千反田「私、折木さんの性癖が気になります!」
折木「>>5」
千反田「……目、ですか……」
折木「ああ、くりくりした大きな目も良いが、切れ長の瞳にもゾクゾクするな」
千反田「折木さん!」
折木「はい」
千反田「私の目は大きいですね!」
折木「そうですね」
千反田「 」ガッツポーズ
千反田「?」
折木「眼球。目の表面の部分を舌で舐めるんだ」
千反田「!!い、痛くないんですか?」
折木「舐めるだけならそんなに痛くはないだろうが、された事はないしした事もないのでわからん。」
千反田「……」(瞼の上からそっと目を触ろうとする)
折木「指で触る時は、予め手をよく洗っておいた方が良いぞ」
千反田「ひゃぅ!?…そ、そうですね!?」
折木「…し、知らん。そういう事がしたい、と思ったのと…誰だってまずは、目を見るだろ?」
千反田「はい、目を見てお話をするのは大事ですね」
折木「俺のように省エネな人間からすると、目に力がある人間は、憧憬の対象になるんだ。」
千反田「そういうものなんでしょうか…」
折木「そういうものなんだ。例えば千反田、お前が気になります!っていう時のあの目…」
千反田「はい」
折木「あのキラキラさせた眼を真っ黒に、いや真っ白に?塗りつぶしたくなったりするよな」
千反田「鏡でみた事はないので…よくわかりません」
折木「残念だ」
折木「だそうだ……>>25」
千反田「…パイズリ…ですか?」
折木「!…千反田、もう一回言ってくれ。」
千反田「え、パイズリ…ですか?」
折木「……あぁ、ありがとう。少し恥ずかしそうに言ってくれると尚良いんだが」
千反田「えっと、えっと…」
折木「まぁそんな器用な演技は無理だろうな」
千反田「……すいません」
折木「パイズリが何か、知らないのか?」
千反田「知りません、初めて聞きました!」
折木「音の響き的には?」
千反田「…ぱい、ぱい……杯、牌、輩…おそらく、パイ、とズリ、で区切るのではないでしょうか?」
千反田「はい、かといって、パイズリ、で一つの単語とするようには思えなくて…」
折木「パイってのはおっぱいの事だ。ズリ、というのは擦る、という意味だ。」
千反田「!!!」
折木「わかったか?つまり、おっぱいに……その、アレを挟んでだな……」
千反田「アレを……」ゴクリ
折木「そう、それで擦るわけだ……」
千反田「擦るわけですか……」
折木「……」
千反田「……気持ち良いんですか?」
折木「経験が無いので良いか悪いかと言われも困るが。
一般的には、視覚的なイメージからくる興奮の方が大きいらしい」
千反田「つまりそんなに……」
折木「気持よくは、ないらしい。」
折木「大体オーソドックスなものは、男が立って女が跪く形か…
男が寝そべって、女がその上に…というタイプだな」
千反田「なんだか難しそうですね」
折木「そうだな、ある程度の大きさがないと挟むのは到底無理だろうな」
千反田「……」ムニムニ
折木「………」
千反田「……難しくないでしょうか?」
折木「…あぁ、よっぽど大きなおっぱいの持ち主でないと無理だろうな」
千反田「で、では……」
折木「…まぁ、厳密に挟んで擦る以外にも、擦り付けるだけだとか色々やりようはあるし…
所詮、童貞の妄想みたいなもんだ。」
折木「…揉んでも大きくならんぞ」ボソッ
千反田「!?ち、違います!ど、どういう形にすれば谷間ななななんでもないです」
折木「…大丈夫だ千反田。女性は妊娠すると胸が大きくなるらしい」
千反田「……つ、つまり…?」
折木「…婚前交渉ではあくまで願望の一種としておいて、結婚、妊娠の後に果たせば良い。」
千反田「……なんだか背徳的なのは何故でしょうか」
折木「それが良いんだろう」
千反田「折木さん!折木さんの性癖は、それだけですか!?」
折木「まぁ、健全なる男子は一つに限らず、大体幾つかの性癖を持っているもんだが…>>50どう思う?」
千反田「足、ですか……?」
折木「あぁ、すらっと綺麗な足は、女の目線からも憧れるだろう?」
千反田「そうですね、あまり足を露出させるような装いは得意ではないのですが…
細くて綺麗な足を拝見すると、少し憧れてしまいます」
折木「男にとっては、細いだけが良いとは限らないぞ」
千反田「と、言いますと?」
折木「足にも色々部位がある。太もも、ふくらはぎ、足首、足裏、つま先…」
千反田「色々あるんですね」
折木「そうだな、太ももなんかは特に、細いよりはムチムチ、と肉付きが良い方が好まれたりする」
千反田「そうなんですか!」
折木「そうだな。そんな太ももに挟まれたいとかぷにぷにしたいとか、好みは色々だが」
千反田「折木さん、少しあっちを向いてて下さい」
折木「わかった」
千反田「」ペラッ ムニムニ
折木「もう良いか?」
千反田「はい、大丈夫です。」
折木「太ももの感触はどうだった?」
千反田「それなりに、ぷにぷにできていたと思います」
折木「良かったな」
千反田「はい」
千反田「そんな…太ももはムッチリ、ふくらはぎはスッキリ、なんて…」
折木「あくまで理想、理想の話だ」
千反田「はい」
折木「で、更にくだっていってくるぶし…はあんまり話す事はないな
足裏…は、マゾには人気が高い」
千反田「マゾヒスティックですか」
折木「あぁ、足裏で踏まれたいとか、グリグリされたいとか。そういう需要だな」
千反田「折木さんは、踏まれたいですか?」
折木「いや、俺は踏まれたいというよりかは、踏みたいって感じだな」
千反田「そうですか」
折木「それから足裏、つま先なんかは敏感だろう?」
千反田「くすぐられると、弱いと思います」
千反田「強い人はあんまりいないかもしれませんね」
折木「そうだな、SM的なプレイとしてつま先を舐めるとかいうのは聞くが…」
千反田「私はあまり聞きませんが」
折木「それは千反田がSM自体に詳しくないからな」
千反田「そうでした」
折木「俺としては不思議な訳だ。MがSのつま先を舐める、でもくすぐったいだろ、それ?って
なんでくすぐったい事をMにさせるんだ、と」
千反田「言われてみれば、そうですね」
折木「そこでひゃぁ!?なんてくすぐったがってみろ、Sの威厳は台無しだぞ」
千反田「それは…確かに…」
折木「…というわけで、俺はSMプレイの時につま先に奉仕させるというならキス程度が良いと思う」
千反田「明日使えないムダ知識ですね…」
千反田「まだあるんですか」
折木「S的に服従の証として、つま先の指の間まで綺麗にさせるというのは有りだと思う。」
千反田「…有りでしょうか」
折木「献身的に尽くしてる、という感じがするだろう。」
千反田「…想像するとくすぐったい感じしかしません」
折木「…そこをぐっと我慢しないと、Sは出来ない事になる。」
千反田「慣れますかね?」
折木「経験も無ければ、今はじめてした話なので全くわからん」
千反田「ですよね」
折木「後は臭いフェチだな」
千反田「折木さん、足の話が…臭い、ですか?」
折木「千反田、お前、ブーツは履くか?」
千反田「どうでしょうか…学校はローファーなので」
折木「あぁ…ローファーも良いな…」
折木「蒸れるからだ」
千反田「…え?」
折木「ローファーに限らず、ブーツみたいな通気性の悪いものは蒸れる。
すると、長時間履く事によって臭いが発生する」
千反田「そう、ですね…」
折木「それがフェチ的にはたまらない臭いという事になる。」
千反田「えぇっ…臭いが、ですか……?」
折木「まぁ、体臭というのは程度の差はあれど、フェロモンを含んでいるというしな
こう…嗅いじゃいけないとわかっていてもつい嗅いでしまう、みたいな…」
千反田「背徳感もあるんですね」
折木「そうだ、よくわかってきたな」
千反田「えへへ」
千反田「というと?」
折木「春先近いというのに、ロングブーツだった。しかもストッキング」
千反田「……」
折木「きっと帰宅した入須先輩の足からは、芳しい臭いがしただろう」
千反田「…………。」
折木「……はぁ、嗅ぎたい。」
千反田「折木さん!折木さん、ローファーも!」
折木「良いよね!」
千反田「途中まではニーソックスのように色がついていて、太ももの途中辺りから肌色になっているものですね?」
折木「そう、それだ。ニーハイとストッキングが一体化、お肉が乗らない!なんて文句がうたわれていた」
千反田「折木さんの好きなものが一つになっていて、より好ましくなるのでしょうか?」
折木「違う、俺はこのニーハイストッキングとやらを嫌悪している!」
千反田「えぇっどうしてですか!」
折木「肉が乗らない、肉が乗らないって!わかってないのもいい加減にしてくれと言いたい!
あの、ニーハイの上のちょっと肉がのってぷくっとなってるのが良いんだろう!
そこをつんつんぷにぷにしたい、というのは全男子の憧れだと俺は声を大にして言いたい!」
千反田「折木さんが急にヒートアップしました」
折木「それぐらい俺はこの商品に怒り心頭しているというわけだ」
千反田「そんなにいけませんか」
折木「千反田、もしお前がそれを履いてきた日には……」
千反田「日には?」
折木「俺は血の涙を流しながら里志のスマホの容量いっぱいまで写真を撮りまくる」
千反田「複雑なんですね」
折木「単純に、千反田の場合、それがわかる長さのスカートをあまり履かないからな」
千反田「」
折木「そう思うと、あの時のチアコスや…メイド服の絶対領域は実際に見たかった」
千反田「やっぱり見たんですか!?」
折木「見たとも」
千反田「………開き直るなんて…!」
折木「時効ってことさ」
まだ俺の性癖は暴露されるべきなのか?>>90」
千反田「はい?」
折木「黒髪は、良いよな」
千反田「……えっと」
折木「すまん、ちょっと感じ入ってしまっていた。
昨今の流行として…茶髪、一時程明るくはないが、ちょっと茶色をいれるのが流行ってるだろう?」
千反田「茶髪は校則違反なので、うちの学校では地毛の範囲ですが…」
折木「まぁ確かに、茶髪くりくりも良いと思うが。やっぱり男は黒髪ロングが好きなんだよ」
千反田「黒髪ロング!」
折木「そう、入須先輩みたいなな……」
千反田「」プクーッ
折木「すまん、今のはわざとだ」
言わせて貰おう、男はみんな処女厨だ」
千反田「しょ……?」
折木「千反田、本を買う時に一番上の本が立ち読みでぐちゃぐちゃになっていたら、
その下から抜いて本を取るだろ?」
千反田「そう、ですね…?多分、そうすると思います。」
折木「俺もそうだ。つまり、男というのはそういう生き物なんだ」
千反田「えっと…よく…?」
折木「まだ誰も足あとをつけてない真っ白な雪を見ると踏み荒らしたくなるだろ?
それと同じで、誰もが染められてない純粋無垢さに、一度は憧れるんだ」
そういう嗜好が、人には少なからずも存在するという事だ」
千反田「確かに…えっと、雪を踏んで足あとをつけるのは、ちょっと楽しいです」
折木「それと同じで。黒髪ロングにも、まだ汚れを知らぬ純真さがこめられていると俺は思う。」
千反田「黒髪ロング……!」
折木「十文字なんて眼鏡に巫女で黒髪ロングだからな、犯罪者が出てもおかしくないレベルの役満だ!」
千反田「(´・ω・`)」
その点、染めてない黒髪だとさらさらつやつやが保たれている事になる
千反田は知らないかもしれないが、男というのは割りと女の髪を触るのが好きだ」
千反田「そうなんですか?」
折木「男の髪は基本的に毛が硬くてごわごわしてるからな、女性の髪みたいに細くてさらさらなのは、
触っていて結構楽しいものなんだ」
千反田「さすが折木さんは詳しいです」
折木「触ったことはないんだけどな。触りたいと日々思っているだけで。
千反田、さっきからわざとかわしまくっているがお前の…その、黒髪も…満点だぞ」
千反田「!!」
折木「お前を褒めた時、一緒に頭もぐりぐりと撫で回した後に、乱れた髪を指で丁寧に整えてやりたい
というかくんくんしたい。」
千反田「くんくん!!」
千反田「え、か、髪ってそんな、匂いが……」
折木「自分の匂いというのは自分ではわからないからな、気が付かないだろうが。
千反田が俺の前を横切ったりする時にふわり、と匂うわけだ……」
千反田「えぇっ」
折木「気にするな、いい匂いだ。それをこう…お前の後頭部に顔を埋めてぐりぐり~っとして
存分にくんかくんかしたい衝動にだな…」
千反田「かられるんですか」
折木「割りと頻繁にな」
千反田「…そ、そ、それじゃあ、あの、私、私で……よければ……っ」
折木「それから外せないのが髪コキだな」
千反田「……髪こ……えっ?」
千反田「髪で、扱く……あっ」
折木「そう、さっきのパイズリと一緒だな。」
千反田「えっでも、髪でって…だ、大丈夫なんですか?」
折木「どうなんだろうな、そんなに気持ちよくもなさそうだが…
女性の髪というのは、命…なんて言ったりするだろう?」
千反田「確かに…長いと大変ではありますが、私もこうやって伸ばしていますし…」
折木「それを汚す、という所に背徳的な悦びを感じるわけだ」
千反田「えぇ、でも、でも……」
折木「確かにちょっと想像しにくいものだが、パイズリもあまり気持ちよくはなくて、視覚イメージがメインだと言っただろ?
髪コキも、フェティシズムを先行させた結果であって、そこに快感がどれほどか、という話はまた別になる」
千反田「はい、折木さん」
折木「さっき何か言い掛けなかったか?」
千反田「…い、いえ、何もっ…」
折木「そうか」
千反田「(髪で、髪で…なんて、そんな……)」
千反田「………」
折木「ぐりぐり撫で回したいなぁ」
千反田「お、折木さん…」
折木「ぶっかけたいなぁ」
千反田「!?」
折木「黒髪に白いのかけて、しっかり塗りこみたいなぁ」
千反田「」ガクガクブルブル
折木「どうした、千反田。呼んだか?」
千反田「何も言ってませんよ?!」
千反田「お、折木さん!」
折木「ん?」
千反田「私、眼力は強いほうだと思います!」
折木「身にしみて知ってるが」
千反田「胸は…そこそこ、ですが…伸びしろはあると思います!」
折木「チラッ …そうだな」
千反田「足は、健脚だと思います!短いスカートは恥ずかしいですが…お肉もそこそこついてます!」
折木「ふむ」
千反田「それから…黒髪にはちょっと自信があります!切る予定もないですし、これからも黒髪で長いままです!」
折木「そんな感じはするな」
千反田「だから、えっと……」
折木「…条件には、合致してるな」
千反田「そう、そう、です……よね!…よね?」
折木「そこで自信を無くすな」
千反田「そこまでは言ってません!!」
折木「すまん、恥ずかしくて茶化した。」
千反田「もう、折木さん、私は真面目なんです!」
折木「千反田はいつも真面目だからな、わかってるつもりだ。
俺の性癖にある程度千反田は合わせられる、条件と一致しているつまり…」
千反田「い、いきなりは無理ですが!」
折木「……こういう夢を見るようになったら、俺も末期だよな」
千反田「夢じゃありません!
私、気になります!折木さん、私に!折木さんの性癖を教えて下さいっ!……実践で!」
折木「俺の愛は痛いぞ?」
千反田「……っ、が、頑張ります!!」
END
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1350911507/
Entry ⇒ 2015.08.09 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
奉太郎「高く高く、空に昇れば」
容姿なら小指の先ほど変わるかもしれないが
生まれてから今まで過ごした日々により形成された人間性が
高校の三年間だけで変わってしまうほど人間は薄っぺらいもんじゃない。
変わったように見えるのは本人が取り繕っているだけだ。
ホータローは高校で変わったね、などと聞き捨てならぬ発言をしたからだ。
「へぇ…じゃあホータローは取り繕ってるってわけかい」
からかうような目。俺の反論にもひるんだ様子は微塵も見られず、笑みが浮かんだ口元は相変わらずだった。
注意!
便宜上、古典部にオリジナルキャラがいます。
「俺は変わっちゃいないさ。何もかも、な」
俺の言葉に里志は肩をすくめた。
暦は10月下旬。夏休みが明けておよそ二か月が経過した。
日を追うごとに肌寒くなってきている様子は、高校生活の残り少なさを暗示しているようでもある。
傍らに座っていた後輩、いずるが訊く。
「自分のことはわからないもんなんだよ」
「自覚症状なしっすかー」
「一生ないだろうね」
そんな里志の軽口にケラケラと笑った。
今年の春に入部した一年生、仙道いずるを形容するなら明瞭快活、だろうか。背は千反田より少し低いくらい。セーラーの上にパーカーを羽織っており、薄ら茶色のショートカットと少し吊り上った目つきも相成りボーイッシュな印象を与える。
傍らに座っていた後輩、いずるが訊く。
「自分のことはわからないもんなんだよ」
「自覚症状なしっすかー」
「一生ないだろうね」
そんな里志の軽口にケラケラと笑った。
今年の春に入部した一年生、仙道いずるを形容するなら明瞭快活、だろうか。
背は千反田より少し低いくらい。
セーラーの上にパーカーを羽織っており
薄ら茶色のショートカットと少し吊り上った目つきも相成って、ボーイッシュな印象を与える。
「おまえたち、何をしている?」
初老の教師が大股開いてツカツカと歩みよってくる。
威圧するような傲慢な振る舞いに俺はむっとなった。
「僕たち古典部なんですよ。加上先生」
里志は気を悪くした様子もなく飄々としている。
「すみません。私が来るようにお願いしたんです」
いずるが立ち上がってこうべを垂れた。
「勉強教えてほしくって」
机を差し示した。加上教諭は教科書とノートが置かれている机といずるを交互に見つめる。
眼鏡の奥の細い目が、刃のように光っていた。
「下校前にはさっさと帰れよ」
いずるの弁解に納得したのか、そっけなく言って踵を返す。
戸が閉じるとしばらく間をおいて、いずるが安堵の息を吐いた。
俺は別の個所が気になった。
「お前、教師にはきちんとした敬語なんだな」
「はい!」
そう胸を張られても…。
本来なら引退して家と学校の往復にいそしんでいなければならない。
それでも部室に入り浸れるのは、いずるに勉強を教えるという理由があるからだ。
なるほど。ここはかわいい後輩のためにひと肌ぬいで学力向上の手助けをしてやろうかと
こうして部室にあつまっている、なんてわけはなく見回りの教師の詰問から逃れるために用意した建前である。
実態は非生産的な会話を行う日々だ。
「何か用事でもあるのかい?」
「いえ。お菓子が食べたいので」
千反田よ。おまえは後輩に餌づけしてくれる人間だと認識されているぞ。
いずるは白い歯を見せてにかっと笑い、教科書の下に隠していた雑誌を読み始める。
草野球で無敵の主人公がプロ野球界に殴り込み、強打者達をクレバーな投球術で翻弄していく姿を描いたもの。
野球素人の俺から見てもかなり荒唐無稽な筋立てだが、これがすこぶる面白いのだ。
「こんにちは。折木さん、福部さん、いずるさん」
言いながら、千反田えるが頭を下げる。
女子にしては高い背丈。長い睫。
ぱっちりとした大きな瞳は、ひとたび好奇心が刺激されるとらんらんと輝く。
一年の頃は背中まで降りたロングへアーで楚々とした雰囲気を与えていたが
今では髪を結ってポニーテールに仕立てている。
三年に進級してすぐの頃から、常時ポニーテールにするようになった。
まあ本人にも何か事情があるのだろう。俺は理由については突っつかなかった。
「あのう」
座った千反田がおずおずと切り出す。
顔をみて続きを促すが、躊躇うように口をパクパクと動かし目が泳いでいた。
「あのですね。わたしから提案があるんです」
「ほうほう。それは」
里志が身を乗り出す。
「どんな提案ですかー」
いずるが言葉を引きついだ。
「えっとですね」
「待て」
緊張した面持ちで話を始める千反田を俺は手で制した。
「話すのは俺たちにだけでいいのか? 伊原にはどうするんだ」
千反田はかあっと顔を赤らめてそうでしたね、と照れくさそうに言った。
「話は摩耶花さんが来てからにします」
えー、めちゃくちゃ気になりますよー。とぼやくいずるに頭を下げた。
三年となれば、卒業後の進路選択を迫られる。
千反田は古典部唯一の国公立大志望だ。今もおもむろに取り出したノートをまじまじと見つめている。
みたところ日本史の暗記事項がまとめられているらしい。
追い込みの時期だがこうしてふらりと部室に来ているあたり、まだ余裕があるのだろう。
古典部で最も学力的に問題があるのは里志だが、それはもう過去の話だ。
留年スレスレの低空飛行だった成績は、夏休み明け頃から急上昇し教師連中の腰を抜かせた。
追い込まれれば驚異的な集中力を発揮する旧友の新たな一面に俺は驚嘆したものだ。
近づきつつある受験。終われば、日々の不安からは解放される。
いつからか、この放課後の地学講義室に居心地の良さを感じるようになっていた。
「あの、折木さん? なにか?」
千反田に呼びかけられる。どうやら視線を感じ取っていたらしい。
「なんでもない。ぼんやりしてただけだ」
ぶっきらぼうにそう言った。千反田は気を悪くした様子はなく
「そうですか」
と微笑みを返してくれた。
無造作なショートカットだった髪型は
これも千反田と同じくして三年に上がった頃、変わった。
レイヤーのボブカット。前髪にはシャギーが入れられている。
そのせいか以前のきつめの顔立ちは少しだけ柔和になった。里志によると、ただの気分転換らしい。
千反田から改めて切り出されると、伊原が先に発言した。
いずるは待ってましたと言わんばかりに体が前のめっている。
「はい。 私たち古典部でパーティーをしようと考えているんです」
順序立てて話すのが苦手なところは変わっていない。
「んー。いいんじゃないですかー パーティーなら」
「るーちゃん…もっと詳しく聞こうよ…」
こといずるに限っては名前をもじる。
というのも、せんちゃんって仙人みたいで嫌です、と口をとがらせたからだ。
俺や里志の名字呼びにも、大衆を無責任にあおる扇動者を連想させると嫌がった。
いささか強引な結びつけじゃないかと思ったが、感性は人それぞれだ。古典部は全員がいずると呼ぶ
長い沈黙の末、渦中の人物が口を開く。
「いずるさんの歓迎会もしていないですし、それに私たち、卒業したらは慣れ離れなわけです」
「だから歓迎会と送別会を兼ねたパーティーをしよう、ってわけだね」
里志がぴんと指を立てる。千反田が相好を崩して頷いた。
うーん。しかし
豪華とはいえないものの、メシを五人で食べに行ったことだってある。
「あれは部活動としてです。 今回はパーティーです」
鳥が大空をばたくように腕を大きく広げる。
「んー。いいですねー さすが千反田先輩」
「ねえ、いつやる予定なの?」
伊原が訊く。俺の抵抗もむなしく、あっさり決定事項になってしまった。
「皆さんが良ければ、来週の土曜を予定していますが」
「はっや」
いずるの反応に千反田が気遣わしげに言う。
「もうすぐ受験勉強が本格的に始まりますので…なるべく早いほうがよろしいのかと…
あの、でも必ずやりたいという訳ではありません。支障があるのならまたの機会にということでもいいんですが…」
ははあ。言い淀んでいたのは俺たちの勉強の妨げになるかもと考えていたらしい。
「僕と摩耶花は大丈夫だよ」
「折木さんは?」
一つの疑問が湧くが、この流れで聞くと水を差すようで躊躇われる。
まあそんなに大したことでもないが。
「大丈夫だ」
千反田が安堵したように頷く。
「せんぱーい。場所はどこですかー?」
聞かれて、千反田が大きく両腕を広げる。
「今からそれを皆さんに考えていただきたいんです」
俺は椅子からズッコケそうになった。多分ほかの三人もそうだっただろう。
「考えてなかったんすか…」
笑みを絶やさない陽気な一年生もあ然としている。
てっきり場所も考えてあって必要なのは部員の承諾だけかと。
ここは言い出しっぺの千反田の家でやるのが筋だろう。が、伊原が余計な気を回す。
「ちーちゃんの家は文化祭の打ち上げでおじゃましたし、悪いわよね」
「んー。だったら福部先輩か伊原先輩か折木先輩の家ですね」
「誰か忘れてるぞ、いずる」
彼女は恥ずかしそうに頭を掻いて。
「あたしん家、クソ狭いアパートなんですよ。 パーティーをするには華やかさ足りないかなーって」
「ここはホータローの家と行こうか」
そんな環境で宴など、とても落ち着かない。
「部員の家じゃなくてもいいだろう。どっかのカフェか茶店か」
一瞬だけ場が静まり返り、何かまずいことを言ったのかと俺はぎょっとした。
「そうね。いいかもそれ。折木にしてはナイスアイディアね」
「僕もそう思う。まあドンチャン騒ぎするってわけでもないだろうし」
里志はともかく、伊原が妙に食いつきが良いことに違和感を覚えた。
千反田の問いに一本だけ腕が上がった。全員がいずるを注視する。
「あたしにまかして下さい」
いずるは片目をつむり、平板な胸を叩いた。
自信ありげな顔を見て、一抹の不安がよぎったのは多分俺だけではないだろう。
8時前にはベッドから這い出た。と言っても寝ざめは良くない。
いつもの土曜の朝ならまだ夢の中にいる時間帯だ。休日の早起きに体は慣れていないのだ。
目をしょぼつかせながら朝食を済ませた俺はリビングのソファーにだらしなく体を預け
携帯電話を手の中でもてあそぶ。
俺だけじゃない。千反田も今では持っているし、いずるの場合入学前から所有済みだ。
テレビでも観ようかとリモコンを手にとった時、間の悪いことに手中にある黄緑の携帯が震えだす。
「もしもし」
リモコンをソファーに放るとディスプレイを確認せず出た。
「んー。折木先輩ですか?」
女子にしては低い声。いずるだとすぐに分かった。
「今日なんですが」
「どうした? 」
いずるの深刻そうな物言いに俺は身構えてしまう。
春先にあった呼び名の件や里志との軽口を交えた会話を聞いていて
あけすけな言い方をするのがいずるのスタイルだと俺は思っていたからだ。
「頑張ってくださいよ」
「なんだと?」
「ではまた後で」
俺の言葉には取り合わず、一方的に話を打ち切る。
真意はくみ取れなかったがどうしてか、いずるの言葉に胸に突き刺さるような感触を覚えた。
パーティーと言っても昼飯を兼ねて軽く、というコンセプトで
1時半には解散する手筈になっていた。さっさと始め手短にすませるという非常に俺好みのスケジュールだ。
神山市の中心部へ徒歩で向かう。
土産物屋、ブティック、本屋など様々な店が立ち並んでおり夏になればここで祭りが行われる。
取り付けられた看板はひたすらにデカくそのせいか、他の建物よりもひときわ存在感があった。
一旦の集合場所であるカラオケボックス前にいたのは、いずる一人だ。
てっきり千反田が一番乗りだと思っていたが。
けれどいずるは身震い一つせず壁に寄りかかっていっている。
水玉模様のパーカーにジーンズという出で立ち。冬の装いをしているが
暖かそうには見えない。
トレンチコートの下に長そでのシャツを着こんでいる俺ですら体を震わせているというのに。
いずると横並びになる形で壁にもたれる。
ふざけ合っている女子大生風のグループが俺の傍らの階段を上がっていった。
階段の先には、古典部のパーティー会場がある。
「個室が与えられますし、パーティーならやっぱここかなって」
「茶店かカフェって千反田が言ってたろう」
俺の抗議に、いずるは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「んー。カラオケも飲み物食べ物頼めますし。立派なカフェじゃないですかー」
うむむ。こいつ見かけによらず里志顔負けの理屈屋だな。
きっと千反田もこうして言いくるめられたのだろう。
その中で俺のことを詳しく言うとすれば、カラオケはあまり好きじゃない。
というより音楽をあまり嗜んでおらず、流行の曲でさえも歌詞はうろ覚えというありさまだ。
「それはそうと折木先輩」
「どうした」
いずるは俺との距離を縮め、声のトーンを落とす。
「これってただの飲み食いパーティーじゃないと私考えてるんですが」
「そういえばお前、今朝の電話はどういう」
言い終わるまえにいずるが俺の袖を引っ張る。
話を変えないでください、と凄まれてしまった。俺は詫びて、続きを促す。
いずるの言葉で閉じ込めていた疑問が湧いてくる。
「まあ多分、な」
体がふらついた、ような気がした。
「きっと何かサプライズがありますよー」
悪戯っぽく笑ういずる。俺は笑えなかった。
千反田の性格からしてそんなことをするとは思えない。
この催しにはもっと深い背景があるはず。
この時期にやる必要性はないのだ。卒業式の前日にでもやればことたりるのだから。
「んー。私はちょっと…見てないですねー」
「そうか」
考えても答えはでない。しばらくして千反田、伊原、里志が連れ立ってやってきた。
里志は青いジャンパーにベージュのチノパン。
伊原はニット帽をかぶり、白の長袖シャツを着ている。英字が書かれているが筆記体のせいで読めない。
下はデニム生地の短パンにブーツをはいていて、寒くないのかと心配してしまう。
千反田は桃色のカーディガンを羽織ってロングスカート。
千反田、いずる、伊原、里志、俺の順で階段を登っていく。
店員に通され部屋へ入る。
備え付けのモニターからはデモ画面が流れていて
見覚えのないガールズバンドが何か宣伝のようなことをしていた。
ディスプレイの光の眩さと部屋の暗さのコントラストが目をついた。まあじきに慣れるだろう。
部屋に入ったいずるはメニューを引っ掴んで、があっと広げた。
大きな吊り目を輝かせメニューを見つめる彼女に伊原と千反田も追随する。
「歌より団子だねえ」
里志がクスリと笑った。言いえて妙だ。
俺もなんだかメニューを囲む女連中をみていると腹が減ってきた。時間はもう昼飯時なのだ。
「折木さんも福部さんも。どうぞ」
千反田が空けたスペースに入った。里志がなぜかニヤニヤと笑っている。なんだ。忌々しい奴め。
手を挙げたのは俺の予想した通り仙道いずるだった。
彼女の選んだのは随分昔の歌で曲名から察するに2000年だろう。
音楽に疎い俺も知っているあたり、かなりのヒットを飛ばしたと思われる。
いずるの歌唱力はなかなかのものであり女子にしては低音の声が強みとなって、迫力やパワーが伝わってくる。
ほかの面々も奇異なものを見たように、阿然としている。
「実はわたし、バンドの真似事をしてまして」
曲が終わって、千反田から称賛の声を浴びたいずるは平板な胸を張ってそう言った。
俺は頷く。ほかの面子も俺と似たり寄ったりの反応。
いずるの抗議を里志が笑ってなだめる。
「なんとなくなんだけど、そうじゃないかと思ってたんだよ。普段の言動からさ」
「バレバレだったんですかー。ちくしょー」
「なんで悔しがるの?」
伊原が首を傾げる。
「あえて黙ってて先輩たちを驚かす計画だったんです」
そうだったのか。それは悪いことを。
思い返せば、いずるが来れない日もあった。
彼女の来れない日は、口実が使えないので俺たちも部室には行けなくなる。
「いえ」
聞かれた本人はきょとんとした様子だった。兼部はしていないらしい。
「あ、そうですか…」
千反田が照れくさそうに笑う。
「入ればいいのに。 こんなに歌うまいんだから」
「バンドのメンバー、校外の人なんですよ。 入部しても意味ないです。まあ理由はそれだけじゃないですけど」
「どんな理由? よかったら教えてくれるかな?」
