楽「このゴリラ女!」千棘「だ、誰がウ ン チ ー コ ン グですって!?」楽「は!?」
1: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:03:34.62 ID:nwwUdEMwO
楽「ちょ、ちょっと待てよ!! 俺はそんな事、一言も……」
千棘「いいや、言ったわよ!! この耳でちゃんと聞いたんだから!!」
楽「だ、大体なんだよそのウンチーコングって……」
千棘「ウンチーコングじゃなくてウ ン チ ー コ ン グよ!!! 2度と間違えないで!!!」
楽「」
千棘「いいや、言ったわよ!! この耳でちゃんと聞いたんだから!!」
楽「だ、大体なんだよそのウンチーコングって……」
千棘「ウンチーコングじゃなくてウ ン チ ー コ ン グよ!!! 2度と間違えないで!!!」
楽「」
2: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:04:37.17 ID:xMEmvUla0
ハデス「ちょっとちょっとそこのお二人さぁ~ん!!」
楽・千棘「うわぁ!!?」
ハデス「おぉっと!! そんなに驚かなくてもい~いじゃない!!」
楽「だ、誰だあのおっさん……お前の知り合いか?」ヒソヒソ
千棘「し、知らないわよあんな人。 あんたのとこのじゃないの?」ヒソヒソ
楽「いや、うちにはあんなやついねぇよ」ヒソヒソ
ハデス「ヒソヒソ話してるとこも~し訳ないんだけどぉ! ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
千棘「聞きたいこと……?」
楽「なんすか?」
ハデス「ウ ン チ ー コ ン グって知ってる!!?」
楽「……は?」
楽・千棘「うわぁ!!?」
ハデス「おぉっと!! そんなに驚かなくてもい~いじゃない!!」
楽「だ、誰だあのおっさん……お前の知り合いか?」ヒソヒソ
千棘「し、知らないわよあんな人。 あんたのとこのじゃないの?」ヒソヒソ
楽「いや、うちにはあんなやついねぇよ」ヒソヒソ
ハデス「ヒソヒソ話してるとこも~し訳ないんだけどぉ! ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
千棘「聞きたいこと……?」
楽「なんすか?」
ハデス「ウ ン チ ー コ ン グって知ってる!!?」
楽「……は?」
3: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:05:15.02 ID:xMEmvUla0
千棘「知ってるも何も、このもやしがたった今私に言ったばかりよ!!」
楽「だから言ってねぇって!!」
ハデス「おっとぉ~もやしくん、それは良くないねぇ~」
楽「俺はゴリラ女って言ったんだよ!!」
千棘「あ!! またウ ン チ ー コ ン グって言った!!」
ハデス「うん! おじさんも今ちゃあ~んと聞いたよ~?」
楽(こいつら耳おかしいんじゃねえのか?)
楽「だから言ってねぇって!!」
ハデス「おっとぉ~もやしくん、それは良くないねぇ~」
楽「俺はゴリラ女って言ったんだよ!!」
千棘「あ!! またウ ン チ ー コ ン グって言った!!」
ハデス「うん! おじさんも今ちゃあ~んと聞いたよ~?」
楽(こいつら耳おかしいんじゃねえのか?)
4: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:05:44.43 ID:xMEmvUla0
楽「まぁ……じゃあ俺がマジでウンチーコングって言ってたとしよう」
千棘「だからウ ン チ ー コ ン グだってば!!」
楽「どう違うんだよウンチーコングとウンチーコングは!!」
ハデス「ウンチーコングとウ ン チ ー コ ン グだよ!!」
楽「いや、だから同じじゃん!!」
千棘「だからウ ン チ ー コ ン グだってば!!」
楽「どう違うんだよウンチーコングとウンチーコングは!!」
ハデス「ウンチーコングとウ ン チ ー コ ン グだよ!!」
楽「いや、だから同じじゃん!!」
5: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:06:29.94 ID:xMEmvUla0
楽「まぁいいやそんなのは……兎に角その……一体なんなんですか? その……」
楽「ウ ン チ ー コ ン グっていうのは……」
千棘「やっと言えるようになったわね」
楽(なんとなく分かったぞ、間隔をあけりゃいいんだな)
ハデス「よくぞ聞いてくれました!!」
ハデス「説明しましょう!! ウ ン チ ー コ ン グというのはね……」
千棘「私知ってる!!」
ハデス「お!! なんだい、知ってたの!?」
ハデス「じゃあお嬢ちゃん、そこのもやしくんに説明して頂戴!!」
千棘「はい!! いい楽、ウ ン チ ー コ ン グっていうのは……」
楽「……」
千棘「ウ ン チ ー コ ン グよ」
楽「答えになってねぇよ!!」
楽「ウ ン チ ー コ ン グっていうのは……」
千棘「やっと言えるようになったわね」
楽(なんとなく分かったぞ、間隔をあけりゃいいんだな)
ハデス「よくぞ聞いてくれました!!」
ハデス「説明しましょう!! ウ ン チ ー コ ン グというのはね……」
千棘「私知ってる!!」
ハデス「お!! なんだい、知ってたの!?」
ハデス「じゃあお嬢ちゃん、そこのもやしくんに説明して頂戴!!」
千棘「はい!! いい楽、ウ ン チ ー コ ン グっていうのは……」
楽「……」
千棘「ウ ン チ ー コ ン グよ」
楽「答えになってねぇよ!!」
6: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:06:58.91 ID:xMEmvUla0
千棘「いやだって……説明も何もウ ン チ ー コ ン グはウ ン チ ー コ ン グだもの」
楽「……聞いた俺が馬鹿だった」
ハデス「そっかーお嬢ちゃんはウ ン チ ー コ ン グ知ってたかぁーよかったよかったー」
千棘「あの……所であなたは誰なんですか?」
ハデス「おおっと、自己紹介が遅れたねぇ」
ハデス「我が名は冥府神、ハデス!!」
ハデス「ま、ウ ン チ ー コ ン グおじさんと覚えてもらってもいいよぉ」
楽(冥府神……このおっさん、中二病か?)
楽「……聞いた俺が馬鹿だった」
ハデス「そっかーお嬢ちゃんはウ ン チ ー コ ン グ知ってたかぁーよかったよかったー」
千棘「あの……所であなたは誰なんですか?」
ハデス「おおっと、自己紹介が遅れたねぇ」
ハデス「我が名は冥府神、ハデス!!」
ハデス「ま、ウ ン チ ー コ ン グおじさんと覚えてもらってもいいよぉ」
楽(冥府神……このおっさん、中二病か?)
7: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:09:58.16 ID:xMEmvUla0
千棘「ところで……ハデスさんはどうして私達にこんなことを?」
ハデス「おじさんはねー、あちこちを周ってウ ン チ ー コ ン グを広めるのが仕事なんだよ」
楽(どんな仕事だよ)
千棘「ウ、ウ ン チ ー コ ン グを広める……? どうしてそんな事を……?」
ハデス「おじさん、一度死んじゃってるの」
千棘「えっ!!?」
ハデス「けどねー、ウ ン チ ー コ ン グを世に広めるのを条件に生き返らしてもらったんだよねー」
ハデス「……ウ ン チ ー コ ン グに」
楽「マジで何者なんだよウ ン チ ー コ ン グ!!」
ハデス「おじさんはねー、あちこちを周ってウ ン チ ー コ ン グを広めるのが仕事なんだよ」
楽(どんな仕事だよ)
千棘「ウ、ウ ン チ ー コ ン グを広める……? どうしてそんな事を……?」
ハデス「おじさん、一度死んじゃってるの」
千棘「えっ!!?」
ハデス「けどねー、ウ ン チ ー コ ン グを世に広めるのを条件に生き返らしてもらったんだよねー」
ハデス「……ウ ン チ ー コ ン グに」
楽「マジで何者なんだよウ ン チ ー コ ン グ!!」
8: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:10:32.55 ID:xMEmvUla0
楽(……って、何乗せられてんだ俺。 全部嘘に決まってんだろ)
楽「なぁ……千棘はどこでウ ン チ ー コ ン グを知ったんだ?」
千棘「私? 私は……昔ママが飼ってたからそれで……」
楽「飼ってたの!!?」
千棘「あとは……テ ン ク ー コ ン グとかも飼ってたわね」
楽「テンクーコング!!!?」
楽「なぁ……千棘はどこでウ ン チ ー コ ン グを知ったんだ?」
千棘「私? 私は……昔ママが飼ってたからそれで……」
楽「飼ってたの!!?」
千棘「あとは……テ ン ク ー コ ン グとかも飼ってたわね」
楽「テンクーコング!!!?」
9: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:11:13.17 ID:xMEmvUla0
鶫「一条楽!!」バッ
楽「おわっ!!? 鶫!!?」
ハデス「おおっと、かわいこちゃんがきたねえ」
鶫「貴様……お嬢に向かってウ ン チ ー コ ン グと言ったらしいな」
楽「……ゴリラっつったんだ」
鶫「それをウ ン チ ー コ ン グと言うんだ!!」
楽「言わねーよ!!」
楽「……!!」
楽(待てよ……)
楽「……ゴリラって知ってるか?」
鶫「ウ ン チ ー コ ン グぐらい知ってる」
楽(やっぱり)
楽「おわっ!!? 鶫!!?」
ハデス「おおっと、かわいこちゃんがきたねえ」
鶫「貴様……お嬢に向かってウ ン チ ー コ ン グと言ったらしいな」
楽「……ゴリラっつったんだ」
鶫「それをウ ン チ ー コ ン グと言うんだ!!」
楽「言わねーよ!!」
楽「……!!」
楽(待てよ……)
楽「……ゴリラって知ってるか?」
鶫「ウ ン チ ー コ ン グぐらい知ってる」
楽(やっぱり)
10: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:11:48.75 ID:xMEmvUla0
楽(なんだこれ、夢か? ゴリラがウ ン チ ー コ ン グになっちゃった夢か?)
楽(だったら早く覚めてくれよ……こんな夢見たくねぇよ……)
楽(つうことはゴリラの画像を見せたら……)
楽「なぁみんな、この画像の動物知ってるか?」
千棘「……何これ、ウ ン チ ー コ ン グに似てるけど」
ハデス「おじさん知らないねぇ~」
鶫「貴様じゃないのか?」
楽(やっぱり)
楽(だったら早く覚めてくれよ……こんな夢見たくねぇよ……)
楽(つうことはゴリラの画像を見せたら……)
楽「なぁみんな、この画像の動物知ってるか?」
千棘「……何これ、ウ ン チ ー コ ン グに似てるけど」
ハデス「おじさん知らないねぇ~」
鶫「貴様じゃないのか?」
楽(やっぱり)
11: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:12:27.12 ID:xMEmvUla0
竜之介「ぼっちゃああああああああん!!!」
楽「!!! りゅ、竜!!?」
楽「そ、そんなに慌ててどうしたんだよ!?」
竜之介「大変です!! 集英組が……集英組が……」
楽「集英組が……?」
竜之介「壊滅させられました!!! ウ ン チ ー コ ン グによって!!!」
楽「はあああああああああ!!!?」
楽「!!! りゅ、竜!!?」
楽「そ、そんなに慌ててどうしたんだよ!?」
竜之介「大変です!! 集英組が……集英組が……」
楽「集英組が……?」
竜之介「壊滅させられました!!! ウ ン チ ー コ ン グによって!!!」
楽「はあああああああああ!!!?」
12: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:13:01.93 ID:xMEmvUla0
ハデス「あーらら、そっちにも迷惑かけちゃってるのね、ウ ン チ ー コ ン グ」
楽「親父は!!? 親父は無事なのか!?」
竜之介「な、なんとか……しかし殆どのやつらが重傷で……」
楽「……」
楽「許さねえ……」
楽「絶対に許さねえぞ!!! ウ ン チ ー コ ン グ!!!」
楽「親父は!!? 親父は無事なのか!?」
竜之介「な、なんとか……しかし殆どのやつらが重傷で……」
楽「……」
楽「許さねえ……」
楽「絶対に許さねえぞ!!! ウ ン チ ー コ ン グ!!!」
13: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:13:37.12 ID:xMEmvUla0
千棘「……」
鶫「お嬢?」
千棘「鶫……私、あれを使っていいかしら?」
鶫「!!? いけませんお嬢!! あれを使うなんて……!!!」
楽「千棘……?」
千棘「私……あんたの事は嫌い」
千棘「だけど……あんたが悲しい思いをするのは……それ以上に嫌いなの!!」
サッ
楽「バナナ……?」
千棘「パパ……ママ……鶫……小咲ちゃん……みんな……」
千棘「……楽……ごめんね」
パクッ
鶫「お嬢おおおおおおおおお!!!!」
鶫「お嬢?」
千棘「鶫……私、あれを使っていいかしら?」
鶫「!!? いけませんお嬢!! あれを使うなんて……!!!」
楽「千棘……?」
千棘「私……あんたの事は嫌い」
千棘「だけど……あんたが悲しい思いをするのは……それ以上に嫌いなの!!」
サッ
楽「バナナ……?」
千棘「パパ……ママ……鶫……小咲ちゃん……みんな……」
千棘「……楽……ごめんね」
パクッ
鶫「お嬢おおおおおおおおお!!!!」
14: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:15:17.25 ID:xMEmvUla0
ビーハイブ
クロード「なんだとおおおおお!!? それは本当か!!?」
鶫『申し訳ございません!! 私がいながら……』
クロード「……起こってしまったものはしょうがない。 我々もすぐそっちに向かう!! その間、時間稼ぎを頼む!!!」
鶫『はいっ!!』プチッ
クロード「……」
クロード「なんてことだ……お嬢が……」
クロード「お嬢が……」
クロード「ウ ン チ ー コ ン グになってしまった……!!!」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!」
クロード「なんだとおおおおお!!? それは本当か!!?」
鶫『申し訳ございません!! 私がいながら……』
クロード「……起こってしまったものはしょうがない。 我々もすぐそっちに向かう!! その間、時間稼ぎを頼む!!!」
鶫『はいっ!!』プチッ
クロード「……」
クロード「なんてことだ……お嬢が……」
クロード「お嬢が……」
クロード「ウ ン チ ー コ ン グになってしまった……!!!」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!」
15: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:16:15.50 ID:xMEmvUla0
楽「ち、千棘ぇ!!?」
ハデス「おーー!! 凄い勢いで千棘ちゃんがウ ン チ ー コ ン グになっちゃったねぇ!!」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
鶫「お嬢の食べたあのバナナは……ゴリラと呼ばれる人しか食べることのできないバナナ……」
楽「今お前ゴリラって言ったよな!!? 堂々とゴリラって言ったよな!!? 本当はゴリラ知ってるよな!?」
鶫「その名も……ウ ン チ ー バ ナ ナ!!」
楽「スルー!!?」
鶫「一条楽!! どうしてくれる!! 貴様のせいだぞ!!!」
楽「お、俺のせいかぁ!?」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!」ダッ
鶫「!!! ま、待ってくださいお嬢!!!」
竜之介「あっちは……集英組のある方向……!!!」
竜之介「坊ちゃん!! 早く車に乗ってください!!!」
楽「お、おう!!!」
ハデス「おーー!! 凄い勢いで千棘ちゃんがウ ン チ ー コ ン グになっちゃったねぇ!!」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
鶫「お嬢の食べたあのバナナは……ゴリラと呼ばれる人しか食べることのできないバナナ……」
楽「今お前ゴリラって言ったよな!!? 堂々とゴリラって言ったよな!!? 本当はゴリラ知ってるよな!?」
鶫「その名も……ウ ン チ ー バ ナ ナ!!」
楽「スルー!!?」
鶫「一条楽!! どうしてくれる!! 貴様のせいだぞ!!!」
楽「お、俺のせいかぁ!?」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!」ダッ
鶫「!!! ま、待ってくださいお嬢!!!」
竜之介「あっちは……集英組のある方向……!!!」
竜之介「坊ちゃん!! 早く車に乗ってください!!!」
楽「お、おう!!!」
16: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:16:46.87 ID:xMEmvUla0
集英組跡地
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!(凡矢理をウンチにしてやる!!)」
「うわあああああああああ!!!」
一征「こいつぁやばいな……」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(貴様、それで我の真似のつもりか!!!!)」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!(凡矢理をウンチにしてやる!!)」
「うわあああああああああ!!!」
一征「こいつぁやばいな……」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(貴様、それで我の真似のつもりか!!!!)」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
17: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:17:26.72 ID:xMEmvUla0
竜之介「つきやした!!」
楽「おし……」
楽「……!!!」
楽「なんだよこれ……ボロボロじゃねえか……」
楽「本当にこれ……全部ウ ン チ ー コ ン グがやったのか?」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!」
楽「!!! 千棘!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!」
鶫「あれは……ウ ン チ ー コ ン グ!!!」
楽「あ、あれがウ ン チ ー コ ン グなのか!!?」
ハデス「ちょっとちょっとー、何やってるのウ ン チ ー コ ン グー」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(ハデス!! 我との約束を忘れたか!! ウ ン チ ー コ ン グの普及を永遠に続けろと!! )」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(ここ凡矢理での知名度はゼロじゃないか!! だからこうして我が直々にやって来てるんじゃないか!!)」
ハデス「やーごめんごめん、悪かったって」
ハデス「あ、でも今君が戦ってるお嬢ちゃんは君のこと知ってた見たいだよぉ?」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
千棘「……」
ウ ン チ ー コ ン グ「……ウウウ?(お嬢?)」
楽「おし……」
楽「……!!!」
楽「なんだよこれ……ボロボロじゃねえか……」
楽「本当にこれ……全部ウ ン チ ー コ ン グがやったのか?」
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!」
楽「!!! 千棘!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!」
鶫「あれは……ウ ン チ ー コ ン グ!!!」
楽「あ、あれがウ ン チ ー コ ン グなのか!!?」
ハデス「ちょっとちょっとー、何やってるのウ ン チ ー コ ン グー」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(ハデス!! 我との約束を忘れたか!! ウ ン チ ー コ ン グの普及を永遠に続けろと!! )」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(ここ凡矢理での知名度はゼロじゃないか!! だからこうして我が直々にやって来てるんじゃないか!!)」
ハデス「やーごめんごめん、悪かったって」
ハデス「あ、でも今君が戦ってるお嬢ちゃんは君のこと知ってた見たいだよぉ?」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
千棘「……」
ウ ン チ ー コ ン グ「……ウウウ?(お嬢?)」
18: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:17:52.58 ID:xMEmvUla0
回想
千棘『パパー! ママー!! 見て見てあれ!!』
花『あれは……』
アーデルト『ウ ン チ ー コ ン グじゃないか』
千棘『私、あの子飼いたい!!』
ウ ン チ ー コ ン グ『……』
クロード『ウ ン チ ー コ ン グが脱走しました!!!』
アーデルト『なに!?』
千棘『どこ!? どこに行ったのウ ン チ ー コ ン グ!!!』
千棘『ウ ン チ ー コ ン グウウウウウウウウウウ!!!!』
千棘『パパー! ママー!! 見て見てあれ!!』
花『あれは……』
アーデルト『ウ ン チ ー コ ン グじゃないか』
千棘『私、あの子飼いたい!!』
ウ ン チ ー コ ン グ『……』
クロード『ウ ン チ ー コ ン グが脱走しました!!!』
アーデルト『なに!?』
千棘『どこ!? どこに行ったのウ ン チ ー コ ン グ!!!』
千棘『ウ ン チ ー コ ン グウウウウウウウウウウ!!!!』
19: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:18:25.28 ID:xMEmvUla0
千棘「ウンコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウウ!!!(私と一緒にいてはお嬢が汚れてしまう……だから私は何も言わず去ってしまったのです)」
千棘「ウ、ウウ……ウンコォ……」ポロッ
楽「なんで泣いてるのかさっぱり分からなねえ……」
鶫「お嬢……」ポロッ
楽「なんで泣いてるの!!? 分かるの!!?」
ハデス「よーし千棘ちゃん!! 凄い勢いでウ ン チ ー コ ン グをウンチにしちゃえ!!」
20: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:19:03.21 ID:xMEmvUla0
キキー!!
楽「!!! 誰か来たぞ!!!」
クロード「……」
鶫「クロード様!!?」
クロード「安心しろ誠士郎、ウ ン チ ー コ ン グのスペシャリストを呼んだ」
クロード「……同行してくれた事に感謝する」
パープル「……虫酸が走るからやめろ」
楽「!!! 誰か来たぞ!!!」
クロード「……」
鶫「クロード様!!?」
クロード「安心しろ誠士郎、ウ ン チ ー コ ン グのスペシャリストを呼んだ」
クロード「……同行してくれた事に感謝する」
パープル「……虫酸が走るからやめろ」
21: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:19:39.04 ID:xMEmvUla0
鶫「彼が……ウ ン チ ー コ ン グのスペシャリスト?」
クロード「ああ」
パープル「俺は淫夢とかいう界隈が嫌いだ」
パープル「ウ ン チ ー コ ン グも淫夢の派生……淫夢は根絶やしにする!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(一緒にするでない!!)」
パープル「死ね!!」ドカァン!!!
クロード「これぞ……アンチウ ン チ ー コ ン グ兵器……東山キャノン!!!」
結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚……
楽「なんか弾から変な声が聞こえる!!」
ハデス「効果は抜群だろうねぇ!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」ドカアアアン!!!
クロード「なっ……素手で弾を破壊しただと!!?」
パープル「……俺はもう引退の身だ、帰る」
クロード「協力、感謝する」
鶫「ありがとうございました」
パープル「虫酸が走るからやめろ」
クロード「ああ」
パープル「俺は淫夢とかいう界隈が嫌いだ」
パープル「ウ ン チ ー コ ン グも淫夢の派生……淫夢は根絶やしにする!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウウウウウウ!!!!(一緒にするでない!!)」
パープル「死ね!!」ドカァン!!!
クロード「これぞ……アンチウ ン チ ー コ ン グ兵器……東山キャノン!!!」
結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚……
楽「なんか弾から変な声が聞こえる!!」
ハデス「効果は抜群だろうねぇ!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」ドカアアアン!!!
クロード「なっ……素手で弾を破壊しただと!!?」
パープル「……俺はもう引退の身だ、帰る」
クロード「協力、感謝する」
鶫「ありがとうございました」
パープル「虫酸が走るからやめろ」
22: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:20:28.13 ID:xMEmvUla0
千棘「ウウ……ウンコォ……」
楽「千棘がだいぶ押されてないか!!?」
ハデス「あらら、このまま負けちゃうかもねぇ」
?「そこまでです!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
楽「この声は……?」
?「これ以上の悪事は……」
小野寺「愛と正義の甘味の魔法少女……マジカルパティシエ小咲ちゃんが許しません!!!」
楽「お、小野寺ぁ!!!?」
楽「千棘がだいぶ押されてないか!!?」
ハデス「あらら、このまま負けちゃうかもねぇ」
?「そこまでです!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
楽「この声は……?」
?「これ以上の悪事は……」
小野寺「愛と正義の甘味の魔法少女……マジカルパティシエ小咲ちゃんが許しません!!!」
楽「お、小野寺ぁ!!!?」
23: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:20:57.10 ID:xMEmvUla0
ハデス「魔法少女とは驚いたねぇ!!」
ハデス「ところでウ ン チ ー コ ン グって知ってる!?」
楽「変な事聞くな!!」
小野寺「ご、ごめんなさい……知らないです……」
楽「よかったああああああ!!! 知らなくてよかったああああああ!!!」
小野寺「で、でも!! テ ン ク ー コ ン グは知ってますよ!!!」
楽「ああああああああああ!!!!」
ハデス「もやしくん、一喜一憂が激しいねぇ」
鶫「彼女は一体何者……?」
楽「鶫!!? 分からねえのか!!?」
ルーニン「小咲ちゃん……マジカルスイーツクッキングよ!」
小野寺「う、うん!!!」
ハデス「ところでウ ン チ ー コ ン グって知ってる!?」
楽「変な事聞くな!!」
小野寺「ご、ごめんなさい……知らないです……」
楽「よかったああああああ!!! 知らなくてよかったああああああ!!!」
小野寺「で、でも!! テ ン ク ー コ ン グは知ってますよ!!!」
楽「ああああああああああ!!!!」
ハデス「もやしくん、一喜一憂が激しいねぇ」
鶫「彼女は一体何者……?」
楽「鶫!!? 分からねえのか!!?」
ルーニン「小咲ちゃん……マジカルスイーツクッキングよ!」
小野寺「う、うん!!!」
24: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:21:24.32 ID:xMEmvUla0
小野寺「ウ ン チ ー コ ン グってなんなんだ~♪」
小野寺「ウ ン チ ー コ ン グはウ ン チ ー コ ン グ~♪」
小野寺「みんな大好きウ ン チ ー コ ン グ~♪」
小野寺「レンジでチンしてできあがり~♪」バーン!!
クロード「あ、あれは……」
ハデス「凄いねぇ!! あれこそ……」
ハデス「マジカルバナナ!!!」
これを食べるとウ ン チ ー コ ン グはみな正常になるのだ!!
小野寺「ウ ン チ ー コ ン グはウ ン チ ー コ ン グ~♪」
小野寺「みんな大好きウ ン チ ー コ ン グ~♪」
小野寺「レンジでチンしてできあがり~♪」バーン!!
クロード「あ、あれは……」
ハデス「凄いねぇ!! あれこそ……」
ハデス「マジカルバナナ!!!」
これを食べるとウ ン チ ー コ ン グはみな正常になるのだ!!
25: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:21:59.30 ID:xMEmvUla0
小野寺「さぁ、召し上がれ♪」
パクッ
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
楽「ウ ン チ ー コ ン グの口の中に入った!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウ……」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウ……」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウ……」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」ブリブリブリブリ!!!!
パクッ
ウ ン チ ー コ ン グ「!!!」
楽「ウ ン チ ー コ ン グの口の中に入った!!!」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウ……」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウ……」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウ……」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」ブリブリブリブリ!!!!
26: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:22:36.95 ID:xMEmvUla0
ウ ン チ ー コ ン グ「……」
楽「ウ ン チ ー コ ン グが大人しくなった!!」
千棘「……」
鶫「!!! お嬢が……元に戻った!!!」
千棘「う……うう……」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!」
千棘「ウ ン チ ー コ ン グウウウウウウウウウウ!!!」ギュウウ
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!(お嬢ーーーー!!!)」
一征「全く……とんでもないやつらだな」
楽「!! 親父、大丈夫か!!?」
一征「楽か、まぁなんとかな」
楽「そっか……よかった……」
ハデス「いやーごめんねウ ン チ ー コ ン グ。 もっとちゃんと布教活動やってれば君も暴れることなかったのにねぇ」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウ!!!(全くだ)」
楽「ウ ン チ ー コ ン グが大人しくなった!!」
千棘「……」
鶫「!!! お嬢が……元に戻った!!!」
千棘「う……うう……」
ウ ン チ ー コ ン グ「!!」
千棘「ウ ン チ ー コ ン グウウウウウウウウウウ!!!」ギュウウ
ウ ン チ ー コ ン グ「ウンコオオオオオオオオオオオオ!!!!(お嬢ーーーー!!!)」
一征「全く……とんでもないやつらだな」
楽「!! 親父、大丈夫か!!?」
一征「楽か、まぁなんとかな」
楽「そっか……よかった……」
ハデス「いやーごめんねウ ン チ ー コ ン グ。 もっとちゃんと布教活動やってれば君も暴れることなかったのにねぇ」
ウ ン チ ー コ ン グ「ウウウウウ!!!(全くだ)」
27: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:23:02.98 ID:xMEmvUla0
楽「……あれ」
千棘「どうしたの?」
楽「小野寺のバナナ食った時に出したウ ン チ ー コ ン グのウンチはどこに……」
ヒュー……
小野寺「!!!」
ドババババババババ!!!
小野寺「いやああああああああ!!!」
楽「うわあああああああ!!! 小野寺が顔中糞まみれだああああああ!!!」
千棘「どうしたの?」
楽「小野寺のバナナ食った時に出したウ ン チ ー コ ン グのウンチはどこに……」
ヒュー……
小野寺「!!!」
ドババババババババ!!!
小野寺「いやああああああああ!!!」
楽「うわあああああああ!!! 小野寺が顔中糞まみれだああああああ!!!」
28: ◆LYNKFR8PTk 2017/08/12(土) 22:23:29.70 ID:xMEmvUla0
楽「……っは!!!」
楽「……」
楽「……」
楽「そうだよな、夢に決まってるよなこんなん」
楽「大体なんなんだよウンチーコングって……」
『臨時ニュースです』
楽「ん?」
『今朝、動物園からウ ン チ ー コ ン グが脱走しました』
『また、彼の脱糞によりニコニコ本社は爆発した模様です』
楽「!!!?」
終わり
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/13(日) 09:18:41.69 ID:qtXqcqS+o
正直ワロタ
掲載元:https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1502543014/
Entry ⇒ 2017.10.20 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
ニセコイ ~もう一つの結末~
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:06:00.40 ID:6f8rteQc0
ある日、凡矢理市内の集英組にて……
俺の名は一条楽。
本年度から凡矢理市役所に勤める事になった どこにでもいる普通の新米公務員____のはずだった。
楽「よし、メシ出来たぞてめぇら~」
竜「あっ!お早うごぜぇやす坊ちゃん!!」
楽「おいおい一体誰が坊ちゃんだ?」
竜「あ!いけねぇ!すいませんいつもクセで…二代目!!」
俺の名は一条楽。
本年度から凡矢理市役所に勤める事になった どこにでもいる普通の新米公務員____のはずだった。
楽「よし、メシ出来たぞてめぇら~」
竜「あっ!お早うごぜぇやす坊ちゃん!!」
楽「おいおい一体誰が坊ちゃんだ?」
竜「あ!いけねぇ!すいませんいつもクセで…二代目!!」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:06:59.75 ID:6f8rteQc0
そう、俺はこの集英組を継いでしまったのだ。
あれだけ嫌がっていたにもかかわらず何故継いだのか、それを語ると長くなるが、俺はこの集英組の実態を知ってしまったのである。
話は変わるが、この凡矢理市は妊娠率が著しく低いのだ。
中高生の望まぬ妊娠が少ないと評価される反面、その妊娠率の低さが成人しているカップルや若い夫婦にまで及んでいることに問題がある。
凡矢理市にはある変わった裏の条例がある。それは____性行為時のコンドームの使用の絶対義務化である。たとえ子作りが目的である性行為であっても、コンドームを正しく使用することが絶対に義務付けられているのだ。これに違反した場合、凡矢理市内の病院で医療行為を受けた場合保険が適用されなくなり、支払う税金も通常の1.5倍となり、さらに生活保護受給の対象外となる。
男性は初めて夢精または射精を迎えた場合、女性は初めて生理が始まってから必ず役所に届けなければならず、届出を出さなかった場合厳しく罰せられてしまうのだ。
あれだけ嫌がっていたにもかかわらず何故継いだのか、それを語ると長くなるが、俺はこの集英組の実態を知ってしまったのである。
話は変わるが、この凡矢理市は妊娠率が著しく低いのだ。
中高生の望まぬ妊娠が少ないと評価される反面、その妊娠率の低さが成人しているカップルや若い夫婦にまで及んでいることに問題がある。
凡矢理市にはある変わった裏の条例がある。それは____性行為時のコンドームの使用の絶対義務化である。たとえ子作りが目的である性行為であっても、コンドームを正しく使用することが絶対に義務付けられているのだ。これに違反した場合、凡矢理市内の病院で医療行為を受けた場合保険が適用されなくなり、支払う税金も通常の1.5倍となり、さらに生活保護受給の対象外となる。
男性は初めて夢精または射精を迎えた場合、女性は初めて生理が始まってから必ず役所に届けなければならず、届出を出さなかった場合厳しく罰せられてしまうのだ。
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:09:51.50 ID:6f8rteQc0
組員A「うんんめぇぇー!!さすが坊ちゃんだー!!」
組員B「バカ!二代目だろ!!」
竜「おうおめぇら、しっかり食えよーー!」
この裏政策の影響から、凡矢理市内では中絶手術が行われておらず、産婦人科も休業状態となっているのだ。
それどころか凡矢理市内ではこの数年間で新しく子供が生まれておらず、女性の妊娠例すらなくなっていたのだ。
気づけば、凡矢理市からは子供たちの元気な声はおろか、新しい産声すら聞こえなかったのだ。
振り返ると、俺は高校時代千棘や小野寺といった魅力的な女子達に囲まれていたというのに、性行為とは無縁な高校生活を送っていたのだ。さらに、俺たちが三年の時、一年生の数が極端に少なかったのを思い出す。
組員B「バカ!二代目だろ!!」
竜「おうおめぇら、しっかり食えよーー!」
この裏政策の影響から、凡矢理市内では中絶手術が行われておらず、産婦人科も休業状態となっているのだ。
それどころか凡矢理市内ではこの数年間で新しく子供が生まれておらず、女性の妊娠例すらなくなっていたのだ。
気づけば、凡矢理市からは子供たちの元気な声はおろか、新しい産声すら聞こえなかったのだ。
振り返ると、俺は高校時代千棘や小野寺といった魅力的な女子達に囲まれていたというのに、性行為とは無縁な高校生活を送っていたのだ。さらに、俺たちが三年の時、一年生の数が極端に少なかったのを思い出す。
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:10:38.63 ID:6f8rteQc0
そして、俺が組を継いだ理由だが____俺は知ってしまったのだ。凡矢理市から子供達の無邪気な声を消し去ってしまった元凶を。
それは____この集英組だったのだ。
集英組の正体、それはこの街を裏から支配していたヤクザ以上に危険な思想集団だったのだ。
集英組と凡矢理市役所は内通しており、集英組はヤクザの体を装い裏でコンドームを製造し凡矢理市内へ流していた。凡矢理市内で販売されているコンドームのほとんどが集英組製のものだったのだ。
俺たちの街をこんなことにしていたのが俺の実家であったと知り、さらに市役所もそれに協力していたと知って、俺は気付けば辞表を出していた。
それは____この集英組だったのだ。
集英組の正体、それはこの街を裏から支配していたヤクザ以上に危険な思想集団だったのだ。
集英組と凡矢理市役所は内通しており、集英組はヤクザの体を装い裏でコンドームを製造し凡矢理市内へ流していた。凡矢理市内で販売されているコンドームのほとんどが集英組製のものだったのだ。
俺たちの街をこんなことにしていたのが俺の実家であったと知り、さらに市役所もそれに協力していたと知って、俺は気付けば辞表を出していた。
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:11:24.70 ID:6f8rteQc0
俺が組を継いだのは、そんな集英組を監視するためだ。もう親父の代とは違う。俺が組長である。
だから俺は、組の連中の面倒を見るという名目でこいつらを監視することにした。
竜「くうぅぅぅ~~~!! 二代目が立派になられて、天国の先代が泣いてやすぜ!」
楽「……そう……だな」
先代、つまり親父だか既にこの世にいない。
俺が二代目を襲名して間もなく、親父は海外にいるお袋と久しぶりにバカンスを楽しみたいと言い出したのだ。
老夫婦といえど久しく会わない男女がする行為といえば決まっている。だから俺は、親父の荷物の中に毒を塗ったコンドームを入れておいたのだ。
親父とお袋の死は旅行先の現地メディアでも報道され、コンドームに細工をしたこともあり性行為時の不慮の事故と伝えられた。
そういや、ビーハイブでも俺が二代目を継ぐタイミングで千棘の親父さんがなんか亡くなったらしい。んで、今はあのメガネ……クロードがボスをしているようだ。
だから俺は、組の連中の面倒を見るという名目でこいつらを監視することにした。
竜「くうぅぅぅ~~~!! 二代目が立派になられて、天国の先代が泣いてやすぜ!」
楽「……そう……だな」
先代、つまり親父だか既にこの世にいない。
俺が二代目を襲名して間もなく、親父は海外にいるお袋と久しぶりにバカンスを楽しみたいと言い出したのだ。
老夫婦といえど久しく会わない男女がする行為といえば決まっている。だから俺は、親父の荷物の中に毒を塗ったコンドームを入れておいたのだ。
親父とお袋の死は旅行先の現地メディアでも報道され、コンドームに細工をしたこともあり性行為時の不慮の事故と伝えられた。
そういや、ビーハイブでも俺が二代目を継ぐタイミングで千棘の親父さんがなんか亡くなったらしい。んで、今はあのメガネ……クロードがボスをしているようだ。
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:12:02.49 ID:6f8rteQc0
楽「さて、そろそろ出掛けるか」
組員「おや、二代目どちらへ?」
竜「ばっきゃろーー! 今日は大切な用事が」
組員「あ、そうでしたね」
楽「留守番頼むぞ」
竜「わかりやした!」
組員「おや、二代目どちらへ?」
竜「ばっきゃろーー! 今日は大切な用事が」
組員「あ、そうでしたね」
楽「留守番頼むぞ」
竜「わかりやした!」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:12:44.01 ID:6f8rteQc0
ちなみに、他の奴らがどうなったかというと……。
まず集だが、あいつももうこの世にはいない。集は教師になっていたのだが、赴任先の学校で青いツナギを着た良い男に無理矢理こいつのトイレに連れ込まれて直腸に棒状のものを突き刺され、その時の出血多量によるショック死で亡くなった。
集の恋人であった宮本だが、この事件をきっかけに翻訳家から小説家に転身。男性同士の禁断の愛をテーマとした官能小説を書くもイマイチ売れず、敷居が低そうとエロノベル作家になるも腐女子から心ないバッシングを受け、心身を病んで帰らぬ人となったのだ。
まず集だが、あいつももうこの世にはいない。集は教師になっていたのだが、赴任先の学校で青いツナギを着た良い男に無理矢理こいつのトイレに連れ込まれて直腸に棒状のものを突き刺され、その時の出血多量によるショック死で亡くなった。
集の恋人であった宮本だが、この事件をきっかけに翻訳家から小説家に転身。男性同士の禁断の愛をテーマとした官能小説を書くもイマイチ売れず、敷居が低そうとエロノベル作家になるも腐女子から心ないバッシングを受け、心身を病んで帰らぬ人となったのだ。
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:13:22.07 ID:6f8rteQc0
春ちゃんは和菓子屋おのでらを継ぐが、不況の煽りを受けて店は閉店。金を稼ぐために両親の反対を押し切って風俗嬢を転身するも、勤務する店が暴力団関係者との紛争に巻き込まれ命を落とした。
春ちゃんの友達だった風ちゃんは風俗雑記の記者をしていて、春ちゃんの取材のためにその場に居合わせていたが不運にもその紛争に巻き込まれたのだ。
あとポーラだが、大学院に進んだのだがなんか死んだらしい。
そして、羽姉ちゃんだが、日本に向かうため飛行機に乗っていたがその飛行機がバスジャックに遭ってしまい墜落し、命を落とした。
春ちゃんの友達だった風ちゃんは風俗雑記の記者をしていて、春ちゃんの取材のためにその場に居合わせていたが不運にもその紛争に巻き込まれたのだ。
あとポーラだが、大学院に進んだのだがなんか死んだらしい。
そして、羽姉ちゃんだが、日本に向かうため飛行機に乗っていたがその飛行機がバスジャックに遭ってしまい墜落し、命を落とした。
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:14:16.67 ID:6f8rteQc0
鶫はひどいもので、日本に向かうため現地の空港に向かう車の中でうんこを漏らしてしまい、運転手にそのことを笑われたのがきっかけで口論となり、運転手が無茶苦茶な運転をした結果前方を走る大型車と激突し爆炎に飲まれてこの世から消えた。
橘は確か、千葉県の人とお見合いをしていた席で、そのお見合いの会場となっていた料亭で大規模な火災が起こり死亡したという。本田さんもそれに巻き込まれたみたいだ。
橘は確か、千葉県の人とお見合いをしていた席で、そのお見合いの会場となっていた料亭で大規模な火災が起こり死亡したという。本田さんもそれに巻き込まれたみたいだ。
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:15:00.19 ID:6f8rteQc0
そして____小野寺だが、彼女とは高校卒業後連絡を取っていない。
小野寺は高校卒業と同時に姿を消し、音信不通の状態である。千棘との結婚式の招待状を出そうにも今どこにいるのか、消息すらわからないのだ。
だが、俺にはもう小野寺という存在すらどうでもいいのかもしれない。
なぜなら___
小野寺は高校卒業と同時に姿を消し、音信不通の状態である。千棘との結婚式の招待状を出そうにも今どこにいるのか、消息すらわからないのだ。
だが、俺にはもう小野寺という存在すらどうでもいいのかもしれない。
なぜなら___
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:15:48.84 ID:6f8rteQc0
千棘「遅い!5分遅刻よ!…久しぶり」
楽「…おう…」
千棘「前に会ったのって何か月前だっけ?」
楽「確か半年以上前だな。お前が忙し過ぎんだよ」
千棘「何よ!あんただって試験とか就職とかで相手してくれなかったクセに…!」
楽「あーあーそれはまぁ…そうだな。それにしてもまさかお前が世界で活躍するファッションデザイナーになるとはなぁ」
千棘「何よ、意外?」
楽「意外っちゅーかなんちゅーか、確かに昔つぐみ相手に色々やってはいたけど、少しはゆっくり出来んのか?」
千棘「あんまり。明後日には戻らないといけないから」
楽「まるっきり華さんみたいな生活してんな」
千棘「結婚したら一緒に住めるんだからもう少しの我慢よ!だからほら、急がないと……例のアレ持ってきた?」
楽「おう」
楽?千棘「ザクシャインラブ!」
楽「…おう…」
千棘「前に会ったのって何か月前だっけ?」
楽「確か半年以上前だな。お前が忙し過ぎんだよ」
千棘「何よ!あんただって試験とか就職とかで相手してくれなかったクセに…!」
楽「あーあーそれはまぁ…そうだな。それにしてもまさかお前が世界で活躍するファッションデザイナーになるとはなぁ」
千棘「何よ、意外?」
楽「意外っちゅーかなんちゅーか、確かに昔つぐみ相手に色々やってはいたけど、少しはゆっくり出来んのか?」
千棘「あんまり。明後日には戻らないといけないから」
楽「まるっきり華さんみたいな生活してんな」
千棘「結婚したら一緒に住めるんだからもう少しの我慢よ!だからほら、急がないと……例のアレ持ってきた?」
楽「おう」
楽?千棘「ザクシャインラブ!」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 03:16:38.03 ID:6f8rteQc0
____そうだ。俺にはかけがえのない人がいるんだ。
千棘という、かけがえのない人が。
楽「愛してるぞ……千棘///」
千棘「私もよ、楽///」
楽「なぜか俺らの周りの友達はみんないなくなっちまったけど……俺にはもう、千棘しかいねえ……いや、千棘がいるんだ!」
千棘「楽……ううん、私たちはもう二人だけじゃないよ」
楽「えっ………」
千棘「たくさん欲しいな……楽との子供///」
楽「千棘………///」
???「そっか……また、コンドームを義務付けないとね………ズルいよ、千棘ちゃん………」
END
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/17(水) 07:55:18.79 ID:Xk1NNKXlO
乙!
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1471370760/
Entry ⇒ 2016.08.19 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
楽「今日は結婚式か……」コナン「変だなあ」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:02:47.10 ID:UQ0XX4FQ0
楽「今日は結婚式か」
千刺「ここまで長かったわね!」
コナン「お邪魔しま~す」
欄「お呼ばれしちゃってすいません」
小野寺「今日のために頑張って作ったケーキだよ!」
千刺「ここまで長かったわね!」
コナン「お邪魔しま~す」
欄「お呼ばれしちゃってすいません」
小野寺「今日のために頑張って作ったケーキだよ!」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:11:01.27 ID:UQ0XX4FQ0
「あなたたちは鈴木様のお客様でございますね?」
園子「感謝してよね。こんな結婚式に招待してあげたんだから」
コナン(出席者のほとんどが完全にヤのつく職業だがな)
楽「」
千刺「」
小野寺「」
蘭「あのパティシエの人可愛いね!」
園子「あの人は小野寺さん、昔新婦と新郎を取り合った中らしいわよ。今日のケーキも彼女が作ったらしいわ!」
コナン(おかしいな、そんな人たちの結婚式にわざわざ来たがるものなのか?それにわざわざ自分でケーキを作ってまで)
園子「感謝してよね。こんな結婚式に招待してあげたんだから」
コナン(出席者のほとんどが完全にヤのつく職業だがな)
楽「」
千刺「」
小野寺「」
蘭「あのパティシエの人可愛いね!」
園子「あの人は小野寺さん、昔新婦と新郎を取り合った中らしいわよ。今日のケーキも彼女が作ったらしいわ!」
コナン(おかしいな、そんな人たちの結婚式にわざわざ来たがるものなのか?それにわざわざ自分でケーキを作ってまで)
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:11:33.65 ID:UQ0XX4FQ0
>>2
すいませんミスです
すいませんミスです
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:14:57.85 ID:UQ0XX4FQ0
楽「キャーーーーーー!!」
コナン「どうしたの!お兄さん!!」
楽「ち、千刺が急に倒れて……」
コナン(これは、急いで手当しないと)
楽「……」
コナン「どうしたの!お兄さん!!」
楽「ち、千刺が急に倒れて……」
コナン(これは、急いで手当しないと)
楽「……」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:17:28.07 ID:UQ0XX4FQ0
コナン「救急車を呼んで!」
楽「え?」
コナン「早く!」
楽「え?」
コナン「早く!」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:26:09.02 ID:UQ0XX4FQ0
コナン(すぐに救急車は来た。しかし桐咲さんは精子をさまよっているらしい)
コナン「警察の人は!」
楽「呼べない……」
蘭「呼べないって、どういうことですか!!」
楽「しょうがないだろう、家の仕事を考えてくれ」
蘭「そう、ですか、しょうがない、ですよね」
コナン(いや呼べよ!)
楽「それにしてもこんな事件が起きるなんて、ひょっとしてうちの組の誰かが……」
コナン「警察の人は!」
楽「呼べない……」
蘭「呼べないって、どういうことですか!!」
楽「しょうがないだろう、家の仕事を考えてくれ」
蘭「そう、ですか、しょうがない、ですよね」
コナン(いや呼べよ!)
楽「それにしてもこんな事件が起きるなんて、ひょっとしてうちの組の誰かが……」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:36:38.50 ID:UQ0XX4FQ0
園子(眠り)「犯人はあなたよ小野寺さん!」
小野寺「……」
楽「そんな……」
蘭「どうして!どうしてこんなことを!」
小野寺「許せなかったんだよ」
楽「え?」
小野寺「一条くんは千刺ちゃん選んだ!それで納得しようとして!でも、あの出来事で吹っ切れたよ!」
楽『なあ小野寺、一緒にあのペンダント埋めに行かないか?』
小野寺「この人は私との思い出を私の目の前で踏みにじった!それが、それが許せなかったんだよ!」
楽「……」
小野寺「最初は一条くんを殺そうとして、でもできなかった。好き、だったから。だから」
小野寺「……」
楽「そんな……」
蘭「どうして!どうしてこんなことを!」
小野寺「許せなかったんだよ」
楽「え?」
小野寺「一条くんは千刺ちゃん選んだ!それで納得しようとして!でも、あの出来事で吹っ切れたよ!」
楽『なあ小野寺、一緒にあのペンダント埋めに行かないか?』
小野寺「この人は私との思い出を私の目の前で踏みにじった!それが、それが許せなかったんだよ!」
楽「……」
小野寺「最初は一条くんを殺そうとして、でもできなかった。好き、だったから。だから」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 19:47:45.87 ID:UQ0XX4FQ0
小野寺「こんなことしたんだもん、覚悟は出来てるよ」
ビーバイブ達「こいつがお嬢を!!」
コナン(麻酔銃は使っちまったし、キック力増強シューズだけで乗り切れるか?)
楽「こいつをここまで追い込んじまったのは俺だ。だから待ってくれ!」
小野寺「一条くん」
楽「俺にお前を助けさせちゃくれねえか。小野寺、俺も……お前の事好きだったからさ」
小野寺「一条くん……」
ビーバイブ達「こいつがお嬢を!!」
コナン(麻酔銃は使っちまったし、キック力増強シューズだけで乗り切れるか?)
楽「こいつをここまで追い込んじまったのは俺だ。だから待ってくれ!」
小野寺「一条くん」
楽「俺にお前を助けさせちゃくれねえか。小野寺、俺も……お前の事好きだったからさ」
小野寺「一条くん……」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 20:02:43.41 ID:UQ0XX4FQ0
コナン(え、何言ってrんだこの人?新婦死にかけてるのに)
蘭「いい人ね、あの人、あんな誠実な人見たことないわ」
ビーバイブ「へ、お嬢の選んだ男がそういうんじゃ仕方ねえな」
コナン「え?」
コナン(おかしい!どうなっている?)
楽(計画通り!小野寺、お前には死んでもらっちゃ困るんだよ。俺の二号としてな)
クロード「一条楽!ふざけるな!お嬢が今どんな状態か知っていながら、それでなおそんな世迷言を!」
楽「いや前好きだってことを行っただけで、それにこれは小野寺だけの責任じゃないし、それにいま千刺は関係ないだろ?」
クロード「そもそもこうなった原因は貴様だろうが!いま、今こそわかった諸悪の根源!貴様だ、一条楽!死ねぇ!」
コナン(散弾銃!)
コナン「みんな伏せろ!」
楽(全く無駄なことを 『ニセコイ ザ・ワールド』!!)
スタンド名『ニセコイ ザ・ワールド』
能力
楽と千刺に都合のいいように世界を改変する
意思が特に強く、尚且つ相性が悪いと聞かないことがある
コナン(な、散弾銃のたまが跳弾して撃った人に戻った……だと)
蘭「いい人ね、あの人、あんな誠実な人見たことないわ」
ビーバイブ「へ、お嬢の選んだ男がそういうんじゃ仕方ねえな」
コナン「え?」
コナン(おかしい!どうなっている?)
楽(計画通り!小野寺、お前には死んでもらっちゃ困るんだよ。俺の二号としてな)
クロード「一条楽!ふざけるな!お嬢が今どんな状態か知っていながら、それでなおそんな世迷言を!」
楽「いや前好きだってことを行っただけで、それにこれは小野寺だけの責任じゃないし、それにいま千刺は関係ないだろ?」
クロード「そもそもこうなった原因は貴様だろうが!いま、今こそわかった諸悪の根源!貴様だ、一条楽!死ねぇ!」
コナン(散弾銃!)
コナン「みんな伏せろ!」
楽(全く無駄なことを 『ニセコイ ザ・ワールド』!!)
スタンド名『ニセコイ ザ・ワールド』
能力
楽と千刺に都合のいいように世界を改変する
意思が特に強く、尚且つ相性が悪いと聞かないことがある
コナン(な、散弾銃のたまが跳弾して撃った人に戻った……だと)
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 20:19:01.60 ID:UQ0XX4FQ0
クロード「ぐは!はあはあ」
楽「やめましょう、クロードさん。今や俺たちは秀英組とビーバイブの長なんだ。このままじゃビーバイブ対集英組で戦争でも始めるつもりですか?」
楽(ここで千刺を手中に収めれば世界は俺を『楽』にさせてくれる。そのためにあんなゴリラ女と結婚する道を選んだというのに。あいつと結婚するのは嫌だが見てくれは悪くないからな)
集英組「全くクソ野郎だな最低だ最低」
蘭「そうよ最低よ最低」
アーカイブ「楽さんに誤ってください!今ならまだ間に合います!」
クロード(ここまでなのか……)
??「ふう~やれやれだぜ」
クロード「あなたは……ジョースター財団の客の!!」
承太郎「全くこっちはタダ飯食いに来ただけだっていうのにまさかこんなところにスタンド使いがいやがるとはな」
楽「やめましょう、クロードさん。今や俺たちは秀英組とビーバイブの長なんだ。このままじゃビーバイブ対集英組で戦争でも始めるつもりですか?」
楽(ここで千刺を手中に収めれば世界は俺を『楽』にさせてくれる。そのためにあんなゴリラ女と結婚する道を選んだというのに。あいつと結婚するのは嫌だが見てくれは悪くないからな)
集英組「全くクソ野郎だな最低だ最低」
蘭「そうよ最低よ最低」
アーカイブ「楽さんに誤ってください!今ならまだ間に合います!」
クロード(ここまでなのか……)
??「ふう~やれやれだぜ」
クロード「あなたは……ジョースター財団の客の!!」
承太郎「全くこっちはタダ飯食いに来ただけだっていうのにまさかこんなところにスタンド使いがいやがるとはな」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 20:22:18.67 ID:UQ0XX4FQ0
楽「な」
楽(まさかこいつ俺の『ニセコイ ザ・ワールド』が効かないだと!)
承太郎「だがこんなおれにもはき気のする「悪」はわかる!!
「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!
おめーの「スタンド」は被害者自身にも法律にも見えねえしわからねえ・・・
だから おれが裁く!」
楽「あ、あ」
承太郎「オララララオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
裁くのはおれの『スタンド』だッー!!」
楽「あああああ!」
一条楽 再起不能(リタイア)
コナン「なぁにこれぇ」
楽(まさかこいつ俺の『ニセコイ ザ・ワールド』が効かないだと!)
承太郎「だがこんなおれにもはき気のする「悪」はわかる!!
「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!
おめーの「スタンド」は被害者自身にも法律にも見えねえしわからねえ・・・
だから おれが裁く!」
楽「あ、あ」
承太郎「オララララオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
裁くのはおれの『スタンド』だッー!!」
楽「あああああ!」
一条楽 再起不能(リタイア)
コナン「なぁにこれぇ」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 20:31:57.37 ID:UQ0XX4FQ0
コナン(その後、秀英組やビーバイブの人たち、それに蘭も正気に戻った)
コナン(治療のために博士のスイッチで一条楽の精巣に入れ、精子を彷徨っていたが無事戻ってこれた)
コナン(桐咲さんは小野寺さんを罪に問わないらしい)
コナン(一条楽は桐咲さんが精巣から出た際のの痛みのショックで死んだ)
コナン「真実はいつも一つ!」
コナン(治療のために博士のスイッチで一条楽の精巣に入れ、精子を彷徨っていたが無事戻ってこれた)
コナン(桐咲さんは小野寺さんを罪に問わないらしい)
コナン(一条楽は桐咲さんが精巣から出た際のの痛みのショックで死んだ)
コナン「真実はいつも一つ!」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 20:33:02.34 ID:UQ0XX4FQ0
終わりもうちょっ上手く締めたかったうまくいかなかったわ。
その点ちゃんと締めたニセコイはすごいね
その点ちゃんと締めたニセコイはすごいね
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 20:34:09.76 ID:UQ0XX4FQ0
依頼出してくる
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/09(火) 21:45:24.61 ID:UQ0XX4FQ0
ジョースター財団ってなんだしスピードワゴン財団かジョースター家だったわすまん
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470736966/
Entry ⇒ 2016.08.14 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
楽「千棘ありがとう」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 10:33:24.43 ID:dSloQPPZ0
新婚旅行。
とあるフランスの美術館。
千棘「ここ一寸観てみたかったの…ふふ…楽と一緒にここを観られるなんて、今でも信じられないな。ホント夢みたい」
楽「そうか」
ドガーン!!
楽・千棘「「!?」」
見物客「テロだ―!!この美術館が襲撃されてるー!!!」
楽・千棘「「えっ!?」」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 11:01:45.17 ID:dSloQPPZ0
パパパパパパパパパァーーーン
楽「近いな……」
千棘「早く逃げ――――――あっ!!楽危ない!!」
パァン!
千棘「うぐっ!!」
楽「千棘…大丈夫か?」
千棘「うん…ちょっと掠っただけだから……」
楽「そうか」
千棘「大丈夫。楽は私が守るから」
楽「千棘ありがとう」
千棘「また来た!!楽!私の後ろに隠れて!!」
楽「おう!!」
ささっ
パアアアアアアアアアアアア――――ン!!!!
千棘「あがががががg――――・・・・」
パキュン……
武装集団の銃撃により、千棘は全身をハチの巣にされ、最期は頭をふっ飛ばされ絶命。
楽はその千棘の死体の下に潜り込み九死に一生を得る。
楽「ありがとう千棘…俺を護ってくれて。俺はお前の分までしっかりと誠実に生きてみせるから」うんうん
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 11:12:23.68 ID:dSloQPPZ0
その後。
今回の顛末が千棘サイドに発覚し、当然の如く激昂。問答無用のギャングとやくざとの全面戦争が始まる。
その結果。
そしてこの血で血を洗う仁義なき抗争は長期化、泥沼化し、互いに立て直しが極めて困難に鳴る迄に疲弊し、双方の組織は壊滅的なダメージを受ける。
そして楽はこの構想の発端である事を責められ、組を追われる立場となった。
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 11:18:57.74 ID:dSloQPPZ0
楽「くそっ。金も地位も女も全て失っちまった!!何で俺がこんな目に……」
楽「それもこれも全部千棘が……アイツ、ゴリラみてぇなナリしてるくせに、とっととおっ死んじまいやがって……お蔭でこっちはいい迷惑だよ」
楽「まったく…これからどうすれば――――――あっそうだ小野寺!小野寺ならこんな俺の気持ちを…誠実さを理解して受け入れてくれる!!やっぱり最初からあんな役立たずの弱虫ゴリラなんかじゃなく小野寺にしとけばよかったんだ!!」
楽「そうと決まれば…………そうだ。確かアイツ独立して店を構えてたな……そうと決まれb₋――――」
パパパパパパパパ―――――ン!!!!
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 11:32:11.69 ID:dSloQPPZ0
楽「ぐえっ!?」がく
楽「あっ…あっ……?」
カクカク…
楽「お…俺……撃たれ―――――死―――――」
パアン!!
ぐちゃっ!!
どちゃ…
楽「――――――――」
この時楽は怨讐のヒットマンと化した鶫に銃撃され、楽は千棘と同じ様に全身をハチの巣の様に撃たれ。最期は頭部をふっ飛ばされて絶命する。
とあるビルの屋上。
誠士郎「お嬢…仇は取りましたよ――――――」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 11:48:00.42 ID:dSloQPPZ0
とある洋菓子店。
小咲「……………………」
男「どうしたんだい小咲?さっきからテレビのニュースをじっと視て……ん?もしかしてこの殺された暴力団の人が気になるのかい?もしかして知ってる人とか?」
小咲「ううん。知らない人」
ふりふり
にこ
男「そうか…じゃあ早く今日の仕込みを始めようか。今日も忙しくなるぞ」
小咲「はい。あなた」
夫「と言っても、小咲は程々にな。なんたって君のお腹の中には、僕と君の大事な子どもがいるんだから」
小咲「はい……ねぇ…あなた――――」じ…
夫「ん?どうしたんだい?そんな神妙な顔して」
小咲「あなたが優しくて、誠実な人で…あなたと結婚して本当に良かった……」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 12:01:11.71 ID:dSloQPPZ0
夫「そうかな?僕は当たり前の事をやってるだけだけど……でも、小咲にそう言ってもらえて僕も嬉しいよ。改めて…ありがとう小咲…こんな僕と結婚してくれて」
小咲「ふふ……もうあなたったら///////でも私の嬉しい……」にこ
夫「さぁ今日も僕たちのお菓子を楽しみにしているお客様たちのために頑張ろう!」
小咲「はい。あなた」にこ
小咲(私はいい人に出会えて、その人と一緒にいいお店を持つ事が出来て・……今…とっても幸せです)
おしまい。
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 12:31:07.80 ID:dSloQPPZ0
原作最終回の余りの非道さにむしゃくしゃして書いた
なんとなく後悔というかナンでこんなのを書いたんだろうという
疑問は感じている
なんとなく後悔というかナンでこんなのを書いたんだろうという
疑問は感じている
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 14:36:08.71 ID:myrXPkVY0
さすがに千棘がかわいそうな話だ
自分も最終回はどうかと思ったけど復讐は何も生まないことがわかった
自分も最終回はどうかと思ったけど復讐は何も生まないことがわかった
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/12(金) 16:09:58.85 ID:uge7e57kO
ありがとうじゃないよね
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470965604/
Entry ⇒ 2016.08.13 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
小野寺「ニセコイの逆襲」
1: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:15:13.28 ID:SrR5nxCV0
・前作(本編とは関係ありません)
万里花「所詮はニセコイ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402231432/
つぐみ「二人のニセコイ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1436528601/
※ジャンプ最新号までのネタバレを含みます。
2: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:16:31.27 ID:SrR5nxCV0
~ 天駒高原 約束の場所 ~
楽「俺も好きだよ、小野寺」
楽「ずっとずっと好きだったんだ、中学の頃から」
楽「ずっと……小野寺の事が好きだった……」
小野寺「……うん、ありがとう」
小野寺「さっき……分かった」
小野寺「嬉しかったよ……凄く……本当に……」
小野寺「……」
3: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:17:07.66 ID:SrR5nxCV0
小野寺「……でも、今はもう違うんだよね?」
楽「……」
楽「うん……」
小野寺「一条君の中にはもう、別の誰かがいるんだよね……?」
楽「……うん」
小野寺「……そっか……」
小野寺「……」
楽「……」
小野寺「……」
楽「……」
4: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:17:43.40 ID:SrR5nxCV0
楽「……えっ、と……」
小野寺「……」
楽「……」
楽「……ゴメン、小野寺」
楽「はっきり言って俺は、本当に卑怯な奴だと思う」
楽「昔も今も、ずっとずっと小野寺の事を好きって想ってたくせに」
楽「小野寺が同じ思いでいてくれたことが、本当、スゲー嬉しくてさ」グスッ
5: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:18:15.98 ID:SrR5nxCV0
楽「……だけど」ゴシゴシ
楽「俺には今、会って想いを伝えなきゃいけないヤツが出来ちまった」
楽「そいつとは今までケンカばっかりで」
楽「ぶつかることも目いっぱいあって」
楽「離れたり、近づいたり、ドキドキしたりして」
楽「……それでも、いつの間にか、目が離せない存在になってて」
楽「……小野寺の事、今も大切に想ってる。これは本当だ」
楽「だけど、俺は今、アイツに会って伝えなきゃいけないんだ」
楽「俺の今の正直なキモチを」
楽「だから……ッ!!」
6: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:18:46.43 ID:SrR5nxCV0
小野寺「それで?」
7: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:19:18.62 ID:SrR5nxCV0
楽「っ……」
楽「だから、えっと、その……」
小野寺「……」
楽「……」
楽「……」
小野寺「……」
楽「…………」
小野寺「……」
8: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:20:00.48 ID:SrR5nxCV0
楽「……~~~~~~~~~~~ッ!!」
楽「ごめん、おのでっ」ダッ
グイッ
楽「うお……っ」
小野寺「行かないで」
楽「……え」
小野寺「行かないで、一条君」
楽「どうしてっ」
小野寺「どうしてって……」
9: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:20:40.69 ID:SrR5nxCV0
楽「……そう、だよな」
楽「確かに、小野寺の気持ちも……」
小野寺「……」
楽「……」
楽「……あの、さ」
楽「俺は、小野寺にすごく残酷な話をしてると思う」
楽「でも」
小野寺「そう思うなら、行かないで」
楽「……」
10: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:21:34.50 ID:SrR5nxCV0
楽「……だけど、俺が、今行かなきゃ!」
小野寺「うん、一条君が今千棘ちゃんの所に行ったら、もう一条君は戻ってきてくれないよね」
小野寺「だから、行かないで」
楽「……小野寺」
小野寺「私はずっとずっと、一条君のことが大好きだったんだよ?」
小野寺「そして一条君を今行かせたら」
小野寺「優しい一条君はきっと、二度と私には振り向いてくれない」
小野寺「だけど、きっと傍には居させてくれると思うから」
小野寺「今一条君を行かせたら、私は一生、後悔するから」
小野寺「だから私は、一条君に行ってほしくない」
11: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:22:11.88 ID:SrR5nxCV0
小野寺「意地悪なんかじゃない」
小野寺「私は本気だよ、一条君」
楽「……小野寺」
小野寺「……」
楽「……わかった」
楽「じゃあ、こうしよう」
楽「今回俺は、あくまでアイツの”友達として”アイツの所に行って話を」
小野寺「誤魔化しは止めて、一条君」
楽「……誤魔化しなんかじゃ、ねーよ」
楽「今って機会を逃したら、アイツはまたアメリカに独りで戻っちまう」
楽「アイツの心に誰かが寄り添ってやれる機会は今しか」
小野寺「……一条君」
12: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:22:50.36 ID:SrR5nxCV0
小野寺「思い付きで周りを振り回すの、もうやめよ?」
13: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:23:36.21 ID:SrR5nxCV0
楽「……は?」
小野寺「……あのね」
小野寺「きっと一条君は」
小野寺「目の前で起きている悲しい事やひどい事に、手を差し伸べずにはいられない、優しい人だと思うんだ」
小野寺「だけどね」
小野寺「人は大人になると、自分の行動に責任を持たなきゃいけなくなるの」
小野寺「一度千棘ちゃんのアメリカ行きを引き留めた時も」
小野寺「万里花ちゃんの結婚を止めに行った時も」
小野寺「一条君は、後の責任を取る気もないのに、見過ごせないからってそれだけで、飛び出していったよね」
14: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:24:16.48 ID:SrR5nxCV0
楽「……」
楽「……目の前の出来事に、飛び出していくことの、何が悪いってんだよ」
楽「小野寺だって、協力してくれたじゃねえか。それにあの時は、千棘も橘も喜んで……」
小野寺「……」ハァ
小野寺「それはね、一条君」
小野寺「一条君じゃなくて、当事者や周りのみんなが頑張ったから、話が丸く収まっただけなんだよ?」
楽「そんなっ」
小野寺「あの時は結婚なんかするつもりもなく、千棘ちゃんの事を引き留めたんでしょう?」
小野寺「万里花ちゃんの病気の事も家の事も、相手の男性の事も何にも考えずに、結婚式を壊しに行ったんでしょう?」
15: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:25:02.49 ID:SrR5nxCV0
小野寺「私達普通の友達とは違う、話次第では千棘ちゃんや万里花ちゃんの一生に責任を持つ立場の一条君が」
小野寺「自分では何の責任も取るつもりもないのに」
小野寺「自分の気持ちを満足させるために……」
楽「……勝手な事ばっか言うなよ」
楽「俺は、」
小野寺「……じゃあ」
小野寺「どうして、万里花ちゃんの想いには応えてあげなかったの?」
楽「それは……」
楽「……あの時は、小野寺の事が、好き、だったから……」
16: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:25:42.28 ID:SrR5nxCV0
小野寺「……万里花ちゃんが望んでいたのは、結婚式を止めてもらう事、なんかじゃなかったよね」
小野寺「愛する一条君と結ばれること、今も昔もたったそれだけ」
小野寺「だけど一条君は、万里花ちゃんの想いを知りながら適当にあしらいつづけて」
小野寺「他人のモノになりそうになったところで、急に文句をつけるようなマネをしたんだよ?」
楽「……」
小野寺「……万里花ちゃんは凄いよ」
小野寺「そんな一条君すら許して、受け入れて、自分の中で昇華して、一条君を送り出したんだもの」
小野寺「……だけどね、一条君」
小野寺「私はそこまで寛大にはなれない」
小野寺「ここまで私のことを想ってくれていたのに」
小野寺「またその場の思い付きみたいな、いい加減な想いで私を裏切ろうとしている一条君を」
小野寺「素直に行かせてはあげられない」
17: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:26:27.44 ID:SrR5nxCV0
楽「……」
小野寺「フられてなんてあげないよ、一条君」
小野寺「私は絶対に、一条君を千棘ちゃんの所には行かせない」
18: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:27:00.29 ID:SrR5nxCV0
21: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:28:04.22 ID:SrR5nxCV0
楽「……」
小野寺「……」
楽「……小野寺、聞いてくれ、俺は」
小野寺「なあに、一条君」
楽「……」
楽「……俺の今の気持ちは、決していきなりの、いい加減な思い付きなんかじゃねーんだ」
小野寺「うん」
小野寺「じゃあ、そうなった経緯を聞かせて?」
22: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:29:03.67 ID:SrR5nxCV0
楽「……」
楽「……その」
楽「小さいころの話は、とりあえず置いておくとして」
楽「俺は中学校の頃から、小野寺の事が好きだった」
小野寺「……」
楽「最初はロクに話もできなくて、遠くから見てることしかできなかった」
楽「……一緒の高校に行けるって知った時は、本当に喜んだよ」
楽「目が合うだけで、ちょっとした話をするだけでも、たまらなく嬉しかった」
楽「千棘とのニセコイを始めさせられた時も、考えたのは小野寺の事だった」
楽「こんな事をして小野寺に誤解されないかって」
楽「俺の本当のコイが無くなってしまわないかって不安だった」
23: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:30:23.96 ID:SrR5nxCV0
楽「……だけど、変な話で」
楽「ニセコイ関係が始まった頃から、小野寺とは急に仲良くなれてさ」
楽「俺の心配とは裏腹に、小野寺と一緒に過ごせる時間が増えていって」
小野寺「……うん」
楽「楽しかったよ、本当に」
楽「色んな所へ遊びに行ったよな」
楽「”おのでら”に手伝いのアルバイトに行った日の夜、二人きりになったこととか」
楽「肝試しでドキドキしたこととか」
楽「修学旅行でも二人きりになったよな」
楽「クリスマスのデートだって、俺の中では、凄くキラキラした思い出で……」
小野寺「……」
24: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:31:13.87 ID:SrR5nxCV0
楽「……だけど、さ」
楽「そんな生活の中で、最初は無理矢理押し付けられた千棘との関係が」
楽「関係の質が、だんだん変化していることに気づいたんだ」
楽「アイツの笑っている顔とか、悲しんでいる顔とか、怒っている顔も、全部が俺の心に深く染み込んでて」
楽「……いつしか、俺の中には二人の女の子が住むようになってた」
楽「……俺は一度に、小野寺と千棘の二人を、好きになっちまってたんだ」
小野寺「……」
楽「……ごめんな、小野寺。でもこれが、俺の正直なキモチで」
小野寺「うん。とりあえず、続けて?」
楽「……」
26: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:32:08.52 ID:SrR5nxCV0
楽「……俺、だって」
楽「俺だって、悩んだんだ」
楽「ずっと昔から想ってる小野寺と、いつの間にか俺の心に入り込んでた千棘と」
楽「凄く不誠実だと思ったし、ひどい話だとも思った」
楽「相手のキモチは分からないけど、俺のキモチはしっかり決めないといけないと思って」
楽「すごく悩んだんだ、本当に」
楽「……だけど」
楽「……」
小野寺「……」
小野寺「……だけど?」
楽「……」
27: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:32:39.08 ID:SrR5nxCV0
楽「……えっと」
楽「……千棘となら、その」
楽「……腹の底から笑い合って」
小野寺「……」
楽「……一人じゃ、辿り着けないような世界にも」
楽「二人でなら、行けるような気がした、から……」
小野寺「……つまり?」
楽「……つまり……」
28: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:35:17.86 ID:SrR5nxCV0
楽「……なんとなく……としか、言えねぇかも……」
29: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:35:54.22 ID:SrR5nxCV0
小野寺「……」
楽「……」
小野寺「……」
楽「……」
小野寺「……一条君」
楽「」ビクッ
小野寺「本当に、それだけなの?」
楽「……そう、だよ」
30: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:36:29.42 ID:SrR5nxCV0
小野寺「そんな理由で、私は捨てられるの?」
31: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:37:16.87 ID:SrR5nxCV0
楽「……」
楽「……」
小野寺「……一条君は、10年前の事も、全部思い出しているんだよね」
小野寺「一条君が憧れていたって言う、約束の女の子が、私だって事も」
楽「……」
小野寺「一条君」
楽「……はい」
小野寺「これで、開けてみてくれる?」
楽「……この鍵」
小野寺「早く」
楽「……わかった」
32: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:38:30.30 ID:SrR5nxCV0
カチャ
楽「……手紙と、指環」
小野寺「……”――大きくなったらくくんへ”」
楽「……?」
小野寺「……手紙の内容。私は、思い出したから」
楽「……」
小野寺「”おとなになったら、らくくんはきっとすごくせがたかくなってるんだろうな”」
小野寺「”はやくおおきくなってあいたいです いっぱい、おはなしもしたいです”」
小野寺「”きっとまたあえると、しんじてます”」
小野寺「”とってもじかんがたってるとおもうけど きっとわたしはらくくんのことがずっと”」
33: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:39:16.86 ID:SrR5nxCV0
小野寺「……好きだよ」
楽「……」
34: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:39:52.69 ID:SrR5nxCV0
小野寺「”らくくんはいまも”」
小野寺「”わたしのことが”」
小野寺「”すきですか?”」
楽「……」
小野寺「……これが」
小野寺「一条君が捨てて行こうとした、小さなころの私」
小野寺「そして」
小野寺「ここで涙を流すのが、一条君が捨てて行く、これからの私」
楽「……」
35: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:41:08.09 ID:SrR5nxCV0
楽「……小野寺、俺」
小野寺「分かるよ、一条君」
小野寺「もう今更、後には引けないもんね」
小野寺「言わせてもらうけど」
小野寺「そんなくだらない理由で、私の事を捨てておいて、今更私の事が好きだなんて、言えないもんね」
小野寺「だけど」
楽「違う!」
36: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:42:15.31 ID:SrR5nxCV0
楽「俺は、俺は千棘が好きなんだよ」
楽「小野寺の言うような保身からじゃなくて」
楽「本当に、心から千棘の事が好きなんだ」
楽「小野寺から見たら、チンケでチャチなくだらない理由かもしれないけど」
楽「そんなことで、俺のキモチはアイツに向いたんだ」
楽「小野寺には本当に悪いと思ってる、だからこうして嫌な思いしてでも小野寺と話そうとしたんだろ!?」
楽「想いは別の所にあるけど、今までもこれからも、一番の友達でいたいって……」
37: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:43:01.77 ID:SrR5nxCV0
小野寺「は?」
38: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:43:31.88 ID:SrR5nxCV0
楽「」ビクッ
小野寺「……」
小野寺「……わかった、一条君」
小野寺「あなたの望むようにしてあげる、だから」
小野寺「一つだけ、なんでも、私のお願いを聞いてくれる?」
楽「……」
楽「おう」
39: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:44:44.32 ID:SrR5nxCV0
ゴトッ
小野寺「小指、詰めてくれる?」
40: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:45:21.71 ID:SrR5nxCV0
楽「……」
楽「……小野寺?」
小野寺「ごめんね。さすがに私も、こんな所で刃物なんて持っていないから」
小野寺「この石でお願い。たぶん何度もぶつければ、一本くらいはなんとかなると思うんだ」
小野寺「手はどっちでもいいから。右の方が殴りやすいと思うけど、左薬指の横が空間だと、ちょっと目立つよね」
楽「……小野寺」
楽「……お前、何、言って……」
41: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:46:10.44 ID:SrR5nxCV0
小野寺「……ケジメだよ、一条君」
小野寺「きっと、これから私は一生、普通のコイなんて出来ないから」
小野寺「友達も信じられないし、他人なんてもっと信じられない。はっきり言って死にたいよ、ホント」
小野寺「だけどそれでも、歯を食いしばって、生きていかなきゃいけないの」
小野寺「……私だって、生きたいから」
小野寺「最愛の人に最低の裏切られ方をしても、いつかきっと、幸せになりたいから」
小野寺「……そんな私の人生の責任を取らずに、自分だけ幸せになろうって言うんだもの」
小野寺「小指くらい、いいよね」
小野寺「これからは、マフィアとヤクザの両方を率いていく一条君だもん」
小野寺「そのくらいの覚悟、ないはずがないよね?」
楽「……」
42: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:46:46.67 ID:SrR5nxCV0
楽「……冗談、だよな、小野寺」
小野寺「本気だよ」
楽「……」
楽「……ほんと、ごめん、俺、小野寺に」
小野寺「言葉は、もういいよ」
小野寺「後は行動で示して」
小野寺「急がなきゃ」
小野寺「千棘ちゃんだって、待ってるんでしょう?」
楽「……」
43: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:47:40.41 ID:SrR5nxCV0
楽「……小野寺」
小野寺「なあに?」
楽「……お前、おかしいよ」
小野寺「一条君もね」ニコッ
楽「……いや」
楽「……おかしいのは、お前だけだよ、小野寺」
小野寺「……」
楽「お前を選ばなくて、本当によかった」
44: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:48:10.70 ID:SrR5nxCV0
楽「だってそうだろ」
楽「俺はちゃんと正直なキモチを伝えて、男らしく正面から謝って、正しいことをしようとしてる」
楽「それなのにお前は、ああだこうだ理屈をつけて、俺の邪魔ばっかりしようとして」
楽「あげくに、指を詰めろって何だよ」
楽「俺がヤクザを継ぎたくないって話、お前だって知ってるはずだろ」
楽「それなのに俺が一番嫌がるやり方で、俺の大切なモノを……」
小野寺「……」
楽「嫌がるやり方で、俺の……」
小野寺「……」
楽「……」
小野寺「……」
45: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:48:44.90 ID:SrR5nxCV0
楽「……と、とにかく、俺はもう沢山だ」
楽「お前となんて金輪際、一生好き合うことなんてない」
楽「これ以上、俺の邪魔をするのは止めてくれ」
小野寺「……」
楽「……この手を離せよ、小野寺」
小野寺「……」スッ
楽「……じゃあな」ダダッ
小野寺「……」
47: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:49:46.90 ID:SrR5nxCV0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ
シャリン シャリン シャリン
楽「……ベンダントの鎖か」
楽「……こんなもの
グッ
楽「……」
カサカサ パラッ
48: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:50:22.07 ID:SrR5nxCV0
”おおきくなったこさきへ”
”おげんきですか ぼくはたぶん げんきです”
”おおきくなってけっこんしたらいっぱいすきなどうぶつをかおうな”
”ゆびわもほんもののものをかってあげます”
”けっこんしたら こさきのりょうりを まいにちたべたいです”
49: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:50:54.75 ID:SrR5nxCV0
楽「……」
ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ
50: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:51:43.33 ID:SrR5nxCV0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
タッ タッ タッ タッ
るり「……ああ、いたいた。ようやく見つけたわ、小咲」
るり「あんた一人なの? 千棘ちゃんは? 一条君は……っ」
小野寺「……」
るり「……小咲、あんたいったい何を」
小野寺「……一条君に、私を捨てるなら小指を詰めてってお願いしたら、嫌われちゃったぁ……」ニコニコ
るり「小咲」ダダッ ダキッ
小野寺「……」ニコニコ
51: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:52:50.74 ID:SrR5nxCV0
るり「小咲、あんたは悪くない、悪くないんだよ」キュッ
るり「あんたは少し真面目が過ぎて、思い込みが強いところがあるから」
るり「ちょっとやりすぎちゃった位なら、誰も怒らないわよ」
るり「一条君だって後で話せば、きっとわかってくれるから」
小野寺「……そう、かなぁ」
るり「うん、うん、きっとそう」
るり「あんたが、一条君が気まずい思いしないようにって、わざと厳しい言葉で送り出したってことくらい……」
52: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:53:47.23 ID:SrR5nxCV0
小野寺「……」
るり「……」
るり「……小咲?」
小野寺「……これからの、一条君の人生で」
小野寺「ふと、美味しいお菓子を口にしたとき」
小野寺「仲の良い友達と、雑然とした商店街をお散歩したとき」
小野寺「金曜日の夜に、仲良しの家族と食卓を囲むとき」
小野寺「小さな子供のワガママに付き合って、大自然の中で駆け回るとき」
小野寺「色んな時の流れの中で、ただ一瞬だけ、私の存在を思い出す事があると思う」
小野寺「そのたった一瞬が、ニセのコイにされてしまった、私のホントの想いの爪痕」
小野寺「それだけが、私の」
53: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:54:38.75 ID:SrR5nxCV0
小野寺「ニセコイの逆襲」
55: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:55:46.70 ID:SrR5nxCV0
~ 数年後 某所 キッチン ~
小野寺「ね、なかなかの仕上がりでしょ?」
楽「ああ、気に入ったよ。こんなに凄ぇウェディングケーキ、世界中見渡したってそうは無ぇよ」
小野寺「ふふ、褒め過ぎだよ一条君」
楽「……ありがとな、小野寺」
楽「小野寺がケーキ作りを申し出てくれた時、千棘の奴が是非にっ! って言うから、つい甘えちまって……」
小野寺「あはは、そうだよね」
小野寺「一条君が私にケーキなんて、作らせたいワケないもんねぇ」
楽「」ビクッ
56: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:57:09.67 ID:SrR5nxCV0
小野寺「うん?」
楽「あ、え、いや、何でもねぇ」
小野寺「……疲れてるんだよ、一条君」
小野寺「公務員のお仕事とヤクザのお仕事、両方やりながら結婚式の準備も進めてるんでしょう?」
小野寺「こっちのことは、私に任せて?」
小野寺「……大丈夫」
小野寺「私達の友情にかけて、このケーキにおかしな手は加えないよ」
楽「……小野寺っ、」
小野寺「ウフフ、冗談冗談」
楽「……っ、はっ、はぁ……」
小野寺「じゃあ、次は式の日にね。それじゃ」
57: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:58:23.27 ID:SrR5nxCV0
~ 数時間後 天駒高原 ~
千棘「……遅い遅い遅~いっ!!30分遅刻よ、アンタ私が忙しいの知ってんでしょ!?」
楽「……おう」
千棘「全く……新しい仕事が忙しいのは分かるけどさ、限度があるでしょ限度が……」
千棘「……って、今日はウェディングケーキの試作品見に行く日だったっけ。小咲ちゃんと会ってて遅れたの?」
楽「……あ、ああ、そうなんだよ。細かいところの修正とか、ちょっと、かかっちまって……」
千棘「それならそうと早く言いなさいよ。あーあ、私も久々に会いたかったなぁ」
千棘「卒業後もちょくちょく遊んでくれる友達って、小咲ちゃんくらいだもんね」
千棘「そう言えばこの前韓国に行って、美味しいキムチの店見つけたんだよ。今度お土産に持ってこようかな」
千棘「結婚後の新居だって小咲ちゃんのトコと近いし、これからが楽しみね、ダーリン♪」
楽「……」
58: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:59:12.25 ID:SrR5nxCV0
千棘「それよりさ、例のあれ、持ってきた?」
楽「」ビクッ
千棘「もう、忘れちゃったの? 前のペンダントは、小咲ちゃんとも相談して、ここに埋めちゃったじゃない」
楽「……」ガタガタ
千棘「だから、アンタと私で、新しい鍵と」
楽「……」ガタガタガタ
千棘「新しい錠を差し合わせて」
楽「……」ガタガタガタガタガタガタガタガタ
59: ◆LeBgafvn/6 2016/08/09(火) 23:59:42.56 ID:SrR5nxCV0
千棘「ザクシャ イン ラ――――」
60: ◆LeBgafvn/6 2016/08/10(水) 00:00:10.50 ID:qi7xYVxf0
ドンッ
61: ◆LeBgafvn/6 2016/08/10(水) 00:00:54.47 ID:qi7xYVxf0
千棘「きゃっ」
ダダダダダッ
楽「ぐっ、げぼっ、ごほっ」
ドボ ドボドボドボ ドボドボドボ
楽「げはっ、ごっ、おえっ、えっ、おえええええええええっ」
楽「げっ、げえっ、げえええええええええ………」
62: ◆LeBgafvn/6 2016/08/10(水) 00:01:29.11 ID:qi7xYVxf0
~ おしまい ~
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/10(水) 00:03:01.48 ID:5WPZk4z6O
擁護できないよね
乙
乙
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/10(水) 00:03:37.48 ID:jcUusTC50
まぁ、そうなるな
乙
乙
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/10(水) 00:03:53.39 ID:TTL6IWh4o
こういうの好き
69: ◆LeBgafvn/6 2016/08/10(水) 00:28:12.12 ID:qi7xYVxf0
千棘を選んだ理由等、大きなところはおおむね原作準拠です。
>>68
過去2作も楽しんでいただけたようで、本当にありがとうございます。
今後とも(機会があれば)お付き合いいただけると幸いです。
>>68
過去2作も楽しんでいただけたようで、本当にありがとうございます。
今後とも(機会があれば)お付き合いいただけると幸いです。
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/10(水) 01:06:12.83 ID:RGSzmtPXo
乙
俺のモヤッたところ全部ヤン寺さんが言ってくれた
俺のモヤッたところ全部ヤン寺さんが言ってくれた
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470752112/
Entry ⇒ 2016.08.11 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
【ニセコイ】鶫「貴様がお嬢の恋人でなければよかったのにな」
1: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:51:27.71 ID:+cl4NTUio
千棘「カツ丼が食べたい」
鶫「はい?」
千棘「この間親子丼ラーメン作ってくれたじゃない? 今度はカツ丼が食べてみたいなって」
鶫「また唐突ですね。まあ親子丼は作りましたし作れないことはないとは思いますが……」
千棘「今度はちゃんとご飯のほうがいいかなー。というわけで鶫!」
鶫「……またあいつに頼むんですね?」
千棘「まああんなやつでも私の恋人だし、あんたたちの仲を良くするためにもよ」
鶫「……わかりました」
鶫(少しだけ、嫌ではないと感じているから問題なんです、などとは……さすがに言えないな)ハァ
鶫「はい?」
千棘「この間親子丼ラーメン作ってくれたじゃない? 今度はカツ丼が食べてみたいなって」
鶫「また唐突ですね。まあ親子丼は作りましたし作れないことはないとは思いますが……」
千棘「今度はちゃんとご飯のほうがいいかなー。というわけで鶫!」
鶫「……またあいつに頼むんですね?」
千棘「まああんなやつでも私の恋人だし、あんたたちの仲を良くするためにもよ」
鶫「……わかりました」
鶫(少しだけ、嫌ではないと感じているから問題なんです、などとは……さすがに言えないな)ハァ
2: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:52:06.78 ID:+cl4NTUio
鶫「というわけでよろしく頼む」
楽「あいつはまた……お前もたまには断れよ」
鶫「断る? なぜだ?」
楽「そういう発想すらねーのな」
鶫「当たり前だ。お嬢の頼みを断るなどありえん」
楽「ほんと千棘には甘いな」ハァ
鶫「お嬢から受けた恩を思えば、このくらい甘いうちにも入らん」
楽「重く考えずぎじゃねえか? ……まあいいか。早速やろうぜ」
鶫「ああ、頼りにしてるぞ」
楽「……」
鶫「なんだ?」
楽「いや、まさかお前からそんな言葉を聞くことになるとは思わなかったからさ」ハハハ
鶫「う、うるさい! 早く始めるぞ!」
楽「あいつはまた……お前もたまには断れよ」
鶫「断る? なぜだ?」
楽「そういう発想すらねーのな」
鶫「当たり前だ。お嬢の頼みを断るなどありえん」
楽「ほんと千棘には甘いな」ハァ
鶫「お嬢から受けた恩を思えば、このくらい甘いうちにも入らん」
楽「重く考えずぎじゃねえか? ……まあいいか。早速やろうぜ」
鶫「ああ、頼りにしてるぞ」
楽「……」
鶫「なんだ?」
楽「いや、まさかお前からそんな言葉を聞くことになるとは思わなかったからさ」ハハハ
