勇者「勇者のソシャゲ冒険記」
1: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:22:46.87 ID:mAB1UGKZ0
魔王「よくぞ……よくぞたった一人でここまで来たな勇者」
勇者「ようやく会えたな!魔王、決着を付けるぞ!!」
魔王「しかしだな勇者……ここで残念なお知らせがある」スッ
勇者「ん?」
魔王「私は今ゲームが忙しい。やるにしてもまた今度にしろ」トントン
勇者「……は?」
魔王「いや、だからゲームが忙しいと言っている。今丁度イベント中でな、せっかく来てもらってアレなんだがまぁ茶でも飲んで今日は帰って……」
パキャッ
魔王「」
勇者「異世界の技術を使い俗世にまみれた魔王め!お前がまだ小さい頃からの付き合いだから俺も今まで目ぇ瞑ってやっていたが今日という今日は許さん!!」
魔王「」
勇者「大体お前の親父も言ってたぞ、"ゲーム中毒の娘が最近相手してくれない"って。だから毎日こうやってワケわからん厳重なトラップ潜り抜けて顔出してんのに何なんだその態度は!!ってかお前の親父はどこ行ったんだ?ここ最近見てないけど……」
魔王「」ジワッ
勇者「ようやく会えたな!魔王、決着を付けるぞ!!」
魔王「しかしだな勇者……ここで残念なお知らせがある」スッ
勇者「ん?」
魔王「私は今ゲームが忙しい。やるにしてもまた今度にしろ」トントン
勇者「……は?」
魔王「いや、だからゲームが忙しいと言っている。今丁度イベント中でな、せっかく来てもらってアレなんだがまぁ茶でも飲んで今日は帰って……」
パキャッ
魔王「」
勇者「異世界の技術を使い俗世にまみれた魔王め!お前がまだ小さい頃からの付き合いだから俺も今まで目ぇ瞑ってやっていたが今日という今日は許さん!!」
魔王「」
勇者「大体お前の親父も言ってたぞ、"ゲーム中毒の娘が最近相手してくれない"って。だから毎日こうやってワケわからん厳重なトラップ潜り抜けて顔出してんのに何なんだその態度は!!ってかお前の親父はどこ行ったんだ?ここ最近見てないけど……」
魔王「」ジワッ
2: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:23:18.26 ID:mAB1UGKZ0
勇者「ったく、返事くらいしろ!そんなピコピコやってる暇があったらちゃんと王としての責務を果たしてだな……まったくこっちはこんなもんまで用意してきたってのに……」ボソッ
魔王「ピコピコじゃないもん……」
勇者「あ?」
魔王「勇者は分からないんだ……私が有り余る時間とお金をかけて育て上げてきたデータの価値なんて勇者には分からないんだ!!」バッ!!
勇者「お前何を!?」
魔王「勇者なんて"あそこ"へ飛んでっちゃえ!!"超異次元転移(カークン・ディドゥーイ)"!!」
勇者「え!?何そのちょっとカッコいい呪文!?何すr―――」
ズバァアアアアアアアア!!
魔王「ピコピコじゃないもん……」
勇者「あ?」
魔王「勇者は分からないんだ……私が有り余る時間とお金をかけて育て上げてきたデータの価値なんて勇者には分からないんだ!!」バッ!!
勇者「お前何を!?」
魔王「勇者なんて"あそこ"へ飛んでっちゃえ!!"超異次元転移(カークン・ディドゥーイ)"!!」
勇者「え!?何そのちょっとカッコいい呪文!?何すr―――」
ズバァアアアアアアアア!!
3: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:23:45.32 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
勇者「……うぅん……いてて。無茶苦茶やりやがるなアイツ」
勇者「ったく、今回はどこへ飛ばされた?前は空中都市まですっ飛ばされて竜の背中に直撃したが……」
「ハロー!見も知らない新規さん!!」
勇者「うわっ!?だ、誰だアンタ!?」
「こんにちはこんばんは、はじめましての方はよーく覚えろコンチクショウ!私の名前はソシャゲ神!」
勇者「そ……?」
ソシャゲ神「ソシャゲ神ですよ奥さん!!」
勇者「奥さんって誰だよ……」
―――
―
勇者「……うぅん……いてて。無茶苦茶やりやがるなアイツ」
勇者「ったく、今回はどこへ飛ばされた?前は空中都市まですっ飛ばされて竜の背中に直撃したが……」
「ハロー!見も知らない新規さん!!」
勇者「うわっ!?だ、誰だアンタ!?」
「こんにちはこんばんは、はじめましての方はよーく覚えろコンチクショウ!私の名前はソシャゲ神!」
勇者「そ……?」
ソシャゲ神「ソシャゲ神ですよ奥さん!!」
勇者「奥さんって誰だよ……」
4: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:24:24.32 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「ここにぶっ飛んできたって事はその身をもってソシャゲにどっぷり浸かる覚悟で来たって事でいいんですよね?まぁ物好きなことで」
勇者「ちょっ!?ちょっと待てよ!?俺何も聞かされてないぞ!?」
ソシャゲ神「はぁ!?聞いてない!?そんなワケないじゃないですかアンタ、だってここに来るには個人による登録と管理者による了承が必要になるんですよ?その過程飛ばしてくるなんてありえないですよ」
ソシャゲ神「ちょっと絶対神UN-Aに連絡取るんで待っててください。ピッポッパっと……」トゥルルルルルン
ソシャゲ神「あ、もしもし?UN-Aさん?実はですね、カクカクジカジカ……」
勇者「ったく、何なんだよ一体……」
ソシャゲ神「は?この人勇者?え、特例?ありですかいそんなの!?」
勇者「……」
ソシャゲ神「はーいはい、分かりましたよ。え?しばらくサポートで付き添え!?ふざけた事言ってんじゃないですよ!?こっちだって私生活がですね……え?レアなアイテム弾むって?ひゃっほい!」
勇者「……」
ソシャゲ神「ほいほい、それじゃあギルドの貸倉庫にお願いしますねヌッフッフ」ガチャ
ソシャゲ神「あ、お待たせしました。お察しの通り貴方この世界で生きていくことが決定づけられてますのでどうぞ頑張ってください」
勇者「話がまったく読めません!!」
勇者「ちょっ!?ちょっと待てよ!?俺何も聞かされてないぞ!?」
ソシャゲ神「はぁ!?聞いてない!?そんなワケないじゃないですかアンタ、だってここに来るには個人による登録と管理者による了承が必要になるんですよ?その過程飛ばしてくるなんてありえないですよ」
ソシャゲ神「ちょっと絶対神UN-Aに連絡取るんで待っててください。ピッポッパっと……」トゥルルルルルン
ソシャゲ神「あ、もしもし?UN-Aさん?実はですね、カクカクジカジカ……」
勇者「ったく、何なんだよ一体……」
ソシャゲ神「は?この人勇者?え、特例?ありですかいそんなの!?」
勇者「……」
ソシャゲ神「はーいはい、分かりましたよ。え?しばらくサポートで付き添え!?ふざけた事言ってんじゃないですよ!?こっちだって私生活がですね……え?レアなアイテム弾むって?ひゃっほい!」
勇者「……」
ソシャゲ神「ほいほい、それじゃあギルドの貸倉庫にお願いしますねヌッフッフ」ガチャ
ソシャゲ神「あ、お待たせしました。お察しの通り貴方この世界で生きていくことが決定づけられてますのでどうぞ頑張ってください」
勇者「話がまったく読めません!!」
5: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:25:03.65 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「あーあーうるせーなぁ営業スマイルも疲れるんだよまったく」
勇者「本性現しやがったな邪悪の化身め」
ソシャゲ神「まー初対面の女性に対して失礼な!ま、契約なんでザッと説明だけさせてもらいますかね」
ソシャゲ神「一応貴方はイレギュラーでこの空間に来てしまったという事ですが、ここはとあるゲーム大好きな異次元魔王の娘っ子が作り出した夢のようなゲーム世界となっています」
勇者(異次元魔王の娘っ子……まぁアイツだな。そういやちょっと前に面白いもの作ったって言ってたけどまぁこんな世界まで創り上げるとは……)
ソシャゲ神「今言った通り、この空間は"ゲームの世界"として成り立っています」
ソシャゲ神「仕事のストレス、人間関係の煩わしさ、日常生活での疲れ諸々……そんな現実の日々から解放される為に作られたのがそう!!このソシャゲワールド!!まーソシャゲっつーよりMMOって言った方がいいのかこれ」
ソシャゲ神「現実では非力だった少年は剛腕を持ち魔物を千切り投げ!!頭がゆるーい少女は頭脳明晰の大魔法使いとなり地を焦がし!!冴えないチビデブハゲのオッサンはモテモテになる!!そんな夢がかなう空間なのです!!」
勇者「チビでデブでハゲとか救いようがねぇな」
ソシャゲ神「おい、やめろ」
勇者「本性現しやがったな邪悪の化身め」
ソシャゲ神「まー初対面の女性に対して失礼な!ま、契約なんでザッと説明だけさせてもらいますかね」
ソシャゲ神「一応貴方はイレギュラーでこの空間に来てしまったという事ですが、ここはとあるゲーム大好きな異次元魔王の娘っ子が作り出した夢のようなゲーム世界となっています」
勇者(異次元魔王の娘っ子……まぁアイツだな。そういやちょっと前に面白いもの作ったって言ってたけどまぁこんな世界まで創り上げるとは……)
ソシャゲ神「今言った通り、この空間は"ゲームの世界"として成り立っています」
ソシャゲ神「仕事のストレス、人間関係の煩わしさ、日常生活での疲れ諸々……そんな現実の日々から解放される為に作られたのがそう!!このソシャゲワールド!!まーソシャゲっつーよりMMOって言った方がいいのかこれ」
ソシャゲ神「現実では非力だった少年は剛腕を持ち魔物を千切り投げ!!頭がゆるーい少女は頭脳明晰の大魔法使いとなり地を焦がし!!冴えないチビデブハゲのオッサンはモテモテになる!!そんな夢がかなう空間なのです!!」
勇者「チビでデブでハゲとか救いようがねぇな」
ソシャゲ神「おい、やめろ」
6: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:25:33.30 ID:mAB1UGKZ0
勇者「そういう説明とかどうでもいいから、ここから出る方法を教えろよ。聞いたところ仮想現実みたいだけど、五感はしっかりしてるし何よりアンタがゲームのキャラクターだとは思えん」
ソシャゲ神「察しがいいですね。まぁ仮想現実とは似て非なる物みたいです。私も勿論現実に居る人間ですし。そこらへん小難しい話は私専門外なので省きます、そういう世界だと思ってください」
勇者「神の癖に何も知らんのかい!」
ソシャゲ神「私は雇われの管理者なんですよ。現実では旅商人やってるんですけどね?運送代とか安くしてくれるっていうからこういうの任されただけで……」
勇者「副業かよ、世知辛いな」
ソシャゲ神「なんとでも言え!私だって常にこっちに入ってる訳じゃねぇんだよ!」
7: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:26:01.26 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「ともかく、本来なら正式な手順を踏んで元の場所に戻ることが出来るのですが貴方は少々特殊でしてね」
勇者「特殊?」
ソシャゲ神「ま、簡単に言っちゃえばロックが掛かっちゃってるんですよ。オンラインゲームで言うならログアウトが出来ない状態。よくあるでしょ、仮想現実に閉じ込められたーッ!って展開」
勇者「???」
ソシャゲ神「……貴方、ゲームとか漫画とかアニメとか全然興味無い人間?」
勇者「もうガキじゃねぇんだし当たり前だろ」
ソシャゲ神「カァーーーッ!!あれか!サブカルチャーに興味無い人間ってやつか!!相手の趣味とか否定して嫌われるタイプでしょアンタ!私そういう人大っ嫌い!」
勇者「しらねーよ!とりあえず話題を戻せ!」
ソシャゲ神「はいはい……んじゃあ掻い摘んで簡単に説明させてもらいますね」ブィーン
勇者「特殊?」
ソシャゲ神「ま、簡単に言っちゃえばロックが掛かっちゃってるんですよ。オンラインゲームで言うならログアウトが出来ない状態。よくあるでしょ、仮想現実に閉じ込められたーッ!って展開」
勇者「???」
ソシャゲ神「……貴方、ゲームとか漫画とかアニメとか全然興味無い人間?」
勇者「もうガキじゃねぇんだし当たり前だろ」
ソシャゲ神「カァーーーッ!!あれか!サブカルチャーに興味無い人間ってやつか!!相手の趣味とか否定して嫌われるタイプでしょアンタ!私そういう人大っ嫌い!」
勇者「しらねーよ!とりあえず話題を戻せ!」
ソシャゲ神「はいはい……んじゃあ掻い摘んで簡単に説明させてもらいますね」ブィーン
8: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:26:27.96 ID:mAB1UGKZ0
―他のプレイヤーと違い正規手順でのソシャゲワールドからの脱出は不可能―
勇者「……出る手段は勿論用意されてるんだろうなオイ」
ソシャゲ神「えっとですね、絶対神UN-Aの話によりますと……メインシナリオを全て攻略すればこの空間から出られるみたいですよ」
勇者「じゃあそのシナリオとやらにはやく挑ませてくれ。家の洗濯物干しっぱなしなんだ」
ソシャゲ神(そんなどうでもいい事を……)
ピコンッ!
勇者「ん?なんだこりゃ?」
ソシャゲ神「今貴方はメインシナリオに進む選択をしたのでコマンドが選ばれたんですよ」
勇者「何だか分からんがこの通りに進んでいけばいいんだな」
ソシャゲ神「イエス!!説明の手間が省けて助かります♪」
勇者「……出る手段は勿論用意されてるんだろうなオイ」
ソシャゲ神「えっとですね、絶対神UN-Aの話によりますと……メインシナリオを全て攻略すればこの空間から出られるみたいですよ」
勇者「じゃあそのシナリオとやらにはやく挑ませてくれ。家の洗濯物干しっぱなしなんだ」
ソシャゲ神(そんなどうでもいい事を……)
ピコンッ!
勇者「ん?なんだこりゃ?」
ソシャゲ神「今貴方はメインシナリオに進む選択をしたのでコマンドが選ばれたんですよ」
勇者「何だか分からんがこの通りに進んでいけばいいんだな」
ソシャゲ神「イエス!!説明の手間が省けて助かります♪」
9: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:28:06.02 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
~第一章 旅立ちの朝~
『勇者……起きなさい勇者』
『貴方はこれから魔王討伐に向かうのです』
『女手一つでしたが、貴方を立派な勇者に育て上げてきたつもりです』
『貴方の父、ヴォルデカは先代勇者として戦い、そして消息を絶ってしまいましたが……』
『どうか……貴方の旅路に幸運のあらん事を』
『傷ついたらいつでも帰って来ていいのよ』
『この部屋は、このままにしておくからね』
勇者「な に こ れ」
ソシャゲ神「プロローグですよプロローグ」
―――
―
~第一章 旅立ちの朝~
『勇者……起きなさい勇者』
『貴方はこれから魔王討伐に向かうのです』
『女手一つでしたが、貴方を立派な勇者に育て上げてきたつもりです』
『貴方の父、ヴォルデカは先代勇者として戦い、そして消息を絶ってしまいましたが……』
『どうか……貴方の旅路に幸運のあらん事を』
『傷ついたらいつでも帰って来ていいのよ』
『この部屋は、このままにしておくからね』
勇者「な に こ れ」
ソシャゲ神「プロローグですよプロローグ」
10: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:28:39.62 ID:mAB1UGKZ0
『それからね、お弁当は毎日作っておくから持って行くんだよ』
勇者「一々こんなの聞かなきゃいかんの?」
ソシャゲ神「まぁ大半はSKIPボタンで素っ飛ばせますので特に聞く気が無いならそれでいいかと」
ソシャゲ神「でも割と重要なことも言ってたりするので後で損したーなんて事になっても知りませんけどね。例えば今みたいにお弁当はそこそこ有用なアイテムになりますし」
勇者「はいはいお弁当ね……」
『それからね、ベッドの下にあったエロ本。貴方にはまだ早い気がするの』
勇者「不必要な情報だよなそれ!?」
『あとねたかし……』
勇者「た か し っ て 誰 ! ?」
勇者「一々こんなの聞かなきゃいかんの?」
ソシャゲ神「まぁ大半はSKIPボタンで素っ飛ばせますので特に聞く気が無いならそれでいいかと」
ソシャゲ神「でも割と重要なことも言ってたりするので後で損したーなんて事になっても知りませんけどね。例えば今みたいにお弁当はそこそこ有用なアイテムになりますし」
勇者「はいはいお弁当ね……」
『それからね、ベッドの下にあったエロ本。貴方にはまだ早い気がするの』
勇者「不必要な情報だよなそれ!?」
『あとねたかし……』
勇者「た か し っ て 誰 ! ?」
11: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:29:11.92 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
―こうして、新たなる勇者の冒険が始まった―
勇者「もう全部SKIPしてきた……」
ソシャゲ神「いやぁ、楽しいお母さんでしたね……」
勇者「どこが!?」
ソシャゲ神「さて、新たな旅路が始まった所ですし、チュートリアルが用意されています。再生しますか?」
勇者「口頭でいいからそういうの」
ソシャゲ神「もっとゲームを楽しもうとする気はないんですかい」
勇者「巻き込まれて"わーたのしー!"なんて言ってられるか!とりあえず何をすればいいんだ?」
―――
―
―こうして、新たなる勇者の冒険が始まった―
勇者「もう全部SKIPしてきた……」
ソシャゲ神「いやぁ、楽しいお母さんでしたね……」
勇者「どこが!?」
ソシャゲ神「さて、新たな旅路が始まった所ですし、チュートリアルが用意されています。再生しますか?」
勇者「口頭でいいからそういうの」
ソシャゲ神「もっとゲームを楽しもうとする気はないんですかい」
勇者「巻き込まれて"わーたのしー!"なんて言ってられるか!とりあえず何をすればいいんだ?」
12: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:31:04.43 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「その都度出てくる指示に従って動いていけばいいだけですよ。基本的に一本道ですし」
勇者「ん、これだな……」
―現れる魔物を倒し始まりの洞窟へ迎え!!―
勇者「よしっ、戦闘なら多少は腕に覚えがあるぞ」
勇者「見たところ見晴らしのいい草原だ。あんまり危険な魔物の気配もないし……」
ピキー!!
―スライムがあらわれた!!―
勇者「来たか!手持ちの装備で……装備……」
ソシャゲ神「あ、すみません。元の世界からこっちの空間へは金目の物とか持ってこられないんですよ。ゲーム仕様に無いリアルPK(プレイヤーキラー)とか出て来たらどうしようもないんで」
勇者「えぇ……」
ソシャゲ神「色々と大人の事情もありましてね?プレイヤー間でのアイテムのやり取りも出来ないので悪しからず。いやもう規制やらなんやらが厳しくて……」
ソシャゲ神「あとあんまり度が過ぎたマナー違反してると絶対神UN-Aからペナルティ・デス喰らうので気を付けてください」
勇者「デスペナルティじゃないのか……」
ソシャゲ神「最悪死を覚悟してください」
勇者「ともかく、素手で戦うしかないってか……まぁいい!!」
勇者「来いスライム!!装備を捨ててかかって来い!!」シュバッ
勇者「ん、これだな……」
―現れる魔物を倒し始まりの洞窟へ迎え!!―
勇者「よしっ、戦闘なら多少は腕に覚えがあるぞ」
勇者「見たところ見晴らしのいい草原だ。あんまり危険な魔物の気配もないし……」
ピキー!!
―スライムがあらわれた!!―
勇者「来たか!手持ちの装備で……装備……」
ソシャゲ神「あ、すみません。元の世界からこっちの空間へは金目の物とか持ってこられないんですよ。ゲーム仕様に無いリアルPK(プレイヤーキラー)とか出て来たらどうしようもないんで」
勇者「えぇ……」
ソシャゲ神「色々と大人の事情もありましてね?プレイヤー間でのアイテムのやり取りも出来ないので悪しからず。いやもう規制やらなんやらが厳しくて……」
ソシャゲ神「あとあんまり度が過ぎたマナー違反してると絶対神UN-Aからペナルティ・デス喰らうので気を付けてください」
勇者「デスペナルティじゃないのか……」
ソシャゲ神「最悪死を覚悟してください」
勇者「ともかく、素手で戦うしかないってか……まぁいい!!」
勇者「来いスライム!!装備を捨ててかかって来い!!」シュバッ
13: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:32:08.86 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
―敗北しました。復活まで04:59―
勇者「……」ボロッ
ソシャゲ神「まぁ装備無しで挑むのは無謀ですわ」
勇者「現実だと相手にならんのに……」グスッ
ソシャゲ神「そこは教訓だと思ってください。じゃあ復活時間までシナリオは進められないのでアイテム仕入れに行きましょうか」
勇者「負けたら死にはしないが街に戻される上にペナルティ受けるのな」
ソシャゲ神「こっちがホントのデスペナルティ」
―復活まで03:30―←これ
―――
―
―敗北しました。復活まで04:59―
勇者「……」ボロッ
ソシャゲ神「まぁ装備無しで挑むのは無謀ですわ」
勇者「現実だと相手にならんのに……」グスッ
ソシャゲ神「そこは教訓だと思ってください。じゃあ復活時間までシナリオは進められないのでアイテム仕入れに行きましょうか」
勇者「負けたら死にはしないが街に戻される上にペナルティ受けるのな」
ソシャゲ神「こっちがホントのデスペナルティ」
―復活まで03:30―←これ
14: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:32:51.34 ID:mAB1UGKZ0
勇者「ん?ちょっと待てよ。金目の物は持ってないって事はサイフも勿論……」
ソシャゲ神「はい、こちらの管理室預かりになってるハズですよ」
勇者「じゃあどうやって装備を整えるんだよ。買いたくても買えねぇじゃん」
ソシャゲ神「ヌッフッフ!そこはこのソシャゲの面白い所ですよ!!という訳で用意させてもらいました!!ジャジャーン!!」ドドン☆
―48時間限定!スタートダッシュガチャ!!(初回は必ずSSR出現!!)―
勇者「えっと……」
ソシャゲ神「ガチャガチャですよガチャガチャ!!よくあるでしょ、デパートの隅っことかファミレスの入り口なんかに!」
勇者「いや、そりゃあ分かるけど……一体どういうシステムなんだよ!?」
ソシャゲ神「あんまり深く考えるとハゲますよ。そういうもんだと思ってください」
勇者「はぁ……んで?これがなんだって?」
ソシャゲ神「はい、こちらの管理室預かりになってるハズですよ」
勇者「じゃあどうやって装備を整えるんだよ。買いたくても買えねぇじゃん」
ソシャゲ神「ヌッフッフ!そこはこのソシャゲの面白い所ですよ!!という訳で用意させてもらいました!!ジャジャーン!!」ドドン☆
―48時間限定!スタートダッシュガチャ!!(初回は必ずSSR出現!!)―
勇者「えっと……」
ソシャゲ神「ガチャガチャですよガチャガチャ!!よくあるでしょ、デパートの隅っことかファミレスの入り口なんかに!」
勇者「いや、そりゃあ分かるけど……一体どういうシステムなんだよ!?」
ソシャゲ神「あんまり深く考えるとハゲますよ。そういうもんだと思ってください」
勇者「はぁ……んで?これがなんだって?」
15: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:34:36.84 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「この空間内では現実の通貨は使えないのですが、ゲーム内通貨やチケットを消費してガチャガチャを引くことができます」
ソシャゲ神「基本的にゲーム内通貨はなーんの足しにもならねぇようなゴミ屑しか引けない或は買えないのですが」
勇者「それ以上いけない」
ソシャゲ神「役に立つアイテムなんかは全てガチャで管理しています」
勇者「あー、なんかニュースとかで見たことあるぞ。色々な問題起こしてるって……」
ソシャゲ神「そういう負の面ばかり見ていても始まりませんよ。もっと全体に目を向けなきゃ」
ソシャゲ神「ま、このゲームの目玉でもありますから。どうぞどうぞ、一回引いてみてくださいな。はい10連チケット」
勇者「なるほど、装備やら何やらはコイツで出るって訳か」
ソシャゲ神「運の要素が強いですからね。一喜一憂天国地獄、勝てばはしゃぎ負ければ発狂。ソシャゲジャンキー共を生産し続けるコイツは罪作りなシステムです♪」
勇者「ギャンブルそのものじゃねーか……よし!引くぞ!!」
ソシャゲ神「基本的にゲーム内通貨はなーんの足しにもならねぇようなゴミ屑しか引けない或は買えないのですが」
勇者「それ以上いけない」
ソシャゲ神「役に立つアイテムなんかは全てガチャで管理しています」
勇者「あー、なんかニュースとかで見たことあるぞ。色々な問題起こしてるって……」
ソシャゲ神「そういう負の面ばかり見ていても始まりませんよ。もっと全体に目を向けなきゃ」
ソシャゲ神「ま、このゲームの目玉でもありますから。どうぞどうぞ、一回引いてみてくださいな。はい10連チケット」
勇者「なるほど、装備やら何やらはコイツで出るって訳か」
ソシャゲ神「運の要素が強いですからね。一喜一憂天国地獄、勝てばはしゃぎ負ければ発狂。ソシャゲジャンキー共を生産し続けるコイツは罪作りなシステムです♪」
勇者「ギャンブルそのものじゃねーか……よし!引くぞ!!」
16: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:35:03.43 ID:mAB1UGKZ0
ガチャガチャ……ポロン!!
パシャアアアアアアア
勇者「……一々演出入るの?」
ソシャゲ神「UN-Aが心を込めて作ったエフェクトです。そんな冷めた目で見ないでください」
―R鉄の剣―
―R鉄の鎧―
―R鉄の兜―
―SSR大腕怒*―
―Nひのきの棒―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―SR賢者のマント―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
ソシャゲ神「うーん、まずまずですね」
勇者「コロボックル自己主張激しすぎない!?」
パシャアアアアアアア
勇者「……一々演出入るの?」
ソシャゲ神「UN-Aが心を込めて作ったエフェクトです。そんな冷めた目で見ないでください」
―R鉄の剣―
―R鉄の鎧―
―R鉄の兜―
―SSR大腕怒*―
―Nひのきの棒―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―SR賢者のマント―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
ソシャゲ神「うーん、まずまずですね」
勇者「コロボックル自己主張激しすぎない!?」
17: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:36:46.18 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「手に入れたアイテムはこうしてカードにして持ち歩くことができます」ポワン
勇者「おお!」
ソシャゲ神「で、編成画面で装備してステータスを上げる事が出来ます」
勇者「こんな感じか」キュピーン
ソシャゲ神「普段の見た目には反映されていませんが、戦闘に入れば装備した状態での戦いになります」
ソシャゲ神「一応設定で常に装備状態にすることも出来ますが……」
勇者「そんな事して何になるんだ?出し入れ自由なら常に付けておく必要も無いだろう」
ソシャゲ神「そこはまぁ……レア度の高いものを手に入れたら他の人に自慢したくなるじゃないですか。あれを見てくださいよ」
勇者「んー?」
勇者「おお!」
ソシャゲ神「で、編成画面で装備してステータスを上げる事が出来ます」
勇者「こんな感じか」キュピーン
ソシャゲ神「普段の見た目には反映されていませんが、戦闘に入れば装備した状態での戦いになります」
ソシャゲ神「一応設定で常に装備状態にすることも出来ますが……」
勇者「そんな事して何になるんだ?出し入れ自由なら常に付けておく必要も無いだろう」
ソシャゲ神「そこはまぁ……レア度の高いものを手に入れたら他の人に自慢したくなるじゃないですか。あれを見てくださいよ」
勇者「んー?」
18: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:37:12.07 ID:mAB1UGKZ0
ガチョンガチョンガチョン
「…………」ガチョンガチョン
「す、すげぇあんなの見せびらかしてどうしたいんだよ……」ヒソヒソ
「LR以上で固めてるぜ!どんだけ無駄に金つぎ込んだんだよアイツ……」ヒソヒソ
「あのアイテム地獄マラソンでしか手に入らないんだよな。どんだけ暇人なんだよ……」ヒソヒソ
「……我……最強……」ガチョンガチョン
ソシャゲ神「ま、一種のステータスの開示ですからね。周りから視線を集める効果は抜群ですから自己顕示欲が強い人にとってはいいんじゃないでしょうか」
勇者「めっちゃ冷たい目で見られてるようにしか見えんけど」
「…………」ガチョンガチョン
「す、すげぇあんなの見せびらかしてどうしたいんだよ……」ヒソヒソ
「LR以上で固めてるぜ!どんだけ無駄に金つぎ込んだんだよアイツ……」ヒソヒソ
「あのアイテム地獄マラソンでしか手に入らないんだよな。どんだけ暇人なんだよ……」ヒソヒソ
「……我……最強……」ガチョンガチョン
ソシャゲ神「ま、一種のステータスの開示ですからね。周りから視線を集める効果は抜群ですから自己顕示欲が強い人にとってはいいんじゃないでしょうか」
勇者「めっちゃ冷たい目で見られてるようにしか見えんけど」
19: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:37:55.85 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「それじゃあ再びレッツラゴー!!」
勇者「ああちょっと待てよ。だったらもっとガチャ引かせてくれよ、出来るんだろ?」
ソシャゲ神「ざーんねん、さっきのガチャは初回のみ無料の10連チケットお渡しするだけで以降は有料になります」
勇者「ひょっとしてアレか?課金ってやつ……」
ソシャゲ神「なーんだ知ってるじゃないですか。その通り、リアルマネーをポイントに変換してガチャを回す事が出来ます」
ソシャゲ神「一応色んな手段で手に入るレアチケットを使えば格は落ちますけどそれなりのガチャは引けますし、バランスは取れていると思いますけどね」
勇者「あんまりいい印象は受けないな。現実に持ち込めないんだろ?」
ソシャゲ神「形に残る物だけが価値があるとは言い切れませんよ。データに価値をつけて、それを承認して消費者は好きでお金を出すんですから」
ソシャゲ神「ま、私もリアルで商人やってる以上は形が残らないと気が済まないタチなんで、あんまり好きじゃないんですけどね」
勇者「管理側がぶっちゃけるなよ……」
勇者「ああちょっと待てよ。だったらもっとガチャ引かせてくれよ、出来るんだろ?」
ソシャゲ神「ざーんねん、さっきのガチャは初回のみ無料の10連チケットお渡しするだけで以降は有料になります」
勇者「ひょっとしてアレか?課金ってやつ……」
ソシャゲ神「なーんだ知ってるじゃないですか。その通り、リアルマネーをポイントに変換してガチャを回す事が出来ます」
ソシャゲ神「一応色んな手段で手に入るレアチケットを使えば格は落ちますけどそれなりのガチャは引けますし、バランスは取れていると思いますけどね」
勇者「あんまりいい印象は受けないな。現実に持ち込めないんだろ?」
ソシャゲ神「形に残る物だけが価値があるとは言い切れませんよ。データに価値をつけて、それを承認して消費者は好きでお金を出すんですから」
ソシャゲ神「ま、私もリアルで商人やってる以上は形が残らないと気が済まないタチなんで、あんまり好きじゃないんですけどね」
勇者「管理側がぶっちゃけるなよ……」
20: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:38:22.55 ID:mAB1UGKZ0
―現れる魔物を倒し始まりの洞窟へ迎え!!―
ピギー!!
勇者「……」
ドシュッ!
ピギー!!
勇者「……」
ドシュッ!
ピギー!!
勇者「……」
ドシュッ!
勇者「ねぇ」
ソシャゲ神「はい?」
勇者「何この流れ作業?楽しいの?」
ソシャゲ神「気にしない気にしない」
ピギー!!
勇者「……」
ドシュッ!
ピギー!!
勇者「……」
ドシュッ!
ピギー!!
勇者「……」
ドシュッ!
勇者「ねぇ」
ソシャゲ神「はい?」
勇者「何この流れ作業?楽しいの?」
ソシャゲ神「気にしない気にしない」
21: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:39:24.55 ID:mAB1UGKZ0
勇者「というか凄いな、このSSRってやつ。さっきボロッボロにやられたのに今じゃまったく苦労しない」
ソシャゲ神「基本的にレアリティに応じて強くなっていきますからね。まぁその武器も初期に実装されたものなんで最近のインフレ武器よりは役に立たないんですけどね」
勇者「製作サイドの裏事情が垣間見えるぞオイ……」
ソシャゲ神「さ、洞窟に着きましたよ!ボス戦間近です、心してかかるように!!」
勇者「よしッ!!」
―洞窟最深部―
『勇者よ、よく来た……我が名はブローブズァイド……この洞窟の支配者』
『貴様の国の姫はこの奥に閉じk』
勇者「SKIPしてドーン☆」
『あぐああああああああああああああああ!!』ズアアアア!!
ソシャゲ神「ハハッ、ホントもうゲーム楽しむ気ゼロで逆に清々しいな」
ソシャゲ神「基本的にレアリティに応じて強くなっていきますからね。まぁその武器も初期に実装されたものなんで最近のインフレ武器よりは役に立たないんですけどね」
勇者「製作サイドの裏事情が垣間見えるぞオイ……」
ソシャゲ神「さ、洞窟に着きましたよ!ボス戦間近です、心してかかるように!!」
勇者「よしッ!!」
―洞窟最深部―
『勇者よ、よく来た……我が名はブローブズァイド……この洞窟の支配者』
『貴様の国の姫はこの奥に閉じk』
勇者「SKIPしてドーン☆」
『あぐああああああああああああああああ!!』ズアアアア!!
ソシャゲ神「ハハッ、ホントもうゲーム楽しむ気ゼロで逆に清々しいな」
22: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:43:25.38 ID:mAB1UGKZ0
勇者「で、姫がなんだって?」
ソシャゲ神「ほーらSKIPしまくってるからそういう事聞き逃すー」
勇者「ほら、なんか振り返り機能ってのもあるみたいだし説明頼むわ」
ソシャゲ神「自分で読めよったく……えっと、要約すると始まりの洞窟にはお姫様が捕らわれていたので新米プレイヤーはそれを助けるためにここに来たって感じですね」
勇者「何だか面白味も無いありがちな展開だな」
ソシャゲ神「言うな!!」
勇者「で、その姫とやらはどこに……」
「勇者さまー」トテトテ
勇者「お、アレか……」
勇者「……」
ソシャゲ神「?どうしました?」
勇者「いや……」
ソシャゲ神「ほーらSKIPしまくってるからそういう事聞き逃すー」
勇者「ほら、なんか振り返り機能ってのもあるみたいだし説明頼むわ」
ソシャゲ神「自分で読めよったく……えっと、要約すると始まりの洞窟にはお姫様が捕らわれていたので新米プレイヤーはそれを助けるためにここに来たって感じですね」
勇者「何だか面白味も無いありがちな展開だな」
ソシャゲ神「言うな!!」
勇者「で、その姫とやらはどこに……」
「勇者さまー」トテトテ
勇者「お、アレか……」
勇者「……」
ソシャゲ神「?どうしました?」
勇者「いや……」
23: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:44:13.12 ID:mAB1UGKZ0
姫「逢いたかったぞ、勇者さま」ダキッ
勇者「……」
~第一章 完~
ソシャゲ神「と、こんな感じでイベントをこなしていきながら最終ステージまで進んで行きましょうって話なんですが……ホントにどうしたんですか?」
勇者「おい」
勇者「なにしてんだ魔王」グイグイ
姫「何を言っているんだ勇者さま。こんな可愛いお姫様が魔王な訳がなかろう」ギュー
勇者「おいソシャゲ神!!コイツはお前の雇い主じゃねぇのか!?」
ソシャゲ神「自分をモデルにキャラクターでも作ったんじゃないっすかねー」ミミホジー
勇者(なんか腹立つなぁ)
姫「では勇者さま、助けてもらった礼がしたい。このまま我が城へ向かおうぞ」
勇者「……」
~第一章 完~
ソシャゲ神「と、こんな感じでイベントをこなしていきながら最終ステージまで進んで行きましょうって話なんですが……ホントにどうしたんですか?」
勇者「おい」
勇者「なにしてんだ魔王」グイグイ
姫「何を言っているんだ勇者さま。こんな可愛いお姫様が魔王な訳がなかろう」ギュー
勇者「おいソシャゲ神!!コイツはお前の雇い主じゃねぇのか!?」
ソシャゲ神「自分をモデルにキャラクターでも作ったんじゃないっすかねー」ミミホジー
勇者(なんか腹立つなぁ)
姫「では勇者さま、助けてもらった礼がしたい。このまま我が城へ向かおうぞ」
24: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:45:06.11 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
「「「勇者様、バンザーイ!!」」」
「「「姫様、バンザーイ!!」」」
姫「やぁやぁ皆のもの、称えよ称えよ」
勇者「……」
ソシャゲ神(あるぇ?こんなイベントあったっけな……)
姫「どっこいしょ。では勇者さまよ、よくぞ私を救いだしてくれた。まずは礼を言うぞ」
勇者「おい、SKIPが出来ないぞ」
ソシャゲ神「なんかNot skip moveとかいう害悪な文字が表示されてますねぇ……」
―――
―
「「「勇者様、バンザーイ!!」」」
「「「姫様、バンザーイ!!」」」
姫「やぁやぁ皆のもの、称えよ称えよ」
勇者「……」
ソシャゲ神(あるぇ?こんなイベントあったっけな……)
姫「どっこいしょ。では勇者さまよ、よくぞ私を救いだしてくれた。まずは礼を言うぞ」
勇者「おい、SKIPが出来ないぞ」
ソシャゲ神「なんかNot skip moveとかいう害悪な文字が表示されてますねぇ……」
25: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:45:35.72 ID:mAB1UGKZ0
姫「勇者さま、今回の報酬として勇者さまだけに特別な品を渡そうと思う。受け取ってくれ」
ソシャゲ神「あー、なんか流れは違う気もしますがこんなのもありましたね」
勇者「なに?」
ソシャゲ神「これもスタートダッシュの一種で、最初のシナリオをクリアする事で装備を一式貰えるんですよ」
ソシャゲ神「一応しばらくメインで使っていけるレベルの物が貰えますので。まぁガチャ運に恵まれなかった補完みたいなもんですけど」
勇者「大したものは貰えないって訳か」
ソシャゲ神「ま、初心者向けに配る物ですからね。そこらへんは割り切って……」
☆特別報酬☆
―所持金+1000万G―
―EX聖剣マリーフィア―
―EX魔剣ガル・ヴォーグ―
―魔石+1000―
―宝玉+5000―
―強化素材+20000―
―レアガチャチケット+2000―
―LR以上確定ガチャチケット+5―
ソシャゲ神「フォオオオおおおお!?」ガタッ
勇者「どうした突然!?」
ソシャゲ神「あー、なんか流れは違う気もしますがこんなのもありましたね」
勇者「なに?」
ソシャゲ神「これもスタートダッシュの一種で、最初のシナリオをクリアする事で装備を一式貰えるんですよ」
ソシャゲ神「一応しばらくメインで使っていけるレベルの物が貰えますので。まぁガチャ運に恵まれなかった補完みたいなもんですけど」
勇者「大したものは貰えないって訳か」
ソシャゲ神「ま、初心者向けに配る物ですからね。そこらへんは割り切って……」
☆特別報酬☆
―所持金+1000万G―
―EX聖剣マリーフィア―
―EX魔剣ガル・ヴォーグ―
―魔石+1000―
―宝玉+5000―
―強化素材+20000―
―レアガチャチケット+2000―
―LR以上確定ガチャチケット+5―
ソシャゲ神「フォオオオおおおお!?」ガタッ
勇者「どうした突然!?」
26: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:46:28.82 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「ちょっ!?マジかコレ!?マジか!?スタートダッシュってレベルじゃねぇよ!?本気で言ってんのか!?これ素で手に入れようと思ったらおいくら万……いや、時間的な労力も考えると数百万だぞ!?」
勇者「えぇ……」
姫「我が宝物庫に眠りし至宝だ、受け取ってくれ」
ソシャゲ神「いよっしゃあああああ!!貰えもらえ!!これでレベル上げて基礎値何とかすりゃあもうすぐにこのゲームの天下取れるぞオイ!?」
勇者「そんな気ねぇよ!!んでも、貰えるって言うなら貰っとくか。じゃあ早速……」スッ
姫「まあ待て、もう一つ一緒に受け取ってほしい報酬がある」
勇者「なんだ?別にこれ以上高価なもん貰っても俺には価値が分からんぞ」
姫「そう……」
姫「私を貰ってくれ。そして城で永遠に暮らそう」
勇者「あ、じゃあいりません」
ソシャゲ神「ふあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」バンバンバン!!
勇者「えぇ……」
姫「我が宝物庫に眠りし至宝だ、受け取ってくれ」
ソシャゲ神「いよっしゃあああああ!!貰えもらえ!!これでレベル上げて基礎値何とかすりゃあもうすぐにこのゲームの天下取れるぞオイ!?」
勇者「そんな気ねぇよ!!んでも、貰えるって言うなら貰っとくか。じゃあ早速……」スッ
姫「まあ待て、もう一つ一緒に受け取ってほしい報酬がある」
勇者「なんだ?別にこれ以上高価なもん貰っても俺には価値が分からんぞ」
姫「そう……」
姫「私を貰ってくれ。そして城で永遠に暮らそう」
勇者「あ、じゃあいりません」
ソシャゲ神「ふあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」バンバンバン!!
27: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:47:20.66 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「お前何言っちゃってんの!?馬鹿なの!?死ぬの!?目先の物の価値が見えてないの!?」
勇者「アンタほんと煩いな」
姫「勇者さま、何故拒む。こんな12歳のピチピチぷりちーな美少女を揉むなり挿れるなり好きにできるんだぞ」
勇者「犯罪です」
姫「更にこのお城や城下町まで付いてくるー☆」
ソシャゲ神「ぐおおおおおおおおおお!!デカい……デカすぎる!!付加価値が大きすぎる!!コイツぁ貰わなきゃ損だ!!」
勇者「じゃあ聞くが、俺がもし貰う選択をしたとしてだ、本当にここに永遠にいなきゃいけなくなるのか?」
姫「うむ」コクリ
ソシャゲ神「ンなもん出たけりゃテキトーこいてさっさとメインクエストクリアすりゃあいい話ですよ。その後アカウントごと他の誰かに譲渡すりゃいいんですよ。この手のゲームなら数百万くらいポンと出す馬鹿なユーザーも居るんですからHAHAHA☆」
勇者(いくらゲームっつっても人の心を弄ぶのはちょっと気が引けるな……)
姫「あ、ちょっと失礼」トテトテ
勇者(しかもまぁ見た目がアイツそっくりだとなると……な)
勇者「アンタほんと煩いな」
姫「勇者さま、何故拒む。こんな12歳のピチピチぷりちーな美少女を揉むなり挿れるなり好きにできるんだぞ」
勇者「犯罪です」
姫「更にこのお城や城下町まで付いてくるー☆」
ソシャゲ神「ぐおおおおおおおおおお!!デカい……デカすぎる!!付加価値が大きすぎる!!コイツぁ貰わなきゃ損だ!!」
勇者「じゃあ聞くが、俺がもし貰う選択をしたとしてだ、本当にここに永遠にいなきゃいけなくなるのか?」
姫「うむ」コクリ
ソシャゲ神「ンなもん出たけりゃテキトーこいてさっさとメインクエストクリアすりゃあいい話ですよ。その後アカウントごと他の誰かに譲渡すりゃいいんですよ。この手のゲームなら数百万くらいポンと出す馬鹿なユーザーも居るんですからHAHAHA☆」
勇者(いくらゲームっつっても人の心を弄ぶのはちょっと気が引けるな……)
姫「あ、ちょっと失礼」トテトテ
勇者(しかもまぁ見た目がアイツそっくりだとなると……な)
28: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:48:10.62 ID:mAB1UGKZ0
トゥルルルルルン
ソシャゲ神「おっと、電話だ。あ、もしもしUN-Aさん?はぁ、そうですか。え゛!?マジで!?えっとまぁ……伝えておきます」ピッ
勇者「どうした?」
ソシャゲ神「えっとですね。そのアイテムを手に取った瞬間から貴方は死ぬまでこの城から出られなくなるとのお達しが」
勇者「」
ソシャゲ神「うけとれ!うけとれ!安定の将来が確約されてんだぞ!」
姫「すまない、戻ったぞ」トテトテ
姫「さぁ、我が愛を受け取るといい」ズイッ
勇者「お前今電話しに裏に引っ込んだだけだろ?えぇ!?」グイグイ
姫「しゃあ?はんのほとかわかはんにゃあ?(さぁ?なんのことかわからんなぁ?)」
ソシャゲ神「おっと、電話だ。あ、もしもしUN-Aさん?はぁ、そうですか。え゛!?マジで!?えっとまぁ……伝えておきます」ピッ
勇者「どうした?」
ソシャゲ神「えっとですね。そのアイテムを手に取った瞬間から貴方は死ぬまでこの城から出られなくなるとのお達しが」
勇者「」
ソシャゲ神「うけとれ!うけとれ!安定の将来が確約されてんだぞ!」
姫「すまない、戻ったぞ」トテトテ
姫「さぁ、我が愛を受け取るといい」ズイッ
勇者「お前今電話しに裏に引っ込んだだけだろ?えぇ!?」グイグイ
姫「しゃあ?はんのほとかわかはんにゃあ?(さぁ?なんのことかわからんなぁ?)」
29: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:48:36.72 ID:mAB1UGKZ0
姫「ではこうしよう、二択だ」
姫「1、私とこの夢のようなソシャゲワールドで添い遂げる」
勇者「却下だ」
姫「2、今ここにあるレアなアイテムの数々をこのガチャにぶち込み怠いだけの旅を続けるか」ドンッ☆
勇者「はぁ?」
姫「私のものにならないというのなら、お前は正攻法でメインシナリオをクリアするしかないのだ勇者よ」
勇者「もう俺の呼び方からして正体隠す気無くなったなオイ」
姫「だが私も鬼じゃあない。お前にチャンスをくれてやろう」
姫「1、私とこの夢のようなソシャゲワールドで添い遂げる」
勇者「却下だ」
姫「2、今ここにあるレアなアイテムの数々をこのガチャにぶち込み怠いだけの旅を続けるか」ドンッ☆
勇者「はぁ?」
姫「私のものにならないというのなら、お前は正攻法でメインシナリオをクリアするしかないのだ勇者よ」
勇者「もう俺の呼び方からして正体隠す気無くなったなオイ」
姫「だが私も鬼じゃあない。お前にチャンスをくれてやろう」
30: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:49:15.29 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「こ、このガチャはまさか……!!」
勇者「知っているのかソシャゲ神!?」
ソシャゲ神「いえ、ぜーんぜん知りませーん♪」
勇者「お前もう黙っててくれる?」
姫「コイツは私特性の特別なガチャだ。今持ちうるすべてのアイテムを注ぎ込んで回す事の出来る特別なガチャだ」
姫「特別なガチャであるがゆえに、とても貴重なものも出る事もある特別なガチャだ」
勇者(語彙力ねぇなぁ……)
姫「今回は一蓮托生という事で私の掲示したアイテムをタダでぶち込んでやろう」
勇者「それはいいけどなんでその二択なんだよ。まぁ選ぶのは簡単だけど」
姫(フフフ、勇者よ。この数々の高価なレアアイテムと引き換えに不毛な冒険を続けるか……否、私ならそんなことはしない)
姫(この美少女である私と財宝の山を目の前にしてそう易々と投げ捨てるような真似は……)
ガチャン
―R鉄の剣―
勇者「あ、さっきのと同じのが出た」
姫「何 こ の ク ソ ガ チ ャ あ あ あ あ あ あ ! ?」ガンガンガン!!
勇者「お前が用意したんだろ!?ガチャを殴るなよ!?」
勇者「知っているのかソシャゲ神!?」
ソシャゲ神「いえ、ぜーんぜん知りませーん♪」
勇者「お前もう黙っててくれる?」
姫「コイツは私特性の特別なガチャだ。今持ちうるすべてのアイテムを注ぎ込んで回す事の出来る特別なガチャだ」
姫「特別なガチャであるがゆえに、とても貴重なものも出る事もある特別なガチャだ」
勇者(語彙力ねぇなぁ……)
姫「今回は一蓮托生という事で私の掲示したアイテムをタダでぶち込んでやろう」
勇者「それはいいけどなんでその二択なんだよ。まぁ選ぶのは簡単だけど」
姫(フフフ、勇者よ。この数々の高価なレアアイテムと引き換えに不毛な冒険を続けるか……否、私ならそんなことはしない)
姫(この美少女である私と財宝の山を目の前にしてそう易々と投げ捨てるような真似は……)
ガチャン
―R鉄の剣―
勇者「あ、さっきのと同じのが出た」
姫「何 こ の ク ソ ガ チ ャ あ あ あ あ あ あ ! ?」ガンガンガン!!
勇者「お前が用意したんだろ!?ガチャを殴るなよ!?」
31: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:49:57.74 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「数百万が一瞬にして一桁の価値も無いようなゴミに……あうあうあうあわわわ……」ガクガクガク
姫「ゆーしゃがわたしをむししてガチャひいた……わたしのかちはてつのけんとどうとうなんだ……」ガクガクガク
勇者「いや、所詮データだろ」
ソシャゲ神(言い切ったーーーーーー!!)
姫「……」ズーン
勇者「さ、旅をつづけるぞ」
ソシャゲ神(冷めてるなぁこの人……)
姫「ゆーしゃがわたしをむししてガチャひいた……わたしのかちはてつのけんとどうとうなんだ……」ガクガクガク
勇者「いや、所詮データだろ」
ソシャゲ神(言い切ったーーーーーー!!)
姫「……」ズーン
勇者「さ、旅をつづけるぞ」
ソシャゲ神(冷めてるなぁこの人……)
32: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:50:24.02 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
勇者「おいソシャゲ神、あと一つ聞いておきたいんだけど」
ソシャゲ神「はいはいなんでしょう、人生棒に振るタイプのすけこまし勇者さん」
勇者「言いたい放題だな……それはいいとして」
勇者「基本的に俺は無料のガチャしか出来ないって認識でいいんだな?元々こんなくだらないものに金を出すつもりもないけど、そもそもこっちに居たら課金が出来ないんだろ?」
ソシャゲ神「貴方はちょっと特例なのでこちらも変わった処置をさせてもらいます」
勇者「なんだ?」
ソシャゲ神「"この世界で手に入れた財産"を変換する事で特別に課金ガチャに手を出してもいいとUN-Aさんが許可を出しています」
ソシャゲ神「価値自体は私の匙加減で決まりますが、まぁ大体物価は外と同じだと思ってくれても大丈夫ですよ。あ、バランスを考慮してガチャから出るアイテムは換金しませんからね」
勇者「例えば……よっと。この石ころ一つでも価値が生まれるって事か?」
ソシャゲ神「その通りです。とはいえその石に価値を見出せるかどうかは神のみぞ知るって話ですが」
勇者「神はオメーだよ」
ソシャゲ神「だから言ってんだろ」
―――
―
勇者「おいソシャゲ神、あと一つ聞いておきたいんだけど」
ソシャゲ神「はいはいなんでしょう、人生棒に振るタイプのすけこまし勇者さん」
勇者「言いたい放題だな……それはいいとして」
勇者「基本的に俺は無料のガチャしか出来ないって認識でいいんだな?元々こんなくだらないものに金を出すつもりもないけど、そもそもこっちに居たら課金が出来ないんだろ?」
ソシャゲ神「貴方はちょっと特例なのでこちらも変わった処置をさせてもらいます」
勇者「なんだ?」
ソシャゲ神「"この世界で手に入れた財産"を変換する事で特別に課金ガチャに手を出してもいいとUN-Aさんが許可を出しています」
ソシャゲ神「価値自体は私の匙加減で決まりますが、まぁ大体物価は外と同じだと思ってくれても大丈夫ですよ。あ、バランスを考慮してガチャから出るアイテムは換金しませんからね」
勇者「例えば……よっと。この石ころ一つでも価値が生まれるって事か?」
ソシャゲ神「その通りです。とはいえその石に価値を見出せるかどうかは神のみぞ知るって話ですが」
勇者「神はオメーだよ」
ソシャゲ神「だから言ってんだろ」
33: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:50:56.47 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「そうだ、今のウチに装備の強化なんかしておいてもいいんじゃないでしょうか」
勇者「おお、そんな事も出来るのか」
ソシャゲ神「はい!手持ちのいらなくなった装備ありますよね?」
勇者「"鉄の剣"二本とよくわからん"ひのきの棒"だな」
ソシャゲ神「ゲーム内通貨を利用してそれらを消費して武器の強化をすることができます。手始めにさっき取ったSSRでも強化しておきましょうか」
勇者「コイツだな……よし!」
ソシャゲ神「一応言っておきますけど、誤ってレアリティ高いのを素材として使わないでくださいね」
―R以上の装備が含まれています。強化素材として使用してもよろしいですか?―
勇者「そんなミスは流石にしないよ……YESっと……」
―レベルアップ!!―
ソシャゲ神「これで完了です。と、こんな感じで装備を強くしていけば旅もグッと楽になっていきますよ!」
勇者(やっぱり何が楽しいのかがわからん……)
勇者「おお、そんな事も出来るのか」
ソシャゲ神「はい!手持ちのいらなくなった装備ありますよね?」
勇者「"鉄の剣"二本とよくわからん"ひのきの棒"だな」
ソシャゲ神「ゲーム内通貨を利用してそれらを消費して武器の強化をすることができます。手始めにさっき取ったSSRでも強化しておきましょうか」
勇者「コイツだな……よし!」
ソシャゲ神「一応言っておきますけど、誤ってレアリティ高いのを素材として使わないでくださいね」
―R以上の装備が含まれています。強化素材として使用してもよろしいですか?―
勇者「そんなミスは流石にしないよ……YESっと……」
―レベルアップ!!―
ソシャゲ神「これで完了です。と、こんな感じで装備を強くしていけば旅もグッと楽になっていきますよ!」
勇者(やっぱり何が楽しいのかがわからん……)
34: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:51:24.33 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
勇者「さて、次のシナリオも出ているみたいだしとっとと行くか」
ソシャゲ神「アーッという間に第五章!そろそろ慣れ始めた頃じゃないですか?」
~第五章 深淵の先にあるもの~
『かつて、このt』
勇者「SKIPで」
『(´・ω・`)』
ソシャゲ神(心なしかNPCが悲しそうにしているように見える……)
―――
―
勇者「さて、次のシナリオも出ているみたいだしとっとと行くか」
ソシャゲ神「アーッという間に第五章!そろそろ慣れ始めた頃じゃないですか?」
~第五章 深淵の先にあるもの~
『かつて、このt』
勇者「SKIPで」
『(´・ω・`)』
ソシャゲ神(心なしかNPCが悲しそうにしているように見える……)
35: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:51:52.59 ID:mAB1UGKZ0
ザシュッ
グギャー
ザシュッ
グギャー
勇者「まーた魔物狩りかよ。もう飽きたぞ」
ソシャゲ神「これが基本スタンスですからね。耐えてください」
勇者「だけどまぁ、このSSRがあればしばらくは大丈夫なんだろ?」
ソシャゲ神「その武器の種類は"槌"で属性が"火"なので耐性を持っている相手にはちょっと苦戦するかもしれないですけどまぁ序盤はゴリ押し出来るから大丈夫なんじゃないでしょうか」
―ダンジョン最深部―
『私の名はソールマs』
勇者「SKIP」ザシュッ
『(´;ω;`)ウッ』
勇者「なんどこのやり取り繰り返すんだよ。ってかコイツダンジョンの前で話してたやつだ!!何でコイツこんな所で戦ってんだ!?」
ソシャゲ神「だからシナリオ素っ飛ばしまくるからこういう訳の分からんことになるんだっての」
グギャー
ザシュッ
グギャー
勇者「まーた魔物狩りかよ。もう飽きたぞ」
ソシャゲ神「これが基本スタンスですからね。耐えてください」
勇者「だけどまぁ、このSSRがあればしばらくは大丈夫なんだろ?」
ソシャゲ神「その武器の種類は"槌"で属性が"火"なので耐性を持っている相手にはちょっと苦戦するかもしれないですけどまぁ序盤はゴリ押し出来るから大丈夫なんじゃないでしょうか」
―ダンジョン最深部―
『私の名はソールマs』
勇者「SKIP」ザシュッ
『(´;ω;`)ウッ』
勇者「なんどこのやり取り繰り返すんだよ。ってかコイツダンジョンの前で話してたやつだ!!何でコイツこんな所で戦ってんだ!?」
ソシャゲ神「だからシナリオ素っ飛ばしまくるからこういう訳の分からんことになるんだっての」
36: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:52:18.55 ID:mAB1UGKZ0
『私はまだ負けぬ!!何度だって蘇る!!』ズアァァ!!
勇者「うお、復活した」
ソシャゲ神「スキル持ちの敵も現れ始めましたね。コイツの場合は一度だけ復活するというものです」
勇者「なんど来たって同じだ。コイツでぶっ飛ばしてやるぜ!!」
『こい!!たかしよ!!貴様のそのプライドをへし折ってやるわ!!』
勇者「俺 登 録 名 た か し に な っ て る の ! ?」
勇者「うお、復活した」
ソシャゲ神「スキル持ちの敵も現れ始めましたね。コイツの場合は一度だけ復活するというものです」
勇者「なんど来たって同じだ。コイツでぶっ飛ばしてやるぜ!!」
『こい!!たかしよ!!貴様のそのプライドをへし折ってやるわ!!』
勇者「俺 登 録 名 た か し に な っ て る の ! ?」
37: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:52:44.97 ID:mAB1UGKZ0
ピピー
ソシャゲ神「あれ?」
勇者「なんだ!?今決着付けようとしてたところなのに」
―レンタル武器の使用期間が過ぎました。対象の武器は消滅します―
勇者「は?」
ボフン
勇者「……」
ソシャゲ神「……」
勇者「……おれのSSRどこいったの?」
ソシャゲ神「……さ、さぁ?」
『死ねぇいたかしィィ!!』ドガアアアア!!
ソシャゲ神「あれ?」
勇者「なんだ!?今決着付けようとしてたところなのに」
―レンタル武器の使用期間が過ぎました。対象の武器は消滅します―
勇者「は?」
ボフン
勇者「……」
ソシャゲ神「……」
勇者「……おれのSSRどこいったの?」
ソシャゲ神「……さ、さぁ?」
『死ねぇいたかしィィ!!』ドガアアアア!!
38: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:53:27.17 ID:mAB1UGKZ0
―敗北しました。復活まで4:59―
勇者「レンタルって何!?ねぇ!?」
ソシャゲ神「あー、私も見落としてました……」
ソシャゲ神「簡単に説明します!ガチャ産やゲーム内通貨で手に入れられる武器でもレンタルという属性を持ったものが存在します!!」
ソシャゲ神「一定回数使用するかあるいは一定時間が過ぎるとレンタルは返却されて手元から消えてしまうのです!!」
ソシャゲ神「レンタル属性の印はこれです!!」
勇者「レンタルって何!?ねぇ!?」
ソシャゲ神「あー、私も見落としてました……」
ソシャゲ神「簡単に説明します!ガチャ産やゲーム内通貨で手に入れられる武器でもレンタルという属性を持ったものが存在します!!」
ソシャゲ神「一定回数使用するかあるいは一定時間が過ぎるとレンタルは返却されて手元から消えてしまうのです!!」
ソシャゲ神「レンタル属性の印はこれです!!」
39: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:53:53.63 ID:mAB1UGKZ0
―R鉄の剣―
―R鉄の鎧―
―R鉄の兜―
―SSR大腕怒*―
―Nひのきの棒―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―SR賢者のマント―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―SSR大腕怒*―
*←コレ
勇者「確かに気になってたよ!?なんか付いてるなーとは思ったよ!?だからって後出しじゃんけん的に言うなよそういう事!?」
ソシャゲ神「マニュアル読まねぇで私にまかせっきりにしてるアンタも同罪だよ!?」
―R鉄の鎧―
―R鉄の兜―
―SSR大腕怒*―
―Nひのきの棒―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―SR賢者のマント―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―SSR大腕怒*―
*←コレ
勇者「確かに気になってたよ!?なんか付いてるなーとは思ったよ!?だからって後出しじゃんけん的に言うなよそういう事!?」
ソシャゲ神「マニュアル読まねぇで私にまかせっきりにしてるアンタも同罪だよ!?」
40: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:54:29.94 ID:mAB1UGKZ0
勇者「ってかどうすんだよ……他の武器も強化に使っちまって手持ちに何もないぞ。ってか素材返せよ」
ソシャゲ神「レンタルで強化に使ったものは次回同じものをレンタルした時に引き継がれるから無理ですよ。まぁ今はレベルも上がってますし前の章に戻って稼いで無料ガチャ引くのが確実ですが……」
勇者「えーダリーよー」
ソシャゲ神「ハァ……分かりましたよ、まぁ半分私のせいでもありますから……はい、詫びチケ3枚。これでガチャ引いてください」
勇者「はいはい」ガチャン
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
勇者「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」ガンガンガン!!
ソシャゲ神「落ち着け!!私が悪かった!!もう3枚あげるから!!だからガチャ叩かないで!!」
ソシャゲ神「レンタルで強化に使ったものは次回同じものをレンタルした時に引き継がれるから無理ですよ。まぁ今はレベルも上がってますし前の章に戻って稼いで無料ガチャ引くのが確実ですが……」
勇者「えーダリーよー」
ソシャゲ神「ハァ……分かりましたよ、まぁ半分私のせいでもありますから……はい、詫びチケ3枚。これでガチャ引いてください」
勇者「はいはい」ガチャン
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
―Nコロボックル―
勇者「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」ガンガンガン!!
ソシャゲ神「落ち着け!!私が悪かった!!もう3枚あげるから!!だからガチャ叩かないで!!」
41: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:54:58.22 ID:mAB1UGKZ0
―Nひのきの棒―
―Nコロボックル―
―Nこんぼう―
勇者「まぁ武器は二つ出たし、これで地道に頑張るしかないか……」
ソシャゲ神(なんか申し訳ねぇ!!)
―Nコロボックル―
―Nこんぼう―
勇者「まぁ武器は二つ出たし、これで地道に頑張るしかないか……」
ソシャゲ神(なんか申し訳ねぇ!!)
42: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:55:26.72 ID:mAB1UGKZ0
―ダンジョン最深部―
『また現れたか……懲りない奴め』
勇者「負けてから来ると台詞変わるんだな」
ソシャゲ神「細かい所に気遣いが出来るのがゲームを長持ちさせる秘訣ですよ」
『さぁこい!たk』
勇者「もうワザワザSKIP宣言しなくていいよな?」
ソシャゲ神「はいどうぞ」
『(´;ω;`)』
『また現れたか……懲りない奴め』
勇者「負けてから来ると台詞変わるんだな」
ソシャゲ神「細かい所に気遣いが出来るのがゲームを長持ちさせる秘訣ですよ」
『さぁこい!たk』
勇者「もうワザワザSKIP宣言しなくていいよな?」
ソシャゲ神「はいどうぞ」
『(´;ω;`)』
43: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:55:52.64 ID:mAB1UGKZ0
~第五章 完~
勇者「あー終わった終わった」ボロッ
ソシャゲ神「苦戦こそしましたけど序盤の敵ですしこんなもんでしょう。何だかんだで順調ですねぇ」
勇者「この調子ならすぐに最終章まで行けるんじゃないか?」
ソシャゲ神「そうですね、メインシナリオ全49章ですのでこのペースを保てるのなら今日中に終われますね」
勇者「」
勇者「あー終わった終わった」ボロッ
ソシャゲ神「苦戦こそしましたけど序盤の敵ですしこんなもんでしょう。何だかんだで順調ですねぇ」
勇者「この調子ならすぐに最終章まで行けるんじゃないか?」
ソシャゲ神「そうですね、メインシナリオ全49章ですのでこのペースを保てるのなら今日中に終われますね」
勇者「」
44: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:56:23.02 ID:mAB1UGKZ0
勇者「ず、随分長いのな……」
ソシャゲ神「他にもサブシナリオ、限定シナリオ、追加シナリオ盛りだくさん!全部合わせると300章くらい超えるんじゃないでしょうか?」
勇者(そこまでやれと言わない辺りまだ有情か……)
―レベルアップ!!―
勇者「おお、何だかんだでレベルも順調だな」
ソシャゲ神「あ、ここで残念なお知らせがあります」
勇者「レベル上がったのに残念なお知らせってなんだよ」
ソシャゲ神「とりあえずこれをご覧ください」ブイーン
ソシャゲ神「他にもサブシナリオ、限定シナリオ、追加シナリオ盛りだくさん!全部合わせると300章くらい超えるんじゃないでしょうか?」
勇者(そこまでやれと言わない辺りまだ有情か……)
―レベルアップ!!―
勇者「おお、何だかんだでレベルも順調だな」
ソシャゲ神「あ、ここで残念なお知らせがあります」
勇者「レベル上がったのに残念なお知らせってなんだよ」
ソシャゲ神「とりあえずこれをご覧ください」ブイーン
45: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:56:54.26 ID:mAB1UGKZ0
―レベルが30を超えましたので、今後スタミナを消費してシナリオを進めていきます―
勇者「……は?」
ソシャゲ神「このゲームはスタミナというものが存在してましてですね……」
ソシャゲ神「シナリオを進める度にスタミナを消費します。そしてスタミナが足りなくなるとシナリオを進められなくなってしまうのです!!」
勇者「……ハァ!?」
ソシャゲ神「でもご安心を!!失ったスタミナは一分ごとに1回復!レベルが上がったりスキルを強化していけば絶対値が増えていきますので!最初のうちは少なくてちょろっとしか冒険できなくても……」
ソシャゲ神「経験を重ねるごとにより長く楽しめるようになっていくのです!!レッツ長期間プレイ!!」
勇者「俺今すぐにこのゲームクリアしたいんだけど!?」
勇者「……は?」
ソシャゲ神「このゲームはスタミナというものが存在してましてですね……」
ソシャゲ神「シナリオを進める度にスタミナを消費します。そしてスタミナが足りなくなるとシナリオを進められなくなってしまうのです!!」
勇者「……ハァ!?」
ソシャゲ神「でもご安心を!!失ったスタミナは一分ごとに1回復!レベルが上がったりスキルを強化していけば絶対値が増えていきますので!最初のうちは少なくてちょろっとしか冒険できなくても……」
ソシャゲ神「経験を重ねるごとにより長く楽しめるようになっていくのです!!レッツ長期間プレイ!!」
勇者「俺今すぐにこのゲームクリアしたいんだけど!?」
46: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:57:30.02 ID:mAB1UGKZ0
勇者「畜生、何だか知らんが俺はシナリオ進めるぞ!!」
ソシャゲ神「あぁもう、そう力づくじゃこの空間でやっていけないんだってば……」
……
―スタミナ全回復まで99:99―
勇者「」ズーン
ソシャゲ神「あーっと言うまでしたね!アッハッハァ!」
勇者「一歩進むごとに5消費ってなんだよ……最大値100で20歩しか進めねぇよ……」
ソシャゲ神「まぁそこら辺の解決策は一旦街に戻ってからお話ししましょう」
ソシャゲ神「あぁもう、そう力づくじゃこの空間でやっていけないんだってば……」
……
―スタミナ全回復まで99:99―
勇者「」ズーン
ソシャゲ神「あーっと言うまでしたね!アッハッハァ!」
勇者「一歩進むごとに5消費ってなんだよ……最大値100で20歩しか進めねぇよ……」
ソシャゲ神「まぁそこら辺の解決策は一旦街に戻ってからお話ししましょう」
47: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 22:58:15.32 ID:mAB1UGKZ0
―城下町―
勇者「一瞬でかえってきた!!」
ソシャゲ神「さて、このままではまともに物事を進められないのでゲーム内通貨でお買い物をしましょう」
勇者「そういや強化で使い切ったきりだったな」
ソシャゲ神「こちらのお店では戦闘時の体力、または魔力回復アイテムやスタミナ回復アイテムなんかを扱っています」
勇者「なぁもう一回言ってやろうか?"強 化 で 使 い 切 っ た き り だ っ た な"」
ソシャゲ神「反省してまーす」ミミホジー
勇者(やっぱり腹立つ)
勇者「一瞬でかえってきた!!」
ソシャゲ神「さて、このままではまともに物事を進められないのでゲーム内通貨でお買い物をしましょう」
勇者「そういや強化で使い切ったきりだったな」
ソシャゲ神「こちらのお店では戦闘時の体力、または魔力回復アイテムやスタミナ回復アイテムなんかを扱っています」
勇者「なぁもう一回言ってやろうか?"強 化 で 使 い 切 っ た き り だ っ た な"」
ソシャゲ神「反省してまーす」ミミホジー
勇者(やっぱり腹立つ)
48: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:00:20.66 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「はいはい詫び入れりゃいんでしょ詫び!ほらよ!」
―所持金+1万G―
勇者「おお、元手より沢山!」
ソシャゲ神「今回は言うまでもありませんがスタミナ回復アイテムの購入をオススメします。1万Gで50%回復が買えますのでどうぞ」
勇者「値段設定ケチだな……これか」
―リンゴ飴(スタミナ50%回復)+1―
勇者「あ、これ本当に食べられるんだ」
ソシャゲ神「食料とか売ってないとゲームにのめり込みすぎて餓死する馬鹿野郎も出てきますからね、一応外部からの提供品ですよ。それ持ち込んだの私ですけど」
ソシャゲ神「チケットやアイテムを変換して食料に変えるサービスなんかもやってます。ゲーム内通貨じゃ美味いものは買えませんけどね」
勇者「そこまで考えてやってるんだなぁ」ペロペロ
ソシャゲ神「ここまでやってんのに栄養失調で倒れるジャンキー共も居るから困ったもんですよ」
勇者「その人達何考えて生きてるの!?」
ソシャゲ神「多分自分の生死に比重を置いてないんじゃないですかねぇ……」
勇者「ゲーム一つに命賭けるとは恐ろしい人種だな」
勇者「……」
勇者「なぁ、このリンゴ飴いくらなら換金してくれる?」
ソシャゲ神「私が提供したっつったもんを私に突き返すな。つーかガチャ一回分にもならんわ」
―所持金+1万G―
勇者「おお、元手より沢山!」
ソシャゲ神「今回は言うまでもありませんがスタミナ回復アイテムの購入をオススメします。1万Gで50%回復が買えますのでどうぞ」
勇者「値段設定ケチだな……これか」
―リンゴ飴(スタミナ50%回復)+1―
勇者「あ、これ本当に食べられるんだ」
ソシャゲ神「食料とか売ってないとゲームにのめり込みすぎて餓死する馬鹿野郎も出てきますからね、一応外部からの提供品ですよ。それ持ち込んだの私ですけど」
ソシャゲ神「チケットやアイテムを変換して食料に変えるサービスなんかもやってます。ゲーム内通貨じゃ美味いものは買えませんけどね」
勇者「そこまで考えてやってるんだなぁ」ペロペロ
ソシャゲ神「ここまでやってんのに栄養失調で倒れるジャンキー共も居るから困ったもんですよ」
勇者「その人達何考えて生きてるの!?」
ソシャゲ神「多分自分の生死に比重を置いてないんじゃないですかねぇ……」
勇者「ゲーム一つに命賭けるとは恐ろしい人種だな」
勇者「……」
勇者「なぁ、このリンゴ飴いくらなら換金してくれる?」
ソシャゲ神「私が提供したっつったもんを私に突き返すな。つーかガチャ一回分にもならんわ」
49: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:00:55.75 ID:mAB1UGKZ0
勇者(なるほど、ガチャで手に入れた物じゃなけりゃ大丈夫っと……)
ソシャゲ神(サラッと探りを入れてきましたか。この程度なら聞かれりゃ答えますけど抜け目ない人ですね)
ソシャゲ神「ではまだ紹介しなければいけないものがありますのでこちらへどうぞ」
勇者「まだなんかあんの……?」
ソシャゲ神「新しいガチャの解放と五章クリア特典ですよ」
勇者「おお、なんか貰えるのか!」
ソシャゲ神「じゃじゃーん!!何とォ!拠点としてこの家を差し上げます!!」
勇者「おぉーーーッ!!」
ソシャゲ神(サラッと探りを入れてきましたか。この程度なら聞かれりゃ答えますけど抜け目ない人ですね)
ソシャゲ神「ではまだ紹介しなければいけないものがありますのでこちらへどうぞ」
勇者「まだなんかあんの……?」
ソシャゲ神「新しいガチャの解放と五章クリア特典ですよ」
勇者「おお、なんか貰えるのか!」
ソシャゲ神「じゃじゃーん!!何とォ!拠点としてこの家を差し上げます!!」
勇者「おぉーーーッ!!」
50: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:01:48.30 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「この場所では旅の履歴やイベントCG、手に入れたアイテムの詳細や仲間たちのアルバムが確認できます。勿論寝泊まりも出来ますので一休みしたいときなどにもどうぞ」
勇者「こんなもんもあるのか」
ソシャゲ神「はい、ここに見ゆる城下町は決してハリボテではなく、一つ一つが使用可能な家になっています」
ソシャゲ神「ゲーム人口自体が多いので、自然と規模も大きくなっていったんですよ。リリース当初よりも街は大きくなってますね」
勇者「助かるよ。それじゃあ早速」
勇者「この家売るわ」
ソシャゲ神「」
勇者「こんなもんもあるのか」
ソシャゲ神「はい、ここに見ゆる城下町は決してハリボテではなく、一つ一つが使用可能な家になっています」
ソシャゲ神「ゲーム人口自体が多いので、自然と規模も大きくなっていったんですよ。リリース当初よりも街は大きくなってますね」
勇者「助かるよ。それじゃあ早速」
勇者「この家売るわ」
ソシャゲ神「」
51: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:02:21.85 ID:mAB1UGKZ0
―課金ポイント+50万―
勇者「チッ、家売ってもこの程度か」
ソシャゲ神「家財を手放しただけで土地売った訳じゃないですからね、ハハ……ハハハ……」
勇者「よし、じゃあガチャ見せてくれよ新しいの出てるんだろ?」
ソシャゲ神「は、はい……この5つです」
―武具ガチャ―
―キャラクターガチャ―
―家具ガチャ―
―ビークルガチャ―
―召喚獣ガチャ―
勇者「チッ、家売ってもこの程度か」
ソシャゲ神「家財を手放しただけで土地売った訳じゃないですからね、ハハ……ハハハ……」
勇者「よし、じゃあガチャ見せてくれよ新しいの出てるんだろ?」
ソシャゲ神「は、はい……この5つです」
―武具ガチャ―
―キャラクターガチャ―
―家具ガチャ―
―ビークルガチャ―
―召喚獣ガチャ―
52: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:02:51.58 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「見たまんまですが説明要りますか?」
勇者「えっと……キャラクターガチャとビークルガチャってのがよく分からんが」
ソシャゲ神「キャラクターガチャはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を出すガチャです。まぁ要はここから出たキャラが一緒に戦ってくれるって感じですね」
ソシャゲ神「延100は超える物語を彩る様々なキャラクターが存在します!ここで仲間を増やして一気に冒険を進めよう!!」
ソシャゲ神「親交を深めていくとムフフなイベントも……」
勇者「データじゃん」
ソシャゲ神「おい、やめろ」
勇者「えっと……キャラクターガチャとビークルガチャってのがよく分からんが」
ソシャゲ神「キャラクターガチャはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を出すガチャです。まぁ要はここから出たキャラが一緒に戦ってくれるって感じですね」
ソシャゲ神「延100は超える物語を彩る様々なキャラクターが存在します!ここで仲間を増やして一気に冒険を進めよう!!」
ソシャゲ神「親交を深めていくとムフフなイベントも……」
勇者「データじゃん」
ソシャゲ神「おい、やめろ」
53: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:03:28.35 ID:mAB1UGKZ0
勇者「で、こっちは?」
ソシャゲ神「ビークルは乗り物ですね。これは基本的にほぼレンタルアイテムになります」
ソシャゲ神「スタミナの消費を抑えたり、待ち時間のあるイベントで時間を短縮したり」
ソシャゲ神「他には戦闘時に乗り込んで戦ったり、単純に街の中を移動するだけのものもあります」
勇者「レンタルばっかりみたいだし当たり外れが大きそうだな……」
ソシャゲ神「まぁレンタルは一度使用してからの時間で計算されますので、使わずに手元にも残しておけますけどね。他の説明はいいですか?」
勇者「ああ、家具は不要だし。召喚獣は現実のやつと同じ感じだろ?」
ソシャゲ神「ええ、パッとしてドーン!!って感じで呼び出せますね」
ソシャゲ神「ビークルは乗り物ですね。これは基本的にほぼレンタルアイテムになります」
ソシャゲ神「スタミナの消費を抑えたり、待ち時間のあるイベントで時間を短縮したり」
ソシャゲ神「他には戦闘時に乗り込んで戦ったり、単純に街の中を移動するだけのものもあります」
勇者「レンタルばっかりみたいだし当たり外れが大きそうだな……」
ソシャゲ神「まぁレンタルは一度使用してからの時間で計算されますので、使わずに手元にも残しておけますけどね。他の説明はいいですか?」
勇者「ああ、家具は不要だし。召喚獣は現実のやつと同じ感じだろ?」
ソシャゲ神「ええ、パッとしてドーン!!って感じで呼び出せますね」
54: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:04:01.13 ID:mAB1UGKZ0
勇者「さて、初心者の俺はどれから引けばいいかな?」
ソシャゲ神「オススメはオーソドックスにキャラガチャですね。50万持ってますし上位版の課金ガチャ引けますけどどうします?」
勇者「ん、じゃあそれで……」
トゥルルルルルン
ソシャゲ神「おっと失礼……あ、UN-Aさんどうしました?え?排出率変えた?なして?」
ソシャゲ神「なに?勇者さんを他の女と旅させたくない?はいはいじゃあ伝えておきますね」ピッ
ソシャゲ神「すみません、たったいまガチャの排出率が変わりまして女の子のキャラが出なくなりました☆」
勇者「ど う で も い い 、 引 く」ガチャン
―1万ポイント使用し11連ガチャを引きます―
ソシャゲ神「オススメはオーソドックスにキャラガチャですね。50万持ってますし上位版の課金ガチャ引けますけどどうします?」
勇者「ん、じゃあそれで……」
トゥルルルルルン
ソシャゲ神「おっと失礼……あ、UN-Aさんどうしました?え?排出率変えた?なして?」
ソシャゲ神「なに?勇者さんを他の女と旅させたくない?はいはいじゃあ伝えておきますね」ピッ
ソシャゲ神「すみません、たったいまガチャの排出率が変わりまして女の子のキャラが出なくなりました☆」
勇者「ど う で も い い 、 引 く」ガチャン
―1万ポイント使用し11連ガチャを引きます―
55: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:04:34.68 ID:mAB1UGKZ0
―R筋肉だるま―
―SRマッスルマスター―
―Rモーホー―
―Rノンノンケ―
―R尻打ちの者―
―SR黄金玉―
―Rノンノンケ―
―LRイノセントミュージアム―
―R大痔主―
―Rオタッキィ―
―Rロリコーン―
勇者「……」
ソシャゲ神「……」
勇者「なにこれ」
ソシャゲ神「こんなのばっかりしか出ませんけど、これと冒険する勇気ありますか?」
勇者「お断りします」
―SRマッスルマスター―
―Rモーホー―
―Rノンノンケ―
―R尻打ちの者―
―SR黄金玉―
―Rノンノンケ―
―LRイノセントミュージアム―
―R大痔主―
―Rオタッキィ―
―Rロリコーン―
勇者「……」
ソシャゲ神「……」
勇者「なにこれ」
ソシャゲ神「こんなのばっかりしか出ませんけど、これと冒険する勇気ありますか?」
勇者「お断りします」
56: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:05:36.26 ID:mAB1UGKZ0
勇者「1万無駄にしたな……」
ソシャゲ神「次どれ引きますー?」
勇者「さっきのスタートダッシュガチャにしとくよ。アレ安くなってんだろ?」
ソシャゲ神「安いって言っても大したもの出ないので他のにした方がいいんですけどねぇ」
勇者「じゃあもう無難に武具ガチャにぶっこんどくか」
ソシャゲ神「次どれ引きますー?」
勇者「さっきのスタートダッシュガチャにしとくよ。アレ安くなってんだろ?」
ソシャゲ神「安いって言っても大したもの出ないので他のにした方がいいんですけどねぇ」
勇者「じゃあもう無難に武具ガチャにぶっこんどくか」
57: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:06:05.52 ID:mAB1UGKZ0
……
~第25章 そして狼をつかまえて~
勇者「何だかんだで折り返して地点だな」
ソシャゲ神「武具を新調しただけあってすんなり来ましたね」
勇者「ああ」
勇者「全財産使ってようやくお前の言うまともなもんが揃ったんだけどな」
ソシャゲ神「ソシャゲってそんなもんですよ、うん……」
~第25章 そして狼をつかまえて~
勇者「何だかんだで折り返して地点だな」
ソシャゲ神「武具を新調しただけあってすんなり来ましたね」
勇者「ああ」
勇者「全財産使ってようやくお前の言うまともなもんが揃ったんだけどな」
ソシャゲ神「ソシャゲってそんなもんですよ、うん……」
58: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:06:34.08 ID:mAB1UGKZ0
『聞いたかよ相棒!やっこさんこんな所にまで逃げ込んだらしいぜ』
勇者「しかしなんか10章くらい前から馴れ馴れしく接してくるコイツは一体何なんだ」
ソシャゲ神「だから必要最低限は読めって……」
勇者「SKIP」
『お前と旅が出来て……嬉しかっ……た……』バアアアアア!!
―アストはたかしの為にその命を使い魔王軍の進行を止めた―
勇者「えぇ……」
ソシャゲ神「何の思い入れも無いキャラがなんか熱いシチュエーションで死なれてもぶっちゃけ困るだけですね、ええ」
勇者「しかしなんか10章くらい前から馴れ馴れしく接してくるコイツは一体何なんだ」
ソシャゲ神「だから必要最低限は読めって……」
勇者「SKIP」
『お前と旅が出来て……嬉しかっ……た……』バアアアアア!!
―アストはたかしの為にその命を使い魔王軍の進行を止めた―
勇者「えぇ……」
ソシャゲ神「何の思い入れも無いキャラがなんか熱いシチュエーションで死なれてもぶっちゃけ困るだけですね、ええ」
59: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:07:35.00 ID:mAB1UGKZ0
―ダンジョン最深部―
『今貴様は仲間を失った……なのに何故戦う!!戦い続ける!!何の為に!!』
勇者「とっととウチに帰りたいからだよ!?SKIPしてオラァ!!」
『グフッ……まだ……倒れんさ!!』
『多々買い続けなければならないのは私も同じィ!!』
勇者(誤字ってる……)
ソシャゲ神(流石にイベントで誤字があると萎えるなオイ)
『今貴様は仲間を失った……なのに何故戦う!!戦い続ける!!何の為に!!』
勇者「とっととウチに帰りたいからだよ!?SKIPしてオラァ!!」
『グフッ……まだ……倒れんさ!!』
『多々買い続けなければならないのは私も同じィ!!』
勇者(誤字ってる……)
ソシャゲ神(流石にイベントで誤字があると萎えるなオイ)
60: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:08:30.98 ID:mAB1UGKZ0
~第25章 完~
勇者「なんかもう……飽きてきた」
ソシャゲ神「物語も後半戦突入してるんですから頑張ってくださいよ」
勇者「興味ない人間にこんな事させるなんて苦行だろホント……」
ソシャゲ神「それじゃあ気晴らしに違う事でもしてみます?例えばイベントに参加してみるとか」
勇者「なんだそれ」
ソシャゲ神「色々な形式はあるのですが、プレイヤーが同じ空間で共存している事を利用して様々な催しが定期的に開催されています」
ソシャゲ神「例えばランキングでプレイヤー間で順位を争ったり、全プレイヤーで協力して強敵を倒したりなんかして」
勇者「よく考えるもんだな」
ソシャゲ神「この業界一発当たれば大きい利益が返ってくるんですけど一度客が離れるともう崩壊が止まらないんですよ。ですからなるべくプレイヤー達を飽きさせず、尚且つどう効率よく金を巻き上げるかを考えなきゃいけなくて、それでいて他のゲームに客を取られないようにもしながら……」
勇者「うん、業界の闇とかそういうのいいから」
勇者「なんかもう……飽きてきた」
ソシャゲ神「物語も後半戦突入してるんですから頑張ってくださいよ」
勇者「興味ない人間にこんな事させるなんて苦行だろホント……」
ソシャゲ神「それじゃあ気晴らしに違う事でもしてみます?例えばイベントに参加してみるとか」
勇者「なんだそれ」
ソシャゲ神「色々な形式はあるのですが、プレイヤーが同じ空間で共存している事を利用して様々な催しが定期的に開催されています」
ソシャゲ神「例えばランキングでプレイヤー間で順位を争ったり、全プレイヤーで協力して強敵を倒したりなんかして」
勇者「よく考えるもんだな」
ソシャゲ神「この業界一発当たれば大きい利益が返ってくるんですけど一度客が離れるともう崩壊が止まらないんですよ。ですからなるべくプレイヤー達を飽きさせず、尚且つどう効率よく金を巻き上げるかを考えなきゃいけなくて、それでいて他のゲームに客を取られないようにもしながら……」
勇者「うん、業界の闇とかそういうのいいから」
61: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:09:02.83 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「今行われているイベントは……こちらですね」
―ラストバトル!!6神を倒せ!!―
ソシャゲ神「全プレイヤー達が長期間かけて神を倒すというイベントです!!」
ソシャゲ神「目に映るは悪しき神の軍勢、それに立ち向かう勇者たち……途方もなく復活を遂げる奴らに、我々は勝利することが出来るのか……!!」
勇者「へぇ、面白そうじゃん」
ソシャゲ神「三日前から始まってるイベントですけど、エントリーは今からでも出来るのでこちらから……」
「おいもう6神全部倒されたぞ!?」
「マジかよ、参加者頭おかしいんじゃねぇの?イベントって10日くらい時間見てただろ」
「なんか出る素材がすっげぇ美味いらしいぞ」
「それでか。あー参加すりゃよかったなぁ」
「最後の神……朝日を迎えられなかったか」
「運営涙目www」
勇者「……」
ソシャゲ神「……」
ソシャゲ神「シナリオ進めましょうか」
勇者「そうだな」
―ラストバトル!!6神を倒せ!!―
ソシャゲ神「全プレイヤー達が長期間かけて神を倒すというイベントです!!」
ソシャゲ神「目に映るは悪しき神の軍勢、それに立ち向かう勇者たち……途方もなく復活を遂げる奴らに、我々は勝利することが出来るのか……!!」
勇者「へぇ、面白そうじゃん」
ソシャゲ神「三日前から始まってるイベントですけど、エントリーは今からでも出来るのでこちらから……」
「おいもう6神全部倒されたぞ!?」
「マジかよ、参加者頭おかしいんじゃねぇの?イベントって10日くらい時間見てただろ」
「なんか出る素材がすっげぇ美味いらしいぞ」
「それでか。あー参加すりゃよかったなぁ」
「最後の神……朝日を迎えられなかったか」
「運営涙目www」
勇者「……」
ソシャゲ神「……」
ソシャゲ神「シナリオ進めましょうか」
勇者「そうだな」
62: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:10:04.65 ID:mAB1UGKZ0
勇者(その後も俺は順調にゲームを進めていき)
『チクショウ!!囲まれた!!たかし!お前は逃げろ!!』
勇者(見覚えの無い連中が入れ代わり立ち代わり俺の前を行ったり来たりしながら……)
『実は俺は……お前の父親だったんだよ!!』
『たかし……母さんはこんな事になって悲しいよ。でもそれも今日で終わり。さぁ覚悟おし!!』
勇者「ちょっと待って今のなに!?」
ソシャゲ神「モノローグで片づけようとするからトンデモ展開に発展するんですよ……」
勇者「俺のせいじゃ無くね!?」
勇者(そうして最終章まで何とかこぎつけたのである……)
ソシャゲ神(端折るなぁ……)
『チクショウ!!囲まれた!!たかし!お前は逃げろ!!』
勇者(見覚えの無い連中が入れ代わり立ち代わり俺の前を行ったり来たりしながら……)
『実は俺は……お前の父親だったんだよ!!』
『たかし……母さんはこんな事になって悲しいよ。でもそれも今日で終わり。さぁ覚悟おし!!』
勇者「ちょっと待って今のなに!?」
ソシャゲ神「モノローグで片づけようとするからトンデモ展開に発展するんですよ……」
勇者「俺のせいじゃ無くね!?」
勇者(そうして最終章まで何とかこぎつけたのである……)
ソシャゲ神(端折るなぁ……)
63: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:10:35.92 ID:mAB1UGKZ0
~最終章 魔王旗よ永遠なれ~
ソシャゲ神「はーいすっ飛んできました最終章!!今までよりも手強くなっていますので気を付けてください!!」
ソシャゲ神「そうそう!これグレーな豆知識何ですけどね?ガチャには形式が色々あって、簡単に分けると個人BOX・全体BOX・完全ランダムってのがあるんですけど……勇者さん?」
勇者「……」
ソシャゲ神「どうしました?上の空みたいですけど」
勇者「いや」
勇者(日付……跨いじまったな)
ソシャゲ神「はーいすっ飛んできました最終章!!今までよりも手強くなっていますので気を付けてください!!」
ソシャゲ神「そうそう!これグレーな豆知識何ですけどね?ガチャには形式が色々あって、簡単に分けると個人BOX・全体BOX・完全ランダムってのがあるんですけど……勇者さん?」
勇者「……」
ソシャゲ神「どうしました?上の空みたいですけど」
勇者「いや」
勇者(日付……跨いじまったな)
64: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:11:17.46 ID:mAB1UGKZ0
勇者「さて、最終章だ。ここまでで丸一日かかっちまったけど、この世界の魔王とやらを倒してハッピーエンドを迎えますかな」
ソシャゲ神「んじゃあ最後のガラス……じゃなくて扉をぶち破りましょう!!」
ギィッ…
「フッフッフ……待っていましたよ、勇者さん……」
―Not skip move―
勇者(あ、腹立つやつだ)
「いくつもの試練を乗り越えようやくたどり着いたようですね……ですが、私は部下たちのようにはいきません」
「かつての大戦の中……私の中に芽生えた憎しみの心。それは紛れもなく人間たちが植え付けたもの」
「そう、貴方達の業の形なのです!!それは時を経ても未だ癒えぬこの心の傷のk」
勇者「うるせぇな早くしろよオラァ!!」グサー!!
「ぎゃああああああああ!?やめっ、やめてください!?何するんですか痛いじゃないですか!?」
勇者「あ、こいつゲームのキャラじゃないっぽい」
ソシャゲ神「ゲームシステムを無視して攻撃しないでください」
ソシャゲ神「んじゃあ最後のガラス……じゃなくて扉をぶち破りましょう!!」
ギィッ…
「フッフッフ……待っていましたよ、勇者さん……」
―Not skip move―
勇者(あ、腹立つやつだ)
「いくつもの試練を乗り越えようやくたどり着いたようですね……ですが、私は部下たちのようにはいきません」
「かつての大戦の中……私の中に芽生えた憎しみの心。それは紛れもなく人間たちが植え付けたもの」
「そう、貴方達の業の形なのです!!それは時を経ても未だ癒えぬこの心の傷のk」
勇者「うるせぇな早くしろよオラァ!!」グサー!!
「ぎゃああああああああ!?やめっ、やめてください!?何するんですか痛いじゃないですか!?」
勇者「あ、こいつゲームのキャラじゃないっぽい」
ソシャゲ神「ゲームシステムを無視して攻撃しないでください」
65: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:11:44.75 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「うぅ、酷いなぁ勇者さん。なんて事するんですか」ボロッ
勇者「ん?あれ……?」
ソシャゲ神「どうしました?」
勇者「いや……いや!?お前こんな所で何してんの!?」
怪人男「おや?ああ私の知ってる勇者さんでしたか。お久しぶりですねぇ」
ソシャゲ神「……まぁ私管理者サイドなので事情自体知ってますけど一応聞いておきます。お知合いですか?」
勇者「魔 王 の 父 親 だ よ コ イ ツ ! ?」
怪人男「そして先代の異次元魔王です!!いやですね、ちょっと娘と喧嘩しましてね?」
勇者「うん」
怪人男「殺されかけました」
勇者(元魔王の威厳ないなぁ)
勇者「ん?あれ……?」
ソシャゲ神「どうしました?」
勇者「いや……いや!?お前こんな所で何してんの!?」
怪人男「おや?ああ私の知ってる勇者さんでしたか。お久しぶりですねぇ」
ソシャゲ神「……まぁ私管理者サイドなので事情自体知ってますけど一応聞いておきます。お知合いですか?」
勇者「魔 王 の 父 親 だ よ コ イ ツ ! ?」
怪人男「そして先代の異次元魔王です!!いやですね、ちょっと娘と喧嘩しましてね?」
勇者「うん」
怪人男「殺されかけました」
勇者(元魔王の威厳ないなぁ)
66: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:12:29.92 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「その後、娘の魔法でこの空間に飛ばされましてね、ここで魔王をやれって言うんですよぉ。まぁ私を頼りにしてくれるなんて可愛いこと可愛いこと♪」
勇者「しばらく見ないと思ってたらこんな所に居たのかよ……で、何を条件にここに閉じ込められた?」
怪人男「……プレイヤーを5万KILLするまで外には出さないと脅されました」ズーン
勇者「今まで何人倒して来た?」
怪人男「……363人」ボソッ
勇者「oh...」
ソシャゲ神(これもう外に出す気無いでしょ)
勇者「しばらく見ないと思ってたらこんな所に居たのかよ……で、何を条件にここに閉じ込められた?」
怪人男「……プレイヤーを5万KILLするまで外には出さないと脅されました」ズーン
勇者「今まで何人倒して来た?」
怪人男「……363人」ボソッ
勇者「oh...」
ソシャゲ神(これもう外に出す気無いでしょ)
67: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:12:57.23 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「しかし驚きましたねぇ、勇者さんこの手のゲームとかやるんですね」
勇者「お前何も聞かされてないのか。境遇自体はお前と同じだよ」
怪人男「アナタも閉じ込められたんですか!」
勇者「そーゆーこと」
怪人男「なぁんだ!じゃあ一緒にここから脱出する手段を探しましょう!仲間は多い方がいいですし!」
勇者「ああそうだな。脱出するために協力してくれるんだな?」
怪人男「勿論ですよぉ!私と勇者さんの仲じゃありませんか!」
勇者「じゃあ死ねえええええええええええ!!」ガギンッ
怪人男「ちょっ!?ちょちょちょちょっと待って!?何で!?ねぇ何で協力関係結んだ直後に襲い掛かるんですか!?」
勇者「お前何も聞かされてないのか。境遇自体はお前と同じだよ」
怪人男「アナタも閉じ込められたんですか!」
勇者「そーゆーこと」
怪人男「なぁんだ!じゃあ一緒にここから脱出する手段を探しましょう!仲間は多い方がいいですし!」
勇者「ああそうだな。脱出するために協力してくれるんだな?」
怪人男「勿論ですよぉ!私と勇者さんの仲じゃありませんか!」
勇者「じゃあ死ねえええええええええええ!!」ガギンッ
怪人男「ちょっ!?ちょちょちょちょっと待って!?何で!?ねぇ何で協力関係結んだ直後に襲い掛かるんですか!?」
68: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:13:33.79 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「あのー、異次元魔王さん、ちょっと申し上げにくいんですけど……勇者さんの脱出方法がメインシナリオクリアするって条件なんですよ」
勇者「そういうワケだからちょっと首くれいない?」ギリギリギリ
怪人男「ちょっと意味が分からないですねハイ、っていうかこれゲームですから!!お願いですからゲームのルールで戦ってください!?物理的に襲ってこないで!!」ギリギリギリ
ソシャゲ神「勇者さんルールは守ってくださいよ。イライラしてるのは分かりますけどここで殺人沙汰になったらサツにガサ入れされるわ死体の処理に困るわでいいこと無いんですから!」
勇者「チッ、それもそうだな」
怪人男「人としての倫理観はそこにないのですね……」
勇者「そういうワケだからちょっと首くれいない?」ギリギリギリ
怪人男「ちょっと意味が分からないですねハイ、っていうかこれゲームですから!!お願いですからゲームのルールで戦ってください!?物理的に襲ってこないで!!」ギリギリギリ
ソシャゲ神「勇者さんルールは守ってくださいよ。イライラしてるのは分かりますけどここで殺人沙汰になったらサツにガサ入れされるわ死体の処理に困るわでいいこと無いんですから!」
勇者「チッ、それもそうだな」
怪人男「人としての倫理観はそこにないのですね……」
69: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:14:00.75 ID:mAB1UGKZ0
勇者「んで?普通に戦えばいいのか?こっちは50万かけてガッチガチに鍛えて来てるんだけど」
怪人男「フフフ、ええ勿論ですよ。今まで通りの手順で私に挑んできてください!!」
勇者「それじゃあ遠慮なく……行くぞ!!」バッ
怪人男「さぁ、我が腕の中で眠るがいい!!」
―敗北しました。復活まで04:59―
勇者「はあああああああああああああああああああああ!?」
怪人男「アーッハッハッハッハ!!リアルでは勇者さんに何一つ勝てなかった私でもゲームの世界となれば話は別です!!」
怪人男「勇者さん見たところ炎の剣も光の玉も封印の証も何も持ってきていないようですね!」
勇者「……え、何それ」
怪人男「フフフ、ええ勿論ですよ。今まで通りの手順で私に挑んできてください!!」
勇者「それじゃあ遠慮なく……行くぞ!!」バッ
怪人男「さぁ、我が腕の中で眠るがいい!!」
―敗北しました。復活まで04:59―
勇者「はあああああああああああああああああああああ!?」
怪人男「アーッハッハッハッハ!!リアルでは勇者さんに何一つ勝てなかった私でもゲームの世界となれば話は別です!!」
怪人男「勇者さん見たところ炎の剣も光の玉も封印の証も何も持ってきていないようですね!」
勇者「……え、何それ」
70: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:14:30.75 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「アーッハッハッハッハ!!もう笑いが止まりませんよ!魔王に挑むにはそれらのアイテムを集めなければならないというのに!!」
勇者「えぇ……聞いてないよ」
ソシャゲ神「お前全部SKIPしてたからそりゃ聞いてねぇだろうな!?」
怪人男「おやおや勇者さん?そんな事も知らなかったんですか?プークスクス」
勇者「」カチンッ
勇者「おいソシャゲ神、その何とかって言うアイテムどこにある」
ソシャゲ神「はいはい、シナリオログ漁って自分で見つけてくださいねー」
勇者「覚えてろよテメェ……」
怪人男「アーッハッハッハッハ!リアルでいつも私を叩きのめしていたツケが回ってきたんですよ!!」
勇者「えぇ……聞いてないよ」
ソシャゲ神「お前全部SKIPしてたからそりゃ聞いてねぇだろうな!?」
怪人男「おやおや勇者さん?そんな事も知らなかったんですか?プークスクス」
勇者「」カチンッ
勇者「おいソシャゲ神、その何とかって言うアイテムどこにある」
ソシャゲ神「はいはい、シナリオログ漁って自分で見つけてくださいねー」
勇者「覚えてろよテメェ……」
怪人男「アーッハッハッハッハ!リアルでいつも私を叩きのめしていたツケが回ってきたんですよ!!」
71: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:14:57.05 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
勇者「……」
勇者「光の玉よし!!炎の剣よし!!封印の証よし!!」
ソシャゲ神「えらい早くかき集めましたね」
勇者「あのオッサンにだけは負けたくねぇ!!」
ソシャゲ神「……そこまで闘志を燃やす理由をお伺いしてもよろしいですか?」
勇者「アレは、あのオッサンが俺の俺の家の隣に引っ越してきた日の事だった……」
ソシャゲ神「お隣さんなの!?」
―――
―
勇者「……」
勇者「光の玉よし!!炎の剣よし!!封印の証よし!!」
ソシャゲ神「えらい早くかき集めましたね」
勇者「あのオッサンにだけは負けたくねぇ!!」
ソシャゲ神「……そこまで闘志を燃やす理由をお伺いしてもよろしいですか?」
勇者「アレは、あのオッサンが俺の俺の家の隣に引っ越してきた日の事だった……」
ソシャゲ神「お隣さんなの!?」
72: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:15:23.90 ID:mAB1UGKZ0
―
―――
――――――
怪人男「あ、こんにちは。今日隣に引っ越してきた異次元魔王というものです。はいこれお近づきの印に」
勇者「あぁこりゃどうも」
怪人男「いやぁいい場所があって助かりましたよ。あ、私運送会社を経営しておりましてね?よろしければごひいきにお願いします」
勇者「はぁ……」
「……」ヒョコッ
勇者「ん?その子は?」
怪人男「ああ、私の娘です。妻に先立たれ男手一つで育ててきた可愛いかわいい娘っ子です。目に入れてもそりゃあもう痛かろうが潰れようが可愛い大切な娘で……」
「お前」
勇者「なんだ?」
「……」
「……」ポッ
怪人男「貴 様 殺 す ぞ」ギリギリギリ
勇者「えぇ……」
―――
――――――
怪人男「あ、こんにちは。今日隣に引っ越してきた異次元魔王というものです。はいこれお近づきの印に」
勇者「あぁこりゃどうも」
怪人男「いやぁいい場所があって助かりましたよ。あ、私運送会社を経営しておりましてね?よろしければごひいきにお願いします」
勇者「はぁ……」
「……」ヒョコッ
勇者「ん?その子は?」
怪人男「ああ、私の娘です。妻に先立たれ男手一つで育ててきた可愛いかわいい娘っ子です。目に入れてもそりゃあもう痛かろうが潰れようが可愛い大切な娘で……」
「お前」
勇者「なんだ?」
「……」
「……」ポッ
怪人男「貴 様 殺 す ぞ」ギリギリギリ
勇者「えぇ……」
73: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:16:49.63 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
勇者「それから毎日のように俺んちのポストには黒い手紙が入り、夜中でもお構いなしに騒音が鳴り響き、なんかよく分からない物体が投げ込まれ……」
ソシャゲ神「どう考えても警察案件だよ!?あの人何やってんの!?」
勇者「仲良くはさせてもらってるよ、よく一緒に飲みに行ったりするし。ただ(現)魔王が俺に懐いちまってな。娘の事になるとアレは必要ならいつでも俺を殺す気でいるぞ……」
ソシャゲ神「父親恐るべし……」
勇者「そんな訳だから俺も負けたくはないって事だよ」
勇者「でもアイツ現実だと物凄く弱いから毎回殴り合いに発展した挙句泣いて謝るのはあっちだったけどな」
ソシャゲ神「かなしいなぁ」
―――
―
勇者「それから毎日のように俺んちのポストには黒い手紙が入り、夜中でもお構いなしに騒音が鳴り響き、なんかよく分からない物体が投げ込まれ……」
ソシャゲ神「どう考えても警察案件だよ!?あの人何やってんの!?」
勇者「仲良くはさせてもらってるよ、よく一緒に飲みに行ったりするし。ただ(現)魔王が俺に懐いちまってな。娘の事になるとアレは必要ならいつでも俺を殺す気でいるぞ……」
ソシャゲ神「父親恐るべし……」
勇者「そんな訳だから俺も負けたくはないって事だよ」
勇者「でもアイツ現実だと物凄く弱いから毎回殴り合いに発展した挙句泣いて謝るのはあっちだったけどな」
ソシャゲ神「かなしいなぁ」
74: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:17:35.61 ID:mAB1UGKZ0
勇者「つーわけで異次元魔王!!もう一回俺と勝負だ!!」バァン!!
怪人男「アッハッハッハ!!また来たのですか!何度来ても結果は同じ!貴方は私には勝てませェン!!」
勇者「そいつはどうかな……?この3つのアイテムが見えんか!!」
―3つのアイテムを天にかざすと、魔王を覆っていた不可思議な結界が徐々に弱まっていった―
怪人男「何ッ!?」
勇者「これで終いにしてやるぜ!!とっとと外に出てこんな世界とはおさらばだ!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
怪人男「アッハッハッハ!!また来たのですか!何度来ても結果は同じ!貴方は私には勝てませェン!!」
勇者「そいつはどうかな……?この3つのアイテムが見えんか!!」
―3つのアイテムを天にかざすと、魔王を覆っていた不可思議な結界が徐々に弱まっていった―
怪人男「何ッ!?」
勇者「これで終いにしてやるぜ!!とっとと外に出てこんな世界とはおさらばだ!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
75: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:18:01.92 ID:mAB1UGKZ0
―敗北しました。復活まで04:59―
勇者「なんでだよ!!なんでだよ!!」バンバンバン!!
怪人男「言ったでしょう勇者さん……私には勝てないって」
勇者「……!?お、お前……まさかとは思うけど……」
怪人男「はい、これ私のフレンドカードです」スッ
勇者「あ、どうも」
―異次元魔王 装備―
・EX聖剣フェニキス
・EX影洩葬装
・EX夜鷹の光玉
・EXレイ・クリエイター
・EX魔玩具
・EX幻想玉
・EX聖獣クフト
怪人男「貴方を倒す為だけにこのゲームに1000万かけた私を打ち倒せると思うな!!」
勇者「えぇ……」
勇者「なんでだよ!!なんでだよ!!」バンバンバン!!
怪人男「言ったでしょう勇者さん……私には勝てないって」
勇者「……!?お、お前……まさかとは思うけど……」
怪人男「はい、これ私のフレンドカードです」スッ
勇者「あ、どうも」
―異次元魔王 装備―
・EX聖剣フェニキス
・EX影洩葬装
・EX夜鷹の光玉
・EXレイ・クリエイター
・EX魔玩具
・EX幻想玉
・EX聖獣クフト
怪人男「貴方を倒す為だけにこのゲームに1000万かけた私を打ち倒せると思うな!!」
勇者「えぇ……」
76: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:18:35.72 ID:mAB1UGKZ0
……
勇者「……」
ソシャゲ神「ありゃ本気ですよ。どうやったって勝てませんよ」
勇者「俺はずっとこんなわけの分からん世界で生きていかなきゃいかんのか……」ズーン
ソシャゲ神「UN-Aさんに素直に頭下げて謝れば許してもらえるんじゃないですか?」
勇者「それだけはしたくない!!俺悪くねぇし!!」
ソシャゲ神「プライド捻じ曲げないタイプだなぁ」
勇者「……」
ソシャゲ神「ありゃ本気ですよ。どうやったって勝てませんよ」
勇者「俺はずっとこんなわけの分からん世界で生きていかなきゃいかんのか……」ズーン
ソシャゲ神「UN-Aさんに素直に頭下げて謝れば許してもらえるんじゃないですか?」
勇者「それだけはしたくない!!俺悪くねぇし!!」
ソシャゲ神「プライド捻じ曲げないタイプだなぁ」
77: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:19:10.92 ID:mAB1UGKZ0
勇者「つーか何で1000万もかけてんだよ異次元魔王、馬鹿なの?死ぬの?」
ソシャゲ神「運送会社の社長さんですからね。お金は融通が利いたんでしょう。そこらへんはもう貴方とはスタートラインが違うからとしか言えないですけど」
勇者「くそ……なにか……何か"穴"があるハズなんだ。アイツに勝つための"穴"が……!!」
ソシャゲ神「ま、簡単に言っちゃえばあの人より多く課金すればいい話なんですけどね」
勇者「それが出来たら苦労しないっての……ハァ……」
ソシャゲ神「……あ」
勇者「ん?」
ソシャゲ神「出来ます!一つだけ出来る方法があります!!」
勇者「……」
勇者「うわぁ……理解した。でもなぁ」
ソシャゲ神「運送会社の社長さんですからね。お金は融通が利いたんでしょう。そこらへんはもう貴方とはスタートラインが違うからとしか言えないですけど」
勇者「くそ……なにか……何か"穴"があるハズなんだ。アイツに勝つための"穴"が……!!」
ソシャゲ神「ま、簡単に言っちゃえばあの人より多く課金すればいい話なんですけどね」
勇者「それが出来たら苦労しないっての……ハァ……」
ソシャゲ神「……あ」
勇者「ん?」
ソシャゲ神「出来ます!一つだけ出来る方法があります!!」
勇者「……」
勇者「うわぁ……理解した。でもなぁ」
78: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:20:10.15 ID:mAB1UGKZ0
ソシャゲ神「四の五の言っていられませんよ。このままいじけているよりかは好転する事は間違いありませんし」
ソシャゲ神「後ろめたさがあるのは否めませんが……貴方もさっきから散々言ってる事じゃないですか」
ソシャゲ神「"所詮はデータ"……ですよ。貴方はルールの中で行えることをするだけです!」
勇者「……」
勇者「はぁ、しゃーない……やるか!!」
ソシャゲ神「後ろめたさがあるのは否めませんが……貴方もさっきから散々言ってる事じゃないですか」
ソシャゲ神「"所詮はデータ"……ですよ。貴方はルールの中で行えることをするだけです!」
勇者「……」
勇者「はぁ、しゃーない……やるか!!」
79: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:21:06.15 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
怪人男「ふんふふ~ん♪」
怪人男「いやぁ今日は愉快ですねぇ。今まで勝てなかった勇者さんにこうも簡単に勝てるとは」
怪人男「悪いとは思ってますよ?思ってますけどねぇ」
怪人男「ウ チ の 娘 を 誑 か し た あ の ク ソ ヤ ロ ウ を ぶ っ 叩 く た め な ら 何 だ っ て し て や る よ」
怪人男「ま、彼に1000万以上お金が出せる事も無いでしょうし。素直に私に謝罪でも入れてくれれば娘に掛け合ってここから出して上げてもいぃんですがねぇえ~アッハッハ!!」
ゴゴゴゴゴゴ
怪人男「おや?なんでしょう、地震なんてこの空間で起きる事は無いと思っていましたがハテ……」
―侵入者発見。魔王は直ちに配置に戻れ―
怪人男「おっといけない、この空間での責務を果たさなければ……」
怪人男「ま、もっともぉ、もうこの私に勝てるプレイヤーなんてどこにも居ないんですけどねぇーーー!!アハハハハハ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ
怪人男「あぁもう煩いですね!何ですかいっt……」
―――
―
怪人男「ふんふふ~ん♪」
怪人男「いやぁ今日は愉快ですねぇ。今まで勝てなかった勇者さんにこうも簡単に勝てるとは」
怪人男「悪いとは思ってますよ?思ってますけどねぇ」
怪人男「ウ チ の 娘 を 誑 か し た あ の ク ソ ヤ ロ ウ を ぶ っ 叩 く た め な ら 何 だ っ て し て や る よ」
怪人男「ま、彼に1000万以上お金が出せる事も無いでしょうし。素直に私に謝罪でも入れてくれれば娘に掛け合ってここから出して上げてもいぃんですがねぇえ~アッハッハ!!」
ゴゴゴゴゴゴ
怪人男「おや?なんでしょう、地震なんてこの空間で起きる事は無いと思っていましたがハテ……」
―侵入者発見。魔王は直ちに配置に戻れ―
怪人男「おっといけない、この空間での責務を果たさなければ……」
怪人男「ま、もっともぉ、もうこの私に勝てるプレイヤーなんてどこにも居ないんですけどねぇーーー!!アハハハハハ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ
怪人男「あぁもう煩いですね!何ですかいっt……」
80: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:21:33.49 ID:mAB1UGKZ0
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
勇者「……」
『ターゲットロック』
勇者「目標、魔王城……撃て」
『ラジャ』
ゴガガガガガガガガガガガガ!!
勇者「……」
『ターゲットロック』
勇者「目標、魔王城……撃て」
『ラジャ』
ゴガガガガガガガガガガガガ!!
81: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:21:59.55 ID:mAB1UGKZ0
ガァァァァン!!
怪人男「ファッ!?な、なにがあったんですか!?システム!過去ログの呼び出し!!」
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―MISS
怪人男「……へ?」
怪人男「ファッ!?な、なにがあったんですか!?システム!過去ログの呼び出し!!」
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―HIT
―勇者(人型ビークル兵器:フグ・カスタム)のガトリングシールド―MISS
怪人男「……へ?」
82: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:22:26.92 ID:mAB1UGKZ0
―レンタルビークルの使用期間が過ぎました。対象のビークルは消滅します―
勇者「チッ!仕留め損ねたか!!だが魔王城に大打撃を与えた!!次は燻りだす!!次ィ!!武器ガチャ1100連!!LR以下自動売買!!」
―LRブレイドアーマー―
―LRシューラ―
―LRライトノヴァ*―
―LRブレイドネス―
―LRブランシュ―
―LR十字剣・咎―
―LRシューラ―
―LRセピアメイズ―
―LR刃の無い剣―
―LRファントマ―
―LR義心鎌フュリク―
―LR火炎放射器―
勇者「良しっ!!こいつで魔王城を焼き払う!!」
勇者「チッ!仕留め損ねたか!!だが魔王城に大打撃を与えた!!次は燻りだす!!次ィ!!武器ガチャ1100連!!LR以下自動売買!!」
―LRブレイドアーマー―
―LRシューラ―
―LRライトノヴァ*―
―LRブレイドネス―
―LRブランシュ―
―LR十字剣・咎―
―LRシューラ―
―LRセピアメイズ―
―LR刃の無い剣―
―LRファントマ―
―LR義心鎌フュリク―
―LR火炎放射器―
勇者「良しっ!!こいつで魔王城を焼き払う!!」
83: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:22:53.87 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「ちょっ!?1100連!?なにやってるんですかあの人!?そんなお金どこから……」
勇者「次ィ!!最上位召喚獣ガチャ880連!!LR以下自動売却!!」
―LRマスターコロボックル―
―LR神霊・オノクロシア―
―LRマスターコロボックル―
―LRマスターコロボックル―
―EXカゲオチ―
勇者「ま た コ ロ ボ ッ ク ル か よ ! ?ともかくEXでここまで引きずり出してやる!!」
怪人男「ひぃっ!!」
ズァッ!!
勇者「次ィ!!最上位召喚獣ガチャ880連!!LR以下自動売却!!」
―LRマスターコロボックル―
―LR神霊・オノクロシア―
―LRマスターコロボックル―
―LRマスターコロボックル―
―EXカゲオチ―
勇者「ま た コ ロ ボ ッ ク ル か よ ! ?ともかくEXでここまで引きずり出してやる!!」
怪人男「ひぃっ!!」
ズァッ!!
84: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:23:20.78 ID:mAB1UGKZ0
勇者「また会ったな異次元魔王さんよぉ!!」
怪人男「な、何故貴方がこんな無茶苦茶なガチャの引き方をしているんですか!?どこからそんなお金が……」
勇者「金ならあるんだよ……この世界にいくらでもな!!」
怪人男「へ……?」
勇者(ああああああああ!!後が怖ぇ!!)
怪人男「な、何故貴方がこんな無茶苦茶なガチャの引き方をしているんですか!?どこからそんなお金が……」
勇者「金ならあるんだよ……この世界にいくらでもな!!」
怪人男「へ……?」
勇者(ああああああああ!!後が怖ぇ!!)
85: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:23:47.14 ID:mAB1UGKZ0
―
―――
――――――
姫「お、おお、おおおおおお!!」
姫「ゆ、勇者!私と共に人生を歩んでくれるというのだな!」
勇者「勿論だ」
姫「……私の事、好きで居てくれるんだな?」
勇者「別に……初めからお前の事好きだよ、俺は」
姫「……ちゃんと結婚もしてくれるんだな?」
勇者「ここまで来たんだ!男に二言はねぇ!!」
姫「……勇者……大好きだ!!」ダキッ!!
