ケイネス「宜しい、ならばこれは決闘ではなくチュウ罰♂だ」切嗣「ッ!?」
ケイネス「姿を見せるが良い、衛宮切嗣!」
切嗣「お前がケイネスエルメロイか……」
ケイネス「素直に姿を見せるとは……勇敢なのか馬鹿なのか」
ケイネス「さて、その体でどこまで耐えられるかな?」ボロン
切嗣「クッ……なんて汚いものを見せつけるんだ!」
ケイネス「よもや私のモノを汚いと言っているのではあるまいな?」
ケイネス「宜しい、ならばこれは決闘ではなくチュウ罰♂だ」
切嗣「ッ!?」
ケイネス「尻を突き出せ」
※ホモチュウ意
切嗣「タイムアルターダブルアクセルッ!!」
ケイネス「ほう?固有結界で高速移動し、逃げたか」
ケイネス「肉体プレイではなく触手プレイをご所望と見た」
ケイネス「行けっ!」
月霊髄液「~~~~ッ!!」ビュンビュン
切嗣「クッ!なんだこのスライムは!?」
月霊髄液「~~~~ッ!!」
切嗣「いやらしい形状をしている…!しかも対象を自動索敵してどこまでも追尾してくるのか」
切嗣「さすがアーチボルト家…変態魔法の一家だけある」
切嗣がケイネスの槍でめちゃくちゃにされるのがいい人 1
触手でめちゃくちゃにされるのがいい人 2
ここに好きなプレイの数字で安価
切嗣「ダメだ!!捕まってしまうッ!!」
ケイネス「……反応あり、捕獲したか」
月霊髄液「♪」ニュルンニュルン
切嗣「おぼっ!!おぼぼぼっ!!あがっ!!」
切嗣「(体の奥からスライムで満たされていく…!)」
切嗣「(ごめんよアイリ…僕は今日、汚されてしまう)」
※この世界線のアイリは男性です、安心してください
ケイネス「手間をかけさせおって、お前を捕まえるために、礼装を使うハメになったぞ」
ケイネス「まぁ、今から別の意味で、ハメるのだがな」
切嗣「溺れる!溺れる!」
ケイネス「聞いているのかアインツベルンの魔術師よ!」
ケイネス「ここまでしてやったのだ、いざ尋常に勃ち合うがいい!」
切嗣「いいだろう、だが、まず攻めるのは僕からだ」
ケイネス「調子に乗りおって…まあ良い、私は寛大な心の持ち主だ」
ケイネス「まずは受けで、お前の攻めを完膚なきまでに受け止める」プリン
切嗣「これがアーチボルト家の…ヒップ…!」ゴクリ
切嗣「(僕のワルサーWA2000と起源弾を奴の穴にぶち込んで、骨抜きにしてやる)」ベチン
ケイネス「んほっ…!よりにもよって私の尻を叩くとは!」
ケイネス「アインツベルンの魔術師は礼儀も知らぬようだ」
切嗣「僕はいつも舞弥のお尻を叱咤激励してるんだ」
ケイネス「他の男の話をするな!今は勃ち合いの最中ぞ!」
切嗣「すまない」
※舞弥も男性です
ケイネス「お辞儀をするがよい、アインツベルンの魔術師よ」
切嗣「……」ペコリペコリ
ケイネス「そうだ……!」
切嗣「……」パンパン
切嗣「……」ペコリ
ケイネス「フン、やればできるではないか」
切嗣「行くぞッ!」ギンギン
ケイネス「一度劣情に駆られれば翻心するケダモノめがッ!?」ズブッ
切嗣「タイムアルタートリプルアクセル!!」
ズンッ!ズンッ!ズンッ!
切嗣「(固有結界の範囲を体内に限定し、自分の体内の時間経過速度のみを操作する…)」
切嗣「反動で体に負担がかかるから、3倍くらいしか加速できないけどっねっ!!」ズブウブブ!!
ケイネス「は…ぁん///おっおっおっ!!」
切嗣「出るぞ!僕のトンプソンコテンダーから起源弾が出るぞ!」
切嗣「お前の魔術回路をめちゃくちゃにしてやる!」
切嗣「その後、再結合する快楽に溺れてしまえ!!」
切嗣「これが――僕の魔術師殺しだ!!」ブシャッ
ケイネス「お~~~~っ!!あづいっ!!おひりのおくがっ!!」プシャー
ケイネス「んほ……んほぉ…」ビクンビクン
ケイネス「」
切嗣「僕は正義の味方になりたかったのにどうしてこんなことに…」
切嗣「馬鹿なッ…!堕ちてから回復までの時間が短すぎる…!」
ケイネス「アーチボルト家は水銀の礼装を使っているのだぞ?」
ケイネス「体内を循環する精液の流れを操れぬわけがなかろう」
切嗣「そんな……馬鹿な…」ガク
ケイネス「吾輩はランサーのマスターでもあると一応言っておこう」
ケイネス「令呪を持って命ずる…一時的にゲイボルグを我輩の所有権としろ」
ランサー「はっ……」
ケイネス「ふむ、これがゲイボルグか……ゆくぞッ!」
切嗣「そんなモノ、人間の尻にぶち込まれたら!死んでしまう!」
切嗣「せめてきゅうりで頼むッ!!」
ケイネス「無駄だ!!」ズボッ
切嗣は死んだ
ケイネスはランサーと結ばれて2人の子供をもうけ、幸せな家庭を築いた
終わり
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Entry ⇒ 2017.06.04 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
切嗣「ぼくはね、ニュージーランドストーリーをやりたいんだ」
切嗣「知らないのかい?」
シャーレイ「うん、どんなゲームか教えてケリィ」
切嗣「じゃあこの映像を見てよ」
ギルガメッシュ「おい!! この着ぐるみを脱がせ!! 何故我がヒヨコの着ぐるみを着なければならんのだ!!」
ヒヨコではなくキウイです。
切嗣「ニュージーランドストーリーはキウイが主人公のゲームなんだ」
ギルガメッシュ「ふん……弓矢一本……こんな貧弱な武器、我には不要!!」バキッ
そんなキウイの前には様々な乗り物に乗った敵が現れました。
ライダー「AAALaLaLaLaLaLaLaLaLaiee!!! 」
ギルガメッシュ「!!?」
気球に乗ったイスカンダルが現れました。
ライダー「AAALaLaLaLaLaLaLaLaLaiee!!! 」
風船に乗ったイスカンダルが現れました。
ライダー「AAALaLaLaLaLaLaLaLaLaiee!!! 」
ライダー「AAALaLaLaLaLaLaLaLaLaiee!!! 」
白鳥に乗ったイスカンダルや宇宙船に乗ったイスカンダルも現れました。
ギルガメッシュ「何故此奴で敵を再現する!! 王の軍勢の雑魚で再現すればいいだろう!!」
切嗣「ニュージーランドストーリーは色んな乗り物に乗った敵キャラが登場するんだ」
グザグサグザグサ!!!
ライダー「オケアノスの潮騒だったのだ……」バタッ
ライダー「オケアノスの潮騒だったのだ……」バタッ
ライダー「オケアノスの潮騒だったのだ……」バタッ
ライダー「オケアノスの潮騒だったのだ……」バタッ
ギルガメッシュ「脆い、そしてうるさい」
イスカンダルを倒すと食べ物が現れました。
ギルガメッシュ「ハイスコア更新の為にも取るか」
セイバー「お腹が空きました」バクバクバクバク
ギルガメッシュ「」
しかし食い逃げにあっさり全部食べられました。
ギルガメッシュ「……我はお前のそういう所も好きだぞ、セイバー」
切嗣「ニュージーランドストーリーは食べ物を拾うとスコアが増えるんだ」
ギルガメッシュ「残機を増やさねば……」
アルファベットを回収すると残機が増えることを知ったキウイは回収する事にしました。
ギルガメッシュ「英雄王たるこの我がゲームオーバーを恐れるなどということは本来はないのだが……台本に従うしかあるまい」
ギルガメッシュ「E……X……T……」
ギルガメッシュ「……RとAは何処だ?」
EXTENDで残機が増えることを知らないみたいです。
切嗣「ニュージーランドストーリーはステージのどこかにあるEXTENDの文字を揃えると一機増えるんだ」
ギルガメッシュ「!!!」グサッ!!!
なんと、キウイは死んでしまいました。
『WELCOME TO HEAVEN!!』
ギルガメッシュ「!!?」
切嗣「ニュージーランドストーリーは終盤で死んでもゲームオーバーにならずに天国ステージに行くんだ」
ギルガメッシュ「我はまだ死なん。 必ずや見つけてみせる」
綺礼「困ってるようだな」
ギルガメッシュ「!! 綺礼……ちょうどよかった。 下界へ戻りたいのだが……」
『Gilgamesh met the goddess and went into a long sleep in the warm sunlight. But the heavens had an exit to the underworld.』(訳:ランサーが死んだ!!)
ギルガメッシュ「貴様は女神ではなく神父だろう!!!」
綺礼「似たような物だ」
ギルガメッシュ「似ておらん!!!」
切嗣「ニュージーランドストーリーの天国ステージでは女神に出会うとゲームオーバーになってしまうんだ」
切嗣「シャーレイ、面白そうだろ」
シャーレイ「……ごめんケリィ、その映像だけじゃ面白さが伝わらないよ」
龍之介「COOOOOOOOOOL!!」
シャーレイ「!!?」
切嗣「どうやら一人には伝わったみたいだ」
切嗣「実はこのニュージーランドストーリー、DS版もあるんだ。 やらない?」
龍之介「やるに決まってんじゃん!!」
シャーレイ「……私はいいや」
~終わり~
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491310793/
Entry ⇒ 2017.05.22 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
【Fate SS】間桐雁夜「……十年後の世界…だと?」桜「え…雁夜おじさん…?」
雁夜「……十年後の世界…だと?」
桜「え…雁夜おじさん…?」
雁夜「さ、桜ちゃん!?君は、桜ちゃんなのか!?」
桜「は、はい、私です!」
雁夜「ああ…こんな立派に大きくなって…」ウルウル
桜「雁夜おじさん…」ウルウル
雁夜「葵さんを凌駕する、こんな見事なダイナマイトボディに育ってくれて!!」ガッツポ
桜「……(怒)」ピクピク
雁夜「おお…凛ちゃんか!」
凛「え!?雁夜おじさん!?」
雁夜「君も大きくなって…」
凛「……」
雁夜「ないかな…あんまり…」ショボーン
凛「どこ見て言ってんだ、このクソ中年!!」
桜「……クス」
桜「…それにしても、雁夜おじさん、どうして?」
凛「貴方は、第四次聖杯戦争で亡くなったと聞いていますけど…」
雁夜「ああ、実は深い事情があってね…」
桜「……」
凛「……」
雁夜「聖杯に繋がる神の様な存在が、僕があんまりに惨めで哀れで救われないので、サービスで救済処置をしてくれたんだ」
凛・桜「「ちっとも深くない!」」
―邸内―
士郎「…じゃあ、この人は桜の叔父さんなんだ」
桜「はい。義理の叔父になりますけど」
雁夜「む…君は?」
士郎「あ、俺は衛宮士郎って言います。桜の学校の先輩で、よく彼女に面倒を見て貰っています」
桜「……」テレテレ
雁夜「……単刀直入に聞こう」
士郎「はい?」
雁夜「君は、桜ちゃんの恋人なのか?」
士郎・桜「「!!??」」
凛「……チッ」
雁夜「どうなんだ?」
士郎「は…はあ…まあ、い、一応…」アセアセ
桜「せ、先輩…い、一応だなんて…」ウルウル
凛「……」イライラ
雁夜「桜ちゃんの言う通りだ。一応だなんて答える奴に、この子を任せるわけにはいかないな」
士郎「……う」
桜「……」オロオロ
凛「……」
雁夜「桜ちゃんはね…。本当に運の巡り合わせが悪い、可哀想な子なんだ…」
士郎「……」
雁夜「どっかの鬱小説家が、持てる才能をフルにつぎ込んで不幸のドン底に突き堕とす…そんな人生を送らされてきた…」
桜(…一言も反論できない、自分の半生が恨めしい)
雁夜「外道共に虐待され続け、その瞳からハイライトも失われた…」
桜「ハイライト言うな」
雁夜「どうせ君も、桜ちゃんのダイナマイトボディが目当てなだけのゲス野郎じゃないのか!?」ビシィ
士郎「お、俺は、桜の身体目当てだなんて!!」
桜「……先輩、私の身体じゃ、満足してくれてなかったんですか」
士郎「……は?」
桜「…そうですね…どうせ私なんか傷物ですし…」シクシク
士郎「い、いや、俺はそんなつもりで言ったんじゃ…」オロオロ
凛「……」イライラ
凛「ああ、もう鬱陶しいわねッ!!!!」
士郎「と、遠坂…?」
桜「ね、姉さん…?」
凛「衛宮くん、貴方がどれだけ桜を大切に想っているのか、ビシッとこの人に説明してあげなさいッ!!」
雁夜「……」
凛「……じゃないと、私が許さないんだから」
士郎「…」
桜「…」
士郎「…サンキュー、遠坂」
凛「フン…」ウル
士郎「うん…そうだよ。俺は誰よりも、桜の事を大切に想っている」
桜「先輩…」
士郎「桜に出会うまでの俺は、あの大火災からずっと心が死んでいたんだと思う」
凛「……」
士郎「だから親父の…切嗣の理想を継ぐ事で、その埋め合わせをしていた」
雁夜「……」
士郎「でも、それはあくまでも切嗣の夢だった。尊いけれども、他人の借り物の心だった」
士郎「だけど、俺にはそれを貫き通す事しか、生き方が分からなかったんだ」
凛「……」
士郎「でも桜が、家の手伝いに通ってくれるようになって…」
士郎「桜と一緒に食事を作って、それを一緒に食べて、二人で他愛もない話しをして…」
桜「……」
士郎「そんな何でもない日常が、とても大切になっていって…」
雁夜「……」
士郎「桜のおかげで、俺の中で止まっていた何かが、また動き出したんだ…」
凛「……」
士郎「だから誓った…」
士郎「『俺は、桜の為だけの正義の味方になる』…と」
桜「せ、先輩…!」
桜「わ、私も先輩と出会う前は、そうでした…」
桜「何もかも諦めて、心を閉ざす事でしか自分を守れなかった…」
桜「でも先輩に出会えて、共に時間を過ごすうちに、心がまた暖かくなっていくのを感じた…」
桜「目にもハイライトが戻ってきたんです…!」
凛「だからハイライト言うな!」
雁夜「……」
雁夜「…よく分かったよ」
雁夜「君たちは互いに出会う事で、互いに救われたんだね」
士郎・桜「「……」」コクリ
雁夜「…羨ましいな」
桜「…え?」
雁夜「いや、ごめんね、桜ちゃん。どうやらまた、叔父さんの空回りだったみたいだ」
桜「いえ、そんな…」
雁夜「士郎君、散々失礼な事を言ってすまなかった。許してくれ」
士郎「いえ、俺も態度が男らしくなかったです」
雁夜(彼なら大丈夫だ…。桜ちゃんをきっと幸せにしてくれる…)
雁夜「さて…お邪魔虫は、そろそろお暇しようかな…」
桜「ま、待ってくださいっ!」
雁夜「?」
桜「……あ、あの私」
雁夜「……」
桜「ち、近い将来、先輩と籍を入れようと思うんですけど…」
凛「え」
士郎「え」
桜「その…間桐の親族は、もう叔父さんしかいなくて…」
雁夜「え?他の連中は…」
黒桜「しかるべき報いを受けて貰いました♪」ニコッ
雁夜「そ、そう…」ダラダラ
桜「だ、だから叔父さんには、結婚式に出席して欲しいんです…」
雁夜「……」
桜「その…」
桜「お、お父さんの代わりに…」
雁夜「……」ブワッ
雁夜「うぅ……こ、こんなに嬉しい事はないよ…」
雁夜「……まさか、また夢オチなんて事はないよな?」
凛「安心してください。ちゃんと現実です」
雁夜「と…」
桜「と?」
雁夜「時臣ザマァァァァァァwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
桜「あ…はは…」
雁夜「桜ちゃんのウェディングドレス姿か…。さぞ綺麗なんだろうな」
士郎「……」ドキドキ
凛「ちょっと士郎、何想像して赤くなってるのよ」
桜「も、もう…先輩ったら…!」
士郎「ち、違っ…!」
雁夜「しかし、あの小さかった桜ちゃんがお嫁さんになるのか…。感慨深いものがあるな…」
桜「……」テレテレ
凛「雁夜おじさーん、お母さんの時みたく、人妻になった桜に懸想しないでくださいねー(棒)」
雁夜「ブッ…!?そ、そんなわけ…」
桜「……」
雁夜「ないとも…言えな…?」
黒桜「……」ゴゴゴゴゴ
雁夜「ちょ…冗談!…ちょっとした気の迷…ウギャー」
士郎「ちょ!?桜、ストップ!!」
ライダー「こうして騒がしいながらも、暖かい幸せな時間は、ずっと続いていきましたとさ。ちゃんちゃん」
士郎・凛「「居たの!?」」
お終い
【カプセルさーばんと SS】サクラ「…負けたから、お嫁さんになってあげるね♪」シロウ「はい?」
.
チュートリアルで、シンジをフルボッコにしたシロウ。
その兄の仇を取ると、妹のサクラに強襲されたが…。
ナレーション.某神父
―サクラ戦後―
サクラ「…じゃあ負けたから、お嫁さんになってあげるね♪」
シロウ「はい?」
サクラ「ご飯?お風呂?それとも私?」
シロウ「わるい、意味わかんない」
リン「シロウ、ここにいたのね!…あれサクラじゃないの」
サクラ「こんにちわ。トーサカの家の、赤の他人のお姉さん」
リン「ちょう けん あく」
シロウ「それより、行くぞリン!悪のマスターどもを、笑ったり泣いたり出来なくしてやる!」
リン「ええ!私のマネーと権力の為に、最後まで戦い抜きましょう!」
シロウ「……」トコトコ
リン「……」トコトコ
サクラ「……」トコトコ
シロウ「……」トコトコ
リン「……」トコトコ
サクラ「……」トコトコ
リン「…ちょっと。なんで付いてくるの」
サクラ「妻ですから」
シロウ「わるい、意味わかんない」
サクラ「約束したじゃないですか…。お前を負かしたら、俺の嫁にするって…」
シロウ「うん、なんか微妙に改竄されてるな」
サクラ「そしたら…あんなに乱暴に私を攻めたてて…」
シロウ「うん、勝負だからな」
サクラ「私は抵抗する術もなく、逞しい棒をなんども捻じ込まれてしまって…」
シロウ「うん、ランサーの槍な」
サクラ「そして、身も心もデッキもボロボロにされたあげく…」
シロウ「うん、勝負だからな」
サクラ「熱いものを9発も無理やりブチ込まれて、屈服させられてしまったの…」
シロウ「うん、ナインライブズ・ボム(せいぎだいばくはつ)な」
サクラ「こんなに傷物にされたら、もうお嫁に行けませーん…」チラッ
シロウ「?」
サクラ「誰か、責任とってくださーい…」チラッ
シロウ「?」
リン「こ、このド変態ッ!!」
シロウ「?」
リン「あ、あんた私の妹に、何やってくれてるのよ!?」
サクラ「どうかしましたか?トーサカの家の、あかいあくまの他人のお姉さん」
リン「ちょう しん らつ」
シロウ「おちつけ、リン。今のは、カプさばバトルのことだ」
シロウ「俺は、何ら法にも規制にも引っかかる事はしていない!」カッ
桜「男らしくないですよ、先輩…ちゃんと責任とってください…」
黒桜「どうして…どうして…!いつまでも私の気持ちに気づいてくれないんですか…!」ゴゴゴゴ
リン「サクラ、素に戻ってる。これ番外編だから。私達、今は健全な小学生だから」
サクラ「てへ☆ぺろ」
シロウ「健全な小学生は、そんな銭ゲバじゃない」
リン「だまらっしゃい!」
リン「ともかく、サクラは連れていけないわ」
リン「主役用の立ち絵もないし、新ルートのシナリオを書き下ろすほどの、執筆意欲も持ち合わせていない」
シロウ「ちょう しびあ」
サクラ「……」ウルウル
リン「辛いけど、シロウから言ってやって」
シロウ「うん、丸投げだな」
シロウ「サクラ…よく聞いてくれ…」ガシッ
サクラ「……」ビクッ
リン「ちょ、近い!肩から、手を放しなさいよ!」
シロウ「……」ジィィィ
サクラ「……」ドキドキ
シロウ「…女性は、16歳にならないと結婚できないんだ」
サクラ「……」
リン「思いっきり、リーガルな説得ね!」
シロウ「ああ、これでも将来は弁護士を目指しているからな」
リン「へ?そうなの?」
シロウ「ああ、正義の実現に必要なのは、魔術や固有結界なんかじゃない」
シロウ「法律と国家権力を駆使して、自分達は治外法権などと勘違いしている魔術師共を一網打尽にしてやる!」ジロッ
リン「な、なんで真っ先に私を睨むのよ!?」
サクラ「…トーサカだから」
サクラ「でも…」
サクラ「高学歴…高収入…高身長(未来視発動)…」ガッツポ
サクラ「逃がさない…」ガシッ
シロウ「?」
リン「ちょう なま ぐさい」
サクラ「私の夢は…赤の他人のお姉さんより…幸せになること…」フシュー
リン「ひぃぃぃぃぃぃ!?」ガクブル
キリツグ「お、シロウじゃないか。何してるんだい?」
シロウ「あ、オヤジ」
サクラ「サクラと申します。不束者ですが宜しくお願いします、お義父様」ペコリ
キリツグ「へ?」
リン「ああ、もう…」
キリツグ「そ、それで、何の集まりなんだい?」
シロウ「うん、将来の為の貯金もせず、課金にお金をつぎ込むダメな連中に、正義の鉄槌を叩きこんでいるんだ!」
シロウ「主にマーボー神父に」
リン「うん、主にマーボー神父に」
キリツグ「そうか…奇遇だね」
キリツグ「僕も、さっき、カプさばバトルに夢中になっているマーボー神父に、背後から起源弾をブチ込んでやったよ」
キリツグ「アイツ、大きな風穴を開けてのたうちまくってたけど、いい気味だ」
シロウ「流石、キリツグ!」
リン「そこに痺れる、憧れる!」
サクラ「……」
キリツグ「それで、さっきからシロウにしがみ付いている、そのお嬢さんは?」
サクラ「妻です」ギュゥゥ
シロウ「うん、ちがう」
サクラ「愛さえあれば、年齢も法も規制も超越できます」
シロウ「うん、それ無理。特に規制」
サクラ「……」ウルウル
キリツグ「ま、まあ…じゃあ、家に養子にくるかい?」
シロウ・サクラ・リン「「「へ?」」」
キリツグ「いや、だからサクラちゃんが良ければ、家の子にならないか?」
リン「ちょ、そんな勝手に!?」
サクラ「宜しくお願いします」
リン「サクラ!?」
サクラ「トーサカは私を捨てた。だから、私が与えられた運命を捨てても、何の呵責もありません」
リン「ちょう せっとく りょく」
サクラ「ひとつ屋根の下……義理の兄妹……ドッキリイベント…」ジュルリ
リン「ちょう ぼん のう」
シロウ「いいのか、オヤジ」
キリツグ「ああ、僕の妻は金持ちの令嬢だからね」
キリツグ「そして娘も、アニメとか映画化とかで稼いでいるセレブだ」
キリツグ「養子や愛人が一人二人増えようが、何の問題もないよ」
リン「ちょう さい てい」
シロウ「俺は、生涯妻しか愛さないけどな」
サクラ「……」ポッ
リン「せいじん の ような せりふ」
シロウ「じゃあ、俺たちは、悪のマスターを殲滅してくる!悪・即・爆!」
リン「ようしゃ ない」
キリツグ「さて、僕たちは家に帰ろうか」
キリツグ「色々手続きをして、君をエミヤ・サクラにしないと」
サクラ「エミヤ・サクラ…!」カッ
サクラ「青侍に…表札…彫らせる…!」ゴゴゴゴ
キャスター「ちょ…それ私の持ちネタ…」
その…後…
シロウと…リンの…活躍により…
冬木の街…は…救われた…
おの…れ……エミヤ…キリ……ガクッ
ナレーション.某神父
―衛宮邸―
サクラ「赤ちゃんができました」ポッ
リン「ええええーーーーッ!?」
シロウ「うん、本当だぞ」
リン「……」ヘナヘナ
赤子「おぎゃーおぎゃー」
リン「あ、あんた何やらかしてくれてんの!?」
リン「これ、完全にアウトでしょ!!規制的にも!!」
シロウ「落ち着け、リン」
ベィビィ・カレン「まったく…嫁き遅れの姉は、すぐ取り乱して困ったものでちゅ」
リン「って、あんたかーいッ!!」
ベィビィ・カレン「ばぶー」
サクラ「……チッ」
リン「この…!」
シロウ「また、新しい養子だな」
シロウ「……」モクモク
リン「…ところで、さっきから何を調べているのよ?」
シロウ「ああ…」
シロウ「義理の妹とは、結婚できるのかなって…」
リン「ええええーーーーッ!?」
サクラ「……」ウルウル
シロウ「……」テレテレ
ベィビィ・カレン「まったく…」
ベィビィ・カレン「こんなベイビーに懸想とか…とんだヘンタイなお義兄ちゃんでちゅ」
シロウ・リン・サクラ「「「ちょう かん ちがい」」」
お終い
ご清聴、ありがとうございました。
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Entry ⇒ 2016.10.27 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
【Fate】雁夜「蟲達を全力で愛でてみよう」
臓硯「まずは一週間蟲の苗床になってみよ。話はそれからじゃ」バタン
雁夜「くそ! あの妖怪爺め!」
雁夜「蟲の苗床だと」チラッ
蟲「キシャアアア」ウゾウゾウゾ
雁夜「うっ」ゾッ
雁夜「我が家の事ながらなんておぞましい」
雁夜「これを乗り越えなければ聖杯戦争で勝てないとはいえ俺に耐えられるのか?」
雁夜「ただでさえこれが嫌で家を出たようなものなのに」
雁夜「何かいい方法はないだろうか?」
雁夜「……そう言えば生き物は人間の感情に敏感だと聞いたことがある」
雁夜「もしかしたらこの蟲達もそうなのか?」
雁夜「……どうせ一年つきあっていくんなら嫌っていくより好きになるよう努力していった方がマシか」
雁夜「よし、蟲達を全力で愛でてみよう」
雁夜「俺は蟲が好き俺は蟲が好き俺は蟲が大好き心から愛している蟲を葵さんと同じくらい愛している蟲が好き蟲が好き蟲が好き好き好き好き……」ブツブツブツ
臓硯「カカカ、さて、あの日より一週間が過ぎたが雁夜の奴め、まだ息があるかの」ガチャ
雁夜「やあ、おはようアリス。まだ眠いのかなバーバラ? キャロルは今日も元気そうだね。ドロシー、昨日の傷は大丈夫かい? エレインとファティマは仲直り出来たようだね? ん? はははこらくすぐったいよゲルダ」
蟲A「キシャアア」
蟲B「キシャアア」
蟲C「キシャアア」
蟲D「キシャアア」
蟲E「キシャアア」
蟲F「キシャアア」
蟲G「キシャアア」
臓硯「」
臓硯「お、おい雁夜、貴様どうした?」
雁夜「ん? なんだ爺か。どうしたって何がだ?」
臓硯「いや、なぜそんな平気そうな顔をして蟲達に接しておる? 妙な名前まで付けておったが」
雁夜「なんだ、そんなことか。別に大したことじゃない。親身になって接してみればこの子達とも分かり合えただけだ」
雁夜「そうしたら皆を個別に認識するためにも名前を付けるのは当然だろう?」
臓硯「……ん? まさか貴様見分けついとるのか? さっきそこのをアリスだのキャロルだの呼んでおったが」
雁夜「その子はヘンリエッタだ! 二度と間違えるなクソ爺! 見ろ! 生みの親にも近いお前に間違われてヘンリエッタとアリスが傷ついてる」
臓硯「いや、わかるかそんなもの」
雁夜「なんでわからない! アリスの方が体型が流線形でヘンリエッタは歯並びがきれいだろうが!」
臓硯「いや、わかるかそんなもの!?」
雁夜「ああかわいそうに。あんなひどい爺のことはほっといて今日は一日おじさんと遊ぼうかアリス、ヘンリエッタ?」
蟲A「キシャアアア」
蟲H「キシャアアア」
臓硯「…………」
臓硯「ああそういうことか。こやつ狂いおったな」
臓硯「ふんつまらん。せっかく苦しみぼがく様を酒の肴にでもしようと思っておったのに所詮雁夜ではこんなものか」
臓硯「ええい腹立たしい。桜よ。今日の鍛錬はいつもの倍行う」
臓硯「恨むのなら貴様を助けに来ておきながら狂った愚か者を恨むがよい」
桜「はい、おじい様」
蟲「キシャアアア」ウゾウゾウゾ
桜「…………」
桜「……?」
桜(倍とおじい様に言われたけど、いつもより痛くもないしくるしくもない? 蟲達が大人しい?)
雁夜「なんだい相談って? え? 桜ちゃんとどう接していいかわからない? 大丈夫だよ、桜ちゃんは優しい子だからこちらも優しくしてあげればすぐに仲良くなれるさ」
雁夜「やあ皆、おはよう。今日は何をして遊ぼうか?」
蟲「キシャアアア」ウゾウゾウゾ
雁夜「え? かくれんぼ? 参ったなあおじさん勝てるかな」
桜「ねえ、かりやおじさん」クイックイ
雁夜「ん? どうしたの桜ちゃん? もしかしてイブやジャクリーンがまたいたずらでもした?」
桜「ううん、二人ともこの前の時からはしてないよ」フルフル
桜「そうじゃなくって、あそこに馴染めてない子がいるの」ユビサシ
雁夜「え?」
蟲K「キシャアアア」
雁夜「あの子は、ケリーか。確か爺の体の構成に漏れたせいで自分をいらない子だと思っていたな」
桜「なんとかできる? かりやおじさん?」
雁夜「ああ、まかせておいてよ桜ちゃん」ポンポン
雁夜「やあ、ケリー、どうしたんだい? こっちに来てみんなと一緒に遊ぼう?」
蟲K「キシャアアア」
雁夜「大丈夫、怖くない、怖くないよ」
蟲K「キシャアアア」ガブッ
雁夜「ッ!」
桜「かりやおじさん、手かまれてるよ」
雁夜「大丈夫、怯えているだけさ。ほら怖くない、怖くない」
蟲K「キシャアアア」ガブガブ
桜「でもどんどん食べられてるよ?」
雁夜「大丈夫、大丈夫だから」
蟲K「キシャアアア」スリスリ
雁夜「ほら、なんとかなったよ?」
桜「でもかりやおじさん、左腕無くなっちゃったよ?」
雁夜「安いもんだよ、腕の一本くらい」
9か月後
雁夜「ただいま、皆いい子にしてたかい?」
蟲「キシャアアア」
桜「おじさんおかえりなさい。どこ行ってたの?」
雁夜「ただいま桜ちゃん。留守の間何か変わったことはなかったかい?」
桜「えっと、レオノールのグループとマリーのグループがどっちがかりやおじさんの腕になるかで喧嘩してたくらい」
雁夜「え?……そっか、腕は人形師に相談してたけど皆がおじさんの腕になってくれるならうれしいな」
桜「……わたしもおじさんの腕の代わりになれるようがんばる」フンス
雁夜「あはは、ありがとう。ところでさっきどこに行ってたかって話だけど、蟲がいっぱい出てくる映画が発売してね」
雁夜「みんなで見ようと思って買ってきたんだ」
桜「映画、久しぶり」
雁夜「うん、楽しもうね」
鶴野「おい、雁夜。お前の義手の件だがもうあそこの人形師に作っておらっていいのか?」ガチャン
鶴野(一日の大半を薄気味悪い蟲蔵で好んで過ごす弟と義理の娘を訪れてみれば、どこから持ってきたか大型テレビを壁際に置き映画を見やる二人)
鶴野(そしてすべての蟲が身動きせず映画を視聴している光景だった)
鶴野(俺はそっと扉をしめた)
雁夜「いやあ面白かったね。特に腐海の中のシーンはよかった。蟲がいっぱいいたし」
桜「私は最後のシーン。王蟲がいっぱいいたし」
雁夜「そうだね。あそこのシーンもよかったね。蟲を見て楽しめるいい映画だった」
蟲「…………」
雁夜「さて、それじゃもう遅いし寝ようか」
桜「うん」
蟲N「キシャアアア」
雁夜「ん? ニコラ? どうしたの?」
蟲N「キシャアアア」
雁夜「映画を流しっぱなしにしてほしい? 別にいいけど気に入ったのかい?」
蟲N「キシャアアア」
雁夜「わかったよ。それじゃリピート再生にしておくから好きなだけ見てていいよ」
雁夜「それじゃお休み」
ランランランララランランラン
蟲A「キシャアア」
蟲B「キシャアア」
蟲C「キシャアア」
蟲D「キシャアア」
蟲E「キシャアア」
蟲F「キシャアア」
蟲G「キシャアア」
蟲H「キシャアア」
蟲I「キシャアア」
蟲J「キシャアア」
蟲K「キ、キシャキシャ」
蟲L「キシャアア」
蟲M「キシャアア」
蟲N「キシャアア」
蟲O「キシャアア」
蟲P「キシャアア」
蟲Q「キシャアア」
蟲R「キシャアア」
蟲S「キシャアア」
蟲T「キシャアア」
蟲U「キシャアア」
蟲V「キシャアア」
蟲W「キシャアア」
蟲X「キシャアア」
蟲Y「キシャアア」
蟲Z「キシャアア」
蟲A~Z「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「キシャアア!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
雁夜「今日もいい天気だね桜ちゃん」
桜「そうだねかりやおじさん」
雁夜「それにしても蟲達の皆が『しばらく来ないで』って言ってからもう7日か。どうしちゃったんだろうね?」
桜「……うん」ギュッ
雁夜「……皆に会えなくて寂しい?」
桜「……少しだけ。でもかりやおじさんがいるから平気」ギュッ
雁夜「そっか。うん、おじさんも桜ちゃんがいるから寂しくないよ」
桜「ほんと?」
雁夜「うん、ホントホント」
アハハ、アハハ
臓硯「カアアアリイイヤアア!」
雁夜「うわ、なんだ爺驚かせるなよ」
臓硯「それはこっちのセリフじゃこのたわけ! いいから今すぐ蟲蔵へ来い!」
雁夜「? なんだ一体?」
蟲「キシャアア」
桜「わあ、王蟲がいる。トビケラも」
雁夜「皆姿が変わってる! もしかしてこれのために数日こもってたのかい?」
蟲O「キシャアア」
雁夜「ああすごいよオリヴィア! 皆なんてすばらしいんだ!」
臓硯「どこがじゃこの愚か者! こんな風に姿を変えては間桐の魔術がまともに使えんではないか!」
雁夜「爺! 皆の努力の結晶である独自の進化と間桐の魔術とどっちが大切なんだ!?」
臓硯「魔術に決まっておるだろうこの阿呆! 貴様どれだけ蟲好きなんじゃ!?」
桜「おじさんおじさん! 見て見て! ナ〇シカみたい!」テクテク
雁夜「わあ、すごいね桜ちゃん! そうだ、この素晴らしい光景を写真に撮って葵さん達にも見せてあげなきゃ! カメラカメラっと」ダダダ
臓硯「あ、おい待て! まだ話はって早いなあいつ!」
臓硯(……まあ良いわ。確かに魔術は使えん形にはなったが最早この蟲共は魔術による使い魔というよりは幻想種に届いておる)
臓硯(これはもしかすると此度の聖杯戦争、うまくいくやもしれぬわい)
雁夜「いいよ桜ちゃん! こっち向いて! うんかわいいよ。桜ちゃんと蟲達が仲良くしているなんて心温まる光景なんだ!」
聖杯戦争数日前
臓硯「さて、いろいろあったがいよいよこの日が来たの」
臓硯「正直、毎日蟲と遊んでおるだけで魔術の訓練もまともにしてない雁夜になぜ令呪が宿ったかとんとわからぬが出た以上はこちらのものよ」
臓硯「で、だ。雁夜よ。他の魔術師に比べ劣る貴様にはバーサーカーを召喚してもらおう」
雁夜「いや、俺の狙いは魔術師の枠だ」
臓硯「なに? キャスターじゃと?」
雁夜「確かにバーサーカーならステータスが向上するだろうが魔力もまともに供給できない俺じゃすぐ自滅するのが落ちだ」
雁夜「かといって三騎士達ではせっかくのステータスが低くなってしまう」
雁夜「なら最初から絡め手を得意とするキャスターで攻めればいい」
臓硯「……ふん、蟲に狂っとると思えば少しは考えておったようじゃの」
臓硯「よかろう。じゃが魔術師は狙って召喚できるものではないぞ? それこそ触媒でもない限りの」
雁夜「ぬかりはない。おおよそ俺が用意できる最高の触媒を手に入れた。これで間違いなく最強のサーヴァントが召喚できる」
臓硯「ほう、そこまで言うからにはさぞよい触媒なのじゃろうな」
雁夜「ああ、これだ」スッ
【ファーブル昆虫記】byジャン・アンリ・ファーブル
臓硯「……」
雁夜「……」
臓硯「……おい、雁夜」
雁夜「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公…」
臓硯「待て待て待て本気で待て! 何を考えておるかこのたわけ! およそ想像のつく限りで全く戦闘に向かん作家系とか阿呆か貴様!」
雁夜「離せ爺! ファーブル大先生に生で会えるチャンスなんだぞ!? 桜ちゃんも楽しみにしているんだぞわかってるのか!?」
臓硯「貴様ほんとに何しに戻ってきた!?」
雁夜「時臣ィ! なぜ桜ちゃんを間桐へ養子にやった!?」
時臣「なに?」
雁夜「答えろ時臣ィ!」
時臣「何をいうかと思えば、無論愛娘の幸せのためだ」
雁夜「なん…だと…?」
時臣「二子を設けた魔術師は(中略) 間桐雁夜は魔道の恥だ。最早誅を下すほかあるまい」スッ
雁夜「……皆、来てくれ」
時臣「……? 使い魔の蟲達に命令ではなく懇願だと? やはり君は魔術師としてふさわしく…」
蟲(幻想種ver)「「「「キシャアアアア」」」」
時臣「」
時臣「……間桐雁夜、それはいったいなんだ?」
雁夜「あ? 右から順番にパトリシア、キトリー、ローズ、ステラ、ティア、ウルスラ、ヴァネッサ、ウェンディ、ザンティピー、ヨランダ、ゾーラだが?」
時臣「いや、名前?ではなく、それは幻想種、なのか?」
雁夜「いいや、違う。この子達は桜ちゃん親衛隊のメンバーだ」
時臣「は? 桜の親衛隊? は?」
雁夜「桜ちゃんが養子に出された当初に桜ちゃんを犯して純潔を奪ってしまったことをひどく後悔し代わりに贖罪として生涯を通して守ると決めた精鋭たちだ」
雁夜「皆自身の行いを恥じているがそれ以上に相手先の状況をよく知りもしないで自分の娘を養子に出した貴様に殺意を抱いている」
時臣「なに? 犯すだと? 何を言っている間桐雁夜?」
雁夜「言っても無駄だろう? 家族より魔術を優先させた貴様はさっき自分が懺悔する機会を自分で放棄したんだ」
雁夜「…話がそれたな。この子達についてだが、桜ちゃんに一番になついた結果この子達(幻想種ver)とは違う独自の進化を遂げたものがいる」
雁夜「その子こそが親衛隊のボスであり貴様を倒す存在だ」
雁夜「さあ行け! 火間蟲入道をベースに進化したG3ことジャイアントゴキブリのジョージ君!」
G3(GIANT GOKIBURI GEORGE)「じょうじ」(CV:中田○治)
時臣「」
G3「じょうじ!」ドゴン
時臣「ぐはっ!」
雁夜「貴様のせいで、貴様のせいでなあ!」
G3「じょう!」ボゴッ
時臣「ごほっ」
雁夜「桜ちゃんは、桜ちゃんは!」
G3「じょじょう!」ドコドコドコ
時臣「ぶはあっ!?」
雁夜「毎日毎日蟲の皆と遊んだり背中に乗せてもらって空を飛んだり一緒に散歩したり映画見たり絵本読んだりして楽しく過ごしてるんだぞ!」
G3「じょうじょうじょうじょうじょうじょう!」オラオラオラオラ
時臣「ぎゃあああああ!」
雁夜「はあ……はあ……どうだ! 参ったか!」
雁夜「……」
雁夜「あれ? 別に今のままでも桜ちゃん問題ないのか?」
G3「じょう?」
綺礼「く、くく、愉悦」
間桐邸
雁夜「というわけで叛逆することにした」
桜「したの」
臓硯「おのれ、もうすぐ聖杯が手に入りそうなところで正気に戻りおって」
臓硯「じゃが忘れてはおるまいな? 貴様がいくら強い蟲を従えておっても貴様らの体内には儂が植え付けた蟲が巣くっておることを」
臓硯「ほれ、貴様らが儂に手を出すよりも早く儂がこうして杖をたたけばこれこの通り」トン
雁夜「?」
桜「?」
臓硯「ん? こ、これこの通り」トン
臓硯「……」トン
臓硯「……」トン、トントントン
臓硯「ば、馬鹿な」
桜「ねえかりやおじさん、おじい様は何をしてるの?」
雁夜「たぶんジョージ君達がとっくに桜ちゃんやおじさんの体から出たのを知らなかったんだよ」
臓硯「」
臓硯「い、いやまだじゃ! 仮に貴様らの中の蟲がそちらについてもここは儂の工房。手などいくらでもあるわ!」
臓硯「さあ、こ奴らを食い殺せ!」
シーン
臓硯「……まさか」
雁夜「ああ、そうだ臓硯。もうこの屋敷にお前に味方する蟲はいない」
雁夜「お前の体を構成している蟲たち以外はな」
臓硯「ば、ばかな」
雁夜「終わりだ臓硯。そしてすまない、臓硯の体となっている蟲達よ」
雁夜「さあ行けアリスバーバラキャロルドロシーエレインファティマゲルダヘンリエッタイブジャクリーンケリーレオノールマリーニコラオリヴィアパトリシアキトリーローズステラティアウルスラヴァネッサウェンディザンティピーヨランダゾーラにジョージ君その他大勢!」
蟲A~Z「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「キシャアア!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
G3「じょうじ!」
臓硯「お、おのれえええええええ!」
こうして臓硯は滅んだ
時臣はジョージ君にぼこぼこにされた後で綺礼にアゾられた
遠坂葵は未亡人のままだ
鶴野は臓硯が滅んだことで喜び家督を雁夜に譲った
慎二は蟲のすごさに嫉妬を通り越して魔術とかどうでもよくなった
そして……
桜「それじゃあお昼は温めて食べてくださいね雁夜お父さん」
雁夜「いつもありがとう桜ちゃん。それにしてもまだお父さんは慣れないなあ」
桜「ふふ、早く慣れてください。先輩との結婚式の時にはヴァージンロードを一緒に歩いてもらう予定なんですから」
雁夜「ああ、あの子か。いい子だよね」
雁夜(そのぶん恋のライバルも多そうだけど)
桜「ええ、それじゃ行ってきます」
雁夜「うん、行ってらっしゃい」
雁夜「……本当に幸せそうでよかった」
雁夜「そうは思わないかい皆?」
蟲A~Z「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「キシャアア!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
G3「じょうじ」
ファーブル「ええ、全くですね」
雁夜「ああ、安心した」
こうして間桐雁夜とその家族は幸せに暮らしましたとさ
完!
これで終わりです
安価令呪スレ書こうと思ったら唐突に思いついて書きたくなったので一気に投下
よろしかったらこちらのスレもどうぞ
【FGO】ぐだお「安価をもって命ずる!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464442587/
臓硯はまず子孫の性癖を蟲に興奮するように改造すべきだと思う
では
いうなれば蟲26祖
では今度こそ終わりです
納得
>>52
イエス、RYUちゃんはバサジルを召喚しました
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473685137/
Entry ⇒ 2016.09.16 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
葵「はい、お誕生日プレゼントの愛犬てつよ」
「実は、リモコンが付いており、この真ん中のついてくるボタンを押すと……」ポチッ
ワンッ! ワンッ! ワンッ!