鶫「う、うるさい! 早く始めるぞ!」
3: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:52:39.27 ID:+cl4NTUio
楽「……下準備はこんなもんか。まあ教えるっていっても、前に教えた親子丼と同じ丼ものだから、基本的にはあんまり変わらないんだけどな」
鶫「そうなのか?」
楽「ああ、気をつけるのはカツの揚げ方と割り下くらいだと思うぜ」
鶫「ふむ」
楽「まず豚肉に小麦粉と卵とパン粉で衣をつけて、油に入れる」ジュージュー
鶫「下味はつけなくていいのか?」
楽「ウチではつけてねえな。タレがカツに染み込むからなくて大丈夫だ」ジュージュー
鶫「なるほど」
楽「……そろそろいいか」ジュージュー
鶫「もういいのか? まだ揚がりきってないように見えるが」
楽「このあと煮込むから、キツネ色になるまで揚げると肉が固くなるんだよ」
鶫「カツの揚げ方ひとつとっても色々と考えることが多いのだな。普通に揚げるのと同じように作るのかと思っていた」
楽「まあカツ丼のメインだし気を使わねえとな」
楽「割り下はだいたい親子丼と同じで大丈夫だけど、かつおだしを使うのはやめたほうがいいぜ」
鶫「なぜだ?」
楽「トンカツと相性が悪くて旨味を消しちまうから入れないほうがいい」
鶫「ほう。料理に関してはさすが詳しいな」
鶫「そうなのか?」
楽「ああ、気をつけるのはカツの揚げ方と割り下くらいだと思うぜ」
鶫「ふむ」
楽「まず豚肉に小麦粉と卵とパン粉で衣をつけて、油に入れる」ジュージュー
鶫「下味はつけなくていいのか?」
楽「ウチではつけてねえな。タレがカツに染み込むからなくて大丈夫だ」ジュージュー
鶫「なるほど」
楽「……そろそろいいか」ジュージュー
鶫「もういいのか? まだ揚がりきってないように見えるが」
楽「このあと煮込むから、キツネ色になるまで揚げると肉が固くなるんだよ」
鶫「カツの揚げ方ひとつとっても色々と考えることが多いのだな。普通に揚げるのと同じように作るのかと思っていた」
楽「まあカツ丼のメインだし気を使わねえとな」
楽「割り下はだいたい親子丼と同じで大丈夫だけど、かつおだしを使うのはやめたほうがいいぜ」
鶫「なぜだ?」
楽「トンカツと相性が悪くて旨味を消しちまうから入れないほうがいい」
鶫「ほう。料理に関してはさすが詳しいな」
4: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:53:23.18 ID:+cl4NTUio
楽「なんか引っかかる言い方だな……まあこれはよく作ってるから。鶫のほうが詳しい料理だって色々あるだろ?」
鶫「正直そこまで自信はないが……」
楽「なに言ってんだよ。この間の肉じゃがなんか絶品だったじゃねえか。それにこんなに綺麗に台所使ってる奴に料理の知識がないわけねえって」
鶫「そ、そうか?」
楽「ああ、少なくとも台所の使い方なら俺の完敗だ。俺も結構自信あったけど、これ見ちゃうとな」
鶫「……ふん、褒めてもなにも出んぞ」
楽「そんなんじゃねえって」
楽「ああでも、今度は鶫に料理を教えてもらいてえな」
鶫「私が貴様に?」
楽「まあ嫌じゃなければだけど、鶫がどんな料理が得意なのか知りてえしさ」
鶫「……考えといてやる。それよりカツ丼のほうはいいのか?」
楽「あーもういいか。あとはといた卵を入れて、蓋をして30秒待てば……」
楽「……よし、完成だ」
鶫「正直そこまで自信はないが……」
楽「なに言ってんだよ。この間の肉じゃがなんか絶品だったじゃねえか。それにこんなに綺麗に台所使ってる奴に料理の知識がないわけねえって」
鶫「そ、そうか?」
楽「ああ、少なくとも台所の使い方なら俺の完敗だ。俺も結構自信あったけど、これ見ちゃうとな」
鶫「……ふん、褒めてもなにも出んぞ」
楽「そんなんじゃねえって」
楽「ああでも、今度は鶫に料理を教えてもらいてえな」
鶫「私が貴様に?」
楽「まあ嫌じゃなければだけど、鶫がどんな料理が得意なのか知りてえしさ」
鶫「……考えといてやる。それよりカツ丼のほうはいいのか?」
楽「あーもういいか。あとはといた卵を入れて、蓋をして30秒待てば……」
楽「……よし、完成だ」
5: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:53:54.12 ID:+cl4NTUio
楽「どうぞ」
鶫「いただきます」パクッ
鶫「……」モグモグ
楽「どうだ?」
鶫「ああ、おいしい。私もこの前試しに作ってみたのだが、比べ物にならんな」モグモグ
楽「なんだ、作ってたのか」
鶫「まあ本当にただ作ったというだけだったがな。まずくはなかったが、お嬢に出すには普通すぎた」
鶫「だがこれならお嬢も喜んでくださるだろう」
楽「鶫にお墨付きもらえたんなら大丈夫だな」
鶫「そんなに大層なものではないが……まあおいしいからな。本当に」モグモグ
楽「そ、そっか」
楽(鶫にこんなまっすぐ褒められるとなんか照れるな……)ポリポリ
鶫「いただきます」パクッ
鶫「……」モグモグ
楽「どうだ?」
鶫「ああ、おいしい。私もこの前試しに作ってみたのだが、比べ物にならんな」モグモグ
楽「なんだ、作ってたのか」
鶫「まあ本当にただ作ったというだけだったがな。まずくはなかったが、お嬢に出すには普通すぎた」
鶫「だがこれならお嬢も喜んでくださるだろう」
楽「鶫にお墨付きもらえたんなら大丈夫だな」
鶫「そんなに大層なものではないが……まあおいしいからな。本当に」モグモグ
楽「そ、そっか」
楽(鶫にこんなまっすぐ褒められるとなんか照れるな……)ポリポリ
6: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:54:23.06 ID:+cl4NTUio
鶫「ごちそうさま」
楽「お粗末さまでした」
鶫「次は私の番だな」
楽「隣で教えながらのがいいか?」
鶫「いや、大丈夫だ。座って待っていてくれ」
楽「いいのか?」
鶫「お嬢に作るときはどうせ私一人で作るから、今のうちにそうしたほうがいいだろう」
楽「そうか、わかった」
鶫「まずはカツから……」
楽(……そこに鶫がいるっつっても、女子の部屋で待ってるってのは落ち着かねえな)ソワソワ
<ジュージュー
楽(あの雑誌はポーラのか? 鶫が読んでるイメージねえし)
<ジュージュー
楽(ぬいぐるみも前からあったっけか? まあ鶫が持ってても別に違和感ねえけど)キョロキョロ
鶫「……おい、さっきから部屋の中をジロジロ見るな! 貴様この前も見ていなかったか!?」
楽「わ、わりい」
楽(つっても手持ち無沙汰なんだよなあ。こういうときっていっつもなにして……)
<コトコト
楽(……よく考えたら普段料理作るの俺だから、こんなふうに待ってる経験なんてほとんどねえな)
<コトコト
楽(結婚して嫁さんに料理作ってもらうのってこんな気分なのかもしれねえな)
楽「お粗末さまでした」
鶫「次は私の番だな」
楽「隣で教えながらのがいいか?」
鶫「いや、大丈夫だ。座って待っていてくれ」
楽「いいのか?」
鶫「お嬢に作るときはどうせ私一人で作るから、今のうちにそうしたほうがいいだろう」
楽「そうか、わかった」
鶫「まずはカツから……」
楽(……そこに鶫がいるっつっても、女子の部屋で待ってるってのは落ち着かねえな)ソワソワ
<ジュージュー
楽(あの雑誌はポーラのか? 鶫が読んでるイメージねえし)
<ジュージュー
楽(ぬいぐるみも前からあったっけか? まあ鶫が持ってても別に違和感ねえけど)キョロキョロ
鶫「……おい、さっきから部屋の中をジロジロ見るな! 貴様この前も見ていなかったか!?」
楽「わ、わりい」
楽(つっても手持ち無沙汰なんだよなあ。こういうときっていっつもなにして……)
<コトコト
楽(……よく考えたら普段料理作るの俺だから、こんなふうに待ってる経験なんてほとんどねえな)
<コトコト
楽(結婚して嫁さんに料理作ってもらうのってこんな気分なのかもしれねえな)
7: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:54:59.65 ID:+cl4NTUio
鶫「できたぞ、一条楽」コトン
楽「お、おう」ドキッ
鶫「? なんだ?」
楽「な、何でもねえよ。いやーうまそうだな! いただきます!」
楽(結婚したらみたいなこと考えてときにちょうど鶫が来たから驚いちまった)ドキドキ
鶫「それなりによく出来たとは思うが、まあ食べてみてくれ」
楽「おう」モグモグ
楽「……あれ、俺が作ったのより甘みが強いな」
鶫「ああ、お嬢は甘みが強いほうが好みだから変えてみた」
楽「こっちのがうまいかもなー。あと卵もなんか違うか?」
鶫「うむ、ふわふわした感じを残すため、とくのを控えめにしてみた」
楽「へー」モグモグ
鶫「……あ、味の感想はどうだ?」
楽「…………」モグモグ
鶫「な、なにか言ってくれ」ドキドキ
楽「お、おう」ドキッ
鶫「? なんだ?」
楽「な、何でもねえよ。いやーうまそうだな! いただきます!」
楽(結婚したらみたいなこと考えてときにちょうど鶫が来たから驚いちまった)ドキドキ
鶫「それなりによく出来たとは思うが、まあ食べてみてくれ」
楽「おう」モグモグ
楽「……あれ、俺が作ったのより甘みが強いな」
鶫「ああ、お嬢は甘みが強いほうが好みだから変えてみた」
楽「こっちのがうまいかもなー。あと卵もなんか違うか?」
鶫「うむ、ふわふわした感じを残すため、とくのを控えめにしてみた」
楽「へー」モグモグ
鶫「……あ、味の感想はどうだ?」
楽「…………」モグモグ
鶫「な、なにか言ってくれ」ドキドキ
8: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:55:38.54 ID:+cl4NTUio
楽「……うまい! なんだこれ! 俺が作ったのよりうまいんだけど!?」
鶫「ほ、本当か? お世辞はいらんぞ?」
楽「本当だって。カツはちょっと固いかなって思うけど、タレの相性とか卵の感じとか、こっちのがうまい」
鶫「本当だな? ……よかった」ホッ
楽「正直悔しいくらいだ。教えたばっかなのになあ」ハァ
鶫「そう言われて悪い気はせんが、たまたまアレンジが上手くいっただけだろう」
楽「アレンジなんて大抵上手くいかねえもんだって。やっぱお前料理うまいよなー」モグモグ
鶫「あ、あまりそういうことを言うな。恥ずかしいではないか」カアァァ
楽「ああ、わりい。でも千棘も喜ぶと思うぜ」
鶫「き、貴様の舌にはあったかもしれんが、お嬢の繊細な舌に合うかはわからんがな!!」
楽(分かりやすい照れ隠しだな)ハハハ
楽「ごちそうさま。ほんとうまかったよ」
鶫「そうか。その……」
楽「ん?」
鶫「……きょ、今日はありがとう、一条楽」
楽「おう、気にすんな。今日の夜出すんだろ? 千棘の感想は明日聞かせてくれよ」
鶫「ああ、わかった」
鶫「ほ、本当か? お世辞はいらんぞ?」
楽「本当だって。カツはちょっと固いかなって思うけど、タレの相性とか卵の感じとか、こっちのがうまい」
鶫「本当だな? ……よかった」ホッ
楽「正直悔しいくらいだ。教えたばっかなのになあ」ハァ
鶫「そう言われて悪い気はせんが、たまたまアレンジが上手くいっただけだろう」
楽「アレンジなんて大抵上手くいかねえもんだって。やっぱお前料理うまいよなー」モグモグ
鶫「あ、あまりそういうことを言うな。恥ずかしいではないか」カアァァ
楽「ああ、わりい。でも千棘も喜ぶと思うぜ」
鶫「き、貴様の舌にはあったかもしれんが、お嬢の繊細な舌に合うかはわからんがな!!」
楽(分かりやすい照れ隠しだな)ハハハ
楽「ごちそうさま。ほんとうまかったよ」
鶫「そうか。その……」
楽「ん?」
鶫「……きょ、今日はありがとう、一条楽」
楽「おう、気にすんな。今日の夜出すんだろ? 千棘の感想は明日聞かせてくれよ」
鶫「ああ、わかった」
9: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:56:19.68 ID:+cl4NTUio
――翌日――
鶫「一条楽!」
楽「お、鶇。どうだった?」
鶫「ああ、とても喜んでくださった。貴様のおかげだ」
楽「大したことしてねえって。結局お前の作ったカツ丼のほうがうまかったしな」
鶫「それも貴様に教わったからだ。改めて感謝する。それでその……」
楽「ん、どうした?」
鶫「またお嬢から何か頼まれたら頼ってもいいだろうか。もう2度も頼んでしまっているし迷惑かも知れんが……」
楽「ああ、んなことか。いつでもいいぜ」
鶫「そうか。……まあ貴様はお嬢の恋人なのだから、お嬢のために協力するのは当然ではあるのだがな」
楽「お前の基準を俺にも当てはめるなよ……あ、そうだ。今度お前んち行くの明後日でいいか?」
鶫「…………はぁ!?」
楽「な、なんだよ」ビクッ
鶫「なななななんで貴様がまた私の家に来るのだ!!?? 何が目的だ!!」アワアワ
楽「なんでってこの間料理教えてくれって言ったことだよ。それともウチに来たほうがいいか?」
鶫「りょ、料理だと……? ……あれは単なる社交辞令じゃなかったのか!?」
楽「社交辞令なんかじゃねえって。カツ丼のアレンジもすげーうまかったし。あ、いや、考えてみて嫌だったってんならしょうがねえけど」
鶫「べ、別に嫌なわけでは……」
楽「なら明後日で大丈夫か?」
鶫「……まあ、特に予定はないから……来ても、別に……」
楽「おう、じゃあよろしくな」
鶫「ああ」
鶫「一条楽!」
楽「お、鶇。どうだった?」
鶫「ああ、とても喜んでくださった。貴様のおかげだ」
楽「大したことしてねえって。結局お前の作ったカツ丼のほうがうまかったしな」
鶫「それも貴様に教わったからだ。改めて感謝する。それでその……」
楽「ん、どうした?」
鶫「またお嬢から何か頼まれたら頼ってもいいだろうか。もう2度も頼んでしまっているし迷惑かも知れんが……」
楽「ああ、んなことか。いつでもいいぜ」
鶫「そうか。……まあ貴様はお嬢の恋人なのだから、お嬢のために協力するのは当然ではあるのだがな」
楽「お前の基準を俺にも当てはめるなよ……あ、そうだ。今度お前んち行くの明後日でいいか?」
鶫「…………はぁ!?」
楽「な、なんだよ」ビクッ
鶫「なななななんで貴様がまた私の家に来るのだ!!?? 何が目的だ!!」アワアワ
楽「なんでってこの間料理教えてくれって言ったことだよ。それともウチに来たほうがいいか?」
鶫「りょ、料理だと……? ……あれは単なる社交辞令じゃなかったのか!?」
楽「社交辞令なんかじゃねえって。カツ丼のアレンジもすげーうまかったし。あ、いや、考えてみて嫌だったってんならしょうがねえけど」
鶫「べ、別に嫌なわけでは……」
楽「なら明後日で大丈夫か?」
鶫「……まあ、特に予定はないから……来ても、別に……」
楽「おう、じゃあよろしくな」
鶫「ああ」
10: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:56:53.04 ID:+cl4NTUio
鶫「…………」
鶫「……し、仕方ないな。あいつには2度も世話になっているのだし、1回教えるくらい!」
鶫「断じて嬉しいなどとは思っておらんぞ。そう、断じて!」
鶫「そ、それよりまたポーラに家にはいないように言っておかなければな。今度はなんと言って……」
ポーラ「私がなによ?」
鶫「ぽぽぽ、ポーラ!? なぜここに!?」
ポーラ「夕飯どうしても食べたいのができたから、黒虎に伝えようと思って」
鶫「そうか。なにがいいんだ?」
ポーラ「オムライス。春がこの間お店で食べたふわふわのオムライスが美味しかったって言ってて……って違う!」
鶫(誤魔化されなかったか……)
鶫「……し、仕方ないな。あいつには2度も世話になっているのだし、1回教えるくらい!」
鶫「断じて嬉しいなどとは思っておらんぞ。そう、断じて!」
鶫「そ、それよりまたポーラに家にはいないように言っておかなければな。今度はなんと言って……」
ポーラ「私がなによ?」
鶫「ぽぽぽ、ポーラ!? なぜここに!?」
ポーラ「夕飯どうしても食べたいのができたから、黒虎に伝えようと思って」
鶫「そうか。なにがいいんだ?」
ポーラ「オムライス。春がこの間お店で食べたふわふわのオムライスが美味しかったって言ってて……って違う!」
鶫(誤魔化されなかったか……)
11: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:57:40.67 ID:+cl4NTUio
ポーラ「私がどうしたのよ? 黒虎」
鶫「い、いやその……じ、実は敵組織が私を狙っているようでな。危険な相手で潜伏先が襲撃されるかもしれんから、明後日まで貴様もどこか別のところに泊まってはどうかと」
ポーラ「敵組織ねえ。なんで明後日までなのよ?」
鶫「あ、相手のアジトは分かっているから、それまでには壊滅させるつもりだからだ」ダラダラ
ポーラ「クロード様に聞いてみよう」スッ
鶫「わーっ!! こ、これはビーハイブとは関係なく私一人の問題だからクロード様には言っていないのだ」
ポーラ「へーえ」
鶫「わ、分かってくれたか?」
ポーラ「ええ。それで明後日は自宅で一条楽と料理デートするのね?」
鶫「そう、明後日は一条楽が来て……きき、貴様なぜそれを!?」
ポーラ「最初から見てたし」
鶫「ならさっさとそう言え!!」
ポーラ「黒虎の慌てる姿、楽しませてもらったわ」フフン
鶫「貴様……!」ワナワナ
ポーラ(あ、やばい)
鶫「い、いやその……じ、実は敵組織が私を狙っているようでな。危険な相手で潜伏先が襲撃されるかもしれんから、明後日まで貴様もどこか別のところに泊まってはどうかと」
ポーラ「敵組織ねえ。なんで明後日までなのよ?」
鶫「あ、相手のアジトは分かっているから、それまでには壊滅させるつもりだからだ」ダラダラ
ポーラ「クロード様に聞いてみよう」スッ
鶫「わーっ!! こ、これはビーハイブとは関係なく私一人の問題だからクロード様には言っていないのだ」
ポーラ「へーえ」
鶫「わ、分かってくれたか?」
ポーラ「ええ。それで明後日は自宅で一条楽と料理デートするのね?」
鶫「そう、明後日は一条楽が来て……きき、貴様なぜそれを!?」
ポーラ「最初から見てたし」
鶫「ならさっさとそう言え!!」
ポーラ「黒虎の慌てる姿、楽しませてもらったわ」フフン
鶫「貴様……!」ワナワナ
ポーラ(あ、やばい)
12: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/02/24(水) 21:58:16.05 ID:+cl4NTUio
ポーラ「ま、まあそういうことなら明後日は外にいてあげるから、2人きりでいなさいよ」
鶫「……一条楽が帰るまで戻るんじゃないぞ」
ポーラ「わかってるわよ」
鶫「ただ9時を過ぎるようなら戻って構わん、というか戻るように」
ポーラ「私はあなたのなんなのよ。……それよりあいつはそんな時間までいる予定なの?」
鶫「そ、そういうわけではないが、念のためにだな」カアァァ
ポーラ「……まあともかく邪魔はしないから、ゆっくり楽しんでなさい」
鶫「ああ……」ハッ
鶫「こ、これは別に頼まれたからやるだけであって全然楽しみとかまして楽しもうなどとは思っていないぞ!!」
ポーラ「はいはい」
鶫「くっ、なげやりな態度を……」
鶫「……そうだ。盗聴器などを仕掛けていたら許さんからそのつもりで」
ポーラ「わ、わかってるわよ」ビクッ
ポーラ(弱みを握ろうと思ったけど無理そうね……)
鶫「……一条楽が帰るまで戻るんじゃないぞ」
ポーラ「わかってるわよ」
鶫「ただ9時を過ぎるようなら戻って構わん、というか戻るように」
ポーラ「私はあなたのなんなのよ。……それよりあいつはそんな時間までいる予定なの?」
鶫「そ、そういうわけではないが、念のためにだな」カアァァ
ポーラ「……まあともかく邪魔はしないから、ゆっくり楽しんでなさい」
鶫「ああ……」ハッ
鶫「こ、これは別に頼まれたからやるだけであって全然楽しみとかまして楽しもうなどとは思っていないぞ!!」
ポーラ「はいはい」
鶫「くっ、なげやりな態度を……」
鶫「……そうだ。盗聴器などを仕掛けていたら許さんからそのつもりで」
ポーラ「わ、わかってるわよ」ビクッ
ポーラ(弱みを握ろうと思ったけど無理そうね……)
17: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:04:20.64 ID:8zW8F0R7o
鶫「うぅ……落ち着かん」ソワソワ
ポーラ「3度目なんだから慣れなさいよ」
鶫「教えるのは今回が初めてだ」
ポーラ「黒虎の作り方を教えるだけだし、別にそんなに味を気にするようなものでもないじゃない」
ポーラ「そもそももう食べさせたことがあるんだから、まずいわけないんだし」
鶫「理屈で言えばそうなのだが……」ソワソワ
ポーラ(好きな相手ってのができるとこんなにめんどくさくなるものなのかしら)イラッ
ポーラ「……というか頼まれたからやるだけなんでしょ? それならそんなに緊張しなくていいんじゃない?」
鶫「べべべ、別に緊張などしておらん!!」
ポーラ「落ち着かないって言ってたのはどこの誰よ」
鶫「き、緊張しているのと落ち着かないのは別なんだ!」
ポーラ「3度目なんだから慣れなさいよ」
鶫「教えるのは今回が初めてだ」
ポーラ「黒虎の作り方を教えるだけだし、別にそんなに味を気にするようなものでもないじゃない」
ポーラ「そもそももう食べさせたことがあるんだから、まずいわけないんだし」
鶫「理屈で言えばそうなのだが……」ソワソワ
ポーラ(好きな相手ってのができるとこんなにめんどくさくなるものなのかしら)イラッ
ポーラ「……というか頼まれたからやるだけなんでしょ? それならそんなに緊張しなくていいんじゃない?」
鶫「べべべ、別に緊張などしておらん!!」
ポーラ「落ち着かないって言ってたのはどこの誰よ」
鶫「き、緊張しているのと落ち着かないのは別なんだ!」
18: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:04:47.48 ID:8zW8F0R7o
ポーラ「はぁ。まあいいわ。とりあえずせっかく2人きりなんだから少しくらい攻めなさいよ」
鶫「な、なにを攻めるというのだ!」
ポーラ「好きなタイプを聞くとかー」
鶫(……前に聞いたな。あいつの好みは黒髪ショートで気が強くて腕っぷしが良くてとまさに私のような――って違う!!!)ブンブン
ポーラ「……何してるのよ? まあそれが嫌ならせめて遠回しに黒虎のことどう思ってるか確かめるとか……」
鶫(そのくらいなら……)ウン
ポーラ「……あとはそうね」
鶫「まだあるのか?」
ポーラ「いっそ実力行使に出ちゃいなさいよ。押し倒してキスとか」フフフ
鶫「キッ……!? ばばば、バカか貴様は!!」カアァァ
ポーラ「黒虎は押しが足りないの。そのくらいの気持ちでいなさいよ。それじゃ私は出かけるわね」ガチャ
鶫「も、もう行くのか?」
ポーラ「出てけって言ってたのはあんたじゃない。適当に様子見て帰るわ」バタン
鶫「あ、ああ」
鶫(本当に出て行くとは……確かにそろそろ一条楽と約束した時間ではあるのだが)
鶫(……とりあえず部屋に座って待っていようか)
鶫「……」ソワソワ
鶫「……」ソワソワ
鶫(だ、台所でも片付けよう)
鶫「な、なにを攻めるというのだ!」
ポーラ「好きなタイプを聞くとかー」
鶫(……前に聞いたな。あいつの好みは黒髪ショートで気が強くて腕っぷしが良くてとまさに私のような――って違う!!!)ブンブン
ポーラ「……何してるのよ? まあそれが嫌ならせめて遠回しに黒虎のことどう思ってるか確かめるとか……」
鶫(そのくらいなら……)ウン
ポーラ「……あとはそうね」
鶫「まだあるのか?」
ポーラ「いっそ実力行使に出ちゃいなさいよ。押し倒してキスとか」フフフ
鶫「キッ……!? ばばば、バカか貴様は!!」カアァァ
ポーラ「黒虎は押しが足りないの。そのくらいの気持ちでいなさいよ。それじゃ私は出かけるわね」ガチャ
鶫「も、もう行くのか?」
ポーラ「出てけって言ってたのはあんたじゃない。適当に様子見て帰るわ」バタン
鶫「あ、ああ」
鶫(本当に出て行くとは……確かにそろそろ一条楽と約束した時間ではあるのだが)
鶫(……とりあえず部屋に座って待っていようか)
鶫「……」ソワソワ
鶫「……」ソワソワ
鶫(だ、台所でも片付けよう)
19: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:05:15.99 ID:8zW8F0R7o
ピンポーン
鶫(き、来た!)ガタッ
鶫「一条楽か。よく来たな」ガチャ
楽「ド、ドア開けるのはええな」ビクッ
鶫「た、たまたまドアの近くにいただけだ!」
楽「そっか。今日はよろしくな。考えてみりゃ料理教わるのは初めてだ」
鶫「そうなのか?」
楽「教わる相手もいねえからなあ。料理の本とか見たくらいだな」
鶫「あれだけおいしくできるのだから、誰かに教わっているものだと思っていた」
楽「そんなうまくねえって。鶫は誰かに教わってたのか?」
鶫「私は基本的な部分はビーハイブの専属コックに教わったな。無論ヒットマンとしての仕事があるからつきっきりというわけではないが」
楽「ヒットマンだけでも大変だろうにすげえな」
鶫「前にも言ったが私は1人で生きてきたのだ。大変だなどと言えるような身分ではないし、そもそも別に大変とも思っておらん」
鶫「私の作った料理を食べてお嬢が喜んでくださるのだ。仕事の片手間に料理の練習をするくらい、大したことはない」
楽「……お前ってほんと千棘のこと好きだよな」
鶫「そんなもの当たり前だろう」
楽「今さらだったな」ハハ
鶫「なぜ笑っているんだ? いいから始めるぞ」
楽「おう」
鶫(き、来た!)ガタッ
鶫「一条楽か。よく来たな」ガチャ
楽「ド、ドア開けるのはええな」ビクッ
鶫「た、たまたまドアの近くにいただけだ!」
楽「そっか。今日はよろしくな。考えてみりゃ料理教わるのは初めてだ」
鶫「そうなのか?」
楽「教わる相手もいねえからなあ。料理の本とか見たくらいだな」
鶫「あれだけおいしくできるのだから、誰かに教わっているものだと思っていた」
楽「そんなうまくねえって。鶫は誰かに教わってたのか?」
鶫「私は基本的な部分はビーハイブの専属コックに教わったな。無論ヒットマンとしての仕事があるからつきっきりというわけではないが」
楽「ヒットマンだけでも大変だろうにすげえな」
鶫「前にも言ったが私は1人で生きてきたのだ。大変だなどと言えるような身分ではないし、そもそも別に大変とも思っておらん」
鶫「私の作った料理を食べてお嬢が喜んでくださるのだ。仕事の片手間に料理の練習をするくらい、大したことはない」
楽「……お前ってほんと千棘のこと好きだよな」
鶫「そんなもの当たり前だろう」
楽「今さらだったな」ハハ
鶫「なぜ笑っているんだ? いいから始めるぞ」
楽「おう」
20: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:06:15.44 ID:8zW8F0R7o
楽「何教えてくれるんだ?」
鶫「肉じゃがにしようと思っている」
楽「おお! すげーうまかったよな。楽しみだ」
鶫(そこまで喜んでくれるのか)フフ
鶫「まあ作るのは貴様だがな」
楽「わかってるって」
鶫「それではまずはじゃがいもからだ」
楽「皮を剥いてと」クルクル
鶫「切るときの大きさだが、だいたいひとくち大くらいで切りそろえるように」
楽「割と小さめなんだな。前に作ってたときもそうだったっけか」
鶫「小さくしたほうが味が染み込みやすいからな。大きいとなかなか中まで染み込まんのだ」
楽「へー。だから小さくしてたんだな。人参と玉葱も同じくらいの大きさでいいのか?」
鶫「ああ」
鶫「肉じゃがにしようと思っている」
楽「おお! すげーうまかったよな。楽しみだ」
鶫(そこまで喜んでくれるのか)フフ
鶫「まあ作るのは貴様だがな」
楽「わかってるって」
鶫「それではまずはじゃがいもからだ」
楽「皮を剥いてと」クルクル
鶫「切るときの大きさだが、だいたいひとくち大くらいで切りそろえるように」
楽「割と小さめなんだな。前に作ってたときもそうだったっけか」
鶫「小さくしたほうが味が染み込みやすいからな。大きいとなかなか中まで染み込まんのだ」
楽「へー。だから小さくしてたんだな。人参と玉葱も同じくらいの大きさでいいのか?」
鶫「ああ」
21: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:06:41.86 ID:8zW8F0R7o
楽「よし、炒め終わった。次は醤油を……」
鶫「なにをしているかバカもの!」
楽「うわっ! な、なんだよ大声出して」
鶫「貴様が醤油から入れようするからだ」
楽「なんかまずいのか?」
鶫「まずいに決まっているだろう。だしを入れて煮込むのが先だ」
楽「そっちが先なのか?」
鶫「そうだ。だしを入れて強火で一気に煮込む。そうするとじゃがいもが崩れる前に火を通せるのだ」
楽「じゃがいもが崩れてねえとは思ってたけど、強火で煮込んでたんだな」
鶫「ああ、そうだ。ちなみに味付けも砂糖やみりんのような甘みのあるものが先だ」
鶫「醤油を先に入れると甘みがつきにくくなってしまうからな」
楽「さっき大声出されたのはそれでか」
鶫「うむ。醤油を入れるのは豚肉としらたきを入れたあとでいい」
楽「そんなあとなんだな」
鶫「そうだな。最後の最後でいい。ほら、やってみろ」
楽「おう」
鶫「なにをしているかバカもの!」
楽「うわっ! な、なんだよ大声出して」
鶫「貴様が醤油から入れようするからだ」
楽「なんかまずいのか?」
鶫「まずいに決まっているだろう。だしを入れて煮込むのが先だ」
楽「そっちが先なのか?」
鶫「そうだ。だしを入れて強火で一気に煮込む。そうするとじゃがいもが崩れる前に火を通せるのだ」
楽「じゃがいもが崩れてねえとは思ってたけど、強火で煮込んでたんだな」
鶫「ああ、そうだ。ちなみに味付けも砂糖やみりんのような甘みのあるものが先だ」
鶫「醤油を先に入れると甘みがつきにくくなってしまうからな」
楽「さっき大声出されたのはそれでか」
鶫「うむ。醤油を入れるのは豚肉としらたきを入れたあとでいい」
楽「そんなあとなんだな」
鶫「そうだな。最後の最後でいい。ほら、やってみろ」
楽「おう」
22: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:07:15.81 ID:8zW8F0R7o
楽「砂糖とみりんと酒を入れて……あれ、豚肉がねえ」
鶫「ああ、すまん。出し忘れていた。冷蔵庫から出してくれ」
楽「はいよ」ガチャ
楽「豚肉は……あったあった」
楽「……ん? これ……」
鶫「なんだ。何かあったのか?」
楽「いや、この容器に入ってるのって麦茶か?」バタン
鶫「そうだがどうかしたか? 別に珍しいものでもあるまい」
楽「女子高生がわざわざ作ってるってのは十分珍しいんじゃねえか? 母親とかが作ってるイメージはあるけど」
鶫「……そういうものなのか? 何か用意しておかないとポーラがジュースばかり飲むから、健康のことを考えて作りおきしているのだが」
楽「ポーラの母親みたいだな」ハハ
鶫「誰が母親だ!」
楽「べ、別にからかってるわけじゃねえって」
鶫「ならばせめて姉と言え」
楽(姉ちゃんってあんまり麦茶作るイメージねえしなあ)
鶫「まったく。余計なことを言っていないで早く続きを作るぞ」
楽「わかったよ」
鶫「ああ、すまん。出し忘れていた。冷蔵庫から出してくれ」
楽「はいよ」ガチャ
楽「豚肉は……あったあった」
楽「……ん? これ……」
鶫「なんだ。何かあったのか?」
楽「いや、この容器に入ってるのって麦茶か?」バタン
鶫「そうだがどうかしたか? 別に珍しいものでもあるまい」
楽「女子高生がわざわざ作ってるってのは十分珍しいんじゃねえか? 母親とかが作ってるイメージはあるけど」
鶫「……そういうものなのか? 何か用意しておかないとポーラがジュースばかり飲むから、健康のことを考えて作りおきしているのだが」
楽「ポーラの母親みたいだな」ハハ
鶫「誰が母親だ!」
楽「べ、別にからかってるわけじゃねえって」
鶫「ならばせめて姉と言え」
楽(姉ちゃんってあんまり麦茶作るイメージねえしなあ)
鶫「まったく。余計なことを言っていないで早く続きを作るぞ」
楽「わかったよ」
23: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:07:46.16 ID:8zW8F0R7o
鶫「豚肉は野菜の上に覆うような感じで置いていく」
楽「野菜の上に置くのか?」
鶫「そうだ。豚肉と落とし蓋で二重で覆うことで、煮崩れをより少なくすることができる」
楽「へーそうなのか」
鶫「あとはしらたきと醤油を入れて、ホイルで落とし蓋をしたら4分ほど煮込んで完成だ」
楽「ここでやっと醤油入れんのか」トポトポ
鶫「うむ。このくらいで入れたほうがちょうどいい味になる。まあ、好みもあるだろうが」
楽「好みはあるかもしれねえけど、前に鶫の食べたときうまかったし、言われた通りやるよ」
鶫「そうか。……そんなに気に入ってくれていたのか?」
楽「まあそりゃ今まで食べた中で一番ってくらいうまかったしな」
鶫「……こういうときは口が上手くなるな」プイッ
楽「素直に受け取れっての」
楽「野菜の上に置くのか?」
鶫「そうだ。豚肉と落とし蓋で二重で覆うことで、煮崩れをより少なくすることができる」
楽「へーそうなのか」
鶫「あとはしらたきと醤油を入れて、ホイルで落とし蓋をしたら4分ほど煮込んで完成だ」
楽「ここでやっと醤油入れんのか」トポトポ
鶫「うむ。このくらいで入れたほうがちょうどいい味になる。まあ、好みもあるだろうが」
楽「好みはあるかもしれねえけど、前に鶫の食べたときうまかったし、言われた通りやるよ」
鶫「そうか。……そんなに気に入ってくれていたのか?」
楽「まあそりゃ今まで食べた中で一番ってくらいうまかったしな」
鶫「……こういうときは口が上手くなるな」プイッ
楽「素直に受け取れっての」
24: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:08:13.76 ID:8zW8F0R7o
鶫「ふん。……それよりそろそろ時間だ。火を止めろ」
楽「おう。これで完成だな」
鶫「ああ、調理は終わりだな。あとは冷ますだけだ」
楽「どのくらい冷ますんだ?」
鶫「本当なら1時間以上は冷ますのだが、まあ冷ますだけなら教えることもないし、10分ほどでいいだろう。多少は変わるはずだ」
楽「しっかり出来てんのかな」
鶫「味見した限りでは大丈夫だろう。横で見ていても問題はなさそうだったしな」
鶫「それより冷ましている間は休むといい。お茶を入れたぞ」
楽「……麦茶?」
鶫「文句があるのか?」
楽「いや別に」ハハ
鶫「笑うなっ!」
楽「おう。これで完成だな」
鶫「ああ、調理は終わりだな。あとは冷ますだけだ」
楽「どのくらい冷ますんだ?」
鶫「本当なら1時間以上は冷ますのだが、まあ冷ますだけなら教えることもないし、10分ほどでいいだろう。多少は変わるはずだ」
楽「しっかり出来てんのかな」
鶫「味見した限りでは大丈夫だろう。横で見ていても問題はなさそうだったしな」
鶫「それより冷ましている間は休むといい。お茶を入れたぞ」
楽「……麦茶?」
鶫「文句があるのか?」
楽「いや別に」ハハ
鶫「笑うなっ!」
25: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:08:49.71 ID:8zW8F0R7o
――10分後――
楽「この温めなおすのが面倒だよな」
鶫「肉じゃがを冷めたまま食べるわけにもいかんだろう」
楽「まあそうなんだけどさ。ん、こんなもんか」
鶫「ふむ。見た目は中々だな」
楽「味もうまいといいんだけどな。じゃあ座って食べようぜ」
鶫「ああ」
楽「いただきます」モグモグ
楽「……おお、なかなかじゃねえか?」
鶫「ふむ。悪くはないな。よく出来ているではないか」モグモグ
楽「今まで作ってたのよりずっとうまい。まあ隣で教わりながら作ったってのもあるけどさ」
鶫「それでも上出来だと思うぞ? 煮崩れもほとんどしていないし。味はまあもう少し醤油が薄いほうが私の好みだが」
楽「だよなー。俺もそこは少し気になった。いつもと違ってあとから入れたから、分量が多くなったみてえだ」モグモグ
鶫「……ところでこれは誰に振る舞うのだ?」
楽「誰に?」
鶫「誰かに食べさせるために教わったのではないのか?」
楽「あーまあ誰かにって言うならウチの奴らにかな。誰かに食べてもらうとかそこまで考えてねえよ」
鶫「……そうか」ホッ
鶫(……なぜ私はホッとしているのだ!)ブンブン
楽「?」
楽「この温めなおすのが面倒だよな」
鶫「肉じゃがを冷めたまま食べるわけにもいかんだろう」
楽「まあそうなんだけどさ。ん、こんなもんか」
鶫「ふむ。見た目は中々だな」
楽「味もうまいといいんだけどな。じゃあ座って食べようぜ」
鶫「ああ」
楽「いただきます」モグモグ
楽「……おお、なかなかじゃねえか?」
鶫「ふむ。悪くはないな。よく出来ているではないか」モグモグ
楽「今まで作ってたのよりずっとうまい。まあ隣で教わりながら作ったってのもあるけどさ」
鶫「それでも上出来だと思うぞ? 煮崩れもほとんどしていないし。味はまあもう少し醤油が薄いほうが私の好みだが」
楽「だよなー。俺もそこは少し気になった。いつもと違ってあとから入れたから、分量が多くなったみてえだ」モグモグ
鶫「……ところでこれは誰に振る舞うのだ?」
楽「誰に?」
鶫「誰かに食べさせるために教わったのではないのか?」
楽「あーまあ誰かにって言うならウチの奴らにかな。誰かに食べてもらうとかそこまで考えてねえよ」
鶫「……そうか」ホッ
鶫(……なぜ私はホッとしているのだ!)ブンブン
楽「?」
26: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:09:33.49 ID:8zW8F0R7o
鶫「ごちそうさま。おいしかった」
楽「おう。今日はありがとな」
鶫「……その、話したいことがあるのだが、いいか?」
楽「ああ、別に構わねえけど」
鶫「そ、そのだな……」
鶫(少しくらい攻めて見る、か。……べ、別にこいつのことなんてどうでもよいのだが、ああ言われて何もしないというのも)グヌヌ
楽「鶫?」
鶫「……少し相談があるのだ」
楽「俺でよけりゃ聞くけど俺でいいのか?」
鶫「構わん。私の友人の話なのだが」
楽「ますます聞いて大丈夫かそれ」
鶫「貴様が喋らなければ大丈夫だろう。私が誰かに相談するのは気にしないそうだから」
楽「ならいいけどさ。それでなんの相談なんだよ?」
楽「おう。今日はありがとな」
鶫「……その、話したいことがあるのだが、いいか?」
楽「ああ、別に構わねえけど」
鶫「そ、そのだな……」
鶫(少しくらい攻めて見る、か。……べ、別にこいつのことなんてどうでもよいのだが、ああ言われて何もしないというのも)グヌヌ
楽「鶫?」
鶫「……少し相談があるのだ」
楽「俺でよけりゃ聞くけど俺でいいのか?」
鶫「構わん。私の友人の話なのだが」
楽「ますます聞いて大丈夫かそれ」
鶫「貴様が喋らなければ大丈夫だろう。私が誰かに相談するのは気にしないそうだから」
楽「ならいいけどさ。それでなんの相談なんだよ?」
27: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:10:09.12 ID:8zW8F0R7o
鶫「なんと表現すればいいか…………その友人に気になる相手が出来たらしいのだ」
楽「気になる?」
鶫「ああ。そいつのことをいつの間にか目で追ってしまったり、そいつの言葉や行動でドキドキしたりイライラしたりするそうだ」
楽「……これ恋愛相談か?」
鶫「違う!!」
楽「そういうふうにしか聞こえねえんだけど……」
鶫「気のせいだ! ……詳しい理由はわからんが、その相手とは恋人関係にはなれないそうだからな」
楽「なんだそれ?」
鶫「わ、私も知らん!!」
楽「ど、怒鳴らなくてもいいだろ? まあいいか。それで恋愛相談じゃないならどういう相談なんだよ」
鶫「うむ。私の友人は、その相手に……」
鶫「…………この表現が正確なのかわからないのだが」
楽「とりあえず言ってみろって」
鶫「……す、好かれたい、らしい」
楽「は?」
鶫「べ、別に恋人になりたいとかそういう話ではないぞ! そもそも無理なわけだし!」
鶫「ただ、おそらく私の友人は、その相手にキツくあたってしまって嫌われているだろうから、せめて普通に好意を持ってもらいたいと言っているのだ」
楽「好かれたいねえ……」
楽「気になる?」
鶫「ああ。そいつのことをいつの間にか目で追ってしまったり、そいつの言葉や行動でドキドキしたりイライラしたりするそうだ」
楽「……これ恋愛相談か?」
鶫「違う!!」
楽「そういうふうにしか聞こえねえんだけど……」
鶫「気のせいだ! ……詳しい理由はわからんが、その相手とは恋人関係にはなれないそうだからな」
楽「なんだそれ?」
鶫「わ、私も知らん!!」
楽「ど、怒鳴らなくてもいいだろ? まあいいか。それで恋愛相談じゃないならどういう相談なんだよ」
鶫「うむ。私の友人は、その相手に……」
鶫「…………この表現が正確なのかわからないのだが」
楽「とりあえず言ってみろって」
鶫「……す、好かれたい、らしい」
楽「は?」
鶫「べ、別に恋人になりたいとかそういう話ではないぞ! そもそも無理なわけだし!」
鶫「ただ、おそらく私の友人は、その相手にキツくあたってしまって嫌われているだろうから、せめて普通に好意を持ってもらいたいと言っているのだ」
楽「好かれたいねえ……」
28: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:11:02.68 ID:8zW8F0R7o
楽(鶫はこう言ってるけど、どう考えても恋愛相談だよなあ)ウーン
楽(……友人って誰なんだ? 千棘は俺の恋人って設定だから鶫に話すわけねえし、小野寺も相談するなら宮本だよな)
楽(橘とか羽姉がするとは思えねえし、クラスの他の奴らも、恋愛相談なら鶫にしねえだろうから……消去法でポーラか!)
楽(ポーラは鶫と仲いいし、鶫は姉ちゃんみたいなもんなんだろうから鶫に相談するよな。それにあいつなら学年も違うから鶫が友達に話しても気にしないだろうし)
楽(鶫も頼られたら経験無くても断れねえよな。それに好かれたいって相談だと女子には聞きにくそうだし、だから男の俺に聞いたのか)ウンウン
楽(っていうかポーラもそういうことに興味持ってんだな。……鶫は初恋まだって言ってたし、そりゃ悩むよなあ)
鶫「一条楽。何かいいアイデアはないだろうか」
楽「そうだなー。好かれたいっていうと……」
楽(ポーラは……あいつ見た目は人形みたいに綺麗なのに、喋るとほんとお子様だからなあ。男子と喧嘩しても不思議じゃねえな)
楽(好かれたいならそいつに対する態度を直せばいいんだろうけど、出来なさそうだし……)
楽(……友人って誰なんだ? 千棘は俺の恋人って設定だから鶫に話すわけねえし、小野寺も相談するなら宮本だよな)
楽(橘とか羽姉がするとは思えねえし、クラスの他の奴らも、恋愛相談なら鶫にしねえだろうから……消去法でポーラか!)
楽(ポーラは鶫と仲いいし、鶫は姉ちゃんみたいなもんなんだろうから鶫に相談するよな。それにあいつなら学年も違うから鶫が友達に話しても気にしないだろうし)
楽(鶫も頼られたら経験無くても断れねえよな。それに好かれたいって相談だと女子には聞きにくそうだし、だから男の俺に聞いたのか)ウンウン
楽(っていうかポーラもそういうことに興味持ってんだな。……鶫は初恋まだって言ってたし、そりゃ悩むよなあ)
鶫「一条楽。何かいいアイデアはないだろうか」
楽「そうだなー。好かれたいっていうと……」
楽(ポーラは……あいつ見た目は人形みたいに綺麗なのに、喋るとほんとお子様だからなあ。男子と喧嘩しても不思議じゃねえな)
楽(好かれたいならそいつに対する態度を直せばいいんだろうけど、出来なさそうだし……)
29: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:11:30.58 ID:8zW8F0R7o
楽「……そいつが誰でどういうやつなのかわかんねえから、いいアドバイスかどうかわかんねえけど」
鶫「構わん。言ってくれ」
楽「笑った女の子が嫌いな男はいねえから、その相手に笑って見せればいいんじゃねえかな。ありがとうって感謝するときとかさ」
楽(ポーラなら多分笑顔なんて見せたことねえだろうし、見た目も可愛いから効きそうだ)
鶫「笑って見せる……こうか?」ヒキツリ
楽「いや、ぎこちないにもほどがあるぞ」
鶫「くっ」
楽「ていうかなんでお前が笑ってんだ?」
鶫「う、うるさい! 伝えるときには私が実践してみせたほうがいいだろう!?」
楽「そうか?」
鶫「そうなんだ! ……その、笑った女の子が嫌いな男がいないというのは、貴様もそうなのか?」
楽「そうじゃなかったらそんなこと言わねえよ」
鶫「……そうか。ありがとう。助かった」
楽「別に感謝されるほどのことは言ってねえって」
鶫「そんなことはない。私じゃそんなことは言えなかった」
楽「まあ喜んでもらえるなら良かったよ」
鶫「構わん。言ってくれ」
楽「笑った女の子が嫌いな男はいねえから、その相手に笑って見せればいいんじゃねえかな。ありがとうって感謝するときとかさ」
楽(ポーラなら多分笑顔なんて見せたことねえだろうし、見た目も可愛いから効きそうだ)
鶫「笑って見せる……こうか?」ヒキツリ
楽「いや、ぎこちないにもほどがあるぞ」
鶫「くっ」
楽「ていうかなんでお前が笑ってんだ?」
鶫「う、うるさい! 伝えるときには私が実践してみせたほうがいいだろう!?」
楽「そうか?」
鶫「そうなんだ! ……その、笑った女の子が嫌いな男がいないというのは、貴様もそうなのか?」
楽「そうじゃなかったらそんなこと言わねえよ」
鶫「……そうか。ありがとう。助かった」
楽「別に感謝されるほどのことは言ってねえって」
鶫「そんなことはない。私じゃそんなことは言えなかった」
楽「まあ喜んでもらえるなら良かったよ」
30: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:11:59.53 ID:8zW8F0R7o
鶫「引き止めてしまって悪かったな」
楽「いや、俺も少し話があったし」
鶫「話?」
楽「ああ、これからも今日みたいに料理を教えあわねえか?」
鶫「え? な、なぜだ!?」ドキッ
楽「ほら、また千棘からなにか作ってって言われるかもしれねえしさ。最初からいろいろ知っておいたほうがいいだろ?」
鶫「そそ、それはそうだが、別に普段から教えあう必要はないだろう。なにを希望されるかもわからんし」アワアワ
楽「……まあ正直言うと、俺が教えてもらいてえんだ」ポリポリ
鶫「は?」
楽「最近料理に凝ってるんだけど、自分一人じゃ限界があってさ。かといってウチじゃ料理できるやついねえし」
楽「いや、俺も少し話があったし」
鶫「話?」
楽「ああ、これからも今日みたいに料理を教えあわねえか?」
鶫「え? な、なぜだ!?」ドキッ
楽「ほら、また千棘からなにか作ってって言われるかもしれねえしさ。最初からいろいろ知っておいたほうがいいだろ?」
鶫「そそ、それはそうだが、別に普段から教えあう必要はないだろう。なにを希望されるかもわからんし」アワアワ
楽「……まあ正直言うと、俺が教えてもらいてえんだ」ポリポリ
鶫「は?」
楽「最近料理に凝ってるんだけど、自分一人じゃ限界があってさ。かといってウチじゃ料理できるやついねえし」
31: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:12:38.04 ID:8zW8F0R7o
鶫「そんなもの、橘万里花にでも教わればいいだろう」
鶫(そんな理由なら慌てる必要などなかったな……べ、別に理由がなんであれそもそも慌てる理由がないのだが!)
楽「橘だと楽様にそんなことさせられませんとか言われそうでさ」
鶫(……まあ想像がつくな)
楽「それにほら、いつもの調子で好きですなんて言われたら料理教わるどころじゃねえから」
鶫「……貴様にはお嬢がいるのだから、なにを言われようと動揺する必要はないだろう?」ピクッ
楽「……いやまあ、そりゃそうなんだけど、男としてしょうがないっつーか」アハハ…
鶫「っ」イラッ
楽「な? ダメか?」
鶫「……本当に貴様は、人の神経を逆なでするのが上手いな」ボソッ
楽「え? 今なんて?」
鶫「別に」
鶫(そんな理由なら慌てる必要などなかったな……べ、別に理由がなんであれそもそも慌てる理由がないのだが!)
楽「橘だと楽様にそんなことさせられませんとか言われそうでさ」
鶫(……まあ想像がつくな)
楽「それにほら、いつもの調子で好きですなんて言われたら料理教わるどころじゃねえから」
鶫「……貴様にはお嬢がいるのだから、なにを言われようと動揺する必要はないだろう?」ピクッ
楽「……いやまあ、そりゃそうなんだけど、男としてしょうがないっつーか」アハハ…
鶫「っ」イラッ
楽「な? ダメか?」
鶫「……本当に貴様は、人の神経を逆なでするのが上手いな」ボソッ
楽「え? 今なんて?」
鶫「別に」
32: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:13:06.23 ID:8zW8F0R7o
鶫(橘万里花だとダメで、私ならいいのか? 私なら料理に集中できると? 私もこんな奴どうでもいいとはいえ、言い方というものがあるだろう!)
鶫(私ひとり慌てているのがバカみたいではないか。……ああ、断ってやりたいが、断ったら自意識過剰になってしまうな。こいつはなんとも思っていないのだから!)ギロッ
楽(な、なんか睨まれてる?)ビクビク
鶫「……まあお嬢のためにもなることだし、私は構わん」
楽「お、おう。いいのか?」
鶫「言い出したのは貴様だろう。なぜそんなことを聞く」ギロッ
楽(そうやって睨んでるからだよ!)ビクビク
楽「い、いや。来ていいならいいんだけどさ」
鶫「……ふん」
楽「そ、それじゃあ今日はこれで。またな」
鶫「ああ」
鶫(私ひとり慌てているのがバカみたいではないか。……ああ、断ってやりたいが、断ったら自意識過剰になってしまうな。こいつはなんとも思っていないのだから!)ギロッ
楽(な、なんか睨まれてる?)ビクビク
鶫「……まあお嬢のためにもなることだし、私は構わん」
楽「お、おう。いいのか?」
鶫「言い出したのは貴様だろう。なぜそんなことを聞く」ギロッ
楽(そうやって睨んでるからだよ!)ビクビク
楽「い、いや。来ていいならいいんだけどさ」
鶫「……ふん」
楽「そ、それじゃあ今日はこれで。またな」
鶫「ああ」
33: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:13:32.96 ID:8zW8F0R7o
鶫(……つい熱くなってしまったが、よく考えてみたらあいつはお嬢の恋人だぞ!? なぜ私は来てもいいなどと言ってしまったのだ!!)アワアワ
鶫(定期的に私の家に来るなどと、ポーラになんと言われるか……)
鶫(というかあいつは私の、女子の家に来ることをなんとも思わないのか!? 仮にも恋人がいるのだぞ! しかもお嬢だ!)
鶫(そう、お嬢がいるのだ! お嬢が……)
鶫(……そうか。あいつにはお嬢がいるのだ)
鶫「お嬢のような恋人がいるのだから、私ごとき、あいつにとって女と意識するような存在ではないのだな」
鶫(考えてみれば当然だ。あいつがあんなに気軽に言っているのも当たり前)
鶫(……さっき言っていたではないか。橘万里花が相手では料理どころではないが、私ではそんなことないと)
鶫(……一条楽に女として見られていないのはなんとなくわかっていたし、恋人のお嬢に負けるのもそれは当然だ)
鶫(けれど、橘万里花にも……まあ、女性らしさや可憐さで優っているとはさすがに思わないが、それでもこうはっきりと女として劣っていると言われるのは)
鶫「――少し、つらいな」
鶫(定期的に私の家に来るなどと、ポーラになんと言われるか……)
鶫(というかあいつは私の、女子の家に来ることをなんとも思わないのか!? 仮にも恋人がいるのだぞ! しかもお嬢だ!)
鶫(そう、お嬢がいるのだ! お嬢が……)
鶫(……そうか。あいつにはお嬢がいるのだ)
鶫「お嬢のような恋人がいるのだから、私ごとき、あいつにとって女と意識するような存在ではないのだな」
鶫(考えてみれば当然だ。あいつがあんなに気軽に言っているのも当たり前)
鶫(……さっき言っていたではないか。橘万里花が相手では料理どころではないが、私ではそんなことないと)
鶫(……一条楽に女として見られていないのはなんとなくわかっていたし、恋人のお嬢に負けるのもそれは当然だ)
鶫(けれど、橘万里花にも……まあ、女性らしさや可憐さで優っているとはさすがに思わないが、それでもこうはっきりと女として劣っていると言われるのは)
鶫「――少し、つらいな」
34: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:14:52.15 ID:8zW8F0R7o
ポーラ「ただいまー。どう、キスのひとつくらいし――なに落ち込んでんのよ?」
鶫「落ち込んでなどおらん」
ポーラ「どう見たら落ち込んでないように見えるのよ」
鶫「……」
ポーラ「はぁ。ま、大方あいつに全然女として見られなくて落ち込んでるんでしょ」
鶫「……それだけじゃない」
ポーラ「ふぅん? じゃあなに?」
鶫「……お嬢だけでなく、他の者と比べても女として劣っていると思われているというのが――」
鶫「まあそもそも別に一条楽のことなどなんとも思っていないしどうでもよいのだが!?」
ポーラ「まだ言う気なのそれ。別にいいけど」
ポーラ「ていうかね、お嬢様と比べようというのがまずおこがましいわよね」
鶫「べ、別にお嬢と比べようなどとは思っていない!」
ポーラ「嘘つき。ま、お嬢様は恋人だしそもそも別格としても、春のお姉さんと警視総監の娘だって当然じゃない。自分だってあの2人より女らしいとは思ってないでしょ?」
鶫「うっ……べ、別に小野寺様の話はしていない」
ポーラ「そうなの? でもまあしてなくても一緒でしょ。あの人が一条楽に女として見られてないと思うの?」
鶫「……思わん」
ポーラ「でしょ? それに春のお姉さんとは中学校が一緒だし、警視総監の娘は黒虎と違って素直に好きだって言ってるし。何かお嬢様たちに勝ってるものあるの?」
鶫「うう……」
鶫「落ち込んでなどおらん」
ポーラ「どう見たら落ち込んでないように見えるのよ」
鶫「……」
ポーラ「はぁ。ま、大方あいつに全然女として見られなくて落ち込んでるんでしょ」
鶫「……それだけじゃない」
ポーラ「ふぅん? じゃあなに?」
鶫「……お嬢だけでなく、他の者と比べても女として劣っていると思われているというのが――」
鶫「まあそもそも別に一条楽のことなどなんとも思っていないしどうでもよいのだが!?」
ポーラ「まだ言う気なのそれ。別にいいけど」
ポーラ「ていうかね、お嬢様と比べようというのがまずおこがましいわよね」
鶫「べ、別にお嬢と比べようなどとは思っていない!」
ポーラ「嘘つき。ま、お嬢様は恋人だしそもそも別格としても、春のお姉さんと警視総監の娘だって当然じゃない。自分だってあの2人より女らしいとは思ってないでしょ?」
鶫「うっ……べ、別に小野寺様の話はしていない」
ポーラ「そうなの? でもまあしてなくても一緒でしょ。あの人が一条楽に女として見られてないと思うの?」
鶫「……思わん」
ポーラ「でしょ? それに春のお姉さんとは中学校が一緒だし、警視総監の娘は黒虎と違って素直に好きだって言ってるし。何かお嬢様たちに勝ってるものあるの?」
鶫「うう……」
35: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/03/13(日) 20:16:07.79 ID:8zW8F0R7o
ポーラ「……そこで胸って言いなさいよ」
鶫「い、言えるかバカもの!!」
ポーラ「人に全く胸がないなんて言っておいて自分では胸があると言えないと……?」イラッ
鶫(まだ根に持っているのか……)
ポーラ「まあとにかく、落ち込む前にまず自分の身を振り返りなさいよ」
鶫「……考えておく」シュン
ポーラ(ついになんとも思ってないとか言わなくなったわね。……言い過ぎたかしら)
ポーラ「……まあ落ち込んでる黒虎なんて見たくないし、私も何か考えておいてあげるわ」
鶫「ポーラ……」
ポーラ「それで次はなんて口実つけて会うの? 他の人がいる前じゃどうせ何もできないんだから早めに2人きりで会う約束しなさいよ」
鶫「あ、それなら大丈夫だ」
ポーラ「へえ。また料理でも作るの?」
鶫「ああ。これから週に何回か料理を教えあうことになった」
ポーラ「……ずっと?」
鶫「まあ1,2回ではないと思うが」
ポーラ「……やるじゃない」
鶫「…………ありがとう?」
鶫「い、言えるかバカもの!!」
ポーラ「人に全く胸がないなんて言っておいて自分では胸があると言えないと……?」イラッ
鶫(まだ根に持っているのか……)
ポーラ「まあとにかく、落ち込む前にまず自分の身を振り返りなさいよ」
鶫「……考えておく」シュン
ポーラ(ついになんとも思ってないとか言わなくなったわね。……言い過ぎたかしら)
ポーラ「……まあ落ち込んでる黒虎なんて見たくないし、私も何か考えておいてあげるわ」
鶫「ポーラ……」
ポーラ「それで次はなんて口実つけて会うの? 他の人がいる前じゃどうせ何もできないんだから早めに2人きりで会う約束しなさいよ」
鶫「あ、それなら大丈夫だ」
ポーラ「へえ。また料理でも作るの?」
鶫「ああ。これから週に何回か料理を教えあうことになった」
ポーラ「……ずっと?」
鶫「まあ1,2回ではないと思うが」
ポーラ「……やるじゃない」
鶫「…………ありがとう?」
39: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:39:45.91 ID:LJ5QL+TXo
――3ヶ月後――
鶫「~~♪」プルルル
鶫(電話だ。……一条楽から)ドキ
鶫「もしもし?」ピッ
楽『あ、鶫か?』
鶫「ああ、そうだ。……まさか来られなくなったのか?」
楽『いや、ちょっと遅れるけどそれは大丈夫』
鶫「そうか」ホッ
鶫(……なにをほっとしているのだ私は)
楽『実はウチの醤油が切れちまったんだ』
鶫「醤油?」
楽『セールのときに買おうと思ってたんだけど、思ったより早くなくなっちまって』
鶫「はあ」
楽『それで何軒か店回ったんだけど今日に限って売り切れてて……悪いんだけど今日行ったとき醤油分けてもらえねえか?』
鶫「なんだ。改まって言うから何かと思えばそんなことか。別に構わん、というか電話などせずとも来たときに言えばそれでよかったのだが」
楽『急に行って鶫のとこにも醤油無かったら困るだろ?』
鶫「貴様と違って醤油を切らすようなことはせん」
楽『だ、だからうっかりしてたんだって』
鶫「本当か? まあ醤油がなければ困るだろうし、用意しておく」クスッ
楽『ありがとな。これから行くから』
鶫「ああ、待ってるぞ」ピッ
鶫「~~♪」プルルル
鶫(電話だ。……一条楽から)ドキ
鶫「もしもし?」ピッ
楽『あ、鶫か?』
鶫「ああ、そうだ。……まさか来られなくなったのか?」
楽『いや、ちょっと遅れるけどそれは大丈夫』
鶫「そうか」ホッ
鶫(……なにをほっとしているのだ私は)
楽『実はウチの醤油が切れちまったんだ』
鶫「醤油?」
楽『セールのときに買おうと思ってたんだけど、思ったより早くなくなっちまって』
鶫「はあ」
楽『それで何軒か店回ったんだけど今日に限って売り切れてて……悪いんだけど今日行ったとき醤油分けてもらえねえか?』
鶫「なんだ。改まって言うから何かと思えばそんなことか。別に構わん、というか電話などせずとも来たときに言えばそれでよかったのだが」
楽『急に行って鶫のとこにも醤油無かったら困るだろ?』
鶫「貴様と違って醤油を切らすようなことはせん」
楽『だ、だからうっかりしてたんだって』
鶫「本当か? まあ醤油がなければ困るだろうし、用意しておく」クスッ
楽『ありがとな。これから行くから』
鶫「ああ、待ってるぞ」ピッ
40: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:40:15.70 ID:LJ5QL+TXo
鶫(とりあえず醤油を分けておこう。このペットボトルでいいか)トポトポ
ポーラ「ただいまー」
鶫「おかえり」
ポーラ「今日も一条楽は来るのよね?」
鶫「ああ、そうだな。心配しなくても3人分用意しているぞ」
ポーラ「……私が2人が料理してるとき、出て行かないで家にいるようになったのいつからだったかしら」
鶫「だいたい2ヶ月前くらいからじゃないか?」
ポーラ「そうよね。あんたと一条楽が料理を教え合い始めたのが3ヶ月前くらいだからそのくらいよね」
鶫「それがどうかしたのか?」
ポーラ「それで何回くらい教えあったっけ?」
鶫「週に1,2回くらいだから……だいたい15~20回くらいだと思う」
鶫「お吸い物とかカレイの煮付けを教わったり、私がミートローフやパエリアを教えたり……」
ポーラ「中身はどうでもいいのよ!!」
鶫「な、なんだ急に」
ポーラ「ただいまー」
鶫「おかえり」
ポーラ「今日も一条楽は来るのよね?」
鶫「ああ、そうだな。心配しなくても3人分用意しているぞ」
ポーラ「……私が2人が料理してるとき、出て行かないで家にいるようになったのいつからだったかしら」
鶫「だいたい2ヶ月前くらいからじゃないか?」
ポーラ「そうよね。あんたと一条楽が料理を教え合い始めたのが3ヶ月前くらいだからそのくらいよね」
鶫「それがどうかしたのか?」
ポーラ「それで何回くらい教えあったっけ?」
鶫「週に1,2回くらいだから……だいたい15~20回くらいだと思う」
鶫「お吸い物とかカレイの煮付けを教わったり、私がミートローフやパエリアを教えたり……」
ポーラ「中身はどうでもいいのよ!!」
鶫「な、なんだ急に」
41: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:40:42.97 ID:LJ5QL+TXo
ポーラ「なんで3ヶ月もあってなにも進展がないのよ! ただおいしい料理食べてるだけじゃない!!」
鶫「お、教えあうことが目的なのだからそれでよいではないかっ」
ポーラ「んな建前はいいって言ってるのよ! たまに私がアシストしようとしてもすぐヘタレて……」
鶫「べ、別にそんなもの望んでおらん! というか貴様の言うアシストとは包丁で切ってるときにぶつかったり髪に芋けんぴをつけたりすることのことを言っているのか!?」
ポーラ「そうよ。怪我した指の血を吸うのも芋けんぴ取ってあげるのもどっちも定番じゃない」
鶫「少女漫画の定番を持ちだしてどうする。というか芋けんぴを取るのは絶対に定番じゃないだろう!?」
ポーラ「ネットで流行になるくらいの定番よ」
鶫「流行の意味が違うだろう」
ポーラ「まあともかく、問題なのはそれを全然活かそうとしないところよ!」
ポーラ「なんなの指切ったら絆創膏を渡したり、芋けんぴをつけたら自分で取ったり! なにがしたいんだっての!」
鶫「当然のことしかしていないだろう!?」
ポーラ「色気がないのよ色気が。もっと指を咥えて舐めてあげたり、あいつに取ってもらったりしないとダメじゃない」
鶫「できるかそんなこと!」
鶫「お、教えあうことが目的なのだからそれでよいではないかっ」
ポーラ「んな建前はいいって言ってるのよ! たまに私がアシストしようとしてもすぐヘタレて……」
鶫「べ、別にそんなもの望んでおらん! というか貴様の言うアシストとは包丁で切ってるときにぶつかったり髪に芋けんぴをつけたりすることのことを言っているのか!?」
ポーラ「そうよ。怪我した指の血を吸うのも芋けんぴ取ってあげるのもどっちも定番じゃない」
鶫「少女漫画の定番を持ちだしてどうする。というか芋けんぴを取るのは絶対に定番じゃないだろう!?」
ポーラ「ネットで流行になるくらいの定番よ」
鶫「流行の意味が違うだろう」
ポーラ「まあともかく、問題なのはそれを全然活かそうとしないところよ!」
ポーラ「なんなの指切ったら絆創膏を渡したり、芋けんぴをつけたら自分で取ったり! なにがしたいんだっての!」
鶫「当然のことしかしていないだろう!?」
ポーラ「色気がないのよ色気が。もっと指を咥えて舐めてあげたり、あいつに取ってもらったりしないとダメじゃない」
鶫「できるかそんなこと!」
42: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:41:24.19 ID:LJ5QL+TXo
ポーラ「このくらいのこともしないならなんで一条楽を呼んでるのよ!」
鶫「そ、それは、だから言っているだろう。料理を教えあうためで……」
ポーラ「……まあ別にあいつと今の関係のままでいいっていうならそれでいいけど」
ポーラ「ただ、私たちはいつまでもここにいられるわけじゃないのわかってる? この間みたいにいつアメリカに帰るって話が出るかわからないのよ?」
ポーラ「お嬢様の護衛だからまだまだ一緒にいられるって思ってるのかもしれないけど、それだって急に別の役目になることだってあるんだし」
ポーラ「そのときになってから後悔したって遅いんだから」
鶫「……そろそろ料理の下準備をしなければ」クルッ
ポーラ「まったく、こういう話だと本当ダメね」
鶫「……」
鶫「そ、それは、だから言っているだろう。料理を教えあうためで……」
ポーラ「……まあ別にあいつと今の関係のままでいいっていうならそれでいいけど」
ポーラ「ただ、私たちはいつまでもここにいられるわけじゃないのわかってる? この間みたいにいつアメリカに帰るって話が出るかわからないのよ?」
ポーラ「お嬢様の護衛だからまだまだ一緒にいられるって思ってるのかもしれないけど、それだって急に別の役目になることだってあるんだし」
ポーラ「そのときになってから後悔したって遅いんだから」
鶫「……そろそろ料理の下準備をしなければ」クルッ
ポーラ「まったく、こういう話だと本当ダメね」
鶫「……」
43: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:42:03.05 ID:LJ5QL+TXo
ポーラ「叫んでたら喉乾いちゃった。黒虎、飲み物ちょうだい」
鶫「麦茶でも飲んでいろ」
ポーラ「たまにはジュース買いなさいよー。まあこれしかないし、仕方ないから飲んであげるけど」
鶫「放っておくとジュースばかり飲むだろう」
ポーラ「おいしいんだからいいじゃない。にしても小さいペットボトルに入れてるなんて、珍しく気が利くわね」ゴクゴク
鶫「小さいペットボトル?」クルッ
鶫「!? お、おいポーラ! それは醤油――」
ポーラ「しょっぱーーーー!!」ブーッ!
鶫「うわぁっ!?」ビシャッ!
ポーラ「あ、あんた何考えてペットボトルに醤油なんて入れてんのよ!」ゲホゲホ
鶫「一条楽が醤油を切らして分けて欲しいと言っていたからペットボトルに入れておいたんだ!」
ポーラ「だからってペットボトルに入れて台所に置くことないでしょ!?」
鶫「入れたところに貴様が帰ってきたんだ! ……こんなことを言っている場合ではないな。醤油を飲んでそのままはまずい。早く吐くんだ」
ポーラ「お、乙女がそんなことできるわけ……気持ち悪い……」
鶫「ほら、意地を貼らずに。その間に掃除して水を用意しておくから」
ポーラ「分かったわよ……」ヨロヨロ
鶫「麦茶でも飲んでいろ」
ポーラ「たまにはジュース買いなさいよー。まあこれしかないし、仕方ないから飲んであげるけど」
鶫「放っておくとジュースばかり飲むだろう」
ポーラ「おいしいんだからいいじゃない。にしても小さいペットボトルに入れてるなんて、珍しく気が利くわね」ゴクゴク
鶫「小さいペットボトル?」クルッ
鶫「!? お、おいポーラ! それは醤油――」
ポーラ「しょっぱーーーー!!」ブーッ!
鶫「うわぁっ!?」ビシャッ!
ポーラ「あ、あんた何考えてペットボトルに醤油なんて入れてんのよ!」ゲホゲホ
鶫「一条楽が醤油を切らして分けて欲しいと言っていたからペットボトルに入れておいたんだ!」
ポーラ「だからってペットボトルに入れて台所に置くことないでしょ!?」
鶫「入れたところに貴様が帰ってきたんだ! ……こんなことを言っている場合ではないな。醤油を飲んでそのままはまずい。早く吐くんだ」
ポーラ「お、乙女がそんなことできるわけ……気持ち悪い……」
鶫「ほら、意地を貼らずに。その間に掃除して水を用意しておくから」
ポーラ「分かったわよ……」ヨロヨロ
44: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:42:29.26 ID:LJ5QL+TXo
鶫「どうだ? ほら水だ」
ポーラ「……ありがと。出せるだけ出したけど、まだ気持ち悪い」ウー
鶫「病院に行くか?」
ポーラ「……そこまでじゃないと思うからクロード様にビーハイブの薬でも貰ってくるわ」
鶫「いや、でも結構飲んでいたしちゃんと見てもらったほうが」
ポーラ「だ、大丈夫! 水も飲んだし!」ビクッ
鶫「……点滴が怖いのか?」
ポーラ「そ、そんなわけないじゃない!」ギクッ
鶫「こんなときにも貴様は……」ハァ
ポーラ「べ、別に注射がどうとかじゃなくて、病院よりビーハイブのほうがいいと思っただけなんだから!」
鶫「まあ、ビーハイブの薬なら病院より効き目があるものもあるしな。私も付いていこうか?」
ポーラ「歩けないわけじゃないしいいわよ。それに黒虎だってそれじゃシャワーを浴びてからじゃないと外に出られないでしょ?」
鶫「む……」ベタベタ
ポーラ「待ってると時間かかっちゃうし1人で行くわ」
鶫「……そうか。気をつけるんだぞ」
ポーラ「わかってるわよ。鍵は私が閉めておくから、あんたはシャワー浴びてなさい」
鶫「ああ、ありがとう。実はベタベタして気持ち悪かったんだ」
ポーラ「いいわよ。それじゃ」
ポーラ「……ありがと。出せるだけ出したけど、まだ気持ち悪い」ウー
鶫「病院に行くか?」
ポーラ「……そこまでじゃないと思うからクロード様にビーハイブの薬でも貰ってくるわ」
鶫「いや、でも結構飲んでいたしちゃんと見てもらったほうが」
ポーラ「だ、大丈夫! 水も飲んだし!」ビクッ
鶫「……点滴が怖いのか?」
ポーラ「そ、そんなわけないじゃない!」ギクッ
鶫「こんなときにも貴様は……」ハァ
ポーラ「べ、別に注射がどうとかじゃなくて、病院よりビーハイブのほうがいいと思っただけなんだから!」
鶫「まあ、ビーハイブの薬なら病院より効き目があるものもあるしな。私も付いていこうか?」
ポーラ「歩けないわけじゃないしいいわよ。それに黒虎だってそれじゃシャワーを浴びてからじゃないと外に出られないでしょ?」
鶫「む……」ベタベタ
ポーラ「待ってると時間かかっちゃうし1人で行くわ」
鶫「……そうか。気をつけるんだぞ」
ポーラ「わかってるわよ。鍵は私が閉めておくから、あんたはシャワー浴びてなさい」
鶫「ああ、ありがとう。実はベタベタして気持ち悪かったんだ」
ポーラ「いいわよ。それじゃ」
45: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:44:07.93 ID:LJ5QL+TXo
ポーラ「うえー気持ち悪ぅ……」テクテク
楽「あれ、ポーラ?」
ポーラ「あ、一条楽」
ポーラ(醤油飲んだせいで来るの忘れてた)
楽「今日は家で食わねえのか?」
ポーラ「ちょっと気持ち悪くて。これからクロード様に薬を貰いに行くのよ」
楽「気持ち悪いって大丈夫か? どうしたんだよ」
ポーラ「……とりあえずあんたのせいね」
楽「はぁ!? なんで!?」
ポーラ「私からは言いたくないから黒虎に聞きなさい」
楽「鶫に?」
ポーラ「そう。私が――」ハッ
ポーラ(この状況は使えるわね)ニヤッ
ポーラ「私が気持ち悪くなった理由はちょっと自分で言いたくないから。今は鍵がかかってるから、この合鍵で入りなさい」チャラ
楽「なんだよその気になる言い方……ていうか鍵かかってるのに入っていいのか?」
ポーラ「今までに何回もうちに来てるんだから今さら気にすることないでしょ?」
楽「……まあそれもそうか。じゃあ借りるな」
ポーラ「ええ、それじゃ私はクロード様のところに行くから、黒虎によろしく」
楽「おう!」
ポーラ(これで着替えてるところにでも出くわしたら面白くなるわね。まあ、そんなに上手く行かないでしょうけど)
楽「あれ、ポーラ?」
ポーラ「あ、一条楽」
ポーラ(醤油飲んだせいで来るの忘れてた)
楽「今日は家で食わねえのか?」
ポーラ「ちょっと気持ち悪くて。これからクロード様に薬を貰いに行くのよ」
楽「気持ち悪いって大丈夫か? どうしたんだよ」
ポーラ「……とりあえずあんたのせいね」
楽「はぁ!? なんで!?」
ポーラ「私からは言いたくないから黒虎に聞きなさい」
楽「鶫に?」
ポーラ「そう。私が――」ハッ
ポーラ(この状況は使えるわね)ニヤッ
ポーラ「私が気持ち悪くなった理由はちょっと自分で言いたくないから。今は鍵がかかってるから、この合鍵で入りなさい」チャラ
楽「なんだよその気になる言い方……ていうか鍵かかってるのに入っていいのか?」
ポーラ「今までに何回もうちに来てるんだから今さら気にすることないでしょ?」
楽「……まあそれもそうか。じゃあ借りるな」
ポーラ「ええ、それじゃ私はクロード様のところに行くから、黒虎によろしく」
楽「おう!」
ポーラ(これで着替えてるところにでも出くわしたら面白くなるわね。まあ、そんなに上手く行かないでしょうけど)
46: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:44:52.23 ID:LJ5QL+TXo
-------------------------------------
鶫(……体中に醤油の匂いが付いてしまったな。ポーラのやつめ……)ゴシゴシ
鶫(まあ醤油をあんなところに置いていた私も確かに悪いのだが、ああも盛大に吹き出されるとは)ゴシゴシ
鶫(服についたシミは取れただろうか。一応すぐに洗剤で洗ってだいたいは落とせたと思うが、残った部分があるかもしれんし……)ゴシゴシ
鶫(……一応一条楽が来るわけだからそれなりに気を使った服だったから、綺麗になってくれるといいのだが)ゴシゴシ
鶫(そ、そうだ。今日はこれから一条楽が来るのだ。早く上がって着替えて髪を乾かさなければ!)
鶫(……醤油の匂いは……取れているな。髪についた分は流石にわからんが)
鶫(泡を落としてもう上がろう)シャー
鶫「ふぅ。さっぱりした」バタン
鶫(体を拭いて、とりあえず着替えて髪を乾かそう)ゴシゴシ
ガチャガチャバタン
鶫(鍵が開けられている……ポーラしか持っていないはずだし開けたのはポーラか?)
鶫(だがなぜ戻って……まさか体調が悪くなって戻ってきたのか!?)ハッ
鶫「ポーラ!?」ガチャッ
-------------------------------------
鶫(……体中に醤油の匂いが付いてしまったな。ポーラのやつめ……)ゴシゴシ
鶫(まあ醤油をあんなところに置いていた私も確かに悪いのだが、ああも盛大に吹き出されるとは)ゴシゴシ
鶫(服についたシミは取れただろうか。一応すぐに洗剤で洗ってだいたいは落とせたと思うが、残った部分があるかもしれんし……)ゴシゴシ
鶫(……一応一条楽が来るわけだからそれなりに気を使った服だったから、綺麗になってくれるといいのだが)ゴシゴシ
鶫(そ、そうだ。今日はこれから一条楽が来るのだ。早く上がって着替えて髪を乾かさなければ!)
鶫(……醤油の匂いは……取れているな。髪についた分は流石にわからんが)
鶫(泡を落としてもう上がろう)シャー
鶫「ふぅ。さっぱりした」バタン
鶫(体を拭いて、とりあえず着替えて髪を乾かそう)ゴシゴシ
ガチャガチャバタン
鶫(鍵が開けられている……ポーラしか持っていないはずだし開けたのはポーラか?)
鶫(だがなぜ戻って……まさか体調が悪くなって戻ってきたのか!?)ハッ
鶫「ポーラ!?」ガチャッ
-------------------------------------
47: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:45:28.04 ID:LJ5QL+TXo
楽(ほんとに鍵かかってるな。鶫なにしてんだろ)ガチャガチャ
楽「お邪魔しまーす」
楽(……返事ねえなぁ)バタン
楽(なんか醤油の匂いがするな。こぼしたのか? 鶫にしちゃ珍しい――)
鶫「ポーラ!?」ガチャッ
楽「へ?」ビクッ
鶫「え?」
楽「……」ボウゼン
鶫「……」ボウゼン
楽(えっ、な、ええ!? ははは裸!? え、ええ!?)
鶫「え、ちょ、ま、えあう。な、ななななな!?」カアァァ
楽「つ、鶫、と、とりあえず服を着――」
鶫「しし、死ねえええええええ!!」バキィッ!!
楽「ぐほっ!!」
鶫「」フーッフーッ
楽「」チーン
鶫(見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた!!!!!!!)ペタン
鶫(全然、なにも隠してなかった!!! な、なんで一条楽が!? 鍵は!? ポーラは!?)
鶫(ど、どうしようどうしよう! ……くしゅんっ!)
鶫(……ともかくまずは服を着よう。一条楽が目を覚ますかもしれんし)
楽「お邪魔しまーす」
楽(……返事ねえなぁ)バタン
楽(なんか醤油の匂いがするな。こぼしたのか? 鶫にしちゃ珍しい――)
鶫「ポーラ!?」ガチャッ
楽「へ?」ビクッ
鶫「え?」
楽「……」ボウゼン
鶫「……」ボウゼン
楽(えっ、な、ええ!? ははは裸!? え、ええ!?)
鶫「え、ちょ、ま、えあう。な、ななななな!?」カアァァ
楽「つ、鶫、と、とりあえず服を着――」
鶫「しし、死ねえええええええ!!」バキィッ!!
楽「ぐほっ!!」
鶫「」フーッフーッ
楽「」チーン
鶫(見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた!!!!!!!)ペタン
鶫(全然、なにも隠してなかった!!! な、なんで一条楽が!? 鍵は!? ポーラは!?)
鶫(ど、どうしようどうしよう! ……くしゅんっ!)
鶫(……ともかくまずは服を着よう。一条楽が目を覚ますかもしれんし)
48: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:46:01.37 ID:LJ5QL+TXo
鶫(とりあえず一条楽は居間に寝かせたが、よく考えたらポーラが合鍵を渡したに決まっているではないか!!)ピピピ
鶫(ポーラめ、一体何を考えているんだ!!)プルルル
ポーラ『もしもし?』ピッ
鶫「ポーラ貴様ぁ!!」
ポーラ『な、何よ急に』
鶫「なぜ一条楽に合鍵を渡したのだ!!」
ポーラ『なぜって鍵を閉めてたら入れないじゃない』
鶫「入られたくないから鍵を閉めているのに、開けられたら意味がないだろう!?」
ポーラ『それは他人の場合でしょ? 知り合いなんだし一条楽なら別に今さら』
鶫「そういう話じゃない! 私がシャワーを使っていると言わなかったのか!?」
ポーラ『なんでそんなこと聞くのよ?』
鶫「っ!」
ポーラ『黒虎?』
鶫「…………た」ボソッ
ポーラ『え?』
鶫「見られたんだ」
ポーラ『着替えてるところでも見られたの?』
ポーラ(作戦は上手く行ったみたいね。これでお互い意識し合えば……)
鶫「……なにも着ていなかった」
ポーラ『え』
鶫(ポーラめ、一体何を考えているんだ!!)プルルル
ポーラ『もしもし?』ピッ
鶫「ポーラ貴様ぁ!!」
ポーラ『な、何よ急に』
鶫「なぜ一条楽に合鍵を渡したのだ!!」
ポーラ『なぜって鍵を閉めてたら入れないじゃない』
鶫「入られたくないから鍵を閉めているのに、開けられたら意味がないだろう!?」
ポーラ『それは他人の場合でしょ? 知り合いなんだし一条楽なら別に今さら』
鶫「そういう話じゃない! 私がシャワーを使っていると言わなかったのか!?」
ポーラ『なんでそんなこと聞くのよ?』
鶫「っ!」
ポーラ『黒虎?』
鶫「…………た」ボソッ
ポーラ『え?』
鶫「見られたんだ」
ポーラ『着替えてるところでも見られたの?』
ポーラ(作戦は上手く行ったみたいね。これでお互い意識し合えば……)
鶫「……なにも着ていなかった」
ポーラ『え』
49: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:46:32.54 ID:LJ5QL+TXo
鶫「扉、開いたから、ポーラが帰ってきたのだと思って。体調悪くなったのかと思ったから、急いで、なにも隠さず、そのまま出たら、一条楽が」グスッ
ポーラ(そ、そこまで狙ったつもりじゃ……)ダラダラ
鶫「……それで、ポーラ? 貴様は一条楽に私がシャワーを浴びているかもしれないとは言わなかったのか?」
ポーラ(あ、これわざと言わなかったって言ったら殺される)ヒクッ
ポーラ『ご、ごめんなさい。てっきりもう上がってるものと思ってたのよ』
ポーラ『ほら、一条楽が来るのはわかっていたわけだし、ささっと流すくらいで終わらせてるのかと』
鶫「それは、まあ確かに一条楽が来るのを少し忘れはしていたが……」
ポーラ(よし、怯んだ!!)グッ
ポーラ『それにまあ、ある意味良かったんじゃない』
鶫「どういう意味だ?」
ポーラ『あんた、前に女としてみてもらえないって悩んでたでしょ? そのあと何ヶ月も一緒に料理してるのに、全然女として見られてそうでもないし』
鶫「うるさい。それに別に悩んでなどおらん」
ポーラ『お嬢様とも春のお姉さんとも警視総監の娘ともスタートラインが違いすぎるんだから。前向きに考えなさい』
ポーラ『これくらいのことがあれば、さすがのあいつもあんたのことを少なからず意識するようになるわよ』
鶫「……そういう問題だろうか」
ポーラ『そういう問題なの。……うぷ。話してたらまた気持ち悪くなってきたわ』
鶫「あ、ああ。すまん。……とりあえず今後合鍵を渡すときは、部屋の様子も伝えるように」
ポーラ『了解。それじゃ』ピッ
ポーラ(……よし、誤魔化せたー!)グッ
ポーラ(そ、そこまで狙ったつもりじゃ……)ダラダラ
鶫「……それで、ポーラ? 貴様は一条楽に私がシャワーを浴びているかもしれないとは言わなかったのか?」
ポーラ(あ、これわざと言わなかったって言ったら殺される)ヒクッ
ポーラ『ご、ごめんなさい。てっきりもう上がってるものと思ってたのよ』
ポーラ『ほら、一条楽が来るのはわかっていたわけだし、ささっと流すくらいで終わらせてるのかと』
鶫「それは、まあ確かに一条楽が来るのを少し忘れはしていたが……」
ポーラ(よし、怯んだ!!)グッ
ポーラ『それにまあ、ある意味良かったんじゃない』
鶫「どういう意味だ?」
ポーラ『あんた、前に女としてみてもらえないって悩んでたでしょ? そのあと何ヶ月も一緒に料理してるのに、全然女として見られてそうでもないし』
鶫「うるさい。それに別に悩んでなどおらん」
ポーラ『お嬢様とも春のお姉さんとも警視総監の娘ともスタートラインが違いすぎるんだから。前向きに考えなさい』
ポーラ『これくらいのことがあれば、さすがのあいつもあんたのことを少なからず意識するようになるわよ』
鶫「……そういう問題だろうか」
ポーラ『そういう問題なの。……うぷ。話してたらまた気持ち悪くなってきたわ』
鶫「あ、ああ。すまん。……とりあえず今後合鍵を渡すときは、部屋の様子も伝えるように」
ポーラ『了解。それじゃ』ピッ
ポーラ(……よし、誤魔化せたー!)グッ
50: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:47:21.16 ID:LJ5QL+TXo
楽「……」クー
鶫(こいつはいつまで寝ているのだ。わ、私の裸を見ておいて)ツン
鶫(まあ、確かに手加減無しで殴ってしまったのだが……死んでないだろうな?)スッ
鶫(……うん、鼓動は安定しているし息もしているし、まあ大丈夫だろう)フゥ
鶫(……思いっきり本気で殴ったのだし、見たことを忘れていないだろうか)
鶫(事故にあったときに直前の記憶がなくなるというのはよくあることだし、期待しても良いのではないか!?)グッ
鶫(……いや、なにを都合のいいことを考えているんだ私は)ハァ
鶫(そういえば、こいつはお嬢の裸は見たことがあるのだろうか。いや、あったら許さないのだが、恋人同士なのだし)
鶫(もしないのなら、こいつが初めて見た女性の裸が私ということに……)
鶫(い、いや。だからどうということはないのだが! 本とかで見たことはあるのだろうし!)
鶫(……ひとりでいると取り留めのないことばかり考えてしまうな)ハァ
鶫「早く起きろ、バカもの」ツン
楽「ん……」
鶫「っ!?」ドキッ
鶫(こいつはいつまで寝ているのだ。わ、私の裸を見ておいて)ツン
鶫(まあ、確かに手加減無しで殴ってしまったのだが……死んでないだろうな?)スッ
鶫(……うん、鼓動は安定しているし息もしているし、まあ大丈夫だろう)フゥ
鶫(……思いっきり本気で殴ったのだし、見たことを忘れていないだろうか)
鶫(事故にあったときに直前の記憶がなくなるというのはよくあることだし、期待しても良いのではないか!?)グッ
鶫(……いや、なにを都合のいいことを考えているんだ私は)ハァ
鶫(そういえば、こいつはお嬢の裸は見たことがあるのだろうか。いや、あったら許さないのだが、恋人同士なのだし)
鶫(もしないのなら、こいつが初めて見た女性の裸が私ということに……)
鶫(い、いや。だからどうということはないのだが! 本とかで見たことはあるのだろうし!)
鶫(……ひとりでいると取り留めのないことばかり考えてしまうな)ハァ
鶫「早く起きろ、バカもの」ツン
楽「ん……」
鶫「っ!?」ドキッ
51: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:47:53.16 ID:LJ5QL+TXo
楽「ん、ふあぁ」
鶫「お、起きたか。一条楽」
楽「あ、ああ。あれ、俺なんで寝てたんだ?」
鶫(これは本当に忘れているのではないか?)ドキドキ
楽(ドア開いて、家の中入ったら急に鶫が……)ハッ
楽「え、あ、つ、鶫!? さ、さっきのあれはそのっ」カアァァ
鶫「……忘れてなかったか」
楽「え?」
鶫「別に、何でもない」
楽「お、おう」
鶫「……覚えているのだろう? 私が、その、浴室から出てきたところを」
楽「い、いやその……な?」
鶫「はっきりと言え」
楽「う……ああ、見たし覚えてる」
鶫「お、起きたか。一条楽」
楽「あ、ああ。あれ、俺なんで寝てたんだ?」
鶫(これは本当に忘れているのではないか?)ドキドキ
楽(ドア開いて、家の中入ったら急に鶫が……)ハッ
楽「え、あ、つ、鶫!? さ、さっきのあれはそのっ」カアァァ
鶫「……忘れてなかったか」
楽「え?」
鶫「別に、何でもない」
楽「お、おう」
鶫「……覚えているのだろう? 私が、その、浴室から出てきたところを」
楽「い、いやその……な?」
鶫「はっきりと言え」
楽「う……ああ、見たし覚えてる」
52: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:48:50.26 ID:LJ5QL+TXo
鶫(ああ、ダメだ。落ち着いていたつもりだったのに、話していたら感情が溢れてきて)
鶫「……なんで、貴様が合鍵を持っていたのだ」
楽「ポーラに借りたんだ」
鶫「あ、合鍵を持っているのはポーラ以外にいないから、勘違いしてしまったではないかぁ」グスン
楽「本当に悪かった」
鶫「普通はインターホンを鳴らすだろう。なんで黙って開けるんだ」グスッ
楽「いつも来てるからつい……ごめん」
鶫「黙って開けたからてっきりポーラが体調を悪くして帰ってきたものだと私は思って……」
楽「全部俺が悪かった」
鶫「このバカ、バカもの。変態!」
楽「なんとでも言ってくれ」
鶫「うぅ……」グスン
楽(黙って泣かれるのが一番つらいな……)ズキン
鶫「……なんで、貴様が合鍵を持っていたのだ」
楽「ポーラに借りたんだ」
鶫「あ、合鍵を持っているのはポーラ以外にいないから、勘違いしてしまったではないかぁ」グスン
楽「本当に悪かった」
鶫「普通はインターホンを鳴らすだろう。なんで黙って開けるんだ」グスッ
楽「いつも来てるからつい……ごめん」
鶫「黙って開けたからてっきりポーラが体調を悪くして帰ってきたものだと私は思って……」
楽「全部俺が悪かった」
鶫「このバカ、バカもの。変態!」
楽「なんとでも言ってくれ」
鶫「うぅ……」グスン
楽(黙って泣かれるのが一番つらいな……)ズキン
53: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:49:17.16 ID:LJ5QL+TXo
――5分後――
鶫「……言い訳くらいしたらどうだ」
楽「え?」
鶫「ポーラに聞いた。あいつに鍵を渡されたのだろう」
鶫「あいつはシャワー浴びてると言っていなかったようだから、知らなかったとか聞いていなかったとか言えばいいだろう」
楽「言ったってしょうがねえだろそんなこと。……その、何言ったって見ちまったもんは見ちまったんだし」
楽「ていうか先に聞いてたんなら合鍵持ってた理由とか聞かなくてよかったんじゃねえか?」
鶫「念の為だ。ポーラが気を配って、本当はシャワーをあびていると言っていたのに言っていないことにしたのかもしれんしな」
楽「そうだったらどうするつもりだったんだよ?」
鶫「殺すつもりだった」
楽(本気の目だこれ……)ゾクッ
鶫「だが貴様を見る限りポーラの言ったことで間違いはなさそうだ」
楽「こんなことで嘘なんかつかねえって」
鶫「……しかし、インターホンを鳴らさなかったのは完全に貴様が悪い」
楽「……謝って済むもんじゃねえけど、ごめん。気が緩んでた」
鶫「だからまあ、貴様を殴った件はこれでチャラということにして、後はもうお互いにこのことは忘れることにしようと思うのだがいいか?」
楽「え?」
鶫「なんだ。不満か」
楽「不満じゃねえけど……いいのかよ? あんな一発殴ったくらいで」
鶫「いい。貴様にとっても不可抗力のようなものだろう」
楽「そりゃまあそうだけど、見たもんは見たんだし……」
鶫「……だから! そういう話をもうぶり返したくないと言っているのだ! 察しろバカもの!!」カアァァ
楽「わ、わかった悪かった」
鶫「本当に貴様は……! あ、あと今後インターホンは必ず鳴らすように。いいな」
楽「さすがにもう忘れねえって」
鶫「……言い訳くらいしたらどうだ」
楽「え?」
鶫「ポーラに聞いた。あいつに鍵を渡されたのだろう」
鶫「あいつはシャワー浴びてると言っていなかったようだから、知らなかったとか聞いていなかったとか言えばいいだろう」
楽「言ったってしょうがねえだろそんなこと。……その、何言ったって見ちまったもんは見ちまったんだし」
楽「ていうか先に聞いてたんなら合鍵持ってた理由とか聞かなくてよかったんじゃねえか?」
鶫「念の為だ。ポーラが気を配って、本当はシャワーをあびていると言っていたのに言っていないことにしたのかもしれんしな」
楽「そうだったらどうするつもりだったんだよ?」
鶫「殺すつもりだった」
楽(本気の目だこれ……)ゾクッ
鶫「だが貴様を見る限りポーラの言ったことで間違いはなさそうだ」
楽「こんなことで嘘なんかつかねえって」
鶫「……しかし、インターホンを鳴らさなかったのは完全に貴様が悪い」
楽「……謝って済むもんじゃねえけど、ごめん。気が緩んでた」
鶫「だからまあ、貴様を殴った件はこれでチャラということにして、後はもうお互いにこのことは忘れることにしようと思うのだがいいか?」
楽「え?」
鶫「なんだ。不満か」
楽「不満じゃねえけど……いいのかよ? あんな一発殴ったくらいで」
鶫「いい。貴様にとっても不可抗力のようなものだろう」
楽「そりゃまあそうだけど、見たもんは見たんだし……」
鶫「……だから! そういう話をもうぶり返したくないと言っているのだ! 察しろバカもの!!」カアァァ
楽「わ、わかった悪かった」
鶫「本当に貴様は……! あ、あと今後インターホンは必ず鳴らすように。いいな」
楽「さすがにもう忘れねえって」
54: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:49:47.78 ID:LJ5QL+TXo
楽「じゃあ、とりあえず今日は帰るわ」
鶫「帰るのか?」
楽「いや、このまま料理すんのも……」
鶫「下準備はもうしてあるんだ。ひとりでは食べきれないしもったいないだろう」
楽「いやまあそりゃそうだけど……」
鶫「それにお互い忘れようと言っただろう?」
楽「言ったけどさ……まあいいか。わかった。教わってくよ」
鶫「うむ」
楽「今日はコロッケだっけか」
鶫「ああ、既に蒸してあるから、すぐにでも取り掛かれるぞ」
楽「へー。茹でるんじゃなくて蒸してるのか」
鶫「ああ。茹でずに皮のまま蒸すのがコツといえばコツだな」
楽「へー」
鶫「帰るのか?」
楽「いや、このまま料理すんのも……」
鶫「下準備はもうしてあるんだ。ひとりでは食べきれないしもったいないだろう」
楽「いやまあそりゃそうだけど……」
鶫「それにお互い忘れようと言っただろう?」
楽「言ったけどさ……まあいいか。わかった。教わってくよ」
鶫「うむ」
楽「今日はコロッケだっけか」
鶫「ああ、既に蒸してあるから、すぐにでも取り掛かれるぞ」
楽「へー。茹でるんじゃなくて蒸してるのか」
鶫「ああ。茹でずに皮のまま蒸すのがコツといえばコツだな」
楽「へー」
55: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:50:14.47 ID:LJ5QL+TXo
鶫「みじん切りにした玉ねぎを炒めてアメ色になったら、牛肉を入れる」ジュージュー
楽「ふむふむ」ジー
楽(……はっ。つい鶫の胸元に視線が!)バッ
楽(あんなことあった後だからなあ。意識しないようにしてるけど、そう考えると余計に意識が)
楽(……分かってたつもりだけどほんとでけえな……服の上からでもはっきりと)チラッ
楽(ってだからやめろ俺!)ブンブン
鶫「……」
鶫「次に小麦粉と卵とパン粉をつけていく」
楽「お、おう!」
鶫「それでつける卵だが、卵そのままではなく、小麦粉と卵を混ぜたものを使う。そうすると卵が剥がれにくくなるのだ」
楽「なるほど」
鶫「……む、泡立て器を出し忘れた。流しの下に……」ゴソゴソ
楽(! しゃ、しゃがんだせいで胸が強調されてる!)チラ
楽(……じゃない、見るなっての俺!)ブンブン
鶫「……」
鶫「よし、じゃあこれで小麦粉と卵を混ぜていく」
楽「あ、ああ」
楽「ふむふむ」ジー
楽(……はっ。つい鶫の胸元に視線が!)バッ
楽(あんなことあった後だからなあ。意識しないようにしてるけど、そう考えると余計に意識が)
楽(……分かってたつもりだけどほんとでけえな……服の上からでもはっきりと)チラッ
楽(ってだからやめろ俺!)ブンブン
鶫「……」
鶫「次に小麦粉と卵とパン粉をつけていく」
楽「お、おう!」
鶫「それでつける卵だが、卵そのままではなく、小麦粉と卵を混ぜたものを使う。そうすると卵が剥がれにくくなるのだ」
楽「なるほど」
鶫「……む、泡立て器を出し忘れた。流しの下に……」ゴソゴソ
楽(! しゃ、しゃがんだせいで胸が強調されてる!)チラ
楽(……じゃない、見るなっての俺!)ブンブン
鶫「……」
鶫「よし、じゃあこれで小麦粉と卵を混ぜていく」
楽「あ、ああ」
56: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:50:52.34 ID:LJ5QL+TXo
鶫「よし、できたぞ」
楽「おー、うまそうだ」
鶫「まあまずくはないだろう」
楽「謙遜するなって」モグモグ
楽「うまい! やっぱさすがだな」
鶫「ふん、世辞を言っても何も出んぞ」モグモグ
鶫「……うん、まあなかなか上手く出来たな」
楽「だろ?」
鶫「ふん」
楽(……にしても真正面から見ると、胸が嫌でも目に入って来るな)チラッ
楽(い、いや。いくらなんでも気付かれるって。顔を見るように……)
鶫「……」
楽「おー、うまそうだ」
鶫「まあまずくはないだろう」
楽「謙遜するなって」モグモグ
楽「うまい! やっぱさすがだな」
鶫「ふん、世辞を言っても何も出んぞ」モグモグ
鶫「……うん、まあなかなか上手く出来たな」
楽「だろ?」
鶫「ふん」
楽(……にしても真正面から見ると、胸が嫌でも目に入って来るな)チラッ
楽(い、いや。いくらなんでも気付かれるって。顔を見るように……)
鶫「……」
57: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:52:08.34 ID:LJ5QL+TXo
鶫「一条楽。……その、言おうか少し迷ったのだが」
楽「ん?」
鶫「…………視線、気づいているから、あまり見るな」カアァァ
楽「…………え? え、あ、え?」
鶫「胸。私が料理しているときからずっと。今も」
楽「いや、あの…………」ダラダラ
鶫「……全然、忘れていないではないか。バカ」ムゥ
楽「……ごめんなさい」ドゲザ
鶫「……そんなに気になるものなのか? 今まではここまで見てはいなかっただろう」ギュッ
楽「ほんと勘弁して下さい……」
鶫「気になるものなのかと聞いているだけではないか」
楽「聞かれてるだけで拷問みたいなもんなんだよ……」
鶫「見られているのは私の方なのだが」
楽「見られたくないだろうってのはわかってるけど」
鶫「けど?」
楽「……あんなことがあったから、目がどうしてもそっち見ちまうんだよ」
鶫「……!」カアァァ
鶫(わ、私の裸を想像していたりするのか? お嬢がいるというのに……)
鶫「……変態」
楽「ごめんなさい!」
楽「ん?」
鶫「…………視線、気づいているから、あまり見るな」カアァァ
楽「…………え? え、あ、え?」
鶫「胸。私が料理しているときからずっと。今も」
楽「いや、あの…………」ダラダラ
鶫「……全然、忘れていないではないか。バカ」ムゥ
楽「……ごめんなさい」ドゲザ
鶫「……そんなに気になるものなのか? 今まではここまで見てはいなかっただろう」ギュッ
楽「ほんと勘弁して下さい……」
鶫「気になるものなのかと聞いているだけではないか」
楽「聞かれてるだけで拷問みたいなもんなんだよ……」
鶫「見られているのは私の方なのだが」
楽「見られたくないだろうってのはわかってるけど」
鶫「けど?」
楽「……あんなことがあったから、目がどうしてもそっち見ちまうんだよ」
鶫「……!」カアァァ
鶫(わ、私の裸を想像していたりするのか? お嬢がいるというのに……)
鶫「……変態」
楽「ごめんなさい!」
58: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:52:55.80 ID:LJ5QL+TXo
楽「じゃあな」
鶫「ああ。今度はいつにする?」
楽「……いや、もうやめねえか?」
鶫「……え?」
楽「ほら、女子の部屋に入り浸ってると、さっきみてえに、その……まずい場面に出くわすこともあるかもしれねえし」
鶫「き、貴様が気をつければいいだけだろう」
楽「まあそりゃそうなんだけど……鶫だって嫌だろ? 自分の……見た相手が部屋に入ってくるとか」
鶫「そ、それはさっき忘れると言ったではないか」
楽「言ったけど、それとこれとは別だろ?」
鶫「……少し待っていろ」
楽「へ?」
鶫「いいか。まだ帰るなよ」ダッ
楽「つ、鶫?」
鶫「ああ。今度はいつにする?」
楽「……いや、もうやめねえか?」
鶫「……え?」
楽「ほら、女子の部屋に入り浸ってると、さっきみてえに、その……まずい場面に出くわすこともあるかもしれねえし」
鶫「き、貴様が気をつければいいだけだろう」
楽「まあそりゃそうなんだけど……鶫だって嫌だろ? 自分の……見た相手が部屋に入ってくるとか」
鶫「そ、それはさっき忘れると言ったではないか」
楽「言ったけど、それとこれとは別だろ?」
鶫「……少し待っていろ」
楽「へ?」
鶫「いいか。まだ帰るなよ」ダッ
楽「つ、鶫?」
59: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:54:04.23 ID:LJ5QL+TXo
鶫「これを持って行け」チャラ
楽「なんだこの鍵?」
鶫「この家の合鍵だ」
楽「……え、ええ!? あ、合鍵!? ちょ、ちょっと待て。意味わかんねえ!」
鶫「……貴様が合鍵をポーラから預かれば、鍵を開けたときもまたポーラかと思ってしまうが、元々貴様に渡しておけば、貴様である可能性が頭にある分、今日のようなことは起こらんだろう」
楽「いや、だからって合鍵渡すこと……」
鶫「……一条楽。貴様が将来お嬢と結婚したとしても、私はあくまでビーハイブのヒットマンだ。いつまでもそばにいられるわけじゃない」
楽「な、なんだよ急に」
鶫「……いつまでも一緒にはいられないんだ。お嬢とも、貴様とも」
楽「お、おう?」
鶫「だから、せめて高校にいる間……いや、そこまででなくとももうしばらくは、こんな風に私の知っている料理を教えたい」
鶫「そばにいられなくても、せめて私の料理を食べることで、私のことを思って欲しい」
鶫「それにはお嬢と一緒にいるだろう、貴様に教えるのが一番のはずだ」
楽「……」
鶫「……一条楽。合鍵を、受け取ってもらえないか?」
楽「……分かった。貰うよ」チャリ
鶫「ありがとう」
楽「でも鍵かかってても使わねえからな。持ってれば鶫が気をつけるって言ったから貰うだけだ」
鶫「わかった。まあ使いたくなったら使うといい」
楽「だから使わねえって。……じゃあまたな。次は土曜日に」
鶫「……ああ。これからもよろしく」
楽「おう」バタン
楽「なんだこの鍵?」
鶫「この家の合鍵だ」
楽「……え、ええ!? あ、合鍵!? ちょ、ちょっと待て。意味わかんねえ!」
鶫「……貴様が合鍵をポーラから預かれば、鍵を開けたときもまたポーラかと思ってしまうが、元々貴様に渡しておけば、貴様である可能性が頭にある分、今日のようなことは起こらんだろう」
楽「いや、だからって合鍵渡すこと……」
鶫「……一条楽。貴様が将来お嬢と結婚したとしても、私はあくまでビーハイブのヒットマンだ。いつまでもそばにいられるわけじゃない」
楽「な、なんだよ急に」
鶫「……いつまでも一緒にはいられないんだ。お嬢とも、貴様とも」
楽「お、おう?」
鶫「だから、せめて高校にいる間……いや、そこまででなくとももうしばらくは、こんな風に私の知っている料理を教えたい」
鶫「そばにいられなくても、せめて私の料理を食べることで、私のことを思って欲しい」
鶫「それにはお嬢と一緒にいるだろう、貴様に教えるのが一番のはずだ」
楽「……」
鶫「……一条楽。合鍵を、受け取ってもらえないか?」
楽「……分かった。貰うよ」チャリ
鶫「ありがとう」
楽「でも鍵かかってても使わねえからな。持ってれば鶫が気をつけるって言ったから貰うだけだ」
鶫「わかった。まあ使いたくなったら使うといい」
楽「だから使わねえって。……じゃあまたな。次は土曜日に」
鶫「……ああ。これからもよろしく」
楽「おう」バタン
60: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/04/03(日) 17:54:47.36 ID:LJ5QL+TXo
鶫(……我ながら強引というか、支離滅裂というか。情に訴えてむちゃくちゃを言ってしまった気がする)
鶫(でもまあ、このくらいしないと本当にお終いになりかねなかったし、嫌なわけではないと分からせるにはこうするしかなかったのだ)ウン
鶫(……お嬢と一緒にいられなくなることが寂しいのも、せめて私の料理を食べてもらいたいと思っているのも本当だ)
鶫(でも、私が寂しいと感じていたのはきっとそれだけじゃなくて……)
鶫(いや、気のせいだ。気の迷いだ。今日あんなことがあったから、精神が不安定になっているんだろう)フッ
鶫(私がどう思ったところで、あいつがお嬢の恋人だという事実は変わらないのだから)
鶫(でもまあ、このくらいしないと本当にお終いになりかねなかったし、嫌なわけではないと分からせるにはこうするしかなかったのだ)ウン
鶫(……お嬢と一緒にいられなくなることが寂しいのも、せめて私の料理を食べてもらいたいと思っているのも本当だ)
鶫(でも、私が寂しいと感じていたのはきっとそれだけじゃなくて……)
鶫(いや、気のせいだ。気の迷いだ。今日あんなことがあったから、精神が不安定になっているんだろう)フッ
鶫(私がどう思ったところで、あいつがお嬢の恋人だという事実は変わらないのだから)
68: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:05:51.38 ID:w/gKl71uo
1
鶫「さて、今日は……あ」
楽「どうした?」クルッ
鶫「……食材を買い忘れていた。すまんが2人で待っていてくれ」フイッ
ポーラ「はーい」
楽「俺も行こうか?」
鶫「い、いらん! いいから待っていろ!」カアァァ
鶫(ふ、2人で食材の買い物なんてまるで夫婦みたいではないか!!)