勇者「……」ナデナデ
―――
――――――
姫「お、おお、おおおおおお!!」
姫「ゆ、勇者!私と共に人生を歩んでくれるというのだな!」
勇者「勿論だ」
姫「……私の事、好きで居てくれるんだな?」
勇者「別に……初めからお前の事好きだよ、俺は」
姫「……ちゃんと結婚もしてくれるんだな?」
勇者「ここまで来たんだ!男に二言はねぇ!!」
姫「……勇者……大好きだ!!」ダキッ!!
勇者「……」ナデナデ
86: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:24:28.86 ID:mAB1UGKZ0
姫「それじゃあ早速式を上げよう!和風がいいか?それともセオリー通りに純白のドレスの方が……」
勇者「なぁ、一つだけいいか?」
姫「ん?どうした勇者」
勇者「俺とお前が結婚するって事は、さっきも言ってた通りこの国は俺のものになるってとこだよな?」
姫「勿論だ、妻の所有物は夫と共有で管理していかねばならない」
姫「勇者、お前が望むのならこの空間を好きなように改造してもらっても構わない」
姫「城も家も政治も人も、もう全てがお前のものなのだ」
勇者「そうか……安心したよ」
勇者「ソシャゲ神、全部売るわ」
ソシャゲ神「はいよ」
姫「」
勇者「なぁ、一つだけいいか?」
姫「ん?どうした勇者」
勇者「俺とお前が結婚するって事は、さっきも言ってた通りこの国は俺のものになるってとこだよな?」
姫「勿論だ、妻の所有物は夫と共有で管理していかねばならない」
姫「勇者、お前が望むのならこの空間を好きなように改造してもらっても構わない」
姫「城も家も政治も人も、もう全てがお前のものなのだ」
勇者「そうか……安心したよ」
勇者「ソシャゲ神、全部売るわ」
ソシャゲ神「はいよ」
姫「」
87: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:25:25.81 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
ソシャゲ神「しめて3兆ポイントでございまーす☆」
怪人男「アンタ悪魔かああああああああ!?」
勇者「俺はルール違反を犯していない。ゲームを根本から改造したりもしてないし、永遠に城で暮らすって口約束もそもそも暮らせる城が無くなっちまったんだから無効だ」
怪人男「林檎さんもなにサラッと買取許可してるんですか!?死の商人かなにかですか!?」
ソシャゲ神「そうは言われましてもねぇ、ルールはルールですから」
勇者「ゲームのルールの穴を突いただけだよ。それに、このルールを押し付けてきたのはお前の娘なんだから、それについても文句は言わせん」
勇者「俺のステータスとアンタのステータス……さて、正面から戦ったらどっちが高いか……試してみるか?」
怪人男「ぐ、うぅ……」
勇者「俺も悪いとは思ってるし、これについてはちゃんと謝るつもりでもいる。だからアンタも変に俺に拘らずに一緒に……」
―――
―
ソシャゲ神「しめて3兆ポイントでございまーす☆」
怪人男「アンタ悪魔かああああああああ!?」
勇者「俺はルール違反を犯していない。ゲームを根本から改造したりもしてないし、永遠に城で暮らすって口約束もそもそも暮らせる城が無くなっちまったんだから無効だ」
怪人男「林檎さんもなにサラッと買取許可してるんですか!?死の商人かなにかですか!?」
ソシャゲ神「そうは言われましてもねぇ、ルールはルールですから」
勇者「ゲームのルールの穴を突いただけだよ。それに、このルールを押し付けてきたのはお前の娘なんだから、それについても文句は言わせん」
勇者「俺のステータスとアンタのステータス……さて、正面から戦ったらどっちが高いか……試してみるか?」
怪人男「ぐ、うぅ……」
勇者「俺も悪いとは思ってるし、これについてはちゃんと謝るつもりでもいる。だからアンタも変に俺に拘らずに一緒に……」
88: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:25:53.84 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「管理者サイドをなめるなーーー!!」ズガアアア!!
勇者「おあ!?」
―魔王のステータスがMAXになった!―
勇者「はぁ!?」
怪人男「侮りましたね……私だってNPCではなく生きた人間なのです!管理者なのです!この程度のデータ改竄はお手の物ってわけですよ!!」
勇者「インチキだろ!!」
怪人男「何とでも言いなさい!!私の娘の乙女心を弄んだ貴方に天誅を下します!!」
勇者「そ、そう言われると俺も何も言い返せないけど……」
勇者「おあ!?」
―魔王のステータスがMAXになった!―
勇者「はぁ!?」
怪人男「侮りましたね……私だってNPCではなく生きた人間なのです!管理者なのです!この程度のデータ改竄はお手の物ってわけですよ!!」
勇者「インチキだろ!!」
怪人男「何とでも言いなさい!!私の娘の乙女心を弄んだ貴方に天誅を下します!!」
勇者「そ、そう言われると俺も何も言い返せないけど……」
89: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:26:42.97 ID:mAB1UGKZ0
勇者「おいソシャゲ神何とかならんのか?」
ソシャゲ神「そう言われましてもねぇ。異次元魔王さんは私にとってリアルの方のお得意様ですし」
勇者「私情持ち込みやがったぞコイツ!!」
怪人男「さぁステータスカンストの私の一撃を食らいなさい勇者さん!!」
怪人男「異次元転移砲(カークン・ドゥーイヴァン)!!」
勇者「ちょっとマテ!?それゲームの技じゃなくてお前のマジもんの魔法じゃねぇか!?ステータス上げた意味ねぇだろ!?」
怪人男「痛い目見てもらうにはちょうどいいです!!」
ソシャゲ神「そう言われましてもねぇ。異次元魔王さんは私にとってリアルの方のお得意様ですし」
勇者「私情持ち込みやがったぞコイツ!!」
怪人男「さぁステータスカンストの私の一撃を食らいなさい勇者さん!!」
怪人男「異次元転移砲(カークン・ドゥーイヴァン)!!」
勇者「ちょっとマテ!?それゲームの技じゃなくてお前のマジもんの魔法じゃねぇか!?ステータス上げた意味ねぇだろ!?」
怪人男「痛い目見てもらうにはちょうどいいです!!」
90: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:27:08.02 ID:mAB1UGKZ0
(勇者よ)
勇者(な、なんだ?頭の中に直接声が……)
(ファ○チキください)
勇者(そういうのいいから!?)
(このガチャを引け、早く)
勇者「なっ!?よくわからんが引けばいいんだな!!」
―残りのポイントを全て使用します―
勇者「ッ!?」
91: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:27:39.85 ID:mAB1UGKZ0
ガチャン
パァァァァァァァ
POM!!
姫「呼ばれて飛び出てじゃじゃーん」
怪人男「ンな!?」
ソシャゲ神「あれま、UN-Aさん直々登場」
姫「勇者よ、よくぞ私を引き当てた。EXを超えるレアリティ、XX(ダブルエックスレア)の異次元魔王の娘っ子が駆け付けたぞ」
パァァァァァァァ
POM!!
姫「呼ばれて飛び出てじゃじゃーん」
怪人男「ンな!?」
ソシャゲ神「あれま、UN-Aさん直々登場」
姫「勇者よ、よくぞ私を引き当てた。EXを超えるレアリティ、XX(ダブルエックスレア)の異次元魔王の娘っ子が駆け付けたぞ」
92: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:28:26.79 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「ちょっ!?何しに来たんですか!危ないから離れてなさい!」
姫「パパ、ほとほと呆れたぞ。まさか一ユーザー相手にチートまで使い始めるとは。やれやれだ」
勇者(そのチートも特に意味ないんだけどな……)
姫「と、言う分けでペナルティ・デスだ」
姫「超次元転移魔砲(カークン・ディドゥーイガルヴァン)」
ズアァァァァァァアァアアアアアアアアアアアアアアアア
怪人男「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
勇者「容赦なく普通に魔法ぶっ放したよ!?自分の親だよ!?」
姫「ふぅ……悪は滅んだ」
姫「パパ、ほとほと呆れたぞ。まさか一ユーザー相手にチートまで使い始めるとは。やれやれだ」
勇者(そのチートも特に意味ないんだけどな……)
姫「と、言う分けでペナルティ・デスだ」
姫「超次元転移魔砲(カークン・ディドゥーイガルヴァン)」
ズアァァァァァァアァアアアアアアアアアアアアアアアア
怪人男「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
勇者「容赦なく普通に魔法ぶっ放したよ!?自分の親だよ!?」
姫「ふぅ……悪は滅んだ」
93: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:28:52.99 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「グフッ……ま、まだ終わりませんよ……」ムクッ
勇者「タフだなオイ、アンタもう寝とけって……」
姫「もうステータスは弄れなくしておいたぞ、今更何をしても……」
怪人男「ふ、フフフ……とっておきの物を見せてあげましょう……」ドン☆
勇者「こ、これは!?」
怪人男「その名も!!"魔王ガチャ!!"」
怪人男「この"魔王ガチャ!!"は本来デバッグ用に作られたもので、回せば高確率でデバッグ専用に超極悪アイテムが出現するというものなのです!!」
ソシャゲ神(あ、"魔王ガチャ!!"って誤字じゃなくてエクスクラメーション入った名前なのね)
勇者「タフだなオイ、アンタもう寝とけって……」
姫「もうステータスは弄れなくしておいたぞ、今更何をしても……」
怪人男「ふ、フフフ……とっておきの物を見せてあげましょう……」ドン☆
勇者「こ、これは!?」
怪人男「その名も!!"魔王ガチャ!!"」
怪人男「この"魔王ガチャ!!"は本来デバッグ用に作られたもので、回せば高確率でデバッグ専用に超極悪アイテムが出現するというものなのです!!」
ソシャゲ神(あ、"魔王ガチャ!!"って誤字じゃなくてエクスクラメーション入った名前なのね)
94: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:29:21.52 ID:mAB1UGKZ0
怪人男「課金はお金に余裕がある人がやるんじゃない……心に余裕がある人がやるんです!!」
勇者「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」
怪人男「私の全てのアイテムをこのガチャに投入し新たに生まれ変われ!!即死装備よーーーーーー!!」
ガチャンガチャン
パァァァァァ
―R鉄の剣*―
怪人男「何 こ の ク ソ ガ チ ャ あ あ あ あ あ あ ! ?」ガンガンガン!!
怪人男「し か も レ ン タ ル あ あ あ あ あ あ あ ! ?」ガンガンガン!!
勇者「俺が魔王のところで引いたガチャと同じ奴だよねアレ」
ソシャゲ神「へー、デバッグ用だったんですかぁ。私も知らなかったなぁ」
姫「下らんあがきだ」
勇者「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」
怪人男「私の全てのアイテムをこのガチャに投入し新たに生まれ変われ!!即死装備よーーーーーー!!」
ガチャンガチャン
パァァァァァ
―R鉄の剣*―
怪人男「何 こ の ク ソ ガ チ ャ あ あ あ あ あ あ ! ?」ガンガンガン!!
怪人男「し か も レ ン タ ル あ あ あ あ あ あ あ ! ?」ガンガンガン!!
勇者「俺が魔王のところで引いたガチャと同じ奴だよねアレ」
ソシャゲ神「へー、デバッグ用だったんですかぁ。私も知らなかったなぁ」
姫「下らんあがきだ」
95: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:29:58.68 ID:mAB1UGKZ0
勇者「さて」
ゴッ
怪人男「」チーン
~最終章 完~
勇者「んじゃ、約束通り元の場所に帰してもらうぞ魔王」
姫「……」ギロッ
勇者「ハァ……ったく、俺はルールは守ってるぞ。つーかルール違反したのはあっちだろ」
怪人男「」チーン
姫「パパはどうでもいい。だが……」
ソシャゲ神(どうでもいいのか)
勇者「元の場所で話すぞ。それでいいだろう」
姫「……」
姫「わかった」
ソシャゲ神「それじゃあ私もお役御免ですね」
勇者「色々悪かったな」
ソシャゲ神「いえいえ、貴方以上に厄介な連中とよく戯れてますので、この程度慣れっこですよ」
勇者「そうかい」
ソシャゲ神「そんじゃ、また機会でもあれば。今度会うときはリアルの方にしたいですけどね」
ソシャゲ神「……アフターケアはしっかりしといてくださいね?」
勇者「言われなくとも」
ゴッ
怪人男「」チーン
~最終章 完~
勇者「んじゃ、約束通り元の場所に帰してもらうぞ魔王」
姫「……」ギロッ
勇者「ハァ……ったく、俺はルールは守ってるぞ。つーかルール違反したのはあっちだろ」
怪人男「」チーン
姫「パパはどうでもいい。だが……」
ソシャゲ神(どうでもいいのか)
勇者「元の場所で話すぞ。それでいいだろう」
姫「……」
姫「わかった」
ソシャゲ神「それじゃあ私もお役御免ですね」
勇者「色々悪かったな」
ソシャゲ神「いえいえ、貴方以上に厄介な連中とよく戯れてますので、この程度慣れっこですよ」
勇者「そうかい」
ソシャゲ神「そんじゃ、また機会でもあれば。今度会うときはリアルの方にしたいですけどね」
ソシャゲ神「……アフターケアはしっかりしといてくださいね?」
勇者「言われなくとも」
96: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:30:24.24 ID:mAB1UGKZ0
――――――
―――
―
魔王「ムー……」
勇者「むくれるなよ。騙すような事をして悪かったよ」
魔王「……」プイッ
勇者「ハァ……壊したスマホも新しいの買ってやるから」
魔王「勇者は」
勇者「ん?」
―――
―
魔王「ムー……」
勇者「むくれるなよ。騙すような事をして悪かったよ」
魔王「……」プイッ
勇者「ハァ……壊したスマホも新しいの買ってやるから」
魔王「勇者は」
勇者「ん?」
97: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:30:50.32 ID:mAB1UGKZ0
魔王「勇者は私とは10も歳が離れているから、私の事を全然分かってくれない」
魔王「ゲームをしていたのもワザとだ。そうすれば勇者がいつも私の事を見に来てくれた」
魔王「私は口下手だ。勇者と一緒に居ても何を話していいのかわからない」
魔王「だからこうして手元を忙しくして、目を逸らして誤魔化していた。一緒に居て嬉しいのに、勇者とは距離を取っていた。いや、取らなきゃ私の気が保てなかった」
魔王「……そんなものが、私にとっての勇者との繋がりだったんだ。それを壊されたら……私だって悲しい」
勇者「魔王……」
勇者「その後付設定やめろ。お前冒頭で"有り余る時間とお金をかけて育て上げてきたデータの価値なんて勇者には分からないんだ!!"って言ってたの忘れてないからな俺」
魔王「チッ、覚えていたか」
勇者「こいつ……」
魔王「ゲームをしていたのもワザとだ。そうすれば勇者がいつも私の事を見に来てくれた」
魔王「私は口下手だ。勇者と一緒に居ても何を話していいのかわからない」
魔王「だからこうして手元を忙しくして、目を逸らして誤魔化していた。一緒に居て嬉しいのに、勇者とは距離を取っていた。いや、取らなきゃ私の気が保てなかった」
魔王「……そんなものが、私にとっての勇者との繋がりだったんだ。それを壊されたら……私だって悲しい」
勇者「魔王……」
勇者「その後付設定やめろ。お前冒頭で"有り余る時間とお金をかけて育て上げてきたデータの価値なんて勇者には分からないんだ!!"って言ってたの忘れてないからな俺」
魔王「チッ、覚えていたか」
勇者「こいつ……」
98: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:31:28.63 ID:mAB1UGKZ0
魔王「だがな勇者。一応気持ちが踏みにじられた身としては深く傷ついてはいるんだ」
勇者「ああ、悪かったよ。そこは反省してる」
魔王「……」
勇者「なぁ魔王、たまには外に出ようぜ」
勇者「ハッピーメリークリスマス」スッ
魔王「あ……」
勇者「ゲームのせいで一日ズレちまったけど、俺からのプレゼントだ」
魔王「マフラー……」
勇者「それでお前と一緒に買い物でもしようと思ってたんだけどな。ま、今ならクリスマスの売れ残り商品なんかが安いとは思うが……どうする?家で引きこもってよくわからんゲームを続けるか、それとも俺と一緒に外に遊びに行くか」
魔王「いく!」ダキッ
勇者「よろしい!」
勇者「ああ、悪かったよ。そこは反省してる」
魔王「……」
勇者「なぁ魔王、たまには外に出ようぜ」
勇者「ハッピーメリークリスマス」スッ
魔王「あ……」
勇者「ゲームのせいで一日ズレちまったけど、俺からのプレゼントだ」
魔王「マフラー……」
勇者「それでお前と一緒に買い物でもしようと思ってたんだけどな。ま、今ならクリスマスの売れ残り商品なんかが安いとは思うが……どうする?家で引きこもってよくわからんゲームを続けるか、それとも俺と一緒に外に遊びに行くか」
魔王「いく!」ダキッ
勇者「よろしい!」
99: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:32:53.81 ID:mAB1UGKZ0
魔王「勇者!せっかくのデートだ、おごれ」
勇者「早速たかるのかよ……まったく、何が欲しいんだ?」
魔王「ゲーム!!」
勇者「終いにゃ切れるぞ……」
魔王「今度は二人で一緒に出来るやつがいい!!」
勇者「それならまぁ……悪くないかな」
魔王「へへ♪」
勇者(こうして俺のどうでもいいソシャゲ冒険は幕を閉じたのであった)
魔王「あ、勇者、洗濯物よかったのか?昨日の夜雨だったぞ」
勇者「」
勇者(……さて)
勇者(あえて触れなかったがとんでもない忘れ物をあの空間に残してきてしまったが……)
勇者「早速たかるのかよ……まったく、何が欲しいんだ?」
魔王「ゲーム!!」
勇者「終いにゃ切れるぞ……」
魔王「今度は二人で一緒に出来るやつがいい!!」
勇者「それならまぁ……悪くないかな」
魔王「へへ♪」
勇者(こうして俺のどうでもいいソシャゲ冒険は幕を閉じたのであった)
魔王「あ、勇者、洗濯物よかったのか?昨日の夜雨だったぞ」
勇者「」
勇者(……さて)
勇者(あえて触れなかったがとんでもない忘れ物をあの空間に残してきてしまったが……)
100: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:33:30.76 ID:mAB1UGKZ0
……
怪人男「ジングルベールジングルベール……」
怪人男「……」
怪人男「……」
怪人男「プレイ人口約10万人」
怪人男「最終章クリアプレイヤー約7万人」
怪人男「私を倒して得られるドロップ品がレアチケット1枚のみ。強さの割に旨み無し。周回する意味は無し」
怪人男「私の所に来る可能性があるプレイヤーは残り約3万人」
怪人男「私が倒さなきゃいけないプレイヤーの数は49635人……」
怪人男「……」
怪人男「……」
勇者(その後、すっかり忘れられていたアイツが救出されたのだが……それは半年先の話だったりする)
勇者「勇者のソシャゲ冒険記」 おわり!
怪人男「ジングルベールジングルベール……」
怪人男「……」
怪人男「……」
怪人男「プレイ人口約10万人」
怪人男「最終章クリアプレイヤー約7万人」
怪人男「私を倒して得られるドロップ品がレアチケット1枚のみ。強さの割に旨み無し。周回する意味は無し」
怪人男「私の所に来る可能性があるプレイヤーは残り約3万人」
怪人男「私が倒さなきゃいけないプレイヤーの数は49635人……」
怪人男「……」
怪人男「……」
勇者(その後、すっかり忘れられていたアイツが救出されたのだが……それは半年先の話だったりする)
勇者「勇者のソシャゲ冒険記」 おわり!
101: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:35:08.77 ID:mAB1UGKZ0
終わった
みんなもソシャゲやってみよう。際限なく金が無くなる恐怖に震えろ
もしお付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました
みんなもソシャゲやってみよう。際限なく金が無くなる恐怖に震えろ
もしお付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました
102: ◆cZ/h8axXSU 2016/12/26(月) 23:35:49.20 ID:mAB1UGKZ0
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 10:42:52.47 ID:qCiVi3Jeo
ソシャゲ怖えなあ
面白かった乙
面白かった乙
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 10:52:08.88 ID:Llx+Xeuto
乙
面白かった
面白かった
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 21:18:05.80 ID:7fJto4z4O
おお あんたか
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1482758566/
Entry ⇒ 2018.03.02 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
魔女「お眠りなさい、安らかに――」 女騎士「くっ、やめろ……!」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:11:42.71 ID:+UMJIFc20
百合です
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:13:07.76 ID:+UMJIFc20
魔女「ほうら、大人しく横になりなさい?」
女騎士「くぅ……! 負けん! こんなフカフカのベッドなんかに私は……」
魔女「はい、お行儀よくしましょうね~?」
女騎士「フカフカの枕になんかぁー!」
魔女「ちゃんと肩までお布団かけないと駄目よ」
女騎士「……お布団いいにおいするぅ……」
魔女「ほら、目を閉じて?」
女騎士「くっ、勝手に瞼が落ちて……!? どういうことなんだ……!」
魔女「さ、ご本を読んであげましょうねぇ」
女騎士「駄目だ、身体が……!? なんて恐ろしい魔法なんだ……。だが私は決して負けない! 魔女の思い通りになど、騎士の誇りにかけても絶対に――」
魔女「むかーしむかし、あるところに……」
女騎士「……スヤァ」
魔女「あらあら」
女騎士「くぅ……! 負けん! こんなフカフカのベッドなんかに私は……」
魔女「はい、お行儀よくしましょうね~?」
女騎士「フカフカの枕になんかぁー!」
魔女「ちゃんと肩までお布団かけないと駄目よ」
女騎士「……お布団いいにおいするぅ……」
魔女「ほら、目を閉じて?」
女騎士「くっ、勝手に瞼が落ちて……!? どういうことなんだ……!」
魔女「さ、ご本を読んであげましょうねぇ」
女騎士「駄目だ、身体が……!? なんて恐ろしい魔法なんだ……。だが私は決して負けない! 魔女の思い通りになど、騎士の誇りにかけても絶対に――」
魔女「むかーしむかし、あるところに……」
女騎士「……スヤァ」
魔女「あらあら」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:14:24.07 ID:+UMJIFc20
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
女騎士「熟睡してしまった……」
魔女「おめざのお茶はいかが?」
女騎士「ああ、いただこう……」
魔女「はい、……よく眠れたかしら?」
女騎士「そうだな、五日ぶりくらいに」グビー
魔女「もう……、駄目よう、ちゃんと寝ないと」
女騎士「それができれば、怪しげな魔女になど頼ったりするものか」
魔女「大変ねぇ」
女騎士「……た、他人には話すなよ。国と国の神に仕えるべき騎士が、異端の……」
魔女「おかわりいる?」
女騎士「いただこう。……異端の魔女のもとに出入りしているとなれば」グビー
魔女「一族郎党八つ裂き火あぶり?」
女騎士「あ、いや、そこまでじゃないかな……」
魔女「おかわりいる?」
女騎士「いただこう」
・
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女騎士「熟睡してしまった……」
魔女「おめざのお茶はいかが?」
女騎士「ああ、いただこう……」
魔女「はい、……よく眠れたかしら?」
女騎士「そうだな、五日ぶりくらいに」グビー
魔女「もう……、駄目よう、ちゃんと寝ないと」
女騎士「それができれば、怪しげな魔女になど頼ったりするものか」
魔女「大変ねぇ」
女騎士「……た、他人には話すなよ。国と国の神に仕えるべき騎士が、異端の……」
魔女「おかわりいる?」
女騎士「いただこう。……異端の魔女のもとに出入りしているとなれば」グビー
魔女「一族郎党八つ裂き火あぶり?」
女騎士「あ、いや、そこまでじゃないかな……」
魔女「おかわりいる?」
女騎士「いただこう」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:15:14.47 ID:+UMJIFc20
魔女「別にしないけどねぇ、人に話したりなんて」
女騎士「ならいいんだが……」
魔女「というか、私はただ、ベッドを貸してるだけだし」
女騎士「嘘だ! 絶対嘘だ!」
魔女「えぇ……」
女騎士「いつも不思議な魔法で眠らせるくせに! 私は! 私はそういうのはやだって言ってるのに、いっつも!」
魔女「だから、魔法なんて使ってないって言ってるじゃない……」
女騎士「嘘だぁ……、あんな簡単に眠らされるの……絶対普通じゃないもん……、絶対おかしいもん……」
魔女「もん、って」
女騎士「魔法だもん……」
魔女「……おかわりいる?」
女騎士「いただこう」
魔女「……魔法だと嫌なの?」
女騎士「それは、嫌だろう。なんか怖いし……」
魔女「じゃあ、もう来ない?」
女騎士「それは……」
魔女「……」
女騎士「ならいいんだが……」
魔女「というか、私はただ、ベッドを貸してるだけだし」
女騎士「嘘だ! 絶対嘘だ!」
魔女「えぇ……」
女騎士「いつも不思議な魔法で眠らせるくせに! 私は! 私はそういうのはやだって言ってるのに、いっつも!」
魔女「だから、魔法なんて使ってないって言ってるじゃない……」
女騎士「嘘だぁ……、あんな簡単に眠らされるの……絶対普通じゃないもん……、絶対おかしいもん……」
魔女「もん、って」
女騎士「魔法だもん……」
魔女「……おかわりいる?」
女騎士「いただこう」
魔女「……魔法だと嫌なの?」
女騎士「それは、嫌だろう。なんか怖いし……」
魔女「じゃあ、もう来ない?」
女騎士「それは……」
魔女「……」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:15:59.27 ID:+UMJIFc20
女騎士「ま、また世話になる、かも……。眠れないようだったら……」
魔女「嫌なんじゃないの?」
女騎士「……魔法じゃないんだよな? 本当に」
魔女「魔法じゃないけど。魔女は魔法なんて使えないし」
女騎士「なら、まぁ……」
魔女「……」
女騎士「嫌ってわけじゃ、ない……かな……」
魔女「……おかわりいる?」
女騎士「いただ……すごい飲ませてくるなお前!」
魔女「作りすぎたのよう」
女騎士「たぷたぷなんだが!?」
・
・
・
魔女「嫌なんじゃないの?」
女騎士「……魔法じゃないんだよな? 本当に」
魔女「魔法じゃないけど。魔女は魔法なんて使えないし」
女騎士「なら、まぁ……」
魔女「……」
女騎士「嫌ってわけじゃ、ない……かな……」
魔女「……おかわりいる?」
女騎士「いただ……すごい飲ませてくるなお前!」
魔女「作りすぎたのよう」
女騎士「たぷたぷなんだが!?」
・
・
・
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:17:13.84 ID:+UMJIFc20
~翌日・都の中心部、騎士団詰所~
・
・
・
副団長「それでは、騎士団長の女騎士殿より、訓示をたまわる!」
女騎士「……コホン、みn――」
副団長「諸君は清聴するよう!」
女騎士「………………」
副団長「では団長殿」
女騎士「あ、うん」
女騎士「えー……、みなも知っての通り、先の大戦から5年。我らが王都はかつてない平和を享受している」
女騎士「民は増え、街は大いに賑わっている」
女騎士「それに伴い、国の矛であり盾である騎士の役目も、変わりつつある……」
女騎士「近年では、いくつもの騎士団が解散、残る騎士団も縮小を余儀なくされているが……」
女騎士「戦場ばかりが騎士の舞台ではない!」
女騎士「今の平和な世こそ、人々が心安く暮らせるよう尽力する!」
女騎士「これこそが騎士の矜持であり、我らが『銀顎のオオクワガタ』騎士団の誇りである!」
女騎士「おのおの、そのことを深く、心に留めておくように!!」
「「「「ハイ!!」」」」
・
・
・
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:18:11.22 ID:+UMJIFc20
~訓練所~
騎士A「団長さぁ……」
騎士B「ん?」
騎士A「今日は元気そうだったな」
騎士B「な。最近何だかキツそうだったけど」
騎士A「クマとか作ってなー」
騎士B「悪い話ばっかりだもんな、ここんとこ」
騎士A「背負いこむもんねぇ」
騎士B「背負い込むもんなぁ」
騎士A「……でも、たまーにあるよな、良さそうな日」
騎士B「たまにあるな」
騎士A「何だろうねぇ」
騎士B「何だろうなぁ」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:19:12.67 ID:+UMJIFc20
騎士A「良さそうな日の団長さぁ……」
騎士B「ん?」
騎士A「良いよねぇ」
騎士B「……良いよなぁ」
騎士A「パァっとさぁ、花みたいでさぁ、あの顔で『がんばったな!』なんて言われた日にはさぁ! 俺はさぁ!!」
騎士B「落ち着いて。分かるけど落ち着いて。すごい分かるけど」
騎士A「毎日良さそうだといいんだけどねぇ」
騎士B「そうだなぁ」
女騎士「なーんだぁーお前たちぃー」
騎士A「あっ」
騎士B「ひっ」
騎士B「ん?」
騎士A「良いよねぇ」
騎士B「……良いよなぁ」
騎士A「パァっとさぁ、花みたいでさぁ、あの顔で『がんばったな!』なんて言われた日にはさぁ! 俺はさぁ!!」
騎士B「落ち着いて。分かるけど落ち着いて。すごい分かるけど」
騎士A「毎日良さそうだといいんだけどねぇ」
騎士B「そうだなぁ」
女騎士「なーんだぁーお前たちぃー」
騎士A「あっ」
騎士B「ひっ」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:19:53.97 ID:+UMJIFc20
女騎士「私の考えた訓練メニューじゃ、しゃべりながらでも余裕ってわけだなぁー!?」
騎士A「い、いや、そそそういうわけではぁ……」
女騎士「いいだろう! 特別に! 私が! みっちりと! 稽古をつけてやるからな!」
騎士B「あ、ぁ……」
女騎士「優秀な我らが騎士二人相手だー! これは私も手加減できんなぁー! はーはっはっは!!」
騎士A(いい笑顔だ……)
騎士B(いい笑顔だ……)
・
・
・
騎士A「い、いや、そそそういうわけではぁ……」
女騎士「いいだろう! 特別に! 私が! みっちりと! 稽古をつけてやるからな!」
騎士B「あ、ぁ……」
女騎士「優秀な我らが騎士二人相手だー! これは私も手加減できんなぁー! はーはっはっは!!」
騎士A(いい笑顔だ……)
騎士B(いい笑顔だ……)
・
・
・
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:20:29.78 ID:+UMJIFc20
~夜・女騎士宅~
女騎士「……ふぅ」
女騎士「今日の分の作業は、これで終わりかな」
女騎士「明日の準備も済んだ……」
女騎士(今日は特にいい汗流したし)
女騎士(よく眠れそうだな……!)
女騎士「さて……、父様、母様、おやすみなさい」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「…………」
女騎士「………………」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:20:56.36 ID:+UMJIFc20
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(明日は他所の騎士団との公開演習……)
女騎士(……)
女騎士(そういえば……)
女騎士(万が一の時の、救護の手順は大丈夫だったろうか……)
女騎士「……」
女騎士(……念のため、最寄りの医療施設を調べ――……)
女騎士(いや、明日の朝、事前に連絡を入れて……)
女騎士「……」モンモン
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:21:54.41 ID:+UMJIFc20
女騎士(……演習中の補給は、ちゃんと準備していただろうか?)
女騎士(公開イベントだ、市民にも、もし何かあったら……)
女騎士「……」モンモンモン
女騎士(支度のこと、スケジュールのこと、予算のこと)
女騎士(騎士団のこれから、団員の状態は、モチベーションは――……)
女騎士「……」モンモンモンモン
女騎士「……」
女騎士「…………」
女騎士「………………」ガバッ
女騎士「……明日の準備も、再点検しておこう……」
・
・
・
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:22:20.39 ID:+UMJIFc20
・
・
・
女騎士「……」カリカリカリカリ
女騎士「……」ペラ
女騎士「……」カリカリ
女騎士(……駄目だ)
女騎士(全然眠気が来ない……)
女騎士「……」
女騎士(まあ、いいか)
女騎士(どうせやることは、山のようにあるんだ)
女騎士(そうだ、眠くなるまで去年の出納帳の整理も――……)
女騎士「…………」カリカリ
女騎士「………………」カリカリカリカリ
女騎士「……………………」
・
・
・
・
・
女騎士「……」カリカリカリカリ
女騎士「……」ペラ
女騎士「……」カリカリ
女騎士(……駄目だ)
女騎士(全然眠気が来ない……)
女騎士「……」
女騎士(まあ、いいか)
女騎士(どうせやることは、山のようにあるんだ)
女騎士(そうだ、眠くなるまで去年の出納帳の整理も――……)
女騎士「…………」カリカリ
女騎士「………………」カリカリカリカリ
女騎士「……………………」
・
・
・
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/12(土) 19:22:49.28 ID:+UMJIFc20
・
・
・
チュン
チュンチュン
女騎士「……!」ハッ
女騎士「……あれ」
女騎士(なんか、もう……)
女騎士(微妙に明るい……)
女騎士「……」
女騎士「……」ハァ
女騎士(少しだけでも……)
女騎士(眠らないと、いや、休まないとな……)
女騎士「……」
女騎士「おやすみなさい……」
チュンチュン
チュン
・
・
チュン
チュンチュン
女騎士「……!」ハッ
女騎士「……あれ」
女騎士(なんか、もう……)
女騎士(微妙に明るい……)
女騎士「……」
女騎士「……」ハァ
女騎士(少しだけでも……)
女騎士(眠らないと、いや、休まないとな……)
女騎士「……」
女騎士「おやすみなさい……」
チュンチュン
チュン
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:08:27.82 ID:RtCOUatc0
・
・
・
~数日後~
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「……」
少女「……」
魔女「……」
少女「……」ジーーー
魔女「……ええと」
少女「……」
魔女「……」
魔女(……とんがり帽子、とんがり帽子)
魔女(……)ゴソゴソ
魔女(あった)
魔女「……」カブリカブリ
少女「……!」
魔女「……はい」
少女「魔女だ……!」
魔女「魔女よう」
・
・
~数日後~
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「……」
少女「……」
魔女「……」
少女「……」ジーーー
魔女「……ええと」
少女「……」
魔女「……」
魔女(……とんがり帽子、とんがり帽子)
魔女(……)ゴソゴソ
魔女(あった)
魔女「……」カブリカブリ
少女「……!」
魔女「……はい」
少女「魔女だ……!」
魔女「魔女よう」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:09:03.53 ID:RtCOUatc0
少女「えっとね、おばあちゃんのね、あのね、腰の……、えっと、飲むやつ? 粉の?」
魔女「……ああ、あのお婆さんの。ちょっと待っててね……」
少女「……」
魔女「ええと……」ゴソゴソ
少女「……ほうきは?」
魔女「今は使わないわねぇ」ゴソゴソ
少女「………………」ガッカリ
魔女「……あった。はい、これね」
少女「ありがとー!」
魔女「どういたしまして」
少女「ばいばーい」
魔女「一人で帰れるかしら?」
少女「帰れるー!」トタタタ
魔女「気を付けてねぇ」ヒラヒラ
魔女「……ああ、あのお婆さんの。ちょっと待っててね……」
少女「……」
魔女「ええと……」ゴソゴソ
少女「……ほうきは?」
魔女「今は使わないわねぇ」ゴソゴソ
少女「………………」ガッカリ
魔女「……あった。はい、これね」
少女「ありがとー!」
魔女「どういたしまして」
少女「ばいばーい」
魔女「一人で帰れるかしら?」
少女「帰れるー!」トタタタ
魔女「気を付けてねぇ」ヒラヒラ
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:10:34.38 ID:RtCOUatc0
魔女「……ふぅ」
魔女「……」
魔女「……あ」
魔女(……そういえば……)
魔女「……1、2、3、4、5……」
魔女(……あれから、五日)
魔女「……」
魔女「そろそろ来るかしらねぇ……」
魔女「……」
魔女「シーツ、新しいの出そうかしら」
魔女「……」
魔女「……ふふっ」
・
・
・
魔女「……」
魔女「……あ」
魔女(……そういえば……)
魔女「……1、2、3、4、5……」
魔女(……あれから、五日)
魔女「……」
魔女「そろそろ来るかしらねぇ……」
魔女「……」
魔女「シーツ、新しいの出そうかしら」
魔女「……」
魔女「……ふふっ」
・
・
・
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:11:07.32 ID:RtCOUatc0
~都の中心部、騎士団詰所~
・
・
・
副団長「それでは、騎士団長の女騎士殿より、訓示をたまわる!」
女騎士「…………」
副団長「諸君は清聴するよう!」
女騎士「…………」
副団長「……団長殿」
女騎士「……」ハッ
女騎士「コホン……、うん、うむ、えーと」
女騎士「みなの日ごろの尽力に、とても満足しー、また感謝しておりぃー、そしてー――……」
女騎士「――くれぐれも健康に注意しー――……」
女騎士「特に朝晩冷えやすい時間帯などはー――……」
女騎士「――」クドクド
女騎士「――――」クドクド
騎士A(クドクドしてる……)
騎士B(クドクドしてるけど内容はフワフワしてる……)
騎士A「良くなさそうだな」
騎士B「な」
・
・
・
・
・
・
副団長「それでは、騎士団長の女騎士殿より、訓示をたまわる!」
女騎士「…………」
副団長「諸君は清聴するよう!」
女騎士「…………」
副団長「……団長殿」
女騎士「……」ハッ
女騎士「コホン……、うん、うむ、えーと」
女騎士「みなの日ごろの尽力に、とても満足しー、また感謝しておりぃー、そしてー――……」
女騎士「――くれぐれも健康に注意しー――……」
女騎士「特に朝晩冷えやすい時間帯などはー――……」
女騎士「――」クドクド
女騎士「――――」クドクド
騎士A(クドクドしてる……)
騎士B(クドクドしてるけど内容はフワフワしてる……)
騎士A「良くなさそうだな」
騎士B「な」
・
・
・
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:11:53.95 ID:RtCOUatc0
・
・
・
女騎士「……うぅぅ」
女騎士(結局あの日から、ろくに眠れていない……)
女騎士(こんなに眠たいのに、ベッドに入ると眼が冴えるのだものな……)
女騎士(不思議だ……)
女騎士「不思議だなぁぁ……」
副団長「何がです」
女騎士「……や、何でもない。気にしないでくれ」
副団長「はぁ」
女騎士「……」
副団長「……」
・
・
女騎士「……うぅぅ」
女騎士(結局あの日から、ろくに眠れていない……)
女騎士(こんなに眠たいのに、ベッドに入ると眼が冴えるのだものな……)
女騎士(不思議だ……)
女騎士「不思議だなぁぁ……」
副団長「何がです」
女騎士「……や、何でもない。気にしないでくれ」
副団長「はぁ」
女騎士「……」
副団長「……」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:12:32.89 ID:RtCOUatc0
副団長「……今日はもう、帰られた方がよろしいかと」
女騎士「む……、だがまだ、残務があって――」
副団長「私の方で、あらかた片付けましたから」
女騎士「あ。……そうだ、訓練場の整理も……」
副団長「若手がすべて済ませています」
女騎士「……夜警の」
副団長「班割りは来月分まで、全部終わらせてしまっています。貴方が」
女騎士「えーと、再来月分を……」
副団長「団長殿」
女騎士「うん」
副団長「お疲れさまでした」ペコリ
女騎士「…………はい」
女騎士「む……、だがまだ、残務があって――」
副団長「私の方で、あらかた片付けましたから」
女騎士「あ。……そうだ、訓練場の整理も……」
副団長「若手がすべて済ませています」
女騎士「……夜警の」
副団長「班割りは来月分まで、全部終わらせてしまっています。貴方が」
女騎士「えーと、再来月分を……」
副団長「団長殿」
女騎士「うん」
副団長「お疲れさまでした」ペコリ
女騎士「…………はい」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:13:47.82 ID:RtCOUatc0
女騎士「……ふぅ」
女騎士(ふがいない……。体よく追い払われてしまった……)
女騎士(だが、確かにこのままでは……、団員にも迷惑をかけてしまう)
女騎士(どうにか休息を取らなければ……)
女騎士(騎士団のためにも……!)
女騎士「……」
女騎士「……」ハァ
女騎士「……やむを得ない」
女騎士「また世話になるか……」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:14:33.57 ID:RtCOUatc0
・
・
・
~王都のはずれの路地裏~
女騎士「……」コソコソ
女騎士「……」コソッ
都民A「なあ、聞いたことあるだろ、お前も」
都民B「あぁ、『東の蜘蛛の森の魔女』だろ?」
女騎士「……!」ビクッ
都民A「残酷で恐ろしい怪物らしい……」
都民B「化け物じみた姿らしい……」
女騎士「……」
女騎士「…………」
女騎士(……美人だったぞ、普通に)
都民A「身の丈3メートルで腕が8本」
都民B「正体は蜘蛛の化身で人間を食べる」
女騎士(食べ……えぇ)
都民A「あと火を吐く」
都民B「火か……」
女騎士(火かぁー…………)
・
・
~王都のはずれの路地裏~
女騎士「……」コソコソ
女騎士「……」コソッ
都民A「なあ、聞いたことあるだろ、お前も」
都民B「あぁ、『東の蜘蛛の森の魔女』だろ?」
女騎士「……!」ビクッ
都民A「残酷で恐ろしい怪物らしい……」
都民B「化け物じみた姿らしい……」
女騎士「……」
女騎士「…………」
女騎士(……美人だったぞ、普通に)
都民A「身の丈3メートルで腕が8本」
都民B「正体は蜘蛛の化身で人間を食べる」
女騎士(食べ……えぇ)
都民A「あと火を吐く」
都民B「火か……」
女騎士(火かぁー…………)
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:15:02.88 ID:RtCOUatc0
――都の東は蜘蛛の森――
――獣も恐れる深い森――
――そこには魔女が住んでいる――
――怖い魔女が住んでいて――
――森に迷った子を捕まえて――
――醜い蜘蛛に変えてしまう――
――蜘蛛の森には近づくな――
――小さい子供は気をつけろ――
女騎士「……」
女騎士「……」コソコソ
・
・
・
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:15:51.85 ID:RtCOUatc0
・
・
・
カラン カラン
魔女「……あら、いらっしゃい」
女騎士「邪魔をす――……おぉ」
魔女「?」
女騎士「魔女だ……」
魔女「魔女よう」
女騎士「いや、というか、なんだ、見た目が」
魔女「?」
女騎士「あの、帽子……とんがり帽子」
魔女「あ……」
女騎士「ああ、いや、似合ってる――け――」
魔女「……」ハズシハズシ
女騎士「ど――……」
魔女「……あらあら」シマイシマイ
女騎士「……」
・
・
カラン カラン
魔女「……あら、いらっしゃい」
女騎士「邪魔をす――……おぉ」
魔女「?」
女騎士「魔女だ……」
魔女「魔女よう」
女騎士「いや、というか、なんだ、見た目が」
魔女「?」
女騎士「あの、帽子……とんがり帽子」
魔女「あ……」
女騎士「ああ、いや、似合ってる――け――」
魔女「……」ハズシハズシ
女騎士「ど――……」
魔女「……あらあら」シマイシマイ
女騎士「……」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 16:16:26.16 ID:RtCOUatc0
魔女「あらあらあら」
女騎士「……」
魔女「見なかったことにしてちょうだいねぇ」アセアセ
女騎士「……」
女騎士(照れてる……)
女騎士(普通に可愛く照れてる)
魔女「ね?」
女騎士「あ、あぁ……」
女騎士(なんか……)
女騎士(普通だよなぁ……)
女騎士「火は吐かないよなぁ……」
魔女「え? 何の話?」
女騎士「……」
魔女「見なかったことにしてちょうだいねぇ」アセアセ
女騎士「……」
女騎士(照れてる……)
女騎士(普通に可愛く照れてる)
魔女「ね?」
女騎士「あ、あぁ……」
女騎士(なんか……)
女騎士(普通だよなぁ……)
女騎士「火は吐かないよなぁ……」
魔女「え? 何の話?」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:58:59.44 ID:pkrjxQxe0
女騎士(……なんとなく、雰囲気で年上だと思っていたが)
女騎士(照れてはにかむと、まだ少女のようにも見えるし……)
女騎士(不思議だ……)
女騎士「……」フワフワ
魔女「……?」
女騎士(もしかしたら……)
女騎士(私のほうが、おねえさんなのかなぁ……)
女騎士「でも3メートルだしなぁぁ……」フワフワ
魔女「……あの、騎士さん? 大丈夫かしら? すごいフワフワしてるけど」
女騎士「……ん? あ、あぁ? 何?」ハッ
魔女「大丈夫? って言ったの。もう……、ふらふらになるまで起きてることないじゃない」
女騎士「望んでそうしてるわけじゃないし……」
魔女「クマもこんな……、うわ……え? わぁ、え……?」マジマジ
女騎士「近い近い近い近い」
女騎士(照れてはにかむと、まだ少女のようにも見えるし……)
女騎士(不思議だ……)
女騎士「……」フワフワ
魔女「……?」
女騎士(もしかしたら……)
女騎士(私のほうが、おねえさんなのかなぁ……)
女騎士「でも3メートルだしなぁぁ……」フワフワ
魔女「……あの、騎士さん? 大丈夫かしら? すごいフワフワしてるけど」
女騎士「……ん? あ、あぁ? 何?」ハッ
魔女「大丈夫? って言ったの。もう……、ふらふらになるまで起きてることないじゃない」
女騎士「望んでそうしてるわけじゃないし……」
魔女「クマもこんな……、うわ……え? わぁ、え……?」マジマジ
女騎士「近い近い近い近い」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 21:59:33.61 ID:pkrjxQxe0
~寝室~
・
・
・
魔女「おふろ、ちゃんと温まったかしら?」
女騎士「あぁ……」ショボショボ
魔女「あら……もうおねむ?」
女騎士「おかしい……やっぱり絶対おかしい……っ」
魔女「ふふ、まだ言ってる」
女騎士「こんなに強い眠気……、尋常ではない! いつだ!? いったいいつの間に魔法をかけた……っ!?」
魔女「魔法じゃないって言ってるのにぃ」
女騎士「だったらなぜ!? なぜこんなに眠くなるというのだ!」
魔女「寝てないからじゃないかしら」
女騎士「なーるほどなぁー!!」ウトウト
魔女「おしゃべりしてないで、ほら……横になりなさい?」
女騎士「うん……」ウトウト
・
・
・
魔女「おふろ、ちゃんと温まったかしら?」
女騎士「あぁ……」ショボショボ
魔女「あら……もうおねむ?」
女騎士「おかしい……やっぱり絶対おかしい……っ」
魔女「ふふ、まだ言ってる」
女騎士「こんなに強い眠気……、尋常ではない! いつだ!? いったいいつの間に魔法をかけた……っ!?」
魔女「魔法じゃないって言ってるのにぃ」
女騎士「だったらなぜ!? なぜこんなに眠くなるというのだ!」
魔女「寝てないからじゃないかしら」
女騎士「なーるほどなぁー!!」ウトウト
魔女「おしゃべりしてないで、ほら……横になりなさい?」
女騎士「うん……」ウトウト
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:00:07.91 ID:pkrjxQxe0
魔女(前より素直ね……)
魔女「……」
魔女(それだけ眠いのかしら)
女騎士「……うぅん」モゾモゾ
魔女「ほうら、お手々かたづけて」
女騎士「シーツすべすべできもちいい……」
魔女「おろし立てですからね。ほら、目を閉じて」
女騎士「……すっかり就寝の体勢になって、完全に術中に嵌っているように見えるだろう? だが、甘いな! なぜこうして無駄口をたたき続けているか? そう、こうして口を閉じずにしゃべり続けていれば、意識を保て決して眠りに落ちることはないっ!」
魔女「ご本を読んであげましょうねぇ」
女騎士「ふふふ、私とて騎士の端くれ、いつもそうやすやすと手玉に取られると思ったら大間違いだ! さあ、今日こそ見極めてやるぞ! いったい私に何をしているのか、どうやって眠りに誘っていr――……」
魔女「むかーしむかし、あるところに、悪い魔女と良くない魔女が……」
女騎士「スヤァ」
魔女「あらあら」
・
・
・
魔女「……」
魔女(それだけ眠いのかしら)
女騎士「……うぅん」モゾモゾ
魔女「ほうら、お手々かたづけて」
女騎士「シーツすべすべできもちいい……」
魔女「おろし立てですからね。ほら、目を閉じて」
女騎士「……すっかり就寝の体勢になって、完全に術中に嵌っているように見えるだろう? だが、甘いな! なぜこうして無駄口をたたき続けているか? そう、こうして口を閉じずにしゃべり続けていれば、意識を保て決して眠りに落ちることはないっ!」
魔女「ご本を読んであげましょうねぇ」
女騎士「ふふふ、私とて騎士の端くれ、いつもそうやすやすと手玉に取られると思ったら大間違いだ! さあ、今日こそ見極めてやるぞ! いったい私に何をしているのか、どうやって眠りに誘っていr――……」
魔女「むかーしむかし、あるところに、悪い魔女と良くない魔女が……」
女騎士「スヤァ」
魔女「あらあら」
・
・
・
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:00:48.25 ID:pkrjxQxe0
・
・
・
女騎士「むぅぅ……」
魔女「お茶、苦すぎたかしら」
女騎士「ちょうどいい! おいしい!」グビー
魔女「あらそう……、まだ寝足りない?」
女騎士「いいや、じゅーうぶん眠れた! 快眠だった!」
魔女「ならどうして、そんな難しい顔してるのよ」
女騎士「よく眠れてしまうからだ!」
魔女「えぇ……」
女騎士「どうして普段はちっとも寝付けないのに、お前のベッドだとぐっすりなのか……!」
魔女「知らないけど……」
女騎士「やっぱり魔法……」
魔女「違うったら」
女騎士「……そうじゃなければ、他に何か理由があるはずだ」
魔女「まあねぇ」
・
・
女騎士「むぅぅ……」
魔女「お茶、苦すぎたかしら」
女騎士「ちょうどいい! おいしい!」グビー
魔女「あらそう……、まだ寝足りない?」
女騎士「いいや、じゅーうぶん眠れた! 快眠だった!」
魔女「ならどうして、そんな難しい顔してるのよ」
女騎士「よく眠れてしまうからだ!」
魔女「えぇ……」
女騎士「どうして普段はちっとも寝付けないのに、お前のベッドだとぐっすりなのか……!」
魔女「知らないけど……」
女騎士「やっぱり魔法……」
魔女「違うったら」
女騎士「……そうじゃなければ、他に何か理由があるはずだ」
魔女「まあねぇ」
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:02:07.35 ID:pkrjxQxe0
女騎士「それを突き止めなければ、私はこの先もずっと睡眠不足のまま……っ」
魔女「考えすぎよぉ」
女騎士「だからこそ、ギリギリまで意識を保って、眠気の正体を探ろうとしたのだが……」
魔女「すぐ寝たじゃない」
女騎士「すぐ寝ちゃったんだよなぁ」
魔女「いいじゃない、よく眠れたんだったら」
女騎士「いいや、何か安眠の決定的な方法があるはずなんだ……、それを手に入れないと……」
魔女「……」
女騎士「私の騎士団は……、今が正念場なんだ。団長の私がフラフラで、だらしない状態では……」
魔女「……」
女騎士「みなに迷惑をかけてしまう……」
魔女「……」
女騎士「団のためにも、みんなのためにも……」
魔女「……頭」
女騎士「……え?」
魔女「考えすぎよぉ」
女騎士「だからこそ、ギリギリまで意識を保って、眠気の正体を探ろうとしたのだが……」
魔女「すぐ寝たじゃない」
女騎士「すぐ寝ちゃったんだよなぁ」
魔女「いいじゃない、よく眠れたんだったら」
女騎士「いいや、何か安眠の決定的な方法があるはずなんだ……、それを手に入れないと……」
魔女「……」
女騎士「私の騎士団は……、今が正念場なんだ。団長の私がフラフラで、だらしない状態では……」
魔女「……」
女騎士「みなに迷惑をかけてしまう……」
魔女「……」
女騎士「団のためにも、みんなのためにも……」
魔女「……頭」
女騎士「……え?」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:02:38.88 ID:pkrjxQxe0
魔女「寝癖、ついてるわ」
女騎士「えっ、うそ……? どこ? こっち? ここ?」
魔女「じっとしてて」カタン
女騎士「あっ」
魔女「……~♪」
シュッ シュ
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(花の香り……)
女騎士(何かの精油だろうか……?)
女騎士(甘いような、辛いような……)
女騎士(不思議な香り……)
魔女「~♪」
女騎士(……魔女の指先と、硬い櫛の感触が)
女騎士(交互に頭を撫でて……)
女騎士(何だろう……)
女騎士(気持ちが……)
女騎士「えっ、うそ……? どこ? こっち? ここ?」
魔女「じっとしてて」カタン
女騎士「あっ」
魔女「……~♪」
シュッ シュ
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(花の香り……)
女騎士(何かの精油だろうか……?)
女騎士(甘いような、辛いような……)
女騎士(不思議な香り……)
魔女「~♪」
女騎士(……魔女の指先と、硬い櫛の感触が)
女騎士(交互に頭を撫でて……)
女騎士(何だろう……)
女騎士(気持ちが……)
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:03:41.64 ID:pkrjxQxe0
魔女「……はい、直ったわ」
女騎士「……ハッ」
魔女「はい、鏡」
女騎士「あ、あぁ……、ありがとう……」
魔女「……♪」ナデナデ
女騎士「……?」
魔女「……ねえ、騎士さん」
女騎士「ん?」
魔女「人はねぇ、夢の世界に入るのに、あんまり沢山の現実の荷物は、持ち込めないのよ」
女騎士「……へ?」
魔女「人は誰でも、夜になれば神秘の大海を渡って、幻想に満ちた夢の世界を訪れる……」
女騎士「……あの」
魔女「けれどその海を渡る小舟は、本当に、とても小さくて……、人ひとりを運ぶのがやっとなの」
女騎士「……あ、あの、ちょっと、魔女さん?」
魔女「何?」
女騎士「……ハッ」
魔女「はい、鏡」
女騎士「あ、あぁ……、ありがとう……」
魔女「……♪」ナデナデ
女騎士「……?」
魔女「……ねえ、騎士さん」
女騎士「ん?」
魔女「人はねぇ、夢の世界に入るのに、あんまり沢山の現実の荷物は、持ち込めないのよ」
女騎士「……へ?」
魔女「人は誰でも、夜になれば神秘の大海を渡って、幻想に満ちた夢の世界を訪れる……」
女騎士「……あの」
魔女「けれどその海を渡る小舟は、本当に、とても小さくて……、人ひとりを運ぶのがやっとなの」
女騎士「……あ、あの、ちょっと、魔女さん?」
魔女「何?」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:04:12.09 ID:pkrjxQxe0
女騎士「……メルヘンの話?」
魔女「魔術の話よ」
女騎士「まじゅ……」
魔女「人間は、みんな少なからず、不思議な力を持っていて」
女騎士「……」
魔女「知らず知らず、その力を使っていて」
女騎士「……」
魔女「たとえば、夜毎に、見たこともない異世界を訪れることができる」
女騎士「……」
魔女「眠りとは、その力を使うための、瞑想に深く入った状態のことよ」
女騎士「嘘ぉ……」
魔女「うふふ、ひとまず信じておきなさないな」
女騎士「……」
魔女「何事も、信じることが大切よ」
女騎士「……うん」
魔女「魔術の話よ」
女騎士「まじゅ……」
魔女「人間は、みんな少なからず、不思議な力を持っていて」
女騎士「……」
魔女「知らず知らず、その力を使っていて」
女騎士「……」
魔女「たとえば、夜毎に、見たこともない異世界を訪れることができる」
女騎士「……」
魔女「眠りとは、その力を使うための、瞑想に深く入った状態のことよ」
女騎士「嘘ぉ……」
魔女「うふふ、ひとまず信じておきなさないな」
女騎士「……」
魔女「何事も、信じることが大切よ」
女騎士「……うん」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:04:52.70 ID:pkrjxQxe0
魔女「けれど、あまり現実を背負い込んでいると、その力が衰えてしまう」
女騎士「……」
魔女「だからね、騎士さん……。ベッドの中にまで、沢山の現実を持ち込んじゃ、いけないの」
女騎士「だがな……、考えまいとしても、頭が勝手に……」
魔女「何か浮かんだら、すぐに手放す。小舟に知らず上がってきた魚を、海に放してあげるみたいに」
女騎士「……」
魔女「まあ、訓練よ」
女騎士「訓練かぁ……」
魔女「……難しそう?」
女騎士「心配は残る」
魔女「心配性なのねぇ……」
女騎士「生まれつきな」
女騎士「……」
魔女「だからね、騎士さん……。ベッドの中にまで、沢山の現実を持ち込んじゃ、いけないの」
女騎士「だがな……、考えまいとしても、頭が勝手に……」
魔女「何か浮かんだら、すぐに手放す。小舟に知らず上がってきた魚を、海に放してあげるみたいに」
女騎士「……」
魔女「まあ、訓練よ」
女騎士「訓練かぁ……」
魔女「……難しそう?」
女騎士「心配は残る」
魔女「心配性なのねぇ……」
女騎士「生まれつきな」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:05:19.44 ID:pkrjxQxe0
魔女「うーん……、……あっ」
女騎士「うん?」
魔女「じゃあ、ね、騎士さん。貴方にこれ、貸してあげるわ」
女騎士「これ?」
魔女「はいっ」
『3人の魔女と塔の姫』
女騎士「……童話?」
魔女「童話!」
女騎士「……」
女騎士(やっぱりメルヘンだ……)
女騎士「いや、魔女、私はこういうのはあまり――……」
魔女「うふふ、馬鹿にしたらいけないわよ。こういうお話って、意外と夢中になるんだから!」
女騎士「……」
女騎士(……こういうの好きなんだ……)
女騎士「……」
女騎士「うん?」
魔女「じゃあ、ね、騎士さん。貴方にこれ、貸してあげるわ」
女騎士「これ?」
魔女「はいっ」
『3人の魔女と塔の姫』
女騎士「……童話?」
魔女「童話!」
女騎士「……」
女騎士(やっぱりメルヘンだ……)
女騎士「いや、魔女、私はこういうのはあまり――……」
魔女「うふふ、馬鹿にしたらいけないわよ。こういうお話って、意外と夢中になるんだから!」
女騎士「……」
女騎士(……こういうの好きなんだ……)
女騎士「……」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/14(月) 22:05:58.59 ID:pkrjxQxe0
魔女「騎士さんの寝物語にも使ってるけど……、いつもさわりのところで寝ちゃうからねぇ」
女騎士「むぐ」
魔女「せっかくだから、どんなお話か、寝る前に読んでごらんなさいな」
女騎士「ううむ……まぁ、せっかくだしな……」
魔女「そうそう」
女騎士「……やっぱり、お前は不思議だなぁ……」
魔女「そう?」
女騎士「なんかさっきの話は、ちょっと、魔女っぽかった」
魔女「魔女よう……」
女騎士「むぐ」
魔女「せっかくだから、どんなお話か、寝る前に読んでごらんなさいな」
女騎士「ううむ……まぁ、せっかくだしな……」
魔女「そうそう」
女騎士「……やっぱり、お前は不思議だなぁ……」
魔女「そう?」
女騎士「なんかさっきの話は、ちょっと、魔女っぽかった」
魔女「魔女よう……」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:52:37.27 ID:DwdTGXAK0
・
・
・
~翌日~
~王都・訓練所~
・
・
・
女騎士「……――であるからして、合同訓練いただく老騎士殿と――……」
老騎士「……」
女騎士「彼の『水晶羽のトンボ』騎士団は、国王褒章にも輝いた誉れ高い騎士の集まりであり――……」
騎士A「……今日は元気そう」
騎士B「そうな」
女騎士「……――ということだ! 諸君らは胸を借りるつもりで、訓練に臨むよう! いいな!」
「「「「ハイ!!」」」」
・
・
~翌日~
~王都・訓練所~
・
・
・
女騎士「……――であるからして、合同訓練いただく老騎士殿と――……」
老騎士「……」
女騎士「彼の『水晶羽のトンボ』騎士団は、国王褒章にも輝いた誉れ高い騎士の集まりであり――……」
騎士A「……今日は元気そう」
騎士B「そうな」
女騎士「……――ということだ! 諸君らは胸を借りるつもりで、訓練に臨むよう! いいな!」
「「「「ハイ!!」」」」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:53:24.04 ID:DwdTGXAK0
・
・
・
老騎士「ふぅむ……まぁ……」
女騎士「……」
老騎士「眠れなくなるほど、深く思い悩む。うむ、儂にもそんな頃があったのである」
女騎士「老騎士殿も、ですか」
老騎士「……特に若い時分などは、儂も悩み多き青年だったのであるな……」
女騎士「ははぁ……」
老騎士「嗚呼、恋の炎に身をやつした、今は遠き、わが青春の光――……」
女騎士「……」
老騎士「……冗談であるぞ」
女騎士「……」
老騎士「がっはっはっは」
女騎士「は、ははは、はは……」
・
・
老騎士「ふぅむ……まぁ……」
女騎士「……」
老騎士「眠れなくなるほど、深く思い悩む。うむ、儂にもそんな頃があったのである」
女騎士「老騎士殿も、ですか」
老騎士「……特に若い時分などは、儂も悩み多き青年だったのであるな……」
女騎士「ははぁ……」
老騎士「嗚呼、恋の炎に身をやつした、今は遠き、わが青春の光――……」
女騎士「……」
老騎士「……冗談であるぞ」
女騎士「……」
老騎士「がっはっはっは」
女騎士「は、ははは、はは……」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:54:12.99 ID:DwdTGXAK0
女騎士「……それで、老騎士殿はどのようにして、眠りを妨げるものを振り払ったのでしょうか」
老騎士「はは、時が解決するに身を任せたまで」
女騎士「時、ですか……」
老騎士「いつの間にか、色々なものと、折り合いがつく」
女騎士「……」
老騎士「そういう時期が、人には必ず来るのである」
女騎士「……そういう、ものでしょうか」
老騎士「善かれ悪しかれな。望んだ形ではなくとも」
女騎士「……」
老騎士「はは、時が解決するに身を任せたまで」
女騎士「時、ですか……」
老騎士「いつの間にか、色々なものと、折り合いがつく」
女騎士「……」
老騎士「そういう時期が、人には必ず来るのである」
女騎士「……そういう、ものでしょうか」
老騎士「善かれ悪しかれな。望んだ形ではなくとも」
女騎士「……」
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:55:02.33 ID:DwdTGXAK0
老騎士「……しかしまぁ、儂くらいの歳になれば、深く眠りすぎるのは、かえって不安になるものである」
女騎士「え? それはまた、どうして……」
老騎士「目が覚めた時、『あれ、儂さっきちょっと死んでた?』ってなって怖いのである」
女騎士「……」
老騎士「……冗談であるぞ」
女騎士「……」
老騎士「がっはっはっはっは!!!!」
女騎士「は、……あはは、ははは」
女騎士「え? それはまた、どうして……」
老騎士「目が覚めた時、『あれ、儂さっきちょっと死んでた?』ってなって怖いのである」
女騎士「……」
老騎士「……冗談であるぞ」
女騎士「……」
老騎士「がっはっはっはっは!!!!」
女騎士「は、……あはは、ははは」
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:55:36.84 ID:DwdTGXAK0
老騎士「しかし、今日はそれほど、やつれて見えないのである」
女騎士「ええ、昨日はまj――……!?」
老騎士「まじ……?」
女騎士「……ま、じ……マジでがんばって寝ましたので!」
老騎士「おお、若者言葉であるな」
女騎士「あは、ははは……」
老騎士「がはははは……。……、コホン……時に、女騎士殿」
女騎士「……? なんでしょう?」
老騎士「今のうちに、貴公の耳にも入れておこうと思うのだが……」
女騎士「……」
老騎士「……――……」ボソボソ
女騎士「ええ、昨日はまj――……!?」
老騎士「まじ……?」
女騎士「……ま、じ……マジでがんばって寝ましたので!」
老騎士「おお、若者言葉であるな」
女騎士「あは、ははは……」
老騎士「がはははは……。……、コホン……時に、女騎士殿」
女騎士「……? なんでしょう?」
老騎士「今のうちに、貴公の耳にも入れておこうと思うのだが……」
女騎士「……」
老騎士「……――……」ボソボソ
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:56:41.62 ID:DwdTGXAK0
・
・
・
女騎士「な……っ、『金冠のオオカブト』騎士団が、解団……!?」
老騎士「……確かな情報である」
女騎士「そんな……、王都最大の騎士団が……」
老騎士「最近では、団内の派閥争いが、激しくなっていたそうである」
女騎士「それにしても、こんな突然とは……」
老騎士「……何か、大きな動きがあるのかも知れないのである」
女騎士「大きな?」
老騎士「……儂等も他人事ではいられないかもしれない、王都全体を覆うような、一つの流れがな……」
女騎士「……」
・
・
女騎士「な……っ、『金冠のオオカブト』騎士団が、解団……!?」
老騎士「……確かな情報である」
女騎士「そんな……、王都最大の騎士団が……」
老騎士「最近では、団内の派閥争いが、激しくなっていたそうである」
女騎士「それにしても、こんな突然とは……」
老騎士「……何か、大きな動きがあるのかも知れないのである」
女騎士「大きな?」
老騎士「……儂等も他人事ではいられないかもしれない、王都全体を覆うような、一つの流れがな……」
女騎士「……」
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:57:45.75 ID:DwdTGXAK0
老騎士「はっはっは、暗い顔をなさるな! 何とかなるである! 騎士はいつでも元気でなければ!」
女騎士「そ……、そうですな! まったくその通り!」
老騎士「がっはっは!!」
女騎士「はっは……、そうだ、『オオカブト』のところで扱っていた公務は……」
老騎士「……次回の定例会で、各騎士団に割り振られるはずである……」
女騎士「……」
老騎士「……」
女騎士(……きっつ)
老騎士「きっつい……」
女騎士「声に出して言わないでください……」
女騎士「そ……、そうですな! まったくその通り!」
老騎士「がっはっは!!」
女騎士「はっは……、そうだ、『オオカブト』のところで扱っていた公務は……」
老騎士「……次回の定例会で、各騎士団に割り振られるはずである……」
女騎士「……」
老騎士「……」
女騎士(……きっつ)
老騎士「きっつい……」
女騎士「声に出して言わないでください……」
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:58:35.65 ID:DwdTGXAK0
・
・
・
~夜・女騎士宅~
・
・
・
女騎士「ふぅ……」
女騎士「……もう、こんな時間か」
女騎士「父様、母様、おやすみなさい」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……まさか『オオカブト』のところが……)
女騎士(老騎士殿は、他人事ではないと言っていたが……)
女騎士(……確かに最近、騎士団を取り巻く環境は……)
女騎士(これまで以上に、厳しい……)
女騎士「……」
女騎士「……」
・
・
~夜・女騎士宅~
・
・
・
女騎士「ふぅ……」
女騎士「……もう、こんな時間か」
女騎士「父様、母様、おやすみなさい」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……まさか『オオカブト』のところが……)
女騎士(老騎士殿は、他人事ではないと言っていたが……)
女騎士(……確かに最近、騎士団を取り巻く環境は……)
女騎士(これまで以上に、厳しい……)
女騎士「……」
女騎士「……」
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:59:11.16 ID:DwdTGXAK0
女騎士(……公務は増え、予算は減り……)
女騎士(……問題は増え、人員は減り……)
女騎士「……」モンモン
女騎士「……」
女騎士「……うぅ」モンモン
~~~~
魔女『ベッドの中にまで、沢山の現実を持ち込んじゃ、いけないの』
~~~~
女騎士「……」ハッ
女騎士(……問題は増え、人員は減り……)
女騎士「……」モンモン
女騎士「……」
女騎士「……うぅ」モンモン
~~~~
魔女『ベッドの中にまで、沢山の現実を持ち込んじゃ、いけないの』
~~~~
女騎士「……」ハッ
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 20:59:53.67 ID:DwdTGXAK0
~~~~
魔女『何か浮かんだら、すぐに手放す』
魔女『小舟に知らず上がってきた魚を、海に放すみたいに』
魔女『まあ、訓練よ』
~~~~
女騎士「……むぅ」
女騎士(……)
女騎士(……かんがえなーい、かんがえなーい……)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……もし魔女が、すぐそこにいたら……)
女騎士(どんなふうに言うだろうか……)
~~~~
魔女『もう……ちゃんとお行儀よく寝ないと駄目よ』
魔女『はい、ちゃんとお布団かけてねぇ』
魔女『いい子にできたら、ご本を読んであげましょうね』
~~~~
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 21:00:30.79 ID:DwdTGXAK0
女騎士「……」
女騎士(なんか……)
女騎士(人のこと赤ちゃん扱いしてなかったか、あいつ……)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(今度会ったら……)
女騎士(文句言ってやろう……)
女騎士(……ふふふ)
女騎士「……」ウトウト
女騎士「……そうだ」ウト
女騎士「……絵本」
ペラ
女騎士(……ええと)
女騎士(むかしむかし、あるところに……)
女騎士(悪い魔女と良くない魔女がいましt……)
女騎士「……スヤァ」
・
・
・
女騎士(なんか……)
女騎士(人のこと赤ちゃん扱いしてなかったか、あいつ……)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(今度会ったら……)
女騎士(文句言ってやろう……)
女騎士(……ふふふ)
女騎士「……」ウトウト
女騎士「……そうだ」ウト
女騎士「……絵本」
ペラ
女騎士(……ええと)
女騎士(むかしむかし、あるところに……)
女騎士(悪い魔女と良くない魔女がいましt……)
女騎士「……スヤァ」
・
・
・
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/15(火) 21:01:28.94 ID:DwdTGXAK0
~朝~
・
・
・
チュン
チュンチュン
女騎士「……」
女騎士「……」ハッ
女騎士「……っ!?」ガバッ
チュン
チュン
女騎士「……朝」
女騎士「……」
女騎士「ね……」
女騎士「眠れた……」
女騎士「……」
女騎士「眠れたぞー!!」
カイミンダー!!
ヤッター!!!!
チュン!!
チュンチュンチュン!!
バサバサバサ…
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:16:25.40 ID:LgyhbV/T0
~数日後~
~都の中心部、騎士団詰所~
・
・
・
女騎士「……~♪」フンフーン
副団長「……」
女騎士「おーい、装備品の確認は済んだか―!? 今日の備品当番誰だー!」
騎士A「ああっ、すみませんっ! 俺です!」
女騎士「ほら、もうすぐ警ら業務の時間だぞーっ! 急げ―!」
騎士A「はいッス!」
女騎士「がんばれー! 走れー!」
騎士A「はいっ!」タタタ
女騎士「ははは、元気で結構だ!」
副団長「……」
~都の中心部、騎士団詰所~
・
・
・
女騎士「……~♪」フンフーン
副団長「……」
女騎士「おーい、装備品の確認は済んだか―!? 今日の備品当番誰だー!」
騎士A「ああっ、すみませんっ! 俺です!」
女騎士「ほら、もうすぐ警ら業務の時間だぞーっ! 急げ―!」
騎士A「はいッス!」
女騎士「がんばれー! 走れー!」
騎士A「はいっ!」タタタ
女騎士「ははは、元気で結構だ!」
副団長「……」
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:17:03.28 ID:LgyhbV/T0
女騎士「う~ん……今日は私も、久しぶりに見回り行っちゃおうかな!」
副団長「……」
副団長(……団長殿)
副団長(ここのところ、元気そうなのは良いのだけど……)
女騎士「いいかな!? いいよな!!」
副団長「はぁ……」
女騎士「よし、決まりだー! はっはっはっは!!」ガシッ
副団長「えっ、いや、ちょ……」
女騎士「出発だーっ」ノッシノッシ
副団長「痛い痛いはやい、速い速いです団長殿」
副団長(元気がダダ漏れてる……)
・
・
・
副団長「……」
副団長(……団長殿)
副団長(ここのところ、元気そうなのは良いのだけど……)
女騎士「いいかな!? いいよな!!」
副団長「はぁ……」
女騎士「よし、決まりだー! はっはっはっは!!」ガシッ
副団長「えっ、いや、ちょ……」
女騎士「出発だーっ」ノッシノッシ
副団長「痛い痛いはやい、速い速いです団長殿」
副団長(元気がダダ漏れてる……)
・
・
・
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:18:22.42 ID:LgyhbV/T0
~王都・市街~
・
・
・
女騎士「う~む……」
副団長「……」
女騎士「……」
副団長「……」
女騎士「何も変わりないな!」
副団長「王都の治安状況は、非常に良好な状態を保っています……」
女騎士「重畳だ!」
副団長「……」
女騎士「……」
副団長「……」
女騎士「……やることがないな!」
副団長「身も蓋もない……」
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:19:20.40 ID:LgyhbV/T0
副団長「われわれの出番がないということは、それだけ平和ということです」
女騎士「そ、それはもちろん!」
副団長「それに、われわれ騎士が、日ごろから市中に目を光らせている。それだけで犯罪行為の抑止効果が望めます」
女騎士「わ、分かってるぞ。私とて当然――……」
ナンダコラー!!
ンダテメー!!
女騎士「むっ……!」
副団長「怒鳴り声が……」
女騎士「もめ事か!? ……こっちだなっ! 行くぞー!」
副団長「はぁ」
女騎士「急げ副団長ぉー!」
副団長「……やれやれ」
・
・
・
女騎士「そ、それはもちろん!」
副団長「それに、われわれ騎士が、日ごろから市中に目を光らせている。それだけで犯罪行為の抑止効果が望めます」
女騎士「わ、分かってるぞ。私とて当然――……」
ナンダコラー!!
ンダテメー!!
女騎士「むっ……!」
副団長「怒鳴り声が……」
女騎士「もめ事か!? ……こっちだなっ! 行くぞー!」
副団長「はぁ」
女騎士「急げ副団長ぉー!」
副団長「……やれやれ」
・
・
・
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:19:52.25 ID:LgyhbV/T0
・
・
・
都民C「この野郎、人の足踏んづけといて、何だその態度は!」
都民D「手前がそんなすぐ側に突っ立ってやがったのが、悪いんじゃねぇか!」
都民C「行列なんだから仕方ねぇじゃねえだろ!」
都民D「隙間開けて並べや! ちょっと考えろ手前ぇ!」
都民C「なんだとぉ!?」
都民D「やんのかぁっ!!」
ザワザワ
女騎士「あ~、こらこら君たち。よさないか、こんな天下の往来で」
副団長「……」
都民C「あ? ……――っっ!?」
都民D「誰だぁ、アンタ! 関係ねぇやつは黙って…………」
都民C「おお、お、おい、お前……悪いことは言わないから、やめとけって……」ヒソヒソ
都民D「あぁ?」
・
・
都民C「この野郎、人の足踏んづけといて、何だその態度は!」
都民D「手前がそんなすぐ側に突っ立ってやがったのが、悪いんじゃねぇか!」
都民C「行列なんだから仕方ねぇじゃねえだろ!」
都民D「隙間開けて並べや! ちょっと考えろ手前ぇ!」
都民C「なんだとぉ!?」
都民D「やんのかぁっ!!」
ザワザワ
女騎士「あ~、こらこら君たち。よさないか、こんな天下の往来で」
副団長「……」
都民C「あ? ……――っっ!?」
都民D「誰だぁ、アンタ! 関係ねぇやつは黙って…………」
都民C「おお、お、おい、お前……悪いことは言わないから、やめとけって……」ヒソヒソ
都民D「あぁ?」
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:20:44.38 ID:LgyhbV/T0
都民C「こ、この人、女騎士様だ。『銀顎』騎士団の、団長の……」ヒソヒソ
都民D「げ――……!?!?」
女騎士「……」ニコニコ
都民D「……これはどうも~」
都民C「大変失礼しました~……」
女騎士「うむ! 行列に待たされて苛立つのは分かるが、喧嘩はいかんぞ!」
都民C「は、はい……」
都民D「すみませんです、ほんと……」
女騎士「はっはっは!」ニコニコ
都民C(笑ってる……)
都民D(笑ってるけど怖ぇ……)
都民D「げ――……!?!?」
女騎士「……」ニコニコ
都民D「……これはどうも~」
都民C「大変失礼しました~……」
女騎士「うむ! 行列に待たされて苛立つのは分かるが、喧嘩はいかんぞ!」
都民C「は、はい……」
都民D「すみませんです、ほんと……」
女騎士「はっはっは!」ニコニコ
都民C(笑ってる……)
都民D(笑ってるけど怖ぇ……)
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:21:19.72 ID:LgyhbV/T0
都民C「……大戦中は、単騎で一個大隊を撃破したらしい……」ヒソヒソ
都民D「……敵国が、国家予算の1割をその首の懸賞金にあてたらしい……」ヒソヒソ
都民C「睨んだだけで熊と虎を倒したらしい……」ヒソヒソ
都民D「本気で剣を振ると海が割れるらしい……」ヒソヒソ
副団長「……」
副団長(尾ひれで空飛べそうなくらい、ウワサが一人歩きしてる……)
女騎士「それにしても、すごい行列だな……」
副団長「……ご存知、ありませんか?」
女騎士「うむ?」
副団長「あそこにある、有名な菓子屋の列ですよ。近頃、王都で大評判の」
女騎士「ほぉ……、知らなかったな」
副団長「王都の者なら誰でも知っているほどです。多分団長以外は」
女騎士「ならばこれで、王都で知らぬ者はいなくなったわけだな! 素晴らしいなぁ!」
副団長「……」
都民D「……敵国が、国家予算の1割をその首の懸賞金にあてたらしい……」ヒソヒソ
都民C「睨んだだけで熊と虎を倒したらしい……」ヒソヒソ
都民D「本気で剣を振ると海が割れるらしい……」ヒソヒソ
副団長「……」
副団長(尾ひれで空飛べそうなくらい、ウワサが一人歩きしてる……)
女騎士「それにしても、すごい行列だな……」
副団長「……ご存知、ありませんか?」
女騎士「うむ?」
副団長「あそこにある、有名な菓子屋の列ですよ。近頃、王都で大評判の」
女騎士「ほぉ……、知らなかったな」
副団長「王都の者なら誰でも知っているほどです。多分団長以外は」
女騎士「ならばこれで、王都で知らぬ者はいなくなったわけだな! 素晴らしいなぁ!」
副団長「……」
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:22:37.38 ID:LgyhbV/T0
店員「あのぅ……」
女騎士「なんだ?」
店員「先ほどは、大変ありがとうございました」ペコリ
女騎士「はは、いやいや、大したことはしていない」
店員「いえ、本当に……。お礼に、こちらを」スッ
女騎士「ん?」
店員「うちのお店の、黄桃のケーキです。店長が、騎士様たちにお持ちしろと……」
女騎士「ははは、気づかいは無用だぞ! 騎士として、当たり前のことをしただけ――……」
店員「でも、いつもお世話になってますから!」
副団長「よろしいのでは? 市民からの支えあっての騎士団ですよ」
女騎士「ふむ……」
店員「あっ、副団長様も」スッ
副団長「恐縮です」
女騎士「なんだ?」
店員「先ほどは、大変ありがとうございました」ペコリ
女騎士「はは、いやいや、大したことはしていない」
店員「いえ、本当に……。お礼に、こちらを」スッ
女騎士「ん?」
店員「うちのお店の、黄桃のケーキです。店長が、騎士様たちにお持ちしろと……」
女騎士「ははは、気づかいは無用だぞ! 騎士として、当たり前のことをしただけ――……」
店員「でも、いつもお世話になってますから!」
副団長「よろしいのでは? 市民からの支えあっての騎士団ですよ」
女騎士「ふむ……」
店員「あっ、副団長様も」スッ
副団長「恐縮です」
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:23:06.55 ID:LgyhbV/T0
副団長「……そういえば、嫌いなんでしたっけ? 甘いの」
女騎士「や、嫌いじゃないけど。普段食べないだけで」
副団長「断るくらいなら、私の方でもらっちゃいますけど」
女騎士「んー……」
女騎士「……」
女騎士「…………」
女騎士「………………」
女騎士「いや、やっぱり頂こう」
店員「はいっ! これからも、王都をよろしくお願いしますねっ」
女騎士「もちろんだっ! はっはっはっは」
・
・
・
女騎士「や、嫌いじゃないけど。普段食べないだけで」
副団長「断るくらいなら、私の方でもらっちゃいますけど」
女騎士「んー……」
女騎士「……」
女騎士「…………」
女騎士「………………」
女騎士「いや、やっぱり頂こう」
店員「はいっ! これからも、王都をよろしくお願いしますねっ」
女騎士「もちろんだっ! はっはっはっは」
・
・
・
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:23:37.97 ID:LgyhbV/T0
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「……」
魔女「……」
魔女「……」ポケー
魔女(……畑の棚も作った……)
魔女(……物置の床も張り直したし……)
魔女(……居間の掃除……は、今日2回したっけ)
魔女「……」
魔女「……」
魔女「……暇だわぁ」ポケー
75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:24:23.31 ID:LgyhbV/T0
魔女「……」
魔女(……騎士さん)
魔女「……1、2、3、4――……」
魔女「……」
魔女(……やぁね)
魔女(彼女が眠れなくて、辛い方が嬉しいの、私は?)
魔女(違うでしょうに)
魔女「……」
魔女「絵本も渡したし……、しばらくはこない、かも――……」
魔女「その方がいいのよねぇ……」
魔女「……」
魔女「……」
魔女「……!」ピクッ
魔女(……騎士さん)
魔女「……1、2、3、4――……」
魔女「……」
魔女(……やぁね)
魔女(彼女が眠れなくて、辛い方が嬉しいの、私は?)
魔女(違うでしょうに)
魔女「……」
魔女「絵本も渡したし……、しばらくはこない、かも――……」
魔女「その方がいいのよねぇ……」
魔女「……」
魔女「……」
魔女「……!」ピクッ
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:25:07.43 ID:LgyhbV/T0
・
・
・
~「蜘蛛の森」~
・
・
・
女騎士「……~♪」フンフーン
女騎士(ちょうど二人分だものな)
女騎士(菓子屋も気が利いているというか……)
女騎士(ふふふ、魔女のやつ、びっくりするかな?)
女騎士「……あ、いや」
女騎士「魔女の喜ぶ顔が見たい、とかではなく……」
女騎士「……お礼、そう、お礼だものな。感謝は大事だからな!」
女騎士「……」
女騎士(……何で言い訳してるんだ、私は……?)
女騎士「……」
女騎士「……ん」
・
・
~「蜘蛛の森」~
・
・
・
女騎士「……~♪」フンフーン
女騎士(ちょうど二人分だものな)
女騎士(菓子屋も気が利いているというか……)
女騎士(ふふふ、魔女のやつ、びっくりするかな?)
女騎士「……あ、いや」
女騎士「魔女の喜ぶ顔が見たい、とかではなく……」
女騎士「……お礼、そう、お礼だものな。感謝は大事だからな!」
女騎士「……」
女騎士(……何で言い訳してるんだ、私は……?)
女騎士「……」
女騎士「……ん」
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:25:40.82 ID:LgyhbV/T0
女騎士「……」
女騎士(……右に折れた道を、そのまま進めば、魔女の屋敷……)
女騎士「……」
女騎士(けれど、左手に……)
女騎士(……よく見ると、道……? のような……)
女騎士「……」
女騎士「…………?」
女騎士(……気になる)
女騎士「……気になるな!」
女騎士「ちょっとだけ、行ってみようかな!」
ガサガサ
ガサ
・
・
・
女騎士(……右に折れた道を、そのまま進めば、魔女の屋敷……)
女騎士「……」
女騎士(けれど、左手に……)
女騎士(……よく見ると、道……? のような……)
女騎士「……」
女騎士「…………?」
女騎士(……気になる)
女騎士「……気になるな!」
女騎士「ちょっとだけ、行ってみようかな!」
ガサガサ
ガサ
・
・
・
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:26:16.04 ID:LgyhbV/T0
・
・
・
ガサガサ
女騎士(……そういえば)
女騎士(前の戦争のときも、こんな森で戦ったことがあったな)
女騎士「……」ガサガサ
女騎士(……敵の影に怯えながら……)
女騎士(ふと、振り返れば)
女騎士(歩いてきた足取りも、見当たらないほど深い森……)
女騎士「……」クルッ
女騎士(……歩いてきた……足取りも)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(見当、たら、ない――……)
女騎士「……」
女騎士「……アレ?」
・
・
ガサガサ
女騎士(……そういえば)
女騎士(前の戦争のときも、こんな森で戦ったことがあったな)
女騎士「……」ガサガサ
女騎士(……敵の影に怯えながら……)
女騎士(ふと、振り返れば)
女騎士(歩いてきた足取りも、見当たらないほど深い森……)
女騎士「……」クルッ
女騎士(……歩いてきた……足取りも)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(見当、たら、ない――……)
女騎士「……」
女騎士「……アレ?」
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:27:25.93 ID:LgyhbV/T0
・
・
・
ガサガサ
女騎士「……むぅ」
女騎士「いかんな、こっちだったか……?」
女騎士「……」ガサガサ
女騎士「違うか」
女騎士「……」ガサゴソ
女騎士「えーと? 確かこっち……」
ガシッ
女騎士「だ……っ、れ……」
魔女「ハァッ……、はぁ――はぁ……っ」
女騎士「ま、魔女……?」
魔女「まに……、まひ、はひ……ハァ」ハァハァ
女騎士「お、落ち着け。深呼吸、深呼吸」
魔女「ハヒー……ハヒー……」
・
・
ガサガサ
女騎士「……むぅ」
女騎士「いかんな、こっちだったか……?」
女騎士「……」ガサガサ
女騎士「違うか」
女騎士「……」ガサゴソ
女騎士「えーと? 確かこっち……」
ガシッ
女騎士「だ……っ、れ……」
魔女「ハァッ……、はぁ――はぁ……っ」
女騎士「ま、魔女……?」
魔女「まに……、まひ、はひ……ハァ」ハァハァ
女騎士「お、落ち着け。深呼吸、深呼吸」
魔女「ハヒー……ハヒー……」
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/16(水) 21:28:15.62 ID:LgyhbV/T0
魔女「ふぅ、はぁ、はぁぁ……、よか……ったぁぁ」
女騎士「魔女……」
魔女「騎士さぁん……もう、馬鹿ぁ」
女騎士「え、なに? 何かしたか私?」
魔女「うぅぅ……っ」ウルウル
女騎士「あぁっ! すまん! 悪かったから! だから泣かないで!」
魔女「こっちはぁ……、蜘蛛の森の、一番奥深く……、人の子を拒む禁断の地……」ウルウル
女騎士「な、なんだ? ま、魔女の聖地な……?」
魔女「毒蜘蛛のね、繁殖地なの」
女騎士「ヒッ」
魔女「楽に死ぬやつ」
女騎士「ヒィッ」
女騎士「魔女……」
魔女「騎士さぁん……もう、馬鹿ぁ」
女騎士「え、なに? 何かしたか私?」
魔女「うぅぅ……っ」ウルウル
女騎士「あぁっ! すまん! 悪かったから! だから泣かないで!」
魔女「こっちはぁ……、蜘蛛の森の、一番奥深く……、人の子を拒む禁断の地……」ウルウル
女騎士「な、なんだ? ま、魔女の聖地な……?」
魔女「毒蜘蛛のね、繁殖地なの」
女騎士「ヒッ」
魔女「楽に死ぬやつ」
女騎士「ヒィッ」
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:00:16.70 ID:FgMnawTA0
・
・
・
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……」テクテク
魔女「……」テクテク
ギュッ
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「あのう、魔女さん……?」
魔女「……何かしらぁ?」テクテク
女騎士「あの、いや、手……」
魔女「手?」
ギュッ
女騎士「つ、繋いでないと、駄目?」
魔女「駄目よ。はぐれたらどうするの」
女騎士「……むぅ、またそうやって、子ども扱いを……」
魔女「あら」
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:01:07.43 ID:FgMnawTA0
魔女「知らない道にどんどん入っていって、迷子になったのは、どこの誰かしら?」
女騎士「うぐっ……」
魔女「来た道が分からなくなったのに、ためらいもなく更に進んでいったのは、どこの誰だったかしらぁ?」
女騎士「うぅぅ……っ、わ、私です……」
魔女「小さな子どもだって、迷ったと思ったら、いったんその場に立ち止まるんじゃないかしら? 違う?」
女騎士「おっしゃる通りですぅ……」
魔女「……分かったら、ほら、もっとちゃんと手を掴んでなさい!」
女騎士「はぁい……」ギュ
魔女「まったく……」
女騎士(怒ってる……)
魔女「まったくもう……」
女騎士(怒ってらっしゃる……)
魔女「……」プンプン
女騎士「うぐっ……」
魔女「来た道が分からなくなったのに、ためらいもなく更に進んでいったのは、どこの誰だったかしらぁ?」
女騎士「うぅぅ……っ、わ、私です……」
魔女「小さな子どもだって、迷ったと思ったら、いったんその場に立ち止まるんじゃないかしら? 違う?」
女騎士「おっしゃる通りですぅ……」
魔女「……分かったら、ほら、もっとちゃんと手を掴んでなさい!」
女騎士「はぁい……」ギュ
魔女「まったく……」
女騎士(怒ってる……)
魔女「まったくもう……」
女騎士(怒ってらっしゃる……)
魔女「……」プンプン
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:01:36.53 ID:FgMnawTA0
~魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「おい――……」
女騎士「……」
魔女「……――っしぃぃ~!」パァァ
女騎士「美味しいか」
魔女「美味しいわ! すごく美味しいわ!」ハムハム
女騎士「……」
女騎士(喜んでる……)
魔女「んん~~~♪」
女騎士(喜んでらっしゃる……)
魔女「ありがとうね、騎士さん!」
女騎士「どういたしまして」
女騎士(怒ったり、笑ったり……)
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:02:16.85 ID:FgMnawTA0
女騎士(……結構、感情が表に出やすいというか……)
女騎士(……初めて会った時は)
女騎士(物静かで、落ち着いていて――……)
女騎士(まさしく『魔女』の雰囲気、なんて思ったけど……)
女騎士「……」ジー
魔女「はぁ、おいひい……」ウットリ
女騎士(……魔女とは……?)
女騎士「……」ジー
魔女「……? 私の顔に、何かついてる?」
女騎士「あ、すまん、別に何も…………いや! ついてる! クリームすっごいついてる!」
魔女「えっ、やだぁ……」ヌグイヌグイ
女騎士「はは……」
女騎士(……初めて会った時は)
女騎士(物静かで、落ち着いていて――……)
女騎士(まさしく『魔女』の雰囲気、なんて思ったけど……)
女騎士「……」ジー
魔女「はぁ、おいひい……」ウットリ
女騎士(……魔女とは……?)
女騎士「……」ジー
魔女「……? 私の顔に、何かついてる?」
女騎士「あ、すまん、別に何も…………いや! ついてる! クリームすっごいついてる!」
魔女「えっ、やだぁ……」ヌグイヌグイ
女騎士「はは……」
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:03:17.56 ID:FgMnawTA0
女騎士(こういうところ見ると……)
女騎士(全然、魔女っぽくないというか)
女騎士(……あ、でも)
女騎士「そういえば、魔女」
魔女「何かしらぁ?」
女騎士「お前、魔法なんて使えないって言ってたけど……、やっぱり使えるじゃないか、魔法」
魔女「?」
女騎士「魔法だろ? 私が森で迷ってるって分かったのも、私の居場所を探り当てたのも」
魔女「あぁ、あれは……うぅん……、魔法を使った、ってわけじゃないんだけどねぇ……」
女騎士「またまた」
魔女「本当よう。しいて言うなら、『森』の魔法かしらね」
女騎士「森の?」
女騎士(全然、魔女っぽくないというか)
女騎士(……あ、でも)
女騎士「そういえば、魔女」
魔女「何かしらぁ?」
女騎士「お前、魔法なんて使えないって言ってたけど……、やっぱり使えるじゃないか、魔法」
魔女「?」
女騎士「魔法だろ? 私が森で迷ってるって分かったのも、私の居場所を探り当てたのも」
魔女「あぁ、あれは……うぅん……、魔法を使った、ってわけじゃないんだけどねぇ……」
女騎士「またまた」
魔女「本当よう。しいて言うなら、『森』の魔法かしらね」
女騎士「森の?」
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:03:45.70 ID:FgMnawTA0
魔女「そう、森が魔法を使って、騎士さんの居るところを教えてくれたの」
女騎士「…………」
魔女「『メルヘンだぁ』って顔してるわね……」
女騎士「だってぇ」
魔女「本当だってば。人に、みんな不思議な、神秘的な力があるように」
女騎士「……」
魔女「森にだって、隠された神秘がある」
女騎士「……」
魔女「特にここは。『蜘蛛の森』はね」ハムハム
女騎士「むぅ……」
魔女「私は、それを信じてるし、感じてる。だから分かる」
女騎士「……それが魔女?」
魔女「それが魔女よ」
女騎士「…………」
魔女「『メルヘンだぁ』って顔してるわね……」
女騎士「だってぇ」
魔女「本当だってば。人に、みんな不思議な、神秘的な力があるように」
女騎士「……」
魔女「森にだって、隠された神秘がある」
女騎士「……」
魔女「特にここは。『蜘蛛の森』はね」ハムハム
女騎士「むぅ……」
魔女「私は、それを信じてるし、感じてる。だから分かる」
女騎士「……それが魔女?」
魔女「それが魔女よ」
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:04:11.14 ID:FgMnawTA0
女騎士「じゃあ、お前本人は……」
魔女「ん?」
女騎士「何か、そういう、魔女らしいことはできないのか?」
魔女「ん~……」
女騎士「……」
魔女「……おいしいお茄子が作れるわ……」
女騎士「うん、あの、そういうのじゃなくて」
魔女「ん~~~~……」
女騎士「そもそも茄子、魔女らしさか……?」
魔女「……占い、とかならできるけど」
女騎士「おぉ」
魔女「ん?」
女騎士「何か、そういう、魔女らしいことはできないのか?」
魔女「ん~……」
女騎士「……」
魔女「……おいしいお茄子が作れるわ……」
女騎士「うん、あの、そういうのじゃなくて」
魔女「ん~~~~……」
女騎士「そもそも茄子、魔女らしさか……?」
魔女「……占い、とかならできるけど」
女騎士「おぉ」
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:05:31.24 ID:FgMnawTA0
・
・
・
魔女「……――そう。そうやって五角形にカードを並べて」
女騎士「……」
魔女「時計回りに、愛……知性……知識……」
女騎士「……」
魔女「法、力……、それぞれ対応する絵柄、これが今の貴方……」ペラリ
女騎士「……」ドキドキ
魔女「さぁ、ペンタグラムの中央に、引いたカードを置いて」
女騎士「……」スッ
魔女「このカードが……、貴方の未来を指し示――……」ペラリ
女騎士「……」ドキドキ
魔女「……」
女騎士「……?」
魔女「……」
女騎士「……な、なぁ……、結果は?」
魔女「……御守り」
女騎士「……え?」
魔女「……お、御守りも作れるのよ、私! とってもよく効くやつ!」
女騎士「あの、結果……」
魔女「せっかくだから、騎士さんにも作ってあげるわねぇ! うーんと効くのを! おっきいのを!」
女騎士「ねぇ、だからどうだったのって! ねぇって! ちょっとぉ!」
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:06:08.06 ID:FgMnawTA0
・
・
・
女騎士「さて……」
魔女「あ、お風呂用意するわね」イソイソ
女騎士「あ……、あぁ、いやいや、いいんだ」
魔女「……?」
女騎士「大丈夫、今日は別に、寝かせてもらうつもりじゃなくて」
魔女「あら、そうなの?」
女騎士「あぁ……、最近すこぶる、調子が良くて。十分睡眠がとれていてな」
魔女「…………それは、良かったわ」
女騎士「うん、これも魔女のおかげだ」
魔女「そんな、私は別に何も……って」
女騎士「うん?」
魔女「じゃあ、今日はどうして森に?」
女騎士「それは……、いや、何だ。世話になった、お礼に……というか」
94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:07:01.82 ID:FgMnawTA0
魔女「お礼に、ケーキを?」
女騎士「あ、あぁ」
魔女「そう……」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……、そ、それと……」
魔女「それと?」
女騎士「……魔女に、会いに……」
魔女「……!」
女騎士「ふ、深い理由があってのことでは、ないんだがな! ただ、いつもすぐ寝てしまうから、たまには、と――……」
魔女「そうなのね、騎士さんは私に会いに来てくれたのねっ!」
女騎士「……め、迷惑だったろうか……」
魔女「とんでもない! とっても嬉しいわ! 美味しいケーキよりも、ずっと!」
女騎士「そ……そうか! ならば良かった!」
女騎士「あ、あぁ」
魔女「そう……」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……、そ、それと……」
魔女「それと?」
女騎士「……魔女に、会いに……」
魔女「……!」
女騎士「ふ、深い理由があってのことでは、ないんだがな! ただ、いつもすぐ寝てしまうから、たまには、と――……」
魔女「そうなのね、騎士さんは私に会いに来てくれたのねっ!」
女騎士「……め、迷惑だったろうか……」
魔女「とんでもない! とっても嬉しいわ! 美味しいケーキよりも、ずっと!」
女騎士「そ……そうか! ならば良かった!」
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/17(木) 22:09:08.82 ID:FgMnawTA0
魔女「うふふ……、こういう風に、誰かとお喋りするの、ずっとやってみたかったのよねぇ……」
女騎士「あ……」
女騎士(……この森に)
女騎士(足を踏み入れる者は、滅多にいなくて……)
魔女「……あっ、もちろんケーキも、すごい嬉しかったし、美味しかったわよ。ホント」
女騎士「……」
女騎士(魔女は……)
女騎士(この森の、この広い屋敷で、いつもひとりで……)
女騎士(もしも……彼女が王都にいたら……)
女騎士(きっと毎日、怒ったり、笑ったり、忙しくて……)
女騎士(けれど彼女は、この森でいつも……)
女騎士「……あ、あの」
魔女「?」
女騎士「ま……また来ても、いいだろうか」
魔女「……!」
女騎士「その……ベッドを借りるのではなく……、お前と……ええと」
魔女「もちろんよ、騎士さん」
女騎士「あ……」
魔女「楽しみに待ってるわ、また来てくれるのを」ニコ
女騎士「あぁ……、また来るよ。必ず」
女騎士「あ……」
女騎士(……この森に)
女騎士(足を踏み入れる者は、滅多にいなくて……)
魔女「……あっ、もちろんケーキも、すごい嬉しかったし、美味しかったわよ。ホント」
女騎士「……」
女騎士(魔女は……)
女騎士(この森の、この広い屋敷で、いつもひとりで……)
女騎士(もしも……彼女が王都にいたら……)
女騎士(きっと毎日、怒ったり、笑ったり、忙しくて……)
女騎士(けれど彼女は、この森でいつも……)
女騎士「……あ、あの」
魔女「?」
女騎士「ま……また来ても、いいだろうか」
魔女「……!」
女騎士「その……ベッドを借りるのではなく……、お前と……ええと」
魔女「もちろんよ、騎士さん」
女騎士「あ……」
魔女「楽しみに待ってるわ、また来てくれるのを」ニコ
女騎士「あぁ……、また来るよ。必ず」
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:41:17.05 ID:FqTckVnj0
~夜~
・
・
・
~~~~
女騎士『あぁ……、また来るよ。きっと、すぐ』
~~~~
魔女「ふふ……」
魔女「んふふ……♪」
魔女(楽しかったぁ……)
魔女(一緒にお菓子を食べて、いっぱいおしゃべりをして……)
魔女(ああいうの、久しぶりだったかも……)
魔女「……♪」
魔女(やっぱり独りぼっちよりも……)
魔女(誰かと一緒に過ごすのは、楽しいわ)
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:42:25.96 ID:FqTckVnj0
魔女「……」
魔女「……?」
魔女「……??」
魔女「あ……」
魔女(そうじゃない)
魔女(そうじゃないのね、私……)
魔女(騎士さん)
魔女(彼女が一緒だったから、きっと……)
魔女「あぁ、ふふ、ふふふ」
魔女「今度はいつ来てくれるかしら、騎士さん……」
ポフッ
魔女「ふァ……」
魔女「……おやすみなさい、騎士さん」
・
・
・
101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:42:55.24 ID:FqTckVnj0
~数日後・王都 王府庁舎内~
・
・
・
役人「……」
女騎士「……」
役人「……」
女騎士「……ええと」
役人「ヒィ!」ビクー
女騎士「……ひいって」
役人「ごっ、ごめんなさい! ごめんなさい! 使えないヤツで本当ごめんなさい!」
女騎士「言ってない言ってない! まだ何も言ってないから!」
役人「ワタシ……クビでしょうか……」
女騎士「大丈夫だから! 大丈夫だからしっかりして!」
・
・
・
102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:43:26.85 ID:FqTckVnj0
女騎士「まぁ、それじゃあ、やっぱり……」
役人「はい……、騎士団の予算の、追加計上の申請は、今回も却下されました……」
女騎士「……そうか」
役人「お役に立てず、申し訳ありませんです……」
女騎士「いや、君の責任ではないだろう。気を病まないでほしい」
役人「クビですよね……」
女騎士「大丈夫だから! というか、人の話を聞いてくれ!」
役人「……うぅ……、以前であれば、問題なく通ったはずの申請内容なのですが」
女騎士「うむぅ……、何か不備があったのだろうか……」
役人「……、あの……、ここだけの、話なのですが」
女騎士「うん?」
103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:44:03.85 ID:FqTckVnj0
役人「王府の上層部は、現存の騎士団の解体を狙ってるみたいなんです……」
女騎士「えっ……」
役人「騎士団を潰して、自分たちが裁量を持つ王立軍に吸収しようと考えてるらしく……」
女騎士「うぇぇ……」
役人「中央の会議では、かなり露骨にそういった話題が出ているようです」
女騎士「それはぁー……、えぇー、そっかぁー、どうしよー……」
役人「ごめんなさい……ワタシがこんな無能でなければ、もっとお役に立てたはずなのに……」
女騎士「いやいや! 助かってるぞ! 君にはいつも世話になってるからな!」
役人「自主退職……」
女騎士「大丈夫だって! いやもう、聞いて! 本当に!」ガシッ
役人「ヒャっ」
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:44:52.17 ID:FqTckVnj0
女騎士「大丈夫だから。君には心から感謝してるよ」
役人「はっ……」ドキリ
女騎士「いつも君が、私たちのために尽力してくれているおかげで、私たちはやっていけてるんだ」
役人「は……あ……」ドキドキ
女騎士「だからこそ、もっと自分に自信を持ってほしい。なっ!」
役人「ハヒ……」
女騎士「うむ! 人間、前向きなのが何よりだぞ!」ポンポン
役人「ハァァ……」ポヤー
女騎士「はーっはっはっは」
女騎士(……とはいえ)
女騎士(中央からの支援があてにならないとなると……、台所事情はかなり苦しいな……)
女騎士(仕方あるまい……)
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:45:44.56 ID:FqTckVnj0
・
・
・
~王都・高級住宅街~
・
・
・
貴族「なるほど、それでパトロン探しを……」
女騎士「ええ、お恥ずかしい話ですが」
貴族「いや、それほどの苦境ならば、当然の行動でしょう。心中、お察しいたします」
女騎士「なにとぞ、お力添えを――……」
貴族「ぜひとも、……と言いたいところなのですが」
女騎士「……」
貴族「近頃は、私の会社に金を出す出資者どもも、色々と文句のつけ方を覚えてしまって」
女騎士「……」
貴族「回収の見込めない投資に金を出すことは、とても認められないでしょう……」
女騎士「そう、ですか……」
貴族「力になれず、申し訳ない……」
女騎士「いえ、お話を聞いてくださっただけでも、ありがたい」
・
・
~王都・高級住宅街~
・
・
・
貴族「なるほど、それでパトロン探しを……」
女騎士「ええ、お恥ずかしい話ですが」
貴族「いや、それほどの苦境ならば、当然の行動でしょう。心中、お察しいたします」
女騎士「なにとぞ、お力添えを――……」
貴族「ぜひとも、……と言いたいところなのですが」
女騎士「……」
貴族「近頃は、私の会社に金を出す出資者どもも、色々と文句のつけ方を覚えてしまって」
女騎士「……」
貴族「回収の見込めない投資に金を出すことは、とても認められないでしょう……」
女騎士「そう、ですか……」
貴族「力になれず、申し訳ない……」
女騎士「いえ、お話を聞いてくださっただけでも、ありがたい」
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:46:19.73 ID:FqTckVnj0
貴族「戦時中であれば、じゃぶじゃぶ出せたのですけどね! お金!」
女騎士「……当時はさすがに、やりすぎだったかと」
貴族「え? よくなかったですか? 純銀のクワガタ像とか、『オオクワガタ感謝の日』イベント」
女騎士「やりすぎだったかと!」
貴族「はぁ……、またやりたいなぁ……。湯水のように金を遣いてぇ……。有り金まるごとぶちこみてぇ……」
女騎士「お、お気を確かに……」
貴族「そうだ、女騎士さん」
女騎士「はい?」
貴族「私たちの、専属になりませんか?」
女騎士「へ?」
貴族「私設騎士団というやつですよ。会社の警備や要人の警護、そういった仕事を、専任して行う騎士組織です」
女騎士「……」
女騎士「……当時はさすがに、やりすぎだったかと」
貴族「え? よくなかったですか? 純銀のクワガタ像とか、『オオクワガタ感謝の日』イベント」
女騎士「やりすぎだったかと!」
貴族「はぁ……、またやりたいなぁ……。湯水のように金を遣いてぇ……。有り金まるごとぶちこみてぇ……」
女騎士「お、お気を確かに……」
貴族「そうだ、女騎士さん」
女騎士「はい?」
貴族「私たちの、専属になりませんか?」
女騎士「へ?」
貴族「私設騎士団というやつですよ。会社の警備や要人の警護、そういった仕事を、専任して行う騎士組織です」
女騎士「……」
107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:48:39.11 ID:FqTckVnj0
女騎士(……そういえば、聞いたことがある)
女騎士(解散した騎士団の中には……)
女騎士(貴族や商社に、組織丸ごと引き受けられたところもあると……)
女騎士「……」
貴族「高名な『銀顎』騎士団が引き受けてくださるのであれば、投資家たちも首を横には振りますまい」
女騎士「……」
貴族「いかがです?」
女騎士「……勿体ないお話です。ですが……」
貴族「……」
女騎士「やはり我らは、国と国の神と……」
貴族「……」
女騎士「そして、すべての民に仕える騎士でありたい……」
貴族「……」
女騎士「この期に及んで、おこがましい話ですが……」
貴族「……いや、実に貴方らしいと思いますよ」
女騎士「……」
・
・
・
女騎士(解散した騎士団の中には……)
女騎士(貴族や商社に、組織丸ごと引き受けられたところもあると……)
女騎士「……」
貴族「高名な『銀顎』騎士団が引き受けてくださるのであれば、投資家たちも首を横には振りますまい」
女騎士「……」
貴族「いかがです?」
女騎士「……勿体ないお話です。ですが……」
貴族「……」
女騎士「やはり我らは、国と国の神と……」
貴族「……」
女騎士「そして、すべての民に仕える騎士でありたい……」
貴族「……」
女騎士「この期に及んで、おこがましい話ですが……」
貴族「……いや、実に貴方らしいと思いますよ」
女騎士「……」
・
・
・
108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:49:35.08 ID:FqTckVnj0
~夜・女騎士宅~
・
・
・
女騎士「ん~~~~」カリカリカリ
女騎士(任務以外の時間は、できる限り協力者探しにあてんとな!)
女騎士(残った仕事は、それが終わってから!)
女騎士「……」カリカリ
女騎士「……」カリカリカリカリ
女騎士「……ふぅ」
女騎士「よし、今日はこれくらいだな!」
女騎士「ぐわ……、もうこんな時間に……」
女騎士「……ま、ちょっとは眠れるか」
ポフ
女騎士「父様、母様、おやすみなさい」
女騎士「……」
女騎士「……それから、魔女も」
女騎士「おやすみ……」
女騎士「……」
女騎士「………………むかしむかし、あるとこr」スヤァ
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:50:34.98 ID:FqTckVnj0
・
・
・
~数日後~
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
女騎士「ふァ……」
魔女「あら」
女騎士「ぁふ……。あ、すまん……」
魔女「いや、いいのだけど……、久しぶりに眠そうね」
女騎士「……ああ、ここ最近、ちょっとな」
魔女「また、眠れなくなっちゃった?」
女騎士「いやぁ、そういうわけじゃないんだ。ただ……」
魔女「ただ?」
女騎士「忙しくてな。眠る暇もないくらいだ」ファァ
魔女「無理したら駄目よ?」
女騎士「……いや、今が私たちの瀬戸際なんだ。多少無理してでも、できる限りのことはしないと」
・
・
~数日後~
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
女騎士「ふァ……」
魔女「あら」
女騎士「ぁふ……。あ、すまん……」
魔女「いや、いいのだけど……、久しぶりに眠そうね」
女騎士「……ああ、ここ最近、ちょっとな」
魔女「また、眠れなくなっちゃった?」
女騎士「いやぁ、そういうわけじゃないんだ。ただ……」
魔女「ただ?」
女騎士「忙しくてな。眠る暇もないくらいだ」ファァ
魔女「無理したら駄目よ?」
女騎士「……いや、今が私たちの瀬戸際なんだ。多少無理してでも、できる限りのことはしないと」
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/19(土) 21:51:04.28 ID:FqTckVnj0
魔女「もう……、あまり心配させないで?」
女騎士「おっ、魔女は私のこと、心配してくれるのか! ははは!」
魔女「当たり前でしょう? 騎士さんの身体に何かあったらと思うと……、もう……」
女騎士「……」
女騎士(……な、なんだろう)
女騎士(恥ずかしいような……、こそばゆいような……)
女騎士「……きょ、極力、無理はしないようにするよ」
魔女「……はぁ。心配だわ……。ちょっと、休んでいったら?」
女騎士「ベッドでか?」
魔女「えぇ」
女騎士「むぅ……、すまんが、あまりゆっくりしていられなくてな。すぐ、行かなければならない」
魔女「そうなのぉ……。残念」
女騎士「残念なのか……」
女騎士「おっ、魔女は私のこと、心配してくれるのか! ははは!」
魔女「当たり前でしょう? 騎士さんの身体に何かあったらと思うと……、もう……」
女騎士「……」
女騎士(……な、なんだろう)
女騎士(恥ずかしいような……、こそばゆいような……)
女騎士「……きょ、極力、無理はしないようにするよ」
魔女「……はぁ。心配だわ……。ちょっと、休んでいったら?」
女騎士「ベッドでか?」
魔女「えぇ」
女騎士「むぅ……、すまんが、あまりゆっくりしていられなくてな。すぐ、行かなければならない」
魔女「そうなのぉ……。残念」
女騎士「残念なのか……」
114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:16:14.38 ID:TlLQuemd0
魔女「あぁ……どうしましょう。適度な休憩とか、絶対取ってないわ、この子……」
女騎士「取ってる! 取ってるから!」
魔女「……」
女騎士「ええと……、い、今とか」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「やっぱり、不安ね……」
女騎士「うぅ……」
魔女「騎士さん、ちょっと寝室まで、付き合ってくれるかしらぁ?」
女騎士「や、本当、今日は……」
魔女「寝て行けってわけじゃないわよぉ。……ただ、ちょっとの時間でいいから」
女騎士「……?」
魔女「……スッキリして、リラックスできること、してあげる」
女騎士「……??」
女騎士「取ってる! 取ってるから!」
魔女「……」
女騎士「ええと……、い、今とか」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「やっぱり、不安ね……」
女騎士「うぅ……」
魔女「騎士さん、ちょっと寝室まで、付き合ってくれるかしらぁ?」
女騎士「や、本当、今日は……」
魔女「寝て行けってわけじゃないわよぉ。……ただ、ちょっとの時間でいいから」
女騎士「……?」
魔女「……スッキリして、リラックスできること、してあげる」
女騎士「……??」
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:16:49.94 ID:TlLQuemd0
~寝室~
・
・
・
魔女「さ、どうぞ」
女騎士「……あ、あぁ?」
女騎士(……ちょっとの時間……)
女騎士(スッキリして、リラックス……?)
女騎士「……?」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「……!?!?」ハッ
魔女「さあ、騎士さん……」
女騎士「まっ……! ちょ……魔女! そ、そういうのはだな!」
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:17:22.16 ID:TlLQuemd0
魔女「……?」ポフ
女騎士「ま、まだ早いというか、も、もうちょっと、私はだなぁ……!!」
魔女「どうしたの? さ、ここ、どうぞ?」ポンポン
女騎士「……?」
魔女「ど、う、ぞっ」ポンポンポンポン
女騎士「膝枕?」
魔女「ふふふ……、スッキリリラックスと言ったら、これよねぇ……!」シャキ
女騎士「耳かき棒……?」
・
・
・
女騎士「ま、まだ早いというか、も、もうちょっと、私はだなぁ……!!」
魔女「どうしたの? さ、ここ、どうぞ?」ポンポン
女騎士「……?」
魔女「ど、う、ぞっ」ポンポンポンポン
女騎士「膝枕?」
魔女「ふふふ……、スッキリリラックスと言ったら、これよねぇ……!」シャキ
女騎士「耳かき棒……?」
・
・
・
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:17:54.77 ID:TlLQuemd0
コショコショ
魔女「……痛くなぁい?」
女騎士「あぁ……」
魔女「……こうしていれば」コショコショ
女騎士「……」
魔女「無理やりでも、横になるし」
女騎士「……」
魔女「体の力も抜かないといけないから、リラックスできるでしょう?」
女騎士「そ、そうだな……」
魔女「……~♪」
女騎士「気持ちいいよ……」
魔女「でしょ~♪」コショコショ
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:18:20.47 ID:TlLQuemd0
魔女「さ、反対側」
女騎士「はぁい……」
魔女「……」コショコショ
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……私」
女騎士「……」
魔女「……一生懸命、がんばってる騎士さんは、好きよ」
女騎士「……」ピク
魔女「動かないの。……でもねぇ」
女騎士「……」
魔女「……やっぱり、無理をして辛そうなところは、見たくないから……」
女騎士「……あぁ」
魔女「私にできることがあったら、何でも言ってほしいわ」
女騎士「……あぁ」
魔女「……~♪」コショコショ
女騎士「ありがとう、魔女……」
女騎士「はぁい……」
魔女「……」コショコショ
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……私」
女騎士「……」
魔女「……一生懸命、がんばってる騎士さんは、好きよ」
女騎士「……」ピク
魔女「動かないの。……でもねぇ」
女騎士「……」
魔女「……やっぱり、無理をして辛そうなところは、見たくないから……」
女騎士「……あぁ」
魔女「私にできることがあったら、何でも言ってほしいわ」
女騎士「……あぁ」
魔女「……~♪」コショコショ
女騎士「ありがとう、魔女……」
119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:18:55.12 ID:TlLQuemd0
・
・
・
~数日後~
~都の中心部、騎士団詰所~
・
・
・
女騎士「えっ、じゃあ……!」
司祭「はい、今年の『王都祭』の警備は、王立軍に依頼することになりまして……」
女騎士「それは……」
司祭「各騎士団が王都中を警備するのが、この国の伝統でしたが……」
女騎士「……」
司祭「王府から、じきじきに依頼があり、教会もそれに押し切られた格好で」
女騎士「王府が……」
司祭「我々も、心苦しい限りです」
女騎士「……いえ、こればかりは仕方のない話でしょう」
司祭「お詫びに、どうか貴方と、貴方の騎士団のために、祈りを捧げさせていただけませんでしょうか?」
女騎士「い、いやいや、そこまでしていただかなくても……」
司祭「いいえ! ぜひとも! 祈らせていただきたい! 2時間弱のフルバージョンで祈らせていただきたい!!」
女騎士「本当に! 本当に結構ですから!」
・
・
~数日後~
~都の中心部、騎士団詰所~
・
・
・
女騎士「えっ、じゃあ……!」
司祭「はい、今年の『王都祭』の警備は、王立軍に依頼することになりまして……」
女騎士「それは……」
司祭「各騎士団が王都中を警備するのが、この国の伝統でしたが……」
女騎士「……」
司祭「王府から、じきじきに依頼があり、教会もそれに押し切られた格好で」
女騎士「王府が……」
司祭「我々も、心苦しい限りです」
女騎士「……いえ、こればかりは仕方のない話でしょう」
司祭「お詫びに、どうか貴方と、貴方の騎士団のために、祈りを捧げさせていただけませんでしょうか?」
女騎士「い、いやいや、そこまでしていただかなくても……」
司祭「いいえ! ぜひとも! 祈らせていただきたい! 2時間弱のフルバージョンで祈らせていただきたい!!」
女騎士「本当に! 本当に結構ですから!」
120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:19:23.63 ID:TlLQuemd0
・
・
・
女騎士(『王都祭』の任務もか……)
女騎士(王都の大きな仕事は……、どんどん王立軍に流れていくな)
女騎士「むぅぅ……」
女騎士(……いや、腐っていても仕方ない!)
