愛(プラトニック・ラブ)」「見返りを求めない愛(無償の愛)」などがある。
今のところどうなるかわからないけどキャラが死んじゃったりするのは嫌だって人は注意してください
東郷「友奈ちゃんの誕生日まであと一か月」
東郷「あんまり高いものは買えないけれど」
東郷「友奈ちゃんにプレゼントをしたい」
東郷「ということで何かいいお仕事はありませんか?」
風「そうねえ」
風「うちの学校がバイト可とはいえ」
風「中学生を雇ってくれるところなんて少ないだろうし」
風「無難に新聞配達とかがいいんじゃないかしら」
風「大赦つながりでツテを探してみようか」
東郷「ありがとうございます! お願いします!」
風「なあに東郷の頼みとあっちゃ断れないでしょ」
風「見つかったわよー東郷のバイト先」
東郷「本当ですか!」
風「ええ、丁度すぐ近くの専売所が人手不足で」
東郷「よかった……」
東郷「あ、風先輩」
風「ん?」
東郷「バイトのことは友奈ちゃんには内緒にしておいてもらえますか?」
風「もちろんそのつもりよ」
風「サプライズしたいものね」
東郷「ありがとうございます!」
風「東郷ほどしっかりしたやつに頼られると無理をしてでも応えたくなっちゃったわー」
風「ということでこれ以外にもなにか相談があったら言いな、ね?」
東郷「はい、頼りにしています」
友奈「おはようございまーす!」
夏凜「おはようって……もう放課後よ」
樹「なんだか芸能人みたいですね」
夏凜「東郷は?」
友奈「なんだか用事があるらしくって」
友奈「しばらく部活にいけないって……」
樹「東郷さんが……珍しい……」
夏凜「自分から友奈といる時間を減らすなんて東郷らしくないわね」
風「まあまあ、東郷にだって事情はあるのよ」
友奈「寂しいけど、東郷さんの気持ちを尊重しなきゃね!」
風「そうそう」
風「その意気よ」
風「今日の部活は特にやることがありません」
夏凜「えっ? そうなの?」
風「依頼メールが一通も来ていませんでした」
友奈「えっと……じゃあー……」
風「今日の部活はお休みってことにする?」
友奈「それじゃもったいないです!」
友奈「せっかくの部活動なんだから何かしないと!」
風「そういわれてもねー」
夏凜「何も思いつかなかったらお手上げよ」
友奈「何か思いつきます!」
友奈「思いつきませんでした」
風「あちゃー」
夏凜「ま、普段働いてる分いいんじゃないの? 今日くらい」
友奈「うーん、そうだね……」
友奈「それなら東郷さんについてけばよかったかなー」
風「東郷も一人で考えたいときくらいあるわよ」
風「友奈が必要な時は東郷のほうからくるだろうし」
友奈「そうですよね」
友奈「一番の友達って言っても東郷さんが常に私のこと考えてくれてるわけじゃないですもんね」
風「いやまあその、ね」
友奈「そういえば東郷さんの誕生日まであと一か月もないんだった」
友奈「去年は知り合ったばかりだったからお祝いし忘れちゃって」
友奈「今年は去年の分も盛大にお祝いしたいなー」
友奈「貯金がどれくらいたまってるか……」
東郷「朝から体を動かすのは気持ちがいいわね」
東郷「新聞配達なんて出来るか心配だったけど」
東郷「専売所の人たちも親切だし」
東郷「何より友奈ちゃんの家に新聞をお届けできるっていうのが」
東郷「何よりも励みになるわ」
東郷「うふふ、おはよう、友奈ちゃん」カタン
東郷「友奈ちゃんはまだ寝ちゃってるよね、きっと」
友奈「東郷さんおはよー!」
東郷「おはよう、友奈ちゃん」
友奈「東郷さん今日も部活来られないの?」
東郷「うん……ごめんね、友奈ちゃん」
友奈「そっか……」ションボリ
東郷(落ち込まないで、友奈ちゃん……)
東郷(友奈ちゃんを喜ばせたいだけなのに落ち込ませちゃった……)
友奈「また一緒に部活にいけるよね?」
東郷「あたりまえでしょ、変な友奈ちゃん」
友奈「やった!」
東郷「いけないのは今週だけだから」
東郷「待っててね」
友奈「うん、ずっと待ってる!」
東郷「それを一週間だから大体7000円といったところかしら」
東郷「友奈ちゃんへのプレゼントだからもっと高いものを買いたかったけれど」
東郷「行動が遅かったわね」
東郷「でも7000円ならプレゼントの幅は結構広いし」
東郷「友奈ちゃんが喜んでくれるプレゼントが見つかるといいなあ」
風「今日は老人ホームから依頼が来てるわ」
風「掃除と盛り上げ!」
夏凜「いいわ、上等よ!」
樹「も、盛り上げ……?」
風「樹は歌えばいいのよ」
樹「う、歌……」
友奈「東郷さんがいれば囲碁とか将棋とかもできたけど……」
風「東郷の分は私たちでカバーしましょ」
友奈「はい!」
友奈「東郷さーん」
東郷「あら友奈ちゃん、いらっしゃい」
友奈「最近あんまり会えないから遊びに来ちゃった」
東郷「ごめんね、友奈ちゃん」
東郷「でも友奈ちゃんならいつでも大歓迎よ」
友奈「ありがとう東郷さん!」
友奈「今日、泊まってもいいかな?」
東郷「今日?」
東郷(あと何時間かしたら専売所にいかなきゃいけないし……)
東郷「ごめん、友奈ちゃん」
東郷「お泊り会は私もしたいけど」
東郷「今日はちょっと用事があるの」
友奈「もう夜なのにこれから用事?」
東郷「う、うん」
東郷「だからごめんね?」
友奈「……」
友奈「うん、わかった」
友奈「邪魔しちゃってごめんね」
東郷「邪魔だなんて!」
友奈「あ、東郷さんそろそろ私家に戻るね」
友奈「顔だけでも見れてうれしかった」
友奈「おやすみ」
東郷「おやすみ、友奈ちゃん」
東郷「友奈ちゃんのこと……傷つけちゃったよね……」
東郷「謝りたいけど、理由を話しちゃったら」
東郷「友奈ちゃんサプライズが出来なくなるし……」
東郷「どうしよう……」
東郷「」ハッ
≪風『ということでこれ以外にもなにか相談があったら言いな、ね?』≫
東郷「そうだ」
東郷「私には頼りになる先輩がいたんだった」
東郷「友奈ちゃんのことで……」
風「まあわかっちゃいたけど」
東郷「友奈ちゃんにバイトのことを隠すと」
東郷「嫌でも友奈ちゃんとの距離が開いちゃって」
東郷「友奈ちゃんが悲しそうにしていて」
東郷「見ていて辛いんです」
風「むしろそれはチャンスよ」
東郷「チャンス?」
風「今さんざん友奈に寂しい思いをさせておいて」
風「誕生日にサプライズでしたーって」
風「全部ネタバラシすれば」
風「負の感情が全部プラスに変わるわ」
風「ツンデレ効果ね」
東郷「なるほど……」
東郷「ためになりました」
東郷(友奈ちゃんを喜ばせるために)
東郷(もっともっと冷たくしよう)
東郷(辛いけど、少しの辛抱!)