楽「わ、わかったよ」
鶫「い、行ってくる!」ダッ
楽「お、おう」
鶫「さて、今日は……あ」
楽「どうした?」クルッ
鶫「……食材を買い忘れていた。すまんが2人で待っていてくれ」フイッ
ポーラ「はーい」
楽「俺も行こうか?」
鶫「い、いらん! いいから待っていろ!」カアァァ
鶫(ふ、2人で食材の買い物なんてまるで夫婦みたいではないか!!)
楽「わ、わかったよ」
鶫「い、行ってくる!」ダッ
楽「お、おう」
69: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:06:17.97 ID:w/gKl71uo
楽「……なあポーラ」
ポーラ「なによ?」
楽「俺鶫に嫌われてんのかなあ」
ポーラ「はぁ?」
楽「いや、最近全然目合わせてくれねえし、さっきも露骨に避けられてるし……」
ポーラ「黒虎の裸見たんでしょ? そのくらい当然じゃない」
楽「うっ……いや、それ言われるとそりゃそうなんだけどさあ」
ポーラ「それに別に嫌われてるってわけでもないと思うけど」
楽「そうか?」
ポーラ「そうかもなにも、嫌な相手に合鍵渡すわけ無いでしょ」
楽「これは勢いで渡しちまっただけじゃねえの?」チャリ
ポーラ「それなら返せって言ってるわよ」
楽「引っ込みつかなくなってるだけじゃねえか?」
ポーラ(……違うけど、黒虎の性格からしてあり得ないとは言い切れないのが)
ポーラ「なによ?」
楽「俺鶫に嫌われてんのかなあ」
ポーラ「はぁ?」
楽「いや、最近全然目合わせてくれねえし、さっきも露骨に避けられてるし……」
ポーラ「黒虎の裸見たんでしょ? そのくらい当然じゃない」
楽「うっ……いや、それ言われるとそりゃそうなんだけどさあ」
ポーラ「それに別に嫌われてるってわけでもないと思うけど」
楽「そうか?」
ポーラ「そうかもなにも、嫌な相手に合鍵渡すわけ無いでしょ」
楽「これは勢いで渡しちまっただけじゃねえの?」チャリ
ポーラ「それなら返せって言ってるわよ」
楽「引っ込みつかなくなってるだけじゃねえか?」
ポーラ(……違うけど、黒虎の性格からしてあり得ないとは言い切れないのが)
70: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:06:54.61 ID:w/gKl71uo
楽「まあともかく、せっかく料理を教えあってるわけだし、普通に話してえんだよ」
ポーラ「ふうん。……ねえ、あんたは黒虎と仲良くなりたいの? それとも仲直りしたいの?」
楽「……なんか違うのかそれ?」
ポーラ「全然違うわよ。前以上になりたいのか、前と同じになりたいのか。どっちなの?」
楽「……まあ、どっちかといえば仲良くなりたいのほうか? 元々好かれちゃいねえし」
楽(言ってて悲しくなるな……)ハハ…
ポーラ「そう。それなら、黒虎を遊びにでも誘えばいいんじゃない?」
楽「遊びに? そんなの誘ったってあいつ来ねえだろ。そもそも嫌いな相手に誘われるのは逆に嫌なんじゃねえか?」
ポーラ「黒虎は嫌がったりしないわよ。保証するわ」
楽「……イマイチ信用が」
ポーラ「じゃあ好きにしたらー?」ゴロン
楽「ああっ! わ、悪い、冗談だ!」
ポーラ「ふんっ」
ポーラ「ふうん。……ねえ、あんたは黒虎と仲良くなりたいの? それとも仲直りしたいの?」
楽「……なんか違うのかそれ?」
ポーラ「全然違うわよ。前以上になりたいのか、前と同じになりたいのか。どっちなの?」
楽「……まあ、どっちかといえば仲良くなりたいのほうか? 元々好かれちゃいねえし」
楽(言ってて悲しくなるな……)ハハ…
ポーラ「そう。それなら、黒虎を遊びにでも誘えばいいんじゃない?」
楽「遊びに? そんなの誘ったってあいつ来ねえだろ。そもそも嫌いな相手に誘われるのは逆に嫌なんじゃねえか?」
ポーラ「黒虎は嫌がったりしないわよ。保証するわ」
楽「……イマイチ信用が」
ポーラ「じゃあ好きにしたらー?」ゴロン
楽「ああっ! わ、悪い、冗談だ!」
ポーラ「ふんっ」
71: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:08:35.47 ID:w/gKl71uo
楽「でもなあ。正直、鶫が俺に誘われて遊びに行くってイメージが沸かねえんだけど」
楽(あの調子だとむしろ気まずくなりそうな気が……)
ポーラ「……まあどうしても心配なら、お嬢様のデートの下見って口実つけたら?」
楽「デートの下見?」
ポーラ「そう。お嬢様のためって言えば黒虎は断らないわよ」
楽「騙されたと知られたら殺されねえかな」ガクブル
ポーラ「騙された?」
楽「いや、本当は千棘とデートになんて行かねえのに、嘘ついて鶫を誘ったら騙したことになるだろ?」
ポーラ「……恋人なんだし本当に行けばいいんじゃないの?」
楽「は? ……あ、ああ! そうだな! 何言ってんだろ俺!」ハハハ
楽(あぶねーあぶねー。秘密にしてるの忘れてたぜ)フー
ポーラ「なんか怪しいわね……」ジー
楽(あの調子だとむしろ気まずくなりそうな気が……)
ポーラ「……まあどうしても心配なら、お嬢様のデートの下見って口実つけたら?」
楽「デートの下見?」
ポーラ「そう。お嬢様のためって言えば黒虎は断らないわよ」
楽「騙されたと知られたら殺されねえかな」ガクブル
ポーラ「騙された?」
楽「いや、本当は千棘とデートになんて行かねえのに、嘘ついて鶫を誘ったら騙したことになるだろ?」
ポーラ「……恋人なんだし本当に行けばいいんじゃないの?」
楽「は? ……あ、ああ! そうだな! 何言ってんだろ俺!」ハハハ
楽(あぶねーあぶねー。秘密にしてるの忘れてたぜ)フー
ポーラ「なんか怪しいわね……」ジー
72: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:09:03.70 ID:w/gKl71uo
楽「と、ところで俺が仲直りしたいって言ってたらなんて言うつもりだったんだよ?」アセアセ
ポーラ「今までどおりの生活続けなさいってだけ。別に喧嘩したわけじゃないんだから」
楽「……それで済むのか?」
ポーラ「済むわよ。黒虎も別に怒ってるわけじゃないもの」
楽「へー……」
楽(それなら無理して誘わなくていいんじゃ……)
ポーラ「あんたが話があるって言ってるってメールはもうしといたから。おとなしく誘いなさいよ」
楽「いつの間に!?」
ポーラ「ついさっき」
楽「はええな……」
ポーラ「まあ、このくらいのサービスはね」
楽「いや、全然サービスになってねえんだけど」
ポーラ「あんたにじゃないわよ」ボソッ
楽「え? なんか言ったか?」
ポーラ「何でもない。黒虎は最初は断るかもしれないけど、ちゃんと誘いなさいよ。仲良くなりたいんでしょ」
楽「わかったよ」
ポーラ「今までどおりの生活続けなさいってだけ。別に喧嘩したわけじゃないんだから」
楽「……それで済むのか?」
ポーラ「済むわよ。黒虎も別に怒ってるわけじゃないもの」
楽「へー……」
楽(それなら無理して誘わなくていいんじゃ……)
ポーラ「あんたが話があるって言ってるってメールはもうしといたから。おとなしく誘いなさいよ」
楽「いつの間に!?」
ポーラ「ついさっき」
楽「はええな……」
ポーラ「まあ、このくらいのサービスはね」
楽「いや、全然サービスになってねえんだけど」
ポーラ「あんたにじゃないわよ」ボソッ
楽「え? なんか言ったか?」
ポーラ「何でもない。黒虎は最初は断るかもしれないけど、ちゃんと誘いなさいよ。仲良くなりたいんでしょ」
楽「わかったよ」
73: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:09:30.50 ID:w/gKl71uo
ポーラ「……ねえ、ところで仲良くなりたいってどんな風に仲良くなりたいの?」
楽「どんな風に?」
ポーラ「そう。あるでしょ? 友達とか、お嬢様を支える仲間としてとか」
楽「支える仲間としてってなんだよ?」
ポーラ「2人ともお嬢様を支える立場でしょ? 後はそうね。恋人とか」
楽「こ、恋人ぉ!? お、お前なに言ってんだよ! 俺にはハニーがいるだろ!」
楽(ま、まさか俺と千棘が偽物の恋人だってバレてんのか!? それかカマかけられてる!?)
ポーラ「恋人はひとりってタイプなの? ヤクザの組長の息子のくせに」
楽「ヤクザの組長の息子とか関係ねえから! 恋人はひとりに決まってんだろ!?」
ポーラ「そう。なら愛人でもいいけど」
楽「愛人ってそっちのほうが問題あんだろ」
ポーラ「まあなんでもいいわよ。それで黒虎とはどうなりたいの?」
楽「どうなりたいかって……」
楽(料理を教えあうときに普通に話せるような感じでいられれば……ってだけでいいのか?)
楽(もっと仲良くなりたいと思ったからそう言ったわけだし……ああもう、よくわかんねえな)ガシガシ
ポーラ「?」
楽「……まあとりあえず、愛人はねえな」
ポーラ「ないの?」
楽「あるわけねえだろ!!」
ポーラ(いきなり黒虎の第一希望が潰されちゃってるわね。まあ直接聞いたわけじゃないけど)
ポーラ(お嬢様から奪うなんてこと出来そうにないし……これは望み薄かしら)フーム
楽「どんな風に?」
ポーラ「そう。あるでしょ? 友達とか、お嬢様を支える仲間としてとか」
楽「支える仲間としてってなんだよ?」
ポーラ「2人ともお嬢様を支える立場でしょ? 後はそうね。恋人とか」
楽「こ、恋人ぉ!? お、お前なに言ってんだよ! 俺にはハニーがいるだろ!」
楽(ま、まさか俺と千棘が偽物の恋人だってバレてんのか!? それかカマかけられてる!?)
ポーラ「恋人はひとりってタイプなの? ヤクザの組長の息子のくせに」
楽「ヤクザの組長の息子とか関係ねえから! 恋人はひとりに決まってんだろ!?」
ポーラ「そう。なら愛人でもいいけど」
楽「愛人ってそっちのほうが問題あんだろ」
ポーラ「まあなんでもいいわよ。それで黒虎とはどうなりたいの?」
楽「どうなりたいかって……」
楽(料理を教えあうときに普通に話せるような感じでいられれば……ってだけでいいのか?)
楽(もっと仲良くなりたいと思ったからそう言ったわけだし……ああもう、よくわかんねえな)ガシガシ
ポーラ「?」
楽「……まあとりあえず、愛人はねえな」
ポーラ「ないの?」
楽「あるわけねえだろ!!」
ポーラ(いきなり黒虎の第一希望が潰されちゃってるわね。まあ直接聞いたわけじゃないけど)
ポーラ(お嬢様から奪うなんてこと出来そうにないし……これは望み薄かしら)フーム
74: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:09:59.31 ID:w/gKl71uo
鶫「ただいま」ガチャ
楽「お、おう」ビクッ
鶫「い、一条楽」ビクッ
鶫「そ、それでポーラからのメールにあった話したいことというのはなんだ?」
楽「いやその……あ、後にしようぜ」
鶫「……気になるではないか」
楽「あ、あはは……」
ポーラ「このヘタレ」ボソッ
楽「元はといえばお前が勝手にメール送るからだろ!?」ヒソヒソ
鶫「なにを話しているんだ?」
楽「べ、別になんでもねえって。……と、とりあえず先に料理作ろうぜ。今日はハンバーグだっけ?」
鶫「ああ。今日はポーラもいるからな」
ポーラ「わーいハンバーグだ! ……じゃない! 人を子供扱いしないでよ!」
鶫「好きじゃなかったか?」
ポーラ「……好きだけど」
鶫「ならいいだろう。一条楽、貴様は見ているといい」
楽「お、おう」
………
……
…
楽「お、おう」ビクッ
鶫「い、一条楽」ビクッ
鶫「そ、それでポーラからのメールにあった話したいことというのはなんだ?」
楽「いやその……あ、後にしようぜ」
鶫「……気になるではないか」
楽「あ、あはは……」
ポーラ「このヘタレ」ボソッ
楽「元はといえばお前が勝手にメール送るからだろ!?」ヒソヒソ
鶫「なにを話しているんだ?」
楽「べ、別になんでもねえって。……と、とりあえず先に料理作ろうぜ。今日はハンバーグだっけ?」
鶫「ああ。今日はポーラもいるからな」
ポーラ「わーいハンバーグだ! ……じゃない! 人を子供扱いしないでよ!」
鶫「好きじゃなかったか?」
ポーラ「……好きだけど」
鶫「ならいいだろう。一条楽、貴様は見ているといい」
楽「お、おう」
………
……
…
75: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:10:36.96 ID:w/gKl71uo
楽・鶫・ポーラ「いただきます」
ポーラ「おいしい! ……い、いや、まあそこそこね」
楽「素直にうまいって言えっての。でもうまいなこれ。やっぱ弱火で焼くのがいいのか?」
鶫「ああ。そっちのほうがジューシーに焼けるらしい」
楽「へー。今度ウチで作るときもやってみるか」
鶫「うむ。……それで話というのはなんなんだ?」
楽「えっ」ギクッ
鶫「料理を作った後に話すと言っただろう。何の話なんだ?」
楽「い、いやその……」ダラダラ
ポーラ(早く言いなさいよ)ケリッ
楽「痛っ! あ、あのさ」
鶫「だからなんだ」
楽「その……こ、今度出かけねえか?」
鶫「……うん? 今なんと言った?」
楽「だから、今度出かけねえかって」
鶫「誰がだ?」
楽「俺とお前で」
鶫「…………な」
ポーラ「おいしい! ……い、いや、まあそこそこね」
楽「素直にうまいって言えっての。でもうまいなこれ。やっぱ弱火で焼くのがいいのか?」
鶫「ああ。そっちのほうがジューシーに焼けるらしい」
楽「へー。今度ウチで作るときもやってみるか」
鶫「うむ。……それで話というのはなんなんだ?」
楽「えっ」ギクッ
鶫「料理を作った後に話すと言っただろう。何の話なんだ?」
楽「い、いやその……」ダラダラ
ポーラ(早く言いなさいよ)ケリッ
楽「痛っ! あ、あのさ」
鶫「だからなんだ」
楽「その……こ、今度出かけねえか?」
鶫「……うん? 今なんと言った?」
楽「だから、今度出かけねえかって」
鶫「誰がだ?」
楽「俺とお前で」
鶫「…………な」
76: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:11:11.38 ID:w/gKl71uo
鶫「ななななな、なにを言っているのだ貴様は!!」アワアワ
楽「お、落ち着けって」
鶫「き、貴様がおかしなことを言うからだろう!? なぜ私が貴様と2人で出かけなければならんのだ!?」カアァァ
鶫「貴様にはお嬢がいるというのに……! 返答によってはただでは済まさんぞ!!」
楽「し、下見だよ!」
鶫「……下見?」
楽「そ、そう。下見だって。今度ハニーとデートに行ってみたいところがあるから、その下見」
鶫「……そうか。下見か」
鶫(要するに、お嬢と行くときに失敗しないための練習台か)ズキッ
楽「それで……一緒に来てもらえるか?」
鶫「わかった」
楽「そう言わずに少し考えて……ってえっ!?」
鶫「わかったと言ったんだ。不満か?」
楽「い、いや、んなことねえけど、まさかすぐオーケーもらえるとは思わなかった」
鶫「いいだろう別に」
ポーラ(どうでもいいって顔してるわね。……お嬢様と行く下見ってのが気に障ったのかしら)
ポーラ(考えてみれば上げて落とすようなものだし……まあ、後のフォローは一条楽がやればいいわよね)
楽「えっと……じゃあとりあえず土曜日で。場所とかはまた連絡する」
鶫「ああ、それでいい」
楽(……なんかすげえそっけないな。本当に喜んでくれるのかこれ……?)
-------------------------------------
楽「お、落ち着けって」
鶫「き、貴様がおかしなことを言うからだろう!? なぜ私が貴様と2人で出かけなければならんのだ!?」カアァァ
鶫「貴様にはお嬢がいるというのに……! 返答によってはただでは済まさんぞ!!」
楽「し、下見だよ!」
鶫「……下見?」
楽「そ、そう。下見だって。今度ハニーとデートに行ってみたいところがあるから、その下見」
鶫「……そうか。下見か」
鶫(要するに、お嬢と行くときに失敗しないための練習台か)ズキッ
楽「それで……一緒に来てもらえるか?」
鶫「わかった」
楽「そう言わずに少し考えて……ってえっ!?」
鶫「わかったと言ったんだ。不満か?」
楽「い、いや、んなことねえけど、まさかすぐオーケーもらえるとは思わなかった」
鶫「いいだろう別に」
ポーラ(どうでもいいって顔してるわね。……お嬢様と行く下見ってのが気に障ったのかしら)
ポーラ(考えてみれば上げて落とすようなものだし……まあ、後のフォローは一条楽がやればいいわよね)
楽「えっと……じゃあとりあえず土曜日で。場所とかはまた連絡する」
鶫「ああ、それでいい」
楽(……なんかすげえそっけないな。本当に喜んでくれるのかこれ……?)
-------------------------------------
77: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:11:44.05 ID:w/gKl71uo
<水族館>
鶫「ここが水族館か」
楽「おう」
鶫「……カップルが多いな」
楽「……まあそういう場所だしな」
鶫「……なぜ私は貴様とここにいるんだ」ギロッ
楽「だ、だから千棘とのデートの下見だって。お前もわかったって言ったじゃねえか」
楽(本当に嫌がってねえんだよな!?)ドキドキ
鶫「それはそうだが……よく考えたら何も私と来なくてもひとりで来ればよかっただろう」
楽「い、いやほら。男ひとりで来るの結構きついし、それに男女で来たら受けられるサービスもあるみたいだし、それも体験しておきてえだろ?」
鶫「確かにお嬢のためにはそのくらいするべきだが……」
楽「てかあのときはすぐわかったって言ったのに、態度変わりすぎじゃねえか?」
鶫「……あのときはヤケになっていたんだ」
楽「ヤケに?」
鶫「ああ」
楽「ヤケにってなんかヤケになるようなことあったっけか?」
鶫「それは……べ、別になんでもない!」
鶫(お嬢の練習台と言われたからなんて言えるか!)
楽「なんでもないって言われてもなあ」
鶫「う、うるさい! いいから中に入るぞ!」スタスタスタ
楽「お、おい。待てって!」タタタッ
鶫「ここが水族館か」
楽「おう」
鶫「……カップルが多いな」
楽「……まあそういう場所だしな」
鶫「……なぜ私は貴様とここにいるんだ」ギロッ
楽「だ、だから千棘とのデートの下見だって。お前もわかったって言ったじゃねえか」
楽(本当に嫌がってねえんだよな!?)ドキドキ
鶫「それはそうだが……よく考えたら何も私と来なくてもひとりで来ればよかっただろう」
楽「い、いやほら。男ひとりで来るの結構きついし、それに男女で来たら受けられるサービスもあるみたいだし、それも体験しておきてえだろ?」
鶫「確かにお嬢のためにはそのくらいするべきだが……」
楽「てかあのときはすぐわかったって言ったのに、態度変わりすぎじゃねえか?」
鶫「……あのときはヤケになっていたんだ」
楽「ヤケに?」
鶫「ああ」
楽「ヤケにってなんかヤケになるようなことあったっけか?」
鶫「それは……べ、別になんでもない!」
鶫(お嬢の練習台と言われたからなんて言えるか!)
楽「なんでもないって言われてもなあ」
鶫「う、うるさい! いいから中に入るぞ!」スタスタスタ
楽「お、おい。待てって!」タタタッ
78: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:12:19.71 ID:w/gKl71uo
楽「アクアリウムにアシカにペンギンに……色々あるみてえだな」
鶫「クラゲ専用のコーナーなんてものもあるとは……それに水族館にはサンゴまであるのだな」
楽「サンゴまであるのか? さすがにサンゴは珍しい気がする」
鶫「そうなのか?」
楽「飼育しづらいから高値で売れるんだろうしさ。でも近くで見れるのは楽しみだな」
楽「他にも海中トンネルなんてのもあるみたいだし面白そうだ」
鶫「うむ。……い、いや。お嬢とのデートの下見なのだから、もっと真面目に見て回れ」
楽「そんな気を張って回ったって良さを感じられねえと思うんだけど」
鶫「む……要はあまり浮ついた気分になるなと言っているんだ」
楽「はいはい」
鶫「本当に分かっているのか?」
楽「わかってるって。でもよ」
鶫「うん?」
楽「下見は俺がするんであって、お前がするんじゃねえんだから、鶫はしっかり楽しめよ」
鶫「……!」
鶫「……き、貴様とでは楽しめるかわからんがな」プイッ
楽「お前相変わらずきついな……」
鶫「……すまない。言い過ぎた」
楽「い、いや別に」
鶫「……」
楽「……」
楽(き、気まずい!! 本当に大丈夫なのかこれ……)
楽「と、とりあえず回ろうぜ」
鶫「ああ」
鶫「クラゲ専用のコーナーなんてものもあるとは……それに水族館にはサンゴまであるのだな」
楽「サンゴまであるのか? さすがにサンゴは珍しい気がする」
鶫「そうなのか?」
楽「飼育しづらいから高値で売れるんだろうしさ。でも近くで見れるのは楽しみだな」
楽「他にも海中トンネルなんてのもあるみたいだし面白そうだ」
鶫「うむ。……い、いや。お嬢とのデートの下見なのだから、もっと真面目に見て回れ」
楽「そんな気を張って回ったって良さを感じられねえと思うんだけど」
鶫「む……要はあまり浮ついた気分になるなと言っているんだ」
楽「はいはい」
鶫「本当に分かっているのか?」
楽「わかってるって。でもよ」
鶫「うん?」
楽「下見は俺がするんであって、お前がするんじゃねえんだから、鶫はしっかり楽しめよ」
鶫「……!」
鶫「……き、貴様とでは楽しめるかわからんがな」プイッ
楽「お前相変わらずきついな……」
鶫「……すまない。言い過ぎた」
楽「い、いや別に」
鶫「……」
楽「……」
楽(き、気まずい!! 本当に大丈夫なのかこれ……)
楽「と、とりあえず回ろうぜ」
鶫「ああ」
79: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:12:45.66 ID:w/gKl71uo
楽「すげえもんだな。水槽の中にアマゾンを表現するみたいなことやってたり、山と森で風景画みたいにしてたり」
鶫「確かに綺麗だが、これでは魚と水槽のどちらがメインかわからんな」
楽「こういうのは魚と水槽合わせてひとつの作品みたいな感じなんじゃねえか?」
鶫「そういうものなのか」
楽「まあ俺もよく知らねえんだけど」
鶫「……適当すぎないか貴様。お嬢とのデートでもそんな調子でいるつもりなのか?」
楽「わ、わりい。でもこんな風に、適当にこうじゃないかって話すのも楽しいもんなんだって」
鶫「本当か?」
楽「本当だ。千棘ともよく適当な感じで話してるし」
鶫「……私がデートの経験がないからといって、適当なことを言っていないか?」ジー
楽「んなことねえよ。まあ、鶫が楽しくないんならやめるけど」
鶫「楽しいかなんて、私は……」
鶫「確かに綺麗だが、これでは魚と水槽のどちらがメインかわからんな」
楽「こういうのは魚と水槽合わせてひとつの作品みたいな感じなんじゃねえか?」
鶫「そういうものなのか」
楽「まあ俺もよく知らねえんだけど」
鶫「……適当すぎないか貴様。お嬢とのデートでもそんな調子でいるつもりなのか?」
楽「わ、わりい。でもこんな風に、適当にこうじゃないかって話すのも楽しいもんなんだって」
鶫「本当か?」
楽「本当だ。千棘ともよく適当な感じで話してるし」
鶫「……私がデートの経験がないからといって、適当なことを言っていないか?」ジー
楽「んなことねえよ。まあ、鶫が楽しくないんならやめるけど」
鶫「楽しいかなんて、私は……」
80: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:13:12.35 ID:w/gKl71uo
鶫「……お嬢が楽しんでいると言っているものを、私がどうこう言う権利はないだろう。これはお嬢とのデートの下見なのだから」
楽「下見は下見だけど、鶫がどう思ってるかくらい言ってもいいんじゃねえか?」
鶫「……貴様とこんな場所で2人きりで話すなど、以前の私は想像もしていなかった」
楽「それは俺もだな」
鶫「……それだけだ。ほら、次に行くぞ」
楽「え、ええ?」
鶫「思ったことは喋っただろう」
楽「そういう意味じゃ……まあいいか。次はクラゲコーナーだってよ」
鶫(……こいつと2人で、下見とはいえデートの真似事をするなど想像もしていなかった。どうでもいい雑談をしているだけなのに、なぜか胸が高鳴る)
鶫(この胸の高鳴りは、きっと嬉しいと思っているということなのだろう。でもそれは幸せな恋人の片割れに言うことではない)
鶫(お嬢と私などでは比べるべくもないが、万が一変な波風を立てることもあるかもしれん)
鶫(こんな気持ちを味わえただけで満足だ。伝えるなんてそんな贅沢、望むべきではない)
楽「下見は下見だけど、鶫がどう思ってるかくらい言ってもいいんじゃねえか?」
鶫「……貴様とこんな場所で2人きりで話すなど、以前の私は想像もしていなかった」
楽「それは俺もだな」
鶫「……それだけだ。ほら、次に行くぞ」
楽「え、ええ?」
鶫「思ったことは喋っただろう」
楽「そういう意味じゃ……まあいいか。次はクラゲコーナーだってよ」
鶫(……こいつと2人で、下見とはいえデートの真似事をするなど想像もしていなかった。どうでもいい雑談をしているだけなのに、なぜか胸が高鳴る)
鶫(この胸の高鳴りは、きっと嬉しいと思っているということなのだろう。でもそれは幸せな恋人の片割れに言うことではない)
鶫(お嬢と私などでは比べるべくもないが、万が一変な波風を立てることもあるかもしれん)
鶫(こんな気持ちを味わえただけで満足だ。伝えるなんてそんな贅沢、望むべきではない)
81: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:13:44.98 ID:w/gKl71uo
楽「おお、こんな大量のクラゲ初めて見たぜ」
鶫「透明なものだけじゃなく、色の付いているのも結構多いのだな」
楽「ああ。模様があったり傘の形が面白かったり、見てると結構楽しいな」
鶫「うむ。ライトアップもされているし、これだけの数が揃うと、なんというか幻想的だな」
楽「綺麗だよなー」
鶫「……そのせいか、カップルが他と比べて多いな」
楽「お、おう」
鶫「正直居づらいのだが……まあ、お嬢はきっと喜ぶだろう」
楽「そりゃよかった。鶫はどうなんだ?」
鶫「私?」
楽「ああ。喜んでんのかどうなのか」
鶫「私が喜ぶかどうかなんてどうでもいいだろう」プイッ
楽「せっかく来てるんだしいいじゃねえか。それに女子の感想も聞いてみてえし」
鶫「……まあ、そうだな。こんなことでもなければ一生見ることのない景色だったろうから、そういう意味で感謝はしている」
楽「そりゃよかったけど、そうじゃねえって」
鶫「わかってる。綺麗だと思うぞ。一緒に見る相手が貴様というのが残念だが」
楽「ならよかった」
鶫(今度はきついとか言わないのだな。……つい言ってしまったが、一条楽がなにも言わないのに私から謝るのもおかしいし……)ムゥ
楽(やっぱまだ機嫌直ってねえみたいだな。直してくれればいいんだけど)ハァ
鶫「透明なものだけじゃなく、色の付いているのも結構多いのだな」
楽「ああ。模様があったり傘の形が面白かったり、見てると結構楽しいな」
鶫「うむ。ライトアップもされているし、これだけの数が揃うと、なんというか幻想的だな」
楽「綺麗だよなー」
鶫「……そのせいか、カップルが他と比べて多いな」
楽「お、おう」
鶫「正直居づらいのだが……まあ、お嬢はきっと喜ぶだろう」
楽「そりゃよかった。鶫はどうなんだ?」
鶫「私?」
楽「ああ。喜んでんのかどうなのか」
鶫「私が喜ぶかどうかなんてどうでもいいだろう」プイッ
楽「せっかく来てるんだしいいじゃねえか。それに女子の感想も聞いてみてえし」
鶫「……まあ、そうだな。こんなことでもなければ一生見ることのない景色だったろうから、そういう意味で感謝はしている」
楽「そりゃよかったけど、そうじゃねえって」
鶫「わかってる。綺麗だと思うぞ。一緒に見る相手が貴様というのが残念だが」
楽「ならよかった」
鶫(今度はきついとか言わないのだな。……つい言ってしまったが、一条楽がなにも言わないのに私から謝るのもおかしいし……)ムゥ
楽(やっぱまだ機嫌直ってねえみたいだな。直してくれればいいんだけど)ハァ
82: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:14:11.63 ID:w/gKl71uo
楽「アシカコーナーだ。へー、ここはアシカとハイタッチ出来るみたいだ」
鶫「ほう。動物園で触れ合えるところがあるというのは聞いたことがあるが、水族館にもそのようなものがあるのだな」
楽「ショーとかだとイルカにボール投げたり餌やったりあるけど、こんな感じのは珍しいな。よし、やってみるか」
鶫「大丈夫なのか?」
楽「大丈夫かって、ハイタッチするだけだろ? 動物好きとしてやらねえわけにはいかねえって」
鶫「いや、動物に嫌われてる貴様がやっても大丈夫なのかと」
楽「普段からハイタッチするくらい人に慣れてるアシカだろ? 流石に大丈夫だって。ほら、行くぞー」
アシカ「オウッ!」バシャーン
楽「うわ、つめてー!!」
鶫「やっぱりダメだったじゃないか」
楽「くそ、ここでもダメか……そういう鶫はどうなんだよ?」
鶫「私か? ほら、来い」
アシカ「オウッ」タッチ
鶫「よーし、いい子だ」ヨシヨシ
楽(こいつ、動物と触れ合うときはこんな顔するんだな)ヘー
鶫「ほう。動物園で触れ合えるところがあるというのは聞いたことがあるが、水族館にもそのようなものがあるのだな」
楽「ショーとかだとイルカにボール投げたり餌やったりあるけど、こんな感じのは珍しいな。よし、やってみるか」
鶫「大丈夫なのか?」
楽「大丈夫かって、ハイタッチするだけだろ? 動物好きとしてやらねえわけにはいかねえって」
鶫「いや、動物に嫌われてる貴様がやっても大丈夫なのかと」
楽「普段からハイタッチするくらい人に慣れてるアシカだろ? 流石に大丈夫だって。ほら、行くぞー」
アシカ「オウッ!」バシャーン
楽「うわ、つめてー!!」
鶫「やっぱりダメだったじゃないか」
楽「くそ、ここでもダメか……そういう鶫はどうなんだよ?」
鶫「私か? ほら、来い」
アシカ「オウッ」タッチ
鶫「よーし、いい子だ」ヨシヨシ
楽(こいつ、動物と触れ合うときはこんな顔するんだな)ヘー
83: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:14:38.47 ID:w/gKl71uo
鶫「まあこんなところだな」
楽「理不尽だ……こんなに動物が好きだってのに」
鶫「私もそれなら負ける気が――い、いや、別に動物など好きなわけではないぞ!?」アセアセ
楽「別に好きでいいじゃねえか。隠す理由がわかんねえよ」
鶫「好きではないものを好きではないと言っているだけだ!」
楽「はいはい」
鶫「くっ……まあともかく、ここもお嬢は気に入りそうだな」
楽「理不尽だ……こんなに動物が好きだってのに」
鶫「私もそれなら負ける気が――い、いや、別に動物など好きなわけではないぞ!?」アセアセ
楽「別に好きでいいじゃねえか。隠す理由がわかんねえよ」
鶫「好きではないものを好きではないと言っているだけだ!」
楽「はいはい」
鶫「くっ……まあともかく、ここもお嬢は気に入りそうだな」
84: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:15:15.63 ID:w/gKl71uo
楽「海中トンネルってすげえなこれ」
鶫「周りじゅう海の中という体験は初めてだ……」
楽「魚を見上げるって面白い感覚だな」
鶫「ああ。これは凄いな。魚の視点とはこういうものなのだな」
楽「ダイビングとか行けばもっと感動するんだろうけど、海ガメとかサメとか近くで見られるのはトンネルのいいとこだなー」
鶫「結構な迫力があるな。まあダイビング中に海の中で出会ったところで負けるつもりはないが」
楽「変なとこで張り合わなくていいって。ていうか流石に無理だろ」
鶫「私が水の中の訓練を受けていないとでも思っているのか?」
楽「いや、訓練とかって問題なのか……?」
鶫「鍛えればたいていのことはどうにかなる。貴様もお嬢の恋人なのだし、一度体験してみるか?」
楽「お、俺はいいよ。それより素直に水族館を楽しめって」
鶫「素直にか……」
鶫「周りじゅう海の中という体験は初めてだ……」
楽「魚を見上げるって面白い感覚だな」
鶫「ああ。これは凄いな。魚の視点とはこういうものなのだな」
楽「ダイビングとか行けばもっと感動するんだろうけど、海ガメとかサメとか近くで見られるのはトンネルのいいとこだなー」
鶫「結構な迫力があるな。まあダイビング中に海の中で出会ったところで負けるつもりはないが」
楽「変なとこで張り合わなくていいって。ていうか流石に無理だろ」
鶫「私が水の中の訓練を受けていないとでも思っているのか?」
楽「いや、訓練とかって問題なのか……?」
鶫「鍛えればたいていのことはどうにかなる。貴様もお嬢の恋人なのだし、一度体験してみるか?」
楽「お、俺はいいよ。それより素直に水族館を楽しめって」
鶫「素直にか……」
85: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:15:44.96 ID:w/gKl71uo
鶫(色とりどりの魚に周りを囲まれた、非日常的な空間に、一条楽と一緒にいる)
鶫(普通なら絶対できない経験で、正直に言えば心が躍る。……ただまあ、どうせなら)
鶫「……周りに人がいなければよかったのにな」ボソッ
楽「え?」
鶫「な、なんでもない。ほら、もう出口だ。外に出るぞ!」
楽「お、おう」
楽(周りに人がいなければって……1人で来たかったってことか?)ウーン
楽(まあ、つまらなくはないみてえだしいいか)
鶫(普通なら絶対できない経験で、正直に言えば心が躍る。……ただまあ、どうせなら)
鶫「……周りに人がいなければよかったのにな」ボソッ
楽「え?」
鶫「な、なんでもない。ほら、もう出口だ。外に出るぞ!」
楽「お、おう」
楽(周りに人がいなければって……1人で来たかったってことか?)ウーン
楽(まあ、つまらなくはないみてえだしいいか)
86: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:16:14.83 ID:w/gKl71uo
楽「下見に付き合ってくれてありがとな。どうだった? 楽しかったか?」
鶫「水族館には初めて来たが、想像以上だった。……まあ一応、楽しめたと言ってもいいだろう」
楽「ならよかった」
鶫「べ、別に貴様が何かをやったわけではないのだからな。水族館が素晴らしいというだけの話だからな」
楽「いや、俺のおかげみたいなこと言ってねえんだけど……?」
鶫「と、ともかく。お嬢なら水族館に行ったこともあるのだろうが、きっとここも楽しまれるだろう」
楽「そっか。鶫がそういうなら安心だ」
鶫「……そう信頼されても困るのだがな。貴様はお嬢の恋人なのだから、私よりお嬢に詳しくなっていなければならんのだぞ」
楽「さすがに小さい頃からずっといたお前より詳しくってのは厳しいと思うんだけど……」
鶫「そんな怠慢が許されるとでも? ……まあ、今すぐとは言わんが、将来的にはそうなれということだ」
楽「まあそのうちな」
鶫「本当にわかっているのか? ……さて、それじゃあ私はこれで――」
楽「ん、じゃあ次のとこ行くか」
鶫「ま、まだあるのか!?」ドキッ
楽「いや、楽しかったけど、この水族館で一日は潰せねえだろ?」
鶫「それはそうだが……」
楽「次は近くで映画見ようと思ってんだけどいいか?」
鶫「お嬢とのデートの下見なのだから、別に私がどうこういうことではないだろう」
楽「いや、嫌だっていうなら無理に行くわけにもいかねえし」
鶫「だからこれは下見だ。嫌も何もない」
楽「……そっか。じゃあ行こうぜ」
鶫「ああ」
楽(機嫌良くして欲しいんだけどなあ)ハァ
鶫(次があると聞いたとき、嬉しいと思ってしまった。私は……)
鶫「水族館には初めて来たが、想像以上だった。……まあ一応、楽しめたと言ってもいいだろう」
楽「ならよかった」
鶫「べ、別に貴様が何かをやったわけではないのだからな。水族館が素晴らしいというだけの話だからな」
楽「いや、俺のおかげみたいなこと言ってねえんだけど……?」
鶫「と、ともかく。お嬢なら水族館に行ったこともあるのだろうが、きっとここも楽しまれるだろう」
楽「そっか。鶫がそういうなら安心だ」
鶫「……そう信頼されても困るのだがな。貴様はお嬢の恋人なのだから、私よりお嬢に詳しくなっていなければならんのだぞ」
楽「さすがに小さい頃からずっといたお前より詳しくってのは厳しいと思うんだけど……」
鶫「そんな怠慢が許されるとでも? ……まあ、今すぐとは言わんが、将来的にはそうなれということだ」
楽「まあそのうちな」
鶫「本当にわかっているのか? ……さて、それじゃあ私はこれで――」
楽「ん、じゃあ次のとこ行くか」
鶫「ま、まだあるのか!?」ドキッ
楽「いや、楽しかったけど、この水族館で一日は潰せねえだろ?」
鶫「それはそうだが……」
楽「次は近くで映画見ようと思ってんだけどいいか?」
鶫「お嬢とのデートの下見なのだから、別に私がどうこういうことではないだろう」
楽「いや、嫌だっていうなら無理に行くわけにもいかねえし」
鶫「だからこれは下見だ。嫌も何もない」
楽「……そっか。じゃあ行こうぜ」
鶫「ああ」
楽(機嫌良くして欲しいんだけどなあ)ハァ
鶫(次があると聞いたとき、嬉しいと思ってしまった。私は……)
87: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:16:44.39 ID:w/gKl71uo
――映画館――
鶫「それでなにを見るんだ?」
楽「そうだな……鶫はどういうのが好きなんだ?」
鶫「私の好みを聞いてどうする。お嬢と見るのだろう」
楽「あー……千棘と見るなら、お互い初めての見たほうが感想も話しやすいだろ?」
鶫「……それはそうかもしれんが、それなら私と映画を見る必要もないのではないか?」
楽「ほ、ほら、映画館の雰囲気とかあるしさ」
鶫「そこまで気にするものなのか?」
楽「俺もそんなに気にしねえけど、千棘とのデートで手を抜くなってのはお前がよく言うじゃねえか」
鶫「ま、まあそれはそうだが……」
楽「それより鶫はどういうのが好きなんだよ。やっぱアクションものとかか?」
鶫「いや、アクションものはあまり好きではないな」
楽「へー、意外だな」
鶫「ああいうものはリアリティのなさが気になってしまって、どうにも楽しめないのだ」
楽「ああ、うん……プロだもんな、お前」
鶫「映画として派手さが必要なのは分かるが、だからといって1人で敵のど真ん中に飛び込んで行ったり無駄に爆発させたりするのは……」
鶫「それでなにを見るんだ?」
楽「そうだな……鶫はどういうのが好きなんだ?」
鶫「私の好みを聞いてどうする。お嬢と見るのだろう」
楽「あー……千棘と見るなら、お互い初めての見たほうが感想も話しやすいだろ?」
鶫「……それはそうかもしれんが、それなら私と映画を見る必要もないのではないか?」
楽「ほ、ほら、映画館の雰囲気とかあるしさ」
鶫「そこまで気にするものなのか?」
楽「俺もそんなに気にしねえけど、千棘とのデートで手を抜くなってのはお前がよく言うじゃねえか」
鶫「ま、まあそれはそうだが……」
楽「それより鶫はどういうのが好きなんだよ。やっぱアクションものとかか?」
鶫「いや、アクションものはあまり好きではないな」
楽「へー、意外だな」
鶫「ああいうものはリアリティのなさが気になってしまって、どうにも楽しめないのだ」
楽「ああ、うん……プロだもんな、お前」
鶫「映画として派手さが必要なのは分かるが、だからといって1人で敵のど真ん中に飛び込んで行ったり無駄に爆発させたりするのは……」
88: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:17:13.53 ID:w/gKl71uo
楽「普通は盛り上がるシーンなんだけどなそれ……。じゃあ好きなのはどういう映画なんだ?」
鶫「……しいて言えば、動物の出る映画が。アクションシーンなどは無いほうがいいな」
楽「そういう系か。俺も好きだしちょうどいいな」
鶫「そ、そうなのか?」ドキッ
楽「ああ。日常が殺伐としてっから、感動系とか癒し系がいいんだよ」
鶫「私も似たようなものだ」
楽「それなら……このHACHIって映画でいいか? 忠犬ハチ公のアメリカ版だってよ」
鶫「ハチ公か! 私の大好きなエピソードだ。まさか映画になっていたとは……」
楽「ハチ公が好きなのか。そりゃ良かった。これにしようぜ」
鶫「うむ! ……!」ハッ
鶫「べ、別に貴様と見るのが楽しみというわけではないからな!」
楽「だからわかってるって」
鶫「……」ムゥ
楽(なんで不満そうなんだ……?)
鶫「……しいて言えば、動物の出る映画が。アクションシーンなどは無いほうがいいな」
楽「そういう系か。俺も好きだしちょうどいいな」
鶫「そ、そうなのか?」ドキッ
楽「ああ。日常が殺伐としてっから、感動系とか癒し系がいいんだよ」
鶫「私も似たようなものだ」
楽「それなら……このHACHIって映画でいいか? 忠犬ハチ公のアメリカ版だってよ」
鶫「ハチ公か! 私の大好きなエピソードだ。まさか映画になっていたとは……」
楽「ハチ公が好きなのか。そりゃ良かった。これにしようぜ」
鶫「うむ! ……!」ハッ
鶫「べ、別に貴様と見るのが楽しみというわけではないからな!」
楽「だからわかってるって」
鶫「……」ムゥ
楽(なんで不満そうなんだ……?)
89: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:17:39.77 ID:w/gKl71uo
鶫「ハチ……!」グスッ
楽(鶫って映画にこんな感情移入する奴だったのか)ヘー
楽「いい映画だったな。泣けるストーリーだった」
鶫「ああ……あんなに愛らしいのにあんなに篤い忠誠心を持っているなんて。私も見習いたいものだ」
楽「犬を見習うってのはどうなんだそれ? いや、確かに感動したけどさ」
鶫「なにをいう。私はお嬢のお付きなのだから、動物であろうと見習うべきものは見習わねば」
楽「それでいいならいいんだけどさ」
鶫「それにしてもハチが駅で主人を待つシーンはよかったな」
楽「ああ、俺もそこは好きだ」
鶫「なかなか来ない主人を待つ愛らしい姿。あれこそ忠犬というのだろうな」
楽「可愛いいのに頑固なところがまたいいんだよなあ」
鶫「分かっているではないか。貴様とここまで意見が合うとはな」
楽「料理するし動物好きだし、意外と趣味があってるのかもしれねえな」
鶫「……そうかもしれんな。まあ貴様と2人で遊ぶなど、今日のような例外を除けばもうないだろうから、どうでもいいことだが」
楽(鶫って映画にこんな感情移入する奴だったのか)ヘー
楽「いい映画だったな。泣けるストーリーだった」
鶫「ああ……あんなに愛らしいのにあんなに篤い忠誠心を持っているなんて。私も見習いたいものだ」
楽「犬を見習うってのはどうなんだそれ? いや、確かに感動したけどさ」
鶫「なにをいう。私はお嬢のお付きなのだから、動物であろうと見習うべきものは見習わねば」
楽「それでいいならいいんだけどさ」
鶫「それにしてもハチが駅で主人を待つシーンはよかったな」
楽「ああ、俺もそこは好きだ」
鶫「なかなか来ない主人を待つ愛らしい姿。あれこそ忠犬というのだろうな」
楽「可愛いいのに頑固なところがまたいいんだよなあ」
鶫「分かっているではないか。貴様とここまで意見が合うとはな」
楽「料理するし動物好きだし、意外と趣味があってるのかもしれねえな」
鶫「……そうかもしれんな。まあ貴様と2人で遊ぶなど、今日のような例外を除けばもうないだろうから、どうでもいいことだが」
90: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:18:06.28 ID:w/gKl71uo
楽「じゃあ今度鶫の家に行くときは動物もののDVDでも持っていくか」
鶫「それは楽し……違う! それは違うだろう!? 今もう遊ぶことはないという話をしていたではないか!」
楽「そんな話だったのかよ。回りくどくてわかんねえって」
鶫「じゃあそういう話だ。だいたい、今日は下見だからしょうがないが、恋人がいるのに女子と2人で出かけるというのも本来おかしいだろう」
楽「でも鶫の家にはよく行くじゃねえか」
鶫「それは料理を教え合っているだけであって、別に遊ぶためではない!」
楽「まあそりゃそうだけどさ」
鶫「……わかればいい」
楽(やっぱ嫌がられてんのかなあ。楽しんでくれてるように見えてんだけど)
鶫(つい映画の話が弾んでしまったが、こいつにはお嬢がいるのだから自省しなければ)
鶫(……ここまで話が合うのは初めてだったし、少しもったいない……というか残念だとは思うが)
鶫「それは楽し……違う! それは違うだろう!? 今もう遊ぶことはないという話をしていたではないか!」
楽「そんな話だったのかよ。回りくどくてわかんねえって」
鶫「じゃあそういう話だ。だいたい、今日は下見だからしょうがないが、恋人がいるのに女子と2人で出かけるというのも本来おかしいだろう」
楽「でも鶫の家にはよく行くじゃねえか」
鶫「それは料理を教え合っているだけであって、別に遊ぶためではない!」
楽「まあそりゃそうだけどさ」
鶫「……わかればいい」
楽(やっぱ嫌がられてんのかなあ。楽しんでくれてるように見えてんだけど)
鶫(つい映画の話が弾んでしまったが、こいつにはお嬢がいるのだから自省しなければ)
鶫(……ここまで話が合うのは初めてだったし、少しもったいない……というか残念だとは思うが)
91: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:18:34.45 ID:w/gKl71uo
鶫「今度こそここで終わりか?」
楽「そうだな。これ以上遊ぶ時間もねえし」
鶫「そうか……」
楽「鶫?」
鶫「なんでもない。帰るぞ」
楽「お、おう」
鶫「……」
楽「……」
鶫(……我ながら少しそっけなさ過ぎた。自分で終わりかと聞いたのに)
鶫「……そういえば、結局行かなかったが水族館で男女で行くと受けられるサービスとはなんだったのだ?」
楽「あ、ああ。あれはカップル向けだったみたいだからやめといた。なんかハグとかあったみてえだし」
鶫「そ、それは賢明だな」
鶫(そ、想像しただけで顔が熱く……!)カアァァ
楽「また鶫に殴られそうだしな」
鶫「そういう問題では無いだろう! 私たちは恋人ではないのだから、は、ハグなどそんなこと出来るか!」
楽「わ、わかってるって。俺もやる気はなかったよ」
鶫「そ、それならいいのだが……」
楽「そうだな。これ以上遊ぶ時間もねえし」
鶫「そうか……」
楽「鶫?」
鶫「なんでもない。帰るぞ」
楽「お、おう」
鶫「……」
楽「……」
鶫(……我ながら少しそっけなさ過ぎた。自分で終わりかと聞いたのに)
鶫「……そういえば、結局行かなかったが水族館で男女で行くと受けられるサービスとはなんだったのだ?」
楽「あ、ああ。あれはカップル向けだったみたいだからやめといた。なんかハグとかあったみてえだし」
鶫「そ、それは賢明だな」
鶫(そ、想像しただけで顔が熱く……!)カアァァ
楽「また鶫に殴られそうだしな」
鶫「そういう問題では無いだろう! 私たちは恋人ではないのだから、は、ハグなどそんなこと出来るか!」
楽「わ、わかってるって。俺もやる気はなかったよ」
鶫「そ、それならいいのだが……」
92: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:19:01.44 ID:w/gKl71uo
楽「動物ものの映画が好きって言ってたけど、今日の以外だとどんなのが好きなんだ?」
鶫「そうだな。定番だが南極物語は好きな作品だ」
鶫「過酷な自然の中で主人に尽くす姿や、1年後戻ってきた隊員を見て駆け寄る姿などは涙をこらえきれん」
楽「あれは良いシーンだよなあ」
鶫「うむ。映画の犬は主人に忠実なことが多いから、なんとなく親近感を覚えてしまう」
楽「千棘もそこまでは望んでねえと思うけどなあ」
鶫「お嬢が望んでいなくともそうなる必要があるのだ。クロード様を見るといい。お嬢と組織に忠実だろう。あれこそ理想だ」
楽「忠実なわりに千棘の恋人の俺は酷い目に合わされてんだけど……」
鶫「それも望まないことであっても、やる必要があるものだな」
楽「やられる側は堪まったもんじゃねえからな……」
鶫「なんといってもお嬢の恋人だからな。多少厳しくなるのは仕方あるまい」
楽「多少の使い方がおかしくねえか」
鶫「我々の訓練に比べれば多少もいいところだ……あ」
楽「どうかしたか?」
鶫「い、いや。なんでもない」
楽「いきなりあ、なんて声出して何でもないってことないだろ? ……クレープ屋?」
鶫「い、いや。クラスの方々がおいしくて有名な店があると言っていたのを聞いていて、それでつい声が出てしまっただけだ!」
楽「……食べたいのか?」
鶫「そ、そういうわけでは……」
楽「また変な意地張るな……。ほら、行くぞ」
鶫「ちょ、ちょっと」
鶫「そうだな。定番だが南極物語は好きな作品だ」
鶫「過酷な自然の中で主人に尽くす姿や、1年後戻ってきた隊員を見て駆け寄る姿などは涙をこらえきれん」
楽「あれは良いシーンだよなあ」
鶫「うむ。映画の犬は主人に忠実なことが多いから、なんとなく親近感を覚えてしまう」
楽「千棘もそこまでは望んでねえと思うけどなあ」
鶫「お嬢が望んでいなくともそうなる必要があるのだ。クロード様を見るといい。お嬢と組織に忠実だろう。あれこそ理想だ」
楽「忠実なわりに千棘の恋人の俺は酷い目に合わされてんだけど……」
鶫「それも望まないことであっても、やる必要があるものだな」
楽「やられる側は堪まったもんじゃねえからな……」
鶫「なんといってもお嬢の恋人だからな。多少厳しくなるのは仕方あるまい」
楽「多少の使い方がおかしくねえか」
鶫「我々の訓練に比べれば多少もいいところだ……あ」
楽「どうかしたか?」
鶫「い、いや。なんでもない」
楽「いきなりあ、なんて声出して何でもないってことないだろ? ……クレープ屋?」
鶫「い、いや。クラスの方々がおいしくて有名な店があると言っていたのを聞いていて、それでつい声が出てしまっただけだ!」
楽「……食べたいのか?」
鶫「そ、そういうわけでは……」
楽「また変な意地張るな……。ほら、行くぞ」
鶫「ちょ、ちょっと」
93: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:19:38.36 ID:w/gKl71uo
鶫「おいしい! おいしいとは聞いていたが、こんなにおいしいものがあったとは!」キラキラ
楽(こういうところは普通の女の子っぽいな)
鶫「生地とクリームの組み合わせもおいしいが、色んなフルーツの味も楽しめるのが素晴らしいな」モグモグ
楽「無理矢理引っ張った甲斐があったぜ」モグモグ
鶫「もっと早く食べていればよかったな。貴様のは何味なんだ?」
楽「ブルーベリーだよ。食べてみるか? ……なんて、食べるわけね――」
鶫「いいのか?」
楽「へ?」
鶫「一口」
楽「え? い、いやまあ」
鶫「それじゃあ……」パクッ
楽「!?」
楽(こういうところは普通の女の子っぽいな)
鶫「生地とクリームの組み合わせもおいしいが、色んなフルーツの味も楽しめるのが素晴らしいな」モグモグ
楽「無理矢理引っ張った甲斐があったぜ」モグモグ
鶫「もっと早く食べていればよかったな。貴様のは何味なんだ?」
楽「ブルーベリーだよ。食べてみるか? ……なんて、食べるわけね――」
鶫「いいのか?」
楽「へ?」
鶫「一口」
楽「え? い、いやまあ」
鶫「それじゃあ……」パクッ
楽「!?」
94: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:20:04.96 ID:w/gKl71uo
鶫「うん、ブルーベリーもおいしいな! 別の味も食べてみたくなったぞ」
楽「……」ボーゼン
鶫「一条楽?」
楽「お、お前、今の……か」
鶫「?」
楽「……い、いや。何でもねえ」
鶫「なんなんだ貴様は。……おいしい♪」モグモグ
楽(い、今の間接キスだよな!? 気にする俺がおかしいのか!?)ドキドキ
鶫「食べないのか? こんなにおいしい物を残すなど許さんぞ」
楽「あ、ああ。食べるよ」
楽(こ、これも間接キスだよな……? 食べないわけにもいかねえし……)
楽「…………」パクッ
鶫「それでいい」モグモグ
楽(あ、味がわからねえ……)ドキドキ
楽「……」ボーゼン
鶫「一条楽?」
楽「お、お前、今の……か」
鶫「?」
楽「……い、いや。何でもねえ」
鶫「なんなんだ貴様は。……おいしい♪」モグモグ
楽(い、今の間接キスだよな!? 気にする俺がおかしいのか!?)ドキドキ
鶫「食べないのか? こんなにおいしい物を残すなど許さんぞ」
楽「あ、ああ。食べるよ」
楽(こ、これも間接キスだよな……? 食べないわけにもいかねえし……)
楽「…………」パクッ
鶫「それでいい」モグモグ
楽(あ、味がわからねえ……)ドキドキ
95: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:20:32.14 ID:w/gKl71uo
鶫「貴様はここで右に曲がるのだったか」
楽「ああ」
鶫「そうか。ここでお別れだな」
楽「そうだな」
鶫「……貴様は」
楽「ん?」
鶫「……いや、なんでもない」
楽「なんだよそこまで言って」
鶫「気にするな。たいしたことじゃない」
鶫(楽しかったか、などと聞いてどうするつもりなのだ。私は)
鶫(こんなふうに遊びに行くことはもうないと、さっき言ったばかりだというのに)
楽(気にするなって、気にしろって言ってるようなもんじゃねえか)
鶫「とりあえず、今日の下見はお嬢とのデートの役には立ったか?」
楽「あ、ああ。これでバッチリだ」
鶫「そうか。それならよかった」
鶫「……それと、もう一つ」
楽「ん?」
鶫「……今日は楽しかった。ありがとう。……一条楽」ニコッ
楽「お、おう」ドキッ
楽「ああ」
鶫「そうか。ここでお別れだな」
楽「そうだな」
鶫「……貴様は」
楽「ん?」
鶫「……いや、なんでもない」
楽「なんだよそこまで言って」
鶫「気にするな。たいしたことじゃない」
鶫(楽しかったか、などと聞いてどうするつもりなのだ。私は)
鶫(こんなふうに遊びに行くことはもうないと、さっき言ったばかりだというのに)
楽(気にするなって、気にしろって言ってるようなもんじゃねえか)
鶫「とりあえず、今日の下見はお嬢とのデートの役には立ったか?」
楽「あ、ああ。これでバッチリだ」
鶫「そうか。それならよかった」
鶫「……それと、もう一つ」
楽「ん?」
鶫「……今日は楽しかった。ありがとう。……一条楽」ニコッ
楽「お、おう」ドキッ
96: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:20:59.27 ID:w/gKl71uo
楽(つ、鶫の笑顔なんて、船のとき以来だけど、あのときと違って心臓が……)ドキドキ
楽(……もしかして、俺こいつのこと気になってんのか?)
楽(水族館でアシカと楽しそうにしてるところとか、映画で感動して泣いたところとか、クレープをおいしそうに食べるところとか。結構長く友達やってるのに、全然見たことなかった)
楽(今日は色んな鶫を見たけど、もっと違うとこ見たいと思った。……ポーラの言ってた仲良くなるって、こういうことなんだろうな)
楽(でもこれ、友達としてっていうよりむしろ――)
楽(……そっか、俺、料理作りあったり、色んな鶫を見たりするうちに、いつの間にか鶫のことが)
鶫「なんだ。急に黙りこんで」
楽「い、いや、なんでもねえよ。ただ前に女は笑顔って言ったけど、あれほんとだなって思っただけで」
鶫「突然何の話だ」
楽「あー……その、今の笑った顔がすげえ良かったって話だよ」カアァァ
楽(この間笑った女子が嫌いな男はいねえとも言ったしとは流石に言わねえし、気付かねえだろうけど)
鶫「そ、そうか。……なら、まあ。今後も努力してみよう」
楽「……え? てっきり殴られるもんだと……」
鶫「殴るかバカもの! 一体人のことをなんだと思っているんだ!」
鶫(笑顔が良かったと言ってくれた。勇気を出して笑ってみた効果が、少しはあったのだろうか)
鶫(友達のことと言って聞いていてよかったな)
楽(……もしかして、俺こいつのこと気になってんのか?)
楽(水族館でアシカと楽しそうにしてるところとか、映画で感動して泣いたところとか、クレープをおいしそうに食べるところとか。結構長く友達やってるのに、全然見たことなかった)
楽(今日は色んな鶫を見たけど、もっと違うとこ見たいと思った。……ポーラの言ってた仲良くなるって、こういうことなんだろうな)
楽(でもこれ、友達としてっていうよりむしろ――)
楽(……そっか、俺、料理作りあったり、色んな鶫を見たりするうちに、いつの間にか鶫のことが)
鶫「なんだ。急に黙りこんで」
楽「い、いや、なんでもねえよ。ただ前に女は笑顔って言ったけど、あれほんとだなって思っただけで」
鶫「突然何の話だ」
楽「あー……その、今の笑った顔がすげえ良かったって話だよ」カアァァ
楽(この間笑った女子が嫌いな男はいねえとも言ったしとは流石に言わねえし、気付かねえだろうけど)
鶫「そ、そうか。……なら、まあ。今後も努力してみよう」
楽「……え? てっきり殴られるもんだと……」
鶫「殴るかバカもの! 一体人のことをなんだと思っているんだ!」
鶫(笑顔が良かったと言ってくれた。勇気を出して笑ってみた効果が、少しはあったのだろうか)
鶫(友達のことと言って聞いていてよかったな)
97: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:21:26.81 ID:w/gKl71uo
鶫「それじゃあそろそろ。一条楽。お嬢とのデートではもっと楽しめるといいな」
楽「……そうだな。でも帰るのもう少しだけ待ってくれ」
鶫「どうした?」
楽「鶫。映画の後もう2人で遊ばないって言ってたよな」
鶫「当然だ。貴様にはお嬢がいるだろう」
楽「でも今日みたいな下見なら付き合ってくれるよな?」
鶫「……まあ、お嬢のためだからな。相手が必要なのであれば、付き合ってやらんでもない」
楽「そっか。わかった。じゃあまた今度頼むからよろしくな」
鶫「……え?」
楽「それじゃあまた」
鶫「……」ポカーン
楽「……そうだな。でも帰るのもう少しだけ待ってくれ」
鶫「どうした?」
楽「鶫。映画の後もう2人で遊ばないって言ってたよな」
鶫「当然だ。貴様にはお嬢がいるだろう」
楽「でも今日みたいな下見なら付き合ってくれるよな?」
鶫「……まあ、お嬢のためだからな。相手が必要なのであれば、付き合ってやらんでもない」
楽「そっか。わかった。じゃあまた今度頼むからよろしくな」
鶫「……え?」
楽「それじゃあまた」
鶫「……」ポカーン
98: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/06/04(土) 20:21:55.36 ID:w/gKl71uo
鶫(下見とはいえ、また一条楽と2人でか……。あれほどこれで終わりだと言ったのに、また誘ってくれるなんて)キュン
鶫(喜んではいけないと分かっているのに、嬉しいと感じてしまう。最初は嫌だと思っていたのに、我ながら現金なものだな)フゥ
鶫(……お嬢、申し訳ございません。やっぱり私は、一条楽のことが、好きになってしまっていたようです)
鶫(……認めてしまうと気が楽になるものだな。だからといってまあ、どうするわけでもないのだが)
鶫(それでもまあ、あいつから誘われたのだし……下見に行くくらいは)
鶫(お嬢のためでもあるのだし。どうせ、その先の望みはないのだし)
鶫(だから、まあ。絶対に直接お嬢には言えませんが)
鶫(一条楽とデートの下見に行くことを、許してください。お嬢)
鶫(喜んではいけないと分かっているのに、嬉しいと感じてしまう。最初は嫌だと思っていたのに、我ながら現金なものだな)フゥ
鶫(……お嬢、申し訳ございません。やっぱり私は、一条楽のことが、好きになってしまっていたようです)
鶫(……認めてしまうと気が楽になるものだな。だからといってまあ、どうするわけでもないのだが)
鶫(それでもまあ、あいつから誘われたのだし……下見に行くくらいは)
鶫(お嬢のためでもあるのだし。どうせ、その先の望みはないのだし)
鶫(だから、まあ。絶対に直接お嬢には言えませんが)
鶫(一条楽とデートの下見に行くことを、許してください。お嬢)
106: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:37:41.30 ID:AQwOOwdqo
楽「鶫。今度釣りに行かねえか」
鶫「釣り? な、なぜ私が貴様と行かなければならないんだ」ドキッ
楽「いや、最近ハマってるから千棘とのデートでどうかと思ったんだけど、女子が行っても楽しいのかわかんねえからさ」
鶫「……要は下見か。女子がというが、私が楽しいと思ってもお嬢が楽しいと思うかわからんだろう」
楽「まあそりゃそうだけど、男の俺よりはいいだろ」
鶫「そうか?」
楽「どっちかといえば?」
鶫「それはまあ……私の方だろうが」
楽「だろ? 今週の土曜日で大丈夫か?」
鶫「予定は……空いてるな」
楽「じゃあよろしく」
鶫「あ、ああ」
鶫(半ば強引に誘われてしまった……別に嫌ではないのだが)
--------------------------------------------------
鶫「釣り? な、なぜ私が貴様と行かなければならないんだ」ドキッ
楽「いや、最近ハマってるから千棘とのデートでどうかと思ったんだけど、女子が行っても楽しいのかわかんねえからさ」
鶫「……要は下見か。女子がというが、私が楽しいと思ってもお嬢が楽しいと思うかわからんだろう」
楽「まあそりゃそうだけど、男の俺よりはいいだろ」
鶫「そうか?」
楽「どっちかといえば?」
鶫「それはまあ……私の方だろうが」
楽「だろ? 今週の土曜日で大丈夫か?」
鶫「予定は……空いてるな」
楽「じゃあよろしく」
鶫「あ、ああ」
鶫(半ば強引に誘われてしまった……別に嫌ではないのだが)
--------------------------------------------------
107: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:38:07.51 ID:AQwOOwdqo
楽「鶫ー。今度は買い物行かねえか?」
鶫「今回も下見か?」
楽「おう。ショッピングは定番だろ」
鶫「今さら私と行く必要はないのではないか」
楽「お前あんまり服持ってねえだろ? 下見のついでに探してもいいんじゃねえかと思って」
鶫「なるほど、そういうことなら……」ハッ
鶫(これは普通にデートなのではないか……?)ウウム
楽「それじゃよろしくな」
鶫「あ、ああ」
--------------------------------------------------
鶫「今回も下見か?」
楽「おう。ショッピングは定番だろ」
鶫「今さら私と行く必要はないのではないか」
楽「お前あんまり服持ってねえだろ? 下見のついでに探してもいいんじゃねえかと思って」
鶫「なるほど、そういうことなら……」ハッ
鶫(これは普通にデートなのではないか……?)ウウム
楽「それじゃよろしくな」
鶫「あ、ああ」
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108: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:38:42.54 ID:AQwOOwdqo
楽「ゲーセン行こうぜ」
鶫「……また下見か?」
楽「ああ。面白いゲームがあるかわかんねえから先に探しといたほうがいいだろ」
鶫「よくわからんが、それは1人では出来ないものなのか?」
楽「2人用のゲームを1人でやるのはちょっとなあ……」
鶫「それはまあ……だが舞子集とか男友達でもいいのではないか」
楽「女子と男子じゃ感性違うだろうし……」
楽「……べ、別に一緒にいくのが鶫でもいいだろ? ま、まあ嫌だっていうなら仕方ねえけど……」
鶫「い、嫌なわけではない。お嬢のためにすることなのだから、嫌がるわけがないだろう」
楽「その……お前自身はどうなんだよ?」
鶫「わ、私は……ど、どうしても行きたくない、というわけではないが」
楽「行きたいってことでいいのか?」
鶫「い、行きたくないわけではないということだ」
楽「……なら明日の放課後でいいか?」
鶫「……わかった」コクン
--------------------------------------------------
鶫「……また下見か?」
楽「ああ。面白いゲームがあるかわかんねえから先に探しといたほうがいいだろ」
鶫「よくわからんが、それは1人では出来ないものなのか?」
楽「2人用のゲームを1人でやるのはちょっとなあ……」
鶫「それはまあ……だが舞子集とか男友達でもいいのではないか」
楽「女子と男子じゃ感性違うだろうし……」
楽「……べ、別に一緒にいくのが鶫でもいいだろ? ま、まあ嫌だっていうなら仕方ねえけど……」
鶫「い、嫌なわけではない。お嬢のためにすることなのだから、嫌がるわけがないだろう」
楽「その……お前自身はどうなんだよ?」
鶫「わ、私は……ど、どうしても行きたくない、というわけではないが」
楽「行きたいってことでいいのか?」
鶫「い、行きたくないわけではないということだ」
楽「……なら明日の放課後でいいか?」
鶫「……わかった」コクン
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109: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:39:11.07 ID:AQwOOwdqo
楽「鶫」
鶫「またか?」
楽「ああ。今度動物園行こうかと思うんだけど、行かねえか?」
鶫「動物園なんて、わざわざ下見に行かなくてもお嬢は楽しむだろう」
楽「い、いやまあそうかもしれねえけどよ。もしかしたら酷いところだったりするかもしれねえし」
鶫「そんなところだったら私と行かなくても分かるだろう」
楽「で、でも女子の目から見たほうがいいだろ?」
鶫「……本当に下見が目的なのか?」
楽「え!?」ドキッ
鶫「どうもお嬢とのデートより下見のほうが多い気がするのだが」ジー
楽「そ、そりゃ下見したところはこれから行くんだから、下見のほうが多いのは当然だろ?」
鶫「それはそうだが……」
楽「それに下見以外で鶫と行く目的ってなんなんだよ」
鶫「それは……」
鶫(私を愛人にするために籠絡しようとしているとか……)カアァァ
鶫「い、言えるかバカもの!!」
楽「ええ!?」
鶫(しかしまあ、恋人にはどうせなれないのだからそれならそれで……ええい、私はなにを考えているのだ!)ブンブン
楽「あー……それで動物園は一緒に行ってくれるのか?」
鶫「……目的はお嬢とのデートの下見なんだな?」
楽「……だからそうだって。他になにがあるんだよ」
鶫「それならまあ、どうしてもというなら行ってやらんでもない」
楽「ああ、どうしても一緒に行って欲しい」
鶫「!」ドキッ
楽「日曜日よろしくな」
鶫「あ、ああ」ドキドキ
--------------------------------------------------
鶫「またか?」
楽「ああ。今度動物園行こうかと思うんだけど、行かねえか?」
鶫「動物園なんて、わざわざ下見に行かなくてもお嬢は楽しむだろう」
楽「い、いやまあそうかもしれねえけどよ。もしかしたら酷いところだったりするかもしれねえし」
鶫「そんなところだったら私と行かなくても分かるだろう」
楽「で、でも女子の目から見たほうがいいだろ?」
鶫「……本当に下見が目的なのか?」
楽「え!?」ドキッ
鶫「どうもお嬢とのデートより下見のほうが多い気がするのだが」ジー
楽「そ、そりゃ下見したところはこれから行くんだから、下見のほうが多いのは当然だろ?」
鶫「それはそうだが……」
楽「それに下見以外で鶫と行く目的ってなんなんだよ」
鶫「それは……」
鶫(私を愛人にするために籠絡しようとしているとか……)カアァァ
鶫「い、言えるかバカもの!!」
楽「ええ!?」
鶫(しかしまあ、恋人にはどうせなれないのだからそれならそれで……ええい、私はなにを考えているのだ!)ブンブン
楽「あー……それで動物園は一緒に行ってくれるのか?」
鶫「……目的はお嬢とのデートの下見なんだな?」
楽「……だからそうだって。他になにがあるんだよ」
鶫「それならまあ、どうしてもというなら行ってやらんでもない」
楽「ああ、どうしても一緒に行って欲しい」
鶫「!」ドキッ
楽「日曜日よろしくな」
鶫「あ、ああ」ドキドキ
--------------------------------------------------
110: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:39:39.71 ID:AQwOOwdqo
鶫(……最近、いくらなんでも下見に誘われる回数が多すぎる気がする)
鶫(そもそも下見は必ず行かなければならないものではないのだから、お嬢とのデート回数より多いのはどう考えてもおかしい)
鶫(一条楽はこれから行くからと言っているが、下見に行く頻度は変わらない……というかむしろ増えている気がするし)
鶫(嫌なわけではない……というかまあ、どちらかと言えば嬉しいし、お嬢のデートのためならばむしろやるべきことではあるのだが)
鶫(しかしお嬢とのデートより多いというのはやり過ぎな気がする。お嬢が知ったら余計な心配をさせてしまうのではないか?)
鶫(私とお嬢では女性としての魅力が段違いとはいえ、仮に私がお嬢と同じ立場だったらいい気持ちはしないだろうし……)
ポーラ「なに難しい顔してんのよ?」
鶫「うわっ! い、いきなり声をかけるな!」
ポーラ「ごく普通に声をかけたつもりなんだけど……?」
鶫「考えごとをしているときに話しかけるなっ」
ポーラ「どうやって判断しろってのよ。それでまた一条楽のことでも考えてたの?」
鶫「な、なぜそれを!?」ビクッ
ポーラ「なぜもなにも、一条楽かお嬢様くらいしかないじゃない。本当に分かりやすいわね」
鶫「うっ……」
鶫(そもそも下見は必ず行かなければならないものではないのだから、お嬢とのデート回数より多いのはどう考えてもおかしい)
鶫(一条楽はこれから行くからと言っているが、下見に行く頻度は変わらない……というかむしろ増えている気がするし)
鶫(嫌なわけではない……というかまあ、どちらかと言えば嬉しいし、お嬢のデートのためならばむしろやるべきことではあるのだが)
鶫(しかしお嬢とのデートより多いというのはやり過ぎな気がする。お嬢が知ったら余計な心配をさせてしまうのではないか?)
鶫(私とお嬢では女性としての魅力が段違いとはいえ、仮に私がお嬢と同じ立場だったらいい気持ちはしないだろうし……)
ポーラ「なに難しい顔してんのよ?」
鶫「うわっ! い、いきなり声をかけるな!」
ポーラ「ごく普通に声をかけたつもりなんだけど……?」
鶫「考えごとをしているときに話しかけるなっ」
ポーラ「どうやって判断しろってのよ。それでまた一条楽のことでも考えてたの?」
鶫「な、なぜそれを!?」ビクッ
ポーラ「なぜもなにも、一条楽かお嬢様くらいしかないじゃない。本当に分かりやすいわね」
鶫「うっ……」
111: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:40:22.12 ID:AQwOOwdqo
ポーラ「それでなに悩んでるのよ。これから一条楽が来るんだから、その前に私に話してその顔どうにかしなさいよ」
鶫「……一条楽がお嬢とのデートの下見に私を誘っているのは知っていると思うが」
ポーラ「ええ」
鶫「それが少し多いのではないかと思うんだ」
ポーラ「……喜んだら?」
鶫「ちょっと多くなったくらいならともかく、一条楽とお嬢とのデートより明らかに多いんだぞ? そのデートのための下見だというのに」
ポーラ「ふーん……」
ポーラ(どう考えても黒虎狙いよねそれ。黒虎にはそういう発想がないみたいだけど)
ポーラ(愛人とかあり得ないって言ってたからどうかと思ったけど、意外と上手くやってるみたいじゃない)
鶫「お嬢とのデートを良くするために必要だとは思うのだが、これほど多いとお嬢に余計な心配をかけてしまうのではないかと不安で……」
ポーラ「……バカね、あんたがお嬢と同じくらい魅力があるとでも思ってるの?」
鶫「いや、別にそんなことは思っていないが」
ポーラ「でしょ。あんたと一条楽が一緒にいるくらいで、お嬢様が心配するわけないじゃない。お嬢様と付き合ってる一条楽が、あんたのこと好きになるわけないんだから」
ポーラ(まあ、心配するわけないなんて嘘だけど。せっかく上手く行ってそうなのに水を差すこともないわよね)
鶫「……そう、だな。そのとおりだ」
鶫「お前の言うとおり、私が考えすぎていたようだ」
鶫(それはそれで、少し寂しいことではあるのだが)
ポーラ「そうそう。気にしすぎ気にしすぎ」
ポーラ(自分の魅力をわかってないって、時には罪ね)
鶫「……一条楽がお嬢とのデートの下見に私を誘っているのは知っていると思うが」
ポーラ「ええ」
鶫「それが少し多いのではないかと思うんだ」
ポーラ「……喜んだら?」
鶫「ちょっと多くなったくらいならともかく、一条楽とお嬢とのデートより明らかに多いんだぞ? そのデートのための下見だというのに」
ポーラ「ふーん……」
ポーラ(どう考えても黒虎狙いよねそれ。黒虎にはそういう発想がないみたいだけど)
ポーラ(愛人とかあり得ないって言ってたからどうかと思ったけど、意外と上手くやってるみたいじゃない)
鶫「お嬢とのデートを良くするために必要だとは思うのだが、これほど多いとお嬢に余計な心配をかけてしまうのではないかと不安で……」
ポーラ「……バカね、あんたがお嬢と同じくらい魅力があるとでも思ってるの?」
鶫「いや、別にそんなことは思っていないが」
ポーラ「でしょ。あんたと一条楽が一緒にいるくらいで、お嬢様が心配するわけないじゃない。お嬢様と付き合ってる一条楽が、あんたのこと好きになるわけないんだから」
ポーラ(まあ、心配するわけないなんて嘘だけど。せっかく上手く行ってそうなのに水を差すこともないわよね)
鶫「……そう、だな。そのとおりだ」
鶫「お前の言うとおり、私が考えすぎていたようだ」
鶫(それはそれで、少し寂しいことではあるのだが)
ポーラ「そうそう。気にしすぎ気にしすぎ」
ポーラ(自分の魅力をわかってないって、時には罪ね)
112: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:41:19.21 ID:AQwOOwdqo
ポーラ「それよりもうすぐ一条楽が来る時間だし、その沈んだ顔なんとかしなさいよ」
鶫「ああ。今日はなにが食べたい?」
ポーラ「考えてなかったの?」
鶫「え?」
ポーラ「いや、一条楽じゃなくて黒虎がメニューを決めるなら、教えるの今回はあんたの番なんでしょ?」
鶫「あ、ああ。そうか。そうだったな」
鶫(教えるというのを完全に忘れていた。しかし考えてみると、最近はあまり教えあってはいない気がする。ただ料理をしあっているというか)
鶫(聞かれたことには答えるし、私から聞くこともあるのだが……最初の頃のような感じではなくなっている)
ポーラ「まあこれから決めるんなら、唐揚げとか食べたいわね」
鶫「ぶれないなお前は」
ポーラ「なにが言いたいのよ!」
鶫「いや別に」ピンポーン
鶫「おっと、一条楽が来たようだな」
ポーラ「逃げるなー!」
……
…
鶫「ああ。今日はなにが食べたい?」
ポーラ「考えてなかったの?」
鶫「え?」
ポーラ「いや、一条楽じゃなくて黒虎がメニューを決めるなら、教えるの今回はあんたの番なんでしょ?」
鶫「あ、ああ。そうか。そうだったな」
鶫(教えるというのを完全に忘れていた。しかし考えてみると、最近はあまり教えあってはいない気がする。ただ料理をしあっているというか)
鶫(聞かれたことには答えるし、私から聞くこともあるのだが……最初の頃のような感じではなくなっている)
ポーラ「まあこれから決めるんなら、唐揚げとか食べたいわね」
鶫「ぶれないなお前は」
ポーラ「なにが言いたいのよ!」
鶫「いや別に」ピンポーン
鶫「おっと、一条楽が来たようだな」
ポーラ「逃げるなー!」
……
…
113: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:42:54.46 ID:AQwOOwdqo
鶫「……貴様が来る直前に決めたのだが、やはり下味が十分ではなかったな」モグモグ
楽「そうか? 十分うまいけどなあ」モグモグ
鶫「数十分しか漬け込んでいないのだが、少し味が薄い気がしないか?」
楽「……言われればまあ確かにそんな気もするけど、言われなきゃ気付かねえよ」モグモグ
鶫「言われて気付くようではいかんのだ。お嬢に出すかもしれないと考えると、やはり下味は十分つけないといかんな」モグモグ
楽「千棘もそんな細かく気にしねえと思うけどなあ」
鶫「お嬢の優しさに甘えていてどうする。……まさか貴様はそんな風に甘えているのか?」
楽「い、いやまあそんなつもりはねえけど」
鶫「本当か?」ジー
楽「に、睨むなよ」ハハ…
ポーラ「まあ下味はちゃんとつけるってことでいいじゃない。確かにまあまあってとこだし」モグモグ
鶫「料理を作らないお前に言われると腹が立つな」
ポーラ「うるさいわねー」モグモグ
楽「……お前らって姉と妹どころか母親と子供みたいだよな」ハハ
鶫・ポーラ「なっ!?」
ポーラ「誰が子供よ!!」
鶫「誰が母親だ!」
楽「そうか? 十分うまいけどなあ」モグモグ
鶫「数十分しか漬け込んでいないのだが、少し味が薄い気がしないか?」
楽「……言われればまあ確かにそんな気もするけど、言われなきゃ気付かねえよ」モグモグ
鶫「言われて気付くようではいかんのだ。お嬢に出すかもしれないと考えると、やはり下味は十分つけないといかんな」モグモグ
楽「千棘もそんな細かく気にしねえと思うけどなあ」
鶫「お嬢の優しさに甘えていてどうする。……まさか貴様はそんな風に甘えているのか?」
楽「い、いやまあそんなつもりはねえけど」
鶫「本当か?」ジー
楽「に、睨むなよ」ハハ…
ポーラ「まあ下味はちゃんとつけるってことでいいじゃない。確かにまあまあってとこだし」モグモグ
鶫「料理を作らないお前に言われると腹が立つな」
ポーラ「うるさいわねー」モグモグ
楽「……お前らって姉と妹どころか母親と子供みたいだよな」ハハ
鶫・ポーラ「なっ!?」
ポーラ「誰が子供よ!!」
鶫「誰が母親だ!」
114: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:44:00.32 ID:AQwOOwdqo
楽「そ、そんなに怒んなよ」
ポーラ「レディを捕まえて子供だなんて……」
鶫(母親などと失礼な。……私が母親、ポーラが子供とすると、父親は一条楽だろうか)チラッ
楽「レディ……?」
ポーラ「文句でもあるのかしら」
楽「文句っつーか……なあ?」
鶫「ん? ……ああ、まあレディとはお嬢のような方をいうのだから、ポーラではレディというにはまだまだだ」
楽「千棘みたいなってのもどうなんだ?」
鶫「何だと? お嬢以上のレディがどこにいるというんだ」ギロッ
楽「あ、あはは……」
ポーラ「レディを捕まえて子供だなんて……」
鶫(母親などと失礼な。……私が母親、ポーラが子供とすると、父親は一条楽だろうか)チラッ
楽「レディ……?」
ポーラ「文句でもあるのかしら」
楽「文句っつーか……なあ?」
鶫「ん? ……ああ、まあレディとはお嬢のような方をいうのだから、ポーラではレディというにはまだまだだ」
楽「千棘みたいなってのもどうなんだ?」
鶫「何だと? お嬢以上のレディがどこにいるというんだ」ギロッ
楽「あ、あはは……」
115: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:45:29.82 ID:AQwOOwdqo
鶫(まったく、恋人だというのにお嬢の素晴らしさを理解していないとは)
鶫(……ただまあ、こいつとこんな風に話すのは、正直楽しい)
鶫(一条楽と夫婦になることができたら、こんな感じなのだろうか。まあ、考えてもしょうがないことだが)
ポーラ「2人して失礼な……」ブルル
ポーラ「ん、メール。何かしら……」
ポーラ「はぁ。ビーハイブから呼び出されたわ」
鶫「ビーハイブからか。私も行ったほうがいい内容か?」
ポーラ「ううん。別に荒事じゃないから。次の仕事の打ち合わせよ」
鶫「そうか。それなら行かないほうがいいな」
楽「何の仕事か……ってのは聞かないほうがいいんだよな」
ポーラ「ええ。その方が賢明ね。まったく、食事中だっていうのに」パクパク
ポーラ「ふぉれひゃあいっふぇふるわ」モグモグ
鶫「口に物を入れていくな!」
鶫(……ただまあ、こいつとこんな風に話すのは、正直楽しい)
鶫(一条楽と夫婦になることができたら、こんな感じなのだろうか。まあ、考えてもしょうがないことだが)
ポーラ「2人して失礼な……」ブルル
ポーラ「ん、メール。何かしら……」
ポーラ「はぁ。ビーハイブから呼び出されたわ」
鶫「ビーハイブからか。私も行ったほうがいい内容か?」
ポーラ「ううん。別に荒事じゃないから。次の仕事の打ち合わせよ」
鶫「そうか。それなら行かないほうがいいな」
楽「何の仕事か……ってのは聞かないほうがいいんだよな」
ポーラ「ええ。その方が賢明ね。まったく、食事中だっていうのに」パクパク
ポーラ「ふぉれひゃあいっふぇふるわ」モグモグ
鶫「口に物を入れていくな!」
116: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:45:55.78 ID:AQwOOwdqo
鶫「あいつは行儀の悪いことを……」
楽「まあ急な呼び出しだったししょうがねえだろ?」
鶫「それとこれとは別だ」
楽「……ほんと母親みてえだな」ハハ
鶫「まだ言うか貴様」
楽「はは。とりあえず食事の続きしようぜ」
鶫「話を逸らしおって……」
鶫(ポーラが出て行ってしまって二人きり。思えば久しぶりだな。最初の頃はむしろポーラを出て行かせていたというのに)
鶫(……いかん。意識したら緊張してきた)ドキドキ
楽「そういえば家で2人になるのって久しぶりだな。外には結構行ってるけどさ」
鶫「そ、そうだな」
楽「……あのさ。千棘とのデートの下見によく行ってるけどさ。あれどう思ってる?」
鶫「……漠然としすぎていてなにがいいたいのかわからん」
楽「誘ってるときいっつもあんまりノリ気じゃねえだろ?」
鶫「貴様はそれが分かっているのに誘っていたのか?」
楽「それは……まあともかく」
鶫「ともかくで済ませるな!」
楽「まあ急な呼び出しだったししょうがねえだろ?」
鶫「それとこれとは別だ」
楽「……ほんと母親みてえだな」ハハ
鶫「まだ言うか貴様」
楽「はは。とりあえず食事の続きしようぜ」
鶫「話を逸らしおって……」
鶫(ポーラが出て行ってしまって二人きり。思えば久しぶりだな。最初の頃はむしろポーラを出て行かせていたというのに)
鶫(……いかん。意識したら緊張してきた)ドキドキ
楽「そういえば家で2人になるのって久しぶりだな。外には結構行ってるけどさ」
鶫「そ、そうだな」
楽「……あのさ。千棘とのデートの下見によく行ってるけどさ。あれどう思ってる?」
鶫「……漠然としすぎていてなにがいいたいのかわからん」
楽「誘ってるときいっつもあんまりノリ気じゃねえだろ?」
鶫「貴様はそれが分かっているのに誘っていたのか?」
楽「それは……まあともかく」
鶫「ともかくで済ませるな!」
117: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:46:56.74 ID:AQwOOwdqo
楽「うっ……。べ、別に理由がないわけじゃねえよ。……他のやつには頼めなかったからさ」
鶫「そうなのか? 小野寺様なら断らなさそうだし、首領羽も頼めば聞いてくれそうだが。何なら橘万里花なら絶対に断らないだろう」
楽「他の2人はともかく、橘に頼んだのお前にバレたらひでえ事になりそうなんだけど」
鶫「私かクロード様か。どちらが手を下すかわからんが、生かしてはおかんだろうな」
楽「駄目じゃねえか!」
鶫「まあ橘万里花はともかく、他の2人にも断られたのか?」
楽「……2人には、っていうかお前以外の誰にも頼んでねえよ」
鶫「そ、それなら頼めなかったというのはどういう意味なんだ」ドキッ
鶫(お嬢の好みを知っていて都合がいいと思われていたからか、それとも……)
楽「……相手がどうとかじゃなくて、純粋に俺の問題なんだよ」
鶫「どういう意味かの答えになっていないぞ」
楽「……ノリ気じゃないってわかってても、鶫と行きたかったんだ」
鶫「そ、それは――」
楽「で、千棘のためとかそういうことは別にして、下見に行ってることを鶫はどう思ってんのか聞きてえんだ」
鶫「は、話の途中で遮るな!」
楽「頼めなかったの意味は言ったろ。最初に聞いたのは俺なんだし、次は鶫が答えろよ」
鶫「そうなのか? 小野寺様なら断らなさそうだし、首領羽も頼めば聞いてくれそうだが。何なら橘万里花なら絶対に断らないだろう」
楽「他の2人はともかく、橘に頼んだのお前にバレたらひでえ事になりそうなんだけど」
鶫「私かクロード様か。どちらが手を下すかわからんが、生かしてはおかんだろうな」
楽「駄目じゃねえか!」
鶫「まあ橘万里花はともかく、他の2人にも断られたのか?」
楽「……2人には、っていうかお前以外の誰にも頼んでねえよ」
鶫「そ、それなら頼めなかったというのはどういう意味なんだ」ドキッ
鶫(お嬢の好みを知っていて都合がいいと思われていたからか、それとも……)
楽「……相手がどうとかじゃなくて、純粋に俺の問題なんだよ」
鶫「どういう意味かの答えになっていないぞ」
楽「……ノリ気じゃないってわかってても、鶫と行きたかったんだ」
鶫「そ、それは――」
楽「で、千棘のためとかそういうことは別にして、下見に行ってることを鶫はどう思ってんのか聞きてえんだ」
鶫「は、話の途中で遮るな!」
楽「頼めなかったの意味は言ったろ。最初に聞いたのは俺なんだし、次は鶫が答えろよ」
118: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:47:26.95 ID:AQwOOwdqo
鶫「ど、どう思っているかとは……」
楽「ノリ気じゃねえってのはわかってるけどさ。それは千棘のことで遠慮してたのか。それともただ俺と行くのが嫌だったのか」
楽「もし、千棘のことで遠慮してたなら、鶫自身の気持ちはどうなのか。……聞かせてくれねえか?」
鶫「……そんなに真剣な顔で言われたら、誤魔化せないではないか」ボソッ
楽「え?」
鶫「なんでもない!」
鶫「……前から言っているように、お嬢のためにやることに私の気持ちなど入る余地はない」
鶫「…………」
鶫(……あとは嫌だったと言うのが一番だと分かっているのに)チラッ
楽「……」ジッ
鶫(……ダメだ。こんな顔で言われたら嘘なんてつけない。言ったらきっと、そこで一条楽との関係は終わってしまう)
鶫「………………ただ、まあ。それは別にして」
鶫「……貴様と一緒にお嬢のデートコースを回ることは、不快ではなかった……と思う」
鶫(……申し訳ありません、お嬢。私は、自分の恋を自分で終わらせてしまうことが、どうしても出来ませんでした)クッ
楽「ノリ気じゃねえってのはわかってるけどさ。それは千棘のことで遠慮してたのか。それともただ俺と行くのが嫌だったのか」
楽「もし、千棘のことで遠慮してたなら、鶫自身の気持ちはどうなのか。……聞かせてくれねえか?」
鶫「……そんなに真剣な顔で言われたら、誤魔化せないではないか」ボソッ
楽「え?」
鶫「なんでもない!」
鶫「……前から言っているように、お嬢のためにやることに私の気持ちなど入る余地はない」
鶫「…………」
鶫(……あとは嫌だったと言うのが一番だと分かっているのに)チラッ
楽「……」ジッ
鶫(……ダメだ。こんな顔で言われたら嘘なんてつけない。言ったらきっと、そこで一条楽との関係は終わってしまう)
鶫「………………ただ、まあ。それは別にして」
鶫「……貴様と一緒にお嬢のデートコースを回ることは、不快ではなかった……と思う」
鶫(……申し訳ありません、お嬢。私は、自分の恋を自分で終わらせてしまうことが、どうしても出来ませんでした)クッ
119: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:48:03.01 ID:AQwOOwdqo
楽「そっか。それならよかった」ホッ
鶫(なんだ。その安心したような顔は。貴様はお嬢の恋人ではないか。なぜ私が嫌がっていたかどうかをそんなに気にするんだ)
楽「じゃあこれからも一緒に行ってもらえるか?」
鶫「ああ。……お嬢のためにな」
楽「……おう」
鶫(……なぜお嬢の恋人がよりにもよってこいつなのだ)
鶫(お嬢の恋人が他の誰であってもきっと私は心から祝福できたのに、こんなに胸を痛めることもなかったのに)
鶫(こいつがお嬢と出会っていなければ……などと考えてもしかたがないか。一条楽とお嬢が出会っていなければ、私がこいつと会うこともなかったのだから)
鶫(もっと別の出会い方はなかったものか。お嬢と一条楽が単なる友人同士で、私がこいつに対して気兼ねなく接することが出来るような)
鶫(……まあ、今も十分お嬢に言えないような関係を持ってしまってはいるのだが。自分でやっていることとはいえ心苦しい)
鶫(……ああ、本当にどれもこれも――)
鶫「……貴様がお嬢の恋人でなければよかったのにな」ボソッ
楽「…………え?」
鶫「!?」ビクッ
鶫(なんだ。その安心したような顔は。貴様はお嬢の恋人ではないか。なぜ私が嫌がっていたかどうかをそんなに気にするんだ)
楽「じゃあこれからも一緒に行ってもらえるか?」
鶫「ああ。……お嬢のためにな」
楽「……おう」
鶫(……なぜお嬢の恋人がよりにもよってこいつなのだ)
鶫(お嬢の恋人が他の誰であってもきっと私は心から祝福できたのに、こんなに胸を痛めることもなかったのに)
鶫(こいつがお嬢と出会っていなければ……などと考えてもしかたがないか。一条楽とお嬢が出会っていなければ、私がこいつと会うこともなかったのだから)
鶫(もっと別の出会い方はなかったものか。お嬢と一条楽が単なる友人同士で、私がこいつに対して気兼ねなく接することが出来るような)
鶫(……まあ、今も十分お嬢に言えないような関係を持ってしまってはいるのだが。自分でやっていることとはいえ心苦しい)
鶫(……ああ、本当にどれもこれも――)
鶫「……貴様がお嬢の恋人でなければよかったのにな」ボソッ
楽「…………え?」
鶫「!?」ビクッ
120: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:48:29.82 ID:AQwOOwdqo
楽「今のどういう意味だよ?」
鶫「べ、別になんでもない!」
鶫(し、しまった! い、今のは声に出してしまっていたのか!?)