「まっすぐに自分のところに近づいてくるんです」
「ただ歩くだけでなく、背中や頭をなでたり、左右の耳を触ると……」サスサス
ゲヘゲヘゲヘウーワンワン
「愛くるしい多彩な反応が楽しめます」
「そして、ただ吠えるだけでなくこのリモコンのTボタンを押すと」ポチッ
アソボウヨー
「と、言葉を話すんです」
「約……」
葵「(桜と凛へのプレゼントにぴったりかしら……注文してみましょう)」
凛「わぁー、子犬だ!」
桜「でも、ふつうのわんちゃんと少し違う?」
葵「この子はね、愛犬ロボ「てつ」って言うのよ」
凛「愛犬ろぼ?」
葵「えぇ、試しに触ってみて?」
凛「う、うん」ソー
ツン
てつ「わんっ! わんっ!」
凛「わっ、動いた!?」
葵「すごいでしょ? 色んな愛くるしい反応を見せてくれるの」
凛「すごいすごーい!」
桜「わ、私も……触っていい?」
葵「えぇ、桜も触ってごらん?」
桜「じ、じゃあ……」ソー
てつ「ヘッヘッヘッヘ……わんわんっ!」
桜「わぁ……」パァアア
葵「気に入ってくれたかしら?」
凛・桜「うんっ!」
時臣「(葵と娘達が使い魔のような何かと触れ合っているな……新手の魔術の鍛錬だろうか)」
桜「わぁ、着いてきた!」
凛「すごーい!!」
葵「(うふふ、リモコンの反応が新鮮ね)」
時臣「楽しそうだね」
凛「あ、お父様!」
時臣「どれ、珍しい使い魔だね……私も触っていいかな?」スッ
てつ「……」シーン
時臣「……?」
葵「(あら、リモコンが反応しないわ……どうしてかしら)」
桜「えっと……てつ?」
てつ「わんっ! わんっ! わんっ!」テクテク
時臣「ど、どうやら主を識別する事が出来るようだね」
葵「(もう一度説明書読んでおいたほうがいいかしら……えーと、愛犬ロボ「TETSU」故障かな? と思ったらの項目は)」
凛「むにゃむにゃ……てつ~」
てつ「……」
葵「うふふ、二人共てつの事をすっかり気に入ったのね」
葵「そうだ、しばらくしたら電池も変えなくちゃいけないわね。用意しておかなくちゃ」
イソイソ
葵「これでしばらくは安心ね」
時臣「(最近は使い魔を宅配便で扱うようになっているのか……見覚えのない請求が来た時は何事かと思ったが、娘達の教育につながるし、まぁいいだろう)」
凛「すごいすごーい!」
葵「うふふ、大切にしてあげなさい」
凛・桜「はーい!」
てつ「あそぼうよー」
凛「ねぇねぇ、次は何して遊ぶ?」
桜「てつはどうしたい?」
てつ「わんっ! わんっ! わんっ!」テクテク
時臣「(間桐から養子の話がきているな……)」
桜「んぅ……てつ?」
てつ「わんっ! わんっ! わんっ!」テクテク
桜「てつ、どこにいくの?」テクテク
凛「むにゃむにゃ……」
てつ「……」テクテク……ピタッ
桜「てつ、どうしたの……?」
「……」
「……」
桜「(話し声が聞こえる……お父様とお母様?)」
桜「(扉に耳を当てたら聞こえるかな?)」スッ
----------------------------------------------
葵「桜を養子に……?」
時臣「魔術は一子相伝が基本だ。凛に後を継がせるとなれば桜は魔導の道に進めなくなる」
時臣「だが、間桐の養子となり、間桐の当主となれば桜も凡俗としての道を歩まずに済む」
時臣「これは桜の為でもある、分かってくれるか?」
葵「……魔術師の妻となった時から、覚悟はしています」
時臣「理解してくれて嬉しいよ、葵」
-------------------------------------------------
桜「……え?」
桜「嘘……だよね? 私、知らないおうちに連れて行かれちゃうの?」
桜「姉さんとも、てつとも……一緒にいられなくなっちゃうの?」
桜「やだよ……そんなの、嫌」
てつ「わんっ! わんっ! わんっ!」テクテク
桜「てつ……?」
桜「一緒に逃げようって、言ってくれてるの?」
てつ「わんっ! わんっ! わんっ!」
桜「…………」
時臣「信じがたい事だが……屋敷の結界に敵の反応は感知されていなかったにも関わらず桜がいなくなってしまっているのは事実だ」
葵「そんな……まさか、桜が誘拐されたんじゃ!?」
時臣「いや、桜を誘拐しようとする輩が訪れたら屋敷の結界が反応しているはず」
葵「じゃあどうして桜がいなくなったの!?」
時臣「それは……」
凛「私、桜を探してくる!!」ダッ
時臣「こら、待ちなさい!」
葵「凛、どこにいくの凛!?」
凛「桜、どこにいったのよ……早く出てこないと許さないんだから!!」
てつ「わんっ! わんっ!」
桜「……てつは優しいね」
てつ「あそばんか?」
桜「……ごめんね、今はショックで遊ぶ気になれないの」
てつ「……」
桜「もう、姉さんとも会えないのかな……」
てつ「わんっ! わんっ!」
桜「……そうだよね、てつが一緒にいてくれるよね」
桜「私、寂しくないよ。てつが一緒にいてくれたら……寂しく……なんて」ポロポロ
てつ「わんっ! わんっ!」
桜「ぐすっ……やっぱりさみしいよ……てつぅ」
てつ「わんっ! わんっ!」
ヒュオオオオオオ
桜「……」ブルッ
桜「少し……寒いね」
てつ「……」
桜「一緒にねよっか……おやすみ、てつ」
てつ「……」
桜「すぅ……すぅ……」
「ほう、この小娘が遠坂の……」
「こんな所にいるとは、わざわざ引き抜く手間が省けたわい」
てつ「わんっ! わんっ!」
「ん? なんじゃこの機械は」
てつ「わんっ! わんっ! わんっ!」シュバッ
「な、何をするやめ……!!」
…………
てつ「わんっ!」
桜「てつ、おはよ……」
桜「(そっか……私、家出しちゃって……それで)」
凛「桜! やっと見つけた!!」ダッ
桜「あれ……姉さん?」
凛「あんた、今までどこに行っていたのよ!?」
凛「急にいなくなって……ほんとに……心配、したんだから」グスッ
葵「桜!!」
桜「お母様……?」
葵「桜……無事でよかった」ギュッ
桜「あ……」
葵「急にいなくなったから心配したのよ……本当に、無事でよかった」
桜「お母様……私」
凛「ねぇ桜、なんでいきなりいなくなったりしたのよ? 私達がどれだけ探したと思ってるの?」
桜「それは……」
桜「……お父様、私は……いらない子なの?」
時臣「そうではない。だが、桜と凛は共に魔導の才能がある」
時臣「だが、一つの家で二人同時に後を継がせる事はできない。魔術刻印は一子相伝だからね」
時臣「それだと、どちらか片方は魔術師の道を歩む事ができなくなり、凡俗として生きなければならなくなる」
時臣「親として、それは冒涜でしかない。だからこそ間桐の申し出は天啓だった」
時臣「桜、君は間桐の家で立派な魔術師になりなさい。間桐で魔術を学ぶ事で、君は幸せになれる」
桜「…………私、は……」
てつ「わんっ! わんっ!」
桜「てつ……」
時臣「……その使い魔を少し黙らせる事はできないかな?」
桜「お父様……てつは使い魔なんかじゃないです」
桜「てつも私達の家族です……てつがいなかったら、私は……」
凛「そうよ! 私、知ってるんだから!」バンッ
時臣「凛!?」
葵「だめよ凛、今は大事なお話をしているの」
凛「てつはね、桜の事を大事に思ってくれてるのよ! 桜が家出した時だって、きっとてつが守ってくれたんだから!」
凛「それに、桜が家出した理由を聞いてあげてもいいじゃない! 桜がなんで今回家出したか、それを聞いてから話をしたらどうなんですか!?」
時臣「……それも一理あるね。 桜、何故いきなり家出を?」
桜「……私は、知らないおうちに渡されるって聞いて」
桜「姉さんやお母様、お父様から必要とされてないって思って……それで……」
葵「そんな事ないわ、私達は桜の事も大事に思っているもの」
桜「でも……私、養子にやられたくない」ポロポロ
桜「やだよぉ……魔術師なんてならなくてもいいから、ずっとみんなと一緒に暮らせたらそれでいいから」
桜「お願いだから……養子になんて……出さないで」グスッ
時臣「……それが、桜の答えか」
桜「……」グスッ
時臣「…………本来ならば、娘の幸せを思って心を鬼にするべきなのだろう」
時臣「けど、本人が望まない道を強制するのは親失格だ」
凛「じゃあ……」
時臣「あぁ、桜も凛も、養子には出さない」
桜「お父様……!!」パァアアア
凛「やったぁあああああああああああああ!!」
てつ「わんっ!」
てつと遊んで、姉さまがいて、お母様とお父様がいて……
もしてつがいなかったら、私は本心を言い出せずに養子に出されていたかもしれない。
望んでもいない魔術師としての道を歩かされていたのかもしれない。
そう思うと、てつは私の恩人で、大事な大事な家族です。
ありがとう、てつ……これからもずっと一緒だよ。
てつ「わんっ!!」
完
超短話でしたがこれにて完結です。完成したら思ってた半分のクオリティも出せてなくてショック……
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432647153/
Entry ⇒ 2016.04.05 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
アイリ「切嗣、いい加減セイバーとコミュニケーションをとって」
アイリ「いいわ。こうなったら嫌でもコミュニケーションをとってもらうわよ」
切嗣「アイリ…?」
アイリ「切嗣、愛してるわ♪ 原稿用意してあるから、お城の客間に来て」
切嗣「原稿…?」
アイリ「さて、私は紅茶を作らなくちゃ。やっぱり仲良くお話しするなら、お茶が必須よね」
アイリ「ええと、茶葉を入れて……あら?何かしらこの黒い茶葉。『アンリマンユ』?知らない銘柄ね……」
アイリ「メイドが気を利かせて用意してくれたのかしら。……何にせよお城に置いてあったものだし、悪いものじゃないわよね?」
アイリ「うん。変な匂いもしないし、大丈夫みたいね。折角だし、今日はこれにしましょう。それじゃ、熱湯を注いで……」
アイリ「出来上がり。私特製、必殺のおもてなしティー!」
アイリ(頑張るのよ、アイリ。あの二人の橋渡しが出来るのは私しかいないんだから!)
アイリ「おまたせセイバー!ごめんね、ちょっと準備に時間かかっちゃって。そのスーツ、やっぱり似合ってるわね」
セイバー「アイリスフィール、この服は中々機能的で気品もあり良い物です。感謝します」
アイリ「気に入ってくれたならそれだけでいいのよ、私が勝手に用意したものなんだから。……ほら切嗣、私の後ろに隠れてないで。それじゃ話し合いも出来ないわよ?」
切嗣「……」
セイバー「……アイリスフィール、これは一体?」
アイリ「これ?これはね、あなたと切嗣の絆を深めるための作戦会議よ♪まぁまぁ紅茶どうぞ」
セイバー「はぁ、では頂戴します」
切嗣「……っ」プルプル
アイリ「切嗣。勇気を出して?」
切嗣「……………………せいばーへ。いままで、むしをしていて、ごめんなさい。あやまります」
セイバー「」ブーッ
セイバー「けほっ、けほっ……だ、大丈夫ですアイリスフィール。大事ありません」
切嗣「アイリが淹れてくれた紅茶を噴き出しておいて『大事ない』だと!?」
アイリ「切嗣、私なら大丈夫だから。抑えて抑えて」
切嗣「アイリ……しかし……」
セイバー(い、いけない。騎士王ともあろうものが紅茶を噴き出してしまうなんて!しかしこの棒読み具合はあまりにも……)
セイバー「……こほん。見苦しい所を見せてしまいました。どうぞ、続けてください」
アイリ「偉いわ切嗣、よく言えました!それこそあなたが行うべき最善の手段よ!」パチパチパチ
切嗣(くっ……なぜ僕が英雄を相手にこんな文章を……)
アイリ「セイバー、切嗣もこう言ってる事だし、今までの非礼は騎士王としての寛大な心で見逃してあげてくれない?」
セイバー「……まぁ、いいでしょう。アイリの努力に免じて、今までの事は水に流してあげます」
アイリ「流石だわセイバー!それでこそ最優、最強のサーヴァントにふさわしい振る舞いよ!」
アイリ「あぁ。イリヤ。ちょっと待っててね。そうだ!みんなでおにごっこしましょう!」
イリヤ「わーい!」
セイバー「なるほど、それはいいですね。」
切嗣「アイリ、それは」
アイリ「切嗣、いいコミュニケーションになるでしょ?」
アイリ「逃げろ~♪」
切嗣「ほぉら、イリヤ、捕まえてごらん」
イリヤ「あははー!えーい!」
セイバー「おっと。タッチされてしまいました。」
イリヤ「次セイバーおにねー!」
セイバー「………!なるほど。わかりました。アイリ。」
切嗣「………っ…そんなのありか?だが…受けて立つ。セイバー」ダダダダダ
セイバー「…………っ!速いっ……流石です。衛宮切嗣。ですが私も負けませんよ」タタタタタタッ
切嗣「ひぃ、ひぃ、疲れた、ひぃ、ふぅ。」
セイバー「はぁ、やりますね。衛宮切嗣。」
アイリ「二人ともやりすぎよ。あれから3時間もずっと走りっぱなしなんて」
切嗣「セイバーに捕まるのが悔しかったからだ。」
アイリ「もうまたそんなこといって。」
イリヤ「二人の戦いはイリヤも見てて楽しかったよー!」
セイバー「ありがとうございます。イリヤスフィール。おや?だいぶ汗だくになってますね」
アイリ「そうね。私たちも汗かいたし……そうだ!みんなでお風呂に入りましょう!」
切嗣「」ブーッ
アイリ「私裸のお付き合いも大事だと思うの。」
切嗣「いやいや」
イリヤ「わーい、お風呂、お風呂♪」ヌギヌギ
アイリ「ほら、あなたも服脱いで」
切嗣「あ、ちょやめ」
切嗣「こらこら、落ち着け、イリヤ。」
切嗣(しかし………成り行きでこうなったが………)
アイリ「う~ん………この人数入るかしら……?」ボイン
セイバー「この広さのお風呂にこの人数は合ってないのでは……?私は後から入りましょうか?」ペター
アイリ「だーめ!それじゃだめなの!」ボイーン
切嗣(言ってはいけないんだろうが……胸囲の格差は残酷だな……)
イリヤ「……んー?」ツンツン
イリヤ「ねーセイバーこんなところにきのこが生えてるよ?」
切嗣「……っ!!やめろイリヤ!」
セイバー「え?風呂場にきのこですか?」
アイリ「初めて聞いたわねー。見に行ってあげて。セイバー。」
切嗣「やめろ……くるなセイバー……」
セイバー「風呂場にきのこを放置するわけにはいきません」
イリヤ「あはは、おもしろーい!」ツンツン
切嗣「これは……きのこじゃない……これはっ……」
セイバー「全く、ひどいものを見せつけられました」
切嗣「本当に悪かった、セイバー。」
アイリ「うふふっ、悪気はなかったのよね。」
切嗣「あ、あはは…」
アイリ「切嗣、耳貸して」
切嗣「何だいアイリ」
アイリ「コミュニケーションとるのはいいけどセイバーに手出したら許さないわよ」
切嗣「ひっ……は、はい……」
切嗣(一緒にお風呂に入ろうって言い出したのはアイリなのに…)
セイバー「いいですよ。えーと、ももたろう。むかーし、むかしあるところに…」
アイリ「でも、あなたがセイバーとちゃんとコミュニケーションとるようになって安心したわ」
切嗣「ああ、僕は何か間違っていたかもしれないな。これからはセイバーと一緒に聖杯をとりにいくよ」
アイリ「私も一緒よ♪」
切嗣「もちろんじゃないか、アイリ。」
セイバー「川からどんぶらこー、どんぶらこー……」
イリヤ「」スースー
セイバー「おや、もう寝てしまいましたね」
~fin~
fate/zeroのifの話
掲載元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1459318660/
Entry ⇒ 2016.04.01 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
ケイネス「またループから脱出できなかったか....」
ターンッ
舞弥「」
ターンッ
ターンッ
ケイネス「....カハッ」ドサッ
ケイネス「....ソ..ラウ....」
切嗣「....」
ケイネス「あ”あ”....殺せ...殺してくれ....」
切嗣「悪いがそれはできない契約だ」
セイバー「....」チャキッ
ザシュッ、、、、
--------------------------------
-------------------------
------------------
------------
-------
----
ガバッ
ケイネス「~~~~ッッ!??」
ケイネス「....」汗タラタラ
ケイネス「なんだ....夢か。やけにリアルだったな」
ケイネス「....悪夢を見てしまうとはな。よりによってソラウと私が殺される内容とは、」
ケイネス「聖杯戦争の直前で緊張していたのだろう、」
ソラウ「大丈夫?やけに苦しそうだったわよ」
ケイネス「問題ない。」
ケイネス「ふっ、、、むしろ冬木の地で私の魔術師としての力を魅せつける機会が得られたことに歓喜している。馬鹿な教え子に邪魔をされたイレギュラーはあったがね」
ソラウ「頼もしいわ、ケイネス」
ケイネス「飛行機も貸し切ってある。準備が済み次第ロンドンを発つぞ、、、、」
ケイネス「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
魔方陣『!!!!!』
パアアアアアアッ
ディルムッド「問おう。貴公が私のマスターか?」
ケイネス「いかにも。」
ディルムッド「仕える事ができて望外の喜び!!」(FGOの召還台詞から)
「俺は何も望みません!」
「俺は何も望みません!」
ケイネス(ふん、主君を裏切った男が望外の喜びとな。こいつの顔をみるといつも腹が立つ!)
ソラウ「上手くいったようね。これが噂のサーヴァントってやつか、なかなかいい男ね」
ケイネス「....?」
ケイネス(なんだ、この違和感は)
ケイネス「そ、そうだな」
ケイネス(ソラウがあのサーヴァントに興味をもったことに非常に嫌悪感をおぼえた。
いや、そもそも私が『こいつの顔をみるといつも腹が立つ!』と思っていたが、なぜ私が知らないはずのサーヴァントの『顔』を
判別できていたのだ?気のせいか,,,,,?)
ディルムッド「主、なんなりとご命令を。」
ケイネス「そうだな、、とりあえずは我々の警護を命ずる。」
ディルムッド「....かしこまりました」
.
.
.
.
.
.
.
.
ケイネス「――宝具の開帳を許す。」
ディルムッド「了解した、我が主よ。」
「ここから先は殺りに行かせてもらう!」チャキッ
シュッ
セイバー「なっ!」
ディルムッド「晒したな!秘蔵の剣を!」
ケイネス(今日は勘が冴えているのか、セイバーのサーヴァントと対峙する気がしていたが案の定予想どうりの展開となった....だが、ここで仕留められる気がしないのはなぜだ?)
ケイネス(....もしかしたらライダーあたりが横槍をいれてくるかもしれんな。あくまでも気のせいだが、、、)
ズドーーーーーン!!!!!
ライダー「我が名は征服王イスカンダル!!!!!」ゴゴゴゴゴ
ケイネス(やはり冴えてるな!)
―アインツベルン拠点―
ケイネス「scalp!(斬ッ)」スパスパッ
ドドーンッ
ケイネス「アーチボルト家九代目当主、ケイネス・エルメロイがここに推参仕る。アインツベルンの魔術師よ!求める聖杯に誇りと命を賭して
いざ尋常に立ち会うがいい!」
『.............』
ケイネス「ふんっ」スタスタ
トラップ『!』チュドーンッ
ハイドラグラム『』ポワンッ
ケイネス(魔術攻撃ではなく爆弾だと?昨夜のホテル爆破はアインツベルンの仕業か。そこまで堕ちたかアインツベルン!!)
ケイネス「―よろしい、ならばこれは決闘ではなく誅伐だ!」
ケイネス(この屋敷の姿形、なんとなく見覚えがあるのは何故だろうか、)
ケイネス「見つけたぞ、ネズミめが.....」
ケイネス「scalp!(斬)」スパスパッ
ドドドドドドド
切嗣「....自動索敵か、」
ケイネス「なっ!???」
切嗣「....?」
ケイネス(こ、この男。どこかで見たことあったぞ?どこで見た?どこかで見たのは覚えている......なんだこの感じ?)
切嗣「タイムアルター、ダブルアクセル!」ササササッ
ケイネス「ぬ!?逃げたか。少しは魔術の心得があるようだな、この面汚しめが!」
ケイネス「怖気づいていないでさっさとででこい!」
ケイネス(奴はここで確実に仕留めないと大変なことになる気がする....なぜ私はこんなに焦っている?)
切嗣「....!」ヒュッ
ケイネス「!」
ケイネス(索敵の網の目をかいくぐっていただと!?)
切嗣「....」ダダダダダダダダダッ銃器乱射
ケイネス「無駄なあがきだ!」ハイドラグラム防御
コンテンダー『』スプリングフィールド弾装填
切嗣(弾幕防御のために被膜化した水銀には耐えられない、)
タァーーーーンッ!!
バスッ
ケイネス「ぐあぁ!!....っく、おのれ、おのれえええ」血ボタボタ
ダッシュ
切嗣(二発目からはケイネスはありったけの魔力を動員して水銀の防御を強化するはずだ、そうでなくては困る。)
、
、
、
、
ケイネス「まさかさっきと同じ手が通じると思ってはいるまいな?」
切嗣「....」
ケイネス「下衆め、楽には殺さぬ」
切嗣「....」ダダダダダダダダッ
ハイドラグラム『!』
ケイネス(より硬くより細くより強靭に!)
切嗣「....」チャキッ(コンテンダー
ケイネス(この状況、はじめてじゃない。さっきからなんなんだ....この違和感は。まるでどこかで一回体験したような、、、、)
ドンッ!(起源弾
ハイドラグラム『』バチンッ
ケイネス「?」
バチバチバチバチ
ケイネス「....ガッ!!!!???????」ブシャヤアアアアアアアアア
バチバチ
ドサッ....
-------------------
---------------
----------
-------
----
--
-
切嗣「ああ、成立だ。もう僕にはお前たちを殺せない。」
切嗣「僕には、な」 パッチン
ターンッ
舞弥「」
ターンッ
ターンッ
ケイネス「....カハッ」ドサッ
ケイネス「....ソ..ラウ....」
切嗣「....」
ケイネス「あ”あ”....殺せ...殺してくれ....」
切嗣「悪いがそれはできない契約だ」
セイバー「....」チャキッ
ザシュッ、、、、
--------------------------------
-------------------------
------------------
------------
-------
ガバッ
ケイネス「!!!????」汗タラタラ
ソラウ「どうかしたの、ケイネス?」
ケイネス「い、生きてる?」
ソラウ「何を馬鹿なこと言ってるの?よっぽど悪い夢をみていたのね」
ケイネス「....そうだな」
ソラウ「なんて縁起の悪い夢ですこと、、、」
、
、
、
、
、
~数日後~
魔方陣『!!!!!』
パアアアアアアッ
ディルムッド「問おう。貴公が私のマスターか?」
ケイネス「い、いかにも。」
ディルムッド「仕える事ができて望外の喜び!!」(FGOの召還台詞から)
「俺は何も望みません!」
「俺は何も望みません!」
ソラウ「上手くいったようね。これが噂のサーヴァントってやつか、なかなかいい男ね」
ケイネス(夢で見た光景と一緒だ....サーヴァントのクラスと顔まで一致している....)
ディルムッド「はい、我が主よ」
ケイネス「その目障りな黒子を絆創膏で隠しておけ」
~数日後~
ケイネス(たしか夢の中で最初にセイバーと戦って、その途中でライダーが来るはず、)
ライダー「我が名は征服王イスカンダル!!!!!」ゴゴゴゴゴ
ケイネス(....的中した。一応令呪は使わないでおこう、)
~さらに数日後~
ケイネス(たしか、、、このあたりで夢ではホテルが爆破された気が....)
ケイネス「ソラウ、ランサー、外に出るぞ」
ソラウ「どうして?」
ケイネス「つべこべ言わずさっさと出るんだ!」
、
、
、
、
、
ホテル『チュドーーーン!!!!』
ソラウ「えっ!?」
ケイネス(ここまで夢の通りだった....ならばこの先に待っている未来は『死』....)
ケイネス(落ち着いて思い出すのだ....あの夢の内容を、)
ケイネス(たしかこの後は....私がアインツベルンを襲撃して、敗北したのだ)
ケイネス(そして....ソラウにそっぽ向かれその後は散々無様な姿を晒し続け、最後はボロ雑巾のようになって殺された)
ケイネス(夢の中とはいえ私をあんな目に合わせた男を許せるわけがない....許してたまるかッッ!)
ケイネス「ランサーッ!いまからアインツベルンを攻めるぞ。この不愉快な行為の報いを受けさせる為にな、」
ランサー「御意、」
―アインツベルン拠点―
ケイネス「scalp!(斬ッ)」スパスパッ
ドドーンッ
ケイネス「アーチボルト家九代目当主、ケイネス・エルメロイがここに推参仕る。アインツベルンの魔術師よ!求める聖杯に誇りと命を賭して
いざ尋常に立ち会うがいい!」
『.............』
ケイネス「ふんっ」スタスタ
トラップ『!』チュドーンッ
ハイドラグラム『』ポワンッ
ケイネス(やはり夢の通りだ。ここで爆弾が爆発することは読んでいたぞ、)
ケイネス「―よろしい、ならばこれは決闘ではなく誅伐だ!」
ケイネス(この屋敷も夢と一緒。ならばあの切嗣が隠れていた場所まで直接向かってやるとしよう)
切嗣(敵が攻めてきたか、奴は恐らく下の階層からしらみt....)
ケイネス「scalp!(斬ッ」
スパスパスパッ
ハイドラグラム『!』
切嗣(予想よりも早くここにやってきたか、)
ケイネス「この魔術師の面汚しがぁぁあぁあぁぁあああああ!!!!SCALP!!!」
切嗣「タイムアルター、ダブルアクセル!」ダッシュ
スパスパスパッ
ハイドラグラム『!』
ケイネス「逃さんッ!」
切嗣「....」ダダダダダダダッ
ケイネス「簡単には死なせんぞッ!衛宮切嗣ゥ!!!」
切嗣「....」チャキッ
コンテンダー『』スプリングフィールド弾
切嗣(....この弾薬の口径ならあの薄い皮膜を貫通できるはずだ)
ケイネス(あ、あれは....まさか!?中身は普通の弾薬か?それとも....)
コンテンダー『!』バンッ
ケイネス(たしか最初の一撃は通常弾のはずだ。かなり厚めに守りさえすれば問題ない)
ハイドラグラム『!』ボスンッ
ケイネス「その程度の攻撃では傷一つつけられんぞ。」
切嗣「....」
切嗣(....この攻撃に対応されるとはな。天才と呼ばれるだけあるようだ)ダッシュ
ケイネス「ここまできて見逃すと思わないことだな!」
、
、
、
、
ケイネス「観念しろ、あの手は通じんぞ」
切嗣「....」
ケイネス「下衆め、楽には殺さぬ」
切嗣「....」ダダダダダダダダッ
ハイドラグラム『!』
ケイネス(起源弾の使用に警戒して魔力供給のリンクをタイミングよく切ってしまえば大丈夫なはずだ、)
切嗣「....」チャキッ(コンテンダー
ケイネス「その奥の手は通じんぞッッ!」
ケイネス(....水銀の壁を作った状態で着弾と同時に魔力のリンクを切る)
ドンッ!(起源弾
ペチャッ
ハイドラグラム『』
ケイネス「だから言っただろう、奥の手は通じんとな。」
切嗣「.....」
切嗣(やっかいなだな、僕のことを調べてきたようだ。よりによって起源弾のことまで....)
切嗣(ならば....あの手を使うまでだ)
ダッシュ
ケイネス「逃げたか。往生際が悪いぞ、面汚しめ」
ケイネス(起源弾をやり過ごせた、これであの夢の中の惨劇を回避できるぞ)
、
、
、
、
、
、
、
ケイネス「追い詰めたぞ、退路を断ったぞ。衛宮切嗣」
切嗣「....」
25mmアンチマテリアルライフル『』
ケイネス「えっ?」
クレイモア地雷『!』ドンッ
ケイネス「ぐぅっ!?」
ハイドラグラム『!!!』ポワンッ
ケイネス(この展開、夢にはなかった出来事だぞ!?)
切嗣(....あのクレイモア弾幕から身を守るのに水銀は薄い被膜状になっている。この状態なら確実に戦車一台を吹き飛ばす対物ライフルの弾は確実に命中するだろう)
25mmアンチマテリアルライフル『!!!』
ヒュンッ
ドパァーーーンッビチ、ベチャベチャビチチ(胴体が粉々に吹き飛ぶ
ボタボタボタボタ
ケイネス(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い助けて助けて助けて助けて助けて痛い痛い痛い痛い)
ボタボタボタボタ
ボタボタボタボタドバァ
ケイネス「.....かっ....ハッ....こ、コロセェ.....ゲフッ」ボタボタボタボタドバァ
切嗣「まさかここまで弾け飛ぶとはな....バラバラだ」
ケイネス「ヒューッ.....ヒューッ...ころっ....せ!」
切嗣(このままほっといても死ぬだろうが、一応トドメを刺しておくか)
ターンッ
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ーー
ガバッ
ケイネス「ひぃぃぃい!!!」脂汗タラタラ
ケイネス「体がッ!私の体がッッ!ぁぁあぁあぁぁあああああ!!!」
ソラウ「だ、大丈夫!?ケイネス!???」
ケイネス「体が....体がバラバラに弾け飛んで.....」ガクガクブルブルブル
ソラウ「弾け飛んだ?何ともないわよ、悪い夢でも見たのね~」
ケイネス「.....」
ケイネス「腕....胴....脚....ちゃんとある」ホッ
ケイネス(夢というには不自然すぎる鮮明さ、痛みの感覚。)
ケイネス(もしかしたら....もしかしたら....あれは夢ではなく、)
ケイネス(本当に起きていた出来事だったとしたら....)
、
、
、
、
、
、
、
ケイネス「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
魔方陣『!!!!!』
パアアアアアアッ
ディルムッド「問おう。貴公が私のマスターか?」
ケイネス「いかにも。」
ケイネス(『仕えることができて望外の喜び』、だったかな)
ディルムッド「仕えることができて望外の喜び!!」
ケイネス(やはり私はこの一連の流れを知っている。そしてこの後ソラウが『いい男ね』と言っていたはず)
ソラウ「上手くいったようね。これが噂のサーヴァントってやつか、なかなかいい男ね。」
ディルムッド「主よ、なんなりとご命令を」
ケイネス「とりあえず貴様の不愉快な顔は聖杯戦争が終わるまで仮面か何かで隠してもらおう。黒子が特に気に触る」
ディルムッド「は、はい」
ディルムッド「御意」
、
、
、
、
、
、
、
~数日後~
アイリスフィール「あれはアーチボルト家当主のケイネス・エルメロイよ、セイバー気をつけて!」
セイバー「はい!」
ケイネス「名前を知ってもらっていて光栄だ!ランサー、私が敵のマスターを仕留める間に敵サーヴァントの足止めを命ずるぞ。余裕があれば仕留めろ、遠慮はいらん!」
ランサー「任せてください!」
※ケイネスはセイバーのマスターが切嗣なのを知らない。
ケイネス「アインツベルンの魔術師よ、我が誅伐を受けるがよいわ~!」
ケイネス「scalp!scalp!scalp!(斬ッ斬ッ斬ッ」
アイリスフィール「うぅっ....」
アイリスフィール(つ、強い!身を守るので精一杯)
セイバー「アイリスフィール!!」
ランサー「貴様の相手はこの俺だ」カキーンッ
セイバー「くっ」カキーンッ
切嗣「舞弥、あのアイリと戦っている男。ランサーのマスターで間違いないようだ」
舞弥《何時でも撃てます、》
切嗣「奴があの礼装全てを攻撃に回している瞬間を狙え。僕もサポートする」カチャッ
舞弥《了解です》
ーーーーーーーー
.
.
.
.
.
.
ケイネス(そしてあの『衛宮切嗣』も後で確実に仕留めてやる)
ハイドラグラム『!!!!』斬ッ斬ッ斬ッ!!
アイリスフィール「いけない!」
タァーーーンッ(銃声
ケイネス「....」
ケイネス「」ドサッ
ディルムッド「主ぃぃい!!!!」
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
ガバッ
ケイネス「クソッタレ!」
ソラウ「大丈夫?ケイネス?」
ケイネス「またやられた!」
ソラウ「やられた?何が?」
ケイネス「あっ、いや、何でもないんだ」
ケイネス(そしてまたここに戻ってきた....何回目だろうか?)
ケイネス(私は聖杯戦争に敗北して殺されるたびにこの聖杯戦争直前のロンドンに戻ってくるということだ)
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ーー
ー
ー12週目の世界ー
ガバッ
ケイネス「ぐぁぁぁああああああああああああああああ!!!」脂汗ドバァー
ソラウ「大丈夫?ケイネス?」
ソラウ「負けてしまった?天才のあなたが?」
ケイネス「うるさいッ黙れ!」
ソラウ「」ビクッ
ケイネス(おのれ、遠坂時臣め....極東の猿めが....全身大火傷の痛み、絶対に復讐してやる復讐してやる復讐してやる)クワッ
ソラウ「あなた....なんだか様子が変よ、」
ガバッ
ケイネス「ひ、ひぃぃ」ガクガクブルブルブル
ソラウ「大丈夫?ケイネス??ひどく怯えてるようだけど....」
ケイネス「い、生きたまま、体をとか....溶かされて....キャスターの魔獣に....」ガクガクブルブルブルガクガクブルブルブル
ソラウ「それは酷い夢ね、大丈夫よ。あなた疲れてるのね、」
ケイネス(何回も....何回やっても殺されてしまう....もう限界だ....)
ケイネス(ならば、聖杯戦争なんぞに最初から参加しなければ....)
ケイネス「ソラウ....実は、」
ソラウ「何かしら、ケイネス?」
ケイネス「聖杯戦争の参加を辞退しようと思う....」
ソラウ「えぇ!?どうして!?あんなに時間をかけて準備したのに!」
ケイネス「すまない、すまない、すまない....もう私には無理なんだ....」
ソラウ「なんてことかしら....」
ケイネス(私は自由だ....!)
ケイネス「代わりと言っては何だが、ソラウ」
ソラウ「?」
ケイネス「一緒に旅行等はいかがかな?ハワイにでも行こう」
~数日後~
ニュースキャスター
《大変、残念なお知らせです。先日、ロンドン発ハワイ行きの飛行機が行方不明となり......》
ー22週目の世界ー
ガバッ
ケイネス「ぁぁあぁあぁぁあああああソラウ!ソラウゥ!」
ソラウ「大丈夫?ケイネス?」
ソラウ「酷い夢でも見たのね、」
ケイネス「そんなはずは、そんなはずはない、、、」
ケイネス(まさか、参加しなくても死の運命から逃れられないのか??)
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
ー29週目の世界ー
ガバッ
ケイネス「畜生!畜生!畜生ぉぉお!!」汗ドバァー
ソラウ「ひぃっ!?」
ケイネス「ウェイバァァアベルベットめぇええ!!!殺してやる!殺してやるぅ!」
ソラウ「落ち着いて!ケイネス!」
ケイネス(しかもよりによって教え子に刺される死に方とは....)
ケイネス「....もう疲れたよ」
ハイドラグラム『!』
ソラウ「?」
ケイネス(望みは薄いが自殺ならばどうか....)
ケイネス「....scalp」ザシュッ
ソラウ「いゃぁぁぁああああああああ」
ブシャァァァア
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ガバッ
ケイネス「....」
ソラウ「どうしたの?」
ケイネス「自殺でもダメか、」
ソラウ「怖い事言わないでよ、ケイネス。悪い夢でも見たの?」
・自殺でも他殺でも、この私が死ねば『聖杯戦争直前のロンドン』に戻る
・聖杯戦争に参加しなければかなり理不尽な死に方をする。(恐らく生き残る事は不可能
・聖杯戦争に参加したときは敵にやられて死ぬ。(まだマシだ
・記憶は引き継ぐ
・前回と違う事をすれば当然結果も変わる
・触媒を使わなくても使ってもなぜかディルムッドを召喚してしまう。(他の触媒は持っていないから試していない
ケイネス(ここから推測できる答えは)
、
、
、
、
、
、
ーこの聖杯戦争を勝ち抜かないと、この苦しみから逃れられない!ー
ケイネス(一応、死ぬ事はない。ならば死を恐れずに戦える。)
ケイネス(記憶は引き継ぐ。戦えば戦うほど他の参加者より経験を積め、より強くなれる)
ケイネス(ならば『死』は敵ではない、味方なのだ。)
ケイネス(私は一流の魔術師から百戦錬磨の一流の魔術師となれる)
ケイネス「クックックック、ハッハッハッハッハッハ!!!!!」
ソラウ「あなた様子がおかしいわよ?」
ディルムッド以外の召喚の件ですが、ケイネス先生がいくら努力して他の聖遺物を入手しようとしても失敗して死ぬので
今回はディルムッド固定という条件です。
ー31週目の世界ー
ケイネス「時間は無限大。私の研究した魔術の全てを改良することも可能だ、」
ケイネス「死を恐れるな」
今回の死因:ライダーに轢き殺される
ーーーーーーーーーー
ー36週目の世界ー
ケイネス「我が魔術礼装『月霊髄液』に頼りきった戦術ではやはり戦闘の幅が小さくなる傾向がある。私個人の戦闘力を上げることを怠ってはならんな。」
今回の死因:綺礼のマジカル八極拳
ーーーーーーーーーー
ー41週目の世界ー
ケイネス「あまり得策ではないと考えてはいたが、今回はあえてディルムッドをバーサーカーで召喚してみよう。ソラウ、魔力供給の負担が増えるが頼んだぞ。」
ソラウ「はい。」
ディルムッド「コノディルムッドノイカリヲオモイダセー!!!」
今回の死因:ディルムッドに裏切られて惨殺される。
|
46週目
|
47週目
|
48週目
|
49週目
ガバッ
ケイネス「ふぅ....」
ソラウ「あらケイネス、起きたのね」
ケイネス(あの金色の偉そうなサーヴァントめ....今度こそ仕留めてやる、、、)
ーーーーーーーーーーーーーーー
ー67周目の世界ー
ガバッ
ケイネス「また失敗した....また失敗した....また失敗した....また失敗した」
ソラウ「いや....どうしたのよ、、」
ーーーーーーーーーーーーー
ー79周目の世界ー
ガバッ
ケイネス「........」
ソラウ「....?」
ケイネス「................」
ーーーーーーーーーーーーーー
ー90周目の世界ー
ガバッ
ケイネス「ソラウ、」
ソラウ「どうしたの?」
ケイネス「君は神の存在を信じるかね?」
|
|
98周目
|
99周目
|
ガバッ
百戦錬磨のケイネス
「今度こそ....今度こそ抜け出せるかもしれない!」
ソラウ「どうしたの?」
百戦錬磨のケイネス
「今すぐにロンドンを発つ。ゆくぞ」
ソラウ「えぇっ!?早過ぎない」
百戦錬磨のケイネス
「グズグズするなッ!」
ソラウ「まるで人が変わったかのようね、どうしたのかしら」
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
ケイネス
『汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ』
魔法陣
『!』パァァァァア
ディルムッド「問おう、貴公がわt....」
ケイネス「そうだ、私がお前のマスターだ。」
ディルムッド「仕えることができt....」
ケイネス「御託はいい。ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの名の下に、令呪をもって命ずる。」
令呪『!』グワンッ
ディルムッド「?」
ケイネス「お前の信じる『騎士道』というくだらぬ価値観を『捨てよ』」
ディルムッド「なっ!?」
ディルムッド「!」
令呪『!』キィンッ
ケイネス「『どんな卑怯な手段を使ってでも敵を倒せ』」
ディルムッド「そんな...」
ケイネス「悪いが文句を聞く耳はもっていない。早速だが貴様に仕事があるぞ」ニヤリ
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
老夫婦「ウェイバーちゃん~」
ウェイバー「我ながら良い案を思いついたもんだな~、あの老夫婦に催眠術をかけたことで住居と金銭の問題が一気に解決できたし」
ズドーーーンッ!
老婦人「きゃあっ!?」
ウェイバー「な、なんだ!?」
???「やぁ、ウェイバーベルベットくん。」
ウェイバー「そんな、どうしてここが??」
ケイネス「君には特別な課外授業を受け持ってあげよう」
ケイネス「私から盗んだ聖遺物で召喚したサーヴァントが今どこで何をしているか私は『知っている』。」
ウェイバー(こうなったら令呪を使うしか....!)
スッ
令呪『』
ウェイバー「ライd....」
ハイドラグラム『!』ザシュッ
ウェイバー「」ブシャァァァアビチビチ
....ドサッ
ケイネス「これで新しく令呪が3つ増えたな。ウェイバー君、これは私に悪事を働いた報いだよ。」
ケイネス(そして、マスターを失ったライダーは自然消滅を待つ)
ケイネス(他のマスターと契約しないことは前回から確認してある。マスターを失った怒りでさぞ暴れまわるが、暴れまわっただけ魔力を消費して早く消えてくれるから好都合だな。)
ケイネス(後はキャスター陣営に送ったランサーの帰りを待つのみ)
ドドーーンッ
ディルムッド「....」
龍之介「えと、誰かなぁ~、きみ?困るんだよね、いきなり家に来られるとさぁ~。壁壊れてるし」
ディルムッド「....」チャキッ
ザシュッ
龍之介「うっ....」ドスッ
キャスター「りゅ、龍之介ぇ~!キェェェェェエエエエエエ!!」
魔本『』ドスッ
キャスター「ぬぉっ!?」
ディルムッド「その人皮で作られた気味の悪い魔本が魔術炉心の役割を果たしているのは主から聞いている。悪いが死んでもらうぞ!」チャキッ
ザシュッ!
キャスター「」ー消滅ー
龍之介「....」ドクドクドクッ
龍之介「すっげーキレー、そっかそりゃ気づかねぇよな....」
龍之介「灯台もと暗しとはよくいったもんだぜ、誰でもねぇ俺の腸の中に探し求めてたものが隠れてやがったんだ、」
龍之介「やっと見つけたよ、ずっと探してたんだぜ。何だよ俺の中にあるならあるっていってくれりゃいいのにさ。・・・」
スタスタスタッ
ディルムッド「恨んでくれるなよ」
ドスッ
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ディルムッド「主よ、頼まれていた敵マスターの『左腕』です。」
ケイネス「うむ、よくやった。」
ケイネス(そして私の令呪は現時点で七画。)
ケイネス(次にやることは、、、)
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
雁夜「くっ....うっ....」
???「ずいぶんと苦しんでいるようだな」
雁夜「だ、誰だ!?」
ケイネス「初めましてと言っておこうか。間桐雁夜。私の名前はケイネス・エルメロイ・アーチボルト。今回の聖杯戦争の参加者であり、君の敵だ。」
ケイネス「待て待て、落ち着きたまえ間桐雁夜くん。私は君の味方だ。」
雁夜「そ、そんなこと....信じられるか」
ケイネス「私は君のことを『知っている』のだよ。君の望むことも全てな」
雁夜「これだから魔術師った奴らは嫌いなんだ....人を見下した物言いをして、」
ハイドラグラム『!』ボワンッ
???「....」
雁夜「う、嘘だろ!?」
桜「....」
ケイネス「君が彼女を助けるために今回の戦争に参加したのを知っていてね。だから私が間桐の家から救出しておいたのだよ、この少女を。」
雁夜「でも....あの化物が放っておかないだろう」
ケイネス「安心しろ、アーチボルト家の名誉にかけてこの少女を全力で匿おう」
ケイネス「そして....君は、『遠坂時臣』を憎んでいる」
雁夜「!?」
ケイネス「だからこそ、手伝おうと言うのだよ。遠坂を討つのをな」
雁夜「.....本当か?」
ケイネス「ああ、本当だとも」
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
ー
ケイネス(アーチャーとアサシンは遠坂時臣と言峰綺礼が同盟関係にある以上はバーサーカーが奴らを抑える)
ケイネス(残る懸念は、セイバー陣営)
ケイネス(『衛宮切嗣』
ケイネス(必ず仕留める)
ーアインツベルンの森ー
ケイネス「準備はできたか?」
ロシア人傭兵《もちろんですぜ。》
《いつでもいけますよ》
《早く殺らせてください》
ケイネス「給料分はしっかり働いてもらうぞ。では最後に作戦を確認する。」
ケイネス「
αチームはランサーと共にヘリコプターで屋上から侵入、
βチームは屋敷を包囲して逃げる標的を確実に仕留める。クレイモアも仕掛けろ。
最初に陽動で私が正面玄関から侵入する。
屋内でサーヴァントに遭遇したら相手にするな。ランサーに任せておけ。
衛宮切嗣を殺したものにはボーナスをやる
以上だ。」
ロシア人傭兵《了解です。》
ドドーンッ
ケイネス「アーチボルト家九代目当主、ケイネス・エルメロイがここに推参仕る。アインツベルンの魔術師よ!求める聖杯に誇りと命を賭して
いざ尋常に立ち会うがいい!」
トラップ『!』チュドーーンッ
ケイネス「ふっ」シュッ|||||
ケイネス(この程度の攻撃、月霊髄液を使わなくても造作もなく避けられる)
ケイネス「―よろしい、ならばこれは決闘ではなく誅伐だ!」
戦闘ヘリ『』バラバラバラバラバラバラッ
ラベリング降下中||||||
傭兵隊長「雇い主以外は見つけた者全て殺してかまわん。サーチアンドデストロイだ!」
ーーーーーーーーーーーー
.
.
.
切嗣「あのケイネスという男、どうやら仲間を雇っていたようだな。舞弥、アイリを頼む」
舞弥「わかりました。」
アイリスフィール「切嗣....気をつけて」
ーーーーーーーーーーーー
切嗣(恐らく屋上から侵入している敵と正面玄関にいるケイネスがシラミつぶしに僕を探しているはずだ、時間がない)
切嗣(だがケイネスが『魔術師』である以上はこの起源弾は切り札となる)
カンッ.....コンッカランッ.....
催涙ガス『』ぷしゅー
切嗣「くっ.....」チャキッ ダダダダダダダッ
傭兵「敵の動きが早くなったぞ!?」
傭兵隊長《標的は魔術師と呼ばれる類の存在だ、少々やっかいな反撃をされるかもしれんので気をつけろ》
傭兵「了解。」
ケイネス(衛宮切嗣、君はあの傭兵程度にやられるような安い人間ではない事を私は知っている)
ケイネス(早く私の前に出てこい!)
、
、
、
、
、
、
タッタッタッ
切嗣「........」ゼェゼェ
ケイネス「ふっ、衛宮切嗣。悪いが君には死んでもらうぞ。全身全霊を以ってお相手しよう!!」
ケイネス『Fervor,mei,sanguis(沸き立て、我が血潮)』
魔術礼装
ー月霊髄液・改造型ー
ハイドラグラム『!』
ケイネス『Wear(纏え』
切嗣(....あの水銀の物体がケイネスを包み込んでいる)
ケイネス(幾度も繰り返された戦いの中で改良を重ねた礼装の力だ。存分に力を発揮させてもらおう)
完成
ー『メタルケイネス』ー
(月霊髄液で全身をコーティングしたケイネス先生)
メタルケイネス「It's show time!」
切嗣「くっ.....」ダダダダダダダッッ
カキンッカキュンカキンッキキンッ
メタルケイネス「そんな豆鉄砲では効果は望めんぞ」
メタルケイネス「scalp!(斬ッ」
ケイネス(さらに恐ろしいのは、余った月霊髄液の水銀は自律行動の礼装として以前と同じ様に使えること。)
メタルケイネス「はっはっはっはっ!どうかね、私と魔術礼装との同時攻撃は?降参するなら楽に殺してやるぞ?」
切嗣「......」チャキッ
切嗣(しかし、魔術回路を使用してる限りはこちらにも決定打を与えるチャンスは残っている)
切嗣(装甲車を貫通するスプリングフィールド弾ならばあのやっかいな金属を貫通できるかもしれないな)
コンテンダー『!』タァーーンッ!
ボスッ
ケイネス「効かん、効かん、効かん、効かん!」
ケイネス(何故なら、あのくり返される時の中でどの程度の厚さがあれば防げるかを検証していたからな!!)
切嗣「....強いな」
切嗣(....ならば、次に奴が攻撃を仕掛けたタイミングで起源弾を使うしか手段がない)
切嗣「....チャンス?」
メタルケイネス「私は今から君が攻撃するまで反撃をしないという約束をしよう。」
切嗣「....ずいぶんと余裕なんだな、魔術師様は」
メタルケイネス「君の攻撃は全て通じないという証明をしてあげようというわけだ。これは私の特別講義だよ、衛宮切嗣くん」
切嗣(慢心か....油断しきった上でのこの発言。好都合だ。そうでなくては困る。
恐らく奴は僕の攻撃に、魔力を使った防御を行う筈だ。ならば、)
切嗣「.....」チャキッ ダダダダダダダッ!
ガガガガガガガガガッ
メタルケイネス「ふん、噂の魔術師殺しとはこの程度かな?」
コンテンダー『』起源弾装填
メタルケイネス「予め言っておく、何をやっても無駄だ」
切嗣「.....」カチッ
コンテンダー『!』タァーーンッ!
ボスッ
メタルケイネス「....」
メタルケイネス(起源弾か?)
メタルケイネス『ぎゃぁぁああああああああああああ!!!!』
切嗣(上手くいったようだ、)
メタルケイネス「ぁぁぁぁぁぁああああ.......と言うのは嘘だ。」
残り六画
メタルケイネス「まったく面倒な攻撃だよ。君の『起源弾』というやつは。何回も手を焼かされたよ、これには」
切嗣(奴に何故起源弾が効かなかった!?....魔術回路を使わない方法で魔術を行使していたのか?いったいどうやって、)
ケイネス(改造した月霊髄液の魔力は『令呪』から供給している。最初から詰んでいたのだよ、衛宮切嗣)
メタルケイネス「あまり何度も使われると厄介だ、そろそろ終わりにしよう。」
メタルケイネス「ーdivision(分裂」
月霊髄液『!』ボボボボボボッ
↓
小さな月霊髄液『』×六体
切嗣「....」
ケイネス「複数体による360度同時攻撃」
ケイネス「ちなみに、反応速度にも以前より手を加えて貴様の5倍速にまで対応できるようになっている。例の魔術で逃げるのは不可能だ。」
ケイネス「諦めろ、諦めろ、諦めろ、諦めろ!!!」
切嗣の令呪『!』キィーンッ
切嗣「ここに来い、セイバーッ!!!!」
ブォンッ
セイバー「大丈夫ですか!?切嗣!」
令呪『!』キィーンッ残5画
ケイネス「ランサァァア!!!」
ブォンッ
ディルムッド「主よ!」
ケイネス「命令だ、あの敵のセイバーを打ち倒すのだ。」
ディルムッド「御意。」
セイバー「くっ!」ガキィンッ
セイバー(これでは切嗣を守れない、)
切嗣(最後まで足掻いてみせる....!)
切嗣「Time alter ・ square accelッ!(四倍速」
メタルケイネス「Scalp!(斬」
月霊髄液
『!』ヒュッ
『!』ヒュッ
『!』ババッ
『!』シュッ
『!』ヒュッ
『!』サッ
シュパッザシュッ
スパスパスパッ
ズバババババババッ!
