【悪魔のリドル】春紀「あれから」
1: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:13:25.09 ID:LlP1D8Wk0
※春紀「暗殺者」の続きです。http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419860851/l50
春紀「じゃあ、行ってくるな」
冬香「うん、行ってらっしゃいお姉ちゃん」
年明けの騒がしい空気も終わり、各々が通勤・通学していく世間の中。
一連の事件から一か月が経った寒河江家は、一先ずの落ち着きを見せていた。
記憶を失ったニオを"抱える"と決めたアタシの決断は、あの後面会に来た犬飼恵介や百合目一にも話した。
片や呆れたように肩を竦め、最後は背中を押し。
片や複雑な表情を浮かべ、『愚か者』を横目で眺め、静かに去って行った。
あれからもう一か月も経ったという事実に、未だに慣れないのはアタシ自信だ。
春紀「………」
ニオ「大丈夫、ですか? ぼーっとしてますよ?」
ふと隣からニオが顔を覗き込むようにして声をかけてきた。
待っていた筈の信号は青になり、周囲の人々が交差点を渡り続けていく中、やっと意識の帰ってきたアタシは苦笑いをしながら後ろ髪を掻いた。
春紀「あぁ、大丈夫大丈夫。ちょっと考え事しててさ」
ニオ「考え事、ですか」
春紀「恵介さんと、理事長の事でね。」
ニオ「やっぱり、直接会うべきでしょうか」
春紀「いや、それはやめておこう。多分……(どっちも、"走り鳰"を赦しはしない)」
ニオには、直接二人に顔を合わせない様に調整してもらっている。
事件の経緯や理事長とどういう関係なのかという事は話だけはしたものの、流石に会わせるのには躊躇いがある。
………それでも、いずれは決着をつけなきゃいけない時は来るだろうな。
春紀「っと、ごめんごめん。仕事遅れちまうな」
ニオ「ふふ、しっかりしてくださいね?春紀さん。ぼっとしすぎですよ」
だけど、今のこの日常に満足しているのは事実だ。
全てを忘れてしまったニオには、走り鳰の面影は殆ど見受けられない。
それどころか、家族の一員の様な優しい存在になっている。
面倒見の良いお姉さん、といったところだろうか。
ガサツなアタシと違って細かいところにも目を配るし、実際デリケートな幼い妹や弟の扱い方はとても上手い。
アタシは、姉妹達が屈託のない笑顔を見せた時、ニオを引き取って良かったと思った。
この時までは、そう確かに思えた。
アタシは、何時までも弱い存在だと気付かされる時までは。
春紀「じゃあ、行ってくるな」
冬香「うん、行ってらっしゃいお姉ちゃん」
年明けの騒がしい空気も終わり、各々が通勤・通学していく世間の中。
一連の事件から一か月が経った寒河江家は、一先ずの落ち着きを見せていた。
記憶を失ったニオを"抱える"と決めたアタシの決断は、あの後面会に来た犬飼恵介や百合目一にも話した。
片や呆れたように肩を竦め、最後は背中を押し。
片や複雑な表情を浮かべ、『愚か者』を横目で眺め、静かに去って行った。
あれからもう一か月も経ったという事実に、未だに慣れないのはアタシ自信だ。
春紀「………」
ニオ「大丈夫、ですか? ぼーっとしてますよ?」
ふと隣からニオが顔を覗き込むようにして声をかけてきた。
待っていた筈の信号は青になり、周囲の人々が交差点を渡り続けていく中、やっと意識の帰ってきたアタシは苦笑いをしながら後ろ髪を掻いた。
春紀「あぁ、大丈夫大丈夫。ちょっと考え事しててさ」
ニオ「考え事、ですか」
春紀「恵介さんと、理事長の事でね。」
ニオ「やっぱり、直接会うべきでしょうか」
春紀「いや、それはやめておこう。多分……(どっちも、"走り鳰"を赦しはしない)」
ニオには、直接二人に顔を合わせない様に調整してもらっている。
事件の経緯や理事長とどういう関係なのかという事は話だけはしたものの、流石に会わせるのには躊躇いがある。
………それでも、いずれは決着をつけなきゃいけない時は来るだろうな。
春紀「っと、ごめんごめん。仕事遅れちまうな」
ニオ「ふふ、しっかりしてくださいね?春紀さん。ぼっとしすぎですよ」
だけど、今のこの日常に満足しているのは事実だ。
全てを忘れてしまったニオには、走り鳰の面影は殆ど見受けられない。
それどころか、家族の一員の様な優しい存在になっている。
面倒見の良いお姉さん、といったところだろうか。
ガサツなアタシと違って細かいところにも目を配るし、実際デリケートな幼い妹や弟の扱い方はとても上手い。
アタシは、姉妹達が屈託のない笑顔を見せた時、ニオを引き取って良かったと思った。
この時までは、そう確かに思えた。
アタシは、何時までも弱い存在だと気付かされる時までは。
2: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:13:47.38 ID:LlP1D8Wk0
外見の変化
春紀『ピン止めもシンプルに一つに、髪もショートヘアへ。爪は何もつけずそのまま、服装もジーンズにパーカーなどラフな物を着ている』
ニオ『瞳の鋭さがなくなり、温厚な雰囲気を醸し出している。癖っ毛服装は体型も合う冬香の服で、スカートやカーディガンなどの落ち着いた印象になった。』
身体の異常
春紀『普通に話す分には問題は無い程に。ただ、時々四肢に痺れが走り動けなくなる時がある』
ニオ『記憶は以前戻らず。骨折なども完治し、素肌が見える部分の傷は無くなった。度々激しい頭痛に襲われている』
3: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:14:27.28 ID:LlP1D8Wk0
春紀「ふぅ……」
時刻は昼。まだ身体に無理をさせる訳にはいかないと、土方仕事ではなくスーパーのアルバイトから始める事にした。
休憩時間になってもせっせと働き続けるニオを遠巻きに眺めながら、ビリビリと痺れて上手く動かせない両手に視線を落とす。
両脚もガクガクと膝が震え、立てたとしても歩くのは厳しい。それでも杖を突かずに済んでいるのは、この症状が長くは無い。
"不規則にやってくるが、じわじわと症状は弱まっていく"。それが残された障害。
店長はとても気前が良い人で、この障害があるという事を理解した上でここに置いてもらっている。
本当に、感謝してもしきれない。
だけど、失敗だと思った事もある。
兎角「……………」
専業主婦よろしく自宅の警備+家事を担当していた筈の東が、このスーパーで働いていたという事。無言でアタシを見下ろしている。
最初は名簿の中に東兎角が見えた時点で辞退しようと考えたが、店長さんの人の良さや家からの距離などを考えて入った。
入って早々、全力でぶん殴られたけど。
兎角『……仕方がない、事にしてやる。私なら、まだ譲歩してやる』
春紀『っつつ……ごめん。暫くしたら、また辞めてくから』
兎角『晴には絶対に関わるな。もうこれ以上面倒事に巻き込むな………絶対に巻き込まないでくれ。』
初めは怒りに満ちていた表情が、少しずつ悔しげな表情へと変わっていったのがとても記憶に残っている。
そして、ぶん殴られた頬の痛みも。
本当に、アンタは晴ちゃんを救えなかった事を今もずっと悔やんでいるのか。
走り鳰の幻影は、今も東の頭にチラついている……かもしれない。
春紀「……えーっと、どうかしたんかい?」
兎角「売れない」
春紀「え?」
兎角「どうやっても売れないんだ、私の担当場所のウィンナー」
………今は、どうやらスーパーの事の方が頭を埋め尽くしてるんだろうな。
4: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:16:04.79 ID:LlP1D8Wk0
春紀「……という訳なんだ」
ニオ「はぁ」
兎角「………」
ニオ「(凄い剣幕で見つめられますね……)」
春紀「(まぁ、色々と思うところはあると思う)」
兎角「……ニオ、だったか。何か策はないか?」
ニオ「あっ、えぇっと……その、頑張って笑ってみる、とかですかね?」
兎角「笑う……」
ニタァ。
そんな擬音が聞こえてきそうな不敵な笑みと共に鋭い視線を向ける兎角の表情は、とても人が寄り付くようなものとは言えないだろう。
普段から無口・無表情で過ごしている東を見れば、まぁそれは笑う事が難しいと言われても分からなくはない。
でも、あの胡散臭さ全開の笑みからふわりと柔らかい笑みを浮かべられるようになっているニオを見ると、そうは思えない。
兎角「ふん」ニタニタ
ニオ「…っ…っ……」ピクピク
春紀「(これ、止めた方がいいか? めちゃくちゃ笑い堪えてピクピクしてるしなぁ)」
兎角「こんな感じか……どうだ、ニオ」ニチャッ
ニオ「ぶふっ」
春紀「あ、あー! 良いんじゃねぇかな? 結構笑えてるじゃん、うん」
兎角「そうか。感謝するぞ、ニオと寒河江」
限界を迎えて口元を抑えながら噴き出すニオを急いで後ろに隠しながら、苦笑いを浮かべてアタシが前に出る。
まぁでも、無表情よりは多分マシ………だと思いたいこの笑顔。
ただ、そこでアタシとニオに感謝の言葉まで口にしたのは意外だと思う。
それ以前に、アタシや"走り鳰"の姿をしたニオは東にとって最も目にしたくない存在であると言えるだろう。
それでも、こうして普通に話しかけたりしてくるのは――――――――晴ちゃんの影響だろうか。
チラつく。
『……あ゛ッは。お前、は、"東のアズマ"の、本物を―――』
互いの額が叩き付けられ、倒れ込む瞬間に呟いた走り鳰の言葉が。
春紀「……」
ニオ「また考えこんじゃってますね……」
兎角「まだ脳がおかしいんじゃないか」
ニオ「まだ一か月くらいですから、仕方ないんですよ」
春紀「はっ……あ、あぁ、どういたしまして」
ニオ「もう仕事の時間ですよ」
兎角「……」
春紀「あぁ、ごめんごめん」
頭を振り払い、痺れの収まった両手を軽く動かしながら、ニオと同じ持ち場へと歩いていく。
歩いていく一回り小さい後ろ頭を眺めながら、一つ気付いた事があった。
5: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:16:39.40 ID:LlP1D8Wk0
幻影に未だ囚われているのは、自分の方だ。
6: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:17:31.95 ID:LlP1D8Wk0
スーパーのアルバイトが一通り終わった。
東の方は、本当にアタシとニオがヤバいと思ったニタニタとした笑顔を浮かべていたが、それが意外と人が寄ってきていたようだ。
なんというか、傍目に見ても端正な顔立ちと凛とした佇まいの東が表情を崩すというギャップに惹かれていたんだろう。
主におばさん連中に人気があった様子だった。
本人はたちまち売り場のウィンナーが消えていくのを眺めながら、フッと小さく口元を綻ばせていた。
春紀「……よし。今日は、これで終わりか」
ニオ「お疲れ様です。痺れ、大丈夫ですか?」
春紀「今日は割と調子良いみたいだ。だから、何時ものところ寄って行ってもいいか?」
ニオ「冬香ちゃんも、今日はその日だって知ってたみたいですよ」
制服から着替え終えたアタシ達は、夕日が優しく降り注ぐアスファルトの道を歩いていた。
十二月の戦いで亡くなった人々は、纏めて同じ場所に弔う事にした。
この街の山を少し上がったところにある、静かな墓地。そこに、週に一度は弔いに来ている。
アスファルトの道が舗装もされていない獣道に差し掛かったところで、それまで無言だったニオが口を開く。
俯きがちな彼女は、
ニオ「……私、何時もこの日になると頭痛が激しくなるんです。前に病院に居た時とは比にならない位。」
春紀「そうだったのか。……無理にこなくていい、つってもな」
ニオ「はい。これは"走り鳰"の責任ですから。でも、この激しい頭痛に襲われてる時が……」
一番、救われている時だと。
そう口にした瞬間、何も存在していなかった畦道から飛び出してきた黒い影が、ニオの肩を擦れ違いざまに殴り付けた。
それも、素手などではなく、明らかに鈍器らしきものを握っていた。
7: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:19:01.85 ID:LlP1D8Wk0
ニオ「あぐ、ぁっ―――」
春紀「ッ、ニオ!!」
ダラリと力なく垂れた右腕を庇うようにしたまま、地面に倒れようとしたニオを急いで駆け寄り抱きとめる。
凄まじい速度で右から左の草木へと飛び交っていった黒い人間(?)らしきモノは、そのまま一気に加速し、ガサガサと今度は明確に速度だけを上げてこちらへと突撃する。
ニオを抱きとめたままの春紀は、そのままニオを庇うようにして倒れ込む。
宙を抉り取るかのような重い鈍器………………ネイルハンマーは、しかし通り過ぎる寸前で止まった。
倒れ込んだアタシがすぐに見上げた先にあったのは、
『 こ ん に ち は 。 ます』
それを表現するのに、必要な言葉はあったはずだった。
なのに出てこなかったのは、全身が凄まじい悪寒に襲われて、そして本能からくる"恐怖"を感じたからだ。
コイツは、"危険だ"――――――――――
そう考えていた時、痛みから涙を零し、叫び続けるニオの必死な瞳が、視界から消えた。
アタシの身体が、凄まじい力で蹴り飛ばされて斜面に叩き付けられたと気付くまで、数秒かかった。
8: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 06:19:54.37 ID:LlP1D8Wk0
ニオ「がほっ、げぽっ……」
??「あァーあ、軽ゥーく蹴っ飛ばしただけなのにもう伸びかけてんのかよ、しけてんなァ」
ニオ「は、るぎ、ざ、んっ」
??「………なんだっけ、あァ、オマエが『―――』を殺したヤツだっけ。あ、そうだ!オマエ殺す為にず~っと待ってたんだったな!ひひひ」
明らかに人間とは思えない程の怪力の両手で締め上げられるニオは、顔を青くし、口からごぽごぽと泡をこぼす。
地面に足がつかない程の高さまで持ち上げられ、バタバタと足が力なく揺れる。
それでも、唸る様な声でアタシの名前を呼ぶ。
その声で、アタシはゲラゲラと笑う襲撃者へと全力の反転で体当たりを決め、その線の細い体がくの字に曲がって吹き飛ばされる。
その拍子に地面に投げ出されたニオへと駆け寄り、
ニオ「ごほっ、げほげほっ!」
春紀「大丈夫、か?」
ニオ「はっ、春紀さん、こそ、血がっ!!」
額から流れる血に片手で触れ、思っている以上に額が割れている事に気が付いた。少し、クラクラするのもこのせいか。
髪、切っといてよかったなと今更に思う。明らかに視界の広さが違ったし、さっき蹴飛ばされる時も咄嗟に腕でガード出来たのも素早く気が付けたからだ。
頭は、庇いきれなかったけど。
殴り付けられたニオの右肩はかなり重傷で、かなり赤く腫れあがっている。
そして、どこかで切ったのか痛々しい程に皮が裂けている。
あまりにも、痛々しい。
??「……あァ、そりゃ"くぎ抜き"の方でぶん殴ったから痛ェだろうなぁ~!!」
ゆらゆらと不安定な動きで起き上がった襲撃者は、未だに黒いローブにフードまで目深に被っている為、顔も見えない。
だが、この声に聞き覚えはあった。それに、こうしてアタシ達に因縁があるのは………一人しか居ない。
春紀「番場、アタシはもうただ犬死にする訳にはいかなくなったんだ」
真夜(?)「ハッ、んじゃさっさとそっちを殺らせろ」
春紀「ダメだ、ニオの生死はアタシに責任がある」
真夜(?)「ひひ、やっぱり"これ"しかねェよなァ!?」
素早く構えたアタシに、ネイルハンマーを携えた――――――真昼と真夜、半々の表情の人物が迫る。
恐怖したのは、まさに綺麗に二つに分かれた人物像が"そのまま話している"様に見えたからだ。
片やまさしく満面の笑みを浮かべ、片や狂気的に歪みきった笑みを浮かべ。
狂ってしまった、少女。
11: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 19:07:36.11 ID:LlP1D8Wk0
※R-18表現
まるで獣のように姿勢を低くして駆け抜ける"真夜"に対し、額の血を袖で拭ったアタシはパーカーを脱ぎ捨てる。
シャツだけの身軽な姿になったアタシは、右腕に巻き付けたパーカーでネイルハンマーの一撃を躱す。
布に包まれ、手元が不自由になった懐に居る真夜の後頭部へと肘打ちを叩き込もうと力を込める。
が、
真夜「いいねェ、ちゃんと動ける様になってんじゃねぇかよォ!!」
振り下ろされた肘打ちを、可動出来る限界を超えたように見えるほどに首をぐるりと回し、驚きを隠せないアタシの脇腹に逆に肘を入れる。
寸での所でガードしきれなかった脇腹に突き刺さる凄まじい衝撃に思わず酸素が吐き出される。
しかし、そこでなんとか踏ん張り、身体を駒の様に回転させて更に蹴りを叩き込もうとする真夜の脚を受け止め、不格好に背負い投げる。
地面に叩き付けられようとした真夜は右腕をバネの如く折り曲げて衝撃を受け流し、そのまま下から上へと跳ね上がる。
あまりにも違う速度と力に、アタシは無様にも顎に膝蹴りを掠め、グラグラと視界が揺れていた。
春紀「あ、がっ……」
真夜「まァ、"追い付けなければ"意味はねェけどな!!」
フラつくアタシを押し倒し、その拍子に後頭部が地面に叩き付けられ更に視界が狭くなっていく。
馬乗りになった真夜は、ニタリと粘つく様な笑みを浮かべたと思うと、アタシのシャツを取り出した小さなナイフで真っ二つに引き裂く。
下着ごと取り払われ露わになったところどころ傷痕の残る体を舐めまわす様に眺めた真夜は。
春紀「ぎッ、あぁぁぁぁぁぁ!!!」
真夜「お~痛そうだなァ」
ナイフでガリガリと。
まるで子供が壁に落書きをするかのように、無造作にナイフでアタシの肌を切り刻む。
ぐち、ぐち、という皮が裂かれる音と共に走った激しい痛みに、歯をギリギリと軋ませて地面の土を握りしめる。
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い
まるで獣のように姿勢を低くして駆け抜ける"真夜"に対し、額の血を袖で拭ったアタシはパーカーを脱ぎ捨てる。
シャツだけの身軽な姿になったアタシは、右腕に巻き付けたパーカーでネイルハンマーの一撃を躱す。
布に包まれ、手元が不自由になった懐に居る真夜の後頭部へと肘打ちを叩き込もうと力を込める。
が、
真夜「いいねェ、ちゃんと動ける様になってんじゃねぇかよォ!!」
振り下ろされた肘打ちを、可動出来る限界を超えたように見えるほどに首をぐるりと回し、驚きを隠せないアタシの脇腹に逆に肘を入れる。
寸での所でガードしきれなかった脇腹に突き刺さる凄まじい衝撃に思わず酸素が吐き出される。
しかし、そこでなんとか踏ん張り、身体を駒の様に回転させて更に蹴りを叩き込もうとする真夜の脚を受け止め、不格好に背負い投げる。
地面に叩き付けられようとした真夜は右腕をバネの如く折り曲げて衝撃を受け流し、そのまま下から上へと跳ね上がる。
あまりにも違う速度と力に、アタシは無様にも顎に膝蹴りを掠め、グラグラと視界が揺れていた。
春紀「あ、がっ……」
真夜「まァ、"追い付けなければ"意味はねェけどな!!」
フラつくアタシを押し倒し、その拍子に後頭部が地面に叩き付けられ更に視界が狭くなっていく。
馬乗りになった真夜は、ニタリと粘つく様な笑みを浮かべたと思うと、アタシのシャツを取り出した小さなナイフで真っ二つに引き裂く。
下着ごと取り払われ露わになったところどころ傷痕の残る体を舐めまわす様に眺めた真夜は。
春紀「ぎッ、あぁぁぁぁぁぁ!!!」
真夜「お~痛そうだなァ」
ナイフでガリガリと。
まるで子供が壁に落書きをするかのように、無造作にナイフでアタシの肌を切り刻む。
ぐち、ぐち、という皮が裂かれる音と共に走った激しい痛みに、歯をギリギリと軋ませて地面の土を握りしめる。
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い
12: ◆UwPavr4O3k 2016/01/01(金) 19:08:05.74 ID:LlP1D8Wk0
春紀「はッ……はッ……」
真夜「過呼吸みてェになってるけど大丈夫かァ? ヒハハ、ん~」
春紀「っひぐッ」
痛みに反射的に零れた涙を、ペロリと長い舌で舐め上げる。
それだけに終わらない真夜は、そのままアタシの顔中を舐め続け、ピクピクと顔の筋肉が引き攣る様子を見て楽しんでいるようだった。
アタシの思考は、もう痛みに支配されて訳が分からなくなっていた。
一通り顔中がべたべたになった後、最後にニヤニヤとした笑みを一層深くした真夜は、
真夜「………中々良い反応するじゃねぇかァ。ちょっと、興奮してきたぜ」
その舌を。
アタシの左目に差し込み、深く深く。
抉り取る様に。
春紀「ッ―――――――――」
声にならない悲鳴を上げ、がむしゃらに両腕と両脚に力を入れて暴れたアタシの鳩尾に重い拳が振り下ろされる。
激しい衝撃に飛んでいく意識。ビクッ…ビクッ…と身体が痙攣し、虚ろな表情のアタシの眼球を舐めまわす。
ぐちゃぐちゃになった左目から啜り上げた涙を、ペッと吐き捨てる。
真夜「あァ~不味い。やっぱ舐めるまでが興奮すんだよなァ~」
不満そうな表情を浮かべ、手持無沙汰の様にアタシの胸を捏ね回す。
ただ、もう、アタシの意識はほとんどなく、ドクドクと流れるナイフ傷と左目の痛みと痺れに放心していた。
13: ◆UwPavr4O3k 2016/01/03(日) 01:44:11.60 ID:x3nhYeTf0
※ニオ視点
大切な人が嬲られている。
それは、激しい頭痛に襲われている時に度々覚える感覚と同じだった。
殺す。殺す。殺す。殺す。ただ純粋な、その殺意。
『さっさと、体を返せ』
脳裏に響く声を、この時初めて聞いた。
ニオ「………離、せ。」
真夜「あ?」
ニオ「((((((その人から離れろ)))))」
右肩をダラリと垂らしたまま、立ち上がった私はその瞳に力を込めて春紀さんに馬乗りになった黒服の女を見つめる。
不機嫌そうに眉を顰めて振り返った黒服は、はっと何かに気が付いたように急いで腕で顔を隠す。
その瞳は、悍ましい程に赤く輝いていた。
真夜「チッ、クソがァ!!」
ギリギリと、幻術に抗おうと暴れる彼女だったが、加減を知らない私の術は今出せる全ての力で拘束していた。
徐々にぐったりとしたまま動かない春紀さんの上から立ち上がり、そのまま数メートル程後ろに下がって行ったところで立ち止まる。
ニオ「はぁッ、はぁッ」
砕けた右肩を左手で支えながら、しかし視線だけは彼女から離さない。
使い続けている間、ずっと心臓が締め付けられるような苦しさと頭痛に苛まれている。
正直、この地獄の様な感覚から早く抜け出したい。でも、そうしてしまったら、きっと春紀さんは救えない。
真夜「ッ、ぐがっ」
そして、知らぬ間に口にしていた言葉によって黒服が自分の首を絞め始める。
殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す―――――――――ころ、
春紀「や、めろッ……!!」
ビクッ、と私は肩を震わせてすぐさま中断する言葉を口にする。
初めはビクビクと痙攣していた黒服は、そのままストンと意識を失い地面に倒れ伏す。
だが、今はそれよりも。
ニオ「春紀さっ、早く、早く救急車呼びます!」
春紀「たの、む」
意識を失った春紀さんが最後の力を振り絞って叫んだ言葉は、私を止める言葉だった。
もし、あの声が無ければ、私は黒服を殺してしまっただろう。
大切な人が嬲られている。
それは、激しい頭痛に襲われている時に度々覚える感覚と同じだった。
殺す。殺す。殺す。殺す。ただ純粋な、その殺意。
『さっさと、体を返せ』
脳裏に響く声を、この時初めて聞いた。
ニオ「………離、せ。」
真夜「あ?」
ニオ「((((((その人から離れろ)))))」
右肩をダラリと垂らしたまま、立ち上がった私はその瞳に力を込めて春紀さんに馬乗りになった黒服の女を見つめる。
不機嫌そうに眉を顰めて振り返った黒服は、はっと何かに気が付いたように急いで腕で顔を隠す。
その瞳は、悍ましい程に赤く輝いていた。
真夜「チッ、クソがァ!!」
ギリギリと、幻術に抗おうと暴れる彼女だったが、加減を知らない私の術は今出せる全ての力で拘束していた。
徐々にぐったりとしたまま動かない春紀さんの上から立ち上がり、そのまま数メートル程後ろに下がって行ったところで立ち止まる。
ニオ「はぁッ、はぁッ」
砕けた右肩を左手で支えながら、しかし視線だけは彼女から離さない。
使い続けている間、ずっと心臓が締め付けられるような苦しさと頭痛に苛まれている。
正直、この地獄の様な感覚から早く抜け出したい。でも、そうしてしまったら、きっと春紀さんは救えない。
真夜「ッ、ぐがっ」
そして、知らぬ間に口にしていた言葉によって黒服が自分の首を絞め始める。
殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す―――――――――ころ、
春紀「や、めろッ……!!」
ビクッ、と私は肩を震わせてすぐさま中断する言葉を口にする。
初めはビクビクと痙攣していた黒服は、そのままストンと意識を失い地面に倒れ伏す。
だが、今はそれよりも。
ニオ「春紀さっ、早く、早く救急車呼びます!」
春紀「たの、む」
意識を失った春紀さんが最後の力を振り絞って叫んだ言葉は、私を止める言葉だった。
もし、あの声が無ければ、私は黒服を殺してしまっただろう。
14: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 04:11:48.16 ID:dbDR2CMg0
※ニオ視点
ニオ「……」
あれから、"ミョウジョウ学園付属"の総合病院へと運ばれた春紀さんに緊急手術が行われることになった。
目玉を弄られた事によって細菌が著しく視力を低下……もしくは、失ってしまうかもしれないという事を聞いた時、私は自分の目を差し出したいと思った。
私のせいで、直接的な関係は無い彼女が巻き込まれてしまった。
その時、自分自身の奥底から響く声に気付くことが出来たのは………"自分何て消えてしまえばいい"と、少しでも考えたからなのかもしれない。
『チッ、"入れ物"を貸した位でいい気になってんなよ、偽者』
ニオ「(……あなた、は。)」
『早く体を返してほしいッスけどねぇ~? いつまでも寒河江春紀と御飯事してもらっちゃ困るんスけどォ)』
寒気。
粘々とした、怖気を感じる笑みを張り付けたまま赤い双眸で私を見つめていたのは、もう一人の私。
その姿は、以前意識を取り戻した時に見ていた姿見に映る自分自身の姿。
ニオ「(走り、"鳰")」
『お前はただのウチが作った"代わり"。これで理解したッスか?でなきゃ、(((((この力をお前が使いこなす事なんて出来ない))))』
瞳が一層赤く輝いたかと思うと、まるで自分の思考自体が全て上書きされる……ザラザラとノイズが掛かったかのように、その言葉以外の全てが消え去っていく。
浸透した言葉は、やがてそう思う事が"当然"だと、私の頭の中を支配していく。
でも、私は強く頭を振り払う。それまで浮かんでいた全ての走り鳰のイメージが、弾けていく。