楽「なんでもなくて言うことじゃねえだろ」
鶫「だ、だからその……」
鶫「べ、別に深い意味など無い。貴様のようにいちいちそんなことで悩むやつにお嬢は任せられないというだけだ」
鶫(……これでごまかせるとは思わないが、空気を読んで気付かないふりをしてくれるだろうか)
鶫(まあ、こいつのことだから本当に気付かなくても驚きはしないが)
楽「そうかよ」
楽「……これから言うこと、クロードとかポーラとかには言わないでもらえるか?」
鶫「何の話だ?」
楽「言うか言わないか先に言ってくれ」
鶫「そんなもの、話を聞くまで決められるわけないだろう」
鶫(……話がズレそうだ。誤魔化せたのだろうか)ドキドキ
楽「まあそりゃそうだよな。……しかたねえか」ハァ
楽「……俺と千棘は本当は付き合ってない。付き合ってるふりをしてるんだ」
鶫「べ、別になんでもない!」
鶫(し、しまった! い、今のは声に出してしまっていたのか!?)
楽「なんでもなくて言うことじゃねえだろ」
鶫「だ、だからその……」
鶫「べ、別に深い意味など無い。貴様のようにいちいちそんなことで悩むやつにお嬢は任せられないというだけだ」
鶫(……これでごまかせるとは思わないが、空気を読んで気付かないふりをしてくれるだろうか)
鶫(まあ、こいつのことだから本当に気付かなくても驚きはしないが)
楽「そうかよ」
楽「……これから言うこと、クロードとかポーラとかには言わないでもらえるか?」
鶫「何の話だ?」
楽「言うか言わないか先に言ってくれ」
鶫「そんなもの、話を聞くまで決められるわけないだろう」
鶫(……話がズレそうだ。誤魔化せたのだろうか)ドキドキ
楽「まあそりゃそうだよな。……しかたねえか」ハァ
楽「……俺と千棘は本当は付き合ってない。付き合ってるふりをしてるんだ」
121: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:48:57.16 ID:AQwOOwdqo
鶫「……は?」
楽「集英組とビーハイブが抗争を始めないように、子供同士で付き合ってることにしてんだよ。本当は恋人でも何でもない」
鶫「ちょ、ちょっと待て! 貴様いきなりなにを言い出しているんだ!?」
楽「俺と千棘は本物の恋人じゃねえって話だよ」
鶫「そうじゃなくって、なんでそんなことをいきなり言い出したんだ!」
楽「言いたかったからだよ」
鶫「なんだそれは……」
楽「……」
鶫「今言ったこと、本当なのか?」
楽「ああ」
鶫「……そうか」
楽「疑わねえのか?」
鶫「そんな嘘をつく理由はないだろう。お嬢に聞けば分かることだし」
楽「千棘に聞かなくていいのか?」
鶫「聞く必要はない。嘘だとするなら、言ってはいけない相手の1人が私だろうからな」
楽「……まあ信じてくれたんならいいよ」
楽「集英組とビーハイブが抗争を始めないように、子供同士で付き合ってることにしてんだよ。本当は恋人でも何でもない」
鶫「ちょ、ちょっと待て! 貴様いきなりなにを言い出しているんだ!?」
楽「俺と千棘は本物の恋人じゃねえって話だよ」
鶫「そうじゃなくって、なんでそんなことをいきなり言い出したんだ!」
楽「言いたかったからだよ」
鶫「なんだそれは……」
楽「……」
鶫「今言ったこと、本当なのか?」
楽「ああ」
鶫「……そうか」
楽「疑わねえのか?」
鶫「そんな嘘をつく理由はないだろう。お嬢に聞けば分かることだし」
楽「千棘に聞かなくていいのか?」
鶫「聞く必要はない。嘘だとするなら、言ってはいけない相手の1人が私だろうからな」
楽「……まあ信じてくれたんならいいよ」
122: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:49:31.23 ID:AQwOOwdqo
鶫「……何のために言ったんだ?」
楽「何のために?」
鶫「何のために、お嬢と貴様が本当の恋人じゃないと言ったんだ」
楽「それは……別に深い意味なんてねえよ。さっき言ったろ。言いたかったから言っただけだ」
鶫(……私が言ったことの意趣返しか)
楽「……それより、その……」
楽「……さっき言った恋人じゃなければよかったのにって言葉。本当に深い意味はねえのかよ」
鶫「!」ビクッ
鶫「…………」ドキドキ
鶫「……ああ、ない」
楽「…………そっか」
鶫(察して……ないなこれは。ああもう!)
鶫「……あれ以上言わなくても、わかるだろう?」カアァァ
楽「えっ?」
鶫「だから、まあ、深いというほどの意味はないが、浅い意味ならあるかもしれんな」カアァァ
楽「何のために?」
鶫「何のために、お嬢と貴様が本当の恋人じゃないと言ったんだ」
楽「それは……別に深い意味なんてねえよ。さっき言ったろ。言いたかったから言っただけだ」
鶫(……私が言ったことの意趣返しか)
楽「……それより、その……」
楽「……さっき言った恋人じゃなければよかったのにって言葉。本当に深い意味はねえのかよ」
鶫「!」ビクッ
鶫「…………」ドキドキ
鶫「……ああ、ない」
楽「…………そっか」
鶫(察して……ないなこれは。ああもう!)
鶫「……あれ以上言わなくても、わかるだろう?」カアァァ
楽「えっ?」
鶫「だから、まあ、深いというほどの意味はないが、浅い意味ならあるかもしれんな」カアァァ
123: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:49:57.55 ID:AQwOOwdqo
楽「鶫……」
鶫「き、貴様こそ! さっきのは本当に言いたかったから言っただけなのか!?」
楽「さ、さっきのは……俺も、鶫と似たようなもんだよ」
鶫「……嘘じゃないんだな?」
楽「嘘じゃねえよ」
楽「……俺は、お前のことが好きだ。俺と本物の恋人になってくれ」
鶫「……私も、貴様のことが好きだ」
鶫「……私を選んでくれてありがとう。一条楽」グスッ
楽「な、泣くなよ。大袈裟だって」
鶫「お、大袈裟なものか。初めて恋をして、でもその相手がお嬢の恋人で」
鶫「絶対に叶うはずがないと思っていた恋なのに、それが叶ったんだぞ。う、嬉しくて……」グスッ
楽「……叶わねえって思ってたのは俺も一緒だよ」
鶫「え?」
鶫「き、貴様こそ! さっきのは本当に言いたかったから言っただけなのか!?」
楽「さ、さっきのは……俺も、鶫と似たようなもんだよ」
鶫「……嘘じゃないんだな?」
楽「嘘じゃねえよ」
楽「……俺は、お前のことが好きだ。俺と本物の恋人になってくれ」
鶫「……私も、貴様のことが好きだ」
鶫「……私を選んでくれてありがとう。一条楽」グスッ
楽「な、泣くなよ。大袈裟だって」
鶫「お、大袈裟なものか。初めて恋をして、でもその相手がお嬢の恋人で」
鶫「絶対に叶うはずがないと思っていた恋なのに、それが叶ったんだぞ。う、嬉しくて……」グスッ
楽「……叶わねえって思ってたのは俺も一緒だよ」
鶫「え?」
124: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:50:24.99 ID:AQwOOwdqo
楽「絶対嫌われてるって思ってたから、鶫が恋人じゃなければよかったのにって言ったときはすげえドキッとした」
楽「千棘とのデートの下見を口実に2人で遊びに行ったり、料理作りあったりするので満足してたけど、それ聞いたら我慢できなくて」
楽「思わず千棘と偽物の恋人してるってことバラしちまった。下手したら2人で会うことも出来なくなってたかもしれねえのにな」
鶫「……ありがとう、本当のことを言ってくれて」
楽「まあ、鶫が言ってくれたからなんだけどな。……こっちこそ、信じてくれてありがとな」
鶫「こんなことで嘘を言う男ではないだろう?」
楽「もしかしたら嘘かもしれねえぞ」ハハッ
鶫「なんだと? ……それなら、そうだな。嘘ではないということを証明してくれ」
楽「証明?」
鶫「……」スッ
楽「!」ドキッ
楽(め、目をつぶったってことは……そ、そういうことでいいんだよな?)ドキドキ
楽「い、行くぞ」ドキドキ
鶫「……」コクリ
楽「……」ソー
鶫「……」ドキドキ
楽「……」チュッ
鶫「んっ……」チュッ
楽「こ、これで証明になったか?」カアァァ
鶫「あ、ああ。もし偽物の恋人だというのが嘘だったら、命はないと思え」カアァァ
楽「ファーストキス奪っといて嘘だったなんて言わねえって」
鶫「……ああ、わかってる」ニコッ
楽(いつもより可愛く見えんな……)ドキッ
楽「千棘とのデートの下見を口実に2人で遊びに行ったり、料理作りあったりするので満足してたけど、それ聞いたら我慢できなくて」
楽「思わず千棘と偽物の恋人してるってことバラしちまった。下手したら2人で会うことも出来なくなってたかもしれねえのにな」
鶫「……ありがとう、本当のことを言ってくれて」
楽「まあ、鶫が言ってくれたからなんだけどな。……こっちこそ、信じてくれてありがとな」
鶫「こんなことで嘘を言う男ではないだろう?」
楽「もしかしたら嘘かもしれねえぞ」ハハッ
鶫「なんだと? ……それなら、そうだな。嘘ではないということを証明してくれ」
楽「証明?」
鶫「……」スッ
楽「!」ドキッ
楽(め、目をつぶったってことは……そ、そういうことでいいんだよな?)ドキドキ
楽「い、行くぞ」ドキドキ
鶫「……」コクリ
楽「……」ソー
鶫「……」ドキドキ
楽「……」チュッ
鶫「んっ……」チュッ
楽「こ、これで証明になったか?」カアァァ
鶫「あ、ああ。もし偽物の恋人だというのが嘘だったら、命はないと思え」カアァァ
楽「ファーストキス奪っといて嘘だったなんて言わねえって」
鶫「……ああ、わかってる」ニコッ
楽(いつもより可愛く見えんな……)ドキッ
125: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:50:51.86 ID:AQwOOwdqo
鶫「私たちの関係だが、しばらくお嬢には黙っておこうと思っている」
楽「千棘にもか?」
鶫「ああ。お嬢と貴様の関係がぎこちなくなってしまう可能性がある。偽物の恋人だというのがクロード様にバレて抗争が始まってしまっては困るからな」
楽「確かにそうだな」
鶫「逆に、何かあったときのフォローをお願いするために貴様の父親には話しておいたほうが良いと思うのだが、大丈夫だろうか」
楽「ああ、抗争を起こさないための協力ならしてくれるはずだ」
鶫「それはそうなのだが、そもそも私たちが付き合うということを認めてくれるかどうか……」
楽「その辺は大丈夫だと思うぜ。そんなに口出す方じゃねえし、周りにバレなきゃ何も言わねえって」
鶫「そうか……信じるぞ?」
楽「ああ。それよりそっちのボスはいいのか?」
鶫「私が直接話せる身分ではないからな……」
楽「そっか。部下だし気軽には話せねえか」
鶫「うむ。……これも貴様の父親から話してもらって、話す場を用意してもらえればと思うのだが」
楽「そうだな。偽物の恋人なんてことやらせてんだし、そのくらいはやってくれるだろ」
鶫「付き合って早々頼りっぱなしになってしまうな」ハァ
楽「別に気にすんなよ。元はといえば親父たちの頼みでこんな面倒なことになってるわけだし」
鶫「……だがその頼みがなければ私と貴様がこ、恋人になることもなかっただろう?」
楽「……まあ確かに。ある意味感謝したほうがいいのか?」
鶫「少なくとも私は感謝しているぞ。こんなことがなければ、きっと恋を知らずに過ごしていただろうからな」キュッ
楽(……ずっと迷惑だと思ってたけど、俺も感謝しとくか)
楽「千棘にもか?」
鶫「ああ。お嬢と貴様の関係がぎこちなくなってしまう可能性がある。偽物の恋人だというのがクロード様にバレて抗争が始まってしまっては困るからな」
楽「確かにそうだな」
鶫「逆に、何かあったときのフォローをお願いするために貴様の父親には話しておいたほうが良いと思うのだが、大丈夫だろうか」
楽「ああ、抗争を起こさないための協力ならしてくれるはずだ」
鶫「それはそうなのだが、そもそも私たちが付き合うということを認めてくれるかどうか……」
楽「その辺は大丈夫だと思うぜ。そんなに口出す方じゃねえし、周りにバレなきゃ何も言わねえって」
鶫「そうか……信じるぞ?」
楽「ああ。それよりそっちのボスはいいのか?」
鶫「私が直接話せる身分ではないからな……」
楽「そっか。部下だし気軽には話せねえか」
鶫「うむ。……これも貴様の父親から話してもらって、話す場を用意してもらえればと思うのだが」
楽「そうだな。偽物の恋人なんてことやらせてんだし、そのくらいはやってくれるだろ」
鶫「付き合って早々頼りっぱなしになってしまうな」ハァ
楽「別に気にすんなよ。元はといえば親父たちの頼みでこんな面倒なことになってるわけだし」
鶫「……だがその頼みがなければ私と貴様がこ、恋人になることもなかっただろう?」
楽「……まあ確かに。ある意味感謝したほうがいいのか?」
鶫「少なくとも私は感謝しているぞ。こんなことがなければ、きっと恋を知らずに過ごしていただろうからな」キュッ
楽(……ずっと迷惑だと思ってたけど、俺も感謝しとくか)
126: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:51:23.44 ID:AQwOOwdqo
鶫「それと、私たちの関係は今までと変えないからな。学校でもそれ以外でもいつもどおり振る舞うように」
楽「千棘に言わねえんならそうなるよなあ」ハァ
鶫「た、溜息をつくな。わ、私だって……」シュン
楽「わ、わりい。誰かに見られたらマズイししかたねえよな」
鶫「……お嬢とのデートも続けるのだぞ」シュン
楽「大丈夫。わかってる」
鶫「……」
楽「でも、デートの下見に行くのはいいだろ? 今までどおりだし」
鶫「……ああ!」パアァァ
楽(笑顔になってくれてよかった。……でも、これじゃあ付き合う前と変わらねえな)ハハ
鶫「……そ、それでだな。家の中でのことなのだが」
楽「家の中?」
楽「千棘に言わねえんならそうなるよなあ」ハァ
鶫「た、溜息をつくな。わ、私だって……」シュン
楽「わ、わりい。誰かに見られたらマズイししかたねえよな」
鶫「……お嬢とのデートも続けるのだぞ」シュン
楽「大丈夫。わかってる」
鶫「……」
楽「でも、デートの下見に行くのはいいだろ? 今までどおりだし」
鶫「……ああ!」パアァァ
楽(笑顔になってくれてよかった。……でも、これじゃあ付き合う前と変わらねえな)ハハ
鶫「……そ、それでだな。家の中でのことなのだが」
楽「家の中?」
127: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:51:57.07 ID:AQwOOwdqo
鶫「あ、ああ。ポーラは私が貴様のことを好きだということを知っているようだし、家の中であれば誰から見られることもない」
鶫「だから他で出来ない分、家の中ではこ、恋人らしいことをしたいのだが……」モジモジ
鶫「ど、どうだろうか。……ら、楽」カアァァ
楽(名前で呼ばれた!)ドキッ
楽「い、いいんじゃねえか。俺も、その……そうしてえし」
鶫「そうか……それじゃあ楽」
楽「お、おう」ドキドキ
鶫「……恋人らしいこととはどういうことをすればよいのだろう」
楽「……は?」
鶫「い、いやその。とりあえず名前で呼び合うというのは分かるのだが、他にどういうことをするのかさっぱりわからんのだ」アセアセ
楽「……あはははは!」
鶫「わ、笑うな!」
楽「悪い悪い。でもまあ、そんなのはこれからゆっくり考えればいいんじゃねえか」
楽「時間はこれから、十分あるんだからさ」
鶫「……そうだな」
鶫「これからはずっと一緒だぞ。楽」ニコッ
終わり
鶫「だから他で出来ない分、家の中ではこ、恋人らしいことをしたいのだが……」モジモジ
鶫「ど、どうだろうか。……ら、楽」カアァァ
楽(名前で呼ばれた!)ドキッ
楽「い、いいんじゃねえか。俺も、その……そうしてえし」
鶫「そうか……それじゃあ楽」
楽「お、おう」ドキドキ
鶫「……恋人らしいこととはどういうことをすればよいのだろう」
楽「……は?」
鶫「い、いやその。とりあえず名前で呼び合うというのは分かるのだが、他にどういうことをするのかさっぱりわからんのだ」アセアセ
楽「……あはははは!」
鶫「わ、笑うな!」
楽「悪い悪い。でもまあ、そんなのはこれからゆっくり考えればいいんじゃねえか」
楽「時間はこれから、十分あるんだからさ」
鶫「……そうだな」
鶫「これからはずっと一緒だぞ。楽」ニコッ
終わり
128: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:52:58.28 ID:AQwOOwdqo
おまけ
楽「――だから、俺は鶫と付き合いてえんだ」
鶫「ど、どうか認めてください!」
楽父「……うん、いいんじゃねえか。別に俺が反対することじゃねえよ」
鶫「ほ、本当ですか!?」
楽「な、大丈夫だって言ったろ」
楽父「お前と千棘の嬢ちゃんが恋人ってのが嘘とバレたら少し面倒だが、そっちはバラすつもりはねえんだろ?」
楽「おう」
楽父「なら構わねえよ。自分で決めたことだ。好きにしな」
鶫「あ、ありがとうございます! ……それで、差し出がましいのですが、もう一つお願いが」
楽父「なんだい? 言ってみな」
鶫「その、ボスにもこのことを報告する場を作っていただけないかと」
楽父「ボスってのは嬢ちゃんのところのかい?」
鶫「は、はい。私ではとても直接話せるような方ではなく……」
楽父「まあ話さないってわけにもいかねえよな……よし、わかった」
鶫「あ、ありがとうございます!」
楽父「ああ。ただ、ひとつだけやってもらいてえことがあるんだが、構わねえか?」
楽「何やらせる気なんだよ?」
楽父「別に大したことじゃねえよ。ウチの奴らに夕飯を作ってやってもらいてえんだ」
楽「……なんだそりゃ?」
楽父「別に普通に作ってくれりゃあいいんだ。いいかい?」
鶫「は、はい!」
楽「――だから、俺は鶫と付き合いてえんだ」
鶫「ど、どうか認めてください!」
楽父「……うん、いいんじゃねえか。別に俺が反対することじゃねえよ」
鶫「ほ、本当ですか!?」
楽「な、大丈夫だって言ったろ」
楽父「お前と千棘の嬢ちゃんが恋人ってのが嘘とバレたら少し面倒だが、そっちはバラすつもりはねえんだろ?」
楽「おう」
楽父「なら構わねえよ。自分で決めたことだ。好きにしな」
鶫「あ、ありがとうございます! ……それで、差し出がましいのですが、もう一つお願いが」
楽父「なんだい? 言ってみな」
鶫「その、ボスにもこのことを報告する場を作っていただけないかと」
楽父「ボスってのは嬢ちゃんのところのかい?」
鶫「は、はい。私ではとても直接話せるような方ではなく……」
楽父「まあ話さないってわけにもいかねえよな……よし、わかった」
鶫「あ、ありがとうございます!」
楽父「ああ。ただ、ひとつだけやってもらいてえことがあるんだが、構わねえか?」
楽「何やらせる気なんだよ?」
楽父「別に大したことじゃねえよ。ウチの奴らに夕飯を作ってやってもらいてえんだ」
楽「……なんだそりゃ?」
楽父「別に普通に作ってくれりゃあいいんだ。いいかい?」
鶫「は、はい!」
129: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:53:25.57 ID:AQwOOwdqo
若衆「坊っちゃん! 料理のお手伝いすることはありやすか!」
楽「ねえよ! 黙って待ってろ!」
竜「そうだぞてめえら、坊っちゃんの手を煩わすんじゃねえ!」
若衆「す、すいやせんでした!」ダダダッ
竜「で、坊っちゃん。本当に手伝うことはねえんですかい?」
楽「だからねえっての! お前も待ってろ!」
竜「つれねえですぜ! 坊っちゃんの愛人の方がせっかく料理を作ってくれてるんですから、見せてくれてもいいじゃねえですか!」
楽「だから、愛人じゃねえっての! いいから待ってろ!」
竜「へい、わかりやした……」トボトボ
楽「ったく、あいつらは。悪かったな鶫」
鶫「いや、気にしてない。さすが二代目は人気者だな」ジュージュー
楽「二代目じゃねえっての。それに目当てはお前だろ?」
鶫「私ではなく、お前が1人で連れてきたお嬢以外の女ということで見に来ただけだろう」
鶫「ただまあ、あ、愛人と言われるのは、少し複雑だが」
楽「違うって言ってんだけど、全然聞かねえんだよ……」
鶫「まあ、恋人とは言えないのだから仕方がない。ただの友達が家族の夕食まで作りに来ることはあまりないだろう」
楽「ねえよ! 黙って待ってろ!」
竜「そうだぞてめえら、坊っちゃんの手を煩わすんじゃねえ!」
若衆「す、すいやせんでした!」ダダダッ
竜「で、坊っちゃん。本当に手伝うことはねえんですかい?」
楽「だからねえっての! お前も待ってろ!」
竜「つれねえですぜ! 坊っちゃんの愛人の方がせっかく料理を作ってくれてるんですから、見せてくれてもいいじゃねえですか!」
楽「だから、愛人じゃねえっての! いいから待ってろ!」
竜「へい、わかりやした……」トボトボ
楽「ったく、あいつらは。悪かったな鶫」
鶫「いや、気にしてない。さすが二代目は人気者だな」ジュージュー
楽「二代目じゃねえっての。それに目当てはお前だろ?」
鶫「私ではなく、お前が1人で連れてきたお嬢以外の女ということで見に来ただけだろう」
鶫「ただまあ、あ、愛人と言われるのは、少し複雑だが」
楽「違うって言ってんだけど、全然聞かねえんだよ……」
鶫「まあ、恋人とは言えないのだから仕方がない。ただの友達が家族の夕食まで作りに来ることはあまりないだろう」
130: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:53:51.96 ID:AQwOOwdqo
楽「悪かったな。親父が無理言って」
鶫「別に無理ではない。むしろ私たちのことを認めてくれたようで嬉しかった」
鶫「しかし、量が多いと大変だな。貴様は毎日こんなに料理を作っているのか……」
楽「慣れれば気にならねえよ。少人数のとじゃ少し違いはあるけどな。あ、そうだ。味付けのときは気をつけろよ」
鶫「味付けか?」
楽「ああ。野菜を炒めると水分が出るだろ? だから調味料は単純な人数分より多めに入れないといけねえんだ」
鶫「なるほど、そういうものなのか」
鶫「……というか、それなら先に言ってくれ。危うく味の薄いものを出すところだったではないか」ジトー
楽「わ、わりい。いつもやってるから当然だと思ってたけど、普通知らねえよな」
鶫「そうだぞ。せっかく、初めて貴様の家族に料理を出すのだから、おいしいものを出したいんだ」
鶫「……変なものを出して嫌われでもしたら、困る」
楽「あ、ああ」
楽(鶫、緊張してんだな。……当たり前か)
鶫「別に無理ではない。むしろ私たちのことを認めてくれたようで嬉しかった」
鶫「しかし、量が多いと大変だな。貴様は毎日こんなに料理を作っているのか……」
楽「慣れれば気にならねえよ。少人数のとじゃ少し違いはあるけどな。あ、そうだ。味付けのときは気をつけろよ」
鶫「味付けか?」
楽「ああ。野菜を炒めると水分が出るだろ? だから調味料は単純な人数分より多めに入れないといけねえんだ」
鶫「なるほど、そういうものなのか」
鶫「……というか、それなら先に言ってくれ。危うく味の薄いものを出すところだったではないか」ジトー
楽「わ、わりい。いつもやってるから当然だと思ってたけど、普通知らねえよな」
鶫「そうだぞ。せっかく、初めて貴様の家族に料理を出すのだから、おいしいものを出したいんだ」
鶫「……変なものを出して嫌われでもしたら、困る」
楽「あ、ああ」
楽(鶫、緊張してんだな。……当たり前か)
131: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:54:21.63 ID:AQwOOwdqo
楽父「おお、仲良くやってるみたいじゃねえか」
楽「お、親父!?」
鶫「く、組長!」
楽父「今作ってんのは野菜炒めか?」
鶫「は、はい!」
楽「こんな大人数作ったことねえだろうから、大量に作りやすいのにしたんだよ」
鶫「く、組長たちのお口に合うかわかりませんが……」
楽父「なに、楽と料理教えあってるんだろ? なら大丈夫だ。それより、その呼び方どうにかなんねえか?」
鶫「呼び方……ですか?」
楽父「ああ、組長はちょっと堅苦しかあねえか?」
鶫「ではどのようにお呼びすれば……」
楽父「そうだな。……お父さんとか、お父様ってのはどうだい?」ニヤッ
鶫「おと……!」カアァァ
楽「お、親父!?」
鶫「く、組長!」
楽父「今作ってんのは野菜炒めか?」
鶫「は、はい!」
楽「こんな大人数作ったことねえだろうから、大量に作りやすいのにしたんだよ」
鶫「く、組長たちのお口に合うかわかりませんが……」
楽父「なに、楽と料理教えあってるんだろ? なら大丈夫だ。それより、その呼び方どうにかなんねえか?」
鶫「呼び方……ですか?」
楽父「ああ、組長はちょっと堅苦しかあねえか?」
鶫「ではどのようにお呼びすれば……」
楽父「そうだな。……お父さんとか、お父様ってのはどうだい?」ニヤッ
鶫「おと……!」カアァァ
132: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:54:48.75 ID:AQwOOwdqo
楽「親父! からかうのはやめろって!」
楽父「軽い冗談じゃねえか。それに将来はそう呼ぶようになるんだろ?」カカカ
楽「そ、それは……」カアァァ
楽父「お前まで黙っちまってどうすんだ」
楽「うるせー。ったく、ウチの奴らの夕飯作れとか言ったり、ちょっかい出してきたり、からかうのも大概にしとけよな」
鶫「……別にからかっているわけではないと思うぞ」
楽「え?」
鶫「貴様の友人と言っても、私は敵組織の人間だからな。受け入れられやすいように料理を振る舞うように言われたのだろう」
楽父「……察せられちゃ世話ねえな」ポリポリ
楽「……なんだよ。それならそうと言えって」
楽父「爺の気まぐれなんざ言うようなことじゃねえだろ」
楽「それじゃお父様ってのは?」
鶫「私の緊張をほぐそうとしてくれたのではないか?」
楽「ほぐれるのかそれ?」
楽父「……まあ、それもなくはねえんだが」
楽「ねえんだが?」
楽父「軽い冗談じゃねえか。それに将来はそう呼ぶようになるんだろ?」カカカ
楽「そ、それは……」カアァァ
楽父「お前まで黙っちまってどうすんだ」
楽「うるせー。ったく、ウチの奴らの夕飯作れとか言ったり、ちょっかい出してきたり、からかうのも大概にしとけよな」
鶫「……別にからかっているわけではないと思うぞ」
楽「え?」
鶫「貴様の友人と言っても、私は敵組織の人間だからな。受け入れられやすいように料理を振る舞うように言われたのだろう」
楽父「……察せられちゃ世話ねえな」ポリポリ
楽「……なんだよ。それならそうと言えって」
楽父「爺の気まぐれなんざ言うようなことじゃねえだろ」
楽「それじゃお父様ってのは?」
鶫「私の緊張をほぐそうとしてくれたのではないか?」
楽「ほぐれるのかそれ?」
楽父「……まあ、それもなくはねえんだが」
楽「ねえんだが?」
133: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:55:15.36 ID:AQwOOwdqo
楽父「……ウチには娘がいねえからなあ」
楽「自分のためじゃねえか!」
楽父「ま、まあそういう面もないわけじゃあねえな」
楽「いい年して何言ってんだよ……とりあえずまだ料理の途中なんだから、そろそろ出てけよ」
楽父「はいよ。出来上がり楽しみにしてるぜ」
鶫「はい、頑張ります……お父様」ニコッ
楽・楽父「……!」ポカーン
鶫「……」ニコニコ
楽父「……いい娘捕まえたじゃねえか」ポン
楽「ちょっとマジ黙れ」
楽父「将来は案外尻に敷かれるんじゃねえか?」カラカラ
楽「さっさと出てけ!」
楽「自分のためじゃねえか!」
楽父「ま、まあそういう面もないわけじゃあねえな」
楽「いい年して何言ってんだよ……とりあえずまだ料理の途中なんだから、そろそろ出てけよ」
楽父「はいよ。出来上がり楽しみにしてるぜ」
鶫「はい、頑張ります……お父様」ニコッ
楽・楽父「……!」ポカーン
鶫「……」ニコニコ
楽父「……いい娘捕まえたじゃねえか」ポン
楽「ちょっとマジ黙れ」
楽父「将来は案外尻に敷かれるんじゃねえか?」カラカラ
楽「さっさと出てけ!」
134: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:55:51.46 ID:AQwOOwdqo
楽「あんなことしなくてよかったんだぞ?」
鶫「まあ本気ではなかったのだろうが、せっかくああ言ってくれたのだからな」
楽「自分のためにやってんだからああ言ったも何もねえって。嫌だったら言えよ?」
鶫「別に嫌ではない。こんなことが嫌なら将来どうするんだ」
楽「将来……そ、それもそうだよな」
鶫「……でもまあ、直接話して緊張したのは事実だな。……す、少し労ってもらいたいのだが、いいか?」
楽「労うって……こ、こうか?」ナデナデ
鶫「!?」ビクンッ
鶫「そ、それも悪くはないが……こっちで」スッ
楽「っ! こ、ここでか?」
鶫「い、今なら誰も来ないだろう? だから……」
楽「……わかったよ」ソーッ
鶫「……んっ」チュ
鶫「まあ本気ではなかったのだろうが、せっかくああ言ってくれたのだからな」
楽「自分のためにやってんだからああ言ったも何もねえって。嫌だったら言えよ?」
鶫「別に嫌ではない。こんなことが嫌なら将来どうするんだ」
楽「将来……そ、それもそうだよな」
鶫「……でもまあ、直接話して緊張したのは事実だな。……す、少し労ってもらいたいのだが、いいか?」
楽「労うって……こ、こうか?」ナデナデ
鶫「!?」ビクンッ
鶫「そ、それも悪くはないが……こっちで」スッ
楽「っ! こ、ここでか?」
鶫「い、今なら誰も来ないだろう? だから……」
楽「……わかったよ」ソーッ
鶫「……んっ」チュ
135: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 21:56:26.83 ID:AQwOOwdqo
鶫「ふふっ。これで疲れが取れた。おいしい料理が作れそうだ」クスッ
楽「そ、そっか」ドキドキ
鶫「……料理をおいしく作りたいと思っているのは、貴様の家族においしく食べてもらいたいというのもそうだが」
鶫「なにより貴様に喜んでもらいたいんだ。わかっているか?」
楽「あ、ああ」ドキドキ
鶫「ならいいんだ。もう少し待っていてくれ。楽」
楽(……将来、本当に尻に敷かれるかもしれねえな。こいつに何か頼まれたら断れる気がしねえや)ハハ…
鶫「~♪」ジュージュー
楽(……まあこいつが楽しそうだしいいか)
楽「鶫、少し手伝おうか?」
鶫「ああ。じゃあ味噌汁の具材を切っておいてくれ」
楽「わかった」
鶫「……」ジュージュー
楽「……」トントン
鶫「……やっぱり、楽と料理するのは楽しいな」
楽「ああ、俺もだよ」
鶫「これからも一緒に料理しような、楽」
終わり
楽「そ、そっか」ドキドキ
鶫「……料理をおいしく作りたいと思っているのは、貴様の家族においしく食べてもらいたいというのもそうだが」
鶫「なにより貴様に喜んでもらいたいんだ。わかっているか?」
楽「あ、ああ」ドキドキ
鶫「ならいいんだ。もう少し待っていてくれ。楽」
楽(……将来、本当に尻に敷かれるかもしれねえな。こいつに何か頼まれたら断れる気がしねえや)ハハ…
鶫「~♪」ジュージュー
楽(……まあこいつが楽しそうだしいいか)
楽「鶫、少し手伝おうか?」
鶫「ああ。じゃあ味噌汁の具材を切っておいてくれ」
楽「わかった」
鶫「……」ジュージュー
楽「……」トントン
鶫「……やっぱり、楽と料理するのは楽しいな」
楽「ああ、俺もだよ」
鶫「これからも一緒に料理しような、楽」
終わり
136: ◆6ardW1rCAXVJ 2016/08/07(日) 22:00:04.55 ID:AQwOOwdqo
なんとか原作の完結前に終わりました
本当はおまけは後で投下したほうがいいんでしょうが、明日には原作が終わってしまうので
文量の割に時間かかりましたが、読んでくださった方はありがとうございました
本当はおまけは後で投下したほうがいいんでしょうが、明日には原作が終わってしまうので
文量の割に時間かかりましたが、読んでくださった方はありがとうございました
137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/07(日) 22:37:57.51 ID:pWI8c2LA0
おつ
138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/07(日) 23:06:55.69 ID:5vOCBjUCo
乙でした
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456318287/
Entry ⇒ 2016.08.09 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
楽「え、小野寺の家の和菓子屋さんなくなっちまうのか!?」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:41:17.01 ID:Tg6DMZW60
ある日の放課後にて……、
楽「え、小野寺の家の和菓子屋さんなくなっちまうのか!?」
小咲「うん、実はそうなんだ……」
楽「いや待てよ、どうしていきなりそんなことにッ!?」
小咲「はわわ、落ち着いて一条くん!」ビクンチョ
楽「え、小野寺の家の和菓子屋さんなくなっちまうのか!?」
小咲「うん、実はそうなんだ……」
楽「いや待てよ、どうしていきなりそんなことにッ!?」
小咲「はわわ、落ち着いて一条くん!」ビクンチョ
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:42:26.85 ID:Tg6DMZW60
楽「これが落ち着いていられるかよ!? どうしてそんなことになっちまったんだ………ハッ、まさかうちの者のケーキ屋が向かいに立ったせいで潰れちまったのか!?悪い小野寺、そんなつもりは本当になかったんだ!!」
春「セイッ!」
楽「ぐはぁーー!」
バキ、バタン
楽「うぅぅ……なんで」
プシューーー
小咲「一条くんしっかり!! もう春、一条くんに乱暴しちゃダメでしょ」
春「ふんッ、一条先輩がお姉ちゃんの話を最後まで聞かないで勝手に暴走するのが悪いんです!」
春「セイッ!」
楽「ぐはぁーー!」
バキ、バタン
楽「うぅぅ……なんで」
プシューーー
小咲「一条くんしっかり!! もう春、一条くんに乱暴しちゃダメでしょ」
春「ふんッ、一条先輩がお姉ちゃんの話を最後まで聞かないで勝手に暴走するのが悪いんです!」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:43:02.41 ID:Tg6DMZW60
楽「え、最後までって……?」
小咲「うん、実はね………完全になくなっちゃうってわけじゃないんだ。和菓子屋自体はなくなるけどね、その代わりに新しい事業を始めるってお母さんが張り切っててね」
楽「え、それってつまり?」
春「つまり、和菓子屋だったおのでらは廃業して、この度完全リニューアルして生まれ変わるんですよ!」
楽「えぇぇーーーッ!?なんで突然そんなことに? てかそれでいいのかよ二人は? 」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:43:53.60 ID:Tg6DMZW60
小咲「うん、お母さんが私達の言うこと聞かないで暴走しちゃってね、あはは……」
春「まあ、むかいに先輩の家の人のケーキ屋さんが出来たのも影響してるんじゃないんですか」
楽「うぅ、それを言われちまうと」グサッ
小咲「それでね一条くん、急で悪いんだけど明日お店の方を手伝ってくれないかな?」
楽「え、明日か?」
春「実は明日が新装開店初日の人になんですよ!初日だと何かと忙しくて人出が欲しいですから」
楽「まあ、明日は特に用事もないし、別にいいけど」
楽(それに、その方が明日も小野寺と
一緒に過ごせるしな………///)
春「まあ、むかいに先輩の家の人のケーキ屋さんが出来たのも影響してるんじゃないんですか」
楽「うぅ、それを言われちまうと」グサッ
小咲「それでね一条くん、急で悪いんだけど明日お店の方を手伝ってくれないかな?」
楽「え、明日か?」
春「実は明日が新装開店初日の人になんですよ!初日だと何かと忙しくて人出が欲しいですから」
楽「まあ、明日は特に用事もないし、別にいいけど」
楽(それに、その方が明日も小野寺と
一緒に過ごせるしな………///)
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:45:38.64 ID:Tg6DMZW60
というわけで、楽は小咲達の店の手伝いをすることになった
そして翌日……、
楽「にしても、一体小野寺の家は何屋さんになるんだろうな」テクテク
楽「お、そろそろ小野寺の家に着くな………って、なんだよこりゃッ!!!」ビクッ
楽「確かに和菓子屋じゃなくなってるのはわかる。でもよ………、『おのでラブホテル』って一体何だよッ!?」
おのでラブホテル外観
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101126.jpg
楽「いくらなんでも変わりすぎだろ!!和菓子屋だった頃の面影が一つもねぇじゃねーーかッ!!」
そして翌日……、
楽「にしても、一体小野寺の家は何屋さんになるんだろうな」テクテク
楽「お、そろそろ小野寺の家に着くな………って、なんだよこりゃッ!!!」ビクッ
楽「確かに和菓子屋じゃなくなってるのはわかる。でもよ………、『おのでラブホテル』って一体何だよッ!?」
おのでラブホテル外観
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101126.jpg
楽「いくらなんでも変わりすぎだろ!!和菓子屋だった頃の面影が一つもねぇじゃねーーかッ!!」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:46:26.48 ID:Tg6DMZW60
小咲「あ、一条くんおはよう。今日はその……よ、よろしくね!」
楽「あ、小野寺! これは一体何事だよッ!? 和菓子屋じゃなくなったのはわかるけどよ、よりにもよってどうしてラブホテルなんだ?」
小咲「ちょ、一条くんってば、声が大きいよ//// 私もまさかラブホテルになっちゃうだなんて知らなかったんだよ〜〜!!」モジモジ
楽「でも、どう考えてもおかしいだろ!?こんな商店街の真ん中にデカデカとラブホテル作るだなんて、お母さん考えてんだ!」
小咲「それはぁ〜……わ、私に聞かれても困るよ〜///」アタフタ
楽「あ、小野寺! これは一体何事だよッ!? 和菓子屋じゃなくなったのはわかるけどよ、よりにもよってどうしてラブホテルなんだ?」
小咲「ちょ、一条くんってば、声が大きいよ//// 私もまさかラブホテルになっちゃうだなんて知らなかったんだよ〜〜!!」モジモジ
楽「でも、どう考えてもおかしいだろ!?こんな商店街の真ん中にデカデカとラブホテル作るだなんて、お母さん考えてんだ!」
小咲「それはぁ〜……わ、私に聞かれても困るよ〜///」アタフタ
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:47:04.98 ID:Tg6DMZW60
ザワザワザワ………
近所の人A「まあ、あれって小野寺さんのところの小咲ちゃんよね?朝早くからラブホテルの前で男と揉めてるわよ」ヒソヒソ
B「確かにあの子、よく小野寺さん家の店で手伝いをしてる一条くんとかいう子よね?ひょっとして、小咲ちゃんの彼氏なのかしら」ヒソヒソ
C「それにしても、商店街の真ん中にこんな大きなラブホテルを造っちゃうだなんて、小野寺さん家は何かと大胆よね〜〜」ヒソヒソ
A「そうね。それに小咲ちゃんもこんな朝早くからから早速男を連れ込むだなんて、若いっていいわよね〜///」
B・C「ねぇ〜〜///」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:48:42.71 ID:Tg6DMZW60
小咲(うわ、近所の人達に見られてる〜〜///)
楽「は、なあ小野寺? こんなところで立ち話もなんだしよ、中に入ってもいいか?」
小咲「う、うん!そうだよね、ごめんねぼさっとしたて、ほら、こっちだよ」テクテク
そしてホテルの中……
内装
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101127.jpg
楽 「うわぁ………すげえなこれ、完全にラブホテルだな」
小咲「そ、そうだね………あはは」
楽「は、なあ小野寺? こんなところで立ち話もなんだしよ、中に入ってもいいか?」
小咲「う、うん!そうだよね、ごめんねぼさっとしたて、ほら、こっちだよ」テクテク
そしてホテルの中……
内装
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101127.jpg
楽 「うわぁ………すげえなこれ、完全にラブホテルだな」
小咲「そ、そうだね………あはは」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:49:31.23 ID:Tg6DMZW60
楽「よくこんな短期間の間でここまで変わったよな……」
小咲「工事の人が頑張ってくれたらしくて。前の店みたく和風な感じの作りもいいけど、こういう洋風な感じのおしゃれな雰囲気も素敵でしょ?あはは」
楽「あ、あぁ………確かにオシャレだよな、あはは…」
楽・小咲「………………………」
楽・小咲(き、気不味いッ!!)
小咲「工事の人が頑張ってくれたらしくて。前の店みたく和風な感じの作りもいいけど、こういう洋風な感じのおしゃれな雰囲気も素敵でしょ?あはは」
楽「あ、あぁ………確かにオシャレだよな、あはは…」
楽・小咲「………………………」
楽・小咲(き、気不味いッ!!)
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:50:35.04 ID:Tg6DMZW60
楽(おいなんだよこの状況は!?よくよく考えりゃ、ラブホテルで今俺は小野寺と二人だけってことになるじゃねえーーかよッ////)
小咲(はうぅ〜〜恥ずかしいよぉ// で、でも、ここは私の家なんだし、奥の方にはお母さんや春もいるし、それにラブホテルと言ってもここは受付フロントなんだし、うう……やっぱり恥ずかしいかも///)モジモジ
楽(でも、さすがにこのままじゃまずいよな。せっかく小野寺と二人きりなんだし、なんとかこの気不味い空気から脱するためにも、俺の方から会話をしねぇとな)
楽「あ、あのよ小野寺?」
小咲「ふぇっ、な…何かな一条くん?」ビクッ
楽「えっとよ……小野寺はその、ラブホテルとか好きか?」
小咲「………へっ?」
楽「って、しまったぁーーー!!緊張のあまり変なこと聞いちまった!!」
小咲(はうぅ〜〜恥ずかしいよぉ// で、でも、ここは私の家なんだし、奥の方にはお母さんや春もいるし、それにラブホテルと言ってもここは受付フロントなんだし、うう……やっぱり恥ずかしいかも///)モジモジ
楽(でも、さすがにこのままじゃまずいよな。せっかく小野寺と二人きりなんだし、なんとかこの気不味い空気から脱するためにも、俺の方から会話をしねぇとな)
楽「あ、あのよ小野寺?」
小咲「ふぇっ、な…何かな一条くん?」ビクッ
楽「えっとよ……小野寺はその、ラブホテルとか好きか?」
小咲「………へっ?」
楽「って、しまったぁーーー!!緊張のあまり変なこと聞いちまった!!」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:52:32.93 ID:Tg6DMZW60
楽(俺ったら、小野寺になんつうこと聞いてんだよーーーーーーッ!!)
小咲「ええええ、いいい…一条君!!?えっと、その、そそそそそれは一体どういう///////」
楽「いや、違うんだ小野寺ッ!! 今のは忘れてくれッ!!!」
小咲「一条君が……わわわわ私がラブホテルを、その、はうぅぅぅぅーーーーーーー////////」
プシューーーー//////
楽「うわぁーーー落ち着け小野寺、大丈夫かぁ!!?」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:53:10.37 ID:Tg6DMZW60
スタタタタ……
春「一条先輩ッ!!」
ゴゴゴゴゴゴ
楽「おお春ちゃん、ちょうど良いところに来てくれたな。小野寺に水を………ってあれ、は…春ちゃん!?」
春「お姉ちゃんになんてことしてくれるんですか…………この、ど変態がぁーーーーーーーーーーッ!!!!」
バキャアーーーー!!!
楽「なんでえーーーーーーー!!?」
ピューーン……キランッ!!
春「一条先輩ッ!!」
ゴゴゴゴゴゴ
楽「おお春ちゃん、ちょうど良いところに来てくれたな。小野寺に水を………ってあれ、は…春ちゃん!?」
春「お姉ちゃんになんてことしてくれるんですか…………この、ど変態がぁーーーーーーーーーーッ!!!!」
バキャアーーーー!!!
楽「なんでえーーーーーーー!!?」
ピューーン……キランッ!!
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:53:47.63 ID:Tg6DMZW60
楽「ううう……どうして俺がこんな目に。」
春「当たり前です。お姉ちゃんにラブホテル好きだとか、そんな変なこと聞くなんて本当に人として最低ですねッ!!!」
小咲「まぁまぁ、私は大丈夫だよ一条君。全然気にしてないし。春も一条君に乱暴しちゃダメでしょ!!」
春「フンッだ!!」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:54:31.54 ID:Tg6DMZW60
楽「うぅぅ……今日はなんだかとんでもねぇ日になりそうだ」
春「それじゃ私はお母さんを呼んできますから、一条先輩はそこでお姉ちゃんと待っててください。もしまた、お姉ちゃんに変なこと聞いたらタダじゃ済みませんからね!!」
ギロッ
楽「お、おう……」
小咲「ごめんね一条くん、春も初日で色々と不安に感じてるというか、ピリピリしてるかもしれないから、大目に見てあげてね」
楽「おう、別に俺は気にしてねえし、大丈夫だよ」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:55:07.65 ID:Tg6DMZW60
小咲「それにしても、今日はお客さんたくさん来てくれるかな〜?」
楽「和菓子屋だったのがいきなりラブホテルに業種転換しちまったからな、まあ全く客が来ないってことはねぇとな思うけど」
小咲「一応ね、今までうちに来てたお客さん達にもDM送ったりチラシを作ってあちこちに配ったりして宣伝はしたんだ」
楽「そうなのか?なら、それなりに利用者は来てくれるかもな」
小咲「うん。あねと、ネットを使って宣伝したんだ!」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:57:09.16 ID:Tg6DMZW60
楽「ネット?ホームページでも作ったのか?」
小咲「うん、あとね、お母さんがインスタグラムのアカウントを作ってお店の宣伝をしているの、ほら」っ
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101128.jpg
楽 「何考えてるのお母さん!」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:58:08.02 ID:Tg6DMZW60
母寺「お、来たな少年!今日はよろしく頼むよ」
楽「あ、お母さん!一体何考えてんんすか!? 和菓子屋をいきなりラブホテルにして、しかもインスタグラムでちゃっかりアカウントまで作って!!」
母寺「何言ってんだい、今時和菓子屋じゃ商売上がったりなんだよ。向かいに出来た一条くんちの関係者のケーキ屋のせいでね」
楽「うう、それを言われると……」
母寺「さて、今日はオープン初日なんだし、小咲に一条くん、気抜くんじゃいよッ!」ビシッ
楽「え、まあやるからには……」
小咲「頑張ろうね、一条くん!」
楽「あ、お母さん!一体何考えてんんすか!? 和菓子屋をいきなりラブホテルにして、しかもインスタグラムでちゃっかりアカウントまで作って!!」
母寺「何言ってんだい、今時和菓子屋じゃ商売上がったりなんだよ。向かいに出来た一条くんちの関係者のケーキ屋のせいでね」
楽「うう、それを言われると……」
母寺「さて、今日はオープン初日なんだし、小咲に一条くん、気抜くんじゃいよッ!」ビシッ
楽「え、まあやるからには……」
小咲「頑張ろうね、一条くん!」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 19:58:51.35 ID:Tg6DMZW60
母寺「そんじゃ私は裏の方で春と色々とやることがあるから、二人は来たお客さんの案内をよろしくね〜」
楽「案内って、ここで来た客相手に鍵渡したり部屋の案内したりすればいいってことなのか?」
小咲「うん、一般のホテルみたいな感じかな」
楽「なら、わざわざラブホテルにしなくてもいいんじゃ………」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:00:57.71 ID:Tg6DMZW60
その頃、裏の方で……
春「うぅぅ………、やっぱり私心配だよ」オドオド
母寺「今更何弱音吐いてんだい! これも一条くんと小咲をくっつけるためだろ。あんたがいい加減一条くんへの想いを断ち切りたいって言い出したのが事の始まりなんだよ」
春「そりゃそうだねどさ、でもいくらなんでもやり過ごだよ!」
母寺「高い費用出して店をわざわざラブホテルに改装までしたんだよ。今更後には引けないじゃないの! それに、私や春とは違って控えめな性格の小咲には、これくらいしてやらないと意味ないのさ」
春「うう………、お姉ちゃん達うまくいくかな?」
母寺「あ、そうだ! 開店時間になる前にインスタグラム更新しとこうかな」カタカタ、ポチッ
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101129.jpg
春「うぅぅ………、やっぱり私心配だよ」オドオド
母寺「今更何弱音吐いてんだい! これも一条くんと小咲をくっつけるためだろ。あんたがいい加減一条くんへの想いを断ち切りたいって言い出したのが事の始まりなんだよ」
春「そりゃそうだねどさ、でもいくらなんでもやり過ごだよ!」
母寺「高い費用出して店をわざわざラブホテルに改装までしたんだよ。今更後には引けないじゃないの! それに、私や春とは違って控えめな性格の小咲には、これくらいしてやらないと意味ないのさ」
春「うう………、お姉ちゃん達うまくいくかな?」
母寺「あ、そうだ! 開店時間になる前にインスタグラム更新しとこうかな」カタカタ、ポチッ
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101129.jpg
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:02:02.32 ID:Tg6DMZW60
そして開店時間となり……、
小咲「そもそも時間だね。お客さん来てくれるかな」
楽 「まだ昼前だし、しかも商店街の真ん中にあるラブホテルにカップルが来るかどうか………」
ウウィーーーーーン
客達「うおぉぉぉぉーーーーー、小野寺さんとこのラブホ使いたいよぉーーーーーー!!」
小咲「きゃあっ、なんかお客さんがいっぱい来た!!」ビクンチョ
楽「うわ、なんだよこコイツらッ!! てか、どうしてラブホテルなのに客はカップルじゃなくて明らかに非リア充なキモい奴ばかりなんだよ!!」
小咲「そもそも時間だね。お客さん来てくれるかな」
楽 「まだ昼前だし、しかも商店街の真ん中にあるラブホテルにカップルが来るかどうか………」
ウウィーーーーーン
客達「うおぉぉぉぉーーーーー、小野寺さんとこのラブホ使いたいよぉーーーーーー!!」
小咲「きゃあっ、なんかお客さんがいっぱい来た!!」ビクンチョ
楽「うわ、なんだよこコイツらッ!! てか、どうしてラブホテルなのに客はカップルじゃなくて明らかに非リア充なキモい奴ばかりなんだよ!!」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:03:13.67 ID:Tg6DMZW60
客A「おい、早く部屋へ案内しろーーー!!」
客B「おい、俺もだぁーーー!」
小咲「はわわわ、皆さん落ち着いてください!!順番に並んで、お一人づつ空いてるお部屋へご案内しますからぁーーー!!」
楽「くそ、こりゃ思った以上に大変だな」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:03:53.96 ID:Tg6DMZW60
再び裏の方で……
母寺「ふふ、どうやら上手くいったみたいだね。客がたくさんやってきたわよ〜〜!」
春「うわ、でも来た人達みんな彼女がいなさそうなのばっかりじゃん! 一人ならラブホテルじゃなくてネットカフェにでも行けばいいのに」
母寺「それが狙いなのさ。こういう奴らは財布に糸目をつけないならガッポリと儲けるチャンスってわけだよ。それに、あんたにはこれから重要な役目があるんだから、しっかりしなよ!」
春「う、うん………」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:04:41.21 ID:Tg6DMZW60
再び楽と小咲サイドにて………
楽「お、お待たせしましたお客様、お客様は072号室となります。階段かエレベーターにて上のフロアへ向かっていただき、突き当りをいったところにございます」っ
客「うほほーーー、楽しみだなぁ♪」
楽「ふう〜〜〜たく、何が楽しみなんだよあの客、相手もいねぇのに一人でラブホテル使うだなんて悲しいだけだろ、ネットカフェにでも行けってんだ」
小咲「あはは………、お客さんの数も落ち着いてきたし、私達もそろそろ休憩しようか?」
楽「おう、そうだな」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:05:25.81 ID:Tg6DMZW60
母寺「いやぁ〜お疲れさん一条くん、おかげで大繁盛だよ」
小咲「あれ、お母さん、もう交代の時間なの?」
母寺「何言ってんだい、ここからがメインイベントだよ!」
パンパンッ!!
客達「うおぉぉぉぉーーーー! 」
ゾロゾロ
小咲「わわ、部屋に案内したはずのお客さん達が集まってきたッ!!」
楽「一体何が始まっちまうんだ!?」
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:07:02.23 ID:Tg6DMZW60
母寺「今日はご来店頂きありがとうございます! おのでラブホテル新装開店初日を記念して、本日はご利用のお客様全員にスペシャルサービスをいたします!!」
客達「いえーーーい!!」
楽「スペシャルサービス?そんなのがあるのか?」
小咲「えっ、私何も聞かされてないけど……」
母寺「なんと、本日ご利用のお客様のお部屋全てに、バスタオル姿の従業員が一部屋ずつまわってお客様のお身体を洗っちゃいますーー!」
客達「うおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーッ!!!!」
客達「いえーーーい!!」
楽「スペシャルサービス?そんなのがあるのか?」
小咲「えっ、私何も聞かされてないけど……」
母寺「なんと、本日ご利用のお客様のお部屋全てに、バスタオル姿の従業員が一部屋ずつまわってお客様のお身体を洗っちゃいますーー!」
客達「うおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーッ!!!!」
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:08:11.89 ID:Tg6DMZW60
小咲「え、えぇぇぇーーーーーーーーーッ//// 何考えてんのお母さんッ!!?」
楽「ちょ、お母さんアンタ一体何考えてんだよッ!?ハッ、まさか明らかに相手がいない奴らがこんなに集まったのも、そのサービスが目当てなのかッ!!」
母寺「3時間ご利用で一回、5時間ご利用で三回、7時間ご利用で5回、そしてなんと10時間ご利用のお客様にはバスタオル姿の従業員とのツーショット撮影と使用済みバスタオルの特典も付けちゃうわよーー!!」
楽「な、なんだってーーー!てか、一体誰がそんな事を………ハッ、まさか小野寺が!?」
小咲「ええッ、そんな……私こんな気持ち悪い人達の相手するの嫌だよぉ〜〜! お母さんーーーーッ////」
楽「ちょ、お母さんアンタ一体何考えてんだよッ!?ハッ、まさか明らかに相手がいない奴らがこんなに集まったのも、そのサービスが目当てなのかッ!!」
母寺「3時間ご利用で一回、5時間ご利用で三回、7時間ご利用で5回、そしてなんと10時間ご利用のお客様にはバスタオル姿の従業員とのツーショット撮影と使用済みバスタオルの特典も付けちゃうわよーー!!」
楽「な、なんだってーーー!てか、一体誰がそんな事を………ハッ、まさか小野寺が!?」
小咲「ええッ、そんな……私こんな気持ち悪い人達の相手するの嫌だよぉ〜〜! お母さんーーーーッ////」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:12:37.03 ID:Tg6DMZW60
母寺「おいおい、誰も小咲がやるだなんて言ってないだろ。出番だよ、春!」
春「うぅぅ………、どうして私が///」
楽「って、何で春ちゃんがッ!?」
小咲「春!? しかもバスタオル姿になってる///」
春「ちょ、一条先輩!私のバスタオル姿をいやらしい目で見ないでくださいッ////」
カァーーーッ//
楽「わ、悪りぃ……! でもよ、春ちゃんそんな格好で恥ずかしくねぇのかよ!?」
春「なァ、私だって恥ずかしいですけど、好きでこんな事してるんじゃないんですからねッ!!」
春「うぅぅ………、どうして私が///」
楽「って、何で春ちゃんがッ!?」
小咲「春!? しかもバスタオル姿になってる///」
春「ちょ、一条先輩!私のバスタオル姿をいやらしい目で見ないでくださいッ////」
カァーーーッ//
楽「わ、悪りぃ……! でもよ、春ちゃんそんな格好で恥ずかしくねぇのかよ!?」
春「なァ、私だって恥ずかしいですけど、好きでこんな事してるんじゃないんですからねッ!!」
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:13:41.89 ID:Tg6DMZW60
客A「ぐぉぉーーー!なんだこの子、
超可愛いぞッ!!」
客B「これが噂に聞く春ちゃんの妹か、グヘヘヘ」
春「うぅぅ……気持ち悪いよ〜〜」ブルブル
母寺「はいはい〜〜、今からこの子が部屋を回りますんで、皆さんは自分の部屋へ戻って待機しててください」
客達「はぁ〜〜〜い!」
小咲「春大丈夫かなぁ………」
楽「今更だけどよ、こんな事バレたら大問題だよな」
超可愛いぞッ!!」
客B「これが噂に聞く春ちゃんの妹か、グヘヘヘ」
春「うぅぅ……気持ち悪いよ〜〜」ブルブル
母寺「はいはい〜〜、今からこの子が部屋を回りますんで、皆さんは自分の部屋へ戻って待機しててください」
客達「はぁ〜〜〜い!」
小咲「春大丈夫かなぁ………」
楽「今更だけどよ、こんな事バレたら大問題だよな」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:14:43.91 ID:Tg6DMZW60
母寺「さて、キモい客達は春に任せて、アンタら二人はこっちへ来てくれ」
楽「え、別のことですか?」
母寺「ああ、アンタ達にしか出来ない重要な仕事があるのさ!」ニヤリッ
小咲「え、私達しか出来ないって………」
テクテク
楽「え、別のことですか?」
母寺「ああ、アンタ達にしか出来ない重要な仕事があるのさ!」ニヤリッ
小咲「え、私達しか出来ないって………」
テクテク
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:15:31.06 ID:Tg6DMZW60
母寺「ほら、ここだよ!」
ガチャ
小咲「うわ、何この部屋!すっごくオシャレでキレイ〜〜!」
楽「すげぇ広いな〜〜!」
母寺「そうだろ、何てったってこの部屋は今春やあのキモい客達がいる普通料金の部屋よりも料金の高いいわばVIPルームの部屋なのさ! 部屋の広さや置いてあるベットや棚に、それから風呂まで何もかも高級なのさ!」
小咲「へぇ〜〜それは凄いね。ここを使うカップルの人達ってきっとお金持ちなんだろうね」
母寺「何言ってんだい、今からお前と一条くんの愛の巣になるんだよ!」ニヤニヤ
ガチャ
小咲「うわ、何この部屋!すっごくオシャレでキレイ〜〜!」
楽「すげぇ広いな〜〜!」
母寺「そうだろ、何てったってこの部屋は今春やあのキモい客達がいる普通料金の部屋よりも料金の高いいわばVIPルームの部屋なのさ! 部屋の広さや置いてあるベットや棚に、それから風呂まで何もかも高級なのさ!」
小咲「へぇ〜〜それは凄いね。ここを使うカップルの人達ってきっとお金持ちなんだろうね」
母寺「何言ってんだい、今からお前と一条くんの愛の巣になるんだよ!」ニヤニヤ
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:16:17.13 ID:Tg6DMZW60
小咲「えッ!?」
楽「お母さん、今なんて……?」
母寺「ふふふ………小咲、今からこの部屋で一条くんとセックスしなさい!!」
小咲「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーッ////」
楽「お、お母さん!! 一体何言い出すんすかッ////」
母寺「そんな驚く事じゃないだろ?ラブホテルってのは男と女がセックスするための場所なんだし、ごくごく普通じゃないかい」
小咲「い、一条くんと……セセ、セックス//////」
楽「ちょ、ちょっと待ってください! どうしていきなりそんな事になるんですかッ!?」
楽「お母さん、今なんて……?」
母寺「ふふふ………小咲、今からこの部屋で一条くんとセックスしなさい!!」
小咲「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーッ////」
楽「お、お母さん!! 一体何言い出すんすかッ////」
母寺「そんな驚く事じゃないだろ?ラブホテルってのは男と女がセックスするための場所なんだし、ごくごく普通じゃないかい」
小咲「い、一条くんと……セセ、セックス//////」
楽「ちょ、ちょっと待ってください! どうしていきなりそんな事になるんですかッ!?」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:17:12.98 ID:Tg6DMZW60
母寺「いや〜実なね、この高級ルームはまだオープンさせてないんだよ。下のフロアの普通の部屋で客がいっぱいになるようならこの部屋も提供を始めようと思ってね、そんで、お客さんに使わせる前に従業員自ら部屋の使い心地を確かめるってわけだい!」
楽「そんな無茶苦茶な!」
母寺「そんじゃ私は下の階に戻るから。小咲、上手くヤるのよぉ〜〜!」ニヤニヤ
楽「ちょ、お母さんーーー!!って、行っちまったよ」
楽「そんな無茶苦茶な!」
母寺「そんじゃ私は下の階に戻るから。小咲、上手くヤるのよぉ〜〜!」ニヤニヤ
楽「ちょ、お母さんーーー!!って、行っちまったよ」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:18:13.58 ID:Tg6DMZW60
小咲「………………////」モジモジ
楽(小野寺の奴も恥ずかしがってモジモジしちまったよ。このまま二人だけでこんなところにいるのも気不味いだけだし………ったく、小野寺のお母さんも一体何考えてんだよ!)
咲「い、一条君…………そ、そのね///」
楽「ああ、悪い小野寺。いきなりあんなこと言われてびっくりだよな。てか、普通に考えて俺とセックスだなんて嫌だよな。」
小咲「……………………私、嫌じゃないよ。」
楽「…………えっ」
楽(小野寺の奴も恥ずかしがってモジモジしちまったよ。このまま二人だけでこんなところにいるのも気不味いだけだし………ったく、小野寺のお母さんも一体何考えてんだよ!)
咲「い、一条君…………そ、そのね///」
楽「ああ、悪い小野寺。いきなりあんなこと言われてびっくりだよな。てか、普通に考えて俺とセックスだなんて嫌だよな。」
小咲「……………………私、嫌じゃないよ。」
楽「…………えっ」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:19:29.01 ID:Tg6DMZW60
小咲「だからね、私…………一条君となら、嫌じゃないよ///」
楽「……………………小野寺///」
小咲「一条君さえよければ、私はその………いいよ///」
楽「小野寺、その…………無理しなくてもいいんだぞ。製品チェックでそんな、自分の大切なもんを俺にあげるだなんて。」
小咲「私、無理なんかしてないよ。それに、一条君だからいいんだよ!!」
楽「……え」
小咲「一条君だからこそ、私はしたいんだよ////」
楽「……………………小野寺///」
小咲「一条君さえよければ、私はその………いいよ///」
楽「小野寺、その…………無理しなくてもいいんだぞ。製品チェックでそんな、自分の大切なもんを俺にあげるだなんて。」
小咲「私、無理なんかしてないよ。それに、一条君だからいいんだよ!!」
楽「……え」
小咲「一条君だからこそ、私はしたいんだよ////」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:21:15.37 ID:Tg6DMZW60
楽「小野寺…………それって///」
小咲「私ね、一条君のことが…………中学生の頃からずっと好きだっんだよ////」
楽「小野寺…………////」
小咲「今までなかなかこの気持ちを伝えることが出来なかったけど、私は一条君のことが好きなんだよ。だから…………だからこそ、一条君となら…………してもいいんだよ。いや、私むしろね……一条君と……一つになりたいんだよ!!」
楽「……………………小野寺ッ!!」
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:22:56.03 ID:Tg6DMZW60
バサ……ダキッ!!!
小咲「はわわわ……い、一条君///」
楽「俺も……ずっと小野寺のことが好きだった。」
小咲「い……一条君//」ウルウル
楽「ごめんな小野寺。小野寺の気持ちになかなか気付けなくて、いや、俺がもっと早く小野寺に好きだって伝えてればこんなことには。」
小咲「ううん、謝ることなんてないよ。一条君にやっと好きって言えたし、それに一条君の気持ちもわかったから、私…………今とっても幸せだよ///」
楽「小野寺…………///」
小咲「一条君…………///」
小咲「はわわわ……い、一条君///」
楽「俺も……ずっと小野寺のことが好きだった。」
小咲「い……一条君//」ウルウル
楽「ごめんな小野寺。小野寺の気持ちになかなか気付けなくて、いや、俺がもっと早く小野寺に好きだって伝えてればこんなことには。」
小咲「ううん、謝ることなんてないよ。一条君にやっと好きって言えたし、それに一条君の気持ちもわかったから、私…………今とっても幸せだよ///」
楽「小野寺…………///」
小咲「一条君…………///」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:24:32.53 ID:Tg6DMZW60
楽「なあ……本当にいいのか。その……しても」
小咲「うん。一条君だからこそしたいの……。優しくしてね///」
楽「あ、あぁ……もちろん/// でも俺初めてだから、上手く出来るか自身ねえけど。でも、頑張るよ!!」
小咲「うん///」
楽「小野寺………………」
小咲「一条君………………」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:42:25.68 ID:Tg6DMZW60
その頃、下のフロアの母寺と春は……
春「うえぇぇぇーーーーん、私もういやだよーーーー!!」ヒック
母寺「何弱音吐いてんだい。これも小咲と一条君を結ばせるためでしょって。」
春「そりゃそうだけどさ、でも私、気持ち悪いおじさんの身体触りまくったんだよ!!! もうこんなのイヤーーーー!! いくら奥手なお姉ちゃんのためでもあんまりだよぉ〜〜!!」 シクシク
母寺「まあまあ、そのおかげで店も予想以上に繁盛したんだし、良かっじゃないの!」
春「うぅぅ………これで一条先輩とお姉ちゃんに何も進展がなかったら私グレるからね!!」
春「うえぇぇぇーーーーん、私もういやだよーーーー!!」ヒック
母寺「何弱音吐いてんだい。これも小咲と一条君を結ばせるためでしょって。」
春「そりゃそうだけどさ、でも私、気持ち悪いおじさんの身体触りまくったんだよ!!! もうこんなのイヤーーーー!! いくら奥手なお姉ちゃんのためでもあんまりだよぉ〜〜!!」 シクシク
母寺「まあまあ、そのおかげで店も予想以上に繁盛したんだし、良かっじゃないの!」
春「うぅぅ………これで一条先輩とお姉ちゃんに何も進展がなかったら私グレるからね!!」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:44:29.21 ID:Tg6DMZW60
母寺「あれだけエロチックな部屋を用意してやったんだ。普段大人しい性格の小咲だって、アダルトな雰囲気に圧されて積極的になるはずだよ」
春「うぅぅ、やっぱり私納行かない………」ボソッ
母寺「さてと、今のうちにインスタグラム更新しとこうかな」
ポチポチ
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101133.jpg
母寺「さてと、そろそろ休憩は終わりにして、ガッポリ儲けるわよーー!」
春「………………………」
春「うぅぅ、やっぱり私納行かない………」ボソッ
母寺「さてと、今のうちにインスタグラム更新しとこうかな」
ポチポチ
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira101133.jpg
母寺「さてと、そろそろ休憩は終わりにして、ガッポリ儲けるわよーー!」
春「………………………」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:46:19.42 ID:Tg6DMZW60
そして楽と小咲は………、
小咲「ハァハァ…………い、一条君。す…凄かったよ////」
楽「ハァハァ………小野寺、その…大丈夫だったか?俺、初めてでその…ちょっと乱暴しちゃったかもしんねぇし///」
小咲「ううん……大丈夫だよ。それに、一条君と一つになれて、私嬉しいよ///」
楽「ああ……俺もだ。俺も、凄く嬉しいよ////」
小咲「ハァハァ…………い、一条君。す…凄かったよ////」
楽「ハァハァ………小野寺、その…大丈夫だったか?俺、初めてでその…ちょっと乱暴しちゃったかもしんねぇし///」
小咲「ううん……大丈夫だよ。それに、一条君と一つになれて、私嬉しいよ///」
楽「ああ……俺もだ。俺も、凄く嬉しいよ////」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:47:14.99 ID:Tg6DMZW60
母寺「あらら〜〜〜、どうやら上手く行ったようね。小咲ちゃ〜ん。」
小咲「お、お母さんッ///」
楽「うわぁ、い…いつの間に!?」
母寺「んでどうだった?枕元の棚にあるコンドームの方は?」
楽「え?」
母寺「まさか………興奮のあまり付けるの忘れてしたんじゃないんでしょうね?」
楽「いやいやいや、ちゃんと付けましたよ! この棚に置いてあったコンドームですよね、ちゃんと挿れる前に装着しましたから!!」
小咲「そうだよーーー、一条君はちゃんと付けて愛してくれたよ////」
小咲「お、お母さんッ///」
楽「うわぁ、い…いつの間に!?」
母寺「んでどうだった?枕元の棚にあるコンドームの方は?」
楽「え?」
母寺「まさか………興奮のあまり付けるの忘れてしたんじゃないんでしょうね?」
楽「いやいやいや、ちゃんと付けましたよ! この棚に置いてあったコンドームですよね、ちゃんと挿れる前に装着しましたから!!」
小咲「そうだよーーー、一条君はちゃんと付けて愛してくれたよ////」
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:47:55.59 ID:Tg6DMZW60
母寺「ふふ、さっすがは一条くん!ちゃんと着けるべきものを着けて小咲を愛してくれたとは、やっぱり私の目に狂いはなかったね」ドヤッ
楽「いやぁ……ども//」
母寺「ま、私としてはそのまま着けずに生でしてくれちゃっても良かったというか、そっちの方がむしろ好都合だったんだけどね」
楽「…………はい?」キョトン
小咲「お母さん、一体何を?」
母寺「ったく、アンタ達、コンドーム着けるのは良いけど、自分達で用意したんじゃないゴムを何の疑いもなく使うだなんてまだまだだねぇ〜〜」
楽「え、それってどういう………」
楽「いやぁ……ども//」
母寺「ま、私としてはそのまま着けずに生でしてくれちゃっても良かったというか、そっちの方がむしろ好都合だったんだけどね」
楽「…………はい?」キョトン
小咲「お母さん、一体何を?」
母寺「ったく、アンタ達、コンドーム着けるのは良いけど、自分達で用意したんじゃないゴムを何の疑いもなく使うだなんてまだまだだねぇ〜〜」
楽「え、それってどういう………」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:48:35.32 ID:Tg6DMZW60
母寺「ふふふ………、アンタ達が使ったコンドームはもちろん私が用意したんだけれど、そのコンドームの先端に穴を空けておいたのさ!!」
楽「え、えぇぇぇーーー!!?」
小咲「お、お母さんッ!?どうしてそんな事をーーーッ!!」
母寺「ふふふ、私もこの若さで孫の顔を見る事になるとは、いやぁ〜〜嬉しい限りだよ」ニヤリッ
小咲「そ、そんなぁ〜〜〜!!」
楽「落ち着け小野寺、中に出しちまっても必ず妊娠するとは限らねえし、それにアフターピルだってある。何なら
、今から近くの病院を行って診てもらおうぜ」
小咲「う、うん!」
楽「え、えぇぇぇーーー!!?」
小咲「お、お母さんッ!?どうしてそんな事をーーーッ!!」
母寺「ふふふ、私もこの若さで孫の顔を見る事になるとは、いやぁ〜〜嬉しい限りだよ」ニヤリッ
小咲「そ、そんなぁ〜〜〜!!」
楽「落ち着け小野寺、中に出しちまっても必ず妊娠するとは限らねえし、それにアフターピルだってある。何なら
、今から近くの病院を行って診てもらおうぜ」
小咲「う、うん!」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:49:56.65 ID:Tg6DMZW60
母寺「ふふ、無駄だよ!一条くん、そういえば冷蔵庫の中にあるドリンクが空になってるけど」
楽「あ、そういえば冷蔵庫の中に入ってるドリンクを風呂から出た時に飲んだけど……」
母寺「あれは私が特別に開発した特精力増強剤でね、それを飲んだ人が射精すると尋常じゃない程の活発力を手にした精子が100パーセント奥まで届いて何があっても妊娠するようになってるのさ!だからアフターピルしたって無駄なのさ!!」
楽「な、なんだってぇぇぇーーーー!!」
小咲「まさか……、わざわざうちをラブホテルにして一条くんと私を結ばせたのも、このためにッ!?」
母寺「その通りさ、これで一条くんはうちの跡取り確定さ! 良かったじゃないか小咲、ずっと好きだった一条くんと晴れて結ばれて」
楽「あ、そういえば冷蔵庫の中に入ってるドリンクを風呂から出た時に飲んだけど……」
母寺「あれは私が特別に開発した特精力増強剤でね、それを飲んだ人が射精すると尋常じゃない程の活発力を手にした精子が100パーセント奥まで届いて何があっても妊娠するようになってるのさ!だからアフターピルしたって無駄なのさ!!」
楽「な、なんだってぇぇぇーーーー!!」
小咲「まさか……、わざわざうちをラブホテルにして一条くんと私を結ばせたのも、このためにッ!?」
母寺「その通りさ、これで一条くんはうちの跡取り確定さ! 良かったじゃないか小咲、ずっと好きだった一条くんと晴れて結ばれて」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:50:35.74 ID:Tg6DMZW60
小咲「そんなぁーーー、こんなやり方あんまりだよ!!」
ピーポーピーポー
母寺「何、サイレン音だって!?まさか誰か通報しやがったのかい!?」
ガタガタガタ
警察「貴様、おのでラブホテルの経営者だな?署までご同行願おうか!」
母寺「警察だと!?クソ、客達には通報するなって口止めしておいたのに、一体誰が呼びやがった!?」
ピーポーピーポー
母寺「何、サイレン音だって!?まさか誰か通報しやがったのかい!?」
ガタガタガタ
警察「貴様、おのでラブホテルの経営者だな?署までご同行願おうか!」
母寺「警察だと!?クソ、客達には通報するなって口止めしておいたのに、一体誰が呼びやがった!?」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:51:25.52 ID:Tg6DMZW60
スタスタ
春「私だよ、お母さん………」
楽「春ちゃん!?」
小咲「春、目が死んでる………!」
母寺「春、アンタ裏切ったねぇーーーーッ!!」ジタバタ
警察「こら、暴れるんじゃない!! コイツを取り押さえろーー!」
小咲「お母さん、それに春………これは一体!?」
警察「大丈夫だ、君たちは我々が保護しよう」
楽「一体どうなってんだよ……春ちゃんは?それからお母さん達は!?」
警察「心配しないで、あの女は我々に任せてくれ。さ、君もひとまずこちらへ」
楽「え、ええ………」
春「私だよ、お母さん………」
楽「春ちゃん!?」
小咲「春、目が死んでる………!」
母寺「春、アンタ裏切ったねぇーーーーッ!!」ジタバタ
警察「こら、暴れるんじゃない!! コイツを取り押さえろーー!」
小咲「お母さん、それに春………これは一体!?」
警察「大丈夫だ、君たちは我々が保護しよう」
楽「一体どうなってんだよ……春ちゃんは?それからお母さん達は!?」
警察「心配しないで、あの女は我々に任せてくれ。さ、君もひとまずこちらへ」
楽「え、ええ………」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:52:15.64 ID:Tg6DMZW60
こうして、小野寺のお母さんは逮捕された。
これは後日、俺と小野寺を保護してくれた警察の人に教えてもらった話なのだが、小野寺のお母さんはなかなか積極的になれない小野寺と俺を半ば強引に結ばせるために、和菓子屋だった店をわざわざラブホテルに改装し、今回の計画を実行したらしい。
俺と小野寺を結ばせ既成事実を作り、俺を跡取りとして強引に迎え入れることも計画に入っていたらしく、春ちゃんを使って男性客に性的なサービスをさせたのはついでに店の利益を上げるためにリピーターを獲得するためでもあったが、俺と小野寺がセックスをしているのを他の客達に知られないようにする目的もあったようだ。
その警官は、さらに春ちゃんの容体についても教えてくれた。春ちゃんは今、凡矢理市内のとある病院に入院している。容体はかなり悪く、食事も喉を通らないらしい。もともと男性が苦手な春ちゃんだったが、今回のことで精神的にも大きなダメージを負ってしまい、男性の姿を見ただけで過呼吸を起こしてしまうまでになってしまったという。いつ退院出来るかわからないようだ。
これは後日、俺と小野寺を保護してくれた警察の人に教えてもらった話なのだが、小野寺のお母さんはなかなか積極的になれない小野寺と俺を半ば強引に結ばせるために、和菓子屋だった店をわざわざラブホテルに改装し、今回の計画を実行したらしい。
俺と小野寺を結ばせ既成事実を作り、俺を跡取りとして強引に迎え入れることも計画に入っていたらしく、春ちゃんを使って男性客に性的なサービスをさせたのはついでに店の利益を上げるためにリピーターを獲得するためでもあったが、俺と小野寺がセックスをしているのを他の客達に知られないようにする目的もあったようだ。
その警官は、さらに春ちゃんの容体についても教えてくれた。春ちゃんは今、凡矢理市内のとある病院に入院している。容体はかなり悪く、食事も喉を通らないらしい。もともと男性が苦手な春ちゃんだったが、今回のことで精神的にも大きなダメージを負ってしまい、男性の姿を見ただけで過呼吸を起こしてしまうまでになってしまったという。いつ退院出来るかわからないようだ。
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:53:00.24 ID:Tg6DMZW60
それ以外にも、この事件以降で、俺達の周囲はガラリと変わってしまった。
まず俺とニセの恋人を演じていた千棘だが、彼女はもうこの世にはいない。今回の事件で俺と小野寺の関係が周囲にバレ、俺と千棘の関係も演技であると組織に知られてしまったのだ。そのことに業を煮やしたビーハイブが集英組に乗り込んで来て、両組織による大規模な紛争が起きてしまった。これに警察組織も加わり、3大勢力による激しい争いは凡矢理市内全域を巻き込んでしまった。
これにより両組織から死傷者が大勢出てしまい、これに巻き込まれる形で千棘は命を落とした。ちなみに、俺の親父と千棘の親父さんも帰らぬ人となり、ボスを失った両組織は壊滅状態へと陥ったのだ。ボスだけでなくうちの組からは竜、ビーハイブからはクロード、鶫、ポーラといった幹部クラスの構成員達が命を落としたのだ。
紛争の鎮圧に当たった警察側の被害も著しく、警視総監として特別に現場の指揮を執っていた橘の親父さんも流れ弾の餌食となり、すぐさま近くの病院へと搬送されたのだが、そのまま息を引き取ってしまった。これにショックを受けた橘も、親父さんがいた病室の窓から身を投げて後を追ってしまった。
まず俺とニセの恋人を演じていた千棘だが、彼女はもうこの世にはいない。今回の事件で俺と小野寺の関係が周囲にバレ、俺と千棘の関係も演技であると組織に知られてしまったのだ。そのことに業を煮やしたビーハイブが集英組に乗り込んで来て、両組織による大規模な紛争が起きてしまった。これに警察組織も加わり、3大勢力による激しい争いは凡矢理市内全域を巻き込んでしまった。
これにより両組織から死傷者が大勢出てしまい、これに巻き込まれる形で千棘は命を落とした。ちなみに、俺の親父と千棘の親父さんも帰らぬ人となり、ボスを失った両組織は壊滅状態へと陥ったのだ。ボスだけでなくうちの組からは竜、ビーハイブからはクロード、鶫、ポーラといった幹部クラスの構成員達が命を落としたのだ。
紛争の鎮圧に当たった警察側の被害も著しく、警視総監として特別に現場の指揮を執っていた橘の親父さんも流れ弾の餌食となり、すぐさま近くの病院へと搬送されたのだが、そのまま息を引き取ってしまった。これにショックを受けた橘も、親父さんがいた病室の窓から身を投げて後を追ってしまった。
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:53:52.75 ID:Tg6DMZW60
こんな事態になり、俺と小野寺は学校を辞めた。
紛争は市内全域を巻き込んだため、学校の友達達もタダでは済まなかったのだ。
春ちゃんの友達の風ちゃんだが、春ちゃんが心身を壊してしまったことにショックを受け、学校の屋上で半狂気に陥った状態で素っ裸となりリンボーダンスを踊っていた時に足を滑らせ、そのまま死亡した。警察はこの件に関しては事件性がないため事故と発表した。
集だが、学校へビーハイブの面々が襲撃に訪れた際、銃弾が頭に直撃し即死してしまったようだ。
宮本は逃げる際に運悪くビーハイブの連中に見つかり、その場でレイプされてしまったようだ。そのショックから突然学校を休学し大道芸人になるんだと言い出し、単身プエルトリコへと渡った。だがプレルトリコは治安が悪く、ある日地元の紛争に巻き込まれ命を落としたと先日連絡が来た。
羽姉ちゃんだが、生徒を守るためビーハイブの面々を相手に臆することなく立ち向かったが、その最中命を落とした。後日、羽姉さんの荷物を整理していた際に、俺の全裸の写真とバイブが見つかった。どうやら羽姉さんは俺でオナニーしてたようだ。
紛争は市内全域を巻き込んだため、学校の友達達もタダでは済まなかったのだ。
春ちゃんの友達の風ちゃんだが、春ちゃんが心身を壊してしまったことにショックを受け、学校の屋上で半狂気に陥った状態で素っ裸となりリンボーダンスを踊っていた時に足を滑らせ、そのまま死亡した。警察はこの件に関しては事件性がないため事故と発表した。
集だが、学校へビーハイブの面々が襲撃に訪れた際、銃弾が頭に直撃し即死してしまったようだ。
宮本は逃げる際に運悪くビーハイブの連中に見つかり、その場でレイプされてしまったようだ。そのショックから突然学校を休学し大道芸人になるんだと言い出し、単身プエルトリコへと渡った。だがプレルトリコは治安が悪く、ある日地元の紛争に巻き込まれ命を落としたと先日連絡が来た。
羽姉ちゃんだが、生徒を守るためビーハイブの面々を相手に臆することなく立ち向かったが、その最中命を落とした。後日、羽姉さんの荷物を整理していた際に、俺の全裸の写真とバイブが見つかった。どうやら羽姉さんは俺でオナニーしてたようだ。
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:54:58.25 ID:Tg6DMZW60
あれから数年が経つ。
いろんなことがありすぎて、この数年間はとても長く感じた。
現在、俺と小野寺はというと………
楽「ただいま〜」
小咲「あ、おかえりなさい楽さん」
俺と小野寺、いや小咲はあの後正式に恋人同士となり、そして結婚した。
凡矢理高校を去った俺達二人は近くにある通信制の高校へ入学し、その後猛勉強をして大学へと進学した。
俺は今回の事件から、公務員ではなく医者の道を志したのだ。そして無事、医師免許を取得した。
小咲「今日は楽さんの大好きなものをたくさん作ったんだよ///」
楽「そうか、それは楽しみだな……//」
いろんなことがありすぎて、この数年間はとても長く感じた。
現在、俺と小野寺はというと………
楽「ただいま〜」
小咲「あ、おかえりなさい楽さん」
俺と小野寺、いや小咲はあの後正式に恋人同士となり、そして結婚した。
凡矢理高校を去った俺達二人は近くにある通信制の高校へ入学し、その後猛勉強をして大学へと進学した。
俺は今回の事件から、公務員ではなく医者の道を志したのだ。そして無事、医師免許を取得した。
小咲「今日は楽さんの大好きなものをたくさん作ったんだよ///」
楽「そうか、それは楽しみだな……//」
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:55:46.50 ID:Tg6DMZW60
俺は大学では医学部、小咲は食育福祉学部という学部で料理の勉強をし、今やテレビが雑誌で引っ張りだこの料理研究家として活躍している。
あのダークマターしか作れなかった小咲が、今や誰よりも料理が上手な自慢のお嫁さんになったのだ。実際、小咲が作る料理は本当に美味しい。
楽「それより小咲、身体の方は大丈夫か?あまり無理するなよ」
小咲「うん、平気だよ!それに、私にはいつも側に楽さんがいるもの///」
楽「ああ、もちろんだ。お腹の子が産まれてくる時もな///」
小咲のお腹の中には今、小さな小さな命が宿っている。
俺はこの子が産まれてくる時を見届けるつもりだ。小咲の旦那として、そして小咲の担当医として。
俺は大きな病院での研修を終え、産婦人科医として独立した。何故産婦人科を選んだかというと、生命の神秘に最も近いのではないかと思ったからだ。
あのダークマターしか作れなかった小咲が、今や誰よりも料理が上手な自慢のお嫁さんになったのだ。実際、小咲が作る料理は本当に美味しい。
楽「それより小咲、身体の方は大丈夫か?あまり無理するなよ」
小咲「うん、平気だよ!それに、私にはいつも側に楽さんがいるもの///」
楽「ああ、もちろんだ。お腹の子が産まれてくる時もな///」
小咲のお腹の中には今、小さな小さな命が宿っている。
俺はこの子が産まれてくる時を見届けるつもりだ。小咲の旦那として、そして小咲の担当医として。
俺は大きな病院での研修を終え、産婦人科医として独立した。何故産婦人科を選んだかというと、生命の神秘に最も近いのではないかと思ったからだ。
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:56:34.25 ID:Tg6DMZW60
小咲「えへへへ、早く産まれてこないかな〜」
楽「俺達の子供だ、元気に生まれてくれるといいよな」
俺はあの後、おのでラブホテルの建物を譲り受け、下半分のフロアをラブホテルのまま残し、残りの上半分のフロアを使って産婦人科と性病科を診療科目として病院を開いたのだ。若い人達に正しい性知識を教えるために性病科も科目に加えた。凡矢理市内の学校へ訪れ定期的に講演もしている。
俺の病院は全国でも珍しい病院とラブホテルが一体となった病院として注目を集め、テレビや医療雑誌の取材でも取り上げらる程になった。
俺は若くして、エリート医師としてそれなりの地位と名声を手にしたのだ。
楽「俺達の子供だ、元気に生まれてくれるといいよな」
俺はあの後、おのでラブホテルの建物を譲り受け、下半分のフロアをラブホテルのまま残し、残りの上半分のフロアを使って産婦人科と性病科を診療科目として病院を開いたのだ。若い人達に正しい性知識を教えるために性病科も科目に加えた。凡矢理市内の学校へ訪れ定期的に講演もしている。
俺の病院は全国でも珍しい病院とラブホテルが一体となった病院として注目を集め、テレビや医療雑誌の取材でも取り上げらる程になった。
俺は若くして、エリート医師としてそれなりの地位と名声を手にしたのだ。
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:58:09.12 ID:Tg6DMZW60
小咲「楽さん、お願いがあるんだけど」
楽「なんだ、小咲?」
小咲「あのね、この子を出産するときは、あの部屋で産みたいなって………」
楽「え、いいのかよ?あの部屋は……」
小咲「うん、あの部屋がいいの。だって、私と楽さんが初めて結ばれた場所だからね」
あの部屋だが、改装して分娩室にした。
高級すぎる分娩室として雑誌で紹介され、それなりに話題となった。
俺達にとっては、悲劇の部屋であると同時に思い出の部屋でもあるのだ。
楽「なんだ、小咲?」
小咲「あのね、この子を出産するときは、あの部屋で産みたいなって………」
楽「え、いいのかよ?あの部屋は……」
小咲「うん、あの部屋がいいの。だって、私と楽さんが初めて結ばれた場所だからね」
あの部屋だが、改装して分娩室にした。
高級すぎる分娩室として雑誌で紹介され、それなりに話題となった。
俺達にとっては、悲劇の部屋であると同時に思い出の部屋でもあるのだ。
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 20:59:29.56 ID:Tg6DMZW60
楽「ああ、小咲が良ければもちろんいいぞ!」
小咲「えへへ、楽しみだな〜〜」
楽「ああ、愛してるぞ小咲////」
小咲「私もです、楽さん///」
常に人の声が絶えない、賑やかなホテルと病院にしようと俺は思っている。
下は常に女の甘い喘ぎ声が絶えないラブホテル、上は新しい命の産声とそれを喜ぶ人達の歓喜の声で絶えない病院に………。
因みに病院の院長はもちろん俺だが、ラブホテルのオーナーは小咲名義にしている。
小咲「えへへ、楽しみだな〜〜」
楽「ああ、愛してるぞ小咲////」
小咲「私もです、楽さん///」
常に人の声が絶えない、賑やかなホテルと病院にしようと俺は思っている。
下は常に女の甘い喘ぎ声が絶えないラブホテル、上は新しい命の産声とそれを喜ぶ人達の歓喜の声で絶えない病院に………。
因みに病院の院長はもちろん俺だが、ラブホテルのオーナーは小咲名義にしている。
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 21:00:27.34 ID:Tg6DMZW60
小咲「それじゃ、お料理冷める前に食べようか」
楽「ああ、いただきます!」
そして、病院とラブホテルに負けないくらい、俺はこの家庭を賑やかで楽しいものにしよう。
この先も、小咲と、子供達と生きていくんだ…………
END
楽「ああ、いただきます!」
そして、病院とラブホテルに負けないくらい、俺はこの家庭を賑やかで楽しいものにしよう。
この先も、小咲と、子供達と生きていくんだ…………
END
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/02/12(金) 21:02:19.72 ID:g4uWNpddo
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455273676/
Entry ⇒ 2016.02.14 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
鶫「どくさいスイッチ?」
1: ゴム屋おのでら 2015/11/20(金) 00:23:17.28 ID:vfvBz0fh0
前作:鶫「バイバイン?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434952320/
ストーリー的につながりはありません。
ビーハイブ屋敷にて……
鶫「クロード様に呼び出されてきたはいいが、荷台の上にまた怪しげなものがおいてあるぞ」
クロード「おお誠士郎、来ていたか」
鶫「あ、クロード様。一体これは…?」
クロード「うむ、これはビーハイブで極秘に開発していた《どくさいスイッチ》という道具でな」
鶫「どくさいスイッチ!?」
鶫(……って、また面倒なものを用意したものだな)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434952320/
ストーリー的につながりはありません。
ビーハイブ屋敷にて……
鶫「クロード様に呼び出されてきたはいいが、荷台の上にまた怪しげなものがおいてあるぞ」
クロード「おお誠士郎、来ていたか」
鶫「あ、クロード様。一体これは…?」
クロード「うむ、これはビーハイブで極秘に開発していた《どくさいスイッチ》という道具でな」
鶫「どくさいスイッチ!?」
鶫(……って、また面倒なものを用意したものだな)
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:24:41.77 ID:vfvBz0fh0
クロード「このスイッチを押すと任意の相手を消し去る事が出来る大変恐ろしい道具なのだ!!」
鶫「なっ、相手を消し去る事が出来るですって!?なんでまたそんな凄いものがここに?」
クロード「うむ。昔、まだお前が組織に属する以前の話になるが、我が組織ととある敵対組織の大規模な紛争があってだな、我が組織は悲しいかな劣勢を強いられていた。そこで、銃で太刀打ちするより効率的に敵を一掃できる策はないかと考えた我が組織は大金をはたいて優秀な発明家にある道具を開発させたのだが、そこ道具ことはこのどくさいスイッチなのだ!」
鶫「そ、それでこのスイッチを使い敵を一掃したのですね」
クロード「ああ、だがただ一掃したのではない。この道具の恐ろしいところは、相手を殺すのではなく最初から存在しなかった事にするところなのだ!!」
鶫「え!?そ、そんなことが可能なのですか?」
鶫「なっ、相手を消し去る事が出来るですって!?なんでまたそんな凄いものがここに?」
クロード「うむ。昔、まだお前が組織に属する以前の話になるが、我が組織ととある敵対組織の大規模な紛争があってだな、我が組織は悲しいかな劣勢を強いられていた。そこで、銃で太刀打ちするより効率的に敵を一掃できる策はないかと考えた我が組織は大金をはたいて優秀な発明家にある道具を開発させたのだが、そこ道具ことはこのどくさいスイッチなのだ!」
鶫「そ、それでこのスイッチを使い敵を一掃したのですね」
クロード「ああ、だがただ一掃したのではない。この道具の恐ろしいところは、相手を殺すのではなく最初から存在しなかった事にするところなのだ!!」
鶫「え!?そ、そんなことが可能なのですか?」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:26:19.96 ID:vfvBz0fh0
クロード「ああ、消されたものは最初からこの世に存在しない事となるため、他社の記憶からも消されるのだ。このスイッチを使い我が組織は見事紛争に勝利したのだが、紛争後このスイッチが悪用されるのを防ぐためその存在は現在では一部の者にしか知らされておらず、スイッチそのものも廃棄されたのだ。しかし、最近になって倉庫からこれが発見されたのだ」
鶫「はぁ……そ、それは大変ですね」
クロード「そこでだ。誠士郎、このスイッチの処分をお前に任せたいのだ!!」
鶫「えぇぇ!?またですか……」
鶫「はぁ……そ、それは大変ですね」
クロード「そこでだ。誠士郎、このスイッチの処分をお前に任せたいのだ!!」
鶫「えぇぇ!?またですか……」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:28:23.37 ID:vfvBz0fh0
ある日、学校で…
鶫「…と言われて預かったはいいが、なぜうちの組織はこんな物騒なものをわざわざ作るのだ」
ポーラ「ん、何そわそわしてのよブラックタイガー?」
鶫「おう、ポーラではないか!あっ、いやその…これはだなッ!」アセアセ
ポーラ「ん、その手に持ってるのは何よ?」
鶫「ああ、これはだな……」
鶫(同じビーハイブの人間だし、ポーラになら言っても平気か)
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:29:34.25 ID:vfvBz0fh0
ポーラ「えッ!? 相手を存在しなかった事に出来るスイッチですって!!」
鶫「おい、声が大きいぞ! ここは学校なのだし、誰かに聞かれたらどうする!」
ポーラ「ああ、すまない……それで、そのスイッチの処分を直々に任されたわけね」
鶫「そうなのだ。まったく……クロード様も毎度の事だが面倒な道具を私に押し付けてくれる」
ポーラ「ねえ、処分する前にそのスイッチが本当に効果があるのか確かめたら?」
鶫「何を言っているのだッ! 私の話を聞いていなかったのか?このスイッチは任意の相手を初めからこの世に存在しない事に出来るのだぞ、安易に使えるわけがないだろ!!」
ポーラ「でも、廃棄する前にきちんと効果があるのか知っておいてもいいんじゃないの?どうせ廃棄するんなら、一度くらい有効活用した方が組織への貢献にもつながるわ」
鶫「貢献だとッ!?」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:32:14.82 ID:vfvBz0fh0
ポーラ「そう。そのスイッチは相手の息の根を止めるんじゃなくて、相手の存在そのものをなかったことにするんでしょ? 確かに物騒極まりないけど、私達はヒットマンよ。今更敵対する組織の人間を何人か消したところで心境に変化なんてないわ」
鶫「敵対する………ハッ、まさかそれは集英組のことを言っているのか!?」
ポーラ「そうよ! お嬢とあの坊やが恋人関係にあったとしても、それがこの先続くかなんてわかりっこないわ。両組織の関係性が不確定なら、先手を打っておいた方がいいはずよ」
鶫「なッ、そんな勝手なことが許されると思うのさ!?」
ポーラ「許すも何も、これは戦争なのよブラックタイガー!! あんた、あの一条楽とかいうガキと知り合ってから腕だけじゃなくて考え方まで鈍ってるんじゃいの?」
鶫「何をーーー! 私は鈍ってなどおらん!! それに一条楽はお嬢の大切なボーイフレンドなのだぞ。そのスイッチを使って一条楽がこの世から消えれば、お嬢やご学友の皆まで悲しむではないかッ!!」
ポーラ「ふん、だからあんたは甘いのよブラックタイガー! いい? 存在が消えるということは、誰かの記憶の中にその消えた奴がいると矛盾が生じるはずよ。つまり、このスイッチで消した奴は誰からの記憶から抹消されなくちゃおかしいんじゃないのかしら」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:33:06.16 ID:vfvBz0fh0
鶫「な……確かに、そうかもしれぬが」
ポーラ「これはお嬢の為でもあるのよ! お嬢にはあんなもやしっこじゃなくて、もっと良い相手がいるはずよ。それに一条楽は本来敵対する組織の跡取り、それを消せれば集英組に勝ったも同然よ!!」
鶫「………いや、そんなのはダメだ!!私は認めぬぞッ」
ポーラ「あんたはここで大人しくしてなさい、ブラックタイガー! 臆病なあんたの代わりに、私がこのスイッチを押して一条楽を消してやるわ!!」
鶫「あ、コラッ、待つのだポーラ!!スイッチを返せぇーーーーーー!」
ポーラ「これはお嬢の為でもあるのよ! お嬢にはあんなもやしっこじゃなくて、もっと良い相手がいるはずよ。それに一条楽は本来敵対する組織の跡取り、それを消せれば集英組に勝ったも同然よ!!」
鶫「………いや、そんなのはダメだ!!私は認めぬぞッ」
ポーラ「あんたはここで大人しくしてなさい、ブラックタイガー! 臆病なあんたの代わりに、私がこのスイッチを押して一条楽を消してやるわ!!」
鶫「あ、コラッ、待つのだポーラ!!スイッチを返せぇーーーーーー!」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:34:25.30 ID:vfvBz0fh0
屋上にて……
楽「ふぅーーー、今日は天気が良いな」
集「絶好のお出かけ日和だね。ねえ楽、今日の放課後ヒマ? こんなに天気が良いんだし、どっか遊びに行こうぜ」
楽「今日の放課後か………あ〜悪い、今日は動物達の世話をする日なんだよな」
タタタタタタ…
ポーラ「見つけたわよ、一条楽!!」
楽「ポーラ? 一体どうしたんだ…」
ポーラ「もう………耐えられない」
楽「えッ?」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:35:26.84 ID:vfvBz0fh0
ポーラ「あんたのせいで……あんたのせいでブラックタイガーがあんな風になってしまったのよッ!!! 」
楽「うわッ、急になんだよ!?」
集「ほほ〜お、これはワケありだね」
ポーラ「あんたのせいで……あんたのせいで、あの凛々しかったブラックタイガーはッ!!!」
楽「おい、落ち着けって! いきなりどうしたんだよ、俺が何かしたってのかよ?」
ポーラ「うるさいッ!! あんたなんか、あんたなんか………今この場で消してやるッ!!」
集「ん、その手に持っているのって」
楽「何かのスイッチか?」
ポーラ「消えろ、一条楽ーーーー!」
ポチッ
楽「!!?」
楽「うわッ、急になんだよ!?」
集「ほほ〜お、これはワケありだね」
ポーラ「あんたのせいで……あんたのせいで、あの凛々しかったブラックタイガーはッ!!!」
楽「おい、落ち着けって! いきなりどうしたんだよ、俺が何かしたってのかよ?」
ポーラ「うるさいッ!! あんたなんか、あんたなんか………今この場で消してやるッ!!」
集「ん、その手に持っているのって」
楽「何かのスイッチか?」
ポーラ「消えろ、一条楽ーーーー!」
ポチッ
楽「!!?」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:36:26.82 ID:vfvBz0fh0
鶫「ハァ…ハァ…クソッ、ポーラの奴め、一体何処へ向かったのいうのだ!! 早く探し出してスイッチを取り返さなければ」
千棘「あれ、そんなに息切らして一体どうしたのよ鶫?」
小咲「どうしたの鶫ちゃん?顔真っ赤だよ!!」
鶫「あ、お嬢に小野寺様!! その………ポーラを、いえ、一条楽を見かけませんでしたか?」
千棘「え、楽を探したんの?」
小咲「そういえば、一条くんならさっき舞子くんと一緒に屋上へ向かったのを見かけたよ」
鶫「ほ、本当ですか!? こうしてはおられん!!」
スタタタタタタタ!!