「わたしは決められたレールの上は走りませんから」
誇らしげにそう言った。先輩四人はそろってポカンと口を開けるだけだった。
高校生のガールズバンドの曲だった。
秋に歌うには少し季節外れで、浴衣姿、打ち明け花火といった夏を連想させる歌詞にはおかしみさえ覚える。
歌自体は、千反田の高い声とうまくマッチし、なかなか聞きごたえがあった。
「さすが千反田さん」
里志が喝采をあげ、それに合わせるかのように俺、伊原、いずるが拍手喝采を送る。
照れくさそうにマイクを置く仕草は美しかった。
が、これから歌う人間からすれば自分の番で席を外されるのは気分がよくないかもしれない。
そう考えたがいらぬ心配のようだ。伊原の番らしい。
こいつなら俺がいようがいなかろうが何とも思わないだろう。
もう一度、いずると話した千反田の意図について考えをめぐらせる。
千反田の表情を見る限り物悲しげな様子は見られないし、雰囲気も和やかなだ。
古典部外部の人間を連れてきて、これはお別れ会だと説明しても信じないだろう。
千反田はなんらかの事情で古典部をやめようとしているというもの。
千反田の歌う姿を目にしてその可能性は崩された。
常識的に考えて、愛着のある部活動を退部する人間はにこやかな微笑は浮かべない。
トイレからでた直後、背後から声がする。振り向くと柔和な笑みを浮かべた女が手を振っている。
「よう、クワガタ女」
倉橋だ。倉橋陽菜乃。
背は伊原より大きく千反田より低い標準的な身長。
ゆるいパーマがかかったセミロングとくりくりとした大きな目が少し幼い印象を与える。
二年生の頃、倉橋とは班が同じだった関係で行動を共にした。
放課後を一緒に過ごした時間は古典部を除けばもっとも長い。
俺の灰色の高校生活を少しだけ彩った奴の一人だ。
「たまにはうちのクラスに来いよ」
「え~やだー。めんどくさーい」
エネルギーの無駄使いはいやだなー、とおどけて俺の真似をする。
「じゃあ省エネくん、また今度お話しよ」
ひらひらと手を振って去って行く。
「おい倉橋」
一つ、質問を思いつき、俺は彼女を呼び止めた。
「なにかな?」
「季節外れの催しものを開くのはどんな事情があると思う?」
人差し指を口元にあてて、目線は虚空をさまよっている。質問が分かりにくかったか。
「たとえば今の時期にお別れパーティーを開くやつがいたら? そいつは何を考えているんだと思う?」
倉橋は、ああ、と呟いて言った。
「教えてくれないか」
「何も卒業だけが別れってわけじゃないでしょ。 人それぞれの別れっていうのがあるはずだよー」
じゃあね、と手を振る倉橋に生返事を返す。いずるが部屋から出てくるまで俺はその場に立ち尽くしていた。
いつものように部室でのんべりだらd…間違えた。後輩に勉強を教えていた。
そんな折、いずるが手洗いで席を立つ。
その日来ていたのはいずる、俺、伊原。つまり今は伊原と二人きりの状況だ。
まあこいつから何かを話しかけることはめったにない。その予想はすぐに裏切られた。
伊原がスマホに目を落したまま言う。
「あんたさあ、早く言った方がいいわよ」
「なにをだよ」
俺の言葉に里志の恋人はため息をつく。
「とぼけんならそれでいいわ。 勝手に喋るから。 ちーちゃんってさ、校外での付き合いも多いのよ。
神高生以外にも知り合いがたくさんいるの。もちろん異性もね。 ま、そういうこと」
伊原の長口上に俺は返す言葉が思いつかない。俺の表情を読み取ったのか伊原がさらに付け加える。
部活にきたらちーちゃんに目が行ってるの、知ってるんだからね」
「そうか」
それが精一杯の返事だ。
隠していたつもりが見抜かれていた気恥ずかしさ。隠しきれていなかった自分への腹立たしさ。
二つがないまぜになったものが、俺の体へ積もっていく。
「じゃあ私、帰るから」
「じゃあな」
俺の挨拶には返事もくれず、バッグを担ぐと早足で部室を後にした。
覗き込むように、ひょっこりと顔だけをこちらへ見せ、
「なんかあったら言いなさいよ。その、あたしにできる範囲なら手伝うから」
目をそらせたままで、そっけない言い方。けれどどうしてか、温かみがあった。
伊原が見抜いているということは、おそらく里志も…。
その中でもっとも変わったのはあの二人の関係性だと思う。
カラオケでのたまたま垣間見えたのだ。会計の時にだした里志の財布に避妊具が入っていたことを。
今日び高校生でするのは珍しくもない話だろうし。自分でも不思議なくらい、驚きはしなかったが。
「おまたせーって別に待たせてないですね」
こいつはどうだろうか。いずるは陽気だが能天気ではない。
情への敏感さは千反田と同等かもしれない。
大混雑する生徒に混じってなんとか弁当を手に入れると、飲み物でも買おうかと自販機へ向かった。
そこでも列ができあがっていて、俺は軽く足を踏み鳴らす。
なんとなく列の前の方を見ると、見覚えのある姿があった。
女子にしては高い背。凛々しさを醸し出すポニーテール。
ほほ笑む横顔がちらりと見え、疑惑が募っていく。冷たいナイフを突きつけられた気がした。
真相を知りたい俺は彼らの後を辿って行った。やめろ、と脳裏から声がする。
それでもつけていったのは心のどこかで杞憂で終わることを期待していたからかもしれない。
中庭に点在しているベンチ。
携帯を確認するフリをして横目で彼らを垣間見る。
時折、肌寒い風が吹きすさぶこの天気を恨めしく思った。
こころなしか、千反田と相手の距離はかなり近い。
二人の会話の内容までは聞こえないが、千反田の笑顔が部室でみせるそれとは違う。
相手に心を許しているかのような笑顔。慎みという名の線引きをなくした笑顔。
それを隣にすわる男に照れくさそうに渡した。中身は弁当だろう。
「先輩?」
声がする。いずるが顔を覗き込んでいた。
「待ち合わせですか?」
「い、いや。姉貴から突然メールが来てな」
「へぇ」
いずるの様子からみるに、千反田には気付いていない。この一年生のおかげで目が覚めた。
俺のしていることは正真正銘のストーカー行為だ。
「彼氏です」
えへへ、と笑う。だめだ。言葉が出てこない。ここはなんていえばいいんだ。
そんなことを思っていると、いずるが押し[ピーーー]ように笑いだす。
「嘘ですよ。先輩、何本気にしてるんすか」
ほんっと騙しがいありますねー、と笑いをこらえながらそう言った。
その軽薄さ今では安らぎさえ感じる。
頷き、連れ立って歩き出す。
いずるがペラペラと何かを話すが、それは耳から通り抜けて行った。
思考がうまくコントロールできない。どうしてもさっきの事を考えてしまう。
おそらく提案する以前に交際が始まったのだろう。
思えばあのカラオケボックスでの集まり以降、千反田はあまり部室には来なくなった。
あの催しは奴なりの決意だったのではないか。
神高からの卒業ではなく、古典部からの卒業ということだ。
里志と伊原は同じ部活なので出席率に変わりはないが、千反田の場合、交際相手は外部の人間だ。
交際が始まればどちらかを切り捨てるしかない。
結果、千反田は恋人を選んだ。それについて文句ない。
俺が千反田の立場なら同じ選択をする。
が、人の心は理屈では動かない。理由に納得できたとしても感情までは…
たった今、おれはそう学んだ。
その空に昇りたいと、そう思った。
高く高く空に昇れば、俺にはすべてが見えるはず。目はどこまでも届くはず。
いずるの話にしきりに相槌をうち、詳細に想像し、中庭でみた風景に上書きしようとする。
湧きあがってくる真っ黒な感情が消えるには、しばらく時間がかかりそうだった。
おわり
やっぱ氷菓SSは名作が多いな
面白かったからいいけど
奉太郎とえるはくっつかないと思うよ。
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435539573/
Entry ⇒ 2015.07.04 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
奉太郎「入須先輩を激しく狼狽えさせたい」
奉太郎「映画撮影の件、入須先輩にまだ借りを返していないな」
奉太郎「……」
奉太郎「俺が勝手に騙されたことだし」
奉太郎「それに対して怒りが収まらない程小さくもない」
奉太郎「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」
奉太郎「省エネ主義か……」
奉太郎「……」
奉太郎「……」
千反田「折木さん!おはようございます」
奉太郎「んっ」
千田反「折木さん、今日朝早いですね」
千田反「何か用事があるんですか?」
奉太郎「まあな」
千田反「私、気になります!」
奉太郎「うぐっ……」
奉太郎「なんでもない」
千田反「そうはいきません!」
千田反「折木さんは確かに朝から用事があると仰いました」
千田反「それがなんなのか私……」
千田反「気になります!」
奉太郎「それはだな……!」
千反田「あっ!」
千反田「入須先輩、おはようございます」
入須「ああ、千反田か」
入須「おはよう」
奉太郎「……」
入須「折木君も、おはよう」
奉太郎「おはよう、ふゆみん!!」
入須「!?」
奉太郎「そのように?」
奉太郎「そのようにって一体どういうことですか?」
千反田「お、折木さん?」
入須「だから今のように私のことを」
奉太郎「私のことを?」
入須「ふ、ふゆみんと呼んでだな」
奉太郎「?」
入須「えっ」
奉太郎「行くぞ千反田」
千反田「は、はい」
入須「……」
入須「私としたことが不意を付かれてしまった」
入須「ふむ」
入須「考えるに折木奉太郎は冗談を言うような性格ではない」
入須「となると何のために」
入須「……!」
入須「ふふっ……なるほど簡単なことじゃないか」
入須「先日の映画撮影の件、それの報復と言う訳か」
入須「折木君も可愛いところがあるじゃないか」
入須「そういった敵対心や怒りは上手く操ってコントロールし易い」
入須「ふふっ」
入須「……」
フー
入須「ひゃあっ」
入須「なに!?」
奉太郎「もう帰るんですか?」
入須「あ、ああそのつもりだ」
入須「しかし感心しないな」
入須「今の行為は所謂セクハラに当たる行為だぞ」
入須「他に何かあるのかな?」
奉太郎「いえ……ただ」
入須「ただ?」
奉太郎「ふゆみーるは耳が敏感なんですね」
入須「……」
奉太郎「じゃあ俺はこれで」
入須「また不意を付かれてしまったか」
入須「まあいい、この程度のことだ」
入須「それより今はとことん過剰に反応してやった方がいいな」
入須「相手の反応が大きいほどやっている側は面白いからな」
入須「ふふっ……折木君」
入須「束の間の攻勢を今のうちに楽しんでおくんだな」
入須「……」
入須「しかしふゆみーるとは……」
入須「……」
奉太郎「あっ!」
奉太郎「おはようございます」
奉太郎「みゆふすりい先輩」
入須「みゆ…ふ?」
入須「済まない折木君意味が解らないんだが」
奉太郎「いりすふゆみ反対から呼んでみゆふすりいですよ」
入須「ああ成る程」
入須「やめてくれないか?」
奉太郎「はい!分かりました」
奉太郎「みゆふすりい先輩」
入須「なっ」
奉太郎「ではこれで」
奉太郎「~♪~♪」
入須「……」
入須「ふふっ」
入須「ふふっ……供恵先輩の弟とはいえ可愛いじゃないか」
入須「おれきほうたろう……」
入須「うろたうほ……きれおかな?」
入須「こうなったら次は何をしてきてくれるのやら」
入須「楽しみだな」
奉太郎「……ふぅ」
奉太郎「やはり慣れないことをするもんじゃない」
奉太郎「だがこれで入須先輩からの警戒は解けただろう」
奉太郎「作戦通りなら俺は今はタロットでいう愚者ってところかな」
奉太郎「……ふふ」
奉太郎「どうもいかんな……少し楽しくなってきてしまった」
入須「おや、折木君」
奉太郎「どうも」
入須「君も今から帰りかな?」
奉太郎「ええ……まあ」
入須(いやにテンションが低いな……不意打ちできる機会がないからか?)
入須「そうか、では私はこれで失礼するよ」
奉太郎「はい、さような……えっ!?」
奉太郎「えっ!?あっ……うそだうそだ……」
入須「大丈夫か?」
奉太郎「あ、あれ……あれっ!うそだ!うそだぁぁ」
入須「あれ?一体何が……」クルッ
奉太郎「嘘です」カプッ
入須「うひやぁぁ!!」
入須「な、何をする」
奉太郎「やっぱりふーみんって耳が敏感なんですね」
入須「折木君、冗談にしても今のはやりすぎではないか?」
奉太郎「スキンシップ!スキンシップ!」
奉太郎「ふゆみたそ~」
入須「スキンシップにしてもやりすぎだぞ」
奉太郎「気にしないでください先輩、俺は気になりませんから」
奉太郎「俺、気になりません!折木になりません!」
奉太郎「なんちゃって、それでは」
入須「……」
入須「まあ今の内だ」
入須「しかし私の耳というのは彼が言うとおり敏感なのか?」
入須「肉欲的なことにはあまり興味はないが……」
入須「このままやられ放題というのも面白くないな」
入須「そろそろ攻撃に転じさせて貰おうかな」
入須「ふふっ」
千反田「ーーでですね」
千反田「私気になるんですよ」
奉太郎「ふむ、俺は気にならんが」
千反田「そんな~私気になるんです」
入須「おはよう」
千反田「あっ、入須先輩」
入須「おはよう」
奉太郎「おはようございますふゆ…」
入須「おはよう、ほうたる~」
入須「では私これで」
千反田「……」ポカーン
千反田「な、なぜ入須先輩があの様なことを言ったんでしょうか?」
奉太郎「この感じは…」
千反田「私、気になります」
奉太郎「そうだな、俺も気になるよ」
奉太郎「……」
入須「ふふっ…あの顔……」
入須「これはいけない」
入須「私としたことが楽しんでしまったようだ」
入須「だがこれで折木君は私に不意を付かれたことの報復に躍起になるはず……」
入須「望むところだな」
入須「ふふっ……面白い」
入須「……」
奉太郎「……」ペロッ
入須「んんっ!!……ふ」
奉太郎(声を出さないように必死に堪えてる入須先輩かわいい)
奉太郎「はむはむ」
入須「あっ……んん……ひゃ」
入須「ふぅ……全く君はいつもいつも」
奉太郎「やっぱり冬実は…」
入須「私は用がある」
入須「では」
入須「これから肉体てきな不意打ちには気をつけなければ」
入須「だが反応は最低限に抑えることができたな」
入須「反応がなければ彼も面白くあるまい」
入須「これからは彼の行為に反応したり反応しなかったりしよう」
入須「そして徐々に無反応の比率を増やしていく」
入須「そうすれば彼は私の反応が欲しくて仕方がなくなるだろう」
入須「後は彼を御するのは簡単だ」
入須「ふふっ」
入須「……」
ツー
入須「ふあぁぁ」
奉太郎「おっはー!」
入須「なんだまた君か…」
入須「そろそろいい加減にしてくれないかな?」
奉太郎「どーどーどーどー」ナテナデ
入須「なっ!?………んっ」
入須「んっ……あぅ」
奉太郎「ふぅ」
入須「全く君は…」
奉太郎「イリフユは背中も敏感なんだね」
入須「なっ!?」
奉太郎「んちゃ!」
入須「……」
入須「ふふっ」
入須「……」
入須(そろそろか……)
\フッユミーン/
奉太郎「ふゆみん!はっじまるよー」
奉太郎「今お帰りですか?」
入須「……」
入須「それじゃあ」
奉太郎「えっ」
入須「彼の去り際の顔……」
入須「こうなれば後は簡単だな」
入須「犬の躾と同じだ、暫く待てをしてあげればいい」
入須「とりあえず三日間くらい放置してみようかな」
入須「三日間後に反応してやったら彼はどんな顔をするだろうか」
入須「ふふふ……」
千反田「私に木になります!」
奉太郎「……」
千反田「……」
千反田「面白くなかったですか?」
奉太郎「まあ」
千反田「どうして面白くなかったのか私(ry」
奉太郎「……!」
奉太郎「ふふふふ」
奉太郎「who you me!? I know you!!」
入須「……」
奉太郎「WHO WHO WHO …… 」
入須「……」
奉太郎「ふぅ…おはようございます」
入須「……」ペコ
奉太郎「あっ」
奉太郎「……」
入須「……そこをどいてくれないか?」
奉太郎「どうしてです?」
入須「用事があるからだ」
奉太郎「……」ペロッ
入須「ふぁっ…」
奉太郎「この味は……嘘をついている味だぜ」
入須「……」スッ
スタスタ スタスタ
奉太郎「……」
入須「……」
入須「ふふ……効果的めんだな」
入須(そろそろ)
奉太郎「おはようございます入須冬実先輩」
奉太郎「俺思ったんですけど冬に実っておかしくないですか?」
入須「そうか?私は中々気に入っているぞ」
入須「じゃあ」
奉太郎「……」
奉太郎「……」ニヤァァ
入須「……」
入須(そろそろか……)
入須「……」
入須(まだ来ないな)
入須「……」
奉太郎「ふゆみたそ~」
入須「あっ……」
入須「……」
入須「……」
奉太郎「いりすたそ~」
入須「……」
奉太郎「ふゆみーん」
入須「……」
奉太郎「ふゆみたそ~」
入須「……」
カチッ
『ほうたる~』
入須「なにっ!?」
カチッ
『ほうたる~』
奉太郎「ふゆみたそ~」
『ほうたる~』
入須「いつだ……いつだ……」
ペロッ
入須「んひゃあぁぁ」
ハムハム
入須「あっ……はぁん……やぁ」
入須「あっ……やぁぁん」
『ほうたる~』
奉太郎「相変わらず敏感ですね」
入須「ほんと……折木君んんっ……あぅ」
『ほうたる~』
奉太郎「スイッチオン」ギュ
『ほうたる~』
入須「ひやぁぁぁぁぁ!!」ビクビク
ペロッ
奉太郎「この味は…………焦ってる味ですね」
カチッ
『ほうたる~』
入須「はぁ……はぁ!?なぜ私の声が……」
『ほほほほほほほうたる~』
入須「…………あの時か」
奉太郎「それじゃあ、さよなら」
奉太郎「ふゆみたそ~」
『ほうたる~』
奉太郎「あー疲れた」
奉太郎「しかし前持って会話を録音して置いてよかったな」
奉太郎「省エネ主義か……」
奉太郎「まあ、いい声録らせて貰ったからいいか」
奉太郎「ふゆみたそ~」
『ひやぁぁぁぁぁぁぁ』
奉太郎「ふぅ……」
入須「まんまんと折木君にしてやられた訳だ」
入須「さすが供恵先輩の弟だな」
入須「ほうたる~……か」
入須「ふふっ」
入須「不本意ながら女帝と呼ばれているが」
入須「やられたままじゃ終われないな」
千反田「それでですね」
千反田「最近折木さん元気がないと思うんです」
奉太郎「それは省エネ主義だからそう見えるだけだ」
千反田「そうでしょうか……でも私気になるんです」
千反田「口では上手く説明出来ないんですけど……なんとなく元気がないような」
奉太郎「気のせいだ」
奉太郎「……」
入須「ほうたる~」
奉太郎「!?」
テクテク テクテク
入須「ん?あの人形……」
入須「……」スッ
スー
入須「……」スッ
スー
入須「……」スッ
スー
入須「……」スッ
ギュー
入須「……あっ」
入須「んん……まっく糸を付けて私を釣るとはな」
奉太郎「ふゆみたそ~」ペロッ
入須「折木君くんんっ……こんなとこで」
奉太郎「ふゆみん相変わらず耳がや弱いですね」ハムハム
入須「ひゃう……君は一体どっちが素なんだ」
奉太郎「さあ?俺は入須先輩の狼狽える姿が見られればそれで」
入須「勝手なんん…………ことを……はぅ」
入須「しかし簡単にいくような男ならそもそも面白くない」
入須「どうするか………」
入須「ふふ……中々楽しいな」
入須「思い通りにいかないというのも」
入須「そろそろ反撃に出るか」
入須「……」
入須(そろそろか)
入須「……!」
千反田「ーーー」
奉太郎「ーーー」
千反田「それで今度私の家にいらっしゃいませんか?」
入須「……」
奉太郎「ふむ……まあ予定がなければな」
入須「!」
千反田「よかった!」
入須「……」
千反田「今お帰りですか?」
入須「そうだ」
千反田「ではさようなら」
奉太郎「ども」ペコ
入須「あっ」
入須「……」
奉太郎「……」
入須「……あっ」
奉太郎「おはようございます」ペコ
入須「えっ」
奉太郎「どうしました?おはようございます」
入須「あ、ああおはよう折木君」
奉太郎「じゃあ」
入須「……あ」
入須「……」
入須「……」
入須(まだ来ないのか)
入須「……」
入須「……」
奉太郎「……」ソー
奉太郎(そわそわしながら待ってる入須先輩はかわいいなぁ)
奉太郎「……」
ソロリ ソロリ
奉太郎「……」
ソロリ ソロリ
フー
入須「ひゃぁん!」
奉太郎「ふゆみんは相変わらず耳が敏感ですね」
奉太郎「最近更に敏感になったんじゃないですか?」
入須「こ、これは君が」
奉太郎「あ、今日は用事があるので帰ります」
奉太郎「さよなら」
入須「あぅ……」
千反田「渡木になります」
奉太郎「……」
千反田「どうですか折木さん」
奉太郎「まあまあだな」
千反田「どうしてまあまあなのか私(ry」
奉太郎「あ、入須先輩おはようございます」
入須「おはよう」
入須「ほ、ほうたる」
奉太郎「じゃあこれで」
千反田「ま、待ってください折木さん」
千反田「あ!おはようございます」ペコ
入須「おはよう…………」
入須「……」
入須「……」キョロキョロ
入須「……」
奉太郎「どうしたんですか?」
入須「あっ」
奉太郎「?」
入須「い、いや気にしないでくれ」
奉太郎「そうですか」
奉太郎「では」
奉太郎「ふゆみんっ」ボソッ
入須「ああぁ」
入須「はぁ……はぁ……」
入須「一体私はどうしてしまったんだ」
入須「この三日間折木君は私にほとんど何もして来なかった……」
入須「これではまるで」
沢木口「入須?どうしたのボーッとして」
入須「い、いやなんでもないぞ」
入須「少し考え事をしていてな」
沢木口「ふーん」
入須「……」ボッー
入須「……」
入須「……」
奉太郎「ふーゆみんっ」
入須「あ、あ、ああ」
奉太郎「どうしたんですか?そんな顔して」ナデナデ
入須「はふぅ……あぅぅ」スリスリ
奉太郎「ふゆみんはかあいいなぁ」ペロペロ
入須「ひゃぅぅ……あん…」
入須「んん………はぅぅ」コクコク
奉太郎「よーしよーしよーし」ナデナデ
入須「う……ぐすっ……」スリスリ
奉太郎(放置されて思わず泣いちゃうふゆみたそは可愛いなぁ)ゾクゾク
入須「ひぐっ………えぐ……」スリスリ
奉太郎「ふゆみたそ~」カプッ
入須「ふぁぁぁぁ」ビクッ
奉太郎「かあいいなぁ」ナデナデ
入須「くぅ~ん」スリスリ
奉太郎(あの入須先輩がこんな……)
奉太郎「かあいいなぁ」
入須「んー」スリスリ
奉太郎「入須先輩」
入須「あっ……」シュン
奉太郎「ふゆみたそ」
入須「はぅぅ…」パァー
入須「んん……なんだ折木君」
奉太郎「俺の家にきませんか?」
入須「えっ!?」
入須「それは一体……」
奉太郎「間違えました」
奉太郎「俺の家に来いよ冬実」
入須「はふぅぅ」コクコク
奉太郎「どうぞ」
入須「ふむ……お、おじゃまします」
ガチャン
奉太郎「……」ギュー
入須「あっ……す、少し早すぎるのではないか?」
奉太郎「ふゆみたそ~」
入須「んん!!……やんっ……」
入須「んちゅ……ぷはぁ……はぁはぁ」
入須「きやっ!」
入須「ちょっと折木くんんっ……やっ」
奉太郎「奉太郎って呼んでくださいよ」
入須「わ、わかった」
奉太郎「ふゆみーるのここかあいいなぁ」
入須「お、折木くん!!見ないでくれな」
奉太郎「奉太郎でしょ?入須先輩」ペロッ
入須「あっ……やぁごめん……ごめんなさい」
奉太郎「そろそろいいですかね」
奉太郎「よいしょっと」
奉太郎「先ずはストッキングを脱がせてと」
奉太郎「パンツを脱がせましてー」
入須「んっ」ピクッ
奉太郎「再びストッキングを履かせまーす」
入須「ほ、奉太郎?」
入須「なんでこんなことを」
奉太郎「知っての通り俺は省エネ主義です」
奉太郎「やらなくてもいいことはやらないけど、やるときはやりますよ」
入須「やるの意味がちがっ……あぁぁぁ」
奉太郎「ふゆみたそ~大丈夫?」
入須「あっあぅ!!うん!ぁぁぁ」
奉太郎「ふゆみん!ふゆみん!」
入須「あぁっ!やぁぁんん……はふぅ」
入須「ほうたろ、ほうたろおぉ!!」
奉太郎「ふぅ……」
入須「はぁはぁ」
奉太郎「やっぱ省エネ主義って糞だわ」
奉太郎「それにしてもふゆみんはかあいいなぁ」ナデナデ
入須「んんっ……ほうたろお……」スリスリ
入須「はぅぁ」クンクン
奉太郎「かあいいなぁ」
奉太郎「ふみたそ~」
入須「朝からはやめてくれ奉太郎」
奉太郎「ふゆみん」カプ
入須「やん……あぅ……卑怯だぞ」
奉太郎「かあいいなぁ」ナデナデ
入須「ほうたる~」
千反田「……」
千反田「おかしい……こんなことは許されない」
分かってると思うけど俺はえるたそ~とか言ってるやつと千反田()が大嫌いだ、ふゆみたそが正義なのだ
入須のキャラは崩壊してしまったけど
良くやった
乙!
乙、よく書ききってくれた!
正直パンツがどっかいったままなのが残念だが、
ここ最近で一番かあいいものを見た気がする
先輩は好きだけどお仕置きは必要だよな
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349427373/
Entry ⇒ 2015.06.17 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
里志「え? 奉太郎が部活?」
「どうしたんだい急に? 高校デビューってやつかい?」
「そんなんじゃなくって…ちがくて…」
奉太郎は顔を赤らめてかぶりを振る。その仕草はちょっと…かわいかった。
「うんうん」
僕は、頷いて続きを待つ。
「お姉ちゃんがどうしても入れっていったから、かな」
思わず頬が緩む。なるほどそういうことだったのか。あまり積極的に人と交わろうとせず
しおらしい性格をしたホータローが部活なんて。どうもおかしいと思ったんだ。
まさかお姉さんに命令されたとはね。
はっきり言ってしまうと、ホータローはお姉さんが大好きなんだ。それゆえ、お姉さんには逆らえない。
と、一応念のために言っておくと変な意味ではない。誤解を招くかもしれないので念のため。
「笑いごとじゃないと、思うよ」
そう抗議してきたものの、これもまた遠慮がちだった。
もっと自信もって言ったほうがいいとおもうけどなあ。
ゆるくパーマのかかった黒髪。長い睫にぱっちりとした瞳、薄い唇が中性的な雰囲気を醸し出している。
女子の一部には、ホータローのことを気になっている子がいることを僕は知っている。
クラスの女子からも時折話しかけられているけれど、ホータローは照れくさそうに相槌を打つだけで、会話は成立しているとは言い難い。
曰く「女の子と話すのは慣れてない」だそうだ。
それがまた、かわいい、と評判になったりするんだけど。
三年後に地球が終わることを知っている人達の小説に出てきそうなシーンだ、と僕は思った。
「じゃあ、今日は一緒に帰れないね」
「うん。そう、かな」
ちょっとホータローには酷な場面かもしれない。けど仕方ない。
「僕も今日は手芸部に行くから。ホータローも頑張んなよ。部活」
「うん。頑張ろう、かな」
僕はホータローの肩を軽く叩いて、教室を去る。
一緒に帰れないのは正直さみしい。けれど。
これがいい結果をもたらすことになれば嬉しい。たとえば、ホータローが部活に打ち込んで
物おじせずに他人と交わることができるようになる、とか。
なんて。それは余計なお世話だね。ホータローだって好きで今の性格になったわけじゃないんだし。
それを責めたり、変化を求めるのは傲慢というものだ。
教室の戸に手をかけた時、そんな声が聞こえた。声のした方を振り返ると
申し訳なさそうに、ひらひらと動かして、手招きをしている。
「なんだい」
「あ、あのね」
「うん」
「里志も、入らない? 部活」
僕は意味をくみ取るため、しばしの逡巡をする。
「ホータローが入る部活に僕も入らないかってこと?」
「そうそう」
うーん。そうか。そう来たか。
だからホータローの誘いを断る道理は全くない。
「どうしようかなあ。ぼく総務委員だってあるんだよね」
二つ返事で承諾しては面白くない。ここは少し意地悪してやろうかな。
「そう、なんだ。そうだよね」
俯いて、自分に言い聞かせるようにそう呟いた。かわいい。
「ホータロー、ちなみにどんな部活に入ろうとしているんだい? 吹奏楽部かな?」
見かけどおりに、というか、彼はピアノが上手い。
昔はコンクールにも出場していたらしいけど大観衆の前で演奏するプレッシャーに勝てずにやめちゃったらしい。
「違う、よ」
両手をぶんぶんと振って否定する。
「違うんだ。ならどんな部活だい?」
「古典部、っていうんだけど」
「コテンブ?」
聞いたことがない。が、あるのだろう。文化系部活動が盛んな神山高校だ。
生徒ですら知らない部活動があったってなんら不思議ではない。
ホータローは困ったように笑う。
「
知らないのかい…」
そう聞くと、ホータローは、片目をつむった。
かわい…違う。そんなこと今はどうでもいい。入部する部の活動内容を知らないってどういうことだ?
「お姉さんは教えてくれなかったのかい?」
「行ってみればわかるよ、って言ってた、かな」
「なるほどね。お姉さんらしいや」
ぼく好みのいい部活動じゃないか。すばらしい。ますます入りたくなってきたぞ。
「里志、あの、じゃあ僕、部活行くから。」
言いながらおずおずと席を立つ。
「ああ、そうだね。 入部と行こうじゃないか。そして古典部の秘密を暴いてみせる」
ホータローに向かって、犯人を指す探偵よろしく、人差し指を勢いよく向ける。
予想通り、彼は呆けた顔を傾けた。
吹奏楽部が吹いているのか、ラピュタの劇中曲が微かに聞こえる。僕にとってはなかなかの腕前だと思う。
けれど、夕暮れの陽が差す校舎にはちょっと不釣り合いかな。
特別棟への渡り廊下まで来て、足を止める。
僕の少し後ろを歩いていたホータローが、困ったように僕を覗き込んだ。
「ホータロー、僕ら、鍵とるの忘れてるよ…職員室でさ」
「鍵…開いてるんじゃない、かな?」
「ほう。その心は?」
「だって、古典部の部室だって地学の先生は知ってる、と思うよ。 わざわざ閉めたりしない、って思うな」
ようし。ここはすこし、退屈な日常にスパイスを加えてやろう。
僕はホータローを誘い、廊下の中央から端に寄る。
部活動の盛んさを象徴するように、時折、生徒が談笑しながら一般棟から特別棟へと吸い込まれていく。
中央で立ち話をしていては、他の生徒の通行の邪魔になってしまうのだ。
「ちょっとしたゲームをしよう」
「ゲーム?」
「そう。部室の鍵が開いているか、開いていないか。賭けるゲーム」
女の子みたいに色白の顔がひきつった。
「ダメだって、思うな。賭け事なんて」
「まあ聞きなって。いいかい」
「ホータローは開いているといったけど、僕としては職員室に戻って確認するべきだと思うんだ」
そう言うと、大きく目を見開いた。対立を嫌う彼にとって、人と意見が別れたことは一大事なのだろう。
「じゃあ戻ろ? きっと里志の方が正しいよ」
「待って。落ち着いて聞いて」
手を小さな肩に回し、ぽんぽんと叩く。
「僕が負けたらどうなるの?」
「その時はホータローが鍵をとってくる。職員室までレッツエンドゴーってわけさ」
ホータローの顔が少しずつ青ざめていく。小心者の彼。簡単に勝負に乗るはずがない、か。
「ただし」僕は強く発音する。
依然、ホータローの表情から不安は消えない。もうひと押しか。
「不満ならハンバーガーにポテトをつけてもいい」
「ほんとに?」
「ああ。もちろんだよ」
どうしようかな、と言いながら、視線は中空を舞っていた。もうひと押しっ!