女騎士(今は、私たちの出来ることを――……)
副団長「……団長殿」
女騎士「ん? あぁ……どうした」
副団長「……ハァ」
女騎士「なんだなんだ! 騎士が暗い顔をするな!」
副団長「……団員の一人から、退団届が出されています」
女騎士「え……っ」
・
・
女騎士(『王都祭』の任務もか……)
女騎士(王都の大きな仕事は……、どんどん王立軍に流れていくな)
女騎士「むぅぅ……」
女騎士(……いや、腐っていても仕方ない!)
女騎士(今は、私たちの出来ることを――……)
副団長「……団長殿」
女騎士「ん? あぁ……どうした」
副団長「……ハァ」
女騎士「なんだなんだ! 騎士が暗い顔をするな!」
副団長「……団員の一人から、退団届が出されています」
女騎士「え……っ」
121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:20:09.31 ID:TlLQuemd0
・
・
・
~夜・女騎士宅~
・
・
・
女騎士「むぅ……」カリカリ
女騎士「……」パサッ
女騎士(……この事務処理が済んだら)
女騎士(新しい任務の提案を作って……)
女騎士(……新しい団員募集の呼びかけも準備して……)
女騎士「……」カリカリ
女騎士「むむむむむ……っ」
女騎士(魔女にはああ言ったが)
女騎士(休んでいる暇などないなっ!)
女騎士「……」カリ
女騎士「……ふぅ」パサリ
女騎士(私ががんばらなければ……)
女騎士(がんばって、がんばって……)
女騎士(守るんだ、騎士団を――……)
女騎士「……」カリカリ
女騎士「…………」カリカリカリカリ
・
・
・
・
・
~夜・女騎士宅~
・
・
・
女騎士「むぅ……」カリカリ
女騎士「……」パサッ
女騎士(……この事務処理が済んだら)
女騎士(新しい任務の提案を作って……)
女騎士(……新しい団員募集の呼びかけも準備して……)
女騎士「……」カリカリ
女騎士「むむむむむ……っ」
女騎士(魔女にはああ言ったが)
女騎士(休んでいる暇などないなっ!)
女騎士「……」カリ
女騎士「……ふぅ」パサリ
女騎士(私ががんばらなければ……)
女騎士(がんばって、がんばって……)
女騎士(守るんだ、騎士団を――……)
女騎士「……」カリカリ
女騎士「…………」カリカリカリカリ
・
・
・
122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:21:10.64 ID:TlLQuemd0
~数日後~
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「……――それから、火防の護符と、魔女織の織物、蜘蛛避けのお香はたっぷりと、ね」
商人「はい! では、確かに……」
魔女「いつもどうも」
商人「いやぁ、こちらこそ! 魔女さんから仕入れた物は、いつも好評ですからな!」
魔女「それはよかったわぁ」
商人「どれをとっても、見た目も美しく、効果は天下一品!」
魔女「うふふ」
商人「おまけに当人はこんなに妖艶な――……」
魔女「あらぁ、どういう意味かしら?」
商人「あっ! いえいえ、今のは決して、下心があって言ったわけではありませんぞ! なは、なははは!」
魔女「あらあら……」
魔女(ようえん……、ヨウエン……)
魔女(本当にどういう意味かしら)
魔女(……あとで辞書を引きましょう)
123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:21:40.08 ID:TlLQuemd0
商人「では、ワタクシはこれで……」
魔女「またお願いしますわ」
キィ
魔女「あら、またお客様――……」
女騎士「……魔女ぉ~……」
魔女「あ」
商人「……おや」
女騎士「……ハッ」サッ
商人「……?」
魔女「お気をつけて、商人さん」
商人「え、ええ……、それでは」
女騎士「……」コソコソ
商人「……? いや、他人の空似か……」スタスタ
魔女「またお願いしますわ」
キィ
魔女「あら、またお客様――……」
女騎士「……魔女ぉ~……」
魔女「あ」
商人「……おや」
女騎士「……ハッ」サッ
商人「……?」
魔女「お気をつけて、商人さん」
商人「え、ええ……、それでは」
女騎士「……」コソコソ
商人「……? いや、他人の空似か……」スタスタ
124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/20(日) 22:22:23.09 ID:TlLQuemd0
女騎士「ふぅ……」
魔女「いらっしゃい、騎士さん」
女騎士「あぁ。……気づかれたかな?」
魔女「ん~……、大丈夫だと思うけど……。だって……」
女騎士「え?」
魔女「クマ、すごいし。ちょっと人相、変わっちゃってる」
女騎士「えぇ……やだぁ……、やめて本当……」
魔女「だって、ほら、見せて。ほら……うわぁ」グイー
女騎士「じっくり見るなぁぁ……」
魔女「いらっしゃい、騎士さん」
女騎士「あぁ。……気づかれたかな?」
魔女「ん~……、大丈夫だと思うけど……。だって……」
女騎士「え?」
魔女「クマ、すごいし。ちょっと人相、変わっちゃってる」
女騎士「えぇ……やだぁ……、やめて本当……」
魔女「だって、ほら、見せて。ほら……うわぁ」グイー
女騎士「じっくり見るなぁぁ……」
128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:24:34.79 ID:wiQBcDZQ0
・
・
・
コショ コショ
女騎士「……――えーと、つまり、妖しいくらい美しいって感じでだな……」
魔女「怪しいの? 私そんな不審かしら……」
女騎士「いや、そうじゃなくてだな……、なんて言うんだろう? 神秘的とか、謎めいた雰囲気とか、そういう意味で……」
魔女「あら、じゃあ私、褒められてたのね」
女騎士「んー……まぁ……」
魔女「そう……んふふ、ヨウエン、妖艶ねぇ……」
女騎士「……」
コショコショ
魔女「……はい、おしまい」
女騎士「……ちょっと、短いぞ」
魔女「ついこの間、やったばかりでしょう? あんまり掻きすぎると、痛くなっちゃうから」
女騎士「そっかぁ……」
魔女「ふふ、そのまま楽にしてていいわよ」ナデナデ
女騎士「あ……」
魔女「んふふ……」ナデナデ
・
・
コショ コショ
女騎士「……――えーと、つまり、妖しいくらい美しいって感じでだな……」
魔女「怪しいの? 私そんな不審かしら……」
女騎士「いや、そうじゃなくてだな……、なんて言うんだろう? 神秘的とか、謎めいた雰囲気とか、そういう意味で……」
魔女「あら、じゃあ私、褒められてたのね」
女騎士「んー……まぁ……」
魔女「そう……んふふ、ヨウエン、妖艶ねぇ……」
女騎士「……」
コショコショ
魔女「……はい、おしまい」
女騎士「……ちょっと、短いぞ」
魔女「ついこの間、やったばかりでしょう? あんまり掻きすぎると、痛くなっちゃうから」
女騎士「そっかぁ……」
魔女「ふふ、そのまま楽にしてていいわよ」ナデナデ
女騎士「あ……」
魔女「んふふ……」ナデナデ
129: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:25:13.09 ID:wiQBcDZQ0
女騎士「……あの商人は」
魔女「え?」
女騎士「よく来るんだ……」
魔女「そうねぇ……、お客様の中では、一番よく来るかしら。いつも私の作るもの、いっぱい買っていってくれてね」
女騎士「ふーん」
魔女「蜘蛛避けのお香も、織物も、どれも素晴らしいっ、なんて褒めてくれて……」
女騎士「ふぅーん……」
魔女「今度、織物上手にできたら、騎士さんにも見せてあげるわね」
女騎士「……」
魔女「……♪」ナデナデ
女騎士「……上機嫌だな」
魔女「あら、そう?」
130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:25:44.41 ID:wiQBcDZQ0
女騎士「あの商人に、褒められたからだろ」
魔女「えぇ?」
女騎士「魔女さんは、妖艶だもんな―……」
魔女「あら……」ナデナデ
女騎士「……」
魔女「妬いちゃった?」
女騎士「ちが……っ」ガバ
魔女「だぁめ、じっとしてて……」ナデナデ
女騎士「……、……違うからな」ストン
魔女「クスクス……、別に褒められたくらいで、舞い上がったりしないわよ、私は」
女騎士「……」
魔女「嬉しくなるんだとしたら――……」
女騎士「……」
魔女「……ふふっ」
女騎士「なんだよぉ……」
魔女「まぁ、いいじゃない」ナデナデ
女騎士「むぅ……」
魔女「……~♪」ナデナデ
131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:26:17.64 ID:wiQBcDZQ0
女騎士「……魔女の手、気持ちいいな……」
魔女「そう、よかったわ」
女騎士「はぁ……、ずっとこうしてたい」
魔女「いいわよう」
女騎士「よくないんだよ……」
魔女「よくないの?」
女騎士「あぁ……、行かなくちゃ。起きて、街へ行って……」
魔女「……」
女騎士「騎士団のために、私がやるべきことを、やらねば……」
魔女「……無理してるの、自分でも分かるでしょう?」
女騎士「分かるよ。でも……私は騎士だから」
魔女「……」
132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:26:56.73 ID:wiQBcDZQ0
女騎士「騎士だから、無理を押してだって、やるべきときは、やらなければいけないんだ」
魔女「……」
女騎士「私は、騎士なんだ……。騎士としてしか、生きられないんだ……」
魔女「……」
女騎士「だから……」
魔女「……」
女騎士「私が、がんばらなければ……、がんばって、がんばって……」
魔女「……」
女騎士「がんばって守るんだ……。騎士団を。みんなの居場所を、私の居場所を」
魔女「……騎士さん」
女騎士「騎士としての、私を」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……ふぅ」ナデナデ
魔女(……固い気持ちで、前を向いて)
魔女(……がんばってる人を、引き留める言葉って……)
魔女「……」ナデナデ
魔女(なかなか、浮かばないものねぇ……)
・
・
・
魔女「……」
女騎士「私は、騎士なんだ……。騎士としてしか、生きられないんだ……」
魔女「……」
女騎士「だから……」
魔女「……」
女騎士「私が、がんばらなければ……、がんばって、がんばって……」
魔女「……」
女騎士「がんばって守るんだ……。騎士団を。みんなの居場所を、私の居場所を」
魔女「……騎士さん」
女騎士「騎士としての、私を」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……ふぅ」ナデナデ
魔女(……固い気持ちで、前を向いて)
魔女(……がんばってる人を、引き留める言葉って……)
魔女「……」ナデナデ
魔女(なかなか、浮かばないものねぇ……)
・
・
・
133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:27:28.19 ID:wiQBcDZQ0
・
・
・
~数日後~
~王都・市街~
女騎士「……――はい、いえ、こちらこそ」
女騎士「ええ、お心遣い、感謝いたします。……では」ペコリ
女騎士「……」
女騎士「……はぁ」
女騎士(……ここも、協力を断られてしまったか)
女騎士(これで何連続か……)
女騎士「……」フラ
女騎士「…………っと」
女騎士(さすがに……)
女騎士(キツい……か……)
女騎士「……はぁ」
「……――殿、女騎士殿!」
女騎士「ん……」
老騎士「女騎士殿! おお、奇遇であるな。こんなところで」
女騎士「老騎士殿……、お元気でしたでしょうか?」
・
・
~数日後~
~王都・市街~
女騎士「……――はい、いえ、こちらこそ」
女騎士「ええ、お心遣い、感謝いたします。……では」ペコリ
女騎士「……」
女騎士「……はぁ」
女騎士(……ここも、協力を断られてしまったか)
女騎士(これで何連続か……)
女騎士「……」フラ
女騎士「…………っと」
女騎士(さすがに……)
女騎士(キツい……か……)
女騎士「……はぁ」
「……――殿、女騎士殿!」
女騎士「ん……」
老騎士「女騎士殿! おお、奇遇であるな。こんなところで」
女騎士「老騎士殿……、お元気でしたでしょうか?」
134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:28:01.75 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「当然である。貴公も……、と言いたいところであるが……」
女騎士「……」
老騎士「……やつれたであるな」
女騎士「……なに、かつての戦の、末期の頃に比べれば……」
老騎士「顔色だけで言えば、あの頃より悪そうであるが……、いや、淑女に向かって失礼な言い分であった。面目ない」
女騎士「ははは……」
老騎士「少し、休んでいかれませい。……折り入って、貴公に話しておきたいこともある」
女騎士「話……?」
老騎士「ううむ……、あぁ、実は……」
女騎士「……」
老騎士「……やつれたであるな」
女騎士「……なに、かつての戦の、末期の頃に比べれば……」
老騎士「顔色だけで言えば、あの頃より悪そうであるが……、いや、淑女に向かって失礼な言い分であった。面目ない」
女騎士「ははは……」
老騎士「少し、休んでいかれませい。……折り入って、貴公に話しておきたいこともある」
女騎士「話……?」
老騎士「ううむ……、あぁ、実は……」
135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:28:46.73 ID:wiQBcDZQ0
・
・
・
女騎士「……」
老騎士「……ふぅ」
女騎士「……では」
老騎士「あぁ、我が『水晶羽のトンボ』騎士団も、解散である」
女騎士「納得、いきません……」
老騎士「……であるか」
女騎士「確かに現状は厳しい! ですが、『トンボ』騎士団は規模でも、質でも、十分にやっていけるだけの力があるはずだ!」
老騎士「……」
女騎士「それなのにっ、どうして……っ!」
老騎士「おっしゃる通りであるな」
女騎士「……」
老騎士「楽な道に逃げたと、そう見られても仕方ないのである……」
女騎士「そうは、言っていません……!」
老騎士「いや、いいや……、儂自身、そのように感じている」
女騎士「……」
・
・
女騎士「……」
老騎士「……ふぅ」
女騎士「……では」
老騎士「あぁ、我が『水晶羽のトンボ』騎士団も、解散である」
女騎士「納得、いきません……」
老騎士「……であるか」
女騎士「確かに現状は厳しい! ですが、『トンボ』騎士団は規模でも、質でも、十分にやっていけるだけの力があるはずだ!」
老騎士「……」
女騎士「それなのにっ、どうして……っ!」
老騎士「おっしゃる通りであるな」
女騎士「……」
老騎士「楽な道に逃げたと、そう見られても仕方ないのである……」
女騎士「そうは、言っていません……!」
老騎士「いや、いいや……、儂自身、そのように感じている」
女騎士「……」
136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:29:15.63 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「……しかしな、女騎士殿……」
女騎士「……」
老騎士「儂はもう、老いすぎた……。あと何年……いや、何か月と、この世にあるかも分からぬ身だ」
女騎士「そんな……」
老騎士「……『老兵は死なず、ただ去り行くのみ』……避けられぬ死を前にして、去り時を誤れば」
女騎士「……」
老騎士「結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……」
女騎士「……」
老騎士「……というか、儂が後釜育ててなかっただけなんであるがな」
女騎士「……老騎士殿」
老騎士「……がっはっはっは!」
女騎士「……」
老騎士「儂はもう、老いすぎた……。あと何年……いや、何か月と、この世にあるかも分からぬ身だ」
女騎士「そんな……」
老騎士「……『老兵は死なず、ただ去り行くのみ』……避けられぬ死を前にして、去り時を誤れば」
女騎士「……」
老騎士「結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……」
女騎士「……」
老騎士「……というか、儂が後釜育ててなかっただけなんであるがな」
女騎士「……老騎士殿」
老騎士「……がっはっはっは!」
137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:29:51.78 ID:wiQBcDZQ0
老騎士「……まあ、そんなこんなでな、団員どもに相談して決めたのである」
女騎士「しかし……」
老騎士「幸い、我が団を引き取ってくれる商社がいくつか見つかってな。みな……」
女騎士「……」
老騎士「バラバラ、には……、なってしまうで、あるがな」
女騎士「……」
老騎士「……失礼」
女騎士「お察し、いたします」
老騎士「いや、なに。いずれ儂の中でも、折り合いのつく時が来るのである」
女騎士「折り合い……」
老騎士「貴公には、以前話したことがあろう……。時が解決するのに、身を任せる」
女騎士「……」
老騎士「年寄りの処世術ではなく、ひとつの真理として」
女騎士「……」
老騎士「そういうことも、あるのだ……」
女騎士「……老騎士殿」
老騎士「……そう……、善かれ、悪しかれな」
女騎士「しかし……」
老騎士「幸い、我が団を引き取ってくれる商社がいくつか見つかってな。みな……」
女騎士「……」
老騎士「バラバラ、には……、なってしまうで、あるがな」
女騎士「……」
老騎士「……失礼」
女騎士「お察し、いたします」
老騎士「いや、なに。いずれ儂の中でも、折り合いのつく時が来るのである」
女騎士「折り合い……」
老騎士「貴公には、以前話したことがあろう……。時が解決するのに、身を任せる」
女騎士「……」
老騎士「年寄りの処世術ではなく、ひとつの真理として」
女騎士「……」
老騎士「そういうことも、あるのだ……」
女騎士「……老騎士殿」
老騎士「……そう……、善かれ、悪しかれな」
138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:30:23.40 ID:wiQBcDZQ0
・
・
・
~騎士団詰所~
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(まさか……、老騎士殿のところまで……)
女騎士「……」
女騎士(無理なのか……)
女騎士(やはり、もう……)
女騎士(逆らえない、あらがえない……)
女騎士(流れの中で……、騎士は……、騎士団は……)
女騎士(私は……)
女騎士「……う」
女騎士「うぅぅ……」
女騎士(……まだだ)
女騎士(まだ……やれることはあるはず)
女騎士(私が……、私ががんばらなければ、やらなければ……)
副団長「団長殿」
・
・
~騎士団詰所~
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(まさか……、老騎士殿のところまで……)
女騎士「……」
女騎士(無理なのか……)
女騎士(やはり、もう……)
女騎士(逆らえない、あらがえない……)
女騎士(流れの中で……、騎士は……、騎士団は……)
女騎士(私は……)
女騎士「……う」
女騎士「うぅぅ……」
女騎士(……まだだ)
女騎士(まだ……やれることはあるはず)
女騎士(私が……、私ががんばらなければ、やらなければ……)
副団長「団長殿」
139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:30:55.44 ID:wiQBcDZQ0
副団長「……団長殿?」
女騎士「……あぁ」
副団長「大丈夫ですか?」
女騎士「……、……すまんな、大丈夫だ」
副団長「……」
女騎士「何か、話だったか?」
副団長「……退団希望者が一名、来ています」
女騎士「……」フラ
副団長「団長殿っ」
女騎士「……だ」
副団長「……」
女騎士「…………大丈夫だ、通してくれ」
副団長「……」
女騎士「……あぁ」
副団長「大丈夫ですか?」
女騎士「……、……すまんな、大丈夫だ」
副団長「……」
女騎士「何か、話だったか?」
副団長「……退団希望者が一名、来ています」
女騎士「……」フラ
副団長「団長殿っ」
女騎士「……だ」
副団長「……」
女騎士「…………大丈夫だ、通してくれ」
副団長「……」
140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:31:49.44 ID:wiQBcDZQ0
・
・
・
騎士C「……」
女騎士「そぉーか、そうか! 嫁さんの実家は、糸の貿易商か!」
騎士C「は、はい……」
女騎士「ん? ということは、なんだ? お前が跡取りとかになっちゃうわけか!?」
騎士C「えぇ、まぁ……」
女騎士「はっはっはっ! それはすごい! 未来の社長殿だなっ!」
騎士C「……いやぁ」
女騎士「ん~、しかしあれだぞ、経営というやつは中々大変だぞ? お前のような無骨で無愛想な男に、果たして務まるか……」
騎士C「……」
女騎士「なんてな! お前なら心配ないさ! あっはっは――……」
騎士C「……本当は」
女騎士「ん?」
・
・
騎士C「……」
女騎士「そぉーか、そうか! 嫁さんの実家は、糸の貿易商か!」
騎士C「は、はい……」
女騎士「ん? ということは、なんだ? お前が跡取りとかになっちゃうわけか!?」
騎士C「えぇ、まぁ……」
女騎士「はっはっはっ! それはすごい! 未来の社長殿だなっ!」
騎士C「……いやぁ」
女騎士「ん~、しかしあれだぞ、経営というやつは中々大変だぞ? お前のような無骨で無愛想な男に、果たして務まるか……」
騎士C「……」
女騎士「なんてな! お前なら心配ないさ! あっはっは――……」
騎士C「……本当は」
女騎士「ん?」
141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:32:21.66 ID:wiQBcDZQ0
騎士C「……本当は、オレ、騎士を続けるつもりだったんです」
女騎士「……」
騎士C「けれど、向こうの家から……」
女騎士「……」
騎士C「騎士の仕事に、この先があるのかと……」
女騎士「……」
騎士C「……今の世の中、騎士の名誉が何になる、って……」
女騎士「お前……」
騎士C「……オレは」
女騎士「……」
騎士C「……なにも、言い返せなかった」
女騎士「……」
騎士C「オレ、騎士失格なんです」
女騎士「……馬鹿者」
騎士C「……」
女騎士「誰が何と言おうと、お前は立派な、我が団自慢の騎士だ」
騎士C「団長……」
女騎士「胸を張れ」
女騎士「……」
騎士C「けれど、向こうの家から……」
女騎士「……」
騎士C「騎士の仕事に、この先があるのかと……」
女騎士「……」
騎士C「……今の世の中、騎士の名誉が何になる、って……」
女騎士「お前……」
騎士C「……オレは」
女騎士「……」
騎士C「……なにも、言い返せなかった」
女騎士「……」
騎士C「オレ、騎士失格なんです」
女騎士「……馬鹿者」
騎士C「……」
女騎士「誰が何と言おうと、お前は立派な、我が団自慢の騎士だ」
騎士C「団長……」
女騎士「胸を張れ」
142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:32:51.36 ID:wiQBcDZQ0
・
・
・
副団長「……――いかがでした」
女騎士「ああ、話は済んだぞ。副団長、彼の退役手続きを頼む」
副団長「……、……はい」
女騎士「退役金もたっぷり弾んでやれ! それから……」
副団長「……」
女騎士「それから――……」
副団長「……」
女騎士「……すまん、外してくれ」
副団長「……団長殿」
女騎士「……」
副団長「……失礼します」
女騎士「……」
パタン
・
・
・
・
・
副団長「……――いかがでした」
女騎士「ああ、話は済んだぞ。副団長、彼の退役手続きを頼む」
副団長「……、……はい」
女騎士「退役金もたっぷり弾んでやれ! それから……」
副団長「……」
女騎士「それから――……」
副団長「……」
女騎士「……すまん、外してくれ」
副団長「……団長殿」
女騎士「……」
副団長「……失礼します」
女騎士「……」
パタン
・
・
・
143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/21(月) 23:33:27.39 ID:wiQBcDZQ0
・
・
・
女騎士「……」
――去り時を誤れば――
――結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……――
――今の世の中、騎士の名誉が何になる、って――
女騎士「……」
女騎士「う……」
女騎士(……騎士団を、生かし続けることで……)
女騎士(色々なものにあらがって、歯向かい続けることで……)
女騎士(私は、何かを見誤ってしまって、いるのか……?)
女騎士「う、ぅ……」
女騎士(私の居場所――)
女騎士(私の騎士道――)
女騎士(私の……人生――)
女騎士「う、ぅ、ぅぅぅ……」
女騎士(もう……)
女騎士(もう、限界だ……)
女騎士「…………魔女…………」
・
・
女騎士「……」
――去り時を誤れば――
――結局は、後に残された者が、苦しむことになろう……――
――今の世の中、騎士の名誉が何になる、って――
女騎士「……」
女騎士「う……」
女騎士(……騎士団を、生かし続けることで……)
女騎士(色々なものにあらがって、歯向かい続けることで……)
女騎士(私は、何かを見誤ってしまって、いるのか……?)
女騎士「う、ぅ……」
女騎士(私の居場所――)
女騎士(私の騎士道――)
女騎士(私の……人生――)
女騎士「う、ぅ、ぅぅぅ……」
女騎士(もう……)
女騎士(もう、限界だ……)
女騎士「…………魔女…………」
148: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:14:31.20 ID:3mTrz7e70
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「……」
・
・
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「……」
・
・
・
149: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:15:18.60 ID:3mTrz7e70
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「………………」
・
・
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士「………………」
・
・
・
150: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:15:48.06 ID:3mTrz7e70
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……ん)
女騎士(……あれ)
女騎士(…………なんだっけ?)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……私、何をしてたんだったっけ?)
女騎士(……えっと)
・
・
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……ん)
女騎士(……あれ)
女騎士(…………なんだっけ?)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……私、何をしてたんだったっけ?)
女騎士(……えっと)
・
・
・
151: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:16:16.02 ID:3mTrz7e70
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……忘れた)
女騎士(……忘れたけど、まぁ……)
女騎士(いいや……)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……何だか、暖かいし、柔らかいし)
女騎士(……すべすべで、いい匂いするし……)
女騎士(……ここにいれるなら、どうでも……)
女騎士(……ここに……)
女騎士「……」
女騎士「……」
・
・
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……忘れた)
女騎士(……忘れたけど、まぁ……)
女騎士(いいや……)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……何だか、暖かいし、柔らかいし)
女騎士(……すべすべで、いい匂いするし……)
女騎士(……ここにいれるなら、どうでも……)
女騎士(……ここに……)
女騎士「……」
女騎士「……」
・
・
・
152: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:16:46.88 ID:3mTrz7e70
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……ここ……)
女騎士(……ここは……)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(ここはどこだ?)
女騎士「……っ!?」ガバッ
魔女「あら、もう起きちゃったの?」
女騎士「えっ、えっ……?」
魔女「さっき寝付いたばかりじゃないのぉ」ヨシヨシ
女騎士「えぇぇ……?」
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(……ここ……)
女騎士(……ここは……)
女騎士「……」
女騎士「……」
女騎士(ここはどこだ?)
女騎士「……っ!?」ガバッ
魔女「あら、もう起きちゃったの?」
女騎士「えっ、えっ……?」
魔女「さっき寝付いたばかりじゃないのぉ」ヨシヨシ
女騎士「えぇぇ……?」
153: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:17:22.05 ID:3mTrz7e70
・
・
・
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「びっくりしたわよぉ、こんな夜更けにフラっとあらわれて……。一瞬、幽霊かと思っちゃったわ」
女騎士「……」
女騎士(……全然覚えていない……)
女騎士「無理がたたると、怖いんだな、人間て」
魔女「他人事みたいに言うんじゃないの」デコピン
女騎士「あたっ」
魔女「ふぅ……」
女騎士「……すまん」
魔女「別に、いいから。ほら……ちゃんと横になって」
女騎士「うん……。……あのさ」
魔女「ん?」
女騎士「あのさ……、私……」
魔女「いいの、何も言わないで」
女騎士「……」
魔女「いいの」
女騎士「……うん」
・
・
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「びっくりしたわよぉ、こんな夜更けにフラっとあらわれて……。一瞬、幽霊かと思っちゃったわ」
女騎士「……」
女騎士(……全然覚えていない……)
女騎士「無理がたたると、怖いんだな、人間て」
魔女「他人事みたいに言うんじゃないの」デコピン
女騎士「あたっ」
魔女「ふぅ……」
女騎士「……すまん」
魔女「別に、いいから。ほら……ちゃんと横になって」
女騎士「うん……。……あのさ」
魔女「ん?」
女騎士「あのさ……、私……」
魔女「いいの、何も言わないで」
女騎士「……」
魔女「いいの」
女騎士「……うん」
154: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:17:57.68 ID:3mTrz7e70
魔女「騎士さんが、誰よりも一生懸命だったこと、私がよく知ってるわ……」
女騎士「……」
魔女「よくがんばったわねぇ」ナデナデ
女騎士「……うん」
魔女「……もう、大丈夫だから……」
女騎士「…………うん」
魔女「……目を瞑って、休みなさい……ゆっくり……」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「魔女……」
魔女「……」
女騎士「眠れないよ」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「よくがんばったわねぇ」ナデナデ
女騎士「……うん」
魔女「……もう、大丈夫だから……」
女騎士「…………うん」
魔女「……目を瞑って、休みなさい……ゆっくり……」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「魔女……」
魔女「……」
女騎士「眠れないよ」
魔女「……」
155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:18:25.98 ID:3mTrz7e70
女騎士「だって、もう、私……」
魔女「……」
女騎士「騎士じゃなくなっちゃう……」
魔女「……」
女騎士「騎士じゃなくなったら、私」
魔女「……」
女騎士「私は……、私って……、なんだ……?」
魔女「……」
女騎士「私は……」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……怖いのね」
女騎士「……」
魔女「怖くて、寂しくて、眠れないくらい」
女騎士「……」コクン
魔女「……」
女騎士「騎士じゃなくなっちゃう……」
魔女「……」
女騎士「騎士じゃなくなったら、私」
魔女「……」
女騎士「私は……、私って……、なんだ……?」
魔女「……」
女騎士「私は……」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……怖いのね」
女騎士「……」
魔女「怖くて、寂しくて、眠れないくらい」
女騎士「……」コクン
156: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:18:54.92 ID:3mTrz7e70
魔女「さっき、ちょっと寝てたじゃない」
女騎士「……あれは、たぶん気絶だし」
魔女「気絶かぁー……」
女騎士「……」
魔女「……ふぅ」
女騎士「……」
魔女「じゃ、お邪魔しま――……」
女騎士「ちょっとちょっとちょっと魔女さん」
魔女「なぁに?」
女騎士「なんで入ってくるの!」
魔女「私のベッドだもの」
女騎士「そうだけども!」
魔女「添い寝」
女騎士「え」
女騎士「……あれは、たぶん気絶だし」
魔女「気絶かぁー……」
女騎士「……」
魔女「……ふぅ」
女騎士「……」
魔女「じゃ、お邪魔しま――……」
女騎士「ちょっとちょっとちょっと魔女さん」
魔女「なぁに?」
女騎士「なんで入ってくるの!」
魔女「私のベッドだもの」
女騎士「そうだけども!」
魔女「添い寝」
女騎士「え」
157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:19:20.57 ID:3mTrz7e70
魔女「……こうして、二人一緒なら」
女騎士「……」
魔女「ちょっとは、寂しくなくなるでしょ?」
女騎士「……」
魔女「ね……?」
女騎士「……うん」
魔女「んふふ……♪」スリスリ
女騎士「近い近い……」
女騎士(でも……)
女騎士(確かに……)
女騎士(暖かくて……、甘い香りがして……)
女騎士「……」
女騎士(抱き着いたら、きっと……とても柔らかいのだろう)
女騎士(……、……怒るかな?)
女騎士「……」
魔女「ちょっとは、寂しくなくなるでしょ?」
女騎士「……」
魔女「ね……?」
女騎士「……うん」
魔女「んふふ……♪」スリスリ
女騎士「近い近い……」
女騎士(でも……)
女騎士(確かに……)
女騎士(暖かくて……、甘い香りがして……)
女騎士「……」
女騎士(抱き着いたら、きっと……とても柔らかいのだろう)
女騎士(……、……怒るかな?)
158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:20:49.76 ID:3mTrz7e70
魔女「初めて、ここに来た時から」
女騎士「……え?」
魔女「騎士さん……、私のベッドでは、グッスリだったでしょう?」
女騎士「……あぁ、そうだった」
魔女「どうしてだったか、分かる……?」
女騎士「……さぁ? やっぱり魔法だったのかも……」
魔女「んふふ、違うったら」
女騎士「んー……」
魔女「きっと」
女騎士「……」
魔女「私の前では、騎士じゃない貴方でいてくれたから……」
女騎士「……」
女騎士「……え?」
魔女「騎士さん……、私のベッドでは、グッスリだったでしょう?」
女騎士「……あぁ、そうだった」
魔女「どうしてだったか、分かる……?」
女騎士「……さぁ? やっぱり魔法だったのかも……」
魔女「んふふ、違うったら」
女騎士「んー……」
魔女「きっと」
女騎士「……」
魔女「私の前では、騎士じゃない貴方でいてくれたから……」
女騎士「……」
159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:21:44.62 ID:3mTrz7e70
魔女「……あ、もちろん、騎士さんは騎士さんなんだけどね」
女騎士「ややこしい」
魔女「……ただ、少しだけ、背負った重荷を下ろして」
女騎士「……」
魔女「……少しだけ、騎士の役目を忘れて」
女騎士「……」
魔女「そのままの貴方で、私と一緒にいてくれたから……」
女騎士「……」
魔女「それできっと、このベッドではいつだって、よく眠れたと思うの」
女騎士「……そうかもな」
女騎士「ややこしい」
魔女「……ただ、少しだけ、背負った重荷を下ろして」
女騎士「……」
魔女「……少しだけ、騎士の役目を忘れて」
女騎士「……」
魔女「そのままの貴方で、私と一緒にいてくれたから……」
女騎士「……」
魔女「それできっと、このベッドではいつだって、よく眠れたと思うの」
女騎士「……そうかもな」
160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:22:15.19 ID:3mTrz7e70
魔女「……だからね」
女騎士「……」
魔女「ここは、貴方の居場所のひとつなの」
女騎士「……」
魔女「……騎士じゃない貴方が、安心して憩う場所」
女騎士「……」
魔女「このベッドは、この屋敷は、この森は――……」
女騎士「……」
魔女「私の傍は……」
女騎士「……」
魔女「貴方の場所よ、騎士さん」
女騎士「魔女……」
魔女「ふふっ、しゃべってばかりじゃ、騎士さんも眠れないわね」
女騎士「ねぇ……」
女騎士「……」
魔女「ここは、貴方の居場所のひとつなの」
女騎士「……」
魔女「……騎士じゃない貴方が、安心して憩う場所」
女騎士「……」
魔女「このベッドは、この屋敷は、この森は――……」
女騎士「……」
魔女「私の傍は……」
女騎士「……」
魔女「貴方の場所よ、騎士さん」
女騎士「魔女……」
魔女「ふふっ、しゃべってばかりじゃ、騎士さんも眠れないわね」
女騎士「ねぇ……」
161: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/22(火) 22:23:38.90 ID:3mTrz7e70
魔女「ん?」
女騎士「あの……、えっと……」
魔女「……いいわよ、ギュッてしても」
女騎士「……え?」
魔女「ほら」
女騎士「うん……」
ギュッ
女騎士(なんで分かったんだろう)
女騎士(魔女はやっぱり……)
女騎士(不思議だなぁ……)
魔女「人間の腕って、誰かを抱きしめるような形の造りになってるのよ」
女騎士「不思議だなぁ」
魔女「不思議でしょ?」
女騎士「あぁ……」
魔女「……」ナデナデ
女騎士「………………スヤァ」
女騎士「あの……、えっと……」
魔女「……いいわよ、ギュッてしても」
女騎士「……え?」
魔女「ほら」
女騎士「うん……」
ギュッ
女騎士(なんで分かったんだろう)
女騎士(魔女はやっぱり……)
女騎士(不思議だなぁ……)
魔女「人間の腕って、誰かを抱きしめるような形の造りになってるのよ」
女騎士「不思議だなぁ」
魔女「不思議でしょ?」
女騎士「あぁ……」
魔女「……」ナデナデ
女騎士「………………スヤァ」
167: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:19:03.09 ID:x5aURJXg0
・
・
・
~朝~
女騎士「……」
女騎士「……」ムクリ
女騎士「……ん~」
女騎士「――」ノビー
女騎士「……っはぁ……」
女騎士「……」
女騎士(爽快だ……)
女騎士(爽快すぎる……!)
女騎士「……こんなに軽かったのか、私の身体……!」ノビーッ
女騎士「……」
女騎士「あれ、魔女……」
・
・
~朝~
女騎士「……」
女騎士「……」ムクリ
女騎士「……ん~」
女騎士「――」ノビー
女騎士「……っはぁ……」
女騎士「……」
女騎士(爽快だ……)
女騎士(爽快すぎる……!)
女騎士「……こんなに軽かったのか、私の身体……!」ノビーッ
女騎士「……」
女騎士「あれ、魔女……」
168: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:19:34.52 ID:x5aURJXg0
・
・
・
女騎士「……あ、いた」
魔女「あら、おはよう、騎士さん」
女騎士「おはよう、魔女」
魔女「朝ごはん、準備してたんだけど……、時間あるかしらぁ?」
女騎士「え~っと、まだ大丈夫……。いいのか?」
魔女「うふふ、もちろん」
女騎士「美味しそうな匂いする……」
魔女「すぐできるわよ~♪」
女騎士「何作ってるんだ?」
魔女「んー、イモリの黒焼きとねえ……」
女騎士「……………………」
魔女「冗談よ、魔女ジョークよ」
女騎士「お、おう……」
・
・
女騎士「……あ、いた」
魔女「あら、おはよう、騎士さん」
女騎士「おはよう、魔女」
魔女「朝ごはん、準備してたんだけど……、時間あるかしらぁ?」
女騎士「え~っと、まだ大丈夫……。いいのか?」
魔女「うふふ、もちろん」
女騎士「美味しそうな匂いする……」
魔女「すぐできるわよ~♪」
女騎士「何作ってるんだ?」
魔女「んー、イモリの黒焼きとねえ……」
女騎士「……………………」
魔女「冗談よ、魔女ジョークよ」
女騎士「お、おう……」
169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:20:03.44 ID:x5aURJXg0
・
・
・
女騎士「……」ムグムグ
魔女「お茶のおかわりは、いかが?」
女騎士「いただこう」
魔女「よく眠れたみたいねぇ」
女騎士「あぁ、まさしく快眠、まるで生まれ変わったみたいな気分だな!」
魔女「ふふ、よかったわ……」
女騎士「……人間って、ちゃんと睡眠取らないと駄目なんだな」
魔女「そうねぇ」
女騎士「なんでだろうな」
魔女「なんでかしらねぇ……お茶のおかわりは?」
女騎士「いただこう」
・
・
女騎士「……」ムグムグ
魔女「お茶のおかわりは、いかが?」
女騎士「いただこう」
魔女「よく眠れたみたいねぇ」
女騎士「あぁ、まさしく快眠、まるで生まれ変わったみたいな気分だな!」
魔女「ふふ、よかったわ……」
女騎士「……人間って、ちゃんと睡眠取らないと駄目なんだな」
魔女「そうねぇ」
女騎士「なんでだろうな」
魔女「なんでかしらねぇ……お茶のおかわりは?」
女騎士「いただこう」
170: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:20:33.74 ID:x5aURJXg0
・
・
・
魔女「忘れ物、ない?」
女騎士「ああ……、なんか多分、身一つで来たよな、私」
魔女「そういえば、そうね……」
女騎士「うん……ごめんな、色々」
魔女「いいのよう」
女騎士「ゆうべは……、本当、助かった」
魔女「いいったら、……律儀な子ねぇ」
女騎士「お礼、言ってなかったと思うから」
魔女「そうだったかしら?」
女騎士「うん、だから……ありがとう」
魔女「どういてしまして♪」
女騎士「……それじゃ」
魔女「いってらっしゃい」
女騎士「……」
魔女「いって、らっ、しゃいっ」
女騎士「……あ、ああ! いってきますっ!」
・
・
魔女「忘れ物、ない?」
女騎士「ああ……、なんか多分、身一つで来たよな、私」
魔女「そういえば、そうね……」
女騎士「うん……ごめんな、色々」
魔女「いいのよう」
女騎士「ゆうべは……、本当、助かった」
魔女「いいったら、……律儀な子ねぇ」
女騎士「お礼、言ってなかったと思うから」
魔女「そうだったかしら?」
女騎士「うん、だから……ありがとう」
魔女「どういてしまして♪」
女騎士「……それじゃ」
魔女「いってらっしゃい」
女騎士「……」
魔女「いって、らっ、しゃいっ」
女騎士「……あ、ああ! いってきますっ!」
171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:21:27.21 ID:x5aURJXg0
・
・
・
~都の中心部、騎士団詰所~
女騎士「……――このように、騎士団は既に、如何ともし難い状況に置かれており――……」
副団長「……」
女騎士「……これ以上の団の継続は不可能であると、現実的に判断せざるを得ない……」
騎士A「……」
女騎士「……よって、団長たるこの私の責任の下……」
騎士B「……」
女騎士「騎士団の、解散を宣言する」
「「「「…………」」」」
・
・
~都の中心部、騎士団詰所~
女騎士「……――このように、騎士団は既に、如何ともし難い状況に置かれており――……」
副団長「……」
女騎士「……これ以上の団の継続は不可能であると、現実的に判断せざるを得ない……」
騎士A「……」
女騎士「……よって、団長たるこの私の責任の下……」
騎士B「……」
女騎士「騎士団の、解散を宣言する」
「「「「…………」」」」
172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:21:59.61 ID:x5aURJXg0
女騎士「――といっても、しばらくは今まで通り、騎士団の任務を続けていく予定だ」
女騎士「諸君ら、団の全員が、新たな道……騎士団を離れた後の、行き先を見つけるまでは……」
女騎士「なんとか……、今の騎士団を維持していこうと思っている」
「「「「…………」」」」
女騎士「……すまないな、私がふがいないばかりに……」
女騎士「心から、みなには申し訳ないと思っている」
女騎士「……」
女騎士「……ごめん、なさい……」
騎士A「解散は……、騎士団は、いつまで保てそうなのですか」
女騎士「はっきりとは言えない……、けれど、いいとこで半年……いや、もっと短いかも」
騎士B「半年……、だったら」
女騎士「……」
騎士B「あと半年は、騎士でいていいんですよね、俺たち」
女騎士「え……」
173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:22:42.00 ID:x5aURJXg0
騎士A「最後の最後まで、『クワガタ』騎士団のメンバーでいたいもんな、俺たち」
騎士B「な。最後まで、できるだけのことして、恩返ししたいもんな、この団に」
ソウダナー
ナー
女騎士「……」
騎士A「騎士団がなくなる、そのときまで」
騎士B「騎士の一員でいていいですかねぇ、俺たち」
女騎士「も、もちろんだ! だが……」
副団長「団長殿……」
女騎士「……」
副団長「みな、同じ気持ちなのですよ」
女騎士「……副団長」
174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:23:44.06 ID:x5aURJXg0
副団長「団長殿がひとり、団のためにもがいて、苦しんで……」
女騎士「……」
副団長「心も身体も、ボロボロになっているとき、私たちは……、見ていることしか、できませんでした」
女騎士「……」
騎士A「言ってくれないんだもんな、団長ー」
騎士B「なー」
女騎士「え、ごめん……、本当、いや本当」
副団長「みな歯がゆくて、悔しくて……」
女騎士「……」
副団長「だから……」
女騎士「……」
副団長「みんな、貴方に報いたいと……、そう願っているのですよ」
女騎士「みんな……」
「「「「……」」」」
女騎士「みんな、ありがとう……」
・
・
・
175: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:24:14.92 ID:x5aURJXg0
・
・
・
~数日後~
~訓練所~
ダンッダンッ
バシッ
女騎士「よしよし! みな気合十分だな! 感心感心っ」
女騎士(あれから……)
女騎士(騎士団は、今まで以上に精力的に、活発になっている……)
騎士A「団長! 次は俺と稽古、お願いします!」
女騎士「よろしい! 手加減はしないぞ!」
騎士B「団長! その次は俺と」
女騎士「ふふふ、いい気合いだ……、ならば私も、久しぶりに本気を出させてもらうとするか」ゴゴゴ
騎士A「あっ」
騎士B「あっ」
女騎士(団員、ひとりひとりが……)
女騎士(騎士でいられる時間を、胸に刻み込もうと、しているかのように……)
女騎士(すぐ先に、終わりが見えている……)
女騎士(今この瞬間を、惜しむかのように)
・
・
・
・
・
~数日後~
~訓練所~
ダンッダンッ
バシッ
女騎士「よしよし! みな気合十分だな! 感心感心っ」
女騎士(あれから……)
女騎士(騎士団は、今まで以上に精力的に、活発になっている……)
騎士A「団長! 次は俺と稽古、お願いします!」
女騎士「よろしい! 手加減はしないぞ!」
騎士B「団長! その次は俺と」
女騎士「ふふふ、いい気合いだ……、ならば私も、久しぶりに本気を出させてもらうとするか」ゴゴゴ
騎士A「あっ」
騎士B「あっ」
女騎士(団員、ひとりひとりが……)
女騎士(騎士でいられる時間を、胸に刻み込もうと、しているかのように……)
女騎士(すぐ先に、終わりが見えている……)
女騎士(今この瞬間を、惜しむかのように)
・
・
・
176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:24:46.14 ID:x5aURJXg0
・
・
・
~市街~
ザワザワ
ガヤガヤ
女騎士「下がれっ! みんな下がってくれ!」
ザワザワ
女騎士「ぐっ……。心配するな……、すぐ助けるからなっ……」
子犬「クゥーン……」
都民C「おぉ、あんなとこから落ちたら……ひとたまりもねぇよぉ」
都民D「うわぁ……俺もう見てられねぇ」
女騎士「っ……! もう一息……っ!」
ガシッ
・
・
~市街~
ザワザワ
ガヤガヤ
女騎士「下がれっ! みんな下がってくれ!」
ザワザワ
女騎士「ぐっ……。心配するな……、すぐ助けるからなっ……」
子犬「クゥーン……」
都民C「おぉ、あんなとこから落ちたら……ひとたまりもねぇよぉ」
都民D「うわぁ……俺もう見てられねぇ」
女騎士「っ……! もう一息……っ!」
ガシッ
177: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:25:19.24 ID:x5aURJXg0
女騎士(……皮肉なことだが……)
女騎士(私自身、これまでないくらい、充実した日々を送っている……)
女騎士「……――ほら、もう大丈夫だからな」
子犬「キャン! キャン!」
オォォォ
パチパチパチ
女騎士(国のために、誰かのために、些細なことでも、汗をかいて)
女騎士(これが、私の求めた騎士の道だと、実感できるような……、かけがえのない日々)
都民E「あぁぁ……ありがとうございます、ありがとうございますっ」
女騎士「いやぁ、ワンコが無事で何よりだ!」
178: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:25:59.03 ID:x5aURJXg0
子犬「クゥゥ……」
都民E「あら……」
女騎士「む? どこか怪我をしていただろうか?」
都民E「いえ……、この子に着せていたお洋服、ビリビリになっちゃっていて。この子のお気に入りだったから……」
女騎士「ふむ……」
都民E「私の母の手作りで……、いまはもう、亡くなってしまったのですが……」
子犬「……」シュン
女騎士「よければその服、お借りできないだろうか?」
都民E「え?」
・
・
・
都民E「あら……」
女騎士「む? どこか怪我をしていただろうか?」
都民E「いえ……、この子に着せていたお洋服、ビリビリになっちゃっていて。この子のお気に入りだったから……」
女騎士「ふむ……」
都民E「私の母の手作りで……、いまはもう、亡くなってしまったのですが……」
子犬「……」シュン
女騎士「よければその服、お借りできないだろうか?」
都民E「え?」
・
・
・
179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:26:25.94 ID:x5aURJXg0
・
・
・
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
魔女「……~♪」ヌイヌイ
女騎士「……」
魔女「~♪」ヌイヌイ
女騎士(もちろん……)
女騎士(まだ心の整理は、全然ついていない)
女騎士(時々、ふとした瞬間に)
女騎士(腹の奥に、しこりのように重たい感覚が――……)
魔女「……えい」ツン
女騎士「うわぁっ! びっくりしたぁ!」
魔女「また難しいこと、考えてたでしょ」
女騎士「う……、なんで分かるんだよ……」
・
・
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
魔女「……~♪」ヌイヌイ
女騎士「……」
魔女「~♪」ヌイヌイ
女騎士(もちろん……)
女騎士(まだ心の整理は、全然ついていない)
女騎士(時々、ふとした瞬間に)
女騎士(腹の奥に、しこりのように重たい感覚が――……)
魔女「……えい」ツン
女騎士「うわぁっ! びっくりしたぁ!」
魔女「また難しいこと、考えてたでしょ」
女騎士「う……、なんで分かるんだよ……」
180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:27:09.69 ID:x5aURJXg0
魔女「ふふふ、なんでか教えてあげしょうか?」
女騎士「……うん」
魔女「実はねぇ……」
女騎士「……」
魔女「……騎士さん、すっごい顔に出る方よ」
女騎士「えぇ~……、うっそぉ」
魔女「本当に。……はい、できたわよ」
女騎士「おぉ!」
魔女「どうかしら」
女騎士「うむ! ばっちりだ! 器用なものだな……」
魔女「これくらい、アサメシ前ね」
女騎士「これならあのワンコも文句あるまい」
魔女「騎士さん、犬のことワンコって呼ぶのね……」
・
・
・
女騎士「……うん」
魔女「実はねぇ……」
女騎士「……」
魔女「……騎士さん、すっごい顔に出る方よ」
女騎士「えぇ~……、うっそぉ」
魔女「本当に。……はい、できたわよ」
女騎士「おぉ!」
魔女「どうかしら」
女騎士「うむ! ばっちりだ! 器用なものだな……」
魔女「これくらい、アサメシ前ね」
女騎士「これならあのワンコも文句あるまい」
魔女「騎士さん、犬のことワンコって呼ぶのね……」
・
・
・
181: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:27:39.18 ID:x5aURJXg0
・
・
・
女騎士(穏やかに日々が過ぎていく……)
女騎士(こんな毎日の中で)
女騎士(いつかきっと、時間が解決してくれることも、あるのかもしれない……)
女騎士(……あの老騎士殿が、語ったように……)
・
・
・
182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:28:11.38 ID:x5aURJXg0
・
・
・
~数日後・王都 王府庁舎内~
役人「そうでしたか……、寂しくなります、本当に……」
女騎士「あぁ……、だがまだしばらくは、君の世話になる予定だがな」
役人「そうなんですね……、でしたら私も、全力でサポートしますから!」
女騎士「ははは! ぜひ頼む! ……それで」
役人「あ、ええ、お願いしたい件というのは、実は……」
女騎士「うん」
役人「……『東の蜘蛛の森の魔女』の、探索と拘束という話でして」
女騎士「うん……うん?」
・
・
~数日後・王都 王府庁舎内~
役人「そうでしたか……、寂しくなります、本当に……」
女騎士「あぁ……、だがまだしばらくは、君の世話になる予定だがな」
役人「そうなんですね……、でしたら私も、全力でサポートしますから!」
女騎士「ははは! ぜひ頼む! ……それで」
役人「あ、ええ、お願いしたい件というのは、実は……」
女騎士「うん」
役人「……『東の蜘蛛の森の魔女』の、探索と拘束という話でして」
女騎士「うん……うん?」
183: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:29:00.23 ID:x5aURJXg0
役人「あ、分かりますよ、その反応。おとぎ話じゃないの? って。思いますよね。私も思いましたもん」
女騎士「え、え、えちょっと」
役人「でも、実在する人物の話なんです! 報告では、一部の都民が接触しているとの証言が――……」
女騎士「ちょっと、ちょっと待って……」
役人「あ、はい」
女騎士「……あの……、なんで?」
役人「う~ん、王立軍の方では、手が回らないようでして……、他の騎士団にも打診してみたのですが、皆さん乗り気じゃ――」
女騎士「いや、なんで私たちがやるの、ってことじゃなくて……」
役人「あぁ」
女騎士「なんで魔女――……えっと、『東の蜘蛛の森の魔女』を、捕らえる必要があるんだ?」
役人「……女騎士さんも、ご存知かと思いますが、最近の行方不明事件……」
女騎士「……女児3名が、相次いで……、っていう、あれか?」
役人「それです」
184: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 23:30:20.91 ID:x5aURJXg0
女騎士「その事件と魔女と、どういう関係なんだ?」
役人「王立軍が、王都内をくまなく調査しましたが、3人の消息は一切掴めませんでした」
女騎士「……」
役人「あと、調査が及んでいない地域といえば、『東の蜘蛛の森』くらいでして」
女騎士「……誘拐かもしれん。だとすれば、すでに王都を出てしまっているかも……」
役人「城門警備隊は、断固として否定しています」
女騎士「だからって、その魔女の仕業だとは……!」
役人「それを調べていただきたい、というのが、今回の依頼なんです……」
女騎士「……つまり……つまり、だ」
役人「……」
女騎士「つまり、無関係かもしれん者に、縄をかけよというわけだろ? 騎士である我々が?」
役人「……あの」
女騎士「なんだ?」
役人「……な、なんか、怒ってます?」
女騎士「えなんで? なんで私怒る必要全然なくない? むしろ全然普通だしっていうか逆に冷静だと思うし実際怒ってないし?」
役人「ひぅぅぅっ!」
役人「王立軍が、王都内をくまなく調査しましたが、3人の消息は一切掴めませんでした」
女騎士「……」
役人「あと、調査が及んでいない地域といえば、『東の蜘蛛の森』くらいでして」
女騎士「……誘拐かもしれん。だとすれば、すでに王都を出てしまっているかも……」
役人「城門警備隊は、断固として否定しています」
女騎士「だからって、その魔女の仕業だとは……!」
役人「それを調べていただきたい、というのが、今回の依頼なんです……」
女騎士「……つまり……つまり、だ」
役人「……」
女騎士「つまり、無関係かもしれん者に、縄をかけよというわけだろ? 騎士である我々が?」
役人「……あの」
女騎士「なんだ?」
役人「……な、なんか、怒ってます?」
女騎士「えなんで? なんで私怒る必要全然なくない? むしろ全然普通だしっていうか逆に冷静だと思うし実際怒ってないし?」
役人「ひぅぅぅっ!」
190: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:21:01.39 ID:GWfyUqhJ0
女騎士「だいたいさぁ、王立軍が手一杯って、そんなわけないじゃん……。ちょっとでも怪しかったら、自分たちでやるでしょ彼ら……」ブツブツ
役人「……」
女騎士「それを汚れ仕事押し付けるみたいなさぁ……、いや分かるけどね私らもね、そういう役回りなんだって分かってるんだけどね」ブツブツ
役人「……」
役人(女騎士さん……、不機嫌になると、こんな感じなんだ……)
役人「た、確かに、魔女を捕縛するといっても、大義名分はあまり立っていないと思います……」
女騎士「だったら先に、証拠なり証言なり集めるのが筋だろう……」
役人「その通りではあるんですが……、う~ん……」
女騎士「?」
役人「いえ……確かな話ではないのですが、今回の件、裏というか……違う狙いがあるようで」
女騎士「どういうことだ?」
191: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:21:36.62 ID:GWfyUqhJ0
役人「この行方不明事件……、王立軍も、国外に連れ去られた疑いが、濃厚だと見ているようでして」
女騎士「そうなの?」
役人「はい……。まぁ、相当力を入れて、探索していたようですからね。王都内にいる可能性は、まずないだろうと、言っています」
女騎士「ふぅん」
役人「ただ、もちろん国境を管理する城門警備隊は、そんなことはありえない、と」
女騎士「まあ、当然そう言うだろうな」
役人「ええ……、それで、ほら、その2つの組織って、管理局が違うじゃないですか?」
女騎士「あぁ」
役人「王立軍を管理する軍務局と……」
女騎士「……」
役人「城門警備隊を管轄する、内務局の間で、責任の擦り付け合いみたいなことが、ひっそりと起きてるんですね」
女騎士「はぁ……なんだかなぁ……」
192: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:22:33.96 ID:GWfyUqhJ0
役人「……ここからは、王立軍の方から聞いた話なんですが……」
女騎士「……」
役人「……軍務局も内務局も、自分たちの責任は認めたくない」
女騎士「うん」
役人「だけど、お互いに責任の押し付け合い、大人げない喧嘩をするのも、本当は避けたいはず」
女騎士「うん……」
役人「……もし、そんな状況で、実行犯は『森』の住人だった、となれば……?」
女騎士「……」
役人「王立軍も、城門警備隊も、自分の仕事に瑕疵はなかった、となり」
女騎士「……おい」
役人「……軍務局と内務局も、無闇ないさかいを避けられる」
女騎士「おいおいっ」
193: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:23:20.69 ID:GWfyUqhJ0
役人「……すっごく、都合の良い話になりませんか?」
女騎士「待ってくれ! そ、そんなの……っ!」ガタッ
役人「ひぁっ」
女騎士「それじゃあ何か!? 王立軍は自分たちの政治のために、魔女を捕らえて!!」
役人「あわわわ、おち、おちつ――……」
女騎士「都合よく罪を被ってもらおうというのか!? そんなことっ! 許されるとでも……っ!」ダンッ
役人「うぅぅ……」ビクン
女騎士「っ……、あ――……、いや……すまない……」
役人「おお落ち着いて……くださいぃ……」ビクビク
女騎士「あ、あぁ……悪かった。つい、カッとなって……」
役人「……うぅ、……女騎士さんの言うことも、分かります」
女騎士「……」
194: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:24:03.23 ID:GWfyUqhJ0
役人「ただ、もし本当に、『魔女』だったら……」
女騎士「……」
役人「多くの人は、女騎士さんのように、間違ってるって、怒ったりはしないと思います……」
女騎士「……」
役人「王都の人間にとって、『東の蜘蛛の森の魔女』は」
女騎士「……」
役人「半分はおとぎ話で、半分は実際の恐怖の対象ですからね……」
女騎士「……」
――怖い魔女が住んでいて――
――森に迷った子を捕まえて――
――醜い蜘蛛に変えてしまう――
女騎士「……」
195: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:24:33.25 ID:GWfyUqhJ0
女騎士(もし……)
女騎士(もし魔女が、捕まったりなんかしたら……)
女騎士(……あの子に味方なんて……)
女騎士(誰ひとり……)
役人「……あ、あのぅ」
女騎士「……ん?」
役人「やっぱり、止めておきますか?」
女騎士「む……」
役人「気乗りする話じゃないのは、よく分かりますし……」
女騎士「……」
役人「……」
女騎士「……」
役人「……」
女騎士「……いや、やる」
196: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:25:04.46 ID:GWfyUqhJ0
役人「え?」
女騎士「やらせてもらおう。どんな理由であれ、騎士はその務めを果たすべきだからな!」
役人「い、いいんですか……?」
女騎士「もちろんだとも! しかしなーいやーまいったなー」
役人「え?」
女騎士「すぐ行きたいのはなー、やまやまなんだけどなー」
役人「……あの」
女騎士「たいへんだからなー、うちの騎士団ー、いまたいへんだからなー」
役人「え、ええ……、その辺の事情は、よくわかりま――」
女騎士「準備だけでもなー、相当な日数かかるだろうなー。十日……いや2週間はかかるだろうなーたいへんだからー」
役人「そ、そこは、仕方ないということで、理解してもらえると思い――」
女騎士「そーかそーかー! じゃあお言葉に甘えて、じーっくり支度して、しーっかり任務にあたらせてもらおうかなー!」
役人「はぁ……」
女騎士「よぉうし、わるいまじょめー、くびをあらってまっていろー!」ハッハッハ
役人「……」ポカーン
197: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:25:39.99 ID:GWfyUqhJ0
・
・
・
~王都・市街~
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」タッ
女騎士「……」タッタッタ…
女騎士(……魔女……)
女騎士(……魔女っ……)
女騎士「……」ダッ!
・
・
・
・
・
~王都・市街~
・
・
・
女騎士「……」
女騎士「……」タッ
女騎士「……」タッタッタ…
女騎士(……魔女……)
女騎士(……魔女っ……)
女騎士「……」ダッ!
・
・
・
198: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:26:10.63 ID:GWfyUqhJ0
・
・
・
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「あらぁ」
女騎士「……」
魔女「あらあら……」
女騎士「……」
魔女「それはぁ……困るわねぇ」
女騎士「そんな悠長な……」
・
・
~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
魔女「あらぁ」
女騎士「……」
魔女「あらあら……」
女騎士「……」
魔女「それはぁ……困るわねぇ」
女騎士「そんな悠長な……」
199: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:26:46.73 ID:GWfyUqhJ0
魔女「はぁ……どうしようかしら」
女騎士「……魔女」
魔女「えぇ」
女騎士「すまない……、こんな暴挙、私が止められれば……」
魔女「もう、また背負いこむ……」
女騎士「……」
魔女「貴方のせいじゃ、ないでしょう?」
女騎士「……けれど」
魔女「すまないなんて、言う必要ないのよ」ナデナデ
女騎士「……こんなときなのに、お前は……」
女騎士「……魔女」
魔女「えぇ」
女騎士「すまない……、こんな暴挙、私が止められれば……」
魔女「もう、また背負いこむ……」
女騎士「……」
魔女「貴方のせいじゃ、ないでしょう?」
女騎士「……けれど」
魔女「すまないなんて、言う必要ないのよ」ナデナデ
女騎士「……こんなときなのに、お前は……」
200: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:27:18.90 ID:GWfyUqhJ0
魔女「でも本当、どうしようかしらねぇ」
女騎士「……魔女」
魔女「ん?」
女騎士「……逃げてくれ」
魔女「……」
女騎士「この国から離れて――……いや、せめて森から離れるだけでもいい」
魔女「……」
女騎士「幸い、お前のことを知っている人は少ないし、王都に身を隠せば……」
魔女「そうねぇ……」
女騎士「そ、そうだ!」
201: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:27:44.99 ID:GWfyUqhJ0
魔女「うん?」
女騎士「う、うちに身を寄せたら、い、いいんじゃないか!?」
魔女「騎士さんの家?」
女騎士「あ、あぁ! そうすれば色々……、あの――、なんだ、私が匿ったり、そういうの、できるし……」
魔女「ん~……」
女騎士「……」
魔女「遠慮しておくわぁ」
女騎士「あ――……」
魔女「ごめんなさいね」
女騎士「……あ、あぁ……いや、こっちこそ……、急に変なこと言っちゃって」
202: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:28:15.11 ID:GWfyUqhJ0
魔女「うぅん……」
女騎士「だ、だがな……、できる限り早く、森を離れて、身を隠してくれ」
魔女「……」
女騎士「それまでは、私が何とか時間を稼ぐから……」
魔女「……」
女騎士「……お前には、無事でいてほしいんだよ……」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……分かったわぁ」
女騎士「……そ、そうか!」
203: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/24(木) 22:28:47.00 ID:GWfyUqhJ0
女騎士「この屋敷も、私が責任もって、荒らさせないし……、絶対に守るし……」
魔女「……ありがとうね、騎士さん」ニコリ
女騎士「……」
女騎士(……あぁ)
女騎士(……いつも通りに、笑ってくれるんだな、お前は……)
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……あの」
魔女「……え?」
女騎士「また、会えるよな……?」
魔女「……すぐ会えるわよ」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……さよならって、言わなくていい?」
魔女「もちろん」
207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:38:55.92 ID:5SlwGYpT0
・
・
・
~2週間くらい後~
~「蜘蛛の森」入り口~
ザッザッ
ザッザッ
女騎士「……はぁ」
副団長「……」
ザッザッ
ザッザッ
女騎士「……」
副団長「……」
女騎士「……はぁ」
副団長「……」
・
・
~2週間くらい後~
~「蜘蛛の森」入り口~
ザッザッ
ザッザッ
女騎士「……はぁ」
副団長「……」
ザッザッ
ザッザッ
女騎士「……」
副団長「……」
女騎士「……はぁ」
副団長「……」
208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:39:24.56 ID:5SlwGYpT0
ザッザッ
ザッザッ
女騎士「……はぁぁぁ」
副団長「……団長殿」
女騎士「うん?」
副団長「お疲れなのは、分かりますが……そう溜息ばかりつかれては」
女騎士「う……」
副団長「団の者の士気にも関わりますので」
女騎士「わ……分かってる」
副団長「……」
ザッザッ
ザッザッ
女騎士「……」
~~~~
魔女『遠慮しておくわぁ』
魔女『ごめんなさいね』
~~~~
女騎士「……はぁ」
副団長「……」
209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:39:56.90 ID:5SlwGYpT0
女騎士(……躊躇いもなく断られてしまった……)
女騎士(やっぱり、唐突過ぎただろうか……)
女騎士(……いや、結局は騎士など、アテになんてできない、とか――……)
女騎士(……いやいや! 魔女がそんな風に思うわけない!)
女騎士(でも、もしかしたら重すぎたかも……)
女騎士(魔女に、引かれてたら……)
女騎士「……」
女騎士(……結構)
女騎士(距離、縮まったと思ってたんだけどな……)
女騎士「……はぁぁぁ」
副団長「団長殿」
女騎士「あ、いや、うん。すまない」
210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:40:26.10 ID:5SlwGYpT0
ザッザッ
ザッザッ
女騎士(……魔女)
女騎士(ちゃんと逃げられただろうか……)
女騎士(……それらしい人物が捕まったという話は、聞いていないが……)
副団長「全員とまれー!」
騎士A「お」
騎士B「……」ピタッ
副団長「……では、団長殿」
女騎士「えー……この先を行くと、魔女の屋敷――……」
女騎士「……えっと、報告によると、そうらしい! そういうことらしい!」
女騎士「諸君らはあくまで、騎士らしく、紳士的に振る舞うこと!」
女騎士「魔女らしい人物が見当たらなくても――……いや、いると思うけど! いると思うから行くんだけど!」
女騎士「屋敷を荒らしたり、無道な真似は避けるように!」
211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:40:52.90 ID:5SlwGYpT0
・
・
・
騎士A「……団長、またシンドそうだな」
騎士B「な」
騎士A「なんでだろうな」
騎士B「さぁ……、魔女が怖いとか?」
騎士A「まさかぁ。そもそも魔女なんてさぁ……」
騎士B「でも、ほら、あそこ……屋敷あるじゃん」
騎士A「おっ」
騎士B「魔女の――……」
騎士A「……」
騎士B「……」
騎士A「……な、なんか、緊張してきたな」
騎士B「な」
・
・
騎士A「……団長、またシンドそうだな」
騎士B「な」
騎士A「なんでだろうな」
騎士B「さぁ……、魔女が怖いとか?」
騎士A「まさかぁ。そもそも魔女なんてさぁ……」
騎士B「でも、ほら、あそこ……屋敷あるじゃん」
騎士A「おっ」
騎士B「魔女の――……」
騎士A「……」
騎士B「……」
騎士A「……な、なんか、緊張してきたな」
騎士B「な」
212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:41:19.94 ID:5SlwGYpT0
女騎士(……魔女)
女騎士(……どこに行ったかなぁ)
女騎士「……はぁぁ」
副団長「団長殿!」
女騎士「あぁ……、ごめんって」
副団長「そうではなく! 前を……っ!」
女騎士「え?」クルッ
魔女「……」ニッコリ
副団長「人が……!」
魔女「……あらあら、こんなにお客様がたくさん……、ティーカップは足りるかしら」
女騎士「魔女っ……」
騎士A「魔女……?」
騎士B「魔女かなぁ」
213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:41:53.65 ID:5SlwGYpT0
副団長「違うかな……?」
騎士A「普通のお姉さんでは? 魔女って言ったら、もっとこう……」
騎士B「なぁ。もっと雰囲気とか、そういうのが……」
副団長「うーん……、……そこの方」
魔女「……ええと」
副団長「……」
魔女「……帽子、とんがり帽子……」ガサゴソ
副団長「……」
魔女「……」カブリカブリ
副団長「……」
魔女「はいっ!」
副団長「魔女……!」
騎士AB「「魔女だ……!」」
魔女「魔女よう」
騎士A「普通のお姉さんでは? 魔女って言ったら、もっとこう……」
騎士B「なぁ。もっと雰囲気とか、そういうのが……」
副団長「うーん……、……そこの方」
魔女「……ええと」
副団長「……」
魔女「……帽子、とんがり帽子……」ガサゴソ
副団長「……」
魔女「……」カブリカブリ
副団長「……」
魔女「はいっ!」
副団長「魔女……!」
騎士AB「「魔女だ……!」」
魔女「魔女よう」
214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:42:26.30 ID:5SlwGYpT0
女騎士「お前……どうして……」
魔女「うふふ、どうしてって、ここ、私のおうちよ?」
女騎士「逃げてって……」
魔女「はい逃げます、とは言ってないわぁ」
女騎士「『分かった』って言ったじゃん!」
魔女「『騎士さんの言い分は分かった』ってことよ。従うかどうかは別として」
女騎士「ズルじゃん!」
魔女「魔女だもの」フフン
女騎士「ズルい! ズル魔女!」
魔女「なによう」
女騎士「だってそうじゃん! 嘘つき! 嘘魔女ー!」
魔女「……クマ女」ボソッ
女騎士「あっ! お前なー! 人が気にしていることをだなーっっ!」
副団長「……あの、団長殿? いったい何を……」
女騎士「待て! 後で説明するから! ちゃんっと全部話すから、今はしばらく待て!」
副団長「は、はぁ……」
215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:42:58.15 ID:5SlwGYpT0
女騎士「どうして分からないんだっ」
魔女「分かってないのは、騎士さんの方よ」
女騎士「な……」
魔女「居場所を守るためだったら、ちょっと無理してでもがんばらないと……、そうじゃない?」
女騎士「……!」
魔女「それを教えてくれたのは、騎士さんよ」
女騎士「だけど……っ」
魔女「私は『東の蜘蛛の森の魔女』」
女騎士「……」
魔女「この森とともに生きて、この森で死ぬの」
女騎士「……」
魔女「『魔女』を森から動かしたかったら、力づくで――……」
女騎士「……」
魔女「やってごらんなさい?」
女騎士「お前……」
216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:43:27.25 ID:5SlwGYpT0
女騎士「……本気か?」
魔女「当然」
女騎士「私とて、騎士の端くれ、こうなった以上は――……」
魔女「ふふふ……」
女騎士「……第一班、抜剣」
チャッ
チャキ
副団長「……よろしいので?」
女騎士「相手に恭順の意思なしとなれば、実力行使しかあるまい」
副団長「しかし……」
女騎士「我々は騎士。国のため、務めを果たすことだけを考えろ」
副団長「……」
女騎士「魔女っ! これが最後の警告だ!」
217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:43:55.60 ID:5SlwGYpT0
女騎士「て、抵抗……しないで、くれ……」
魔女「怖いわね、騎士さん」
女騎士「た、頼む……」
魔女「でも、そう簡単に捕まるつもりもないのよ、私」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……っ、警告はしたぞ……」
魔女「……ふふ」
女騎士「全員前へ――……」
218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:44:29.34 ID:5SlwGYpT0
ザワザワザワザワッ
ガサガサガサッ
女騎士「……――っ!?」
女騎士(なんだ……!?)
女騎士(森が……)
魔女「……――の、薫風の祝福――……女神――の名の星より――……」ブツブツ
魔女「……reyug……zo――……tio――bo……かくあるべし――……」ブツブツ
ガサガサガサッ
ガサガサッ
女騎士「……これは」
副団長「団長殿……っ!?」
女騎士「うろたえるな! しっかり――……」
副団長「ち、違います! 足が……っ」
女騎士「なっ……」
219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:44:59.23 ID:5SlwGYpT0
女騎士(足が……)
女騎士(足が動かない……っ! まるで地面に、吸い付いてるみたいに……)
魔女「『森は網にして牙』」
魔女「『森は罠にして狩人』」
魔女「命は森より繁茂し森へと還る……」
魔女「さぁ、貴方達も……、その生気を森に捧げなさい……」
女騎士「なんだ……身体が……!」
女騎士(急に体が重く……)
女騎士(力が……抜けていく……)
ザワザワザワッ
騎士A「……うぅぅ」ガク
騎士B「……剣が、持てない……」カラン
220: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:45:54.49 ID:5SlwGYpT0
女騎士「くぅ……っ、みんな……しっかり……」
魔女「無駄よ。今の貴方達は、蜘蛛の罠にかかった蝶も同然――……」
女騎士「魔女……っ、お前これ……」
魔女「うふふ」
女騎士「これ……魔法じゃん!」
魔女「うん」
女騎士「魔女は魔法使えないって――……」
魔女「あら、魔女は魔法なんて、使えないけど」
女騎士「……」
魔女「だけど、『私が』魔法を使えないなんて、言ってないわねぇ?」
女騎士「ズルじゃん……! もう……っ!」
魔女「言ってる場合かしら? このまま森は、貴方達の生気を吸いつくすわよ?」
女騎士「うぐ……」
魔女「ふふ……さぁ――……」
221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/26(土) 20:46:27.88 ID:5SlwGYpT0
魔女「お眠りなさい、安らかに――」
女騎士「くっ、やめろ……!」
225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:29:05.24 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「くそ……っ」ザッ
魔女「驚いた……、まだ動けるのねぇ」
女騎士「こんな、もの……、完徹ウン日目のダルさに比べれば……っ」ザシッ
魔女「どこから来るの、その体力……」
女騎士「ふんっ……」ザッ
魔女「けれど、やめておきなさい。それ以上動けば、命にかかわるわ」
女騎士「……」ザッ
魔女「……い、命に、かかわるって、言ってるでしょ?」
女騎士「……」ザッ
魔女「やめ……やめてったら」
女騎士「魔女……」ザッ
魔女「お願いっ……やめてっ」
女騎士「ま――……」フラ
魔女「騎士さん!?」
魔女「驚いた……、まだ動けるのねぇ」
女騎士「こんな、もの……、完徹ウン日目のダルさに比べれば……っ」ザシッ
魔女「どこから来るの、その体力……」
女騎士「ふんっ……」ザッ
魔女「けれど、やめておきなさい。それ以上動けば、命にかかわるわ」
女騎士「……」ザッ
魔女「……い、命に、かかわるって、言ってるでしょ?」
女騎士「……」ザッ
魔女「やめ……やめてったら」
女騎士「魔女……」ザッ
魔女「お願いっ……やめてっ」
女騎士「ま――……」フラ
魔女「騎士さん!?」
226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:29:51.95 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「――」ドサッ
副団長「団長殿……!」
騎士A「団長っ」
魔女「きっ……!」ダッ
女騎士「……」
魔女「ああっ! あぁ……なんてこと! 騎士さん! 騎士さん!」ガシッ
女騎士「……」
魔女「あぁぁ……こんな、ごめんなさい、ごめんね……許して、お願い、目を開けて……」
女騎士「……」
魔女「だめ、お願いよ……騎士さん、騎士――……」
女騎士「スヤァ」
魔女「……」
副団長「……」
騎士B「……」
女騎士「スヤスヤ」
副団長「団長殿……!」
騎士A「団長っ」
魔女「きっ……!」ダッ
女騎士「……」
魔女「ああっ! あぁ……なんてこと! 騎士さん! 騎士さん!」ガシッ
女騎士「……」
魔女「あぁぁ……こんな、ごめんなさい、ごめんね……許して、お願い、目を開けて……」
女騎士「……」
魔女「だめ、お願いよ……騎士さん、騎士――……」
女騎士「スヤァ」
魔女「……」
副団長「……」
騎士B「……」
女騎士「スヤスヤ」
227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:30:55.03 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「……ウーン」
魔女「……」
副団長「……」
騎士AB「「……」」
女騎士「……ンヘヘヘェ」ムニャムニャ
魔女「……あの」
副団長「……」
魔女「……あ、……ふ、ふふふふっ! 今日のところは見逃してあげるわ! 大人しくお退きなさぁい!?」
副団長「……」
魔女「この騎士さんは……えーと、預からせてもらうわ! よ、よく寝てるし!」
副団長「……」
魔女「お、起こすと、かわいそうだし……」
騎士A「……」
騎士B「……」
魔女「ちゃんと、ベッドで寝かせてあげたいし……」
副団長「……」
騎士A「……」
騎士B「……」
魔女「……ねっ」
女騎士「……フガフガ」スヤスヤ
魔女「……」
副団長「……」
騎士AB「「……」」
女騎士「……ンヘヘヘェ」ムニャムニャ
魔女「……あの」
副団長「……」
魔女「……あ、……ふ、ふふふふっ! 今日のところは見逃してあげるわ! 大人しくお退きなさぁい!?」
副団長「……」
魔女「この騎士さんは……えーと、預からせてもらうわ! よ、よく寝てるし!」
副団長「……」
魔女「お、起こすと、かわいそうだし……」
騎士A「……」
騎士B「……」
魔女「ちゃんと、ベッドで寝かせてあげたいし……」
副団長「……」
騎士A「……」
騎士B「……」
魔女「……ねっ」
女騎士「……フガフガ」スヤスヤ
228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:31:42.80 ID:Nk2ry+KR0
・
・
・
~魔女の屋敷・寝室~
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……ん、ん」
魔女「あら」
女騎士「……ん~」ムクリ
魔女「騎士さん……」
女騎士「あぁ、魔女……おはよう」
魔女「大丈夫? 身体、痛いところない? 具合は? おかしいところない?」
女騎士「……いや? いたって快調だが」
魔女「そう、よかったぁ……」ホッ
女騎士「たっぷり眠れて、むしろ回復した気分だな!」ハッハッハッ
魔女「どうなってるのよ、貴方の体力……」
・
・
~魔女の屋敷・寝室~
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……ん、ん」
魔女「あら」
女騎士「……ん~」ムクリ
魔女「騎士さん……」
女騎士「あぁ、魔女……おはよう」
魔女「大丈夫? 身体、痛いところない? 具合は? おかしいところない?」
女騎士「……いや? いたって快調だが」
魔女「そう、よかったぁ……」ホッ
女騎士「たっぷり眠れて、むしろ回復した気分だな!」ハッハッハッ
魔女「どうなってるのよ、貴方の体力……」
229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:32:15.71 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「他の者は?」
魔女「お帰りいただいたわ」
女騎士「そっか」
魔女「……、……ごめんなさいね、騎士さん」
女騎士「ん?」
魔女「私……騎士さんや、皆さんに酷いことしちゃって……」
女騎士「気にすることはない」
魔女「でも……」
女騎士「我らは務めを果たそうとした。お前は身を守ろうとした」
魔女「……」
女騎士「お互い、なすべきことをなしただけだろう」
魔女「……騎士さんらしいわねぇ」
魔女「お帰りいただいたわ」
女騎士「そっか」
魔女「……、……ごめんなさいね、騎士さん」
女騎士「ん?」
魔女「私……騎士さんや、皆さんに酷いことしちゃって……」
女騎士「気にすることはない」
魔女「でも……」
女騎士「我らは務めを果たそうとした。お前は身を守ろうとした」
魔女「……」
女騎士「お互い、なすべきことをなしただけだろう」
魔女「……騎士さんらしいわねぇ」
230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:32:54.30 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「しかしまぁ、一瞬本気で殺されるかと思ってしまったがな!」ハッハッハ
魔女「あら、本気だったわよ」
女騎士「お、おう……」
魔女「本気……の、つもりだったんだけど」
女騎士「……」
魔女「『魔女』でいるためなら、どんな酷いことでも、するつもりだったけど……」
女騎士「……」
魔女「できるつもりだったんだけどねぇ……」
女騎士「うん……」
魔女「だめねぇ……、いざとなったら、怖くなっちゃって……」
女騎士「魔女は、優しいから」ナデナデ
魔女「あら、本気だったわよ」
女騎士「お、おう……」
魔女「本気……の、つもりだったんだけど」
女騎士「……」
魔女「『魔女』でいるためなら、どんな酷いことでも、するつもりだったけど……」
女騎士「……」
魔女「できるつもりだったんだけどねぇ……」
女騎士「うん……」
魔女「だめねぇ……、いざとなったら、怖くなっちゃって……」
女騎士「魔女は、優しいから」ナデナデ
231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:33:53.35 ID:Nk2ry+KR0
魔女「ありがと、騎士さん……」
女騎士「いつもとは、反対だなぁ」ナデ
魔女「ふふ、そうね……。はぁ……、どうしようかしら、これから……」
女騎士「こうなった以上、おそらく王立軍も捨て置かないだろう」
魔女「……」
女騎士「人数も、武装も、我々の比ではない。今度ばかりは、流石に……」
魔女「……ふぅ」
女騎士「……なぁ、魔女」
魔女「うん?」
女騎士「決めたよ、私は」
魔女「……」
女騎士「もう、お前に森から離れろとは言わない……」
魔女「……」
女騎士「いつもとは、反対だなぁ」ナデ
魔女「ふふ、そうね……。はぁ……、どうしようかしら、これから……」
女騎士「こうなった以上、おそらく王立軍も捨て置かないだろう」
魔女「……」
女騎士「人数も、武装も、我々の比ではない。今度ばかりは、流石に……」
魔女「……ふぅ」
女騎士「……なぁ、魔女」
魔女「うん?」
女騎士「決めたよ、私は」
魔女「……」
女騎士「もう、お前に森から離れろとは言わない……」
魔女「……」
232: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:34:19.70 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「だが、私も森に残る」
魔女「騎士さん……」
女騎士「森で、お前を守るよ……」
魔女「だめよ、そんなの……」
女騎士「いつか、魔女、言ってくれただろ?」
魔女「……」
女騎士「ここは、私の居場所でもあるって」
魔女「だけど……」
女騎士「魔女の隣は、私の場所だって」
魔女「……」
女騎士「だったら、その場所を……今度こそ、守りたい」
魔女「……」
女騎士「最後の最後、ぎりぎりまで、どうか――……」
魔女「……仕方のない人ねぇ」
女騎士「魔女……」
魔女「……、……ありがと、騎士さん」
魔女「騎士さん……」
女騎士「森で、お前を守るよ……」
魔女「だめよ、そんなの……」
女騎士「いつか、魔女、言ってくれただろ?」
魔女「……」
女騎士「ここは、私の居場所でもあるって」
魔女「だけど……」
女騎士「魔女の隣は、私の場所だって」
魔女「……」
女騎士「だったら、その場所を……今度こそ、守りたい」
魔女「……」
女騎士「最後の最後、ぎりぎりまで、どうか――……」
魔女「……仕方のない人ねぇ」
女騎士「魔女……」
魔女「……、……ありがと、騎士さん」
233: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:34:55.38 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「はっはっは! 安心しろ! この剣が折れようと、我が心折れることなしと――……」
魔女「そうと決まれば、この屋敷にいるのは危険よねぇ」
女騎士「あ、うん、はい、そうですね……」
魔女「とりあえず、森の最奥部にでも、身を隠しましょうか」
女騎士「そうか……、……ん?」
魔女「どうかした?」
女騎士「んん……いや、待て。魔女、前に言ってなかったか?」
魔女「何を?」
女騎士「ほら……、『森の一番奥深くは、毒蜘蛛の繁殖地だ』って」
魔女「あぁ」
女騎士「駄目じゃん」
234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:35:48.10 ID:Nk2ry+KR0
魔女「大丈夫よ。蜘蛛避けのお香っていうのがあってね……」
女騎士「へぇ」
魔女「うふふ、すごくよく効くのよ。これさえ焚いていれば、毒蜘蛛の巣に突っ込んでも、蜘蛛の方から逃げてくれるんだから」
女騎士「そんなに効くのか」
魔女「それはもう。素晴らしいって評判で……、私、とっても上手に作れるのよ」
女騎士「ふぅん――……」
女騎士「――」
女騎士(……あれ?)
女騎士(……どこかで聞いような……?)
女騎士「――ん?」
235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:36:39.98 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「んん~~?」
魔女「……どうかした?」
女騎士「なぁ……、そのお香があれば、森の奥深くでも普通に生活できる?」
魔女「まあ、まず問題ないでしょうね」
女騎士「……」
魔女「昔、私が作った小屋もあるし、水とか、食べ物さえあれば心配ないわ」
女騎士「……んん?」
~~~~
魔女『そう、森が魔法を使って、騎士さんの居るところを教えてくれたの――』
~~~~
魔女「……ねぇ、どうかした?」
女騎士「……前にさ、私が森で迷ったこと、あっただろ?」
魔女「あぁ、あったわねぇ」
魔女「……どうかした?」
女騎士「なぁ……、そのお香があれば、森の奥深くでも普通に生活できる?」
魔女「まあ、まず問題ないでしょうね」
女騎士「……」
魔女「昔、私が作った小屋もあるし、水とか、食べ物さえあれば心配ないわ」
女騎士「……んん?」
~~~~
魔女『そう、森が魔法を使って、騎士さんの居るところを教えてくれたの――』
~~~~
魔女「……ねぇ、どうかした?」
女騎士「……前にさ、私が森で迷ったこと、あっただろ?」
魔女「あぁ、あったわねぇ」
236: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:37:07.97 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「あんな感じでさ、森の奥に、誰か行こうとしたら、魔女、気づく?」
魔女「えぇ……? まぁ、だいたいは気づくと思うけど……」
女騎士「だいたい?」
魔女「いや、寝てるときとかは……。眠っていたら、さすがに気づかないわよ、私でも」
女騎士「……んんん?」
魔女「ねぇ、なんなのようさっきから」
女騎士「いや……、その……」
237: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:37:36.85 ID:Nk2ry+KR0
~~~~
役人『王立軍が、王都内をくまなく調査しましたが――』
役人『3人の消息は一切掴めませんでした――』
役人『あと、調査が及んでいない地域といえば――』
役人『『東の蜘蛛の森』くらいでして――』
~~~~
238: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:38:24.50 ID:Nk2ry+KR0
女騎士「……」
魔女「ねえねえ」
~~~~
魔女『そうねぇ……、お客様の中では、一番よく来るかしら』
魔女『いつも私の作るもの、いっぱい買っていってくれてね』
魔女『蜘蛛避けのお香も、織物も、どれも素晴らしいっ、なんて褒めてくれて――』
~~~~
――蜘蛛避けのお香も――
女騎士「……ん~~~~~?」
魔女「ねえったらぁ、もぉ~……」
239: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/27(日) 15:38:58.18 ID:Nk2ry+KR0
・
・
・
~「蜘蛛の森」最深部・「毒蜘蛛の巣窟」~
~粗末な小屋~
ウッ ウゥッ グスッ
グスン… シクシク…
少女「……」グスッ
商人「ケッ、ガキはいつまでもピーピー泣きやがる……」
商人「おい! テメエらあんまりうるせェと、小屋の外に放り出すぞ!」
少女「っ」ビクッ
商人「そうなりゃ、あっという間に蜘蛛どもの餌だからな! 死にたくなきゃ、静かにしやがれッ!」
少女「……」ビクビク
商人「ハンッ、最初からそうやって、大人しくしてやがれ!」ケッケッケ
少女「……ぅ、ぅぅ……」
・
・
~「蜘蛛の森」最深部・「毒蜘蛛の巣窟」~
~粗末な小屋~
ウッ ウゥッ グスッ
グスン… シクシク…
少女「……」グスッ
商人「ケッ、ガキはいつまでもピーピー泣きやがる……」
商人「おい! テメエらあんまりうるせェと、小屋の外に放り出すぞ!」
少女「っ」ビクッ
商人「そうなりゃ、あっという間に蜘蛛どもの餌だからな! 死にたくなきゃ、静かにしやがれッ!」
少女「……」ビクビク
商人「ハンッ、最初からそうやって、大人しくしてやがれ!」ケッケッケ
少女「……ぅ、ぅぅ……」
245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:34:32.32 ID:bG3qd2it0
悪党A「……しっかし、見張りは交代制とはいえ、こんな陰気なところに籠ってたんじゃ、ガキじゃなくても泣きたくなってきますわなぁ……」
商人「まぁ、そういうな。もうしばらくの辛抱だ」
悪党B「外に出られるのも、夜中だけですしねぇ……」
商人「この森の魔女は、妙に勘が働くからな。念には念を、だ」
悪党A「抜け目ないですねぇ、旦那は」
商人「まぁな。デカい商売ほど慎重に……、石橋をたたいて、ってことよ」
悪党B「王都のガキは、高値がつきますからな」
商人「そうさ。特にそっちのガキなんか――……」
少女「……っ」ビクッ
商人「久しぶりの上玉だ。さぞ良い値が付くだろうよ」
悪党A「ヘッヘッヘッ」
悪党B「ケッケッケッケ」
少女「ぅぅ……」ブルブル
商人「まぁ、そういうな。もうしばらくの辛抱だ」
悪党B「外に出られるのも、夜中だけですしねぇ……」
商人「この森の魔女は、妙に勘が働くからな。念には念を、だ」
悪党A「抜け目ないですねぇ、旦那は」
商人「まぁな。デカい商売ほど慎重に……、石橋をたたいて、ってことよ」
悪党B「王都のガキは、高値がつきますからな」
商人「そうさ。特にそっちのガキなんか――……」
少女「……っ」ビクッ
商人「久しぶりの上玉だ。さぞ良い値が付くだろうよ」
悪党A「ヘッヘッヘッ」
悪党B「ケッケッケッケ」
少女「ぅぅ……」ブルブル
246: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:35:19.01 ID:bG3qd2it0
商人「都合のいい時に、ガキを攫っちまえば……」
商人「この『毒蜘蛛の巣窟』に押し込んでおけるんだから、便利なもんだ」
商人「ここなら、誰にもバレる心配がねぇ」
商人「それで、都合のいい時を見て『出荷』すりゃ……」
悪党B「アシがつくこともねぇ、ってわけですね」
商人「そういうことだ。……それで、だ。今度の『王都祭』がはじまったら、こいつらは『出荷』だ」
悪党A「ようやくですな」
商人「あぁ、祭りになれば城門の警備も手薄になる」
悪党B「そこを、祭りの大荷物に紛れて運び出せば……」
商人「誰にも気づかれずに、王都の外まで連れ出せるって寸法よ」
悪党B「さすが旦那だぁ」
247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:35:53.96 ID:bG3qd2it0
悪党A「とはいえ、この仕事のたびに、毒蜘蛛と共寝、ってのも……中々、こたえますわ」
悪党B「お前はさっきから、そればっかりだな……」
商人「なに、いずれ魔女から、蜘蛛避けの香の調合法を聞き出すつもりだよ」
悪党A「なるほど、そうすりゃ……」
商人「もう魔女は用済み。いらなくなったら――……」
悪党B「消しちまいますか」
商人「……いや、あいつも『出荷』するんだよ!」
悪党A「なるほど、そいつぁいい!」ゲラゲラ
悪党B「さっすが旦那だぁ」ゲラゲラ
商人「なっはっはっは!」
悪党B「お前はさっきから、そればっかりだな……」
商人「なに、いずれ魔女から、蜘蛛避けの香の調合法を聞き出すつもりだよ」
悪党A「なるほど、そうすりゃ……」
商人「もう魔女は用済み。いらなくなったら――……」
悪党B「消しちまいますか」
商人「……いや、あいつも『出荷』するんだよ!」
悪党A「なるほど、そいつぁいい!」ゲラゲラ
悪党B「さっすが旦那だぁ」ゲラゲラ
商人「なっはっはっは!」
248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:36:22.29 ID:bG3qd2it0
「――あらあら、酷いこと言ってくれるわねぇ……」
商人「!」
悪党A「誰だっ!?」
ガチャリ キィ
魔女「……ごきげんよう、商人さん……」
商人「お前は……っ!」
魔女「人の大切な売り物を、こんなことに使うなんて……呆れた人」
悪党A「どうしてここが……っ」
魔女「あら、この小屋は私が作ったものよ? それにここは、私の森。貴方達のような……」ジト
悪党B「……っ」
魔女「悪人たちが、足を踏み入れていい場所じゃないのよ」
悪党A「チッ……」
悪党B「どうします、旦那……」
商人「……仕方ねぇ、とりあえずふん縛って――……」
商人「!」
悪党A「誰だっ!?」
ガチャリ キィ
魔女「……ごきげんよう、商人さん……」
商人「お前は……っ!」
魔女「人の大切な売り物を、こんなことに使うなんて……呆れた人」
悪党A「どうしてここが……っ」
魔女「あら、この小屋は私が作ったものよ? それにここは、私の森。貴方達のような……」ジト
悪党B「……っ」
魔女「悪人たちが、足を踏み入れていい場所じゃないのよ」
悪党A「チッ……」
悪党B「どうします、旦那……」
商人「……仕方ねぇ、とりあえずふん縛って――……」
249: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:36:56.95 ID:bG3qd2it0
魔女「そうはいかないわ!」ヒョイ
バシャッ
パシャ
商人「わっぷ……っ」ビシャッ
悪党A「冷てっ!」
悪党B「水風船……?」
魔女「……その液体はね、蜘蛛が大好きなフェロモンで作った、蜘蛛寄せの水……」
商人「な……っ!?」
魔女「たーっぷり濃くしたから、強力よ? お香よりも、ずっと……」
悪党A「うげぇっ」
商人「ば、馬鹿野郎! 落ち着――……」
魔女「そしてこれが、さっき捕まえた毒蜘蛛」ポイッ
商人「ひぃぃぃぃっ」ズザザ
悪党B「だ、旦那ぁ!?」
悪党A「うわぁぁ!」
バシャッ
パシャ
商人「わっぷ……っ」ビシャッ
悪党A「冷てっ!」
悪党B「水風船……?」
魔女「……その液体はね、蜘蛛が大好きなフェロモンで作った、蜘蛛寄せの水……」
商人「な……っ!?」
魔女「たーっぷり濃くしたから、強力よ? お香よりも、ずっと……」
悪党A「うげぇっ」
商人「ば、馬鹿野郎! 落ち着――……」
魔女「そしてこれが、さっき捕まえた毒蜘蛛」ポイッ
商人「ひぃぃぃぃっ」ズザザ
悪党B「だ、旦那ぁ!?」
悪党A「うわぁぁ!」
250: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:37:26.42 ID:bG3qd2it0
魔女「……さぁ、行くわよ! 今のうちに……」
少女「魔女――……。で、でも、お外はくもが……」
魔女「このマントを羽織って。蜘蛛が寄り付かなくなるから」
少女「う、うん……」
魔女「さぁ、貴方達も、急いでっ……」
ドタドタ…
タッタッタ…
悪党A「あぁ、くそ! 待ちやがれ……」
商人「こ、こら! 暴れると蜘蛛が、こっちに気づく!」
悪党B「うわぁぁ……!」
少女「魔女――……。で、でも、お外はくもが……」
魔女「このマントを羽織って。蜘蛛が寄り付かなくなるから」
少女「う、うん……」
魔女「さぁ、貴方達も、急いでっ……」
ドタドタ…
タッタッタ…
悪党A「あぁ、くそ! 待ちやがれ……」
商人「こ、こら! 暴れると蜘蛛が、こっちに気づく!」
悪党B「うわぁぁ……!」
251: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:37:58.55 ID:bG3qd2it0
・
・
・
商人「……」ビクビク
悪党A「……」ビクビク
悪党B「……」ビクビク
商人「……」
悪党A「……」
悪党B「……」
商人「……?」
悪党A「……?」
悪党B「……?」
商人「……??」
・
・
商人「……」ビクビク
悪党A「……」ビクビク
悪党B「……」ビクビク
商人「……」
悪党A「……」
悪党B「……」
商人「……?」
悪党A「……?」
悪党B「……?」
商人「……??」
252: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:38:29.26 ID:bG3qd2it0
悪党A「……あっ」
悪党B「……どうした?」
悪党A「旦那! これ! この毒蜘蛛、偽物ですよ! 造りもんだ!」
悪党B「えっ……!?」
商人「畜生……、やられた!」バッ
悪党A「旦那!?」
商人「追うぞ! 急げ!」ダッ
悪党B「で、でも、蜘蛛寄せの水が……」
商人「馬鹿! ブラフだよ! 考えてみりゃ、ガキにも水がかかるかもしれねぇのに、そんなもの使うわけねぇ!」
悪党A「あっ……」
商人「クソ、あの野郎っ!」
悪党B「……どうした?」
悪党A「旦那! これ! この毒蜘蛛、偽物ですよ! 造りもんだ!」
悪党B「えっ……!?」
商人「畜生……、やられた!」バッ
悪党A「旦那!?」
商人「追うぞ! 急げ!」ダッ
悪党B「で、でも、蜘蛛寄せの水が……」
商人「馬鹿! ブラフだよ! 考えてみりゃ、ガキにも水がかかるかもしれねぇのに、そんなもの使うわけねぇ!」
悪党A「あっ……」
商人「クソ、あの野郎っ!」
253: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:38:56.43 ID:bG3qd2it0
・
・
・
ハッ ハッ……
ハァ…… ハァ……
魔女「ハッ……、ハァ……、もう、ちょっと……もうちょっとらから……、がんら……がんあって……」ゼヒーゼヒー
少女「うん……、魔女もがんばって……」タッタッタ
魔女(あと少しで……、森を抜け――……)
悪党C「おい、手前ェらどこへ行くんだあ?」ヌッ
魔女「……っ!」
少女「ひゃ……!」
魔女(あいつらの……仲間!?)
悪党D「こっちにもいるゼ」ガシッ
魔女「あぁっ……!」ヨロッ
少女「魔女……っ」
悪党C「ガキどもも、逃げようったって、そうは行かねぇぞう……」ガシッ
少女「きゃあ!」
・
・
ハッ ハッ……
ハァ…… ハァ……
魔女「ハッ……、ハァ……、もう、ちょっと……もうちょっとらから……、がんら……がんあって……」ゼヒーゼヒー
少女「うん……、魔女もがんばって……」タッタッタ
魔女(あと少しで……、森を抜け――……)
悪党C「おい、手前ェらどこへ行くんだあ?」ヌッ
魔女「……っ!」
少女「ひゃ……!」
魔女(あいつらの……仲間!?)
悪党D「こっちにもいるゼ」ガシッ
魔女「あぁっ……!」ヨロッ
少女「魔女……っ」
悪党C「ガキどもも、逃げようったって、そうは行かねぇぞう……」ガシッ
少女「きゃあ!」
254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:39:34.53 ID:bG3qd2it0
・
・
・
タッタッタッ
商人「はぁ、はぁ……」
悪党A「おっ、あれは……」
魔女「離しなさい……っ、離して……!」ジタバタ
悪党C「暴れるんじゃねえよ!」
悪党D「大人しくしてロ!」
少女「うぅぅ……」ビクビク
悪党A「お前ら、来てたのか!」
悪党C「おう、昼間たまたま森に、騎士団の連中が入っていくのを見てな。何かと思って、こっそり覗きに来たんだ」
商人「勝手なことを……と言いたいところだが、これはお手柄だぜ」
悪党D「へへへ……」
商人「さて、魔女さんよ……」
魔女「……っ」グッ
・
・
タッタッタッ
商人「はぁ、はぁ……」
悪党A「おっ、あれは……」
魔女「離しなさい……っ、離して……!」ジタバタ
悪党C「暴れるんじゃねえよ!」
悪党D「大人しくしてロ!」
少女「うぅぅ……」ビクビク
悪党A「お前ら、来てたのか!」
悪党C「おう、昼間たまたま森に、騎士団の連中が入っていくのを見てな。何かと思って、こっそり覗きに来たんだ」
商人「勝手なことを……と言いたいところだが、これはお手柄だぜ」
悪党D「へへへ……」
商人「さて、魔女さんよ……」
魔女「……っ」グッ
255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:40:04.78 ID:bG3qd2it0
商人「さっきはよくもやってくれたな……」
魔女「水遊びしただけでしょ。ムキにならないでよ」
悪党B「この……っ」
商人「まぁ、待て。……アンタには、まだまだ役に立ってもらいたかったが……」
魔女「……」
商人「こうなった以上は、もう放ってはおけねぇ……」
魔女「……」
商人「知らないフリしておけば、長生きできなのにな……、おい」
悪党A「へい。……へっへっへ」スラッ
ギラリ
魔女「……っ」
魔女(ナイフ……!)
魔女「水遊びしただけでしょ。ムキにならないでよ」
悪党B「この……っ」
商人「まぁ、待て。……アンタには、まだまだ役に立ってもらいたかったが……」
魔女「……」
商人「こうなった以上は、もう放ってはおけねぇ……」
魔女「……」
商人「知らないフリしておけば、長生きできなのにな……、おい」
悪党A「へい。……へっへっへ」スラッ
ギラリ
魔女「……っ」
魔女(ナイフ……!)
256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:40:47.85 ID:bG3qd2it0
悪党A「あそこまで馬鹿にされたんだ、落とし前はきっちり、つけてもらうぜ……」
魔女「……」
魔女(こんな……ところで……)
魔女「……」
魔女(騎士さん……!)
悪党A「死ねェッ!」
魔女「騎士さ――……!」
シュバッ
ガキンッ
悪党A「なっ……!」
商人「なぁ……っ!?」
女騎士「……――間一髪、だな」
魔女「騎士さんっ!!」
魔女「……」
魔女(こんな……ところで……)
魔女「……」
魔女(騎士さん……!)
悪党A「死ねェッ!」
魔女「騎士さ――……!」
シュバッ
ガキンッ
悪党A「なっ……!」
商人「なぁ……っ!?」
女騎士「……――間一髪、だな」
魔女「騎士さんっ!!」
257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:41:48.62 ID:bG3qd2it0
悪党D「なんだっ、てめっ――……」
女騎士「魔女を離せバカ者ーー!!」メゴッ
悪党D「ごっ……!」
バタンッ
商人「……」
悪党B「……」
魔女「……」
商人(メゴッって……)
悪党B(メゴッていった……)
魔女(メゴッっていったわね……)
女騎士「魔女っ!」
魔女「はっ、はい!」
女騎士「待ってろって言ったじゃん! 私来るまで待ってろって言ったじゃん私!」
魔女「ご、ごめんなさい……、でも私、居ても立っても……」
女騎士「ばかぁ……っ! もぉぉ……、心配をかけるなぁ……」グスン
魔女「ごめんなさいねぇ……」ヨシヨシ
商人(……なにあれ)
悪党B(……なにあれ)
女騎士「魔女を離せバカ者ーー!!」メゴッ
悪党D「ごっ……!」
バタンッ
商人「……」
悪党B「……」
魔女「……」
商人(メゴッって……)
悪党B(メゴッていった……)
魔女(メゴッっていったわね……)
女騎士「魔女っ!」
魔女「はっ、はい!」
女騎士「待ってろって言ったじゃん! 私来るまで待ってろって言ったじゃん私!」
魔女「ご、ごめんなさい……、でも私、居ても立っても……」
女騎士「ばかぁ……っ! もぉぉ……、心配をかけるなぁ……」グスン
魔女「ごめんなさいねぇ……」ヨシヨシ
商人(……なにあれ)
悪党B(……なにあれ)
258: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/28(月) 23:42:16.97 ID:bG3qd2it0
悪党C「おいっ! じっとしてねぇとこのガキどもがっ!」グイッ
魔女「あっ!」
少女「ひぅ……っ」
悪党C「どうなってm
副団長「てぇーい!」バキーン
悪党D「むぉぎゃ」バタリ
副団長「『銀顎のオオクワガタ』騎士団だ! 神妙にしろ!」
商人「後ろから!! い、今後ろから!!」
悪党A「後ろから躊躇なく不意打ちを!!」
悪党B「それでも騎士かお前!!」
騎士A「悪党が言うセリフじゃないんだよなぁ」
騎士B「な。言いたいことは分かるけど」
魔女「あっ!」
少女「ひぅ……っ」
悪党C「どうなってm
副団長「てぇーい!」バキーン
悪党D「むぉぎゃ」バタリ
副団長「『銀顎のオオクワガタ』騎士団だ! 神妙にしろ!」
商人「後ろから!! い、今後ろから!!」
悪党A「後ろから躊躇なく不意打ちを!!」
悪党B「それでも騎士かお前!!」
騎士A「悪党が言うセリフじゃないんだよなぁ」
騎士B「な。言いたいことは分かるけど」
265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:32:25.65 ID:NZhvR/KK0
ドスッ バスッ
ソッチイッタゾー!!
オラァー!
女騎士「本当に、怪我はないか? おかしいところはないか?」
魔女「えぇ、大丈夫よ……」
女騎士「怖かっただろ?」
ピストルダー!
ヤベェー!!
パンッ パンッ
魔女「怖かったけど……ふふ」
女騎士「……?」
魔女「不思議ね……、きっと騎士さんが助けてくれるって、分かっていた気がするわ」
イマダーイケーッ
バキンッ バンッ
女騎士「言ったろ、私がお前を守るって……」
魔女「騎士さん……」
女騎士「魔女……」
副団長「団長殿っ! 手伝ってください! ちょっと! 団長!」
ソッチイッタゾー!!
オラァー!
女騎士「本当に、怪我はないか? おかしいところはないか?」
魔女「えぇ、大丈夫よ……」
女騎士「怖かっただろ?」
ピストルダー!
ヤベェー!!
パンッ パンッ
魔女「怖かったけど……ふふ」
女騎士「……?」
魔女「不思議ね……、きっと騎士さんが助けてくれるって、分かっていた気がするわ」
イマダーイケーッ
バキンッ バンッ
女騎士「言ったろ、私がお前を守るって……」
魔女「騎士さん……」
女騎士「魔女……」
副団長「団長殿っ! 手伝ってください! ちょっと! 団長!」
266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:32:59.44 ID:NZhvR/KK0
騎士A「はぁ、はぁっ、大人しくしろこの野郎!」グイグイ
悪党A「いててっ、ぐぅ……チキショウ……」
騎士B「もう逃げられないからな!」ギリギリ
悪党B「くそったれ……いでで!」
商人「チッ……、こうなったら……!」
副団長「あっ、待て!」
商人「せめて魔女の野郎だけでも……!」カチャッ
女騎士「……!」ハッ
女騎士(ピストル……!?)
女騎士「魔女! 危ない!」バッ
魔女「きゃ……っ!」
パァン!!
悪党A「いててっ、ぐぅ……チキショウ……」
騎士B「もう逃げられないからな!」ギリギリ
悪党B「くそったれ……いでで!」
商人「チッ……、こうなったら……!」
副団長「あっ、待て!」
商人「せめて魔女の野郎だけでも……!」カチャッ
女騎士「……!」ハッ
女騎士(ピストル……!?)
女騎士「魔女! 危ない!」バッ
魔女「きゃ……っ!」
パァン!!
