ダル「僕が未だに童貞なのはおかしい」 岡部「?」
2017.09.27
~某所~
岡部「何を言っているのだダルよ」
ダル「何を言っているのだ、じゃないお!!」
ダル「オカリン、何年か前『2017年の9月27日…、ダルの娘である鈴羽が産声をあげるだろう』って言ってたじゃんか!!」
岡部「ぐ、ま、まあ、そんなことも言ったような言わなかったような…」
ダル「言ったお!! だから由季たんとは仲良くしとけ、とも言ったお!!」
岡部「そ、そうだな、うん」
ダル「でも、結局由季たんは僕に目もくれることなくレイヤーをやめ、今はどこかで幸せに暮らしているとまゆ氏が言ってたし…」
岡部「…」
ダル「ぬがああああああああ!!!! 由季たんと(自主規制)したかったおおおおおおお!!!!!!」
紅莉栖「ちょっと倫太郎!! 何大声で…って、橋田か。久しぶりね、このラボに来るの」
岡部「すまない紅莉栖、今こいつをなんとかするから……」
紅莉栖「全く。そんな下世話な話を大声でしないでよね」
ダル「その下世話なことをオカリンと毎晩やりまくってる牧瀬氏改め岡部氏に言われたくないおおおお!!!!」
紅莉栖「なっ……!!!////」
岡部「お、おいダル!!!」
ダル「おおおおお!! 僕は諦めないおオカリイイイイイン!!!!!」ドスドスドスドス!!
岡部「だ、ダルっ!?」
紅莉栖「そっちにはタイムマシンの試作機が……、って、橋田あんたまさか!!」
ダル「うおおおおお!!! 飛べよおおおおおおおおおおおお!!!!!」キュイイイイイン
岡部「ダアアアアアアル!!!!!!!!」
キュイイイイイイイン
~~~~~~~~
2010.08.14
プシュー…
ダル「…ふう……。長い旅だったお」
ダル「今は…、2010年の8月14日か。本当にタイムマシンが完成するなんて思ってもみなかったお。待てよ、つーことは、僕が初めてのタイムトラベラー? パねえ」
ダル「さて…、考えもなしにタイムトラベルしちゃったけど、これからどうしよう?」
ネーネーオカリーン オコラレチャウヨー エエイ,ハナセマユリ
ダル「やば、誰か来た。隠れるお」ササッ
まゆり(過去)「だめだってオカリン!! 勝手に屋上に上がったら怒られちゃうよー」
岡部(過去)「ええい、そんなことを気にしてどうする!! なぞの人工衛星のようなものが出現するのを俺は見たのだ!!」
まゆり(過去)「ええー!? まゆしぃは、何もなかったと思うのです」
岡部(過去)「そんなはず…あれ?」
ダル(………)
岡部(過去)「う、うむ……。おかしいな、俺は確かに……」
マユシイノイッタトオリナノデス スマンマユリ
ダル「………」
ダル「……ふう。行ったかな?」
ダル「あー、ステルス機能つけといて良かったおー。まさかオカリンたちが見に来るとは」
ダル「しかし、本当に帰ってきたんだな、僕。オカリンたちがまだ半分子供だったお。まあ、この古いラジ館見たときからなんとなく実感はあったけどさ」
ダル「コミマか……。確か、僕が由季たんを初めて見たのがあのコミマだったっけ」
ダル「……ん? まてよ、ということは………」
初めて会ったコミマ
↓
運命的な出会い
↓
運命の赤い糸
↓
えんだあああああああああああああああああ!!!!!
ダル「!!!!!」
ダル「これだ!! これで行くお!!! そうすれば、きっと由季たんも……フヒ、フヒヒ」
ダル「そのためには……、ええと、あれをこうして、これを………」
~~~~~~~~~~
2010.08.15
~東京ビッグサイト~
ダル「フヒヒ……やってきましたビッグサイト!! コミマ!!」
ダル「僕の作戦はこうだお」
僕、僕(過去)を尾行する
↓
僕(過去)、由季たんの近くに偶然行く
↓
僕、僕(過去)に足を引っかけて転ばせる
↓
優しい由季たんは僕(過去)を助ける
↓
僕(過去)、一目ぼれ
↓
僕(過去)、由季たんに一生萌え萌え☆キュン
↓
えんだあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
ダル「オゥフwwwwwwwwww完璧すぎるおwwwwwwwwwwwwコポォwwwwwwwwww」
ダル「そうと決まれば……」キョロキョロ
ダル(過去)「あぢ~~…、溶けるお~~………」ノソノソ
ダル「見つけた!! ここから僕を尾行するお!!」
岡部(過去)「うーむ…、それがまゆりのメールが要領を得なくてな」
ダル(過去)「ちょ、じゃあこの会場くまなく歩かなきゃダメってことかよ! ふざくんな!!」
岡部(過去)「俺に怒っても仕方ないだろう! ええと…、犬の隣を左に曲がって、転がってる空き缶の右をまっすぐ……」
ダル(過去)「その目印で本当に大丈夫なん?」
岡部(過去)「大丈夫ではないから迷っているのではないか!」
ダル「……ん?」
おまえら「フヒヒwwwwこっちに視線お願いしまーすwwwwwwww」
???「はーい! これでいいですかー?」
おまえら「コポオwwwwwwwwwwwwww」パシャパシャ
ダル「あれは……、まさしく!!」
由季「えへっ、こうかな?」
おまえら「フヒヒ、かわい杉ワロタwwwwwwwwwwwwwwww」パシャパシャ
ダル「由季たん!!」
ダル「……おっと、いけないいけない。見とれてる場合じゃなかったお。えっと、僕(過去)に先回りして、足を……」
ダル(過去)「いやー、人が多いお……」
岡部(過去)「おい、気をつけろよダル」
ダル(過去)「わかってるって。僕がコミマ何回目だと思ってるん?」
ダル「よし、今だ!!」
ゲシッ
ダル(過去)「わっ!!」ヨロッ
岡部(過去)「ダル!」ガシッ
ズテーン!!!
「いてててて……」
由季「だ、大丈夫…?」
「あ、ああ……」
ダル「……ん? 僕ってあんな声だったっけ?」
由季「ほら、捕まって…」
「すまない……」
ダル(過去)「お、オカリン!! 大丈夫?」
岡部(過去)「ああ、平気だ。そこのレイヤー、誰かは知らないが、礼を言わせてもらおう」
由季「あ………」ポー
岡部(過去)「……? どうしたのだ?」
由季「い、いえっ! えへへ、怪我がなかったならよかったです」
ダル「ま、まさか」
岡部(過去)「あ、ああ……」
由季「あ、あのっ! わたし、阿万音由季って言うんですけど、よかったら連絡先を教えていただけませんか?」
ダル「wwwwwwwwwwwwwwww???????wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
由季「凶真さん……」ポー
ダル(過去)「オカリンパねえ。なんていうか、パねえ」
ダル「パねえじゃないおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」ドスドスドスドス!!!
岡部(過去)「…ん? な、なんだ今の人は?」
ダル(過去)「ただの僕みたいな拗らせたキモオタっしょ。オカリン爆発しろ」
~~~~~~
~ラジオ会館~
ダル「はあ、はあ、はあ……。認めない、こんな過去を僕は認めないお!!!」
ダル「幸いまだ燃料は残ってる……。僕は何度でも抗ってみせるお!!!!」
キュイイイイイン
~~~~~~
~東京ビッグサイト~
ダル「さっきはオカリン対策を忘れてたお。オカリンをあらかじめ何らかの形で引き離してからやればうまくいくはず!」
ダル(過去)「あぢ~~…、溶けるお~~………」ノソノソ
ダル「いた! また尾行を開始するお!!」
~~~~~~~~
ダル「ええっと、今度は後ろからオカリンのズボンを……えいっ」
ズリッ!!
岡部(過去)「ファッ!?」
ダル「あ、ミスってパンツまでずらしちゃったお。まあいいか、そこですかさず僕に足を……、えい!」
ダル(過去)「わっ!!」
ズテーン!!!
ダル「キターーーーーー!! これで僕が転んだお!! ミッションコンプリート!!」
由季「……っ」ポー
ダル「フヒヒ、僕に見とれて……って、あれ?」
ダル(過去)「いててて……、ありがとうまゆ氏。あれ? オカリンは?」
まゆり(過去)「オカリンなら……あれ? あっ……/////」カアアアア
ダル(過去)「? まゆ氏、なにを……」クルッ
ダル「あれ? なんかオカリンの周りが騒がしいような……」
岡部(過去)「お、俺は悪くない!! 俺は!! このズボンが勝手に!! ええい、早く上げなくては!!」カチャカチャ
警備員「ほら、早くそれしまって。いつまでもブラブラさせてないでさ。それ終わったら警察行くよ」
まゆり(過去)「は、はわわわわ……、お、オカリンの、オカリンのオカリンがはわわあわわわわ」
ダル(過去)「」
ダル「」
由季「……ステキ…………」ポー
ダル「え!?」
由季「あのレイヤーさんの知り合いみたいだから、後であの人に連絡先教えてもらおうっと」エヘヘ
ダル「ええええ!?」
ダル「ええええええええええええええええ!?」
ダル「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!」ドスドスドス!!
~~~~~
それから……
ダル「僕(過去)のズボンをおろすお!!」ズリッ
ダル(過去)「きゃあああ!!!」パオーン
警察「はいはい、こっち来てね」
由季「サイテー」
ダル「むおおおおお!!!!」
~~~~~
ダルは………
ダル「電話をかけてオカリンを立ち止まらせるお!!」
岡部(過去)「ん? 俺だ、要件を……って、うわっ!」ドンッ
由季「きゃっ!!」ドサッ
岡部(過去)「すまない、大丈夫か?」
由季「いたた……、あ………」ポー
ダル「むおおおおおおお!!!!!」
~~~~~
幾千の旅を……
ダル「原点回帰! 僕を再び転ばせるお!!」
ダル(過去)「うわっ!!」ドテッ
由季「大丈夫ですか?」
ダル(過去)「………」シーン
由季「……え? だ、大丈夫ですか!!」
岡部(過去)「きゅ、救急車だ!! 救急車をよべ!!!」
ダル(過去)「」チーン
ダル「むおおおおおおおおお!!!!!!」
~~~~~~
繰り返した………
ダル「もう僕が脱いじゃうおwwwwwww」スポポーン
警察「ちょっと署まで」
岡部(過去)「うわあ………」
まゆり(過去)「まゆしぃは、小さいなって思ってしまうのです」
ダル(過去)「禿同」
ダル「むおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
~~~~~~
キュイイイイイイン
ダル「はあ、はあ、はあ………」
ダル「な、なぜ!? なぜうまくいかないんだお!!」
ダル「ぬがあああああああ!!!!!!」ガンガンガン
ダル「………あ、」
ダル「いいこと思いついたお」
ダル「別に恋愛なんてしなくても子供なら作れるんだお」
ダル「フヒ、フヒヒヒヒ、フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
ダル「えーと、9月27日から280日を引いて、と」
ダル「さあって、とりあえず2016年の年末あたりまで行こうかな」
ダル「飛べよおおおおおおおおおお!!!!!!」
キュイイイイイイイン
~~~~~~~~~
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~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
2010.7.29
~秋葉原駅前~
鈴羽「あれ? 岡部倫太郎じゃん! ちいーっす!!」
岡部「なんだ、バイト戦士ではないか。いいのか、こんなところでサボっていて?」
鈴羽「まあね。……あたしは父さんを探しにこの街に来たから。これはその調査の一環だよ」
岡部「なに? 父親を……?」
鈴羽「うん。……あたしは、父さんを……必ず見つけて見せる」ギリッ
岡部「鈴羽……」
~~~~~~
2010.8.13
まゆり「えへへ、まゆしぃね、スズさんのお父さんが誰なのか、わかっちゃったのです」
鈴羽「……え?」
岡部「本当か、まゆり!!」
まゆり「えっへへー、えっへん!」
ダル「そ、それで? 阿万音氏の父親っていうのは……」
まゆり「あのねー」
鈴羽「……」ゴクリ
まゆり「スズさんのお父さんはー……」
まゆり「ダルくんなのでーす!」
岡部「………はあ?」
紅莉栖「あははは! まゆり、面白い冗談言うのね」
ダル「ちょ! 牧瀬氏、それはひどいお! まあ、僕も信じられないけど……」
まゆり「違うよー! 冗談じゃないのです」
紅莉栖「大体橋田が、結婚できるわけないじゃない」
鈴羽「………」ギリッ
ダル「ひどいお!!」
岡部「おいまゆり、そんな冗談をバイト戦士の去る日に……」
鈴羽「別にいいよ、岡部倫太郎。……それより椎名まゆり、理由を聞かせてもらおうか」
まゆり「いいよ~☆ あのねー、このバッチはね~………」
~~~~~
紅莉栖「バレルって……、樽って何よ」
まゆり「でもでも、説明はつくでしょ?」
岡部「う、うむ、確かに……。……じゃあ」
鈴羽「橋田至が……あたしの父さん…?」
紅莉栖「ありえない……。けど、筋は通っちゃったわね……」
鈴羽「父さん………」
ダル「あ、あう……」
鈴羽「父さん……っ!!」
ギュッ
鈴羽「あたしね、未来から来たんだよ……?」
ダル「う、うん」
鈴羽「父さんに会うために……」
鈴羽「そして………」
鈴羽「…………」
ダル「………?」
岡部「す、鈴羽?」
紅莉栖「阿万音さん?」
シュッ
ダル「うわ!」ドタッ
紅莉栖「あ、阿万音さん? 何を……」
岡部「お、おいバイト戦士!! よせ!!」
岡部(目を疑ったのは俺だけではないだろう。なぜなら、鈴羽はダルに向かってその拳を突き上げたからだ。……ダルが偶然よろめかなければ、その拳は間違いなくダルの顎を的確にとらえていただろう)
鈴羽「あたしは……あたしは……!!!」フーッ フーッ
まゆり「す、スズさん!?」
ダル「ひ、ひあああ!!! ひああああああああ!!!」
鈴羽「父さんを見つけて、殺してやるためにこの時代に来たんだ!!!!!」
まゆり「スズさん!! やめてえっ!!!!!!」
ダル「す、すす、鈴羽! お、おちおち、落ち着いて……」
鈴羽「うるさい!!! 気安くあたしの名前を呼ぶな!! この……」
鈴羽「強姦魔!!!!!!!」
ダル「……え?」
岡部「……は?」
紅莉栖「……ん?」
まゆり「……?」
鈴羽「……っ!! こいつは!! こいつは!!」
鈴羽「2016年の12月21日に!! あたしの母さんを強姦したんだ!!」
ダル「えええ!?」
鈴羽「『鈴羽たんのためだよ、フヒヒ』とかいいながら襲いやがって!! そのせいであたしの母さんは精神を病んだままあたしを生んで、訳の分からないままに鈴羽と名付けたんだ!! 全部、全部お前がいけないんだ!!!!」
紅莉栖「うわあ……」
まゆり「ダルくん……、まゆしぃはとってもとっても、とーっても悲しいのです……」
ダル「ちょ、ま、待ってほしいお! そ、そりゃあ僕だって魔がさすときがあるのかもしれないけど、でも今の僕は何もしてないお! 無実だお!!」
鈴羽「当たり前だ!! 何かされてからで堪るか!! 明後日のコミマで、母さんはお前と初めて出会ったんだ! その前にお前を……!!!」
ダル「そ、そんなのあんまりだお!! ほ、ほら、オカリンたちも何か言ってやってほしいお!!」
まゆり「………」
紅莉栖「………ないわー」
岡部「ダル………」
岡部「ダル……、すまない」
ガシッ
ダル「……え?」
紅莉栖「橋田、まだ何もしてないあんたには気の毒だけど、性犯罪を未然に防ぐためにしかたないのよ」
ダル「ちょ!! 今その話聞いたからもう何もしないお!! ていうか、聞かなくても僕そんなことしないお!!」
まゆり「橋田さん……、まゆしぃもね、スズさんを悲しませたくはないのです」
ダル「ま、まゆ氏……橋田さんって」
岡部「ダル……、そういうことだ」
ダル「は、離せ!! 僕は無実だおー!!!」ジタバタ
鈴羽「ありがとう、みんな……」
鈴羽「ここで運命を終わらせる……!!!」
ダル「え、ちょ」
ぎゃあああああああああああ!!!!!……………
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~
2017.09.27
ギュウウウウウウウン
岡部「ぐっ……この感覚……、リーディングシュタイナーか……」
岡部「ダルが過去へ飛んだことで世界線が変わった……? でも一体どのように」
紅莉栖「倫太郎ー? どうしたの、顔真っ青よ?」ヒョイッ
岡部「あ、ああ……紅莉栖」
紅莉栖「あによ」
岡部「ダルはどうなったか知らないか?」
紅莉栖「え……?」
紅莉栖「それってもしかして、橋田のこと?」
岡部「な、なんだ…。知らないのかと思ってびっくりしたではないか」
紅莉栖「知らないわけないでしょうが、あんなインパクトの強い死に方した奴」
岡部「そうだよな。……ん?」
紅莉栖「?」
紅莉栖「だーかーらー。あんな死に方した奴なんて忘れられないって言っとろーが」
岡部「ま、まさか……。ダルは死んだのか……?」
紅莉栖「……あんたまさか覚えてないの? 橋田なら……。そっか、もう七年になるんだ」
紅莉栖「橋田なら、七年前にラジ館の屋上で阿万音さんに殺されたじゃない」
岡部「」
紅莉栖「タイムパラドックスのせいで阿万音さんまで消えちゃったけどね。阿万音さんのお母さんになるはずだった、ほら、あの元コスプレイヤーの由季さんを強姦したって、恨まれてたじゃない。本当に忘れたの?」
岡部「あ、あ、あああああ………」
紅莉栖「いやー、あの時は橋田を押さえていいものか迷ったけど、その後阿万音さんも消えちゃったってことは、あの子の言ってたことは本当だったんだろうし……。これでよかったのよね、きっと」
岡部「なん、だよこれ………」
紅莉栖「……倫太郎?」
岡部「なんだよこれええええ!!!!!!!」
岡部「俺は……、こんな未来を、認めない!!!」
紅莉栖「ちょっと! そのタイムリープマシンをどうするつもり!? ねえ、りんたr」
岡部「飛べよおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」バチバチバチ
―――――――これは
救えなかった世界の
物語―――――――――――
シュタインズ・ゲート ダル
To be continued…
進行上to be continuedにしたけど
続くわけないwww というか続けちゃいけない
今日は鈴羽の誕生日ってんで急きょ用意してみたんだお。
でも鈴羽甘々SSとかもう書き尽くされちゃってネタがないからこんなのになっちゃったお
本物のダルはこんなことしないお
最後に
鈴羽誕生日おめでとう!!!
世界一かわいいお
ちゅっちゅっ
鈴羽は俺の嫁
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1506515968/
Entry ⇒ 2018.02.21 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
鈴羽「おっはー!岡部倫太郎ー」
シーン…
鈴羽「あれ?誰も居ない?……何これリストバンド?」ヒョイ
鈴羽「んー?なになに未来ガシェット試作機?これ未来ガシェットなの?ふーん」クルクル
鈴羽「うーん見た感じはただのリストバンドだけど……」
鈴羽「ひょっとして戦隊モノみたいに変身できるとか?」ゴクリ
鈴羽「…………」
カチリ
鈴羽「へ、変身っ!!」シャキーン!
岡部「……何をしているのだバイト戦士よ?」
鈴羽「うひゃわう!!?」ガタタン
鈴羽「い、いきなり入ってこないでよ!!?」
岡部「ここは俺のラボなのだが!?」
鈴羽「み、みた?」
岡部「う、うむ……」
鈴羽「う、うう~出来れば皆には内緒にしててほしいな……」
岡部「安心しろ、お前がそう言うならだれにも話さん」
岡部「しかしお前が仮面ライダーファンだったとは……」
鈴羽「や、やっぱり変かな?」
岡部「いや?男のダルだってプリキュアを見るし問題ないだろう」
鈴羽「橋田至……流石にそれはどうなの……」
岡部「それに俺は男だ女だの色眼鏡で人の好みの良し悪しを決めるような男ではない」
鈴羽「岡部倫太郎……」
岡部「気持ちも分からんでもないしな……っと、これはマッドサイエンティストとしては
失言だったかな?フゥーハッハッハッハッハ!!」
鈴羽「もう……あ、そうだ!」スッ
岡部「ん?なんだそのリストバンド二つあったのか」
鈴羽「岡部倫太郎もこれ着けて一緒にポーズを取ろう!」
岡部「な、何故俺がそんな事をせねばならんのだ!」
鈴羽「あたしこういう決めポーズを誰かと一緒にやってみたかったんだよね」
岡部「お、俺でなくてもいいだろうが!」
鈴羽「だって他の人に頼むのは恥ずかしいもん!」
岡部「俺はいいのか?」
鈴羽「岡部倫太郎にはもうばれちゃったし……ダメかな?」
岡部「ぐっ……い、一回だけだぞ!」
鈴羽「やったぁ!君ってホントいい奴だよね!!」
岡部「やれやれ、この鳳凰院凶真ともあろう者がヒーローごっこなど……」
鈴羽「いつもやってる事と同じようなもんじゃないの?」
岡部「馬鹿者!あれこそが俺の真の姿なのだ!!」
鈴羽「うーん、よくわからないや」
岡部「ぐぬぬ……いつ助手たちが来るかわからん、さっさと終わらせるぞバイトライダーよ!」
鈴羽「バイトライダーってあたしの事?じゃあ君はマッドライダー?」
岡部「狂気の走り屋か。うむ、悪くないな」カチリ
鈴羽(適当に言ったんだけど結構気に入ったみたいだね)
岡部「フゥーハッハッハッハ!我こそは狂気の走り屋(マァッドライダー)※ネイティブな発音※、仮面ライダー一号!」シャキーン!
鈴羽「えと、ふぅーはっはっは!バイトライダーは仮の姿!悪の支配を正すために未来から来た未来人!仮面ライダー二号!!」シャキーン!
岡部「き、決まった……」ジーン…
鈴羽(何か良く分からないけどあたしより感動してる)
岡部「ふぅ、なかなかいい前口上だったな鈴羽よ」
鈴羽「い、いま名前で……」
岡部「?どうしたバイト戦士よ」
鈴羽(戻った……)ショボン
鈴羽「なんでもないよ。そういえばこのリストバンドって岡部倫太郎の発明?未来ガシェットって書いてあったんだけど」
岡部「何?俺はこんなもの作った覚えはないぞ?」
鈴羽「え?じゃあこれ……」
岡部「ダルか紅莉栖が作ったのか?いやしかし俺は何も……」
鈴羽「う~ん、どちらにしてもとりあえず外した方がいいかもね」
岡部「そうだな、勝手に使ったとなってはいったい何を言われるか……」
鈴羽「……あれ?」グッ
岡部「……どうした?」
鈴羽「は、外れない……」サァー
岡部「何っ!?そんな馬鹿な……」カチャカチャ
岡部「だ、ダメだこっちもビクともせん……」
鈴羽「ど、どうしようこれ……」
岡部「お、落ち着け!きっと解除条件があるはずだ。ラボにメモか何かあるかもしれん、それを探すぞ!」
鈴羽「オーキードーキー!」
―――30分後―――
岡部「くっ……パソコンの中まで調べてみたが……」
鈴羽「見つかったのは橋田至の隠しエロ画像フォルダだけだったね……」
岡部「ぐぬぬ……万事休すか」
鈴羽「はぁ……手がかりは無しかー」
岡部「仕方ない、休憩がてらに飲み物でも……ぬ、ドクぺの備蓄がそろそろ切れるな」プシッ
鈴羽「あーあたしそろそろバイトの時間だ……いかなきゃ」スクッ
岡部「そうか、まぁ仕方あるまい。俺の方でリストバンドについては何とか調べておこう」
鈴羽「ごめんね、任せっきりで……」
岡部「気にするな。これもシュタインズ・ゲートの選択だ」
鈴羽「あはは、君って良い奴だよね」
岡部「ええい、いいから早く行け!遅刻しても知らんぞ!」プイッ
鈴羽(顔赤くなってる、本当に素直じゃないなぁ……)
鈴羽「ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて行ってくるね」ガチャ
鈴羽「って痛っ!!?」ビクッ
岡部「ぐああああああああ!!?」ビリビリ
鈴羽「ちょ、岡部倫太郎大丈夫!!?」ガチャ
岡部「ななななんだ急に電流が流れたように痛みが……」ビリビリ
鈴羽「う、う~んどうもこのガシェット同士が一定距離離れると電流が流れるみたいだね……」
岡部「な、何でお前はそんな平然としているのだ……」
鈴羽「慣れてるから?」
岡部「普通は慣れんぞ……しかし、これでは俺たちは常に二人一組で動かなければならないという事ではないか?」
鈴羽「そ、そうなるね……」
岡部「くっ!もしもし俺だ!どうやら『機関』の罠に嵌められたらしい!至急危険物処理班の出動を要請する!!」
鈴羽「う~ん……まいったな、あたし今日バイトあるのに……」
岡部「致し方あるまい、こうなってしまった以上恥を忍んで助手かダルに連絡を……」カパッ
おかけになった電話は、電波が届かない所か、通話が―――
岡部「助手もダルも出ない……だと?」
鈴羽「ええ!?ど、どうしよう……」
岡部「……はぁ、仕方ないな。行くぞ鈴羽」
鈴羽「え?」
岡部「一応出来るだけ邪魔はしないようにする。俺が一緒に居なければ仕事に支障が出るだろう?」
鈴羽「つ、着いてきてくれるの?」
岡部「ああ、今日はラボには誰も来てないようだしな」
鈴羽「……なんか、ごめんね。あたしの所為で」
岡部「気に病むなバイト戦士。なに、助手かダルに連絡を取るまでの辛抱だ」
鈴羽「……君って本当にいい奴だね」
岡部「……お前はラボメンだ。困ったときはお互い様だろう」
鈴羽「……ありがとう」
鈴羽(本当に……良い奴過ぎて困るくらいだよ……)
―――――ブラウン管工房
岡部「お前のバイト先ってブラウン管工房だったのか……」
鈴羽「そうだよ?」
天王寺「なんで岡部まで来てんだ?ついに家賃を払う気になったか?」
岡部「あーこれはですねミスターブラウン、深い訳が……」
鈴羽「現金で返せないからここで働いて少しでも返すってさ」
岡部「お、おい!?」
天王寺「ほう?お前にしては随分とまっとうな考えじゃねえか」
鈴羽(働いてた方が一緒に居ても不自然に見えないでしょ?)ヒソヒソ
岡部(た、確かにそうだな……)ヒソヒソ
岡部「ところでミスターブラウン?しあつ……萌郁は?」
天王寺「あん?ああ、あいつはなんだか用事があるらしくてな。今日は休みを取っている。
だから臨時バイトをそいつに頼んだんだ」
岡部「しかし一日位ならミスターブラウン一人でもなんとかなるのでは?」
岡部(というかそもそもこのブラウン管工房に人手が足りないなんてあり得んだろう)
天王寺「生憎今日は丁度綯の授業参観があってよぉ……午前中はどうしても店を開けなくちゃなんなくてな」
岡部「なるほどそれで……」
天王寺「つーわけだ、バイト、岡部。店番をよろしく頼む」
岡部「うむ、承知した」
鈴羽「オーキードーキー。任せてよ店長!」
岡部「……本当に客が来ないな」
鈴羽「まぁ、ブラウン管の修理位しか需要ないからね……」
岡部「新規でブラウン管など余程の物好きでなければ買わんしな」
まゆり「あれー?オカリンこんな所で何してるのー?」
岡部「む、まゆりか。これには深い事情があってだな……」
鈴羽「あははこれのせいで離れられなくなっちゃってさ」フリフリ
まゆり「んーリストバンド?わぁ!オカリンと鈴さんおそろいだねぇ」ニコニコ
岡部「違う違う!これは未来ガシェット(仮)だ!」
鈴羽「(仮)って……めんどくさい表現するね……」
岡部「これのせいで一定距離を離れると地獄のような拷問を強いられることに……」
鈴羽「電流が流れるだけなんだけどね」
まゆり「良く分からないけれどそのガシェットさん(仮)のせいで離れられないって事?」
岡部「うむ」
まゆり「そっかーねぇねぇ鈴さん?」
鈴羽「何だい?椎名まゆり」
まゆり「オカリンは鈍感さんだからこの機会にちゃんとアピールしなきゃダメだよ?」ヒソヒソ
鈴羽「ふ、ふぇ!?」ボンッ
まゆり「えへへーそれじゃあまゆしぃはそろそろ行くねー」
岡部「何だ、ラボによっていかないのか?」
まゆり「今日はメイクイーンでイベントがあるからちょっと早めにいかなきゃいけないのです」
岡部(成程、どおりでダルが携帯に出ない訳だ)
まゆり「ルカ君も今日は来れないみたいだから、オカリンも鈴さんもバイト頑張ってねー?ばいばーい」フリフリ
岡部「ああ、まゆりも気を付けてなー」
鈴羽「じゃ、じゃあねー」
岡部「?どうしたバイト戦士よ、顔が赤いようだが……」
鈴羽「な、なんでもないよ!」
岡部「?」
鈴羽(もう!椎名まゆりが変な事言うから岡部倫太郎の顔が見れないよ!!)ブンブン
岡部(急に首を振り始めたぞ……首筋でもこってるのだろうか……)
――――12時半過ぎ。
岡部「結局誰も来なかったな」
鈴羽「まぁ大体予想通りだけどね……」
天王寺「おうお前ら、真面目に店番やってたか?」
岡部「帰ってくるなりご挨拶だなミスターブラウンよ、朝から二時間ここから微動だにすらしなかったぞ」
鈴羽「お客さん一人も来なかったよ」
天王寺「まぁ分かってはいたんだがな」
岡部「このご時世ブラウン管なんぞ旧時代の遺物では集客は望めんだろう……」
天王寺「家賃千円アップだな」
岡部「ブラウン管の素晴らしさをもっと世間は理解すべきだろう、フゥーハッハッハ!」
鈴羽「君って本当にヘタレだよね……」
綯「あっ、鈴羽お姉ちゃんとオカリンおじさんこんにちはー」
岡部「何故俺だけおじさんなのだ!!」
鈴羽「だって岡部倫太郎老けてるじゃん」
岡部「ぐぬぬ……シスターブラウン!俺は決しておじさんなどでは……」
綯「ふぇ……ご、ごめんなさい……」
天王寺「岡部、家賃三千円アップな」
岡部「ちょ!?流石にそれは洒落にならん!!」
鈴羽「泣かせたらダメだよ岡部倫太郎、綯はまだ小学生なんだしさ」
岡部「ぐぬぬ……驚かせたのはすまなかった。しす……綯よ」
綯「ふぇ?(初めて名前で呼ばれた?)」ピクッ
岡部「だがその……一応俺は鈴羽と年齢は一緒なのでな……おじさんだと流石にちょっと傷つくのだ。
最悪呼び捨てでも構わんからおじさん呼びだけは勘弁してくれないか?」
綯「う、うん……ごめんなさいオカリン……お兄さん?」
岡部「うむ、それでいい。さっきはすまなかったな」ナデナデ
綯「(撫でられた!!)えへへ……オカリンお兄さんも私の事名前で呼んでくれませんか?」
岡部「それもそうだな……了解した、これからもよろしく頼むぞ綯よ」
綯「うん!///」
鈴羽(まさか小学生まで……)
天王寺「岡部」
岡部「どうしましたミスターブラウン?」
天王寺「何綯と仲良くなってんだ家賃一万円アップだ」
岡部「それは流石に横暴だろう!!?」
―――
鈴羽「ふー取りあえず山場は越えたね、安心したらお腹すいてきちゃった」
岡部「昼飯がてらにメイクイーンに向かってみるか、ダルなら間違いなくそこに居るだろう」
鈴羽「オーキードーキー」
―――メイクイーン
フェイリス「お帰りなさいませ―――あっ、凶真ぁ!」ヒシッ
岡部「入店と同時に抱き付いて来るな!!」
フェイリス「んニャー、凶真は恥ずかしがり屋なんだニャン☆」
鈴羽(なんか見てるともやもやする……)
岡部「フェイリス、ダルは居るか?」
フェイリス「ダルニャン?ダルニャンなら……」
橋田「フェイリスたんから愛あるハグだと?オカリンマジ爆発すべきだお!」
岡部「おおダル、やはりここか。お前に聞きたいことがあるんだが」
橋田「お?ついに僕のおすすめエロゲオブザイヤーを聞く気になった?」
岡部「そんなもの今後永久に聞かんから安心しろ、俺が聞きたいのはこいつの事だ」スッ
橋田「リストバンド?オカリンにしては随分シンプルなデザインだお」
鈴羽「あたしもつけてるよ」スッ
フェイリス「ニャニャ?凶真と鈴ニャンお揃いなのニャン!」
橋田「え?何?メイクイーンにまで赴いて僕にペアルック自慢?リア充爆発しろ!!」
岡部「違う!こいつはどうも未来ガシェット(仮)のようでな、外せなくて困っていたのだ」
橋田「(仮)ってまた面倒な言い方するお……」
鈴羽「橋田至は何か知らない?」
橋田「う~ん……ゴメン、少なくとも僕は作った記憶がないお。
開発室は最近牧瀬氏が占領してたし……」
岡部「という事は助手の発明で間違いなさそうだな」
鈴羽「う~んまいったなー……牧瀬紅莉栖が居そうな所なんて見当もつかないや……」
橋田「?それそこまで邪魔になるようにも見えないけれど……」
岡部「一定距離離れると電流が流れる仕組みらしくてな……」
鈴羽「だからこうやって午前中からずっと一緒に居るんだよね」
橋田「は?阿万音氏とくっつく事を強いられるとかむしろご褒美じゃないですか!!」
岡部「お前は本当に見境のないHENTAIだな……」
フェイリス「流石ダルニャン……」
橋田「まぁオカリンと常に一緒に居る事を強いられている阿万音氏には地獄かもね」
岡部「ぐぬぬ……言い返せん」
鈴羽「そう?あたしは結構楽しいけどな」
岡部「そ、そうか?」
橋田(あれ?思いのほか好感触?)
鈴羽「岡部倫太郎こそ嫌じゃない?」
岡部「そんな事は無いぞ、バイト戦士の女らしい一面を見れたりするからな。これが中々楽しい」
鈴羽「ちょっ、恥ずかしくなってきた……」カァー…
フェイリス(鈴ニャンの赤面とか初めて見たニャン……)
橋田(どう見てもカップルです本当にありがとうございました)
鈴羽「そ、それよりさ!お腹すいたし何か食べようよ!」
橋田(強引に話題を変えたお)
フェイリス(鈴ニャン分かりやすいニャン)
―――食後
鈴羽「ご、ごめんね岡部倫太郎……奢ってもらっちゃって」
岡部「構わん。気まぐれだ」
橋田「オカリンが奢るとか明日嵐でも来るんじゃね?」
岡部「ダルよ、さっきのオムライス代を請求してほしいのか?」
橋田「冗談だお。そういえばこれから牧瀬氏を探すみたいだけど当てとかあるん?」
岡部「うーむ如何せん携帯に出ないからな……助手が行きそうな所がラボ以外だと思いつかん……」
鈴羽「牧瀬紅莉栖のホテルは?」
岡部「実は詳しい場所を知らなくてな……」
橋田「それじゃあ八方ふさがりだお……」
鈴羽「一旦ラボに戻る?もしかしたら入れ違いで牧瀬紅莉栖が来てるかもよ?」
岡部「そうだな、下手に動き回るよりはいいかもしれん」
橋田「んじゃ、一旦ラボに戻るって事でFA?」
岡部「うむ、だがその前にドクペを補充したいのだが……」
橋田「んじゃ近くのスーパー寄ってく?」
鈴羽「あたしは別にいいよ!もう少しこのままでもいいし……」ボソッ
岡部「何か言ったか?バイト戦士よ」
鈴羽「何でもなーい」
橋田(僕には丸聞こえだお……)
―買い物終了後―
岡部「やはり狂気のマッドサイエンティストが嗜むのはこの知的飲料でなくてはな」プシッ
鈴羽「それっておいしいの?」
岡部「気になるのか?」
橋田「興味本位で手を出すと後悔する味だお」
岡部「おのれフェイバリットライトアーム、我が知的飲料を愚弄するか!」
橋田「僕は一般論を言ったまでだお」
鈴羽「でもそこまで言われると気になるなー、ちょっと貰うね」ヒョイ
岡部「あっ!こらそれは俺が……」
鈴羽「んー、んー……」
橋田「わお、阿万音氏良い飲みっぷりですなー」
鈴羽「……なんていうか、薬っぽい味だね」
橋田「だお?だからあんまり人気ないんだお」
岡部「ぐぬぬ……お前ら……」
鈴羽「でもこれ嫌いじゃないかも……」
橋田「mjd!?」
岡部「なんだと?」
鈴羽「うん、なんだろう?美味しいとは思わないんだけど……何か飲みたくなるというか……」ゴクゴク
橋田「まさか牧瀬氏以外にオカリンと同じ味覚を持ってる人がラボに居るとは……」
岡部「フゥーハッハッハ!流石はバイト戦士!いや、阿万音鈴羽だな!!」
鈴羽「あっ、全部飲んじゃった……」カラッ
岡部「なぁに気にするな、今の俺は大変機嫌がいい……クックック」
橋田「うわぁ……オカリンが久しぶりに気持ち悪い件について」
岡部「鈴羽とはぜひラボで夜が明けるまでドクぺについて語り合いたいな……」
鈴羽「語るも何もあたしはさっき初めて飲んだばかりなんだけど……」
岡部「ふっ……ならば朝まで俺がドクぺの魅力をしっかりと身体に教えてやろう……」
鈴羽「か、身体に……」
橋田「わーおオカリン大胆発言」
岡部「そこだけ繰り返すな!そういう意味ではない!!」
鈴羽「あっ、話してたらラボについたね」
岡部「ふむ……部屋に電気はついてないようだな」
橋田「う~ん、また入れ違いかお?」
岡部「とりあえず一旦上がるぞ、結構歩いたからな……正直疲れた」
鈴羽「えー、岡部倫太郎だらしないなー」
岡部「お前のその元気はどこから出ているのだ……」
――ラボ
岡部「よし、これでしばらくはドクぺの心配をしなくて済みそうだ」
鈴羽「橋田至帰っちゃったねー」
岡部「まったく、ダルはマイフェイバリットライトアームとしての自覚が足りん」
鈴羽「……ごめんね」
岡部「ん?急にどうしたんだバイト戦士よ」
鈴羽「元はと言えば、あたしが勝手にガシェットいじったから……こんな事に岡部倫太郎付きあわせちゃって……」
岡部「気にするな、これもまたシュタインズゲートの選択だ」
鈴羽「でも……」
岡部「ええい!バイト戦士よ、さっきも言ったが俺は俺で楽しんでいる!お前が気に病む事は無いのだ!!」
鈴羽「岡部倫太郎はあたしと一緒に居て楽しいの?」
岡部「な、なんだ藪から棒に」
鈴羽「どうなの?」
岡部「……う、うむ。それはだな……」
鈴羽「あたしは楽しいよ。君と居ると退屈しない」
岡部「鈴羽……」
鈴羽「……岡部倫太郎」
鈴羽「……あたしは、君の事が」
ガチャ
岡部「!?」
鈴羽「あ、あれ?」
岡部「は、外れた!外れたぞ!!」ブンブン
鈴羽「え?でもなんで……」
岡部「ふ、フゥーハッハッハ!
何だか良く分からんが助手の発明もこの鳳凰院凶真の前には無力なのだ!!」
鈴羽(タイミング悪すぎ……)
岡部「ところで鈴羽よ、さっきは何を言おうとしてたのだ?」
鈴羽「え……え!?いやそれは……その……」
紅莉栖「―――居た!岡部!!」バターン!!
岡部「うぉあ!?く、クリスティーナ!!?」
鈴羽「牧瀬紅莉栖!?」
紅莉栖「なんで阿万音さんまで?……まぁいいわ、岡部!アンタこの辺りに置いてたリストバンド持っていかなかった!?」
岡部「あ?ああ……それならここに……」
紅莉栖「あ……良かったー!やっぱり岡部が持ってたのね!」
岡部「やはり助手の発明か……一体なんだったのだこれは」
紅莉栖「ん?これはね未来ガシェット試作型『だーりんのばかぁ!』よ」
鈴羽「なにそのふざけた名前……」
紅莉栖「これは装着者同士の親愛値を脈拍や血圧その他もろもろから算出して、
互いの値が一定値以上にならないと外れない……言うなれば喧嘩仲裁用ガシェットなのよ」
鈴羽「へーっ、てことは」
岡部「うむ、どうやら俺達はようやくその親愛値を上回ったという事か」
紅莉栖「…………は?」
岡部「うむ……いや実はな。朝方鈴羽と俺が着けてしまってな……」
鈴羽「一日中ずっと一緒にいたんだよねー」
紅莉栖「」
岡部「その……なんだ、助手よ。勝手に使ってしまってすまなかった……」
鈴羽「ごめんね牧瀬紅莉栖。まさか外れなくなるとは思わなくて……」
岡部「しかし外れるのに丸一日掛かるとは……」
鈴羽「そういえばその装置って親愛値?がどの位で解除される設定になってるの?」
紅莉栖「え?いやそれは……」
岡部「なんだ助手、もったいぶらずに教えてくれてもよかろう」
紅莉栖(言えるわけないだろ!相思相愛レベルとか!!)
紅莉栖(元々私と岡部でつけようと思って作ったのに!)
紅莉栖「えーと……き」
岡部「き?」
紅莉栖「き、企業秘密よ!」
岡部「何を訳分からんことを言っとるのだ助手!」
紅莉栖「う、うるさい!勝手に使った岡部が悪いのよ!!」
岡部「そんなに隠されたら気になるではないか!!」
鈴羽「あはは……」
今年はもう鈴羽生誕の年なんですね……
やシN1!
PS+会員は今月のフリープレイにSteins;Gate0が来ているので購入処理をしておくとよろしい。
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1494605909/
Entry ⇒ 2017.11.14 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
ダル「僕が未だに童貞なのはおかしい」 岡部「?」
2017.09.27
~某所~
岡部「何を言っているのだダルよ」
ダル「何を言っているのだ、じゃないお!!」
ダル「オカリン、何年か前『2017年の9月27日…、ダルの娘である鈴羽が産声をあげるだろう』って言ってたじゃんか!!」
岡部「ぐ、ま、まあ、そんなことも言ったような言わなかったような…」
ダル「言ったお!! だから由季たんとは仲良くしとけ、とも言ったお!!」
岡部「そ、そうだな、うん」
ダル「でも、結局由季たんは僕に目もくれることなくレイヤーをやめ、今はどこかで幸せに暮らしているとまゆ氏が言ってたし…」
岡部「…」
ダル「ぬがああああああああ!!!! 由季たんと(自主規制)したかったおおおおおおお!!!!!!」
紅莉栖「ちょっと倫太郎!! 何大声で…って、橋田か。久しぶりね、このラボに来るの」
岡部「すまない紅莉栖、今こいつをなんとかするから……」
紅莉栖「全く。そんな下世話な話を大声でしないでよね」
ダル「その下世話なことをオカリンと毎晩やりまくってる牧瀬氏改め岡部氏に言われたくないおおおお!!!!」
紅莉栖「なっ……!!!////」
岡部「お、おいダル!!!」
ダル「おおおおお!! 僕は諦めないおオカリイイイイイン!!!!!」ドスドスドスドス!!
岡部「だ、ダルっ!?」
紅莉栖「そっちにはタイムマシンの試作機が……、って、橋田あんたまさか!!」
ダル「うおおおおお!!! 飛べよおおおおおおおおおおおお!!!!!」キュイイイイイン
岡部「ダアアアアアアル!!!!!!!!」
キュイイイイイイイン
~~~~~~~~
2010.08.14
プシュー…
ダル「…ふう……。長い旅だったお」
ダル「今は…、2010年の8月14日か。本当にタイムマシンが完成するなんて思ってもみなかったお。待てよ、つーことは、僕が初めてのタイムトラベラー? パねえ」
ダル「さて…、考えもなしにタイムトラベルしちゃったけど、これからどうしよう?」
ネーネーオカリーン オコラレチャウヨー エエイ,ハナセマユリ
ダル「やば、誰か来た。隠れるお」ササッ
まゆり(過去)「だめだってオカリン!! 勝手に屋上に上がったら怒られちゃうよー」
岡部(過去)「ええい、そんなことを気にしてどうする!! なぞの人工衛星のようなものが出現するのを俺は見たのだ!!」
まゆり(過去)「ええー!? まゆしぃは、何もなかったと思うのです」
岡部(過去)「そんなはず…あれ?」
ダル(………)
岡部(過去)「う、うむ……。おかしいな、俺は確かに……」
マユシイノイッタトオリナノデス スマンマユリ
ダル「………」
ダル「……ふう。行ったかな?」
ダル「あー、ステルス機能つけといて良かったおー。まさかオカリンたちが見に来るとは」
ダル「しかし、本当に帰ってきたんだな、僕。オカリンたちがまだ半分子供だったお。まあ、この古いラジ館見たときからなんとなく実感はあったけどさ」
ダル「コミマか……。確か、僕が由季たんを初めて見たのがあのコミマだったっけ」
ダル「……ん? まてよ、ということは………」
初めて会ったコミマ
↓
運命的な出会い
↓
運命の赤い糸
↓
えんだあああああああああああああああああ!!!!!
ダル「!!!!!」
ダル「これだ!! これで行くお!!! そうすれば、きっと由季たんも……フヒ、フヒヒ」
ダル「そのためには……、ええと、あれをこうして、これを………」
~~~~~~~~~~
2010.08.15
~東京ビッグサイト~
ダル「フヒヒ……やってきましたビッグサイト!! コミマ!!」
ダル「僕の作戦はこうだお」
僕、僕(過去)を尾行する
↓
僕(過去)、由季たんの近くに偶然行く
↓
僕、僕(過去)に足を引っかけて転ばせる
↓
優しい由季たんは僕(過去)を助ける
↓
僕(過去)、一目ぼれ
↓
僕(過去)、由季たんに一生萌え萌え☆キュン
↓
えんだあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
ダル「オゥフwwwwwwwwww完璧すぎるおwwwwwwwwwwwwコポォwwwwwwwwww」
ダル「そうと決まれば……」キョロキョロ
ダル(過去)「あぢ~~…、溶けるお~~………」ノソノソ
ダル「見つけた!! ここから僕を尾行するお!!」
岡部(過去)「うーむ…、それがまゆりのメールが要領を得なくてな」
ダル(過去)「ちょ、じゃあこの会場くまなく歩かなきゃダメってことかよ! ふざくんな!!」
岡部(過去)「俺に怒っても仕方ないだろう! ええと…、犬の隣を左に曲がって、転がってる空き缶の右をまっすぐ……」
ダル(過去)「その目印で本当に大丈夫なん?」
岡部(過去)「大丈夫ではないから迷っているのではないか!」
ダル「……ん?」
おまえら「フヒヒwwwwこっちに視線お願いしまーすwwwwwwww」
???「はーい! これでいいですかー?」
おまえら「コポオwwwwwwwwwwwwww」パシャパシャ
ダル「あれは……、まさしく!!」
由季「えへっ、こうかな?」
おまえら「フヒヒ、かわい杉ワロタwwwwwwwwwwwwwwww」パシャパシャ
ダル「由季たん!!」
ダル「……おっと、いけないいけない。見とれてる場合じゃなかったお。えっと、僕(過去)に先回りして、足を……」
ダル(過去)「いやー、人が多いお……」
岡部(過去)「おい、気をつけろよダル」
ダル(過去)「わかってるって。僕がコミマ何回目だと思ってるん?」
ダル「よし、今だ!!」
ゲシッ
ダル(過去)「わっ!!」ヨロッ
岡部(過去)「ダル!」ガシッ
ズテーン!!!
「いてててて……」
由季「だ、大丈夫…?」
「あ、ああ……」
ダル「……ん? 僕ってあんな声だったっけ?」
由季「ほら、捕まって…」
「すまない……」
ダル(過去)「お、オカリン!! 大丈夫?」
岡部(過去)「ああ、平気だ。そこのレイヤー、誰かは知らないが、礼を言わせてもらおう」
由季「あ………」ポー
岡部(過去)「……? どうしたのだ?」
由季「い、いえっ! えへへ、怪我がなかったならよかったです」
ダル「ま、まさか」
岡部(過去)「あ、ああ……」
由季「あ、あのっ! わたし、阿万音由季って言うんですけど、よかったら連絡先を教えていただけませんか?」
ダル「wwwwwwwwwwwwwwww???????wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
由季「凶真さん……」ポー
ダル(過去)「オカリンパねえ。なんていうか、パねえ」
ダル「パねえじゃないおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」ドスドスドスドス!!!
岡部(過去)「…ん? な、なんだ今の人は?」
ダル(過去)「ただの僕みたいな拗らせたキモオタっしょ。オカリン爆発しろ」
~~~~~~
~ラジオ会館~
ダル「はあ、はあ、はあ……。認めない、こんな過去を僕は認めないお!!!」
ダル「幸いまだ燃料は残ってる……。僕は何度でも抗ってみせるお!!!!」
キュイイイイイン
~~~~~~
~東京ビッグサイト~
ダル「さっきはオカリン対策を忘れてたお。オカリンをあらかじめ何らかの形で引き離してからやればうまくいくはず!」
ダル(過去)「あぢ~~…、溶けるお~~………」ノソノソ
ダル「いた! また尾行を開始するお!!」
~~~~~~~~
ダル「ええっと、今度は後ろからオカリンのズボンを……えいっ」
ズリッ!!
岡部(過去)「ファッ!?」
ダル「あ、ミスってパンツまでずらしちゃったお。まあいいか、そこですかさず僕に足を……、えい!」
ダル(過去)「わっ!!」
ズテーン!!!
ダル「キターーーーーー!! これで僕が転んだお!! ミッションコンプリート!!」
由季「……っ」ポー
ダル「フヒヒ、僕に見とれて……って、あれ?」
ダル(過去)「いててて……、ありがとうまゆ氏。あれ? オカリンは?」
まゆり(過去)「オカリンなら……あれ? あっ……/////」カアアアア
ダル(過去)「? まゆ氏、なにを……」クルッ
ダル「あれ? なんかオカリンの周りが騒がしいような……」
岡部(過去)「お、俺は悪くない!! 俺は!! このズボンが勝手に!! ええい、早く上げなくては!!」カチャカチャ
警備員「ほら、早くそれしまって。いつまでもブラブラさせてないでさ。それ終わったら警察行くよ」
まゆり(過去)「は、はわわわわ……、お、オカリンの、オカリンのオカリンがはわわあわわわわ」
ダル(過去)「」
ダル「」
由季「……ステキ…………」ポー
ダル「え!?」
由季「あのレイヤーさんの知り合いみたいだから、後であの人に連絡先教えてもらおうっと」エヘヘ
ダル「ええええ!?」
ダル「ええええええええええええええええ!?」
ダル「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!」ドスドスドス!!
~~~~~
それから……
ダル「僕(過去)のズボンをおろすお!!」ズリッ
ダル(過去)「きゃあああ!!!」パオーン
警察「はいはい、こっち来てね」
由季「サイテー」
ダル「むおおおおお!!!!」
~~~~~
ダルは………
ダル「電話をかけてオカリンを立ち止まらせるお!!」
岡部(過去)「ん? 俺だ、要件を……って、うわっ!」ドンッ
由季「きゃっ!!」ドサッ
岡部(過去)「すまない、大丈夫か?」
由季「いたた……、あ………」ポー
ダル「むおおおおおおお!!!!!」
~~~~~
幾千の旅を……
ダル「原点回帰! 僕を再び転ばせるお!!」
ダル(過去)「うわっ!!」ドテッ
由季「大丈夫ですか?」
ダル(過去)「………」シーン
由季「……え? だ、大丈夫ですか!!」
岡部(過去)「きゅ、救急車だ!! 救急車をよべ!!!」
ダル(過去)「」チーン
ダル「むおおおおおおおおお!!!!!!」
~~~~~~
繰り返した………
ダル「もう僕が脱いじゃうおwwwwwww」スポポーン
警察「ちょっと署まで」
岡部(過去)「うわあ………」
まゆり(過去)「まゆしぃは、小さいなって思ってしまうのです」
ダル(過去)「禿同」
ダル「むおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」
~~~~~~
キュイイイイイイン
ダル「はあ、はあ、はあ………」
ダル「な、なぜ!? なぜうまくいかないんだお!!」
ダル「ぬがあああああああ!!!!!!」ガンガンガン
ダル「………あ、」
ダル「いいこと思いついたお」
ダル「別に恋愛なんてしなくても子供なら作れるんだお」
ダル「フヒ、フヒヒヒヒ、フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
ダル「えーと、9月27日から280日を引いて、と」
ダル「さあって、とりあえず2016年の年末あたりまで行こうかな」
ダル「飛べよおおおおおおおおおお!!!!!!」
キュイイイイイイイン
~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
~~~~~~~~~
2010.7.29
~秋葉原駅前~
鈴羽「あれ? 岡部倫太郎じゃん! ちいーっす!!」
岡部「なんだ、バイト戦士ではないか。いいのか、こんなところでサボっていて?」
鈴羽「まあね。……あたしは父さんを探しにこの街に来たから。これはその調査の一環だよ」
岡部「なに? 父親を……?」
鈴羽「うん。……あたしは、父さんを……必ず見つけて見せる」ギリッ
岡部「鈴羽……」
~~~~~~
2010.8.13
まゆり「えへへ、まゆしぃね、スズさんのお父さんが誰なのか、わかっちゃったのです」
鈴羽「……え?」
岡部「本当か、まゆり!!」
まゆり「えっへへー、えっへん!」
ダル「そ、それで? 阿万音氏の父親っていうのは……」
まゆり「あのねー」
鈴羽「……」ゴクリ
まゆり「スズさんのお父さんはー……」
まゆり「ダルくんなのでーす!」
岡部「………はあ?」
紅莉栖「あははは! まゆり、面白い冗談言うのね」
ダル「ちょ! 牧瀬氏、それはひどいお! まあ、僕も信じられないけど……」
まゆり「違うよー! 冗談じゃないのです」
紅莉栖「大体橋田が、結婚できるわけないじゃない」
鈴羽「………」ギリッ
ダル「ひどいお!!」
岡部「おいまゆり、そんな冗談をバイト戦士の去る日に……」
鈴羽「別にいいよ、岡部倫太郎。……それより椎名まゆり、理由を聞かせてもらおうか」
まゆり「いいよ~☆ あのねー、このバッチはね~………」
~~~~~
紅莉栖「バレルって……、樽って何よ」
まゆり「でもでも、説明はつくでしょ?」
岡部「う、うむ、確かに……。……じゃあ」
鈴羽「橋田至が……あたしの父さん…?」
紅莉栖「ありえない……。けど、筋は通っちゃったわね……」
鈴羽「父さん………」
ダル「あ、あう……」
鈴羽「父さん……っ!!」
ギュッ
鈴羽「あたしね、未来から来たんだよ……?」
ダル「う、うん」
鈴羽「父さんに会うために……」
鈴羽「そして………」
鈴羽「…………」
ダル「………?」
岡部「す、鈴羽?」
紅莉栖「阿万音さん?」
シュッ
ダル「うわ!」ドタッ
紅莉栖「あ、阿万音さん? 何を……」
岡部「お、おいバイト戦士!! よせ!!」
岡部(目を疑ったのは俺だけではないだろう。なぜなら、鈴羽はダルに向かってその拳を突き上げたからだ。……ダルが偶然よろめかなければ、その拳は間違いなくダルの顎を的確にとらえていただろう)
鈴羽「あたしは……あたしは……!!!」フーッ フーッ
まゆり「す、スズさん!?」
ダル「ひ、ひあああ!!! ひああああああああ!!!」
鈴羽「父さんを見つけて、殺してやるためにこの時代に来たんだ!!!!!」
まゆり「スズさん!! やめてえっ!!!!!!」
ダル「す、すす、鈴羽! お、おちおち、落ち着いて……」
鈴羽「うるさい!!! 気安くあたしの名前を呼ぶな!! この……」
鈴羽「強姦魔!!!!!!!」
ダル「……え?」
岡部「……は?」
紅莉栖「……ん?」
まゆり「……?」
鈴羽「……っ!! こいつは!! こいつは!!」
鈴羽「2016年の12月21日に!! あたしの母さんを強姦したんだ!!」
ダル「えええ!?」
鈴羽「『鈴羽たんのためだよ、フヒヒ』とかいいながら襲いやがって!! そのせいであたしの母さんは精神を病んだままあたしを生んで、訳の分からないままに鈴羽と名付けたんだ!! 全部、全部お前がいけないんだ!!!!」
紅莉栖「うわあ……」
まゆり「ダルくん……、まゆしぃはとってもとっても、とーっても悲しいのです……」
ダル「ちょ、ま、待ってほしいお! そ、そりゃあ僕だって魔がさすときがあるのかもしれないけど、でも今の僕は何もしてないお! 無実だお!!」
鈴羽「当たり前だ!! 何かされてからで堪るか!! 明後日のコミマで、母さんはお前と初めて出会ったんだ! その前にお前を……!!!」
ダル「そ、そんなのあんまりだお!! ほ、ほら、オカリンたちも何か言ってやってほしいお!!」
まゆり「………」
紅莉栖「………ないわー」
岡部「ダル………」
岡部「ダル……、すまない」
ガシッ
ダル「……え?」
紅莉栖「橋田、まだ何もしてないあんたには気の毒だけど、性犯罪を未然に防ぐためにしかたないのよ」
ダル「ちょ!! 今その話聞いたからもう何もしないお!! ていうか、聞かなくても僕そんなことしないお!!」
まゆり「橋田さん……、まゆしぃもね、スズさんを悲しませたくはないのです」
ダル「ま、まゆ氏……橋田さんって」
岡部「ダル……、そういうことだ」
ダル「は、離せ!! 僕は無実だおー!!!」ジタバタ
鈴羽「ありがとう、みんな……」
鈴羽「ここで運命を終わらせる……!!!」
ダル「え、ちょ」
ぎゃあああああああああああ!!!!!……………
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~
2017.09.27
ギュウウウウウウウン
岡部「ぐっ……この感覚……、リーディングシュタイナーか……」
岡部「ダルが過去へ飛んだことで世界線が変わった……? でも一体どのように」
紅莉栖「倫太郎ー? どうしたの、顔真っ青よ?」ヒョイッ
岡部「あ、ああ……紅莉栖」
紅莉栖「あによ」
岡部「ダルはどうなったか知らないか?」
紅莉栖「え……?」
紅莉栖「それってもしかして、橋田のこと?」
岡部「な、なんだ…。知らないのかと思ってびっくりしたではないか」
紅莉栖「知らないわけないでしょうが、あんなインパクトの強い死に方した奴」
岡部「そうだよな。……ん?」
紅莉栖「?」
紅莉栖「だーかーらー。あんな死に方した奴なんて忘れられないって言っとろーが」
岡部「ま、まさか……。ダルは死んだのか……?」
紅莉栖「……あんたまさか覚えてないの? 橋田なら……。そっか、もう七年になるんだ」
紅莉栖「橋田なら、七年前にラジ館の屋上で阿万音さんに殺されたじゃない」
岡部「」
紅莉栖「タイムパラドックスのせいで阿万音さんまで消えちゃったけどね。阿万音さんのお母さんになるはずだった、ほら、あの元コスプレイヤーの由季さんを強姦したって、恨まれてたじゃない。本当に忘れたの?」
岡部「あ、あ、あああああ………」
紅莉栖「いやー、あの時は橋田を押さえていいものか迷ったけど、その後阿万音さんも消えちゃったってことは、あの子の言ってたことは本当だったんだろうし……。これでよかったのよね、きっと」
岡部「なん、だよこれ………」
紅莉栖「……倫太郎?」
岡部「なんだよこれええええ!!!!!!!」
岡部「俺は……、こんな未来を、認めない!!!」
紅莉栖「ちょっと! そのタイムリープマシンをどうするつもり!? ねえ、りんたr」
岡部「飛べよおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」バチバチバチ
―――――――これは
救えなかった世界の
物語―――――――――――
シュタインズ・ゲート ダル
To be continued…
進行上to be continuedにしたけど
続くわけないwww というか続けちゃいけない
今日は鈴羽の誕生日ってんで急きょ用意してみたんだお。
でも鈴羽甘々SSとかもう書き尽くされちゃってネタがないからこんなのになっちゃったお
本物のダルはこんなことしないお
最後に
鈴羽誕生日おめでとう!!!