「飲み物もつけていい。シェイク、コーラ、なんでもこいさ」
しばらく経ってから、じゃあ、乗ってみよう、かな。 と呟き、頬を赤らめて笑った。かわいかった。
妙に騒がしいなと、思っていると、途中、用務員らしき人が、いろんな教室に出入りしていた。
おそらく何かのメンテナンスだろう。
最上階の四階までのぼり切った僕らは、一旦、足を止めた。
呼吸を整えるため、というのもあるけれど、心の準備、っていう理由もある。
あの一番奥の教室にギャンブルの答えがある。古典部の活動内容も。
横に並んだホータロを見ると彼もこちらを見ていたらしく、顔を見合わせる形になった。
「お先にいかが?」
僕は貴婦人のように声を高くする。
「いえいえ」ホータローが女性のように澄んだ声で言った
「いやいや。どうぞどうぞ」
某お笑いトリオのような譲り合いが続き、結局ホータローが先に行くことになった。
彼の足はわずかに震えているのがわかる。それを見て、僕の加えたスパイスは当たりだった、とほくそ笑んだ。
「じゃあ、あけるよ」
地学講義室の前まで来た。ホータローが、ゆっくりと横開きのドアを引っ張るがドアはびくともしない。
もう一度。今度は腕だけなく、全体重をかけるようにしてドアを引く。ドアは、頑として動かなかった
やったー、と僕は心の内でガッツポーズを決める。
もちろん外面はセレスさんを見習って無表情。
靴の先で小突くようにドアを蹴飛ばしていた。ギャンブルは性格をも変えてしまう。
「これって、鍵じゃなくってつっかえ棒が掛かってたらどうなるの?」
……。意外とめげない子だった。
「それならホータローの勝ちでいいよ。 でもありえないね。なんでつっかえ棒を仕掛ける必要があるのさ」
僕の言葉に、ため息をつく。
苦笑いをうかべながら、小さく僕に手を振った。
僕も応じようと手を挙げたその時、あら、と声がした。甲高い女の子の声。
それは、鍵が閉まっていて誰もいないはずの地学講義室から聞こえた。
空耳だろうかと思ったが違うようだ。
隣にいるホータローも、奇怪なものをみた、と言いたげに目を見開いている、
ドアの向こうから乱暴なノック音が聞こえ、僕は、はっと我に返る。
「ホータロー、鍵を」
「う、うん」
ホータローはワンテンポ遅れて頷き、小走りで職員室へと向かって行った。
ドアの向こうに向かって声を張る。はい、と消え入るような声が聞こえた。
僕はホータローのショルダーバッグを拾い上げ、ドアに寄りかかった。
なぜか煮え切らない。この状況に微かな違和感を感じる。どうして彼女は自分で鍵を開けないのだろう。
考えてすぐ、僕のデータベースは答えをはじき出した。
中にいたまま鍵の開け閉めをするのは不可能なのだ。となると。
僕は軽くドアをノックした。
「はい?」
返事はすぐに帰ってきた。彼女もドアの近くに佇んでいるのかもしれない。
「少し聞いていいかい?」
「はい。構いませんが」
「ええ。 来るときも一人でした」
「鍵は?」
「開いていました。地学の担当の先生に授業が終わっても閉めないよう、あらかじめお願いしていましたから」
なんと。ホータローの推理は正解だったらしい。この突発的な事故がなければだけど。
質問を続けようとすると、階段を駆け上る音が微かに聞こえる。その音は少しずつ鮮明になっていく。
ずっと握りしめていたらしいキーが汗で濡れていた。
「お疲れ様、」
僕はほほ笑む。わずかに呼吸を乱していたホータローも同じように破顔した。
「じゃあ今開けるね」
鍵を差し込み、施錠をといた。
ドアを勢いよく開けてすぐ、女子生徒と視線が合致する。
「開けてくれて、ありがとうございます」
淑やかに頭を下げる。僕はそんな態度に驚嘆した。
閉じ込められていたというのに、こんなにも落ち着いていられるなんて。
顔を上げた彼女を冷静に観察した。
体はすらりとしていて、丸みをおびた輪郭と大きな瞳は、どこか温かみが感じられる。
黒髪は背中まで伸びていて、清流のようだ。
「ホータロー、知り合いなのかい?」
当の本人は呆けた顔を傾けている。そんな彼に彼女は続ける。
「あなたは確かA組でしたよね? わたしはB組の千反田です。千反田えるです。んー。覚えていませんか?」
千反田さんは、口元に笑みを浮かべながら言った。しばらくぼんやりとしていたホータローだったが、顔色をうかがうように口を開いた。
「はい」
ぱぁあ、と満面の笑みを浮かべた。さて。僕も。
福部里志、と名乗った後、ホータローを待っている間に抱いた疑問を二人に話した。
中から鍵がかけられないのなら、なぜ僕らが来る前に施錠されていたのか。
千反田さんが中にいるのなら、鍵は開いていないとおかしいのだと。
ホータローはそんな千反田さんを見て、
何か不吉な予感でも感じ取ったのか(ホータローはこう見えて勘が良いところがある)
みるみるうちに顔が青ざめていった。
「あの、一応用は済んだし、僕は帰っても、いい、のかな?」
「ダメです」
柔らかにほほ笑み、即答する。
「だって」
「ダメです。さあそのショルダーバッグを置きましょう」
ホータローがこちらをじっと見つめてくるが僕はあえてそっぽを向いた。
なぜならば。おもわず頬が緩む。
謎以外にも面白いものが見られそうだったから。
「うん」
渋々と言った様子で頷く。
「何か気付いたこととか、思い出したこととかあったら、ホータローに教えてあげて」
「んー。それでしたら」
千反田さんがつま先で床を打つ。
「何か音が聞こえます。下の教室から」
そうだろうか。僕には何も聞こえないけれど。床に耳を押し付けるようにしてみた。
やはり何も聞こえない。
「僕にも聞こえない、かな」
「私、耳はいいほうなんですよ」
不思議とそれは自慢には聞こえなかった。
まあ、ここで彼女が嘘を言う理由はない。耳が良いのは確かなんだろう。
けれど下の教室の音云々は有益な情報じゃなさそうだ。が、ホータローの様子が違った。
何かを言いたそうにしてちらちらと視線を送っている。
どうかした、と聞くと一泊おいて話し始めた。
「里志、用務員さんとすれ違ったよね? ここに来る前にさ」
ホータローが囁くように言う。
「そうだね。あ、」
僕は気が付く。床下の音の正体に。
「たぶん、用務員さんが教室で何か作業してる、と思うよ」
「さっき鍵とってくるときに見たんだけど、マスターキーを持ってるんだよね」
「ああ。そういうことか」
「たぶん、ね」
照れくさそうに言う。用務員は各教室を回り、すべての教室の作業が終わってから鍵を閉め始める。
つまり千反田さんは作業が終わった鍵の開いている教室に入り、その後に用務員が鍵を閉めてしまった。
そういうカラクリだったのだ。
「ああ。昇降口で待ってなよ」
ホータローはバッグを担ぐと、足早に教室を出て行った。
「折木さんっ」
僕は取り乱す千反田さんを制して、笑顔で言う。
「僕が説明するよ。千反田さん。照れ屋の探偵に代わってさ」
自分が分かっていても、そっとヒントを与えるだけにとどめる。
もったいつけているのではなく、注目を浴びるのが苦手なのだ。
ぼくはそんなホータローの生き方を、もったいないと感じることもある。
とはいっても。彼に対して、変わることを強要しない。してはいけない。
けれど変わってほしいと願う自分もいる。
賭けの敗者であるホータローに落とし前をつけさせてもらうべく
千反田さんと別れた後、僕らはハンバーガーショップに立ち寄った。
入ってすぐ、ホータローはなぜか注文を取らず、席に座って本を読み始めた。
聞くと、懐具合が僕に奢るだけで精いっぱいだと言う。
僕だけ食べるのも居心地が悪いのでポテトを譲ってやった。
こちらの顔色をうかがいながらポテトを頬張るホータローは、その…ちょっとかわいかった。
お姉ちゃんが最後まで言わなかった活動内容は、気がむいたら部室に行って下校時刻まで時間を潰すというもの。
つまりなんでもありってことだった。千反田さんは、文化祭に向けて文集をつくりましょう、と鼻息荒く話していたけれど
取り掛かりがいつになるのかは不明だそうだ。
僕はそんな古典部のおおらかな活動スタンスをを案外気に入っている。
「あら、ほーちゃん、久しぶり」
図書室に入ると、伊原摩耶花が片手をあげて微笑んだ。
「うん。久しぶり。摩耶花」
ぼくは、小さく手を振る。
栗色のショートカット。目は少し吊り上ってきつめの顔だちをしている、
けどその凛々しさが一部の男子に人気がある。
凜として説教、なんてあだ名が付けられていること、摩耶花は知っているだろうか。
摩耶花がポンと軽く手を叩いた。
「ほーちゃん。 ちょっと頭の体操でもしてみない?」
悪戯をたくらんでいるみたいに、口の端を吊り上る。小悪魔的だ。
僕は片目をつむり、人差し指をそっと唇に当てた。ちょっと声が大きすぎる。かな。
摩耶花は苦笑して顔の前で手を合わせた。
そのキュートな仕草にドキリとする。
千反田さんとのファーストコンタクトで似たようなことを言われた気が。まあ摩耶花だし大丈夫だろう。
「ちょと待っててね。ん。じゃあ、あそこ座ってて」
僕は頷いて、摩耶花の指差した席へ座った。
一番奥の六人掛けの机は、図書館内全体が見渡せる。
今日は生徒の入りはまばらなようで僕と摩耶花を除けば三人しかいない。
摩耶花は、本を抱えてやってきた。
小説のハードカバーよりも大きく、辞書より分厚い。百科事典か何かだろうか。少しほこりでくすんでいるせいで、タイトルが読みにくい。
「この本なんだけどね」
「なんの本なの?」
「神山高校学校史って本。いや問題はそれじゃないのよ」
僕は頷いて続きを促す。
「日本史とかで使ってるんじゃない、かな?」
「私もそう思ってね、先輩に聞いてみたんだけど、そんな授業ないんだって」
「へえ」
ねえ、何かない? と口調こそ平淡だったものの、瞳はらんらんと輝いている。
千反田さんほどではないにしろ、摩耶花も好奇心旺盛だ。
「えっと」
僕は貸出カードを確認してみた。借りたのは今日を入れて五人。
彼女の言うとおり、毎週金曜に返却されている。貸出も金曜だ。
分からない、という風に首を振る。
「あ。でも」
表情がぱっと明るくなる。人差し指を立て、
「この前、一限目の休み時間に使ったことがあるわ」
僕は頷く。だったら。
「貸出カードを見ると、昼休みに借りて放課後に返してるね」
「うんうん」
「借りてるのはみんな二年生の女子だ。これやっぱり授業で使ってるんだよ」
「それは違うって言ったじゃない」
「週に一度しかない授業だよ。 きっとその授業、だと思うよ」
「週一度の授業…」
顎に手を当てて、そう呟いている。摩耶花ならすぐ気付くだろう。
僕よりも二年生と接する機会は多いのだから。
「選択授業…?」
「たぶん」
「まあ、それで説明できないこともないけど…何の授業?」
む。僕は言葉に詰まる。問題はそこなのだ。この分厚い巨大な本を何の授業で使うのか。
ゆっくりと首を横に振ると、摩耶花はクスリと笑った。
春の終わりを感じさせるかのように、まだ日は沈んでおらず蒸し暑い。
僕らは知っている限りの同級生の近況を教え合った。
「まあ、いつでも図書館においでよ。待ってくるからさ」
別れ際、摩耶花がそんなことを言った。
「あ、あのね摩耶花。僕部活入ったんだ」
「え? ほーちゃんが部活?」
「えへへ」
「なんで照れるのよ…で、何部?」
古典部、と言った後部活に入るきっかけから今の状態を説明した。
ふーん、と言ったきりしばらく沈黙し、こう言った。
「わたしも入ろうかしら」
なんと。それは。僕は精いっぱいの笑顔を浮かべて言った。
「うん。大歓迎だよ」
摩耶花のほほ笑みは、真夏の太陽に負けないぐらい、きらびやかに輝いていた。
彼女が冗談で言ったのか、僕にはわからない。けれど
本当だと嬉しい、かな。
次回も楽しみ
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433289972/
Entry ⇒ 2015.06.15 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
折木「千反田の生理周期を記録してみた」
折木「(この本前に読んだなぁ)」ペラ
える「……」ガタッ
スタスタ
折木「おい」
える「はい。なんでしょう?」
折木「どこ行くんだ?」
える「あ、ちょっとお手洗いに」
折木「そうか」
ガラッ
折木「ふー……」メモメモ
里志「ホータロー、何をメモしているんだい?」
折木「ああ、これか。最近、暇だから千反田の生理周期を記録しているんだ」
里志「ぶっ!」
折木「今日は2日目みたいだから、多い日なんだろうな」
折木「まあな。しかし、さすが千反田だ。見事な28日周期だ」
里志「ああそうなんだ」
折木「やはり健康状態はバツグンなんだろうな。できるなら基礎体温も計ってやりたいくらいなんだが」
里志「どうやって2日目とかわかるんだよ」
折木「毎日観察してればわかる。昨日から始まってたし、
今日はトイレに行く回数が多いから2日目というのは妥当な線だろう」
里志「僕は今、かつてないほどにホータローを軽蔑してるよ」
折木「おお伊原、いたのか」
里志「いたんだ」
摩耶花「激しくキモいから記録とるのはやめなさい。デリカシーなさすぎでしょ」
折木「おい待てよ。これは俺の狂わしい性的嗜好を満たすためにしているとでも思ってるのか?」
摩耶花「じゃなかったら何なのよ!」
折木「違うぞ。千反田の体調や精神状態を把握するためにやってるんだ」
摩耶花「はぁ?」
摩耶花「なんで自ら体験したかのような言い方なのよ!」
折木「一般常識だ」
里志「ゴメン、僕はわからないや」
折木「それに、生理前は独特な精神的不調に襲われるだろう?」
摩耶花「そうなんだ……」
折木「知らないのか?伊原、お前まさかまだ……」
折木「え?本当に?いくら小柄だからって…」
里志「!」ガタッ
摩耶花「う…わ、わたしだって気にしてるんだから!もうこれ以上いわないで!」
里志「摩耶花、その件について後でちょっと話し合おう」キリッ
摩耶花「な、なによふくちゃんまで!うわーん!」
ダダッ
里志「逃げたね」
折木「おい里志、伊原は産婦人科に連れて行った方がいいと思うぞ。念のために」
里志「そうだね。それと、僕やっぱり摩耶花と付き合おうかな……」
折木「確かに、初潮がまだというのはコンプレックスになってるだろうし、病院に行くには
精神的に支えてくれるパートナーがいたほうが心強いだろうな。里志、お前いいやつだな。
伊原のこと真摯に考えてやっているんだな」
里志「あ、ああ…そうだね」
える「あ、あの……いま摩耶花さんが泣きながら走っていきましたけど、どうかしたんでしょうか?」
折木「ああ、伊原もいろいろ大変なんだよ」
里志「そうだね。悩める乙女だね」
える「何があったかお聞かせください!摩耶花さんが悩んでいるなら、わたし、力になりたいです」
折木「う、う~ん……」
里志「ちょっと僕たちの口からは言い出しにくいことだから…」
里志「あ、いや、それもマズいんじゃないかな……摩耶花はコンプレックスになってるみたいだし、
千反田さんに知られたらそれこそもっと落ち込むかも…」
える「どういうことですか!?」
折木「千反田にはあるものが伊原にはないってことだよ、そんな状態で持てる者から相談されても
みじめに感じてしまって素直になれないかもしれないだろ」
える「なんのことかさっぱりわかりません!お願いします!
お二人に訊いたことは黙っていますから、教えてください!」
折木「うーん……仕方ないな…」
える「初潮……って、女の子の日のことですよね?」
折木「そうだ。さすがにもう高校生だからな、まだの奴はそうそういない」
える「そうですね。わたしも中2でした」
里志「……千反田さん、そういう情報いらないから」
える「はっ!す、すみません!」カアアア
里志「記録つけるな!」
折木「まあそういうことだ。特に千反田みたいな正確な28日周期の女子になんて、相談しにくいかもしれないだろ」
える「そういうものでしょうか……?」
折木「まあ本意はわからんがな」
える「って、ええ!?なんでわたしの周期とか知ってるんですかっ!」
折木「あっ、しまった」
折木「い、いや~適当に言っただけだ。まぐれだまぐれ」
える「……やっぱり、臭いますか?」
折木「えっ」
える「今日もだってわかっているんでしょう?」
折木「まあ、それは…」
折木「まあ、わからないと言えば、ウソになるな」
里志「僕は全く気が付かなかったよ。マジで」
える「敏感な人にはわかっちゃいますよね、すみません。不快な気分にさせてしまって」
折木「ああ、いや、別に気にしてはいないぞ。それに誰にだってあることなんだから」
える「いいえ、わたし、特別多いんです!今日だって、もう何度トイレにいったか…」
える「しかし、臭いがキツいというのはすごく気になるんです……」
折木「ふーむ。千反田はナプキン派だよな?」
える「ええ…」
折木「多い日だけでもタンポンを使ってみてはどうだ?
生理の臭いは血が空気で酸化することによって発生する臭いだろ。
タンポンなら膣内で吸収するから、臭いも発生しにくい」
える「タンポンはどうしても、その…中に挿れるというのが…ちょっと…」
折木「気持ちはわからんでもないが、いずれもっと太いモノが出たり入ったりするんだから、
今から慣れておくという意味でも、使えるようになっておいて損はないと思うぞ」
える「そ、それって……どういう意味ですか…」
える「じゃなくて。あ、いや……わたしも使ったことがないわけではないんです……
でも、やっぱりあれって違和感あるというか、体内にあんなものがあったら嫌じゃないですか?」
おそらく、挿入位置が浅かったんじゃないか?うまく挿入できていなかったからだと思うぞ」
える「そ、そうなんでしょうか……」
折木「ああ、膣内の形にわせて角度とか調整しながら入れないとうまく入らないからな
最初は失敗しやすいんだ」
える「なるほど……」
折木「それに、タンポンは少ない日だと挿入しづらい。今日みたいな2日目なんかに使う方がいいだろう」
える「なんで2日目ってことまでわかるんですかっ!」
折木「いや、まあ、見ていればわかる」
える「ううう…」
える「どこに行くんですか?」
折木「ドラッグストアだよ。買いにいこう、タンポン」
える「ええええ!今日買うんですか!?」
折木「そうだ。多い日に使わないと意味ないんだから。千反田の場合、3日目もそこそこ出るだろ?」
やらなければいけないことは手短に、だ」
える「だからどうして量とかまで知ってるんですか!?」
折木「俺は千反田のことは何でも知っているのさ」
える「かっこつけないでください!」
折木「よし、このドラッグストアでいいか」
える「そ、そうですね……しかし折木さん、こういう商品を男の人と買ってるのを見られたら、わたし…」
折木「大丈夫だ。このあたりは人通りも多くないし、知り合いに見られる可能性は低い……と思う」
える「わたし、知り合い少なくないんです!」
折木「わかったわかった。レジに並ぶときはどこか言ってるから」
える「わたしひとりで買えますから!」
える「それは、まあ…」
折木「よし、じゃ、いくぞ」
テロテロテローン
える「生理用品の売り場はこのあたりですね」
折木「ああ、タンポンはこの棚だな」
折木「これはようは吸収できる量によって違うんだ
どれが最適かは色々使いながら自分で決めればいい」
える「わたしの場合、多いからスーパーのほうがいいんでしょうか」
折木「あ、いや。吸収できる量が多いってことは、その分大きいってことでもある
慣れないうちは大きいと挿入しづらいから、小さいのを使ってみて、それでも足りなさそうなら
徐々にランクを上げていくといいと思う」
える「そうなんですか。じゃ、まずはこのスリムタイプにしてみます。
初心者向けと書かれていますし」
折木「そうだな。ナプキンと併用すれば吸収量が少なくても大丈夫だろう」
折木「ああこれか。タンポンは普通、挿入用の器具がついているが、
慣れた人は指で入れることもできるんだ。これは挿入器具がないタイプだな。
ハードタンポンユーザはこっちを使うらしい。だが、まあしばらくはこっちのアプリケータ付きでいいだろう」
える「そうなんですか。わかりました」
折木「ああ、では買ってこい」
える「はい。あ、ナプキンもついでに買っておきます」
折木「ああ」
……
…
折木「ああ、礼なんていいよ」
える「では、これで…」
折木「まて」
える「まだ何か?」
折木「入れ方がわからないだろ?」
える「大丈夫です!昔使ったことありますし、説明書もついてますので!」
折木「昔使ってうまく入らなかったと言っていたじゃないか」
える「う……そ、それは……」
える「で、でもそれは、それはっ……!」
折木「嫌なのか?」
える「お、折木さん!?タンポン入れるって、どういうことかわかってるんですか!?」
折木「千反田、声がでかい。通行人が振り向いてるぞ」
える「あっ///」
える「タンポンいれるときはパンツ脱がなきゃいけないんですよ!」
折木「当たり前だろう?」
える「そんな状態で折木さんに教えてもらうわけにはいきません!」
折木「そんなことか。別に俺は千反田の股間が密林状態でも気にしないぞ」
える「なんでジャングルだって知ってるんですかっ!」
折木「あ、いや、これは本当に適当に言っただけで……」
える「あっ///」
折木「わかったわかった。俺も別に千反田の下半身がみたいわけじゃない
挿入するときは何か仕切りを間におくなりして直接見えない状態でやればいいだろ」
える「えっ、折木さんわたしの下半身みたくないんですか?」
折木「まあ見たくないといえばウソになるかな」
える「ああ、よかった」
折木「見せたいのか?」
える「違います!もしかしたら、折木さんはそっちの気がある人なのかと思ってしまったので…」
える「よかったです」
折木「というわけで、千反田の家にいくか」
える「わたしの家でやるんですか!?」
折木「俺の家で女の子を連れ込んでパンツ脱がすわけにもいかないのでな」
える「わたしの家でも同じだと思います!」
折木「さ、ついたな。ではさっそく」
える「折木さん、そんなにわたしにタンポン突っ込みたいんですね」
折木「俺が入れるんじゃない。自分で入れるんだぞ」
える「わかってます!」
折木「じゃあ、そのへんででも」
える「待ってください、仕切りになりそうな奴をもってきますので」
折木「そうだな」
える「椅子に座りながらの方がいいですよね?」
折木「まあ、実際にはトイレで入れたりすることを考えるとそうだろうな」
える「よいしょっと、こんな感じで入れようと思います。どうでしょうか」
折木「うん、いいんじゃないか」
える「では、脱ぎますので折木さんは向こうにいてください」
折木「ああ」
パサッ
折木「うわあ」
える「な、なんですかっ!」
折木「いや、パンツ脱ぐとさすがに臭いが……」
える「そういうこと言わないでください!最低!ノンデリカシー!」
折木「す、すまん…」
折木「泣くな!俺がわるかった!」
える「ううう……わたし、気にしているんですから……」
折木「本当にすまん!」
える「謝ってくれたので許します……」
折木「さ、気を取り直して挿入しようか」
える「そうですね」
折木「ああ、膣内に挿入される部分はあまり触るなよ。それに絶対に床とかその辺に置くな」
える「わかってます。このギザギザになってる部分を持てばいいんですね」
折木「そうだ。親指と中指でアプリケータをもって、人差し指を使って挿入すればいい」
える「はい」
折木「あ、その時左手は小陰唇を広げるのに使うといいかもな」
える「なるほど……」クパ
える「んっ……」
える「うう……んっ……あっ……」ハァハァ
折木「」ゴクリ
える「う、うまく入りません」
折木「落ち着け。焦るな千反田」
える「でも、でも!ちゃんと挿入しているのに……」
える「は、はい」
える「はーっ、ふーっ」
える「ふう」
折木「そうだ。そのまま挿入するんだ」
える「は……い……」クチュ
える「はぁ、はぁ」
える「んっ、あっ、ダメです……」
折木「膣内の奥の方に入れないとダメだからな。入りにくいなら、
斜め後ろの方に倒して立ててみろ」
える「あっ、こ、こうですかね……」ヌルッ
える「あんっ……!」
折木「おっ」
える「はぁ、はぁ、は、入りました。これで人差し指で挿入したらいいんですね…」ニュルルル
折木「どうだ?」
える「んっ」キュポン
える「あ、入りました!違和感もありません!」
折木「そうか。よかったよかった」
折木「ああ、これで千反田も立派なタンポン派だな」
える「はい!」ガラッ
える「本当にありがとうございます!」ズイッ
折木「おい千反田……近い、近いから…
それと、タンポン触った手で俺の手を握らないでくれるか……」
える「はっ!す、すみません!」
やはり気になるのは衛生上の問題だ」
える「そうですね」
折木「いったん開封したタンポンは挿入失敗したら絶対に再利用しないこと。
挿入部を壁や地面に当てないこと、これはさっき言ったとおりだ」
える「汚いですからね」
折木「それと、タンポンは長時間トイレにいかなくてもいいというメリットがあるが、
だからってずっと膣内に入れておいていいわけがない」
える「そうなんですか」
折木「ああ、説明書にも書いてあるが、最大8時間だ。それ以上体内にタンポンを入れないように」
える「わかりました」
える「そんなことありえるんですか!?」
折木「ああ、タンポン挿入が日常的になってくると、タンポンをいれたことを忘れてしまうこともある
特に、寝る前に挿入した場合なんかは、翌朝抜くのを忘れがちだ」
える「たしかに、それはありそうですね」
折木「それと、抜くときにはヒモを引っ張るわけだが、そのヒモが見つからない時がある」
える「えっ」
が、それだと一見わからなかったりするんだ。それが抜き忘れの原因でもあったりするんだが」
える「たしかに、入れたのにヒモが無かったら焦りそうです」
折木「そういうときは焦らずに、手でまさぐってみてよく探せば必ずヒモはある。
家にいるなら、手鏡なんかで見てみればいいぞ」
える「でも、ヒモが膣の奥にいってしまったらどうすればいいんですか……?」
折木「できるなら、指を入れてヒモを探すしかない。
ちょっとやってみて無理なら恥ずかしがらず産婦人科へいくことだ」
える「わかりました」
折木「ま、そんなこと滅多にない。不安がらなくていい」
折木「ああ、それと…もう一つ大切なことが……」
える「な、なんでしょう…?」
折木「タンポン挿入に成功した後は、パンツはけ…」
える「え?あっ!!!」
える「キャアアアアアアアアアアアア」
折木(思いのほか密林だった……)
折木「気にするな。その……俺も…た、たのしかったし」
える「……はい!わたしも、です」
折木「じゃあな」
える「あのっ!」
折木「ん?」
える「どうして、折木さんは生理用品に詳しいんですか?」
折木「ああ、中学のころから姉貴によく入れてたのさ」
end
乙
いやあ久しぶりに良作に出会えた、ありがとうございました
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349363971/
Entry ⇒ 2015.06.15 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (2)
折木「俺は千反田が好きなのか…?」
折木「い、いや、なんでもない…」
さとし「嘘はよくないね、千反田さんが好きなのかい?」
折木「聞いてたのか…」
さとし「そりゃあれだけ大きな声で呟いてたら聞こえるさ」
さとし「それでどうしてそう思ったんだい?」
折木「最近あいつを…、千反田を見ていると落ち着かないんだ…」
折木「それだけじゃない、千反田が他の男と話をしているとモヤモヤする…」
折木「だから…だから俺は千反田が好きなのかと思ってだな……さとし?」
折木「さとし、俺はどうすればいいと思う?」
さとし「自分の気持ちを相手に伝えるだけじゃないか。」
折木「まだ好きかどうか分からないのにか?」
さとし「そうだね。でもその気持ちを心に留めて置くのは疲れないかい?」
折木「あぁ…確かに。最近よく眠れないんだ…。」
さとし「だったら今思っていることを、そのまま千反田さんに伝えてみたらどうだい?きっとスッキリするんじゃないかい?」
折木「…そんなものなのか?」
さとし「そういうものさ、まっ、ものは試しだよホータロー。」
折木「…分かった、明日千反田に伝える。」
折木「千反田、ちょっといいか?」
える「なんですか、折木さん?」
折木「話したいことがあるんだ。今日の放課後、屋上に来てくれないか?」
える「? 部室じゃ駄目なんですか?」
折木「あぁ…ちょっとな。」
える「分かりました、放課後に屋上ですね。」
折木「あぁ…、すまんな千反田。」
える「いえ、折木さんの頼みです、ではまた、放課後に。」
える「それで、話したいことってなんですか、折木さん?」
折木「いや、その…だな、きょっ」
える「きょっ?」
折木「きょ、今日はいい天気だな~、ハハハ…。」
える「お~れ~き~さん、話したいことがあるんでしょう?」
折木「そうなんだが…、やっぱいい…。(俺には無理だ…、それにこれは省エネに反する…)」
える「…なります…。」
折木「えっ…?」
える「私、気になりますっ。」ズイッ
える「折木さんが私に何をお話ししようとしているのか気になるんです」
える「教えて下さいっ、折木さん。」ズイッ
折木「わっ、分かった、分かったから少し離れてくれっ。」
える「あっ、すっ、すみません///」
折木「じゃ、じゃあ話すぞ。」
える「は、はいっ。お願いします。」
折木「それに…千反田が他の男と話をしているとモヤモヤするんだ…。」
える「そ、それって…」
折木「…千反田……」
える「は、はいっ///」
折木「話を聞いてくれてありがとう。」ペコ
える「…えっ?」
える「終わり…ですか?」
折木「?そうだが…?」
える「……」
える「おっ、折木さんのバカ~‼」ダッ
折木「おっ、おいっ、千反田⁈」
折木「俺、何か悪いこと言ったか?…まぁいい明日謝るか…」
折木「ちっ、千反田、昨日のことなんだが、すまなかった。」ペコ
える「い、いえっ、私もいきなり帰ってしまってすみません。」ペコ
折木「いや、それはいいんだが、聞きたいことがあるんだ。」
える「なんでしょう?」
折木「なんで昨日怒ったんだ?」
える「そ、それはっ…///」
折木「聞かせてくれっ、そして怒らせた理由を分かった上で、またちゃんと謝りたい‼」
折木「どうして⁈」
える「どうしてもです‼」
える「告白されるのかと思ったなんて言えるわけないじゃないですか‼」
折木「…告白?」
える「はっ、い、今のは忘れてください‼恥ずかし過ぎます///」ダッ
折木「ちょ、ちょっと待て、千反田何処に行く‼」
さとし「…(ホータローは上手くやってるかな~)」ニヤニヤ
まやか「どうしたのふくちゃん、ニヤニヤなんかして⁇」
さとし「それがさ、ホータローが…」
ダッダッダッ‼ガラッ
える「はぁっはぁっ…」
まやか「ど、どうしたの、ちーちゃん、そんなに慌てて⁉」
さとし「何かあったのかい⁉」
まやか「折木がどうかしたの⁉」
える「折木さんに、追いかけられているんです‼」
ダッダッダッ‼
折木「千反田っ‼‼」
える「お、折木さんっ…」
折木「千反田、俺は…‼」
折木「い、伊原っ‼ 俺は何も…」
まやか「そんなわけないでしょ‼ちーちゃんが、あんたに追われてるって言ってたわよ‼」
える「ま、まやかさん、それは私が大袈裟に言い過ぎたというか…」
さとし「まぁまぁ、落ち着いて、まやか。うん、そうだね、ここはホータローと千反田さん、二人で話し合った方がよさそうだね。」
さとし「さっ、まやか行くよ。」
まやか「ちょっと、ふくちゃん⁉なんで?」
さとし「いいから、いいから。」
まやか「ちゃんと説明してよね⁉…それと折木覚えておきなさいよ‼」ギロッ
折木「ハハハ…、はぁ~…」
える「ご、ごめんなさい、私のせいで変な勘違いをさせてしまいましたね…」
折木「あとでちゃんと説明すれば平気だろ、多分…。」
折木「それよりも…さっきの事なんだが…」
える「わ、忘れて下さいっ‼」
折木「そんなことできるわけないだろ…」
える「私が勝手に舞い上がってしまっただけなんです…ですから…」グスッ
折木「千反田…‼」
える「ご、ごめんなさい…泣いてないですよ、ほ、ほらっ‼」ニコ
折木「…(そうだよな、あんなこと言ったら誰だって告白だって思うよな…)」
折木「…(俺はどうなんだ…、千反田のことが好きなのか?)」
折木「…(いや違う、俺は逃げていただけなんだ、フラれるのが怖くて…、ほんとは最初から答えは出てたんだ‼そう俺は…‼)」
折木「俺は千反田が好きだっ‼」
折木「だから俺と付き合ってくれ!!」
える「はい…///」グスッ
える「わ、私もずっと折木さんのことが好きでした。」グスッ
える「すごく…嬉しいです///」
折木「俺もだ…、そして…」
折木「すごく疲れた…。」グテー
折木「あぁ…、それと…」
える「それと…なんですか⁇」
折木「その、なんだ…呼び方を変えないか?」
える「そ、そうですよね、私達こ、恋人同士ですもんね…///」
折木「じゃあ、え、える…一緒に帰ろうか。」
える「はい、奉太郎さんっ///」
~END~
初めてだったので、遅くてすみません。
疲れたんで、もう寝ます。
学校めんどくさい…
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349107019/
Entry ⇒ 2015.06.01 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (1)
摩耶花「ふくちゃんに嫌われた……」
折木「どうしたんだ。お前らの夫婦喧嘩はいつものことだろ」
摩耶花「ううん、違うの……今回は本当にまずいかも…」
折木「何があったんだ?」
それは解決したんだけど、それ以降、ふくちゃんがずっと冷たいの」
折木「里志を怒らせたってことか?」
摩耶花「……ううん。怒ってるというより、ずっと気まずい感じ…
一緒にいても、口数少ないし、ずっと考え事してるような感じなの。
どうしよう。ふくちゃん、わたしと別れたがってるのかな……
わたし、ふくちゃんと別れたくない!」
折木「仕方ない。それについては、俺の方から里志に探りいれてみてやるから」
摩耶花「本当?」
摩耶花「そうね……」
折木「ああ、雨も降りそうだしな」
摩耶花「ほんとだ。あ、傘もってきてないや……」
摩耶花「ねえ、折木はどう思う?」
折木「何の話だ」
摩耶花「ふくちゃんの話よ。やっぱりわたしのこと嫌いになったのかなあ」
折木「さあな」
摩耶花「さあな、って……」
折木「単に、いつも通りの些細な口げんかしただけだろ」
折木「そんで、ちゃんと仲直りしたんだろ」
摩耶花「そうだけど…」
折木「話を聞いている限りでは、いつも通りのお前らって感じだが」
摩耶花「でも、それ以降ふくちゃんの態度が急変したのよ。
なんか、全然笑わなくなった」
折木「別に無視されてるとかじゃないんだろ」
摩耶花「うん、そうなんだけど…でも、なんか違うのよ!」
折木「考え過ぎだ。何か悩み事があるだけかもしれん」
折木「落ち着け。自分を追い込んでも事態は良くならないぞ」
摩耶花「嫌だ、嫌だよぉぉぉぉ…別れたくないよ…」ウッウッ
折木「……」ガシッ
摩耶花「折木……」
ポツポツ…
折木「雨が降ってきた。俺の家で雨宿りしていけ」
折木「かなり強くなってきたな…」
摩耶花「ね、お姉さんは…?」
折木「姉貴なら今日は帰らない。親も仕事だ」
摩耶花「そっか」
折木「なんなら泊まっていくか」
摩耶花「な、何言ってんのよ!」
折木「天気予報見る限りじゃ雨止まなさそうだぞ」
折木「やめとけ。大雨暴風警報が発令されてる。傘をさして帰るのは危険だ」
摩耶花「う……」
折木「姉貴の部屋に泊まればいいだろう」
摩耶花「わたしに変なことしないでよね……」
折木「はいはい」
…
摩耶花「お風呂あがったわよ」
折木「姉貴の服、大きすぎるな…」
摩耶花「いいわよ。貸してくれてありがとうって、お姉さんに言っといて」
折木「ああ、俺も風呂入って寝る。姉貴の部屋自由に使ってくれ」
摩耶花「あ、うん」
バタン
摩耶花「……」
摩耶花(成り行きとはいえ、折木の家に泊まっちゃった…)
摩耶花(ふくちゃんの家も泊まったことないのに…)
摩耶花(折木とはいえ、男の人と二人きり…)
摩耶花(ふくちゃんにバレたら、きっと怒るよね…)
…
折木(伊原はもう寝たか…)
折木「俺も寝よう」
スースー
ガチャ
折木「?」
摩耶花「折木……まだ起きてる?」
摩耶花「ちょっと、話してもいい?」
折木「ああ…」
摩耶花「折木はさ、わたしとふくちゃんのことどう思う?」
折木「どうって…」
折木「仲良しだなとは思うぞ」
摩耶花「そっか……」
折木「……」
摩耶花「わたしはふくちゃんのこと、好き」
折木「知ってる」
折木「そんなことはないと思うぞ。伊原のこと好きだって言っていたしな」
摩耶花「わたしに合わせてくれていただけなのかも、わたしが、あまりにもしつこいから…」
折木「そんなことはない。自信を持っていい。直接聞いたから間違いない」
摩耶花「でも、それから愛想を尽かしたかもしれないよね…」
折木「どうしてそんなに後ろ向きなんだ。伊原らしくない」
眠ったら、夢にでちゃう…」
摩耶花「折木、わたし、わたし、やっぱりふくちゃんのこと好きだよおおおお」
折木「伊原…」ガシッ
摩耶花「ちょ、ちょっと、折木…?」
折木「今夜は里志のこと、忘れろ」
摩耶花「………うん」
バタッ
…
…
ザアアアアアア
チュンチュン
摩耶花「ん……」
折木「スースー」
摩耶花「朝か……うう、寒い」
摩耶花(折木と…寝ちゃった…
ふくちゃんとも、まだなのに…)
摩耶花「明日から、どんな顔してふくちゃんに会えばいいの……」
摩耶花「うん、折木、昨日はありがとね。おかげで元気でた」
折木「ああ、気にするな」
摩耶花「わたし、先に学校行くね」
折木「せっかちだな。一緒に登校してもいいじゃないか」
摩耶花「そんなところふくちゃんに見つかったらどうするの。じゃあね」
折木「……」
摩耶花(はぁ、なんで昨日折木に身体許しちゃったんだろ……)
摩耶花(最低だ、わたしって)
摩耶花(ふくちゃんに合わす顔がない…)
摩耶花(折木、このこと誰にもいわないよね…)
摩耶花「はぁ…」
ガラガラ
摩耶花「今日も折木だけ?」
折木「ああ、里志は今日も休みだぞ」
摩耶花「そう」
折木「……」ペラ
摩耶花「……ね」
折木「なんだ」ペラ
折木「ああ」ペラ
摩耶花「誰にも言わないでよね」
折木「わかってる。当たり前だろ」
摩耶花「ちーちゃんにも言っちゃダメだよ」
折木「なんで千反田の名前が出るんだ。わかってる」
摩耶花「それならいいの」
折木「……」ペラ
折木「そうだな」
摩耶花「……」
摩耶花(やだ、なんでわたしったら折木のこと意識してんだろ…)
折木「……帰るか」
摩耶花「そう。じゃあ、また明日」
摩耶花「え、何言ってんのよ!いいわ、もう少し宿題してから帰る」
折木「いいじゃないか、宿題くらい」
摩耶花(え?何々?なんでわたしを誘ってるの…?)