ハッと気付いた時には、時計の針が20時を指していた。春紀さんが運ばれてきたのは18:00だから、もう二時間も意識を失っていたのだろうか。
まるで夢の中にいた様なふわふわとした感覚に陥っていた私は、ふとポタポタと滴る液体を袖で拭う。
異常な量の発汗に、凄まじい寒気を感じる。
ニオ「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
そして、不意に見やったその視線の先。
悍ましい程に強烈な視線を湛えた、"黒い獣"の様な気配が―――――――――
ニオ「……」
あれから、"ミョウジョウ学園付属"の総合病院へと運ばれた春紀さんに緊急手術が行われることになった。
目玉を弄られた事によって細菌が著しく視力を低下……もしくは、失ってしまうかもしれないという事を聞いた時、私は自分の目を差し出したいと思った。
私のせいで、直接的な関係は無い彼女が巻き込まれてしまった。
その時、自分自身の奥底から響く声に気付くことが出来たのは………"自分何て消えてしまえばいい"と、少しでも考えたからなのかもしれない。
『チッ、"入れ物"を貸した位でいい気になってんなよ、偽者』
ニオ「(……あなた、は。)」
『早く体を返してほしいッスけどねぇ~? いつまでも寒河江春紀と御飯事してもらっちゃ困るんスけどォ)』
寒気。
粘々とした、怖気を感じる笑みを張り付けたまま赤い双眸で私を見つめていたのは、もう一人の私。
その姿は、以前意識を取り戻した時に見ていた姿見に映る自分自身の姿。
ニオ「(走り、"鳰")」
『お前はただのウチが作った"代わり"。これで理解したッスか?でなきゃ、(((((この力をお前が使いこなす事なんて出来ない))))』
瞳が一層赤く輝いたかと思うと、まるで自分の思考自体が全て上書きされる……ザラザラとノイズが掛かったかのように、その言葉以外の全てが消え去っていく。
浸透した言葉は、やがてそう思う事が"当然"だと、私の頭の中を支配していく。
でも、私は強く頭を振り払う。それまで浮かんでいた全ての走り鳰のイメージが、弾けていく。
ハッと気付いた時には、時計の針が20時を指していた。春紀さんが運ばれてきたのは18:00だから、もう二時間も意識を失っていたのだろうか。
まるで夢の中にいた様なふわふわとした感覚に陥っていた私は、ふとポタポタと滴る液体を袖で拭う。
異常な量の発汗に、凄まじい寒気を感じる。
ニオ「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
そして、不意に見やったその視線の先。
悍ましい程に強烈な視線を湛えた、"黒い獣"の様な気配が―――――――――
15: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 04:12:41.22 ID:dbDR2CMg0
兎角「―――い。おい、聞こえてないのか?」
綺麗に皺が伸ばされたハンカチが私の頬に押し付けられた時、全ての寒気が払われていった。
自然に荒くなっていた息を胸に手をあてて整える。軽く会釈して、差し出されたハンカチを受け取って首回りと額の汗を拭う。
ニオ「すいません、ありがとうございます。あの、これ、洗って返しますね」
兎角「出来ればそうしてくれ。………寒河江はどうなった?」
救急車に連絡した後。
まず第一に連絡しようと思った相手は彼女だった。
これは春紀さんにも言ってなかったけど、こっそり連絡先を交換していた私達は、少しずつだけど打ち解けた。
東さんにとって、私の顔は仇敵のまま。できる限り見たくもないだろうから、最初の頃はずっとマスクをつけたり、工夫した。
でも彼女は、少しだけ口元を緩めて、不器用な表情で、
兎角『今のお前は今のお前だろ。もしも厄介事が起きたら、私に連絡しろ。晴に届く前に手くらい貸してやる』
その一言に私はどれだけ救われたか。それ以来、顔をわざと隠す事はやめた。
なんだか、隠す事自体が失礼だと思ってしまったから。
ニオ「……左目、もう見えなくなってしまうかもしれないらしいです。」
兎角「……そうか」
ニオ「私が、あの時、もっと早く……"この力"に気付いていれば」
兎角「走り鳰の幻術か」
ニオ「皮肉、です。私のこの力のせいで色んな人達に迷惑をかけたのに、この力を頼らなきゃ、私は何もできなかった」
兎角「……お前は、その幻術を扱えたのか?」
ニオ「強く念じて、思いを叫んだら、視界が鮮明に広がって黒服の人が苦しんでいました。」
兎角「お前は現場に居た相手の風貌を覚えているか?」
ニオ「……黒いフード付きのコートに、銀髪。瞳の色はくすんだ様な灰色。」
兎角「……心当たりがある。だが、ソイツは暫く行方を暗ましている。出てきたって事は、"走り鳰"を殺す準備が整ったって事だろうな。」
ニオ「殺す、準備?」
兎角「要は気持ちの問題だろう。踏ん切りがついたんだろう、ヤツにとって親しい人間が死んだ事に。」
ニオ「……」
兎角「お前はどうする。もし私がお前の立場なら、何て優しい言葉は私には言えない。だが、」
静かに立ち上がった東さんは、それまでの無表情に少しだけ感情の色を乗せて口にする。
兎角「ニオはニオだ。お前は寒河江にとって、左目を失ってでも守るだけの"存在"だった事を、しっかりと受け止めろ」
それだけを口にした黒いコートを纏った青髪の彼女は、長い廊下を歩いて立ち去って行った。
16: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 04:42:06.45 ID:dbDR2CMg0
※春紀視点
春紀「……あ?」
ふと、意識が覚醒した。
暗闇だった視界には、確かに鮮明に景色が映し出され………その景色に、見覚えがあった。
まず、この住宅街にアタシは――――を殺しに来ていた。
クリスマスの直後の話だ、コートにタイツまで着込んでいたアタシの右脚に、裁ちバサミが凄まじい速度で飛来する。
突き刺さり、血が溢れ出す。思わず痛みで膝から崩れてしまう。
何かが、アタシに語り掛ける。だが、そこからはこれまでの記憶になかった。
○○「ねぇ、結局春紀ちゃんは何がしたかったの? アタシ達を殺して。その報酬で家族とやらを守るって言ってたけど」
何者かは、全身が固くなり上手く動かせないアタシの元へと歩み寄り、片手に握りしめたハサミを振り上げる。
○○「罪を抱える?抱えて生きていく?本当にそれで"赦された"つもりなの?……ふざけるな」
振り上げられたハサミを、アタシは自然と凝視する。
○○「お前のせいで何人死んだ。お前の"救ったつもりになっている偽善の心のせいで"、何人が死んだ?」
まるでコマ送りされるかのように、アタシの左目に振り下ろされるハサミを見ていた。
○○「思い出せ!!!」
そして、そのハサミが突き刺さり、明確な激痛が全身を襲った瞬間―――――――――
春紀「っ、んぐッ!!」
ニオ「春紀さん!!」
左目から感じるギリギリと締め付けられるような痛みに、思わずベッドから跳ね上がる様に上半身を起こす。
左目を、着けられた眼帯の上から抑えながら、荒い息を整える。
そして、ゆっくりと視線を横に見やると。
心配そうに眉を歪めるニオの姿に、少しだけ安心した。
春紀「あ、たしは。」
ニオ「丸二日、ずっと眠ってたんです。……………それと、左目の視力は」
戻る事は無い。そういわれると、左目には目玉の感触はあっても実際に瞼を開く動作をしたところで左の視界は完全に真っ黒だ。
だが、そんな事より。
春紀「お前、殴られた肩は!?」
ニオ「打撲と、少し骨にヒビが入った位です。……今回の事は、その、本当に、すいま「はは、あぁ、良かった…」
ニオ「え?」
春紀「……お前に大事が無くて良かった。」
ニオ「……」
春紀「左目は見えなくてもパートは続けられる。胸とか腹とかは、ズタズタに傷痕が残ったけど、前の時の傷と混ざってるから変わらない。ニオが無事でよかった」
春紀「……あ?」
ふと、意識が覚醒した。
暗闇だった視界には、確かに鮮明に景色が映し出され………その景色に、見覚えがあった。
まず、この住宅街にアタシは――――を殺しに来ていた。
クリスマスの直後の話だ、コートにタイツまで着込んでいたアタシの右脚に、裁ちバサミが凄まじい速度で飛来する。
突き刺さり、血が溢れ出す。思わず痛みで膝から崩れてしまう。
何かが、アタシに語り掛ける。だが、そこからはこれまでの記憶になかった。
○○「ねぇ、結局春紀ちゃんは何がしたかったの? アタシ達を殺して。その報酬で家族とやらを守るって言ってたけど」
何者かは、全身が固くなり上手く動かせないアタシの元へと歩み寄り、片手に握りしめたハサミを振り上げる。
○○「罪を抱える?抱えて生きていく?本当にそれで"赦された"つもりなの?……ふざけるな」
振り上げられたハサミを、アタシは自然と凝視する。
○○「お前のせいで何人死んだ。お前の"救ったつもりになっている偽善の心のせいで"、何人が死んだ?」
まるでコマ送りされるかのように、アタシの左目に振り下ろされるハサミを見ていた。
○○「思い出せ!!!」
そして、そのハサミが突き刺さり、明確な激痛が全身を襲った瞬間―――――――――
春紀「っ、んぐッ!!」
ニオ「春紀さん!!」
左目から感じるギリギリと締め付けられるような痛みに、思わずベッドから跳ね上がる様に上半身を起こす。
左目を、着けられた眼帯の上から抑えながら、荒い息を整える。
そして、ゆっくりと視線を横に見やると。
心配そうに眉を歪めるニオの姿に、少しだけ安心した。
春紀「あ、たしは。」
ニオ「丸二日、ずっと眠ってたんです。……………それと、左目の視力は」
戻る事は無い。そういわれると、左目には目玉の感触はあっても実際に瞼を開く動作をしたところで左の視界は完全に真っ黒だ。
だが、そんな事より。
春紀「お前、殴られた肩は!?」
ニオ「打撲と、少し骨にヒビが入った位です。……今回の事は、その、本当に、すいま「はは、あぁ、良かった…」
ニオ「え?」
春紀「……お前に大事が無くて良かった。」
ニオ「……」
春紀「左目は見えなくてもパートは続けられる。胸とか腹とかは、ズタズタに傷痕が残ったけど、前の時の傷と混ざってるから変わらない。ニオが無事でよかった」
17: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 04:43:09.60 ID:dbDR2CMg0
ニオ「………私には、あなたの左目と身体を差し出すだけの価値が、本当にあるんですか?」
18: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 05:03:04.68 ID:dbDR2CMg0
※ニオ視点
春紀「……あった」
春紀さんは、眼帯に隠された瞳と右の瞳を閉じると、一言そう呟いた。
……東さんは、私はそれを失ってでも守るべき存在だったと言ってくれた。
こうして目の前の春紀さんが口にした以上、それは本当の事だったんだろう。
でも、私は、
ニオ「……走り鳰と、話しました。彼女はまだ、"死んでいない"」
春紀「……なんだって?」
ニオ「彼女は言ってました。ニオは"代わり"。代わりの存在だって。」
春紀「どういう、」
ニオ「私は走り鳰という人格に作られた、"都合の良い人格"。たぶん、そういう事だと思います」
春紀「……待て、待ってくれ」
ニオ「……春紀さん。私、本当に感謝してます。どうしようもなく彷徨ってた私を、ここまで優しく救ってくれた事。」
春紀「待ってくれ!!」
ニオ「……でも、ね。私がこれ以上このまま過ごしていたら、いつかは必ず"走り鳰"が姿を現す。そうなったら、私の記憶には無かった凄惨な過去がまた再現されるかもしれない。」
春紀「待てって言ってんだろ!!」
ニオ「待ちません!!……私、本当に、」
「生きてて、いいのかな」
その言葉を私が口にした瞬間、初めて春紀さんが怒りの表情で私の頬を叩いた。
春紀「………撤回しろ。アタシは、お前が哀れだから、責任を取るためだから。」
思わず熱くなった頬に手を添えて涙を浮かべる私の胸倉を、まだ弱々しい力で掴んで引き寄せると、
春紀「それだけの理由でお前と過ごした訳じゃない!! 失われていい命なんて、あそこには、無かったんだ……」
でも、春紀さんも今尚自分の罪で苦しんでいる。胸倉を掴んだ右手はすぐに力を失い、するするとベッドに落ちる。
春紀「無かったんだよ……」
シーツにポタポタと染みができていく。
ポロポロと、唇を噛み締めて涙を流す春紀さんの姿は、酷く弱々しく見えた。
そんな彼女の様子に、私は。
ニオ「………ごめんなさい。お世話になりました」
深々と頭を下げ、足早に病室を立ち去っていく。
残ったのは、嗚咽を零しながらシーツを握りしめる春紀さんの泣き声だけだった。
彼女の苦しみを少しでも和らげるために、自ら彼女の元を離れた。
春紀「……あった」
春紀さんは、眼帯に隠された瞳と右の瞳を閉じると、一言そう呟いた。
……東さんは、私はそれを失ってでも守るべき存在だったと言ってくれた。
こうして目の前の春紀さんが口にした以上、それは本当の事だったんだろう。
でも、私は、
ニオ「……走り鳰と、話しました。彼女はまだ、"死んでいない"」
春紀「……なんだって?」
ニオ「彼女は言ってました。ニオは"代わり"。代わりの存在だって。」
春紀「どういう、」
ニオ「私は走り鳰という人格に作られた、"都合の良い人格"。たぶん、そういう事だと思います」
春紀「……待て、待ってくれ」
ニオ「……春紀さん。私、本当に感謝してます。どうしようもなく彷徨ってた私を、ここまで優しく救ってくれた事。」
春紀「待ってくれ!!」
ニオ「……でも、ね。私がこれ以上このまま過ごしていたら、いつかは必ず"走り鳰"が姿を現す。そうなったら、私の記憶には無かった凄惨な過去がまた再現されるかもしれない。」
春紀「待てって言ってんだろ!!」
ニオ「待ちません!!……私、本当に、」
「生きてて、いいのかな」
その言葉を私が口にした瞬間、初めて春紀さんが怒りの表情で私の頬を叩いた。
春紀「………撤回しろ。アタシは、お前が哀れだから、責任を取るためだから。」
思わず熱くなった頬に手を添えて涙を浮かべる私の胸倉を、まだ弱々しい力で掴んで引き寄せると、
春紀「それだけの理由でお前と過ごした訳じゃない!! 失われていい命なんて、あそこには、無かったんだ……」
でも、春紀さんも今尚自分の罪で苦しんでいる。胸倉を掴んだ右手はすぐに力を失い、するするとベッドに落ちる。
春紀「無かったんだよ……」
シーツにポタポタと染みができていく。
ポロポロと、唇を噛み締めて涙を流す春紀さんの姿は、酷く弱々しく見えた。
そんな彼女の様子に、私は。
ニオ「………ごめんなさい。お世話になりました」
深々と頭を下げ、足早に病室を立ち去っていく。
残ったのは、嗚咽を零しながらシーツを握りしめる春紀さんの泣き声だけだった。
彼女の苦しみを少しでも和らげるために、自ら彼女の元を離れた。
21: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 19:16:01.55 ID:W6bwnUuP0
※番場真昼(?)
真昼「ッ、ハハ、あのクソ野郎が……」
何とか意識を取り戻した後、自分が一時的に拠点としているアパートの一室へと戻った"オレ(わたし)"は、姿見の前に立った。
首元には自分自身の手で絞めた痕がびっしりと残っており、一歩間違えれば首の骨まで持っていかれる寸前だった事を再確認する。
あの忌々しい力は、"走り鳰"ではないあの何者かの状態でも扱う事が出来たらしい。
アレさえなければ大したことは無いただの女、隣の寒河江春紀は度重なる戦いで肉体に限界が来ている事は知っている。
"あんなモノ"はどうという事は無い。
真昼「(……ひ、ひはは。オレは、こんな気持ちで)」
こんな気持ちで、武器を振り回していたのか。
番場真昼でも真夜でもない"何か"は、初めてこの手に実感した血を愛しむ感覚にまた震えている。
何かを傷付ける事で得られる"聖遺物"は、これまでただこの手に受け止めて愛でていただけだった。
でも今は違う。
確かに、自分自身の手でソレをつかみ取れる力を得た今では、聖遺物何てどうでもいい。
その過程が重要だと、寒河江春紀の肉体を蹂躙したあの時に確かにこの手に実感した。
乱雑に並べられた大小様々な工具を手当たり次第に掴み取り、腰のホルダーへと納める。
もう何日もまともに風呂にも入らず食事も取っていない彼女は、ただひたすらに殺すべき者を殺す為に歩き出す。
不思議と、その表情にやつれた様子はなく。
常に張り付けたような笑みが浮かんでいた。
真昼「ッ、ハハ、あのクソ野郎が……」
何とか意識を取り戻した後、自分が一時的に拠点としているアパートの一室へと戻った"オレ(わたし)"は、姿見の前に立った。
首元には自分自身の手で絞めた痕がびっしりと残っており、一歩間違えれば首の骨まで持っていかれる寸前だった事を再確認する。
あの忌々しい力は、"走り鳰"ではないあの何者かの状態でも扱う事が出来たらしい。
アレさえなければ大したことは無いただの女、隣の寒河江春紀は度重なる戦いで肉体に限界が来ている事は知っている。
"あんなモノ"はどうという事は無い。
真昼「(……ひ、ひはは。オレは、こんな気持ちで)」
こんな気持ちで、武器を振り回していたのか。
番場真昼でも真夜でもない"何か"は、初めてこの手に実感した血を愛しむ感覚にまた震えている。
何かを傷付ける事で得られる"聖遺物"は、これまでただこの手に受け止めて愛でていただけだった。
でも今は違う。
確かに、自分自身の手でソレをつかみ取れる力を得た今では、聖遺物何てどうでもいい。
その過程が重要だと、寒河江春紀の肉体を蹂躙したあの時に確かにこの手に実感した。
乱雑に並べられた大小様々な工具を手当たり次第に掴み取り、腰のホルダーへと納める。
もう何日もまともに風呂にも入らず食事も取っていない彼女は、ただひたすらに殺すべき者を殺す為に歩き出す。
不思議と、その表情にやつれた様子はなく。
常に張り付けたような笑みが浮かんでいた。
22: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 19:36:46.84 ID:W6bwnUuP0
※兎角
晴『私は、兎角さんに行って欲しい。春紀さんを、助けてほしい』
あんな事を言われたら、私は動かざるを得ない。
もうこれ以上晴を血に塗れたこちら側へと引き込む訳にはいかないと、長々と説得した末の言葉がこれだ。
正直、イカれてる。私は純粋にそう思った。
でも、晴は全身に新たな傷を負ったとしても、そしてその原因が寒河江や走りにあると知っていてそう言った。
………それは優しさなんかじゃない。一つの"呪い"だ。
殺せない呪いが、少し前の私にはあった。それは長々と私を苦しめ、それでも晴を守る為にその呪いを解くことが出来た。
あの時も、晴の姿は目の前に浮かんでいた。
兎角「(……私も、イカれたんだろうな)」
視線の先―――――――――病院の正面口から、零れる涙を拭いながら覚束ない足取りでこちらへと歩く少女を見やり思った。
ニオ「ごめんなさい、ごめんなさいっ春紀さんっ……」
兎角「……お前が決めた道だろ。今更泣くな」
グズグズと鼻を鳴らしながら俯くニオを見ながら、私は彼女を"走り鳰"の姿を消し去った。
私の知る走り鳰という女は、こんな風に誰かの為に涙を流す様な優しい心を持った存在でない事を知っている。
晴『私は、兎角さんに行って欲しい。春紀さんを、助けてほしい』
あんな事を言われたら、私は動かざるを得ない。
もうこれ以上晴を血に塗れたこちら側へと引き込む訳にはいかないと、長々と説得した末の言葉がこれだ。
正直、イカれてる。私は純粋にそう思った。
でも、晴は全身に新たな傷を負ったとしても、そしてその原因が寒河江や走りにあると知っていてそう言った。
………それは優しさなんかじゃない。一つの"呪い"だ。
殺せない呪いが、少し前の私にはあった。それは長々と私を苦しめ、それでも晴を守る為にその呪いを解くことが出来た。
あの時も、晴の姿は目の前に浮かんでいた。
兎角「(……私も、イカれたんだろうな)」
視線の先―――――――――病院の正面口から、零れる涙を拭いながら覚束ない足取りでこちらへと歩く少女を見やり思った。
ニオ「ごめんなさい、ごめんなさいっ春紀さんっ……」
兎角「……お前が決めた道だろ。今更泣くな」
グズグズと鼻を鳴らしながら俯くニオを見ながら、私は彼女を"走り鳰"の姿を消し去った。
私の知る走り鳰という女は、こんな風に誰かの為に涙を流す様な優しい心を持った存在でない事を知っている。
23: ◆UwPavr4O3k 2016/02/04(木) 23:47:55.44 ID:W6bwnUuP0
目一「……鳰さんは、まだ戻れる余地があるという事ね?」
真昼「あァ。アイツはオレに幻術を使ってきやがった。」
ミョウジョウ学園の一室。
最上階には、この学園を管理するトップである理事長の百合目一の自室があった。
ただ、そこに居たのは彼女一人ではなく………目の前に広がる大小様々なスクリーンを眺めている、真昼の姿がある。
目一「"今"の彼女も申し分は無いけれど、鳰さんが戻る事が出来るのなら戻ってほしいわね。」
真昼「(……チッ。さっさと金出しやがれ)」
目一「……ふふ。貴女は本当に顔に全部書いてあるのね、番場"真夜"さん」
真昼「真夜じゃねぇつってんだろォが!!」
目一「あら、ごめんなさい。でも言動は真夜さんの方がとても近しいわ」
復讐すべき人物を要していた元凶ともいえる目一、彼女と何故真昼がこうしてこの場で会話できているのか。
答えは簡単。"取引"だ。
まさしく。走り鳰と寒河江春紀が交わしていた取引の始まりも、ここであった。
真昼「テメェの気色悪さにはオレでもドン引きするぜ」
目一「あら、私は鳰さんの"可能性"を信じているのよ。"番場真昼"に殺されそうになっても、尚自分自身を取り戻して私の元へ戻ってくると。」
目一は、敢えて真昼が鳰を殺しに向かう事を補助している。その理由は、
目一「真実の愛とは、つまりどんな状況でも相手を信じられるか信じられないか。でしょう?」
歪んだプライマーの瞳に、真昼は寒気すら覚えた。
24: ◆UwPavr4O3k 2016/02/05(金) 04:21:04.08 ID:zQNEteQf0
※今回かなり駆け足で進めてますが、もっとじっくり表現した方がよいでしょうか? また今回少しオリジナル入れてます
兎角「……出来る限り、私の体術を教えようと思う。」
ニオ「東さんの、体術ですか?」
使われなくなった港の一角。乱雑に廃コンテナが組み上げられた倉庫に、二つの影があった。
あの時、春紀が手術を受けていた後に互いに連絡を取り合い、そしてニオ自身が決めた事。
必ず自分にかかわる全ての事柄を解決しきった上で、春紀の元へと帰る。その為には、少し強引に引き離す必要があった。
彼女は、最後の質問にYESと答えた。
『私には、あなたの左目と身体を差し出すだけの価値が、本当にあるんですか?』
YESと答えてしまった。だから、強く突き放す必要があった。
彼女の事だ、必ず消えたニオを追ってまたボロボロになりながら探し続ける事になるだろう。
………でも、結局泣き崩れた春紀の姿を見たニオには、突き放す何て出来なかった。
兎角「"葛葉"に幻術の力がある様に、"東"にも特殊な力は代々全員が受け継いでいる」
ニオ「特殊な、力」
兎角「才覚として備わっている驚異的な身体能力。暗殺という、人間と人間の殺し合いにおいて絶大な力を発揮する身体の力だ」
ニオ「(……確かに、東さんの身のこなしが凄いのは、スーパーで見ていた)」
手先が器用などというレベルではなく、数メートル離れた位置にあるわずかな隙間ほどのペンホルダーにペンを投げ入れたり、3、4メートルは跳躍したり。
兎角「……私は"目覚め"ていない。でも、確かに才覚としてこの身に宿っている事は理解している。」
ニオ「その"東"の力を、本当に私が?」
兎角「初歩的な格闘技から教える。まずは、上着を脱げ」
黒いコートを脱ぎ、簡素なワイシャツの袖を捲り上げた兎角を見て、ニオもまたカーディガンをそっと畳んだ。
こうして、ニオは兎角の鍛錬を受ける事になった。
(ニオの外見修正……癖っ毛は全てパーマでストレートになっており、印象としては兎角に近くなった)
25: ◆UwPavr4O3k 2016/02/05(金) 05:13:27.30 ID:zQNEteQf0
春紀「……」
冬香「お姉ちゃん、また、怪我したんだ」
ニオと兎角の鍛錬が続く中、翌日の早朝に急いで駆け付けた冬香が見たのは、空虚な瞳で窓を眺める春紀の姿だった。
左目は眼帯で隠され、胸元が大きく開いた手術衣から覘いているのは、幾重にも巻かれた包帯。
その姿は、また"何か"に巻き込まれて、大きな怪我をしたという事を理解するには十分だった。
冬香「……ねぇ、お姉ちゃん。私って、頼りないのかな」
ビクッ、と春紀の肩が小さく震える。
そんな事は無い、冬香は何時も家族を守ってくれている………口元は、そう動いた。
言葉は出なかった。
静かに、春紀の頭を抱えるように抱きしめる。今の自分に出来る事は、こうやって"母親代わり"をするだけだ。
ずっとずっと、そうだった。春紀がいない間、自分はただ母親の役回りを代わりに演じ続けていただけだった。
春紀の事を、本当に理解出来ている訳が無かった。
春紀「……ごめん。不安にさせてごめん。冬香に、」
冬香「もういいよ。ゆっくり休もう?……左目、見えなくなって色々大変だよね」
春紀「……あぁ」
抱きしめられた腕の中で、静かにまた涙を流した。
27: ◆UwPavr4O3k 2016/02/06(土) 06:18:58.13 ID:4VtCa/iL0
ニオ「ふっ……」
兎角「(動きは、完全にあの時地下で戦った時と同じだ)」
冬香と春紀が思いを交わす前日、夜闇に紛れて廃倉庫の一角に居た二人は互いに武器無しで組手を始めていた。
兎角がまずニオにやるべきこととして、"身体が覚えている技術"全てを成すがままにやってみろと指示した。
今、こうして打ち合っていると確かにあの地下で小競り合いをした時と似たような動きをニオは行っている。
そう、まるで相手の動き全てを真似てそっくりそのまま動いている様な動きだ。
兎角「右肘を使った殴打にはもっと遠心力を利用しろ。膝蹴りも全然軽い。」
ニオ「っ、はぁっ!!」
もう組手を初めて一時間、必死になって縋り付くニオに対して兎角は額に滲む程度の汗しか掻いていない。
その全ての技を捌き、疲労でニオの動きが止まってしまうまで受け流し続けていた。
そして、顔面に控えめに放たれた拳を掴み、手首を軽く捻って地面に組み伏せた兎角は
兎角「動きそのものは、"走り鳰"の頃とあまり変わらない。が、ニオの特徴として相手の動きに"合わせて"動く特徴がある。」
ニオ「痛っ……合わせる、ですか?」
兎角「それをうまく使いこなせれば、私の動きを真似る事も簡単だろう。やってみるしかないけどな」
荒げた息を整えた後、その後夜遅くまで二人の鍛錬は続いた
28: ◆UwPavr4O3k 2016/02/08(月) 07:08:45.40 ID:NPKsv3620
真昼「……へぇ、伸縮自在の鎖ねぇ」