267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:33:33.94 ID:NZhvR/KK0
女騎士「ぐ、ぅぅ、ぅ……」
魔女「騎士さん! 騎士さんっ!!」
商人「へ……っへへ」
女騎士「き――、か……」
商人「へ……?」
女騎士「効かーん!」ゴスンッ
商人「へげぇっ!?」
バタン
女騎士「ふぅ……」
魔女「騎士さんっ! 大丈夫!?」
女騎士「うむ! 何ともない!」
魔女「なんで何ともないのよ……」
魔女「騎士さん! 騎士さんっ!!」
商人「へ……っへへ」
女騎士「き――、か……」
商人「へ……?」
女騎士「効かーん!」ゴスンッ
商人「へげぇっ!?」
バタン
女騎士「ふぅ……」
魔女「騎士さんっ! 大丈夫!?」
女騎士「うむ! 何ともない!」
魔女「なんで何ともないのよ……」
268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:34:33.36 ID:NZhvR/KK0
女騎士「丁度、胸当てに当たってくれたからな。それに、これ……」スッ
魔女「あ、それ……、私のあげた御守り……」
女騎士「あぁ――、これに当たって、銃弾が止まったみたいだ」
魔女「……よかったぁ」
女騎士「っていうか、弾も止めるって……。魔法の御守りなのか……?」
魔女「まさか。銀貨が入っているのよ」
女騎士「……ふふ、私がお前を守るように……、きっと、魔女も私を守ってくれていたんだな」
魔女「き、騎士さん……!」
女騎士「魔女……!」
副団長「もう行きますよ、団長殿。団長殿ー」
騎士A「ほっといて撤収しましょうよ、撤収」
騎士B「な」
・
・
・
魔女「あ、それ……、私のあげた御守り……」
女騎士「あぁ――、これに当たって、銃弾が止まったみたいだ」
魔女「……よかったぁ」
女騎士「っていうか、弾も止めるって……。魔法の御守りなのか……?」
魔女「まさか。銀貨が入っているのよ」
女騎士「……ふふ、私がお前を守るように……、きっと、魔女も私を守ってくれていたんだな」
魔女「き、騎士さん……!」
女騎士「魔女……!」
副団長「もう行きますよ、団長殿。団長殿ー」
騎士A「ほっといて撤収しましょうよ、撤収」
騎士B「な」
・
・
・
269: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:35:21.17 ID:NZhvR/KK0
・
・
・
~数日後~
~王都 王府庁舎内~
・
・
・
役人「いやぁ、あの行方不明事件の犯人を捕まえたとあって、『銀顎』騎士団の名声はうなぎ上りですねっ!」
女騎士「いやいや……」
役人「王都は連日、その話題で持ち切りですよ! 私も仕事辞めて、ウワサの輪に加わりたいくらいです!」
女騎士「うん、辞めないで」
役人「まさに王都に『銀顎』騎士団あり! 嗚呼誉れあれオオクワガタ!」ジーン…
女騎士「はは、ちょっと大袈裟だな、君は……」
役人「なのに……」
女騎士「……」
役人「なのに……、本当に、解散しちゃうんですね……」
女騎士「ああ」
・
・
~数日後~
~王都 王府庁舎内~
・
・
・
役人「いやぁ、あの行方不明事件の犯人を捕まえたとあって、『銀顎』騎士団の名声はうなぎ上りですねっ!」
女騎士「いやいや……」
役人「王都は連日、その話題で持ち切りですよ! 私も仕事辞めて、ウワサの輪に加わりたいくらいです!」
女騎士「うん、辞めないで」
役人「まさに王都に『銀顎』騎士団あり! 嗚呼誉れあれオオクワガタ!」ジーン…
女騎士「はは、ちょっと大袈裟だな、君は……」
役人「なのに……」
女騎士「……」
役人「なのに……、本当に、解散しちゃうんですね……」
女騎士「ああ」
270: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:36:10.82 ID:NZhvR/KK0
役人「惜しいですよ……、今なら後援したいってところも、引く手あまたでしょうに……」
女騎士「前々から、決めていたことだからな……。それに……」
役人「……」
女騎士「きっと、王都は変わるんだ。新しい、進歩した、もっと平和な都市に……」
役人「……」
女騎士「私たち騎士も、変わらなければいけないのだろう」
役人「……本当に、残念です」
女騎士「そういってもらえるのは、素直に嬉しいがな」
役人「女騎士さんのことだって……」
女騎士「私?」
女騎士「前々から、決めていたことだからな……。それに……」
役人「……」
女騎士「きっと、王都は変わるんだ。新しい、進歩した、もっと平和な都市に……」
役人「……」
女騎士「私たち騎士も、変わらなければいけないのだろう」
役人「……本当に、残念です」
女騎士「そういってもらえるのは、素直に嬉しいがな」
役人「女騎士さんのことだって……」
女騎士「私?」
271: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:36:56.45 ID:NZhvR/KK0
役人「王立軍からの勧誘、どうして断っちゃったんですか」
女騎士「うーん」
役人「女騎士さんであれば、軍の要職だってより取り見取りのはず……、それなのに……」
女騎士「うん、まぁ……、しばらくは、剣から離れて……」
役人「……」
女騎士「色々と、考えてみたいと思っているんだ。これからのこととか……。色んなことを……」
役人「……そう、ですか」
女騎士「ああ。……君には本当に、世話になった」
役人「いえいえ、私なんて……、いつクビ切られてもおかしくない、ダメダメ下級役人ですけど……」
女騎士「いや、そんなこと」
役人「……でも、いつか……」
女騎士「……」
役人「いつか、女騎士さんが、また騎士として立ち上がる日があるとしたら……」
女騎士「……」
役人「……その時は、私が……、いつもみたいに、この窓口で、お待ちしていますから」
女騎士「……ああ。そのときは、また君に会いに来よう」
役人「クビになってなければ、ですけどね……」
女騎士「あの、うん、まあ、がんばって」
女騎士「うーん」
役人「女騎士さんであれば、軍の要職だってより取り見取りのはず……、それなのに……」
女騎士「うん、まぁ……、しばらくは、剣から離れて……」
役人「……」
女騎士「色々と、考えてみたいと思っているんだ。これからのこととか……。色んなことを……」
役人「……そう、ですか」
女騎士「ああ。……君には本当に、世話になった」
役人「いえいえ、私なんて……、いつクビ切られてもおかしくない、ダメダメ下級役人ですけど……」
女騎士「いや、そんなこと」
役人「……でも、いつか……」
女騎士「……」
役人「いつか、女騎士さんが、また騎士として立ち上がる日があるとしたら……」
女騎士「……」
役人「……その時は、私が……、いつもみたいに、この窓口で、お待ちしていますから」
女騎士「……ああ。そのときは、また君に会いに来よう」
役人「クビになってなければ、ですけどね……」
女騎士「あの、うん、まあ、がんばって」
272: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:37:37.50 ID:NZhvR/KK0
・
・
・
~騎士団詰所~
・
・
・
女騎士「――へぇ! それじゃ、二人とも?」
騎士A「えぇ、騎士Cのとこの商社で」
騎士B「アイツに話したら、『ちょうど人手が足りなかったところだ』って言って」
女騎士「そうかそうか! ……いやしかし、大変だぞ? あいつ跡取りらしいからな。顎でコキ使われる、なんてことに……」
騎士A「いえ、なに、そこはアレですよぉ」
騎士B「俺たちはアイツの、人に言えない秘密も、タンマリ握ってますからねぇ」
女騎士「なるほどな……、お前らも、なかなかのワルよのぉ……」
騎士A「ヘッヘッヘ」
騎士B「ヘッヘッヘ」
女騎士「ヘッヘッヘ」
・
・
~騎士団詰所~
・
・
・
女騎士「――へぇ! それじゃ、二人とも?」
騎士A「えぇ、騎士Cのとこの商社で」
騎士B「アイツに話したら、『ちょうど人手が足りなかったところだ』って言って」
女騎士「そうかそうか! ……いやしかし、大変だぞ? あいつ跡取りらしいからな。顎でコキ使われる、なんてことに……」
騎士A「いえ、なに、そこはアレですよぉ」
騎士B「俺たちはアイツの、人に言えない秘密も、タンマリ握ってますからねぇ」
女騎士「なるほどな……、お前らも、なかなかのワルよのぉ……」
騎士A「ヘッヘッヘ」
騎士B「ヘッヘッヘ」
女騎士「ヘッヘッヘ」
273: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:38:31.83 ID:NZhvR/KK0
騎士A「……団長」
女騎士「ん?」
騎士A「今まで本当に、ありがとうございました……」
騎士B「団長の下で、騎士としてやれて」
騎士A「この騎士団に入れて……」
騎士B「俺たち、幸せでしたよ」
騎士A「ありがとうございます」
女騎士「……お前たちは、最高の騎士だった」
騎士A「……」
騎士B「……」
女騎士「生涯忘れえぬ、最高の仲間だ」
騎士A「団長……」
騎士B「団長……」
女騎士「達者でな。またいつか会おう」
騎士AB「「はいっ!」」
女騎士「ん?」
騎士A「今まで本当に、ありがとうございました……」
騎士B「団長の下で、騎士としてやれて」
騎士A「この騎士団に入れて……」
騎士B「俺たち、幸せでしたよ」
騎士A「ありがとうございます」
女騎士「……お前たちは、最高の騎士だった」
騎士A「……」
騎士B「……」
女騎士「生涯忘れえぬ、最高の仲間だ」
騎士A「団長……」
騎士B「団長……」
女騎士「達者でな。またいつか会おう」
騎士AB「「はいっ!」」
274: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:39:04.45 ID:NZhvR/KK0
・
・
・
女騎士「……ふぅ」
副団長「これで全員、次の行き先が決まりましたね」
女騎士「あぁ。……あ、いや、まだだぞ」
副団長「はい?」
女騎士「お前だよ。副団長、お前は、どうするんだ?」
副団長「ああ、いえ、私は永久就職ですので」
女騎士「えい――……」
副団長「……」
女騎士「……えっ」
副団長「……」ニヘラァ
・
・
女騎士「……ふぅ」
副団長「これで全員、次の行き先が決まりましたね」
女騎士「あぁ。……あ、いや、まだだぞ」
副団長「はい?」
女騎士「お前だよ。副団長、お前は、どうするんだ?」
副団長「ああ、いえ、私は永久就職ですので」
女騎士「えい――……」
副団長「……」
女騎士「……えっ」
副団長「……」ニヘラァ
275: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/29(火) 22:40:27.93 ID:NZhvR/KK0
副団長「……うふ、ふふふ、ふふふふ……」ニヘヘヘ
女騎士「……わぁ、そんな顔するのな、副団長」
副団長「ダーリンがぁ~」
女騎士「……だぁりん!?」
副団長「これを機に、一緒になってくれってぇ~えへへへへへへっ♪」デレデレ
女騎士「……」
副団長「毎朝、ミソスープ作ってくれって言われてぇ~」
女騎士「そ、そう……、おめでとう、色々意外だったけど」
副団長「そういうわけで、私は後のこと、決まってますけど……」
女騎士「ん?」
副団長「団長殿は、これからどうするおつもりで?」
女騎士「私か? そうだな……私は――……」
女騎士「……わぁ、そんな顔するのな、副団長」
副団長「ダーリンがぁ~」
女騎士「……だぁりん!?」
副団長「これを機に、一緒になってくれってぇ~えへへへへへへっ♪」デレデレ
女騎士「……」
副団長「毎朝、ミソスープ作ってくれって言われてぇ~」
女騎士「そ、そう……、おめでとう、色々意外だったけど」
副団長「そういうわけで、私は後のこと、決まってますけど……」
女騎士「ん?」
副団長「団長殿は、これからどうするおつもりで?」
女騎士「私か? そうだな……私は――……」
282: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:25:47.69 ID:/cl5Nov40
・
・
・
~王都・市街~
女騎士「……」テクテク
都民A「なあ、聞いたか?」
都民B「あぁ、『東の蜘蛛の森の魔女』だろ?」
女騎士「……」ピクン
都民A「例の事件、さらわれた子供たちを救い出したのは、あの魔女らしい……」
都民B「体を張って、犯人たちと闘ったらしい……」
女騎士「……」
都民A「森で困ったことがあると、こっそり助けてくれるらしい……」
都民B「よく効く薬も、作ってくれるらしい……」
女騎士「……」
都民A「そして美人」
都民B「美人か……」
女騎士「……」ウン
・
・
~王都・市街~
女騎士「……」テクテク
都民A「なあ、聞いたか?」
都民B「あぁ、『東の蜘蛛の森の魔女』だろ?」
女騎士「……」ピクン
都民A「例の事件、さらわれた子供たちを救い出したのは、あの魔女らしい……」
都民B「体を張って、犯人たちと闘ったらしい……」
女騎士「……」
都民A「森で困ったことがあると、こっそり助けてくれるらしい……」
都民B「よく効く薬も、作ってくれるらしい……」
女騎士「……」
都民A「そして美人」
都民B「美人か……」
女騎士「……」ウン
283: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:26:16.82 ID:/cl5Nov40
――都の東は蜘蛛の森――
――そこには魔女が住んでいる――
――優しい優しい蜘蛛の魔女――
――森で迷った子供がいたら――
――魔女が必ず助けてくれる――
――ならず者ども、悪党どもは――
――蜘蛛の森には近づくな――
女騎士「……~♪」テクテク
・
・
・
284: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:26:42.84 ID:/cl5Nov40
・
・
・
女騎士「……」テクテク
司祭「……女騎士殿」ヌッ
女騎士「うわっ! びっくりしたぁ……」
司祭「聞きましたぞ……」
女騎士「え」
司祭「例の魔女と、密かに通じていたそうではないですか……!」
女騎士「あ、いや、それはぁ~……」
司祭「私にも内緒で!」
女騎士「あ、あはは、色々と、深い事情があってですね……」
・
・
女騎士「……」テクテク
司祭「……女騎士殿」ヌッ
女騎士「うわっ! びっくりしたぁ……」
司祭「聞きましたぞ……」
女騎士「え」
司祭「例の魔女と、密かに通じていたそうではないですか……!」
女騎士「あ、いや、それはぁ~……」
司祭「私にも内緒で!」
女騎士「あ、あはは、色々と、深い事情があってですね……」
285: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:27:46.83 ID:/cl5Nov40
司祭「本来なら、魔女は相容れぬ異教徒……、ですが」
女騎士「……」
司祭「このたびの件、王都の民を守り、悪を挫くその清い心! 教会としても、認めぬわけにはいかないということに相成りました!」
女騎士「そ、そうでしたか……」
司祭「そうです! 我らが神は寛容を旨とする……です! から!」ズイッ
女騎士「わっ」
司祭「国が認めた、いち宗派として! 我々の神にも! ぜひ一度祈りを捧げていただきたいのです!」
女騎士「は、はぁ……」
司祭「女騎士殿からも、ぜひ伝えてください! 一度王都に参って、我らが教会に立ち寄るよう!」ズイズイ
女騎士「近い、近いです」
司祭「我々も72時間礼拝フルコースを準備してお待ちしておりますのでぇぇ!」ズイズイズイ
女騎士「長いです長いです、そして近い」
・
・
・
286: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:28:36.21 ID:/cl5Nov40
・
・
・
~~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
女騎士「……――ということらしいんだけど」
魔女「えぇ……、いやよう、私、72時間なんて……」
女騎士「でしょうね」
魔女「丸4日じゃない。遠慮するわぁ」
女騎士「うん、3日だな」
魔女「あら? ひぃ、ふう、み……」カゾエカゾエ
女騎士「指を折るな指を。足りないだろ絶対」
魔女「学校のお勉強もしようかしら……」
女騎士「あはは、まあいいさ。魔女は魔女のままで」
魔女「騎士さんがそう言うなら……」
・
・
~~都の東「蜘蛛の森」魔女の屋敷~
・
・
・
女騎士「……――ということらしいんだけど」
魔女「えぇ……、いやよう、私、72時間なんて……」
女騎士「でしょうね」
魔女「丸4日じゃない。遠慮するわぁ」
女騎士「うん、3日だな」
魔女「あら? ひぃ、ふう、み……」カゾエカゾエ
女騎士「指を折るな指を。足りないだろ絶対」
魔女「学校のお勉強もしようかしら……」
女騎士「あはは、まあいいさ。魔女は魔女のままで」
魔女「騎士さんがそう言うなら……」
287: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:29:08.79 ID:/cl5Nov40
魔女「……思いの外」
女騎士「うん?」
魔女「早かったわね、騎士団、なくなっちゃうの……」
女騎士「まあな。……元々、無理を重ねて続けてきてたから……」
魔女「……」
女騎士「終わるとなってしまえば、流されるまま、こうなる巡り合わせになっていたんだろう……」
魔女「……つらい?」
女騎士「つらくない、とは、流石に言えないがな。でも……」
魔女「……」
女騎士「魔女が、私に居場所を教えてくれたからさ……」
魔女「……」
女騎士「騎士でも何者でもない私を、受け入れてくれたから」
魔女「うん……」
女騎士「うん?」
魔女「早かったわね、騎士団、なくなっちゃうの……」
女騎士「まあな。……元々、無理を重ねて続けてきてたから……」
魔女「……」
女騎士「終わるとなってしまえば、流されるまま、こうなる巡り合わせになっていたんだろう……」
魔女「……つらい?」
女騎士「つらくない、とは、流石に言えないがな。でも……」
魔女「……」
女騎士「魔女が、私に居場所を教えてくれたからさ……」
魔女「……」
女騎士「騎士でも何者でもない私を、受け入れてくれたから」
魔女「うん……」
288: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:30:17.94 ID:/cl5Nov40
魔女「……――それで、いつ越してこれそうなの?」
女騎士「あぁ、一応身支度だけはしたけど……」
魔女「そう」
女騎士「……でも、本当にいいのか?」
魔女「何言ってるの。『一緒に暮らしたい』って言ったの、騎士さんじゃない」
女騎士「そ、それは……そうだけど……」
魔女「楽しみだわぁ。このおうちに、騎士さんが来てくれるなんて……」
女騎士「……誰かと暮らすなんて、色々慣れてなくて、迷惑かけたら申し訳ないけど……」
魔女「うふふ、今から謝っちゃうのねぇ」
女騎士「う……、出来る限りがんばるが……」
魔女「いいのよ、肩ひじ張って、がんばらなくたって。騎士さんは騎士さんのままで」
女騎士「……魔女」
魔女「……ねぇ、騎士さん」
女騎士「ん?」
魔女「好きよ」
女騎士「え? あっ、あ、わ――……!?」
魔女「ふふふ」
女騎士「わ、私もっ――!」
女騎士「あぁ、一応身支度だけはしたけど……」
魔女「そう」
女騎士「……でも、本当にいいのか?」
魔女「何言ってるの。『一緒に暮らしたい』って言ったの、騎士さんじゃない」
女騎士「そ、それは……そうだけど……」
魔女「楽しみだわぁ。このおうちに、騎士さんが来てくれるなんて……」
女騎士「……誰かと暮らすなんて、色々慣れてなくて、迷惑かけたら申し訳ないけど……」
魔女「うふふ、今から謝っちゃうのねぇ」
女騎士「う……、出来る限りがんばるが……」
魔女「いいのよ、肩ひじ張って、がんばらなくたって。騎士さんは騎士さんのままで」
女騎士「……魔女」
魔女「……ねぇ、騎士さん」
女騎士「ん?」
魔女「好きよ」
女騎士「え? あっ、あ、わ――……!?」
魔女「ふふふ」
女騎士「わ、私もっ――!」
289: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:30:51.19 ID:/cl5Nov40
・
・
・
~寝室~
女騎士「んぅ……」ショボショボ
魔女「~♪」ナデ
女騎士「……そのうち、さ」
魔女「んん?」
女騎士「……おっきいベッド、買おうか」
魔女「……別にいいわよ」
女騎士「……だって、狭いだろ、魔女。……こうやって」
魔女「ん~……」
女騎士「二人で、一緒に横になると……」
魔女「私は、ちょうどいいと思うけど?」
女騎士「そっかぁ……」
魔女「ええ」
女騎士「なら、いっかぁ……」
・
・
~寝室~
女騎士「んぅ……」ショボショボ
魔女「~♪」ナデ
女騎士「……そのうち、さ」
魔女「んん?」
女騎士「……おっきいベッド、買おうか」
魔女「……別にいいわよ」
女騎士「……だって、狭いだろ、魔女。……こうやって」
魔女「ん~……」
女騎士「二人で、一緒に横になると……」
魔女「私は、ちょうどいいと思うけど?」
女騎士「そっかぁ……」
魔女「ええ」
女騎士「なら、いっかぁ……」
290: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:31:18.14 ID:/cl5Nov40
魔女「もうちょっと、こっち来る?」
女騎士「うん……」モゾ
魔女「……ふふっ」
女騎士「魔女ー……」
魔女「なぁに?」
女騎士「手、繋いでいい……?」
魔女「ええ、いいわよ」ギュッ
女騎士「……」ギュー
魔女「甘えん坊さんかしらぁ?」
女騎士「……こう、してたらさ」
魔女「……」
女騎士「うん……」モゾ
魔女「……ふふっ」
女騎士「魔女ー……」
魔女「なぁに?」
女騎士「手、繋いでいい……?」
魔女「ええ、いいわよ」ギュッ
女騎士「……」ギュー
魔女「甘えん坊さんかしらぁ?」
女騎士「……こう、してたらさ」
魔女「……」
291: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:31:47.31 ID:/cl5Nov40
女騎士「今夜は、夢でも会えそうな……気がする……」
魔女「いつでも、会えるわよ」
女騎士「……」
魔女「夢の中でも、明日の未来も、その先も……」
女騎士「……」
魔女「ここが、貴方の居場所で……」
女騎士「……」
魔女「私の居場所だから……」
女騎士「……」
魔女「だから――、ゆっくり、お眠りなさい」
女騎士「……うん……」
魔女「……」
女騎士「……おやすみなさい、父様、母様……」
魔女「いつでも、会えるわよ」
女騎士「……」
魔女「夢の中でも、明日の未来も、その先も……」
女騎士「……」
魔女「ここが、貴方の居場所で……」
女騎士「……」
魔女「私の居場所だから……」
女騎士「……」
魔女「だから――、ゆっくり、お眠りなさい」
女騎士「……うん……」
魔女「……」
女騎士「……おやすみなさい、父様、母様……」
292: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:32:13.80 ID:/cl5Nov40
女騎士「おやすみ、魔女」
魔女「おやすみなさい」
293: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:32:53.01 ID:/cl5Nov40
これで、このお話はおしまいです
最後までお読みいただき、ありがとうございました
最後までお読みいただき、ありがとうございました
295: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:57:09.17 ID:/cl5Nov40
~アフター~
296: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:57:38.12 ID:/cl5Nov40
・
・
・
~寝室~
・
・
・
魔女「ねぇ、騎士さぁん……」
女騎士「な、なんだ?」
魔女「内緒にしてたんだけど、私ねぇ……」グイッ
女騎士「ち、近い、近い……」
魔女「実は、他にも魔法、使えちゃうんだぁ……」
女騎士「そそそそうなんだぁ!」
魔女「ベッドの中で使う魔法なんだけどね! 私、とーっても上手なのよぉ! 見たい? 見たいわよね!」ギラギラ
女騎士「ま、ま、魔女さん! 待って! ちょっと!」
魔女「いいわよ見せてあげるわほーんとに素敵な魔法なの綺麗な夢を見せてあげる魔法なんだけどね!?」ギラギラギラ
女騎士「ひぇぇ!」
魔女「大丈夫――……」
女騎士「あっ……」
・
・
~寝室~
・
・
・
魔女「ねぇ、騎士さぁん……」
女騎士「な、なんだ?」
魔女「内緒にしてたんだけど、私ねぇ……」グイッ
女騎士「ち、近い、近い……」
魔女「実は、他にも魔法、使えちゃうんだぁ……」
女騎士「そそそそうなんだぁ!」
魔女「ベッドの中で使う魔法なんだけどね! 私、とーっても上手なのよぉ! 見たい? 見たいわよね!」ギラギラ
女騎士「ま、ま、魔女さん! 待って! ちょっと!」
魔女「いいわよ見せてあげるわほーんとに素敵な魔法なの綺麗な夢を見せてあげる魔法なんだけどね!?」ギラギラギラ
女騎士「ひぇぇ!」
魔女「大丈夫――……」
女騎士「あっ……」
297: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:58:07.00 ID:/cl5Nov40
魔女「……さぁ、じっとしてて……」
グイッ ボフッ
女騎士「あ――……」
魔女「騎士さんは、そうやって、楽にしててくれればいいから……」
女騎士「……」
魔女「……うふふ、天井の染みでも数えててちょうだい?」
女騎士「……」
魔女「良い子ねぇ……、そうよ、そうやって力を――……」
女騎士「……」
魔女「抜いて……? 騎士さん――……?」
女騎士「スヤァ」
魔女「……………………………………」
・
・
・
グイッ ボフッ
女騎士「あ――……」
魔女「騎士さんは、そうやって、楽にしててくれればいいから……」
女騎士「……」
魔女「……うふふ、天井の染みでも数えててちょうだい?」
女騎士「……」
魔女「良い子ねぇ……、そうよ、そうやって力を――……」
女騎士「……」
魔女「抜いて……? 騎士さん――……?」
女騎士「スヤァ」
魔女「……………………………………」
・
・
・
298: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:58:37.87 ID:/cl5Nov40
・
・
・
~朝~
魔女「……」
女騎士「ごめんって」
299: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:59:09.94 ID:/cl5Nov40
魔女「……」
女騎士「違うんだって、あれは、ほら、あの、条件反射で」
魔女「……」
女騎士「なんていうか、あのベッドに入るともう、ああなっちゃうんだって」
魔女「……」
女騎士「……だから、その……」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士(……怒ってる)
魔女「……」ムスー
女騎士(……怒ってらっしゃる)
女騎士「違うんだって、あれは、ほら、あの、条件反射で」
魔女「……」
女騎士「なんていうか、あのベッドに入るともう、ああなっちゃうんだって」
魔女「……」
女騎士「……だから、その……」
魔女「……」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士(……怒ってる)
魔女「……」ムスー
女騎士(……怒ってらっしゃる)
300: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 22:59:39.78 ID:/cl5Nov40
女騎士「……」
魔女「……」トポトポ
女騎士(……あ、でもお茶は注いでくれるんだ)
女騎士「……」グビッ
魔女「……」
女騎士(……あっ、でもめちゃくちゃ薄い)
魔女「……無職で居候の騎士さんには、それくらいのお茶で十分じゃないかしらぁ?」
女騎士(そしてすっごい心抉ってくる!)
女騎士「……」
魔女「あっ」
女騎士「えっ」
魔女「元・騎士さんだったかしらぁ」
女騎士「あっ苦くなってきた! お茶いい塩梅に苦くなってきた!!」
魔女「……」トポトポ
女騎士(……あ、でもお茶は注いでくれるんだ)
女騎士「……」グビッ
魔女「……」
女騎士(……あっ、でもめちゃくちゃ薄い)
魔女「……無職で居候の騎士さんには、それくらいのお茶で十分じゃないかしらぁ?」
女騎士(そしてすっごい心抉ってくる!)
女騎士「……」
魔女「あっ」
女騎士「えっ」
魔女「元・騎士さんだったかしらぁ」
女騎士「あっ苦くなってきた! お茶いい塩梅に苦くなってきた!!」
301: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 23:00:05.53 ID:/cl5Nov40
女騎士「……ごめんってー」
魔女「……」
女騎士「ほんと、謝るから。なんでもします。この通り」
魔女「……なんでも?」
女騎士「ああ! 魔女が望むこと、なんでも! 騎士に二言はないぞ!」
魔女「…………じゃあ」
女騎士「お」
魔女「……お祭り」
女騎士「え?」
魔女「……」
女騎士「ほんと、謝るから。なんでもします。この通り」
魔女「……なんでも?」
女騎士「ああ! 魔女が望むこと、なんでも! 騎士に二言はないぞ!」
魔女「…………じゃあ」
女騎士「お」
魔女「……お祭り」
女騎士「え?」
302: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 23:00:35.74 ID:/cl5Nov40
魔女「……お祭り、行ってみたい」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……『この森とともに生きて、この森で死ぬの』」
魔女「い、一日くらいいいじゃない! もう! なんでそんな変なことばっかり覚えてるのっ!」
女騎士「……お祭り、行ってみたいの?」
魔女「……本当は、ずっと行きたかったけど……」
女騎士「……」
魔女「……一人だと、怖いし……、楽しくなさそうだし……」
女騎士「……そっか」
魔女「……」
女騎士「……一緒に行こうな、今年は」
魔女「……いいの!?」
女騎士「……」
魔女「……」
女騎士「……『この森とともに生きて、この森で死ぬの』」
魔女「い、一日くらいいいじゃない! もう! なんでそんな変なことばっかり覚えてるのっ!」
女騎士「……お祭り、行ってみたいの?」
魔女「……本当は、ずっと行きたかったけど……」
女騎士「……」
魔女「……一人だと、怖いし……、楽しくなさそうだし……」
女騎士「……そっか」
魔女「……」
女騎士「……一緒に行こうな、今年は」
魔女「……いいの!?」
303: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 23:01:04.94 ID:/cl5Nov40
女騎士「ああ、一緒に色々、見て回ろう」
魔女「……!」パァァ
女騎士「……私も毎年、王都祭は警備だったし……、見る側に回るのは初めてかも……」
魔女「そうなの? じゃあ私たち、初めて同士ね!」
女騎士「ははは、そうだな」
魔女「じゃあ、じゃあ!」
女騎士「うん」
魔女「一緒にいっぱい、遊びましょうね!」
女騎士「ああ、もちろんだ」
魔女「……わぁ!」
女騎士「魔女と一緒に……」
魔女「騎士さんと一緒に!」
魔女「……!」パァァ
女騎士「……私も毎年、王都祭は警備だったし……、見る側に回るのは初めてかも……」
魔女「そうなの? じゃあ私たち、初めて同士ね!」
女騎士「ははは、そうだな」
魔女「じゃあ、じゃあ!」
女騎士「うん」
魔女「一緒にいっぱい、遊びましょうね!」
女騎士「ああ、もちろんだ」
魔女「……わぁ!」
女騎士「魔女と一緒に……」
魔女「騎士さんと一緒に!」
304: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 23:01:38.03 ID:/cl5Nov40
~(ほんとに)おわり~
305: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/30(水) 23:04:20.55 ID:/cl5Nov40
お読みいただいた方、ありがとうございました
コメントくださった方、とても励みになりました。ありがとうございました
また機会があれば、またどこかで、またお会いできたら幸いです
コメントくださった方、とても励みになりました。ありがとうございました
また機会があれば、またどこかで、またお会いできたら幸いです
309: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/31(木) 08:28:41.03 ID:ZnFWhSOno
乙
すごくよかった
すごくよかった
310: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/31(木) 14:54:17.77 ID:rU0/MnBM0
乙
過去作があるなら教えてほしい
過去作があるなら教えてほしい
311: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 00:35:50.19 ID:EtS+HCiW0
素晴らしい話だった
乙
乙
312: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/02(土) 21:56:56.26 ID:XYrdL7eVo
乙
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掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1502532702/
Entry ⇒ 2018.02.22 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
僧侶「スルメイカ固いですね」
1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/02(金) 00:32:41 ID:eqRtoy7c
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/02(金) 00:34:28 ID:eqRtoy7c
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/02(金) 00:40:49 ID:eqRtoy7c
僧侶「乙女にむかって臭いとはなんですか失礼しちゃいますねプンプン」
勇者「はぁ…まさか君みたいなのが派遣されてくるとはなぁ」
僧侶「みたいなのとは何ですかみたいなのとは」
勇者「俺はついこの間勇者になったばかりなんだ。まだ見ぬ冒険に心躍らせて…そうしてこの『はじまりの洞窟』に来たんだ。なのに…」
勇者「はぁ…まさか君みたいなのが派遣されてくるとはなぁ」
僧侶「みたいなのとは何ですかみたいなのとは」
勇者「俺はついこの間勇者になったばかりなんだ。まだ見ぬ冒険に心躍らせて…そうしてこの『はじまりの洞窟』に来たんだ。なのに…」
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/02(金) 00:43:51 ID:eqRtoy7c
僧侶「ならピッタリじゃないですか」
僧侶「こう見えても私ベテランなんですよ。冒険初心者の勇者様のお供にはピッタリ!」
勇者「ベテランねぇ…」
僧侶「はい。そんな事よりイカ食べます?」
スッ
勇者「…食べる」
クッチャクッチャ
僧侶「こう見えても私ベテランなんですよ。冒険初心者の勇者様のお供にはピッタリ!」
勇者「ベテランねぇ…」
僧侶「はい。そんな事よりイカ食べます?」
スッ
勇者「…食べる」
クッチャクッチャ
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/02(金) 00:48:11 ID:eqRtoy7c
・ ・ ・ ・ ・
テクテクテク
勇者「随分奥まで来たな。そろそろ宝箱のひとつでもないもんかね」
僧侶「さぁどうでしょう。このはじまりの洞窟は魔物も宝箱もめったに出ない超安全なダンジョンですから」
勇者「ダンジョンなのかそれは…まぁ魔物が出ないのは安心だが…」
僧侶「あっ、それフラグ」
勇者「止めろよそういうの」
テクテクテク
勇者「随分奥まで来たな。そろそろ宝箱のひとつでもないもんかね」
僧侶「さぁどうでしょう。このはじまりの洞窟は魔物も宝箱もめったに出ない超安全なダンジョンですから」
勇者「ダンジョンなのかそれは…まぁ魔物が出ないのは安心だが…」
僧侶「あっ、それフラグ」
勇者「止めろよそういうの」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/02(金) 00:51:37 ID:eqRtoy7c
僧侶「!」
クルッ
僧侶「何者かの気配が…嫌な予感がします」
勇者「だから止めろって」
僧侶「残念ながら私の嫌な予感って当たるんですよねぇ…」
ガサガサッ
僧侶「!」
勇者「!」
クルッ
僧侶「何者かの気配が…嫌な予感がします」
勇者「だから止めろって」
僧侶「残念ながら私の嫌な予感って当たるんですよねぇ…」
ガサガサッ
僧侶「!」
勇者「!」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 00:21:38 ID:tWWDwFbE
ガバァッ
?「グギャギャギャ!」
勇者「うわぁ!」
僧侶「こ、この魔物は!」
勇者「まさか、はじまりの洞窟にこんな奴が現れるなんて!」
僧侶「あ、ありえません…ありえませんこんな事!」
僧侶「これでは…これでは、まるで!」
勇者「そんな!馬鹿な!こんな事って…あるのかよ!?」
僧侶「私達は…もはや…」
?「グギャギャギャ!」
勇者「うわぁ!」
僧侶「こ、この魔物は!」
勇者「まさか、はじまりの洞窟にこんな奴が現れるなんて!」
僧侶「あ、ありえません…ありえませんこんな事!」
僧侶「これでは…これでは、まるで!」
勇者「そんな!馬鹿な!こんな事って…あるのかよ!?」
僧侶「私達は…もはや…」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 09:25:48 ID:tWWDwFbE
?「グギャギャギャ!」
勇者「うわぁ!」
僧侶「勇者様!」
?「ギャオラ!」
ブンッ
バキィッ
勇者「ぐわぁ!」
僧侶「勇者様!ドナルドみたいな鳴き声で!」
勇者「うわぁ!」
僧侶「勇者様!」
?「ギャオラ!」
ブンッ
バキィッ
勇者「ぐわぁ!」
僧侶「勇者様!ドナルドみたいな鳴き声で!」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 09:28:39 ID:tWWDwFbE
勇者「ぐふっ…」
僧侶「勇者様がやられた…」
僧侶「駄目…私だけではこの魔物には勝てない…この…」
『きんたまオーク』
僧侶「には…」
僧侶「勇者様がやられた…」
僧侶「駄目…私だけではこの魔物には勝てない…この…」
『きんたまオーク』
僧侶「には…」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 09:30:53 ID:tWWDwFbE
きんたまオークとは?
一般的なオークより巨大で筋肉質
凶暴で底なしの性欲。
その両頬が醜く垂れている容姿から
きんたまオークと呼ばれ恐れられている。
一般的なオークより巨大で筋肉質
凶暴で底なしの性欲。
その両頬が醜く垂れている容姿から
きんたまオークと呼ばれ恐れられている。
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 09:34:20 ID:tWWDwFbE
きんたまオーク「グギャギャギャ!」
ブンッ ブンッ
僧侶「うぉっ危ね」
バッ
僧侶「あっ、勇者様が…」
きんたまオーク「!」
ブンッ
バキィッ
勇者「ぐふっ…」
ブンッ ブンッ
僧侶「うぉっ危ね」
バッ
僧侶「あっ、勇者様が…」
きんたまオーク「!」
ブンッ
バキィッ
勇者「ぐふっ…」
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 09:39:54 ID:tWWDwFbE
僧侶「ゆ、勇者様ー」
勇者「ぐふっ…」
バタリ
バキバキバキ
僧侶「これは勇者様の肋骨が折れたに違いない!」
僧侶「急いで回復しないと…」
ダダッ
きんたまオーク「させるかよ。回復魔法は詠唱にかなりの時間がかかる…俺の攻撃をかわしながら詠唱はできんぞ?」
僧侶「くっ…なら先に貴方を倒すまでです!」
勇者「ぐふっ…」
バタリ
バキバキバキ
僧侶「これは勇者様の肋骨が折れたに違いない!」
僧侶「急いで回復しないと…」
ダダッ
きんたまオーク「させるかよ。回復魔法は詠唱にかなりの時間がかかる…俺の攻撃をかわしながら詠唱はできんぞ?」
僧侶「くっ…なら先に貴方を倒すまでです!」
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 09:42:08 ID:tWWDwFbE
きんたまオーク「やって…みろぉぉぉ!」
ブンッ
僧侶「そんな大振りで!」
サッ
きんたまオーク「二の矢がある!」
ブンッ
僧侶「だからといって!」
ガキィン
僧侶「直撃さえしなければ!」
ブンッ
僧侶「そんな大振りで!」
サッ
きんたまオーク「二の矢がある!」
ブンッ
僧侶「だからといって!」
ガキィン
僧侶「直撃さえしなければ!」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/03(土) 16:00:29 ID:tWWDwFbE
きんたまオーク「ほぅ…ただの僧侶ではないようだな」
僧侶「これでも幾多の修羅場をくぐってきていますからね…」
ニィッ
ニィッ
きんたまオーク「それは…楽しみ甲斐があるというものだな!」
僧侶「これでも幾多の修羅場をくぐってきていますからね…」
ニィッ
ニィッ
きんたまオーク「それは…楽しみ甲斐があるというものだな!」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/04(日) 01:04:11 ID:5GlZKQHk
ビキビキビキ
きんたまオーク「オーク忍法…筋肉倍化の術!」
僧侶「体が…巨大に!?」
きんたまオーク「この姿になるとスピードが落ちるので嫌なのだがな…代わりにパワーは!」
ブンッ
バコォッ
きんたまオーク「数十倍にも膨れ上がる!」
僧侶「振り下ろした拳が大地を…あんなの食らったら即死に違いない!」
ブルッ
ジョロロロロ…
僧侶「恐怖のあまり失禁する私!」
きんたまオーク「オーク忍法…筋肉倍化の術!」
僧侶「体が…巨大に!?」
きんたまオーク「この姿になるとスピードが落ちるので嫌なのだがな…代わりにパワーは!」
ブンッ
バコォッ
きんたまオーク「数十倍にも膨れ上がる!」
僧侶「振り下ろした拳が大地を…あんなの食らったら即死に違いない!」
ブルッ
ジョロロロロ…
僧侶「恐怖のあまり失禁する私!」
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/04(日) 12:27:28 ID:5GlZKQHk
そのとき
あまりに強烈なアンモニア臭により
止まった筈の勇者の心臓が再び動き出した。
ドクン…
ドクンドクン…
ドゥンッ!
勇者「!」
ガバァ
僧侶「!」
きんたまオーク「!」
あまりに強烈なアンモニア臭により
止まった筈の勇者の心臓が再び動き出した。
ドクン…
ドクンドクン…
ドゥンッ!
勇者「!」
ガバァ
僧侶「!」
きんたまオーク「!」
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/07(水) 00:15:39 ID:c3NVJplQ
勇者「あんまりにアンモニア臭いからよぉ~」
フラリ
勇者「つい生き返っちまったじゃあねぇかよぉ~!」
フラリ フラリ
きんたまオーク「く、来るな…こっちに来るなぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僧侶(きんたまオークが怯えている…確かに勇者様の威圧感は…尋常では無い…死の淵から生き返る事で何かが…変わった…?)
勇者「伊達にあの世は見てねぇぜ…!」
フラリ
勇者「つい生き返っちまったじゃあねぇかよぉ~!」
フラリ フラリ
きんたまオーク「く、来るな…こっちに来るなぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僧侶(きんたまオークが怯えている…確かに勇者様の威圧感は…尋常では無い…死の淵から生き返る事で何かが…変わった…?)
勇者「伊達にあの世は見てねぇぜ…!」
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/07(水) 18:51:51 ID:c3NVJplQ
ジリジリ
勇者「さぁて、きんたまオーク…お前を…」
ダダダッ オシリ ツカミッ
きんたまオーク「!?」
勇者「ンフフフフ…」
ウシロニマワリコミッ
オシリ ナデナデ
きんたまオーク「っん…」
勇者「可愛いな…可愛いなぁ…」
ナデナデ ツツツ…
きんたまオーク「はぁっ…くぅっ…」
僧侶「勇者様…早く…早くきんたまオークを!油断してはいけません!なにをするか分かりません…だから早く!」
勇者「分かっている…早く…犯してやる…」
勇者「さぁて、きんたまオーク…お前を…」
ダダダッ オシリ ツカミッ
きんたまオーク「!?」
勇者「ンフフフフ…」
ウシロニマワリコミッ
オシリ ナデナデ
きんたまオーク「っん…」
勇者「可愛いな…可愛いなぁ…」
ナデナデ ツツツ…
きんたまオーク「はぁっ…くぅっ…」
僧侶「勇者様…早く…早くきんたまオークを!油断してはいけません!なにをするか分かりません…だから早く!」
勇者「分かっている…早く…犯してやる…」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/07(水) 18:59:51 ID:c3NVJplQ
ヌギッ
勇者「さぁ、(俺の股間の)ビッグ棒…ショーーターイム!」
パーパー テレレレレン
パーパー テレレレレー
勇者「汗だくの中、筋肉質の魔物に挿入する者がいてもいい…自由とは、そういうことだ!」
ズボボボボボボボ
カノッサ! カノッサ!
ンーーー
モッサン! ゴッサン!
きんたまオーク「ンナーーーーー!」
勇者「さぁ、(俺の股間の)ビッグ棒…ショーーターイム!」
パーパー テレレレレン
パーパー テレレレレー
勇者「汗だくの中、筋肉質の魔物に挿入する者がいてもいい…自由とは、そういうことだ!」
ズボボボボボボボ
カノッサ! カノッサ!
ンーーー
モッサン! ゴッサン!
きんたまオーク「ンナーーーーー!」
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/08(木) 06:12:20 ID:HV35Z2fA
~きんたまオーク脳内会議室~
議員1「肛門障壁、突破されました!」
議員2「ええぃ、こうも容易く!」
議員3「だ、第一直腸で阻止できれば問題は!」
議員4「直腸の能力は貴君も知っておるだろう、第一から第四まで含めてな!」
議員3「ぐぅっ…」
議員5「…」
議員1「議員5!君も何か意見はな…」
議員1「肛門障壁、突破されました!」
議員2「ええぃ、こうも容易く!」
議員3「だ、第一直腸で阻止できれば問題は!」
議員4「直腸の能力は貴君も知っておるだろう、第一から第四まで含めてな!」
議員3「ぐぅっ…」
議員5「…」
議員1「議員5!君も何か意見はな…」
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/08(木) 06:18:41 ID:HV35Z2fA
議員5「第三直腸の…超振動ミキサー使用許可を…」
議員達「!!!!」
議員5「本来は便秘の際にのみ使用許可がおりる超振動ミキサー…だが今は緊急事態です…皆さん、どうか賢明な判断を…」
議員達「!!!!」
議員5「本来は便秘の際にのみ使用許可がおりる超振動ミキサー…だが今は緊急事態です…皆さん、どうか賢明な判断を…」
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/08(木) 06:27:32 ID:HV35Z2fA
スッ
議員5「私の承認印です、さぁ早く皆さんも…」
議員1「し、しかし」
議員5「承認から使用まではどうしてもラグがある!一秒でも時間が惜しいのです!」
議員4「…」
スッ
議員4「諸君、今は彼の言うとおりにしよう」
議員2「…分かりました」
議員3「…」
スッ スッ
議員5「私の承認印です、さぁ早く皆さんも…」
議員1「し、しかし」
議員5「承認から使用まではどうしてもラグがある!一秒でも時間が惜しいのです!」
議員4「…」
スッ
議員4「諸君、今は彼の言うとおりにしよう」
議員2「…分かりました」
議員3「…」
スッ スッ
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/08(木) 06:34:37 ID:HV35Z2fA
議員1「やるしか…ないのか…」
スッ
議員4「全員の承認印が揃った…では許可書を発行します」
ウィーヴォン! ウィーヴォン!
議員1「この警報は…!」
議員2「えぇい急げ!このままでは快楽死してしまうぞ!」
議員3「早く…早く奴のちんぽを!超振動ミキサーでミンチにしてやれェェェェェ!」
スッ
議員4「全員の承認印が揃った…では許可書を発行します」
ウィーヴォン! ウィーヴォン!
議員1「この警報は…!」
議員2「えぇい急げ!このままでは快楽死してしまうぞ!」
議員3「早く…早く奴のちんぽを!超振動ミキサーでミンチにしてやれェェェェェ!」
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/08(木) 18:30:31 ID:HV35Z2fA
~現実~
勇者「ホーホーホー!」
ヌププププ
僧侶「うわぁぁぁ!勇者様のビッグ棒が容赦なく!きんたまオークの直腸を!」
きんたまオーク「ぐぬぬ…ぬふっ」
ニヤリ
僧侶(笑った…きんたまオークが笑った!?何か策が…)
勇者「ホーホーホー!」
ヌププププ
僧侶「うわぁぁぁ!勇者様のビッグ棒が容赦なく!きんたまオークの直腸を!」
きんたまオーク「ぐぬぬ…ぬふっ」
ニヤリ
僧侶(笑った…きんたまオークが笑った!?何か策が…)
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/08(木) 18:40:22 ID:HV35Z2fA
きんたまオーク「く、くらえ…これが俺の…奥の手だ!」
ヴヴヴ
勇者「!?」
勇者(な、何だ…俺のビッグ棒が震え…いや違う!これは…きんたまオークの腸が振動している?のか!?)
ヴヴヴ…
ヴァァァァァァァ!
勇者「ぐぬぅっ!?」
きんたまオーク「ふ・ふ・ふ…どうだい俺の…超振動ミキサーの味は!」
ヴヴヴ
勇者「!?」
勇者(な、何だ…俺のビッグ棒が震え…いや違う!これは…きんたまオークの腸が振動している?のか!?)
ヴヴヴ…
ヴァァァァァァァ!
勇者「ぐぬぅっ!?」
きんたまオーク「ふ・ふ・ふ…どうだい俺の…超振動ミキサーの味は!」
40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/09(金) 20:59:07 ID:kR0RZSKQ
勇者「ち、超振動ミキサー…だと!?」
きんたまオーク「そうさ、読んで字のごとく…腸が激しい振動を起こし異物を細切れにするんだァ…」
エヘッエヘッ…
きんたまオーク「うへへぇ…きっと、きいっと、綺麗な挽き肉になるんだろォなァ…」
アヘアヘアヘェ
ヨダレ ダラァ…
僧侶「き、きんたまオークは既に正気じゃない!このままでは…このままでは!」
勇者「挽き肉ってワケかい…やれやれだぜ」
きんたまオーク「そうさ、読んで字のごとく…腸が激しい振動を起こし異物を細切れにするんだァ…」
エヘッエヘッ…
きんたまオーク「うへへぇ…きっと、きいっと、綺麗な挽き肉になるんだろォなァ…」
アヘアヘアヘェ
ヨダレ ダラァ…
僧侶「き、きんたまオークは既に正気じゃない!このままでは…このままでは!」
勇者「挽き肉ってワケかい…やれやれだぜ」
41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/09(金) 21:18:40 ID:kR0RZSKQ
僧侶「な、何故そんなにも余裕なんですか…ちんぽが…ちんぽがミンチになるんですよ!?」
ポロッ…
僧侶「ミンチに…なるん…ですよ…」
勇者「僧侶、お前泣いて…?」
僧侶「怖いんです…誰かのちんぽがミンチになるのは…どうしようもなく、怖いんです…」
きんたまオーク「怖い…?」
ポロッ…
僧侶「ミンチに…なるん…ですよ…」
勇者「僧侶、お前泣いて…?」
僧侶「怖いんです…誰かのちんぽがミンチになるのは…どうしようもなく、怖いんです…」
きんたまオーク「怖い…?」
42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/09(金) 21:26:49 ID:kR0RZSKQ
僧侶「私の父は強盗に襲われちんぽがミンチになって死にました…兄はバイク事故でちんぽがミンチになって死にました」
僧侶「初めての恋人はキスと同時にちんぽがミンチになって死にました」
僧侶「二人目の恋人はタバコのフレーバーでちんぽがミンチになって死にました…三人目はトラベリングしながらちんぽがミンチになって死にました」
僧侶「初めての恋人はキスと同時にちんぽがミンチになって死にました」
僧侶「二人目の恋人はタバコのフレーバーでちんぽがミンチになって死にました…三人目はトラベリングしながらちんぽがミンチになって死にました」
43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/09(金) 21:36:24 ID:kR0RZSKQ
僧侶「そう…私に関わった人間は皆…皆!ちんぽがミンチになって死ぬんです!」
僧侶「死ぬん…です…」
きんたまオーク「そうか…貴様は…」
勇者「?」
きんたまオーク「呪われた宿命【さだめ】の癒し手…我が一族に伝わる伝説が!本当にあったとはな!」
勇者「伝説…だと?」
きんたまオーク「そうだ…その者に近づけば、たちまちちんぽがミンチになる…癒しの能力を持つが故にその呪いに苦しみ悶える…やがて正気を保てなくなり自ら命を絶つ…」
きんたまオーク「だが呪いは消えず!新たな宿主を探す!そうだ…この呪いは消えぬ…この世のちんぽをミンチにし尽くすまでは…消えぬのだ!」
僧侶「死ぬん…です…」
きんたまオーク「そうか…貴様は…」
勇者「?」
きんたまオーク「呪われた宿命【さだめ】の癒し手…我が一族に伝わる伝説が!本当にあったとはな!」
勇者「伝説…だと?」
きんたまオーク「そうだ…その者に近づけば、たちまちちんぽがミンチになる…癒しの能力を持つが故にその呪いに苦しみ悶える…やがて正気を保てなくなり自ら命を絶つ…」
きんたまオーク「だが呪いは消えず!新たな宿主を探す!そうだ…この呪いは消えぬ…この世のちんぽをミンチにし尽くすまでは…消えぬのだ!」
45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/11(日) 00:27:50 ID:YFGyZnV6
きんたまオーク「ふはは…呪われし癒し手よ!貴様のできる事はもはや…ちんぽをミンチにすることのみ!この俺のようになぁぁぁぁぁ!」
どるるるる!
勇者「!」
勇者「ふ、再び超振動ミキサーが!」
どるるるる!
勇者「あぐあっ…意識が…もう下半身の感覚が無くなって…きた…」
トロォン…
勇者「だ、駄目だ…もう俺は…」
どるるるる!
勇者「!」
勇者「ふ、再び超振動ミキサーが!」
どるるるる!
勇者「あぐあっ…意識が…もう下半身の感覚が無くなって…きた…」
トロォン…
勇者「だ、駄目だ…もう俺は…」
46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/11(日) 16:28:12 ID:YFGyZnV6
僧侶「…」
僧侶「違う…違います!」
勇者「!?」
僧侶「私は…貴方とは違う!いたずらに人のちんぽをミキシングしたりは!しない!たとえ呪われた身であっても!私は僧侶です…みんなを癒す…光の存在でありたい!」
パァァ…
きんたまオーク「そ、僧侶が光った…金色に光った…?」
勇者「僧侶…そうか、君は…」
僧侶「私は…私です…癒しの担い手…僧侶です!」
ブワァァァァッ!
僧侶「癒しの光を…」
僧侶「は~な~ち~ま~…」
ギュワン!
僧侶「す―――!」
僧侶「違う…違います!」
勇者「!?」
僧侶「私は…貴方とは違う!いたずらに人のちんぽをミキシングしたりは!しない!たとえ呪われた身であっても!私は僧侶です…みんなを癒す…光の存在でありたい!」
パァァ…
きんたまオーク「そ、僧侶が光った…金色に光った…?」
勇者「僧侶…そうか、君は…」
僧侶「私は…私です…癒しの担い手…僧侶です!」
ブワァァァァッ!
僧侶「癒しの光を…」
僧侶「は~な~ち~ま~…」
ギュワン!
僧侶「す―――!」
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/11(日) 16:30:10 ID:YFGyZnV6
ずびびびび!
きんたまオーク「うわぁぁぁ!光の球がこっちに来る!?」
勇者「これは癒しを魔法エネルギーに変換した光の球…当たれば蒸発し即死にちがいな…」
じゅわっ
僧侶「…」
きんたまオーク「うわぁぁぁ!光の球がこっちに来る!?」
勇者「これは癒しを魔法エネルギーに変換した光の球…当たれば蒸発し即死にちがいな…」
じゅわっ
僧侶「…」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/11(日) 16:36:40 ID:YFGyZnV6
こうして
勇者ときんたまオークは蒸発した。
僧侶「まさか…癒しの力がこんな事を引き起こすとは…」
ガクッ
僧侶「何故…私はただ…みんなを癒して…みんなの太陽に…なりたかった…だけなのに…」
僧侶「呪われた私に、そんな願いは叶わないというのなら…私はっ…!」
ククッ
僧侶「そうよ…それが神様の思し召しというなら…やりましょう…今日から私は…肉棒狩り…」
勇者ときんたまオークは蒸発した。
僧侶「まさか…癒しの力がこんな事を引き起こすとは…」
ガクッ
僧侶「何故…私はただ…みんなを癒して…みんなの太陽に…なりたかった…だけなのに…」
僧侶「呪われた私に、そんな願いは叶わないというのなら…私はっ…!」
ククッ
僧侶「そうよ…それが神様の思し召しというなら…やりましょう…今日から私は…肉棒狩り…」
49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/11(日) 16:40:09 ID:YFGyZnV6
僧侶「肉棒狩り…この世のちんぽを…ミンチにし尽くすまで、私はっ…止まらない…!」
僧侶「この意志は…固い…スルメイカより、固いですよ…フフッ…フ…あはっ、あはははははは!」
こうして
恐るべき狩人が誕生したのだった…
【完】
僧侶「この意志は…固い…スルメイカより、固いですよ…フフッ…フ…あはっ、あはははははは!」
こうして
恐るべき狩人が誕生したのだった…
【完】
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/12(月) 06:18:46 ID:jBfbCo6Q
哀しい…事件だったね…
乙
乙
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1496331161/
Entry ⇒ 2018.02.05 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
僧侶「毒手を極めましたよ」
1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/17(土) 01:39:15 ID:FIveCv0M
僧侶「毎日毒虫の入った壷に手を突っ込んでたら極まりました」
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/17(土) 01:43:45 ID:FIveCv0M
勇者「何してんだァ…お前は俺らのパーティー唯一の回復役だろうが!」
僧侶「そう言われましても極まったものはしょうがないですよ」
勇者「どこかズレてる奴だとは思っていたが…ここまでとはな…」
僧侶「私の突拍子もない行動にしびれました?」
勇者「毒だけにね」
僧侶「そう言われましても極まったものはしょうがないですよ」
勇者「どこかズレてる奴だとは思っていたが…ここまでとはな…」
僧侶「私の突拍子もない行動にしびれました?」
勇者「毒だけにね」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/17(土) 07:00:21 ID:FIveCv0M
僧侶「…」
サワリ
勇者「ちょ」
ジワッ
勇者「あ゛あ゛あ゛」
ビクンビクン
僧侶「あ、やっぱり効きますね」
勇者「あ゛あ゛あ゛」
僧侶「おっといけない、『キュア』!」
パァァ
勇者「あ゛あ゛あ゛…ふぅ」
サワリ
勇者「ちょ」
ジワッ
勇者「あ゛あ゛あ゛」
ビクンビクン
僧侶「あ、やっぱり効きますね」
勇者「あ゛あ゛あ゛」
僧侶「おっといけない、『キュア』!」
パァァ
勇者「あ゛あ゛あ゛…ふぅ」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/17(土) 21:16:51 ID:FIveCv0M
僧侶「うっかり毒殺してしまうところでしたHAHAHA!」
勇者「う、うっかりで勇者を殺す気か」
僧侶「ですからぁ、謝っているじゃあないですか!」
勇者「なんだよえらく強気だな…」
僧侶「そりゃそうですよ。今の私は全身兵器…触れただけでいかなる生命体も殺せる最強の兵器なんですから!」
勇者「う、うっかりで勇者を殺す気か」
僧侶「ですからぁ、謝っているじゃあないですか!」
勇者「なんだよえらく強気だな…」
僧侶「そりゃそうですよ。今の私は全身兵器…触れただけでいかなる生命体も殺せる最強の兵器なんですから!」
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/17(土) 21:21:20 ID:FIveCv0M
勇者「全身兵器ねぇ…」
ヅカヅカ
勇者「なら…ここは!どうなっているのかなァ!?」
ヌププッ
僧侶「!?」
ビリビリッ
勇者「うっ…痺れが…や、やはりな…下の口から毒よだれがダラダラしてやがる」
僧侶「う、嘘…私、毒よだれなんか…嫌…」
勇者「ふん、とんだ淫乱兵器だな!」
ヅカヅカ
勇者「なら…ここは!どうなっているのかなァ!?」
ヌププッ
僧侶「!?」
ビリビリッ
勇者「うっ…痺れが…や、やはりな…下の口から毒よだれがダラダラしてやがる」
僧侶「う、嘘…私、毒よだれなんか…嫌…」
勇者「ふん、とんだ淫乱兵器だな!」
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/18(日) 08:58:17 ID:YYOZwr5w
僧侶「くっ…」
勇者「どうした、毒よだれが乾いてきたぞ?」
僧侶「そ、そんなに毒よだれがお望みなら…お望みなら!」
グッ
僧侶「はぁぁぁ!」
勇者(下腹部に力を…なるほど、毒よだれはそうやって出すのか)
勇者「くきっ、くききっ…かつての俺がやった事とはいえ、悪趣味なものだ…」
僧侶「?」
僧侶「な、何を言って…」
勇者「どうした、毒よだれが乾いてきたぞ?」
僧侶「そ、そんなに毒よだれがお望みなら…お望みなら!」
グッ
僧侶「はぁぁぁ!」
勇者(下腹部に力を…なるほど、毒よだれはそうやって出すのか)
勇者「くきっ、くききっ…かつての俺がやった事とはいえ、悪趣味なものだ…」
僧侶「?」
僧侶「な、何を言って…」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/18(日) 09:02:21 ID:YYOZwr5w
勇者「知らなくていい…今はまだ、な…だがいずれ…いや、あるいは…」
クニュッ
僧侶「んっ…」
ジワッ
勇者「兵器は兵器らしく…毒を出していればいい!」
勇者(そう、兵器…お前らは造られた兵器。俺の為に存在しておればいいのだ!)
クニュッ
僧侶「んっ…」
ジワッ
勇者「兵器は兵器らしく…毒を出していればいい!」
勇者(そう、兵器…お前らは造られた兵器。俺の為に存在しておればいいのだ!)
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/18(日) 09:04:59 ID:YYOZwr5w
僧侶「んっ、くぅ…」
ボヤァ
僧侶「か、快楽で意識が…」
勇者「そうかい、なら」
クニュックニュッ ズボンヌ!
クニュックニュッ サマンサ!
ンーーー
モッサン! ゴッサン!
僧侶「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
ボヤァ
僧侶「か、快楽で意識が…」
勇者「そうかい、なら」
クニュックニュッ ズボンヌ!
クニュックニュッ サマンサ!
ンーーー
モッサン! ゴッサン!
僧侶「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/18(日) 09:06:58 ID:YYOZwr5w
グッタリ
僧侶「…」
ドババババ
勇者「よし、大量の毒よだれが下の口から溢れてきたぞ」
僧侶「…」
キィン…
僧侶「っ!?」
キィン…キィン…
僧侶「頭が…ぐぁっ、意識…がっ…記憶…情報…わ、私は…」
僧侶「…」
ドババババ
勇者「よし、大量の毒よだれが下の口から溢れてきたぞ」
僧侶「…」
キィン…
僧侶「っ!?」
キィン…キィン…
僧侶「頭が…ぐぁっ、意識…がっ…記憶…情報…わ、私は…」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/18(日) 09:19:06 ID:YYOZwr5w
僧侶「これは…私の脳内に…いいえ、これは…外部記憶装置…『クロノ』へのアクセス…」
ハッ
僧侶「私、今何を…」
勇者「どうやら少しづつ思い出してきたようだな僧侶…いや、毒物製造人型兵器…『パイソン』!」
ハッ
僧侶「私、今何を…」
勇者「どうやら少しづつ思い出してきたようだな僧侶…いや、毒物製造人型兵器…『パイソン』!」
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/19(月) 19:56:17 ID:LDMfe/PM
キィン…
《クロノ起動》
《ナウローディング…》
《サーバー085のファイルを展開》
《検索結果:毒物製造人型兵器パイソン、擬態名は僧侶》
《体内に毒を精製するプラントを有している。主に廃棄物から毒物を製造する事を目的とする》
《クロノ起動》
《ナウローディング…》
《サーバー085のファイルを展開》
《検索結果:毒物製造人型兵器パイソン、擬態名は僧侶》
《体内に毒を精製するプラントを有している。主に廃棄物から毒物を製造する事を目的とする》
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/19(月) 19:59:59 ID:LDMfe/PM
ザザッ
《警告。貴方にこれ以上の情報閲覧権限はありません》
《すみやかに検索履歴を消去しクロノとの接続を解除して下さい》
《30秒後に強制切断します。その場合貴方の補助記憶装置が破損する恐れがあります》
《繰り返します、すみやかに検索履歴を…》
《警告。貴方にこれ以上の情報閲覧権限はありません》
《すみやかに検索履歴を消去しクロノとの接続を解除して下さい》
《30秒後に強制切断します。その場合貴方の補助記憶装置が破損する恐れがあります》
《繰り返します、すみやかに検索履歴を…》
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/20(火) 08:30:47 ID:NoIoHAIE
キィン…
ぶつん!
僧侶「っ!」
僧侶「い、今のは…脳内に情報が溢れて…」
勇者「どうやらクロノへアクセスしたようだな。だがあまりお勧めできんなそれは」
僧侶「勇者様…貴方は一体…一体何を知って…?」
勇者「知っている…知っていた…知っている者の一人…さぁて、どう言えばいいものやら…」
僧侶「はぐらかすのは無しです。教えて下さい…私は…私は何者なんですか…?」
勇者「何者…それを知ってなお、君は今の自分で…僧侶でいられるかい?」
僧侶「え…」
勇者「覚悟があるかと訊いている!ただ知りたいという欲求だけで触れてはいけないものがある」
勇者「今一度問う、君は自分が自分でいられるか!?」
ぶつん!
僧侶「っ!」
僧侶「い、今のは…脳内に情報が溢れて…」
勇者「どうやらクロノへアクセスしたようだな。だがあまりお勧めできんなそれは」
僧侶「勇者様…貴方は一体…一体何を知って…?」
勇者「知っている…知っていた…知っている者の一人…さぁて、どう言えばいいものやら…」
僧侶「はぐらかすのは無しです。教えて下さい…私は…私は何者なんですか…?」
勇者「何者…それを知ってなお、君は今の自分で…僧侶でいられるかい?」
僧侶「え…」
勇者「覚悟があるかと訊いている!ただ知りたいという欲求だけで触れてはいけないものがある」
勇者「今一度問う、君は自分が自分でいられるか!?」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/21(水) 06:07:05 ID:K2u/Y2fw
僧侶「そ、そんな事…わからない…私は…私は何なの!?」
勇者「…」
僧侶「ふふ…さぞかし…さぞかし滑稽なのでしょうね?こうやって苦しみのたまうさまは!」
勇者「僧侶…」
スッ
僧侶「っ!触らないで!ドントタッチミーーー!ドント!ドント!はぁぁぁぁぁ!」
ビクンビクンビクン
チョロロロロ…
勇者「このチョロチョロ音…失禁、した…のか…」
これぞまことのチョロイン。
勇者「…」
僧侶「ふふ…さぞかし…さぞかし滑稽なのでしょうね?こうやって苦しみのたまうさまは!」
勇者「僧侶…」
スッ
僧侶「っ!触らないで!ドントタッチミーーー!ドント!ドント!はぁぁぁぁぁ!」
ビクンビクンビクン
チョロロロロ…
勇者「このチョロチョロ音…失禁、した…のか…」
これぞまことのチョロイン。
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/23(金) 12:26:25 ID:pdSctMFo
勇者「…」
僧侶「…よ」
勇者「?」
僧侶「笑いなさいよ…笑えばいいじゃないですか!こんな私を…自分が何者かも分からない私を!」
ジョバババババ
勇者「や、止めろ僧侶!そんなに興奮しては尿力が…」
僧侶「…よ」
勇者「?」
僧侶「笑いなさいよ…笑えばいいじゃないですか!こんな私を…自分が何者かも分からない私を!」
ジョバババババ
勇者「や、止めろ僧侶!そんなに興奮しては尿力が…」
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/23(金) 12:28:52 ID:pdSctMFo
ジョバババババ
ジョバンニ…
カ ン パ ネ ル ラ !
勇者「こ、これは…これでは!まるで!」
ジョバンニ…
カ ン パ ネ ル ラ !
勇者「こ、これは…これでは!まるで!」
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/23(金) 12:35:15 ID:pdSctMFo
その瞬間
ある国では王が死に
ある星では大地が割れ空が落ちてきた。
またある銀河はその活動を停止し
ある次元では生きとし生ける者すべてが死に絶えた。
そう
あらゆる負のエネルギーが溢れ出したのだ。
ある国では王が死に
ある星では大地が割れ空が落ちてきた。
またある銀河はその活動を停止し
ある次元では生きとし生ける者すべてが死に絶えた。
そう
あらゆる負のエネルギーが溢れ出したのだ。
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/25(日) 21:27:04 ID:Ftt7jw2s
あらゆる次元の神々が
創造主が
混沌たる破壊者が
未来を切り開く希望が
ひとつ所に収束し
――はじけた――
やがてすべては【ひとつ】に
再構築された。
その様子を
もはや何者でも無く何者でもある
勇者と僧侶『だったもの』が
静かに眺めていた。
創造主が
混沌たる破壊者が
未来を切り開く希望が
ひとつ所に収束し
――はじけた――
やがてすべては【ひとつ】に
再構築された。
その様子を
もはや何者でも無く何者でもある
勇者と僧侶『だったもの』が
静かに眺めていた。
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/25(日) 21:29:43 ID:Ftt7jw2s
?「あぁ…光が…」
?「はい、ひとつに…一なる所に…」
?「行こう…俺達は…また…始まる…始まる事ができる…」
?「はい、永久に共に…」
シュワァァァ…
【完】
?「はい、ひとつに…一なる所に…」
?「行こう…俺達は…また…始まる…始まる事ができる…」
?「はい、永久に共に…」
シュワァァァ…
【完】
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/06/26(月) 12:16:21 ID:eAPbnzOU
ビックバーン
乙
乙
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1497631155/
Entry ⇒ 2017.12.05 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
勇者「細かすぎて伝わらないモノマネ大会!」魔王「楽しみだな」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:31:59.50 ID:Wt+MaI5+o
勇者「こないだこの世界に飛ばされてきた芸人とやらがやってた」
勇者「≪細かすぎて伝わらないモノマネ≫というものがこの世界でも大流行!」
魔王「ならいっそ大会でも開いてみるか、と誰かがいったら本当にやることになってしまった」
勇者「今回は6組の参加者が登場するらしいが、ワクワクしてきたよ」
魔王「ああ、楽しみだな」
勇者「それじゃ、最初の方、どうぞ!」
勇者「≪細かすぎて伝わらないモノマネ≫というものがこの世界でも大流行!」
魔王「ならいっそ大会でも開いてみるか、と誰かがいったら本当にやることになってしまった」
勇者「今回は6組の参加者が登場するらしいが、ワクワクしてきたよ」
魔王「ああ、楽しみだな」
勇者「それじゃ、最初の方、どうぞ!」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:34:42.15 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデン!
村娘「え~……≪たまには違うことを言いたくなった村人≫」
村娘「ここは○○の村です」
村娘「ここは○○の村です」
村娘「ここは……○○の村です」
ガシャン!!!
村娘「え~……≪たまには違うことを言いたくなった村人≫」
村娘「ここは○○の村です」
村娘「ここは○○の村です」
村娘「ここは……○○の村です」
ガシャン!!!
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:37:31.38 ID:Wt+MaI5+o
ハハハハハハ… アハハハハハ…
勇者「ちょっと迷ってたね」
魔王「迷ってたな」
勇者「でも、ちゃんと『○○の村です』をいったのは偉いと思う」
魔王「プロ根性だな」
魔王「ああいう人はたまにいるのか?」
勇者「うん、冒険の時感じる時はあった。あ、今この人違うこと言おうとしたなって」
魔王「あるのか~」
勇者「そりゃいつも同じこといってりゃ、違うこと言いたくなるって」
勇者「じゃあ、続いての方、どうぞ!」
勇者「ちょっと迷ってたね」
魔王「迷ってたな」
勇者「でも、ちゃんと『○○の村です』をいったのは偉いと思う」
魔王「プロ根性だな」
魔王「ああいう人はたまにいるのか?」
勇者「うん、冒険の時感じる時はあった。あ、今この人違うこと言おうとしたなって」
魔王「あるのか~」
勇者「そりゃいつも同じこといってりゃ、違うこと言いたくなるって」
勇者「じゃあ、続いての方、どうぞ!」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:40:18.77 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデン!
騎士「≪演習の時の騎士団長≫」
騎士「ではこれより、竜神の型を行う! しっかりついてくるように!」
騎士「始めぇーっ!」
騎士「イェアーッ!」ブンッ
騎士「イヤァァァーアァァァッ!!」ブオンッ
騎士「イィアァァァァァッ!!!」ブオンッ
騎士「あ、ごめん、間違えた」
ガシャン!!!
騎士「≪演習の時の騎士団長≫」
騎士「ではこれより、竜神の型を行う! しっかりついてくるように!」
騎士「始めぇーっ!」
騎士「イェアーッ!」ブンッ
騎士「イヤァァァーアァァァッ!!」ブオンッ
騎士「イィアァァァァァッ!!!」ブオンッ
騎士「あ、ごめん、間違えた」
ガシャン!!!
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:43:30.20 ID:Wt+MaI5+o
ハハハハハハ… アハハハハハ…
勇者「間違えちゃったかー」
魔王「でもちゃんと間違いを認めるのは偉いと思う」
魔王「普通ならごまかしちゃうだろうし、なかなかできることではないぞ」
勇者「うん、だからこそ騎士団長まで出世できたんだろうな」
魔王「自分の間違いを素直に認めるってのは、上に立つ者に必須のスキルだよ」
魔王「ワシも見習わないと……」
勇者「続いての方、どうぞ!」
勇者「間違えちゃったかー」
魔王「でもちゃんと間違いを認めるのは偉いと思う」
魔王「普通ならごまかしちゃうだろうし、なかなかできることではないぞ」
勇者「うん、だからこそ騎士団長まで出世できたんだろうな」
魔王「自分の間違いを素直に認めるってのは、上に立つ者に必須のスキルだよ」
魔王「ワシも見習わないと……」
勇者「続いての方、どうぞ!」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:46:24.89 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデデン!
スライム「え~……≪魔王様に作戦を進言するも、採用されなかった時の側近様≫」
ゴブリン「……」
スライム「魔王様」
ゴブリン「なんだ?」
スライム「勇者パーティーはついに悪魔の塔をも攻略した模様です」
ゴブリン「ふむ」
スライム「ここはゴーレム軍団とゴースト軍団で挟みうちにするというのはいかがでしょう?」
スライム「名づけてゴーゴー作戦!」
ゴブリン「いや、そんな手で勇者を倒せるとは思えん。却下する」
スライム「はっ、かしこまりました!」
スライム「……チッ」
ガシャン!!!
スライム「え~……≪魔王様に作戦を進言するも、採用されなかった時の側近様≫」
ゴブリン「……」
スライム「魔王様」
ゴブリン「なんだ?」
スライム「勇者パーティーはついに悪魔の塔をも攻略した模様です」
ゴブリン「ふむ」
スライム「ここはゴーレム軍団とゴースト軍団で挟みうちにするというのはいかがでしょう?」
スライム「名づけてゴーゴー作戦!」
ゴブリン「いや、そんな手で勇者を倒せるとは思えん。却下する」
スライム「はっ、かしこまりました!」
スライム「……チッ」
ガシャン!!!
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:49:11.73 ID:Wt+MaI5+o
ハハハハハハハ…! アハハハハハハハ…!
勇者「ハハハ……」
魔王「ガハハハ……」
魔王「そうなんだよ、舌打ちすんだよアイツ。聞こえてないとでも思ってんのかね」
勇者「案外聞こえるようにやってんじゃない? 怒られないギリギリのボリュームで」
魔王「今度、アイツとはじっくり話し合う必要がありそうだな」
ハハハハハ…
勇者「では続いての方、どうぞ!」
勇者「ハハハ……」
魔王「ガハハハ……」
魔王「そうなんだよ、舌打ちすんだよアイツ。聞こえてないとでも思ってんのかね」
勇者「案外聞こえるようにやってんじゃない? 怒られないギリギリのボリュームで」
魔王「今度、アイツとはじっくり話し合う必要がありそうだな」
ハハハハハ…
勇者「では続いての方、どうぞ!」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:51:19.55 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデン!
オーク「≪オレに追い詰められた時の女騎士≫」
オーク「くっ、殺せ!」
ガシャン!!!
オーク「≪オレに追い詰められた時の女騎士≫」
オーク「くっ、殺せ!」
ガシャン!!!
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:54:31.15 ID:Wt+MaI5+o
アハハハハハハ…! ハッハッハッハッハ…!
勇者「アハハハハ……!」
魔王「ガハハハハ……!」
勇者「いやぁ~、もはや伝統芸だな」
魔王「うむ、歴史の重みを感じる」
勇者「シンプルイズベストだね」
魔王「まぁ、細かすぎて伝わらないモノマネって趣旨とはちょっとズレてるけどな」
勇者「伝わりまくってるよね」
勇者「では続いての方!」
勇者「アハハハハ……!」
魔王「ガハハハハ……!」
勇者「いやぁ~、もはや伝統芸だな」
魔王「うむ、歴史の重みを感じる」
勇者「シンプルイズベストだね」
魔王「まぁ、細かすぎて伝わらないモノマネって趣旨とはちょっとズレてるけどな」
勇者「伝わりまくってるよね」
勇者「では続いての方!」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 22:57:03.72 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデン!
スケルトン「え~……≪火を吐いたけどちょっと熱かったドラゴン≫」
スケルトン「ゴォォォォォッ!」
スケルトン「ゴォォォォォォォォッ!」
スケルトン「……アチッ」
ガシャン!!!
スケルトン「え~……≪火を吐いたけどちょっと熱かったドラゴン≫」
スケルトン「ゴォォォォォッ!」
スケルトン「ゴォォォォォォォォッ!」
スケルトン「……アチッ」
ガシャン!!!
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:00:28.95 ID:Wt+MaI5+o
ハハハハハハ… アハハハハハ…
勇者「そりゃ熱いよな。いつも思ってたもん」
魔王「うん、熱い」
魔王「ワシも火は吐けるが、加減間違えるとヤケドしたり口内炎になるからな」
勇者「ハハハ、なるんだ~」
アノー…
勇者「……え、なに? スケルトンが落ちた拍子に砕けた?」
勇者「だから落下するのはやめとけっていったのに。無茶しやがって」
魔王「まあ、組み立てれば元に戻るから心配あるまい」
勇者「じゃあラストの方、どうぞ!」
勇者「そりゃ熱いよな。いつも思ってたもん」
魔王「うん、熱い」
魔王「ワシも火は吐けるが、加減間違えるとヤケドしたり口内炎になるからな」
勇者「ハハハ、なるんだ~」
アノー…
勇者「……え、なに? スケルトンが落ちた拍子に砕けた?」
勇者「だから落下するのはやめとけっていったのに。無茶しやがって」
魔王「まあ、組み立てれば元に戻るから心配あるまい」
勇者「じゃあラストの方、どうぞ!」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:03:50.77 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデン!
戦士「≪ちょっとピンチな時の勇者≫」
戦士「ちっ……やるな! みんな、これぐらいでくじけるな!」
戦士「続きまして、≪かなりピンチな時の勇者≫」
戦士「ぐっ! みんな、諦めるな! 諦めなければ、絶対にチャンスはやってくる!」
戦士「続きまして、≪ものすごくピンチな時の勇者≫」
戦士「ぐあっ……くっ……ううっ……! ぐ、ぐぐっ……!」
戦士「カエリテェ……」
ガシャン!!!
戦士「≪ちょっとピンチな時の勇者≫」
戦士「ちっ……やるな! みんな、これぐらいでくじけるな!」
戦士「続きまして、≪かなりピンチな時の勇者≫」
戦士「ぐっ! みんな、諦めるな! 諦めなければ、絶対にチャンスはやってくる!」
戦士「続きまして、≪ものすごくピンチな時の勇者≫」
戦士「ぐあっ……くっ……ううっ……! ぐ、ぐぐっ……!」
戦士「カエリテェ……」
ガシャン!!!
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:06:27.09 ID:Wt+MaI5+o
アハハハハハハ…! ハハハハハハ…!
魔王「ガハハハハハハハハ……!」
勇者「ふふふっ、ふふっ……!」
魔王「弱音出ちゃったな」
勇者「アイツもよく見てるな~」
魔王「ワシと戦ってる時もボソボソなんかつぶやいてたけど、こういう感じだった?」
勇者「うん、こんな感じだった。帰りてぇ~って感じだった」
魔王「まぁ、勇者だって人間だ。弱音吐く時だってあるだろう」
勇者「うんうん、しょうがない」
魔王「ガハハハハハハハハ……!」
勇者「ふふふっ、ふふっ……!」
魔王「弱音出ちゃったな」
勇者「アイツもよく見てるな~」
魔王「ワシと戦ってる時もボソボソなんかつぶやいてたけど、こういう感じだった?」
勇者「うん、こんな感じだった。帰りてぇ~って感じだった」
魔王「まぁ、勇者だって人間だ。弱音吐く時だってあるだろう」
勇者「うんうん、しょうがない」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:09:13.84 ID:Wt+MaI5+o
勇者「これで全部終わったか。いやぁ~、面白かった!」
魔王「うむ、どれもよくできてた」
勇者「個人的にはどれが一番好きだった?」
魔王「騎士団長かな。ワシもあれは見習わなければならん。お前は?」
勇者「う~ん、悩むな。あえて選ぶなら側近のやつが一番好きかな」
魔王「側近とは、本当に話し合わねばならんな」
ハハハ…
勇者「じゃあ最後に、俺たちもやるか!」
魔王「そうだな!」
魔王「うむ、どれもよくできてた」
勇者「個人的にはどれが一番好きだった?」
魔王「騎士団長かな。ワシもあれは見習わなければならん。お前は?」
勇者「う~ん、悩むな。あえて選ぶなら側近のやつが一番好きかな」
魔王「側近とは、本当に話し合わねばならんな」
ハハハ…
勇者「じゃあ最後に、俺たちもやるか!」
魔王「そうだな!」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:12:19.85 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデン!
魔王「え~……≪ワシにさらわれてた時の姫≫」
魔王「魔王!」
魔王「ちょっと魔王!」
魔王「あたしを拉致しといて、新聞ぐらいないの? え、ある?」
魔王「こんなのやだ! あたしが読みたいのはね……スポーツ新聞!」
ガシャン!!!
アハハハハハ… ハハハハハ…
魔王「え~……≪ワシにさらわれてた時の姫≫」
魔王「魔王!」
魔王「ちょっと魔王!」
魔王「あたしを拉致しといて、新聞ぐらいないの? え、ある?」
魔王「こんなのやだ! あたしが読みたいのはね……スポーツ新聞!」
ガシャン!!!
アハハハハハ… ハハハハハ…
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:15:26.29 ID:Wt+MaI5+o
デデデデデデデデデン!
勇者「え~……≪俺と出会ったばかりの頃の姫≫」
勇者「勇者様……わたくし、あなたを愛しております」
勇者「わたくし、あなたのためならこの命を捧げられます!」ウルウル…
勇者「続きまして、≪俺と結ばれた後の姫≫」
勇者「勇者ぁ~……あたしお腹すいちゃった~」
勇者「ちょっと軽くつまめるもん作ってくんない?」
勇者「早く!!!」
ガシャン!!!
勇者「え~……≪俺と出会ったばかりの頃の姫≫」
勇者「勇者様……わたくし、あなたを愛しております」
勇者「わたくし、あなたのためならこの命を捧げられます!」ウルウル…
勇者「続きまして、≪俺と結ばれた後の姫≫」
勇者「勇者ぁ~……あたしお腹すいちゃった~」
勇者「ちょっと軽くつまめるもん作ってくんない?」
勇者「早く!!!」
ガシャン!!!
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:18:21.45 ID:Wt+MaI5+o
アハハハハハハ…! ハハハハハハ…!
魔王「お互い、あの姫には苦労させられてるようだな」
勇者「ああ、もう完全に尻に敷かれてるよ」
魔王「ちなみに、軽くつまめるものって何作るの?」
勇者「サンドイッチ作るよ。玉子サンドとか」
ハハハハハハ… ハハハハハ…
勇者「結婚は人生の墓場っていうけど、マジだねぇ~」
魔王「うんうん、ワシも姫をさらった時はワガママすぎて扱いに困ったもんだ」
勇者「女って怖いよなぁ」
魔王「うん、怖い怖い」
シーン…
勇者「ん?」
魔王「なんで笑い声がなくなったんだ? みんなどうした?」
魔王「お互い、あの姫には苦労させられてるようだな」
勇者「ああ、もう完全に尻に敷かれてるよ」
魔王「ちなみに、軽くつまめるものって何作るの?」
勇者「サンドイッチ作るよ。玉子サンドとか」
ハハハハハハ… ハハハハハ…
勇者「結婚は人生の墓場っていうけど、マジだねぇ~」
魔王「うんうん、ワシも姫をさらった時はワガママすぎて扱いに困ったもんだ」
勇者「女って怖いよなぁ」
魔王「うん、怖い怖い」
シーン…
勇者「ん?」
魔王「なんで笑い声がなくなったんだ? みんなどうした?」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:21:55.98 ID:Wt+MaI5+o
姫「二人とも……何やってんの?」ゴゴゴゴゴ…
勇者「ヒッ!?」
魔王「ゲェ!?」
姫「細かすぎて伝わらないモノマネか……ずいぶん楽しいことしてたようね」
勇者「いや、違う! 違うんだ!」
魔王「これはただのお遊び企画で……」
姫「じゃああたしも一つ披露しようかしら」
姫「え~……≪勇者と魔王をボコボコにする姫≫」パキポキ…
勇者&魔王「いやぁぁぁ! 鋭すぎる殺気が伝わりまくってくるぅぅぅぅぅぅ!!!」
―おわり―
勇者「ヒッ!?」
魔王「ゲェ!?」
姫「細かすぎて伝わらないモノマネか……ずいぶん楽しいことしてたようね」
勇者「いや、違う! 違うんだ!」
魔王「これはただのお遊び企画で……」
姫「じゃああたしも一つ披露しようかしら」
姫「え~……≪勇者と魔王をボコボコにする姫≫」パキポキ…
勇者&魔王「いやぁぁぁ! 鋭すぎる殺気が伝わりまくってくるぅぅぅぅぅぅ!!!」
―おわり―
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/22(水) 23:26:18.87 ID:mAzaA+LR0
乙
雰囲気出てたわ
雰囲気出てたわ
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511357519/
Entry ⇒ 2017.12.04 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
勇者(29)「何!?合コンだと!!!!???」男魔法使い(31)「ああ」男戦士(21)
1: ◆6CRtwRkZPabv 2017/04/22(土) 17:48:02.53 ID:wY8oOhd+0
勇者「いつだ!?相手は!?俺のロマンスは!?」
魔法使い「とにかく落ち着け…」
勇者「いいやっ!落ち着けないね…!勇者になればモテると思い14年…!」
魔法使い「ああ…お前の気持ちは痛いほどよくわかる」
男戦士(18)(そんなに昔から冒険してたんだ…)
女僧侶(17)(というかそんな不埒な目的で勇者してたんすか…)
勇者「長く、苦しい旅が続いた…」
戦士「勇者さん…」
勇者「…昔いた戦士と僧侶はデキ婚でいなくなったり、部屋割りが男2人だったり、隣の部屋から…」
戦士「そういう苦しさですか!?」
僧侶「だから私たちを新しく加入させたんすね…」
魔法使い「…とにかく、ここからは大人の世界だぜベイベー」
戦士「ベイベーじゃないですよ。というかパーティの予算勝手に使い込まないでください」
勇者「大丈夫だ。少しずつためたへそくり×2がある!買い物のおつりとかのな!」
僧侶「子どもっすか!?というか道理で買い出しによく言ってくれると思ったら…!」
勇者「ふっ…1皮むけた男になって帰ってくるぜ…!」
魔法使い「君たちも焦らないように…くくっ」
僧侶「それセクハラっすよ」
魔法使い「とにかく落ち着け…」
勇者「いいやっ!落ち着けないね…!勇者になればモテると思い14年…!」
魔法使い「ああ…お前の気持ちは痛いほどよくわかる」
男戦士(18)(そんなに昔から冒険してたんだ…)
女僧侶(17)(というかそんな不埒な目的で勇者してたんすか…)
勇者「長く、苦しい旅が続いた…」
戦士「勇者さん…」
勇者「…昔いた戦士と僧侶はデキ婚でいなくなったり、部屋割りが男2人だったり、隣の部屋から…」
戦士「そういう苦しさですか!?」
僧侶「だから私たちを新しく加入させたんすね…」
魔法使い「…とにかく、ここからは大人の世界だぜベイベー」
戦士「ベイベーじゃないですよ。というかパーティの予算勝手に使い込まないでください」
勇者「大丈夫だ。少しずつためたへそくり×2がある!買い物のおつりとかのな!」
僧侶「子どもっすか!?というか道理で買い出しによく言ってくれると思ったら…!」
勇者「ふっ…1皮むけた男になって帰ってくるぜ…!」
魔法使い「君たちも焦らないように…くくっ」
僧侶「それセクハラっすよ」
2: ◆6CRtwRkZPabv 2017/04/22(土) 17:53:48.24 ID:wY8oOhd+0
戦士「…一応聞きますけど、どこでやるんです」
魔法使い「オイオイ男の嫉妬は見苦しいぜベイベー」
戦士「ベイベーじゃないです。もし何かあったら呼びに行きますから」
僧侶「不本意っすけど」
魔法使い「隣町の酒場で、決戦を行う。…時間としては、あと2時間くらいだな」
勇者「おしゃれ、していくか」
魔法使い「ああ」
戦士「…うまくいくのかな」
僧侶「ムリっすね…。というか仮にも勇者とその1番の相棒の魔法使いっすよ?それが今まで女の影ゼロだったのに、1回の合コンで全部うまくいこうだなんて虫が良すぎる話っす」
魔法使い「それでは留守番を頼んだぜベイベー」
戦士「うるせえ…というかもう行って来ればいいですよ?」
僧侶「がんばってくださいねー」(棒)
男戦士(●21)「」
魔法使い「オイオイ男の嫉妬は見苦しいぜベイベー」
戦士「ベイベーじゃないです。もし何かあったら呼びに行きますから」
僧侶「不本意っすけど」
魔法使い「隣町の酒場で、決戦を行う。…時間としては、あと2時間くらいだな」
勇者「おしゃれ、していくか」
魔法使い「ああ」
戦士「…うまくいくのかな」
僧侶「ムリっすね…。というか仮にも勇者とその1番の相棒の魔法使いっすよ?それが今まで女の影ゼロだったのに、1回の合コンで全部うまくいこうだなんて虫が良すぎる話っす」
魔法使い「それでは留守番を頼んだぜベイベー」
戦士「うるせえ…というかもう行って来ればいいですよ?」
僧侶「がんばってくださいねー」(棒)
男戦士(●21)「」
3: ◆6CRtwRkZPabv 2017/04/22(土) 18:02:37.21 ID:wY8oOhd+0
【隣町の酒場】
勇者「ついたぁ」
魔法使い「ああ。きっと空の上であいつらも見守ってくれているはずだぜ…」
チャラ男「あ、あんたら勇者と魔法使いっすか?」
勇者「ああ」
魔法使い「君は?」
チャラ男「俺っちは、今回の合コンの主催者なんすよ!これで男は全員すね」
勇者「遅くてすまないな」
チャラ男「いっすよ!まだ女の子とたち来てねーんで!」
大地の四天王「チャラ男さん、こっちです!」
風の四天王「…」
チャラ男「すまねっす!いま2人ご入店!」
チャラ男・大地の四天王「「ウェーーーイ!!」」
風の四天王「…!」
勇者「うわ…」
魔法使い「私の席はここですかね?」
大地の四天王「いいっすよー!」
チャラ男「からのー?」
勇者「…まさか、こんなところで会うなんてな」
風の四天王「…ああ。だが、今は争うときではない」
勇者「お前…!あれだけのことをしておいて…!」
風の四天王「…それは、こちらのセリフだ…!」
魔法使い「それで今回の子マジかわ?」
大地の四天王「まじカワっすよ?」
チャラ男「盛り上がっていきましょー?」
魔法使い・大地の四天王・チャラ男「ウェーイ!!」
勇者・風の四天王((うるせぇ…))
勇者「ついたぁ」
魔法使い「ああ。きっと空の上であいつらも見守ってくれているはずだぜ…」
チャラ男「あ、あんたら勇者と魔法使いっすか?」
勇者「ああ」
魔法使い「君は?」
チャラ男「俺っちは、今回の合コンの主催者なんすよ!これで男は全員すね」
勇者「遅くてすまないな」
チャラ男「いっすよ!まだ女の子とたち来てねーんで!」
大地の四天王「チャラ男さん、こっちです!」
風の四天王「…」
チャラ男「すまねっす!いま2人ご入店!」
チャラ男・大地の四天王「「ウェーーーイ!!」」
風の四天王「…!」
勇者「うわ…」
魔法使い「私の席はここですかね?」
大地の四天王「いいっすよー!」
チャラ男「からのー?」
勇者「…まさか、こんなところで会うなんてな」
風の四天王「…ああ。だが、今は争うときではない」
勇者「お前…!あれだけのことをしておいて…!」
風の四天王「…それは、こちらのセリフだ…!」
魔法使い「それで今回の子マジかわ?」
大地の四天王「まじカワっすよ?」
チャラ男「盛り上がっていきましょー?」
魔法使い・大地の四天王・チャラ男「ウェーイ!!」
勇者・風の四天王((うるせぇ…))
4: ◆6CRtwRkZPabv 2017/04/22(土) 18:08:34.12 ID:wY8oOhd+0
(カランカラン)
チャラ男「お?来ちゃいましたか女の子たち?」
大地の四天王「来ちゃいましたねー?」
魔法使い「マジうれしー!」
水の四天王「あ、こんばんわー」
火の四天王「今日はよろしく頼む」
魔王「…」
ギャル「こんちわーっす!ガンガン飲むんでお願いしまーす!」
清楚系「本日はよろしくお願いしますね」
勇者(清楚系かわいい)
風の四天王「ふっ…やはり、貴様を私は戦う運命にあるようだな…」
勇者「なん…だと…!?」
風の四天王「私の狙いも…清楚系ちゃんなのだよ」
勇者「貴様…!」
風の勇者「だが…これは合コンだ。…まさに魔物が支配する弱肉強食の世界」
勇者「…かもしれないな。だとしたら、俺は…それを超える!」
魔法使い「始めるぞ、そっちの2人」
チャラ男「話し込むんなら女の子にしましょーよ!くぁいい子5人勢ぞろいっすよ!」
大地の四天王「ウェーイ!」
チャラ男「お?来ちゃいましたか女の子たち?」
大地の四天王「来ちゃいましたねー?」
魔法使い「マジうれしー!」
水の四天王「あ、こんばんわー」
火の四天王「今日はよろしく頼む」
魔王「…」
ギャル「こんちわーっす!ガンガン飲むんでお願いしまーす!」
清楚系「本日はよろしくお願いしますね」
勇者(清楚系かわいい)
風の四天王「ふっ…やはり、貴様を私は戦う運命にあるようだな…」
勇者「なん…だと…!?」
風の四天王「私の狙いも…清楚系ちゃんなのだよ」
勇者「貴様…!」
風の勇者「だが…これは合コンだ。…まさに魔物が支配する弱肉強食の世界」
勇者「…かもしれないな。だとしたら、俺は…それを超える!」
魔法使い「始めるぞ、そっちの2人」
チャラ男「話し込むんなら女の子にしましょーよ!くぁいい子5人勢ぞろいっすよ!」
大地の四天王「ウェーイ!」
5: ◆6CRtwRkZPabv 2017/04/22(土) 18:16:05.65 ID:wY8oOhd+0
チャラ男「えー、主催者のチャラ男です。今日は来ていただきマジありがとうございまーす!」
大地の四天王・魔法使い「「ウェーイ!」」
チャラ男「それじゃまず自己紹介からしちゃいましょーか?」
魔法使い「魔法使いです。一応勇者のパーティやってます」
大地の四天王「大地の四天王です。魔王軍直属の四天王です」
勇者「…勇者です。魔法使いのパーティのリーダーです」
風の四天王「風の四天王だ。大地の四天王と同じ職場で働いている」
チャラ男「そんじゃ、女の子たちのパティーン?」
大地の四天王・魔法使い「「ウェーイ!」」
勇者(うるせえよ(31)ぁ!)
水の四天王「水の四天王です。そのお二人と同じ職場で仕事をさせてもらってます」
火の四天王「火の四天王だ。…3人と同じ、という事以外は特に語ることはないな…すまない」
ギャル「えーと、この酒場の娘のギャルでーす!オナシャス!」
清楚系「えっと…ギャルちゃんの友達の清楚系です。今日はよろしくおねがいします」
魔王「女魔王だ。…恥ずかしながら、魔王軍の長をさせてもらっている」
チャラ男「今日は飲みホなんで楽しんじゃましょー!」
勇者・風の四天王以外「うえーぃ!!」
勇者(あれ、四天王って宿敵じゃないのかな…)
風の四天王(ふん…そんな下らぬことに気を取られていては…死ぬぞ)
勇者(死ぬ!?)
大地の四天王・魔法使い「「ウェーイ!」」
チャラ男「それじゃまず自己紹介からしちゃいましょーか?」
魔法使い「魔法使いです。一応勇者のパーティやってます」
大地の四天王「大地の四天王です。魔王軍直属の四天王です」
勇者「…勇者です。魔法使いのパーティのリーダーです」
風の四天王「風の四天王だ。大地の四天王と同じ職場で働いている」
チャラ男「そんじゃ、女の子たちのパティーン?」
大地の四天王・魔法使い「「ウェーイ!」」
勇者(うるせえよ(31)ぁ!)
水の四天王「水の四天王です。そのお二人と同じ職場で仕事をさせてもらってます」
火の四天王「火の四天王だ。…3人と同じ、という事以外は特に語ることはないな…すまない」
ギャル「えーと、この酒場の娘のギャルでーす!オナシャス!」
清楚系「えっと…ギャルちゃんの友達の清楚系です。今日はよろしくおねがいします」
魔王「女魔王だ。…恥ずかしながら、魔王軍の長をさせてもらっている」
チャラ男「今日は飲みホなんで楽しんじゃましょー!」
勇者・風の四天王以外「うえーぃ!!」
勇者(あれ、四天王って宿敵じゃないのかな…)
風の四天王(ふん…そんな下らぬことに気を取られていては…死ぬぞ)
勇者(死ぬ!?)
6: ◆6CRtwRkZPabv 2017/04/22(土) 18:22:44.19 ID:wY8oOhd+0
チャラ男「いやー、清楚系ちゃんマジかわっすわー!」
大地の四天王「ほんとほんと!」
清楚系「そ、そうですか…?ありがとうございます」
ギャル「えー?あたしはー?」
大地の四天王「いやいや!まじカワっすよ!」
魔法使い「へぇー、魔法体系に関して研究なさってるんですねー」
水の四天王「そうなのー。なかなか結果が出なくて大変でねー?」
火の四天王「…」
女魔王「…」
風の四天王「…」
勇者「…」(気まずい…)
火の四天王「…サラダを取り分けようか?皿を貸してくれ」
勇者「あ、ああ」
風の四天王(!こいつ…取り分け方がうまい!まるで女子力の塊だ…!)
勇者(サラダはあんまり食べる気にならないが、3日何も食べていなかったかのように感じる!?)
風の四天王・勇者((こやつ…できる!))
火の四天王「魔王様も、どうぞ」
女魔王「いや、私は野菜苦手だから…」
勇者(子供か!?)
大地の四天王「ほんとほんと!」
清楚系「そ、そうですか…?ありがとうございます」
ギャル「えー?あたしはー?」
大地の四天王「いやいや!まじカワっすよ!」
魔法使い「へぇー、魔法体系に関して研究なさってるんですねー」
水の四天王「そうなのー。なかなか結果が出なくて大変でねー?」
火の四天王「…」
女魔王「…」
風の四天王「…」
勇者「…」(気まずい…)
火の四天王「…サラダを取り分けようか?皿を貸してくれ」
勇者「あ、ああ」
風の四天王(!こいつ…取り分け方がうまい!まるで女子力の塊だ…!)
勇者(サラダはあんまり食べる気にならないが、3日何も食べていなかったかのように感じる!?)
風の四天王・勇者((こやつ…できる!))
火の四天王「魔王様も、どうぞ」
女魔王「いや、私は野菜苦手だから…」
勇者(子供か!?)
8: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/22(土) 18:31:00.05 ID:wY8oOhd+0
酉間違えてたー…かな?
火の四天王「勇者とは、あの勇者か?」
勇者「あ、はい」
火の四天王「そうなのか…ここで宿敵と会いまみえるとは…」
風の四天王「ああ。これも運命だな」
火の四天王「いや、お前には聞いていない」
風の四天王「」
勇者「…まあ、魔王軍もかわいい子ばっかですし、いいんですけど」
女魔王「私は!?」
勇者「あー、かわいいです、はい」
勇者「でも、仮にも因縁ある相手との合コンてのは…」
火の四天王「…かもしれないな」
水の四天王「うふふ~酔っぱらっちゃったー…」
魔法使い「げへへ、それじゃあ私が介抱しますよー?」
勇者「…」
火の四天王「…」
勇者「…ああやって、分かり合える世界のほうが、いいのかもしれないな」
火の四天王「…だが、もう後戻りはできないだろう?お前も、私も」
勇者「…」
女魔王「肉系料理マダー?」
風の四天王「今注文します!」
火の四天王「勇者とは、あの勇者か?」
勇者「あ、はい」
火の四天王「そうなのか…ここで宿敵と会いまみえるとは…」
風の四天王「ああ。これも運命だな」
火の四天王「いや、お前には聞いていない」
風の四天王「」
勇者「…まあ、魔王軍もかわいい子ばっかですし、いいんですけど」
女魔王「私は!?」
勇者「あー、かわいいです、はい」
勇者「でも、仮にも因縁ある相手との合コンてのは…」
火の四天王「…かもしれないな」
水の四天王「うふふ~酔っぱらっちゃったー…」
魔法使い「げへへ、それじゃあ私が介抱しますよー?」
勇者「…」
火の四天王「…」
勇者「…ああやって、分かり合える世界のほうが、いいのかもしれないな」
火の四天王「…だが、もう後戻りはできないだろう?お前も、私も」
勇者「…」
女魔王「肉系料理マダー?」
風の四天王「今注文します!」
9: ◆6CRtwRkZPabv 2017/04/22(土) 18:36:45.98 ID:wY8oOhd+0
ちょいと席を外すので、また夜中にお願いしますね
基本スぺ
勇者 29歳 顔そこそこ 実力 かなり強い
魔法使い 31歳 顔そこそそ 実力 結構強い
チャラ男 19歳
大地の四天王 人間換算で19歳
風の四天王 人間換算で29歳 女性と付き合ったことない
火の四天王 人間換算28歳
水の四天王 人間換算29歳
女魔王 人間換算26歳 親から魔王軍引き継いだ感じ
ギャル 人間換算19歳
清楚系 26歳
基本スぺ
勇者 29歳 顔そこそこ 実力 かなり強い
魔法使い 31歳 顔そこそそ 実力 結構強い
チャラ男 19歳
大地の四天王 人間換算で19歳
風の四天王 人間換算で29歳 女性と付き合ったことない
火の四天王 人間換算28歳
水の四天王 人間換算29歳
女魔王 人間換算26歳 親から魔王軍引き継いだ感じ
ギャル 人間換算19歳
清楚系 26歳
16: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 01:38:38.14 ID:hgPPAH6s0
清楚系「あ、お酒つぎますね」
大地の四天王「ありがとうございます!」(うおおお!?なにか柔らかいものが腕にあたってる!?)
勇者(あいつハニートラップよけれなさそうだな…)
火の四天王「戦闘能力だけなら私たちに匹敵するんだがな…」
女魔王「来た!から揚げ!」
風の四天王「レモンかけますね」
風の支店以外「「「は?」」」
火の四天王「何を…やっている…?」
チャラ男「さすがにそれはないっしょーっ!?」
大地の四天王「見損なったぞ!」
女魔王「もうよい、貴様を風の四天王から更迭する」
ギャル「ないわー」
勇者「やはり、お前とは決着をつけるべきなようだな…」
風の四天王「」
水の四天王「それでね、うちのお母さんがいつになったら旦那を連れてくるの、って…」
魔法使い「そうなんですか…」
水の魔法使い「しかも部下のセイレーンにも陰口叩かれるし…」
魔法使い「大変ですね…勇者の一味に加入すればそんなことはなくなりますよ…」
大地の四天王「ありがとうございます!」(うおおお!?なにか柔らかいものが腕にあたってる!?)
勇者(あいつハニートラップよけれなさそうだな…)
火の四天王「戦闘能力だけなら私たちに匹敵するんだがな…」
女魔王「来た!から揚げ!」
風の四天王「レモンかけますね」
風の支店以外「「「は?」」」
火の四天王「何を…やっている…?」
チャラ男「さすがにそれはないっしょーっ!?」
大地の四天王「見損なったぞ!」
女魔王「もうよい、貴様を風の四天王から更迭する」
ギャル「ないわー」
勇者「やはり、お前とは決着をつけるべきなようだな…」
風の四天王「」
水の四天王「それでね、うちのお母さんがいつになったら旦那を連れてくるの、って…」
魔法使い「そうなんですか…」
水の魔法使い「しかも部下のセイレーンにも陰口叩かれるし…」
魔法使い「大変ですね…勇者の一味に加入すればそんなことはなくなりますよ…」
17: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 01:45:13.41 ID:hgPPAH6s0
●←風の四天王だったもの
女魔王「しかし、ごうこんというのも勉強になるな…」
火の四天王「そうですね。部下にあのようなものがいることがわかる踏み絵になるとは…侮れません」
勇者「今回ばかりは同情するぜ…」
ギャル「さて、そろそろ盛り上がってきてるみたいだし?」
チャラ男「やっちゃいますかぁ?」
大地の四天王「王様ゲーーーム!」
火の四天王(あいつノリノリだな…)
ギャル「割りばしに番号を書いて…ホイ!」
チャラ男「王様だーれだ?」
風の四天王「私だ」
女魔王「チッ…まだ生きていたのか」
風の四天王「ひどすぎません!?」
風の四天王「えーと、それじゃあ4番が1番に、秘密を暴露!」
ギャル「あ、あたし1番だ」
大地の四天王「あ、俺4番…」
勇者(これは…どうなる!?)
女魔王「しかし、ごうこんというのも勉強になるな…」
火の四天王「そうですね。部下にあのようなものがいることがわかる踏み絵になるとは…侮れません」
勇者「今回ばかりは同情するぜ…」
ギャル「さて、そろそろ盛り上がってきてるみたいだし?」
チャラ男「やっちゃいますかぁ?」
大地の四天王「王様ゲーーーム!」
火の四天王(あいつノリノリだな…)
ギャル「割りばしに番号を書いて…ホイ!」
チャラ男「王様だーれだ?」
風の四天王「私だ」
女魔王「チッ…まだ生きていたのか」
風の四天王「ひどすぎません!?」
風の四天王「えーと、それじゃあ4番が1番に、秘密を暴露!」
ギャル「あ、あたし1番だ」
大地の四天王「あ、俺4番…」
勇者(これは…どうなる!?)
18: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 01:52:58.84 ID:hgPPAH6s0
大地の四天王「えーっと…」
大地の四天王(実は俺、人間国から送られたスパイなんだ…)
ギャル「え」
大地の四天王(前任者がいなくなったのを好機に、って送られたんだ)
ギャル「…あの、そういうの、よくないとおもいます」
勇者「ギャル子ちゃんが…うろたえている!?」
火の四天王「どうやら…トンデモない秘密を暴露したようだな…」
チャラ男「そんじゃ、次行っちゃいましょー?王様だーれだ!?」
魔法使い「あ、私ですね…」
魔法使い(…女の子はみんなかわいいですね…ならば…!)
魔法使い「3番と2番は王様に5分膝枕!」
風の四天王「3番」
勇者「2番」
魔法使い「」
水の魔法使い「…でもね、こういうの経験だと思うの」
清楚系「確かにそうですね…ぜひ!はよ!はよ!」(勇者×魔法使い(゚∀゚)キタコレ!!)
女魔王「邪な気を感じる…」
大地の四天王(実は俺、人間国から送られたスパイなんだ…)
ギャル「え」
大地の四天王(前任者がいなくなったのを好機に、って送られたんだ)
ギャル「…あの、そういうの、よくないとおもいます」
勇者「ギャル子ちゃんが…うろたえている!?」
火の四天王「どうやら…トンデモない秘密を暴露したようだな…」
チャラ男「そんじゃ、次行っちゃいましょー?王様だーれだ!?」
魔法使い「あ、私ですね…」
魔法使い(…女の子はみんなかわいいですね…ならば…!)
魔法使い「3番と2番は王様に5分膝枕!」
風の四天王「3番」
勇者「2番」
魔法使い「」
水の魔法使い「…でもね、こういうの経験だと思うの」
清楚系「確かにそうですね…ぜひ!はよ!はよ!」(勇者×魔法使い(゚∀゚)キタコレ!!)
女魔王「邪な気を感じる…」
19: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 01:58:57.76 ID:hgPPAH6s0
チャラ男「結局無しっすか。まあ男同士の膝枕とかもはやグロ画像ですけどね」
清楚系「そうですかねぇ…」
火の四天王「そ、それでは次に行こう!王様だーれだ!?」
女魔王「…私だ」
勇者「来たか…!」
風の四天王「ば、番号は…!?」
女魔王「…8番と、1番が、王様のサラダ食べてくれ」
火の四天王「好き嫌いとかよくないです」
チャラ男「うおおおおお!きれい系お姉さんの食べ残しのサラダぁ!あ、俺1番っす!」
風の四天王「うおおお!人間ごときには負けん!8番だっ!」
女魔王(まあ、手は付けてないんだけど、楽しそうならいっか)
水の四天王「うぇぇ…魔法使いさんやさしいですね…」
魔法使い「そ、そうですかね…!?」(これは…立った!フラグが立った!)
清楚系「そうですかねぇ…」
火の四天王「そ、それでは次に行こう!王様だーれだ!?」
女魔王「…私だ」
勇者「来たか…!」
風の四天王「ば、番号は…!?」
女魔王「…8番と、1番が、王様のサラダ食べてくれ」
火の四天王「好き嫌いとかよくないです」
チャラ男「うおおおおお!きれい系お姉さんの食べ残しのサラダぁ!あ、俺1番っす!」
風の四天王「うおおお!人間ごときには負けん!8番だっ!」
女魔王(まあ、手は付けてないんだけど、楽しそうならいっか)
水の四天王「うぇぇ…魔法使いさんやさしいですね…」
魔法使い「そ、そうですかね…!?」(これは…立った!フラグが立った!)
20: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 02:07:46.34 ID:hgPPAH6s0
勇者「それじゃ、次の行くか」
大地の四天王「イェーイ!王様だーれだ!?」
勇者「あ、俺だ」
風の四天王(来たか…わが弟弟子よ…!きっと君の願いはこの美女メンバーを狙っているのだろう…?)
風の四天王(だが…その確率は4/9…実質水の四天王が酔いつぶれている中、確率はさらに下がる…)
風の四天王(だが、きっとお前ならそれを乗り越えていくことができる…!さあ、見せてみろ!お前の可能性(エロス)を!」
勇者「うるせえよ!後半から声に出てるんだよ!可能性(エロス)ってなんだよ!から揚げにレモンかけるな!…はぁはぁ、突っ込みつかれたわ!」
風の四天王「」
勇者「あーそれじゃあ」
風の四天王「どうせ『ほっぺにチュー』とかだろう!いやらしい奴め!だが、私はそんな奴は嫌いじゃないぞ!さ(バシッ)
女魔王「うるさい」
勇者「え、えーと…じゃあ4番と6番、俺の事をどう思ってるか正直に頼む!」
風の四天王(う、うまい…!これなら(バシッ)
女魔王「うるさい」
風の四天王「まだしゃべってもないのに!?」
大地の四天王「イェーイ!王様だーれだ!?」
勇者「あ、俺だ」
風の四天王(来たか…わが弟弟子よ…!きっと君の願いはこの美女メンバーを狙っているのだろう…?)
風の四天王(だが…その確率は4/9…実質水の四天王が酔いつぶれている中、確率はさらに下がる…)
風の四天王(だが、きっとお前ならそれを乗り越えていくことができる…!さあ、見せてみろ!お前の可能性(エロス)を!」
勇者「うるせえよ!後半から声に出てるんだよ!可能性(エロス)ってなんだよ!から揚げにレモンかけるな!…はぁはぁ、突っ込みつかれたわ!」
風の四天王「」
勇者「あーそれじゃあ」
風の四天王「どうせ『ほっぺにチュー』とかだろう!いやらしい奴め!だが、私はそんな奴は嫌いじゃないぞ!さ(バシッ)
女魔王「うるさい」
勇者「え、えーと…じゃあ4番と6番、俺の事をどう思ってるか正直に頼む!」
風の四天王(う、うまい…!これなら(バシッ)
女魔王「うるさい」
風の四天王「まだしゃべってもないのに!?」
21: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 02:13:46.65 ID:hgPPAH6s0
大地の四天王「あーっ…俺は違うな」
勇者「正直大地の四天王に当たったらどうしようかと思ったぜ…」
女魔王「…私が、4番だ」
火の四天王「6番だな」
風の(バシッ)
大地の四天王「うるせぇ」
風の四天王「まだ出てもいないのに!?」
勇者(うーん、この2人か…何言われても重そうだな…)
女魔王「…面白い奴だな。面識は今までなかったが…今日であって、わかった。独特の雰囲気を持っている。正直風の四天王と交換したい」
大地の四天王(なん…だと…!?)
火の四天王「私は、以前面識があったのだが…魔王様と似たような感じだな。また、こういう機会がほしいものだ」
魔法使い「み、水の四天王さん…!?」
水の四天王「えへへ~魔法使いさん~おんぶ~」
大地の四天王(うわキツ…)
水の四天王(ア?)
大地の四天王(すいませんでしたっ!)
勇者「正直大地の四天王に当たったらどうしようかと思ったぜ…」
女魔王「…私が、4番だ」
火の四天王「6番だな」
風の(バシッ)
大地の四天王「うるせぇ」
風の四天王「まだ出てもいないのに!?」
勇者(うーん、この2人か…何言われても重そうだな…)
女魔王「…面白い奴だな。面識は今までなかったが…今日であって、わかった。独特の雰囲気を持っている。正直風の四天王と交換したい」
大地の四天王(なん…だと…!?)
火の四天王「私は、以前面識があったのだが…魔王様と似たような感じだな。また、こういう機会がほしいものだ」
魔法使い「み、水の四天王さん…!?」
水の四天王「えへへ~魔法使いさん~おんぶ~」
大地の四天王(うわキツ…)
水の四天王(ア?)
大地の四天王(すいませんでしたっ!)
22: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 02:17:45.14 ID:hgPPAH6s0
チャラ男「おっとぉ?もう時間みたいっすね?」
ギャル「あ、本当だ…」
チャラ男「そんじゃ、飲みなおしたい人集まって、次の店にいきましょうか?」
魔法使い「あ、私は水の四天王さんを送ってきますね…」
水の四天王「zzz」
ギャル「チャラ男…あとで一緒にのもーよ?ね」
チャラ男「ん…いいけど、なんかあったパティーン?」
大地の四天王(やべぇ…あの暴露は失敗だったか!?)
清楚系「あの、少し飲み足りないので…」
大地の四天王「あ、はい!」(うおおおおお!!神は俺を見捨てなかった!?)
風の四天王「」
ギャル「あ、本当だ…」
チャラ男「そんじゃ、飲みなおしたい人集まって、次の店にいきましょうか?」
魔法使い「あ、私は水の四天王さんを送ってきますね…」
水の四天王「zzz」
ギャル「チャラ男…あとで一緒にのもーよ?ね」
チャラ男「ん…いいけど、なんかあったパティーン?」
大地の四天王(やべぇ…あの暴露は失敗だったか!?)
清楚系「あの、少し飲み足りないので…」
大地の四天王「あ、はい!」(うおおおおお!!神は俺を見捨てなかった!?)
風の四天王「」
23: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 02:24:13.97 ID:hgPPAH6s0
火の四天王「さて、我々はどうする?」
勇者「…なんというか、あれだ。出来上がってる組み合わせばっかだしな。もう帰ろうかと思ってる」
女魔王「…なあ、勇者よ」
勇者「…たぶん、その質問の答えは決まってるさ」
勇者「…俺は、お前の下にはつけないよ」
女魔王「…そうか。戦士(21)のことか」
勇者「…」
勇者「…しかし、なんで合コンでお前たちが来たんだ…?」
火の四天王「大地の四天王が誘ってきたんだ。魔王様が行きたいとおっしゃってな」
勇者「…しかし、成果はゼロか…」
女魔王「我々は、いつなら分かり合えたんだろうな」
勇者「…戦士(21)が死ぬ前、さ」
勇者「…なんというか、あれだ。出来上がってる組み合わせばっかだしな。もう帰ろうかと思ってる」
女魔王「…なあ、勇者よ」
勇者「…たぶん、その質問の答えは決まってるさ」
勇者「…俺は、お前の下にはつけないよ」
女魔王「…そうか。戦士(21)のことか」
勇者「…」
勇者「…しかし、なんで合コンでお前たちが来たんだ…?」
火の四天王「大地の四天王が誘ってきたんだ。魔王様が行きたいとおっしゃってな」
勇者「…しかし、成果はゼロか…」
女魔王「我々は、いつなら分かり合えたんだろうな」
勇者「…戦士(21)が死ぬ前、さ」
24: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 02:30:12.16 ID:hgPPAH6s0
帰り道…
勇者「あれは…まさか…?」
戦士(21)の幽霊「よう、勇者…」
勇者「戦士(21…)!?」
故戦士(21)「もう、いいんだ。俺に構う事はない。魔王たちと和解すればいい」
勇者「…だが」
故戦士(21)「いいんだ。俺を殺した土の四天王は…お前たちが仇を取ってくれたじゃないか」
勇者「…」
勇者「俺は、お前を親友だとずっと思っていた。魔族も、宿敵だと。でも…」
故戦士(21)「…大丈夫だ。もう、思いつめる必要はない…」
勇者「…わかった。これから急いで和解に進めるようにするよ」
故戦士(21)「そうか…ありがとう」
勇者「…お前は昔からやさしい奴だったからな。死ぬ前も…魔族と分かり合いたいって…」
故戦士(21)「…」
故戦士(21)「あ、そうだ」
勇者「?」
故戦士(21)「お前の新しい仲間の戦士と僧侶、付き合ってるぞ」
勇者「う…うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!????????」
勇者「あれは…まさか…?」
戦士(21)の幽霊「よう、勇者…」
勇者「戦士(21…)!?」
故戦士(21)「もう、いいんだ。俺に構う事はない。魔王たちと和解すればいい」
勇者「…だが」
故戦士(21)「いいんだ。俺を殺した土の四天王は…お前たちが仇を取ってくれたじゃないか」
勇者「…」
勇者「俺は、お前を親友だとずっと思っていた。魔族も、宿敵だと。でも…」
故戦士(21)「…大丈夫だ。もう、思いつめる必要はない…」
勇者「…わかった。これから急いで和解に進めるようにするよ」
故戦士(21)「そうか…ありがとう」
勇者「…お前は昔からやさしい奴だったからな。死ぬ前も…魔族と分かり合いたいって…」
故戦士(21)「…」
故戦士(21)「あ、そうだ」
勇者「?」
故戦士(21)「お前の新しい仲間の戦士と僧侶、付き合ってるぞ」
勇者「う…うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!????????」
26: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 02:38:38.98 ID:hgPPAH6s0
この後、勇者は魔族との和解交渉を進め、後世に名を残した。
彼と戦士(18)、僧侶(17)のパーティは永くにわたる平和を築いたのだ
大地の四天王はスパイがばれずに、魔王軍の一員として暮らした なんか横に清楚系ちゃんもいたけど気にしないでおこう
水の四天王は魔法使いと駆け落ち 正直ふざけんなと思う
女魔王は俺と交流を深めていった 故戦士(21)の理想をかなえるために…
火の四天王も俺に協力してくれた 時々俺を見つめる視線を感じるけど…なにかしてしまったかな…
風の四天王はから揚げにレモンをかけ続けている
ギャルとチャラ男は結婚したらしい 俺も結婚式に招待された
勇者「…フラグが立ったと思ったのに!?」
女魔「女魔王→勇者→故戦士(21)だろう?清楚系が言っていた」
勇者「ちょっ…!?」
火の四天王「過去の思い人のために操をたてるという事か…くっ!」
勇者「そんな関係じゃねーよ!?」
残念ながら、合コンはうまくいかなかった というか周りばっかりうまくいきやがって!?
今日の教訓「合コンは周りばっかりうまくいくと、つらさが増す」
終わり
彼と戦士(18)、僧侶(17)のパーティは永くにわたる平和を築いたのだ
大地の四天王はスパイがばれずに、魔王軍の一員として暮らした なんか横に清楚系ちゃんもいたけど気にしないでおこう
水の四天王は魔法使いと駆け落ち 正直ふざけんなと思う
女魔王は俺と交流を深めていった 故戦士(21)の理想をかなえるために…
火の四天王も俺に協力してくれた 時々俺を見つめる視線を感じるけど…なにかしてしまったかな…
風の四天王はから揚げにレモンをかけ続けている
ギャルとチャラ男は結婚したらしい 俺も結婚式に招待された
勇者「…フラグが立ったと思ったのに!?」
女魔「女魔王→勇者→故戦士(21)だろう?清楚系が言っていた」
勇者「ちょっ…!?」
火の四天王「過去の思い人のために操をたてるという事か…くっ!」
勇者「そんな関係じゃねーよ!?」
残念ながら、合コンはうまくいかなかった というか周りばっかりうまくいきやがって!?