東郷(友奈ちゃんの笑顔のためだもの)
東郷「……」
友奈「東郷さん?」
東郷「友奈ちゃん、そろそろ授業が始まるから座ろう?」
友奈「う、うん……」
友奈「そうだね……」
友奈(東郷さんどうしたんだろう……)
友奈(何かしちゃったかな……)
東郷「ふう……」
東郷(冷たくとは言ったけれど1日の最後は友奈ちゃんで終わらせないとね)
東郷「友奈ちゃ……」
東郷(いや、待って)
東郷(私から話しかけたら失敗なんじゃないかしら……)
東郷(友奈ちゃんから話しかけてくれるのを待ちましょう)
友奈(東郷さん……)
友奈(話しかけたいけどまたさっきみたいに)
友奈(冷たかったら……やだな)
友奈(話しかけるのが怖い……)
東郷「結局今日は友奈ちゃんと話せなかったな……」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「東郷さん!」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「私、何かしちゃった?」
東郷「え?」
友奈「なんだか最近東郷さんが冷たいから」
友奈「何があったのか」
友奈「それだけ聞きたくて!」
東郷「友奈ちゃん……」
東郷「友奈ちゃんは何も悪くない!」
友奈「じゃあどうして……」
東郷「……」
東郷「ごめんね友奈ちゃん」
東郷「それだけは……」
東郷「友奈ちゃんには絶対に言えないの……」
東郷「ごめんね……」
友奈「東郷さん……」
友奈「無理言ってごめんね」
友奈「おやすみ」
友奈「東郷さん!」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「私、何かしちゃった?」
東郷「え?」
友奈「なんだか最近東郷さんが冷たいから」
友奈「何があったのか」
友奈「それだけ聞きたくて!」
東郷「友奈ちゃん……」
東郷「友奈ちゃんは何も悪くない!」
友奈「じゃあどうして……」
東郷「……」
東郷「ごめんね友奈ちゃん」
東郷「それだけは……」
東郷「友奈ちゃんには絶対に言えないの……」
東郷「ごめんね……」
友奈「東郷さん……」
友奈「無理言ってごめんね」
友奈「おやすみ」
友奈「それでねー」
クラスメイト「そんなこというと血を吸うわよ?」
東郷(友奈ちゃんは違うお友達と仲良く話している)
東郷(このまま友奈ちゃんが離れていっちゃったら……)
東郷(あと4日……)
東郷(長すぎる……)
3月18日
東郷「今日も友奈ちゃんとは話せなかった」
東郷「あと3日の辛抱だと自分を奮い立たせた」
3月19日
東郷「今日も友奈ちゃんと話せなかった」
東郷「いつもどうやって話しかけていたのかがわからなくなった」
東郷「今日で友奈ちゃんに冷たくするのも最後……」
東郷「明日は1日中友奈ちゃんとお話しよう」
東郷「今日さえ過ぎれば……」
東郷「きっと……」
東郷「バイトは今朝で終わったけれど」
東郷「さて、どうしようかしら」
→・友奈へのプレゼントを買いに行く
・部活に行く
東郷「そうよね」
東郷「部活に行っちゃったらこっそり友奈ちゃんへのプレゼントを買う暇が無くなっちゃうし」
東郷「休むのは今日が最後」
東郷「押し花……なのかな」
東郷「でも普段頑張り屋さんの友奈ちゃんにはゆっくり癒されてほしいし」
東郷「温泉とかいいかもしれない」
東郷「予算的に一人分しか買えないけれど」
東郷「友奈ちゃんなら大丈夫だよね」
東郷「友奈ちゃん、喜んでくれるかな」
東郷「今は23時半」
東郷「0時になった瞬間に友奈ちゃんの家に行こう」
東郷「友奈ちゃん、喜んでくれるといいな」
東郷「そして今日はいっぱい話そう」
東郷「1週間分お話しよう」
東郷「それだとお泊りするしかなくなっちゃうわね」
東郷「冷たくしたこと、怒ってなければいいんだけれど」
東郷「よし、行こう」
東郷「友奈ちゃんのご両親は夜更けにも関わらず私を家に入れてくれました」
東郷「友奈ちゃーん」
東郷「お誕生日、おめでとう!」ガチャ
友奈「」クビツリ
東郷「友奈ちゃん?」
友奈「」ブラーン
東郷「……は?」
完
夏凜「『私はまた友達を失いました。私は友達失格です。私は友達を作る権利なんてありません。そんなの耐え切れません』」
樹「東郷さんはそれを見てすぐに飛び降りました」
風「そして二人とも帰らぬ人となりました」
風「そして私も、一生後悔を引きずりながら生きていきました」
→・選択肢に戻る
・タイトルに戻る
東郷「バイトは今朝で終わったけれど」
東郷「さて、どうしようかしら」
・友奈へのプレゼントを買いに行く
→・部活に行く
東郷「そうね、やっと友奈ちゃんに会えるんだもの」
東郷「部活に行かない手はないわね」
東郷「友奈ちゃん、部活に行こう」
友奈「東郷さん!」
友奈「うん! 行こう!」
友奈「てっきり東郷さんに嫌われちゃったと思ってたから」
友奈「東郷さんから話しかけてきてくれてうれしい!」
東郷「私が友奈ちゃんを嫌うわけないでしょ」
東郷「私は友奈ちゃんが話しかけてきてくれなくて寂しかったよ」
友奈「また流されるのが怖くて……」
友奈「つい話しかけるのを躊躇しちゃって……」
東郷「私も、友奈ちゃんが私に愛想をつかしちゃったんじゃないかって」
東郷「ずっと不安だった」
友奈「今日も東郷さんと話せなかったら」
友奈「私もう生きていけなかったかも」
東郷「大げさね、友奈ちゃんは」
風「お、来たわね東郷」
樹「お久しぶりです!」
夏凜「生きてたのか」
東郷「お久しぶりです、それと夏凜ちゃんはあとで校舎裏に来てください」
夏凜「さらっと怖いことを言うわね」
友奈「東郷さんと校舎裏いいなあ」
夏凜「じゃあ代わってあげるわ」
友奈「やったー! 東郷さん校舎裏行こう!」
東郷「じっくりゆっくり可愛がってあげるね」
風「不純な会話をしない!」
友奈「ふえ? 不純なんですか?」
東郷「友奈ちゃんはわからなくていいの」