目一「多関節の武器はとても貴女に似合うと思っていたわ。最も、銃を極端に嫌がるからだけれど」
真昼「銃なんざ使ったところで満たされねェんだよ。」
振り回すたびに、自分の力の加減で伸び縮みする革で覆われた鎖に高揚する。
手元のグリップは圧感知によって、握る力によって最適な長さへと自在に調整されていくこの鎖は、目一が真昼へと明け渡したモノ。
元々、工具のみで殺人を繰り返していた真昼にとってリーチというモノは確かに度し難く克服し辛い問題だった。
この武具は拳銃などの銃火器を嫌う真昼には最適と言えた。
目一「(………ニオさんが東さんと行動を共にしている事は、黙っていましょうか。)」
目一が走り鳰を取り戻す為に画策している裏で、同じく彼女を取り戻す機会を得た葛葉が嗅ぎまわっている事を知っている。
勿論、最近寒河江春紀の元を離れた事も知っているし、今すぐにでも彼女らの場所を真昼に伝える事も出来た。
しかし、何故伝えなかったのか。
真昼「ヒヒッ……葛葉って奴らが嗅ぎ回ってんだろ?何人か手当たり次第に"捌いた"から分かるぜ」
目一「あら、もう干渉していたのね。」
それは、この番場真昼という少女の残虐性と索敵能力を高く買っているからだ。
今のまま場所を教えてしまえば、おそらく東兎角ですら今の番場真昼にはあっさりと敗北するだろう。
その証拠に、既に葛葉の追っ手を何十人も殺害している。
目一「(……壊れてしまった貴女が、純恋子さんの手で救われた時の輝きと。ガラス細工の如く砕け散った今の貴女の鈍い煌き)」
どちらも、百合目一という女を満たす為の要因になり得た。
30: ◆UwPavr4O3k 2016/02/09(火) 01:50:46.99 ID:kY5k5HNq0
※冬香視点
「お姉ちゃん、おめめ見えなくなっちゃったの?」
春紀「ちょっと怪我しちゃったんだ。お前達が気にすることじゃないよ」
翌日、本人立っての希望で退院する事にしたお姉ちゃんと私は、東村山の実家へと戻っていた。
左目の眼帯に気をかける末っ子の妹に、へらへらとした弱気な笑みを浮かべて頭をくしゃりと撫でる。
……相当、精神的に不安定な状況らしい。担当のお医者さんにはできるだけ付き添ってあげて欲しいそうだ。
お母さんには、以前の事件の事と今回の事、全部黙ってる。お姉ちゃんが"巻き込みたくないから"だって。
ふと、軒先に飾ってある家族の集合写真を眺める。まだ髪も長く、苦しい状況でも笑みを浮かべていたお姉ちゃんの姿。
今隣に立っている彼女は、誰なんだろう。こんなにボロボロで今にも壊れそうな笑みを浮かべる、彼女は。
冬香「早く部屋で休もう」
やや強引に姉に貸している肩を動かし、不安そうに見つめる妹と弟達の元を離れた。
普段から鍛えていた体は、明らかに軽く、体格差のある私ですらもこうして軽く抱えることが出来た。
春紀「……アタシは、間違っていたんだろうな」
冬香「え……?」
春紀「あそこでニオを、ニオの生き方を"縛った"事が間違いだったんだ」
部屋にやってきて、ベッドに座ったお姉ちゃんは俯きがちに口を開く。
春紀「罪はアタシ一人で償うべきだった」
そう呟いた姉の手を、黙って握ってあげる事位しか………できなかった。
「お姉ちゃん、おめめ見えなくなっちゃったの?」
春紀「ちょっと怪我しちゃったんだ。お前達が気にすることじゃないよ」
翌日、本人立っての希望で退院する事にしたお姉ちゃんと私は、東村山の実家へと戻っていた。
左目の眼帯に気をかける末っ子の妹に、へらへらとした弱気な笑みを浮かべて頭をくしゃりと撫でる。
……相当、精神的に不安定な状況らしい。担当のお医者さんにはできるだけ付き添ってあげて欲しいそうだ。
お母さんには、以前の事件の事と今回の事、全部黙ってる。お姉ちゃんが"巻き込みたくないから"だって。
ふと、軒先に飾ってある家族の集合写真を眺める。まだ髪も長く、苦しい状況でも笑みを浮かべていたお姉ちゃんの姿。
今隣に立っている彼女は、誰なんだろう。こんなにボロボロで今にも壊れそうな笑みを浮かべる、彼女は。
冬香「早く部屋で休もう」
やや強引に姉に貸している肩を動かし、不安そうに見つめる妹と弟達の元を離れた。
普段から鍛えていた体は、明らかに軽く、体格差のある私ですらもこうして軽く抱えることが出来た。
春紀「……アタシは、間違っていたんだろうな」
冬香「え……?」
春紀「あそこでニオを、ニオの生き方を"縛った"事が間違いだったんだ」
部屋にやってきて、ベッドに座ったお姉ちゃんは俯きがちに口を開く。
春紀「罪はアタシ一人で償うべきだった」
そう呟いた姉の手を、黙って握ってあげる事位しか………できなかった。
31: ◆UwPavr4O3k 2016/02/09(火) 02:49:37.37 ID:kY5k5HNq0
※ニオ視点
ニオ「………ん」
翌日。動きっぱなしで全身ドロドロになった昨日のトレーニングで筋肉痛が酷い。
びきびきという擬音が聞こえてくるかのように痛む左腕を動かし、肩や背中など全体的なマッサージをする。
それでも痛いモノは痛いけど、ぐっとこらえて一人用のベッドから起き上がる。
ふと右側を見やると、スース―と規則の良い寝息をたてて眠っている"兎角さん"が居た。
同じベッドに。
ニオ『え、えっと、やっぱり同じベッドは厳しいんじゃ……』
兎角『確かに私が金は出すと言ったが、二人部屋なんか取ったら何日も持たないぞ』
ニオ『それは、そうですけど……』
深夜、何処を拠点とするかを決める為に歩き回っていた私達は、こんな調子で何度も押し問答を繰り返していた。
一つのベッドに同性とはいえ二人で眠るのは、その、なんというか倫理観的に悪いというか、気まずいというか……。
結局私が折れて、できる限り私が端の方に寄って眠る事にした。それでも、ボロボロになってた身体はすぐに眠りに落ちて行った。
心地よい気分で備え付けの小さなテレビをつけると、時刻は12時を回っている。少し眠り過ぎたかな。
ニオ「兎角さん、もう12時ですよ」
兎角「んっ……あぁ、そうだった」
不意にぐいっと顔を近付けられて何事かと思った私は、ビクッと肩を震わせたまま数秒固まっていた。
兎角さんの方はぼんやりとした顔のまま、私だと気付くとそのまま顔を離して洗面所へと歩いて行った。
………晴さんとは、毎日こんな感じで目覚めのキスでもしているのだろうか。あまり詮索しない様にしよう。
数十分後。
兎角「……ニオ、昨日のトレーニングをやってどうだった」
ニオ「え、っと、凄く疲れましたし、今でも筋肉痛が…」
兎角「まぁ、暫くお前の身体もまともに鍛えられて無かっただろうしな。ただ、自分で気づいていたか?」
ニオ「気付いていた事?」
兎角「お前は最後の最後で私に一撃入れた。自分で気づいていないかもしれないが、私のガードをすり抜けた」
それは、兎角さんでも追いつかなかった高速の手刀。最初、真昼から意識を奪ったあの時の手刀もそうだ。
兎角「視覚という神経系に精通している葛葉の技術として、神経を突くといった戦い方がとても合っているんだろうな」
ニオ「神経系、ですか。つまり、直接力で戦わずに搦め手を生かせばいいんですね?」
兎角「後は純粋な体力だ。という訳で、さっそく10キロから走るぞ」
ニオ「は、はい」
ニオ「………ん」
翌日。動きっぱなしで全身ドロドロになった昨日のトレーニングで筋肉痛が酷い。
びきびきという擬音が聞こえてくるかのように痛む左腕を動かし、肩や背中など全体的なマッサージをする。
それでも痛いモノは痛いけど、ぐっとこらえて一人用のベッドから起き上がる。
ふと右側を見やると、スース―と規則の良い寝息をたてて眠っている"兎角さん"が居た。
同じベッドに。
ニオ『え、えっと、やっぱり同じベッドは厳しいんじゃ……』
兎角『確かに私が金は出すと言ったが、二人部屋なんか取ったら何日も持たないぞ』
ニオ『それは、そうですけど……』
深夜、何処を拠点とするかを決める為に歩き回っていた私達は、こんな調子で何度も押し問答を繰り返していた。
一つのベッドに同性とはいえ二人で眠るのは、その、なんというか倫理観的に悪いというか、気まずいというか……。
結局私が折れて、できる限り私が端の方に寄って眠る事にした。それでも、ボロボロになってた身体はすぐに眠りに落ちて行った。
心地よい気分で備え付けの小さなテレビをつけると、時刻は12時を回っている。少し眠り過ぎたかな。
ニオ「兎角さん、もう12時ですよ」
兎角「んっ……あぁ、そうだった」
不意にぐいっと顔を近付けられて何事かと思った私は、ビクッと肩を震わせたまま数秒固まっていた。
兎角さんの方はぼんやりとした顔のまま、私だと気付くとそのまま顔を離して洗面所へと歩いて行った。
………晴さんとは、毎日こんな感じで目覚めのキスでもしているのだろうか。あまり詮索しない様にしよう。
数十分後。
兎角「……ニオ、昨日のトレーニングをやってどうだった」
ニオ「え、っと、凄く疲れましたし、今でも筋肉痛が…」
兎角「まぁ、暫くお前の身体もまともに鍛えられて無かっただろうしな。ただ、自分で気づいていたか?」
ニオ「気付いていた事?」
兎角「お前は最後の最後で私に一撃入れた。自分で気づいていないかもしれないが、私のガードをすり抜けた」
それは、兎角さんでも追いつかなかった高速の手刀。最初、真昼から意識を奪ったあの時の手刀もそうだ。
兎角「視覚という神経系に精通している葛葉の技術として、神経を突くといった戦い方がとても合っているんだろうな」
ニオ「神経系、ですか。つまり、直接力で戦わずに搦め手を生かせばいいんですね?」
兎角「後は純粋な体力だ。という訳で、さっそく10キロから走るぞ」
ニオ「は、はい」
32: ◆UwPavr4O3k 2016/02/11(木) 20:15:49.61 ID:ad1aapj40
ニオ「はぁっはぁっ……と、兎角さんっ。」
兎角「なんだ」
ニオ「はやっ、早いですっ」
兎角「これでもお前に合わせている方だ。気合いれろ」
そんなこんなでホテルから出た二人は互いに動きやすい服装(兎角は短パンにシャツ、ニオは無地のトレーナー)で5kmランニングを始めた。
ニオの二歩を一歩で駆け抜ける兎角のあまりの速さに、必死になってついていこうとするニオだったが、それでもかなり離された。
兎角が途中からそれに気付いてから立ち止まり、数分後にようやく合流して再度走り始めていたが……
ニオ「(……そうだ、こんなにも強靭な身体なら、噂通りの強さも頷ける。)」
春紀に聞いた程度で実際の兎角の動きを見たわけではないが、その純粋な戦闘における強さは圧倒的らしい。
話によれば、"走り鳰"の幻術などの搦め手には弱いらしいが、それでも格闘や銃撃、投擲に関して凄まじい実力。
そう、既に三キロ近く走っているというのに僅かな汗で殆ど息も乱れていない、この涼しい表情。
この程度のランニング朝飯前、といったところだ。
兎角「……よし、初日だから仕方ない。其処の公園で休憩するぞ」
近くにあった自販機からミネラルウォーターを二本買ってきた兎角から一本を受け取り、首元にあてながら取り出したハンドタオルで汗を拭う。
ぜぇぜぇと肩で息をするニオを、やれやれといった眉を潜めた表情で眺めていた兎角は、話しかけようと口を開いたところで。
33: ◆UwPavr4O3k 2016/02/11(木) 20:16:18.07 ID:ad1aapj40
一気にニオを庇うように飛び付き、返す刀の如く背に隠していたホルダーからプッシュナイフを引き抜き、投げ返す。
ニオが居た場所を銃弾が通過し、兎角が投げたナイフは襲撃者の拳銃へと正確に吸い込まれていき、弾き飛ばした
当の突き飛ばされたニオの方は未だに状況が掴めないまま、ただドクンドクンと高鳴る心臓を抑える事だけに徹していた。
襲撃者は複数人いる。僅かながら複数の銀色の輝きが見えたことから、兎角はそれだけ銃口がある事を確信する。
ともあれ、この開けた公園のど真ん中では分が悪い。そういって起き上がったところを狙撃されても終わりだ。
兎角「(……葛葉。位だろうな、今更ニオを襲う輩は)」
雑木林へと、得意の視覚に関する術によって身を隠す葛葉のメンバー達は一歩もその場を動かず、180度包囲した状態のまま膠着している。
そう、強引にでも数の力で押してこないのは、おそらく"対象を殺害"ではなく"回収、または確保"という仕事なのだろう。
伏せたままの二人は、兎角が軽く指先のジェスチャーでニオへと指示し、小さく頷く。
その突破する方法とは。
兎角「まとめてやる」
単身で、かつこの最小限の装備で全てを打倒する。この実践こそが、ニオの成長の早道だと考えた。
次の瞬間、凄まじい速さで抜かれた自動拳銃が葛葉の一人の脚を貫く。
一斉に、他のメンバーが発砲する…………が、射線さえ読み切れば後はこの脚が動くかどうかだ。
殆ど勘で探り当てた"安全ルート"を全力で駆け抜け、続けて両手でしっかりと構え、一人一人冷静に撃ち抜いていく。
それも、殺す事なく、全員腕や足など一時的に戦闘能力を奪う為の箇所を、だ。
雑木林に立ち入った時には大半が銃を手放しており、最も近くに居たメンバーから順に首の神経を殴りつけて意識を奪っていく。
木々に隠れ、銃弾を防げる位置に来た兎角は手持ちの拳銃が残り六発であると確認するとそのまま一気に身を乗り出す。
未だ戦意のある残りの三人―――――――右、左、左。
三方向の内、左の二人を薙ぐ様なダブルタップで黙らせ、右の弾丸だけを集中して回避する。射線は、読めた。
右側へと走り込んでいた兎角は、そのまま一気に近距離の格闘術で投げ技を叩き込み、意識を奪う。
流石に二発ずつ弾丸を撃ち込まれた二人は悶絶して倒れ込んでいたが、容赦なく首元を圧迫してさらに意識を奪っていく。
そうして、装備はナイフと拳銃のみの軽装のはずだった東兎角は数にして10人の人間を制圧した。
その戦いぶりを、少し離れた公衆トイレの影から見守っていたニオは、圧巻という感想しか頭に無かった。
人間離れしている。いかに敵も周囲の人間からの隠匿性を重視する為に軽装備だったとはいえ、こちらはまともな防弾装備すら無い。
だというのに、やってのけた。射線を読み弾丸を回避するという、神業を当たり前の様にこなした。
兎角「……ニオ、今日はトレーニング中止だ。早くホテルに戻るぞ」
はっとした時には既に兎角が目の前に立っており、雑木林には警察らしき人間が大人数入り込んでいた。
ただ、その目の前に立つ兎角の様子に、よろしくは無いが人間らしさを感じる傷をいくつか確認できた。
彼女は、機械か何かではない。ただ、あまりにも忠実に仕事をこなすその姿が、とても機械的に見えている。
差し出された手を取り、まだ震えている腰を叩いて兎角と二人来た道を走って逆走する。
35: ◆UwPavr4O3k 2016/02/12(金) 11:16:31.86 ID:rmZaMyUv0
ニオ「(……あれが、兎角さんの力)」
正直、あまりにも人間離れし過ぎていて私には到底真似は出来ない事だろうと恐れを抱いてしまった。
この隣を走る、傷だらけの女性と。かつての自分は対峙し、そして捩じ伏せていた事実に疑問を抱く程には。
兎角「銃口さえ見ることが出来れば、射線は案外読める。ただ、読めたところで自分の身体が付いてこなければどうにもならない。」
ニオ「肉体の限界、ですか」
兎角「必ず、人間には筋力も体力も限界がある。ただ、東の血筋はその限界点が普通よりも遥か先にあるという事だ」
正直、あのメンバー達は小間使い程度のモノだった。だからこそ、この人数差でも対処することが出来た。
アレならば、まだ策を張り巡らせて走り鳰の方が純粋に恐怖を感じた。
兎角「……ここから、葛葉の襲撃も視野に入れて動かないといけないな」
ニオ「すいません……」
兎角「いつかは向き合うべきだったんだろう、お前自身が育った"家"と。」
それから一週間後。
度重なる襲撃とトレーニングの中で、ニオもまた着実に力をつけていた。
兎角の最たる技ともいえる"投擲"に関しては、兎角本人も認める程に技術が向上していた。
ニオ「……よし」
格闘戦においても、兎角に土をつける事は叶わずとも、以前指摘された点から一撃の速さと死角を突く技が伸びた。
結果的に度々ガードをすり抜けられるようになっていた。
兎角「お前は成長した。少なくとも、自分の身を守れる位には。そして、一つだけ大切にすべき事がある」
ニオ「大切にすべきこと、ですか?」
兎角「これは人間を殺す為の技じゃない。私が学んだのは暗殺の技だ。でも、"私が"ニオに教えたのは決してそうじゃない。」
ニオ「はい。必ず、大事にします。教えてもらったこと、全部。」
互いに汗の粒が落ちる中、何時もの廃倉庫でニオは深く頭を下げる。
戦う力とは何かの多くを教えてもらった彼女に、感謝を口にしながら。
兎角「……ニオは一度ホテルに戻れ。私は少し用が出来た」
ニオ「わかりました。」
そうして、二人は一度別れる事になった。
36: ◆UwPavr4O3k 2016/02/12(金) 11:51:18.88 ID:rmZaMyUv0
※AKキャラ 台詞等が少なく詳しくないので、口調などイメージと違う場合は了承ください。
兎角「……これで、最後か」
ニオと別れた後、兎角は廃倉庫周辺に集まっていた数人の葛葉の人間を始末していた。
といっても全員意識を奪ってまとめて警察に突き出す位だが、しかし、今回ばかりは事情が違った。
一人、明らかに異質な雰囲気を纏った女が、こちらへと歩いてきていた。
ソイツは、赤く輝く眼光を見開き、ニタリと口元を歪ませる。その女は。
志摩「……よぉ。アンタが噂の東兎角か。」
兎角「誰だ、お前は」
志摩「葛葉の雇われ暗殺者だよ。つーわけで、やる事は分かってんだろ?アタシはまどろっこしい説明はキライなんでね」
兎角「……チッ」
濃く引かれたアイシャドウの瞳を細め、姿勢を低くした志摩はそのまま一気に駆け抜け、引き抜いたナイフを構える兎角へと右の拳を放つ。
勿論ただの拳ではなく、其処に握られていたのは犬飼伊介も使用していた武器。
ナックルダスターの刃を、兎角もまたナイフで弾き飛ばす。
兎角「金が目的か」
志摩「あぁそうさ。まぁ、一度は噂の東兎角とも手合わせ願いたかったもんでね」
兎角「……くだらねぇ。」
志摩「アハハッ、そう言うなよ。裏世界じゃあ名の通った有名人と会えて嬉しいぜ!!」
互いに一進一退の競り合いの中で、兎角はこの女の実力が中々のモノだと理解した。
理解した上で、しかし殺さない様に加減する事は出来ると決め、できる限り致命傷は狙わない様に立ち回る。
その決断に、強く後悔する事になるとも知らずに。
兎角「……これで、最後か」
ニオと別れた後、兎角は廃倉庫周辺に集まっていた数人の葛葉の人間を始末していた。
といっても全員意識を奪ってまとめて警察に突き出す位だが、しかし、今回ばかりは事情が違った。
一人、明らかに異質な雰囲気を纏った女が、こちらへと歩いてきていた。
ソイツは、赤く輝く眼光を見開き、ニタリと口元を歪ませる。その女は。
志摩「……よぉ。アンタが噂の東兎角か。」
兎角「誰だ、お前は」
志摩「葛葉の雇われ暗殺者だよ。つーわけで、やる事は分かってんだろ?アタシはまどろっこしい説明はキライなんでね」
兎角「……チッ」
濃く引かれたアイシャドウの瞳を細め、姿勢を低くした志摩はそのまま一気に駆け抜け、引き抜いたナイフを構える兎角へと右の拳を放つ。
勿論ただの拳ではなく、其処に握られていたのは犬飼伊介も使用していた武器。
ナックルダスターの刃を、兎角もまたナイフで弾き飛ばす。
兎角「金が目的か」
志摩「あぁそうさ。まぁ、一度は噂の東兎角とも手合わせ願いたかったもんでね」
兎角「……くだらねぇ。」
志摩「アハハッ、そう言うなよ。裏世界じゃあ名の通った有名人と会えて嬉しいぜ!!」
互いに一進一退の競り合いの中で、兎角はこの女の実力が中々のモノだと理解した。
理解した上で、しかし殺さない様に加減する事は出来ると決め、できる限り致命傷は狙わない様に立ち回る。
その決断に、強く後悔する事になるとも知らずに。
37: ◆UwPavr4O3k 2016/02/13(土) 07:59:35.20 ID:l5D8WiH20
ニオ「……見つかっちゃったんですね。」
兎角と別れた後、ホテルへ向かう道の途中で、人混みの中に見覚えのある黒衣を纏った女を見つけた。
少しだけ考え、そのまま脇にあった路地裏へと入り、ある程度進んだところで振り返る。
狂気を湛えた笑みは、それだけで寒気を感じる。握り締めた右拳がふるふると震える。
真昼「めんどくせェ"保護者"のせいで中々近寄れなかったがなァ。ようやく一人になりやがって………ヒヒ」
ニオ「……春紀さんは、左目が見えなくなりました」
真昼「そりゃああんだけ舐め回せばそうなるなぁ~」
ニオ「私の過去が春紀さんを傷付けてしまった。だから、私は私の責任を取ります」
真昼「つまり?」
ニオ「あなたを此処で止めて見せる」
真昼「ヒッ……やってみろよ!!」
フードを脱ぎ、現れた素顔は――――――粘ついた笑みを浮かべ、バサバサと乱雑な銀髪を一つに束ねた番場真昼。
ずっと、大切な"彼女"が消えてしまったあの日から、番場真夜を演じ続けている道化師。
懐から引き抜いたくぎ抜きを手に、兎角から借り受けた模擬ナイフを構えるニオに肉薄する。
ニオ「ッ、貴女は……こんな事をする為に、"英純恋子さん"に生かされた訳じゃないはずです!!」
真昼「テメェがアイツの名前を呼ぶんじゃねェ、屑野郎が!!」
振りぬかれた鉄を、身を反らす事で避け、ナイフで真昼の脇腹を切り払う。
すんでのところでナイフを裂け、身を捻ったまま、反対側の左肘をニオの胸元へと突き出す。
思わず片手で受け止め……きれず、そのまま勢いを殺す為に地面を滑って行く。
ニオ「ぐっ……」
真昼「テメェだけはギリギリまで苦しませてから殺してやる」
だが、ただのうのうとこの一週間を過ごしてきた訳ではない。
滑らせていた両足を一気に半歩引き、軸を移動させて正面から力で押してくる真昼の勢いを利用し、背負い投げの如く横回転させる。
左半身ごと地面に叩き付けられた真昼は、しかし受け身を取っていた為にすぐに起き上がり、そのままニオの背中を思い切り蹴り飛ばす。
あまりにも、復帰が早い。
38: ◆UwPavr4O3k 2016/02/13(土) 09:53:28.45 ID:l5D8WiH20
ニオ「っ、げほっげほ!!」
真昼「なァ、アイツは気道を防がれて窒息したらしいぜ。こういう風に、な!!」
蹴り飛ばされた後、コンクリートの壁に叩き付けられたニオは激しく咳き込みながら体を丸くしていた。
そこに、真昼の容赦ない靴底が落とされ、すんでのところで両手を使って防いだものの、ギリギリと首元へと圧迫されていく。
ニオ「っ」
真昼「グリグリってなァ、足の裏で息の根を止められたそうだぜ。……お前にお返ししてやるよ」
全力で片足に力と体重を乗せる真昼の靴底は、次第にニオの首を腕ごと押し込んでいく。
霞む意識の中、壁を蹴り飛ばして体を駒の様に回転させたニオは、そのまま膝で真昼の脚を蹴り飛ばす。
片足に力を傾けていた真昼は、もう片方の脚を蹴られたことによってそのまま前のめりになってしまう。
そう、つまり完全に首を踏み砕く様な体制になってしまう。
しかし、両脚の力が緩んだ一瞬で首を大きく振り、地面へとその片足が突き刺さる。
前のめりになった真昼の顔面はそのまま壁に叩き付けられた。
真昼「がぶッ」
ニオ「ッ、はぁっ!!」
そのまま、自分の得意とする首元の神経を的確に狙った手刀を叩き込み、真昼の身体がフラリと揺れる。
殺さず、制圧する。これで、なんとか――――――――
真昼「……ハァ。目が覚めた」
次の瞬間、なんとか飛び退いたニオの身体にラバー製の鋭い鞭が叩き込まれ、トレーナー事左腕に赤い擦過痕を作った。
ビリビリとした痺れと火傷の様なじくじくとした痛みに、思わずグッと歯を噛み締めて傷口をハンカチで抑える。
技術的な戦い方として、力を振り回す真昼とは相性が良いはずだった。致命傷さえ受けなければ、それでいい。
何故か拳銃といった具体的な殺す為の道具を扱わないからこそ、の事だったが……
ニオ「(あの、鞭。間合いが読めない…?)」
明らかに飛び退いて避けた筈だった。しかし、飛び退いた先に一瞬で伸縮して左腕を殴られた。
39: ◆UwPavr4O3k 2016/02/13(土) 15:41:07.31 ID:l5D8WiH20
真昼「あの時、テメェにぶん殴られた時だ」
手刀を打ち込まれた首を摩りながら、右手に握ったグリップを何度も握り直す。
そのたびに、鞭は自在に長さを変え、シュルシュルと地面を削りながら引きずられる。
真昼「オレの中の"番場真夜"は消えた。番場真昼という、唯一無二の存在だけが残った」
それは、狂った少女の狂言か。
真昼「……ヒヒ、ひ。あァ、足りねぇ」
懐から取り出した白い錠剤の入ったピルケースから二粒口に放り投げる。
途端に、激しい頭痛が襲う……が、すぐさま目の前の全てが鮮明に見えてくる。
ソレは、一時期は春紀が多様していた劇薬。しかし、今回のモノは以前春紀が使っていたモノよりも更に危険な代物。
使えば次々と神経が狂い、全ての感覚が鈍っていく。
ニオ「(神経に打撃をしても、通用しなかった。)」
つまり、これからは得意の神経に対する攻撃も通用しない。
という事は。
真昼「さァて、小賢しい東の入れ知恵も終わりだぜぇ!!」
ここからは、純粋な暴力が支配する。
40: ◆UwPavr4O3k 2016/02/14(日) 09:30:13.84 ID:UPmo8jSL0
伸縮自在の鞭を、人間の肉体のリミッターを超えた筋力で振り回す真昼の動き。
あらゆる方向からしなり、高速で迫る鞭に避ける事は出来ても、掠るだけで度々体の至るところに蚯蚓腫れを酷くしたような赤いラインが出来る。
熱を帯びていく身体に、歯噛みしつつも、迂闊に近づけないこの状況ではジリ貧のままだ。
ニオ「あっ……」
集中力が切れていたところに、鞭の一撃が叩き込まれ、脇腹を打たれたニオはあまりの痛みに膝を折ってしまう。
二撃、三撃……続けざまに叩き込まれた鞭に身体がグラリと揺れ、手にしていたナイフが滑り落ちる。
真昼「……やっぱりテメェじゃダメだ。適当に遊んで殺してやる」
ニオの髪を掴み、強引に顔を引き合わせた真昼は、愉快気な表情を消しながらそう呟く。
薄れゆく意識は、真昼が鋭い蹴りをニオの鳩尾に叩き込んだところで消え去った。
41: ◆UwPavr4O3k 2016/02/14(日) 17:44:53.03 ID:UPmo8jSL0
兎角「……」
志摩「ッ、速ぇな。流石、東の"アズマ"なだけある」
前提として、兎角はこの女とはかなりの実力差はあると感じていた。だが、不殺というモノは予想以上に難しいモノ。
更に、互いにナイフとナックルを交わす中で、気になった事がいくつかあがった。
兎角「答えろ。"本当に、お前は葛葉に雇われたのか?"」
志摩「……そうだよ」
兎角「……」」
確かに、この女とのやり取りの中で、チラリと腰のチェーンに提げてあった定期らしきカードケースの中身を見た。
ミョウジョウ学園。そう記された学生証が、其処にはあった。
可能性として二つ。この女がミョウジョウ学園に属していて、単に葛葉の仕事とやらを受けているだけ。
もう一つ。それは、あのミョウジョウ学園のプライマーが差し向けた"刺客"。
後者ならば。
兎角「(……ニオか)」
もし。もし仮に、百合目一が目下の当事者である番場真昼に目をつけていたら?