今日の教訓「合コンは周りばっかりうまくいくと、つらさが増す」
終わり
27: ◆NYGFN63xERY9 2017/04/23(日) 02:39:18.18 ID:hgPPAH6s0
そんな感じで終わりです
依頼出してきますね
依頼出してきますね
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/23(日) 03:06:21.57 ID:64hiubf10
乙
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/23(日) 12:19:17.75 ID:Ar9lgNHq0
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492850882/
Entry ⇒ 2017.12.01 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
古畑任三郎「魔王さんを殺したのは……勇者さん、あなたですね」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:00:18.88 ID:2Ro3e5Mlo
……
古畑「え~……今回、私はある異世界にお邪魔しています」
古畑「いわゆる剣と魔法のファンタジー世界、というやつです」
古畑「もしも魔法があったらさぞかし便利でしょうねえ」
古畑「通勤は魔法でひとっ飛び、料理だって魔法でできちゃいます。そして、殺人も……」
古畑「しかし、かくいう私も一つだけ魔法を使うことができます」
古畑「完全犯罪を見破る、という魔法を」
……
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:03:19.17 ID:2Ro3e5Mlo
― 城内・応接室 ―
魔法使い「なるほど、妙な本を開いたら、この世界に迷い込んでしまったと」
古畑「そうなんです」
古畑「私の部下が最近魔術に凝ってるなんていって、変な本を開いてしまって」
今泉「ひ、ひどいなぁ~。開け開けって急かしたの古畑さんじゃないですかぁ~」
魔法使い「ハハハ、よくあるんですよ。そういうことって」
魔法使い「本に秘められていた魔力が、あなたたち二人をここに連れ込んだということでしょうね」
古畑「ですが、こちらのような言葉の通じる世界に飛ばされたのは不幸中の幸いでした」
今泉「こ、こういう奇跡ってあるんですねえ!」
魔法使い「その本に秘められてた力が、そうさせてるのかもしれませんね」
魔法使い「なるほど、妙な本を開いたら、この世界に迷い込んでしまったと」
古畑「そうなんです」
古畑「私の部下が最近魔術に凝ってるなんていって、変な本を開いてしまって」
今泉「ひ、ひどいなぁ~。開け開けって急かしたの古畑さんじゃないですかぁ~」
魔法使い「ハハハ、よくあるんですよ。そういうことって」
魔法使い「本に秘められていた魔力が、あなたたち二人をここに連れ込んだということでしょうね」
古畑「ですが、こちらのような言葉の通じる世界に飛ばされたのは不幸中の幸いでした」
今泉「こ、こういう奇跡ってあるんですねえ!」
魔法使い「その本に秘められてた力が、そうさせてるのかもしれませんね」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:06:31.77 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「最初は夢かなにかだと思っていたのですが、やはりこれは現実だと思い直しまして」
今泉「この人、何度僕のほっぺたをつねったことか! ホントムチャクチャすんだから!」
古畑「それで、三日ほどこちらの世界をさまよってたわけですが」
古畑「町の人からこういうことはお城にいる魔法使いさんに相談した方がいいと伺いまして」
今泉「僕たち、帰れるんでしょうかぁ!?」
今泉「帰れないと、僕、ホームシックになっちゃいますよぉ~」
魔法使い「そうですねえ……」
今泉「この人、何度僕のほっぺたをつねったことか! ホントムチャクチャすんだから!」
古畑「それで、三日ほどこちらの世界をさまよってたわけですが」
古畑「町の人からこういうことはお城にいる魔法使いさんに相談した方がいいと伺いまして」
今泉「僕たち、帰れるんでしょうかぁ!?」
今泉「帰れないと、僕、ホームシックになっちゃいますよぉ~」
魔法使い「そうですねえ……」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:09:14.95 ID:2Ro3e5Mlo
応接室に一人の男が入ってきた。
ガチャッ
勇者「おい、魔法使い」
魔法使い「なんでしょう?」
勇者「あ、失礼……まだ来客中だったか。しかし、変わった格好をしているが……」
古畑「はじめまして、古畑と申します」
今泉「今泉です!」
勇者「はじめまして、勇者です」
魔法使い「異世界からこの世界に迷い込んでしまった方々なんですよ」
勇者「ああ、なるほど……どうりで」
ガチャッ
勇者「おい、魔法使い」
魔法使い「なんでしょう?」
勇者「あ、失礼……まだ来客中だったか。しかし、変わった格好をしているが……」
古畑「はじめまして、古畑と申します」
今泉「今泉です!」
勇者「はじめまして、勇者です」
魔法使い「異世界からこの世界に迷い込んでしまった方々なんですよ」
勇者「ああ、なるほど……どうりで」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:12:26.18 ID:2Ro3e5Mlo
勇者「魔法使い、パーティーの準備ができた。遅れず出席するように」
魔法使い「分かりました」
勇者「では失礼」
バタン…
今泉「今のが勇者ですか! す、すごいなぁ~、かっこよかったなぁ~、サインもらえばよかった!」
魔法使い「なにしろ彼は我が国の英雄ですから」
魔法使い「これまで何度も魔王の侵攻を阻止してきたんですよ」
古畑「ん~ふふふ、私もこの数日間で多少この世界のことを勉強いたしました」
古畑「なんでもこの世界では人と魔族がずっと対立しているとか……」
古畑「その中で特に活躍してこられたのが、あの勇者さんというわけですね?」
魔法使い「その通りです」
古畑「しかし、なにかバタバタされていたようですが? それにパーティーとは?」
魔法使い「実は今日、魔王がこの城に来てるんですよ」
今泉「えええええ~っ!? ラスボスがこの城来ちゃってるんですかぁ~!?」
魔法使い「分かりました」
勇者「では失礼」
バタン…
今泉「今のが勇者ですか! す、すごいなぁ~、かっこよかったなぁ~、サインもらえばよかった!」
魔法使い「なにしろ彼は我が国の英雄ですから」
魔法使い「これまで何度も魔王の侵攻を阻止してきたんですよ」
古畑「ん~ふふふ、私もこの数日間で多少この世界のことを勉強いたしました」
古畑「なんでもこの世界では人と魔族がずっと対立しているとか……」
古畑「その中で特に活躍してこられたのが、あの勇者さんというわけですね?」
魔法使い「その通りです」
古畑「しかし、なにかバタバタされていたようですが? それにパーティーとは?」
魔法使い「実は今日、魔王がこの城に来てるんですよ」
今泉「えええええ~っ!? ラスボスがこの城来ちゃってるんですかぁ~!?」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:15:30.71 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「魔王というのは、ん~、たしか魔族側のリーダーでしたね」
古畑「それがいったいなぜ?」
魔法使い「魔王直々に、人間側に話したいことがあるということで」
古畑「どんな話を?」
魔法使い「おそらくは停戦の申し出、でしょうね」
魔法使い「やっと人と魔族の完全和解に向けて、一歩前進といったところでしょう」
魔法使い「なので、我が国もパーティーを開いて魔王を歓迎しようと準備に追われているのです」
魔法使い「もうまもなく、城の中庭でパーティーが始まりますよ」
古畑「んふふ、それは結構なことです。おめでとうございます」
今泉「古畑さん、パーティーですって! パーティー!」
古畑「さっきからうるさいよ、今泉君」
古畑「それがいったいなぜ?」
魔法使い「魔王直々に、人間側に話したいことがあるということで」
古畑「どんな話を?」
魔法使い「おそらくは停戦の申し出、でしょうね」
魔法使い「やっと人と魔族の完全和解に向けて、一歩前進といったところでしょう」
魔法使い「なので、我が国もパーティーを開いて魔王を歓迎しようと準備に追われているのです」
魔法使い「もうまもなく、城の中庭でパーティーが始まりますよ」
古畑「んふふ、それは結構なことです。おめでとうございます」
今泉「古畑さん、パーティーですって! パーティー!」
古畑「さっきからうるさいよ、今泉君」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:18:28.58 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「ところで、私達の件は?」
魔法使い「ああ、お二人を帰還させることは可能ですよ」
古畑「ホントですか! よかったぁ~……」
古畑「一生ここで暮らすことになったら、どうしようかと思いました」
魔法使い「ただし、あなた方を元の世界に帰す術式は、複雑な手順を要するのです」
魔法使い「私も王国の魔法使いとして、パーティーには出席せねばなりませんので」
魔法使い「あなた方を元の世界に帰すのはそれから、ということでよろしいですか?」
古畑「もちろんです」
魔法使い「ああ、お二人を帰還させることは可能ですよ」
古畑「ホントですか! よかったぁ~……」
古畑「一生ここで暮らすことになったら、どうしようかと思いました」
魔法使い「ただし、あなた方を元の世界に帰す術式は、複雑な手順を要するのです」
魔法使い「私も王国の魔法使いとして、パーティーには出席せねばなりませんので」
魔法使い「あなた方を元の世界に帰すのはそれから、ということでよろしいですか?」
古畑「もちろんです」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:22:10.04 ID:2Ro3e5Mlo
今泉「古畑さん、せっかくだからパーティーに参加させてもらいましょうよ! ねえ?」
古畑「図々しいよ」
魔法使い「いえ、かまいませんよ」
今泉「いやったーっ!」
古畑「すみません、ご迷惑をおかけして」
魔法使い「いいんですよ。それではパーティーが開かれる中庭まで一緒に参りましょう」
古畑「図々しいよ」
魔法使い「いえ、かまいませんよ」
今泉「いやったーっ!」
古畑「すみません、ご迷惑をおかけして」
魔法使い「いいんですよ。それではパーティーが開かれる中庭まで一緒に参りましょう」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:25:23.73 ID:2Ro3e5Mlo
― 城内・小部屋 ―
二人きりで対峙する勇者と魔王。
魔王「ふん、人間どももケチなものよ」
魔王「俺が直々にやってきたというのに、こんな古びた石板一枚置いてあるだけの部屋しか用意せんとは」
勇者「城内で普段使われてない部屋というのはそうないんだ。仕方ないだろう」
勇者「そちらこそ、黒いマントにタキシードとは少々悪趣味なのではないかな」
魔王「せっかくの歴史的瞬間なんだ。これぐらいのおめかしはさせろ」バサッ
魔王「で、俺になんの用だ?」
勇者「念のため、鍵を閉めておく。誰かに聞かれたらまずいからな」ガチャッ
勇者「魔王……今日は何を話しにきた?」
魔王「決まってるだろう……人間と魔族の“完全和解”を提案しにきたのだ」ニヤッ
勇者「…………」
二人きりで対峙する勇者と魔王。
魔王「ふん、人間どももケチなものよ」
魔王「俺が直々にやってきたというのに、こんな古びた石板一枚置いてあるだけの部屋しか用意せんとは」
勇者「城内で普段使われてない部屋というのはそうないんだ。仕方ないだろう」
勇者「そちらこそ、黒いマントにタキシードとは少々悪趣味なのではないかな」
魔王「せっかくの歴史的瞬間なんだ。これぐらいのおめかしはさせろ」バサッ
魔王「で、俺になんの用だ?」
勇者「念のため、鍵を閉めておく。誰かに聞かれたらまずいからな」ガチャッ
勇者「魔王……今日は何を話しにきた?」
魔王「決まってるだろう……人間と魔族の“完全和解”を提案しにきたのだ」ニヤッ
勇者「…………」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:28:12.63 ID:2Ro3e5Mlo
勇者「やめとけ、和解などお互いのためにならん」
魔王「お互いのため? お前のためにならない、の間違いだろう?」
勇者「!」
魔王「人と魔族が和解してしまったら、お前は国から今までのような厚遇は受けられなくなる」
魔王「それどころか、用済み扱いされてしまう可能性も高い」
魔王「だからこそ、お前は俺に、幾度となくこの国を攻撃させたのだからな」
魔王「最初の数回の侵攻は確かに俺自身の意志だが、あとはお前との裏取引によるものだ」
魔王「適当に攻め、頃合いを見計らって撤退という、大した被害も出ない馴れ合いの戦いを繰り返した」
勇者「…………」
魔王「おかげでお前はこの国の大英雄になれたわけだ」
魔王「お互いのため? お前のためにならない、の間違いだろう?」
勇者「!」
魔王「人と魔族が和解してしまったら、お前は国から今までのような厚遇は受けられなくなる」
魔王「それどころか、用済み扱いされてしまう可能性も高い」
魔王「だからこそ、お前は俺に、幾度となくこの国を攻撃させたのだからな」
魔王「最初の数回の侵攻は確かに俺自身の意志だが、あとはお前との裏取引によるものだ」
魔王「適当に攻め、頃合いを見計らって撤退という、大した被害も出ない馴れ合いの戦いを繰り返した」
勇者「…………」
魔王「おかげでお前はこの国の大英雄になれたわけだ」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:30:24.55 ID:2Ro3e5Mlo
勇者「お前にもそれ相応の金品は渡してきたはずだが?」
魔王「そうだな。おかげさまで俺もずいぶん潤った」
魔王「だからもう、八百長のような戦いをする必要はない」
魔王「これからは人と魔族が入り乱れた世界で大いに楽しんでやる」
魔王「パーティー会場で洗いざらい全部ブチまけてやるよ。そうなればお前は破滅だ」
魔王「ここにあるこの石板には『魔王を倒した勇者は……』などという一文が書いてあるが」
魔王「実際には勇者は魔王に倒されることになったわけだ!」
魔王「しかも、俺のこの鋭い爪ではなく、口によってな!」
魔王「アッハッハッハッハッハ……!」
勇者「…………」
魔王「そうだな。おかげさまで俺もずいぶん潤った」
魔王「だからもう、八百長のような戦いをする必要はない」
魔王「これからは人と魔族が入り乱れた世界で大いに楽しんでやる」
魔王「パーティー会場で洗いざらい全部ブチまけてやるよ。そうなればお前は破滅だ」
魔王「ここにあるこの石板には『魔王を倒した勇者は……』などという一文が書いてあるが」
魔王「実際には勇者は魔王に倒されることになったわけだ!」
魔王「しかも、俺のこの鋭い爪ではなく、口によってな!」
魔王「アッハッハッハッハッハ……!」
勇者「…………」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:33:12.13 ID:2Ro3e5Mlo
勇者「……考え直すことはできないのか?」
魔王「いくら金を積まれても、無理だなぁ」
勇者「なら仕方ない」スッ…
魔王「そうそう、人間諦めが肝心――」
ザシュッ!!!
一瞬で首を斬られる魔王。
魔王「がっ……!?」
ドサッ…
勇者「…………」
魔王「いくら金を積まれても、無理だなぁ」
勇者「なら仕方ない」スッ…
魔王「そうそう、人間諦めが肝心――」
ザシュッ!!!
一瞬で首を斬られる魔王。
魔王「がっ……!?」
ドサッ…
勇者「…………」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:36:03.94 ID:2Ro3e5Mlo
うつ伏せに横たわる魔王の手に、剣を持たせる勇者。
勇者「この石板を倒して、と」ググッ…
ズシンッ
勇者「……これでよし」
勇者「鍵はこいつが持っている。あとはテレポートで部屋を脱出すれば……」
………………
…………
……
勇者「この石板を倒して、と」ググッ…
ズシンッ
勇者「……これでよし」
勇者「鍵はこいつが持っている。あとはテレポートで部屋を脱出すれば……」
………………
…………
……
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:39:06.31 ID:2Ro3e5Mlo
― 城の中庭・パーティー会場 ―
会場は城の人間が集まり、大いに盛り上がっていた。
ワイワイ… ガヤガヤ…
今泉「古畑さん、ここの食事うまいっすね!」モグモグ
古畑「よく食うね~、君は」
今泉「パーティーが終わったらといわず、しばらくこの世界にいるのもいいんじゃないですか!?」
古畑「じゃ、君一人だけそうしなさい。私は一人で帰るから」
今泉「ひ、ひどいなぁ~」
魔法使い「古畑さん、今泉さん」
古畑「なんでしょうか、魔法使いさん?」
魔法使い「あなた方のことを紹介したら、陛下がぜひお会いしたいというので。こちらへどうぞ」
会場は城の人間が集まり、大いに盛り上がっていた。
ワイワイ… ガヤガヤ…
今泉「古畑さん、ここの食事うまいっすね!」モグモグ
古畑「よく食うね~、君は」
今泉「パーティーが終わったらといわず、しばらくこの世界にいるのもいいんじゃないですか!?」
古畑「じゃ、君一人だけそうしなさい。私は一人で帰るから」
今泉「ひ、ひどいなぁ~」
魔法使い「古畑さん、今泉さん」
古畑「なんでしょうか、魔法使いさん?」
魔法使い「あなた方のことを紹介したら、陛下がぜひお会いしたいというので。こちらへどうぞ」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:42:05.34 ID:2Ro3e5Mlo
国王「おお、そなたたちが異世界からの来客か」
古畑「古畑と申します」
今泉「今泉です!」
国王「特別な計らいは出来ぬが、せめてパーティーを楽しんでいってくれたまえ」
古畑「ありがとうございます」
今泉「あの、王様!」シュビッ
国王「なんだね?」
今泉「王様はレストランには行かれますか?」
国王「うむ、たまには」
今泉「これがホントの『王様のレストラン』……なんちて」
国王「は?」
古畑「君は黙ってなさい」ペシッ
今泉「いてっ!」
古畑「古畑と申します」
今泉「今泉です!」
国王「特別な計らいは出来ぬが、せめてパーティーを楽しんでいってくれたまえ」
古畑「ありがとうございます」
今泉「あの、王様!」シュビッ
国王「なんだね?」
今泉「王様はレストランには行かれますか?」
国王「うむ、たまには」
今泉「これがホントの『王様のレストラン』……なんちて」
国王「は?」
古畑「君は黙ってなさい」ペシッ
今泉「いてっ!」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:45:04.77 ID:2Ro3e5Mlo
勇者「陛下、ご機嫌うるわしゅう」ザッ
国王「おお、勇者よ」
国王「魔王は単独で我が国に乗り込んできたが、一体何を話すと思う?」
勇者「一時的な停戦の申し出、というのが濃厚でしょう」
国王「停戦か……和解の申し出ということはないだろうか?」
勇者「完全な和解には、まだ段階を経なければならないでしょう」
国王「そうか……残念だ」
勇者「焦ってはなりません。真の平和とは、一歩ずつ成し遂げるものなのですから」
国王「おお、勇者よ」
国王「魔王は単独で我が国に乗り込んできたが、一体何を話すと思う?」
勇者「一時的な停戦の申し出、というのが濃厚でしょう」
国王「停戦か……和解の申し出ということはないだろうか?」
勇者「完全な和解には、まだ段階を経なければならないでしょう」
国王「そうか……残念だ」
勇者「焦ってはなりません。真の平和とは、一歩ずつ成し遂げるものなのですから」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:48:27.69 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「んふふふ、こんにちは~、勇者さん」
勇者「先ほどはどうも。古畑さん、でしたね?」
古畑「この国の大英雄にお会いできて、光栄です」
今泉「あ、僕も握手して下さい!」
勇者「かまいませんよ」
勇者「あ、そうだ。古畑さん達は元いた世界では何を?」
古畑「私たち……刑事をやっておりまして」
勇者「刑事?」
今泉「簡単にいえば、悪い奴を捕まえる仕事です!」
勇者「……ほう」
国王「なるほど、つまり君たちも勇者というわけだな」
古畑「いえいえ、とんでもない! 国を救ってらっしゃる勇者さんと並ぶなんて、とてもとても」
勇者「先ほどはどうも。古畑さん、でしたね?」
古畑「この国の大英雄にお会いできて、光栄です」
今泉「あ、僕も握手して下さい!」
勇者「かまいませんよ」
勇者「あ、そうだ。古畑さん達は元いた世界では何を?」
古畑「私たち……刑事をやっておりまして」
勇者「刑事?」
今泉「簡単にいえば、悪い奴を捕まえる仕事です!」
勇者「……ほう」
国王「なるほど、つまり君たちも勇者というわけだな」
古畑「いえいえ、とんでもない! 国を救ってらっしゃる勇者さんと並ぶなんて、とてもとても」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:51:39.34 ID:2Ro3e5Mlo
勇者「もうまもなく魔王も来ると思いますし、パーティーを楽しんでいって下さい」
古畑「ありがとうございます」
すると――
タタタタタッ
兵士A「大変です!」
勇者「どうした?」
兵士A「魔王がいる部屋をノックしてるんですが、まったく反応がないんです!」
勇者「鍵は?」
兵士A「部屋に案内する時、魔王に渡しているので、魔王が開けない限り中には入れません!」
古畑「ありがとうございます」
すると――
タタタタタッ
兵士A「大変です!」
勇者「どうした?」
兵士A「魔王がいる部屋をノックしてるんですが、まったく反応がないんです!」
勇者「鍵は?」
兵士A「部屋に案内する時、魔王に渡しているので、魔王が開けない限り中には入れません!」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:54:10.96 ID:2Ro3e5Mlo
国王「勇者よ、様子を見に行ってくれぬか」
勇者「かしこまりました」
魔法使い「私も参りましょう」
古畑「何かあったようですねぇ~。我々もついていってよろしいですか?」
勇者「どうぞ。ただしくれぐれもお気をつけ下さい」
勇者、魔法使い、古畑、今泉、兵士が魔王のいる小部屋へ向かう。
勇者「かしこまりました」
魔法使い「私も参りましょう」
古畑「何かあったようですねぇ~。我々もついていってよろしいですか?」
勇者「どうぞ。ただしくれぐれもお気をつけ下さい」
勇者、魔法使い、古畑、今泉、兵士が魔王のいる小部屋へ向かう。
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 22:57:31.09 ID:2Ro3e5Mlo
一行が部屋の前にたどり着く。
兵士B「返事して下さい!」ドンドンドン
勇者「どうだ?」
兵士B「ドアには鍵がかかってるし、返事もないんです」
魔法使い「私が中にテレポートしましょうか?」
勇者「いや、テレポートは魔力を大量に消費するから、むやみに使うべきではない」
勇者「ここは爆破呪文でムリヤリこじ開けてしまおう」
勇者「我が魔力よ、障害物を粉砕せよ!」
ボゥンッ!!!
勇者の魔法でドアが破壊された。
古畑「んん~……! これが魔法……!」
今泉「うわぁぁぁっ! すっげぇ~!」
兵士B「返事して下さい!」ドンドンドン
勇者「どうだ?」
兵士B「ドアには鍵がかかってるし、返事もないんです」
魔法使い「私が中にテレポートしましょうか?」
勇者「いや、テレポートは魔力を大量に消費するから、むやみに使うべきではない」
勇者「ここは爆破呪文でムリヤリこじ開けてしまおう」
勇者「我が魔力よ、障害物を粉砕せよ!」
ボゥンッ!!!
勇者の魔法でドアが破壊された。
古畑「んん~……! これが魔法……!」
今泉「うわぁぁぁっ! すっげぇ~!」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:00:21.75 ID:2Ro3e5Mlo
― 城内・小部屋 ―
一行が中に入ると――
勇者「これは……!」
魔法使い「魔王が……!」
古畑「…………!」
今泉「ふ、古畑さぁん!」
石板に押し潰された形で、うつ伏せに横たわる魔王の姿があった。
一行が中に入ると――
勇者「これは……!」
魔法使い「魔王が……!」
古畑「…………!」
今泉「ふ、古畑さぁん!」
石板に押し潰された形で、うつ伏せに横たわる魔王の姿があった。
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:03:33.14 ID:2Ro3e5Mlo
勇者「ま、まさか、今の魔法で石板が倒れて……!? 私が魔王を殺してしまったのか!?」
勇者「悪いが、すぐあの石板をどけて、どこかに運び出してくれ!」
兵士AB「はっ!」
古畑「今泉君、君も手伝って」
今泉「ぼ、僕もですかぁ!?」
兵士AB「うんしょ、うんしょ」
今泉「重い~!」
まもなく石板は運び去られ、魔王の姿がより明らかになった。
勇者「悪いが、すぐあの石板をどけて、どこかに運び出してくれ!」
兵士AB「はっ!」
古畑「今泉君、君も手伝って」
今泉「ぼ、僕もですかぁ!?」
兵士AB「うんしょ、うんしょ」
今泉「重い~!」
まもなく石板は運び去られ、魔王の姿がより明らかになった。
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:07:00.42 ID:2Ro3e5Mlo
魔法使い「やはり、魔王はもう死んでいますね」
勇者「くっ……なんてことだ……! 爆破呪文など使わねば……!」
魔法使い「いや、これは……魔王は石板に押し潰されて死んだのではなさそうですよ」
勇者「え?」
魔法使い「見て下さい。魔王の手には剣が握られています」
魔法使い「魔王の首からは出血もあります。この出血量、相当前から死んでいたようです」
魔法使い「しかも、この部屋の鍵は魔王が持っていた。誰もこの部屋には入れなかったのです」
勇者「つまり、これは……」
魔法使い「ええ、自殺ですよ」
勇者「これ以上我々と戦っても勝ち目は薄いから、せめてもの抵抗としてこの城で自殺、か」
勇者「なるほど、十分考えられるな」
古畑「――と決めつけるのはまだ早いのでは?」
魔法使い「え」
勇者「……なぜです?」
勇者「くっ……なんてことだ……! 爆破呪文など使わねば……!」
魔法使い「いや、これは……魔王は石板に押し潰されて死んだのではなさそうですよ」
勇者「え?」
魔法使い「見て下さい。魔王の手には剣が握られています」
魔法使い「魔王の首からは出血もあります。この出血量、相当前から死んでいたようです」
魔法使い「しかも、この部屋の鍵は魔王が持っていた。誰もこの部屋には入れなかったのです」
勇者「つまり、これは……」
魔法使い「ええ、自殺ですよ」
勇者「これ以上我々と戦っても勝ち目は薄いから、せめてもの抵抗としてこの城で自殺、か」
勇者「なるほど、十分考えられるな」
古畑「――と決めつけるのはまだ早いのでは?」
魔法使い「え」
勇者「……なぜです?」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:11:04.68 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「この死体、色々と不自然な点があります」
魔法使い「不自然? どこがですか?」
古畑「えぇ~……魔王さんの手には、まるで猛獣のような立派な爪が備わっています」
古畑「魔王さん、こんな爪を持ってるのに、どうしてわざわざ剣で自殺したんでしょう?」
魔法使い「!」
勇者「!」
古畑「それに、普通人が刃物で自殺する時は、首や心臓を“刺す”ものですが」
古畑「この首は明らかに横に斬られてます。スパッと」
古畑「んん~……そこがどうも引っかかるんですよねえ」
魔法使い「あのう、そんな細かいことはどうでもいいじゃないですか」
魔法使い「だいたい、あなたはよその世界の人間で――」
勇者「いやいや、我々とはちがう見識を持つ人の意見も聞いてみようじゃないか」
勇者「古畑さん、続けて下さい」
古畑「はい」
魔法使い「不自然? どこがですか?」
古畑「えぇ~……魔王さんの手には、まるで猛獣のような立派な爪が備わっています」
古畑「魔王さん、こんな爪を持ってるのに、どうしてわざわざ剣で自殺したんでしょう?」
魔法使い「!」
勇者「!」
古畑「それに、普通人が刃物で自殺する時は、首や心臓を“刺す”ものですが」
古畑「この首は明らかに横に斬られてます。スパッと」
古畑「んん~……そこがどうも引っかかるんですよねえ」
魔法使い「あのう、そんな細かいことはどうでもいいじゃないですか」
魔法使い「だいたい、あなたはよその世界の人間で――」
勇者「いやいや、我々とはちがう見識を持つ人の意見も聞いてみようじゃないか」
勇者「古畑さん、続けて下さい」
古畑「はい」
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:15:18.97 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「私も、刑事として人を自殺に見せかけて殺す、という事件に何度か出会ったことがあります」
古畑「もしかしたら、この事件もその類の可能性があるのでは、と」
勇者「ほう」
古畑「つまりですね。自殺か他殺かを結論付けるのはもう少し調べてからでも遅くはないのでは?」
魔法使い「調べるといっても……何を?」
古畑「たとえば……魔王さんが握っている剣に残っている指紋とか」
魔法使い「指紋? なんですかそれ?」
古畑「んん~……指紋をご存じない?」
古畑「人の指の跡はひとりひとり違うことを利用して、事件を捜査する手法なのですが……」
魔法使い「いや……聞いたことがないですね」
勇者「そういった技術は我が国には……」
古畑「んん~、そうですかぁ~」
古畑「もしかしたら、この事件もその類の可能性があるのでは、と」
勇者「ほう」
古畑「つまりですね。自殺か他殺かを結論付けるのはもう少し調べてからでも遅くはないのでは?」
魔法使い「調べるといっても……何を?」
古畑「たとえば……魔王さんが握っている剣に残っている指紋とか」
魔法使い「指紋? なんですかそれ?」
古畑「んん~……指紋をご存じない?」
古畑「人の指の跡はひとりひとり違うことを利用して、事件を捜査する手法なのですが……」
魔法使い「いや……聞いたことがないですね」
勇者「そういった技術は我が国には……」
古畑「んん~、そうですかぁ~」
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:18:07.72 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「他には……そうですねえ、この世界には魔法があります」
古畑「たとえば、魔王さんを殺した犯人が魔法でビューンと脱出するなんてことは出来ないでしょうか?」
古畑「これなら、この部屋に鍵がかかったまま逃げることができます」
魔法使い「ああ、なるほど。それなら考えられますね」
勇者「うむ」
魔法使い「では一応、“魔力の痕跡”の調査を行いますか」
勇者「よろしく頼む。私は陛下に、この事件のことを報告してくる」
古畑「お聞き入れ下さり、ありがとうございます」
古畑「たとえば、魔王さんを殺した犯人が魔法でビューンと脱出するなんてことは出来ないでしょうか?」
古畑「これなら、この部屋に鍵がかかったまま逃げることができます」
魔法使い「ああ、なるほど。それなら考えられますね」
勇者「うむ」
魔法使い「では一応、“魔力の痕跡”の調査を行いますか」
勇者「よろしく頼む。私は陛下に、この事件のことを報告してくる」
古畑「お聞き入れ下さり、ありがとうございます」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:20:18.18 ID:2Ro3e5Mlo
やがて、部屋に今泉が戻ってきた。
今泉「あれ、何をしてるんですか?」
古畑「現場検証中。魔法使いさんの邪魔しちゃダメだよ」
古畑「しかし、大変ですねぇ~、魔法使いさん」
魔法使い「何がです?」
古畑「この世界には魔法がありますから」
古畑「魔法があれば、どんな犯罪もやりたい放題じゃないですか」
古畑「魔法で相手を殺して魔法で逃げてしまえば、絶対に捕まりません」
今泉「迷宮入り事件だらけになっちゃいますねえ~。怖いなぁ~」
魔法使い「残念ながら、魔法はそんなに便利なものではないですよ」
古畑「おや、そうなんですか?」
今泉「あれ、何をしてるんですか?」
古畑「現場検証中。魔法使いさんの邪魔しちゃダメだよ」
古畑「しかし、大変ですねぇ~、魔法使いさん」
魔法使い「何がです?」
古畑「この世界には魔法がありますから」
古畑「魔法があれば、どんな犯罪もやりたい放題じゃないですか」
古畑「魔法で相手を殺して魔法で逃げてしまえば、絶対に捕まりません」
今泉「迷宮入り事件だらけになっちゃいますねえ~。怖いなぁ~」
魔法使い「残念ながら、魔法はそんなに便利なものではないですよ」
古畑「おや、そうなんですか?」
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:23:06.58 ID:2Ro3e5Mlo
魔法使い「たとえば、今ここで私が古畑さんを炎の魔法で焼き殺したとしましょう」
古畑「私は焼かれるのはごめんだなぁ。今泉君、頼むよ」
今泉「えぇ~、なんでですかぁ!?」
魔法使い「じゃあ今泉さんを地獄の業火で消し炭にしたとしましょう」
今泉「ちょ、ちょっとぉ!」
魔法使い「私はその日のうちに捕まるでしょうね」
古畑「なぜです?」
魔法使い「今泉さんの灰に私の“魔力の痕跡”がバッチリ残っているでしょうから」
古畑「ほぉ~、なるほど……痕跡が残るんですか。指紋のように……」
古畑「私は焼かれるのはごめんだなぁ。今泉君、頼むよ」
今泉「えぇ~、なんでですかぁ!?」
魔法使い「じゃあ今泉さんを地獄の業火で消し炭にしたとしましょう」
今泉「ちょ、ちょっとぉ!」
魔法使い「私はその日のうちに捕まるでしょうね」
古畑「なぜです?」
魔法使い「今泉さんの灰に私の“魔力の痕跡”がバッチリ残っているでしょうから」
古畑「ほぉ~、なるほど……痕跡が残るんですか。指紋のように……」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:26:47.79 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「では、こういうのはどうでしょう」
古畑「魔法使いさん、さっきあなたテレポートで鍵のかかった部屋に入ろうとおっしゃいましたね」
魔法使い「はい」
古畑「テレポートがどこかに瞬間移動する術だというのは、私にも察しがつきます」
古畑「これでどこまでも逃げてしまえばいいのでは?」
魔法使い「残念ながら、それは無理ですね」
魔法使い「テレポートはそう遠くまでは行けませんし、非常に魔力を消費します」
魔法使い「使えて“一日一回”ですから、どこまでも逃げることはできません」
古畑「魔力の痕跡は?」
魔法使い「もちろん床に残りますよ。調べればどこに飛んだのかまで特定できます」
古畑「それを消し去ったりする術は?」
魔法使い「ないですね。時が経つのを待つしかありません」
古畑「魔力の痕跡を残さず魔法を使う方法は?」
魔法使い「もしそんなのがあったら、私はとっくに魔法を犯罪に使ってますよ」
古畑「んふふふ、ごもっとも」
古畑「魔法使いさん、さっきあなたテレポートで鍵のかかった部屋に入ろうとおっしゃいましたね」
魔法使い「はい」
古畑「テレポートがどこかに瞬間移動する術だというのは、私にも察しがつきます」
古畑「これでどこまでも逃げてしまえばいいのでは?」
魔法使い「残念ながら、それは無理ですね」
魔法使い「テレポートはそう遠くまでは行けませんし、非常に魔力を消費します」
魔法使い「使えて“一日一回”ですから、どこまでも逃げることはできません」
古畑「魔力の痕跡は?」
魔法使い「もちろん床に残りますよ。調べればどこに飛んだのかまで特定できます」
古畑「それを消し去ったりする術は?」
魔法使い「ないですね。時が経つのを待つしかありません」
古畑「魔力の痕跡を残さず魔法を使う方法は?」
魔法使い「もしそんなのがあったら、私はとっくに魔法を犯罪に使ってますよ」
古畑「んふふふ、ごもっとも」
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:29:39.16 ID:2Ro3e5Mlo
魔法使い「これでお分かりでしょう?」
魔法使い「ある程度魔法を使える者ならば、魔法を犯罪に使うなんてことはまずしません」
古畑「とてもよく分かりました……しかし、念のため調査はお願いします」
魔法使い「分かりました」
古畑「今泉を残しておきますから、好きにこき使って下さい」
今泉「えええ!? そんなぁ!」
魔法使い「じゃあ今泉さん、魔王の死体をちょっとどかして下さい」
今泉「ぼ、僕が!?」
魔法使い「そこの床も調査したいんで」
今泉「えぇ~、生き返ったりしないだろうなぁ」ズル…
今泉「わっ、マントの下にタキシード着てるよぉ、この魔王!」
古畑「それじゃ頼んだよ」
現場の調査は二人に任せ、古畑はパーティー会場へと向かった。
魔法使い「ある程度魔法を使える者ならば、魔法を犯罪に使うなんてことはまずしません」
古畑「とてもよく分かりました……しかし、念のため調査はお願いします」
魔法使い「分かりました」
古畑「今泉を残しておきますから、好きにこき使って下さい」
今泉「えええ!? そんなぁ!」
魔法使い「じゃあ今泉さん、魔王の死体をちょっとどかして下さい」
今泉「ぼ、僕が!?」
魔法使い「そこの床も調査したいんで」
今泉「えぇ~、生き返ったりしないだろうなぁ」ズル…
今泉「わっ、マントの下にタキシード着てるよぉ、この魔王!」
古畑「それじゃ頼んだよ」
現場の調査は二人に任せ、古畑はパーティー会場へと向かった。
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:32:06.70 ID:2Ro3e5Mlo
― 城の中庭・パーティー会場 ―
すでに魔王の死は伝わり、パーティーは中止となっていた。
ザワザワ… ドヨドヨ…
国王「そうか……魔王は死んでしまっていたか」
勇者「残念です……」
古畑「失礼いたします、国王陛下、勇者さん」
国王「おお、古畑殿」
すでに魔王の死は伝わり、パーティーは中止となっていた。
ザワザワ… ドヨドヨ…
国王「そうか……魔王は死んでしまっていたか」
勇者「残念です……」
古畑「失礼いたします、国王陛下、勇者さん」
国王「おお、古畑殿」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:35:18.57 ID:2Ro3e5Mlo
国王「申し訳ない。異世界からの来客を、こんなことに巻き込んでしまって」
古畑「とんでもない。こちらこそ、大したお手伝いもできず申し訳ありません」
国王「今のところ、魔王は我が国への当てつけに自殺したというのが濃厚だと聞いておる」
国王「それにしても、魔王がこんな死に方をしてしまうとは……」
国王「これで魔族も、おそらく新たな魔王を立てて、人間達に牙をむくだろう」
国王「人と魔族の和解……全ては振り出しに戻ってしまったということか」
勇者「…………」ホッ
古畑「…………」
古畑「とんでもない。こちらこそ、大したお手伝いもできず申し訳ありません」
国王「今のところ、魔王は我が国への当てつけに自殺したというのが濃厚だと聞いておる」
国王「それにしても、魔王がこんな死に方をしてしまうとは……」
国王「これで魔族も、おそらく新たな魔王を立てて、人間達に牙をむくだろう」
国王「人と魔族の和解……全ては振り出しに戻ってしまったということか」
勇者「…………」ホッ
古畑「…………」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:37:25.88 ID:2Ro3e5Mlo
国王「ところで、古畑殿は元の世界に戻らなくてよろしいのかな?」
勇者「なんでしたら、魔法使い以外の術者を用意しましょうか?」
古畑「いえ、私はまだ気になることが残っているので……」
国王「今のこの状況ではとてもおもてなしは出来ぬが、くつろいでいってくれ」
古畑「お気遣い下さり、ありがとうございます」
勇者「…………」
勇者「なんでしたら、魔法使い以外の術者を用意しましょうか?」
古畑「いえ、私はまだ気になることが残っているので……」
国王「今のこの状況ではとてもおもてなしは出来ぬが、くつろいでいってくれ」
古畑「お気遣い下さり、ありがとうございます」
勇者「…………」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:40:22.57 ID:2Ro3e5Mlo
― 城内・通路 ―
古畑「勇者さん、あの~……ちょっとよろしいですか?」
勇者「なんですか?」
古畑「このたびは魔王さんがお亡くなりになり、本当に残念でした」
勇者「ええ、これで人と魔族の和解への道は遠ざかってしまいました。悔しいです」
古畑「お察しします」
勇者「こうなった以上、いつ魔族がこの国を襲うか分かりません」
勇者「あなたも今泉さんを連れて、すぐに退散した方がいい」
古畑「これはこれは、ご忠告ありがとうございます」
勇者「で、話というのはそれだけですか?」
古畑「あ、すみません。どうしても伺いたいことがございまして」
勇者「なんでしょう?」
古畑「勇者さん、あの~……ちょっとよろしいですか?」
勇者「なんですか?」
古畑「このたびは魔王さんがお亡くなりになり、本当に残念でした」
勇者「ええ、これで人と魔族の和解への道は遠ざかってしまいました。悔しいです」
古畑「お察しします」
勇者「こうなった以上、いつ魔族がこの国を襲うか分かりません」
勇者「あなたも今泉さんを連れて、すぐに退散した方がいい」
古畑「これはこれは、ご忠告ありがとうございます」
勇者「で、話というのはそれだけですか?」
古畑「あ、すみません。どうしても伺いたいことがございまして」
勇者「なんでしょう?」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:43:36.19 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「勇者さん、パーティーが始まるまでは何をなさってました?」
古畑「たとえば、あの応接室で私どもと顔を合わせた後、とか……」
勇者「どうしてそんなことを聞くんです?」
勇者「……まさか私が魔王を殺したと疑ってらっしゃるのでは?」
勇者「魔王の死因は倒れた石板によるものではない、というのははっきりしたでしょう」
古畑「いえいえいえいえ、とんでもない! あくまで形式上のことです」
勇者「……まぁ、いいでしょう」
勇者「城内を適当にうろついてましたね」
古畑「魔王さんにお会いには?」
勇者「今まで何度も戦った間柄ですが、今日は一度も会ってません」
古畑「一度も?」
勇者「はい」
古畑「そうですか、ありがとうございます」
勇者「じゃあ私はこれで」
古畑「あ、すみません、もう一つだけ」
勇者「……なんです?」
古畑「たとえば、あの応接室で私どもと顔を合わせた後、とか……」
勇者「どうしてそんなことを聞くんです?」
勇者「……まさか私が魔王を殺したと疑ってらっしゃるのでは?」
勇者「魔王の死因は倒れた石板によるものではない、というのははっきりしたでしょう」
古畑「いえいえいえいえ、とんでもない! あくまで形式上のことです」
勇者「……まぁ、いいでしょう」
勇者「城内を適当にうろついてましたね」
古畑「魔王さんにお会いには?」
勇者「今まで何度も戦った間柄ですが、今日は一度も会ってません」
古畑「一度も?」
勇者「はい」
古畑「そうですか、ありがとうございます」
勇者「じゃあ私はこれで」
古畑「あ、すみません、もう一つだけ」
勇者「……なんです?」
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:46:31.70 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「先ほど魔法使いさんがテレポートで、魔王さんのいる部屋に入ろうとした時」
古畑「あなた止めましたよね? なぜです?」
古畑「ドアを爆破するより、その方がよっぽどスマートだった気がしますが……」
勇者「あなたは知らないでしょうが、テレポートというのは非常に魔力を消費するんです」
勇者「それに、あの時の私は魔王が死んでるなんてことは知らなかった」
勇者「そんな中に魔法使い一人で飛び込むのは危険だと考えるのは当然だと思いますが?」
古畑「おっしゃる通り」
古畑「さすが勇者さん、英雄らしい賢明な判断です」
勇者「…………」
古畑「あなた止めましたよね? なぜです?」
古畑「ドアを爆破するより、その方がよっぽどスマートだった気がしますが……」
勇者「あなたは知らないでしょうが、テレポートというのは非常に魔力を消費するんです」
勇者「それに、あの時の私は魔王が死んでるなんてことは知らなかった」
勇者「そんな中に魔法使い一人で飛び込むのは危険だと考えるのは当然だと思いますが?」
古畑「おっしゃる通り」
古畑「さすが勇者さん、英雄らしい賢明な判断です」
勇者「…………」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:49:19.68 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「そういえば、さっき魔法使いさんはテレポートは一日一回が限度、とおっしゃってました」
勇者「ハハ、あなたも人が悪い。知ってたんじゃないですか」
古畑「一日一回というのは、勇者さん、あなたも?」
勇者「はい」
古畑「よろしければ、今テレポートを見せて下さいませんか? 私どうしても見たいんです」
勇者「……断る」
古畑「なぜ?」
勇者「なぜって、決まってるでしょう」
勇者「非常に疲れる魔法を、ただ見せるためだけに使うなんてバカバカしいじゃないですか」
古畑「そうですかぁ~、たしかにその通りです」
古畑「私、バカな頼みを申し上げてしまいました。本当にごめんなさい」
勇者「ハハ、あなたも人が悪い。知ってたんじゃないですか」
古畑「一日一回というのは、勇者さん、あなたも?」
勇者「はい」
古畑「よろしければ、今テレポートを見せて下さいませんか? 私どうしても見たいんです」
勇者「……断る」
古畑「なぜ?」
勇者「なぜって、決まってるでしょう」
勇者「非常に疲れる魔法を、ただ見せるためだけに使うなんてバカバカしいじゃないですか」
古畑「そうですかぁ~、たしかにその通りです」
古畑「私、バカな頼みを申し上げてしまいました。本当にごめんなさい」
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:52:09.28 ID:2Ro3e5Mlo
古畑「私てっきり、今の勇者さんは“テレポートを使わない”ではなく」
古畑「もしかして“テレポートを使えない”のかなぁ~、とふと思ってしまったもので」
勇者「…………」
古畑「どっちなんでしょう?」
勇者「あなたに話す義務はないな」
古畑「それはそうです。んふふふ、申し訳ありません」
勇者「…………」
古畑「もしかして“テレポートを使えない”のかなぁ~、とふと思ってしまったもので」
勇者「…………」
古畑「どっちなんでしょう?」
勇者「あなたに話す義務はないな」
古畑「それはそうです。んふふふ、申し訳ありません」
勇者「…………」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:55:53.25 ID:2Ro3e5Mlo
タタタタタッ
今泉「古畑さぁん!」
古畑「遅いじゃないかぁ~、何やってたの」
今泉「何やってたのって、魔法使いさんを手伝ってたんですよ!」
今泉「あの人も穏やかそうな顔つきで、人使い荒すぎなんですもぉん!」
今泉「肩揉めだの、面白い話しろだの、疲れたから紅茶入れてこいだの……」
古畑「で、結果は?」
今泉「部屋の隅々まで調べましたが“魔力の痕跡”はどこにもありませんでした!」
古畑「……そう」
勇者「…………」ホッ
勇者「どうやら、自殺と断定して間違いなさそうですね」
勇者「さ、もう行っていいですか? 私は忙しいんだ」
古畑「あ、どうぞ、結構です。お引き止めして、申し訳ありませんでした」
古畑「…………」
今泉「古畑さぁん!」
古畑「遅いじゃないかぁ~、何やってたの」
今泉「何やってたのって、魔法使いさんを手伝ってたんですよ!」
今泉「あの人も穏やかそうな顔つきで、人使い荒すぎなんですもぉん!」
今泉「肩揉めだの、面白い話しろだの、疲れたから紅茶入れてこいだの……」
古畑「で、結果は?」
今泉「部屋の隅々まで調べましたが“魔力の痕跡”はどこにもありませんでした!」
古畑「……そう」
勇者「…………」ホッ
勇者「どうやら、自殺と断定して間違いなさそうですね」
勇者「さ、もう行っていいですか? 私は忙しいんだ」
古畑「あ、どうぞ、結構です。お引き止めして、申し訳ありませんでした」
古畑「…………」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/20(月) 23:58:28.29 ID:2Ro3e5Mlo
今泉「古畑さん、まさか勇者さんを疑ってるんですか?」
古畑「ん~……まぁね」
今泉「どうして戦いをやめようって話を持ちかけてきた魔王を、勇者さんが殺すんです!?」
今泉「勇者っていったら、ゲームじゃ主人公なんですよ? 正義の味方なんですよ!?」
古畑「でもさ、倒される側からしたら、勇者もしょせんは殺人者……だよね」
今泉「う、うわぁ~、古畑さんひねくれてるなぁ~!」
今泉「僕、そういう考えよくないと思うな」
今泉「古畑さん、あれでしょ。桃太郎を読むと鬼が可哀想って思うタイプだったでしょ?」
古畑「うるさいよ」ペシッ
今泉「あてっ!」
古畑「ん~……まぁね」
今泉「どうして戦いをやめようって話を持ちかけてきた魔王を、勇者さんが殺すんです!?」
今泉「勇者っていったら、ゲームじゃ主人公なんですよ? 正義の味方なんですよ!?」
古畑「でもさ、倒される側からしたら、勇者もしょせんは殺人者……だよね」
今泉「う、うわぁ~、古畑さんひねくれてるなぁ~!」
今泉「僕、そういう考えよくないと思うな」
今泉「古畑さん、あれでしょ。桃太郎を読むと鬼が可哀想って思うタイプだったでしょ?」
古畑「うるさいよ」ペシッ
今泉「あてっ!」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:03:03.12 ID:TROQoGIho
今泉「でももし勇者さんが魔王を殺したとしたら、次はどうするんでしょうね」
古畑「どうするって? もう目的は果たされてるでしょ」
今泉「いや、ゲームだと、もっと強い裏ボスが出てくるのがお決まりなんですけどね。こういう場合」
古畑「そんなのがいるんだ」
今泉「おばあちゃんに付き合わされてるうちに、僕もゲームに詳しくなりましてね」エヘヘ…
古畑「君は少しゲームから離れなさい」
古畑「どうするって? もう目的は果たされてるでしょ」
今泉「いや、ゲームだと、もっと強い裏ボスが出てくるのがお決まりなんですけどね。こういう場合」
古畑「そんなのがいるんだ」
今泉「おばあちゃんに付き合わされてるうちに、僕もゲームに詳しくなりましてね」エヘヘ…
古畑「君は少しゲームから離れなさい」
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:06:18.77 ID:TROQoGIho
今泉「まぁいずれにせよ、いつまでもここにはいられないわけですし」
今泉「古畑さんもお土産の一つや二つ、見つけておいた方がいいですよ。僕みたいに」ヒョイッ
古畑「……なに、その石ころ」
今泉「さっき兵士の人達と石板運んでる時、石板壁にぶつけちゃったんです。その欠片!」
古畑「相変わらずろくなことしないねぇ、君は」
今泉「これ、僕の宝物にしちゃおっと!」ゴソッ
古畑「ま、好きにしなさい」
今泉「古畑さんもお土産の一つや二つ、見つけておいた方がいいですよ。僕みたいに」ヒョイッ
古畑「……なに、その石ころ」
今泉「さっき兵士の人達と石板運んでる時、石板壁にぶつけちゃったんです。その欠片!」
古畑「相変わらずろくなことしないねぇ、君は」
今泉「これ、僕の宝物にしちゃおっと!」ゴソッ
古畑「ま、好きにしなさい」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:09:35.05 ID:TROQoGIho
― 城内・キッチン ―
テーブルに大量の料理が並んでいる。
今泉「うわぁ~、おいしそうな料理がいっぱいだなぁ」
メイド「だけどパーティー中止になっちゃったから、出せなくなっちゃいましたけどね」
メイド「こんなに料理が残って、シェフもガッカリしてましたよ。よかったら食べて下さいよ」
今泉「いいんですか!?」
メイド「どうぞどうぞ。ただし、こっちのケーキは食べないで下さいね。あたしのだから」
古畑「君もよく食うねえ~」
今泉「残り物は別腹!」
古畑「ん~……君、ちょっと聞きたいんだけど」
メイド「なんでしょう?」
テーブルに大量の料理が並んでいる。
今泉「うわぁ~、おいしそうな料理がいっぱいだなぁ」
メイド「だけどパーティー中止になっちゃったから、出せなくなっちゃいましたけどね」
メイド「こんなに料理が残って、シェフもガッカリしてましたよ。よかったら食べて下さいよ」
今泉「いいんですか!?」
メイド「どうぞどうぞ。ただし、こっちのケーキは食べないで下さいね。あたしのだから」
古畑「君もよく食うねえ~」
今泉「残り物は別腹!」
古畑「ん~……君、ちょっと聞きたいんだけど」
メイド「なんでしょう?」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:12:13.49 ID:TROQoGIho
古畑「たとえば……魔王さんが死ぬことによって、勇者さんが得することって何かあるかな?」
メイド「ええ、ありますよ!」
古畑「! ……教えてもらえる?」
メイド「これは噂なんですけどね」
今泉「うまい、うまい」モグモグムシャムシャ
メイド「ええ、ありますよ!」
古畑「! ……教えてもらえる?」
メイド「これは噂なんですけどね」
今泉「うまい、うまい」モグモグムシャムシャ
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:15:09.67 ID:TROQoGIho
メイド「勇者様って、自分が必要とされるために、自分の地位を守るために」
メイド「魔王に頼んでわざと王国を攻撃させてたって噂があるんですよ」
メイド「だから、最近の戦いでは魔王がすぐに撤退することが多くなったって」
古畑「んん~」
古畑「それが本当だとすると、魔族と停戦や和解するなんてのは勇者さんにとっては面白い話じゃないね」
メイド「はい、勇者様としてはずっといがみ合いが続いた方が好都合でしょうね」
古畑「なるほどぉ~」
古畑「……とりあえず動機はあるわけ、か」
今泉「いくらでも食べれちゃう」バクバクムシャムシャ
メイド「魔王に頼んでわざと王国を攻撃させてたって噂があるんですよ」
メイド「だから、最近の戦いでは魔王がすぐに撤退することが多くなったって」
古畑「んん~」
古畑「それが本当だとすると、魔族と停戦や和解するなんてのは勇者さんにとっては面白い話じゃないね」
メイド「はい、勇者様としてはずっといがみ合いが続いた方が好都合でしょうね」
古畑「なるほどぉ~」
古畑「……とりあえず動機はあるわけ、か」
今泉「いくらでも食べれちゃう」バクバクムシャムシャ
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:18:46.91 ID:TROQoGIho
― 城内・通路 ―
勇者「…………」スタスタ
古畑「どうも~」ヒョコッ
勇者「古畑さん、またあなたですか。てっきりもう元の世界に帰られたのかと思いましたよ」
古畑「私すっかりここが気に入りまして。もう少しだけここにいようかと思いまして」
勇者「……今度はなんの用です?」
古畑「実は先ほど、あなたに関するよからぬ噂を小耳に挟んだもので……」
勇者「ああ、私が魔王に持ちかけていたずらに戦いを長引かせてるという噂ですね」
古畑「ご存じでしたか」
勇者「そりゃもう。嫌でも耳に入ってきますよ。そういう根も葉もない誹謗中傷がね」
勇者「…………」スタスタ
古畑「どうも~」ヒョコッ
勇者「古畑さん、またあなたですか。てっきりもう元の世界に帰られたのかと思いましたよ」
古畑「私すっかりここが気に入りまして。もう少しだけここにいようかと思いまして」
勇者「……今度はなんの用です?」
古畑「実は先ほど、あなたに関するよからぬ噂を小耳に挟んだもので……」
勇者「ああ、私が魔王に持ちかけていたずらに戦いを長引かせてるという噂ですね」
古畑「ご存じでしたか」
勇者「そりゃもう。嫌でも耳に入ってきますよ。そういう根も葉もない誹謗中傷がね」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:21:32.15 ID:TROQoGIho
勇者「しかし、これだけは断言しておきましょう」
勇者「私は自分の地位なんかにこれっぽっちも執着してはいないと!」
古畑「いえ、私そんなつもりじゃ。お気を悪くされたらすみません」
勇者「で、それだけじゃないでしょう?」
古畑「はい、これだけお伺いしたいと思いまして」
古畑「仮に魔王さんが自殺したとして、なぜあんなおめかしをしてたんでしょう?」
古畑「普通、これから自分が死ぬって時にあんな派手に着飾るでしょうか?」
勇者「そりゃ、最期の時だ。タキシードぐらい着たってバチは当たらないでしょう」
古畑「あれ、あれれ、おかしいですねぇ~」
勇者「何がです?」
勇者「私は自分の地位なんかにこれっぽっちも執着してはいないと!」
古畑「いえ、私そんなつもりじゃ。お気を悪くされたらすみません」
勇者「で、それだけじゃないでしょう?」
古畑「はい、これだけお伺いしたいと思いまして」
古畑「仮に魔王さんが自殺したとして、なぜあんなおめかしをしてたんでしょう?」
古畑「普通、これから自分が死ぬって時にあんな派手に着飾るでしょうか?」
勇者「そりゃ、最期の時だ。タキシードぐらい着たってバチは当たらないでしょう」
古畑「あれ、あれれ、おかしいですねぇ~」
勇者「何がです?」
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:24:32.50 ID:TROQoGIho
古畑「どうして勇者さん、魔王さんがタキシードを着ていたことをご存じなんです?」
勇者「!」
古畑「あなたは先ほど今日魔王さんには一回も会っていないとおっしゃってた」
古畑「魔王さんの死体はうつ伏せで、詳しく調べなければタキシードを着ているなんてことは」
古畑「分からなかったはずです」
古畑「私も今泉が死体を動かした時、はじめて知りました」
古畑「現場の捜査に参加しなかったあなたが、魔王さんがタキシードを着ていたことを」
古畑「なぜ知っているのですか? んん~これは妙だと思いませんか?」
勇者「…………!」
勇者「!」
古畑「あなたは先ほど今日魔王さんには一回も会っていないとおっしゃってた」
古畑「魔王さんの死体はうつ伏せで、詳しく調べなければタキシードを着ているなんてことは」
古畑「分からなかったはずです」
古畑「私も今泉が死体を動かした時、はじめて知りました」
古畑「現場の捜査に参加しなかったあなたが、魔王さんがタキシードを着ていたことを」
古畑「なぜ知っているのですか? んん~これは妙だと思いませんか?」
勇者「…………!」
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:27:35.43 ID:TROQoGIho
勇者「実は……会うというほどではないが、見たんですよ」
古畑「見た?」
勇者「この城に来ていた魔王を、チラッとね」
古畑「そうですか、そうですか。それならば何もおかしくはありません。失礼しました」
勇者「……なるほど、これがあなたのやり方か。古畑さん」
古畑「え?」
勇者「こうやって人にまとわりついて、ボロを出すのを待つ。これがあなたの戦術というわけだ」
古畑「いえいえ誤解ですよ、私はそんな」
勇者「あなたがいた世界でも、こうやって犯人を暴いてきたのだと容易に想像できますよ」
古畑「そんな、想像でものをおっしゃらないで下さい」
勇者「……いいですか」
古畑「見た?」
勇者「この城に来ていた魔王を、チラッとね」
古畑「そうですか、そうですか。それならば何もおかしくはありません。失礼しました」
勇者「……なるほど、これがあなたのやり方か。古畑さん」
古畑「え?」
勇者「こうやって人にまとわりついて、ボロを出すのを待つ。これがあなたの戦術というわけだ」
古畑「いえいえ誤解ですよ、私はそんな」
勇者「あなたがいた世界でも、こうやって犯人を暴いてきたのだと容易に想像できますよ」
古畑「そんな、想像でものをおっしゃらないで下さい」
勇者「……いいですか」
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:30:13.25 ID:TROQoGIho
勇者「あの部屋には鍵がかかっていた。魔王は中で死んでいた。しかも鍵を持ったまま」
勇者「魔王を殺して部屋の鍵がかかったまま外に出るには、テレポートしか手段はない」
勇者「だが、部屋からは魔力の痕跡は一切発見されなかった」
勇者「いいですか、これが事実なんですよ」
古畑「おっしゃる通りです」
勇者「どうしても私を犯人にしたかったら、私がどうやって魔力の痕跡を残さずテレポートしたか」
勇者「証明してみせて下さい」
古畑「分かりました……証明してみせます」
勇者「楽しみにしていますよ」
勇者「魔王を殺して部屋の鍵がかかったまま外に出るには、テレポートしか手段はない」
勇者「だが、部屋からは魔力の痕跡は一切発見されなかった」
勇者「いいですか、これが事実なんですよ」
古畑「おっしゃる通りです」
勇者「どうしても私を犯人にしたかったら、私がどうやって魔力の痕跡を残さずテレポートしたか」
勇者「証明してみせて下さい」
古畑「分かりました……証明してみせます」
勇者「楽しみにしていますよ」
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:33:43.63 ID:TROQoGIho
― 城内・キッチン ―
今泉「で、あるんですか、証拠?」モグモグ
古畑「……ないね」
今泉「じゃあ、どうしようもないじゃないですか。もう帰りましょうよ~」
古畑「君一人で帰っていいよ」
今泉「またまた強がってぇ~。古畑さん、僕がいないとダメじゃないっすか~」
古畑「私がいつ君を必要とした?」
今泉「で、あるんですか、証拠?」モグモグ
古畑「……ないね」
今泉「じゃあ、どうしようもないじゃないですか。もう帰りましょうよ~」
古畑「君一人で帰っていいよ」
今泉「またまた強がってぇ~。古畑さん、僕がいないとダメじゃないっすか~」
古畑「私がいつ君を必要とした?」
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:36:23.89 ID:TROQoGIho
今泉「あ、このケーキ食べちゃおっと」パクッ
メイド「やだ、ちょっと! このケーキはあたしのですよ!」
今泉「え!?」
メイド「だから分けておいたのにぃ~! 髪は薄いくせに食欲だけはあるんだから!」
今泉「うぐぐぐ……」
古畑「何やってるんだよ、君は」
今泉「ごめんごめん、だけどこうやって削れば、口つけたのはなかったことになるから」
メイド「なりませんよ!」
今泉「ごめんちゃーい!」
古畑「…………!」
古畑「ちょっと待って」
メイド「やだ、ちょっと! このケーキはあたしのですよ!」
今泉「え!?」
メイド「だから分けておいたのにぃ~! 髪は薄いくせに食欲だけはあるんだから!」
今泉「うぐぐぐ……」
古畑「何やってるんだよ、君は」
今泉「ごめんごめん、だけどこうやって削れば、口つけたのはなかったことになるから」
メイド「なりませんよ!」
今泉「ごめんちゃーい!」
古畑「…………!」
古畑「ちょっと待って」
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:39:14.78 ID:TROQoGIho
古畑「君、今なんていった?」
今泉「ごめんちゃーい!」
古畑「違うよ、その前」
今泉「え? えぇと、削れば口つけたのはなかったことになるから……って」
古畑「…………」
古畑「……そういうことか」
古畑「今泉君」
今泉「なんです?」
古畑「さっきの石ころ、貸してもらえる」
今泉「いいですけど……どうすんですか、こんなもん」
今泉「ごめんちゃーい!」
古畑「違うよ、その前」
今泉「え? えぇと、削れば口つけたのはなかったことになるから……って」
古畑「…………」
古畑「……そういうことか」
古畑「今泉君」
今泉「なんです?」
古畑「さっきの石ころ、貸してもらえる」
今泉「いいですけど……どうすんですか、こんなもん」
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:42:05.83 ID:TROQoGIho
……
古畑「見知らぬ異国どころか異世界で起こった、この不可思議な事件……」
古畑「ん~、私にもようやく真相が見えてきました」
古畑「果たして勇者さんは、真の勇者なのか、それともただの殺人者なのか……」
古畑「どうぞ解決編をお楽しみ下さい」
古畑「古畑任三郎でした」
……
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:45:12.90 ID:TROQoGIho
― 城内・小部屋 ―
二人きりで対峙する古畑と勇者。
勇者「なんですか、古畑さん。人をこんなところまで呼び出して」
古畑「お忙しいところすみません。どうしてもお話ししたいことができたもので」
勇者「ほう? 事件の捜査は進展したんですか?」
古畑「はい、とても大きく進展しました」
古畑「魔王さんを殺したのは……勇者さん、あなたですね」
勇者「…………」
二人きりで対峙する古畑と勇者。
勇者「なんですか、古畑さん。人をこんなところまで呼び出して」
古畑「お忙しいところすみません。どうしてもお話ししたいことができたもので」
勇者「ほう? 事件の捜査は進展したんですか?」
古畑「はい、とても大きく進展しました」
古畑「魔王さんを殺したのは……勇者さん、あなたですね」
勇者「…………」
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:48:37.69 ID:TROQoGIho
勇者「お話を伺いましょう」
古畑「あなたはまず、この部屋にいた魔王さんを訪れました」
古畑「大事な話があるからと、鍵をかけました」
古畑「ここでおそらく、魔王さんはパーティーで停戦あるいは和解を提案することを話したのでしょう」
古畑「さらに、今までの戦いは勇者さんとの八百長だったこともバラす、と」
古畑「それをされたら困るあなたは剣で魔王さんを殺害し、死体に剣を握らせた……」
古畑「ここまではよろしいですね?」
勇者「続けて下さい」
古畑「あなたはまず、この部屋にいた魔王さんを訪れました」
古畑「大事な話があるからと、鍵をかけました」
古畑「ここでおそらく、魔王さんはパーティーで停戦あるいは和解を提案することを話したのでしょう」
古畑「さらに、今までの戦いは勇者さんとの八百長だったこともバラす、と」
古畑「それをされたら困るあなたは剣で魔王さんを殺害し、死体に剣を握らせた……」
古畑「ここまではよろしいですね?」
勇者「続けて下さい」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:51:40.75 ID:TROQoGIho
古畑「さて、あとはどう脱出するかです」
古畑「そのままテレポートを使ったのでは、魔力の痕跡が残ってしまう」
古畑「たとえば魔法使いさんが部屋を調べれば、何があったのかはバレバレです」
古畑「そこであなたはこの部屋にあった石板を魔王さんの上に倒し、その上に乗って」
古畑「テレポートしたのです」
古畑「こうすれば、部屋の床に痕跡を残さずテレポートすることができます」
勇者「…………」
古畑「そう、あなたがこの部屋のドアを開ける時、爆破を起こす魔法を使ったのは」
古畑「“石板はドアを開くための爆発によって倒れた”と我々に印象づけるためです」
古畑「魔法使いさんのテレポートをあわてて止めたのも、このためです」
古畑「もし元から石板が倒れていたのが分かってしまったら」
古畑「この石板を足場に犯人はテレポートした、という真相にたどり着かれるおそれがありますからね」
古畑「そのままテレポートを使ったのでは、魔力の痕跡が残ってしまう」
古畑「たとえば魔法使いさんが部屋を調べれば、何があったのかはバレバレです」
古畑「そこであなたはこの部屋にあった石板を魔王さんの上に倒し、その上に乗って」
古畑「テレポートしたのです」
古畑「こうすれば、部屋の床に痕跡を残さずテレポートすることができます」
勇者「…………」
古畑「そう、あなたがこの部屋のドアを開ける時、爆破を起こす魔法を使ったのは」
古畑「“石板はドアを開くための爆発によって倒れた”と我々に印象づけるためです」
古畑「魔法使いさんのテレポートをあわてて止めたのも、このためです」
古畑「もし元から石板が倒れていたのが分かってしまったら」
古畑「この石板を足場に犯人はテレポートした、という真相にたどり着かれるおそれがありますからね」
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:54:52.36 ID:TROQoGIho
古畑「しかし、まんまとこれらをやり遂げたあなたは」
古畑「魔王さんを押し潰している石板をいち早く部屋から片付けるよう、兵士の方々に命じました」
古畑「この瞬間、この部屋から魔力の痕跡が検出されることは絶対になくなったわけです」
古畑「私もうっかりしてました」
古畑「現場保存は捜査の鉄則だというのに、あの場の雰囲気にすっかり飲まれてしまってました」
古畑「しかし、先ほどうちの今泉がメイドさんのケーキをつまみ食いして」
古畑「自分の食べた箇所を削ってつまみ食いをなかったことにする、などという」
古畑「みっともない真似をしたおかげで気づいたのです」
古畑「テレポートしか脱出の手段はないのに、なぜ魔力の痕跡はどこにもないのか?」
古畑「それは……痕跡は現場からすでに削り取られてしまったからなのだと」
勇者「……よくできた推論だ。しかし、肝心の石板がなければ――」
古畑「あります」
勇者「え……」
古畑「魔王さんを押し潰している石板をいち早く部屋から片付けるよう、兵士の方々に命じました」
古畑「この瞬間、この部屋から魔力の痕跡が検出されることは絶対になくなったわけです」
古畑「私もうっかりしてました」
古畑「現場保存は捜査の鉄則だというのに、あの場の雰囲気にすっかり飲まれてしまってました」
古畑「しかし、先ほどうちの今泉がメイドさんのケーキをつまみ食いして」
古畑「自分の食べた箇所を削ってつまみ食いをなかったことにする、などという」
古畑「みっともない真似をしたおかげで気づいたのです」
古畑「テレポートしか脱出の手段はないのに、なぜ魔力の痕跡はどこにもないのか?」
古畑「それは……痕跡は現場からすでに削り取られてしまったからなのだと」
勇者「……よくできた推論だ。しかし、肝心の石板がなければ――」
古畑「あります」
勇者「え……」
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 00:57:38.76 ID:TROQoGIho
古畑「あの石板はおそらく、すでにあなたが埋めるなり砕くなりして処分してしまったでしょう」
古畑「ですが、ここにその欠片があるのです」ヒョイッ
古畑「今泉が土産にするといって、こっそりくすねていたものです」
古畑「魔法使いさんに聞いたところ、これは石板の一部で間違いないそうです」
古畑「あとはこの欠片から、あなたがテレポートを使った痕跡が発見されれば、事件は解決です!」
古畑「……いかがですか?」
勇者「…………」
古畑「ですが、ここにその欠片があるのです」ヒョイッ
古畑「今泉が土産にするといって、こっそりくすねていたものです」
古畑「魔法使いさんに聞いたところ、これは石板の一部で間違いないそうです」
古畑「あとはこの欠片から、あなたがテレポートを使った痕跡が発見されれば、事件は解決です!」
古畑「……いかがですか?」
勇者「…………」
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:00:26.70 ID:TROQoGIho
勇者「……お見事です」
古畑「ありがとうございます」
勇者「いつから私が犯人だと?」
古畑「一緒に魔王さんのいた部屋に入った時からです」
古畑「あの時、あなたは“私が魔王を殺してしまったのか”といいました」
古畑「石板が爆破で倒れたことをより強く印象付けるためにおっしゃったのでしょうが」
古畑「あの時点で魔王さんが死んでると断定するのはいくらなんでも早すぎでした」
古畑「せめて“魔王、しっかりしろ!”などというべきでした」
勇者「……参ったな。最初からお見通しだったというわけか」
古畑「……はい」
古畑「ありがとうございます」
勇者「いつから私が犯人だと?」
古畑「一緒に魔王さんのいた部屋に入った時からです」
古畑「あの時、あなたは“私が魔王を殺してしまったのか”といいました」
古畑「石板が爆破で倒れたことをより強く印象付けるためにおっしゃったのでしょうが」
古畑「あの時点で魔王さんが死んでると断定するのはいくらなんでも早すぎでした」
古畑「せめて“魔王、しっかりしろ!”などというべきでした」
勇者「……参ったな。最初からお見通しだったというわけか」
古畑「……はい」
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:04:23.37 ID:TROQoGIho
勇者「それともう一つ、こんなところに私を一人呼び出して」
勇者「もし私が逆上して襲いかかってきたら、証拠を奪おうとしたら、とは考えなかったのですか?」
古畑「考えませんでした」
勇者「なぜ?」
古畑「なぜなら、あなたは真の勇者だからです」
古畑「なんの力もない私を傷つけるような人ではない、と思いました」
勇者「どういうことです?」
古畑「ご自分でお気づきかは分かりませんが、あなたは二度ほっとなさっています」
古畑「一度目は、国王陛下が魔族との和解は振り出しに戻ったといった時」
古畑「二度目は、この部屋に魔力の痕跡がなかったのが判明した時です」
古畑「二度目の時は、作戦が成功したことへの安堵のように見えましたが」
古畑「一度目は違いました。心の底から人々のためを思っての安堵に見えました」
古畑「あの時、私はあなたが単に保身で殺人をするような人ではないと感じたのです」
勇者「もし私が逆上して襲いかかってきたら、証拠を奪おうとしたら、とは考えなかったのですか?」
古畑「考えませんでした」
勇者「なぜ?」
古畑「なぜなら、あなたは真の勇者だからです」
古畑「なんの力もない私を傷つけるような人ではない、と思いました」
勇者「どういうことです?」
古畑「ご自分でお気づきかは分かりませんが、あなたは二度ほっとなさっています」
古畑「一度目は、国王陛下が魔族との和解は振り出しに戻ったといった時」
古畑「二度目は、この部屋に魔力の痕跡がなかったのが判明した時です」
古畑「二度目の時は、作戦が成功したことへの安堵のように見えましたが」
古畑「一度目は違いました。心の底から人々のためを思っての安堵に見えました」
古畑「あの時、私はあなたが単に保身で殺人をするような人ではないと感じたのです」
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:07:29.80 ID:TROQoGIho
古畑「教えて頂けますか? ……本当の動機を」
勇者「古畑さん、一つの集団の平和を維持するために必要なものは何かご存じですか?」
古畑「……いえ」
勇者「それは“共通の敵”というやつです」
勇者「共通の敵がいれば、その集団はその敵に向かって一つにまとまることができるのです」
勇者「それは人だけでなく魔族も同じこと」
勇者「本来どう猛な魔族が魔王を中心に一つになっていたのは」
勇者「魔王のカリスマのおかげなどではなく、人間という共通の敵がいたからなのです」
勇者「つまり、人と魔族が対立しているからこそ、二つの集団はまとまってこれたのです」
勇者「それがもしも人と魔族が完全和解などしたらどうなるか……」
勇者「真の平和が訪れる? いいえ、それこそ人と魔族の入り混じった社会で無数の対立が生まれ」
勇者「制御不能の混沌と破滅の世が始まるでしょう」
勇者「私はそれを……どうしても防ぎたかったんです」
古畑「魔王さんに頼んで、たびたび戦いを起こしていたのもそのためだったんですね」
勇者「古畑さん、一つの集団の平和を維持するために必要なものは何かご存じですか?」
古畑「……いえ」
勇者「それは“共通の敵”というやつです」
勇者「共通の敵がいれば、その集団はその敵に向かって一つにまとまることができるのです」
勇者「それは人だけでなく魔族も同じこと」
勇者「本来どう猛な魔族が魔王を中心に一つになっていたのは」
勇者「魔王のカリスマのおかげなどではなく、人間という共通の敵がいたからなのです」
勇者「つまり、人と魔族が対立しているからこそ、二つの集団はまとまってこれたのです」
勇者「それがもしも人と魔族が完全和解などしたらどうなるか……」
勇者「真の平和が訪れる? いいえ、それこそ人と魔族の入り混じった社会で無数の対立が生まれ」
勇者「制御不能の混沌と破滅の世が始まるでしょう」
勇者「私はそれを……どうしても防ぎたかったんです」
古畑「魔王さんに頼んで、たびたび戦いを起こしていたのもそのためだったんですね」
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:10:34.10 ID:TROQoGIho
古畑「あなたのおっしゃることはよく分かりました」
古畑「あなたが単に保身や名誉欲で殺人をする人ではなくてよかった」
古畑「やはりあなたは私が思った通りの方でした」
勇者「光栄です」
古畑「私は部外者です。まもなくこの世界を去る身です」
古畑「この世界の行く末やあなたの主義について、どうこう言うつもりもそんな権利もありません」
古畑「しかし……しかし、それでもなお、あなたはこんな形で魔王さんを殺した責任は取らねばならない」
古畑「……そう思います」
勇者「その通りですね」
古畑「あなたが単に保身や名誉欲で殺人をする人ではなくてよかった」
古畑「やはりあなたは私が思った通りの方でした」
勇者「光栄です」
古畑「私は部外者です。まもなくこの世界を去る身です」
古畑「この世界の行く末やあなたの主義について、どうこう言うつもりもそんな権利もありません」
古畑「しかし……しかし、それでもなお、あなたはこんな形で魔王さんを殺した責任は取らねばならない」
古畑「……そう思います」
勇者「その通りですね」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:13:20.10 ID:TROQoGIho
勇者「あの石板にはなんと書いてあったかご存じですか?」
古畑「いえ」
勇者「実は『魔王を倒した勇者は、さらなる強敵に出会うであろう』と書いてあったのです」
古畑「ん~、今泉が裏ボスなどといってましたね」
勇者「裏ボス……裏ボスか、なるほど」
勇者「私はたしかに魔王を倒しましたが、古畑さん、あなたという裏ボスには勝てなかったようだ」ニコッ
古畑「…………」ニッコリ
勇者「では、参りましょう」
~ END ~
古畑「いえ」
勇者「実は『魔王を倒した勇者は、さらなる強敵に出会うであろう』と書いてあったのです」
古畑「ん~、今泉が裏ボスなどといってましたね」
勇者「裏ボス……裏ボスか、なるほど」
勇者「私はたしかに魔王を倒しましたが、古畑さん、あなたという裏ボスには勝てなかったようだ」ニコッ
古畑「…………」ニッコリ
勇者「では、参りましょう」
~ END ~
68: ◆P8bpXMw50A 2017/11/21(火) 01:13:56.11 ID:TROQoGIho
この事件は創作であり古畑任三郎は架空の刑事です
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:18:46.74 ID:7gzBVgtSo
乙
凄いな、ファンタジーRPGの世界に完全に古畑を落とし込んでる
凄いな、ファンタジーRPGの世界に完全に古畑を落とし込んでる
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:30:26.55 ID:Zn6lfYhD0
乙
かなりよかった
かなりよかった
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/21(火) 01:55:54.58 ID:i+bZ9e2v0
乙
面白かった
面白かった
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511182807/
Entry ⇒ 2017.11.24 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
女勇者「私の死を望む世界」
1: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:00:38.63 ID:crzuGK9B0
・全体的に雰囲気暗いです。
・地の文多め。
・地の文多め。
2: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:00:54.12 ID:crzuGK9B0
私は誰からも必要とされない、ただ無能で無力な存在だった。
だから魔王が人間を滅ぼそうとしていると聞いても、あまり怖くはなかった。
私を邪険にする人達を道連れにできるなら、滅ぼされてもいい――そんな風にすら思った。
神は何の冗談か、そんな私を勇者として選んだ。
体に勇者の紋章が浮かんだ時に思ったのは、使命感よりも優越感。
ようやく私は特別な、必要とされる存在になれる――
そう、思っていた。
だから魔王が人間を滅ぼそうとしていると聞いても、あまり怖くはなかった。
私を邪険にする人達を道連れにできるなら、滅ぼされてもいい――そんな風にすら思った。
神は何の冗談か、そんな私を勇者として選んだ。
体に勇者の紋章が浮かんだ時に思ったのは、使命感よりも優越感。
ようやく私は特別な、必要とされる存在になれる――
そう、思っていた。
3: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:01:20.03 ID:crzuGK9B0
勇者「くぅ…」
切りつけられた背中が痛む。
私の走ってきた後に背中の血が落ち、それは私の居場所を追っ手に知らせていた。
走らないと――そう思うが体力の限界を感じ、思うように足が動かない。
そうしている内に、追っ手はすぐに姿を現した。
兵士「いたぞ!」
深手を負い、ほとんど無力な私を、5人もの兵が追ってきた。
勇者(もう無理…)
私は彼らに殺される。
笑えてきた。誰からも見向きもされない存在から、誰からも死を望まれる存在になるなんて。
神はこういう形で私を特別にしてくれた――本当に笑える話だった。
切りつけられた背中が痛む。
私の走ってきた後に背中の血が落ち、それは私の居場所を追っ手に知らせていた。
走らないと――そう思うが体力の限界を感じ、思うように足が動かない。
そうしている内に、追っ手はすぐに姿を現した。
兵士「いたぞ!」
深手を負い、ほとんど無力な私を、5人もの兵が追ってきた。
勇者(もう無理…)
私は彼らに殺される。
笑えてきた。誰からも見向きもされない存在から、誰からも死を望まれる存在になるなんて。
神はこういう形で私を特別にしてくれた――本当に笑える話だった。
4: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:01:52.99 ID:crzuGK9B0
兵士「抵抗しなければ楽に逝かせてやる」
勇者「そうした方が、貴方の気持ちも楽なんでしょう?」
皮肉を込めて言うと、兵士の顔が歪む。
そりゃあそうだ、無力な人間を苦しめて殺すなんて、普通の人間なら平常心でできやしない。
勇者「苦しめばいい」
私を殺して痛まないなんて許さない。
私に力があれば、精一杯抵抗してやるのに。それができないなら、せめて呪いの言葉を吐く。
勇者「絶対に許さない」
私が憎いのは目の前の兵士だけじゃない。
憎いのは私の死を望む世界――
勇者「こんな世界、滅びてしまえばいい」
勇者「そうした方が、貴方の気持ちも楽なんでしょう?」
皮肉を込めて言うと、兵士の顔が歪む。
そりゃあそうだ、無力な人間を苦しめて殺すなんて、普通の人間なら平常心でできやしない。
勇者「苦しめばいい」
私を殺して痛まないなんて許さない。
私に力があれば、精一杯抵抗してやるのに。それができないなら、せめて呪いの言葉を吐く。
勇者「絶対に許さない」
私が憎いのは目の前の兵士だけじゃない。
憎いのは私の死を望む世界――
勇者「こんな世界、滅びてしまえばいい」
5: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:03:10.71 ID:crzuGK9B0
?「その必要はない」
その声がしたと同時だった。
兵士「うわああぁぁ!?」
勇者「――」
突然、兵士の1人が大量の血をぶちまけて倒れた。
その場にいた者の視線は倒れた兵士――の後ろにいたものに集中する。
そこにいたのは、威圧的な黒い全身鎧に身を包んだ騎士だった。
暗黒騎士「こいつらはお前を狙っている――間違いないな??」
勇者「――えぇ」
暗黒騎士「なら――」
暗黒騎士は近くにいた兵士を軽い剣さばきで切り伏せた。
残りの3人の兵士達は一斉に暗黒騎士にかかっていった。
だが、無駄だった。
「ぐあっ!?」
「が…っ」
「げあぁっ」
勝負にならなかった。暗黒騎士は一瞬で彼らを葬り去ったのだった。
その場で生き残ったのは、私と暗黒騎士、ただ2人。
勇者「ありがとうございます…」
暗黒騎士「勇者だな?」
勇者「多分ね」
この複雑な現状に、私は曖昧な返答を返した。
そして言うより早いと、肩の紋章を見せてやった。
その声がしたと同時だった。
兵士「うわああぁぁ!?」
勇者「――」
突然、兵士の1人が大量の血をぶちまけて倒れた。
その場にいた者の視線は倒れた兵士――の後ろにいたものに集中する。
そこにいたのは、威圧的な黒い全身鎧に身を包んだ騎士だった。
暗黒騎士「こいつらはお前を狙っている――間違いないな??」
勇者「――えぇ」
暗黒騎士「なら――」
暗黒騎士は近くにいた兵士を軽い剣さばきで切り伏せた。
残りの3人の兵士達は一斉に暗黒騎士にかかっていった。
だが、無駄だった。
「ぐあっ!?」
「が…っ」
「げあぁっ」
勝負にならなかった。暗黒騎士は一瞬で彼らを葬り去ったのだった。
その場で生き残ったのは、私と暗黒騎士、ただ2人。
勇者「ありがとうございます…」
暗黒騎士「勇者だな?」
勇者「多分ね」
この複雑な現状に、私は曖昧な返答を返した。
そして言うより早いと、肩の紋章を見せてやった。
6: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:03:44.23 ID:crzuGK9B0
暗黒騎士「…また、神のお遊びか」
勇者「?」
暗黒騎士「勇者選びのことだ。どう考えても勇者に適さぬ人間を勇者に選んで、そいつが何をするのか笑いながら眺めている」
勇者「そうなんですか?」
暗黒騎士「あくまで俺の想像だ」
だけどそれなりに納得のいく話だ。
私はとうの昔に信仰を捨てた。今回のこれは天罰だと言われれば、納得すると思う。
勇者「でも人間にとって勇者選びはお遊びじゃない」
だから私が殺されそうになった。
勇者「?」
暗黒騎士「勇者選びのことだ。どう考えても勇者に適さぬ人間を勇者に選んで、そいつが何をするのか笑いながら眺めている」
勇者「そうなんですか?」
暗黒騎士「あくまで俺の想像だ」
だけどそれなりに納得のいく話だ。
私はとうの昔に信仰を捨てた。今回のこれは天罰だと言われれば、納得すると思う。
勇者「でも人間にとって勇者選びはお遊びじゃない」
だから私が殺されそうになった。
7: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:04:50.27 ID:crzuGK9B0
歴史上、不定期に魔王が出現することがあった。
歴代の魔王はいずれも不死で、普通の人間が倒すことは不可能。
魔王を討つことができるのは、神が選んだ勇者ただ1人と言われている。十数年前魔王が現れた時も、当時の勇者が魔王を討ったと聞く。
暗黒騎士「だから魔王は勇者を狙うわけだが――」
勇者が殺されれば、次の者が勇者として選ばれる。
神は勇者に相応しい者を、人間の中から順位付けしている。つまり1番目が死ねば、2番目が勇者になる。そう言われていた。
暗黒騎士「だが、神が選んだ勇者が、人間達に認められなければ?」
勇者といえば魔王を倒せるだけの武力を持った者を連想する。
だが、資質はあるが未熟な者が選出されることもある。
暗黒騎士「しかし未熟な者の成長を待つにも限度がある」
勇者「だから成長を待つより、次の勇者に期待する」
確かに私は魔王どころが魔物の1匹も倒せない。そんな私がマトモに戦えるようになるまで、何年かかることか。
それなら私を殺し、次の勇者に期待する方が人間にとって合理的。
勇者「理不尽にも程がある」
暗黒騎士「神のお遊びだからな」
勇者「で――神の玩具である私に、何か御用ですか?」
歴代の魔王はいずれも不死で、普通の人間が倒すことは不可能。
魔王を討つことができるのは、神が選んだ勇者ただ1人と言われている。十数年前魔王が現れた時も、当時の勇者が魔王を討ったと聞く。
暗黒騎士「だから魔王は勇者を狙うわけだが――」
勇者が殺されれば、次の者が勇者として選ばれる。
神は勇者に相応しい者を、人間の中から順位付けしている。つまり1番目が死ねば、2番目が勇者になる。そう言われていた。
暗黒騎士「だが、神が選んだ勇者が、人間達に認められなければ?」
勇者といえば魔王を倒せるだけの武力を持った者を連想する。
だが、資質はあるが未熟な者が選出されることもある。
暗黒騎士「しかし未熟な者の成長を待つにも限度がある」
勇者「だから成長を待つより、次の勇者に期待する」
確かに私は魔王どころが魔物の1匹も倒せない。そんな私がマトモに戦えるようになるまで、何年かかることか。
それなら私を殺し、次の勇者に期待する方が人間にとって合理的。
勇者「理不尽にも程がある」
暗黒騎士「神のお遊びだからな」
勇者「で――神の玩具である私に、何か御用ですか?」
8: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:05:25.03 ID:crzuGK9B0
彼は助けてくれたとはいえ、今の私に心を許せる相手はいない。
だからすぐにでも逃げ出したかったが、激痛で立ち上がることもできない。
暗黒騎士「俺は魔王軍の幹部だ」
勇者「へぇ」
なら勇者の敵か。
勇者「勇者を討ちに来たんですか?」
暗黒騎士「いや」
まぁそうだろう。そうでなければ見殺しにしていたはずだ。
暗黒騎士「魔王軍にとっては、勇者は弱い者だと都合がいい」
暗黒騎士はそう言うと私に寄ってきて、目の前に立った。
物々しい鎧は威圧感があり、私の視線を釘付けにする。
暗黒騎士「お前を捕らえに来た」
あぁなるほど。
彼らは彼らで、私を利用するつもりか。
だからすぐにでも逃げ出したかったが、激痛で立ち上がることもできない。
暗黒騎士「俺は魔王軍の幹部だ」
勇者「へぇ」
なら勇者の敵か。
勇者「勇者を討ちに来たんですか?」
暗黒騎士「いや」
まぁそうだろう。そうでなければ見殺しにしていたはずだ。
暗黒騎士「魔王軍にとっては、勇者は弱い者だと都合がいい」
暗黒騎士はそう言うと私に寄ってきて、目の前に立った。
物々しい鎧は威圧感があり、私の視線を釘付けにする。
暗黒騎士「お前を捕らえに来た」
あぁなるほど。
彼らは彼らで、私を利用するつもりか。
9: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:05:50.57 ID:crzuGK9B0
勇者が弱い者なら、殺すより手中に収めておけばいい。そうすればもう、魔王に恐れるものはない。
勇者の死を望むのが人間達で、勇者を保護するのは魔王側の者とは、何ともおかしな状況だ。
とはいえ当事者である私に行動の選択肢はなく、暗黒騎士に促されるまま飛龍に乗り、あっという間に魔王城に着いた。
魔王城――勇者として旅をしていたなら、最終目的として辿り着くべき場所。
そんな場所に暗黒騎士の案内であっさり入り、ほとんど誰ともすれ違うことのない通路を通って一室に通された。
暗黒騎士「回復術師を呼んでくるからそこで待っていろ」
そう言われ待っている間、部屋を見渡す。
魔王城の外観からは想像できない程粗末で小さな部屋。暗黒騎士が部屋を出た際、外側から鍵をかけていた。
ここが私の軟禁場所――殺されるよりはマシだが、神に選ばれた勇者への仕打ちがこれか。
回復術師は私の背中の傷を治療すると、無駄口を叩かず部屋から出て行った。
魔物達から虐げられ、皮肉のひとつでも言われるものかと思っていたが、それもない。
敵すら私を見ていない。私は誰からも見向きされない――
何だ、今までと変わらないじゃないか。
勇者の死を望むのが人間達で、勇者を保護するのは魔王側の者とは、何ともおかしな状況だ。
とはいえ当事者である私に行動の選択肢はなく、暗黒騎士に促されるまま飛龍に乗り、あっという間に魔王城に着いた。
魔王城――勇者として旅をしていたなら、最終目的として辿り着くべき場所。
そんな場所に暗黒騎士の案内であっさり入り、ほとんど誰ともすれ違うことのない通路を通って一室に通された。
暗黒騎士「回復術師を呼んでくるからそこで待っていろ」
そう言われ待っている間、部屋を見渡す。
魔王城の外観からは想像できない程粗末で小さな部屋。暗黒騎士が部屋を出た際、外側から鍵をかけていた。
ここが私の軟禁場所――殺されるよりはマシだが、神に選ばれた勇者への仕打ちがこれか。
回復術師は私の背中の傷を治療すると、無駄口を叩かず部屋から出て行った。
魔物達から虐げられ、皮肉のひとつでも言われるものかと思っていたが、それもない。
敵すら私を見ていない。私は誰からも見向きされない――
何だ、今までと変わらないじゃないか。
10: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:06:19.87 ID:crzuGK9B0
勇者「ん」
治療後横になっていると、ドアの叩く音がし、私は起き上がる。
暗黒騎士「入るぞ」
勇者「どうぞ」
暗黒騎士「随分大人しいな」
勇者「まぁ」
暗黒騎士「…疲れているのか。すまなかったな」
意外。皮肉を言われるどころか、気を使われるなんて。
この暗黒騎士、鎧姿は威圧的だけど中身はそうでもないのかもしれない。
暗黒騎士「まぁ気を抜いてもいい。ここではお前に危害を加える者はいない」
次は優しい言葉。
一体何を企んでいるのか――あぁ、そういうことか。
暗黒騎士「大分不自由するとは思うが――」
勇者「気を使わなくてもいいですよ」
暗黒騎士「?」
暗黒騎士の顔は見えないが、疑問を浮かべたに違いない。
勇者「気を使わなくても私は自害しませんよ。そんなにやわじゃありませんから」
暗黒騎士「…」
治療後横になっていると、ドアの叩く音がし、私は起き上がる。
暗黒騎士「入るぞ」
勇者「どうぞ」
暗黒騎士「随分大人しいな」
勇者「まぁ」
暗黒騎士「…疲れているのか。すまなかったな」
意外。皮肉を言われるどころか、気を使われるなんて。
この暗黒騎士、鎧姿は威圧的だけど中身はそうでもないのかもしれない。
暗黒騎士「まぁ気を抜いてもいい。ここではお前に危害を加える者はいない」
次は優しい言葉。
一体何を企んでいるのか――あぁ、そういうことか。
暗黒騎士「大分不自由するとは思うが――」
勇者「気を使わなくてもいいですよ」
暗黒騎士「?」
暗黒騎士の顔は見えないが、疑問を浮かべたに違いない。
勇者「気を使わなくても私は自害しませんよ。そんなにやわじゃありませんから」
暗黒騎士「…」
11: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:07:05.39 ID:crzuGK9B0
暗黒騎士「…つまり俺はお前が自害することを恐れて気を使った。そう言いたいのか?」
勇者「違うんですか?」
暗黒騎士「俺はそこまで打算的じゃない」
勇者「失礼しました。優しくされるのには不慣れなもので」
暗黒騎士「…」
おや黙った。私は何か変なことを言っただろうか?
まぁ、人より歪んでいるのは自覚しているけれど。
勇者「保護して頂いただけで、十分ありがたく思っています」
暗黒騎士「そうか。居心地は悪いかもしれんがな」
勇者「この状況はいつまで続く見込みで?」
暗黒騎士「え?」
勇者「だって人間を滅ぼせば、私は用済みになるでしょう?」
暗黒騎士「!」
勇者「違うんですか?」
暗黒騎士「俺はそこまで打算的じゃない」
勇者「失礼しました。優しくされるのには不慣れなもので」
暗黒騎士「…」
おや黙った。私は何か変なことを言っただろうか?
まぁ、人より歪んでいるのは自覚しているけれど。
勇者「保護して頂いただけで、十分ありがたく思っています」
暗黒騎士「そうか。居心地は悪いかもしれんがな」
勇者「この状況はいつまで続く見込みで?」
暗黒騎士「え?」
勇者「だって人間を滅ぼせば、私は用済みになるでしょう?」
暗黒騎士「!」
12: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:07:44.83 ID:crzuGK9B0
勇者を手中に収めて魔王が次に行うのは、人間達への攻撃だ。
人間達も抵抗するだろうけど、殺すことのできない魔王相手にいつまでも粘ることはできないだろう。
勇者「あまり長引かないことを願うばかりです」
暗黒騎士「…お前、家族は?」
勇者「いませんよ」
私は正直に答えた。
勇者「私を必要とする人もいませんから」
この世界は私に死を望んでいる。
なら、私の心は痛まない。
勇者「こんな世界、滅びたって構わない――」
暗黒騎士「――が」
勇者「え?」
暗黒騎士が何かを呟いた。今、彼は何て?
暗黒騎士「俺が――」
暗黒騎士は私の頬に触れた。
暗黒騎士「俺が、お前を必要としてやる」
勇者「――!?」
人間達も抵抗するだろうけど、殺すことのできない魔王相手にいつまでも粘ることはできないだろう。
勇者「あまり長引かないことを願うばかりです」
暗黒騎士「…お前、家族は?」
勇者「いませんよ」
私は正直に答えた。
勇者「私を必要とする人もいませんから」
この世界は私に死を望んでいる。
なら、私の心は痛まない。
勇者「こんな世界、滅びたって構わない――」
暗黒騎士「――が」
勇者「え?」
暗黒騎士が何かを呟いた。今、彼は何て?
暗黒騎士「俺が――」
暗黒騎士は私の頬に触れた。
暗黒騎士「俺が、お前を必要としてやる」
勇者「――!?」
13: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:08:24.21 ID:crzuGK9B0
手が暖かい――至近距離に近づいた兜の隙間から、彼の視線を感じる。
彼は何も言わない。一体どんな顔をしているのか、私には想像もつかない。
暗黒騎士「…すまない」
暗黒騎士はそう言うと私から離れた。
暗黒騎士「今日は休め…。また来る」
そう言い残し、彼は部屋から出て行く。
私はというと、茫然としていた。
一体、何のつもり――?
私にはまだ、暗黒騎士の意図がまるでわからなかった。
彼は何も言わない。一体どんな顔をしているのか、私には想像もつかない。
暗黒騎士「…すまない」
暗黒騎士はそう言うと私から離れた。
暗黒騎士「今日は休め…。また来る」
そう言い残し、彼は部屋から出て行く。
私はというと、茫然としていた。
一体、何のつもり――?
私にはまだ、暗黒騎士の意図がまるでわからなかった。
14: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 19:08:59.57 ID:crzuGK9B0
暗黒騎士「…」
暗黒騎士は動揺を悟られぬよう、いつも通り堂々とした立ち振る舞いで歩いていた。
兜を脱げば、すぐにいつもの自分ではないと悟られるだろうが。
暗黒騎士(何をやっているんだ、俺は)
別に勇者を哀れんでいるつもりはなかった。
魔王の命令通り勇者を捕らえ、人間を滅ぼし、用済みになった勇者を処分する。それが普通の流れだ。
だというのに――
勇者『こんな世界、滅びたって構わない――』
その言葉を聞いた瞬間、全身の毛がぞわわっと逆立った。
暗黒騎士(俺は――あの感情を知っている)
今でも忘れることのできない思い出が、暗黒騎士の頭の中を駆け巡っていた。
暗黒騎士は動揺を悟られぬよう、いつも通り堂々とした立ち振る舞いで歩いていた。
兜を脱げば、すぐにいつもの自分ではないと悟られるだろうが。
暗黒騎士(何をやっているんだ、俺は)
別に勇者を哀れんでいるつもりはなかった。
魔王の命令通り勇者を捕らえ、人間を滅ぼし、用済みになった勇者を処分する。それが普通の流れだ。
だというのに――
勇者『こんな世界、滅びたって構わない――』
その言葉を聞いた瞬間、全身の毛がぞわわっと逆立った。
暗黒騎士(俺は――あの感情を知っている)
今でも忘れることのできない思い出が、暗黒騎士の頭の中を駆け巡っていた。
24: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 21:07:39.29 ID:crzuGK9B0
>翌日
暗黒騎士は軍を率いて森に潜んでいた。
近くには人間の国の王が住む城がそびえ立っている。
暗黒騎士「俺が最前線に立って突き進む。お前達はかかってくる兵士達を迎撃してくれ」
魔物「でも暗黒騎士様、それとても危険じゃあ」
暗黒騎士「だが、この方法が1番早い」
魔物達は訝しげな顔をする。暗黒騎士が勝負を急ぐのは珍しい。
暗黒騎士「この程度の国に時間をかけては魔王軍の名折れ」
魔物「あぁ、そういうことですか!まぁ、じゃないと人間達を滅ぼすなんてできませんよね~」
暗黒騎士「…」
魔物「どうしました?」
暗黒騎士「いや、何でも。では行くか」
突然の魔王軍の襲撃に、城の兵士達は混乱した。
暗黒騎士は軍を率いて森に潜んでいた。
近くには人間の国の王が住む城がそびえ立っている。
暗黒騎士「俺が最前線に立って突き進む。お前達はかかってくる兵士達を迎撃してくれ」
魔物「でも暗黒騎士様、それとても危険じゃあ」
暗黒騎士「だが、この方法が1番早い」
魔物達は訝しげな顔をする。暗黒騎士が勝負を急ぐのは珍しい。
暗黒騎士「この程度の国に時間をかけては魔王軍の名折れ」
魔物「あぁ、そういうことですか!まぁ、じゃないと人間達を滅ぼすなんてできませんよね~」
暗黒騎士「…」
魔物「どうしました?」
暗黒騎士「いや、何でも。では行くか」
突然の魔王軍の襲撃に、城の兵士達は混乱した。
25: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 21:08:06.12 ID:crzuGK9B0
暗黒騎士「はっ!」
兵士達は最前線に立つ暗黒騎士を狙うが、暗黒騎士の剣に一蹴される。
暗黒騎士が1人で5人の兵士を相手している間に、魔術師たちが奥から現れた。
やれ!――その号令で炎や電撃が暗黒騎士に襲いかかる。
暗黒騎士「ふん――」
暗黒騎士はブンと大きく剣を振る。
その太刀で襲いかかってきた魔法を切り、ついでに兵士達2人も戦闘不能にした。
兵士達の表情が歪む。
今のひと振りで、暗黒騎士が只者ではないと察したようだ。
それでも兵隊長と思わしき男は顔を歪めつつも、束でかかれと兵士達を焚きつけていた。
暗黒騎士「何人でも相手しよう」
この国は平和ボケしている。そんな国の兵士達など、何人束になってこようが暗黒騎士の敵ではなかった。
兵士達は最前線に立つ暗黒騎士を狙うが、暗黒騎士の剣に一蹴される。
暗黒騎士が1人で5人の兵士を相手している間に、魔術師たちが奥から現れた。
やれ!――その号令で炎や電撃が暗黒騎士に襲いかかる。
暗黒騎士「ふん――」
暗黒騎士はブンと大きく剣を振る。
その太刀で襲いかかってきた魔法を切り、ついでに兵士達2人も戦闘不能にした。
兵士達の表情が歪む。
今のひと振りで、暗黒騎士が只者ではないと察したようだ。
それでも兵隊長と思わしき男は顔を歪めつつも、束でかかれと兵士達を焚きつけていた。
暗黒騎士「何人でも相手しよう」
この国は平和ボケしている。そんな国の兵士達など、何人束になってこようが暗黒騎士の敵ではなかった。
26: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 21:08:33.07 ID:crzuGK9B0
一体、何人の兵を切ったか。
兵たちの主力と思われる者を何人か切り、統率が乱れた所で前を進む余裕ができた。
暗黒騎士は鼻のいい魔物を側へ呼ぶ。
暗黒騎士「王の所へ案内しろ」
魔物「了解です」
途中、兵ではない城の者とすれ違う。避難が遅れるとは、本当に平和ボケしている。
そういう者達は無視し突き進む。大抵の者は暗黒騎士の物々しい鎧を見ただけで圧倒され、歯向かおうとはしなかった。
魔物の案内する部屋の前には兵たちがいたが、別に問題はない。
護衛にもならぬ護衛を5秒で切り伏せ、暗黒騎士は扉を開けた。
王「ひ、ひいいぃぃ」
暗黒騎士「…哀れな姿だな」
暗黒騎士は感情を抑えて、無様な王に吐き捨てた。
兵たちの主力と思われる者を何人か切り、統率が乱れた所で前を進む余裕ができた。
暗黒騎士は鼻のいい魔物を側へ呼ぶ。
暗黒騎士「王の所へ案内しろ」
魔物「了解です」
途中、兵ではない城の者とすれ違う。避難が遅れるとは、本当に平和ボケしている。
そういう者達は無視し突き進む。大抵の者は暗黒騎士の物々しい鎧を見ただけで圧倒され、歯向かおうとはしなかった。
魔物の案内する部屋の前には兵たちがいたが、別に問題はない。
護衛にもならぬ護衛を5秒で切り伏せ、暗黒騎士は扉を開けた。
王「ひ、ひいいぃぃ」
暗黒騎士「…哀れな姿だな」
暗黒騎士は感情を抑えて、無様な王に吐き捨てた。
27: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 21:09:00.42 ID:crzuGK9B0
暗黒騎士「国を討つということは王を討つこと――」
王「やめてくれ!頼む!お前達と手を組んでもいい!」
暗黒騎士「…」
こうあっさり寝返ろうとするとは――無様すぎて嫌悪感すら沸く。
暗黒騎士「…この国に勇者が現れたそうだな」
王「そ、そうだ!勇者についての情報を教えよう!」
暗黒騎士「…ほう?」
王「勇者は山奥の村に住む小娘だ!」
王「勇者は天涯孤独の身。村の屋敷で使用人をやっているが、あまり食事を与えられてこず体は弱いらしい」
暗黒騎士「…お前の国の人間だろう?何で今まで何ともしてやらなかった?」
王「そんな山奥の村で起こっていることなどワシが把握しているわけないだろう」
王「それにお主達にとっても都合がいいではないか…そんな無力な小娘が勇者とは」
暗黒騎士「…」ドカッ
王「がっ!?」
王「やめてくれ!頼む!お前達と手を組んでもいい!」
暗黒騎士「…」
こうあっさり寝返ろうとするとは――無様すぎて嫌悪感すら沸く。
暗黒騎士「…この国に勇者が現れたそうだな」
王「そ、そうだ!勇者についての情報を教えよう!」
暗黒騎士「…ほう?」
王「勇者は山奥の村に住む小娘だ!」
王「勇者は天涯孤独の身。村の屋敷で使用人をやっているが、あまり食事を与えられてこず体は弱いらしい」
暗黒騎士「…お前の国の人間だろう?何で今まで何ともしてやらなかった?」
王「そんな山奥の村で起こっていることなどワシが把握しているわけないだろう」
王「それにお主達にとっても都合がいいではないか…そんな無力な小娘が勇者とは」
暗黒騎士「…」ドカッ
王「がっ!?」
28: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 21:09:26.51 ID:crzuGK9B0
暗黒騎士は剣を振り上げる。
王「ま、待て――勇者の情報を与えただろう!?」
暗黒騎士「あぁそうだな――だが胸糞悪くなった」
王「何が気に入らぬ!?人間の間で起こっていることなど、お主らには――」
暗黒騎士「関係あるんだよ」
暗黒騎士はそう言うと兜を脱いだ。
その顔を見て、王は絶句する。
暗黒騎士「俺も、元人間だからな」
暗黒騎士の額には、人間が魔族に転生した証の刻印がしっかり刻まれていた。
暗黒騎士「それにお前は――」
王「―――」
暗黒騎士「とっくの昔に、俺の恨みを買っていた」
王「ま、待て――勇者の情報を与えただろう!?」
暗黒騎士「あぁそうだな――だが胸糞悪くなった」
王「何が気に入らぬ!?人間の間で起こっていることなど、お主らには――」
暗黒騎士「関係あるんだよ」
暗黒騎士はそう言うと兜を脱いだ。
その顔を見て、王は絶句する。
暗黒騎士「俺も、元人間だからな」
暗黒騎士の額には、人間が魔族に転生した証の刻印がしっかり刻まれていた。
暗黒騎士「それにお前は――」
王「―――」
暗黒騎士「とっくの昔に、俺の恨みを買っていた」
29: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/08(木) 21:09:52.30 ID:crzuGK9B0
世界が滅びればいい――そう強く思ったのは、あの時だった。
幼馴染『おにぃ…もう走れないよ』
昔の光景が鮮明に浮かんだ。
幼馴染『いいんだ私…もう、諦める』
何を言っているんだ、俺はそう幼馴染を叱る。
それでも幼馴染は、涙を浮かべた笑顔で首を横に振った。
幼馴染『この世界で生きていくのは、辛すぎるよ』
それは幼馴染の本音。
俺が言葉を返せずにいると、幼馴染は続けた。
幼馴染『私は勇者にはなれない』
幼馴染『だからもっと強い人が勇者になって、おにぃの生きる世界を守る――』
幼馴染『それが、1番いいから』
嫌だ。
俺にはお前が必要なんだ――
そう言いかけた時、追っ手が姿を現した。
そして俺は、大事な人を失った。
幼馴染『おにぃ…もう走れないよ』
昔の光景が鮮明に浮かんだ。
幼馴染『いいんだ私…もう、諦める』
何を言っているんだ、俺はそう幼馴染を叱る。
それでも幼馴染は、涙を浮かべた笑顔で首を横に振った。
幼馴染『この世界で生きていくのは、辛すぎるよ』
それは幼馴染の本音。
俺が言葉を返せずにいると、幼馴染は続けた。
幼馴染『私は勇者にはなれない』
幼馴染『だからもっと強い人が勇者になって、おにぃの生きる世界を守る――』
幼馴染『それが、1番いいから』
嫌だ。
俺にはお前が必要なんだ――
そう言いかけた時、追っ手が姿を現した。
そして俺は、大事な人を失った。
36: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:39:45.32 ID:7CjjXFoN0
勇者「…あら」
帰還後、暗黒騎士は勇者の元を訪れる。
勇者は暇を持て余していた様子で、暗黒騎士の訪問に表情が少し明るくなった。
暗黒騎士「食事をほとんど残したそうだな」
勇者「量が多かったもので」
勇者はそう答えたが、厨房の者に聞けば勇者はパン半分と野菜しか食べていないようで、いくら少食でも食べなさすぎだ。
国王の言葉を思い出す。勇者は今まであまり食事を与えられてこなかった、と。
それを聞いてからだと、勇者の小柄な体型が痛々しく見えてきた。
暗黒騎士「お前の国の王を殺してきた」
勇者「へぇ」
暗黒騎士「お前を殺すよう命令した男だぞ」
勇者「そうですね」
思った以上に無反応だ。まぁ流石に大手をあげて喜べ、とは言わないが。
勇者「確かに命令したのは国王ですが、私の死を望んでいるのは国王だけじゃありませんから」
暗黒騎士「…そうだな」
あの小国の王の独断で、勇者を殺すなんて命令出せるはずがない。
政治的な背景は知らないが、きっと、勇者殺害命令には様々な人間の思惑が絡んでいるのだ。
暗黒騎士(それは、あの時も同じだったな)
人間達のやる事は、あの時と全く変わっていない。まぁそれは、実際魔王を倒したという実績ができてしまったせいでもあるけど。
帰還後、暗黒騎士は勇者の元を訪れる。
勇者は暇を持て余していた様子で、暗黒騎士の訪問に表情が少し明るくなった。
暗黒騎士「食事をほとんど残したそうだな」
勇者「量が多かったもので」
勇者はそう答えたが、厨房の者に聞けば勇者はパン半分と野菜しか食べていないようで、いくら少食でも食べなさすぎだ。
国王の言葉を思い出す。勇者は今まであまり食事を与えられてこなかった、と。
それを聞いてからだと、勇者の小柄な体型が痛々しく見えてきた。
暗黒騎士「お前の国の王を殺してきた」
勇者「へぇ」
暗黒騎士「お前を殺すよう命令した男だぞ」
勇者「そうですね」
思った以上に無反応だ。まぁ流石に大手をあげて喜べ、とは言わないが。
勇者「確かに命令したのは国王ですが、私の死を望んでいるのは国王だけじゃありませんから」
暗黒騎士「…そうだな」
あの小国の王の独断で、勇者を殺すなんて命令出せるはずがない。
政治的な背景は知らないが、きっと、勇者殺害命令には様々な人間の思惑が絡んでいるのだ。
暗黒騎士(それは、あの時も同じだったな)
人間達のやる事は、あの時と全く変わっていない。まぁそれは、実際魔王を倒したという実績ができてしまったせいでもあるけど。
37: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:40:16.95 ID:7CjjXFoN0
勇者「…すみません」
暗黒騎士「ん…?何がだ?」
勇者「せっかく気を使って私の所に来て下さっているのに、私と話していてもつまらないでしょう」
暗黒騎士「いや、そんな事はないが」
半分嘘だ。何を言っても反応が薄く、後ろ向きな発言が多い為、決して楽しい気分ではない。
自分も口下手な自覚はあるので、勇者だけのせいではないが。
暗黒騎士「なら話題を変えようか。…お前のことを聞いてもいいか?」
勇者「私の?」
暗黒騎士「あぁ。お前のことが知りたい」
勇者「まぁ…構いませんよ」
暗黒騎士(屋敷で下働きをしていたと聞いたが…)
王からそれを聞いたことは言わない。勇者の口から直接聞いて、会話のきっかけになればいいと思った。
暗黒騎士「ん…?何がだ?」
勇者「せっかく気を使って私の所に来て下さっているのに、私と話していてもつまらないでしょう」
暗黒騎士「いや、そんな事はないが」
半分嘘だ。何を言っても反応が薄く、後ろ向きな発言が多い為、決して楽しい気分ではない。
自分も口下手な自覚はあるので、勇者だけのせいではないが。
暗黒騎士「なら話題を変えようか。…お前のことを聞いてもいいか?」
勇者「私の?」
暗黒騎士「あぁ。お前のことが知りたい」
勇者「まぁ…構いませんよ」
暗黒騎士(屋敷で下働きをしていたと聞いたが…)
王からそれを聞いたことは言わない。勇者の口から直接聞いて、会話のきっかけになればいいと思った。
38: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:40:51.83 ID:7CjjXFoN0
勇者「私の父、悪徳商人だったんですよ」
暗黒騎士「いきなり面白いな」
勇者「それで恨みを買って、私が小さい頃に殺されまして。母は気を病んでほぼ同時期に亡くなりました」
暗黒騎士(それで重い…)
勇者「私は村のお金持ちに引き取って頂きました」
暗黒騎士「…そこでいじめられでもしたか?」
勇者「私が悪いんです」
暗黒騎士「え?」
勇者「本当に頭が悪くて、何をやっても駄目で、人に好かれることもできないから」
暗黒騎士は黙る。
魔王軍の中にも、気の毒な程無能で、努力の実らない者はいる。そういう者を周囲は煩わしく思うが、きっと本人も自己嫌悪していると思う。
勇者はきっと自分をそんなタイプだと言っているのだろう。勇者をよく知らない暗黒騎士は、フォローの発言もできなかった。
勇者「いつも腹立たしく思っていたんです」
暗黒騎士「…何にだ」
勇者「無能な自分自身と、無能な私を苦しめる世界が」
暗黒騎士「それじゃあ生きること自体が苦しかったんじゃないのか」
勇者「死ぬのも怖いですけどね」
勇者はそこで、今日初めてちょっとだけ笑った。
暗黒騎士「いきなり面白いな」
勇者「それで恨みを買って、私が小さい頃に殺されまして。母は気を病んでほぼ同時期に亡くなりました」
暗黒騎士(それで重い…)
勇者「私は村のお金持ちに引き取って頂きました」
暗黒騎士「…そこでいじめられでもしたか?」
勇者「私が悪いんです」
暗黒騎士「え?」
勇者「本当に頭が悪くて、何をやっても駄目で、人に好かれることもできないから」
暗黒騎士は黙る。
魔王軍の中にも、気の毒な程無能で、努力の実らない者はいる。そういう者を周囲は煩わしく思うが、きっと本人も自己嫌悪していると思う。
勇者はきっと自分をそんなタイプだと言っているのだろう。勇者をよく知らない暗黒騎士は、フォローの発言もできなかった。
勇者「いつも腹立たしく思っていたんです」
暗黒騎士「…何にだ」
勇者「無能な自分自身と、無能な私を苦しめる世界が」
暗黒騎士「それじゃあ生きること自体が苦しかったんじゃないのか」
勇者「死ぬのも怖いですけどね」
勇者はそこで、今日初めてちょっとだけ笑った。
39: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:41:38.51 ID:7CjjXFoN0
暗黒騎士は幼馴染を思い出す。
小さい頃はいじめられっこで、よく自分の背中に隠れていた幼馴染。
幼馴染『おにぃ…いつもごめんね』
幼馴染は周囲の子より鈍臭くて、気が弱かった。
そういう周囲より劣った存在は、虐げられる標的にされやすい。
幼馴染『私といるとおにぃも仲間はずれにされちゃうでしょ…?』
弱い者いじめする奴らなんかと遊びたくない。俺がそう言うと幼馴染は涙目になった。
幼馴染『私、やっぱり弱い者なんだね』
幼馴染『おにぃがいなくなったら私…』
今になってわかる。幼馴染は怖がっていたのだと。
弱い者が自分の力で生きていくことを恐れるのは、おかしな事じゃない。
当時の俺はそんなことわからなかったが、幼馴染と約束をした。
お前が弱いなら、俺が強くなる。俺がずっと、お前を守ってやると――
暗黒騎士(俺は、あいつとの約束を破った)
小さい頃はいじめられっこで、よく自分の背中に隠れていた幼馴染。
幼馴染『おにぃ…いつもごめんね』
幼馴染は周囲の子より鈍臭くて、気が弱かった。
そういう周囲より劣った存在は、虐げられる標的にされやすい。
幼馴染『私といるとおにぃも仲間はずれにされちゃうでしょ…?』
弱い者いじめする奴らなんかと遊びたくない。俺がそう言うと幼馴染は涙目になった。
幼馴染『私、やっぱり弱い者なんだね』
幼馴染『おにぃがいなくなったら私…』
今になってわかる。幼馴染は怖がっていたのだと。
弱い者が自分の力で生きていくことを恐れるのは、おかしな事じゃない。
当時の俺はそんなことわからなかったが、幼馴染と約束をした。
お前が弱いなら、俺が強くなる。俺がずっと、お前を守ってやると――
暗黒騎士(俺は、あいつとの約束を破った)
40: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:42:22.98 ID:7CjjXFoN0
勇者「すみません」
暗黒騎士「…ん?」
勇者「後ろ向きな話をしてしまって」
暗黒騎士「お前が後ろ向きな人間だというのがわかったから、構わん」
勇者「次は貴方の事を聞かせて頂けませんか?」
暗黒騎士「何だ。そんな事に興味あるのか?」
勇者「話して頂ければ興味が沸くかもしれません」
暗黒騎士「…」
嘘でもいいから興味があると言え、と思った。要領の悪い人間は嘘も下手だ。
それでも一応聞いてくれたのだから、話してみることにした。
暗黒騎士「俺は…お前と同じ国で生まれた」
勇者「じゃあ暗黒騎士さんは人間なんですか?」
暗黒騎士「元、な。人間が嫌になる気持ちはお前もわかるだろう」
勇者「はい」
詳しい理由については、話したくなかったので話さないことにした。
暗黒騎士「とにかく人間をやめてからずっと、鍛えながら魔物達と過ごしてきた。そして魔王様に実力を見初められ、魔王軍に入った」
勇者「貴方は有能なんですね」
暗黒騎士「…」
その言葉は素直に褒められたのか、卑屈さがこもっているのか、わからなくて少し困った。
暗黒騎士「…ん?」
勇者「後ろ向きな話をしてしまって」
暗黒騎士「お前が後ろ向きな人間だというのがわかったから、構わん」
勇者「次は貴方の事を聞かせて頂けませんか?」
暗黒騎士「何だ。そんな事に興味あるのか?」
勇者「話して頂ければ興味が沸くかもしれません」
暗黒騎士「…」
嘘でもいいから興味があると言え、と思った。要領の悪い人間は嘘も下手だ。
それでも一応聞いてくれたのだから、話してみることにした。
暗黒騎士「俺は…お前と同じ国で生まれた」
勇者「じゃあ暗黒騎士さんは人間なんですか?」
暗黒騎士「元、な。人間が嫌になる気持ちはお前もわかるだろう」
勇者「はい」
詳しい理由については、話したくなかったので話さないことにした。
暗黒騎士「とにかく人間をやめてからずっと、鍛えながら魔物達と過ごしてきた。そして魔王様に実力を見初められ、魔王軍に入った」
勇者「貴方は有能なんですね」
暗黒騎士「…」
その言葉は素直に褒められたのか、卑屈さがこもっているのか、わからなくて少し困った。
41: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:43:23.96 ID:7CjjXFoN0
勇者「どうして貴方程の方が、私を気にかけて下さるんですか?」
暗黒騎士「…」
いきなりのストレートな質問に押し黙る。何と答えればいいのか…。
勇者「魔王軍は勇者を閉じ込めておけば、あとは何の用もないはずですよね」
勇者「ここを出入りする方は貴方以外、私に何の興味も持ちません」
勇者「どうして貴方は私に興味を?」
暗黒騎士「…そうだな」
短い時間で色々考えたが、答えは1つしかない。
暗黒騎士「同情かもしれないな」
勇者「同情…」
言ってから少し後悔する。
同情なんて上から目線の言葉、より一層惨めになるだけではないか。
勇者「ありがとうございます」
だけど勇者は、
勇者「優しいんですね、暗黒騎士さん」
同情すら優しさと受け取る程、自尊心を失っていた。
暗黒騎士「…」
いきなりのストレートな質問に押し黙る。何と答えればいいのか…。
勇者「魔王軍は勇者を閉じ込めておけば、あとは何の用もないはずですよね」
勇者「ここを出入りする方は貴方以外、私に何の興味も持ちません」
勇者「どうして貴方は私に興味を?」
暗黒騎士「…そうだな」
短い時間で色々考えたが、答えは1つしかない。
暗黒騎士「同情かもしれないな」
勇者「同情…」
言ってから少し後悔する。
同情なんて上から目線の言葉、より一層惨めになるだけではないか。
勇者「ありがとうございます」
だけど勇者は、
勇者「優しいんですね、暗黒騎士さん」
同情すら優しさと受け取る程、自尊心を失っていた。
42: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:43:49.27 ID:7CjjXFoN0
暗黒騎士「…言っただろう、俺がお前を必要としてやると」
してやるなんてのも上から目線だ。
だけどこの勇者は、別にそんなの気にしていないのだろう。
勇者「嬉しいです」
勇者は笑顔になる。
手を差し伸べてくれるのなら、自分を見下していても構わない――きっと、そういう事だ。
勇者「でも私、必要とされるには役に立たない人間です」
暗黒騎士「――っ」
上から目線の同情に、何かを返したいと思う気持ち。
何も返せず、自分を無能と卑下する気持ち。
勇者の声と表情から、そんな気持ちが伝わってきた。
暗黒騎士(本当に、こいつは――)
どうしようもなく卑屈で、どうしようもなく気の毒で――
暗黒騎士「…役割を与えてやる」
勇者「役割…?」
暗黒騎士「これだ」
暗黒騎士は剣を手渡した。勇者にしてやれるのは、これ位しか思いつかない。
暗黒騎士「俺の剣を磨くという重要な仕事だ。お前に任せてもいいか」
勇者「重要な仕事…」
勇者の表情が少し明るくなった。
こんな事で嬉しそうになる勇者を見て、暗黒騎士は胸が痛んだ。
してやるなんてのも上から目線だ。
だけどこの勇者は、別にそんなの気にしていないのだろう。
勇者「嬉しいです」
勇者は笑顔になる。
手を差し伸べてくれるのなら、自分を見下していても構わない――きっと、そういう事だ。
勇者「でも私、必要とされるには役に立たない人間です」
暗黒騎士「――っ」
上から目線の同情に、何かを返したいと思う気持ち。
何も返せず、自分を無能と卑下する気持ち。
勇者の声と表情から、そんな気持ちが伝わってきた。
暗黒騎士(本当に、こいつは――)
どうしようもなく卑屈で、どうしようもなく気の毒で――
暗黒騎士「…役割を与えてやる」
勇者「役割…?」
暗黒騎士「これだ」
暗黒騎士は剣を手渡した。勇者にしてやれるのは、これ位しか思いつかない。
暗黒騎士「俺の剣を磨くという重要な仕事だ。お前に任せてもいいか」
勇者「重要な仕事…」
勇者の表情が少し明るくなった。
こんな事で嬉しそうになる勇者を見て、暗黒騎士は胸が痛んだ。
43: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 16:44:28.20 ID:7CjjXFoN0
暗黒騎士「…じゃあ俺はもう行く。長居してすまなかった」
そう行って足早に部屋を出た。
廊下を歩きながら思い出すのは、幼馴染の顔。
幼馴染『おにぃ、いつもありがとう』
幼馴染『皆が私に意地悪しても』
幼馴染『おにぃはいつも私を助けてくれるね』
暗黒騎士「…くっ」
勇者と幼馴染は違う。顔も喋り方も、全然似ていない。
それはわかっているが――
暗黒騎士(放っておけん…)
彼女を救いたいという気持ちが、どうしようもない程大きくなっていた。
そう行って足早に部屋を出た。
廊下を歩きながら思い出すのは、幼馴染の顔。
幼馴染『おにぃ、いつもありがとう』
幼馴染『皆が私に意地悪しても』
幼馴染『おにぃはいつも私を助けてくれるね』
暗黒騎士「…くっ」
勇者と幼馴染は違う。顔も喋り方も、全然似ていない。
それはわかっているが――
暗黒騎士(放っておけん…)
彼女を救いたいという気持ちが、どうしようもない程大きくなっていた。
45: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 21:59:58.47 ID:7CjjXFoN0
>翌日
暗黒騎士「お前が先代勇者か」
先代「…魔王軍の者か?」
先代勇者の情報が入ったので田舎を訪ねた。
暗黒騎士の鎧は目立ったが、遠巻きに見るだけで彼に声をかける者はいなかった。
先代「村の外に出よう」
暗黒騎士は了承する。
先代勇者――先代魔王を倒した当時は若造だったが、今は年齢を重ね貫禄を醸し出している。
聞けば、先代魔王を倒した後もずっと修行を続けていたとの事。
暗黒騎士「今回は勇者に選ばれなかったようだな」
先代「勇者は神が選ぶ。俺にどうこう言う権利はない」
暗黒騎士「…」
それなら、最初に勇者に選ばれた幼馴染は――
いや、やめておこう。こいつには関係ないことだ。
先代「勇者ではなくなった俺に何の用だ?」
暗黒騎士「悪いが命を貰いに来た。勇者でなくなっても、お前はまだ人間達の英雄だからな」
先代「なるほど、俺を殺して人々の希望を砕くか。しかし――」
先代勇者はそう言うと剣を構えた。
只者ではない、暗黒騎士は一瞬でそれを感じ取った。
先代「お前は魔王軍の主力級と見た。お前を討ち、魔王軍の希望を砕かせてもらおうか」
暗黒騎士「面白い」
何も問題はない、初めからやり合うつもりで来た。
暗黒騎士「お前が先代勇者か」
先代「…魔王軍の者か?」
先代勇者の情報が入ったので田舎を訪ねた。
暗黒騎士の鎧は目立ったが、遠巻きに見るだけで彼に声をかける者はいなかった。
先代「村の外に出よう」
暗黒騎士は了承する。
先代勇者――先代魔王を倒した当時は若造だったが、今は年齢を重ね貫禄を醸し出している。
聞けば、先代魔王を倒した後もずっと修行を続けていたとの事。
暗黒騎士「今回は勇者に選ばれなかったようだな」
先代「勇者は神が選ぶ。俺にどうこう言う権利はない」
暗黒騎士「…」
それなら、最初に勇者に選ばれた幼馴染は――
いや、やめておこう。こいつには関係ないことだ。
先代「勇者ではなくなった俺に何の用だ?」
暗黒騎士「悪いが命を貰いに来た。勇者でなくなっても、お前はまだ人間達の英雄だからな」
先代「なるほど、俺を殺して人々の希望を砕くか。しかし――」
先代勇者はそう言うと剣を構えた。
只者ではない、暗黒騎士は一瞬でそれを感じ取った。
先代「お前は魔王軍の主力級と見た。お前を討ち、魔王軍の希望を砕かせてもらおうか」
暗黒騎士「面白い」
何も問題はない、初めからやり合うつもりで来た。
46: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 22:00:16.13 ID:7CjjXFoN0
先代「覇あぁ!!」
先代勇者が剣を振り上げると、それだけで落ち葉が舞い上がった。常人であればここで圧倒される。
しかし暗黒騎士はあえて攻めた。まずは一撃、余裕で受け止められる。二擊目、三擊目、休まずに連続で打つ。これも止められる。
四擊目――かわされる。標的を失った刃が空中を切る。勇者の刃は――暗黒騎士の首を狙う。
暗黒騎士「くっ」
空中を切った剣を戻す余裕はなく、紙一重でかわす。剣先がわずかに兜をかすめた。
だが油断禁物、先代勇者は次の一撃を既に放っていた。
暗黒騎士「…っ!」
暗黒騎士は後方に大きく跳躍し、それをかわした。
先代「ほう…そんな重そうな鎧着てる割に、動けるではないか」
暗黒騎士「動けなくなるようなら着ない」
先代「それもそうだな!」
先代勇者は大きく笑う。それが彼の余裕を表しているかのようで、暗黒騎士に不快感が沸く。
暗黒騎士(余裕をかますなら、油断を突く)
暗黒騎士は再び攻める為、駆けた。
先代勇者が剣を振り上げると、それだけで落ち葉が舞い上がった。常人であればここで圧倒される。
しかし暗黒騎士はあえて攻めた。まずは一撃、余裕で受け止められる。二擊目、三擊目、休まずに連続で打つ。これも止められる。
四擊目――かわされる。標的を失った刃が空中を切る。勇者の刃は――暗黒騎士の首を狙う。
暗黒騎士「くっ」
空中を切った剣を戻す余裕はなく、紙一重でかわす。剣先がわずかに兜をかすめた。
だが油断禁物、先代勇者は次の一撃を既に放っていた。
暗黒騎士「…っ!」
暗黒騎士は後方に大きく跳躍し、それをかわした。
先代「ほう…そんな重そうな鎧着てる割に、動けるではないか」
暗黒騎士「動けなくなるようなら着ない」
先代「それもそうだな!」
先代勇者は大きく笑う。それが彼の余裕を表しているかのようで、暗黒騎士に不快感が沸く。
暗黒騎士(余裕をかますなら、油断を突く)
暗黒騎士は再び攻める為、駆けた。
47: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 22:00:50.69 ID:7CjjXFoN0
打ち合いは続く。相手の一撃一撃が重く感じるが、暗黒騎士も圧倒されてはいない。
打ち合いの中、隙がないかと探るが、そんな容易な相手ではない。
むしろ――
先代「覇ぁ!」
暗黒騎士「ぐっ」
暗黒騎士の方が危険な場面が多かった。
考える。身体能力はほぼ同等。先代勇者が自分より上回っているのは、経験。
自分が先代勇者より上回っているのは――
暗黒騎士「…っ」ダッ
先代(捨て身の突進…ヤケになったか?)