世界一かわいいお
ちゅっちゅっ
鈴羽は俺の嫁
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Entry ⇒ 2017.10.05 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
真帆「オカリンさーん。あれ、寝てるわね」岡部「……」グーグー
岡部「……」スースー
真帆「こんなところで寝てたら風邪ひくわよ」
岡部「……」グーグー
真帆「ここの所徹夜続きだったから……仕方ないかしらね」ハァ
岡部「……」スピースピー
真帆「どうにかしてベッドの方に運ばないと……」
岡部「……」スカースカー
真帆「……私だって最近ちょっとは鍛えてるんだから、ヒョロヒョロのオカリンさんぐらい持って運べるわよね」
岡部「……」グースカ
真帆「んっ、しょ……っ! うっ、意外と重い……!」プルプル
岡部「……」ピーコロ
真帆「よいしょ……よいしょ……」ズルズル
真帆「ふわっ!」ズテッ
ビターン
岡部「……」
真帆「な、なんだかオカリンさんに襲われてるみたいな体勢になっちゃったわ」ドキドキ
真帆「とりあえず抜け出さないと……」ズルズル
岡部「……」
真帆「ふうぅ、なんとか抜け出せたわ」フゥ
岡部「……」
真帆「……こらー、起きなさーい」
岡部「……」スゥスゥ
真帆「むぐぐ、気持ちいいくらい熟睡してるわね」
岡部「……」クースピー
真帆「……このー」ムニー
岡部「……」
真帆「ほっぺに摘まめる肉があんまりないわね。最近痩せてきたからかしら……」ムニムニ
岡部「……」
岡部「……」
真帆「……」フニフニ
岡部「……」
真帆「……はっ! なぜか上の空で触り続けてしまったわ」ブニブニ
岡部「……」
真帆「……起きてないわよね」
岡部「……」
真帆「……最近私に変な渾名付け始めたでしょ」プクー
岡部「……」
真帆「ロリッ子とかゴーヤチャンプル―とか……あなたがそんな人だとは思わなかったわ」ムニー
岡部「……」
真帆「私は曲がりなりにもあなたよりも年上なんだからねっ」ムニムニ
岡部「……」
岡部「……」
真帆「真帆って呼んでくれるようになったのは嬉しいけど……変な渾名つけてなんて言ってないんだからっ」ムニムニ
岡部「……」
真帆「聞いてるの? んー……お、岡部君!」フニフニ
岡部「……」
真帆「……ま、真帆お姉さんの言うことをちゃんと聞きなさいっ!//」ドキドキ
岡部「……」
真帆「私は岡部君をそんな風に育てた覚えはないわよっ」ムニー
岡部「……」
真帆「……ま、真帆って呼んでくれないと、私もな、名前で呼んじゃうんだから」ドキドキ
岡部「……」
真帆「り、りんたろ//」
岡部「……」
真帆「~~~~~~ッ//」プシュー
岡部「……」
岡部「……」スースー
真帆「……それにしても」
岡部「……」クークー
真帆「もともと細かったけれど、最近はもっと痩せてきたわね、オカリンさん」
岡部「……」グゥグゥ
真帆「……あなた、無理しすぎよ」
岡部「……」スゥスゥ
真帆「2025年までは死なないなんて、絶対の保証じゃないんだから……」
岡部「……」
真帆「……みんなあなたを支えるために頑張ってる」
真帆「あなたがいなくなったら、みんな悲しむわ」
真帆「私だって……」ジワ
岡部「……」
真帆「っ、ごめんなさいね。こんな話をするつもりじゃなかったの」
岡部「……」
真帆「だけど、2025年まであと10年以上もあるわ。……根を詰めすぎると、きっと持たないわよ」
岡部「……」
岡部「……」スピー
真帆「あなたが不健康そうに見えるのが悪いのよっ」ムニムニ
岡部「……」
真帆「髭だってこんなに伸ばして……」サワサワ
岡部「……」
真帆「……」サワサワ
岡部「……」
真帆「……//」ポー
岡部「……」
真帆「……はっ! 私は何を」
岡部「……」
真帆「だ、誰にも見られてなくてよかったわ……」
岡部「……」
真帆「でも、意外と触り心地いいわね、オカリンさんの髭……」
岡部「……」
岡部「……」
真帆「……」ウズウズ
岡部「……」
真帆「……」サワサワ
岡部「……」
真帆「……じょりじょりー」ホオズリ-
岡部「……」
真帆「……っ// こ、これじゃ橋田さんに変態だなんてとても言えないわね……//」スリスリ
岡部「……」
真帆「……ちくちくする」ジョリジョリ
岡部「……」
真帆「……」スリスリ
岡部「……」
岡部「……」
真帆(やっぱり端正な顔立ちなのよね……身だしなみに気を遣わなすぎるけれど。……私の言えた義理じゃないか)
岡部「……」
真帆(身体だってお世辞にも鍛えてるとは言えないし……)
岡部「……」
真帆(でも、いつだって私の事を守ってくれた……)
岡部「……」
真帆(私にとってオカリンさんは……友人よりももっと……)
真帆「……オカリンさん」ドキドキ
岡部「……」
真帆「……」ソーッ
岡部「……」
真帆「……」ドキドキ
岡部「……」
真帆「……」チュッ
岡部「……」ビクッ
真帆「……~~~~ッ!!」カアァァァ
真帆「ほっぺただけど……キスしちゃった……」ドキドキ
岡部「……」
真帆「……うぅ、私も変態なのかしら」
岡部「……」
真帆「でもごめんなさい……オカリンさんの顔が近くにあって……我慢出来なくて……」
岡部「……」
真帆「……」
岡部「……」
真帆「……あはは、なにやってるんだろ、私」ジワ
岡部「……」
真帆「オカリンさんの心の中にいるのはあの子なのに……一人で勝手に盛り上がっちゃって……」ポロッ
岡部「……」
真帆「こんなに近くにいるのに……遠いなぁ……」ポロポロ
岡部「……」
真帆「やっぱり私は……『アマデウス』にはなれないのね……」ポロポロ
岡部「……」ポタポタ
岡部「……」
真帆「まったく、私のどこにこんなに未練が残ってたのかしら」ズズッ
岡部「……」
真帆「ごめんなさいね、オカリンさん。こんなことは、これきりにするから」
岡部「……」
真帆「私たちは紅莉栖を救う。過去に消えた鈴羽さんやまゆりさんも救う」
真帆「かがりさんだって、フブキさんだって、レスキネン教授だって、レイエス教授だって」
真帆「みんな幸せになれる世界線を作る。世界を救う」
真帆「それでいいのよね。それ以外には何もいらないのよね」
岡部「……」
真帆「……私とオカリンさんの関係は、ただのラボメン同士。それだけ」
岡部「……」
真帆「……お布団持ってくるわね。冷えちゃいけないし」クルッ
岡部「……待て、真帆」グイッ
真帆「ふぇっ!?」ビクッ
真帆「ふぇ、え、え、お、オカリンさん、いつから……」
岡部「……お前が俺を運ぼうとして転んだ時からだ」
真帆「ほ、ほとんど最初からじゃないのよっ!」
岡部「お前がなにやら呟き始めたから、起きるタイミングを逃したのだ」
真帆「うぅ……できれば最後まで寝たままのフリをしてほしかったわ……//」カアァァァ
岡部「まあそう落ち込むな、真帆お姉さん」
真帆「やめてえええっ!!//」ジタバタジタバタ
岡部「別に俺の事を倫太郎と呼んでもいいのだぞ?」ニヤニヤ
真帆「ううううう……//」プシュー
岡部「まあ、今後のからかい材料を手に入れられたのは僥倖として」
真帆「ぜ、絶対橋田さんとかフェイリスさんの前では言わないでよっ!?//」
真帆「なっ、なんのことかしらっ?」
岡部「……声が上ずっているぞ。お前も、嘘を吐くのが下手だな」
真帆「……もう、隠してもしょうがない、か」
真帆「……そうよ。私はオカリンさんの事が好き」
岡部「……」
真帆「辛い時には支えてくれて、危ない時には守ってくれて……」
真帆「私が非日常に巻き込まれてしまってから、いつもあなたが私の事を守ってくれた」
真帆「だから好きになった」
岡部「……ならば」
真帆「……だけど、いいの」
岡部「……何?」
真帆「私の想いなんて、あなたの決意を鈍らせるだけ」
真帆「あなたはただ、紅莉栖の事を想っていれば、それでいいの」
真帆「私もただ、『運命石の扉』へと至る礎となれれば、それでいい」
真帆「想いは世界線を越えることはない。私の想いは、辿り着くべき未来には必要ないものだから」
真帆「だから、いいのよ」
真帆「自己犠牲だなんて、私はそんなつもりは……」
岡部「そうやって、自分を殺して、ただ他人の為に尽そうとする。俺にとってはあまりに眩しすぎて――自分に腹が立って、仕方がない」ギュッ
真帆「ふぇっ、ちょっと、オカリンさんっ!?//」
岡部「紅莉栖は、自分を犠牲にしてまゆりを救ってくれた。……俺は、何もできなかった。あいつに、紅莉栖に、何もしてやれなかった……」ギュウゥ
真帆「おっ、オカリンさん? く、苦しいよ……」
岡部「そして、人知れず自分を犠牲にしようとしていたお前の事にも、気が付けなかった」
真帆「……」
岡部「比屋定真帆。はっきり言うぞ」
真帆「な、なに?」
岡部「俺は……お前が好きだ」
真帆「……えっ、えっ?」
岡部「お前は俺の事を、どう思っている……?」
真帆「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
岡部「あいつは……紅莉栖は……大切な存在だ」
真帆「それなら、それなら! 私の事なんて!」
岡部「だが……俺はあいつを、見捨てたんだ」
真帆「……っ
岡部「あいつを救うのを……諦めたんだ」
岡部「自分のしたことが怖くて、辛くて、自分の責任から逃げ出したんだ」
岡部「そんな俺が……あいつを想う資格なんて、ない」
岡部「あいつの事を想えるのは……あいつを死から救い出すことのできた、岡部倫太郎だけだ」
真帆「……だけど、そんなのっ……」
岡部「お前は、自分はアマデウスにはなれないと言ったな」
真帆「……ええ、そうよ。私は、どこまでいってもあの子の影を追い続けることしかできない」
真帆「私は、『神に愛されしもの』にはなれない。私は結局――アマデウスに焦がれるだけの、サリエリにしか、なれない」
真帆「……どうして、岡部さんがそんなこと」
岡部「『アマデウス』はこう言っていた」
岡部「『私は、自分を凡庸なる人々の代表だと考えていた。そして、貴女が常に私にとっての目標であり、貴女こそがまさにアマデウスその人だった』――と」
真帆「……"紅莉栖"」
岡部「……さっき、辛いときに支えてくれたから、好きになったと言ったな」
真帆「……ええ」
岡部「俺だって同じだ。お前がいなければ、きっと俺は今この場に立ててはいないだろう。鈴羽やまゆりを助けることも、できなかっただろう」
真帆「……」
岡部「この世界線で、一人で勝手に塞ぎこんでいた俺に、立ち上がる力をくれた。だから惹かれた。だから好きになったんだ」
真帆「オカリンさん……」
岡部「過ごした日々の思い出も、すべては世界線が変われば塗り替えられてしまうかもしれない……」
真帆「……」
岡部「だが、覚えている」
岡部「遥か彼方の世界線の記憶でも……俺たちは心のどこかにそれを持っている」
岡部「人の想いは世界線を越える。誰でも、必ず」
岡部「だから、無駄になんてならない」
真帆「……ぅ」ジワ
岡部「それに――少しくらい幸せになったって、バチは当たらないさ」
岡部「幸せそうなダルを傍から見るのも腹が立つし、な」
真帆「……最後の最後で締まらないわよ、バカぁ……」ポロポロ
岡部「比屋定真帆、俺はお前が好きだ」
岡部「お前は俺の事を、どう思っている?」
岡部「もう一度、お前の口から聞かせてほしい」
真帆「……私、は」
岡部「……」
真帆「うぅうう……//」
岡部「……一度言っているのに、なぜ」
真帆「しっ、仕方ないでしょ! 改まって言おうと思うと、どうしても……」
岡部「……」
真帆「うぅ……そ、そうだっ」
真帆「め、目を閉じて!」
岡部「……なっ」
真帆「と、閉じなさいよっ」
岡部「……くくっ」
岡部「ははははははは!」
真帆「ど、どうして笑うのよぅ……」
真帆「な、なんの話よ……」
岡部「生憎だが目は閉じない。もう返事を聞けないのは御免だからな」ガシッ
真帆「ふぇっ」
岡部「ちゃんと目を見て、返事をしてほしい」
岡部「頼む」
真帆「わ、私は……」
「あなたの事が――」
終
かなり無理やりになってしまったがご容赦ください
乙・プサイ・コングルゥ
真帆SSもっと増えろ
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Entry ⇒ 2017.08.28 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
鈴羽「おっはー!岡部倫太郎ー」
シーン…
鈴羽「あれ?誰も居ない?……何これリストバンド?」ヒョイ
鈴羽「んー?なになに未来ガシェット試作機?これ未来ガシェットなの?ふーん」クルクル
鈴羽「うーん見た感じはただのリストバンドだけど……」
鈴羽「ひょっとして戦隊モノみたいに変身できるとか?」ゴクリ
鈴羽「…………」
カチリ
鈴羽「へ、変身っ!!」シャキーン!
岡部「……何をしているのだバイト戦士よ?」
鈴羽「うひゃわう!!?」ガタタン
鈴羽「い、いきなり入ってこないでよ!!?」
岡部「ここは俺のラボなのだが!?」
鈴羽「み、みた?」
岡部「う、うむ……」
鈴羽「う、うう~出来れば皆には内緒にしててほしいな……」
岡部「安心しろ、お前がそう言うならだれにも話さん」
岡部「しかしお前が仮面ライダーファンだったとは……」
鈴羽「や、やっぱり変かな?」
岡部「いや?男のダルだってプリキュアを見るし問題ないだろう」
鈴羽「橋田至……流石にそれはどうなの……」
岡部「それに俺は男だ女だの色眼鏡で人の好みの良し悪しを決めるような男ではない」
鈴羽「岡部倫太郎……」
岡部「気持ちも分からんでもないしな……っと、これはマッドサイエンティストとしては
失言だったかな?フゥーハッハッハッハッハ!!」
鈴羽「もう……あ、そうだ!」スッ
岡部「ん?なんだそのリストバンド二つあったのか」
鈴羽「岡部倫太郎もこれ着けて一緒にポーズを取ろう!」
岡部「な、何故俺がそんな事をせねばならんのだ!」
鈴羽「あたしこういう決めポーズを誰かと一緒にやってみたかったんだよね」
岡部「お、俺でなくてもいいだろうが!」
鈴羽「だって他の人に頼むのは恥ずかしいもん!」
岡部「俺はいいのか?」
鈴羽「岡部倫太郎にはもうばれちゃったし……ダメかな?」
岡部「ぐっ……い、一回だけだぞ!」
鈴羽「やったぁ!君ってホントいい奴だよね!!」
岡部「やれやれ、この鳳凰院凶真ともあろう者がヒーローごっこなど……」
鈴羽「いつもやってる事と同じようなもんじゃないの?」
岡部「馬鹿者!あれこそが俺の真の姿なのだ!!」
鈴羽「うーん、よくわからないや」
岡部「ぐぬぬ……いつ助手たちが来るかわからん、さっさと終わらせるぞバイトライダーよ!」
鈴羽「バイトライダーってあたしの事?じゃあ君はマッドライダー?」
岡部「狂気の走り屋か。うむ、悪くないな」カチリ
鈴羽(適当に言ったんだけど結構気に入ったみたいだね)
岡部「フゥーハッハッハッハ!我こそは狂気の走り屋(マァッドライダー)※ネイティブな発音※、仮面ライダー一号!」シャキーン!
鈴羽「えと、ふぅーはっはっは!バイトライダーは仮の姿!悪の支配を正すために未来から来た未来人!仮面ライダー二号!!」シャキーン!
岡部「き、決まった……」ジーン…
鈴羽(何か良く分からないけどあたしより感動してる)
岡部「ふぅ、なかなかいい前口上だったな鈴羽よ」
鈴羽「い、いま名前で……」
岡部「?どうしたバイト戦士よ」
鈴羽(戻った……)ショボン
鈴羽「なんでもないよ。そういえばこのリストバンドって岡部倫太郎の発明?未来ガシェットって書いてあったんだけど」
岡部「何?俺はこんなもの作った覚えはないぞ?」
鈴羽「え?じゃあこれ……」
岡部「ダルか紅莉栖が作ったのか?いやしかし俺は何も……」
鈴羽「う~ん、どちらにしてもとりあえず外した方がいいかもね」
岡部「そうだな、勝手に使ったとなってはいったい何を言われるか……」
鈴羽「……あれ?」グッ
岡部「……どうした?」
鈴羽「は、外れない……」サァー
岡部「何っ!?そんな馬鹿な……」カチャカチャ
岡部「だ、ダメだこっちもビクともせん……」
鈴羽「ど、どうしようこれ……」
岡部「お、落ち着け!きっと解除条件があるはずだ。ラボにメモか何かあるかもしれん、それを探すぞ!」
鈴羽「オーキードーキー!」
―――30分後―――
岡部「くっ……パソコンの中まで調べてみたが……」
鈴羽「見つかったのは橋田至の隠しエロ画像フォルダだけだったね……」
岡部「ぐぬぬ……万事休すか」
鈴羽「はぁ……手がかりは無しかー」
岡部「仕方ない、休憩がてらに飲み物でも……ぬ、ドクぺの備蓄がそろそろ切れるな」プシッ
鈴羽「あーあたしそろそろバイトの時間だ……いかなきゃ」スクッ
岡部「そうか、まぁ仕方あるまい。俺の方でリストバンドについては何とか調べておこう」
鈴羽「ごめんね、任せっきりで……」
岡部「気にするな。これもシュタインズ・ゲートの選択だ」
鈴羽「あはは、君って良い奴だよね」
岡部「ええい、いいから早く行け!遅刻しても知らんぞ!」プイッ
鈴羽(顔赤くなってる、本当に素直じゃないなぁ……)
鈴羽「ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて行ってくるね」ガチャ
鈴羽「って痛っ!!?」ビクッ
岡部「ぐああああああああ!!?」ビリビリ
鈴羽「ちょ、岡部倫太郎大丈夫!!?」ガチャ
岡部「ななななんだ急に電流が流れたように痛みが……」ビリビリ
鈴羽「う、う~んどうもこのガシェット同士が一定距離離れると電流が流れるみたいだね……」
岡部「な、何でお前はそんな平然としているのだ……」
鈴羽「慣れてるから?」
岡部「普通は慣れんぞ……しかし、これでは俺たちは常に二人一組で動かなければならないという事ではないか?」
鈴羽「そ、そうなるね……」
岡部「くっ!もしもし俺だ!どうやら『機関』の罠に嵌められたらしい!至急危険物処理班の出動を要請する!!」
鈴羽「う~ん……まいったな、あたし今日バイトあるのに……」
岡部「致し方あるまい、こうなってしまった以上恥を忍んで助手かダルに連絡を……」カパッ
おかけになった電話は、電波が届かない所か、通話が―――
岡部「助手もダルも出ない……だと?」
鈴羽「ええ!?ど、どうしよう……」
岡部「……はぁ、仕方ないな。行くぞ鈴羽」
鈴羽「え?」
岡部「一応出来るだけ邪魔はしないようにする。俺が一緒に居なければ仕事に支障が出るだろう?」
鈴羽「つ、着いてきてくれるの?」
岡部「ああ、今日はラボには誰も来てないようだしな」
鈴羽「……なんか、ごめんね。あたしの所為で」
岡部「気に病むなバイト戦士。なに、助手かダルに連絡を取るまでの辛抱だ」
鈴羽「……君って本当にいい奴だね」
岡部「……お前はラボメンだ。困ったときはお互い様だろう」
鈴羽「……ありがとう」
鈴羽(本当に……良い奴過ぎて困るくらいだよ……)
―――――ブラウン管工房
岡部「お前のバイト先ってブラウン管工房だったのか……」
鈴羽「そうだよ?」
天王寺「なんで岡部まで来てんだ?ついに家賃を払う気になったか?」
岡部「あーこれはですねミスターブラウン、深い訳が……」
鈴羽「現金で返せないからここで働いて少しでも返すってさ」
岡部「お、おい!?」
天王寺「ほう?お前にしては随分とまっとうな考えじゃねえか」
鈴羽(働いてた方が一緒に居ても不自然に見えないでしょ?)ヒソヒソ
岡部(た、確かにそうだな……)ヒソヒソ
岡部「ところでミスターブラウン?しあつ……萌郁は?」
天王寺「あん?ああ、あいつはなんだか用事があるらしくてな。今日は休みを取っている。
だから臨時バイトをそいつに頼んだんだ」
岡部「しかし一日位ならミスターブラウン一人でもなんとかなるのでは?」
岡部(というかそもそもこのブラウン管工房に人手が足りないなんてあり得んだろう)
天王寺「生憎今日は丁度綯の授業参観があってよぉ……午前中はどうしても店を開けなくちゃなんなくてな」
岡部「なるほどそれで……」
天王寺「つーわけだ、バイト、岡部。店番をよろしく頼む」
岡部「うむ、承知した」
鈴羽「オーキードーキー。任せてよ店長!」
岡部「……本当に客が来ないな」
鈴羽「まぁ、ブラウン管の修理位しか需要ないからね……」
岡部「新規でブラウン管など余程の物好きでなければ買わんしな」
まゆり「あれー?オカリンこんな所で何してるのー?」
岡部「む、まゆりか。これには深い事情があってだな……」
鈴羽「あははこれのせいで離れられなくなっちゃってさ」フリフリ
まゆり「んーリストバンド?わぁ!オカリンと鈴さんおそろいだねぇ」ニコニコ
岡部「違う違う!これは未来ガシェット(仮)だ!」
鈴羽「(仮)って……めんどくさい表現するね……」
岡部「これのせいで一定距離を離れると地獄のような拷問を強いられることに……」
鈴羽「電流が流れるだけなんだけどね」
まゆり「良く分からないけれどそのガシェットさん(仮)のせいで離れられないって事?」
岡部「うむ」
まゆり「そっかーねぇねぇ鈴さん?」
鈴羽「何だい?椎名まゆり」
まゆり「オカリンは鈍感さんだからこの機会にちゃんとアピールしなきゃダメだよ?」ヒソヒソ
鈴羽「ふ、ふぇ!?」ボンッ
まゆり「えへへーそれじゃあまゆしぃはそろそろ行くねー」
岡部「何だ、ラボによっていかないのか?」
まゆり「今日はメイクイーンでイベントがあるからちょっと早めにいかなきゃいけないのです」
岡部(成程、どおりでダルが携帯に出ない訳だ)
まゆり「ルカ君も今日は来れないみたいだから、オカリンも鈴さんもバイト頑張ってねー?ばいばーい」フリフリ
岡部「ああ、まゆりも気を付けてなー」
鈴羽「じゃ、じゃあねー」
岡部「?どうしたバイト戦士よ、顔が赤いようだが……」
鈴羽「な、なんでもないよ!」
岡部「?」
鈴羽(もう!椎名まゆりが変な事言うから岡部倫太郎の顔が見れないよ!!)ブンブン
岡部(急に首を振り始めたぞ……首筋でもこってるのだろうか……)
――――12時半過ぎ。
岡部「結局誰も来なかったな」
鈴羽「まぁ大体予想通りだけどね……」
天王寺「おうお前ら、真面目に店番やってたか?」
岡部「帰ってくるなりご挨拶だなミスターブラウンよ、朝から二時間ここから微動だにすらしなかったぞ」
鈴羽「お客さん一人も来なかったよ」
天王寺「まぁ分かってはいたんだがな」
岡部「このご時世ブラウン管なんぞ旧時代の遺物では集客は望めんだろう……」
天王寺「家賃千円アップだな」
岡部「ブラウン管の素晴らしさをもっと世間は理解すべきだろう、フゥーハッハッハ!」
鈴羽「君って本当にヘタレだよね……」
綯「あっ、鈴羽お姉ちゃんとオカリンおじさんこんにちはー」
岡部「何故俺だけおじさんなのだ!!」
鈴羽「だって岡部倫太郎老けてるじゃん」
岡部「ぐぬぬ……シスターブラウン!俺は決しておじさんなどでは……」
綯「ふぇ……ご、ごめんなさい……」
天王寺「岡部、家賃三千円アップな」
岡部「ちょ!?流石にそれは洒落にならん!!」
鈴羽「泣かせたらダメだよ岡部倫太郎、綯はまだ小学生なんだしさ」
岡部「ぐぬぬ……驚かせたのはすまなかった。しす……綯よ」
綯「ふぇ?(初めて名前で呼ばれた?)」ピクッ
岡部「だがその……一応俺は鈴羽と年齢は一緒なのでな……おじさんだと流石にちょっと傷つくのだ。
最悪呼び捨てでも構わんからおじさん呼びだけは勘弁してくれないか?」
綯「う、うん……ごめんなさいオカリン……お兄さん?」
岡部「うむ、それでいい。さっきはすまなかったな」ナデナデ
綯「(撫でられた!!)えへへ……オカリンお兄さんも私の事名前で呼んでくれませんか?」
岡部「それもそうだな……了解した、これからもよろしく頼むぞ綯よ」
綯「うん!///」
鈴羽(まさか小学生まで……)
天王寺「岡部」
岡部「どうしましたミスターブラウン?」
天王寺「何綯と仲良くなってんだ家賃一万円アップだ」
岡部「それは流石に横暴だろう!!?」
―――
鈴羽「ふー取りあえず山場は越えたね、安心したらお腹すいてきちゃった」
岡部「昼飯がてらにメイクイーンに向かってみるか、ダルなら間違いなくそこに居るだろう」
鈴羽「オーキードーキー」
―――メイクイーン
フェイリス「お帰りなさいませ―――あっ、凶真ぁ!」ヒシッ
岡部「入店と同時に抱き付いて来るな!!」
フェイリス「んニャー、凶真は恥ずかしがり屋なんだニャン☆」
鈴羽(なんか見てるともやもやする……)
岡部「フェイリス、ダルは居るか?」
フェイリス「ダルニャン?ダルニャンなら……」
橋田「フェイリスたんから愛あるハグだと?オカリンマジ爆発すべきだお!」
岡部「おおダル、やはりここか。お前に聞きたいことがあるんだが」
橋田「お?ついに僕のおすすめエロゲオブザイヤーを聞く気になった?」
岡部「そんなもの今後永久に聞かんから安心しろ、俺が聞きたいのはこいつの事だ」スッ
橋田「リストバンド?オカリンにしては随分シンプルなデザインだお」
鈴羽「あたしもつけてるよ」スッ
フェイリス「ニャニャ?凶真と鈴ニャンお揃いなのニャン!」
橋田「え?何?メイクイーンにまで赴いて僕にペアルック自慢?リア充爆発しろ!!」
岡部「違う!こいつはどうも未来ガシェット(仮)のようでな、外せなくて困っていたのだ」
橋田「(仮)ってまた面倒な言い方するお……」
鈴羽「橋田至は何か知らない?」
橋田「う~ん……ゴメン、少なくとも僕は作った記憶がないお。
開発室は最近牧瀬氏が占領してたし……」
岡部「という事は助手の発明で間違いなさそうだな」
鈴羽「う~んまいったなー……牧瀬紅莉栖が居そうな所なんて見当もつかないや……」
橋田「?それそこまで邪魔になるようにも見えないけれど……」
岡部「一定距離離れると電流が流れる仕組みらしくてな……」
鈴羽「だからこうやって午前中からずっと一緒に居るんだよね」
橋田「は?阿万音氏とくっつく事を強いられるとかむしろご褒美じゃないですか!!」
岡部「お前は本当に見境のないHENTAIだな……」
フェイリス「流石ダルニャン……」
橋田「まぁオカリンと常に一緒に居る事を強いられている阿万音氏には地獄かもね」
岡部「ぐぬぬ……言い返せん」
鈴羽「そう?あたしは結構楽しいけどな」
岡部「そ、そうか?」
橋田(あれ?思いのほか好感触?)
鈴羽「岡部倫太郎こそ嫌じゃない?」
岡部「そんな事は無いぞ、バイト戦士の女らしい一面を見れたりするからな。これが中々楽しい」
鈴羽「ちょっ、恥ずかしくなってきた……」カァー…
フェイリス(鈴ニャンの赤面とか初めて見たニャン……)
橋田(どう見てもカップルです本当にありがとうございました)
鈴羽「そ、それよりさ!お腹すいたし何か食べようよ!」
橋田(強引に話題を変えたお)
フェイリス(鈴ニャン分かりやすいニャン)
―――食後
鈴羽「ご、ごめんね岡部倫太郎……奢ってもらっちゃって」
岡部「構わん。気まぐれだ」
橋田「オカリンが奢るとか明日嵐でも来るんじゃね?」
岡部「ダルよ、さっきのオムライス代を請求してほしいのか?」
橋田「冗談だお。そういえばこれから牧瀬氏を探すみたいだけど当てとかあるん?」
岡部「うーむ如何せん携帯に出ないからな……助手が行きそうな所がラボ以外だと思いつかん……」
鈴羽「牧瀬紅莉栖のホテルは?」
岡部「実は詳しい場所を知らなくてな……」
橋田「それじゃあ八方ふさがりだお……」
鈴羽「一旦ラボに戻る?もしかしたら入れ違いで牧瀬紅莉栖が来てるかもよ?」
岡部「そうだな、下手に動き回るよりはいいかもしれん」
橋田「んじゃ、一旦ラボに戻るって事でFA?」
岡部「うむ、だがその前にドクペを補充したいのだが……」
橋田「んじゃ近くのスーパー寄ってく?」
鈴羽「あたしは別にいいよ!もう少しこのままでもいいし……」ボソッ
岡部「何か言ったか?バイト戦士よ」
鈴羽「何でもなーい」
橋田(僕には丸聞こえだお……)
―買い物終了後―
岡部「やはり狂気のマッドサイエンティストが嗜むのはこの知的飲料でなくてはな」プシッ
鈴羽「それっておいしいの?」
岡部「気になるのか?」
橋田「興味本位で手を出すと後悔する味だお」
岡部「おのれフェイバリットライトアーム、我が知的飲料を愚弄するか!」
橋田「僕は一般論を言ったまでだお」
鈴羽「でもそこまで言われると気になるなー、ちょっと貰うね」ヒョイ
岡部「あっ!こらそれは俺が……」
鈴羽「んー、んー……」
橋田「わお、阿万音氏良い飲みっぷりですなー」
鈴羽「……なんていうか、薬っぽい味だね」
橋田「だお?だからあんまり人気ないんだお」
岡部「ぐぬぬ……お前ら……」
鈴羽「でもこれ嫌いじゃないかも……」
橋田「mjd!?」
岡部「なんだと?」
鈴羽「うん、なんだろう?美味しいとは思わないんだけど……何か飲みたくなるというか……」ゴクゴク
橋田「まさか牧瀬氏以外にオカリンと同じ味覚を持ってる人がラボに居るとは……」
岡部「フゥーハッハッハ!流石はバイト戦士!いや、阿万音鈴羽だな!!」
鈴羽「あっ、全部飲んじゃった……」カラッ
岡部「なぁに気にするな、今の俺は大変機嫌がいい……クックック」
橋田「うわぁ……オカリンが久しぶりに気持ち悪い件について」
岡部「鈴羽とはぜひラボで夜が明けるまでドクぺについて語り合いたいな……」
鈴羽「語るも何もあたしはさっき初めて飲んだばかりなんだけど……」
岡部「ふっ……ならば朝まで俺がドクぺの魅力をしっかりと身体に教えてやろう……」
鈴羽「か、身体に……」
橋田「わーおオカリン大胆発言」
岡部「そこだけ繰り返すな!そういう意味ではない!!」
鈴羽「あっ、話してたらラボについたね」
岡部「ふむ……部屋に電気はついてないようだな」
橋田「う~ん、また入れ違いかお?」
岡部「とりあえず一旦上がるぞ、結構歩いたからな……正直疲れた」
鈴羽「えー、岡部倫太郎だらしないなー」
岡部「お前のその元気はどこから出ているのだ……」
――ラボ
岡部「よし、これでしばらくはドクぺの心配をしなくて済みそうだ」
鈴羽「橋田至帰っちゃったねー」
岡部「まったく、ダルはマイフェイバリットライトアームとしての自覚が足りん」
鈴羽「……ごめんね」
岡部「ん?急にどうしたんだバイト戦士よ」
鈴羽「元はと言えば、あたしが勝手にガシェットいじったから……こんな事に岡部倫太郎付きあわせちゃって……」
岡部「気にするな、これもまたシュタインズゲートの選択だ」
鈴羽「でも……」
岡部「ええい!バイト戦士よ、さっきも言ったが俺は俺で楽しんでいる!お前が気に病む事は無いのだ!!」
鈴羽「岡部倫太郎はあたしと一緒に居て楽しいの?」
岡部「な、なんだ藪から棒に」
鈴羽「どうなの?」
岡部「……う、うむ。それはだな……」
鈴羽「あたしは楽しいよ。君と居ると退屈しない」
岡部「鈴羽……」
鈴羽「……岡部倫太郎」
鈴羽「……あたしは、君の事が」
ガチャ
岡部「!?」
鈴羽「あ、あれ?」
岡部「は、外れた!外れたぞ!!」ブンブン
鈴羽「え?でもなんで……」
岡部「ふ、フゥーハッハッハ!
何だか良く分からんが助手の発明もこの鳳凰院凶真の前には無力なのだ!!」
鈴羽(タイミング悪すぎ……)
岡部「ところで鈴羽よ、さっきは何を言おうとしてたのだ?」
鈴羽「え……え!?いやそれは……その……」
紅莉栖「―――居た!岡部!!」バターン!!
岡部「うぉあ!?く、クリスティーナ!!?」
鈴羽「牧瀬紅莉栖!?」
紅莉栖「なんで阿万音さんまで?……まぁいいわ、岡部!アンタこの辺りに置いてたリストバンド持っていかなかった!?」
岡部「あ?ああ……それならここに……」
紅莉栖「あ……良かったー!やっぱり岡部が持ってたのね!」
岡部「やはり助手の発明か……一体なんだったのだこれは」
紅莉栖「ん?これはね未来ガシェット試作型『だーりんのばかぁ!』よ」
鈴羽「なにそのふざけた名前……」
紅莉栖「これは装着者同士の親愛値を脈拍や血圧その他もろもろから算出して、
互いの値が一定値以上にならないと外れない……言うなれば喧嘩仲裁用ガシェットなのよ」
鈴羽「へーっ、てことは」
岡部「うむ、どうやら俺達はようやくその親愛値を上回ったという事か」
紅莉栖「…………は?」
岡部「うむ……いや実はな。朝方鈴羽と俺が着けてしまってな……」
鈴羽「一日中ずっと一緒にいたんだよねー」
紅莉栖「」
岡部「その……なんだ、助手よ。勝手に使ってしまってすまなかった……」
鈴羽「ごめんね牧瀬紅莉栖。まさか外れなくなるとは思わなくて……」
岡部「しかし外れるのに丸一日掛かるとは……」
鈴羽「そういえばその装置って親愛値?がどの位で解除される設定になってるの?」
紅莉栖「え?いやそれは……」
岡部「なんだ助手、もったいぶらずに教えてくれてもよかろう」
紅莉栖(言えるわけないだろ!相思相愛レベルとか!!)
紅莉栖(元々私と岡部でつけようと思って作ったのに!)
紅莉栖「えーと……き」
岡部「き?」
紅莉栖「き、企業秘密よ!」
岡部「何を訳分からんことを言っとるのだ助手!」
紅莉栖「う、うるさい!勝手に使った岡部が悪いのよ!!」
岡部「そんなに隠されたら気になるではないか!!」
鈴羽「あはは……」
今年はもう鈴羽生誕の年なんですね……
やシN1!
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1494605909/
Entry ⇒ 2017.08.15 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
【逆裁×シュタゲ】『逆転のタイムマシン』
8月 17日 午後4時 32分
未来ガジェット研究所
岡部「・・・・まゆり。ラボメンナンバー004は誰だ」
まゆり「004の人は居ないよ?」
岡部「・・・・ダル。7月28日のこと、覚えているか?」
ダル「7月28日?」
まゆり「まゆしぃは覚えてるよ、一緒にうーぱ買いに行ったんだよねー」
岡部「それが目的ではなかったが・・・・」
ダル「ああ! ドクター中鉢のタイムマシン発明成功記念会見の日か。それがどしたん?」
岡部「やはりここは俺が元居た世界線・・ ・・β世界線」
岡部「俺は、その後どうなった? 殺人現場を目撃してただで済んだとは思えないんだが」
ダル「オカリン、まさか記憶飛んじゃったん? あの裁判のこと」
岡部「さ、裁判!?」
まゆり「無罪になってよかったね、まゆしぃずっと心配だったのです」
岡部「ちょ、ちょっと待て。俺が、裁判だと!? 詳しく教えろ!」
ダル「わ、わかったお。あれはたしか・・・・」
――――――
――――
――
7月 29日 午前9時 30分
留置所 面会室
ホウオウイン「まさかこの狂気のマッドサイエンティストが留置所で1泊させられるとは・・・・! これも機関の陰謀か・・・・!」
ホウオウイン「あのスネオヘアーのクソコップめ・・・・! いずれ神罰が下るであろう・・・・ククク」
ナルホド(矢張、真宵ちゃんに続いて3人目の依頼人だけど、変な人だな・・・・)
??「ごめんね、成歩堂。無理を聞いてもらっちゃって」
ナルホド「いえ、"千尋さんの先輩"の頼みでしたら断われませんよ。"牧瀬さん"」
マキセ「正直なのね。今日はよろしく」
ホウオウイン「まき・・・・せ・・・・? 貴様、まさか被害者の牧瀬紅莉栖と何か関係が!?」
マキセ「ええ。成歩堂に無理を言ったのもそのためよ」
マキセ「私は今回の事件の被害者の・・・・実の母親なの」
Rボタンで法廷記録を確認
弁護士バッジ
これがないと、
誰もぼくを弁護士と
みとめてくれない。
綾里 千尋(享年27)
綾里法律事務所の元所長。
牧瀬弁護士の後輩だったが、
事件に巻き込まれ殺害された。
牧瀬 弁護士(??)
マンハッタンの敏腕弁護士。
今回は彼女たっての希望で、
成歩堂法律事務所が弁護人となった。
牧瀬 紅莉栖(18)
事件の被害者。
アメリカの大学の天才脳科学者。
日本の女子高に短期留学していた。
岡部 倫太郎(18)
この事件の被告人。
東京電機大学1年生で、
常に白衣を着ている。
マヨイ「なるほどくん、成歩堂法律事務所初のお仕事が入ってよかったね!」
ナルホド「このままだったら一か月は仕事入らなそうだったからね・・・・」
ホウオウイン「そんな私的な理由でこの俺、"鳳凰院凶真"を巻き込んだというのか」
ナルホド(あれ? 法廷記録には《岡部 倫太郎》って書いてあるけど・・・・)
マキセ「大丈夫。千尋の後輩、成歩堂ならあなたの無罪を証明できるわ」
ホウオウイン「フンッ。俺はまだ、貴様の能力<チカラ>を認めたわけではないからな」
ナルホド(ぼくも不安だけど・・・・依頼人の前で不安を出したらだめだよね)
マキセ「私もついててあげるから安心して。真宵は傍聴席から応援しててね」
マヨイ「はーい! それじゃなるほどくん、現場百遍だよ!」
⇒[ラジオ会館]
ナルホド「この倉庫が現場か。最上階だけあって、もうヘトヘトだよ」
マヨイ「体力無いなぁ、なるほどくんは」
??「コラ! ここは立ち入り禁止ッス!」
マヨイ「あっ! イトノコ刑事!」
イトノコ「イトノコじゃないッス! 糸鋸 圭介ッス!」
イトノコ「って、変な名前の弁護士じゃないッスか。用があるなら早くするッス」
ナルホド(変な名前はお互い様だろ・・・・)
[調べる] 移動する
話す つきつける
ナルホド「ここの通路は一本道だけど、下への階段は二重構造になってるんだね」
マヨイ「じゃあ、のぼってくる人に隠れて階段を降りるってこともできるね」
ナルホド「倉庫の中には、商品の在庫や運搬具、工具なんかがある、か」
マヨイ「このダンボール、全部カードゲームのカードだよ! すごーい!」
ナルホド「通路の奥には屋上へ通じる階段があるみたいだ」
マヨイ「屋上行ってみようよ!」
調べる [移動する]
話す つきつける
ラジオ会館 屋上
ガチャ
ナルホド「あ、あれ? 鍵がかかってない。ドアノブが壊れてる?」
マヨイ「なにかの痕がついてるね」
ナルホド(これは、銃痕? いや、そんなわけないか)
ナルホド「屋上は金網で囲まれてる。ここから別の場所に移動できそうにないな」
マヨイ「あっ。誰かいるよ」
ナルホド「あなたは?」
萌郁「・・・・」
調べる 移動する
[話す] つきつける
萌郁「記者・・・・アーク・リライトっていう、出版社。都市伝説、追いかけてる・・・・」
ナルホド(随分ボソボソとしゃべる女性だな)
ナルホド「こんなところで一体なにを?」
萌郁「タレコミが・・・・あった・・・・」
マヨイ「タレコミって? なんかおいしそう!」
萌郁「昨日・・・・この場所から・・・・強い光を、見たって・・・・」
ナルホド「強い光?」
萌郁「でも、何もない・・・・幽霊だったのかも・・・・」
マヨイ「うーん、幽霊じゃないみたいだけど」
調べる 移動する
話す [つきつける]
弁護士バッジ
これがないと、
誰もぼくを弁護士と
みとめてくれない。
[弁護士バッジ]⇒つきつける
萌郁「弁護士さんが、ここに・・・・何の用・・・・?」
ナルホド「昨日、この下の階で殺人事件があったんですが、何か知りませんか?」
萌郁「・・・・・・・・・・・・・」フルフル
ナルホド(徹底してしゃべらないのか・・・・)
萌郁「・・・・ここの、写真。ケータイで撮った・・・・」
萌郁「これ・・・・あげるから、私がここに居たこと・・・・内緒にして・・・・」
マヨイ「いいですよ! ありがとうございます!」
ナルホド「そんな勝手に。でも、秘密は守ります」
ナルホド「うちの事務所のパソコンに転送してくれませんか?」
萌郁「わかった・・・・」
ラジ館屋上の写真
屋上からはどこへも移動できない。
扉のドアノブは外側から破壊されて
いた。
証拠品《ラジ館屋上の写真》を法廷記録にファイルした。
マヨイ「・・・・」
ナルホド「さあ、そろそろ行こうか。マヨイちゃん?」
マヨイ「・・・・・・・・・・・・」コクッ
ナルホド「・・・・・・・・・・・・」
7月 30日 午前10時
地方裁判所 第3法廷
サイバンカン「これより、岡部 倫太郎の法廷を開廷します」
ホウオウイン「待った!!」
サイバンカン「はひっ!?」
ホウオウイン「俺の名は、岡部倫太郎などという名前ではないッ!」
ホウオウイン「フェニックスの鳳凰に院、凶悪なる真実で、鳳凰院凶真だ!」
サイバンカン「・・・・院は、どういう意味なのですかな」
ホウオウイン「院についての説明は長いので省かせてもらう」
ナルホド(な、なにやってるんだー!?)
ミツルギ「被告人、勝手にしゃべらないでいただきたい」
ミツルギ「検察側、準備完了しております」
ナルホド「弁護側、準備完了しております」
サイバンカン「御剣検事。冒頭弁論をおねがいします」
ミツルギ「被告人・岡部 倫太郎は、7月28日、午後0時39分」
ホウオウイン「スターップ!!」
ミツルギ「!?」
ホウオウイン「何度も言わせるな! 俺の名前は・・・・」
ホウオウイン「鳳凰院、凶真だッ!」
サイバンカン「・・・・御剣検事。被告人の名前を覚えられないとは、情けないですな」
ミツルギ「さ、裁判長! この男の名前は確かに岡部倫太郎だ!」
ナルホド(ミツルギのやつ、人の名前を確かめるのが苦手らしいな)
マキセ「岡部、ちょっといいかしら」
ホウオウイン「牧瀬弁護士! 俺の名前は岡部ではないと・・・・」
マキセ「それ以上言うなら、岡部の脳みそを娘の大学に検体として提供するわよ?」ニコ
オカベ「・・・・岡部倫太郎です」
ミツルギ「被告人・岡部 倫太郎は、7月28日、午後0時39分」
ミツルギ「ラジオ会館8階・従業員通路奥の倉庫で、脳科学者・牧瀬 紅莉栖を殺害した」
ミツルギ「数々の証拠、証言が被告人は犯人であることを示している」
ミツルギ「本法廷で、検察側はその点を完全に立証するだろう」
サイバンカン「ふむぅ。・・・・なるほど」
サイバンカン「それでは、審議に入りたいと思います」
サイバンカン「御剣検事、最初の証人を入廷させてください」
ミツルギ「では、イトノコギリ刑事を」
イトノコ「よろしくお願いしますッス!」
ミツルギ「まず、この事件について説明してほしい」
イトノコ「はッ。では、説明させていただくッス!」
イトノコ「7月28日、秋葉原のラジオ会館8階で事件は起きたッス」
イトノコ「当日、正午からドクター 中鉢による『タイムマシン発明成功記念会見』が行われていたッス」
ナルホド「タイムマシン!?」
オカベ「クックック・・・・しかしそれはパクリに過ぎなかったのだ」
サイバンカン「静粛にお願いできますかな」
ナルホド「す、すいません。あまりにも突飛だったもので」
イトノコ「まったく、仕方ない人ッスねえ」
ナルホド(タイムマシンの発明? 一体現場で何が起こっていたんだ・・・・)
イトノコ「被害者の牧瀬 紅莉栖、被告人の岡部 倫太郎両名はその会見を見に来ていたッス」
イトノコ「事件現場は同階の従業員通路の途中にある倉庫だったッス」
イトノコ「牧瀬 紅莉栖は午後0時 39分、何者かに刺されたッス」
イトノコ「その後、救急車で運ばれて死亡が確認されたッス」
イトノコ「凶器は、腹部左側に突き刺さった《折りたたみナイフ》ッス」
イトノコ「御剣検事も言ってたッスが、数々の証拠が岡部 倫太郎が犯人だと物語っているッス」
サイバンカン「凶器は《ナイフ》ですか」
折りたたみナイフ
刃を柄にしまえるナイフ。
牧瀬 紅莉栖の血が付着しており、
床に転がっていた。
証拠品《折りたたみナイフ》を法廷記録にファイルした。
ミツルギ「当然、凶器に付着していた指紋について調査した記録が上がっている」
ナイフの指紋調査記録
ナイフには二種類の指紋が
べったりとついていた。
片方は岡部 倫太郎の指紋と一致。
証拠品《折りたたみナイフ》を法廷記録にファイルした。
ナルホド(二種類・・・・?)
ミツルギ「現場にはタイムマシン会見参加者以外が存在しなかった証拠も提出させてもらおう」
ラジオ会館側の報告
8階通路には従業員は居なかった。
また、7階以上へ向かう人間は
会見参加者の他に居なかった。
屋上への扉には鍵がかかっていた。
証拠品《折りたたみナイフ》を法廷記録にファイルした。
ミツルギ「さらに証人まで居る。さっそくその証人に入廷していただこう」
ナルホド(・・・・!)
ミツルギ「タイムマシン会見の司会者であり、犯行現場の目撃者の一人だ」
シカイシャ「ど、どうも・・・・」モジモジ
ミツルギ「では、証言を始めていただく」
サイバンカン「証人は、事件当日。タイムマシン会見の司会をしていたのですね?」
シカイシャ「は、はい。発明家の、ドクター 中鉢さんに無理やり頼まれて・・・・」
サイバンカン「無理やり? 無理やりは良くないですなぁ」
ミツルギ「裁判長。そこは本事件とは関係ない」
ミツルギ「あなたには岡部 倫太郎が犯人であることを証言していただきたい」
シカイシャ「は、はい! 私がその、犯行現場へ駆けつけた時、この、白衣の男が居たんです!」
オカベ「フゥーン!」
サイバンカン「白衣の男?」
ミツルギ「どう考えても岡部 倫太郎のことだろう」
ナルホド(な、なんだって・・・・!?)
証言開始
~事件当日について~
・「私、ドクター 中鉢さんに頼まれて、タイムマシン会見の司会を務めさせていただきました」
・「会見は12時ちょうどに始まったんですが、途中で白衣の男が会見を遮りまして・・・・」
・「その、牧瀬 紅莉栖さんが白衣の男を会見からつまみ出したんです」
・「会見終了後、私は早々に控え室で帰り支度をしていたのですが、その時男の叫び声が聞こえてきまして・・・・」
・「気になりまして、声のした従業員通路の奥へと向かったんです。会見場に居た誰よりも先に」
・「倉庫の前に真っ白な白衣を着た男が立っていて、中を覗いたら牧瀬 紅莉栖さんが血の海に倒れていて・・・・!」
・「私、悲鳴を上げてしまいました。そしたら白衣の男がギクリとしたように振り返って・・・・」
・「私は『警察を呼べ!』と叫びました。するとその男は現場を見に来た人たちに紛れて逃げ出したのです」
サイバンカン「ふむぅ。その白衣の男という人物、非常にあやしいですな。一体誰なのか・・・・」
ナルホド(裁判長の記憶力もソウトウあやしいけどな)
サイバンカン「では。さっそく《尋問》をしてもらいましょうか」
ナルホド(こ、これはかなりマズイぞ・・・・)
マキセ「落ち着いて、成歩堂。被告人が無実なら、必ず証拠品と証言の間にはムジュンがあるはずよ」
※すべての証言にゆさぶりをかけます
尋問開始
~事件当日について~
・「私、ドクター 中鉢さんに頼まれて、タイムマシン会見の司会を務めさせていただきました」
待った!!
ナルホド「無理やり、とおっしゃっていましたが、嫌ならなぜ引き受けたのですか?」
異議あり!!
ミツルギ「それは本事件と関係ないと述べたはずだ!」
シカイシャ「は、はい。私はただ、ギャラに合わない仕事だということと、会見のうさん臭さが嫌だっただけで、深い意味はありません」
ミツルギ「ドクター 中鉢は多くのバラエティ番組に出演する有名人だが、それはうさん臭い発明家として有名なのだ」
ミツルギ「そんな男がタイムマシンを発明したという会見。仕事として関わりたくはあるまい」
ナルホド(そ、そうだったのか・・・・)
・「会見は12時ちょうどに始まったんですが、途中で白衣の男が会見を遮りまして・・・・」
待った!!
ナルホド「会見を遮った・・・・?」
シカイシャ「は、はい。白衣の男がドクター 中鉢さんにタイムマシン理論について食って掛かって・・・・」
ナルホド「具体的にはどのように?」
シカイシャ「たしか、ドクター 中鉢さんの話が、ジョン・タイターのパクリだとかなんとか・・・・」
ナルホド「ジョン・タイター?」
ミツルギ「2000年にアメリカの大手掲示板に出現した、未来人を自称するハンドルネームのことだ」
ナルホド「み、未来人!?」
マキセ「本も出版されてるし、アメリカには未だに根強いファンもいるわよ」
サイバンカン「ど、どういうことですかな?」
ミツルギ「この話は本件とは無関係、ということだ」
ナルホド(タイムマシンに未来人・・・・ホントに無関係なのか?)
・「その、牧瀬 紅莉栖さんが白衣の男を会見からつまみ出したんです」
待った!
ナルホド「どうして牧瀬 紅莉栖さんだと特定できたんです?」
シカイシャ「そ、それは、その時はわかりませんでしたが、後から被害者の写真を見せてもらったので・・・・」
ミツルギ「ともかく、被害者は会見で騒ぎ出した被告人を会場の外へ連れ出した、ということだ」
サイバンカン「その恨みを買ってぐさっと、なんてことでしたら、随分堪忍袋が小さいですな」
オカベ「なんだとォ!? この俺がそんなことでキレる矮小な人間に見えるとでも言うのか、このハゲサイバンチョが!」
サイバンカン「は、はげぇ~っ!?」
ナルホド(う・・・・ますます自信がなくなってきたぞ)
・「会見終了後、私は早々に控え室で帰り支度をしていたのですが、その時男の叫び声が聞こえてきまして・・・・」
待った!!
ナルホド「男の叫び声?」
シカイシャ「は、はい。とんでもないことをしてしまったというような絶叫でした」
ミツルギ「この声については、会見場に居た他の人物からも証言を得ている」
ミツルギ「大方、犯人が被害者を刺した時に大声をあげたのだろう」
オカベ「お、俺ではない! 俺だってその叫び声を聞いてから現場へ走ったのだ!」
オカベ「でなければ、俺が従業員通路の奥の倉庫になど行くわけがあるまい!」
サイバンカン「被告人は静粛に!」
ナルホド(岡部さんの言う通りなら、誰の叫び声だったんだ・・・・?)
・「気になりまして、声のした従業員通路の奥へと向かったんです。会見場に居た誰よりも先に」
待った!!
ナルホド「あなたお一人でですか?」
シカイシャ「は、はい」
ナルホド「ドクター 中鉢さんはその時どこに?」
シカイシャ「さ、さあ。気づいた時には居なくなっていました」
ミツルギ「ラジオ会館にはその時、従業員は8階に居なかった。そして証人は会見場の誰よりも先に移動した」
ミツルギ「ということは、その声の主は会見場からつまみ出されていた者しか考えられない」
ナルホド(ホントにそうなのか・・・・?)
・「倉庫の前に真っ白な白衣を着た男が立っていて、中を覗いたら牧瀬 紅莉栖さんが血の海に倒れていて・・・・!」
待った!!
ナルホド「牧瀬 紅莉栖さんが血の海に倒れていた。間違いありませんね?」
シカイシャ「は、はい。この目でしかと見ました!」
ナルホド「そして白衣の男が立っていた。これも間違いないですよね?」
シカイシャ「は、はい。上から下まで真っ白な男が立っていました」
ミツルギ「・・・・・・・・」
マキセ「明らかにあの証拠品とムジュンしてるわね」
ナルホド(そ、そうなのか・・・・!?)
・「私、悲鳴を上げてしまいました。そしたら白衣の男がギクリとしたように振り返って・・・・」
待った!!
ナルホド「その時、岡部さんはどのような様子でしたか?」
シカイシャ「は、はい。なんだかパニックに陥っているような感じで・・・・」
ミツルギ「証人が悲鳴を上げるまで、証人の存在にさえ気が付かないほど混乱していたのだろう」
ナルホド「だけど、人が血の海に倒れているところを目撃すれば誰だってパニックに陥る」
オカベ「フン、この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真がその程度のことでパニックなんぞに陥るわけが―――」
ミツルギ「そうだな。確かにそれは一理ある」
オカベ「ずこっ」
ミツルギ「だが、自分が行った殺害の現場を目撃された人間もパニックに陥る」
ナルホド(ここは掘り下げても仕方ないか・・・・)
・「私は『警察を呼べ!』と叫びました。するとその男は現場を見に来た人たちに紛れて逃げ出したのです」
待った!!
ナルホド「逃げ出した・・・・?」
シカイシャ「は、はい。わき目もふらずに逃げていきました」
ナルホド「それなら、結局警察を呼んだのは?」
シカイシャ「私がケータイで警察と救急車を呼びました」
ミツルギ「つまり、被告人は警察も救急車も呼ばずその場から逃走したのだ」
ナルホド(ぐぬぬ・・・・)
・「倉庫の前に真っ白な白衣を着た男が立っていて、中を覗いたら牧瀬 紅莉栖さんが血の海に倒れていて・・・・!」
Rボタンで法廷記録を確認
ゆさぶる [つきつける]
弁護士バッジ
これがないと、
誰もぼくを弁護士と
みとめてくれない。
綾里 千尋(享年27)
綾里法律事務所の元所長。
牧瀬弁護士の後輩だったが、
事件に巻き込まれ殺害された。
牧瀬 弁護士(??)
マンハッタンの敏腕弁護士。
今回は彼女たっての希望で、
成歩堂法律事務所が弁護人となった。
牧瀬 紅莉栖(18)
事件の被害者。
米大学の天才脳科学者。
日本の女子高に短期留学していた。
岡部 倫太郎(18)
この事件の被告人。
東京電機大学1年生で、
常に白衣を着ている。
ラジ館屋上の写真
屋上からはどこへも移動できない。
扉のドアノブは外側から破壊されて
いた。
折りたたみナイフ
刃を柄にしまえるナイフ。
牧瀬 紅莉栖の血が付着しており、
床に転がっていた。
ナイフの指紋調査記録
ナイフには二種類の指紋が
べったりとついていた。
片方は岡部 倫太郎の指紋と一致。
ラジオ会館側の報告
8階通路には従業員は居なかった。
また、7階以上へ向かう人間は
会見参加者の他に居なかった。
屋上への扉には鍵がかかっていた。
[折りたたみナイフ]⇒つきつける
異議あり!!
ナルホド「その白衣の男、本当に"真っ白な白衣"だったのですね?」
シカイシャ「は、はい。それはもう、血の海の赤と対照的な白でした。間違いありません」
ナルホド「それはおかしいですね。どうして白衣は白かったのでしょう」
サイバンカン「成歩堂くん。白衣が白いのは当然でしょう」
ナルホド「いえ、凶器となったナイフがそれを否定しているのですよ」
サイバンカン「・・・・んん? どういうことですかな」
ナルホド「凶器のナイフには被害者の血が付着しています。そして現場は血の海だった・・・・」
ナルホド「この折りたたみナイフで人を刺したのならば、返り血を浴びないわけがない!」
シカイシャ「!!!!!」
ナルホド「岡部さんが犯人だというなら、白衣が白いのはムジュンしている!」
サイバンカン「・・・・どうですかな、御剣検事」
ミツルギ「たしかに、弁護人の言う通りだ」
ミツルギ「だが、正直に言ってそんなものはどうにでもなる」
ナルホド(な、なんだって!)
ミツルギ「例えば、予め二着の白衣を用意し、犯行の後で着替えれば、返り血は手にしかつかない」
ミツルギ「手についた血は、返り血を浴びた一着目で拭き取るか、白衣の袖の下に隠してしまえば証人に目撃されることはない」
ナルホド(た、たしかに・・・・)
ミツルギ「被告人は警察に拘束される前に一度帰宅している。今着ている白衣は別モノだろう」
サイバンカン「やはり、この犯行が可能な人間は被告人以外に居ないのですかな?」
ナルホド「いや、もう一度この証拠品をよく見てください!」
ナルホド「この折りたたみナイフには二種類の指紋がついています」
ナルホド「ひとつは確かに岡部さんのものですが、もうひとつは別の誰かのものだ」
サイバンカン「ふむぅ。これはどういうことですか?」
ナルホド「岡部さん以外にも犯行が可能な人間が居た、ということです!」
異議あり!!
ミツルギ「チッ チッ チッ。弁護人はそれを示す証拠品を持っているのか?」
ナルホド「そ、それは・・・・(汗」
ミツルギ「イトノコギリ刑事。当然この指紋についての鑑定結果は出ているのだろうな」
イトノコ「もちろんッス! その指紋と同じ指紋が会見場の壇上付近から多く検出されたッス!」
ナルホド(なんだって! 隠してたな、ミツルギのやつ・・・・)
イトノコ「その他に諸々の状況から考えて、もうひとつの指紋は間違いなくドクター 中鉢のモノッス!」
ザワ ザワ
カンッ! カンッ! カンッ!
サイバンカン「・・・・刑事にひとつ言いたいことがあります」
イトノコ「は? 何のことッスか?」
サイバンカン「なんでそれを先に言わなかったんですか!」
イトノコ「・・・・お恥ずかしい限りッス」
ナイフの指紋調査記録
ナイフには岡部 倫太郎の指紋と
ドクター 中鉢のモノがべったりと
ついていた。
証拠品《ナイフの指紋調査記録》のデータを書き直した。
ナルホド(だけど、それってどういうことなんだ? どうして凶器にドクター 中鉢の指紋が?)
マキセ「・・・・」
ミツルギ「弁護人はこのナイフについたもう一人の指紋の主こそ犯人だと主張したいようだが、その可能性はすぐに無くなる」
ナルホド「な、なに?」
ミツルギ「そのことは、次の証人が証言してくれることだろう。ドクター 中鉢をここへ!」
マキセ「・・・・!」
ナカバチ「・・・・」
マキセ「あなた、どうしてここに・・・・」
ナカバチ「フン、それはこっちの台詞だ」
ナルホド(二人は知り合いなのか・・・・?)
ミツルギ「証人の名前を」
ナカバチ「私こそは、人類史にその名を刻む世紀の科学者、ドクター 中鉢であるッ!」
ナルホド(またアクの強そうな人だな)
ミツルギ「このナイフにはあなたの指紋がついているとのことだが、それについて何か言いたいことはあるか」
ナカバチ「フンッ。若造のくせに、この私に偉そうな口をきくんじゃない」
ミツルギ「・・・・」グググ
ナカバチ「そのナイフに私の指紋がついているのは当然だろう。なぜなら、そのナイフは私のナイフだからだ!」
ナルホド「!」
サイバンカン「そ、それは、どういうことですかな!? 《証言》を頼みますぞ!」
証言開始
~ナイフについた指紋について~
・「そのナイフは私のモノだ。世紀の大発明の発表を前に自衛の手段は必要だと思って持ってきた」
・「事実、会見直前にヤツラの局所地震攻撃を受けたりした!」
・「そのような困難を乗り越え、会見は無事成功するはずだった。あの白衣の男と紅莉栖に邪魔されるまではな!」
・「紅莉栖は私を従業員通路に呼び出した。タイムマシンについて話したいことがある、とのことだった」
・「そこで私はあの白衣の男に襲われたのだ! その時、運悪くナイフを奪われてしまった!」
異議あり!!
オカベ「そんなデタラメをよく思いつくものだな! 確かに会見を邪魔したことは認めよう。だが、貴様を襲った覚えなどないわ!」
サイバンカン「被告人は静粛に!」
ナカバチ「しらばっくれるつもりか! どこまでも私を馬鹿にしおって・・・・!」プルプル
カッ! カッ! カッ!
サイバンカン「どうやら、証言に問題点があったようですな。弁護人はそれを整理して、この場をおさめてください」
ナルホド(丸投げされた!?)
尋問開始
~ナイフについた指紋について~
・「そのナイフは私のモノだ。世紀の大発明の発表を前に自衛の手段は必要だと思って持ってきた」
待った!!
ナルホド「世紀の大発明?」
ナカバチ「タイムマシンだ! 人類の永遠の夢でありロマン! それが現実のものとなったのだ!」
サイバンカン「な、な、な、なんですと!? それは、大変なことではありませんか!」
マキセ「あなた、まだそんなくだらないことを・・・・」
ナカバチ「本当はこんなところで時間をロウヒしている場合ではないのだ! すぐにマシンを開発しなければ!」
ナルホド(・・・・どこまで本気なんだ?)
・「事実、会見直前にヤツラの局所地震攻撃を受けたりした!」
待った!!
ナルホド「ヤツラ、とは?」
ナカバチ「タイムマシンの成果をかすめ取ろうとする憎きヤツラだ!」
ナカバチ「アメリカの大学、ロシア政府、あるいは欧州の研究機関など、私を狙っている組織はごまんといる!」
ナルホド(本当に大丈夫かこの人? ちょっと心配になってきたぞ・・・・)
ナルホド「それと、地震攻撃?」
ミツルギ「攻撃かどうかはともかく、事件当日の午前11時50分頃、ラジオ会館が強い揺れに襲われたことは事実だ」
ナカバチ「私は会見の準備に追われていたからな、司会者に確認させに行かせた」
シカイシャ「は、はい。私のほかにも何人かが揺れの強かった屋上へ行きました。そこの白衣の方を先頭に」
オカベ「ククク、敵の攻撃を前にして臆している場合ではなかったからな」
ミツルギ「それが自然現象か人為的なものか、地震か地盤沈下なのかなどは目下調査中とのことだ」
サイバンカン「ふむぅ・・・・陰謀の匂いがぷんぷんしますな」
ラジオ会館側の報告2
午前11時50分頃、ラジオ会館は
強い揺れに襲われた。
同時に屋上へ数人が確認に行った。
証拠品《ラジオ会館側の報告2》を法廷記録にファイルした。
・「そのような困難を乗り越え、会見は無事成功するはずだった。あの白衣の男と紅莉栖に邪魔されるまではな!」
待った!!