今別れたこのタイミングが、ジャスト。
兎角「チッ……ふざけるな!!」
志摩「お、ぐがッ!?」
それまで競り合っていた筈のナックルは一気に押し切られ、凄まじい速度で迫る左の拳を寸前で志摩はガードする。
その直後に、明らかに先ほどまでとは違う速度の膝が鳩尾を打ち抜き、思わず呻きながら身体をくの字に折り曲げる。
追撃に後頭部の神経に手刀を打ち込み、完全に意識を奪う。
あまりにも鮮やかな一連の動きは、まごうことなき"東"の血統。
志摩「(は、えぇッ……)」
意識を失いながらも、その兎角の動きに口元を歪めていた。
42: ◆UwPavr4O3k 2016/02/14(日) 17:59:42.98 ID:UPmo8jSL0
兎角「なんだ、お前」
薫子「……始末対象、東兎角だな」
数分の間に志摩との決着をつけた兎角は、廃倉庫の外へと古びた錆だらけのドアを蹴り開けて行った。
だが、すぐ目の前の広場の真ん中に突っ立っていた眼帯の女を見つけ―――――そのあまりにも自分と似通った姿・雰囲気に違和感を覚える。
コイツは……
兎角「次から次へと、うざったいんだよ」
薫子「余計な会話は必要ない。」
間髪入れず、軍用のミリタリーナイフを片手に、もう片方の手でM92F自動拳銃を構えた薫子はダブルタップする。
咄嗟に近くに乱雑に組まれていた廃コンテナへと転がり込んだ兎角の足元に銃弾が跳ねる。
舌打ちしつつ、腰のホルダーから拳銃を引き抜くと、牽制の銃弾を三発、コンテナの影から撃つ。
薫子もまた驚異的な動きで放たれた銃弾を斜めに体を滑らせることで回避し、そのまま一気に距離を詰める為に駆け出す。
タイミングを計った兎角と、コンテナの曲がり角で鉢会った瞬間、互いのナイフが、銃弾が交差する。
お互いに組み合った状態で改めて顔を見ると、兎角は違和感の理由を理解した。
兎角「……お前は、昔の私か」
薫子「意味が分からないな」
兎角「分からないだろうな、"今"のお前には」
一度仕切り直す為に互いに払いのけつつ、近距離で銃撃し合うも射線が読めている銃弾は空を切り。
互いに握った刃と刃がぶつかり、銃床同士が克ち合う。
43: ◆UwPavr4O3k 2016/02/20(土) 22:48:51.68 ID:hz/bIg6g0
兎角「……軍隊仕込みのCQBか」
薫子「……」
一進一退。互いのナイフ捌きは、似ている様に見えて全く違う。
一振り一振りに明確な殺意を込めて振り抜く薫子と、あくまでも相手の動きを受け流す様に振るう兎角。
ただ機械的に学んだ技術を再現する薫子の動きは、基本的な動きは兎角に優っていても、"応用する"力は到底追いつかない。
そう、ニオとの一週間で兎角もまた得たモノは多かったのだから。
兎角「鞭打は、基本型に対する極限の有効策と言ってもいい」
しならせた腕は、薫子のガードを容易くすり抜け――――――――否、ガードした腕ごと叩き伏せた。
あまりの痛みに身体が勝手に反応し、ビクンッと片腕を震わせながら力が抜ける。
そこで初めて僅かながら驚愕に目を見開き感情を露わにした薫子は、ダラリと垂らした片腕を見る。
神経にダメージを与えられたせいで、一時的に腕全体が痺れて動かせなくなっている。
兎角「……"葛葉"の神経術を、東が応用した」
急いでガードしたもう一方の腕も、休まず叩き込まれる鞭打によって叩き落される。
いよいよ戦う術が無くなっていく薫子に対して、兎角は少しだけ自嘲する。
兎角「お前にも出来るといいな。"守るべきモノ"が」
口でナイフの柄を咥え、強引に迫り来る薫子に対し、視界から一瞬消えたかと思った時には既に。
鳩尾に拳を入れ終えた兎角は、意識を失っていく薫子とすれ違うようにして走り出す。
47: ◆UwPavr4O3k 2016/03/10(木) 12:58:51.74 ID:Ec0YCj+Y0
それにしても、やはりミョウジョウ学園は異常だと、夕暮れに差し掛かる街中を走りながら兎角は考えていた。
数か月前に終結した自分達10年黒組。それから間もなくして、黒組……仮に11年黒組とするそれは始まっていたのだろう。
寒河江と似たような部類の喧嘩殺法を扱う素人から、まさしく敵を"殺す"のでなく"制圧する"為のCQBを扱う軍人まで、様々な種類の人間を惹きつける。
これも、あの理事長の持つプライマーとしての力とやらが働いているせいなのか。
兎角「(……本当にくだらない)」
ただ、最近特に度重なる面倒事に巻き込まれている兎角は、その言葉だけを頭に思い浮かべた。
そうして走っている間、明らかに背後からつけている様な動きをしている黒いパーカーの人間に気付く。
あれで隠れているつもりなのだろうか。随分とずさんな尾行に、敢えて一般人を巻き込む危険性を減らす路地裏へと回り込む事が出来た。
そして、曲がり角を曲がった直後、振り返った兎角は相手の脚へとナイフを投げようと構えようと。
した時には、既に隣を通り過ぎた黒い影が、自分の頬に深い裂傷を作り出していた。
眼で捉えられぬ程の速度で動いたその影は、くちゃりとした音を立てながら、右手を舐る。
麗亜「ん~、意外と美味しい。ダルいの我慢して来た甲斐はあったかも」
兎角「チッ」
ぱっくりと裂かれた頬からビリビリと痺れるような痛みを感じ、思わず眉を顰める。
夕暮れの中にチラリと見えたその少女は、着ている制服らしきソレを"分離"させながら、こちらに歩み寄って来る。
その分離したモノを凝視した時に見えたのは、蝙蝠。
麗亜「あたしは黒須麗亜。吸血鬼なんだ~、よろしく」
兎角「吸血鬼、が、クロスか。冗談はよせよ」
裂かれた右側の頬から伝うようにして、兎角の身体をじわじわと麻痺毒が蝕んでいく。
口がまともに動かず、右の腕全体に力が入らない。
戦闘が始まる前から不利な状況ながらも、この不可思議な生物に対してナイフを握り、両者は交錯する。
48: ◆UwPavr4O3k 2016/03/18(金) 16:42:39.32 ID:kKjkurPl0
吸血鬼なんて、空想上の怪物であり、少なくとも最初の邂逅時点ではこの少女の事をただの頭のネジが何本か飛んでいるブラッドフィリアかと思っていた。
だが、そんな中でも、頭によぎっていた違和感はここにきて照明されることとなった。
頬を裂かれたあの時、あまりの速度に兎角の視線は追いつかず、頬を裂かれた事にすら気付くのに数秒遅れてしまった。
兎角「ッ、が」
麗亜「……あらゆる仕事を迅速かつ正確に達成し。無感動・無表情の様相からまるで機械のようだ」
兎角「……」
麗亜「なんて聞いてたけど、流石に"本物の怪物"相手は厳しいかなぁ~」
衝突は、一つの明確な結果を生んだ。
麗亜の怪力が兎角のナイフを握った左腕と激突し、ただでさえ右腕も碌に動かなくなってきている兎角の両手が正常に動かなくなった。
左腕は、肘から関節を無理やり捻じ曲げた様な状態で、本来なら気絶してもおかしくはない激痛をこらえて両脚で無理やり立っている。
麗亜「まぁ、そっか。"結局今も人を殺せない"半端者だしね、東さんは」
兎角「……」
麗亜「不殺の技術を極めれば、何にも負けない強さを殺戮以外で手に入れられるとでも思ってたみたいだけど」
とはいえ、ナイフでざっくりと左手をやられている麗亜の方も流れ出る血をハンカチで拭っていた。
ただ、明確なのは既に裂かれたナイフ傷は徐々に修復されており、数分もすれば完全にその傷は癒えるという事。
代償となるものの大きさが、人間とは違う。
麗亜「無理だよ。殺し屋の子供として生まれた東兎角は、殺しからは逃げられない。」
兎角「黙れ」
麗亜「人間(ヒト)の血を啜って生きるあたしが言うのもなんだけど――――――殺す為の才能を、あなたは持ちすぎてる」
兎角「黙れ!!」
49: ◆UwPavr4O3k 2016/03/18(金) 23:56:23.94 ID:kKjkurPl0
砕け散った左腕が激しい痛みを発しても、ピクリとしか動かない右腕が力なく揺れても、まだ兎角は倒れる訳にはいかない。
帰りを待つ人は、居る。
必ず、彼女の元へ。
兎角「分かった様な口ぶりで話すな、化け物。お前と似た奴を私は知ってる。」
麗亜「あははっ、吸血鬼の知り合いでもいたの?」
兎角「ふざけた殺人鬼だ。」
口に咥えたナイフ、それを一気に首を振りぬくことで麗亜へと飛ばす。
だが、そんなものは気休め程度にしかならないだろうと、受ける側の麗亜も飛ばした側の兎角も理解していた。
だからこそ、その陰に控える"炎"を、麗亜は気付くのに遅れていた。
兎角「お前はソレに似ている」
ねじ曲がった筈の腕を無理やりに動かし、拳銃の引き金を引いた。
連続して、二回。
正常ではない右手で放たれた正確な二撃は、一発目で放り投げられたライターを破壊し、二発目で内容物に火を点けた。
兎角自身、それは技術で撃った弾丸ではない。
激痛で感覚もほとんど麻痺している右腕を感覚だけで動かし、全て直感で行った一連の動作は。
全く同じ位置に二度弾丸を撃ち込むという神業を成し遂げた。
50: ◆UwPavr4O3k 2016/03/19(土) 00:14:13.20 ID:MXBlE2ja0
結果、
麗亜「っ、あっづッ」
兎角「この程度か、吸血鬼」
小規模の炎が麗亜に降り注ぎ、彼女の服として構成されている蝙蝠たちの一部に炎がまとわりつき、次々にのたうち回って落ちていく。
吸血鬼の弱点とは、言い始めればきりがない程に多く語られているが、今回兎角が唯一扱えたのは"炎"だった。
安物のポケットライター。
それもまた、スーパーでのニオや寒河江春紀との交流の中で見つけた一つのきっかけだった。
突破口は、ここしかない。
兎角「お前は力に頼り過ぎた。だから、誰でも簡単に対処できるような猫だましにも引っかかる」
暗がりの路地裏が一瞬赤く照らされる中、一気に走り込んできた兎角がそのまま全体重を乗せたショルダータックルを繰り出す。
直撃し、炎の苦しみと焼けた蝙蝠に歯噛みしながらもフラフラと揺れる麗亜に対し、容赦なく蹴りを叩き込む。
鳩尾、脇腹、首元、太腿……意識を刈り取る為の神経系を的確に潰した打撃は、五発目にして麗亜が地に伏した。
グラグラと揺れる視界の中、
麗亜「っ、なん、だ……やっぱり、化け物、じゃん。」
兎角「一緒にするな」
麗亜「ハ、ハハ。どこの、世界、に、腕が45度曲がったまま銃を、撃て、る、に、んげん、が―――」
場慣れと技術。
誰かを殺した経験があったとしても、不殺の技術を極めたに近しい今の東兎角には、その程度では勝利する事は叶わない。
51: ◆UwPavr4O3k 2016/03/19(土) 01:16:51.02 ID:MXBlE2ja0
ポタリ、ポタリ。
静まり返ったとあるアパートメントの一室。
アパートと言っても、その一室しか借りられている場所は無く、周囲の部屋には誰も人は入っていない。
僅かに閉め切られていない蛇口から断続的に水滴が落ち、ボタボタという音を響聞かせている。
その居間らしき数畳の部屋の真ん中に、シャツ一枚の姿に両手を縛り上げられ、つま先立ちの恰好で吊るされたニオは居た。
ポタポタと落ちているのはニオ自身の血であり、頬を深く裂かれ、そこからゆっくりと垂れていく血が床に染みを作っていく。
ニオ「ハァっ……う、っ……」
真昼「ちったァ血も減ってきたか?」
先の鞭により擦過傷が身体のあちこちに残り、また暴行を受けたと思われる青痣や赤く腫れあがっている個所なども多い。
右頬がぷっくりと腫れ上がり、右目の視界が殆ど見えなくなっている事から、相当な回数顔面を殴打された事がわかる。
ニオ「っ、げぶっ」
突然胃からせり上がってきた血液を噴き出し、ダラリと力なく揺れる。
真昼「世界にはなァ、色々な拷問がある。その中でも、やべェのが凌遅刑だ」
虚ろな瞳で揺れる裸同然のニオの乳房から脇腹を、工具を握り過ぎたタコまみれのボコボコの指先が撫ぜていく。
時折、ピクピクと生理的な反応を見せるが、その意識は殆どぼんやりとしていて、今は失われていく血液に意識が向いている。
真昼「まァ、ソレは最後だぜ。それまでは、精々玩具にさせろよ、なァ?」
乱暴にニオの顎を引き寄せると、荒々しく唇を重ね、ぐちゃぐちゃと血反吐まみれのニオの口内をかき混ぜていく。
53: ◆UwPavr4O3k 2016/03/23(水) 00:50:45.23 ID:aKCXVBSL0
麗亜「……ふぅ」
数分後、兎角が立ち去った後の路地裏でもぞもぞと動き始めていた麗亜は、軽くため息を吐くと何も身に着けないまま立ち上がる。
両手を大きく広げると、一度は散ってしまっていた蝙蝠達が集まっていき、元のセーラー服デザインを形作る。
麗亜「(やっぱり炎はダルいなぁ~。まぁ、美味しい思いできたしこれ以上はめんどいからやめとこ)」
兎角の脚に打たれた四か所の痣も消え、すっかり元の姿へと戻った麗亜は、既に日が暮れた夜の街へと消えて行った。
吸血鬼が、炎程度で焼かれてしまったら、麗亜は既にこの世にはいない。
そして、なんとか三度の襲撃を乗り切った兎角は、晴の待つアパートへと帰宅する。
兎角「ハァッ、ハァッ……」
晴「どうしたのその腕!!」
裂き傷や切り傷だらけの全身は軽傷だが、何より先ほどの左腕の捻転が最も痛々しく赤黒くなっている。
あまりの痛みに思わず兎角ですら眉を顰め、荒々しく息を吐いて蹲ってしまった。
なんとか晴の懸命な処置によって、一時的な痛みを抑える事は出来た。だが、左腕は満足に動かせない状態のままになってしまう。
晴「……兎角、もう無茶しないで」
兎角「…………悪い」
晴「色んな問題があって、それは勿論私が関わってる事も多いと思う。でも……もう兎角がボロボロになって帰ってくるの、見たくないよ」
兎角「これで、本当に終わりだ。必ず全て終わらせてみせる。」
簡易的な添え木で支えられた左腕を庇いながらも、寝かせられた布団の上から起き上がる。
アパートへと戻る途中、ニオへの電話が何度も繋がらなかった。
という事は、彼女の身に何かあったと見てほぼ間違いないだろう。
最近、特に番場が嗅ぎ回っていたのを感じ取っていた。
兎角「(不用意に一人にさせる方が、間違いだった)」
55: ◆UwPavr4O3k 2016/05/03(火) 09:16:07.95 ID:xesjNZZs0
晴「……信じてるから。兎角の事。」
ぐっと引き寄せられた肩に顔を埋めて来た晴をそっと抱きしめる。
言うべき事は伝えたと、何度か頭を撫でると優しく押し返してアパートを後にする。
既に外は宵闇に包まれ、視界もかなり悪くなった。
少しだけ、夜目に慣れる様に意識を切り替え、左腕の調子を確かめる様に動かした。
その時、視界の端で何かが蠢いたのを見逃さなかった。
晴を巻き込む訳にはいかないと、出来る限り遠くの方へと駆け出していく。
逃げ出した先には気配は無く、一時的に突き放したモノだと確信していた。
筈だった。
自分の左肩にナイフの切っ先が通った時、完全に兎角は相手を見失う。
兎角「っづ……!?」
「東のアズマ。確かに、私が聞いていた噂通りの見目麗しい女の子」
兎角「……」
「でも、私、ケダモノはあまり得意ではないの」
周囲が開けた暗闇の小さな公園で、決して浅くは無い左肩の切り傷から伝う生暖かい血の感触。
暗闇のせいか、余計に感覚が鋭敏になっている筈の兎角ですら気付く事が難しい相手。
曰く、その女は"曲芸"を得意としている。
「ここで殺すわ、貴女のこと」
それは真上。
周囲一帯の住宅や木々に張り巡らされた極細のワイヤーに逆さまにぶら下がったピエロの顔が兎角の眼前に現れる。
目を見開いた兎角へとナイフの斬撃が襲い掛かり、驚異的な反射神経から右手のナイフでそれを受ける。
が、受け止めきれない刃が的確に兎角の傷跡を抉るように走り、止血した個所から血が溢れる。
その痛みは、思わず兎角が片膝を突く程。
兎角「ッ……お、前。誰だ」
「あら。暗殺者に自己紹介を求めるの?」
身長は目測で170前後。女性にしては相当高い方と見えるその長身の女を睨み付ける兎角に、ピエロ顔の奥の瞳が嗤う。
氷影「日月氷影。貴女が最後に覚える名前」
片膝を突く兎角に、その兎角自身の血で濡れたナイフをスカーフで拭い取る氷影。
兎角は近付いてくるこの女に、これまで生きて来た中でも"最も"と言っても良い恐怖に似た痺れを感じた。
サイコパスや吸血鬼なんて化物には持ち得ない、"暗殺者"としての純粋な狂気が、この女からは漂う。
56: ◆UwPavr4O3k 2016/05/06(金) 04:48:09.87 ID:XcfkH6Ru0
兎角「……」
氷影「安心なさい、一之瀬晴ちゃんには手を出していないから」
アパートの部屋が割れている以上、この女は恐らく晴の居場所も突き止めている筈だ。
もしや、自分が家を出たタイミングで手を出されていたのかもしれないと、視線を後ろへと向けている。
兎角「……目的はなんだ。お前の、お前達"ミョウジョウ"の目的は」
氷影「さぁ。残念ながら私には分からないわ。だって、貴女を殺すのは私自身のやりたい事だから」
兎角「何、だと?」
氷影「美しいモノが目の前にあったら、壊したい性分なの。……ね、貴女みたいに鋭い刃物みたいな美しさ何て滅多に見ないわ。でも、ソレをその野蛮さが邪魔をしている。」
左肩の、傷痕を抉り返された痛みは思わずピクピクと左の指先が痙攣するほどのモノとなり、実質これで左腕は完全に潰された。
右手は何とか動くが、それ以前に先ほどから続く小競り合いで失血が激しく、また走ったせいでフラフラと貧血の様な症状も訪れる。
そしてここにきて、恐らく兎角にとって天敵とも言える"暗殺者"としての技量が同じかそれ以上の相手。
十全の体調だったとしても厳しいかもしれない相手に、こんな状態で戦えと言う。
兎角「(……"世界は、赦しに満ちている"。そう、晴は答えた)」
ふざけている、そう兎角は口癖のように吐き捨てる。
赦しなど、自分にはやはり必要が無い……とまでは言い切り難いが、少なくとも自分に向けられる言葉では無い。
取り落としそうになっていた右手のナイフを握り直す。
左手の裂傷を、無理やりに止血する為に添え木を締め付ける更に強く締め付ける。
どちらにせよ、自分には時間が無い。
兎角「なら、お前はここで叩き潰すだけだ」
氷影「そう。ズタズタに切り刻んだ先に、きっとその野蛮な瞳も穏やかになるわ。」
闇夜に紛れる暗殺者達は、互いの技術と力をぶつけ合う。
赤い瞳はゆらゆらと揺蕩い、青い瞳は真っ直ぐに視線を鋭く尖らせていく。
57: ◆UwPavr4O3k 2016/05/06(金) 06:39:27.76 ID:XcfkH6Ru0
ニオ「あ…う……あ……」
血だまりを床に作っていた頬は一時的にガーゼが乱暴に貼り付けられ、相変わらず吊り下げられたロープがギリギリと手首に食い込んでいる。
だが、それよりもだらしなく口を開けて涎が零れ続けているニオの表情は蕩けきって………その原因は真昼の手に握られているモノだった。
極細の注射針からはせわしなく液体が溢れ続けており、差し込まれた真昼の腕へと流れていく。
真昼「(……チッ、薬なんぞ使いたくなかったんだけどよォ。)」
ニオに打ち込んだのは筋弛緩剤と中毒性のある薬品。自分に打ち込んでいるのは、"禁断症状を抑える"為のとある薬。
薬漬けは理事長の指示だ。真昼としては薬漬けにするのだけは、面白くないとしてあまり好んでいない。
あくまでも、人間としての理性・情緒を持った対象を嬲る事が楽しいのだから。
真昼「(あァ―――――ここだ。この瞬間だけ、"彼"と一緒になれる)」
込み上げる感情をくつくつと喉の奥を鳴らし、ビクビクと背筋を震わせては、一時的な悦楽を享受する。
針の差し込まれていた真昼の腕は、もう、何度打ったかもわからない程に青痣が作り出されている。
口の中には、延々と嬲られ続けた真昼の唾液と自分の血と。
あまりにも、嗅覚を支配しているのが鉄臭くて、それ以外の感覚が全ておかしくなっている。
手首が痛い。吐き気がする。頭が痛い。がんがんと耳鳴りがする。寒気がする。腕が、足が、胸が、お腹が、首が、瞳が―――――――――――。
徹底的に抵抗する力を失われ、血も失い更に薬で脳もおかしくなっている。
怖い。こわい、いたい。
それは、決して肉体が壊れてしまう事だけではなく。
心が壊れてしまう事が、一番怖い。
せっかく、助けてもらった、ニオが。
『……。一人じゃ身を守る事も出来ないグズがいつまでウチの体に居座ってるッスかねェ。結局、テメェ一人じゃ何も壊せないし殺せない。自分を"殺す"事も出来ない』
58: ◆UwPavr4O3k 2016/05/06(金) 06:39:53.36 ID:XcfkH6Ru0
ニオが、こわれて、あいつが。……あいつが、戻ってしまう。
だから。
ニオ「っ…ぐすっ……うあああっ……」
ぐしゃぐしゃの喉を必死にならして、掠れたような声ですすり泣く。
"痛みから、悲しみから、葛藤から逃げる為の涙"を流してでも、"ニオ"を守らないといけない。
絶対に、
真昼「ひ、ヒヒッ。テメェにも涙位あったんだなァ、糞野郎が。」
ボロボロと涙をあふれさせるニオの頬を片手で掴み上げ、もう片方は容赦なく彼女の腹部を殴りつける。
ニオ「がふっ、げぶぁっ」
真昼「テメェにッ!! 泣く資格がッ!! あると思ってんのか、アァ!?」
ニオ「ごぷッ……う゛、あ゛ぁ……」
真昼「ハァッ…ハッ、いい面になったじゃねぇか」
ぶらぶらと力なく手首だけで揺れているニオの髪を引っ張り上げると、もはやそこには生気は薄く、瞳からは光が消え失せ、顔中を体液でぐしゃぐしゃしたニオの表情。
浅く息をしている事から意識だけは残っているようだが、当の本人は虫の息といったところか。
そして、今も涙を薄らとこぼしているその瞳に、明確な恐怖と怯えが宿った事を真昼は確認すると、ニタリと垂涎の笑みを浮かべて
真昼「……怖いか? オレが。なァ、テメェは今オレをどう思っている?」
ニオ「……」
真昼「答えねぇと首をへし折るぜ」
ニオ「……こ、あぃ……」
もはや言葉といっていいかもわからない、僅かな口の動きだけでその掠れた声を発する。
全身の震えが止まらず、ガクガクと痙攣の様に体を震わせるニオに、
真昼「もう満足した。テメェは用済みだ」
大ぶりの鉈をその震える喉に添え………まるで断頭台の如く、吊られたニオは徐々にその鉈へと食い込もうとする喉を止められない。
真昼「慈悲は最後まで無ェ。最大限苦しんで死ね」
59: ◆UwPavr4O3k 2016/05/12(木) 15:23:23.28 ID:/jhDhGz80
一方的になるかと思われた勝負は、しかし、思った以上の兎角の抵抗に氷影の表情が少しだけ変わる。
水準よりも遥かに優れた血筋の力は、やはり侮れない。
氷影「(自分としては、完全に見えない角度から斬りかかってるつもりだけど)」
死角というモノは、必ずどの生物にも存在し、360度全方位が見渡せるバケモノが仮にこの世に居るとすれば………
"仮定"するなら、第六感。
本来存在しえない筈の超直感という名の本能的な感知センサーの様なモノが働いていることだろう。
ならば、目の前の薄暗く満足に体も動かせない状況の中で、的確とは言えぬものの徐々に正確にナイフを弾く生物は何者だ。
兎角「ッ!!!」
氷影「(……化物。確かに、理事長の言葉も分からない事は無いわ)」
ミョウジョウ学園の理事長でさえも、評価に値する二人の少女。
東と葛葉という二つの因縁。
氷影「……ふふ。頑張っている貴女に少しだけ聞きたいことがあるの。」
兎角「知るか」
氷影「何故、貴女は"走り鳰"にこだわるの? 寒河江春紀という、貴女からして見れば"敵"が救った彼女を」
兎角「………」
氷影「少なくとも、殺し殺される様な因縁は強い筈よ。私達の一つ前の黒組、十年黒組の事はよく知ってるわ」
兎角「自分のケジメだ。それ以上でも、以下でもない」
完全に気配を消した死角からの斬撃の筈なのに、兎角の頭はどんどん冴え渡っていく。
自分でも分からない。失血も激しく、既にフラフラだったはずの手足は正確に動き、痛む傷痕も麻痺したように痛みを感じない。
単純にアドレナリンが溢れているというだけでは説明しきれない。そんな不思議な力が湧き上がる。
氷影「……そう。」
"東兎角"という存在にとって、今の"走り鳰"はあくまでも一之瀬晴という少女の為の依代。
そう思っていたが、それ以上に何かがあるらしい。
これ以上はいずれ自分の位置が割れてしまうだろうと思った氷影は、あまり好んでいない拳銃を引き抜く。
消音器付のワルサーという拳銃、亜音速で死角から飛来する複数の弾丸は、確実に兎角を貫いた。
放たれた弾丸は五発。氷影の私的な意向で、装填していたのはその五発のみ。
右脚、左腕、右肩、左足……そして、ナイフを握る右手。
右脚、左腕―――――――二発が血の華を咲かせ、兎角の両膝がガクリと力を失う。
左腕は元々重傷だった為か、添え木の間から特に多くの血が流れていく。
そう、"ただの二発しか"、当たらなかった。
60: ◆UwPavr4O3k 2016/05/12(木) 15:24:34.74 ID:/jhDhGz80
そして、兎角が右手のナイフで何かを振り抜いた後の様な動作を目にした氷影のピエロ面が叩き割られる。
それはブッシュナイフ。ブーツに仕込んだ小ぶりのナイフは、氷影の頬を裂き、その仮面を破壊した。
氷影「――――――は。あは」
兎角「……チッ、後3センチか」
既に貧血だった兎角は更に血を流した事によってもはや失血死の恐れすらある筈の状態………その筈だ。
何故、彼女はそれでも――――――――それでも、"獰猛な瞳で笑っていられる"?
氷影はあまりに人間離れしたその正体が、自分が触れるべき"領域"ではなかったと、すぐに後悔する事になる。
兎角「おい。まだ"そっち"を見てるのか?」
何故なら、目の前に居た筈の手負いの獣が一瞬の内に自分の背後に立っていたから。
そして、頬から溢れる血液とは別に。
氷影は、自分の、左胸、から、溢れ出す血液を、ぼんやりと、眺めて。
兎角「初めからこうすれば良かったのは分かっていた。ただ、私自身がソレを強く拒んだ。……でも、お前にはそんな枷を掛けたままじゃどうしようもなかったんだろうな」
氷影「げ、ぼっ……あ、あ。」
兎角「世界は"理不尽"に満ちている。それが、"今"の私の答えだ、晴」
これは、彼女が犯した罪。
決して赦される事の無い、人間を殺す大罪。
62: ◆UwPavr4O3k 2016/05/23(月) 15:39:58.24 ID:u4W6mO6z0
兎角「……」
初めてではなかった。
人間にナイフを刺したのは、刺されたのは、いくらだってあった。
でも、確かにこの右手のナイフが貫いている蠢く心臓が、静かに止まっていく。
命を、奪う。
氷影「……そ、うね。私、の、人生。あ、なたに殺され、て、少し、満足した、かも。」
兎角「……」
その一言を最後に、心臓から湯水の様に溢れ出す血液を抑える事も無く、静かに目を閉じて彼女は絶命した。
力が抜け、そのまま後ろに倒れてくる氷影の身体を受け止め、右手のナイフをゆっくりと引き抜く。
抜いた箇所から溢れた血が全身に飛び散る事も気にせず、ただ静かに死体を処理するべく砂の地面に横たえる。
兎角「(これが、殺すという事か。)」
それはあまりにも………無機質で、無感動だった。
63: ◆UwPavr4O3k 2016/06/02(木) 06:24:56.61 ID:qEJ+rY/b0
真昼「……」
一時は、ニオの首を鉈に押し付けて引き裂こうとしていた真昼だったが、足元に撃ち込まれた銃弾で正気を取り戻す。
真昼「(……チッ、あのクソババア)」
今はまだ、殺すべき時ではない。
静かに真昼の僅か逸れた場所に撃ち込まれた銃創が物語る。
ニオ「げぶ、うぅっ」
押し付けられていた鉈から解放され、吊るされたまま激しく咳き込む。
喉か内蔵か、どちらにしても傷付いているせいで血を吐き出してしまった。
粘性の強い血が喉に詰まり、ごぼこぼと喉を鳴らすニオの顔が青ざめていくのを、真昼が舌打ちをしつつも蹴りつける。
血の塊を吐き出したニオの髪を乱雑に掴み上げ、一瞥すると両手の拘束を鉈で引き裂き床に放り投げた。
抵抗することもなく倒れ伏したニオは、霞む視界の中。
がんがんと激しく頭の中身を揺さぶられるような感覚と共に、意識を失う。
「……ペッ、あ゛ーあ゛ァ。自分で作った人格ながらクソ使えないッスねェ」
そして。
聞き覚えのある声と共に、"人格"が入れ替わる。
真昼「……あァ、テメェだテメェだテメェだ……」
ソレを見た真昼は、にたりとした粘つく様な笑みを浮かべるのとは逆に、その心中を煮え滾らせていた。
久々にこの全身の鳥肌が立つ激しい寒気の様な感覚を思い出す。
鳰「げぼっ、っ痛ぇなァクソったれ」
真昼「死ね。死ね死ね死ね死ね死ね!!!」
頭は妙に冴え渡っている。だが、ただ一つ、目の前の女を殺せと言うハッキリとした意志が真昼を突き動かし、右手に握った鉈を振り下ろす。
全身はボロボロに痛めつけられている鳰は、しかし眉一つ動かさず……どちらかといえば、やたらと喉に引っかかる粘ついた血に不快感を覚えながらその両目を真昼に向ける。
ただ一言。
((((((((((((((((((((((「消えろ」))))))))))))))))))
それだけで、真昼の動きがぴたりと止まり、意識を失った彼女は倒れ伏した。
もはや、走り鳰には勝負だとか殺し合いだという概念は無い。
64: ◆UwPavr4O3k 2016/06/09(木) 08:24:26.05 ID:+k16k7z70
鳰「……ッ、痛ェ……」
幻術を、と言っても本調子では無いので軽い催眠術の応用で真昼を黙らせた。
その後、手近な場所に落ちている小ぶりなハンドナイフを手にし、ボロアパートから立ち去る。
倒れ伏した真昼の様子を伺うに、おそらく数分後には起き上がってしまうだろう。"そう"するしか無かった理由は、すぐに来た。
鳰「うッ、ゲボッゲボッ!!」
ふらふらと今にも倒れそうな状態でアスファルトの道を歩いていた鳰は、突然激しく咳き込んだかと思うと、胃の中の物を全てぶちまけた。
人格を無理やりたたき起こしたせいか知らないが、入れ替わった後から、まるで船酔いをした状態のような気持ちの悪さが体中を支配する。
幻術を無理に行使できなかった理由は、確か全身を痛めつけられた事もあったが、しかしこの吐き気が大きい。
鳰「(……目一)」
一度は失敗してしまったこの計画は、少なからずミョウジョウの利益となるが故に百合目一の協力も仰いでいた。
彼女が自分を許す、などといった考えよりも、目一が自分を……"走り鳰"を既に捨ててしまっていないか、という事の方が大事だった。
許す許される以前に、もう自分を見限っているのではないかという"結末"だけは避けたい。
ならば、やるべき事は一つ。
鳰「(東兎角、寒河江春紀、一之瀬晴。そして、"番場真昼")」
あのアパートで番場真昼を見逃した理由は、常に狙撃手が自分を狙い続けていた。
ナイフを振り上げた途端に外していた照準を一瞬で額へと持ってきた狙撃手の様子を伺いつつも引いた。
全ては、生き残り、目的を達成し、計画を成就させる為。
鳰「全員、ぶっ殺してやる……」
どんな手を使っても、惨めな醜態を晒そうとも、生き残る事が出来た。
だからこそ、あのような気持ちの悪い人格を作り上げ、あたかも"記憶喪失を起こしてしまった"様に見せかけた。
だからこそ、こうして仮初の人格を叩き潰し、現実世界へと舞い戻った。
筈だった。
鳰「(ッ、うる、せェぞ!!)」
先ほどから続く吐き気の正体は、必死にこの身体を奪おうと意識の其処から叫び続けるもう一人のハシリニオ。
計算違いは、その仮初の人格があまりにも自我を持ちすぎてしまった事か。
65: ◆UwPavr4O3k 2016/06/15(水) 16:56:28.88 ID:HokN+HoU0
そうして二つの戦いが一旦の落ち着けを見せていた裏で、一室に二人の男女が立っていた。
恵介「君が全て悪いわけではなかった。それは重々理解"してはいた"が」
春紀「……」
恵介「自分の責任を放棄して、こんな所で腐っているのは何故だ?」
正確に言えば、片方の影は椅子に座りこんでしまっている。
春紀の心ここに在らず、といった様子に、恵介の表情は依然として厳しい。
恵介「走り鳰の管理は君に任せていたが、やはり彼女を更生させてもう一度やり直す事は叶わなかったようだ」
春紀「……アタシは、」
恵介「俺のやり方でやらせてもらうとしよう。君が立ち直ろうがそのまま腐ろうが、これ以上過去の柵を放置しておく訳にはいかない」
暗殺者とは、あくまでも全て極秘かつ穏便に事を済ませていく存在であるべきだ。
恵介にとっては、自分の娘同然の存在を殺した走り鳰という存在がこれ以上公に生き続けていく事になれば、いずれ仕事にも支障が出る可能性がある。
仕事以外にも、個人的な感情が揺らされる事もあるかもしれない。
そうして、恵介が部屋を後にしようと
春紀「……腐ってた訳じゃないんだ。ただ、ずっと考えていた」
振り返った先に、先ほどまでのぼんやりとした表情ではなく、どこか気迫の感じられる瞳で恵介を見つめる春紀の姿を見た。
それは、まるで、
恵介「(………伊介、を重ねてしまうのは、どうも)」
愛しい我が子の面影を感じてしまう。
そもそも、本来の自分であればまず我が子の伊介を殺した相手である走り鳰に加減などせず即殺しに向かうし、目の前にいる少女も伊介と親しいとはいえ共犯者に変わりない。
二人とも抹殺して、それで犬飼伊介の話は終わるはずだったのだ。
それをなぜ、寒河江春紀の願いを一度だけ聞いたのか。
春紀「ニオは走り鳰の作り出した人格だったらしい。だからこそ、走り鳰の人格に戻ってしまう事を考えてアタシの元から離れて行った。
でも、それはきっと、それだけの意味じゃない。罪はきっと一人でも償える。でも、これ以上逃げたらもう後は無い」
67: ◆UwPavr4O3k 2016/06/29(水) 05:46:27.12 ID:n4iuEWQH0
左目を失ってから日は浅い、未だ少しだけフラフラとした動きで椅子から立ち上がった春紀は、
春紀「アタシは、もうあれ以上誰も死なせずに終わらせようとした。でも、やっぱり、"この世界は赦されなかった"」
恵介の元へと歩み寄った春紀は、彼に手を差し出し、
春紀「恵介さん、必ずこれでケリをつける。……その為の、力を貸してほしい」
……決意した瞳は、あまりにも"澱んでいた"。
片目を失い、友人も離れ、そして最後には現実を知った。
間違いなく、このまま彼女を行かせれば、死ぬだろう。
恵介「(……生きる事を放棄するのとは違う。ケジメをつける為には……)」
こうするしかないのだろう、と。
かつて伊介が愛用していた超小型拳銃であるデリンジャーを春紀の手に置き、六発の弾丸も重ねた。
恵介「……」
春紀「ありがとう。……伊介様に会ったら、アタシ、絶対謝るからさ」
目を伏せたまま、恵介は静かに立ち去る。
決して、これは自分達大人が介入すべき問題ではないと、この騒動が始まった時から決めている。
故に、彼女が『死ぬ』かもしれないとしても、手は出せない。
出さない。
それが、暗殺者という、汚い現実の中の真に汚れたくだらない役割の、末路。
68: ◆UwPavr4O3k 2016/06/29(水) 06:17:19.11 ID:n4iuEWQH0
数分後。
そう、それは三人がそれぞれの目的の為に歩いていたからこそ、閑静な住宅街のT字路で出会ってしまった。
兎角「……ニオ、お前、」
鳰「ハッ、名前で呼ぶな気色が悪い。東兎角、お前はウチが殺す!!」
まず、出会った鳰が兎角にナイフを構えて仕掛けた。
お互いに満身創痍の傷を負いながら、それでも兎角は渋い顔で唇を噛み締めながら左手でナイフを構える。