しかし捨て身による隙を、先代勇者が見逃すはずなかった。
先代「…捉えた!!」
暗黒騎士「っ!!」
先代勇者の剣が、暗黒騎士の胸に突き刺さる――と、同時
暗黒騎士「かかったな」
先代(刃が…)
先代勇者が気付いた時には遅く
先代「が…っ!!」
暗黒騎士の剣は、先代勇者の胸を貫いた。
打ち合いの中、隙がないかと探るが、そんな容易な相手ではない。
むしろ――
先代「覇ぁ!」
暗黒騎士「ぐっ」
暗黒騎士の方が危険な場面が多かった。
考える。身体能力はほぼ同等。先代勇者が自分より上回っているのは、経験。
自分が先代勇者より上回っているのは――
暗黒騎士「…っ」ダッ
先代(捨て身の突進…ヤケになったか?)
しかし捨て身による隙を、先代勇者が見逃すはずなかった。
先代「…捉えた!!」
暗黒騎士「っ!!」
先代勇者の剣が、暗黒騎士の胸に突き刺さる――と、同時
暗黒騎士「かかったな」
先代(刃が…)
先代勇者が気付いた時には遅く
先代「が…っ!!」
暗黒騎士の剣は、先代勇者の胸を貫いた。
48: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 22:01:26.39 ID:7CjjXFoN0
暗黒騎士「俺がお前を上回っていたのは、鎧による防御力だ」
暗黒騎士は心臓に到達する前で止まった、勇者の剣を見ながら言った。
暗黒騎士「思うように刃が進まなかっただろう?狙うなら、鎧の隙間を狙うんだったな」
先代「フ…それであえて胸に隙を作ったのか…ゴホッ」
先代勇者は仰向けに倒れながらも、相変わらずふてぶてしい態度を崩さなかった。
暗黒騎士は油断せず、剣を振り上げる。
暗黒騎士「…1つ、どうでもいい質問をさせてくれ」
先代「何だ…?」
暗黒騎士「お前が勇者になる前――神に勇者として選ばれた少女がいたのを知っているか」
先代「あぁ、いたなぁ」
先代「気の毒な少女だった…だが彼女が勇者として成長するのを待っていたら、人間は滅んでいたかもしれん」
暗黒騎士「…国に殺されたのは仕方なかった、と思うか」
先代「結果的には仕方なかったかもしれない――だが」
先代「神は間違っていると思ったな」
暗黒騎士「…そうか」
暗黒騎士「話は以上だ」
―――
暗黒騎士は心臓に到達する前で止まった、勇者の剣を見ながら言った。
暗黒騎士「思うように刃が進まなかっただろう?狙うなら、鎧の隙間を狙うんだったな」
先代「フ…それであえて胸に隙を作ったのか…ゴホッ」
先代勇者は仰向けに倒れながらも、相変わらずふてぶてしい態度を崩さなかった。
暗黒騎士は油断せず、剣を振り上げる。
暗黒騎士「…1つ、どうでもいい質問をさせてくれ」
先代「何だ…?」
暗黒騎士「お前が勇者になる前――神に勇者として選ばれた少女がいたのを知っているか」
先代「あぁ、いたなぁ」
先代「気の毒な少女だった…だが彼女が勇者として成長するのを待っていたら、人間は滅んでいたかもしれん」
暗黒騎士「…国に殺されたのは仕方なかった、と思うか」
先代「結果的には仕方なかったかもしれない――だが」
先代「神は間違っていると思ったな」
暗黒騎士「…そうか」
暗黒騎士「話は以上だ」
―――
49: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/09(金) 22:02:04.17 ID:7CjjXFoN0
幼馴染の件は先代勇者のせいではない。
ただ何となく、先代勇者の気持ちが知りたかっただけだ。
神は間違っている――その通りだ。
神は人間を救おうとは考えていない。勇者という運命に翻弄される人間を見て、どう足掻くか、楽しんでいる。
だけど、神に逆らう方法なんてありはしない。
暗黒騎士(現状はさぞ楽しい展開だろうな…)
幼馴染と勇者。運命に翻弄された2人の少女の顔が浮かび、どうしようもない位腹が立ってくる。
暗黒騎士(だが俺は魔王様に忠誠を誓った身)
ならば人間に都合のいいようになんてさせない。
それが神を楽しませる結果になったとしても、どこまでも魔王の為に動こう。
ただ何となく、先代勇者の気持ちが知りたかっただけだ。
神は間違っている――その通りだ。
神は人間を救おうとは考えていない。勇者という運命に翻弄される人間を見て、どう足掻くか、楽しんでいる。
だけど、神に逆らう方法なんてありはしない。
暗黒騎士(現状はさぞ楽しい展開だろうな…)
幼馴染と勇者。運命に翻弄された2人の少女の顔が浮かび、どうしようもない位腹が立ってくる。
暗黒騎士(だが俺は魔王様に忠誠を誓った身)
ならば人間に都合のいいようになんてさせない。
それが神を楽しませる結果になったとしても、どこまでも魔王の為に動こう。
52: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 10:08:51.00 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「元気か」
勇者「暗黒騎士さん」
勇者はいつも通りの覇気のない顔で暗黒騎士を出迎えた。
その手には、昨日暗黒騎士から預かった剣がある。
勇者「これ、磨いておきました」
暗黒騎士「あぁ、ありが――ん?」
暗黒騎士は勇者の手に注目した。指や手の平に傷ができている。
暗黒騎士「…剣を磨いて怪我したか?」
勇者「………はい」
何て不器用な…と思ったが侮辱してはいけない。一生懸命やってくれたのだ。
暗黒騎士「また頼んでもいいか」
勇者「はい、喜んで」
勇者は嬉しそうだ。きっと、役に立てることが嬉しいのだろう。
実際大した仕事じゃないが、勇者が喜ぶならそれでいい。そう思いながら、勇者から剣を受け取る。
暗黒騎士(………ん?)
一瞬、剣の感触に違和感があった。だが見た所剣に変わった所はない。
勇者「どうしました?」
暗黒騎士「あ、いや。…今使っている剣の手入れが必要になる時まで預かっていてくれるか。最近部屋がゴチャゴチャしてきてな」
勇者「あ、はい。わかりました」
勇者「暗黒騎士さん」
勇者はいつも通りの覇気のない顔で暗黒騎士を出迎えた。
その手には、昨日暗黒騎士から預かった剣がある。
勇者「これ、磨いておきました」
暗黒騎士「あぁ、ありが――ん?」
暗黒騎士は勇者の手に注目した。指や手の平に傷ができている。
暗黒騎士「…剣を磨いて怪我したか?」
勇者「………はい」
何て不器用な…と思ったが侮辱してはいけない。一生懸命やってくれたのだ。
暗黒騎士「また頼んでもいいか」
勇者「はい、喜んで」
勇者は嬉しそうだ。きっと、役に立てることが嬉しいのだろう。
実際大した仕事じゃないが、勇者が喜ぶならそれでいい。そう思いながら、勇者から剣を受け取る。
暗黒騎士(………ん?)
一瞬、剣の感触に違和感があった。だが見た所剣に変わった所はない。
勇者「どうしました?」
暗黒騎士「あ、いや。…今使っている剣の手入れが必要になる時まで預かっていてくれるか。最近部屋がゴチャゴチャしてきてな」
勇者「あ、はい。わかりました」
53: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 10:09:32.47 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「今日は…先代勇者を討ってきた」
暗黒騎士は勝手に喋り始める。
勇者は「へぇ」と薄い反応を見せた。
暗黒騎士「相手の剣がもう少し深く刺さっていたら俺の負けだった」
勇者「やっぱり強かったんですね、先代勇者は」
暗黒騎士「…あぁ」
やっぱり、と言われて複雑な気分になった。
奴は幼馴染の代わりに選ばれた勇者で、本来勇者ではなかった人間だ。
勇者「…暗黒騎士さん?」
暗黒騎士「あ、いや何でもない」
それから、他愛ない話を続けた。
暗黒騎士は勝手に喋り始める。
勇者は「へぇ」と薄い反応を見せた。
暗黒騎士「相手の剣がもう少し深く刺さっていたら俺の負けだった」
勇者「やっぱり強かったんですね、先代勇者は」
暗黒騎士「…あぁ」
やっぱり、と言われて複雑な気分になった。
奴は幼馴染の代わりに選ばれた勇者で、本来勇者ではなかった人間だ。
勇者「…暗黒騎士さん?」
暗黒騎士「あ、いや何でもない」
それから、他愛ない話を続けた。
54: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 10:09:59.45 ID:n6XkU/tv0
それからも、何度か勇者の所に足を運んだ。
暗黒騎士「土産だ、暇つぶしに使え」
スライム「うにゅうにゅ」
勇者「わぁ、変な生き物。面白いですね」
暗黒騎士(変な…)←可愛いと言うと思っていた
勇者は少し通う内に容易に心を開き、他愛ないことで笑顔を見せた。
暗黒騎士「…今日も国に襲撃を行った。大分ダメージを与えたと思う」
勇者「暗黒騎士さんは凄いんですね」
人間が攻撃されたと聞いても心を痛める様子はない。
世界が滅んでもいい――勇者の気持ちは、そう言った時と変わっていない。
暗黒騎士「土産だ、暇つぶしに使え」
スライム「うにゅうにゅ」
勇者「わぁ、変な生き物。面白いですね」
暗黒騎士(変な…)←可愛いと言うと思っていた
勇者は少し通う内に容易に心を開き、他愛ないことで笑顔を見せた。
暗黒騎士「…今日も国に襲撃を行った。大分ダメージを与えたと思う」
勇者「暗黒騎士さんは凄いんですね」
人間が攻撃されたと聞いても心を痛める様子はない。
世界が滅んでもいい――勇者の気持ちは、そう言った時と変わっていない。
55: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 10:10:26.53 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「今日は非番だし、少し出かけるか」
そう言って城外に連れ出し、森を案内する。
特に楽しいものではないだろうが、毎日部屋にこもっていても飽きるだろう。
勇者「あの花初めて見る。知ってる?」
スライム「うにゅうにゅ」コクリ
勇者「そっか、この辺知ってるの?」
スライム「うにゅ~」ダッ
勇者「あ、待ってー」ダッ
スライム「うにゅにゅ~」
勇者「ふぅふぅ、疲れた~」
暗黒騎士「休むか」
脆弱だなと思いながら、暗黒騎士は木陰に勇者を誘った。
そう言って城外に連れ出し、森を案内する。
特に楽しいものではないだろうが、毎日部屋にこもっていても飽きるだろう。
勇者「あの花初めて見る。知ってる?」
スライム「うにゅうにゅ」コクリ
勇者「そっか、この辺知ってるの?」
スライム「うにゅ~」ダッ
勇者「あ、待ってー」ダッ
スライム「うにゅにゅ~」
勇者「ふぅふぅ、疲れた~」
暗黒騎士「休むか」
脆弱だなと思いながら、暗黒騎士は木陰に勇者を誘った。
56: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 10:10:54.96 ID:n6XkU/tv0
勇者「今日はありがとうございます、暗黒騎士さん」
暗黒騎士「別に礼など必要はない」
勇者「貴方と会っている時間が1番楽しいです」
暗黒騎士「そうか…」
満面の笑みに心が痛む。勇者にとっての幸せはあまりにも小さい。
暗黒騎士「…何か望みはないのか」
勇者「望み…?」
勇者は首を傾げる。
暗黒騎士「こんな不自由な生活送ってたら、望みの1つや2つ出来るだろう」
勇者「望み…」
勇者は考え込んでいる。
自分なら酒が飲みたいとか、もっと体を動かしたいとか思うだろうが、勇者には本当に何も無いのか。
勇者「あ、そうだ」
暗黒騎士「思いついたか?」
勇者「暗黒騎士さんの顔が見たいです」
暗黒騎士「…俺の?」
暗黒騎士「別に礼など必要はない」
勇者「貴方と会っている時間が1番楽しいです」
暗黒騎士「そうか…」
満面の笑みに心が痛む。勇者にとっての幸せはあまりにも小さい。
暗黒騎士「…何か望みはないのか」
勇者「望み…?」
勇者は首を傾げる。
暗黒騎士「こんな不自由な生活送ってたら、望みの1つや2つ出来るだろう」
勇者「望み…」
勇者は考え込んでいる。
自分なら酒が飲みたいとか、もっと体を動かしたいとか思うだろうが、勇者には本当に何も無いのか。
勇者「あ、そうだ」
暗黒騎士「思いついたか?」
勇者「暗黒騎士さんの顔が見たいです」
暗黒騎士「…俺の?」
57: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 10:11:38.51 ID:n6XkU/tv0
勇者「駄目ですか?」
暗黒騎士「…」
いつも兜をかぶっているのには理由があった。
魔族に転生したのはもう十何年も前だが、それから外見はほとんど歳を取っていない。
自分は見た目に貫禄がない、と暗黒騎士は思っていたので、兜で威圧感を出していた。
だけど表情がわからないというのは、コミュニケーションを取る上ではマイナスだ。
暗黒騎士「構わん」
勇者「いいんですか!」
暗黒騎士「…笑うなよ?」
そう言って暗黒騎士は兜を脱ぎ、コンプレックスの塊である顔をさらけ出した。
その顔を見た勇者の反応は…。
勇者「思った通りでした」
意外だった。
暗黒騎士「もっといかついかと思ったとか、想像より若いとか、そういうことばかり言われてきたが」
勇者「そう言われるのが嫌で兜をかぶっていたんですか?」
暗黒騎士「まぁ、そうだ」
勇者「てっきり、表情が見えたら――」
勇者「暗黒騎士さん、辛いのがばれちゃうからかと思った」
暗黒騎士「――――え?」
暗黒騎士「…」
いつも兜をかぶっているのには理由があった。
魔族に転生したのはもう十何年も前だが、それから外見はほとんど歳を取っていない。
自分は見た目に貫禄がない、と暗黒騎士は思っていたので、兜で威圧感を出していた。
だけど表情がわからないというのは、コミュニケーションを取る上ではマイナスだ。
暗黒騎士「構わん」
勇者「いいんですか!」
暗黒騎士「…笑うなよ?」
そう言って暗黒騎士は兜を脱ぎ、コンプレックスの塊である顔をさらけ出した。
その顔を見た勇者の反応は…。
勇者「思った通りでした」
意外だった。
暗黒騎士「もっといかついかと思ったとか、想像より若いとか、そういうことばかり言われてきたが」
勇者「そう言われるのが嫌で兜をかぶっていたんですか?」
暗黒騎士「まぁ、そうだ」
勇者「てっきり、表情が見えたら――」
勇者「暗黒騎士さん、辛いのがばれちゃうからかと思った」
暗黒騎士「――――え?」
58: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 10:12:13.54 ID:n6XkU/tv0
勇者「暗黒騎士さんて時々、とても辛そうな様子を見せるんですよ。気がついてました?」
暗黒騎士「そんなわけ――」
勇者「私、ずっと人の機嫌をうかがって生きてきたから…」
勇者「顔が見えなくても、何となく暗黒騎士さんの感情がわかるんです」
暗黒騎士「…っ!!」
暗黒騎士が辛いとはっきり感じるのは、幼馴染を思い出す時。
勇者の姿は、幼馴染と重なることが多く――
勇者「あっ」
暗黒騎士は、衝動的に、勇者を抱きしめた。
勇者「どうしたんですか…?」
暗黒騎士「俺じゃない――」
辛い目にあっているのは、俺じゃない。
当の本人は、何が辛いのかすらわからなくなっている。
勇者「暗黒騎士さん…?」
この、無力で哀れな少女を守りたくて、苦痛に歪んだ自分の顔を見られたくなくて――
ただただ強く、勇者を抱きしめていた。
暗黒騎士「そんなわけ――」
勇者「私、ずっと人の機嫌をうかがって生きてきたから…」
勇者「顔が見えなくても、何となく暗黒騎士さんの感情がわかるんです」
暗黒騎士「…っ!!」
暗黒騎士が辛いとはっきり感じるのは、幼馴染を思い出す時。
勇者の姿は、幼馴染と重なることが多く――
勇者「あっ」
暗黒騎士は、衝動的に、勇者を抱きしめた。
勇者「どうしたんですか…?」
暗黒騎士「俺じゃない――」
辛い目にあっているのは、俺じゃない。
当の本人は、何が辛いのかすらわからなくなっている。
勇者「暗黒騎士さん…?」
この、無力で哀れな少女を守りたくて、苦痛に歪んだ自分の顔を見られたくなくて――
ただただ強く、勇者を抱きしめていた。
63: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:04:28.30 ID:n6XkU/tv0
勇者「今日は楽しかったです」
暗黒騎士「…そうか」
勇者を部屋まで見送り、暗黒騎士は自室へと戻る。
勇者はあっけらかんとしていたが、あの鋭い勇者に自分の動揺がばれていないか、とても不安だ。
俺は正気を失っている――それが、はっきり感じられた。
魔王「お楽しみだったようだな、暗黒騎士」
暗黒騎士「!?」
唐突に姿を現した魔王に驚く。
魔王はそんな暗黒騎士の顔が見えているのか、可笑しそうに笑った。
暗黒騎士「…お楽しみという程の事は」
魔王「最近、よくあの勇者の元に通っているな?」
暗黒騎士「…魔王様が思っているような事は一切ありませんので」
魔王「さて、何の事かのう?」
魔王は下世話に口を歪めた。
魔王のことは尊敬しているが、こういう所は本当に苦手だ。
暗黒騎士「…とにかく勇者とは大した事はしていません」
魔王「そうか…勇者の扱いについてお前に相談しようと思っていたが、わしの独断でいいかのう」
暗黒騎士「…勇者の?」
そう尋ね返すのは見切っていたかのように、魔王はにやりと笑う。
魔王「部屋で話そう」
暗黒騎士「はい…」
暗黒騎士は魔王の下世話な声色に、何か嫌なものを感じた。
暗黒騎士「…そうか」
勇者を部屋まで見送り、暗黒騎士は自室へと戻る。
勇者はあっけらかんとしていたが、あの鋭い勇者に自分の動揺がばれていないか、とても不安だ。
俺は正気を失っている――それが、はっきり感じられた。
魔王「お楽しみだったようだな、暗黒騎士」
暗黒騎士「!?」
唐突に姿を現した魔王に驚く。
魔王はそんな暗黒騎士の顔が見えているのか、可笑しそうに笑った。
暗黒騎士「…お楽しみという程の事は」
魔王「最近、よくあの勇者の元に通っているな?」
暗黒騎士「…魔王様が思っているような事は一切ありませんので」
魔王「さて、何の事かのう?」
魔王は下世話に口を歪めた。
魔王のことは尊敬しているが、こういう所は本当に苦手だ。
暗黒騎士「…とにかく勇者とは大した事はしていません」
魔王「そうか…勇者の扱いについてお前に相談しようと思っていたが、わしの独断でいいかのう」
暗黒騎士「…勇者の?」
そう尋ね返すのは見切っていたかのように、魔王はにやりと笑う。
魔王「部屋で話そう」
暗黒騎士「はい…」
暗黒騎士は魔王の下世話な声色に、何か嫌なものを感じた。
64: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:05:08.51 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「それで魔王様、勇者の扱いというのは」
勇者を生け捕りにし、人間への侵攻を進める――そういう話だったはずだ。
捕らえている間の勇者の扱いについては、特に指示はなかったが。
暗黒騎士「今の所勇者は逃げたり自害する様子は見受けられません。何か問題が…」
魔王「つまらん」
暗黒騎士「…は?」
魔王「上手くいきすぎだ。刺激が無くてつまらん」
暗黒騎士「何を…」
魔王が何を言っているのか、心底理解できない。
魔王「暗黒騎士、お前は優秀だ。人間への侵攻も滞りなく行っている」
魔王「だがわしはもう少し刺激を楽しみたい…」
暗黒騎士「どうしろと?」
尋ねると魔王は大笑いした。
心底困り果てる。これは、魔王が自分をからかっている時の笑いだ。
勇者を生け捕りにし、人間への侵攻を進める――そういう話だったはずだ。
捕らえている間の勇者の扱いについては、特に指示はなかったが。
暗黒騎士「今の所勇者は逃げたり自害する様子は見受けられません。何か問題が…」
魔王「つまらん」
暗黒騎士「…は?」
魔王「上手くいきすぎだ。刺激が無くてつまらん」
暗黒騎士「何を…」
魔王が何を言っているのか、心底理解できない。
魔王「暗黒騎士、お前は優秀だ。人間への侵攻も滞りなく行っている」
魔王「だがわしはもう少し刺激を楽しみたい…」
暗黒騎士「どうしろと?」
尋ねると魔王は大笑いした。
心底困り果てる。これは、魔王が自分をからかっている時の笑いだ。
65: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:05:58.54 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「魔王様、真面目に話して下さい」
魔王「悪い悪い」
魔王「わしには刺激が足らん。そこであの勇者だ」
暗黒騎士「勇者をどうするつもりで…?」
魔王「人間どもは勇者が我々の捕虜になっている事を知らん…」
暗黒騎士「まぁ、そうですね」
魔王「そこで人間達を絶望に叩き落とす為…」
魔王「勇者にわしの子を孕んでもらうというのはどうかのう」
暗黒騎士「!?」
魔王の下卑た笑みの奥に隠された残酷さに、暗黒騎士はぞわりと悪寒がした。
魔王「悪い悪い」
魔王「わしには刺激が足らん。そこであの勇者だ」
暗黒騎士「勇者をどうするつもりで…?」
魔王「人間どもは勇者が我々の捕虜になっている事を知らん…」
暗黒騎士「まぁ、そうですね」
魔王「そこで人間達を絶望に叩き落とす為…」
魔王「勇者にわしの子を孕んでもらうというのはどうかのう」
暗黒騎士「!?」
魔王の下卑た笑みの奥に隠された残酷さに、暗黒騎士はぞわりと悪寒がした。
66: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:06:32.41 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「反対です!」
魔王「おや即答か」
暗黒騎士「あの勇者は勇者として機能していません、魔王様が思うほど人間達は絶望しないでしょう」
暗黒騎士「それに今勇者の精神状態は安定している…そんな事して勇者が自害したらどうするんです!」
魔王「前者はともかく後者はごもっともだの」
暗黒騎士「おわかり頂けたなら、おやめ下さい」
魔王「だが…それはそれでいいかもしれんな」
暗黒騎士「なっ」
魔王「神が選んだ勇者を孕ませ、人間達を嘲笑してやるのは面白い」
魔王「勇者が自害し、新たな者が勇者となるならもっと面白い」
暗黒騎士「…!!」
魔王「そうでもしなければ、今の勇者はあまりにもつまらん」
暗黒騎士「魔王様…」
全身が冷えていくのを感じる。
魔王の意志は強い。このままでは、勇者が――
魔王「おや即答か」
暗黒騎士「あの勇者は勇者として機能していません、魔王様が思うほど人間達は絶望しないでしょう」
暗黒騎士「それに今勇者の精神状態は安定している…そんな事して勇者が自害したらどうするんです!」
魔王「前者はともかく後者はごもっともだの」
暗黒騎士「おわかり頂けたなら、おやめ下さい」
魔王「だが…それはそれでいいかもしれんな」
暗黒騎士「なっ」
魔王「神が選んだ勇者を孕ませ、人間達を嘲笑してやるのは面白い」
魔王「勇者が自害し、新たな者が勇者となるならもっと面白い」
暗黒騎士「…!!」
魔王「そうでもしなければ、今の勇者はあまりにもつまらん」
暗黒騎士「魔王様…」
全身が冷えていくのを感じる。
魔王の意志は強い。このままでは、勇者が――
67: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:07:00.41 ID:n6XkU/tv0
「おい」
勇者「すやすや…ん~?」
「起きろ」
勇者「ふあぁ……誰?」
暗黒騎士「俺だ」
勇者「暗黒騎士…さん?」
暗黒騎士「…こんな時間に悪い。起きろ」
勇者「ふぁい…どうしたんですかぁ」
暗黒騎士「今から外に出る」
勇者「え?…今、夜じゃないんですか?」
暗黒騎士「いいから来い」
勇者「でも…」
暗黒騎士「魔王様の子を孕みたくなければ早くしろ」
勇者「!」
勇者「すやすや…ん~?」
「起きろ」
勇者「ふあぁ……誰?」
暗黒騎士「俺だ」
勇者「暗黒騎士…さん?」
暗黒騎士「…こんな時間に悪い。起きろ」
勇者「ふぁい…どうしたんですかぁ」
暗黒騎士「今から外に出る」
勇者「え?…今、夜じゃないんですか?」
暗黒騎士「いいから来い」
勇者「でも…」
暗黒騎士「魔王様の子を孕みたくなければ早くしろ」
勇者「!」
68: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:07:43.91 ID:n6XkU/tv0
裏口から勇者を連れ出し、足早に城から遠ざかる。
勇者「よいしょ、よいしょ…」
何故か預けていた剣を持ってきた勇者は歩くのが遅い。
それでもまぁ、何とか誰にも見つからずにいる。
勇者「あの暗黒騎士さん…」
暗黒騎士「…何だ」
勇者「さっき言っていたことの意味は…」
暗黒騎士「魔王様が戯れを始めようとしている」
勇者「戯れ…」
暗黒騎士「少し歩けば洞窟がある。そこに身を隠していろ」
勇者「…でも魔王軍が混乱するのでは」
暗黒騎士「そんな心配している場合か。それとも魔王様の生贄になりたいか?」
勇者「それは…嫌ですけど」
暗黒騎士「煮え切らん返事だな?まさかお前…」
勇者「いえ…魔王は私が勇者だから、そうしようと考えたんですよね」
暗黒騎士「あぁ、そうだな」
勇者「あぁ、やっぱり」
勇者でなければ、誰も自分に見向きもしない。勇者はそう考える奴だ。
もっとも、この状況じゃ見向きもされない方が遥かにいいと思うが。
勇者「よいしょ、よいしょ…」
何故か預けていた剣を持ってきた勇者は歩くのが遅い。
それでもまぁ、何とか誰にも見つからずにいる。
勇者「あの暗黒騎士さん…」
暗黒騎士「…何だ」
勇者「さっき言っていたことの意味は…」
暗黒騎士「魔王様が戯れを始めようとしている」
勇者「戯れ…」
暗黒騎士「少し歩けば洞窟がある。そこに身を隠していろ」
勇者「…でも魔王軍が混乱するのでは」
暗黒騎士「そんな心配している場合か。それとも魔王様の生贄になりたいか?」
勇者「それは…嫌ですけど」
暗黒騎士「煮え切らん返事だな?まさかお前…」
勇者「いえ…魔王は私が勇者だから、そうしようと考えたんですよね」
暗黒騎士「あぁ、そうだな」
勇者「あぁ、やっぱり」
勇者でなければ、誰も自分に見向きもしない。勇者はそう考える奴だ。
もっとも、この状況じゃ見向きもされない方が遥かにいいと思うが。
69: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:08:12.84 ID:n6XkU/tv0
勇者「あの…私を逃がしたこと、貴方が真っ先に疑われるのでは?」
暗黒騎士「そうだろうな。だが、上手く対処できる自信はある」
本音では自信は50%。だけどここは嘘をつく。
勇者「けど私、こんなんでも一応勇者ですし…暗黒騎士さんに迷惑をかけるのは」
暗黒騎士「おい、馬鹿なこと考えるんじゃないぞ」
暗黒騎士は冷や汗をかきながら勇者に詰め寄る。
この様子なら魔王城に戻ると言いかねない。そうしたら、勇者は魔王と――
暗黒騎士「駄目だ!お前がいいと思っても俺が許さん!」
勇者「やっぱり優しいですね暗黒騎士さんは」
暗黒騎士「こんなのは優しさの内に入らん、俺が気に入らんだけだ!」
勇者「でも、誰よりも私の為に行動してくれます」
暗黒騎士「お前の為じゃない!」
これは自己満足。勇者という運命の犠牲になる人間がいるのが気に入らない。
今だに幼馴染のことが吹っ切れずにいる自分の、精一杯の神への抵抗で――
勇者「私、貴方とならいいんですけど」
暗黒騎士「――は?」
勇者「産むのは貴方との子じゃ、駄目ですか?」
暗黒騎士「―――」
その瞬間、思考が停止した。
暗黒騎士「そうだろうな。だが、上手く対処できる自信はある」
本音では自信は50%。だけどここは嘘をつく。
勇者「けど私、こんなんでも一応勇者ですし…暗黒騎士さんに迷惑をかけるのは」
暗黒騎士「おい、馬鹿なこと考えるんじゃないぞ」
暗黒騎士は冷や汗をかきながら勇者に詰め寄る。
この様子なら魔王城に戻ると言いかねない。そうしたら、勇者は魔王と――
暗黒騎士「駄目だ!お前がいいと思っても俺が許さん!」
勇者「やっぱり優しいですね暗黒騎士さんは」
暗黒騎士「こんなのは優しさの内に入らん、俺が気に入らんだけだ!」
勇者「でも、誰よりも私の為に行動してくれます」
暗黒騎士「お前の為じゃない!」
これは自己満足。勇者という運命の犠牲になる人間がいるのが気に入らない。
今だに幼馴染のことが吹っ切れずにいる自分の、精一杯の神への抵抗で――
勇者「私、貴方とならいいんですけど」
暗黒騎士「――は?」
勇者「産むのは貴方との子じゃ、駄目ですか?」
暗黒騎士「―――」
その瞬間、思考が停止した。
70: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:08:49.81 ID:n6XkU/tv0
勇者が側室となるのは、魔王ではなく、魔王軍幹部――それでも人間からすれば大差ないかもしれない。
暗黒騎士「だが、しかし…」
勇者「やっぱり、駄目ですか…」
暗黒騎士「いやっ…魔王様が了承するかは…」
違う、そうではない。
暗黒騎士自身が、動揺しているのだ。
勇者「貴方になら、何をされても構いませんから」
だけど勇者に残された選択肢は、あまりにも少なく。
勇者「それが叶わないなら、私を殺して下さい」
暗黒騎士「――っ」
この状況に、暗黒騎士も決断を迫られていた。
暗黒騎士「だが、しかし…」
勇者「やっぱり、駄目ですか…」
暗黒騎士「いやっ…魔王様が了承するかは…」
違う、そうではない。
暗黒騎士自身が、動揺しているのだ。
勇者「貴方になら、何をされても構いませんから」
だけど勇者に残された選択肢は、あまりにも少なく。
勇者「それが叶わないなら、私を殺して下さい」
暗黒騎士「――っ」
この状況に、暗黒騎士も決断を迫られていた。
71: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:10:08.83 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「俺は――」
その先の言葉をどうしても言えない。
暗黒騎士(どうすればいい…!?)
情けないと思いながら、空想の幼馴染に答えを求める。
もし、幼馴染なら何と言うか――
幼馴染『おにぃには、弱い人を救ってあげてほしいな』
救い。勇者にとっての救いとは?
勇者に残された選択肢に、救いと言えるものは…。
暗黒騎士「お前は…どうすれば救われる」
卑怯だ。自分が決断すべき場面で、勇者に答えの出ない質問をする。
勇者「そうですね、私は――」
勇者は自嘲気味に笑った。
勇者「こんな世界、滅べばいいと思います」
暗黒騎士「――っ!!」
暗黒騎士の胸に、勇者の言葉が突き刺さった。
その先の言葉をどうしても言えない。
暗黒騎士(どうすればいい…!?)
情けないと思いながら、空想の幼馴染に答えを求める。
もし、幼馴染なら何と言うか――
幼馴染『おにぃには、弱い人を救ってあげてほしいな』
救い。勇者にとっての救いとは?
勇者に残された選択肢に、救いと言えるものは…。
暗黒騎士「お前は…どうすれば救われる」
卑怯だ。自分が決断すべき場面で、勇者に答えの出ない質問をする。
勇者「そうですね、私は――」
勇者は自嘲気味に笑った。
勇者「こんな世界、滅べばいいと思います」
暗黒騎士「――っ!!」
暗黒騎士の胸に、勇者の言葉が突き刺さった。
72: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 18:10:39.28 ID:n6XkU/tv0
この無力な少女は、この世界に虐げられ、普通に生きることもできない。
暗黒騎士「勇者…!」
勇者「暗黒騎士さん…痛いですよ」
勇者がひたすら哀れで、この世界への憤りが抑えられず。
抱きしめられた衝動で、勇者は剣を落とした。
暗黒騎士「俺がお前を救う」
できもしない言葉を吐く。
勇者「…ありがとうございます」
勇者は決して明るくはない微笑みを浮かべた。
勇者「その言葉だけでも救われていますから――」
暗黒騎士「勇者…!」
勇者「暗黒騎士さん…痛いですよ」
勇者がひたすら哀れで、この世界への憤りが抑えられず。
抱きしめられた衝動で、勇者は剣を落とした。
暗黒騎士「俺がお前を救う」
できもしない言葉を吐く。
勇者「…ありがとうございます」
勇者は決して明るくはない微笑みを浮かべた。
勇者「その言葉だけでも救われていますから――」
75: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 19:56:51.05 ID:n6XkU/tv0
その時。
暗黒騎士「…っ」
唐突に、後方から嫌な気配を感じた。
いきなり現れた…いや、今までずっと気配を消していたのだ。自分でも察することができない程、気配消しに優れた実力者といえば…
暗黒騎士「魔王様…!?」
魔王「お楽しみの所悪いのう暗黒騎士」
暗闇から現れる魔王。その顔はいつも通り穏やかなのに、どこか威圧感がある。
暗黒騎士は油断せず、魔王と向き合う。
暗黒騎士「これは…」
魔王「言い訳せずともわかる。勇者を逃がすつもりのようだの」
暗黒騎士「そうです。俺は貴方の戯れには反対だ」
臆さずはっきり言う。下手な言い訳は逆効果だと思った。
暗黒騎士「魔王様こそ…今までずっと隠れてご覧になっていたのですか?」
魔王「ふっ…お前達のやりとりが面白くてのう」
相変わらず下世話だ。今更それに対し抗議した所で魔王が態度を改めるわけないが。
そんなことより、今は勇者をどう守るかの方が大事だ。
暗黒騎士「なら全て聞いていたはずですね」
魔王「勇者はお前の子を産みたいそうだな」
魔王は嘲笑を浮かべる。
誰のせいでこうなったと思っているのだ…暗黒騎士は少しいらついた。
暗黒騎士「…貴方の目的を果たすなら、それでいいのでは?」
暗黒騎士「…っ」
唐突に、後方から嫌な気配を感じた。
いきなり現れた…いや、今までずっと気配を消していたのだ。自分でも察することができない程、気配消しに優れた実力者といえば…
暗黒騎士「魔王様…!?」
魔王「お楽しみの所悪いのう暗黒騎士」
暗闇から現れる魔王。その顔はいつも通り穏やかなのに、どこか威圧感がある。
暗黒騎士は油断せず、魔王と向き合う。
暗黒騎士「これは…」
魔王「言い訳せずともわかる。勇者を逃がすつもりのようだの」
暗黒騎士「そうです。俺は貴方の戯れには反対だ」
臆さずはっきり言う。下手な言い訳は逆効果だと思った。
暗黒騎士「魔王様こそ…今までずっと隠れてご覧になっていたのですか?」
魔王「ふっ…お前達のやりとりが面白くてのう」
相変わらず下世話だ。今更それに対し抗議した所で魔王が態度を改めるわけないが。
そんなことより、今は勇者をどう守るかの方が大事だ。
暗黒騎士「なら全て聞いていたはずですね」
魔王「勇者はお前の子を産みたいそうだな」
魔王は嘲笑を浮かべる。
誰のせいでこうなったと思っているのだ…暗黒騎士は少しいらついた。
暗黒騎士「…貴方の目的を果たすなら、それでいいのでは?」
76: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 19:57:18.72 ID:n6XkU/tv0
そうなればいい、という気持ちは少しもなかった。ただ今は現状を何とかしたい。
しかし魔王はそこで、おどけた顔をした。
魔王「すまんが暗黒騎士…」
暗黒騎士「?」
魔王「お前に話した目的は、半分嘘だ」
暗黒騎士「…は?」
半分嘘――それはどっちを?
魔王「お前はわしが拾わねば、惨めな浮浪者だったな」
魔王「そんなお前がわしを裏切るかどうか――そこを試してみたかったのだ」
暗黒騎士「…っ!!」
魔王「あぁ、裏切るようけしかけたのはわしだ、だから裏切りに関して怒ってはおらん」
魔王「だがわしは初めから――」
暗黒騎士「まさか…」
魔王「その勇者には死んでもらうつもりだった」
暗黒騎士「!!」
しかし魔王はそこで、おどけた顔をした。
魔王「すまんが暗黒騎士…」
暗黒騎士「?」
魔王「お前に話した目的は、半分嘘だ」
暗黒騎士「…は?」
半分嘘――それはどっちを?
魔王「お前はわしが拾わねば、惨めな浮浪者だったな」
魔王「そんなお前がわしを裏切るかどうか――そこを試してみたかったのだ」
暗黒騎士「…っ!!」
魔王「あぁ、裏切るようけしかけたのはわしだ、だから裏切りに関して怒ってはおらん」
魔王「だがわしは初めから――」
暗黒騎士「まさか…」
魔王「その勇者には死んでもらうつもりだった」
暗黒騎士「!!」
77: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 19:57:45.84 ID:n6XkU/tv0
魔王「つまらんのだよ、その勇者は」
勇者「…」
勇者は話を聞いているのかすら疑わしい程、何の反応も無かった。
暗黒騎士「魔王様、人間達に大分ダメージを与えたとはいえ、まだ隠れた実力者がいるのかもしれませんよ!?この勇者を殺せば新たな者が勇者となり、魔王様が討たれる危険が…」
魔王「それが魔王だ」
魔王はすっぱりと暗黒騎士の言葉を切った。
魔王「不死の体に守られ、勇者との戦いを避けて魔王を名乗れるものか」
魔王「勇者として機能していない勇者はいらん」
暗黒騎士「…っ、勇者!」
魔王の言葉を聞き終わる前に、暗黒騎士は剣を構え魔王に突っ込んでいった。
その剣は、魔王の腕に止められる。
暗黒騎士「今の内に逃げろ!」
魔王「おやおや、不死の肉体を持つわしに立ち向かおうとは」
暗黒騎士「殺すことが目的じゃありませんから…!」
そう言って剣を振り上げ、魔王の腕を切り落とす。それから連続で、魔王の胸に剣を深く刺した。
魔王は無抵抗のまま、笑みを崩さない。
魔王「暗黒騎士、ようやくお前も面白くなったな…」
暗黒騎士「何…!?」
勇者「…」
勇者は話を聞いているのかすら疑わしい程、何の反応も無かった。
暗黒騎士「魔王様、人間達に大分ダメージを与えたとはいえ、まだ隠れた実力者がいるのかもしれませんよ!?この勇者を殺せば新たな者が勇者となり、魔王様が討たれる危険が…」
魔王「それが魔王だ」
魔王はすっぱりと暗黒騎士の言葉を切った。
魔王「不死の体に守られ、勇者との戦いを避けて魔王を名乗れるものか」
魔王「勇者として機能していない勇者はいらん」
暗黒騎士「…っ、勇者!」
魔王の言葉を聞き終わる前に、暗黒騎士は剣を構え魔王に突っ込んでいった。
その剣は、魔王の腕に止められる。
暗黒騎士「今の内に逃げろ!」
魔王「おやおや、不死の肉体を持つわしに立ち向かおうとは」
暗黒騎士「殺すことが目的じゃありませんから…!」
そう言って剣を振り上げ、魔王の腕を切り落とす。それから連続で、魔王の胸に剣を深く刺した。
魔王は無抵抗のまま、笑みを崩さない。
魔王「暗黒騎士、ようやくお前も面白くなったな…」
暗黒騎士「何…!?」
78: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 19:58:11.83 ID:n6XkU/tv0
魔王「言っただろう。お前も優秀すぎてつまらん」
暗黒騎士「な…」
魔王「元人間で、人間に対し恨みを抱えているお前を部下にすれば面白そうだと思っていた」
魔王「しかしお前は、わしの命令通りにしか動かなかった」
暗黒騎士「それがつまらないと?」
魔王「あぁ…そうだ」
暗黒騎士「っ!!」
不意打ちで横腹を殴られ、軽くよろめく。さっき切り落とした腕が、もう再生していた。
魔王がダメージを受けた所を見たことはない。そのせいで、この再生の早さは予想外だった。
魔王の攻撃はそれで終わらず…。
暗黒騎士「ぐがっ…!!」
腹に魔力を帯びた一撃を喰らい、吹っ飛ばされる。
吹っ飛ばされる最中腕を思い切り蹴り上げられ、それで剣が暗黒騎士とは逆方向に飛んでいった。
暗黒騎士(くそ…)
ここまで見事にやられるとは思わず、自分の目論見の甘さに舌打ちする。
だがそれより問題なのは…。
暗黒騎士「お前…何で逃げてないんだ!」
勇者「…」
勇者は相変わらず状況を無視しているかのように、一歩も動いていなかった。
暗黒騎士「な…」
魔王「元人間で、人間に対し恨みを抱えているお前を部下にすれば面白そうだと思っていた」
魔王「しかしお前は、わしの命令通りにしか動かなかった」
暗黒騎士「それがつまらないと?」
魔王「あぁ…そうだ」
暗黒騎士「っ!!」
不意打ちで横腹を殴られ、軽くよろめく。さっき切り落とした腕が、もう再生していた。
魔王がダメージを受けた所を見たことはない。そのせいで、この再生の早さは予想外だった。
魔王の攻撃はそれで終わらず…。
暗黒騎士「ぐがっ…!!」
腹に魔力を帯びた一撃を喰らい、吹っ飛ばされる。
吹っ飛ばされる最中腕を思い切り蹴り上げられ、それで剣が暗黒騎士とは逆方向に飛んでいった。
暗黒騎士(くそ…)
ここまで見事にやられるとは思わず、自分の目論見の甘さに舌打ちする。
だがそれより問題なのは…。
暗黒騎士「お前…何で逃げてないんだ!」
勇者「…」
勇者は相変わらず状況を無視しているかのように、一歩も動いていなかった。
79: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 19:58:38.05 ID:n6XkU/tv0
魔王「どうせ逃げても無駄だとわかっていたのだろう」
魔王はゆっくり勇者に迫る。それでも勇者は動かない。
暗黒騎士「おい…!!」
あの時と同じだ。
あの時も自分が弱かったせいで幼馴染を守れなかった。
幼馴染『この世界で生きていくのは、辛すぎるよ』
生きるのを諦め、死を望まれる者に生きてほしいと願うのは、自分だけで――
暗黒騎士「勇者!俺にはお前が――」
勇者「誰かの代わりに必要、ですか――?」
暗黒騎士「!?」
勇者「その反応、やっぱり」
勇者はこの状況にそぐわない、淀みのない笑顔を浮かべた。
魔王はゆっくり勇者に迫る。それでも勇者は動かない。
暗黒騎士「おい…!!」
あの時と同じだ。
あの時も自分が弱かったせいで幼馴染を守れなかった。
幼馴染『この世界で生きていくのは、辛すぎるよ』
生きるのを諦め、死を望まれる者に生きてほしいと願うのは、自分だけで――
暗黒騎士「勇者!俺にはお前が――」
勇者「誰かの代わりに必要、ですか――?」
暗黒騎士「!?」
勇者「その反応、やっぱり」
勇者はこの状況にそぐわない、淀みのない笑顔を浮かべた。
80: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 19:59:06.69 ID:n6XkU/tv0
勇者「何となくわかっていたんです、暗黒騎士さんが見ているのは私じゃなかったって」
暗黒騎士「それは…」
間違いではない。自分は勇者と幼馴染の姿を重ねていた。
だが、自分は幼馴染の事を一度も話したことはない。
勇者「暗黒騎士さんが私を気遣ってくれるのも、人間に恨みを抱いている理由も――きっと大切な人を失ったんだろうなぁって、ちょっと想像したらわかっちゃうんですよ」
その様子はもう、未練を捨てたかのように吹っ切れていて――
勇者「それでも良かったんです、私に優しいのは貴方だけだったから」
暗黒騎士「違う、俺は」
勇者を救いたいという気持ちは、本物だった。
魔王「どの道もう終わりだ」
やめろ――暗黒騎士は駆ける。
勇者「こんな世界、滅びればいいけど――」
勇者「貴方だけは幸せでいてほしいです」
暗黒騎士「…っ!!」
暗黒騎士「それは…」
間違いではない。自分は勇者と幼馴染の姿を重ねていた。
だが、自分は幼馴染の事を一度も話したことはない。
勇者「暗黒騎士さんが私を気遣ってくれるのも、人間に恨みを抱いている理由も――きっと大切な人を失ったんだろうなぁって、ちょっと想像したらわかっちゃうんですよ」
その様子はもう、未練を捨てたかのように吹っ切れていて――
勇者「それでも良かったんです、私に優しいのは貴方だけだったから」
暗黒騎士「違う、俺は」
勇者を救いたいという気持ちは、本物だった。
魔王「どの道もう終わりだ」
やめろ――暗黒騎士は駆ける。
勇者「こんな世界、滅びればいいけど――」
勇者「貴方だけは幸せでいてほしいです」
暗黒騎士「…っ!!」
81: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 19:59:34.62 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士はその時頭で考えて行動してはいなかった。
駆けた先、勇者の足元付近に剣が落ちていた。だから、拾った。
そして無防備な魔王の胸に、剣を深く突き刺した。
魔王「無駄だと――」
しかし、次の瞬間魔王の顔が歪む。
余裕が崩れた…?疑問に思いながら剣を引っこ抜く。そして違和感。
魔王が口から血を吐く――傷口が再生しない?
暗黒騎士は無心ながらも、普通の体が相手であれば致命傷になる一撃を放っていた。
それを無防備で喰らった魔王は、そこに崩れ落ちる。
魔王「その剣か――」
暗黒騎士「…え?」
魔王の視線の先、自分が手に持っていた剣を暗黒騎士も見る。
魔王「その剣から勇者の加護を感じる」
暗黒騎士「…!?」
この剣は勇者に預け、勇者が磨いていたもの。
だがまさか、それだけでこの剣が魔王を討つ為の刃になったとでも…!?
魔王「世の中は不可解なことで成り立っておるのう」
魔王は弱った様子で、大きく笑った。
駆けた先、勇者の足元付近に剣が落ちていた。だから、拾った。
そして無防備な魔王の胸に、剣を深く突き刺した。
魔王「無駄だと――」
しかし、次の瞬間魔王の顔が歪む。
余裕が崩れた…?疑問に思いながら剣を引っこ抜く。そして違和感。
魔王が口から血を吐く――傷口が再生しない?
暗黒騎士は無心ながらも、普通の体が相手であれば致命傷になる一撃を放っていた。
それを無防備で喰らった魔王は、そこに崩れ落ちる。
魔王「その剣か――」
暗黒騎士「…え?」
魔王の視線の先、自分が手に持っていた剣を暗黒騎士も見る。
魔王「その剣から勇者の加護を感じる」
暗黒騎士「…!?」
この剣は勇者に預け、勇者が磨いていたもの。
だがまさか、それだけでこの剣が魔王を討つ為の刃になったとでも…!?
魔王「世の中は不可解なことで成り立っておるのう」
魔王は弱った様子で、大きく笑った。
82: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 20:00:07.26 ID:n6XkU/tv0
魔王「こんな間抜けな死に方する魔王は、歴代でわしが初めてだろう」
暗黒騎士「魔王様…」
魔王には恩もあり、忠誠もある。
だから自分の手で魔王を殺してしまうなんて、暗黒騎士にとっては不本意で――
魔王「先のことを考えよ、暗黒騎士」
暗黒騎士「先の…?」
魔王「詳しくはわしの遺言状でも読め。喜ぶのだな暗黒騎士」
魔王「人間を滅ぼすのは、お前だ――」
暗黒騎士「――!!」
暗黒騎士は茫然としていた。今だ現状を受け入れられない。
しかし、そうしている暇はなかった。
暗黒騎士「…!!」
大勢の気配がこちらに迫ってくる。
大群はあっという間に自分たちを囲んだ。彼らは、魔王軍の魔物達だ。
暗黒騎士「魔王様…」
魔王には恩もあり、忠誠もある。
だから自分の手で魔王を殺してしまうなんて、暗黒騎士にとっては不本意で――
魔王「先のことを考えよ、暗黒騎士」
暗黒騎士「先の…?」
魔王「詳しくはわしの遺言状でも読め。喜ぶのだな暗黒騎士」
魔王「人間を滅ぼすのは、お前だ――」
暗黒騎士「――!!」
暗黒騎士は茫然としていた。今だ現状を受け入れられない。
しかし、そうしている暇はなかった。
暗黒騎士「…!!」
大勢の気配がこちらに迫ってくる。
大群はあっという間に自分たちを囲んだ。彼らは、魔王軍の魔物達だ。
83: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 20:00:34.09 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「…」
戯れの気持ちを持たぬ彼らなら、少なくとも勇者を殺しはしないはず。
暗黒騎士はそこから逃げ出そうとも、抵抗しようとも思わなかった。自分は魔王を殺した反逆者。反逆者は罰を受けるのが当然。
しかし。
魔物「暗黒騎士様…」
暗黒騎士「…?」
彼らから殺気はまるで感じない。
それどころか、自分の錯覚か、自分に敬意を払っているようにも感じられ…。
暗黒騎士「どうした…俺を殺さないのか」
魔物「とんでもない」
魔物「魔王様の遺言に従い――」
魔物「貴方を次の魔王と認めます」
暗黒騎士「――っ!?」
戯れの気持ちを持たぬ彼らなら、少なくとも勇者を殺しはしないはず。
暗黒騎士はそこから逃げ出そうとも、抵抗しようとも思わなかった。自分は魔王を殺した反逆者。反逆者は罰を受けるのが当然。
しかし。
魔物「暗黒騎士様…」
暗黒騎士「…?」
彼らから殺気はまるで感じない。
それどころか、自分の錯覚か、自分に敬意を払っているようにも感じられ…。
暗黒騎士「どうした…俺を殺さないのか」
魔物「とんでもない」
魔物「魔王様の遺言に従い――」
魔物「貴方を次の魔王と認めます」
暗黒騎士「――っ!?」
84: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 20:01:01.23 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士「俺が次の魔王だと!?俺は不死の体を持っていないぞ!」
魔物「それでも、我々を束ねることはできます」
暗黒騎士「!!」
魔王の死に際の言葉を思い出す。
人間を滅ぼすのはお前――つまり、自分が魔王となり人間を滅ぼす。
暗黒騎士「しかし…」
歴史上、魔王とは不死の体を持つ者だった。
だというのに、自分が魔王を名乗り出ていいものなのか…。
勇者「気にしなくていいんじゃないですか」
暗黒騎士「勇者!?」
勇者は相変わらず平然としていた。
勇者「勇者が神に選ばれて魔王を討つ力を得るように、魔王もきっと誰かに選ばれて不死の体を得る――」
勇者「魔王も、神の戯れに過ぎないかもしれない」
暗黒騎士「…」
勇者の言うことも一理ある。魔王も勇者も神を楽しませる存在でしかない、と暗黒騎士は思っている。
魔王も神が選ぶものなら、それに従ってやる義理はない。
暗黒騎士「…わかった」
暗黒騎士は渋々、魔王の遺言を受け入れた。
魔物「それでも、我々を束ねることはできます」
暗黒騎士「!!」
魔王の死に際の言葉を思い出す。
人間を滅ぼすのはお前――つまり、自分が魔王となり人間を滅ぼす。
暗黒騎士「しかし…」
歴史上、魔王とは不死の体を持つ者だった。
だというのに、自分が魔王を名乗り出ていいものなのか…。
勇者「気にしなくていいんじゃないですか」
暗黒騎士「勇者!?」
勇者は相変わらず平然としていた。
勇者「勇者が神に選ばれて魔王を討つ力を得るように、魔王もきっと誰かに選ばれて不死の体を得る――」
勇者「魔王も、神の戯れに過ぎないかもしれない」
暗黒騎士「…」
勇者の言うことも一理ある。魔王も勇者も神を楽しませる存在でしかない、と暗黒騎士は思っている。
魔王も神が選ぶものなら、それに従ってやる義理はない。
暗黒騎士「…わかった」
暗黒騎士は渋々、魔王の遺言を受け入れた。
85: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 20:01:44.87 ID:n6XkU/tv0
不死の体を持たぬ暗黒騎士は、人間への侵攻を慎重に行っていた。
人間達の主要な国の要人と英雄を片付ける為動いていたが、彼らも手ごわく侵攻は順調にはいかなかった。
だが、それ以上に――
魔物「魔王様、今日の侵攻は魔王軍の敗走となりました」
暗黒騎士「そうか…犠牲が少なかったならそれでいい」
暗黒騎士は魔王になって、積極性を失っていた。
勇者「お疲れですか?」
暗黒騎士「まぁな…だが心配するな」
勇者「はい…無理しないで下さいね」
暗黒騎士「…」
魔王が死んだと同時、勇者の紋章も消えた。勇者とは魔王がいるからこそ存在できるものだ。
従うべき存在も、勇者の運命に翻弄される者もいなくなり、暗黒騎士の戦意は大分削がれていた。
それでも勇者は、暗黒騎士の側を離れなかった。
勇者「私が必要とされていないことは変わりありませんから」
紋章を失った勇者は死を望まれる存在から、また誰からも見向きされない存在に戻っただけ。
だがそんな勇者を救いたいという気持ちは、暗黒騎士にもまだ残っていた。
暗黒騎士「俺の側にいろ、勇者」
こうして勇者は人知れず、暗黒騎士の妻となった。
人間達の主要な国の要人と英雄を片付ける為動いていたが、彼らも手ごわく侵攻は順調にはいかなかった。
だが、それ以上に――
魔物「魔王様、今日の侵攻は魔王軍の敗走となりました」
暗黒騎士「そうか…犠牲が少なかったならそれでいい」
暗黒騎士は魔王になって、積極性を失っていた。
勇者「お疲れですか?」
暗黒騎士「まぁな…だが心配するな」
勇者「はい…無理しないで下さいね」
暗黒騎士「…」
魔王が死んだと同時、勇者の紋章も消えた。勇者とは魔王がいるからこそ存在できるものだ。
従うべき存在も、勇者の運命に翻弄される者もいなくなり、暗黒騎士の戦意は大分削がれていた。
それでも勇者は、暗黒騎士の側を離れなかった。
勇者「私が必要とされていないことは変わりありませんから」
紋章を失った勇者は死を望まれる存在から、また誰からも見向きされない存在に戻っただけ。
だがそんな勇者を救いたいという気持ちは、暗黒騎士にもまだ残っていた。
暗黒騎士「俺の側にいろ、勇者」
こうして勇者は人知れず、暗黒騎士の妻となった。
86: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 20:02:11.53 ID:n6XkU/tv0
暗黒騎士が勇者を愛していたか――それは暗黒騎士自身、わかっていなかった。
それでも勇者を伴侶にした日から、暗黒騎士は幼馴染を思い出さないようにしてきた。
これも同情かもしれない。だが少なくとも、勇者は魔物達から虐げられずに過ごせている。
少し時が経ち、2人の間に子ができた。
勇者「男の子なら、貴方に似ればいいですね」
暗黒騎士「どうだかな」
幸せを感じてはいた。
暗黒騎士「守るべきものが増えたな。それに、お前を必要とする存在も」
勇者「はい…そうですね」
自分は勇者を救うことができた――かつての卑屈さのない笑顔を浮かべた勇者を見て、暗黒騎士も安心したように笑った。
子ができた影響か、魔王軍の人間への侵略は一旦止まった。
それでも今までの攻撃によってダメージを受けていた人間達に、魔王軍を攻めきる力はなかった。
ともかくそれから魔王軍にとっては、平和な年月が流れた。
それでも勇者を伴侶にした日から、暗黒騎士は幼馴染を思い出さないようにしてきた。
これも同情かもしれない。だが少なくとも、勇者は魔物達から虐げられずに過ごせている。
少し時が経ち、2人の間に子ができた。
勇者「男の子なら、貴方に似ればいいですね」
暗黒騎士「どうだかな」
幸せを感じてはいた。
暗黒騎士「守るべきものが増えたな。それに、お前を必要とする存在も」
勇者「はい…そうですね」
自分は勇者を救うことができた――かつての卑屈さのない笑顔を浮かべた勇者を見て、暗黒騎士も安心したように笑った。
子ができた影響か、魔王軍の人間への侵略は一旦止まった。
それでも今までの攻撃によってダメージを受けていた人間達に、魔王軍を攻めきる力はなかった。
ともかくそれから魔王軍にとっては、平和な年月が流れた。
87: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 20:02:40.19 ID:n6XkU/tv0
少年「…?」
勇者と暗黒騎士の子は、城内を探索していた。
好奇心旺盛な年頃で、目に入るもの全てが興味の対象となる。
少年「…」
少年は自然と武器庫に足を運ばせる。
平和になった現在人の出入りは少なく、彼を咎める者はいない。
武器庫には埃のかぶった武器が無造作に置かれており、少年はそれに興味を惹かれ手を伸ばした。
少年「…あっ」
手を伸ばした先にあったのは刃で、少年は手を切った。
血が床に落ちる。血を見慣れぬ少年はその光景に目を惹かれる。
だけど少年は、本能的に知っていた。
少年「…えい」
彼が念じると同時、手の傷口は閉じる。
本能的に知っていた。どんな刃も自分の命は奪えないことを。
勇者「ぼく~、どこ行ったの~?」
少年「まま!」
少年は武器庫を飛び出し、大好きな母に飛びついた。
少年「まま~まま~」
勇者「甘えん坊ねぇ、この子ったら」
少年「ねぇまま」
勇者「あら、なーに?」
少年「ぼく、おとなになったら…ままのおねがい、かなえてあげるね!」
少年は無邪気な笑みを母に向ける。
母の願いが少年の目指すものだと、彼は本能的に知っていた。
Fin
勇者と暗黒騎士の子は、城内を探索していた。
好奇心旺盛な年頃で、目に入るもの全てが興味の対象となる。
少年「…」
少年は自然と武器庫に足を運ばせる。
平和になった現在人の出入りは少なく、彼を咎める者はいない。
武器庫には埃のかぶった武器が無造作に置かれており、少年はそれに興味を惹かれ手を伸ばした。
少年「…あっ」
手を伸ばした先にあったのは刃で、少年は手を切った。
血が床に落ちる。血を見慣れぬ少年はその光景に目を惹かれる。
だけど少年は、本能的に知っていた。
少年「…えい」
彼が念じると同時、手の傷口は閉じる。
本能的に知っていた。どんな刃も自分の命は奪えないことを。
勇者「ぼく~、どこ行ったの~?」
少年「まま!」
少年は武器庫を飛び出し、大好きな母に飛びついた。
少年「まま~まま~」
勇者「甘えん坊ねぇ、この子ったら」
少年「ねぇまま」
勇者「あら、なーに?」
少年「ぼく、おとなになったら…ままのおねがい、かなえてあげるね!」
少年は無邪気な笑みを母に向ける。
母の願いが少年の目指すものだと、彼は本能的に知っていた。
Fin
88: ◆WnJdwN8j0. 2015/01/10(土) 20:08:29.76 ID:n6XkU/tv0
お付き合いありがとうございました。
このキャラ達ならどんな動きするかな~と思いながら書き進めていましたが、思ったよりも暗くなりました。
悩む暗黒騎士も大好きです。
このキャラ達ならどんな動きするかな~と思いながら書き進めていましたが、思ったよりも暗くなりました。
悩む暗黒騎士も大好きです。
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 20:42:03.33 ID:pITRWh8aO
乙
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/10(土) 21:15:40.39 ID:LqFRyTjRO
乙
最後こわー
最後こわー
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420711238/
Entry ⇒ 2017.11.24 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
悪い魔女「春色バレンタインを発売させないと姫は目を覚まさない」王子「なにっ!」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:22:31.91 ID:3tbzuSBU0
悪い魔女「私より綺麗な姫など、この世界にいらない!深い眠りについてもらったのだ!」
王子「なにっ!?貴様…我が愛する姫になんてことを!」
悪い魔女「この呪いは貴様の愛ある口付けなどでは解けない…。あははっ!もう姫が目を覚ますことはないだろう!春色バレンタインが発売しない限りね!」
王子「春色バレンタイン!?」
家来ども「あ…あぁ、あの春色バレンタインだと!」
悪い魔女「せいぜい角ラインやあの大先生に掛け合ってみるといい!あはははははっ!」
王子「待て悪い魔女!!くそ…なんてことを」
王子「なにっ!?貴様…我が愛する姫になんてことを!」
悪い魔女「この呪いは貴様の愛ある口付けなどでは解けない…。あははっ!もう姫が目を覚ますことはないだろう!春色バレンタインが発売しない限りね!」
王子「春色バレンタイン!?」
家来ども「あ…あぁ、あの春色バレンタインだと!」
悪い魔女「せいぜい角ラインやあの大先生に掛け合ってみるといい!あはははははっ!」
王子「待て悪い魔女!!くそ…なんてことを」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:26:11.30 ID:3tbzuSBU0
王子「家来ども答えろ!春色バレンタインが発売される確率はどれくらいなのだ!」
家来ども「……」
家来「極めて低い…かと」
王子「それでは困る…愛する姫が目を覚まさない」
王子「何か…いい作戦はないのか」
そして、私は愛馬の「リンパナハセイギ」にまたがり旅に出ることにした。
そう、春色バレンタインを世に出すために。
王子「頼む。君たちだけが頼りだ!春色バレンタインを発売してくれ!」ぺこり
ツバサ「えっと…」
あんじゅ「あの、私たちに頼まれましても…」
英玲奈「角ラインさんでもなければあの大先生でもないし、それに、そもそも私たちはμ’sでもない」
王子「そこをなんとか!」
英玲奈「いや、その…えっと」
ツバサ「うん…」
あんじゅ「私たちに頼まれましても…って、ふふっ…このセリフは2回目ね」
英玲奈「だが、何度でも言おう。無理だな。お引き取り願う」
家来ども「……」
家来「極めて低い…かと」
王子「それでは困る…愛する姫が目を覚まさない」
王子「何か…いい作戦はないのか」
そして、私は愛馬の「リンパナハセイギ」にまたがり旅に出ることにした。
そう、春色バレンタインを世に出すために。
王子「頼む。君たちだけが頼りだ!春色バレンタインを発売してくれ!」ぺこり
ツバサ「えっと…」
あんじゅ「あの、私たちに頼まれましても…」
英玲奈「角ラインさんでもなければあの大先生でもないし、それに、そもそも私たちはμ’sでもない」
王子「そこをなんとか!」
英玲奈「いや、その…えっと」
ツバサ「うん…」
あんじゅ「私たちに頼まれましても…って、ふふっ…このセリフは2回目ね」
英玲奈「だが、何度でも言おう。無理だな。お引き取り願う」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:28:06.61 ID:3tbzuSBU0
王子「っく…!アキバまで来たというのに…春色バレンタインを世に出さずグッズと薄い本を買って国に持ち帰ることなどできぬ!」
あんじゅ「さりげなく観光はするんですね」
英玲奈「ぬかりないじゃないか」
ツバサ「けれど薄い本…?一体何のことかしら」
あんじゅ「あっ、この学校のパンフレットとか?」
英玲奈「なるほど。それならすぐに用意しよう」
王子「またご冗談を。薄い本といえばりんぱなと相場が決まっている。だがしかし、学校のパンフレットがいただけるならいただこうじゃないか。さっさと用意してくれ」
あんじゅ「上から?若干図々しいわね」
ツバサ「とにかく、私たちに出来ることがあるとすれば…春色バレンタインに関係する星空凛さんと小泉花陽さんが通う音ノ木坂学院の場所を教える事くらいです」
あんじゅ「そうね。2人に…ううん。μ'sのみんなに掛け合えばなんとかなるかも」
英玲奈「あぁ。皆、義理堅い奴らだ。きっと力になってくれるだろう」
王子「…それは、ダメなんだ。なんやかんやらやらかしてしまい…その……出禁くらってるんだ」
ツバサ「…」
あんじゅ「…」
英玲奈「…」
王子「あえて二度と言おう。出禁くらってるんだ!」キリッ
あんじゅ「さりげなく観光はするんですね」
英玲奈「ぬかりないじゃないか」
ツバサ「けれど薄い本…?一体何のことかしら」
あんじゅ「あっ、この学校のパンフレットとか?」
英玲奈「なるほど。それならすぐに用意しよう」
王子「またご冗談を。薄い本といえばりんぱなと相場が決まっている。だがしかし、学校のパンフレットがいただけるならいただこうじゃないか。さっさと用意してくれ」
あんじゅ「上から?若干図々しいわね」
ツバサ「とにかく、私たちに出来ることがあるとすれば…春色バレンタインに関係する星空凛さんと小泉花陽さんが通う音ノ木坂学院の場所を教える事くらいです」
あんじゅ「そうね。2人に…ううん。μ'sのみんなに掛け合えばなんとかなるかも」
英玲奈「あぁ。皆、義理堅い奴らだ。きっと力になってくれるだろう」
王子「…それは、ダメなんだ。なんやかんやらやらかしてしまい…その……出禁くらってるんだ」
ツバサ「…」
あんじゅ「…」
英玲奈「…」
王子「あえて二度と言おう。出禁くらってるんだ!」キリッ
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:38:03.25 ID:3tbzuSBU0
・
・
・
王子「まさかUTX高校まで出禁を食らうことになるとはな、誤算だった。アッハッハー」
王子「ツバサ…あんじゅ…英玲奈…ぐふっ、ぐしゅっしゅっ、しゅっ」
王子「天使とは存在するものだな!うん!」
王子「いやいや、3人とも美しかった。会えて嬉しかった…こうなるともう姫が目を覚まさなくてもいいかなーとさえ思えてしまう」
王子「しかし、そうもいかぬ。A-RISEの残り香とりんぱなの薄い本だけを持って国に帰ることなどできない!」
王子「はぁ…けどどうしよっかなー。どーせ角ラインやあの大先生に掛け合っても相手にされないだろうし」
王子「もうあれだな。姫のことは知らなかった事にして音ノ木に寄って校門の外からμ'sの匂いでも嗅いで帰ろっかー。なぁリンパナハセイギ」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!!」
「はやくりんちゃん!!」
「ま、まつにゃー!」
王子「むむっ…まさか!この声は!」
花陽「急いで凛ちゃん!早くしないと限定グッズが無くなっちゃうよ!」
凛「まったく。かよちんはアイドルのことになると凛より足が早くなるにゃー。けど、凛はそんなかよちんのことも好きにゃー」
王子「りんぱなみーっけ!!よぉし!ビデオカメラスイッチオン!」
ジジっ…
王子「…」ジジジッ…
・
・
王子「まさかUTX高校まで出禁を食らうことになるとはな、誤算だった。アッハッハー」
王子「ツバサ…あんじゅ…英玲奈…ぐふっ、ぐしゅっしゅっ、しゅっ」
王子「天使とは存在するものだな!うん!」
王子「いやいや、3人とも美しかった。会えて嬉しかった…こうなるともう姫が目を覚まさなくてもいいかなーとさえ思えてしまう」
王子「しかし、そうもいかぬ。A-RISEの残り香とりんぱなの薄い本だけを持って国に帰ることなどできない!」
王子「はぁ…けどどうしよっかなー。どーせ角ラインやあの大先生に掛け合っても相手にされないだろうし」
王子「もうあれだな。姫のことは知らなかった事にして音ノ木に寄って校門の外からμ'sの匂いでも嗅いで帰ろっかー。なぁリンパナハセイギ」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!!」
「はやくりんちゃん!!」
「ま、まつにゃー!」
王子「むむっ…まさか!この声は!」
花陽「急いで凛ちゃん!早くしないと限定グッズが無くなっちゃうよ!」
凛「まったく。かよちんはアイドルのことになると凛より足が早くなるにゃー。けど、凛はそんなかよちんのことも好きにゃー」
王子「りんぱなみーっけ!!よぉし!ビデオカメラスイッチオン!」
ジジっ…
王子「…」ジジジッ…
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:40:05.83 ID:3tbzuSBU0
花陽「朝10時から販売だったから…うぅ、まだあるかなぁ」
凛「ある!絶対あるよ!」
花陽「そうだよね…うん!あっ、ここだ!って…ピャア!!!」
凛「あっ…」
花陽「終了…しました……ううっ」バタッ
凛「かよちん!!」
王子「…」ジジっ
花陽「そうだよね…朝10時発売のグッズを夕方に買いに来たらダメだよね…けど学校を休むわけにはいかないし…うぅ」
凛「かよちん…」
凛「大体、平日の朝10時から発売なんてひどいにゃ!学生には学校があるんだよ!そもそもひどいにゃ!」
花陽「凛ちゃん…こればっかりは仕方ないよ…」
凛「仕方なくない!かよちんがかわいそう…凛、かよちんを悲しませる人は大っ嫌いにゃ!」
花陽「凛ちゃん…もういいの。ほら、アイスでも食べて帰ろっ」にこっ
凛「けど…!!」
花陽「もう…いいから…ねっ?」にこっ
凛「う、うん…」
王子「…」ジジジッ
バタンっ
王子「さて、俺たちの凛ちゃんのかよちんを悲しませたこの店に抗議だ!いくぞリンパナハセイギ!!」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィィィ!!!」
凛「ある!絶対あるよ!」
花陽「そうだよね…うん!あっ、ここだ!って…ピャア!!!」
凛「あっ…」
花陽「終了…しました……ううっ」バタッ
凛「かよちん!!」
王子「…」ジジっ
花陽「そうだよね…朝10時発売のグッズを夕方に買いに来たらダメだよね…けど学校を休むわけにはいかないし…うぅ」
凛「かよちん…」
凛「大体、平日の朝10時から発売なんてひどいにゃ!学生には学校があるんだよ!そもそもひどいにゃ!」
花陽「凛ちゃん…こればっかりは仕方ないよ…」
凛「仕方なくない!かよちんがかわいそう…凛、かよちんを悲しませる人は大っ嫌いにゃ!」
花陽「凛ちゃん…もういいの。ほら、アイスでも食べて帰ろっ」にこっ
凛「けど…!!」
花陽「もう…いいから…ねっ?」にこっ
凛「う、うん…」
王子「…」ジジジッ
バタンっ
王子「さて、俺たちの凛ちゃんのかよちんを悲しませたこの店に抗議だ!いくぞリンパナハセイギ!!」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィィィ!!!」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:44:46.02 ID:3tbzuSBU0
・
・
・
花陽「アイス美味しいね!凛ちゃんっ」
凛「うん…」
花陽「凛ちゃん…?」
凛「…」
花陽「もしかして体調が悪いとか?大丈夫?遅くなるしアイス食べたらすぐ帰ろうね」にこっ
凛「凛…やっぱりあのお店にもう一度行ってくる!」
花陽「えっ…凛ちゃん?」
凛「かよちんが無理して元気にしてる姿…凛は見てられない!」
花陽「そんな気にしなくていいよ。たしかに買えなかったのは悲しいけど…仕方ないことだし」
凛「仕方なくない!だって…」
「ヒヒィィィン」
りんぱな「えぇっ!」
花陽「う…馬?どうしてアキバに馬がいるの!?」
凛「さすがワンダーゾーンなアキバにゃ…」
花陽「ワンダーゾーン…君に呼ばれてないのに馬が走ってきちゃったよ!」
「ヒヒィィィン」
花陽「えっ?これを私に…?」
「ヒヒィィィン」コクン
花陽「これって…」
凛「あぁ!かよちんが欲しがってた限定グッズにゃ!どうしてこれをお馬さんが持ってるにゃ?」
「ヒヒィィィン」
りんぱな「?」
「ヒヒィィィン…アノミセノテンチョ…ヒヒィン……テンバイスルタメ……ザイコ…カクシテタ…ヒヒィィィン!」
りんぱな「しゃべったぁぁ!!!」
花陽「なんかすごいしゃべったよ!凛ちゃん!」
凛「すごい…やっぱりワンダーゾーン!それがアキバにゃ!」
「ヒヒィィィン!!!」
・
・
花陽「アイス美味しいね!凛ちゃんっ」
凛「うん…」
花陽「凛ちゃん…?」
凛「…」
花陽「もしかして体調が悪いとか?大丈夫?遅くなるしアイス食べたらすぐ帰ろうね」にこっ
凛「凛…やっぱりあのお店にもう一度行ってくる!」
花陽「えっ…凛ちゃん?」
凛「かよちんが無理して元気にしてる姿…凛は見てられない!」
花陽「そんな気にしなくていいよ。たしかに買えなかったのは悲しいけど…仕方ないことだし」
凛「仕方なくない!だって…」
「ヒヒィィィン」
りんぱな「えぇっ!」
花陽「う…馬?どうしてアキバに馬がいるの!?」
凛「さすがワンダーゾーンなアキバにゃ…」
花陽「ワンダーゾーン…君に呼ばれてないのに馬が走ってきちゃったよ!」
「ヒヒィィィン」
花陽「えっ?これを私に…?」
「ヒヒィィィン」コクン
花陽「これって…」
凛「あぁ!かよちんが欲しがってた限定グッズにゃ!どうしてこれをお馬さんが持ってるにゃ?」
「ヒヒィィィン」
りんぱな「?」
「ヒヒィィィン…アノミセノテンチョ…ヒヒィン……テンバイスルタメ……ザイコ…カクシテタ…ヒヒィィィン!」
りんぱな「しゃべったぁぁ!!!」
花陽「なんかすごいしゃべったよ!凛ちゃん!」
凛「すごい…やっぱりワンダーゾーン!それがアキバにゃ!」
「ヒヒィィィン!!!」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:48:55.52 ID:3tbzuSBU0
花陽「いいの…?」
「ヒヒィィィン!!」
花陽「しかも2つも…どうして?」
「…ヒヒィィィン…モウ…ヒヒン…ヒトツハ…ニコチャンノブン…ヒヒィィィン!」
凛「なんて太っ腹にゃ…」
花陽「あっと…えっと…」
「ヒヒィィィィン!!!」
パッカパッカパッカパッカパッカパッカ…
花陽「あぁ!待ってお馬さん!」
「ヒヒィィーン」
パッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカ…
花陽「お金!お馬さん…グッズのお金!」
「ヒヒィィィィン!!!」
花陽「いっちゃった…」
凛「うん。いっちゃったね」
花陽「けど、本当に貰っていいのかな…売り切れてた物なのに…それにお金だって払ってないし…」
凛「いいんだよ!きっと、あのお馬さんはかよちんのファンにゃー」
花陽「ぅっぇぇえ!?」
凛「さすがかよちん!お馬さんも応援しちゃう可愛さにゃー」
花陽「そうかなぁ…けど、そうだと嬉しいな。」
花陽「お馬さんありがとう!グッズ、大事にするからね!」
凛「凛からもお礼を言うよ!かよちんに笑顔を取り戻してくれてありがとにゃー!」
ヒヒィィィン…
花陽「ふふっ。どういたしまして…って言ってくれたのかな?」
凛「うん!…あっ、もうこんな時間!かーよちんっ」
花陽「うん!帰ろっか、凛ちゃん」にこっ
凛「うん!」
「ちょっ!ま…まちなさぁぁぁい!」
りんぱな「へ?」
にこ「花陽…!はぁはぁ…ゼェ…か、買えたんでしょうね…」
花陽「あっ、にこちゃん!にこちゃんも来てくれたの?」
穂乃果「おーい!凛ちゃん!花陽ちゃぁぁん!!」
凛「穂乃果ちゃんまで!」
「ヒヒィィィン!!」
花陽「しかも2つも…どうして?」
「…ヒヒィィィン…モウ…ヒヒン…ヒトツハ…ニコチャンノブン…ヒヒィィィン!」
凛「なんて太っ腹にゃ…」
花陽「あっと…えっと…」
「ヒヒィィィィン!!!」
パッカパッカパッカパッカパッカパッカ…
花陽「あぁ!待ってお馬さん!」
「ヒヒィィーン」
パッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカパッカ…
花陽「お金!お馬さん…グッズのお金!」
「ヒヒィィィィン!!!」
花陽「いっちゃった…」
凛「うん。いっちゃったね」
花陽「けど、本当に貰っていいのかな…売り切れてた物なのに…それにお金だって払ってないし…」
凛「いいんだよ!きっと、あのお馬さんはかよちんのファンにゃー」
花陽「ぅっぇぇえ!?」
凛「さすがかよちん!お馬さんも応援しちゃう可愛さにゃー」
花陽「そうかなぁ…けど、そうだと嬉しいな。」
花陽「お馬さんありがとう!グッズ、大事にするからね!」
凛「凛からもお礼を言うよ!かよちんに笑顔を取り戻してくれてありがとにゃー!」
ヒヒィィィン…
花陽「ふふっ。どういたしまして…って言ってくれたのかな?」
凛「うん!…あっ、もうこんな時間!かーよちんっ」
花陽「うん!帰ろっか、凛ちゃん」にこっ
凛「うん!」
「ちょっ!ま…まちなさぁぁぁい!」
りんぱな「へ?」
にこ「花陽…!はぁはぁ…ゼェ…か、買えたんでしょうね…」
花陽「あっ、にこちゃん!にこちゃんも来てくれたの?」
穂乃果「おーい!凛ちゃん!花陽ちゃぁぁん!!」
凛「穂乃果ちゃんまで!」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:54:14.34 ID:3tbzuSBU0
真姫「2人だけじゃない。みんないるわよ」
凛「真姫ちゃんも!真姫ちゃん真姫ちゃーん!!」
花陽「えっ…みんなも?どうして?」
穂乃果「いやぁー、あのね。そのー…」
ことり「うん。ごめんね…私たちの生徒会のお仕事が長引いてなかなか練習に参加できなかったから結局練習が終わるのが遅くなっちゃって…」
穂乃果「本当はもう少し早くアキバにこれるはずだったでしょ?だから私達のせいでグッズが買えなかったらと思って…」
希「それで、グッズが買えたか心配になってみんなでみにきたってわけ」
花陽「みんな…心配してくれてありがとう」
絵里「お礼なんていいわ。それで…グッズは買えたの?」
海未「そうです!グッズは買えましたか?」
にこ「どーなの!買えたの!答えなさいよ!」
花陽「私たちがついたときにはもう売り切れてて…」
絵里「やっぱり…」
海未「そうですか…」
にこ「おわった…」バタン
ことり「うわぁぁん!にこちゃん倒れないで!」
希「にこっち!しっかり!」
真姫「たかがグッズくらいで大袈裟なのよ」
にこ「ぬぁんですって!!」ガバッ
希「生き返った…今の真姫ちゃんの言葉はにこっちにとって効果抜群の言葉やね」
ことり「あはは…そうだね」
凛「まだ続きがあるんだよ。ねっ、かよちん」
真姫「つづき?」
ピロリンピロリロ
穂乃果「あっ、ごめん電話だ。ちょっと出るねって…あれ?ツバサさんからだ」
海未「ツバサさんですか?何かあったのでしょうか…」
穂乃果「うん。とにかくでてみるね」ぴっ
穂乃果「もしもし。はい、高坂穂乃果です。はい。元気ですよ!ツバサさんは?…そうですか。あの…ツバサさん…どうかしましたか?」
にこ「ツバサからの電話もきになるところだけど今はそれよりグッズ!ねぇ、それで、続きってなによ!」
希「グッズが勝つんやね」
真姫「どーしてグッズが勝つの!」
にこ「どーしても勝つのよ!」
凛「真姫ちゃんも!真姫ちゃん真姫ちゃーん!!」
花陽「えっ…みんなも?どうして?」
穂乃果「いやぁー、あのね。そのー…」
ことり「うん。ごめんね…私たちの生徒会のお仕事が長引いてなかなか練習に参加できなかったから結局練習が終わるのが遅くなっちゃって…」
穂乃果「本当はもう少し早くアキバにこれるはずだったでしょ?だから私達のせいでグッズが買えなかったらと思って…」
希「それで、グッズが買えたか心配になってみんなでみにきたってわけ」
花陽「みんな…心配してくれてありがとう」
絵里「お礼なんていいわ。それで…グッズは買えたの?」
海未「そうです!グッズは買えましたか?」
にこ「どーなの!買えたの!答えなさいよ!」
花陽「私たちがついたときにはもう売り切れてて…」
絵里「やっぱり…」
海未「そうですか…」
にこ「おわった…」バタン
ことり「うわぁぁん!にこちゃん倒れないで!」
希「にこっち!しっかり!」
真姫「たかがグッズくらいで大袈裟なのよ」
にこ「ぬぁんですって!!」ガバッ
希「生き返った…今の真姫ちゃんの言葉はにこっちにとって効果抜群の言葉やね」
ことり「あはは…そうだね」
凛「まだ続きがあるんだよ。ねっ、かよちん」
真姫「つづき?」
ピロリンピロリロ
穂乃果「あっ、ごめん電話だ。ちょっと出るねって…あれ?ツバサさんからだ」
海未「ツバサさんですか?何かあったのでしょうか…」
穂乃果「うん。とにかくでてみるね」ぴっ
穂乃果「もしもし。はい、高坂穂乃果です。はい。元気ですよ!ツバサさんは?…そうですか。あの…ツバサさん…どうかしましたか?」
にこ「ツバサからの電話もきになるところだけど今はそれよりグッズ!ねぇ、それで、続きってなによ!」
希「グッズが勝つんやね」
真姫「どーしてグッズが勝つの!」
にこ「どーしても勝つのよ!」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 11:57:07.60 ID:3tbzuSBU0
ことり「ねぇねぇ!どういうことなの?」
花陽「うん。あのね、私は買えなかったんだけど…ほら」
にこ「!!!」
花陽「えへへっ、あのね」
凛「さすらいのお馬さんがかよちんにプレゼントしてくれたんだー」
ことり・真姫「馬っ!?」
絵里「馬って…あの馬のこと?」
凛「そう、あのお馬さんにゃー」
希「さすがワンダーゾーンやね…」
凛「うん!さすぎワンダーゾーンにゃー」
花陽「しかもそのお馬さん、にこちゃんの分までプレゼントしてくれたんだ。はい、これにこちゃんの分」
にこ「花陽!」
花陽「は、はい!!」
ぎゅっ
花陽「へぇっ!?」
凛「にゃ!!」
にこ「あぁぁいしてるぅぅぅ!!!!!」ぎゅー
花陽「えぇぇぇぇ!?」
真姫「ちょっと!人前でやめてよ!」
凛「凛もかよちんを愛してるにゃぁぁ!!!」ぎゅ!
真姫「ちょっと!人の話聞いてるの!」
希「じゃあうちも!花陽ちゃん愛してるー」ぎゅー
花陽「うぇぇ!?」
ことり「なら私も!あいしてるー」ぎゅー
花陽「ぴゃぁー」
凛「かよちん愛してるにゃー」ぎゅー
花陽「ぴぁぁ!!」
真姫「ちょっと!」
凛「いいからいいから!真姫ちゃんもくるにゃー」
真姫「い、行かないわよ!」
凛「ほらほらー♪」
真姫「ぅわっ…ちょっ…ぅぇぇ!?」
花陽「うん。あのね、私は買えなかったんだけど…ほら」
にこ「!!!」
花陽「えへへっ、あのね」
凛「さすらいのお馬さんがかよちんにプレゼントしてくれたんだー」
ことり・真姫「馬っ!?」
絵里「馬って…あの馬のこと?」
凛「そう、あのお馬さんにゃー」
希「さすがワンダーゾーンやね…」
凛「うん!さすぎワンダーゾーンにゃー」
花陽「しかもそのお馬さん、にこちゃんの分までプレゼントしてくれたんだ。はい、これにこちゃんの分」
にこ「花陽!」
花陽「は、はい!!」
ぎゅっ
花陽「へぇっ!?」
凛「にゃ!!」
にこ「あぁぁいしてるぅぅぅ!!!!!」ぎゅー
花陽「えぇぇぇぇ!?」
真姫「ちょっと!人前でやめてよ!」
凛「凛もかよちんを愛してるにゃぁぁ!!!」ぎゅ!
真姫「ちょっと!人の話聞いてるの!」
希「じゃあうちも!花陽ちゃん愛してるー」ぎゅー
花陽「うぇぇ!?」
ことり「なら私も!あいしてるー」ぎゅー
花陽「ぴゃぁー」
凛「かよちん愛してるにゃー」ぎゅー
花陽「ぴぁぁ!!」
真姫「ちょっと!」
凛「いいからいいから!真姫ちゃんもくるにゃー」
真姫「い、行かないわよ!」
凛「ほらほらー♪」
真姫「ぅわっ…ちょっ…ぅぇぇ!?」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 12:01:38.11 ID:3tbzuSBU0
絵里「まったく…けど、よかったわ。無事グッズを手に入れることができて」
海未「ですがツバサさんからの電話が気になります。どうしたんでしょうか…」
絵里「そうね…悪い知らせじゃないといいけど」
穂乃果「はい。はい。ありがとうございます…気をつけます。では」ぴっ
海未「何かありましたか?」
穂乃果「うん。ほら、前に王子様みたいな格好した変な人が来たでしょ?あの人がUTX高校にも来たみたい」
海未「UTX高校にもですか?」
絵里「まったく…困ったものね。馬にまたがった王子様みたいな人が凛と花陽とお話したいなんて押しかけて大声で叫んで…あれっ」
穂乃果「えっ?どうかしたの?」
絵里「馬…」
海未「馬…?」
うみえり「…」
穂乃果「ん?」
うみえり「馬…」
海未「まさか…」
絵里「あのグッズ…」
真姫「ねぇ、けどどうして馬が限定グッズをくれたの?」
凛「かよちんのファンだからだよー」
ことり「わぁ♪」
希「さすが花陽ちゃんやね!」
にこ「アルパカじゃ飽き足らず馬使いにでもなるつもり?」
花陽「ならないよ!!」
絵里「まさか…よね」
海未「は、はい!まさかですよね!」
穂乃果「えー、ずるーい。ねぇ、2人でなんの話ししてるのー?ねぇー」
海未「だとすればまだ近くにいるかもしれません。ここは念のため早く帰りましょう」
絵里「それがいいわね。みんな!帰るわよ!あっ…念のため、花陽と凛から目を離さないで!」
花陽「私と凛ちゃんから?」
凛「にゃー?」
海未「ですがツバサさんからの電話が気になります。どうしたんでしょうか…」
絵里「そうね…悪い知らせじゃないといいけど」
穂乃果「はい。はい。ありがとうございます…気をつけます。では」ぴっ
海未「何かありましたか?」
穂乃果「うん。ほら、前に王子様みたいな格好した変な人が来たでしょ?あの人がUTX高校にも来たみたい」
海未「UTX高校にもですか?」
絵里「まったく…困ったものね。馬にまたがった王子様みたいな人が凛と花陽とお話したいなんて押しかけて大声で叫んで…あれっ」
穂乃果「えっ?どうかしたの?」
絵里「馬…」
海未「馬…?」
うみえり「…」
穂乃果「ん?」
うみえり「馬…」
海未「まさか…」
絵里「あのグッズ…」
真姫「ねぇ、けどどうして馬が限定グッズをくれたの?」
凛「かよちんのファンだからだよー」
ことり「わぁ♪」
希「さすが花陽ちゃんやね!」
にこ「アルパカじゃ飽き足らず馬使いにでもなるつもり?」
花陽「ならないよ!!」
絵里「まさか…よね」
海未「は、はい!まさかですよね!」
穂乃果「えー、ずるーい。ねぇ、2人でなんの話ししてるのー?ねぇー」
海未「だとすればまだ近くにいるかもしれません。ここは念のため早く帰りましょう」
絵里「それがいいわね。みんな!帰るわよ!あっ…念のため、花陽と凛から目を離さないで!」
花陽「私と凛ちゃんから?」
凛「にゃー?」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 12:05:48.96 ID:3tbzuSBU0
・
・
・
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!」
王子「よくやったぞ、リンパナハセイギ。ほら、ご褒美のラーメンおにぎりだ」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!」
王子「さすがリンパナハセイギだ。かよちんと凛ちゃん寄りの食べ物を喜ぶなんて…お前も好きだな」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!!」
王子「凛ちゃんとかよちん…いい匂いだったか?」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィィン!!!」
王子「よし、残り香を嗅がせろ」
リンパナハセイギ「ヒヒン」フンッ
王子「ちょっ!ずるいよ!匂いぐらいいいじゃんかー!」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィィン」プンッ
王子「ちっ…まぁいいけど。さっ、俺たちの凛ちゃんと俺たちの凛ちゃんのかよちんも笑顔になったことだし…そろそろ国へ…いや待て」
王子「春色バレンタイン!!」
リンパナハセイギ「ヒヒン!!」
王子「…しまった。凛ちゃんとかよちんが可愛すぎて姫のことなどすっかり忘れていた」
王子「春色バレンタイン…」
王子「発売延期から始まり延期を重ね…今や発売未定になっている。それが春色バレンタイン」
王子「なぜ発売してくれないのか…」
王子「けど…あれだな。なんかもうあれだな、凛ちゃんもかよちんも可愛かったし…なっ」
王子「春色バレンタインは来年発売する!する風!!あくまで発売する風!」
王子「とか適当なこと言って悪い魔女でも説得するか。なっ。」
王子「じゃまぁ…疲れたし。いくぞ!」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!」
王子「かよちんと凛ちゃんの薄い本を買って帰るか…と、言いたいところだけど、その前に…ぐしゅしゅしゅ」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!!」
・
・
・
姫「…」
悪い魔女「…」
姫「…」
悪い魔女「…」
ゆさゆさ
姫「ん…ふぁぁー。あれ?もう終わった?」
悪い魔女「…」
・
・
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!」
王子「よくやったぞ、リンパナハセイギ。ほら、ご褒美のラーメンおにぎりだ」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!」
王子「さすがリンパナハセイギだ。かよちんと凛ちゃん寄りの食べ物を喜ぶなんて…お前も好きだな」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!!」
王子「凛ちゃんとかよちん…いい匂いだったか?」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィィン!!!」
王子「よし、残り香を嗅がせろ」
リンパナハセイギ「ヒヒン」フンッ
王子「ちょっ!ずるいよ!匂いぐらいいいじゃんかー!」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィィン」プンッ
王子「ちっ…まぁいいけど。さっ、俺たちの凛ちゃんと俺たちの凛ちゃんのかよちんも笑顔になったことだし…そろそろ国へ…いや待て」
王子「春色バレンタイン!!」
リンパナハセイギ「ヒヒン!!」
王子「…しまった。凛ちゃんとかよちんが可愛すぎて姫のことなどすっかり忘れていた」
王子「春色バレンタイン…」
王子「発売延期から始まり延期を重ね…今や発売未定になっている。それが春色バレンタイン」
王子「なぜ発売してくれないのか…」
王子「けど…あれだな。なんかもうあれだな、凛ちゃんもかよちんも可愛かったし…なっ」
王子「春色バレンタインは来年発売する!する風!!あくまで発売する風!」
王子「とか適当なこと言って悪い魔女でも説得するか。なっ。」
王子「じゃまぁ…疲れたし。いくぞ!」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!」
王子「かよちんと凛ちゃんの薄い本を買って帰るか…と、言いたいところだけど、その前に…ぐしゅしゅしゅ」
リンパナハセイギ「ヒヒィィィン!!!」
・
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姫「…」
悪い魔女「…」
姫「…」
悪い魔女「…」
ゆさゆさ
姫「ん…ふぁぁー。あれ?もう終わった?」
悪い魔女「…」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 12:07:59.48 ID:3tbzuSBU0
姫「ってことは、やっと春色バレンタインが発売したってことだね!」
悪い魔女「それが…かくかくしかじか」
姫「はぁぁ?UTX高校に行ってツバサ達とお話しして出禁になって私達のかよちんと私達のかよちんの凛ちゃんとにこちゃん達を幸せにして薄い本だけ買って帰ってくる?はぁぁ?」
悪い魔女「…うん」
姫「ちょっ、話が違うじゃん!私に呪いがかかったことにすれば王子が春色バレンタインを発売まで持ち込んでくれるって言ったの悪い魔女っちでしょ!」
悪い魔女「そうだけど…」
姫「あぁぁ!もうっ!なんで春色バレンタインは発売しないの!これもう本当に誰かの陰謀だよ!国家機密だよ!ロシナンテの災難だよ!」
悪い魔女「えっ…いや」
姫「もうしらない!こうなったら悪い魔女っち!魔法で春色バレンタイン出してよ!」
悪い魔女「いいけど…」
姫「駄目だよ!それはルール違反だよぉぉぉ!!」
悪い魔女「だよね…もうこのくだり何度目だろ」
姫「はぁ…マジな話、なんで発売延期から発売未定になっちゃったんだろ…ファンは今でも待ち続けてるのに」
悪い魔女「うん…」
姫「まぁいいや…おみやげの薄いりんぱな本で手を打ちますか」
悪い魔女「打つんだ」
姫「…」
悪い魔女「…」
姫「打ちます」
悪い魔女「打つんだ」
悪い魔女「それが…かくかくしかじか」
姫「はぁぁ?UTX高校に行ってツバサ達とお話しして出禁になって私達のかよちんと私達のかよちんの凛ちゃんとにこちゃん達を幸せにして薄い本だけ買って帰ってくる?はぁぁ?」
悪い魔女「…うん」
姫「ちょっ、話が違うじゃん!私に呪いがかかったことにすれば王子が春色バレンタインを発売まで持ち込んでくれるって言ったの悪い魔女っちでしょ!」
悪い魔女「そうだけど…」
姫「あぁぁ!もうっ!なんで春色バレンタインは発売しないの!これもう本当に誰かの陰謀だよ!国家機密だよ!ロシナンテの災難だよ!」
悪い魔女「えっ…いや」
姫「もうしらない!こうなったら悪い魔女っち!魔法で春色バレンタイン出してよ!」
悪い魔女「いいけど…」
姫「駄目だよ!それはルール違反だよぉぉぉ!!」
悪い魔女「だよね…もうこのくだり何度目だろ」
姫「はぁ…マジな話、なんで発売延期から発売未定になっちゃったんだろ…ファンは今でも待ち続けてるのに」
悪い魔女「うん…」
姫「まぁいいや…おみやげの薄いりんぱな本で手を打ちますか」
悪い魔女「打つんだ」
姫「…」
悪い魔女「…」
姫「打ちます」
悪い魔女「打つんだ」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 12:09:21.83 ID:3tbzuSBU0
・
・
・
花陽「はぁぁ…本当に買えちゃった。嬉しいなぁ」
凛「うん!凛も嬉しいにゃー」
絵里「さっきからそればっかりじゃない?」
希「それだけ嬉しいってことやない?」
花陽「そうだよー。ねっ、凛ちゃん」
凛「うん!けど…絵里ちゃんも希ちゃんもどうして今日は凛達をお家まで送ってくれるの?」
のぞえり「…」
りんぱな「んん?」
希「みんなで帰った方が楽しいやん?」にこっ
花陽「うんっ!」
凛「楽しいにゃー」
絵里「…」キョロキョロ
希「特に異常なし?」
絵里「えぇ、今のところは」
希「ふぅ…よかった」
りんぱな「?」
凛「何か警戒してる?」
花陽「の、かなぁ…?何かあるの?怖いよぉ…」
希「なにもないよ」にこっ
絵里「えぇ。だから怖がらなくていいのよ」
凛「だって!怖がらなくていいにゃー」
花陽「う、うん…」
のぞえり「…」キョロキョロ
花陽「うんー…」
警察「…」
花陽「警察の人までついてくるなんてやっぱりおかしいよぉ…」
凛「おかしくないおかしくない!さ、帰ったら早速部屋に飾ろうね!凛も付き合うにゃー」
花陽「あっ、うん!」
ヒヒィィィィン
ジジジ…
王子「…」ジジジ
王子「…ちっ、守りが固くて自宅の中までは無理か」ジジジ
「ヒヒイィーン」
おしまい
・
・
花陽「はぁぁ…本当に買えちゃった。嬉しいなぁ」
凛「うん!凛も嬉しいにゃー」
絵里「さっきからそればっかりじゃない?」
希「それだけ嬉しいってことやない?」
花陽「そうだよー。ねっ、凛ちゃん」
凛「うん!けど…絵里ちゃんも希ちゃんもどうして今日は凛達をお家まで送ってくれるの?」
のぞえり「…」
りんぱな「んん?」
希「みんなで帰った方が楽しいやん?」にこっ
花陽「うんっ!」
凛「楽しいにゃー」
絵里「…」キョロキョロ
希「特に異常なし?」
絵里「えぇ、今のところは」
希「ふぅ…よかった」
りんぱな「?」
凛「何か警戒してる?」
花陽「の、かなぁ…?何かあるの?怖いよぉ…」
希「なにもないよ」にこっ
絵里「えぇ。だから怖がらなくていいのよ」
凛「だって!怖がらなくていいにゃー」
花陽「う、うん…」
のぞえり「…」キョロキョロ
花陽「うんー…」
警察「…」
花陽「警察の人までついてくるなんてやっぱりおかしいよぉ…」
凛「おかしくないおかしくない!さ、帰ったら早速部屋に飾ろうね!凛も付き合うにゃー」
花陽「あっ、うん!」
ヒヒィィィィン
ジジジ…
王子「…」ジジジ
王子「…ちっ、守りが固くて自宅の中までは無理か」ジジジ
「ヒヒイィーン」
おしまい
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/17(金) 12:09:52.03 ID:3tbzuSBU0
ありがとうございました。
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510885351/
Entry ⇒ 2017.11.19 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
女戦士「死に場所を探している」ぼく「はあ…」
1: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:40:51.18 ID:c9/bqZoV0
ぼく「どっかその辺で死んできたらいいんじゃないですかね」
女戦士「わぁ辛辣ぅ」
女戦士「わぁ辛辣ぅ」
2: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:41:31.22 ID:c9/bqZoV0
ぼく「そんなこといわれましても、なにぶん他に答えようもないもので」
女戦士「まあ、言われてみればそうだよね」
ぼく「剣を持っていらっしゃるところを見ると流れの傭兵さんでしょうか。戦場をお求めなら山を下りて東に進めば地方領主がくだらない小競り合いをしていますけど」
女戦士「う~ん、駄目なんだよなぁ。そんな普通の戦場じゃ私は死ねないんだ」
ぼく「よほど腕に自信があるんですね」
女戦士「確かに腕に自信はあるけれども、もっと根本的なところでな。剣や槍で体を貫かれても、私は死なんのだ」
ぼく「……は?」
女戦士「何を隠そう、私は不死身なんだ」
ぼく「なにそれこわい」
女戦士「まあ、言われてみればそうだよね」
ぼく「剣を持っていらっしゃるところを見ると流れの傭兵さんでしょうか。戦場をお求めなら山を下りて東に進めば地方領主がくだらない小競り合いをしていますけど」
女戦士「う~ん、駄目なんだよなぁ。そんな普通の戦場じゃ私は死ねないんだ」
ぼく「よほど腕に自信があるんですね」
女戦士「確かに腕に自信はあるけれども、もっと根本的なところでな。剣や槍で体を貫かれても、私は死なんのだ」
ぼく「……は?」
女戦士「何を隠そう、私は不死身なんだ」
ぼく「なにそれこわい」
3: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:42:13.85 ID:c9/bqZoV0
女戦士「証拠を見せよう」
ぼく「え、なになに、なんで剣を抜いたのこの人」
女戦士「ほら、ぶっしゃー」
ぼく「わあ自分のお腹刺したよこの人。ぶっとい剣で自分のお腹刺したよこの人」
女戦士「おごぼぼほらな、ぎょぼごぼぜぇんぜん死なないだろぼぼぼごぼ」
ぼく「口から血をごぼごぼさせながらしゃべるのやめてすごいこわい」
女戦士「ずぼーん」
ぼく「わあ抜いた」
女戦士「見て見て、ほら」
ぼく「…え? お腹の傷が…ない?」
女戦士「どうだ? 信じたか?」
ぼく「これは…確かに…いえ、でも……」
女戦士「はいザクーン」
ぼく「わあ喉刺した。なんなのこの人。ちょうこわい」
女戦士「なんかまだ疑ってる風だったから」
ぼく「もう喉の傷ねえし……わかりましたよ。信じますよ」
女戦士「よかった。これで疑われたら今度は縦に真っ二つになるところだった」
ぼく「そんなもん一体どうやって……あ、やめて、なに剣を自分の頭頂部に当ててんの、いいですいいですやろうとしなくていいですごめんなさいゆるして」
女戦士「信じてくれたか」
ぼく「信じます、信じます……もう、心臓に悪いなあ」
ぼく「しかし……ははぁ、なるほど。それでこんな山奥の家まで訪ねてきたんですね?」
女戦士「うん、下の町で噂を聞いてな」
女戦士「お前、怪しげな術を研究している魔女なんだろう?」
ぼく「え、なになに、なんで剣を抜いたのこの人」
女戦士「ほら、ぶっしゃー」
ぼく「わあ自分のお腹刺したよこの人。ぶっとい剣で自分のお腹刺したよこの人」
女戦士「おごぼぼほらな、ぎょぼごぼぜぇんぜん死なないだろぼぼぼごぼ」
ぼく「口から血をごぼごぼさせながらしゃべるのやめてすごいこわい」
女戦士「ずぼーん」
ぼく「わあ抜いた」
女戦士「見て見て、ほら」
ぼく「…え? お腹の傷が…ない?」
女戦士「どうだ? 信じたか?」
ぼく「これは…確かに…いえ、でも……」
女戦士「はいザクーン」
ぼく「わあ喉刺した。なんなのこの人。ちょうこわい」
女戦士「なんかまだ疑ってる風だったから」
ぼく「もう喉の傷ねえし……わかりましたよ。信じますよ」
女戦士「よかった。これで疑われたら今度は縦に真っ二つになるところだった」
ぼく「そんなもん一体どうやって……あ、やめて、なに剣を自分の頭頂部に当ててんの、いいですいいですやろうとしなくていいですごめんなさいゆるして」
女戦士「信じてくれたか」
ぼく「信じます、信じます……もう、心臓に悪いなあ」
ぼく「しかし……ははぁ、なるほど。それでこんな山奥の家まで訪ねてきたんですね?」
女戦士「うん、下の町で噂を聞いてな」
女戦士「お前、怪しげな術を研究している魔女なんだろう?」
4: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:42:55.29 ID:c9/bqZoV0
ぼく「下の町で噂になってる魔女はぼくの姉です。町の人は魔女のことをとても美人でグラマラスと言ってませんでしたか?」
女戦士「そういえばそう言ってる人もいた。確かにお前はそういう風には見えないな」
ぼく「そりゃ見えないでしょうよ。まあいいです。そういうことなら上がってください」
ぼく「正直、ぼくもあなたの体にものすごく興味があります」
女戦士「このグラマラスなボディの秘訣か?」
ぼく「それはどうでもいいです。正直姉の方がすごい体をしていましたので」
女戦士「何だと。もういっぺん言ってみろこの野郎」
ぼく「うわあ怒った。この人自分のプロポーションに絶対の自信をもっていらっしゃる」
女戦士「お前御自慢のお姉ちゃんのところに案内しろ。格の違いというものを教えてやる」
ぼく「あいにく、姉はもう亡くなってまして」
女戦士「あ、ごめん」
ぼく「いえいえ。お気になさらず。肖像画は残っているので後でお見せしますよ」
女戦士「そういえばそう言ってる人もいた。確かにお前はそういう風には見えないな」
ぼく「そりゃ見えないでしょうよ。まあいいです。そういうことなら上がってください」
ぼく「正直、ぼくもあなたの体にものすごく興味があります」
女戦士「このグラマラスなボディの秘訣か?」
ぼく「それはどうでもいいです。正直姉の方がすごい体をしていましたので」
女戦士「何だと。もういっぺん言ってみろこの野郎」
ぼく「うわあ怒った。この人自分のプロポーションに絶対の自信をもっていらっしゃる」
女戦士「お前御自慢のお姉ちゃんのところに案内しろ。格の違いというものを教えてやる」
ぼく「あいにく、姉はもう亡くなってまして」
女戦士「あ、ごめん」
ぼく「いえいえ。お気になさらず。肖像画は残っているので後でお見せしますよ」
5: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:43:29.14 ID:c9/bqZoV0
ぼく「姉は亡くなりましたが彼女の研究はぼくが受け継いでいるんです。ですので、ぼくとしてもあなたの不死性はとても興味があります」
女戦士「研究。町の人間が怪しげな術と言っていたやつか」
ぼく「甚だ不本意ですけどね。姉のしていた研究は至極真っ当な医術ですよ」
ぼく「この世には不治の病と言われる難病が数多く存在している。その治療法の研究の為に、そりゃ確かに怪しい薬や、逆に毒物なんかも作り出したりしましたが」
ぼく「姉は新しい技術を取り入れるのにためらいを持たない人でしたから、最新鋭の機器も町の商人を通じて買い付けていました。知らない人が見たら何に使うのかもわからない異形の機械です。確かに魔女と呼び姉を畏怖した町の人の気持ちもわからなくはありません」
女戦士「お姉さんはご病気で?」
ぼく「病気……まあ、確かに病気と言えなくはないですね。厄介な病原菌に犯され、姉は苦痛のあまり自ら死を選びました」
ぼく「ぼくは姉のことを尊敬していたし、愛していました。姉を蝕んだ病原菌が憎くて、その菌を駆逐したかった。だから、姉の研究を引き継いで、その方法を勉強しています」
ぼく「……と、ここが研究室です。どうぞ中へ」
女戦士「ほぉぉ……一見すると、訳の分からん機械と意味不明な薬瓶だらけだ。確かにこれは、ここが魔女の館と呼ばれるのも納得だなあ」
ぼく「重たい薬瓶や機械なんかは、人に頼んでここまで運んでもらってますからね。そんな人達が町に戻って噂をするんでしょう」
女戦士「しかしあれだな。よくよく見れば、結構危ない機械や薬が沢山ある。人の命をたちまちに奪う毒なんかもあるじゃないか」
ぼく「わかるんですか?」
女戦士「うん。私はね、これまで何とか自分を殺そうと長い間色々なことを試してきたんだよ。飲んできた毒の種類も、数百種類はくだらない」
ぼく「長い間? 女戦士さん、もしかしてあなたは」
女戦士「うん。お察しの通りだ。不死身といったが、実際私は不老不死だ。うら若き美しい乙女に見えるかもしれないが、もう六百歳を超えている」
ぼく「美しいはいらんと思いますが……ははぁ…それはとてつもない話ですね」
女戦士「……多分。二百歳を超えてからはあんまり数えてないから正確なところはわかんないけど」
女戦士「研究。町の人間が怪しげな術と言っていたやつか」
ぼく「甚だ不本意ですけどね。姉のしていた研究は至極真っ当な医術ですよ」
ぼく「この世には不治の病と言われる難病が数多く存在している。その治療法の研究の為に、そりゃ確かに怪しい薬や、逆に毒物なんかも作り出したりしましたが」
ぼく「姉は新しい技術を取り入れるのにためらいを持たない人でしたから、最新鋭の機器も町の商人を通じて買い付けていました。知らない人が見たら何に使うのかもわからない異形の機械です。確かに魔女と呼び姉を畏怖した町の人の気持ちもわからなくはありません」
女戦士「お姉さんはご病気で?」
ぼく「病気……まあ、確かに病気と言えなくはないですね。厄介な病原菌に犯され、姉は苦痛のあまり自ら死を選びました」
ぼく「ぼくは姉のことを尊敬していたし、愛していました。姉を蝕んだ病原菌が憎くて、その菌を駆逐したかった。だから、姉の研究を引き継いで、その方法を勉強しています」
ぼく「……と、ここが研究室です。どうぞ中へ」
女戦士「ほぉぉ……一見すると、訳の分からん機械と意味不明な薬瓶だらけだ。確かにこれは、ここが魔女の館と呼ばれるのも納得だなあ」
ぼく「重たい薬瓶や機械なんかは、人に頼んでここまで運んでもらってますからね。そんな人達が町に戻って噂をするんでしょう」
女戦士「しかしあれだな。よくよく見れば、結構危ない機械や薬が沢山ある。人の命をたちまちに奪う毒なんかもあるじゃないか」
ぼく「わかるんですか?」
女戦士「うん。私はね、これまで何とか自分を殺そうと長い間色々なことを試してきたんだよ。飲んできた毒の種類も、数百種類はくだらない」
ぼく「長い間? 女戦士さん、もしかしてあなたは」
女戦士「うん。お察しの通りだ。不死身といったが、実際私は不老不死だ。うら若き美しい乙女に見えるかもしれないが、もう六百歳を超えている」
ぼく「美しいはいらんと思いますが……ははぁ…それはとてつもない話ですね」
女戦士「……多分。二百歳を超えてからはあんまり数えてないから正確なところはわかんないけど」
6: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:44:18.38 ID:c9/bqZoV0
ぼく「これが姉の肖像画です」
女戦士「え、なにこれ超かわいいし超おっぱい大きいじゃん。嘘だ、絶対盛ってるよこれ」
ぼく「失礼な。盛ってません。むしろ実物はもっと綺麗で可愛いです。これを描いた画家はへっぽこです」
女戦士「うっそだ~。女としての自信が打ち砕かれていくよう……これ僧侶よりおっぱい大きいんじゃないの?」
ぼく「僧侶?」
女戦士「昔々、と~おい昔に一緒に魔王討伐をした仲間の女の子だよ。すごい可愛くておっぱいも大きかったんだ」
ぼく「魔王って……『勇者と魔王』のあの魔王ですか? よく物語に出てくる、あの…」
女戦士「大抵の物語は創作物だけどね。中には真実に近いものもあるよ。遠い昔から、少しずつ形を変えながらも語り継がれ続けてるんだろうねえ」
ぼく「すごい…実在したんだ、魔王……」
女戦士「なんかすごく感動してるね」
ぼく「そりゃ、もう。この家にも勇者と魔王の物語はいくつか置いてありますよ。小さいころから大好きで繰り返し読んでました」
女戦士「へえ…それ、私も後で見せてもらおうかな」
ぼく「どうぞどうぞ。もしかしたら、女戦士さんの冒険が謳われたものが、中にはあるかもしれない。そうしたら、うわあ、すごいなぁ……」
女戦士「目をキラキラさせてるところ申し訳ないけど、本題に戻ろうか」
女戦士「どうだろう? 君は私を殺してくれるだろうか?」
女戦士「え、なにこれ超かわいいし超おっぱい大きいじゃん。嘘だ、絶対盛ってるよこれ」
ぼく「失礼な。盛ってません。むしろ実物はもっと綺麗で可愛いです。これを描いた画家はへっぽこです」
女戦士「うっそだ~。女としての自信が打ち砕かれていくよう……これ僧侶よりおっぱい大きいんじゃないの?」
ぼく「僧侶?」
女戦士「昔々、と~おい昔に一緒に魔王討伐をした仲間の女の子だよ。すごい可愛くておっぱいも大きかったんだ」
ぼく「魔王って……『勇者と魔王』のあの魔王ですか? よく物語に出てくる、あの…」
女戦士「大抵の物語は創作物だけどね。中には真実に近いものもあるよ。遠い昔から、少しずつ形を変えながらも語り継がれ続けてるんだろうねえ」
ぼく「すごい…実在したんだ、魔王……」
女戦士「なんかすごく感動してるね」
ぼく「そりゃ、もう。この家にも勇者と魔王の物語はいくつか置いてありますよ。小さいころから大好きで繰り返し読んでました」
女戦士「へえ…それ、私も後で見せてもらおうかな」
ぼく「どうぞどうぞ。もしかしたら、女戦士さんの冒険が謳われたものが、中にはあるかもしれない。そうしたら、うわあ、すごいなぁ……」
女戦士「目をキラキラさせてるところ申し訳ないけど、本題に戻ろうか」
女戦士「どうだろう? 君は私を殺してくれるだろうか?」
7: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:44:57.96 ID:c9/bqZoV0
ぼく「そうですね。医術とは突き詰めれば『命を殺す術』。病気を治す薬も、見方を変えれば病原菌を殺す毒」
ぼく「良心が咎めるという点に目を瞑れば、何をしても死なないというあなたは新しい治療法を試すのにうってつけの被検体です」
ぼく「いいでしょう。出来るかどうかはわかりませんが、協力はします」
女戦士「ありがとう。では早速……これか? この謎の薬を飲んでみればいいか?」
ぼく「いえ、まずはあなたが今まで死ぬために試してきたことを教えてください。それを聞いて、分析したうえで、事には取り掛かりましょう。徒にあなたを傷つけることは避けたい」
女戦士「……長い話になる。何しろ、六百年分の、自分殺しの旅だ。覚悟して聞いてほしい」
ぼく「……ごくり」
ぼく「良心が咎めるという点に目を瞑れば、何をしても死なないというあなたは新しい治療法を試すのにうってつけの被検体です」
ぼく「いいでしょう。出来るかどうかはわかりませんが、協力はします」
女戦士「ありがとう。では早速……これか? この謎の薬を飲んでみればいいか?」
ぼく「いえ、まずはあなたが今まで死ぬために試してきたことを教えてください。それを聞いて、分析したうえで、事には取り掛かりましょう。徒にあなたを傷つけることは避けたい」
女戦士「……長い話になる。何しろ、六百年分の、自分殺しの旅だ。覚悟して聞いてほしい」
ぼく「……ごくり」
8: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:45:36.06 ID:c9/bqZoV0
女戦士の!! 『こんな死に方を今まで試してきたよ』のコーナー♪
【☆刺殺☆】
さっきも「ぼく」の目の前で試したよ!