ナルホド「邪魔?」
ミツルギ「前の証人が言っていただろう。被告人がドクター 中鉢の会見を遮った、と」
ナルホド「被害者である牧瀬 紅莉栖さんも邪魔をした、というのは?」
ナカバチ「後でわかったが、ヤツラは裏で組んでいたのだ! 私をハメるためだけにな!」
ナルホド(また陰謀論か・・・・)
・「紅莉栖は私を従業員通路に呼び出した。タイムマシンについて話したいことがある、とのことだった」
待った!!
ナルホド「牧瀬さんがあなたを現場近くに呼び出したんですか!?」
ナカバチ「そうだ! 私の会見の感想でも言うのかと思ったが、アイツは、よりにもよって新理論を提案してきたッ!」
ナルホド「その新理論、見せてもらっても?」
ナカバチ「・・・・見たところで凡人には理解できまい」
ナルホド「必ず返しますので、お願いします」
タイムマシン新理論
牧瀬 紅莉栖が書いたもの。
殺害の直前にドクター 中鉢に
手渡された。
証拠品《タイムマシン新理論》を法廷記録にファイルした。
ナカバチ「・・・・まあいい。ともかく、この理論でタイムマシンが完成するのだからな!」
・「そこで私はあの白衣の男に襲われたのだ! その時、運悪くナイフを奪われてしまった!」
待った!!
ナルホド「具体的にはどういう風に?」
ナカバチ「私と紅莉栖が話しているところにその男がやってきて、私からナイフを奪ったのだ」
ナカバチ「そしてそのまま紅莉栖を一突き・・・・あまりのことに私は現場から逃げ出した」
ナルホド(確かに話の筋は通っている・・・・けど)
オカベ「嘘八百を並べるとは・・・・!」
ナルホド(ぼくは岡部さんの弁護人。被告人を信じ抜かないと!)
Rボタンで法廷記録を確認
ゆさぶる [つきつける]
弁護士バッジ
これがないと、
誰もぼくを弁護士と
みとめてくれない。
綾里 千尋(享年27)
綾里法律事務所の元所長。
牧瀬弁護士の後輩だったが、
事件に巻き込まれ殺害された。
牧瀬 弁護士(??)
マンハッタンの敏腕弁護士。
今回は彼女たっての希望で、
成歩堂法律事務所が弁護人となった。
牧瀬 紅莉栖(18)
事件の被害者。
米大学の天才脳科学者。
日本の女子高に短期留学していた。
岡部 倫太郎(18)
この事件の被告人。
東京電機大学1年生で、
常に白衣を着ている。
ラジ館屋上の写真
屋上からはどこへも移動できない。
扉のドアノブは外側から破壊されて
いた。
折りたたみナイフ
刃を柄にしまえるナイフ。
牧瀬 紅莉栖の血が付着しており、
床に転がっていた。
ナイフの指紋調査記録
ナイフには岡部 倫太郎の指紋と
ドクター 中鉢のモノがべったりと
ついていた。
ラジオ会館側の報告
8階通路には従業員は居なかった。
また、当日7階以上へ向かう人間は
会見参加者の他に居なかった。
屋上への扉には鍵がかかっていた。
ラジオ会館側の報告2
午前11時50分頃、ラジオ会館は
強い揺れに襲われた。
同時に屋上へ数人が確認に行った。
タイムマシン新理論
牧瀬 紅莉栖が書いたもの。
殺害の直前にドクター 中鉢に
手渡された。
[折りたたみナイフ]⇒つきつける
異議あり!!
サイバンカン「なんですかな。成歩堂くん」
ナルホド「証人はナイフを奪われたと言った」
ナルホド「ですが、それなら何故被告人は証人がナイフを携帯していることを知っていたのですか?」
ナカバチ「!!」
ナルホド「このナイフは折りたたみ式。刃をしまって携帯していたのなら、一目で刃のついたナイフだと認識するのは不可能です!」
サイバンカン「たしかに!!」
ミツルギ「・・・・クックック。確かにその通り。被告人は証人がナイフを持っていることを事前に知ることはできない」
ナルホド「な、なに・・・・?」
ミツルギ「だが、証人自らナイフを持っていることを知らせていたなら、どうだろうか」
ナカバチ「・・・・ふん」
ナルホド(ミツルギのやつ、ぼくがここを指摘するってわかってたんだな!?)
サイバンカン「証人は、被告人がナイフを手に出来た理由を証言するように!」
証言開始
~ナイフを奪われた理由~
・「ああ、そうだ。私はこの手でナイフを取り出した。自らの身を守るために」
・「私と紅莉栖はタイムマシン理論のことで口論になった。悪いのは紅莉栖だ、私ではない!」
・「そこに白衣の男が現れ、紅莉栖とグルになって私を襲った!」
・「私は身を守るためにナイフを取り出したが、白衣の男に突き飛ばされナイフを落としてしまった」
・「落ちたナイフを拾った白衣の男は、紅莉栖目がけてナイフを突き刺したのだ!」
ザワ ザワ
カッ! カッ! カッ!
サイバンカン「なんと・・・・」
ナルホド「そんな・・・・」
ミツルギ「これでハッキリしただろう。確かに証人と被害者は口論になった」
ミツルギ「だが、それを踏まえても岡部 倫太郎が凶器を手にした事実は揺らがない」
サイバンカン「弁護人、《尋問》をお願いします」
ナルホド(肉を切らせて骨を断つ、って感じだな・・・・どうする!?)
尋問開始
~ナイフを奪われた理由~
・「ああ、そうだ。私はこの手でナイフを取り出した。自らの身を守るために」
待った!!
ナルホド「そもそもナイフを持ち歩いている時点で銃刀法違反では?」
ミツルギ「その件は本法廷とは関係ない」
サイバンカン「検事の言うことはモットモです」
ナルホド(やっぱりダメか・・・・)
・「私と紅莉栖はタイムマシン理論のことで口論になった。悪いのは紅莉栖だ、私ではない!」
待った!!
ナルホド「口論?」
ナカバチ「紅莉栖が私のタイムマシン理論を論破してきたのだ!」
ナルホド「完璧なタイムマシン理論が出来たから記者会見をしたのでは?」
ナカバチ「ええい、黙れ黙れ! このドクター中鉢に弁護士風情が意見するなど、絶対に許さーんッ!!」バンッ! バンッ!
サイバンカン「静粛に! 静粛に!」カンッ! カンッ!
ナルホド(この暴れっぷり・・・・)
ナルホド「その口論が原因で、ドクター 中鉢が牧瀬さんをナイフで刺した・・・・」
ナカバチ「なんだと!? 名誉棄損で訴えてやる!」
ミツルギ「その場合、何故証人のナイフに被告人の指紋がついていたのかを説明する証拠品が必要だが?」
ナルホド(う、たしかに・・・・)
・「そこに白衣の男が現れ、紅莉栖とグルになって私を襲った!」
待った!!
ナルホド「それは、口論を止めに入った、の間違いでは?」
ナカバチ「違う! ヤツラは会見を妨害し、その上理論を否定してきた! グルだったのだ!」
ナルホド(本当に牧瀬さんと岡部さんはグルだったのか・・・・?)
・「私は身を守るためにナイフを取り出したが、白衣の男に突き飛ばされナイフを落としてしまった」
待った!!
バンッ!
ナルホド「つまり、岡部さんは事前にドクター 中鉢がナイフを持っていることを知らなかった!」
ナルホド「だったら、牧瀬さんを殺害する計画を立てられるはずがない!」
ミツルギ「チッ チッ チッ。そうではない」
ナルホド「なに?」
ミツルギ「元々被告人は被害者に対する殺意を持ち合わせており、そこに偶然、都合よくナイフが転がってきた可能性は否定できまい」
ミツルギ「あの部屋には他にもドライバーなどの工具が置いてあった。被害者を殺害するのに凶器を持ち込む必要がなかったのだよ」
ナルホド「くっ・・・・」
・「落ちたナイフを拾った白衣の男は、紅莉栖目がけてナイフを突き刺したのだ!」
待った!!
ナルホド「・・・・となると、岡部さんが中鉢さんを助けたことに?」
ナカバチ「そんなわけあるか! 本当は私を刺すつもりだったのを、手違いで紅莉栖に刺したのだ!」
ナルホド「っ! 今のは重要な証言です! 証言の変更を要求します!」
サイバンカン「弁護人の主張を認めます。証人は証言を改めるように」
ナカバチ「ふんっ」
・「落ちたナイフを拾った白衣の男は、私にナイフを突き刺そうとして失敗し、紅莉栖に刺したのだ!」
待った!!
ナルホド「・・・・つまり、岡部さんの本当の狙いは」
ナカバチ「天才発明家、ドクター 中鉢の殺害、だったのだろうなぁ」ドヤァ
オカベ「黙れ! このパクリ発明家が!」
ミツルギ「先に言っておくが、たとえ本人に殺意が無くとも牧瀬 紅莉栖を殺害したのであれば、被告人は有罪だ」
ナルホド「そんな・・・・ことって・・・・」
サイバンカン「・・・・どうやら、審理はここまでのようですな。弁護人、何か言いたいことはありますか?」
ナルホド(これが真実なのか? 本当にこれが―――)
チヒロ『なるほどくん。何があっても依頼人を信じるの』
チヒロ『法廷で最後に必要になるのは・・・・そのチカラよ』
ナルホド(千尋さん・・・・僕は・・・・)
待った!!
マキセ「さっきから白衣の男白衣の男って言ってるけど、それって、本当に"今ここに座ってる岡部"のことなの?」
ナルホド「!!」
ナカバチ「わ、私が見間違えたとでも言いたいのか!?」
マキセ「成歩堂。今までの証言をじっくり考えてみて」
マキセ「証言のどこかに矛盾がある、って考えるだけじゃなく」
マキセ「もし矛盾が何もなかったらどうなるかって」
ナルホド「矛盾が何もなかったら・・・・?」
マキセ「発想を《逆転》させるのよ、成歩堂!」
ナルホド「発想を、《逆転》・・・・!」
ナルホド「でも、やっぱり証言の中に嘘があるようにしか・・・・」
マキセ「・・・・成歩堂。ここだけの話なんだけど」
ナルホド「は、はい?」
マキセ「ドクター 中鉢の本名は牧瀬 章一・・・・。私の夫であり、紅莉栖の実の父親よ」ヒソヒソ
ナルホド(な、なんだって!? じゃあ、口論ってのは親子喧嘩だったのか・・・・)
マキセ「だからわかるの。多分、章一はあれで嘘は吐いていない。あれでも真実を言っているつもり」
マキセ「もちろん私は岡部の弁護士。岡部の無実を主張するわ」
マキセ「まずひとつ。さっきの司会者の証言では、岡部の白衣は真っ白、返り血を浴びていなかった」
マキセ「ふたつ目。中鉢の証言では、岡部は"ドクター 中鉢にナイフを突き刺そうとして失敗し、紅莉栖に刺した"」
マキセ「本当にそうなら、返り血を浴びないなんて芸当、できると思う?」
ナルホド「!!」
マキセ「もちろんこれだとあの検事、さっきと同じように、白衣を二着持っていれば可能、とか言ってくるわ」
マキセ「でも、岡部は普段から二着目の白衣を持ち歩いているわけじゃない。犯人じゃないんだから、計画的に用意してたわけでもない」
ナルホド(そうだ。依頼人は犯人じゃない)
マキセ「もし司会者とドクター 中鉢の証言に矛盾がないとするなら、白衣が二着存在しないといけないのよ」
マキセ「なら、当然疑問が浮かぶ。なぜ白衣は二着あったのか。そして―――」
マキセ「どうして凶器に指紋が二種類"しか"ついてないのか」
ナルホド(確か証拠品の中にそれらしいものが・・・・いやでも、ホントに!?)
ナルホド「そう言えば、ドクター 中鉢さん。"男の叫び声"は聞きましたか?」
ナカバチ「なんだそれは? 知らんな」
ナルホド(ということは、"男の叫び声"はドクター 中鉢が現場から逃走した後に発せられた・・・・)
ナルホド(となると、その主は"白衣の男"。そして、その声をたよりに"岡部さん"は現場へかけつけた・・・・)
ナルホド(これって、つまり・・・・)
ナルホド「裁判長。ドクター 中鉢が言っている"白衣の男"が、"ここに居る岡部さん"ではない可能性があります」
サイバンカン「な、なんですと?」
ナカバチ「なんだと!? そんなはずはない!」
ミツルギ「ほう? つまり、別の第三者が白衣をまとって犯行を行った、そして指紋は何らかのトリックだ、と主張するのだな?」
ナルホド「そうです。被告人の主張と、先ほどの司会者の証言、そしてドクター 中鉢の証言にムジュンが無いなら、それしかない」
ミツルギ「だが、弁護人はそれを否定する証拠品を既に持っているはずだ。第三者が現場へのぼってきていない証拠を」
ラジオ会館側の報告
8階通路には従業員は居なかった。
また、7階以上へ向かう人間は
会見参加者の他に居なかった。
屋上への扉には鍵がかかっていた。
[ラジオ会館側の報告]⇒つきつける
ナルホド「確かに、"下の階から上の階へ"と向かう人間は居なかった」
ミツルギ「なに・・・・?」
ナルホド「ですが、もし"上の階から下の階へ"と向かう人間が居たら?」
サイバンカン「どういうことですかな?」
ナルホド「つまり、屋上から8階通路に行く人間についてまだ議論していない、ということです」
ミツルギ「だが、屋上へ通じる扉は施錠されていたとここにある」
ラジ館屋上の写真
屋上からはどこへも移動できない。
扉のドアノブは外側から破壊されて
いた。
[ラジ館屋上の写真]⇒つきつける
ナルホド「証拠品として、こちらの写真を提出します!」
サイバンカン「これは?」
ナルホド「屋上の扉のドアノブです。見る影もありませんが」
ミツルギ「つまり、屋上の扉は外側から何者かによって鍵が破壊されていた、と」
ナルホド「そうだ!」
ミツルギ「外側から破壊されていたということは、中に侵入するために破壊した、ということ」
ミツルギ「だが、屋上からはどこへもいけない。ということは、その何者かはそもそもどこから屋上へやってきたのだ?」
ナルホド「それは、こう、何かに乗って・・・・」
ミツルギ「屋上にその何かが飛来したという証拠でもあるのか?」
ラジオ会館側の報告2
午前11時50分頃、ラジオ会館は
強い揺れに襲われた。
同時に屋上へ数人が確認に行った。
[ラジオ会館側の報告2]⇒つきつける
くらえ!!
サイバンカン「これが、証拠なのですか?」
ナルホド「確かに直接的な証拠ではありません。ですが、揺れを感じた多くの人が屋上へ向かったのは事実!」
ミツルギ「ほう?」
ナルホド「司会者さん。屋上には何があったんですか?」
シカイシャ「え、えっと・・・・樽型の巨大な機械と、迷彩服の女性従業員が」
ザワ ザワ
カッ! カッ!
サイバンカン「なんと・・・・それでは、本当に第三者が居たというのですかな!?」
ミツルギ「どうしてそんな大事なことを言わなかった!」ダンッ!
シカイシャ「ひぃっ! いえ、どうせドクター 中鉢の仕込みだろうと思っていたので!」
ナルホド「そうなんですか?」
ナカバチ「し、知らん! それこそ、白衣の男の陰謀に違いない!」
オカベ「そんなわけあるか! 俺だって貴様の仕込みか何かだと思ったのだぞ!」
ミツルギ「だが、その第三者は白衣でも男でもない。本件とは明らかに無関係の人物だ」
ナルホド「果たしてそうでしょうか。それこそ、指紋のトリックに関わる重要な人物である可能性がある!」
ミツルギ「その証拠はあるのか!」
ナルホド「ない! だけど、可能性を否定する証拠もないはずだ!」
ミツルギ「ぐぬぬ・・・・」
サイバンカン「ふむぅ・・・・」
ミツルギ「・・・・いや、おかしい」
サイバンカン「なにがですかな?」
ミツルギ「こちらの資料では、従業員はその日、誰も8階より上に上がっていないことは間違いない」
ナルホド「ってことは、従業員じゃない?」
ミツルギ「その従業員が鍵を使い屋上に行ったとして、再度中に入るのに鍵を壊す意味がわからない」
ミツルギ「そもそも、従業員が迷彩服を着ている、というのもおかしな話だ。本当に従業員だったのか!?」ギロッ
シカイシャ「ひぃっ! いえ、あの、"下がってくださーい"とか、"会見は予定通り始まりまーす"とか言っていたので、てっきり関係者かと・・・・」
ミツルギ「・・・・通報を受けた警察は、無論屋上も確認したのだな?」ギロッ
イトノコ「は、はいッス! 午後1時頃、屋上には何もなかったッス!」
ナルホド「何も・・・・ない? 樽型の機械は?」
イトノコ「そんなもん、あったらすぐに報告してるッス!」
ナルホド「やっぱり・・・・ということは、もう間違いない!」
タイムマシン新理論
牧瀬 紅莉栖が書いたもの。
殺害の直前にドクター 中鉢に
手渡された。
[タイムマシン新理論]⇒つきつける
くらえ!!
ナルホド「樽型の機械はタイムマシン、迷彩服の女はその運転手!」
ナルホド「二着もある白衣と二種類しかない指紋・・・・」
ナルホド「つまり、真犯人は"未来からやってきた岡部さん"だったんですよ!」
ザワ ザワ
カンッ! カンッ!
サイバンカン「・・・・」
ミツルギ「・・・・」
マキセ「・・・・」
ナルホド「な、なーんちゃって・・・・あはは」
ナカバチ「何を言うか! まだタイムマシンは造っておらんわ!」
ナルホド「いや、えっと、未来で造られたものが過去へ来た、とか?」
ミツルギ「確かに、仮にそうなら例の"男の叫び声"についても説明ができる・・・・だが、しかし」グググ
サイバンカン「ですが、弁護人の主張では、結局被告人が犯人ということになってしまうのではないのですか?」
オカベ「な、なにっ!?」
ナルホド「違います! "今ここに居る被告人の岡部さん"ではなく、"未来の岡部さん"が犯人だと主張しているんです!」
ミツルギ「理にかなってはいる・・・・本法廷で裁いているのは、被告人席に座っている人物であって、それ以外の誰でもない」
サイバンカン「ですが、仮に"未来の岡部さん"が犯人だとして、それが意味しているのは、いずれ被告人が罪を犯すということでは?」
ナカバチ「それは違う! 世界は分岐するのだ、パラレルワールドと言えばわかりやすいか?」
サイバンカン「むむむ・・・・どうやら世界の本質を理解するためには、私たちが世界を受け入れなければならないようです」
サイバンカン「ともかく、検察側は重要参考人である迷彩服の女性を取り調べるように」
ミツルギ「つ、つまり、3日以内にタイムトラベラーの事情聴取をしてこい、というのか・・・・?」プルプル
ナルホド「それって、原理的に不可能なんじゃ・・・・」
マキセ「でも、それなら事実上無罪ってこと。良かったわね、成歩堂」
ナルホド(本当にこの事件はこれで終わりなんだろうか。いや―――)
ナルホド(むしろ、すべての始まりだったんじゃないか?)
サイバンカン「本日の審理はここまで。閉廷ッ!」
――
――――
――――――
8月 17日 午後5時 05分
未来ガジェット研究所
ダル「―――ってな感じで宙ぶらりんになって、検察側が証人を用意できなくて推定無罪だお」
まゆり「じょしんほーてー? って言うんだよねー」
岡部「"未来の俺"が犯人・・・・だと・・・・!?」
岡部(そして、"樽型の機械"・・・・これはもう間違いない)
岡部(だが、どういうことだ!? それが意味しているのは・・・・)
デンワ「プルルルル・・ ・・ プルルルル・・ ・・」
岡部「!」
ダル「あ、僕のケータイだ。はい、もしもし・・・・父さん? 誰の? 君の?」
岡部「ま、まさか・・・・」プルプル
ダル「オカリン! 謎の女が代われってさ」
岡部「・・・・誰だ」
謎の女『お願い! 今すぐラジ館屋上に来て!』
岡部「おまえは・・・・!」プルプル
鈴羽『あたしは、2036年から来た橋田至の娘、阿万音鈴羽!』
鈴羽『お願い、あたしの言うことを信じて! 未来と、牧瀬紅莉栖を救うために!』
岡部「・・・・いや、あの日へ行ったところで紅莉栖を殺してしまうのは"今の俺"なのだろう」
鈴羽『っ!? どうしてそれを!?』
岡部「だが、その俺は俺であって俺でない」
岡部(《発想》を逆転させろ。あの弁護士のように)
岡部(おそらくこれはβ世界線の収束。しかし、俺は今まさにα世界線の収束を乗り越えてきたじゃないか!)
岡部「それなら・・・・紅莉栖を救える可能性は、ゼロではない!」
鈴羽『さすがオカリンおじさん! だったら話は早い』
鈴羽『一緒に目指そう。どの世界線にも干渉されない、奇跡の世界線、《シュタインズ・ゲート》を!』
⇒⇒⇒シュタインズゲート本編へ続く・・・・
以上です。読んでいただきありがとうございます
最後のオチが弱くてごめんなさい、どうしても無罪をかっこよく勝ち取るビジョンが見えませんでした
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495254524/
Entry ⇒ 2017.05.26 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
岡部「犠牲となった全てのラボメンに……『顔射』を」紅莉栖「は?」
岡部「世界は再構成される!!……うっ」ドピュッ
紅莉栖「きゃああああああ!?」
岡部「フハッ!」ドピュッドピュッ
紅莉栖「きゃあ!?きゃああああ!?!??」
岡部「フゥーハハハハハハハハッ!!!!」
ドピュピュピピュッ
紅莉栖「やめっ……もうやめっ……きゃああ!?」
岡部「ふぅ……次に行くか」
岡部「別にどうということはない。俺は……顔射しに来ただけだ」
ルカ子「が、顔射って、あの……僕、男ですよ?」
岡部「男だろうが女だろうがそんなことは関係ない。そんなことはどーでもいい!」
ルカ子「岡部さん……」///////
岡部「そらっ!」ドピュッ
ルカ子「ひゃんっ」
岡部「ふぅ……ルカ子よ、合言葉を忘れているぞ?」
ルカ子「あっ……えっと……エル・プサイ……子種狂い?」
岡部「……コングルゥだ」
岡部「バイト戦士……そう言えば貴様は自称戦士だったな?」
鈴羽「自称じゃなくて正真正銘の戦士だよ!」
岡部「ならば、覚悟は出来ているな?」
鈴羽「へ?」
岡部「うりゃ!」ドピュッ
鈴羽「ぷはっ!?もぉー!何なのさいきなり!髪がベタベタになっちゃったじゃないか!」
岡部「ふむ……この状況下で真っ先に出た文句がそれか。……確かに、貴様は正真正銘の戦士のようだな。それでは、次に向かうか」
岡部「ふっ……やはり、見る者が見ればわかるのだな。今日の俺はひと味違う、ということを」
フェイリス「にゃんだかわからにゃいけど、とりあえず、コーヒーをかき混ぜていいかにゃん?」
岡部「ああ、いつもの『目を見て混ぜ混ぜ』で頼む」
フェイリス「かしこまりましたにゃん!まぜまぜ……まぜまぜ……」カチャカチャ
岡部「よし!ここで練乳を追加だ!!」ドピュッ
フェイリス「にゃっ!?凶真の練乳が濃過ぎて、まぜまぜしても溶けないにゃん!?」
岡部「フゥーハハハハハハハハッ!!せいぜい気合いを入れて混ぜるのだな。さぁ、お次は誰だ?」
岡部「比屋定さん?何故日本に?」
比屋定「半狂乱の紅莉栖からメールが届いてね。様子を見に来たのよ」
岡部「助手が迷惑をかけてすみません」
比屋定「いえ、私も半狂乱の紅莉栖なんて珍しいものを見れたから、気にしなくていいわ。それより本当なの?紅莉栖に……その、かけたって……」
岡部「お望みならば、比屋定さんにもかけましょうか?」
比屋定「いいえ。私は遠慮しとく。代わりに、是非かけて欲しいってうるさい人を連れて来てるのよ」
レスキネン「オー!リンターロー!」
レスキネン「HAHAHA!リンターロー!カタイコトハ、ナシデスヨ~?」
岡部「……わかりました。それでは教授……失礼します。うっ」ドピュッ
レスキネン「オー!リンターローノ、アツイ『リビドー』。タシカニ、ウケトリマシタ」
比屋定「良かったですね、教授」
岡部「ふぅ……次は、奴か」
岡部「変か?」
ダル「変も何も、下半身が完全に露出しているわけで……」
岡部「何か問題あるか?」ブラン
ダル「いや、その親しき中にも礼儀が必要じゃね?」
岡部「しかし、脱がなければ顔射出来ないではないか!」
ダル「これは酷い。流石の僕も全力逃げるお!」
岡部「あ!こら待て!マイフェイバリット・ライトアーム!!」
ダル「ひぃ~!お助け~!」ドタドタドタ
ミスターブラウン「何っ!?あっ!岡部!てめぇ……とうとう本性を現しやがったな!?」
岡部「ミ、ミスターブラウン!?こ、これは誤解で……」
ミスターブラウン「何が誤解だ!誤解って言うなら俺に顔射してみやがれっ!」
岡部「では、遠慮なく」ドピュッ
ミスターブラウン「へっ……大した度胸じゃねぇか。よし!家賃半額にしてやる!」
岡部「不幸中の幸いとは、まさにこのことか。フゥーハハハハハハハハッ!これこそが『シュタインズゲート』の選択だぁ!」
~♪~♪
岡部「『閃光の指圧師』?……萌郁からのメールか……なになに?」
萌郁『私も岡部くんに顔射されたいな☆』
岡部「相変わらず、メールではテンション高い奴だな……ならば、『ラボに来い』。よし、送信」
~♪~♪
岡部「む?今度は電話……だと?奴にしては珍しいな……もしもし?」
岡部「何故だ?」
萌郁「……恥ずかしい、から」
岡部「なら、顔射は出来ないぞ?」
萌郁「……大丈夫。携帯に、かけて」
岡部「なるほど、ビデオ通話で顔射とは……考えたな」
萌郁「……早く」
岡部「フハッ!よかろう!!特別に、受話器越しの顔射を披露してやる!……うっ」ドピュッ
萌郁「……記事に、していい?」
岡部「……匿名で頼む」
まゆり「オカリンオカリン、とぅっとぅる~!」
岡部「む?なんだ、まゆりか。どうかしたのか?」
まゆり「む~!まゆしぃを忘れて貰っては困るのです!!」
岡部「いや、そもそもお前は『顔射』とは何か知ってるのか?」
まゆり「まゆしぃにはよくわからないけど、みんな楽しそうだったから混ぜて欲しいなぁ」
まゆり「わぁ!オカリンの『ジューシーからあげ』カチカチだぁ~!昔はもっとぶにゅぶにゅだったのに……」
岡部「ふっ……我が股間に封印されし竜の力……とくと見るがいい!!」ドピュッ
まゆり「ふわぁぁ!?まゆしぃのカイちゅ~がびちゃびちゃだよ~!」
岡部「フゥーハハハハハハハハッ!!どうだぁ?恐れ入ったかぁ?」
まゆり「あのねぇ、オカリン。まゆしぃはがっかりなのです!」
岡部「な、何故……?」
まゆり「オカリンが『そーろー』過ぎるのと……」
岡部「ぐっ……ま、まだ何かあるのか?」
まゆり「『飛距離が足りない』のが、まゆしぃは悲しくて悲しくてたまらないのです!」
岡部「飛べよぉぉおおおおおおお!!!!」
FIN
乙乙
おつ
家族で笑わせていただきました
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484223736/
Entry ⇒ 2017.03.19 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
岡部「『鳳凰院凶真観察日記』……だと?」ダル「なんぞ?」
ダル「お初にお目にかかる……と思ったら、それ、よく見たら牧瀬氏のじゃね?」
岡部「それは本当か!?」
ダル「たぶん。だって、表紙の下の方に記名してあるしおすし」
岡部「ふむ。『栗御飯とカメハメ波』……か。間違いなく奴の固定ハンドルネーム、だな」
ダル「でしょ?」
岡部「つまり、このふざけた観察日記をクリスティーナが書いた、ということか。ぐぬぬ……許せんっ!!」
岡部「当然、クリスティーナにはそれ相応の報いを受けて貰う。が、しかぁーし!」
ダル「オカリン……まさか……」
岡部「その前に、この観察日記とやらの中身を覗くこととしよう」
ダル「いや、でも、さすがに不味いんじゃね?人の日記を勝手に読むのは……」
岡部「何を言う!この日誌のタイトルから推察するに、観察対象はこの俺!よって、その内容を読む権利が俺にあるのは自明の理の筈だ!!」
ダル「そりゃそうかもだけど……」
岡部「かも、ではない!これは既に決定事項だ!!」
岡部「では開くぞ!!運命石の扉を!!」
ペラッ
『○月X日。曇天。
本日より、鳳凰院凶真こと、岡部倫太郎の観察日記をつけることにする。
本日記の目的は、これまで出会った人物の中で最も不可解且つ、不愉快な存在である、鳳凰院凶真、本名岡部倫太郎の生態の調査並びに、その日観察対象より受けた被害を克明に書き記し、後々の研究や訴訟に役立てることである。
尚、本日記において鳳凰院凶真こと岡部倫太郎の名は以後、『岡部』に統一することにする。
以下、本日の被害。
今日も岡部は私のことを名前で呼ばない。
岡部は高確率で私のことを『助手』、もしくは『クリスティーナ』と呼び、また悪意をもって『ザ・ゾンビ』や、『セレブ・セブンティーン』(略して、『セレセブ』)のような侮辱的な呼称を用いる。
他のラボメンにも同様にあだ名を付けたがる傾向はあるが、その数と種類、内容の悲惨さにおいて私よりも酷い者は居ない。
どうして、私ばっかり……。』
岡部「随分……気にしていたんだな」
ダル「これはオカリンが全面的に悪いと思われ」
岡部「わ、わかっている!これからは、『牧瀬プリン』と呼ぶ回数を増やすことにする!」
ダル「オカリン……それは逆効果じゃ…?」
岡部「む?ならば、『蒙古斑』とでも呼べばいいのか?」
ダル「ダメだこりゃ……」
岡部「何を呆れている!次のページに進むぞ!!」
ペラッ
『○月X日。晴れ。
今日は5回岡部と会話した。
いつも通り、支離滅裂な妄想与太話ばかりほざいていたので、きっぱり論破してやった。
実に気分がいい。
明日は10回岡部を論破してやろう。』
ダル「オカリンよえー。弱すぐる」
岡部「ふんっ!俺は助手には寛大なのだ!なにせ、奴はプライドばかりは一人前だからな。だから、年長者として、精神年齢でも上なこの俺が、あえて折れてやったにすぎん!」
ダル「とりあえず、涙拭けよ」
岡部「泣いてなどいないっ!ええい!次のページにいくぞ!!」
ペラッ
『○月X日。雨のち晴れ。
今日は岡部が素っ気なかった。
何を言っても生返事で返してくる。
まるで、言い負かした翌日の父のような態度だ。
嫌われてしまったかも知れない。
そう思って俯いていると、岡部はおもむろに口を開いて、また支離滅裂なことを言い始めた。
どうやら、昨日の話題を自分なりに理論武装してきたようだ。
岡部は父とは違うとわかり、嬉しかった。
同時に、嫌われていたわけではなかったので、安心した。
別に、岡部の私に対する好感度を気にしているわけではないけれど、それでもなぜか、ほっと、安堵してしまった。
もちろん、一晩練り上げたその屁理屈を、私はばっさり切り捨てたわけだけど。』
岡部「ふんっ!たまたま、調子が悪かっただけだ!!」
ダル「しかし、飴と鞭とは、なかなかやりますな~」
岡部「何のことだ?」
ダル「無自覚、かぁ。ま、そんなところもオカリンの良いところってことで」
岡部「何を勝手に納得しているのだ!次いくぞ!!」
ペラッ
『○月X日。土砂降り。
改めて思う。
岡部の周りには女性が多すぎる、と。
ラボ内でも、ラボから外に出ても、岡部の周囲にはいつも女性の姿が見受けられる。
こいつは研究とかなんとか言いつつ、ハーレムを作りたいだけなんじゃないだろうか?
ラボでまゆりさんといちゃこらして、メイド喫茶でフェイリスさんと2人だけの世界を構築し、帰り際に漆原さんを誘惑した挙句、道すがらに桐生さんと阿万音さん、ついでに綯ちゃんまで口説いていた。
綯ちゃんを口説いているところを見つかり、ブラウン管工房の店長さんに怒られていたのを見て、少しは溜飲が下がったのだが、自重して貰いたい。
ま、私には関係ないんだけどねっ!』
岡部「なっ!?ダル!裏切るのかっ!?」
ダル「裏切るも何も、ラボメンの男女比の偏りは誰の目から見ても明らかですしおすし……」
岡部「では、準ラボメンにミスターブラウン氏と、レスキネン教授、そしてルカ子の父君である漆原氏も招こうではないか!」
ダル「あーそうすると、オカリンは間違いなく掘られるけど、それでも問題ないの?」
岡部「そ、それは困るっ!……まぁ、いい。現状維持だろうが、俺には頼れる右腕である、お前がついているのだからな!」
ダル「ウホッ!」
岡部「変な意味に取るな!!そんなことよりも、次のページだ!!」
ペラッ
『○月X日。晴れのち曇りのち雨。
今日は私の飲みかけのドクぺを岡部が間違って飲んだ。
きゃっほー!関節キスだぁー!……って、べ、別に嬉しくなんてないんだからなっ!!
むしろ不快だし、もう二度と飲めない。
でも、さすがに捨てるわけにもいかない。
そう、粗末にするのはいけないことだ。うん。
だから、仕方なく岡部が口をつけてしまったドクぺを飲もうとしたのだけど……
岡部『ダル、お前も飲むか?』
ダル『あざーす。ごくごく……ぷはぁ~!』
って、何だそりゃ!?
私のドクぺを回し飲みするなっ!!
確定した。
ダルこと橋田至(以後、『橋田』と記載)は、私の敵であると。
橋田、死すべし。』
岡部「飲み物とは言え、食べ物の恨みは恐ろしいな」
ダル「いや、これはもっと根深いというか何というか……」
岡部「仕方ない、後で謝っておくか。……気をとり直して、次に進むぞ!」
ペラッ
『○月X日。暴風雨。
前々から思っていたけれど、猫耳メイドのフェイリスさん(以後、『猫耳』と記載)が、岡部に対して馴れ馴れしすぎると思う。
明らかに客に対するスキンシップの範疇を超えている。
今日なんて、これ見よがしに岡部の腕にしがみつき、その豊満な胸を嫌味ったらしく押し付けていた。
それに対して岡部は、表面上は困りつつも、鼻の下を伸ばして満更でもないようだ。
胸なんてただの飾りだってことを、岡部には分からんのですかっ!?
思えば、ラボメンの女性はみんな胸が大きい。
まゆりさん、阿万音さん、桐生さん、そして猫耳。
胸が小さいのは私と、漆原さんだけだ。
そして漆原さんは男。だが、男なのだ。
早急に比屋定先輩をラボメンに加える必要がある。あーだけど、そうしたら私のアイデンティティがー……。
むしゃくしゃする。
今日はもう寝よう。』
岡部「そんなわけあるかっ!」
ダル「だったら牧瀬氏に『レモンちゃん可愛いよ』って……」
岡部「逆効果だろう!?」
ダル「えぇ~ルイスたんだったらこれでイチコロなのに……」
岡部「アニメと現実を一緒にするな!とにかく、次のページに進むぞ!!」
ペラッ
『○月X日。快晴。
今日は岡部の洗濯物を手に入れた。
白衣はもちろん、シャツ、ズボン、そして……ふひひっ、し、下着まで。
おっと、鼻血が。
岡部の下着を汚したら大変だ。
自重せねば。
と、思ったら、よくよく見ると私が汚す前に、既に汚れているようだ。
光に翳すと、うっすらと、岡部のうんスジが……フハッ!
素晴らしいサンプルである。
丁重に扱い、今後の研究に活かそう。
私はこの、『岡部のウンパン』によって、世界の支配構造を打ち砕くのだっ!!
フゥーハハハハハハハハッ!!!!』
岡部「フッ……」
ダル「オ、オカリン……?」
岡部「フゥーハハハハハハハハッ!!!!」
ダル「ど、どうしたん?ウンパン盗まれて、気でもふれたん?」
岡部「違う!俺は正気だ!!」
ダル「それなら良かったお」
岡部「ああ、良かった。おかげで俺は、ついにクリスティーナの弱みを握ることが出来た!」
ダル「その引き換えにウンパンを盗まれてしまったわけだけど、それについては構わないわけ?」
岡部「構わんっ!!さぁ、もっとクリスティーナの弱みを暴くぞ!!」
ダル「この辺でやめておいた方が……」
岡部「俺の辞書に『撤退』などという言葉はない!ここまで来たら、読み進めるのみ!!」
ダル「オカリンあんた……最高に輝いてるよ…」
岡部「一気に読み進めるぞ!!」
ペラッペラッペラッ……
今日は岡部の女性関係についてまとめてみる。
まず、椎名まゆり。
彼女は岡部の幼馴染であり、彼との関係は友達以上恋人未満と言ったところだ。
本人曰く、『岡部の人質』であり、相互依存関係であるとも言える。
しかし、これまでの観察結果を見るに、岡部との関係はそれ以上に進展する兆候は見受けられない。
その為、危険度としては低いが、彼女が本気を出せば余人の立ち入る隙はないと、明記しておく。
次に猫耳。
先日の観察記録の通り、岡部に対する過剰なまでのスキンシップが目に余る。
今の所岡部が彼女に惹かれている様子はないが、この泥棒猫は要注意である。
次に阿万音鈴羽。
性格も行動も体育会系な彼女は、ネクラでインテリのひ弱な私にはない魅力を備えている。
快活且つ、開けっぴろげな性格に、岡部も心を許してる節が随所に見受けられる。
顔もかなり整っていて笑顔がキュートだ。
おまけに声も可愛い。
大事なことなので、もう一度繰り返す。
声も可愛い。
次に桐生萌郁。
ブラウン管工房でアルバイトしている彼女については、本人が寡黙な為、詳細な情報は収集出来なかった。
岡部との関係性も、目立った接点は見受けられないが、たまに岡部が挙動不振に陥ることがあるので、因縁浅からぬ相手なのかも知れない。
特筆すべき点があるとすれば、ラボ随一の巨乳である。
繰り返す、巨乳である。
次に漆原るか。
私よりも女らしく、巫女服がとてもよく似合う、美少年である。だが、男なのだ。
常時岡部に好き好き光線を照射しているが、彼は男である。
それに対して岡部は基本的には友人として、節度ある振る舞いを心がけているようだが、ときどき魅力されているようだ。
だが、漆原さんは男だ。
岡部が間違った道に進まないよう、気を配る必要がある。
だって、彼は男なのだから。
最後に橋田。
岡部の右腕という地位を確固たるものとしている彼は、岡部にとって良きパートナーであり、友人であり、有能な人材である。
彼の存在によって、私がどれだけ努力しても、岡部の右腕にはなれない。悔しい。
しかし、必然的に岡部の左腕はフリーということになり、つまり、その位置に収まる存在こそが、岡部の恋人であると言えるだろう。
その左腕に時折あの猫耳が纏わり付いているのを目撃するたびに、無性にイライラする。
あーもう!橋田死ねっ!!』
ダル「ちょっ!」
岡部「うるさいぞ、ダル」
ダル「だって、こんなのあんまりだお!」
岡部「いいから、黙って読め」
今日も猫耳が岡部にちょっかいかけていた。
にゃんにゃんにゃんにゃんうるせぇ!
橋田もヘラヘラヘラヘラしやがって!
橋田、死ねっ!!』
ダル「生きるっ!!」
岡部「そうだな、強く生きろ」
ダル「それにしても、なんだか牧瀬氏の日記の先行きが怪しくなってきますたな」
岡部「フハハッ……そろそろ、爆弾発言が飛び出すやも知れんなぁ。楽しみだ」
あの猫耳!岡部の耳たぶに噛みつきやがった!
私だってまだ噛んだことないのに!
事ここに至り、ついに本気で岡部を堕としに来ていると判断した。
速やかに、メス猫の迎撃及び、反撃の準備を進めなければならない。
これは、最優先事項である。』
岡部「ふむ。どうやら動くようだな。ダルよ、ここ最近フェイリスが何か被害を受けた様子はないか?」
ダル「特にそんな様子はないお。でも、女の諍いってのは、水面下で秘密裏に行われるのが世の常なわけで……」
岡部「助手の奴、フェイリスに何かしてなければいいのだが……」
岡部、橋田、並びに猫耳には内密でラボメンガールズを招集し、円卓会議を開催した。
議題はもちろん、近頃目に余る泥棒猫耳メイドの岡部に対する数々のセクシャルハラスメントへの対策についてである。
当初は会議が難航するかに思われたが、他のラボメンガールズ達が思いの外、協力的であり、スムーズに話し合いは行われた。
彼女達にとっても、猫耳の蛮行は許しがたく、また共通の認識として、今の状況を由々しき事態だと思っているようだ。
正直、岡部と猫耳に一番近しいまゆりさんがどんな反応を示すのか予測がつかず、内心ヒヤヒヤしていたのだが、蓋を開けてみれば彼女か最も協力的だった。
まゆりさんがこちらの味方についてくれたのは僥倖以外の何物でもない。
近しい友人として、自らきちんと注意すると確約してくれた。
これで、発情した猫耳への対処は万全だ。
その後、血の盟約を交わし、岡部に対する不可侵条約を結んで、お開きとなった。
もちろん、条約など、気休めに過ぎず、隙あらば岡部を掠め取ろうと画策していることは、盟友達のギラギラとした目つきを見れば明らかだ。
いかに彼女達を敵に回すことなく、岡部に取り入るか、その為の策を迅速に講じなくてはならない。
そしてそれを成し遂げた時、世界の支配構造は打ち砕かれ、岡部は私の手に堕ちるのだ。
フゥーハハハハハハハハッ!!』
ダル「血で血を洗う女同士の骨肉の争い……萎えるお」
岡部「フハハッ!目的はさっぱりわからんが、助手もなかなかどうして、この凶気のマッドサイエンティストたるこの俺に相応しい成長を遂げているようだな!!」
ダル「本日の鈍感主人公スレはここですか?」
最近、ラボメンガールズ達の目つきがヤバイ。
警戒心を喚起させたのは迂闊だったか。
こちらの望み通り、互いが牽制し合う状況を構築出来たのは良いが、これでは私も迂闊には動けない。
どうしてこうなった。
それはさておき、比屋定先輩からそろそろアメリカに帰還するよう勧告が来た。
予定滞在日数を大幅にオーバーしているが、この際仕方ない。
何せ、私は未だ、何一つ成し遂げていないのだから。
アメリカに帰る前に、何としてでも、岡部との間に既成事実を作りあげなければならない。
その為なら、私は悪魔に魂を売ってもいい。
決意した。
あらゆる手段を用いて目的を達成する、正真正銘の、マッドサイエンティストになってやる。
あー岡部の赤ちゃんが欲しいよぉ。』
ダル「牧瀬氏が『ヤンデレ』に変貌したお」
岡部「ふむ。助手の奴、なかなかアメリカに帰らないと思ったら、まさかホムンクルスの研究をしていたとはな」
ダル「え?」
岡部「ん?」
岡部を籠絡するにあたり、様々な方法を吟味した結果、『洗脳』が最適であるとの解に至った。
そもそも、肉体的なアドバンテージは今更語るまでもなく、性格的なアドバンテージさえも他のラボメンガールズ為に大きく水を開けられている私にとって、これ以外の道はない。
そして私は脳科学専攻である為、この手法が得意分野であるとも言える。
これまで他の男の人を籠絡した経験はないけれど。
ともかく、『洗脳』するには岡部の正常の思考を阻害することが必要不可欠だ。
つまり洗脳中に、第三者の介入を入らない状況を作り出す必要がある。
岡部と2人きりで。
私だけが。
私だけの言葉で。
私の思い通りに岡部を『洗脳』する。
ラボメンガールズ達が互いを牽制し合い、身動き一つ取れない今、私の障害となるのは橋田だけである。
橋田……どこまでも邪魔をしてくれる。
どうしてくれようか。
足のつかない毒物でチンするか。
いや、奴はデブだ。
常人では十分致死量であっても、奴をチンするには足らないかも知れない。
下手に生き延びられて、私の悪事が露見するのは避けたい。
さて、どうしたものか。
奴の食事や飲み物に、毎日微量の毒物を混入し、病死と見せかけてチーンする。
これだ。
これなら、奴がどれだけデブでもいずれくたばるだろう。
さながら私は、電子レンジの待ち時間を眺めるが如く、橋田がチーンとなるのを待っていればいい。
ふふっ。
橋田、貴様は我が野望の為、犠牲となるのだ!
フゥーハハハハハハハハッ!!!!』
ダル「僕、ちょっと用事を思い出したから……」
岡部「待てダル!こんな幼稚な脅しに屈するのかっ!?」
ダル「幼稚でも何でもこんなこと書かれてたら怖いに決まってるだろ常考!!チンとか……マジ勘弁。とにかく僕は帰るおっ!!
岡部「お、おいっ!」
バタンッ!
岡部「…………脅し、だよな?」
岡部「ま、まぁ、いい!とにかく、続きを…」
ペラッ
『○月X日。快晴。
私の計算が正しければ、前日の日記を読んだ時点で橋田は排除されている筈。
ようやく、邪魔者は居なくなった。
待ってて、岡部。
すぐ、行くよ?』
岡部「な、なんだ、これは……?」
岡部「い、嫌な予感がする」
岡部「逃げるか…?いや、もはや手遅れかも知れん……」
岡部「くそっ。こんな日記にさえ、手を出さなければ………ん?待てよ…?」
岡部「そうだ!日記を読む前にタイムリープすれば!」
バシャンッ!
岡部「なっ!?停電!?いや、ブレーカーが落ちただけか……?」
紅莉栖「おーかべ♪」
岡部「!?」
岡部「その声はまさか、クリスティーナ!?」
紅莉栖「ふふふっ。この暗闇の中で、声だけで私だってわかってくれるなんて……嬉しいな」
岡部「に、日記を勝手に読んだことは謝る!!すまなかった!!」
紅莉栖「そんなことは今はどうでもいい」
岡部「えっ……?」
紅莉栖「それよりも、岡部」
岡部「な、何だ?言いたいことがあるなら、聞こうじゃないか。だから、い、命だけは……」
紅莉栖「大丈夫。私はあんたに危害を加えたりしない。だから……じっとして」
岡部「お、おいっ!」
紅莉栖「よいっしょ……と」ストン
岡部「なっ!?」
紅莉栖「ふふふっ。ずっと、岡部の膝の上に座ってみたかったの」
紅莉栖「嫌なの?」
岡部「い、嫌とかそういう問題ではなくて…」
紅莉栖「ハッキリしろ!IQ170の灰色の頭脳はそんなこともすぐに答えられないのかっ!?」
岡部「……嫌じゃありません」
紅莉栖「ふふっ。いい子ね。それじゃあ、ご褒美をあげる」
岡部「ご、ご褒美……?」
紅莉栖「そう、ご褒美よ。だから、目を閉じなさい」
岡部「目を閉じろって、この暗闇で何故目を閉じる必要性が……」
紅莉栖「いいから目を閉じろっ!!」
岡部「はい」
岡部「こ、心得た」
紅莉栖「…………はむっ!」
岡部「!?」
紅莉栖「ふむっ……あむっ……ちゅっ」チュッチュッチュッ
岡部「!?!??!?」
紅莉栖「ぷはっ……はぁ……はぁ……」
岡部「じょ、助手よ……お前、何を…?」
紅莉栖「助手じゃない」
岡部「えっ?」
紅莉栖「ちゃんと名前で呼べっ!!」
紅莉栖「嬉しいっ!」
岡部「なっ!?」
紅莉栖「やっと名前で呼んでくれたっ!嬉しいから、またご褒美あげるね!」
岡部「そ、そんなことより、こっちの質問に……むぐっ!?」
紅莉栖「ちゅっ……ふっ……はむっ」チュッチュッチュッ
岡部「……ぷはっ!さ、さっきから一体何なのだお前は!?」
紅莉栖「あのね、私ね……?」
岡部「ん?」
紅莉栖「岡部のことが好きなの」
岡部「は?」
岡部「へ?」
紅莉栖「私のことをどう思っているのかと聞いている!!」
岡部「あっ……う、うむ。お前は俺の助手であり、大切なラボメンでだな……」
紅莉栖「私の聞きたいのはそんなことじゃないっ!!恋愛対象として好きなのかどうか、さっさと答えなさいっ!!」
岡部「れ、恋愛対象として……?」
紅莉栖「ええ、そうよ」
岡部「し、しかしだな、恋愛とはそもそも精神病の一種であり……」
紅莉栖「それ以上くだらないこと言ったら海馬に電極ぶっ刺してお前の脳みそをねるねるねーるねするぞコラ」
岡部「す、好きです!はい!」
岡部「あ、ああ」
紅莉栖「ほんとにほんと!?」
岡部「ほ、本当だとも!!」
紅莉栖「じゃあ、愛してる?」
岡部「なっ!?あ、愛……?」
紅莉栖「何よ。違うって言うの!?」
岡部「いや、そうではないが……気恥ずかしいというか、何と言うか……」
紅莉栖「ハッキリしないと生きたまま脳みそ輪切りにするぞっ!!」
岡部「あ、愛している!これでいいかっ!?」
岡部「くっ……この俺が助手の軍門に下るなど……」
紅莉栖「不満なのか?」
岡部「いえ、滅相もありません」
紅莉栖「そ。それじゃあ、荷物纏めて、パスポートを取得して来なさい。一週間以内にね」
岡部「パ、パスポート!?何故そんな物を用意しなければならないのだ!?」
紅莉栖「は?一緒にアメリカに帰るからに決まってるじゃない。馬鹿なの?死ぬの?」
岡部「死にたくありません」
紅莉栖「なら、準備しといてね」
紅莉栖「おや~?もしかして、狂気のマッドサイエンティストともあろう者がびびってるんですか~?」
岡部「び、びびってなどいない!ただ、向こうでの生活費をどう稼ぐか、それを考えあぐねていたのだ」
紅莉栖「ああ、それなら大丈夫。愛玩実験動物として、私がちゃんと養ってあげるから」
岡部「そ、それではまるでヒモじゃないか!」
紅莉栖「そうね。まゆりさんにでも知られたら、『ヒモリン』って呼ばれちゃうかも」
岡部「本気でありえそうだから笑えない……」
紅莉栖「ふふっ。……岡部」
岡部「ん?」
紅莉栖「私のこと、好き?」
岡部「……ああ、愛してる」
紅莉栖「ふふふっ。『洗脳』、成功♪」
FIN
乙
この後アメリカで、AI紅莉栖&真帆たんvs紅莉栖編が始まるんですねわかります
面白かった
久々のSS楽しかったわ
掲載元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1481803221/
Entry ⇒ 2016.12.28 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
【シュタゲSS】フェイリス「……パパ?」
哀心迷図のバベルのネタバレあり。特に漫画版を読んでる人にはより楽しんでいただけるかと。
もちろん、知らなくても楽しんでいただけるよう頑張ります。
今、何処からか、パパの声が聞こえた気がした。
深夜2時にふと目を覚ました私が、トイレに行こうとリビングを通ったときに。
パパ??「あれ、留未穂、まだ起きていたのかい」
その声に、私は驚いて音の方へ顔を向けたけれど、そこには誰もいなかった。
何かがあったわけでもなく、ただ深夜の黒い闇がひっそりと佇んでいた。
留未穂『どうして、今頃パパの幻聴なんて聞いちゃうのかな……』
胸がきゅうっと締め付けられる感覚を覚えた。
いつもは、こんなことないのに。どうしてだろう。
パパは、私が小さい頃に事故で亡くなった。
飛行機の事故で、たった一人の乗客以外は皆無事だった事故で、たった一人、私のパパだけが亡くなった。
それも、私がついた嘘のせいで――。
気付いたら、涙が流れていた。静かに、けれど確かに、一粒、二粒、と零れ落ちていく。
留未穂「あれ……なんで泣いてるんだろう……もう……」
執事の黒木はもうとっくに家に帰した。パパはこの世にはいない。
こんな広い家に、私はたった一人。
フェイリス「今さら寂しくなんて……ないニャ……」
フェイリスの口調で言っても、涙は止まらなかった。
そんなこと気にしなかったかのように私は急いで用を足すと、すぐさま布団へともぐりこみ、瞼を閉じた。
ダル「ふっ、残念だな、まゆ氏。僕はそんな手には乗らない!」
まゆり「ふえぇ、またリンクカード取られちゃったよう……」
フェイリス「もー、まゆしぃは顔に出過ぎなのニャン」
まゆり「ええー、そうなのぉ? まゆしい知らなかったよー」
ダル「これで僕の勝利は決定的……。あとひとつ……フェイリスたんに勝てば、フェイリスたんの手料理……」
まゆり「まだだよー、まゆしぃはまだ諦めないのです」
何やら賑わっているのは、秋葉家のリビングでのことである。
今日、俺たちは突然フェイリス――もとい秋葉留未穂に、家に来るよう呼び出されたのである。
ここ――シュタインズゲート世界線では、フェイリスの家に遊びに行ったことは、ダルもまゆりも、おそらく俺もないらしく、べらぼうに高いマンションを見上げ、二人して盛り上がっていた。
どうして突然家に呼んだのかを尋ねてもはぐらかされ、結局訊けてはいない。
そうこうしていると、奴らは雷ネットアクセスバトラーズを始めた。
何やら、三人でトーナメントをして、フェイリスを打ち負かせば、フェイリスが手料理を振る舞うらしい。
三人でトーナメントも何もあるかと思ったが、何も突っ込まず俺はただ窓の外を眺めている。
何度か、オカリンもやろうよーとか、凶真も一緒にやるニャンとか言われたりしたが、俺は毅然とした態度でそれを断った。
この窓から秋葉原を見下ろし、悦に浸っているためである――まあ、ルールのよく分からないゲームで負けるのも悔しいという気持ちが、なくもないが。
決してそれだけじゃないぞ。この狂気のマッドサイエンティストである俺は、そんな小さな男ではないぞ。
ダル「よっしゃああああああ。じゃあさっそく、フェイリスたん、勝負だ!」
フェイリス「ダルニャン、やる気満々だニャン! フェイリスは嬉しいのニャー」
ダル「うおおおおおおお、フェイリスたんの上目遣いきたああああああ。でも、勝負は手加減しないのだぜッ」
フェイリス「もちろんだニャン。じゃあ、はーじめーるニャーン!」
どうやら結局まゆりはダルに負けてしまったらしい。
そうかと思えば、すぐに決勝戦をダルは始めてしまった。
よっぽどフェイリスの手料理が食べたいらしいな。
だが、そんなダルの元気も最初だけだった。
初めのうちこそ、ダルは優位に進めていたらしく、いちいち叫びながら自分のしたことを解説したりしていたのだが、次第にそれはなくなっていった。
同時に顔はみるみる暗くなっていき、一方フェイリスは初めからずっと笑みを浮かべたままだった。
ダル「くおおおお、まだ負けん、まだ負けんぞおおおおお! どうしてもフェイリスたんの手料理が食べたいんだあああああ」
岡部「まったく、うるさいぞダル。そもそも、そこにいるのはフェイリスではなく、秋葉留未穂だぞ」
ダル「オカリンうるさい! それにフェイリスたんはフェイリスたんなんだぞ!」
岡部「いやあ、違うなあ。そこにいる猫耳小娘は、紛れもなく秋葉留未穂なのだッ!」
フェイリス「ちょっと凶真ー、何言ってるのニャー! フェイリスは、フェイリスな の ニャ」
なんだか、なのニャの言葉の間に、一々ハートが入っているように聞こえたぞ。
わざわざ上目遣いで言いおって、まったく、けしからん小娘だ。
ダル「そうだそうだー! もーまったく、オカリンのせいで集中力切れちゃうだろ! これで負けたらどうしてくれるんだッ!」
フェイリス「ニャー? ダルニャン、それは違うニャ。凶真による妨害工作――混沌の囁き(カオスウィスパー)がなくても、フェイリスの勝利は決定的なのニャ。
そんなに凶真の声が気になるニャら、耳栓してもいいのニャよー??」
ダル「くっ……、フェイリスたんに否定されるなんて……感じちゃうッ」
岡部「変態は自重しろ」
そう言いながら、俺はα世界線でのことを思い出していた。
耳栓――。その言葉には、強い思い出があった。
かつて、フェイリスはα世界線において、Dメールを送りパパさんを生き返らせた。
しかし、まゆりを助けるためにそれをなかったことにしなければならなくなった俺は、フェイリスに何とDメールを送ったのか尋ねたが、覚えていなかった。
当然だ。世界線が変われば、記憶を保てていられるのは俺だけ。そう、このリーディング・シュタイナーを持つ俺だけなのだ。
しかしそのせいで困りかけた俺だったが、フェイリスはもしかしたら思い出せるかもしれない、と言った。
俺は思い出してくれっ、と必死に頼んだ。すると、フェイリスは、雷ネットの決勝で勝てたら思い出せるかもしれない、と言ったのだ。
そう、このときフェイリスは、雷ネットの大会において決勝で敗れてしまっていたのだ。
そんなこの決勝で勝つことができれば、思い出すことができるかもしれない。
フェイリスが言ったその言葉を信じ、俺はタイムリープをした。フェイリスから、過去のフェイリスへの伝言を抱えて。
そのときに、過去のフェイリスに持たせるよう言われたのが、サングラスと、そしてこの耳栓だった。
決勝で妨害工作にあったから負けた、これさえあれば絶対に勝てていた、フェイリスはそう言っていたのだ。
結局、色々と問題はあったものの、見事フェイリスは優勝、そこからも色々あって、最終的にはDメールの内容を思い出し、まゆりを救える世界へ少し近づいたのだ。
だが、そのことを今のフェイリスは覚えていない。なかったことになったのだから。あの夜の告白も、涙も、何もかも。
フェイリスの様子が、少しおかしかったのだ。
フェイリス「みみ……せん……?」
心がここにないような、そんな感じ。数秒間そんな調子だったフェイリスだったが、俺の視線に気づき、ハッとして笑顔を作った。
ダル「フェイリスたん、どうかしたん?」
フェイリス「ニャ、ニャんでもないニャ! ふむう、さっさとフェイリスの劇的勝利を収めるニャン!
それで……申し訳ないんニャけど……、このあととっても大事な用があるのを忘れてたニャン。
この勝負が終わったら、今日はお開きにするニャン」
ダル「な、なに!? じゃあ、僕が勝ったら手料理はどうなるのですか!?」
フェイリス「フェイリスは負けないから大丈夫ニャ」
ダル「うぐおっ」
やはり、何かおかしい――。
俺にはそう見えたが、あえて何も言わなかった。あるいは、本当に大事な用があるもかもしれないし。
岡部「ふむ、そうか。では我々は、退散する準備をしておこう」
まゆり「えへへー、フェリスちゃんのお家はとっても楽しいねー。また来たいのです」
フェイリス「もちろん大歓迎だニャン! いつでも遊びに来るニャ」
まゆりが隣で満面の笑みを浮かべ喜んでいる。
さらにその横で、圧倒的絶望感に沈んでいるスーパーハカーが約1名。
やはりフェイリスは相当強いらしいな。まあ、世界大会に呼ばれるくらいなのだから、当然だが。
フェイリス「ニャー、これでフェイリスの勝ちニャ」
ダル「うおおおお、フェイリスたんつええええええ。全く太刀打ちできないっす」
フェイリス「ふふっ、もっと褒めてもいいのニャ」
ダル「フェイリスたんの上目遣い……今日だけで何回目かお……もう今なら爆死してもいいお」
岡部「馬鹿なこと言ってないで、早く出る準備をしろ、ダル」
俺がそう促すと、ダルは渋々と言った様子で帰り支度を始めた。
フェイリス「本当にゴメンなのニャー。また遊びに来てほしいニャ!」
岡部「気にすることはない。当然だ。また遊びに来る。次に会う時は、俺の偉大さに畏怖を覚えるがいい」
フェイリス「ニャフーン、嬉しいのニャー。フェイリスも、黄昏時にのみ存在する九番目の水路にいるとされるあの仙人の元で、修行を積んで待っているのニャ」
岡部「おおそうか。じゃあまたな」
フェイリス「もー、凶真は冷たいのニャー!」
まゆり「フェリスちゃん、またねー」
ダル「僕はこの聖地に、必ず戻ってくるお! それまで待ってるんだお!」
フェイリスの言葉をスルーするように、俺はさっそうと玄関を出た。
まゆりもダルも別れの挨拶を言いながら、俺に続いた。
その瞬間、少しだけ俺が振り向くと、閉まる扉の隙間から、僅かにフェイリスの姿が見えた。
その顔がどこか悲しそうで、寂しそうに見えたのは、俺の見間違いだろうか。
ダル「うん。なんか突然雰囲気が変わった感じがあったお」
帰り道、二人がそんな会話を始めた。
やはり、そう思っていたのは俺だけではなかったのか。いや、フェイリスが変でないときなど、無いに等しいのだが。そうではなく。
まゆり「オカリンは何か知ってるー?」
岡部「……いや、分からんな」
俺はそう答えたが、本当は全く心当たりがないわけではなかった。いや、正確には、ないと信じたかった。
ただ、ないと断言することはできなかった。
もしもフェイリスに、α世界線の記憶が戻りつつあるとしたら――。
普通、世界線が変われば世界は再構成されるため、前の世界線の記憶を保持することはできない。
それこそ、この俺の持つリーディング・シュタイナーがなければ。
――だが。
α世界線において、フェイリスはDメールを送る前の世界線の記憶を取り戻した。
シュタインズゲート到達後、紅莉栖はα世界線の断片的な記憶をおぼろげに取り戻した。
リーディング・シュタイナーは、僅かながら誰にでも存在する。
それは、これまでの経験から俺が分かったことだ。
確かに、α世界線においてフェイリスは、10年前に亡くなったはずのパパさんと話をすることで、愛されていたのだという実感を得ることができた。
フェイリスも、Dメールを取り消すメールを送るとき、この世界線の記憶を失くしてしまうことは悲しい、と言っていた。
だから、その記憶を思い出すことは、一見悪いことではないように思える。
だがしかし、それはいないはずのパパさんの記憶も思い出すということ。
なかったはずの10年の記憶が思い出されたとき、フェイリスに残されるのは苦しい感情なのではないか。
まゆり「オカリンどうしたの? 難しい顔してー」
岡部「ん? 何でもないぞ。少し小腹がすいたなあと思っていたのだ」
ダル「お、じゃあ早く帰って、ラボでカップ麺でも食べるお」
まゆり「ジューシーから揚げもあるよーー!!」
岡部「フッ、そうだな」
フェイリスがまたも苦しむ姿を――俺はもうみたくない。
悪いのはすべて俺なのであり、俺だけが罰を受けるべきなのだから。
だから、この想像が、どうか間違っていてくれと俺は祈っていた。
午後二時ごろ、フェイリス宅を後にした俺たちはラボへ帰ってきた……のだが、そこには何故か仏頂面の助手がいた。
ムスーッと顔をしかめ、俺を睨みつけている。そのくせまゆりには甘い声で返事するのだからたちが悪い。
机にはまゆりの買ってきたであろうバナナと、誰のか分からないヘアゴムが5つと、明らかにダルのであろうエロゲが置いてある。
まゆりは髪はくくってないはずだが……コスプレにでも使うのだろうか。
というかダルよ、なぜ机にエロゲを置きっぱなしにしている。
岡部「だから、朝フェイリス宅に行くがお前も来るか、と尋ねただろ。それなのに『私は良いわ。あんた達で行ってきなさい』とかクールぶってメールしてきたのは、他でもない、お前
だ、助手ぅ」
紅莉栖「だ、だって、朝の六時にメールされても……ほとんど頭回らずに返したわけだが……」
岡部「そんな朝に突然フェイリスから連絡が来たのだから、仕方なかろう。それに、まゆりもダルもちゃーんと来たのだぞ?」
紅莉栖「は、橋田はフェイリスさんだからでしょ? 大体……」
まゆり「まあまあ、オカリン、紅莉栖ちゃんはオカリンに会えなくて寂しかったって言ってるんだから、優しくしてあげなきゃ駄目だよ?」
紅莉栖「ふぇっ!? そ、そんなこと誰も言ってな……」
ダル「じゃあ牧瀬氏は寂しくなかったん?」
紅莉栖「そ、それは……」
ダル「爆発しろ」
まゆり「ほらー、オカリン分かったー?」
あたふたする俺にまゆりが目で訴えかけてくる。こういう時のまゆりは意志が強く、折れてはくれない。
そう分かってはいるのに、俺はどうにも素直になれない。
紅莉栖「だから、学会の用事で来たって言ってんでしょ!? 大体何よそれ……早く帰れって言うの?」
紅莉栖の口調が、一転厳しくなる。分かっていただろ、岡部倫太郎。
それなのにどうして……素直になれないのだろう。
岡部「お、俺の方から来てくれと頼んだ覚えはないが?」
まゆり「オカリン! そんなこと言っちゃだめだよ。もう素直じゃないんだからあ」
ダル「仲直りしたと思ったらまた喧嘩ですか……もう、手の妬ける子ねえ!」
紅莉栖の方を見ると……案の定目が潤んでいる。ああ、俺は馬鹿だ。一体何をしているんだ。
紅莉栖「……あんたに悪意はないって分かってるけど……、ちょっと出てくる」
まゆり「あ、紅莉栖ちゃん! 待ってー」
まゆりが引き留めようとしたが、紅莉栖はさっと扉の方へと走って、出て行ってしまった。
するとまゆりがこっちへ顔を向けてくる。その表情は明らかに怒っている。
まゆり「もう、オカリン? ちゃんと素直に言わなきゃだめだよ?」
ダル「まあ、この二人の夫婦喧嘩はいつものことですしおすし。どうせすぐ仲直りするっしょ」
岡部「ふ、夫婦喧嘩などでは……」
といいつつも、やはり紅莉栖のことが気にかかっていた。
素直にならなければ、そう思えば思うほど、照れくさくなり、悪態をついてしまう。
きっと、それは紅莉栖も同じなのだろう。そうだと分かっているからこそ、素直になれない自分が嫌になる。
岡部「……俺も少し外へ出てくる」
まゆり「紅莉栖ちゃんに会ったら、ちゃんな謝りなよ?」
まゆりの言葉に頷きながら、俺はラボを後にした。
みんなが帰ってから数分してから、私は特に用もなく家を出た。
用事を思い出したというのは嘘だ。本当は、一人になりたかった。
耳栓―――――。
ずっとそのワードが、頭にこびりついて離れない。一体なんだっていうの?