夏凜「東郷も東郷だけど風も風ね」
樹「お姉ちゃん……」
風「あんたらが変なこと言うから妹が私を警戒しちゃったじゃないの!」
夏凜「じゃあ樹、私の妹になりなさい」
樹「よ、よろしくお願いします!」
風「信頼だけでなく妹まで失った!」
東郷「私は風先輩のこと信頼してますよ」ウフフ
東郷「うん」
東郷「とても楽しかったわ」
東郷「それと、友奈ちゃん」
友奈「んー?」
東郷「私、ちょっと買い物があるんだけど」
東郷「付き合ってくれる?」
友奈「いいよ!」
友奈「どこに行くの?」
東郷「ローソン」
友奈「すぐそこだね」
東郷「」ピッピッ
東郷「あれっ、チケットぴあじゃ温泉宿のチケットは売ってないの?」
東郷「インターネットで買うしかないみたいね」
東郷「それだと届くまでに時間がかかるから」
東郷「友奈ちゃんの誕生日に間に合わない……」
東郷「チケット代を引いてもちょっと余りがあるから」
東郷「当日用のプレゼントはそこから買うことにしましょう」
友奈「東郷さん終わった?」
東郷「ええ、友奈ちゃんは何か買うの?」
友奈「ポイフル」
東郷「おいしいもんね」
東郷「うん、またね」
東郷「……」
東郷「あのっ」
友奈「ねえっ」
東郷「あっ、ごめんなさい」
東郷「友奈ちゃんから先にどうぞ」
友奈「うーんとね」
友奈「たぶん私、東郷さんと同じこと考えてたと思うから」
友奈「東郷さんから言ってほしいな」
東郷「え?」
東郷「じゃあ、言うね」
友奈「うん」
東郷「今日、友奈ちゃんの家に泊まってもいい?」
友奈「うん、いいよ!」
友奈「私も東郷さんを誘おうと思ってたんだー」
東郷「そうなの?」
友奈「最近あんまり話せなかったから」
友奈「一晩中はなそうとおもって」
東郷「そうなの……」
東郷「私も一緒」
友奈「やっぱり!」
友奈「やっぱり私たち親友だね!」ニッコリ
東郷「うん!」ニッコリ
東郷(友奈ちゃんへのプレゼントは明日一緒に買いに行こう)
友奈「それでね、風先輩がね──」
東郷「あはは、そんなことがあったんだ」
東郷(一週間分の部活の出来事を友奈ちゃんから聞くと)
東郷(友奈ちゃんの表情もころころ変わるので)
東郷(実際にその場にいたかのような臨場感を味わうことができる)
友奈「それで樹ちゃんと夏凜ちゃんがうどんで風先輩をパーン!」
東郷「友奈ちゃんの話はどれだけ聞いても飽きないね」
東郷「もっともっと聞いていたい」
友奈「うん、全部話すよ!」
友奈「ん? 何が?」
東郷「5」
東郷「4」
東郷「3」
東郷「2」
東郷「1」
3月21日
東郷「友奈ちゃん、お誕生日おめでとう!」
友奈「え?」
友奈「あ!」
友奈「そうだ! 私誕生日だ!」
東郷「自分の誕生日を忘れちゃうなんて、友奈ちゃんらしいわ」
友奈「えへへ」
東郷「おめでとう、って伝えたかったの」
友奈「私すっごく感動しちゃった!」
東郷「大げさね、友奈ちゃんは」
友奈「大げさなんかじゃないよ」
友奈「本当に、東郷さんに出会えて良かった」
友奈「何度も思ったことだけど」
友奈「今日もまた思ったよ」
東郷「友奈ちゃん……」ウルッ
東郷「うふふ」
東郷「友奈ちゃんのくせに生意気なことを言っちゃって」
友奈「ええ!?」
東郷「冗談よ」
東郷「私も友奈ちゃんに出会って良かったって」
東郷「思わない日は無いもの」
友奈「照れちゃいますなー」テレ
東郷(なんだか、1週間前よりも距離が縮まった気がする)
東郷(これも風先輩のアドバイスのおかげかしら)
東郷(きっともう何も心配することなんてなくて)
東郷(ずっとずっと)
東郷(友奈ちゃんと幸せに過ごすことができる)
東郷(そうに決まってる)
風「ちーっす」
風「お、もうみんな揃ってたの」
夏凜「遅いわよ風」
樹「東郷さんが友奈ちゃんが部室に来るのを遅らせてくれてるから」
樹「早く飾り付けしちゃお?」
風「おうよー!」
風「最近は世の中も物騒だし」
風「この部屋だけでもぱーっとぱーっと晴れやかに咲かせましょう! 花のように!」
夏凜「物騒っていったら……あれでしょ? 不発弾」
樹「このあたりに不発弾が埋まってるかも……って話?」
風「怖いわよねー」
夏凜「大赦が早々に処理してくれるでしょ」
樹「そうですよね」
風「まあそれは抜きにしてもほら、不景気とかね……?」
夏凜「誕生日会でどうにかなる問題じゃなさそうだけどね」
風「だーかーらー」
風「ここだけでも明るくって言ったじゃないの」
樹「お姉ちゃん、口より手を動かして!」
風「樹……自分の考えをはっきり言える子になって……」ホロリ
友奈「? うん」ガラガラ
パン
パンパン
風「誕生日おめでとー! 友奈ー!」
夏凜「今日は特別よ、おめでとう」
樹「おめでとうございます!」
東郷「あらためておめでとう、友奈ちゃん」
友奈「え? えっ?」
友奈「えっと……」
友奈「皆様! ありがとうございます!」
友奈「今年も結城友奈をよろしくお願いします!」
ドンチャン
友奈「ふう、楽しかった!」
東郷「うん、楽しかったね」
東郷「帰りに、寄りたいところがあるの……」
東郷「友奈ちゃん一緒に来てくれる?」
友奈「もちろん!」
友奈「どこまでも東郷さんについていくよ!」
東郷「そっか」
東郷「それなら安心だね」
友奈「うん! もう離さない!」ギュッ
東郷「ゆ、友奈ちゃん!」テレ
友奈「わあ、可愛いお店だね」
東郷「友奈ちゃん、こういうの好きだよね?」
友奈「うん!」
東郷「本当はびっくりさせたかったんだけど」
東郷「買う暇がなくて……」
東郷「だから友奈ちゃんの欲しいものを教えてほしいの」
東郷「私からの誕生日プレゼント」
友奈「えっ」
友奈「そんな、悪いよ!」
東郷「友奈ちゃんは、友達にプレゼントをあげたりはしないの?」
友奈「それは……」
東郷「友奈ちゃんのことだもの」
東郷「きっと、プレゼントするよね?」
友奈「うん……」