千棘「うわぁ、ちょっと……鶫!?」
小咲「あんなに慌てて一体どうしたんだろう………」
千棘「あんなに血相変えて、いつもの鶫じゃないわね」
小咲「一条くんを探してたけど、もしかして一条くんに何かあったんじゃ!?」
千棘「…………小咲ちゃん、私達も後を追いかけるわよ!!」
小咲「あっ、千棘ちゃん待ってぇーーーー」
千棘「あれ、そんなに息切らして一体どうしたのよ鶫?」
小咲「どうしたの鶫ちゃん?顔真っ赤だよ!!」
鶫「あ、お嬢に小野寺様!! その………ポーラを、いえ、一条楽を見かけませんでしたか?」
千棘「え、楽を探したんの?」
小咲「そういえば、一条くんならさっき舞子くんと一緒に屋上へ向かったのを見かけたよ」
鶫「ほ、本当ですか!? こうしてはおられん!!」
スタタタタタタタ!!
千棘「うわぁ、ちょっと……鶫!?」
小咲「あんなに慌てて一体どうしたんだろう………」
千棘「あんなに血相変えて、いつもの鶫じゃないわね」
小咲「一条くんを探してたけど、もしかして一条くんに何かあったんじゃ!?」
千棘「…………小咲ちゃん、私達も後を追いかけるわよ!!」
小咲「あっ、千棘ちゃん待ってぇーーーー」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:37:22.25 ID:vfvBz0fh0
再び屋上にて…
ポーラ「えいッ!」
ポチッ
楽「?」
ポーラ「…………あれ?」
集「そのスイッチ、一体何なの?」
ポーラ「おかしいわ、どうして何も起こらないなよ!!」
楽「……………………………」
集「なぁ〜んだ、ただの悪ふざけか」
ポーラ「そ、そんなはずないわ!確かにこのスイッチは相手を消すことが出来るスイッチだとブラックタイガーが……」
集「まあ、ヒマな休み時間の退屈しのぎにはなったかな。なぁ、楽?」
楽「…………………………」
集「ん、楽?」
ポーラ「えいッ!」
ポチッ
楽「?」
ポーラ「…………あれ?」
集「そのスイッチ、一体何なの?」
ポーラ「おかしいわ、どうして何も起こらないなよ!!」
楽「……………………………」
集「なぁ〜んだ、ただの悪ふざけか」
ポーラ「そ、そんなはずないわ!確かにこのスイッチは相手を消すことが出来るスイッチだとブラックタイガーが……」
集「まあ、ヒマな休み時間の退屈しのぎにはなったかな。なぁ、楽?」
楽「…………………………」
集「ん、楽?」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:38:37.23 ID:vfvBz0fh0
楽「………………ガルルルル」
ポーラ「?」
集「あれ、なんだか楽の様子がおかしいぞ」
楽「グオォォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!」
ポーラ「なッ!?」
集「えッ!?」
ポーラ「?」
集「あれ、なんだか楽の様子がおかしいぞ」
楽「グオォォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!」
ポーラ「なッ!?」
集「えッ!?」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:39:39.09 ID:vfvBz0fh0
階段にて………
鶫「ハァ…ハァ…、屋上はこの階段の先だな。頼む、間に合ってくれよ」
千棘「鶫ーーーーー!」
小咲「ハァ…ま、待ってよ千棘ちゃん〜」
鶫「お嬢、それに小野寺様まで!!」
千棘「鶫、どういう事情があるかは知らないけど、あんたのそんな姿を見せられちゃ放っておけるわけないじゃないの!!」
鶫「お嬢………」
千棘「ったく、水臭いわね。私達に黙って何でもかんでも1人で解決しようだなんて思うんじゃないわよ」
鶫「ですがお嬢、これは一大事なのです」
小咲「一条くんが関わってるんでしょ?なら、なおさら放っておくわけにはいかないよ」
千棘「そうよ、楽のことなのアタシらを差し置いてアンタだけ張り切るんじゃないわよ」
鶫「お嬢……小野寺様………うぅぅう、実は……」
鶫「ハァ…ハァ…、屋上はこの階段の先だな。頼む、間に合ってくれよ」
千棘「鶫ーーーーー!」
小咲「ハァ…ま、待ってよ千棘ちゃん〜」
鶫「お嬢、それに小野寺様まで!!」
千棘「鶫、どういう事情があるかは知らないけど、あんたのそんな姿を見せられちゃ放っておけるわけないじゃないの!!」
鶫「お嬢………」
千棘「ったく、水臭いわね。私達に黙って何でもかんでも1人で解決しようだなんて思うんじゃないわよ」
鶫「ですがお嬢、これは一大事なのです」
小咲「一条くんが関わってるんでしょ?なら、なおさら放っておくわけにはいかないよ」
千棘「そうよ、楽のことなのアタシらを差し置いてアンタだけ張り切るんじゃないわよ」
鶫「お嬢……小野寺様………うぅぅう、実は……」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:40:42.44 ID:vfvBz0fh0
千棘「なッ、楽が消えちゃうかもしれないですって!!?」
小咲「そ、そんなぁ〜〜!!」
鶫「そうなのです、ですから一刻も早く一条楽を見つけ出して保護しなければ」
千棘「なら、私達も手伝うわ」
小咲「うん。このまま一条くんが消えちゃうなんて嫌だもの」
鶫「ありがとうございます、お二人とも!!」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:41:35.08 ID:vfvBz0fh0
prprprpr
鶫「チッ、こんな時にクロード様から電話だと!?」
ガチャ
クロード『おお、誠士郎か? 実はお前に大至急伝えなければならぬ事があってだな』
鶫「申し訳ありませんクロード様、只ま今取り込み中ですので、手短にお願いします」
クロード『そうか。実は、今朝お前に渡したあのスイッチだが、実は誤って別のスイッチを渡してしまったようでな!』
鶫「………………え?」
クロード『お前に渡したのはどくさいスイッチではなく、任意の相手をレイプ魔に変貌させてしまう《レイプ魔スイッチ》というまったく別の道具だったのだ』
鶫「レ、レイプ魔スイッチぃーー!?」
鶫「チッ、こんな時にクロード様から電話だと!?」
ガチャ
クロード『おお、誠士郎か? 実はお前に大至急伝えなければならぬ事があってだな』
鶫「申し訳ありませんクロード様、只ま今取り込み中ですので、手短にお願いします」
クロード『そうか。実は、今朝お前に渡したあのスイッチだが、実は誤って別のスイッチを渡してしまったようでな!』
鶫「………………え?」
クロード『お前に渡したのはどくさいスイッチではなく、任意の相手をレイプ魔に変貌させてしまう《レイプ魔スイッチ》というまったく別の道具だったのだ』
鶫「レ、レイプ魔スイッチぃーー!?」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:42:56.80 ID:vfvBz0fh0
クロード『そのスイッチによって変貌したものは理性を失った獣の如く、目の前にいる者を男女問わず強姦してしまうレイプ魔となってしまうのだ!! 理性も知性もなく、ただ目の前の獲物を犯す事のみを行動原理とする性欲の制御が効かなくなる生物兵器を生み出し武力にしようと開発された者なのだが、一度変貌した者は二度と元に戻らないため、あまりにも危険と判断され、どくさいスイッチと共に処分されるはずだったものでな』
鶫「…………………」
クロード『見た目がどくさいスイッチと瓜二つで判別がつかなくてな、今朝お前に間違えて渡してしまったようでな。この際だから、そのスイッチの処分もお前に任せる。危険なので決して使用はするなよ、では』
ガチャ
千棘「ちょっと鶫………」
小咲「今の電話の話って………」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:43:51.45 ID:vfvBz0fh0
集「ギャアァァァァァァーーーーーーーー!!!」
鶫「ッ!!?」
千棘「な、何よ今の悲鳴は!?」
小咲「今の声、まさか舞子くん!?」
鶫「クッ、遅かったか!!」
鶫「こうしてはいらねない。屋上へ急ぎましょう!!」
ダダダダダダダダ
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:44:33.62 ID:vfvBz0fh0
楽「グオォォォォォォォォォォォォーーー!!!」
集だったもの「……………」チーーーン
小咲「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー////」
千棘「舞子くんが、下半身丸出しになって死んでるッ!!!」
鶫「遅かったか………………」
楽「グュォウゥゥゥ!!?」
千棘「あ、楽の奴がこっちへ気がついたわ!!」
鶫「マズイッ、ここは私が奴を惹きつけます。お嬢は小野寺様を連れて逃げてください!!」カチヤッ
楽「グオォォォォォーーーーーー!!」シュンッ!
千棘「きゃッ!!」
鶫「は、速い!!」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:46:00.91 ID:vfvBz0fh0
楽「ギャアァァァァァオォォォォォォ!!!」バシッ
小咲「きゃあッ!!」
鶫「お、小野寺様!!」
千棘「大変、暴走した楽が小咲ちゃんに馬乗りにッ!!」
小咲「い、いいい…一条くん////」
ブルブル
鶫「マズイ、このままでは小野寺様が一条楽の餌食となってしまう!」
千棘「鶫、はやく小咲ちゃんを助けてあげてッ!!!」
鶫「えぇい、一条楽!!はやく小野寺様から離れろッ!! さもなければお前の頭に目掛けて発砲するぞ!」
楽「オォォ……オノデラァァァァァァァーーーーーーーー!!」
制服ビリビリッ
小咲「きやぁぁーーー///」
千棘「ちょッ、小咲ちゃんの制服がビリビリじゃないの///」
鶫「クッ、既に奴にはこちらの言葉は耳に届かぬのか。やむを得ん!!」
小咲「きゃあッ!!」
鶫「お、小野寺様!!」
千棘「大変、暴走した楽が小咲ちゃんに馬乗りにッ!!」
小咲「い、いいい…一条くん////」
ブルブル
鶫「マズイ、このままでは小野寺様が一条楽の餌食となってしまう!」
千棘「鶫、はやく小咲ちゃんを助けてあげてッ!!!」
鶫「えぇい、一条楽!!はやく小野寺様から離れろッ!! さもなければお前の頭に目掛けて発砲するぞ!」
楽「オォォ……オノデラァァァァァァァーーーーーーーー!!」
制服ビリビリッ
小咲「きやぁぁーーー///」
千棘「ちょッ、小咲ちゃんの制服がビリビリじゃないの///」
鶫「クッ、既に奴にはこちらの言葉は耳に届かぬのか。やむを得ん!!」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:46:46.97 ID:vfvBz0fh0
バァーーーーーン!!
楽「グオォォォォォォォォォォォーーーーーッ!!」
鶫「よし、命中したぞ」
千棘「小咲ちゃん、今のうちにこっちへ」
小咲「う、うん……ありがと千棘ちゃん///」
鶫「ここは危険です。一旦ここから離れましょう」
千棘「そうね!」
楽「グオォォォォォォォォォォォーーーーーッ!!」
鶫「よし、命中したぞ」
千棘「小咲ちゃん、今のうちにこっちへ」
小咲「う、うん……ありがと千棘ちゃん///」
鶫「ここは危険です。一旦ここから離れましょう」
千棘「そうね!」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:47:38.68 ID:vfvBz0fh0
空いてる教室…
鶫「ハァ…ハァ……ひとまず、撒いたようですね」
千棘「楽の奴、いきなり小咲ちゃんに襲いかかって制服を破るだなて最低よッ!」
小咲「わ、私は大丈夫だよ千棘ちゃん。それに、あの一条くんはスイッチのせいでいつもの一条ではなくなってるし」
千棘「それで、これからどうするのよ?」
鶫「とにかく、このまま学校へいても危険です。この事をクロード様に報告してなんとかせねば……」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:48:57.50 ID:vfvBz0fh0
ドゴォォォーーーンッ!!
小咲「きゃぁぁぁぁ、今の衝撃は何!?」
千棘「物凄い音がしたわよ!」
鶫「まさか………、壁を破って校舎の中へ入って来たのかッ!!」
キャァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ!!!
千棘「また誰かの悲鳴が、きっと楽に襲われてるんだわ!!」
小咲「あれ……この階って確か1年生の教室があったような………ハッ、春!!?」
千棘「た、大変よッ!! はやく助けに行かなくちゃ!!」
鶫「落ち着いてください2人とも、ここは私が先導しますので、お二人は絶対に私のそばから離れないでください!!」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:50:24.60 ID:vfvBz0fh0
スタタタタタタタタタ
一年教室…
楽「グオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーー!!」
女子A「きゃぁーーーーーーーー助けてぇ!!」
男子A「に、逃げろーーーーーーーー!!」
小咲「はわわ、パニックになってるよ!!」
千棘「落ち着いてみんな、パニックになっては逆に危険よ!!」
鶫「くそ、また誰か襲われてるのか!?」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:51:58.65 ID:vfvBz0fh0
春「……………ウゥゥ、ウグッ……ヒック////」 ビクビク
楽「ハハハ……ハアァァァルゥゥゥゥチャーーーーーーーーーーーー!!」
小咲「春ッ!!!?」
千棘「そんな……春ちゃんが見るも無残な姿に!!」
鶫「クソッ、またしても遅かったか………」
春「オネエチャンタチ、ニ……ニゲ……テッ」ガクッ
小咲「春ーーーーーーーーー!!!」
鶫「おのれッ、一条楽め、これ以上犠牲が出る前に私がここで始末してくれるッ!!」
楽「ギャオォォォォォォーーーンッ!!!」
小咲「ま、待って鶫ちゃん!! 相手は一条くんなんだよ!? 銃で撃ったら一条くんが可愛そうだよッ!!」
鶫「何を言っているのですか小野寺様!! こやつはもう我々の知る一条楽ではありません。」
千棘「そうよ小咲ちゃん! こいつのせいで春ちゃんだってレイプされたんだよッ!? これ以上こいつを野放しにしてちゃ私達だって、いえ、凡矢理市内にいる人みんなが危険よッ!!」
楽「ハハハ……ハアァァァルゥゥゥゥチャーーーーーーーーーーーー!!」
小咲「春ッ!!!?」
千棘「そんな……春ちゃんが見るも無残な姿に!!」
鶫「クソッ、またしても遅かったか………」
春「オネエチャンタチ、ニ……ニゲ……テッ」ガクッ
小咲「春ーーーーーーーーー!!!」
鶫「おのれッ、一条楽め、これ以上犠牲が出る前に私がここで始末してくれるッ!!」
楽「ギャオォォォォォォーーーンッ!!!」
小咲「ま、待って鶫ちゃん!! 相手は一条くんなんだよ!? 銃で撃ったら一条くんが可愛そうだよッ!!」
鶫「何を言っているのですか小野寺様!! こやつはもう我々の知る一条楽ではありません。」
千棘「そうよ小咲ちゃん! こいつのせいで春ちゃんだってレイプされたんだよッ!? これ以上こいつを野放しにしてちゃ私達だって、いえ、凡矢理市内にいる人みんなが危険よッ!!」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:52:48.71 ID:vfvBz0fh0
小咲「で、でも………」
鶫「お嬢の言う通りですッ!! ここで始末しなければ、えぇいーーーこれでも食らえ!!」
カチ……カチカチカチッ……カチ
小咲「えッ?」
千棘「ひょっとして、弾切れ!?」
鶫「クッ、こんな時にか!」
楽「ガォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーッ!!!!」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:53:53.10 ID:vfvBz0fh0
バキューーーーンッ!!
楽「グギャァァァァァァァァァーーーーーッ!!!」
鶫「何、今の弾丸一体何処から!?」
ポーラ「こっちよ、このレイプ魔野郎!!!」
鶫「ポーラ!!」
楽「グオォォォォォォォォォォォ」
ポーラ「ついて来なさい、私が相手よ!」
スタタタスタタタ
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:54:49.49 ID:vfvBz0fh0
鶫「おい待て、待つのだポーラ!!」
小咲「みんな、あれを見て!!」
千棘「うわッ、何よあれーーー!?」
鶫「校庭に巨大な穴がある……まさか、ポーラの奴!!」
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:56:10.07 ID:vfvBz0fh0
楽「ガォォォォォォーーーーン!!」
ポーラ「これでも食らえーーーッ!!」
ババババババァーーーーーーン!!
楽「グギャァァァァァァァーーーーーーーー!!!」
バタバタ…ドスッ
ポーラ「ふッ、その穴の底には大量のダイナマイトを仕掛けておいたわ。あんたには、この穴の中で私と一緒に死んでもらうわよ!!」
鶫「ポーラーーーーーーーーー!!」
ポーラ「来ないで、ブラックタイガー!!こうなったのは私のせいよ。私が馬鹿なことさえ考えなければこうはなってはいなかったわ。」
鶫「ポーラ、馬鹿な事を考えるな!生きて償うことだって出来るのだぞッ!!」
ポーラ「これでも食らえーーーッ!!」
ババババババァーーーーーーン!!
楽「グギャァァァァァァァーーーーーーーー!!!」
バタバタ…ドスッ
ポーラ「ふッ、その穴の底には大量のダイナマイトを仕掛けておいたわ。あんたには、この穴の中で私と一緒に死んでもらうわよ!!」
鶫「ポーラーーーーーーーーー!!」
ポーラ「来ないで、ブラックタイガー!!こうなったのは私のせいよ。私が馬鹿なことさえ考えなければこうはなってはいなかったわ。」
鶫「ポーラ、馬鹿な事を考えるな!生きて償うことだって出来るのだぞッ!!」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:57:21.58 ID:vfvBz0fh0
ポーラ「無駄よ…………じゃあね、ブラックタイガー」
カチッ、ヒューーーーン……
ドッカァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
鶫「ポーラァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
カチッ、ヒューーーーン……
ドッカァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
鶫「ポーラァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 00:59:50.25 ID:vfvBz0fh0
あれから数ヶ月が経ちました。
校庭で起きたあの爆発により、レイプ魔と化した一条くんはポーラさん諸共跡形もなく消え去りました。
しかし、仕掛けられたダイナマイトの数が多すぎたのか、校庭は全壊状態、校舎にも深刻なダメージが加わり学校はしばらく休校となりました。
この事件により、鶫ちゃんに間違えてスイッチを渡したクロードさんは責任を取る形で自殺、更に一条くんを失った報復として集英組の人達がビーハイブへ攻め込み両組織の大規模な紛争を招く事態へと繋がりました。
この紛争により、ビーハイブは壊滅状態へと陥り、ボスである千棘ちゃんのお父さんが命を落としました。千棘ちゃんと鶫ちゃんも当然命を狙われますが、鶫ちゃんが命に代えて千棘ちゃんを守り抜いたことで命はたすかりましたが、代わりに鶫ちゃんが重傷を負い、現在意識不明の昏睡状態です。
紛争を止めるため警察もこれに加わり、戦いは激化の一途をたどります。一条くんを失った集英組の人達は手段を選ばず、警視総監である橘さんのお父さんの命を真っ先に狙いますが、これに巻き込まれた橘さんが流れ弾を受け命を落としました。結果としてその場に居合わせた警察官と集英組組員は全員死亡、橘さんのお父さんも帰らぬ人となりました。
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 01:01:07.39 ID:vfvBz0fh0
あまりにも大規模且つ衝撃的な事件を受けて、みんなも精神的におかしくなってしまったのです。
まずるりちゃんは、学校が再開される前に自ら退学し、メキシコへラーメン職人になると言い出し日本を出ましたが、現地で起きた火災に偶然にも巻き込まれ、命を落としたそうです。
春の友達の風ちゃんですが、春が死んでしまったのがよっぽどショックだったのか、お小遣いを全て投資して株を買ったらなんとその株価が急上昇し、高校生にしてあっという間に億万長者となってしまいました。
そして私、小野寺小咲はと言うと、千棘ちゃんと旅をしています。
そう、ある共通の目的を持って……
まずるりちゃんは、学校が再開される前に自ら退学し、メキシコへラーメン職人になると言い出し日本を出ましたが、現地で起きた火災に偶然にも巻き込まれ、命を落としたそうです。
春の友達の風ちゃんですが、春が死んでしまったのがよっぽどショックだったのか、お小遣いを全て投資して株を買ったらなんとその株価が急上昇し、高校生にしてあっという間に億万長者となってしまいました。
そして私、小野寺小咲はと言うと、千棘ちゃんと旅をしています。
そう、ある共通の目的を持って……
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 01:02:13.04 ID:vfvBz0fh0
千棘「私達が探し求めるもの……この街にもなかったわね」
小咲「うん…でも、きっとこの世界の何処かにあるばすだし、諦めないで探し出そうね!!」
千棘「そうね、私達にはやらなくちゃいけないことがあるんだしね! 死んでいったみんなのためにも………」
私と千棘ちゃんの共通の目的……
それは、犠牲となった一条くんや春、そして現在病院のベットで静かに眠る鶫ちゃん達の仇を取ることです。
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 01:03:10.52 ID:vfvBz0fh0
千棘「何がなんでも見つけ出して、みんなの仇を私たちの手で!!」
小咲「うん、絶対に見つけ出そうね! あの忌まわしきスイッチを作った張本人達を!!」
ドラえ○もん「…………フフフ」
ミッキー○ウス「ハハッ」
END
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 01:40:12.44 ID:8ZpvlUcfO
おまおれ
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/20(金) 07:29:35.86 ID:7UBOL4dxO
一人妙に幸せそうなやつがいるが…
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447946597/
Entry ⇒ 2015.12.13 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
千棘「最近、楽の様子がおかしい・・・・」
1: ゴム屋おのでら 2015/11/16(月) 13:13:37.34 ID:/MaSIJGL0
久々にゴム屋おのでらとして書きます。
少し長めです。
よろしくお願いします。
キーンコーンカーンコーン
楽「ふぅ〜、やっと授業が終わった」
千棘「それじゃダーリン、一緒に帰るわよ」
楽「悪い千棘、俺用事があるから1人で帰るわ。じゃあなーー」
千棘「あ、ちょっ、待ちなさいよーーー………行っちゃった」シュン
千棘「もうっ、何よアイツ。最近付き合い悪くなってるじゃないの!!」
小咲「千棘ちゃんもそう思う?」
千棘「あ、小咲ちゃん! 千棘ちゃんもって、小咲ちゃんも思い当たる節あるの?」
小咲「うん。一条くん、最近うちのお店にあまり来てくれなくなったの」
千棘「そうなんだ。私もね、最近アイツと全然デートしてないんだ。それどころが一緒に帰るのだって断られたし」
小咲「一条くん、一体どうしちゃったのかな……」
少し長めです。
よろしくお願いします。
キーンコーンカーンコーン
楽「ふぅ〜、やっと授業が終わった」
千棘「それじゃダーリン、一緒に帰るわよ」
楽「悪い千棘、俺用事があるから1人で帰るわ。じゃあなーー」
千棘「あ、ちょっ、待ちなさいよーーー………行っちゃった」シュン
千棘「もうっ、何よアイツ。最近付き合い悪くなってるじゃないの!!」
小咲「千棘ちゃんもそう思う?」
千棘「あ、小咲ちゃん! 千棘ちゃんもって、小咲ちゃんも思い当たる節あるの?」
小咲「うん。一条くん、最近うちのお店にあまり来てくれなくなったの」
千棘「そうなんだ。私もね、最近アイツと全然デートしてないんだ。それどころが一緒に帰るのだって断られたし」
小咲「一条くん、一体どうしちゃったのかな……」
2: ゴム屋おのでら 2015/11/16(月) 13:14:09.69 ID:/MaSIJGL0
集英組にて………、
楽「ただいまー」
竜「あ、お帰んなせぇ坊ちゃん。そいうや、さっき坊ちゃん宛に荷物が届いてましたよ」
楽「お、もう届いてたのか!!サンキュー竜」
竜「坊ちゃん、何か買われたんですかい?」
楽「ああ、俺の生き甲斐だ!!」
竜「い、生き甲斐!?」
楽「ああ。一度ハマったらもう病みつきになっちまってよ、これなしでは俺はもう生きらんねえんだよ!」
竜「ハマったら病みつきに…………ハッ!!?坊ちゃんまさか……」
楽「そんじゃ俺しばらく部屋にこもるからーー」
竜「坊ちゃん待ってくだせぇッ、坊ちゃーーーーーーーーんッ!!!!」
3: ゴム屋おのでら 2015/11/16(月) 13:14:46.78 ID:/MaSIJGL0
楽の部屋……
楽の 「おお届いた届いた〜。これが来るのをどれ程待ちかねていたことかぁ!!」
ガサゴソガサゴソ
竜「くぅぅ……坊ちゃん、坊ちゃんがまさか……」シクシク
組員A「いつまでも泣かねぇでくだせよ竜さん。それよりも、本当なんですかい?坊ちゃんがヤクに手を出したってのは!?」
竜「あぁ、確かに坊ちゃんは『ハマると病みつきに』って……」
組員B「でもヤクザなら、そういうのに手を出しても当然なんじゃ…」
竜「バッキャローーー!!うちの組はクスリには手出さねぇ清きヤクザなんだよッ!!」
組員B「す、すいやせん!! でもヤクザである時点で、清きもクソもねぇような……」
竜「坊ちゃん……あっしらの知らねえところで非行へ走っちまうだなんて」
楽「キターーーーーーーーーーーー!! 届くのを待ちに待ってたぜ、AKBのニューシングル『ポニーテールとゴム』!」
楽の 「おお届いた届いた〜。これが来るのをどれ程待ちかねていたことかぁ!!」
ガサゴソガサゴソ
竜「くぅぅ……坊ちゃん、坊ちゃんがまさか……」シクシク
組員A「いつまでも泣かねぇでくだせよ竜さん。それよりも、本当なんですかい?坊ちゃんがヤクに手を出したってのは!?」
竜「あぁ、確かに坊ちゃんは『ハマると病みつきに』って……」
組員B「でもヤクザなら、そういうのに手を出しても当然なんじゃ…」
竜「バッキャローーー!!うちの組はクスリには手出さねぇ清きヤクザなんだよッ!!」
組員B「す、すいやせん!! でもヤクザである時点で、清きもクソもねぇような……」
竜「坊ちゃん……あっしらの知らねえところで非行へ走っちまうだなんて」
楽「キターーーーーーーーーーーー!! 届くのを待ちに待ってたぜ、AKBのニューシングル『ポニーテールとゴム』!」
4: ゴム屋おのでら 2015/11/16(月) 13:15:17.76 ID:/MaSIJGL0
竜たち「へ…………?」
組員A「竜さん、AKBってなんですかい?ポニーテールとゴムってなんですかい?」
竜「た、確か……そんな名前の小娘共が集まって歌を歌う集団があったような気が」
組員B「それって、いわゆるアイドルってやつですかい?」
楽「テンション上がるーーーーーーーーーーーー!!!」
竜「そうか……。まあ、坊ちゃんくらいの歳にもなりゃそういうのに興味持っても不思議じゃねえが」
組員A「なんだアイドルですかい。それなら心配するような事はねぇですって」
組員B「あれ、でも坊ちゃんの様子がちょっと変じゃないですかい……」
楽「ハァハァ……可愛ヨ…可愛ヨパルル……ウヒョォォォォ」
組員A「うわ、坊ちゃんがまるでヤクにハマっちまったような顔になってますぜ!!」
竜「そんなッ、くぅ……坊ちゃん、おいたわしい……」
組員B「竜さん、坊ちゃんが買ったのって本当は白い粉とかなんじゃ……」
竜「そ、そんなわけねぇだろうがッ!!」
組員A「竜さん、AKBってなんですかい?ポニーテールとゴムってなんですかい?」
竜「た、確か……そんな名前の小娘共が集まって歌を歌う集団があったような気が」
組員B「それって、いわゆるアイドルってやつですかい?」
楽「テンション上がるーーーーーーーーーーーー!!!」
竜「そうか……。まあ、坊ちゃんくらいの歳にもなりゃそういうのに興味持っても不思議じゃねえが」
組員A「なんだアイドルですかい。それなら心配するような事はねぇですって」
組員B「あれ、でも坊ちゃんの様子がちょっと変じゃないですかい……」
楽「ハァハァ……可愛ヨ…可愛ヨパルル……ウヒョォォォォ」
組員A「うわ、坊ちゃんがまるでヤクにハマっちまったような顔になってますぜ!!」
竜「そんなッ、くぅ……坊ちゃん、おいたわしい……」
組員B「竜さん、坊ちゃんが買ったのって本当は白い粉とかなんじゃ……」
竜「そ、そんなわけねぇだろうがッ!!」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:16:15.91 ID:/MaSIJGL0
組員A「あれ、坊ちゃんの手元にあるのって……CDすかね?」
竜「CD!?CDってのはあの音楽を聴く円盤のことだろ?なんでまたそんなもんを」
組員B「あ、よく見りゃあのCDのパッケージに写ってるの、AKBでっせ」
竜「ってこたぁ…坊ちゃんはAKBのCDを買ったってことか!!はぁーーーよかった。坊ちゃんがヤクになんざぁはまらんで」
組員B「あれ、でもよく見てくだせえ竜さん。坊ちゃんの手元に大量のCDがありまっせ!」
竜「あっ、なんだって!?」
楽「ふぅ〜。今回は劇場盤が23枚と、通常の初回限定のやつをtypeAとtypeBがそれぞれ5枚に、typeCが3枚か。まあ少なめだけど、今回はこんなもんだろうな」
竜「な、なんで坊ちゃんは同じCDをああも大量に買ってるんだい?」
組員A「さぁ……あっしらには理解出来ねぇでさぁ…」
組員B「坊ちゃん、なにやら1人でブツブツ言ってやしたけど、同じCDを何枚も買って金の無駄じゃないんですかね……」
竜「CD!?CDってのはあの音楽を聴く円盤のことだろ?なんでまたそんなもんを」
組員B「あ、よく見りゃあのCDのパッケージに写ってるの、AKBでっせ」
竜「ってこたぁ…坊ちゃんはAKBのCDを買ったってことか!!はぁーーーよかった。坊ちゃんがヤクになんざぁはまらんで」
組員B「あれ、でもよく見てくだせえ竜さん。坊ちゃんの手元に大量のCDがありまっせ!」
竜「あっ、なんだって!?」
楽「ふぅ〜。今回は劇場盤が23枚と、通常の初回限定のやつをtypeAとtypeBがそれぞれ5枚に、typeCが3枚か。まあ少なめだけど、今回はこんなもんだろうな」
竜「な、なんで坊ちゃんは同じCDをああも大量に買ってるんだい?」
組員A「さぁ……あっしらには理解出来ねぇでさぁ…」
組員B「坊ちゃん、なにやら1人でブツブツ言ってやしたけど、同じCDを何枚も買って金の無駄じゃないんですかね……」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:16:42.79 ID:/MaSIJGL0
楽「さ〜てと、今回は当たりが出るかな…」
ガサゴソ
竜「坊ちゃんがCDが入ってた箱の中を漁り始めたぞ。一体何を……」
組員B「あっ、見てくだせえ竜さん!! 坊ちゃんが取り出したのって、ビニール袋じゃないっすかね!!」
組員A「ハッ…ひょっとして、あのビニールの中にブツがあるんじゃ!!?」
竜「な、なんだとぉーーーーー!!」
楽「ふふふ〜〜ん♪」ガサゴソ
組員A「ありゃ、ビニールから出てきたのって……写真ですかい?」
竜「はぁッ、写真だと?」
組員B「なんで写真なんて入ってるんだ………」
楽「なんだよチクショーーー!! あ〜あ、今回もぱるるの生写真入ってなかったぜ。」
竜「ぱるる…………?生写真…………?」
ガサゴソ
竜「坊ちゃんがCDが入ってた箱の中を漁り始めたぞ。一体何を……」
組員B「あっ、見てくだせえ竜さん!! 坊ちゃんが取り出したのって、ビニール袋じゃないっすかね!!」
組員A「ハッ…ひょっとして、あのビニールの中にブツがあるんじゃ!!?」
竜「な、なんだとぉーーーーー!!」
楽「ふふふ〜〜ん♪」ガサゴソ
組員A「ありゃ、ビニールから出てきたのって……写真ですかい?」
竜「はぁッ、写真だと?」
組員B「なんで写真なんて入ってるんだ………」
楽「なんだよチクショーーー!! あ〜あ、今回もぱるるの生写真入ってなかったぜ。」
竜「ぱるる…………?生写真…………?」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:17:09.00 ID:/MaSIJGL0
組員A「坊ちゃん、一体何を言ってるんすかね…?」
楽「あ〜あ、今回もハズレかよ。俺が欲しかったのはぱるるのなのによ、誰もビッチ臭え柏木とかごしはるとかのいらねえっつ〜の」
組員A「ビッチって、どうやら女の話をしてるみてぇですぜ」
竜「そうか……坊ちゃんも女を侍らすようになったんですね。くぅ〜〜〜〜あっしらの知らねえところで坊ちゃんも男になったんすね。あっしは嬉しいでさぁーーー!!」
楽「あ〜あ、今回もハズレかよ。俺が欲しかったのはぱるるのなのによ、誰もビッチ臭え柏木とかごしはるとかのいらねえっつ〜の」
組員A「ビッチって、どうやら女の話をしてるみてぇですぜ」
竜「そうか……坊ちゃんも女を侍らすようになったんですね。くぅ〜〜〜〜あっしらの知らねえところで坊ちゃんも男になったんすね。あっしは嬉しいでさぁーーー!!」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:17:47.22 ID:/MaSIJGL0
ピポパポピ……prpr
ガチャ
楽「もしもし集かぁ?」
組員A「今度は電話で誰かと話してるっすね」
組員B「相手は集坊ちゃんみてえだな」
楽「なあ、お前のとこにも届いたか?AKBの新曲」
組員A「お前もってこたぁ…、向こうもAKBのCDを買ったんですかいね?」
竜「AKBってのはそんなに流行ってんのか?」
組員B「さぁ。少なくともあっしらみてぇなのにはあまり浸透してねぇ感じですね」
楽「なぁ集、よかったらさ俺の持ってるゆきりんとお前のぱるる交換しねえか?」
竜「なッ、女を交換だとぉーーー!?」
組員A「最近の高校生は人身売買をするんですかい!?」
楽「はぁーーー?なんだよ、お前ゆきりん好きだって言ってたじゃねえか!」
組員B「あれ、なんか揉めてるようでっせ」
楽「お前、いつの間に推し変したんだよ!? なに……、ゆきりんがこの前手越と週刊誌に撮られてからだって。チッ、なんだよ…………」
組員A「週刊誌!?」
竜「坊ちゃん、いつの間に有名人と友達に!?」
楽「はぁ……わかったよ、じゃな。」
ガチャ
楽「ったく、集のやつ推し変なんかしやがつてよ。テンション下がったな……飯まで寝ようかな」
組員A「あれ、坊ちゃん電話を切ってそのまま寝ちゃいましたぜ」
組員B「しかも買ったCD全然聴いてねぇでっせ」
竜「坊ちゃん………坊ちゃんに一体なにが!?」
羽「………………楽ちゃん」
ガチャ
楽「もしもし集かぁ?」
組員A「今度は電話で誰かと話してるっすね」
組員B「相手は集坊ちゃんみてえだな」
楽「なあ、お前のとこにも届いたか?AKBの新曲」
組員A「お前もってこたぁ…、向こうもAKBのCDを買ったんですかいね?」
竜「AKBってのはそんなに流行ってんのか?」
組員B「さぁ。少なくともあっしらみてぇなのにはあまり浸透してねぇ感じですね」
楽「なぁ集、よかったらさ俺の持ってるゆきりんとお前のぱるる交換しねえか?」
竜「なッ、女を交換だとぉーーー!?」
組員A「最近の高校生は人身売買をするんですかい!?」
楽「はぁーーー?なんだよ、お前ゆきりん好きだって言ってたじゃねえか!」
組員B「あれ、なんか揉めてるようでっせ」
楽「お前、いつの間に推し変したんだよ!? なに……、ゆきりんがこの前手越と週刊誌に撮られてからだって。チッ、なんだよ…………」
組員A「週刊誌!?」
竜「坊ちゃん、いつの間に有名人と友達に!?」
楽「はぁ……わかったよ、じゃな。」
ガチャ
楽「ったく、集のやつ推し変なんかしやがつてよ。テンション下がったな……飯まで寝ようかな」
組員A「あれ、坊ちゃん電話を切ってそのまま寝ちゃいましたぜ」
組員B「しかも買ったCD全然聴いてねぇでっせ」
竜「坊ちゃん………坊ちゃんに一体なにが!?」
羽「………………楽ちゃん」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:18:18.20 ID:/MaSIJGL0
翌日、学校にて……
小咲「あ、おはよー千棘ちゃん」
千棘「おはよー小咲ちゃん……」
小咲「あれ、今日も一条くんと一緒じゃなかったの?」
千棘「そうなのよね。あいつ、放課後だけじゃなくて登校まで付き合い悪くなってさ………はぁ」
小咲「そ、そうなんだぁ……」
千棘(何よあいつ、私にはもう何も感じないっていうの…………)シュン
小咲(一条くん、一体どうしちゃったんだろう……)
集「やぁーーーみんなおはよう」
小咲「あ、舞子くんおはよう」
千棘「あれ、舞子くん、楽と一緒じゃないの?」
集「ああ、楽なら学校前に寄るとこあるってさ?」
千棘「え、学校に来る前にって、わざわざ何処寄ってんのよアイツ!?」
小咲「舞子くんは一条くんがどこへ寄ってるのかを知ってるの?」
集「知ってるけど…てゆうか、俺はてっきり2人なら楽から教えてもらってるのかと思ったけど」
小咲「え、それってどういう………」
ガラッ
羽「は〜いみんな、席についてね」
小咲「あ、おはよー千棘ちゃん」
千棘「おはよー小咲ちゃん……」
小咲「あれ、今日も一条くんと一緒じゃなかったの?」
千棘「そうなのよね。あいつ、放課後だけじゃなくて登校まで付き合い悪くなってさ………はぁ」
小咲「そ、そうなんだぁ……」
千棘(何よあいつ、私にはもう何も感じないっていうの…………)シュン
小咲(一条くん、一体どうしちゃったんだろう……)
集「やぁーーーみんなおはよう」
小咲「あ、舞子くんおはよう」
千棘「あれ、舞子くん、楽と一緒じゃないの?」
集「ああ、楽なら学校前に寄るとこあるってさ?」
千棘「え、学校に来る前にって、わざわざ何処寄ってんのよアイツ!?」
小咲「舞子くんは一条くんがどこへ寄ってるのかを知ってるの?」
集「知ってるけど…てゆうか、俺はてっきり2人なら楽から教えてもらってるのかと思ったけど」
小咲「え、それってどういう………」
ガラッ
羽「は〜いみんな、席についてね」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:19:04.30 ID:/MaSIJGL0
そして昼休みになり…
楽「〜〜〜♪」
小咲「ねえ、千棘ちゃん。一条くん、やっぱり様子がおかしくないかな?」ヒソヒソ
千棘「小咲ちやんもそう思う?やっぱりアイツ、何か変よ!! 今日だって朝来ないで途中から授業出てきたし」
ヒソヒソ
小咲「ひょっとして、何処か具合でも悪いのかな。もしかしたら、登校する前に病院へ寄ってたとか?」
千棘「いや、それはないんじゃない。アイツなんだが元気そうよ。しかもご機嫌でダラシない顔で鼻歌まで歌っちゃってるし」
楽「〜〜〜♪」
小咲「一条くん、一体どうしちゃったんだろう……」シュン
楽「〜〜〜♪」
小咲「ねえ、千棘ちゃん。一条くん、やっぱり様子がおかしくないかな?」ヒソヒソ
千棘「小咲ちやんもそう思う?やっぱりアイツ、何か変よ!! 今日だって朝来ないで途中から授業出てきたし」
ヒソヒソ
小咲「ひょっとして、何処か具合でも悪いのかな。もしかしたら、登校する前に病院へ寄ってたとか?」
千棘「いや、それはないんじゃない。アイツなんだが元気そうよ。しかもご機嫌でダラシない顔で鼻歌まで歌っちゃってるし」
楽「〜〜〜♪」
小咲「一条くん、一体どうしちゃったんだろう……」シュン
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:19:43.91 ID:/MaSIJGL0
集「そのリズム……さてはお前、学校来る前に早速聴いてきたなぁ?」
楽「お、わかるか集! そうなんだよ。いやぁ〜〜今回のはまあまあの良曲だな」
小咲「あれ、舞子くんとは普通に話してるね」
千棘「聴いてきた……良曲……、一体何の事?」
集「まあ俺はこの間の曲の方が好みだったけどね」
楽「ふっ、わかってねぇ〜な集は。今回の新曲『ポニーテールとゴム』の方がヲタク心を分かってる構成になってんだろう」
集「そうかぁ?ま、確かにコンドームで髪型をポニーテールにする乙女心を歌にしたってのはなかなか斬新だと思うけど、神曲とまでは言えないんじゃないの〜〜」
楽「あぁ〜その点は俺も同感だな」
小咲「ゴムに神曲って……、一条くんたち一体何を話してるんだろう?」
千棘「とりあえず、もう少し聞いてみましょう」
楽「お、わかるか集! そうなんだよ。いやぁ〜〜今回のはまあまあの良曲だな」
小咲「あれ、舞子くんとは普通に話してるね」
千棘「聴いてきた……良曲……、一体何の事?」
集「まあ俺はこの間の曲の方が好みだったけどね」
楽「ふっ、わかってねぇ〜な集は。今回の新曲『ポニーテールとゴム』の方がヲタク心を分かってる構成になってんだろう」
集「そうかぁ?ま、確かにコンドームで髪型をポニーテールにする乙女心を歌にしたってのはなかなか斬新だと思うけど、神曲とまでは言えないんじゃないの〜〜」
楽「あぁ〜その点は俺も同感だな」
小咲「ゴムに神曲って……、一条くんたち一体何を話してるんだろう?」
千棘「とりあえず、もう少し聞いてみましょう」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:20:19.89 ID:/MaSIJGL0
楽「それより集、お前いつの間に推し変なんてしやがったんだよ!?」
集「あぁ、昨日の電話のことか。いやだってさぁ〜〜、ゆきりんって元々スキャンダル多いメンバーだったじゃん。それなのに謝罪もなくスルーときたら、さすがに今まで神推ししてた俺も他の子に鞍替えしちゃうよ」
楽「まあ確かに、ゆきりんはひでえもんな」
千棘「ゆ、ゆきりん?ねぇ小咲ちゃん
、ゆきりんって何か知ってる?」
小咲「ううん、知らないな。でもどこかで聞いたことあるような……」
集「お前だって、いつまでぱるるなんか推してんだよ。いい加減推し変しちゃえば?」
楽「ハァッ、ぱるるのこと悪く言うんじゃねえよ!!ぱるるはな、塩対応とか言われてるけど、本当は凄く健気でいい子なんだぞ!!」
小咲「はわわ、一条くんが怒り出しちゃったよ!!」
千棘「ぱるる? ぱるるって一体何よ!?動物かなんか!?」
集「あぁ、昨日の電話のことか。いやだってさぁ〜〜、ゆきりんって元々スキャンダル多いメンバーだったじゃん。それなのに謝罪もなくスルーときたら、さすがに今まで神推ししてた俺も他の子に鞍替えしちゃうよ」
楽「まあ確かに、ゆきりんはひでえもんな」
千棘「ゆ、ゆきりん?ねぇ小咲ちゃん
、ゆきりんって何か知ってる?」
小咲「ううん、知らないな。でもどこかで聞いたことあるような……」
集「お前だって、いつまでぱるるなんか推してんだよ。いい加減推し変しちゃえば?」
楽「ハァッ、ぱるるのこと悪く言うんじゃねえよ!!ぱるるはな、塩対応とか言われてるけど、本当は凄く健気でいい子なんだぞ!!」
小咲「はわわ、一条くんが怒り出しちゃったよ!!」
千棘「ぱるる? ぱるるって一体何よ!?動物かなんか!?」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:21:15.12 ID:/MaSIJGL0
集「ほ〜お、随分とぱるるの単推しぶりが凄いな楽は。でもよ、ぱるるって最近AKBのイベントサボって握手会も全然出てこないじゃん。そのくせ映画のイベントには出てくんのに、ファンとしては不満はないの?」
楽「え?ううん………まあ正直言えば、ここ最近のぱるるの言動は確かにおかしいとは思うけどな。映画のイベント出るくらいならAKBのイベントにも参加しろよって確かに思うぜ。あくまでも本業はAKBのくせに女優面して映画のイベントだけ出てサボるようだと、これからのぱるるは心配しちまうよな………」
集「だろぉーー?そこでだ、今度の週末のイベントでさ、俺と一緒に新しい推しメンを探さない?」
楽「おお、そういや全国の関東は今週末だったな。」
小咲「全国?週末? 今週末に何かあるのかな?」
千棘「ないかのイベントっぽいけど、もしかして最近の楽が変なのもそれに関係してるんじゃ………」
鶫「お嬢たち、先程から何をしているのですか?」
千棘「あ、鶫!」
るり「何をヒソヒソと話してるのよ小咲?」
小咲「あ、るりちゃん」
万里花「まあ〜楽様が話されているところをコソコソと聞き耳を立てて盗み聞きとは、随分と悪趣味ですわ」
千棘「フンッ、あんたには関係ないでしょ!」
鶫「お、あそこにいるのは一条楽と舞子集。2人して何を話しているのだ?」
るり「何よ小咲、会話に混ざりたいんなら普通に一条くんに話しかければいいじゃないの?」
小咲「いや、あのその……」
千棘「実はね……」
楽「え?ううん………まあ正直言えば、ここ最近のぱるるの言動は確かにおかしいとは思うけどな。映画のイベント出るくらいならAKBのイベントにも参加しろよって確かに思うぜ。あくまでも本業はAKBのくせに女優面して映画のイベントだけ出てサボるようだと、これからのぱるるは心配しちまうよな………」
集「だろぉーー?そこでだ、今度の週末のイベントでさ、俺と一緒に新しい推しメンを探さない?」
楽「おお、そういや全国の関東は今週末だったな。」
小咲「全国?週末? 今週末に何かあるのかな?」
千棘「ないかのイベントっぽいけど、もしかして最近の楽が変なのもそれに関係してるんじゃ………」
鶫「お嬢たち、先程から何をしているのですか?」
千棘「あ、鶫!」
るり「何をヒソヒソと話してるのよ小咲?」
小咲「あ、るりちゃん」
万里花「まあ〜楽様が話されているところをコソコソと聞き耳を立てて盗み聞きとは、随分と悪趣味ですわ」
千棘「フンッ、あんたには関係ないでしょ!」
鶫「お、あそこにいるのは一条楽と舞子集。2人して何を話しているのだ?」
るり「何よ小咲、会話に混ざりたいんなら普通に一条くんに話しかければいいじゃないの?」
小咲「いや、あのその……」
千棘「実はね……」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:21:51.43 ID:/MaSIJGL0
鶫「つまり、最バーーーローー条楽の様子がおかしいのが気になって、2人で様子を伺ってたと?」
千棘「そうなのよ。楽ったら、私達とは付き合い悪くなったくせに舞子くんとは普段通りに話してたし、一体何なのよ、もうッ!!」
鶫「おのれ一条楽め!!お嬢というものがありながら」
小咲「でも舞子くんとの会話も普段とは違った感じなんだよね。聞き慣れない言葉がたくさん出てきたし」
るり「聞き慣れない言葉?」
小咲「うん。確か舞子くんとがね、ゆきりんがどうのこうのって言ってた」
万里花「ゆきりん?」
千棘「それから神曲だの推し変だのとも言ってたわね」
鶫「何かの隠語でしょうか?麻薬を小麦粉と言い換えるように」
るり「ひょっとしてそれ、AKB48のことじゃないの?」
みんな「え、AKB48!?」
千棘「そうなのよ。楽ったら、私達とは付き合い悪くなったくせに舞子くんとは普段通りに話してたし、一体何なのよ、もうッ!!」
鶫「おのれ一条楽め!!お嬢というものがありながら」
小咲「でも舞子くんとの会話も普段とは違った感じなんだよね。聞き慣れない言葉がたくさん出てきたし」
るり「聞き慣れない言葉?」
小咲「うん。確か舞子くんとがね、ゆきりんがどうのこうのって言ってた」
万里花「ゆきりん?」
千棘「それから神曲だの推し変だのとも言ってたわね」
鶫「何かの隠語でしょうか?麻薬を小麦粉と言い換えるように」
るり「ひょっとしてそれ、AKB48のことじゃないの?」
みんな「え、AKB48!?」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:22:38.79 ID:/MaSIJGL0
鶫「AKBとは、あのAKBのことでしょうか?」
千棘「え、鶫は知ってんの!?」
鶫「はい。お嬢は知らないのですか?AKB48とは、今一部の熱狂的な支持者から盲目的に支持されているアイドルグループのことですよ」
千棘「アイドル!? そんなのが今流行ってるの?」
鶫「ええ、ただ流行っているかと言うと微妙なところですね。そのAKBなのですが、全盛期はもうとっくに過ぎてますので」
万里花「私もテレビでたまたま見たことがありますわ。でもさほどレベルの高い集団というわけでもありませんわ。ダンスも素人レベルで歌は口パクが毎度のこと、最近では人気メンバーの卒業や相次ぐスキャンダルで低迷が止まらないとネットでも叩かれているらしいようで」
小咲「そ、そうなんだ……。そういえば私も詳しくは知らないけど、でもテレビでAKBが出てるのを見たりしたことはあるよ」
千棘「でも、どうして今更楽がそんなのを好きになんのよ!!?なんか納得出来ないわね……」
るり「確かにそうね。AKBなんて今更好きになる理由がわからないし、最近じゃファンは減少傾向でアンチは増加傾向なのに」
鶫「まあ、あのくらいの歳ならアイドというものにハマっても不思議ではないが、だがまさか一条楽がアイドルオタクだったとは……」
千棘「うわッ、オタクとかマジキモいんだけど………」
千棘(もう、何よ楽の奴!! 私がいるのにそのAKBとかいうのが好きになったの?だから最近私にも冷たいわけ…………)
小咲(一条くん、AKBのことが好きなのかな…。私よりも、AKBの方が可愛いって思ってるのかな………)
千棘「え、鶫は知ってんの!?」
鶫「はい。お嬢は知らないのですか?AKB48とは、今一部の熱狂的な支持者から盲目的に支持されているアイドルグループのことですよ」
千棘「アイドル!? そんなのが今流行ってるの?」
鶫「ええ、ただ流行っているかと言うと微妙なところですね。そのAKBなのですが、全盛期はもうとっくに過ぎてますので」
万里花「私もテレビでたまたま見たことがありますわ。でもさほどレベルの高い集団というわけでもありませんわ。ダンスも素人レベルで歌は口パクが毎度のこと、最近では人気メンバーの卒業や相次ぐスキャンダルで低迷が止まらないとネットでも叩かれているらしいようで」
小咲「そ、そうなんだ……。そういえば私も詳しくは知らないけど、でもテレビでAKBが出てるのを見たりしたことはあるよ」
千棘「でも、どうして今更楽がそんなのを好きになんのよ!!?なんか納得出来ないわね……」
るり「確かにそうね。AKBなんて今更好きになる理由がわからないし、最近じゃファンは減少傾向でアンチは増加傾向なのに」
鶫「まあ、あのくらいの歳ならアイドというものにハマっても不思議ではないが、だがまさか一条楽がアイドルオタクだったとは……」
千棘「うわッ、オタクとかマジキモいんだけど………」
千棘(もう、何よ楽の奴!! 私がいるのにそのAKBとかいうのが好きになったの?だから最近私にも冷たいわけ…………)
小咲(一条くん、AKBのことが好きなのかな…。私よりも、AKBの方が可愛いって思ってるのかな………)
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:23:42.17 ID:/MaSIJGL0
るり「でも、やっぱり変ね」
小咲「え、変って何が?」
るり「今まで一条くんがAKBが好きだっている素振りなんて見て来なかったじゃない?それなのに最近になって好きになるだなんて、何かきっかけがあったんじゃないかしら」
小咲「きっかけ?」
鶫「そういえば、一条楽の奴がお二人との付き合いが悪くなったのは何時頃なのですか?」
千棘「ここ最近よ」
小咲「うん。一条くんがうちのお店に来なくなったのもつい最近のことだし」
るり「……………ひょっとして、舞子くんかしら」
小咲「え、舞子くん!?」
鶫「ハッ、まさか舞子集の奴が一条楽をそそのかして……」
万里花「その結果、楽様をオタクにしてしまったと?」
るり「いや、まだ断定は出来ないけど、でもその可能性は高いわね。舞子くんならやりかねないわ」
小咲「それじゃ、もしそれが本当なら、一条くんは舞子くんのせいでAKBのオタクになっちゃったってこと!?」
千棘「なッ、何よそれーーーーー!!」
鶫「お、落ち着いてくださいお嬢!!まだそうと決まったわけではありません」
万里花「でも、もし本当にそうだししたら、このままにしておくわけには参りませんわね」
千棘「そうよ!! そのAKBってのとがなんなのかよく知らないけど、でもなんか負けたみたいな感じがして気に入らないわ!!小咲ちゃんも嫌でしょ?」
小咲「え、…………う、うん!! 私も、一条くんがAKBのオタクだなんて嫌だよ! 前の一条くんに戻って欲しいよ!!」
るり「おぉ、あんたにしてはよく言ったわよ小咲!!」
千棘「そうよ小咲ちゃん!!こうなったら私たちで楽の奴をオタクの道から救い出してやりましょうよ!」
万里花「私もこのまま楽様が童貞無職なキモヲタに成り果ててしまうのを見逃すわけにはいきませんわ!! 今回ばかりは私も協力いたしますわ!!」
鶫「しかし、具体的には一体どうすれば……」
小咲「え、変って何が?」
るり「今まで一条くんがAKBが好きだっている素振りなんて見て来なかったじゃない?それなのに最近になって好きになるだなんて、何かきっかけがあったんじゃないかしら」
小咲「きっかけ?」
鶫「そういえば、一条楽の奴がお二人との付き合いが悪くなったのは何時頃なのですか?」
千棘「ここ最近よ」
小咲「うん。一条くんがうちのお店に来なくなったのもつい最近のことだし」
るり「……………ひょっとして、舞子くんかしら」
小咲「え、舞子くん!?」
鶫「ハッ、まさか舞子集の奴が一条楽をそそのかして……」
万里花「その結果、楽様をオタクにしてしまったと?」
るり「いや、まだ断定は出来ないけど、でもその可能性は高いわね。舞子くんならやりかねないわ」
小咲「それじゃ、もしそれが本当なら、一条くんは舞子くんのせいでAKBのオタクになっちゃったってこと!?」
千棘「なッ、何よそれーーーーー!!」
鶫「お、落ち着いてくださいお嬢!!まだそうと決まったわけではありません」
万里花「でも、もし本当にそうだししたら、このままにしておくわけには参りませんわね」
千棘「そうよ!! そのAKBってのとがなんなのかよく知らないけど、でもなんか負けたみたいな感じがして気に入らないわ!!小咲ちゃんも嫌でしょ?」
小咲「え、…………う、うん!! 私も、一条くんがAKBのオタクだなんて嫌だよ! 前の一条くんに戻って欲しいよ!!」
るり「おぉ、あんたにしてはよく言ったわよ小咲!!」
千棘「そうよ小咲ちゃん!!こうなったら私たちで楽の奴をオタクの道から救い出してやりましょうよ!」
万里花「私もこのまま楽様が童貞無職なキモヲタに成り果ててしまうのを見逃すわけにはいきませんわ!! 今回ばかりは私も協力いたしますわ!!」
鶫「しかし、具体的には一体どうすれば……」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:24:30.24 ID:/MaSIJGL0
羽「あのぉ………」
千棘「羽先生?」
羽「ごめんね。みんなが話してるところを聞いてどうしても放っておけなくてね。楽ちゃんのことなんだけどね、実はね…………」
みんな「ええ!?最近家に帰ってから部屋に引きこもるようになった!?」
羽「うん、そうなの。最近の楽ちゃん、家でも様子がおかしいんだ」
千棘「アイツ、私達に対してだけじゃなくて、家でも様子おかしいのね」
小咲「一条くんがそうなっちゃったのって、何時頃からですか?」
羽「つい最近。多分、みんなと付き合いが悪くなり始めたのと同じタイミングだと思うの」
万里花「楽様……部屋で1人引きこもって一体何をしてるのでしょうか」
羽「うん、そう思ってね、楽ちゃんがお風呂に入っている間こっそり部屋に入ってみたの。そしたらこれが置いてあったの」っ
るり「これって!?」
鶫「CDのようですが……まさかこれは!?」
羽「うん。AKBのCDよ」
千棘「羽先生?」
羽「ごめんね。みんなが話してるところを聞いてどうしても放っておけなくてね。楽ちゃんのことなんだけどね、実はね…………」
みんな「ええ!?最近家に帰ってから部屋に引きこもるようになった!?」
羽「うん、そうなの。最近の楽ちゃん、家でも様子がおかしいんだ」
千棘「アイツ、私達に対してだけじゃなくて、家でも様子おかしいのね」
小咲「一条くんがそうなっちゃったのって、何時頃からですか?」
羽「つい最近。多分、みんなと付き合いが悪くなり始めたのと同じタイミングだと思うの」
万里花「楽様……部屋で1人引きこもって一体何をしてるのでしょうか」
羽「うん、そう思ってね、楽ちゃんがお風呂に入っている間こっそり部屋に入ってみたの。そしたらこれが置いてあったの」っ
るり「これって!?」
鶫「CDのようですが……まさかこれは!?」
羽「うん。AKBのCDよ」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:25:15.85 ID:/MaSIJGL0
小咲「こ、これが一条くんをオタクにしちゃったAKBのCD!?初めて見る」
千棘「このジャケットに写ってるのがAKBね。……って、なんでこいつら水着なのよ!!?」
小咲「はわわ、ホントだぁ///」
鶫「み、水着を着た少女達の写真を見て如何わしいことをしていたのか!?おのれ、一条楽様め……///」
羽「まあ、楽ちゃんもそういうお年頃だから、部屋にAKBのCDがある分には別に問題ないんだけどね」
るり「他に何か問題なことでも」
羽「うん。実はね、これと同じようなAKBのCDが楽ちゃんの部屋に山積みになってたの」
小咲「え?同じCDが山積みってどういうことですか?CDなんて入ってる曲は同じなんだし、一枚買えばいいと思うけど」
千棘「このジャケットに写ってるのがAKBね。……って、なんでこいつら水着なのよ!!?」
小咲「はわわ、ホントだぁ///」
鶫「み、水着を着た少女達の写真を見て如何わしいことをしていたのか!?おのれ、一条楽様め……///」
羽「まあ、楽ちゃんもそういうお年頃だから、部屋にAKBのCDがある分には別に問題ないんだけどね」
るり「他に何か問題なことでも」
羽「うん。実はね、これと同じようなAKBのCDが楽ちゃんの部屋に山積みになってたの」
小咲「え?同じCDが山積みってどういうことですか?CDなんて入ってる曲は同じなんだし、一枚買えばいいと思うけど」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:25:50.19 ID:/MaSIJGL0
るり「なるほど、AKB商法ね!!」
千棘「AKB商法?何よそれ?」
鶫「AKB商法というのはですね、同じCDをヲタク共に何枚も購入させるために特典をつけて売り上げを伸ばそうとするAKBお得意の卑怯な戦術のことです!!」
るり「そう。それでオタク達は同じCDなのにその特典欲しさに何枚も購入してしまうの。実に汚いやり方だわ」
万里花「ええ、実際には買っているのは一部のマニアックな身も心も醜い殿方ばかりですのに、結果としてCDはその特典商法の効果でミリオン超え、でも実際にはCD自体はあまり聞かれておらず、特典のみを抜き取ってCDをネットオークションや古本屋に売るか、ひどい場合にはそのまま投棄するという輩もいるようですの」
千棘「何よそれ!!?そんなのCD売れたことになんないじゃないの!!やり方が汚いし卑怯だわ!」
小咲「そんなぁーーー、そんなのお金の無駄遣いだよ。それに気づかないでいる一条くんがあまりにも気の毒だよ」
羽「そうなの!!最近の楽ちゃん、AKBにハマりすぎちゃって、みんなの分の料理も作ろうとしてくれないの」
千棘「え、それじゃ料理はどうしてるんですか?」
羽「最初の頃は私が作った餃子でみんな満足してくれてたんだけど、でも餃子ばかりだと飽きちゃうし、でも私餃子しか作れないから。それで最近はみんなコンビニで買ったカップ麺で済ませてるの」
鶫「カップ麺ばかりでは健康に良くないな」
るり「ひょっとして、一条くんもカップ麺ばかり食べてるんですか?」
羽「うん、どうやらそうらしくてね。集英組のみんなも、いい加減楽ちゃんの料理を食べたいって嘆いてるんだ」
千棘「AKB商法?何よそれ?」
鶫「AKB商法というのはですね、同じCDをヲタク共に何枚も購入させるために特典をつけて売り上げを伸ばそうとするAKBお得意の卑怯な戦術のことです!!」
るり「そう。それでオタク達は同じCDなのにその特典欲しさに何枚も購入してしまうの。実に汚いやり方だわ」
万里花「ええ、実際には買っているのは一部のマニアックな身も心も醜い殿方ばかりですのに、結果としてCDはその特典商法の効果でミリオン超え、でも実際にはCD自体はあまり聞かれておらず、特典のみを抜き取ってCDをネットオークションや古本屋に売るか、ひどい場合にはそのまま投棄するという輩もいるようですの」
千棘「何よそれ!!?そんなのCD売れたことになんないじゃないの!!やり方が汚いし卑怯だわ!」
小咲「そんなぁーーー、そんなのお金の無駄遣いだよ。それに気づかないでいる一条くんがあまりにも気の毒だよ」
羽「そうなの!!最近の楽ちゃん、AKBにハマりすぎちゃって、みんなの分の料理も作ろうとしてくれないの」
千棘「え、それじゃ料理はどうしてるんですか?」
羽「最初の頃は私が作った餃子でみんな満足してくれてたんだけど、でも餃子ばかりだと飽きちゃうし、でも私餃子しか作れないから。それで最近はみんなコンビニで買ったカップ麺で済ませてるの」
鶫「カップ麺ばかりでは健康に良くないな」
るり「ひょっとして、一条くんもカップ麺ばかり食べてるんですか?」
羽「うん、どうやらそうらしくてね。集英組のみんなも、いい加減楽ちゃんの料理を食べたいって嘆いてるんだ」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:27:18.30 ID:/MaSIJGL0
千棘「楽をそんな風にしちゃうだなんて、AKBってなんだか恐ろしいのね」
鶫「確かに、アイドルはハマると宗教やクスリよりも厄介ですからね」
羽「それで話を戻すけどね、部屋の中にあったこれと同じ大量のCDなんだけど、開封されてたのはこの1枚だけだったの」
小咲「え、それってどういうことですか?」
羽「つまり、ちゃんと曲を聴いたCDはこの一枚だけで、他の大量のCDは未開封のままで全く手をつけてない状態だったのよ。」
千棘「それじゃCD買った意味ないじゃないの!!」
鶫「まあAKBのオタクなんて所詮は曲目当てでCD買いませんよ。あくまでも欲しいのは特典のみですから」
るり「そうね。一回も曲を聞かないで特典だけ抜いてCDは捨てる馬鹿までいるって聞くし」
万里花「ホントに、ヲタクって気持ち悪いですわ」
羽「しかもこの開封された一枚もあまり聞かれた痕跡がなくてね、ほとんど新品に近い状態なの。」
千棘「ひょっとして楽が途中から授業に参加したのって………」
羽「多分、今朝になってCDを聞きたくなって、聞いたら思いの外ハマっちゃったパターンなのかもね」
小咲「そんな………一条くんかわいそうだよ。早くAKBの呪縛から解き放ってあげないと」
羽「そこでみんなにお願いがあるの。楽ちゃんを救ってあげてほしいの。今の楽ちゃんは私の言うことに聞き耳持ってくれそうにないし、だからみんなにしかお願いできないの!!」
小咲「任せてください先生!!きっも私達がAKBという深い闇から一条くんを救い出してみせます」
千棘「そうよ!!そんな気持ち悪いやり方でしかCDを売れないような卑怯な連中に負けてたまるかっての!!」
万里花「楽様にはAKBなんて下衆な雌ブタ共よりも、私が身近にいるということを思い出させてあげますわ!!」
鶫「お嬢の彼氏ともあろう者が、AKBなんぞという低レベルな現代文化の象徴のようなものにハマっていたのでは問題だからな!!お嬢、私も協力します」
るり「小咲がこのままじゃ私も調子狂うわ。ここはみんなで力を合わせて一条くんを元に戻してあげましょう」
みんな「おおぉぉーーーー!!」
羽「みんな………ありがとう。私もサポート役くらいは出来るからね」
鶫「確かに、アイドルはハマると宗教やクスリよりも厄介ですからね」
羽「それで話を戻すけどね、部屋の中にあったこれと同じ大量のCDなんだけど、開封されてたのはこの1枚だけだったの」
小咲「え、それってどういうことですか?」
羽「つまり、ちゃんと曲を聴いたCDはこの一枚だけで、他の大量のCDは未開封のままで全く手をつけてない状態だったのよ。」
千棘「それじゃCD買った意味ないじゃないの!!」
鶫「まあAKBのオタクなんて所詮は曲目当てでCD買いませんよ。あくまでも欲しいのは特典のみですから」
るり「そうね。一回も曲を聞かないで特典だけ抜いてCDは捨てる馬鹿までいるって聞くし」
万里花「ホントに、ヲタクって気持ち悪いですわ」
羽「しかもこの開封された一枚もあまり聞かれた痕跡がなくてね、ほとんど新品に近い状態なの。」
千棘「ひょっとして楽が途中から授業に参加したのって………」
羽「多分、今朝になってCDを聞きたくなって、聞いたら思いの外ハマっちゃったパターンなのかもね」
小咲「そんな………一条くんかわいそうだよ。早くAKBの呪縛から解き放ってあげないと」
羽「そこでみんなにお願いがあるの。楽ちゃんを救ってあげてほしいの。今の楽ちゃんは私の言うことに聞き耳持ってくれそうにないし、だからみんなにしかお願いできないの!!」
小咲「任せてください先生!!きっも私達がAKBという深い闇から一条くんを救い出してみせます」
千棘「そうよ!!そんな気持ち悪いやり方でしかCDを売れないような卑怯な連中に負けてたまるかっての!!」
万里花「楽様にはAKBなんて下衆な雌ブタ共よりも、私が身近にいるということを思い出させてあげますわ!!」
鶫「お嬢の彼氏ともあろう者が、AKBなんぞという低レベルな現代文化の象徴のようなものにハマっていたのでは問題だからな!!お嬢、私も協力します」
るり「小咲がこのままじゃ私も調子狂うわ。ここはみんなで力を合わせて一条くんを元に戻してあげましょう」
みんな「おおぉぉーーーー!!」
羽「みんな………ありがとう。私もサポート役くらいは出来るからね」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:27:54.54 ID:/MaSIJGL0
千棘「とは言ったけど、具体的にはどうすればいいのかしらね。楽本人に尋ねるわけにもいかないし」
小咲「そういえばさっき、舞子くんが一条くんに今週末がどうのこうのって言ってたけど、何かAKBのイベントでもあるのかな?」
るり「それ、もしかして握手会のことじゃないかしら!?」
千棘「握手会って?」
鶫「AKBの特典商法の要ともいえるものです。AKBはCDに握手券をつけて販売することで同じCDを何枚も買わせようとしているのですよ!!そうすることによって、たくさんCDを買えばそれだけたくさんの握手券が手に入る、つまりメンバーとたくさん握手出来るってことです」
千棘「うわ、何よそのやり方。マジキモいんだけど……」
万里花「そんなことまでしてアイドルと触れ合いたいのなら、いっそキャバクラや風俗へ行った方がいいですのにね」
小咲「それで同じCDだけたくさん手元に残っちゃうんだね」
るり「そうよ、だからAKB商法はいろんなところで問題視されてて、実際に批判もされているわ」
羽「今ネットで調べたんだけどね、確かに今週末に凡矢理文化ホールでAKBの握手会があるみたいだよ!」
千棘「それじゃ、楽達はそれに参加するつもりなのね!!」
小咲「そういえばさっき、舞子くんが一条くんに今週末がどうのこうのって言ってたけど、何かAKBのイベントでもあるのかな?」
るり「それ、もしかして握手会のことじゃないかしら!?」
千棘「握手会って?」
鶫「AKBの特典商法の要ともいえるものです。AKBはCDに握手券をつけて販売することで同じCDを何枚も買わせようとしているのですよ!!そうすることによって、たくさんCDを買えばそれだけたくさんの握手券が手に入る、つまりメンバーとたくさん握手出来るってことです」
千棘「うわ、何よそのやり方。マジキモいんだけど……」
万里花「そんなことまでしてアイドルと触れ合いたいのなら、いっそキャバクラや風俗へ行った方がいいですのにね」
小咲「それで同じCDだけたくさん手元に残っちゃうんだね」
るり「そうよ、だからAKB商法はいろんなところで問題視されてて、実際に批判もされているわ」
羽「今ネットで調べたんだけどね、確かに今週末に凡矢理文化ホールでAKBの握手会があるみたいだよ!」
千棘「それじゃ、楽達はそれに参加するつもりなのね!!」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:28:30.33 ID:/MaSIJGL0
鶫「よし、とりあえず我々もそれに参加して一条楽達の動きを観察することにしましょう」
小咲「でも、その握手券ってのを持ってないとイベントに参加出来ないんじゃないのかな?」
鶫「いいえ、その点は心配ありません。ビーハイブの資金力を使ってどうにか人数分手配します」
千棘「さっすがは鶫、気が効くわねーー!」
万里花「まあ、警視総監の娘である立場からすれば本来ならそういった不正を見逃すのはどうかと思いますが、今回ばかりは大目に見ますわ。私の方でも、AKBの握手券を揃えておくようお父様に頼んでおきますわ。本田、今の件を早速」
本田「御意!」
小咲「うわっ、本田さんいつの間に!?」
千棘「てゆうか、どうしてAKBのイベントに警察が出てくんのよ?」
万里花「あら、知らないんですの?AKBのイベントには危険な輩が発狂して暴挙を犯さぬよう、警備員として元警官や警察官の方々が雇われているんです。警視総監である私の父なら、そっちの方面にも顔が効きますわ!」
千棘「え、そうなの!!」
鶫「AKBは警察までも稼いだ金で引き込んでいるのか。侮れる相手だ」
るり「とりあえず握手券の方は用意してもらえるとして、AKBをよく知らないメンバーは当日までにAKBのことについて勉強しておくこと。細かいことはメールでやり取りして決めましょう」
みんな「おぉーーー!!」
こうして、AKBにハマった楽を救い出すべく、千棘や小咲達が団結するのであった。
小咲「でも、その握手券ってのを持ってないとイベントに参加出来ないんじゃないのかな?」
鶫「いいえ、その点は心配ありません。ビーハイブの資金力を使ってどうにか人数分手配します」
千棘「さっすがは鶫、気が効くわねーー!」
万里花「まあ、警視総監の娘である立場からすれば本来ならそういった不正を見逃すのはどうかと思いますが、今回ばかりは大目に見ますわ。私の方でも、AKBの握手券を揃えておくようお父様に頼んでおきますわ。本田、今の件を早速」
本田「御意!」
小咲「うわっ、本田さんいつの間に!?」
千棘「てゆうか、どうしてAKBのイベントに警察が出てくんのよ?」
万里花「あら、知らないんですの?AKBのイベントには危険な輩が発狂して暴挙を犯さぬよう、警備員として元警官や警察官の方々が雇われているんです。警視総監である私の父なら、そっちの方面にも顔が効きますわ!」
千棘「え、そうなの!!」
鶫「AKBは警察までも稼いだ金で引き込んでいるのか。侮れる相手だ」
るり「とりあえず握手券の方は用意してもらえるとして、AKBをよく知らないメンバーは当日までにAKBのことについて勉強しておくこと。細かいことはメールでやり取りして決めましょう」
みんな「おぉーーー!!」
こうして、AKBにハマった楽を救い出すべく、千棘や小咲達が団結するのであった。
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:29:12.45 ID:/MaSIJGL0
その日の夜…
小咲「AKBのことについて勉強かぁ……一応テレビで見たことはあるけど、AKBってそんなに可愛いのかな。私もAKBみたいな格好したら、一条くん振り向いてくれるのかな………//」
コンコン…ガチャ!!
春「お姉ちゃん、この間借りてた本返すね」
小咲「あ、春。そうだ、ねえ、春ってAKBって知ってる?」
春「えっ、AKBってあのAKB?お姉ちゃん……AKB好きなの?」ジトッ
小咲「え、いや好きじゃないけど。でも、とある事情でAKBのことについて調べなくちゃいけないくて」
春「調べるって………えっ、その雑誌AKBの雑誌じゃん!!お姉ちゃん一体どうしちゃったの!?どうしてお姉ちゃんがAKBなんかを!!?」
小咲「ちょ、落ち着いて春!」
小咲「AKBのことについて勉強かぁ……一応テレビで見たことはあるけど、AKBってそんなに可愛いのかな。私もAKBみたいな格好したら、一条くん振り向いてくれるのかな………//」
コンコン…ガチャ!!