折木「なあ、伊原…」
チュッ
摩耶花「んっ、やっ、何…!?」
折木「」
摩耶花「やめて!」
ドンッ!
折木「いいのか?」
折木「黙っていてほしいんだろ?」
摩耶花「わ、わたしを脅迫する気?」
折木「別に脅迫じゃない」
摩耶花「か、勘違いしないで!わたしはあんたの恋人じゃない!」
折木「じゃ、伊原は恋人じゃない男に股を開く女ってわけか」
摩耶花「やめて!昨日のわたしは、わたしは……何かおかしかったのよ……」
折木「里志のことなんか、忘れればいいじゃないか」
摩耶花「やめてってば!」
折木「……」
摩耶花「……お願い。わたしからふくちゃんを奪わないで……
わたしが好きなのは、折木じゃなくてふくちゃんなの…」
折木「わかったよ」
摩耶花「……ごめん」
折木「謝ることはない」
里志「どうしたの?」
える「実は、わたし、見てしまったんです。
摩耶花さんと折木さんが部室で……キスしてるところを…」
里志「千反田さん、僕をからかってるなら…」
える「冗談でこんなこと言いません!」
える「そんなんじゃありませんってば!」
里志「」
える「嘘じゃありません。わたし、見てしまったんです」
里志「まさか」
える「わたしも、信じたくはありませんが…」
える「そんなんじゃありません!ハッキリとキスしてました」
里志「わかったよ。千反田さん、摩耶花に訊いてみる」
える「あのっ……」
里志「なに?」
える「摩耶花さんのこと、どうか怒らないであげてください」
里志「……わかったよ」
プルルルル
摩耶花「あ、電話だ。ふくちゃん」
里志「摩耶花」
摩耶花「ふくちゃん!久しぶり!って、まだ2日だけか!」
里志「摩耶花、僕に隠し事してるよね?」
摩耶花「えっ?」
摩耶花「な、なんのこと?」
里志「頼むよ摩耶花。正直に話してくれ」
摩耶花「……」
里志「摩耶花、部室で折木とキスしてただろ?」
摩耶花「だ、誰にきいたの!?」
里志「誰でもいい。本当の話なの?」
摩耶花「……ごめん!でも、あれは違うのよ!」
里志「何が違うんだよ!」
摩耶花「あれは、折木が強引に迫ってきて……わたしはふくちゃんがいるから
折木の気持ちにはこらえられないって言ったの。
そしたら、折木が腹いせにふくちゃんに言いつけたんでしょ?」
里志「……そんな言い訳までされて、ショックだよ……」
摩耶花「本当よ!わたしが好きなのは…」
里志「もういい。もういいよ摩耶花」
里志「摩耶花、別に摩耶花がホータローのこと好きになったって僕は怒らないよ。
そうさ。そもそも、摩耶花は僕なんかにはもったいないくらい素敵な女の子だ。
折木と摩耶花がベストカップルだって言ったのは、冗談なんかじゃなく、本心だったんだよ」
里志「僕は今まで摩耶花の好意に甘えてたんだ。でも、ずっと考えてたんだよ。
僕は摩耶花に釣りあわないんじゃないかって」
摩耶花「そんなことない!何言ってるの」
里志「摩耶花にはホータローが似合ってるよ。お幸せに」
摩耶花「違う!わたしが好きなのは…」
ガチャッ
ツーツー
摩耶花「嘘……」
摩耶花「うわああああああああああああああああ」
摩耶花「いやああああああああああああ」
摩耶花「ふくちゃあああああああああああああああん!」
折木(あの後、どうやら里志は摩耶花と別れたらしい)
折木(俺は伊原のことは黙っていたのだが……やはり別れても仕方ない空気だったのだろう)
折木(その後、里志とは自然に疎遠となり、伊原も部室に姿を現さなくなった)
折木「古典部も、寂しくなってしまったな」
える「ええ、そうですね」
折木「……ま、その方が省エネでいいかもしれんな」
える「ふふ、折木さん、わたしと 2 人 でがんばりましょう」ニヤリ
END
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Entry ⇒ 2015.05.14 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
奉太郎「古典部には俺しかいないからな……。」
奉太郎「ああ。姉貴の命令なんだ。断ればどうなるかわからない。」
里志「あはは。それはこわいね。でも奉太郎、僕はもう手芸部に入ることにしてるし総務委員会にも入ってるから付き合ってあげられないよ。」
奉太郎「子供じゃないんだ。部活ぐらい一人で入れる。というか姉貴の話じゃ、部員0で廃部寸前だそうだ。」
里志「へえ。じゃあほんとに一人じゃないか。まあ学校に自分専用のフリースペースがあるというのも悪いもんじゃないよ。」
里志「じゃ、奉太郎、悪いけど僕は手芸部に行くよ。」
奉太郎「ああ。俺もとりあえず部室の確認がてら地学準備室に行ってみるよ。」
奉太郎「まさに最果て…だな…。」ガチャ…ガラララ
奉太郎「………無人か…ま、当たり前か。」
奉太郎「窓の外はグラウンドか。…なんだあれは?随分古そうな建物だが…」
奉太郎「まあいいか。そうだな、少し本でも読んで帰るか…。」
奉太郎「…というわけだ。」
里志「へえ。ほんとに奉太郎一人なんだね。それで活動は何をするんだい?」
奉太郎「しない。」
里志「え?」
奉太郎「しないと言ったんだ。気が向いたときだけあの部屋に行き、本でも読んで暇を潰す。」
奉太郎「活動は、それだけだ。」
里志「………なんというか、灰色だね…。」
奉太郎「……」ペラ…
奉太郎「……そういえば、里志が変なことを言ってたな…。なんでも音楽室に現れる少女の霊だとか…。」
奉太郎「誰もひいていないはずのピアノが鳴り響く音楽室で、目を血走らせた少女の霊が出た…か…。」
奉太郎「無人のピアノに血走らせた目……か…。」
奉太郎「………。」
奉太郎「おおかた、吹奏楽部員がピアノ曲のタイマーをかけて寝ていた、ってオチだろう…。」
奉太郎「………。」ペラ…
奉太郎「さすがに、毎日これでは駄目だろうか…。」
奉太郎「一人だが古典部らしい活動をしてみようか。」
奉太郎「文集か……。」ペラ…
奉太郎「……。」
奉太郎「却下。」
奉太郎「聞いた話だと文集は関谷純という人が作り始めたらしいな。」
奉太郎「どうやら『氷菓』というらしい。」
奉太郎「氷菓…和訳でアイスクリームか。」
奉太郎「………。」
奉太郎「アイスクリーム……アイ、スクリーム…。」
奉太郎「なんてな…。」
奉太郎「変な話を聞いた。」
奉太郎「図書室で毎週金曜日に同じ本を借りては返すといったことが多発しているらしい。」
奉太郎「しかも毎回別の人物…。共通点と言えば全員女子で2年生。」
奉太郎「しかし、クラスはバラバラと…。」
奉太郎「借りてすぐに返す……。これじゃあ図書の本分は果たせそうもない。」
奉太郎「学年は同じだがクラスは別で共通している人間たち……か……。」
奉太郎「おおかた、美術の授業で絵のモデルにしていた……。そんなところだろう…。」
入須「実は今、訳あってミステリーを解くのが得意な人間を探しているのだが…。」
入須「心当たりはないか?」
遠垣内「ミステリーですか…。俺はとんとそっちの方面には疎いですし…。」
遠垣内「心当たりは、ありませんねえ…。」
教師「であるからして~…」
奉太郎「…」フワーア
奉太郎「眠い…。」
「……!!!」ドンドン!!
奉太郎「…!なんだ?A組か?」
「…!!」
「…!」
……シーン…
教師「はいはい、授業を再開しますよー。」
奉太郎「聞いた話によると大声を出していたのは数学の尾道らしい。」
奉太郎「真面目だが少し怒りっぽいんだよな。」
奉太郎「原因は尾道が授業の進度を間違えたことにあるそうだが…。」
奉太郎「尾道は真面目で几帳面な教師だ。授業を行っていて進度の間違いに気付かないことがあるだろうか?」
奉太郎「Aか…。」
奉太郎「………。」
奉太郎「おおかた、進度を書いていたメモのaとdを見間違えた……。ってところだろう…。」
奉太郎「………。」ペラ…
コンコン
奉太郎「……!はい…。」
ガラッ
田名辺「お邪魔するよ。」
奉太郎「……?」
奉太郎「カンヤ祭?」
田名辺「ああ、折木君は1年だったね。カンヤ祭っていうのは学園祭の俗称のことだよ。ここは古典部の部室だろう?」
奉太郎「そうですけど…。」
田名辺「部員も一人入って廃部は免れたはずだから、申請書の出し忘れかと思って確認にきたのさ。」
奉太郎「なるほど。」
田名辺「出さない?」
奉太郎「はい。面倒なんで。」
田名辺「面倒…か……それは残念だな…。確か古典部の文集は50年近く続く由緒あるものだったはずだからね……。」
奉太郎「そうなんですか…。」
田名辺「確かに…。新入生一人に文集作成を任すなんて酷だね。」
田名辺「では古典部はカンヤ祭に何も出品しない、ということでいいね?」
奉太郎「そうですね。」
奉太郎「わざわざすいません。」
田名辺「いや、気にすることはないよ。しかし、そうなると…工作部になるか……。」
奉太郎「え…?」
田名辺「ああ、いや、こっちの話だよ。気にしなくていい。」
奉太郎「そうですか。」
奉太郎「はい。」
ガララ…
奉太郎「久しぶりに里志以外と喋ったな…。」
奉太郎「ふう…つかれたな。今日は帰るか…。」
地学準備室
奉太郎「学園祭か…。」
ワイワイガヤガヤ
奉太郎「みなエネルギー消費に励むんだなあ…。」
奉太郎「今日は一日、ここでゆっくりするか…。」
ダレダヨーオレノジュースノンダノー!!
コンコン
奉太郎「…。」
コンコン
奉太郎「…。」
コンコン
奉太郎「…はっ!」
奉太郎「やばい…寝ていた…。」
コンコン
奉太郎「…!はい!」
「失礼します…。」ガララ
奉太郎「…ああ、そうですが。」
千反田「あの、ここに古典部の文集は売っていますか?」
奉太郎「…申し訳ないんだが今年は文集を出していないんだ。」
千反田「あ、あのできれば過去のものでもいいのですが…」
奉太郎「いや、過去のものも置いていないな…。」
奉太郎「いや、いいよ。」
千反田「………。」
千反田「あ、あの…」
奉太郎「ん…?」
千反田「おひとり…なんですか?」
奉太郎「あ、ああ…。」
奉太郎「……ほっとけ。」
千反田「なぜ、学園祭なのにおひとりでここにいらっしゃるのか…」
千反田「わたし、少し気になるのですが…」
奉太郎「…!」
千反田「省エネ…。」
奉太郎「やらなくていいことはやらない。やるべきことは…」
奉太郎「手短に…だ。」
千反田「…!」
奉太郎「『わたしは気になる』…か。」
奉太郎「なんだか妙にひっかかるな…。」
奉太郎「顔がいいからか…?……しかし、古典部の文集をわざわざほしがるヤツがいたとは…。」
奉太郎「伝統ってものもあながち捨てたもんではない…か。」
ワイルドー!? ファイアー!!
奉太郎「盛り上がってるなぁ……。」
奉太郎「聞いた話だと、学園祭でなんだかへんな事件が起きているらしい。」
奉太郎「十文字と名乗るやつが、いろんな部からしょうもないものばかり盗んでいるとか。」
奉太郎「犯行後にカードを残しているところからみて愉快犯か…?」
奉太郎「………。」
奉太郎「あいうえお順か…。ってことは次に狙われるのは『か』か…。」ペラペラ…
奉太郎「このパンフによると、『か』がつくのは科学部、壁新聞部ってところか…。」
奉太郎「暇な奴もいたもんだ…。」
「ハンニンハシカク」ジョウエイチューデーッス!!
奉太郎「十文字事件はまだ進んでるらしいな…。」
奉太郎「壁新聞部、奇術部がやられ、次は『く』か…。」
奉太郎「最後の『ん』までやるにはちょっとペースが遅いんじゃないか?」
奉太郎「というか『ん』で始まる部活はないが…。」
奉太郎「どうやら、十文字は『く』を飛ばして『け』で力尽きたらしい。」
奉太郎「まあ、『こ』は工作部しかないしな。」
奉太郎「あんなに大勢の人が張り込んでちゃ、十文字も盗みは働けなかったか。」
田名部「工作部、ガード固すぎだろ……。」
バララララララララ…
奉太郎「ヘリか…。」
奉太郎「ヘリと言えば中学校ときの小木が好きだったな…。」
奉太郎「まあ、思い出しただけだが……。」
ガラッ!!
奉太郎「……!」
奉太郎「…なんだ、里志か…。びっくりするじゃないか…。」
里志「……。」
里志「……奉太郎…、いつまでこんなこと続けるつもりだい…?」
奉太郎「こんなこと…?」
里志「僕の知る折木奉太郎の省エネはこんなんじゃあないよ。」
奉太郎「…なにをいってるんだ…。」
奉太郎「俺は生まれてこのかたずっとこの生き方だ。」
奉太郎「それはお前が一番よく知ってるだろう?」
里志「……氷菓のことも…!」
奉太郎「……!」
里志「その折木奉太郎がこんな簡単なことにも気づけないなんて…!」
里志「………。」
奉太郎「……。」
里志「奉太郎……今の君は……。」ガララ…
里志「……無色だよ。」バタン…
奉太郎「……!」
奉太郎「大体、俺は謎を解いたことなんてないぞ…。」
奉太郎「そもそも、省エネが信条のヤツの友達をするあいつも十分変だ。」
奉太郎「……こんな俺をかまってくれるモノ好きなんて……。」
奉太郎「普通に考えたら、いるわけないだろ……。」
キンコンカンコーン
校内放送「10月31日、駅前の功文堂で買い物をした心当たりのある生徒は、至急、職員室柴﨑のところまできなさい。」
奉太郎「変な校内放送だな…。」
奉太郎「こんな放課後に…、しかもどう考えても叱られるビジョンしかみえてこない言い回しだ。」
奉太郎「罪悪感から謝罪文を書いたって所だろう…。」
奉太郎「…ん?」
奉太郎「呼び出されたヤツが何かしら悪いことをしただろうと予想はつくが…。」
奉太郎「それがなんで偽札や謝罪文なんて話になるんだ。」
奉太郎「……話が飛躍しすぎているだろ。」
奉太郎「音楽室のことも…図書室のことも……。」
奉太郎「しかし、間違ってる気がしない…。」
奉太郎「……。」
奉太郎「『こんな簡単なことに気づけないなんて』…か…。」
奉太郎「……、そういえば里志は音楽室のことはともかく、なんで図書室の話まで知ってるんだ?」
奉太郎「だれか他の奴から聞いたんだろうか…?」
奉太郎「あの話は誰から聞いたんだったか?俺は誰から……。」
奉太郎「……!」
奉太郎「……。いや、違う…。なんで知っているかは……」
奉太郎「……俺…だ…。」
奉太郎「これまで里志意外では、あの田名部というヤツとしか喋った覚えはない……。」
奉太郎「田名辺……?」
奉太郎「なぜ田名辺という名前が出てきた…?そういえばあいつは俺の前で…。」
奉太郎「名乗って…いないのに…。」
奉太郎「…関谷純に………。」
奉太郎「……氷菓…………。」
奉太郎「俺は……。」
(わたし……)
奉太郎「気に、なる……。」
奉太郎「……!!」
奉太郎「いば……ら……?」
(僕に才能がないのは確かだけど、折木奉太郎に才能がないかと聞かれたら、そこは保留しておきたいね。)
奉太郎「里志……!」
(折木さん…私…)
奉太郎「…千反……田……?」
(気になります!!)
里志「…………。」キョトン
摩耶花「…………。」キョトン
千反田「………は…はい……?」
奉太郎「…………………。」
奉太郎「…………………え?」
里志「ほ、奉太郎!!あははははははははは!!」
千反田「お…折木さん?どうしました…?」
奉太郎「…………はえ?」
摩耶花「わ、わかりやすすぎでしょ…!!あは、あはははははははは!!」
里志「あはっははははっは!!ヒッ、ヒー…ヒー…、ハァーハァー……ゲホッゲホッ、ぶっ!!!ぶはははははは!!!」
千反田「/////////」
奉太郎「なっ……俺は…寝ていた…のか……?」
奉太郎「あ、ああ……。」
里志&摩耶花「「あはははははあはははは!!!」」バンバン
千反田「もう!二人とも笑いすぎですよ!!」
奉太郎「ったく……………。」ドカッ
奉太郎「そりゃあ……解けないわけだ………。」
奉太郎「……………。」
奉太郎「………勘弁してくれ…。」
千反田「……なんで折木さんが私の名前を呼んだのか……」
千反田「私…気になります!!」
奉太郎「……!」
千反田「はい!!」
奉太郎「………ったく…省エネが過ぎるとあんな夢をみるのか……。」
奉太郎「おちおち、寝てもいられないな……。」
千反田「折木さん……?」
奉太郎「………古典部は、俺だけじゃないからな…。」
終わり
面白かった
面白かった
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348578857/
Entry ⇒ 2015.05.11 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
奉太郎「千反田がラブレターを貰った?」
放課後、俺が部室に入るといきなりそんな話でもちきりだった。
摩耶花「そう、そうなのよ!! ちーちゃんの鞄の中に入ってたの!!」
える「…………///」
奉太郎「ふーん」
里志「はは、あんまり興味なさそうだね。まぁホータローらしいけど」
える「えっ……そ、そうですか……興味無いですか…………」
なぜかしょんぼりする千反田。
俺にどうしろっていうんだ。
摩耶花「あ、こら、なにちーちゃん悲しませてんのよ!! 本当はすっごく焦ってるくせに!!」
奉太郎「焦りは無駄なエネルギー消費だと思う。なぜなら焦った所で何も変わらないからな」
里志「まぁまぁ、二人とも。でもまだ開封してないんだね、それ。早く開けてみようよ」
奉太郎「なぜ俺を見て言う」
摩耶花「えっ、まさかその手紙の差出人を推理するっていうんじゃ……」
奉太郎「…………?」
そんなやりとりをしている間に、好奇心に目を輝かせた千反田が手紙を開封する。
確かに封筒には「この想いをあなたへ」という文字が書いてある。
手紙の内容は……。
『千反田えるさん、僕はずっとあなたのことを見てきました。あなたの見せる様々な表情、その全てが僕にとっては太陽のように眩しい。
ですが、あなたの隣にはいつも折木奉太郎さんがいた。それでも僕は、あなたが幸せならばと自分に言い聞かせて身を引くつもりでした。
でも、気付いてしまったんです。そんなものは都合の良い理由にすがっているだけで、ただの逃げにすぎないという事を。
今日の6時、1年A組でお待ちしております。僕の気持ちを直接伝えさせてください』
里志「こりゃまた……」
奉太郎「…………」
顔が引きつるのを感じる。
なんていうか……重過ぎないかこれ?
しかも俺が千反田の恋人かなんかだと勘違いされているらしい。
える「//////」
奉太郎「おーい」
える「ひゃ、ひゃい!!!」
奉太郎「そんなに気に入ったのかこれ?」
える「そ、そういう事ではありません!! でも、こういったものをいただくのは初めてですのでその……///」
摩耶花「おっ、ちーちゃん満更でもない??」ニヤニヤ
える「ですからそういう事ではありませんってば!! それに摩耶花さんは知っているでしょう!! わたしは……」
そこまで言って千反田は口ごもる。顔は真っ赤だ。
あとさっきから何で千反田はこっちをチラチラ見ているんだ。
奉太郎「どうしたんだ?」
える「な、なんでもないですっ!!」
奉太郎「??」
里志「名探偵も色恋沙汰は専門外、か」
奉太郎「おい里志、どういう意味だ」
える「わたしは…………気になります」
「「はい??」」
俺と里志と伊原の声がハモる。
える「いつ、どうやってこのお手紙を私の鞄に入れたのか…………わたし、気になります!!」
奉太郎「…………よし、じゃあ俺はこれで」
える「折木さん!!!」
立ち上がる俺の腕をがっしり掴む千反田。
える「わたしは朝登校してきた時には、教科書を入れる前に必ず机の中を確認します! ですが、今朝は確かに何も入っていませんでした!!