ブシャァァァアアアアアアアビチビチビチ
切嗣「」ドサッ
セイバー「切嗣ゥゥゥウ!!!」
ディルムッド「....」
ケイネス「どうせそのセイバーは放っておいても消滅するだろうが、お前の好きにしろランサー。決着をつけることを『望んで』いただろう、たしか」
ケイネス(さて、まだここでやる事が残っている)
ケイネス「傭兵諸君、仕事だ。この屋敷に集まってくれ」
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ケイネス「アインツベルンの屋敷から押収した品を見せてくれ」
傭兵『はい、ここに全て揃っております。』
押収品『』
ケイネス「金目のものはいらん。貴様らが持っていけ。」
傭兵『ありがとうございます。』
ケイネス(さて、目当ての品はあるか、)
ケイネス「!」
ケイネス「あった!あったぞ、切嗣の持っていた起源弾が!」
傭兵『報告です、アイリスフィールを捕まえました。側にいた黒髪の女は射殺しまたり』
ケイネス「うむ、ご苦労」
ケイネス「その女をここに連れてこい」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
傭兵『おい、歩け』ドンッ!
アイリ「よくも!よくも切嗣を!」
ケイネス「サーヴァントがもう複数体脱落した段階なのに元気なのだな、『小聖杯』」
アイリ「くっ」
ケイネス「この女を地下牢に閉じ込めておけ、」
傭兵『了解』
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
ー
ー
ケイネス「間桐雁夜くん、私からの選別だよ。受け取りたまえ」サッ
コンテンダー『』
起源弾『』
雁夜「あ、ありがとう」
ケイネス「これを何とかして遠坂時臣に撃つことができれば、奴は確実に死ぬ。君の目的は果たされるわけだよ」
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
ー
スパッ!
アサシンa「ぐあっ」
メタルケイネス「ふん、アサシンなど....ましてや百体に分裂したものなんかに私が負けると思ったかね?思慮が足りんよ、君達」
ケイネス「ランサー、後ろを頼んだぞ」
ディルムッド「はい」
アサ子「かかれーっ!」
アサシン達『うおぉぉぉぉぉおおお』
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
起源弾『!』チュンッ
時臣「うっ.....ガッ...ゲハァッ!!!」ブシャァァァァア!!!ビチビチビチ
ドサッ
雁夜「や、やった!やったぞぉ、ざまあみろ時臣!」
ギルガメッシュ「死んだか、時臣」
雁夜「来い、バーサーカー!」
バーサーカー「ahhhhhhhhh!!!!!」
ギルガメッシュ「遊びが過ぎたようだな。覚悟してもらうぞ」ブォンッ
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
ー
ー
~数日後~
ケイネス「さて、事前に放った使い魔の報告で遠坂時臣の死亡は確認済み」
ケイネス「私とランサーで言峰教会を襲撃して言峰親子も殺害してある。よくやった、ランサー」
ディルムッド「ありがとうございます!」
ケイネス「残るバーサーカー陣営、間桐雁夜は放っておいても勝手に自滅する....つまり」
ケイネス「私の勝利は確定的なものとなったのだ!!」
ソラウ「さっすがよ!ケイネス!見直したわよ!あなた一流の魔術師である以前に一流の戦士だったのね!」
ケイネス(まだ起動していないということは、バーサーカーは生きているということか?)
ケイネス(まあ、大丈夫だろう。雁夜おじさんだし、
パリンッ
????『GAaaaaAaaaaaa!!!』
傭兵《屋敷に何者かが侵入しm....ぎゃぁ!!》
ケイネス「まさか、ね。間桐雁夜め、恩を忘れて私に刃向かうとはな。よろしい、これは誅伐だ」
ディルムッド「私が食い止めます!主よお逃げください!」
ケイネス「wear(纏え!」
ハイドラグラム『!』ボワッ
メタルケイネス「大丈夫だ、ランサー。確実に息の根を止めるために私も戦おう」
バーサーカー「Aaaaaaa」チャキッ
コンテンダー『』
メタルケイネス「!?」
ケイネス(あ、あれはまさか!??)
騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー
コンテンダー『!』ドギューーンッ!
ディルムッド「ぐぁっ!」
ケイネス(しまった、現在ランサーに魔力供給しているのはソラr....)
ソラウ「い、いやぁぁぁぁぁあ」ブシャァァァァア
メタルケイネス「ソ、ソラウゥゥ!!!!」
バーサーカー「GUuuuuuuu!!」ガチャッ
騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー
宝具化コンテンダー『!』ドキューーンッ!!
.....ボスッ
月霊髄液『!、!、!』ボコボコボコッ
ケイネス(な、なんだ、普通の起源弾とは威力が違う???)
令呪『!、!、!』パリンッパリンッパリンッ
令呪残0画
ケイネス(そ、そんな....起源弾の性能が桁違いn.......)
ケイネス「がっ....アッ....」ブシャァァァァァァァァァァァァァァア!!!!
ドサッ
ケイネス「」
ランサー「主ィィイ!!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
ー
ガバッ
ケイネス「そ、そんな....そんな...あと少しだったのに....」
ソラウ「どうしたの?さてはエッチな夢でも見てたのかしら、ケイネス?」
ケイネス『黙れッ!!!!』
ソラウ「えっ.....ごめんなさい」
200回目までなら、今度こそはと私も思う。
避けられなかった惨劇に。
100、またもかと私は呆れる。
避けられなかった惨劇に。
三度目なら、呆れを越えて苦痛となる。
七度目となるとそろそろ喜劇になる。
200周目までなら、今度こそはと私も思う。
避けられなかった惨劇に。
300周目からは、またもかと私は呆れる。
避けられなかった惨劇に。
1000回を超えるとなるとそろそろ喜劇になる。
ー1047回目の世界ー
ガバッ
ケイネス「.......」
ソラウ「あら、起きたの?」
ケイネス「....このまま寝かせてくれ」
ケイネス「この死のスリルがたまらない!」
ー1086周目の世界ー
ケイネス「なんだ、意外と大気中から魔力をかき集めるのは簡単なものなのだな。いろいろ試してみるか」
ー1111周目の世界ー
ケイネス「高速詠唱は楽だから良い。空間転移というのも試してみるか、」
ー2365周目の世界ー
ケイネス「固有結界の継続時間、もう少し伸ばせるかもしれんな」
ケイネス「」
ケイネス「」
ケイネス「」
ケイネス「」
ケイネス「」
ケイネス「蒼崎橙子の人形作りを参考に独学で頑張ってみたが、自分と寸分違わぬオリジナルと同じコピーが完成したか、」
ー3246周目の世界ー
ケイネス「新術の実験に時計塔を襲ってみるか、」
ケイネス「私、僕、俺、アタシ、、」
ケイネス「『あなた』じゃない、『あなた達』だ」
ー6754周目の世界ー
ケイネス「私は何処にでもいるし何処にでもいない。」
ー8564周目の世界ー
ソラウ「ケイネス、どうしたの?その眼は....なんか変よ?」
ケイネス「....この世界は死で満ち溢れている」
ケイネス「....この世界の真実にようやくたどり着いた」
ケイネス「この世界の神、いや我々の存在するこの世界を作った存在」
ケイネス「ステイナイトの前日談で、ゼロ....」
ケイネス「うろぶt....」ブシャァァァァァァァァァア
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
ー
ー10000周目の世界ー
ガバッ
ケイネス「....虚淵玄、奈須きのこ、TYPE-MOON」
ソラウ「何言ってるの?」
ケイネス「もう生きる続けるのに疲れた、ゆくぞ」
ソラウ「え?」
ケイネス「面倒だ、空間ごと移動させる」指パッチン
ーーーーーーー
ーーーーーーー
ー冬木市ー
ソラウ「ここ何処なの???どうしたの??突然わけわかんないわよ!」
ケイネス「騒ぐな、すぐ済む」フワッ
ケイネス「この世界に存在する物体の確率を操作すれば良いだけだよ」
ソラウ「?」
冬木市『』ゴゴゴゴゴゴコゴ
ソラウ「な、何をしているの?」
ゴゴゴゴゴゴコゴ
悲鳴
『いやぁぁぁぁぁああ!』
『うわぁぁぁぁぁぁぁああああ』
ゴゴゴゴゴゴコゴ
ケイネス「この街にいる生物全てを魔力に変換しただけだ。」
ゴゴゴゴゴゴコゴ
ソラウ「嘘でしょ!?」
ケイネス「すまないが、いま集中しているから話しかけないでもらいたい。」
ブォンッ
ソラウ「その左手の模様は???」
ケイネス「サーヴァント7体分の令呪だよ。
さっき私が聖杯の召喚システムに手を加えたのだ。私1人で全ての召喚をできるように」
セイバー「....」
ランサー「....」
アーチャー「....」
アサシン「....」
ライダー「....」
キャスター「....」
バーサーカー「....」
ケイネス「魂を呼び寄せただけで意識は殺した。喋るだけ面倒だからな」
ソラウ「あなた本当にケイネスなの?」
ケイネス「私はケイネス.エルメロイ.アーチボルトさ。それ以上でもそれ以下でもないよ、ソラウ。」
令呪残り0画
セイバー「....!」
ランサー「....!」
アーチャー「....!」
アサシン「....!」
ライダー「....!」
キャスター「....!」
バーサーカー「....!」
ブシャァァァァァァァァァア!
ドサドサッドサドサドサドサッ
ソラウ「ひぃっ.....」
ケイネス「これで、聖杯は起動する」
聖杯『』ゴッゴッゴッゴッゴゴ
聖杯『』
ケイネス「貴様が汚染されてろくなものではないことは知っているぞ、だが使わせてもらおう」
ケイネス(願いの内容は『全て存在を抹消しろ』。これで私は繰り返す世界から消えることができるのだ。)
???「待て、」
ケイネス「邪魔をしに来たか『抑止力』ども」
エミヤ「........」
ケイネス「たかだか守護者や抑止力ごときで私を止めることができると思うなッ!」
真祖アルクェイド「後悔されるなよ、」
ケイネス「よろしい、ならば戦おう!!この思い上がった世界とな、」
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
ーーー
ーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
ケイネス「という夢を見たんだ、ソラウ」
ソラウ「何を馬鹿なことを言っているの?あなた一応それでもアーチボルト家当主でしょ」
ケイネス「むぅ、」
ソラウ「そろそろ仕事に行かないとダメな時間よ、じゃあ気をつけてね」チュッ
ケイネス「ああ、行ってくる/////」
ケイネス「もちろんさ、」
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
エピローグ
ケイネス
ナレーション
《私は先祖が作った会社の経営をしている実業家である。》
《先月、親の会社を継いだ上に、新しい家族も増えることになっててんてこ舞いだ。》
ー会社ー
ケイネス「こら!ウェイバーくん、遠坂さんは大事な取引先なんだぞ!」
ウェイバー「まったく、君はいつまでたっても成長しないのだな....」
ナレーション
《時々ふと考えることがある、》
《あの夢はもしかしたら本当の事だったんじゃないかと、》
《もっともそんなことはありえんがね、》
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ケイネス「絵本?誰にもらったんだ?」
ソラウ「生まれてくる子供の為にって、母がくれたのよ。昔話ね」
ケイネス「この世界を作った神話の神様の話か、」
ケイネス「永遠に繰り返される時の悪戯に翻弄された男の話だったな」
ソラウ「そして世界に抗い新しい世界が生まれた、」
ケイネス「生まれてくる子、ソラウに似てると良いな。私に似てると前髪が薄くなるだけだ、」
ソラウ「あたしは好きよ、その前髪」チュッ
ケイネス「/////」
ケイネス(幸せなだなぁ)
ー終わりー
m(_ _)m
今度は前髪の運命に抗うためにループしなきゃな
先生が報われて良かった…
まさかケイネス先生が主役でこんなに面白い話に出会えるとは思わなかった
蛇足だとは思うけどエピローグの世界ではケイネス以外の聖杯戦争の参加者はどんな人生を送ってますか?特に切嗣
ケイネス:社長
ウェイバー:ケイネスの会社で働く
遠坂時臣:神戸に本社がある貿易会社
龍之介:死刑囚。すでに故人
綺礼:中華料理屋店長
雁夜:会社員
切嗣:買い取った特許などを元に様々な企業に訴訟を起こすパテントトロールの組織のリーダー
面白かったよ
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453304483/
Entry ⇒ 2016.01.25 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (1)
切嗣「ゲルテナ展?」
切嗣「僕はただ、娘を取り戻して、一緒に静かに暮らしたいだけなのに」
切嗣「くそっ……」
-
--
---
アハト「裏切り者にアインツベルンの敷居をまたがせるとでも思ったか?」
切嗣「そんなのはどうでもいい、イリヤを……娘を返せ!」
アハト「あれは次の聖杯戦争の貴重な駒だ。裏切り者にはやらん」
切嗣「ふざけるな!イリヤはお前達の駒なんかじゃない。イリヤは……イリヤは!!」
アハト「裏切り者の戯言等聞くつもりはない、帰れ!」
---
--
-
切嗣「………」
切嗣「また、来よう。これ以上粘っても今回用意した手段じゃ結界は破れない」
ゲルテナー、ゲルテナハイカガデスカー
切嗣「?」チラッ
「あ、お兄さんもよければいかがですか?今博物館でゲルテナ展開催しているんですよ」スッ
切嗣「あ、あぁ」
切嗣「………」ペラッ
切嗣「期間限定でゲルテナ展開催、このパンフレットを持参すれば入場料50%OFF。場所は……近いな」
切嗣「せっかくだし、行ってみよう。士郎への土産話にもなる」
切嗣「これがゲルテナ展か……」
切嗣「(せきをする男、個性なき番人……こういうのを芸術っていうんだろうけど、僕にはよくわからないな)」
切嗣「(人もかなり多い所を見る限りだと、ワイズ・ゲルテナの作品は相当人気なんだろうけどね)」
切嗣「えっと、この一際大きな絵は……絵空事の世界」
ゾクッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「(なんだ、今この絵からとんでもない魔力を感じたような……)」チラッ
シーン……
切嗣「人が……いない?まさか、人払いの結界か?」
切嗣「(だが、何の為に?アインツベルンが裏切り者である僕を始末する為にこんな事を?)」
切嗣「(いや、それならイリヤを取り戻そうとアインツベルンに向かった時に殺せばいい。なら一体誰が?)」
ガチャガチャ
切嗣「くそっ出入り口も開かない。結界の基点を破壊しなければだめか」
切嗣「(武器はコンテンダーと起源弾しか持ち込んでいない。心細いが、なんとかするしかない)」
ベチャッ
切嗣「!!」バッ
切嗣「果物……?どうしてこんな所に」
ニャーオ…
切嗣「今度は猫の声か。一体どうなっているのか」
切嗣「(待てよ、あの絵から魔力を感じたと思った瞬間から人が消えている。つまり、あの絵が基点か?)」
切嗣「……確かめる必要があるな」
切嗣「先程見た時とは絵が全然違う?だが、この絵から魔力を感じる」
切嗣「(どうする、起源弾を打ち込んでみるか?いや、一度結界の術式を調べてからにしよう。でなければ何が起こるかわからない)」
ドロ…
切嗣「(青の絵具が作品から垂れている?これは一体……)」
タ………ケ
切嗣「!?」
切嗣「今のは……一体?」
切嗣「いや、今はそんな事を気にしている場合じゃない。結界の基点を……」クルッ
ア ノ コ ヲ タ ス ケ テ
切嗣「なっ!?」
切嗣「(床に血でメッセージが!?あの子を助けて……僕に助けを求めているのか?)」
切嗣「やはりさっきの絵が……ん?」
切嗣「(垂れていた青の絵具が文字になっている。『したのかいにおいでよ、ひみつのばしょ おしえてあげる』)」
切嗣「どうやら、下の階に行かなければならなさそうだね」
切嗣「(罠の可能性もあるが……行ってみよう)」
切嗣「(いいだろう、どこの誰かは知らないが、誘いに乗ってやる。元は魔術師殺しと呼ばれた身、思い通りに行くと思うな)」
スッ
バチャン
切嗣「……ここは?」
切嗣「(先程とは全く違うどこか、と行った所か。建物の中みたいだが、油断する訳にはいかないな)」
切嗣「……ん?」
切嗣「これは、薔薇?黒い薔薇は初めてみるな」
切嗣「奥に扉があって、机を動かせない事から……恐らく、薔薇を取れという事か」スッ
切嗣「(だがこの薔薇、呪いにも似た魔力を感じる。下手に扱わない方がよさそうだ)」
切嗣「(薔薇を取った途端に机を動かせるようになったか。これで奥に進める)」
切嗣「(扉を開けた先には一枚の絵画か。笑顔の女性の絵……その下には青い鍵が落ちている
切嗣「(扉を開けた先には一枚の絵画か。笑顔の女性の絵……その下には青い鍵が落ちている。拾っておくか)」
スッ
クワッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「(絵が不気味な表情になった!?一体どういう事だ)」
切嗣「(絵の下にはメッセージか……『そのバラ朽ちるとき、あなたも朽ち果てる』。どうやら、先程拾った薔薇が朽ちた時、僕も死ぬようだ)」
切嗣「(だが、それをわざわざ教えた理由はなんだ?一体何が目的なんだ)」
切嗣「とにかく、ほかには何もないようだし部屋を出るか」
ガチャ
カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ
カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ
切嗣「!?」
切嗣「(まさか、この青の鍵を取ったからか?だがこれを戻した所で状況は変わらなさそうだ)」
ゾクッ
切嗣「!!」
切嗣「(嫌な気配がする。このままここに長居してはいけない)」
切嗣「くっ!」ダッ
…………
切嗣「はぁ……はぁ……」
切嗣「青い扉か。恐らく、ここでこの鍵を使えば」ガチャ
切嗣「やはりか。思った通りだ」キィ……
切嗣「今度は、緑色の部屋か」
切嗣「(虫の絵が並んでいる。左にはメッセージ)」
切嗣「(『はしにちゅうい』……これに隠されたヒントを解けなければ、恐らくよくない事が起きる)」
切嗣「とにかく、まずは調べて……ん?」
切嗣「床にいるのは……アリか?」
アリ「ぼく アリ」
切嗣「喋った!?」
アリ「ぼく 絵 だいすき ぼくの 絵 かっこいい」
アリ「ぼくの 絵 見たいけど ちょっと 遠い ところにある」
切嗣「」
切嗣「(アリの絵、か……連れて行って調べてみるか)」
一時離脱
ガバッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「壁から手が出てきた?……ぐっ!」ガクッ
切嗣「がっ……ぁ……!」
切嗣「はぁ……はぁ……ぐ……一体、何が」
『そのバラ朽ちるとき、あなたも朽ち果てる』
切嗣「まさか!?」ゴソッ
切嗣「薔薇が一枚欠けている。なるほど、それでこの痛みか」
切嗣「それに、はしに注意の意味もわかった。なら古風だが真ん中を通ればいい」
切嗣「通れたのはいいが、扉に鍵がかかっているな」
切嗣「だがアリの絵はここにあったのか。ほら、見たがっていたお前の絵だぞ」
アリ「あっ ぼくの 絵 かっこいい」
切嗣「…………」
切嗣「…………それだけかい?」
アリ「あっ ぼくの 絵 かっこいい」
切嗣「…………」イラッ
切嗣「この絵、少しの間借りて行くよ」ガコッ
切嗣「…………」
切嗣「アリの絵を橋にして進むか」
グシャ
切嗣「…………」
切嗣「(絵の中のアリが潰れたように見えたが、気のせいだ)」
……
切嗣「やはりここに緑の鍵があったか」
切嗣「(これであの扉を開く事が出来るはずだ」スッ
ガタッ
切嗣「!!」バッ
切嗣「マネキンが動いた?くっ、僕を捕まえるつもりか」
切嗣「タイムアルター……ダブルアクセル!!」ダッ
切嗣「ぜぇ……はぁ……なんとか、逃げ切ったか」
切嗣「はぁ……が……!!」
切嗣「(反動が思っていたよりもでかいな。僕の身体も相当ガタが来ているらしい)」
切嗣「……鍵のかかった扉を開けて、先に進もう」
(◎ω◎)ニャーン
………
切嗣「猫の壁にかくれんぼ、動く石像、嘘つきの部屋、猛唇、赤い服の女……」
切嗣「(いくつもの仕掛けを突破したが、未だに奥にはたどり着けない)」
切嗣「(この魔術の使用者は一筋縄ではいかなさそうだ)」
切嗣「(だが、こうなると本当に何が目的……ん?)」
切嗣「青い花びら……僕の薔薇と同じもの?」
切嗣「(だとしたら、僕と同じように巻き込まれた人間がいる?それとも罠か?)」
切嗣「(前者なら放ってはおけない、後者なら返り討ちにするまで。辿ってみよう)」
切嗣「(恐らく、この薔薇の持ち主はここで力尽きたか。あるいは……)」
切嗣「(いや、今は憶測で決め付ける段階じゃない。それよりもここから脱出しなければ)」
切嗣「…………ん?」
切嗣「(あんな所に幼い子供が倒れている?)」
切嗣「(あらかさまな罠だが。無視しても問題はなさそうだが)」
(イリヤ「うん、私キリツグが帰ってくるの、良い子にして待ってる!」)
切嗣「……っ!」
切嗣「…………君、大丈夫か?」スッ
切嗣「…………脈は……なし」
切嗣「…………手遅れか」
切嗣「(また、僕は……助けられなかったのか)」
切嗣「(イリヤと同い年位の、小さな子供も)」
切嗣「くそっ!」ドンッ
ポロッ
切嗣「!」
切嗣「これは……薔薇の茎?」
切嗣「ほとんど燃えているけど、これがこの娘の……」
切嗣「…………」
スッ
切嗣「(何をしているんだ、僕は)」
切嗣「(もうこの娘は助からないと分かっているのに、何故この娘を背負って歩いている)」
切嗣「(何故…………)」
切嗣「見た所、この仕掛けも解かなければいけないんだろうけど……手がかりがないとどうしようもない」
切嗣「道は続いているようだし、ここは後回しにしよう」
ガチャ
切嗣「今度は迷路か。不意打ちには注意しないと……」
バッ
切嗣「ね!」タァン
ドサッ
切嗣「マネキンか。……起源弾で屠る事が出来るのはわかったが、もったいないな」
切嗣「残弾が少ない以上、使用は控えないといけないな」
切嗣「とにかく、この迷路の仕掛けを解いてみよう」
切嗣「……音がしたかと思えば、新しい扉か」
切嗣「(後一体、いくつの仕掛けを解けばいいんだろうね)」ガチャ
切嗣「ここは……オブジェの部屋か」
切嗣「(見た目はともかく、どれも完成度は高い)」
切嗣「……ん?木の葉の中で何かが光ったような」
切嗣「これは……結婚指輪か」
切嗣「(なるほど、これを先程の仕掛けに使用すればいいのか)」
切嗣「(…………そういえば、アイリに結婚指輪を渡せなかったな)」
切嗣「…………」
切嗣「感傷に浸っている場合じゃないか。早く進もう」
首マネキン「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」ズラッ
切嗣「これは……さすがに気味が悪いな」
切嗣「(この様子だと、この先も長そうだ。食べ物を持ち込んでおけばよかったな)」
切嗣「(昔なら、これよりもずっと危険な戦場をいくつもくぐり抜けてきたんだけどね。本当に衰えたよ)」
ガタンッ
切嗣「タイムアルター、ダブルアクセル!!」ダッ
………
切嗣「はぁ………はぁ………」
切嗣「(あの後、あの先にあるフロアの仕掛けを解いている内にフロア全体の展示物が襲いかかってくるとは思わなかった)」
切嗣「けど……はぁ……なんとか……逃げ切ったぞ…………」
切嗣「ふぅ……」
切嗣「(さすがに疲れたよ。動かないこの娘を背負ったまま移動していたし、どこかで休みたい)」
切嗣「そうだな……あの部屋で、少し休むか」
切嗣「(部屋の真ん中には水入りの花瓶か……意味がないのかもしれないけど、焦げっぱなしで放置しておくくらいなら)」スッ
切嗣「こうして、添えられていた方が茎もきっとマシだろう」
切嗣「(後は……そうだな、見た所周囲は安全だし)」
切嗣「少し暗い眠っても、罰は当たらないよね」ドサッ
一旦ここまで
からだ が やけ る
いた い
なん で わた し そと でれない の?
イ も ギャ も わたし おいて い
わたしも そと でた い
そとの せかい である たい
でも わたし でれない
ふたりとも わたし おいて た
わたし もやし った
いた い い たい いたい いたい いた……い……
?
いた……い?
なんで痛かったんだっけ?
さっきまであんなに苦しかったのに、今は楽な気がする。
なんでだろう?どこか安心するような感じ
なんだか、眠く、なって、きたなぁ。
切継「気がついたかい?」
「えっと……ここ、は?」
切継「残念ながら、僕にもここがどこなのか分からない」
「そう。……って、あなただれ!?」
切継「僕は衛宮切継、訳ありでこの怪異に巻き込まれた人間さ。君の名前を聞いてもいいかな?」
「私?私の、名前は……あれ?」
「なんで思いだせないの?ちゃんとあったはずなのに」
切継「(名前が思い出せない……記憶を失っているのか?)」
切継「(無理もない。むしろこんな幼い子供が、いきなりこんな事に巻き込まれて精神が無事な方がおかしい位だ)」
切継「(それにさっきまでの彼女の状態から考えると、彼女は一度……)」
切継「思いだせないか。じゃあ、他に覚えている事は?」
「えっと……」
切継「例えば、好きな食べ物は?」
「わかんない」
切継「じゃあ、お母さんの名前は?」
「……わかんない」
切継「……じゃあ、いちたすいちは?」
「2。さすがにそれくらいはわかるわ」
切継「計算能力は影響なし。となると失っているのは自分及び自分の周りに関する記憶がほとんどという事か」
「切継のいってること、むずかしくてよくわかんない」
切継「ごめんごめん、君には少し難しかったね。それより、僕達が今いるこの空間は危険だ」
切継「この部屋も何時得体の知れない何かが襲ってくるかわからないし、一歩外に出ればそこは危険地帯だ」
切継「僕はこの空間の元凶を倒して元の場所に帰るつもりだけど、君も一緒に来るかい?」
「……うん」
切継「よかった。……あぁ、そうだ。一つ言い忘れていた事があった」
「言い忘れていた事?」
切継「僕はね、魔法使いなんだ」
「う、うん」
切嗣「この部屋を出る前にもう一度言っておくけど、一歩出れば危険地帯だ。身を守る武器がなければ何かあった時に身を守る事が出来ない」
切嗣「だから、決して僕から離れないようにね」
「切嗣はだいじょうぶなの?」
切嗣「僕は自衛手段を持っているからね。けど、万能じゃない」
切嗣「だから命を大事に行動するんだ、いいね?」
「わかった」
切嗣「よろしい。じゃあ、部屋を出ようか」ガチャ
「…………」ギュッ
ガタガタッ
「ひっ!?」ビクッ
切嗣「下がって」スッ
切嗣「(あの部屋の扉が叩かれたのか。確実に何かがいる……僕一人ならともかく、この娘もいる。今は近づかない方がいい)」
切嗣「あの部屋は後回しにしよう。慎重に進まないと何が起こるかわからないからね」
「……うん」
切嗣「(さて、廊下の脇には3つのボタンとあらかさまに配置されている一つの本棚か。罠の可能性があるが、手がかりが隠されている可能性もある)」
「どうしたの?」
切嗣「ちょっとね考え事だよ。あの本棚を調べてくるから、ここで待っているんだ」
「わかった」
切嗣「(さて、鬼が出るか蛇が出るか)」スッ
ガシャン
切嗣「なっ!?」
「切嗣、後ろ!」
切嗣「!!」クルッ
切嗣「(またマネキンか。だが避けられない間合いじゃない)タイムアルター、ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「(3つのボタンの内恐らく二つは罠、一つが正解だろう)」
切嗣「(ここに配置してあるマネキンは赤、青、黄……動いているのは黄色のマネキン、赤と青は停止)」
切嗣「(そしてボタンは赤、青、緑。マネキンとの関連性を信じるなら押すべきボタンは緑!!)」ポチッ
青マネキン「」ガタッ
切嗣「何!?」
切嗣「大丈夫だ……タイムアルター、ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「(ダブルアクセルで奴らに反応出来ない速度で移動、押すボタンは……緑が罠だった以上、考える時間はない。青だ)」ポチッ
ガシャン
「切嗣、出口が開いたよ!」
切嗣「今向かう、だがその前に!」ゴソッ
切嗣「(よし、本を回収した。後は……)」
ブチッ
切嗣「しまっ……がぁ!!」
切嗣「タイムアルター……ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「はぁ……はぁ……が……ぁ……あ……!!」
「しっかりして切嗣、どこか痛いの!?」
切嗣「ぐ……ぅ……大丈夫さ……少し、魔法を使った反動が来ているだけだ」
ポロッ
「これって……黒い薔薇?一枚しか花びらが残ってないけど」
切嗣「ごめんね、それは僕のなんだ。」スッ
「あっ……」シュン
切嗣「心配しなくても、君の分もちゃんとあるよ」スッ
「これって、私の薔薇?」
切嗣「あぁ、黄色い髪の君に似合う黄色い薔薇だ。大事にするんだよ」
「うん!」
切嗣「ふぅ……ごめんね、少し疲れてしまったからおじさん……は……ここ……で……休む……よ」ドサッ
「切嗣? しっかりして、切嗣!」
「そういえば切嗣の薔薇……そうだ!」ダッ
「確か、この辺に……あった!」
「これの切嗣の薔薇を活ければ切嗣も元気になるはず」チャプッ
「……よかった、薔薇の花びらも元通りになってる」
「あれ、なんで私こんな事知ってるんだろう?」
切嗣「……ぅ……ぐ……」
切嗣「がはっ! はぁ……はぁ……ん?」ガバッ
切嗣「(ずっと続いていた痛みと苦しさが無くなっている?どういう事だ?)」
切嗣「…………!」ゴソッ
切嗣「僕の薔薇がない?それに、あの娘もいない」
切嗣「まさか!」ダッ
切嗣「よかった、ここにいたのか」
「あ、切嗣」
切嗣「目が覚めた時いなかったから心配したんだよ。……どうかしたかい?」
「ううん、なんでもない。それよりほら、切嗣の薔薇元気になったわ!」
切嗣「これは……確かに、僕の薔薇だ。でもどうやって?」
「そこの花瓶に活けて元気にしたの!」
切嗣「そうか。……ん?」
切嗣「(おかしい。そんな事実は今初めて知った。けどこの娘はまるで知っていたかのように行っている)」
切嗣「……少しだけ、僕の質問に答えてくれるかな?」
「うん、いいよ!」
切嗣「君は、ここに来たばかりだよね?」
「ううん、わかんない。気付いた時にはここにいたもん」
切嗣「そうか。じゃあ、記憶に関して、何か思い出したことはあるかい?」
「……ごめんなさい、わかんないの」
切嗣「じゃあ、どうして薔薇を活けるなんて行動に出たんだい?」
「それもわかんないの。ただ、切嗣が倒れて、薔薇を活ければ元気になるはずって思って……なんでそんな事知っているのかもわかんなくて」
切嗣「……そうか」
切嗣「大体わかった。問い詰めるような真似をしてごめんね」
「ううん、いいの。それより元気になったから大丈夫よね?」
切嗣「あぁ、僕はもう大丈夫だ」
「よかった!じゃあ早く行きましょう」
切嗣「(……記憶が無いにも関わらず薔薇の仕組みを潜在意識レベルで覚えている少女か)」
切嗣「(怪しい所はある。だが悪い考えを持っている訳ではなさそうだ)」
切嗣「(そうだ、僕の考えすぎだ。……もう、これ以上疑うのはやめよう)」
切嗣「(何より、ほとんどを失っている僕と違って、彼女は……)」
「ねぇ切嗣、さっきから元気ないけど大丈夫?」
切嗣「いや、なんでもないよ。見ての通り僕は元気さ」
「……本当に?」
切嗣「あぁ、本当だ。それよりこの扉の暗号も無事見つかった事だし、扉を開けよう」
「うん、確か『深海の世』だったよね」
切嗣「正解だ」ガチャ
切嗣「ここは……一枚の絵画と本か」
「えーと……わたしはその[ピー]しく美しい[ピー]に指を[ピー]らせ、[ピー]を[ピー]えさせる彼女に、そのまま……」
パタン
僕は彼女から静かに本を取り上げ、本棚に戻した。
切嗣「こういう本は君にはまだ早い。大人になってから読みなさい」
「えー」
切嗣「えーじゃない。教育に悪い本を読ませる訳にはいきません」
「ケチ!」
切嗣「ケチで結構。……この絵画には特に変わった所はなさそうだな」
ブツンッ
「え?な、なに!?切嗣、どこなの!?」
切嗣「僕はここにいるよ」
「あっ……切嗣」
切嗣「いいかい、僕の傍を決して離れないように。今ライターを取り出すから」ゴソゴソ
切嗣「(ライターに魔術を加えて部屋一面を照らせば、様子が分かるはずだ)」シュボッ
た す け て
や め て
い や だ
し に た く な い
こ わ い
「ひっ!?」
切嗣「……暗くなっている間に壁や床にメッセージの落書きか。とんだ悪質な趣向だね」
切嗣「どうやら、ここも安全ではないらしい。行こう」ガチャ
『お客様に申し上げます。当館内では火気厳禁となっております』
『マッチ、ライター等の使用・持ち込みはご遠慮くださいますようお願いいたします』
『万が一館内でそれらの使用をスタッフが発見した場合、』
切嗣「……チッ」
「ね、ねぇ……このアナウンスって」
切嗣「行こう、この場に長居しない方がいい」
切嗣「ここまで来れば大丈夫だろう」スッ
「あれ、その本って確か」
切嗣「あらかさまな場所にあった本棚から拝借してきた本だよ。手がかりが得られればいいんだけどね」ペラッ
「あ…………」
日誌
ヒトの想いがこもった物には魂が宿ると言われている
それならば作品でも同じことができるのではと私は常に考えている
そして今日も私は自分の魂を分けるつもりで作品作りに没頭している
切嗣「…………」
切嗣「(これは誰かの日誌?作り上げた空間に意味もなくこんなものを置いておくとは思えない)」
切嗣「(考えられるのは、黒幕が残したなんらかのヒントか……ワイズ・ゲルテナ本人の日誌か)」
切嗣「(どちらにせよ、ここで読みふける程の価値はなさそうだ)」パタン
切嗣「どうやら、そこまで急いで読む必要はなさそうだ。今は先を……」
「…………」
切嗣「おい、聞いているのか?」
「作品……魂…………わたしは…………メアリー……」
切嗣「おい……おい!しっかりしろ!!」ユサユサ
「ふぇ?……あれ、ここは?」
切嗣「よかった、正気に戻ったか」ホッ
「あれ、私どうして……あれ?」
切嗣「先程から妙な言葉をつぶやいていたよ。わたしはメアリーとか」
「メアリー……そうだ、思い出した!私、メアリーっていう名前なの!!」
切嗣「ほ、本当なのかい?」
メアリー「そうよ!今はまだそれくらいしか思い出せないけど……うん、私の名前はメアリー」
切嗣「そうか。なんにせよ、名前を思い出せたなら僕も嬉しいよ」
メアリー「どうして私が名前を思い出した事が嬉しいの?」
切嗣「何時までも君呼ばわりだと嫌だろう?名前の方が、誰の事を指しているかわかりやすいからね」
メアリー「そっか……そうだよね」
切嗣「そういう事だ。名前もわかった事だし……改めてよろしく、メアリー」
メアリー「えへへ……よろしくね」
切嗣「さて、何時までもここで話している訳にもいかないし……張り切っていこうか」
メアリー「おー!」
メアリー「わぁー、かわいいね。切嗣もそう思わない?」
切嗣「……本当に、これがかわいいと思うのかい?」
メアリー「思うけど、切嗣は思わないの?」
切嗣「僕はこんな君の悪いものをかわいいとは思えないかな」
メアリー「えー、切嗣って、変!」
切嗣「変、か……あはは」
メアリー「こんなにかわいいのに……」
パリン
メアリー「きゃあ!?」
切嗣「危ないから下がっていなさい……これは、鍵?」
メアリー「置物の中に鍵が入ってたのね」
切嗣「(ひとりでに置物が落下したのが気になるが……警戒はしておこう)」
切嗣「となりの部屋がこの鍵で開くはずだ。確かめてみよう」
メアリー「うん、わかった!」
メアリー「どうしたの?」
切嗣「ちょっとこの絵の中から物音がしてね。離れていなさい」
メアリー「う、うん」
切嗣「(この音……何かが近づいてくる?まさか!)」
ボゴォッ
切嗣「(床から植物が!?)タイムアルター、ダブルアクセル!」バッ
ガゴォ
メアリー「切嗣、大丈夫!?」
切嗣「僕は無事だよ。しかし植物を操る魔術……ん?」
切嗣「(この植物、石でできている!?しかもご丁寧に壊れないよう強化されている)」
切嗣「参ったな、どうやらこれを壊して合流するのは無理そうだ」
メアリー「…………ねぇ、切嗣。さっきの部屋で拾ったカギ、あるよね?」
メアリー「そのカギでもしかしたら、私がいる方のドアを開けられるんじゃない?」
メアリー「もしかしたら違う部屋に、これを壊れる道具があるかもしれない」
メアリー「だから、カギをこっちにちょうだい?私も切嗣の役に立ちたいの」
切嗣「それは……ダメだ、身を守る術を持たないメアリー一人で単独行動は危険すぎる」
メアリー「でも、このままだと何時までも合流出来ないよ?」
切嗣「……責めて護身用の簡単な魔術を教える。幸い、魔力は人よりも多いから魔術は扱えるはずだ」
メアリー「護身用の魔術?」
切嗣「そうだ。時間がないから本当に簡易的なものだけどね。それを覚えてからじゃないと、鍵は渡せない」
メアリー「じゃあ、魔術を教えたらカギをくれるのね?」
切嗣「約束する。ただし、少しでも危険を感じたらすぐに戻ってくるように。いいね?」
メアリー「うん!」
切嗣「(本当に簡易的な魔術とはいえ、あそこまで簡単に覚えるとは思わなかった)」
切嗣「(メアリーから感じる魔力は並大抵のものじゃない。あの年まで怪異に命を奪われていないのがおかしい位だ)」
切嗣「(もし彼女が何も対策をしないまま外に出ればあっという間に怪異の餌食になる。それだけは避けなければならない)」
切嗣「(彼女の身を守る対策もする必要があるな)」
切嗣「(それも考えなければいけないが……こちらも何もしない訳にはいかない)」
切嗣「(さっきの部屋に戻って他に何かないか調べてみよう。手がかりがつかめるかもしれない)」
………
心壊
あまりに精神が疲弊するとそのうち幻覚が見え始め……
最後は壊れてしまうだろう
そして厄介なことに
自身が壊れていることを自覚することができない
切嗣「……心が壊れている事を自覚出来ない、か」
切嗣「(もしかしたら僕はとっくの昔に心が壊れているから、ここにあるものが不気味な人形に見えるのかもしれないな)」
切嗣「……ん?」
切嗣「これは……まさか」
ズッ
切嗣「やはりか。本棚の裏に扉があったとはね」
切嗣「僕は僕で、この先を調べないといけなさそうだ」
クイッ
切嗣「……これは何も起きないか」
切嗣「これは……」クイッ
フッ
クイッ
パッ
切嗣「……消灯・点灯用か」
切嗣「これは……」クイッ
ベシャッ
切嗣「……人形が落ちてきたか。人が高いところから落ちた時の状態が見事に再現されているな」
ドサッ
切嗣「また何かが落ちてきたか。これは……重石か?」
切嗣「あのくぼみと一致するが……試してみるか」ゴトッ
ギィ
切嗣「これで、先に進めると。よくできた仕掛けだ」
切嗣「……ん?」
”こんにちは 切嗣
わたし ひとりで さみしいの
だから いっしょに つれてって”
切嗣「また気味が悪い人形か。ご丁寧にメッセージ付きときた」
切嗣「(さすがにこんな不気味なものを連れて行く気にはなれない。無視して進もう)」スッ
切嗣「…………」
切嗣「……また人形か」
”ねぇ どうして
つれてって くれないの?”
切嗣「…………」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………またか」
”なんで むしするの?
わたしのこと きらいなの?”
切嗣「…………」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………チッ」
”ねぇ あそぼうよ
ここ おもしろいもの
たくさん あるんだよ”
切嗣「…………ついてくるな」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………クソッ」
”わたしの おともだちも
たくさん いるんだ
しょうかいして あげるね”
切嗣「何なんだ一体」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………今度は一体なんだ」
”えいえんに ここにいろ”
切嗣「!?」
切嗣「はぁ……はぁ……」
切嗣「ここまで来れば……ん?」
切嗣「……」
切嗣「(今度は扉の前で待ち伏せか。どこまでついてくるつもりなんだ)」
切嗣「そっちがそのつもりならこちらにも考えがある」チャキッ
切嗣「(起源弾はもったいない。普通の弾で仕留める)」
タァン
切嗣「さっきの人形と同じように、血が流れ出たか」
”い た い よ ぉ
い た い よ ぉ”
切嗣「……先に進むか」
切嗣「(このフロアには一体何があるか……ん?)」
切嗣「……今度は人形の生首か」
”あなたの せいで
くびが もげちゃった”
切嗣「自業自得だ」
切嗣「(もう人形に付き合うのは疲れた。まずはこの部屋から調べよう)」ガチャ
切嗣「この部屋は……台座が並んでいる?」
切嗣「また新しい仕掛けか。メッセージは……」
『七つの色彩……絵の具玉を集めよ
さすれば部屋は色づき
そなたの架け橋となるだろう』
切嗣「どうやら、絵の具玉とやらを集める必要がありそうだ」
切嗣「ぐっ……なんだこの部屋は!?」
切嗣「(かなり危険な毒ガスか。数秒居座るだけでも危険だ)」
切嗣「(新しい道具と絵の具玉、両方回収するには……)タイムアルター、トリプルアクセル!!」ダッ
切嗣「がっ……はぁ……ぜぇ……はぁ……ぁ……」ガクッ
切嗣「(まずい、魔術の反動が……しばらくは動けないか)」
切嗣「ぐ……ぁ……」ドサッ
切嗣「(意識が朦朧と……責めて壁際によって休もう)」
メアリー「あれ、これってパレットナイフ?」
メアリー「これであのツル……削れないよね」
メアリー「でも、このナイフどこかで見た事があるような……念のため持っておこう」スッ
メアリー「他になにもなさそうだし、一旦戻rかな」
フッ
メアリー「わっ何!?」
パッ
メアリー「びっくりした、なんだったんだろう」
メアリー「……あれ、出口が」
メアリー「なんで!?さっきこの人形壁際にあったのに」
メアリー「うーん……!」
メアリー「だめだ、全然動かせないよ」
メアリー「どうしよう、切嗣が向こうにいるのに戻れない」
メアリー「…………」
メアリー「しょうがないからこっちから行こう」
メアリー「何か思い出しそうな気がするけど、思い出しちゃいけないような……」
ベチャベチャベチャベチャッ
メアリー「なっ何!?」
メアリー「これって……壁に文字が書かれてる?」
”おともだちが まってるよ”
”はやく いこうよ”
”おとなのいない たのしいせかいへ”
”イヴ が きみを まってるよ”
メアリー「なに、これ……どういう事?」
メアリー「それにイヴって……確か…………」
メアリー「ぅぐ……頭が痛くて、思い出せない」
メアリー「わたしは、なにをわすれているの?」
あるところに小さな女の子がいました
女の子は両親と一緒に美術館へ行きました
しかしふと気が付くと女の子は迷子になってしまい……
うす暗い美術館の中を探しましたが両親も出口も見つからず……
怖くて心細くてさみしくてお腹もへりノドが乾き転んでケガをして体力も限界になって……
……最期のページに小さな女の子が倒れている挿し絵で本は終わっている……
メアリー「この絵の女の子、見た事があるような……ぁ」
ギャリーって……イヴのお父さん?
ちがうよ
ふーん……じゃあお父さんは別にいるのね
そっかぁ……
イヴのお母さんやさしい?
うん
へぇ……いいなぁ
早く両親に会いたいよね?私も早くここから出たいよ
………ねぇイヴ、あのさ
もしここから出られるのが2人だけだったら……どうする?
出られるのが2人だけだったら……ギャリーと一緒に出るかな
…………
……そう……ギャリーと一緒の方がいいんだ……
ま、今のはたとえ話だからいいけど……
出る時は一緒に出ようね?約束だよ!
メアリー「なに、これ……私の、記憶?」
メアリー「私は、この人を……知ってる?」
メアリー「それにこの記憶……私は、前にここを訪れた事があるの?」
メアリー「わからない。わからない。わからない……怖いよ、誰か助けてよ」
メアリー「誰か……お願いだから」
切嗣「(どうにか、絵の具玉を集めきる事が出来た)」
切嗣「薔薇を活ける事で体力を回復出来る事を知らなかったらここまで集めるのは無理だったのかもしれないけどね」
切嗣「それにしても、ここにも本があるとはね。メアリーが心配だけど、念のためここも調べておこう」スッ
メアリー ----年
ゲルテナが手がけた生涯最後の作品。
まるでそこに存在するかのように佇む少女だがもちろんのこと彼女も実在しない人物である。
切嗣「…………!!」
切嗣「どういう、事だ?」
切嗣「メアリーが実在しない人物……それに、この挿し絵」
切嗣「間違いなく彼女だ。なら……」
切嗣「彼女は一体、何者なんだ?」
切嗣「閉まっていた部屋の扉が、開いている?」
切嗣「……調べてみるか」
切嗣「……君が悪い人形がこんなにもあるとはね」
切嗣「特に何もなさそうだが……ん?」
切嗣「これは……誰かの手記か?」
きづいた時から、わたしはここにいた。
外のせかいを私はしらない。
だれかひとりがのらないと出ることができないって、おともだちがおしえてくれた。
だから私は、私いがいのだれかがくるのをまっている。
だれかがのこらないと出ることができないなら、私いがいのだれかをのこして外にでればいい。
はやくだれかこないかなぁ
切嗣「…………」ペラッ
私とおなじ位の女の子はイヴ、男の人はギャリーっていうの。
イヴとはなかよくやっていけそう。そとにでたらイヴの所でいっしょにくらしたいな。
イヴと私のふたりで、ここから出るんだ。
切嗣「…………」ペラッ
ギャリーが私のひみつをしった。
あのへやからも出られた。しまつしにいかなきゃ
にんぎょうがじゃまだなぁ。なんでじゃまするかなぁ。
はやくあいつをころして、イヴといっしょに出るんだ。
切嗣「…………」ペラッ
イヴは私をえらんでくれなかった。
もういい、イヴなら私といっしょに出てくれるとおもったのに。
私をおいていくなら、ふたりとも……
切嗣「…………」ペラッ
めありーが もやされた
ぼろぼろと くずれていった
でも めありー いきること のぞんでる
だから わたしたち めありー さいげんした
いまの めありー のこりかす
そとの こわいのに ねらわれたら
あっというまに しんじゃう
だれか あのこ まもって あげて
切嗣「これは……メアリーの、日記?」
切嗣「だが、最後のページ……これが事実ならあの娘は」
切嗣「…………」
切嗣「あの娘と会おう。自分の目で確かめなければ結論は出せない」
ガチャガチャ
切嗣「……扉が開かない?」
ベチャッ
切嗣「!」
"また たからさがし しようよ
だれがカギを もってるかな?"