春「お姉ちゃん、この間借りてた本返すね」
小咲「あ、春。そうだ、ねえ、春ってAKBって知ってる?」
春「えっ、AKBってあのAKB?お姉ちゃん……AKB好きなの?」ジトッ
小咲「え、いや好きじゃないけど。でも、とある事情でAKBのことについて調べなくちゃいけないくて」
春「調べるって………えっ、その雑誌AKBの雑誌じゃん!!お姉ちゃん一体どうしちゃったの!?どうしてお姉ちゃんがAKBなんかを!!?」
小咲「ちょ、落ち着いて春!」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:29:45.49 ID:/MaSIJGL0
小咲たん事情を説明中……
春「うげげっ、一条先輩AKBのヲタクになっちゃったの?」
小咲「そうなの。それで一条くんを元に戻すためにみんなで協力することになったの」
春「そうなんだ。それでお姉ちゃんAKBのことについて調べてたんだ。はぁ〜〜良かったよ、お姉ちゃんがAKBなんて好きじゃなくって」
小咲「ねえ春?AKBってそんなに悪い人達なの?」
春「そりゃそうだよ!!AKBになんてロクな女の子いないよ。大体は裏で男と遊んでるビッチばっかりだし、AKBは何かとひどいんだよ」
小咲「そ、そうなんだ……。その言い方だと、春はAKBのこと嫌いなの?」
春「うん、私AKB死ぬほど嫌いなんだよ!!マジ最悪なんだよAKBって!」
小咲「えっと、具体的にはどんなところが嫌いなの?」
春 「あいつら、何かと色々と舐めてるんだよ!!例えばね、AKBって演技下手なくせしてゴリ押しでドラマとか出てくんだけど、私それで許せないことあるんだよね!!」
小咲「許せないことって?」
春「とりあえずお姉ちゃん、このDVD見てみて」っ
小咲「これって、ドラマのDVD?」
春「このドラマね、私が好きな少女漫画が原作なんだけど、主人公の女の子がAKBのメンバーになってんの。それが本当に最悪なんだよーーー!!」
小咲「と、とりあえず見てみよう」
春「うげげっ、一条先輩AKBのヲタクになっちゃったの?」
小咲「そうなの。それで一条くんを元に戻すためにみんなで協力することになったの」
春「そうなんだ。それでお姉ちゃんAKBのことについて調べてたんだ。はぁ〜〜良かったよ、お姉ちゃんがAKBなんて好きじゃなくって」
小咲「ねえ春?AKBってそんなに悪い人達なの?」
春「そりゃそうだよ!!AKBになんてロクな女の子いないよ。大体は裏で男と遊んでるビッチばっかりだし、AKBは何かとひどいんだよ」
小咲「そ、そうなんだ……。その言い方だと、春はAKBのこと嫌いなの?」
春「うん、私AKB死ぬほど嫌いなんだよ!!マジ最悪なんだよAKBって!」
小咲「えっと、具体的にはどんなところが嫌いなの?」
春 「あいつら、何かと色々と舐めてるんだよ!!例えばね、AKBって演技下手なくせしてゴリ押しでドラマとか出てくんだけど、私それで許せないことあるんだよね!!」
小咲「許せないことって?」
春「とりあえずお姉ちゃん、このDVD見てみて」っ
小咲「これって、ドラマのDVD?」
春「このドラマね、私が好きな少女漫画が原作なんだけど、主人公の女の子がAKBのメンバーになってんの。それが本当に最悪なんだよーーー!!」
小咲「と、とりあえず見てみよう」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:30:40.66 ID:/MaSIJGL0
AKB『なんたらかんたら〜〜』
春「ね、酷いでしょ?」
小咲「う〜ん、確かに台詞も棒読みだし演技は上手じゃないね」
春「そうでしょーーー!?このシーン、原作の漫画じゃかなり感動するシーンなのに、AKBのクソ演技のせいで台無しなんだよ。実写化はいいとして、なんでそれがAKBなのよ、もうッ!!」
小咲「確かに、それはあまりいい気はしないよね」
春「でしょでしょ!!他にもね、AKBって歌番組でも口パクばったりたし、ダンスもあまり上手くないんだよ」
小咲「そうなんだ」
こうして小咲は、AKB48の酷さについて春から教わった。
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:31:38.75 ID:/MaSIJGL0
そして、握手会当日の朝……
楽「ふわあぁ〜〜〜、昨日は興奮してあんまり寝てねえな。でも、これも握手会のためだ!!」
羽「あら楽ちゃん。今日は随分と早起きなのね」
楽「あ、おはよ羽姉。俺これから集と出掛けてくるから〜〜」
羽「うん。いってらっしゃい」
ガラガラガラガラ
羽「楽ちゃん行ったみたいね………」
ピポパポピ、prpr
ガチャッ
羽「あ、もしもし………うん、今楽ちゃん家を出たところよ。それじゃみんな、予定通りよろしくね」
楽「ふわあぁ〜〜〜、昨日は興奮してあんまり寝てねえな。でも、これも握手会のためだ!!」
羽「あら楽ちゃん。今日は随分と早起きなのね」
楽「あ、おはよ羽姉。俺これから集と出掛けてくるから〜〜」
羽「うん。いってらっしゃい」
ガラガラガラガラ
羽「楽ちゃん行ったみたいね………」
ピポパポピ、prpr
ガチャッ
羽「あ、もしもし………うん、今楽ちゃん家を出たところよ。それじゃみんな、予定通りよろしくね」
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:34:05.54 ID:/MaSIJGL0
とある広場にて……
千棘「さっき羽先生からきた電話からすると、楽の奴そろそろ握手会の会場へ着いた頃かしらね」
鶫「おそらく今頃、舞子集の奴と落ち合っているでしょうね」
るり「そうね。ヲタクの中にはルールを破って会場に徹夜しているのもいるようだし、早めに行った方がいいものね」
万理花「いわゆる徹夜組って奴ですわね」
鶫「それはそうと、宮本様、小野寺様は一緒ではないのですか?」
千棘「あれ、そういえば小咲ちゃんまだ来てないの?」
るり「そうみたいね。待ち合わせの時間はもう過ぎてるというのに」
小咲「みんなーーー遅れてごめ〜ん」
千棘「あ、小咲ちゃん来た」
るり「遅いわよ小咲。あれほど遅刻するなって言ったじゃないの」
小咲「ごめんね遅れちゃって。でも春にAKBのことについて色々聞いてたら遅れちゃって」
春「あ、皆さんおはようございます」
千棘「あれ、春ちゃんも来てたんだ!」
春「はい、お姉ちゃんが心配で私も今回着いて行くことにしました!」
千棘「さっき羽先生からきた電話からすると、楽の奴そろそろ握手会の会場へ着いた頃かしらね」
鶫「おそらく今頃、舞子集の奴と落ち合っているでしょうね」
るり「そうね。ヲタクの中にはルールを破って会場に徹夜しているのもいるようだし、早めに行った方がいいものね」
万理花「いわゆる徹夜組って奴ですわね」
鶫「それはそうと、宮本様、小野寺様は一緒ではないのですか?」
千棘「あれ、そういえば小咲ちゃんまだ来てないの?」
るり「そうみたいね。待ち合わせの時間はもう過ぎてるというのに」
小咲「みんなーーー遅れてごめ〜ん」
千棘「あ、小咲ちゃん来た」
るり「遅いわよ小咲。あれほど遅刻するなって言ったじゃないの」
小咲「ごめんね遅れちゃって。でも春にAKBのことについて色々聞いてたら遅れちゃって」
春「あ、皆さんおはようございます」
千棘「あれ、春ちゃんも来てたんだ!」
春「はい、お姉ちゃんが心配で私も今回着いて行くことにしました!」
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:34:38.37 ID:/MaSIJGL0
るり「よし、これで全員揃ったようね。それじゃみんな、今日はまず一条くんがどれ程AKBにハマってしまったのかを知るべく、実際に握手会へ乗り込んで直々に観察するわよ」
千棘「準備万端よ!鶫、頼んでたものは用意出来た?」
鶫「もちろんですお嬢!」
万里花「本田、こちらも準備はよろしいですか?」
本田「御意、仰せの通りに」
小咲「うわ、みんな気合十分だね。私達も負けてられないね」
春「大丈夫だよお姉ちゃん!昨日の夜2人であれだけAKBについて調査したんだし、きっと一条先輩を更生できるよ」
こうして一同は、AKBの握手会の会場へと向かった。
千棘「準備万端よ!鶫、頼んでたものは用意出来た?」
鶫「もちろんですお嬢!」
万里花「本田、こちらも準備はよろしいですか?」
本田「御意、仰せの通りに」
小咲「うわ、みんな気合十分だね。私達も負けてられないね」
春「大丈夫だよお姉ちゃん!昨日の夜2人であれだけAKBについて調査したんだし、きっと一条先輩を更生できるよ」
こうして一同は、AKBの握手会の会場へと向かった。
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:35:10.50 ID:/MaSIJGL0
握手会会場……、
千棘「ここが握手会の会場ね!」
鶫「休日ということもあり、結構人が入ってますね」
るり「でも、殆どが見るからねヲタクっぽい気持ちの悪いおっさんばかりね」
春「うわぁーー何よあそこの人、マジキモいんだけどぉ……!!」
小咲「お、落ち着いて春!!」
万里花「AKBのことについて調べてみても、実際にオタク共を間近にするとやはりキモいですわね」
千棘「うげッ、何よあそこのおじさん……変な刺繍の入った服着て、どこの田舎の暴走族よ」
鶫「奴らはあれをカッコいいとでも思っているのでしょうかね」
小咲「AKBについて散々勉強してしたけど、こうして実際にオタクの人たちを見てみると、ちょっと怖いね……」
千棘「で、でもこれも楽の奴を目覚めさせるためよ!!頑張らなくちゃ」
春「うげげげ、どうしてオタクってこんなにキモいのばっかなんですか?」
るり「そうね……オタクだからキモいってのもあると思うけど、でもキモいからオタクになっちゃったってのもあるかもしれないわね。どうせあんな容姿じゃ女からモテるわけもないし、仕事も出来ない。だからAKBなんかにハマって人生を台無しにしちゃったんだわ」
千棘「ここが握手会の会場ね!」
鶫「休日ということもあり、結構人が入ってますね」
るり「でも、殆どが見るからねヲタクっぽい気持ちの悪いおっさんばかりね」
春「うわぁーー何よあそこの人、マジキモいんだけどぉ……!!」
小咲「お、落ち着いて春!!」
万里花「AKBのことについて調べてみても、実際にオタク共を間近にするとやはりキモいですわね」
千棘「うげッ、何よあそこのおじさん……変な刺繍の入った服着て、どこの田舎の暴走族よ」
鶫「奴らはあれをカッコいいとでも思っているのでしょうかね」
小咲「AKBについて散々勉強してしたけど、こうして実際にオタクの人たちを見てみると、ちょっと怖いね……」
千棘「で、でもこれも楽の奴を目覚めさせるためよ!!頑張らなくちゃ」
春「うげげげ、どうしてオタクってこんなにキモいのばっかなんですか?」
るり「そうね……オタクだからキモいってのもあると思うけど、でもキモいからオタクになっちゃったってのもあるかもしれないわね。どうせあんな容姿じゃ女からモテるわけもないし、仕事も出来ない。だからAKBなんかにハマって人生を台無しにしちゃったんだわ」
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:35:58.14 ID:/MaSIJGL0
春「AKBのオタクってニートでブサイクなおっさんばっかりなんですかぁ?」
るり「大半がそうだけど、ちらほら若い人もいるみたいね。あそこにいるのなんか学生かしら?」
千棘「ホントだぁ〜。高校生か大学生くらいの人もちらほらいるみたいね。私達みたいな女子ってあんまりいないのかしら」
鶫「一応AKB好きの女子もいることにはいるようですが、極少数のようですね。」
春「ちびっこファンとかはいないんですかね?」
るり「家族連れってものいそうだけど………どうやらこの会場にはいないみたいね」
千棘「親も子供にAKBなんて教えたくないんじゃないのかしらね」
小咲「確かに、大の大人がこんなのにハマっちゃうんだし。小さいうちからオタクになっちゃったら、親御さん は嫌だろうからね」
るり「さてと、立ち往生もなんだし、用意した握手券をそれぞれ配布するわよ」
春「あ、私マスクしてもいいですか?オタクの嫌な臭い嗅ぎたくないんで」
千棘「あ、私もするーーー!」
るり「そうね、それに一条くん達にばれちゃ意味がないわ。顔を隠すためにもマスクも人数分配っておくわ」
鶫「なら、サングラスも配っておきましょう。こんなこともあろうかと、サングラスも用意しておいたのです」
万里花「なら、帽子を被るのも効果的ですわ。本田、直ぐに人数分の帽子の用意を」
本田「御意」
小咲「よし、マスクもしたしサングラスもかけたし帽子も被ったし、バッチリだね」
千棘「うん!これなら楽も私達が誰なのかわからないはずよね」
るり「それじゃみんな、早速会場へ入るわよ」
みんな「おぉぉーーーーー!!」
るり「大半がそうだけど、ちらほら若い人もいるみたいね。あそこにいるのなんか学生かしら?」
千棘「ホントだぁ〜。高校生か大学生くらいの人もちらほらいるみたいね。私達みたいな女子ってあんまりいないのかしら」
鶫「一応AKB好きの女子もいることにはいるようですが、極少数のようですね。」
春「ちびっこファンとかはいないんですかね?」
るり「家族連れってものいそうだけど………どうやらこの会場にはいないみたいね」
千棘「親も子供にAKBなんて教えたくないんじゃないのかしらね」
小咲「確かに、大の大人がこんなのにハマっちゃうんだし。小さいうちからオタクになっちゃったら、親御さん は嫌だろうからね」
るり「さてと、立ち往生もなんだし、用意した握手券をそれぞれ配布するわよ」
春「あ、私マスクしてもいいですか?オタクの嫌な臭い嗅ぎたくないんで」
千棘「あ、私もするーーー!」
るり「そうね、それに一条くん達にばれちゃ意味がないわ。顔を隠すためにもマスクも人数分配っておくわ」
鶫「なら、サングラスも配っておきましょう。こんなこともあろうかと、サングラスも用意しておいたのです」
万里花「なら、帽子を被るのも効果的ですわ。本田、直ぐに人数分の帽子の用意を」
本田「御意」
小咲「よし、マスクもしたしサングラスもかけたし帽子も被ったし、バッチリだね」
千棘「うん!これなら楽も私達が誰なのかわからないはずよね」
るり「それじゃみんな、早速会場へ入るわよ」
みんな「おぉぉーーーーー!!」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:36:36.00 ID:/MaSIJGL0
会場の中……
キモオタA「おーーーいまだか、早く始めろよ!」
キモオタB「まゆゆーーー、まゆゆーーー!!」
ザワザワ…ガヤガヤ
春「うわ、何よあそこのオタク……突然奇声上げて、マジキモい…」
小咲「発狂でもしたのかな?」
るり「まあAKBのオタクには精神患者が結構多くいるらしいわよ」
小咲「え、そうなの?」
千棘「まあ、AKBになんかハマる時点である種の精神病だと思うけど」
鶫「お嬢!言ってることはごもっともですが、あまり過激なことを言わないけでください。厄介なオタクにでも聞かれたら惨事になりかねませんよ!」
千棘「おっと…、そうだったわね」
キモオタA「おーーーいまだか、早く始めろよ!」
キモオタB「まゆゆーーー、まゆゆーーー!!」
ザワザワ…ガヤガヤ
春「うわ、何よあそこのオタク……突然奇声上げて、マジキモい…」
小咲「発狂でもしたのかな?」
るり「まあAKBのオタクには精神患者が結構多くいるらしいわよ」
小咲「え、そうなの?」
千棘「まあ、AKBになんかハマる時点である種の精神病だと思うけど」
鶫「お嬢!言ってることはごもっともですが、あまり過激なことを言わないけでください。厄介なオタクにでも聞かれたら惨事になりかねませんよ!」
千棘「おっと…、そうだったわね」
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:37:14.84 ID:/MaSIJGL0
小咲「握手会っていうから並んだら直ぐに握手するのかと思ってたけど、違うんだね」
万里花「ええ、握手をする前にメンバー達によるミニライブがあるようですわね」
小咲「そのミニライブも口パクなのかな?」
春「きっとそうだと思うよ。だってAKBって音楽番組でもほとんど口パクだもんね」
るり「そのね。たまに生歌の時とあるけどお世辞にも上手いとは言えないレベルよ。あの下手さは放送事故よね」
千棘「そんな連中がミリオンヒット連発とか、音楽好きな人が怒るのも無理ないわね」
鶫「全くですね。まあ所詮、ここにいるオタク共は握手会だけ手に入れてCDはろくに聞かないで棄てるような馬鹿ばかりですから、音楽のことなんてこれっぽっちもわかってませんよ」
万里花「楽様は一体何処にいるのでしょうか」キョロキョロ
小咲「一条くん達、どの辺かな?」
春「あっ、お姉ちゃんいたよ!!前の方に一条先輩らしき後ろ姿が」
小咲「え、本当に!?」
千棘「あ、ホントだわ!あの後ろ姿は間違いなく楽よ!!」
鶫「隣にいるのは舞子集だな。一体何を話しているのだ」
万里花「ええ、握手をする前にメンバー達によるミニライブがあるようですわね」
小咲「そのミニライブも口パクなのかな?」
春「きっとそうだと思うよ。だってAKBって音楽番組でもほとんど口パクだもんね」
るり「そのね。たまに生歌の時とあるけどお世辞にも上手いとは言えないレベルよ。あの下手さは放送事故よね」
千棘「そんな連中がミリオンヒット連発とか、音楽好きな人が怒るのも無理ないわね」
鶫「全くですね。まあ所詮、ここにいるオタク共は握手会だけ手に入れてCDはろくに聞かないで棄てるような馬鹿ばかりですから、音楽のことなんてこれっぽっちもわかってませんよ」
万里花「楽様は一体何処にいるのでしょうか」キョロキョロ
小咲「一条くん達、どの辺かな?」
春「あっ、お姉ちゃんいたよ!!前の方に一条先輩らしき後ろ姿が」
小咲「え、本当に!?」
千棘「あ、ホントだわ!あの後ろ姿は間違いなく楽よ!!」
鶫「隣にいるのは舞子集だな。一体何を話しているのだ」
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:37:57.58 ID:/MaSIJGL0
集「いやぁーー、朝早くから並んだから前の方にこれたな」
楽「そうだな。それにしてもまさかAKBが凡矢理市に来るなんてなぁ」
集「なあなあ楽、それで楽は誰推しにするか決めたの?」
楽「いや、だから俺はまだ別にぱるるから推し変すると決めたわけじゃねえぞ!!てか、そういうお前はもう誰推しにするか決まったのかよ」
集「もっちろんーーー!俺がゆきりんから推し変すんのは、この最近研究生からチームAへ昇格した高部あいちゃんだよぉーーー!!」
楽「お、確かこの高部あいって子って、最近昇格したばっかの子じゃん」
楽「そうだな。それにしてもまさかAKBが凡矢理市に来るなんてなぁ」
集「なあなあ楽、それで楽は誰推しにするか決めたの?」
楽「いや、だから俺はまだ別にぱるるから推し変すると決めたわけじゃねえぞ!!てか、そういうお前はもう誰推しにするか決まったのかよ」
集「もっちろんーーー!俺がゆきりんから推し変すんのは、この最近研究生からチームAへ昇格した高部あいちゃんだよぉーーー!!」
楽「お、確かこの高部あいって子って、最近昇格したばっかの子じゃん」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:38:48.76 ID:/MaSIJGL0
集「そうそう。しかもこの子、公演ではゆきりんのアンダーなんだってさ」
楽「へえ〜そうなのか。んで、なんでまたこの子を推すことにしたんだ?」
集「この黒い髪に大きな瞳、そして何か裏がありそうなミステリアスな雰囲気、ゆきりんなんかよりよっぽど清楚で可愛らしいじゃん!!」
楽「そうか?まあ見た目はゆきりんよりかはいいと思うけど、でもこういう子も裏で何かやってたりしてな」
集「んなッ!?そんなわけねぇーーだろ!!ぱるるなんかよりよっぽどマシだぁーーー」
楽「おい、いきなり大声出すなよ!てか、何俺のぱるるをディスってんだよ!!」
集「ふんッ!!お前が先に俺のあいちゃんをディスってきたんだぞ!!」
楽「わかったよ、悪かったって。だから機嫌直せよ、な?」
集「ふん……まあ高部あいちゃんはぱるるとは違って今日のイベントはちゃんと参加するしな。ぱるるなんかまた仮病で今日の握手会すっぽかしてんじゃんー!」
楽「まあ、確かにぱるる今日も握手会サボりらしいけどよ……。てか、その高部あいちゃんって子はいるんだな」
集「ああそうさ!あいちゃんは間違いなく将来AKBのセンターになってるね」
楽「へえ〜そうなのか。んで、なんでまたこの子を推すことにしたんだ?」
集「この黒い髪に大きな瞳、そして何か裏がありそうなミステリアスな雰囲気、ゆきりんなんかよりよっぽど清楚で可愛らしいじゃん!!」
楽「そうか?まあ見た目はゆきりんよりかはいいと思うけど、でもこういう子も裏で何かやってたりしてな」
集「んなッ!?そんなわけねぇーーだろ!!ぱるるなんかよりよっぽどマシだぁーーー」
楽「おい、いきなり大声出すなよ!てか、何俺のぱるるをディスってんだよ!!」
集「ふんッ!!お前が先に俺のあいちゃんをディスってきたんだぞ!!」
楽「わかったよ、悪かったって。だから機嫌直せよ、な?」
集「ふん……まあ高部あいちゃんはぱるるとは違って今日のイベントはちゃんと参加するしな。ぱるるなんかまた仮病で今日の握手会すっぽかしてんじゃんー!」
楽「まあ、確かにぱるる今日も握手会サボりらしいけどよ……。てか、その高部あいちゃんって子はいるんだな」
集「ああそうさ!あいちゃんは間違いなく将来AKBのセンターになってるね」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:39:30.22 ID:/MaSIJGL0
小咲「なんだか一条くんと舞子くん熱くなって語り合ってるみたいだけど」
春「一体何について話してんのかな?」
千棘「ひょっとして、楽が推してるっていうぱるるって子のことかしら?」
小咲「えっと……確かぱるるっていうのは島崎遥香ちゃんって子で、塩対応って言って失礼な態度を取ってる子だよね」
るり「そうよ。最近じゃその塩対応にも周囲が呆れてしまってるようでね、ビートたけしや徳光和夫あたりの大御所タレントもマジでキレてるって噂らしいわ」
春「塩対応って言っても、ようはただ性格悪いだけじゃん。先輩ったら、あんなのの一体どこがいいんでしょうかね」
るり「まったくね。AKBである今のうちはまだ塩対応でも許されるかもしれないけど、社会人としては普通にアウトよね。きっとAKBの肩書きがなくなって外の世界へ出たら苦労するだろうわね」
鶫「まったく……盲目的なキモオタが甘やかすから塩対応だなんて聞こえの良いものを作り上げてしまったのだろうな」
小咲(一条くんって、素っ気ないのが好きなのかな………。でも私、一条くんに冷たくなんて出来ないよ///)
千棘(ったく、塩対応なんてただの世間知らずじゃないの。あんなののどこが可愛いのよ、バカ………///)
春「一体何について話してんのかな?」
千棘「ひょっとして、楽が推してるっていうぱるるって子のことかしら?」
小咲「えっと……確かぱるるっていうのは島崎遥香ちゃんって子で、塩対応って言って失礼な態度を取ってる子だよね」
るり「そうよ。最近じゃその塩対応にも周囲が呆れてしまってるようでね、ビートたけしや徳光和夫あたりの大御所タレントもマジでキレてるって噂らしいわ」
春「塩対応って言っても、ようはただ性格悪いだけじゃん。先輩ったら、あんなのの一体どこがいいんでしょうかね」
るり「まったくね。AKBである今のうちはまだ塩対応でも許されるかもしれないけど、社会人としては普通にアウトよね。きっとAKBの肩書きがなくなって外の世界へ出たら苦労するだろうわね」
鶫「まったく……盲目的なキモオタが甘やかすから塩対応だなんて聞こえの良いものを作り上げてしまったのだろうな」
小咲(一条くんって、素っ気ないのが好きなのかな………。でも私、一条くんに冷たくなんて出来ないよ///)
千棘(ったく、塩対応なんてただの世間知らずじゃないの。あんなののどこが可愛いのよ、バカ………///)
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:40:05.50 ID:/MaSIJGL0
万里花「ちなみに、今日はその塩対応でお馴染みの島崎遥香という方は登場するのでしょうか?」
るり「いや、どうやら今日は不参加みたいね。まあ、正しくはには今日"も"だけどね」
小咲「AKBのイベントは欠席なのに映画のイベントは出てるみたいだけど、仕事選んでるのかな?」
春「そりゃこんなところでキモオタ相手にするよりは映画みたいに大きな仕事した方が美味しいもんね」
千棘「今頃男と遊んでんじゃないの〜」
るり「あ、それはないみたいよ。どうやら島崎遥香は火傷をしちゃったみたいだし」
小咲「あぁー、確か足を火傷しちゃったんだっけ?ネットに載ってたね」
鶫「しかしそれも、話題づくりのためにしたという噂がありますよ」
万里花「自分の身体に傷まで負わなければ話題にもならないなんて、惨めですわね」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:40:40.80 ID:/MaSIJGL0
スタッフ「お待たせいたしました。只今よりミニライブを始めます」
キモオタ共「ぐおぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!!!」
千棘「あ、どうやら始まるみたいよ!」
小咲「一体どんな人が出てくるのかな?」
AKBメンバー「皆さんこんにちは〜!AKB48ですわね!!」
キモオタ共「ぶひぃぃぃぃぃーーーーーーー!!!」
るり「どうらや今壇上にいるのが今日の出演メンバーみたいね」
千棘「これがAKBか……なんか思ってたよりも可愛い子いないわね」
鶫「まあ、本当に可愛い子ならばわざわざAKBにならなくてもいい思い出来ますからね」
万里花「中途半端なビジュアルの小娘達が勘違いしてオーディションを受けるんですわね」
集「うおぉぉぉーーーーーーーー、あいちゃーーーん!!」
楽「くそッ、どうして今日もぱるるいねえんだよーーー!!」
春「うわ、一条先輩が周りのキモオタと一緒になって叫んでる。キモッ」
小咲「一条くん…………」
千棘「楽のバカ………」
キモオタ共「ぐおぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!!!」
千棘「あ、どうやら始まるみたいよ!」
小咲「一体どんな人が出てくるのかな?」
AKBメンバー「皆さんこんにちは〜!AKB48ですわね!!」
キモオタ共「ぶひぃぃぃぃぃーーーーーーー!!!」
るり「どうらや今壇上にいるのが今日の出演メンバーみたいね」
千棘「これがAKBか……なんか思ってたよりも可愛い子いないわね」
鶫「まあ、本当に可愛い子ならばわざわざAKBにならなくてもいい思い出来ますからね」
万里花「中途半端なビジュアルの小娘達が勘違いしてオーディションを受けるんですわね」
集「うおぉぉぉーーーーーーーー、あいちゃーーーん!!」
楽「くそッ、どうして今日もぱるるいねえんだよーーー!!」
春「うわ、一条先輩が周りのキモオタと一緒になって叫んでる。キモッ」
小咲「一条くん…………」
千棘「楽のバカ………」
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:41:34.56 ID:/MaSIJGL0
スタッフ「それではメンバー1人ずつ自己紹介をお願いします」
柏木「はい。寝ても覚めてもゆきりんワールド、ゆきりんこと柏木由紀です!!」
ヲタ共「ゆきりーーーーんッ!!」
小咲「えっと…確かあの子が柏木由紀って子だよね」
千棘「確か、ジャニーズの手越って人と週刊誌に書かれたけど、それからスルー決め込んでるのよね?」
鶫「ええ、しかも彼女は過去に何度が週刊誌にスクープ記事を書かれていますが、本人の口から今まで釈明がされたことはないようです」
千棘「同性からは嫌われそうなタイプよね」
春「確かに……私もゆきりんは嫌いですね」
万里花「ビッチって言葉がお似合いですわね」
高部あい「はーーい!!あなたの心に届けたい。みんなの恋の運び屋、高部あいでーーーす!!」
ヲタ共「あいちゃーーーん!!」
千棘「あれ、AKBにあんな子いたっけ?」
鶫「どうやら、最近になって有名になったメンバーらしいですよ」
るり「まあAKBのメンバーなんてほとんどは名前も顔を知られてない子ばかりだもんね」
春「それでよく"国民的"グループだのんて言えますよね」
小咲「確かに、一般世間からすれば名前の知られてるメンバーってごく僅かだもんね」
万里花「この高部あいという子は見た目はそれほど悪くないですが、あとはどこにでもいるような普通の顔ばかりですわね」
千棘「確かに、アイドルっていう割にはインパクトに欠ける顔よね。てか、ハッキリ言ってあの端っこの子とかブサイクじゃない?」
鶫「あの後ろの方で下向いてるメンバーも、結構酷い顔してますよね」
小咲「あそこで眠たそうにしてる子も結構ブサイクだよね」
春「あの程度でアイドルやれるんじゃ、その辺の一般人でも変わらないと思うけどな」
るり「盲目的になったオタクからすれば、どれも可愛く見てちゃうのかしらね」
柏木「はい。寝ても覚めてもゆきりんワールド、ゆきりんこと柏木由紀です!!」
ヲタ共「ゆきりーーーーんッ!!」
小咲「えっと…確かあの子が柏木由紀って子だよね」
千棘「確か、ジャニーズの手越って人と週刊誌に書かれたけど、それからスルー決め込んでるのよね?」
鶫「ええ、しかも彼女は過去に何度が週刊誌にスクープ記事を書かれていますが、本人の口から今まで釈明がされたことはないようです」
千棘「同性からは嫌われそうなタイプよね」
春「確かに……私もゆきりんは嫌いですね」
万里花「ビッチって言葉がお似合いですわね」
高部あい「はーーい!!あなたの心に届けたい。みんなの恋の運び屋、高部あいでーーーす!!」
ヲタ共「あいちゃーーーん!!」
千棘「あれ、AKBにあんな子いたっけ?」
鶫「どうやら、最近になって有名になったメンバーらしいですよ」
るり「まあAKBのメンバーなんてほとんどは名前も顔を知られてない子ばかりだもんね」
春「それでよく"国民的"グループだのんて言えますよね」
小咲「確かに、一般世間からすれば名前の知られてるメンバーってごく僅かだもんね」
万里花「この高部あいという子は見た目はそれほど悪くないですが、あとはどこにでもいるような普通の顔ばかりですわね」
千棘「確かに、アイドルっていう割にはインパクトに欠ける顔よね。てか、ハッキリ言ってあの端っこの子とかブサイクじゃない?」
鶫「あの後ろの方で下向いてるメンバーも、結構酷い顔してますよね」
小咲「あそこで眠たそうにしてる子も結構ブサイクだよね」
春「あの程度でアイドルやれるんじゃ、その辺の一般人でも変わらないと思うけどな」
るり「盲目的になったオタクからすれば、どれも可愛く見てちゃうのかしらね」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:42:12.59 ID:/MaSIJGL0
スタッフ「それではメンバーの皆さん、歌の方をお願いします」
AKB「それでは聞いてください。AKB48で新曲『ポニーテールとゴム』です!」
キモオタ共「フォーーーーーー!!」
千棘「あ、歌が始まるみたいよ!!」
小咲「また口パクで歌ったふりだけするのかな」
AKB達「ポニーテール〜♪ なびかせて〜♪ ゴムを咥える〜♪」
ヲタ共「フォーーーーーー!!」
春「あれ、明らかに口パクですよね?」
るり「そうね。しかもダンスも全然揃ってないわ」
AKB「それでは聞いてください。AKB48で新曲『ポニーテールとゴム』です!」
キモオタ共「フォーーーーーー!!」
千棘「あ、歌が始まるみたいよ!!」
小咲「また口パクで歌ったふりだけするのかな」
AKB達「ポニーテール〜♪ なびかせて〜♪ ゴムを咥える〜♪」
ヲタ共「フォーーーーーー!!」
春「あれ、明らかに口パクですよね?」
るり「そうね。しかもダンスも全然揃ってないわ」
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:42:43.84 ID:/MaSIJGL0
万里花「こんなので満足するだのんて、AKBのファンはレベルが低いのですね」
千棘「まあオタクからすれば歌とかダンスとかはどうでもいいんじゃないの?ようは自分の大好きなアイドルが出て来れば、何をしたってアリなんでしょうね」
小咲「なんだろう……私ちっとも楽しくないよ」
鶫「こんなの、カラオケで歌ってる素人の方がよっぽど上手いではないか」
キモオタ共「フォーーーーーーー!!」
集「最高だぜ、あいちゃーーーん!!!」
楽「ぱるるいなかったけどよかったぞぉーーー!!」
AKB「ありがとうございますーー!」
春「うわ、一条先輩あんなので喜んでますよ」
るり「まさかここまでキモいとはね」
万里花「楽様……見るのもおいたわしいですわ」
鶫「酷い有様だな………これからの日本が心配だ」
小咲「一条くん………待っててね!今すぐにでも一条くんの目を覚まさせてあげるからね!!」
千棘「ったく、あんなのにハマる暇があるんなら私にかまいなさいよね、バカもやし!!」
千棘「まあオタクからすれば歌とかダンスとかはどうでもいいんじゃないの?ようは自分の大好きなアイドルが出て来れば、何をしたってアリなんでしょうね」
小咲「なんだろう……私ちっとも楽しくないよ」
鶫「こんなの、カラオケで歌ってる素人の方がよっぽど上手いではないか」
キモオタ共「フォーーーーーーー!!」
集「最高だぜ、あいちゃーーーん!!!」
楽「ぱるるいなかったけどよかったぞぉーーー!!」
AKB「ありがとうございますーー!」
春「うわ、一条先輩あんなので喜んでますよ」
るり「まさかここまでキモいとはね」
万里花「楽様……見るのもおいたわしいですわ」
鶫「酷い有様だな………これからの日本が心配だ」
小咲「一条くん………待っててね!今すぐにでも一条くんの目を覚まさせてあげるからね!!」
千棘「ったく、あんなのにハマる暇があるんなら私にかまいなさいよね、バカもやし!!」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:43:18.19 ID:/MaSIJGL0
スタッフ「それではみなさん、これより握手会えと……」
ドサドサドサ
警官「動くな、警察だぁーー!」
スタッフ「え、ちょっと、あちら達一体なんなんですか!?」
警察「ちょ、どうしてこんなところに警察がいんのよ!?」
万里花「変ですわね、それに見る限りAKBの警備員とは違うようですし」
キモオタA「おいおい、一体なんだー?」
キモオタB「何かのサプライズか?」
ザワザワ…ガヤガヤ
右助「高部あい、お前に逮捕状が出ている!!これよりお前を違法薬物所持の疑いで逮捕する」
ドサドサドサ
警官「動くな、警察だぁーー!」
スタッフ「え、ちょっと、あちら達一体なんなんですか!?」
警察「ちょ、どうしてこんなところに警察がいんのよ!?」
万里花「変ですわね、それに見る限りAKBの警備員とは違うようですし」
キモオタA「おいおい、一体なんだー?」
キモオタB「何かのサプライズか?」
ザワザワ…ガヤガヤ
右助「高部あい、お前に逮捕状が出ている!!これよりお前を違法薬物所持の疑いで逮捕する」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:43:44.73 ID:/MaSIJGL0
千棘「あれ、あの人何処かで見覚えのあるような」
万里花「あれは右助ではありませんの!!どうして右助がこんなところにいるのです!!」
千棘「あの人確か、ファミレスで見た人よね」
小咲「それよりもAKBに逮捕状ってどういうこと!?」
春「薬物がどうのこうのって言ってたけど」
高部あい「ちょ、いきなりなんですか!?私薬物なんて身に覚えがありませんよ」
右助「逮捕状も出てるんだし、調べもついてんだ。お前が数ヶ月前から怪しい人物と薬の売買をしている証拠もおさえてある!!署までご同行願おうか!!」
集「そ、そんなーーー!!高部あいちゃんが麻薬だって!!?」
楽「あの人…確かに橘のバイト先だったファミレスで見た人だよな」
キモオタA「おい、いきなりどういうことだよーーー!!」
キモオタB「いきなり麻薬所持ってどういうことだよーーー!?てかタイミング考えろよな」
キモオタC「そうだそうだ、これじゃイベントになんねえじゃねえーーか!!」
ザワザワ…ガヤガヤ
万里花「あれは右助ではありませんの!!どうして右助がこんなところにいるのです!!」
千棘「あの人確か、ファミレスで見た人よね」
小咲「それよりもAKBに逮捕状ってどういうこと!?」
春「薬物がどうのこうのって言ってたけど」
高部あい「ちょ、いきなりなんですか!?私薬物なんて身に覚えがありませんよ」
右助「逮捕状も出てるんだし、調べもついてんだ。お前が数ヶ月前から怪しい人物と薬の売買をしている証拠もおさえてある!!署までご同行願おうか!!」
集「そ、そんなーーー!!高部あいちゃんが麻薬だって!!?」
楽「あの人…確かに橘のバイト先だったファミレスで見た人だよな」
キモオタA「おい、いきなりどういうことだよーーー!!」
キモオタB「いきなり麻薬所持ってどういうことだよーーー!?てかタイミング考えろよな」
キモオタC「そうだそうだ、これじゃイベントになんねえじゃねえーーか!!」
ザワザワ…ガヤガヤ
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:44:28.93 ID:/MaSIJGL0
楽「おい、なんか周りのオタク達が騒ぎ出して不穏な空気になってきたぞ」
集「くそぉーーーーー!!そうやってまた俺たちオタクを裏切るのかよ!!どうなんだよあいちゃん、答えてくれよーーーー!!」
キモオタA「そうだそうだ、答えてくれよ!!」
キモオタ「またゆきりんみたくスルーすら気かよ!!」
楽「って、集までオタク共と一緒に騒ぎ出しちまったよ!!」
ザワザワ…ガヤガヤ
小咲「はわわ、どうしよう!!なんだか会場が騒がしくなってきたよ」
春「これじゃ握手会どころじゃないよぉ〜」
千棘「ちょっと、これなんかまずいんじゃないの」
鶫「ご安心くださいお嬢、お嬢の身を守るために護衛はつけております」
右助「さぁ、おとなしく捕まれ」
高部あい「ううう………ってい!」
右助「あ、逃げやがったな!!待て、その女を捕らえろ!!」
小咲「うわッ、たの高部っていう人ステージから逃げ出しちゃったよ!!」
るり「これじゃイベントどころじゃないわね、それに会場のオタク達が暴れ出して大変なことになりそうだわ!!」
集「くそぉーーーーー!!そうやってまた俺たちオタクを裏切るのかよ!!どうなんだよあいちゃん、答えてくれよーーーー!!」
キモオタA「そうだそうだ、答えてくれよ!!」
キモオタ「またゆきりんみたくスルーすら気かよ!!」
楽「って、集までオタク共と一緒に騒ぎ出しちまったよ!!」
ザワザワ…ガヤガヤ
小咲「はわわ、どうしよう!!なんだか会場が騒がしくなってきたよ」
春「これじゃ握手会どころじゃないよぉ〜」
千棘「ちょっと、これなんかまずいんじゃないの」
鶫「ご安心くださいお嬢、お嬢の身を守るために護衛はつけております」
右助「さぁ、おとなしく捕まれ」
高部あい「ううう………ってい!」
右助「あ、逃げやがったな!!待て、その女を捕らえろ!!」
小咲「うわッ、たの高部っていう人ステージから逃げ出しちゃったよ!!」
るり「これじゃイベントどころじゃないわね、それに会場のオタク達が暴れ出して大変なことになりそうだわ!!」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:45:09.21 ID:/MaSIJGL0
キモオタA「うごおぉぉぉーーーーーー一体どうなっちまってんだよ!!!!!??」
キモオタB「キエェェェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーー!!!!」
春「うわッ、あそこのオタクが発狂しだよだよ!!」
小咲「何かされる前にここから逃げなきゃ!!」
るり「待つのよ小咲、会場が混乱している今闇雲に逃げ出してもかえって危険よ!」
スタッフ「会場にお越しのみなさん、落ち着いてください!!」
右助「おい、騒ぎが大きくなる前にはやく高部を捕まえろ」
警官「それが、どうやら高部はこのオタク達の中に紛れ込んだようで会場のどこにいるのかわかりません!!」
右助「なんだってーーーーー!?なら、この騒がしいオタク共を大人しくさせろ!これじゃ高部を探し出せねぇぞ」
警官「それが、発狂しているオタクのせいでこちらの言うことを聞いてくれそうにありません。こんな状態で奴らに無理強いを強いるとかえって騒ぎを大きくしてしまいます!!」
キモオタB「キエェェェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーー!!!!」
春「うわッ、あそこのオタクが発狂しだよだよ!!」
小咲「何かされる前にここから逃げなきゃ!!」
るり「待つのよ小咲、会場が混乱している今闇雲に逃げ出してもかえって危険よ!」
スタッフ「会場にお越しのみなさん、落ち着いてください!!」
右助「おい、騒ぎが大きくなる前にはやく高部を捕まえろ」
警官「それが、どうやら高部はこのオタク達の中に紛れ込んだようで会場のどこにいるのかわかりません!!」
右助「なんだってーーーーー!?なら、この騒がしいオタク共を大人しくさせろ!これじゃ高部を探し出せねぇぞ」
警官「それが、発狂しているオタクのせいでこちらの言うことを聞いてくれそうにありません。こんな状態で奴らに無理強いを強いるとかえって騒ぎを大きくしてしまいます!!」
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:45:56.74 ID:/MaSIJGL0
右助「くそッ、こうなったら奥の手だ! オタクに当たっても構わん、この群れの中にいる高部あいを射殺しろーーー!!」
警官「イエッサー」
バーーンッ!
キモオタA「ぐわぁぁぁーーー」バタン
キモオタB「うわッ、キモオタAが警官に撃たれたぞ!!しっかりするんだキモオタA、キモオタAーーーーー!!」
キモオタAだったもの「…………」
チーーーーーーーン
右助「ふはははーーー、てめぇらキモオタなんざいくら死んでもかまやしねえんだよ!!高部と共に[ピーーー]やぁーーー!!」
バーーンッバーーンッ!!
キモオタB「うわぁ、警官に撃ち殺される!!」
キモオタC「に、逃げろぉーーーー!!」
万里花「このままでは私達も撃ち殺されてしまいますわ」
小咲「うわぁぁ、早く逃げなきゃ!!」
千棘「落ち着いて小咲ちゃん!パニック状態の会場で慌てて逃げ出してもかえって危ないわ、鶫!!」
鶫「御意! ビーハイブ狙撃班、配置につけ!!」
ビーハイブ達「イエッサーーー!」
警官「イエッサー」
バーーンッ!
キモオタA「ぐわぁぁぁーーー」バタン
キモオタB「うわッ、キモオタAが警官に撃たれたぞ!!しっかりするんだキモオタA、キモオタAーーーーー!!」
キモオタAだったもの「…………」
チーーーーーーーン
右助「ふはははーーー、てめぇらキモオタなんざいくら死んでもかまやしねえんだよ!!高部と共に[ピーーー]やぁーーー!!」
バーーンッバーーンッ!!
キモオタB「うわぁ、警官に撃ち殺される!!」
キモオタC「に、逃げろぉーーーー!!」
万里花「このままでは私達も撃ち殺されてしまいますわ」
小咲「うわぁぁ、早く逃げなきゃ!!」
千棘「落ち着いて小咲ちゃん!パニック状態の会場で慌てて逃げ出してもかえって危ないわ、鶫!!」
鶫「御意! ビーハイブ狙撃班、配置につけ!!」
ビーハイブ達「イエッサーーー!」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:46:30.59 ID:/MaSIJGL0
小咲「あれって千棘ちゃんのおうちの人達!?どうしているの?」
千棘「こんなこともあろうかと、鶫に言って待機させておいたのよ!」
鶫「お嬢を危険にさらろうとするものは例え誰であっても許さんッ!! オタクに当たっても構わん、警官を撃ち殺せーーーー!!」
ビーハイブ「イエッサーーー」
バーーンバーーンッ!!
警官「うぎゃぁぁぁぁーーーー」バタン
キモオタB「ぐはぁぁぁーーー」バタン
右助「あ、あれはビーハイブの連中!?どうしてこんなところにいやがるんだ……まあいい、オタク諸共奴らも撃ち殺せ!!」
バーーンバーーンッ!!
ビーハイブ「ぐわぁぁぁーーー!」バタン
鶫「おのれーーー躊躇うな!!奴らを1人残らず始末するのだ、お嬢の身を守れーー!!」
千棘「こんなこともあろうかと、鶫に言って待機させておいたのよ!」
鶫「お嬢を危険にさらろうとするものは例え誰であっても許さんッ!! オタクに当たっても構わん、警官を撃ち殺せーーーー!!」
ビーハイブ「イエッサーーー」
バーーンバーーンッ!!
警官「うぎゃぁぁぁぁーーーー」バタン
キモオタB「ぐはぁぁぁーーー」バタン
右助「あ、あれはビーハイブの連中!?どうしてこんなところにいやがるんだ……まあいい、オタク諸共奴らも撃ち殺せ!!」
バーーンバーーンッ!!
ビーハイブ「ぐわぁぁぁーーー!」バタン
鶫「おのれーーー躊躇うな!!奴らを1人残らず始末するのだ、お嬢の身を守れーー!!」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:47:16.26 ID:/MaSIJGL0
小咲「なんだか物凄い銃撃戦になってるよ!!」
春「オタクの人が次々と倒れていくよ!」
るり「でもこのままじゃ私達も巻き込まれるんじゃ」
万里花「この機に乗じてここから脱出しますわ。本田!」
本田「御意、皆さまこちらへ。脱出用のヘリを手配しました。これで脱出します」
春「ヘリコプターって、いつの間に!?」
千棘「でも、このままじゃ鶫が!!」
鶫「お嬢、私に構わず行ってください!!」
千棘「そんな、それじゃあんたが______」
鶫「私なら大丈夫です!!お嬢、早く行ってください!!」
千棘「鶫……」
小咲「行こう、千棘ちゃん」
千棘「小咲ちゃん……………うぐっ、鶫、絶対に死ぬんじゃないわよ!!」
バタバタバタ
春「オタクの人が次々と倒れていくよ!」
るり「でもこのままじゃ私達も巻き込まれるんじゃ」
万里花「この機に乗じてここから脱出しますわ。本田!」
本田「御意、皆さまこちらへ。脱出用のヘリを手配しました。これで脱出します」
春「ヘリコプターって、いつの間に!?」
千棘「でも、このままじゃ鶫が!!」
鶫「お嬢、私に構わず行ってください!!」
千棘「そんな、それじゃあんたが______」
鶫「私なら大丈夫です!!お嬢、早く行ってください!!」
千棘「鶫……」
小咲「行こう、千棘ちゃん」
千棘「小咲ちゃん……………うぐっ、鶫、絶対に死ぬんじゃないわよ!!」
バタバタバタ
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:47:44.16 ID:/MaSIJGL0
本田「皆さま、どうぞこちらです」
万里花「さま、早く乗ってください」
千棘「鶫……」
小咲「千棘ちゃん、鶫ちゃんならきっと大丈夫だよ!」
千棘「小咲ちゃん………そうよね、鶫はこんな簡単に死ぬわけないよね。ありがと」
春「このヘリ、一体どこへ向かうんですか?」
るり「とりあえずここを離れた方がいいわよね」
万里花「そうですわね、本田」
本田「御意、これより離陸します」
万里花「さま、早く乗ってください」
千棘「鶫……」
小咲「千棘ちゃん、鶫ちゃんならきっと大丈夫だよ!」
千棘「小咲ちゃん………そうよね、鶫はこんな簡単に死ぬわけないよね。ありがと」
春「このヘリ、一体どこへ向かうんですか?」
るり「とりあえずここを離れた方がいいわよね」
万里花「そうですわね、本田」
本田「御意、これより離陸します」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:48:22.53 ID:/MaSIJGL0
高部あい「はあ…はあ……まさかイベント中に警察がくるだなんてね。でも、ここで隠れてば警察も追ってこないはずよね。あとはタイミングを見計らって逃げ出せば………」
集「そうはいくかよ!!」
高部あい「だ、誰よあんた!?」
集「そうやってお前たちAKBは健気で純粋なオタク心を弄びやがって、裏では麻薬に手を染めたり男と寝たりしてファンの夢を壊してるだな!!」
高部あい「ふん、それがなんだっていうのよ! アイドルなんて所詮はそんなものよ。そうやってバカなオタクから搾り取った金で裏ではみんな遊んでんのよ!! オタクほど盲目的で純粋でバカな生き物はいないわ!まあ私達はそのおかげで美味しい思いを出来るけどね」
集「おのれーーーー絶対てめえは許さねえぞ!!」
楽「おい集!!こんなところにいやがったのか。オレ達もさっさとここから逃げるぞ。会場は銃撃戦になって大変なことになってんぞ!!」
集「悪いな楽、俺はやり残したことがある。お前だけ先に逃げてくれよ!!」
楽「はぁ!?何言ってんだよ集!?このままここにいたら銃撃戦に巻き込まれて俺達も危ねぇぞ。早く逃げねえと」
集「いや、俺はここで逃げるわけには行かねえんだ!!全国のバカなオタク達の代表として、俺はコイツを許すわけにはいかねえよ!!」
楽「集………」
集「そうはいくかよ!!」
高部あい「だ、誰よあんた!?」
集「そうやってお前たちAKBは健気で純粋なオタク心を弄びやがって、裏では麻薬に手を染めたり男と寝たりしてファンの夢を壊してるだな!!」
高部あい「ふん、それがなんだっていうのよ! アイドルなんて所詮はそんなものよ。そうやってバカなオタクから搾り取った金で裏ではみんな遊んでんのよ!! オタクほど盲目的で純粋でバカな生き物はいないわ!まあ私達はそのおかげで美味しい思いを出来るけどね」
集「おのれーーーー絶対てめえは許さねえぞ!!」
楽「おい集!!こんなところにいやがったのか。オレ達もさっさとここから逃げるぞ。会場は銃撃戦になって大変なことになってんぞ!!」
集「悪いな楽、俺はやり残したことがある。お前だけ先に逃げてくれよ!!」
楽「はぁ!?何言ってんだよ集!?このままここにいたら銃撃戦に巻き込まれて俺達も危ねぇぞ。早く逃げねえと」
集「いや、俺はここで逃げるわけには行かねえんだ!!全国のバカなオタク達の代表として、俺はコイツを許すわけにはいかねえよ!!」
楽「集………」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:49:03.35 ID:/MaSIJGL0
高部あい「何よ、コイツって私のこと?あんたに何が出来るっていうのよ?」
集「確かに俺達アイドルのオタクはバカだ。こんな女のためにせっかく貯めた小遣いを使っちまうんだもんな……」
楽「集、お前……」
集「いくら金を使って握手券を買っても、そのアイドルと付き合えるわけでもない。金の無駄だとわかっててもなかなかやめられない……俺、今わかったよ。アイドルってのはハマると麻薬なんかよりもよっぽど怖いんだなって。盲目的になりすぎてそのアイドルが全てだと勘違いしちまう、そのアイドルがしていることがなんでも正しいと思い込んでしまう、でも、そんなのやっぱり間違いなんだよ!!」
楽「…………集」
集「わかっていたはずなのに、俺は軽い気持ちで友達であるお前を巻き込んでしまったんだ。AKBなんて邪悪なものに親友を巻き込んでしまった。俺はとんでもない大馬鹿野郎さ……でも、そんな大馬鹿野郎にも、最後に一つ、出来ることがあるはずさ」
楽「集……………お前」
集「さあ楽、大馬鹿野郎からの最後のお願いだ。俺に構わず行ってくれよ。俺のことなら気にすんなって、お前をAKBなんかに捲き込んじまった報いさ。さあ、行ってくれよ」
楽「集………、お前は、お前は大馬鹿野郎なんかじゃねえよ。お前は俺の一番の親友さ!」
集「楽……………」
高部あい「はっ、何よそれ、マジウケるんだけどーー、男同士の友情ってやつ?マジ臭いんだけどそういうの! あんたら結局はAKBにハマったキモオタじゃないのよ!」
集「確かに俺たちはお前らみたいな最低なアイドルにハマったキモオタかもしれない!! でも、キモオタでもは、アイドルなんかよりも守りたいものがあるんだよ!!!」
楽「集、お前………」
集「確かに俺達アイドルのオタクはバカだ。こんな女のためにせっかく貯めた小遣いを使っちまうんだもんな……」
楽「集、お前……」
集「いくら金を使って握手券を買っても、そのアイドルと付き合えるわけでもない。金の無駄だとわかっててもなかなかやめられない……俺、今わかったよ。アイドルってのはハマると麻薬なんかよりもよっぽど怖いんだなって。盲目的になりすぎてそのアイドルが全てだと勘違いしちまう、そのアイドルがしていることがなんでも正しいと思い込んでしまう、でも、そんなのやっぱり間違いなんだよ!!」
楽「…………集」
集「わかっていたはずなのに、俺は軽い気持ちで友達であるお前を巻き込んでしまったんだ。AKBなんて邪悪なものに親友を巻き込んでしまった。俺はとんでもない大馬鹿野郎さ……でも、そんな大馬鹿野郎にも、最後に一つ、出来ることがあるはずさ」
楽「集……………お前」
集「さあ楽、大馬鹿野郎からの最後のお願いだ。俺に構わず行ってくれよ。俺のことなら気にすんなって、お前をAKBなんかに捲き込んじまった報いさ。さあ、行ってくれよ」
楽「集………、お前は、お前は大馬鹿野郎なんかじゃねえよ。お前は俺の一番の親友さ!」
集「楽……………」
高部あい「はっ、何よそれ、マジウケるんだけどーー、男同士の友情ってやつ?マジ臭いんだけどそういうの! あんたら結局はAKBにハマったキモオタじゃないのよ!」
集「確かに俺たちはお前らみたいな最低なアイドルにハマったキモオタかもしれない!! でも、キモオタでもは、アイドルなんかよりも守りたいものがあるんだよ!!!」
楽「集、お前………」
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:49:44.45 ID:/MaSIJGL0
警官「こっちの方に高部あいが逃げ込んだらしいぞ!!」
右助「よし、探し出せ!!見つけたら問答無用に射[ピーーー]るんだーー!」
高部あい「ちっ、警官がきやがったか!!」
集「逃がすかよーーーー!」
ガシッ
高部あい「きゃッ、離せよこの変態、痴漢!!」
楽「集ーーーーー!!」
集「さあ行くんだ楽!俺の屍を超えてゆけ!!」
集「集…………うぐぐ、ありがとよ」
集「へへ、気にすんなって。それと集、俺が偉そうに言えたことじゃないけど、もうアイドルだなんて厄介なものにハマるなよ。お前には桐崎さんも、それに小野寺もいるんだしさ……………幸運を祈るぜ」
楽「集………あぁ、ありがとよ!!」
タタタタタ……
右助「よし、探し出せ!!見つけたら問答無用に射[ピーーー]るんだーー!」
高部あい「ちっ、警官がきやがったか!!」
集「逃がすかよーーーー!」
ガシッ
高部あい「きゃッ、離せよこの変態、痴漢!!」
楽「集ーーーーー!!」
集「さあ行くんだ楽!俺の屍を超えてゆけ!!」
集「集…………うぐぐ、ありがとよ」
集「へへ、気にすんなって。それと集、俺が偉そうに言えたことじゃないけど、もうアイドルだなんて厄介なものにハマるなよ。お前には桐崎さんも、それに小野寺もいるんだしさ……………幸運を祈るぜ」
楽「集………あぁ、ありがとよ!!」
タタタタタ……
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:50:24.15 ID:/MaSIJGL0
右助「おい、まだ高部あいは見つからないのか!?」
警官「まさか、もうすでに会場から逃げ出しのでは?」
右助「いや、そんなはずはない。まだ会場の何処かにいるばすだ、隅々までよく探すんだ!」
別の警官「右助さん、大変です!!」
右助「一体何事だ?」
警官「はい。痺れを切らした上層部が最終手段に切り出したらしく、会場へ向けてミサイルを発射したとのことです」
右助「なんだとーーーー!?」
警官「ミサイルはあと数分で会場に着弾するようです!」
右助「くそ、上は俺達ごと高部あいを派手に始末ようってわけか!!ええい、総員撤退だ、直ちにここを離れるぞ!」
警官「了解です!」
警官「まさか、もうすでに会場から逃げ出しのでは?」
右助「いや、そんなはずはない。まだ会場の何処かにいるばすだ、隅々までよく探すんだ!」
別の警官「右助さん、大変です!!」
右助「一体何事だ?」
警官「はい。痺れを切らした上層部が最終手段に切り出したらしく、会場へ向けてミサイルを発射したとのことです」
右助「なんだとーーーー!?」
警官「ミサイルはあと数分で会場に着弾するようです!」
右助「くそ、上は俺達ごと高部あいを派手に始末ようってわけか!!ええい、総員撤退だ、直ちにここを離れるぞ!」
警官「了解です!」
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:51:06.96 ID:/MaSIJGL0
楽「はあ…はあ……くそ、この会場思ってたよりもデカイぞ。しかも初めてくるから何処に出入り口があんのかよくわかんねえ、迷っちまったよ」
鶫「こっちだ、一条楽!!」
楽「お前は鶫!?どうしてお前がこんなところに!?」
鶫「説明はあとだ!!この会場にミサイルが接近しているのだ。あと数分もしないうちにここは爆破される」
楽「な、なんだってーーーー!!?」
鶫「こちらへ急げ、この先に地下へ繋がる通路がある! この建物の地下は頑丈なシェルターになっていて、ミサイルの爆破にも耐えられるのだ!!」
楽「本当かッ!?」
鶫「ああ、だから急ぐのだ。もたもたするなッ!!」
楽「お、おうッ、恩にきるぜ鶫」
そして数分後………
キモオタ達「うわぁーーー逃げろ」
ゆきりん「ちょっと、何よあれ!?」
キモオタ達「あ、あれは……ミサイルだぁーーーーーーー!!!」
ドッカァーーーーーーーーーーーンッ!!!
こうして、握手会の会場はミサイルによって木っ端微塵となりした。
鶫「こっちだ、一条楽!!」
楽「お前は鶫!?どうしてお前がこんなところに!?」
鶫「説明はあとだ!!この会場にミサイルが接近しているのだ。あと数分もしないうちにここは爆破される」
楽「な、なんだってーーーー!!?」
鶫「こちらへ急げ、この先に地下へ繋がる通路がある! この建物の地下は頑丈なシェルターになっていて、ミサイルの爆破にも耐えられるのだ!!」
楽「本当かッ!?」
鶫「ああ、だから急ぐのだ。もたもたするなッ!!」
楽「お、おうッ、恩にきるぜ鶫」
そして数分後………
キモオタ達「うわぁーーー逃げろ」
ゆきりん「ちょっと、何よあれ!?」
キモオタ達「あ、あれは……ミサイルだぁーーーーーーー!!!」
ドッカァーーーーーーーーーーーンッ!!!
こうして、握手会の会場はミサイルによって木っ端微塵となりした。
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:52:48.37 ID:/MaSIJGL0
これは後ほど聞いた話です。
あの日ミサイルが撃ち込まれた会場跡地で行われた捜索により、逃げ遅れた多数の死傷者の焼け跡遺体が発見されました。中には身元が確認出来ないものもあったようですが、そのほとんどは当日会場にいたオタクとAKB48のメンバーのものだとされています。
身元が判明した遺体には、舞子くんのものと今回の騒動のきっかけとも言える高部あいのものと見られる遺体があったようです。それと右助さんという警官とその部下と見られる遺体も瓦礫の下から発見されましたが、その死因は爆発に巻き込まれてたものではなく、銃撃戦によるものだと判明しました。
どうやら鶫ちゃんがやったらしく、ミサイルが撃ち込まれるとの話を彼らから聞いた後、背後から狙い撃ちして仕留めたようです。本来ならビーハイブの組員に警官が撃ち殺されたということもあり、警視総監である橘さんのお父さんが怒り出してビーハイブと一悶着起こるところだったのですが、それをなだめたのは橘さんでした。鶫ちゃんは千棘ちゃんの身を守るために発砲したのですが、それを拡大解釈して私達全員の身を守るためだったとお父さんに説明してくれたようで、橘さん自身にも身の危険があったこともあってか、本田さんも裏で色々と働いてくれたらしく、さらに今回のことは警察に落ち度があったこともあり、警視総監の面子を守るためにも橘さんのお父さんは何もしてきませんでした。
鶫ちゃんやビーハイブが一般人であるオタク達を撃ち殺した件についても、ビーハイブの重役の人達が裏で色々と動いたようでお咎めはないみたいです。千棘ちゃん自身も自分の身を守るために銃撃戦となった挙句、たまたま居合わせた一般客が悲しいことに巻き添いになったと主張し、発砲も警官の方から先にしたこともあり、ここでも千棘ちゃん達の思惑通りに事が済みました。
そして、私達はと言うと…
まず妹の春ですが、今回のことでより男性不信となってしまったようで、現在学校を休学し入院しています。男性の声を聞くだけで怯えてしまい、お父さんでもなかなか病室に入れてもらえません。お友達の風ちゃんやポーラちゃんも心配していました。
るりちゃんは特に変わりませんが、一条くんを痛い目で見ています。
橘さんは、今後こういった事態が起こらぬようにと、本田さんや警察の人達を集めアイドルの撲滅活動を行う団体を立ち上げたようです。
鶫ちゃんは、ミサイルが発射されたあの会場にいたのですが、地下にあった頑丈なシェルターの中へ避難していたため無事でした。ちなみにその時一条くんも一緒でした。そこで一条くんと話したそうです。一条くんは舞子くんが残した言葉や鶫ちゃんからの説得もあり、改心しました。もうアイドルなんかにはまらないと言っていたようです。
そして、私と千棘ちゃんはと言うと……
千棘「あ、おはよー小咲ちゃん」
小咲「おはよう千棘ちゃん。一条くん……今日からだよね」
千棘「うん。ったくあのもやしったら、立ち直るのに随分とかかったじゃないの」
あの日ミサイルが撃ち込まれた会場跡地で行われた捜索により、逃げ遅れた多数の死傷者の焼け跡遺体が発見されました。中には身元が確認出来ないものもあったようですが、そのほとんどは当日会場にいたオタクとAKB48のメンバーのものだとされています。
身元が判明した遺体には、舞子くんのものと今回の騒動のきっかけとも言える高部あいのものと見られる遺体があったようです。それと右助さんという警官とその部下と見られる遺体も瓦礫の下から発見されましたが、その死因は爆発に巻き込まれてたものではなく、銃撃戦によるものだと判明しました。
どうやら鶫ちゃんがやったらしく、ミサイルが撃ち込まれるとの話を彼らから聞いた後、背後から狙い撃ちして仕留めたようです。本来ならビーハイブの組員に警官が撃ち殺されたということもあり、警視総監である橘さんのお父さんが怒り出してビーハイブと一悶着起こるところだったのですが、それをなだめたのは橘さんでした。鶫ちゃんは千棘ちゃんの身を守るために発砲したのですが、それを拡大解釈して私達全員の身を守るためだったとお父さんに説明してくれたようで、橘さん自身にも身の危険があったこともあってか、本田さんも裏で色々と働いてくれたらしく、さらに今回のことは警察に落ち度があったこともあり、警視総監の面子を守るためにも橘さんのお父さんは何もしてきませんでした。
鶫ちゃんやビーハイブが一般人であるオタク達を撃ち殺した件についても、ビーハイブの重役の人達が裏で色々と動いたようでお咎めはないみたいです。千棘ちゃん自身も自分の身を守るために銃撃戦となった挙句、たまたま居合わせた一般客が悲しいことに巻き添いになったと主張し、発砲も警官の方から先にしたこともあり、ここでも千棘ちゃん達の思惑通りに事が済みました。
そして、私達はと言うと…
まず妹の春ですが、今回のことでより男性不信となってしまったようで、現在学校を休学し入院しています。男性の声を聞くだけで怯えてしまい、お父さんでもなかなか病室に入れてもらえません。お友達の風ちゃんやポーラちゃんも心配していました。
るりちゃんは特に変わりませんが、一条くんを痛い目で見ています。
橘さんは、今後こういった事態が起こらぬようにと、本田さんや警察の人達を集めアイドルの撲滅活動を行う団体を立ち上げたようです。
鶫ちゃんは、ミサイルが発射されたあの会場にいたのですが、地下にあった頑丈なシェルターの中へ避難していたため無事でした。ちなみにその時一条くんも一緒でした。そこで一条くんと話したそうです。一条くんは舞子くんが残した言葉や鶫ちゃんからの説得もあり、改心しました。もうアイドルなんかにはまらないと言っていたようです。
そして、私と千棘ちゃんはと言うと……
千棘「あ、おはよー小咲ちゃん」
小咲「おはよう千棘ちゃん。一条くん……今日からだよね」
千棘「うん。ったくあのもやしったら、立ち直るのに随分とかかったじゃないの」
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:53:29.98 ID:/MaSIJGL0
一条くんは自分のせいで舞子くんが犠牲になっただと、あの日以降落ち込むようになってしばらく学校へきませんでした。
しかし、私や千棘ちゃんの説得、そして一条くんのお家の人や羽先生のフォローもあり、最近になってようやく元気を取り戻したのです。
そして、今日からまた一条くんが学校へ通います。羽先生に頼まれて、私と千棘ちゃんで一条くんのお迎えにきました。
ピンポーーーーーン!!!
小咲「一条くん、迎えに来たよ」
千棘「ほらもやし、さっさと準備して出て来ないよーーー」
竜「お、坊ちゃん。お出迎えが来たやうですぜ」
楽「おう、今行くーー!」
しかし、私や千棘ちゃんの説得、そして一条くんのお家の人や羽先生のフォローもあり、最近になってようやく元気を取り戻したのです。
そして、今日からまた一条くんが学校へ通います。羽先生に頼まれて、私と千棘ちゃんで一条くんのお迎えにきました。
ピンポーーーーーン!!!
小咲「一条くん、迎えに来たよ」
千棘「ほらもやし、さっさと準備して出て来ないよーーー」
竜「お、坊ちゃん。お出迎えが来たやうですぜ」
楽「おう、今行くーー!」
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:54:09.30 ID:/MaSIJGL0
一条くんは周りの人の助けも借りて、徐々に元気になっています。
あれだけのことが起きてまだ万全ではないだろうけど、それでもまたこうして学校へ一緒になって通えることがとても嬉しいです。
あれから、一条くんのことを厳しく責める人もたくさんいましたが、私と千棘ちゃんは、できるだけ一条くんに対して優しく接することにしました。一条くんも反省していることだし、それに親友である舞子くんを失った心の傷と自責の念が思っていたより大きかったからです。
でも、私はそんな一条くんを支えてあげならが一歩づつ一緒に進んで行ければと思っています。
AKBが亡き今、以前以上に一条くんと会話する機会が増えた気がします。前よりも仲良くなれた気がしてとても嬉しいです。今度のお休み、また一条くんがうちの和菓子屋さんのお手伝いをしてくれることになりました。
一条くんとの距離が縮まった……
でもそれは、千棘ちゃんも同じ。
私と千棘ちゃんはあの事件の後、互いに一条くんが好きだということを伝え、一緒に一条くんを支えるとともにお互いを良き恋のライバルとして認め合いました。
私は負けません、必ず千棘ちゃんに勝って一条くんを手に入れてみせます!!
竜「そんじゃ坊ちゃん、行ってらっしゃいーー」
楽「おう、行ってきまーす」
小咲「おはよう、一条くん」
千棘「ったく、久々の登校なんだしビシッとしなさいよね」
こうして私と千棘ちゃん、それと一条くんの3人で学校へと向かうのでした。
あれだけのことが起きてまだ万全ではないだろうけど、それでもまたこうして学校へ一緒になって通えることがとても嬉しいです。
あれから、一条くんのことを厳しく責める人もたくさんいましたが、私と千棘ちゃんは、できるだけ一条くんに対して優しく接することにしました。一条くんも反省していることだし、それに親友である舞子くんを失った心の傷と自責の念が思っていたより大きかったからです。
でも、私はそんな一条くんを支えてあげならが一歩づつ一緒に進んで行ければと思っています。
AKBが亡き今、以前以上に一条くんと会話する機会が増えた気がします。前よりも仲良くなれた気がしてとても嬉しいです。今度のお休み、また一条くんがうちの和菓子屋さんのお手伝いをしてくれることになりました。
一条くんとの距離が縮まった……
でもそれは、千棘ちゃんも同じ。
私と千棘ちゃんはあの事件の後、互いに一条くんが好きだということを伝え、一緒に一条くんを支えるとともにお互いを良き恋のライバルとして認め合いました。
私は負けません、必ず千棘ちゃんに勝って一条くんを手に入れてみせます!!
竜「そんじゃ坊ちゃん、行ってらっしゃいーー」
楽「おう、行ってきまーす」
小咲「おはよう、一条くん」
千棘「ったく、久々の登校なんだしビシッとしなさいよね」
こうして私と千棘ちゃん、それと一条くんの3人で学校へと向かうのでした。
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 13:55:03.28 ID:/MaSIJGL0
楽「あのよ………小野寺も千棘も、ありがとな」
千棘「たく、まだ言ってんのあんた。いつまでも過ぎたことでイジイジしてちゃ、男らしくないわよ」
小咲「千棘ちゃんの言う通りだよ。もう済んだことだし、舞子くんだって、きっと天国で一条くんのことを応援してくれてるって」
楽「そっか………そうだよな。前向きに進まねえと死んだあいつに顔向け出来ねえもんな。ありがとう、2人とも」
小咲「そ、そんな、私達は何もしてないよ///」
千棘「そうよ、まったく世話の焼けるもやしね///」
楽「俺はもう、AKBみてえなアイドルになんかハマったりしねえ。だって俺には、小野寺や千棘がいるんだもんな」
小咲「一条くん……///」
千棘「ら、楽………///」
千棘(そうよ、アンタはAKBなんかじゃなくて私を見れてばいいよの/// 小咲ちゃん、この戦いは負けないは!)
小咲(私だって……もう、今までよ控え目な私じゃないんだから!! もっと積極的にアピールして千棘ちゃんよりも早く一条くんのハートを射止めてみせるもん///)
楽「あぁ、あとこの"ことりちゃん"もな!!」
千棘「えっ!?」
小咲「こ、ことりちゃん?」
カタカタカタ……
楽「なあ見てくれよ〜2人とも! この子、ラブライブってゲームに登場する南ことりちゃんって子なんだけどさ、スゲー可愛くてよ!」
千棘•小咲「もっとダメェーーーーーーーーッ!!!」
終わり
千棘「たく、まだ言ってんのあんた。いつまでも過ぎたことでイジイジしてちゃ、男らしくないわよ」
小咲「千棘ちゃんの言う通りだよ。もう済んだことだし、舞子くんだって、きっと天国で一条くんのことを応援してくれてるって」
楽「そっか………そうだよな。前向きに進まねえと死んだあいつに顔向け出来ねえもんな。ありがとう、2人とも」
小咲「そ、そんな、私達は何もしてないよ///」
千棘「そうよ、まったく世話の焼けるもやしね///」
楽「俺はもう、AKBみてえなアイドルになんかハマったりしねえ。だって俺には、小野寺や千棘がいるんだもんな」
小咲「一条くん……///」
千棘「ら、楽………///」
千棘(そうよ、アンタはAKBなんかじゃなくて私を見れてばいいよの/// 小咲ちゃん、この戦いは負けないは!)
小咲(私だって……もう、今までよ控え目な私じゃないんだから!! もっと積極的にアピールして千棘ちゃんよりも早く一条くんのハートを射止めてみせるもん///)
楽「あぁ、あとこの"ことりちゃん"もな!!」
千棘「えっ!?」
小咲「こ、ことりちゃん?」
カタカタカタ……
楽「なあ見てくれよ〜2人とも! この子、ラブライブってゲームに登場する南ことりちゃんって子なんだけどさ、スゲー可愛くてよ!」
千棘•小咲「もっとダメェーーーーーーーーッ!!!」
終わり
58: ゴム屋おのでら 2015/11/16(月) 13:57:22.09 ID:/MaSIJGL0
作者です。
以上で当SSはお終いです。最後までご覧いただきありがとうございました。
それと、最後になりますが、
AKBファンの方はご閲覧にご注意ください。
以上で当SSはお終いです。最後までご覧いただきありがとうございました。
それと、最後になりますが、
AKBファンの方はご閲覧にご注意ください。
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 14:11:20.59 ID:fnwNZFEpO
乙、今回は書溜め一気に投下スタイルだったか
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 18:53:29.14 ID:pxDFtuLK0
乙
書き溜め形式いいな途中でやる気なくなることもないし
ラブライブ編も書いてええのんやで
書き溜め形式いいな途中でやる気なくなることもないし
ラブライブ編も書いてええのんやで
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/16(月) 20:50:50.82 ID:iN3rb1MOo
相変わらずカオスなssだった
乙
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447647216/
Entry ⇒ 2015.11.18 | Category ⇒ ニセコイ | Comments (0)
つぐみ「二人のニセコイ」
1: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:43:31.84 ID:8HeZ4CUl0
2: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:45:21.20 ID:8HeZ4CUl0
※前作の最後で「再投稿する際は別のトリップにする」旨予告していましたが、そのトリップキーをなくしてしまいました。
よって前作のキーをそのまま使って投稿しています。悪しからずご了承ください。
よって前作のキーをそのまま使って投稿しています。悪しからずご了承ください。
3: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:46:21.23 ID:8HeZ4CUl0
楽「……じゃあさ」
楽「千棘の鍵って、元々はつぐみのモノだったりして、って言うのはどうよ」
小野寺「―――」
万里花「………」
るり「………」
集「………」
楽「……ごめん、俺、そんなに変なこと、言っ、たか?」
小野寺「あっ……いや、その、うーん」
万里花「………」
るり「……一条くん、あなたって、ほんっとに……」
4: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:47:04.16 ID:8HeZ4CUl0
羽「……ちなみに、どうしてそんな発想に至ったのか、教えてくれるかな?」
小野寺「ちょ、羽先生!!」
楽「いやあ……ホント、根拠のある話じゃないんだけど」
楽「俺達って、小さい頃皆で仲良く遊んでたんだろ?」
羽「うん。今鍵を持っている子達と、楽ちゃんとつぐみちゃん。間違いなく小さい頃に遊んでるわ」
楽「それで、鍵が4本登場する絵本に、皆うすぼんやり覚えがある、と」
万里花「……ええ」
小野寺「……うん」
楽「そうなると当時”絵本ごっこしよう”と言う話になって、何かの形で鍵が実際に用意された可能性はあると思う」
楽「俺らの親が用意したとか、たまたま俺らで持ってたおもちゃの鍵を持ち寄った、とかな」
るり「……」
5: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:48:07.58 ID:8HeZ4CUl0
楽「しかし男の俺はともかく、女の子が5人に対して、絵本に出てくる鍵は4本。お話通りにするには、鍵が一本足りないだろ?」
楽「……でも、故意に仲間外れを作ったりするのは、多分しなかったと思うんだよな」
楽「例えば、ジャンケンか何かで負けて、鍵をもらえなかった千棘が」
楽「皆の前では平気そうなツラして意地張って」
楽「夜中こっそり、一人でべそべそ泣いてるところを見つけたつぐみが」
楽「自分の鍵を譲ってやった絵面とか、なんかしっくりくるっつーか」
小野寺(どうしよう、ちょっと来る)
万里花(来ますわ)
るり(来るわね)
羽(来るかも)
6: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:48:49.46 ID:8HeZ4CUl0
集「まあ……だけどお前、ひとつ失敗してるよ」
楽「?」
集「そーゆー話は……」
プルプルプル
千棘「何ぁにをお話しになられていたのかしら、ダーリィン……?」
集「関係者の耳に触れそうもないところで、するべきだったってコトで」ニコ
楽(終わった)
千棘「アンタねぇぇぇぇええええ!!!!」
7: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:49:50.56 ID:8HeZ4CUl0
パシィッ!!
8: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:50:43.19 ID:8HeZ4CUl0
楽「!?」
つぐみ「うっ……」
千棘「つぐみ!? 一体何処から」
つぐみ「……本気を出しすぎです、お嬢」
千棘「……」ムスッ
千棘「……何で、ジャマ、するのよ」
つぐみ「……」フゥ
つぐみ「落ち着いてください」
つぐみ「いくらコイビトだからと言って、無尽蔵に痛めつけてよいものではありません」
千棘「……主のコイビトに実銃ブッ放す奴が、ずいぶんなお説教ね?」
つぐみ「……」
つぐみ「私は特別な訓練を受けていますから、大丈夫なんです」
10: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:51:43.96 ID:8HeZ4CUl0
千棘「……ふんっ」プイッ
つぐみ「お嬢っ」
千棘「おじょう、じゃないわよ」
千棘「どうせちょっと……」
千棘「……ダーリンにおだて上げられたから、のぼせ上がってるんでしょ」
つぐみ「」ボッ
つぐみ「いいいいいや、私は、べべべべべべ別にそんなっ」
千棘「いーわよ、いーわよ。どうせ私はワガママだも~ん」
楽「お、おい……ハニー。今のは俺が悪かったからさ。つぐみにまで当たることないだろ」
千棘「……」プチン
千棘「別に、当たってなんか、ないッ!!」ダダダダダッ
つぐみ「あっ、お嬢っ!!」ダダッ
11: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:53:06.04 ID:8HeZ4CUl0
羽「っ、と」キュッ
つぐみ「わっぷ……せ、先生」
羽「……つぐみちゃん」
羽「追わないで欲しい気持ちになることも、人生にはたくさんあるのです」
つぐみ「しかしっ」
羽「ねっ?」
つぐみ「……」
つぐみ「そういう、ものですか」
12: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:54:06.24 ID:8HeZ4CUl0
るり「……うかつよ、一条君」
楽「面目ない」ズーン
万里花「落ち込まないで下さいまし、楽様」
万里花「面白いことを閃いた時、つい周りに吹聴したくなるのは、人間(ヒト)の抗えざる性(サガ)ですもの」
楽(橘と同レベルか……)
小野寺「ちゃんと千棘ちゃんに、謝らなくちゃだめだよ?」
楽「ああ。今日の夜にでも電話して、明日にでも謝っておくよ」
キーン コーン カーン コーン
13: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:54:58.54 ID:8HeZ4CUl0
万里花「……っ、と。次の授業が始まってしまいますわ。舞子さん、行きましょう」
小野寺「えっ」
楽「えっ」
集「えっ」
万里花「……行きましょう」グイグイ
集「う、ウ、ウヘアアアァァァァ……」
小野寺「……」
楽「……」
羽「……」
羽「……マジコイ?」
楽・小野寺『違うと思います』
14: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:55:41.19 ID:8HeZ4CUl0
『二人のニセコイ』
15: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:57:51.47 ID:8HeZ4CUl0
~ 夜 集英組 一条楽 自室 ~
楽「悪かった」
千棘『……もう、分かったって言ってるでしょ。切るわよ』
楽「だけど、俺のせいでお前、つぐみとも」
千棘『いいから。夜も遅いし……また明日、ね』
楽「だから、ちょっと待っ」
千棘『おやすみ』プッ ツー ツー ツー
楽「……」
楽「……」バフッ
楽(……くそっ)
楽(今かけ直しても、こじれるだけか……)
16: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:58:53.98 ID:8HeZ4CUl0
楽(……)
楽(そもそもの原因は俺だから、あんまり強く出れねーけど)
楽(いくらそっち方面に疎い鈍いっつったって、つぐみに”鍵の話”を嗅ぎ回られるっつー事は)
楽(ニセコイ関係を疑っているつぐみに、格好の材料を与えるってコトで)
楽(その危険性、アイツは本当に分かってんのかな……)
楽(……)
楽(……)
楽(つぐみ、か)
楽(出会った頃は、刺々しいばっかりで、ホント俺の命なんざ紙くずぐらいに考えてる奴だと思ってたけど)
楽(なんにでも一生懸命な奴で、いちいちカッコイイし、それでいて可愛いところもあるとか、だんだん分かってきて)
楽(人としても一本筋が通ってて、魅力的、っつーか……)
17: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 20:59:33.26 ID:8HeZ4CUl0
楽(……)
楽(……)
楽(……もし)
楽(……さっきの想像が真実で)
楽(つぐみが、約束の女の子だったとしたら……)
楽(……)
楽(……)
楽(ないない)
楽(あれだけ千棘を敬愛していて、忠節を捧げていて、大事にしているアイツだ)
楽(俺を含めて、千棘以外の存在を好きになる姿が、全然想像できねー)
18: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:00:17.02 ID:8HeZ4CUl0
楽(……)
楽(……)
楽(……そーだよな)
楽(仮につぐみが約束の女の子だったとして)
楽(今のつぐみは、俺のことなんて、絶対相手にしねーだろ)
楽(……そもそも)
楽(千棘にとは言え、鍵を他人にやっちまってるってことは、約束自体大事に思っていないと予想できるわけで……)
楽(……っつーかそもそも、今の俺は小野寺が好きで、千棘と付き合ってて、橘の婚約者で、羽姉と同居していて……)
楽(……)
楽(……)
楽(……)ハァ
楽(……)
楽(……寝よ)
19: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:01:14.25 ID:8HeZ4CUl0
~ 同刻 桐崎邸 桐崎千棘 自室 ~
楽『悪かった』
千棘「……もう、分かったって言ってるでしょ。切るわよ」
楽『だけど、俺のせいでお前、つぐみとも』
千棘「いいから。夜も遅いし……また明日、ね」
楽『だから、ちょっと待っ』
千棘「おやすみ」プッ ツー ツー ツー
千棘「……」
千棘「……」
千棘「……」バフッ
20: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:01:54.38 ID:8HeZ4CUl0
千棘「……」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
千棘(ああああああああああああああああああああ)ゴロゴロゴロ
千棘(何なのよもおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)ジタバタジタバタ
千棘(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)ジタバタガスガス
千棘「……っはーっ、はーっ、はーっ……」
千棘(……)
千棘(……)
千棘(……私が)
千棘(本当は鍵なんて持ってなくて)
千棘(何かの情けでつぐみから鍵を貰ったってぇ?)
21: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:02:42.26 ID:8HeZ4CUl0
千棘(……)
千棘(ありえるわよクソッタレ!!!!!!!!!)ズガンズバン
コン コン
クロード『……お嬢?』
千棘「……ジャマしないでくれる? 今良いトコなの」
クロード『……程々になさいませ』
千棘「はいはい……」
千棘「……」
千棘(……)
ジャリ
千棘(……元々、この鍵だって、日記と一緒にクローゼットへブチ込まれてただけのモンだし)
千棘(日記にはそれらしいコトが書いてあるけど、この鍵がその時のモノって確証はそもそもないし)
千棘(大体日記の内容って真実なの? 日記の男の子ってホントにアイツ?)
千棘(全然覚えてないけど、当時の私がつぐみを男の子と勘違いしてたって可能性は?)
22: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:04:01.77 ID:8HeZ4CUl0
千棘(……考えれば考えるほど、ワケわかんない)
千棘(一体、10年前に何があったっつーのよ……)
千棘(……)
千棘(……)
千棘(……でも)
千棘(仮に、10年前のコトが全部分かったとして)
千棘(約束の女の子が、私じゃなかったとしたら)
千棘(……例えば、つぐみだったとしたら)
千棘(ニセモノのコイビトでしかない私は)
千棘(どうしたら、いいんだろ……)
23: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:05:25.03 ID:8HeZ4CUl0
~ 同刻 鶫誠士郎 セーフハウス ~
つぐみ(……)
つぐみ(……流石に同じ家には、帰りづらかったけれど)
つぐみ(こうして一人になると、やはり少し、寂しいな……)
つぐみ(……)ゴロン
つぐみ(……)
つぐみ(……全く)
つぐみ(お嬢のかんしゃくも、今に始まったことではないが)
つぐみ(自分が標的になるのは、やはり気持ちの良いものではない)
つぐみ(……下手をすれば、日本に来てからは、初めてではないか?)
つぐみ(何故かと言えば……)
つぐみ(一条、楽)
つぐみ(奴がお嬢と付き合い始めてから、お嬢の怒りはおおむね全て、奴に向いていたから)
24: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:06:10.15 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ(……怒りだけではない)
つぐみ(間近で見ていた私には、確かに分かる)
つぐみ(お嬢の喜び、悲しみ、怒り、興味、全ての感情が、今は奴を中心に回っている)
つぐみ(……本当に、馬鹿な話だ)
つぐみ(一条楽とお嬢が、ニセモノのコイビトかも知れない、などと)
つぐみ(あのお嬢が、ここまであけすけに心を向けている男の、何がニセモノだと言うのだろう)
つぐみ(お嬢は間違いなく、一条楽を、愛しているはずだ)
つぐみ(……)
つぐみ(だが)
つぐみ(一条楽の方は、どうなのだろうか)
つぐみ(他の女に、少しでも懸想するようなことが……)
つぐみ(……あったならば血煙を吹かせて縊り殺してやるところなのだが)
つぐみ(……)
25: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:07:24.93 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ(……)
つぐみ(……)ハァ
つぐみ(……自分自身に嘘をついても、しょうがない、か)
つぐみ(……)ゴロン
つぐみ(……そう言えば)
つぐみ(結局、”鍵”とは何なのだ)
つぐみ(考えてみれば、おかしな話だ)
つぐみ(一条楽が記憶を無くした時に、二人の間に、鍵を通じた因縁があったとは聞いているが)
つぐみ(今日の、お嬢の怒りぶりは、普段のそれとは恐らく違っていた)
つぐみ(あのように重い一撃、今まで……)
26: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:07:57.29 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ(……)
つぐみ(そうだ、やはりおかしい)
つぐみ(10年前に、お嬢と一条楽の間に鍵の因縁が生まれていたとしたら)
つぐみ(それは二人がコイビト同士になった時点で、既に成就されているではないか)
つぐみ(何故お嬢は、既に果たされているはずの約束に、固執しているのだ?)
つぐみ(それも普通に、ではない。まるで、縋ってさえいるような……)
つぐみ(……)
ゴロン
つぐみ(……そして、小野寺様をはじめとする、鍵を持つ他の者の存在)
つぐみ(……仮に、彼女らの存在が、お嬢の心をかき乱しているのだとしたら……)
つぐみ(……)
27: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:08:40.89 ID:8HeZ4CUl0
~ 翌日 凡矢理高校 昼休み 校舎裏 ~
万里花「……それで、私ですか?」
つぐみ「……ああ」
万里花「素直にお話しするとでも?」ニコ
つぐみ「……こういう言い方は、貴様……お前相手でも、失礼で悪いとは思うんだが」
つぐみ「他に、当てがなくなってしまったのだ」
万里花「あら」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
つぐみ「お嬢、その、昨日は……」
千棘「……いいのよ、ホント」
千棘「確かに昨日の勢いじゃ、アイツに怪我させちゃってもおかしくなかったし」
千棘「止めてくれてありがと、つぐみ。嫌な思いまでさせちゃって、ごめんね」
千棘「あ、ミルクティもありがと」ズズッ
つぐみ「お嬢っ……」パァァァァ
28: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:09:23.85 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……」
つぐみ「」ブンブンッ
つぐみ「」キリッ
つぐみ「ところでお嬢、昨日の話にも出ていた、鍵の話なんですが」
千棘「ブッフゥッ!?」ブボッ
つぐみ「お嬢!?」
千棘「グホッ、ゲホッ、あ、な、な、なななななんでもないのよつぐみ」
つぐみ「なななななんでもない訳無いでしょう!? 今すっごい吹いてましたよ飲み物」
千棘「いーいーかーらーほっとけよ!!!!」ダダダッ
つぐみ「……」
つぐみ(……?)
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
つぐみ「小野寺様」
29: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:10:01.41 ID:8HeZ4CUl0
小野寺「あ、つぐみちゃんおはよう。あの後大丈夫だった?」
小野寺「……って、心配することないか。千棘ちゃんとつぐみちゃん、仲良しだもんね」
つぐみ「ええ、ありがとうございます」ハハ
つぐみ「ところで、その時に話題になった鍵の件なんですが」
小野寺「」ビクッッ
つぐみ「……小野寺様?」
小野寺「あー……その、ごめんね、つぐみちゃん、その辺はその、私からは、のーこめんとって言うか……」
つぐみ「そんな事は無いでしょう。それとも」
つぐみ「……私の耳に入るのは、不都合な話、と言う事になるのでしょうか」キラリン
小野寺「っ……」
つぐみ「……」
小野寺「……ご」
つぐみ「ご?」
小野寺「ご」
小野寺「ごめんなさい!!」ダダダダダッ
つぐみ「……」ハァ
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
つぐみ「羽先生、鍵のことでご相談が……」
30: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:10:46.21 ID:8HeZ4CUl0
羽「んー? どこの鍵の話かな?」
つぐみ「……どこの鍵、かは、よくわからないのですが」
羽「えっ」
つぐみ「えっ」
羽「……んーっとね、私はまだ新任だから、自分の教室の鍵くらいしか、預かっていないんだけど」
つぐみ「ああ、ええと違います。先生方がお持ちの鍵の話です」
羽「……当直用の下着とか、お風呂セットくらいしか、入ってないわよ?」
つぐみ「えっ」
羽「えっ」
つぐみ「……ああー、先生方の職員用ロッカーの話ではなくて、先生やお嬢が持っている鍵の話で」
羽「……」
羽「……」
羽「……えーとね」
つぐみ「……誤魔化さないで、お聞かせ願えますか」
羽「バレちゃった」エヘ
31: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:11:24.25 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……先生は、ご存知なんですよね」
つぐみ「お嬢と小野寺様と、橘万里花と先生がお持ちの鍵のこと」
羽「……」
羽「んー」
羽「教えてあげません」ニコ
つぐみ「……知っていることは、否定しないのですか」
羽「うん。先生はお姉さんですから、皆より少しだけ昔のことには詳しいわ」
羽「でも、皆が知らないことを、つぐみちゃんにだけ話すのは平等じゃないもの」
羽「先生は、えこひいきをしません」
羽「だから、ひみつです」ピッ
つぐみ「……しかし」
つぐみ「一条楽を含め、当時を知る者達は、皆その鍵について、何らかの見識を持っているようです」
つぐみ「私だけ何も知らないというのは、不平等とは言えませんか」
羽「……んー、まあ、そうなんだけどね」
つぐみ「ではっ」
32: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:12:04.49 ID:8HeZ4CUl0
羽「それでもダメ、かなー」
つぐみ「……何故、ですか」
羽「……私は先生だけど、当事者でもあるからね」
羽「ライバルに塩を送るようなコトは、できるだけしたくないかな、って」ニコ
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
万里花「……なるほど」
万里花「けれど、それだけではないのでしょう?」
つぐみ「……」
万里花「もし、あなたが本当に、鍵の真実を知りたいだけならば」
万里花「私以外にも、話を聞くべき人間が、ちゃんといるではありませんか」
つぐみ「……」
万里花「正直にお答えください」
万里花「どうして、楽様を避けて、私に話を聞きに来たのですか?」
33: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:12:58.27 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……」
万里花「言えないのならば、私からお話しすることもありません」クルッ
万里花「ごきげんよう、鶫誠士郎さ」
つぐみ「それが一条楽の、かつての想い人に繋がる話だと思っているからだ!!!!」
万里花「」ビクッ
つぐみ「……」
つぐみ「私とて、鈍感ではあるかも知れんがバカじゃない」
つぐみ「10年前に出会った者達が、同じように鍵を持っていて」
つぐみ「一条楽がその中心に居ることぐらいは、理解している」
つぐみ「今日、皆に話を聞いて……疑念が確信に変わった」
万里花「……確かに、そのような発想をお持ちなら、楽様に直接話を聞くのは憚られますわね」
万里花「でも、それで私に話を聞きにくるのは、やはりおかしいのではありませんか?」
万里花「自らの主のコイビトの、恋愛遍歴を探ろうだなんて。余程趣味が悪いのではないかしら」
34: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:13:50.06 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……」
つぐみ「……今、一条楽はお嬢のコイビトだが」
つぐみ「仮に、過去にその、鍵を持った女と、コイに落ちたことがあったとするなら」
つぐみ「そして私が、本当はその一人だったかもしれないと言われてしまえば……」
つぐみ「……」
つぐみ「……」
万里花「……」ザッ
つぐみ「……気になるんだよっ!!」
万里花「」ピタ
万里花「……へえ」ニヤ
つぐみ「……」
つぐみ「……あ」カァァァ
35: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:14:37.51 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……っあ、う、え」
つぐみ「……や、やっぱり、い、いい」
つぐみ「都合がいいようだが、この話は忘れてくれ、橘万里花。私も二度と、このような世迷い事はっ」アセアセ
万里花「お断りします」ニコッ
つぐみ「っ……!!」
万里花「せっかく協力して差し上げる気になったのに、今更待ったはナシでしょう?」ニコニコ
つぐみ「……む、ぅ……」
万里花「最初から」
万里花「正直に気持ちを話してさえ下されば、意地悪をするつもりなど、無かったんですのよ」
つぐみ「……どうして」
万里花「だって貴女は、私にそっくりだから」
万里花「放ってなんて、おけませんわ」ニコ
つぐみ(傷ついた)
36: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:15:12.77 ID:8HeZ4CUl0
万里花「……」
万里花「お話は、しますけれど」
万里花「今日の放課後、時間はございまして?」
つぐみ「……おそらく、大丈夫だ」
万里花「ならば少し、お付き合いくださいまし」
万里花「……おこづかい、いっぱい持ってきてくださいね?」
つぐみ「……ああ」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
つぐみ「……それで」
つぐみ「何故」
37: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:15:47.32 ID:8HeZ4CUl0
~ 同日 放課後 駅前繁華街 ~
つぐみ「こんな所に集まらねばならんのだ」
万里花「何故って」
万里花「お買い物をするために、決まっているじゃありませんの」
つぐみ「」
万里花「?」ニコ
つぐみ「……私は、鍵の話をしてくれるよう頼んだはずなのだが」
万里花「……」
万里花「……」ギロッ
つぐみ「」ビクッ
万里花「……きさん」
万里花「にやがんなかよ」
つぐみ「」
38: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:16:29.91 ID:8HeZ4CUl0
万里花「殺し屋の世界がどがんひゅーなかトコか知らんけんね」
万里花「ばってん、女にとって恋愛ちゅうモンは命がけやが」
万里花「そげん硝煙臭い、げど臭い格好せんと」
万里花「コイをするならしこらんかい、コラ」
つぐみ「……すみません」
つぐみ(……言葉の意味は全然分からんが、とにかく凄味があって怖い)
万里花「……」
万里花「」ギラッ
万里花「そこな隠れよるきさんら」
???『』ビグウッ
万里花「はよ、こーきぃ」
万里花「そげな隠れとっとも、一緒に居ねればどんげもならんわ」
???『ど、ど、どうしよう小咲ちゃんこれ完全にバレてるんだけど』
???『凄い怒られてるのは分かるんだけど何言ってるんだか全然わかんないよ、どうしよう千棘ちゃぁん』
つぐみ「……」
つぐみ(……女は、怖いな……)
39: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:17:47.69 ID:8HeZ4CUl0
~ 駅前デパート 6階 レディースファッションエリア ~
マネキン(ドヤァァァァァァ)
ディスプレイ(キラァァァァァァァ)
店員(イラッシャイマセェェェェェ)
つぐみ(……橘万里花の勢いに圧倒されたとはいえ)
つぐみ(……こんな女々しい空間に、私が足を踏み入れようとは……)ゲッソリ
千棘「……万里花、アンタねぇ」ヒソヒソ
小野寺「……あのね、私達、鍵のことでちょっとつぐみちゃんと」ヒソヒソ
万里花「ぁあ゙!?」ギロリ
小野寺「生きててすみません」
万里花「……」
40: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:18:37.08 ID:8HeZ4CUl0
万里花「……こほん」
万里花「今日は私、つぐみさんにお洒落を学んでいただこうと、買い物にお誘いしましたの」
万里花「主の桐崎さんが、ちゃんと彼女と向き合っていたら」
万里花「必要の無いコトだったかも知れませんけど、ね」
千棘「何よソレ、私は……」
千棘「……」
千棘「……」ギリッ
千棘「……そんな事より、どういう風の吹き回しよ」
千棘「何であんたが、つぐみにこんな真似」
万里花「……そうですねぇ」
万里花「私なりの、つぐみさんへのお答えとでも、申しておきましょうか」
千棘「……」
千棘「やっぱ、ワケわかんないんだけど」
万里花「……」ニコ
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
小野寺「えっとえっと」
41: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:19:19.42 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「え、はあ、まあ」
小野寺「……」
小野寺「……えっと」
小野寺「つぐみちゃんは、普段はどんな所で服を買ってるの?」
つぐみ「……ビ」
小野寺「ヴィトン!?」
つぐみ「備品を」
小野寺「ビヒン!?」
つぐみ「あ、その、勤め先の備品から、適当に見繕っているというか、その」
小野寺「それは横領だよつぐみちゃん……」
つぐみ「すみません……」
万里花「……」
千棘「……」
万里花「……」
千棘「……」
万里花「……」チラ
42: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:20:13.34 ID:8HeZ4CUl0
小野寺「やっぱりこれだけ一杯あると、どうしても目移りしちゃうね、つぐみちゃん」
千棘「……」
千棘「……」ハァ
千棘「……もう、しょうがないわね……」
千棘「私達も手伝ってあげるから。つぐみもちょっとはやる気出しなさいよ」
つぐみ「え、あ、お嬢、そ、そんな」
千棘「いいからいいから。ね、小咲ちゃん?」
小野寺「うん、もちろん♪」
つぐみ「いいんですよ、私にこんな、キラキラした服は、その……」
小野寺「大丈夫大丈夫、つぐみちゃんスタイル良いし、きっと似合うって、ほらほら……」
つぐみ「お、小野寺様~……」ジタバタ
千棘「……」
千棘「……これで、いいんでしょ?」
万里花「……ええ」ニコ
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
小野寺「……つぐみちゃんには、こういうチュニックワンピなんか似合うかな、なんて思ったりして」
千棘「確かにね、こういう淡い……パステル系の色合い着てるところ、あんまり見ないし」
43: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:20:55.78 ID:8HeZ4CUl0
万里花「……」ヤレヤレ
千棘「……何よ」
万里花「幼稚園児のスモックを選ぶつもりで来ているのでしたら、今すぐお帰りになられることをお勧めしますわ」
万里花「インターネット通販でお買い上げになられたほうが、余程素材も配色も豊富にございますわよ」
小野寺「生まれてすみません」
千棘「……ちょっと万里花アンタ、少しは言葉を」
万里花「黙りなさいこの豪腕クソムシ」
千棘「」
万里花「つぐみさん程の豊かなバストラインと高身長を、魅力的に見せるコトを考えた時」
万里花「デブがデブであることを隠すための逃げ道、チュニックワンピなどと言う選択肢はまず消し去られるべき愚考ですわ」
千棘「な、なんでよ、可愛いじゃ」
万里花「可愛さで腹肉を覆い隠すための服なんだから当たり前でしょうバカですか」
千棘「」
44: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:21:46.42 ID:8HeZ4CUl0
小野寺「……そっか」
小野寺「そうだよね」
小野寺「チュニックワンピに何か嫌な思い出があるのかと思う位貶めてるのは、正直どうかと思うけど」
小野寺「つぐみちゃん、せっかくシュッとしてて胸がおっきいんだもん。そこを生かさないと勿体無いよね」
万里花「……」ニコ
万里花「10年前のデータで恐縮ですが、楽様の好みはややファンシー系のすっきりとしたガーリー」
万里花「そういう意味では先行きド近眼の金髪霊長類コーデも一応アリといえばアリですが」
千棘(え、うそ、それ私のことなの)
千棘(……って言うかそのコーデ、発案したの小咲ちゃんなんだけど)
万里花「楽様も様々な意味で健康健全な青少年。やはり巨乳を主軸に置いたコーデを立てるのが巧手と言うものです」
つぐみ「……私はその、例えば上にカーディガンやストールなど」
万里花「黙れよ」
つぐみ「」
45: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:22:40.71 ID:8HeZ4CUl0
万里花「巨乳は資産です。ない事を隠すことこそあれ、あるものを使わずにどうするんです」
万里花「上はすっきりタイトなホルダーネックキャミ。巨乳とスレンダーのコントラストを浮き彫りに」
万里花「七分丈デニム上の腰からヒップにかけてのラインや、横乳等の健康的な露出を重ねて」
万里花「楽様の視線を誘う方向性で検討しておりますが、いかがですかつぐみさん」
つぐみ「……こ、このチュニックワンピもその」チラ
千棘「……」
千棘「……」ヤレヤレ
小野寺「……」オロオロ
つぐみ「……ホルダーネックでお願いします」
万里花「……はい」ニコ
~ 駅前デパート 7階 エステ・コスメティックフロア ~
千棘「ふふふ……」パフパフ
千棘「ファッションでは水を空けられたけど、メイクなら私の独壇場よ」ペタペタ
つぐみ「……あの、お嬢」
千棘「ああ、さっきのコトなら気にしなくていいわよ」
千棘「悔しいけど、服。とっても似合っていたもの」
46: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:23:21.41 ID:8HeZ4CUl0
千棘「つぐみって、本当はあんなに可愛らしかったのね。びっくりしちゃった」ニィ
つぐみ「……」テレテレ
千棘「でも、だからこそ、私だってあなたの主として、それなりの力量を見せてあげなきゃね」
千棘「待ってなさいつぐみ、世界が嫉妬する驚きの白さに染め上げてやるんだからね……!!」ヌリヌリ
つぐみ「……あ、ありがとうございます、お嬢……」
千棘「元々つぐみは肌も綺麗だし、普段遣いならナチュラルメイクか、ノーメイクでもいいくらいだけど」
千棘「……ちっちゃい傷跡とかは、化粧で隠せたら、それに越したことはないもんね」
つぐみ「……そう、ですね」
千棘「……」
つぐみ「……」
千棘「……付けまわす様な真似して、ごめんね」
つぐみ「……いえ。むしろ私の注意が散漫で、気づけなかったことを恥じています」
千棘「……鍵のことも、その。どうやって説明していいか、わかんなくなっちゃって」
千棘「でもね、あのね、その……鍵のことも、今日のことも」
千棘「つぐみに嫌な思いをさせようとして、そうした訳じゃないって言うか」
千棘「結局のところ、自分の都合って言うか……」
つぐみ「……」
千棘「……」
47: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:24:14.88 ID:8HeZ4CUl0
千棘「……あのね、つぐみ、実は」
つぐみ「言わないでください、お嬢」
千棘「でも、」
つぐみ「橘万里花から話を聞くために、街に出たのですから」
つぐみ「お嬢からタダで聞いてしまっては、勿体無いですよ」
千棘「……つぐみ」
つぐみ「……」ニコ
つぐみ「……それに」
千棘「……それに?」
つぐみ「………」
~ 駅前デパート 10階 レストラン・カフェフロア ~
つぐみ「……おいしい」
千棘「洋菓子のお店にも詳しいのね、さすが小咲ちゃん」
小野寺「えへへ……機会があったら、皆で行ってみたいなーって、ずっと思ってたの」
48: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:25:03.68 ID:8HeZ4CUl0
万里花「美味しい」モフモフ
万里花「これでお金が取れますわね」モフモフ
千棘「もう取ってるっつの」
小野寺「あ、あはは……」
つぐみ「……」
つぐみ「……すまんな、橘万里花」
万里花「もふ?」
つぐみ「私は少し、結論を急ぎすぎていた」
つぐみ「人同士の関係性というものは、約束事や結論だけを元に出来上がるのではないと、改めて気づかされたよ」
つぐみ「その合間にある、お嬢や小野寺様、そしてお前達と過ごす、日常の尊さのようなものを」
つぐみ「全く理解しないまま、その秘密だけ暴き出そうと言うのは、少しばかり破廉恥だった」
小野寺「……」
千棘「……」
万里花「……謝られる道理は、ございませんわ」
49: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:25:44.86 ID:8HeZ4CUl0
万里花「私、ぶっちゃけ、自分の鍵の話以外は、ろくに知りませんし」ニコ
千棘「最後までいい話で終わらせなさいよアンタはァァァァァ!!!」ビュッビュビュッ
万里花「あら、あらあら」ユラァユラァ
つぐみ「……はは、は」
小野寺「……」
小野寺「……ねえ、皆」
小野寺「せっかく皆で集まったんだし、できれば一つ、付き合って欲しい所があるんだけど……」
つぐみ「……?」
~ 駅前デパート 9階 アミューズメントフロア ~
つぐみ「……何です、この怪しげな筐体は」
小野寺「ええっと……」
小野寺「……すごくかわいい証明写真が取れるの。複数人で」
つぐみ「なるほど」
万里花「」ブフッ
千棘「」ブフッ
50: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:26:40.34 ID:8HeZ4CUl0
小野寺「えっ、万里花ちゃん、千棘ちゃん、今のアウトだった!?」
千棘「いや……どっちかってと、アウトだったのはあたしらだけど……」
万里花「何で女四人連れ立って証明写真撮りにこなくちゃならないんですの……プッ」
つぐみ「……確かに。疑問は残りますね」
つぐみ「証明写真を残しておくと、どこかから経費が落ちるのですか」
万里花「」ブフッ
小野寺「……そう言うのじゃ、ないんだけどね」
小野寺「つぐみちゃんの言っていた、”日常の尊さ”って言う奴」
小野寺「形にして残しておくのも、悪くないかなー、って」
千棘「……」
万里花「……」
つぐみ「……そう、ですね」
つぐみ「せっかくこうして、集まる事ができたのですから」
つぐみ「今日の記憶を残すのも、やぶさかではありません」
51: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:27:21.99 ID:8HeZ4CUl0
千棘「……そうと決まれば、さっさと撮っちゃいましょ」
千棘「落書きする時間のほうが、面白いでしょ、こーゆーのって!!」ダダダッ
小野寺「あっ、ちょっとまってよ、千棘ちゃん!!」タタタッ
万里花「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……これからは、橘万里花と呼び捨てるのも、憚られてしまうな」
万里花「……お気になさらず」
万里花「貴女と私が、あらゆる意味で敵同士と言うことには、変わりありませんもの」
つぐみ「……」
つぐみ「……それでも、言わせてもらおう」
つぐみ「……ありがとう」
万里花「……どういたしまして」ニコ
52: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:28:13.12 ID:8HeZ4CUl0
~ 10分後 同フロア プリクラ筐体”Election” Bブース ~
万里花『↓ビーハイブ流星拳(相手は死ぬ)』
千棘『↑腹黒帝国(首都:アンマン)』
万里花「何ですの」
千棘「やんのかコラ」
小野寺「ちょ、二人とも、あと150秒しかないんだからっ」
万里花「小野寺さんは無難に花びらラインで枠でも囲っておいて下さいまし」
千棘「この争いに手と口を出してしまえば貴女も戻れないわよ小咲ちゃん」
小野寺「んもー……」
つぐみ「……」
つぐみ「……」
―― つぐみちゃんの言っていた、”日常の尊さ”って言う奴
―― 形にして残しておくのも、悪くないのかなー、って
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……」カキカキ
53: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:29:02.71 ID:8HeZ4CUl0
~ 同日 夜 鶫誠士郎 セーフハウス ~
ガチャ
バターン ガチャ
つぐみ「ふぅ……」
つぐみ「すっかり、遅くなってしまったな」カチッ
つぐみ「……だが、凄く楽しかったし」ドサッ
つぐみ「……」
つぐみ「ふふっ、私らしくもない、独り言など」
つぐみ「……」ガサガサ
つぐみ「……」
つぐみ「…… ふ ふ ふん ふんふんふ ふふふ~ん♪」 ヌギヌギ
つぐみ「ふふふふふふん ふん ふん ふふ~ん♪」ガサガサ
つぐみ「……」
つぐみ「……この服」クルッ
つぐみ「やはりいいな」シパッ
つぐみ「お嬢もお許し下さったし」クイッ
つぐみ「出掛けるのが楽しみだ」キメッ
54: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:29:43.93 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……それに」
つぐみ「あの橘万里花が勧めるのだから」
つぐみ「きっと、一条楽の好みにも沿う事だろう」
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ(…………)
つぐみ(………………)
つぐみ「なんちゃって、なんちゃって」ジタバタ
つぐみ「……」
つぐみ「……」ニコッ
つぐみ「~~~~~~ッ」テレテレ
つぐみ「……そう、だな」
つぐみ「きっと一条楽も、気に入るに違いない」
つぐみ「この服を着て……」
つぐみ「お嬢に習ったメイクを」
つぐみ「そう、お嬢に……」
55: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:30:52.98 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!!!」バァン!!
つぐみ「何を、何を考えていたのだ私は!?!?!?」ジタバタジタバタ
つぐみ「いやおかしいだろ、おかしいだろ色々と!!」ドンドコドコドコ
つぐみ「何で橘万里花に鍵の話を聞きに行ったら」
つぐみ「私が一条楽好みの服を買ってホクホク帰宅することになってるんだよ!!」ダァン!!
つぐみ「しかも今日の動向はお嬢に筒抜け!!!!」
つぐみ「一条楽の!」ガン
つぐみ「コイビトの!!」バン
つぐみ「お嬢に筒抜け!!!」ボーン!!