それではいつ、誰が、どうやってこのお手紙をわたしの鞄に入れたのでしょう!?」
奉太郎「そ、そんなのは休み時間とかにこっそりお前の机の中に入れておけば……」
里志「それはどうかな。少なくとも僕はそんな誰かに見られるか分からないリスクはおかせないけどね」
奉太郎「さとしぃぃ~!!」
摩耶花「……まぁ確かにふくちゃんの言うとおりかも」
奉太郎「……友達居ないのか?」
える「ち、違います!! お近くの席の方とお話しているのです!!」
千反田の言葉に俺は納得する。
確かに俺もわざわざ歩くのは面倒なので、休み時間の話相手はいつも近くの席の奴だ。
摩耶花「ふふん、なんだかんだ折木だって気になってるんでしょ? 協力してあげなさいよ」
奉太郎「…………分かったよ」
える「ありがとうございます折木さん!!」
里志「あれ、意外とあっさり折れたね。折木だけに」
奉太郎「こうなった千反田はどうにもならない事を知ってるだけだ。それに…………」
里志「それに?」
奉太郎「……いや、何でもない」
俺は前髪をいじって里志から目を逸らす。
里志「それで千反田さんは朝に机の中身を確認するって言ったよね。
それなら放課後に机の中身を鞄へ移す時、その前に鞄の中を確認したりするのかな?」
える「はい、そうですね。もちろん、その時は何も入っていませんでした」
それでちーちゃんはその事に気付かないで、机の中身ごと手紙を鞄の中に入れる……と」
里志「どこかで誰にも見られずに千反田さんの机の中に手紙を入れられるタイミングはなかったのかな?」
える「そうですね…………あ、今日は一度だけ音楽の移動教室がありました! その時なら……」
里志「おっ、それなら真っ先に教室に戻った人が怪しいね。誰か心当たりはない?」
える「……えっと、その……最初に戻ってきたのはわたしとお友達の方でした」
摩耶花「じゃあダメじゃない……」
える「はい……うっかりしてました…………あ!!」
里志「どうしたんだい?」
える「そういえば、今日の音楽の途中に具合が悪いとおっしゃって保健室へ行かれた方がいます!」
摩耶花「ほんと!? 誰か付き添いの人とかは!?」
える「いえ、保健委員の方は必要ないと断っていました」
里志「へぇ……それは結構怪しいね。そうやって保健室へ行く前に教室へ寄って、手紙を机の中に入れる。これならいけそうだ」
奉太郎「Zzz……」ウトウト
える「お・れ・き・さん!!!!!」
奉太郎「うおうっ!!!」ビクッ
いきなり千反田が近くで大声を出した。
こういうのは心臓に悪いからやめてほしい。
える「もう。聞いていませんでしたよね?」
奉太郎「聞いてた聞いてた。そうだな、確かにそいつが怪しい」
える「折木さんもそう思いますか!?」
奉太郎「……お、おう」
なんかてきとーに言ったのに、純粋な表情で食いつかれてしまった。
これはこれで罪悪感を覚える。
里志「よし、それじゃあさっそく千反田さんのクラスに行ってみようか」
奉太郎「えっ……」
える「はい。まだ残っていらしたら良いのですが……」
里志「その人が差出人なら確実に残っているね。なにせ、今日の6時に千反田さんを呼び出しているんだし」
奉太郎「わ、分かった。だがその前にちょっと千反田と話したいことがあるんだ。伊原と里志は先行っててくれ」
摩耶花「え? まぁいいけど……」
そう言って伊原は里志と一緒に部屋を出ていった。
千反田はキョトンと首をかしげる。
える「折木さん、聞きたい事とは?」
奉太郎「あぁ、まずは――――」
***
俺達が千反田のクラスに着くと、その前で里志と伊原が待っていた。
里志「考えてみれば、その音楽の授業の途中で抜けた人って千反田さんしか分からないから、僕達だけで行っても仕方なかったんだよね」
奉太郎「そりゃそうだ」
摩耶花「ちょっと折木! 気付いてたんなら教えなさいよ!!」
える「まぁまぁ、摩耶花さん。ではみなさん、入りましょう」
中には数人の生徒が残っていた。
摩耶花「それで、ちーちゃんが言ってた人は?」
える「えっと……あ、あの方です!」
千反田はそう言うと、慌てて一人の男子生徒の近くまで歩いて行く。
える「あ、あの!!! わたしにラブレターをくださったのはあなたですかっ!?」
奉太郎「待て待て待て」
俺は慌てて千反田を制する。
案の定いきなりそんな事を言われた生徒は唖然としている。
男子「え……は、はい……?」
奉太郎「千反田、いろいろすっ飛ばしすぎだ」
える「あ……す、すみません!!」
里志「ははは、まぁ千反田さんらしいじゃないか」
摩耶花「えっと……あなたは今日の音楽の授業の途中で保健室へ行った。そうよね?」
男子「あぁ……うん。ちょっと貧血気味で」
男子「それは…………」
奉太郎「…………もういいだろ」
摩耶花「えっ……ちょ、折木!?」
俺が教室を出ていくと、他の古典部員達も後を追ってくる。
背後からは「ちっ」という舌打ちが聞こえてきた。
***
俺達は次に保健室に来ていた。
そこの先生に聞いてみると、確かに先程の男子生徒は貧血でここに来ていて症状を聞く限り仮病ではなさそうだ。
里志「こうなると…………」
奉太郎「仮病じゃないって事はあいつは白だろ」
摩耶花「……じゃあなんで保健委員の付き添いを断ったのよ」
奉太郎「あいつと保健委員の仲が悪いからだ」
摩耶花「あんたてきとーに言ってない?」
奉太郎「それならケンカ中とかだな。さっきなぜ付き添いを断ったのかって聞いた時、あいつはチラッとある方向を見た。
千反田、あの教室に保健委員のやつは残っていたな?」
える「えぇ、そういえば」
奉太郎「たぶんその保健委員の方を見ていたんだろう。教室を出る時聞こえてきた舌打ちも同じやつだ」
里志「確かに何となく気まずい雰囲気があった気がするね……」
摩耶花「でもなんでそんなケンカ中の二人が揃って教室に残ってるのよ」
奉太郎「さっきの奴は何とか仲直りをしたいと思って居るんじゃないか? 保健委員の方はそれに気付いて何か言ってくるまで残ってるとか」
える「言われてみれば、あのお二人は最近少し余所余所しい所があったかもしれません……」
摩耶花「えっ……じゃああの二人、いつまで残ってるつもりなのよ…………」
伊原はブツブツとそんな事を言う。
里志「んー、ねぇ千反田さん。あの手紙は部室に入ってから気付いた、そうだよね?」
える「はい。わたしは部室で本を読んでいると、摩耶花さんがやってきて……」
摩耶花「それで、わたしが明日の古典の予習をしたいからちーちゃんに教科書とノートを貸してほしいって言ったの。その教科書とノートの間に挟まっていたのよ」
里志「摩耶花が予習なんて珍しいね」
里志「なるほど。それで千反田さん、古典の授業は今日の何限目にあったんだい?」
える「古典は6限で一番最後の授業ですね。………………あ!」
里志「という事は手紙が入れられたのはその授業が終わってから部室に来るまでの間、という事になるね。教科書とノートの間に挟まっていてその授業の時に気付かないわけがない」
える「そ、その通りですね……!」
摩耶花「なるほど、それならかなり絞れるわね……。何かなかった、ちーちゃん?」
える「えっと…………あ、わたし、壁新聞部に行きました!」
里志「壁新聞部?」
える「はい。家のことで少し遠垣内さんにお話があって」
摩耶花「遠垣内先輩に? あれ、でもあの人ってもう壁新聞部は引退したんじゃ……」
える「最後に入須さん特集で書かせてほしいとお願いしているみたいです。部室には入須さんも居ました」
里志「おぉ、確かにあの女帝特集ともなると注目度も高そうだね!」
える「はい。ですが入須さんは渋っている様子で…………」
摩耶花「うーん……そうだ、ちーちゃん。その時鞄はずっと持ってた?」
える「鞄…………そういえば、一度机の上に置いて過去の新聞を拝見させてもらっていました」
摩耶花「もしかして……遠垣内先輩?」
里志「卒業する前に……っていう気持ちはあるかもしれないね。それにどちらも名家だし……」
える「えっ……えぇ……!?///」
摩耶花「ふふ……いよいよピンチね折木? あの先輩、結構イケメンだったし……」ニヤニヤ
奉太郎「Zzz……」
摩耶花「…………」
里志「はは、ホータローはベッドで熟睡みたいだね」
先生「ちょっとー、健康な子は家のベッドで寝なさいねー」
奉太郎「んぐ……?」
える「…………もうっ!!」プクー
目が覚めると、なぜか伊原が冷ややかな目で見ていて、千反田も頬を膨らませていた。
知らない内に壁新聞部に行くという事で話は決まっていて、俺も引きずられるように連れて行かれる。
奉太郎「……つーか、それだと千反田には気付かれなくても入須先輩の方が気付くかもしれないだろ」
里志「それなら二人はグルって事だね」
奉太郎「グル……ねぇ」
そんな事を話している内に壁新聞部の部室前まで辿り着く。
赤外線センサーはもう外したらしい。
千反田が扉をノックすると、遠垣内先輩が出てきた。
遠垣内「あれ、どうしたんだ? 何か忘れ物?」
える「わ、わたしにラブレターをくださったのはあなたですかっ!?」
遠垣内「…………へ?」
奉太郎「だから落ち着け千反田」
そんな声が聞こえたと思ったら、奥から入須先輩が出てきた。
その姿に、俺は思わず半歩下がってしまう。どうもこの人は苦手だ。
とりあえず里志と摩耶花がある程度の事情を説明する。
すると入須先輩がジト目で遠垣内先輩を見る。
入須「……つまり私とこの子、どちらでも良かったという話なのですか?」
遠垣内「ち、違う、誤解だ!! 俺はそんな手紙なんて知らない!!」
摩耶花「どっちでも良かったって何の話ですか入須先輩?」
入須「実は先程遠垣内先輩に告白されてな」
「「えっ!!?」」
千反田、里志、伊原の声がハモる。
遠垣内先輩は慌てて、
遠垣内「お、おい!!」
入須「すみません。しかし誤解であるならこれが最も早く解ける方法なのでは?」
遠垣内「それは……そうだが…………」
奉太郎「なるほど、既に恋人がいる遠垣内先輩はありえない……と。分かりましたそれでは失礼します」
入須「それも誤解だ折木くん」
里志「誤解とは?」
入須「私は告白をされたが、承諾はしていない」
摩耶花「つまり…………フッた?」
える「まぁ」
遠垣内「…………」ズーン
こういうのを傷に塩を塗ると言うのだろうか。
俺は少し気の毒になって、相当落ち込んでいる様子の遠垣内先輩を見る。
奉太郎「えっと…………なんか、すみません。俺達はもう行くんで……」
入須「折木くん」
奉太郎「はい?」
入須「私には気になっている男がいる。だから、彼の告白を断ったんだ」
入須「それは本当か、折木くん?」
奉太郎「えっ……はい、少なくとも俺はそう思いますけど……」
入須「…………」
奉太郎「…………」
入須「…………」ジー
奉太郎「…………じゃ、じゃあ俺達はこれで」
みんなが目を丸くして、俺と入須先輩の事を交互に見ていた。
俺はそんな視線、そして入須先輩自身からの視線に耐え切れずにその場を後にした。
***
俺達は部室まで戻ってきた。
先程から伊原が凄くうるさい。
摩耶花「ちょっと折木!! だからあんたはどうすんのよ!!」
摩耶花「入須先輩のことよ!」
奉太郎「……今は千反田のラブレターの差出人だろ」
摩耶花「ちーちゃん! ちーちゃんも気になるよね!?」
える「……はい。わたし、気になります」
千反田は真剣な表情で真っ直ぐ俺を見てくる。
奉太郎「…………」
える「…………」ジー
奉太郎「…………分かった」
える「ありがとうございます!!」
里志「相変わらずホータローは千反田さんの『わたし、気になります』には弱いね」ニヤ
奉太郎「うるさいぞ里志。それで、さっきの入須先輩の言葉なんだが……」
千反田と伊原がゴクリと喉を鳴らす。
える「え?」
摩耶花「は?」
千反田と伊原がキョトンとする。
奉太郎「まず、さっきのやり取りで遠垣内先輩は心にダメージを負った」
里志「そりゃあね……」
摩耶花「でも、それで何で入須先輩はあんな事言ったのよ。あれじゃどう見ても入須先輩が折木のこと……」
奉太郎「あぁ。“そう見せる事”があの人の目的だったんだ」
える「そう見せる事……ですか?」
里志「入須先輩がホータローに惚れてるように見せるのが、遠垣内先輩の事を気遣っているっていう事になるのかい?」
奉太郎「入須先輩のクラスの自主制作映画の件は覚えてるよな? 俺が探偵役……いや、脚本家に選ばれた時の話だ」
摩耶花「あー、あんたがまんまと入須先輩に乗せられちゃった時の事でしょ」
里志「ホータロー完全敗北の時だね」
える「ちょ、ちょっと摩耶花さんも福部さんも言い過ぎですよ」
一人は千反田える。一人は学外の人間。一人は遠垣内将司」
摩耶花「なによ、『俺ってすげーんだぜ』アピール?」
奉太郎「違う。例え買いかぶりでもなんでも、遠垣内先輩は俺ができる人間だと思い込んでいるって事が重要だ」
える「えっと……話が見えないのですが……」
奉太郎「告白した相手に『他に好きな人が居る』と言われてフラれたとする。
そういう時、その好きな人というのが誰だか分からない状態よりも、自分も知っていてそして一目置いている相手の方がまだ諦めがつくと思わないか?」
里志「……確かにね。入須先輩が考えそうなことではある」
摩耶花「でもそれって無理矢理すぎない? わたしはただ素直に入須先輩が折木のこと好きなんだって捉えるのが自然だと思うけど」
える「わたしもその……摩耶花さんと同意見です」
奉太郎「本気で口説くつもりなら、あの人は二人きりという状況を作ると思うけどな」
摩耶花「それは…………」
える「……確かに入須さん、何か頼みごとをする時は人目のつかない所で異性にって言っていました…………」
里志「はは、そういえばホータローがやられた時も茶屋で二人きりだったんだっけ」
奉太郎「うるさい」
伊原はまだ納得していない様子でこちらを見ている。
俺は軽く溜息をついて、
奉太郎「あぁ、これはただの俺の推論だ。だが、少なくとも俺はこう思っているからどうするつもりもない、という事だ」
摩耶花「…………むぅ」
える「それでは折木さん、一つ聞かせていただけますか?」
奉太郎「なんだ?」
える「折木さんは、入須さんの事は好きですか?」
奉太郎「…………苦手だ」
える「…………」
奉太郎「……なんだよ」
える「……いえ…………ふふ、そうですか」
千反田は俺の言葉ににっこりと笑う。
てっきり、『折木さんは入須さんの事を誤解しています』なんて説教されるかもしれないと思っていただけに意外だった。
気付けば約束の時間の30分前になっていた。
外はすっかり真っ暗だ。
里志「……はぁ、これは分かりそうにもないね。ホータローもいつも以上にやる気がないみたいだし」
奉太郎「失礼な。俺だって真剣に考えてたが分からなかったんだ」
摩耶花「へぇ、名探偵折木奉太郎の推理も完璧じゃないのね」ニヤニヤ
奉太郎「推理じゃなくて推論だ」
える「あの……わたしは……」
千反田は気まずそうにもじもじしている。
まぁ手紙を貰った当人なので当たり前か。
千反田の言葉に伊原は少し考え込んで、
摩耶花「……ここからはちーちゃん一人で手紙に指定された場所に行ってもらう事になっちゃうかな。
さすがに人の告白の場面までついていくのはちょっとアレだし」
里志「まぁ既にこうして差出人を探し出そうとしている時点でアレだけどね。でもどうやら僕達の負けみたいだし、ここら辺で大人しく引いておこうか」
奉太郎「そうだな。俺もそれがいいと思う」
奉太郎「……さぁ」
里志「はは、無駄だって摩耶花。省エネ主義のホータローが自分から恋愛事に首を突っ込むなんてないない」
える「…………」
奉太郎「……千反田?」
える「……いえ、何でもありません。分かりました。わたし、一人で指定された場所へと行きたいと思います」
摩耶花「折木のバーカ」
奉太郎「だから何なんだ一体……」
俺は責めるような目を向けてくる伊原に対して、ただ溜息をつくしかなかった。
その後、古典部は千反田を残してそれぞれ帰路に就く。
午後6時。1年A組。
真っ暗な教室に、一つの影が佇んでいるのが見える。
俺は何の躊躇もせずに足を踏み入れる。
奉太郎「いくら待っても千反田は来ないぞ、伊原」
ビクッと影が震える。
近づけばよく分かる。同じ古典部で小・中学校と9年間同じクラスの腐れ縁、伊原摩耶花だ。
摩耶花「な、なんであんたがこんな所に居るのよ!」
奉太郎「それを言ったらお前もだろ」
摩耶花「わ、私はちーちゃんが心配で……」
奉太郎「……今回のラブレターの件、俺にはいくつか気になることがあった」
摩耶花「…………なによ」
摩耶花「それがどうしたのよ。いつものパターンじゃない」
奉太郎「確かにその言葉が“手紙を開封した後”のものだったら自然だったかもな」
摩耶花「…………」
奉太郎「だが、違った。その時はまだ手紙は開封されていなかった。
そして『差出人を推理する』という言葉は手紙の内容にそいつの事が書いていないという前提の下でないと出てこないはずだ。どうしてお前はそう思ったんだ?
俺はそういうラブレターとかいうものに詳しいわけでもないが、普通は差出人の名前とかは入っているものだと思うけどな」
摩耶花「…………それは」
奉太郎「もう一つ気になったことは、お前は千反田のクラスでケンカ中の二人組。あいつらがいつまで教室に残っているのか、やけに深刻そうに気にしていた。
千反田のクラス……つまりこの1年A組だ。まぁあの二人はもう帰ったみたいだけどな」
摩耶花「ちーちゃんだって人が居る所で告白されたくないでしょ」
奉太郎「だがそれをどうにかするのは手紙の差出人の仕事じゃないか? お前はまるで自分自身の事であるかのように困った表情をしていた」
摩耶花「そんなのは折木がただそう思っただけよ」
奉太郎「……確かにな。それじゃあ他に気になったこと……手紙に指定された時刻と場所だ」
摩耶花「時刻と場所って、6時に教室のどこがおかしいわけ? 誰もいなくなる時間帯じゃない」
奉太郎「もし千反田が6時までに手紙に気付かなかったらどうするんだ?」
奉太郎「手紙は古典の教科書とノートの間に挟まっていた。しかも手紙が入れられたのは6限の古典の授業の後。
千反田は部室で本を読むからそれからずっと鞄を開けないという事はないが、それでも気付くかどうかは分からない。
それなら朝早くに下駄箱に入れておくとかして、確実に夕方6時前に気づいてもらえる方法をとった方がいいはずだ」
摩耶花「…………」
奉太郎「そして現に、千反田は部室で鞄から本を取り出しても手紙に気付かなかった。
それじゃあどうやって気付いたのか。伊原、お前に古典の教科書とノートを貸してほしいと頼まれて取り出したからだ」
摩耶花「…………そうね」
奉太郎「千反田のクラスの男子が怪しいって全員が部室を出る前。俺はお前と里志を先に行かせて、その時の事を千反田に詳しく教えてもらった。
最初に手紙に気付いたのは伊原、お前らしいな。千反田から古典の教科書とノートを受け取って、お前がそれの間に挟まっている手紙を見つけた」
摩耶花「…………うん」
奉太郎「元から手紙なんて入ってなかったんだろ。ただお前が手紙を取り出して、教科書とノートの間に挟まっていたと言えばいいだけだったんだ。
お前は教科書とノートを千反田から受け取ってこう言ったらしいな。『ちーちゃんはこっちは気にしないで本読んでていいよ』ってな」
摩耶花「…………」
伊原は何も言わない。
ただ俯いているだけで、この暗さでは表情もよく分からない。
奉太郎「……言っとくが、これは全部俺の推論だ。証拠なんてない。俺は名探偵なんかじゃないからな。
お前はその気になれば『そんなのただの妄想だ』と押し通すこともできる」
奉太郎「だが、これだけは答えてくれ。お前は里志の事が好きなんだよな?」
摩耶花「……? うん、そうだけど……なんで今更……」
キョトンと首をかしげる伊原の言葉に、俺は少し気まずさを感じて前髪をいじりながら、
奉太郎「その……お前が差出人だとすると、理由が分からなくてな……。
もしかしたらお前にそういう気があるのかと……あ、いや、俺は別に同性愛を否定するつもりはないが……」
摩耶花「…………は?」
奉太郎「だ、だからお前が千反田の事を好きなんじゃないか……という事だ。友達とかそういう意味ではなく」
摩耶花「ぶっ!!! ちょっと、あんたいきなり何言い出してんのよ!!!」
奉太郎「お、俺だってそれはないと思った! ただ一応確認というか……」
摩耶花「当たり前でしょ!! あの手紙は……!!」
そこまで言って、伊原は凍りついた。
奉太郎「……それで、あの手紙は?」
摩耶花「……うぅ、分かった認めるわよ!! あれはわたしの仕業!! でも動機とかは教えてあげないから!!」
摩耶花「ふん、あんたのお得意の推論で当ててみなさいよ」
奉太郎「部室で言っただろ? 俺も真剣に考えたけど分からなかったって」
摩耶花「……あれってそういう意味だったんだ」
奉太郎「とりあえず、普通に考えれば千反田をからかって反応を楽しむとかだと思ったが、観察してみるとお前はむしろ俺の反応を楽しんでいるようにも思えた」
摩耶花「分かってるじゃない」
奉太郎「いや、わけ分からん。千反田にラブレター出して、何で俺の反応を期待するんだ」
摩耶花「…………はぁ」
伊原はまるでどうしようもない子供を見るように溜息をつく。
何だかよく分からないが物凄くバカにされている感じはする。
摩耶花「……もういいわ、ちーちゃんに聞いてよ」
奉太郎「千反田に?」
摩耶花「うん。今の話を全部伝えれば分かるはずだから。それじゃあね、なんかわたし疲れちゃった」
奉太郎「あ、おい!」
俺は慌てて呼び止めるが、伊原はそのまま教室を出ていってしまった。
暗い教室には俺一人がポツンと取り残された。
帰り道。
暗い中を俺と千反田は並んで校門を通る。千反田の方は自転車を押している。
もうすぐ春とはいえこの時間はまだまだ寒さが厳しく、俺は白のコート、千反田は黒のコートを羽織っている。
奉太郎「――――というわけだ」
える「……そう、ですか」
千反田には事前に差出人の当てだけは軽く言って、俺が教室へ行くと説得した。
その時の条件が後で全部詳しく教えてほしいという事なので、最初から説明していたわけだ。
奉太郎「そういえば、千反田なら伊原の動機が分かるって言ってたが、どうだ?」
える「…………折木さん」
奉太郎「ん?」
える「折木さんはどうして今回の件について、ここまでやる気を出してくださったのですか?
こんな遅くまで学校に残ってまで……」
奉太郎「……やらなくてはいけない事は手短に、だ。もしかしたらお前と伊原で面倒な事になっているかもと思った。
それなら早い内に解決したほうがいいだろう。俺は短縮は好きで省略はもっと好きだが、先延ばしは好きじゃないんだ」
千反田は少し俯いてそう言う。
奉太郎「……そうか? それならいいんだが。それで、伊原の動機っていうのは……」
える「秘密です♪」
奉太郎「さいですか」
いたずらっぽく笑う千反田に、俺は溜息をつく。
まぁ、この様子ならそこまで無理をして聞き出すこともないだろう。
そうやって俺が少し安心していると、
える「折木さん」
奉太郎「ん?」
える「……あの、そ、その…………」
奉太郎「……?」
なにやら千反田がもじもじしている。
それから上目遣いで、
える「もし、わたしが本当にラブレターをもらったら…………それでも折木さんは気になりますか?」
答えは割と簡単に出てきた。
奉太郎「…………気になるかもな」
俺も釣られるように立ち止まって、後ろを振り返る。
二人は無言で見つめ合い、風が木々を揺らす音だけが辺りに響く。
沈黙を破ったのは千反田だった。
そしてその声は、わずかに震えていた。
える「そ、それは……差出人について……ですか?」
奉太郎「いや…………千反田の返事が、かな」
える「…………そ、その、それは……どういう…………」
千反田の微かに潤んだ瞳や真っ赤な顔は暗い中でもよく分かる。
俺は少し気恥ずかしくなり、視線を逸らす。
するとちょうど、蕾がつき始めた桜の木が視界に入る。
「…………桜はまだ咲かないな」
話を逸らすにはあからさま過ぎたかもしれない。
案の定、千反田はキョトンと呆然とする。
……だが、それからすぐに。
千反田は嬉しそうに、にっこりと笑った。
何となく、伊原の動機というやつが分かった気がした。
アニメが終わっちゃった悲しみでカッとなって書いた。後悔はしていない
もどかしいよ…
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Entry ⇒ 2015.05.04 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
える「摩耶花さん、相談なんですが…」
える「ええ、大したことではないのですが…」
摩耶花「なになに?」
える「生理がとまってるんです」
摩耶花「 え っ ! ? 」
える「ええ、ほら、こないだまで中間テストで、もうすぐには期末テストでしょう?
それで、根詰めてやりすぎてしまったんだと思います」
える(勉強のやりすぎによるストレスで生理不順になったのでしょうか……)
摩耶花(テスト勉強でストレス溜まったら、その…したくなるもの、なのかな?)
摩耶花「そ、そうかあ…」
える(テスト勉強の進展具合のことでしょうか?)
える「摩耶花さんのとこは、遅いんですか?」
摩耶花「えっ、そ、そうね…。まだ、そういうところまではいってない、かな…」
える「わからないことがあれば、わたしで良ければ教えますのでいつでも相談してくださいね」
摩耶花「えええっ!そ、そうね、あ、ありがと」
える「ええ、まあ自慢するほどではないですが、毎晩やっていますので」
摩耶花「ま、毎晩!?す、すごいね…。家でやってるの…?」
える「基本的には家ですよ?ああ、たまに部室に残ってするときもありますが」
える「え、ええ…まあ…他にすることもありませんしね…」
摩耶花「えー、そうなんだ。そういうもんなんだ…」
摩耶花「そりゃ、そんなけしてたら生理とまっちゃうよ…」
摩耶花「折木にはそうだんしたの?」
える「えええっ!こ、こんな話折木さんにできないですよ!」
摩耶花「そ、そうか。いきなりは無理だよね」
える「だから摩耶花さんにお話ししているんです」
摩耶花「でも、いつかは折木にも言った方がいいんじゃ…」
える「言いませんよ!折木さんにそんな気苦労背負わせたくないですし…」
摩耶花「ちーちゃん、そこまで折木のこと考えて…。自分ひとりで背負ってたのね…」ホロリ
える「しかし、それほど深刻な問題というわけでもないですし…」
摩耶花「かなり深刻だと思うよ!?」
える「そうですかね。次も飛んだら病院に行ってみようと思います」
摩耶花「そうしたほうがいいよ」
摩耶花「その…当たってたらどうするの!」
える「当たる?」
摩耶花「できてたら、って意味よ」
える「できる?テストの話ですか?」
摩耶花「違う!赤ちゃん!」
摩耶花「へっ?」
える「えっ?」
摩耶花「ちーちゃんが妊娠したかもしれないって話じゃないの?」
える「えええっ!?」
摩耶花「だって生理が止まったとかいうから…」
える「ただの生理不順の話ですから!」
摩耶花「え?じゃあ毎晩してるとかいったのは…?」
える「毎晩…?あ、ああ!」
える「あ、あれはテストの話だと思って…勉強を毎晩してるって話です!」
摩耶花「そ、そうか。そうよね…」
摩耶花「てっきりちーちゃんと折木が毎晩…」
摩耶花「わたしもびっくりした…」
える「わたし、恥ずかしいです…」
摩耶花「ごめんごめん」
える「どうして折木さんなんですか~」
摩耶花「だ、だって、ちーちゃんたち毎日ラブラブじゃない」
える「ええええっ!」
折木もまんざらじゃなさそうだし」
える「そ、それは…」
摩耶花「少なくとも、折木は絶対ちーちゃんのこと好きだと思うな」
える「えええっ!」
摩耶花「ちーちゃんは、好きなの?折木の事…」
里志「そういう報告マジでいいから」
折木「あの写真がダメだ。あの写真がある限り俺は千反田で抜き続けてしまう
里志「じゃ棄てろよ」
折木「そんなことできねーよ!」
里志「そんなのつけてたんだ!」
折木「千反田の使用回数が昨日500回に達した」
里志「千反田さんと知り合ってからの日数より多くない!?」
折木「そうだろうな…」
折木「好き、なんてもんじゃない」
里志「ああそう」
折木「俺の人生のすべてといっても良い」
里志「じゃあなんで告白して付き合わないのかな?」
折木「……フられたらどうする」
折木「なぜそういえる?」
里志「だって、千反田さんの接し方が僕とは全然違うからね」
折木「そうなのか」
里志「そう。だから告白しなよ」
折木「できないよー。そんなのこわいよー」
里志「やれやれ…」
える「今日は誰もいないんですね…」
える「折木さんは来ないんでしょうか…」ソワソワ
える「おや?これは…手帳ですね」
える「表紙には『オナネタ記録』とありますが…
おなねた、とはなんのことでしょうか…?」
える「中を読むのは、悪い気がするので、やめておきましょう!」
える「……」
える「……」チラ
える「……」
える「……不思議な手帳です。
日付と、その横に一言のメモが書かれているだけのものですね。
本当に「記録」といった感じですが…」
える「9月19日 1回目:本 2回目:L 3回目:L
9月20日 1回目:L 2回目:L
9月21日 1回目:AV 2回目:L
……ずっとこの調子で、ずーっと書いてますね」
える「あ、一番新しいページに『L使用回数累積500回記念』とあります」
える「とすると、これは何かを使った記録、ということなのでしょうか?」
それだと『L使用回数』という言葉の意味が理解できませんね。わたしを使う、というのはよくわかりませんし」
える「しかし…」
える「ちょくちょく人名が登場するんですよね、この記録」
える「ミホ、サナエ、マユミ、キョウコ…」
える「うーん、この名前に何か共通点のようなものは、ないですね…」
える「あ、マヤカというのもありますね。摩耶花さんのことでしょうか」
える「うーん、やはりわたしでは謎は解けませんね。この記録は気にしないことにしましょう…」
える「さすがに他人の手帳の中身の謎を折木さんに訊くわけにもいきませんしね」
える「あ、折木さん。いらしたんですか」
折木「も、もしかして、これ…」
える「ああ、この手帳ですか?椅子の下に落ちていたので机の上においておきました。中身までは見ていませんよ」
折木「そうなのか?」
える「さすがに悪いと思いまして…。折木さんのなんですか?」
折木「まあな」サッ
える「日記か何かで?」
折木「そんなとこだ」アセ
える(嘘、ついちゃいました)
折木「ま、まあ、日ごろの事をな…」
える「見せてください!」
折木「ダメに決まってるだろ!!!」
える「そうですよね。折木さんだって恥ずかしいですよね、わたしったら無神経にすみません…」
折木「……」
える「何が500回なんですか?」
折木「!?」
える「Lってやっぱりわたしのことですか?」
折木「み、み、見てんじゃねーか!」
える「?」
折木「そうだよ。その通りだよ……。俺は夜な夜な千反田のことを想像してる最低のクズ男だよ」
える「え?」
折木「軽蔑したか…?失望したか…?」
える「急にどうしたんですか?見られたのがそんなにショックだったんですか?」
折木「やめろ!やめてくれ!悪かった!俺が悪かった!」
その…すみません!勝手に見てしまって!」
折木「意味がわからないなんて、ウソつくなよ…」
える「嘘ではありませんよ!」
折木「……本当か?」
える「本当です。おなねた、ってなんですか?」
える「お願いします!」
…
…
…
える「……」サーッ
折木「というわけサ」
える「あ、の、」サササ
折木「フフフ、さすがの千反田もドン引きか…」
える「ひっ!」ビクッ
折木「……」
える「ご、ごめんなさい。わたし、びっくりしちゃって、その…」
折木「そうだよな。そりゃそうだよな」
える「折木さんって…わたしのこと、好きなんです…か?」
折木「……ああ」
俺は千反田のことが異性として好きなんだ。
そりゃあもう毎晩千反田とえっちなことする妄想するくらいにな!」
える「そうですか…」
折木「気持ち悪いか?そうだよな…。こんなオナネタ記録するような変態に好かれてうれしいわけないよな…」
える「い、いえ…そういうわけでは…」
折木「…え?」
える「折木さんのこと、考えてると、胸がいっぱいになります」
折木「それって…」
える「これって、恋心なんですかね…」
える「折木さんがわたしでえっちな想像してると聞いたとき、実はちょっと嬉しかったんです
不思議ですよね。普通、そんなことされたら気持ち悪いと思うはずなのに…
折木さんだと嫌じゃないです…」
折木「お、お、お…?」
える「えっちなことって、どうやるのか、知りません」
える「おかしいですよね、もう高校生なのに…。そういうことを知るのが恥ずかしくて…逃げてきました」
折木「あ、ああ…」
える「折木さん…教えてくれませんか…?」
折木「い、いいのか!?」
える「あの…赤ちゃんができるようなことでなければ…」
折木「わかった」ゴクリ
える「すきにしてください…」
折木「里志は今日は来ないといっていた。伊原も…この時間に来なけりゃいつもきてないから大丈夫だろう」
える「はむっ!」チュウウウ
折木「」チュパチュパ
える「んんんっ」チュパチュパ
折木「ぷは」
える「これが…キスの味なんですね…わたし、ドキドキします…」
折木「ああ、すごい…えるの唇、やわらかい…」
える「あっ、名前で呼んでくれましたね」
折木「えるも、名前で呼んでくれ」
折木「!!!」ビクンビクン
折木「名前で呼ばれただけでイきそうだ…」ガシッ
える「やんっ!あ、服、脱ぐんですね…」
折木「ああ、俺が脱がせるからじっとしてろ…える」
折木「すごい……えるのおっぱいLカップ!」
える「そ、そんなにないです!」
折木「触るぞ…」
える「んんいやああんっ!」ハァハァ
折木「んっ」ペロペロ
える「あっ、ほうたろぉ…舐めちゃいやっ…」ハァハァ
折木(最高)
摩耶花「」
折木「!?」
える「!?」
摩耶花「あ、あ…」ワナワナ
折木「伊原…いつからそこに…?」
摩耶花「ちーちゃんから離れなさいよ!」
摩耶花「ちーちゃん大丈夫!?折木になにされたの?」
える「あ、あ!摩耶花さん!これは…これは…その…」
折木「」ダラダラ
摩耶花「……最低」
摩耶花「ちーちゃん、折木のこと好きなのはわかるけど…庇う必要なんてないわ」
折木「おいおい!それじゃ俺が無理やり千反田を襲ったみたいじゃないか!」
摩耶花「……みたい、じゃないでしょ。その通りでしょ」
摩耶花「だいたい学校でする?最低よ。死ね」
える「あの、すみません!わたしが悪いんです!わたしが…折木さんは何も悪くないです!」
摩耶花「ちーちゃん…」
折木「わ、わかったよ…」
摩耶花「明日…覚えときなさいよ…」
える「あっ!折木さん!」
摩耶花「……よしよし」
摩耶花「なに?」
える「眠さの限界です…」
摩耶花「そうね…わたしも…」
fin
おつ
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Entry ⇒ 2015.04.26 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
折木「千反田の服を消滅させる能力に目覚めた」
える「そうですね。折木さんは今日も読書ですか?」
折木「まあな」
折木(ためしに、千反田のパンツだけ消してみよう…)
折木「ハッ!」
える「……ッ!」ガタッ!