東郷「だから、私も友奈ちゃんにプレゼントするの」
東郷「おかしい?」
友奈「う、うん?」
友奈「うーんと……よくわかんないけど」
友奈「そういうことなら仕方ないね!」
東郷「そうでしょう」
友奈「じゃあ、お言葉に甘えて!」
友奈「こっちがいいかな……」
友奈「いやいやこっち……」
東郷「大丈夫? 友奈ちゃん」
東郷「全部買ってもいいんだよ?」
友奈「うーん……」
友奈「これだああぁぁぁあああ!」ガシッ
東郷「」ビクッ
友奈「どう? 東郷さん」
東郷「う、うん」
東郷「友奈ちゃんに似合ってて、とても可愛い」
友奈「だよね!」
東郷「あれ? それペアストラップだよ?」
友奈「うん」
友奈「東郷さんとお揃い」
友奈「あ、でも東郷さんとお揃いなのに東郷さんに買ってもらうなんておかしいか!」
東郷「ううん……」
東郷「おかしくなんてない!」
東郷「ぜひ! 買うわ!」
東郷「うん……」テレ
東郷「せっかく友奈ちゃんが選んでくれたから」
東郷「この身が滅んでも大事にしなきゃね」
友奈「怖いこと言わないでよ……」
東郷「うれしくって、つい」
友奈「うん、私もうれしいよ」
友奈「東郷さんがプレゼントを買ってくれるなんて」
友奈「ウルトラハッピーだよ!」
東郷「なにそれ、友奈ちゃん」
友奈「昨日みたアニメで出てくるセリフなんだー」
チワーッス
東郷「あ、はい! 今出ます!」
ハンコカサイン
東郷「じゃあハンコで」ポン
チャーッス
東郷「ありがとうございました」
東郷「ついに届いたわ」
東郷「温泉宿の宿泊券が……」
東郷「さっそく友奈ちゃんに私にいこう」
↓
東郷「さっそく友奈ちゃんに渡しにいこう」
友奈「はーい」
友奈「どうしたの? 東郷さん」
東郷「友奈ちゃんに渡したいものがあるの」
東郷「これなんだけど……」
友奈「ちけっと?」
東郷「うん」
東郷「有名な温泉宿の宿泊券なの」
東郷「友奈ちゃんに日頃の疲れを癒してもらいたくて」
友奈「え!?」
友奈「これ、高かったんじゃ……」
東郷「そんなことなかったよ」
東郷「それで友奈ちゃんの疲れが取れるなら安いものよ」
友奈「そんな……だめだよ!」
東郷「えっ」
友奈「こんな素敵なもの、受け取れないよ!」
東郷「私は友奈ちゃんにゆっくりしてもらいたいの!」
友奈「じゃあ!」
友奈「もうすぐ東郷さんの誕生日だから」
友奈「私も東郷さんにおんなじものをプレゼントするね」
東郷「えっ」
友奈「そうしたら一緒に温泉にいけるでしょ?」
東郷「そうね……」
東郷「でも友奈ちゃんは私と一緒でいいの? 疲れない?」
友奈「東郷さんがいないと疲れが取れないよ」
友奈「だから私は東郷さんと一緒に行きたいな」
東郷「友奈ちゃんがそこまで言うなら……」
友奈「やったあ! 決まり!」
一旦寝ますおやすみなさい
この先も選択肢分岐的なのをやろうとおもうんですが
ハッピーエンドもほしい?
友奈「それじゃいってきまーす」
風「おみやげよろしくねー」
東郷「わかっていますよ」ウフフ
樹「お、お気を付けて!」
夏凜「ボケ要因二人がいなくなるとしばらくツッコミが楽になるわね」
友奈「それではー!」
友奈「東郷さん、ポイフル食べる?」
東郷「一つもらうわ」
友奈「はい」コロン
友奈「あ、ハートの形だ!」
友奈「よかったね! 東郷さん!」
東郷「うん、うれしい」
東郷「」パクッ
東郷「」モグモグ
友奈「あ、見えてきたよ東郷さん!」
東郷「本当ね」
友奈「おっきい露天風呂があるから外からでもわかりやすいね!」
東郷「うん>>620
、楽しみ」
東郷「早速チェックインしてくるね」
友奈「そういうのよくわかんないから」
友奈「お願いします!」
東郷「了解」
東郷「友奈ちゃんはここで休んでてね」
友奈「景色を楽しんでるね」
友奈「おっかえりー!」
東郷「部屋は214号室だって」
友奈「ねえ東郷さん」
東郷「なあに?」
友奈「ちょっと考えたんだけどさ」
友奈「勇者部のみんなも誘えば良かったかな」
東郷「そうね……」
東郷「その方が楽しかったかも」
友奈「今からでも呼んでみよっか?」
東郷「えっ……」
→・友奈ちゃんと二人きりがいい
・みんなも呼んだほうがいい
友奈「えっ?」
東郷「それに、今から呼ぶにしても急すぎるし」
東郷「皆に自腹で払わせるわけにはいかないしね」
友奈「それもそうだね」
友奈「じゃあ、二人っきり!」
東郷「うん……!」
友奈「広いねー」
東郷「この間みんなで泊まったところほどじゃないけれどね」
友奈「じゃあ、さっそくお風呂に行こう!」
東郷「もう行くの?」
友奈「善は急げってやつだよ!」
東郷「うん、そうね」
東郷「行こう、友奈ちゃん」
友奈「うん!」
友奈「わあ、ひっろーい!」
東郷「友奈ちゃん、お客さんいるよ」
友奈「うえっ!?」
友奈「大きな声出しちゃった恥ずかしい……」
東郷「楽しいのはわかるけど」
東郷「落ち着こう」
東郷「温泉は逃げないからね」
友奈「うん!」
東郷「生き返るね……」
おばあさん「若い子がここにくるなんて珍しいねえ」
友奈「あ、どうも」
おばあさん「中学生かい?」
友奈「はい!」
友奈「讃州中学勇者部、結城友奈です!」
おばあさん「これはこれはご丁寧に」
おばあさん「二人は旅行客だよね?」
東郷「はい、一泊二日ですけれど」
おばあさん「それなら十分さ」
友奈「? 何が十分なんですか?」
おばあさん「この辺に伝説の温泉があってね」
おばあさん「あまり行きやすいところじゃないから私くらいの歳になっちゃうともういけなくて」
おばあさん「でもあなたたちならきっとたどり着けるはず」
東郷「興味深いですね……」
友奈「それって、どこにあるんですか?」
おばあさん「えっとね……」
友奈「気持ちよかったね、東郷さん」
東郷「うん、友奈ちゃん」
東郷「それで、おばあさんの言ってた温泉だけど……」
東郷「どうするの?」
友奈「せっかくだし、行こう?」
東郷「そうね……」
→・友奈ちゃんに従う