打ち合いの中、兎角は鳰がニオとして得た技術を自然と使いこなしている事に気付く。
以前までの走り鳰の格闘の技量は、ただでさえ暗殺者としての血が滾っている自分にとって足元にも及ばない我流のモノだった。
だが、今、こうして傷を負っているとはいえ、兎角に食らいついてきている鳰の動きに、思わず不安な気持ちが浮かび上がる。
それは初めて兎角が感じる、"殺してしまうかもしれない"という悍ましい恐怖。
兎角「ッ、クソ!!」
鳰「ハ、アハハッ!! どうしたどうした!! こんな"能力(モノ)"に頼らなくても、ウチはお前を殺せる!!」
兎角「(……抑えろ、抑えろ。私は、ここで、殺すべきじゃ、無い。)」
氷影を殺した時、一瞬湧き上がったどす黒い衝動は、自分の理性までも吹き飛ばしていた。
だからこそ、全てが終わった後、氷影を刺した血塗れのナイフを見た時、自然と左手が震えていた。
その時の衝動が、また襲い掛かってくる。ソレを抑え付けるのに必死で、鳰に押されてしまう。
仮に、ここで鳰が幻術を使ってしまったら、その時はこの衝動を抑えきれずに暴れてしまうかもしれない。
兎角「チッ!!」
一度、鳰の腹を蹴り飛ばして距離を取ろうとした。
だが、大した力は込めていなかったつもりでも、無意識下で殺しかねない程の力を込めた蹴りを受けて鳰の身体は、まるで紙風船の様に道路を跳ねる。
鳰「ぶっ、ぐぼっ……」
それもそうだろう。たった数十分前まで、散々体中を痛めつけられ、血も多く失っている鳰は、本当は立っているだけで限界だった。
それを、ただ、東兎角を殺すという執念だけで必死に動いていた。
血反吐を吐き、うつ伏せで道路に倒れ込んだ鳰は、ビクビクと痙攣しながらも震える手に力を込めて立ち上がろうとする。
そんな彼女の様子に、兎角はニオを引き戻す為に何をすればいいか、思考する。
その思考は、決して大きくは無い、乾いた銃声と共に吹き飛ばされた。
鳰「……あ、」
春紀「先に行っててくれ、走り鳰。アタシも、すぐに行くからさ」
鳰の心臓に背中から突きつけられたデリンジャーから放たれた弾丸は彼女の心臓を貫き、おびただしい量の血液が噴き出した。
兎角「な、ん―――――何を、している」
春紀「……ケジメさ。暗殺者としての、"寒河江春紀"という一人の人間としてのケジメをつけに来ただけだ」
瞬間、兎角は頭の中の理性が蒸発する音を聞いた。
70: ◆UwPavr4O3k 2016/07/04(月) 05:37:02.62 ID:dkRzTxfL0
一発の銃声が戦いの始まりを告げた。
そう思ったのは、兎角だけだ。
なぜなら、
鳰「(……)」
一度距離を離し思考の時間を得る為の兎角の行動は、大きく裏目に出ていた。
この場において、一度大きく時間が欲しかったのは鳰の方だった。
幻術の使用すること自体に負担はそうは無い。だが、その力を維持し続けるのには中々に負担がかかってしまう。
今この状況を作り出せるのも、無理やり意識をたたき起こしてギリギリと歯を軋ませている鳰が全て。
倒れ伏した隙間から見える、血の様な赤い瞳が兎角と春紀を捉える。
兎角「――――――」
春紀『あぁ、そうだ。結局、何もかもから逃げ続けたアタシのせいだ。』
「っ、お前ッ……!!」
今、兎角がナイフを振りかざしている相手は、寒河江春紀『ではない』。
全ては鳰が見せる偽物。無意識のうちに、兎角は先ほどのやり取りの中でまたも幻術に嵌っていた。
出会った時から、既に対抗策は無かったのだから。
春紀「……東、お前、泣いて、」
兎角「寒河江……人間を一人殺した今の気分は、どうなんだ」
春紀「殺、」
兎角「人間の命を奪う事が、どれだけ無機質でどれだけ空虚か。お前が感じたモノはなんだッ!!」
ギリギリと奥歯を噛み締め、今まで見たこともないような激情を見せる兎角の様子に、春紀は思わず威圧されてしまう。
ふと振り返った先に、その赤い瞳をぎらつかせて片目だけでこちらを睨み付ける鳰の様子に、察する。
兎角は幻術に掛かっている。そしてそれは、もしかすると、自分が鳰を殺したという内容なのかもしれない。
実際に発砲はした。だがそれは、あくまでも争っていた二人を引き剥がす為の空砲。
それを上手いように利用されてしまったのか。
春紀「……"重さ"を感じた。それは、絶対に下ろせない錘だ」
だが、分かった上で春紀は拳を握る。
引っ張り出した黒組の時のガントレットを構え、兎角の恐ろしくも弱々しいナイフを受け止める。
春紀「だから、全力でアタシと戦え。お前の思いを、アタシにぶつけろ」
兎角「ッ!!!」
春紀「それが、アタシも望んでいた事だった」
71: ◆UwPavr4O3k 2016/07/04(月) 05:41:45.47 ID:dkRzTxfL0
ギリギリと軋むガントレットでナイフを跳ねのけ、左のストレートを叩き込む。
だが、軽々と首を捻るだけでそれを避けた兎角は、凄まじい速度で姿勢を低くし、春紀の脚を潰す為にナイフを振るう。
咄嗟に身を引いた春紀だったが、しまったと思った時にはそのまま兎角の体当たりを腹に受け、地面に身体を叩きつけられる。
春紀「っ、ゲホッ」
兎角「ふっ―――――」
一息、その後に繰り出された肘を、春紀は身を引いて避ける。
左目は兎角にとって大きなアドバンテージになっている、それを理解しているからこそ毎度左側からの攻めが多い。
左側は限りなく見辛い。だからこそ、
春紀「アタシは、ずっとお前と戦う事をイメージしてきた」
本来ならば、あの時の最終決戦は彼女との筈だった。
だから、黒組を始末する為に鳰が画策していた時、最も行っていたのは東兎角という暗殺者の分析。
躱されたても尚、安定した動作で素早くナイフを左側から突き出してきた兎角の腕を抱え、
兎角「ッ、はっ」
春紀「だからこそ、此処でアタシは東兎角の対策を完成させられた!!」
強引に腰を叩き込み、一気に体を回転させて兎角を背中からアスファルトへと投げる。
だが、軽々と首を捻るだけでそれを避けた兎角は、凄まじい速度で姿勢を低くし、春紀の脚を潰す為にナイフを振るう。
咄嗟に身を引いた春紀だったが、しまったと思った時にはそのまま兎角の体当たりを腹に受け、地面に身体を叩きつけられる。
春紀「っ、ゲホッ」
兎角「ふっ―――――」
一息、その後に繰り出された肘を、春紀は身を引いて避ける。
左目は兎角にとって大きなアドバンテージになっている、それを理解しているからこそ毎度左側からの攻めが多い。
左側は限りなく見辛い。だからこそ、
春紀「アタシは、ずっとお前と戦う事をイメージしてきた」
本来ならば、あの時の最終決戦は彼女との筈だった。
だから、黒組を始末する為に鳰が画策していた時、最も行っていたのは東兎角という暗殺者の分析。
躱されたても尚、安定した動作で素早くナイフを左側から突き出してきた兎角の腕を抱え、
兎角「ッ、はっ」
春紀「だからこそ、此処でアタシは東兎角の対策を完成させられた!!」
強引に腰を叩き込み、一気に体を回転させて兎角を背中からアスファルトへと投げる。
72: ◆UwPavr4O3k 2016/07/13(水) 14:56:06.36 ID:QrQyKVOv0
春紀「……悪い、強く投げ過ぎた」
アスファルトに叩き付けられた兎角は、しかしそれでも片腕に力を込めようとするも、既に身体はボロボロで、もはや起き上がる事も出来なくなった。
片腕の出血は無理やり止められているだけで、ただでさえ血が足りないのに加えて肺が潰されたことにより、本格的に意識が薄れていく。
ここにきて、今まで無理やりに動いていた兎角の無意識な殺意が引いていき、ぼんやりとした瞳のまま春紀を見上げた。
兎角「……いや、おかげで目が覚めた。また、私は、」
春紀「葛葉の幻術は、此処で絶やすべきだ。あまりにも凶悪過ぎる」
そうして冷静になった頭で見渡した景色には、血だまりに沈んでいたと思っていた鳰の姿はどこにもなかった。
春紀は取り出したデリンジャーの弾倉を兎角に見せ、
春紀「空砲を利用されたんだ。紛らわしい事をしたアタシにも非はあった」
兎角「……」
納得したのか、少しだけ首を縦に動かした兎角は、遂に限界を迎えて意識を失う。
いち早く治療したいのもあったが、それよりも先に、鳰との話をつけなければならないだろう。
倒れ伏し、しかし先ほどまで輝かせていた片目の赤い瞳は輝きを失っている。
鳰の傍へと歩み寄った春紀は、ゆっくりと彼女の肩を支えて立ち上がらせようと力を込める。
鳰「……は、るき、さん?」
春紀「お前、戻れたのか?」
鳰「そう、みたいです。鳰が幻術を使って体力を使い果たしたせいか、意識が反転した……と思います」
よろよろと立ち上がったまま、しかし気まずそうな表情のまま顔を伏せるニオに対して、
春紀「アタシが悪かった。……自分勝手な考えを、自分が思う正義を押し付けてしまったから、ニオを止める事が出来なかった」
鳰「……」
春紀「でも、やっと気付けた。この命のやり取りの世界に必要な事は、"絶対的な意思"だった。」
必ず何かを成し遂げるという思いこそが、失われる命を肯定する唯一の方法。
春紀「もう一人で抱え込むな。アタシや冬香達がニオを待ってるんだから」
顔を伏せていた鳰がピクリと肩を震わせ、支えられている左腕で春紀の肩を強く抱く。
今は、休むことが必要だ。身体の傷も、心の傷も癒す為に。
そうして、歩き出そうとした春紀は、自分の脇腹に焼ける様な痛みを感じた。
73: ◆UwPavr4O3k 2016/07/13(水) 14:56:34.02 ID:QrQyKVOv0
春紀「……悪い、強く投げ過ぎた」
アスファルトに叩き付けられた兎角は、しかしそれでも片腕に力を込めようとするも、既に身体はボロボロで、もはや起き上がる事も出来なくなった。
片腕の出血は無理やり止められているだけで、ただでさえ血が足りないのに加えて肺が潰されたことにより、本格的に意識が薄れていく。
ここにきて、今まで無理やりに動いていた兎角の無意識な殺意が引いていき、ぼんやりとした瞳のまま春紀を見上げた。
兎角「……いや、おかげで目が覚めた。また、私は、」
春紀「葛葉の幻術は、此処で絶やすべきだ。あまりにも凶悪過ぎる」
そうして冷静になった頭で見渡した景色には、血だまりに沈んでいたと思っていた鳰の姿はどこにもなかった。
春紀は取り出したデリンジャーの弾倉を兎角に見せ、
春紀「空砲を利用されたんだ。紛らわしい事をしたアタシにも非はあった」
兎角「……」
納得したのか、少しだけ首を縦に動かした兎角は、遂に限界を迎えて意識を失う。
いち早く治療したいのもあったが、それよりも先に、鳰との話をつけなければならないだろう。
倒れ伏し、しかし先ほどまで輝かせていた片目の赤い瞳は輝きを失っている。
鳰の傍へと歩み寄った春紀は、ゆっくりと彼女の肩を支えて立ち上がらせようと力を込める。
鳰「……は、るき、さん?」
春紀「お前、戻れたのか?」
鳰「そう、みたいです。鳰が幻術を使って体力を使い果たしたせいか、意識が反転した……と思います」
よろよろと立ち上がったまま、しかし気まずそうな表情のまま顔を伏せるニオに対して、
春紀「アタシが悪かった。……自分勝手な考えを、自分が思う正義を押し付けてしまったから、ニオを止める事が出来なかった」
鳰「……」
春紀「でも、やっと気付けた。この命のやり取りの世界に必要な事は、"絶対的な意思"だった。」
必ず何かを成し遂げるという思いこそが、失われる命を肯定する唯一の方法。
春紀「もう一人で抱え込むな。アタシや冬香達がニオを待ってるんだから」
顔を伏せていた鳰がピクリと肩を震わせ、支えられている左腕で春紀の肩を強く抱く。
今は、休むことが必要だ。身体の傷も、心の傷も癒す為に。
そうして、歩き出そうとした春紀は、自分の脇腹に焼ける様な痛みを感じた。
74: ◆UwPavr4O3k 2016/07/17(日) 18:40:04.09 ID:FvhlkTxl0
春紀「が、ぶっ」
鳰「……死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
春紀の肩を強く抱いたのは、決して立つのが辛くて支えてほしかった訳ではない。
最後の力を振り絞って突き出した右手のナイフを、春紀の腹へとねじ込む為だ。
春紀「ッ、あ」
鳰「死ね!!」
ぐぢゅりぐぢゅり。
粘ついた音と共に、春紀の内蔵をズタズタに切り裂いていく鳰のナイフは、しかし鳰自身の疲労の限界もあってかそう深くは刺さらなかった。
浅い部分、しかし捻じり回した事によって傷口は目も当てられない程にグロテスクだ。
たまらず、せり上がってきた嘔吐感と共に血の塊をアスファルトにぶちまけた春紀は、そのまま前のめりに倒れ込む。
刺した側の鳰もまた、フラフラとした動きで倒れてしまう。
春紀「っ、はっ…はっ…」
鳰「……全部お前が。お前のせいで全部狂った!! ウチはもっと上手くやれたんだ、なのに、なのになのになのにッ!!」
春紀「げぼっ、……」
急速に視界が暗くなっていく。血が流れ続け、全身から力が抜ける。
ダメだ。まだ、"まだ"死ぬわけにはいかない。
自分がここに来たのは。ただ、犬死する為に来たんじゃない。
春紀「……お、まえ、の。"走り鳰"に対する言葉、だ。」
鳰「ッ!?」
致命傷とも言える箇所に傷を負って尚、それでも体をたたき起こして無理やりに這いずってくる春紀に、鳰は驚きよりも恐怖を覚える。
そもそも、こいつは家族の為に自分と協力し、大金を得られればそれでよかったはずだ。
その中で、誰の入れ知恵か余計な情報を手にし、最終的には走り鳰の最後の障害となった。
だが、その肝心な情報などよりも。
何故、こうまでして寒河江春紀は走り鳰に固執する。
確かに、自分が作り出した無意識下における都合の良い別人格が暫くともに過ごしたという事もあるのだろう。
だが、ソレを差し置いても、何故自分の命を賭けてまでこうして追い縋る。
なぜ、
春紀「お前、の。やさしさ、は、本物だった」
鳰「なッ……にを、言って、」
春紀「"別人格"なんかじゃなかった。アレは、ハシリニオは、"一人"だった」
鳰「は…?」
春紀「……アタシはニオと過ごして、気付いた事があった。それは、ハシリニオは、アタシが走り鳰と過ごした時に見た癖や仕草を全く同じように行っていた」
鳰「……何を、」
春紀「お前、は。本当は、記憶喪失なんかじゃ無かっただろ。記憶を失ったふりをして、自分が失敗したというショックで一時的にハシリニオという別人格を無理やりに"演じていた"だけだ」
鳰「…ふざけ」
春紀「ふざけてなんかいねぇ!!……だったら、お前は何で、」
「何で泣いているんだ」
75: ◆UwPavr4O3k 2016/07/17(日) 22:13:03.61 ID:FvhlkTxl0
鳰「……あ、え」
ボタボタと、いつの間にか自分の頬を濡らす涙の粒に気付いたのは、自分の頬に飛び散った返り血が手元に流れ落ちて来た時だった。
地面を這いずり、血痕を残しながらも鳰の元に辿り着いた春紀は、自分の眼帯を外す。
其処には、細菌で充血し、壊死しかけている赤黒いグロテスクな瞳がある。
それでも、春紀は両目で鳰を見る為に眼帯を取り払う。
ぎゅうっ、と。
辛くなった時に、冬香がしてくれた事を、鳰にも。
春紀「片目が見えなくなっても、ナイフを刺されても、アタシは、大丈夫だ。……走り、お前はきっとやり直せる。誰かを殺して、何かを成し遂げる事なんてもう終わりだ」
鳰「……っ。」
春紀「だ、から。……な、もう、止めよう。自分に、嘘をついて、意地張って、生きるの。」
元々、捨てられた人間になるはずだった。
それでも、此処まで生きてこられたのは理事長のおかげだ。
今回も、それからも、彼女の為に生きたいと思い続けた。
だからこそ、ずっとずっと東兎角について考え続ける理事長の姿がたまらなく辛かった。
嫉妬心は暴走し、元々気に食わなかったあってか、東兎角をこの手で潰す姿を彼女に見せられれば良いと。それだけを考えた。
けれども、結果は寧ろ最悪だ。何せ、一般人上がりのど素人と相討っただけだ。
東との争いに敗北する。その結果は、きっと理事長を呆れさせ、そしていつか自分は用済みになってしまう。
そんな恐怖と思い込みと嫉妬心と…………全てがぐちゃぐちゃに混ざり合って出来上がった"ハシリニオ"は、耐えきれなくなって作り上げたただの偶像。
偶像こそが本物。走り鳰は、この一か月間を過ごしてきて、寒河江春紀という女性に憎しみだけではなく、憧れを抱いた。
貧しくても、辛くても、家族全員で笑って過ごしている。
家族とは、こんなに素晴らしいと、初めは臭いと思っていながらも、殺し殺されの世界に居るよりはずっと居心地が良かった。
うれしかった。
鳰「ひっ、ぐすっ……うああああっ」
春紀「ッ、はは、おいおい、そんなに強く抱かれたら、傷口がもっと開くって」
決壊した苦しみは大粒の涙と共に流れていき、春紀もまたその涙を受け止める為に胸を貸した。
76: ◆UwPavr4O3k 2016/07/17(日) 22:52:55.77 ID:FvhlkTxl0
「みぃーつけた。」
不意に、暗がりから聞こえて来たしゃがれた様な声。
元はおそらく声も高く、そしてあまり大きな声を出すのは苦手であった筈のその声は、あまりにも酷くガサガサと低い声だ。
何日も碌な食事は取らず、中毒性の高い薬を服用し過ぎた結果、今の彼女は廃人寸前だった。
そして、その右手に握られているのは大きな鉈。
肉を分断する位は容易に可能とする。
そんな彼女が振り上げた鉈を構えているのはどこか。
春紀「……な、にッ」
不幸にも、泣き喚いている鳰の頭を撫ぜる春紀の目の前だった。
どうする。自分の脇腹の負傷も決して浅くは無く、正直今ここで迎撃しろと言われてもあんな鉈の衝撃を受けきる自信は無い。
抱えている鳰を離せば逃げる位は? あり得ない。そんな選択肢、今ここには無い。
どうする。
どうす
春紀「ッ、ここまで、かよ。」
振り下ろされた鉈を止めるすべは無く、春紀は無理やり鳰を抱え込むようにして真昼に背を向ける。
これを受ければ必ず死ぬ。もう、他には。
77: ◆UwPavr4O3k 2016/07/17(日) 22:54:30.75 ID:FvhlkTxl0
兎角「……」
他にあった可能性は、鉈を振り下ろそうとしていた真昼に体当たりを喰らわせ、共に倒れ込んだ。
傷と疲労でフラフラの兎角とは対照的に、薬で飛んでいる真昼は、邪魔をされた怒りのままに尋常ではない脚力で兎角を蹴り飛ばす。
意識を取り戻してすぐに走ってきたせいか、あまり頭が覚醒していない兎角はそのまま塀に叩き付けられる。
だが、その少しの時間のおかげでなんとか鳰と立ち上がる事が出来た。
鳰「……は、るきさん。」
春紀「鳰、東を連れて早くここから離れろ」
鳰「そんな、こと」
春紀「……アタシは必ず冬香達の元に帰る。"自分のケジメ"を付ける時が来たんだ。ここが、最後だ」
真昼「あ゛~あ゛!!! ごちゃごちゃうるせぇんだよテメェら!!!」
蹲って痙攣している兎角を横目に、真昼は鉈を引きずる様にして鳰と春紀に横薙ぎに振るう。
なんとか距離を離していた為に鳰を抱えつつ避けられたが、これ以上はジリ貧だ。
長引けは長引く程、この、腹の、傷、が……
春紀「(っ、う、そ、だろ……もう、血、が…)」
この場には満身創痍の人間しかいない。心が傷付いた、身体が傷付いた。
ダメだ。自分が、ここで、倒れたら。もう、全員、死ぬ。
ケジメをつけられずに、終わってしまう。
体制を取り直した真昼が、今度こそ止めを刺す為に振り上げた。
鳰「―――」
ドクドクと溢れる脇腹の傷口を、そっと引き裂いた布を押し付けた鳰は、真昼へと向き直る。
彼女がこうまでして執着するのは、自分が原因だ。確かに、この脚で英純恋子を殺した。
だったら、自分が離れるだけでいい。至極単純な事。
春紀「ま……て。だ、め、だ」
鳰「私が春紀さんを……"ウチ"が、春紀さんを絶対守ってみせる」
振り絞った力は、いったいどこから湧いて来たのか。
それまでの使命感や憎しみを全て投げ捨てた鳰は、一気に近くの公園へと駆け抜ける。
80: ◆UwPavr4O3k 2016/07/19(火) 04:45:30.10 ID:1l3ra7v+0
静まり返った夜の公園。
東村山の一角に点在するその公園は、かつて、春紀が途方に暮れて沈んでいたところに鳰が話を持ちかけた場所でもあった。
ここから始まった、憎悪と苦しみの殺戮。
「……逃げんじゃねェぞ、クソ野郎」
春紀の座り込んでいたブランコを眺めていた鳰の背後に、巨大な鉈を片手に引きずったまま、明らかに異常な様子の真昼が現れる。
その異常さは、いくつかあるがその中でも特筆すべきなのは。
鳰「……逃げてなんかないっスよ。自分のケジメは、自分でつけるっスから」
真昼と顔面が、真っ二つに分かれている事。
正確に言えば、まるで顔面麻痺を起こしたように凶悪な真夜の表情と怯えた様な真昼の表情が真っ二つに分かれて張り付いている。
過度なストレス、心労………なんにせよ、既に真昼の心はボロボロになり、"無理やりに演じていた"真夜としての人格が定着しつつある。
このままいけば、彼女の心は自壊して廃人になってしまうだろう。
そう推測出来たのは、"人間の脳"を専門にする葛葉の幻術使いだからだ。
鳰「(……でも、もう幻術はつかえない。立っているのでも、精一杯……)」
今の自分は、アドレナリンが溢れているのか、気力だけで無理やりに動いている。
ここですぐにでも倒れ込んでしまいたい身体を無理やりたたき起こしている様な苦しさと格闘する。
だが、こんなところで寝ている訳にはいかない。
全ては、この最後のケジメをつける為に。
真夜?「……ケジメ、ケジメか。ひひ、ひひひひひひひひひひひひひひひひ」
肩を揺らし、ケタケタと奇妙な引き笑いを見せた真夜/真昼は、そのゆらりとした挙動からは考えられない程の速度で地面を駆ける。
あっという間に距離を詰めた後、右手に構えた大鉈を一気に薙ぎ払う。
真昼?「ミョウジョウが知った事か。"オレ"がお前をぶっ殺して終わりだァ!!!!!!!!!!!」
向かい合う鳰もまた、襲い来る大鉈を睨み付ける。
これがきっと、本当の本当に最後の果し合い。
『暗殺者』としての、最後の奪い合い。
81: ◆UwPavr4O3k 2016/07/19(火) 13:52:37.17 ID:1l3ra7v+0
今の真昼の動きはあまりにも無茶苦茶で、それら全てが力任せに動いている。
最初の鉈の大振りをあまり体に負担をかけないように最小限の動きで回避した鳰は、返す刀の様に転がっていた石を投げつける。
振り切っていた動きのまま飛来した石を、真昼はぼんやりとした表情のまま受け止める動作もせずに顔面で受けた。
頬に切り傷を作りながらも、まるで動じていない真昼は
真夜?「ひひひひひひひ。あァ、すみれこ。オレはやっと、お前の"魂"を救えるんだァ」
それまでの緩慢な動きから一辺、常軌を逸脱した速度で、走り抜けるというよりは飛びついてきたと言って良い真昼の動きに、鳰は反応が遅れた。
ただでさえ夜で辺りが見え辛いこの状況では、鉈の僅かな光を頼りに動くしかない。
その状況下で、
鳰「ごぶッ、おっ……」
真昼?「肉が、オレの手が肉を抉る。ひひ、ひひひひひひひひ!!! 抉る抉る抉る抉る!!!」
死角から放たれた拳が鳰の鳩尾に叩き込まれ、その強烈な衝撃に思わず肺から空気が溢れ出す。
反射的に零れた涙をぐっとこらえ、歯を食いしばってなんとか身体を回転させ、至近距離に居る真昼に裏拳を放つ。
延髄、首元の神経を狙って放たれた神経打は、確かに真昼の首へと当たった。
当たった上で、真昼は鳩尾のダメージに顔を歪ませた鳰の顔面を掴み、一気に地面へと叩き付けた。
鳰「っ、あぐッ!!」
真昼「マッサージ、マッサージと変わらねぇ……気持ちいいなァ。すみれこ、気持ちいいなァ」
確かに意識を奪える様な角度と力で放ったはずなのに、全くと言っていい程ダメージは入っていない。
もはや、今の彼女には感覚すらも、痛みすらも感じられないのか。
必死に両手で顔面を掴んだ手を引き剥がそうと抵抗していても、その万力の様な腕は全く動かせない。
鳰「あっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
真昼「こり、こり。こり、こり」
真昼の指が、鳰の両目を瞼の上から擦る。
その行為に本能的な恐怖と寒気を覚えた鳰は、なんとか腕を剥がせはしないか、全力で思考する。
82: ◆UwPavr4O3k 2016/07/20(水) 14:47:35.22 ID:z6XYF9RO0
鳰「っ、は、ぐッ……」
片手で鳰の顔面を、もう一方の手でその細首を締め上げ、徐々に地面から足が離されていく鳰は已然として苦悶の声を上げる。
どうする。圧倒的な力でねじ伏せられた体は、もう殆ど動かない。
幻術―――――――確かに疲労していたとはいえ、それでも一度扱う程度ならまだ可能かもしれない。
それでも、閉じていない方の瞳の色が赤く輝く事は無かった。
鳰「(ッ、こ、んな、モノにッ……!!)」
頼ってしまえば、これまでの自分となんら変わらない。
圧倒的な力を持った故に、それを振りかざしていくつもの死体の山を築き上げてきたこの悪魔の様な能力を。
捨て去る。
決別の為の、この戦いだ。
だが、現実は非情。
鳰「ひゅーっ……ひゅーっ…」
真昼「いつ死ぬかな、いつ死ぬかな、いつ死ぬかな……」
笑みを張り付けながら、その実一切笑っていない虚ろな瞳を浮かべる真昼は、自らの手で釣り上げた鳰の身体から力が抜けていく様子にぶつぶつとそれだけを呟く。
やがてはこのもう片手で締め付けている顔面を砕き、眼球がいつ飛び出すのか、ソレすらも楽しみにしている。
呼吸が上手く出来ない。瞳からじんわりと光を失い、既に抵抗していた両手はダラリと力なく投げ出される。
どう、すれば……。
その時鳴り響いた着信音に、その音の主を所持していた筈の鳰ですらも驚愕する。
あまりにも急すぎる音声が響き渡り、真昼さえもビクリと肩を震わせて締め上げる手が少しだけ緩まった。
刹那の判断、震える手を無理やりに動かして後ろポケットに入っていた画面のひび割れた安物のケータイを引き抜いた鳰は、
そのシャッター部分を真昼に突きつけ、一気に連射モードでボタンを押す。
真昼「ヒッ、ひぁぁあああああああああああッ!!!」
激しい金切り声と共に、凄まじく怯えた様な表情を浮かべた真昼は、締め上げていた鳰を放り出し、その場に頭を抱えて蹲った。
なんとか、窮地だけは脱出出来た。
84: ◆UwPavr4O3k 2016/09/14(水) 13:51:38.03 ID:UBkNOjDv0
鳰「ハァっ……ハァっ……」
げほげほと激しく咳き込んでいる鳰は、なんとか自分の眼球がちゃんと二つついている事と、首の骨が砕けていない事を確認する。
仮に、今目の前で蹲って苦しんでいる真昼にこの策が通用しなかった事を思うと………いや、今はその光景は忘れよう。
狂乱している真昼から視線を外さず、連続でシャッターを切ったのを最後に光を失った携帯を投げ捨て、まだフラつく両脚でなんとか立ち上がる事が出来た。
どうする。仮に、仮に殺さない様にするとして、一体どうすれば丸く収められる。
正攻法では、もはや薬物で感覚神経すらも麻痺した彼女を相手にするのは無理だ。
鳰「(……コレを)」
この瞳の力があれば全ては解決し、未だ倒れていた春紀や兎角の下へといち早く戻る事が出来る。
だからこそこれまで頼り切ってきたし、これさえあれば何でもやれた。
ソレを断ち切りたいという思いがあったから、機転を利かせる事も出来た。でも、もうこれ以上考えられる手はない。
真昼「あぁ、すみれこ、もう大丈夫……大丈夫、」
絶叫をピタリと止め、ボソボソと呟いた真昼は次第に冷静さを取り戻している。
現実は非情だ。何度も味わうはずだったその無力を、鳰はこの瞳の力で感じる事はなかったせいでここに今凄まじい重圧を感じている。
力が無いとは、ここまで。
鳰「……ごめんなさい。春紀さん、でも、ウチは、助けたい」
唇を噛み締め、唸る様に呟いた鳰は、その両目を大きく見開き。
そして、紡ごうとした言葉は―――――――撃ち抜かれた両脚の痛みにかき消された。
ガクリと崩れていく両脚を止められず、前のめりに倒れ込んだ鳰の背後には拳銃を手にした女が立っている。
目一「本当に貴女は残念だったわ、鳰さん。ここでもし、違う選択を取っていたならば、私が出向くのは少し待っていたのに。」
長い髪を揺らした彼女は、少しも残念などとは思っていないような薄い笑みを浮かべて眼下に崩れ落ちた鳰を見下ろす。
砂粒を握りしめ、両腕に力を込めようとした鳰の腕を、再度同じように消音器付きの拳銃が撃ち抜く。
ビクビクと身体を震わせながらも、既に意識が遠のきかけている鳰の頬を爪先で押し上げ、
85: ◆UwPavr4O3k 2016/09/14(水) 13:52:51.20 ID:UBkNOjDv0
目一「……鳰さん、愛しい愛しい貴女。苦しいでしょう、痛いでしょう。番場"真昼"さんが散々痛めつけていたけれど、無力感というモノがどんなものかは十分に理解出来たはずよ」
ギリ、と、奥歯を噛み締めた鳰は掠れた声で、
鳰「目、一さん。ウチは、あなたの期待には、応えられなかった」
目一「……」
鳰「でも、気付けた。気付く事が、出来た。自分の、人生の、事。自分の生き方の、罪に」
目一「……それで?」
鳰「……」
目一「いくつか訂正しなければならない事があります。第一に、今回の騒動の発端の全ては鳰さん。貴女が自発的に行った事よ。そして、二つ目に、
私は貴女に期待など微塵もしていない。10年黒組を掃討できなかった時点で、もう既に貴女は"走り鳰"では無くなっていた」
目一は確かに走り鳰という少女を愛していたし、だからこそ、最も近い場所に彼女を置いていた。
だが、あくまでもソレは見込みのある能力を持っていた事もある。……故に、その力を以てしても成し遂げられなかった前回の黒組の時から、その信頼は少なからず揺らいでいた。
そして以前の戦いに敗北した彼女の最後のチャンスとして、ひたすらに叩きのめし、その葛葉の力を極限まで抑え込んだ中で、"特殊な力無し"にどこまでやれるか試した。
結果は、やはり不完全な力に頼らざるを得ない程度の"能力"しか持っては居なかった。
目一「……もう、貴女は私にとって他人に過ぎない。愛らしい走り鳰の外見を取った、ただの人間よ」
87: ◆UwPavr4O3k 2016/09/28(水) 06:52:29.74 ID:5CjnZX920
ドクドクと血管の脈動を感じ、次第に全身に寒気が襲い掛かってくる。
流れ出していく血液が自分のものだと自覚したのは、ちらと下を見やった時。
鳰「………そ、っスか。感謝、してるっス。こん、な、ウチを、拾って、くれて」
掠れるような声で呟き、ソレを変わらぬ表情のまま静かに見下ろす目一は、ちらと視線を一度横に向け、
手を上げると同時、拳を振り上げ目一へと肉薄していた春紀の腕が、家屋の二階から放たれた弾丸で撃ち抜かれた。
春紀「ッ、づァ!!」
目一「っ」
それでも、決して怯まない。ただでさえ、もう失血が激しい身体なのにも関わらず、鳰を撃った"敵"を殴るために反対側の拳を振りぬく。
その胆力と精神力には、さしもの目一ですら目を見張るモノがあった。
振りぬかれた拳をあっさりと首で避けた目一は、何かに満足したかの様に口元を歪め、もはや立つのすら困難な春紀の腿へ蹴りを放つ。
目一「……さて、寒河江春紀さん。貴女は本当に素晴らしい働きをしてくれたわ。それこそ、私の期待値を大きく超えた結果を残す位には」
春紀「う゜ッ、げほっ、げぼッ」
溢れ出す腹部の血は止まらず、蹴り飛ばされた右脚はガクガクと痙攣してまともに立つことが出来ない。
口から零れた血を地面に吐き出し、なんとか呼吸をする春紀の姿を眺め、目一は片手の拳銃を鳰に突きつけ、
目一「この子はまもなく死ぬ。そして貴女も、その様子なら後は無い。……そして、簡単な提案があります。
"貴女が私の新たな働き蜂"になりなさい。そうすれば、この子の命も、貴女の命も―――――ご家族の命も、保証しましょう」
春紀「……」
これ以上、手は残っていない。流石に、この状況を根性でどうにかしようなんて馬鹿げた事は考えない。
後少し。少しで、"罪"を一つ乗り越えられたというのに。………結局、罪の清算など出来ないというのか。
真昼「……オイ、目一。テメェ、何しゃしゃり出てきてんだァ!!!」
暫くの間、沈黙の渦中にあった真昼が目を血走らせて動き出し、凄まじい脚力で地を蹴り、右手に握った大鉈を目一の背中へと振り下ろす。
89: ◆NDD5HaAhTA 2016/10/12(水) 13:55:00.72 ID:7uSDMIPH0
その刃は、しかし目一へと届く前に、正確な狙撃によって弾き飛ばされ、更に狙撃手は一撃目の衝撃でグラついた真昼の頭へと狙いを定める。
そして、その引き金が少しの躊躇いも無く引かれたと同時、背後から強引に飛びついてきた兎角によって弾丸は空を切る。
背中から真昼に倒れ込んだ兎角は、それが振り絞った最後の気力だったのか、そのまま意識を失った。
春紀「……頼む、鳰も東も番場も、助けてやってくれ。なんでも、やる」
目一「では、これからよろしく頼みます。――――――新しい働き蜂さん」
春紀の首元を殴りつけた目一は、ジャケットから取り出した携帯でどこかへと連絡をつける。
薄れていく意識の中で、結局どうする事も出来なかった自分の無力さにまた打ちひしがれていた。
そして、その引き金が少しの躊躇いも無く引かれたと同時、背後から強引に飛びついてきた兎角によって弾丸は空を切る。
背中から真昼に倒れ込んだ兎角は、それが振り絞った最後の気力だったのか、そのまま意識を失った。
春紀「……頼む、鳰も東も番場も、助けてやってくれ。なんでも、やる」
目一「では、これからよろしく頼みます。――――――新しい働き蜂さん」
春紀の首元を殴りつけた目一は、ジャケットから取り出した携帯でどこかへと連絡をつける。
薄れていく意識の中で、結局どうする事も出来なかった自分の無力さにまた打ちひしがれていた。
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451596404/
Entry ⇒ 2017.04.10 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
兎角「甘い匂い」
1: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 21:46:20.32 ID:hPsocCIz0
悪魔のリドルSSです。
兎晴です。R-18。
終始エロい事をしていますのでストーリーとか何もありません。
ただイチャイチャさせたかっただけです。
長くはならないと思いますが適当にさらっと作ったのを手直ししながらなので時間がかかるかもしれません。
最後まで必ずやりますのでよろしくお願いします。
兎晴です。R-18。
終始エロい事をしていますのでストーリーとか何もありません。
ただイチャイチャさせたかっただけです。
長くはならないと思いますが適当にさらっと作ったのを手直ししながらなので時間がかかるかもしれません。
最後まで必ずやりますのでよろしくお願いします。
2: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 21:50:28.47 ID:hPsocCIz0
始めはちょっとした悪戯心だった。
ベッドでくつろぐ晴を少し驚かせようと思っただけだ。