つぐみ「ニヤニヤしてる場合じゃないだろ私何考えてるんだよもおおおおおおおお………」カァァァァァ
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……一条楽、は」
つぐみ「お嬢の、コイビト、か……」
56: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:31:36.81 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……はぁぁ……」ズーン
つぐみ「……」
つぐみ「……今日はもう、休もう」
ガラガラ カチッ
つぐみ「……」
ポーラ「……」チョコン
つぐみ「」
ポーラ「……」
つぐみ「……」
57: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:32:10.36 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「一応先に言い訳しておくわね」
ポーラ「先週『たまにはちゃんとした物を食べさせてやろう。早く帰って来い』って夕食に誘ってくれたのはアンタ」
ポーラ「今日『悪いが、用事が出来たから遅くなる。どこかで時間をつぶすか、家の中にいてくれ』って言ったのもアンタ」
ポーラ「なかなか帰ってこないから、奥の部屋で電気を消して寝ちゃったのはあたしだけど」
ポーラ「私の靴も荷物も玄関にあるのに、気づかなかったのはアンタ」
ポーラ「だからお願い」
ポーラ「全部聞いてたけど殴らないで」
つぐみ「……」
ポーラ「……」
つぐみ「……」
ポーラ「……」
つぐみ「……殺せよ」
ポーラ「……ごめんね」
58: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:32:53.50 ID:8HeZ4CUl0
~ 鶫誠士郎 セーフハウス 食卓 ~
つぐみ「……」モグモグ
ポーラ「……」モグモグ
ポーラ「……ご馳走になっておいて、申し訳ないとは思うんだけどさ」
ポーラ「……」
ポーラ「…………寝かせてよ」
ポーラ「あるいは、空気が油粘土より重いこの部屋から、私を出して……」モグモグ
つぐみ「……五月蝿い」モグモグ
つぐみ「これでお前に飯も食わせず、ただ去らせてしまえば」
つぐみ「私が恥をかいた意味が、本当になくなるだろうが……」モグモグ
ポーラ「……」
ポーラ「……美味しいから、いいけど」モグモグ
つぐみ「……すまんな」モグモグ
59: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:33:40.07 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「……居させられるんだったら、聞くわよ」
ポーラ「どーすんの、一条楽のこと」
つぐみ「」ブホッ
ポーラ「……」
つぐみ「……」
ポーラ「……」
つぐみ「……」ハァ
つぐみ「別に、どうもしないよ」
ポーラ「……」ジトー
つぐみ「……勘違いするな。ごまかしじゃあない」
つぐみ「確かに私の中に、一条楽を憎からず思う気持ちはある」
つぐみ「だが、多分それは、純粋な恋愛感情だけと言うわけでもないのだ」
ポーラ「……随分、本音っぽいわね」
つぐみ「今更取り繕えるか、恥ずかしい……」
ポーラ「確かに」フフ
60: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:34:32.60 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「……まあ、そういうことなんだ」
つぐみ「一条楽を憎からず思う気持ちは、多分単純なコイとは違って」
つぐみ「私の大切な存在であるお嬢が、心を揺り動かされていることへの敬愛、尊敬とか」
つぐみ「日本の、普通の学生が送るような、穏やかな日常への憧憬とか」
つぐみ「そういう気持ちがないまぜになって、私は」
つぐみ「……一条楽に、ひ、惹かれているのだと、思う」
ポーラ「それは、楽しいの? それとも辛い?」
つぐみ「……自分でも、よくわからない」
つぐみ「どのみち、形になる事のない想いだからな、辛く思う時もあるけれど」
つぐみ「ふとしたことで暖かい、優しい気持ちになれるコトも、いっぱいあるんだ」
ポーラ「……」
つぐみ「それに、今までの私ならば、しなかったような真似をすることもある」
ポーラ「そんな、可愛らしい服を着てみたり?」
つぐみ「……ああ」テレテレ
ポーラ「あれだけ憔悴してたクセに、着替えてないしね」
ポーラ「気に入ってるんでしょ、ソレ」
つぐみ「……」カァァ
61: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:36:21.69 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「なんか、いーなぁ。そういうの」
つぐみ「……今度、一緒に行こうか、ポーラ」
つぐみ「美味しいスイーツの店も、小野寺様に紹介してもらったんだ」
ポーラ「……ううん」
ポーラ「それも悪くないけど、そういうんじゃ、ないの」
つぐみ「……」
ポーラ「そういうんじゃあ、ないの……」
62: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:37:03.19 ID:8HeZ4CUl0
~ 同刻 桐崎邸 桐崎千棘 自室 ~
千棘「……」
千棘「……」
千棘「……」バフッ
クロード『……お嬢』
千棘「今……ちょっと気分が乗らないの。邪魔しないで」
クロード『……程々になされませ』
千棘(何をよ……)
千棘「……」
千棘「……」ゴロン
千棘「……」
千棘(……つぐみ)
千棘(……楽しそうだったな)
―― 主の桐崎さんが、ちゃんと彼女と向き合っていたら
―― 必要の無いコトだったかも知れませんけど、ね
千棘(……)
63: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:38:22.15 ID:8HeZ4CUl0
ジャリ チャリン
千棘(……)
千棘(……10年前の約束と鍵)
千棘(……楽、そして、つぐみ)
千棘(……ちゃんと、か)
千棘「……」
千棘「……ねえ、クロード」
クロード『はっ』
千棘(本当に居たよ……)
~ 20分後 凡矢理IC付近 ビーハイブ幹部専用車 車内 ~
ブゥゥゥゥン ゥゥゥン ウゥゥン
クロード「このまま、海まで流しましょうか」
千棘「……うん」
64: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:39:06.52 ID:8HeZ4CUl0
クロード「……」
千棘「……」
クロード「……」
千棘「……」
千棘「……聞かないの?」
クロード「……そうですね」
クロード「私とて、男のはしくれ」
クロード「女性がそんな表情をしている時に、暴き出すような不粋は致しません」ニコッ
千棘「……案外、大人なのね、クロードってば」
クロード「……光栄です」フフ
千棘「うん」フフ
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
千棘「クロードは……どうしてパパの所で働こうと思ったの?」
クロード「似合っていませんか」
千棘「そうは思わない、けど」
千棘「その……ママの会社だって、普通の仕事だって、やってけたんじゃない?」
65: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:39:48.40 ID:8HeZ4CUl0
クロード「そうですねぇ……」
クロード「……いえ、やはり私には、この道しかありませんでしたよ」
千棘「……」
クロード「誤解なさらないでください」
クロード「今お嬢の前に居る私は、この道を進んだからこそ、こうしていられるのです」
クロード「そうでなければ、こんなに可愛らしい女性を目の前に、冷静ではいられないかも」
千棘「やだ、クロードってば」
クロード「……」
千棘「あはは、はは……」
クロード「……」
千棘「……クロード?」
クロード「……昔の、話ですよ」
クロード「貴女を手篭めにして、ゆくゆくはこの組織を我が物として乗っ取ろう」
クロード「そんな風に考えた事もありました」
クロード「それが出来ない立場でも、ありませんでしたしね」
66: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:41:55.32 ID:8HeZ4CUl0
千棘「……どうして、やめちゃったの?」
千棘「私みたいな小娘相手なら、いくらでも付け入るスキなんて、あったでしょうに」
クロード「どうして、ですかねぇ」
クロード「……自ら成り上がる面白さを、見つけてしまったから、でしょうか」
千棘「悪ぶっちゃって」
クロード「そう見えますか?」
千棘「うん」
クロード「……」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
クロード「……別に、ね」
クロード「集英組の小僧が、憎い訳ではないんですよ」
クロード「ただ、この世の中には、お嬢の事を弄び、利用しようとする者はごまんと居ます」
クロード「かつての、あるいは今の、私のように」
千棘「……」
67: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:42:42.83 ID:8HeZ4CUl0
クロード「……小僧自身に自覚が無かろうと、小僧を手駒に、小僧の周りの人間がそんな企みを持っているかもしれない」
クロード「更に言えば、お嬢自身の周りの人間が、自らの利益の為に、小僧を利用している可能性だって、有り得るんです」
千棘「……」
クロード「私はそんな輩から、お嬢を護りたいと思っています。その為には命だって張るつもりだ」
クロード「仮にお嬢自身から、煙たがられようとも、ね」
千棘「……やっぱり、優しいんじゃん」
クロード「いいえ。単なる私のエゴですよ」
クロード「そして、そのエゴの為に命を張れるのが、この業界のいいところです」
クロード「……私がこの道に生きる理由。これが答えでは、足りませんか?」
千棘「うーん……」
千棘「まあ、いっかな。それでも」
クロード「恐縮です」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
千棘「……」
千棘「……さっきの話の、続きって訳じゃないんだけどさ」
クロード「ええ」
68: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:43:38.35 ID:8HeZ4CUl0
千棘「……」
千棘「……敵対組織のヒットマンと、組織の跡取りの恋って、」
クロード「有り得ませんね」
千棘「……どうして?」
クロード「組織によってその軽重に差はありますが」
クロード「ヒットマンは、組織で管理している”道具”の一つに過ぎません」
クロード「……腕の立つ者や、金を掛けて育てた者であれば、それなりに珍重もするでしょうが」
クロード「組織がダメージを被ってまで、庇ったり助け出したりはしないのです」
クロード「……使い捨ての道具を拾う為に、組織の屋台骨が揺らぐようなコトがあれば、本末転倒ですからね」
クロード「対して、組織の跡取りの嫁と言えば、その組織の格を内外に示す、重要なポジションです」
クロード「使い捨てのヒットマンを娶った、などと言う話になれば、色香で垂らしこまれたボンクラと、物笑いの種になるばかり」
クロード「ですから、そんな恋は実りませんよ。せいぜいが妾として弄ばれて、捨てられるのがオチでしょう」
千棘「……」
千棘「ずいぶん、包み隠さず、教えてくれるのね」
クロード「……今日のお嬢が、大人の顔をなさっているからこそ」
クロード「車の中での話は、今日これきりにして頂けるよう、お願い致します」
千棘「……ええ」
69: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:44:41.64 ID:8HeZ4CUl0
ピピピピピッ ピピピピピッ ピピピピピッ ピピピピピッ
70: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:45:19.24 ID:8HeZ4CUl0
~ 深夜 町外れ ビーハイブ暗殺部隊緊急回線使用中 ~
クロード『ミッションを説明する』
つぐみ「了解」
ポーラ「了解」
クロード『40分ほど前、ウチの”生徒”どもが空港付近より逃走した』
クロード『標的は10代前半の男4名、女2名の計6名』
クロード『全員始末しろ』
クロード『相手の装備、能力、協力者については一切不明だが、緊急事態かつ表ざたには出来ん仕事なのでな』
クロード『任務に当たるのはお前らだけだ。支援は一切ない』
つぐみ「……」
ポーラ「……」
クロード『お前らも知っての通り、今ウチの”生徒”どもには試験的に生体電流で動作するGPS発信機を埋め込んでいる』
クロード『GPSによる位置同定まで二分二十七秒』
クロード『自由な質問を許可する』
71: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:46:05.96 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「逃げた”生徒”の所属は」
クロード『私がそんなヌルい教育をすると思うか』
つぐみ「いえ」
クロード『……ビーハイブ内、反体制派幹部の、子飼いのガキ共だ』
クロード『ボスとお嬢を日本で亡き者にするべく、密かに入国させていたらしい』
クロード『首謀者は先程、ベーリング海でカニのエサにしたと報告が入ったが、生き残りのガキ共も始末する必要がある』
クロード『組織の内情を身代金に、他所の組織へ身売りでもされたら厄介だからな』
クロード『しかし、ビーハイブのコマをヘタに動かせば、他所の組織が揉め事を嗅ぎ付けて、ガキ共を保護しに動く恐れがある』
クロード『今動ける者のうち、お前達二人ならば、この場面で裏切りを打つような真似は無いと踏んだ』
クロード『それだけの話だ』
ポーラ「諸々の状況を踏まえても、任務の難易度と人員が釣り合いません」
ポーラ「確実を期すならば、クロード様ご自身にも動いていただく必要があるかと思いますが」
クロード『私は動けん。野暮用があってな』
72: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:46:47.39 ID:8HeZ4CUl0
千棘『……ロード、どう……、仕事の…話なら……るわよ……』
クロード『心配ありません、お嬢。ブラジル支部の古い友人からの連絡でして』
クロード『頭は良い奴なのですが、未だに世界が平たいと思っているようで。時差の存在を頑なに認めないんですよ』
千棘『ふーん……人って……いう所……わってる……よね』
クロード『全くもって。大した話ではありませんから、すぐに戻ります』
千棘『……ーい……』
クロード『……どのみち、すぐには戻れん位置だ。このまま連れ回したほうが、護衛するにも丁度良い』
ポーラ「千棘お嬢様に事態を伝え、協力頂いてもよろしいのでは?」
ポーラ「いずれ近い将来、必ず、」
クロード『お嬢の仕事は』
クロード『……疲れた家族の為に、不恰好なパンプキン・パイを焼いてやる事だ』
クロード『キッチンシンクの下に何匹ネズミがいて、飼い猫が何匹殺したかなど、知る必要は一生ない』
ポーラ「……了解」
73: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:47:36.59 ID:8HeZ4CUl0
クロード『……位置の同定が完了した。デバイスエリアP93RD2Q141より南東方向へ移動中』
クロード『……錬度が足らんな。この速度は徒歩だ。しかも6人固まって移動している』
クロード『現時点を以ってお前等にもアクセス権限を分与した。確認しろ』
クロード『判っているとは思うが、一切痕跡は残すな。追跡を開始せよ、オーバー』ブツッ
ポーラ「……だって、さ」
つぐみ「ああ、行こう」
ポーラ「……アンタ、何とも思わないの?」
ポーラ「こんな日に、こんな……」
つぐみ「……いや、別に何も」
ポーラ「……あっ、そ」
~ 15分後 付近某所 ~
トボトボ トボトボ
A『………』
B『……』
C『…………!!』
D『……』
E『…』
ポーラ「Hi,babies」ザシュ
74: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:48:25.38 ID:8HeZ4CUl0
F『――――!!!!』
シュバッ シュバ シュバババッ
つぐみ「……ポーラ」
ポーラ「怒んないでよぉ」
ポーラ「大した武装してる様子もないし、ひょっとしたら一気にイケちゃうかな、なんて思っちゃったって」
ポーラ「仕方ないじゃないっ」ゲシッ
F「」
ポーラ「この程度の錬度じゃあ、お嬢様暗殺計画がバレてなかったとしても、返り討ちだったわね」
ポーラ「クロード様、私達を立派に育ててくださって、ありがとうございます、ってとこかし……らっ!」ゲシッ
F「」ゴロ ドサッ
つぐみ「……何をそんなにイラついている」
ポーラ「いいでしょ別に。それよりもホラ、とりあえずもう一匹残ってるわよ」
つぐみ「ん……」ツカツカ
75: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:49:14.20 ID:8HeZ4CUl0
C「……」カタカタカタカタ
つぐみ「……」
つぐみ(……アジア人か。日本人かも知れんな。綺麗な目をしている)
つぐみ(そう、綺麗な、黒い、目、を――)
―― だって貴女は、私にそっくりだから
―― 放ってなんて、おけませんわ
―― つぐみちゃんの言っていた、”日常の尊さ”って言う奴
―― 形にして残しておくのも、悪くないのかなー、って
―― あなたって、本当はあんなに可愛らしかったのね。びっくりしちゃった
つぐみ(―――)
ポーラ「……何よ、結局手ぇ出さないわけ? 」
ポーラ「別に、いいんだけど、さ」トコトコ
C「……」ガタガタガタ
ポーラ「ねえ、折角生きてるんだから教えてよ」
76: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:49:54.94 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「日本語は分かりますか?」
C「……」フイッ
ポーラ「はい、日本語でいいのね。アンタらの仕事を手引きしたのはだあれ?」
C「……」
ポーラ「どこの組織と協力しているの? 他に仲間はいるのかな?」
C「……」
ポーラ「じゃあねえ」
ポーラ「”殺一警百(シャーイージンパイ)”って知ってるかな?」
C「」ビクッ
ポーラ「……」ニコニコ
ポーラ「Dung♪」
ポーラ「Dung♪」
ポーラ「Dung♪ Dun Dun Dung♪」
77: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:50:31.19 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「One little」
ポーラ「Two little」
ポーラ「Three little Indian♪」
ポーラ「Four little」
ポーラ「Five little…」
ポーラ「…Six Little Indian♪」
ポーラ「Seven little」
ポーラ「Eight little」
ポーラ「Nine little Indian♪」
ポーラ「Ten little Indian Boooooooooys♪」
C「あ」
C「あ」
C「あがああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
78: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:51:05.72 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「騒ぐなよ」ゲシッ
C「!」ゲボッ
ポーラ「……ま、いいか。もう一回分あるし」
ポーラ「はい、じゃあお靴を脱いでね」グイグイ
C「!!……」カタカタカタ
ポーラ「……じゃ、もう一度聞くよー」
ポーラ「アンタらの仕事を手引きしたのはだあれ?」
C「……」カタカタ
ポーラ「どこの組織と協力しているの? 他に仲間はいるのかな?」
C「……あ、ああ」
ポーラ「……」
ポーラ「Dung♪」
ポーラ「Dung♪」
ポーラ「Dung♪ Dun Dun Du」
つぐみ「止めろッ!!!」グイッ
ポーラ「きゃっ!!」ドサッ
79: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:51:33.18 ID:8HeZ4CUl0
C「あ」
C「あああ」
つぐみ(……)
つぐみ(……)
つぐみ(……わたし、は)
つぐみ(……今、何を、し、た……………)
ポーラ「……黒虎?」
ポーラ「今、あんた、」
つぐみ「……」
C「あ、あ」
C「おねえ、さ、ん、」
C「ありが、と、……」
80: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:51:59.88 ID:8HeZ4CUl0
ズダァン!!!
81: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:52:39.43 ID:8HeZ4CUl0
ブシャッ
ドサッ
つぐみ「……」
ポーラ「……」
つぐみ「……時間制限のある尋問中に」
つぐみ「心の拠所を作らせるのは巧手ではない」
つぐみ「ゆとりがある時ならば、アメとムチを考えるのもいいが」
つぐみ「切迫した状況がある時は、却って自分達の首を絞める結果にもなりかねない」
つぐみ「初歩の初歩だったな、すまなかった」
ポーラ「いや、別にいいけど、あんた、」
つぐみ「埋め合わせは今夜中にする」
つぐみ「行くぞ」シュタッ
ポーラ「あっ、ちょっ、待ちなさいよ、黒虎ッ!!!」シュタッ
82: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:53:25.05 ID:8HeZ4CUl0
~ 20分後 ~
つぐみ「任務完了」
つぐみ「痕跡は全て薬品で処理しました」
クロード『ご苦労』ブツッ
ポーラ「……」
つぐみ「すまなかった、ポーラ」
つぐみ「私は……」
つぐみ「……どうか、していたらしい 」
ポーラ「……もし任務が失敗してたら、二、三発ひっぱたいてやるつもりだったけどさ」
ポーラ「結局残りの全員自力で引きずり出して、素手で頚動脈引き千切った女に、どんな落とし前付けさせられるっつーのよ……」
ポーラ「衰えてないようで安心したわ、ホント」
つぐみ「……」
ポーラ「……でも、どうして突然、あんなことを」
つぐみ「さあな」
つぐみ「任務をこなしている間に、忘れてしまった」
ポーラ「……あっ、そ」
83: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:54:08.75 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「でもあんた、虚偽報告はしちゃダメでしょ」
つぐみ「?」
ポーラ「痕跡。体中、返り血で血まみれよ」
つぐみ「……そうだな」
つぐみ「先に帰る」
ポーラ「……うん」
ポーラ「……ねえ、黒虎」
つぐみ「何だ」
ポーラ「……」
ポーラ「私はクロード様と合流して、そのまま屋敷の警備に入るわ」
ポーラ「荷物はどうせ大したモンないし、明日以降取りに行くから、悪いけど置いといて」
ポーラ「ご飯、ありがとね」
つぐみ「……ああ」シュタッ
84: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:54:57.03 ID:8HeZ4CUl0
ポーラ「……」
ポーラ「お嬢様」
ポーラ「あんたの飼い猫は」
ポーラ「……とっても、優秀だよ」
85: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:55:32.00 ID:8HeZ4CUl0
~ 鶫誠士郎 セーフハウス ~
ガチャ
バターン ガチャ
つぐみ「ふぅ……」
つぐみ「すっかり、遅くなってしまったな」カチッ
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……」ユラリ
つぐみ「……」
カチャ パカ
つぐみ(……)
つぐみ(……)
つぐみ(……日本に来てから)
つぐみ(本当に、色んな事があったな)
86: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:56:01.58 ID:8HeZ4CUl0
ガサガサ
つぐみ(……貰ったのは随分前だけれど、最近は特に付ける機会も多い、お嬢のリボン)
つぐみ(……こんな女々しい格好をして、普通の学生のように遊び回って)
つぐみ(最初は任務のためと割り切っていたが……)
つぐみ(……いつしか、心の底から、この穏やかな世界と時間を、楽しんでいる私が居た)
つぐみ(……本当の私のことを、誰も知らない、この世界で)
つぐみ(……)
つぐみ(そう、誰も)
つぐみ(お嬢ですら知らない)
つぐみ(本当の私は)
つぐみ(本当の私の手のひらは)
つぐみ(こんなにも、こんなにも、血塗られていることを)
つぐみ(私に、あなた達と同じ世界で生きる資格なんてないのだと)
つぐみ(誰も――)
87: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:56:39.49 ID:8HeZ4CUl0
つぐみ「………」
つぐみ「………」
つぐみ「……ぁ」
つぐみ「あ」
つぐみ「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!」
つぐみ「私は!!」ビリビリビリビリ
つぐみ「わたしは!!」バキィ
つぐみ「わたしはっ!!!!」グシャア
つぐみ「わたし、はっ、!!!」ボゴォッ
つぐみ「……」
つぐみ「……………私は………」
つぐみ「………」
つぐみ「……………」
つぐみ「――――」
88: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 21:57:25.83 ID:8HeZ4CUl0
~ つづく ~
89: ◆LeBgafvn/6 2015/07/10(金) 22:11:23.49 ID:8HeZ4CUl0
お久しぶりです。
かなり時間がかかってしまいましたが、ニセコイでもう一作書く事が出来ましたので
アニメ二期終了に合わせて投稿を始めさせていただきました。
非常に長くなってしまったので、3,4回に分けて投稿する予定です。
ご容赦ください。
今回に至るまでの間に、オリジナルも書きました。
次回までの暇つぶしにでも読んで頂ければ幸いです。
男「俺のT○SOウッディ28Bキャップを挿入してやるぜ」
http://morikinoko.com/archives/51954659.html
男「ここがカーテンチ○ポレールバトルロワイヤル世界大会会場か」
http://morikinoko.com/archives/51964318.html
かなり時間がかかってしまいましたが、ニセコイでもう一作書く事が出来ましたので
アニメ二期終了に合わせて投稿を始めさせていただきました。
非常に長くなってしまったので、3,4回に分けて投稿する予定です。
ご容赦ください。
今回に至るまでの間に、オリジナルも書きました。
次回までの暇つぶしにでも読んで頂ければ幸いです。
男「俺のT○SOウッディ28Bキャップを挿入してやるぜ」
http://morikinoko.com/archives/51954659.html
男「ここがカーテンチ○ポレールバトルロワイヤル世界大会会場か」
http://morikinoko.com/archives/51964318.html
93: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:09:36.78 ID:z6poyGtz0
~ 翌日早朝 桐崎邸付近 一条楽通学路 ~
トボトボ トボトボ
楽「……なー、集」
集「なーに?」
楽「正直に答えて欲しいんだけどさ」
楽「……周りから見た俺って、優柔不断で、女の子にだらしない、ダメな奴だったり」
集「するする。っていうか気づくの遅すぎ」ヘラヘラ
楽「あのなぁ……」
楽「一応、真剣に相談してるつもりなんだけど」
集「分かってるよ」
集「こんな朝っぱらから呼び出して、いきなり二人っきりで学校行こうだなんて、そりゃ真剣な相談だろうと思ったさ」
集「だからもー、マジメもマジメ。客観的に見て、お前は相当女の子にだらしない、本当にダメな奴だよ?」
集「って言うか、クラスの奴らからも、毎度毎度あんだけやっかみに遭って、よくも今更そんな質問する気になったもんだって」ハハハハ
楽「……」ムスッ
94: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:10:21.05 ID:z6poyGtz0
楽「じゃあ、お前は何でそんな奴と友達やってんだよ」
集「……それもマジな質問?」
楽「……マジだよ」
集「……んー」
集「俺は別に楽の女じゃないし? ってか男だし? お前がどんだけ女にだらしなくても関係ないからなー」
集「そもそも、俺も人のこと、言えた義理じゃないしさ」ニヒヒ
楽「分かってんなら、もっとシャンとしろよな」ハァ
集「そーだな」ヘラヘラ
集「……んで」
集「それをさておいても、俺はお前のこと、女にだらしないなんて思ってなかったぜ?」
楽「……さっきと言ってること、違わねぇ?」
集「”周りから”思われてるかも知れんが、”俺は”思ってなかったの」
楽「……」
集「俺は、お前の家の事情とか、他の奴よりはお前のことを知ってるしさ」
集「”家の為に仕方なく”ニセの恋人やって、”家のために仕方なく”ニセの婚約者やって」
集「”家の都合で仕方なく”年上の女先生と同居してるけど、本当は小野寺の事が好きで仕方ないってんだから」
集「だらしないどころか、むしろ気の毒に思ってるぐらいだよ」
集「これもマジのマジ、俺の本音で、本気の話ね」
95: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:11:08.78 ID:z6poyGtz0
楽「……そっ、か」
集「……」
集「でもさー」
集「楽自身からそんな質問が出てくるってことは」
集「楽は今の状況に、罪悪感を感じてるんだよな?」
楽「? ……ん、まあ、そりゃあ……」
集「それはダメだろ」
集「反則。許されないよ。最低」
楽「……よく分からんのだけど」ポリポリ
集「……」
96: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:12:20.05 ID:z6poyGtz0
集「……あのさ」
集「楽が本当に小野寺だけを好きで、ちゃんと小野寺の方だけ向いてるなら、そんな罪悪感生まれるワケないんだよ?」
楽「……そうかな?」
集「そうでしょ」
集「だって楽は、自分の本当のコイを、周りの余計な雑音でことごとく邪魔されてる、被害者なんだから」
集「怒ったり悔しがったり、全員いなくなればいいのに、位思うほうが、フツーだと思うけど」
楽「……」
集「もっと言っちゃえばさ」
集「今みたいな状況を、どこかでオイシイ、と思っちゃってる気持ちがあるから、罪悪感が生まれるんじゃないの?」
楽「そんなことっ!!」
集「本当に無い?」
集「今みたいなヘンな関係の前に、皆友達同士だから、嫌い合うまでの事はしないにしてもさ」
集「ニセの恋人や婚約者、同居にしたって、ちゃんと話をして、もう少し距離を置いて付き合うことはできるんじゃないの?」
楽「……」
97: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:14:04.41 ID:z6poyGtz0
集「……この前の、誠士郎ちゃんと鍵の話の時にも思ったんだけどさ」
集「約束の鍵の女の子が好き。でも小野寺と付き合いたい。だけどみんなのことも大事にしたい」
集「そんな気持ち、理解できないとは言わない」
集「だってお前は、凄くいいヤツだからさ」
集「困ってる人がいたら、自分のことなんて省みず、助けずにはいられないような、優しいヤツだから」
集「そんなのは、俺が一番よく知ってる。きっと、皆だって分かってるハズだ」
集「でも」
集「……優しさと、区切りをつけない事は、決して一緒じゃないと思うよ」
楽「……」
集「……」
集「ごめんな、なんか説教臭くなっちまって」
楽「……いいよ」
集「ん」
楽「ありがとう、集」
集「いーのいーの」
98: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:17:02.00 ID:z6poyGtz0
集「とりあえず、俺は先に学校行くからさ」
集「手始めに千棘ちゃんとでも、話してみたらどう?」
楽「そうだな。そうしてみる」
集「おっけー。じゃ、頑張ってな」
集「また行き詰まったら、いつでも相談しろよー」ヘラヘラ
楽「ありがとなー」
楽(……)
楽(……)
―― 集「今みたいな状況を、どこかでオイシイ、と思っちゃってる気持ちがあるから、罪悪感が生まれるんじゃないの?」
楽「……」
楽「」パシパシ
楽(まずは千棘と、ちゃんと話そう)タッ
楽(千棘のためにも)タッタッ
楽(俺のためにも)タッタッタッタ
楽(俺の気持ち、ちゃんとはっきり、させ、なく)
ポニョン
楽「……ちゃ?」
99: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:19:29.13 ID:z6poyGtz0
???「……」
楽「……」
楽「……つぐみさん?」
つぐみ「……」イラッ
つぐみ「……おはよう、一条楽」
~ 凡矢理高校付近 通学路 ~
つぐみ「……そういうワケで、お嬢は暫く外出できない」
つぐみ「襲撃を受ける可能性のほか、盗聴等の危険性も考慮して、電話やメール等、外部との接触を一切断って頂いている」
楽「……まあ、命を狙われる危険がある以上、我慢しないといけないんだろうけど」
楽「結構、長くなるのか?」
つぐみ「ああ。ある程度の始末をつけてしまえば、正直そう長引く話でもないんだが」
つぐみ「良きにつけ悪しきにつけ、利益が生まれない話には興味を持たないのがこの業界の人間だからな」
つぐみ「不穏分子が徹底的に粛清されたと言う話が広まれば、おかしな事を考える輩も、自然といなくなる」
つぐみ「それが確認できるまでは、お嬢に近しい我々だけで警備体制を敷かねばならん」
つぐみ「私やポーラも、今日の夜には任務に入る。暫くは戻れないだろう」
楽「……」
つぐみ「……」
100: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:21:26.51 ID:z6poyGtz0
つぐみ「……さっきのコトなら、もういいと言っているだろう」
つぐみ「お嬢の代わりで待ち合わせ場所に居ながら、お前の接近に気づけないほど油断していた私にも責任がある」
つぐみ「責めるつもりもないし、どこかへ密告するつもりもない。私も忘れるから、とっとと忘れて……」
楽「……それも、そうなんだけどよ」
楽「……」
つぐみ「……?」イラッ
楽「……いや、その」
楽「千棘が大変な立場にいるって言うのは、何となく想像できてたんだけど」
楽「改めて考えると……つぐみも、本当にスゲー奴なんだなって、ふと思ってさ」
つぐみ「……」
つぐみ「……裏切り者を何人か消すくらい、大して難しい仕事じゃあない」
つぐみ「ましてや、知らない相手だ。特に心に引っかかるようなコトもない」
楽「……そうは言っても、命の取り合いをして、辛くない奴なんていねぇだろ」
楽「千棘の為にそこまでできるお前は、俺から見たらやっぱり、凄ぇ奴だと思うよ」
101: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:23:32.86 ID:z6poyGtz0
つぐみ「……唐突に何だ」
楽「……」
楽「……その、さ」
楽「実は俺、ちょっと、悩んでたんだよ」
楽「自分では、”男たるもの”なんつって、誰にも恥ずかしくないように、真っ直ぐ生きてきたつもりだったんだけど」
楽「実は物凄く、いい加減な生き方で、周りの奴等を傷つけてたんじゃないか、って、急に気づいちまって」
楽「つぐみにも、嫌な思いさせちまった事、あったと思う。ほんとにゴメン」
つぐみ「……そんなことは、ない」
つぐみ「いいから、その話は、もう」
楽「……」
楽「……いや、聞いてくれ」
楽「そうじゃなきゃ、千棘の為に、本当に全身全霊を、命を賭けて戦っているつぐみに」
楽「そして千棘自身に、申し訳が立たねぇ」
つぐみ「……やめろ」
楽「ダメだ」
楽「もう、いい加減な事はできねーよ」
102: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:26:09.55 ID:z6poyGtz0
つぐみ「……」
楽「千棘のためにも」
つぐみ「……」ギュッ
楽「千棘を心から好いて、心配して」
つぐみ「……」カタカタカタ
楽「千棘の為に戦う、お前のためにも、」
楽「俺は……」
つぐみ「黙れええええええええええっ!!!!!」
楽「」ビクッ
つぐみ「……っ、はあっ、はあ、はあっ……」ガタガタ
楽「……つぐ、み……?」
つぐみ「……ゎ、たし、は」
つぐみ「私、は」
つぐみ「そんなに綺麗な人間じゃない」
つぐみ「お前達とは、お前とは」
つぐみ「……違うんだよ……」
103: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:28:33.18 ID:z6poyGtz0
楽「……つぐみ」
楽「何、言って……」
楽「……」
つぐみ「……ぐっ、ううっ、ううううっ、ううう……」ボロ ボロ
楽「……」
楽「つぐみ……」
―― 集「……優しさと、区切りをつけない事は、決して一緒じゃないと思うよ」
楽「……」
楽「……」キッ
ギュッ
つぐみ「っ!?」
つぐみ「な、な、一条、楽っ!!」
楽「……」ギュッ
104: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:29:46.27 ID:z6poyGtz0
つぐみ「離せ、離さないかっ、このっ」グイグイ
楽「……」
つぐみ「離せ、この」
つぐみ「離、せ……」
楽「……」
つぐみ「……」
楽「……」
楽「……あのさ」
楽「……正直」
楽「何でお前が泣いてるのか」
楽「苦しんでるのか、まるで分かんねーままなんだけど」
楽「……少しは、落ち着いたか?」
105: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:31:21.13 ID:z6poyGtz0
つぐみ「……」
つぐみ「……ああ」
つぐみ「だから、そろそろ離してくれないか」
楽「……」
楽「……ぅわっ、はっ、その、いやっ、ごめんっ!!!」ババッ
つぐみ「……気にするな」ゴシゴシ
つぐみ「久々の任務だったからな。精神的に参っていたのかも知れん」
つぐみ「すまなかった」ペコリ
楽「……そ、そっか、俺こそゴメンな、何かっ」
つぐみ「……」
つぐみ「……悪いが、今日は早退する」
つぐみ「皆には、上手く伝えておいてくれないか」
楽「……あ、ああ、分かった。任せとけ」
つぐみ「……よろしく」クルッ
106: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:33:26.96 ID:z6poyGtz0
楽「……」
つぐみ「」タタタタッ
楽「……」
楽「……」ギリッ
楽「つぐみッ!!」
つぐみ「」ビクッ
楽「つぐみ、あのさ!!」
楽「もし本当に、何か辛いことがあって、どうしようもなく悩んだりしたら」
楽「俺にも、相談してくれ」
楽「絶対、力になるから」
楽「いつでもどこでも、地獄の果てだって飛んでいって、力になるから!!!」
つぐみ「……」
つぐみ「……」
楽「……だから……」
つぐみ「……」フッ
つぐみ「ありがとう。そのときは、頼らせてもらうよ」
楽「……おう!!」
107: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:35:00.37 ID:z6poyGtz0
~ 放課後 教室 ~
キーン コーン カーン コーン
キーン コーン カーン コーン
楽(……)
―― 楽「絶対、力になるから」
―― 楽「いつでもどこでも、地獄の果てだって飛んでいって、力になるから!!!」
楽(あんな事まで、言うつもりはなかったのに)
楽(あいつが)
楽(……つぐみが、今まで見たことも無いくらい、寂しそうで、辛そうだったから)
楽(……)
小野寺「……一条君?」
楽「っお? ど、どうした小野寺」
小野寺「あ、いや、なんでもないんだけどね」
小野寺「一条君、なんかすごく悩んでるみたいだったから、大丈夫かな、って、そのっ」
小野寺「友達としてっ!! ちょっと、心配だっただけで、えっとねっ」
108: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:36:16.99 ID:z6poyGtz0
楽「……」
楽「……そう、だよな」
小野寺「えっあっ……え?」
楽「友達が友達の心配をするのは、何もおかしなことじゃないよな?」
小野寺「?? ……うん、ふつーだと思うけど」
楽「……そっか、そうだよ」
楽「はは、そうだよな、ははははっ!!」
小野寺「……一条君……??」
楽(……そうだよ。別におかしなことじゃない)
楽(ちょっと様子のおかしい異性の友達を気遣ってやることぐらい、全然おかしな話じゃないんだ)
楽(だから、今の俺の気持ちは)
楽(誰かに後ろめたく思うようなモンじゃ、ないんだ)
109: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:39:05.95 ID:z6poyGtz0
~ 数十分後 ポーラ 教室 ~
ポーラ「……」ボー
楽「よっ」
ポーラ「……ご機嫌麗しゅう、デクノボウの王子様」
楽「そっちは不機嫌だな」
ポーラ「まーね。こちとらほぼ完徹だから。成長期のカラダには、授業時間程度の睡眠じゃあ足りないのよ」
楽「体の具合悪くするぐらいなら、サボっちまうのもアリなんじゃないか?」
楽「どうせ居眠りすんなら、居ても居なくても同じだろうに」ハハ
ポーラ「……うっさいわね。放っといてよ」
楽「……?」
楽「……まあ、いいや」
楽「とりあえず、眠いところ悪りぃんだけど、ちょっと付き合ってくれよ。お礼もするからさ」
楽「夜の任務まで、まだもう少し、時間はあるんだろ?」
ポーラ「……用事ならここで済ませてくれる? ホント眠いんだけど」
楽「そう言わずに。ポーラにも関係ない話じゃないんだ」
ポーラ「……?」
110: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:40:46.32 ID:z6poyGtz0
~ 二分後 一条楽 教室 ~
ポーラ「……」
集「お、相変わらず可愛いね、ポーラちゃん」ニカッ
るり「……ほんっと節操ないわね」
小野寺「る、るりちゃん」
万里花「……」
羽「あらあら」ニコニコ
ポーラ「……何よ、これ」
楽「千棘、しばらく学校来られないって話は、ポーラも知ってるだろ?」
楽「俺もつぐみから話、聞いたんだけど」
楽「あいつはあいつで、結構参っちまってるみたいだから。やっぱり仕事って、大変なんだろーな、って、ちょっと思って」
ポーラ「……」
楽「んで、いい機会ってワケでもないけど、千棘が帰ってきたら、皆でパッと遊びに行く計画でも立てようかって話でさ……」
112: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:42:16.34 ID:z6poyGtz0
春「そんなコト言って先輩、ポーラさんにまで粉かけようって言うんじゃないですよね、私、許しませんからね!!」
風「あらあら、春ちゃんカワイイ」ツンツン
春「わわっ、風ちゃんどこ触ってっ」
集「ぐふふ、どれどれおじちゃんもそのふわとろ脂肪遊戯に参加させてはいただけないかな」
るり「マジ殺すわよ」ドフッ
集「警告前に発砲するのは反則だよぅるりちゃん」フニョフニョ
小野寺「る、るりちゃん!! 舞子君もちょっと落ち着いてっ」
羽「まあまあ」ウフフ
楽「お前等なぁ……」ポリポリ
楽「とまあ、こんな感じで、俺達だけじゃ中々纏まらなくて……」
楽「ポーラなら、つぐみの好きな遊び場所とか、多少は知ってるだろ?」
楽「もし都合が悪くなければ、俺達と一緒に……」
113: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:43:53.00 ID:z6poyGtz0
ダンッ!!!!!
114: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:45:44.99 ID:z6poyGtz0
楽「っ……!?」
春「……」
春「ポーラさん……?」
ポーラ「……」
ポーラ「……」
ポーラ「……むかし、むかし」
ポーラ「あるところに、小さいころから殺し屋として育てられてきた、それはそれはかわいい女の子がいました」
ポーラ「普通の人間が持つべき命への尊厳、倫理観をゴミクズのようにすり潰され育った女の子は」
ポーラ「普通の女の子がお母さんからパンプキン・パイの焼き方を教わるように」
ポーラ「組織にとって邪魔な人間を潰す手段と、効率的な心の壊し方を教わっていったのです」
春「ポーラさん、ねえ、突然何を……」
万里花「……」
羽「……」
ポーラ「……」
115: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:46:55.64 ID:z6poyGtz0
ポーラ「やがて、思春期を迎えた女の子でしたが、彼女の人生に、一片たりとも聖域は残されていませんでした」
ポーラ「芽生え始めたばかりの、彼女の”女”そのものが、便利な殺しの道具として扱われ出すまでに、そう時間は掛かりませんでした」
ポーラ「長い永い時間と、たくさんの彼女を犠牲にして、彼女は立派な殺し屋として、生きるための居場所を手に入れたのです」
楽「……」
楽「……ポーラ」
ポーラ「……」
ポーラ「……ねえ」
ポーラ「そんな私達の人生を、端っこぽっちも知らないガキ共が」
ポーラ「温室育ちの倫理観に絡め取って、あったかいあったかい思いをさせて」
ポーラ「汚くて、暗くて、臭くて醜い、それまでの境遇を、何もかも否定して!!」
ポーラ「喜ぶと思う?」
ポーラ「いつか元の世界に帰ったとき、苦しまないと思う?」
ポーラ「それが本当に、救いだと思ってんのかよ、あんたたちはッ!!!!」
集「……」
るり「……」
小野寺「……え」
小野寺「ポーラ、ちゃん……?」
116: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:48:11.64 ID:z6poyGtz0
ポーラ「……悪いけど」
ポーラ「帰らせてもらうわ」スッ
ポーラ「アンタ達もこれ以上、余計なことを考えるのは、止めときなさい」
ポーラ「……悲しくなるだけよ、お互いにね」スタスタ
小野寺「……えっ?」
小野寺「え? え??」
小野寺「ワケ、わかんないよ」
小野寺「一条君、ポーラちゃんは、何を、」
楽「……確かめてくる」
楽「皆は、ここで待っててくれ」ダッ
小野寺「一条君っ!?」
117: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:50:20.82 ID:z6poyGtz0
~ 凡矢理高等学校 中庭 ~
ポーラ「……」
楽「っ、はあっ、はあっ、待てよ、ポーラッ!!!!」
ポーラ「……」ハァ
ポーラ「うっさいわね。言ったでしょ? 私眠いの」
楽「……あんな話をしておいて、今更誤魔化しはナシだろ」
楽「答えてくれ」
楽「さっきの話、あれは……」
ポーラ「……安心なさい、黒虎の話じゃないから」
ポーラ「アイツが男として育てられたって話、知ってるわよね」
ポーラ「ちょっとした、たとえ話みたいなものよ。分かりやすかったでしょう?」
楽「……そ、そっか」
楽「……」
楽「……そうだよな、何かの、たとえ話ってコトだよな」
楽「だって、お前だって、その、日本に来るまで、キスもしたことないってっ!!」
118: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:52:28.35 ID:z6poyGtz0
ポーラ「……何、想像してんのか知んないけどさ」
ポーラ「日本のbitchにも、結構居るらしいじゃない?」
ポーラ「カラダは尻の穴までお金で売るけど、唇だけは売り物にしない、みたいな、安っぽいプライド持ってる女」
楽「……そん、な、の」
ポーラ「信じられないなら……」スッ
ポーラ「今ここで、試してあげよっか……?」サワサワ
楽「よ、よせ、ポーラっ!!」
ポーラ「……ねぇ」
ポーラ「あたし、黒虎とあんたのやりとり、見てたんだよ……」ッッッ
楽「っ……」カァァ
ポーラ「地獄の果てまで飛んでくるー、なんてさぁ」
ポーラ「アンタ、本気で言ったワケ?」
ポーラ「だとしたら、何で?」
ポーラ「黒虎はアンタにとって、恋人の家で働いてるだけの、ただのお付きでしょ?」
119: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:54:05.90 ID:z6poyGtz0
楽「……つぐみだって、俺の大事な友達だ」
楽「本気で悩んでるときに、力になってやるコトの、何がおかしいっつうんだよ……!!!」
ポーラ「……」ハァ
ポーラ「……もしかしたら、あんたは本当の本当に、優しい奴なのかも知れないね」
ポーラ「だけどちょっと、理想を現実に変えるには、力が足りないの」
ポーラ「あんたの見ている世界は、きっとすっごく綺麗なもので」
ポーラ「真摯な心で何かを願えば、望んだ形で必ず叶うとでも思っているのかも知れないけれど」
ポーラ「救い切れや、しないんだよ」
ポーラ「あんたの非力な両腕じゃあ、一人だって、抱えられるかどうか……」
楽「……」
ポーラ「……」
ポーラ「ねぇ」
ポーラ「例えば、さ」
ポーラ「私とあんただって、もう、友達なんでしょう?」
楽「……」コク
ポーラ「ありがと」フフ
120: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:55:34.24 ID:z6poyGtz0
ポーラ「……それで、もし」
ポーラ「さっきの話が、私の事だって言ったら」
ポーラ「アンタは私のこと、救ってくれるのかな」
ポーラ「汚くて、暗くて、臭くて醜い私の人生を、全部まるごと綺麗なキラキラに塗り替えてくれるぐらいの」
ポーラ「人並みの愛と幸せを、アンタは、私にくれるのかな?」
121: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:56:40.81 ID:z6poyGtz0
楽「……」
122: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 21:58:33.94 ID:z6poyGtz0
ポーラ「……」
ポーラ「……」フゥ
ポーラ「差し伸べた手の重さ、分かってくれたみたいね?」フフ
楽「……」
楽「……俺は……」
ポーラ「別にいいよ。そもそも、謝るべき相手は、私じゃないしね」
楽「で、でも」
ポーラ「私自身は、むしろちょっと嬉しいよ」
ポーラ「アンタが……」
ポーラ「……最低の嘘だけは、つかないでいてくれたから」
スッ ポイッ
123: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:00:11.64 ID:z6poyGtz0
楽「……この、ちっちゃいケータイは」
ポーラ「私直通の、仕事用携帯電話。衛星通信使ってるから、ボタン一つでサハラ砂漠からでも掛かるけど、いたずらに使わないでね」
ポーラ「もしまた……余計な事を思いつきそうになったら、掛けてらっしゃい」
ポーラ「正直なあんたに、せめてもの御褒美。私が慰めてあげるから」
ポーラ「文字通り、”地獄の果てまで飛んでいって”ね」ナデナデ
楽「……やめろよ、そういう冗談」
ポーラ「そんなにカチカチになってお説教しても、説得力ないよ」フフ
楽「ばっ……!!」
ポーラ「……それじゃ私、本当に夜まで寝るからさ」
ポーラ「渡したばっかで悪いけど、掛けてくるならお嬢様が戻ってからにしてちょうだい」
楽「ま、待てよ、まだ話は!!」
ポーラ「……ばいばい、憐れな王子様」
シュタッ シュッ タタタタッ
楽「……」
楽「……さっきはわざと、追いつかれてくれたってワケね……」ハァ
124: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:02:50.50 ID:z6poyGtz0
楽「……」
楽「……」
―― 集「……優しさと、区切りをつけない事は、決して一緒じゃないと思うよ」
―― ポーラ「真摯な心で何かを願えば、望んだ形で必ず叶うとでも思っているのかも知れないけれど」
―― ポーラ「……救い切れや、しないんだよ」
―― ポーラ「あんたの非力な両腕じゃあ、一人だって、抱えられるかどうか」
楽「……」
楽「……」
―― ポーラ「差し伸べた手の重さ、分かってくれたみたいね」
楽「……俺、は……」
125: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:04:46.82 ID:z6poyGtz0
~ 同時刻 教室 ~
小野寺「……一条君達、遅いね」
春「……」ソワソワ
風「……」
風「……春ちゃん、私達もポーラさん、探しにいこ?」
春「え、でも、一条センパイと行き違いになっちゃうんじゃ」
風「一条センパイだって、下級生の教室には入りにくかったりするんじゃないかな」
風「ここは皆さんに任せて、私達は私達で探してみようよ」
春「うーん、でも……」
集「大丈夫だから行っておいで。先にこっちへ戻ってきたら、連絡するからさ」
春「……わかりました、じゃ、行こっか、風ちゃん」タタタ
風「うん! ……先輩方、申し訳ありませんが、私達は失礼します」
風「後のことは、お任せ致しますので……それでは」タタタタ バタン
126: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:06:01.22 ID:z6poyGtz0
集「……察しのいい子で助かるよ、ほんと」
小野寺「じゃ、じゃあ私も春達と一緒にっ」
るり「アンタはこっちだよ」ガッシ
小野寺「ひゃい!?」ズルッ
万里花「……そうは言っても、私達がここで話して解決することは、一つも無いと思うのですが」
集「……万里花ちゃん」
万里花「誰しも、人は生まれ持った境遇から、逃れることはできないものです」
万里花「……自分で打ち勝つか、納得して受け入れるしかないんですよ、結局のところ」
万里花「それを周りがどうこう考えて、意のままにしようだなんて。あまりにも、傲慢と言うものですわ」
るり「……らしくないじゃない、橘さん」
るり「貴女みたいな人こそ、こういう話に、一番腹を立てると思っていたけれど」
万里花「……私は私」
万里花「他人の話に興味はありませんし、首を突っ込むつもりもございませんので」
るり「……冷たいのね」
万理花「……」
127: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:08:54.25 ID:z6poyGtz0
るり「……私だって、コドモじゃないもの」
るり「ポーラさんや、橘さんの言うことも、全く間違っているとは言わないわ」
るり「だけど、それって惨すぎるでしょう」
るり「まるで」
るり「私達が、つぐみちゃん達と過ごした時間を、全部否定してるみたいじゃない!!」
るり「私はそんなこと、絶対認めない」
るり「認めないんだから……」
小野寺「……るりちゃん」
128: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:09:31.64 ID:z6poyGtz0
羽「んー、残念だけど、その通りなのよねぇ」ハァ
129: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:10:44.81 ID:z6poyGtz0
小野寺「……ぇ?」
るり「……先生?」
羽「結局、みんなとつぐみちゃん達は、この学校を卒業したら」
羽「あるいはもっと早く道が分かれたら、二度と交わることの無い他人になるんじゃないかな?」
羽「その時、綺麗な思い出であの子達を苦しめるくらいなら、いっそ最初から交わらないべきだったんじゃないかなーって」
るり「……そんなっ!」
集「……そんなコトないでしょー、羽先生」グイッ
るり「……舞子」
羽「あら、先生の教育的指導にご不満かな、舞子くん?」
集「いやま、そんな大した話じゃないんスけどね」ポリポリ
集「……先生は最近ここへ来たばっかりだから、知らないのかもしんないけど」
集「千棘ちゃんだって、誠士郎ちゃんだって、俺達だって、皆がここへ馴染むために、すっごい努力してきてたんですよぉ」ヘラヘラ
集「ポーラちゃんがどうして突然、あんな事を言い出したのかは分からない」
集「だけど、皆が皆を思い合って」
集「努力して、時には苦しんで、一緒に作ってきた思い出を」
集「全部まとめて否定する権利は、例え先生にだって」
集「無いでしょ」
羽「……」
130: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:11:48.81 ID:z6poyGtz0
羽「……うーん」
羽「皆、青春してるわねぇ」シミジミ
集「……」
るり「……茶化さないで下さい、先生」
るり「私達が今日こうして集まったのだって、義理や強制なんかじゃなくて、桐崎さんやつぐみさんの為に、何かしたいと思ったから」
るり「だから、そんな風に言うのは……」
羽「うん、でもねぇ。先生は先生だから、教育に私情を挟めないのよ」
羽「楽ちゃんの為に頑張りたい舞子君や、小野寺さんのために頑張りたい宮本さんとは、違ってね?」
集「……今、楽は関係ないだろうが、センセイ」ギロッ
るり「ちょっと、ま、舞子」
小野寺「……」
羽「そんなことないわ。関係ありあり、大有りよ」
羽「だって楽ちゃんもまた、ヤクザの大事な跡取り息子なんだもの」
羽「皆は無意識に、楽ちゃんと千棘ちゃんを、つぐみちゃん達から切り離して考えているみたいだけど」
羽「楽ちゃんも千棘ちゃんも、つぐみちゃんと境遇はおんなじ、むしろ酷いかな?」
羽「人を殺してご飯を食べる、犯罪組織の跡継ぎなんだから」
131: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:15:14.97 ID:z6poyGtz0
集「だから関係ないだろ!!!」バンッ
集「あいつは! ヤクザなんて継がずに、普通の人間として生きてくコトを望んでんだ、だから」
羽「それは楽ちゃん個人の視点で、願望だよね?」
羽「楽ちゃんが組織を継いだほうが都合のいい人たちは、あらゆる手段で楽ちゃんの、そんなささやかな夢を潰すわ」
羽「その時とばっちりを食うのは、隣にいる舞子君だったり、その家族や友達で」
羽「罪悪感を抱かねばならないのは、他ならぬ楽ちゃんなんだけど」
羽「それでも全く全然、関係の無いお話なのかな?」
集「そんなの、っ……」
羽「……まあ、その話はいいわ」
羽「私が皆に考えて欲しいのは、もっと本質的なお話でーす」
羽「ノートは無いと思うから、心の中にアンダーラインを引いて、じっくり考えてみてね」
132: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:16:39.51 ID:z6poyGtz0
羽「”これから皆は、桐崎さんやつぐみちゃん、楽ちゃんと、どう付き合っていくべきなのか”」
133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/07/16(木) 22:17:59.05 ID:z6poyGtz0
小野寺「……どうして、そんなこと、いま、さら」
羽「……ずっと目をそらし続けられれば、良かったんだけどね」フゥ
集「……」
るり「……」
羽「皆がどう否定したところで」
羽「楽ちゃん達が食べているご飯は、罪の無い人達から搾取したり、違法な取引で荒稼ぎした黒いお金で出来てるの」
羽「恨まれているでしょうね、憎まれているでしょうね」
羽「彼らがどう望もうが、これから皆と同じような、”普通のシアワセ”を手にすることは、絶対にできない」
羽「……特にね」
羽「友達づきあいならまだいいの」
羽「だけど」
羽「コイをして、一緒になるっていうことは、そういう全部全てを、一緒に受け入れるってことでもあるんだよ?」
小野寺「……」カタカタ
羽「そういう覚悟がないのに、あの子達と手を取り合って仲良くしよう、なんて考えは、止めたほうがいいんじゃないかと先生は思うわ」
134: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:19:59.56 ID:z6poyGtz0
羽「ねえ」
羽「その辺り、どう思うか、聞かせてくれるかな」
羽「小野寺小咲さん?」
小野寺「……」カタカタ
小野寺「……わ」カタカタカタ
小野寺「わ、私、わたし、は……」
小野寺「……うぶっ」
羽「……」
小野寺「~~~~~~~~~~~ッ!!!!!!」ダダダダダッ
るり「小咲ッ!?」
135: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:22:17.03 ID:z6poyGtz0
集「……よせ、るりちゃん」
るり「でもっ!!」
羽「……あなた達も、向き合いなさい」
羽「何の責任も持てないのに、彼らの関係をかき回したり、応援してみたり、なんてことは」
羽「最も罪深い行為よ」
集「……」
るり「……」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
羽「……」
ガラッ ピシャーン!!!
万里花「……」
羽「……そんなに怖い顔して、どうしたの?」
136: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:23:53.39 ID:z6poyGtz0
万里花「……」
万里花「……あんな話で、私に気を遣ったつもりでいるなら……」
羽「……違うわ」
羽「先生は、先生だから。皆が必要な時に、必要なことを教える義務があるの」
羽「本当に、それだけよ」
万里花「……本当、貴女のそういうところ」
万里花「昔っから、大っ嫌いですわ」
羽「……そっ、か」
137: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:24:57.79 ID:z6poyGtz0
~ 二週間後 朝 鶫誠士郎 セーフハウス ~
つぐみ「……」ボー
つぐみ(……)
つぐみ(……この2週間)
つぐみ(ずいぶんと、充実していた)
つぐみ(潜んで、戦って、情報を収集して、昼も夜もなく飛び回って)
つぐみ(それなりの数を殺して)
つぐみ(いい働きをしたと思う)
つぐみ(……そうさ)
つぐみ(やはり、私が居るべきは”こちら側”で正しかったのだ)
つぐみ(お嬢や小野寺様、他の皆様方)
つぐみ(……そして、一条楽)
つぐみ(その穏やかな毒気に当てられて、私は勘違いをしていたに過ぎないんだ)
つぐみ(同じように)
つぐみ(一緒に)
つぐみ(優しい世界で、清らかに生きていけるかもしれない、なんて)
138: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:26:09.86 ID:z6poyGtz0
つぐみ(……はは)
つぐみ(気持ちを切り替えると、随分と肩が軽くなった)
つぐみ(……)
つぐみ(……それでも)
つぐみ(やはり、お嬢と顔を合わせるとなると)
つぐみ(気が重い……ん?)
ブーッ ブーッ ブーッ
つぐみ「……鶫です」
千棘『……おはよ、つぐみ。今回も迷惑かけたわね』
つぐみ「とんでもない。お嬢の為に働くことができて、私は幸せですよ」フフ
千棘『……ありがと』
つぐみ「今日から学校に復帰されることは、伺っております」
つぐみ「普段どおり、20分ほど後に門の前まで……」
139: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:28:09.25 ID:z6poyGtz0
千棘『……ね、つぐみ』
つぐみ「はい?」
千棘『……あのね』
千棘『つぐみにとっての私って、何?』
つぐみ「……」ドキッ
千棘『……』
つぐみ「……」
千棘『……つぐみ、』
つぐみ「……大切な、友達ですよ」
千棘『……そう』ハァ
つぐみ「……?」
千棘『……ううん、いいの。聞いた私が卑怯だったわ』
つぐみ「お嬢、それはどういう意味でっ」
千棘『ごめんね、気にしないで。全部こっちの話だから』
140: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:29:52.02 ID:z6poyGtz0
千棘『……それと、今日から暫く、私一人で登校したいの』
つぐみ「……な、なるほど、一条楽との時間を作られるのですね。では私も遠方から」
千棘『ああ、クロードに付いて貰ってるから、大丈夫よ』
千棘『あと、ダーリンとも暫くは一緒に登校するの、止めるから』
つぐみ「……え?」
千棘『えっと……付き合いたてのカップルって時期でもないし。適度な距離を置いてもいいかな、って、思ってみたりして』
つぐみ「……お嬢」
千棘『し、心配しないで、別に別れ話が出たとか、嫌いになったとか、そーゆーんじゃないからっ!!』
つぐみ「……」
千棘『と、とにかく、クロードに色々お願いしてるから、全然心配要らないからっ』
千棘『つぐみも自分の学園生活、楽しみなさいよねっ!! それじゃっ!!!』ブッ ツーッ ツーッ ツーッ ツーッ
つぐみ「……」 ツーッ ツーッ ツーッ ツーッ
つぐみ「……?」
141: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:31:36.39 ID:z6poyGtz0
~ 教室 ~
ガラガラガラガラ
つぐみ「……おはよう」
集「……」
るり「……」
つぐみ(お嬢は……まだ来ていないか)
つぐみ(一条楽は……)キョロキョロ
楽「……おはよう、つぐみ」
つぐみ「」ビクッ
つぐみ「……おはよう、一条楽」
楽「……」フイ
つぐみ(……何だ、無愛想な)
つぐみ(余計な勘繰りを受けるものだとばかり思っていたが)
つぐみ(……こいつなりの、気遣いなのかも知れんが……)
つぐみ(……)チラ
142: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:33:01.39 ID:z6poyGtz0
集「……」フイ
るり「……」
つぐみ(……よく見てみれば)
つぐみ(教室中の雰囲気が、何だか重苦しいような……)
つぐみ(……)
つぐみ(……どうでもいいか)
つぐみ(私のいるべき世界が”こちら”でないことは、さっき確認したばかりではないか)
つぐみ(……そうさ)
つぐみ(最初から望んだりしなければ)
つぐみ(……これ以上、傷ついたりすることもない)
ガラガラガラガラ
千棘「……」
羽「あら、千棘ちゃんはギリギリセーフだね。おはよう」ニコ
千棘「……おはようございます」
羽「小咲ちゃんと万里花ちゃんは、今日もお休み……っと」
羽「他のみんなはー……」
143: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:34:20.31 ID:z6poyGtz0
集「……」
るり「……」
楽「……」
つぐみ「……」
千棘「……」
羽「……」
羽「……うーん」
羽「どうしたものかしらねぇ……」
144: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:36:02.08 ID:z6poyGtz0
~ 数日後 AM11:33 ”定期デート”中 凡矢理駅前商店街付近 ~
楽「……」
千棘「……」
楽(……)
―― ポーラ「あんたの非力な両腕じゃあ、一人だって、抱えられるかどうか」
楽(……あの日のポーラの言葉が、ずっと頭から離れねぇ)
―― ポーラ「アンタは私のこと、救ってくれるのかな」
―― ポーラ「汚くて、暗くて、臭くて醜い私の人生を、全部まるごと綺麗なキラキラに塗り替えてくれるぐらいの」
―― ポーラ「人並みの愛と幸せを、アンタは、私にくれるのかな?」
楽(俺の中にあった気持ちが、友達の事を大事に思う、男として当然の義理や人情だって言うなら)
楽(即答できたはずだ)
楽(ポーラの事だって、助けてやるって)
楽(一生を塗り替えてやるくらい素敵な思い出を、一緒に作ってやるって、言うべきだったはずだろ)
145: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:37:45.10 ID:z6poyGtz0
楽(だけど、そうじゃなかった)
楽(つぐみにしたみたいには、できなかった)
楽(……つぐみが、”鍵の女の子かも知れなかったから”助けたいと思ったのか?)
楽(違う!!)
楽(俺はただ、純粋な気持ちで……)
楽(……クソッ)
千棘「………ぇ」
楽(何なんだよ……)
千棘「……ねえ」
楽(何なんだよっ……!!!)
千棘「ねえってばっ!!!」
楽「っ!!」
楽「な、な、何だよいきなり大声出してっ」
千棘「いきなりじゃないわよ。何回呼んでも返事しないアンタが悪いんでしょうが」
楽「あ、ああ、悪りぃ、ちょっと考え事しててさ」
146: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:38:56.22 ID:z6poyGtz0
千棘「ったく……まあ、私も考え事してたし、別にいいけど」
楽「お前も考え事?」
千棘「……何よ」ギロッ
楽「……何でもない」
楽「そ、それより、最近登校どうしてるんだよ? 一人で来てんのか? それとも……」
楽「……つぐ、み、と、」
千棘「」ブフォッ
楽「どわ、な、何すんだよっ!!」
千棘「アンタがいきなりつぐみの名前なんて出すからでしょお!?」グイグイグイグイ
楽「あ、いや、うわ、ご、ごめ……」
楽「……」
楽「……別に変じゃないだろ」
千棘「あ、いや、別に、その」アタフタ
千棘「……変じゃないけど?」ファサ
楽「……だよなぁ」ハァ
千棘「……そうねぇ」フゥ
147: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:40:28.05 ID:z6poyGtz0
楽「……」
千棘「……」
千棘「……アンタは、さ」
楽「……うん」
千棘「つぐみの事、どう思ってるのよ」
楽「ど、どど、どう、って」
千棘「……」キッ
楽「……」
楽「……」ハァ
楽「……大事な友達だと思ってるよ」
千棘「それだけ?」
千棘「可愛いとか、魅力的とか、一緒にいたい、とか、思ったりしないの?」
楽「」ドキッ
楽「い、いきなり何だよハニー、デート中にそんな、他の女の話をっ」
千棘「いいからちゃんと答えなさいよっ!!!」
148: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:41:25.54 ID:z6poyGtz0
楽「い、今じゃなくてもいいだろ、そんなの」
千棘「私は今聞きたいのっ!!」
楽「だから何でっ!!」
千棘「それは……」
千棘「……言えるワケ、ないじゃない」
楽「はぁ……?」
千棘「あたしだって、こんな事こんな時に聞きたかないわよ」
千棘「でも仕方ないじゃない!! 苦しいんだもん!! 気になるんだもん!!!!」
千棘「あ、あたしが、あたしが、どんな思いで、今日まで、っ……」ウルッ
楽「……それって、どう」
『そぅれでは皆さん!! 今日も張り切って行きましょう~!!!』
『せ~の!!』
千棘「……あ?」
149: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:42:21.31 ID:z6poyGtz0
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
楽「……何だ、あの集団」
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
150: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:43:42.15 ID:z6poyGtz0
千棘「……なんか……むずむずするって言うか……」
千棘「キモッ」
楽「……うーん」
千棘「マスゲームって言うんでしょ、あーゆーの。日本で見られるとは思わなかったけどさ」
楽「違うし、日本でも特殊な光景だと思うが」
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
千棘「……あの掛け声何なのよ」
千棘「似たようなカッコした子供とか、お年寄りまで楽しそうに拳振り上げてるけど」
千棘「邪神復活の儀式とでも説明されたほうが、まだ安心できる感じじゃない、アレ」
151: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:44:50.88 ID:z6poyGtz0
楽「……日本では、ああいうのが好きな奴にも人権が与えられてんだよ」
千棘「あっそ……」
千棘「……行きましょ。あんまりジロジロ見てると、ウチの奴らが駆除始めちゃいそう」クルッ
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
楽「……」
楽「……おい」
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
千棘「……何よ、混ざりたいの?」
楽「……」ブルブル
152: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:46:06.71 ID:z6poyGtz0
楽「……あれ」
千棘「あん……?」
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
『パンチ!!』
「パンチ!!」
「ぱんち!!」
「ぱんちっ!!」フニャン
小野寺「ぱんちっ!! ぱんちっ!!」フニャン フニャン
153: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:48:05.64 ID:z6poyGtz0
千棘「こ、小咲ちゃんっ!?」
楽「だよなっ……!!」ダッ
千棘「ちょ、っちょっちょ待ちなさいよっ!!」ガシッ
楽「何だよ!!」ギロッ
千棘「何だよ、ってっ!!」
千棘「……」
千棘「……あ、あんなことしてるの、知り合いに見られたら、恥ずかしいんじゃない?」テヘッ
楽「……」
楽「……」
楽「……確かに」
千棘「でしょ」ハァ
千棘「……驚いたのは分かるけど、慌て過ぎよ」
千棘「あんな恐ろしい顔して飛び出して来られたら、小咲ちゃん、泣いちゃうかもしれないじゃないの」
楽「……」
千棘「……?」
154: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:49:17.76 ID:z6poyGtz0
楽「……にしたって、小野寺は、なんであんな奴らとあんな事してんだよ」
千棘「私が知るワケないでしょ……最近ずっと休んでたし、連絡も取ってないもん」
千棘「アンタこそ、心当たりないワケ? 様子がおかしかったとかさ」
楽「最近の……小野寺?」
千棘「そうよ。何か悩んでる様子だったとか、変な仲間に誘われてるとかさ……」
楽「……」
楽「……」
千棘「……何もなかった?」
楽「……」
楽「……ごめん」シュン
千棘「……忙しい奴ね、いきなりブチギレてみたり落ち込んでみたり……」
千棘「それより、これからの事を考えましょ。まずはこの儀式が何の集まりなのか知るべきだわ」
千棘「大事にならない程度に、どこかへ相談して……」
155: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:50:36.51 ID:z6poyGtz0
楽「……やっぱ、警察とか、学校とか」
千棘「ダメよ、ダメダメ。どっちも騒ぎが大きくなるだけじゃない」
楽「親御さんや、友達筋も危ないか……春ちゃんとかが知ったら、絶対ショック受けるもんな」
千棘「……こんな時、つぐみに相談できたらなぁ」
楽「」ビクッ
千棘「……何よ」
楽「いや、つぐみは、止めとかないか」
楽「……何となくだけど」
千棘「……そ、そうね、何となく、だけど」
楽「……」
千棘「……」
『テ~ン パンチ テ~ン パンチ……』
『テ~ン パンチ テ~ン パンチ……』
『ぱんちっ、ぱんちっ……』
156: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:53:11.35 ID:z6poyGtz0
楽「……やっぱり、直接、」ダッ
千棘「あーもう分かった、分かったからちょっと待ちなさいってのっ!」グイッ
楽「どわっ」
千棘「……」ハァ
千棘「一応、一人だけ心当たりがあるから。直接当たるのはもうちょっとだけ待って」
楽「……分かった」
楽「でも俺達の知り合いで、こんな時に力になってくれそうな奴、誰か居たっけ」
千棘「……本来、アンタが思いついて、話するべきトコだと思うんだけどね……」ポリポリ
楽「……?」
157: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:54:32.77 ID:z6poyGtz0
~ 同日 PM1:28 凡矢理高校 新聞部 部室 ~
ブツッ カチャカチャ ウィーン ウイィィィン
司会者『……このように、”パンチング・コ~ル”には、仲間達の様々な意思が込められています』ニコー
観客『ワ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 』
司会者『どんな大きな壁にも、立ち向かう意志を示す”天・パンチ”』
司会者『共に目標に向かって進む仲間を助ける”添・パンチ”』
司会者『苦しい状況を自らの力で逆転させる”転・パンチ”』
司会者『仲間同士の輪にしっかりと収まって、絆を強める”填・パンチ”』
司会者『人や世界との繋がりを広げ、自らをより高みに押し上げる”展・パンチ”』
司会者『おっと、テンパンチだからといって、10(テン)で終わりってワケじゃあないんですよ』 ワハハハハハハ
司会者『……”テンパンチ・プロジェクト”メンバー一人ひとりの数だけ、心のパンチは存在します』
司会者『パンチはメンバーの、硬くて強い絆の証』
司会者『さあ、皆さん一緒に、力の限り叫びましょう!!』
司会者『テ~ン!!』
観客『パァーンチ!!!』
158: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:56:02.15 ID:z6poyGtz0
ブツッ カチャカチャ ウィーン ウイィィィン
老婆『あんよがじょうず、あんよがじょうず……』
子供『キャッキャッ』
リポーター『こちらが今回ご紹介する、新しい形の地域コミュニティ”ねこぱんち”さんです』
リポーター『本日は園長先生にお話を伺おうと思います。こんにちは、大村さん』
園長『ハハハ、どうも』
リポーター『”ねこぱんち”の魅力について教えていただきたいのですが』
園長『はい。”ねこぱんち”は一人暮らしをされているご老人や、一人で留守番をする時間があるお子さん達のコミュニティ施設です』
園長『いくつかの関係団体の方にご協力頂きまして、もと教師の方や、保育士の資格をお持ちの方』
園長『さらには医療関係の技術をお持ちの方や、介護士の方々等のボランティアスタッフを揃え』
園長『新しい地域のコミュニケーションスペースとして、一つの受け皿になれればと言う思いから始めました』
リポーター『正に、皆が喜ぶ理想の場と言う事になりますね。ご苦労もあったのでは?』
園長『ははは。皆が望んでいたことを、一つの形として提供させていただいただけですので、思ったほどの苦労はありませんでした』
園長『こちらで主催するイベントなどを通じて、交友の輪が広がったという、嬉しいお話も頂いております』
リポーター『なるほど。”ねこぱんち”の活動そのものが、更にたくさんの仲間を惹きつけるカギと言う訳ですね』
園長『ええ。遠方からいらしてくださる方も多いので、今後は別の地域でも”ねこぱんち”の輪を広げていければと思いますね』
リポーター『なるほど。いつか私の住む町にも、”ねこぱんち”ができたら、嬉しいですね』
リポーター『それでは……』
159: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:57:23.20 ID:z6poyGtz0
ブツッ カチャカチャ ウィーン ウイィィィン
子供達『ぱんち! ぱんち! ぱんち! ぱんち! 』
女性『はいはーい、みんな上手ねー。よくできたわ』
子供1『せんせー、せんせー!!』
女性『あら、だめよ。ちゃんと呼んでくれなきゃ、お返事しませーん』
子供1『あ、そうだった。おねえさま!』
女性『よろしい。目上のメンバーのことは、ちゃんと”お兄様””お姉様”と呼ばなくてはだめよ』
子供1『えへへ。ごめんなさーい』
女性『それでどうしたの、弟くん』
子供1『おねえさま、おとうさまはいつ遊びに来るの?』
子供2『あ、あたしも会いたいです。おとうさまー』
子供3『ばかだなあ。おとうさまはおいそがしいから、おれたちと遊んでるひまなんてないんだぞ』
子供4『いやだよぉ、あいたいよぉ。おとうさまー』エーン
女性『はいはい、みんな騒がないの。お父様は皆がいい子にしていたら、きっと遊びに来てくれるわよ』
女性『お父様にお見せできるように、”テン・パンチ”の練習、しっかりしておきましょうねー』
子供達『はーい』
女性『じゃあいくわよ、せーの』
160: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 22:59:18.36 ID:z6poyGtz0
女性『腐った政治を?』
子供達『てん・ぱんち!!』
女性『野蛮な軍隊?』
子供達『てん・ぱんち!!』
女性『汚い金持ち?』
子供達『てん・ぱんち!!』
女性『無能な警察?』
子供達『てん・ぱんち!!』
女性『はい、テン・パンチ!! テン・パンチ!! 』
子供達『てん・ぱんち!! てん・ぱんち!! てん・ぱんち!! てん・ぱんち!! 』
全員『ワァァァァァァァァァ!! テン・パンチ!!』
161: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:00:41.21 ID:z6poyGtz0
ブツッ カチャカチャ ウィーン ウイィィィン
背広男『政府の独善的な横暴を許すな~ッ!!』
メンバー『ゆ る す な ~ ッ!!』
背広男『政府の独善的な横暴を許すな~ッ!!』
メンバー『ゆ る す な ~ ッ!!』
背広男『 シ ュ プ レ ヒ コ ~ ル ッ ! ! 』
背広男『てェ~んッ!!』
メンバー『パァ~ンチッ!!!』
背広男『てェ~んッ!!』
メンバー『パァ~ンチッ!!!』
背広男『てェ~んッ!!』
メンバー『パァ~ンチッ!!!』
背広男『てェ~んッ!!』
メンバー『パァ~ンチッ!!!』
子供『ぱぁ~んち!!』
女性『ぱぁ~んち!!』
老人『ぱぁ~んち!!』
ブツッ
162: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:02:06.07 ID:z6poyGtz0
万里花「……映像資料の提供、ありがとうございました、美々子さん」
万里花「何だかんだとご説明差し上げるよりも、こうして現物をお見せしたほうが、よくよく伝わると思いまして」
喜喜美々子「何、大したことではございマセン。橘さんには色々と取材協力もしていただいているコトですし」
美々子「……こんな形でも、お力になれるのであれば、私としても……」
ダンッ!!!!
楽「何和気藹々ノンビリと話してんだよお前等ッ!!!」
千棘「ちょっ、楽、ダーリン、あんた協力してもらっておいて何をっ」
楽「何をじゃねえよ!!! お前も見ただろ!?」
楽「あいつら、どう見たって! 完全に!!」
楽「……マジモンの、イカレた集団じゃねぇか……」
千棘「……」
楽「警察は何やってんだよッ!!」
楽「あんな、慈善事業の皮を被って、子供に洗脳みたいな真似させてる組織に」
楽「どうして何も手出ししねぇんだ!? さっさとブッ潰してっ」
163: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:03:14.63 ID:z6poyGtz0
万里花「……元々”テンパンチ・プロジェクト”は、芸術家やアーティスト、スポーツ選手など」
万里花「安定した収入を持たない方々が身を寄せ合って出来た共助組織」
万里花「その中で神格化された”お父様”なる人物の思想を中心として成る、善意の非営利団体です」
万里花「その思想には若干の偏りが見受けられますし、信者の方をデモの参加者として利用している事実もありますが」
万里花「法律的な観点から見れば、表向きは極めて健全、合法的な活動を行っています」
万里花「違法行為が認められない現状、表立って警察が取り締まりを行うことはできません」
千棘「……アコギな真似してても、法律対策万全のシューキョー団体より」
千棘「ヤクザやマフィアの方が、よっぽど摘発対象ってワケね……」
楽「……クソッ!!」バァン!!
万里花「……」
美々子「……」
千棘「……」
万里花「……楽様」
万里花「小野寺さんがどうして、”テンパンチ・プロジェクト”に参加されていたのかは、私も分かりません」
万里花「ですが」
万里花「人は、心にどうしようもなく重い悩みを抱えた時、どこかに救いを求めてしまう生き物なのです」
164: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:04:22.97 ID:z6poyGtz0
楽「……こんな宗教にハマっちまう程、小野寺が何かに悩んでいたって言いたいのかよ」
万里花「……そう、思います」
楽「……だからっ、て……」
万里花「”テンパンチ・プロジェクト”は、確かに偏った思想集団と言う側面もありますが」
万里花「楽様もご覧になったように、悩みを抱えた方の心の拠所と言う側面も、確実にあるのです」
万里花「”テンパンチ・プロジェクト”への参加が、小野寺さんの意思ならば」
万里花「私達に、それを否定する権利は……」
千棘「……」
楽「……権利なんて、無くったって」
楽「俺達で、止めてやらなくちゃ、ダメだろ」
万里花「……」
楽「小野寺がもし、誰にも言えないような悩みを抱えて、変な宗教にハマっちまったって言うなら」
楽「それを救うのは、おかしな奴等の変な思惑で捻じ曲げられた宗教なんかじゃなくって」
楽「小野寺の友達で」
楽「小野寺の事を本当に大事に思っている奴であるべきだ」
楽「だから」
楽「”テンパンチ・プロジェクト”に頼るなんて事、絶対に」
楽「ダメだ」
165: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:05:23.86 ID:z6poyGtz0
万里花「……素敵ですわ、楽様」
万里花「まるで」
万里花「小野寺さんのことを、本当に愛しているみたいで」
楽「っ!!」
千棘「ちょっと万里花!」
万里花「……何でしょう」
千棘「……ソイツがそーゆー奴だって事、アンタだって十分知ってるでしょ」
千棘「こんな時に、変なコト言い出さないでよ。新聞部の子だって居るのに」
美々子「……今日はオフレコで結構ですヨ。橘さんともそのようにお約束しています」
千棘「……あっ、そ……」
166: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:07:01.85 ID:z6poyGtz0
万里花「……確かに、桐崎さんの仰るとおりではあります」
万里花「けれど」
万里花「楽様が、そんな素敵な方だからこそ」
万里花「私も、少し勘違いしてしまうんです」
万里花「……私も」
万里花「いつか貴方に、愛してもらえるかもしれない、なんて」
千棘「……万里花、あんた……」
167: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:07:58.55 ID:z6poyGtz0
万里花「楽様にとって、小野寺さんは大切な友達なのかも知れません」
万里花「関わっているのがあんな団体ですもの、小野寺さんを心底心配される気持ちも、勿論理解できますわ」
万里花「……だけど、ごめんなさい、楽様」
万里花「私は少しだけ、こうも思ってしまうのです」
万里花「コイビトである桐崎さんが、楽様の寵愛を受けることには、まだ納得も我慢も行くのです」
万里花「けれど、そうではない相手の中で」
万里花「こんなにも貴方をお慕いしている私と」
万里花「小野寺さんが私と同じ、あるいはそれ以上に楽様に想われている事が」
万里花「……」
万里花「こと、が……」
楽「……」
千棘「……」
美々子「……」
万里花「……失礼致しました」
万里花「小野寺さんの一大事と言う時に、つまらない話を」
万里花「申し訳ありません、楽さ……」
楽「……橘」
万里花「」ビクッ
168: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:09:00.43 ID:z6poyGtz0
楽「俺は」
楽「例え今、千棘がいなかったとしても、橘を好きになることはできない」
万里花「……」
千棘「……どうしてよ」
千棘「万里花はあんだけ、アンタの事、愛してるっつってるのに」
千棘「あた、あたしに、余計な遠慮してるってんならっ」
楽「違う」
千棘「じゃあ!!!」
楽「俺にだって、分かんねぇよ」
楽「でも」
楽「好きって気持ちは、相手の愛情が強いからって、同じくらい強く生まれるモンじゃねーだろ」
楽「これから長いこと付き合っていったら、俺にもそんな気持ちが、生まれるのかもしれないけど」
楽「今は橘のこと、かわいい、とか、俺の事を好きになってくれて嬉しい、とか、そんな感情しかないってのに」
楽「そんな中途半端な気持ちで、橘と付き合ったりすることは、できない」
楽「……小野寺や、他の皆と同じようにしか、見られないよ」
169: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:10:00.05 ID:z6poyGtz0
万里花「……それだけ聞ければ、十分です」
千棘「……いいの?」
万里花「あら、桐崎さんがそれを仰います?」ホホホ
千棘「……ふん」
万里花「……私はもう、何も申しません」
万里花「楽様は、楽様の思うように、なさってください……」フイ
楽「ああ」
楽「……ごめんな、橘」ダッ
千棘「ちょっ、楽!! 万里花あんた何勝手、な……」
万里花「……」ゴシゴシ
美々子「……」
千棘「……万里花」
万里花「……やっぱり」
万里花「楽様は、素敵」ニコ
千棘「……あっ、そ……」ハァ
170: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:11:00.59 ID:z6poyGtz0
ダッ ダッ ダッ ダッ
楽(……ごめん)
楽(橘、ごめん)
楽(傷つけて、ごめん)
―― 楽「……小野寺や、他の皆と同じようにしか、見られないよ」
楽(嘘ついて、ごめん)
171: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:11:49.46 ID:z6poyGtz0
楽(だけど)
楽(俺は)
―― 集「……優しさと、区切りをつけない事は、決して一緒じゃないと思うよ」
―― ポーラ「……救い切れや、しないんだよ」
―― ポーラ「あんたの非力な両腕じゃあ、一人だって、抱えられるかどうか」
楽(……結局、誰も救えてない俺だけど)
楽(本当に愛してる子ぐらいは)
楽(せめて、小野寺だけは)
楽(俺の手で、救わなきゃいけないんだ)
楽(俺の手で、俺が)
楽(救わなきゃ……!!!)
172: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:13:08.08 ID:z6poyGtz0
~ 十数分後 凡矢理駅前商店街付近 グループ通話中 ~
つぐみ「……この付近ですか?」
千棘『うん、さっき私達が見かけたのは、その辺りだと思う』
千棘『できれば私がそっちに行きたいんだけど、クロードが……』
クロード『車を回したほうが効率的ですし、私と小僧が一対一では、反発するばかりでしょう』
クロード『申し訳ありませんが、お嬢はこちらに付いてください』
クロード『ポーラは小野寺様の家付近を捜索しろ』
ポーラ『……』
クロード『……ポーラ』
ポーラ『……ハイ』
千棘『アイツ、興奮してて何しでかすかわからないけど……』
千棘『……優しく、止めてあげてね』
つぐみ「了解」
ポーラ『了解』
173: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:13:47.87 ID:z6poyGtz0
クロード『行動を開始する。些細な事であっても、情報の共有化に努めろ。オーバー』ブツッ
つぐみ「……」
つぐみ「……善意の共助組織”テンパンチ・プロジェクト”か」
つぐみ「……」
つぐみ「私も、勧誘されてみるかな」フフッ
つぐみ「……」
ダッ
174: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:14:38.08 ID:z6poyGtz0
~ 同刻 一条楽 ~
ガヤガヤ ガヤガヤ
ワイワイ ワヤワヤ
楽(クソッ、人が多い……)
楽(……だけど)
楽(春ちゃんに確認したら、小野寺はまだ家に帰っていないって言ってるし、最近は割と帰りも遅いらしい)
楽(あれだけの人数、バスや自家用車で移動しているとも考えづらい)
楽(となれば電車に乗ってどこかへ行ったか、歩きで別の場所に移動したか)
楽(この辺りで商店街以外に、人が集まりそうで、広いスペースの取れる場所と言ったら……!!)
175: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:15:43.90 ID:z6poyGtz0
~ 凡矢理駅前広場 ~
『それでは、駅前の皆さんにも、メンバーの力強いテンパンチをお披露目しましょう~!!』
『ワ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア 』
小野寺「わーっ!! わーっ!!!」
楽(見つけたっ……!!)ダダダッ
楽(小野寺)
『さあ、みなさん拳を握ってぇ』
楽(今、俺が)
『せーのっ!!』
楽(助けてやるからっ……)
楽「おのっ」
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
小野寺「ぱんちっ!! ぱんちっ!! ぱんちっ!! 」フニャン フニャン フニャン
176: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:17:12.07 ID:z6poyGtz0
楽「あ……」
??「……」グイッ
??「さっき、桐崎さんと二人でいるのが見えたから」
??「……警戒しておいて、正解だったみたいね」
楽「……」
楽「……その手、離せよ」
楽「宮本っ……!!!」
るり「……お断りします」
るり「小咲は、今とても充実した時間を過ごしているわ」
るり「”テンパンチ・プロジェクト”に参加して、素敵な仲間を得たおかげでね」
るり「あなたなんかに、邪魔されたくないの。判るかしら」
楽「……判るわけ、ねえだろ」ブンッ
るり「……っ」ギュッ
楽「……離せ」
楽「痛い思い、すんぞ」
るり「させてみればいいじゃない。交番、近くだけど?」
楽「構うもんか」
楽「小野寺は、俺の手で、絶対にっ」
177: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:18:07.87 ID:z6poyGtz0
るり「……やめてよ、もう」
るり「何で今更、そんな事言い出すのよ」
るり「帰ってよ」
るり「何をしろとは言わないから、せめて小咲の事、放っといてよ……!!」
楽「……宮本には、カンケーねーだろ」
楽「事情は知らねーけど」
楽「小野寺をこんな組織に巻き込ませといて、平気な顔してる宮本にはカンケーねーよ」
楽「余計な邪魔、すんなよ」
楽「小野寺は、俺がこの手で、絶対に正気に戻してっ」
るり「……いい加減なこと、言わないで」
るり「小咲がこうなった原因、どうせ貴方は知らないんでしょう」
楽「それはっ……」
るり「……」
楽「……」
178: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:19:01.03 ID:z6poyGtz0
るり「……だったら、もう帰ってよ」
るり「私にとっても、貴方は、一応、友達だから」
るり「……酷いこと、言いたくないの」
楽「……どーゆーことだよ、ソレ」
るり「……言いたくないって、言ってるでしょう」
楽「そんなんで納得できるワケねーだろ!!」
るり「納得なんてしてくれなくていい」
るり「私を恨んで構わないから」
るり「今すぐここから消えて」
るり「お願い」
るり「お願いよ……」
楽「……」
楽「宮本」
楽「俺は、」
タッタッタッタ タッ
つぐみ(居た)
つぐみ(一条楽と……)
つぐみ(……宮本様?)
179: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:20:35.32 ID:z6poyGtz0
楽「確かに、小野寺があんな事してる理由、知らねぇよ」
楽「だけどさ」
楽「俺にとって、小野寺はすごく大事な……」
楽「……友達、で」
楽「どうしても、俺の手で、助けてやりてぇんだ」
楽「……俺、バカだし、今まで色んな事、間違えてきたけど」
楽「最後の最後だけは、外したくねぇんだ」
楽「だから、頼む、宮本」
楽「この手を離して、そこをどいてっ」
るり「……今更ムシのいい事言ってんじゃないわよ」
楽「……え」
るり「小咲がこんな風になったのも」ポロ
るり「私がこんな事しなきゃなんないのも」ポロポロ
るり「全部アンタのせいじゃない」ボロボロ
るり「アンタが何にも気づかないから」
るり「アンタが何にもしなかったから」
るり「アンタが」
るり「アンタが……」
180: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:21:32.68 ID:z6poyGtz0
るり「ヤクザの息子なんかじゃなければ、小咲も私もこんなに苦しまなかったのにッ!!!!」
181: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:22:22.56 ID:z6poyGtz0
つぐみ(……)
楽「……?」
楽「……え、みや、もと」
楽「何だよ、その話」
楽「た、確かに、俺のオヤジはヤクザやってるし」
楽「今のみんなと仲良くなるまでは、集くらいしかまともな友達いなくって」
楽「みんなにも、怖い思いさせるかも知れないってビビってた時期もあったけど」
楽「俺は絶対、跡目なんか継がないつもりで」
楽「宮本だって、知って、……」
るり「……」
るり「……何週間か前、ポーラさんとの一件、覚えているでしょう」
楽「……ああ」
るり「あの後、教室に残った私達は、羽先生からアドバイスされたの」
るり「”裏の世界の人間と付き合い続けることの、リスクについて”」
楽「な、っ」
182: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:23:17.01 ID:z6poyGtz0
るり「……私も少なからず、衝撃を受けたし、反省したわ」
るり「所詮あなたも、桐崎さんも、つぐみさんだって」
るり「裏の世界に生きる人達の影響から、逃れることなんてできない」
るり「本人達が望んでも、望まなくても、回りの人間に不幸を振りまく存在なんだって」
るり「……少し考えれば、分かることだったのに」
楽「……」
るり「……私は、ショックだった。多分舞子君もね」
るり「……でも」
るり「小咲は違ったの」
183: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:24:13.47 ID:z6poyGtz0
~ 21日前(羽の”アドバイス”翌日 千棘復帰の2週間前)~
ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル
ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル
ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル
ピッ
るり「……小咲」
小野寺『……るりちゃん』
小野寺『ごめんね、ちょっと、体調悪いみたいで』
るり「……」
るり「……じゃあ、制服着て、学校に行くフリだけして、その辺ほっつき歩いてる、なんてこと、ないわよね?」
るり「例えば制服じゃ行き場がないから、公園のベンチか何かに座り込んで、時間を潰してる、なんてことは」
小野寺『……』
るり「ねえ、小咲」
るり「……羽先生の話、私だってショックを受けたわ」
るり「小咲に対して、すごく無責任な応援をしてたんだって気づかされて、落ち込んだ。後悔もした」
るり「だけど、突然逃げ出すような真似をしたら、一条君だって、桐崎さんだって、つぐみさんだってきっと悲しむわ」
るり「無理に仲良くしろとは言わないけれど、せめて学校に来るぐらいは」
小野寺『……』
184: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:25:38.72 ID:z6poyGtz0
小野寺『違うの』
るり「……?」
小野寺『……私は』
小野寺『今でも、一条君のことが大好き』
小野寺『ヤクザの息子だって何だって、優しくて頼もしい、かっこいい一条君が、大好きなの』
小野寺『千棘ちゃんだって、つぐみちゃんだって、私の大切な友達なの。それは本当』
るり「だったらっ」
小野寺『……だけどね』
小野寺『私、一言も、言い返せなかったんだ』
るり「……小咲」
小野寺『一条君の為に、本気で怒ってた舞子君みたいに』
小野寺『たぶん私の為に怒ってくれた、るりちゃんみたいに』
小野寺『できなかったの』
小野寺『私の大好きな人を、大好きでいること、真っ向から否定されていたのに』
小野寺『それは違うって、私はそれでも、皆の事が大好きだって、言えなかったの』
るり「……」
小野寺『……情けないんだ、ほんと』
小野寺『私が皆を好きな気持ちは、間違っているのかもしれない、って、思っちゃったから』
小野寺『迷っちゃったの。自分がどうしたらいいか』
小野寺『迷って、怖くて、震えて、固まって』
小野寺『結局最後まで、何にも、言えなかったんだ……』
185: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:26:45.16 ID:z6poyGtz0
るり「……一条君達は、あの時あの場に居なかったじゃない」
るり「後から話したって、笑って流してくれるわよ」
小野寺『うん。そうだと思う』
小野寺『一条君達は、私の弱くて、汚い所を見ても、きっと庇ってくれると思う。優しくしてくれると、思う』
小野寺『だけど、反対の立場に立った私が、とっさに何もできなかった事実は、ずっと私の胸の中にある』
小野寺『……ううん、今だって、何にもしてやしない』
小野寺『”例えどんなコトになったって、私は一条君達のことが大好き”』
小野寺『そんな、簡単で当たり前のことを、口にすればいいだけなのに』
小野寺『それができない私は』
小野寺『皆と一緒に居る資格、ないよ』
るり「……」
小野寺『……ううん、それも嘘だね』
小野寺『あのねるりちゃん、耐えられないのは、私の方なんだ』
小野寺『こんな気持ちで、皆の傍にいることが』
小野寺『苦しくて、悔しくて、恥ずかしくて、我慢できないの』
小野寺『皆と居るのが辛いの。皆に嫌な私を見られて、嫌われるのが怖いの』
小野寺『だから、ごめんね。私のことは、放っておいて』
小野寺『るりちゃんの強さがつらいの』
小野寺『優しさが、まぶしすぎて、つらいの……』
るり「……」
るり「……小咲、あのね」
小野寺『……ごめんね。ちょっと熱っぽくなってきたから、電話、切る』
るり「小咲ッ!!」
小野寺『またね、るりちゃん』ブツッ ツーッ ツーッ
186: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:27:57.66 ID:z6poyGtz0
~ 20日前 ~
ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル ルルルルル
るり「小咲っ」
小野寺『……るりちゃん、家に来たでしょ』
小野寺『ありがとね、余計なこと、言わないでくれて』
るり「……小咲、会って、ちゃんと話しましょう」
るり「苦しいかもしれないけど、辛いかもしれないけど」
るり「一人で悩んでも、きっと良い答えは浮かばないわ」
小野寺『……ありがと、るりちゃん』
小野寺『でもね、もう答えは出てるの』
るり「……」
小野寺『答えはね、”私自身が、変わること”』
小野寺『誰かの助けなんて借りずに、自立して、自分の言葉で話せるようにならなくちゃだめなの』
小野寺『だから、るりちゃんには頼れないよ』
小野寺『心配してくれて、ありがとう』
るり「小咲、あのね、話を聞いて」
小野寺『……お話してると、縋りたくなっちゃうから』
小野寺『ごめんね』ブツッ ツーッ ツーッ
187: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:29:26.96 ID:z6poyGtz0
~ 19日前 ~
羽「はーい、じゃあ小野寺さんと……橘さんも今日はお休み。桐崎さんとつぐみちゃんは、この前言ったとおり家の事情でお休みね」
羽「じゃあ、一限に間に合うように、皆ちゃんと準備するのよー。……あ、礼しなくていいよ。じゃあね~」
るり(……)
るり(……舞子君は舞子君で、きっと悩んでる)
るり(桐崎さんやつぐみさんに電話したら、全部話さなきゃいけなくなるし)
るり(橘さんは……調子でも悪いのかしら、最近休みがちだし、あの時も何だか険悪な雰囲気で……)
るり(……)
るり(……)グッ
るり「……ねえ」
るり「ねえ、一条君」
楽「……」
楽「……んぁ?」
るり「……」
るり「……ちょっと、相談したいことが、あるんだけど」
楽「……」ボー
楽「……ごめん、宮本。本当に悪いんだけど、今度にしてもらえるかな」
楽「俺も、ちょっと悩み事があってさ。うまく話、聞けそうにない」
るり「そんな事言ってる場合じゃないの。本当に大事な相談でっ」
楽「じゃあ尚更、俺以外の奴に頼んでくれよ」
楽「……今は誰かの為に、何かしてやれる自信無ぇんだ」
楽「本当に、ごめん」タタタッ
るり「あっ……」
るり「……」
188: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:30:49.53 ID:z6poyGtz0
~ 18日前 ~
ルル
るり「小咲っ」
小野寺『るりちゃん、こんばんは』
るり「……電話、かけて来てくれるなんて、驚くじゃない」
小野寺『ふふふ』
小野寺『……』
るり「……」
小野寺『……るりちゃんの言うとおり、だったんだ』
小野寺『制服なんて着てたら、あんまり行く場所もなくって』
るり「もぅ」
小野寺『……ごめんね』
小野寺『それで……親切なおばあちゃんが、声をかけてくれてね』
小野寺『”私達と一緒なら、怪しまれることもないよ”って、公民館に連れてきてくれて』
小野寺『そのまま、一緒に小さい子の遊び相手をしてあげたの』
るり「うん、うん」
189: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:32:09.82 ID:z6poyGtz0
小野寺『おばあちゃんと、お友達の人がね、私の話、親身になって聞いてくれて、心配してくれてね』
小野寺『るりちゃんに心配かけちゃだめだよって、ちゃんとお話した方がいいよって、言ってくれてね』
るり「うん……うん」
小野寺『本当にごめんね、るりちゃん。私、勝手に落ち込んで、勝手に逃げ出してっ』グスッ
るり「……いいの、もういいの、小咲」グスグス
るり「アンタが無事なら、私は、それで……」
小野寺『うん、学校にも、来週からは行くようにするから』
るり「分かった。待っててあげる」
小野寺『……それと、もう少しの間、おばあちゃん達のお手伝い、続けてみようと思うんだ』
小野寺『何だか、充実してるの。達成感って言うか、何ていうか』
小野寺『自分のやるべきこと、みたいなのが、もう少しで、見つけられるような気がして……』
るり「うん、いいんじゃない」
るり「自信、持っていいと思うわよ。自分で、そういうの、見つけられたんだから」
小野寺『……うん♪』
190: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:32:39.93 ID:z6poyGtz0
~ 15日前 ~
小野寺「おっはよ、るりちゃん♪」
るり「お……おはよ、小咲。元気そうね」
小野寺「うん。るりちゃんと、皆のおかげだよ。あ、一条君、おっはよー!」
楽「お……おは、よう、小野寺」
小野寺「~~♪♪」
楽「……」ポリポリ
るり「……小咲、久しぶりの登校よ。もう少し何か、かける言葉はないの?」
楽「え、小野寺、最近休んでたんだっけ」
楽「……気が付かなかった。ごめん」ペコリ
るり「……あっ、そ」
楽「……そう言えば、宮本。この前はごめんな。なんか、相談あったって」
るり「いいわよ、もう」ハァ
191: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:33:41.18 ID:z6poyGtz0
~ 12日前 ~
小野寺「それでねそれでね、昨日はおばあちゃん達のお友達と、お食事会をしてね……」
るり「……そうなの。良かったわね」
小野寺「うん、とっても楽しかったんだよ。ぱんちっ、ぱんちっ♪」
るり「……ねえ、小咲」
小野寺「?」
るり「元気になったのは、私も嬉しいんだけど」
るり「……一条君達のことは、もう、大丈夫なの?」
小野寺「……うーん」ポリポリ
小野寺「勿論、考えてはいるし、今でも悩んでるよ?」
小野寺「だけど」
小野寺「自分に解決するだけの力がない問題を、すぐ何とかしようと思うのは、ちょっと焦り過ぎな気もするし」
小野寺「今ぐらいの距離感を保ったまま、柔らかく着地できるところを探したいかな、って、今は思ってる」
るり「……」
るり「……それ、本当に小咲の考えた言葉?」
小野寺「……えへへ、るりちゃんにはバレバレかぁ」テレテレ
小野寺「おばあちゃん達と、お友達のアドバイスなの」
小野寺「不思議なんだよ、おばあちゃん達や、お友達と話していると、とっても心が軽くなってね……」
るり「……」
192: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:34:42.58 ID:z6poyGtz0
~ 11日前 ~
小野寺「今週もおしまーい! それじゃるりちゃん。私、おばあちゃん達の所に行くからっ」
るり「……小咲、明日時間ある?」
小野寺「……あっ……ごめん、明日はちょっと、約束があって」
るり「一条君と出かけるワケでもないでしょう? 桐崎さん達だってまだ戻ってきてないし、橘さんだって今日は休みだったのに」
小野寺「ひ、ひどいなぁるりちゃん。私にだって他にも友達は……」
るり「友達同士で遊びに行くなら、丸一日潰れるワケでもないでしょう? 少し付き合ってよ」
小野寺「あ……うーん、えっとね、ちょっと一日用事が……」
るり「……ねえ小咲、私に何か隠してない?」
小野寺「……」
るり「おばあちゃん達にも言われたんでしょう? 友達に心配かけるなって」
るり「……私は、心配」
るり「最近の小咲は、何だか様子がおかしい」
るり「不自然なくらい明るくて、社交的で、悩みが無いみたいに振舞って」
るり「まるで」
るり「……」
るり「まるで」
るり「作り物みたいなんだもの」
193: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:35:31.46 ID:z6poyGtz0
小野寺「……」
小野寺「……わかった」
小野寺「るりちゃん、明日は私と一緒に遊ぼう」
るり「……?」
小野寺「大丈夫」
小野寺「るりちゃんも、来ればわかるよ」ニコッ
194: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:36:30.95 ID:z6poyGtz0
~ 10日前 ~
芸術家風の男「それでは」
芸術家風の男「新しい仲間にも皆の気持ちが届くように、力いっぱいご唱和ください」
芸術家風の男「てェ~ん」
『パァ~ンチ!!!』
小野寺「ぱんちっ、ぱんちっ」フニャン フニャン
るり「……」
るり(ダメな奴だこれ……)
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
るり「……それで、おばあちゃん達の友達が、この会の人達だったってワケね」
小野寺「……うん」
小野寺「あっ、でもね、怪しい宗教団体とかじゃあ全然なくってっ」
小野寺「アーティストとか、スポーツマンの人達が、力を合わせて助け合うための集まりみたいなものでっ」
小野寺「時々お互いのイベントとか集まりに顔を出したりして交流を深めて、今日みたいに団結を深めたりしてっ」
るり「……って説明しなさいって、おばあちゃん達に言われたの?」
小野寺「……」
るり「……小咲」
小野寺「……う、う、ううっ」カタカタカタ
るり「小咲?」
195: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:37:20.60 ID:z6poyGtz0
小野寺「ごめんね、るりちゃん、私変だよね」
小野寺「こんな変な人たちと、こんな変な集まりやって、かっこつけてパンチして」
小野寺「だ、だけどね、おばあちゃん達も、”テンパンチ・プロジェクト”の人たちも」
小野寺「みんな私の話、親身になって聞いてくれて、とっても優しくてっ」
小野寺「わ、私、わたし、私いっ!!!!」
るり「……何勘違いしているの、小咲」
小野寺「……」
小野寺「え?」
るり「まさかこんなコトになってるとはね、って、正直、驚いただけよ」
るり「”テンパンチ・プロジェクト”。素敵な集まりじゃない」
るり「学校の友達以外の大人と接する機会なんて、そうそうあるものじゃあないし」
るり「常に自分と向き合っている芸術家の方々なんて、自分を確立したい小咲の相手にはぴったりじゃない!」
小野寺「……ほ、本気で、言ってるの……?」
るり「……もちろん」
るり「学校でのアンタ、いい顔してたわよ」
小野寺「……るりちゃんっ!!」ギュッ
るり「……」ポン ポン
196: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:38:16.28 ID:z6poyGtz0
るり「……小咲さえ良ければ、次の集まりからは私も誘ってくれないかしら」
るり「私も翻訳家志望だもの、そういう業界の話、興味があるわ」
るり「もちろん、”テンパンチ・プロジェクト”にも、ね」
小野寺「……うんっ」
小野寺「大歓迎だよ、るりちゃんっ♪」
るり「……ありがとう、小咲」
197: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:38:49.96 ID:z6poyGtz0
~ 現在 ~
るり「小咲は、貴方達じゃなくて、自分の弱さを恨んだ」
るり「羽先生に食って掛かって、貴方達を友達だと言えなかった自分を恥じて責めた」
楽「……」
るり「……拠り所が必要だったのよ」
るり「だって小咲は、そんなに強くないから」
るり「せめてアンタが、優しい言葉の一言でもかけてやれば、小咲はこんな風にはならなかった」
るり「アンタのせいよ」
るり「アンタがボンクラだから」
るり「アンタがっ、救えなかったからっ、小咲はインチキ臭い宗教団体にひっかかってえっ」
るり「わだしが、その、ざいごの、背中を押すハメになったのよお゙っ……」
楽「……」
るり「……責めなさいよ」
るり「悪いのは私」
るり「見ていただけの私」
198: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:40:01.53 ID:z6poyGtz0
るり「だげどっ!!!」
るり「他にどうしろって言うのよっ!!!!」
るり「親友が心の底から悩んでいるのに、何の力にもなれずに潰れていくのを見ていくしかなくってっ!!」
るり「ようやく見つかった心の支えを奪えって言うの!? 私に!?」
るり「……できるわけ、ないじゃない、そんなこと」
るり「……でぎる、わけっ……」
楽「……」
楽「……宮本、俺は」
るり「……帰ってよ」
るり「お願いだから、帰って」
るり「これ以上、親友の愛したあなたを、私に傷つけさせないで」
るり「……お願い、だから……」
楽「……」
楽「――ッ!!!」ダッ
つぐみ「……」
るり「うっ、ひぐッ、えぐっ……」ボロボロ
199: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:40:43.52 ID:z6poyGtz0
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
「テ~ン」 『パンチ!!』
小野寺「ぱんちっ!! ぱんちっ!! ぱんちっ!! ぱんちっ!! 」
「ぱんちっ!! ぱんちっ!! ぱんちっ!! ぱんちっ!! 」
『パンチッ!!パンチッ!!パンチッ!!』
『パンチッ!!パンチッ!!』
『パンチッ!!パンチッ!!』
『パンチッ!!!』
200: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:41:36.18 ID:z6poyGtz0
~ 集英組 奥の間 ~
バァンッ!!!