切嗣「なんだと?」
ゴーン…ゴーン…
切嗣「……この部屋のどこかに鍵が隠されているという事か」
切嗣「急がなければ恐らく……チッ」ダッ
切嗣「違う、こいつも違う。こいつも違う」ゴソゴソ
切嗣「どいつだ……?どいつが鍵を持っている!?」
切嗣「(白い絵からは段々と化物が現れ出している。奴が出てきたらアウトだ)」
切嗣「こいつも違う……こいつも違う!」
切嗣「(くそっ早くしないと化物が……!)」
切嗣「(このままだと殺される。奴が魔術で動いているなら一か八か)」チャキッ
切嗣「起源弾……!!」ダァン
バシュッ
ボロボロ……サァアアアアア……
切嗣「ふぅ……危なかった」
切嗣「(思った通りだった。奴が魔力で生み出されたのなら、起源弾が有効)」
切嗣「(半分賭けだったけど、上手くいってよかった)」
切嗣「後は、人形の中から鍵を見つけ出せばいい」
切嗣「メアリー、ここにいたのか」
メアリー「ぁ……切、嗣」
切嗣「君が無事でよかった。ここからは一緒に……メアリー?」
メアリー「ぁ……え……と」
切嗣「大丈夫か?顔色が悪いけど」
メアリー「ううん、大丈夫。……あのね、切嗣」
切嗣「なんだい?」
メアリー「もし、もしもだよ?……もし二人の内どちらかしか外に出れなかったら、切嗣はどうする?」
切嗣「…………」
切嗣「それは、場合によるな」
切嗣「例えば僕が死にかけで、外に出ても助からない状態だったら外に出る意味はないからメアリーを外に出す事を選ぶ」
切嗣「逆にメアリーが同じような事になった場合も、外に出る意味はないから僕が出る事を選ぶ」
メアリー「……そう」
切嗣「……少し、僕の話をしよう。休憩がてらにでも聞いてくれればいい」
切嗣「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」
メアリー「正義の、味方?」
切嗣「そう、悪を倒してみんなを助ける、そんな存在になりたかった」
切嗣「けど、現実はそんな生易しいものじゃなかった」
切嗣「そこで僕は、元凶となった父親を殺し、ある人と一緒に島を出た。
メアリー「お父さん、殺しちゃったの?」
切嗣「そうだ。父親を放っておけばまた別の所で同じことを繰り返す。それを防ぐ為に殺した」
切嗣「父親を殺した僕を拾ってくれた人は悪いことをする魔術師を狩る仕事をしていてね、僕はその手伝いをして成長していった」
メアリー「魔術師?魔法使いじゃなくて?」
切嗣「厳密に言うと、魔法使いと魔術師は違うんだ」
切嗣「魔力を使って人為的に奇跡・神秘を再現するのが魔術師、現代の如何なる資金・時間をかけても実現不可能な正真正銘の奇跡を扱うのが魔法使いだ」
切嗣「僕も本当は魔術師というカテゴリに振り分けられる。残念ながら魔法使いには至らないんだ」
メアリー「うーん、よくわかんない」
切嗣「まぁわからないのも無理はないよ」
メアリー「そういえば、切嗣のお母さんはどんな人なの?」
切嗣「お母さんは……僕が物心着く頃には死んでしまったから覚えていないんだ。お母さんと言えたのは、さっき行った僕を拾ってくれた人だ」
メアリー「そうなんだ。その人って優しいの?」
切嗣「厳しかった、かな。怒ると怖いし。そもそも戦場に優しさは必要なかったからね」
切嗣「けど、その人も死んでしまった。……僕が、殺した」
メアリー「え……何で殺しちゃったの?」
切嗣「けど、奴は自分の身体に使い魔を隠していたらしい。奴の死体から出てきた使い魔は乗っていた人達をグールに変えて、飛行機の中を地獄絵図に変貌させた」
切嗣「僕を拾ってくれた彼女はなんとか生き残って飛行機を操縦していたけど、飛行機が無事着陸すればその街に住んでいる人達が大量に死ぬ事になる」
切嗣「街に住む万の人間とたった一人の恩人、両方を天秤にかけて僕は街に住む万の人間を選んだ」
切嗣「飛行機を爆破した結果、飛行機が着陸するはずだった街の人達の命は守られた……僕の恩人と引換にね」
メアリー「……辛くなかったの?」
切嗣「辛かったよ。泣き叫んだりもした。その後僕はフリーの魔術師殺しとして、転々としていった」
切嗣「そんなある時、なんでも願いを叶える願望機がある事を知った僕は、それを手に入れる為にアインツベルンに婿入りした」
メアリー「婿入り?」
切嗣「要するに、お婿さんになりにいったんだ。お嫁さんの男性版だよ」
メアリー「じゃあ切嗣、結婚したの?」
切嗣「妻には結婚指輪も渡せなかったけどね。彼女も生まれてからの短い時間だったけど、娘も出来て幸せだったよ」
メアリー「幸せ……だった?」
切嗣「僕の妻、アイリスフィールは……さっき言った願いを叶える願望機を取り合う戦いで命を落としたんだ」
メアリー「そん、な……それじゃあまた大切な人がいなくなって切嗣が一人ぼっちじゃない」
切嗣「……そう、だね。でも結局は僕が殺したようなものだ」
メアリー「……切嗣は、その願いを叶える願望機を手に入れたの?」
切嗣「手に入れた、とは言えないかな。願望機は、僕が破壊しちゃったからね」
メアリー「え、なんで?壊しちゃったの!?」
切嗣「願いが叶う願望機は、その願いを破壊という形でしか叶えない呪われた欠陥品だったんだ」
切嗣「願望機を否定した僕は、それを破壊して……アインツベルンを追放された」
メアリー「……娘がいたって言ったよね。娘はどうなったの?」
切嗣「今も一人ぼっちで、アインツベルンに囚われているよ。何度も迎えに行ったけど、助けられなかった」
メアリー「そん、な……」
切嗣「今は願望機を巡る争いによって引き起こされた災害の中から助けた一人の子供だけが僕の希望だよ。名前は士郎っていうんだ」
切嗣「本当なら今日、娘のイリヤを迎えに行って……家族3人で暮らす予定だったんだけどね。また失敗したよ」
メアリー「…………」
切嗣「こんな生き方をしてきて、僕は後悔してるよ。どこかで道を変えれば、違う結末もあったのかもしれないとね」
メアリー「切嗣……」
メアリー「?」スッ
切嗣「…………」スッ
切嗣「……うん、大体わかった」
メアリー「何がわかったの?」
切嗣「メアリーの事だよ。君の場合、怪異に対する耐性がほとんどついていない」
切嗣「だから、このままだと外に出た途端怪異に狙われて殺されてしまう」
メアリー「怪異?」
切嗣「そうだ。外の世界にはたくさんの怪異に満ち溢れている」
切嗣「怪異は君みたいに抗魔力の低い人や魔力をたくさん持っている人が大好物なんだ」
切嗣「だから、ろくな対抗の術もない状態で怪異に狙われたら大変な事になってしまう」
メアリー「じゃあ、私は外に出れないの?」
切嗣「それは違う。対抗の術を持ってないなら、身につければいい」
切嗣「僕が魔術を教えよう。対抗手段を身につければ、外に出ても平気なはずだ」
メアリー「切嗣が教えてくれるの?」
切嗣「もちろんさ。まずは簡単な魔術から教えていくよ」
メアリー「うん!」
切嗣「最初に、魔術回路を……」
メアリー「うぅ……身体中が痛い」
切嗣「ははは、いきなり魔術の訓練を始めたからね。むしろ教えた事をどんどん出来るようになった事に驚いている位だよ」
切嗣「もし魔術師として成長したら、世界有数の魔術師として大成出来るかもしれないね」
メアリー「うーん……でも、魔術師じゃなくて普通の人として生きる事は出来ないの?」
切嗣「メアリーの場合、怪異がある以上魔術と関わりなく生きていく事は不可能だろうね」
切嗣「でも、魔術を扱いつつ一般人として生きる事も出来る。僕と違って未来に満ち溢れているんだ、生き方は自分で決めるといいよ」
メアリー「そっか……そうだよね」
切嗣「さて、そろそろ進もうか。何時までものんびりしている訳にはいかないからね」
メアリー「うん!」
カッカッカッ……
切嗣「……これは」
メアリー「景色が一変したね」
切嗣「心情風景の変化……まさかこの空間全体が、固有結界だというのか?」
メアリー「固有結界?」
切嗣「固有結界っていうのは、己の心情風景を反映する大魔術だ。並大抵の魔術師では発動すらできない代物だ」
メアリー「そうなんだ……」
切嗣「だが、これ程の固有結界の使い手となると……」
切嗣「(これ程の固有結界、今までの手がかり……)」
切嗣「(僕の予想が正しければ、この固有結界はワイズ・ゲルテナが作り出したもの)」
切嗣「(作り出した作品達を守る為の結界……と言った所か)」
切嗣「(だが、今は……)」
切嗣「景色が一変したが何が起こるかわからない。気を引き締めて進もう」
メアリー「うん」
メアリー「でも、あっという間に解けちゃったね」
切嗣「魔術を使ってショートカットしたからね。問題はこのおもちゃばこだ」
メアリー「この中にカギがあるって書いてあったよね。……底が見えないけど」
切嗣「どちらにせよ進むしかない。しっかり掴まっているんだ」
メアリー「うん」
バッ
ヒュウウウウ……
切嗣「(底が見えない。無事着地出来るかどうか……)」
バチッ
メアリー「きゃあ!?」パッ
切嗣「なっ……しまった!」
メアリー「きゃああああああああ!!」
切嗣「メアリィイイイイイ!!」
ドサッ
切嗣「(ここは……おもちゃばこの中か)」
切嗣「(メアリーと共に着地しようとした時に干渉が起きて離れ離れになったのか)」
切嗣「……!」
切嗣「(薔薇がない。あの時に落としたか。メアリーも見当たらない)」
切嗣「悩んでいる暇はない。早くメアリーと薔薇を探さないと」
切嗣「メアリー!」
メアリー「あ……切嗣」
切嗣「メアリー、ケガはないか?薔薇はちゃんと持っているかい?」
メアリー「うん、私は平気。薔薇もちゃんと持ってるよ」スッ
切嗣「そうか……よかった」
ガタッ
切嗣「!!」スッ
メアリー「きゃあ!?き、切嗣!?何で急にお姫様抱っこ……」
切嗣「奴らが一斉に動きだした。全力で走るからしっかり掴まっていなさい」
メアリー「う、うん!」ギュッ
切嗣「(数が多い、出口も遠い。切り抜けるには……)タイムアルター、トリプルアクセル!!」ダッ
メアリー「き、切嗣……大丈夫!?」
切嗣「大丈夫……だ…………魔術の、反動が……返ってきている、だけだから」
メアリー「ほ、本当に?死んじゃったりしないよね?」
切嗣「…………大丈夫だよ、メアリー」
スキ……キライ……
切嗣「…………」
切嗣「先に行ってなさい、僕は少しここで休むから」
メアリー「え……でも」
切嗣「いいから。僕はしばらく動けそうにないからね」
切嗣「無事外に出たら、このチケットを使って飛行機に乗るんだ」
切嗣「空港までの道のりはこの地図に記してある」
切嗣「出来れば娘を取り戻して欲しいけど、今の君では無理だからね」
切嗣「だから、飛行機に乗って日本に行って、そしたらここに記された場所に向かなさい」
切嗣「そこに、僕の義息子がいる……出来れば、仲よくしてあげてほしい」
メアリー「切嗣……そんな遺言みたいに言わないで」
切嗣「……ごめんね」
メアリー「やだ、絶対に嫌!こんな別れ嫌!!」グッ
メアリー「私が、背負う。私が切嗣を背負って一緒に脱出する。だから……!!」
切嗣「メアリー……」
スキ……キライ……
切嗣「(ごめんよ……どうやら、僕は……)」
切嗣「…………」
切嗣「……どうやら、この部屋には特に何もなさそうだね」
メアリー「うん……あれ?」
切嗣「……?」
メアリー「奥に何かある。なんだろう?」トコトコ
切嗣「あれは……絵画の欠片?ほとんど燃えてしまっているから断定はできないが」
メアリー「これ、なん…………ぁ……!!」ガクッ
切嗣「メアリー、どうしたん……!!」
メアリー「ぐ……ぁ……頭に……頭が!!」
切嗣「メアリー、しっかりしろメア……っ!」ガクッ
メアリー「ぁぐ……頭に、次々と……見た事ある、光景が……!!」
メアリー「これ……は……私……の……?」
閉ざされたその空間の中で、私はずっと外に憧れていた。
外の世界には私の知らないものがたくさんある。
外に行きたいけど、外に出るには他の人と入れ替わりでなければ出る事ができない。
だから私は、私以外の人がここに来るのを待った。
ひたすら待って、それで……
イヴとギャリーが迷い込んで来た。
イヴとお友達になって、仲よくなった。
でも、ギャリーが私の正体をバラして外で一緒に仲良く暮らす夢は砕け散った。
イヴを連れて行かれた後も、なんとかイヴと一緒に脱出できないかとあがいた。
けど、だめだった。
拒絶されて、絵を燃やされて……私は、そのまま燃え尽きた。
メアリー「嫌……嫌ぁああああああああああああああああああああ!!」
メアリー「私は、私……もう、私燃えて、燃えてなくなって」
メアリー「じゃあここにいる私は、何?私は燃えてなくなったのに、どうしてここに?」
メアリー「なんで?私は……でも……じゃあ……なんで」
切嗣「メアリー!!」ガシッ
メアリー「ぁ……」
切嗣「メアリー、落ち着くんだ」
メアリー「切……嗣?」
切嗣「君は今ここにいる。僕が保証する。だからまずは落ち着こう」ギュッ
メアリー「でも……私」
切嗣「確かに、今の君は残り火のような存在かもしれない。外に出ても長く生きられないかもしれない」
切嗣「それでも、僕と違って君には未来がある」
切嗣「君がなんであろうと、メアリーはメアリーだ」
切嗣「だから……自棄にならずに、前を向いて生きて欲しい」
メアリー「…………わた、し……私……っ」グスッ
切嗣「……落ち着いたかい?」
メアリー「……うん」
切嗣「……記憶が戻ったんだね?」
メアリー「……うん」
切嗣「……そうか」
メアリー「ねぇ切嗣、やっぱり外には貴方が出なきゃだめよ」
切嗣「……どうして、そう思うんだい?」
メアリー「私、知っちゃったの。私が今生きている事自体奇跡で、何時消えてもおかしくないって」
メアリー「そんな私が外に出るより、切嗣が外に出て子供達と一緒にいてあげた方がずっといいわ」
切嗣「……君は、それでいいのかい?」
メアリー「…………私だって、外に出たいけど」
メアリー「私は……拒絶された」
メアリー「外に出ても、きっと……」
切嗣「…………」
メアリー「……行こう、切嗣。外の世界はもうすぐよ」
切嗣「……これが、元の場所に……つながる……出口」
メアリー「……とうとうここまで来たのね」
切嗣「……そう、だね」
メアリー「ここに辿り着くまでに色々あったね」
切嗣「あぁ…………色々と……あった」
メアリー「私、切嗣と出会えてよかった。貴方がいなかったらずっと恨みを抱いていたかもしれない」
切嗣「そうか……なら、よかった……かな」
メアリー「……」
切嗣「……」
メアリー「お別れだね、切嗣」
切嗣「そうだね」
メアリー「貴方との思い出は、消えるまでの間大事にとっておくわ。だから、切嗣も私の事絶対忘れないでね」
メアリー「これ、は?」
切嗣「僕からのお守りだよ。それと、選別の品だ」
メアリー「切嗣……ありがとう」
切嗣「大事に、使うんだよ」
メアリー「うん……そろそろ、行かないと絵が閉じちゃうね」
切嗣「そうだね……ちなみに、どうしたら外の世界に出られるんだい?」
メアリー「絵画に飛び込めば外に出られるわ。飛び込むだけでいい」
切嗣「そうか…………わかった」
メアリー「……外に出たら、娘を取り戻せるといいね」
切嗣「…………」
メアリー「…………」
切嗣「……それじゃあ、お別れだ」
メアリー「うん……元気でね」
切嗣「あぁ……そうだね」ヒョイッ
メアリー「ふぇ?」
切嗣「外には君が出るんだ。未来の無い僕よりも、少しでも未来を生きる権利がある君がね」
メアリー「な、なんで!?いつ消えてもおかしくない私より切嗣が出た方が……!!」
スゥ……
切嗣「(絵が閉じる。時間がない!)」ブンッ
メアリー「きゃあ!?」スゥッ
切嗣「ごめんね、メアリー。僕はどちらにせよ生きる事ができないんだ」ガクッ
切嗣「(さっきから増している痛みと息苦しさ。恐らく、薔薇をむしられているんだろう)」
切嗣「(それに僕は、聖杯の泥に侵されている……もう余命幾ばくもない)」
切嗣「(同じ何時死んでもおかしくない身なら……責めてあの娘に外を楽しんで欲しい)」
切嗣「(そんなエゴだけど……許してほしい)」スッ
切嗣「(絵はやはり通れないか……どうやら、この結界を維持する為の人柱力が一人は留まらないといけないらしい)」ペタ……
切嗣「(でも、あの娘なら……そうだな、あの娘なら士郎とも仲よくしてくれる)」
切嗣「(それに、あの娘が成長すれば……僕に成し遂げられなかったイリヤの奪還も果たしてくれるかもしれない)」
切嗣「(そう思えば、少しは安心出来る……かな)」ドサッ
切嗣「(安心したら……眠く……なって…………)」
切嗣「…………」
ワイワイガヤガヤ
メアリー「……外の、世界?」
メアリー「…………私、出られたんだ」
メアリー「本当に……外に」
メアリー「……」
メアリー「!!」ガバッ
メアリー「そうだ、切嗣! 切嗣はどこ!?」キョロキョロ
メアリー「切嗣……まさか」ダッ
メアリー「……忘れられた、肖像」
メアリー「間違い無い……これ、切嗣だ」
メアリー「やっぱり……私の、代わりに」
メアリー「なんでよ……なんでなのよ」グスッ
メアリー「なんで切嗣が……身代わりになるのよ」グスッヒック
メアリー「短い間しか生きられない私なんかの為に……どうして」
メアリー「どう……し……て……」
メアリー「ぐすっ……うわぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」
切嗣という、私に外で生きる術を教えてくれた人のおかげで。
あの人が何を思って私を外に出してくれたのかはわからない。
けど、外に出たという事はあの人が身代わりで残ったという事。
悲しいけど、あの人が代わりに残ってくれた以上外に出た私は立ち止まっているわけにはいかない。
メアリー「……修行しよう。魔術師として成長して、立派な魔法使いになって……そしたら、切嗣を助けに戻るんだ」
後に彼女は様々な怪異と遭遇し、やがて第五次聖杯戦争に巻き込まれ、切嗣の実娘と遭遇し……そして英霊へと至るが、それはまた別の話。
切嗣とメアリーの出会いの話は、ここで終わりである。
短めのSSでしたが読んでいただきありがとうございました。
ついでに前作品の宣伝。尚、当作品とは何の関連性もありません。
イリヤ「暇だからキリツグに会いに日本に行く」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414685418/
イリヤ「暇だからキリツグに会いに日本に行く」ウェイバー「後編」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415320550/
面白かった
両方ともリアルタイムで見てたよ
その作者の人だったのか
過去作もこれから見てくるよ
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422358932/
Entry ⇒ 2015.10.18 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
イリヤ「切嗣に処女奪われた」
アイリ「えっ...?」
イリヤ「切嗣ね、すごい嬉しそうだったよ」
アイリ「イリヤ、そういう冗談はお母さん嬉しくないわ」
イリヤ「嘘じゃないもん!切嗣に処女奪われたんだもん!」
アイリ「はぁ...そもそもそんな言葉どこで覚えたの?」
イリヤ「切嗣が『イリヤ...父さんな、お前の処女を奪ってしまった...』って言ってた」
アイリ「...切嗣来て」
アイリ「あなた、イリヤのその...」
切嗣「イリヤがどうかしたのか?」
アイリ「だからイリヤの...しょ」
切嗣「すまない...今、舞弥と着衣セックスしていたんだ
緊急な用事でなければ後にしてくれないか?」
アイリ「は?」
切嗣「何か問題があったかな?」
アイリ「もういいわ...あなたイリヤの処女を奪ったの?」
アイリ「だってこの子が...」
イリヤ「切嗣に処女奪われたー」
アイリ「...」
アイリ「って言うんだもの」
切嗣「イリヤ」
イリヤ「何?パパ」
切嗣「...」シーッ
イリヤ「...」シーッ
切嗣「...」ウンウン
アイリ「は?」
イリヤ「ごめんなさいお母さん」
アイリ「そ、そうよね?私も何を勘違い」
セイバー「アイリ騙されてはいけません」
アイリ「セイバー?」
切嗣「...」キッ
セイバー「ん...」
切嗣「セイバー...今夜は君の大好きなステーキだ」
セイバー「それは感謝します...で、アイリ先程のお話ですが」
切嗣「セセ、セイバー...ステーキ何杯食いたい?」
イリヤ「わぁーセイバー大食い」
アイリ「本当によく食べるわねぇ」
切嗣「分かった...シェフに掛け合ってみるよ」
セイバー「本当ですか!?感謝します...ところでアイリ」
切嗣「ところでセイバー...」
セイバー「何ですか!?」
切嗣「...」クイクイ
セイバー「は、はぁ...」スタスタ
バタンッ
アイリ「?」
イリヤ「あーもしかしてー...」トテトテ
アイリ「あ、イリヤ...」
イリヤ「お母さんはそこで待っててー」
アイリ「?」
イリヤ「...」ヒョコヒョコ
ソーーッッ
イリヤ「...」ジーッ
イリヤ「わっ!」
切嗣「覗きなんて真似は良くないぞ」
イリヤ「ごめんなさい」
切嗣「よしよし、イリヤは良い子だ500円あげるからお母さんと出掛けてなさい」
イリヤ「えっと...遠くへ行っていいの?」
切嗣「隣町までならな」
イリヤ「やったぁ!お母さんと行ってくるー」
切嗣「いってらっしゃい」
オカアサーン オデカケシヨー
切嗣「いいから脱げ」
セイバー「は?」
舞弥「あの...続きは?」
切嗣「ここからは3Pだ」
セイバー「なな、何を...///」カーッ
舞弥「あなたが望まれるのなら構いませんが」
切嗣「こいつの使い道と言えばこのくらいだからな」
セイバー「何て侮辱的な扱い...」ヌギヌギ
切嗣「ふふ...それじゃお手並み拝見とイこうか可愛い騎士王さん」
セイバー「...くっ」
セイバー「」
切嗣「くたばったな」
舞弥「正直こちらもあなたの射精量には驚きました」
切嗣「その気になればいくらでも出るからな普段オナニーしないし」
舞弥「にしても彼女が処女だとは驚きました」
セイバー「」
切嗣「無様なものだな...アーサー王が精液まみれなんて」
切嗣「さて...それじゃイリヤたちも帰ってくるし紅茶でも入れておいてくれ」
舞弥「かしこまりました」
モミモミ
舞弥「ちょっと...まだ溜まってるんですか?」
切嗣「いい尻をしてるからつい揉みたくなってな悪い」
舞弥「戦闘のし過ぎで壊れました?」
切嗣「ふふ、そうかもしれんな」モミモミ
舞弥「あの...紅茶を淹れれないので」
切嗣「すまない、今度はいい胸をしてるからつい(ry」
舞弥「もう好きにしてください...」ハァッ
アイリ「外なんて久しぶりに出たわね」
切嗣「おかえり二人とも」
イリヤ「お父さん、外ではプリキュアっての流行ってたよ」
切嗣「そうだなあ...テレビでも買うか」
イリヤ「お父さんが好きそうな感じだったよプリキュア!」
舞弥「そういう趣味がおありなんですか?」
切嗣「まったく...イリヤは父さんを変態にしたてあげたいのかな?」コノコノ
イリヤ「だって変態じゃん!」
イリヤ「...あ」
アイリ「どうしたのあなた...いつも以上に表情が暗いわよ」
切嗣「すまない...部屋に籠る」
舞弥「...」
イリヤ「あ、紅茶淹れてたの?」
舞弥「あ、はい」
イリヤ「イリヤも手伝うよー」トテトテ
アイリ「それじゃ私は座って待ってようかしら」
切嗣「はぁ...」
バタンッ
切嗣「うわっ!?」ビクッ
セイバー「」
切嗣「こいついること忘れてたよ」
セイバー「」zzZ
切嗣「やれやれ股をおっ広げて熟睡か...どこの金髪ビッチだ」
切嗣「...はぁ」
切嗣「答えは簡単だ...イリヤが可愛いからだ」
切嗣「にしても実の娘だぞ...バカ野郎!バカ野郎!」
セイバー「クカーッ!」zzZ
切嗣「...」ビクッ
切嗣「イビキまでかきやがって...」
セイバー「スースー...」zzZ
イリヤ「ねぇねぇお母さん」
アイリ「どうしたの?」
イリヤ(8)「私...妊娠しちゃった♪」
~fin~
次はもうちょい続けろよ
めちゃくちゃじゃねえか
掲載元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1436690344/
Entry ⇒ 2015.07.23 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
キャスター「リュウノスケ、子役オーディションを始めましょう」
キャスター「そうです。 Fate/Zero 第2話で私に殺される子供を決めるのです」
龍之介「えっ、でもそういうのってあおき監督が決めるんじゃないの?」
キャスター「本来はそうなのですが……私が監督に駄々をこねた結果、特別に許可をもらいました」
龍之介「はは、旦那は子供好きだからねぇ」
キャスター「ふふふ……これで演技に関係なく私好みの子供を選出できますよ!」
龍之介「旦那! 声がでかいって! 聞こえたらマズイよ!」
少年(ここで起用されれば……俺の知名度アップも間違いなし! 絶対に勝ち取ってみせる!!)
キャスター「さてみなさん、集まりましたね」
子ども達「はーーーい!!」
キャスター「……おっと、言い忘れてました」
龍之介「……?」
キャスター「私は男の子にしか興味がありませんので女の子達は帰ってください」
女の子達「!?」
龍之介(旦那、ショタコンだからなぁ)
少年(男で良かった……)
龍之介「ひぃ、ふぅ、みぃ……10人ぐらいかな?」
キャスター「ええ、そうですね」
少年(この日のためにセリフも覚えて練習したんだ……頑張るぞ!!)
キャスター「……もう出てきていいですよ」
龍之介「?」
ガチャッ
男×4「……」
少年達「!!?」
龍之介「ちょ、ちょっと旦那!! 何そのパンツ一丁のマスクした男達は!?」
龍之介「攻撃……?」
男×4「……」バッ!!
龍之介「!?」
少年(パンツを脱いだ!?)
キャスター「彼らの肉棒に耐えるのです!!」
少年B「えーーーーっ!?」
少年C「すいません……僕、やめます」
少年B「俺も……」
\ボクモーボクモー/
龍之介(そりゃそうだよな……)
キャスター「なんて根性のない坊や達なんでしょう……」
少年(俺だってやりたくねえよ……けど!!)
少年「……俺はやります!」
龍之介(嘘!?)
キャスター「なんと……たった一人、根性のある坊やがいましたね」
龍之介「ぼ、僕……本当にいいの?」
少年「は、はい!」
少年(こんな大役、滅多にないしな……これを機に売れれば親孝行できる!)
キャスター「そうはいきませんリュウノスケ。 このオーディションは今後の私の人生を左右するんですからね」
龍之介「そ、そんなに……?」
キャスター(このオーディションで合格した人が私の可愛いペットになるのです!)
龍之介「ところでさ旦那……」
キャスター「なんですリュウノスケ」
龍之介「あのマスクした人達とはどういう関係?」
キャスター「♂」
龍之介「は?」
キャスター「察してください、リュウノスケ」
龍之介(うわぁ……)
少年「あの……何を奥でコソコソ話をしているんですか?」
キャスター「いえ、なんでもありませんよ坊や。 さあ、オーディションを始めましょう」
少年「い、一時間!!?」
キャスター「おや、この役を勝ち取りたくないのですか?」
少年「や、やります!」
キャスター「分かればよろしい。 では始めましょう」
男×4「……」バッ!!
少年(フ、フルチンで来た!?)
男×4「……」
少年「む、むご……」
少年(ちょっ……やめ……)
キャスター「素晴らしい! 肉棒4つが彼の口の中に!!!」
龍之介(どこをどう見たら素晴らしいんだよ)
少年「……ぱあっ!!」
キャスター「坊や!! 吐き出してはいけません!! あと10分は咥えたままでいなさい!!」
少年「!!!?」
キャスター「いいから早く!」
少年「は、はい!」
キャスター「ご覧なさいリュウノスケ!! 涙目になっている少年の顔を!! なんと可愛いらしいでしょう!!」
キャスター「私の悲鳴を上げてはいけないという決まりを守りながら必死に堪えている姿……これこそが私の理想なのです!!」
龍之介「旦那、あの子助けてもいい?」
キャスター「ダメです! あなたにもあれをやらせますよ!」
龍之介「わ、分かったよ……」
キャスター「そこまでにしましょう」
少年「は、はい……オエッ」
キャスター「次の試練です」
少年(まだあるの!?)
キャスター「次は彼らに20分間舌で舐められるのです!!」
少年「!?」
キャスター「さあ、あなた達!! 坊やを舐めるのです!」
男×4「……」コクリ
少年「ちょ……まっ……」
男×4「……」レロレロレロレロ
少年「!!!」ビクビク!!
キャスター「悲鳴を上げてはいけませんよ!」
少年「ふぁ、ふぁい……///」
少年(ふざけんなよ……色んなところを舐めやがって!///)
龍之介「……」
キャスター「!!」
パァン!!
龍之介「うわあ!?」
キャスター「龍之介、警察を呼ぶのは私が許しません」
龍之介「くそ、携帯が……だったら!」ダッ
キャスター「ふんっ!」
龍之介「ぐはっ!?」
キャスター「外へ出て助けを呼ぶことも私が許しません」
龍之介(くそ、どうすれば……どうすればあの子を救える!?)
少年「うっ……ううっ」
キャスター「少年、あと3分ですよ」
少年(絶対に悲鳴は上げない!!)
少年(売れなきゃ……売れなきゃいけない! 母さんと父さんに楽をさせるんだ!!)
キャスター「なかなか耐えますね……それでこそ調教しがいがある!!」
少年「20分……経ちました」
キャスター「よろしい! では最後の試練!!」
少年(なんだろう……)
キャスター「ホモセックスをするのです!!」
少年「えっ……」
龍之介「!!?」
少年「あっ……ああっ……」
男「……」バッ
少年「!!」
龍之介「……僕!! こんなチョイ役を取ってもなんも得しない! 早く悲鳴を上げるんだ!!」
少年「……」ブンブン
龍之介「そんな……どうして!?」
少年「どんな小さな役でもいい……全力で挑みたいんです!!」
少年「父さんと……母さんのために!!」
龍之介「!!!」
男「……」
少年「!!」
キャスター「おや……?」
少年「んっ……んんっ!!」
少年(な、なんだ……この感覚は……)
キャスター「あの様子……もしや坊や!!」
少年「んんーーーーーーーーっっっっ!!///」
キャスター「なんと……」
龍之介「そんな……ここまで来て……」
ガンガン!
キャスター「ん……?」
龍之介「あおき監督だ!!」
キャスター「もういいです……少年は試練に耐えられなかった……開けましょう」
ガチャッ
キャスター「どうも監督」
監督「鶴岡さん、今の悲鳴は?」
キャスター「彼です……」
少年「はぁ……はぁ……」
少年(くそ……我慢できなかった……)
監督「……君」
少年「は、はい……」
監督「……俺のドラマに出てくれないか?」
少年「へ……?」
キャスター「監督……残念ながら彼はオーディションに不合格で……」
監督「うるせえ! 監督の俺が言ってるんだ!! 採用は採用だ!」
キャスター「」
少年「い、いいんですか?」
監督「ああ、今の悲鳴は演技じゃなかったとしても素人じゃ中々できないからね、頼んだよ……ところで名前は?」
少年「お、大原です!! が、頑張ります!!」
龍之介(確かにあの悲鳴は凄かったな……頑張れ少年!!)
男×4「……」
監督「ところで彼らは?」
龍之介「き、気にしないでください」
龍之介(悲鳴により視聴者にトラウマを与えた彼は悲鳴の人と呼ばれるようになった)
龍之介(このドラマの出演を機に大原少年は様々な役をこなし、後に『奈須きのこ賞』を受賞するにまで至った)
龍之介(そしてお金も沢山もらい、親孝行もできたそうだ)
龍之介(因みに旦那はあんなことを繰り返した所為で逮捕された)
ライダー「食事に……セ、セックス///」
監督「カーーーーット!!」
ウェイバー「なんだよ! いい歳してセックスって言うのも恥ずかしがってんのかよ!」
ライダー「う、うるさい!!///」
〜終わり〜
あの少年の演技よかったよな
龍之介が普通にいい奴だww
りゅーちゃんが変態じゃない
fate/zeroがドラマでフィクションだったらって設定?
ギャラクシーエンジェルの最終回思い出したわ
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Entry ⇒ 2015.07.19 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
アイリ「セイバーがね……」ニコニコ 舞弥「……」
アイリ「ふふふ……本物の騎士様にエスコートされるのってドキドキしちゃうわ」ニコニコ
舞弥「……」
アイリ「セイバーでもああいう風な冗談言うのねえ」クス
舞弥「……」
アイリ「あっ、あと前にもセイバーが……」ニコ
舞弥「……」
舞弥「(主従百合……尊い…)」
舞弥「……」
舞弥「マダム」
アイリ「? なに? 舞弥さん」
舞弥「セイバーの事が好きなのですね」
アイリ「うーん……」
アイリ「……あなたも、そう思う?」
舞弥「と、いいますと? 貴女自身の感情なので私に判断は……」
アイリ「実を言うとねえ…………ここだけの話に出来る?」
舞弥「はい。他言はしません」
アイリ「ふふ。ありがとう」ニコ
アイリ「正直ね、私ももしかすると自分はセイバーの事が好きなんじゃないかって思っていたの」エヘ
舞弥「(かわいい)」
舞弥「それは……所謂、LOVEですね?」
アイリ「……そうね。不思議だけど、素直に認められるわ」
舞弥「……」
舞弥「(よっし!!!)」ガッツポ・・
舞弥「難しいですね……」
舞弥「(正直、切嗣には悪いですが百合無罪は世界の必理。私は応援します)」
舞弥「お相手が男性ならともかく、あの英霊は女性ですしそれ以前に人間ですらありません」
アイリ「そう言わないで。セイバーも1個の人間よ」
アイリ「それに、それを言うなら私も人の枠から外れている存在だわ」ニコ
舞弥「……すみません。失言でした」
舞弥「ですがマダム。これだけは覚えていてください」
舞弥「私は貴女の味方です」
アイリ「ありがとう舞弥さん」
アイリ「この戦争が終わるまで私は生を許されている。だからその間は可能な限り楽しみたいの」
舞弥「はい。それは誰にも害されない貴女の権利ですから」
アイリ「でも……」
アイリ「……セイバーには内緒ね? 気を使わせたくないから」フフ
舞弥「……」
舞弥「(私にお任せください……)」グッ
舞弥「……」
セイバー「おはようございます。舞弥」
舞弥「……」ペコ
セイバー「アイリスフィールを探しているのですが……」キョロ…
舞弥「……」
舞弥「気になりますか? セイバー」
セイバー「ええ、今はアイリスフィールの護衛を切嗣から言い任せられていますから」
舞弥「……それは、切嗣から与えられた役割だからですか?」
セイバー「質問の意味を計りかねます」
舞弥「……すみません。今のは忘れてください」
舞弥「(私としたことが焦りすぎました……これでは不振がられてしまう)」
セイバー「……確かに、彼女の護衛はマスターである切嗣の命です」
舞弥「…… セイバー「しかし」
舞弥「!」
セイバー「私個人の持つ感情として、アイリスフィールを護りたいという気持ちは本心です」
セイバー「私は、全身全霊を持って彼女の騎士として姫を護り通します」
舞弥「……ふっ」
舞弥「それが貴女の覚悟なのね……、わかったわ。今後もマダムを頼みます」
舞弥「……」
舞弥「(『姫』発言キターーーーーーー!!!)」パアァッ
セイバー「はい。それがなにか?」
舞弥「いえ、ただ男であると臣民を欺くための婚姻だったのかと思いまして」
セイバー「ええ。円卓の計らいですが、思惑はその通りです」
舞弥「……そう、ですか」
舞弥「(セイバーはノンケだということ… セイバー「しかし」
舞弥「!」
セイバー「円卓の薦めといえど、御身の性を秘匿するには独身を貫く事でもそれは同じ。敢えて女性を妻と迎え入れたのは、そこに私の意思が存在していたからです」
舞弥「つ、つまり……」
セイバー「私は、彼女を愛していました」
舞弥「!」
舞弥「百合騎士バンザーイ!!!(同性愛はこの国でも古くから認められています。武将でもかの有名な……)」
舞弥「え?」
舞弥「(この子……心を読む能力でも?)」クッ
舞弥「いや、今のは気にしないでください」
舞弥「セイバー、貴女は騎士としてこの上ない資質を持っているようですね」ニコ
セイバー「?」
セイバー「舞弥、貴女の笑顔を見るのは初めてですね。少し貴女という人間を知れた気がします」ニコ
舞弥「お互い様という事ですか。ふふ」
舞弥「この世界での貴女の姫君、そのお方とのアレやソレ。楽しみにしています」
セイバー「舞弥?」
舞弥「ふふ……」ユエツ
セイバー「……何か勘違いをしているようですが、私とアイリスフィールとの関係は護られる者と、護る者。それ以上でも以下でもありません」
舞弥「へ?」
舞弥「……っぷ。(は、吐き気が……)」オエェ…
セイバー「私には、妻がいます」
舞弥「……」
セイバー「騎士とは忠義の道。そこに恋沙汰など以ての外」
舞弥「……」
セイバー「それにアイリスフィール自身、マスターである切嗣の妻。そのような御仁に恋慕を抱く事それ自体、不忠そのものです」
舞弥「……」
セイバー「確かに、彼女は女性としてとても魅力的だと思います…………舞弥?」
舞弥「……」
舞弥「(このような想いをするのなら、花や草木に生まれたかった……)」ウウゥ…
舞弥「(死のう。囮となれば切嗣の役にもなろうというもの)」
セイバー「舞弥」
舞弥「(切嗣……此度の聖杯戦争、成功を草葉の陰から祈っています)」
セイバー「……」
舞弥「(最後にマダムの胸でも揉んで逝こうかな……)」
セイバー「……それに」
舞弥「?」
セイバー「私の感情ではなく、アイリスフィールがどう思うのかという事が……」プイ
舞弥「!」
舞弥「せ、セイバー……それって…」ゴク
セイバー「……この話は他言 舞弥「しません!!」
セイバー「……」
セイバー「先程も言った通り、アイリスフィールはとても魅力的な女性です」
セイバー「ですから……」
舞弥「……」ゴクリ
セイバー「私は…………不忠者です」カアァ
舞弥「!」
舞弥「人に生まれてよかったーーー!!!!!(セイバー、貴女の気持ちはわかります。しかしこの世で生きる時間も短い……さもあれば、この数日を…この時代の姫に捧げるのも良しと私は考えます)」ブブゼラ プップー!
舞弥「騎士として、主君の妻を愛してしまった背徳の関係……それも不道理」
舞弥「ですが、セイバー……聞いてください…」
セイバー「……」
舞弥「人が人を愛する。それ自体を悪などと誰が言えましょうか」
セイバー「……舞弥」
舞弥「貴女はアイリスフィールを愛していて、アイリスフィールもまた……セイバー、貴女を愛している」
舞弥「大切なのはそこなのです。貴女は残り数日で元の世界に戻り、アイリスフィールも刻を同じくしてその姿を聖杯へと変え……個人としての彼女は消えてしまう」
舞弥「ならば残された僅かな時を……どうか、自身の心胸に正直になってみてはどうですか」
セイバー「……」
舞弥「それに言ったでしょう? 私は、貴女の味方だって」フッ セイバー「あの、舞弥」
セイバー「アイリスフィールが私を愛しているというのはどういう事ですか?」
舞弥「ふぇ?」キョトン
セイバー「それは?」
舞弥「……マダムには、秘匿を命じられていたのですが」
セイバー「そう……ですか、つまり」
舞弥「はい。あえて二度とは申しませんが」
セイバー「……」
舞弥「……」
セイバー「アイリスフィールに、私の想念は伝えないでください」
舞弥「セイバー……」
セイバー「意図せず一方的に彼女の想いを知ってしまい、これでは五分ではないが仕方ない」
セイバー「ギネヴィアがランスロットに靡いてしまった事を私は責められない。男として彼女を満たしてやる事が出来ず、戦ばかりでその心にも構ってやれなかった」
セイバー「ギネヴィアにしてやれなかった事をアイリスフィールにするのは、それはアイリスフィールに対して不誠実であり、ギネヴィアに対しての贖罪にもなり得ない。ただ自らの悔いを刪削したいが為の自己満足に他ならない」
舞弥「セイバー、あの」
セイバー「いいのです。私はこの想いを持って過去へと消えよう……アイリスフィールと出逢えた事が、僥倖です」
舞弥「いや後ろ、後ろ後ろっ」
セイバー「ん?」クルッ
アイリ「そう、そんな事を考えていたのね」ニコ
セイバー「あ、アイリスフィール!?」
舞弥「マダム……」
舞弥「(それはそれとしてランスロットめ……もし聖杯戦争に出てきたら真っ先にヘッドショットをお見舞いしてやろう)」
セイバー「アイリスフィール……しかし、私は」
アイリ「ええ、わかっているわ。貴女の立場も、貫くべき道も」
アイリ「ただ、貴女の気持ちが嬉しいの。私にはそれだけで十分だわ」ニコ
セイバー「……はい。同様に、私の心も貴女に愛されているという事実に満たされています」
アイリ「好きよ、セイバー」
セイバー「私もです。アイリスフィール」
舞弥「(尊い……)」ウルッ
アイリ「じゃあ……エスコート、お願いしようかしら」フフ
セイバー「喜んで……」
スタ、スタ…
舞弥「……」
舞弥「二人は幸せなキスをして終了のはずでは???」
舞弥「しかし、良いものを見た」
舞弥「精神のみでの繋がりも美しいが、私としては愛し合う二人も見たい……」
舞弥「それにしても絵になりますねあの二人は……」ウンウン
舞弥「媚薬香を焚いておいて……」
舞弥「……理由を付けて二人を同衾させて」ウムウム
舞弥「使い魔に取り付けてあるCCDでさっきの映像は撮れている。これで当分はネタに困らない」
舞弥「……」
舞弥「トイレで精神統一してこよう……」
切嗣「……そういう事なら舞弥、この件は君に一任するよ」
舞弥「いいんですか?」
切嗣「ああ。僕はアイリの気持ちを尊重したいからね」
切嗣「こう言っては難だが、彼女に残された時間も僅かだ。アイリのしたいようにするといい」
舞弥「切嗣……貴方が理解ある夫で良かった」
切嗣「夫である前に彼女の幸せを願う一個人だよ。相手が他の男となったらそれは嫌だけど、セイバーなら丁度いい。デコイであるアイリの警護にも身が入るだろうしね」
舞弥「それでは早速、様子を見てきます」
切嗣「二人にはまだ仕事があるんだ。ハメを外し過ぎないように注視してほしい」
舞弥「了解です」
舞弥「……」
舞弥「(”アイリ×セイバーのラブラブちゅっちゅ作戦”、開始ですっ!)」シュバッ!
アイリ「きゃっ」
ガシッ
セイバー「大丈夫ですか? アイリスフィール」
アイリ「え、ええ……」カアァ
舞弥「(初っ端からイチャラブキターー!!)」
アイリ「セイバー……」
セイバー「……アイリスフィー… ケイネス「おや、思いがけず標的と遭遇し 舞弥「起源弾っ!!」バシュッ!
ケイネス「ぐわぁーっ!!?」
バキュン バキュン!
ケイネス「」シーン
舞弥「……」フゥ
舞弥「いらぬ邪魔が入るところでした。百合イチャの邪魔はさせるなと切嗣も言っていたような気がしますし、周りに被害も出さなかった。後で褒めてもらいましょう」
アイリ「セイバー……」
セイバー「アイリス、フィール……」
舞弥「(よしっ、よし! そこです! 今ですセイバーっ!!)」キュンキュン
セイバー「……」ゴク
綺礼「アインツベルンの 舞弥「起源弾っ!!」バシュン!
時臣「おや、 舞弥「起源弾っ!!」バシュン!
龍之介「旦那ぁ! 舞弥「起源弾っ!!」バシュン!
舞弥「起源弾っ!!」 雁夜「ぐわぁーっ!?」
舞弥「はあっ、はぁっ、次から次へと……」
舞弥「しかし、これで大分静かに……」チラッ
アイリ「っ……ん」
セイバー「……っ」
チュー
舞弥「大事な瞬間を見逃してしまった!!?」グハァッ!?
舞弥「な、なんて事だ……その瞬間を見逃すまいと、24時間観察してきたのに…」ウウゥ…
アイリ「……」カァ
セイバー「……この往来は人が少ないといえど誰に見られるともしれません。いきましょう」カァ
舞弥「セイバー、無理して平常心を取り繕うとして……可愛いではないですか」フフフ
舞弥「生では拝めなかったですが、使い魔は録画したいるはず……それを後で拝聴いたしましょう…」フゥ…
舞弥「明かして、障害が無くなった二人も見てみたいし……」
舞弥「明かさずに、背徳感でドキドキしながらの百合も捨て難い……」ウーン
舞弥「悩みますね……さて、どうしましょうか」
舞弥「……いや、明かさないままだとあの二人のことです。きっと一定のラインで落ち着いてしまうはず(名推理)」
舞弥「となると、教えてあげるが世のため百合のため」
ーー……
セイバー「切嗣が?」
舞弥「はい」
ーー……
アイリ「……そう」
舞弥「はい」
ーー……
舞弥「もうこれで二人の進展を阻むものはありません。後はムード作りを……」
ーー……
セイバー「……アイリスフィール」
ギュッ
アイリ「だ、だめよセイバー……」カアァ
舞弥「(満更でもない感が異常ですよマダム。これは押せ押せですセイバー)」
チュッ…
舞弥「(キターーーーー!!!)」パアァッ!