晴「や、とかっ、——んんっ!」
後ろから抱きしめ、耳を少し食むだけで晴の喉からは色気付いた声が漏れ出した。
頰は赤く染まり、息は熱い。
きっとこの続きも大丈夫だろうと判断して、兎角は晴の胸に手を当てた。
晴「待って……っ!」
嫌がるような声を出すが、彼女の手は兎角の手を上から覆うだけで抵抗するにしては力が足りない。
ベッドでくつろぐ晴を少し驚かせようと思っただけだ。
晴「や、とかっ、——んんっ!」
後ろから抱きしめ、耳を少し食むだけで晴の喉からは色気付いた声が漏れ出した。
頰は赤く染まり、息は熱い。
きっとこの続きも大丈夫だろうと判断して、兎角は晴の胸に手を当てた。
晴「待って……っ!」
嫌がるような声を出すが、彼女の手は兎角の手を上から覆うだけで抵抗するにしては力が足りない。
3: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 21:55:56.20 ID:hPsocCIz0
そういった素振りをしているだけだ。
兎角は興奮を隠しながら両手に感じる膨らみにぐっと力を込めた。
晴「ふ……んっ」
晴の苦しげな声を耳の奥に残し、兎角はさらに手に動きを加えた。
晴「だめ、だって——」
兎角「少し揉むだけだから」
左右の肉を持ち上げ、寄せながら指先でむにむにと揉んでいく。
4: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 22:03:03.67 ID:hPsocCIz0
晴の肩がピクリと震えて吐息が漏れた。
兎角「気持ち良い?」
晴「ばか……」
顔が赤い。
恥ずかしいのか、興奮しているのか。
少なくとも怒ってはいない。
兎角はもう一歩進みたくて、服の上からブラのホックに手を当てた。
5: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 22:13:34.80 ID:hPsocCIz0
もうすっかり手慣れたもので、晴が反応する頃には綺麗に外れてしまっていた。
晴「兎角さ――!」
振り向いた晴の怒鳴り声を唇で塞ぐ。
舌を強引に入れると晴もそれに返して来るのだから結局のところは彼女も求めているのだ。
赤く熟れた粘膜の触れ合う音が命の熱さを語る。
息苦しくなると離れて絡み合う唾液を飲み下し、またそれを求めてお互いの口内へと侵入する。
そんな事を繰り返すうちに気持ちは高みへと登りつめていく。
6: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 22:17:10.57 ID:hPsocCIz0
もっと激しいものが欲しい。
服の裾に手を差し込んで、直接胸に触れる。
吸い付くような弾力と瑞々しさに兎角は息を呑んだ。
晴「んんっぅ!」
手のひらで乳房を撫でながら指の間に入り込んだ先を摘む。
さらに大きく晴の体が揺れて、逃げるように唇が離れていった。
11: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 23:19:27.21 ID:hPsocCIz0
それを追うことはせず、続けて首筋に口付けて強く吸った。
晴「や――っ、跡、っ……!」
兎角「大丈夫だ。見えないところだから」
花のように赤く咲いた部分を舌先で舐める。
晴「あ……、ぁ」
舌が這う度に晴の背筋がびくんと仰け反る。
こんな刺激にも敏感に反応するのなら、晴の体はもうすっかり出来上がっているのだ。
12: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 23:25:06.10 ID:hPsocCIz0
続けて両方の胸を乱暴に扱ってみる。
強く寄せたり、強引に持ち上げても晴は嫌がる様子を見せない。
兎角「先、もっと触っていい?」
耳元で囁くと、晴はまた頬を紅潮させた。
そして首をゆっくりと左右に振る。
晴「だめ……」
息を含んだ声は密着していなければ聞こえないくらいに小さい。
13: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/09(月) 23:31:13.58 ID:hPsocCIz0
そんな消え入りそうな拒否を認める気はない。
爪で硬くなった突起を刺激すると晴が股を擦り合わせたのが見えた。
胸を攻め続けながら兎角は口を開いた。
兎角「興奮してる?」
晴「んっ、ふ……っぅ、あっ」
晴は答えないがその喘ぎ方だけで十分だった。
人差し指で先の膨らみを押しつぶすとまた違う嬌声が漏れた。
19: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 20:45:53.78 ID:xFrhZJiD0
ゆっくりと乳輪を撫で、じわじわと乳首を挟んで刺激を与える。
晴の腰が時々揺れている事にはとっくに気付いていた。
揉む手は休めず、片方の手をスカートに差し込む。
今度は快感にではなく、晴は素直に驚きで体を震わせた。
晴「兎角っ!」
静止の声とほぼ同時に下着の中へ手を差し込む。
兎角「濡れてるよ」
晴の腰が時々揺れている事にはとっくに気付いていた。
揉む手は休めず、片方の手をスカートに差し込む。
今度は快感にではなく、晴は素直に驚きで体を震わせた。
晴「兎角っ!」
静止の声とほぼ同時に下着の中へ手を差し込む。
兎角「濡れてるよ」
20: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 20:55:35.71 ID:xFrhZJiD0
局部に触れなくても下着の湿り具合で晴の体が求めているものは十分に理解した。
声を出さないように口元を押さえているが、吐息は目に見えるほどに熱を持っている。
陰部の周りを撫でてその潤いを確かめながら晴の反応を見る。
晴「あ、ん……っ」
浅い部分に指を這わせて溢れ出る愛液を拭い取ると、兎角は下着から手を引き抜いた。
絡みついたそれの粘りを楽しみながらじっくりとそれを眺める。
広げた指に繋がる透明な糸。
23: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 21:13:39.05 ID:xFrhZJiD0
そこから立ち昇ってくる生臭さに晴が顔を背けた。
兎角「晴」
ひとつ、耳元で静かに、告げるように囁く。
そして体液のまとわりつく指を彼女の眼前に差し出す。
晴「それ、やだよ……」
晴が嫌悪感に眉をひそめても罪悪感なんて少しも覚えなかった。
むしろ楽しいくらいだ。
24: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 21:22:13.91 ID:xFrhZJiD0
目の前で指をこすり合わせてその生々しさを伝える。
兎角「晴、私の指が欲しい?」
そろそろ素直になるんじゃないかと思って頰に唇を寄せる。
本音を聞けばすぐにでも行為を始めるつもりでいた。
しかし——。
晴「じゃあ、ちょうだい?」
25: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 21:34:00.71 ID:xFrhZJiD0
空気が変わった。
咄嗟に晴の前から手を引こうとしたが、ぬるりとした感触に体が固まる。
晴「ん……ちゅ」
晴が自らの体液を舐め取り始めている。
兎角にしっかりと見えるように舌を出して、手のひらから指先までを伝う。
愛おしそうに指先を咥え、興奮した様子で晴は息を吐いた。
唇を離すと、晴の唾液と体液が混じり合って細い糸を作った。
28: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 21:41:23.07 ID:xFrhZJiD0
思わずコクリと喉が鳴り、それに見惚れてしまう。
晴「兎角さん」
冷たく色付いた——いつもより低めの声が聞こえると同時に兎角の体が仰向けに倒された。
兎角「え——」
油断していたとはいえ、こんなにあっさり押し倒されてしまった事に兎角は困惑した。
一瞬のうちにブラジャーのホックも外されていて、上に覆い被さる晴の姿には恐怖すら覚える。
兎角「は、る……?」
29: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 21:42:15.82 ID:xFrhZJiD0
思わずコクリと喉が鳴り、それに見惚れてしまう。
晴「兎角さん」
冷たく色付いた——いつもより低めの声が聞こえると同時に兎角の体が仰向けに倒された。
兎角「え——」
油断していたとはいえ、こんなにあっさり押し倒されてしまった事に兎角は困惑した。
一瞬のうちにブラジャーのホックも外されていて、上に覆い被さる晴の姿には恐怖すら覚える。
兎角「は、る……?」
30: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 21:43:11.64 ID:xFrhZJiD0
目を細めて笑うその表情は獣のようだ。
晴「我慢できなくなっちゃった」
威圧感。
指先すら動かせない。
間を置かず晴は兎角の胸に手を当てた。
ほとんど平らになったそこを何度か撫で回し、下着を上にずらしてシャツの上から的確に突起をこする。
兎角「んっ――」
31: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 21:56:30.20 ID:xFrhZJiD0
なぜか体がひどく敏感になっていて、たったそれだけの刺激に体が跳ねた。
晴「兎角さんも興奮してるよね?」
水が流れるような滑らかな動きで晴の手が兎角の股間ヘと移動する。
抵抗する間もなく、異物が入り込んでくる感覚。
兎角「ぅ、あっ」
愛撫などという行為ではない。
無機物に触れているのと変わらない粗雑な触り方だ。
36: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 22:53:10.40 ID:xFrhZJiD0
ただそこに肌があってその具合を確かめているだけ。
晴「ほら。濡れてる」
ぐちゅぐちゅとかき回す音が響く。
ただ冷静に見下ろされるのが辛くて、兎角は腕で顔を覆った。
兎角「っ……く」
こんなに雑な扱いでも体は反応してしまって抗うことができない。
シャツのボタンを外されて、体を触られても晴の熱さは感じられなかった。
37: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 23:01:49.18 ID:xFrhZJiD0
晴「兎角さん、どうしてほしい?」
そう言って笑う晴の目はやはり冷たい。
それでも心はここにある気がした。
兎角「もっと愛して」
まっすぐに見つめる。
まるで拗ねた子どもみたいだ。
そんなみっともなさも嫌いではないと思うのは、きっと目の前にある優しい匂いのせいだ。
38: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 23:10:39.13 ID:xFrhZJiD0
晴は二秒ほどきょとんと目を丸くした後、口の端を引き結んだ。
目を逸らして落ち着きのない様子を見せてから、また兎角を見下ろす。
その時にはもう晴はいつもの顔で微笑んでいた。
晴「やっぱりかわいいなぁ」
そう独り言のように呟くと晴は兎角の体を抱き締めた。
強く。
感情を押し付けるように。
39: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 23:22:27.96 ID:xFrhZJiD0
ここでやっと晴の愛情が染み渡ってくるのを感じられた。
兎角「はる」
情けない声が出た。
やっと安心できた気の弱い少女のようで、とても恥ずかしくなる。
しかし考えてみて納得する。
今ここで晴と対峙する自分はそういう人間なのだ。
晴「兎角」
40: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 23:30:21.50 ID:xFrhZJiD0
時々呼び捨てて来るその声は、いつも気持ちが溢れていて彼女の感情を濃く感じる。
その度に胸が高鳴って、それに気付いてかどうか、晴は手を握ってくる。
今も指を絡めて、丁寧に体温を伝えてきている。
こういう事を幸せだと言うのだろう。
一度体を離して、晴は兎角の目を見つめるとゆっくり顔を近付けてきた。
重なるものの温かさを想像して目を閉じる。
始めは触れるだけ。
41: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/11(水) 23:39:23.65 ID:xFrhZJiD0
二回目はもっと深く。
三回目は舌を絡めて。
約束をするように少しずつ想いを乗せて息を交わらせていく。
兎角「は……ぁ、ぅ」
息苦しくなる頃には唇だけでは足りなくなって、兎角は晴の服に手を差し込んだ。
しかしその手は晴によってやんわりと制止される。
晴「晴がするから」
43: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 20:09:09.97 ID:4irtJbsR0
晒された胸に口付け、少しずつ唇を中心へと這わせていく。
手は腰や太ももをいやらしく撫で回して、兎角の弱い部分を的確に攻める。
晴「あっ、んんっ」
体がびくびくと震えるのを耐えるのも忘れてそれに呼応するように自然と声が漏れた。
段々と晴の手付きが荒くなっていく。
胸にあてがわれた唇は先をついばみ、ゆるい刺激を与えてくる。
44: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 20:14:25.70 ID:4irtJbsR0
もっと刺激が欲しくて兎角は晴の髪を掻いた。
その意図を察したのか、晴は兎角の乳首を強めに噛んだ。
兎角「っ!」
喉の奥で小さく悲鳴が漏れた。
甘い痛みに体が震える。
こんな事すらも快感になってしまうのが怖い。
晴に何をされてもそれが悦びになるなら、例え壊されたとしても後悔なんてないのだろうと思う。
45: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 20:20:56.38 ID:4irtJbsR0
痛みはほんの一瞬で、晴はすぐに舌先を使って乳首を舐め始める。
硬くなったそこを指と舌で弄び、強く吸われると腰が反応した。
もう限界だった。
兎角「晴……」
膝を立てて股をすり合わせると、晴がそれに気付いて体を起こす。
両脚の間に体を割り込ませて下着の上から舌で割れ目をなぞった。
兎角「んくっ……」
46: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 20:39:33.64 ID:4irtJbsR0
くすぐったい。
何度かその周りに舌を当てた後、晴が下着に手を掛ける。
もはや驚くよりは、待ち遠しいくらいだった。
無意識に腰を上げて脱がせやすくしている事に気付いて晴から視線を逸らす。
もう何度も晴を受け入れているのに、こういう行為になかなか慣れない。
両脚の付け根をじっと見つめながらそこを指で広げた。
晴「いれるね」
47: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 20:41:28.35 ID:4irtJbsR0
声に息が混じる。
晴がこの体を欲しがっている。
兎角「したいの?」
掠れた声が出ると、晴は兎角が不安を感じていると思ったのか優しく目を細めた。
晴「うん。兎角さんを触りたいよ。抱いて、声を聞きたい」
手を伸ばすと晴はそれを取って頰を擦り付けてきた。
温かさに胸が安らぐ。
48: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 20:52:19.45 ID:4irtJbsR0
愛情が見える物であると、兎角は晴に出会って初めて知ることができた。
兎角「んっ……」
局部にあてがわれた指が侵入してくる。
晴「中もちゃんと濡れてるね」
状態を確かめるようにぐるりと中をかき回す。
兎角「あっ、く……ぅ」
圧迫感に身をよじると逃げられないように晴が腰を掴んできた。
49: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 21:10:56.09 ID:4irtJbsR0
晴「逃げないで」
兎角の方がよほど力が強いのに、なぜか晴の一言で体が動かなくなる。
兎角が大人しくなると晴は満足気に笑い、さらに激しく兎角を攻めた。
兎角「ふぁっ!あ!んんっ!!ぅあっ!!」
中で何かが暴れ回っている。
奥に入り込んだ晴の指は兎角の感じる部分の全てを掻き乱している。
もう片方の手はずっと兎角の体のラインをなぞっていた。
50: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 21:24:32.54 ID:4irtJbsR0
どこに何があるのか、それを探している。
きっとこのまま続ければ外側にある兎角の弱い部分も近いうちに全て把握されてしまうのだろう。
晴のものになれる。
そう思うと感度はさらに上がった。
兎角「ああっ、ぁあ……っ!!」
急に中が窮屈になって、下腹部いっぱいに晴の指が入り込む。
晴「中、締まってきたよ」
51: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/15(日) 22:15:34.14 ID:4irtJbsR0
興奮気味に息を吐く晴。
こくりと喉を鳴らして兎角に体に口付けていく。
時々刺すような軽い痛みを感じて跡をつけられている事に気付いた。
首、鎖骨、胸、脇腹。
だんだんと下へと移動して、いきなり太ももを上に押し上げられた。
兎角「っ!」
内腿に口付けられ、舌が這う。
55: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 20:59:20.97 ID:QWpaJe6D0
そして中を動き回る指がさらに奥へと突き込まれた。
兎角「ぅうっ!ん!」
そのまま中を激しく押し広げられる感覚。
全身に広がる快感に耐えられなくて、ぐっと自分の服を強く握りしめる。
下腹部の奥を押さえ付けられてるようで息が出来ない。
必死に息を吸って喘ぎ声と共に流れ出て、また肺を目一杯広げる。
兎角「は……るっ!っう!んんっ!ぁ!」
56: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 21:04:08.55 ID:QWpaJe6D0
喉の奥で声が引っかかる。
体勢を変えさせられて四つん這いになると、また動きが激しくなった。
勝手に腰が揺れる。
ひくひくと中が痙攣して、晴の指が自分のいい所に当たるように求めてしまう。
もっと気持ち良くなりたい。
晴「兎角、ここがいいんだよね?」
どこをいじっているかなんて兎角には分からない。
57: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 21:20:46.82 ID:QWpaJe6D0
ただ、晴がそう言って刺激してくる場所は悲鳴を上げそうになるくらいに気持ちが良かった。
体が崩れ落ち、晴に支えられながら腰を突き出す。
兎角「あぁっ、あっ、は……あ!」
息が短く切れる。
全身が痺れてきて下腹部が甘い刺激で満たされ始めた。
晴「イキそう?」
晴が興奮気味に尋ねてくる。
58: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 21:31:06.27 ID:QWpaJe6D0
息が荒く、体を触る手付きにも力が入っている。
兎角「晴……っ」
胸を触るその手を引き寄せて抱きしめるように口付けると晴の動きが柔らかくなった。
晴「ごめん。乱暴になってたね」
後ろから攻める体勢を改め、正常位に戻す。
晴が上に覆いかぶさり、優しくキスをされた。
舌と舌が絡んで唾液が混じり合う。
59: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 21:43:22.28 ID:QWpaJe6D0
飲み下せずに口の端から流れ出したそれを晴が舐め取り、もう一度深く結び付く。
二人の舌から唾液が糸を引いて垂れていく。
晴「あつい……」
ぼそりと呟いて晴は服を脱いだ。
少しずつ晒されていく肌をじっと見つめ、首筋や腰の流れに心が奪われていく。
胸に手を当てて軽く揉むと彼女の体が反応した。
晴「舐める?」
60: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 21:53:01.18 ID:QWpaJe6D0
自らの胸を持ち上げ、晴はからかうように笑った。
兎角「うん」
素直に答えて兎角は半身を起こし、晴の胸を吸った。
耐えるような呻き声が耳をかすめ、晴の指が兎角の髪を掻く。
晴「ん……ふっ、気持ち、い……っ」
舌先で突起を押し込み、ぐりぐりと弄り回す。
晴は短く声を上げて両腕を兎角の首に回した。
61: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 22:08:20.93 ID:QWpaJe6D0
体の熱が伝わってくる。
兎角は晴の中心に手を伸ばして秘部をなぞった。
流れ出した愛液を塗りつけるように割れ目の周りを撫でる。
晴がどれだけ興奮しながら兎角の中を味わっていたのかが十分に理解出来た。
前戯なんて当然必要ない。
晴がやったように無遠慮な突き込み方をしてみたかったが、今はそんな余裕はなかった。
誘われるように指が吸い込まれていく。
62: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 22:33:27.37 ID:QWpaJe6D0
自分の意思ではないみたいに。
兎角「……っ!」
押し倒して立場を逆転する。
晴「あぁっ!あっ、はぁ……んっ!」
始めから勢いを付けて晴をかき回してみたが、それでもやっぱり優位に立っている気がしない。
晴の思い通りになっているような感覚。
それでもやめることは出来なくて、晴に体を重ね続けた。
63: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 22:49:11.38 ID:QWpaJe6D0
晴の手が頬をなぞり、引き寄せられたみたいに自然と口付けてしまう。
言葉では何も言われていないのに舌を出すように促された気がした。
兎角「ん……ふっ!」
晴の吐息が熱い。
彼女の唾液が欲しくなって深く口付けて、差し出された舌に吸い付く。
唇を離し、もう一度同じように迫ると晴の手がそれを制止した。
晴「こっちは?」
64: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/18(水) 22:54:15.17 ID:QWpaJe6D0
どくんと体が脈打つ。
晴が示したのは秘部だった。
いつの間にか動きを止めていた指を刺激するように腰を揺らす。
もっと欲しいのかと思ったが彼女にはまだ余裕が見えた。
兎角の方が興奮に耐えられなくなっているのを分かっているのだ。
晴「兎角。そこ、撫でて」
晴の声に体がぴくりと反応する。
69: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/19(木) 21:42:25.25 ID:Hh2sOn//0
指を曲げてそっと肉壁を掻くと晴が息を吐いた。
晴「んっ……いいよ……。もう少し、強く……」
ぐっと押し込むように指を立てる。
晴「あっ、あ、んっ。そのまま、奥、こすって……っ」
言われるままに奥へと突き入れ、晴が感じる部分を犯していく。
深い快楽を声に乗せ、晴の白い肌が赤く染まった。
晴「んっ……いいよ……。もう少し、強く……」
ぐっと押し込むように指を立てる。
晴「あっ、あ、んっ。そのまま、奥、こすって……っ」
言われるままに奥へと突き入れ、晴が感じる部分を犯していく。
深い快楽を声に乗せ、晴の白い肌が赤く染まった。
70: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/19(木) 21:47:57.47 ID:Hh2sOn//0
受け入れがたい快感の波に苦しむ姿がたまらなく愛しい。
自分の手でこんなにも晴は色に狂う。
晴「んんっ!あ!ぁうっ!とか、くっ!やっ、ぁ!」
夢中で晴の体を貪った。
両脚を大きく開かせて淫らな姿を上から見下ろす。
赤く充血した晴の割れ目からはとめどなく体液が流れ出し、卑猥な水音を立てている。
立ち昇る晴の匂い。
71: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/19(木) 22:08:57.94 ID:Hh2sOn//0
指に伝わる粘膜の熱さと、肌に触れる優しさが鎖になって兎角を縛り付ける。
晴から目を離せない。
頭の中は晴に満たされていて他の事は何も考えられなかった。
兎角「はる……!」
他に発する言葉もなくて、ただ晴の名前を呼んだ。
今はそれだけで十分だった。
この一言が兎角の気持ちなのだから。
72: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/19(木) 22:17:39.27 ID:Hh2sOn//0
快感に身をよじる晴を絶えず攻め立てていく。
晴「あっ、んくっ!はぁ、んんっ!」
絞り出すような喘ぎ声に変わり、体が強張ってきた。
絶頂が近い。
晴の様子を窺うために全身を見ていると晴が顔を隠した。
晴「や、だっ、兎角さ、んっ、見ないで……っ!」
きっと恥ずかしいのだろうが、そんな風に言われると余計に見たくなる。
73: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/19(木) 22:38:12.74 ID:Hh2sOn//0
晴の手を強引に開かせて彼女をじっと見つめる。
兎角「見せて」
晴はかわいいと思う。
今まで何者にも興味を持たなかった兎角にとっては初めて心を揺らして来た存在。
この気持ちが愛しさだと教えてくれた。
兎角「晴はわたしのものだ」
晴の一番奥で指の腹を強く押し付けると、中が強く収縮した。
74: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/19(木) 22:44:26.34 ID:Hh2sOn//0
そして晴が悲鳴のように高い嬌声を上げた瞬間、彼女の中心から体液が吹き出した。
びくびくと体を震わせてベッドに沈む晴。
自分の中からもとろりと雫が流れ出すのを感じた。
晴の頬に触れると突然首に腕を回され、体が引き倒された。
晴「兎角さん、まだイッてないよね」
体を返されて晴が上に覆いかぶさる。
今さら抵抗なんてする気はない。
75: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 03:09:59.11 ID:3SiZsU9s0
晴のよがる姿だけで十分に満足していたが気持ち良くしてくれるのなら拒む理由があるはずもなかった。
乱れた息をそのままに、晴は兎角に口付けた。
絶頂を迎えたばかりの晴の体は熱を帯び、心臓は大きく脈打っている。
それにつられて兎角の体も反応して夢中で舌を返す。
漏れる声と絡み合う音が興奮を誘い、兎角は晴の手を掴んで自らの中心へと導いた。
——早く
そう言いたくなるのをぐっとこらえて口付けを深く繰り返す。
乱れた息をそのままに、晴は兎角に口付けた。
絶頂を迎えたばかりの晴の体は熱を帯び、心臓は大きく脈打っている。
それにつられて兎角の体も反応して夢中で舌を返す。
漏れる声と絡み合う音が興奮を誘い、兎角は晴の手を掴んで自らの中心へと導いた。
——早く
そう言いたくなるのをぐっとこらえて口付けを深く繰り返す。
76: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 03:17:32.88 ID:3SiZsU9s0
混じり合う吐息で溶けてしまいそうだ。
晴の手が胸を這い、その先を撫でる。
塞がれた口から声が漏れ、兎角の反応に興奮した晴が指を埋めてきた。
兎角「んっんん!」
思うように声も出せずに体だけが敏感に震える。
背筋に快感が走り、ぞくぞくとした感覚に腰が浮いた。
唇を離して晴が体を起こすと同時に女の部分を激しく貫かれた。
77: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 03:43:39.85 ID:3SiZsU9s0
兎角「ふぁあっ!」
自分が発した物だと思えないほどに甲高い悲鳴が耳に届く。
恥ずかしいと思う余裕もなく、兎角は股を開いて体を晴に差し出した。
晴も遊びを入れるつもりはないようで的確に絶頂へと誘い込んでくる。
下腹部から全身に躊躇なく刺激が広がっていく。
自分でも感じるほどに膣内がひくひくと痙攣している。
兎角「ぅっ、く……ぅ!」
78: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 03:46:01.41 ID:3SiZsU9s0
自然と腰が浮いた。
もっと奥へと晴の指が入り込み、空気と体液が混じり合って卑猥な音が部屋に響いた。
ふと気が付くとぬるりとした感触が太ももにまとわりついていて、兎角はそこに視線を向けた。
晴「んふ……っ、ぁんっ」
晴が兎角の膝に股間を擦り付けている。
晴「とか、くさん……っ、んっ、一緒に……!」
すでに限界に近かったが、兎角はなんとか耐えて晴が達するのを待った。
もっと奥へと晴の指が入り込み、空気と体液が混じり合って卑猥な音が部屋に響いた。
ふと気が付くとぬるりとした感触が太ももにまとわりついていて、兎角はそこに視線を向けた。
晴「んふ……っ、ぁんっ」
晴が兎角の膝に股間を擦り付けている。
晴「とか、くさん……っ、んっ、一緒に……!」
すでに限界に近かったが、兎角はなんとか耐えて晴が達するのを待った。
79: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 04:01:30.62 ID:3SiZsU9s0
ふわふわと意識が揺らいで、感覚が下腹部に集中する。
無意識にびくんっと腰が浮いて体がのけぞった。
兎角「くっ……ぁ!晴っ、もう……っ!」
晴「あっ、あっ、晴もイッちゃ……ふぁっ!」
二人の体が同時に硬直し、激しい快楽に身を任せて欲望を吐き出す。
兎角「ぅっ……あ……」
お互いの体はベッドに沈み、吐く息はどちらのものともつかない。
無意識にびくんっと腰が浮いて体がのけぞった。
兎角「くっ……ぁ!晴っ、もう……っ!」
晴「あっ、あっ、晴もイッちゃ……ふぁっ!」
二人の体が同時に硬直し、激しい快楽に身を任せて欲望を吐き出す。
兎角「ぅっ……あ……」
お互いの体はベッドに沈み、吐く息はどちらのものともつかない。
80: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 04:04:41.11 ID:3SiZsU9s0
晴は兎角の上に体を重ねて動けなくなっていた。
兎角「大丈夫か?」
返事はなかったが彼女は兎角の手をしっかりと握った。
そのまましばらく経って息が整った頃、静寂が訪れた。
音のない二人だけの世界。
繋がった体はまるで一つの個体だった。
ずっとこのままでいられない事が、当たり前のはずなのに今は無性に悲しい事だと思えた。
81: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 04:07:46.25 ID:3SiZsU9s0
晴「とかくさん」
唐突に静寂は砕かれた。
しかしその音は心地よくて、安らぎの音色だった。
兎角「なんだ」
自分の声も心なしか穏やかで気恥ずかしくなる。
晴「とかくさーん」
また名前を呼ぶ。
82: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 04:11:43.74 ID:3SiZsU9s0
兎角「どうした?」
背中を撫でると、晴は首に鼻先を押し付けてきた。
甘えた声に甘えた仕草。
晴「とーかーくー」
名前を呼びたいだけだと気付いて兎角はため息をついた。
兎角「晴」
そう返すと晴は嬉しそうに息を吐いて両腕を首に回して抱きついてきた。
83: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 04:14:31.18 ID:3SiZsU9s0
何度も頬と首にキスをしてくるのが鬱陶しくて、そして嬉しい。
晴の額に口付けて、彼女が顔を上げたところで唇を奪う。
すぐに離れたが今度は晴が同じように返してきた。
ついばむような甘いキスを繰り返し、目を合わせて微笑み合う。
晴「兎角さん」
もう一度紡がれた優しい音色。
84: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 04:15:57.99 ID:3SiZsU9s0
自身の心が全てここにあるのだと思い知らされた。
——わたしは晴のものだ
そして自分の中で乱れていた晴の姿を思い浮かべる。
兎角の女王蜂は晴だけであり、晴の働き蜂は兎角だけだと。
この甘い匂いと蜜は誰にも渡さない。
終わり
——わたしは晴のものだ
そして自分の中で乱れていた晴の姿を思い浮かべる。
兎角の女王蜂は晴だけであり、晴の働き蜂は兎角だけだと。
この甘い匂いと蜜は誰にも渡さない。
終わり
85: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/23(月) 04:22:42.50 ID:3SiZsU9s0
終わりました。
ただただエロい事をしているだけだったんですが読んでくださってありがとうございました。
日は変わりましたが11月22日は「いい夫婦の日」だそうです。
いつまでも1号室がイチャイチャしてますように。
ただただエロい事をしているだけだったんですが読んでくださってありがとうございました。
日は変わりましたが11月22日は「いい夫婦の日」だそうです。
いつまでも1号室がイチャイチャしてますように。
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/23(月) 08:51:26.08 ID:ZW9pFxp3O
ああ^~赦されるぅ~
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/23(月) 12:54:39.03 ID:E5gTszYWo
乙乙
良かった
良かった
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/24(火) 04:09:14.64 ID:SEC1UjiB0
最高でした!