凶真に耳栓を渡される記憶――雷ネットの大会に私が出場し始めてから、凶真に耳栓を渡された記憶なんてない。
それなのに、どうしてかそんな風景が思い出されてしまう。一体どうしてなの?
とても気味が悪い。もしかしてそんな夢でも見たのだろうか。
だけどそれは、夢のそれよりもうんと鮮明で、リアルだった。
デジャブというわけでもない。だけど、確かにそんなあるはずのない記憶が、いくつか私の頭に転がっていた。
誰にも会いたくなかった。誰かに会って、いつものフェイリスを演じるのは、今はとてもしんどかったから。
それなのに――あなたがそこにいてしまった。
――Okabe Side
ラボを出たはいいが、俺は特に当てもなくブラブラとしていた。
すると――そこに見覚えのある顔が見えた。
岡部「……フェイリス」
フェイリス「ニャッ? 凶真……」
フェイリスは俺をさも今見つけたような顔をしたが、その前に一度目が合ったような気がしたのだが。気のせいだろうか。
俺が話しかけても、フェイリスはいつものようにハイテンションで絡んできたりはしなかった。
むしろ悲しそうな顔をして、俺の方を見ていた。
岡部「用事があるのでは、なかったのか?」
フェイリス「あ、あれニャ? あれ、フェイリスの勘違いだったのニャー。ニャハハハハ」
明らかにフェイリスの様子はおかしかった。どう考えても取り繕っているように見える。
岡部「フェイリス……先ほどから様子がおかしいが、どうかしたのか?」
すると、フェイリスは数秒間じっと黙ったまま、俯いた。
数秒後、ようやく、か細く消えてしまいそうな声でフェイリスが言葉を紡ぎ出した。
フェイリス「……実は……」
ゴクリ、と唾を飲み込む。フェイリスの神妙な面持ち。やはり――。
フェイリス「明日ファンタズムのライブに行くって言ってた友達に、ドタキャンされちゃったのニャー!。チケットが余っちゃって困ったのニャー!」
すると、さっきの顔から一転、普段のフェイリスのテンションに戻った。もしかして、勘違いだったか?
岡部「な、なんだそれは。心配して損したではないか」
フェイリス「ニャー! ドタキャンされる苦しみを、凶真は分かってないニャ!」
岡部「ふむ、それはそうとファンタズムというと、あのFESとかいう……」
フェイリス「そうニャ! あの独特で美しい歌声は聴く人の心をハッキングしちゃうんだニャ! まさか凶真も興味があるニャ!?」
先ほどまではどこか作り笑いのように見えていたが、今は幾分それも和らいだ気がする。
だが、子どものころから大人相手に渡り合ってきたフェイリスのことだ。一体本当は何を想っているのか、到底俺には分かってやれない。
岡部「ふむ、まあ人並みにはな」
フェイリス「じゃあ、明日一緒にライブに行くニャ! 駄目かニャ?」
フェイリスが覗き込むような目で俺を見てくる。ええい、そんな目で見るな。
岡部「ま、まあ、余っているというのなら、一緒に行ってやらんでもないぞ。たまたま空いている日だったからな」
そんなフェイリスの本心が分からないからか、俺はフェイリスとライブに行くことを了承していた。
だが俺はライブなど行ったこともないぞ。大丈夫なのか。
フェイリス「やったニャー! じゃあ詳しいことはまた後でメールするニャ! 凶真とデート嬉しいニャー!」
岡部「デ、デートなどと言った浮ついたものではない!」
そう言いながら、フェイリスの元気が少しは出たように思えて、俺はひどく安心していた。
さっきまではどこか変に思えていたが、もしかすると本当に俺の勘違いだったのかもしれない。
まあ明日一日一緒にいれば、勘違いだったかどうかも分かるだろう。
その後数分他愛もない話をした後、俺はフェイリスと別れて、また歩き出した。
凶真が「どうかしたのか」と尋ねた時、私はすべて言ってしまいたかった。
きっと、凶真は馬鹿になんてしない。いざとなれば、いつもの中二病で流せる。
フェイリス「……実は……」
私がそう口を開くと、凶真の顔はより一層真剣味を帯びた。
そう、凶真はとても優しいのだ。自らの体を犠牲にしてまで、誰かを守ろうとするほど……あれ、それはいつの記憶だっけ?
もう、言ってしまおう。本当はずっと明るいフェイリスでいなければならないのだけど、言ってしまおう。
そう思ったけど、ギリギリのところで私は踏みとどまった――いや、言えなかった。
私の意味不明な記憶に、誰かを巻き込みたくなかったんだ。
フェイリス「明日ファンタズムのライブに行くって言ってた友達に、ドタキャンされちゃったのニャー!。チケットが余っちゃって困ったのニャー!」
チケットが余っているのは嘘ではない。落ちた時のために何枚かチケットを応募したら、二枚当たったのだ。
発券しなければいいと思ったけど、そういうのはあまり気持ちよくないから、発券はした。
誰か一緒に行く人がいれば、と思ったけど――一緒に行く友達なんていないから、一枚余っていたのだ。
岡部「な、なんだそれは。心配して損したではないか」
フェイリス「ニャー! ドタキャンされる苦しみを、凶真は分かってないニャ!」
岡部「ふむ、それはそうとファンタズムというと、あのFESとかいう……」
フェイリス「そうニャ! あの独特で美しい歌声は聴く人の心をハッキングしちゃうんだニャ! まさか凶真も興味があるニャ!?」
凶真がファンタズムへの興味を示した時、私は少し元気が出た。
ほんの少しの間、たくさんの不思議で、悲しい感覚を忘れていた。
私の好きなものに凶真が興味を示してくれると、なんだかとても嬉しかった。
だから――。
岡部「ふむ、まあ人並みにはな」
フェイリス「じゃあ、明日一緒にライブに行くニャ! 駄目かニャ?」
気付けば、私は凶真をライブに誘っていた。
岡部「ま、まあ、余っているというのなら、一緒に行ってやらんでもないぞ。たまたま空いている日だったからな」
フェイリス「やったニャー! じゃあ詳しいことはまた後でメールするニャ! 凶真とデート嬉しいニャー!」
凶真が一緒に来てくれることになった時、私は心底嬉しかった。
気が付くと、いつものフェイリスに、演じなくてもなっていた。
その後数分他愛もない話をした後、私は凶真と別れたけれど、そんな私の心は、思いっきり浮わついていた。
岡部「こ、ここがリキッドルームか……」
フェイリス「ニャフフー。始まる前から楽しみなのニャー!」
ライブ当日、待ち合わせ場所で合流した後、俺たちはライブハウスへ来ていた。
ちなみに、いつものメイド服ではないが、しっかり猫耳はつけている。
岡部「し、しかしこんなに早く来る必要はなかったのではないか? 会場は確か17時で……」
現在の時刻は15時前。さすがに早すぎるのではないか?
と思ったのだが……。
フェイリス「何言ってるニャ! そんな時間に来たら先行物販に間に合わないのニャ!」
岡部「ふむ、なるほどな。って、もうこんなに行列が!」
良く見てみると、その先行物販とやらに並んでいる者たちがすでに行列を作っていた。
ええい、この俺の前を行くとは、命知らずな奴らめ。
フェイリス「でもフェイリスは、凶真となら退屈じゃないのニャ!」
岡部「お、おいフェイリス! 抱きつくな!」
フェイリス「ニャフフー、いいのニャいいのニャー♪」
腕に抱きつくようにして頬を摺り寄せてくる。
フェイリスのいい匂いが鼻の方へと運ばれて……って、俺は一体何を考えているんだ!
フェイリス「お目当ての物は全部買えたのニャー!」
岡部「こんなに買いおって、一体誰が持つと……」
フェイリス「凶真は優しいのニャーン!」
岡部「だ、だから抱きつくなと言っているだろうが!」
長い行列と言えど、コミマを思えばこんなもの、子どものチャンバラに過ぎぬ。
この鳳凰院凶真を出し抜こうなど、百年早いのだ!フゥーハハハ!
岡部「それで……会場の時もまたあんな行列になるのか?」
フェイリス「ニャニャッ、入るときはどうせ整理番号順ニャから、そんなに早く来なくていいニャン」
岡部「そうか。それでは少し時間があるな。どこか休めるところに……」
フェイリス「じゃあ、あそこの喫茶店がいいのニャン♪」
岡部「ぐっ、まあよかろう。好きなものを御馳走してやる」
本当はそんな財力は俺にはないのだが……今日くらい仕方あるまい。
チケット代も払わずに観させてもらうわけだしな。
フェイリス「なんか今日の凶真は優しすぎるニャ。はっ、まさか奴らに洗脳……」
岡部「なんだ、フェイリスは奢られたくないのか」
フェイリス「う、嘘ニャ! ありがたく奢っていただくのニャ!」
フェイリス「なんなのニャー、さっきからフェイリスの方ばっかり見てー」
そんなに見ていたつもりはないが、見ていたのだろうか……。
ぐっ、これも機関からの試練か。
岡部「いや、なに、お前のことが心配でな」
フェイリス「ニャッ!? い、いきなり何を言ってるのニャ」
ふふふ、驚いていやがる。
普段中二でしか話さないから、いざ普通に話せば逆にこうなると思ったのだ!
……まあ、心配なのは事実だが。
フェイリス「フェ、フェイリスは標高八千mの修練所で鋼のメンタルを手に入れたから、心配ないのニャ!」
岡部「……フッ、そうか」
この、含みを持たせた、ある種の意味深な笑い。
ハッハッハ、戸惑うがよいフェイリスよ。今こそ我の勝利の時なり!
フェイリス「……でも、ありがとニャ」
岡部「へっ?」
そう言ったきり、黙り込むフェイリス。おい、なんなんだ。なんなんだその意味深な発言は。
認めん、俺は認めんぞ!
フェイリス「いやー、良いライブだったのニャー!」
ライブを見終えると、俺たちはライブハウスを後にした。
フェイリスは興奮気味に、ずっと飛び跳ねながら喋っている。
岡部「うむ、確かに中々良かったな。特になんだったか、あの、蝶は微かな羽ばたきで云々の奴は……」
フェイリス「運命のファルファッラなのニャ! フェイリスもあの歌は大好きなのニャ!!」
岡部「ああ、あの三拍子系独特の雰囲気に、ギターソロのタッピングを用いたフレーズ。非常に良い」
フェイリス「ニャニャッ! 凶真音楽のこと分かるのかニャ? かっこいいニャー」
岡部「ふん、当然の嗜みだ」
まあ、某音楽レビューサイトで見ただけなのだが。
本当はタッピングが何かなんて分かっていない。
というか、あの歌は何処か俺の三週間の世界線漂流を思い出させるのだが、気のせいだろうか……。
フェイリス「フェイリスは大丈夫ニャ! 一人でだって……」
岡部「送るといっておるのだ。それぐらい俺にさせろ」
フェイリス「……分かったニャ。凶真は優しいのニャー」
岡部「茶化すんじゃない」
今日一日フェイリスと居て、おかしなことはなかった。
あの寂しそうな顔も見ることはなかった。それでも、俺はどこか不安を抱えていた。
元より、フェイリスは小さいころから大人たちと渡り合ってきた人物。
自分の気持ちを隠すなど、造作もないことなのだろうからな。
秋葉原に帰ってきてフェイリスの家も近づいてきたころ、突然男に声を掛けられた。
この声……聞き覚えがあるぞ……まさか……。
4℃「てめぇ、チャンピオン気取りのメスネコだな。お前みたいな奴がチャンピオンよりも、俺様の方が似合うってもんだ。なぜなら俺は……」
岡部「やはりお前か……」
フェイリス「ニャッ、凶真も知ってるニャ?」
岡部「も、というと、お前も知っているのか?」
フェイリス「ニャー。雷ネットの大会で見たニャ……でも、何か不正を働いて失格になったとか……」
この世界線でもこいつは雷ネットに参加しているのか。
しかし、やはり汚いやり方は変わってないようだな……。
4℃「おい、てめえら俺様の話を無視すんじゃねえ。このストリートシーンに舞い降りた黒の絶対零度こと4℃様の逆鱗に触れると……」
岡部「その十円ハゲのようになってしまうのか?」
4℃「て、てめえ! なんでそのことを知ってやがる!」
十円ハゲのことを指摘すると、やはり激昂する4℃。
俺の方に近づいたかと思うと、一瞬で腹部にけりを入れてきた。
岡部「ぐはッ」
4℃「おいおい、何倒れてんだ、俺は何もしてねえぜ。ただ、ガイアが囁くのさ。そうそれはまさに……」
フェイリス「凶真! 逃げるニャ!」
4℃「っておい! 待てこのクソピンク!」
4℃はどうやら逆恨みでフェイリスのことを狙っているらしい。
腹部の痛みはまだ引かず、ズキズキと圧迫するように痛みを与えてくるが、俺達は構わず走った。
だが――。
4℃「待ってて言ってんだろーがァ!」
岡部「うぐッ」
4℃「ふん、その猫娘は後でかわいがってやるとして、まずはこの白く穢れた血を、黒の絶対零度で染めてやるぜ」
フェイリスには絶対に手を出させるわけにはいかん。何とか時間を稼ぎ、誰か来るのを待たないと――。
しかし、人通りはかなり少なく、僅かな人たちも、俺を無視するように足早にどこかへ歩いていく。
岡部「な、なにが絶対零度だ。絶対零度は4℃ではなく、-273℃だぞ」
4℃「うるせえ! それに俺は黒の絶対零度。そんじゃそこらの野郎とは訳が違うのさ。ギンヌンガの裂け目はまさしく俺の聖域。分かるか?」
岡部「ぐはッ、うッ」
フェイリス「凶真! 凶真ァ!」
何度も、何度も、何度も、足を腹を、腕を蹴られる。
段々痛みがなくなってきた。よし、これならまだ耐えられる――のか?
ああ、もう分からない。いいんだ、これで。たぶん。
痛みは増しているのか、それともなくなっているのか。
おそらく蹴られ続けているのだろうが、もう俺には分からなかった。
かろうじて、フェイリスの心配する顔が見えて、俺は――。
??「おい岡部! 乗れ!」
4℃「あァン? なんだてめ……」
ブラウン「なんだ、俺に文句あんのか」
軽トラから突然聞こえてきた声で、俺の意識は覚醒した。
車から降り、顔を見せたのは――ミスターブラウンだった。
4℃「え、いや、俺は」
ブラウン「馬鹿が」
ゴスン、というものすごい音が聞こえた後、よんどしーは地面に倒れ込んだ。
ブラウン「てめぇ、次見かけたらぶっ殺すからな」
岡部「ミ、ミスターブラウン、何故ここに……」
痛みをこらえながら、ミスターブラウンに俺は尋ねる。
ミスターブラウンは車に乗り込みながら、答えた。
ブラウン「偶然だよ、偶然。それより、早く乗れ。店でいいか?」
岡部「すまん、助かる……いや、だがラボの方ではなく、こいつの家へ向かってくれ……場所は――」
そういって、俺はフェイリスの家の方へと連れて行ってもらった。
軽トラなので、どう考えても3人は乗れないはずなのだが、小柄なフェイリスが俺の足の隙間に座ることで、何とか無理やり乗車していた。
フェイリスは俺の体の傷に触れぬよう背中を浮かしてくれている。
それでいて、心配そうな顔をしながら、そっと手を当ててくれていた。
フェイリス「凶真……大丈夫かニャ……?」
岡部「俺のことは心配いらん。そ、それにしてもミスターブラウン。偶然とはいえ、良いタイミングだったぞ。れ、礼を言おう」
ブラウン「ふん、ちょっとお得意様のとこへ行って帰る道で喧嘩してる奴がいると思ったら、これだ。ったく、弱いくせに喧嘩してんじゃねえ」
岡部「い、一方的に吹っかけられたのだ」
俺の言葉を聞いているのか、いないのかは分からないが、数秒間後、ミスターブラウンは幾分顔を緩めながら呟いた。
ブラウン「ま、身を挺してでも女の子を守るってのには、ちょっとだけ見直したぜ」
岡部「べ、別にそういう訳ではない。……だがまあ、それなら家賃を下げてくれても」
ブラウン「ばっか野郎。これ以上どう下げるってんだ」
軽口を叩いてはいるが、本当はかなりミスターブラウンには感謝していた。
ミスターブラウンが来てくれなければ、俺は延々と蹴られ、フェイリスはどうされていたか定かではない。
岡部「……ありがとう、ミスターブラウン」
気付けば、俺はものすごく小さい声で、そう呟いてしまっていた。
その声がミスターブラウンに聞こえていたかはわからないが、彼は「フン」と鼻を鳴らし、軽トラを走らせ続けた。
黒木「お嬢様、どうされたのですか」
フェイリス宅に入ると、執事の黒木さんが俺の方を見て、驚いたようにフェイリスに尋ねた。
俺は別に入らずとも、お前を送ったらラボまで帰ると言ったのだが、帰れるわけないでニャ、と一蹴されてしまった。
フェイリス「黒木、はやく手当の準備をして! 私は何もされてない……凶真が庇ってくれたから」
黒木「左様でございますか。では、岡部様、こちらへ」
ソファに寝かされて、俺は黒木さんに手当をしてもらった。
一体この人にできないことなどあるのだろうか。まさにパーフェクト執事だ。
黒木「岡部様、お嬢様は庇っていただいたようで……私からもお礼申し上げます。本当にありがとうございます」
岡部「い、いえ、そんな。俺はそれでも返し消えないほど……フェイリス……留未穂には、借りがありますから」
黒木「今日は泊まっていってください。夕飯、寝床ともにすぐに準備いたします」
その声には、有無を言わせぬ響きがあった。
実際、手当を終えた黒木さんは驚くべき速さで次々と仕事を済ませていった。
夕飯を食べ終えると、黒木さんはどうやら帰っていったらしい。
すなわち、この家には現在、俺とフェイリスの二人きり――はっ、馬鹿なことを考えるのはよせ!
体の痛みは完全に引いてはいないものの、もうほとんど動かせるようになっていた。
黒木さんに案内された部屋のベッドに横たわっていると、小さくノックの音が響いた。
留未穂「……入ってもいい?」
岡部「あ、あぁ……」
俺が返事をすると、フェイリス――いや、留未穂が静かに入ってきた。
いつもの猫耳はなく、“秋葉留未穂”というただの一人の女の子として、存在しているようだった。
留未穂「岡部……さん……」
掠れそうな声でそう呟いたかと思うと、突然、留未穂は飛びついてきて、俺の方へと腕を伸ばした。
岡部「なっ」
横たわる俺の体に、留未穂の腕が絡みつく。
飛びついてきたとはいえ、小柄な留未穂の体は柔らかく、痛みは感じなかった。
突然の出来事に俺は戸惑うが、決して留未穂を避けたりはしなかった。
留未穂「うぅ……怖かったよう……」
留未穂は震えていた。いつも、弱音を吐かないフェイリス。
そんな強くて、ものすごく弱い少女が、泣いていた。
留未穂「黒い感情をぶつけられて……とっても……怖かったの……」
岡部「……あぁ、すまんな」
留未穂「ううん、岡部さんは何も悪くないでしょ? 岡部さんは、私を助けてくれた。……岡部さんはね、私の……、私の……」
そこまで話したところで、留未穂の口が止まった。
一体どうしたのだろうか。
岡部「どうかしたか?」
数秒間、留未穂は何も言わずに俯いた。
ようやく動くと、消え入りそうな声で言った。
留未穂「最近ね、おかしなことばっかり思い浮かぶの……」
俺は、じっと留未穂の瞳を見つめていた。
やはり、まさか――。
留未穂は意を決したように、言葉を紡ぎ出した。
留未穂「馬鹿だって笑うかもしれないけど、今日みたいに黒い感情をぶつけられて……岡部さんが庇ってくれて。
そしたら、車が来て、助けてくれて。そんなことが、前にもあったような気がするの。そんなはずないのに、なんでだろうね」
いつもの明るいフェイリスではない、素の姿。
それは本当にただの女の子で、悲しいくらいに儚げだった。
留未穂「それだけじゃない。最近ね……約10年前に亡くなった、パパのことが、つい最近までいたような気がするの。
まるでつい最近までパパと過ごしていたような、そんな思い出が流れ込んでくるの。
そんなわけないのに、どうしてか頭から離れないの。だから、とっても苦しくて……馬鹿みたいだね」
泣きそうに――いや、きっと涙を隠しながら、留未穂は言った。
俺はそっと留未穂の背中に手を回すと、少し力を込めて、抱き締めた。
岡部「……すまない」
留未穂「どうして岡部さんが謝るの? ふふっ、さっきから謝ってばっかりだね」
岡部「……違うんだ」
――リーディングシュタイナー。
それは、誰もが少しは持っている力。
中でもフェイリスは、まだその力が強い傾向にあったように思えた。
このままその記憶に苦しめられるくらいならば――。
俺は、覚悟を決めた。
あのα世界線でのことは、紅莉栖以外には話していない。
しかし、留未穂は覚悟を持って、俺にこのことを話してくれた。
ならば、俺もそれに応える必要があるのだ。
俺はベッドに座り直すと、留未穂も隣に腰を下ろした。
留未穂「えっ?」
岡部「実は……」
そして、俺は話せる限りのすべてを話した。
α世界線で行ったDメール実験のこと、それによってまゆりの死が確定してしまったこと。
だから、それを避けるために、フェイリス含む数々の願いや想いを、すべて犠牲にしてきたこと。
そしてここは、紅莉栖も死なず、まゆりも死なない、奇跡の世界線で、ようやく俺はそこに辿り着けたこと――。
赦してほしかったわけじゃない。ただ、俺は仮に手段があるとしても、フェイリスのパパさんを助けるわけにはいかない。
もう一度タイムマシンを使うことなど、できないから。
留未穂は、じっと俺の瞳を見つめながら、黙って話を聞いてくれた。
その表情は真剣そのもので、話が進むにつれて、悲しげな表情に変わっていった。
そして、α世界線であったフェイリスとの出来事を話した時、一瞬留未穂の目がカッと開いた。
どうかしたかと聞いたが、そのときは留未穂は答えず、ただ俺の話を聞いてくれた。
話し終えたとき、留未穂は俺の方に近づき、頭を俺に委ねながら、呟いた。
留未穂「……全部……、思い出したよ」
岡部「な、なに! 本当か?」
留未穂「うん……覚えてる……全部……最後に送ったメールも、全部……」
岡部「すまん……」
反射的に俺は謝っていた。
すると留未穂は、俺の方を見て首を傾げながら問うた。
留未穂「ねえ、岡部さん。その世界では、私は最後に、『パパ愛してる』ってメールを過去に送ったんだよね。
それは、今この世界ではどうなのかな。そのメールは、パパに送られたことになってるのかな」
おそらく――なってないだろう、と思った。
あれから世界は何度も変わった。何度も世界線を漂流し、ようやくここにたどり着いた。
だが、何と答えればいいのだろう、と思っていると、それを察知してか、留未穂は言った。
留未穂「ふふ、そっか、やっぱ届いてないよね。もう、岡部さん、すぐ気を遣うんだから……優しいね」
岡部「い、いや、そういう訳では……」
やはり、この女の前では嘘は吐けない。
すべてを見透かされてしまう――悲しいほどに。
岡部「しかし、俺は……」
留未穂「ううん、いいの。でも……、思ってたより、ちょっとだけ、ちょっとだけ、悲しいね」
そう言うと、留未穂はまた、俺の背中へと手を伸ばした。
前よりも今の方が悲しいのは、当然だろう。
あのときは、まゆりの命と天秤にかけることで、仕方ないんだと思うことができた。
それに、実際にパパさんがいなくなった世界、すなわち元に戻った世界(フェイリスが再度Dメールを送った後の世界)では、そのこと自体を覚えていないから、悲しくはならなかった。
しかし、今はどうだ。
すべてを思い出したうえで、失った10年間の想い出だけが無数に漂う中、そんな失われた現実の中、留未穂は一人取り残されているのだ。
岡部「……なんだ、留未穂」
留未穂「ふふっ、また名前で呼んでくれた」
岡部「それで喜ぶなら、いくらでも呼んでやる。留未穂」
悲しそうな、留未穂の顔。
どこまでも悲しみが広がっているような、圧倒的な儚さ。
留未穂「……誰も悪くないけど、きっとここが幸せな世界だけど……」
留未穂の顔が、俺の胸に沈む。
薄いシャツを通して伝わる水分が、留未穂が泣いていることを伝えていた。
留未穂「ちょっとだけ、今だけは、泣いてもいいかな……」
岡部「……あぁ」
留未穂の泣き声が、部屋中に響き渡った。
それはまるで、美しすぎるピアノの演奏のように、切なかった。
きっとフェイリスは、苦しくてもまた、何も言わずひたすら一人で抱え続けるだろう。
俺に……、何かできることはないのだろうか。
紅莉栖「あ、岡部」
ラボのドアを開けると、すでに紅莉栖が来ているようだった。
紅莉栖「き、昨日は……その……いきなり怒って、悪かったわ」
岡部「え、あぁ。うん」
何かを話してきたのは分かったが、フェイリスのことで頭がいっぱいな俺は紅莉栖との会話に集中できなかった。
結果、生返事になってしまったが、それでも俺は紅莉栖の方を見ようとはしなかった。
紅莉栖「……ちょっと、聞いてるの?」
岡部「え、あぁ。えっと、うん」
紅莉栖「ねえ、岡部。謝ってるんだから聞きなさいよ!」
岡部「あぁ。そうだな」
そこまで返事してた時に、俺はようやくハッとして紅莉栖の方を見た。
が、すでに遅かった。紅莉栖は肩を震わせて俺の方を睨んでいた。
紅莉栖「なによ……もう知らないっ」
すると、俺の横を抜けて紅莉栖はラボの入口へと走った。
そのときちょうど来たらしいまゆりとすれ違ったが、紅莉栖はまゆりの方を一度も見ようとはしなかった。
まゆり「あ、紅莉栖ちゃん、トゥットゥル……あれ?」
走り去る紅莉栖の背中を不思議そうに見た後、ラボの方を覗き込んだまゆりは、俺の姿を見つけてなるほどといったように頬を膨らませた。
まゆり「ちょっとオカリン! また紅莉栖ちゃんに……」
だがそこまで言いかけて、俺の顔を見た後まゆりは言葉を止めた。
何故か悲しそうに眉を下げて、口を開く。
まゆり「オカリン、何かあったの?」
岡部「え、どうしてだ? 別に俺は……」
まゆり「オカリン……、今、とっても悲しそうな顔してるよ?」
岡部「えっ?」
まゆりは案外鋭いところがある。
とはいえ、俺はそんなに悲しそうな顔をしていたのだろうか?
岡部「……すまんな、少し出てくる」
まゆり「あ、ちょっと、オカリン!」
俺はまたここにいるのがどうしても嫌になり、ラボを出た。
行くところもなく、その日一日ひたすらに歩き続けた。
そして、夜になった。
もう帰ろうか――と思ったはずなのに、気付けば俺はメイクイーンに向かっていた。
時間的に、フェイリスが帰ろうとする時間だろうか。
無意識に俺はそれまで待っていたのだろうか。
フェイリス「あれ、凶真?」
メイクイーンから出てきたフェイリスが俺の姿を認める。
俺はゆっくりとフェイリスに近づきながら、どんな口調で話せばいいのだろう、と思った。
岡部「お、おう、奇遇だなあ。まさかこんなところで会うなんて」
フェイリスは数秒間俺の瞳を見つめた後、フフッ、と笑った。
フェイリス「そうだニャ。凶真とは前世から約束された運命、ここで会うのも必然だったのニャ!」
昨日のことなんてなかったかのように、フェイリスは元気に振る舞っていた。
だが、俺には分かる。フェイリスは、無理をしている。
岡部「そ、そうだな。ついでだし、家まで送ってやろう」
フェイリス「えっ、そ、それは大丈夫ニャ! そんなに凶真にばっかり……」
岡部「昨日の奴にまた絡まれたらどうする。人が心配しているのだから、ありがたく受け取れ」
フェイリス「……分かったニャ」
そう言うと、突然フェイリスが腕に抱きついてくる。
岡部「お、おい! それとこれとは話が……」
フェイリス「いいのニャいいのニャー♪」
振り払うこともできず、結局そのままフェイリスの家まで歩いた。
昨日の奴は見かけなかった。ひとまず安心だ。
フェイリス「凶真……ありがとニャ」
家に着くと、フェイリスが笑顔で俺に言った。
だがその笑顔に、少し無理している様子が感じ取れる。
岡部「ふん、礼には及ばん」
フェイリス「それと……、心配かけて、ごめんニャ」
すると一瞬、フェイリスが笑顔という仮面を下した姿が見えた。
苦しんでいて、本当は助けてって言いたくて、だけど言えない顔。
岡部「何も謝らなくていい。お前は何も悪くないのだから。悪いのは……」
フェイリス「凶真……」
フェイリスと別れた後、歩きながら俺は正しいのだろうか、と自問自答を繰り返した。
どうすることが正解なのだろう。どうすることが間違いなのだろう。
岡部さんがすべて話してくれてから、3日が過ぎた。
あれから岡部さんは、毎日私の家まで送ってくれる。
それはとても嬉しいのだけど……いいのかな、って思う。
岡部さんにとって、牧瀬さんはとても大切な人。
それと同じくらい、牧瀬さんにとって岡部さんは、とても大切な人。
そこに私と言う異物が入り込んで、岡部さんと牧瀬さんを苦しんでる。
それなのに、岡部さんと一緒に入れる時間を楽しいと思ってしまう……なんて私は醜いのだろう。
岡部さんは、知っている。私が“本当に岡部さんと一緒にいていいのかな”と思っていることを。
そして、パパのこととこのことで二重に苦しませていると思って、余計に苦しんでいる。
ここ最近、私はラボに行かず岡部さんとまゆしぃくらいとしか話をしていない。
岡部さんも、ラボにはあんまり行ってなくて、牧瀬さんとも喧嘩をしているらしい。
私のせいだ――。
私なんていなければ良かったのに。一度決心したはずなのに、またパパのことで悲しんで、大切な人を傷つけてしまう私なんて――。
岡部さんは、なんども私を抱き締めてくれた。
私は、何度もその優しさに甘えた。駄目だって、分かってるのに。
また、私のせいだ。また、また、また――――。
ここ何日か、ほとんどラボに行っていないせいか、ダルや紅莉栖、まゆりからメールが次々と来ている。
そのほとんどに俺は返信をせず、ただ意味のない日々を送っていた。
昨夜のフェイリスが頭に浮かびあがる。
夜、街灯の下、腕の中にはフェイリス。
フェイリス「……凶真、クーニャンに怒られちゃうニャ……」
岡部「……そうだな」
そう言いながら、俺は腕を離せなかった。
フェイリスも、俺の背中から腕を離さなかった。
好きだとか、好きじゃないとか、そういう次元の話じゃない。
いや、仮にそういう次元を含んでいるとしても、もっと本質的な……、いや、やめよう、言い訳の言葉を探すのは。
俺にとって、紅莉栖は誰よりも大切な人間だ。
俺は……、紅莉栖が好きだ。
だが、だからフェイリスを放っておけるのか?
優しくしないのが優しさだとしたら、傷付いているフェイリスを無視してもいいのか?
俺には、そんなことはできなかった。
それが、正しいのか間違っているのかは、今でも分からない。
と、考えていると、突然携帯が鳴った。
どうやらダルからメールが来たらしい。
最近はあまり返信もできていなかったが……そろそろ見るべきか、と思い、俺は携帯を開けた。
岡部「なになに……『今日もラボで待ってるから、来るんだお』か……」
文面には有無を言わせない響きがあった。
あまり人に会いたくないのでラボにはいっていなかったのだが……仕方ない。
岡部「ラボに行くとするか……」
時刻はまだ昼前。
紅莉栖がラボにはいるかもしれない。
一体、紅莉栖は、どんな顔をしているのだろう。
紅莉栖に会うのが、今一番苦しかった。
ラボにはいると、まずまゆりが俺の名前を呼んだ。
開口一番にまゆりに叱られると思っていた俺は、またあの悲しそうな顔をして俺の方をじっと見てきたのが意外だった。
ダル「……オカリン」
いつもとは違う雰囲気を漂わせて、ダルが俺の方を見た。
何があったのかを問いただすような、鋭い眼。
机の上には相変わらずバナナが置いてあるが、おそらく前とは違うものだろう。
前回のものは食べてしまって、新たに購入した分に違いない。
ヘアゴムは同じように3つほど、机に置かれたままだった。
あのエロゲはさすがにどこかへ行ったようだ。
というか本当は、神聖なラボでそんなことをされると困るのだが……。
岡部「ク、クリスティーナはいないようだな」
まゆり「クリスちゃんは、さっきラボを出ていったのです……」
も、もしかして俺は避けられているのか?
だが、俺が紅莉栖をはじめに避けたのだから……どう思われても、仕方あるまい。
岡部「最近、来れていなくてすまんな。この俺がいなければ寂しかったか?」
ダル「オカリン、何があったんだお」
岡部「何って……別に、何もないぞ。ちょっと実家が忙しくてな、はは」
まゆり「オカリンのお父さんもお母さんも、分からないって言ってたのです」
こいつ、家にも聞いていたのか!?
くそ、何と答える……。
俺は黙り込んだ。
そう、紅莉栖は一体どんな顔をしていたのだろうか。
考えるだけで、胸が苦しくなる。
岡部「……すまん」
ダル「それは、僕じゃなくて牧瀬氏に言うべき言葉だろ常考」
岡部「あ、あぁ、そうだな」
ダル「それで……フェイリスたんと、何があったん?」
岡部「えっ?」
どうしてフェイリスと何かあったと知っているのだ?
……と思ったが、フェイリスも最近ラボには顔を見せていないようだし、分かってもおかしくはないか。
岡部「それは……だな……」
だが、俺には言えなかった。
俺の世界線漂流の話を、シュタインズゲート世界線の皆に言う必要はない。
だってそれは、存在しない記憶達なのだから。
ダル「なあ、一体何を隠してるんだお? オカリンが何を抱えてるのかは知らんけどさ、牧瀬氏は……」
岡部「分かってる。紅莉栖にはすまないと……」
ダル「じゃあどうして牧瀬氏に……」
岡部「牧瀬氏牧瀬氏うるさい! 紅莉栖さえいれば……フェイリスなんてどうなってもいいのかよ!」
ダル「はぁ? 誰もそんなこと言ってないだろ!」
気付けば――俺は怒声を上げてしまっていた。
岡部「だって、だってそうじゃないか! じゃあ一体、どうしたらいいんだよ!?」
俺は涙が零れそうになるのをこらえながら、訴えた。
一体どうすれば、どうすればみんな幸せになるんだよ。
一体どうすれば、誰も悲しまないんだよ。
フェイリスは、パパさんの記憶を抱えて、笑っていけるんだよ。
まゆり「だからね、それを考えるためにね、まゆしぃは教えてほしいのです」
岡部「え、あ……」
まゆりの優しい声が、心に染み込んでくる。
まるで俺の意思なんてないように、だけれど、それは心地よくて――。
ダル「それにさ、オカリン、僕たちラボメンなんだろ。ラボメンは、困った時には助けあうんじゃなかったかお?」
まゆり「そうだよ、オカリン。しんどいよーって、言っていいんだよ?」
岡部「あ……、あ……」
何も、何一つ解決していないのに、涙が零れ落ちるのを俺は止められなかった。
そうだ、俺達は――ラボメンなんだ。
俺もラボメンの一人で合い、誰かを助け、そして困ったときは、助けてもらわねばならんのだ――。
岡部「……すまん……すまん……」
ダル「ふん、そういうときは、ありがとうって言うんだぜ」
岡部「はは……ソースはエロゲか?」
ダル「当たり前だろ常考!」
そこで俺は、ようやく笑った。
電話レンジを改良した時よりも、SERNにハッキングをしたときよりも、ダルが輝いて見えた。
岡部「……ありがとう」
ダル「うはっ、オカリンのデレとか誰得!」
まゆり「まゆしぃは嬉しいので、良かったのです♪」
ラボに、三つの笑い声が響いた。
あぁ、初めからこうすればよかったのか、と思った。
今日は仕事が入っていないから、一日いるつもりだった。
そんな私に、牧瀬紅莉栖という方がお見えです、と黒木から連絡が入ったのは、もう少しで昼になろうか、という時だった。
初めは、いないと言って、と黒木に言おうとした。
だけど、牧瀬さんが一人で来るなんてよほどの用事があるのかもしれないし、何より牧瀬さんだと考えたら、居留守なんて使えなくなった。
部屋に通して、と黒木に伝えると、私はベッドに座って考えた。
牧瀬さんが、一体どうしたのだろう。
一番考えられるのは、やはり、“うちの岡部に何してんのよ”だろうか。
先日もラボで牧瀬さんをからかうような話をしていたばかりだ。
それなのに先日から岡部さんと……、そう思い出すと、自分が自分で嫌になった。
もうすぐ牧瀬さんが来る……そう分かっているのに、涙が止まらなくなった。
だめ、止まって、お願い、そう思ってるのに――。
フェイリス「え、あ、うん。いいよ……いいニャ」
フェイリスを忘れそうになって、あわてて付け足す。
何とか涙を見せまいと、俯きながら必死に目をこすり続けた。
フェイリス「ご、ごめんニャ。ちょっと目にゴミが入ってて……それにしても、一体どうしたのニャ?」
私はまだ顔を上げれずに、ずっと下を向いて目をこすりながら、牧瀬さんに話しかけた。
いつもの私なら絶対にしないことだが……、フェイリスをつくれるまで少し待ってほしい。
紅莉栖「橋田が“オカリンに説教してやるー”っていったら、まゆりが“じゃあまゆしぃがフェリスちゃんに話聞いてくるねー”って言うから、じゃあ私に行かせて、って言ったのよ」
フェイリス「え、どうしてニャ?」
ようやく涙は止まってきた。もう少しでちゃんと顔を上げて、フェイリスができそうだ。
紅莉栖「そんなことより……いつまでも泣いてないで、顔上げなさいよ」
フェイリス「えっ?」
いつもの牧瀬さんより、幾分も優しい声が聞こえて、思わず私は顔を上げてしまった。
そこにいたのは――。
紅莉栖「ね、留未穂ちゃん」
私と同じようにツインテールに髪をくくった、牧瀬さんだった。
それを見た時、遠くなっていた一つの記憶が思い出された。
留未穂「……クリスちゃん」
昔、まだパパが生きていた頃、ある女の子と出会った。
パパのお友達の娘さんだというその女の子は、私より年上だけど、ものすごく恥ずかしがり屋さんだった。
髪の短いその女の子を無理やり鏡の方へと連れて行って、私と同じツインテールにした。
女の子は似合わないからと嫌がっていたが、私は無理やり彼女の髪を結んでやった。
すると、私はとっても可愛いと思ったのだが、女の子は嫌がって、すぐにゴムをとってしまった。
紅莉栖「初めはね、岡部は私を避けるし、『最近フェリスちゃんがおかしいんだー』、ってまゆりが言うから、これは何かあるな、って思ったのよ」
紅莉栖「それで、正直ちょっとだけイラッといたんだけど、いつもあんなに元気なフェイリスさんは何に悩んでるんだろう、ってふと考えたらね」
紅莉栖「……どうしてか、浮かんだのよ。部屋の隅で、『私が悪いの』って頭を押さえて泣きながら、叫んでいるフェイリスさんが」
そう、それは少し経ってからのこと。
お仕事が忙しくて中々構ってくれないパパに誕生日は何が欲しいかと尋ねられ、私はパパと一緒にいたい、と答えた。
初め、パパは一緒にいてくれると言っていたが、急に仕事が入って、一緒に過ごせないことになってしまった。
仕方ない――そう頭では分かっていても、感情はコントロールできなかった。
留未穂(幼)「パパなんか死んじゃえばいいんだッ!」
気付けば、私はそう叫んでいた。
そして、私の誕生日――私は家出をした。
パパを困らせたかった。パパに心配してもらいたかった。
黒木から私がいなくなったのを聞いたパパは、急いで飛行機をとり、帰って来ようとした。
だけど――そのままパパは帰らぬ人となった。
着陸に失敗した飛行機の、唯一の死者になってしまったのだ。
そして、パパのお葬式で、私はずっと泣いていた。
私のせいだったから。私が悪かったから。
大人が慰める声も、何も聞こえなかった。聞きたくなかった。そんなときに――。
紅莉栖「そこで、やっと思い出したの……私は留未穂ちゃん――留未穂と、ずっと前に出会っていたんだって」
クリスちゃんが、手を差し伸べてくれたのだ。
優しい笑顔を浮かべて。あんなに嫌がっていたツインテールにして。
そして、私はそれに救われたのだ。
ツインテールにしたクリスちゃんが、「一人じゃないよ」って言ってくれているような気がして。
紅莉栖「驚いたわ、そして、ずっと忘れていた私がとても嫌になった。でも、仕方ないのかもね。あれからお互いに、色々あっただろうから」
確かに、そうかもしれない。
クリスちゃんはそこから飛び級で海外の賢い大学へ行くほどの天才として歩み、私はパパの代わりに会合に出て話し合いをするようになったのだから。
紅莉栖「でもね、そのことを思い出して、ああ助けてあげなきゃ、って思ったの」
紅莉栖「何があったのかは分からないけど、迷い猫を、あの時のように救ってあげなきゃ、って」
紅莉栖ちゃんはそう言って、ニッコリと笑った。
私は、涙が止まらなかった。泣き止もうとしても、もう制御できなかった。
留未穂「紅莉栖ちゃん……紅莉栖ちゃぁん!」
私は、紅莉栖ちゃんの胸へ飛び込むと、大声を上げて泣いた。
こんなに思いっきり泣くのは、いつ振りだろうか。
と思って、最近岡部さんの前で泣いたのを思い出して、少し恥ずかしくなった。
紅莉栖「もう、よしよし、頑張ったんだよね」
留未穂「ひっぐ……うっ……うぅ……」
紅莉栖ちゃんは、優しく私の頭をなでてくれた。
私が泣き止むまでずっと、その手を止めないでいてくれた。
留未穂「でも、本当ビックリだなぁ、紅莉栖ちゃんと出会っていたなんて」
紅莉栖「それも、こんな風に再開するんだから、ほんと運命のイタズラよね」
紅莉栖「それにしてもね、おかしいと思ったのよ。初めて……じゃないけど、メイクイーンであなたに会った時のこと覚えてる?」
留未穂「岡部さん達に連れてこられたときのこと?」
紅莉栖「そうそう。あのとき、私は留未穂が差し出した手を、ものすごく穏やかな気持ちで握った。そんなこといつもなかったから、なんでだろうって思ってたの」
留未穂「昔のことを、どこかで覚えていたのかもね。それとも、もしかしたら、別の世界で私たちは……」
紅莉栖「もう、留未穂ったら」
私が泣き止むと、紅莉栖ちゃんと並んで座って、少し話をしていた。
一体何に私が苦しんでいるのかは、紅莉栖ちゃんからは聞いてこなかった。それが、きっと彼女の優しさだろう。
紅莉栖ちゃんの顔からは、昔の恥ずかしがっている面影はなかったが、昔のような優しさは十分に感じることができた。
留未穂「私……紅莉栖ちゃんに助けてもらってばっかりだな」
紅莉栖「ふふっ、いいのよ。また困ったことがあったら、留未穂に頼るから」
あのころはまるで年下のように思えた女の子が、今ではまるでお姉さんのように感じる。
もし私にお姉さんがいたら、きっとこんな温もりなんだろうな。
紅莉栖「それじゃ、そろそろラボに行きましょうか。たぶん岡部達が……」
紅莉栖ちゃんがそう言いかけた時、突然ノックの音が聞こえた。
黒木「お嬢様、少し宜しいでしょうか」
黒木はこういう時に、空気を読まずにこんな真似する人間ではない。
ということは、きっと何かよほどの用があるに違いない。
留未穂「どうしたの?」
私が尋ねると、黒木は開けます、と言ってから扉を開き、紅莉栖ちゃんの方へ歩いた。
黒木「牧瀬……紅莉栖様でございますね?」
紅莉栖「え、あ、はい、そうですけど……」
紅莉栖ちゃんは戸惑いを隠せないで私の方をチラチラと見る。
だけど、私だって何が何だか分からない。
そう言って差し出したのは、ボロボロになっている箱だった。
紅莉栖「こ、これは?」
受け取りながら黒木に尋ねるが、黒木はそれには答えず、さらに何かを取り出した。
黒木「それは、こちらをお聞きいただければ、分かります」
そう言って黒木が取り出したのは、カセットプレイヤーと、一つのカセットテープだった。
留未穂「あ、それは!」
それを見て、私は思い出した。
それは若い時、パパと中鉢さんがタイムマシンを作るために会議をしている様子を録音したテープ。
そうか、ここには紅莉栖ちゃんのパパの声が……。
留未穂「あの会話を、聞かせてあげるってことだね」
でも、あの会話の中に、このボロボロの箱が何かを指すような会話はあったかな?
そう考えていると、黒木はゆっくりと首を横に振った。
黒木「いえ、そうではありません。2003年7月25日、牧瀬様は秋葉家を訪れ、苦しげな顔をされまま、このテープのB面に録音なされていました」
留未穂「えっ?」
それは初めて知ることだった。
驚きの表情を浮かべる私以上に、驚いていたのは紅莉栖ちゃんだった。
紅莉栖「それって、私がパパと……」
黒木「牧瀬章一様は、幸高様とタイムマシン研究に励んでおりました」
黒木「そんな中、幸高様を亡くし、最愛の娘にまで突き放すようなことを言ってしまった後の牧瀬様の本当の想いが、そこにはあるのではないでしょうか」
紅莉栖「……パパの……本当の想い……」
紅莉栖ちゃんは驚きと、期待と、そして不安を抱えているようだった。
どこか怯えるような表情で、黒木を見ている。
黒木「出過ぎた真似をして、申し訳ありません。しかし、これは間違いなく、牧瀬紅莉栖様が、持って帰るべき忘れ物なのです」
そう言い残すと、黒木は静かに部屋を出ていった。
紅莉栖ちゃんはやはり怖いのか、置かれたカセットテープを再生せずに、ただ眺めている。
そんな紅莉栖ちゃんの肩に、私は手を乗せる。
留未穂「大丈夫だよ、紅莉栖ちゃん。一人じゃないよ」
今度は、私が助ける番だ。
こんな小さなことしかできなくて申し訳ないけど――それでも、私が助ける番なんだ。
紅莉栖「えっ……あっ……」
その言葉が紅莉栖ちゃんの力になった――のかは分からないけど、その数秒後、覚悟を決めたのか、紅莉栖ちゃんは再生ボタンを押した。
中鉢『第……えー、第何回目だったかな、とにかく、相対性理論……超越委員会』
中鉢さんの声が聞こえると、紅莉栖ちゃんが一瞬ビクッとなる。
私はずっと紅莉栖ちゃんの肩に手を置いたまま、聞いた。
中鉢『もう、幸高はいなくなってしまった。亡くなってしまった』
中鉢『あのころの私たちは、タイムマシンを作るという夢に、溢れていたのにな……』
中鉢『それに、最近おかしなことを想うんだ。相対性理論超越委員会には、もう一人いたんだって』
中鉢『おかしいよな。これは私と幸高で始めたものなのに。もう一人、年上の女性がいたような気がするんだ……とても……寂しくなるんだ』
中鉢『あのころに……戻りたいよ。そうしたら、今度こそ絶対にタイムマシンを作ってみせる。娘に論破されないような、完璧なタイムマシンを』
紅莉栖ちゃんはお父さんと仲が良くない、と聞いたことがある。
それは、この娘に論破された、ということと、何か関係があるのかな。
中鉢『私は……俺はっ、タイムマシンを使ってやりたいことがあるんだ……』
先ほどから、紅莉栖ちゃんの目を涙ぐんでいる。
その涙は、一体どんな気持ちが引き連れてきたものなのだろうか。
中鉢『今日、娘に、ひどいことを言ってしまった』
紅莉栖ちゃんの顔が、急に上がる。
そしてより一層声に耳を澄ませるかのように、静止した。
中鉢『あの瞬間に戻って、自分に言ってやるんだ。娘を……紅莉栖を……』
中鉢『傷付けるなと』
中鉢『感情に身を任せて、家族の絆を壊すな、と……』
中鉢『俺はあんなこと……』
中鉢『言いたくなかったんだッ!』
さっきの私のように、滝のように涙を流しながら、紅莉栖ちゃんはボロボロの箱を開ける。
そこから出てきたのは、とってもきれいなフォークだった。
紅莉栖「ねえ、留未穂……」
留未穂「なあに、紅莉栖ちゃん……」
紅莉栖ちゃんの涙に釣られて、いつのまにか私も泣いていた。
きっと悲しいわけじゃなくて、泣いていた。
紅莉栖「私達……ここにいていいんだね……」
留未穂「……うん……うん……」
ダルとまゆりに大切なことを気付かされてから、俺はラボメンにすべてを話す決心をした。
α世界線でのこと、β世界線でのこと、そして、いまシュタインズゲート世界線にいるということ。
ラボメンを緊急招集すると、まだ生まれていない鈴羽以外のメンバーは、ちゃんと集まってくれた。
一番最後にやってきたフェイリスと紅莉栖は、以前よりもものすごく近い距離感になっているような気がする。
岡部「今日は、集まってくれてすまない。……少し、話しておきたいことがあるのだ」
ダルやまゆりには話したことはなかったのだろうか、覚えていないが、少なくともルカ子や萌郁には、初めての話だろう。
俺は、すべてを話した。
α世界線で、俺達はタイムマシンを――正確には、過去にメールを送れる装置とタイムリープマシーンをつくったということ。
それを利用して、色んな人の願いを無責任に叶えたこと。
その結果、ある組織に狙われ、まゆりが何度も死んでしまったこと。
SERNのことは、萌郁がいる場で言うと問題になると面倒なので、名前はぼかすことにした。
そして、世界を戻すため、皆の願いをなかったことにしたこと。
鈴羽の邂逅を消し、フェイリスの願いをなくし、ルカ子を男に戻した。
フェイリスについての話は、少し詳しめに話した。フェイリスを元気にするというのが、最終目標だからだ。
逆に、ルカ子の話や萌郁の話などは短く終わらせた。
ルカ子の抱いていた俺への想いをこんな場で俺から言われたらルカ子は嫌だろうし、萌郁について深く話すと、またSERNに目をつけられかねないと思ったのだ。
逆に言えば、タイムマシンを作ったなどと言っていても、この世界線では存在しない以上、少しくらい話しても、萌郁も下手に干渉して来ないだろう、と踏んだ。
また、未来のことも言わなかった。鈴羽がダルの娘である、などと言ってしまって、未来が変わってしまうことが怖かったのだ。
そして、まゆりを助けられると思ったら、今度は紅莉栖を犠牲にしなければならなかったことも話した。
……紅莉栖と交わした口づけについては皆には話していないが、それはいらないと判断したからであって、恥ずかしいわけじゃないぞ!
そして、β世界線に戻ってくると、第三次世界大戦を防ぐため、また過去を変えなければならなかったこと。
それに一度失敗して、俺は紅莉栖を殺してしまったこと。
しかし最終的に、紅莉栖を助け、このシュタインズゲート世界線に辿り着けたのだということを、すべて話した。
話し終えた後は、皆ポカーンとしていた。
以前に話していた紅莉栖や、フェイリスは悲しそうな顔で、俺の方を見ていた。
最初に口を開いたのは、まゆりだった。
まゆり「ううっ……オカリンは……ずっと頑張っててくれてたんだね……」
ルカ「僕が女の子だったなんて……信じられません……でも……」
萌郁「……私の話……短い……」
ダル「オカリン……オカリンになら、掘られてもいいお」
岡部「だが断る」
皆、俺の話を信じてくれたようだった。
本当、お人よしばっかりだな、こんな話を信じてくれるなんて……。
……本当に、良い仲間を持ったものだ。
ダル「さーて、じゃあ今日はピザでも頼むかお」
まゆり「あー、いいねえ。まゆしぃはから揚げが食べたいなあ」
萌郁「……私……ケバブ……」
岡部「お、おい、一体何の話だ」
俺がそう聞くと、普段の3倍(ただし元は0)のイケメン度でダルが答えた。
ダル「もちろん、フェイリスたんを元気づけるパーティに決まってるだろ、常考!」
ルカ「あ、それなら、お料理手伝いますね」
紅莉栖「私も手伝うわ、漆原さん」
岡部「っておい! 勝手に決めるな! いや、駄目ではない……というかありがたいが……って助手! お前だけはキッチンに立たせんぞ!」
紅莉栖「はあ? それどういうことよ」
岡部「……ラボは戦場ではない。破壊活動を行いたいなら他所で……」
紅莉栖「誰が破壊活動するって言った! まったく、私だって料理くらい……それに、留未穂のためなんだからなッ」
いや、お前は……。
まあ、ルカ子が一緒ならば、何とかしてくれるだろうか。
というか、紅莉栖はいつの間にフェイリスの真名で呼ぶようになったのだ?
そのまま聞いた。
何のひねりもなくて悪かったな。
紅莉栖「あら、つい留未穂って呼んでしまってたかしら? 危ない危ない、気を付けないと」
岡部「おい、だから一体いつから……」
紅莉栖「二人だけのの秘密よ、ヒ・ミ・ツ。岡部なんかには教えてあげないわ」
まゆし「まゆしぃも気になるなー、一体何があったのかなー?」
紅莉栖「まゆりには後で話すわね。あ、もしよかったら他のみんなも……」
漆原「え、いいんですか?」
萌郁「……聞きたい」
紅莉栖「もちろん、留未穂……じゃなくて、フェイリスがオッケーしたらだけどね」
岡部「おいそこ! 態度が全然違うではないか!」
橋田「ウハッ! みんなって僕も入ってるんですか! ついに僕にもモテ期が……」
紅莉栖「あ、岡部と橋田以外ね」
橋田「ウオーッ、冷たい目! だがそれがいい! ごちそうさまです!」
いつにも増して騒がしい奴らだ。
ダルにいたってはさっきからかっこよさが半減しているぞ(ただし元は0)。
ふとフェイリスを見ると、フェイリスは少し俯いて固まっていた。
岡部「フェイリス、どうかしたのか?」
フェイリス「……ううん。そうじゃなくて、ただ……」
岡部「ただ?」
俺がそう聞くと、フェイリスは数秒経ってから、いつか振りの笑顔で、答えた。
フェイリス「とっても、嬉しいのニャ!」
その目には少し涙が溜まっていて、それでいて、光に満ち溢れた笑顔だった。
――Faris Side
パパに死んじゃえって言ってしまったことを、忘れた日なんてなかった。
悲しみは薄れても、ふとした瞬間に悲しくなることは、どうしてもある。
それに加え、パパが生きていた世界のことを思い出すと、記憶がこんがらがって、本当に混乱した。苦しかった。
……だけど、私は一人じゃないんだ。
岡部さんも、橋田さんも、マユシィも、紅莉栖ちゃんも、漆原さんも、萌郁さんも。
ううん。
凶真も、ダルニャンも、マユシィも、クーニャンも、ルカニャンも、モエニャンも。
みんな大切な仲間なんだ。
かけがえのない、私の仲間なんだ。私は……、一人で苦しまなくたっていいんだ。
ねぇ、きっと、どこかから見てるよね?
私が成長していくのを。仲間ができるのを。いつか結婚して、家族ができて、私の人生を生きていくのを。
ほら、また、皆が呼んでる。
私の名前を呼んでる。とても楽しそうな声で――。
私はとても小さく、皆には聞こえない声で呟く。
フェイリス「ねえ、ほら、私の大切な仲間の声が聞こえる……パパ?」
完
お読みいただいていた方、おられましたら、ありがとうございました。
次は、もっと軽いのを書きたいですねえ……。
笑えるSS書きたいですが、才覚がないようで……。
何はともあれ、今回はありがとうございました。
また機会があれば。
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1458565096/
Entry ⇒ 2016.12.26 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
紅莉栖「岡部……えっち、しよ?」
機関の精神攻撃により深刻なオカクリ分不足に陥ったためSS投下作戦を開始する
何?シュタゲは古い?それに今時VIPでSSスレなど流行らないだと?
流行る流行らないの問題ではない、やることに意義があるのだ
では健闘を祈る、エル・プサイ・コングルゥ
岡部「フゥーハハハハ!戻ったぞ、我がラボメンたちよ!」
岡部「……」
岡部「なんだ……誰も居ないではないか……このラボの長たる鳳凰院凶ぉぅ真!が戻ったというのに出迎えも無しか!冷たいではないか!」
紅莉栖「みんな岡部のこと心配してたんだからそういう言い方は無し。けど、誰も居ないのは珍しいわね……」
岡部(だが、これは考えようによっては好都合……)
岡部(アメリカで勢い余って思いを伝えてから1年近くが経ってしまった)
紅莉栖「岡部ー、ドクペ飲む?あんたが居ない間もまゆりが買ってきてたのよ」
岡部(しかし、はっきりと恋人同士という関係になるわけでもなく、「友達以上恋人未満」のような状態が続いてきた……)
岡部(紅莉栖も俺のことを、す、好きでいてくれてるのはもはや確定的に明らかなのだ!)
岡部(恋人同士になるには、今しかあるまい!)