刺しても刺してもすぐに治るよ!
どこを刺しても、どれだけ血を流しても関係ないみたいだ!
【☆撲殺☆】
嫌がる傭兵に大金を掴ませてでっかいハンマーで頭をバーン☆ってしてもらったよ!
うつ伏せに寝てる状態で頭を叩き潰してもらったよ!
頭が粉々になったはずなのに、普通に目が覚めたよ!
頭は何事もなかったように元通りだったよ!
頭を叩いてくれた傭兵はどこかに逃げてしまったみたいだ!
【☆轢殺☆】
でっかい車輪で全身を轢いてもらったよ!
仰向けになった状態で、何回も何回も体の上を車輪が往復したよ!
全身がぐっちゃぐちゃになったはずなのに普通に元通りになったよ!
まあ、頭をハンマーで叩き潰して死ななかった時点で、予想してたけどね!
【☆水死☆】
趣向を変えて、足に重りをつけて深い海に飛び込んだよ!
めっちゃ苦しくなって、一回死んだような気がするんだけど、すぐに目覚めちゃうよ!
苦しくなって意識失う → 目が覚める → また苦しくなって意識失う → 目が覚める の無限ループだったよ!
そのうち苦しいってなんなのかよくわかんなくなったよ!
深い水の底にいくということで水圧による圧死も期待してたんだけど、そっちはやっぱり全然平気だったよ!
9: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:46:18.18 ID:c9/bqZoV0
まだまだいくよ!
続・女戦士の!! 『こんな死に方を今まで試してきたよ』のコーナー♪
【☆捕食死☆】
海に長いこと沈んでる時に、優雅に泳ぐ鮫を見つけた時に閃いたよ!
普通に動物に食べられるだけじゃ、食べられたところから再生しちゃって駄目だろうけど、丸呑みされて消化されたらいけるんじゃない!?
体がただバラバラになるんじゃなくて、ウンコに変わってしまえば、流石に再生できないんじゃない!?
そう思って鮫の口に飛び込んだよ!
結果は最悪で、そもそも全然消化されなかったよ!
全然消化されない異物がいつまでも腹の中にいたことで、鮫さんは死んじゃったよ!
本当に申し訳なくて、この方法はもう二度としないと心に誓ったよ!
【☆餓死☆】
そもそも腹が減らないよ!
ってゆーか不老不死になってからウンコもおしっこも出ないよ!
食べたもの、飲んだものはいずれ吐き気を催して全部吐いちゃうんだよ!
とゆーわけで、勿体ないから極力食べ物は食べないようにしているよ!
甘味とかは、申し訳ないけどたまーに食べてるんだ!
【☆爆死☆】
火薬をいっぱい使った爆弾というものが世に出てきたから試してみたよ!
爆弾を抱えたまま着火して、ボカン!
四肢が吹き飛んでバラバラになった感覚はあったけど、気づけば無傷で立ってたよ!
地面がえぐれて更地になった中心にポツンと立っていたときは、何だか物悲しい気持ちになったよ!
【☆蒸発死☆】
火山のマグマに飛び込んで一瞬で焼け溶ければ或いはと思い、試してみたよ!
でもやっぱりすぐに体が復活したよ!
でもまた一瞬で溶けたよ!
溶ける → 復活 → 溶ける → 復活 の繰り返しになったよ!
一瞬で溶けちゃうから、海の時と違って途中でやめて上がることも出来なかったよ!
しょうがないから、意図的に抑えていた全盛期の力を開放したよ!
そうすると防御力が跳ね上がるから、マグマの熱にもある程度耐えることが出来るようになるんだ!
それでようやく脱出したよ!
クソ程めんどくさかったから、この方法は絶対に死ねるという保証がなければもう二度とやらねえ!!
【☆老衰死☆】
いつかは脳みそに限界がくるんじゃないかと思ってだらだら生きてるよ!
でも、いつまで経ってもその兆候すら表れないよ!
六百年分、意外と昔のことも覚えてたりするよ!
凄いね、人間の脳みそ!
10: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:46:56.24 ID:c9/bqZoV0
女戦士「え~と、あとね~」
ぼく「もういいです。一回休憩」
女戦士「おや、顔色がすこぶる悪い」
ぼく「そりゃそうでしょう……はあ、あなたの話が全て真実だとしたら、本当にとんでもない話だ」
女戦士「お? まだ疑ってる?」
ぼく「うそうそうそ、信じてます信じてます。やめて剣を頭頂部に当てないで」
女戦士「どうかな? 私の話を聞いて何かわかった?」
ぼく「う~ん、いろいろなことが衝撃的過ぎてなんとも……とりあえず今夜一晩ゆっくり考えてみます」
女戦士「お願いね。それじゃ、今日はこれでお開きにしようか」
ぼく「良ければしばらくこの館に泊まってください。姉の使っていた部屋も空いてますので」
女戦士「いいの? それじゃ、遠慮なくお世話になるね」
ぼく「もういいです。一回休憩」
女戦士「おや、顔色がすこぶる悪い」
ぼく「そりゃそうでしょう……はあ、あなたの話が全て真実だとしたら、本当にとんでもない話だ」
女戦士「お? まだ疑ってる?」
ぼく「うそうそうそ、信じてます信じてます。やめて剣を頭頂部に当てないで」
女戦士「どうかな? 私の話を聞いて何かわかった?」
ぼく「う~ん、いろいろなことが衝撃的過ぎてなんとも……とりあえず今夜一晩ゆっくり考えてみます」
女戦士「お願いね。それじゃ、今日はこれでお開きにしようか」
ぼく「良ければしばらくこの館に泊まってください。姉の使っていた部屋も空いてますので」
女戦士「いいの? それじゃ、遠慮なくお世話になるね」
11: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:47:33.06 ID:c9/bqZoV0
ぼく「というわけで、気分を紛らわせるために自慢の大浴場にやってきたのだった」
ぼく「大浴場なんていうと大げさだけど、それでも人間二人が入って十分に足を伸ばせるほどの広さがあるのだ」
ぼく「体にいい色んな薬草もお湯に浮かべてあるし、その泉質は有名温泉地にも引けをとらない自信がある」
ぼく「……お姉ちゃんと洗いっこしてたのが懐かしい」
ぼく「……お姉ちゃん……くすん…」
女戦士「なんだなんだ。姉が恋しいのか。よし、それじゃ私がお姉ちゃんの代わりをしてやろう」
ぼく「うわあ、何入ってきてんですか。やめて脱がないで、出てって、脱ぐなぁ」
女戦士「なんだ顔を真っ赤にして。照れる必要なんてないぞ?」
ぼく「いいから出てっ、て…」
ぼく(思わずぼくは言葉を失ってしまった)
ぼく(女戦士さんは鍛えられて非常に均整の取れたプロポーションをしていて、見かたによっては確かに姉の体よりも美しいとさえ言えた)
ぼく(だけど、ぼくの目を引いたのはそこではなくて……女戦士さんの体には、無数の傷跡があったのだ)
ぼく(特に……お腹にある大きな傷跡。そこにまるで大きな穴が開いていたかのように……肋骨から腰骨まで、大きく丸くそこだけ皮膚の色が違う)
女戦士「なんだ人の体をまじまじと見て。欲しいのか? この見事に均整の取れた体が」
ぼく「ち、違いますよ。な、なんでもないです。すいません」
女戦士「ああ、この傷跡か。醜いだろう? しかし私はこれを恥ずかしいとは思わない。むしろ、この傷跡は私の誇りだ」
女戦士「これは自分殺しの旅の中でついたものではない。はるか昔、私がまだ真っ当に人として生きていたころについた傷だ。魔王討伐の旅の中でついた傷なんだ」
ぼく(ぼくは、あまりの衝撃に声を出せないままでいた)
ぼく(女戦士さんの言葉を今まで疑っていたわけはないけど、女戦士さんのお腹の傷跡は彼女の話が真実であることを雄弁に物語っていた)
ぼく(だって、あんな大きさの傷、今の医術で治せるわけがない。今は空想の物語とされている、神話の時代の奇跡の魔法でもなければ……)
ぼく(ぼくの心臓がばくんばくんと大きく高鳴っている)
ぼく(彼女の協力が得られるなら、ぼくは―――――ぼくの目的に大きく近づくことが出来るかもしれない)
ぼく「大浴場なんていうと大げさだけど、それでも人間二人が入って十分に足を伸ばせるほどの広さがあるのだ」
ぼく「体にいい色んな薬草もお湯に浮かべてあるし、その泉質は有名温泉地にも引けをとらない自信がある」
ぼく「……お姉ちゃんと洗いっこしてたのが懐かしい」
ぼく「……お姉ちゃん……くすん…」
女戦士「なんだなんだ。姉が恋しいのか。よし、それじゃ私がお姉ちゃんの代わりをしてやろう」
ぼく「うわあ、何入ってきてんですか。やめて脱がないで、出てって、脱ぐなぁ」
女戦士「なんだ顔を真っ赤にして。照れる必要なんてないぞ?」
ぼく「いいから出てっ、て…」
ぼく(思わずぼくは言葉を失ってしまった)
ぼく(女戦士さんは鍛えられて非常に均整の取れたプロポーションをしていて、見かたによっては確かに姉の体よりも美しいとさえ言えた)
ぼく(だけど、ぼくの目を引いたのはそこではなくて……女戦士さんの体には、無数の傷跡があったのだ)
ぼく(特に……お腹にある大きな傷跡。そこにまるで大きな穴が開いていたかのように……肋骨から腰骨まで、大きく丸くそこだけ皮膚の色が違う)
女戦士「なんだ人の体をまじまじと見て。欲しいのか? この見事に均整の取れた体が」
ぼく「ち、違いますよ。な、なんでもないです。すいません」
女戦士「ああ、この傷跡か。醜いだろう? しかし私はこれを恥ずかしいとは思わない。むしろ、この傷跡は私の誇りだ」
女戦士「これは自分殺しの旅の中でついたものではない。はるか昔、私がまだ真っ当に人として生きていたころについた傷だ。魔王討伐の旅の中でついた傷なんだ」
ぼく(ぼくは、あまりの衝撃に声を出せないままでいた)
ぼく(女戦士さんの言葉を今まで疑っていたわけはないけど、女戦士さんのお腹の傷跡は彼女の話が真実であることを雄弁に物語っていた)
ぼく(だって、あんな大きさの傷、今の医術で治せるわけがない。今は空想の物語とされている、神話の時代の奇跡の魔法でもなければ……)
ぼく(ぼくの心臓がばくんばくんと大きく高鳴っている)
ぼく(彼女の協力が得られるなら、ぼくは―――――ぼくの目的に大きく近づくことが出来るかもしれない)
12: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:48:08.60 ID:c9/bqZoV0
ぼく(朝になった。一晩じっくりと考えた結果、女戦士さんに色々と聞きたいことが出来たのでぼくは彼女を呼びに姉の部屋に向かう)
ぼく(元気よく出てきた彼女によく眠れたかと聞くと「口と鼻を塞いで寝たから果たして寝ていたのか死んでたのかわからん」とほざいたので怒鳴りつけた)
ぼく(いくら何でも姉の部屋で死亡実験を行うのはやめていただきたい)
女戦士「正直すまんかった。今は反省している」
ぼく「頼みますよホント……それで、昨日の話なんですが、いろいろと知りたいことが出来たので質問に答えてください」
女戦士「わかった」
ぼく「まずは何より、あなたがそんな体になってしまった原因です。昨日の脱衣場で聞いた話も含めると、あなたのその不死性は持って生まれたものではない。一体どうして、あなたはそんな体になってしまったのですか?」
女戦士「原因はこれだ」
ぼく(そういって女戦士さんは左手を差し出してきた。昨日は気づかなかったが、中指に指輪をしている)
ぼく(何の変哲もない指輪に見えるが、どこか禍々しい雰囲気をぼくは感じた)
女戦士「死者の指輪という、呪われたアイテムだ。これを装備すると、装備した者は呪われて不老不死となり、私のように決して死ねない体になってしまう」
女戦士「私が生まれた時代には、こういった呪いのアイテムが沢山あった。誰かを、何かを呪う人の怨念がアイテムに宿り、呪いを生み出すんだ」
女戦士「装備したのが確か二十七とかそこらの年齢だったから……私の肉体年齢は、その辺りで止まっている。全盛期ともいえる年齢でこれを装備したのは不幸中の幸いだったと言えるだろうな」
ぼく(確かに、年老いた状態、あるいは幼少期の状態で不老不死となれば、その後の長い年月を過ごすのに多大な問題があったろう。もしかすると、これはそれこそを目的としたアイテムなのかもしれない)
ぼく(しかしあらためてぼくは高揚する。こんなアイテムは今の常識では考えられない、まさしく神代の奇跡の産物だ。つまり、ぼくが読みふけった勇者と魔王の物語は決して空想の絵空事ではなく、実在していたということになる)
ぼく「当然、その指輪は外すことが出来ないんですよね。その指輪がついている中指を切り落としても……」
女戦士「もちろん試した。何度やっても無駄だったよ。中指は瞬く間に元の形を取り戻し、そこにはこの指輪が外れずくっついてきた」
ぼく(ぼくは頷く。一連の話から新たな疑問は生じたが、まずは昨晩のうちに考えていた疑問から片付けていくことにした)
ぼく「それでは、次です。こんなことをお願いするのは、大変に心苦しいのですが……」
ぼく(元気よく出てきた彼女によく眠れたかと聞くと「口と鼻を塞いで寝たから果たして寝ていたのか死んでたのかわからん」とほざいたので怒鳴りつけた)
ぼく(いくら何でも姉の部屋で死亡実験を行うのはやめていただきたい)
女戦士「正直すまんかった。今は反省している」
ぼく「頼みますよホント……それで、昨日の話なんですが、いろいろと知りたいことが出来たので質問に答えてください」
女戦士「わかった」
ぼく「まずは何より、あなたがそんな体になってしまった原因です。昨日の脱衣場で聞いた話も含めると、あなたのその不死性は持って生まれたものではない。一体どうして、あなたはそんな体になってしまったのですか?」
女戦士「原因はこれだ」
ぼく(そういって女戦士さんは左手を差し出してきた。昨日は気づかなかったが、中指に指輪をしている)
ぼく(何の変哲もない指輪に見えるが、どこか禍々しい雰囲気をぼくは感じた)
女戦士「死者の指輪という、呪われたアイテムだ。これを装備すると、装備した者は呪われて不老不死となり、私のように決して死ねない体になってしまう」
女戦士「私が生まれた時代には、こういった呪いのアイテムが沢山あった。誰かを、何かを呪う人の怨念がアイテムに宿り、呪いを生み出すんだ」
女戦士「装備したのが確か二十七とかそこらの年齢だったから……私の肉体年齢は、その辺りで止まっている。全盛期ともいえる年齢でこれを装備したのは不幸中の幸いだったと言えるだろうな」
ぼく(確かに、年老いた状態、あるいは幼少期の状態で不老不死となれば、その後の長い年月を過ごすのに多大な問題があったろう。もしかすると、これはそれこそを目的としたアイテムなのかもしれない)
ぼく(しかしあらためてぼくは高揚する。こんなアイテムは今の常識では考えられない、まさしく神代の奇跡の産物だ。つまり、ぼくが読みふけった勇者と魔王の物語は決して空想の絵空事ではなく、実在していたということになる)
ぼく「当然、その指輪は外すことが出来ないんですよね。その指輪がついている中指を切り落としても……」
女戦士「もちろん試した。何度やっても無駄だったよ。中指は瞬く間に元の形を取り戻し、そこにはこの指輪が外れずくっついてきた」
ぼく(ぼくは頷く。一連の話から新たな疑問は生じたが、まずは昨晩のうちに考えていた疑問から片付けていくことにした)
ぼく「それでは、次です。こんなことをお願いするのは、大変に心苦しいのですが……」
13: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:48:38.44 ID:c9/bqZoV0
ぼく(ぼくは館を出て、少し歩いたところにある河原に立っていた)
ぼく(ごうごうと大きな音と共に舞い上がる水しぶきがぼくの頬を叩く。目の前には滝つぼがあった。ぼくの住む館は山の頂に近いところにある。少し歩けば、こうやって山肌を滑り落ちる滝があるのだ)
ぼく(女戦士さんはここにはいない。彼女はというと……)
女戦士「おぉ~い、そろそろいいかぁ~」
ぼく(ごうごうと響く滝の音に負けない大音量で、滝の上から女戦士さんがこちらに呼び掛けてきた)
ぼく(そう、彼女は滝の上にいる。三十メートルは優にある高さから、彼女は物おじせず滝つぼのそばに立つぼくを覗き込んでいる)
ぼく(ぼくは手をあげて彼女に合図を出した。すると彼女は景気よくジャンプし、滝の上から空中へと身を躍らせた)
ぼく(びじゃん、と重く湿った音が響いた)
ぼく(彼女が落ちたのは滝つぼではない。ぼくの立つ河原、つまりは岩場だ)
ぼく(ぼくがそうしてくれと頼んだ)
ぼく(彼女は何度もこれまでに体がバラバラになったことがあるという話をした。しかし彼女は気が付くと五体満足で復活していたという)
ぼく(ぼくはその復活の過程が知りたかった。彼女の再生力がどれ程のものなのかを確認したかった)
ぼく(果たして今、ぼくの目の前にはぐちゃりと潰れた彼女の肉体がある)
ぼく(昔、大きな蛾を靴の裏で踏みつぶした時のことを思い出した)
ぼく(彼女は間違いなく死んでいた。生きているはずがない)
ぼく(首は折れ、腕はめちゃくちゃに折れ曲がり、足はかろうじて皮膚だけで繋がっている。衝撃で破けた腹部からは臓物が四方八方に飛び出していた)
ぼく「お、おおぅ……」
ぼく(思わず口からうめき声が漏れていた。女戦士さんの体が再生を始めたのだ。折れ曲がった首はひとりでに真っすぐになり、同様に手足もぐねぐねと蠢きながら元の形へと戻っていく)
ぼく(バラバラになった粘土細工を修復しているようだ。透明な人間が隣にいて、こねこねと手足を繋ぎ合わせているのではと想像してしまう)
ぼく(ひとりでに腹に戻ろうと蠢く臓物は地を這う巨大な芋虫に見えた。見たいと頼んだ手前、目をそらすわけにもいかない。生理的嫌悪感に耐え、そのおぞましい光景を注視し続けた)
ぼく(ごうごうと大きな音と共に舞い上がる水しぶきがぼくの頬を叩く。目の前には滝つぼがあった。ぼくの住む館は山の頂に近いところにある。少し歩けば、こうやって山肌を滑り落ちる滝があるのだ)
ぼく(女戦士さんはここにはいない。彼女はというと……)
女戦士「おぉ~い、そろそろいいかぁ~」
ぼく(ごうごうと響く滝の音に負けない大音量で、滝の上から女戦士さんがこちらに呼び掛けてきた)
ぼく(そう、彼女は滝の上にいる。三十メートルは優にある高さから、彼女は物おじせず滝つぼのそばに立つぼくを覗き込んでいる)
ぼく(ぼくは手をあげて彼女に合図を出した。すると彼女は景気よくジャンプし、滝の上から空中へと身を躍らせた)
ぼく(びじゃん、と重く湿った音が響いた)
ぼく(彼女が落ちたのは滝つぼではない。ぼくの立つ河原、つまりは岩場だ)
ぼく(ぼくがそうしてくれと頼んだ)
ぼく(彼女は何度もこれまでに体がバラバラになったことがあるという話をした。しかし彼女は気が付くと五体満足で復活していたという)
ぼく(ぼくはその復活の過程が知りたかった。彼女の再生力がどれ程のものなのかを確認したかった)
ぼく(果たして今、ぼくの目の前にはぐちゃりと潰れた彼女の肉体がある)
ぼく(昔、大きな蛾を靴の裏で踏みつぶした時のことを思い出した)
ぼく(彼女は間違いなく死んでいた。生きているはずがない)
ぼく(首は折れ、腕はめちゃくちゃに折れ曲がり、足はかろうじて皮膚だけで繋がっている。衝撃で破けた腹部からは臓物が四方八方に飛び出していた)
ぼく「お、おおぅ……」
ぼく(思わず口からうめき声が漏れていた。女戦士さんの体が再生を始めたのだ。折れ曲がった首はひとりでに真っすぐになり、同様に手足もぐねぐねと蠢きながら元の形へと戻っていく)
ぼく(バラバラになった粘土細工を修復しているようだ。透明な人間が隣にいて、こねこねと手足を繋ぎ合わせているのではと想像してしまう)
ぼく(ひとりでに腹に戻ろうと蠢く臓物は地を這う巨大な芋虫に見えた。見たいと頼んだ手前、目をそらすわけにもいかない。生理的嫌悪感に耐え、そのおぞましい光景を注視し続けた)
14: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:49:08.49 ID:c9/bqZoV0
女戦士「どうだった?」
ぼく「ええ、まあ……すごかったです」
女戦士「気づいたら治ってるから、自分じゃよくわかんないんだよね。想像するに、けっこうえぐいシーンだったと思うけど」
ぼく「ええ、そりゃもう……すごかったですよ、もう、なんていうか、こう、やばかったです」
女戦士「語彙力が死んでいる…」
ぼく「ちなみにその……痛みは、どうなんです?」
女戦士「痛みは感じるよ。今のは即死っぽかったからほとんど痛み感じずに意識無くなったけど、剣で刺したりしたときは普通に痛い。でも、もう慣れたよ」
女戦士「痛いは痛いんだけど、怖くないって感じ。痛いのが嫌なのって、そこに怖いがくっついてくるからだと思うんだよね。死ぬのが怖い、元の形に戻らないかもしれないのが怖い、ってさ」
女戦士「だから、痛いけど嫌じゃない……ぬう、こう言うと変態っぽいな。とにかく、君が心配するような苦痛を私は感じないってことだ。気にしないで実験を続けてほしい」
ぼく「は、はぁ……」
ぼく(戸惑いはあったし、躊躇いは依然としてあった。でも、さっきの光景を見て、もしかしたら、と試したいことが出来た。それはとても冷酷で残酷なアイデアだったけど、ぼくの好奇心はそれを試さずにはいられなかった)
ぼく「それじゃあ、女戦士さん、館に戻りましょう。ぼくの研究室で試したいことがあります」
女戦士「うん、わかった」
ぼく(女戦士さんは二つ返事でついてきた。ぼくはそれがとてもうれしかった)
ぼく(姉も好奇心旺盛で、怪しげな実験を数多く行っていた。そのせいで人々から魔女だと蔑まれて、ぼくはそれが許せなかったけど……どうやらぼくは、そう呼ばれても仕方がない存在のようだった)
ぼく「ええ、まあ……すごかったです」
女戦士「気づいたら治ってるから、自分じゃよくわかんないんだよね。想像するに、けっこうえぐいシーンだったと思うけど」
ぼく「ええ、そりゃもう……すごかったですよ、もう、なんていうか、こう、やばかったです」
女戦士「語彙力が死んでいる…」
ぼく「ちなみにその……痛みは、どうなんです?」
女戦士「痛みは感じるよ。今のは即死っぽかったからほとんど痛み感じずに意識無くなったけど、剣で刺したりしたときは普通に痛い。でも、もう慣れたよ」
女戦士「痛いは痛いんだけど、怖くないって感じ。痛いのが嫌なのって、そこに怖いがくっついてくるからだと思うんだよね。死ぬのが怖い、元の形に戻らないかもしれないのが怖い、ってさ」
女戦士「だから、痛いけど嫌じゃない……ぬう、こう言うと変態っぽいな。とにかく、君が心配するような苦痛を私は感じないってことだ。気にしないで実験を続けてほしい」
ぼく「は、はぁ……」
ぼく(戸惑いはあったし、躊躇いは依然としてあった。でも、さっきの光景を見て、もしかしたら、と試したいことが出来た。それはとても冷酷で残酷なアイデアだったけど、ぼくの好奇心はそれを試さずにはいられなかった)
ぼく「それじゃあ、女戦士さん、館に戻りましょう。ぼくの研究室で試したいことがあります」
女戦士「うん、わかった」
ぼく(女戦士さんは二つ返事でついてきた。ぼくはそれがとてもうれしかった)
ぼく(姉も好奇心旺盛で、怪しげな実験を数多く行っていた。そのせいで人々から魔女だと蔑まれて、ぼくはそれが許せなかったけど……どうやらぼくは、そう呼ばれても仕方がない存在のようだった)
15: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:49:43.97 ID:c9/bqZoV0
ぼく「それじゃ、この薬を飲んでください」
ぼく(研究室に戻ったぼくは、ある薬瓶を女戦士さんに差し出す。中身は強力な睡眠薬だ。飲んだ人間はたちまちのうちに昏倒する。そして、しばらくは何をされても起きない)
ぼく(それは例えば、腹を切り裂かれて臓物を抜かれたとしても……)
女戦士「わかった。ごくごく、ぷはー。まっずい、くそまずいなこれ。毒か、さては毒だなこれ。まき散らす糞尿も私の中には無いが、はてさていったいどんなおぞましい死に方をするのかぐごごごすぴー」
ぼく「しゃべりながら寝た。立ったままなのが凄いなこの人」
ぼく「まあでもバタンと床に倒れなくてよかった。そうすると手術台に運ぶのが大変だった」
ぼく(ぼくは傍にあった手術台へと女戦士さんの体を横たえる。本当に申し訳ないけれど、本人の了承なしに上半身の服をはだけさせてもらった)
ぼく(形のいい乳房があらわになる。姉の体で見慣れていたつもりだけど、美しい女性の体というものはどうしても見蕩れてしまう)
ぼく「はっ、いかんいかん。気を取り直して……いくぞ」
ぼく(ぼくは手にしたメスを、女戦士さんの左鎖骨の下あたりに突き入れた。女戦士さんの反応はない。今のところ薬はよく効いている)
ぼく(しかし薬の効果はきっとほんの僅かしかもたない。剣で刺した傷が瞬く間に回復したように、薬による体の異常もたちまちのうちに回復してしまうはずだ)
ぼく(ぼくは迅速に作業を進める。乳房に沿うようにメスを入れ、皮膚をめくり、胸部の中身をあらわにする)
ぼく(つまりは心臓だ。ぼくは女戦士さんの体から心臓を切り取り、それをあらかじめ用意していた三十センチ四方の鉄箱の中に閉じ込めた)
ぼく(がちゃりと念入りに鍵までかける。これでこの心臓は彼女の中に戻ることは出来ないはずだ)
ぼく「さて、どうなる……」
ぼく(彼女の体の再生が始まった。めくれあがった皮膚がひとりでに戻り、あっという間に傷は無くなってしまう)
女戦士「うーん、よく寝た……あっ、なんで私おっぱい丸出しなんだ。やったな、お前ついにやったな、えっち」
ぼく「ちがうちがう、ちがいます、誤解です。これにはやむをえない事情があったのです」
ぼく(女戦士さんは普通に今までのように起きてきた。ならば、鉄箱の中の心臓はどうなったのだろう)
ぼく「………」
ぼく(ぼくは絶句する。ぼくは高揚する。箱の中身はからっぽだった。ぼくはまぎれもなく、奇跡を今この目で目撃したのだ)
ぼく(女戦士さんの異常な体質、それ自体も奇跡ではあった。しかしそれはあくまで傷の超回復という、現実に存在するものの延長線上にあったものだった)
ぼく(今回のこれは違う。箱の中にあったはずのものが消えた。おそらくは女戦士さんの体の中に瞬間的に移動した。これは、現実にはあり得ない。つまり―――これは『魔法』だ)
ぼく(ぼくは今、魔法の実在を確認したのだ)
ぼく(研究室に戻ったぼくは、ある薬瓶を女戦士さんに差し出す。中身は強力な睡眠薬だ。飲んだ人間はたちまちのうちに昏倒する。そして、しばらくは何をされても起きない)
ぼく(それは例えば、腹を切り裂かれて臓物を抜かれたとしても……)
女戦士「わかった。ごくごく、ぷはー。まっずい、くそまずいなこれ。毒か、さては毒だなこれ。まき散らす糞尿も私の中には無いが、はてさていったいどんなおぞましい死に方をするのかぐごごごすぴー」
ぼく「しゃべりながら寝た。立ったままなのが凄いなこの人」
ぼく「まあでもバタンと床に倒れなくてよかった。そうすると手術台に運ぶのが大変だった」
ぼく(ぼくは傍にあった手術台へと女戦士さんの体を横たえる。本当に申し訳ないけれど、本人の了承なしに上半身の服をはだけさせてもらった)
ぼく(形のいい乳房があらわになる。姉の体で見慣れていたつもりだけど、美しい女性の体というものはどうしても見蕩れてしまう)
ぼく「はっ、いかんいかん。気を取り直して……いくぞ」
ぼく(ぼくは手にしたメスを、女戦士さんの左鎖骨の下あたりに突き入れた。女戦士さんの反応はない。今のところ薬はよく効いている)
ぼく(しかし薬の効果はきっとほんの僅かしかもたない。剣で刺した傷が瞬く間に回復したように、薬による体の異常もたちまちのうちに回復してしまうはずだ)
ぼく(ぼくは迅速に作業を進める。乳房に沿うようにメスを入れ、皮膚をめくり、胸部の中身をあらわにする)
ぼく(つまりは心臓だ。ぼくは女戦士さんの体から心臓を切り取り、それをあらかじめ用意していた三十センチ四方の鉄箱の中に閉じ込めた)
ぼく(がちゃりと念入りに鍵までかける。これでこの心臓は彼女の中に戻ることは出来ないはずだ)
ぼく「さて、どうなる……」
ぼく(彼女の体の再生が始まった。めくれあがった皮膚がひとりでに戻り、あっという間に傷は無くなってしまう)
女戦士「うーん、よく寝た……あっ、なんで私おっぱい丸出しなんだ。やったな、お前ついにやったな、えっち」
ぼく「ちがうちがう、ちがいます、誤解です。これにはやむをえない事情があったのです」
ぼく(女戦士さんは普通に今までのように起きてきた。ならば、鉄箱の中の心臓はどうなったのだろう)
ぼく「………」
ぼく(ぼくは絶句する。ぼくは高揚する。箱の中身はからっぽだった。ぼくはまぎれもなく、奇跡を今この目で目撃したのだ)
ぼく(女戦士さんの異常な体質、それ自体も奇跡ではあった。しかしそれはあくまで傷の超回復という、現実に存在するものの延長線上にあったものだった)
ぼく(今回のこれは違う。箱の中にあったはずのものが消えた。おそらくは女戦士さんの体の中に瞬間的に移動した。これは、現実にはあり得ない。つまり―――これは『魔法』だ)
ぼく(ぼくは今、魔法の実在を確認したのだ)
16: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:50:14.33 ID:c9/bqZoV0
女戦士「うーむ、研究室での実験を終えてから、あいつ、難しい顔をして変な部屋に引っ込んでしまったな」
女戦士「しばらく自由にしていてくださいと言われたけど、どうしようか。特に何もやりたいことなんてないぞ」
女戦士「一番やりたいことっていったら死ぬことだけど、死ねないしな」
女戦士「よし、さっき行った川で魚とりでもしよう。居候しておいて何も働かないただ飯食いと思われても嫌だしな。まあ、私飯食わないんだけどネ」
女戦士「あ、しまった。水着も持たずに川まで来てしまった。館に戻れば、あいつの姉の水着なんかもあるだろうけど、戻るのは面倒だな。あいつも部屋から出てくるかわからんし」
女戦士「しょうがない。はしたないが全裸でやろう。なに、こんな山奥にやってくる人間もいないだろうさ」
――――――――……………………
女戦士「ぷはぁ~。大量大量。これで六匹目ときたもんだ」
女戦士「うぅ~、濡れた体に風が当たると流石に冷えるな。氷ばっかりある土地で凍死しまくったのを思い出す……」
女戦士(植物のつるを使って即席でこしらえた籠に手掴みした魚を放り込んでいると、がさがさと後ろの茂みを揺らす音がした)
女戦士(あいつが様子を見に来たのかと思い、無警戒に振り返ると、そこには見覚えのない男が立っていた)
男「おお、魔女の館に行く途中で喉を潤しに川に寄ってみれば、何とも美しいお嬢さんがいるではないか。傷跡が多くあるが、それを差し引いても素晴らしい肉体だ」
女戦士(独特の耳飾りが特徴的な男だった。私は男に対して、妙に生理的嫌悪感を覚えた。無遠慮に私の体を舐め回す視線がおぞましい)
女戦士「何だ貴様は。上にある館に何の用事だ」
男「なに、くだらぬ用事さ。人に話すようなことではない」
女戦士「お前の言う魔女はもういないぞ。だいぶ前に亡くなったらしい」
男「……なに? そうか、町の連中の噂は本当だったか。実に、実に勿体ないことをした」
女戦士(遠い目をして館の方角を見遣る男。何を思い返しているのか、その顔に一瞬下卑た笑みが浮かんだのを私は見逃さなかった)
男「あの時、魔女の傍らにはもう一人幼い子供がいた。今回はその成長を見届けるも一興か」
女戦士(男が背を向けた。私は岩に立てかけていた剣を手に取る)
護衛「旦那様、随分と時間がかかっておりますが、何かございましたか?」
女戦士(もう一人、剣を持った男が茂みから現れ、私を見て固まった。迂闊だった。連れがいたとは。剣より先に服を取るべきだった)
護衛「女、貴様、何を…」
女戦士(有無を言わさず私は剣を持った男に斬りつけた。男は咄嗟に剣を構えたが、遅い。かつて魔王を討伐した私からすれば、あくびが出るほど遅い剣速だ)
男「な…?」
女戦士(耳飾りが特徴的な男は突然斬り捨てられた護衛を見て固まっている。私が剣を振り上げるとわたわたと慌てふためき始めた)
男「なぁ、なに、なん、なんで…? もしや、復讐か? 魔女から復讐を頼まれた傭兵か? 貴様」
女戦士「違うよ。悪いが、これは非常に個人的な理由だ。お前たちは、私の裸を見てしまった」
男「………は?」
女戦士「私の裸を見ていい男は、たった一人だけなんだよ」
女戦士「しばらく自由にしていてくださいと言われたけど、どうしようか。特に何もやりたいことなんてないぞ」
女戦士「一番やりたいことっていったら死ぬことだけど、死ねないしな」
女戦士「よし、さっき行った川で魚とりでもしよう。居候しておいて何も働かないただ飯食いと思われても嫌だしな。まあ、私飯食わないんだけどネ」
女戦士「あ、しまった。水着も持たずに川まで来てしまった。館に戻れば、あいつの姉の水着なんかもあるだろうけど、戻るのは面倒だな。あいつも部屋から出てくるかわからんし」
女戦士「しょうがない。はしたないが全裸でやろう。なに、こんな山奥にやってくる人間もいないだろうさ」
――――――――……………………
女戦士「ぷはぁ~。大量大量。これで六匹目ときたもんだ」
女戦士「うぅ~、濡れた体に風が当たると流石に冷えるな。氷ばっかりある土地で凍死しまくったのを思い出す……」
女戦士(植物のつるを使って即席でこしらえた籠に手掴みした魚を放り込んでいると、がさがさと後ろの茂みを揺らす音がした)
女戦士(あいつが様子を見に来たのかと思い、無警戒に振り返ると、そこには見覚えのない男が立っていた)
男「おお、魔女の館に行く途中で喉を潤しに川に寄ってみれば、何とも美しいお嬢さんがいるではないか。傷跡が多くあるが、それを差し引いても素晴らしい肉体だ」
女戦士(独特の耳飾りが特徴的な男だった。私は男に対して、妙に生理的嫌悪感を覚えた。無遠慮に私の体を舐め回す視線がおぞましい)
女戦士「何だ貴様は。上にある館に何の用事だ」
男「なに、くだらぬ用事さ。人に話すようなことではない」
女戦士「お前の言う魔女はもういないぞ。だいぶ前に亡くなったらしい」
男「……なに? そうか、町の連中の噂は本当だったか。実に、実に勿体ないことをした」
女戦士(遠い目をして館の方角を見遣る男。何を思い返しているのか、その顔に一瞬下卑た笑みが浮かんだのを私は見逃さなかった)
男「あの時、魔女の傍らにはもう一人幼い子供がいた。今回はその成長を見届けるも一興か」
女戦士(男が背を向けた。私は岩に立てかけていた剣を手に取る)
護衛「旦那様、随分と時間がかかっておりますが、何かございましたか?」
女戦士(もう一人、剣を持った男が茂みから現れ、私を見て固まった。迂闊だった。連れがいたとは。剣より先に服を取るべきだった)
護衛「女、貴様、何を…」
女戦士(有無を言わさず私は剣を持った男に斬りつけた。男は咄嗟に剣を構えたが、遅い。かつて魔王を討伐した私からすれば、あくびが出るほど遅い剣速だ)
男「な…?」
女戦士(耳飾りが特徴的な男は突然斬り捨てられた護衛を見て固まっている。私が剣を振り上げるとわたわたと慌てふためき始めた)
男「なぁ、なに、なん、なんで…? もしや、復讐か? 魔女から復讐を頼まれた傭兵か? 貴様」
女戦士「違うよ。悪いが、これは非常に個人的な理由だ。お前たちは、私の裸を見てしまった」
男「………は?」
女戦士「私の裸を見ていい男は、たった一人だけなんだよ」
17: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:50:44.56 ID:c9/bqZoV0
ぼく「おかえりなさい」
女戦士「ただいま。ほら、お土産だ」
ぼく「うわあすごい。魚がいっぱいだ。今夜は御馳走ですね」
女戦士「すまんがお風呂をいただけるか? 汚れた体を洗いたい」
ぼく「わかりました。すぐに準備しますね」
女戦士「一緒に入るか? 背中を流してやるぞ」
ぼく「結構です。風呂から上がったらぼくの研究室に来てもらえますか?」
女戦士「いいぞ。また新しい実験か?」
ぼく「いえ……少し、見てもらいたいものがあるのです」
女戦士「ただいま。ほら、お土産だ」
ぼく「うわあすごい。魚がいっぱいだ。今夜は御馳走ですね」
女戦士「すまんがお風呂をいただけるか? 汚れた体を洗いたい」
ぼく「わかりました。すぐに準備しますね」
女戦士「一緒に入るか? 背中を流してやるぞ」
ぼく「結構です。風呂から上がったらぼくの研究室に来てもらえますか?」
女戦士「いいぞ。また新しい実験か?」
ぼく「いえ……少し、見てもらいたいものがあるのです」
18: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:51:13.84 ID:c9/bqZoV0
ぼく「見てもらいたいものというのは、これです」
女戦士「植木鉢に土……それと、木の苗、か? これは」
ぼく「そうです。これはぼくの家系に代々受け継がれてきたもので、名を『邪木の苗』といいます。ぼくの私室で大切に保管していました」
女戦士「『じゃぼく』って、邪悪な木と書くのか? 凄く仰々しい名前だな」
ぼく「ええ、何を隠そう、この木にはかつて世界を支配した『魔王』の力が宿っているというのです」
女戦士「まおう……って、魔王? 私が倒した、あの魔王か?」
ぼく「ええ、女戦士さんが魔王と戦ったというのなら、その魔王なのでしょう。文献によると魔王が存在したのは四百年前とありますから、年代に多少の齟齬はありますが……伝聞が重なる中でその辺りはズレてくるでしょうし」
女戦士「まあ、私の六百年というのもかなりあやふやなものだからな……途中から年を数えるのやめてるし」
ぼく「魔王の力などと伝え聞いても、ぼくは今までそれを鼻で笑ってきました。しかし女戦士さん、あなたの存在でぼくは魔王の力が実際に存在することを確信しました」
ぼく「ぼくはこれから、家に残っている古い文献を読み漁ります。そして、魔王の力を復活させる方法を探ります」
女戦士「魔王の力を? これはまた物騒なことを言い出したな。実際に魔王の力を見た身としては決してお勧めはできないぞ。どうしてそんな決断を下したんだ?」
ぼく「これまで女戦士さんの話を聞いて、また、いくつかの実験に付き合ってもらって、ぼくは確信しました。今、この現代において、女戦士さんを殺す方法はきっと存在しません」
ぼく「女戦士さんは現代の常識では考えられない、奇跡の力でその身を縛られています。考えられるあらゆる方法を用いても、現代ではその奇跡の力を突破することは不可能です」
ぼく「しかし、遠い昔に存在したという、同じ奇跡の力なら? 女戦士さんの体に宿る呪いを打ち消す魔法が、同じ神代には存在していたかもしれない。いや、必ず存在していたはずだ」
女戦士「断言したな。それはまた、どうしてだ?」
ぼく「女戦士さん、あなたに不老不死をもたらしたというその死者の指輪。作った者に心当たりはありますか?」
女戦士「無い。これは昔、どうしても不老不死になりたかった私が世界中を旅してやっとこさ偶々見つけたものなんだ。作った者どころか、当時は所有者すらいなかった」
ぼく「やはり。ならば、間違いないでしょう」
女戦士「一人で納得してないで説明してくれ」
ぼく「わかりませんか? 簡単なことです。女戦士さん、死者の指輪はあなたを呪うために作られたものじゃない。あなたは少なくとも二人目以降の指輪の犠牲者だということだ」
女戦士「あ……」
ぼく「死者の指輪が真に解呪不可能な不老不死の呪いだとしたら、指輪はあなたの手には渡らず、最初の犠牲者……不老不死を生み出すほどの怨念の向く先となった者の指にいつまでもあったはずだ」
ぼく「しかし女戦士さんが発見した時、指輪は独立してそこにあった。それはつまり、最初の犠牲者が不老不死から逃れたことを意味している。その方法が、無事に解呪できたのか、あるいは死によるものなのかまではわからないけれど」
女戦士「…………」
ぼく(女戦士さんは感極まったのか、無言で肩を震わせていた)
ぼく(六百年の旅路……もしかすると彼女がこうして希望を抱いたのは数百年ぶりのことなのかもしれない)
女戦士「植木鉢に土……それと、木の苗、か? これは」
ぼく「そうです。これはぼくの家系に代々受け継がれてきたもので、名を『邪木の苗』といいます。ぼくの私室で大切に保管していました」
女戦士「『じゃぼく』って、邪悪な木と書くのか? 凄く仰々しい名前だな」
ぼく「ええ、何を隠そう、この木にはかつて世界を支配した『魔王』の力が宿っているというのです」
女戦士「まおう……って、魔王? 私が倒した、あの魔王か?」
ぼく「ええ、女戦士さんが魔王と戦ったというのなら、その魔王なのでしょう。文献によると魔王が存在したのは四百年前とありますから、年代に多少の齟齬はありますが……伝聞が重なる中でその辺りはズレてくるでしょうし」
女戦士「まあ、私の六百年というのもかなりあやふやなものだからな……途中から年を数えるのやめてるし」
ぼく「魔王の力などと伝え聞いても、ぼくは今までそれを鼻で笑ってきました。しかし女戦士さん、あなたの存在でぼくは魔王の力が実際に存在することを確信しました」
ぼく「ぼくはこれから、家に残っている古い文献を読み漁ります。そして、魔王の力を復活させる方法を探ります」
女戦士「魔王の力を? これはまた物騒なことを言い出したな。実際に魔王の力を見た身としては決してお勧めはできないぞ。どうしてそんな決断を下したんだ?」
ぼく「これまで女戦士さんの話を聞いて、また、いくつかの実験に付き合ってもらって、ぼくは確信しました。今、この現代において、女戦士さんを殺す方法はきっと存在しません」
ぼく「女戦士さんは現代の常識では考えられない、奇跡の力でその身を縛られています。考えられるあらゆる方法を用いても、現代ではその奇跡の力を突破することは不可能です」
ぼく「しかし、遠い昔に存在したという、同じ奇跡の力なら? 女戦士さんの体に宿る呪いを打ち消す魔法が、同じ神代には存在していたかもしれない。いや、必ず存在していたはずだ」
女戦士「断言したな。それはまた、どうしてだ?」
ぼく「女戦士さん、あなたに不老不死をもたらしたというその死者の指輪。作った者に心当たりはありますか?」
女戦士「無い。これは昔、どうしても不老不死になりたかった私が世界中を旅してやっとこさ偶々見つけたものなんだ。作った者どころか、当時は所有者すらいなかった」
ぼく「やはり。ならば、間違いないでしょう」
女戦士「一人で納得してないで説明してくれ」
ぼく「わかりませんか? 簡単なことです。女戦士さん、死者の指輪はあなたを呪うために作られたものじゃない。あなたは少なくとも二人目以降の指輪の犠牲者だということだ」
女戦士「あ……」
ぼく「死者の指輪が真に解呪不可能な不老不死の呪いだとしたら、指輪はあなたの手には渡らず、最初の犠牲者……不老不死を生み出すほどの怨念の向く先となった者の指にいつまでもあったはずだ」
ぼく「しかし女戦士さんが発見した時、指輪は独立してそこにあった。それはつまり、最初の犠牲者が不老不死から逃れたことを意味している。その方法が、無事に解呪できたのか、あるいは死によるものなのかまではわからないけれど」
女戦士「…………」
ぼく(女戦士さんは感極まったのか、無言で肩を震わせていた)
ぼく(六百年の旅路……もしかすると彼女がこうして希望を抱いたのは数百年ぶりのことなのかもしれない)
19: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:51:52.49 ID:c9/bqZoV0
ぼく(こうして、ぼくは家の中にある古い文献を片っ端から読み漁った。しかし古代の言語は解読が難しく、これでは読み解くまでに何年かかるかと思っていたが、嬉しい誤算があった)
ぼく(特に欲しかった、魔王に関する記述がある文献を女戦士さんが読むことが出来たのだ。どうやら、彼女が生まれた時代の言語とそう変わらない文字であったらしい)
ぼく(また、これにより家に伝わる『邪木の苗』に更なる信憑性が生まれ、モチベーションも高まった。しばらく、ぼくと女戦士さん、二人で黙々と本を読む日々が続いた)
ぼく(ところで、女戦士さんの話の中で気になることがあった。彼女は不老不死になる方法を探していたと言った。彼女は、望んで不老不死になったのだ)
ぼく(ある日、どうしてなのか聞いてみると、女戦士さんは意外とあっさり教えてくれた)
女戦士「昔な、私には恋人がいたんだよ。だけどその恋人は、世界を救うために無理をしすぎて、人間ではなくなってしまった。なんというか、神様もどきみたいなものになって、寿命がなくなってしまったんだ」
女戦士「私はそいつと一緒に生きたくて、同じ時を過ごす方法を長い間探し求めた。それで、たどり着いたのがこの死者の指輪だったんだ」
ぼく「その……恋人さんは、今は…?」
女戦士「死んでしまったよ。ある日、一人だけ先に人間に戻ってしまって、病気であっさり死んでしまった」
女戦士「私はあいつとずっと一緒にいると誓ったんだ。だから、早くあいつを追いかけてやらなくちゃ。だから……私は、一刻も早く死にたいんだ」
ぼく(特に欲しかった、魔王に関する記述がある文献を女戦士さんが読むことが出来たのだ。どうやら、彼女が生まれた時代の言語とそう変わらない文字であったらしい)
ぼく(また、これにより家に伝わる『邪木の苗』に更なる信憑性が生まれ、モチベーションも高まった。しばらく、ぼくと女戦士さん、二人で黙々と本を読む日々が続いた)
ぼく(ところで、女戦士さんの話の中で気になることがあった。彼女は不老不死になる方法を探していたと言った。彼女は、望んで不老不死になったのだ)
ぼく(ある日、どうしてなのか聞いてみると、女戦士さんは意外とあっさり教えてくれた)
女戦士「昔な、私には恋人がいたんだよ。だけどその恋人は、世界を救うために無理をしすぎて、人間ではなくなってしまった。なんというか、神様もどきみたいなものになって、寿命がなくなってしまったんだ」
女戦士「私はそいつと一緒に生きたくて、同じ時を過ごす方法を長い間探し求めた。それで、たどり着いたのがこの死者の指輪だったんだ」
ぼく「その……恋人さんは、今は…?」
女戦士「死んでしまったよ。ある日、一人だけ先に人間に戻ってしまって、病気であっさり死んでしまった」
女戦士「私はあいつとずっと一緒にいると誓ったんだ。だから、早くあいつを追いかけてやらなくちゃ。だから……私は、一刻も早く死にたいんだ」
20: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:52:31.97 ID:c9/bqZoV0
ぼく(ある日のことだった。ぼくは食糧を求めて河原を散策していた)
ぼく(ぼくはそこで、見覚えのある耳飾りが河原に落ちているのを見つけた)
ぼく(どくん、と心臓が跳ねた)
ぼく(足ががくがくと震え、全身から嫌な汗が噴き出した)
ぼく(思い出したくもない光景が頭の中に蘇ってきた)
ぼく「げろ、おえぇ」
ぼく(嫌悪感で吐き気を催した。ぼくは慌てて周りを見渡した。誰もいない。とりあえず、目に見えるところには人影はない)
ぼく(ぼくは走った。それまでに採集していた山菜なども放り出して家へと駆け戻った)
ぼく(早く、早く戸締りをして、窓も全部目隠しをして、部屋に隠れなきゃ)
ぼく(もし見つかったら、あいつに見つかったら……また、あの時のように…)
ぼく(いやだ、いやだ。いやいやいや)
ぼく(よほど顔色が悪かったのだろう。館に戻ったぼくに女戦士さんが「どうした?」と話しかけてきたけれど、まともに返答する余裕もなかった)
ぼく(……復活させよう。魔王の力を、早く、一刻も早く)
ぼく(治療するんだ……ぼくは…お姉ちゃんの志を継ぎ、医者として……)
ぼく(…………この世界に蔓延る病原菌を、駆逐する……)
ぼく(ぼくはそこで、見覚えのある耳飾りが河原に落ちているのを見つけた)
ぼく(どくん、と心臓が跳ねた)
ぼく(足ががくがくと震え、全身から嫌な汗が噴き出した)
ぼく(思い出したくもない光景が頭の中に蘇ってきた)
ぼく「げろ、おえぇ」
ぼく(嫌悪感で吐き気を催した。ぼくは慌てて周りを見渡した。誰もいない。とりあえず、目に見えるところには人影はない)
ぼく(ぼくは走った。それまでに採集していた山菜なども放り出して家へと駆け戻った)
ぼく(早く、早く戸締りをして、窓も全部目隠しをして、部屋に隠れなきゃ)
ぼく(もし見つかったら、あいつに見つかったら……また、あの時のように…)
ぼく(いやだ、いやだ。いやいやいや)
ぼく(よほど顔色が悪かったのだろう。館に戻ったぼくに女戦士さんが「どうした?」と話しかけてきたけれど、まともに返答する余裕もなかった)
ぼく(……復活させよう。魔王の力を、早く、一刻も早く)
ぼく(治療するんだ……ぼくは…お姉ちゃんの志を継ぎ、医者として……)
ぼく(…………この世界に蔓延る病原菌を、駆逐する……)
21: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:53:17.62 ID:c9/bqZoV0
ぼく(遂に決行の時がやってきた)
ぼく(ぼくと女戦士さんは家を出て、古い文献に記されていた場所にやってきていた)
ぼく(白く大きな岩。周囲の風景は文献に記されていたものを少々違いはあったものの、ここが『聖地』ということで間違いなさそうだった)
ぼく「では、女戦士さん」
女戦士「うん」
ぼく(女戦士さんに穴を掘ってもらい、邪木の苗を植える。とある植物の根を粉末状にして羊の血と混ぜ合わせた物を使って、文献に記されていた通りの魔方陣を描く)
ぼく(そして、歌を歌う。文献によると、これは精霊を讃える聖なる歌なのだそうだ。精霊とはこの世界に遍く存在する超常のもの。魔王の力の源は、この精霊であったらしい)
ぼく(女戦士さんの生まれた時代では精霊の存在は当たり前のものだったらしいが、この現代において精霊の話なんて見たことも聞いたこともない)
ぼく(しかし精霊はこの世から消え去ったわけではなく、ただ眠りについているだけで、それを起こし、活性化させるのがこの魔方陣と聖歌なのだそうだ)
ぼく(……魔王の力を復活させるのに聖地とか聖歌とか笑ってしまう。この文献の筆者は魔王を信仰でもしていたのだろうか)
ぼく(そのうちに、変化が生じた。邪木の苗を中心に光が生まれ、それが魔方陣を循環してぼくの体に流れ込んでくる)
ぼく(体の中心に熱を感じた。熱い。じわりと全身から汗が噴き出してくる)
ぼく(しかし不快では無かった。むしろ快感ですらあった。高揚感で心が沸き立つ。弱い自分が消え去っていく)
ぼく(何か得体のしれない超常の力がぼくの体に宿っていた。不思議だけれど、確信がある。その力の扱い方も、知識として頭の中に流れ込んできていた)
ぼく(ぼくは、右手を天に向かって掲げた)
ぼく(ぼくと女戦士さんは家を出て、古い文献に記されていた場所にやってきていた)
ぼく(白く大きな岩。周囲の風景は文献に記されていたものを少々違いはあったものの、ここが『聖地』ということで間違いなさそうだった)
ぼく「では、女戦士さん」
女戦士「うん」
ぼく(女戦士さんに穴を掘ってもらい、邪木の苗を植える。とある植物の根を粉末状にして羊の血と混ぜ合わせた物を使って、文献に記されていた通りの魔方陣を描く)
ぼく(そして、歌を歌う。文献によると、これは精霊を讃える聖なる歌なのだそうだ。精霊とはこの世界に遍く存在する超常のもの。魔王の力の源は、この精霊であったらしい)
ぼく(女戦士さんの生まれた時代では精霊の存在は当たり前のものだったらしいが、この現代において精霊の話なんて見たことも聞いたこともない)
ぼく(しかし精霊はこの世から消え去ったわけではなく、ただ眠りについているだけで、それを起こし、活性化させるのがこの魔方陣と聖歌なのだそうだ)
ぼく(……魔王の力を復活させるのに聖地とか聖歌とか笑ってしまう。この文献の筆者は魔王を信仰でもしていたのだろうか)
ぼく(そのうちに、変化が生じた。邪木の苗を中心に光が生まれ、それが魔方陣を循環してぼくの体に流れ込んでくる)
ぼく(体の中心に熱を感じた。熱い。じわりと全身から汗が噴き出してくる)
ぼく(しかし不快では無かった。むしろ快感ですらあった。高揚感で心が沸き立つ。弱い自分が消え去っていく)
ぼく(何か得体のしれない超常の力がぼくの体に宿っていた。不思議だけれど、確信がある。その力の扱い方も、知識として頭の中に流れ込んできていた)
ぼく(ぼくは、右手を天に向かって掲げた)
22: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:53:48.44 ID:c9/bqZoV0
「『呪文・――――――大雷撃』!!!!」
23: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:54:19.33 ID:c9/bqZoV0
(雲無き空に稲光が走る。轟音を伴い、落下した雷光は――――――山の麓にあった町を灼熱で焼き尽くした)
24: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:54:58.09 ID:c9/bqZoV0
ぼく「……は、はは」
ぼく(心が沸き立つ。口の端がにやりと曲がる)
ぼく「ははは!! あはははははは!!!!」
ぼく(抑えきれない激情に、ぼくは大口を開けて哄笑した)
ぼく「すごい! 流石だ!! 流石魔王の力だ!! たった一度の魔法で町をひとつ焼き尽くした!!」
ぼく「出来る……出来るぞ…!! これで、ぼくの目的は叶う…!!」
ぼく「この世界に蔓延る病原菌を、地球を食い荒らす害獣を――――人間を、駆逐できる!!!!」
ぼく(ぼくは横に立つ女戦士さんを見る。女戦士さんは放心状態で、うわごとのように何か呟いていた)
女戦士「雷…? 私の知っている魔王は漆黒の炎を操っていたはずだ……雷だなんて、これじゃ、まるであいつの……」
ぼく(ぼくは女戦士さんに掌を向ける。女戦士さんはそれでやっとこちらに目を向けて、ふっ、とその顔に笑みを浮かべて見せた)
女戦士「そうか…そういうことか……いいよ、やりな。あいつの力なら、もしかしたらこの呪いも……」
ぼく(女戦士さんの言葉は最後まで聞こえなかった。轟音。雷光。灼熱。彼女の体は黒い人型の炭になって倒れた)
ぼく(呪いは解けただろうか。彼女は愛しの恋人の下へ行けただろうか。彼女の望みが叶っていてほしいと切に願う)
ぼく(その顛末を見届けるつもりはない。ぼくにはやらなくてはならないことがある)
ぼく(なにしろ、世界はとても広くって、人間は滅法多いのだ)
ぼく(心が沸き立つ。口の端がにやりと曲がる)
ぼく「ははは!! あはははははは!!!!」
ぼく(抑えきれない激情に、ぼくは大口を開けて哄笑した)
ぼく「すごい! 流石だ!! 流石魔王の力だ!! たった一度の魔法で町をひとつ焼き尽くした!!」
ぼく「出来る……出来るぞ…!! これで、ぼくの目的は叶う…!!」
ぼく「この世界に蔓延る病原菌を、地球を食い荒らす害獣を――――人間を、駆逐できる!!!!」
ぼく(ぼくは横に立つ女戦士さんを見る。女戦士さんは放心状態で、うわごとのように何か呟いていた)
女戦士「雷…? 私の知っている魔王は漆黒の炎を操っていたはずだ……雷だなんて、これじゃ、まるであいつの……」
ぼく(ぼくは女戦士さんに掌を向ける。女戦士さんはそれでやっとこちらに目を向けて、ふっ、とその顔に笑みを浮かべて見せた)
女戦士「そうか…そういうことか……いいよ、やりな。あいつの力なら、もしかしたらこの呪いも……」
ぼく(女戦士さんの言葉は最後まで聞こえなかった。轟音。雷光。灼熱。彼女の体は黒い人型の炭になって倒れた)
ぼく(呪いは解けただろうか。彼女は愛しの恋人の下へ行けただろうか。彼女の望みが叶っていてほしいと切に願う)
ぼく(その顛末を見届けるつもりはない。ぼくにはやらなくてはならないことがある)
ぼく(なにしろ、世界はとても広くって、人間は滅法多いのだ)
25: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:55:40.05 ID:c9/bqZoV0
ぼく「は! はは!! あはははははは!!!!!」
ぼく(ぼくに宿った魔王の力は、どうやら魔法だけではなかった)
ぼく(体が軽い。一足飛びで集落を飛び越し、軽く駆けただけで馬車を追い抜く)
ぼく(逃げ惑う人々をしらみつぶしにするのも、今なら容易だった)
男性「どうして…どうしてこんなことをするんだ! どうしてぇ!?」
ぼく(だらしなく涙を流して目の前の男が叫んでいる。きっと失禁もしているだろう。みっともない)
ぼく「どうしてといわれても、お前たちが罪深い人間だからさ」
ぼく「みんなの為に必死に勉強していたぼくらを、魔女だなんて迫害して、あんな山奥に追いやって、それだけじゃ飽き足らずに、たまに家に押しかけては乱暴して」
ぼく「こんな生物に生きてる価値なんてない。死ね。死んで草の養分となった方がよっぽどマシだ」
男性「お前、まさか山の上の…!? いやだ、違う、俺はそれには加担していない! 助けてくれ!!」
ぼく「だけどぼくらが何をされていたのかは知っていたはずだ。知っていながら、無視し続けた。いや、むしろ酒の肴として虐げられるぼくらの様子を面白おかしく語ってもいた」
ぼく「なあ、どうして人間ってのはそうなんだ? どうして『こいつには何をしてもいいんだ』なんて勝手に認定する? どうしてその認定を受けた者を、さも人間じゃないように扱える?」
ぼく「これは、そうやって認定された者からの仕返しだ。ぼくは、お前たち人間すべてを『いらない存在』だと認定する」
男性「ひ、ひぃぃ……!!」
ぼく「それじゃあ、さよなら。あの世でお姉ちゃんに土下座しろ」
ぼく(ぼくに宿った魔王の力は、どうやら魔法だけではなかった)
ぼく(体が軽い。一足飛びで集落を飛び越し、軽く駆けただけで馬車を追い抜く)
ぼく(逃げ惑う人々をしらみつぶしにするのも、今なら容易だった)
男性「どうして…どうしてこんなことをするんだ! どうしてぇ!?」
ぼく(だらしなく涙を流して目の前の男が叫んでいる。きっと失禁もしているだろう。みっともない)
ぼく「どうしてといわれても、お前たちが罪深い人間だからさ」
ぼく「みんなの為に必死に勉強していたぼくらを、魔女だなんて迫害して、あんな山奥に追いやって、それだけじゃ飽き足らずに、たまに家に押しかけては乱暴して」
ぼく「こんな生物に生きてる価値なんてない。死ね。死んで草の養分となった方がよっぽどマシだ」
男性「お前、まさか山の上の…!? いやだ、違う、俺はそれには加担していない! 助けてくれ!!」
ぼく「だけどぼくらが何をされていたのかは知っていたはずだ。知っていながら、無視し続けた。いや、むしろ酒の肴として虐げられるぼくらの様子を面白おかしく語ってもいた」
ぼく「なあ、どうして人間ってのはそうなんだ? どうして『こいつには何をしてもいいんだ』なんて勝手に認定する? どうしてその認定を受けた者を、さも人間じゃないように扱える?」
ぼく「これは、そうやって認定された者からの仕返しだ。ぼくは、お前たち人間すべてを『いらない存在』だと認定する」
男性「ひ、ひぃぃ……!!」
ぼく「それじゃあ、さよなら。あの世でお姉ちゃんに土下座しろ」
26: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:56:19.40 ID:c9/bqZoV0
ぼく(程なくして、ぼくは山の麓の町を壊滅させた。人っ子一人残さなかった)
ぼく(しかし、肝心のこの町の長が、あの耳飾りの男がしばらく前から行方不明だというのは本当に残念だった。どこかで野垂れ死んだのか……出来れば、この手で殺してやりたかった)
ぼく(物思いにふけっていると、背後で足音がした)
ぼく(もうこの町に生き残りはいない。だとすれば該当する人間はあの人しかいない)
ぼく(振り返る。果たして、そこには女戦士さんが立っていた)
女戦士「よう」
ぼく「生きていたんですね。残念だ」
女戦士「本当にな。残念至極だよ」
ぼく「あなたに対してぼくが出来ることはもうありません。この魔王の力が通じなかった以上、他に呪いを打ち破る心当たりはぼくには無い」
女戦士「いいよ。今までありがとう。お前のおかげで、すごく懐かしいものも見れた……本当に、感謝しているよ」
ぼく「どういたしまして……それで、どうして剣を抜いて構えてるんです? まさか、ぼくを止める気ですか?」
女戦士「止める気というか……殺す気だな。申し訳ないけど」
ぼく(しかし、肝心のこの町の長が、あの耳飾りの男がしばらく前から行方不明だというのは本当に残念だった。どこかで野垂れ死んだのか……出来れば、この手で殺してやりたかった)
ぼく(物思いにふけっていると、背後で足音がした)
ぼく(もうこの町に生き残りはいない。だとすれば該当する人間はあの人しかいない)
ぼく(振り返る。果たして、そこには女戦士さんが立っていた)
女戦士「よう」
ぼく「生きていたんですね。残念だ」
女戦士「本当にな。残念至極だよ」
ぼく「あなたに対してぼくが出来ることはもうありません。この魔王の力が通じなかった以上、他に呪いを打ち破る心当たりはぼくには無い」
女戦士「いいよ。今までありがとう。お前のおかげで、すごく懐かしいものも見れた……本当に、感謝しているよ」
ぼく「どういたしまして……それで、どうして剣を抜いて構えてるんです? まさか、ぼくを止める気ですか?」
女戦士「止める気というか……殺す気だな。申し訳ないけど」
27: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:56:56.97 ID:c9/bqZoV0
ぼく「どうしてですか? あなたが人間をかばい立てする理由がわからない。あなたは六百年も生きて、人間の醜いところを沢山見てきたでしょう」
女戦士「確かにな。とある事情も手伝って、人間なんて滅んでしまえなんて思ってしまう気持ちも私にはあるよ」
ぼく「でしょう? あいつらは最低だ。ぼく達姉妹に『魔女』なんてレッテルを貼って、魔女狩りと称して好き放題してきた」
ぼく「姉もぼくも、好き放題に犯された。ぼくなんて、胸も小さくてこんな男の子みたいな体してるのに、あいつら、股に穴さえ開いてればなんだっていいんだ」
ぼく「けだもの、けだもの、けだもの…!! 気持ち悪い…!! それをただ見ていただけの奴らも同罪だ…!! あいつらに生きてる価値なんてないんだ!!!!」
ぼく「なのに……なのに、あなたはぼくを止めるのか」
女戦士「言っただろう。止めるというか、殺すんだ。お前の主義主張はどうだっていいし、お好きにどうぞって感じだよ。正直、私がお前と同じように男から汚されたら同じように大暴れする自信がある」
ぼく「なんだそれ……なんでだ!! だったらどうして、あなたはぼくを殺すんだ!!」
女戦士「……理由はひとつだ。お前は、『あいつ』のことを魔王と呼んだ」
女戦士「私は、いかなる理由があろうと『あいつ』を魔王と呼んだ奴を許さない」
ぼく(そう言って女戦士さんは剣を構えた)
ぼく(ぼくの心は絶望感でいっぱいだった。だって勝てるわけがない)
ぼく(目の前にいるのは、かつて魔王を倒した張本人で、更に不死身のおまけつき)
ぼく(ああ、いやだ、いやだ。どうして、どうしてぼくばっかりがこんな目に)
ぼく(―――――――本当に、いいことなんてひとつもない人生だった)
女戦士「確かにな。とある事情も手伝って、人間なんて滅んでしまえなんて思ってしまう気持ちも私にはあるよ」
ぼく「でしょう? あいつらは最低だ。ぼく達姉妹に『魔女』なんてレッテルを貼って、魔女狩りと称して好き放題してきた」
ぼく「姉もぼくも、好き放題に犯された。ぼくなんて、胸も小さくてこんな男の子みたいな体してるのに、あいつら、股に穴さえ開いてればなんだっていいんだ」
ぼく「けだもの、けだもの、けだもの…!! 気持ち悪い…!! それをただ見ていただけの奴らも同罪だ…!! あいつらに生きてる価値なんてないんだ!!!!」
ぼく「なのに……なのに、あなたはぼくを止めるのか」
女戦士「言っただろう。止めるというか、殺すんだ。お前の主義主張はどうだっていいし、お好きにどうぞって感じだよ。正直、私がお前と同じように男から汚されたら同じように大暴れする自信がある」
ぼく「なんだそれ……なんでだ!! だったらどうして、あなたはぼくを殺すんだ!!」
女戦士「……理由はひとつだ。お前は、『あいつ』のことを魔王と呼んだ」
女戦士「私は、いかなる理由があろうと『あいつ』を魔王と呼んだ奴を許さない」
ぼく(そう言って女戦士さんは剣を構えた)
ぼく(ぼくの心は絶望感でいっぱいだった。だって勝てるわけがない)
ぼく(目の前にいるのは、かつて魔王を倒した張本人で、更に不死身のおまけつき)
ぼく(ああ、いやだ、いやだ。どうして、どうしてぼくばっかりがこんな目に)
ぼく(―――――――本当に、いいことなんてひとつもない人生だった)
28: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:57:47.99 ID:c9/bqZoV0
女戦士(私の呪いを解くために、一緒に親身になって考えてくれた少女を、私は殺した)
女戦士(確かにまだまだ発育途上だったけど、いずれは姉と同じく綺麗になるだろうと思わせた可愛らしい少女は、今は物言わぬ骸となって私の傍に倒れている)
女戦士(彼女は彼女で私を利用していたとはいえ、六百年の歳月で随分と鈍くなったとはいえ、心は痛む)
女戦士(特に、今の私は感傷的だった。彼女によって、本当に懐かしいものを見せてもらえたから)
女戦士(かつて共に魔王を討伐したあいつの、共に生きることを誓ったあいつの力を、彼女はほんの一部とはいえ復活させた)
女戦士(頬を涙が伝っていた。泣くのは一体何年ぶりだろう。もしかすると、百年ぶり以上のことかもしれない)
女戦士(会えなくなって、四百年。心の内の、そのまた奥に押し込めていた想いが溢れ出す)
女戦士(悲しくて、寂しくて、私は立っていられなくなって、その場に膝をついてしまった)
女戦士(果たして、私はまた立ち上がることが出来るだろうか。また死に場所を求めて歩き出すことが出来るだろうか)
女戦士(わからない。今は何も考えられずに、ただ感傷のままに、私はあいつの名前を呼ぶ)
女戦士「会いたいよ――――――――――勇者」
女戦士(確かにまだまだ発育途上だったけど、いずれは姉と同じく綺麗になるだろうと思わせた可愛らしい少女は、今は物言わぬ骸となって私の傍に倒れている)
女戦士(彼女は彼女で私を利用していたとはいえ、六百年の歳月で随分と鈍くなったとはいえ、心は痛む)
女戦士(特に、今の私は感傷的だった。彼女によって、本当に懐かしいものを見せてもらえたから)
女戦士(かつて共に魔王を討伐したあいつの、共に生きることを誓ったあいつの力を、彼女はほんの一部とはいえ復活させた)
女戦士(頬を涙が伝っていた。泣くのは一体何年ぶりだろう。もしかすると、百年ぶり以上のことかもしれない)
女戦士(会えなくなって、四百年。心の内の、そのまた奥に押し込めていた想いが溢れ出す)
女戦士(悲しくて、寂しくて、私は立っていられなくなって、その場に膝をついてしまった)
女戦士(果たして、私はまた立ち上がることが出来るだろうか。また死に場所を求めて歩き出すことが出来るだろうか)
女戦士(わからない。今は何も考えられずに、ただ感傷のままに、私はあいつの名前を呼ぶ)
女戦士「会いたいよ――――――――――勇者」
29: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:58:34.44 ID:c9/bqZoV0
―――――――現代、日本。
とある大学にて、学生たちがうわさ話をしている。
「すごいよな、教授。また新しい特効薬を開発だってさ」
「女の人だってのに、すごいよね。いつ行っても研究してて、一体いつ寝てんだって感じだもん」
「今日も記者が殺到してるよ。まあ、いつもの通りあの人は取材には答えないんだろうけど」
「げー、あたしまた代役やらされるのかしら。もう正直めんどいんだけど」
大学の北側、あまり日の当たらない研究室で、件の女教授は今日も試験管を睨みつけていた。
こんこん、と部屋のドアがノックされる。
どうぞ、と女教授が答えると、初老の男性が中に入ってきた。
「精が出ますな」
穏やかな声音で男性は女教授に話しかける。
実は、この男性がこんな風に声色優しく人に話しかけることはとても珍しい。
初老の男性は女教授が研究する分野では結構な権威として知られ、その厳しい人格が有名な人物であった。
彼がこんなに気を遣うように話しかけるのは、自分と対等以上の研究者と目の前の女性を認めているからに他ならない。
「昨晩もこの研究室の電気は消されることがなかったと聞きます。その熱心さ、私も見習わなくてはなりますまい」
「いえいえ、私など、まだまだです」
女教授の声は凛として室内によく通り、聞く者を心地よくさせる響きをもっていた。
「今回の発見についても、たまたま。私はただ、あらゆる命を奪い去る強毒性の物質を探していただけ。今回は、たまたまそれが人に有害な物を殺すものだったから称賛された。それだけです」
「謙遜する必要はありません。あらゆるフィールドワークを厭わぬあなたの行動力が招いた成果です。出会って二十年は経とうというのに本当にいつまでも若々しい。その若さの秘訣を、今晩食事でもしながら教えていただけませんかな?」
「申し訳ありません。今晩の内に研究をある段階まで進めておきたくて……」
「これはいかん。また振られてしまった。本当に君はガードが堅い。浮いた噂ひとつ聞かんしな。実際のところ、いい人はおらんのかね」
「ええ、そういう人は、間に合っておりますので」
女教授は男性に向かって柔らかな笑みを浮かべた。
その表情からは、女教授がその場を取り繕うために適当を言っているようにはとても見えない。
「なんだそうか、おるのか! いやこれは失敬! それでは、こんな爺に誘われてもついていくわけにはいかないな」
「ええ、申し訳ありませんが―――――いえ、もしも、私の願いを叶えてくれるなら、私は喜んであなたにご一緒しましょう」
「ほう。では、その望みとはなにかね?」
女教授は笑う。
わずかに開いたドアの隙間から流れ込んだ風が、女教授の長く美しい金髪を揺らした。
とある大学にて、学生たちがうわさ話をしている。
「すごいよな、教授。また新しい特効薬を開発だってさ」
「女の人だってのに、すごいよね。いつ行っても研究してて、一体いつ寝てんだって感じだもん」
「今日も記者が殺到してるよ。まあ、いつもの通りあの人は取材には答えないんだろうけど」
「げー、あたしまた代役やらされるのかしら。もう正直めんどいんだけど」
大学の北側、あまり日の当たらない研究室で、件の女教授は今日も試験管を睨みつけていた。
こんこん、と部屋のドアがノックされる。
どうぞ、と女教授が答えると、初老の男性が中に入ってきた。
「精が出ますな」
穏やかな声音で男性は女教授に話しかける。
実は、この男性がこんな風に声色優しく人に話しかけることはとても珍しい。
初老の男性は女教授が研究する分野では結構な権威として知られ、その厳しい人格が有名な人物であった。
彼がこんなに気を遣うように話しかけるのは、自分と対等以上の研究者と目の前の女性を認めているからに他ならない。
「昨晩もこの研究室の電気は消されることがなかったと聞きます。その熱心さ、私も見習わなくてはなりますまい」
「いえいえ、私など、まだまだです」
女教授の声は凛として室内によく通り、聞く者を心地よくさせる響きをもっていた。
「今回の発見についても、たまたま。私はただ、あらゆる命を奪い去る強毒性の物質を探していただけ。今回は、たまたまそれが人に有害な物を殺すものだったから称賛された。それだけです」
「謙遜する必要はありません。あらゆるフィールドワークを厭わぬあなたの行動力が招いた成果です。出会って二十年は経とうというのに本当にいつまでも若々しい。その若さの秘訣を、今晩食事でもしながら教えていただけませんかな?」
「申し訳ありません。今晩の内に研究をある段階まで進めておきたくて……」
「これはいかん。また振られてしまった。本当に君はガードが堅い。浮いた噂ひとつ聞かんしな。実際のところ、いい人はおらんのかね」
「ええ、そういう人は、間に合っておりますので」
女教授は男性に向かって柔らかな笑みを浮かべた。
その表情からは、女教授がその場を取り繕うために適当を言っているようにはとても見えない。
「なんだそうか、おるのか! いやこれは失敬! それでは、こんな爺に誘われてもついていくわけにはいかないな」
「ええ、申し訳ありませんが―――――いえ、もしも、私の願いを叶えてくれるなら、私は喜んであなたにご一緒しましょう」
「ほう。では、その望みとはなにかね?」
女教授は笑う。
わずかに開いたドアの隙間から流れ込んだ風が、女教授の長く美しい金髪を揺らした。
30: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 16:59:17.72 ID:c9/bqZoV0
「―――――――あなたが、私を殺してくれるなら」
31: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/10/29(日) 17:00:17.89 ID:c9/bqZoV0
以上、一旦終了
11月3日に続きを投下します
11月3日に続きを投下します
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/29(日) 17:40:37.89 ID:2vLTICPG0
乙
続きがきになる
続きがきになる
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/29(日) 18:44:07.85 ID:vj93EgIaO
えっこれ続きあるのか
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/29(日) 19:45:51.13 ID:9cy9TfLYo
乙ー
35: ◆QKyDtVSKJoDf 2017/11/03(金) 18:16:00.63 ID:uAQKxthS0
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/03(金) 20:03:45.52 ID:RBIXGmx60
こっちにも乙!
これからまとめられて話題になって書籍化アニメ化ってまじで行くと思ってる。
これからまとめられて話題になって書籍化アニメ化ってまじで行くと思ってる。
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/04(土) 06:11:29.23 ID:RAOQb0c8O
勇者息子の続編だったのか!
でもあっちでこっちのssの結末書いてもうてるやん……
でもあっちでこっちのssの結末書いてもうてるやん……
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509262850/
Entry ⇒ 2017.11.19 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
勇者「王様が何言ってんのか分からねェ」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:22:52.75 ID:wBN+zEz0o
大臣「陛下、勇者殿が参られました」
勇者「ただいま参上いたしました!」
王「勇者よ、よく来てくれた」
勇者「はっ」
勇者「私が呼ばれたということは……」
王「うむ、漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫がついにリヴァイヴァルを果たしたのだ」
勇者「……は?」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:25:07.68 ID:wBN+zEz0o
勇者「あの……」
王「なにかな?」
勇者「なんですか? 今の漆黒なる何とかとか……リバイバル、とか」
大臣「漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫とは、魔王の別称です」
大臣「リヴァイヴァルとは復活の意」
大臣「ようするに、魔王が復活を果たした、ということですな」
勇者「あ、そうですか」
王「では、話を続けよう」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:28:24.46 ID:wBN+zEz0o
王「リヴァイヴァルした漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫は」
王「すでにジ・ヴァリエース大陸を構成するファイブ・ユニオン・カントリーのうち」
王「鋼鉄と軍事の強(ストロング)国家、ヴェリ=ダイヤーニ・ヴァン王国と」
王「花と緑を愛する宗教国家、フェノーマ・ジ・ヴィグラジア教主国をオーバーデリートした」
王「もはや一刻の猶予もない!」
勇者「……!?」
勇者「あ、あの、なにがなんだか……」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:30:23.51 ID:wBN+zEz0o
大臣「今の陛下のお話を要約いたしますと」
大臣「この大陸の五つの国のうち、二つの国が滅ぼされた、ということです」
勇者「分かりやすい……」
王「話を続けてよいか? 時間がないのだ」
勇者「申し訳ありません。どうぞ、続けて下さい」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:32:42.16 ID:wBN+zEz0o
王「このままでは、我が草木生い茂る母なる大地ドルヴォ・ヴィーグリル・ツェリッペェインが」
王「闇の行軍≪ダークネス・アーミー≫にシリアスジェノサイドされることは明白!」
王「それだけは断じて避けねばならん!」
王「そこでおぬしを呼び寄せたというわけだ!」
勇者「ああもう、頭痛くなってきた……」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:35:52.09 ID:wBN+zEz0o
勇者「あのっ!」
王「なにか?」
勇者「闇の行軍ダークネスアーミーは魔王軍のことかなってなんとなく分かりましたけど」
勇者「最初の母なる大地ドルヴォなんちゃらってどこのことなんです?」
大臣「この国の正式名称です。略せずいうとああなるのです」
勇者「えっ……」
大臣「つまり、この国も危ない、ということです」
勇者(生まれて十数年、この国で暮らしてたけど知らなかった……!)
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:39:15.40 ID:wBN+zEz0o
王「これを受け、我が国に代々仕えてくれているヴィロード家の」
王「モルグ=ヴァージ・G・インピール卿が聖なる絶対神からスピリチュアルメッセージを賜った」
大臣「城勤めの神官が神からお告げをもらった、ということです」
勇者(もう全部大臣が話してくれっていいたい!)
王「≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫を呼び寄せろ、と!」
勇者「!?」
勇者「な、なんですか、その……ブレイブ・セイントってのは」
王「≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫だ」
勇者「失礼しました! ブレイブ・ウォリアー・セイントってのはなんなんです!?」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:42:39.20 ID:wBN+zEz0o
大臣「あなたのことです」
勇者「……は?」
大臣「≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫とは、勇者のことですから」
勇者「陛下! あんた俺がここに来た時、“勇者よ、よく来てくれた”っていってたじゃん!」
勇者「用語が分かりにくいのは仕方ないとしても、せめて統一はして!」
王「ほう、大した記憶力。さすが≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫」
勇者「勇者で統一してくれぇ!」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:47:09.43 ID:wBN+zEz0o
王「≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫よ」
勇者(結局こっちになるのか……)
王「どうか……どうかこの通り申し上げる」
王「漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫を聖浄化――キリング・デーモン・クラッシュ――してくれ!」
勇者「魔王を倒してくれ、ってことでいいんですよね?」
大臣「正解です」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:49:45.81 ID:wBN+zEz0o
王「さて、旅立つおぬしにエース・アルティメット・ウェポンを授けよう」
勇者(えーと、武器をくれるのかな……?)
王「これは初代国王ボリメェル・ヘンダント二世の時代……通称“エンシャント・エイジ”より」
王「レジェンド・トラディションされてきた名剣……」
王「王者の剣≪キング・クラウン・マーシャルソード≫である!」
大臣「古くから王家に伝わる家宝である“王者の剣”を授けましょう」
勇者「ありがとうございます!(この“ありがとう”は大臣にいっている)」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:53:29.06 ID:wBN+zEz0o
勇者「これで魔王を倒せ、というわけですか」
王「いや、このままでは漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫は到底倒せぬだろう」
王「この王者の剣≪キング・クラウン・マーシャルソード≫には秘密(トップシークレット)があってな」
王「大陸中に散らばるカルテット・ソードジュエルをはめ込むことによって」
王「勇者の剣≪ホーリー・デビル・スレイヤー≫へと変化する」
大臣「王者の剣は四つの宝石をはめ込むと、勇者の剣にパワーアップするようです」
勇者「なるほど」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 01:57:51.21 ID:wBN+zEz0o
王「勇者の剣≪ホーリー・デビル・スレイヤー≫にさえなれば」
王「おぬしのソードスキルは神域≪ゴッド・テリトリー≫に達し」
王「邪の化身ギャグゥラス=ビルガを打ち滅ぼすことも不可能ではなくなるであろう……」
勇者「ん!?」
大臣「どうしました?」
勇者「今出てきたギャグゥラス=ビルガってのは何者なんです?」
勇者「魔王の手下? それとも魔王以外の第三勢力的な敵か何かですか?」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 02:00:57.83 ID:wBN+zEz0o
大臣「邪の化身ギャグゥラス=ビルガは魔王のことですよ」
勇者「!?」
大臣「魔王の本名はギャグゥラス=ビルガというんです」
勇者「はぁ~……」
勇者「せめて……せめて漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫で統一して下さいよ!」
勇者「別称にさらに別称重ねられたら、わけが分からなくなる!」
王「考えておこう」
勇者(考えるだけかよ!)
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 02:03:34.85 ID:wBN+zEz0o
王「さて、これで話は終わりだ」
王「クリスタル・ルピー・キャッスルよりゴーアウトした後はまずは……」
王「城下町セフェリメタル・ギャラクシアンでインフォメーションを≪集約≫するがよかろう」
勇者「……!」プルプル…
大臣「城を出たら城下町で情報を集めて下さい」
勇者「分かりましたぁっ!」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 02:05:47.96 ID:wBN+zEz0o
勇者「必ずや、この≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫が!」
勇者「この王者の剣≪キング・クラウン・マーシャルソード≫にカルテット・ソードジュエルをはめて!」
勇者「剣を勇者の剣≪ホーリー・デビル・スレイヤー≫にして!」
勇者「漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫こと邪の化身ギャグゥラス=ビルガを!」
勇者「聖浄化――キリング・デーモン・クラッシュ――してみせますよ!」
勇者「では失礼します!」スタスタスタ…
バタンッ!
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 02:09:13.82 ID:wBN+zEz0o
王「大臣よ」
大臣「はっ」
王「彼はなぜあんなに困惑したり、怒ったりしておったのだ」
大臣「それはやはり、陛下の話がいささか分かりにくかったからかと」
王「分かりにくかったか?」
大臣「ええ、今度からは物事を人に伝える時は専門用語や長ったらしい単語はなるべく使わず」
大臣「必要なことのみを簡潔に伝えるようにした方がよろしいでしょう」
王「む……そうだな。反省するとしよう……」
――――
――
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 02:12:34.59 ID:wBN+zEz0o
――
――
王「勇者よ、よくぞ無事戻ってくれた! よく魔王を倒し、大陸を救ってくれた!」
大臣「国民みんな、いや大陸中が大喜びしておりますよ!」
勇者「ありがとうございます!」
王「さっそく、おぬしの冒険がどのようなものであったかをぜひ教えてくれぬか?」
勇者「はいっ! かしこまりました!」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 02:17:17.80 ID:wBN+zEz0o
勇者「では、≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫より報告を申し上げます。
草木生い茂る母なる大地ドルヴォ・ヴィーグリル・ツェリッペェインをゴーアウトした私は
さっそく王者の剣≪キング・クラウン・マーシャルソード≫にはめ込むための
カルテット・ソードジュエルを探すべく、まずはファイブ・ユニオン・カントリーの一つ、
荒涼とした砂漠の大地アース・ゲイナー・シュピー国を訪れました。
ここもすでに闇の行軍≪ダークネス・アーミー≫の侵略(イノベーション)を受けていたのですが、
私の決死のブレイブ・バトルにて闇の亡者どもを完全撃退することに成功いたしました。
この手柄により、私は第一のカルテット・ソードジュエルである“真紅にして青碧なる石”を入手。
続いて、すでに滅ぼされた鋼鉄と軍事の強(ストロング)国家、ヴェリ=ダイヤーニ・ヴァン王国と
花と緑を愛する宗教国家、フェノーマ・ジ・ヴィグラジア教主国へ向かい、
ここに巣食う邪軍第三大隊≪エビルフォースNo.3≫や甲鉄悪霊冥影軍などを撃砕。
生き残った王族や教主の親族を探し出し、国家リヴァイヴァルに成功いたしました。
その途上、二つ目のカルテット・ソードジュエルである“魔に魅入られた涙”を入手いたしました。
残るファイブ・ユニオン・カントリーである大湖の国家レイク・ファーラルを訪れた私は
ここでも暗黒なる精鋭軍≪グランド・デーモンズ≫と対決、これを倒しました。
ちなみに三つ目のカルテット・ソードジュエルは湖の底に沈下(シンク)しておりました。
これが“深湖に圧縮されし貝殻”というわけです。
しかし、ここで私のブレイブ・アドベンチャーは行き止り(デッドエンド)を迎えてしまいます。
カルテット・ソードジュエルの残り一つがどこにあるかが、どうしてもアンノウンだったのです。
そんな時、フェノーマ・ジ・ヴィグラジア教主国で隠遁している女性大賢者である
ラルファ・ミークラージ女史が私にパーフェクトアドバイスを授けてくれました。
ジ・ヴァリエース大陸で最も偉大なる高山≪バヴェル・セントラル・マウンテン≫に向かえ、と。
私は≪バヴェル・セントラル・マウンテン≫にて、カルテット・ソードジュエルをサーチし、
ついに見つけたのです。“天に近い輝石”を。
これにより、私の王者の剣≪キング・クラウン・マーシャルソード≫はついに、
勇者の剣≪ホーリー・デビル・スレイヤー≫へと進化を果たしました。
私のソードスキルは神域≪ゴッド・テリトリー≫に達したわけです。
いよいよ残存するビッグ・エネミー(許されざる人類の敵)はただ一人(ワン)……。
漆黒なる首領≪デス・ダーク・キング≫こと邪の化身ギャグゥラス=ビルガのみになったわけです。
私とヤツとの死闘(デスバトル)は熾烈を極め、勇者の剣≪ホーリー・デビル・スレイヤー≫も
ついに永劫破砕(デンジャー・ブレイク)してしまいます。
ですが、私は≪ブレイブ・ウォリアー・セイント≫として諦めませんでした。
砕け散った勇者の剣≪ホーリー・デビル・スレイヤー≫――名づけて“愛と勇気の破片”を
邪の化身ギャグゥラス=ビルガの胸にあるインポータント・コアに突き刺したのです。
この一撃により、聖浄化――キリング・デーモン・クラッシュ――は果たされ、私は凱旋したのです」
王「勇者が何言ってんのか分からねェ」
― 完 ―
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 03:25:59.32 ID:1Fghzucg0
勇者学思い出したわ
乙
乙
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 03:28:03.03 ID:++IIgpJwo
修行やってます
いつの日か、世界を救う日が来ると信じて―――
いつの日か、世界を救う日が来ると信じて―――
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/11/06(月) 08:16:39.45 ID:fhVrAcSp0
いいおち
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509898972/
Entry ⇒ 2017.11.13 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
魔王「もし儂の味方になれば、有給をやろう」 勇者「ゆうきゅう」
1: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:39:43.76 ID:01+6FuFio
魔王♂「ふふふ、様式美に則るならば『世界の半分を』と言いたいところだがな」
勇者♂「世界の半分だと!?そんなものになびく俺ではない!」
魔王「いや『世界の半分』については、ほんの軽口だ。本気にしないでくれ」
僧侶♀「初めて言葉の通じる魔族に出会ったと思ったら、さっそく私たちを籠絡するつもりですか!」
僧侶「言葉さえ通じれば、分かり合える・・・そう信じていた、私の考えは甘かったのですね!」
戦士♂「ところで、『ゆうきゅう』ってなんだ?魔法使い」
魔法使い♀「わ、わたしに聞かないでよ!」
僧侶「意味は分かりませんが、なんと魅惑的な響きなのでしょうか・・・」
勇者「ゆうきゅう・・・そうかっ!」
勇者「魔王を打ち滅ぼさんがために、世界を旅してきた勇者パーティーである俺たちに」
勇者「与えられるものは、悠久の時・・・」
勇者「すなわち『死』である・・・そう言いたいんだな!魔王よ!」
魔王「いや違う、そうじゃない」
2: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:40:20.39 ID:01+6FuFio
魔王「すまぬ・・・側近、説明をしてやってくれ」
側近♀「仰せのままに、魔王様」
側近「一言で申しましょう、有給休暇とは給料のもらえる休暇の事です」
戦士「うーん!わからん!」
魔王「もちっと、詳しく説明してやれ」
側近「つまりですね、一日仕事を休んだとしても、一日分の給料を差し上げますよってことです」
魔法使い「魔王軍に入ったら、その有給がもらえるってこと?」
僧侶「ま、魔法使いさん!」
魔法使い「ちょっと、聞くだけよ」
魔王「とりあえずは、半年毎に10日。あとは勤務年数によって随時増えていく」
勇者「俺たちは勇者だ!勇者とは仕事ではない、勇者とは心のありよう!」
勇者「そもそも俺たちは王国から雇われているわけではない!ただ世界平和のために貴様を打倒さんとするのだ!」
3: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:40:48.60 ID:01+6FuFio
勇者「そんな俺たちを、そのようなもので籠絡しようとは笑止千万!語るに落ちたな魔王よ!」
魔王「ん・・・儂の持っている情報とは違うな」
側近「変ですね・・・」
側近「勇者殿は、王国に雇われているわけでないと申されましたね?つまり給与も、もらっていないと?」
勇者「もちろんだ!俺は傭兵ではない!」
側近「他の皆さんも同じですか?」
戦士「ああ、そうだ」
魔法使い「ええ」
僧侶「あ、わたしは教会に所属しているので、そっちで貰えてるはずです」
魔法使い「え?そうだったの?」
僧侶「ええ、ただ旅の間は受け取りにいけないですから、銀行の預かり口座に入金されているはずです」
魔王「ならば、この魔王城まで如何にしてやってきたのだ?路銀は、どうしたのだ?」
4: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:41:20.23 ID:01+6FuFio
勇者「そんなもの魔物を狩って稼ぎながら来たに決まっているだろう!」
戦士「まあ、飯はそのへんの食える草を食ったりしてたし、宿もとらずに野営ばっかりしてたしな」
魔王「な、なんと・・・・痛ましい」
魔法使い「時には村を襲った魔物を倒し、お礼としてお金をもらったこともあったわね」
魔法使い「あの時は、久々のベッドに思わず感涙しちゃったわよね」
僧侶「そ、そうでした、あの時の村は魔王の放った魔物に恐怖していました!」
僧侶「みなさん、私たちはまんまと口車に乗せられています!私たちがするべきことは、魔王と語らうことではありません!」
魔王「まあ待て、まあ待て。魔物と言っても、全てが儂の指示で動いているわけではない」
勇者「責任逃れをする気か!?」
側近「事実です。だいたい言語を解する魔族は少数ですからね、私たちが従えているのは、ほんのわずかです」
側近「意思疎通ができない魔物は、獣といっしょですよ。そこまで責任を追及される謂れはありません」
戦士「そうだったのか・・・」
5: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:41:46.46 ID:01+6FuFio
魔王「話を戻そう。儂らの情報では、『勇者』は一事業として予算が組まれ王国議会でも承認されている」
側近「予算額は、50万ゴールド。勇者をサポートする行政部署も新設されるほどですから、王国の本気度が伺えますね」
勇者「そんなもの、貰った覚えはないし!サポートを受けた覚えもない!」
戦士「支給されたのって・・・こん棒と薬草と・・・」
魔法使い「50Gだけだったわね・・・」
側近「・・・現場に支給が行き渡っていないなら、つまるところ新設された部署に流れているか」
魔王「誰かの懐に収まったか・・・だな」
勇者「・・・そうなのか」
6: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:42:13.25 ID:01+6FuFio
------
大臣「ぶえっくしょん!」
王「お、大臣、風邪か?うつすでないぞ」
大臣「いえ、どこかで噂されているのかもしれません・・・」
王「ほっほっほ、もてる男はつらいのお」
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7: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:42:40.22 ID:01+6FuFio
僧侶「ま、待ってください皆さん!私たちは金額に惑わされているだけです!」
僧侶「勇者とは心のありようでしょ!?お金に目がくらんで平和を裏切るんですか!?」
魔法使い「・・・一人だけ給料もらってる人に言われてもね」
僧侶「だいたい、魔王の情報が正しいとも限りません!」
戦士「まあ、確かにそうだな」
勇者「魔王!その情報元を明かしてみろ!俺たちは、そう簡単には騙されないぞ!」
魔王「側近、持ってこい」
側近「既に」
側近「こちらが、今年度の王国予算の写しです。あと新設部署と勇者一行に関する組織図等です」
魔法使い「王国議会の承認印、日付、議長の署名・・・本物の写しのようね」
戦士「お、俺たちのパーティー構成や技、出自まで記載されていやがる!」
勇者「な、なぜそんなものが!」
8: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:43:08.17 ID:01+6FuFio
側近「いえ、普通に情報公開制度を利用して役所に発行してもらいました」
魔王「写しをもらうのに、多少金がかかったがな・・・」
戦士「国が、俺たちを売ったってことか・・・?」
側近「い、いえ、通常の手続きで貰えるんですけど・・・」
勇者「・・・一体いくらだ」
勇者「いくら金を積んだんだ!王国民は善良な人々とは言え、皆が欲望に抗えるわけではない!」
勇者「多少金がかかったと言ったな!言え!いくら掛かったんだ!!!」
魔王「・・・発行手数料で50Gほどだ」
魔法使い「いやああああああああああああああああああああああ!!」
勇者「うわああああああああああああああああああ!50G!たったの50Gで俺たちは売られたのか!!!」
戦士「な、なんてことだ・・・」
僧侶「落ち着いてください!ごく普通の手続きです!王都に居れば、誰でも手に入る情報です!」
9: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:43:35.85 ID:01+6FuFio
僧侶「!」
僧侶「そうです、これらの情報は王都に魔族が潜入している証ではありませんか!王都の危機ですよ皆さん!」
側近「いえ、王都には普通に数百の魔族が暮らしていますよ」
勇者「な、なんだと!」
魔法使い「ど、どういうこと!?既に王都は魔族に占領されてしまったっていうの!?」
魔王「お、お主らは何も知らんのだな・・・」
側近「言ってしまえば、組織の最末端・・・いわゆる鉄砲玉みたいな扱いだったのかもしれませんね」
魔王「ま、まあ、単独でここまで来るんだ力はあるし、何よりその名声に期待をしよう」
勇者「ま、まだ!貴様らに与すると決めたわけではないぞ・・・っ!」
魔王「まあ、もう少し話を聞け。王都に魔族が暮らしている理由だったな、側近頼む」
側近「近年、我が魔族も文化というものに興味が湧いてきてですね、まあ特に魔王様がですが」
魔法使い「文化?」
10: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:44:03.49 ID:01+6FuFio
側近「ええ、人間たちの絵画や彫刻といった芸術や、音楽、料理、服飾、その他もろもろです」
側近「ただ、文化を取り入れるには多大に金がかかる」
側近「そこで私たち魔族は、王国の技能実習生制度を用いて多くの魔族を王都に送り出しました」
側近「王都の魔族たちは、働きながら文化を学び、数年後には魔王城に帰ってくる予定です」
魔王「本当は、儂自身が行きたかったのだが・・・残念なことに魔王城は強力な結界で封印されていてな」
魔王「儂は、この魔王城から出ることが叶わぬのだ」
魔王「先代の勇者め・・・死して尚、儂を苦しめるとは・・・」
側近「先ほどの情報は、王都にいる魔族に連絡をとって、仕事の合間に役所に行ってもらったのです」
戦士「そ、そんな制度があったのか・・・知らなかった・・・」
勇者「だが、俺は王都で魔族を見たことはないぞ・・・?」
側近「まあ、姿かたちは私たち同様、人間と大して変わりませんから」
戦士「勇者!」
11: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:44:30.82 ID:01+6FuFio
戦士「あのパブにいた、角と羽の生えた娘!もしかして魔族だったのかも!」
勇者「ちょっと肌が青い娘も居たな!そうか、てっきり店の趣向かと思っていた!」
魔法使い「・・・ちょっと、その話知らないんだけど?いったいどんな店に通ってたの・・・?」
戦士「い、いや!ななななんでもない!!!」
勇者「・・・なるほど、魔王の話は事実らしいな」
勇者「だが、それすらも貴様らの王都壊滅の企みだと否定できない!」
勇者「現に、俺たちは貴様らが次の春に王都を襲撃するという情報を大臣から聞かされている!」
魔王「・・・春だと?」
側近「それって『春闘』のことかと」
勇者「ほら見たことか!春に闘うだと!」
魔王「ああもう!面倒くさいやつらだ!」
側近「我ら魔族は、文化に限らず人間の経済についても疎くてですね」
12: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:44:57.81 ID:01+6FuFio
側近「年々、学習を進める中で、我ら魔族に支払われている賃金が不当に低いことが最近わかりまして」
側近「王国に是正を求める運動を開始したのです。春闘とはその一環で、団結して王国側と交渉しようとしているのです」
戦士「武力をもって戦うわけではないと?」
側近「もちろん・・・。ただ、こうして魔王様を討つために勇者を派遣している以上、王国側にその意思はないようですが」
魔王「そこでだ、勇者よ」
魔王「お主もまた、不当な賃金で働かされている者の一人として、儂らと共に共闘してほしいのだ」
魔王「名声もあるお主なら、王国に賃金是正の風を巻き起こすことができるであろう!」
勇者「・・・魔族が純粋たる悪ではないということはわかった」
僧侶「・・・勇者様」
勇者「だが、俺には国王には義理もある・・・あの方は、俺にとって父親のような存在・・・」
勇者「裏切ることはできん!」
戦士「よく言った勇者!俺はお前についていくぜ!」
13: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:45:24.85 ID:01+6FuFio
魔法使い「リーダーは勇者だもんね!私も勇者に従う!」
僧侶「もちろん私もです!」
魔王「父親のような存在か、まあある意味そうかもな・・・」
勇者「意味ありげだな・・・?」
側近「こっちの資料によると、勇者様は旅の途中で侯爵家の娘と御結婚をされていますね」
僧侶「結婚!?どういうことですか勇者様!いつの間に!!!」
勇者「なななななんだとっ!ししし知らんぞ!どういうことだ!」
魔王「やはり、お主の知るところではなかったか」
側近「まあ、普通に考えれば政略結婚でしょうねえ」
魔王「父親のような存在なのだろう?親が勝手に結婚を決めても、問題はあるまい」
勇者「まままままあ、国王がそうしたと言うのなら・・・し、従うしか・・・」
僧侶「そ、そんな!困ります!」
14: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:45:52.30 ID:01+6FuFio
勇者「ち、ちなみに侯爵家の娘って、どんな感じ?」
側近「美人で有名ですよ」
勇者「な、ならば従うしかあるまい・・・?」
戦士「露骨だな勇者・・・」
魔法使い「見損なったわ・・・」
僧侶「ゆ、勇者さまぁ・・・」
側近「御年50幾つ、妙齢のご婦人です」
勇者「王うううううううううううううううううううううううううううううううっ!!!!」
勇者「許さんっ!絶対に許さんぞぉおおぉおおおぉおぉおぉおおおお!」
戦士「50の婆か・・・どこが妙齢なんだ・・・」
側近「私たち魔族にとっては若すぎるぐらいですけどねえ」
勇者「に、人間どもめ!人間どもめええええええええええええええ!!」
15: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:46:18.75 ID:01+6FuFio
勇者「魔王は悪であると、人間よがりの知識を俺に植え付け!あまつさえ俺たちの50万ゴールドを横領し!!」
勇者「俺たちの情報を、わずか50Gで魔族に売り渡した上に!!」
勇者「なにより!この俺を50の婆と結婚させただとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
魔王「お、おお・・・ならば・・!」
勇者「・・・!」
勇者「魔王様・・・いえ!社長!なんなりと御命じ下さい!」
戦士「ま、聞く限り王国の仕打ちは酷すぎるしな、ちょっと不安だが勇者についていくぜ」
魔法使い「魔王討伐後は、王国に研究職に取り立ててもらえる予定だったけど・・・まあこっちで就職するのもいいか」
僧侶「勇者様を政争の具にするとは!許せません!私もずっと勇者様の御傍にいます!」
魔王「ふはははは!頼もしい限りだ!勇者よ、さっそく王都に戻り!啓蒙活動に勤しんでもらおうぞ!」
勇者「お任せください!」
魔王「だが・・・」
魔王「もう5時だ!今日はもう帰ってよい!」
16: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:46:47.89 ID:01+6FuFio
有給休暇の誘惑に抗うも、王国の非道の行いに怒り
魔王と手を結び、巨悪と戦うことを誓った勇者一行
勇者一行の正義の戦いは、まだまだ終わらない
ただし就業時間内には、いったん終わる
17: ◆CItYBDS.l2 2017/09/22(金) 17:48:15.17 ID:01+6FuFio
おわりです。お先に失礼します。
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/22(金) 18:01:25.18 ID:LXY6nUqxO
乙
これは続きみたいな
これは続きみたいな
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/22(金) 18:30:11.28 ID:LxLdhH2A0
おつかれさまでしたー
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/22(金) 19:08:51.76 ID:RySeOfCRo
なんというホワイト
先代勇者の呪いが解けてほしいね
乙
先代勇者の呪いが解けてほしいね
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1506069583/
Entry ⇒ 2017.11.13 | Category ⇒ 魔王・勇者 | Comments (0)
吸血娘「死なないハゲってさ、不老不死ってより不毛不死だよね」屍男「…」
1: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:02:17.78 ID:dtVbVf21o
吸血娘「って、毛根はもう死んでるか!アッハハハハハハァ!!!!」バンバン
屍男「…」
吸血娘「なんだよしけてんな!お前にはもう湿気なんて関係ないやないかーい!」バシッ
屍男「...」
屍男「…」
吸血娘「なんだよしけてんな!お前にはもう湿気なんて関係ないやないかーい!」バシッ
屍男「...」
2: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:03:21.89 ID:dtVbVf21o
吸血娘「んだよ、今日は一段と暗いな。頭はいつも明るいくせに」
吸血娘「育毛剤の副作用で髪だけじゃくて感情も失ったのか?元気出せよハゲ、髪はなくてもお前には私がついてるんだから」
屍男「…少し黙っててくれないか。やかましい」
吸血娘「アんっ!?」ピキッ
吸血娘「調子乗んなハゲ!!!!死ねッ!!!!毛根ごと消え去れッ!!!!」バシバシ
屍男「…頭を叩くのはやめろ」
吸血娘「育毛剤の副作用で髪だけじゃくて感情も失ったのか?元気出せよハゲ、髪はなくてもお前には私がついてるんだから」
屍男「…少し黙っててくれないか。やかましい」
吸血娘「アんっ!?」ピキッ
吸血娘「調子乗んなハゲ!!!!死ねッ!!!!毛根ごと消え去れッ!!!!」バシバシ
屍男「…頭を叩くのはやめろ」
3: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:04:10.65 ID:dtVbVf21o
吸血娘「ちょっと頑丈だからっていい気になるなよハゲ!私だって不死身なんだからな!」ゲシゲシ
吸血娘「それにこのサラサラのパツキン!テメェのツルッパゲと比べたらまさに天と地だ!」
吸血娘「あ、地といってもお前のは作物一つも育たない死んだ土地だけどな。砂漠だ砂漠、ホワイトサンズだ」
屍男「…ホワイトサンズは砂丘じゃなかったか?」
吸血娘「知るか!どっちも似たようなもんだろが!」ゲシッ
吸血娘「それにこのサラサラのパツキン!テメェのツルッパゲと比べたらまさに天と地だ!」
吸血娘「あ、地といってもお前のは作物一つも育たない死んだ土地だけどな。砂漠だ砂漠、ホワイトサンズだ」
屍男「…ホワイトサンズは砂丘じゃなかったか?」
吸血娘「知るか!どっちも似たようなもんだろが!」ゲシッ
4: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:04:57.51 ID:dtVbVf21o
吸血娘「ぜぇ…ぜぇ…ちょ、ちょっと休憩。動き疲れた」
屍男「…相変わらず体力がないな。お前は」
吸血娘「るせーよアホ、私は肉体派じゃないんだよ。脳筋のお前と違って繊細なんだ」
屍男「…モヤシ」ボソッ
吸血娘「誰がモヤシじゃゴラァ!!!!てめぇの腐った汁全部吸うぞゴラァ!!!!!」ガジガジ
屍男「頼むから降りてくれ、動きにくい」
屍男「…相変わらず体力がないな。お前は」
吸血娘「るせーよアホ、私は肉体派じゃないんだよ。脳筋のお前と違って繊細なんだ」
屍男「…モヤシ」ボソッ
吸血娘「誰がモヤシじゃゴラァ!!!!てめぇの腐った汁全部吸うぞゴラァ!!!!!」ガジガジ
屍男「頼むから降りてくれ、動きにくい」
5: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:06:27.60 ID:dtVbVf21o
吸血娘「ペッペッ、相変わらずまずい血だな。腐ってんじゃないの」ゴシゴシ
屍男「...見て分からないのか」
吸血娘「あーあ、こんなハゲの血じゃなくて、十代のピチピチの処女の血が飲みたいわ。もう長いこと飲んでないし」
吸血娘「いつも飲むのは中年のドラッグとアルコールで薄汚れた不味い血…薬中の血ってマジでゲロ吐きそうになるわ」
吸血娘「お前も食いたいだろ?若い女の肉」
屍男「…いや、俺はいい」
吸血娘「嘘つくなよ、このムッツリが。ハゲは全員ムッツリスケベって相場が決まってるんだよ」
屍男「...見て分からないのか」
吸血娘「あーあ、こんなハゲの血じゃなくて、十代のピチピチの処女の血が飲みたいわ。もう長いこと飲んでないし」
吸血娘「いつも飲むのは中年のドラッグとアルコールで薄汚れた不味い血…薬中の血ってマジでゲロ吐きそうになるわ」
吸血娘「お前も食いたいだろ?若い女の肉」
屍男「…いや、俺はいい」
吸血娘「嘘つくなよ、このムッツリが。ハゲは全員ムッツリスケベって相場が決まってるんだよ」
6: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:08:02.40 ID:dtVbVf21o
吸血娘「ホント、そこら辺の女学生でもさらっちゃおっかな。力を使えば人に見られることもないし」
屍男「...」
吸血娘「冗談だって、そこまでするほど私も悪人じゃないよ」
吸血娘「仕方ない、今度どっかの献血所からまたパクってくるか。直飲みしたいけど我慢してやる」
ピピッ
吸血娘「ん、時間か。行くぞハゲ」スッ
屍男「…あぁ、分かっている」スッ
吸血娘「お仕事の時間だ」
屍男「...」
吸血娘「冗談だって、そこまでするほど私も悪人じゃないよ」
吸血娘「仕方ない、今度どっかの献血所からまたパクってくるか。直飲みしたいけど我慢してやる」
ピピッ
吸血娘「ん、時間か。行くぞハゲ」スッ
屍男「…あぁ、分かっている」スッ
吸血娘「お仕事の時間だ」
7: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:09:45.34 ID:dtVbVf21o
……………………………………………………
……………………………………
グチャッ
グチャッ
吸血娘「ふぅ、全部で6人終わりっと」ゲプッ
吸血娘「さすがに飲みすぎたわ…合計50リットル以上はあったからな。お腹パンパン」ポンポン
死体『』
吸血娘「はい、あとはお前の仕事な、片しといて」
屍男「…分かっている」スッ
バキバキッ
グチャッ
……………………………………
グチャッ
グチャッ
吸血娘「ふぅ、全部で6人終わりっと」ゲプッ
吸血娘「さすがに飲みすぎたわ…合計50リットル以上はあったからな。お腹パンパン」ポンポン
死体『』
吸血娘「はい、あとはお前の仕事な、片しといて」
屍男「…分かっている」スッ
バキバキッ
グチャッ
8: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:11:33.20 ID:dtVbVf21o
吸血娘「ねぇ、人間って美味いの?私は血しか飲まないから分かんないし」
屍男「…女は基本的に全員、肉が柔らかくて美味い。男は脂肪がついたデブ以外は淡白な味だ」
吸血娘「ふーん、あそっ」
吸血娘「しかし、今回の依頼のやつも相当な悪人だな。集団強姦の常習犯だって、被害者は恐らく合計三桁以上」ペラッ
吸血娘「未成年の時には数人をバラシて埋めてるって…コワッ、最近の若いやつはなにするか分からんな」
吸血娘「ま、悪いことをしたら天罰が下るのは当然のことだよね。それを私たち怪物がやってるってのは皮肉っぽいけど」
屍男「…女は基本的に全員、肉が柔らかくて美味い。男は脂肪がついたデブ以外は淡白な味だ」
吸血娘「ふーん、あそっ」
吸血娘「しかし、今回の依頼のやつも相当な悪人だな。集団強姦の常習犯だって、被害者は恐らく合計三桁以上」ペラッ
吸血娘「未成年の時には数人をバラシて埋めてるって…コワッ、最近の若いやつはなにするか分からんな」
吸血娘「ま、悪いことをしたら天罰が下るのは当然のことだよね。それを私たち怪物がやってるってのは皮肉っぽいけど」
9: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:13:02.38 ID:dtVbVf21o
屍男「…処理終わったぞ」
吸血娘「よーし、じゃあさっさと撤収だ。早くお風呂に入りたいし」
吸血娘「ハゲ、お前はあいつんところ行って報酬貰ってきて」
吸血娘「あとピザも買ってこい、肉いっぱい入ってるやつな」
屍男「…自分で」
吸血娘「んじゃよろしく。もし買ってこなかったら、お前が寝てる間に頭に永久脱毛のレーザー当てるからな」スタスタ
屍男「...」
吸血娘「よーし、じゃあさっさと撤収だ。早くお風呂に入りたいし」
吸血娘「ハゲ、お前はあいつんところ行って報酬貰ってきて」
吸血娘「あとピザも買ってこい、肉いっぱい入ってるやつな」
屍男「…自分で」
吸血娘「んじゃよろしく。もし買ってこなかったら、お前が寝てる間に頭に永久脱毛のレーザー当てるからな」スタスタ
屍男「...」
10: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:15:10.85 ID:dtVbVf21o
…………………………………………………………………
………………………………
チリンチリン♪
魔女「いらっしゃーい」
屍男「...」
魔女「おっ、ゾンビくんじゃない、どうしたの?おつかいでも頼まれたのかしら?」
屍男「…金を受け取り来た」
魔女「あーはいはい、いつものやつね。まったく不愛想なんだから」ガサゴソ
魔女「はい、今回の報酬よ」ドサッ
………………………………
チリンチリン♪
魔女「いらっしゃーい」
屍男「...」
魔女「おっ、ゾンビくんじゃない、どうしたの?おつかいでも頼まれたのかしら?」
屍男「…金を受け取り来た」
魔女「あーはいはい、いつものやつね。まったく不愛想なんだから」ガサゴソ
魔女「はい、今回の報酬よ」ドサッ
11: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:16:09.11 ID:dtVbVf21o
屍男「…確認した」スッ
魔女「で、どう?そろそろ慣れた?この仕事も」
屍男「…あぁ、特に不自由はしていない」
魔女「あの子のところだと色々苦労してるんじゃないの?例えば頭に針刺されてヘルレイザーごっこされたり」
屍男「…いや、さすがにそこまではされてない」
魔女「なんだ、つまんないの」
屍男「…」
魔女「で、どう?そろそろ慣れた?この仕事も」
屍男「…あぁ、特に不自由はしていない」
魔女「あの子のところだと色々苦労してるんじゃないの?例えば頭に針刺されてヘルレイザーごっこされたり」
屍男「…いや、さすがにそこまではされてない」
魔女「なんだ、つまんないの」
屍男「…」
12: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:17:10.68 ID:dtVbVf21o
魔女「じゃあ“記憶“の方は?何か思い出したりした?」
屍男「...相変わらずだ。生前の自分が何者だったのかすら思い出せない」
魔女「そう…ま、これだけは気長に行くしかないわね。唐突に全部思い出すわけでもないし」
屍男「前例があるのか?死者が記憶をなくして蘇るなど」
魔女「前にも言ったけど、別に死体が蘇るのはそう珍しいことじゃないわよ?よく言うじゃない、地獄が満員になると死者が地上を歩き出すって」
屍男「…聞いたことないが」
屍男「...相変わらずだ。生前の自分が何者だったのかすら思い出せない」
魔女「そう…ま、これだけは気長に行くしかないわね。唐突に全部思い出すわけでもないし」
屍男「前例があるのか?死者が記憶をなくして蘇るなど」
魔女「前にも言ったけど、別に死体が蘇るのはそう珍しいことじゃないわよ?よく言うじゃない、地獄が満員になると死者が地上を歩き出すって」
屍男「…聞いたことないが」
13: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:18:37.69 ID:dtVbVf21o
魔女「まあ原理は幽霊と変わらないってことよ。違いは肉体が歩かないか、見えるか見えないかの些細な違い」
魔女「でも記憶がないのはちょっと特殊かもね。大抵は未練やら後悔やら、何か思い残したことが起因になって蘇ってるわけだし」
屍男「…未練か」
屍男「一つだけ、この仕事を始めて分かったことがある」
魔女「ほう、なに?」
屍男「…恐らく俺は、生きている時も似たようなことに関わっていた気がする。死というものに関係する何かにな」
魔女「ふーん…それは興味深いわね」
魔女「でも記憶がないのはちょっと特殊かもね。大抵は未練やら後悔やら、何か思い残したことが起因になって蘇ってるわけだし」
屍男「…未練か」
屍男「一つだけ、この仕事を始めて分かったことがある」
魔女「ほう、なに?」
屍男「…恐らく俺は、生きている時も似たようなことに関わっていた気がする。死というものに関係する何かにな」
魔女「ふーん…それは興味深いわね」
14: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:19:38.45 ID:dtVbVf21o
魔女「確かに、やけに手際がいいと思ってたわ。正直慣れるにはまだ早すぎるし、気を病んでる様子もない」
魔女「この手の仕事は人を殺すことに何も躊躇がない怪物にしか出来ないからねぇ、もしかして生前はどっかのマフィアお抱えのヒットマンとか?」
屍男「…そうかもな、思い出せないが」
魔女「ま、何か思い出したら相談に来なさいな。お金次第では情報を探してもいいわよ?」
屍男「…検討しておこう。では俺はそろそろ失礼する」スッ
魔女「この手の仕事は人を殺すことに何も躊躇がない怪物にしか出来ないからねぇ、もしかして生前はどっかのマフィアお抱えのヒットマンとか?」
屍男「…そうかもな、思い出せないが」
魔女「ま、何か思い出したら相談に来なさいな。お金次第では情報を探してもいいわよ?」
屍男「…検討しておこう。では俺はそろそろ失礼する」スッ
15: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:21:16.58 ID:dtVbVf21o
魔女「ちょい待ち」ガシッ
屍男「…まだ何か用か」
魔女「ねぇ…今、時間ある?」
屍男「…あると言えばあるが」
魔女「…少し、遊んでいかない?最近溜まってるのよね…色々と」ヒラッ
屍男「...」
魔女「アナタもこの仕事を続けているなら…溜まってるんじゃないの?そういうのは発散した方がいいわよ」
屍男「…まだ何か用か」
魔女「ねぇ…今、時間ある?」
屍男「…あると言えばあるが」
魔女「…少し、遊んでいかない?最近溜まってるのよね…色々と」ヒラッ
屍男「...」
魔女「アナタもこの仕事を続けているなら…溜まってるんじゃないの?そういうのは発散した方がいいわよ」
16: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:22:21.56 ID:dtVbVf21o
屍男「…興味がないな。帰るぞ」グッ
魔女「ちょっとぉ…こんな美女が誘ってるのに、まさか何もしないで帰るつもり?それでも男なのかしら?」
屍男「…俺は死人だ。死体と寝る趣味があるなら、墓場にでも行ってくれ」スタスタ
バタンッ
魔女「…ふっ」
魔女「まったく…お堅いんだから」
魔女「ちょっとぉ…こんな美女が誘ってるのに、まさか何もしないで帰るつもり?それでも男なのかしら?」
屍男「…俺は死人だ。死体と寝る趣味があるなら、墓場にでも行ってくれ」スタスタ
バタンッ
魔女「…ふっ」
魔女「まったく…お堅いんだから」
17: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:23:58.01 ID:dtVbVf21o
ガチャッ
屍男「…帰ったぞ」
吸血娘「遅いんじゃハゲェェッッッッ!!!!!!」ブンッ
ブンブンブンッ
グサッ
屍男「...包丁を投げるのはやめろと前にも言っただろ」ブスッ
吸血娘「いいだろ別に!お前どうせ痛覚鈍いんだし、すぐ治るだろハゲ!」
吸血娘「ハゲだけに怪我ないってな!アッハハハハハハハハハァ!」
屍男「…自分で言ったジョークでうけるな」
屍男「…帰ったぞ」
吸血娘「遅いんじゃハゲェェッッッッ!!!!!!」ブンッ
ブンブンブンッ
グサッ
屍男「...包丁を投げるのはやめろと前にも言っただろ」ブスッ
吸血娘「いいだろ別に!お前どうせ痛覚鈍いんだし、すぐ治るだろハゲ!」
吸血娘「ハゲだけに怪我ないってな!アッハハハハハハハハハァ!」
屍男「…自分で言ったジョークでうけるな」
18: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:25:29.30 ID:dtVbVf21o
吸血娘「それよりピザはどうした!まさか買ってこなかったんじゃないだろうな!」
屍男「…よく見ろ、ちゃんと買ってある」スッ
吸血娘「うっひょー!さっさと言えよな!この使えないハゲが!」
吸血娘「ん~~~んっま!やっぱピザは最高だね!このジャンクさがたまんない!」
吸血娘「あ、トマトが入ってるところはハゲにやるわ。野菜食べると髪が生えてくるかもな。感謝しろよ」ポイッ
屍男「...少しは栄養を考えたらどうだ。そんな体に悪いものばっかり食ってると成長しないぞ」
屍男「…よく見ろ、ちゃんと買ってある」スッ
吸血娘「うっひょー!さっさと言えよな!この使えないハゲが!」
吸血娘「ん~~~んっま!やっぱピザは最高だね!このジャンクさがたまんない!」
吸血娘「あ、トマトが入ってるところはハゲにやるわ。野菜食べると髪が生えてくるかもな。感謝しろよ」ポイッ
屍男「...少しは栄養を考えたらどうだ。そんな体に悪いものばっかり食ってると成長しないぞ」
19: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:27:03.05 ID:dtVbVf21o
吸血娘「いいの、ヴァンパイアは血さえ吸ってれば他のエネルギーなんて摂取しなくてもいいんだから」パクパク
吸血娘「あーおいしい…ピザとコーラを作ったやつは天才だな。二十代後半の健康的な女の血くらいうまい」ムシャムシャ
屍男「…さっきまで血を何十リットルも飲んでたくせによく食えるな」
吸血娘「血と食物は別物、吸収機関が違う。あれ、正確には血を飲んでるんじゃなくて身体に取り込んでるんだからね」モグモグ
吸血娘「つーか、お前も似たようなもんだろ。死体6人も食って動けるとか、胃袋どうなってるんだよ」モグモグ
吸血娘「あーっ!ピザうまい!最高!フォウッ!」
屍男「…おめでたいやつだ」
吸血娘「あーおいしい…ピザとコーラを作ったやつは天才だな。二十代後半の健康的な女の血くらいうまい」ムシャムシャ
屍男「…さっきまで血を何十リットルも飲んでたくせによく食えるな」
吸血娘「血と食物は別物、吸収機関が違う。あれ、正確には血を飲んでるんじゃなくて身体に取り込んでるんだからね」モグモグ
吸血娘「つーか、お前も似たようなもんだろ。死体6人も食って動けるとか、胃袋どうなってるんだよ」モグモグ
吸血娘「あーっ!ピザうまい!最高!フォウッ!」
屍男「…おめでたいやつだ」
20: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:28:12.53 ID:dtVbVf21o
屍男「ピザもいいが、報酬も受け取ってきたぞ。確認してくれ」スッ
吸血娘「んー…さていくら入ってるかなっと」ペラペラ
吸血娘「…はぁっ!?たったこんだけぇ!?」
屍男「...少ないのか」
吸血娘「いつもの半分以下じゃねえか!確かに雑魚で楽にやれたけど割に合わない!」
吸血娘「こっちは誰かに目撃されるリスクがあるんだぞ!あのクソビッチめ!!!!」
屍男「…不景気というやつだろう。あと、ビッチとかそういう汚い言葉を年頃の娘が使うもんじゃない」
吸血娘「んー…さていくら入ってるかなっと」ペラペラ
吸血娘「…はぁっ!?たったこんだけぇ!?」
屍男「...少ないのか」
吸血娘「いつもの半分以下じゃねえか!確かに雑魚で楽にやれたけど割に合わない!」
吸血娘「こっちは誰かに目撃されるリスクがあるんだぞ!あのクソビッチめ!!!!」
屍男「…不景気というやつだろう。あと、ビッチとかそういう汚い言葉を年頃の娘が使うもんじゃない」
21: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:29:52.79 ID:dtVbVf21o
吸血娘「いやどう見てもあいつビッチじゃん!無駄に露出高いし、おっぱいでかいし!歩くポルノじゃん!」
吸血娘「…はっ!?ハゲ!お前まさかやけに帰りが遅いと思ったらあいつと...!」
屍男「帰りが遅かったのはお前がピザを頼むからだろうが」
吸血娘「あんまりあいつと仲良くするなよ!あいつは人間のくせに私たちの世界に干渉しているちょっとヤバいやつなんだからな!」
吸血娘「それに、あの蛇みたいな目…絶対ろくなやつじゃない!ビッチだビッチ!」
屍男「…人間が俺達と関わっているのは珍しいのか?」
吸血娘「…はっ!?ハゲ!お前まさかやけに帰りが遅いと思ったらあいつと...!」
屍男「帰りが遅かったのはお前がピザを頼むからだろうが」
吸血娘「あんまりあいつと仲良くするなよ!あいつは人間のくせに私たちの世界に干渉しているちょっとヤバいやつなんだからな!」
吸血娘「それに、あの蛇みたいな目…絶対ろくなやつじゃない!ビッチだビッチ!」
屍男「…人間が俺達と関わっているのは珍しいのか?」
22: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:31:40.63 ID:dtVbVf21o
吸血娘「敵対するなら分かるけど、あいつはこっち側と癒着してるんだぞ」
吸血娘「例えるなら…カマキリの群れの中にいる蝶、すぐ食われてもおかしくないのに、それなりの立場にいる」
吸血娘「それに何かあいつと目を合わせると、観察されているみたいでキモいし…時折口調が別人みたいに変わるし」
吸血娘「なるべく関わらない方がいいやつナンバーワンだわ!私の勘がそう言っている!」
屍男「…まあそれは分かるが」
吸血娘「チッ…次会ったら抗議してやる。あとハゲ、お前そろそろ臭うから風呂入ってこい。くさいぞ」
屍男「…分かった」スタスタ
吸血娘「例えるなら…カマキリの群れの中にいる蝶、すぐ食われてもおかしくないのに、それなりの立場にいる」
吸血娘「それに何かあいつと目を合わせると、観察されているみたいでキモいし…時折口調が別人みたいに変わるし」
吸血娘「なるべく関わらない方がいいやつナンバーワンだわ!私の勘がそう言っている!」
屍男「…まあそれは分かるが」
吸血娘「チッ…次会ったら抗議してやる。あとハゲ、お前そろそろ臭うから風呂入ってこい。くさいぞ」
屍男「…分かった」スタスタ
23: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:33:18.47 ID:dtVbVf21o
シャアアアアアアアワアアアアアアアア…
屍男「…」クンクン
屍男「…やはり、一日に三回は入らないと臭ってくるか。不便だな」
屍男(香水でも買うか?しかし大の男が香水の匂いがするのは…またあいつに何か言われそうだな)
ゴリッ
屍男「…なんだ、今、何か硬い感触が」
屍男これは…弾丸か?あぁ、前に撃ち込まれていたのを取り忘れていたのか」グチュッ
屍男「…」
屍男「…あれから、もう半年か」
屍男「…」クンクン
屍男「…やはり、一日に三回は入らないと臭ってくるか。不便だな」
屍男(香水でも買うか?しかし大の男が香水の匂いがするのは…またあいつに何か言われそうだな)
ゴリッ
屍男「…なんだ、今、何か硬い感触が」
屍男これは…弾丸か?あぁ、前に撃ち込まれていたのを取り忘れていたのか」グチュッ
屍男「…」
屍男「…あれから、もう半年か」
24: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/13(金) 21:37:03.37 ID:dtVbVf21o
▢▢▢▢ 半年前 ▢▢▢▢
屍男「」
屍男「」ビクッ
屍男「」パチッ
屍男「...」
屍男「........?」 キョロキョロ
屍男「…ここはどこだ?ゴミが大量にあるが」
屍男「なぜこんなところに…うっ」ズキッ
屍男「――――俺は、誰だ?」
屍男「」
屍男「」ビクッ
屍男「」パチッ
屍男「...」
屍男「........?」 キョロキョロ
屍男「…ここはどこだ?ゴミが大量にあるが」
屍男「なぜこんなところに…うっ」ズキッ
屍男「――――俺は、誰だ?」
29: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:52:18.52 ID:Sq07Y5wLo
ワイワイ ガヤガヤ
屍男(気が付いたら…路地裏のゴミ捨て場で目が覚めた)
屍男(その前のことは何も覚えていない…自分の名前も、出身も)
屍男(…これは“記憶喪失”というやつなんだろうな。自分の過去だけが綺麗に丸ごと抜けている)
屍男(これからどうする。警察にでも行って事情を話せば保護してもらえるか?)