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447073180/
Entry ⇒ 2015.12.03 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
兎角「晴がお盛んすぎて困る」
1: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 21:10:30.82 ID:oR1luanD0
悪魔のリドルSSです。
以前書いたSSのシリーズとなっています。
兎晴です。
ふたなりで終始エロですので本当にご注意ください。
手直ししながらなので少し遅筆になるかと思いますが最後までヤりますのでよろしくお願い致します。
晴「やっちゃいます!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410437420/
晴「もっかいやっちゃいます!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424521503/
以前書いたSSのシリーズとなっています。
兎晴です。
ふたなりで終始エロですので本当にご注意ください。
手直ししながらなので少し遅筆になるかと思いますが最後までヤりますのでよろしくお願い致します。
晴「やっちゃいます!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410437420/
晴「もっかいやっちゃいます!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424521503/
2: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 21:11:51.91 ID:oR1luanD0
眠気で意識がはっきりしない中、何かがそばでもぞもぞと動いているのが分かった。
鬱陶しくて身をよじろうとするがうまく体が動かない。
闇の重さが体の動きを邪魔しているみたいだ。
気にもせず引き続き睡魔に身を委ねていたが、くすぐったいような感覚に少しずつ頭が起きていく。
水音と微かな息遣いが聞こえる。
次の瞬間、下半身に重みを感じると同時に腰回りがぞくりと震えた。
3: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 21:17:38.66 ID:oR1luanD0
兎角「う……ぁっ」
思わず声が漏れる。
しかし自分以外にも重なる声があった。
晴「は、あ……んっ」
晴の声。
まぶたを開けば下半身を露出した晴が自分の上に跨っている。
月明かりに浮かび上がる彼女の表情は恍惚に満ちていた。
4: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 21:25:56.94 ID:oR1luanD0
兎角「はるっ、お前……!」
晴「ごめん、ねっ、我慢、できなくて……っ、あんっ」
慌てる兎角に謝りながらも彼女は腰の動きを止めない。
走り鳰から渡された怪しい薬を使えばこうやって男性器を体験することが出来る。
寝る前に渡された飲み物にでもそれが入っていたのだろう。
晴「兎角さんは、んっ、動かなくて、大丈夫っ、だからぁ」
腰を振って出し入れを繰り返す動作のひとつひとつが兎角の性感を激しく刺激する。
5: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 21:41:33.85 ID:oR1luanD0
どうすれば兎角が気持ち良くなるかを晴は完全に理解している。
膝をついて兎角に覆いかぶさり、腰を捻りながら粘膜をこすり合わせる。
兎角「うっ、晴、待って……」
激し過ぎて体がついていかない。
シーツをぐっと掴んで耐えるが晴の動きに合わせて自分の体も反応してしまっている。
男性器のついた自分の方が犯されているような感覚だった。
晴「あっ、あぁっ、兎角さんの、硬くて、おっきぃっ」
6: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 21:52:17.17 ID:oR1luanD0
兎角の制止も届かず、晴の腰は跳ね続ける。
流れ出た晴の体液が腰を濡らし、肌がぶつかる度にぬちゅぬちゅと水音が響いた。
熱くとろけた晴に包まれ、全身にその体温が広がる。
——まずい
下腹部から膨れ上がる欲望を必死で抑えるが、兎角の腰も無意識にガクガクと震え始めた。
兎角「だっ、ダメだ……っ!晴っ!うぅっ!!」
下腹部にぐっと力が入り、直後に快感が全身を突き抜けた。
8: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 21:58:03.79 ID:oR1luanD0
吐き出された体液が、ごぽっと音を立てて晴の中で混ざり合う。
晴「んっ、ぁっ!兎角っ、すごい、中で暴れてる……っ!」
精液が飛び出す度に兎角のそれがびくびくと跳ねた。
兎角「うっ、く」
断続的に中が締め付けては緩む。
出し終わると兎角は息を切らせてベッドに身を預けた。
兎角「ぁっ、はぁっ、はぁっ」
9: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/27(土) 22:05:03.98 ID:oR1luanD0
晴「ねぇ?晴、まだイッてないよ……」
晴が腰を上げると、萎えたそこがずるりと落ち、混ざり合った体液が溢れ出した。
ティッシュで精液を拭き取り、晴はそこに顔を近付けた。
晴「兎角さんばっかり満足してずるい」
じゅるっと音を立てて晴は兎角のそこを舐め始める。
さっきもそうして勃たせたのだろう。
兎角「う……」
12: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 15:06:36.14 ID:0cWFhBbI0
舌を上手く使って感度の良い部分を的確に撫でてくる。
手は玉に伸び、くすぐるようにそこを優しくなぞった。
しかしどうしても勃ち上がりきらない。
寝起きだというのにそんなに元気になれるはずもなかった。
意識ははっきりしているものの体はまだ起きていない。
晴「兎角さん、これじゃまだ使えないよ?」
そこを見てくすくすと笑う晴の目は背筋が冷えるほどに妖艶だった。
13: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 15:12:47.54 ID:0cWFhBbI0
どうしたのだろう。
今までにも欲情する事はあったがこんなにも性行為のみを求めるなんて事はなかった。
局部だけを攻めてもどうにもならないと思ったのか、晴は兎角の服を脱がせて胸に舌を這わせた。
暗い部屋に晴の吐息と愛撫の音が吸い込まれていく。
他に物音はなくてここだけ別の世界みたいだ。
兎角「んっ……」
指先を首に当て、鎖骨をなぞって胸の方へなで下ろしていく。
14: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 15:27:44.74 ID:0cWFhBbI0
晴「やっぱりダメかな……」
硬さの足りないそこを何度かこする。
体への愛撫はとても気持ちが良かったが下半身に血が集まらない。
わずかに考え込んで、晴は枕元のスタンドを灯すと自分の服を脱ぎ始めた。
兎角「晴?」
眩しさに目を眉をしかめながら晴の行動を見守る。
晴「兎角さん、ちゃんと見ててね?」
15: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 15:40:22.34 ID:0cWFhBbI0
全裸となった晴は自分の胸を掴み、何度か揉んだ後に人差し指で先をいじり始めた。
晴「ぁ、はぁ、んっ」
指先で軽く撫でているとその刺激で先がぷっくりと勃ち上がった。
人差し指と親指でそこをつまんでくりくりと揉む。
漏れる吐息と声に兎角は思わず息を呑んだ。
晴「はっ……、んんっ」
それと同時に晴の腰がくねる。
16: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 15:58:10.12 ID:0cWFhBbI0
刺激が欲しいのだろう。
晴「んっ、ぁ、兎角さんの、欲しい……」
どくんっと鼓動が一際高くなって血の巡りが良くなった。
単純だ。
こんな事でまた勃起するなんて。
すっかり硬さを取り戻した中心に自分で触れて、呆れる。
晴「嬉しい。兎角さんは晴の体を欲しがってくれてるんだよね?」
17: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 16:04:01.87 ID:0cWFhBbI0
兎角「晴の事が好きだからだ」
体ばかりだと思われたくない。
もちろん晴だって同じ気持ちだと分かっている。
晴「うん。晴も兎角さんが大好きだよ」
股間を愛撫していた手を止め、晴はもう一度兎角の上に乗り、躊躇なく中心に腰を落とした。
ちゅぽんっと水音を立ててそこが飲み込まれる。
18: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 16:11:05.16 ID:0cWFhBbI0
兎角「うぅっ」
さっきより締め付けが強く、波打つ襞が兎角自身を包み込んだ。
晴「あぁっ、気持ち、いいっ」
晴が動く度に胸が揺れ、腰のうねりや首元、鎖骨の女らしい艶かしさに目を奪われる。
同い年の少女にこんなにも色気を感じるなんてどうかしている。
晴「兎角さんもっ、気持ちい……?」
兎角「はぁ……ぅ、あぁ、気持ち、いいよ……っ」
19: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 16:18:26.14 ID:0cWFhBbI0
苦しいくらいの刺激に背筋が仰け反る。
晴の中は温かくて、ぬるま湯に浸かっているような感覚だった。
繋がっている部分はそこだけなのに全身が晴で満たされている。
やられっぱなしなのが気に入らなくて兎角は晴の腰を両手でぐっと掴んだ。
晴「兎角……?」
浮いたような表情で晴が兎角を見下ろす。
兎角は膝を立ててぐっと足に力を入れると腰を強く突き上げた。
20: ◆P8QHpuxrAw 2015/06/28(日) 16:24:49.84 ID:0cWFhBbI0
晴「んんっ!!」
ずんっと晴の奥に先が当たる。
勢いで溢れ出した二人の体液が腰を濡らし、打ち付け合う水音が激しくなった。
何度も繰り返すうちに晴が苦しげに身を縮めた。
晴「あっ、うっ、もう、ダメっ、イッちゃうっ」
晴がぐりぐりと股間を押し付けてきた。
一旦腰を止めて、晴の腰を解放する。
23: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 21:51:30.11 ID:6K4NBvLa0
小刻みに晴の腰が揺れ、気持ちのいい場所を探している。
中は断続的にぎゅうっと強く締め付けては緩み、兎角の射精を促した。
兎角も腰を擦り付けて吐き出すタイミングを探る。
晴「あぁっ、と、かくっ、イっ……ぁああっ」
一番強く締め付けた瞬間、兎角は晴の中に欲望を撒き散らした。
飲み下すように膣内がぐにぐにと波打っている。
兎角「ぅ、あぁ……」
24: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 22:00:33.02 ID:6K4NBvLa0
全てを解放した達成感に、全身が脱力して動けなくなる。
晴も倒れ込むように兎角の上に横たわった。
兎角「大丈夫か?」
晴「重いよね……でももうちょっとこのままでいい?」
兎角「別に、いつまででも構わない」
こんな細い体で一体なにを言っているのだろう。
晴の背中に手を回し、肉付きや骨張った場所を確認する。
25: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 22:05:38.11 ID:6K4NBvLa0
身長差はほとんどないのに体付きが全然違う。
筋肉の多い兎角は晴より体重はあるし、触れた時の柔らかさも全然違う。
こんな戦闘用の体なんかより、晴の肌はずっと温かい気がした。
晴「兎角さん」
息の混じった声で呼ばれてどきりと胸が鳴る。
返事もしないうちに晴は兎角の唇を奪った。
晴「んぅ……」
26: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 22:10:29.84 ID:6K4NBvLa0
軽く付けると思っていたのに晴の舌は兎角の唇をなぞり、隙間を割って入り込んできた。
晴「んっ、ふぅ」
晴の口からは艶かしい吐息と声が漏れ、舌を返すうちに晴の腰がごそごそと動き始めた。
晴「どうしよ……。また欲しくなってきちゃった」
密着した下腹部が擦れる。
艶のある晴の目に、思わずこくりとのどが鳴ったがさすがにもう使える状態に出来る自信はなかった。
晴「ごめんね、いやらしくて。我慢するから大丈夫だよ」
27: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 23:09:00.88 ID:6K4NBvLa0
そんな風に言われて引き下がれるわけもない。
兎角は体を起こして、晴にキスをした。
晴「んっ、んん、ぅ」
濃厚に舌を絡ませては息をつき、再び深く口付ける。
何度かそれを繰り返したあと、兎角は晴の体を愛撫した。
首に舌を這わせて晴から漏れる息を耳元で感じる。
晴「や、ぁんっ」
28: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 23:16:14.84 ID:6K4NBvLa0
胸に手を当てて強く揉むと晴の体が震えた。
晴「兎角さん、そこ舐めて?」
晴は自分の胸を持ち上げ、兎角の前にその先を突き付ける。
形の良いピンク色の乳首をそっと唇で食んで舌先でなぞる。
晴「もっと、強く……」
押しつぶすようにぐっと舌を出すと晴が声を漏らした。
そして兎角の頭を抱いて髪を掻く。
29: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 23:21:45.92 ID:6K4NBvLa0
興奮する晴の動作が扇情的で、兎角の股間が反応した。
晴「少し硬くなったね」
頼りなく立ち上がったそこに手を当てて上下に擦る。
晴の手でもまだ足りない。
兎角「晴、胸でして」
晴「胸って……。晴のそんなに大きくないよ?」
兎角「挟んでくれるだけでいいから」
30: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 23:29:30.59 ID:6K4NBvLa0
兎角が促すと晴は二人の体液で濡れた局部を晴はためらいもなく胸の間にあてた。
包み込む事は出来ないが、晴の胸から覗く自分の物が晴を汚しているようで興奮が湧き上がってくる。
兎角「胸で挟んで、先を舐めて」
言われるまま、晴は自分の胸を寄せて兎角を左右から挟んだ。
手とは違う感覚がそこを包んでいる。
柔らかくてふわふわとした感触に気持ちが温かくなる。
晴「兎角さん、これ好きなんだ?」
31: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 23:37:19.57 ID:6K4NBvLa0
だんだんと硬さを増していくそこを舌先で軽く舐め始める。
兎角「う……、く」
興奮で息が荒くなってくるのを感じた。
気持ちよさだけが欲しいなら普通に咥えて貰った方がいい。
しかし今の晴の姿にどうしようもなく心が沸き立つ。
もうすでに兎角のものは十分な角度へと勃ちあがっていた。
兎角「晴。入れるぞ」
32: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 23:43:02.57 ID:6K4NBvLa0
晴を仰向けに寝かせ、両脚の間に体を割り込ませる。
晴の具合を確かめる事もせず直接局部を押し当てると、それは飲み込まれるようにするりと入り込んでしまった。
晴「あっ、ん」
中はどろどろに濡れていて、腰を当てるたびに中から体液が溢れ出てくる。
入り込んだ局部を引き出すと愛液が絡み付いてお互いに触れ合った所が溶けているみたいだった。
もう一度差し込んで、また抜き出して、何度も同じ感覚を味わう。
しかし締め付けが緩くて刺激が足りない。
33: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/02(木) 23:51:02.23 ID:6K4NBvLa0
晴の反応も今ひとつな気がする。
彼女が悦ぶ方法はもう分かっている。
兎角は晴の腰を両手でしっかりと掴み、腰を強く前進させた。
晴「んっ!?ぅぁっ!!」
喉の奥から絞り出された声は悲鳴に近い。
兎角は腰を捻って晴の一番深い部分を探し当てた。
兎角「晴、ここ?」
34: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/03(金) 00:02:09.39 ID:+WCSCAVb0
晴「だ、だめ……っ、そこは、痛い、からっ……」
兎角「でも気持ちいいんだろ?」
晴は首を振ったが、中がきゅっと締まったのを感じた。
こんな言葉だけで期待をしている晴に加虐心が溢れる。
晴の目は色欲にまみれ、苦しそうに胸で息をしている。
精一杯息を吸い込んだ所でわずかに震え、もどかしそうに抜けていく。
きっと本当は待ちきれないのだろう。
35: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/03(金) 00:06:43.70 ID:+WCSCAVb0
――かわいい
体も心も、仕草ひとつひとつが自分次第だと思うと愛しくて、逆に壊してしまいたいほどの衝動に駆られる。
一旦落ち着くつもりで、ゆっくりと息を吐く。
そんな兎角の理性を無視するように晴は二人の繋がった部分に手をあてた。
指先がくすぐったくて、思わず腰に力が入る。
晴が恍惚の息を吐いて、ため息まじりにそっと呟いた。
晴「激しく、して……?」
40: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/03(金) 23:44:38.68 ID:+WCSCAVb0
兎角「っ!」
息が詰まり、一瞬意識が途切れたみたいに真っ白な空気に溶けた。
その直後。
教室には晴の悲鳴が響いていた。
晴「あぁんっ!やっ、あ!いっ、たぃ……っ!!」
両手を押さえ付けて激しく腰をぶつけていく。
動けない晴の体をじっくりと舐め回すように視線を這わせる。
41: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/03(金) 23:53:34.74 ID:+WCSCAVb0
晒された胸がぴんと上を向き、腰のうねりに合わせていやらしく揺れた。。
隠す事も出来ずにもどかしげに涙を浮かべ、暗闇に紛れてきっと羞恥心に顔を染めているんだろう。
股間から伝わる感触もそうだったが、胸の奥から下半身に興奮が伝って全身が溶けてしまいそうだ。
晴「とかっ……!あぁっ!!」
外に声が漏れるのを恐れて兎角は晴の唇を自分の口で塞いだ。
晴「んっ!!んんーっ!!ふぅっ……!!んくっ!!」
晴の体がびくびくと跳ねて、兎角は彼女の体を掻き抱いた。
42: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 00:03:39.63 ID:OiCEdycz0
それに返すように晴も兎角の体に腕を回す。
背中を何度も引っ掻かれて、服も剥ぎ取られた。
素肌が触れ合う事に感動を抱く暇すらもなく晴の体を貪った。
粘膜が擦れ合って卑猥な音を立てる。
なにも隠さない生まれたままの体と欲望を交わらせて、夢中で晴を食い尽くす。
晴「ふ、ぁぅ!んむっ……!んんっ!」
息苦しくなって唇を離そうとした時に、ガリッと皮膚を裂く音が聞こえた。
43: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 00:08:27.04 ID:OiCEdycz0
そして同時に唇に痛みが走る。
兎角「痛っ」
咄嗟に顔を上げると、晴の腹の上にぽたぽたと血が垂れた。
そこでやっと唇を噛まれた事に気付く。
きっと声を上げようとして思わず噛み締めてしまったのだろう。
晴「あ……兎角……」
兎角の怪我に気付いた晴が体を起こして唇をそっと舐めた。
44: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 00:24:19.88 ID:OiCEdycz0
兎角「大丈夫だ。大した事はない。晴、苦しいか?」
繋がった部分はまだ窮屈にお互いを圧迫している。
晴「ううん、違うの……止まらなくて……。ずっとお腹の中がウズウズして、いつもえっちな事を考えちゃうの」
今も晴の中は活発に動いていて、兎角自身をずっと求め続けている。
息は乱れて目は潤み、涙の跡すら見えた。
兎角「分かった。イかせてやるから私の体を抱き締めて肩を噛んでろ。血が出たって構わない」
兎角は対面座位の体勢で、右腕をベッドについて左腕で晴を抱いた。
45: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 00:33:52.09 ID:OiCEdycz0
晴はそれに応えて両腕を兎角の背中に回して言われた通り肩に噛み付いた。
兎角「行くぞ。あまり大きな声を出すなよ」
足をぐっと踏ん張り、右腕で体を支えながら兎角は腰を突き上げた。
晴「んっ!!んぁっ!!うぅん――っ!!!!」
いきなりの刺激に晴の体が強張る。
肩に痛みを感じるが、まだ歯を立てた程度のものだ。
きっとこのくらいじゃ晴は満足しない。
46: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 00:41:05.75 ID:OiCEdycz0
突けば突くほど、跳ね返るように膣内が兎角の先を強く押さえ付ける。
晴「と、かく、っ!奥ばっか、だめ、ぇっ!」
晴自身の重さで意識せずとも常に奥に入り込んでしまうのだから仕方がない。
晴の胸を掴んで乳首を撫でてみるがこちらの反応は薄い。
全ての感覚が下半身に向いている。
兎角「は、るっ」
晴「気持ち、いいっ、おかし、く、なりそっ……!!」
47: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 00:44:56.65 ID:OiCEdycz0
もっと乱れたらいい。
そんな晴を見たいと思う。
晴を強く抱き締め、もう一度肩を噛ませると兎角は腰の速度を上げた。
晴「ふ、ぅんっ!!んぐっ!ぁぅっ!!」
混ざり合った二人の体液が流れ出して生々しい匂いが鼻をついた。
晴の手が兎角の背中を強く抱き締める。
爪が食い込んでいるのか、痛みを感じたが大して気にはならない。
48: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 00:54:10.37 ID:OiCEdycz0
兎角自身も晴との繋がりに、他の事を考える余裕はなかった。
全身が晴に満たされていて、こんな一部しか晴の中に入っていないなんて事が不思議だった。
兎角「はるっ、もう、出そ……っ」
下腹部が疼き始める。
晴の中もびくびくと痙攣し、腰を強く押し付けてきている。
どちらも達する直前だった。
晴「ふぐっ、んっ、んぅ――っ!!!」
49: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 01:07:15.82 ID:OiCEdycz0
晴の体が一瞬硬直し、腰の動きが止まった。
そして中が緩み、もう一度強く締まる。
兎角は晴が昇り詰めたのを確認した後、彼女の中に興奮の塊を放出した。
兎角「ぅうっ、あ――っ!」
腰が砕けたようにガクガクと震える。
達しはしたものの、ほとんど射精出来ていない。
50: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 01:17:15.74 ID:OiCEdycz0
もうとっくに晴に搾り取られていて、三回目の行為は晴にいいように弄ばれただけだ。
全身に力が入らず、晴を抱きしめたまま兎角は背中からベッドに倒れこんだ。
兎角「はぁっ、はぁっ」
息は切れて鼓動が早い。
気付けば二人とも汗だくだ。
兎角「大丈夫か?」
胸の上に頭を乗せて動けないでいる晴の背中を優しく撫でる。
51: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 01:23:42.75 ID:OiCEdycz0
晴「うん。ごめんね。血、出ちゃった」
肩の話だろう。
兎角「構わないって言っただろう。すぐ治る」
今になって傷になっている部分がじわじわと痛み出した。
その痛みが晴から与えられたものだと思うとなぜか愛しいとすら思える。
晴「兎角さん、だいすき」
何度言われても嬉しい言葉。
52: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/04(土) 01:31:04.11 ID:OiCEdycz0
毎回胸が高鳴る。
そんな優しい言葉に返せるほどの気遣いを持ち合わせない兎角は、こんな時に申し訳ない気持ちになる事もあった。
言葉ならいくらでも返せるが、晴の輝いた声色や愛の深い視線にはどう応えたらいいのかが分からない。
色々と思考を巡らせていると胸の先にぬるい感触が走った。
兎角「んっ……晴?」
見れば晴が気だるそうに胸に頭を乗せたまま舌先で乳首を撫でていた。
兎角「まだ足りないのか?」
54: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 19:56:42.35 ID:i+9Hi4Ll0
さすがにもうどんな事をされても勃たせるのは無理だと思う。
晴「ううん……。兎角さんのここ、かわいくて」
意味がよく分からなかったが幸せそうな晴がここにいるから、それならなんでも良かった。
晴「だめ?」
上目遣いの視線がとてもかわいらしい。
胸の奥が温かくなって、兎角は晴の頭を撫でた。
兎角「構わないけど」
55: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 20:04:08.12 ID:i+9Hi4Ll0
笑いかけてやると、晴は目を細めて微笑んだ後、引き続き兎角の胸の先を舐めた。
刺激を与えようとするような色気のある舐め方ではなくて、子犬がじゃれつくような甘えた仕草。
舐めるだけでなく、唇で軽く食んで、ついばむように咥え、ちゅっと音を立てて吸う。
兎角「っ、ぅ」
晴「兎角さん、感じてるの?」
体が震えるのを堪えきれず、それに気付いた晴が嬉しそうに笑った。
兎角「当たり前だ」
56: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 20:16:49.95 ID:i+9Hi4Ll0
そこは性感帯だ。
好きな女の子に触られて平気でいられるわけがない。
晴のも触ってやろうかと考えたが、また元気になってもらっても困るからやめておく事にした。
晴「かわいい。晴は兎角さんの事が好きなんです」
兎角「さっきも聞いた」
目を合わせていられなくて、ふいっと顔を逸らすと楽しそうに晴が息を漏らしたのが聞こえた。
兎角「ごめん」
57: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 20:41:40.45 ID:i+9Hi4Ll0
兎角が晴に向いて謝ると彼女は不思議そうに首を傾げた。
晴「どうして?」
兎角「あまりお前を喜ばせてやれるような事が言えない。晴はそういうのうまいだろ」
晴「兎角さんは晴が何かを話すと嬉しいの?」
兎角「ああ。お前の言葉が——声が好きなんだ」
ふわふわの髪を撫でて晴のぬくもりを感じる。
温かい空気が闇を照らしていた。
58: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 20:49:41.57 ID:i+9Hi4Ll0
ひなたの匂いはいつでも兎角の心を揺さぶる。
愛しさばかりが胸に詰まって、表現できないまま自分の中で膨らんでは消えていく。
晴「晴は兎角さんが晴を見つめる目が好きです。いつも晴を護ってくれてるの分かるんです」
兎角「……そんなに見てるか?」
晴「見てますよ」
護衛のために見張る事はあっても、そんな鋭利な視線は彼女を不愉快にさせるだけだと思っていた。
晴は兎角の首に手を回してぎゅっと力強く抱きしめた。
59: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 21:13:45.90 ID:i+9Hi4Ll0
晴「兎角さんの目は綺麗だよ。怒ってる時、嬉しい時、呆れてる時、困ってる時、全部分かるよ。えっちしてる時なんて、溢れそうな気持ちを抑え込んでるよね」
得意げに言い当ててくる晴に反論もできないまま、兎角は押し黙った。
恥ずかしくて、嬉しい。
晴「それ全部、晴の中にください。声にならない分は晴の体にぶつけていいから」
そうやって艶めかしく誘う声はいつもより低くて色香が舞う。
兎角「その言い方、ずるい」
兎角は晴の頭を撫でながら不機嫌に言った。
60: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 21:18:53.59 ID:i+9Hi4Ll0
晴「晴はえっちなんです」
兎角「ああ。分かってる」
今日は特にひどい。
人が寝ている間にセックスを始めるなんて。
少し心配になる。
しかしそれを聞いてしまうのは悪い気がした。
時にはそういった事もあるのだろう。
61: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 21:25:35.04 ID:i+9Hi4Ll0
兎角「眠いのか?」
晴の呼吸が少しずつ深くなっていく。
晴「ん……」
体をずらして兎角の上から晴が降りようとする気配を感じた。
兎角「そのまま寝て」
晴の肩を抱きしめる。
ずっと晴の重さを感じていたい。
62: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/06(月) 21:27:21.12 ID:i+9Hi4Ll0
心も体も全てを独占している気がして、今の状態は心地良かった。
布団を雑に引き寄せて晴に被せると、その頃にはもう晴は一定のリズムで呼吸を繰り返していた。
眠った晴をそっと抱きしめて背中を撫でる。
愛しくて胸の奥から白い光が膨らんでくる。
そのまま二人を包んで一つになれたらいいのに。
きっと二人だけの温かい世界になるはずだ。
そんな幻想を抱きながら晴の温もりの中、兎角は眠りについた。
-------------
65: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:03:37.50 ID:fH1hmrJ50
いつもならすぐに寮へ帰ろうとする兎角が、今日は自分の席から動かない。
自分達以外は誰もいなくなって、無言のまま10分は経過しただろうか。
陽は傾き、教室を照らす光は既に赤みを帯びている。
日頃から無愛想な兎角の表情は尚の事固く、話しかけづらい。
晴「兎角さん?」
声がかすれていた。
軽く咳払いをすると兎角は普段の通り、澄んだ瞳で見つめてきた。
66: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:10:28.90 ID:fH1hmrJ50
やっべ。大幅に貼る場面間違えました。すいません。
なかった事にして貰いたいです。
なかった事にして貰いたいです。
67: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:11:31.90 ID:fH1hmrJ50
高層階からの景色はもう見慣れた。
風の流れが見える。
流された木の枝がみんな同じ方向に押されて、同じタイミングで戻る。
点のような人影が不規則に動く様子はまるでどこかで見たゲームみたいだ。
高い所から全体を把握しているだけで世界を皮肉に感じる。
そしてそんな自分がちっぽけな人間だと悟った。
鳰「顔色悪くないっスか?」
68: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:12:39.54 ID:fH1hmrJ50