紅莉栖「岡部、聞こえてる?ねえ、大丈夫!?」ズイッ
岡部「ってわあああ!近い、近い!なんだ紅莉栖、急にどうした!」
紅莉栖「急にじゃないわよ、何度も声かけたのに……大丈夫?なんでもないのよね?」
岡部「あ、ああ……ちょっと考え事をしていただけだ」
紅莉栖「あんなことの後だから心配するじゃない……バカ岡部」
岡部「すまない、紅莉栖……」
シーン
岡部(なんか妙な空気になってしまった……だが、俺のことを心配してシュンとなってる紅莉栖はなんだか可愛いな……クッ、静まれ、我が鼓動よ……)
紅莉栖(キャー!「すまない、紅莉栖……」だって!こ、こういう素直な岡部もいいわね……それに助手でもティーナでもなく名前で呼んでくれてる……)モジモジ
岡部「な、なんだ!」
紅莉栖「私のこと無視するほど重大な考え事って、いったい何?もしどうでもいいことだったら……」ジトー
岡部「も、もちろん非常に重要な考え事だ!」
岡部「考えてたのは……お前の、いや、お前と俺の事だよ」
紅莉栖「えっ」
岡部「紅莉栖……俺はお前が好きだ」
紅莉栖「な、何を改まって……」アセアセ
岡部「だから、今のお前との関係に、物足りなさを感じている……」
紅莉栖「それって」
岡部「俺はお前と……恋人になりたい」
紅莉栖「!」
岡部「俺と付き合ってくれ、紅莉栖」
岡部「くっ、紅莉栖?急に抱きt」
紅莉栖「こっちみんな!」
岡部「( ゚д゚)」
岡部「( ゚д゚ )」
紅莉栖「じゃなくて、グスン、えっと、今……わたし、ひどい顔してると思うから……」
紅莉栖「しばらくこうさせて……」
グスン……スン……
紅莉栖「……岡部」
岡部「なんだ」
紅莉栖「私の返事……伝えるから」
紅莉栖「目、つぶってほしいな」
岡部「うむ」
紅莉栖「岡部……私も、岡部のことが好き。誰よりも、大切に思ってる」
紅莉栖「だから……これから、よろしくお願いします」チュッ
こうして紅莉栖とキスをするのは、もう何度目になるだろうか。
世界線を越えそれなりの回数を経験したはずだが、全く慣れる気配がない。神経がむき出しになっているかと錯覚するほど鋭敏になった唇からの信号が、ビリビリと脳を痺れさせる。
唇を触れさせ合う、ただそれだけの行為なのに、脳内を電気信号が激しく駆け回っているのが分かる。軽い眩暈すら覚え、よろめいてソファに座り込んでしまった。
「あっ……大丈夫?岡部」
紅莉栖が心配そうに声を掛ける。だが、その表情はキスが中断された残念さを隠しきれてないぞ。このHENTAI処女め。
「体調悪いなら、無理しないで……」
「いや、お前の魅力に、クラッと来たんだ」
勢いで言ってしまってから、死ぬほど後悔した。顔が熱い。誰かクーラーをつけてくれ。
見れば紅莉栖も真っ赤になっていて、今にも火を噴きそうだ。
「ば、バカ岡部!こっ、このHENTAI!何言ってんのよ!」
「ふ、フゥーハハハ、天才少女も動揺すると酷く語彙が貧困になるのだな!」
照れ隠しに軽口を叩く。
その時、聞きなれた着信音が聞こえてきた。
Beginning of fight……Beginning of fight……
無視して紅莉栖とイチャつきたいところだが、この携帯の着信は今まで非常に重大な意味を持ってきた。
この世界線で特殊な電話やメールが来る可能性は低いが、せめて発信元だけでも確認して……なんだ、ダルか。
ちょうどいい位置にあったうーぱクッションに向かって携帯を投げつける。
「ちょ、おま……出なくてよかったの?」
「機関の妨害工作だった。俺には今、妨害に屈せず遂行しなければならない任務があるのだ」
そう、人生初の恋人とイチャつくという重大な任務がな!
「任務?」
ソファーから立ち上がり、紅莉栖の目をじっと見つめる。そして肩に手を回し……
Beginning of fight……Beginning of fight……
「ダァル……」
「電話、出てきなさいよ。緊急の用事かもしれないし……そ、それに、私とキスとか…する時間はこれから沢山……いや、別に私がキスしたいわけじゃないけど!ほら、岡部がしたいならって!」
それもそうだ。正式に恋人になったのだからそう慌てることもあるまい。任務遂行は樽型お邪魔虫を一喝してからでも遅くはない。
「ふむ、お前がそう言うなら」
Beginning of fight……Beginning of fight……
携帯を確認すると、やはり着信はダルからだった。
くだらない用事だったならば、今度フェイリスにないことないことダルの悪評を伝えてやろう。
そう思っていたが、耳に飛び込んできたのは全く予想だにしない内容だった。
「何……場所は……分かった、すぐに行く」
電話を切り、一つ深呼吸する。だが、頭の中は混乱したままで、ちっとも落ち着けそうになかった。
「どうしたの岡部、ひどい顔してる……」
「まゆりが……」
ここはシュタインズゲート世界線だというのに。ようやく辿り着いた場所だというのに。
「まゆりが倒れた」
`''- 、ヽ.゙f!''γ゙ニヽ1| 1!'".゙f! (、_`゙ o::{. {::::::t-r ''~〕! 十 γ゙ニヽ
f 、__ノソ l:しヽヾ_ィ 」:!_._!L j.l_ ,、,_) i7::ヽヽ ノ_j:: ど,j!、 lレヾゞ
~ ̄~ .~  ̄  ̄
―境界領域のライトニングボルト―
ダルたちラボメンは俺と紅莉栖を二人きりにしようと画策し、みんなでメイクイーンに行っていたらしい。そこで突然まゆりが倒れ、救急車で病院へ。だが、運ばれている時には既に脈が無かったそうだ。
原因不明の心臓麻痺。らしい。医者からそのような説明を受けた気もするが、本当にそんなことを聞いたのかどうかはっきりしない。どうも、ダルから電話を受けてからの記憶が曖昧だ。
ただ一つ、はっきりと記憶しているのは。
体温を失っていく、まゆりの手の感触だけ。
まゆりは、死んだ。
太陽が高い。携帯を確認すると、どうやらまゆりが死んだ翌日の午前十時。
昨晩をどう過ごしたのか覚えていない。
ダルや紅莉栖はどうしたのだろうか。何かを話した気もするが、よく分からない。大方、一人にさせてほしいとでも言って出てきたのだろう。
「まゆり……」
シュタインズゲートへと来る時に覚悟はしていたつもりだった。シュタインズゲートでは未来はすべて未確定。まゆりも、紅莉栖も、あっさり死んでしまう未来だってあり得ると。
だが、それにしても。それでも思わずにはいられない。
「早すぎる……」
どうしてこんなにも早くまゆりが死ななければならないのだ。直前まで元気にしていたというのに。大体なんだ、心臓麻痺だと?原因不明だと!?ふざけるな!!これではまるで。まるで……
「アトラクタフィールドによる、収束……?」
「さっすがおじさん、そこまでわかってるんだ」
突然、聞き覚えのある声が背後から掛けられた。
「お前は」
「ラジ館屋上に来て。詳しい話はそこで」
慌てて振り返ると、走り去っていく背中が見えた。見覚えのある後ろ姿だ。
「まったく……7年後に会う約束はどうしたのだ」
あいつが俺の前に現れる時は、未来がろくでもないことになっている時と相場が決まっている。
ただでさえまゆりが死んだばかりだというのに、これ以上何をやらせようというのか。
「鈴羽め」
ラジ館屋上。そこには予想通り、人工衛星のような機械――間違いなくタイムマシンだろう――があり、阿万音鈴羽が待っていた。
記憶にある鈴羽よりも、少しだけ大人びて見える。
「……久しぶりだな、鈴羽。会いたくなかったぞ」
「うわー、いくら落ち込んでる時だからって失礼なこと言うね!っていうか、私のことほんとに分かるんだねー。お父さんの言ってた通り」
「お前とは、7年後……いやもう6年後の予定か、お前が生まれた時に再開したかったよ」
心の底からそう思う。
「で、今回はなんなのだ?第三次大戦か?SERNによるディストピアか?」
自棄になりながら尋ねる。未来の世界がどうなろうと、どうでもいいことだ。
俺は……まゆりが、紅莉栖が、生きていてくれるだけで良かったのに。
「それで、俺に未来を変えろと言うんだろう?俺はやらんぞ」
過去改変はもうこりごりだ。もう……俺は疲れた。
それに、あれだけ苦労して辿り着いたSG世界線を離れることなど考えられない。
人生は本来やり直しの効かない物なのだ。俺は偶然にもやり直しの術を手に入れてしまったこともあったが、もうあんなものには頼らない。
現実を――まゆりの死を――受け入れて、生きていく。
「オカリンおじさんならそう言うだろうって、父さんは言ってたよ」
それが分かってるなら、さっさと帰れ。
「でもね、聞いてオカリンおじさん。ここは――」
「ここは既に、シュタインズゲートじゃない」
「そう、ダイバージェンスで言うと、マイナス0.0000002%ほどズレて……」
「馬鹿な!リーディングシュタイナーは発動していないというのに、世界線が変動しているなどありえない!」
俺が幾度となく経験してきたリーディングシュタイナーの感覚。眩暈にも似たあの独特の感覚は、この世界線に来てから一度も感じていない。
「世界線の変動がごく小さな物だったから。リーディングシュタイナーが発動しなかったか、発動しても普通の眩暈とかと勘違いしたんじゃないかって、父さんは推測してた」
眩暈……眩暈だと?まさかあの時。
――紅莉栖とキスをした時の、眩暈。
あの時、世界線が変動したというのか?
「だ、だが!Dメールも使ったわけでもないのに何故世界線が変動したのだ!」
「……ここからする話はオカリンおじさんの話を元に父さんが独自に考えた理論だから。もしかすると間違っている部分もあるかもしれないけど、聞いてほしい」
この世界線の先ではダルが世界線理論を研究しているのか。ならばこのタイムマシンもやはりダル製なのだろうな。
「聞かせてくれ」
脳裏に、電流の流れる様を思い浮かべる。
「ジグザグに、揺れ動くな。時には分岐もしながら、複雑な軌道を取る。稲妻のように」
「そういうこと。SG世界線はDメールなどの過去への干渉手段を用いずとも、常に揺れ動いていたんだ。リーディングシュタイナーが反応しないような、ごく僅かな範囲で」
太い世界線の境界領域で揺れ動く小さな世界線のイメージを浮かべる。小さな物が動き回る様は、まるでブラウン運動のようにも思えた。
「こうしてSG世界線が動いた結果、不運にもα世界線のアトラクタフィールド内に侵入してしまった。アトラクタフィールド内の世界線は、糸を束ねて紐になるように『収束』される。そうして他のα世界線群と同じように、椎名まゆりの死に収束したのが、今、この現実だよ」
「だが!だが他の世界線ではまゆりが死んだのは1年も前のことだ!今更それが収束する物なのか!?」
「椎名まゆりの死は毎回ちょうど同じ日時ではなかったって、父さん経由で聞いてるよ」
「……」
その通りだ。世界線漂流の中で、まゆりの死は1日ずつズレていった。だからといって……
「推測でしかないけど、椎名まゆりの死のタイミングが1年程度違っても、α世界線のアトラクタフィールド内に収まってしまうんだろうね」
あの憎たらしい「収束」というやつは、また俺から大切な人を奪っていくのか。
「……状況は分かった。納得はしていないがな。それで、お前は俺にどうしろと言うのだ」
「簡潔に言えば、未来から持ってきたタイムリープマシンで、過去を変えてほしい」
鈴羽はタイムマシンの中からヘッドホン型の機械を取り出す。紅莉栖が作った物より小型だ。耳当ての部分に小さく印字されている「FG203」が、何故かやけにくっきりと見えた。
だがタイムリープでは駄目だ。タイムリープマシンの弱点は俺が誰よりも知っている。
「無理だ。タイムリープマシンで過去の俺の行動を変えても、世界線の収束に阻まれ、結果を変えることはできない」
俺は何度も何度も、何度も何度も何度も何度もまゆりを助けることに失敗してきた。
あんな思いは……もう、したくない。
「その通り。だけど、今回の場合は事情が違う」
「なぜだ!俺は何度も失敗して……」
「ここがSG世界線だからだよ」
「あれは言葉の綾というか、なんというか。
アトラクタフィールドに取り込まれてはいるけれど、今いるこの世界線はSG世界線と『連続』してる。
タイムリープマシンで過去へと辿っていけば、アトラクタフィールドに侵入する前のSG世界線に戻れるはず。
そして、『自由に揺れ動く』特性を持つSG世界線ならば、オカリンおじさんの行動を変えるだけで微細なダイバージェンス変動を起こし、アトラクタフィールドから離れることが出来る……全部、父さんの受け売りだけどね」
「……」
SG世界線の特殊性、というべきか、不安定さに関してはつい先日身をもって体験したところだ。そして、SG世界線でタイムリープマシンを使ったことは無い。鈴羽の――未来のダルの言うことを、信じてみてもいいのかもしれない。
「それで……俺は、具体的にどうすればいいのだ?」
「それを説明する為には、この世界線が辿る歴史を知ってもらう必要がある」
俺は鈴羽から未来の歴史を聞いた。俺が2020年に不慮の事故で死ぬこと。紅莉栖は失意のどん底に落ち、その後は俺を助ける為にタイムマシン開発に生涯をささげること。
その為にSERNへと入り、SERNは紅莉栖から得た時間干渉技術でディストピアを構築する――これが、2048年。
アトラクタフィールドの一番端に引っかかっただけだからか、俺の知っているα世界線の流れと随分違うところも多い。
ダルめ。可愛い娘に作戦を伝えることが出来なくてヘタれたな。
やるべきことは簡単だ。紅莉栖がSERNに入ってまでタイムマシンを作ろうとするような動機を無くせばいいのだ。
そして、リーディングシュタイナーの発動したタイミングを考えれば、やるべきことは自明である。
――俺が、紅莉栖と恋仲になったことを無かった事にする――
それだけ。単純なことだ。
「分かった」
俺が紅莉栖に告白したのは昨日の午後二時頃だったはず。余裕を持つならば……
「明日の正午にはここに来る、待っていてほしい。」
やるべきことは分かった。本来なら今すぐにでも過去へ飛ぶべきなのだろう。だが、俺には決心出来なかった。
せっかく紅莉栖と恋人同士になれたというのに。それを「無かった」ことにする勇気が無かったのだ。
我ながら馬鹿馬鹿しい。今までだって多くの人の思いを無かったことにしてきたというのに。
女として生きるルカ子を無かったことにした。父親と仲良く過ごす瑠美穂の生活を無かったことにした。ラボメンとして楽しく過ごした鈴羽の数日間を無かったことにした。
だというのに、紅莉栖の――そして自分のことになると、途端にもこんなに惜しいものか。身勝手にもほどがある。
今ラボメンと顔を合わせたとして、いったい何を話せばいいのだろう。
ラボの鍵は開いていた。
「ただいま」
「おかえ……岡部!連絡つかないから心配したじゃない!」
ラボに居たのは紅莉栖だった。
「わた、私、まゆりの後を追って、あんたまで居なくなったらどうしようかって心配で……ヒグッ」
俺は紅莉栖をそっと抱き寄せる。
「悪かったな。心配かけた」
「携帯も全然繋がらないし!何してたのよ、もう!」
「……病院で電源を切ってそのままだったようだ」
「馬鹿!馬鹿岡部!」
「悪かったよ……」
そっと紅莉栖の髪を撫でる。嗚咽が止まるまで、ずっとそうしていた。
紅莉栖が落ち着いたところで、並んでソファーに腰掛ける。
数日前までの距離間より僅かに近い。直接触れてはいないけれど、互いの体温は感じる微妙な距離。
ささいなことだけれど、とても愛しく、そして惜しく感じられた。
「何とはなんだ?」
「ごまかせるとでも思ってるの?今のあんた、酷い顔してるわよ……自分がまゆりを殺してしまったような……いや、まるで『これから大事な人を殺しにいくんだ』みたいな、怖い顔」
「!!」
「言っておくけど、まゆりの死に責任を感じてるなら筋違いよ。医者だって原因不明だって言ってたし、誰にも防げなかった……」
いや。そうではない。俺が、俺が世界線を動かしたから……
「違う、違うんだよ紅莉栖……」
「じゃあ、何が違うって言うのか説明しなさい。岡部から聞いた話だと、今まで私は何度も相談に乗ってあんたのことを助けてきた。でしょ?
遠慮せず頼りなさいよ。その、か、彼女なんだし」
「分かった、お前には辛い話になるかもしれないが……と、前置きして話すのも二度目か」
「知らないわよ」
紅莉栖は苦笑した。
紅莉栖は呆れていた。そりゃそうか。そうだよな。
「私は大丈夫だから。まゆりを……私の大切な友達を、助けて。お願い」
「そうだな、だが俺は……お前との関係を無かったことにしたくない」
「私は大丈夫だと言って――」
「お前じゃなく!俺が嫌なんだ!俺が!!お前と恋人同士でありたいんだ!!」
「岡部……」
最低だ、俺は。自分勝手なことを紅莉栖に怒鳴り散らして、いったい何がしたいんだ。
「ごめんね、岡部」
やめろ。謝るな。どうかしてるのは俺だ。
「岡部の気持ち、考えて無かった。岡部がそんな風に思ってくれるの、とてもうれしい」
別に紅莉栖の為と考えたわけじゃない。俺のエゴイズムだ。
「……それでね、岡部。私に、提案があるのだけれど」
「なんだ」
「ええと、その……私と……え……」
「何だ、はっきり言え」
「岡部。えっち、しよ?」
「こ、こっこっこのHENTAI処女があああ!こっちは真面目に話をしとるというに、何を言い出すかあ!」
「わ、私だって真面目に言ってる!そ、それにもうすぐ処女じゃなくなるし……」
「だぁまれセレセブHENTAI処女ゾンビがあ!」
「だ、だって!まゆりを助けたら私たちは恋人同士になれないわけでしょ?そうしたら、する機会はもう来ない」
「だから今のうちにしようと!?HENNTAIめ!」
「じゃあ岡部はシたくないの?」
「…………」
「………………」
「………………………………シたいが」
そりゃ当然。恋人同士ならそういうこともしたい。
「ああ、リーディングシュタイナーの能力でな」
「私も、岡部ほど完全な形ではないかもしれないけど、世界線を越えて記憶を保持している。
今、……することで強烈な記憶を残しておけば、その記憶をまゆりが生きる世界線へ持っていけるかもしれない。
それに、今度の世界線移動は、跳躍ではなく少し揺れ動く程度なんでしょ?記憶を保持できる可能性は高いんじゃないかしら」
「それは……そうかもしれないが」
「今、この世界線の記憶を私も岡部も持っていけたなら……まゆりを生かすために、アトラクタフィールドに接触しないために、恋人同士になれなかったとしても……きっと頑張れるって、そう思わない?」
「そう……かもしれないな」
「だからね、岡部……えっちしよ?」
「だが断る」
「……こんな時まで用語使うな」
真面目にえっちがどうとか話してられるか。ちょっとくらい茶化さねばやってられんのだ。許せ。
「俺とて不純異性交遊に勤しみたい気持ちはある。あるが、そういうものは必要に駆られて無理にするものではないだろう?必要が無くとも、お互いに求めあって行為に至る……そういうものではないかね、助手よ」
「つまりヘタれたんですねわかります」
お前こそ@ちゃんねる用語が漏れてるぞ。
「……まあいいわ、私もその……いきなり最後まで、とかは怖かったし。無理しない範囲で記憶に残るような行為をするってことでどう?」
「まあ、そのくらいならよかろう」
ソファに押し倒された。思い切り押された胸が少し痛い。
「おまっ、何をする紅莉栖っムグ」
そのまま口を塞がれてしまった。
「ん……ぷはっ。時間は今日のうちしかないんでしょ?楽しむわよ」
「まてお前、ここでか?誰か来るかもしれないぞ」
まゆ氏が亡くなった直後に盛ってるとかマジありえねー、とかダルに言われたら……考えるだけでも死にたくなる。死なないが。
「それもそうね、私のホテルに来なさい」
「いいのか?ではお言葉に甘えて……おい紅莉栖、お前がどいてくれないと起き上がれない」
「ホテルには行く、行くと言ったが、その時の指定まではまだしていない……岡部もそのことをどうか思い出して頂きたい……もう1回、キスしてからでもいい?」
結局、ホテルへと向かったのは5回ほどキスをした後のことだった。
「のわっ!」
ホテルに着くなり、ベッドに押し倒されてしまった。
「ムフフ……ここなら遠慮なく何でもできるわよー」
「おいどうしたのだ紅莉栖そのテンションは」
明らかに紅莉栖のテンションがおかしい。無理して明るくしているような……
そうか。きっと俺がまゆりのことを意識しないようにしてるんだな。
「さて、何からしようかしら、まずは……この辺の味見を……はむ」
「んっ……くぅ」
いきなり耳たぶをくわえられた。紅莉栖の鼻息が耳にかかってこそばゆい。
「レロ……チュプ……岡部、女の子みたいな声出てる。かわいい。気持ちいいの?」
ええい、耳元で囁くな、耳元で!
「ちょ、ちょっと驚いただけであって、ンむ!こら、そんなに舐めるな!」
「ンチュ……ジュル……駄目?」
駄目かどうかと聞かれれば。
「駄目じゃないが……んっ!」
「ふふ……岡部の反応面白いわね……これは全身くまなく、調べなくちゃ」
俺はさながら被験体だ。
「次は首に行ってみようかしら……ん、岡部?」
「い、息が……かかって……」
紅莉栖が顔を移動させ、首筋に吐息がかかる。産毛が僅かに揺られるその感覚に、ビクリと体が反応をする。
首など自分で触ってもなんともないのに。愛する人と体を密着させ、愛する人に触れられると、ささいな刺激が稲妻となる。
「へえー。息だけでこんな反応だなんて、舐めたらどうなっちゃうのかしら。行くわよ」
紅莉栖は軽く首筋にキスをした後、ペロペロと舐め始めた。微妙な舌先の動き一つ一つに体が跳ね上がってしまう。
「岡部って首筋弱いんだー、本当に面白い。
……くすぐったさっていうのは動脈が近い危険部位を触れられた時の信号だっていうけれど、危険信号を気持ちよく感じちゃうのって不思議ね。
危険を勘違いするって意味では、吊り橋効果に近いのかしら?じっくり研究してみたいわ」
「べ、別に気持ちよくなど」
「ないの?」
「……あるが」
「ふふ、素直な岡部って本当にかわいい」
面白い実験が出来て生き生きとしてる紅莉栖もなかなか可愛いぞ。
「吊り橋効果というよりは、ジェットコースターなどに近いのではないか?」
「え?どういう意味?」
「ジェットコースターは言わば『安全の保障された危険』を楽しむ遊びだ。今やっていることも似ていると思わないか?安全が保障されているからこそ……信頼しきっている相手だからこそ良いのだ」
「面白い見解ね。検証してみる価値はあるか――」
「ならばその検証、お前の体でやってやろう!」
「きゃあっ!ちょっと、岡部!」
体を返し紅莉栖の上に覆いかぶさる。
やられた分はきっちりやり返してやろう。
約束した明日の正午まで、時間はまだまだあるのだから。
午前11時。まだ寝ている紅莉栖の頭の下から、そっと腕を引き抜き起き上がる。
「んぅ……すぅ……」
良かった、起こさずにベッドを抜け出すことが出来た。
起きて下手に話をしてしまうと、名残り惜しくなってしまうだろうからな。
紅莉栖が寝ていてくれて助かった。
「さて、服を着なければ……なんでこんな所まで服が吹っ飛んでいるのだ?ええとこれとこれと……そっちは紅莉栖の下着だな、見なかったことにしよう」
ちなみに今は二人とも全裸だ。「実験」をするために邪魔だったのだからしょうがない。
紅莉栖の奴、本当に全身くまなく検証したからな……
念のために、まだ俺が童貞であることも併せてお伝えしておこう。
ヘタレなのだ。ご了承ください。
いそいそと服を着て、準備を整える。
「さて、さらばだ紅莉栖。また、二日前に会おう」
紅莉栖の髪をそっと撫でる。
「お前の記憶が、少しでも引き継がれることを祈るよ」
そう小声で言い残し、俺はホテルを後にした。
ラジ館の屋上では約束通り鈴羽が待っていた。
「タイムリープの時間設定はどうする?」
「今から約47時間前、二日前の午後1時で頼む」
そうすれば、おそらく紅莉栖と一緒にラボへと向かっているくらいのタイミングのはずだ。
後は、ラボについた後に俺が告白しなければ良い。
「分かった……準備できたよ。こっちでやり残したことはもう無い?」
「大丈夫だ……いや待て、行く前に確認しておきたいことがある。」
俺はヘッドギアを被りながら一つ尋ねる。
「お前、2048年から来たって言ってたよな?ということは今はさんじゅっ」
「女性に歳を聞くんじゃない!跳べよおおおおおおお!」
「う、うおおおおおおお!」
「どうしたの岡部?すごい汗……」
「なんでもない……ちょっと恐ろしい形相で睨みつけられただけだ……」
「恐ろしい形相って……そんな人いた?どこ?」
「もういない、大丈夫だ」
話しながらそっと携帯の時計を確認する。
確かに、二日前の午後1時に戻ってきていた。
「ところで紅莉栖、俺の一番の『弱点』を知っているか?」
「弱点?なんの話よ?……とりあえず、脳に電極挿しまくったら死ぬわよね」
……どうやら。
紅莉栖は、『実験結果』を覚えていないらしい。
「そうか……ならいい」
「ならいいって、何よ今の質問は」
「いいんだ、気にするな」
紅莉栖に顔を見られないようにしながら、ラボへと歩いた。
それからは特筆すべきことは何もない。
まゆりは翌日になっても死ぬことは無かった。3年が経った今も、元気に暮らしている。
紅莉栖はアメリカへと戻り、物理的距離の離れた俺たちは自然と疎遠になった。
稀に機会があれば会うこともある程度の、遠くの友達。
まゆりなどはメールなどでやりとりをしているようだが、俺はほとんど連絡も取らなくなっていた。
「――これで、いいんだ」
そう、俺には僅かな時間とはいえ紅莉栖と恋人同士だった記憶が確かにあるのだから。
紅莉栖の方だって、そのうち何かのきっかけで思い出すかもしれない。
それだけで、俺は頑張れる。この世界線を、生きていける。
そう、思っていた。
昔を懐かしみ、半ば無意識に名前が口からこぼれる。
「おお?オカリンの口から見知らぬ女性っぽい名前が出た件について。しかもなんか物憂げな表情。ちょっとkwsk」
ラボに居たダルが、何故か食いついてくる。
「見知らぬってなんだよ。紅莉栖だぞ、牧瀬紅莉栖。お前もよく知ってるだろ?」
「牧瀬……紅莉栖?誰なんだお?あれだけフラグを立てておきながら誰とも付き合わなかったオカリンにもついに春が来たのかお!?」
何をふざけているんだこいつは。
「何を言ってるんだ、牧瀬紅莉栖。17歳にして飛び級で大学を卒業した天才少女にして、我がラボのNo.004だ」
「はあ?No.004は桐生氏っしょ常考。ってか天才少女がこんなラボに入る意味が分かんねーし。それ、オカリンの脳内の住人?」
駄目だ、ダルでは話にならない。
「まゆり、まゆり!」
「どうしたのオカリン?そんな大声出さなくてもまゆしぃは聞こえるのです」
「まゆりは覚えてるよな?紅莉栖のことを……この間もメールしたと言っていただろう!」
「何を……」
何を、言っているんだ。まゆりは。
「でもね、なんか懐かしい気がする名前なのです。オカリンの知り合いなら、会ってみたいなー」
「……そうだな、会わせてやるよ」
この状況は、何度も経験してきた。
周りの人間と、俺だけが話が噛み合わない。記憶に齟齬がある状態。これはまさに。
――世界線移動。
ならば、俺のやるべきことは決まっている。
「まゆり、必ずお前を紅莉栖と会わせてやる!」
紅莉栖のいない世界など……俺は認めない!
「お、オカリン?」
「待っていろ、まゆり!」
俺はラボを飛び出した。
牧瀬紅莉栖という人間がいた痕跡は一切なかった。間違いない、紅莉栖が居ない世界線に、リーディングシュタイナーの発動しないうちに移動している。
なぜ世界線が動いてしまったかは分からない。
だが、世界線を元に戻すならば電話レンジないしはタイムリープマシンが必ず必要になるはずだ。
記憶を頼りにいくつもの店を回り、パーツを集めていく。
「岡部倫太郎!」
具体的にどうすれば元の世界線に戻れるかは分からない……だが、それを考えるのは電話レンジを作りながらでも良いだろう。
「ちょっと、岡部倫太郎ってば!」
誰だ、やかましい!今俺は忙しいのだ!
「悪いが今は急いでいる、さらば……って、鈴羽サ―ティではないか」
「さ、サ―ティ……なにその失礼な呼び方は!」
ドビシィッと音を立ててローキックが突き刺さる。左ふくらはぎが破裂するかと思った。
「ちょ、ちょっとした冗談だ、鈴羽よ。して、要件を聞こうではないか」
「うん、でもここじゃちょっと話づらいから……」
「ラジ館屋上か?」
「さっすが岡部倫太郎、分かってるじゃん」
「それで鈴羽よ、何故お前がこの時代に来たか説明してもらおう。あれ?鈴羽?」
鈴羽の姿が見えない。確かに俺より少し早く屋上に入ったはずだが。
「おーい鈴羽?ったく、なんの遊びだ」
「岡部倫太郎!ここだよここ」
「うおっ?」
目の前に鈴羽が突然現れた。何もない所から現れたように見えたぞ。なんだこれは、新手の未来ガジェットか?
「ごめんごめん、ちょっと色々と不安定でさ。いきなり消えたり現れたりするかもしれないけどそういうもんだと思って」
は、はあ?何を言ってるのかこいつは。
「普通、人間は消えたり現れたりせんぞ」
「まあまあ、その辺も説明するから。
――私は2048年、第三次大戦が起きた未来から来た。その未来を変えるためにも、岡部倫太郎。君には、牧瀬紅莉栖を救ってもらいたい」
また、どこかで聞いたような話だな。
「俺もつい先ほど紅莉栖救出の為に動き出したところだ。とりあえず電話レンジ作成に着手したが、何故紅莉栖が消えたかが把握できていない。それについてはどこまで分かっている?」
鈴羽はタイムマシンのハッチを開け、中から何かを取り出した。
「それは、ダイバージェンスメーターではないか」
いつか見たのと同じ……いや、桁数が一つ多いか?とにかくそっくりのダイバージェンスメーターだった。
表示されている数字は、1.048956――最後の一桁が読めない。チカチカと表示が次々に変わり、時には数字が重なっていることもある。
「これ、未来の岡部倫太郎が作った世界線の座標を表示する装置なんだけどさ。最後の一桁が常に動いてるでしょ?今まさにこの世界線は微小な変動を繰り返している極めて不安定な状態なんだ」
「不安定、か。同じことを別の阿万音鈴羽にも聞いたぞ。SG世界線は稲妻のように常に揺れ動いていると」
「それだけならここまで不安定になることはないんだけどね。この世界線は、β世界線のアトラクタフィールドに捕まってしまった」
「……」
せっかくα世界線のアトラクタフィールドを脱したというのに、今度はβ世界線か。
2本の導線に挟まれたわずかな隙間に、電流を通す。SG世界線はまさに、奇跡の産物なのだろう。
「何……!?」
「そして、別世界線の記憶を元に、時間移動の研究に着手する。タイムマシンで牧瀬紅莉栖が何をしたかったのかは分からない――だけど問題は、彼女の書いた論文にロシアが興味を持ったことなんだ」
思い出があれば、この世界線でも生きていける。
そう言っていたのは紅莉栖だというのに、何を思ってタイムマシンを作るのだろうか。
いや、思い出したからこそ辛いこともあったのだろうか。
「なぜ今更思い出すのか」と思ったかもしれない。
想像することしかできないが、あるいは使命を忘れて生きていた橋田鈴――「失敗した」阿万音鈴羽――のように、苦しみを味わったのかもしれない。
そして中鉢論文。β世界線においてDr中鉢がロシアへと持ち込んだあの論文も、元はと言えば紅莉栖の書いたものだった。
「論文を元に、大国同士のタイムマシン開発競争が始まり、それが第三次大戦の引き金となる。私が来た未来は、そういう世界」
「うん、私はβ世界線については岡部倫太郎から聞いただけだけどね。牧瀬紅莉栖が死んだ世界……なんだよね」
「そうだ。だがお前の話からするとこの先の未来では紅莉栖は生きているのだろう?なぜ今の紅莉栖は消えて……誰からも認識されなくなってしまっているのだ!」
「この世界線が、β世界線に近づきすぎているから。アトラクタフィールドの収束に巻き込まれて、この世界線でも牧瀬紅莉栖は死んだことになりかかっている」
だがおかしい。紅莉栖が現時点で死んでいるならば、未来で論文は書かれない。
ならば戦争も起きない。β世界線の状況に近づくことも無く、アトラクタフィールドの収束も受けない……?
「紅莉栖の存在が……矛盾を引き起こしている?」
「気づいたみたいだね、岡部倫太郎。これは親殺しのパラドクスだよ」
「!!」
「β世界線に収束するならば牧瀬紅莉栖は死んでいなければおかしい。だが牧瀬紅莉栖が死んでいてはβ世界線に近づかない。
そのためにこの世界線は、『牧瀬紅莉栖が生きている世界』と『牧瀬紅莉栖が死んでいる世界』が、いわば重なり合ったようになっているんだ」
「案外、今父さんや椎名まゆりにでも電話すれば、普通に牧瀬紅莉栖の事を覚えてるかもよ?牧瀬紅莉栖はいたりいなかったリしているんだ。さっきの私、みたいにね」
「鈴羽、お前……」
「いやー、未来から無理やり不安定な世界線を遡ったからね、私の存在自体がかなり不安定になってるみたい。ま、予想した通りだけど」
「それは……未来へと帰れば元に戻るのか?」
「多分無理かな?あはは、そんな顔しないでよ岡部倫太郎!君がしっかり、SG世界線を安定させてくれれば済む話なんだからさ!」
「SG世界線を安定させる、だと……?そんなことが可能なのか!」
「可能だと、そう言ったのは君だよ。いや、これから随分先の未来で言うんだ」
また、未来の俺か。自分に対して言うのもナルシストのようで変な気分だが、それなりに信頼は出来るのかもしれない。なんせ、SG世界線へと俺を導いた実績があるからな。
それに、信頼できようができまいがやるしかない。紅莉栖だけじゃない、鈴羽の存在もかかっていると知ってしまったのだ。
「まず、君にはタイムリープマシンを作ってもらう。設計図は未来の君が用意したから、今渡すね。ハイこれ」
「ほう、準備のいいことだ。だがタイムリープマシン自体を持ってくるのではまずかったのか?」
「そうすると、私と同様にタイムリープマシン自体の存在が不安定な物になる危険性があった。タイムリープの瞬間にマシンが『無かったこと』になったら……どうなるか想像もつかないでしょ?」
なるほど、それはちょっと考えたくないな。
「それで、俺はいつに戻って何をすればいいんだ」
「そう、それは……実は……」
「うむ」
「実は……」
「実はなんなのだ。焦らすでない」
みの○んたではあるまいし。
「…………教えてくれなかった!」
「な、な、なんだとう!」
「テヘッではないわこのアラサーが!あ、ごめんなさい謝りますからその目はやめて頂けますでしょうか、はい、申し訳ございませんでした。」
殺されるかと思った。Mr.ブラウンに匹敵する殺気だ。
「よろしい……岡部倫太郎は、具体的にどうすればいいかは教えてくれなかったけど、ヒントはくれたよ」
「何、それをさっさと言え!」
「ええと、『収束において、人間の生死は非常に大きな意味を持つ。収束の力によっても、複数の人間を強引に殺すことはできない。』だってさ」
「む、むぅ……?」
なんだか分かるような分からんような……
「あれ?何をすればいいか分からない感じ?こう言えば岡部倫太郎なら分かるはずだって……」
「とりあえず、現時点では分からん」
「あ、そういえばもう一つ未来の君から伝言があった」
「『分からなかったらタイムリープマシン作りながら考えろ。たまにはその残念な脳細胞を働かせろ』ってさ」
「ぬわぁんだとぅ!このIQ170の灰色の脳細胞を残念だと!」
聞き捨てならん、そんなことを言った馬鹿をここに連れて来い!論破してやる!
「ちょ、ちょっとそんなに怒らないでよ!それ言ったの未来の君だからね!とにかく伝えることは伝えたから!私はこの時代観光してくるー!」
そう言い残して、アラサーとは思えない健脚で走っていく。
「待てえい鈴羽!あ、おいコラほんとに待て!連絡手段とかー!くっ、本当に行ってしまうとは……ここからは俺一人でやれということか」
今まで何度も俺の行動の指針を示してくれた鈴羽がいないというのは、少し不安な気持ちになる。
だが、未来の俺がこれで大丈夫だと判断したのだ。それを信じようではないか。
手のひらに残されたタイムリープマシンの設計図に目を落とす。
「まずは……パーツの買い物だな」
「はいはい、今度はどんなガラクタを作るんだお……」
ダルにコピーした設計図を1部渡してやる。
「ん、これ設計図?なんぞこれ?何をする機械なのかさっぱり分からん件。ってかこんな複雑なんオカリン書いたの?」
「ふっふっふ、それは確かに俺が書いた物だ。ちなみに機能は……今は秘密だ」
俺が書いた。ただし未来の。
「いやオカリンが書けるとは思えないんだけど……ところどころに書き込んである注意書きがオカリンの字っぽいんだよなー」
「未来ガジェット作るの?久しぶりでまゆしぃはなんだかうれしいのです。ごはん買ってきたり飲み物買ってきたりしてお手伝いするねー」
「よろしい。いざ、ラグナロックを始めん!」
「一体オカリンは何回終末を迎えるつもりなんだお……」
「人の生死が重要……それも複数の、か……」
α世界線では、死ぬ時期に多少の差異はあれど、必ずまゆりが死ぬ。β世界線では、紅莉栖が死ぬ。世界線の収束は、多少の出来事などの変化は許容できても、人間の生死の違いは許容できないのだろう。
だから、世界線が収束する時はかなり強引にでも人を殺して辻褄合わせをする。
だが、「収束は複数の人間を殺せない」。世界線の収束力と言えど、人間をいきなり心臓麻痺にするような横紙破りは一人が限界なのだろうか。
……つまり、α世界線にとってのまゆり。β世界線にとっての紅莉栖のような人間が他にもいれば、SG世界線は両者からの収束の影響を受けない、完全に自由な世界線となることができる……?
「ねえねえオカリン、何か難しい顔をしてるよ?」
「ああ、ちょっと考え事をしていてな」
いかんな、まゆりが心配するような顔をしていたか。
「ドモドモー」
ゴクリと飲むと、脳細胞へとエネルギーが充填されていく気がする。疲れた脳で考えても良い閃きは来ないものだ。まゆりには感謝だな。
しかし、まゆりや紅莉栖のような人間が他にもいれば、か。そんな人間が居ないから収束の影響を受けているというのに。居もしない人間を作り出すことなどできは……
ん?人間を作り出す?
人間を……
「ブブウー!!!!」
まてまてそれはあり得ないだろ常識的に考えてそんなまさか
「ちょ、おまオカリンきったね!つうかパーツにドクペかかってるお!いい加減に汁」
いやいや、ない無いナイない。さすがにねーから。
「何ブツブツ言ってるお……あーあ、このパーツは駄目だわ。オカリンさっさと替えを買ってくるお!」
地味に痛い出費になってしまった。まあ仕方がない、自分がパーツを駄目にしたのだから……
だが、外出したことで少し落ち着いてきた。これなら冷静に先ほどの考えを検証できそうだ。
人間を作り出す……すなわち、子作り。
考えるだけで恥ずかしくなってくるが、ちょっと真面目に検証してみようではないか。
仮にタイムリープマシンで過去へ戻り、紅莉栖との間に子供をもうけたとしよう。
紅莉栖で考えるのは、仮定の話でも他の女性となど考えられないからだ。悪しからず。
その状態でβ世界線の収束範囲に触れるとどうなるか。紅莉栖とその子が死んでβ世界線へと収束する……ことにはならないらしい。
未来の俺がどう検証したかは分からないが、「複数の人間が収束に殺されることはない」からだ。
同様に、α世界線において紅莉栖と俺の間に子供ができたというような話は聞いたことが無い。
あの世界線でのラウンダーの襲撃以降のことを考えれば、子供ができた可能性は非常に低い。
つまり、α世界線に対しても、まゆりと紅莉栖の子の二人が存在しない人間になり、強引な収束は不可能になる。
あれ?これいけるのではないか?
いやいや待て待て、俺は紅莉栖とヤりたいが為に無意識に結論を誘導してはいないだろうか。タイムリープしてヤってみて「駄目でしたー」ってなったらどうする。
はあ、ヤるべきかヤらざるべきかとか真剣に考えていると、自分が非常に残念な人間に思えてくるな……
まさか未来の俺、『残念』な脳細胞を働かせろって、こういう意味だったのか……?
結局他の手段は思いつかなかった。上手くいく確証はないが、こうなればやってみるしかあるまい。
もしも本当に未来の俺が子作り作戦を考えていたなら、鈴羽に詳しい作戦を教えなかったのも納得できるというものだな。こんなん伝えられるか。
俺がヤるぞヤるぞと犯罪者じみたかなり危ない意思を固めていた時、不意にダルが声を上げた。
「ふぅーう、できたお」
「何、本当かダル!さすがは我がラボの誇るスーパーハカー!」
「ハカーじゃなくてハッカーでよろ。というか、ハッキング能力関係ねーしこれ。つーか人が頑張ってる時に言い出しっぺのオカリンは何ドクペ飲んでくつろいでるん?」
だって、俺でも手を出せるような場所がなくて……じゃない、我が右腕の力を信頼していただけのことよ!
「ごくろうだったダルよ。貴様も飲むがいい」
「ここでキンキンに冷えたダイエットコーラとは、オカリン分かってるぅー!」
「あーあダル君に負けちゃった、競争してたのに。でも……これでコスも完成っと♪」
かつて紅莉栖が考案し作り上げた物と比べると、ヘッドホン部分は変わらないものの本体が随分と大型だ。SERNにハッキングをかけてLHCを借りずとも、これ単体でタイムリープが可能になっているらしい。
俺がダルの協力を得られない、あるいはハッキングに失敗する可能性を考慮したのだろうか。不確定要素は少ない方が良いと未来の俺は考えたのだろう。
「で、勢いで完成させちゃったけど……オカリン、なんぞこれ?」
「フムン、では使う所を見せてやろうではないか。そうすればこれが何か、おのずと分かるであろう」
嘘だ。これを使う所を見たところで何の機械か分かることはない。
あえて説明しないのは、ダルたちにこれが何か説明するのが面倒というのもあるが、ちょっとした保険でもある。
リーディングシュタイナーの能力は誰でも持っているもの。ならば、別世界線の記憶を元にタイムリープマシンを作り上げてしまう可能性は、少しでも低い方が良い。
マシンのセッティングをし、ヘッドホンを頭に装着する。
移動先は……3年前。俺が紅莉栖と恋人同士になり、またそれを無かったことにした、あの日がいいだろう。
あの日へと戻り、俺は……紅莉栖と子作りをするのだ!
「フフフフ、フゥーハハハハ!いくぞダル、まゆり!マシン起動!」
「うわ、なんだこれ!熱っ!放電!?放電だ!」
「お、オカリン大丈夫ー?」
「フゥーハハハ!これより!ラグナロックは!最終局面へと到達する!」
懐かしい声……そう何年も聞いていないわけでもないのに、随分久しぶりに聞く気がする、愛しい声が呼びかけてくる。
「……俺だ、機関の……機関が、なんだったか……くっ、追って連絡する」
俺は慌てたふりをしながら、携帯をポケットにしまう。さりげなく日時を確認するのも忘れない。確かに、あの日の……ラボに帰る途中だな。
「ちょっと、突然止まったと思ったら、妄想電話の内容思いつかなかったとか?プークスクス」
「妄想などではない!これは……」
「はいはい分かりました、鳳凰院凶真さん」
「くっ、助手の分際で愚弄しおって」
今までタイムリープや世界線移動のたびに周囲に心配をかけてしまったが、これだけやればさすがの俺も学習する。
今の演技は我ながら素晴らしかった。紅莉栖は全く不審に思っていないようだ。
これから恋人に……いや、近いうちに家族となる相手に、余計な心配はかけたくない。
この後ラボに誰もいないことも俺は知っている。だが、自然に演技しきってみせようじゃないか。
無人の室内に俺の声が響きわたる。
「なんだ……誰も居ないではないか……このラボの長たる鳳凰院凶ぉぅ真!が戻ったというのに出迎えも無しか!冷たいではないか!」
ラボメン達が俺と紅莉栖を二人きりにするためにメイクイーンで時間を潰しているのも知っている。その温かさにニヤけそうになる。
「みんな岡部のこと心配してたんだからそういう言い方は無し。けど、誰も居ないのは珍しいわね……岡部ー、ドクペ飲む?あんたが居ない間もまゆりが買ってきてたのよ」
以前は返事をせずに紅莉栖を心配させてしまったな。そこまで再現する必要もあるまい。
「うむ、頂こう。ありがとう紅莉栖」
「ふぇっ!何よ急にそんな……どう、いたしまして……」
ふっ、名前で呼んだだけで照れるとはな。テレスティーナめ。
くぅーッ、赤くなる紅莉栖を眺めながら飲むドクペはいつもの3倍うまいな!
さて、我が灰色の脳細胞にエネルギーがいきわたった所で、いよいよ勝負と行こうか。
「うん……」
真剣な雰囲気を感じてか、恥ずかしがりつつもまっすぐこちらを見つめてきた。
「紅莉栖、俺はお前が好きだ」
「ちょっと……どうしたのよ?改まって」
「だから、今の関係に物足りなさを感じている」
「!!それって」
「俺はお前と、恋人になりたい。付き合ってくれ、紅莉栖」
「岡部……嬉しい」
紅莉栖の目が潤んでいる。今にも涙がこぼれそうだ。だが、以前と違い、しっかりこちらを見つめてきている。
「私、ずっと岡部と恋人同士になりたかった。岡部から聞いた、別の世界線の話でも説明がつかないくらい。ずっと、ずっと長い間、そうなりたかったような気がするの」
もしかすると。俺と恋人になれなかった未来の記憶も、なんらかの形で今の紅莉栖に受け継がれているのだろうか。
「だから、岡部。これから、よろしくお願いします」
そう言って、紅莉栖は俺にキスをした。
唇からの信号が、脳をビリビリと痺れさせる。懐かしい痺れに、俺は……
紅莉栖を突き飛ばした。
「キャッ!お、岡部……?」
なぜ忘れていたんだ!あの時、キスと同時に眩暈に襲われて……おそらくはリーディングシュタイナーが発動し、α世界線へと入ってまゆりは死んだのだ!
だが、今の所、眩暈は感じていない……リーディングシュタイナーは発動していないのか?
「岡部、真っ青な顔してる……大丈夫?」
「すまない、紅莉栖……突然突き飛ばしたりして……大丈夫だ」
冷静になれ。もしまゆりが死んでしまったとして、鈴羽がタイムリープマシンを持ってきてくれる……はずだ。まだ取り返しのつかない状況ではない。
だが、現時点でまゆりが無事かは確認しておきたい。
目の前では紅莉栖が不安そうな顔で俺のことを見ている。
「紅莉栖……すまない、非常に大事な電話を一本入れなければならない。少しだけ、ここで待っていてくれるか?」
紅莉栖の前で電話をしてもいいのだが、まゆりの安否確認などしてはこいつに余計な心配をかけてしまうだろう。
「岡部……本当に大丈夫なの?体調とか……」
「大丈夫、すぐ戻るよ。……愛してる、紅莉栖」
「あ、愛し……」
相手は……ダルがいいか
「もしもーし、オカリーン?無事戻ってきたお?」
「ああ、そのことは大丈夫だ。……まゆりはそばにいるな?」
「まゆ氏?いるけど電話かわる?」
思わず息をつく。どうやら現時点ではまゆりは無事なようだ。
「いや、その必要はない。特にまゆりに変わった様子はないな?」
「うん、元気にオムライス食べてるお。なになに、そんなにまゆ氏の事が心配なのかお?ハーレム爆発しろ!」
「別にハーレムではない。ではまた」
電話を切り、紅莉栖の元へと戻った。すぐに戻ると約束したからな。
「すまなかった紅莉栖。こんな大事な時に突然電話などと」
「駄目、許さない」
くっ……先ほどの精神攻撃(愛してる)からは既に復帰していたか。
「どうしても許してほしければ……キス、して」
「お安い御用だ」
ふぅ、どうやら致命的に嫌われたわけではないようだな。安心したぞ。
そっと紅莉栖を抱き寄せ、唇を重ねた。
ちなみに、完全に許してもらうまでは10回のキスが必要となった。
以前鈴羽は、SG世界線ではタイムリープマシンで過去の行動を変えるだけでも微細なダイバージェンスの動きがあると言っていた。
おそらく、俺の行動が微妙に変わったことの影響で以前とは違う世界線の動きになり、まだα世界線のアトラクタフィールドに侵入していないのだろう。
だが、世界線の動きをコントロールできているわけではない。
今、この瞬間にもまゆりが倒れるかもしれないのだ。
急いでミッションを達成せねばならない。
「それじゃあ、入るぞ」
「ど、どうぞ。ちょっと散らかってるけど」
俺は紅莉栖の泊まるホテルの部屋に来ていた。
付き合い始めたその日のうちにホテルとか我ながら軽く引くが、紅莉栖はそこまで嫌がることはなく連れてきてくれた。
嫌がられず良かった。余計に時間をかけるほど、アトラクタフィールドに侵入してしまう可能性も上がるだろう。
すなわちそれは、まゆりの死の危険が上がっていくことを意味するのだから。
時間をかけるのはよくない。
ならば、すぐにでも――
「岡部?どうしたの……キャッ、急に引っ張らないで!」
紅莉栖の手を引き、そのままベッドに押し倒す。
紅莉栖のシャツのボタンを外していく。紅莉栖が動くのでなかなか外せずもどかしい。
「おかっ、べ、待って!その、心の準備が…おかべ、おかべ!」
うるさい、急がないとまゆりが――
「岡部!」
紅莉栖に思い切り突き飛ばされた。
「岡部……怖いよ……」
紅莉栖の目の端から一粒の涙が落ちる。
俺は――何をやっているんだ。
これではレイプではないか。
紅莉栖を……誰より大切な人を……また、傷つけてしまった。
「……すまない」
そんな言葉しか出ない自分に嫌気が差す。
どうしていいか分からず、紅莉栖に背中を向けて座った。
後ろから少し震えた声を掛けられる。紅莉栖はまだ泣いているのだろうか。
「何を言っている。完全に俺が悪い」
「ううん、私も。急だったからびっくりしちゃっただけで、こうやって、求められるのは……その、嫌じゃない、っていうか。
それなのにあんな風に拒絶しちゃって……岡部の気持ちも考えないで、ごめんね」
「相手の気持ちを考えなかったのはこちらのほうだ。すまない」
ふと、背中に体温を感じた。紅莉栖が、背中に寄り掛かって座っているようだ。
苦笑まじりに、紅莉栖が言う。
「じゃ、お互い様、おあいこってことで。けど、さっきの岡部すごい形相だったわよ?童貞乙、必死だなwwwって感じで」
「……」
俺は、いったいどんな顔をして襲い掛かっていたのだろうか。想像もしたくない。
「あのさ、岡部。何をそんなに焦っているのか知らないけど。『どうしても今やる必要があるんだー』、みたいな顔してたよ?
こういうのって、なんというか……必要に駆られて無理にするものじゃないでしょ。単に、理由なんて無くお互いに求めあって行為に至る、そういうもの……
って、何こんなこと真面目に話してるんだろ私、恥ずかし」
――そういうものは必要に駆られて無理にするものではないだろう?
いつか、俺が紅莉栖に言った言葉。
紅莉栖の方に向き直る。
「紅莉栖……すま……いや、ありがとう」
そっとハグして、頭を撫でた。
「岡部……良かった、いつもの顔に戻った」
そのままキスをする唇が触れるか触れないかという程度の、軽い接触。
「ん……岡部、やっぱり優しいね。そういう所、とっても好きよ」
ならば、精一杯優しく触れ合おうではないか。
焦ることはない。まゆりのことは今は考える必要はない。もしものことがあっても、最悪タイムリープという手もあるのだ。
今は、目の前の、愛しい人のことだけを見て、感じて、愛し合おう。
先ほどと違い、安心した表情で身を任せてくれている。そのことがたまらなく愛おしく感じ、思わずキスをする。
「んう……おかべぇ……」
紅潮させた頬、滑らかな首筋、小さなおでこ……紅莉栖のすべてが可愛らしく見えて、そこらじゅうにキスをしていく。
「おかべ……好き……」
そう言われては、全力を出さずには言われない。紅莉栖には悪いが、「予習」の成果を使わせてもらおう。
わざと少し耳に息がかかるようにして、そっと囁く。
「俺も、紅莉栖が好きだ」
紅莉栖が体をビクりと震わせる。構わずに、耳たぶを口に含み、チロチロと舐める。
「んぅっ、く……ふぅ……」
必死に声を抑えようとしているが、それでも声が漏れてしまうようだ。恥ずかしさに顔を真っ赤にしている。
徐々に舐め方を大胆にしていく。時々ピチャリと音を立てるようにするのも効果的なのを俺は知っている。
「ん!ああ、やあ!」
もはや全く声を抑えられていない。舌の動きに合わせて紅莉栖の体がビクビクと跳ねる。
耳を舐めながら手を太ももに這わせる。ストッキングの手触りをしばらく楽しんだ後、軽く爪を立てて内ももをなぞる。
「―――!!はあっ、やめっ!」
目を白黒させながら身をよじって逃れようとする。だが、逃がしてやらない。こうやって爪を立てられるのも好きだと知っているからだ。悪いな。
「おかべ、おかべ!んっ!……んちゅ……」
執拗な責めに耐え切れなくなったのか、頭を掴まれて強引にキスされてしまった。できるならもうちょっと耳を味わいたかったのだが。
「はぁ、おかべ……すごい……これ、検証……証明、しないと……」
息も絶え絶えといった様子で、舌も回っていない。その目を見れば何をしようとしているか手に取るように分かった。実験大好きっ子の目だったからだ。
紅莉栖に覆いかぶさる姿勢から、体を入れ替えてやる。
俺たちは、お互いが研究者であり被験者だ。
「紅莉栖……入れたい。入れて、いいか?」
紅莉栖は横を向いて目をそらした。
「紅莉栖、俺の目を見てくれ」
そっと頬に手を当て、しっかりと紅莉栖の目を見て告げる。
「責任は取る。信じろ」
「………バカ」
また、プイッと横を向かれてしまった。
「岡部、またさっきみたいな焦ってる顔になってるわよ?」
「!!……そんな顔、してたか」
「……ちょっとだけ。大体、入れたいって言っても、避妊具も用意してないでしょ?そのまま……やるの?」
「ああ……責任は、取る」
「バカ……そんな簡単に言って……」
やはり無理があっただろうか。こうなれば仕方がない。後日に……
「でも、そんな顔で頼まれたら断れないじゃない」
「!!」
「私の勝手な思い込みかもしれないけど。岡部は自分の為に無理な頼みをするタイプじゃないと思ってる。
なんでこんなことしてるか全然想像つかないけど……何か理由があるんでしょ?」
こいつは、本当にいつも俺の考えを見通しているな。
「ああ……そうだ」
「いつか話せ。それなら許す」
「ああ……約束しよう」
「絶対だからな」
紅莉栖がキスをしてくる。
長い、長いキスだった。
初めてならば、指でほぐしてからの方がいいだろう。
「つっ……優しく、触って」
「すまない……こうか?」
話をしている間に乾いてしまったようだ。キスをしながら、恐る恐る愛撫してみる。
そのうち、徐々に指先に濡れた感触がしてきた。
「ん……いけるかも……ちょっと、指、入れてみて」
「分かった、痛かったら教えてくれ」
「ん」
手探りで見当をつけ、そっと指を入れていく。指が温かな感触に包まれる。深い。どこまでも沈んでいきそうだ。
紅莉栖の表情を見ながら、そっと動かしてみる。
「どうだ」
「大丈夫……ねえ岡部、私……早く、『実験』進めたい……かも」
「そんなこと言われたら止まれんぞ」
「やめる気ない癖に……それに、こ、これは『実験』なんだからな……何も、問題はないわ」
言っている意味が良く分からないが、単に恥ずかしいのだろう。
俺も恥ずかしいので、ここは紅莉栖にのっておく。
「じゃあ、次の実験に移るぞ」
紅莉栖に覆いかぶさり、このあたりが入口だろうというあたりにあてがう。
「行くぞ、紅莉栖」
ぐっと押し付けてみる……全く入っていく気配がない。
位置か?角度の問題か?いや、紅莉栖のこわばった表情から推測するに、緊張で力が入ってるのか?
「紅莉栖、ゆっくり深呼吸をしてみろ」
「う、うん……」
頭を撫でながら話しかける。
「大丈夫だから。力を抜いてみろ」
「じゃあ……キスして。キスしてくれたら、安心できる……気がする」
「分かった」
そっと唇を重ねる。そのまま腰に力を込めてみると、ずぷりと沈み込んだ。
「つ……」
紅莉栖が苦悶の表情を浮かべる。
その表情が。肉を引きちぎる感触が。ラジ館で紅莉栖を刺し殺した時を思わせ。
強烈なフラッシュバックに襲われる。
思わず唇を離す。
「う……ああ……」
「ちょっと岡部?……って、何であんたが泣いてんのよ。普通逆じゃないの?」
紅莉栖が苦笑している。
「大丈夫だから。少し痛いけど、嫌な痛さじゃないっていうか。大丈夫だから、そのまま来て」
穏やかな笑みを向けられて、フラッシュバックが治まる。落ち着け、紅莉栖だって不安だろうに、俺が取り乱してどうする。全く、情けない姿を見せてしまった。
「ああ、ありがとう。いくぞ」
再び、少しずつ押し込んでいく。取り乱した間に少ししぼんだおかげか、するりと奥まで入ってしまった。
熱い物に覆われた感触と、ぴたりとくっついた互いの下腹部が、確かに二人が繋がっていることを伝えてくる。
「入った……んだよね」
「ああ」
「ふふ……なんか不思議な感じ。でも、すごく嬉しい」
「ああ、俺もだ……」
「おかべ……」
「紅莉栖……」
どちらからともなく、キスをする。紅莉栖の目の端に涙が溜まっている。俺も、不思議と勝手に涙がこぼれそうになった。
俺たちは繋がったまま、何度も何度もキスを繰り返した。
「うん、いいわよ」
キスをしている間に、すっかりと硬さを取り戻していた。動いて大丈夫かは不安だったが、もう我慢ができない。
ゆっくりと腰を前後させる。
「んっ……くぅ……」
自分のわずかな動き一つ一つが紅莉栖に伝わり、反応が返ってくる――そのことが、伝わる感触以上に俺に快感を与える。
「んっ……不思議ね……出そっ…うと思ってないのに勝手に声が出るなんて……んっ……データを……とらなきゃ……」
紅莉栖がつぶやき、悪戯っぽい目をこちらへと向ける。
「だから、もっと、して?」
それを聞いた瞬間、俺の中で何かが爆発した。
「紅莉栖、紅莉栖、紅莉栖!」
わけもわからず紅莉栖の名を呼ぶ。腰が自分の意思と関係なく動いている。
「おかべ、おかべ!きて!おかべ!」
名前を呼ばれるたびに、頭が白く塗りつぶされていく気がする。
「紅莉栖!っはあ、はあ、紅莉栖!」
「おかべ!おかべ!」
どんどん白くなる。
「紅莉栖ー!」
「おかべっ!」
そして、完全に世界が真っ白になった。
眩暈がし、急激に眠気が襲い掛かってくる。意識を無理やり吸い出されていくかのようだ。
「紅莉……栖」
力を振り絞り、声を掛ける。
「愛している」
キスをしようとした所で、意識が暗転した。
世界がグルグル回るような不快感。頭がボーっとしてうまく働かない。この感じは、子供の頃に熱を出した時の夢……?
誰かが俺のことを心配そうに見ている。紅莉栖だ。
子供の頃に熱を出した時なら紅莉栖がいるはずないのに。
まあ、夢ならなんでもいいか。
目を覚ますと、目の前に紅莉栖の顔があった。
「……おはよう。今何時だ?」
紅莉栖がやけに心配そうな顔をしているのが気になる。
「4時よ。ちなみに午後の」
「なに?随分と寝過ごしてしまったようだな」
慌てて体を起こす。寝すぎたせいか……それとも昨日の『実験』がこたえたか、体がだるい。
「そのまま寝てなさい。あなた、すごい熱出してるんだから」
「そうだったか、心配かけたな。だが、熱はもう下がった気がするぞ」
話しているうちに、寝ぼけた頭がすっきりしてきた。熱っぽい感じはない。
「本当?」
紅莉栖が額同士を合わせてきた。
そんなに顔を近づけたら、また熱が上がるかもしれないだろうが。
「んー、確かに下がってるわね。けど無理しないで寝てて」
「すまないな、お言葉に甘えさせてもらうとしようか」
寝ている時に感じていた感覚はきっと夢なんかじゃない。子供の時、2000年問題の時と全く同じ感覚に、同様の高熱。ならば、世界線の分岐点で発動したリーディングシュタイナーの可能性が高い。
では、その分岐とはどのような物か。推測だが、「SG世界線がα世界線に飲み込まれる」場合と「SG世界線が独立を保つ」場合の分岐だ。
そして、熱が収まったということは分岐点を通りすぎ、世界線が確定したと考えられる。
現時点で紅莉栖が慌てたりしている様子が無いので、まゆりの身に何かあったということは無さそうだ。つまり、ここはα世界線ではない。
以上のことから導き出される結論は――
俺は、枕元に置いてあった携帯を手にし、耳に当てる。
「俺だ。ついに機関の殲滅に成功した。……そうだな、以前の約束通り、俺は組織を抜けさせてもらう。
ああ、これが世界の――いや、俺の責任という物だ。エル・プサイ・コングルゥ」
携帯を置くと、紅莉栖が呆れ顔でこちらを見ていた。
「そんな馬鹿やってる余裕があるなら本当に平気そうね。私、コンビニ行くけど、ごはんは普通の物食べられそう?」
「ああ、なんでも大丈夫だ。助かる。それと、一つ頼みたいことがある」
「なに?」
「……タウンワークを持ってきてくれ」
これから要りようになるだろうからな。
いずれは結婚して家庭を持つかもしれないということは妄想することはあったが、まさかこんなに早くとはな。
俺はまだ大学生だし、紅莉栖はアメリカでの研究だってある。これからは忙しくなりそうだ。
だが、これも――
「これもシュタインズゲートの選択、か」
`''- 、ヽ.゙f!''γ゙ニヽ1| 1!'".゙f! (、_`゙ o::{. {::::::t-r ''~〕! 十 γ゙ニヽ
f 、__ノソ l:しヽヾ_ィ 」:!_._!L j.l_ ,、,_) i7::ヽヽ ノ_j:: ど,j!、 lレヾゞ
~ ̄~ .~  ̄  ̄
―境界領域のライトニングボルト― 完
無駄に長いし駄文だが楽しんでくれる人が一人でもいてくれたら嬉しい
ちょっとエロ描写に恥ずかしくなってきたので枕に顔うずめてバタバタしてくる
「ふむぅ、耳と内ももが弱いか……」
「べ、別に弱いと証明されたわけじゃないし、もっとデータを取って検証すべき///」
「いや、次の段階に移る。両方を同時に刺激するとどうなるかを試そう」
「そ、そんなことをされたら私……キャッ」
「レロ……チュパ……」
「やあっ……っ無理……やめっ!」
「むぅ、逃げるでない。データがまだ足りんぞ。それともこれは駄目だったか」
「いや、駄目じゃないんだけど……駄目というか。その…………すごくいいんだけど体が勝手に逃げちゃうの」
「ふむ、すごくいいか」
「そこだけ切り取るな!」
「では次は逃げられないようにしっかり捕まえて実験をしよう」ガシッ
「え、ちょっと待って岡部、無理、無理だから!」
「かべ……おか…へ…」ピクピク ビクン
「うつろな目で体を痙攣させている……やりすぎたか……っておま、紅莉栖!紅莉栖大丈夫かそれ!?」
「え……ふぇ?そえってなんのころ?」
「鼻血!」
「え……なんぞこれー!?なんぞこれー!!」
「ほらティッシュ!」
「ありがと岡部……」
「……面白い実験結果が出たな」
「脳内麻薬の過剰分泌により血圧が急上昇、毛細血管にダメージを与えたのね……確かに興味深いけど、岡部」ギロ
「はい」
「今度からやりすぎないように」
「申し訳ありませんでした」
乙
後で全部読みます
俺がカリカリしてあげる
面白かった
掲載元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1476874183/
Entry ⇒ 2016.11.24 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
紅ノ亞里亞「男を呪うのですね」紅莉栖「ええ」【オカン×シュタゲ】
紅莉栖「……本当にあなたが紅ノ亞里亞さん?」
亞里亞「ええ。それがなにか?」
紅莉栖(私より年下じゃない……)
紅莉栖「そう。ならいいんですけど」
亞里亞「ご依頼の内容は?」
紅莉栖「そうですね。私の依頼は―――」
紅莉栖「―――ある男を呪ってほしい」
オカン側は亞里亞と悪魔しか登場しないシュタゲ寄り話
5pb.祭り公式SS世界線のような世界だと思っていただければ
その辺嫌な方はブラウザバックをお願いいたします
―――
―
Site1 牧瀬紅莉栖
[2時間前 未来ガジェット研究所]
ダル「うーん……うーん……?」カタカタ ッターン
岡部「ダルよ。さっきからモニターの前で何をうんうんと唸っているのだ」
ダル「いやあ、とあるお店の店員さんがとっても萌え~だって、ある筋からタレこみがあったんだけど」カタカタ
まゆり「萌え~な店員さんか~。可愛いんだろうなぁ~♪」
ダル「ネット上のどこを探してもその子の個人情報に行きつかないんだよねぇ」
ダル「まるで何かに守られてるような……。こんなこと今までで初めてでさ」カチカチ
岡部「……今俺は軽く引いているぞ。お前のスーパーハカーの腕をそんなくだらんことに使うなどとッ!」
ダル「だからハカーじゃなくてハッカーだっつの!」
紅莉栖「そういう問題じゃないだろーが!」ゴチン!