舞弥「(あぁ、いきなりそんな……)」
舞弥「(これは……中々…)」
舞弥「(シーツがあんなに……)」ゴクリ
舞弥「(音がっ、振動がっ!)」
舞弥「……」
舞弥「……」
ーー……
舞弥「……良い、ものを見ました」
舞弥「しかし、こうなると二人の行く末が気になります……」
舞弥「マダムも健在で、セイバーもこの時代に残る……そんな夢みたいな話…」
舞弥「……」
舞弥「いやいや、一度聖杯になったマダムを復活させるなんて……」
舞弥「……アレの力ならそれも、可能?」
舞弥「……」
舞弥「私の、望む……私が考える理想の百合世界の構築…」
舞弥「……まさか、まさかですよね」
舞弥「……」
舞弥「…………」
舞弥「聖杯をこの手にっ!!」グッ
イリヤ「せ、セイバー」
セイバー「はい? どうしましたイリヤ」ニコ
イリヤ「あっ、あのね」
イリヤ「……そ、その…」カアァ
アイリ「桜ちゃんもどうぞ」ニコ
桜「はっ、はい!」カァッ
切嗣「……舞弥。これで良かったのかな」
舞弥「争いは全く無く、切嗣が望んでいた世界平和も実現しました」
切嗣「……うん、そうだね」
切嗣「……たぶん、僕では叶えられなかった。そんな気がするよ。だから今では君で良かったと思う」
舞弥「ありがとうございます」
舞弥「……」チラ
セイバー「良い子ですねイリヤスフィールは……」ニコ
イリヤ「えへへぇ……」テレ
アイリ「はい、あーんっ」
桜「あ、あー……ん」パク
アイリ「セイバーも、あーんっ」
セイバー「……ん」パクリ
セイバー「やはり、アイリスフィールの料理はどれも美味しいですね」
アイリ「ありがとう。セイバー」フフ
切嗣「……最近は、なんだか僕も舞弥の言いたい事がわかってきた気がするよ」
舞弥「流石です、切嗣」
舞弥「……」
舞弥「……百合って、本当に…素晴らしいものですね」ニコッ
<完>
乙です。
やさしいせかい
キリツグ以外の男は全滅してる可能性
士郎も普通に暮らしてる事だろう
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Entry ⇒ 2015.07.03 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
セイバー「私は、切嗣の事が大好きですよ?」切嗣「……」
切嗣「サーヴァントと腹を割って話し合う……!?」
アイリ「ええ♪」
切嗣「アイリ、それは」
アイリ「抵抗があるのは分かるわ。あなたに言わせれば英雄達は『栄光だの名誉だの、そんなものを嬉々としてもてはやす殺人者』。嫌悪すべき対象ですものね」
アイリ「でもね切嗣。あなたの目的は聖杯を手に入れ、その力で恒久的な平和を達成する事」
アイリ「そのために今日まで……最大の効率と最小の浪費で、最短のうちに処理をつける最善の方法を選び続けてきたんでしょう?」
アイリ「なら、今回もそうすべきよ。余計な意地を張って流れる血の量を増やすべきではないわ」
切嗣「……」
アイリ「あなたはセイバーの事を道具として扱う、と言ったわよね」
アイリ「道具を有効利用したいのなら、そのメンテナンス……この場合はコミュニケーションね。とにかく、そういったものを欠くのは極めて非効率だと思うの」
切嗣(分かっている。分かっているさ、そんなことくらい……だが……)
アイリ「どうかしら。少しの時間だけでいいから、私のワガママに付き合ってもらえない?」
切嗣「……アイリ。すまないがもう仕事の時間で」
アイリ「切嗣、お願い。一人になろうとしないで?……怖がらなくても大丈夫よ。ここには私も、イリヤも、舞弥さんもいる」
アイリ「あなたの心が弱ってしまったのなら、私達が支えになる。先の見えない不安に襲われるなら、星明りになって照らしてあげる」
アイリ「いつ、どこで、何があったって、あなたを『独りぼっちの正義の味方』になんてさせないわ。絶対に」
アイリ「だって私達は皆……貴方の事が、大好きだから」
切嗣「……」
切嗣(……ああ、そうだった)
切嗣(僕は……この瞳を好きになってしまったんだった)
アイリ「ちなみに、もしワガママ聞いてくれなかったら私セイバーの胸の中で泣いちゃうかも」
切嗣「!?」
アイリ「心に傷を負った結果フラフラと夜の街で遊ぶようになって、イリヤにも露出度の高い服着せちゃうかも」
切嗣「!!!!!?????」
アイリ「舞弥さんも彼氏作っちゃうかも」
切嗣(どうでもいい)
アイリ「その他もろもろ、私達の関係にヒビが入っちゃうかも」
切嗣「もういい分かった、分かったからありもしない未来の可能性を言葉にするのはやめてくれアイリ!……口をきけばいいんだろう?アレと」
アイリ「ええ。愛してるわ、切嗣♪ 原稿用意しておいたから、準備が出来たらお城の客間に来てね」
切嗣「はぁ……」
切嗣(原稿?一体何の……)
ーーアインツベルン城・給仕室
アイリ「さて、私は紅茶を作らなくちゃ。やっぱり仲良くお話しするなら、お茶が必須よね」
アイリ「ええと、茶葉を入れて……あら?何かしらこの黒い茶葉。『アンリマンユ』?知らない銘柄ね……」
アイリ「メイドが気を利かせて用意してくれたのかしら。……何にせよお城に置いてあったものだし、悪いものじゃないわよね?」
アイリ「うん。変な匂いもしないし、大丈夫みたいね。折角だし、今日はこれにしましょう。それじゃ、熱湯を注いで……」
アイリ「出来上がり。私特製、必殺のおもてなしティー!」
アイリ(頑張るのよ、アイリ。あの二人の橋渡しが出来るのは私しかいないんだから!)
ーーアインツベルン城・客間
アイリ「おまたせセイバー!ごめんね、ちょっと準備に時間かかっちゃって。そのスーツ、やっぱり似合ってるわね」
セイバー「アイリスフィール、この服は中々機能的で気品もあり良い物です。感謝します」
アイリ「気に入ってくれたならそれだけでいいのよ、私が勝手に用意したものなんだから。……ほら切嗣、私の後ろに隠れてないで。それじゃ話し合いも出来ないわよ?」
切嗣「……」
セイバー「……アイリスフィール、これは一体?」
アイリ「これ?これはね、あなたと切嗣の絆を深めるための作戦会議よ♪まぁまぁ紅茶どうぞ」
セイバー「はぁ、では頂戴します」
セイバー「………………!」
セイバー(ふむ、これは中々美味しい。良い茶葉を使っていますね)
アイリ「飲みながらでいいから聞いてもらえる?切嗣がちょっと言いたい事あるらしいの。……ほら、切嗣」
セイバー(あの男が私と会話を!?アイリスフィール、一体どれほど強力な暗示をかけたと言うのですか……!)
切嗣「……」
アイリ「切嗣。人と話すときは、目を見なきゃダメよ?」
切嗣「ぐっ……!」
セイバー(そんなヘドロ沼のような目で見られても困るだけなのですが……)
切嗣「……っ」プルプル
アイリ「切嗣。勇気を出して?」
切嗣「……………………せいばーへ。いままで、むしをしていて、ごめんなさい。あやまります」
セイバー「」ブーッ
アイリ「大変!セイバー、大丈夫!?今何か拭くものを持ってくるわ!」
セイバー「けほっ、けほっ……だ、大丈夫ですアイリスフィール。大事ありません」
切嗣「アイリが淹れてくれた紅茶を噴き出しておいて『大事ない』だと!?」
アイリ「切嗣、私なら大丈夫だから。抑えて抑えて」
切嗣「アイリ……しかし……」
セイバー(い、いけない。騎士王ともあろうものが紅茶を噴き出してしまうなんて!しかしこの棒読み具合はあまりにも……)
セイバー「……こほん。見苦しい所を見せてしまいました。どうぞ、続けてください」
切嗣「……これからは、ちゃんとはなしあって、なかよくいっしょにせいはいせんそうをかちぬいていきたいです。えみやきりつぐ」
アイリ「偉いわ切嗣、よく言えました!それこそあなたが行うべき最善の手段よ!」パチパチパチ
切嗣(くっ……なぜ僕が英雄を相手にこんな文章を……)
アイリ「セイバー、切嗣もこう言ってる事だし、今までの非礼は騎士王としての寛大な心で見逃してあげてくれない?」
セイバー「……まぁ、いいでしょう。アイリの努力に免じて、今までの事は水に流してあげます」
アイリ「流石だわセイバー!それでこそ最優、最強のサーヴァントにふさわしい振る舞いよ!」
アイリ「さて。それじゃあ禊も済んだ事だし、まずはお互いの名前を呼び合ってみましょうか。コミュニケーションの基本は名前を覚える事だって、本に書いてあったわ」
切嗣「……アイリ、いつ敵の偵察用使い魔が来るともしれない。ここでアレの真名を明かすわけにはいかないんだ」
セイバー「同意します。その試みはあまりに馬鹿らしい」
アイリ「むー……なら、『セイバー』でいいわ。ほら切嗣♪」
切嗣「ぐっ!」
セイバー(顔を見るだけで伝わってくる……この男は今、産まれてからもっとも激しい屈辱と恥辱を味わっている)
セイバー(他人事とはいえこれではまるで強姦……同情せざるをえません)
切嗣「………………セ」
アイリ「セ?」
切嗣「……」ギリッ
切嗣「セイ、バー………………ッ」
セイバー「ッ!?」ゾクッ
セイバー(な、なんだというのです今の感覚は!?全身に走った、電に打たれたような痺れは……!)
セイバー(この男が屈辱に唇を噛み締めこちらを睨みながら、それでも苦々しく私を呼んだ瞬間)
セイバー(私は確かに、言いようのない幸福を感じた……!?)
アイリ「偉いわ切嗣。さぁ、セイバーも」
セイバー「改めてよろしくお願いします、衛宮切嗣。……これでいいのですか?」
切嗣「っ……!」
セイバー(名を呼ばれただけであんなにも嫌そうに……よっぽど私の事が嫌いなのですね、切嗣)
セイバー(……何故かは分かりませんが、少し楽しい気分になってしまいました)
アイリ「ええ。バッチリよ♪ これで第一ステップはクリアーね。じゃあ次なんだけど……」
セイバー(……)
セイバー「少しいいですか、アイリスフィール」
アイリ「あら、どうしたの?」
セイバー「先ほどの私を呼ぶ切嗣の声にはまだ拒否感が残っていました。私はとても悲しい。残念ですが、このままでは真の信頼関係を作る事などできはしないでしょう」
セイバー「信頼出来ないマスターと共に戦ったのでは、聖杯戦争にもきっと負けてしまうでしょう」
セイバー「悲しいですが、私はサーヴァントの身。マスターが敢えて敗北を選ぶのなら、涙を呑んでそれを受け入れるしかないのですね……」
アイリ「まぁ大変!ほら切嗣、もう一度言ってあげて?」
切嗣「ぐ、ぅっ……!」
セイバー「いいのですアイリスフィール。切嗣がどうしても私を呼びたくないのなら、それで。私は彼の意志を尊重します」
セイバー「切嗣にとっては聖杯など、その程度の安っぽいプライドで逃しても惜しくない程度のものなのでしょう」
切嗣(この女、言わせておけば……!)
セイバー「そうでないというのなら、さぁ。私を呼ぶのです切嗣。共に聖杯戦争を勝ち抜いていく『無二の戦友』として、努めてフレンドリィに」
アイリ「切嗣、早く言わなきゃセイバーがやる気を失ってしまうわ!」
切嗣「セ、セイ……バー」
セイバー「聞こえません。幼子ではないのですから、もっと大きな声で言わなければ」
切嗣「ッ……セイバー」
セイバー「おや、声に怒気が混じっていますね?なるほど、切嗣はアイリスフィールやイリヤスフィールをを悲しませる事になったとしても私と信頼関係を結びたくはない、と」
切嗣「セイバー!お願いだ、僕と共に…………戦ってくれ!」
セイバー「戦って『くれ』?」
切嗣「…………戦って、ください……!」
セイバー(~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!)ゾクゾクッ
セイバー「……民草にそこまで懇願されては、王として動かない訳にはいきませんね。分かりました切嗣、手を貸してあげましょう」
アイリ「切嗣、力を貸してもらえるのだから、お礼を言わなきゃだめよ?」
切嗣「ありがとう…………ございます…………!」
切嗣(クソッ、クソッ……!)
セイバー「……ふふ、ふふふ」
アイリ(セイバーったら楽しそう!切嗣の事気に入ってくれたのかしら?)
セイバー(いけませんよ切嗣。そんな悔しそうにしたら……もっともっと、あなたの屈辱に歪む顔が見たくなってしまうではありませんか)
セイバー(あぁ、私はどうかしている。人に責め苦を与えて喜ぶなど、支配者たる王としてあるまじき事……なのに……)
切嗣「……アイリ。僕はもう行く」
セイバー「切嗣。どこに行くのです?私はあなたともっと話がしたい」
切嗣「偵察だ。お前は必要じゃない」
セイバー「もう一度言います。『私は、あなたともっと話がしたい』」
アイリ「切嗣、ここは……ね?」
切嗣「……手短に済ませろ」
セイバー「済ませ『ろ』?」
切嗣「…………済ませて、『ください』……!」
セイバー(この男が苦しんでいる姿を見つめているだけで、どうしてこんなにも愉しいのだろうか……!)ゾクッ
セイバー「さて切嗣。まずはあなたが聖杯にかける願いを教えてもらいたい」
切嗣「そんな事をお前に喋る理由は無い」
セイバー「そちらには無くともこちらにはあります。願望機にかける程の大きな願いを知れば、私はもっと深くあなたを理解できる」
セイバー「聞かせてください切嗣。あなたは、聖杯に何を望むのですか?」
切嗣「……恒久平和だ」
セイバー「ほう?」
切嗣「僕はお前らのように周りを巻き込んで自分勝手な闘争をする『英雄』なんてものの存在を認めない」
切嗣「自分の名誉や地位のために罪もない人々を戦いの中に巻き込み、犠牲にし、それを鑑みようともしないお前達を、僕は許さない」
切嗣「戦いは汚いものだ。醜いものだ。あってはならないものだ。僕はこれまでも戦いの数を減らそうと努力してきたが、それでも人類は過ちを繰り返し続けた」
切嗣「だからこそ僕はこの聖杯戦争に勝利して聖杯を手にし、願望機の力でもって恒久平和を達成する。この戦いを、人類最後の流血にしてみせる」
切嗣「それが僕の願いだ。これで満足か?セイバー」
セイバー「……ええ、とてもよく分かりました。また一つあなたの事が知れて、私は嬉しいです」
セイバー(叶うはずの無い理想を、それでも叶えようとして、挙句奇跡に縋るという事か。……やはりこの男は救いようがない。だがしかし、いやそれ故に)
セイバー(どこまで堕ちてゆくのか、見てみたい。切嗣の心を支えてる呪いの如き理想を目の前で砕いた時、彼はどんな顔をするのだろうか……?)
セイバー(……ッ!!)ゾクッ
セイバー(私の聖杯にかける願いなど、この欲求に比べれば遙かに小事)
セイバー(最早故郷の事などどうでもいい。私はただ切嗣が傷つきながら、苦しみながら理想の泥沼で這い回る姿を見つめていたい……!)
セイバー「……切嗣。あなたの理想を叶えるため、私は剣になりましょう。今さら騎士道どうこうなど言うつもりはありません。好きに使って下さい」
切嗣「……最初からそのつもりだ」
セイバー「それはよかった。では切嗣、共に勝利を目指しましょう。……どこへ行くのです?」
切嗣「言っただろう、偵察だ。ついてくるな」
セイバー「……仕方ありませんね。あなたがそう言うのなら、今のところはこの城で過ごしておきます」
切嗣(しばらく家を空けるか……いやしかしイリヤとアイリが……だが……)
セイバー「どうかしましたか、切嗣?」ニコッ
切嗣「ッ……!!」
セイバー「ああ、留守の事なら大丈夫ですよ。あなたの妻と娘は、この私が責任を持って警護します。他のマスターやサーヴァントには指一本触れさせません」
切嗣「……」
セイバー(怯えと怒りがない交ぜになって、まるで悪魔を見るような目ですね。切嗣……その表情、正直ゾクゾクしてしまいます)
セイバー(私から一寸でも遠くへ逃げ出してしまいたいのですよね?でも、あなたにそれは出来ない。悪魔のいる館に、妻子を残していけるはずがない)
切嗣(……駄目だ。このセイバーはおかしい。アイリとイリヤを置いて家を空けるわけにはいかない。偵察が終わったらすぐに帰ってくるしかない……!)
セイバー(だからあなたは帰ってくる。私はただここで座して待っていれば良い)
セイバー(だが、もしも……アイリスフィールやイリヤスフィールに何かあったら……切嗣はどんな顔をするだろうか?)
セイバー「ふふ、ふふふ……!『偵察』頑張って下さいね、切嗣。……二日三日家を空ける事になろうとも、何の心配も要りませんからね?」
切嗣(クソッ……!やはり呼び出すのはキャスターかアサシンにしておくべきだったんだ!)
ーー翌日・夕刻 アインツベルン城・玄関
切嗣「アイリ!」
アイリ「あらあなた。おかえりなさい」
切嗣「君とイリヤを置いていって、本当にすまなかった!イリヤは無事か!?」
アイリ「ええ。他のマスターもサーヴァントも、ここには一歩も入ってこなかったわ」
切嗣「そうじゃない!セイバーは、奴は今どこにいる!?」
アイリ「セイバー?セイバーなら今、イリヤにお話をしてあげてるわよ。二人ともとっても仲良しさんで……」
切嗣「……ッ!」
アイリ「あ、ちょっと切嗣!?」
ーーアインツベルン城・イリヤの部屋
セイバー「大きなくろいくまさんは、同じ森に住むみんなのことが大好きでした。みんなが仲良く暮らすにはどうしたらいいのか、いつも考えていました」
セイバー「くまさんはある時、親友のライオンさんが2匹のおおかみさんを食べようとしている所に出くわしてしまいました」
セイバー「ライオンさんは言いました。「ここ数日何も食べてないんだ。これ以上お腹がすいたら死んでしまう。」と、かすれた声で言いました」
セイバー「おおかみさんたちは言いました。「ぼくたちは何も悪い事をしていないよ。死にたくないよ。食べられたくないよ。」と、震える声で言いました」
セイバー「くまさんにとって、ライオンさんは親友です。でもおおかみさんたちだって、大切な森の仲間です。やさしいくまさんはどうするべきか、とてもとても悩みました」
イリヤ「ど、どうなっちゃうの!?くまさん、どうするの!?」
セイバー「くまさんは悩んだ末、ただ『おおかみさんの方が命の数が多いから』という理由で、おおかみさんをたすけることにしました」
セイバー「くまさんにはそんな理由でしか、おおかみさんとライオンさんの命を公正に区別する方法が思いつかなかったのです」
セイバー「ライオンさんが一匹死んでも、おおかみさんが二匹生き残るのならそれでいいと、そう思うしかなかったのです」
セイバー「……くまさんは涙を流しながら、親友のライオンさんをその大きな体で突き飛ばしました」
セイバー「近くの木に叩きつけられたライオンさんは、くまさんに「呪ってやる」と告げると、ぱったりとたおれて動かなくなってしまいました」
セイバー「くまさんのおかげで助かったはずのおおかみさんたちは血まみれのくまさんにおびえ、お礼も言わず逃げるように去っていきました」
セイバー「それからしばらくして、くまさんは2匹のおおかみさんが3匹のうさぎさんを食べようとしているところに出くわしてしまいました」
セイバー「おおかみさんは前のライオンさんと同じことを言いました。うさぎさんは前のおおかみさんと同じ事を言いました」
セイバー「くまさんはまた悩みました。ここでおおかみさんを止めれば彼らは飢え死にし、ライオンさんの死は無駄になってしまう」
イリヤ「そうよね!くまさんはおおかみさんを助けてあげなきゃダメよ!」
セイバー「でもここで二匹のおおかみさんを殺せば、三匹のうさぎさんの命を助ける事ができる……」
セイバー「ライオンさんを突き飛ばした時の事を思い出したくまさんは……」
イリヤ「……!!」
イリヤ「そ、それで……どうなったの?」
セイバー「終わりです。『やさしいくまさん』のお話は、これで終わりなんですよイリヤスフィール」
イリヤ「えぇー!?でも最後まで言ってないじゃない!くまさんはそれから、どうしたの?」
セイバー「ふふ……どちらにしても、くまさんは悲しむでしょうね」
イリヤ「そうよ!こんなの、くまさんを虐めるために書かれた話じゃない!酷いわ!」
セイバー「そうです。終わらないくまさんの苦悩、それを傍観者としてただ見つめる。そんな愉悦を感じる事こそがこの物語の肝なのですよ」
イリヤ「ゆえつ?」
セイバー「そうです。そもそも愉悦とは……」
切嗣「イリヤァァァーーーーッ!」
イリヤ「あー!キリツグおかえりーっ」
セイバー「おかえりなさい切嗣。大事ありませんでしたか?」
切嗣「貴様!イリヤに何をした!?言え!」
セイバー「何、とは?私はただ自分が知る物語をイリヤスフィールに聞かせていただけですが」
イリヤ「そうよキリツグ、何怒ってるの?私セイバーと一緒に居られて、すっっごくドキドキして、楽しかったんだから!」
セイバー「私もあなたと共に過ごせて幸せでしたよ」
イリヤ「えへへ……もう私達、友達よね?」
セイバー「ええ。私とイリヤスフィールは、神に誓って友情を保ち続けるでしょう」
イリヤ「やったー!私、メイドじゃないお友達、初めてなの!」
セイバー「それは良かった。一番の友達になる事ができて光栄です」
イリヤ「ずっとずっと、一緒に遊ぼうね!これでもう、寂しくなんかないもん!」
切嗣「……」
セイバー「……どうしました、切嗣?とても怖い顔をしていますよ?イリヤスフィールが怯えてしまいます」
セイバー「大丈夫です。ここにはあなたの敵など、一人もいませんよ。さぁ、頬の緊張を解いて。可愛い娘を抱いてあげたらどうです?」
切嗣「イリヤ。明日からはお父さんと一緒に向こうの部屋で遊ぼう」
イリヤ「やだ!私、セイバーと一緒に遊ぶもん!キリツグ、一緒に遊んでてもすぐお仕事に行っちゃうんだもの。結局独りぼっちで、つまらないわ」
切嗣「……!」
切嗣(イリヤ……やっぱり、寂しかったのか……)
セイバー(あぁ……辛いですよね切嗣。言葉にせずとも、あなたの絶望は痛いほど伝わってくる)
イリヤ「セイバーはずーっと遊んでくれるもん!私、セイバー大好き!」
セイバー「私もあなたが大好きですよ、イリヤスフィール」
イリヤ「わーい!」
セイバー(突然やってきた、大嫌いな人間を、大切にしている人が好きになってしまう……なんて悲劇的なのでしょう)
セイバー(でもあなたは私からイリヤスフィールを引き剥がす事は出来ない。なぜなら私と一緒にいるイリヤスフィールが、とても幸せそうに見えてしまうから)
セイバー(娘の幸福誰よりも強く願うあなただからこそ、そこで立ち尽くす事しか出来ない……!)
セイバー(……ですが流石に時期尚早すぎますね。折角のご馳走、ここで平らげてしまうのはあまりにも無粋)
セイバー(ここは一つ、助け舟を出しておきましょう)
セイバー「イリヤスフィール。明日からは切嗣とも一緒に遊んであげては?彼もあなたに会えず、寂しい思いをしたのですから」
イリヤ「えぇー……」
セイバー「私も混ざりますから。そうですね……三人で一緒に、胡桃の芽を探す競争をするのはどうでしょう?」
イリヤ「うんっ。それならいいよ!チャンピオンは何人の挑戦でも受けるのだ~!」
セイバー「これは頼もしい。ではこのセイバー、姫の玉座に全身全霊で挑ませていただきます。……よろしいですね?切嗣」
切嗣「……………………ああ」
セイバー(ふふ、これは明日以降も愉しめそうですね……)
ーー翌日・アインツベルン城敷地内・森
切嗣「おっ、一つ見つけた」
イリヤ「えぇー!?どこどこー?」
切嗣「ほら、あの木の上のほうだよ。こうして、肩車してやれば……見えるだろう?」
イリヤ「あ、ホントだぁ……高い所にあるから気づかなかったわ」
切嗣「先取点は頂きだ。どうする?チャンピオン」
イリヤ「むぅーっ、負けないもーん!」
セイバー「まったく、イリヤスフィールは本当に可愛らしいですね。英霊の私が言う事でもありませんが、絵本の中から飛び出してきた姫のようだ」
切嗣「……」
セイバー「切嗣、私に話しかけられるたびそんな仏頂面をしていては彼女が退屈してしまいますよ。ほら笑顔を作って。あなたは父親なのだから」
イリヤ「あ、あった!イリヤも一個、みーつけた!セイバー!キリツグー!こっちだよー!」
セイバー「さぁ行きましょう切嗣。私達の姫様がお呼びです」
切嗣「『僕とアイリ』のイリヤだ。二度と間違えるな」
セイバー「これは失礼しました。…………ところで切嗣、先程からこの森の中にサーヴァントの気配を感じるのですが」
切嗣「分かっている。ランサーとそのマスターだろう」
セイバー「イリヤを下がらせなくて大丈夫なのですか?敵は中々に素早いようですし、人質にとられる可能性も否定できませんが」
切嗣「奴らは無関係の少女を人質に出来るほど、合理的に動ける人間じゃない」
セイバー「なるほど。連れ歩いて戦闘に巻き込んでしまう方が危険であるという事ですね。良い判断です」
セイバー「つまり切嗣。あなたはこの森の中であの侵入者たちを撃退する気でいると、そう理解してよいのですね?」
切嗣「……ああ。お前にも、有効に機能してもらう」
セイバー「ふふ、お任せください」
セイバー(では、お手並み拝見といきましょうか……)
・
・
・
・
・
・
セイバー(私を囮にして森の中を移動し、敵のマスターと一対一の状況を作り出す)
セイバー(そして前もって舞弥に捕獲させておいたランサーのマスターの婚約者を人質にし、目の前で傷つける事で精神的動揺を誘う)
セイバー(激昂したランサーのマスターが月霊髄液で攻撃してきた所に起源弾を撃ちこむ)
セイバー(必然、彼の全身の魔術回路と神経、魔術刻印は壊滅。魔術的防御が不可能になったところで、通常の弾丸を用いて殺す)
セイバー(マスターが居なくなり消えかけているランサーに、私が止めを刺す。全ての目撃者たる婚約者も、舞弥に殺させる)
セイバー(全て切嗣の目論見通り。悪くない。悪くないのですが……何かこう、物足りないというか)
セイバー(切嗣であればもう少し悪辣な手段も採れたでしょうに。この程度では、彼の心は軋まない)
セイバー(あの顔が苦悩に歪む事は無いだろう。……残念極まりない)
セイバー「ランサー。消えかけたその体では最早戦うまでもないでしょう。一応聞いておきますが、言い残すことはありますか?」
ランサー「人質、不意打ち……戦いに参加する資格の無い者まで巻き込んで……!」
ランサー「貴様らは……そんなにも……そんなにも勝ちたいか!? そうまでして聖杯が欲しいか!?」
セイバー「ええ、欲しいです。私はどんな手段を使ってでも万能の願望機たる聖杯を手にし……」
セイバー「それを切嗣の目の前で、粉々に打ち砕いてあげたいのです……!」ゾクゾクッ
セイバー「ああ、切嗣はどんな顔をするのでしょうか?罵られ、蔑まれ、周囲を危険に晒し、およそ人間が求める全てを捨ててまで手繰り寄せた聖杯が目の前で砕け散ったその時、彼は!?」
セイバー「きっと……それは至上の芸術になるでしょう。私はその瞬間を見たいがために、今あなたを殺そうとしているのですよ、ランサー」
ランサー(こ、この女……既に狂っていたのか……!)
ランサー「そんなもののために……! この俺がたったひとつ懐いた祈りさえ……騎士道の誇りさえ踏みにじって……貴様らはッ、何一つ恥じることもないのか!?」
セイバー「騎士道?……今の私は、そんなものに欠片ほどの価値も見出していない」
セイバー「それと、文句を言いたいのはこちらの方です。あなたとマスターがあまりにも不甲斐ないから、切嗣と私は何の葛藤もなくあなた達を倒してしまった。そこに勝利はあれど、愉悦は無い」
ランサー「何……!?」
セイバー「舞台の敵役としては三流以下もいいところです。あなたに騎士の誇りがあるのなら、切嗣を苦悩させられなかった自らの力不足をこそ恥じなさい」
ランサー「……赦さん……断じて貴様を赦さんッ! 他者を苛む愉悦に憑かれ、騎士の誇りを貶めた亡者のセイバー……その夢を我が血で穢すがいい!」
ランサー「 貴様に呪いあれ! その願望に災いあれ! いつか地獄の釜に落ちながら、このディルムッドの怒りを思い出せ!」
セイバー「生憎と私はもう、あなた程度の小さな憎悪では満たされないのです……さようならランサー。せめて存分に苦しんで死んでください」
ランサー「が、はっ……!」
セイバー「さて……」
ーーアインツベルン城・玄関
イリヤ「セイバー!こっちこっちー!」
セイバー「切嗣、イリヤスフィール、お待たせしました。作戦通り、ランサーはこの手で討ち果たしましたよ」
切嗣「……イリヤ、随分体が冷えてしまっている。先に城の中に入って、暖炉で暖まってきなさい。僕とセイバーも後から行くから」
イリヤ「うん!」
セイバー「……あれだけ外で駆け回っていたのに、まだ走る力が残っていたのですね。子供の体力は本当に底なしです」
セイバー(そういえば、切嗣にも子供時代があったんですよね……)
セイバー(それはそれは荒んだ、血と硝煙と苦悩にまみれた愉悦たっぷりの青春を……おっと涎が)
切嗣「……」
切嗣「……セイバー」
セイバー「何でしょうか?」
切嗣「今回の作戦は成功だ。おかげで、最大の効率で事を進める事が出来た」
セイバー「それは何よりです、切嗣。私の望みはあなたの望みの一助となる事。それが叶ったとあればこれ以上の喜びはありません」
切嗣「次の戦いに備えておけ」
セイバー「ええ。了解しました」
セイバー(しかし、あまりにも上手く事が進み過ぎている……これでは面白みがない。何か手を打たなければ)
ーーアインツベルン城・客間 暖炉前
イリヤ「でね、あれからまた胡桃を探してたんだけど、キリツグったらサワグルミも胡桃の仲間だからOKなんて言うのよ!ずるいと思わない!?」
セイバー「ハハハ、彼も必死に胡桃だけを探すあなたを見て愉悦を感じ、ほくそ笑んでいたのでしょう。私と同じですよ」
イリヤ「違うもん!セイバーも負けず嫌いだけど、ちゃんと胡桃の芽だけ探してたもん!ズルする切嗣とは違うわ!」
セイバー(何かないものか……何か……)
イリヤ「それでね、その後に紅茶飲んだら、何だか体がぽーっとしてきて、熱まで出て、変な気持ちになっちゃったの。とっても不思議だったわ」
セイバー「……イリヤスフィール、その紅茶の話、もう少し詳しく聞かせていただけませんか?」
イリヤ「え?いいけど……?」
イリヤ「あのね、その日の紅茶は林檎みたいな風味でとっても美味しかったの。でも飲んだ後になんだかむずむずして、それをずっと我慢してたら熱を出しちゃったの」
セイバー「それで、どうやってその状態から回復したのです?」
イリヤ「……お」
セイバー「お?」
イリヤ「女の子の『アレ』を……弄ったら、すーって楽になって……」カァァ
セイバー「なるほど……イリヤスフィール、恥ずかしい出来事を喋らせてしまった無礼を謝ります。なんなりと罰を」
イリヤ「ううん。いいのよセイバー。あなたが何か得たのなら、私はそれでいいわ」
切嗣「イリヤ、お待たせ」
イリヤ「お帰りズルツグ!」
切嗣「ズ、ズルツグ?イリヤ、まさかまだサワグルミの事を根に持ってるのかい?」
イリヤ「べっつにー?……でも、明日からはちゃんと胡桃の数で勝負してくれないと、これからもズルツグって呼ぶからね」
切嗣「イリヤ、明日は……」
イリヤ「お仕事?」
切嗣「すまない……明日は、また偵察があるんだ」
イリヤ「……セイバーは?」
セイバー「私は切嗣が行動しろと言わない限り何もする事はありませんよ。サーヴァントですから」
イリヤ「ホント!?じゃあ、明日も一緒に遊ぼうね!」
セイバー「ええ」
切嗣「イリヤ、セイバーと二人で遊ぶのは……!」
イリヤ「遊ぶのは……ダメ、なの?明日もお母様はお城の中で安静にしてなきゃ駄目だし、切嗣だって居ないんでしょう?」
切嗣「うっ……!?」
セイバー「私を信頼してください。大丈夫ですよ、今日だって無傷で敵のサーヴァントを退けたではありませんか」
切嗣「……」
セイバー「これからもお互いを信頼し合って聖杯戦争を勝ち抜いていきましょうね、切嗣!」ニコッ
切嗣(僕は……こいつと共に最後まで戦うしかないのか……?)
ーー翌日正午 アインツベルン城・アイリの部屋
コンコンコン
アイリ「はーい?」
ガチャッ
メイド「失礼します。お体の具合はどうですか?」
アイリ「うーん、良くはないんだけど……まぁこの程度なら、直ぐに治ると思うから」
メイド「左様でございますか。替えの紅茶をお持ちしましたので、どうかご自愛を」
アイリ「ええ、ありがとう。下がっていいわ」
メイド「はい。失礼しました」
ガチャッ
アイリ「あら、リンゴのフレーバーなのね…………うん、美味しい。やっぱり寒い日に暖かい紅茶は染みるわね」
アイリ「…………あら?」
アイリ(い、いけない……顔が熱いわ、ちょっと染みすぎちゃったみたい……そういえば、最近切嗣とも久しくシてないわね……って私急にったら何を!)
アイリ「う、うぅ」
アイリ(熱まで出てきた……どこかのサーヴァントがやられたのかしら?)
アイリ「はぁ、はぁ……」
アイリ「はぁ、はぁ……」
アイリ(く、苦しい……からだ、あつい……立ってられないわ……これも聖杯化の影響……?でも、こんなに早く……)
コンコンコン、ガチャッ
セイバー「アイリスフィール、今後の事で少し相談が……どうしたのですか!?」
アイリ「せ、セイバー……」
セイバー「失礼します。……ひどい熱だ!何か心当たりは?今日は何かいつもと違う事をしませんでしたか?」
アイリ「分からないわ……紅茶が、いつもと違っていた、くらいで」
セイバー「分かりました。とにかく、今すぐ切嗣に帰ってくるよう連絡しましょう」
アイリ「セイバー、まって……いま、切嗣の邪魔は、してはダメ……!私なら、大丈夫だから……」
セイバー「大丈夫ではないでしょう!このままでは、貴女の生死にかかわる問題になりかねない」
セイバー「そうすれば一番悲しむのは誰です?切嗣でしょう?」
アイリ「セイバー……お願い……」
セイバー「っ……分かりました。ではアイリスフィール、せめて治療を」
アイリ「ち、りょう……?」
セイバー「はい。おそらく熱の原因は紅茶の茶葉……煎じるとそういう類の効能が出るものは、私もいくつか覚えがあります」
セイバー「大方、薬草の棚にあったものが何らかの原因で混ざってしまったのでしょう」
アイリ「そう、なの……?」
セイバー「ええ。そしてその熱の正体は媚熱です。治すには、一度体の感覚を高めきってしまえばいい」
アイリ「ま、まってセイバー……それって……」
セイバー「アイリスフィール、じっとしていてください。すぐに終わらせます」
アイリ「セイバー、お願い、やめてっ……!こ、こんなの、不貞だわ……!」
セイバー「いいえ。これは治療であり、私達は女同士です。高熱で腕すら動かせなくなってしまったアイリの代わりに、私がやるだけの事。何の不純さもありません」
アイリ「で、でも……切嗣はとても嫌だと思うわ。私、あの人の哀しい顔は……見たくないもの」
セイバー「では、秘密にしてしまえばいい。語られない事実など無いのと一緒です。私は決して口を割りません。後はアイリスフィール、あなたさえ秘密を守っていれば切嗣は悲しまない」
アイリ「……で、も」
アイリ(だめだわ……あたま、ぽーっとして……ちから、はいらない……)
セイバー「もう喋るのも辛いでしょう。大丈夫ですよアイリスフィール。ほら、目を閉じて……」
アイリ「せい、ばー……………………………………………………んっ」
・
・
・
・
・
・
ーー同日深夜 アインツベルン城
切嗣「ただいま」
切嗣(アイリが居ない……?いつも出迎えてくれていたのに)
セイバー「おかえりなさい切嗣。首尾はどうでしたか?」
切嗣「大体はどのマスターも、こちらの予想通りに動いている」
セイバー「それは何よりですね。この戦いの勝利も、きっと近い」
セイバー「城の方も大事ありませんでしたよ。イリヤスフィールもアイリスフィールも、既に眠っています」
切嗣(アイリ……いや、当たり前だ。深夜だというのに、出迎えてくれていた今までが頑張り過ぎだったんだ)
切嗣(僕の出迎えをしない事で、アイリが少しでも長く健やかにいてくれるのなら……僕はそれでいい)
セイバー「いやぁ、それにしてもアイリスフィールの身体は凄いですね。彼女と結ばれた切嗣は幸せ者です」
切嗣「……何を言ってる?」
セイバー「身体の話ですよ。同じ女として、あれだけのプロポーションは素直に羨ましく思います。剣を振るには少し邪魔でしょうが」
切嗣「何故、今そんな話をする……」
セイバー「それは言えません。アイリスフィールから硬く禁じられているので」
切嗣「なら、力付くでも聞き出すまでだ……!」
セイバー「ああ、落ち着いて下さい切嗣。分かりました、言います。言いますから。戦略上重要な令呪を、こんなところで使わないで下さい。非効率です」
切嗣「……早くしろ」
セイバー「では手短に。私は今日、アイリスフィールを抱きました。彼女があなたを出迎えに来ないのは、その事をあなたに知られたくないからです」
切嗣「きっ……さまああああああああああああああああああああああああッ!」
セイバー「ですから、落ち着いてください。抱いたと言っても、あくまで治療目的です」
セイバー「メイドが紅茶の茶葉を薬草と取り違えてしまい、それを誤って飲んだアイリスフィールが高熱を発症した」
セイバー「このままでは生死に関わるほどの事態になると、一目でわかるほどの媚熱でした」
セイバー「なので私が腕一本動かせないアイリスフィールの代わりに、彼女の体の疼きと熱を鎮めた」
セイバー「それだけの話です。筋は通っているし、私に悪意がない事も分かってもらえるでしょう?」
切嗣「……」ギリッ
切嗣(こいつは、自分が何をやったのか分かっているのか……!?)
セイバー「ガラス細工のように美しく繊細な体でしたので、触っている途中に壊れてしまわないか不安でした」
セイバー「……ですが、いやぁ、ギネヴィアより味わい深かったって感動しましたよ」
切嗣「嘘を言うなッ!」
セイバー「ならアイリスフィールに聞いてみては?実のところ、彼女は今も起きていますから」
セイバー「もっとも、そうすれば間違いなく彼女は傷つくでしょうが。切嗣はそれを望むのですね?」
切嗣「……ッ」
セイバー「白く美しい髪、緋色に輝く瞳、情熱を秘めた肉体……それらが乱れて動くのですからこれはもう、至高としか」
切嗣(駄目だ、もう僕にはこいつを許せない!今すぐに殺さなければ、自分を抑えられない!)
切嗣「令呪を持って命ずる……!自害せよ、セ」
セイバー「すみません切嗣、少し言葉が過ぎましたね。ですが、私を殺すという事はあなたの夢を殺すという事。あなたは本当にそれで良いのですか?」
セイバー「当然アイリスフィールや、あなたが無理を言って連れてきたイリヤスフィールもただでは済まないでしょう」
セイバー「私を殺す事は、結果としてあなた達家族の全てを不幸にしてしまう事に繋がるのです」
セイバー「今まであなたが失ってきた物の数、今まであなたが奪っていった物の数と、あなたの脳裏にたった今浮かんだ一時の激情。天秤にかけてみてください」
セイバー「天秤は必ず、あなたに正しい道を示してくれるはずですよ?」
切嗣(耳を貸すな!コイツは、コイツだけは殺さなければ……!僕はッ!)
セイバー「そしてもう一度思い返してみて下さい。私は此度の聖杯戦争において、間違いなくあなたの役に立っている」
セイバー「孤独なイリヤスフィールの友達になり、難敵であるランサーを倒し、高熱を出したアイリスフィールの命を救った」
セイバー「どれ一つ、あなたの不利益になった出来事は無いはずだ」
セイバー「切嗣。私はあなたの協力者であり、あなたの幸福を追求する従者なのです」
セイバー「そんな相手を利用しようとすらせず、主観的に許せないというだけで殺すと?」
セイバー「……それは、あまりにも酷すぎる愚行ですよ。貴方の願いから最も遠い位置にある選択肢です」
セイバー「恒久平和。素晴らしい願いじゃないですか。きっとこの願いはあなた以外には叶えられない」
セイバー「他の誰よりも真剣に平和を願ってきたあなたが、今、ここで、私と共に成し遂げるしかない」
セイバー「あなたはその機会を、永遠にこの世界から失わせるつもりですか?」
切嗣(僕は……)
切嗣(僕はッ……!)
切嗣「セイバー……僕は……お前を、殺さない。だって僕は……僕は、世界を、救うからだ……!」
セイバー「……ふふ、ふふふっ」
セイバー(ああ、なんて……なんて空虚な響き……!)ゾクゾクッ
セイバー「ええ、素晴らしい判断ですよ切嗣。それでこそ全ての救済を望むもの。それでこそ、あなたは衛宮切嗣だ」
切嗣「だが!……それでも、僕はお前を許さない!絶対にだ!」
セイバー「好きにして下さい。私はあなたの望みが叶えば、それでいいのですから」
セイバー(殺意のこもった目、握りしめた拳、頬を伝う数えきれない涙の痕……全てが愛しい。あなたの心に憎悪と怒りが満ちるたび、私の心は歓喜に震えてしまう)
セイバー(切嗣?私は、切嗣の事が大好きですよ?だから……これからも、ずっと苦しめてあげますから。壊れないでくださいね?)
セイバー「では切嗣、明日のために今日はもう休んでください。寝不足は体に毒ですから」
セイバー「それとも、アイリスフィールを慰めに行かれますか?面倒であれば申しつけてください。代わりに私がやっておきます」
セイバー「これでも妻を娶った身です。女性の扱いは心得ているつもりですから」ニコッ
切嗣「黙れ……!お前に頼む事など、何一つない!」
セイバー「そうですか。では私はこれで失礼します」
ーーアインツベルン城・切嗣の部屋
切嗣(アイリ……)
切嗣(治癒目的で行ったのなら、僕だって怒ったりしない。必要な事だったんだろう?なのに……なのに何故……隠そうとするんだ?)
切嗣「……クソッ!」ドンッ
コンコンコン
切嗣「入ってくるな!ドアの向こうが誰であってもだ!……もう僕の事を、放っておいてくれ!」
切嗣「う、うぅぅ……」
切嗣(セイバー、あいつのやった事は……どんな理由があろうと犬畜生以下だ! 鬼だ! 外道の極みだ!)
切嗣(なのに僕は……数えきれないほどの犠牲を払ってきてなお、あんな奴の力に頼らなければ、己の願望すら果たせないのか……!)
ーーアインツベルン城・切嗣の部屋前の廊下
『入ってくるな!……僕の事を、放っておいてくれ!』
セイバー(紅茶の一杯でも淹れてあげようかと思いましたが、取り付く島もありませんでしたね)
セイバー(切嗣のあんな悲痛な声、初めて聞きました)
セイバー「……」
セイバー「ふふ、うふふふふふ……!」
セイバー(ああ、愉しい……!)
ーー翌日朝 アインツベルン城
切嗣「アイリ、おはよう」
アイリ「…………おはようございます、あなた」
セイバー「おはようございますアイリスフィール。昨日はよく眠れましたか?」
アイリ「……ええ」
セイバー(嘘が下手ですね、アイリスフィール)
セイバー「さて切嗣。今日、私はどう動きましょう?留守番でも構いませんが」
セイバー「む。では遂に打って出るのですね?」
切嗣「そうだ。一刻も早く、この聖杯戦争を終わらせる」
アイリ「あなた……」
切嗣「アイリ、すまない。しばらく家を空ける」
アイリ「ううん、いいの。……頑張ってね」
切嗣「行くぞ、まずはキャスターだ。無関係な一般市民を多く殺傷している奴を倒し、報酬の令呪一画を狙う」
セイバー「はいっ!」
切嗣(少しでも長く、少しでも遠くへ、こいつをアイリとイリヤから引き離さなければ……!)
ーー同日午前 冬木市内
切嗣「偵察の間に入手した情報だけ与えておく。キャスターの真名はジル・ド・レェだ」
セイバー「聞き覚えがありませんね。まぁ、大した輩ではないのでしょうが」
切嗣「奴は狂気に犯され、お前を聖女ジャンヌ・ダルクだと思って崇拝している。それが自分に有利に働く限り、ジャンヌとして振る舞え」
セイバー「聖女?私が、ですか……?」
切嗣「……」
セイバー「ふふ、ふふふふふ!神は本当に数奇な運命を授けるのですね!良いでしょう、これより私は神に仕える聖女、ジャンヌ・ダルクになってみせましょう!」
ーー同日正午・キャスター陣営のアトリエ
セイバー「邪魔です」
海魔「「「「「「「ピギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」」」」」」」
セイバー(まったく、数ばかり揃えて!それにしても……凄まじい悪趣味ですね。人間ランプに、人間傘?)
セイバー(肉体的苦痛を通して現れる表情の固定化……まぁ一考の余地はありますが、死んでしまっては元も子もない)
セイバー(第一切嗣が自分の肉体を傷つけられたとしても、苦痛を顔に浮かべ、泣き叫ぶはずもない)
セイバー(となるとやはりこれらは私の理解の外にある、ただの退屈なオブジェでしかないという事ですね)
セイバー「ジル、私です。会いに来ましたよ」
キャスター「おぉおジャンヌ!あなたから我らのアトリエに出向いてもらえるとは!」
龍之介「お、この人が旦那が言ってたジャンヌちゃん?かーわいいじゃーん。あ、俺雨生龍之介っす。こっちが青髭の旦那」
セイバー「ジル、私もあなたがこの場所に居ると聞いてから、居ても立ってもいられなかったのです。あなたとまた会えて、本当によかった」
キャスター「…………ジャンヌ?少々、雰囲気がお変わりになりましたかな?」
セイバー「ああ、それは服のせいでしょう。このような漆黒の服を着ているせいで、私まで黒く見えてしまうのです」
セイバー「ですがジル、どんな服を着ていようとも私は私。正真正銘、本物のジャンヌです。忠義を尽くしてくれたあなたになら、それがわかるでしょう?」ニコッ
キャスター「……違う」
キャスター「違う、違う、違う違うちがあああああああああああああああああああああああああうぅ!」
キャスター「貴様はジャンヌではない!ジャンヌの魂は、ジャンヌの微笑みは、断じて貴様のように穢れてはいない!」
龍之介「へ?違うの?」
セイバー「何を言うのですジル。よもやこの私の顔を、声を忘れてしまったのですか?」
キャスター「黙れジャンヌの名を騙る不届き者め!天に代わって、この私が罰を下す!」
セイバー「どうしたのですジル。私を求めて狂っているのでしょう?ならば怒れる時ほど笑わなければなりませんよ。今のあなたは…………まるで、常人ではないですか」
キャスター「喋るなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
海魔「「「「「「「「ピギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」」」」」」」」
セイバー「無数の使い魔如きで、このジャンヌ・ダルクが倒せると思っているのですか?ジル・ド・レエ!」
キャスター「死ね!死ね!死ねええええええええええええええええええええええああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
・
・
・
セイバー「まるで歯ごたえがありませんね、これでは草刈りです」
キャスター「ぐぅっ……!」
龍之介(うーん、こりゃ駄目だな……)
龍之介「えーと、令呪をもってなんとか!『旦那!一旦囮の海魔ばら撒いて、このアトリエは放棄!トンズラしよう!』」
セイバー「何っ!?」
キャスター「リュウノスケ、今何と!?ここにはあなたのオブジェもあるのですよ!?」
龍之介「いいから!ほら早く!」
キャスター「……覚えていろ、ジャンヌを騙る大罪人!貴様は、貴様だけはこのジル・ド・レエが必ず!必ず八つ裂きにして地獄に叩き落してやる!」
セイバー(あんな所に抜け道が……!令呪でブーストされているとあれば、流石に追いつく事は出来ませんね。ここは一旦、引くとしましょうか)
ーー同日夕方・冬木市内
セイバー「という訳でキャスター討伐には失敗しましたが、敵に令呪一画を使わせることに成功しました。これは十分な戦果と言っていいのでは?」
切嗣「……」
セイバー「もう日も暮れます。そろそろ私達も城に戻りますか?」
切嗣「いや、キャスターを追撃する。準備をしろ、位置は捕捉してある」
セイバー「……分かりました」
セイバー(どうしても、私をアイリスフィールとイリヤスフィールに近づけたくないのですね……その努力、いじらしくて好きですよ切嗣)
ーー冬木市・地下水路
キャスター「リュウノスケ!あなたともあろうものが、自分の作品を見捨ててまで……何故私の邪魔をしたのです!?」
龍之介「……旦那が、怒ってたからだよ」
キャスター「何ですと!?どうして激昂せずにいられるものか!いいですかリュウノスケ!あの売女は!あの声で、あの姿で私のジャンヌを侮辱したのですよ!?」
龍之介「分かってる!分かってるよ。風俗嬢が初恋の人に激似だったみたいなもんだろ?旦那が怒るのも分かる。……でもさ旦那。俺たちは、憎しみで戦っちゃ駄目なんだよ」
キャスター「憎しみでは……駄目……?」
龍之介「そりゃ、普通の奴ならあそこでやっちゃえー!ってなるんだろうけどさ。旦那、俺達は芸術家(アーティスト)なんだよ」
龍之介「俺達の生きる理由は、いつでもどこでも誰を前にしたって……より良い作品を作りたいって、それじゃなきゃダメだと思うんだ」
龍之介「憎しみで人を殺しても……なんもならないよ。旦那の折角のその怒りが抜け落ちて、あの子はただ死んで、それだけなんだよ」
龍之介「だからさ、旦那。今はゆっくり逃げ回って力を溜めて……んでもって、旦那が誰より憎むあの子を、誰もが賞賛する最高にCOOLなアートにしてやろうぜ!」
龍之介「そうすりゃ旦那の怒りもあの子の命も、より良い作品を作るために必要なものだったんだから、無駄じゃなかった。無意味じゃなかったって事になるだろ?」
龍之介「俺達で、あの子の魂を救ってやるんだよ!旦那!」
キャスター「………………ォ」
キャスター「オォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!リュウノスケ……私は、またしてもあなたに救われてしまった!」
龍之介「いや、救うとかそんな、大したもんじゃないよ。へへ」
キャスター「いいえ!これは紛れも無い私への赦しです!感謝しますよリュウノスケ……私はあなたのお陰で道を過たずに済んだ」
キャスター「そして待っていなさいセイバー……私達の手で、誰よりも罪深いあなたをこの世で最もCOOLなアートに仕立てあげて見せましょう!」
龍之介「よっし旦那、その意気だ!」
キャスター「しかしリュウノスケ。逃げ回ると言っても、今の我々は追撃を退けられるでしょうか?海魔もしばらくは数が出しにくい状態ですし」
龍之介「任しといてよ旦那。俺、これでも逃げ回る事と証拠隠滅に関してはちょっとしたもんだからさ。……旦那が万全の状態であの子の前に立てるまでは、俺が旦那を守るよ」
キャスター「オォ、なんと頼もしい……リュウノスケ。私は、あなたに召喚されて本当に良かった」
龍之介「そういう台詞は全部終わった後、エンディングに言うもんだよ旦那。さぁ逃げよう!最高のアートのために!」
ーー同日夜中 冬木市・地下水路
セイバー「しかし、こうしてあなたと肩を並べて歩く事が出来るとは。私は嬉しいですよ切嗣」
切嗣「黙って歩け。まだ先は長い、警戒も怠るな」
セイバー「連れませんね、せっかく二人きりの時間だというのに。……腕の一つでも絡めて見せましょうか?」
切嗣「もう一度言う。『黙って歩け』」
セイバー「その命令に従う訳にはいきません。会話は信頼関係の基本です。どうしても黙らせたいのなら令呪を使えば良いでしょう」
セイバー(まぁ、あなたにはそれが出来ない事を見越して言っている訳ですがね?)