折木「どうした?急に立ち上がって?」ニヤニヤ
える「え、あ、あれ?いや…な、なんでもないです…」
える「ちょ、ちょっと、お手洗いに行ってきますね…」
折木「なんだ?おしっこ行きたかったのか?」
える「い、いわないでください!」
テケテケテケ
折木(焦ってる焦ってる)
える(わたしのパンツがありません…。今朝は確かに穿いたはずです!)
える(でも、急になくなるなんてこと…)
える「わたし、ノーパンです…」ボソ
える(折木さんとノーパンのまま顔合わせるなんて無理です!!)
える「帰ろう…」
折木「早かったな」
える「そ、それより、わたし、今日は帰りますね!」
折木「……はは~ん?さては、ウンコ漏らしたな?」
える「えっ?な、何言ってるんですか折木さん!」
折木「状況から推察してそうとしか言えないだろう」
折木「さっきトイレに行く前、千反田が突然何かに驚いたように立ち上がった」
える「ま、まあ…」
折木「これは“予期しなかったことが千反田の身に起きた”からだと考えられる。
しかも、それは他人からみてわかりにくいことだ、現に俺は何が起きたのかわからなかった」
そして、千反田はそそくさとトイレへ駆け込んだ。もうこの時点で排泄系統に何か異変があったことは確定的に明らかだ」
える「…」
折木「だが、この時点ではまだ
“千反田が急に便意あるいは尿意を催してトイレに駆け込んだだけ”
そう解釈することもできる。それくらいならよくあることだ」
折木「しかしだ、トイレにいった後、千反田は急に帰ると言い出した。なぜだ?
用を足した後なら、もう心配事は過ぎ去ったはず。家に帰る必要はない」
える「そ、それは…」
折木「となると、家に帰らなければならない用事がトイレに行った後できた。
そう考えるのが自然じゃないか?」
折木「それは違うな。そのセンは俺も考えた。
だが、もし生理ならナプキンか何かをもってトイレへ行くはず。
千反田は手ぶらでトイレに行った。となると生理ではない」
える「ぐっ…」
折木「だいいち、千反田の周期から考えて今の時期はありえない」
える「なんでそんなこと知ってるんですかっ!?」
折木「見てればわかる」
える「……ッ!?」
折木「つまり、トイレにいって用を足そうとしたときにアクシデントが起きたのは間違いない。
痔や腹痛がひどいくらいならすぐ帰らなくてもいいし、少し休んでから帰りたいと思うはず。
すぐに帰りたくなることと言えば……ウンコが漏れて下着についた。そうだろう?違うか?千反田!」
折木「強情だな」
える「わたし、漏らしてません!」
折木「そこまでいうなら証拠を見せてもらう」
える「しょ、証拠?」
折木「そうだ。千反田がスカートをめくって、パンツにウンコついてないことを見せればいい」
える「そ、そんなことできません!」
折木「なぜだ?」
える「パンツ見せろと言われて見せる女の子がいるわけないでしょう!」
える「ま、摩耶花さん?」
折木「そうだ。伊原は今日顔を出すと言っていた。もうすぐ来るだろう。
伊原に確認してもらえばいい。同性にならパンツくらい見せられるだろう?」
える「だ、だめです!できません!だいたい、折木さんも福部さんにパンツ見せるのとか嫌でしょ!?」
折木「?別にかまわんが?」
える「……ッ!」
える「きょ、今日は帰りますっ!」ダッ
バタン!
折木(ちっ、逃げたか…仕方ない)
折木「ハッ!」
える「きゃあああああああああああああああああ」
える「いや、こないで!こないでください折木さあああああん!」
折木「そんなこと言っても…」タタタ
ガラガラ
える「いやあああああみないでええええええええええ」
折木「ど、どうしたんだ!」ニヤニヤ
える「スカートが!スカートが急に消えたんです!」
折木「な、何を言ってるんだ千反田!目を覚ませ!」ニヤニヤ
折木(スカート消したったwwww)
える「は、はい…」
折木「とりあえず、俺の体操服貸すからはいてろ」
―――
――
―
える「ありのまま今起こったことをお話しします」
折木「ああ、落ち着いて話してくれよ」
える「家に帰るべく廊下を歩いていたら、いつのまにかパンツとスカートが消えたんです」
折木「…」
える「何を言っているのかわからないかもしれませんが、わたしも何が起きたのかわからないんです」
折木「そ、そうか…(憐みの表情)」
える「頭がどうにかなりそうです!」
折木「ちょ、ちょっとその謎は解けそうにないなー(棒)」
える「折木さん、わたし、どうしたらいいんでしょう?」
折木「これはちょっと無理かなー」
折木「伊原か、いまちょっと立て込んでてな」
摩耶花「あれ?ちーちゃん、そんな暗い顔してどうしたの?」
える「実は…」
………
……
…
摩耶花「はぁ?」
える「ウソのようですが本当の話です」
摩耶花「あのさぁ…」
折木「は?どうして俺なんだ?俺は何もしてないぞ(嘘)」
摩耶花「急にパンツとスカートが消えるわけないでしょ」
える「しかし、本当に起こったことなんです!」
摩耶花「ちーちゃんも、折木を庇わなくていいから」
える「…え?」
摩耶花「折木!あんたがちーちゃんのスカートとパンツを無理やり脱がせたんでしょ!」
折木「…は?」
摩耶花「そこまでする奴とは思わなかったわ!死ね!性犯罪者!レイプ魔!」
折木「ちょおおおおおおおおおおおおお、違うって!」
摩耶花「もう口もききたくない!死ね!いこ、ちーちゃん!」
える「あっ、あっ、摩耶花さん!」
折木「まて!伊原!」
折木「ハッ!」
…
…
摩耶花「へっ…?」
摩耶花「きゃあああああああああああああああああああ」
える「ま、摩耶花さん!」
折木「どうしたんだー!(棒)」
摩耶花「服が、消えた…全部…」
える「ひどい…どうしてこんなことに…」
折木「うわー!」
える「ああああああ…」
折木「うわー!たいへんだー!」
える「ぐすっ、ぐすっ、うわあああああああああああああああああああああああああん」
摩耶花「ちーちゃん!落ち着いて!」
折木「とりあえずぶしつにはいるんだー!」
折木「その…なんだ。わかればいいよ」
摩耶花「でも、なんでだろうね」
折木「何か超常現象的なソレが起きているとしか思えないな」
摩耶花「そうね…このまま外を出歩くのは危険よね」
折木「そうだな…もし外出先で全裸にでもなったら…」
摩耶花「……」
える「えぐっ、えぐっ、えぐっ、わたし、わたし、折木さあん…」
ガラッ
里志「奉太郎!僕は遂にデータベースとして一つ上の段階に進むことができたよ!」
千反田「きゃっ!」
摩耶花「ちょっ福ちゃん!こっち見ないで!」
折木「一体何なんだ。(いいとこだったのに)」
折木「へー。」
摩耶花「福ちゃん・・・」
千反田「福部さん・・・」
里志「なんだいみんな、その憐れむような目は。いいよ。証明として誰かの情報を当ててあげるよ。」
折木「(この自信は本物だな。となるとマズイな。)」
摩耶花「じゃあちーちゃんの服が消えたんだけど、その理由も分かるの?」
折木「(アウトー!コイツはどんだけ俺が嫌いなんだ?)」
里志「お安い御用さ。」
摩耶花「ちーちゃん大丈夫?」
千反田「はい。これで原因が分かるといいのですが・・・」
里志「どれどれ。ん?なんか変なマークが出て奉太郎に繋がってるよ。」
折木「(くそ!ヤメロ!厨ニのデータベース(笑)が!)」
摩耶花「折木に?」
里志「えーと、スキル服を消滅?まさか君も僕と同じスキル持ちだったのかい?」
折木「里志、冗談はいい加減にしろ。」
里志「冗談なもんか。僕らは神に選ばれたのさ!」
千反田「折木さん・・・」ドドドドド
折木「ちょっと待て!そんな夢みたいな事本当に信じるのか?」
摩耶花「服が消える自体ナンセンスだもの。ありえない話じゃないわ。」
里志「データベースを自称する僕だけど、奉太郎のスキルは羨ましいなぁ。あっでも僕のスキルもスリーサイズとか自慰の回数とか分かるんだよ!」
折木「お前は黙ってろ!」
摩耶花「ふ、福ちゃんもそんな!」ドドドドド
千反田「折木さん。今なら許して差し上げても構いません。正直に仰ってください。」
自白する?自白しない?
安価>>101
里志「世の中論理だけじゃないんだよ。その証拠に僕には摩耶花の昨日の自慰の回数が見えてるよ。昨日は大門カイト総受け同人で一回、乱きり本で一回の計二回しているね。」
摩耶花「なっ!なんて知ってるのよ!」バキドカガス
里志(瀕死)「NHK縛りのオカズとは流石、摩耶花だ。」ガクッ
千反田「これで論理的ではありませんが超常的能力がある事が証明されました。」
千反田「福部さんの証言では証拠にはなりませんか?」
折木「ならないな。客観的に目に見える証拠ではないからな。」
摩耶花「アンタ、まだシラを切る気?」
折木「お前のオカズが本当に里志の言う通りだったと証明してくれるのか?」クックック
千反田「・・・折木さん、残念です。ここに至っても正直に真実を語ってはくれないのですか?」
折木「>>115だ。」
千反田「はい?」
折木「折角千反田の全裸が見られたんだからオナニーするしかないんだ。超常現象様々だなぁ。」
摩耶花「折木!アンタって奴は!」
折木「ほら、お前も里志脱がせてオカズにするチャンスだぞ?」
千反田「・・・折木さん。私どうしても鬼(き)になるんです。どうして私の服が消えたのか。」ボソッ
折木「どうした?千反田。」
千反田「だから私、鬼になります!」
千反田「折木さん、気が付かれましたか。」
折木「千反田か。ここは何処なんだ?どうして俺は縛られているんだ?」
千反田「ここは千反田家の所有する拷問部屋です。折木さんが縛られているのはこれから折木さんに拷問をするためですよ。」
折木「なんだと!」
千反田「最後のチャンスです。正直にお話して下さいますか?」
折木「>>125」
千反田「残念です。お話したくなったらいつでもどうぞ。」
折木「知らないんだから話せないぞ。」
千反田「とりあえず足の指に竹串を挿していきますね。すべての指に指し終わったら爪を剥がします。お話して下さったらすぐにやめて差し上げます。」
折木「・・・」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
千反田「そこまで行ったら傷口に辛子を塗って水責めでもしましょうか。それとも石抱きでも?」
千反田「お話して下さるのですか?」
折木「知らないものは話せない。つまりいくら責めても無駄だ。」
千反田「皆さん初めはそう仰るそうです。」
折木「それはそうだろうが、俺は本当に無実だ。」
千反田「ならば耐えてください。殺しはしませんから。」
自白する?>>135
千反田「仕方ありません。」
折木「(まさか本当に拷問なんてしないだろ。何度も聞くのがその証拠だ。)」
千反田「では竹串を挿していきますね。」
折木「は?」
千反田「折木さん、私は先程から本気だと言っているのですが?」
折木「まさか大天使チタンダエルが拷問なんて・・・」
千反田「・・・もういいです。一本目挿れますよ。」
折木「>>144」
千反田「そうですか。」
折木「(おっこのハッタリは効いたか?)」
千反田「では別の拷問にします。私も辱めを受けましたし、辱め系統にしましょうか。」
折木「は?」
千反田「竹串に慣れている折木さんにはヌルいかもしれませんが、私も楽しめるのでお付き合いくださいね。」
折木「いやいやいや。」ブンブン
千反田「とりあえずスタンガンで気絶させて、服を脱がせますね。」バチバチ
折木「うぅ・・・動けない。」
千反田「それはそうです。亀甲縛りして専用の台に括りつけましたから。本当は吊るしたかったのですが、滑車が古くて壊れてしまうかもしれなかったので仕方なく台に括りつけることにしたんですよ。」ショボン
折木「なんてこった。」
千反田「ふふっ、脱がせている間に写真も撮ってしまいました。折木さんの包太郎のを。私の裸も見たんですから当然ですよね。」
折木「かっ仮性だからな!」
千反田「はいはい。では最初の拷問を始めますね。」
折木「いや待て。大事なことなんだぞ!真性と仮性では天と地ほどの・・・」カチャッ
千反田「少しこれをくわえて黙ってくださいね。では浣腸をしますね。グリセリン50%を1リットルから行きますね。」
折木「んーんー!」
千反田「大きい注射器みたいですよね?今からこれを折木さんに刺すんですよー。」
折木「んーんー!(それは大きな間違いだ!)」
千反田「全て入ったところで尻尾付きプラグを差して、頭には耳を装着しますね。」
折木「んーんー!(どういうつもりだ!)」
千反田「可愛いですよ、折木さん。これも写真におさめますね。」パシャ
折木「んー!(やめろー!)」
千反田「安心してください。包太郎の写真もこの写真も摩耶花さんにしか見せませんから。」
折木「・・・(早くも腹が痛くなってきた。)」
千反田「もう効いてきましたか?プラグがあるから出せなくて辛いですよね?正直にお話して下されば出させて差し上げますよ?」
自白する?>>165
や
ら
な
い
か
千反田「口にくわえているものを外さないと話せませんね。」
折木「そんなことよりやらないか?」
千反田「折木さん・・・」
折木「見てくれ。俺の包太郎がそびえ立ってるだろ。」
千反田「ええ。相変わらず服を着たままの包太郎ですが。今すぐ折木にしてあげたいくらいの可愛さですよ。」
折木「頼む!それだけは勘弁してくれ。」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
千反田「余裕ですね。しばらくそのまま我慢していてください。包太郎君にはこのシールを貼ってあげますから暇する事はないでしょう。」
折木「これはまさか・・・」
千反田「家畜の人工授精のために精液をとる装置をもとに作られたものだそうです。」
折木「あひぃぃ!」
千反田「いわゆる低周波マッサージ機ですね。お気に召していただけたら幸いです。」
折木「ひぎぃぃ!」
千反田「男性は射精すると賢者になるそうですね。折木も沢山出して正直になってくれるでしょうか?私、気になります。」
折木「あふぅ!」
千反田「では後ほど。」
千反田「おまたせしました。やはり電池が切れてしまっていますね。ボタン電池では長時間は持ちませんから。」
折木「ヒューヒュー。」
千反田「折木さんのお家には連絡を入れておきました。私の家なら安心だそうです。良かったですね。」
折木「ち、千反田。」
千反田「なんですか?正直にお話して下さる気になりましたか?」
折木「>>177」
千反田「えっ!そんな急に・・・」
折木「服が消えたのはなかなか思い切れない俺を後押しするために神様が用意してくれたプレゼントだと思う。つまり俺が勇気を出して告白すればもう千反田の服は消えないはずだ。」
千反田「そんな。でも・・・。」
折木「返事はいつでもいい。だから今はこれを解いてくれ。」
折木「(しまった!)」
千反田「その償いとしてこの場でぶち撒けてくださいね。」ニコッ
折木「やめろー!」
千反田「やめません。ビデオもセットしましたし、いきますよ!」スポン
折木「らめぇぇぇ!」
千反田「良いですよ折木さん!省エネが嘘のような叫びが心にしみます。」
折木「ううっ・・・」
千反田「ではもう一度。今度は絵的な事を考えて牛乳でいきます。」
折木「えっ?これて終わりじゃ・・・」
千反田「まさか!学校で女性を全裸にしてこの程度で住むはずがありませんよ。」
千反田「すっかり綺麗になって透明な液しか出てこなくなりましたね。」
折木「・・・」
千反田「折木さん!」ポチッ
折木「んほぉぉ」ドピュ
千反田「お返事して下さらないと電池を入れ替えた搾精機を使わないと行けませんよ?」
折木「すまん。少し疲れてな。でもこれで終わりだろう?早く外してくれ。」
千反田「まだですよ?今までので精々パンツ分位です。」
折木「なんだと?」
千反田「とりあえず、肛門のシワの数とペニスの大きさと包皮の余り具合を記録して今後の参考にしますね。」
折木「シクシク」
千反田「ペニスは通常時3.7センチ包皮が0.5センチですね。」ポチッ
折木「あひぃぃ!」ドピュ
千反田「もう勃起せずに透明な液が出てくるだけですか。では勃起時は後日と。」
折木「・・・」
千反田「折木さん、省エネは結構ですが、おしりの毛や陰毛も整えた方がいいですよ?」
折木「・・・」
千反田「折木さん?返事も出来ないほどおつかれですか?とりあえず陰毛は切りそろえておきますね。」
折木「・・・」
里志「・・・」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
摩耶花「ちーちゃん、お部屋貸してくれてありがとう。お陰で福ちゃんも素直になってくれたわ。」
千反田「摩耶花さん、良かったですね。」
摩耶花「しかし折木の奴、真性とはねー。」
千反田「勃起した時に手で剥けるので一応仮性ですよ?」
摩耶花「でもすぐ被っちゃうんでしょww」
千反田「そうですが、そこが可愛いんですよ!」
摩耶花「そんなもんかなぁ。まぁ福ちゃんも通常時は服着てるからたいさないんだけどね。」
千反田「そうなんですか?」
摩耶花「福ちゃん、見せてあげて。」
里志「・・・分かったよ。」ヌギヌギ
千反田「被ってますね。しかも無毛ですか。なによりこのリボンは?」
摩耶花「可愛いでしょ?」
摩耶花「福ちゃんの小さい癖にヤンチャだから、陰毛全部剃ってリボンで封印してるのwww」
千反田「そんなにヤンチャなんですか?折木さんにも見習って欲しいですね。」
里志「・・・摩耶花が無理やりしてるんじゃないか。」ボソッ
摩耶花「なんか言った?」ドドドドド
里志「な、なにも!」
千反田「折木さんは省エネで前立腺を弄って差し上げたり、足で乱暴にしないと大きくならなくて・・・」
千反田「折木さんですから。」
摩耶花「その折木は見当たらないけど、どうしたの?」
千反田「折木さんでしたら先程から私の下にいらっしゃいますよ。」
摩耶花「ホントだwww椅子かと思って気が付かなかったわwww」
千反田「省エネしたいと仰るのでお付き合いしてるんです。」
摩耶花「確かに椅子なら動かないし、省エネだわ。」
千反田「はい。折木さんにピッタリですよね。」
折木「しかもその女装は写真に収められ、摩耶花の資料やオカズになっているらしい。俺の写真をオカズにしている所を里志に見せると反応が良いらしい。里志のオカズにも使っているそうだが、きっと嘘だろう。そう思いたい。」
折木「なんだかんだいって俺は本当に幸せだ。」
Happy End
幸せなのか……
結果的に藪蛇な能力だったなあ
>>1による別ルートも気になります!
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348054281/
Entry ⇒ 2015.04.21 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
奉太郎「…なあ、える」 える「!?」
奉太郎「その経営的戦略眼についてだが、俺が修めるというのはどうだろう?」
える「どうして急に下の名前……え?」
奉太郎「……」
える「折木さん、それって…その」
奉太郎「結婚しよう、える」
える「」
奉太郎「…なあ。聞いてるのか?」
える「」
奉太郎「……」
える「」
奉太郎「ちゅーしちゃうぞ」
える「お、おおお折木さん!!おおおち落ち着いてください!」
奉太郎「お前が落ち着け」
える「わたしたちまだ学生ですよ!そんな…急に!」
奉太郎「驚かせたならすまん。だが俺はお前のことg」
える「こ、困ります!だってその…新婚旅行の行き先も決めてないのに!!」
奉太郎「飛躍しすぎだ。せっかちだな、えるは」
奉太郎「それはそうだろう」
える「…いえ!そんなことより!!」
奉太郎「お前は一人娘だろう、俺が婿入りする形になるのがベストだろうな」
える「折木さん!」
奉太郎「千反田だ。千反田奉太郎に俺はなる」
奉太郎「ダメ……か?」
える「ダメじゃ!…ない……ですけど」
奉太郎「ならば」
える「どうしてそんなに積極的なんですか!?」
える「……ッッ!こ、答えになっていません!」
奉太郎「ずっと…愛していた」
える「ですから!どうしてそんな急に」
奉太郎「お前への愛を伝えずにはいられなくなったんだ」
える「…!……!」パクパク
奉太郎「お前は…えるは。俺のことをどう思ってるんだ?」
える「いつも、何度も、助けていただいて」
奉太郎「たまたまだ」
える「本当に感謝しています。折木さんは、わたしにとって大切な人で…」
える「…特別な、人です」
奉太郎「…それは」
える「わたしも……折木さんのことが、好きです」
える「……あの、おれき、さん?」
奉太郎「 」フラッ
バタン
える「折木さん!」
える「折木さん! 大丈夫ですか!? 折木さん!――」
―――
――
―――
ほうたろの部屋
奉太郎「……その…ただの風邪で、心配掛けてすまなかった」
える「いいんです。昨日無理を言ってお手伝いしていただいたわたしの責任です」
奉太郎「千反田が気にすることじゃない。見舞いに来てくれてありがとう」
える「これ、お見舞いの品です。紅茶に入れるとおいしいんですよ」
奉太郎「ほう……ジャムか」
奉太郎「どうした」
える「さっき、折木さん、わたしのこと『千反田』って……」
奉太郎「ずっとそうだっただろう?」
える「……もしかして、折木さん」
える「昨日、倒れる前のこと……覚えて…いないんですか?」
奉太郎「何か……やたらと気分が高揚していたというか、そんなだった気はするんだが」
える「……」
奉太郎「…ち、千反田?」
える「……」ジワッ
奉太郎「え?」
える「えるって……呼んでくれたじゃないですか」
える「わたしのことを、愛していると言ってくれたじゃないですか!!」
奉太郎(……なん……だと?)
える「……何かのまちがい、だったんですか?」
奉太郎「…いや、それは」
える「っ!」ダッ
奉太郎「千反田!! 待ってくれ! ちた…っ!」
奉太郎「……クソッ!!」ドンッ
奉太郎「…俺は……馬鹿か」
奉太郎(ここで追いかけずに……何が省エネだ)
奉太郎(俺は……)
奉太郎「俺の省エネは……すべて今日この一瞬(トキ)のために!!」
奉太郎「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」ダダダダダ
奉太郎(まだ100mも離れていなかった)
奉太郎「千反田ァァァァァ!!!」ドドドド
える「ひっ!」
える「折木、さん」
奉太郎「ま…待って…ハァ…くれ! ハァ…ハァ…」
える「いえ、いいんです」
える「わたしが……嬉しくて」
える「舞い上がってしまった…だけなんです」
奉太郎「千反田!」
える「だから…グスッ…明日から、また…いつもどおr」
奉太郎「……える!」
奉太郎「お前は、勘違いをしている」
える「そんなこと」
奉太郎「昨日……俺が倒れる前」
奉太郎「そのあたりのことを、覚えていないのは、本当だ」
える「……やめてください」
奉太郎「だから、お前に向けて言った言葉も」
える「やめてください!」
奉太郎「今の俺は覚えていない」
える「もういいんです!」
奉太郎「千反田」
奉太郎「……える」
奉太郎「俺は、お前のことが好きだ」
奉太郎「傷つけて本当にすまなかった。だが俺は」
奉太郎「たとえ他のすべてを忘れようと、お前のことだけは見失いはしない」
奉太郎「お前への想いを忘れることはない」
奉太郎「える。 俺はお前のことを愛している」
奉太郎「えるに関することは例外だ」
える「せっかくのエネルギーが、もったいないですよ」
える「……でも、うれしいです」
える「折木さん」
える「いえ……奉太郎さん」
える「わたしも、奉太郎さんのことが大好きです」
おわり
える「今日は奉太郎さん来ないんでしょうか……」
里志「!?」
摩耶花「ちーちゃん!? ほ、奉太郎さんってどういうこと!!?」
える「あ…/// 実はですね……」
ガラッ
奉太郎「お、3人とも来てるのか」
里志「!?」
える「奉太郎さん……///」
摩耶花「お、おおお折木!? 頭でも打ったの!?」
奉太郎「失礼な!」
奉太郎「俺とえるは、まあその、恋人同士になったわけだ」
里志「!?」
摩耶花「も、妄想にちーちゃんを巻き込むんじゃないわよ!!」
える「奉太郎さん、そんなはっきり言われると照れちゃいます……」モジモジ
奉太郎「まあいいだろ、遅かれ早かれだ」
摩耶花「ほ、本当なの……ね?」
奉太郎「だからそうだと言ってるだろう。 なんならここでえるを抱きしめ…」
える「奉太郎さん! 人前じゃ恥ずかしいです!」
摩耶花(二人きりならいいの!?)
える「摩耶花さん?」
摩耶花「うん……。 おめでとう、ちーちゃん」
える「ふふ。 ありがとうございます、摩耶花さん」
奉太郎「奥歯に物が挟まったような言い方だな」
摩耶花「そんなことないわよ。あんたたちお似合いだと思ってたし」
奉太郎「なんだ」
摩耶花「ねえ、ふたりのどっちが先に告白したの?」
える「それは」
奉太郎「俺だ」
里志「!?」
奉太郎「…俺にそういうところが無かったとは言えないが」
える「奉太郎さんは、いざというときにはとても頼りになる人なんですよ、摩耶花さん」
摩耶花「まあ……そうかもね」
奉太郎「……」プイ
奉太郎「ああ、そうだな」
ガガガガ
摩耶花(イスを……動かして)
奉太郎「ふう」スッ
里志「!?」
摩耶花(ちーちゃんの……隣に!? っていうか近っ!!)
奉太郎「える……///」
摩耶花(これ! なに!?)
奉太郎「……」ナデナデ
摩耶花(うわあああ!! ふくちゃんこの状況なんとかしt …)
摩耶花(息してない……)
摩耶花「ッゲフンゲフン! ああん! そういえば今日は漫研に行く用事があったんだった!」
奉太郎「伊原、お前漫研やめただろう」
摩耶花「ノオオオオオオ!!!」
摩耶花(なんでその状況で冷静なのよ! fack!)
える「摩耶花さん、スペルが違いますよ。 f・u・c・k です」ニコッ
摩耶花「ちーちゃん心読まないで!」
摩耶花「黙ってなさい!」
える「摩耶花さん、小魚ありますよ。 カルシウム豊富です」
摩耶花「あ、ありがとう。 じゃなくて!」
奉太郎「俺のときと態度が違いすぎるぞ」
摩耶花「ちーちゃんも人目を憚りなさい! 密着してるじゃない!」
える「それは確かに……その、ちょっと恥ずかしいですけど」
える「奉太郎さんとこうしていると、とても気持ちいいんです///」
摩耶花(くううううううううううううう!!!)
奉太郎「とても幸せな気持ちになれます」
折木「お前も大概だぞ」
摩耶花「誰のせいよ!」
奉太郎「そうか」
える「大丈夫ですか? ゆっくり休んでくださいね」
摩耶花「うん。 それじゃあまたね」
える「はい。 また明日」
ガラッ バタン
―――
部室前
摩耶花「……はあ」
摩耶花(ん……声が……)
える「奉太郎さん、ふたりっきりになってしまいましたね」
奉太郎「そうだな」
える「きゃっ/// もう、変なところ触らないでください///」
奉太郎「える……」
える「んっ… 奉太郎、さん……」
摩耶花(……帰ろ)
おわり
える「不思議探索をしましょう」
里志「!?」
奉太郎「どうしたんだ急に」
摩耶花「不思議探索ってなに?」
摩耶花「なるほど」
奉太郎「…不思議なことを見つけて、それでどうするんだ?」
える「文集です!」
里志「!?」
える「去年の文集の出来は、それは素晴らしいものでした」
摩耶花「そう…ね、中身の評判もよかったと思う」
える「ですから、」
奉太郎「『今年の古典部はイマイチだな』と思われないためにも、興味を惹くネタを探そうというわけか」
える「そうです! さすが奉太郎さんですね。大好きです//」
摩耶花(はいはい)
―――
土曜日
奉太郎「おはよう。 もうみんな来てたのか、早いな」
える「奉太郎さんが一番最後ですね。 罰金です」
摩耶花(ちーちゃん意外と厳しい…?)
奉太郎「じ、時間通りだっただろう。 金もそんな持ってきてないぞ」
える「いいえ。 わたしの頭をなでなですることでお支払い可能なんです」
奉太郎「……おいで」
える「ふふ///」トローン
摩耶花(前言撤回!)
奉太郎「なんでまた」
える「4人でまとまって探すより二手に分かれた方が不思議を発見しやすいんです。 伯父が言っていました」
奉太郎「なるほど」
摩耶花「それはそうね」
-くじ引き-
里志「赤だ」
奉太郎「無印だな」
摩耶花「わたしも無印」
える「……赤…です」
奉太郎「な、なんだ」
える「いいですか」
奉太郎「なにが」
える「これはデートではないんです。 古典部の命運を左右する重要な仕事だということをっ」
奉太郎「分かってる! 分かってますとも!」
える「ならいいんですが……」
奉太郎「何も心配することはない。すぐに帰ってくるさ」ナデナデ
える「はい……///」
摩耶花(…チッ)
摩耶花「あんた本当にちーちゃんのこと好きな 奉太郎「まあな」
摩耶花「……」
摩耶花(いやいやいや、即答されたって格好よくないわよ)
奉太郎「ところで不思議ってどこにあるんだ?」
摩耶花「微妙に深遠な問いかけしないで」
摩耶花「そうね」
奉太郎「……」
摩耶花「……」
奉太郎「なあ」
摩耶花「なによ」
奉太郎「今日は大日向は来ないのか」
摩耶花「ひなちゃんはなんか用事あるんだって」
奉太郎「そうか」
奉太郎「また藪から棒に」
摩耶花「やらなくてもいいことは、やらないんじゃなかったの?」
奉太郎「文集の充実は、まあ、やらなければならないことだろ」
摩耶花「手短に?」
奉太郎「よく覚えてるな」
摩耶花「……まあ、いいんだけどね」
摩耶花「……」
奉太郎「そうだな。 すこし惚気ていいか」
摩耶花(藪蛇だった!)