ダル「ひでぶっ!!」
まゆり「ダルくん、だいじょうぶ?」
ダル「よ、洋書の角はやめたげてよぉ……」プルプル
紅莉栖「私とまゆりの目の前で普通に気持ち悪いストーカー行為をすんなっ!」
岡部「お、落ち着け助手。マイフェイバリットライトアームは某超国の女スパイの動向を探ろうとだな……」
紅莉栖「厨二病乙! あと助手って言うな! ってかこれ見てよくそこまで妄想できるわねっ」
岡部「これとは?」
http://www.rouge_small_castle.co.jp/
紅
ノ
館
岡部(おお、これはいかにもな感じではないか……!)ドキドキ
まゆり「なんだか怖そうだよ、クリスちゃん」
紅莉栖「大丈夫よ、まゆり。見るからに厨二病こじらせちゃった痛い人のページだから」
ダル「牧瀬氏は何もわかってないお! この厨二病ど真ん中なサイトと店舗を運営してるのが"ロリかわクール系美少女"だってところが最高なんだってばよ!」
ダル「きっと紅ノ亞里亞ちゃんはゴスロリファッションで自作のぬいぐるみを抱きしめてて『私は悪魔に魂を売ってしまったの』とか言っちゃってる系少女なんだお!」
まゆり「ダルくん元気だねぇ~」ニコニコ
ダル「ちなブラコン設定な。呼び方は『お兄様』か『兄くん』以外にありえないww」コポォ
岡部「ソースは?」
ダル「@ちゃんですがなにか?」
岡部「貴様のとある筋というのはソレか……」ガックシ
岡部「というかお前、今『店舗』と言ったか?」
紅莉栖「ここってその店員さんの超絶恥ずかしいポエムとか設定集とか設定画置き場じゃないの?」
ダル「違うお。普通に吉祥寺にあるお店のサイトだお」
ダル「つか牧瀬氏、中身もよく見ないで決めつけとか(・A・)イクナイ!」
紅莉栖「橋田の妄想設定もたいがいだろうが」ゴゴゴ
ダル「ヒェッ」
まゆり「ここってなんのお店なのかな? ぬいぐるみのお店だったらいいな~♪」
紅莉栖「……なになに? 『紅ノ館へようこそ。復讐心に燃える心、嫉妬に駆られる日々云々……黒魔術代行』」
紅莉栖「黒魔術!?」
岡部「黒魔術だと!?」
岡部「まさかこの現代日本に黒魔術代行業が残存していようとはな……ククク」ニヤリ
紅莉栖「…………ハァ(ため息)」
まゆり「黒魔術って、魔法のこと~?」
岡部「ちっがーうぞぉ、まゆり! 黒魔術とは神をも欺く禁術! その圧倒的な力ゆえに術者をも蝕んでしまうという悪魔の秘術なのだぁフゥーハハハ!」
紅莉栖「……………………ハァー(ため息)」
ダル「あっ。しまった、これは波乱のヨカーン」
岡部「ルーン、セイズ、ガンド……我が右腕に封印されし悪霊を解き放つべく、今まさに奴らは決戦の準備をしていることだろうっ!」バサッ
紅莉栖「……まだ厨二病の痛いホムペだったらどれだけよかったか」
岡部「どうした助手ぅ。まさか科学の申し子ともあろう貴様が、黒魔術の真実を前にして怖気づいているのではあるまいなぁ?」ニヤニヤ
紅莉栖「だってこれ……ただの詐欺サイトじゃない」
岡部「がっ!!」
ダル「アチャー」
紅莉栖「『呪いには三つのコース』……うわ、結構な額をふんだくるのね」カチカチ
岡部「おい、クリスティーナッ! 我が感動を一瞬にして台無しにしてくれたな!?」
紅莉栖「はあ? 私は事実を言ったまでですがなにか?」ギロ
岡部「どこが事実なのだっ! この店の経営者が詐欺行為をしているという証拠でもあるのか!?」
紅莉栖「黒魔術なんてあるわけないだろーが。ないもので商売してる時点で詐欺。はいQ.E.D.」
岡部「ほおーう。つまり貴様は、我が眼に宿りし魔眼リーディングシュタイナーまでも否定すると言うのだな?」
紅莉栖「当たり前でしょ。あまりにも非科学的過ぎよ」
岡部「なっ! ならDメールを送信した後、俺だけ記憶を維持している理由が説明できるのかっ!?」
紅莉栖「だから、それこそあんただけが記憶を維持しているかもまだ証明できてないでしょーが!」
まゆり「ちょ、ちょっと二人とも~! 喧嘩しちゃダメだよ~ぅ!」
ダル「いや、こうなることが簡単に想像できたのに止められんかった僕に非があるっつーか……」
岡部「そうやってなんでもかんでも否定する気か、クリスティーナよ」
紅莉栖「っ……。私は、非科学的なものが許せないのよ」
紅莉栖「しかもそれで人様から金を巻き上げて、自分の利益にしてるなんてもっと許せないわ」
岡部「だが黒魔術が存在しないとも証明できていない」
紅莉栖「確かにまだ科学が現象を説明できない分野はあるかもしれない! だけど、ないものをあるって言うのはペテン師のやることでしょ!」
岡部「いいや、黒魔術は存在する。もし巧妙にその事実が隠されているのだとすれば、それは宇宙規模の陰謀だ」
紅莉栖「……どうしてあんたはそういうことを平気で言えるわけ?」
岡部「フッ、当たり前だ。この鳳凰院凶真の言葉は常に真実なのだからな! フゥーハハハ!」
紅莉栖「……話にならない」ギリッ
ダル「つ、つかさ、そんなに疑うんだったらリア凸すればいんじゃね? 場所、吉祥寺っぽいから総武線で一本だお」アワアワ
まゆり「そ、そうだよ! まゆしぃもそれがいいと思いまーす!」
岡部「うむ、ラボメンナンバー2とナンバー3にしてはなかなか鋭い提案――――」
紅莉栖「だったら私だけで行くわ」
岡部「な、なにぃ!?」
紅莉栖「冷静に考えて、こんな恥ずかしい白衣の男の人と一緒に吉祥寺になんて行けない」
岡部「」チーン
ダル「ぐはー。なんか牧瀬氏の表面温度が氷点下な件について」
まゆり「クリスちゃん……」
紅莉栖「いいわ。岡部の熱意に免じて『この世に黒魔術は存在する』という仮説を立ててあげる」
紅莉栖「ゆえに私はこれからこの仮説を否定するためのデータを集めてくる」
紅莉栖「そのためには実験的に誰かを呪う必要があるわけだが」
紅莉栖「私は岡部を呪おうと思うわ」ウフフ
岡部「…………」ガクガク
ダル「…………」ブルブル
紅莉栖「もし怪我でもしたら自業自得ね。ま、そんなこと起こるわけないけど」ガチャ キィ
まゆり「クリスちゃん、いってらっしゃーい」フリフリ
紅莉栖「あ、岡部。髪の毛数本もらうわよ」ブチブチッ
岡部「い、いだだっ!?」
紅莉栖「てゆーか黒魔術とか有り得ないに決まってる。え? 論破? するのも馬鹿馬鹿しすぎるんですけどww」プギャー
岡部「この女……」プルプル
―――
―――――
Site2 牧瀬紅莉栖
[紅ノ館]
亞里亞「男を呪うのですね」
紅莉栖「ええ」
紅莉栖(むしろ一発くらい天罰でも食らえばいいわ……って、なにを非科学的なことを)ウウム
亞里亞「では、黒魔術を執行するための"触媒"を」
紅莉栖「ああ、その辺はHPで読みました。呪う対象の髪の毛ですよね」スッ
亞里亞「確かに。では―――」
紅莉栖「相手の情報はこちらに書いておきました」スッ
亞里亞「随分準備がよろしいようで」
紅莉栖「実験の成功の鍵はその準備の周到さにあるので」
亞里亞「……そうですわね」
亞里亞「ですが、こちらの羽ペンと紙を使ってもう一度お書きください」
紅莉栖「これじゃダメなんですか?」
亞里亞「呪いにおいて最も大切なのは貴女の意志ですので。貴女としても、呪いをかけたという実感がほしいとお思いでしょう?」
亞里亞「今ここで書くことが儀式なのですわ」
紅莉栖「なるほど……。この黒い羽ペンには何かあるんですか?」カキカキ
亞里亞「闇の眷属であるカラスの羽。インクにはコウモリの血を混ぜています」
紅莉栖(うわあ、これはフェイリスさんと別方向に吹っ切れた痛さね……)カキカキ
紅莉栖「……はい、書けました」
紅莉栖(私、アイツの個人情報そんなに知らないんだな……)
亞里亞「コースは?」
紅莉栖「『悪魔の儀式』で。これ、お金です。確認してみてください」スッ
亞里亞「確認します」スッ
紅莉栖(さてどこから切り込んでいくか)
紅莉栖(さっき出されたハーブティー……スンスン。いや、毒を入れるメリットが無い)
紅莉栖「お茶、いただきます」ツツーッ
亞里亞「…………」
紅莉栖「……何です? そんな大きな目で見つめて」
亞里亞「いえ、あなたが初めてだったものですから」
紅莉栖「初めて?」
亞里亞「ここで私の出したハーブティーを飲んでくださったのが」
紅莉栖(あー……これは失敗した? 確かにこんな胡散臭い場所だし……)
紅莉栖(それに、他人を本気で呪おうとしてる人間の精神状態じゃ普通は気味悪くて飲めないか)
紅莉栖「えっと。実はこのお店に来るまでは緊張してたんですけどね」
紅莉栖「亞里亞さんが若い方だったし、お部屋の香りも素敵なので癒されてしまって」
亞里亞「そうでしたの」
紅莉栖(誤魔化せた……? この人、桐生さんみたいに表情が読めないわね)
亞里亞「……たしかに66,600円、いただきました」
紅莉栖「そのお金なんだけど、結構な額ですよね?」
亞里亞「そうかもしれませんね」
紅莉栖「それだけ払っても呪いが成功するとは限らない……違います?」
亞里亞「おっしゃる通りですわ。どんな時も必ず発動する魔術など存在しません」
紅莉栖(詐欺師の常套句じゃない……)
紅莉栖「だからね、私から提案があります」
亞里亞「提案?」
紅莉栖「期限を設けさせていただけませんか?」
亞里亞「はぁ」
紅莉栖「もし1週間以内に呪いが発動しなかったら返金していただきたいのですが」
亞里亞「……いえ、ごめんなさい。それはできませんの」
紅莉栖「なぜです?」
亞里亞「黒魔術において契約を改めたり、途中で変えるというのは禁忌ですので」
紅莉栖(そう来たか)
紅莉栖「なるほど、確かに悪魔の契約ですね」
亞里亞「……拝金主義者の悪魔の、ですわ」
紅莉栖「……?」
亞里亞「ですが、1週間以内という期限は受け付けます。それを過ぎてしまいましたら、そういうこともありますとしか」
紅莉栖(この人が本当に詐欺師なら、今まで騙してきた人たちに対して謝ってほしいんだけどね……)
紅莉栖(まあいざ来てみればちょっと怪しい雰囲気があるだけのお悩み相談所だし、お客が納得してるのならいいのかも?)ウーン
亞里亞「そしてこの場合、呪詛が返ってくる場合がありますわ」
紅莉栖「え?」
亞里亞「人を呪わば穴二つ」
紅莉栖「……ああ。"When you curse someone, you dig your own grave."ってこと」
亞里亞「そこはご了承いただけますかしら?」
紅莉栖「ええ。構わないです」
紅莉栖(呪詛返しなんてあるわけないでしょ)
亞里亞「……わかりましたわ」
亞里亞「では、使うドールの数は5体」
紅莉栖「ドール?」
亞里亞「使い魔のようなものとお考えになって。こちらから、『アーリマン』、『ゴルゴーン』、『カヴン』、『ペテロ』、『リリス十二世』ですわ」
紅莉栖(うえっ、気味悪い見た目……)
紅莉栖(名前は見事に魔術用語ね。でも十二世?)
亞里亞「それとこちら」スッ
紅莉栖「こ、これは……ナイフ……っ」ドクン
『パパっ!? 盗むのっ!?』
『父より優秀な娘など……っ!!』
『――――あああぁぁぁぁあああああっ!!!!!』
紅莉栖「――――ッ!?!?」
紅莉栖(な、なに、今の記憶は……。さっきのは、岡部の叫び声?)ドクン
亞里亞「……落ち着きました?」
紅莉栖「えっ? あ、すいません」ビクッ
亞里亞「いえ。驚かれたのなら謝りますわ」
紅莉栖(ホントにさっきのハーブティーに変なモノでも入ってたのかしら)
紅莉栖「もう大丈夫です。それで、このナイフはいったい――」
亞里亞「短剣(ダガー)」
紅莉栖「え?」
亞里亞「ナイフではなくて†短剣(ダガー)†ですわ」
紅莉栖「あっはい」
亞里亞「貴女の血を数滴、いただきます。どちらの手でもいいですので、指を傷つけてくださいますか?」
紅莉栖(そこまでしないといけない、か)
紅莉栖「わかりました……っ」スッ
亞里亞「滴をこちらの小瓶に」
ポタッ
亞里亞「はい、結構」
亞里亞「次に触媒を蝋燭の火で燃やしますわ。その間、思いつく限りの呪詛を心の中で唱えなさい」
紅莉栖「…………」
紅莉栖(岡部の変態、岡部のロリコン、岡部の女たらし、岡部の巨乳好き、岡部のすけこまし、岡部のバカ、岡部の鈍感、岡部の朴念仁、岡部の――――)
亞里亞「以上で儀式は終わりですわ」
紅莉栖「――岡部の厨二病、岡部のむっつりスケベ、岡部のヒゲ、岡部のマッドサイエンティスト」ブツブツ
亞里亞「……こほん」
紅莉栖「……えっ? あ、もう終わりですか」
亞里亞「凄まじい念を感じます」
[ハモニカ横丁 紅ノ館入口]
紅莉栖「ありがとうございました」ガチャ
亞里亞「あなたの意志が強ければ呪いは成就するでしょう」
紅莉栖「……私の意志は強いわ。誰よりも」コツ コツ コツ
亞里亞「…………」
??『あれが今度の客とは悲しいなぁ』
亞里亞「あら、いらしていたのですね」
亞里亞「悪魔さん」
日下部『ちょうど予定が開いてたからな』
紅莉栖「……ん? 今、男の声みたいなのが聞こえたような……疲労で発生した耳鳴りかな……?」コツ コツ コツ
日下部『あの女、テメエの仕事部屋を気に入ったみたいだぞ。随分熱心に眺めてやがった』
亞里亞「ハーブティーもアロマも気に入っていただけたみたいで、悪い気はしませんでしたわ」
日下部『フン……同世代の女としゃべれて友達気分か?』
亞里亞「まさか。そのような俗世のものなど知りたくもないのに」
日下部(こいつの心が俺だけに依存してる状態を維持するのに牧瀬とかいう女は邪魔だ)
日下部(こいつはこう見えて心には隙だらけだ。いつ誰にハメられるかもわからねえ)
日下部(どういうわけか牧瀬はこの女に興味津々だった。まあ、良く見てもゴシップ的興味だろう)
日下部(……とりあえずは仕事をしておくか。先立つものは金だ)
日下部『で、俺は1週間以内にその男を呪えばいいんだな?』
亞里亞「ええ。くれぐれもあの約束をお忘れなきよう」
日下部『契約では呪う相手を殺してはならない、だったか』シュタッ
日下部(……呪う相手は殺さねえとは言ったが、呪った本人を殺さねえとは言ってねえぜ)ニヤリ
[翌日 未来ガジェット研究所]
岡部「――ホントに俺を呪ったのか!?」
ダル「うわぁ……」
まゆり「クリスちゃん……」
るか「牧瀬さん……」
紅莉栖「ちょっ!? 昨日そういう流れだったでしょ!?」
ダル「い、いや、あの時はなんかそういう流れになっちゃってたけどさ」
ダル「冷静に考えて冗談でも人を呪うとか無いわーマジ無いわー」
紅莉栖「」
まゆり「まゆしぃはね、悲しいのです……」シュン
紅莉栖「うぐぅっ!? だ、だから、これは黒魔術とかいうシロモノが存在しないことを証明するためにだなっ!」
るか「あの、牧瀬さんが科学者さんだってことはわかります。で、でも、霊的な力を悪用するのは、よくないかと……」
紅莉栖「そうじゃないのっ! その霊的ななんとかがそもそもこの世に存在してないって言ってるのぉっ!」
ダル「いや、本職巫女のるか氏に言っても説得力皆無な件」
岡部「この世に存在しなくとも、あの世に存在していればこちら側に影響を与えることも可能なのではないか?」
紅莉栖「あぁぁーーーもうっ! 知らないっ! 車にでも轢かれろバカ岡部ぇ!!」ガチャッ バタンッ!
ダル「いやー、ちょっと僕らも悪ノリし過ぎたっぽい」
まゆり「まゆしぃ、昨日のお話をよくわかってなかったよ。ごめんね、クリスちゃん。止めてあげられなくて……」
岡部「……あいつの何がそこまで動かすのだろうな」
ダル「何って?」
岡部「いや、どうしてそこまでオカルト的なものにこだわるのかと思ってな」
岡部「科学者だから疑似科学を許せない。これはまだわかるが、ここまで徹底的なのは珍しいんじゃないか?」
ダル「本人は性格って言ってた件」
岡部「この電話レンジ(仮)に関してもだ。最初はタイムマシンなぞ非科学的だなんだと批判していたが、今やなんだかんだで主任研究員となっている」
岡部(まあ、父親との間に何かがあったのだろう、ということくらいはわかるが……)
るか「岡部さん! 今すぐ神社でお祓いさせてくださいっ!」ウルウル
岡部「ふ、ふおぉっ!? か、顔が近いぞルカ子っ!」ドキッ
岡部(だが男だ……)
るか「はっ! す、すいませんでした……」カァァ
まゆり「るかくんと一生懸命説得すれば、呪いさんも帰ってくれると思うなぁ」
岡部「なんと言ってもルカ子はこの秋葉の原の防人だからなっ! フゥーハハハ!」バサッ
るか「は、はいっ! ボク、がんばりますっ!」キラキラ
岡部「……ダルよ。なにかあったらすぐDメールでなかったことにするからここに待機。いいな?」ヒソヒソ
ダル「らじゃ!」
[万世橋]
岡部「……自分が呪われていると思うと、この暑さも涼しく感じる」ブルッ
まゆり「夏風邪ひかないようにしないとねー」
るか「そう言えば、牧瀬さんはどちらに行ってしまったんでしょう」
岡部「今頃自分のホテルに帰り枕に顔をうずめ己の愚行を自戒しワンワン泣いているのだろう」
岡部「ククク……俺を呪ったことを後悔するがいい。そして、呪いなど受け付けぬこの鳳凰院凶真の力に恐れおののくが――――」
キャァァァーーーー!!
イヤァーーーー!!
ウワァァァーーー!!
岡部「な、なんだ!?」ビクッ
キィィィーーーーーッ!! バターーーーーンッ!!
ガリガリガリッ!!
るか「自動車が横転しましたっ!?」ビクッ
まゆり「えっ?」オロオロ
岡部「――――まゆりっ!!!」ダッ
ド ン ッ
―――――
―――
―
岡部(……空が赤い。なんだこれ、血か……?)
「――――リンッ! オカリンッ!」
岡部「……え?」
「――――さんっ! 岡部さんっ!」
岡部「あ、あれ……どう、なって……」ゴフッ
まゆり「オカリン!? 気が付いたの!?」ポロポロ
るか「お、岡部さぁぁぁぁん!!」ポロポロ
岡部「あ、ああ……。――――っ!」ズキッ
岡部(体がものすごく痛い……。そうだ、俺はまゆりをかばって横転したバンに跳ねられた)
岡部(少なくとも額と内蔵から血が出てる。全身の骨も何本かイったのだろう、まともに動けない)
岡部(死にはしなかったが……)
岡部(まさか、これが呪いなのか……?)
岡部「お、お前たち……ケータイを、出せ……」ズキズキ
まゆり「オカリンッ!? ど、どうするの!?」
岡部「D、メールで……なかった、ことに……」ズキズキ
るか「え、えっと、ボクのケータイでよければっ!」
岡部「ダルに、電話して、セットを……。まゆりは、メールを……」
まゆり「電話レンジちゃんにメールだね!?」
岡部「文面は……18文字……。この事故を、回避させろ……」
まゆり「わかったよ、オカリンっ!」ピッ ピッ
るか「橋田さんと通話繋がったよ、まゆりちゃん! いつでもオーケーだって!」
まゆり「ダルくんっ、送り先は10分前っ! 送るよっ!?」ピッ
グ ワ ン
岡部(ぐっ……来たか、リーディングシュタイナー……ッ!!)
――――
Site5 日下部吉柳
[謎の場所]
岡部「……ここは?」
日下部『チッ。逃げやがったな』
岡部「な、なんだ貴様はっ!?」ビクッ
日下部『安心しろ。もうそっち側へ俺はついていけねえ』
岡部「な、なにっ!?」
日下部『今のテメエは元居た脳ミソから飛び出して別の脳ミソへと移動中らしいな』
岡部「……リーディング・シュタイナーを知ってるのか!?」
日下部『なあ。霊体の俺がどうやってあのバンを転ばしたと思う?』
岡部「はぁっ!?」
日下部『こんな俺でも音波や電波は出せるんだ』
日下部『だから波長の合うやつとなら会話だって出来る』
岡部「貴様、幽霊なのか!?」
日下部『空気の振動を利用して直接テメエの眼球や鼓膜を破壊してもいいが、それはつまらねえ』
日下部『原因は現実にありそうな事故じゃないと面白くねえんだよ』
日下部『車の運転手が責任を取らされるんだろうなぁ。俺のせいだとも知らずに』ニタァ
岡部「お、おい! 何の話だ!」
日下部『てなもんで、ちいっとあの車の機器を弄らせてもらった』
岡部「……貴様が、呪いの正体か」
日下部『精密機械になればなるほど俺の操れるレベルのモノになる。狙いは少しズレちまったが』
岡部「貴様がっ! まゆりを殺そうとしたのかっ!」
日下部『ま、ここでの出来事は記憶できねえ。テメエには今脳がねえから』
岡部「質問に答えろっ!」
日下部『期限のこともあるから呪いは1日1回までだ。テメエの主観でな』
日下部『こっちも仕事なんだ。よろしく頼むぜ』
岡部「おいっ! おい―――――」
――――
Site6 岡部倫太郎
[未来ガジェット研究所]
岡部「…………」
チク タク チク タク
岡部「…………」
チク タク チク タク
岡部「…………」キョロキョロ
まゆり「どうしたの、オカリン?」
るか「どうかされましたか?」
岡部「……2人とも、よくやった」ダキッ
まゆり「わっ、オカリン!」
るか「えっ……ええええええええっ!?!?!?」カァァァ
ダル「ちょ!? ラボはラブホじゃねーっつーの!」ガタッ
ガチャ
紅莉栖「――岡部、さっきは急に出て行ってごめうおおおおおいいいおぉぉかぁぁべぇぇぇぇ!!!!」
岡部「……理不尽だっ」ジンジン(※洋書で叩かれた)
紅莉栖「だ、黙れこのHENTAIっ! よくもまあJK2人に――いや片方男だが――同時にセクハラしておいて平然としていられるわね!」フーッ フーッ
岡部「まさかこれも呪いなのか?」プルプル
紅莉栖「呪いなんかあるわけないと言っとろーが! 自分の非を呪いのせいにする男の人って!」キシャーッ
ダル「ちょ、牧瀬氏もちけつ」
まゆり「クリスちゃん、まゆしぃは大丈夫だよ? オカリンに抱きしめられたの久しぶりだったからビックリしちゃっただけで」
紅莉栖「はい常習犯確定。被害者からの証言は絶対」スッ(※洋書2撃目用意)
岡部「ちょぉっ! ウェイウェイ! まゆりは幼馴染だっ!」
るか「ボ、ボクのことは、いいんです……きっと、岡部さんにも事情があったと、思うので……」カァァ
ダル「ウホッ」
紅莉栖「何か言い残すことは?」ニコォ
岡部「こ、これを見ろっ! 俺のケータイだっ! まゆりからDメールを受け取っているはずっ!」スッ
紅莉栖「Dメール?」
紅莉栖「『ラボから出ち ゃだめ車にひか れぐちゃぐ』……なるほど、そういうことだったの」
岡部「ほう、あの時まゆりはこんな文章を……。咄嗟だったにしては上出来じゃないか」
まゆり「えっへへ~。また褒められちゃったのです」
岡部「また? そうか、このDメールを受信した時の俺がお前を褒めたのだな」
紅莉栖「……ねえ。っていうことは、本当に、その、あの」プルプル
岡部「ああ。俺の記憶では間違いなく車に跳ね飛ばされた。だが、Dメールによってそれをなかったことにしたのだ」
紅莉栖「わ、わたしが、くるまに、ひかれちゃえ、とか、い、いった、から……」プルプル
岡部「お、おい、クリスティーナ……?」
紅莉栖「わたし、が……おかべ、を……の、のろっ……う、う、うう……」
紅莉栖「――――うわぁぁぁぁ……ごべんねぇぇっ……っ」ポロポロ
まゆり「落ち着いた? クリスちゃん」ナデナデ
紅莉栖「うぐっ、ひぐっ。えぐっ」ズビーッ
るか「あの、お水、ゆっくり飲んでくださいね」
ダル「いやあ、女子の泣き顔hshsなこの僕でさえ心の底から心配しちゃうマジ泣きだったお」
岡部「なあ、クリスティーナ。思ったんだが」
紅莉栖「ご、ごめんなさい……。なんでもするから、許して……」ヒグッ
岡部「話を聞け! よく考えてみれば、この世界線において呪いは発動していないのではないか?」
紅莉栖「……ふぇ?」
岡部「お前が泣きじゃくっている間にダルに調べてもらったが、この世界線では万世橋で交通事故など起こっていない」
岡部「つまりそれは、あの事故は俺があの時万世橋に居たからこそ発生したものだ、ということ」
岡部「ならば、貴様のかけたという呪いはまだ現実化していない。未確定の状態だ」
岡部「俺たちに電話レンジ(仮)がある限り、呪いは"なかったこと"にし続けられるのではないか?」
紅莉栖「……話が本末転倒だわ」
紅莉栖「黒魔術の存在を科学的に否定しようとしていたら、黒魔術を科学の力で抹消し始めていた。なにを言ってるか(ry」
岡部(こいつ、やはりネラーか……)
紅莉栖「でもそれはつまり、別の呪いが今まさに待ち構えている可能性がある、ということよ?」
紅莉栖「本来起こるはずの交通事故をなかったことにした。それは、呪いが発動する可能性を先延ばしにしただけなんじゃないの?」
岡部「落ち着け助手よ。そもそも呪いなど科学的に存在しないのではなかったのか?」
紅莉栖「えっ? あ、いや、そりゃ、そうだけど……」
紅莉栖「……そう! 絶対にあの亞里亞とかいう女の裏に闇の組織が居て、ってなんで岡部と同類の陰謀論を唱えてるのよ私……」ガックリ
岡部「どうやらさすがの天才HENTAI少女も混乱しているようだな」ククッ
紅莉栖「へ、HENTAI言うなっ!」
岡部「案外呪いなど発動せずに平和に過ごせるかもしれない。仮に発生したとしても、Dメールを使えばいい」
岡部「いずれ呪いと呼べるようなものが何ひとつない世界線へと到達できるかもしれない」
紅莉栖「……そうね、挑戦する価値はあるのかもしれない」
紅莉栖「待って。昨日にDメールを送って私を吉祥寺に行かせないようにすれば、そもそもこんなことにならないんじゃない?」
岡部「お前はそれで満足するのか?」
紅莉栖「……岡部が酷い目に遭うのなら、私の科学的好奇心なんて要らない」
岡部「確かに、本当にどうしようもなくなったらそうするしかないだろう。だが、呪いひとつ跳ね返せないようでは鳳凰院凶真の名が廃る」
岡部「それにだ。正直、今回の件はお前を焚きつけた俺にも責任がある」
紅莉栖「い、いいの? 許してくれるの?」
岡部「ラボメンだからな。というか、あの泣き顔を見せておいてそれはないだろう」
紅莉栖「おかべぇ……」ウルッ
岡部「そ、それにだな、貴様は我がラボの重要な研究員だ。今後とも電話レンジ(仮)の改良に専念してもらわねば困るっ!」
紅莉栖「……うん」
岡部「ならばッ! 今すべきことはなにかッ!」バサッ
紅莉栖「ふぇ!?」ビクッ
岡部「これより第666回対黒魔術対策円卓会議を行う! ラボメン全員集結せよッ!」
鈴羽「呪いなんてあたしの蹴りで霧消させてあげるよ!」シュッ シュッ
萌郁「……いい記事……書けそう……」
るか「と、とりあえずラボに結界を張りました!」
フェイリス「フェイリスの前世は白魔導士だったニャン♪ 黒魔術なんて敵じゃないニャ!」
まゆり「みんなでオカリンを守ろーっ!」
紅莉栖「逆に不安になってきたわ……」
岡部「う、うむ……」
ダル「つかさ、普通に亞里亞たんにお願いして契約解除してもらえばいんじゃね?」
紅莉栖「悪魔の契約だから契約違反はダメなんですって」
フェイリス「ク、クーニャンの口からそんなセリフが出てくるニャんて……」
紅莉栖「したくてしてない! あと、本当の意味での呪いは信じてないから!」
紅莉栖「絶対なにか裏がある……けど、亞里亞っていう娘が岡部を直接襲ったとも考えにくいのよね……」
鈴羽「どうして?」
紅莉栖「今までの客にすべて同じように接してるんだったら、あの娘はもう捕まってておかしくない」
紅莉栖「完全犯罪を成し遂げそうなほど狡猾って感じでもなかったし、裏に居るヤバイ組織を6万円ちょっとで動かせるとも思えない」
岡部「相手がどんな手段を使っているのだとしても使っていないのだとしても、こちらには電話レンジ(仮)がある」
紅莉栖「それに頼り切りになってるのも危ない気がするけど……まあ、そうね。この場合原因はなんでもいいか」
紅莉栖「それで、実際どうするかって話なんだけど」
岡部「会議を仕切りおって。委員長キャラめ」
紅莉栖「うっさい! えっと、これから6日間、誰かが常に岡部の側に居る」
紅莉栖「なにかあったらすぐラボで待機してる橋田に連絡して、電話レンジ接続ケータイのアドレスにDメールを送る。OK?」
るか「常に岡部さんの側に……」カァァ
フェイリス「それってデートとかしちゃってもいいニャ?」
紅莉栖「ハァ!? ダメに決まってるでしょ!?」
岡部「う、うむ。俺としてもあまり動き回るのはよくないと思うのだが」
萌郁「ずっとラボに……引きこもるのは……?」
紅莉栖「それなんだけど、もしこのラボごと巻き込まれたら一巻の終わりなのよね。それができるのかは知らないけど」
岡部「ということは、今すぐにでもここを離れたほうがいいのか?」
フェイリス「だったらフェイリスのうちにくるニャ! あそこなら絶対安全ニャ!」
紅莉栖「ちょっと待ちなさい! 6日間の持ち回りは公平に決めるわよ!」
岡部「よしっ! では"魔術祓い作戦"<オペレーション・ガンバンテイン>開始だっ!」バサッ
Site7 秋葉留未穂
[タイムスタワー エレベーター内]
フェイリス「前は万世橋で車に跳ねられたニャ?」
岡部「ああ。今回も車に狙われるかも知れないと思ったが、警戒していたせいか何も無かったな」
フェイリス(凶真の担当の初日はフェイリスに決まったニャ)
フェイリス(くふふ……これも最初に勢いで凶真をゲットしたフェイリスの作戦!)キラーン
フェイリス(それにしても凶真はまた面白い遊びを考えたものニャ。あのクーニャンに魔術を肯定させるニャんて)
フェイリス(これを機に凶真やクーニャンをFESのライブにでも誘ってみようかニャ~?)
チーン
フェイリス「さ、ついたニャ。この最上階なら車も突っ込んでこないニャ!」
岡部「そうだな……む? エレベーターのドアが開かないが」
フェイリス「ニャニャ?」
ガタッ!! ガクンッ!!
岡部「のわっ!?」
フェイリス「きゃぁっ!?」
岡部「ちょ、今、少しエレベーターが下がらなかったか!?」
フェイリス「え、えっ!? そんな!? 今までこんなこと1度もなかったよ!?」
岡部「これはもしや……フェイリス! メールの準備をっ!」
フェイリス「わ、わかった!」ピッ ピッ
ガクンッ!! ガクンッ!!
フェイリス「いやあっ!!」ビクッ
岡部「もしもしダルか!? ああ、そうだ! 今すぐDメールの準備――――」
ガッ!! キュルキュルキュルキュルキュル!!
ヒューーーーーーッ!!
岡部「う、うわああああああああっ!!!!!」
フェイリス「いやあああああああああっ!!!!!」ピッ
グ ワ ン
[タイムスタワー 非常階段]
岡部「…………」
フェイリス「ちょ!? 急に立ち止まらないでほしいニャ!」
岡部「こ、ここは?」
フェイリス「えっ? もしかして別の世界の記憶を受信したニャ?」
岡部「そ、そうだ! Dメールの受信履歴はっ!」スッ
岡部「『エレベーター 使うな!』……なるほど。だいたい状況が飲み込めたぞ」
フェイリス「やっぱり……。ってことは、本当に呪いが発動したのかニャ?」
岡部「ああ……だが、それもフェイリスのおかげで跳ね返すことができたぞ!」
フェイリス「ニャフフ。フェイリスの魔力はこの銀河の誰よりも強いのニャ!」
Site8 岡部倫太郎
岡部(その後も俺は数々の呪いを乗り越え――)
―
鈴羽『UPXのモニタが割れたっ!?』
岡部『ぐあああっ!!』
―
萌郁『電車が……止まらない……っ!』
岡部『くそぉっ!』
―
るか『ガスが漏れてます!?』
岡部『ごふっ……がはっ……!』
―
まゆり『コンビニで火事なんて……』グスッ
岡部『まゆり……Dメールを……』
―
紅莉栖『岡部っ! 岡部ぇっ!』
岡部『なかったことに……っ!』
―
[御茶ノ水 ローズホテル東京 牧瀬紅莉栖の部屋]
岡部「…………」
紅莉栖「岡部? どうしたの、急に黙っちゃって。……もしかして、過去を変えた?」
岡部「……ああ。全く、俺が落ちてきた電線に感電した程度でワンワン泣きおって」クク
紅莉栖「えっ!? 岡部、大丈夫!? 痛いところない!?」
岡部「……お前こそ大丈夫か?」
紅莉栖「……ダメね、相当混乱してるみたい」ハァ
岡部「無理もない。ここ1週間、ずっと気を張り詰めていたのだ」
岡部「だが、これで最後の試練を乗り切った。どういうわけか呪いは1日1回だったからな」
紅莉栖「経験則ではそうらしいけど、本当に呪いが終わったかは明日になるまでわからない」
紅莉栖「不安はまだ続くわよ……」
[翌日 未来ガジェット研究所]
紅莉栖「ふわーっはっはっは! 呪い!? 黒魔術!? なにそれおいしいの!?」ドヤァ
岡部(こいつ……)
まゆり「でも良かったよー、オカリンの身になにもなくて」
ダル「つかさ、結局最初の目的は達成されたん?」
岡部「実際に黒魔術は発動しなかったからな。科学的な意味においては肯定できない……のか?」
紅莉栖「少なくともこの世界線ではね。岡部が体験した呪いってのもどんな裏があったかわかったもんじゃないけど」
岡部「それでいいのか?」
紅莉栖「……もうさすがに疲れたわ。確かにカラクリをいずれ解き明かす必要はあるとは思うけど」
紅莉栖「穏便な方法がないわけだし、もう手を引くわ。電話レンジの改良作業も残ってるしね」
岡部「カッコカリだっ!」
Site9 日下部吉柳
[紅ノ館]
亞里亞「……いらしてたのですね」
日下部『牧瀬紅莉栖の依頼は達成できなかった』
亞里亞「今日は成果報告をしに? 珍しいですこと」
日下部(こちらが仕掛けようとすると、まるで未来が視えてるかのごとく躱してきやがった)
日下部(事故に見せかけてダメージを負わせるどころか、事故を引き起こすことすらかなわなかった)
日下部(あいつらの根城のテナントビルには変な電波が飛び交ってて近づくことすらできねえ)
日下部(俺も忙しいんだ。時間かけてやったのが全部パーになってイライラしてんだぜ)
日下部『……契約では成果報告はしねえと言ったはずだ。実際、成果は出してねえ』
亞里亞「そういうこともあるのでしょう。彼女には申し訳ないことをしました」
日下部『だからテメエは舐められるんだ。実際、あの女は……』
亞里亞「……?」
日下部『牧瀬紅莉栖は男を呪いたかったわけじゃない。テメエの黒魔術を否定したかっただけだ』
亞里亞「……。……そう、でしたの」
日下部『今までも遊び半分で依頼しにくるやつは居た。怖いもの見たさでな』
日下部『そういう意味ではあの女は異質だったわけだが……おい、どうした?』
亞里亞「…………」
日下部(なんだ? 今さら黒魔術を馬鹿にされたくらいで絶望してんのか?)
日下部(あるいは、親しみを感じた人間に裏切られて落ち込んでいるか……)
日下部『ともかく、この俺の力が通用しなかったんだ。何か見えない大きな力が働いたのかも知れねえ』
亞里亞「つまり、別の呪いに妨害されたと?」
日下部『その可能性もある。そんなわけで、俺はもうひとつの契約を実行すべきと思うわけだ』
亞里亞「……呪詛返し、ですわね」
日下部『フフン……見に来るか?』
亞里亞「え……」
日下部『いや、俺の勘違いならいいんだが、テメエは牧瀬紅莉栖に言いたいことがあるんじゃねえかと思ってな』
亞里亞「…………」
亞里亞「……連れて行ってくださいませ」
日下部『……高くつくぜ』ニタァ
Site10 紅ノ亞里亞
[御茶ノ水 路上]
まゆり「それじゃ、まゆしぃは丸の内線で帰るね。ばいば~い!」タッ タッ
紅莉栖「バァイ、まゆり」
紅莉栖「……はぁ」
紅莉栖「なんだかとっても疲れた1週間だったわ……。6万円も払って、私、何やってるんだか……」トボトボ
紅莉栖「いつか仕返ししてやるんだから! オカルトなんて科学的に全否定してやるっ!」グッ
紅莉栖「…………」
紅莉栖「お風呂入って寝よ……」トボトボ
亞里亞「ごきげんよう、牧瀬紅莉栖さん」
紅莉栖「っ!?」ビクッ
亞里亞「呪いが発動せず申し訳ありませんでした」ペコリ
紅莉栖「あ、あなたは紅ノ館の……。えっと、その件に関してはもういいんです」
亞里亞「もういい、とは?」
紅莉栖「実はその男とはさっき和解できたので……。今思えば発動しなくてよかったなーなんて」
亞里亞「そうでしたの。それは良かったですわ」
紅莉栖「え、ええ……」
亞里亞(目の動き、仕草、わずかににじむ汗……)
亞里亞「……嘘ですわね」
紅莉栖「えっ!?」ビクッ
亞里亞「貴女は最初から男を呪う気などなかった……違いますか?」
紅莉栖「あ、いや、えっと……」
亞里亞「私を試すような真似をしたことは構いません」
亞里亞「ですが、貴女が私のお店でした発言はすべて嘘だったのですね」
紅莉栖「……逆に質問させてください。あなたは、今までどうやって相手を呪ってきたんですか?」
亞里亞「それは貴女もよくご存じのはず。儀式を行い――」
紅莉栖「そういう話を聞いてるんじゃないわ」
亞里亞「…………」
紅莉栖「どうやって実際に人を傷害……いえ、もしかしたら殺害までしてたのかって聞いてるんです」
亞里亞「……何のお話かしら」
紅莉栖「とぼけないでッ! あんたが何らかの方法を使って人を傷つけてるのはわかってるのよ!?」
亞里亞「…………」
亞里亞(他人から向けられる明らかな敵意。酷く苦しく醜い)
亞里亞(同じ『紅』の属性を持つ者同士理解し合えるかもと思いましたが、どうやら思い過ごしだったようですわ)
亞里亞(ハーブティーもアロマも、新しいものに取り換えなくてはなりませんね)
日下部『……準備はできた。あと30秒だ』
亞里亞「…………」コクッ
紅莉栖「ちょっと、どこ見てるの? 話聞いて――」
亞里亞「貴女、有名な脳科学研究所の研究者さんなのですね。インターネットで検索させていただきましたわ」
紅莉栖「……ええ、一応。それが何か?」
亞里亞「そんな貴女に聞きたいことがあるのです」ギュッ
紅莉栖「ちょ、あの、なんです? 手、離してください」
亞里亞「貴女は――」
亞里亞「――死後の世界を信じますか?」パッ
キキィーーーーーー!!
紅莉栖「え――――――――――」
・・・
・・・
・・・
―――――
To:岡部倫太郎
件名:
本文
紅莉栖を紅ノ 館へ行かせる な!殺される
―――――
Site11 岡部倫太郎
[未来ガジェット研究所]
岡部「…………」
紅莉栖「――って、話聞いてんの? 岡部?」
岡部「……紅莉栖」ガシッ
紅莉栖「ふぇぇ!? いきなり真顔で名前を呼ぶなぁ! 肩に触るなぁ!」カァァ
岡部「お前が、無事でよかった……」
紅莉栖「」プシュー
紅莉栖はまゆりと別れてすぐ事故に遭い病院に運ばれた。
重傷ではあったが死んではいなかった。
Dメールで『殺される』と書いたのは過去の自分を騙すための嘘だ。
そこまでしないと引き留めそうにないからな。
紅莉栖を跳ねた車は歩道に乗り上げ理不尽な軌道を描いていたという。
俺には呪詛返しのように思えた。
どういうわけか紅莉栖に付き添って救急車に乗ってきたという紅ノ亞里亞を問い質したところ、やはりそういう契約だったらしい。
―回想―
[六井記念病院]
岡部「はぁっ、はぁっ……ま、待ってくれ! じゃなかった、待ってください!」
亞里亞「…………」
岡部「あなたが紅莉栖を見つけて救急車を呼んでくださったんですね。ありがとうございます」
亞里亞「いえ、私は感謝されるようなことなどしていませんわ」
岡部「あの、もしよければ名前と電話番号を教えてもらえませんか?」
岡部「紅莉栖が事故に遭った時の様子を詳しく聞きたいので」
亞里亞「……紅ノ亞里亞、と言えばわかりますかしら」
岡部「なっ……!?」
岡部「まさか、あんたが……い、いや、車は歩道に乗り上げていたらしい。紅莉栖を車道に突き飛ばしたわけじゃない……」ブツブツ
亞里亞「自動車のほうも大した速度は出ていませんでした」
岡部「な、なあ! あんたなら何か知ってるんじゃないか? どうして俺じゃなく紅莉栖がこんな目に遭ったんだ!?」
亞里亞「……そう。貴方が岡部倫太郎さんなのですね」
岡部「あ、ああ。そうだ」
亞里亞「随分と牧瀬紅莉栖さんをご心配なさっているご様子」
岡部「当たり前だッ! あいつは、俺の大事な……ラボメンなんだっ」
亞里亞「…………」
亞里亞「……嫌らしい」
亞里亞「いいでしょう。お教えしますわ」
亞里亞「契約では1週間呪いが発動しなかった場合、呪詛返しが発動することになっていましたの」
岡部「やはり……!」
亞里亞「私は黒魔術を代行したまで。……現場に居合わせたのは初めてですが」
亞里亞「血だまりの中に倒れる彼女、美しかったですわ。どうして似合っていたのかしら」
岡部「……なぜそんな器用なことができたんだ」
亞里亞「私は悪魔に心を売った存在。悪魔に聞けばわかることがあるのです」
岡部(何を言っているんだ、この女……!?)
――回想終了――
俺はDメールを送らなければならなかった。
俺が呪われていた時は1週間という期限があったが、紅莉栖のソレには期限がない。
この呪いを解く方法はただひとつ。1週間前の紅莉栖を紅ノ館へと行かせないことだけだ。
この1週間はなかったことになってしまったが、紅莉栖が無事ならそれでいい。
紅莉栖「このHENTAIっ! 橋田とまゆりが出かけてるからって手を出すなんて……い、いや、あんたがしたいなら、その、あのっ、でもぉっ!」モジモジ
岡部「お前は黒魔術を信じるか?」
紅莉栖「へっ!?」ビクッ
紅莉栖「……先週、あんたから謝ったじゃない。黒魔術なんて無いから俺が悪かった、って」
岡部「そ、そうなのか……」
紅莉栖「あんたまさか、Dメールを送って過去の自分に謝らせたの?」
岡部「まあ、そういうことになるのか」
紅莉栖「……その顔は何かあったのね。あとで洗いざらい教えなさいよ」
岡部「言ったところでお前が黒魔術を信じるとは思えんがな」クク
紅莉栖「やっぱりそっち絡みの話なのね」ハァ
岡部「ああ。もうあんな思いはこりごりだ」
紅莉栖「そう言われると聞くのが楽しみね」
岡部「お前が大事な仲間なんだと思い知ったよ」
紅莉栖「大事な仲間……」トクン
岡部「そ、そうだ。なぜならっ、貴様は我が助手なのだからなっ! フゥーハハハ!」
紅莉栖「だっ、だから助手じゃないと言っとろーが!」
岡部(ともかく、これで全ては元通りだ。黒魔術の存在は惜しいが、しばらくは放置だな)
岡部「よしっ、では早速電話レンジ(仮)の改良について取り掛かるぞ! おおっ、ヘッドギアがついているではないか!」
ガチャ
ダル「ただいまー。なんかあったん?」
岡部「なにかとはなんだ?」
ダル「いや、僕が戻ってきたらまゆ氏が全力ダッシュで走っていったからさ」
紅莉栖「まゆりが?」
ダル「え? ラボの中に入ってなかったん?」
岡部「ということは……」
紅莉栖「……まさか、あの恥ずかしいやり取りを玄関で聞かれた!?」
ダル「男女が2人で恥ずかしいやり取り……ふざくんなリア充このヤロウ!!」
紅莉栖「黙れHENTAI!」
岡部「……なんだか嫌な予感がする」
岡部「まゆりを探してくるっ!」ダッ
Site12 紅ノ亞里亞
[紅ノ館]
亞里亞「……重荷になりたくない、ですか」
まゆり「まゆしぃがいつまでも頼りきりになってたらオカリン困っちゃうなーって思って」
まゆり「オカリンにはもう、同じ未来を一緒に歩いて行ける人が居るから……」
まゆり「まゆしぃにはわからない難しい話を楽しそうにできる、とってもかわいい女の子が居るから……」
亞里亞「具体的にはどのような依頼になるのでしょう。ここは黒魔術代行屋ですわ」
まゆり「呪いはダメかなぁ。えっとね、魔法でまゆしぃを救ってほしい……のです」
亞里亞「救う……つまり、魂の救済かしら」
亞里亞「そもそも、あなたはどうしてここへ?」
まゆり「オカリンがね、ここの黒魔術はホンモノだーってずっと言ってたから」ニコニコ
亞里亞(……なんて一途で反吐が出るような愛情ですこと)
[ハモニカ横丁 紅ノ館入口]
まゆり「アリアちゃん、ばいば~い。今度は一緒にお人形さん作ろうね!」ガチャッ
亞里亞「…………」フリフリ
亞里亞(不思議な雰囲気の人……)
日下部『あれが新しい仕事とは泣けてくるな』
亞里亞「あの子はおそらく勘違いしているか、よくわかっていないですわ」
日下部『だが金はもらったし契約は成立した。儀式を実行したのはテメエ自身だろうが』
亞里亞「髪の毛を燃やす手順は省略してしまいました。代わりに緑の人形をもらいましたけれど」
―
まゆり『髪の毛は持ってないけど、オカリンからこの間もらった”う~ぱ”があるのです』スッ
亞里亞『ではそれを触媒としましょう。すべては燃やせないので軽く火あぶりにします』
まゆり『えっ!? で、でも……うん。オカリンに迷惑かけちゃだめだよね……』
―
亞里亞「貴方はどうお考えなんですの?」
日下部『魂の救済だろ? この場合は自死しかねえ』
亞里亞「私にはあの子が自殺をしたいと思っているとは到底思えない……自殺をしようとした私だからわかるのです」
日下部『ほう? たった一度の自殺未遂で断言できるのか?』
亞里亞「まるで何度も自殺をした経験があるような口ぶりですね」
日下部『フフン……』
亞里亞「……契約では呪う相手を殺さないと約束したはずですわ」
日下部『"相手"は殺さねえとは言ったな』
亞里亞「…………」
日下部『悪いがこっちにも事情があるんだ。……テメエの心を奪う人間が居ると困るんだよ』ボソッ
亞里亞(……聞き取れなかった。たまに悪魔の声がよく聞こえない時がある)
亞里亞(この声がいつの日か永遠に聞こえなくなる日が来ると考えるだけで、不安になる)
日下部『それに、こうも考えることができる』
日下部『目に見えない大きな力のせいで呪いが発動してしまった、ってな』
亞里亞「…………」
亞里亞(私は既に人の不幸で収入を得ることへの罪悪感を悪魔に半分ほど肩代わりしてもらっている)
亞里亞(この上さらに呪いの発動さえも誰のせいかわからないのだと考えろと言う)
亞里亞(結局私は、自分が安心したいだけ……)
日下部『前にも言っただろ。死ってのはな、選ばれし者に"与えられる"ものなんだ』
日下部『なんの因果か知らねえが、あの乳のデカいメスガキからは腐った死の臭いがする』
亞里亞「……品の無い下衆な表現ですこと」
日下部『運命とでも言えばいいか? ともかく、これ以上口を出すな。あとは俺の仕事だぜ』
亞里亞「…………」
日下部『……俺が何をしたところで、もう関係ねえのかも知れねえけどよ』ボソッ
シュタッ
亞里亞(……また、聞き取れなかった)
Site13 岡部倫太郎
[池袋 雑司ヶ谷霊園]
岡部「はぁっ、はぁっ……」タッ タッ
岡部「……やはりここに居たか。良かった……」
岡部「まゆり。探したぞ」
まゆり「んー? あー! オカリンだー!」
岡部「全く、心配させるな。急にどうしたんだ?」
まゆり「……えっへへ~。でも、どうしてここがわかったの?」
岡部「お前は俺の人質だからな。人質がどこに居るか、俺は常に把握しているのだ」
まゆり「……あのねオカリン。まゆしぃは、オカリンの人質を――――」
プルルル プルルル
岡部「ん? すまん、俺のケータイだ」
まゆり「あ、ううん。出て出て」
岡部「俺だ」ピッ
岡部「……もしもし?」
『…………』
岡部「おい、誰だ?」
『……俺……じゃ、ねえ……』
岡部「っ!? 貴様は、誰だ!?」ドクン
まゆり「あれ~? まゆしぃのカイちゅ~止まっちゃってる……」
まゆり「――――」
岡部「な……っ!?」
岡部「まゆり……? おい、まゆり……っ」
岡部「―――――まゆりぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!」
END
シュタゲ本編のような展開へ
まゆり『とぅっとぅるー! まゆしぃです☆』
日下部『お、おう』
以上です。レスおよび読了ありがとうございました
原作未完ゆえ設定が間違っているかもしれません
オカンサイドがあまり書けませんでしたが亞里亞と悪魔の関係いいですよね
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1478747480/
Entry ⇒ 2016.11.17 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
紅莉栖「――勘違いすんなぁーっ!!」
岡部「比屋定? 誰だそれは」
紅莉栖「私の先輩よ。脳科研の」
岡部(ヴィクコンか……)
岡部「その比屋定某とやらが、狂気のマッドサイエンティストに心酔したため帰国できなくなった助手を迎えにくる、と?」
紅莉栖「誰も貴様に心酔などしとらんわ」
紅莉栖「先輩、飛行機の関係で、到着はお昼前になるって」
紅莉栖「怒られるでしょうね……。本来やるべき研究をほっぽって、こんなお遊びサークルに入り浸ってるんですもの」
岡部「とか言いながら、嬉々として新たなガジェット制作を始めたツンデレ少女はどこのどいつだ」
紅莉栖「ツンデレ違う! ……確かにここでの生活は、どういうわけか居心地いいけど」ボソッ
紅莉栖「まあでも先輩って、一度決めたら引かないタイプだから、間違いなく私は強制送還される」ハァ
岡部「ククク、この鳳凰院凶真に挑もうとは、いい度胸だ」
紅莉栖「岡部が先輩に勝てるとは思えないけど」
紅莉栖(あの人、舌戦だけは強いのよね)
岡部(まさか、超絶スーパーなムキムキタフガイだったりするのか……?)アセッ
岡部「その先輩とやらは、どんな人物なのだ?」
紅莉栖「えっ? そうねぇ……一途な人、かな」
岡部(い、一途……?)ドクン
紅莉栖「何事にも真摯に向き合って、少しでも疑問があれば、自分で納得するまで諦めない人、って感じかしら」
岡部「ほ、ほう。なるほど、研究熱心ということか」ホッ
紅莉栖「ま、その性格のせいで何度も迫られたわ。衝突したり、喧嘩になったこともあった」
岡部(せまっ!?)ドキドキ
紅莉栖「けど、実験が成功した時は、お互いどちらの研究っていうこともなく、我が事のように喜びあったりした」
紅莉栖「仲直りのコーヒーは、特別な味がしたわ」フフッ
岡部(これは、まさか……いや、やはり……)
岡部「……ずいぶんと仲がよろしいのだな」
紅莉栖「アメリカの研究所で二人っきりの日本人同士だったし、歳も近いから仲良くもなるわよ」
岡部「それは仕方ないな。うむ、仕方のないことだ」
紅莉栖「実験を朝までやって、そのまま二人で寝落ちしちゃうなんてしょっちゅう」
岡部「う、うむ……」
紅莉栖「つかの間の休みの日には一緒に映画を見に行ったり、西海岸のビーチに遊びに行ったこともあったわ」
岡部「デートだと!?」ガタッ
紅莉栖「デート? まあ、デートよね、うん」
岡部「ま、まま、まさか、おうちにお泊りなどということも……!?」プルプル
紅莉栖「ママと先輩は仲が良いわよ」フフッ
岡部「な……な……」
紅莉栖「岡部? どうしたの、そんな地球が滅亡しそうな顔をして」
岡部「……俺だ」スッ
紅莉栖(また例の報告……)ハァ
岡部「ああ、どうやら助手は機関によって偽造記憶を移植されてしまったらしい」
岡部「ボッチにつけこまれたか……なんと卑劣な攻撃なのだ……」
紅莉栖「聞こえてるぞコラ」
紅莉栖「つまり、この私に、仲の良い先輩が居て、正直ビックリしてるんですねわかります」ニヤニヤ
岡部「その『先輩』とは、あなたの想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか?」
紅莉栖「違うと言っとるだろーが! あと3時間もしたらここに来るわよ、私をさらいに」
岡部「う、うむ……」
岡部(まるで映画『卒業』のワンシーン……いやいや、なにを考えているのだ俺は……)
紅莉栖「もしかして岡部、妬いてるの?」
岡部「だっ! ……誰がクリスティーナなんぞにヤキモチなど焼くか」プイッ
紅莉栖「安心しなさい。先輩はあんたの思ってるような人じゃないから」フフッ
岡部(この余裕……いったい、なんだと言うのだ!?)
岡部「おい、ダル! 応答しろ、ダル!」
ダル『なんだよも~。今せっかくメイクイーンでフェイリスたんとのニャンニャンタイムを満喫してるとこなのに~』
岡部「……紅莉栖に男がいた」
ダル『いや、普通いるっしょ。17歳でサイエンス誌に載った天才で、しかもあの見た目っしょ?』
ダル『研究室とかいう閉鎖的な男社会に居て、アメリカの男が放っておくわけがなくね?』
岡部「な……!?」ドクン
岡部「だ、だが、やつはヴァージンなのだぞ!?」
ダル『処女厨大歓喜ィ! つかそれ、オカリン確認したん?』
岡部「いや、我が魔眼で観測したわけではないが……」
ダル『どうせ別の世界線の話なんっしょ? この世界線では違うとかあり得るんとちゃうん?』
ダル『それこそオカリンの勘違いだったりして』
岡部「そんな……バカな……っ」ガクッ
ダル『もしもし? オカリン? オカリーン?』
岡部「…………」
紅莉栖「こんなところに居たか。突然ラボを飛び出して行って、先輩にビビったんですねわかります」
岡部「……俺は鳳凰院凶真。我が野望のためには、多くの人の想いさえも犠牲にする男だ」
紅莉栖「はいはい厨二病乙」
岡部「世界の支配構造を覆すためには、因果律に反逆することさえ躊躇わない……!」
紅莉栖「お、岡部?」
岡部「Dメールを送る。助手、手伝ってくれ」
紅莉栖「えっ?」
紅莉栖「送り先は中2の頃の岡部。内容は【ヴィクコンの 脳科研に入る ために勉強!】……」
岡部「さすれば、今の俺は脳科学研究所所属の人間になるだろう」
紅莉栖「まあどうせ? 岡部が必死こいて勉強したところで簡単に入れる大学じゃないですけど」
紅莉栖「……でも、本当にいいの? このメールを送ったら、少なくとも今のあんたが否定されることになる」
紅莉栖「どの程度かはわからないけれど……なかったことになっちゃうのよ?」
岡部「構わない。というか、今よりもっと勉強していれば、より精度の高い電話レンジ(仮)を開発することも可能だろう」
紅莉栖「……もしかして、私のためだったりする?」
紅莉栖(父に嫌われて世界から否定された、あの頃の私の側に居てくれるってこと……?)