切嗣「……ッ」
セイバー「それにしてもキャスター達の作品はまったく外道の所業、悪趣味の極みですね。あなたとしてもあの二人は許し難いはずだ」
セイバー「さぁ切嗣、私の手を取って。正義の名の元に、共に巨悪を倒しましょうね?」
切嗣「……僕は、お前となれ合うつもりも、友情を育むつもりもない。……最大限利用して使い捨てるだけだ」
セイバー「ええ、それで結構ですよ。あなたにどんなに疎まれようと、私は切嗣が大好きですから」ニコッ
・
・
・
雁夜「ハァッ、ハァッ……う、ぐぅ!?」
バーサーカー「グルルルルルルル……!」
雁夜「黙ってろバーサーカー……!俺は、俺は桜ちゃんを助けるんだ……」
雁夜(待っててくれ、桜ちゃん……!俺が、必ず君を……)
バーサーカー「……!!」
雁夜「どうした!?……敵のサーヴァントか!」
龍之介「えーと、次の逃げ道はこっちーかなっと」
バーサーカー「グルルルルオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアッ!」
雁夜(あれは……討伐命令が出ているキャスターとそのマスター!?倒せば令呪が貰える……!)
龍之介「げっ!逃げた先で張るのは卑怯だろぉ……青髭の旦那、ひょっとしてアレもサーヴァントって奴だったり……するよね?」
キャスター「ええ、間違いなくそうでしょう……覚悟を決めなさいリュウノスケ。我々は、何としても生き延びなければならないのだから」
龍之介「カクゴ、か。あんま得意じゃないんだけど……アートのためだ。柄にない事でも頑張らなきゃな!」
雁夜(それにあいつ等は、町の子供ばかりを狙って……!)
雁夜「バーサーカー…………やれ!」
バーサーカー「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
キャスター「笑覧あれリュウノスケ!目の前に立ち塞がる醜い障壁でさえ、美しく作り替えて見せましょう!」
龍之介「やっちまえ、旦那ー!」
龍之介(っと、旦那が頑張ってくれてる間に俺は俺で、逃げ道を探しておかないとね……)
・
・
・
キャスター「もっとだ!もっと!産まれよ海魔、溢れよ背徳、満ちよ絶望!この世全てを埋め尽くすほどに!!!!!!」
キャスター「ジル・ド・レェの催す退廃の祭典の、装飾となれええええええええええええええぃ!」
海魔「「「「「ピギァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」
龍之介「いいぞー旦那!その調子その調子!」
バーサーカー「ガルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
雁夜「ぐっ……!」
雁夜(無限に湧いてくるのか、あの蛸みたいなのは!だとすると短期決戦が望めない……!)
雁夜(しかもここには武器になりそうな物もない、バーサーカーは素手で戦っている!)
雁夜(駄目だ、相性が悪すぎる!このままじゃ俺が先に倒れてしまう)
雁夜(クソっ、どうすれば……)
セイバー「これは面白い状況ですね。さて、どちらに肩入れしますか?切嗣」
切嗣「動くな。……僕達はここで見ていればいい」
雁夜(セイバーとそのマスターだと!?こんな時に……!)
バーサーカー「……Ar……thur……!?」
キャスター「……おやぁ?」
雁夜「バ、バーサーカー!何余所見してる!?キャスターを倒せ!」
バーサーカー「A――urrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrッ!!」
雁夜「ぐああああああああああああああっ!?」
龍之介(お、仲間割れ?……ってあいつら別に仲間でもないのか。何にせよラッキー、今日はツイてる!)
龍之介「旦那、今のうちに囮の海魔出して。もっと遠くまで逃げちゃおう」
キャスター「そうですねリュウノスケ。……今は、力を蓄えるべき時です」
バーサーカー「……Ar……thur……Ar……thur……Ar……thur……ッ!!」
セイバー「おっと。バーサーカーがこっちに向かってきてますよ。どうしますか切嗣」
セイバー「魔力の鎧ではなくスーツを着込んでいる今の私であれば、全力の魔力放出を駆使して逃げ回る事くらいは出来そうですが」
切嗣「……バーサーカーのマスター、お前がキャスターを攻撃する限り、僕達はお前に危害を加えるつもりはない」
切嗣「僕とお前と、キャスターを倒す目的は一致しているはずだ。今すぐそのバーサーカーをキャスターの方へ向かわせろ」
雁夜「無理言うな!バーサーカーは今錯乱している!俺の命令を聞く状態じゃない!」
雁夜「げほっ……げばああああああっ!蟲、が……!」
セイバー(へぇ……バーサーカーが暴れる度に体内の魔力を肩代わりしているのであろう蟲が暴れまわり、あのマスターは苦しむのですか)
バーサーカー「A――urrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrッ!!」
セイバー(いいですね、アレ。切嗣にも付けてあげたい)
セイバー(イリヤスフィールと遊んだり、あるいはアイリスフィールと愛し合ってる時に不意に思いっきり魔力を吸い取って……)
セイバー(身を裂くような痛みに耐えながら、それでも切嗣なら笑顔を保つだろう。ふふ……城に居る時でさえ、まともに笑えなくなってしまうかもしれませんね)
セイバー(……良い。実に良い…………)
雁夜(なんだあのセイバー……素手とはいえバーサーカーと打ち合っている最中に、笑っているのか!?)
切嗣「どうしても制御できないのなら、令呪を使え。このままでは僕達はお前達を敵と見做さければいけなくなる」
切嗣「そうすればキャスターはまんまと逃げおおせるぞ」
雁夜「ッ……令呪をもって命ずる!『バーサーカー、キャスターを先に倒せ!セイバーは後だ!』」
バーサーカー「……!!ガルルルルラウアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
雁夜「セイバーのマスター。……令呪は、俺が貰う。行くぞバーサーカー」
切嗣「……」
セイバー「私達も行きましょうか。一時的に非戦協定を結ぶとはいえ、みすみす令呪を渡すのは阿呆らしい」
セイバー「キャスターもバーサーカーもそのマスター達も、一人残らず今日ここで殺す。それこそが最善。……でしょう?」
切嗣「……そうだ。バーサーカーには、キャスターの探知役と足止めをしてもらう」
切嗣「その後に倒す。……そして、一刻も早くこの聖杯戦争を終わらせる」
・
・
・
ーー同日深夜 冬木市・地下水路
バーサーカー「ガルグアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアゥッ!」
龍之介(うーん、よくないな……すばしっこい上にアレ、直感だけでおっかけてくるタイプだ。猟犬かっつーの)
龍之介(しかもアレが追ってきてるって事は偽ジャンヌちゃん達はアイツのマスターと和解したって事だよな……2対1か、困ったなぁ)
龍之介「旦那、海魔の数はどんな感じ?壁にしてばら撒いておくくらいは出来る?」
キャスター「……」
龍之介「……旦那?」
キャスター「リュウノスケ。私は自らを触媒に大海魔を呼び出し、バーサーカーとセイバーを倒します」
キャスター「さしあたって、あなたには令呪をもって私の能力を底上げして頂きたい!」
龍之介「ち、ちょっと待ってくれよ青髭の旦那!自分を触媒にって、それじゃ旦那は……!」
キャスター「……ええ。私は制御を放棄して大海魔を召喚するのです。取り込まれ、しばらくせぬうちに海魔の肉に潰され自滅するでしょう」
龍之介「駄目だ!いくら旦那の頼みでもそれは……」
キャスター「リュウノスケ!!!!!!!」
龍之介「!?」
キャスター「……いいですかリュウノスケ。我々は二騎のサーヴァントから実によく逃げ延びている。あなたの才覚のおかげです」
キャスター「しかし、あの黒い犬を撒くことはおそらく不可能でしょう。あれは獣に身を貶めているが故に、誰よりも正確に我らを追跡してくる」
キャスター「バーサーカー一騎のみならどうにかなるかもしれません。しかしリュウノスケ、あなたも見たはずです。あのセイバーの力を」
キャスター「悔しいですが、備えが足りない今の私ではひとたまりもないでしょう。アレは異常です、明らかに一般のサーヴァントと一線を画している」
龍之介「……」
キャスター「このままでは私はおろか、あなたまで死んでしまう!」
キャスター「……そうなってしまえば、この末期の世において一体誰が神を讃える芸術品(アート)を作ると言うのですかッ!?」
龍之介「旦那……でも、俺……」
キャスター「私が大海魔と一体化した後は、すぐに逃げなさいリュウノスケ。私のマスターよ……あなたは生きなければならない」
キャスター「そして私は、なんとしてもあの大罪人をアートに仕立てあげてやらなければならない。彼女の魂の救済のために」
キャスター「全てはより良い作品を作るために。二つの事柄を為すには、この手段しかないのです」
龍之介「そ……」
龍之介「そんな事言わないでくれよ旦那!俺、嫌だよ。俺さ……俺、やっと、自分のアート分かってくれる人に会えたってのにさぁ……!」
キャスター「……ええ。あなたのアートは素晴らしい。短い間ではありましたがその深い哲学、このジル・ド・レェ心服させていただきました」
キャスター「だからこそ。あなたは生きて、他の誰にも成し得ないCOOOOOOOLを成し続けるのです!」
キャスター「……あなたに、二度も救われた。今度は、私めがあなたを救う番でしょう」
キャスター「友情に鮮度などありません。たとえ姿は見えずとも、私の心は常にリュウノスケと共にある」
キャスター「あなたはもう、一人ではないのですよ」
龍之介「……だん、な……」
龍之介「なぁ旦那。じゃあせめて、これを貰ってくれないか?……俺からの、餞別だと思ってさ」
キャスター「リュウノスケ……これは?」
龍之介「俺が使ってた剃刀。……言っただろ?凝ってるんだって」
キャスター「あぁ……どおりで何人もの血を吸って赤く染まっている訳だ」
龍之介「そいつがあれば、どんな時でも前を向いて殺しが出来る……そんな気になる、俺のお守りなんだ」
キャスター「そのように大切な物をこの私に……!ならば私は、この剃刀をあなたの魂だと思いましょう。こうして……」
龍之介「……すげぇ、すげぇよ!旦那の本と、俺の剃刀が……ひとつになっちまった!振り下ろすだけで人が殺せる本だなんて、超COOLだよ旦那ぁ!」
キャスター「簡易な融合魔術です。これでもう、私の本とあなたの剃刀は……我らの魂は一つになった。どうなろうとも離れる事はない」
キャスター「あなたの想い、確かに受け取りましたよ。リュウノスケ」
龍之介「旦那……」
キャスター「別れはいつになっても惜しい物です……。ですが、もう狂犬がすぐそこまで迫っています。さ、令呪を」
龍之介「……」
龍之介「令呪を、もって、…………言うよ」
龍之介「『青髭の旦那、後の事なんて考えなくていい。全力でやっちまえ!』」
キャスター「おお、力が満ち満ちてくる……!」
龍之介「…………もういっちょ、令呪をもって、言う!」
龍之介「『旦那……作ってやろうぜ。神様もびっくりするぐらいの、最っ高に……COOLなアートをさ!』」
キャスター「ええ、ええ。作りましょう。全てに意味を与える、至高の芸術を……!」
キャスター「ありがとうリュウノスケ。……私はあなたと出会えて、本当に良かった」
龍之介「旦那、俺もだ、俺もだよっ!俺も、旦那と会えて、ホントに………………」
バーサーカー「ガルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
キャスター「行きなさいリュウノスケ!走るのです!決して、振り返る事のないよう!」
龍之介「ッ……!」
キャスター(…………此度の現界、我が聖処女ジャンヌと会う事は叶わなかった)
キャスター(しかし、友を得た。彼と過ごした日々は聖処女と共にあったあの時の得難い光を、もう一度思い起こさせてくれた)
キャスター(それだけで、十分すぎるほどの甲斐がありました。リュウノスケ……)
キャスター(衆生にはどう映っていようと、あなたは私にとって最高のマスターだった)
キャスター(ならばこそ、ここで主の血路を開くのが従者の務め。……我が友の人生に、幸多からん事を)
キャスター「来るがいい黒き狂戦士よ、ジャンヌを騙る大罪人よ!全力で貴様らをアートに仕立て上げて見せよう!」
キャスター「天なる神も照覧あれ!これが我が身全てを懸けた渾身の背徳にして、無二の友へ捧ぐ最後の喜劇!」
キャスター「『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』ッ!」
大海魔『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
バーサーカー「…………!!」
雁夜「な、なんだアレは……!?」
雁夜(水路に収まりきれずに詰まってる肉塊……いや、あれも海魔って奴なのか?……スケールが違い過ぎる!)
大海魔『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
バーサーカー「ガルルアアァアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
雁夜(速い!バーサーカーと同じスピードで動ける触手が、何本もあるのか……!?)
雁夜(だが……!)
雁夜「俺は、やるしかないんだ……!バーサーカーッ!」
バーサーカー「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
・
・
・
バーサーカー「グルルルルルルルルル……!!」
大海魔『ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
雁夜「げほっ、ごはっ!…………クソッ」
雁夜「バーサーカー、攻撃の手を休めるな!」
バーサーカー「ガルグアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアゥッ!」
雁夜(これだけやっても傷一つ付けられないのか……!?いや違う、付けた傷が再生している!)
雁夜(つくづく相性の悪い……!何か手はないのか!?)
雁夜(……待てよ。あれだけ大きなものを召喚して、しかも再生までさせてるんだ。向こうにも消耗があって然るべきだ)
雁夜(なのにあの海魔が衰える気配は一向にない。……そういえば、さっき小さな海魔を相手にした時も、キャスターは自身はまったく消耗していなかった)
雁夜(つまり、キャスター自身は現界に必要な分以外の魔力を使っていない……奴が何か身に着けている物……持っていたあの本そのものが強力な魔力炉なんじゃないのか!?)
雁夜(どうせこのままじゃ勝てない……勝ったとしても、追ってくるセイバーにやられる。だとするなら……賭けてみる価値はある!)
雁夜(…………桜ちゃん。おじさん、頑張るからね。きっと君を、助け出してみせるよ……!)
雁夜「令呪を持って命ずる!『バーサーカー!アロンダイトを使って、そいつの身体を切り刻め!』」
バーサーカー「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
バーサーカー「オォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」
大海魔『!??!!?!?!??!!?!??!?!?!??!?!?』
雁夜「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
雁夜(もって3分が限度だ……!間に合え……間に合ってくれっ!)
キャスター(ぐぅ……!まさか剣の宝具でありながら、再生が追いつかない速度で大海魔を切り刻むとは……!)
キャスター「……思い上がるなよ匹夫めが!!一瞬切り刻んだ程度でこの大海魔は決して朽ちはしな……」
雁夜(キャスターの姿が見えた!……今しかない!)
雁夜「ぐぅっ…………令呪をもって命ずる!『バーサーカー、アロンダイトを封印しキャスターの本を奪え』!」
バーサーカー「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
キャスター「何!?……しまった!」
キャスター(私の『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』が、黒く染まっていく……!リュウノスケの、魂が……!)
キャスター「返せっ!返せええええええええええええええええええええっ!それは、その本は私とリュウノスケの……!」
雁夜「バーサーカー……そいつの頭を叩き割れ!」
バーサーカー「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
キャスター「がっ……!リュ、ウ……ノ、……スケ……」
雁夜「はぁっ、はぁっ……」
バーサーカー「グルルルルルルルル……!!」
雁夜(……楽になった。やはり、あの本は魔力炉だったんだ……バーサーカーが食い荒らす分の魔力を、アイツの宝具になった本が肩代わりしている)
雁夜(いける……いけるぞ!これだけ消費が少なくなったんなら、アロンダイトを使ってもすぐさま魔力切れになる事もない!)
雁夜(令呪は全て使い切ってしまったが、教会に行ってキャスター討伐分の報酬を貰えばいい!)
雁夜「勝てる……今の俺なら時臣にだって、勝てる!……俺のサーヴァントは、最強なんだ!!」
雁夜(桜ちゃんもう少しだ、もう少しで君を救い出せる!)
セイバー「ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!!!!!」
雁夜「!?」
セイバー「いやぁ、それにしても驚きました。まさかバーサーカーのクラスで召喚されたのがあなただとは」
雁夜(セイバー……!)
バーサーカー「……Ar……thur……Ar……thur……Ar……thur……ッ!」
セイバー「無毀なる湖光(アロンダイト)、確かに見せてもらいました。魔剣になっていたのは些か驚きましたが……聖邪どちらにせよ、やはりあれは名剣ですね」
セイバー「本当なら同士討ちが好ましかったのですが……流石に万事都合よくはいきませんね」
雁夜「セイバー。見ての通り、キャスターはバーサーカーが倒した。令呪は俺のものだ」
セイバー「それはどうでしょう。ここであなたとバーサーカーを殺し、教会に報告すれば令呪は切嗣のものだ」
雁夜「……俺は、さっきまでの俺とは違うぞ。バーサーカーの全力を出し惜しみしたりしない」
セイバー「それは重畳。……せいぜい、愉しませてくださいね?」
雁夜(笑っている……口ぶりからするにさっきの戦闘を、バーサーカーが海魔を切る所を見ていたハズだ!にも関わらず、このセイバーは何故笑える!?)
セイバー「ランスロット。…………ギネヴィアの褥は、暖かいですよねぇ?」
バーサーカー「A――urrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrッ!!」
セイバー「騎士道に拘っていた頃の私なら苦戦したでしょうが……」
バーサーカー「A――urrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrッ!!」
セイバー「エクスッ……!」
バーサーカー「!?」
雁夜(バーサーカーの動きが止まった!?……あれじゃあまるで、セイバーの攻撃を待ってるみたいじゃ……)
セイバー「カリバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
雁夜(…………何が、起こったんだ?目の前に光が広がって……白くて何も見えない)
雁夜(身体が、楽だ……魔力が食われるのを、少しも感じない……?)
雁夜「バー……サーカー?どこにいる?」
セイバー「バーサーカーでしたら、私の宝具の直撃を受けて消滅しましたよ?」
雁夜「…………ぇ」
セイバー「そして、あなたも今から同じ運命を辿る事になる」
雁夜「何だよ…………?何だよそれッ!俺は、バーサーカーは最強なんだぞ!?なんで、たった一撃で……!?」
セイバー「如何に素早かろうと、天井も壁もあるこの狭い空間で『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を避けられる訳がないでしょう?」
セイバー「あなたが消滅しなかっただけ、ランスロットは努力した方です。あなたは主君として、彼を褒めるべきなのですよ?」
雁夜「やめろ……やめてくれ!俺は桜ちゃんを救わなきゃいけないんだ!俺は!」
セイバー「そうですか。ではあなたも、あの世で切嗣の勝利を祈っていて下さい。そうすれば、全ての人が救われるはずですから」
雁夜「来るな……来るなよ……ここで死んだら俺は……何のためにっ……」
セイバー「さようなら。ランスロットと戦わせてくれた事、一応感謝しておきますよ」
雁夜「あ、ぐっ…………!」
雁夜(………………さくら、ちゃ)
セイバー「『ついうっかり』無断でエクスカリバーを使ってしまいました。これでは切嗣が魔力不足で大変な事になっているかもしれませんね……ふふ」
ーー冬木市内・集合場所
セイバー「切嗣、無事で何よりです。……その様子だと、キャスターのマスターの殺害は完遂できたようですね。流石です」
セイバー(流石に息が上がっていますね……無理もない、準備もしないままエクスカリバーに必要な魔力を吸い出されたのですから)
切嗣「セイバー。エクスカリバーを使ったな……!」
セイバー「すみません。敵のバーサーカーは切嗣の想定通り円卓の騎士、ランスロットでして。私も思わず躊躇してしまい、敗北する一歩手前まで追い詰められてしまいました」
セイバー「そこで仕方なく、最後の手段としてエクスカリバーを使いました。切嗣に負担をかけてしまった事、本当に申し訳なく思っていますよ?」
切嗣(その顔を見れば嫌でも分かる。コイツに謝る気など一切ない……!)
切嗣「……!?」グラッ
切嗣(意識が……こんな、ときにっ……!)
セイバー「おや、気を失ってしまいましたね」
セイバー(連日の戦闘による緊張、朝から晩まで張り詰めた神経の疲労。それに加えて急激な魔力の浪費……これだけの条件が揃っておきながら倒れない方がおかしいのですよ、切嗣)
セイバー「舞弥。見ているのでしょう?心配は要りません。切嗣は私が城へ護送し、看病します」
セイバー「ゆめゆめ、変な気を起こさないように。貴方は引き続き他のマスターの偵察を行ってくれれば良い。想定外の事が起きて困るのは切嗣ですからね?」
セイバー「さぁ、帰りましょう切嗣。……私達の城へ」
切嗣「……」
ーー翌日早朝・アインツベルン城
セイバー「アイリスフィール、ただいま帰りました」
切嗣「……」
アイリ「あなたっ!」
セイバー「気を失っているだけですよ。連日の戦闘で疲労が溜まっていたのです」
アイリ「セイバー……」
セイバー「アイリスフィール、私は切嗣をベッドへ運び、彼の身辺を警護しておきます」
アイリ「……ええ、お願い」
セイバー「ああ、それと……後で切嗣の部屋に食事を運んで頂けませんか?簡単な物で良いので、メイドにでも運ばせて」
アイリ「いいえ、私が持って行くわ。……夫を支えるのは、妻の努めですもの」
セイバー「そうですか。では、よろしくお願いします」
セイバー(アイリスフィールもようやく『秘密』から立ち直ったようですね)
セイバー(これは……想像以上に愉しい事になりそうです……ふふ、ふふふふふ……!)
ーーアインツベルン城・切嗣の部屋
切嗣「ぅ、ぅ……」
セイバー(切嗣、うなされているのですね……あぁ、形の無い恐怖に怯えるその顔も良い……!!)
セイバー(まぁ彼の本当の苦難は今から始まる訳なのですが……)
切嗣「ここ、は……」
セイバー「おはようございます切嗣。ここはアインツベルン城。現在時刻はあなたが倒れてから、およそ5時間半です」
切嗣「なんだと……!?」
切嗣(身体が……動かない……!?)
セイバー「あなたの身体が動かないのは私がちょっとした細工をしたからです。……この城は本当に何でもありますね」
切嗣(細工だと……?くっ、宝物庫の道具か薬品を使ったのか……!?)
セイバー「ところで切嗣?昨日のエクスカリバーによって魔力を失ったのは貴方だけではありません」
セイバー「切嗣の魔力供給パスが狭いので、私も十分に回復出来ていないのですよ。実体化している事さえ辛いほどです、この状態で襲われると非常に不利なのは明らか」
セイバー「今後の戦いに備えるためにも、可及的速やかに魔力供給パス以外の経路で魔力を供給して頂きたい」
切嗣「……お前、まさか!?」
セイバー「つまり切嗣。私は今後の戦いを迅速に進めるため、あなたに性交を要求するという事です」ニコッ
セイバー「動くのは私です。あなたはただ身を委ねてくれればそれでいい」
切嗣「ふざ、けるなっ……!」
セイバー「勝つためです。…………偵察先で、舞弥とも性交したのでしょう?アイリスフィールを裏切る時に心を揺るがせないために」
切嗣「……!!」
セイバー「おや、その顔を見る限り本当にしていたのですね。今のは直感でカマをかけただけだったのですが……ふふふ、あなたという人は本当に救い難い……」
セイバー「ですが良いではありませんか。この行いにはきちんとした理由があり、あなたにはそれを為さねばならない義務と責任がある。これは不義でも不貞でもない」
セイバー「あなたは一滴の汚名を被る事もないし、あなたの夢に陰りが生じる事も有り得ない。誰も不幸せになる事のない行いなのです」
切嗣「令呪をもって命ずる!セ……!」
切嗣(ぐっ、口の自由が……!)
セイバー「ふふ、ふふふふふ……朝日が差し込む中、同じベッドに居ると言うのは本当に幸せな事ですね切嗣。まるで夫婦のようだ」
切嗣(やめろ……)
セイバー「身体は動かないまま感覚だけが残る。……さぞや気持ち良い事でしょう。恐れる事はありません」
切嗣(やめろ…………!)
セイバー「さぁ…………愉しみましょう?」
切嗣(やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!)
セイバー(その顔ですよ切嗣!あぁああああああああああああああああ、もう我慢できません!あなたのその苦悩ごと、食べてしまいましょう!)ゾクゾクゾクッ
ーーアインツベルン城・切嗣の部屋前の廊下
アイリ(……鍵が閉まってる。切嗣、そんなに体調良くないのかしら)
コン、コン、コン
アイリ「切嗣、私よ。簡単な物だけれどご飯を……」
『う、ぐっ……!』
『ふふ、良いですよ切嗣…………んっ……あまりに気持ち良くて、私ももう果ててしまいそうだ……!』
アイリ「……………………え?」
『あぁ……流れ込んできていますよ切嗣。ふふ……熱い……滾っています』
『やはりアイリスフィールの身体を気遣いながらでは、思うように快感が得られなかったのではないですか?』
『それも仕方のない事。だってあなたは彼女を愛しているんですものね?あなたは悪くありません』
『アイリスフィールにぶつけられないその欲望を……この私に、余さず浴びせかけてしまえばいい……!』
アイリ「……」フラッ
アイリ(きっと……理由があるのよ。これには……理由が……)
アイリ(切嗣が、欲望だけでこんなこと……するはずないもの……)
イリヤ「あ、お母様!キリツグの部屋の前で何してるのー?」
アイリ「こっちに来ないでッ!」
イリヤ「えっ?」ビクッ
アイリ「あ……」
アイリ(今、イリヤに向かって拒絶を……!?私はあの子の母親なのに……!)
イリヤ「お母様……?私、悪い事、しちゃった……?」
アイリ「ごめんなさいイリヤ……あなたは何も悪くないわ。切嗣は今疲れてしまって休んでいるところだから……私と一緒に、向こうで遊びましょう。先に行って待っててもらえる?」
イリヤ「……うんっ!」
『ふぅ……おや切嗣、首筋に汗が。舐め取ってあげましょう……』
『ふふ、綺麗になりましたね……では、もう一勝負お付き合い願いましょうか?』
アイリ「……ッ」
アイリ(切嗣……私は、最後まであなたを信じているわ。そして、あの子も……)
アイリ(だから、いつか必ず……打ち明けてね?私、待ってるから……)
イリヤ「お母様?そのご飯、キリツグの部屋に置いてこなくていいの?」
アイリ「あの人はまだ眠っているみたいだから。起きた頃にはこの食事も冷えてしまっているでしょう?」
イリヤ「そうなの?なら、置かない方がいいね。ご飯は暖かい方が美味しいものね!」
アイリ「ええ。勿体ないけれど、メイドに捨てさせておくわ。……行きましょうイリヤ。なるべく、遠くに……」
ーーアインツベルン城・切嗣の部屋
セイバー「おや。アイリスフィール達は行ってしまったようですね……ふふ、残念です」
セイバー「もっともっと、あなたの満たされた声を彼女に聞かせてあげたかった……」
セイバー「夫の幸福は妻の幸福。あなたとアイリは、互いの幸福を願いあう仲ですものね?」
切嗣「……!」
セイバー「魔力、確かに頂戴しました。……まぁ、あなたは数日動けないままでしょうが……」
切嗣「……」
セイバー「安心してください。この戦い、あなたが再び動けるようになるまでには確実に終わらせてみせます」
セイバー「今の私には潤沢過ぎるほどの魔力がある。あなたはそこでくつろいでいるだけでいい」
セイバー「寝ているだけで聖杯が手に入るなんて、願ってもない幸運でしょう?」
切嗣(……こいつは今、満たされている)
切嗣(僕から魔力を奪い、尊厳を踏みにじる事で……心底満たされている)
切嗣(ならばチャンスはある。これまで犠牲にしてきた何もかものために、僕は全てを諦めない……!)
ーー同日夜中・冬木市内
イリヤ「すっごーい!町の中って知らないものが一杯!まるで魔法の国みたい!」
イリヤ「お母様、次はあそこのお店に行ってみたいわ!」
アイリ「……」
イリヤ「お母様?」
アイリ「え?あ、あぁ……そう、ね。行ってみましょうか」
イリヤ「うんっ!」
アイリ(私、何をしているのかしら……勝手に車を使って……襲われる可能性だってあるのに護衛も付けず、幼い娘をこんな時間まで連れまわして……)
セイバー「探しましたよ、アイリスフィール」
アイリ「……!!」
アイリ「セイバー……ごめんなさい」
セイバー「謝る必要はありません。あなたにも心はある、時としてストレスの発散が必要になる事もあるでしょう」
セイバー「それにほら。イリヤスフィールも、あんなに喜んでいるではありませんか」
アイリ「……イリヤにとって、お城の外に出るのは初めてだから……」
イリヤ「セイバー、迎えに来てくれたの!?……でも私、もっともっとここに居たいの……」
セイバー「心配には及びませんよイリヤスフィール。私はあなた達を連れ戻しに来たわけではない」
イリヤ「本当!?私、もっと遊んでいいの!?」
セイバー「はい。今宵の全ては貴女の望むままに……どうぞ心ゆくまで楽しんでください。あちらの服屋など、中々に見物でしたよ」
イリヤ「やった!私、新しいお洋服欲しーい!」
アイリ「……」
アイリ(聞きたい……切嗣の事が……)
アイリ(どうして、あなただけがここに居るのか……どうして、あの人は来てくれないのか…………どうして、あの人はあなたと肌を重ねたのか)
アイリ「ねぇ、セイバー」
セイバー「なんでしょうか?」
アイリ「切嗣は……?」
セイバー「安眠魔術を使って、無理矢理熟睡していますよ。……まったく切嗣らしいというか、何というか」
セイバー「しかし彼もまた心ある身です。どれだけ機械のように振る舞おうとも消し得ないものがある。今はただ、ゆっくりと寝かせてあげるのが良いでしょう」
アイリ「……」
セイバー「……舞弥が死にました」
アイリ「っ!?」
セイバー「偵察行動の最中、深入りしすぎたのでしょう。殺傷力のある魔術トラップに掛かったようです」
セイバー「切嗣が寝ているのは、その傷を癒すためでもあるのかもしれません」
アイリ「……」
アイリ(なら、セイバーと肌を重ねた事も……傷を癒すための行為だって事……?)
アイリ(切嗣……私は、あなたを独りぼっちにしないって、約束したのに……!)
セイバー「……アイリスフィール。切嗣が私と肌を重ねたのは、あなたに負担をかけまいとする切嗣の思いやりです」
アイリ「……!」
セイバー「彼だって本当ならあなたの胸で泣きたかったはずです。喪失の悲哀と深まった孤独を埋めるように、一心にあなたを貪りたかった」
セイバー「……でも彼は誰より深くあなたを愛している。あなたの重荷になる事だけは、絶対にしたくなかったのでしょう」
セイバー「ですからその嘆きを『道具』たる私にぶつけ、私はそれを受け止めた。それが事実です」
セイバー「私の事ならどれだけ罵られようと文句は言いません。ですが……どうか、彼の愛だけは信じてあげてほしい」
セイバー「彼はずっと……アイリスフィール。あなただけを想い続けているのだから」
アイリ(切嗣………………)
アイリ(あなたが想ってくれるのなら、それがあなたの想いの形なら……)
アイリ(受け入れるわ。……誰よりも不器用で、誰よりも優しい……私の大好きな人)
アイリ「……ッ」
セイバー「アイリスフィール……頼りないかもしれませんが、私の胸を貸しましょう」ギュッ
アイリ「!!」
セイバー「これでもう、涙を堪える必要はありません。今は心のままに泣けばいい。あなたにも彼にも……誰かを思いやれる美しい心があるのだから」
アイリ「セイ、バー……!わたし、わたしっ……!」
アイリ「う、うぅぅぅぅ……っ!」
セイバー「大丈夫です、大丈夫ですよアイリスフィール。……切嗣が愛しているのは、あなただけです」
アイリ「でも……私、あの人を慰めてあげられない……!こんな、弱い体だから……!」
セイバー「そんな事はありません。あなたとイリヤスフィールが生きているだけで、どれだけ切嗣の心の支えになっているか私は知っています」
アイリ「……!」
セイバー「だからもう、嘆く必要はないのですよ。……さぁ、涙を拭いて」
アイリ「…………………………………………………………」
アイリ「………………ありがとうセイバー。私、どうかしてたわ」
セイバー「行きましょうアイリスフィール。イリヤスフィールが待っています」
アイリ「でも、危険じゃないかしら?もう帰ったほうが……敵のサーヴァントの所在も、掴めていないのでしょう?」
セイバー「いえ。舞弥が残してくれた情報で相手の行動範囲は大体推測できました。この周辺一帯ならば他のサーヴァントの攻撃はありません」
セイバー「それとも、アイリスフィールは最優のサーヴァントたる私の知識と護衛だけでは不足であると?」
アイリ「……ならセイバー?主として、騎士たるあなたに命令します。この散策の間、私とイリヤを完璧に護衛する事!」
セイバー「騎士として誉れの極みです。仰せのままに、女王様」
ーー冬木市内・服屋
イリヤ「みてみてー!ピンクのフリフリー!」
セイバー「おお、これはマーリンもびっくりの愛らしい大魔法使いですね」
アイリ「まぁ!ちょっと露出が多いけれどとっても可愛いわイリヤ!……えーと、『プラズマ☆セット』……店員さん、この服も頂けるかしら?」
店員「かしこまりました」
セイバー「……しかしアイリスフィール、これで50着目です。あまりに多く買い過ぎでは?」
アイリ「だってイリヤったら、何着せても似合うんだもの♪……運ぶのだって、可愛い騎士王さんがやってくれるんでしょう?」
セイバー「ハハ……も、もちろんですよ」
アイリ「イリヤー?次はこっちの『ツヴァイ☆セット』着けてみてくれるー?」
イリヤ「うんっ!」
セイバー(……長くなりそうだ)
ーー冬木市内・中華料理屋『泰山』
セイバー「ふむ、ここの激辛麻婆豆腐は中々いけますね」
イリヤ「セイバー、私にも一口ちょうだい?」
セイバー「ええ。構いませんよ。では、口を開けてくださいイリヤスフィール」
イリヤ「あーん………………かりゃーい!ひたがひりひりしゅる!」
アイリ「もう、これは大人向けのメニューだからやめておきなさいって言ったのに……ほら、お水」
イリヤ「ひぇ~……」
セイバー「アイリスフィールも、一口いかがですか?何事も経験です」
アイリ「え?わ、私は……」
イリヤ「大人は食べても大丈夫なんだよね?食べてみてよ、お母様」
アイリ(うっ……イリヤの視線が……!でも、セイバーも平気そうに食べてたし、一口くらいなら大丈夫……よね?)
アイリ「そ、そうね。何事も経験よね。……それじゃあ、一口だけ」
セイバー「その意気です。さぁ、口を開けて……」
アイリ「あ、あーん…………」
イリヤ「どう?お母様、大人だから辛くないの!?」
セイバー「ふふ……さぁ、どうでしょう?」
アイリ「か………………」
イリヤ「か?」
アイリ「かりゃい……………………」
イリヤ「あはははは!やっぱりお母様も食べられないんだ!」
アイリ「しぇいばー、おみじゅ……」
セイバー「ここに。一気に飲み干すのは良くないですから、少しずつ飲んでくださいね?」
アイリ「うぅ~……」
イリヤ「……お母様。この店、おトイレ……どこにあるの?」
アイリ「ぷはーっ……トイレならあっちよイリヤ、一緒に行きましょう。……ごめんなさいセイバー、ちょっと席空けるわね?」
セイバー「ええ。私はここで荷物番をしていますので、ごゆっくり」
セイバー「……」
言峰「隣、失礼する」
セイバー「ええ。構いませんよ、アサシンのマスター。……店主、お代わりを」
言峰「セイバーよ。この場で私に事を構える気が無いと、何故分かる?」
セイバー「あなたがそのつもりなら、私の前に姿を現す必要が無いでしょう」
言峰「……」
セイバー「アサシンのマスター、私からも一つ質問しましょう。……あなたはこの麻婆豆腐に何を求めている?」
言峰「何、だと?」
セイバー「ええ。確固たる意志無き者が食べれば、アイリスフィールやイリヤスフィールのように一口でトイレ送りになるのが自明の理であるこの激辛麻婆豆腐」
セイバー「私の前に姿を晒し、自ら麻婆豆腐を頼み、汗を拭き出しながらも完食しようとするあなたは一体何を求めているのか?」
セイバー「いわばこれは麻婆問答。私があなたに興味を抱いている証ですよ」
セイバー(この解答如何では……この男もまた、切嗣と同じになれるかもしれない)
言峰「……私は、この料理に苦痛を求めている。万人が美しいと感じる物を美しいと感じられない、この罪深い身を罰する苦痛を」
セイバー「心の虚無を埋める為に、あえて苛烈な人生を選んでいると?……店主、お代わりもう一杯」
言峰「そうだ。私は……理由を探している」
セイバー「ふむ……やや不完全ではありますが……いいでしょう。ならば私があなたの理由に成ろう」
言峰「何?」
セイバー「今この瞬間より、私はあなたの敵対者になる。ありとあらゆる手段を用いて殺しに来るがいい」
セイバー「あなたがどれほど努力をしても、決して私には届かない。その絶望をもって、あなたの虚無を埋めてあげましょう」
言峰「……本気で言っているのか」
セイバー「ええ、本気です。あなたが空虚を埋めたいのなら、今すぐにでもかかって来るがいい」
言峰(なんだ、この女から漂う邪悪さは……まるでこの世全ての悪をかき集めない交ぜにしたかのような……)
言峰(この私でさえ理屈ではなく……この女が生きていれば、世界はもっと悪い方向に動いていくだろうと、そう直感できる)
言峰(だとすれば……セイバーを倒す事が、よもや本当に私の意味……聖職者として育ったことの意味……望みもしない苦痛を求め続けた意味だったのかもしれん……!)
言峰(だが今この場で仕掛ければ、間違いなく私は殺されるだろう。ここは退くしかないが……)
言峰「……感謝するぞセイバー。私の手にかかるまで、死んでくれるな。……店主、代金を」
セイバー「そちらこそ。勝手に諦めて退場、などという無粋な事だけはしないで下さいね?……店主、お代わりを大盛りで」
言峰(フ……このように血沸き肉躍る舞台から、誰が降りてやるものか……!)
ーー同日深夜 アインツベルン城
セイバー「イリヤスフィール、満足いただけましたか?」
イリヤ「うんっ!今日は本当に楽しかった!」
セイバー「それは何よりです」
アイリ「セイバー……その、切嗣の事は」
セイバー「『私に』お任せ下さい、アイリスフィール。今はご自愛を」ニコッ
アイリ「……ええ。そう、ね……」
アイリ(どんなに強がったって、私では彼を癒してあげられないんだもの……セイバーの言うとおり、彼女が切嗣の傍に寄り添うべきだわ)
アイリ「切嗣のこと、お願いするわ。彼……あまり強くないから。支えてあげてね?」
セイバー「もちろんです。私は彼の道具であり、忠実な従者なのですから」
アイリ「さ、イリヤ。……もう寝ましょ?」
イリヤ「はーい!」
セイバー(さて、では私も……)
ーーアインツベルン城・切嗣の部屋
セイバー「こんばんは切嗣。良い子にしていましたか?……酷い目のクマです、ひょっとしてずっと起きていたのですか?」
切嗣「……」
セイバー「ふふ、もっと睨んでいいんですよ?憎々しげに、殺意を込めて」
切嗣「……」
セイバー(切嗣……この状況に置かれても尚、あなたの魂は少しも私に屈していない)
セイバー(けれども私を殺し、聖杯を諦めるつもりもない。この期に及んであなたは、まだ自らの夢を追っている。なんて愚直で、なんて哀れな人…………)
セイバー(あぁ、あなたの全てが愛しい。どうしてあなたはそんなにも私を愉しませてくれるのです?)
セイバー「前の続きをしても良いのですが……生憎、私はこれから招かれざる客への対応をせねばなりません」
セイバー「次にこの部屋を訪れる時は聖杯を手土産にしてきますよ。……お休みなさい、切嗣」
ーーアインツベルン城敷地内・庭園
アサシン「……」
セイバー「これはこれはアサシン。殺気も抑えず雁首揃えて何の用です?」
セイバー(複数いたのですか……確かに予想外です。これなら舞弥が殺されたのも頷ける、彼女はアサシンが脱落したものとして行動していた)
アサシン「……!」
セイバー「……なるほど。マスターに『犠牲を厭わず勝利せよ』とでも命令されましたか。まったくあなた達も運がない」
セイバー「数に任せて撹乱し、あわよくばエクスカリバーを使わせて泥沼の消耗戦に持ち込もうとでも目論んでいるのでしょう」
セイバー「…………分を知れ暗殺者。私の剣を受ける栄誉は、それほど安くはない……!」
・
・
・
・
・
・
アサシン「……ッ!」
アサシン(馬鹿な、いくら我々一人一人の能力も分割されているとはいえ……たった一騎で70を超える我々を無傷で倒しきるなどと……!)
セイバー「貴女で最後。……まぁ、肩慣らし程度にはなりましたよ」
アサシン「か、はっ…………!」
セイバー(まぁ、これで全て倒せたかどうかは不確定ですが……複数いる事をバラしてきた以上、これ以上アサシンを利用する気はないのでしょう)
セイバー(さて、アサシンのマスターはどうやって私をもてなすつもりなのか……期待しておくことにしましょうか)
イリヤ「セイバーッ!」
セイバー「イリヤスフィール。どうしました?」
イリヤ「お母様が……お母様が!」
セイバー「!?」
ーーアインツベルン城・アイリの部屋
メイド「セイバー様、アイリスフィール様が……!」
セイバー「報告はいい!総員下がりなさい、この部屋は施錠します!」
メイド「は、はいっ!し、失礼いたします!」
イリヤ「お母様!」
アイリ「イリヤ……セイバーを、呼んできて……くれたのね……」
セイバー「どうしたのですアイリスフィール!これは一体……!?」
アイリ「……私の身体は、もうじき聖杯に成るわ。五騎のサーヴァントが倒れた今、残るのはあなたともう一人のサーヴァントだけ……」
セイバー(五騎?……では、ライダーかアーチャーのどちらかが既に……)
アイリ「勝ちなさい、セイバー……あなたなら、きっと出来るわ……」
アイリ(そして、切嗣を……彼の、夢を……)
セイバー「……この命に代えても。必ず、勝利してみせます」
アイリ「…………」
イリヤ「お母様、お母様駄目!眠っちゃ駄目!」
アイリ「イリヤ……私の、可愛い娘……」
アイリ「本当は、あなたにこんな所を見せるべきではないのに……それでも、私は……あなたともっと過ごしたいと……そう、思ってしまったの……」
アイリ「こんなお母さんを……許してね……?そして、切嗣を……独りにしないであげて。あの人は、イリヤの事を誰よりも……」
イリヤ「しないっ!怒ったりしないよ!私だって、お母様と一緒に居られて幸せだったもん!嬉しかったもん!」
イリヤ「キリツグとだって、毎日一緒に遊ぶから!もう仲間外れになんてしないから!だから、だから……!」
アイリ「そう………………ああ……安心、したわ…………」
アイリ(大丈夫よ……アインツベルンの妄執は、セイバーと切嗣が終わらせてくれる……イリヤは、きっと幸せになれる……)
アイリ(きっと…………)
アイリ「…………」
イリヤ「お母様ぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
セイバー(アイリスフィールの身体が炎に包まれていく……なるほど、人の姿という殻を破って聖杯が出てくる訳ですか)
セイバー(おや、アレは……?)
セイバー(ふふふ……ふふふふふふふふふふふふふふ!まったく切嗣も人が悪い!)
セイバー(私の最大の宝具を、よもや愛する妻の身体に埋め込んでいようとは!)
セイバー「さようならアイリスフィール。おかえりなさい……私のアヴァロン」
イリヤ「セイ、バー……?」
セイバー「イリヤスフィール、いよいよ聖杯戦争も終盤です。……ここも危険に晒されるでしょう。あなたは本国へ送り返します」
イリヤ「嫌!私は…………お父様と、一緒に居るもん!独りにしないって……お母様と、約束したもん!」
セイバー「無理を言ってはいけません。切嗣だってあなたの命が一番大切なのです」
イリヤ「絶対に嫌!」
セイバー「イリヤスフィール……何故聞き分けてくれないのです?私はあなたの親友として、あなたの命を心配しているというのに」
イリヤ「……セイバー、あなただってお母様の言葉を聞いていたでしょう!?なのにどうして、私とお父様を引き離そうとするの!」
セイバー(…………)
セイバー「それは勿論……切嗣を、独りぼっちにしたいからですよ」ニコッ
イリヤ「……………………え」
セイバー「彼は『やさしいくまさん』なのですイリヤスフィール。……私は、彼の悶え苦しむ姿をもっと見ていたい」
セイバー「そこにあなたという希望が見えてはならない。彼の人生は絶望に次ぐ絶望、喪失に次ぐ喪失でなければならない」
セイバー「破滅への階段を、彼が自らの意志で一段一段降りていく姿を見てこそ至高の愉悦というもの」
セイバー「あなたを殺さないのは、目覚めた切嗣から最後の自制心を奪わないため。あなたは階段の13段目なのです。今失う訳にはいかない」
イリヤ「……なに、いってるの……?」
セイバー「安心してくださいイリヤスフィール。あなたと共にいた時間は、間違いなく愉しかった。神に誓って、私とあなたの友情は本物ですから」
イリヤ「嫌……嫌ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
・
・
・
イリヤ「……」
セイバー(やれやれ、いきなり大声をあげるのだから……部屋に鍵をかけておいて正解でしたね)
ガチャッ
メイド「セイバー様、アイリスフィール様は……それと、イリヤスフィール様のとても大きな声が……」
セイバー「アイリスフィールは聖杯に成りました。イリヤスフィールはショックで錯乱してしまったようです」
セイバー「応急処置として気絶させておきましたが……これ以上ここに居るのは、彼女にとって良くない」
セイバー「動けない我が主に代わり、私が指示を出します。……イリヤスフィールの命を守るため、速やかに彼女を本家に送り返すように」
メイド「了解致しました。……セイバー様、何卒、ご武運を……!」
セイバー「ええ。……分かっています。この戦い、もうすぐに終わりの時が来るでしょう」
セイバー(残る敵はサーヴァント一騎とアサシンのマスターのみ。アヴァロンを取り戻した私にとってみれば児戯に等しい)
セイバー(そしてその時こそ切嗣……あなたの眼前で聖杯を……)
セイバー(ふふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!)