・友奈ちゃんを引き止める
東郷「せっかくだし……」
友奈「うん! 行こう、東郷さん!」テヲニギル
東郷「う、うん……」テレ
友奈「えーっと……ここからは……」
友奈「道がないので気を付けて、だって」
東郷「結構険しい山みたいだけど……」
東郷「本当に行くの?」
友奈「うん、ここまできたらあとちょっとらしいから」
友奈「東郷さんが嫌だったら私はいいんだけど」
東郷「う、ううん! いやじゃないよ!」
東郷「友奈ちゃんと一緒ならどこにだって!」
友奈「そっか! うれしい!」ニコッ
友奈「それじゃあしゅっぱーつ!」
東郷「お、おー!」
東郷「いっぱーつ!」
友奈「ふう、おつかれさま! 東郷さん!」
東郷「うん、ありがとう……」
東郷「それにしても……道が険しすぎない?」
友奈「でも秘境っていうくらいだしそういうものなんじゃない?」
東郷「そんなわけ……」
東郷「友奈ちゃん、ちょっとその地図見せてくれる?」
友奈「うん、いいよ」ヒョイ
東郷「どれどれ……」
東郷「……」
東郷「?」
東郷「よくわからない……」
友奈「私もー」
東郷「友奈ちゃんよくわからないまま突き進んできたの……?」
友奈「なんていうかその……」
友奈「ふぃーりんぐで!」
東郷「」アチャー
友奈「こっちに温泉があるって!」
東郷「うふふ」
東郷「友奈ちゃんが言うと説得力があるね」
友奈「そうかな」
東郷「そうだよ」
東郷「それで、次はどうするの?」
友奈「たぶんこの崖の向こう側!」
東郷「崖……どうするの?」
友奈「ろっくくらいみんぐ!」
友奈「はムリだから……」
友奈「どこかから登れないか探してみよっか」
東郷「そうね」
東郷「友奈ちゃん……」
東郷「もう暗くなってきちゃったけど……」
友奈「そうだねー……」
友奈「結城友奈14歳、ここに温泉探しを断念……」
友奈「帰ろっか」
東郷「うん」
東郷「帰り道、わかるの?」
友奈「うーん、と」
友奈「たぶんこっち!」
東郷「もう真っ暗……」
友奈「ど、どうしよう」
東郷「これってもしかして……」
東郷「遭難?」
友奈「そうなんだ!」
東郷「友奈ちゃん、それ笑えない」
友奈「だよね……ごめんなさい……」
東郷「遭難したら迂闊に動かない方がいいというけれど」
東郷「こんな森の真ん中じゃそういうわけにもいかないわよね」
友奈「あ、そこの崖のふもとに洞穴があったよ!」
東郷「じゃあ今日はそこで過ごしましょう」
友奈「賛成!」
東郷「食糧は……」
友奈「ポイフルしかないね」
東郷「でも数日だけならなんとかなりそう」
東郷「飲み水がないのが辛いけれど」
友奈「ごめんね東郷さん」
友奈「私のせいでこんなことに……」
東郷「友奈ちゃんがいなかったらできない体験だよ」
東郷「なんとも思ってないから安心して」
友奈「東郷さん……」
東郷「私たちが帰ってないことは旅館の人たちがわかるだろうし」
東郷「そうなったら捜索にきてくれるはずだよ」
東郷「だから大丈夫」
友奈「うん、そうだよね……」
友奈「大丈夫……大丈夫……」
友奈「東郷さん、あーん」
東郷「あ、あーん」///パク
東郷「友奈ちゃん、あんまり食料の無駄遣いはだめよ」
友奈「東郷さんに少しでも多く食べてもらいたくって」テヘヘ
東郷「気持ちはありがたいけど……」
東郷「私も友奈ちゃんにいっぱい食べてもらいたいの」
友奈「ごめんなさい……」
友奈「でも私はハートのポイフル食べたから大丈夫だよ」
東郷「もう、友奈ちゃんったら……」
東郷「助け……来ないね」
友奈「きっと今探してくれてる途中だよ」
友奈「希望を失っちゃだめだよ」
東郷「うん……そうだよね……」
東郷「友奈ちゃんが言うんだもの……間違いない……」
友奈「……」
友奈「うん」
友奈「私を信じて!」
東郷「うん……」
東郷「信じてる」
友奈「……」
東郷「……」
友奈「東郷さん……大丈夫?」
東郷「私は大丈夫」
東郷「友奈ちゃんは?」
友奈「私も大丈夫……」
友奈「ちょっと……お腹が減っちゃっただけ」グウ
東郷「……」
友奈「今日はもう寝ちゃおっか」
友奈「起きてたらお腹が減っちゃうし」
東郷「そうね」
東郷「……」
東郷「友奈ちゃん」
友奈「……」
東郷「友奈ちゃん?」
友奈「……」
東郷「友奈ちゃん!」ユサユサ
友奈「……あ」
友奈「ごめん……エイプリルフール……」
東郷「そ、そうなの?」
東郷「冗談になってなかったっていうか……」
友奈「ごめんね……」
友奈「ちょっと、眠くて……」
東郷「友奈ちゃん……」
東郷「ねえ友奈ちゃん」
東郷「私、決めたの」
友奈「……どうしたの?」
東郷「友奈ちゃん、私を食べて」
友奈「……え?」
東郷「このまま衰弱してく友奈ちゃんなんて見たくない」
東郷「私が友奈ちゃんを救えるのは……」
東郷「きっとこの方法だけなの」
友奈「そんなことできないよ……」
東郷「お願い、友奈ちゃん」
友奈「嫌……だ」
東郷「友奈ちゃん」
東郷「聞いて」
友奈「ん?」
東郷「私は友奈ちゃんが好き」
東郷「愛してるといっても過言ではないわ」
友奈「うれしい……」
東郷「だから」
東郷「なんとしても友奈ちゃんには助かってほしい」
東郷「だから……私を……」
友奈「……」
友奈「うん、わかった」
東郷「友奈ちゃん!」パァ
友奈「でもね、東郷さん」
友奈「私も東郷さんのことが好きだから」
友奈「東郷さんに助かってほしい」
友奈「だから」
友奈「東郷さんも、私を食べて生き残ってほしいんだ」
東郷「そんなこと……」
東郷「出来るわけ、ない!」
友奈「東郷さんが私を食べてくれないなら」
友奈「私も、東郷さんを食べたりしない」
東郷「……」
東郷「本当に、いいんだよね」
友奈「東郷さんこそ」
友奈「大丈夫?」
東郷「うん……」
東郷「友奈ちゃんなら、大丈夫」
友奈「じゃあ……」
東郷「うん……」
ガブッ
友奈「ッ」
グチッ
グチッ
友奈「~~~ッ!」
東郷「ん、んぐ……」モグ