岡部「勘違いするな、クリスティーナ」
岡部「すべては俺の独善だ。俺の目的は、世界を混沌に陥れること」
紅莉栖「ああもう……それでいいわよ」
紅莉栖(なんだかんだで、こいつなりの照れ隠しなのかな……)
紅莉栖(なによ、ちょっと嬉しいじゃない……)
紅莉栖「それじゃ、送るわよ」
岡部「ああ、頼む」
紅莉栖「…………」ピッ
岡部「――――ぐっ!? この目眩はっ!?」グラッ
――――――――――
―――――
岡部「……リーディングシュタイナーが発動したのか」
岡部(ここはどこだ? 屋外のようだが……)キョロキョロ
岡部(夜空に星が瞬いている……。さっきまで朝だったというのに)
岡部(Dメールでは時間移動はできない。ということは、ここは……)
紅莉栖「ちょ、ちょっと岡部? どうしたの急に?」
岡部「紅莉栖……? ここはヴィクコンか?」
紅莉栖「寄宿舎の前だけど……大丈夫?」
岡部「つ、つまり、俺は未来からのメールを受け取り、一生懸命勉強し、飛び級でヴィクコンに入学したのだな!?」
紅莉栖「そんなわけあるか」
岡部「っ、なに?」
紅莉栖「この寄宿舎の一部屋に岡部が一泊できるのは、私の上司である教授のおかげじゃない」
紅莉栖「あんたはヴィクコンの学生じゃなくて、東京電機大学の1年生でしょーが」
岡部「うぇいうぇい! ならば、どうして俺がアメリカに居るのだ!?」
紅莉栖「それはあんたが、いつか入学することになる大学を見学したいー、とか言うから、仕方なく付き合ってあげてるわけだが」
紅莉栖「……あっ、この場合の付き合ってるっていうのは交際してるって意味じゃないからな! 勘違いすんなっ!」
岡部「……テンプレ乙、とだけ言っておこう」
紅莉栖「くっ……」カァァ
岡部「だが、ということは、世界はそんなに変わってはいないのか……」
??「まったく、うるさいわね。今何時だと思ってるのかしら」
紅莉栖「あ、先輩!」
岡部「な、なに!? 紅莉栖の彼氏か!?」クルッ
真帆「か、彼氏? 勘違いも甚だしいわね……」キョトン
岡部「しょ、少女……?」
紅莉栖「先輩はれっきとした成人女性よ」
真帆「今まで中学生に間違われることはあっても、男に間違われたことは無かったのに……」ガックリ
真帆「侮辱罪で訴えてあげるわ」ムスッ
紅莉栖「岡部はホント人に喧嘩を売るのが上手よね。紹介するわ。こちら、比屋定真帆先輩」
岡部「比屋定……"真帆先輩"ッ!?」
真帆「こんな失礼な男とどうして紅莉栖が……」ブツブツ
岡部(ま、まさか、ルカ子の時と同じように、Dメール送信によるバタフライ効果によって、性別を改変してしまったのか!?)ドクン
真帆「初めまして、岡部さん。日本で紅莉栖が世話になってるようで」スッ
岡部「……っ」
真帆「握手もできないの?」ムスッ
岡部「か、勘違いするな。我が右腕に宿りし、あああ悪霊がぁっ……!」プルプル
紅莉栖「ホントにすいません、先輩……」
岡部「き、貴様がその、クリスティーナと仲が良いとかいう先輩とやらか」
真帆「"クリスティーナ"?」
紅莉栖「だぁー! 先輩の前でその呼び方はしないって約束しただろーがぁ!」ウワァン
真帆「……ふぅん。恋人同士のあだ名、ってこと」
紅莉栖「ちょ、先輩!? それは誤解です、弁明させてくださいっ!」
岡部(この比屋定さんに対して、紅莉栖が必死に恋愛関係を否定しようとしている……?)
岡部(まさか、この世界線の紅莉栖は、そっちのケがあるのかぁ!?)
岡部(確かに紅莉栖はコミマでBL本を買いあさっていたこともあったが、まさか百合属性まで持つことになるとは……)
岡部(たとえ比屋定さんの性別が変わったとしても、恋愛感情は変わらなかったということか……!?)
岡部(……冷静になってみれば、俺は紅莉栖にひどいことをしてしまった)
岡部(私欲のために、紅莉栖から比屋定先輩という存在を、遠ざけようとしてしまったんだ)
岡部(認めよう。これは俺の嫉妬であり、自惚れだ)
岡部(世界中の誰よりも、紅莉栖のことを理解しているのだという自惚れ……)
岡部(つまらない意地からくる、勘違いに過ぎなかったのだ)
岡部(紅莉栖は、そんなことを望んでいないというのに……)
岡部「……二人とも、ずいぶん仲が良いのだな」
真帆「それはまあ、色々あったけれど、一緒に乗り越えてきたもの」
紅莉栖「日本人、しかも若い女性……それだけのことで、どれだけ私たちがこの場所で苦労してきたか」
真帆「それに、紅莉栖は私の超えるべき目標でもある」
紅莉栖「先輩?」
真帆「正直に言って、科学者としての素質の面で私は紅莉栖に及ばない」
真帆「だけどね、ううん、だからこそ、私は紅莉栖を尊敬してるし、同時に勝ちたいと思ってる」
紅莉栖「わ、私だってそうです。私がここに来るずっと前から、孤立無援で奮闘してた先輩のこと、尊敬してます」
紅莉栖「先輩が居てくれたことで、どれだけ救われたか……」
真帆「紅莉栖……」
岡部「……ダル。俺だ。ああ、そうだ。至急Dメール送信の準備を」
紅莉栖「ちょっと岡部? 人が話してる時にケータイは――」
岡部「わかっている。残念ながら俺は慎重じゃなかった」
岡部「自分の愚かさが分かっていたなら、未来をこんな形にしてしまうなんてこともなかった」
岡部「それでも、可能性があるならば……試さずにはいられない」
岡部「それがサイエンティストというものだろう?」
真帆「どうしたの、この人?」
紅莉栖「……も、もしかして、Dメールをっ!?」
岡部「紅莉栖、すまなかった」
紅莉栖「ふぇ?」
岡部「また会おうな……」ピッ
【ヴィクコンは 機関の罠だ。 仲間を信じろ】
――――――――――
―――――
[ラボ]
岡部「……リーディグシュタイナー。どうやら、無事ラボに帰還したようだな」
紅莉栖「ど、どうしたの岡部。……また変な電波でも受信したか」
岡部(これですべてのバタフライ効果は取り消せたはず……)
ガチャッ
真帆「ホントにここであってるのかしら……あら、紅莉栖?」
紅莉栖「あ、先輩。遠いところ、お疲れ様です」
岡部「来たか、比屋定……あ、あれ? 少女だ……」
紅莉栖「まあ、岡部が戸惑うのも無理ないか。これでも先輩、成人してるのよ?」
真帆「まあ、それに関しては言われ慣れているから別にいいのだけれど」
岡部(――比屋定真帆は、もとから女だった!?)ガーン
岡部「俺はなんという勘違いを……」ガクッ
真帆「そ、そこまで落ち込まなくていいわよ。どうせ紅莉栖が説明しなかっただけなんでしょうから」
紅莉栖「確かに先輩の容姿については、あんまり言及することができませんでしたけど」
紅莉栖(だって、先輩の容姿の話は禁句だものね……)
岡部「それで、比屋定真帆とやら。紅莉栖を取り返しにきたのだろう?」
紅莉栖「ちょっ、先輩の前に限って名前で呼ぶなぁ……っ」カァァ
真帆「取り返しにってほどじゃないわよ。ただ、紅莉栖がそこまで入れ込んだ場所と人に興味があっただけ」
真帆「もちろん、これから紅莉栖に納得できるような解を出してもらうつもりだけど」チラッ
紅莉栖「うっ……」
紅莉栖「い、一応、このラボの所長の許可をもらおうと思います」
岡部「む?」
真帆「ええ、どうぞ」
紅莉栖「ねえ、岡部……。さっきの話の続きなんだけど」
岡部「さっき、とは?」
紅莉栖「おまっ! ……あんたがさ、私のこと、信じるって言ってくれたこと」
岡部(そんなことを言ったのか、俺……。だが、それは間違いではない)
岡部「ああ、そうだ。俺はお前の意見を尊重する」
岡部「お前がアメリカに帰るべきと判断したなら、そうすればいい。もちろん、その場合でも、お前の居場所は無くならない」
岡部「ラボにはいつでも来たい時に来ればいい。お前は、世界のどこにいようと、ラボメンナンバー004なのだからな」
紅莉栖「うん……」
真帆「なかなか理解のある所長さんじゃない」
真帆「あなたのこと、勘違いしてたわ。人は見かけによらないものね……」
岡部「フッ、見くびってもらっては困るな」
紅莉栖「そうやってすぐ調子に乗らない」
真帆(やっぱり、この二人……)
紅莉栖「こんなの、全然合理的じゃない。それでも、私は……」
紅莉栖「――決めた」
紅莉栖「先輩、ごめんなさい。私、もう少しだけ、ここに残ります」
岡部「な、なにっ!?」
真帆「…………」
紅莉栖「私が研究所に居ないことで発生する損失に対して、責任を持ちます。社会的制裁があるなら、甘んじて受けます」
紅莉栖「なので……あと数日だけでも、ここに居させてください」
真帆「……どうして?」
紅莉栖「私が、居たいからです」
岡部「それでは説明になってないぞ!? いつもの論破厨紅莉栖はどうした!?」
紅莉栖「ろ、論破厨って言うなぁっ!」
真帆「……そう。なるほど、そういうこと……」
真帆「あの紅莉栖に、こんな感情的な結論を出させるなんて。"You are something."」
岡部「ゆ、ゆー……?」
紅莉栖「褒められてるわよ、岡部」
岡部「お、おう?」
真帆「まあ、元々紅莉栖が日本へ来ることは、研究所でずっと缶詰だった時期のストレスを発散するのに良いと思ってたし、そこは問題ないわ」
紅莉栖「あ、ありがとうございますっ!」ペコリ
真帆「でも、帰ってきたら覚悟しておきなさい? 論文の講演会やら人工知能研究やらで、とっても忙しくなるわよ?」
紅莉栖「……は、はいっ」
真帆「岡部さん。紅莉栖を頼んだわよ」
岡部「……ああ、任せろ」
・・・
岡部「それで、比屋定さんは『私が居たらお邪魔よね』などと言い捨てて早々に帰ってしまったわけだが……」
紅莉栖「先輩、絶対勘違いしてる……うぅ……」モジモジ
岡部「なあ、紅莉栖――」
紅莉栖「そ、それ以上言うなぁっ!」ジタバタ
岡部「まだ何も言ってないわけだが……」
紅莉栖「べ、別に私は、あんたがどーしても一緒に居て欲しいって言うから、しかたなーく残ってあげただけなんだからなっ!?」
岡部「……テンプレ乙」
紅莉栖「ぐっ……」カァァ
岡部「ホントに良かったのか? あの比屋定さんだって、お前にとっては大切な人だろう?」
紅莉栖「そりゃ……当然よ。仕事仲間としても、人生の先輩としても大切な人なのは間違いない」
紅莉栖「だけど、別にこれは、アメリカと日本を、脳科研とラボを、先輩と岡部を選択するっていう話じゃない」
紅莉栖「どちらかひとつを選ぶことかできないなんて、そんなの、残酷すぎる」
岡部「……そうだな」
紅莉栖「あんただってきっとそんなことになったら、どっちも選ぶっていう選択をするんでしょ?」
紅莉栖「それがシュタインズ・ゲートの選択だぁー! ふぅーはははぁ! とかなんとか言っちゃってさ」ドヤッ
紅莉栖「…………」カァァ
岡部「……言ってから照れるな。こっちまで恥ずかしくなる」
岡部「比屋定さんに頼まれたからには、ラボの所長として、しっかり助手の面倒を見てやらんとなぁ」ククク
紅莉栖「どっちかというと逆でしょーが。ってゆーか、助手って言うな」
紅莉栖「まあ、これで作りかけだったガジェット制作も継続できるわね。やっぱり完成させておかないと、なんだか心残りになっちゃうもの」
岡部「そう言えば、紅莉栖はどんな未来ガジェットを作っているのだ? 見た目はヘッドギアだが……」
紅莉栖「名前をつけるとしたら、【勘違いチェッカー】ってところかしら」
紅莉栖「人間の会話を認識するAIを搭載して、伝達情報の送信側と受信側の思考アルゴリズムに80%以上の齟齬が発生した場合にアラームが鳴る、っていうもの」
岡部「ほう、これは金になりそうだな! フゥーハハハ! さっそく試してみようではないかっ!」スチャ
紅莉栖「ラボの運営費のために開発したわけじゃないが……岡部が楽しそうならいっか」フフッ
紅莉栖「まっ、常に論理的な会話をしてる私に情報伝達の齟齬が発生するなんて有り得ないんだけどね」スチャ
ガチャッ
まゆり「トゥットゥルー! クリスちゃんクリスちゃん、ダルくんに聞いたんだけど、アメリカに帰っちゃうって本当!?」ヒシッ
紅莉栖「ハロー、まゆり。それについては延期させてもらったわ。どこかの誰かさんが寂しがっちゃうからね」
岡部「む? まゆりのことか?」
ビー!ビー!
岡部「なんだ? アラームが?」
紅莉栖「……ってことは、本当に誰かわかってなかったのか」ハァ
まゆり「まゆしぃはとってもさみしいよー。でも、延期してくれたってことは、ちゃんとお別れ会ができるねっ!」
紅莉栖「お別れ会って、幼稚園じゃないんだから……でも、サンクス」フフッ
岡部「紅莉栖は消えてなくなるわけではない。時差はあるだろうが、この情報化社会ではすぐ連絡が取れるぞ」
紅莉栖「それに、アメリカに帰ってからも、日本にはちょくちょく戻ってくるつもりだから」
まゆり「ホント!? よかったー、それならさみしくないね」ニコニコ
紅莉栖「べ、別に岡部に会いたいから日本に来るわけじゃないからな!」
ビー!ビー!
まゆり「えっと……?」
岡部「誰も俺の話などしてなかろう、助手よ……」
紅莉栖「なぁっ……」カァァ
紅莉栖「い、いや、わかってるわよ!? 岡部と離れ離れになっても、全然さみしくないものね!」
ビー!ビー!
紅莉栖「あと数日で岡部のもとを離れなきゃいけないからって、さみしかったりなんかしない!」
ビー!ビー!
紅莉栖「ずっと岡部のそばに居られたらなんて、全くこれっぽっちも思ってないっ!」
ビー!ビー!
紅莉栖「岡部が居なくたって、ぜんっぜんさみしくなんかないからぁーっ!」
ビー!ビー!
まゆり「……ねえ、オカリン。これってウソ発見器さん? もしかしてオラオラ?」
岡部「いや、助手は墓穴を地球の裏側まで掘ろうとしているだけだ」
天王寺「こら岡部ぇ! うるさくしてると家賃上げるぞ!!」
岡部「ミスターブラウン!? おい、紅莉栖! お前の気持ちは充分わかったから、静かにしてくれぇっ!」
紅莉栖「――勘違いすんなぁーっ!!」
ビー!ビー!
おわり
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469022716/
Entry ⇒ 2016.07.23 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (1)
鈴羽「そして『あたし』は生まれ変わる」
鈴羽「あたしは橋田鈴。今日で55歳になる」
ダル「えっと……僕の娘、ってことでFA?」
鈴羽「そうだよ、父さん」
まゆり「どうしてまゆしぃのこと、まゆねえさんって呼ぶのかなー」
鈴羽「まゆねえさんはまゆねえさんだよ」
紅莉栖「私はあなたの孫弟子、なんですか?」
鈴羽「物理学に関してはそうじゃないかな」
るか「うちの神社にPCの奉納を依頼された……」
鈴羽「一応ね。秋葉幸高にIBN5100の奉納を代行してもらった」
萌郁「だから……私と岡部くんが神社にIBN5100を探しに……」
鈴羽「そういうこと」
フェイリス「ママがずっと海外で看病してたニャ……?」
鈴羽「秋葉ちかねさんには頭が上がらないよ」
岡部「まさか、ラボの元オーナーだったなんてな」
鈴羽「42型ブラウン管テレビを確保したのもあたし」
鈴羽「それじゃ、ラボメンのみんな―――」
鈴羽「―――あたしに、君たちのシュタインズ・ゲートを紹介してほしいな」
―――――
―――
―
※橋田鈴さんがしゃべるだけ
シュタゲゼロ・β外伝のネタバレ有りやで
鈴羽誕生日おめでとう
カツン カツン
鈴羽「……戻ってきたんだね、あたし」
鈴羽「あの時はこんな階段なんてなんでも無かったけど、杖をつきながらじゃキツイな」
鈴羽「35年は長かったようで短かった気がするよ」
鈴羽「自分で下準備したってのに、なんだか変な気分」
鈴羽「未来に置いて来た忘れ物、受け取りに来たよ」
鈴羽「ここも変わってないなぁ、って。あたし、思ってもいいんだ」
鈴羽「あたしの人生に、意味はあったのかな……」
鈴羽「さて、ちょっと盗み聞きでもしよっと」
D 1.048596% シュタインズ・ゲート
2010.09.27 (Mon) 17:34
未来ガジェット研究所
岡部「緊急招集への応対、ラボメンとして実に素晴らしい働きだ」
岡部「俺もこのラボの創設者として鼻が高いぞ、うむ」
岡部「今日皆に集まってもらったのは他でもない」
岡部「第1回ラボメン歓迎パーティー(※まゆり命名)を開催するためであるッ!」
まゆり「わー」パチパチ
フェイリス「凶真、呼んでくれてありがとニャン♪」
るか「本日は、お招きいただき、ありがとうございます。おか……きょ、凶真さん!」
萌郁「…………」ピッピッピッ
ダル「一気にラボが賑やかになった件。さっすがオカリン、僕にできないことを(ry」
岡部「まゆり。ラボメンの現在状況について報告してくれ」
まゆり「りょーかいなのです!」
まゆり「えっとねー、オカリンがこのラボの創設者で、001なんだよー」
岡部「ッ、鳳凰院凶真だと言っとるだろーが!」
まゆり「オカリンのほうがかわいいのにー」
まゆり「それでね、次にラボメンになったのはまゆしぃなのです!」
岡部「コスプレ作りが趣味の不思議系少女、椎名まゆりこそラボメンナンバー002である」
まゆり「まゆしぃはね、オカリンの人質なんだよー♪」
岡部「……やめろ貴様ら。変な目で俺を見るな。この件については後で説明する」
まゆり「それからねー、スーパーハカー? ラボメンナンバー003の、ダルくんだよー」
ダル「だからハカーじゃなくてハッカーだろJK、ここテン~」
岡部「以上が従来のラボのメンバーだ。そうだな?」
まゆり「それからそれから~、ラボメンナンバー005は、1階のブラウン管工房でアルバイトをしている、萌郁さんなのです!」
萌郁「……桐生萌郁。よろしく」
まゆり「次は006、であってる?」
岡部「うむ」
まゆり「よかったー。えっとね、ラボメンナンバー006は、なんとまゆしぃのお友達、るかくんなのです!」
るか「ど、どうも。まゆりちゃんの友達の、漆原るかです」
岡部「だが男だ」
まゆり「最後にね、ラボメンナンバー007は、まゆしぃのバイト先のお友達の、フェリスちゃんでーす!」
フェイリス「マユシィはフェイリスの事を"フェリス"、って可愛く呼んでくれるけど、本当の名前はフェイリス・ニャンニャンなのニャ♪」
岡部「本名は秋葉留未穂だがな」フゥーン
ダル「あー! あー! 聞こえなーい! フェイリスたんはフェイリスたんだおー!」
るか「で、でも、おか、凶真さん。そうなると、このラボメンバッジの4番目の方と8番目の方は……?」
岡部「ルカ子よ、良い質問だ」
ダル「オカリン、004は永久欠番って言ってなかったっけ?」
岡部「それも今日までの話」
岡部「4番目のイニシャルはM。これが意味するところは……」
岡部「……牧瀬紅莉栖ッ! 今日からお前を、ラボメンナンバー004に任命するッ!!」
紅莉栖「ふぇっ!? わ、私!?」
岡部「貴様の襟元に鈍く輝くそのバッジはなんなのだ」
まゆり「ラボメンがいっぱいでうれしいなー、えへへー」
紅莉栖「でっ、でも、私、つい昨日鳳凰院さん……じゃなかった、岡部さんと知り合えたばかりだし……」
紅莉栖「そりゃ、一応私たちは7月28日に出会ってはいるけれど……」
紅莉栖「……ホントに私をこのラボのメンバーに入れてくれるの?」
岡部「そんなに不安ならば、貴様には正式なラボメンとして認めるための試験を課してやろう。覚悟しておくのだなッ!」
ダル「まあ、ラボっつっても牧瀬氏が本場で経験してきた研究所とはかなり毛色が違うと思われ」
フェイリス「クーニャンも気軽に遊びにくればいいのニャ♪」
紅莉栖「く、クーニャンですか……」
まゆり「でもでも、すごいねーオカリン! どうしてラボメンナンバー004さんのイニシャルがMだってわかったのー?」
ダル「前に話してた、世界線がどうの、って話?」
岡部「フッ、この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真にかかれば簡単なこと」
岡部「幾多の世界を超え、可能性という禁断の果実を手にした俺だからこそできる選択……!! それがッ!! シュタ」
萌郁「この、008の……A、って、誰……」
岡部「って、いいところで口を挟むんじゃない、閃光の指圧師<シャイニング・フィンガー>よ!」
萌郁「しゃい……?」
紅莉栖「その、008の方も永久欠番なんですか?」
岡部「いや、違う。間違っているぞ、クリスティーナ」
紅莉栖「今度は"クリスティーナ"……はぁ」
岡部「ラボメンナンバー008は、7年後に現れる」
岡部「心して覚えておくように」
大檜山ビル2階 扉前
鈴羽「『ラボメンナンバー008は7年後に現れる』、か。そりゃ、そうなんだけどさ」
鈴羽「……ってことは、あたしはラボメンじゃない、ってことなのかな」
鈴羽「そんなの、嫌だな……」
鈴羽「……なんてね。008はそっちの鈴羽のためにあるものだよね」
鈴羽「あたしはあたしで、あたしらしくいこう」
鈴羽「(この扉の先には、一体どんな世界が広がっているんだろう……)」ドキドキ
鈴羽「あはは、年甲斐も無く緊張しちゃってるね」
鈴羽「……ええい、行っちゃえ!」
ガチャ
未来ガジェット研究所
鈴羽「お邪魔するよー。相変わらず埃っぽい部屋だねー」
紅莉栖「あ、どうもお邪魔してます。えっと、この研究所の主任研究員の方、ですか?」
鈴羽「ふっふっふ、白衣が似合ってるだろう? 牧瀬紅莉栖」
紅莉栖「どうして私の名前を……って、論文を読んでいただいたんですね。ありがとうございます」
岡部「ん? 誰です、ご婦人。勝手にラボの敷居を跨がないでいただきたい」
岡部「(松葉杖? それにこの声、この見た目、この雰囲気、どこかで……)」
紅莉栖「えっ、この人、ラボの関係者じゃないの?」
ダル「いや知らんし」
まゆり「えっと……はじめまして?」
鈴羽「ま、35年ぶりだから、仕方ないか」ポリポリ
岡部「(35年……?)」
紅莉栖「ちょ、ちょっと待って。35年ぶりって、それじゃ、ここにいる誰もが生まれてませんよ?」
鈴羽「それがそうじゃないんだよ。噂に違わず、君は頭でっかちだね」
紅莉栖「は、はぁ!?」
鈴羽「それで、岡部倫太郎。ここが一体どこか。君ならわかるはずだよ」
岡部「……御仁。まさかとは思うが、認知症か何か……」
鈴羽「失礼だな、君は。ま、相変わらずか」
鈴羽「どこかって聞いてるんだよ。この世界線が、どこなのか」
岡部「せ、かい……? なッ!?」
岡部「ま、まさか……お前は……」
岡部「そ、そんな……どうして……!?」
岡部「ここはシュタインズ・ゲートではなかったのか!?」
岡部「なぜだ!? どうして貴様がここに居る!?」
鈴羽「…………」
岡部「……阿万音鈴羽ッ!!!」
ダル「あ、阿万音? 誰ぞ?」
るか「あの、あまり大きい声を出すのは……」
鈴羽「もう1度聞きたい。岡部倫太郎」
鈴羽「君は、ここが"シュタインズ・ゲート"だと確信を持っているんだね?」
岡部「あ、当たり前だ!! 紅莉栖は生きているし、中鉢論文も葬った!!」
岡部「第3次世界大戦は起こらない!!」
鈴羽「そうか……」
萌郁「第3次……?」
ダル「あー、気にしなくていいお。いつもの発作みたいなやつだから」
フェイリス「んー、でも今回のは何か違うような気がするニャ」
岡部「お前、まさか2036年からタイムトラベルしたのか……!? 1975年へと!!」
岡部「答えろッ!! 答えろ鈴羽ッ!!」
岡部「お前が言ったんだぞ! 紅莉栖を救えば、シュタインズ・ゲートへ行けると!」
岡部「どうして……どうしてお前は俺の前にまた現れたんだ!!」
紅莉栖「ちょっと、どうしたんですか岡部さん!」
るか「落ち着いてください!」グスッ
鈴羽「……君が興奮するのももっともだ。やっぱりあたしはこの世界線に存在しないほうがよかったかな」
岡部「ッ!?」
まゆり「……ねぇオカリン? この人、つらそうな顔してるよ? お話、聞いてあげよう?」
岡部「……すまない、取り乱してしまった」
まゆり「そんな時はねー、はい! ドクペだよー」
岡部「あぁ、悪いな。まゆり」
ダル「やれやれなのだぜ、オカリン。どう見たって訳ありって感じじゃん」
萌郁「それで……あなたは……」
鈴羽「自己紹介が遅れたね。あたしは確かに"阿万音鈴羽"って名乗ってたんだけど……」
鈴羽「もう別名義のほうが長くなっちゃった。今はこっちに愛着を持ってる」
鈴羽「改めて言うよ。あたしは、橋田鈴。大檜山ビルの元オーナーであり……」
鈴羽「未来人、ジョン・タイターだよ」
ダル「ナ、ナンダッテー!? あの、2000年に米掲示板に出たっていう……!?」
紅莉栖「う、嘘でしょ? タイターとか釣り乙……」
まゆり「外国人さんなのかなー?」
岡部「鈴羽。順を追って説明してほしい」
岡部「ここはシュタインズ・ゲートで間違いないんだよな?」
ダル「またその話かおオカリン。もう耳にタコができるほど聞いたわけだが」
鈴羽「『1.048596』。それが未来のオカリンおじさんと父さんが弾き出した希望の数字だった」
鈴羽「あたしの35年間の体験と、君の確信――ここに牧瀬紅莉栖と椎名まゆりが居る事実――が合わされば」
鈴羽「……ここは、シュタインズ・ゲートだよ」
岡部「……そうか」
まゆり「"オカリンおじさん"???」
ダル「どう見てもオカリンより年上の女性におじさん扱いされるオカリンかわいそす」
鈴羽「いや、あたしが言った"オカリンおじさん"ってのは、また別の人なんだ」
まゆり「えっ、オカリン以外にも"オカリン"っていう名前の人がいるの?」
鈴羽「うーん、まあそういうもんだと思っていてくれればいいよ」
岡部「それで、鈴羽。お前はどのようにしてこの世界線に辿り着いたのだ」
鈴羽「そうだね。ここを話さないと、ゆっくりおしゃべりもできないみたいだから」
鈴羽「……少し長い話になるけど、いいかな」
紅莉栖「それってもしかしなくても、岡部さんが言ってた、"タイムトラベル"に関係することですか?」
鈴羽「そうだよ、タイムマシンを利用した物理的タイムトラベル」
鈴羽「質問したいことはたくさんあるだろうけど、とりあえず聞いて」
鈴羽「―――あたしはね、人類初のタイムトラベラー、阿万音鈴羽だったんだ」
・・・
あたしが生まれたのはβ世界線上の2017年9月27日。こことは違う世界。
物心ついた頃から研究に勤しむ父さんの背中を見ていた。
2025年、あたしが7歳の時、オカリンおじさんが死んだ。
まゆねえさんを強盗からかばったらしい。
丁度その頃から第3次世界大戦が本格化し始めて、日本中で空襲があった。
2030年4月、あたしが12歳の時、国民皆兵制度が施行されて、あたしは政府軍に入軍した。
けどまあ、父さんたちの組織"ワルキューレ"が反政府組織と見なされるようになって、あたしは軍を抜けたんだ。
ワルキューレは過去を改変することで第3次世界大戦を回避しようとしていた。
ううん、正しくは、第3次世界大戦が起きない世界に再構築しようとしていた。
もちろんあたしは父さんたちに賛同した。
2036年8月、父さんが完成させたC204型に乗って、使命を託されたあたしは1975年へ飛び立った。
―――まゆねえさんの娘、椎名かがりを連れて。
1975年に到着したあたしは、まずIBN5100を入手した。
内蔵された独自のプログラミング言語を利用して、2000年問題を根本的に解決する必要があったからね。
これが第3次世界大戦を回避するのに必要な行為だったんだ。
その後、1975年から1998年へと移動したんだけど、椎名かがりの手によってIBN5100は破壊され、2000年問題解決は失敗した。
同時に椎名かがりとはぐれることになってしまった。
それから数か月単位の小さな移動を繰り返して椎名かがりを探したけど、結局見つからなかったよ。
燃料がギリギリになっちゃって、仕方なく2010年8月21日の夕方に跳んだ。
それがあたしのメインミッションだったからね。
ここからは聞いてる人も居るんじゃないかな……
あたしは岡部倫太郎をタイムマシンに乗せて、同年7月28日へと跳んだ。
牧瀬紅莉栖を救うために。
8月21日に戻ってきたあたしは、岡部倫太郎を2度目の救出へと連れ出すことに失敗した。
岡部倫太郎は諦めてしまったんだ。牧瀬紅莉栖を救うことを。
それから1年間、あたしはラボで生活した。おじさんの気持ちが変わることを信じて。
だけど……結局、1年待ってもおじさんは跳ばなかった。
2011年7月7日、あたしはまゆねえさん―――その世界線の17歳のまゆねえさん―――を連れて2010年8月21日へと跳んだ。
タイムマシンが消失していたはずの、1分間へと向かって。
まゆねえさんは、自分のケータイからおじさんのケータイに電話をかけて、過去の自分と対話した。
それによって、たぶん、世界線は変わったと思う。
だけど、C204くんの燃料もバッテリーも限界だった。
マシンはすぐに悲鳴を上げて、レーダーをロストしたフライトを開始することになった。
どこに漂着するかなんてわからなかった。未来か、過去か。それもどこの世界線か。
マシンは不時着した。
もう言わなくてもわかると思うけど、そこはマシンの初期設定年、1975年だったんだ。
不時着と同時にマシンが誤作動を起こしたから、あたしは咄嗟に量子コンピュータだけ外して、まゆねえさんと2人で避難した。
それからすぐ、また爆発音がした。ビックリしたよ。
あたしたちが2011年まで居た世界線の、2025年時点のオカリンおじさんがそこに現れたんだ。
おじさんはあたしとまゆねえさんが1年前へ跳んだ後、14年かけて研究に打ち込んだ。
タイムリープマシンが存在してるから、おじさんが研究に打ち込んだ時間はもっと長いと思うけど。
その結果、2025年にC193型っていうタイムマシンと、タイムマシン追跡装置、いわゆるトレーサーを開発したらしい。
これがすごいシロモノでね、世界線を自在に行き来できるんだ。
正確に言えば、カー・ブラックホールの"痕跡"をトレースする装置。
それによって先行するマシンの到着世界線および時刻を割り出し、追跡することができる。
もちろん、自分自身の移動も追跡することができるから、元居た世界線に戻ることもできる。
ともかく、オカリンおじさんが助けに来てくれた。
2人乗りのタイムマシンに乗って。
おじさんは当然のようにあたしとまゆねえさんをC193型に乗せて、元居た世界線へと送り返そうとした。
だけど、あたしは思い出した。
あたしが7歳の時、おじさんはまゆねえさんをかばって死んだらしい。
結局、あたしの記憶の中のオカリンおじさんも同じことをするんだって思い当たった。
だったら、ここであたしがC193型に乗ったらタイムパラドックスが起こるんじゃないか、って思った。
よくよく考えたらこれは祖父殺しのパラドックスみたいなものだから、世界線理論ではパラドックスは起きないんだけど。
でも、結果的にはあたしの判断が正しかった。
たぶん、あたしが1975年から生活することはシュタインズ・ゲート世界線が成立する以前の収束だったんだ。
だから結局、オカリンおじさんとまゆねえさんの2人をあたしが無理やりC193型に乗せて送り返すことになった。
相当抵抗されたけどね。
これはあたしの希望でもあったし、たぶん世界もそう望んでた。
C193型が飛び立った直後、C204くんは消滅したよ。
事象の地平線<イベント・ホライズン>へと跳んでったのかな。
緊張が解けたからか、あたしは意識を失って倒れた。
目を覚ますと、あたしは独りぼっちになってた。
やることはいくつかあった。
1つ目は、1度失敗してしまった2000年問題の処理を遂行すること。
仮にここがシュタインズ・ゲートなら間違いなく成功できるって確信したよ。
だけどそのためには、IBN5100を入手した上で量子コンピュータを起動できるレベルの電源を確保しなければならなかった。
2つ目は、2000年11月から2001年3月にかけて、アメリカの大手ネット掲示板でジョン・タイターとして君臨すること。
これをしないと牧瀬章一はタイムマシン発明記者会見、という名のパクリ論文発表を2010年7月28日にラジ館で開催しない。
それに、α世界線へと旅立つオカリンおじさんにとって必要な知識があるはずだから。
あたしはまず上野に行って"橋田鈴"という身分を入手した。
その後、未来の知識を動員して金を稼いで、コネを作って……まあ、色々やったよ。
余った金で大檜山ビルのオーナーになったりね。
2年後には東京電機大学に入学できた。
ここで研究職に就くことによって、怪しまれずに大電源を使い放題できる環境を手に入れられると思ったんだ。
結果はうまく行った。
1998年、あたしは2000年問題をIBN5100と量子コンピュータを使って解決した。
これで、第3次世界大戦の火種を消火できた、ってわけさ。
だけど、この頃になるとあたしは体調が悪くなった。
医者に行っても原因不明。たぶん、ブラックホールを通過した後遺症が現れたんだと思う。
特異点が真空を分極してしまって、高フラックスの放射線が発生してたのかもしれない。
あたしの身体は大量の放射線を浴びていた上に、体内が徐々にフラクタル化し始めていた。
そこに教え子の秋葉幸高が救いの手を差し伸べてくれたんだ。
アメリカでなら、現代医学の最先端でなら、あたしの延命が実現するかもしれないって。
望みは薄かった。
子どもの頃にオカリンおじさんから聞いた話だと、α世界線のあたしは2000年に自殺や病死をしていたらしいからね。
でも、ここがシュタインズ・ゲートなら―――
あたしは可能性にかけたのさ。2010年まで生き残れる可能性に。
君たちと再会できる未来を信じたんだ。
施設からなんとかタイターの書き込みができた。当時にしては環境の整った施設だったよ。
12年間、寝たきり状態だった。死線をさまよったこともあった。
そして今年の8月21日、突然体が回復したんだ。
まあ、1か月はデータ採取のための検査入院をさせられたけど。
岡部「……なるほど。それで今日日本に帰ってきた、と」
鈴羽「どうしてあたしがシュタインズ・ゲートに飛ばされたのかはわからない」
鈴羽「運命のいたずらか、必然か」
岡部「(俺がシュタインズ・ゲートに到達した時、同乗者の鈴羽とマシンは世界に再構成され、消滅した)」
岡部「(それは、シュタインズ・ゲートがβ世界線上の未来の因果を受け入れなかったからだ)」
岡部「(一方、紅莉栖救出と中鉢論文焼失自体はこの俺がβ世界線の過去において巧みに構築した因果だ)」
岡部「(この2点だけは、β世界線の過去で実行したことがシュタインズ・ゲートへとそのまま反映されている)」
岡部「(ある意味、論文焼失直後、世界線はシュタインズ・ゲートへと分岐したとも言える)」
岡部「(しかし、仮に、他にもシュタインズ・ゲートへと至るために必要な過去改変があったとすれば)」
岡部「(それが、この鈴羽が1975年に不時着することだとしたら……)」
鈴羽「まあ、理屈なんてどうでもいいんだ」
鈴羽「35年間このことばかり考えていたけど、確定的な結論は出なかったしね」
岡部「……ここがシュタインズ・ゲートだと言うなら、俺が気張る必要もないのか」
岡部「ならば、改めてラボメンとして歓迎しよう。ラボメンナンバー008、阿万音鈴羽」
岡部「よくぞ我がラボへ舞い戻った……ここまでの道のりはさぞつらかっただろう」
鈴羽「……ありがとう、オカリンおじさん」
鈴羽「でも、気持ちだけ受け取っとくよ」
岡部「なに?」
鈴羽「その008、イニシャルAは、確かに"阿万音鈴羽"――あるいは"橋田鈴羽"かな――のものだけど、それは"あたし"じゃない」
鈴羽「その称号は、この世界線上の2017年に生まれてくる"あたし"に授与してあげて欲しい」
岡部「……お前がそう言うのならば、いいだろう」
鈴羽「だからこのあたしは、近所のおばさん、ってことでラボに参加させてよ」
岡部「結局ラボには入るんだな。無論、大歓迎だ」
紅莉栖「客員研究員、ってことですか」
鈴羽「そんな大それたものじゃなくてもいいけどさ」
岡部「ちゃんと白衣を着てくるあたりの気概が認められるからな」
岡部「ガジェット開発には率先して起用してやろう」
鈴羽「あはは、嬉しいこと言ってくれるじゃん」
紅莉栖「(私もここでは白衣を着ようかな……)」
るか「ホントに未来人なんですね、橋田鈴さん……」
萌郁「SF……」
まゆり「うーん、まゆしぃには難しくてよくわからないのです」
紅莉栖「あ、あの、橋田教授?」
鈴羽「なんだい、牧瀬紅莉栖」
紅莉栖「色々質問したいことがあるのですが、聞いても?」
鈴羽「ああ、もちろん。なんでも聞いてよ」
フェイリス「フェイリスも気になったことがあったニャ」
鈴羽「未来のオカリンおじさんの恥ずかしい話も色々あるよ」ニヤリ
フェイリス「ニャニャ! ぜひ披露してほしいニャン!」
岡部「ま、待てィ!」
紅莉栖「どうしてパ……いえ、牧瀬章一のことをご存じなんですか?」
フェイリス「フェイリスも不思議だったニャ。ニャんでフェイリスのパパが阿万音さんを助けたニャ?」
鈴羽「(……さすがにこのナリじゃ、"スズニャン"とは呼んでくれないか)」
鈴羽「牧瀬章一と秋葉幸高はね、あたしのゼミのゼミ生だったのさ」
鈴羽「もう教授職は辞めて長いけどね」
紅莉栖「えっ……!?」
フェイリス「ニャ……!?」
鈴羽「実はこの世界線の君たち2人に会うのは久しぶり、12年ぶりくらいになるのかな」
鈴羽「君たちが小さい頃に会ってるんだよ、あたしと君たちは」
紅莉栖「……あっ、パパが昔言ってた、あの教授」
フェイリス「パパのカセットテープに入ってた声の人……」
鈴羽「随分大きくなったね、お嬢さんたち」
紅莉栖「え、ちょっと待って。ってことは、フェイリスさんって、まさか、留未穂ちゃん?」
フェイリス「……あーっ!!!」
フェイリス「クリスちゃんだ! パパのお葬式の時以来だね!」
紅莉栖「……思い出した! 私、あの時あなたを励まそうと、あなたと同じ髪型にして……」
フェイリス「あんなに嫌がってたのにね……ふふっ、また会えて嬉しいよ、クリスちゃん!」ダキッ
紅莉栖「ちょ、ちょっと! 抱き着かないでよ! ただでさえ暑いのに……」
フェイリス「感動の再会だニャー!」
紅莉栖「猫モードに戻ってるし……はぁ」
ダル「幼馴染属性からの百合展開ktkr!!!!!!!!」ガタッ
紅莉栖「橋田さんは座っててください」
鈴羽「あたしも橋田なんだけど」
紅莉栖「あっ……えと……HENTAI、座ってろ」
ダル「いいよぉ……もっと罵ってくれてOKだよぉ……はぁはぁ」
まゆり「ほぇー、フェリスちゃんとクリスちゃんは幼馴染さんだったの?」
岡部「そういうことになるらしいな」
るか「なんだか素敵ですね」
鈴羽「あたしは、牧瀬紅莉栖に謝らなくちゃならない」
紅莉栖「えっ……と……?」
鈴羽「君の父、牧瀬章一があんな風になってしまったのは、結局あたしのせいだった」
鈴羽「あたしは前もって牧瀬章一がそういう蛮行に出ることを知ってたからね」
鈴羽「学生時代の彼と出会った時はギョッとしたものさ」
鈴羽「あたしは彼を避けるようになった。だけど、それが原因でしつこく付きまとわれてしまって……」
鈴羽「あたしのタイムマシン研究のノートを盗み見られたことが決定的だった」
鈴羽「結局根負けして、秋葉幸高も入れて3人でタイムマシン研究をやることになった」
鈴羽「もちろん本腰は入れなかった。牧瀬章一とは距離を取らなきゃ、って思ったからね」
鈴羽「だけど、それが裏目に出た」
鈴羽「彼は自分の才能を誰にも認めてもらえないコンプレックスを抱えたままに……」
鈴羽「誰もが自分を科学的に否定することのできない領域に引きこもってしまったのさ」
鈴羽「まあ、その虚構の牙城も稀代の天才少女によって打ち砕かれることになったわけだけどね」
紅莉栖「パパ……」
岡部「(それは鈴羽のせいではない)」
岡部「(今頃中鉢博士はロシアの冷たい監獄の中で日本警察への身柄引き渡しを待っていることだろう)」
岡部「(中鉢に同情はしない。しないが……)」
岡部「(章一氏もまた運命に踊らされた1人だった。シュタインズ・ゲートへと至るために必要なことだったのだ……)」
岡部「紅莉栖、お前と共に青森へ行く約束を守れなかった。すまないな」
紅莉栖「えっと……それも別世界線の話?」
岡部「俺は、お前の父親を救うことはできなかった」
紅莉栖「ううん、いいの……」
鈴羽「オカリンおじさん……いや、岡部倫太郎。まだこの先、牧瀬紅莉栖の身に何が起こるかわからない」
鈴羽「しっかりと守ってやりなよ」
岡部「フッ、知れたことを。ラボメンを守るのはこの俺の役目、何をためらうことがあろうか」
紅莉栖「……///」
鈴羽「それでこそ岡部倫太郎だ」
フェイリス「フェイリスのパパが阿万音さんをアメリカの病院に連れてったのはホントかニャ?」
鈴羽「ああ、そうだよ。ルミねえさん」
フェイリス「る、"ルミねえさん"!?」
鈴羽「あたしが子どもの頃はそう呼んでたんだ」
フェイリス「えっと、阿万音さん……橋田さん? できれば"ルミ"も"ねえさん"もやめていただきたいのですが……」
岡部「(トーンがガチだな)」
鈴羽「あはは、わかったよフェイリス。どうも君たちと話していると自分の年齢を忘れてしまうね」
鈴羽「ちなみにあたしのことは橋田でも阿万音でもどっちでもいいよ。呼びやすいほうで」
フェイリス「助かるニャン♪」
鈴羽「……でも、あたしがアメリカに行った2年後には、秋葉幸高は飛行機事故で先に逝ってしまったけどね」
フェイリス「ニャ……」
鈴羽「それからは秋葉幸高の奥さん、秋葉ちかねさんの面倒になった」
鈴羽「君の母さんが半年に1度しか日本に戻ってこれない理由の半分は、あたしのせいだったんだ」
フェイリス「ニャニャ!? 初耳のオンパレードだニャァ……」
るか「そう言えばお話を聞いて思い出しましたけど……」
るか「今から9年前に執事さんと一緒に神社にパソコンを奉納しに来た女の子は、フェイリスさんだったんですね」
フェイリス「そうニャ。あれはパパの遺言だったんだニャ」
鈴羽「秋葉幸高には頭が上がらないよ……」
鈴羽「そう言えば、あたしも柳林神社にはお世話になったよ。一時期、地主の真似事をしてたからね」
鈴羽「地鎮祭や地域振興企画の時はよく漆原栄輔に助けてもらった」
るか「え、栄輔って、ぼくのお父さん……!」
鈴羽「奥さんが妊娠してる時、奥さんに肉を食べるよう勧めておいたよ。それでよかったんだよね、オカリンおじさん」
岡部「α世界線の話か。まあ、そこまでする必要はなかったと思うが」
るか「ぼくがお母さんのお腹に居る頃からお世話になってたんですね」
鈴羽「まあ、そういうことになるのかな」
萌郁「それで……私と岡部くんが、8月1日にIBN5100を探し回った……」
岡部「(どういうわけか、このシュタインズ・ゲートではそういうことになっていた)」
岡部「(やはり萌郁はラウンダーなのだろう)」
岡部「(編プロを7月に辞めていた萌郁にとってIBN5100を捜索する動機はそれしかない)」
岡部「(その後のIBN5100の行方は不明だ。ラボでクラッキングの為に使用したのか、その後解体したのか、はたまた萌郁がラウンダーへと引き渡したか)」
鈴羽「岡部倫太郎、ちょっと耳を貸して」
岡部「なんだ?」
鈴羽「実はあたし、1998年にSERNをハッキングしたんだ。IBN5100を使って」
岡部「……2000年問題を解消するついで、ということか」
鈴羽「そう。父さん自作の量子コンピュータの前にはザルもいいところだったよ」
岡部「(それがαやβと異なる、シュタインズ・ゲート独自の現象の原因なのか……?)」
鈴羽「ここは1%の壁を超えた世界だからね、基本的にはIBN5100は岡部倫太郎の手に入る運命にあった」
岡部「(世界線の収束……いや、改変の結果か?)」
鈴羽「桐生萌郁。君はIBN5100を探しに、6月頃、秋葉原に来たそうだね」
萌郁「……ネットで、話題になってたから」
岡部「(FBの命令か……)」
ダル「そういや、結局あの@ちゃんのIBN5100祭りはなんだったのだぜ?」
鈴羽「それもあたしが仕込んでおいたこと」
鈴羽「あたしが日本を去る直前に上野の知り合いに頼んで、タイミングになったらそういう噂を流すよう依頼してたのさ」
萌郁「それで私が……名古屋から、秋葉原へ来ることになった……」
岡部「まるで俺たちは鈴羽の敷いたレールの上を歩かされてきたようだな」
鈴羽「レールなんて立派なものじゃないよ。あったとしても、それは透明なガラス板のように不可視なんだ」
鈴羽「どう動くかなんて予測不可能だったから、やっぱり実際に歩いたのは君たちなんだよ」
鈴羽「それから……あたしが会うのは3度目だね。橋田至」
ダル「んお? そうなん?」
鈴羽「あたしが生まれてからマシンで跳ぶまでと、跳んだ先で1年間、それから35年を過ごして、今……」
鈴羽「相変わらず、元気そうだね。父さん」
ダル「と、"父さん"?」
紅莉栖「ま、まさか、あなたがこのHENTAIの娘だって言うんですか!?」
ダル「はいィ? って、僕はHENTAIじゃないお! HENTAIと言う名の紳士だお!」
紅莉栖「でも2017年生まれだとすると辻褄が合う……いやいや、魔法使いは子どもを作れない……」
ダル「牧瀬氏容赦なさ杉ワロタ」
フェイリス「ダルニャン! フェイリスというものがありながら、いつの間にリア充になってたのニャ!」
ダル「僕は一生フェイリスたん一筋だお!!」
鈴羽「それだとあたしが困るなぁ。フェイリスはあたしの母さんじゃないから」
ダル「まだ見ぬ嫁と、フェイリスたんとのどっちかを選ぶなんて……ぼ、僕は一体どうしたら……」
ダル「いや、だが、しかし……ハーレムルートという手も……」
ダル「僕の人生にエロゲの選択肢が出現するなんて、夢にも思ってなかったんだぜ!」
フェイリス「ダルニャン、ごめんニャ。フェイリスはニャンニャン星へと帰らなくちゃいけないのニャ」
フェイリス「ダルニャンは生き別れの兄弟……でも、記憶は既に失われてしまった」
フェイリス「だから、ダルニャンには普通の地球人との愛を育んでほしいニャ……グスン」
ダル「んほおーーーッ!!! フェイリスたんから愛のメッセージいただきますたーーーっ!!!」
紅莉栖「いや遠まわしに拒否されてるからな?」
フェイリス「これからもお友達としてよろしくニャン♪」
まゆり「えっと、スズさんがダルくんのお母さんじゃないの?」
鈴羽「違うよ。その人はあたしにとって祖母になるかな。会ったことはないね」
ダル「ちなみに今、阿万音氏はおいくつで?」
鈴羽「タイムトラベルのせいでちょっとずれたけど、今日はあたしの誕生日だから……」
鈴羽「55歳ってことになるのかな」
ダル「つまり、僕は19にして55の娘を持つ男ということですねわかりません!」
紅莉栖「なにがなんだかわからない……」
鈴羽「自分の娘がこんなおばちゃんだったら嫌?」
ダル「い、いや、一応僕の守備範囲は広いほうだと自負しているのだが」
ダル「さすがにアラ還の女性を攻略するエロゲには手を出したことがないっつーか」
鈴羽「父さんに攻略されるつもりはないけど」フフッ
ダル「オウフ……」
ダル「ところで、1つ訊いていい?」
ダル「母さん可愛かった? ロリ顔で小さくて巨乳っていうのをキボンヌ」
鈴羽「実は、母さんはまゆねえさんの知り合いなんだ」
まゆり「まゆしぃのお友達に、ダルくんの未来のお嫁さんがいるの?」
ダル「ということは、J・K・確・定!!!」
ダル「ついに我が世の春がキターーーーーー!!!!」
岡部&紅莉栖「「黙れHENTAI!!」」
鈴羽「大学生の来嶋かえで、って知ってるでしょ?」
ダル「だ、大学生?」
鈴羽「その先輩のコスプレイヤーに阿万音由季って言う人がいると思うんだけど……」
ダル「せ、先輩……年上でござったか」
まゆり「カエデちゃんとはコスプレ仲間だけど……」
まゆり「あまね、ゆきさん? うーん、聞いたことがないなぁ」
鈴羽「そっか、シュタインズ・ゲートではまだ知り合ってなかったんだ」
ダル「まあでも、女子大生ってだけで点数高杉っつーか」
ダル「阿万音由季たん……どんなカワイ娘ちゃんなんだろ」
ダル「まるで優良ソフト会社の新作エロゲを待ちわびる気持ちに似ているお……はぁはぁ」
紅莉栖「ダメだこいつ、早くなんとかしないと」
まゆり「そう言えばさっき、まゆしぃの、むすめ?」
まゆり「椎名かがりちゃんって言うのは……」
岡部「そ、そうだ! まゆりに娘だと!?」
鈴羽「かがりは、戦災孤児だった。それをまゆねえさんが養子に取って世話することになったんだ」
まゆり「戦災孤児……」
岡部「養女ということか……」
鈴羽「この世界線の未来では第3次世界大戦は起こらない」
鈴羽「それもこれも、あの空白の1分間にあたしと一緒にタイムトラベルしてくれたまゆねえさんのおかげなんだ」
鈴羽「シュタインズ・ゲート上のかがりは本当の両親の元で仲睦まじく暮らすことになると思う」
まゆり「そ、そっか……それなら幸せいっぱいだね!」
鈴羽「そうだね。まゆねえさんも、幸せいっぱいになれますように」
まゆり「えっへへー。スズさんがラボに遊びに来てくれるのでまゆしぃは幸せいっぱいなのです!」
鈴羽「あたしもまゆねえさんとまたこうしておしゃべりできて幸せだよ」
まゆり「そーじょーこーか、だねー♪」
岡部「(……俺はまゆりの幸せを、守ることができたんだよな)」
鈴羽「さ、このくらいでいいかな。これであたしは君たち全員にとって見ず知らずの人間じゃなくなったわけだ」
フェイリス「すごいニャ……ものの数分で濃密な人間関係を創造してしまったのニャ」
るか「それじゃ、少し遅くなりましたけど、ラボメン歓迎パーティーを再開しましょうか」
ダル「さんせーっ」
まゆり「もうお腹ぺこぺこなのです」
鈴羽「牧瀬紅莉栖、君は台所に立つの禁止、って未来のオカリンおじさんが」
岡部「俺が!?」
鈴羽「いや、君じゃないけどさ」
紅莉栖「えっと、どうしてですか?」
鈴羽「『ラボの破壊活動を容認することはできない』、ってさ」
紅莉栖「私はテロリストか!」
萌郁「もう料理は……できてる……」
岡部「うむ、ラボメンとして実に良い働きだ。それでは、改めてここに宣言しようではないか!」
岡部「第1回ラボメン歓迎パーティー並びに、阿万音鈴羽の誕生パーティーをここに開催するッ!!!」
まゆり「わー」パチパチ
鈴羽「はは、気の利くことをするじゃないか」
岡部「狙いすましたかのように自分の誕生日に登場しておいて何を言っている」
鈴羽「バレたか」
岡部「それでこそ俺たちの阿万音鈴羽だ」フッ
鈴羽「……人間って、歳を取るとね。涙腺が緩んじゃうもんなんだよ」
岡部「どうした、特殊研究員鈴羽。俺の心意気に感動したか?」
鈴羽「……君って良いやつだね、岡部倫太郎」グスッ
天王寺「こらっ!! うるせぇぞお前ら!! また家賃上げられたいか!!」
岡部「て、敵襲!! 助手よ、洗脳マシンであの筋肉ダルマを追い払うのだ!!」
紅莉栖「じょ、助手ってゆーな!」
天王寺「今日は上客が来る日なんだから静かにしろって言っただろうが……あ、あれ、鈴さん!?」
鈴羽「よっ。12年ぶり」
天王寺「なんだ、もう帰ってたんですね。しかし、元気な姿を見れてホント良かった……」
天王寺「お前ら、よく聞け。こちらが橋田鈴さん。大檜山ビルの元オーナーだ」
鈴羽「ビルの2階に天王寺裕吾が寝泊まりしてた頃がつい昨日のようだね」
岡部「な、なにッ!? ミスターブラウンがこのラボに住み着いていただと!?」
天王寺「バカ野郎、まだこの奇妙な発明サークルがテナントに入る前の話だ」
まゆり「ラボに歴史あり、だねー」
鈴羽「……後で今宮綴、いや天王寺綴か。彼女の仏さんを拝ませてほしい。それから、綯の成長が見たい」
天王寺「あぁ、もちろんです。車を用意してありますよ」
岡部「(ふむ。ミスターブラウンは橋田鈴に頭が上がらない。そして橋田鈴こと阿万音鈴羽の父親はダル)」
岡部「(ダルは我が頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>……)」
岡部「(ということは、今後ミスターブラウンの不当な賃上げ要求に対して俺は強力な抑止力を得た、ということではないか?)」
岡部「フフ……フフフ……フゥーハハハ!! 終戦の時は近いッ!!」
天王寺「でかい声出すなっつってんだろ! 鈴さんの身体に障ったらどうすんだ!」
鈴羽「ブーメランじゃないかな、それ」
まゆり「まだスズさんは、お身体悪いの?」
天王寺「ッ……」
鈴羽「ああ、気にすることないよ。たまに血を吐くだ……け……ウップ」ゲロゲロ
ダル「ちょーーーッ!? だ、大丈夫なのか、阿万音氏……?」
フェイリス「今タオル持ってくるニャ!」
鈴羽「ゲホッ……ありがと、"橋田至"。みんなもそんなに心配しなくていいよ」
鈴羽「それと……もしよかったら、橋田至だけは、あたしを"鈴羽"って呼んでくれない、かな……」
鈴羽「も、もちろん、無理にとは、言わない、けど……」
橋田「……それくらいお安い御用なのだぜ! "鈴羽"!」
鈴羽「……ありがと」
まゆり「スズさん嬉しそうだねー♪」
鈴羽「ごめん、今日は疲れちゃった。あとはみんなで楽しくやってて」
岡部「……わかった。また、気が向いたらいつでもラボに来るといい」
鈴羽「オーキードーキー」
―――――
あたしの居たβ世界線の未来では、天王寺裕吾、そして天王寺綯はどこで何をしていたのかわからなかった。
α世界線――オカリンおじさんの話の中の――と同じようにSERNのスパイだったかも知れない。
あるいはワルキューレの支援者だったのかも知れない。
どっちにしろ、2010年時点にラウンダーであるはずの天王寺裕吾を見張れるのは好都合だったから、あたしは若い彼と接触した。
だけどあたしたちは、いつの間にか家族みたいになってたんだ。
お互いに家族の居ない一人者、っていうところで引かれ合ったのかも。
そんな絆が、今のラボにつながってるなんて、不思議だよね……
―――――
D 1.048596% シュタインズ・ゲート
2010.09.27 (Mon) 20:11
御徒町 天王寺家
チーン
鈴羽「……すまなかったね、"天王寺綴"。あたしは君を救ってやることができなかった」
天王寺「なんで鈴さんが謝るんだか。交通事故だってのに」
鈴羽「("交通事故"、ねえ。もちろん君はその真相を知ってるんだろうけど)」
天王寺「ほら、綯、こっちにおいで」
綯「は、初めまして……天王寺、綯です」
鈴羽「初めまして。綯のことはお父さんからの手紙にたくさん書いてあったよ」
天王寺「こちらが前に話してた鈴さん。綯が生まれる前にここに一緒に住んでた人だ」
鈴羽「"君"が"あたし"の家に居候してたんだろ?」
天王寺「うぐっ……そうだ。ここは元々鈴さんの家なんだ」
綯「そ、そうだったんだ!」
天王寺「今日からまた一緒に住む……ってことで、いいんですよね?」
鈴羽「ああ。しかし、君も几帳面だね。あたしの部屋をそのまま残してあるだなんて」
天王寺「そりゃ、いつか帰ってくると思ってたからですよ」
綯「えっと……よ、よろしくお願いします」
鈴羽「綯? 綯は、自転車好き?」
綯「う、うん……」
鈴羽「じゃぁさ、今度おばちゃんとサイクリングしよう」
綯「え、いいの!」
天王寺「鈴さん、さすがに身体が……」
鈴羽「少しくらいあたしも綯と遊ばせてくれよ」
天王寺「うーん……無理せんでくださいよ?」
綯「やったー! サイクリング、サイクリング♪」
鈴羽「あたしのMTB、まだ置いてある?」
鈴羽「(大学時代にMTBに一目惚れして大枚をはたいて衝動買いしちゃったんだよね)」
天王寺「走れる程度には整備してますぜ。これでも技術屋の端くれなんでね」
鈴羽「君ってやつは人情家だねえ。その見た目とは大違いだ」
天王寺「一言余計だ!」
・・・
鈴羽「……綯は寝ちゃったか」
天王寺「綯のやつ、同居人が増えると知った日からずっと興奮していて、最近寝不足だったんですよ」
鈴羽「可愛いもんだね、子どもってのは」
天王寺「……綯は、俺と綴の宝ですから」
鈴羽「君にとってかけがえのない唯一の家族、なんだね」
天王寺「鈴さんは何でもお見通しだ」
鈴羽「君がしゃべりにくそうにしてるのもお見通しだ」
鈴羽「また昔みたいにタメ口聞いても特別に許してやるよ」
天王寺「……あんたも変わらないな、そういうところ」
鈴羽「誰かさんからの受け売りさ。この白衣と一緒でね」
天王寺「さぞムカつく野郎なんだろうな」
鈴羽「……あたしの遺言、覚えてくれてたみたいで良かった」
天王寺「遺言なんて言うんじゃねえ。ただのテキストファイルだろ」
天王寺「まあ、実際にあの岡部の野郎が2階を借りに来た時は度肝を抜いちまったが……」
鈴羽「仲良さそうだったじゃないか」
天王寺「『人は巡り巡って誰かに親身にしてもらうことになっている。だから君もいずれ誰かに親身にしてあげることだよ』」
天王寺「……忘れちゃいねえよ」
鈴羽「……そっか」
鈴羽「そういや綴から聞いたよ。君、あたしのことを自分の母親に重ねて見てたんだって?」
天王寺「ブフォ!!」
鈴羽「図体ばっかりでかくなって、心はまだまだガキだったんだねぇ」クスクス
天王寺「この野郎……!」
鈴羽「甘えてもいいんだよ、"母さん"って」
天王寺「ば、馬鹿か! 俺はもう32のオッサンだぞ」
鈴羽「見た目の割りには若いよね」
天王寺「うるせぇ!」
鈴羽「……実は話してなかったけど、あの橋田至とあたしは親戚なんだ」
天王寺「なに、そうだったのか。いや、同じ名字だからまさか、とは思ったが」
鈴羽「それで、あと7年したら橋田至にも子どもができる」
天王寺「また鈴さんお得意の未来予知か」
鈴羽「その時にさ……よくしてやって欲しいんだよ。たぶん、その時にあたしはもうこの世に居ない」
天王寺「……そういうこと、言うんじゃねえ」
鈴羽「わがままだってのはわかってるけどさ、家族ができる大変さを知ってるのは君くらいだから」
天王寺「わがままなわけあるか。俺がどんだけ鈴さんに助けられたと思ってる」
天王寺「むしろ、恩返しできる機会をくれて感謝したいところだ」
鈴羽「そうか……頼もしいね」
天王寺「ほら、疲れてんなら早く寝ろ」
鈴羽「ああ。君も寝たばこをするんじゃないよ」
天王寺「しねーよ!! してねーよ!!」
―
―――
―――――
その日、あたしは不思議な夢を見た。
オフ会?……ってのに乗り込んだり。ラボメンみんなとパーティーをやったり。
有明までサイクリングをしたり。
あたしの頭の中のどこかに隠れてた、幸せな記憶たちが手を取り合って踊り始めた。
2010年まで生きることができて良かったなーとしみじみ思う。
ちょっとおばさんくさいかな、あはは。
でも。
あたしの人生に意味はあったんだ。
これ以上の幸せは無いよ。
綯の成長を見届けられないのは惜しいけど。
でもそれは、この"あたし"の役割じゃないんだろう。
あたしはもう、役割からは解放された。
オペレーションは完遂したし、収束に縛られる必要もない。
本当の自由を手に入れたのさ。
さあ、明日は何をしようかな。
―――――
―――
―
数年後 シュタインズ・ゲート世界線
雑司ヶ谷霊園
岡部「……まゆり。婆さんへの挨拶は済んだか」
まゆり「うん。お婆ちゃんね、向こうでも元気にやってるって」
岡部「しかし、そんなデカい百合の花束なぞ必要なかったのではないか?」
まゆり「いいの! これはね、まゆしぃが初めてお給料もらった時からずっとやってることなのです」エヘン!