屍男(…いや、警察は駄目だ。なぜかは分からんが、嫌な予感がする)
屍男(気が付いたら…路地裏のゴミ捨て場で目が覚めた)
屍男(その前のことは何も覚えていない…自分の名前も、出身も)
屍男(…これは“記憶喪失”というやつなんだろうな。自分の過去だけが綺麗に丸ごと抜けている)
屍男(これからどうする。警察にでも行って事情を話せば保護してもらえるか?)
屍男(…いや、警察は駄目だ。なぜかは分からんが、嫌な予感がする)
30: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:53:30.90 ID:Sq07Y5wLo
屍男(…しかし、動かないと埒があかない。いずれにせよ、このままホームレスのような生活を続けるわけにもいかん)
屍男(人が集まるこの駅前なら、俺のことを知っているやつに声をかけられるかと思ったが…もう日が暮れてしまった)
グゥゥ
屍男(腹が減ってきたな。今日はここで一晩過ごし、明日になっても見つからなかったらおとなしく病院にでも行くか)
「うっ、なんだあのハゲの周り、めっちゃくっせえぞ」
「うわ!ハゲだ!ハゲ菌がうつる!」
屍男「…」
屍男(人が集まるこの駅前なら、俺のことを知っているやつに声をかけられるかと思ったが…もう日が暮れてしまった)
グゥゥ
屍男(腹が減ってきたな。今日はここで一晩過ごし、明日になっても見つからなかったらおとなしく病院にでも行くか)
「うっ、なんだあのハゲの周り、めっちゃくっせえぞ」
「うわ!ハゲだ!ハゲ菌がうつる!」
屍男「…」
31: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:55:01.11 ID:Sq07Y5wLo
チッチッチッチッチッチッチッチッ
屍男(深夜の0時か。さすがにもう人はいないな)
屍男(…そろそろ寝るか。こんなところで横になると死体と間違われて通報される可能性がある…少し場所を変えるか)スッ
「ちょっといい?そこの髪がない人」
屍男「…なんだ、俺のことか?」
「そうよ、こんなところで何をしているの?」
屍男「…いや、何でもない。もうここを離れるところだ」
屍男(長居し過ぎたか、怪しまれると厄介だな)
屍男(深夜の0時か。さすがにもう人はいないな)
屍男(…そろそろ寝るか。こんなところで横になると死体と間違われて通報される可能性がある…少し場所を変えるか)スッ
「ちょっといい?そこの髪がない人」
屍男「…なんだ、俺のことか?」
「そうよ、こんなところで何をしているの?」
屍男「…いや、何でもない。もうここを離れるところだ」
屍男(長居し過ぎたか、怪しまれると厄介だな)
32: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:56:21.64 ID:Sq07Y5wLo
「ふーん…そう」ジロジロ
屍男(…なんだ、この女は)
屍男(よく見ると…他の人間とは違う雰囲気がある。妖艶…蠱惑的…まるで魔女だな。薄気味悪ささえ感じる)
屍男(格好を見るに、娼婦か何かか?まさか商売の相手を探しているんじゃあるまいな)
魔女「アナタ…もしかして、記憶喪失だったりする?」
屍男「」ピクッ
屍男「…お前は、俺を知っているのか?」
屍男(…なんだ、この女は)
屍男(よく見ると…他の人間とは違う雰囲気がある。妖艶…蠱惑的…まるで魔女だな。薄気味悪ささえ感じる)
屍男(格好を見るに、娼婦か何かか?まさか商売の相手を探しているんじゃあるまいな)
魔女「アナタ…もしかして、記憶喪失だったりする?」
屍男「」ピクッ
屍男「…お前は、俺を知っているのか?」
33: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:57:20.16 ID:Sq07Y5wLo
魔女「残念、会ったこともないわね。でも…」
魔女「アナタに何が起きたかは…知っているかも」チラッ
屍男(この女は…なぜ俺のことを)
屍男(…考えても仕方ないか。今はこの女が一番の頼りだ)
屍男(…勘だが、こいつは何か特別な気配がする)
屍男「…あぁ、そうだ。俺には記憶がない」
屍男「お前は医者か、エスパーか?どちらにしても、俺が何者なのか教えてほしい」
魔女「いいわ、ここで話すのもなんだし、ちょっと場所を移しましょうか。着いてきなさいな」スタスタ
魔女「アナタに何が起きたかは…知っているかも」チラッ
屍男(この女は…なぜ俺のことを)
屍男(…考えても仕方ないか。今はこの女が一番の頼りだ)
屍男(…勘だが、こいつは何か特別な気配がする)
屍男「…あぁ、そうだ。俺には記憶がない」
屍男「お前は医者か、エスパーか?どちらにしても、俺が何者なのか教えてほしい」
魔女「いいわ、ここで話すのもなんだし、ちょっと場所を移しましょうか。着いてきなさいな」スタスタ
34: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:58:13.23 ID:Sq07Y5wLo
カランカラン♪
魔女「そこら辺にでも座っててちょうだい。お茶を出すわ」
屍男(…ここは古本屋か?どんな所に連れ行かれるのかと思ったら…意外とまともな場所だな)
屍男(この女の店…にしては似合わないな)
魔女「はい、レモンティー。口に合うかどうかは知らないけど」
屍男「…さっそく本題に入っていいか。お前はなぜ、俺が記憶を失っていると一目でわかったんだ?」
魔女「うーん…そうねぇ…」
魔女「じゃあ気付いてないみたいだし、正直に言ってあげるわ。あんまり取り乱さないでね」
魔女「そこら辺にでも座っててちょうだい。お茶を出すわ」
屍男(…ここは古本屋か?どんな所に連れ行かれるのかと思ったら…意外とまともな場所だな)
屍男(この女の店…にしては似合わないな)
魔女「はい、レモンティー。口に合うかどうかは知らないけど」
屍男「…さっそく本題に入っていいか。お前はなぜ、俺が記憶を失っていると一目でわかったんだ?」
魔女「うーん…そうねぇ…」
魔女「じゃあ気付いてないみたいだし、正直に言ってあげるわ。あんまり取り乱さないでね」
35: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:58:59.03 ID:Sq07Y5wLo
魔女「アナタ、もう死んでいるのよ。人間じゃない、だからすぐ分かったの」
屍男「………は?」
36: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:00:04.96 ID:Sq07Y5wLo
魔女「気付いてなかったでしょ、自分が死んでいることに」
魔女「そりゃ駅の前で、死体が意味深な顔をして辺りの人間をチラチラ見てたら…人を探してるか、今夜のディナーを見極めているかのどっちかしかないわよ」
魔女「普通の怪物は私の目を見たら真っ先に警戒するし、アナタの態度を見ると何も知らない、蘇ってからそう日が経ってないアンデッドってことはすぐ分かったわ」
魔女「蘇生した直後は記憶が混乱して、ボーっとしてるしね」
屍男「…待て、勝手に話を進めるな。俺が死んでいるだと?」
屍男「笑えない冗談だ。死体が動くわけがない…俺を馬鹿にしているのか?それともイカれているのか」
魔女「そう言うと思ったわ。じゃあ論より証拠を見せてあげる」チャキッ
魔女「そりゃ駅の前で、死体が意味深な顔をして辺りの人間をチラチラ見てたら…人を探してるか、今夜のディナーを見極めているかのどっちかしかないわよ」
魔女「普通の怪物は私の目を見たら真っ先に警戒するし、アナタの態度を見ると何も知らない、蘇ってからそう日が経ってないアンデッドってことはすぐ分かったわ」
魔女「蘇生した直後は記憶が混乱して、ボーっとしてるしね」
屍男「…待て、勝手に話を進めるな。俺が死んでいるだと?」
屍男「笑えない冗談だ。死体が動くわけがない…俺を馬鹿にしているのか?それともイカれているのか」
魔女「そう言うと思ったわ。じゃあ論より証拠を見せてあげる」チャキッ
37: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:00:56.84 ID:Sq07Y5wLo
バンッ!!!!!!
屍男「!?」ドンッ
屍男(なっ…拳銃っ…撃たれッ...)
ドサッ
屍男「」
屍男「」
屍男「…??」ピクッ
屍男(…痛みがない?)
魔女「ほら、銃で心臓を撃ち抜かれても生きてるでしょ。これでも普通の人間だっていうの?」
魔女「これが現実、アナタは一度死んで蘇ったゾンビくんってワケ」
屍男「!?」ドンッ
屍男(なっ…拳銃っ…撃たれッ...)
ドサッ
屍男「」
屍男「」
屍男「…??」ピクッ
屍男(…痛みがない?)
魔女「ほら、銃で心臓を撃ち抜かれても生きてるでしょ。これでも普通の人間だっていうの?」
魔女「これが現実、アナタは一度死んで蘇ったゾンビくんってワケ」
38: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:01:59.95 ID:Sq07Y5wLo
屍男(ど、どうなって…撃たれた傷は!?)バッ
ジュゥゥゥゥゥゥッ
屍男「に、肉が集まって再生しているだと…」
魔女「おぉ、再生のスピードはっやーい」
屍男「何がどうなっているんだ…?ぐぅっ」グッ
屍男「俺は……もう本当に……死んで、いるのか......?」
魔女「目の前で手品を初めて見た子供みたいなその顔…髪があったら男前なのにもったいない」
ジュゥゥゥゥゥゥッ
屍男「に、肉が集まって再生しているだと…」
魔女「おぉ、再生のスピードはっやーい」
屍男「何がどうなっているんだ…?ぐぅっ」グッ
屍男「俺は……もう本当に……死んで、いるのか......?」
魔女「目の前で手品を初めて見た子供みたいなその顔…髪があったら男前なのにもったいない」
39: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:05:56.27 ID:Sq07Y5wLo
屍男「...」
魔女「まあショックなのは分かるけど、そんなに悲観することじゃないわよ。第二の人生だと思えば気楽なものよ?」
魔女「ほら、ゾンビ映画のゾンビ達も肉食べてる時はすごく楽しそうだし」
屍男「...俺はなぜ死んだんだ」
魔女「さぁ?そんなこと私に言われても
分からないわよ。全知全能の神じゃあるまいし」
屍男「...記憶はいつか戻るのか?」
魔女 「そうね、そのうち戻るんじゃないの。今は蘇った反動で脳が混乱してるだけだと思うし」
魔女「まあショックなのは分かるけど、そんなに悲観することじゃないわよ。第二の人生だと思えば気楽なものよ?」
魔女「ほら、ゾンビ映画のゾンビ達も肉食べてる時はすごく楽しそうだし」
屍男「...俺はなぜ死んだんだ」
魔女「さぁ?そんなこと私に言われても
分からないわよ。全知全能の神じゃあるまいし」
屍男「...記憶はいつか戻るのか?」
魔女 「そうね、そのうち戻るんじゃないの。今は蘇った反動で脳が混乱してるだけだと思うし」
40: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:08:21.54 ID:Sq07Y5wLo
屍男「...俺みたいな境遇のやつは他にもいるのか」
魔女「えぇ、死者が蘇ったら主に二つに分類されるわ」
魔女「一つは『幽霊(ゴースト)』こ死の実感がない、つまり事故とか病気とかの突然死をした人がなりやすいわね」
魔女「幽霊の特徴は肉体がないこと、それに視える人にしか見えない。こっり暮らすなら最適の存在よね」
魔女「他にも足が付いてるのとか、自由に移動が可能なタイプもいるけど...ここら辺は話すと長くなるからとりあえず飛ばすわ」
魔女「そしてもう一つは『怪物(モンスター)』アナタはこっちに当てはまる」
魔女「えぇ、死者が蘇ったら主に二つに分類されるわ」
魔女「一つは『幽霊(ゴースト)』こ死の実感がない、つまり事故とか病気とかの突然死をした人がなりやすいわね」
魔女「幽霊の特徴は肉体がないこと、それに視える人にしか見えない。こっり暮らすなら最適の存在よね」
魔女「他にも足が付いてるのとか、自由に移動が可能なタイプもいるけど...ここら辺は話すと長くなるからとりあえず飛ばすわ」
魔女「そしてもう一つは『怪物(モンスター)』アナタはこっちに当てはまる」
41: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:12:45.54 ID:Sq07Y5wLo
魔女「怪物は死を実感しながら死ぬとなりやすいって言われてるわ。殺人とか、自殺とか…個人的な経験だと性格にクセがある人が多いわね」
魔女「怪物の特徴は蘇った肉体そのもの。超人的な怪力になったり、足が速くなったり、ワープしたり…まさにモンスターって感じ」
魔女「まあジェイソンみたいなのを想像すればいいわ。大体はあんな感じだから」
屍男「」グッ
グシャッ
屍男「...なるほどな、少し力を入れただけでカップが砕けた。ハルクにでもなった気分だ」パラパラ
魔女「怪物の特徴は蘇った肉体そのもの。超人的な怪力になったり、足が速くなったり、ワープしたり…まさにモンスターって感じ」
魔女「まあジェイソンみたいなのを想像すればいいわ。大体はあんな感じだから」
屍男「」グッ
グシャッ
屍男「...なるほどな、少し力を入れただけでカップが砕けた。ハルクにでもなった気分だ」パラパラ
42: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:14:11.69 ID:Sq07Y5wLo
魔女「ちょっと、勝手にカップ壊すのやめてくれる?」
屍男「…フッー、つまりアレか。俺は…誰かに殺されたということか」
屍男「そして蘇ったと…くだらんホラー映画じゃあるまいし…馬鹿みたいな話だ」
屍男「…一つ、気になることがあるんだが」
魔女「なに?」
屍男「この頭…髪が抜けたのも蘇った影響なのか?」
魔女「いや、それは違うと思う」キッパリ
屍男「…」
屍男「…あぁ、そうか」
屍男「…フッー、つまりアレか。俺は…誰かに殺されたということか」
屍男「そして蘇ったと…くだらんホラー映画じゃあるまいし…馬鹿みたいな話だ」
屍男「…一つ、気になることがあるんだが」
魔女「なに?」
屍男「この頭…髪が抜けたのも蘇った影響なのか?」
魔女「いや、それは違うと思う」キッパリ
屍男「…」
屍男「…あぁ、そうか」
45: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:02:59.09 ID:AFSOJReDo
魔女「しかしまあ、怪物になったのは運が悪かったかもね。幽霊なら実体がないから好き放題出来たのに」
魔女「いくら死んでるといっても、怪物は元のベースが人間だからどうしても睡眠と食事が必要になるのよね。幽霊はただ浮いてるだけでいいんだけど」
屍男「…どうすればいいんだ。俺はこれから…」
屍男「名も故郷も親も知らずに、化け物になった状態で生きろと?そのまま死んでた方がまだ楽だろう」
屍男「…姿も髪が抜けて、この有様だ」
魔女「だから髪がないのは元からだって」
魔女「まあそうねぇ…このままだと本当に野垂れ死んじゃいそうだし、アナタが良ければ記憶が戻るまでここに住んでもいいわよ?あ、もちろん仕事はしてもらうけど」
魔女「いくら死んでるといっても、怪物は元のベースが人間だからどうしても睡眠と食事が必要になるのよね。幽霊はただ浮いてるだけでいいんだけど」
屍男「…どうすればいいんだ。俺はこれから…」
屍男「名も故郷も親も知らずに、化け物になった状態で生きろと?そのまま死んでた方がまだ楽だろう」
屍男「…姿も髪が抜けて、この有様だ」
魔女「だから髪がないのは元からだって」
魔女「まあそうねぇ…このままだと本当に野垂れ死んじゃいそうだし、アナタが良ければ記憶が戻るまでここに住んでもいいわよ?あ、もちろん仕事はしてもらうけど」
46: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:04:05.32 ID:AFSOJReDo
屍男「…いいのか?お前は」
屍男「会ったばかりの死人を家に招き入れるなんて…余程のお人好しか間抜けだぞ。正常な判断とは思えない」
魔女「家を提供してあげるって言ってるのに、普通そんなこと言う?」
魔女「別に理由なんてないわよ。ただ、困った時はお互い様ってだけ」
魔女「貸しは作っておいて損はないからね。いつか倍返し貰えればいいし」
屍男「…お前は本当に何者なんだ?人間なのか、それとも怪物というやつなのか」
魔女「さあ?そんなのどうでもよくない?」
魔女「アナタが直面してる状況と比べたら…私の正体なんて些細なものよ」
屍男「会ったばかりの死人を家に招き入れるなんて…余程のお人好しか間抜けだぞ。正常な判断とは思えない」
魔女「家を提供してあげるって言ってるのに、普通そんなこと言う?」
魔女「別に理由なんてないわよ。ただ、困った時はお互い様ってだけ」
魔女「貸しは作っておいて損はないからね。いつか倍返し貰えればいいし」
屍男「…お前は本当に何者なんだ?人間なのか、それとも怪物というやつなのか」
魔女「さあ?そんなのどうでもよくない?」
魔女「アナタが直面してる状況と比べたら…私の正体なんて些細なものよ」
47: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:05:35.61 ID:AFSOJReDo
…………………………………………………
……………………………
屍男「…」ポンポン
屍男「…ここの本はこっちの本棚か」
屍男「…虫に食われているな。これはもうダメか」ペラペラ
屍男(あれから二週間か。成り行きであの女の店で働くことになったが…)
屍男(なんだこの本屋は、オカルト系の怪し気でインチキ臭い本しかないぞ)
屍男(…しかも半分くらいは何の言語で書かれているか分からん。状態も悪いし何年前の白物なんだ)
屍男(これだと客も来ないはずだ。今までに来た奴なんて数えるほどしかいない…)
屍男(…いや、問題はその客の方か)
……………………………
屍男「…」ポンポン
屍男「…ここの本はこっちの本棚か」
屍男「…虫に食われているな。これはもうダメか」ペラペラ
屍男(あれから二週間か。成り行きであの女の店で働くことになったが…)
屍男(なんだこの本屋は、オカルト系の怪し気でインチキ臭い本しかないぞ)
屍男(…しかも半分くらいは何の言語で書かれているか分からん。状態も悪いし何年前の白物なんだ)
屍男(これだと客も来ないはずだ。今までに来た奴なんて数えるほどしかいない…)
屍男(…いや、問題はその客の方か)
48: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:06:50.39 ID:AFSOJReDo
屍男(時々来る客の中でも、本には目もくれずに店の奥に入っていくやつらがいる)
屍男(その客には触れるなと言われているが…あれは間違いなく、一般人ではない。気配で分かる)
屍男(そして、そいつらの共通点は馬鹿でかい荷物を持っているということだ。俺の勘だとアレは…)
魔女「おーご苦労、ご苦労。だいぶここら辺も片付いてきたわね」
魔女「やっぱり男の人がいると助かるわ。女の子一人だと本の整理もままないからねぇ」
屍男「…女の子という年齢はとうに過ぎてると思うが」
魔女「何か言った?」
屍男「…何も」
屍男(その客には触れるなと言われているが…あれは間違いなく、一般人ではない。気配で分かる)
屍男(そして、そいつらの共通点は馬鹿でかい荷物を持っているということだ。俺の勘だとアレは…)
魔女「おーご苦労、ご苦労。だいぶここら辺も片付いてきたわね」
魔女「やっぱり男の人がいると助かるわ。女の子一人だと本の整理もままないからねぇ」
屍男「…女の子という年齢はとうに過ぎてると思うが」
魔女「何か言った?」
屍男「…何も」
49: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:08:17.68 ID:AFSOJReDo
魔女「で、そろそろ記憶が戻ったりした?」
屍男「…いや」
魔女「え~まだ戻ってないわけ?それはちょっとおかしいわね…」
魔女「普通は数日から一週間で、頭が整理されて生前のことを思い出すはずなんだけど...」
屍男「…どうなっているかはこっちが聞きたい。本当に戻るのか?」
魔女「二度と戻らないってことはないでしょ。記憶自体は頭の中にちゃんと入ってるはずだし、気長に行くしかないってことね」
屍男「…そうか、待つしかないか。ところで一つ、こちらも聞きたいことがある」
屍男「ここはいつから死体安置所になったんだ?」
魔女「…え?」
屍男「…いや」
魔女「え~まだ戻ってないわけ?それはちょっとおかしいわね…」
魔女「普通は数日から一週間で、頭が整理されて生前のことを思い出すはずなんだけど...」
屍男「…どうなっているかはこっちが聞きたい。本当に戻るのか?」
魔女「二度と戻らないってことはないでしょ。記憶自体は頭の中にちゃんと入ってるはずだし、気長に行くしかないってことね」
屍男「…そうか、待つしかないか。ところで一つ、こちらも聞きたいことがある」
屍男「ここはいつから死体安置所になったんだ?」
魔女「…え?」
50: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:09:06.48 ID:AFSOJReDo
屍男「隠しても無駄だ。俺も同じ死体なんだからな。死体の臭いは僅かな死臭で分かる」
屍男「それをお前が関わるなと言った客が運んでいることも知っている。理由を聞かせてもらいたい」
魔女「…」
屍男「こちらも居候の身だ。詮索はしたくないが、これはあまりに常軌を逸している」
屍男「返答次第では…こちらも黙っているわけにはいかない」
魔女「…それってつまりこういうこと?」
魔女「私が、人を殺して、その死体で何かしていると」
屍男「…あぁ、そうだ」
屍男「それをお前が関わるなと言った客が運んでいることも知っている。理由を聞かせてもらいたい」
魔女「…」
屍男「こちらも居候の身だ。詮索はしたくないが、これはあまりに常軌を逸している」
屍男「返答次第では…こちらも黙っているわけにはいかない」
魔女「…それってつまりこういうこと?」
魔女「私が、人を殺して、その死体で何かしていると」
屍男「…あぁ、そうだ」
51: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:10:09.02 ID:AFSOJReDo
魔女「...」
魔女「はぁーあ…ばーれちゃった」
魔女「まあ半分正解ってところね。勘違いしないでほしいけど、私は死体を弄り回す趣味なんてないわよ。生きてるなら話は別だけど」
魔女「いいわ、着いてきなさい。真実を教えてあげる」スタスタ
屍男「…」
魔女「なに?警戒してるの?」
魔女「安心しないさいよ。バレたから口止めなんて古典的なことやらないから」
魔女「はぁーあ…ばーれちゃった」
魔女「まあ半分正解ってところね。勘違いしないでほしいけど、私は死体を弄り回す趣味なんてないわよ。生きてるなら話は別だけど」
魔女「いいわ、着いてきなさい。真実を教えてあげる」スタスタ
屍男「…」
魔女「なに?警戒してるの?」
魔女「安心しないさいよ。バレたから口止めなんて古典的なことやらないから」
52: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:11:15.07 ID:AFSOJReDo
スタスタ…スタスタ…
屍男(…店の奥にこんな地下へ進む階段があったのか。まるで秘密基地だな)
屍男(しかしこの臭いは…奥に進めば進むほど、死臭がはっきりする。一人や二人の量じゃないぞ)
カチャッ
魔女「はい、この部屋よ」ガチャ
屍男「…なんだ。この部屋は…」
ゾォォォォォォォォォォォォォォォォォ
屍男(見渡すとまず視界に入るのが、台に乗せられた多数の死体…状態は損傷が激しいものから、ほぼ無傷のものまで様々だ)
屍男(そしてその中央にあるのが巨大な水槽、いや鍋なのか?中には液体が入っていて、沸騰している水のように煮え立っている。どう見ても人体に悪影響を及ぼす色と臭いだ)
屍男(…店の奥にこんな地下へ進む階段があったのか。まるで秘密基地だな)
屍男(しかしこの臭いは…奥に進めば進むほど、死臭がはっきりする。一人や二人の量じゃないぞ)
カチャッ
魔女「はい、この部屋よ」ガチャ
屍男「…なんだ。この部屋は…」
ゾォォォォォォォォォォォォォォォォォ
屍男(見渡すとまず視界に入るのが、台に乗せられた多数の死体…状態は損傷が激しいものから、ほぼ無傷のものまで様々だ)
屍男(そしてその中央にあるのが巨大な水槽、いや鍋なのか?中には液体が入っていて、沸騰している水のように煮え立っている。どう見ても人体に悪影響を及ぼす色と臭いだ)
53: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:13:01.17 ID:AFSOJReDo
屍男(最高に狂ってる光景だ…常人ならこの場を見るだけで卒倒するだろう)
屍男(…まさか、自分が呑気に本の整理をしていた部屋がこんな地獄だったとは)
屍男「…おい、これは一体どういうことだ?お前は…ここで何をしている」
屍男「こんなものが世間にバレたら逮捕どころの話じゃないぞ...歴史上ナンバーワンのクレイジーでイカれてる最高のサイコ犯罪者だ」
魔女「別に私はそこまで狂ってないわよ。異常が日常になってるだけ、すぐ慣れるわ」
魔女「で、ここで何をしているのかって話だけど…この死体の顔に見覚えはある?」
死体『』
屍男「…そいつ鼻から下がないぞ」
屍男(…まさか、自分が呑気に本の整理をしていた部屋がこんな地獄だったとは)
屍男「…おい、これは一体どういうことだ?お前は…ここで何をしている」
屍男「こんなものが世間にバレたら逮捕どころの話じゃないぞ...歴史上ナンバーワンのクレイジーでイカれてる最高のサイコ犯罪者だ」
魔女「別に私はそこまで狂ってないわよ。異常が日常になってるだけ、すぐ慣れるわ」
魔女「で、ここで何をしているのかって話だけど…この死体の顔に見覚えはある?」
死体『』
屍男「…そいつ鼻から下がないぞ」
54: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:13:55.58 ID:AFSOJReDo
魔女「あら?ごめんなさい。分かりにくかったわね、じゃあこれは?」
死体『』
屍男「…記憶のない俺が人の顔を覚えてると思うか?」
魔女「えぇ、コレは結構有名人だったしね。ニュースでよくやってたから見覚えがあっても不思議じゃない」
魔女「ほら、これが生前の写真。これなら誰か分かるでしょ」ペラッ
屍男「…ん?」ピクッ
屍男「待て、こいつは確か...殺人犯で手配中の男じゃなかったか?老人を二人殺したとかいう...」
死体『』
屍男「…記憶のない俺が人の顔を覚えてると思うか?」
魔女「えぇ、コレは結構有名人だったしね。ニュースでよくやってたから見覚えがあっても不思議じゃない」
魔女「ほら、これが生前の写真。これなら誰か分かるでしょ」ペラッ
屍男「…ん?」ピクッ
屍男「待て、こいつは確か...殺人犯で手配中の男じゃなかったか?老人を二人殺したとかいう...」
55: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:15:58.09 ID:AFSOJReDo
魔女「正解、一週間前に二人のお爺さんを殺して、その犯行の様子をSNSに公開したゲス野郎」
魔女「表では今でも逃走中ってシナリオになってるわね。ま、捕まることは永遠にないでしょうけど」
屍男「…なぜそいつが死体になって転がっているんだ」
魔女「何となくもう察してるんじゃないの?極悪人が殺されるなんて理由は一つしかないじゃない」
屍男「…復讐か」
魔女「だいせいかい~誰から依頼されたかは企業秘密で言えないけど、こいつは依頼されて殺されたのよ」
魔女「自業自得ってやつよね。人から恨まれることなんてするもんじゃないわ」
魔女「表では今でも逃走中ってシナリオになってるわね。ま、捕まることは永遠にないでしょうけど」
屍男「…なぜそいつが死体になって転がっているんだ」
魔女「何となくもう察してるんじゃないの?極悪人が殺されるなんて理由は一つしかないじゃない」
屍男「…復讐か」
魔女「だいせいかい~誰から依頼されたかは企業秘密で言えないけど、こいつは依頼されて殺されたのよ」
魔女「自業自得ってやつよね。人から恨まれることなんてするもんじゃないわ」
56: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:16:42.57 ID:AFSOJReDo
魔女「ここにある死体もみんなそう、殺人鬼から強姦魔に放火魔…麻薬王から頭のネジが外れたやつまで悪人のオールスター」
魔女「まるでクズの博覧会…標本にして飾ったらお金取れるレベルだと思うわ」
屍男「…するとあの死体を運んでたやつらは」
魔女「アナタ…いえ、私達の同類よ。人の姿をしているけど、みんな怪物や人外の化け物」
魔女「私が仕事を紹介して、彼らが実行し、達成したら報酬を払う…まあどこにでもあるビジネスよ」
屍男「...」
屍男「…はぁ、一体何なんだ」
魔女「まるでクズの博覧会…標本にして飾ったらお金取れるレベルだと思うわ」
屍男「…するとあの死体を運んでたやつらは」
魔女「アナタ…いえ、私達の同類よ。人の姿をしているけど、みんな怪物や人外の化け物」
魔女「私が仕事を紹介して、彼らが実行し、達成したら報酬を払う…まあどこにでもあるビジネスよ」
屍男「...」
屍男「…はぁ、一体何なんだ」
57: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:18:15.65 ID:AFSOJReDo
屍男「いきなり目が覚めたら記憶を失っていて、娼婦のような恰好をした女に自分は死人だと告げられ、そいつの店に住むことになり...」
屍男「あげくの果てにはその女が実は殺し屋の元締めだと?そろそろ頭がパンクしそうだ…この世界はフィクションで出来ているのか」
屍男「…その鍋は何だ?まさか死体を溶かすとでも言うんじゃないだろうな」
魔女「おっ、ご名答」
魔女「ふんっ」グッ
グイッ
ドボンッ…
ジュッ…グツグツッ...グツグツッ…
魔女「この液体は私が作った特別製、人間の細胞を一つも残さずにこの世から消滅させる」
魔女「死体っていう証拠がないと殺人は立証できないって、かの有名な殺人犯も言ってたでしょ?」
屍男「あげくの果てにはその女が実は殺し屋の元締めだと?そろそろ頭がパンクしそうだ…この世界はフィクションで出来ているのか」
屍男「…その鍋は何だ?まさか死体を溶かすとでも言うんじゃないだろうな」
魔女「おっ、ご名答」
魔女「ふんっ」グッ
グイッ
ドボンッ…
ジュッ…グツグツッ...グツグツッ…
魔女「この液体は私が作った特別製、人間の細胞を一つも残さずにこの世から消滅させる」
魔女「死体っていう証拠がないと殺人は立証できないって、かの有名な殺人犯も言ってたでしょ?」
58: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:19:14.20 ID:AFSOJReDo
屍男「…」
魔女「で、どうするの?」
魔女「これが死体を運んでたワケ、私の正体は復讐代行兼殺し屋」
魔女「いくら悪人を殺してると言ってもそれが善だとは思っていない。結局は全部お金のため、我ながら小悪党やってると思うわ」
魔女「アナタはこの事実を知って…どう行動をするのかしら?」
屍男「...」チラッ
死体『』
屍男「…」ゴクリ
ズキッ
魔女「で、どうするの?」
魔女「これが死体を運んでたワケ、私の正体は復讐代行兼殺し屋」
魔女「いくら悪人を殺してると言ってもそれが善だとは思っていない。結局は全部お金のため、我ながら小悪党やってると思うわ」
魔女「アナタはこの事実を知って…どう行動をするのかしら?」
屍男「...」チラッ
死体『』
屍男「…」ゴクリ
ズキッ
59: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:20:08.05 ID:AFSOJReDo
屍男「…ッ」グッ
屍男(なんだ?頭が...)
魔女「どうしたの?頭を押さえて」
屍男「…何でもない」
屍男「俺がお前達の所業を知ってどうするかだったな…俺は」
屍男「…特に何もしない。好きにしたらいい」
魔女「えっ」
屍男(なんだ?頭が...)
魔女「どうしたの?頭を押さえて」
屍男「…何でもない」
屍男「俺がお前達の所業を知ってどうするかだったな…俺は」
屍男「…特に何もしない。好きにしたらいい」
魔女「えっ」
60: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:20:55.67 ID:AFSOJReDo
屍男「…なんだ、その反応は」
魔女「いや…ちょっとゾンビくんのキャラと違うなと思って」
魔女「私の目だと、こんな汚れ仕事は嫌いなタイプだと思ってたから」
屍男「...勝手に俺を判断するな。俺は…」
屍男「この世界には消えていい存在もいると思っただけだ。殺してるのは市民に危害を加えてるやつらなんだろ?」
屍男「なら…そんな屑は死んだ方がいい。貴様達が見境なく人を襲っているというなら話は違ってくるがな」
魔女「…ふーん」
魔女「いや…ちょっとゾンビくんのキャラと違うなと思って」
魔女「私の目だと、こんな汚れ仕事は嫌いなタイプだと思ってたから」
屍男「...勝手に俺を判断するな。俺は…」
屍男「この世界には消えていい存在もいると思っただけだ。殺してるのは市民に危害を加えてるやつらなんだろ?」
屍男「なら…そんな屑は死んだ方がいい。貴様達が見境なく人を襲っているというなら話は違ってくるがな」
魔女「…ふーん」
61: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:21:46.04 ID:AFSOJReDo
魔女「私もそうだけど、どうやらアナタも元から相当ぶっ飛んだ思想を持っているようね。記憶がないのもそこから来ているのかも」
魔女「いや、これはどちらかと言うとアッチ系の…」
屍男「…?どういうことだ?」
魔女「ううん、何でもない。さすがに考え過ぎか…とにかく、アナタが敵に回らなくて良かったわ」
魔女「せっかく仲良くなってきたのにもう殺し合うなんて…勿体ないですもんね」ニコッ
屍男(…食えない女だ)
魔女「いや、これはどちらかと言うとアッチ系の…」
屍男「…?どういうことだ?」
魔女「ううん、何でもない。さすがに考え過ぎか…とにかく、アナタが敵に回らなくて良かったわ」
魔女「せっかく仲良くなってきたのにもう殺し合うなんて…勿体ないですもんね」ニコッ
屍男(…食えない女だ)
65: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:51:50.74 ID:+2aT8+rko
…………………………………………………………
……………………………………………
屍男「…」キュッキュッ
屍男(ここの店の秘密を知ってから数日が過ぎた。あれから特にこれといった変化はない)
屍男(しかしよく死体の山の真上で商売なんて出来るものだ。案の定売れてないがな)
屍男「…よし、ここは綺麗になったな」キュッ
スゥッ…
屍男「…ん?」
屍男(…客か、珍しいな。しかもまだ子供か)
……………………………………………
屍男「…」キュッキュッ
屍男(ここの店の秘密を知ってから数日が過ぎた。あれから特にこれといった変化はない)
屍男(しかしよく死体の山の真上で商売なんて出来るものだ。案の定売れてないがな)
屍男「…よし、ここは綺麗になったな」キュッ
スゥッ…
屍男「…ん?」
屍男(…客か、珍しいな。しかもまだ子供か)
66: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:52:55.75 ID:+2aT8+rko
「...」ペラペラ
屍男(...背丈を見るにまだ小学生、いや中学生か?読んでる本のタイトルは…『呪い大百科』)
屍男(…まあここに来るやつが全員化け物ってわけでもないからな。呪いだの占いだのに興味を持つ年齢だろうし、そこまで不思議でもないか)
「…これでいっか」スッ
屍男(…ちょっと待て、なぜ本をもって出口に向かう?まだ会計が終わってないぞ)
屍男(これは…まさか万引きというやつか)
屍男(…さすがに止めた方がいいか。店番も頼まれてるしな)
屍男(...背丈を見るにまだ小学生、いや中学生か?読んでる本のタイトルは…『呪い大百科』)
屍男(…まあここに来るやつが全員化け物ってわけでもないからな。呪いだの占いだのに興味を持つ年齢だろうし、そこまで不思議でもないか)
「…これでいっか」スッ
屍男(…ちょっと待て、なぜ本をもって出口に向かう?まだ会計が終わってないぞ)
屍男(これは…まさか万引きというやつか)
屍男(…さすがに止めた方がいいか。店番も頼まれてるしな)
67: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:54:08.78 ID:+2aT8+rko
屍男「おい、待て」
「...」
屍男「売り物を持ってどこに行くつもりだ?金を払うのが先だろう」
「…ハァ?お前、誰に向かって口聞いて…」
吸血娘「...っ!」ピクッ
屍男(…やはり中学生くらいか。平日の昼間からブラブラしているのは学校をサボっているからか)
屍男(少し、他の子供と違うように見えるが…まあ見るからに不良っぽいからな。そのせいか)
「...」
屍男「売り物を持ってどこに行くつもりだ?金を払うのが先だろう」
「…ハァ?お前、誰に向かって口聞いて…」
吸血娘「...っ!」ピクッ
屍男(…やはり中学生くらいか。平日の昼間からブラブラしているのは学校をサボっているからか)
屍男(少し、他の子供と違うように見えるが…まあ見るからに不良っぽいからな。そのせいか)
68: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:55:31.37 ID:+2aT8+rko
吸血娘「...」
屍男「…どうした、ジッと固まって」
屍男「何も問答無用で警察に突き出そうとは思ってない。金さえ払えばこちらも事を荒立たせるつもりはないからな」
吸血娘「…ハゲ」ボソッ
屍男「…」
屍男(…失礼な子供だな。最近の若いのはみんなこうなのか)
屍男「いいから代金を払え。今の発言も含め、今回は見なかったことにしてやる」
屍男「…どうした、ジッと固まって」
屍男「何も問答無用で警察に突き出そうとは思ってない。金さえ払えばこちらも事を荒立たせるつもりはないからな」
吸血娘「…ハゲ」ボソッ
屍男「…」
屍男(…失礼な子供だな。最近の若いのはみんなこうなのか)
屍男「いいから代金を払え。今の発言も含め、今回は見なかったことにしてやる」
69: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:56:27.99 ID:+2aT8+rko
吸血娘「ハァ?何でただの死体が私に命令してるの?私を誰だと思っているんだ」
屍男「」ピクッ
屍男(こいつ…まさか)
屍男「…俺が死体だとわかるのか?」
吸血娘「んなもん見れば誰だって分かるわ。だって臭いし、目が死んでるし、おまけに毛根も死んでるし」
吸血娘「というかお前誰?あのビッチに雇われたの?」
屍男(…あの女のことも知っている。やはりこの子供も…)
屍男「」ピクッ
屍男(こいつ…まさか)
屍男「…俺が死体だとわかるのか?」
吸血娘「んなもん見れば誰だって分かるわ。だって臭いし、目が死んでるし、おまけに毛根も死んでるし」
吸血娘「というかお前誰?あのビッチに雇われたの?」
屍男(…あの女のことも知っている。やはりこの子供も…)
70: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:58:02.52 ID:+2aT8+rko
屍男「…あぁ、そうだ。ワケあってここに住まわせてもらっている」
吸血娘「セフr」
屍男「違う」
吸血娘「反応はっや、まあいいや。そっか…そういうことか」
吸血娘「じゃあ私は急いでるから、またなハゲ」
屍男「おい待て、金を払えと言ってるだろうが」
吸血娘「あいつにツケといて、まあ返す気なんてないけど~」
吸血娘「んじゃそういうことで~」フリフリ
屍男「…なんなんだあいつは」
吸血娘「セフr」
屍男「違う」
吸血娘「反応はっや、まあいいや。そっか…そういうことか」
吸血娘「じゃあ私は急いでるから、またなハゲ」
屍男「おい待て、金を払えと言ってるだろうが」
吸血娘「あいつにツケといて、まあ返す気なんてないけど~」
吸血娘「んじゃそういうことで~」フリフリ
屍男「…なんなんだあいつは」
71: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:59:10.31 ID:+2aT8+rko
屍男「ということがあったんだが」
魔女「あぁ、ドラキュラちゃんね。あの子なら別にいいわ。うちのお得意様だし」
屍男「…ドラキュラ?」
魔女「正確に言うとヴァンパイア。人の血を啜る半不老不死の世界で最も有名な怪物…あ、怪物と言ってもアナタと違って死んでないわよ?あの子は先天性の方」
魔女「簡単に言うと人外ってやつね。こっちの世界なら、アナタみたいな死人よりこのタイプの方が断然多いわ」
屍男「…ヴァンパイアか。さすがに慣れたのかもうそこまで驚かなくなったな」
屍男「あの子供も人を殺しているのか?」
魔女「あぁ、ドラキュラちゃんね。あの子なら別にいいわ。うちのお得意様だし」
屍男「…ドラキュラ?」
魔女「正確に言うとヴァンパイア。人の血を啜る半不老不死の世界で最も有名な怪物…あ、怪物と言ってもアナタと違って死んでないわよ?あの子は先天性の方」
魔女「簡単に言うと人外ってやつね。こっちの世界なら、アナタみたいな死人よりこのタイプの方が断然多いわ」
屍男「…ヴァンパイアか。さすがに慣れたのかもうそこまで驚かなくなったな」
屍男「あの子供も人を殺しているのか?」
72: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:01:01.95 ID:+2aT8+rko
魔女「見た目は子供だけど、実年齢はそこまでじゃないわよ。もうお酒は飲める年頃だし」
魔女「仕事に関してはよくやってくれてるわ。暗殺って分野だとあの子の右に出る者はいないってくらいにね」
屍男「…そうか」
魔女「もしかして、あの子のことが気になってるの?ゾンビくんて意外とストライクゾーン広いのね」
屍男「…誤解を招く言い方はやめろ。俺はただ、ああいう子供が手を汚していることが気に入らないだけだ」
魔女「だからあれでも成人だって、まあそこら辺は種族の違いってやつだと思うけどね」
魔女「仕事に関してはよくやってくれてるわ。暗殺って分野だとあの子の右に出る者はいないってくらいにね」
屍男「…そうか」
魔女「もしかして、あの子のことが気になってるの?ゾンビくんて意外とストライクゾーン広いのね」
屍男「…誤解を招く言い方はやめろ。俺はただ、ああいう子供が手を汚していることが気に入らないだけだ」
魔女「だからあれでも成人だって、まあそこら辺は種族の違いってやつだと思うけどね」
73: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:03:50.66 ID:+2aT8+rko
魔女「ヴァンパイアから見たら、結局は人間は食糧だってこと。人間は同種を殺すことに抵抗があるけど、あの子にはそれがないから割り切れるんでしょうね」
魔女「人間が家畜用の豚や鶏を殺すのと同じでね。目の前から死を極力まで排除している現代人からしたら残酷に思えるでしょうけど」
屍男「…」
魔女「価値観の違いってやつよ。じゃあ私はお風呂入って髪と死体をとかしてくるから食器洗っといてちょうだい」スタスタ
屍男(…価値観の違いか)
屍男(言葉で片付けるのは簡単だが、やはり異常だな…この世界は)
屍男(…ただ、少しだけ理解出来たような気がする)
魔女「人間が家畜用の豚や鶏を殺すのと同じでね。目の前から死を極力まで排除している現代人からしたら残酷に思えるでしょうけど」
屍男「…」
魔女「価値観の違いってやつよ。じゃあ私はお風呂入って髪と死体をとかしてくるから食器洗っといてちょうだい」スタスタ
屍男(…価値観の違いか)
屍男(言葉で片付けるのは簡単だが、やはり異常だな…この世界は)
屍男(…ただ、少しだけ理解出来たような気がする)
74: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:04:37.71 ID:+2aT8+rko
▢▢▢▢ 翌日 ▢▢▢▢
吸血娘「でなーその男が私に言ったんだよ」
吸血娘「『け、警察!誰か助けてぇ!!!』ってね!」
吸血娘「自分は4人も殺しておいて警察に女の子みたいな声出して助け求めてやんの!身の程を知れってんの!アッハハハハハハハハハァ!!!!!」バンバン
屍男「…」
吸血娘「まあすぐぶっ殺してやったけどね。まったくああいうクズ共が相手だと何の迷いもなく殺れるから楽だわ」
屍男「…おい」
吸血娘「でなーその男が私に言ったんだよ」
吸血娘「『け、警察!誰か助けてぇ!!!』ってね!」
吸血娘「自分は4人も殺しておいて警察に女の子みたいな声出して助け求めてやんの!身の程を知れってんの!アッハハハハハハハハハァ!!!!!」バンバン
屍男「…」
吸血娘「まあすぐぶっ殺してやったけどね。まったくああいうクズ共が相手だと何の迷いもなく殺れるから楽だわ」
屍男「…おい」
75: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:05:37.72 ID:+2aT8+rko
吸血娘「ん?なに?」
屍男「…なぜ今日もここにいる。そしてなぜ三時間もそこでくっちゃべっているんだ」
吸血娘「何でって、別に理由なんてないけど?ただの暇潰しだし」
屍男「…はっきり言うぞ。仕事の邪魔だ、帰ってくれ」
吸血娘「仕事って言ってもどうせ本の整理とか、掃除くらいしかやることないじゃん。せっかく退屈そうな顔してたから面白い話してやったのに」
屍男「…誰も頼んでない」
吸血娘「うるせぇ!このハゲ!お堅いのはこのハゲ頭だけにしとけ!」バシーン
屍男「...」ヒリヒリ
吸血娘「あー…気持ちいい!一度このハゲ頭を平手打ちしたかったんだよね!やっぱり殴り心地最高だわ!」バシバシ
屍男「…なぜ今日もここにいる。そしてなぜ三時間もそこでくっちゃべっているんだ」
吸血娘「何でって、別に理由なんてないけど?ただの暇潰しだし」
屍男「…はっきり言うぞ。仕事の邪魔だ、帰ってくれ」
吸血娘「仕事って言ってもどうせ本の整理とか、掃除くらいしかやることないじゃん。せっかく退屈そうな顔してたから面白い話してやったのに」
屍男「…誰も頼んでない」
吸血娘「うるせぇ!このハゲ!お堅いのはこのハゲ頭だけにしとけ!」バシーン
屍男「...」ヒリヒリ
吸血娘「あー…気持ちいい!一度このハゲ頭を平手打ちしたかったんだよね!やっぱり殴り心地最高だわ!」バシバシ
76: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:07:02.91 ID:+2aT8+rko
屍男「...」イライラ
屍男(な、なんなんだこいつは…突然来たと思ったら、つまらん話と頭の話を延々と...)
屍男(さすがに腹が立ってきたぞ...グッ、押さえろ。相手はまだ精神的に未熟だ…我慢しなくては)
吸血娘「あっ、おいハゲ、ちょっとそこの本取って」
屍男「…どれだ」
吸血娘「そこの手前のやつ、表紙が黒いの」
屍男「これか?」スッ
ネチャッ
屍男(な、なんなんだこいつは…突然来たと思ったら、つまらん話と頭の話を延々と...)
屍男(さすがに腹が立ってきたぞ...グッ、押さえろ。相手はまだ精神的に未熟だ…我慢しなくては)
吸血娘「あっ、おいハゲ、ちょっとそこの本取って」
屍男「…どれだ」
吸血娘「そこの手前のやつ、表紙が黒いの」
屍男「これか?」スッ
ネチャッ
77: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:07:50.10 ID:+2aT8+rko
屍男「…なんだ?何か手に…」
吸血娘「アッハハハハハハハハハァ!!!!引っかかってやんの!その本の表紙の塗料はぐちゃぐちゃに溶けてて触るとくっ付くんだよ!」
吸血娘「しかもそれめっちゃくさいぞ…一度風呂に入っても取れないくらいに…まあ元から臭いし変わんないか!ぷぷっ」プププ
屍男「...」クンクン
屍男「」ブチッ
屍男「…いい加減にしろ。大人をからかうな」
吸血娘「アん?もしかして子ども扱いしてる?これでも二十歳なんですけど
吸血娘「アッハハハハハハハハハァ!!!!引っかかってやんの!その本の表紙の塗料はぐちゃぐちゃに溶けてて触るとくっ付くんだよ!」
吸血娘「しかもそれめっちゃくさいぞ…一度風呂に入っても取れないくらいに…まあ元から臭いし変わんないか!ぷぷっ」プププ
屍男「...」クンクン
屍男「」ブチッ
屍男「…いい加減にしろ。大人をからかうな」
吸血娘「アん?もしかして子ども扱いしてる?これでも二十歳なんですけど
78: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:09:00.79 ID:+2aT8+rko
屍男「ならもっと年齢に相応しい振る舞いをしろ。いつまでガキみたいな真似をしてるんだ」
吸血娘「だってヴァンパイアの歳だと二十歳なんて人生の十分の一にも満たしてないし、人間換算だとまだ8歳くらいだし」
屍男「そういう問題じゃないだろうが、同年代の人間を見てみろ、お前よりはずっと大人だぞ」
吸血娘「…んなこと言われても同じ歳の人間なんて話したことすらないし」
屍男「…?学校に行ったことはないのか」
吸血娘「ヴァンパイアが学校になんて行けると思う?豚小屋にオオカミを放り込むようなもんだろハゲ。少しはその何にもない頭働かせろ」
吸血娘「だってヴァンパイアの歳だと二十歳なんて人生の十分の一にも満たしてないし、人間換算だとまだ8歳くらいだし」
屍男「そういう問題じゃないだろうが、同年代の人間を見てみろ、お前よりはずっと大人だぞ」
吸血娘「…んなこと言われても同じ歳の人間なんて話したことすらないし」
屍男「…?学校に行ったことはないのか」
吸血娘「ヴァンパイアが学校になんて行けると思う?豚小屋にオオカミを放り込むようなもんだろハゲ。少しはその何にもない頭働かせろ」
79: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:09:49.43 ID:+2aT8+rko
屍男「…お前、もしかして」
屍男「寂しい…のか?」
吸血娘「は、はぁ!?ち、ちげーし!全然そんなんじゃねーし!!」
吸血娘「ば、ばーか!あーほ!もう帰るわハゲ!頭洗って出直して来い!」ダッ
屍男「…」
屍男「といううことがあったんだが」
魔女「ほう」
屍男「寂しい…のか?」
吸血娘「は、はぁ!?ち、ちげーし!全然そんなんじゃねーし!!」
吸血娘「ば、ばーか!あーほ!もう帰るわハゲ!頭洗って出直して来い!」ダッ
屍男「…」
屍男「といううことがあったんだが」
魔女「ほう」
80: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:11:32.57 ID:+2aT8+rko
魔女「あのドラキュラちゃんがねぇ…結構可愛いところあるんじゃないの」
魔女「確かに、あの子は自分と近い歳の人間との繋がりはなかったろうしね。周りは自分と同じモンスターか、獲物しかいなかっただろうし」
屍男「…あいつは今まで一人だったのか?」
魔女「...」
魔女「親は居たけど、あんまり仲は良くなったみたい」
魔女「ヴァンパイアは夜型の生活だから、人との繋がりは今まで仕事ぐらいでしかなかったのかも。後は同族の集会くらいか」
魔女「そもそもそのヴァンパイア自体が、今では少数の血統しか残ってないからねぇ…二、三世紀前はもっと数が多かったらしいけど」
魔女「ま、仕方ないか。彼女と同年代と言ったら、血液に一番脂がのってる時期だもん。仲良くなる前に出会ったら本能で襲っちゃうまであるし」
魔女「確かに、あの子は自分と近い歳の人間との繋がりはなかったろうしね。周りは自分と同じモンスターか、獲物しかいなかっただろうし」
屍男「…あいつは今まで一人だったのか?」
魔女「...」
魔女「親は居たけど、あんまり仲は良くなったみたい」
魔女「ヴァンパイアは夜型の生活だから、人との繋がりは今まで仕事ぐらいでしかなかったのかも。後は同族の集会くらいか」
魔女「そもそもそのヴァンパイア自体が、今では少数の血統しか残ってないからねぇ…二、三世紀前はもっと数が多かったらしいけど」
魔女「ま、仕方ないか。彼女と同年代と言ったら、血液に一番脂がのってる時期だもん。仲良くなる前に出会ったら本能で襲っちゃうまであるし」
81: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:13:23.42 ID:+2aT8+rko
魔女「基本的に普通の人間には手を出さないから、自分から距離を取ってるところもあるんだろうね」
屍男「…そんな奴がなぜ俺にちょっかいをかけてくるんだ」
魔女「さあ?ゾンビくんって頭以外は男前だし、もしかしたら惚れられてるのかもね」
屍男「......」
魔女「冗談よ、本気にしないで」
魔女「まあ考えられる可能性としては…どこか同じ雰囲気を感じたのかもね」
屍男「…同じ雰囲気?俺とあいつがか?」
魔女「―――――」
魔女「そうね、二人は結構似てると思うわよ」
屍男「…そんな奴がなぜ俺にちょっかいをかけてくるんだ」
魔女「さあ?ゾンビくんって頭以外は男前だし、もしかしたら惚れられてるのかもね」
屍男「......」
魔女「冗談よ、本気にしないで」
魔女「まあ考えられる可能性としては…どこか同じ雰囲気を感じたのかもね」
屍男「…同じ雰囲気?俺とあいつがか?」
魔女「―――――」
魔女「そうね、二人は結構似てると思うわよ」
82: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:14:32.83 ID:+2aT8+rko
屍男「…」
屍男「…そうか、あいつは今まで孤独に生きてきたんだな」
屍男「記憶を失い、何も寄り添うものがない今の俺と…確かに似ているかもしれん」
魔女「えっ?アナタには私がいるじゃない」
屍男「…お前には貸しがあるし、恩も感じているが、深い仲になろうとは思ってないしなるつもりもない」
屍男「はっきり言うと、なるべく関わりたくない」
魔女「酷くない?」
屍男「…そうか、あいつは今まで孤独に生きてきたんだな」
屍男「記憶を失い、何も寄り添うものがない今の俺と…確かに似ているかもしれん」
魔女「えっ?アナタには私がいるじゃない」
屍男「…お前には貸しがあるし、恩も感じているが、深い仲になろうとは思ってないしなるつもりもない」
屍男「はっきり言うと、なるべく関わりたくない」
魔女「酷くない?」
90: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:02:06.34 ID:YQmGKLBxo
…………………………………………………
…………………………………………
吸血娘「私がぶっ殺したやつの中で一番強かったのは半魚人野郎だったなぁ」
吸血娘「あの時は初めて人間以外を相手にしたし、マジで死ぬかと思ったわ」
吸血娘「ま、最後は喉笛に噛みついて血吸ってやったけどね。味は予想通り生臭かった」
屍男「…そうか」
屍男(あれから毎日、こいつは店に来るようになった)
屍男(話す内容はやれ誰かをぶっ殺しただの、あいつは手強かっただの…低俗な話ばかりだが、聞いててそれなりに退屈はしない)
屍男(一人で過ごすより、二人の方が気が楽になるんだろう。こいつも…俺も)
…………………………………………
吸血娘「私がぶっ殺したやつの中で一番強かったのは半魚人野郎だったなぁ」
吸血娘「あの時は初めて人間以外を相手にしたし、マジで死ぬかと思ったわ」
吸血娘「ま、最後は喉笛に噛みついて血吸ってやったけどね。味は予想通り生臭かった」
屍男「…そうか」
屍男(あれから毎日、こいつは店に来るようになった)
屍男(話す内容はやれ誰かをぶっ殺しただの、あいつは手強かっただの…低俗な話ばかりだが、聞いててそれなりに退屈はしない)
屍男(一人で過ごすより、二人の方が気が楽になるんだろう。こいつも…俺も)
91: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:03:08.16 ID:YQmGKLBxo
屍男「その半魚人とやらは比喩か何かか?まさか本物じゃあるまいな」
吸血娘「いんや本物だけど、そりゃヴァンパイアがいるなら半魚人がいてもおかしくないだろ。常識的に」
吸血娘「ほかにも狼男とか、翼が生えてるやつとか触手がうねうねしてるやつもいるぞ」
屍男「…それを世間では非常識と言うんだがな」
屍男「殺し屋というのは人だけではなく、そんな輩も相手にするんだな。気苦労が絶えんだろう」
吸血娘「依頼するのは人間だしね。たまに人殺しの中にもそういうやつらが混じってることもあるよ」
吸血娘「でも普通の人間相手にするのとあんま変わらんけどね。私ヴァンパイアだし、最上級の魔族だし」ドヤァ
吸血娘「いんや本物だけど、そりゃヴァンパイアがいるなら半魚人がいてもおかしくないだろ。常識的に」
吸血娘「ほかにも狼男とか、翼が生えてるやつとか触手がうねうねしてるやつもいるぞ」
屍男「…それを世間では非常識と言うんだがな」
屍男「殺し屋というのは人だけではなく、そんな輩も相手にするんだな。気苦労が絶えんだろう」
吸血娘「依頼するのは人間だしね。たまに人殺しの中にもそういうやつらが混じってることもあるよ」
吸血娘「でも普通の人間相手にするのとあんま変わらんけどね。私ヴァンパイアだし、最上級の魔族だし」ドヤァ
92: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:04:05.22 ID:YQmGKLBxo
屍男「…同じ人外相手でも平気なのか。仲間みたいなものだと思うんだが」
吸血娘「ハァ?全然違うでしょ。あんな気持ち悪いやつらと一緒にしないでよ」
吸血娘「同じ人間じゃないってだけで、種族も思想も全然違うわ。そんなの気にしてたらゲロ吐くわ」
屍男「…そういうものか」
カランカラン♪
魔女「帰ったわよ…って、ドラキュラちゃん今日もいるの」
吸血娘「ゲッ」
吸血娘「ハァ?全然違うでしょ。あんな気持ち悪いやつらと一緒にしないでよ」
吸血娘「同じ人間じゃないってだけで、種族も思想も全然違うわ。そんなの気にしてたらゲロ吐くわ」
屍男「…そういうものか」
カランカラン♪
魔女「帰ったわよ…って、ドラキュラちゃん今日もいるの」
吸血娘「ゲッ」
93: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:05:13.02 ID:YQmGKLBxo
魔女「ここ最近毎日じゃない?そんなにこの店が気に入ったのなら、何か買っても罰は当たらないと思うけど」
吸血娘「誰がお前に金なんて落とすか!ファッキュー!」クイッ
魔女「あらお下品」
吸血娘「んじゃ、あのビッチも来たことだしもう帰るわ。また明日なハゲ」
屍男「…あぁ」
魔女「もう帰っちゃうの?夕飯ぐらいはご馳走してあげるのに」
吸血娘「誰がお前の作った飯なんて食えるか!絶対違法な薬品とか入れてるわ!」ダッ
魔女「失礼しちゃうわね。たまにしか使ってないわよ」
屍男(…ん?)
吸血娘「誰がお前に金なんて落とすか!ファッキュー!」クイッ
魔女「あらお下品」
吸血娘「んじゃ、あのビッチも来たことだしもう帰るわ。また明日なハゲ」
屍男「…あぁ」
魔女「もう帰っちゃうの?夕飯ぐらいはご馳走してあげるのに」
吸血娘「誰がお前の作った飯なんて食えるか!絶対違法な薬品とか入れてるわ!」ダッ
魔女「失礼しちゃうわね。たまにしか使ってないわよ」
屍男(…ん?)
94: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:05:54.46 ID:YQmGKLBxo
魔女「さ、ドラキュラちゃんも帰ったことだし少し遅いけどディナーにしましょうか。今日は私が作るわ」
屍男「…」
屍男「いや、今日は俺が作る」
魔女「え?どうして?交代制って決めたのに」
屍男「当分、飯当番は俺がする。お前は休んでろ」スタスタ
魔女「えー…まあ休めるのはいいけどさ、正直ゾンビくんのご飯ってあんまり美味しくな」
屍男「絶対に俺が作る」
屍男「…」
屍男「いや、今日は俺が作る」
魔女「え?どうして?交代制って決めたのに」
屍男「当分、飯当番は俺がする。お前は休んでろ」スタスタ
魔女「えー…まあ休めるのはいいけどさ、正直ゾンビくんのご飯ってあんまり美味しくな」
屍男「絶対に俺が作る」
95: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:06:46.51 ID:YQmGKLBxo
…………………………………………………………
………………………………………
吸血娘「ハゲ、お前死んでからどれくらい経った?」
屍男「…急にどうした」
吸血娘「別に、気になっただけ」
屍男「ひと月と少しだな。そろそろこの生活にも慣れてきたところだ」
吸血娘「ふーん...」
吸血娘「なぁ、そろそろ生前の自分の手掛かりとか探さないの?ずっとこの埃くさい店の掃除ばっかしてるけど」
吸血娘「普通だったら最優先に自分の正体を探すと思うんだけど、そんなゆっくりしてて大丈夫なわけ?」
屍男「...」
………………………………………
吸血娘「ハゲ、お前死んでからどれくらい経った?」
屍男「…急にどうした」
吸血娘「別に、気になっただけ」
屍男「ひと月と少しだな。そろそろこの生活にも慣れてきたところだ」
吸血娘「ふーん...」
吸血娘「なぁ、そろそろ生前の自分の手掛かりとか探さないの?ずっとこの埃くさい店の掃除ばっかしてるけど」
吸血娘「普通だったら最優先に自分の正体を探すと思うんだけど、そんなゆっくりしてて大丈夫なわけ?」
屍男「...」
96: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:08:23.82 ID:YQmGKLBxo
屍男「…最初の一週間は探した…が、何も有益な情報はなかった」
屍男「恐らく、この町は俺との関わりがほぼないのだと判断した。これ以上探すのは時間の無駄だ」
屍男「かと言って、他の地方に行くわけにもいかん…この店を離れたら俺はただの住所不定の無職だからな。そこまでする余裕はない」
屍男「だから今は現状維持だ…ここを離れて生活が安定したら旅でもして見つけるつもりだ」
吸血娘「…なんかお前って変だよな。まるで自分から逃げてるみたいだぞ」
屍男「…そうか?普通だと思うが」
吸血娘「私だったら真っ先に飛び回る。テレビのリモコンをなくしたのならともかく、自分の記憶だもん。そんな悠長な考え方はできない」
屍男「恐らく、この町は俺との関わりがほぼないのだと判断した。これ以上探すのは時間の無駄だ」
屍男「かと言って、他の地方に行くわけにもいかん…この店を離れたら俺はただの住所不定の無職だからな。そこまでする余裕はない」
屍男「だから今は現状維持だ…ここを離れて生活が安定したら旅でもして見つけるつもりだ」
吸血娘「…なんかお前って変だよな。まるで自分から逃げてるみたいだぞ」
屍男「…そうか?普通だと思うが」
吸血娘「私だったら真っ先に飛び回る。テレビのリモコンをなくしたのならともかく、自分の記憶だもん。そんな悠長な考え方はできない」
97: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:09:22.56 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「自分の過去とか気にならないの?親とか、友達とか」
屍男「…さあな、確かに気にはなるが、そこまでの執着はないな」
吸血娘「じゃあ自分を殺したやつのことは?確か路地裏のゴミ捨て場で目が覚めたんでしょ?」
吸血娘「自殺するにしては明らかに変な場所だし、殺されて誰かに捨てられた以外に考えられないじゃん」
屍男「...」
屍男「…それもあまり興味はないな。殺されたということは、それ相応の理由があったんだろう」
屍男「わざわざ犯人探しをするつもりはない」
屍男「…さあな、確かに気にはなるが、そこまでの執着はないな」
吸血娘「じゃあ自分を殺したやつのことは?確か路地裏のゴミ捨て場で目が覚めたんでしょ?」
吸血娘「自殺するにしては明らかに変な場所だし、殺されて誰かに捨てられた以外に考えられないじゃん」
屍男「...」
屍男「…それもあまり興味はないな。殺されたということは、それ相応の理由があったんだろう」
屍男「わざわざ犯人探しをするつもりはない」
98: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:10:26.77 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「…」
吸血娘「そう、私だったら犯人を見つけ出して絶対殺すと思う。復讐としてね」
屍男「…それが正常だろうな」
吸血娘「はぁ~~~とんだフニャチン野郎だな。どこまで無頓着なんだか」
屍男「…そういう言葉は使うな。下品だぞ」
吸血娘「…あっ、そういえばさ、さっき生活が安定したら離れるって言ってたけど、もしかしてここ以外に住居が見つかったらそっちに移るつもりなの?」
屍男「…あぁ、いつまでも一人暮らしの女と一緒というわけにもいかんからな。いや、その他の死体もいるか」
屍男「あいつから僅かだが、給料も貰っている。まとまった額が貯まったら出て行くつもりだ」
吸血娘「そう、私だったら犯人を見つけ出して絶対殺すと思う。復讐としてね」
屍男「…それが正常だろうな」
吸血娘「はぁ~~~とんだフニャチン野郎だな。どこまで無頓着なんだか」
屍男「…そういう言葉は使うな。下品だぞ」
吸血娘「…あっ、そういえばさ、さっき生活が安定したら離れるって言ってたけど、もしかしてここ以外に住居が見つかったらそっちに移るつもりなの?」
屍男「…あぁ、いつまでも一人暮らしの女と一緒というわけにもいかんからな。いや、その他の死体もいるか」
屍男「あいつから僅かだが、給料も貰っている。まとまった額が貯まったら出て行くつもりだ」
99: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:11:44.17 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「へぇ~…ふ~ん…」
吸血娘「…よし、決めた。ハゲ、今日はあのビッチ何時に帰ってくる?」
屍男「...?今日は遅くなるとか何とか言ってたが、それがどうした」
吸血娘「そ、じゃあ電話するか」ピッ
プルルルルルル…プルルルルルル…
吸血娘『あ、もしもし?私だけど』
吸血娘『今日からこのハゲ、私の家で引き取るから。ってことでよろしくぅ!』
屍男「!?」
屍男「ちょっと待て、何を言って…」
吸血娘「…よし、決めた。ハゲ、今日はあのビッチ何時に帰ってくる?」
屍男「...?今日は遅くなるとか何とか言ってたが、それがどうした」
吸血娘「そ、じゃあ電話するか」ピッ
プルルルルルル…プルルルルルル…
吸血娘『あ、もしもし?私だけど』
吸血娘『今日からこのハゲ、私の家で引き取るから。ってことでよろしくぅ!』
屍男「!?」
屍男「ちょっと待て、何を言って…」
100: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:12:48.82 ID:YQmGKLBxo
吸血娘『は?急に言われても困る?うるさいなぁ…ほら、買い取り代を口座に入金したから確認して、これじゃ足りない?』
吸血娘「―――ん、変われって」ポイッ
屍男「おい、携帯を投げるな。危ないだろ」グッ
『もしもし?ゾンビくん?話はさっき聞いてたと思うけど、そういうことで今日からドラキュラちゃんと暮らすことになったから』
屍男『はぁっ!?』
屍男『おい、お前達は俺をペットか何かと勘違いしているのか?本人の承諾もなしに勝手に話を進めるな』
吸血娘「―――ん、変われって」ポイッ
屍男「おい、携帯を投げるな。危ないだろ」グッ
『もしもし?ゾンビくん?話はさっき聞いてたと思うけど、そういうことで今日からドラキュラちゃんと暮らすことになったから』
屍男『はぁっ!?』
屍男『おい、お前達は俺をペットか何かと勘違いしているのか?本人の承諾もなしに勝手に話を進めるな』
101: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:13:48.64 ID:YQmGKLBxo
『でもゾンビくんって居候でしょ?とやかく言える立場じゃないと思うんだけど』
屍男『…確かにそうだが、それとこれとは話が別だ。簡単に人を売買するな、こっちの事情も考えろ』
『え?もしかしてドラキュラちゃんのところに行くのが嫌なわけ?そんなに私と離れたくな...』
プツッ
屍男「…この蛇が」ポイッ
吸血娘「お前も投げてるじゃん」グッ
吸血娘「さっ、ってことで今日から私の家に引っ越しな。荷物さっさとまとめといてよ」
屍男『…確かにそうだが、それとこれとは話が別だ。簡単に人を売買するな、こっちの事情も考えろ』
『え?もしかしてドラキュラちゃんのところに行くのが嫌なわけ?そんなに私と離れたくな...』
プツッ
屍男「…この蛇が」ポイッ
吸血娘「お前も投げてるじゃん」グッ
吸血娘「さっ、ってことで今日から私の家に引っ越しな。荷物さっさとまとめといてよ」
102: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:14:58.40 ID:YQmGKLBxo
屍男「...なぜ俺を買ったんだ」
屍男「あいつがふたつ返事でOKしたということは…決して少ない額ではなかったんだろう。そこまでする動機は何だ」
吸血娘「…別に、そろそろまともに使える眷属が欲しかっただけ。だってお前、こんな誰も来ないオンボロ店でも毎日掃除してるじゃん」
吸血娘「だから便利だと思ったの。まあハゲてるのはマイナスだけどな」
屍男「…こちらとしては、ここにいるよりは快適に過ごせると思うが…」
屍男「…その、いいのか。大の男を住まわせるなんて。家族もいると聞いたが」
屍男「あいつがふたつ返事でOKしたということは…決して少ない額ではなかったんだろう。そこまでする動機は何だ」
吸血娘「…別に、そろそろまともに使える眷属が欲しかっただけ。だってお前、こんな誰も来ないオンボロ店でも毎日掃除してるじゃん」
吸血娘「だから便利だと思ったの。まあハゲてるのはマイナスだけどな」
屍男「…こちらとしては、ここにいるよりは快適に過ごせると思うが…」
屍男「…その、いいのか。大の男を住まわせるなんて。家族もいると聞いたが」
103: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:15:34.49 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「…またあいつ余計なこと言いやがって」ボソッ
吸血娘「いいよ。今は私一人だけしかいないし。無駄に広いから部屋も困らないしね」
屍男「…しかしだな」
吸血娘「あぁもう!優柔不断だなこのハゲ!中途半端なのはその頭だけにしとけ!いいから荷物まとめろ!」ゲシッ
吸血娘「向こうに行ったら掃除やら洗濯やらもやってもらうんだからな!きびきび動け!」ゲシゲシッ
屍男「…分かった。分かったから蹴るな」
吸血娘「いいよ。今は私一人だけしかいないし。無駄に広いから部屋も困らないしね」
屍男「…しかしだな」
吸血娘「あぁもう!優柔不断だなこのハゲ!中途半端なのはその頭だけにしとけ!いいから荷物まとめろ!」ゲシッ
吸血娘「向こうに行ったら掃除やら洗濯やらもやってもらうんだからな!きびきび動け!」ゲシゲシッ
屍男「…分かった。分かったから蹴るな」
104: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:16:19.82 ID:YQmGKLBxo
……………………………………………………………………
.........................................................
吸血娘「ほら、ここが私の家」
屍男「...」
吸血娘「ん?どしたの。そんなまじまじと見て」
屍男「…いや、思ったより小さいと思ってな。ヴァンパイアというのはもっと貴族的なイメージを想像していた」
屍男「どんな豪邸か城が出てくるのかと思ったら…割と普通だった」
バシッ
吸血娘「今のご時世にそんな目立つもん建てられるかハゲ!このくらいでちょうどいいんだよ!」
吸血娘「というか見た目より中は結構広いんだからな!?いいからさっさと入れ!」ゲシッ
.........................................................
吸血娘「ほら、ここが私の家」
屍男「...」
吸血娘「ん?どしたの。そんなまじまじと見て」
屍男「…いや、思ったより小さいと思ってな。ヴァンパイアというのはもっと貴族的なイメージを想像していた」
屍男「どんな豪邸か城が出てくるのかと思ったら…割と普通だった」
バシッ
吸血娘「今のご時世にそんな目立つもん建てられるかハゲ!このくらいでちょうどいいんだよ!」
吸血娘「というか見た目より中は結構広いんだからな!?いいからさっさと入れ!」ゲシッ
105: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:17:39.09 ID:YQmGKLBxo
チリンチリン♪
屍男「…確かに、悪くはないな」キョロキョロ
吸血娘「ここに荷物置いていいから。トイレと風呂の場所も教えるからついてきて」スタスタ
屍男「ここの家に一人で暮らしているのか?だいぶ持て余しているように見えるが」
吸血娘「そう、一人暮らしするには大きいよ。でも狭いよりマシでしょ」
屍男「親は今はどこにいるんだ?ヴァンパイアと言ってもそこら辺は人間と変わらないと聞いたが」
吸血娘「...」
屍男「…確かに、悪くはないな」キョロキョロ
吸血娘「ここに荷物置いていいから。トイレと風呂の場所も教えるからついてきて」スタスタ
屍男「ここの家に一人で暮らしているのか?だいぶ持て余しているように見えるが」
吸血娘「そう、一人暮らしするには大きいよ。でも狭いよりマシでしょ」
屍男「親は今はどこにいるんだ?ヴァンパイアと言ってもそこら辺は人間と変わらないと聞いたが」
吸血娘「...」
106: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:18:30.13 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「母親は病弱だったらしくて、私を産んですぐに死んだよ」
吸血娘「父親もつい先月ね」
屍男「......」
屍男「…すまない」
吸血娘「いいよ、父親とはそんなに仲良くなかったし。むしろ家のスペースが空いて助かったくらい」
吸血娘「ほら、ここが風呂。シャワーの使い方分かる?こっちを回してここを押すとお湯で...」
屍男(…いくら親しくなかったと言っても唯一の肉親だったはずだ。精神的なショックは大きいだろう)
屍男(やはり寂しかったのか。孤独を恐れるのは人もヴァンパイアも変わらない…か)
吸血娘「父親もつい先月ね」
屍男「......」
屍男「…すまない」
吸血娘「いいよ、父親とはそんなに仲良くなかったし。むしろ家のスペースが空いて助かったくらい」
吸血娘「ほら、ここが風呂。シャワーの使い方分かる?こっちを回してここを押すとお湯で...」
屍男(…いくら親しくなかったと言っても唯一の肉親だったはずだ。精神的なショックは大きいだろう)
屍男(やはり寂しかったのか。孤独を恐れるのは人もヴァンパイアも変わらない…か)
107: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:20:24.34 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「お前の作るご飯あんまり美味しくないな。なんか味が雑」モグモグ
屍男「…文句を言うな。ある材料で手早く作ったんだからな。それに俺はコックじゃない」
吸血娘「これならピザとった方が良かったわ。うん、マジで」モグモグ
屍男「…そのわりにはよく食ってるように見えるが」
吸血娘「ふぅ、食った食った。じゃあおやすみ~」
屍男「…もう寝るのか、眠る時間には早いと思うが」
吸血娘「ふわぁ…ヴァンパイアは昼間はあんまり活動しないの。人間が夜に眠るのと同じでね」
吸血娘「私が寝てる間に掃除と洗濯やっといて...あ、下着は絶対に見るなよ。見たら殺すから…」スタスタ
屍男「…文句を言うな。ある材料で手早く作ったんだからな。それに俺はコックじゃない」
吸血娘「これならピザとった方が良かったわ。うん、マジで」モグモグ
屍男「…そのわりにはよく食ってるように見えるが」
吸血娘「ふぅ、食った食った。じゃあおやすみ~」
屍男「…もう寝るのか、眠る時間には早いと思うが」
吸血娘「ふわぁ…ヴァンパイアは昼間はあんまり活動しないの。人間が夜に眠るのと同じでね」
吸血娘「私が寝てる間に掃除と洗濯やっといて...あ、下着は絶対に見るなよ。見たら殺すから…」スタスタ
108: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:21:18.77 ID:YQmGKLBxo
屍男「…」
屍男「…勝手なやつだ」
屍男「はぁ、しかしまた忙しい日になりそうだ。まさか今度はこの家に住むことになるとは」
屍男「片付けるならまずはリビングだな。洗い物も溜まってるし、窓も埃が大量にある。そのあとは二階で…」
屍男「…俺はメイドか。毎日掃除をしてるような気がするぞ」
屍男「...」
屍男「…一体、昔の俺はどこで何ををしていたんだろうな」
屍男「…勝手なやつだ」
屍男「はぁ、しかしまた忙しい日になりそうだ。まさか今度はこの家に住むことになるとは」
屍男「片付けるならまずはリビングだな。洗い物も溜まってるし、窓も埃が大量にある。そのあとは二階で…」
屍男「…俺はメイドか。毎日掃除をしてるような気がするぞ」
屍男「...」
屍男「…一体、昔の俺はどこで何ををしていたんだろうな」
113: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:40:43.39 ID:JIew2oDzo
▢▢▢▢ 一週間後 ▢▢▢▢
吸血娘「ふわぁ…ねむぃ...」ゴシゴシ
吸血娘「今何時だ…って、もう日が沈んでるじゃん。今日はよく寝たなぁ」
屍男「遅いぞ。もうとっくに食事の用意ができている」
屍男「夕食、いや朝食か。早く食え」
吸血娘「あむっ…一週間お前の作ったご飯食べて分かったことがあるわ」
吸血娘「これ、最初は割と普通でどんどん行けるけど、半分食ったあたりで手が止まる」モグモグ
屍男「…それは褒めてるのか?」
吸血娘「貶してるに決まってんだろハゲ。味付けがくどいってことだよ」モグモグ
吸血娘「ふわぁ…ねむぃ...」ゴシゴシ
吸血娘「今何時だ…って、もう日が沈んでるじゃん。今日はよく寝たなぁ」
屍男「遅いぞ。もうとっくに食事の用意ができている」
屍男「夕食、いや朝食か。早く食え」
吸血娘「あむっ…一週間お前の作ったご飯食べて分かったことがあるわ」
吸血娘「これ、最初は割と普通でどんどん行けるけど、半分食ったあたりで手が止まる」モグモグ
屍男「…それは褒めてるのか?」
吸血娘「貶してるに決まってんだろハゲ。味付けがくどいってことだよ」モグモグ
114: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:41:49.89 ID:JIew2oDzo
吸血娘「ところでハゲ、お前今日はいつ風呂に入った?」
屍男「昼だが」
吸血娘「もう臭くなってるぞ。ちゃんと洗っとけ」
屍男「…そんなに臭うか?あの店にいた時はそこまで言われなかったんだが」クンクン
吸血娘「あのビッチは性根が腐ってるからな。ついでに鼻もひん曲がってるんだろ」モグモグ
吸血娘「ごちそうさま。はい、トマトはお前にやる」スッ
屍男「…相変わらずお前は野菜を残すな。何のために入れてると思ってるんだ」
屍男「昼だが」
吸血娘「もう臭くなってるぞ。ちゃんと洗っとけ」
屍男「…そんなに臭うか?あの店にいた時はそこまで言われなかったんだが」クンクン
吸血娘「あのビッチは性根が腐ってるからな。ついでに鼻もひん曲がってるんだろ」モグモグ
吸血娘「ごちそうさま。はい、トマトはお前にやる」スッ
屍男「…相変わらずお前は野菜を残すな。何のために入れてると思ってるんだ」
115: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:42:55.45 ID:JIew2oDzo
吸血娘「だってトマトってクソ不味いんだもん。老婆の腐ってる血みたいな酸味がする」
屍男「…変な例えはやめろ」
吸血娘「さっ、今日は仕事あるしあいつんとこ行くか。会いたくないけど」
屍男「…仕事?」
吸血娘「あれ?言ってなかったっけ?今日は依頼が入ってるって」
屍男「…それは、あの殺しの仕事か?」
吸血娘「それ以外ないでしょ。私がカフェで働いてるように見える?」
屍男「...」
屍男「…変な例えはやめろ」
吸血娘「さっ、今日は仕事あるしあいつんとこ行くか。会いたくないけど」
屍男「…仕事?」
吸血娘「あれ?言ってなかったっけ?今日は依頼が入ってるって」
屍男「…それは、あの殺しの仕事か?」
吸血娘「それ以外ないでしょ。私がカフェで働いてるように見える?」
屍男「...」
116: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:44:11.19 ID:JIew2oDzo
屍男「...どうしてもやるのか」
吸血娘「どうしてもって、そりゃ金がないとヴァンパイアでも生きていけない世の中だし」
吸血娘「強盗でも何でもやるってなら話は別だけどね」
屍男「...」
吸血娘「もしかして心配してるわけ?私が返り討ちに合わないかとか、どうか」
吸血娘「大丈夫だって、たかが人間に私が負けるわけないでしょ。あんまり舐めないでよね」
屍男(…心配なのは"今"じゃない。それから"先"のことだ)
吸血娘「どうしてもって、そりゃ金がないとヴァンパイアでも生きていけない世の中だし」
吸血娘「強盗でも何でもやるってなら話は別だけどね」
屍男「...」
吸血娘「もしかして心配してるわけ?私が返り討ちに合わないかとか、どうか」
吸血娘「大丈夫だって、たかが人間に私が負けるわけないでしょ。あんまり舐めないでよね」
屍男(…心配なのは"今"じゃない。それから"先"のことだ)
117: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:45:06.78 ID:JIew2oDzo
吸血娘「あ、もしかして人殺しなんてしちゃダメとか言いたいの?言っておくけど、私は人間じゃないんだからね」
吸血娘「だから人間の決めてる共食いの摂理なんて気にならないし、当てはまらない。現に人だって他の種族を殺して富を得てるわけじゃん?私がやってることも」
屍男「…いや、その点はいい。殺すのは悪人なんだろ…なら死んで当然のやつらだ」
屍男「…」
ズキッ
屍男「――――あぁ、そうだ。間違いない」
屍男「…ひとつ、頼みごとをしていいか?」
吸血娘「えっ?」
吸血娘「だから人間の決めてる共食いの摂理なんて気にならないし、当てはまらない。現に人だって他の種族を殺して富を得てるわけじゃん?私がやってることも」
屍男「…いや、その点はいい。殺すのは悪人なんだろ…なら死んで当然のやつらだ」
屍男「…」
ズキッ
屍男「――――あぁ、そうだ。間違いない」
屍男「…ひとつ、頼みごとをしていいか?」
吸血娘「えっ?」
118: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:45:52.92 ID:JIew2oDzo
魔女「…で、これはどういうことなの?」
屍男「...」
吸血男「い、いやだって…こいつも一緒について来るって言うから」
魔女「ついて来るって…まさかゾンビくんも一緒にやる気?」
屍男「そうだ」
魔女「…」
魔女「ちょっと、ゾンビくんってこんな積極的なキャラだっけ?この件に関しては不干渉で通すと思ってたんだけど」ボソッ
吸血娘「私に言われても知らんし…何か急に来たいって言い出して、ついてくんなって言っても聞かないし...」
魔女「はぁ…ゾンビくんにはこっち側に来てほしくなかったのに」
屍男「...」
吸血男「い、いやだって…こいつも一緒について来るって言うから」
魔女「ついて来るって…まさかゾンビくんも一緒にやる気?」
屍男「そうだ」
魔女「…」
魔女「ちょっと、ゾンビくんってこんな積極的なキャラだっけ?この件に関しては不干渉で通すと思ってたんだけど」ボソッ
吸血娘「私に言われても知らんし…何か急に来たいって言い出して、ついてくんなって言っても聞かないし...」
魔女「はぁ…ゾンビくんにはこっち側に来てほしくなかったのに」
119: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:46:36.07 ID:JIew2oDzo
魔女「ゾンビくん、本気でやるの?人殺しを」
屍男「…あぁ、覚悟はしている」
魔女「想像以上にきつい仕事よ?相手の命を狙ってるわけだから、向こうも本気で抵抗してくる。計画通りにとんとん拍子で進むことなんてないと思っていいわ」
屍男「…そうだな、だがもう決めたことだ。今更変えるつもりはない」
魔女「…」
魔女「…ドラキュラちゃんも何か言ったら?せっかくのお気に入りを危険に晒すかもしれないわよ」
吸血娘「いやまあ…私がいればそんなに危険じゃないだろ。こいつだって一応怪力と再生能力は持ってるんだし」
吸血娘「でも…単独だとそれだけじゃ危ないかも」
屍男「…あぁ、覚悟はしている」
魔女「想像以上にきつい仕事よ?相手の命を狙ってるわけだから、向こうも本気で抵抗してくる。計画通りにとんとん拍子で進むことなんてないと思っていいわ」
屍男「…そうだな、だがもう決めたことだ。今更変えるつもりはない」
魔女「…」
魔女「…ドラキュラちゃんも何か言ったら?せっかくのお気に入りを危険に晒すかもしれないわよ」
吸血娘「いやまあ…私がいればそんなに危険じゃないだろ。こいつだって一応怪力と再生能力は持ってるんだし」
吸血娘「でも…単独だとそれだけじゃ危ないかも」
120: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:47:37.90 ID:JIew2oDzo
屍男「足を引っ張るつもりはないし、死ぬつもりもない。自分の身くらいは自分で守れる」
魔女「引く気はないってことね。分かったわ」
魔女「じゃあこれ、今日の標的の資料。一度行ったら分かることも色々あるでしょう…気を付けてね」
屍男「…助かる」
吸血娘「まあ私が大体片付けるから、お前は後ろでボーっとしてればいいよ」
吸血娘「さて今回のやつは…と、また殺人犯か。最近多いな」
魔女「過去に分かってるだけでも三人殺してるわ。二度目の殺人で捕まった時は精神鑑定に引っかかって減刑されてるみたいね」
魔女「で、出所した後すぐに何も面識がなかった一般人を殺害…多分、近いうちにヘマやってまた捕まるでしょうね。こういうタイプは」
魔女「引く気はないってことね。分かったわ」
魔女「じゃあこれ、今日の標的の資料。一度行ったら分かることも色々あるでしょう…気を付けてね」
屍男「…助かる」
吸血娘「まあ私が大体片付けるから、お前は後ろでボーっとしてればいいよ」
吸血娘「さて今回のやつは…と、また殺人犯か。最近多いな」
魔女「過去に分かってるだけでも三人殺してるわ。二度目の殺人で捕まった時は精神鑑定に引っかかって減刑されてるみたいね」
魔女「で、出所した後すぐに何も面識がなかった一般人を殺害…多分、近いうちにヘマやってまた捕まるでしょうね。こういうタイプは」
121: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:48:16.34 ID:JIew2oDzo
屍男「...」
魔女「潜伏先はもう分かってるわ。後は一人になったところを狙って死体を持って来て頂戴」
吸血娘「うぃー、まだ一人だから良かったな。前は三人もいて運んでくるのが大変だったわ」
屍男「...」
吸血娘「ん?どしたハゲ。まさか今になってやめたくなった?なら帰っても」
屍男「大丈夫だ。問題ない」
屍男(この感情は...)
魔女「潜伏先はもう分かってるわ。後は一人になったところを狙って死体を持って来て頂戴」
吸血娘「うぃー、まだ一人だから良かったな。前は三人もいて運んでくるのが大変だったわ」
屍男「...」
吸血娘「ん?どしたハゲ。まさか今になってやめたくなった?なら帰っても」
屍男「大丈夫だ。問題ない」
屍男(この感情は...)
122: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:49:34.82 ID:JIew2oDzo
吸血娘「あ、そういやハゲ。お前車の運転できる?」
屍男「…多分、出来るんじゃないか?」
吸血娘「多分ってなんだよ。まあいいや。じゃあこいつの住処まで運転よろしく」スタスタ
魔女「車の持ち主の私には一言もないのね。汚さないでよ、あとトランクには触らないこと」
ブルルン…ブルルン…
屍男(…なるほど、身体が操作を覚えてるのを実感する。知識や記憶を忘れても、文字通りに身に付いた技術は覚えてるということか)
屍男「出すぞ。シートベルトを締めておけ」
吸血娘「それ私たちにいる?」
ブゥゥゥン!!!!!!
屍男「…多分、出来るんじゃないか?」
吸血娘「多分ってなんだよ。まあいいや。じゃあこいつの住処まで運転よろしく」スタスタ
魔女「車の持ち主の私には一言もないのね。汚さないでよ、あとトランクには触らないこと」
ブルルン…ブルルン…
屍男(…なるほど、身体が操作を覚えてるのを実感する。知識や記憶を忘れても、文字通りに身に付いた技術は覚えてるということか)
屍男「出すぞ。シートベルトを締めておけ」
吸血娘「それ私たちにいる?」
ブゥゥゥン!!!!!!
123: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:51:05.31 ID:JIew2oDzo
………………………………………………………………………………
……………………………………………………
吸血娘「ここがやつの根城のアパートか」
屍男「…どうやって殺すんだ?建物を見ると壁は薄そうだ。銃なんか使ったらすぐ通報されそうだが」
吸血娘「バカか、銃なんて使うわけないだろ。暗殺するんだから物音は最小限、目撃者0、証拠を残さないが最低条件だっての」
吸血娘「ハゲは部屋の前で待機して、終わったら鍵開けるから」
吸血娘「見せてあげる、私の能力…ヴァンパイアの力を」スゥッ
屍男「…ッ!?」
……………………………………………………
吸血娘「ここがやつの根城のアパートか」
屍男「…どうやって殺すんだ?建物を見ると壁は薄そうだ。銃なんか使ったらすぐ通報されそうだが」
吸血娘「バカか、銃なんて使うわけないだろ。暗殺するんだから物音は最小限、目撃者0、証拠を残さないが最低条件だっての」
吸血娘「ハゲは部屋の前で待機して、終わったら鍵開けるから」
吸血娘「見せてあげる、私の能力…ヴァンパイアの力を」スゥッ
屍男「…ッ!?」
124: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:51:42.84 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ………
刺青男「...」
刺青男「ふぅ、まったくこのコカイン効きやしねぇな。とんだパチモンだ」
刺青男「上物があるっつうんで買ったのにとんだ詐欺だ。ノ野郎、すぐに金を返して…」
モクモクッ…モクモクッ…
刺青男「…アァ?なんかこの部屋煙たいな。炙ってねぇのに」
刺青男「チッ…クソが、窓開けるか」スッ
刺青男「...」
刺青男「ふぅ、まったくこのコカイン効きやしねぇな。とんだパチモンだ」
刺青男「上物があるっつうんで買ったのにとんだ詐欺だ。ノ野郎、すぐに金を返して…」
モクモクッ…モクモクッ…
刺青男「…アァ?なんかこの部屋煙たいな。炙ってねぇのに」
刺青男「チッ…クソが、窓開けるか」スッ
125: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:52:28.20 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ!!!!!!
刺青男「!?」ビクッ
刺青男(な…んだっ!?急に息が苦しくッ…)
刺青男「ゲハァッ!!」バタッ
刺青男「アッ…アッ…」ピクピク
刺青男(んだ…コレェ…さ、さっきやったコカインの副作用か…?)
刺青男(ざ、ざけんなよっ!あの野郎…い、今すぐ引きずり出して…!)
刺青男「アガッ…グアッ!?」ピクッ
刺青男「」ピクピクッ
刺青男「」ピクッ
刺青男「」シーン
刺青男「!?」ビクッ
刺青男(な…んだっ!?急に息が苦しくッ…)
刺青男「ゲハァッ!!」バタッ
刺青男「アッ…アッ…」ピクピク
刺青男(んだ…コレェ…さ、さっきやったコカインの副作用か…?)
刺青男(ざ、ざけんなよっ!あの野郎…い、今すぐ引きずり出して…!)
刺青男「アガッ…グアッ!?」ピクッ
刺青男「」ピクピクッ
刺青男「」ピクッ
刺青男「」シーン
126: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:53:21.14 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ
吸血娘「よっと」スタッ
刺青男「」
吸血娘「死んだ?」ゲシッ
刺青男「」ピクッ
吸血娘「まだ生きてたか。まあいいや、どうせ血吸うんだし」スッ
ガリッ…
ギュッ…ギュッ…
吸血娘「…チッ、こいつ直前にキメてやがったな。まじぃ」ジュルッ
刺青男「」
吸血娘「よっと」スタッ
刺青男「」
吸血娘「死んだ?」ゲシッ
刺青男「」ピクッ
吸血娘「まだ生きてたか。まあいいや、どうせ血吸うんだし」スッ
ガリッ…
ギュッ…ギュッ…
吸血娘「…チッ、こいつ直前にキメてやがったな。まじぃ」ジュルッ
刺青男「」
127: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:54:12.26 ID:JIew2oDzo
スタスタ
カチッ
吸血娘「もう入っていいよ。終わったから」ガチャ
屍男「…」
吸血娘「さあ、早く死体袋に入れて撤収するよ。あー今日は楽だった」
屍男「…驚いたな。まさか自分の肉体を霧状にできるとは」
吸血娘「どう?ビビった?」
屍男「…あぁ、かなりな」
屍男(この能力があればごく僅かな隙間からでも侵入が可能、相手の呼吸器官に入れば騒音の一つも立てずに殺せるというわけか)
屍男(…確かに、暗殺には持ってこいだな)
カチッ
吸血娘「もう入っていいよ。終わったから」ガチャ
屍男「…」
吸血娘「さあ、早く死体袋に入れて撤収するよ。あー今日は楽だった」
屍男「…驚いたな。まさか自分の肉体を霧状にできるとは」
吸血娘「どう?ビビった?」
屍男「…あぁ、かなりな」
屍男(この能力があればごく僅かな隙間からでも侵入が可能、相手の呼吸器官に入れば騒音の一つも立てずに殺せるというわけか)
屍男(…確かに、暗殺には持ってこいだな)
128: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:55:19.76 ID:JIew2oDzo
ドサッ
屍男「…しかし大丈夫か?さすがにこの荷物は目立つぞ。アパートの住民に見られたらどうするんだ」
吸血娘「その時は私の力で記憶を消すから問題ないよ。そもそもこんな時間に誰も外に出ないでしょ」
屍男「記憶も消せるのか…便利なものだな」
吸血娘「何てったってヴァンパイアだからねぇ。他にも監視カメラとか写真に写ることはないから証拠も残ることはないし、最終手段として――――」
カチャッ
吸血娘「」ピクッ
屍男(何だ…後ろから物音が)クルッ
大男「ふぅ、スッキリした」ジャー
大男「…ん?なんだお前ら」
吸血娘(なっ…!?)
屍男(トイレにもう一人ッ…!)
屍男「…しかし大丈夫か?さすがにこの荷物は目立つぞ。アパートの住民に見られたらどうするんだ」
吸血娘「その時は私の力で記憶を消すから問題ないよ。そもそもこんな時間に誰も外に出ないでしょ」
屍男「記憶も消せるのか…便利なものだな」
吸血娘「何てったってヴァンパイアだからねぇ。他にも監視カメラとか写真に写ることはないから証拠も残ることはないし、最終手段として――――」
カチャッ
吸血娘「」ピクッ
屍男(何だ…後ろから物音が)クルッ
大男「ふぅ、スッキリした」ジャー
大男「…ん?なんだお前ら」
吸血娘(なっ…!?)
屍男(トイレにもう一人ッ…!)
129: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:56:04.99 ID:JIew2oDzo
大男「おい、ここで何をやってる?テメェら...」ギロッ
刺青男「」
大男「!?」ビクッ
大男「し、死んでるのかそいつ!?お、お前ら!そこを動くな!」
吸血娘(ぐっ、ミスった…まさかもう一人いたなんて…これなら"アレ"を飛ばせばよかった...)
吸血娘(仕方ない、今すぐ霧になって…)
ダッ
ボキッ
吸血娘「…へ?」
刺青男「」
大男「!?」ビクッ
大男「し、死んでるのかそいつ!?お、お前ら!そこを動くな!」
吸血娘(ぐっ、ミスった…まさかもう一人いたなんて…これなら"アレ"を飛ばせばよかった...)
吸血娘(仕方ない、今すぐ霧になって…)
ダッ
ボキッ
吸血娘「…へ?」
130: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:56:52.00 ID:JIew2oDzo
大男「」プラーン
屍男「…」ガシッ
吸血娘「…えっ?」
吸血娘「えっ…ちょっ…お、お前、何してんの?」
屍男「…首の骨を折った。これなら音が漏れる心配はないだろう」
大男「」
吸血娘「い、いやそうじゃなくて…なんで殺したの?見られただけなら記憶を消すだけでいいんだけど…」
屍男「…やつは拳銃を構えていた。もし後一秒でも遅れていたら、発砲していた可能性がある」
屍男「それに…恐らくこいつは殺しても問題ないはずだ。そこで転がってる刺青の男の仲間だろう」
屍男「…」ガシッ
吸血娘「…えっ?」
吸血娘「えっ…ちょっ…お、お前、何してんの?」
屍男「…首の骨を折った。これなら音が漏れる心配はないだろう」
大男「」
吸血娘「い、いやそうじゃなくて…なんで殺したの?見られただけなら記憶を消すだけでいいんだけど…」
屍男「…やつは拳銃を構えていた。もし後一秒でも遅れていたら、発砲していた可能性がある」
屍男「それに…恐らくこいつは殺しても問題ないはずだ。そこで転がってる刺青の男の仲間だろう」
131: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:57:35.16 ID:JIew2oDzo
吸血娘「た、確かに見るからに一般人じゃない顔つきだけどさ…普通即殺る?」
屍男「…おかしいか?」
吸血娘「ちょっと、ね」
吸血娘「…ま、まあいいや。殺しちゃったもんは仕方ないし、血吸っとくか」
吸血娘「あ、でも死体袋一つしかないもんなぁ…入るかこれ」
ギュッギュッ
吸血娘「入らねぇ」
屍男「…おかしいか?」
吸血娘「ちょっと、ね」
吸血娘「…ま、まあいいや。殺しちゃったもんは仕方ないし、血吸っとくか」
吸血娘「あ、でも死体袋一つしかないもんなぁ…入るかこれ」
ギュッギュッ
吸血娘「入らねぇ」
132: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:58:23.90 ID:JIew2oDzo
吸血娘「…どうしよ。さすがに一人抱えて戻るのはリスク高いな」
屍男「…」
吸血娘「まず一つを袋に入れてトランクに閉まって、また戻ってくる?いやでもなぁ…あいつにトランクは使うなって言われてるし」
吸血娘「かと言って、車内に置いとくのは誰に見られてもおかしくないし...うーん、考え過ぎ?でもなぁ」
屍男「…ひとつ、提案があるんだが」
吸血娘「ん?何かアイデアある?」
屍男「そこの刺青の男…食べてもいいか?」
吸血娘「は?」
屍男「…」
吸血娘「まず一つを袋に入れてトランクに閉まって、また戻ってくる?いやでもなぁ…あいつにトランクは使うなって言われてるし」
吸血娘「かと言って、車内に置いとくのは誰に見られてもおかしくないし...うーん、考え過ぎ?でもなぁ」
屍男「…ひとつ、提案があるんだが」
吸血娘「ん?何かアイデアある?」
屍男「そこの刺青の男…食べてもいいか?」
吸血娘「は?」
133: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:59:08.76 ID:JIew2oDzo