東郷「」ゴクン
東郷「大丈夫……?」
友奈「大丈夫、勇者だもん」
東郷「友奈ちゃん、来て」
友奈「うん……」
グチッ
ブチッ
東郷「ん……っ」
友奈「! 東郷さん!」
東郷「大丈夫……続けて……」
友奈「うん、うん……」
友奈「ごめん」
友奈「ごめんね」ブチッ
東郷「んぁっ……」
友奈「」モグモグ
友奈「」ゴクン
東郷「うん、私も……」
友奈「寝よっか……」
東郷「うん」
友奈「手、つないでいい?」
東郷「でも、私も友奈ちゃんも」
東郷「右手……無くなっちゃったし」
友奈「そういえば……」
東郷「ごめんね……」
東郷「私が友奈ちゃんと同じ部位を食べてほしいって言ったから」
友奈「東郷さんは悪くなんてないよ」
友奈「じゃあ、今日はもう寝ちゃお」
東郷「うん……」
東郷「おやすみなさい」
友奈「おやすみ」
友奈「はむ……」グチグチッ
東郷「どう? おいしい?」
友奈「うん」
友奈「おいしいよ、東郷さん」
東郷「よかった……」
東郷「それじゃあ、私も食べるね」
友奈「うん」
東郷「」ガブ
東郷「」ブチ
友奈「んッ」
東郷「」モグゴクン
東郷「うん、おいしいよ友奈ちゃん」
友奈「よかった……」
友奈「でも、ごめんね東郷さん」
友奈「せっかく歩けるようになったのに……」
東郷「私は大丈夫」
東郷「少し前の状況にもどっただけだから」
東郷「友奈ちゃんのほうが……」
東郷「足……無くなっちゃったし……」
友奈「根性でなんとかなるよ!」
友奈「だから何も心配しないで」
友奈「それに、東郷さんがいればどんな世界だって生きていけるよ」
東郷「うん……」
東郷「そうだよね……」
友奈「」ダルマ
東郷「」ダルマ
友奈「東郷さん、いる?」
東郷「いるよ、友奈ちゃん」
友奈「ごめんね東郷さん」
友奈「もう、食べさせてあげられなくて」
東郷「そんなの私も一緒」
友奈「なんか……目が見えなくなっちゃって」
東郷「私も……あんまり友奈ちゃんの声が聞こえないの」
友奈「そっか……」
東郷「でも」
東郷「最後まで友奈ちゃんと一緒だから」
東郷「怖くない」
友奈「最後じゃないよ」
友奈「私たちは二人とも助かって」
友奈「また勇者部で過ごす」
友奈「風先輩や樹ちゃん夏凜ちゃんには迷惑かけちゃうかもしれないけど」
友奈「きっと、いつも通りの日常に戻れるよ」
東郷「うん……うん……」
東郷「皆ならきっといつも見たいに……」
友奈「それが勇者部だよ」
東郷「少し、そっちにいってもいい?」
友奈「うん」
友奈「来られる?」
東郷「うん、這ってでも行く」ズルズル
友奈「ごめんね」
友奈「私もう動けないから……」
東郷「友奈ちゃん、いる?」
友奈「いるよ、東郷さん」
友奈「東郷さん、いる?」
東郷「いるよ、友奈ちゃん」
友奈「なんか、寒いね……」
東郷「……うん」
友奈「東郷さん」
東郷「なに? 友奈ちゃん」
友奈「大好き」
東郷「私も」
東郷「大好きだよ」
友奈「あは……」
東郷「……」
東郷「友奈ちゃん?」
友奈「……」
東郷「友奈ちゃん……」
友奈「……」
東郷「……おやすみ、友奈ちゃん」
東郷「私もすぐにそっちに行くね」
東郷「おやすみなさい」
風「発見されたとき、二人は寄り添うように倒れていたという」
樹「お互いに両手足の無い状態で発見され」
樹「お互いの手足はお互いの胃の中から発見されました」
夏凜「二人は最後まで希望を捨てなかった」
夏凜「私たちにはそれがわかる」
風「だって彼女たちは勇者だから」
風「最後のその時まで希望を信じていたに違いない」
樹「だからこそ私たちは悔やみ、悲しみます」
完
→・選択肢に戻る
・タイトルに戻る
友奈「気持ちよかったね、東郷さん」
東郷「うん、友奈ちゃん」
東郷「それで、おばあさんの言ってた温泉だけど……」
東郷「どうするの?」
友奈「せっかくだし、行こう?」
東郷「そうね……」
・友奈ちゃんに従う
→・友奈ちゃんを引き止める
友奈「そっか」
友奈「東郷さんがそういうなら私も」
友奈「ご一緒します!」
東郷「ごめんね、友奈ちゃん」
友奈「なんにもだよー」
友奈「私は東郷さんと一緒に居られれば」
友奈「それだけですっごく楽しいから」
東郷「わ、私も……」
東郷「ずっと友奈ちゃんと一緒にいたい」
友奈「一緒だよ」
東郷「うん!」
友奈「あ、はーい」
ガチャガチャ
旅館の人「それではごゆっくり……」 ガラガラ
東郷「この間の旅館ほどじゃないけど」
友奈「豪華だねー」
友奈「とくにこのうどん」
友奈「すっごく美味しそう!」
東郷「」パクパク
友奈「」パクパク
友奈「」モグ
友奈「」カミキレナイ
友奈「」カミキレタ
友奈「」モグモグゴクン
東郷「」ズルズル
友奈「食べるのに夢中で会話なくなっちゃったね」
東郷「なに?」
友奈「東郷さんって」
友奈「好きな人とか……いるの?」
東郷「っ」
東郷(それはもちろん友奈ちゃんよ愛してるらぶゆー)
友奈「あ、男の子でね」
東郷「ああ……いないよ」
東郷「私はそういうのよくわからなくて」
東郷「……友奈ちゃんはいるの?」
友奈「えっと、ね」
東郷「詳しく」
友奈「その、ね?」
友奈「私」
友奈「男の子より女の子のほうが好きみたい」
東郷「!」ガッツポーズ
友奈「そういうのって、気持ち悪いよね……」
東郷「そんなことないわ友奈ちゃん!」
東郷「私だって、同じよ!!」
東郷「気持ち悪いどころか友奈ちゃんで気持ちよくなりらいくらい!」ムハー
友奈「と、東郷さん落ち着いて!」ドウドウ
友奈「……」
友奈「」ジッ
東郷「わ、私?」
友奈「」///コクリ
東郷「いやったあああああ!」
友奈「東郷さん!?」ビクッ
東郷「友奈ちゃん大好き!!」
東郷「愛してる!!」ダキッ
友奈「と、東郷さん!」
友奈「苦しいよ!」
東郷「友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん……」スリスリ