奉太郎「実は」
摩耶花(まだ許可してないのに!)
摩耶花(流れる雲を眺めていた。空はどうして青いんだろう。不思議)
奉太郎「―――というわけだ」
摩耶花「そっか」
ピロリロリン
摩耶花「ふくちゃんから電話だ」
摩耶花「あれ、ちーちゃん? どうしたの?」
える『福部さんに携帯電話をお借りしたんです。 あの、奉太郎さんに代わっていただけますか?』
摩耶花「だそうよ。 はい」
奉太郎「…もしもし」
える『奉太郎さん! 時間です!』
奉太郎「時間、というのは?」
える『集合地点に帰投してください。 会いたいです』
奉太郎「分かった。 すぐ行く」キリッ
奉太郎「える。待たせて悪い」ナデナデ
える「奉太郎さん…」ギュー
里志(こいつはもう別人だよ、ホータロー)
奉太郎「そうだな」チラッ
摩耶花(……きなの臭いがするわ)
-くじ引き-
える「赤です!」
奉太郎「俺も赤だな」
える「ということはわたしと奉太郎さんのペアですね!」
奉太郎「じゃあ行こうか、える」スッ
える「はい///」
摩耶花(ナチュラルに手を繋いだ!?)
奉太郎(ただの散歩も……悪くない)
奉太郎(えると他愛ない話をしたり、10年後の農家のあるべき姿を議論することは、とても楽しい)
奉太郎(……繋いだ手が汗ばんできた)
奉太郎(い、一旦拭いた方がいいのか!?)
える(奉太郎さんに嫌われてしまうでしょうか……)
える(でも……手は放したくないです…)ギュッ
奉太郎「!」
奉太郎「……」ギュッ
える(ほ、奉太郎さん…握り返してくれた?)
える(……ふふ///)
える「そろそろ、戻りましょうか」
奉太郎「そうだな」
おわるか
える「奉太郎さっ…ん//」スリスリ
奉太郎「ん?」モミモミ
摩耶花(……慣れって怖いわ)
える「携帯電話が欲しいですね」
奉太郎「無くても困らないが……あったら便利だろうな」
里志「今買うならやっぱりスマートフォンだろうね」
里志「僕のおススメはやっぱりD社の銀河かな!」
里志「いや! でもふたりは通話が多いだろうしW社も…」
える「それで、ですね」
える「今度のお休みに、ご一緒に携帯電話を見に行きませんか?」
奉太郎「買うわけではないのか?」
える「はい。 まずは下調べです」
奉太郎「ん…じゃあ行こうか」
える「楽しみです」ニコッ
摩耶花(電気屋デートですね)
える「……最近の携帯電話はすごいですねえ」
奉太郎「そうだな」
奉太郎「……む」
える「どうしました?……家庭用電動小型マッサージ機?」
奉太郎「……」
える「奉太郎さん、どこか具合の悪いところでも?」
奉太郎「……まあ、ちょっとな」
ブブブブブブブブブブブブブブ
える「やっ…あああ! だめ!だめっ…です/// あん!///」
摩耶花「」
える「ほっ…奉太郎さッ…んん! ひぁっ!」ビクンッ
奉太郎「える…えるっ……」
摩耶花「」
える「だ…めっ! きもちよくなっちゃ…ぁあんっ…います!!///」ビクビクッ
―――
――
える「……」トローン
奉太郎「……」ナデナデ
摩耶花「いつも…通り? あれ? 夢?」
摩耶花(……)
摩耶花(……///)カアッ
奉太郎「伊原」
摩耶花「ひゃい! な、なによ!」
奉太郎「挙動不審だぞ」
摩耶花「そ、んなことはない!」
摩耶花(…って、え? なんでわたしが? あれ?)
奉太郎「これか? 電マだ」
摩耶花「そうじゃなくて! そんなのがどうしてこの部室にあるのよ!」
奉太郎「えるが使ってみたいというものだから、持ってきた」
摩耶花「そのちーちゃんはどうしてそこで陶然としてるの!?」
奉太郎「よほど肩が凝っていたんだろうな。 そうとう気持ち良かったらしい」
摩耶花「気持ち良…って、え? 肩?」
奉太郎「それがどうかしたのか?」ケロリ
摩耶花「いや……なんでもない……」
摩耶花(……なんだ、肩か)
おわり
よくがんばった!感動した!!
面白かったぜ!
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1347568472/
Entry ⇒ 2015.03.31 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
える「わたしに告白なんかさせてしまってごめんなさい」
える「本当にごめんなさい。いえ、折木さんは悪くないです」
える「わたし、折木さんの優しさに甘えてました。折木さんとずっと友達でいられたらいいな、って考えて…」
える「でも、そんな都合のいいことありませんよね」
折木「そ、そうか」
える「折木さんさえよければ、これからも友達でいてくれませんか?」
える「折木さんは、特別な友達ですから」
折木「あ、ああ。わかった」
折木「…」ボーッ
摩耶花「ねぇ!ねえ!どうだったの?」
折木「…ああ、伊原…か」
摩耶花「昨日したんでしょ?告白!」
折木「フラれた」
摩耶花「えっ!?」
折木「思わせ振りな態度ですみません、だとさ」
摩耶花「そ、そっか…」
折木「俺だってそう思ってたさ。…自分で言うのもなんだが…」
摩耶花「これ、遊園地の招待券。折木とちーちゃんのカップル成立祝いにダブルデートしようってふくちゃんが貰って来てくれたんだけど」
摩耶花「そういう感じじゃなくなったね…」
摩耶花「…」
折木「やはり俺には灰色が似合ってたんだ」
折木「色恋沙汰には手を出すなということか…」
摩耶花「ちょ、ちょっと折木!」
折木「…」
摩耶花「私もふくちゃんから返事もらえるのにずっと長いことかかったんだから!」
摩耶花「折木も粘ればちーちゃんもきっと…」
折木「伊原…」
折木「里志の場合は、伊原への返事を”保留”していた」
折木「千反田の場合は明確な”拒否”だ」
折木「待ったところで結果は同じだ」
摩耶花「あ…」
摩耶花「あ、ふくちゃん…」
里志「何暗い顔してるんだい摩耶花!ホータローにチケットはもう渡した?」
折木「里志…ありがとうな。気持ちだけ受け取っておく」
里志「どうしたの?」
摩耶花「あのね、ふくちゃん。落ち着いて聞いてね」
折木「気にするな」
摩耶花「…」
里志「…」
折木「…」
里志「で、でもさ!遊園地は行こうよ!古典部みんなで何かするってのは今までもずっとあったんだしさ!」
里志「あ、千反田さん!ちょうどいいところに!」
摩耶花「いまね、私たち4人で遊園地行こうって話してたのよ!」
里志「そうなんだ!ちょうど招待券が4枚てに入ったからさあ!」
える「そうなんですか」
える「でもいいんですか?福部さん、摩耶花さんと二人でいきたいのでは?」
える「まあたしかに、そうですね」
里志「そうそう!」
える「折木さんは、行くんですか?」
折木「ア、アア!いくぞ?」
える「そうですよね」ホッ
える「では、皆さんで行きましょうか」
える「はい」
摩耶花「お、おー!」
折木「…」
える「楽しみですね!折木さん♪」
折木「だ、だなぁ…」
摩耶花(これで折木のこと好きじゃないなんて、信じられないわ…)
里志「ついたね!」
える「遊園地くるのはじめてです!」
折木「そうかー」
える「ほらほら、折木さん。もっと楽しそうにしてください!」ピタ
折木「!」
摩耶花(ちーちゃん、そりゃ罪だよ…そんなに引っ付いて…)
折木「ジェットコースターだよ、知ってるだろ」
える「現物ははじめてみました!すごく大きいですね」
折木「そうだな」
える「乗りましょう!わたし、きになります!」
折木「怖いぞ…いいのか?」
える「わたし、どれくらい怖いのか体感してみたいです!」
折木「仕方ない、いくか」
える「はい!」
里志「ふう、たくさん遊んだね」
摩耶花「そうね」
える「楽しいですね、折木さん」
折木「…ああ」
里志「最後に、あれに乗ろう」
摩耶花「観覧車ね」
える「うわあ、すごく高いです!」
里志「え、僕と摩耶花で乗るの?ベタだなぁ」
える「ええっ」
摩耶花「そうじゃなくて!ちーちゃん、女同士で乗らない?」
折木「アッー!」
える「女同士とかいうから、びっくりしました」
摩耶花「たまにはいいでしょ?ほら、みて!さっきのったコーヒーカップがあんなに小さく見えるよ!」
える「すごいです!」
摩耶花「あ、あそこでキスしてるカップルがいるよ」
える「わわわっ!みてはいけないものをみた気分です」
える「摩耶花さん?」
摩耶花「…どうしてちーちゃんは折木を振ったの?」
える「!」
摩耶花「私にはちーちゃん達、相思相愛にみえた」
える「聞いたんですね…」
摩耶花「えっ?」
える「わたしが折木さんのこと、好いているように見えるのは、仕方ありません」
える「わたし、折木さんのこと、好きですから…」
摩耶花「ええええっ!?」
摩耶花「じゃあどうして?」
える「付き合えないんです。わたし、わたし、婚約者がいますから…」
摩耶花「ええええええ」
える「だからこそ、ずっと友達で居たかったんです」
える「でも、それも叶いませんでした」
摩耶花「そんなの絶対おかしいよ」
摩耶花「ちーちゃんも折木も相思相愛なのに、付き合えないなんて!」
える「わたし、わたし、こんなに折木さんのこと好きなのに…」
える「折木さんにひどいこと言ってしまいましたぁ!」ビエエエン
える「やっぱり、折木さん、よそよそしくなってました…」
える「もう昔みたいにはなれないんですね…」ヒック
摩耶花「婚約者が何よ!だったら折木と結婚すればいいじゃない!」
える「だめなんです。わたしは一人娘ですから…」
える「でも…」
摩耶花「もし付き合えないとしても、気持ちを偽るのはよくないわ!」
える「…はい」
摩耶花「あ、もう観覧車終わりだ。降りよ」
える「ええ、」
折木「お、おい千反田?目元が赤いぞ?」
える「あの、折木さん、お話があります」
折木「え?」
える「折木さん!わたし、わたし、折木さんのことが、好きです!」
折木「!?」
里志「!」ニヤリ
える「わたしは婚約者がいます。だから折木さんとは付き合えません」
える「でも、でも…好きなんです。折木さんのことは、大好きです」
折木「千反田…」
える「どうしたら、いいで、しょうか?」
える「嬉しいです。こんな嬉しいことありません」
折木「婚約者がなんだ!俺の恋人になってくれ!」
える「無理です。できないんです、それ…」
える「おかしいですよね。こんなに、好きなのに」
える「だから、お願いです」
える「折木さんがわたしのこと好きなら、わたしを愛してくれませんか」
折木「それってどういう」
折木「えええっ!」
える「わたしに、折木さんを覚えさせてください」
折木「あ、ああ…」
える「は、はい!」
折木「絶対に離さない!妊娠させてでも俺のものにしてやる!」
える「ああっ、折木さん、いじわるです!」ポッ
里志「ははは、仲直りしたみたいだね。じゃ、僕たちも子作りしようか、摩耶花」
摩耶花「だーめ、ちゃんと避妊してよね!」
END
乙
える!中に出すぞ!パンパンパン
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1347452612/
Entry ⇒ 2015.03.28 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
折木「千反田が事あるごとに腕に抱き着いてくる」
折木「…なんだ」
千反田「今日はとてもいい天気ですねっ」
折木「そうだな」
千反田「ここのところいっつもいいお天気ですねっ」
折木「…そうだな」
千反田「ふふふっ」スリスリ
千反田「はい、そのようですね!」ギュー
折木「…この体勢は読書には向かないと思わないか?」
千反田「私のことはお気になさらず、どうぞ続けてください!」ニギニギ
折木「腕をニギニギされると落ち着かないんだが…」
千反田「すみません…」スリスリ
折木「顔をこすりつけるのもやめなさい」
折木「…よく見てらっしゃるこって」
千反田「ふふっ、つまり読書の間は片手が自由…ですよね」
折木「…まあ…そうなんだが…」
千反田「ふふふっ」ギュッ
千反田「……………」
千反田「………………」ポスッポスッ ←頭を肩近くにぶつけている
千反田「………………」スリスリ ←顔を二の腕にこすりつけている
千反田「…………………………」 ←ちょうどいいポジションが見つかったらしい
千反田「まだ章の途中ですよ?」
折木「いや、いいんだ」
千反田「そうですか…」ニギニギ
折木「さて、千反田」
千反田「ふぁい…」
折木「そこに座りなさい」
折木「…じゃあそのままでいいが、一先ず腕を離せ」
千反田「いやです」
折木「……………………」
千反田「いやです」
千反田「はい」
折木「さらにここは部室だ」
千反田「そのようですね」
折木「そして俺達は男女だ」
千反田「よかったです」
折木「ん?」
千反田「私、女でよかったです…こんな心地好さを味わえたのですから…」スリスリ
折木「……いや…そうじゃない…そうじゃないんだ千反田…」
千反田「もうそんな時間でしたか…」
折木「(やっと自由になった…)」プラプラ
千反田「では折木さん、戸締まりをして帰りましょうか」
折木「ああ…」
折木「…ああ」
折木「…部室から出るといつもと同じなんだよな…」
折木「…ただいま」
折木「…まあ普段からして接近しすぎというのはあったんだが」
折木「先週辺りから部室での定位置が変わりだしてだな」
折木「三日前ついに距離がなくなってしまったわけだ」
折木「その日は肩に頭を乗っける程度だったんだが」
折木「今日は一度も腕を離して貰えなかった」
折木「明日はどうなると思う…聡志よ」
福部「ゴメンちょっと近所の犬がうるさいから切るね」
供恵「最近弟が女の匂いをさせて帰ってきます…お姉ちゃんは悲しいですなう…」カタカタ
千反田「んっふっふー♪」ギュゥゥゥゥゥ
折木「…ご機嫌だな」
千反田「とてもとてもいい気持ちですっ」
折木「…さいで」ペラッ
千反田「んふふー♪」スンスン
摩耶花「ねぇ待って待って待って待って、ちょっと待って」
摩耶花「なんでちーちゃんは折木に後ろから抱き着いてるの?首に手回して、ねぇ」
千反田「摩耶花さんはしちゃダメですよ?」ギュゥゥゥ
折木「っ、おい、首絞まってる」
千反田「あっ…すみませ……んぅ……」スリスリ
摩耶花「幻覚じゃないのね…えー…なにこれ……」
千反田「んー♪」スリスリ
摩耶花「…言われなくても座るわよ…」
摩耶花「…………………」
折木「……………」ペラッ
千反田「……………」ゴロゴロ
摩耶花「…………………)」
折木「(はっきりいってこの体勢は今までで一番まずい…)」
折木「(明言はしないがとにかく柔らかい)」
折木「(しかもポジション確保の為にしょっちゅう動いては押し付けてこすりつけてくる)」
折木「(全身に力が入らん…)」
千反田「そうですか…」
摩耶花「うん…」
折木「…………………」ペラッ
千反田「……………………」ネジネジ ←襟足の毛をいじって遊んでいる
摩耶花「………………」
摩耶花「えと…じゃあ私…漫研に顔出してくるねっ!」
折木「(逃げられた…)」
千反田「はぁ…♪」 ←首筋の匂いを堪能している
千反田「へっちゃらです」
折木「椅子に座ったらどうだ」
千反田「それでは首に上手く手を回せません!」
折木「…さいで」
千反田「です♪」ギュッギュッ
折木「いや、今日はずっと室内にいたが…まさか匂うか?」
千反田「…ということはこれは、100%折木さんの香りなんですね…」
折木「お前は何を言ってるんだ…」
千反田「はあぁ…」ポフポフ ←髪に口と鼻を埋めている
折木「(読書ができん…)」
千反田「…………」
千反田「えいっ」ハムッ
折木「んうぃ!??」
千反田「んむぅー…」ハムハム ←耳をはむはむしている
折木「っ!千反田!それ止め!!くっ、ぁ!?」ゾクゾクゾク
千反田「あぁ…おれきさんかわいい…」ハムハムハムハムハムハム
折木「っくぁ…ほんと…ゃめ…ぁぃぁぁ」ゾクゾクプルプル
千反田「おれきさん…ここがお好きなんですね……」ハムハム
折木「っ…………………ッ!!」ビクン
千反田「ひゃっ!」
折木「いい加減にしろ!悪ふざけにも限度があ…………」
千反田「………お、おれき………さん……」
折木「(とにかく逃れつもりで体を後ろに向けたのだが…)」
折木「(千反田が手を回したままだったから…その…)」
折木「(手を回したまま顔が向かい合って…)」
折木「(この体勢は…)」
千反田「…………………」
折木「……」
千反田「……ん………」
折木「……柔らかいな」
千反田「…折木さんもです……」
折木「…………」
千反田「…………はぁ…」ギュゥゥゥゥゥ
千反田「では…失礼しますね」
折木「…俺は椅子じゃな…」
千反田「んもう…これくらいいいじゃないですかもう」ギュッ
折木「……それもそうだな」ギュッ
摩耶花「」
里志「」
千反田「おーれっきさんっ」チュゥゥ
折木「んむっ…………ぷは………ちょっとは休まないか……んむ!……」
千反田「……はぁ……!もう!おれきさんかわいい!もっとします!んー♪」チュッチュッチュッ
折木「(もうどうにでもなれ…)」
終われ
奉太郎「…わかった、わかったから…」
摩耶花「……」
摩耶花「(ちーちゃん…あんな近づいちゃって…)」
奉太郎「それは…~であるからして…」
える「なるほど、さすが折木さんっ」
摩耶花「(……)」
摩耶花「(…いいな)」
里志「やぁ、遅れてごめん」
奉太郎「遅いぞ、里志」
奉太郎「ん…」
摩耶花「……」ブツブツ
奉太郎「どうした伊原」
摩耶花「へ…」
奉太郎「さっきから俺の顔ばかり見て」
摩耶花「え…!?えと…その…」
奉太郎「?」
奉太郎「まぁいい、図書室行くぞ」
摩耶花「う、うん…」
奉太郎「えと…」
摩耶花「……」
摩耶花「あ…これ」
摩耶花「(この前読んだ、推理小説だ…なかなか面白かったのよね)」
奉太郎「…何見てるんだ?」
奉太郎「これは面白いよな」
摩耶花「あ…折木も?私もこの間読んだの、これ」
摩耶花「けどラストがよくわからなくて…」
摩耶花「(あれ…?もしかして…)」
摩耶花「(気になりますチャンス…?!)」
摩耶花「あっ…ぅ…」
摩耶花「(ここを逃したら…だめっ!)」
摩耶花「(誰も見てないよね…)」キョロキョロ
摩耶花「おっ、折木!」
奉太郎「うおっ」ビクッ
摩耶花「この小説のことなんだけど…」
奉太郎「どうした?」
摩耶花「結局、ラストで主人公は何を思ったの…?」ドキドキ
摩耶花「わ、私も…」
ギュ
奉太郎「え」
摩耶花「……」
摩耶花「……???」
摩耶花「(何してるの私…/?//)」
奉太郎「伊原…、落ち着け」
摩耶花「(勢い余って…抱き着いちゃった…///)」
奉太郎「離してくれるか…誰か来たらまずいだろ」
摩耶花「いや…」
摩耶花「教えてくれるまで離さないんだから…」
奉太郎「(久しぶりのデレ)」
摩耶花「(もっ…もうやけくそよ!)」ドキドキ
摩耶花「…本当?」
奉太郎「えぇと、ラストの主人公の心境だったか…」
摩耶花「う、うんっ」
奉太郎「この時、主人公は…」
摩耶花「ふむふむ…♪」
奉太郎「…と、こんな感じに解釈している」
摩耶花「…ありがと、やっぱり折木はすごいのね」
奉太郎「褒めても何も出ないぞ」
摩耶花「ま、待って…!じゃあここは?」
摩耶花「ここの中盤なんだけどさっ」
奉太郎「ん…」
奉太郎「文集見てからにしよう、ほら」
摩耶花「むぅ…」ムスッ
摩耶花「……」キョロキョロ
ギュッー
奉太郎「ぬ」
摩耶花「き、気になるからっ…」
摩耶花「…教えて?」
奉太郎「(伊原に何が起きた)」
摩耶花「うんうんっ」
奉太郎「(嬉しそうだなー)」
奉太郎「おっと…こんな時間か」
摩耶花「……」
奉太郎「そろそろ戻らなきゃだ、急ぐぞ」
摩耶花「……」キョロキョロ
奉太郎「?」
摩耶花「折木、変な事するけど…いい?」
奉太郎「…なんだ」
摩耶花「んっ」パッ
摩耶花「んー!」
奉太郎「な、なんだよ」
摩耶花「ぎゅーって…ね…折木から」
奉太郎「」
奉太郎「(伊原のツンはどこにいった)」
奉太郎「落ち着け、今日のお前はおかしい」
摩耶花「おかしくないわよ」
奉太郎「なんだって…抱き着いてきたんだ?」
摩耶花「そ、それは…そにょ…」
奉太郎「言ってみろ、言ったら抱きしめる」
摩耶花「…ずるいっ」
奉太郎「ふふ…」
摩耶花「…から」
奉太郎「え?」
摩耶花「ちーちゃんと楽しそうで…羨ましかったから…//」
奉太郎「(嫉妬たそ~)」
奉太郎「わ…わかったよ」
ギュッ
奉太郎「こうでいいのか…」
摩耶花「うん…///」ギュ
摩耶花「もっと強く…」
奉太郎「ほら」ギュム
摩耶花「…ふふっ、」
摩耶花「じゃあ、部室に戻りましょ♪」
奉太郎「おう」
おしまい
誰かイリス先輩編よろしくお願いします
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1347263680/
Entry ⇒ 2015.03.24 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)
奉太郎「貸出プレイ・・・・・・だと・・・・・?」
奉太郎「どうもこうも…お前がなぜそんなことを言うのか、俺にはさっぱり理解できないんだが」
里志「ふうん。まあ普通の人なら嫌悪感を抱くかもしれない」
奉太郎「現に俺もそうだ」
里志「そうかな?僕は奉太郎ならわかってくれると思うんだけどな」
里志「自分の女が他の男に抱かれる、この快感にさ」
里志「まあまあ、落ち着けよ奉太郎」
里志「君は最近、千反田さんとどうだい?」
奉太郎「どうって…。いたって普通に交際させてもらっているが」
里志「果たして、本当にそうかなあ」
奉太郎「どういう意味だ」
里志「千反田さんに聞いたよ。君達最近、してないんだろ?」
奉太郎「!!なにをっ」
奉太郎「……っ」
里志「君の愚息は千反田さんの裸体を見ても反応しなくなった。そこには奉太郎のコンプレックスが根底にあると踏んでいるんだが、違うかい?」
奉太郎「…言ってみろ」
里志「簡単さ。きみは千反田さんと自分が釣り合わないんじゃないかと思っている」
奉太郎「うるさいっ!」グイッ
里志「……本当の事だろ?奉太郎。離してくれよ」
奉太郎「チッ」
里志「なにも君を責めてるわけじゃないんだ。君達二人のお手伝いになればな、ってね」
奉太郎「…」
里志「省エネ主義な君の事だ。どうせ消極的、非活動的な自分は、快活な千反田さんを満足させられないだろう、とでも考えてんじゃないかな」
里志「それが千反田さんとのセックスに反映した」
奉太郎「……」
里志「満足させられないかもしれないというプレッシャーが、君を不能にしたんだ」
奉太郎「…だからどうしたっていうだ」
里志「千反田さんが摩耶花に相談していてね。自分は奉太郎に嫌われてしまったんじゃないか、ってさ」
奉太郎「そんなことはない!」
里志「でもね、奉太郎。女の子にとって、彼氏が自分とのセックスで勃たないっていうのはね、それはそれはショックな事なんだ」
里志「それはイコール、自分に魅力がないってことなんだからね」
奉太郎「……」
里志「わかってる。千反田さんはなにも悪くない。悪いのは奉太郎、君だ」
里志「そこで僕がお手伝いしてあげようと思ってさ」
奉太郎「それとさっきの話がつながる訳か?さっぱり意図がわからん」
里志「あれ?もう気付いてるんじゃないかな」
里志「奉太郎、君は千反田さんが自分以外の男と寝たとしたら、どう感じる?」
奉太郎「凄まじい嫌悪感で、胸が張り裂けそうになる」
里志「それだけかい?」
奉太郎「……?」
里志「興 奮 す る ん じ ゃ な い か?」
里志「おやおや、奉太郎。省エネ主義の君らしくない。声を荒げるなんてね」
奉太郎「お、お前が変なことをいうからだ!」
里志「なにも不思議なことじゃないよ奉太郎。男というのはね、自分の女が奪われそうになる時にはある本能が働くのさ」
奉太郎「……」
里志「すばり、子孫を残そうとする強い意志だ。性欲ともよばれるね。興奮はそれに不随するに過ぎない」
奉太郎「狂ってる」
里志「それら二つの感情はね、根本的には同じなんだよ」
奉太郎「おい」
里志「子孫を残す。実に単純な欲望さ」
奉太郎「おい」
里志「興奮。激情。焦燥感、これらのリビドーはさ、性欲に起因するんだ」
里志「女が奪われる。その事実は時にね、最高の抗癌剤さ。とりわけ君にとってはね」
里志「はやる焦燥感。深い絶望。それとは別に自らの中に渦巻く激情。これに気付いた時、君の問題はすでに解決している」
奉太郎「…もったいぶるんじゃねえっ!」
里志「気付いてないのかい?君の愚息は…」
里志「もうすでに勃っているじゃないか」
奉太郎「な、なにを馬鹿なっ」
里志「確認するのが怖いのかい。まあそれでもいいさ。まあ僕には」
里志「君の股間の膨らみが偽りだとはおもわないけれどね」
奉太郎「………っ!!」
里志「千反田さんとのセックスでは勃たないのに、彼女が抱かれる想像をしたら勃つなんてね。やっぱり君も、変態だ」
奉太郎「う、嘘だっ!!これは何かの間違いだっ!」
里志「僕はね、決して千反田さんとセックスしたいわけじゃない。あくまでも、君達のためなんだ。もう一度言うよ奉太郎」
里志「千反田さんを抱かせてくれないか」
奉太郎「断るっ!!」
里志「……ここまで言ってもわからないのかい?」
里志「愚問だね。了承するに決まってるよ」
奉太郎「っ!?馬鹿な!?」
里志「こんなに興奮するシチュエーションはないよ。自分の親友に自分の女を抱かれる?最高じゃないか!なんだったらこっちからお願いしたいくらいだよ」
奉太郎「お、お前」
里志「それにさ、僕が既にやっている…とは思わないのかい?」
奉太郎「……なんだと」
里志「遠垣内先輩。羽場先輩。尾道先生に山内」
奉太郎(…?)