チンピラ1「何だ、どうした?!」
チンピラ2「出入りですかい、出入りですかい」
チンピラ3「……っと、坊っちゃんじゃないですか、驚かさんでくださいよ」ワッハッハ
楽「……」フーッ フーッ フーッ
親父「……楽よぉ」
親父「威勢がいいのは結構な事だが、せめて靴くれぇ……」
楽「……」
楽「……アンタが」
楽「……アンタが、あんたがっ……」
楽「……」
親父「……」
親父「……来いや」
楽「……ぉぉぉぉぉぉおおおおおああああああああああ!!!!!」ダダダダダッ
201: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:42:23.19 ID:z6poyGtz0
親父「……手ぇ出すなよ、お前等」スクッ
楽「あぁぁぁぁぁああありゃああああああ!!!!!!」ブォン
親父「づっ」バキィ
楽「……」フーッ フーッ フーッ フーッ フーッ
親父「……ちっ」ペッ
楽「……何で、倒れね、んだよっ……」
親父「……いつか、こんな日が来るかも知れんとは、思っていたからな」
親父「だから受けてやった、それだけの話だ」
楽「ワケわかんねえコ」ガスッ
楽「ごえふっ……」
親父「……義理で食うのは一発限り」
親父「極道ナメんな、シャバ僧がっ……!!!」ブオン ガスッ
202: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:43:01.41 ID:z6poyGtz0
楽「ごっ!!」ドサッ
チンピラ2「ぼ、坊っちゃ」
チンピラ1「手ぇ出すんじゃねえ!!!!!」ガシィ
チンピラ2「ぐっ」
チンピラ1「……手ぇ、出すんじゃねえよ……」
バギッ ドゴッ ドスッ
楽「ぐっ、ぶっ、ぐうう」
203: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:43:32.27 ID:z6poyGtz0
楽「……………クソ、ッ…………」
204: ◆LeBgafvn/6 2015/07/16(木) 23:44:26.15 ID:z6poyGtz0
~つづく~
206: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 20:55:42.27 ID:9Zy4974d0
~ 同日 PM6:21 凡矢理高校付近路上 ~
つぐみ「ええ、集英組内部までは確認できませんでしたが、ともかく家までは帰りついたようです」
クロード『構わん。小野寺様の方は』
つぐみ「……駅からの足取りは不明です。これより、」
クロード『……もういい。ポーラも既に戻してある。お嬢には私から顛末を報告しておく』
つぐみ「申し訳ありません」
クロード『……信心薄い日本人相手とは言え、宗教が絡む話だ。不用意に首を突っ込めば火傷では済まんぞ』
つぐみ「心得ております」
クロード『どうだかな。どの道、お前は今回の件から外れてもらう』
つぐみ「えっ」
クロード『汚れ仕事になるかも知れん、と言う事だ。お嬢を可能な限り遠ざける予定だが、お前を通じて状況が漏れんとも限らん』
つぐみ「……私は」
クロード『お嬢に心の底から縋られて、心が揺らがんと断言できるか』
つぐみ「っ……」
つぐみ「……この件には、一切関わりを持たないと誓います」
クロード『フン』
クロード『じきに雨が降る。体調を崩して任務に支障を来せば、お嬢の懐刀だろうと特別扱いはせんぞ』
つぐみ「はっ」
クロード『……』ブツッ
207: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 20:56:17.71 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……ふぅ」
シト シト シト
つぐみ「……ひと荒れ、来るかも知れんな」
ザー ザザー ザー
ビシャアアアアアア サァアアアア
208: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 20:56:51.98 ID:9Zy4974d0
つぐみ(……どう受け止めれば、いいのだろうか)
つぐみ(……)
つぐみ(……結局のところ)
つぐみ(お嬢も、一条楽も、私と同類だったと)
つぐみ(……そう、周りから見られていて)
つぐみ(そう生きるしかないのだと言う事で)
つぐみ(……何だろう)
つぐみ(一条楽達との間に、越えられない溝を感じて、あれだけみっともない嘆き方をした後だと言うのに)
つぐみ(いざ、彼らが自分と同じ側にいる人と分かっても)
つぐみ(悲しみしか感じない)
つぐみ(……一条楽の、今にも泣きそうな顔を見てしまったから?)
つぐみ(……想像するまでもなく、現実に直面したお嬢が、悲しむと思うから?)
つぐみ(……そんな二人の為に、自分が何かする機会すらも、取り上げられてしまったから?)
209: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 20:57:52.90 ID:9Zy4974d0
つぐみ(……)
つぐみ(……やれやれ、調子のいい事だ)
つぐみ(殺し屋の生活の方が、居心地がいい、などと、自分をごまかしていたくせに)
つぐみ(結局、未練があるのだ)
つぐみ(お嬢と、一条楽と、皆が笑いあっていた、あの日常が)
つぐみ(……こんなにも、愛おしい――)
ザァァァァァァァァ
210: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 20:59:00.31 ID:9Zy4974d0
「――探しましたわ、つぐみさん」
211: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:00:12.32 ID:9Zy4974d0
つぐみ「っ!?」
「こんな時間、こんな雨の日に、一人で出歩いているなんて、随分色気の無い話じゃありませんの」
「コイをするなら、それなりに格好付けなさい、と、アドバイス差し上げたと言うのに、もう」プンスカ
つぐみ「……そんな事、お前に言われた覚えは無いが」
「確かに言いましたとも」
「方言で」テヘッ
212: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:01:30.82 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……まあ、いい」
つぐみ「随分と元気そうじゃないか。最近休みがちだったのは、サボりか何かか?」
つぐみ「――橘万里花」
ザアアアアアアアアアア
213: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:02:27.69 ID:9Zy4974d0
万里花「失礼な。そんなはしたない真似、私がするとお思いでして?」
万里花「私の病弱設定、お忘れになったワケではございませんでしょうに」プンスコ
つぐみ「……」
万里花「……」
万里花「私が病弱であることを、お忘れに……」
つぐみ「……茶番は結構」
万里花「あら」
つぐみ「用事があるなら、手短に済ませろ」
つぐみ「この豪雨の中で遊んでいては、お前でなくとも、風邪ぐらいひいておかしくはない」
万里花「……そう、ですわね」
万里花「では、用件だけお伝えしておきます」
214: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:03:19.22 ID:9Zy4974d0
万里花「私、今夜限りで、この街を去ることにいたしましたの」
215: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:04:02.85 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……は?」
万里花「ですから、この街から出て行くことにしたのです」
つぐみ「……お嬢から、話は聞いているが」
つぐみ「一条楽がお前を相手にしていない事など、お前自身も承知の話だったろう。何を今更……」
万里花「……どう受け取って頂いても結構ですわ」
万里花「私がここから居なくなると言う事実は、変わりませんので」
つぐみ「……」
万里花「……アメリカに、凄腕のお医者様がいらっしゃるんです」
万里花「まだお若い方なんですけど、私の病気を熱心に研究していらして」
万里花「私の病状を噂で聞いたのか、是非にと治療を申し出て下さいましたの」
つぐみ「……そう、か」
万里花「ええ、そうなんです」
216: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:05:17.11 ID:9Zy4974d0
つぐみ「長く、かかるのか?」
万里花「高校生のうちには、帰って来られないと思います」
つぐみ「……それならば尚更、こんな所で油を売っている暇は無いだろう」
つぐみ「今夜中に街を出るつもりならば、他に会うべき人間がいくらでも居るはずだ。私などに時間を割く必要は……」
万里花「……ありますよ、つぐみさん」
万里花「言ったでしょう」
万里花「貴女は、私にそっくりだって」
つぐみ「……それは、確かに言われたな」
つぐみ「ショックだった」フフ
万里花「あら」フフ
万里花「……」
万里花「貴女も、私も」
万里花「強がっているけれど、本当は、誰よりも弱いんです」
万里花「だから、愛する何かに縋りつかなければ、生きていけない……」スッ
つぐみ「……馬鹿な、私は……」グッ
つぐみ「……」
つぐみ「……私は……」スッ
万里花「……」ニコッ
217: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:06:18.97 ID:9Zy4974d0
万里花「だけど貴女は、私よりも、少しだけ強い」
万里花「今の自分を支えてくれる”何か”から離れて」
万里花「自分で見つけた、本当に手に入れたい何かに、手を伸ばせる強さがある人だと思います」
つぐみ「……」
万里花「ですから」
万里花「似たもの同士の貴女に、私から、最後のプレゼントを差し上げに来たのです」ススッ
つぐみ「……お前、これは」
万里花「ええ」
チャリン
万里花「楽様との、約束の鍵です」
218: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:07:10.59 ID:9Zy4974d0
つぐみ「馬鹿なッ!?」ガシッ
万里花「痛つっ……」
つぐみ「何故これをお前が手放す!!!」
つぐみ「お前の慕情は、そんなに軽いモノではなかったはずだろうが!!!」
つぐみ「こ、この鍵がっ、お前と、お前、お前達にとって」
つぐみ「どれほど大事なものか」
つぐみ「そこまで、私が、想像できないとでも、思っているのか、橘万里花ッ!!!!!」
万里花「……」
万里花「……嫌ですわ、そんなムキになって」ハァ
万里花「無邪気で思慮の足りない子供同士が、お遊びで交換したオモチャじゃありませんか」
つぐみ「貴様ァ!!!!」
万里花「……落ち着いてください、つぐみさん」
万里花「これは、私にはもう、必要の無いモノなんです」
つぐみ「だから……」
つぐみ「……」
万里花「……」
つぐみ「……橘、万里花、まさか」
219: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:08:31.04 ID:9Zy4974d0
万里花「私が持っていても、仕方のないモノなんですよ、つぐみさん」
万里花「アメリカで凄腕のドクターとラブロマンスを狙っている私が」
万里花「前の男との思い出の品を持っていても、邪魔になるだけじゃありませんの」ニコニコ
つぐみ「……」
万里花「そりゃあ、楽様は素敵な男性ですけれど」
万里花「私の10年に渡る花嫁修業と、私のこれからの人生を天秤にかけて」
万里花「釣り合うほどの殿方だとは、正直思えない所もございますし」
万里花「たまたま似たもの同士で、鍵をお持ちで無いとお嘆きのつぐみさんに、捨てるよりマシと差し上げるだけのお話です」
万里花「腹を立てるような話では、ございませんでしょう?」
万里花「まあ、中古品を押し付けられる気分と言うのは、あまり良いものではないのかも知れませんけれど……」
つぐみ「……」
つぐみ「……」
万里花「……」
つぐみ「……本当に」
万里花「はい」
つぐみ「……いいんだな?」
万里花「……」
万里花「ええ」スッ
220: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:09:18.64 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……確かに、ちゃちな鍵だな」
万里花「はい」
万里花「……これからの私には、きっと、似合いません」
つぐみ「……」
つぐみ「そう、だな」
万里花「……」ニコ
万里花「それでは、不用品の処分も済んだ所で、私は失礼させていただきます」
つぐみ「……ああ」
万里花「どうぞ、お達者で」クルッ
つぐみ「……」
万里花「……」ザッ ザッ
つぐみ「……」
万里花「……」ザッ ザッ
つぐみ「橘万里花」
万里花「……」ピタ
つぐみ「私も一つ、お前と私が似ているところを見つけたよ」
万里花「……」
万里花「……それは?」
つぐみ「嘘が、ヘタクソだ」
221: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:10:26.99 ID:9Zy4974d0
万里花「……」
つぐみ「……」
万里花「……」
万里花「……楽様が」
万里花「凡矢理第三公園、ドーム型の遊具の中で、意識朦朧としたまま倒れていらっしゃいます」
つぐみ「……分かった」クルッ
万里花「……」
万里花「つぐみ、さん」
つぐみ「……?」
万里花「……つぐみさん」
万里花「願わくば、本物のコイを、手に入れられますよう」
つぐみ「……ありがとう」
つぐみ「さよなら、橘万里花」タタタタッ
万里花「……ごきげんよう」
万里花「……」
万里花「……」
万里花「けほっ」
222: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:11:13.86 ID:9Zy4974d0
~ 同日 PM11:28 鶫誠士郎 セーフハウス ~
グルグル ジャキッ
楽「っぐ……うう」
つぐみ「……」ペタペタ
つぐみ(一見出血もしているし、殴られすぎた上に雨ざらしになって、意識も混濁しているようだが)
つぐみ(脳や重要器官にはダメージが入っていない。骨も間接も無傷同然だ)
つぐみ(これだけ処置してやれば、後は放っておいても大丈夫だろう)スクッ
つぐみ(……親父殿の仕業だろうな。見せしめの親子喧嘩もお手の物、と言う訳か)
ガラガラ ピシャッ
ドサッ
つぐみ「……はぁ」ゴロン
つぐみ(……どっと疲れた)
カチャ チャリッ
つぐみ(……)
223: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:12:53.14 ID:9Zy4974d0
―― 万里花「貴女も、私も」
―― 万里花「強がっているけれど、本当は、誰よりも弱いんです」
―― 万里花「だから、愛する何かに縋りつかなければ、生きていけない……」
つぐみ(私が、弱い? 何かに縋らなければ、生きていけない?)
つぐみ(……見当違いも甚だしい)
つぐみ(組織に、クロード様にお仕えするのは、私の選択だ)
つぐみ(お嬢を護りたいのは、私の意志だ)
つぐみ(……一条楽への想いを断ち切ることは、私の義務だ)
つぐみ(断じて、縋りついてなどいない)
つぐみ(断じて、私の弱さの言い訳になど)
つぐみ(拠り所になど、していない――)
―― 万里花「だけど貴女は、私よりも、少しだけ強い」
―― 万里花「今の自分を支えてくれる何かから離れて」
―― 万里花「自分で見つけた、本当に手に入れたい何かに、手を伸ばせる強さのある人だと思います」
つぐみ(――)
224: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:15:03.94 ID:9Zy4974d0
つぐみ(……)
つぐみ(……やはり間違いだよ、橘万里花)
つぐみ(私はきっと、自分自身やお前が考えている以上に)
つぐみ(情けなくて)
つぐみ(弱い)
つぐみ(……今の生活を)
つぐみ(組織に繋がれ、クロード様に仕え、お嬢の傍で生きられる今をかなぐり捨てて)
つぐみ(……一条楽への、お嬢の思いから目を逸らして)
つぐみ(自分のコイに生きることなど、できない)
つぐみ(……)
つぐみ(……そして)
つぐみ(そんな中途半端な、小さなニセの恋心でも)
つぐみ(私は、捨て切れずにいる……)
つぐみ(……)
225: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:16:49.87 ID:9Zy4974d0
つぐみ(……)
スクッ
つぐみ(もし)
テク テク
つぐみ(この襖を開いて)
テク
つぐみ(一条楽に取り縋れば、奴は私の事を、ひと時でも愛してくれるだろうか)
ピタ
つぐみ(……馬鹿馬鹿しい。奴はお嬢のコイビト)
つぐみ(汚れた世界を生きる、私のような汚い野良犬相手に、心を揺らがすわけがない)
つぐみ(……)
つぐみ(……いや、それも嘘か)
つぐみ(難しいことじゃない)
つぐみ(私のように、恋愛のいろはなど知らぬ者でも関係ない)
つぐみ(単純明快で、女の機能を持っている者になら、誰にでも出来る方法がある)
つぐみ(例えば)
つぐみ(……)
226: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:17:55.26 ID:9Zy4974d0
つぐみ(……)グッ
つぐみ(抱かれてしまえば、奴の心の片隅くらいになら、残れるかもしれない)
つぐみ(心の寄る辺を失い、打ちのめされた奴の心の隙間に、染み込む事くらいは、できるはずだ)
サワッ
つぐみ(サラシで縛り付けるばかりで、生活の邪魔にしかならなかったこの胸も)
つぐみ(……皆は綺麗だと、うらやましいと、言ってくれたが)
スルスル スルッ
つぐみ(……そう、一条楽とて、きっと喜ぶ)
つぐみ(きっと……)
つぐみ(……)
つぐみ(……泣くな)
つぐみ(涙を見せるな、つぐみ)
つぐみ(重い女だと思われて、相手にされなかったらどうする)
つぐみ(軽薄に笑え、いやらしくしなを作って、傍らで奴を抱いてやれ)
つぐみ(そして、なんという事の程でもないように、奴の下着に指先を挿し入れて、耳元で囁いてやればいい)
つぐみ(”憂さ晴らしに、私の体を貸してやる”)
つぐみ(”お前はお嬢の大事なコイビトだからな”)
つぐみ(”下手を打たれて、お嬢の心に、傷を残されては敵わん”)
つぐみ(”何、このような些細な話、犬に噛まれるようなものだ”)
つぐみ(”安心しろ、誰に言うでもない。私も明日になればさっぱり……)
227: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:18:53.06 ID:9Zy4974d0
つぐみ(……)
つぐみ(さっぱり……)
つぐみ(……)
つぐみ(……忘れられる、わけ、)
楽『……つぐみ?』
つぐみ「」ビクッ
つぐみ「……起きたのか」
楽『朦朧としてたけど、飛び飛びに意識はあった』
楽『……世話かけちまって、ごめんな、つぐみ』
つぐみ「構わん」
つぐみ「貴様は……お嬢の、大事な交際相手だからな。道端に転がっていれば、拾ってくらいはやるさ」
楽『……』
つぐみ「夕飯もまだだろう? 余り物で用意してやるから、少し寝て」
楽『つぐみ』
つぐみ「……」
228: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:20:30.61 ID:9Zy4974d0
楽『知ってるんだろ、さっきのコト』
つぐみ「何のことだか」
楽『そうでもなきゃ、いくら千棘のコイビト相手だろうが』
楽『いや、コイビトだからこそ、こんな時間から自分の家に上げて手当てなんてしねーよ』
楽『いいトコ、組に連絡して引き取らせるか、119番かけて病院に任せるか、そんぐらいだ』
楽『……ありがとな、気ぃ使ってくれて』
つぐみ「……何があったかは、本当に、想像でしか分からんが」
つぐみ「本気で喧嘩できるだけ、良い親父殿ではないか。意地など張らず、とっとと頭を下げてしまえば」
楽『それはできない』
つぐみ「……どうして」
楽『……』
楽『……俺はさ』
楽『今まで自分が、ちゃんとできてると思ってたんだ』
楽『ヤクザの息子だけどさ』
楽『親父の男として、人として格好いい所は認めて、だけど同じヤクザにはならないって決めて』
楽『堅気の世界で生きていけるように、一生懸命勉強して、友達は信頼して、女の子には優しくしてってさ』
229: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:21:31.37 ID:9Zy4974d0
楽『つまづいたり、失敗したり、悩んだりしたことも、そりゃあ一杯あったけど』
楽『それでも、お天道様に恥じるような生き方はしてないって』
楽『俺は、俺が望むような、正しい生き方ができてるって、思い込んでた』
つぐみ「……」
楽『でも実際は、そんな事無くてさ』
楽『俺にはコイビトがいるってのに、他の女の子とも中途半端に仲良くしてさ』
楽『……橘のコトだって、真剣に考えずに逃げてばっかで、最後は手ひどい突き放し方してさ』
楽『……』
楽『……それでも』
楽『最後の最後』
楽『自分が本当に守りたいものだけは、絶対に守ろうって、やっと決めたのに』
楽『……笑っちまうよ』
楽『俺には最初っから、スタートラインに立つ資格すら無かったんだってさ』
楽『結局、親父やヤクザモンの世界に囚われたまんまで、むしろそいつらに守られてさえ居て』
楽『そのことを自覚すらせず、一人前ぶっていきがってたんだ、俺は』
230: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:22:24.57 ID:9Zy4974d0
楽『そんな俺の未来は、結局、ヤクザモンはヤクザモンらしく、沈んだまんま、くたばるしか無いってモノで』
楽『……夢見る資格すら、なかったん、だってっ……』
つぐみ「……話が見えん」
つぐみ「貴様が、宮本様に極道の人間として忌み嫌われた事はわかる」
つぐみ「小野寺様はお前を好いていたようだが、お前が極道の人間と思い知らされ、悩んだ末にカルト宗教に堕ちた。それも、知っている」
つぐみ「……だが、貴様はお嬢のコイビトだろう」
つぐみ「貴様が、貴様の愛した平凡な夢と、平和な暮らしから突き放された事は、気の毒に思うが」
つぐみ「貴様が最も大切にするべき」
つぐみ「お嬢は、失われていないではないか」
楽『……』
231: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:23:01.79 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……幸い、クロード様と行動していたお嬢は、今回の件をまだろくに知らない」
(……何だ、この手応えの無さは)
つぐみ「傷つかないよう、悟られないよう、うまく伝えるさ」
(……何故私は、こんなに焦っている)
つぐみ「そして二人、よその学校に転校するなりなんなりすればっ」
(まるで、自分の語る言葉が)
232: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:23:56.04 ID:9Zy4974d0
つぐみ「形は違えど、今までどおりの平穏な生活が、送れるはずではないかっ!!!」
(まるっきり質量を持たない、薄っぺらな嘘とでも言うかのように!!)
233: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:24:25.98 ID:9Zy4974d0
楽『……』
楽『……あのな、つぐみ』
楽『落ち着いて聞いてくれ』
つぐみ「……」
楽『俺と千棘は、コイビトなんかじゃない』
234: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:25:30.11 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……」
つぐみ「……そういうこと、か」
楽『ああ』
楽『ビーハイブと集英組は抗争を抑えるために、お互いの娘と息子を利用したんだ』
楽『俺達はそれを受け入れて、高校の三年間、ニセのコイビトを演じることになった』
楽『だから、本当の俺と千棘はコイビトじゃない。皆の目が無いところでは、時にいがみ合ってすらいる関係だ』
つぐみ「……」
楽『笑えるだろ?』
楽『そんな男が警視総監の娘と許婚で、中国マフィアの若き女ボスと同居してんだ』
楽『ああ、コイビトのお付の凛々しい女ヒットマンにも、ときめいたコトが何度かあったな』
楽『……まあ、本人が本当に好きなのは、クラスメイトの内気で可憐な女の子なんだけどさ』ハハ
つぐみ「……」
楽『……』
楽『殺せよ』
235: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:26:34.40 ID:9Zy4974d0
楽『ずっと、そうしたかったんだろ』
つぐみ「……」
楽『……俺は』
楽『死ぬのはすげぇ怖いし、絶対に嫌だけど』
楽『お前やビーハイブの殺し屋から、逃げ切れる力も技術もないし』
楽『親父に泣きついて、半端なヤクザモンとして生きていくことも、今更できない』
楽『……ビーハイブと組が本格的な抗争に入れば、どうせ今まで通りの生活なんて送れやしないし、きっとみんなにも迷惑がかかる』
楽『だったら最期くらい、潔く我慢するよ。それくらいカッコつけたっていいだろ?』
楽『……ただ、小野寺のことだけは、助けてやってくれ』
楽『千棘もきっと、それは望むはずだから』
楽『だから――』
ガラガラガラガラガラ
楽「」ビクッ
ピシャァァン!!
236: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:27:27.81 ID:9Zy4974d0
ズイ ズイ ズイ ズイ ズイ
つぐみ「……」ユラァ
楽「つぐ、」グイッ
つぐみ「……一条楽」
楽「……はい」
つぐみ「案ずるな」
つぐみ「私がお前を、護ってやる」
237: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:28:25.93 ID:9Zy4974d0
~ AM0:33 鶫誠士郎 セーフハウス ~
つぐみ「……ここからが重要だ」
つぐみ「”テンパンチ・プロジェクト”は四半期に一度、奴等の総本山がある神粍(シンミリ)町の団体施設で大々的なイベントを行う」
つぐみ「組織の中核人物らが集まり、その期に集った新たな構成員を、本腰入れて洗脳し直すという訳だ」
楽「……」
つぐみ「そこで……」
楽「……何で、だよ」
つぐみ「……?」
つぐみ「ああ、別に団体に参加しているわけでも、信仰しているわけでもないぞ」
つぐみ「暗殺者としての、基本的な教養だ」
つぐみ「活動する国において、自らの組織と主に仇成す可能性のある相手の存在や、大まかな沿革程度は、予め知っておかねば差し障る……」
楽「いや、そうじゃなくて!!」
つぐみ「……夜中だぞ、騒々しい」
楽「……悪ぃ」
楽「だけど、おかしいだろ」
つぐみ「だから何が」
楽「この流れ全部だよ!!」
つぐみ「……」
238: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:29:39.56 ID:9Zy4974d0
楽「俺のこと」
楽「……殺すんじゃ、なかったのかよ」
つぐみ「……そのことか」ハァ
つぐみ「何も難しい話じゃない。自分の望む仕事は、自分でやれと言うだけの話だ」
つぐみ「私や組織に殺されることを、言い訳に使ったりせずに、な」
楽「……っ」カァァ
楽「そんな事言ったって、俺は!」
つぐみ「愛しているのだろう、小野寺様の事を」
楽「……俺に、そんな資格……」
つぐみ「愛される資格がなければ、愛してはいけないのか?」
楽「……」
つぐみ「……胸を張れ、一条楽」
つぐみ「お前は弱いし、頭も悪いが、他人の為に自分を犠牲にできる優しい人間だ」
つぐみ「私はそんなお前の事が、大好きだよ」
239: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:30:54.52 ID:9Zy4974d0
楽「……よせよ」ハハ
楽「俺だってつぐみの事は、尊敬するところのたくさんある、素敵な友達だと」
つぐみ「……ヌルい逃げ方はさせんぞ、一条楽」
つぐみ「私は、お前の事を、異性として真剣に愛している」
つぐみ「冗談でも、慰めでも、なんでもない。本気でお前の事を愛しているんだ」
楽「……」
楽「……」
楽「……えっと、その」カァァァァァァ
つぐみ「……そ、そしてっ!」
楽「はいっ!」
つぐみ「お前はニセコイ関係だったと信じているようだが」
つぐみ「お嬢もお前のことを、本気で愛している」
楽「……い、いやいやおいちょっと待てよ」
楽「何でお前がそんなことっ」
つぐみ「付き合いの長さ」
楽「うっ」
240: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:32:24.35 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……それに、お嬢の本気の愛情と、ニセコイ関係の縛りを含めて考えれば、最近不審が目立ったお嬢の行動に全て説明がつく」
つぐみ「論理的に経験的に考えて間違いない。お前はお嬢にも愛されている」
楽「……だけどっ」
つぐみ「橘万里花は言うに及ばず。小野寺様も宮本様の言うとおり、お前を愛している、あるいはいたのだろう」
つぐみ「先生にしても、あの年齢の女性が、わざわざ男の家に同居を願う理由など、恋愛しかあるまい。そう考えた方が自然だ」
つぐみ「もしかしたら、春様やポーラもそうなのかも知れんな。いや人気者じゃないか、良かったな、一条楽」ハハハ
楽「……」ガクッ
楽「……何なんだよ、それ……」
つぐみ「……」フゥ
つぐみ「……お前は、自分自身の事を不誠実で、他人に恥ずべき所ばかりの薄汚い存在だと落ち込んでいたようだが」
つぐみ「そんなお前を、皆が愛した」
つぐみ「私の知っている一条楽は、例えコイビトとして結ばれない運命でも」
つぐみ「自分の大切な人を救いに行かずにはいられない、男気と勇気のある奴だ」
つぐみ「……だが、もし」
つぐみ「お前自身が、お前自身でいることに自信を無くしたと言うなら、私がお前を支えてやる」
つぐみ「お前自身の強さが、お前自身の優しい心が、無くならないように」
つぐみ「それはきっと、お嬢の望むことでもある」
つぐみ「だから、私はお前を殺したりしない。お前がお前であるために、私はあらゆる手段を尽くす」
つぐみ「それだけの話だよ」
241: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:33:13.30 ID:9Zy4974d0
楽「……お前は」
楽「それで、いいのかよ」
つぐみ「……意地悪な奴だな」
楽「……ごめん」
つぐみ「いい」フフ
~ AM1:00 鶫誠士郎 セーフハウス リビング ~
楽「いづっ」
つぐみ「……食事は朝まで止めておけ。ミルクティ位なら飲めるか?」スッ
楽「せっかく用意してくれたのに、悪ぃ……ん、こっちは大丈夫そうだ。美味いし」
つぐみ「世辞はいい」ニコ
楽「」ドキッ
つぐみ「……何か、おかしかったか」カァァァ
楽「な、何でもねえよ」ゴクゴクゴク
つぐみ「……むう」
つぐみ「……さっきは上の空だったようだから、もう一度説明しておくが」
つぐみ「”テンパンチ・プロジェクト”は、いわゆる普通のカルト宗教団体だ」
楽「ゴク……色々突っ込みどころがあると思うんだが」
242: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:35:59.30 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……”テンパンチ・プロジェクト”が、元々定収入を持たない人間達の互助組織だとは聞いているな」
つぐみ「その中で、元プロボクサーの”お父様”と呼ばれる人間が核となり、今日の政治結社じみた宗教団体の形成に至っている」
つぐみ「その本質は、フィクション作品に登場するような”ありふれたカルト教団”と同じだ」
つぐみ「教祖、それに一部の幹部が定めたルールで下級構成員をハードに洗脳し、利用する」
つぐみ「”テンパンチ・プロジェクト”の場合は金銭こそ巻き上げないが、政治的なアジテート活動に信者を活用しているんだ」
楽「……うーん?」
つぐみ「……例えば、日本の自衛隊は戦争に参加できないが、”テンパンチ”の幹部は、自衛隊に戦争をさせたいと思っているとするだろう」
楽「……うん」
つぐみ「法治国家において、意見を主張するにはヒトとカネが必要だ。”テンパンチ”は各種活動を通じて、自分達の仲間を増やす」
つぐみ「地域のコミュニティ施設から、いじめられっ子の救済まで、とにかく何でも手を出して、自分達に忠実なコマを作るわけだな」
つぐみ「ある程度コマが集まれば、今度はそれを使って更なるヒトとカネを引き出すことが可能になる」
つぐみ「直接信者から搾取しなくても、自分達主催のスポーツイベントだの、コンサートだのを開いて稼ぐことも可能だし」
つぐみ「ストライキやデモの旗頭に、世間知らずの可愛い女子高生を派遣する事だってカンタンだ」
つぐみ「”自衛隊による先制防衛を!! 今だ必殺、天・パンチ!!”とでも言った具合にな」
楽「……つくづく悪の組織じゃねえか」
243: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:37:04.93 ID:9Zy4974d0
つぐみ「擁護する訳ではないが、現代の法治国家で少数派の意見を押し通そうとするならば、こんな形にならざるを得ないのも現実だ」
つぐみ「それに参加者の多くは、”テンパンチ・プロジェクト”に所属することで、人生の安寧と、満足感を得ている」
つぐみ「信じて、救われているってコトだよ」
つぐみ「若い信者に売春をさせたり、老人からカネを巻き上げる団体もある中、なかなか健全な運営をしている方だと思うが」
楽「……」
つぐみ「話を続けるぞ」
つぐみ「”テンパンチ・プロジェクト”は、四半期に一度大々的なイベントを開き、新規入会者に強力な洗脳を施している」
つぐみ「小野寺様や宮本様は、まだその段階までは達していないようだ。十分引き返せる余地がある」
楽「なるほどな……で、そのイベントって」
つぐみ「今日の夜から3日間」
楽「」ブホッ
つぐみ「……」ムスッ
楽「ご、ごめ、で、でも!! 急がなきゃっ」
つぐみ「そうだな。今日駅前にたむろしていたのも、恐らく施設に移動するためなのだろう」フキフキ
つぐみ「しかし、まだ動くわけにはいかない」
楽「どうして!!」
244: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:39:15.57 ID:9Zy4974d0
つぐみ「敵の本陣に乗り込むには、あまりに準備が足りなさ過ぎる」
つぐみ「私が知っているのは、調べれば誰でも分かるような、インターネットで拾える程度の知識に過ぎん」
つぐみ「相手のスケジュール、施設の設備、人員、その他諸々。何も知らずに飛び込んでも、受付で追い返されるのがオチだ」
つぐみ「二人を説得して連れ帰るにしろ、強引にさらうにしろ、それなりの準備が必要になる」
楽「……くそっ」ダンッ
つぐみ「幸い、イベント自体は泊まりがけで行われるらしい」
つぐみ「恐らく、本格的な仕上げに入るのは最終日、明後日。明日の夜までに手を打てば、なんとかなるはずだ」
楽「そう、か……」
楽「……」
楽「……ちなみに、つぐみの言う”準備”ってのは」
つぐみ「弾薬とか、爆弾とか」
楽「待て待て待て待てお前何するつもりだよ」
245: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:39:52.42 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……」フゥ
つぐみ「宗教の根底にあるものは、個人の思想、他人に侵されたくない人格の根底だ」
つぐみ「人を動かす原動力として、これ以上強いものはそう無い」
つぐみ「そのような輩に一度恨みを買えば、死ぬまで付け狙われる事を覚悟せねばならん」
つぐみ「ましてや”テンパンチ・プロジェクト”の異常性は、さっきお前自身が語ったばかりではないか」
つぐみ「相手の本陣に飛び込んで、二人を説得して連れ帰れば全ておしまい、と考えているのならば、状況を舐め過ぎているぞ」
楽「……そうなると、また話が別なんじゃないのか?」
楽「そんな危険な組織相手に、俺達二人だけじゃ」
つぐみ「……どうやら私のことも舐めているようだな」
つぐみ「こう見えて私も、ビーハイブでは指折りの実力を持つ殺し屋だ」
つぐみ「いかに狂信者の集団とは言え、烏合の集相手にワンマン・アーミーをこなす位、わけない」ニヤ
楽「……頼もしいことで」
つぐみ「ふふ」
つぐみ「……まあ、まずはそういう準備だ。後は私自身の問題もある」
楽「?」
つぐみ「私はビーハイブの所有物だからな。自由に使える道具や時間を工面するのにも、ちょっとした手間が要るんだ」
つぐみ「お前はその間、小野寺様をどうやって口説き落とすか、じっくり考えながら体を休めればいい」
つぐみ「傷つきながら女を救うのは絵になるが、親父様に負わされた傷で動けませんでした、では、話にならんぞ」ハハハ
246: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:41:41.26 ID:9Zy4974d0
楽「……」
つぐみ「はは、は……」
つぐみ「……」
楽「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……それとも、一条楽」
つぐみ「あるいは、お前にとって……」
楽「……?」
つぐみ「……いや、なんでもない」
つぐみ「話は以上だ。今日はこの部屋で寝ていけ」
楽「」ドキッ
楽「い、いやお前、それってっ」
つぐみ「……何を想像している、馬鹿者」カァァ
つぐみ「お前が一人で先走らないように監視するためと」
つぐみ「そもそも服が血と泥にまみれた制服しかなくて、とても外に出られるような状態ではないこと」
つぐみ「そして家に帰り辛いであろう貴様が、集英組の者に出くわさないよう、気を使ってやっているだけだ!!!」カァァァァァ
楽「で、でもお前は」
247: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:42:40.28 ID:9Zy4974d0
つぐみ「私はソファーで寝る。ポーラやクロード様が来た時、不在では言い訳も立たんしな」
楽「……じゃあ俺がソファーで寝るよ。部屋の主がベッドを使うべきだろ」
つぐみ「パンツと包帯しか着ていない怪我人を、ソファーで寝かせられるか。それにお前では頭がはみ出るだろう」
楽「大して身長変わらねーだろ!! 第一女の子の匂いの染み付いたベッドで寝るなんてっ」
つぐみ「匂い!? 匂いと言ったか!? 何をするつもりだ貴様!!!!」
楽「何ってお前……」カァァァァ
楽「……別に何も」
つぐみ「……何だよ、今の間は」
楽「……何でもねーよ」
つぐみ「……」
楽「……」
248: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:43:48.46 ID:9Zy4974d0
~ 15分後 ~
つぐみ「……電気、消すからな」
楽「……おぅ」
カチャ カチャ シーン
つぐみ「……」モゾモゾ
楽「……」
つぐみ「……もっと端に寄れ」ギュム
楽「……無理だ、落ちる」ギュム
つぐみ「ではやはり、私がソファーで……」
楽「いや、俺が……」
つぐみ「……」
楽「……」
つぐみ「……おやすみ」
楽「……おやすみ」
249: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:46:18.71 ID:9Zy4974d0
~ 深夜 ~
つぐみ(……)
つぐみ(……)
つぐみ(……この状況)
つぐみ(……お嬢が知ったら、どうなってしまうのか……)
つぐみ(……)
つぐみ(……)
―― 「私は、お前の事を、異性として真剣に愛している」
―― 「冗談でも、慰めでも、なんでもない。本気でお前の事を愛しているんだ」
つぐみ(……)
つぐみ(告白、してしまった)
つぐみ(……あんな、色気の無い、無様な)
つぐみ(……)
つぐみ(もっと、他に言いようがあったはずなのに……)
つぐみ(……或いは、もっと上手に伝えられていれば……)
つぐみ(……)
つぐみ(いやいやいやいや)
250: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:47:08.82 ID:9Zy4974d0
つぐみ(ダメだろ、上手くいっちゃ)
つぐみ(奴はお嬢の想い人だし、奴自身は小野寺様の事を好いているのだから)
つぐみ(……私の介入できる余地など、最初からありはしないんだぞ)
つぐみ(……)
つぐみ(……だけど)
つぐみ(……嬉しい)
つぐみ(言葉にして、ようやく分かった)
―― 「一条楽を憎からず思う気持ちは、多分単純なコイとは違って」
―― 「私の大切な存在であるお嬢が、心を揺り動かされていることへの敬愛、尊敬とか」
―― 「日本の、普通の学生が送るような、穏やかな日常への憧憬とか」
つぐみ(そんなんじゃ、なくて)
つぐみ(私は、一人の女として、一条楽のことが大好きだって)
つぐみ(愛している。愛されたい、ずっと、いっしょにいたいって)
つぐみ(自分が、ちゃんとコイをしているんだって事が、わかったから)
251: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 21:48:23.18 ID:9Zy4974d0
つぐみ(だから……)
つぐみ(……)
つぐみ(……だから、何だというのだ)
つぐみ(例えニセコイだったとしても、お嬢が一条楽を愛している事実に、何も変わりはないというのに)
つぐみ(お嬢のことを考えたら、想いを抱く事自体、間違っているコイだというのに)
つぐみ(……)
ムクッ
ガサガサ
テク テク
スッ
チャリン
つぐみ(……橘万里花)
つぐみ(……私は……)
楽「……どうしたんだよ、それ」
252: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:01:41.97 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……起きていたか」
楽「……寝れねーだろ」プイ
つぐみ「そうだな」フゥ
楽「……」
つぐみ「……橘万里花から、貰った、鍵だよ」
つぐみ「お前の事を諦めたから、今夜中でこの町を出るそうだ」
つぐみ「……その様子を見るに、知らなかったし、知らされなかったらしいな」
楽「……」
楽「……俺」
つぐみ「……?」
楽「……橘に、嘘、ついたんだ」
つぐみ「……」
楽「橘のこと、小野寺と同じようにしか、見れないって」
つぐみ「酷い嘘だな」
楽「ああ」
253: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:02:56.54 ID:9Zy4974d0
つぐみ「お嬢と、新聞部員の前だから、そんな嘘をついたのか」
楽「……違う」
楽「違うんだよ」
楽「俺は」
楽「本気の橘を前にして」
楽「最後まで、本当の事が、言えなかったんだ」
楽「かっこつけたから」
楽「自分が、痛い思いをしたくなかったから」
楽「結局、最後の最後まで」
楽「本気で、橘に応えることが、できなかったんだ……」
つぐみ「……」
ニギッ
楽「……つぐみ」
つぐみ「橘万里花は、笑っていたよ」
楽「……」
つぐみ「きっとお前に会えば、決心が鈍ると思ったのだろう」
つぐみ「だが奴は、お前を恨んでいる様子など、微塵も無かった」
つぐみ「だから……」
254: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:04:00.82 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……今からでも、橘万里花を愛してやると言うのなら、追いかけてやれ」
つぐみ「そうでないならば、せめて」
つぐみ「忘れてやれ」
つぐみ「……それが、手を取らぬ者が与えていい、唯一の優しさだと、私は思う」
楽「……」
つぐみ「……ソファーで寝るか?」
楽「……ここでいい」
つぐみ「わかった」モゾモゾ
楽「……つぐみ?」
つぐみ「少し風に当たってくる。お前が寝付いた頃にでも、戻ってくるさ」
楽「……」
つぐみ「今度こそおやすみ、一条楽」
楽「……つぐみ」
つぐみ「うん?」
楽「……ありがとな」
つぐみ「……」
ガラガラガラ ピシャン
255: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:05:13.82 ID:9Zy4974d0
~ 鶫誠士郎 セーフハウス前 ~
つぐみ「……」
―― つぐみ「……今からでも、橘万里花を愛してやると言うのなら、追いかけてやれ」
―― つぐみ「そうでないならば、せめて」
―― つぐみ「忘れてやれ」
―― つぐみ「……それが、手をとらぬ者が与えていい、唯一の優しさだと、私は思う」
つぐみ(……我ながら、ご立派な説教だったな)
つぐみ(追って行って欲しいとも、忘れて欲しいなどとも、欠片も考えていないクセに……)
カサッ
つぐみ「!」
ポーラ「こんばんわ」
ポーラ「面白そうなこと、始めたみたいじゃないの」ニヤニヤ
つぐみ「……盗み聞きとは、趣味が宜しくないな」
ポーラ「あら、アンタたち二人っきりの気配を察して、入室を控えるくらいには良識派のつもりなんだけど」
つぐみ「……それは、どうも」
ポーラ「……それより、どうだったのよ」
つぐみ「一緒のベッドで寝ていたところだ、と言ったら、信じてくれるか?」
ポーラ「……つまーんなーい」ブゥ
256: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:08:16.03 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……すまんが、一人にしてくれないか。色々と考えたいことがあるんだ」
ポーラ「あら、冷たいじゃない。組織の命令に背いて、新興宗教家相手に戦争でもおっ始めようってワケでもあるまいに」
つぐみ「……」
ポーラ「……ぇー」
ポーラ「いや、まぁ……アンタの人生だからさ、何がどうとか言うつもりは無いけど」
ポーラ「そこまでする必要、あるの?」
ポーラ「奪回対象はお嬢の親友だし、消されるまではないにしても、万一バレたらアンタは……」
つぐみ「もちろん、分かっているさ」
つぐみ「だが、どうしてもやらねばならない」
つぐみ「……例えそれが、お嬢やお前、組織と決別する選択だったとしても」
つぐみ「私自身が、私自身で愛したものを、守るためには……」グッ
ポーラ「……あっ、そ」
ポーラ「それなら私も、手ぇ貸してあげちゃおっかな」クルッ
ポーラ「冴えないもやし小僧の護衛には、黒虎と白牙の二枚看板ぐらいで丁度いいと思わない?」ニィ
257: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:08:56.16 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……止しておけ、ポーラ」
つぐみ「お前の言う通り、この件は私が犯す重大な命令違反だ。手を貸すどころか、知って黙っている事すら厳罰を被りかねん」
つぐみ「お前にはお前の、大事なものがあるのだろう。関わらん方が身のためだよ」
ポーラ「……何よソレ、かっこつけちゃってさ」ブー
ポーラ「この状況だって、私が一条楽に口添えしてあげたおかげで……」
つぐみ「……」ピクッ
ポーラ「……あっ」
つぐみ「……ポーラ」
つぐみ「貴様」
つぐみ「自分がいったい、どれだけのことをしたのか!!」
ポーラ「……な、何よ、何よっ」
ポーラ「黒虎だって、この状況、楽しんでない訳じゃないんでしょ」
ポーラ「わ、私ばっかり責めないでよね! あ、アンタ、アンタだってっ」
つぐみ「……」
ポーラ「……そ、そ、そうよ、そもそも、この状況だって、各々がそれぞれで考えた結果こうなってるんでしょ」
ポーラ「確かにきっかけを作ったのは私かもしれないけど、そんなに怖い顔される筋合いは……」
つぐみ「……」
ポーラ「だから……」
258: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:10:14.57 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……確かに」
つぐみ「お前の言うとおりだよ、ポーラ」
ポーラ「……へ」
つぐみ「この状況に、私が少なからず喜びを感じているのは、事実だ」
つぐみ「私がお前に説教をする道理もない。むしろ、感謝するべきなのかも知れん」
ポーラ「……わ、分かればいいのよ」フン
つぐみ「だが、ポーラ」
つぐみ「……」
つぐみ「自分の果たせなかった幸せの形を、他の誰かに投影するのは、もう止めておけ」
つぐみ「……空しさが、残るだけだ」
259: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:11:20.31 ID:9Zy4974d0
ポーラ「……」ギロッ
ポーラ「そんなんじゃないわよ」
つぐみ「しかし」
ポーラ「そんなンじゃないっつってんのよッ!!!」ダッ
つぐみ「おい、ポーラ、ポーラっ!!」
つぐみ「ポーラ……」
つぐみ「……」ハァ
つぐみ「……幸せの形、か……」
260: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:12:00.73 ID:9Zy4974d0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
261: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:12:42.47 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……」
楽「……」
つぐみ「……」
つぐみ「……それとも、一条楽」
つぐみ「あるいは、お前にとって」
楽「……?」
つぐみ「私は汚れた存在か」
楽「……アホな事、言ってんじゃねーよ」
つぐみ「否定に力がないな。女はおろか、子供ですら騙せんぞ」
楽「……」
262: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:13:56.22 ID:9Zy4974d0
つぐみ「認めろ、一条楽。お前は結局、自らの境遇に反発して、外に救いを求めているだけだ」
つぐみ「だからお前にとっての”別の世界”に生きる、私達を傷つけようと何も思わない」
つぐみ「”普通の世界”の象徴である平凡な女、小野寺小咲を逃げ道にしているだけなのだろう?」
楽「違う!!」
つぐみ「いいや、違わんさ」
つぐみ「そうでなければ、何故橘万里花の気持ちに応えない」
万里花「……楽様にとって、私は暴力団と警察が手を取り合うために決められた、形ばかりの婚約者」
万里花「けれど、私の気持ちがそれだけではないことを、私は全身全霊をかけて貴方に伝えてまいりました」
万里花「結果は拒絶すらない、延々と続く肩透かし。それももう、終わりましたけれど」
万里花「ありがとうございます、楽様。最後にはっきりと、私を傷つけていただいて」
楽「橘っ」
小野寺「……一条くん、大好きだよ」
小野寺「でも、一条君にとって私は……」
楽「……」
小野寺「……どうして、否定してくれないの?」
小野寺「一条君がそんなだから、私は!!」
263: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:15:16.66 ID:9Zy4974d0
楽「……俺は橘の事も、小野寺のことも、いいかげんになんて考えてない!!」
千棘「今更いい子ぶってんじゃないわよ、糞モヤシ野郎」
千棘「アンタは結局、平凡な大人にも、はみ出し者にもなりきれない、中途半端で優柔不断なクズ野郎なのよ」
千棘「私の気持ちにだって、気づいてなかったわけじゃないんでしょ」
千棘「ヤクザの世界の出来事だからって、真面目に考えてなんていなかったんでしょ」
千棘「ニセコイって言葉に逃げて」
千棘「万里花の事も、小咲ちゃんの事も」
千棘「……私のことも」
千棘「真剣に考えずに、今のぬるい関係をずっと続けていきたいなんて、思っていたんじゃないの?」
楽「……」
千棘「……いや、案外本気で理解してなかったのかしら」
千棘「わざと目をそらして、自分自身すら騙して、気づかないフリをしてごまかして」
千棘「結局、私の独り相撲だったってことかしら。酷い話」
羽「……みんな、あんまり楽ちゃんを責めないであげて~」
羽「楽ちゃんだって、まだまだコドモな男子高校生なんだから」
羽「ちょっとくらい、独りよがりだって、自分勝手だって
羽「不幸を自分の生まれのせいにしたって、仕方ないわ」
264: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:16:51.20 ID:9Zy4974d0
羽「時には失敗だってするよ」
羽「自覚無しに誰かの心を傷つけたりしても、それは楽ちゃんが悪いんじゃないの」
羽「楽ちゃんだって、かわいそうなんです」
楽「……羽姉、なんで、そんな言い方」
羽「だって、そうじゃなきゃ」
羽「……私、楽ちゃんのこと、許せなくなっちゃう」
楽「っ……」
万里花「ねえ、これからどうされますの、楽様」
千棘「どうするのよ、楽」
小野寺「一条君……」
羽「楽ちゃん」
「楽様」
「楽」
「一条君」
「楽ちゃん」
「楽楽様一条君楽ちゃん楽楽楽様一条君一条君いちじょ
楽「うるっせえええええええええ!!!!!!!!」
265: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:18:05.31 ID:9Zy4974d0
楽「はあっ……はあ、はあっ……」
つぐみ「一条楽」
楽「……」
つぐみ「お前がどんなつもりであろうが、周りの人間を傷つけて回っている事実は消せない」
楽「……そう、だな」
楽「それ以上は、ただの俺の自己満足、言い訳だ」
楽「だけど、俺は……」
つぐみ「……勘違いするな、一条楽」
楽「……?」
つぐみ「別に私は、お前を咎めている訳ではない」
楽「どういう意味だよ」
つぐみ「私はお前の生き方を肯定する」ファサ
楽「わっ、よせ、お前、いきなり何をっ!!」
つぐみ「今日び女の乳くらい、そう珍しいものでもないだろうに。やはり面白い奴だな」フフ
楽「いいから、服着ろってっ」
つぐみ「……」ギュッ
楽「~~~~~~~ッ!!」
266: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:19:23.05 ID:9Zy4974d0
つぐみ「……愛したいだけ、愛すればいいのだ、一条楽」
つぐみ「偏りさえさせなければ、本妻と別に愛人を持つこともできる」
つぐみ「あるいは、単に性欲の捌け口としても……」ツツツ
楽「……やめ、ろよ」
つぐみ「そう固く考えるな。私は千棘お嬢様の忠実なる僕だが、所詮ビーハイブの殺し屋、使い捨ての駒だ」
つぐみ「お前が性欲処理の道具として拾ってくれるなら、少しは寿命も永らえる。人助けだとでも思え」
つぐみ「そうして、せめて人並みの幸せと愛を、ひとときでも与えてくれるなら、私は……」
楽「……」
つぐみ「さあ、一条楽」
つぐみ「……いえ、一条様」
つぐみ「今だけでもいい」
つぐみ「私のことを」
つぐみ「あいして――」
267: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:20:19.99 ID:9Zy4974d0
楽「……つぐみっ!!」ガバッ
楽「……」
楽「……」
楽「……」バタッ
楽「……夢」
楽「じゃ、ねえよな、今のは……」ゴロン
268: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:21:19.00 ID:9Zy4974d0
~ 鶫誠士郎 セーフハウス 寝室 ~
楽(……そう)
楽(夢なんかじゃない)
楽(俺は心のどこかで、避けてるんだ)
楽(マフィアの娘としての千棘や、殺し屋のつぐみ達と、向き合うことを)
楽(本当のみんなのことを、見ようともしないで、だから……)
楽(……)
楽(……置き手紙?
カサッ
『よく寝ているようだから、準備のため先に出かける。
午後7時丁度に、凡矢理駅の東口前で落ち合おう。
服を私の変装用備品から見繕っておいた(未使用品だ)
家の鍵と一緒にテーブルの上へ置いた。
もし、私の助力が迷惑ならば、その時間前に出発してくれ。
お嬢には私から、うまく伝えておく。
鶫 誠士郎』
269: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:23:10.97 ID:9Zy4974d0
楽「……」
楽(千棘のため? 小野寺のため?)
楽(……俺のため、なんだろうな、やっぱ)
楽(俺のこと……愛してくれてるって、言ってたし)
楽(だけど)
楽(俺は一度、橘を裏切ってる)
楽(あんなに俺のことを愛してくれていた橘のことを、相手にもしないで)
楽(そのくせ、夢の中とは言え、つぐみの事をあんな風に……)
楽(……)
楽(やっぱり、つぐみを巻き込むのは……)
プルルルルルルルルルルルッ プルルルルルルルルルルルッ プルルルルルルルルルルルッ
270: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:23:44.54 ID:9Zy4974d0
楽「……」
プルルルルルルルルルルルッ プルルルルルルルルルルルッ プルルルルルルルルルルルッ
楽「……え、俺の携帯?」
プルルルルルルルルルルルッ プルルルルルルルルルルルッ プルルルルルルルルルルルッ
楽(着信音、こんなんじゃなかったよな……番号も表示されてねーし)
楽(……)
プッ
楽「……もしもし」
???『おはよ。それとも、もうこんにちは、かな?』
楽「用事があるなら、普通にかけてきてくれよ……」
楽「……羽姉」
271: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:25:00.15 ID:9Zy4974d0
羽『ごめんね。どうしても電話が繋がらなかったから、焼豚会の専用回線、使っちゃったの』テヘヘ
楽「……そういや昨日の晩、電話帳の連絡先全部着拒したんだっけ」
羽『みたいだね。組のみんなも心配してたよ?』
楽「……」
羽『そっちは、ごめんねできないよ。大事な人達を心配させるのは、例え楽ちゃんであっても、いけないことでーす』
楽「どうせ、大方の事情は知ってんだろ。放っておいてくれよ」
楽「羽姉の事だって、俺はっ」
羽『……小咲ちゃん達の話なら、やっぱり謝る気にはならないよ、私は』
楽「どうしてっ!!!」
羽『今の楽ちゃんになら、わかるんじゃないかな?』
羽『それとも、自分がヤクザの子供としての運命から逃れられないと知った今でも、小咲ちゃん達を自分の人生に巻き込みたいと思うの?』
楽「……でも、それとテンパンチ・プロジェクトは」
羽『気の毒だとは思うけどね。それでも、自分達で選んだ道だよ』
羽『成功も失敗も自分持ち。私達が何かするよりも、よっぽどシンプルで、健全だと思うけど』
楽「……」
272: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:25:34.05 ID:9Zy4974d0
羽『……なんてね。こんな意地悪な話をするために、電話したわけじゃないんだ』
羽『今日の夜、時間作ってもらえないかな? 楽ちゃんに会いたいの』
楽「……悪いけど、無理だ」
羽『どうして?』
楽「……先約があって」
羽『それなら、大丈夫だよ。こっちで楽ちゃんの都合に合わせるようにするから』
羽『たとえば』
273: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:26:01.25 ID:9Zy4974d0
羽『今日の夜7時ちょうどに、凡矢理駅の東口前で待ち合わせだったらどうかな?』
274: ◆LeBgafvn/6 2015/08/03(月) 22:26:48.11 ID:9Zy4974d0
~ つづく ~
275: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:12:01.79 ID:QDWtMbLU0
~ 同日 昼過ぎ 桐崎邸 桐崎千棘 私室前 ~
バターン カチャ
千棘『ちょっとクロード、ふざけんじゃないわよ、こら、出せ、出しなさい、出せッ!!!!』
クロード「……申し訳ありません、お嬢」
クロード「何しろ、一度根絶やしにしたと思っていた反乱分子の残党が発見されたということですから」
クロード「どこに、どの程度、どのように存在するのか把握するところから始めなくてはなりませんので」
クロード「お嬢の安全を確保するために、再びこうして閉じこもっていただく以外、お嬢を守る方法がないのです」
千棘『私の安全なんてどーでもいいわよ! 今こんなトコで閉じこもってるわけにはいかないの!!』
クロード「……思うところは様々ございましょうが、私はお嬢の命を第一に考えております」
クロード「小野寺様の件についても、こちらで調べを進め、手筈を整えておきます。どうかご理解ください」
千棘『……』
千棘『……ダーリンにも、連絡できないの?』
千棘『昨日から電話、つながらなくって、あんな別れ方した後だし……』
クロード「……」
クロード「どこから情報が漏れるか、わかりませんゆえ」
276: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:12:34.32 ID:QDWtMbLU0
千棘『……じゃあ、つぐみに頼んで』
千棘『アイツ、興奮してたし、何やらかすかわからないから……つぐみに面倒見させてあげてほしいの』
クロード「……」
千棘『前回から続きでの仕事なら、信頼できる部下の選定もできているんでしょ?』
千棘『つぐみ一人ぐらい、外したって大丈夫でしょ?』
クロード「……お嬢」
千棘『お願いよ、クロード』
クロード「……検討しておきます」
千棘『……よろしくね』
クロード「……失礼致します」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ
千棘の父「クロード」
クロード「はっ」
千棘の父「千棘は?」
クロード「自室に篭っていただきました」
千棘の父「……困ったねぇ」
クロード「……はっ」
千棘の父「ニホンのカルトなど、そこらを探せばいくらでもあるだろうに。何故”テンパンチ”などを……」
クロード「……」
277: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:14:29.53 ID:QDWtMbLU0
千棘の父「どうするつもりだい」
クロード「……小野寺小咲は集英組の小僧とも親交があり、消せば間違いなく騒ぎになります」
クロード「小僧が勝手に動いて、上手くやればそれでよし。もたもたしているようならば」
クロード「本人か、宮本るりの方を交通事故にでも遭わせ、手脚の一本も無くしてやれば、家族が絡んで宗教どころでもなくなるかと」
千棘の父「相変わらず、酷い男だ。千棘の悲しむ顔を想像すると胸が痛いよ」
クロード「申し訳ございません」
千棘の父「誤解しないでくれ。君の仕事ぶりをそれだけ評価しているという意味さ」
クロード「はっ」
千棘の父「しかし、まさか裏切り者どもが、新興宗教と手を組んでいたとはね」フゥ
クロード「……」
千棘の父「彼女らが千棘の友人、言い換えればビーハイブに対して有効な人質だと知れればコトだ」
千棘の父「せっかくのゴミ虫共を根絶やしにするチャンスを、みすみす逃すことになる」
千棘の父「……ビーハイブがテンパンチ・プロジェクトに興味を持っている事を、絶対に感づかれてはならんのだよ」
クロード「……千棘お嬢様には、一切知らせずにございます」
千棘の父「千棘ももう大人だ。その辺りの機微を、話してやってもいい時期とは思っているんだが」
クロード「千棘お嬢様が、知る必要は、ございません」
クロード「そのために、私が居るのですから」
千棘の父「……そういう男だから、僕は君が好きなんだ」
クロード「恐悦至極にございます」
千棘の父「君に一任するよ。よろしく頼む」フリフリ
クロード「はっ……」
278: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:17:00.64 ID:QDWtMbLU0
クロード「……立ち聞きとは悪趣味だな、ポーラ」
ポーラ「はっ」シュタッ
クロード「好奇心は猫を殺す。知っていたか」
ポーラ「クロード様が本気ならば、私はとうに殺されていますゆえ」
クロード「可愛げのない奴め」チッ
ポーラ「申し訳ありません」
クロード「……聞いた通りだ。今回の件、”テンパンチ”に一切手出しはするな」
クロード「一週間、様子を見る。その間に集英組の小僧が解決すればそれでよし。でなければ私が動く」
クロード「ポーラ、貴様は誠士郎を監視しておけ」
ポーラ「……質問があります」
クロード「言ってみろ」
ポーラ「何故黒虎でなく、私を使おうと?」
クロード「下らん」
クロード「誠士郎より貴様の方が使いやすい。そう判断したまでだ」
ポーラ「……」
ポーラ「……」
ポーラ「承知致しました」ニヤァ
279: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:19:53.66 ID:QDWtMbLU0
~ 午後6時45分 凡矢理駅東口前広場 ~
楽「……」
羽「あ、楽ちゃん。こっちこっちー」ペケペケ
楽「……早ぇな、羽姉」
羽「うん、一刻も早く楽ちゃんに会いたくってね、ずっと待ってたんだよ」ニコニコ
楽「……後ろの護衛も?」
夜(イエ)「……」
羽「ううん、隠れてるだけでもっと居るよ?」
楽「……そうかい」
楽「で、羽姉の用事ってのは何なんだよ」
楽「小野寺の事を助ける気がないってんなら、せめて俺達のことは邪魔しないで……」
羽「え? 助けるつもりだよ?」
楽「……電話で言ってたことと、違うじゃねーか」
羽「そんなことないよ。私の気持ちがどうであろうと、私は必要なら必要な事をするの」
楽「どういうことだよ」
羽「えっとね、楽ちゃん」
羽「小咲ちゃん達をテンパンチ・プロジェクトから救いたければ、私のものになって欲しいの」
楽「……」
羽「言っちゃった、言っちゃった」キャッ
280: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:22:08.62 ID:QDWtMbLU0
楽「……どうしちまったんだよ羽姉」
楽「何で、いきなりそんな事ッ……!!」
羽「……いきなりじゃないよ」
羽「私の気持ち、知っちゃったんでしょう?」
羽「だから、私は私のできる限りの手段を使って、欲しいものを手に入れようと思ったの」
羽「ね、とってもシンプルでしょ?」ニコッ
夜「……」スッ
羽「焼豚会のみんなは、とっても優秀なの」
羽「傷ひとつつけずに、二人を救い出す事ができると思う」
羽「どのみち、千棘ちゃんとはニセコイなんだし、小咲ちゃんと楽ちゃんとじゃ、絶対幸せになんてなれないよ」
羽「……だから、ね?」
楽「……」
楽「……正直、羽姉が何考えてんだか分かんねーし」
楽「羽姉の言ってる事も、間違っては居ないと思う」
楽「けど……」
281: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:23:32.97 ID:QDWtMbLU0
羽「……」クスッ
羽「あのね、楽ちゃん」
楽「……?」
羽「つぐみちゃんなら、ここには来ないよ?」
楽「」ドキッ
楽「まさか、羽姉……!!!」
羽「私はなにもしていないよ」
楽「じゃあどうして!!」
羽「……」
羽「……どうして、か」
羽「どうして、なんだろうね……」
~ 同日 夕刻 桐崎邸備品倉庫 ~
シュタッ
つぐみ(……)
282: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:25:41.53 ID:QDWtMbLU0
タタタタタタタッ カチャッ
つぐみ(……)ガサガサ
????「……そんな真似をせずとも、正面から堂々と入ってくればよかろう」
つぐみ「っ」シュタッ
????「何をそんなに驚いている」
????「それにどうした、拠点攻略用装備など持ち出そうとして。自衛隊基地でも潰しに行くつもりか?」
つぐみ「……」
????「答えろ、鶫誠士郎」
つぐみ「……見逃してください、クロード様」
クロード「……無能な飼い犬は、せめて飼い主に忠実であれと、何度も叩き込んでやったはずだがな」
つぐみ「お嬢のためなのです」
クロード「お為ごかしとは反吐が出る」シュッ タタタタッ
つぐみ「うっ……」ガスッ
クロード「道具が物を考えるな」ガスッ ビシッ
クロード「勝機を取らずに勝負をするな」バシッ ガシッ
クロード「情報は命を削って隠せ」ブオンッ ドゴッ
つぐみ「がは、あっ……」
クロード「全て基本だ」
つぐみ「……ッ」ドサッ
クロード「……愚か者めが」フキフキ
283: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:26:34.88 ID:QDWtMbLU0
つぐみ(……頭が朦朧とする。暫くまともに歩ける気がしない)
つぐみ(しかし、こうもあっさりとやられてしまうか)
つぐみ(血の滲むような、人知を超えるような努力を重ねてきたつもりだったのに)
つぐみ(こうも、絶対的か……)
クロード「”テンパンチ・プロジェクト”には、先日潰した反乱分子との繋がりが確認されている」
クロード「小野寺小咲と宮本るりが、ビーハイブに有効な人質と悟られる可能性は、限りなく下げておかねばならん」
クロード「そのためにビーハイブの人間は、いかなる形であっても、関与させるわけにはいかんのだ」
クロード「……子供同士の恋愛ごっこはジャパニーズ・マフィアとそのクソガキどもに任せろ」
クロード「その辺りの機微が分からんお前には、しばらく屋敷の地下でのんびりしていてもらう」ダキッ
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
羽「ねえ、楽ちゃん。お願いだから、私の言う通りにして」
羽「つぐみちゃんが来なければ」
羽「楽ちゃん一人で小咲ちゃん達を連れ戻すなんて、できないでしょう?」
楽「……」
羽「楽ちゃんは、頭がいいんだから」
羽「どうするのが一番いいかは、分かってるよね」
284: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:28:03.29 ID:QDWtMbLU0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
ドサッ
つぐみ「ぅ、あ……」
クロード「……もう、黙っていろ」
つぐみ「……」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
羽「楽ちゃんは頑張ったよ。立派だったと思う。私が保証してあげるから、だから」
羽「もう、いいじゃない。現実を受け入れようよ」
羽「だって、楽ちゃんには」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
クロード「お前は私の忠実な手駒として生かされてきた、私達の所有物だ」
クロード「少しばかり人として扱われたからと、夢を見てしまったに過ぎない」
クロード「お嬢や年頃の娘を眺めるうちに、自分にもそのような感情が抱けると血迷ってしまっただけだ」
クロード「すぐに醒める」
クロード「なぜなら、お前には」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
285: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:30:29.35 ID:QDWtMbLU0
『最初から、夢見る資格なんて、なかったんだから』
286: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:31:20.48 ID:QDWtMbLU0
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
楽「……」
楽「……羽姉、ありがとう」
羽「じゃあ、」
楽「おかげで、ようやく腹が据わったよ」ドスン
羽「……楽ちゃん?」
楽「どうしていきなり、羽姉がこんな真似を始めたのかは、わからないけど」
楽「俺は絶対、羽姉の思い通りには、なってやんねー」
羽「……楽、ちゃん」
楽「例え資格があろうとなかろうと、俺は俺が決めたように、俺のやりたいようにやる」
楽「そうじゃなきゃ後悔するって、散々思い知らされてきたばっかりだからさ」フフ
羽「……」
夜「……浅はかアル、集英組のコソウ」
夜「私達が本気になれば、無理矢理オマエを連れ去る事なんてソッサもナイネ」
夜「肉便器にスルタけナラ、両手両足と舌クライなら無くっても用は足りるヨ」
楽「黙ってろ三下」ペッ
夜「」
楽「俺の事を力ずくで連れ去れるなら、最初っからそうしてるはずだろ?」
楽「そうならないって事は、羽姉がそんなやり方を認めてないって事だ」
楽「違うって言うなら、今すぐにでも俺の事、殴ってみろよ」
夜「……」ギリッ
287: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:34:32.26 ID:QDWtMbLU0
羽「……あんまり意地悪しないであげて。みんな真面目な子達なの」
楽「……一応、俺もヤクザの息子だから。その辺の仕組みは分かってんだ」
楽「ちょっと脅かされて、イラついちまったんだ。ゴメンな」
夜「……」イライラ
楽「……って言うか、羽姉は変なトコ生真面目だからな」
楽「説得するって決めたなら、実力行使には訴えないだろうな、とは、最初っから思ってたよ」ポリポリ
羽「……楽ちゃん」
夜「然しトゥスルネ、集英組のコソウ」
夜「貴様一人では結局、娘っ子助けられない。同穴の狢ネ」
楽「……決まってんだろ」
楽「つぐみを待つ」
羽「……つぐみちゃんは、ビーハイブから今回の件に関わらないよう、指示が下されているはずよ」
羽「ここに来られるとは思えないし、万が一、来たとしたなら、それは……」
楽「あいつは来る。絶対に」
楽「約束したんだ」
楽「だから、俺もここで待ってる」
楽「そんで、あいつがビーハイブに戻れるように、どんな事でもするし、どんな償いだってするつもりだ」
楽「だから……」
288: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:35:59.21 ID:QDWtMbLU0
羽「……」ハァ
羽「じゃあ、お隣失礼」ドッコイショ
楽「……羽姉」
羽「もしつぐみちゃんが来なかったら、私を頼ってくれるかな、って」
羽「それくらいは、期待してもいいでしょう?」
楽「……おう」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
つぐみ(……そうさ、私には、夢見る資格なんて最初からなかったんだ)
つぐみ(それは多分、お嬢や普通の女の子にはあって、私にはないもの)
つぐみ(昨日ああして、一条楽と過ごした時間も)
つぐみ(想いを告げることができた、あの瞬間も、結局はすべて偶然で)
つぐみ(私が愛されたわけじゃない)
つぐみ(単にタイミングさえ良ければ、誰だって……)
つぐみ(……)
289: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:37:00.11 ID:QDWtMbLU0
つぐみ(……)
つぐみ(では)
つぐみ(私が一条楽に愛されるには、どうすればよかった?)
つぐみ(結局、私は)
つぐみ(お嬢の存在を言い訳にして、自分のコイから、逃げていただけなのではないか)
―― 「だけど貴女は、私よりも、少しだけ強い」
―― 「今の自分を支えてくれる何かから離れて」
―― 「自分で見つけた、本当に手に入れたい何かに、手を伸ばせる強さのある人だと思います」
―― 「私は、お前の事を、異性として真剣に愛している」
―― 「冗談でも、慰めでも、なんでもない。本気でお前の事を愛しているんだ」
ピクッ
290: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:39:40.31 ID:QDWtMbLU0
つぐみ(……想いを告げたら、それだけで満足)
クロード「……?」
つぐみ(そんなんじゃあ)
ガサッ
つぐみ(お前は許してくれないよなぁ)
クロード「……」
つぐみ(橘、万里花ッ……!!!!)
クロード「……愚かな」
つぐみ「………ぉおおおおおおおおおおああああああああああああああ!!!!」バッ
クロード「……」ヒュン
ガッ
クロード「!!?」
つぐみ「そして私もッ!!!」
つぐみ「到底」
つぐみ「納得なんて」
つぐみ「できるはずがないッ!!!!!」バギィ!!!
クロード「ぐぉあっ……!!」
291: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:41:27.52 ID:QDWtMbLU0
つぐみ「まだまだぁ!!!」ブォンッ
クロード「……調子に乗るなッ……!!」
つぐみ「ええ、命賭けですともッ!!!」ガスッ
クロード「……っぐ……!!」
つぐみ「たアッ!!」クルクル スタッ
クロード「……何故だ、誠士郎」
クロード「お嬢のご学友と、集英組の小僧がどうなろうと、お前が命まで張る必要はあるまい」
クロード「何故、お前がそこまで……」
つぐみ「……分からないから、貴方にはお嬢が懐かないのですよ」ニヤ
クロード「利いた風な口をッ……!!」
つぐみ「甘いッ!」ビュッ
クロード「くッ……!」シュタッ
つぐみ(……いける)
つぐみ(原因は分からんが、クロード様が戸惑っている今ならば)
つぐみ(クロード様を躱して、一条楽の下へ……)
タァンッ!!
つぐみ「……なッ」
クロード「……」
292: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:43:10.71 ID:QDWtMbLU0
つぐみ「気は確かですかクロード様!? 屋敷の中で、実銃などとっ」
クロード「……どうあっても、お前を小僧の下へ行かせる訳にはゆかん」
クロード「今一度、お嬢と組織に恭順を誓え」
クロード「さもなくば死ね、誠士郎」
つぐみ「……」
ヒョイ
クロード「……両手を挙げたそのままで、こちらに来い。妙な真似は」
ヒュッ
タタタタン!!!
クロード「ぐっ……!!!」
つぐみ「”情報は命を削って隠せ”」
つぐみ「仕込み銃、最後まで取っておいた甲斐がありました」
クロード「……どこまでも小賢しいッ!!」ダッ
つぐみ「ぐあ……っ!!」
つぐみ(……やはり、正面からの戦いでは、力の差がありすぎる)
つぐみ(致命傷を与えるのは避けたとはいえ、これほどまでに……!!)
293: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:43:56.49 ID:QDWtMbLU0
クロード「何故だ、何故だ誠士郎」
クロード「何故今になって、私を、お嬢を裏切ろうとする」
クロード「結局は貴様も一人の女、集英組の小僧に誑かされたとでも言うのかッ!!」
つぐみ「私は私の信じる愛のために、私の力を使うと誓った、ただそれだけです、そこには何の打算も無いッ!!!」
クロード「組織の事はどうするッ!! 小僧には集英組がついているのだ、どんな形でも小野寺嬢は救い出される、お前が関わる必要は、」
つぐみ「そうして一条楽と小野寺様を睦み合わせ、お嬢から引き離すのが真の目的でしょうがッ!!!」
クロード「違うッ! 私はッ!!!!!」
つぐみ「お為ごかしはどちらですかッ!!!」
つぐみ「あなたに、あなたなんかにッ!!!!」
つぐみ「人の恋路を、操る権利なんて、あるはずがないんだあああああああッ!!!!」
クロード「誠士郎おおおおおおおおおおおぉぉぉッ!!!!」
つぐみ「クロード様ァァァァァァアアアアァ!!!!」
294: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:45:34.35 ID:QDWtMbLU0
つぐみ(……思ったとおり)
つぐみ(私ごときの力量では、クロード様を止めるには、全力で殺す以外はなかった)
つぐみ(そして、今このまたとない機会)
つぐみ(この引き金を引けば、クロード様を確実に)
つぐみ(殺す事ができる)
つぐみ(……躊躇はある)
つぐみ(殺し屋としてとは言え、私の事を守り、育ててきてくれた恩人)
つぐみ(今は上司でもある。殺すような事になれば、まず組織には、お嬢の近くには、戻ってこれまい)
つぐみ(だが、一条楽を選ぶという事は、組織を、お嬢を捨てるという事でもある)
つぐみ(……そう、一条楽を、愛するという事は……)
つぐみ(……)
つぐみ(――!!)
ガタァァァァ ァ ァ ァ ン ………
295: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:46:03.22 ID:QDWtMbLU0
カチャン
クロード「……」
つぐみ「……」
クロード「……とどめを刺す前に、一つ聞いておきたい事がある」
つぐみ「……はい」
クロード「最後の瞬間」
クロード「何故、引き金を引かなかった」
クロード「……お前にとって、唯一の勝機だった筈だろう」
つぐみ「……そう、ですね」
つぐみ「……私にとって、一条楽はかけがえの無い存在です」
つぐみ「お嬢と同じぐらい……もしかしたら、それ以上に」
つぐみ「だから彼のためなら、クロード様にとどめを刺して、組織を捨てる事だって構いやしない」
つぐみ「直前までは、そんな風に考えていたんです」
つぐみ「だけど」
296: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:47:07.18 ID:QDWtMbLU0
つぐみ「……もし、貴方が」
―― 「何故今になって、私を、お嬢を裏切ろうとする」
―― 「結局は貴様も一人の女、集英組の小僧に誑かされたとでも言うのかッ!!」
つぐみ「本当は最初から、私が女である事を知っていて」
つぐみ「私の”女”を護るために、わざと”男”の殺し屋として育ててくれたのかな、とか」
―― つぐみ「そうして一条楽と小野寺様を睦み合わせ、お嬢から引き離すのが真の目的でしょうがッ!!!」
―― クロード「違うッ! 私はッ!!!!!」
つぐみ「私の事を、娘と思ってくださって、おかしな男と駆け落ちされるのが嫌で、必死に止めてくださったのかな、とか」
つぐみ「そんな妄想が、ふつふつと浮かんできて……」
つぐみ「……私にとって、一条楽はかけがえの無い存在です」グス
つぐみ「お嬢と同じぐらい……もしかしたら、それ以上に、だけど」ヒグッ グスッ
つぐみ「貴方を……切り捨でてまで……手に入れたいものじゃ、ながった、ですっ……」ボロ ボロボロ
297: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:47:36.02 ID:QDWtMbLU0
クロード「……」
クロード「……私はお前が、優秀なヒットマンになると信じて育てた」
クロード「それだけだ」
つぐみ「……」
クロード「だが、それも見込み違いだったらしい」
クロード「私の与えた名前を墓標に、ここでくたばれ、誠士郎」
つぐみ「……」
つぐみ(お嬢)
つぐみ(ポーラ)
つぐみ(橘万里花)
つぐみ(……一条、楽)
つぐみ(ごめんなさい)
つぐみ「……さよなら」
298: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:48:10.21 ID:QDWtMbLU0
バスッ
299: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:49:11.04 ID:QDWtMbLU0
シュウウゥゥゥゥ
つぐみ「……」
つぐみ「……ぇ」
つぐみ(右耳が凄く痛い……けど、撃たれたわけじゃない)
つぐみ(……弾痕?)
クロード「……」クルッ
つぐみ「……クロード様」
クロード「……ビーハイブのルーキー、”黒虎(ブラックタイガー)”誠士郎は、たった今俺が殺した」
クロード「その残りカスがどこへ消えようと、俺の知った事ではない」
クロード「とっとと失せろ」
つぐみ「……クロード様」
クロード「失せろ!!!」
つぐみ「……ありがとう、ございます」
つぐみ「さようならっ……!!!」ダダダッ
300: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:50:02.28 ID:QDWtMbLU0
カチッ シュボッ
クロード「……ふぅ」
ポーラ「……まったく、我侭な娘を持つと、父親は大変ですね」
クロード「……俺を殺しに来たのか、ポーラ」
ポーラ「……何故、そう思われるので?」
クロード「俺は俺自身のエゴで、殺し屋候補のガキを贔屓し育てた」
クロード「お前からすれば、さぞかし腹の立つ話だろうよ」
ポーラ「ご冗談を」フフ
ポーラ「私は私自身で築き上げた、今の世界を結構気に入ってるんです」
クロード「……そう、か」
ポーラ「……それにね」
クロード「?」
ポーラ「私の分の仕返しは、ある人に代わりをお任せしてますから」
クロード「ある人……?」
ポーラ「……」
クロード「……」
???「……」
301: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:51:39.09 ID:QDWtMbLU0
クロード「……ぽ、ぽぽぽポーラ、貴様、お前、まさか」
ポーラ「すみませぇん、私、組織に忠誠を誓っておりますのでぇ」
ポーラ「より上位の命令には背くことができないんですぅ。本当に、ごめんなさい」ニパッ
クロード「……」
???「……ねぇ、クロード」
クロード「……はい」
千棘「ポーラから全部聞いたんだけど」
千棘「……まずは、ありがとうね」
千棘「私の事、本気で守ってくれようとしてくれていたんだよね」
クロード「……私の行動はすべてお嬢のための」
千棘「だけどね」
千棘「私だって、いつまでも子供じゃない。子供でいたくないの」
千棘「知るのが辛いことであっても、私は私の意志でそれを知りたい」
千棘「知って、悩んで苦しんで、それでも選んだ選択なら、きっと後悔せずに受け入れる事が出来る」
千棘「そうでなきゃ、いつまで経っても私は、私になれないよ」
クロード「……お嬢」
302: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:53:05.22 ID:QDWtMbLU0
千棘「……でもね」
千棘「そんな貴方のおかげで」
千棘「つぐみは私があげたリボンを引きちぎっちゃうくらい悩んで苦しんだし」
千棘「私は、つぐみと、私の最愛の相手が、二人っきりで私の一番の親友を助けに行く場面を、何も知らずに見送る羽目になっちゃったのよねー……」
クロード「……」カタカタカタ
千棘「あーあ。心が痛いなー。寂しいなー、悔しいなー、切ないなー」
クロード「……」
千棘「ねえ、これって誰のせいかな、ポーラ?」
ポーラ「クロード様ではないでしょうか」
クロード「……」カタカタカタカタ
千棘「……ねえ、クロード」
千棘「貴方の事、嫌いじゃないのよ。酷い事はしたくないの」
クロード「……はい」
千棘「……だから、私のために」
千棘「私の鉄拳、一発限りでいいから、避けずに食らって下さるかしら……?」
クロード「御い
ズボッシャアアアアアアアアアアアア!!!!!
303: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:54:18.85 ID:QDWtMbLU0
~ 午後6時59分 凡矢理駅東口前広場 ~
楽「……」
羽「……」
夜「……」
羽「……」チラ
楽「……」
タッタッタッ タッ タッ
楽「……よう」
つぐみ「……待たせたな」
羽「……」ハァ
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
つぐみ「……それでこの監視か」
つぐみ「憎悪の視線で、体中に穴が開きそうだ」ハァ
楽(……今更ながら、よく無事だったな俺)
つぐみ「ともかく大丈夫だ。私は予定通り、お前と共に行く」
つぐみ「邪魔をするというのならば……」チラリ
羽「……大丈夫よ、つぐみちゃん。私だって自分の生徒が助かるなら、それが一番良いもの」
つぐみ「では……」
304: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:55:01.75 ID:QDWtMbLU0
羽「だけどつぐみちゃん、ちょっと迂闊よ」
羽「学生二人がこんな時間に、大荷物を抱えて神粍町なんて、どうやって行くつもりだったのかしら」
つぐみ「……電車を使うつもりでした。”テンパンチ”の関係者と偽れば、そう不確実な話では……」
羽「ダメよぉ。途中の駅で補導されたらどうするつもり?」
つぐみ「……羽先生には、関係の無いことでしょう」
羽「待って待って、私も意地悪でこんな話をしたんじゃないの」
ブオン ブロロロロロロ ブオンブオン
つぐみ「あ……」
羽「……少しは大人を頼りにしてみても、バチは当たらないでしょ?」ニコッ
楽「……羽姉だって、俺らと大して歳、変わんねーだろ」
羽「……運転は私じゃないから、大丈夫よ?」
夜「……乗る、乗らない、はっきりするヨロシ」イライライラ
305: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:55:52.09 ID:QDWtMbLU0
~ 同日 PM11:21 神粍IC付近 飲酒検問 ~
警官1「はい、そのまま脇に寄って車を止めてくださーい」
警官2「こんばん……ちょ、ちょっと運転手さん随分若いね!?」
警官1「誰か大人は乗ってないのか……あっ。だめだよお姉さん、こんな女の子運転席に乗せちゃあ!!」
夜「……私もう大人ネ」イライライライラ
警官1「」ビクッ
警官2「?どうしたんスか先輩。お嬢ちゃん、じゃあ運転免許証を見せてもらえるかな」
夜「私の故郷、車の運転に免許要らないヨ」
楽「わーっ!! わああーッ!!! ごめんなさいコイツまだ日本語よく分かってなくてッ」
夜「……うっかり失敬。この前偽造してもらったばかりヨ」スッ
警官2「」
つぐみ(終わった)
羽「……こらこら、また日本語間違えてる。”偽造”じゃなくて”発行”でしょう?」ゴゴゴゴゴゴゴ
夜「」ビクッ
夜「……オマワリサン許してヨ。私の故郷、なんでも偽造するから、まぎらわしかったネ」
警官2「……あ、あは、あははははは……か、確認させていただきますね」ニコッ
警官1「特に、厳重に、念入りにね」ニコッ
楽「」
306: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:56:50.61 ID:QDWtMbLU0
警官1「……確認が取れましたので、行ってもらって大丈夫です。ご協力ありがとうございました」
夜「……謝々」ブオーン
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
警官1「……あの4人組、何か感じなかったか」
警官2「……まあ、変な4人ではありましたけど」
警官1「対応を間違ったら、俺達、全員死んでたかも知れんぞ」
警官2「何すかソレ」ハハハ
警官1「……それよりも、ぼちぼち本番だぞ。さっき、隣のICを通過したと連絡が入った」
警官2「……ワケわかんねっすよねぇ……何でこんな田舎に向けて」
警官1「さぁな。俺達は俺達の仕事をするだけだ。バリケードの準備始めるぞ」
警官2「了解」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
307: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:57:21.03 ID:QDWtMbLU0
羽「……楽勝だったでしょ?」ニコニコ
夜「焼豚会の偽装技術は世界一。私の日本語も完璧アル」
楽「ど こ が だ よ」
つぐみ「……」グッタリ
羽「つぐみちゃんも、疲れでぐったりしちゃってるみたいだし」
つぐみ(違うが)
羽「少しは楽ちゃん達の力に、なれた、かな」エヘヘ
楽(正直電車の方がマシだった)
羽「……」
楽「……」
羽「……ねえ、楽ちゃん」
楽「うん?」
羽「楽ちゃんはさ」
羽「もし」
羽「私が、こんな風にじゃなくって」
羽「清楚で優しい、みんなのお姉さんとして、楽ちゃんに想いを告げていたら」
羽「……」
羽「楽ちゃんは、受け入れてくれた?」
308: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:58:00.62 ID:QDWtMbLU0
楽「……」
楽「どー、かな」
楽「羽姉の年上ぶるところとか、口うるさいところとか、実は昔っからちょっと苦手だったんだよな」
楽「皆にはゼータクだとか色々罵られるだろうけど、結局付き合ったりはしなかったと思うわ」
楽「なんか、ごめんな羽姉」ハハハ
羽「……そっ、か」
楽「……おう」
羽「……ありがとね、楽ちゃん」
楽「……」
~ PM11:42 神粍町 ”テンパンチ・プロジェクト”総本部付近 空き地 ~
つぐみ「……羽先生、ありがとうございました」
羽「大丈夫だよ。私の代わりに、大事な教え子を助けに行ってくれるんだもん、このくらいは」
つぐみ「……焼豚会の首領ともなれば、プライベートの都合で私兵の時間を割くような真似、簡単ではなかったはず」
つぐみ「ましてや、組織に益のない、宗教団体との抗争など。派閥が黙ってはいなかったでしょう」
楽「……羽姉」
309: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:58:34.99 ID:QDWtMbLU0
羽「集英組を取り込めるって話があれば、少しは目があったんだけどね」
羽「単なるプライベートのカチコミじゃ、運転手をこの子にお願いするぐらいで、精一杯」テヘ
夜「……」ムスッ
楽「……世話かけたな、羽姉」
羽「だから、大丈夫だって。それよりもつぐみちゃん」
つぐみ「はっ」
羽「小咲ちゃん達と」
羽「楽ちゃんのこと、よろしくね?」
つぐみ「……」
つぐみ「一命に、代えましても」
羽「うーん、一命に代えて、じゃ困っちゃうんだけどなぁ」
つぐみ「しかし……」
羽「……じゃあ、余分な事を考えないように、つぐみちゃんにはこれをプレゼントしまーす」
チャリッ
つぐみ「……この鍵は」
310: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 22:59:43.84 ID:QDWtMbLU0
羽「知っての通り、壊れちゃってるけどね。これからのつぐみちゃんには、きっと必要なモノだよ」
羽「楽ちゃんにキッパリ振られちゃった、私と違って、ね?」ニコッ
楽「……羽姉」
羽「さ、さ。急がないと夜が明けちゃうよ。早く行った行った!」グイグイ
つぐみ「……」
楽「……」
楽「羽姉」
羽「うん?」
楽「またな」
羽「……うん」
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
つぐみ「……」
楽「……」
つぐみ「……頑張ったな、とでも、言ってやればいいのか?」
楽「……放っとけよ」
つぐみ「……」
ポン ポン
つぐみ「頑張ったな」
楽「……へっ」スタ スタ スタ
311: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 23:00:17.53 ID:QDWtMbLU0
つぐみ「……」
―― 「……今からでも、橘を愛してやると言うのなら、追いかけてやれ」
―― 「そうでないならば、せめて」
―― 「忘れてやれ」
―― 「……それが、手を取らぬ者が与えていい、唯一の優しさだと、私は思う」
つぐみ(……)
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
羽「……」
夜「……生意気な餓鬼ネ」
羽「……楽ちゃんは、いい子だよ?」
夜「お前の事ヨ」
夜「こんな辺鄙な片田舎のど真ん中、男に捨てられて一人。涙の一つでも流すほうがカワイゲアルヨ」
羽「……」
羽「……ぐすっ」
羽「うっ、うえっ、うあ、うあうぅぅぅう…………」
夜「……」ヤレヤレ
312: ◆LeBgafvn/6 2015/08/18(火) 23:00:52.49 ID:QDWtMbLU0
~ つづく ~
313: ◆LeBgafvn/6 2015/09/05(土) 22:43:26.62 ID:jQQ1wPqN0
「テンッ!」 『パンチッ!!』
「テンッ!」 『パンチッ!!』
「テンッ!」 『パンチッ!!』
「テンッ!」 『パンチッ!!』
るり「パンチっ!! パンチっ!! っはぁ、パンチッ!!」
るり(……こんな締め切った部屋で、もう何時間こんなことしてるんだろ)
るり(……疲れた)
るり(……暑い)
「テンッ!」 『パンチッ!!』
「テンッ!」 『パンチッ!!』
「テンッ!」 『パンチッ!!』
「テンッ!」 『パンチッ!!』
るり「はあっ、パンチっ、パンチっ」
るり(施設に着くなり小咲と引き離されて、別のグループに入れられちゃった時も結構焦ったけど)
るり(これはちょっと、厳しくなってきたっていうか……)
314: ◆LeBgafvn/6 2015/09/05(土) 22:44:11.93 ID:jQQ1wPqN0
るり(”対象を極限状態に置いて、自意識や倫理観をいったん滅茶苦茶にリセット”)
るり(宗教団体じゃなくたって、警察や軍隊、本格的な学校の運動部だってやってるような、単純で浅はかな手口)
るり(予備知識は、不足無いくらいに、勉強してきたけれど)
るり(だけどっ、分かってたって、辛いものは、辛い……)
スタッフ「おやー? 1213番さん、パンチから力が抜けちゃってますねぇ~」
るり「……パンチッ、はあ、パンチッ」
スタッフ「1213番さん」
るり(……小咲、は、大丈夫、かしら)
スタッフ「1213番さん!!!」グイッ!!!
るり「っあ!!」
るり(1213番、って、私のこと、だっけ?)
スタッフ「はい皆さん、ストップ、ストップ、すとぉぉぉっぷ」
シーン
スタッフ「いけませんよ1213番」ハァー
るり「っ、ぜはっ、はっ、はあ、はあっ……」
315: ◆LeBgafvn/6 2015/09/05(土) 22:44:54.61 ID:jQQ1wPqN0
スタッフ「周りを御覧なさい。疲れているのは皆一緒なんです」
参加者1「ふぅー……ふぅ」
参加者2「……」ゴクゴク
スタッフ「そんな中であなただけ疲れた様子を見せて、手を抜いているのでは、皆の気持ちを一つにすることなどできはしない」
るり「っは、でも、私はっ」
スタッフ「無理な事をお願いしているんじゃありません。皆で力を合わせて、皆で同じ目標に向かってパンチを捧げる」
スタッフ「それが”お父様”と皆さんを繋ぐ、最初にして最大の絆なのですよ」
参加者3「さっすが先輩、いい事仰る!!」
参加者4「僕ももう待ちきれませんよ、早く次のパンチをしましょう、パンチッ、パンチッ!!」
るり「……」
るり(……”関係者に周りを囲ませて、一方的に人格を否定して――)
スタッフ「……よし」
スタッフ「せっかくの機会ですから、1213番にはステージに上がってもらって、皆に正しいパンチのアドバイスを貰うことにしましょうか」
るり「……は?」
スタッフ「さあ1213番、こちらへ」グイグイグイ
るり「きゃっ、あっ、嫌、やめてっ」ズルズル
ドサッ
るり「ぐッ……」
316: ◆LeBgafvn/6 2015/09/05(土) 22:45:40.81 ID:jQQ1wPqN0
スタッフ「さあ、1213番」
参加者5「早く立てよォ」
参加者6「お前のパンチを見せてみろ! なァーんてね! ハハハハハ」
参加者7「ワハハハハハハ」
参加者「……」
参加者「……」
参加者「……」
るり「ひッ……」
参加者「……」
参加者「……」
参加者「……」
るり「……」カタカタ
るり「……ぱ、ぱんちっ、パンチッ、パンチッ!!!」
参加者1「ちょっと腰が入ってないかなー。もうちょっとなんだけどね」
参加者2「声が足りないよ!! 頑張って! ほら腹筋に力入れて!!」サワサワ