東郷「せっかく……思いが通じたんだし」
友奈「うん、いいよ」
東郷「今夜は、寝かせないよ」
友奈「えへへ」
友奈「お手柔らかにオネガイシマス!」
東郷「うふふ……」
カチカチ
モゾモゾ
ナデナデ
友奈「ひゃぅ」
友奈「くすぐったいよ東郷さん」
東郷「ごめんね、暗くてよく見えなくて」
東郷「今のは何だったのかな」
友奈「お、お尻だよ……」
東郷「友奈ちゃんのおしり」
東郷「柔らかすぎて」
東郷「揉んでも手が埋まっちゃう」モミモミ
友奈「そんなこと言ったら!」
友奈「東郷さんの胸だって手がどんどん沈んでくよ!」ミモミモ
東郷「はう……」
友奈「ふわあ……」
東郷「おはよう、友奈ちゃん」
友奈「おはよー東郷さん……」ポワン
友奈「やっぱり東郷さんは朝、早いねー」
東郷「ちょっと眠れなくって」
友奈「え?」
友奈「大丈夫!? 東郷さん!」
東郷「大丈夫よ」
東郷「友奈ちゃんの寝顔を見ていたらお日様が出ていただけだから」
友奈「それはそれで心配だけど……」
友奈「東郷さんがそういうなら安心したよ」
東郷「もっと泊まっていたいけれど」
東郷「今日で帰らなくちゃいけないのよね」
友奈「うん……」
友奈「また、こようね」
東郷「そうね、みんなで……そして」
友奈「二人で、ね!」
東郷「うん!」
ガタンゴトン
友奈「なんか名残惜しいね」
東郷「そうね」
友奈「でも、楽しかったよね!」
東郷「もちろん」
東郷「今までで一番楽しかったよ」
友奈「あはは、そんなに?」
友奈「一日しかたってないのにみんなに会うのが久しぶりな気がするよ」
東郷「そうね」
東郷「みんな無事にやってるかしら」
友奈「東郷さんがいないと事務作業とか困ってそうだよね」
東郷「うふふ、うろたえてる夏凜ちゃんの姿が目に浮かぶわ」
ガタンゴトン
ガタンゴトン
ガタンゴトン……
東郷「駅でそんな大声を出したら恥ずかしいわ、友奈ちゃん」
友奈「えへへ」
友奈「なんか叫ばずにはいられなくってー」
東郷「まだ早い時間だし部活中かも」
東郷「行ってみる?」
友奈「うん!」
東郷「それじゃあ」
友奈「れっつごー!」
友奈「あれ、道が封鎖されてる……」
東郷「やけに荒れてるみたいだけれど何があったのかしら……」
東郷「まるで何かが爆発したみたいな」
友奈「部室で皆に聞いてみよっか」
東郷「そうね」
東郷「それが一番手っ取りばやいと思う」
友奈「いっつも通ってる道だったんだけどなー」
東郷「ここが一番近道だもんね」
友奈「うんうん」
友奈「結城友奈! 帰還しましたー!」バタン
東郷「東郷美森、帰港しました」
ガラーン
友奈「ありゃ?」
友奈「誰もいない」
東郷「部活はお休みだったのかしら」
友奈「もしかしたらどこかに出張してるのかも」
東郷「帰りに職員室で先生方に聞いてみましょう」
ガラガラ
友奈「失礼しまーす」
教師1「」ガタッ
教師2「あ……」
教師3「……おかえりなさい」
東郷「?」
友奈(学校休んで旅行行ったから怒られちゃうかな……)ビクビク
教師1「落ち着いて聞きなさい」
友奈「は、はい!」
教師1「君たち以外の三人が───」
東郷「なんでも、不発弾が埋まっていたのだとか」
友奈「そんな突拍子もない死は信用できず」
友奈「私たちは今でも部活を続けています」
東郷「旅行にいく前のように、五人の時のように」
友奈「風先輩! こんどの劇の脚本はできましたか?」
友奈「そうですかー、私、待ってます!」
友奈「……ん?」
友奈「か、夏凜ちゃん何やってるの……?」
友奈「へえー……」
友奈「かっこいいね!」
東郷「友奈ちゃん」
友奈「どうしたの?」
東郷「この依頼なんだけど……」
東郷「ちょっと見てほしくて」
友奈「どれどれ……?」
友奈「『現実を見てください』?」
友奈「うーん……?」
東郷「どう?」
友奈「うーん」
友奈「よくわかんないな」
東郷「そう……」
友奈「今のところ保留でいいんじゃないかな」
東郷「そう……ね」
東郷「友奈ちゃん」
友奈「うん?」
東郷「今、楽しい?」
友奈「? うん!」
東郷「そう……それなら……」
東郷「私も……」
完
東郷「なあに?」
友奈「ちょっと考えたんだけどさ」
友奈「勇者部のみんなも誘えば良かったかな」
東郷「そうね……」
東郷「その方が楽しかったかも」
友奈「今からでも呼んでみよっか?」
東郷「えっ……」
・友奈ちゃんと二人きりがいい
→・みんなも呼んだほうがいい
東郷「そうね」
東郷「楽しいことは皆で楽しみたいものね」
友奈「それじゃあ誘ってみるね」
友奈「あ、でもお金大丈夫かな……」
東郷「そのっちに頼んで大赦にお金を出してもらいましょう」
風「やほやほー」
樹「遅くなりました!」
夏凜「邪魔するわよー」
友奈「いらっしゃい皆ー」
風「まさか誘われるとは思っても見なかったわ」
風「よかったの? 東郷」
東郷「友奈ちゃんと二人きりなんて普段いっぱいありますし」
東郷「こういう場こそ皆で楽しみたいので」
夏凜「さすが東郷、いいこと言うじゃない」
風「私の女子力見せつけてやるんだからー!」
友奈「はい!」
東郷「お供します」
東郷「旅行から帰ると不発弾が回収されたというお話を聞きました」
風「まあぶっちゃけ不発弾とかいわれてもピンとこないのでどうでもいいです」
樹「旅行を終えて私たち五人は一層仲良くなって」
夏凜「幸せに学園生活を過ごしました」
完
不発弾は何かの伏線かと思った
淡々としてるな
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420548571/
Entry ⇒ 2015.12.20 | Category ⇒ 結城友奈は勇者である | Comments (0)
友奈「バレンタインデー」【ゆゆゆSS】
SS内で園子はこれといった出番はないので
地文はBD1巻特典PCゲームの誰でもない第三者視点と同じタイプ