ーーアインツベルン城 イリヤの部屋
イリヤ「……」
メイド(イリヤスフィール様……この若さで母親の死に立ち会ってしまうなどとは……すぐに出立の準備をしなければいけませんね)
メイド「……」
メイド(ですが……正直なところ、あまりにも気を失う時間が長すぎる。衝動的に自分自身に呪いをかけてしまったのかもしれない)
メイド(失礼になりますが……ここは調べてみるしかなさそうですね)
メイド「……!?」
メイド(違う、これは呪いなどではなくアインツベルンに伝わる霊草の効能!)
メイド(しかもとてつもない量服用させてある……常人なら即死、一流の魔術師でも治癒しなければ一週間程度は指一本動かせない程に)
メイド「…………」
メイド(あまり想像したくないですが……)
メイド(……幸い、私の手には屋敷内全ての部屋の鍵がある)
メイド(これを使えば、確かめる事が出来る)
メイド「……イリヤスフィール様。念のため、効能を打ち消すまじないをかけておきます。未熟故時間がかかってしまうかもしれませんが」
メイド「それでは。……私めは、真実を見極めてまいります」
ーーアインツベルン城 切嗣の部屋前の廊下
コン、コン、コン
メイド「切嗣様。起きていらっしゃいますか?」
メイド(……反応がありませんね)
メイド(もしも切嗣様が同じ症状に陥っていたなら、すぐに治療しなければならないというのに……!)
メイド(仕方ない、こうなったら鍵を使って)
セイバー「な に を し て い る ん で す か ?」ニコッ
メイド「ヒッ!?」
セイバー「怯える事はありません。私はただあなたに質問しただけなのです」
セイバー「そして質問には解答の義務がある。……さぁ、答えてください。あなたは私のマスターの部屋の前で何をしようとしていたのですか?」
メイド「わ、私は……切嗣様の、お体を心配して……」
セイバー「それで?私が申しつけた本来の仕事も完遂せず、回復中の切嗣に茶々を入れに来たと?」
メイド「け、決してそのような……!」
セイバー「では今すぐにイリヤスフィールの元へ戻りなさい。あなたは彼女の侍従でしょう?」
メイド「……切嗣様は、もう起きていらっしゃるのですよね?」
セイバー「……何?」
メイド(もしも切嗣様がイリヤスフィール様と同じ状況におかれているとしたら……この場所からでも、指で発動する簡易な打消しのまじない程度なら……!)
メイド「イリヤスフィール様が気絶していたのはお母様を失ったショックだけではなかった。……霊草を盛られていた」
メイド「効能は知っていても分量を知らない、典型的な外法の盛り方でした。……常人なら死んでいる。魔術師であっても起きた後に障害が残る可能性すらある」
メイド「イリヤスフィール様が気絶した瞬間に居合わせたのはあなただけですよね、セイバー様」
セイバー「……」
メイド「しかし騎士王ともあろうお方が何故?……とも思いましたが、一つだけ心当たりがあります。もっとも、城に伝わる怪談話の類ではありますが」
メイド「かつて第三回聖杯戦争においてアインツベルンが使役した『アヴェンジャー』……真名アンリマユ。それ自体は早期に敗北した極めて脆弱なサーヴァントでしたが」
メイド「『願い』そのものであるという危険な本質に気づいたマスターがその魂を願望機たる聖杯に戻すことなく、『天の杯(ヘヴンズ・フィール)』を用いて現世に留まらせた」
メイド「その物質化したアンリマユの残滓が、今もこの城のどこかにあると言われています。あなたは、まさかそれを……」
メイド(お願い……起きて……早く!)
セイバー「……最近のメイドはまじないも使えるのですね。アインツベルンの侍従なのだから無理もないが」
メイド「ッ!?」
セイバー「御高説有難うございました。お礼に一つアドバイスをしてあげましょう。私達サーヴァントは、魔力の流れを探知する事が出来ます」
メイド「あ、ぁ…………!」
セイバー「あぁ、私は哀しい。あなたのように優秀なメイドを失う事になるなんて……!」
メイド「ひっ……!」
『令呪をもって命ずる。セイバー、以後自分の意志で動く事を禁止する』
『重ねて令呪をもって命ずる。僕の命令には絶対服従してもらう』
『更に重ねて令呪をもって命ずる。……逆らう事は許さない』
セイバー「…………!」
メイド「きっ………………」
メイド「切嗣様っ!」
切嗣「……すまない。怖い思いをさせた」
メイド「いえ、私の事など……それよりも、アイリスフィール様とイリヤスフィール様が……!」
切嗣「何っ!?」
メイド「アイリスフィール様は……体が聖杯へと……」
切嗣「……そうか」
切嗣(アイリ……いや。僕に迷っている暇はない)
切嗣「イリヤは?」
メイド「セイバーに霊草を盛られていました……」
切嗣「……!」
メイド「未熟ではありますが、私が解呪しておきました。今はご自身の部屋で眠られているはずです」
切嗣「……君には、本当に助けられた。ありがとう」
メイド「メイドとして当然のことをしたまででございます。……切嗣様、セイバーはまだ殺さないのですね?」
切嗣「そうだ。……僕はこいつを使い倒して、聖杯を手に入れる」
メイド「……ご武運を」
切嗣(残った令呪はキャスター討伐の報酬分の一画のみか……)
切嗣(今は行動を縛れているが、令呪の命令は時が経つごとに強制力は弱まる)
切嗣(出来る事ならこの手は使いたくなかったが、こうなった以上は早く決着をつけなければ……!)
ーーアインツベルン城・正門
セイバー「……」
切嗣「……行くぞセイバー」
イリヤ「お父様そいつから離れてっ!」
切嗣「イリヤ!?……身体は!?」
切嗣(今、僕の事を……)
イリヤ「もう大丈夫よ。……それよりもお父様、こいつは悪魔なのよ!早く倒しちゃわないと……」
切嗣「イリヤ……まだ、それは出来ない」
イリヤ「……平和を作るために?」
切嗣「ああそうだ。……僕は、必ず成し遂げる。アイリと約束したんだ」
イリヤ「なら、私だってお母様と約束したわ。『お父様を、絶対に独りにしない』って」
切嗣「……!」
イリヤ「お母様は……最後まで、お父様の味方だったわ。だったら私もお母様のようになる。お父様の、味方になってあげる」
切嗣「…………」
イリヤ「………………お父様、泣いてるの?」
切嗣「…………ありがとう、イリヤ……ありがとう………………!」
イリヤ「泣かなくてもいいよ、お父様はもう独りじゃないもの。……私が、傍に居るよ?」
切嗣「……ああ。イリヤが父さんの味方になってくれるなら、もう大丈夫だ」
切嗣「もう何も、怖くはない…………!」
イリヤ「うん、大丈夫だよ。きっと!」
切嗣「イリヤ、ここはじき戦場になる。メイド達と一緒に、城の奥で待っていてくれ」
イリヤ「お父様……ちょっと待って」
切嗣「なんだい?」
イリヤ「んーっ……!」
切嗣「!」
イリヤ「えへへ、知ってる?ふぁーすときすって、いっちばん大事に思ってる人にするのよ?……これで、ちょっとくらいは魔力回復出来た?」
切嗣「ああ、十分過ぎるくらいだ…………!必ず、帰ってくるよ」
イリヤ「……うん。待ってる!」
ーー翌日午前 冬木市内・遠坂邸
言峰(私の目的はセイバーの死をこの目で見る事。そのための既に行動を起こしてしまっているのだ……)
言峰(ならば……何も迷う事はない。ただこの血肉の湧きに任せて動けばいい……!)
時臣「待っていたよ、綺礼」
時臣「いよいよ残るは二騎のみとなった。綺礼、ここまで私と王が手傷を負う事も無く残る事が出来たのは、君のおかげだ」
言峰「いえ。もとより私は、あなたを勝利させるための駒。お役に立てたなら何よりです」
時臣「お父上の事は残念だった。まさか監督役が背後から銃撃を受けるなどとは……」
言峰「魔術師殺しと呼ばれるセイバーのマスター、衛宮切嗣の仕業です。……父は立派な人間でした」
時臣「監督役は君が代行するのか?」
言峰「はい。父のようにはいかないかもしれませんが……遺言通り、預託令呪はこの腕に移しました」
時臣「なるほど。……綺礼、私は君という弟子を得た事を、今でも誇りに思っている」
時臣「どうか今後とも、亡きお父上のように君もまた、遠坂との縁故を保っていてほしいと思うものだが……どうだろう」
言峰「願ってもないお言葉です。ご息女の事は、しっかりと見守らせていただきます」
時臣「ありがとう。……綺礼」
言峰「これは?」
時臣「君個人に対して、私からの贈り物だ。開けてみたまえ」
言峰「……」
時臣「アゾット剣だ。君が遠坂の魔道を修め、見習いの過程を終えた事を証明するための品だ」
言峰「至らぬこの身に重ね重ねご厚情、感謝の言葉もありません。我が師よ」
時臣「君にこそ感謝だ、言峰綺礼。これで私は、最後の戦いに臨む事が出来る」
時臣「もうこんな時間か。それでは綺礼…………」
言峰(気負う必要はありません、我が師よ)
ドスッ
言峰「あなたの戦いは、これで終わりだ」
時臣「かっ………………!?ぁ、ぁぁっ………………………………!?」
時臣「くぁっ…………!が、ふっ………………!」
言峰「師よ。あなたも私の父と同じ、最後の最後まで私という人間を理解できなかったのですよ」
アーチャー「フン……どれほど優雅に振る舞おうと努めていても最期がこれではな。見よ、間抜けたこの死に顔を」
アーチャー「……で?綺礼とやら。名目上は忠臣を保っていた我のマスターを殺しておいて、これからどうするつもりだ?」
言峰「手を貸せ英雄王ギルガメッシュ。……最大の愉しみをくれてやる」
アーチャー「ほう?死んだ魚かと思っていたが、突如として父と死を殺しなお悦楽を求めるか。……いいだろう、せいぜい飽きさせてくれるな?」
アーチャー「でなければ綺礼、お前もこの阿呆のようになるやもしれんぞ?」
言峰「汝の身は我がもとに、我が運命は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うのなら……」
アーチャー「誓おう。汝の供物は血肉と為す。……言峰綺礼、新たなるマスターよ」
アーチャー「さぁ綺礼、始めるとしようか。お前の采配で見事、この喜劇に幕を引くがいい。褒美に聖杯を賜わそう」
言峰「異存はない。英雄王よ、お前もせいぜい愉しむ事だ……すぐに仕掛ける」
ーー同日正午 アインツベルン城・正門
言峰「見つけたぞ、セイバー」
セイバー「……」
アーチャー「綺礼。まさか眼前の物言わぬ傀儡が我の相手と言うのではないだろうな?」
言峰「闘ってみろ。嫌でも分かる」
切嗣(アサシンのマスター……何らかの方法でアーチャーのマスターになったか)
アーチャー「フン……一笑に付してやろう。『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』!」
切嗣「セイバー、避けろ」
セイバー「……!」
アーチャー「何……?傀儡風情が、我が王の財宝を退けるか!」
切嗣「セイバー、エクスカリバーを使え」
言峰「英雄王。避けた方が賢明だぞ」
アーチャー「黙れ綺礼!王が傀儡の遊戯に怯えてなんとする!『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』!」
言峰(まぁ、そうだろうな。……分かりやすい奴だ)
セイバー「…………」
セイバー「………………………………!」
アーチャー「む、おっ………………おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
言峰「令呪三画をもって命ずる。『アーチャー、最大出力の攻撃でエクスカリバーを迎撃しろ』」
アーチャー「綺礼貴様……ッ!『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』ッ!!!!!!!!!」
切嗣「セイバー、アヴァロンを使え!」
セイバー「……!」
アーチャー「何……?我の『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』を……凌いだだと!?」
切嗣「セイバー、やれ」
セイバー「…………!」
アーチャー「ぐ、ぅっ!?おのれ……おのれおのれおのれおのれおのれぇ!」
セイバー「……」
アーチャー「ぐっ…………セイ、バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
切嗣(アーチャーが消えていく……)
言峰(残るは一騎か。……ならばセイバーのマスターの取るべき行動は一つだな……存外あっけなく)
切嗣「令呪をもって命ずる。『自害せよ、セイバー』」
セイバー「…………!」
セイバー「……ふ」
切嗣「!?」
言峰(何だと……?)
セイバー「ふふふふふふふふふふふふふふふ!令呪令呪令呪……一度上手く行ったら全てそれで通すのは悪癖ですよ、切嗣」
切嗣(何故だ……!?)
セイバー「確かに令呪は魔力への抵抗を無視したサーヴァントへの絶対命令権ですが……抗えない訳ではない」
セイバー「まして今の私はあなたの命令で『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を使用しているのですよ?」
セイバー「それまでの三つの令呪の強制力を加味したとしても、令呪一画の命令程度防げない訳がないでしょう」
セイバー「もう成す術もないでしょう、あなたはそこで立ち尽くしているがいい。目の前で聖杯を破壊してあげますよ」
セイバー(あぁ…………切嗣、あなたの絶望に暮れる顔が今から楽しみで仕方ありませんよ)
切嗣「……約束した」
セイバー「はい?」
切嗣「約束したんだ、イリヤと……必ず、世界を平和にして帰ってくると……!」
セイバー「……それで?今のあなたに何が出来ると?」
切嗣「確かに……令呪は使い切った。起源弾も通用しないだろう。だが……」
切嗣「だがそれでも、諦めない事は出来る……!」
セイバー(この期に及んで……目に悔し涙を溜めながら言う台詞がそれですか。あなたという人は、本当になんて愚かしく、愛おしい……!)
言峰「……聖杯戦争監督役代行として、ここに聖杯戦争の終結を宣言する。勝ったのは衛宮切嗣、お前だ」
セイバー「ふふふ、よかったですね切嗣。貴方の勝ちですよ?もっと喜んでは?」
言峰「そこで私は監督役としての権限を使い……全ての預託令呪、計八画を勝者である衛宮切嗣に渡す」
セイバー「……!?」
言峰「何の問題もない。『既に聖杯戦争は終わった』のだからな。好きに使え」
言峰「……どうしたセイバー?薄ら笑いが引き攣っているぞ……!」
セイバー「貴様ッ……貴様ああああああああああああああああああああああああああああッ!」
言峰「が、はっ………………!」
言峰(フッ……貴様のアヴァロン、何画まで凌げる?)
切嗣「……全令呪をもって命ずる!」
セイバー「やめっ……!」
セイバー(魔力放出で接近して下顎を……駄目だ、間に合わない!)
切嗣「『セイバー、アヴァロンを解除し全力で自害しろ』!」
セイバー「……ッキリツグウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ッ!」
・
・
・
・
・
・
聖杯『……………………』
切嗣「これが、聖杯……」
聖杯『衛宮切嗣。あなたは聖杯に何を望む?』
切嗣「僕は……」
切嗣「…………恒久平和を望む。人と人がお互いを慈しみあう、誰も独りぼっちにならない世界を」
聖杯『…………叶えましょう。貴方の意志を…………』
切嗣(舞弥……アイリ……イリヤ……終わったよ…………)
・
・
・
・
・
・
イリヤ「……ねぇ、お父様?」
切嗣「んー?」
イリヤ「こんな怪談話知ってる?このお城には、昔ご先祖様が封印した悪魔がまだ潜んでるんだって!」
イリヤ「その悪魔は独りぼっちの心に入り込んで、その人の魂を食べちゃうのよ!」
切嗣「おお、そりゃ怖いなぁ。イリヤが魔法少女にでもなって助けてくれるのかい?そしたら父さん嬉しいなあ」
イリヤ「私は魔法少女にはなれないわ。でもたとえ悪魔が現れたとしても、お父様も私もメイド達も、絶対大丈夫よ。だって……」
イリヤ「もう、誰も独りぼっちじゃないんだもの。だからこの怪談話は、もうちっとも怖くないの!」
切嗣「……ああ、そうだね。素晴らしい事だ」
イリヤ「お父様。私、お母様の分まで一生懸命生きるわ。……だから」
イリヤ「ずーっと私の、傍に居てねっ!」
乙!
ハッピーエンドでよかった
素晴らしい作品だった
ハッピーエンドでよかった
見事にまとめたな
とても楽しませてもらいました
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418392421/
Entry ⇒ 2015.05.11 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (1)
切嗣「アイリがネットにハマった結果……」
イリヤ「キリツグ、どうしたの?」
切嗣「少し、考え事をね」
イリヤ「……それって、お母様の事?」
切嗣「あぁ……突然だけど、僕はアイリにパソコンを与えてよかったのか今でも悩んでいる」
切嗣「何故かって?理由を話すと長くなるけど……」
-5年前-
切嗣「アイリ、これがパソコンだよ」
アイリ「えーと、この板みたいなので伝言を刻み込むのね?」
切嗣「刻み込むというよりは、入力するが正解かな。慣れればわざわざ使い魔を用意しなくても……」カタカタ
切嗣「これ一つでメッセージを送る事が出来る」タァン!
アイリ「うーん、でもこの箱伝言を伝えに動かないわよ?」
切嗣「いやいや、もう既に相手にメッセージは届いているんだ。ほら、返事が来た」ピロン
『こちらに異常はありません。引き続き調査を行います』
切嗣「と、まぁこのようにメールだろうがなんだろうが、ほとんど時間をかけずに相手に伝えたい事を伝える事が出来る」
アイリ「すごいわ、切嗣!!これが機械というものなのね」
アイリ「えっと、これは?」
切嗣「インターネットと言ってね、世界中に広がっている様々な情報を集める事が出来る。簡単に言えば電子世界だね」
アイリ「電子世界……つまり固有結界!?」
切嗣「固有結界とは違うかな。とにかく、この画面の向こう側にある世界をこうして見る事が出来るのもパソコンのすごい所だ」
切嗣「例えば、何か料理を作りたい時には」カタカタ
切嗣「こうして、レシピを検索すれば作りたい料理のつくり方が出てくる」
アイリ「パソコンって、万能なのね……」
切嗣「いやいや、そうでもないよ。確かに様々な情報を手に入れる事が出来るけど、それら全てが本当とは限らない」
アイリ「嘘の情報も混ざってるの?」
切嗣「残念だけど、中には嘘の情報も存在する。だから、なんでもかんでも鵜呑みにせずにどの情報が正しいかを自分で判断する必要がある」
アイリ「難しいわ……」
切嗣「まぁ、少しずつ慣れていこう。僕が傍で教えるから、まずはマウスとキーボードの扱い方から学ぼうか」
アイリ「えぇ、わかったわ!
切嗣「イリヤももうすぐ4歳か……早いな」
切嗣「アイリもトラブルこそ色々あったけど、タイピングも出来るようになったのは喜ばしい事だ」
切嗣「……まだ、自分の名前を打つのに6秒かかるけど」
アイリ「お願い切嗣、ちょっと来てほしいの!」
切嗣「おっと、アイリが呼んでいるな。イリヤも寝しつけた事だし助け舟を出すとしますか」スッ
切嗣「アイリ、どうしたんだい?」
アイリ「あのね、隠しページっていうのを見つけたから見ようと思ったんだけど」
切嗣「えっ……まさか」バッ
アイリ「突然画面がおかしくなっちゃって……」
切嗣「」
アイリ「うん……しょ、うん……しょ!」グググ
切嗣「アイリ、何をしているんだい?」
アイリ「腹筋をしているの」
切嗣「腹筋?」
アイリ「ID腹筋スレっていうのに引っかかっちゃったから、IDの数字だけ腹筋しなくちゃいけないのよ」
切嗣「アイリ……それは」
アイリ「でも、腹筋は身体を頑丈にしてくれるって書いてあったわ。だから一生懸命腹筋するの!」
切嗣「……そうか。足、抑えてあげようか?」
アイリ「えぇ、お願い」
この時、僕は致命的な間違いをした。
何故この時ID腹筋スレを見ても無理に腹筋する必要はないと言わなかったのか……
後に僕は、この出来事を激しく後悔する事になる。
切嗣「今度は腕立て伏せかい?」
アイリ「そうなの……IDの数字だけ、腕立て伏せをしなくちゃ……もうだめ」バタッ
切嗣「無理、しなくてもいいんだよ?」
アイリ「だめよ、最後までやらなくちゃ」
切嗣「なにも、一度にやりきる必要はないんだよ。分けてでも達成すればいい」
アイリ「そうね……ちょっと、休憩するわ」
切嗣「イリヤが呼んでるから、一緒に行こう」
アイリ「そうなの?じゃあ急いで汗を拭かなくちゃ」
切嗣「……」
切嗣「(腹筋、凄く割れてるなぁ)」
腹筋が鍛えられるといっても、当時は甘くみていた。
それをこの日、身をもって思い知った。
切嗣「くっ……アイリ、アイリ!!」
アイリ「来て、切嗣……!!」
切嗣「ぐぅっ……おぉおおおおおおおお!!」
アイリ「はぅぅう///」キュッ
グシャ
切嗣「」
ポタ……ポタ
アイリ「……切嗣?」
切嗣「」ドサッ
アイリ「切嗣!?どうしたの、切嗣!?」
僕は、アイリの内側の筋肉で息子が潰れて二度と行為が出来なくなった。
切嗣「アイリ、今度は……何をしているんだい?」
アイリ「あのね、今度は首だけで腹筋?をしなくちゃいけないの」
切嗣「そ、そうか…………アイリ、それは」
アイリ「でも、最近はこれも楽しみなのよ。今日は後5千回でノルマ達成なの!」
切嗣「…………そうか」
切嗣「(楽しみか……アイリが楽しいと打ち込んでいるなら、止めるべきじゃないのかもしれないな)」
そんな日々が続いてどうなったか、それは言うまでもない。
-1年前-
切嗣「それじゃあイリヤ、行ってくるよ」
イリヤ「キリツグ、お母様……絶対帰ってきてね」
切嗣「あぁ、約束する。僕は必ずイリヤを迎えにいく」ギュッ
切嗣「……終わったよ、アイリ」
アイリ「それじゃあ行くのね……私も後から追いつくわ」ムキッ
切嗣「あぁ……先に行って待っているよ」
セイバー「行きましたね」
アイリ「そうね……セイバーは、私の護衛として一緒に来るのよね?」
セイバー「はい。正直、アイリスフィールよりも切嗣の方が護衛を必要としそうですが」
アイリ「あの人は大丈夫。私なんかよりもずっと強いから」ムキッ
セイバー「(何を言っているんですか、その人間をやめてるかのようなたくましさで)」
ランサー「よくぞ来た、一日中街を練り歩いたが、俺の挑発に乗って現れた猛者は……」チラッ
ランサー「(あれは、何だ? 本当に人間なのか!?)」
ランサー「(いや、さっきから感じるこの気配はあの少女ではなく隣の部分的な筋肉から)」
セイバー「気持ちはわかりますが、サーヴァントは私の方です」
ランサー「そ……そうか」
アイリ「なんだか失礼な事を思われていた気がするけど」
セイバー「気のせいです」
ランサー「では、いざ参る!」
セイバー「ぐっ……!!」
ランサー「判断を誤ったなセイバー、鎧を解除しなければこの必滅の黄薔薇を防げたというものを」
セイバー「くっ……アイリスフィール、速く治癒を!」
アイリ「わかったわ、セイバー!」グググ
セイバー「あの……アイリスフィール? 一体何を」
アイリ「チェストォオオオオオオオオ!!」グシャア
セイバー「っがぁああああああああああ!?」ドシャッ
ランサー「!?」
アイリ「患部は抉りとったわ、後は再生するだけよ!」
セイバー「その理論は……色々、おかしい」ガクッ
ケイネス「今だランサー、セイバーにとどめを……」
ライダー「まてぇええええええい!!」
ズガガガ
ライダー「双方、武器を収めよ。征服王イスカンダルの……」
アイリ「新手の……サーヴァント!?」
ライダー「ふむ、中々たくましい筋肉だな。どうだ、余の臣下にならんか?」
アイリ「えっと……私?」
ライダー「お前さん以外に誰がおる」
ウェイバー「ライダー、お前まさかマスターを口説く為に チュンッ
ライダー「いかん、何者かが狙っておる!再び会おうぞ」ズガガガガガ
ウェイバー「えぇえええええええ!?」
アイリ「…帰っていったわね」
ランサー「何がしたかったのだろうか」
ケイネス「……ランサー、今日はもう帰るぞ」
ランサー「はい」
綺礼「そこをどけ、女」
アイリ「お断りよ!」
綺礼「なら無理やり通るまでだ」
舞弥「マダム、逃げ……」
綺礼「フッ!」ヒュン
ガキィンガキィン
綺礼「黒鍵が弾かれた!?一体何の魔術を……」
アイリ「えっと、まだ何も魔術は使っていないわよ?」
綺礼「なん……だと」
アサシン「申し上げます、まもなくセイバーがここに到着いたします」
綺礼「そうか、仕方あるまい」クルッ
アイリ「……何がしたかったのかしら?」
アイリ「セイバー、今から貴女の手を思いっきり握るわ」
セイバー「は、はい」
メリゴリグシャバキィ
セイバー「っ!?!?!?!?!?!?!!?!?」
アイリ「ふざけてる訳じゃないのよ。今はもうこれくらいの力しか出せないの」
セイバー「!!!!????」
アイリ「更にサーヴァントが脱落すれば、きっと……」
セイバー「……」
アイリ「きっと、全力で殴っても壁を壊せなくなっちゃう」
セイバー「その時点で十分異常です、違う意味で」
-少しして-
ライダー(?)「……」ズン
舞弥「ライダー!? どうしてここに」
アイリ(アヴァロン摘出後)「何を言っているの舞弥さん、あれはバーサーカーよ」
舞弥「えっ」
ライダー(バーサーカー)「■■■■■!!」
舞弥「マダム、逃げ……」
アイリ「ふっ!!」ドゴォ
バーサーカー「!?」グシャア
舞弥「!?」
アイリ「腕立て伏せや腹筋をしていてよかったわ、おかげでこうして戦えるもの」
アイリ「鍛え上げられた筋肉はどんな神秘にも負けないって、どこかで見たわ!」
舞弥「色々とおかしいです、マダム」
バーサーカー「……」シュウウウ
アイリ「あら、バーサーカーが消えちゃったわ」
アイリ「気をつけてね……切嗣」
切嗣「アイリ……僕は」
アイリ「泣かないで、切嗣。私は人並みの幸せを十分味わったわ」
アイリ「だから、残りの幸せはイリヤにあげて」
切嗣「……約束する、必ずイリヤを迎えに行って幸せにすると」
アイリ「ありがとう……いってらっしゃい」
アイリ「……切嗣を待っている間暇だし、ノートパソコンで安価スレでも更新しようかしら」
舞弥「マダム、柳洞寺にネット回線はありません」
アイリ「えぇー」
綺礼「……」
綺礼「ぜぇ……ぜぇ……さぁ来い切嗣!」
切嗣「既に満身創痍だけど、何があったんだい?」
綺礼「答えなくとも分かるだろう……お前の妻を捕獲するのに、どれだけ苦労したか」
切嗣「あぁ……」
綺礼「だが、そんな事はどうでもいい」
切嗣「……決着をつけるつもりか」ジャキッ
綺礼「はぁあああああ!!」
切嗣「固有時制御 ダ……」
アイリ「壁殴りダブルラリアットォオオオオオオオ!!」ズガアアアン
綺礼「ぐはぁ!?」ドガァ
切嗣「アイぶほぉあ!?」ゴシャア
切嗣「……こ、ここは?」
アイリ「気がついた、切嗣?」
切嗣「ここはいった……っ!?」ジャキッ
アイリ「どうしたの、切嗣?突然銃なんか構えて」
切嗣「お前は誰だ!?」
アイリ「誰って……私がわからまいの?」
切嗣「アイリだとでも言うつもりか?僕の目はごまかせないぞ」
切嗣「何故なら本物のアイリは……」
切嗣「そんな華奢な腹筋じゃない!!」
アイリ「誰かの殻を被る事でしか話す事しか出来ない、本来の私」
アイリ「切嗣、貴方なら私が何であるか……わかるでしょう?」
切嗣「アイリの……まさか、聖杯!?」
アイリ「そうよ切嗣、貴方は聖杯に選ばれたの」
アイリ「貴方がここにいる今しか、願う事は出来ない。戻ってしまえば聖杯は降臨しないわ」
切嗣「どういう、事だ!?」
アイリ「説明している時間はないの、貴方の願いを聞かせて」
切嗣「僕の願い……僕は」
切嗣「恒久的……世界…………」
アイリ「世界……?」
切嗣「せか
ビシッ
切嗣「!?」
アイリ「なっ……まさか!?」
切嗣「なんだ、一体何が」
アイリ「こんな……こんなの計算外よ!どうして貴女が消滅しないの!?」
アイリ「ようやく……英霊が溜まって、ようやく私が出てこれるはずだったのに!!」
切嗣「一体何が起きているんだ……世界が、崩壊している?」ボロ…
アイリ「いくら鍛えてるからって……こんなのおかしいわよ!!絶対、絶対におかしい!!」
アイリ「何もかもおかしい……そんなので私が、聖杯が封じられるなんて!!」ボロボロ
アイリ「ようやく生まれるはずだったのに……どうして」ドロッ
切嗣「なっ、アイリの姿が崩れて……泥が!?」
アイリ「呪ってやる……お前の夫だけでも、呪って……!!」
切嗣「っ!!」
バリィイイイン
アイリ「切嗣、気がついたのね!?」ムキッ
切嗣「アイリ……本物の、アイリなのか?」
アイリ「えぇ、そうよ」
切嗣「アイリ……」スッ
切嗣「この腹筋、間違い無い。本物のアイリだ」スリスリ
アイリ「おかしな人、私はここにいるわ」
切嗣「……アイリ、一つ聞いてもいいかい?」
アイリ「なぁに?」
切嗣「残りのサーヴァントは、何人いる?」
アイリ「……多分、残り二人よ」
切嗣「という事は」
ギル「はっ、まさかこうもたやすく倒れるとはな。期待はずれにも程があるぞ、綺礼」
切嗣「アーチャー!!」
セイバー「切嗣、アイリスフィール……ここは危険です。下がってください」
アイリ「セイバー、無茶よ!!」
セイバー「奴は全力の一撃をぶつけてきます。私も全力で迎え撃つので、その間に少しでも遠くへ!!」
切嗣「……」
セイバー「早く!!」
切嗣「……アイリ、行こう」
アイリ「切嗣?」
切嗣「ここにいれば皆死んでしまう。僕達だけでも逃げて、聖杯を……」
アイリ「……その、聖杯なんだけどね」
切嗣「?」
アイリ「おかしな感じがしたから、無理やり封じちゃったの」
切嗣「…………は?」
アイリ「その、ね?このまま願いを叶えたら世界が滅んじゃうような気がしたのよ」
切嗣「待ってくれアイリ、話が理解出来ない」
ギル「なるほど、そういう事か」
セイバー「今ので分かったのですか!?」
ギル「ふん、この世のすべてを背負っている我に分からぬ事など存在せぬわ!!」
切嗣「……一から説明してくれ」
ギル「つまり……」
切嗣「さっぱりわからない」
セイバー「同じく」
ギル「えぇい、要約すればそこの人形が汚れた聖杯を封じているという事だ!!」
セイバー「どうやって?」
アイリ「鍛え抜かれた筋肉に不可能はないのよ?」
切嗣「あぁ、うん……もう何が起きても驚かないよ」
セイバー「では、聖杯は……使えない?」
ギル「そこの人形を殺せば聖杯が現れるだろうな」
セイバー「アイリスフィールを……?」チラッ
アイリ「?」ムキッ
セイバー「(殺せる気がしません)」
セイバー「……私は、アイリスフィールを裏切ってまで聖杯を手に入れようとは思わない」
ギル「そうか、なら我が……」
アイリ「……」
ギル「我が……」
アイリ「……」
ギル「……」
アイリ「……」
ギル「えぇい怖気づいてたまるかぁ!! 天地乖離す……」
アイリ「はっ!!」ボッ
ギル「ぐあぁああああああああああああ!?」シュウウウウ
アイリ「……これで一見落着ね」フラッ
切嗣「アイリ!!」ガバッ
アイリ「ごめんね、切嗣……私、もう…………」
切嗣「すまない……僕は、君を…………!!」
アイリ「素手で瓦礫すら砕けないみたい」
切嗣「……えっ?」
セイバー「は?」
結局、聖杯は最後の1組になっても現れなかった。
僕はアイリと共にイリヤを迎えに行ったけど、アハト爺が
アハト「そんな訳がない! 聖杯で第三魔法を成就させるまでうんたらかんたら」
とかぬかして入れてくれなかったから、アイリが結界を破壊して僕がイリヤを奪還してきた。
切嗣「……と、いう訳さ」
イリヤ「そんな事があったのね」
切嗣「けど、こうしてイリヤとアイリ、舞弥と4人で暮らす事が出来ている事を考えると……ね」
イリヤ「うーん、難しい話はよくわからないけど、お母様はお母様よ?」
切嗣「そうだね」
切嗣「(そうだな……あれからアイリがネラーとしてやや引きこもり気味でも、構わない)」
切嗣「(今生きている事自体本当なら奇跡なんだ、それを考えると今のアイリは希望に満ち溢れている)」
切嗣「(それに、イリヤや僕と一緒に外に出かけたりもしている。公園では子供達の人気者だ)」
切嗣「(僕は何を悩んでいたんだ、アイリ達が楽しく過ごしているならそれでいいじゃないか)」
アイリ「切嗣ー、そろそろ夕飯を食べに行きましょう?」
切嗣「っと、アイリが呼んでいるね。行こうか、イリヤ」
イリヤ「うん! でも、一つ聞いていい?」
切嗣「なんだい、イリヤ?」
イリヤ「舞弥は戦時食作れるのに、どうしてキリツグもお母様もお料理できないの?」
切嗣「」
完
短かったですがこれにて終了です。
乙乙
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Entry ⇒ 2015.04.17 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
切嗣「ゲルテナ展?」
切嗣「僕はただ、娘を取り戻して、一緒に静かに暮らしたいだけなのに」
切嗣「くそっ……」
-
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アハト「裏切り者にアインツベルンの敷居をまたがせるとでも思ったか?」
切嗣「そんなのはどうでもいい、イリヤを……娘を返せ!」
アハト「あれは次の聖杯戦争の貴重な駒だ。裏切り者にはやらん」
切嗣「ふざけるな!イリヤはお前達の駒なんかじゃない。イリヤは……イリヤは!!」
アハト「裏切り者の戯言等聞くつもりはない、帰れ!」
---
--
-
切嗣「………」
切嗣「また、来よう。これ以上粘っても今回用意した手段じゃ結界は破れない」
ゲルテナー、ゲルテナハイカガデスカー
切嗣「?」チラッ
「あ、お兄さんもよければいかがですか?今博物館でゲルテナ展開催しているんですよ」スッ
切嗣「あ、あぁ」
切嗣「………」ペラッ
切嗣「期間限定でゲルテナ展開催、このパンフレットを持参すれば入場料50%OFF。場所は……近いな」
切嗣「せっかくだし、行ってみよう。士郎への土産話にもなる」
切嗣「これがゲルテナ展か……」
切嗣「(せきをする男、個性なき番人……こういうのを芸術っていうんだろうけど、僕にはよくわからないな)」
切嗣「(人もかなり多い所を見る限りだと、ワイズ・ゲルテナの作品は相当人気なんだろうけどね)」
切嗣「えっと、この一際大きな絵は……絵空事の世界」
ゾクッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「(なんだ、今この絵からとんでもない魔力を感じたような……)」チラッ
シーン……
切嗣「人が……いない?まさか、人払いの結界か?」
切嗣「(だが、何の為に?アインツベルンが裏切り者である僕を始末する為にこんな事を?)」
切嗣「(いや、それならイリヤを取り戻そうとアインツベルンに向かった時に殺せばいい。なら一体誰が?)」
ガチャガチャ
切嗣「くそっ出入り口も開かない。結界の基点を破壊しなければだめか」
切嗣「(武器はコンテンダーと起源弾しか持ち込んでいない。心細いが、なんとかするしかない)」
ベチャッ
切嗣「!!」バッ
切嗣「果物……?どうしてこんな所に」
ニャーオ…
切嗣「今度は猫の声か。一体どうなっているのか」
切嗣「(待てよ、あの絵から魔力を感じたと思った瞬間から人が消えている。つまり、あの絵が基点か?)」
切嗣「……確かめる必要があるな」
切嗣「先程見た時とは絵が全然違う?だが、この絵から魔力を感じる」
切嗣「(どうする、起源弾を打ち込んでみるか?いや、一度結界の術式を調べてからにしよう。でなければ何が起こるかわからない)」
ドロ…
切嗣「(青の絵具が作品から垂れている?これは一体……)」
タ………ケ
切嗣「!?」
切嗣「今のは……一体?」
切嗣「いや、今はそんな事を気にしている場合じゃない。結界の基点を……」クルッ
ア ノ コ ヲ タ ス ケ テ
切嗣「なっ!?」
切嗣「(床に血でメッセージが!?あの子を助けて……僕に助けを求めているのか?)」
切嗣「やはりさっきの絵が……ん?」
切嗣「(垂れていた青の絵具が文字になっている。『したのかいにおいでよ、ひみつのばしょ おしえてあげる』)」
切嗣「どうやら、下の階に行かなければならなさそうだね」
切嗣「(罠の可能性もあるが……行ってみよう)」
切嗣「(いいだろう、どこの誰かは知らないが、誘いに乗ってやる。元は魔術師殺しと呼ばれた身、思い通りに行くと思うな)」
スッ
バチャン
切嗣「……ここは?」
切嗣「(先程とは全く違うどこか、と行った所か。建物の中みたいだが、油断する訳にはいかないな)」
切嗣「……ん?」
切嗣「これは、薔薇?黒い薔薇は初めてみるな」
切嗣「奥に扉があって、机を動かせない事から……恐らく、薔薇を取れという事か」スッ
切嗣「(だがこの薔薇、呪いにも似た魔力を感じる。下手に扱わない方がよさそうだ)」
切嗣「(薔薇を取った途端に机を動かせるようになったか。これで奥に進める)」
切嗣「(扉を開けた先には一枚の絵画か。笑顔の女性の絵……その下には青い鍵が落ちている
切嗣「(扉を開けた先には一枚の絵画か。笑顔の女性の絵……その下には青い鍵が落ちている。拾っておくか)」
スッ
クワッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「(絵が不気味な表情になった!?一体どういう事だ)」
切嗣「(絵の下にはメッセージか……『そのバラ朽ちるとき、あなたも朽ち果てる』。どうやら、先程拾った薔薇が朽ちた時、僕も死ぬようだ)」
切嗣「(だが、それをわざわざ教えた理由はなんだ?一体何が目的なんだ)」
切嗣「とにかく、ほかには何もないようだし部屋を出るか」
ガチャ
カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ
カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ
切嗣「!?」
切嗣「(まさか、この青の鍵を取ったからか?だがこれを戻した所で状況は変わらなさそうだ)」
ゾクッ
切嗣「!!」
切嗣「(嫌な気配がする。このままここに長居してはいけない)」
切嗣「くっ!」ダッ
…………
切嗣「はぁ……はぁ……」
切嗣「青い扉か。恐らく、ここでこの鍵を使えば」ガチャ
切嗣「やはりか。思った通りだ」キィ……
切嗣「今度は、緑色の部屋か」
切嗣「(虫の絵が並んでいる。左にはメッセージ)」
切嗣「(『はしにちゅうい』……これに隠されたヒントを解けなければ、恐らくよくない事が起きる)」
切嗣「とにかく、まずは調べて……ん?」
切嗣「床にいるのは……アリか?」
アリ「ぼく アリ」
切嗣「喋った!?」
アリ「ぼく 絵 だいすき ぼくの 絵 かっこいい」
アリ「ぼくの 絵 見たいけど ちょっと 遠い ところにある」
切嗣「」
切嗣「(アリの絵、か……連れて行って調べてみるか)」
一時離脱
ガバッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「壁から手が出てきた?……ぐっ!」ガクッ
切嗣「がっ……ぁ……!」
切嗣「はぁ……はぁ……ぐ……一体、何が」
『そのバラ朽ちるとき、あなたも朽ち果てる』
切嗣「まさか!?」ゴソッ
切嗣「薔薇が一枚欠けている。なるほど、それでこの痛みか」
切嗣「それに、はしに注意の意味もわかった。なら古風だが真ん中を通ればいい」
切嗣「通れたのはいいが、扉に鍵がかかっているな」
切嗣「だがアリの絵はここにあったのか。ほら、見たがっていたお前の絵だぞ」
アリ「あっ ぼくの 絵 かっこいい」
切嗣「…………」
切嗣「…………それだけかい?」
アリ「あっ ぼくの 絵 かっこいい」
切嗣「…………」イラッ
切嗣「この絵、少しの間借りて行くよ」ガコッ
切嗣「…………」
切嗣「アリの絵を橋にして進むか」
グシャ
切嗣「…………」
切嗣「(絵の中のアリが潰れたように見えたが、気のせいだ)」
……
切嗣「やはりここに緑の鍵があったか」
切嗣「(これであの扉を開く事が出来るはずだ」スッ
ガタッ
切嗣「!!」バッ
切嗣「マネキンが動いた?くっ、僕を捕まえるつもりか」
切嗣「タイムアルター……ダブルアクセル!!」ダッ
切嗣「ぜぇ……はぁ……なんとか、逃げ切ったか」
切嗣「はぁ……が……!!」
切嗣「(反動が思っていたよりもでかいな。僕の身体も相当ガタが来ているらしい)」
切嗣「……鍵のかかった扉を開けて、先に進もう」
(◎ω◎)ニャーン
………
切嗣「猫の壁にかくれんぼ、動く石像、嘘つきの部屋、猛唇、赤い服の女……」
切嗣「(いくつもの仕掛けを突破したが、未だに奥にはたどり着けない)」
切嗣「(この魔術の使用者は一筋縄ではいかなさそうだ)」
切嗣「(だが、こうなると本当に何が目的……ん?)」
切嗣「青い花びら……僕の薔薇と同じもの?」
切嗣「(だとしたら、僕と同じように巻き込まれた人間がいる?それとも罠か?)」
切嗣「(前者なら放ってはおけない、後者なら返り討ちにするまで。辿ってみよう)」
切嗣「(恐らく、この薔薇の持ち主はここで力尽きたか。あるいは……)」
切嗣「(いや、今は憶測で決め付ける段階じゃない。それよりもここから脱出しなければ)」
切嗣「…………ん?」
切嗣「(あんな所に幼い子供が倒れている?)」
切嗣「(あらかさまな罠だが。無視しても問題はなさそうだが)」
(イリヤ「うん、私キリツグが帰ってくるの、良い子にして待ってる!」)
切嗣「……っ!」
切嗣「…………君、大丈夫か?」スッ
切嗣「…………脈は……なし」
切嗣「…………手遅れか」
切嗣「(また、僕は……助けられなかったのか)」
切嗣「(イリヤと同い年位の、小さな子供も)」
切嗣「くそっ!」ドンッ
ポロッ
切嗣「!」
切嗣「これは……薔薇の茎?」
切嗣「ほとんど燃えているけど、これがこの娘の……」
切嗣「…………」
スッ
切嗣「(何をしているんだ、僕は)」
切嗣「(もうこの娘は助からないと分かっているのに、何故この娘を背負って歩いている)」
切嗣「(何故…………)」
切嗣「見た所、この仕掛けも解かなければいけないんだろうけど……手がかりがないとどうしようもない」
切嗣「道は続いているようだし、ここは後回しにしよう」
ガチャ
切嗣「今度は迷路か。不意打ちには注意しないと……」
バッ
切嗣「ね!」タァン
ドサッ
切嗣「マネキンか。……起源弾で屠る事が出来るのはわかったが、もったいないな」
切嗣「残弾が少ない以上、使用は控えないといけないな」
切嗣「とにかく、この迷路の仕掛けを解いてみよう」
切嗣「……音がしたかと思えば、新しい扉か」
切嗣「(後一体、いくつの仕掛けを解けばいいんだろうね)」ガチャ
切嗣「ここは……オブジェの部屋か」
切嗣「(見た目はともかく、どれも完成度は高い)」
切嗣「……ん?木の葉の中で何かが光ったような」
切嗣「これは……結婚指輪か」
切嗣「(なるほど、これを先程の仕掛けに使用すればいいのか)」
切嗣「(…………そういえば、アイリに結婚指輪を渡せなかったな)」
切嗣「…………」
切嗣「感傷に浸っている場合じゃないか。早く進もう」
首マネキン「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」ズラッ
切嗣「これは……さすがに気味が悪いな」
切嗣「(この様子だと、この先も長そうだ。食べ物を持ち込んでおけばよかったな)」
切嗣「(昔なら、これよりもずっと危険な戦場をいくつもくぐり抜けてきたんだけどね。本当に衰えたよ)」
ガタンッ
切嗣「タイムアルター、ダブルアクセル!!」ダッ
………
切嗣「はぁ………はぁ………」
切嗣「(あの後、あの先にあるフロアの仕掛けを解いている内にフロア全体の展示物が襲いかかってくるとは思わなかった)」
切嗣「けど……はぁ……なんとか……逃げ切ったぞ…………」
切嗣「ふぅ……」
切嗣「(さすがに疲れたよ。動かないこの娘を背負ったまま移動していたし、どこかで休みたい)」
切嗣「そうだな……あの部屋で、少し休むか」
切嗣「(部屋の真ん中には水入りの花瓶か……意味がないのかもしれないけど、焦げっぱなしで放置しておくくらいなら)」スッ
切嗣「こうして、添えられていた方が茎もきっとマシだろう」
切嗣「(後は……そうだな、見た所周囲は安全だし)」
切嗣「少し暗い眠っても、罰は当たらないよね」ドサッ
一旦ここまで
からだ が やけ る
いた い
なん で わた し そと でれない の?
イ も ギャ も わたし おいて い
わたしも そと でた い
そとの せかい である たい
でも わたし でれない
ふたりとも わたし おいて た
わたし もやし った
いた い い たい いたい いたい いた……い……
?
いた……い?
なんで痛かったんだっけ?