里志「僕が摩耶花を抱かせた相手だよ」
里志「遠垣内先輩と羽場先輩で3Pさせたこともあったっけな。宿泊研修では山内に一晩貸し出し。尾道先生には温泉旅行に連れて行かせ、僕のいないのところで一日中抱いてもらった」
奉太郎「い、伊原は……あいつはどう思ってるんだ」
里志「最初はいい気はしてないみたいだったね。僕の言うことをよく聞いてくれたものさ。でも今は病みつきだね。この頃は自分から身体を差し出してるよ。もちろん、行為の際は撮影をお願いしているけれど」
奉太郎「お前はっ…なんともおもわないのか…」
里志「さっきも言ったろう?僕は寝取られることへの快感に病みつきさ」
里志「だからこそ言える。君はこちら側にくる素質がある。そして」
里志「これだけが君を、不能から救い出す方法さ」
奉太郎「……」
里志「まあ、騙されたと思って。僕に全てを預けてみてよ」
奉太郎「里志」
里志「いい返事…期待してるよ」
奉太郎(えるが他人に抱かれる。想像しただけで興奮してしまう)
奉太郎(……なんて男だ俺は。自分の女の痴態で勃ってしまうとは……)
奉太郎「なあ、える」
える「なんでしょう奉太郎さん」
奉太郎「俺のこと……好きか?」
える「な、なにを言っているんですか///いまさらですっ」
奉太郎「答えてくれ」
奉太郎「ああ、俺も好きだ」
奉太郎「愛している」ギュッ
える「わっ、わ、わ私もです///」キュー
える「どうしたんですか奉太郎さん///今日は変ですよ?」
奉太郎「いや、お前が可愛くてな」
える「…もうっ…」ポスッ
奉太郎(える…俺は…お前に…最低な事をさせるかもしれない)
奉太郎「……」
里志「その様子だと…答えは決まったみたいだね」
奉太郎「ああ」
里志「聞かせてもらおうか」
奉太郎「……
えるを頼む」
里志「請け負うよ」ニヤッ
奉太郎「ああ、えるには了解をもらった」
里志「どんな顔してたんだい?彼女」
奉太郎「信じられないって風だったな。普段からでかい瞳がより見開いていたよ」
里志「よく了承してもらえたね」
奉太郎「おれの不能を治すためだと言ったら、快くオッケーしてもらえたよ」
奉太郎「正直、罪悪感が凄まじいがな」
里志「はは、今に病みつきになるさ」
里志「それにね、いわゆる貸し出しプレイ、スワッピングといったものを経験すると、マンネリを解消するカップルも多いんだ」
奉太郎「俺とえるもそうなれたらいいな」
里志「なるのさ。保証するよ」
里志「それじゃあ日程は追って連絡するよ」
える「何を言うんですか。私、奉太郎さんのためなら、どんな事だってできます」
奉太郎「……すまない、俺は」
える「気にしちゃだめです。私、奉太郎さんがどういう思いでこの決断をしたか、手に取るようにわかります」
える「私をもう一度、抱く為ですよね。満足させるためですよね」
える「奉太郎さん。私は嬉しいんですよ?」
奉太郎「える……俺は、自分がわからないっ!」
奉太郎「お前が他の男の腕で果てる、想像しただけで、苦しい、激しい動悸がするんだ!」
奉太郎「でもな、今の俺は、そうする事でしか勃てないんだよ!勃起しないんだ!」
奉太郎「最低な男だよ……」
える「っ!」パンッ
える「貴方がそういう姿勢でどうするんですか」
える「私だって嫌です。奉太郎さん以外の男の人に抱かれるなんて」
える「それでも、貴方の為だからするんです」
える「貴方はどっしり構えていればいいんですよ。そうでないと、私が了承した意味がありません」
える「長い目で見ましょう。たった一度、私が身を切るだけで、問題は解決するんです」
奉太郎「える…お前」
える「それに私、これが終わった時、奉太郎さんがどう回復するのか、真に気になります」ニコッ
える「いい夢を見れるようになると良いですね」
奉太郎「えるうううううう!!」
える「よしよし」ナデナデ
奉太郎「ああ」
里志「まず、ホテルを二部屋予約する。両隣になるようにね。片方は僕と千反田さんの、もう片方は君が入るんだ」
奉太郎「俺も部屋に入るのか」
里志「その方が興奮するのさ。隣の部屋で情事が行われているという状況にね」
奉太郎「そういうものか」
里志「それできみにはある機械を渡す」
奉太郎「なんだ?」
里志「無線機みたいなものさ。君に渡した子機から、僕と千反田さんの部屋に設置する本機に電話がかけられるようになっている。ちなみに僕がとらずとも、自動で受信するんだ。僕たちの部屋で何が行われているか、聞きたくなったらかけるといい」
奉太郎「…一体なぜこんなものを」
里志「当日になったらわかるよ。ただし、一回の電話で通じる時間は三分に設定してある」
奉太郎「制限時間をつけるのか?」
里志「うん。といっても、かけたければ何回かけてもいいからね」
奉太郎「……」
奉太郎「……そうだな。ゴムを付けてくれればそれでいい」
里志「本当にそれだけ?」
奉太郎「何が言いたい」
里志「普通なら、キスは辞めてくれとか、アナルプレイは駄目だとか、いろいろあるんだけどね」
奉太郎「…さすがにアナルは…」
里志「ふふ。了解。どうせ開発してないんだろ?」
奉太郎「余計なお世話だ。そんなこと、えるにはさせられない」
里志「大事にしてるね」
里志「それとホテルのお金は僕が払うよ」
奉太郎「いいのか?」
里志「これぐらいさせてもらわないとね。君達ばかりに身を切らせるわけにもいかない」
奉太郎「わかった。よろしく頼む」
里志「お安い御用さ」
える「奉太郎さん、時間までまだあるので、少し散歩しませんか?」
奉太郎「ああ、いいぞ」
える「…」テクテク
奉太郎「…」テクテク
える「奉太郎さん。覚えていますか?私達が付き合い始めたころ」
奉太郎「忘れるわけないさ。お前が俺に「氷菓」の件で相談してくれた、あの喫茶店だったな。俺たちの馴れ初めは」
える「ふふ、あの時私、上がっちゃって……告白なんて初めてだったから」
える「恋は先手必勝ですよ」
奉太郎「尻に敷かれないようにしないとな」
える「奉太郎さん。これが終わったら……旅行に行きませんか」
奉太郎「いいな。二人で?」
える「ええ。前に行った、温泉旅館へ」
奉太郎「ああ、行こう」
える「約束ですよ」
奉太郎「…」
える「…」
里志「そう硬くならずにね」
俺、える、里志はホテルの一室に居る。俺の部屋として予約した部屋だ
えるはシャワーを浴びて、バスタオルを身に包んでいる。俺と里志二人の前で、素肌をさらしていた。
艶めかしい、綺麗な柔肌。
髪はいつも俺とする時のように、後ろで纏めていた。露出したうなじが、男を狂わせる色香を醸し出す。幾度となく、この首筋に舌を這わせてきた事を思い起こす。
タオルに隠れて見えないが、普段のえるからは想像も出来ない大きさの乳房が伺えた。意外に着痩せするタイプなのだとわかったのは、始めて体を重ねた時だ。
ギリギリ手に収まるほどの大きさ。あの制服の何処にこんな物を隠し持っていたのかと疑いたくなる。どんな男よりも先にその頂きを手に収めた時は、感動で手が震えたほどだ。
そして、自己主張してやまない下半身。ふくよかとまではいかないが、十分張りのある太腿。肉感があり、突けばそれだけ帰ってくる弾力があるのだ。
手を這わせたい。舐め回したい。孕ませたい。様様な衝動に駆られる
里志「それじゃあ奉太郎、いってくるよ。手はず通りにね。行こうか、千反田さん」
える「ええ……あの、奉太郎さん」
奉太郎「……どうした?える」
える「あの……キスしてもらえませんか」
奉太郎「ああ」スッ
える「…んっ、ちゅっ、はぁ……ん…」
奉太郎「んっ、…これで……いいだろうか……」
える「はい。有難うございます。あの…」
里志「千反田さん。そろそろ」
える「あ……すいません福部さん」
える「奉太郎さん……私……頑張りますから」
奉太郎「あ……待っ」
ガチャ……バタン
最後にえるの見せた儚げな表情が、俺の心をどうしようもなく揺さぶった。
奉太郎(……なんてことをしてしまったんだ俺は……こんなときになって後悔するなんて)
しかし、こう思いながらも俺は、自分の陰茎が抑えきれぬ興奮のあまり勃起している事に気付いていた。
奉太郎「…」
手には里志から渡された無線機。あの二人の部屋に繋がるらしい。今になって思えば、音声だけでよかったのかもしれない。映像まで見せられたら発狂してしまうだろう。
周りを見渡す。テレビ、テーブル。申し訳程度置いてあるランプ。普通の部屋の一室だ。おそらく同じ光景のなか、あの二人はセックスに勤しむのだろう。
頭がぼうっとする。こうした状況ならなければ感じられない。無気力感、焦燥感。
二人がでていってまだ五分と経たず、俺は無線機の通話ボタンを押した。湧き上がる様々な感情に蓋をしめて。
える「里……んっ…はぁ、ちゅ」
既に行為は始まっていた。えるの声が聞こえた瞬間。俺は胸が締め付けられるのを感じた。
奉太郎「……ああ……えるぅっ」
もう取り返しがつかない。既にえるは、里志の腕に抱かれている。
える「はぁっ!だっ…んんっ、ちゅっ、やっ」
えるが強く嬌声を上げる。キス以外の事をされているということを、俺はようやく理解した。
える「あっ、だっ…んんっっ!ちゅっ、はぁ…ん…」
えるがの声が、時折り何かで塞がれたようにくぐもる。甘い吐息が途切れ途切れに漏れて聴こえる。
俺と寝るとき、果たしてえるはこんなに早く感じ始めていただろうか……深く考えれば、二度と這い上がれない絶望の谷へ落とされるような気がする。
える「ぁ…んっ」
里志の呼び掛けの後、えるは抑えきれずに出してしまったかのような吐息を吐いた。本格的に感じ始めている証拠だ。
える「ぁ………っ……あっ」
里志「ちゅっ、じゅっ……んっ」
える「っ………っあっ」
かすかに聞こえる水音。里志が何かを強く啜る音。えるの乳首を、里志のその口で含み、舌で転がしているのだ。
奉太郎「があああっっ!!えるぅぅ」
えるの乳首を吸っていいのは俺だけのはずだった。しかしすでにえるの乳首は、里志の唾液で濡れている。想像するだけでなんと最悪な光景なのだろう。
える「はぁっ……っ…ぉ…ああッ」
乳を揉まれ、形を変えられ、指で乳首を転がされる。里志は、えるの胸をまるで自分の物であるかのように扱っているのだろうか。舌先で乳首の周りをなぞり、えるの興奮を誘う。外堀を埋めつつ、頂きを円を描くように目指し、ついにはその中心を口に含む。
える「あ……っ……あんっ!!」
突然の口による乳首の抱擁に快楽を感じるえる。愛おしむように舌先で愛撫する里志。勿論、空いている腕は、余す事なく胸をもみしだく。悩ましい吐息が漏れ始める。
える「いやっ…も、あっ!もっと…やさしくッッ、うんあッ!!」
これらは音を判断材料にした俺の想像でしかない。しかし、想像するしかないのだ。実際にどういう愛撫をしているかは見てみない事にはわからない。
える「えっ」
驚くえる。なんだ?一体なにを持ってきたんだ?
える「どうして……はぁ…はぁ…こんなものを?」
里志「僕は…が好きでね」
糞ったれ!!聞き取り辛いっ……
える「これ……」
ガチャ、ツーツー
奉太郎「・・・・・・!!お、おい」
制限時間がきてしまったらしい。最後までえるの言葉が聞き取れなかった。
奉太郎「なんなんだよ一体!なにを持ってきたんだ!!」ガタッ
思わず腰掛けていたベッドから立ち上がる。
糞ったれ!里志のやつ…一体えるに何をする気なのだ。
どっと疲れが押し寄せる。こめかみに流れる汗を感じる。
奉太郎「こんなにエネルギーがいるものなのか」
こうしたプレイははじめてだが、ただ聞くだけの立ち位置ですら、これほどの気力の消費を伴う物だとは想像していなかった。
しかし俺はこの拷問のような時間が終わった事にほっとしていたらしい。胸のざわめきが、時間とともに幾分か和らいで行く。
奉太郎「こいつはたしかに、制限時間があってよかった。永遠と聞かせ続けられたら、おれは本当に壊れてしまう」
しかし、里志は一体何を持ってきたんだろう。気になる俺は、反射的に無線機のボタンを押そうとする。
奉太郎「いや…まて…」
もう一度えるの喘ぎ声を聞くのか俺は…耐えられるのか俺は。自分自身に問いかける。
奉太郎「ええい、悩んでも始まらん。どうせする事もない。えるにばかりこんな事させているんだ、俺は受け止めなければならない」
滴り落ちる汗。蝕んでいく焦燥感。苦しいのは俺だけではない。壁の向こうで身を切っている彼女を思い浮かべる。
果たして、俺はしばしの黙考の後、右手のボタンを押した。
里志「ぷはっ、んぐっ」
える「んっ、んんっ。ごくっ。んっ」
なんだこれは。キス…のようだが…先程とは違い、動きがない。かわりに、喉を鳴らすような音が頻繁に聴こえる。恐らく、全てえるのものだ。
える「んぐっ、んんっ、や…んぐっ」
里志「んっ、ーーー」
唾でも飲ませているのだろうか。それにしては飲み込む音が大きすぎる気がする。
える「ぷはっ…はぁ…はあぁ。もうお腹いっぱいですよぉ…」
里志「まだ半分位残ってるよ。全部飲んでもらうからね。ほらっ、んぐっ」
そう言って里志は何かを飲み込む。
える「がっ、んっ!げほっ!げほっ」
里志「ちゅっ、はぁ…気道に入っちゃったかな。ごめんね」
える「はぁ、はぁ……もういいでしょぅ……里志さん」
今里志といったか?いつから名前でよぶようになったんだ。里志に言われたのか?
える「やぁ…んっ……おなかたぷたぷですぅ……やぁ…っ」
里志「お腹触らせてご覧」サワサワ
える「……くすぐったい」
里志「ここに僕が流し込んだ……が入ってるんだね」ペロッ
える「ぁん……」
里志「かわいいよ」
える「そんなこといわないで……」
ガチャ ツーツー
甘い…雰囲気が甘すぎる。里志のペースにえるが完全に載せられていた。
膝が無意識に震えている。目眩がする。俺のえる……おれだけのえる…
ベッドに倒れる。天井を仰ぐ。不思議だ。ありもしない自分を錯覚する。ショーウィンドーの中をを羨ましそうに見ている自分・・・・・・
える「んふぅ…ふっ…んっ、んっ」ジュポッジュポッ
える「んっ…んむ…んあああっ!あむぅっ。んん」ビクビク
える「はぁ…はあぁ…あむっ…んっ、んっ」ジュッポジュッポ
里志「じゅるっ、ずずっっ、ぷはぁ」
気づくと、俺は無意識的にボタンを押していたらしい。無線機から淫靡な声が聞こえる。
大きな水音と、えるが何かに口を塞がれているような声が聴こえる。おそらく69だ。えるの秘部を里志が弄び、指を出し入れしながら口を押し付けているのだろう。
そしてえるも、里志のペニスをその小さな口に加えている。えるの口の粘膜が里志のそれと直に触れているということだ。
何回も何回も頭を上げ下げし、一生懸命に。俺はえるにフェラをさせた事は数回しかなかったから、なれないやり方で健気に奉仕しているのだろう。
じゅっぽ、ずっぽという音が時折聞こえる。
里志「じゅるるるるるる」ずずずずっっ
それにしても、ペースが早い。セックスを始めてからまだ十五分かそこらしかたっていないのに、もう下半身を攻めているのか?えるが痛がっているんじゃないかと心配になる。
える「んっ」ヌポンッ
える「はぁ……あああっ!!あはぁっ……」ピチャピチャ
里志「大分潤ってきたね。いい具合だよ」
える「あっ、あっ、あんっ」ビチャビチャ
水音が鳴る。わざと音を立てているのだろう。えるの膣内をその手で擦り、掻き回し、思い切り口で吸引する。身を震わせるえる。
もはや、里志の欲望を素直に受け容れ、その甘美に慣れ始めている。その証拠に、普段俺との行為の時のように、高い嬌声を上げている。
しかしながら、普段より声を押し殺そうとしているのがうかがえた。この異常な状況下のせいか?俺に聞かれないようにするため?それとも、他の男の手であえがされているのが恥ずかしいから?
その言葉の後で、体がシーツをこするような音が聞こえる。えるが身体をくねらせ、熱を持て余しているのだ。衣擦れの音がたまらなく官能的だと知った。
おそらく、えるの肌は自らの汗でびっしょり濡れ、さらに里志の汗までもがその肌に染み込んでいるのだろう。早く洗い流してやりたい。えるは俺のなんだ。その肌に、他の男の体物質を絡ませたくない。
里志「それじゃあそろそろ」
える「はぁ…んぅ…え?……きゃっ」
誰かがシーツの上で引きずられるような音がする。えるがその両足を里志に抱えられ、または程良い肉付きの腰を両手で掴まれ、自身の腰へと引き寄せたのだ。
里志「いいよね?える」グイッ
える「!!お、おっきい……」
里志「興奮させてくれるねぇ。その言葉って本当に僕の大好物さ」グッ
える「あ……ちょっとまっ」
ガチャ ツーツー
里志のあの言葉。間違いなく、挿入の時間だ。えるのセカンドバージンは里志の手によってうばわれる。その瞬間が、ついに来てしまった。
奉太郎「える………」
おそらく。右手の無線機のボタンを押せば、えるは膣内をかき回す肉棒で喘がされている最中なはずだ。肉と肉がぶつかり合い、粘膜と粘膜が混じり合う。
何度もその肉棒にえるは突きこまれるのだろう。その度に漏れるえるの甘い声。突き込む里志の背中と、それに手を回すえるを想像する。
足を里志に絡ませ、淫靡な声を里志の耳元で漏らすえる。嫌だ……聞きたくない……。
奉太郎「ああ……がああああああ!里志いいいいいいいいい!!」
嫌だ。嫌だ。助けてくれ!!えるを、どうか救ってくれ…
奉太郎「……ああああああああ!」
だんっ。と、机を強く叩く。しかし、ふと感じる痛みに、現実に引き戻される
奉太郎「はぁ・・・・・・・はぁ」
拳を見つめる。じんとくる痛み。ふと忘れていた事実を思い出す。この部屋にいるのは自分で、起こっている現実は決して目の前では展開されていないのだ。落ち着くための時間は十分にあるのだ。
もう一度、拳を机に振り下ろす。しかし、この一突きはただの自棄ではない。
奉太郎「ああ!!・・・はぁ・・・・・・はぁ、あああ!」
何度も手を振り下ろす。この痛みで、我に返る自分を感じる。
この音で自分に言い聞かせる様に、この手の痛みで自分に諭させる様に。
奉太郎「・・・・・・・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」
拳を止める。すでに心の中は先ほどの自分とは違っていた。
奉太郎「…俺は聞き届けなければならない」
何のためのこの決断だ。忘れたのか俺は。全てはえるをもう一度抱くためだ。そのために、俺はここに居る。そのために、えるは里志に抱かれている。
奉太郎「刻みつけなければ」
えるのその声を。二度と忘れないように。
苦悶の中、俺は、もう一度、ボタンを、押した。
里志「はぁっ…はぁ、気持ち良いよえる…」パンパン
える「だっ、あっ、めぇっ!ああっ!あっ!」ズンズン
える「おっ、あっ、んあっ、ああああああっっ!!」タンタンタン
里志「はぁっ、はぁっっっ!」
奉太郎「ああ・・・・・・」
無線機を取りこぼしそうになる。握力が手から抜けていく。予想通り、えるは里志の肉棒を、すでに受け入れていた。
里志「お気に召されたようでっ、光栄っ、だよっ!ふっ」ピタン!ピタン!
脳が、強制的に想像へと思考を導く、えるの足を其の肩にかけ、里志は思い切りえるの股に向かって腰を打ち込む。其の勢いはさながら獣のようだ。
里志は、えるの腰をしっかりつかみ、激しいピストンの一助とする。腰と腰とがぶつかり合う。跳ね回る愛液。えるの膣内分泌液で白く濡れる里志の肉棒が思い起こされる。
それはえるの中に深く挿入されたり、勢いよく膣肉を引きずりながら出し入れされる光景が目に浮かぶ。
吐き気がする。悪寒が全身を駆け抜ける。たまらず、無線機置いて、トイレへと駆け出した。
アンアン!ダメっ!サトシサン!
バタン
出せる限り、俺は吐いた。動悸が収まらない。今たっている場所が現実ではないかのように感じる。そうだったらどんなにいいか。
トイレのドア越しから、まだえるの喘ぎ声が聞こえる。胸が…張り裂けそうだ……。助けてくれ……助けてくれ。
数分後、無線機の声が止んだ。嘘のような静けさ。先程までの出来事が夢だったのではないかと錯覚する。
奉太郎「もうたくさんだ……もう聞きたくない……」
トイレから戻るのがためらわれる。二度と聞きたくない。えるの肌、声。
その心までもが、いまや里志の手中にある。その柔肌に深く手を食い込ませ、乳房を強く吸い、自身の肉棒でえるの粘膜を掻き回しているのだろう。
それに対して、えるは里志の肩を強く抱き、爪を食い込ませ、快感から足をピンと張り、深く里志を受け入れているのだ。
冗談じゃない。この件を承諾した頃の俺はどうかしていた。里志を狂っていると罵ったが、狂っていたのはまさしく俺の方でもあったのだ。
頭が如何にかなりそうだ。あらゆる憎悪が頭の中をかけめぐる。憤怒が、嫉妬が、色欲が、一斉に混じり合った混沌の中にいるようだ。
「奉太郎さん」
声が聞こえた。はっとする。俺は顔を上げた。無論、まわりには誰もいない。しかし、確かに聞こえた。誰だ。俺を呼ぶ声は。
「負けちゃだめです」
俺ははっとした。この優しい、包み込むような声は
「ファイトです」
える以外にいない。
幻聴。居るはずのないえるの声。隣の部屋で里志に貫かれているはずのえるの声だ。……どうかしちまったかな。
伊原まで……。
「あんたがしっかりしないでどうすんの!」
確かに其の通りだが、生憎、俺はもう疲れたよ…伊原、こんな時までお前の幻聴が聞こえるのが何よりの証拠さ。
「このバカ!うすらトンカチ!こんなときぐらい……」
なんだよ……俺にかまわないでくれよ。
「エネルギー使わないでどうすんの!!」
奉太郎「…………っ」
奉太郎「………」
奉太郎「……ふぅーっ」
其の通りだ。
確かにな、こんな時までエネルギー節約じゃあさ。
奉太郎「省エネ主義も考えもんだなぁおい」
ほんとうに、俺はクソッタレだ……。
奉太郎「……」スクッ
ゆっくり、俺は、其の足で、立ち上がった。
奉太郎「……」
心は決まった。皮肉にも、俺の主義信条を最も毛嫌いしていた奴のお陰で。
奉太郎「えるを……取り戻す」
足取りは強い。もう迷いはない。ただ、もう一度えるを抱いている未来の自分を想像し、絶望から這い上がる自分を感じる。
ホテルの自室から出る。右手には、里志とえるの部屋がある。
この部屋の向こうでは…里志とえるが激しくまぐわっているのだ。
奉太郎「……いくぞ」
自分に言い聞かせる。折れない心を持つのだ。
そうしておれは…とびらを…あけた
ガチャ
奉太郎「…って……あれ?」
部屋は、開けた扉から全体を見渡せるようになっていた。それ故に一目でわかった。
奉太郎「…二人がいない?」
おかしい、そんなはずはない。たしかにこの部屋のはずだ。まさか、部屋を間違えたか?
奉太郎「いや、違う。部屋はここであっているはずだ。なにせ、この部屋には鍵がかかっていない」
音がする。なにかもやもやと、俺の心の側面を削ぐような音。
智の着ていた衣服。そして
えるの脱ぎ散らかされた下着。
ずしんと。俺の腹に何かが落ちる。腰から崩れ落ちそうになるのを必死にこらえる。確かにここで、あの二人はまぐわっていたのだ。
音が大きくなる。耳障りな水音。俺の中に飛び込んでくる焦燥感。
なるほど、通りでえるの行為中の様子がおかしかったわけだ。要するに、えるが里志に口移しで飲まされたのはこの酒だったのだ。
さらに、沈黙し、それでもなお、圧倒的な何かを語りかけるシングルベッド。俺はたまらず近付いた。シーツに手を進める。
奉太郎「・・・ッ!!」
生暖かいぬくもり。淫靡な香り。汗と汗が染み付いて、このベッドの周りだけ異様なまでにこもった甘ったるい空気が漂っている。先程までここで何かが行われていたかのような痕跡。肉と肉がぶつかり合い、互の体液を交換する激しいセックスの痕。
奉太郎「やはりここで・・・」
行為は行われていた。二人の肌はこのベッドの上で重ねっていた。物言わぬ痕跡がなによりの証拠だ。
音が聞こえる。漏れる女性の声。肉をぶつけ合う音。断続的に聞こえる水の滴り落ちる音
目を背けてはならない。耳を塞いではならない。
奉太郎「・・・ぁ・・・はぁ・・・」
手が震える。呼吸が乱れる。
足に力が入らない。正常な思考ができない。
奉太郎「・・・・・・ぅ・・・ぁ・・・」
俺はゆっくり視線を動かす。
あのシャワールームから、音が聞こえる。
「…ぁっ………さ……さん……はぁ」
歩を進める度に大きくなって行く声。同時に膨らんで行く焦燥感。
「…………ぁっはぁ…。ぁ…だ…め」
鼓動が高まる。脳髄にまで響くほどに。
「あっ…あっ…うんっ……はぁっ」
反響して聞こえる肉音。隠微な声。
ドアノブに手をかける。手が震えた。
それでもいかなければならない。
ドアを、開けた。
こもる湿気がシャワールームから流れ込む。ひどく甘い匂いが全身を包む。
予想通り。
「さとしさぁん!ああっっ!あんっ」
流しっぱなしのシャワーに濡れながら、一組の男女が絡み合っていた。
ばちんばちんと音が鳴る。迸る水。ぶつかり合って弾けた水が俺の顔にまで飛んでくる。ひどく頭痛がした。
「もうっ、だめえぇ、早くいってっくだあ、あん!ああっ!いっ、っくう」
既に呂律が回っていないえるの声。懇願する、早く達してくれと。
一心に腰を叩き込む里志。もう俺はこの男が以前から知っている福部里志と同一人物とは思えなかった。
俺の知らない男の顔。女を、えるを貪り食う獣の顔。俺はおそらく一生この顔を忘れないのだろう。
「おおっ、いっ!っくよっ!えるぅ!」
「早くっおっおねぇ、がっいしまぁっ、ああん!」
里志が輸送を激しくする。射精の瞬間だ。それを今か今かと待ち受けるえるの膣。
子宮はさがり、里志のそれを待ちわびている。
ひどく卑猥だ。淫靡だ。俺にはこんな事言わなかったのに。俺にはこんな姿、みせてくれなかったのに。
声を必死に絞り出す。切実な懇願。
奉太郎「・・・・・・お願いだ」
やめてくれと、これ以上俺の前で交わらないでくれと。しかし、それは本当にか細い声で、二人の耳には最後まで届かなかった。
「おおおおお!!」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、んん!!」
パンパンパン!・・・・・・パンッ!
不意に、里志の腰が、えるに向かって深く打ち込まれたまま止まった、尻が幾度となくすぼみだす、小刻みに震える腰、その度収縮する尻の筋肉。射精だ。
そしてえるの恍惚の表情。里志の射精の一突きを受けるたびに、幸せそうな表情を浮かべる。足は爪先立ちでたっていたが、我慢しきれなくなって崩れ落ちる。それを許すまいと腰を持って壁に押し付ける里志。
「はぁ・・・はぁ・・・ん・・・はぁ・・・」
無機質なシャワーの音だけが行為の残滓を残す。ぬるっと、えるのヴァギナから肉棒を引く抜く里志。薄く白い体液にまみれている里志のペニス。
えるの秘所からは、行為によってひどく薄汚れた愛液と・・・・・・
滴り落ちる・・・・・・里志の、
奉太郎「ぁ・・あぁ・・・・里志・・・・お前」
精液。
自然と笑みがこぼれ落ちた。
シャワールームの光で照り映える里志のそれは、確かにゴムをつけておらず、妖しく、えるの体液で光っていた。
奉太郎「・・・・・・ああ」
直にえるの粘膜を引きずり回したのか。
直にえるの子宮口を突き倒したのか。
直に精液をえるの子宮に注ぎ込んだのか。
直に精子をえるの卵子めがけて送り込んだのか。
えるを孕ませてしまう可能性すら考えないで、自分の欲望を満たすまま射精したのか。
惚けて二人の痴態を見ている時、どうしてゴムをつけているかどうか、頭にすらよぎらなかったのか。
絶望が俺の体をまさぐる。
俺がシャワールームの音を、意識するのを避けていたとき、既にこの二人は、生で直接交わっていたのだ。
先走り汁ですらえるは妊娠してしまうかもしれないのに、かわまず突き込む里志、そしてそれを嬉々として受け入れるえる。
奉太郎「狂っている」
奉太郎「なんでなんだ」
排卵した卵子に襲いかかる数多の里志の精子。
卵子を奪い取り、我がものとするそれ。作られる受精卵。背徳的な生命の営み
奉太郎「なんでなんだあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
そこで俺は理性を失った。
覚えているのは、手に感じる痛み。里志を思い切り殴り倒した際の痛みと。
忘れることのできない、泣き叫ぶえるの声だった。
あれほど乱れていたのは、お酒が入っていたからということ。
中に出したのは、大丈夫な日であったからだということ。
それをえるが了承したのは、決して快楽を求めてからではなく、里志に説得されたからとのこと。
そのほうが俺の不能を治すのに効果的なのだという説得。
しかしながら、ゴムをしてくれと頼んだ俺を無視し、欲望のおもむくままに精を放出した里志を、俺は到底許すことはできなかった。
える「わあ・・・前来た時と変わっていませんね」
奉太郎「そう・・・だな」
貸出プレイのあと、俺とえるの間には気まずい雰囲気が漂っている。
えるはどう思っているのか。あの行為について。聞き出せないまま現在に至る、
セックスもしていない。なんとなく、そういう雰囲気にならないだけでは、おそらくないのだろう
える「ありがとうございます」ペコッ
奉太郎「ああ、世話になる」
仲良し姉妹「にしし♪」
ふとえるの横顔を見た。
愛おしく、柔らかな笑顔だ。
ふと胸が締め付けられる。罪悪感という名の感情。押しつぶされそうになる。
える「どうしました?奉太郎さん」
奉太郎「い、いや別に」
あわてて目をそらす。
どんな目で俺を見ているのだろう。気になりはするが、直視できない自分がいた。
あのプレイのあと、俺がえるを見つめることが増えたように、えるも俺をじっと見つめていることがあると気づいた。しかし、それはぼんやりとしていて、本当に俺を見つめているのだろうかと不安にさせる。
える「ねえ奉太郎さん?」
奉太郎「・・・なんだ?」
える「・・・少し散歩しませんか?」
える「私、あれから考えたことがあるんです」
奉太郎「・・・・・・」
無言で先を促す。あれとはおそらく、あの行為のことだろう。
える「お付き合いするというものがなんなのか」
思わず足を止めてしまう。それに倣って、えるも歩を止める。しかし、えるは俺の方を振り向かずに続けた。
える「男女の交際の上での性行為の役割」
喉を鳴らす。
える「愛を確かめ合うもの、お互いのぬくもりを感じ合うためのもの、自らの空虚感を埋め合わせるためのもの」
風が髪をなでつける。
える「はたして、私たちのそれは、どんな意味合いを持っていたのでしょうか」
奉太郎「俺たちのは、その、あ、愛を確かめ合うものじゃ、ないのか?」
える「本当にそうだったのでしょうか」
鼓動が早まる。
える「本当に愛を確かめ合うだけのものであったなら。私たちにとって、性行為は、必ずしも必要なものではありません」
奉太郎「・・・・・・」
える「なぜなら、そんなことをしなくても、愛を確かめ合うことはできるのですから」
夕暮れ時。紅く映える太陽。目の前を羽虫が飛んでいく.
奉太郎「・・・・・・それは・・・・・・」
える「あの行為を私たちが承諾したのは、一時の気の迷いだったのでしょうか」
奉太郎「そんなことは・・・・・・」
かろうじて搾り出す声。しかし、いつかの時と同じように、弱々しい声だった。
える「私は思うのです・・・・・・奉太郎さん・・・・・・あなたは・・・・・・」
奉太郎「その先は言うな!!!!」
える「っ・・・」
息を呑むえる。ひっと漏れる怯えの声。違うんだ。それを言ってしまったら俺は立ち直れなくなる。お前に二度と顔向けできなくなるんだ。
崩れ落ちる足。わかっていた。えるが言おうとしていること。俺が里志の申し出を承諾した理由。
える「奉太郎さん・・・あの・・・」
奉太郎「お前が言おうとしていることはわかってるんだ!そのとおりなんだよ!!」
またしても叫ぶ。その度に歪むえるの顔。違う、俺はお前にそんな顔をして欲しいんじゃない。
奉太郎「俺は・・・ただお前が・・・お前の痴態が・・・・・・見たかっただけなんだ・・・」
不能を治すというのはただのお仕着せの理由。本当の俺はそんなものが理由ではなく、ただただ、他の男の手で果てる、えるを見たかっただけなのだ。
奉太郎「お前を言いように利用しただけなんだ・・・・・・」
到底許容できない動機。
一生かけても理解され得ないであろう異常性癖。
里志に憎しみを抱いた。あいつにいいようにされるえるに激しく嫉妬した。死ぬほど叫んだ。しかしそれでも、
奉太郎「許してくれ・・・」
本当に憎むべきは己の腐った性根だったのだ。
里志と同じだ。結局俺もそちら側の人間であっただけのこと。
俺は泣いていた。はしたない理由で、はしたない自分を見下して、はたしたなくえるの前で膝まずいて。
里志に提案された時に、はっきり断るべきだったのだ。狂っていたの本当に自分の方だったのだ。愛する彼女を他人に抱かせ、興奮を得る。自らの欲望を満たしたいがための狂宴。自分のしたことに吐きそうになる。
許してくれるとは到底思えない。
それが自分の過ちなのだから。
一生残る咎なのだから。
そんな俺を、優しく包み込んでくれる手など、あってはならない。
「奉太郎さん・・・・・・」
こんな最低な男を、抱きしめる両手など、あっては、ならない。
「奉太郎さん」
自分のことしか考えていない、欲望の塊を、強く、抱いてくれる手など、あっては、ならない。
「許します」
こんな暖かい手など、あっては、ならない。
「うぁ・・・うっ・・・・・・うぅ・・・」
「そんなあなたを、許します」
こんな、俺を抱きしめている、千反田えるの手など、あっては、ならないのだ。
「それでも好きです。奉太郎さん」
響く虫達の残響と、揺れる木の葉の落ちる音。
嗤う木々のざわめきと。
一人の男の慟哭が、ただ、いつまでも、虚しく響いていた―――。
了.
NTRに主眼をおいたssって少ないから、俺が書けばきっと誰かが「俺の方がうまく書ける!!」つってもっと書いてくれるんじゃないかと期待して書いた。
NTR好きでサーセン
自分の大切な人が自分以外の男から快楽を与えられ乱れる姿に
色々な感情が入り乱れながら興奮し絶望する奉太郎の心情が上手く書けてたよ
掲載元:http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1347199215/
Entry ⇒ 2015.03.23 | Category ⇒ 氷菓 | Comments (0)