夏凜「いや普通にお菓子って言いなさいよ」
東郷「では私から」
友奈「おお、ぼた餅みたいにまあるい」
東郷「フフッこれはトリュフって言うのよ友奈ちゃん。基本の形は同じだけど簡単なものから難しいものまである拡張性の高いお菓子なの」
樹「東郷さんって洋菓子も作れるんですねー。凄いです」
風「じゃあ次は夏凜!君に決めた!」
夏凜「えぇっ!?……東郷の後ってのはちょっとキツイわね。私はコレよ」
樹「あっクッキー……美味しそうです」
友奈「夏凜ちゃんのも後で食べてみたいなー」
風「ほほーう、あえてチョコから離れたってやつかしら」
夏凜「チョコは色々あるからどれ作ればいいか分からないし難しそうだったから……本を見てクッキーを作ることにしたのよ」
東郷「それなら今度時間がある時にチョコの作り方を教えてあげるわ」
夏凜「いいの?ありがとう」
風「樹!アタシのバッグからアレを出しなさい!」
樹「うん」
友奈「わー、チョコレートケーキだ。これもいいな~」
夏凜「樹もこれ作ったの?凄いわね」
樹「えっと、その……イチゴを載せただけです……」
風「樹はお菓子作りはまだ出来る領域じゃないからねぇ。トッピング担当させたのよ」
東郷「どうやら樹ちゃんにもお菓子作り教室を開く必要がありそうね」
樹「お、お手柔らかにお願いします」
友奈「はい、私はコレです!」
風「ん、んん!?」
夏凜「サランラップをしたボウルにドロっとしたチョコが入ってるけど……何よこれ?」
東郷「友奈ちゃん、コレは一体……?」
友奈「コレはね、園子ちゃんのアイデアで用意した指チョコだよ」
東郷「そのっちの……?」
友奈「うん、チョコ作りの相談にのってもらってたんだー」
風「それで結局のところ指チョコって何かしら?」
友奈「じゃあとりあえず風先輩食べてみませんか?」
風「そうねー、どんなのか気になるし」
風「はいはい」
友奈「そのまま口を開けて下さい」
風「はいはい」
風(……ん?)
風は少しおかしな予感がしたが口を開けていた。
すると友奈はボウルに右手の人差し指を入れ、たっぷりチョコを付けると、そのまま風の口へと入れ込み口内でかき混ぜるように動かす
予想外のことに驚いて一旦ストップをかけようとするが舌が指に絡まり喋ることを遮られる
風「あむ……んじゅ……ぅぅ」
風は思わず顔を離そうとするが友奈の左手が後頭部に置いてありそれもままならない。
口内をマッサージされるような刺激と快感。それに加えてチョコの甘さと指で舌を弄られる感覚に溺れることになった
風「甘…あぁん……もう……ダメ」
風は快感により力が抜け倒れそうになるがとっさに友奈が口から指を抜き、しっかり支えてゆっくり椅子に座らせる
風「……甘かったわ。アタシの負けね」
風「友奈、アンタがNo1よ」グター
友奈「やったぁ!」
夏凜「ええっと……」
樹(凄い光景で思わず見惚れてしまいました)
友奈「うん。『マッサージが得意ならこういうのがいいと思うよ~』って言われたから!」
東郷(そのっちの発想は私にも予想できなかったわ)
友奈「次は誰が食べたい?」
風「樹……本当にこんなにも頼もしくなっちゃってお姉ちゃんは嬉しいわ」
夏凜「いやいや、何アホなこと言ってるの」
友奈「風先輩みたいにフラついたら危ないからまずはイスに座ってね」
樹「は、はい」
友奈「それじゃ樹ちゃん、あ~ん」
樹「あーん」
樹「も……らめぇぇ……」ピクピク
友奈「樹ちゃんにも喜んで貰えたようでよかったー」
夏凜「たったの1分でこうなるってどんなテクニックなの……」
東郷「友奈ちゃん、次は私にお願い」
友奈「もちろんオッケーだよ東郷さん!一生懸命するからね」
東郷「私ならきっと耐えてみせる。ここで負けるわけにはいかないわ」
夏凜「そういえば前のマッサージでこんな流れを見たような」
東郷「うぅ……ハァー…ハァー……友奈ちゃん…」グッタリ
友奈「じゃあこれで次は夏凜ちゃんだね」
夏凜「え?あ、えっと……私は……」
友奈「いや?」
夏凜「ぐっ……」
夏凜(友奈に寂しそうな顔をしてほしくないし……皆も味わったんだからやるしかないわね)
友奈「な、なんだかよく分からないけど凄い気合い」
友奈「じゃあハイ、あ~ん」
夏凜「ア、アーン」
友奈は指をまず舌にまとわりつかせてチョコの甘さを味わせる。それから歯と歯茎を擦るようにかつ痛みを与えたりしないように指を動かしていく
夏凜「あぅ……」
した顎の方を刺激されているうちに唾液が出てきてニチャニチャとした音が出るようになってくる
夏凜(なんだろう、頭の中が熱くてボーッとしてくる)
そうしてしばらくしない内に無意識に夏凜は友奈の指を舐っていた
夏凜「ゆーなぁ……ペロ…チュッ…ん……おいし…ジュル……」
友奈「よかったー。あ、もう指チョコなくなっちゃった」
そう言うと友奈は夏凜の口から指を引き抜く
夏凜「あ……」
友奈「夏凜ちゃんは東郷さんとかみたいにはならなかったね」
夏凜「風達はまだまだね」
夏凜「私の場合、物足りなかったくらいだし」フフン
友奈「ならこのまま2本指でするね」
夏凜「え?」
友奈は左手で夏凜の口を開けチョコを塗った右手の人差し指と中指を入れ込み、右頬と左頬を内側から撫でそのまま舌に絡みつかせる
夏凜(あ、これもうダメなやつだ)
風「……」グター
樹「……」グター
東郷「……」グター
夏凜「……」ピクピク
友奈「うん、皆が喜んでくれたみたいで良かった」
園子「ふざけた発想とはいえ酷い話だよね……」
『ゴッドフィンガー・バレンタイン』終わり
HTML依頼を出さなきゃね
vitaゆゆゆゲームのバレンタインイベントとか楽しみだなー
なんて恐ろしい発想だ
なんて乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423813306/
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