さっきまであんなに苦しかったのに、今は楽な気がする。
なんでだろう?どこか安心するような感じ
なんだか、眠く、なって、きたなぁ。
切継「気がついたかい?」
「えっと……ここ、は?」
切継「残念ながら、僕にもここがどこなのか分からない」
「そう。……って、あなただれ!?」
切継「僕は衛宮切継、訳ありでこの怪異に巻き込まれた人間さ。君の名前を聞いてもいいかな?」
「私?私の、名前は……あれ?」
「なんで思いだせないの?ちゃんとあったはずなのに」
切継「(名前が思い出せない……記憶を失っているのか?)」
切継「(無理もない。むしろこんな幼い子供が、いきなりこんな事に巻き込まれて精神が無事な方がおかしい位だ)」
切継「(それにさっきまでの彼女の状態から考えると、彼女は一度……)」
切継「思いだせないか。じゃあ、他に覚えている事は?」
「えっと……」
切継「例えば、好きな食べ物は?」
「わかんない」
切継「じゃあ、お母さんの名前は?」
「……わかんない」
切継「……じゃあ、いちたすいちは?」
「2。さすがにそれくらいはわかるわ」
切継「計算能力は影響なし。となると失っているのは自分及び自分の周りに関する記憶がほとんどという事か」
「切継のいってること、むずかしくてよくわかんない」
切継「ごめんごめん、君には少し難しかったね。それより、僕達が今いるこの空間は危険だ」
切継「この部屋も何時得体の知れない何かが襲ってくるかわからないし、一歩外に出ればそこは危険地帯だ」
切継「僕はこの空間の元凶を倒して元の場所に帰るつもりだけど、君も一緒に来るかい?」
「……うん」
切継「よかった。……あぁ、そうだ。一つ言い忘れていた事があった」
「言い忘れていた事?」
切継「僕はね、魔法使いなんだ」
「う、うん」
切嗣「この部屋を出る前にもう一度言っておくけど、一歩出れば危険地帯だ。身を守る武器がなければ何かあった時に身を守る事が出来ない」
切嗣「だから、決して僕から離れないようにね」
「切嗣はだいじょうぶなの?」
切嗣「僕は自衛手段を持っているからね。けど、万能じゃない」
切嗣「だから命を大事に行動するんだ、いいね?」
「わかった」
切嗣「よろしい。じゃあ、部屋を出ようか」ガチャ
「…………」ギュッ
ガタガタッ
「ひっ!?」ビクッ
切嗣「下がって」スッ
切嗣「(あの部屋の扉が叩かれたのか。確実に何かがいる……僕一人ならともかく、この娘もいる。今は近づかない方がいい)」
切嗣「あの部屋は後回しにしよう。慎重に進まないと何が起こるかわからないからね」
「……うん」
切嗣「(さて、廊下の脇には3つのボタンとあらかさまに配置されている一つの本棚か。罠の可能性があるが、手がかりが隠されている可能性もある)」
「どうしたの?」
切嗣「ちょっとね考え事だよ。あの本棚を調べてくるから、ここで待っているんだ」
「わかった」
切嗣「(さて、鬼が出るか蛇が出るか)」スッ
ガシャン
切嗣「なっ!?」
「切嗣、後ろ!」
切嗣「!!」クルッ
切嗣「(またマネキンか。だが避けられない間合いじゃない)タイムアルター、ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「(3つのボタンの内恐らく二つは罠、一つが正解だろう)」
切嗣「(ここに配置してあるマネキンは赤、青、黄……動いているのは黄色のマネキン、赤と青は停止)」
切嗣「(そしてボタンは赤、青、緑。マネキンとの関連性を信じるなら押すべきボタンは緑!!)」ポチッ
青マネキン「」ガタッ
切嗣「何!?」
切嗣「大丈夫だ……タイムアルター、ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「(ダブルアクセルで奴らに反応出来ない速度で移動、押すボタンは……緑が罠だった以上、考える時間はない。青だ)」ポチッ
ガシャン
「切嗣、出口が開いたよ!」
切嗣「今向かう、だがその前に!」ゴソッ
切嗣「(よし、本を回収した。後は……)」
ブチッ
切嗣「しまっ……がぁ!!」
切嗣「タイムアルター……ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「はぁ……はぁ……が……ぁ……あ……!!」
「しっかりして切嗣、どこか痛いの!?」
切嗣「ぐ……ぅ……大丈夫さ……少し、魔法を使った反動が来ているだけだ」
ポロッ
「これって……黒い薔薇?一枚しか花びらが残ってないけど」
切嗣「ごめんね、それは僕のなんだ。」スッ
「あっ……」シュン
切嗣「心配しなくても、君の分もちゃんとあるよ」スッ
「これって、私の薔薇?」
切嗣「あぁ、黄色い髪の君に似合う黄色い薔薇だ。大事にするんだよ」
「うん!」
切嗣「ふぅ……ごめんね、少し疲れてしまったからおじさん……は……ここ……で……休む……よ」ドサッ
「切嗣? しっかりして、切嗣!」
「そういえば切嗣の薔薇……そうだ!」ダッ
「確か、この辺に……あった!」
「これの切嗣の薔薇を活ければ切嗣も元気になるはず」チャプッ
「……よかった、薔薇の花びらも元通りになってる」
「あれ、なんで私こんな事知ってるんだろう?」
切嗣「……ぅ……ぐ……」
切嗣「がはっ! はぁ……はぁ……ん?」ガバッ
切嗣「(ずっと続いていた痛みと苦しさが無くなっている?どういう事だ?)」
切嗣「…………!」ゴソッ
切嗣「僕の薔薇がない?それに、あの娘もいない」
切嗣「まさか!」ダッ
切嗣「よかった、ここにいたのか」
「あ、切嗣」
切嗣「目が覚めた時いなかったから心配したんだよ。……どうかしたかい?」
「ううん、なんでもない。それよりほら、切嗣の薔薇元気になったわ!」
切嗣「これは……確かに、僕の薔薇だ。でもどうやって?」
「そこの花瓶に活けて元気にしたの!」
切嗣「そうか。……ん?」
切嗣「(おかしい。そんな事実は今初めて知った。けどこの娘はまるで知っていたかのように行っている)」
切嗣「……少しだけ、僕の質問に答えてくれるかな?」
「うん、いいよ!」
切嗣「君は、ここに来たばかりだよね?」
「ううん、わかんない。気付いた時にはここにいたもん」
切嗣「そうか。じゃあ、記憶に関して、何か思い出したことはあるかい?」
「……ごめんなさい、わかんないの」
切嗣「じゃあ、どうして薔薇を活けるなんて行動に出たんだい?」
「それもわかんないの。ただ、切嗣が倒れて、薔薇を活ければ元気になるはずって思って……なんでそんな事知っているのかもわかんなくて」
切嗣「……そうか」
切嗣「大体わかった。問い詰めるような真似をしてごめんね」
「ううん、いいの。それより元気になったから大丈夫よね?」
切嗣「あぁ、僕はもう大丈夫だ」
「よかった!じゃあ早く行きましょう」
切嗣「(……記憶が無いにも関わらず薔薇の仕組みを潜在意識レベルで覚えている少女か)」
切嗣「(怪しい所はある。だが悪い考えを持っている訳ではなさそうだ)」
切嗣「(そうだ、僕の考えすぎだ。……もう、これ以上疑うのはやめよう)」
切嗣「(何より、ほとんどを失っている僕と違って、彼女は……)」
「ねぇ切嗣、さっきから元気ないけど大丈夫?」
切嗣「いや、なんでもないよ。見ての通り僕は元気さ」
「……本当に?」
切嗣「あぁ、本当だ。それよりこの扉の暗号も無事見つかった事だし、扉を開けよう」
「うん、確か『深海の世』だったよね」
切嗣「正解だ」ガチャ
切嗣「ここは……一枚の絵画と本か」
「えーと……わたしはその[ピー]しく美しい[ピー]に指を[ピー]らせ、[ピー]を[ピー]えさせる彼女に、そのまま……」
パタン
僕は彼女から静かに本を取り上げ、本棚に戻した。
切嗣「こういう本は君にはまだ早い。大人になってから読みなさい」
「えー」
切嗣「えーじゃない。教育に悪い本を読ませる訳にはいきません」
「ケチ!」
切嗣「ケチで結構。……この絵画には特に変わった所はなさそうだな」
ブツンッ
「え?な、なに!?切嗣、どこなの!?」
切嗣「僕はここにいるよ」
「あっ……切嗣」
切嗣「いいかい、僕の傍を決して離れないように。今ライターを取り出すから」ゴソゴソ
切嗣「(ライターに魔術を加えて部屋一面を照らせば、様子が分かるはずだ)」シュボッ
た す け て
や め て
い や だ
し に た く な い
こ わ い
「ひっ!?」
切嗣「……暗くなっている間に壁や床にメッセージの落書きか。とんだ悪質な趣向だね」
切嗣「どうやら、ここも安全ではないらしい。行こう」ガチャ
『お客様に申し上げます。当館内では火気厳禁となっております』
『マッチ、ライター等の使用・持ち込みはご遠慮くださいますようお願いいたします』
『万が一館内でそれらの使用をスタッフが発見した場合、』
切嗣「……チッ」
「ね、ねぇ……このアナウンスって」
切嗣「行こう、この場に長居しない方がいい」
切嗣「ここまで来れば大丈夫だろう」スッ
「あれ、その本って確か」
切嗣「あらかさまな場所にあった本棚から拝借してきた本だよ。手がかりが得られればいいんだけどね」ペラッ
「あ…………」
日誌
ヒトの想いがこもった物には魂が宿ると言われている
それならば作品でも同じことができるのではと私は常に考えている
そして今日も私は自分の魂を分けるつもりで作品作りに没頭している
切嗣「…………」
切嗣「(これは誰かの日誌?作り上げた空間に意味もなくこんなものを置いておくとは思えない)」
切嗣「(考えられるのは、黒幕が残したなんらかのヒントか……ワイズ・ゲルテナ本人の日誌か)」
切嗣「(どちらにせよ、ここで読みふける程の価値はなさそうだ)」パタン
切嗣「どうやら、そこまで急いで読む必要はなさそうだ。今は先を……」
「…………」
切嗣「おい、聞いているのか?」
「作品……魂…………わたしは…………メアリー……」
切嗣「おい……おい!しっかりしろ!!」ユサユサ
「ふぇ?……あれ、ここは?」
切嗣「よかった、正気に戻ったか」ホッ
「あれ、私どうして……あれ?」
切嗣「先程から妙な言葉をつぶやいていたよ。わたしはメアリーとか」
「メアリー……そうだ、思い出した!私、メアリーっていう名前なの!!」
切嗣「ほ、本当なのかい?」
メアリー「そうよ!今はまだそれくらいしか思い出せないけど……うん、私の名前はメアリー」
切嗣「そうか。なんにせよ、名前を思い出せたなら僕も嬉しいよ」
メアリー「どうして私が名前を思い出した事が嬉しいの?」
切嗣「何時までも君呼ばわりだと嫌だろう?名前の方が、誰の事を指しているかわかりやすいからね」
メアリー「そっか……そうだよね」
切嗣「そういう事だ。名前もわかった事だし……改めてよろしく、メアリー」
メアリー「えへへ……よろしくね」
切嗣「さて、何時までもここで話している訳にもいかないし……張り切っていこうか」
メアリー「おー!」
メアリー「わぁー、かわいいね。切嗣もそう思わない?」
切嗣「……本当に、これがかわいいと思うのかい?」
メアリー「思うけど、切嗣は思わないの?」
切嗣「僕はこんな君の悪いものをかわいいとは思えないかな」
メアリー「えー、切嗣って、変!」
切嗣「変、か……あはは」
メアリー「こんなにかわいいのに……」
パリン
メアリー「きゃあ!?」
切嗣「危ないから下がっていなさい……これは、鍵?」
メアリー「置物の中に鍵が入ってたのね」
切嗣「(ひとりでに置物が落下したのが気になるが……警戒はしておこう)」
切嗣「となりの部屋がこの鍵で開くはずだ。確かめてみよう」
メアリー「うん、わかった!」
メアリー「どうしたの?」
切嗣「ちょっとこの絵の中から物音がしてね。離れていなさい」
メアリー「う、うん」
切嗣「(この音……何かが近づいてくる?まさか!)」
ボゴォッ
切嗣「(床から植物が!?)タイムアルター、ダブルアクセル!」バッ
ガゴォ
メアリー「切嗣、大丈夫!?」
切嗣「僕は無事だよ。しかし植物を操る魔術……ん?」
切嗣「(この植物、石でできている!?しかもご丁寧に壊れないよう強化されている)」
切嗣「参ったな、どうやらこれを壊して合流するのは無理そうだ」
メアリー「…………ねぇ、切嗣。さっきの部屋で拾ったカギ、あるよね?」
メアリー「そのカギでもしかしたら、私がいる方のドアを開けられるんじゃない?」
メアリー「もしかしたら違う部屋に、これを壊れる道具があるかもしれない」
メアリー「だから、カギをこっちにちょうだい?私も切嗣の役に立ちたいの」
切嗣「それは……ダメだ、身を守る術を持たないメアリー一人で単独行動は危険すぎる」
メアリー「でも、このままだと何時までも合流出来ないよ?」
切嗣「……責めて護身用の簡単な魔術を教える。幸い、魔力は人よりも多いから魔術は扱えるはずだ」
メアリー「護身用の魔術?」
切嗣「そうだ。時間がないから本当に簡易的なものだけどね。それを覚えてからじゃないと、鍵は渡せない」
メアリー「じゃあ、魔術を教えたらカギをくれるのね?」
切嗣「約束する。ただし、少しでも危険を感じたらすぐに戻ってくるように。いいね?」
メアリー「うん!」
切嗣「(本当に簡易的な魔術とはいえ、あそこまで簡単に覚えるとは思わなかった)」
切嗣「(メアリーから感じる魔力は並大抵のものじゃない。あの年まで怪異に命を奪われていないのがおかしい位だ)」
切嗣「(もし彼女が何も対策をしないまま外に出ればあっという間に怪異の餌食になる。それだけは避けなければならない)」
切嗣「(彼女の身を守る対策もする必要があるな)」
切嗣「(それも考えなければいけないが……こちらも何もしない訳にはいかない)」
切嗣「(さっきの部屋に戻って他に何かないか調べてみよう。手がかりがつかめるかもしれない)」
………
心壊
あまりに精神が疲弊するとそのうち幻覚が見え始め……
最後は壊れてしまうだろう
そして厄介なことに
自身が壊れていることを自覚することができない
切嗣「……心が壊れている事を自覚出来ない、か」
切嗣「(もしかしたら僕はとっくの昔に心が壊れているから、ここにあるものが不気味な人形に見えるのかもしれないな)」
切嗣「……ん?」
切嗣「これは……まさか」
ズッ
切嗣「やはりか。本棚の裏に扉があったとはね」
切嗣「僕は僕で、この先を調べないといけなさそうだ」
クイッ
切嗣「……これは何も起きないか」
切嗣「これは……」クイッ
フッ
クイッ
パッ
切嗣「……消灯・点灯用か」
切嗣「これは……」クイッ
ベシャッ
切嗣「……人形が落ちてきたか。人が高いところから落ちた時の状態が見事に再現されているな」
ドサッ
切嗣「また何かが落ちてきたか。これは……重石か?」
切嗣「あのくぼみと一致するが……試してみるか」ゴトッ
ギィ
切嗣「これで、先に進めると。よくできた仕掛けだ」
切嗣「……ん?」
”こんにちは 切嗣
わたし ひとりで さみしいの
だから いっしょに つれてって”
切嗣「また気味が悪い人形か。ご丁寧にメッセージ付きときた」
切嗣「(さすがにこんな不気味なものを連れて行く気にはなれない。無視して進もう)」スッ
切嗣「…………」
切嗣「……また人形か」
”ねぇ どうして
つれてって くれないの?”
切嗣「…………」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………またか」
”なんで むしするの?
わたしのこと きらいなの?”
切嗣「…………」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………チッ」
”ねぇ あそぼうよ
ここ おもしろいもの
たくさん あるんだよ”
切嗣「…………ついてくるな」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………クソッ」
”わたしの おともだちも
たくさん いるんだ
しょうかいして あげるね”
切嗣「何なんだ一体」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………今度は一体なんだ」
”えいえんに ここにいろ”
切嗣「!?」
切嗣「はぁ……はぁ……」
切嗣「ここまで来れば……ん?」
切嗣「……」
切嗣「(今度は扉の前で待ち伏せか。どこまでついてくるつもりなんだ)」
切嗣「そっちがそのつもりならこちらにも考えがある」チャキッ
切嗣「(起源弾はもったいない。普通の弾で仕留める)」
タァン
切嗣「さっきの人形と同じように、血が流れ出たか」
”い た い よ ぉ
い た い よ ぉ”
切嗣「……先に進むか」
切嗣「(このフロアには一体何があるか……ん?)」
切嗣「……今度は人形の生首か」
”あなたの せいで
くびが もげちゃった”
切嗣「自業自得だ」
切嗣「(もう人形に付き合うのは疲れた。まずはこの部屋から調べよう)」ガチャ
切嗣「この部屋は……台座が並んでいる?」
切嗣「また新しい仕掛けか。メッセージは……」
『七つの色彩……絵の具玉を集めよ
さすれば部屋は色づき
そなたの架け橋となるだろう』
切嗣「どうやら、絵の具玉とやらを集める必要がありそうだ」
切嗣「ぐっ……なんだこの部屋は!?」
切嗣「(かなり危険な毒ガスか。数秒居座るだけでも危険だ)」
切嗣「(新しい道具と絵の具玉、両方回収するには……)タイムアルター、トリプルアクセル!!」ダッ
切嗣「がっ……はぁ……ぜぇ……はぁ……ぁ……」ガクッ
切嗣「(まずい、魔術の反動が……しばらくは動けないか)」
切嗣「ぐ……ぁ……」ドサッ
切嗣「(意識が朦朧と……責めて壁際によって休もう)」
メアリー「あれ、これってパレットナイフ?」
メアリー「これであのツル……削れないよね」
メアリー「でも、このナイフどこかで見た事があるような……念のため持っておこう」スッ
メアリー「他になにもなさそうだし、一旦戻rかな」
フッ
メアリー「わっ何!?」
パッ
メアリー「びっくりした、なんだったんだろう」
メアリー「……あれ、出口が」
メアリー「なんで!?さっきこの人形壁際にあったのに」
メアリー「うーん……!」
メアリー「だめだ、全然動かせないよ」
メアリー「どうしよう、切嗣が向こうにいるのに戻れない」
メアリー「…………」
メアリー「しょうがないからこっちから行こう」
メアリー「何か思い出しそうな気がするけど、思い出しちゃいけないような……」
ベチャベチャベチャベチャッ
メアリー「なっ何!?」
メアリー「これって……壁に文字が書かれてる?」
”おともだちが まってるよ”
”はやく いこうよ”
”おとなのいない たのしいせかいへ”
”イヴ が きみを まってるよ”
メアリー「なに、これ……どういう事?」
メアリー「それにイヴって……確か…………」
メアリー「ぅぐ……頭が痛くて、思い出せない」
メアリー「わたしは、なにをわすれているの?」
あるところに小さな女の子がいました
女の子は両親と一緒に美術館へ行きました
しかしふと気が付くと女の子は迷子になってしまい……
うす暗い美術館の中を探しましたが両親も出口も見つからず……
怖くて心細くてさみしくてお腹もへりノドが乾き転んでケガをして体力も限界になって……
……最期のページに小さな女の子が倒れている挿し絵で本は終わっている……
メアリー「この絵の女の子、見た事があるような……ぁ」
ギャリーって……イヴのお父さん?
ちがうよ
ふーん……じゃあお父さんは別にいるのね
そっかぁ……
イヴのお母さんやさしい?
うん
へぇ……いいなぁ
早く両親に会いたいよね?私も早くここから出たいよ
………ねぇイヴ、あのさ
もしここから出られるのが2人だけだったら……どうする?
出られるのが2人だけだったら……ギャリーと一緒に出るかな
…………
……そう……ギャリーと一緒の方がいいんだ……
ま、今のはたとえ話だからいいけど……
出る時は一緒に出ようね?約束だよ!
メアリー「なに、これ……私の、記憶?」
メアリー「私は、この人を……知ってる?」
メアリー「それにこの記憶……私は、前にここを訪れた事があるの?」
メアリー「わからない。わからない。わからない……怖いよ、誰か助けてよ」
メアリー「誰か……お願いだから」
切嗣「(どうにか、絵の具玉を集めきる事が出来た)」
切嗣「薔薇を活ける事で体力を回復出来る事を知らなかったらここまで集めるのは無理だったのかもしれないけどね」
切嗣「それにしても、ここにも本があるとはね。メアリーが心配だけど、念のためここも調べておこう」スッ
メアリー ----年
ゲルテナが手がけた生涯最後の作品。
まるでそこに存在するかのように佇む少女だがもちろんのこと彼女も実在しない人物である。
切嗣「…………!!」
切嗣「どういう、事だ?」
切嗣「メアリーが実在しない人物……それに、この挿し絵」
切嗣「間違いなく彼女だ。なら……」
切嗣「彼女は一体、何者なんだ?」
切嗣「閉まっていた部屋の扉が、開いている?」
切嗣「……調べてみるか」
切嗣「……君が悪い人形がこんなにもあるとはね」
切嗣「特に何もなさそうだが……ん?」
切嗣「これは……誰かの手記か?」
きづいた時から、わたしはここにいた。
外のせかいを私はしらない。
だれかひとりがのらないと出ることができないって、おともだちがおしえてくれた。
だから私は、私いがいのだれかがくるのをまっている。
だれかがのこらないと出ることができないなら、私いがいのだれかをのこして外にでればいい。
はやくだれかこないかなぁ
切嗣「…………」ペラッ
私とおなじ位の女の子はイヴ、男の人はギャリーっていうの。
イヴとはなかよくやっていけそう。そとにでたらイヴの所でいっしょにくらしたいな。
イヴと私のふたりで、ここから出るんだ。
切嗣「…………」ペラッ
ギャリーが私のひみつをしった。
あのへやからも出られた。しまつしにいかなきゃ
にんぎょうがじゃまだなぁ。なんでじゃまするかなぁ。
はやくあいつをころして、イヴといっしょに出るんだ。
切嗣「…………」ペラッ
イヴは私をえらんでくれなかった。
もういい、イヴなら私といっしょに出てくれるとおもったのに。
私をおいていくなら、ふたりとも……
切嗣「…………」ペラッ
めありーが もやされた
ぼろぼろと くずれていった
でも めありー いきること のぞんでる
だから わたしたち めありー さいげんした
いまの めありー のこりかす
そとの こわいのに ねらわれたら
あっというまに しんじゃう
だれか あのこ まもって あげて
切嗣「これは……メアリーの、日記?」
切嗣「だが、最後のページ……これが事実ならあの娘は」
切嗣「…………」
切嗣「あの娘と会おう。自分の目で確かめなければ結論は出せない」
ガチャガチャ
切嗣「……扉が開かない?」
ベチャッ
切嗣「!」
"また たからさがし しようよ
だれがカギを もってるかな?"
切嗣「なんだと?」
ゴーン…ゴーン…
切嗣「……この部屋のどこかに鍵が隠されているという事か」
切嗣「急がなければ恐らく……チッ」ダッ
切嗣「違う、こいつも違う。こいつも違う」ゴソゴソ
切嗣「どいつだ……?どいつが鍵を持っている!?」
切嗣「(白い絵からは段々と化物が現れ出している。奴が出てきたらアウトだ)」
切嗣「こいつも違う……こいつも違う!」
切嗣「(くそっ早くしないと化物が……!)」
切嗣「(このままだと殺される。奴が魔術で動いているなら一か八か)」チャキッ
切嗣「起源弾……!!」ダァン
バシュッ
ボロボロ……サァアアアアア……
切嗣「ふぅ……危なかった」
切嗣「(思った通りだった。奴が魔力で生み出されたのなら、起源弾が有効)」
切嗣「(半分賭けだったけど、上手くいってよかった)」
切嗣「後は、人形の中から鍵を見つけ出せばいい」
切嗣「メアリー、ここにいたのか」
メアリー「ぁ……切、嗣」
切嗣「君が無事でよかった。ここからは一緒に……メアリー?」
メアリー「ぁ……え……と」
切嗣「大丈夫か?顔色が悪いけど」
メアリー「ううん、大丈夫。……あのね、切嗣」
切嗣「なんだい?」
メアリー「もし、もしもだよ?……もし二人の内どちらかしか外に出れなかったら、切嗣はどうする?」
切嗣「…………」
切嗣「それは、場合によるな」
切嗣「例えば僕が死にかけで、外に出ても助からない状態だったら外に出る意味はないからメアリーを外に出す事を選ぶ」
切嗣「逆にメアリーが同じような事になった場合も、外に出る意味はないから僕が出る事を選ぶ」
メアリー「……そう」
切嗣「……少し、僕の話をしよう。休憩がてらにでも聞いてくれればいい」
切嗣「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」
メアリー「正義の、味方?」
切嗣「そう、悪を倒してみんなを助ける、そんな存在になりたかった」
切嗣「けど、現実はそんな生易しいものじゃなかった」
切嗣「そこで僕は、元凶となった父親を殺し、ある人と一緒に島を出た。
メアリー「お父さん、殺しちゃったの?」
切嗣「そうだ。父親を放っておけばまた別の所で同じことを繰り返す。それを防ぐ為に殺した」
切嗣「父親を殺した僕を拾ってくれた人は悪いことをする魔術師を狩る仕事をしていてね、僕はその手伝いをして成長していった」
メアリー「魔術師?魔法使いじゃなくて?」
切嗣「厳密に言うと、魔法使いと魔術師は違うんだ」
切嗣「魔力を使って人為的に奇跡・神秘を再現するのが魔術師、現代の如何なる資金・時間をかけても実現不可能な正真正銘の奇跡を扱うのが魔法使いだ」
切嗣「僕も本当は魔術師というカテゴリに振り分けられる。残念ながら魔法使いには至らないんだ」
メアリー「うーん、よくわかんない」
切嗣「まぁわからないのも無理はないよ」
メアリー「そういえば、切嗣のお母さんはどんな人なの?」
切嗣「お母さんは……僕が物心着く頃には死んでしまったから覚えていないんだ。お母さんと言えたのは、さっき行った僕を拾ってくれた人だ」
メアリー「そうなんだ。その人って優しいの?」
切嗣「厳しかった、かな。怒ると怖いし。そもそも戦場に優しさは必要なかったからね」
切嗣「けど、その人も死んでしまった。……僕が、殺した」
メアリー「え……何で殺しちゃったの?」
切嗣「けど、奴は自分の身体に使い魔を隠していたらしい。奴の死体から出てきた使い魔は乗っていた人達をグールに変えて、飛行機の中を地獄絵図に変貌させた」
切嗣「僕を拾ってくれた彼女はなんとか生き残って飛行機を操縦していたけど、飛行機が無事着陸すればその街に住んでいる人達が大量に死ぬ事になる」
切嗣「街に住む万の人間とたった一人の恩人、両方を天秤にかけて僕は街に住む万の人間を選んだ」
切嗣「飛行機を爆破した結果、飛行機が着陸するはずだった街の人達の命は守られた……僕の恩人と引換にね」
メアリー「……辛くなかったの?」
切嗣「辛かったよ。泣き叫んだりもした。その後僕はフリーの魔術師殺しとして、転々としていった」
切嗣「そんなある時、なんでも願いを叶える願望機がある事を知った僕は、それを手に入れる為にアインツベルンに婿入りした」
メアリー「婿入り?」
切嗣「要するに、お婿さんになりにいったんだ。お嫁さんの男性版だよ」
メアリー「じゃあ切嗣、結婚したの?」
切嗣「妻には結婚指輪も渡せなかったけどね。彼女も生まれてからの短い時間だったけど、娘も出来て幸せだったよ」
メアリー「幸せ……だった?」
切嗣「僕の妻、アイリスフィールは……さっき言った願いを叶える願望機を取り合う戦いで命を落としたんだ」
メアリー「そん、な……それじゃあまた大切な人がいなくなって切嗣が一人ぼっちじゃない」
切嗣「……そう、だね。でも結局は僕が殺したようなものだ」
メアリー「……切嗣は、その願いを叶える願望機を手に入れたの?」
切嗣「手に入れた、とは言えないかな。願望機は、僕が破壊しちゃったからね」
メアリー「え、なんで?壊しちゃったの!?」
切嗣「願いが叶う願望機は、その願いを破壊という形でしか叶えない呪われた欠陥品だったんだ」
切嗣「願望機を否定した僕は、それを破壊して……アインツベルンを追放された」
メアリー「……娘がいたって言ったよね。娘はどうなったの?」
切嗣「今も一人ぼっちで、アインツベルンに囚われているよ。何度も迎えに行ったけど、助けられなかった」
メアリー「そん、な……」
切嗣「今は願望機を巡る争いによって引き起こされた災害の中から助けた一人の子供だけが僕の希望だよ。名前は士郎っていうんだ」
切嗣「本当なら今日、娘のイリヤを迎えに行って……家族3人で暮らす予定だったんだけどね。また失敗したよ」
メアリー「…………」
切嗣「こんな生き方をしてきて、僕は後悔してるよ。どこかで道を変えれば、違う結末もあったのかもしれないとね」
メアリー「切嗣……」
メアリー「?」スッ
切嗣「…………」スッ
切嗣「……うん、大体わかった」
メアリー「何がわかったの?」
切嗣「メアリーの事だよ。君の場合、怪異に対する耐性がほとんどついていない」
切嗣「だから、このままだと外に出た途端怪異に狙われて殺されてしまう」
メアリー「怪異?」
切嗣「そうだ。外の世界にはたくさんの怪異に満ち溢れている」
切嗣「怪異は君みたいに抗魔力の低い人や魔力をたくさん持っている人が大好物なんだ」
切嗣「だから、ろくな対抗の術もない状態で怪異に狙われたら大変な事になってしまう」
メアリー「じゃあ、私は外に出れないの?」
切嗣「それは違う。対抗の術を持ってないなら、身につければいい」
切嗣「僕が魔術を教えよう。対抗手段を身につければ、外に出ても平気なはずだ」
メアリー「切嗣が教えてくれるの?」
切嗣「もちろんさ。まずは簡単な魔術から教えていくよ」
メアリー「うん!」
切嗣「最初に、魔術回路を……」
メアリー「うぅ……身体中が痛い」
切嗣「ははは、いきなり魔術の訓練を始めたからね。むしろ教えた事をどんどん出来るようになった事に驚いている位だよ」
切嗣「もし魔術師として成長したら、世界有数の魔術師として大成出来るかもしれないね」
メアリー「うーん……でも、魔術師じゃなくて普通の人として生きる事は出来ないの?」
切嗣「メアリーの場合、怪異がある以上魔術と関わりなく生きていく事は不可能だろうね」
切嗣「でも、魔術を扱いつつ一般人として生きる事も出来る。僕と違って未来に満ち溢れているんだ、生き方は自分で決めるといいよ」
メアリー「そっか……そうだよね」
切嗣「さて、そろそろ進もうか。何時までものんびりしている訳にはいかないからね」
メアリー「うん!」
カッカッカッ……
切嗣「……これは」
メアリー「景色が一変したね」
切嗣「心情風景の変化……まさかこの空間全体が、固有結界だというのか?」
メアリー「固有結界?」
切嗣「固有結界っていうのは、己の心情風景を反映する大魔術だ。並大抵の魔術師では発動すらできない代物だ」
メアリー「そうなんだ……」
切嗣「だが、これ程の固有結界の使い手となると……」
切嗣「(これ程の固有結界、今までの手がかり……)」
切嗣「(僕の予想が正しければ、この固有結界はワイズ・ゲルテナが作り出したもの)」
切嗣「(作り出した作品達を守る為の結界……と言った所か)」
切嗣「(だが、今は……)」
切嗣「景色が一変したが何が起こるかわからない。気を引き締めて進もう」
メアリー「うん」
メアリー「でも、あっという間に解けちゃったね」
切嗣「魔術を使ってショートカットしたからね。問題はこのおもちゃばこだ」
メアリー「この中にカギがあるって書いてあったよね。……底が見えないけど」
切嗣「どちらにせよ進むしかない。しっかり掴まっているんだ」
メアリー「うん」
バッ
ヒュウウウウ……
切嗣「(底が見えない。無事着地出来るかどうか……)」
バチッ
メアリー「きゃあ!?」パッ
切嗣「なっ……しまった!」
メアリー「きゃああああああああ!!」
切嗣「メアリィイイイイイ!!」
ドサッ
切嗣「(ここは……おもちゃばこの中か)」
切嗣「(メアリーと共に着地しようとした時に干渉が起きて離れ離れになったのか)」
切嗣「……!」
切嗣「(薔薇がない。あの時に落としたか。メアリーも見当たらない)」
切嗣「悩んでいる暇はない。早くメアリーと薔薇を探さないと」
切嗣「メアリー!」
メアリー「あ……切嗣」
切嗣「メアリー、ケガはないか?薔薇はちゃんと持っているかい?」
メアリー「うん、私は平気。薔薇もちゃんと持ってるよ」スッ
切嗣「そうか……よかった」
ガタッ
切嗣「!!」スッ
メアリー「きゃあ!?き、切嗣!?何で急にお姫様抱っこ……」
切嗣「奴らが一斉に動きだした。全力で走るからしっかり掴まっていなさい」
メアリー「う、うん!」ギュッ
切嗣「(数が多い、出口も遠い。切り抜けるには……)タイムアルター、トリプルアクセル!!」ダッ
メアリー「き、切嗣……大丈夫!?」
切嗣「大丈夫……だ…………魔術の、反動が……返ってきている、だけだから」
メアリー「ほ、本当に?死んじゃったりしないよね?」
切嗣「…………大丈夫だよ、メアリー」
スキ……キライ……
切嗣「…………」
切嗣「先に行ってなさい、僕は少しここで休むから」
メアリー「え……でも」
切嗣「いいから。僕はしばらく動けそうにないからね」
切嗣「無事外に出たら、このチケットを使って飛行機に乗るんだ」
切嗣「空港までの道のりはこの地図に記してある」
切嗣「出来れば娘を取り戻して欲しいけど、今の君では無理だからね」
切嗣「だから、飛行機に乗って日本に行って、そしたらここに記された場所に向かなさい」
切嗣「そこに、僕の義息子がいる……出来れば、仲よくしてあげてほしい」
メアリー「切嗣……そんな遺言みたいに言わないで」
切嗣「……ごめんね」
メアリー「やだ、絶対に嫌!こんな別れ嫌!!」グッ
メアリー「私が、背負う。私が切嗣を背負って一緒に脱出する。だから……!!」
切嗣「メアリー……」
スキ……キライ……
切嗣「(ごめんよ……どうやら、僕は……)」
切嗣「…………」
切嗣「……どうやら、この部屋には特に何もなさそうだね」
メアリー「うん……あれ?」
切嗣「……?」
メアリー「奥に何かある。なんだろう?」トコトコ
切嗣「あれは……絵画の欠片?ほとんど燃えてしまっているから断定はできないが」
メアリー「これ、なん…………ぁ……!!」ガクッ
切嗣「メアリー、どうしたん……!!」
メアリー「ぐ……ぁ……頭に……頭が!!」
切嗣「メアリー、しっかりしろメア……っ!」ガクッ
メアリー「ぁぐ……頭に、次々と……見た事ある、光景が……!!」
メアリー「これ……は……私……の……?」
閉ざされたその空間の中で、私はずっと外に憧れていた。
外の世界には私の知らないものがたくさんある。
外に行きたいけど、外に出るには他の人と入れ替わりでなければ出る事ができない。
だから私は、私以外の人がここに来るのを待った。
ひたすら待って、それで……
イヴとギャリーが迷い込んで来た。
イヴとお友達になって、仲よくなった。
でも、ギャリーが私の正体をバラして外で一緒に仲良く暮らす夢は砕け散った。
イヴを連れて行かれた後も、なんとかイヴと一緒に脱出できないかとあがいた。
けど、だめだった。
拒絶されて、絵を燃やされて……私は、そのまま燃え尽きた。
メアリー「嫌……嫌ぁああああああああああああああああああああ!!」
メアリー「私は、私……もう、私燃えて、燃えてなくなって」
メアリー「じゃあここにいる私は、何?私は燃えてなくなったのに、どうしてここに?」
メアリー「なんで?私は……でも……じゃあ……なんで」
切嗣「メアリー!!」ガシッ
メアリー「ぁ……」
切嗣「メアリー、落ち着くんだ」
メアリー「切……嗣?」
切嗣「君は今ここにいる。僕が保証する。だからまずは落ち着こう」ギュッ
メアリー「でも……私」
切嗣「確かに、今の君は残り火のような存在かもしれない。外に出ても長く生きられないかもしれない」
切嗣「それでも、僕と違って君には未来がある」
切嗣「君がなんであろうと、メアリーはメアリーだ」
切嗣「だから……自棄にならずに、前を向いて生きて欲しい」
メアリー「…………わた、し……私……っ」グスッ
切嗣「……落ち着いたかい?」
メアリー「……うん」
切嗣「……記憶が戻ったんだね?」
メアリー「……うん」
切嗣「……そうか」
メアリー「ねぇ切嗣、やっぱり外には貴方が出なきゃだめよ」
切嗣「……どうして、そう思うんだい?」
メアリー「私、知っちゃったの。私が今生きている事自体奇跡で、何時消えてもおかしくないって」
メアリー「そんな私が外に出るより、切嗣が外に出て子供達と一緒にいてあげた方がずっといいわ」
切嗣「……君は、それでいいのかい?」
メアリー「…………私だって、外に出たいけど」
メアリー「私は……拒絶された」
メアリー「外に出ても、きっと……」
切嗣「…………」
メアリー「……行こう、切嗣。外の世界はもうすぐよ」
切嗣「……これが、元の場所に……つながる……出口」
メアリー「……とうとうここまで来たのね」
切嗣「……そう、だね」
メアリー「ここに辿り着くまでに色々あったね」
切嗣「あぁ…………色々と……あった」
メアリー「私、切嗣と出会えてよかった。貴方がいなかったらずっと恨みを抱いていたかもしれない」
切嗣「そうか……なら、よかった……かな」
メアリー「……」
切嗣「……」
メアリー「お別れだね、切嗣」
切嗣「そうだね」
メアリー「貴方との思い出は、消えるまでの間大事にとっておくわ。だから、切嗣も私の事絶対忘れないでね」
メアリー「これ、は?」
切嗣「僕からのお守りだよ。それと、選別の品だ」
メアリー「切嗣……ありがとう」
切嗣「大事に、使うんだよ」
メアリー「うん……そろそろ、行かないと絵が閉じちゃうね」
切嗣「そうだね……ちなみに、どうしたら外の世界に出られるんだい?」
メアリー「絵画に飛び込めば外に出られるわ。飛び込むだけでいい」
切嗣「そうか…………わかった」
メアリー「……外に出たら、娘を取り戻せるといいね」
切嗣「…………」
メアリー「…………」
切嗣「……それじゃあ、お別れだ」
メアリー「うん……元気でね」
切嗣「あぁ……そうだね」ヒョイッ
メアリー「ふぇ?」
切嗣「外には君が出るんだ。未来の無い僕よりも、少しでも未来を生きる権利がある君がね」
メアリー「な、なんで!?いつ消えてもおかしくない私より切嗣が出た方が……!!」
スゥ……
切嗣「(絵が閉じる。時間がない!)」ブンッ
メアリー「きゃあ!?」スゥッ
切嗣「ごめんね、メアリー。僕はどちらにせよ生きる事ができないんだ」ガクッ
切嗣「(さっきから増している痛みと息苦しさ。恐らく、薔薇をむしられているんだろう)」
切嗣「(それに僕は、聖杯の泥に侵されている……もう余命幾ばくもない)」
切嗣「(同じ何時死んでもおかしくない身なら……責めてあの娘に外を楽しんで欲しい)」
切嗣「(そんなエゴだけど……許してほしい)」スッ
切嗣「(絵はやはり通れないか……どうやら、この結界を維持する為の人柱力が一人は留まらないといけないらしい)」ペタ……
切嗣「(でも、あの娘なら……そうだな、あの娘なら士郎とも仲よくしてくれる)」
切嗣「(それに、あの娘が成長すれば……僕に成し遂げられなかったイリヤの奪還も果たしてくれるかもしれない)」
切嗣「(そう思えば、少しは安心出来る……かな)」ドサッ
切嗣「(安心したら……眠く……なって…………)」
切嗣「…………」
ワイワイガヤガヤ
メアリー「……外の、世界?」
メアリー「…………私、出られたんだ」
メアリー「本当に……外に」
メアリー「……」
メアリー「!!」ガバッ
メアリー「そうだ、切嗣! 切嗣はどこ!?」キョロキョロ
メアリー「切嗣……まさか」ダッ
メアリー「……忘れられた、肖像」
メアリー「間違い無い……これ、切嗣だ」
メアリー「やっぱり……私の、代わりに」
メアリー「なんでよ……なんでなのよ」グスッ
メアリー「なんで切嗣が……身代わりになるのよ」グスッヒック
メアリー「短い間しか生きられない私なんかの為に……どうして」
メアリー「どう……し……て……」
メアリー「ぐすっ……うわぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」
切嗣という、私に外で生きる術を教えてくれた人のおかげで。
あの人が何を思って私を外に出してくれたのかはわからない。
けど、外に出たという事はあの人が身代わりで残ったという事。
悲しいけど、あの人が代わりに残ってくれた以上外に出た私は立ち止まっているわけにはいかない。
メアリー「……修行しよう。魔術師として成長して、立派な魔法使いになって……そしたら、切嗣を助けに戻るんだ」
後に彼女は様々な怪異と遭遇し、やがて第五次聖杯戦争に巻き込まれ、切嗣の実娘と遭遇し……そして英霊へと至るが、それはまた別の話。
切嗣とメアリーの出会いの話は、ここで終わりである。
短めのSSでしたが読んでいただきありがとうございました。
ついでに前作品の宣伝。尚、当作品とは何の関連性もありません。
イリヤ「暇だからキリツグに会いに日本に行く」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414685418/
イリヤ「暇だからキリツグに会いに日本に行く」ウェイバー「後編」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415320550/
面白かった
両方ともリアルタイムで見てたよ
その作者の人だったのか
過去作もこれから見てくるよ
壁画に耳ありジョージにメアリー…
あの作品の作者だったのか、楽しませてもらった!
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422358932/
Entry ⇒ 2015.02.07 | Category ⇒ Fate/Zero | Comments (0)
セイバー「イリヤスフィールにおやつ食べられました」
セイバー「私のおやつイリヤスフィールが食べました…」グイグイ
切嗣「…」
セイバー「おやつ…」
切嗣「…」スタスタ
セイバー「うぅ…」グゥ
切嗣「…」コトッ
セイバー「ぷりん!」パアァッ
切嗣「…」
セイバー「た、食べてもよろしいのですか!?」
切嗣「…」コクッ
切嗣「………」
セイバー「キリツグ…!」
切嗣「………」フルフル
セイバー「ッ…、何故!?」
切嗣「………」モニョモニョ
アイリ「ふんふん? ……そうね、確かにセイバーは危ないわね……」
セイバー「!?」
アイリ「聞いてセイバー。この世界にはね? 『女剣士と触手モンスターの法則』というのがあるの。その法則だと貴女は、キャスターとの相性が悪すぎるのよ」
アイリ「けれど巨獣・悪獣の類は、ボスが故に触手・淫獣に対して圧倒的な支配力を持つわ」
アイリ「…でもその触手・淫獣は……雑魚故に、卑猥であるが故に、エロスを求めた薄い本の魔力によって強化され、女性キャラクターに対して決定的な優位性を持つの」
セイバー「そ、そんな…そんなことが……」
アイリ「伝説や逸話が聖杯の奇跡によって『宝具』の器を得るように、青少年や中年男性達の溢れ出るエロスが『陵辱』という器を授かるのよ。…ニッポンは、特にそういうのが強いから」
セイバー「聖杯…まさかそれほどのものとは……」
アイリ「ちなみに私だと、“子持ち”と“人妻”の属性があるから『孕ませ』、『NTR』、『完堕ち』の被害に遭う可能性が大きいわね」
切嗣「……!!」ブンブンブン
アイリ「あ、セイバー。いまね、本を書いていたの」
セイバー「…読むのではなく、ですか?」
アイリ「えぇ…。私はホムンクルスで、色々な問題を抱えてる。正直に言うとそう、長くは生きられないわ」
セイバー「…!」
アイリ「だから、本をかくことにしたの。私が生きていた証を、私が遺せる限りのものを、残しておきたくて。…絵は得意じゃないから、文章でね」
セイバー「……いつか、貴女の書いた本をイリヤスフィールが読んだときは、きっと気に入ることでしょう。それだけの真心の込められた物であるのなら」
アイリ「どうかしら……あっ、セイバーも読んでみる?」
セイバー「いいのですか?」
アイリ「もちろん! 読者は多い方が嬉しいもの!」
切嗣「…! …!」ブンブンブン
セイバー「では、失礼して…」
ライダー『フフフ、まさかライダーともあろう余が、坊主ごときに乗りこなされるとはな』ズパンッズパンッズパンッ
黒髪の少年『ぼ、ぼくがっ…マスターなんだから…あたりま…え…んあぁッ!!』グチュッグチュッグチュッ
セイバー「───」
アイリ「………」ワクワクワクワク
切嗣「…! …!!」オロオロハクオロ
セイバー「……アイリスフィール?」
アイリ「なぁにセイバー」ワクワクワクワク
セイバー「(うっ…)」
アイリ「───」キラキラキラ
セイバー「──ざ、斬新な内容ですね」
セイバー「サークル?」
アイリ「そうよ! 切嗣と私が2人で立ち上げたの! サークル名は『おもろい夫婦と仲間たち』!!」
セイバー「……キリツグも?」チラッ
切嗣「!!?」
セイバー「………」
切嗣「………」ガタガタブルブル
アイリ「私が原作で、切嗣が作画なのよ?」
セイバー「えっ!?」
切嗣「!! !! …!!」ユサユサユサ
アイリ「えー? いいじゃない、こんなに上手く描けてるのだもの、もっと胸を張ったほうがいいわ」
切嗣「…!!」ブンブンブン
セイバー「マイヤまで!?」
アイリ「アシスタントさんよ」
セイバー「(…いまは戦時では?)」
切嗣「………」ガサゴソ
切嗣「…? ……!!」バンッ!
アイリ「えっ? 切嗣、どうかしたの?」オロ
切嗣「…! …! ──!!」ガサガサガサッ
アイリ「あ……舞弥さんが切嗣のおやつを買ってくるの忘れちゃったのね…」
舞弥「も、もうしわけありません、すぐに買ってきます…!」
アイリ「待って! もう夜で危ないし、切嗣のお気に入りのおやつは市外のスーパーじゃないと売ってないのよ! …このアインツベルンの森からじゃ、もう間に合わないわ…」
切嗣「…!」ズガーン
セイバー「おやつくらいで男が涙を流さないでください」
アイリ「切嗣、楽しみにしてたのよ。原稿が上がったら私と2人で食べたいって」ナデナデ
セイバー「アイリと?」
アイリ「そうよ。…なんて言ったかしら……たしか…そう、ぽ、ぽポぽ、ポポロクロイス…」
舞弥「ポッキーです」
アイリ「そうそう! 両端を互いに食べていくヤツ!」
セイバー「麺ではダメなのですか?」
アイリ「うーん、おやつっぽくはないかなぁ」
舞弥「あたりめなら在りますが」ガサガサ
アイリ「ちょっとおやじくさい…ってあるの!?」
舞弥「食べたくてつい…」モジモジ
アイリ「はいはい、言い子だから…」ナデナデ
アイリ「ダメじゃない、泣かせたりしたら」
切嗣「…」
切嗣「…すまない」
舞弥「マヨネーズと醤油と一味唐辛子を合わせた調味料をつけるとなおいいです」モグモグ
切嗣「………」ムシャムシャ
セイバー「ひかひどうにも喉が渇いてひますね」ハムハム
アイリ「ワインくらいあっひゃかひら?」ムグムグ
舞弥「ワインですと生臭さが出てしまいますから、オススメはしません」モグモグ
アイリ「あらまぁ……あらっ?」
切嗣「………」ムシャム…
セイバー「あいりしゅふぃーゆ…?」ハムハム
アイリ「……ネタの方から来てくれたみたいね」ゴックン
ウェイバー「お前! 敵陣にいきなり突っ込んでなに考えてんだよ!」
ライダー「うるさい」ピンッ
ウェイバー「きゃんっ!」
セイバー「──何用らライダー。…まひゃか、ランしゃーとの決着をつけるよりも前にわたひと戦おうといふのか?」ハムハムハムハム
ライダー「なぁに、ただ酒を呑みに来ただけだが……なにをハムハムしとるんだ貴様は」
セイバー「あたりめだ」
ライダー「……ほう?」
アイリ「まぁ切嗣ったら、食べたかったおやつが食べられて嬉しいのねっ」ナデナデ
ライダー「がっはっはっは! うむ美味い、確かに美味いぞこの食い物は!」バクバク
アイリ「済みませんねライダーさん、お使いになんか行かせたりしちゃって」
ライダー「なに、楽しく美味く酒を呑むためならあれほどは苦労にもはいらんて!」
ウェイバー「…ゴルディアスで駐車場に着くなよなお前……はぁ…」グビグビ
舞弥「……どうぞ」
ウェイバー「あ、すみません」トクトクトク
セイバー「それでライダー。本当にただ酒を呑みにきたわけでは在るまい。用件はなんなにょら」ハムハムコクコク
ライダー「んぁー? バカモノめ、独り酒が寂しかったからに決まっておろう」ガバガバグビグビ
掲載元:http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1322439786/l50
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