まゆり「おばあちゃんが大好きだったお花だから……」
ポツン ポツン
岡部「……そう言えばまゆりはものすごい雨女だったな」
まゆり「折りたたみ傘、持ってないのです……」
岡部「……ダル。ほら、ひと雨来そうだ。そろそろ行くぞ」
ダル「う、うん……わかってるけどさ」
まゆり「お団子、買って帰ろうね」
ダル「おおっ、まゆ氏ナイス提案~。あそうだ、今ちょっと買ってくるお」タッタッ
岡部「花は用意するのに団子を用意しないとは、ダルというキャラにとってあるまじき行為だな」
まゆり「でもねー、ダルくんのそういうところ、好きだなー」
岡部「由季さんに聞かれたら……いや、あの人ならむしろ喜ぶか」
まゆり「ねえ、スズさん。そっちの世界は、どんなかな?」
まゆり「おばあちゃんは楽しいって言ってたけど、スズさんの世界は楽しい、かな」
岡部「今頃、フェイリスのパパさんと一緒にタイムマシン研究をしていたりしてな」
まゆり「そうだねぇ……ダルくんが持ってきたお花も気に入ってくれるといいなぁ」
ダル「ふぃー、ギリギリ買えたお。こっちが草団子で、こっちがみたらし」
岡部「おま、何パック買ってきたんだ!? そんなに食う気なのか……」
ダル「いや全部は食わねーよ。みんなの分だって」
ダル「それと、これは"鈴羽"の分な」
ダル「全く、親より先に逝くなんて、とんだ不良娘だったお」
ダル「……こっちの"鈴羽"は僕が幸せにしてみせる。だから、そっちの"鈴羽"は安心して眠っててくれよ」
ダル「奇跡を、ありがとうな。鈴羽」
/二二ヽ
| 橋 |
| 田 |
| 家 |
| 之 |
| 墓 |
__| |__
/ └──┘ \
|´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ソ
ソ::::::::::::::::::::::::::::::::ソソ
/ ソ ̄|;;;;;;;lll;;;;;;;| ̄ソ \
|´ ̄ ̄ |. [廿] .|´ ̄ ̄.|
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ブー ブー ブー
ダル「はーい。え、だ、誰?」
ダル「父さん?」
岡部「誰だ」
ダル「……当直の看護師さんから。今、僕、父さんになったみたい」
岡部「…………」
ダル「…………」
まゆり「もしかして、それって……」
岡部「あんのヤブ医者がぁぁぁああ!! 出産予定は来週だと言ってたではないかッ!!」ダッ
ダル「そんなことどうでもいいから、大通りまで走るお! まゆ氏、先行ってタクシー捕まえるのヨロ!」ダッ
まゆり「トゥットゥルー!!」タッタッタッ
ダル「待ってろよ鈴羽、今父さん行くからなぁっ!!」
おしまい
一旦終了 もうちょっとだけ続くんじゃ
おまけは朝8時頃投下予定
以下、鈴羽への想いを叫ぶスレ
D 1.048596% シュタインズ・ゲート
2010.09.29 (Wed) 16:31
未来ガジェット研究所
岡部「……で、これはなんだ」
紅莉栖「何って、未来ガジェット10号機、どこでもゲート、だけど? あんたが名付けたんでしょーが」
岡部「ホントに作ったのか? 俺はただなんとなく言っただけだったのだが……」
まゆり「わぁー、これ本当にどこでもドアなのかな? すごいねー♪」
ダル「プログラミング系は僕と"未来の僕"のおかげなのだぜ」
鈴羽「あたしは主に機械関係と具体的なアイデアかな」
紅莉栖「私は理論担当ね」
岡部「どこからどう見ても未来的青狸のソレにしか見えないな……」
ダル「いやあ、デザインはやっぱりこれしかないかなと思ってさ」
岡部「それで、ホントにこれ、どこにでもつながるのか?」
ダル「今起動してる状態だから、扉開けてみ」
岡部「…………」ゴクリ
ガチャ
岡部「……扉をくぐった先には、一面のブラウン管。そこに鎮座するハゲ狸……これはッ!?」
岡部「階下のブラウン管工房とつながっているというのか!!」
天王寺「だれがハゲ狸だ、え? コラ!!」
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira089709.jpg
ゴツン!!
岡部「あいたぁっ!!!」
天王寺「とっとと失せろ!!」
岡部「言われなくても戻りますよ!!」バタン
紅莉栖「ふむん。ゲート通過による痛覚維持は可能、と」
岡部「そこぉっ!! 真面目にデータを取るんじゃないッ!!」
岡部「しかし、一体どんな仕組みでこんなものが実用化されているんだ……?」
鈴羽「簡単な話さ。要はタイムマシンから時間移動要素を抜き取っただけなんだ」
紅莉栖「現在から現在にしかタイムトラベルできないタイムマシンとも言えるわね」
岡部「ということは、このドアは……」
鈴羽「扉型の電子レンジ。あるいは、小さなLHCって感じかな」
岡部「こ、これが、LHC……!?」
紅莉栖「この扉の枠の中で粒子が衝突して、複数のカー・ブラックホールを作り出してる」
鈴羽「そこに2036年の技術で電子を注いであげれば、裸の特異点は作り放題、回し放題」
紅莉栖「リング特異点を平面上に局在化して、出口側の座標データさえあれば、ってわけ」
ダル「そのデータは僕が世界各国の関係各省にハッキングして常に現在情報に更新されるようにしたお」
鈴羽「これで時間移動無しのタイムトラベル、テレポーテーションの出来上がり」
岡部「あくまでワームホールではない、ということだな」
まゆり「まゆしぃにはちんぷんかんぷんなのです」
紅莉栖「量子テレポーテーションと違って情報だけを伝達するわけでもないし」
鈴羽「分子レベルで分解するわけでもない」
岡部「だ、だが、36KBの壁はどうなったんだ? ゲル化は乗り越えたのか?」
鈴羽「おいおい、そんなのクリアしてなきゃそもそもC204型でタイムトラベルできるわけないだろ?」
岡部「そりゃ、そうか……」
鈴羽「ほとんどの領域で父さん自慢の量子コンピュータが役立ってる」
ダル「かがくのちからってすげー!」
鈴羽「電源増設費は気にしないでいいよ。こう見えてもあたし、結構資産家だからね」
岡部「ラボを勝手に改造したのか……って、電気代は俺持ちではないか!!」
紅莉栖「そんぐらい協力しなさいよ」
岡部「もしかしてクリスティーナよ、飛行機が怖いからと言ってこんなものを作ったのか?」
紅莉栖「ティーナをつけるな! ちゃんと出国審査通るから。あと別に飛行機は怖くない」
紅莉栖「色々実験データが欲しいの。試しに行きたいところ、言ってみて」
岡部「……実験大好きっ子よ、さっきは何も説明せず俺をモルモットにしたな!?」
紅莉栖「勝手に扉くぐったのはあんたでしょ。ほら、次はどこに行くの?」
岡部「くそぅ……ん?」
岡部「フフ……ならば天才HENTAI少女よ。俺が指定した場所へと必ずゲートをつなげると約束するか?」
紅莉栖「法律の範囲内に決まってるだろ。女風呂とか却下」
岡部「ッ、そんなことを言っているのではない!!」
紅莉栖「当然人のプライバシーに関わる場所も却下ね」
岡部「ならば。公的機関なら問題ないと言うのだな?」
岡部「ダルッ! 今すぐこのどこでもゲートをヴィクトル・コンドリア大学、脳科学研究所へとつなげろ!」
ダル「オーキードーキー」カタカタ ッターン
紅莉栖「ちょ、なんでよ!?」
岡部「俺は既に鈴羽から聞きおよんでいるぞ、クリスティーナには愛しの先輩がいることをな!」フゥーン
紅莉栖「先輩って、真帆先輩のこと!?」
岡部「そいつを召喚して、クリスティーナの恥ずかしい話をたっぷり聞かせてもらおうではないかッ!!」
紅莉栖「はっ!! 馬鹿ね、今あっちは何時だと思ってるの!?」
紅莉栖「サマータイム中だから時差は13時間、あっちは深夜4時よ!!」
紅莉栖「研究所に人が残ってる訳……」
真帆「で、これはどういうことなのかしら。説明してほしいのだけど、紅莉栖」
紅莉栖「…………」ダラダラ
ダル「ちょ!? このロリっ娘誰なん!? まさかオカリン、ナンパしてきたん!?」
まゆり「うわーちっちゃい子だねー。ようこそラボへ♪」
岡部「よく来たな、ここが我が未来ガジェット研究所だ」
岡部「そして俺がこのラボの創設者にして、狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だッ!! フゥーハハハ!!」
真帆「え、なに、ここ日本なの?……もしかして私、不法入国してる?」
紅莉栖「先輩、もしかしなくても不法入国してます」
岡部「あのー」
真帆「ねえ紅莉栖、これって夢? 私、夜中まで研究してたから……」
紅莉栖「い、いえ、たぶん、夢ではないのではないでしょうか……」
岡部「もしもーし」
真帆「ま、だとしたら1か月以上休暇期間を自分勝手な理由で延ばした後輩を叱り飛ばさないといけないのだけど?」
紅莉栖「……お手柔らかにお願いします」
岡部「俺の話を聞けぇっ!!」
真帆「……いい先生を紹介してあげましょうか」
岡部「誰がかわいそうな頭の男か! このロリっ娘が!」
真帆「ロリっ娘言うな!……あんたが紅莉栖の言ってた岡部倫太郎ね」
岡部「俺は岡部倫太郎などという名前ではないッ! 俺は、世界の支配構造を覆し、混沌の底へと陥れる……」
岡部「狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だッ!!!」
真帆「……紅莉栖、付き合う相手は選んだほうがいいと思うのだけれど」
紅莉栖「私も最近痛感してます」ハァ
真帆「ここ、ホントにラボなの? 研究施設のようには見えないのだけれど……」
真帆「この小型プロペラ機が研究成果?」
岡部「それは未来ガジェット2号機、タケコプカメラーだ」
岡部「内蔵されたCCDカメラによって動力なしに空中撮影ができる優れ物だぞ!」
紅莉栖「撮影された映像は激しく回転していて見る者に吐き気を催させる毒物ですけど」
真帆「何そのガラクタ……」
まゆり「トゥットゥルー♪ 椎名まゆりって言います。まゆしぃ☆って呼んでね」
真帆「とぅ……? あなたが紅莉栖の言ってた椎名さんね、お会いできて光栄だわ」
真帆「私は比屋定真帆、一応"成人"してるわ。よろしくね」
ダル「合法ロリktkr!!!」
まゆり「ひやじよさん……?」
真帆「呼びにくかったら真帆でいいわ」
まゆり「わかったよー、まほニャン♪」
真帆「ちょっとお待ちなさい。なにか余計なモノが語末にくっついているわ」
まゆり「なにが~?」
真帆「……それで、あちらの2人は?」
紅莉栖「ドラえもんみたいな見た目のHENTAIが技術者の橋田至、東京電機大学1年生」
ダル「ぼくダルえもん~」(CV. 関智一)
岡部「声はスネ夫だ。似てないが」
紅莉栖「それでこちらの教授が橋田鈴さん、東京電機大の元物理学教授」
真帆「親子なのかしら」
鈴羽「……久しぶりだね、比屋定真帆」
真帆「えっと、どこかのコンベンションでお会いしたことが……?」
鈴羽「教授職自体はもう12年も前に辞めちゃったよ」
紅莉栖「先輩、信じられないと思いますが、この人、別の世界の未来からやってきたんです」
真帆「……は?」
ダル「僕の未来の娘なんだって」
真帆「……へ?」
まゆり「スズさんはねー、まゆしぃの娘のかがりちゃんのお姉さん代わりだったんだよー」
真帆「……んん?」
岡部「とある世界においてはディストピアの中枢であった悪の組織と対峙するワルキューレの戦士であり!!」
岡部「またとある世界においては第3次世界大戦を生き延びた軍人であり……ッ!!」
岡部「その正体はッ!! 運命石の扉<シュタインズ・ゲート>への因果を構築した、孤独のサイエンティストなのだッ!! フゥーハハハ!!」
真帆「……今日ってエイプリルフール?」
紅莉栖「残念ながら全て真実です……悔しいことに」
鈴羽「君と会うのは1つ前の世界では35年前に挨拶程度」
鈴羽「その前の世界では同じ反政府組織の一員として活動してた」
真帆「ちょ、ちょ、ちょっと待って!? あなたはあくまでも妄想の類じゃないと言うのね!?」
真帆「異世界間移動!? タイムトラベル!? まずは理論を説明して!!」
岡部「さすがクリスティーナの先輩だ。理屈から入るタイプか」
紅莉栖「ティーナをつけるな!」
鈴羽「ちょっと長くなるけどいいかな」
・・・
真帆「……実証実験ができないのは悔しいけど、なるほど。だいたいわかった」
真帆「それでこのどこでもドアね……いや、やっぱり信じられない……」
岡部「未来ガジェット10号機、どこでもゲートだッ!」
鈴羽「君も強情だね、"クリスねえさん"」
真帆「……私のこと?」
まゆり「"クリス"ねえさん? クリスちゃんじゃなくて?」
岡部「クリスティーナならこっちにいるぞ」
紅莉栖「いや私はクリスだから。教授、えっと?」
鈴羽「あたしの世界では牧瀬紅莉栖が2010年7月28日に亡くなってる、って話したよね」
紅莉栖「は、はい」
真帆「……一体なんの冗談?」
まゆり「で、でもでも、それは無かったことになったんだよね!?」
紅莉栖「そうよ、まゆり。大丈夫、私は生きてるわ」
鈴羽「あたしの世界において、その後、後輩大好き脳科学者はどうしたと思う?」
岡部「なるほど。心の底から可愛がっていた後輩の非業な死に対して喪失感に苛まれたあげく」
岡部「架空の人格『クリス』を自分の中に作り上げ」
岡部「それはまるでジキルとハイドのような様相を呈することとなった、と」
鈴羽「あながち間違ってはいないね」
真帆「う、嘘でしょ!?」
鈴羽「仮に、牧瀬紅莉栖が何者かに刺されて秋葉原で死んだとして……」
鈴羽「しかもその事件の関係者が第3次世界大戦の引き金になったとしたら、君ならどう行動する?」
真帆「えっと……そうね。もちろんとても悲しいことだし、悲嘆にくれることもあるでしょう」
紅莉栖「先輩……」
真帆「だけど、私なら多分、事件の真相を究明する」
岡部「揃いも揃って知りたがりだな」
真帆「だって、天才の紅莉栖が殺されて、それが世界大戦につながる!?」
真帆「どう考えたって裏に何かがあるとしか思えないわ!」
岡部「貴様、陰謀論者だったのか」
真帆「違うわよ!」
ダル「んほぉ! 幼女のツッコミ激し杉……はぁはぁ」
真帆「……紅莉栖、今すぐ訴訟の準備を始めるわよ」
紅莉栖「私が私刑に処しておきます、先輩」
鈴羽「あはは、ありがとうみんな。このくらい軽い空気じゃないと話せないからね」
鈴羽「そう。君は実際そうやって行動して、ここ未来ガジェット研究所に辿り着いた」
鈴羽「牧瀬紅莉栖殺害の真相を知っている、岡部倫太郎にね」
岡部「ぐっ……」
真帆「……え、それ、どういうこと?」
岡部「鈴羽。いや、橋田鈴よ。ここまででよかろう」
鈴羽「でも、中途半端にリーディング・シュタイナーが発動して疑念を募らせるくらいならさ」
鈴羽「その前に全て本人の口から説明しておいた方がいいと思うけど」
岡部「それは、そうだが……」
紅莉栖「私の口から説明するわ。岡部はもう、つらい思いをする必要はないもの」
岡部「う、うむ……」
真帆「……?」
紅莉栖「岡部の口から聞いてたら私もすぐには信じられなかったと思うけど」
紅莉栖「橋田教授の説明なら納得せざるを得なかった」
紅莉栖「……私は1度、岡部倫太郎によって刺殺された」
真帆「ハァ!?」
紅莉栖「だけどそれは事故のようなもの。私のパパ、牧瀬章一の凶行から私を守ろうとした結果だった」
岡部「…………」
真帆「あの、ロシアの亡命に失敗したっていう……」
真帆「ということは、もし亡命に成功してたら、第3次世界大戦が……?」
紅莉栖「その過去を変えるために岡部は、世界を騙した」
紅莉栖「もう1度過去に跳んで、私を救ってくれたの」
真帆「……なるほど。紅莉栖がそんな目に遭っていたなんて……」
鈴羽「どうしても岡部倫太郎は1度牧瀬紅莉栖の救出に失敗しなければならなかったんだ」
鈴羽「それが最終的に世界を変えるほどの執念を生み出すことになったってわけ」
鈴羽「その執念にはね、君の想いも詰まっていたんだよ」
真帆「わ、私の?」
鈴羽「牧瀬紅莉栖のいない世界で、牧瀬紅莉栖を救う方法を知ってしまった君はね」
鈴羽「死に物狂いでタイムマシン研究を進展させたんだ」
真帆「そ、そんな! そりゃ、紅莉栖ならできるかも知れないけど、私なんかにタイムマシン研究なんて……」
鈴羽「だから君は"クリス"になったんだ。クリスならタイムマシンを作れると信じて」
真帆「……突拍子もない話のはずなのに、妙に説得力があるわね」
紅莉栖「これが未来人の力みたいですよ」
鈴羽「ホント、クリスねえさんには頭が上がらないよ」
鈴羽「あの理論が無ければC204型は完成しなかっただろうからね」
真帆「……その、大変申し訳ないのだけれど、あなたのような立派な大人の女性に"ねえさん"と呼ばれるのは少し抵抗があるのですが」
岡部「見た目はロリっ娘だからなあ」フゥーン
真帆「ロリっ娘言うな!」
ダル「ツンデレ属性持ちの合法ロリとかたまらんすぐる」
鈴羽「寂しいこと言うねえ。わかったよ、比屋定真帆」
岡部「後輩を想う愛の力が奇跡を起こした、というわけだな」
鈴羽「助手を想う愛の力も奇跡を起こした、とも言えるね」
岡部「…………」
紅莉栖「…………///」
まゆり「クリスちゃん、愛されてるねー♪」
真帆「……紅莉栖がずっと日本に居たがる理由がわかったわ」ハァ
紅莉栖「ちがっ、先輩! そういうのじゃないから! 勘違いしないでください!」
岡部「認めたくないものだな。自分自身の、若さ故の過ちというものを」フゥーン
ダル「これが若さか……」
紅莉栖「若者をいじめないで頂きたい!」
鈴羽「新しい時代を作るのは老人ではないってことさ。岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖、2人の未来に期待してるよ」
紅莉栖「わ、私たちの未来とか///」
まゆり「えっへへー、2人はとってもお似合いだと思うなー♪」
紅莉栖「ふぇっ!?///」
岡部「う、うむ……」
鈴羽「……そうだね、あたしもそう思うよ。まゆねえさん」
鈴羽「(短冊に書かれた願いが叶うことはなくても、あの時のまゆねえさんの決意はきっと叶ったんだ)」
真帆「最初はどうして紅莉栖が日本に滞在し続けるのか疑問だったし、脳科学界における重大な損失だとも思ったけど」
真帆「……なんだか、知らないところでつながりが出来上がってたわけね」
紅莉栖「先輩……」
まゆり「まほニャン、せっかく日本に来たんだから、一緒に遊ぼうよー!」
真帆「いえ、さすがに入国審査もしてないのにそれは遠慮するわ」
岡部「ならば、またいつでも秋葉原に来るといい」
鈴羽「そうだよ。比屋定真帆もつながってるんだ」
鈴羽「この未来ガジェット研究所とさ」
真帆「……喜んでいいのかしら、それ」
岡部「助手大好きっ娘よ。後輩とのつながりが深まって内心嬉しいのだろう?」
真帆「は、はぁ!? またその話!?」
ダル「百合厨の僕大歓喜」
鈴羽「父さんは今日おやつ抜きね」
ダル「なん……だと……」
岡部「フゥーハハ!! わかった、ではこうしようではないかッ!!」
岡部「比屋定真帆、お前は今日から……ッ!!」
岡部「ラボメンナンバー009だッ!!」
真帆「ラボ、メン……?」
まゆり「えぇー!!」
まゆり「また女の子のラボメンが増えるんだねー、まゆしぃ大勝利なのです!」
紅莉栖「ちょ、ちょっと待って! 岡部、何言ってんのよ!」
真帆「ふぅん……おもしろそうね」
紅莉栖「先輩まで!」
真帆「ちなみに紅莉栖のナンバーは?」
岡部「004だが」
真帆「ってことは、このラボなら私は紅莉栖の後輩になれるわけね」
紅莉栖「あの、一体なにを考えて……」
真帆「これからよろしくね、紅莉栖先輩♪」
紅莉栖「う、鬱だ……」
真帆「それじゃ、私はそろそろ帰るわ。もう眠いし。ふゎ……」
紅莉栖「ちゃんとベッドで寝てくださいよ」
真帆「紅莉栖こそ今週中には帰って来なさいよ? お母さんも心配してるんだから」
紅莉栖「わかってますよ……」
真帆「そんなに寂しかったら、今度はラボメンをアメリカに連れてくればいいじゃない」
ダル「そう言うと思って、ラボメンは全員ちゃんとパスポートを作っているのだぜ」
まゆり「発案はオカリンだけどねー」
岡部「フゥン。俺はラボメンが世界中のどこへ居ようともその座標を常に把握しておく必要があるからな」
鈴羽「ま、何かあったらこの未来ガジェット9号機、どこでもゲートを使えばいいしね」
ダル「それじゃ再起動するおー。ポチっとな」
真帆「岡部さん。椎名さん。橋田さんと、教授。またね」
鈴羽「レイエス教授によろしく言っておいて。あたしが入院してる時に世話になったから」
真帆「そうなの? わかったわ。バーイ」
ガチャ バタン
岡部「(……あのちびっ子が紅莉栖の代わりにタイムマシンを作っていたとはな)」
紅莉栖「これで十分どこでもゲートのデータは取れたし、私も明日にはアメリカに帰るわ。もちろん飛行機で」
まゆり「えぇー!? クリスちゃん帰っちゃうのー!?」
紅莉栖「大丈夫よ、まゆり。もし会いたくなったらこのゲートを使えばすぐ会える」
岡部「いやいやいや、電気代がどれだけかかると思っている!」
岡部「ネット通話で代用するのだな」
まゆり「でもでもー、それだとクリスちゃんとぎゅーってできないよ?」
紅莉栖「ふふっ。今のうちにギュってしとく?」
まゆり「うん♪ ぎゅーっ」
ダル「正直、たまりません。むっはー」
鈴羽「まゆねえさんはこの頃から変わらないんだなぁ」
紅莉栖「……そう言えば」
紅莉栖「教授の知っている未来の、先輩の結婚相手って……わかったりします?」
鈴羽「何度も言ってるけど戦時中だよ? 君たちが考えるような浮ついた話は無いよ」
紅莉栖「そ、それもそうですよね……」
鈴羽「……クリスねえさんはね、2025年に大切な人を失った」
紅莉栖「そんな……」
岡部「2025……」
鈴羽「もしかしたら、その人のためにマシンを作ってたのかも知れないんだ」
鈴羽「あたしは、クリスねえさんは作戦行動中に殺された、って聞いてるけど」
鈴羽「あたしの知らないところで、試作機のタイムマシンでその人の跡を追ったのかも知れない」
まゆり「……なんだか、切ないお話だね」
岡部「……だが、物理的タイムトラベルをしたならば、鈴羽と同じような状況になっているのではないか」
鈴羽「たぶん、そう。逆説的に彼女は、タイムトラベルには失敗した、と言える」
ダル「タイムトラベルに、失敗……!?」
鈴羽「天才には一歩、及ばなかったのさ」
紅莉栖「嘘……」
ズゥゥゥゥゥン!!
まゆり「な、なに!? 地震かな……?」
紅莉栖「どこでもゲートの誤作動……ではなさそうだけど」
岡部「いや、これは屋上からだ! 行くぞッ!」タッ
ダル「ちょ、ちょっと待つお! デブには階段はつらいんだお……」
タッタッタッ……
岡部「こ、これは……」
ダル「ちょ! いつぞやのタイムマシン!」
まゆり「でも、前に見たのとちょっと形が違う……?」
紅莉栖「えっ、2人はタイムマシンを見たことあるの?」
ダル「いや、んなわけないっしょ!」
まゆり「タイムマシンさんなんて、初めて見たよー」
紅莉栖「……は?」
ダル「だ、だが、マシンから降りてきたオカリンを病院に連れてったのは僕たちだったと思われ……?」
まゆり「あの時はオカリンが降りてすぐマシンは消えちゃったけど……」
紅莉栖「2人は何を言っているの……?」
岡部「しかし、これがどうしてシュタインズ・ゲートに現れたんだ……」
プシュゥゥゥゥ
紅莉栖「ハッチが開いた!」
岡部「お、お前は……!!」
真帆「……どうやら、シュタインズ・ゲートへの物理的タイムトラベルは成功したみたいね」
ダル「嘘だろ……さっきまで居た幼女が再登場してきた、だと……!?」
まゆり「ま、まほニャン? えっと、アメリカから戻って来てくれたの?」
真帆「そんなに私若いかしら? 椎名さんも、橋田さんも、久しぶり」
鈴羽「……クリスねえさんは、変わらないね」
真帆「鈴羽、ずいぶん大きくなったわね。45歳の私より10は年上かしら」
鈴羽「クリスねえさん……よかった、生きてたんだ……」グスッ
真帆「それから……紅莉栖。Amadeusじゃない本物と会うのは25年ぶりね」
紅莉栖「えっと……あなたは、私が今年の7月に死んだ世界線から来た、先輩?」
真帆「さすが紅莉栖、理解が速いわね」
真帆「……生きてる。紅莉栖が、生きてる……」グスッ
ダキッ
紅莉栖「せ、先輩……」
真帆「良かった……ホントに良かった……」ポロッ
紅莉栖「……私のために、ありがとう、ございます」ギュッ
真帆「……それもこれも、あなたのおかげね」
真帆「未来ガジェット研究所所長、岡部倫太郎さん」
岡部「…………」
岡部「比屋定さん、あなたは2025年にタイムマシンに乗った"俺"を追いかけてきたのではなかったのか?」
真帆「そうよ、あなたと橋田さんが作ったカー・ブラックホールトレーサーを使って」
紅莉栖「えっ、じゃぁ先輩の大切な人って……」
真帆「だけど、"あなた"の乗ったC193型のカー・ブラックホールは非常に不安定だった」
真帆「起動した瞬間捕捉が解除されて、私のマシンはトレース目標を失ってしまった」
真帆「大檜山ビルの屋上からフライトしたせいなのかはわからないけど、フライト開始後に気づいたから焦ったわ」
真帆「仕方なく他のカー・ブラックホールが存在する世界線時間を探したの」
真帆「そしたら、シュタインズ・ゲート世界線でカー・ブラックホールが生成されている時間帯を見つけた。奇跡的にね」
岡部「……そうか! あのどこでもゲートは、いわば小さなタイムマシン!」
岡部「それでトレーサーを使い、ここまでフライトすることができたと……!」
鈴羽「まさかそんな因果を作り出していたなんてね……」
真帆「科学の力って不思議ね、ここまでくると魔法かおとぎ話にしか思えないもの」
鈴羽「だけど、魔法じゃない。理論は必ずある」
真帆「……そう。私は、この世界線の収束に縛られていない。鈴羽と違って」
紅莉栖「なにを言って……?」
シュゥゥゥ……
ダル「タ、タイムマシンが光り出したお!?」
まゆり「これって、前と一緒!? 消えちゃうの!?」
真帆「私とこのタイムマシンは、シュタインズ・ゲート世界線、狭間の世界線にはあるはずのない因果だから」
真帆「アトラクタフィールドの干渉を受けない世界線にとって、私は異物扱いされる」
真帆「異物は、排除される」スゥッ……
紅莉栖「ッ!? せ、先輩の身体が、透明に……!?」
岡部「そんな……こんなことって、あるかよ……!!」
岡部「せっかく辿り着いたんだろ!?」
岡部「お前が信じた結果に、ようやく巡り合えたんだろ!?」
岡部「この俺には無い記憶のはずだが、だがッ!」
岡部「俺はお前と、共に同じ時間を過ごしていたような気がするんだ……!」
岡部「どうしてお前が消えなきゃならないんだよ!! 比屋定真帆!!」
真帆「……ううん、あなたは私の知ってる岡部さんじゃない」
真帆「それに、私もこの世界の真帆じゃない。だから、あなたはこっちの私と仲良くしてあげて」
真帆「私はね、この目で、この身体で、この信じた"解"を導けた」
真帆「それだけで、私は十分。科学者としては最高の幸せよ」
真帆「じゃあね、紅莉栖」
真帆「幸せに生きて……」
スゥ……
まゆり「消えちゃった……」
ダル「そんな……マジかお……」
紅莉栖「先輩……」
鈴羽「…………」
ダル「あ、あれ、僕たちどうして屋上に?」
まゆり「さっきまでここに誰かが居たような気がするのです……」
紅莉栖「白衣を着た、小さい、私の大切な……誰だっけ……」
岡部「(……3人、いや、シュタインズ・ゲートの住人の記憶が再構成されたのか)」
鈴羽「所詮、科学は万能ではないってことさ。それに挑む研究者もね」
岡部「(そして"消失"を理解しているタイムトラベラーも俺同様、限定的に記憶は維持される……)」
岡部「(しかし……しかしだな……)」
岡部「なぜお前はそこまで冷静で居られるのだ、阿万音鈴羽……」
鈴羽「これでも年長者だから、かな」
岡部「そんなことを聞いているのではないッ!! お前も、お前だって……!!」
岡部「世界の因果から解放されれば、このシュタインズ・ゲートから消滅してしまうのだぞ!!」
まゆり「えっ!?」
ダル「な、なんぞ!?」
紅莉栖「……たしかに、そうならないとおかしい」
鈴羽「まあね。だけどソレがいつかは正直わからない」
鈴羽「可能性の1つとしては、2011年7月7日があたしのデッドラインかもしれない」
鈴羽「そこまでなら、ギリギリあたしの生きた証が残ってるからね」
紅莉栖「でもその仮説は……」
鈴羽「……間違ってるかもしれない。もしかしたら、あたしは1時間後に消滅するかもしれない」
鈴羽「この世界の、全ての人の記憶からね」
まゆり「そんなっ!?」
ダル「ど、どゆこと?」
岡部「……それは、死ぬよりひどいことではないのか」
鈴羽「いいんだ。もう歳だし、十分生きたよ」
鈴羽「きっと……クリスねえさんも、あたしと同じ気持ちだったと思う」
岡部「……いや、まだだ。まだ、あるはずなんだ……」
岡部「神が隠し持った、秩序のない理論が……!!」
鈴羽「もう、いいんだよ。岡部倫太郎」
岡部「いいわけあるかよ!!」
岡部「俺は、これ以上仲間を犠牲になんてできない……!!」
岡部「お、俺は、狂気の、マッドサイエンティスト……鳳凰、院……」グッ
まゆり「オカリン……」
鈴羽「……岡部倫太郎。それ以上言うなら、あたしは今すぐこのビルの屋上から身を投げる」
紅莉栖「や、やめて!」
まゆり「そんなことしちゃダメだよ!!」
ダル「ちょ、鈴羽!! やめろって!!」
岡部「……クソッ!!」
岡部「また俺は、仲間を見殺しにしなければならないのかよ……ッ!!」
鈴羽「……何度も言うけどさ、この世界にとって阿万音鈴羽は2017年に生まれてくる彼女のほうなんだ」
鈴羽「あたしは岡部倫太郎が世界線移動をしてきた記憶の残滓みたいなもの」
鈴羽「役目が終われば、舞台から退場しないとね」
岡部「どうして……どうして鈴羽なんだ……」
岡部「どうして鈴羽ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないんだッ!!」
鈴羽「君が世界一諦めの悪い男だってのは知ってる」
鈴羽「やっぱりあたしがここに来たのは間違いだったみたいだ」
岡部「そ、そんなことはないッ!! 待て、そんなことは……ッ!!」
鈴羽「……潮時かなぁ」
鈴羽「牧瀬紅莉栖もアメリカに帰るんだろ? あたしもどこか遠くへ行こうかな」
紅莉栖「……どこかって、どこへです」
鈴羽「どこでもゲートがあるからね、どこへでも行けるよ」
鈴羽「……あたしの母さんの生まれ故郷は石川県なんだって。そこなら、人知れず暮らせるかな」
岡部「わ、わかった!! もうお前を収束に縛る方法を考えたりしない!!」
岡部「だから、秋葉原に居てくれ!! このラボに居てくれ!!」
鈴羽「猫ってさ、自分の体調の悪さを上手に隠す動物なんだって。それで人前から居なくなったりする」
岡部「一体、なんの話だ……」
鈴羽「でもそれって、死ぬのを飼い主に見られたくないからじゃないんだ」
鈴羽「生きたいから。生に執着したいから、身体を休めるために静かなところへ移動する」
鈴羽「だからね……あたしも、そんな理由なんだよ」
大檜山ビル2階 未来ガジェット研究所
まゆり「スズさん……いなくなったら嫌だよ……」
鈴羽「また7年後に会えるよ。あたしは死んでも生まれ変わっちゃうから」
岡部「……思い出を作ったことを後悔していないか」
岡部「別れが必然ならば、出会ったことを後悔してないか?」
鈴羽「……あたしは行くよ。未来を変えることが、"あたし"の役割だった」
鈴羽「ラボメンとして存在することは、"あたし"の役割じゃない」
鈴羽「田舎だって悪くないよ。そこでまた、猫のように自由気ままに生きていく」
ダル「鈴羽……」
鈴羽「親不孝を許して、父さん。その代わり、もう1人の鈴羽が父さんを愛してくれると思うから」
ダル「うん……わかったお……」
ダル「それじゃ、スイッチ入れるお……」
鈴羽「……たらららったら~ん♪ ど~こ~で~も~ド~ア~、なんつって」エヘヘ
岡部「まったく、お前というやつは……」
鈴羽「やっぱりあたしに辛気臭いのは似合わないからね」
鈴羽「それじゃ、若者たち。元気で暮らしなよ」
鈴羽「あたしはこれからシュレーディンガーの猫になるんだ」
鈴羽「観測なんていう野暮なことはしないでよね。収束が発生しちゃうから」
紅莉栖「量子力学……やっぱりあなたは、物理学の教授ですね」
鈴羽「いーや、ただの未来から来た猫型ロボットさ」
岡部「ふ、ふん! お前なんぞ、顔も見たくないわ! このラボからとっとと消え失せるのだな!」
紅莉栖「ちょ、ちょっと岡部!?」
岡部「お前に出会ってさんざんだった! 炎天下で自転車をこがされたり、親父探しに付き合わされたり!」
岡部「銃で足を撃ち抜かれたりな! まぁ、それはこの俺ではないが」
岡部「ともかく! 貴様はこの俺、鳳凰院凶真の逆鱗に触れたのだッ!」
岡部「2度と……! 決して、2度と俺たちの前に姿を現すんじゃないぞ!! "橋田鈴"ッ!!」
ダル「押すな押すなってことですねわかりません!」
紅莉栖「あぁ、そういう……」
まゆり「オカリンはオカリンだねー」
鈴羽「……ありがとう、岡部倫太郎。ラボのみんな」
鈴羽「……絶対、忘れないよ」
鈴羽「じゃあね! また、未来で会おう!」
ガチャ
バタン
―――――
―――
―
――――――――――――
あたしたちラボメンは、どれだけ離れたところにいても、心はつながってる。
過去でも、現在でも、未来でも。
世界線を跨いだとしても―――
ラボメンバッジがある限り、ね。あたしのはもうボロボロだけど。
最初から心配することなんて無かったんだ。
教えることも、導くことも必要なかったんだ。
だからあたしは、安心して君たちから距離を置ける。
君たちにはわからないだろうけど、"老い"ってのは恐ろしいものなんだ。
『老兵は死なず消え去るのみ』、ってね。元軍人のあたしらしいだろ?
同時にあたしは科学者だ。アインシュタインの言葉を借りるとさ……
『人生は自転車のようなものだ』、これがあたしにピッタリかな。
あんまり長く立ち止まると、2度と漕ぎ出せなくなる。
その時まで走り続けるよ、あたしのペースでさ。
きっと、巡り巡って、いつかまたどこかにつながるんだから。
通常、因果の輪から外れた存在は、世界から消失する。
消失の事実を誰もが認知できないままに消失する。
なかったことになる。
そこがアトラクタフィールドの狭間を縫って進む都合の良い世界線、シュタインズ・ゲートなら、なおのこと不安定でゆらぎが生じる。
そうして世界はイレギュラーに関する記憶を全人類から消去し、代わりに脳は辻褄合わせの歴史を納得する。
消失の事実それ自体を取り消すために必要なことはなにか。
"行為と関連づけられた記憶は、より強固な長期記憶になりうる。"
あたしとラボのみんなで作った未来ガジェット10号機、『どこでもゲート』。
それにまつわる思い出は―――
―――宇宙の全座標とあたしの存在を繋げていた。
――――――――――――
数年後 シュタインズ・ゲート世界線
由季「ねぇ……至さん?」
ダル「どうしたんだい、由季たん」
由季「もし女の子が生まれたら、"鈴羽"って書いて、"スズハ"と読ませる名前にする。それでいいんですね?」
ダル「うん。前に話した通り、未来から来た僕たちの娘がそう名乗ってたからね」
由季「でも、例えば鈴羽が小学生になった時に、自分の名前の由来をお父さんお母さんに聞いてみようっていう課題を出されたとして」
ダル「……んん?」
由季「未来から来た自分がそう名乗ってたから、だと先生ビックリしちゃうと思うんです」
ダル「凄まじい妄想力だお。さすが僕のリアル嫁」
由季「だから、後出しでもいいから、理由を作ってあげたいと思うんですけど」
ダル「そだなー。じゃ、未来人の代表格、ドラえもん氏から取ったってのはどう?」
由季「えっ?」
ダル「未来に羽ばたく子に育ってほしい、ってのはあるけど、それだとどんな未来かわからんじゃん?」
由季「そうですね……」
ダル「だから、ドラえもんの居た22世紀みたいに、科学技術が平和利用されててさ」
ダル「SFチックな冒険があふれる楽しい未来を作ってほしいっていう」
ダル「んで、ドラえもん氏って猫じゃん? 猫と言えば鈴、みたいな」
由季「アニメや漫画のキャラから名前を取るのは嫌じゃないですけど……昔から風当り強いですし……」
ダル「んじゃ僕の尊敬する物理学教授の名前から取った、でいいお」
由季「橋田鈴さんですよね。以前は実家のお母さんからよくお話を聞いてました」
ダル「僕のお義母さんですねわかります」
由季「白衣の女性が引っ越してきて、色んな発明品を作ってるって」
由季「作った道具で子どもたちと遊ぶ、ちょっとした地元の有名人だったみたいですよ」
ダル「(あの"鈴羽"がこの世界に生きていた証が残って本当に良かったお)」
ダル「そういや由季たん。ドラえもんの道具だったら、何が一番欲しい? あ、4次元ポケットはなしで」
由季「うーん、そうですね……スモールライトもタイムマシンも欲しいですけど、やっぱり」
―――どこでもドア、かな。
どこでもドア話 おしまい
β外伝小説第三部『無限遠点のアルタイル』のエピローグ、2025年の描写のところに
それを見ながら゛クリス゛こと比屋定真帆は、ダルに声をかけた。クリスとは、真帆が現在使用している偽名である。
ってある。なんで「クリス」を偽名にしたかは不明。このSSの、オカリンの妄想(ジキルとハイド云々)および鈴羽の話(クリスならタイムマシンが作れる云々)はオリ設定
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443279609/
Entry ⇒ 2016.07.21 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
ダル「できた! 『誰かがオカリンのことを嫌いになるスイッチ』~」
ダル「そもそもオカリンハーレムすぎね? おかしくね?」
ダル「僕は二次元命だから耐えてこられたけどそろそろ限界だお」
ダル「まずは>>3がオカリンのことを嫌いになるお」ポチッ
ダル「…………」
岡部「ぬぁんだ、ダルしかおらんではないか」
ダル「…………」イラッ
岡部「まあいい、今日は未来ガジェットの新作を製作するぞ」
岡部「アイデアと材料はこの鳳凰院凶真が揃えておいた、頼れる右腕(マイフェイバリットライトアーム)よ――」
ダル「……僕忙しいからさ」ガタ
岡部「何を言うダルよ、先程からエロゲしかしていないではないか」
岡部「俺たちは世界の支配構造を覆すのだぞ! そのようなことをしている場合ではぬぁーい!!」バッ
ダル「”そのようなこと”?」
岡部「えっ」
ダル「オカリンにはわからねえだろうな!」
ダル「女っ子ーと触れ合ったことのない僕みたいなキモオタの気持ちがなぁ!」
ダル「そもそも幼馴染がいる時点で勝ち組だろッッ!」
ダル「それに重ねてラボメンと称して美少女(美少年含む)で囲いがって……」
ダル「僕なんか楽しそうなラボメンガールズの声とエロゲのCGを重ねあわせて自らを慰める日々……」
ダル「サイレントエロゲーマー舐めんな!」
ダル「それ以外に、二次元以外に美少女とのふれあいのない僕にエロゲをやめろというなら」
ダル「いいぜ、その幻想をぶち殺す」
岡部「だ、ダル……?」
岡部「安心するがいい、それはこの鳳凰院凶真が保証してやろう!」
岡部「フゥーッハッハッハ!」
ダル「ッチ!」
ダル「僕はモテモテなオカリンと違ってそんな前向きになれないお」
ダル「僕なんか一生二次元に操を立てるか魔法使いになるしか道がないんだお」
岡部(ダルは本当に美人レイヤーと結婚するんだがな……)
ダル「これじゃあ惨めになるだけだお、しばらくラボにもこないから」スッ
岡部「なっ!」
ダル「なんだお」
岡部「確かに俺は調子に乗ってたかもしれん」
岡部「ラボメンも人数が増え、日に日にラボは賑やかになっていった」
岡部「そこに浸かりすぎて忘れていたのかもしれないな」
岡部「初めは俺とまゆり、そしてダルの三人しかいないラボだったことに」
岡部「お前からしてみればそっちのほうが居心地のよい場所だったかもしれない」
岡部「だが、ラボメンは皆いい連中だ。お前もそれはわかっているだろう」
岡部「だからこそ俺はお前たちラボメン全員がここで過ごしてよかったと思えるような場所にしたいんだ」
岡部「”もう”時間は巻き戻せない、だから後悔のないようにな」
岡部「それが、ラボの主たる俺の義務だ」
岡部「他のラボメンは心強い、だがどこかで何かを抱えている奴らだ」
岡部「無論俺もだ」
岡部「そんななかダルはいつだってダルだった」
岡部「どんなときも黙って俺の右腕として働いてくれたな」
岡部「言葉を交わすまでもなく、俺の横で無茶なことにも付き合ってくれた」
岡部「思えば、俺は誰よりダルを信頼していたのかもしれないな」
岡部「いや、信頼しすぎたせいで、お前のことを考えてやれなかった……」
岡部「いつでも帰って来いダル、お前はかけがえのないラボメンなのだから……」
ダル「…………」バタン
ダル「オカリンの主人公力が強すぎて僕の未来ガジェットが負けそう」
ダル「まあ製作者である僕には効かないように作ったからあれ全部演技だったんだけどねー」
ダル「やっぱりオカリンはラボメンを大事にしてるんだな~」
ダル「そんなオカリンがラボメンに嫌われてメンタルズタズタになるところが楽しみすぎてwktkだお!」
ダル「ボタンの効力としては『オカリンがゴキブリやゲジゲジ並の不愉快な存在に感じられる上に親の仇かとも思えるほどの憎しみが沸々と湧き上がってくる』程度だから」
ダル「さっきみたいなのは通用しないから安心だお」
ダル「そんじゃ本番、>>22」
ダル「でも安価は絶対だから押すおー」ポチッ
ダル「さ、ラボに戻ってみるお」
ダル「お、やってるやってる」
ダル「どうしたんだお!?」
紅莉栖「は、橋田! ちょっと手伝って!」
まゆり「オカリンが……オカリンが……」
岡部「離してくれぇぇぇぇ俺は……俺には生きる権利なんかないんだァァァ!!」
ダル「こいつぁすげえ壊れっぷり」
岡部「うぅぅすまない……ルカ子、フェイリス、萌郁、鈴羽……」
岡部「俺の身勝手のせいで……お前たちを踏み台に……っ!」
岡部「あ、ああああああああああああああ!!!!」
紅莉栖「岡部! 岡部! しっかりしてよ……なんで突然飛び降りようなんて……!」
岡部「すまない紅莉栖……俺はお前を一度見捨てようとした……何度も何度も助けてくれたお前を」
岡部「あんなにもっ……必死にまゆりを救おうとしてくれたお前をっ!」
岡部「はは、あのとき、刺されてそのまま死ねばよかったんだ……」
岡部「それが俺にはふさわしい……そうだ」ダッ
紅莉栖「岡部ッ!」
岡部「そうだ、今からでも遅くはない、こんな俺は今すぐにでも死んでしまえばいい……」包丁ツカミ
岡部「うおああああああああ!!」
まゆり「オカリン! そんなことしちゃだめだよ!」
岡部「まゆり……は、ははそうだよな」
岡部「こんな簡単に死んじゃだめだよな」
まゆり「えっ……」
岡部「俺は何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も」
岡部「まゆりを死なせたんだ」
岡部「俺が余計なことをしたせいで……っ!」
岡部「そうだ……もっと苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで」
岡部「それから死ぬべきなんだッ!」腕ザクー
岡部「ぐ、ぐああああああああ!!!!!」ザクザクザクザク
紅莉栖「きゃああああああああ!!!!!」
ダル「地獄か」
ダル「あのあとオカリンは騒ぎを聞きつけたミスターブラウンによって取り押さえられたお」
ダル「んでもってなんで僕が正座させられているかって?」
ダル「牧瀬氏にボタンのことがバレたからだお」
ダル「君のように勘のいいガキは――」
紅莉栖「前頭葉をスムージーにされる準備が整ったみたいね?」
ダル「ほんっとすいませんでした」
紅莉栖「とりあえず橋田の処分は後で決めるとして、そこの超ネガティブな岡部をどうにかしなさいよ」
岡部「んんんー!」
まゆり「どうどう、どうどうだよオカリン」
ダル「いやそれがノリと勢いで作ったから解除ボタンがなくてですねはい」
ダル「だからもとに戻すのは不可能っつーか、てゆーか覆水盆に返らず?」
紅莉栖「まゆり、奥からノコギリ取ってきてくれる?」
ダル「あっちょまって」
ダル「だからもう一度オカリンにとってオカリンはいい存在だと認識させれば」
ダル「元に戻るはずなんだぜ」キリッ
紅莉栖「」エロゲパリーン
ダル「ああああああああああ!?!?」
紅莉栖「次ふざけるたびに二枚ずついくわよ?」ニコ
ダル「真面目にやります」
ダル「だから要するに>>34すればオカリンは元に戻るはずだお……」
ダル(それがどうしてこうなった)
ダル(もうやけだお)
ダル「オカリンをゲル状にすれば元に戻るはずだお……」
紅莉栖「そう……」
こうして10年の時が経ち、牧瀬氏はタイムマシンを完成させた
しかも搭乗者は必ずゼリーマンになるタイプの凶悪なやつをだ
そしてそれの初始動の日
なぜか僕がそこに放り込まれた
女の恨みって怖い、やっぱり二次元が最高です、改めてそう思った
ありえないGが肉体にかかり、意識が薄れゆく今となっては
すべてが遅すぎたのだが……
『実験結果、エラー。ヒューマンイズデッド。ミスマッチ。 』
BADEND
でも性格はルカ子っぽくなった
掲載元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1467921283/
Entry ⇒ 2016.07.14 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (0)
紅莉栖「シュタインズ・ゲート・ゼロが発売&アニメ化されるけど」岡部「ほう?」
岡部「そ、そうだな」
紅莉栖「岡部は精神がおかしくなった状態からスタート」
岡部「うむ……」
紅莉栖「世界は第三次世界大戦へと突き進む」
岡部「らしいな」
紅莉栖「夢も希望も無いわね」
紅莉栖「だってこの顔見てよ! あんた、死神みたいな顔してるわよ」
岡部「白衣でないのは気に食わんが、このダークな雰囲気こそ俺の理想とする狂気のマッドサイエンティスト……ククク」
紅莉栖「ちなみに正面に立ってる赤毛の女の子は私じゃないわ。椎名かがりさん」
岡部「ゼロのキーパーソンだな」
紅莉栖「@ちゃんでは、私とかがりさんの血縁的関係を指摘してるレスがあったけど、あれってどうなのかしら」
岡部「つまり、お前の離婚した母親が別の男と再婚して子どもを作る可能性か?」
ダル「腹違いの妹とか、胸が熱くなるだろJK」
紅莉栖「橋田はいいわよね、相変わらず超人的スペックをフル活用するわけだし」
岡部「こいつはウィザード級のスーパーハカーだからな」
ダル「ハカーじゃなくてハッカーだろJK」
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira089023.jpg
紅莉栖「は、はぁ!? 別に岡部といつもつかず離れず一緒に居ることができても嬉しくなんかないから!」
岡部「お、おう」
紅莉栖「それに、それは私じゃなくてAmadeusでしょ。私の2010年3月時点の記憶を持った、別人格の存在よ」
紅莉栖「岡部、Amadeusの私に鼻の下を伸ばしたり、橋田にHENTAI行為をさせるようなことがあったら、脳ミソに電極ぶっさすからね」
岡部「わかっている……」
岡部「α世界線で愛した女を見捨て、β世界線でこの手で自ら刺し殺した存在」
紅莉栖「あっ……」
岡部「Amadeusと対話しても思い出すのはおそらく、お前の体温と、血の臭いと、そして『助けて』という断末魔だ」
紅莉栖「……ごめん」
岡部「なぜ謝る? むしろお前は怒るべきだ。なぜ二度目の救出へと向かわなかったのかと」
紅莉栖「もう、この話やめましょう」ウルウル
岡部「いや、そうはいかない。結局、俺は一度『逃げた』のだからな」
まゆり「オカリンは悪くないよ……全部まゆしぃのせいだよ……」
紅莉栖「ま、まゆり!? いつから居たの……」
まゆり「だから、何も知らないまゆしぃがみんなの足を引っ張っちゃったんだよね……」
まゆり「ごめんね、クリスちゃん。ごめんね、オカリン……」グスッ
紅莉栖「そ、それは違うわ! 結局、オペレーション・スクルドを発案するためにはまゆりの愛情が必要だったはずだから!」
岡部「だが、俺は1年も経たずしてまゆりを失うことになる……少なくとも、ドラマCDβでは」
岡部「α世界を何度も繰り返してようやくまゆりを救ったのに、だ。まゆりは17歳にして因果の輪から外れた存在になってしまうんだ」
紅莉栖「だったら、それを救うのは鳳凰院凶真しかいないでしょ!」
岡部「"鳳凰院凶真"? なんだその厨二病は。遊びは終わったんだよ……」
まゆり「……オカリンッ!!」
バシーン!!
岡部「正直、こんな感じで冗談として話さないと、内容が重すぎて胃もたれを起こしてしまうからな……」
まゆり「まゆしぃね、今回のシュタインズ・ゲート・ゼロのためにビンタの練習をしてきたのです♪」
紅莉栖「たくましいわね、まゆり」
岡部「アニメ組には全く伝わらない話になってしまったな」
まゆり「でもねー、アニメでまゆしぃの死んじゃうシーンがてんこ盛りだったから、正ヒロインになるためにもクリスちゃんの死にはもっと重い意味があってもいいと思うのです」
紅莉栖「た、たしかにアニメではαで消滅する私が描かれたり、ドラマCDαで補完されたりしたけど、βで岡部に刺殺される私についてはそんなでもなかったわね……」
ダル「ドクター中鉢に全部持っていかれちゃった感あるよな」
岡部「7月28日に行くたびにザ・ゾンビは生き返っていたしな」
紅莉栖「ヒロイン的な意味ではここらでちゃんと死んでおく必要があるのかしら……」
紅莉栖「せ、先輩!!」
岡部「自己紹介ぐらいしろ、ロリっ娘。一応新キャラなのだからな」
真帆「あら、でも無印アニメでも紅莉栖のケータイにメールの送り主として登場していたはずだけど」
岡部「わかるかそんなもん!」
ダル「ニヤ動でアニメ始まったら、『この辺に真帆↓』職人が現れそうな予感」
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira089024.jpg
真帆「実際、矢作さんにはそういう依頼があったんじゃないかしら……」
紅莉栖「私の先輩です」
真帆「アメリカ生まれアメリカ育ちだけど、両親も祖父母もDNA的には生粋の沖縄系日本人よ」
真帆「詳しくはこっちのサイトを見て頂戴」
http://steinsgate0.jp/cast/
ダル「そして合法ロリである」
岡部「加えて助手大好きっ娘だ」
由季「せっかく可愛いんですから、もっとオシャレに気を使うといいと思いますよ」
真帆「好き勝手言うな! 訴えるわよ!」
ダル「あ、阿万音氏、いらっしゃいなんだぜ……」
由季「お邪魔します、橋田さん♪」
ダル「ちょ、オカリン、まだお付き合いはしてないのだぜ……」
まゆり「でもデートはしたんだよねー♪」
由季「橋田さん……やっぱり、私みたいな女の子、嫌いですよね……」
ダル「い、いや、そんなことは、ないっつーか……」
鈴羽「父……兄さん。あたしのためにももっと頑張ってよね」
由季「あ、あれ、鈴羽さんが開発室の奥から……」
鈴羽「おっはーとか言わないほうだよ」
紅莉栖「私の事を嫌ってないほうよね」
鈴羽「むしろ、あたしのミッションは牧瀬紅莉栖を救うことだからね」
まゆり「スズさん、まゆしぃの、ううん、私のお願いを聞いてくれてありがとうね……」
鈴羽「まゆねえさんはまゆねえさんだから、気にしないで」
ダル「ちなみに鈴羽は僕の妹じゃなくて、本当は娘なんだお!」
由季「あ、あれ、突発性難聴が……」
ダル「毎日ショートケーキを買い食いするくらいの甘党だってこと、父さん知ってるお」
鈴羽「は、恥ずかしいから言わないでよ……」
ダル「このシュタインズ・ゲート・ゼロにはたくさん詰まってるはずだお!!」
ダル「娘に背中を流してもらったり……」
ダル「エロゲを覚えた鈴羽にご奉仕してもらったり……」
ダル「巫女コスに挑戦してもらったり……」
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira089025.jpg
ダル「全裸の鈴羽とレスリングしたり……」
ダル「はぁはぁ……想像するだけで興奮が収まらないだろふざけんな!!!」
岡部「(どうして由季さんはこんなやつに惚れてるんだ……?)」
まゆり「フブキちゃんはね、無印原作の時から名前が出てたし、アニメにもまゆしぃの友達として名前だけ登場してたのです」
岡部「立ち絵が出るのに5,6年かかったキャラか……」
由季「かえではフェノグラムでまゆりちゃんにメールしてるよね」
ダル「ゼロではフブキ氏、カエデ氏ルートも完備されてるはず」
岡部「いや……どうなんだろうな。たしかにフブキと俺にはとある共通項があるのだが、そのエンドはどう考えてもバッドなんだが」
真帆「そう言えばレスキネン教授が中瀬さんと岡部さんの仲を煽ったりしてたわね」
岡部「俺はレスキネン教授に近づくことにした。紅莉栖の面影を追いかけるためにな」
真帆「岡部さんって、一途というかなんというか……」
ダル「まぁ、オカリンでもヴィクコンに行くのは難しいと思われ」
まゆり「たしか、中の人はスピードワゴンさんだよねー。クリスちゃんのJOJOネタもさく裂かなー?」
岡部「いや、助手はネラーだがコピペとしてしかJOJOを知らないクチだからな」
紅莉栖「ネラー言うな!」
真帆「大丈夫よ、Amadeusもネラーらしいから」
紅莉栖「私が死んだ後でもHDDは全力稼働中なんですねわかります……」
ダル「ふぅー、僕のエロゲフォルダに世界最高峰の暗号化を施しておいてよかったお」
紅莉栖「えっと……」
真帆「うーんと……」
岡部「そんなやつ、小説にいたか?」
紅莉栖「居るにはいたけど、正直そんなに登場してないのよね……」
真帆「もしかしたらゼロでは、ヴィクコンとペンタゴンやCIAを結ぶ陰謀の重要人物なのかしら……」
岡部「人工リーディングシュタイナーの開発に関係が……?」
鈴羽「精神生理学研究所って言ったら、どっちかって言うとギガロマニアックス方面だもんね」
真帆「何の意味が……」
岡部「ドラマCDでは比屋定真帆はラボメンナンバー009になっていたわけだが、そこら辺どうなんだろうな」
紅莉栖「私が死んじゃってるから、真帆先輩レベルの頭脳がないとタイムマシンは完成しないと思われ」
ダル「ん?」
岡部「お?」
紅莉栖「あっ……と、思われるわ!」
真帆「嫌でも岡部さんに協力するわよ。紅莉栖を助けるためだもの」
ダル「ってことは、真帆たんルートエンドでは、2025年に死ぬ予定のオカリンを愛の力で救出して二人はエデンの園へ、でおk?」
紅莉栖「うーん、β未来の岡部は岡部であって岡部でないから、それでいいんじゃないかしら」
岡部「おい、勝手に話を進めるな!」
岡部「いやいや、きっと今回のまゆりエンドも用意されているはずだ! 作業着の立ち絵もあったしな!」
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紅莉栖「でもあれってどう考えても悲惨な未来を暗示してるわよね……あのまゆりが作業着よ?」
岡部「うっ……」
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岡部「萌郁があれだけ傷だらけになるシーンと言えば小説ではあの辺りだが、つまりそれ以降のシナリオが発生しているということだよな」
紅莉栖「桐生さん、βでもラウンダーなのよね? ラボの味方に寝返るようなことはあるのかしら」
岡部「ふむ。つまり二重スパイ状態か。それにはFB、ミスターブラウンの動向が重要だな」
ダル「綯ちゃん氏の未来も、私、気になります!」
岡部「そもそも萌郁は自分の居場所が欲しいだけだったのだ。各勢力が台頭して混乱状態になってしまえば、店長と共に我が未来ガジェット研究所サイドへとつくこともある……といいんだがな」
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岡部「力士シール? なんだそれは」
ダル「えっ、オカリン、カオチャやってないの?」
岡部「かおちゃ……?」
まゆり「カオスチャイルドだよー、オカリン」
鈴羽「まあ、時代も世界線も違うし、今までも他作品と絡むことは少なかったから気にしなくてもいいんだろうけど」
鈴羽「あたしはどんな軍隊からも守ってみせるよ。このラボを」
岡部「……頼もしい限りだ」
https://www.youtube.com/watch?t=143&v=0getIXnq7xA
岡部「崩壊した中央通りか……カオヘを思い出すな」
ダル「おおぉ……イントロからして神曲な件」
紅莉栖「黒岡部もかっこいいわね……」
由季「冬仕様のラボメン衣装も素敵ですね。ゼロでは衣装がいっぱい変わるみたいで楽しみです」
鈴羽「雪が降ってるのに袖をまくってる兄さん、ちょっと恥ずかしいよ」
ダル「んほぉーーーーッ!!! フェイリスたん可愛すぎだろーーーー!!!!」
ダル「あの肉球で全身をくまなくモフモフされたいお……はぁはぁ」
紅莉栖「黙れHENTAI!」
まゆり「るかくん可愛いねー♪」
鈴羽「なんかあたしがいっぱいいるね」
ダル「おぉ、阿万音氏のどや顔……」
由季「そしてかがりさんからのうーぱですね……」
岡部「かがりのところで『神さえも欺くロジック』か……気になるな」
岡部「ついに俺もガラケーを卒業してスマホに変えたか」
まゆり「最後の、ダルくんとオカリンとまゆしぃのところは、2010年8月21日かな?」
岡部「無印アニメのこのシーンにつながる、ということだろうな」
紅莉栖「それじゃ、想定科学ADV恒例の、ネタバレ歌詞の分析でもしましょうか」
ダル「ほい。Amadeus(曲名)の歌詞だお」
明日の天気も
知らぬままがいいと 傘持たず
涙の雨なら
優し過ぎる嘘に 書き換えた
箱に閉じ込めた 空の断片が
未来のパズルに はまってくれない
無限回の推論は ノイズ吐き出して
神さえも欺く ロジック
約束のあの場所へ
僕らは 宇宙のまだ知らない
ゼロのゲート開くよ
全ては粒となり 再生する
それなら 途切れそうな意識も
繋ぎ止めてみせるよ
あの時間 あの場所で
君の時が もう一度 始まる
紅莉栖「え、どうして?」
まゆり「まゆしぃはすっごい雨女なので、いつもオカリンにビニール傘を買ってもらってるのです(フェノグラム)」
真帆「優し過ぎる嘘、っていうのは、岡部さんよね。そりゃ、内容が内容だから正直に言えるわけないもの」
岡部「フゥーハハハ! 俺こそが牧瀬紅莉栖を殺害したのだー、などと言えるわけがないだろうが」
紅莉栖「自分を傷つけるような冗談はやめて」
岡部「す、すまん……」
紅莉栖「己の普通はどうなっているんだ」
真帆「小説のタイトルから言ってパンドラでしょうね。つまり、つついたら第三次世界大戦が飛び出すもの」
ダル「あー、それってもしかして、アレ? 僕の秘密のバイトで預かった……」
岡部「だが、未来のパズルというのはなんのことだろうな」
紅莉栖「ゼロが過去でイチが未来というなら、今作の『ゼロ』の意味は、本来ならなかったことになったかつての世界線の未来、ってことなのかも」
鈴羽「あるいは、ゼロは数字じゃなくて、形としての閉時曲線のことかもね」
岡部「ウロボロス的円環という無限ループのことだな」
鈴羽「当然、過去の出来事が未来によって起因している状況下において、ループを脱出するためにはノイズが必要になる」
岡部「それこそがシュタインズ・ゲートへ至る唯一の鍵……オペレーション・スクルドだった、というわけだ」
岡部「あのノイズまみれのムービーメールが、その全貌を吐き出すためのな……」
紅莉栖「たぶん、鍵はその一つだけじゃない。もういくつか鍵が必要だったはずよ」
岡部「その鍵をそろえるのが今回のシュタインズ・ゲート・ゼロだ、というわけだな」
岡部「つまり、そういうことなのだろうな」
ダル「まあ、トゥルーエンドがハッピーエンドっつーかアニメや無印のあそこに繋がるってのは確定してるから安心してプレイできるお」
真帆「もしシュタインズ・ゲートが一本だけではないとしたら……バリエーションのあるシュタインズ・ゲートがあっても面白いかも知れないわね」
岡部「中々に楽しみではないか……ククク。この俺を満足させてみるがいい、シュタインズ・ゲート・ゼロッ!!」
紅莉栖「厨二病、乙」
まゆり「やっぱり鳳凰院凶真だねー♪」
シュタインズ・ゲートの
正統続編。11月19日発売。
Steins;Gate 0 シュタインズ・ゲート・ゼロ
公式サイト http://steinsgate0.jp/
そう、そこに『彼女』は今もいる―――
2015年11月19日発売
PS3,PS4 7,800円(税抜)/PS Vita 6,800円(税抜)
うちひしがれたオカリンとか心が痛んで見ていられそうにない……
というのはどうでもいいとして、
箱はシュレディンガーの猫の実験装置のことじゃないの?
ウッ…頭が……
あくまでもifストーリーだよね?
続編だけどオカリンと助手がチュッチュする世界とは別ってだけだよね?
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442819910/
Entry ⇒ 2016.07.07 | Category ⇒ STEINS;GATE | Comments (1)