鳰に声を掛けられ、兎角ははっと顔を上げた。
少し、ぼうっとし過ぎたみたいだ。
兎角「そうか?」
ここ数日、疲れが溜まっている自覚はあった。
夜こそ活発になる。
晴が毎日のように求めてきて、行為を繰り返している。
男性器を使う事もあれば、女同士で愛し合う事もある。
69: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:16:56.76 ID:fH1hmrJ50
もちろんそれはとても気持ち良かったし、心が繋がるのは嬉しい。
ただ身がもたない。
教室の反対側で英純恋子と談笑する晴の顔には疲れなんて見られないし、それどころかむしろ血色がいいくらいだ。
兎角「晴が、その、積極的で困ってる」
鳰「それは大変っスね。毎晩?」
兎角「ああ」
思わずため息が出た。
70: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:21:31.38 ID:fH1hmrJ50
晴の性欲もそうだがこんな事を鳰なんかにこぼす自分にも呆れてしまう。
さっさと話を終わらせて席に戻ろうかと思ったが、鳰はまだ何かを言いたそうだ。
鳰「強めの刺激与えてみたらどうっスか?」
兎角「これ以上か……」
最近の行為は以前に比べてだいぶ頑張っていると思う。
強くしすぎて晴が壊れてしまうんじゃないかと思うほどに。
体を縛り付けて口を塞いで、後ろから気を失うまで突き続けた事もある。
71: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:43:53.42 ID:fH1hmrJ50
その時の事を思い出すだけでまた下半身が疼いてくる自分も酷いものだと思う。
兎角「刺激はそれなりに」
掴みどころのない晴にどこまで自分の存在が浸透しているのかは分からない。
どんなに愛しても彼女の中に入り切れている気がしなくて、余計に個体である事を思い知る。
鳰「場所を変えてみるとか」
兎角「場所?」
鳰「そっス。いつもと違う場所でしてみるってのも良いと思うっスよー」
72: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:44:22.38 ID:fH1hmrJ50
詳しく聞いてみようかと思ったところで授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
にやにやと嫌な笑い方をして前の席へと戻っていく鳰。
そんな彼女の背中を眺めながら兎角はまたため息をついた。
兎角「場所、か」
-------------
にやにやと嫌な笑い方をして前の席へと戻っていく鳰。
そんな彼女の背中を眺めながら兎角はまたため息をついた。
兎角「場所、か」
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73: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:47:13.44 ID:fH1hmrJ50
いつもならすぐに寮へ帰ろうとする兎角が、今日は自分の席から動かない。
自分達以外は誰もいなくなって、無言のまま10分は経過しただろうか。
陽は傾き、教室を照らす光は既に赤みを帯びている。
日頃から無愛想な兎角の表情は尚の事固く、話しかけづらい。
晴「兎角さん?」
声がかすれていた。
軽く咳払いをすると兎角は普段の通り、澄んだ瞳で見つめてきた。
74: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 21:53:56.79 ID:fH1hmrJ50
ほぅっと息を吐いてそちらに歩み寄り、隣に立つ。
晴「帰らないんですか?」
兎角「いや……」
やっと口を開いたかと思ったら、その声は緊張気味だ。
晴「大丈夫?」
どこか具合でも悪いのかと思って顔を覗き込んでみる。
白い肌は忠実に夕日の明るさに染まり、きめ細かくて、見るからに柔らかい。
75: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 22:02:11.86 ID:fH1hmrJ50
元々感情の希薄な表情だったが今は影が見える。
思い当たる事は十分にあった。
ここ数日ずっと兎角には無理をさせている。
夜になると無性に兎角に触れたくなってしまうのだ。
まずはこの手に。
次に服の裾に、胸に、首に。
気持ちが止まらなくて、同時に深い部分から熱情が湧き上がってくる。
76: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/07(火) 22:09:40.26 ID:fH1hmrJ50
それはすぐに溢れ出して自分の欲望だけを露わにした。
兎角「今日も、する?」
どきりと胸が苦しくなる。
こちらを見上げる兎角の目は顔色を伺うような、少し不安な色を持っていた。
兎角が行為を嫌がっていない事は分かっている。
彼女は疲れているんだと思いながらも晴の情欲はまだ治まってはいなかった。
晴「たぶん」
79: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:07:05.49 ID:V+5T6Ug80
晴は本音を伝えた。
したくないなら断ってくれてもいい。
兎角の気配がある限り、その温もりが欲しい。
申し訳ない気持ちもあったが兎角に対してはわがままでいたい。
目を合わせずに俯いていると兎角がわずかに椅子をひいて晴に半身を向けた。
兎角「ここでする?」
晴「えっ」
80: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:17:36.29 ID:V+5T6Ug80
驚いて兎角を見れば、彼女の手は自らの股間に添えられていた。
つられて晴もそこへ手を伸ばせば、女性には無いはずの柔らかさがあった。
晴「誰か、来るかも」
そう言いながらも兎角の唇に自分の唇を合わせる。
吐息が熱い。
兎角「もう帰っただろ」
舌を差し出され、それを舐める。
81: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:24:44.49 ID:V+5T6Ug80
晴「先生は?」
続けて兎角が晴の舌を吸う。
兎角「来やしない」
そして晴の頭を抱き寄せて口内を舌でかき回した。
息が漏れる。
鼓動が早くなって下半身が疼き出した。
唇を離して膝を折り、兎角の股間に顔を寄せる。
82: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:30:35.52 ID:V+5T6Ug80
スカートを上げて、もうすっかり見慣れた男性器を見据えた。
晴「勃たせてあげる」
まだ興奮の足りないふにゃふにゃのそこを優しく握って先を舌で撫でる。
兎角から見えるように尿道の周りにじっくり舌を這わせていく。
時々視線を上げて兎角の顔を見ると、彼女は興奮に頬を紅潮させて晴を見つめていた。
あまり言葉はなくても兎角の目と表情はいつも素直だ。
いつでも兎角は晴を好きだと訴えている。
83: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:34:53.10 ID:V+5T6Ug80
そんな兎角を羨ましいと思う事が少なくない。
大事な事はなにも伝えられないずるさが心苦しくて、こうやって性的な行為で誤魔化しているなんて兎角が知ったら、どのくらい軽蔑されるだろう。
兎角「ぅあ……っ」
少しずつ硬さが増していく。
手で上下に擦り、先を口で刺激するとまた兎角の声が漏れて、日の赤さに溶けた。
高くなった声はこんな時にしか聞けない。
晴はそんな声に湧き上がる情欲を抑えながら兎角のそこを深くまで咥えこんだ。
84: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:46:25.67 ID:V+5T6Ug80
兎角「っ……!歯が、当たってっ……」
いつもは粘膜に歯を立てないよう、唇と舌をうまく使うようにしているが、今回は少し意地悪になってみたかった。
わざと歯を立てて、じわじわと圧迫していく。
兎角「晴っ、痛い……」
兎角の息が詰まる。
晴の髪の毛を掻いて痛みを訴えているが緩めるつもりはない。
強くは噛んでいないと思う。
85: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:52:36.37 ID:V+5T6Ug80
多少不愉快になる程度に力加減をして。
苦しそうに息を吐く音が聞こえるが本当に嫌がっている訳ではなさそうだ。
口内を通じてさらに硬くなっていく様子がはっきりと分かる。
これ以上は本当に痛いだろう。
晴「ぷはっ」
口を離して見てみれば思った以上に大きくなっていた。
自分の唾液でねっとりと濡れたそこを指先でなぞると、まるで別の生き物のようにぴくんと揺れた。
86: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 21:58:41.66 ID:V+5T6Ug80
さっきまであんなに柔らかかったのに血が集まるだけでこんなに大きく硬くなるなんて毎回不思議で仕方がない。
晴「痛い事されたのに硬くなるんだね?」
兎角の顔を見上げると彼女の頬は既に紅潮していた。
彼女は眉をしかめて目を逸らしたが、恥ずかしがっているのかと思いきや目に見えて欲情している。
晴は下着を脱いで兎角の目の前でスカートをゆっくりと捲し上げた。
兎角はそれをじっと見つめ、まずは指で割れ目をなぞる。
兎角「濡れてる」
87: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 22:44:17.59 ID:V+5T6Ug80
晴「んっ……」
流れ出た愛液を塗りつけるように兎角は晴の中心を撫で、穴に浅く指を入れた。
くちゅくちゅと数回掻き回して抜くと愛液が指に纏わりついて糸をひき、溢れ出たものが内腿を伝う。
心も体も兎角を欲しがっている。
兎角のそこも張り詰めてしまって、血管が浮いて苦しげに震えている。
きっと中に入りたくて仕方がないのだろう。
晴「いいよ、兎角さん」
88: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 22:52:21.88 ID:V+5T6Ug80
晴の声を合図にして兎角が勢いよく立ち上がった。
晴「あっ」
体を押されて壁まで一気に追い詰められ、強引に唇を奪われる。
晴「んっ、ふ……っ!んぅっ」
密着した下腹部に兎角の硬くなった男性器が当たる。
熱い。
欲に任せた激しい口付けの中、兎角の腕が晴の膝の裏に腕を差し込み、左足を持ち上げた。
89: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/09(木) 23:04:20.51 ID:V+5T6Ug80
開かれた股に熱い粘膜がこすり付けられる。
心臓が破裂しそうだった。
興奮に息が上がり、ただただ待ち遠しい。
兎角が少し腰を引くと自然とそこが交じり合い、晴への前戯もないままするりとひとつになってしまった。
晴「ぅうっ、んっ」
慣れた感覚。
この硬さも大きさも、ゆるゆると中を動き回る感触も全てが兎角だ。
91: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 19:59:38.83 ID:4C+g+vil0
晴「はっ……ぁぅ」
いつもと体勢が違うせいか下腹部が余計にぎゅっと締め付けられる感覚があった。
晴「入ってる……」
抱きしめていた体を離して繋がった部分をじっと見つめる。
根元まで見えるように自分と兎角のスカートをめくった。
ぱんぱんに膨れ上がった兎角の男性器が自分の中を行き来する。
体液でべとべとに濡れていやらしく光っている事が、すでに出来上がっているはずの興奮に拍車をかける。
92: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 20:03:12.05 ID:4C+g+vil0
あまり奥は突かず、入り口から半ばにかけて緩やかに往復を繰り返す。
ぞわぞわと下腹部から背筋にかけて快感が登りつめてくる。
性器の交わる水音がたまらなく愛しい。
粘膜をこすり合わせるのは特別な事で、お互いに他の誰ともなし得ない行為であると分かっているから余計に気持ちは高揚した。
晴だけの兎角であり、兎角だけの晴であると。
流れ出て冷えた愛液が内腿をくすぐり、自分の淫乱さを物語った。
気持ちのよさ以上に視覚的なものがひどく胸の奥をかき回す。
93: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 20:20:59.03 ID:4C+g+vil0
興奮が止まらない。
はしたないこの体勢に心が乱れていく。
晴「ごめん、ね……っ、晴、いやら、しくてっ」
兎角が困っているのは分かっていた。
それでも嫌がらずに付き合ってくれている。
彼女自身にも旺盛な部分があるのは分かっているがそれ以上に無理をさせているのは自覚している。
兎角「気にするな」
94: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 20:34:56.58 ID:4C+g+vil0
無愛想な声で返事をすると、兎角は晴から身を離した。
硬さを保つそこがずるりと抜け落ち、晴の中から体液が零れ落ちた。
まだどちらも満足はしていない。
兎角に腕をひかれ、彼女の席へ移動すると手をつくように促された。
兎角がなにを望んでいるかは分かっている。
自分自身もそうやって後ろから激しく犯されるのは好きだった。
抵抗がないわけではない。
95: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 20:37:32.49 ID:4C+g+vil0
晴「んん……っ」
恥ずかしくて、羞恥心で体が震える。
ひやりとした机に手を置き、普段の兎角を思い浮かべた。
真面目に座って授業を受ける姿が頭の片隅に浮かび、今の行為が後ろめたくなる。
そばにいる人は同一人物で、欲望に駆られた熱を惜しげもなく突き付けてくる。
もう壊れてしまいそうだった。
気持ちが昂ぶって理性がかき消されていく。
96: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 21:17:22.27 ID:4C+g+vil0
晴は全てが見えてしまうのを分かって腰を突き出し、足を開いた。
兎角は晴と自身のスカートを外して邪魔なものを取り去った。
下腹部が意識もせずきゅっと締まるのを感じる。
すぐにでも差し込まれるかと思ったが兎角は硬く膨れ上がったそこで尻を撫でていた。
手でも感触を楽しむように撫でたり揉んだりを繰り返している。
もどかしくて思わず腰を揺らしてしまう。
早く。
97: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 21:31:12.51 ID:4C+g+vil0
兎角のそれが欲しくて手を伸ばす。
こんなに膨れ上がった状態なのになにを焦らしているんだろう。
兎角だってすぐに入れたいに決まっている。
晴「兎角さん、しよう?」
自分でも不思議なくらい気分は高揚していて、声に色気が混じっている事に驚く。
誘う時はいつでもそうだ。
兎角を女として求める。
98: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 21:34:37.64 ID:4C+g+vil0
晴「早く……」
いつもならとっくに理性なんて捨てているだろうに、今回はなかなか動かない。
今の誘いで兎角の股間は十分に反応してびくびくと苦しそうに震えている。
こんなものが入ってきたらどんなに気持ちいいだろう。
体が快感を欲しがっている。
この際道具を使われたとしても構わないと思うほどに気持ちはふしだらだった。
晴「ねぇ、挿れてよ……」
99: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 22:04:29.34 ID:4C+g+vil0
恥ずかしい。
こんな風にねだる自分はどこまで淫らに狂っているんだろう。
兎角「なにを?」
一瞬耳を疑った。
兎角がそんな風に攻めてくるなんて。
晴「と、兎角さん、そういうのが趣味なの?」
顔が熱くなる。
100: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 22:10:20.37 ID:4C+g+vil0
今まで何度も交わらせてきたのに今更そんな事を言われても反応に困ってしまう。
晴「お……」
兎角に対抗して冷静なふりをしてさらりと言ってしまうつもりだったのに言葉が出てこない。
普段だったらきっとさらりと言えてしまうのに、使える状態のそれを目の前にしてこんな場所で懇願する事がとても恥ずかしく思えた。
晴「兎角さんのバカ」
兎角「バカでいいから」
熱いものが割れ目をなぞる。
101: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 22:18:05.40 ID:4C+g+vil0
もう少しで入りそうなところまできて、割れ目に沿って流れるように通り過ぎていく。
もどかしくて股をすり合わせると兎角はそこを無理にこじ開けた。
局部には触れず、ずっと太ももや尻の肉を撫でたり揉んだりを繰り返している。
兎角「しないの?」
本当に意地が悪い。
兎角だって我慢しているはずなのに。
陰部がひくひくと震えている。
102: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/12(日) 22:24:12.59 ID:4C+g+vil0
奥からはいやらしい汁が流れ出している。
欲しい。
早く挿れて。
掻き回して。
頭の中がそんな乱れた妄想だらけで嫌になる。
兎角「ほら。欲しくない?」
ちらりと兎角の中心を見れば、完全に出来上がったそれが目に入った。
107: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/13(月) 21:09:21.17 ID:8F1jNDhg0
今にも破裂しそうだ。
ここから与えられる刺激に耐えられるだろうか。
壊されたって構わない。
熱い滾りを受け入れたい。
晴「兎角さんの、おち……ん、ち、ん欲しい……」
やっと絞り出した声に兎角が満足そうに息を吐いた。
兎角「聞こえないよ」
108: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/13(月) 21:11:42.45 ID:8F1jNDhg0
嘘だ。
彼女の顔を見ればわかる。
楽しそうに口角を上げてこちらを見ている。
ちゃんと聞こえているはずなのに。
晴「おちん、ちん……っ、くださいっ!」
自棄気味に叫んだ瞬間、下腹部がひどく疼いた。
羞恥心で興奮している事に気付いた瞬間、ズルッと体の奥に硬いものが入り込んだ。
109: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/13(月) 21:15:43.94 ID:8F1jNDhg0
晴「は、ぁあん——っ!」
突き抜けるような刺激だった。
中がキュッと締まった瞬間に一番奥まで一気に突き込まれ、強引に押し広げられた快感が頂点に誘い込む。
兎角「晴、イッた?」
びくびくと体は震え、中が強く収縮しては緩くなる。
痙攣したように中がうごめいているのが自分でも感じられた。
なんとか立っている事は出来たがこれ以上は腰が持ちそうにない。
110: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/13(月) 21:22:43.88 ID:8F1jNDhg0
体を支える手がガクガクと震える。
当然兎角は中に入り込んだまま硬さを保っていて、物足りなくて跳ね回っている。
兎角「辛いか?」
答えられずにいると兎角は晴の背中を押し倒して机に組み敷いた。
上から覆い被さり、机に手をついてゆっくりと腰を進めた。
晴「ひっ……ぅ!」
鈍い快感が腰の奥に溜まっていく。
111: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/13(月) 21:27:58.14 ID:8F1jNDhg0
ぬるい感触が出たり入ったりを繰り返して、こつんと奥に触れるたびに全身が痺れた。
内部がじっくり犯されていく。
粘質的な汁が溢れ出して、ぬちゅぬちゅと音を立て続けている。
強く激しく行為をするのとは違った感覚。
目に映る日常の景色が、こんな場所でいやらしい事をしているのだと、当て付けのようにその事実を突き付けてくる。
兎角「はっ、はっ……」
兎角から言葉はなく、浅い息を小刻みに吐いて彼女は晴の中に興奮を擦り付けた。
112: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/13(月) 21:37:22.81 ID:8F1jNDhg0
晴「あっ、ぁんっ、ふっ、ぅあっ」
絶頂した直後の倦怠感が抜けてくると、また下腹部がうずき始めた。
兎角「晴、中がすごく濡れてきた。もっと動いていい?」
晴「うんっ……、いっぱい、して……っ」
腰を揺らすと中が擦れ、兎角との繋がりが深くなった。
兎角は体を起こし、晴の腰を掴んだ。
次の瞬間には遠慮もないほどに奥から入口への往復が激しくなった。
113: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/14(火) 20:34:14.12 ID:MkaUNBvz0
晴「ああんっ!あっ!!」
いきなりの強引さに声を上げてしまったがここは教室だ。
自分の腕を噛んでぐっと口をつぐむ。
晴「ぅっ……ふ!!んんぁっ!あぐっ!」
どんどん勢いが増していく。
下腹部の奥を硬いものが激しく突き上げる。
前後の動きもそうだが、兎角のそこが大きくびくんっと不規則に震えるたびに晴の興奮を誘った。
114: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/14(火) 20:43:50.00 ID:MkaUNBvz0
いつもと全然違う。
体勢の影響なのか奥に当たるたびに全身にびりびりと刺激が走った。
晴「んっんんっ!!ぅう!!」
必死に堪えようとするが腹部の深い部分への叩きつけるような衝撃になすすべもない。
脳が痺れたみたいになにも考えられない。
視界になにが映っているのかも分からなくて自分の前髪を掻きむしる。
我慢するのが辛い。
115: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/14(火) 20:48:50.57 ID:MkaUNBvz0
ぐちゅぐちゅと肉の塊が腹の奥を引っ掻き回している。
晴「とかっ、やっ……!!はげし……っ!!」
快感に体がついていかない。
体を鍛えているだけあって、兎角の腰のぶつかり方が重い。
晴「だっ、め!も、ぉっ……やっ!」
苦しい。
息が出来ない。
116: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/14(火) 21:10:43.28 ID:MkaUNBvz0
口からは唾液がだらしなく垂れ、机にしがみつく力ももう限界だった。
足なんてとっくに震えているし、股間に当たる感覚以外はもう視界すらもままならなかった。
自分がなにを見ているのかもわからない。
耳に届くのは兎角の息遣いと自分の声にならない悲鳴、卑猥な水音だけ。
誰もいないであろうこのフロアには他になんの音もない。
それでも誰かが来るかもしれないこの状況では全てを捨てることは出来なくて、どこか頭の隅に冷静な部分がある。
なのに気持ちは今まで以上にずっと興奮していた。
117: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/14(火) 21:17:36.68 ID:MkaUNBvz0
他人にこの行為を見られているんじゃないかと、そう思うと気持ちはたまらなく高ぶった。
兎角「はぁっ、はぁっ、晴っ」
腰の勢いが小刻みになった。
限界が近いのだろう。
気持ちのいい状態を保って昇り詰めようとしている。
晴「あっ、あっ、んんっ!とかく、中に出し、てっ!」
兎角から放たれる熱い塊が好きだった。
118: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/14(火) 21:30:29.56 ID:MkaUNBvz0
どろどろとした精液が浸透していく感覚が愛しくて、後になって流れ出てくるそれを見ていつも嬉しくなる。
兎角「うぁっ……あ、あっ、ぅ!」
腰を強く密着させて兎角の動きが止まった。
中で跳ね回る兎角の中心からは今大量の精液が放たれているのだろう。
ゆっくりと腰が離れて、また強く押し付けられる。
晴「あ……はぁ、はぁっ、う……」
中に出されている事は分かっているが感覚はあまりなくて、やっと止まらない快感から解放されたと思うと力が抜けた。
120: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 20:54:55.93 ID:MXztIteE0
なんとか頭を上げて兎角を見れば、肩を上下させて大きく息をついていた。
ついさっきまで膨れ上がっていたそこはだいぶ小さくなっていたがそれでもまだ上を向いている。
晴「兎角さん、元気すぎるよぉ……」
兎角「お前が言うな」
兎角はティッシュを取り出して晴の中心を丁寧に拭いた。
兎角「いやだったか?」
口元が笑っている。
121: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 21:04:46.82 ID:MXztIteE0
そんなわけがないと分かっている顔だ。
晴「兎角さん、今日は意地悪です」
体を起こして兎角に向かい合うと、彼女はきょとんと目を丸くした。
兎角「そうかな」
晴「そうです」
振り返って軽く唇を差し出すと兎角もキスをしてきた。
嬉しくて胸が温かくなる。
122: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 21:09:45.46 ID:MXztIteE0
晴「もう一回しよ?」
まだ立ち上がっているそこを手のひらでするすると撫でると、兎角の肩がピクリと震えた。
兎角「いいのか?」
やはりまだ足りないようだ。
晴「うん。座って」
兎角を机に座らせて晴はその上に向かい合わせに跨った。
机の上に膝をつくなんてはしたないと思いながらも、性欲が理性に勝る。
123: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 21:23:57.79 ID:MXztIteE0
熱く濡れそぼった二人の中心が交わる。
もう何度も繰り返した行為に恥じらいはなくて、躊躇うような初々しさはなかった。
気持ち良さだけでなく楽しみを見出すようになって、交わる時の彼女の癖や表情を見る余裕が出来た。
一つ一つに愛情があって彼女の優しさを知る。
晴「んっ」
思わず声が漏れる。
124: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 21:41:01.20 ID:MXztIteE0
入ってくる硬さに押し出されるように吐く息が震えた。
両腕を兎角の首に回して体を密着させる。
晴「気持ち良い……」
動いていなくても兎角の体温が心地良かった。
暖かいものに心を包まれているみたいで満たされた気持ちになる。
兎角「うん。私も気持ち良い」
抱き返してくる両腕は体温以上の温もりがあった。
晴「兎角さん、すき」
125: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 21:52:57.39 ID:MXztIteE0
何度呟いただろう。
何度でも伝えたい。
こんなにも愛していると、どうやったら伝えられるだろう。
兎角に愛されている事を十分に自覚しながら、自分にはそれを伝える術がない。
兎角は言葉で伝えるのが上手いと褒めてくれたけれど、まだ足りない。
きっと兎角も同じように悩んでいるのだろう。
伝えたい事が表現できない。
126: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 22:23:50.66 ID:MXztIteE0
大切すぎて抱えきれない気持ちを二人はそれぞれに持っている。
きっと同じ物を別々に。
二人で一緒に持つ事ができるだろうか。
声も視線も指先の動き一つでも、心を通わせる手段になると信じて。
晴は兎角に口付けた。
すると兎角が顔を真っ赤にして、驚いたように目を見開いた。
晴「どうしたの?」
127: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 22:29:51.88 ID:MXztIteE0
兎角「あ、いやっ、なんか……」
慌てて兎角は目を逸らし、また晴を見上げた。
兎角「すごく嬉しかった。よく分からないけど、晴は私を想ってくれてる」
今の気持ちを伝えられた気がする。
嬉しい。
今、兎角から貰った気持ちで心が溢れそうだった。
一人ではこんな風にはならない。
128: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 22:51:27.78 ID:MXztIteE0
兎角「晴。好きだ」
まっすぐな瞳から注がれるきれいな感情が、胸を満たして流れ落ちた。
ここには兎角がいる。
溢れた感情は兎角が拾ってくれる。
だから兎角から溢れ出した心は全て受け止めたい。
大切な気持ちは兎角とともにある。
晴「動くね?」
129: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 23:12:50.55 ID:MXztIteE0
腰を前後に揺らすと兎角のそこがまた大きくなり始めた。
座っているせいで少しの圧迫で中がいっぱいになる。
晴「あ……んっ」
腰を上げて引き抜き、また腰を落とす。
兎角の吐き出した精液と自分の中からとめどなく溢れる愛液がかき混ぜられている。
繋がっている様子を、興奮が抑えられないといった目で兎角がじっと見つめている。
晴「この中、んっ、兎角さんで、いっぱいなんっ、だよ」
130: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 23:45:15.04 ID:MXztIteE0
自分の下腹部を撫でて、ごつごつと奥に当たる衝撃を感じる。
兎角もそこにそっと手を添えた。
そしてぐっと手のひらを押し込むように強く押さえつけてくる。
晴「んぅっ!」
中からと外からの圧迫に快感が増した。
もっと欲しくて腰が勝手に動き始める。
またこうやって快楽を求めて淫らに腰を振っている。
131: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/15(水) 23:57:46.56 ID:MXztIteE0
どうしようもなくて、自分が嫌になると同時に、兎角への気持ちに甘えて節操のなさを正当化していた。
晴「とかくっ、とかくぅ……っ」
涙が溢れてきた。
愛しくて愛しくて。
爆発しそうな気持ちに心がついていかない。
兎角「うあっ、く、晴っ、中すごっ、ぁ」
兎角の体がびくびくと震えている。
133: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 20:54:56.64 ID:jxlzHrVZ0
自分の体が兎角を悦ばせている事がたまらなく嬉しい。
兎角が晴の涙を拭い、頭を抱き寄せて口付けた。
晴「んっ、ぁふっ」
二人の息と声が混じる。
口内を荒らし合って。
もう耐えられなくて、晴は服を脱ぎ捨てた。
下着ももういらない。
134: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 20:57:50.52 ID:jxlzHrVZ0
誰かが来るかもしれないなんて不安もない。
自分で揉んで胸からの刺激を感じようとした時に、兎角が先にそこを掴んだ。
晴「あぁんっ!」
強引に揉まれ、指が胸に食い込んでいく。
もう片方の胸の先を唇でついばみ、歯を立てて口に含んだ。
晴「んんっ、ふぁっ」
兎角のネクタイを緩めてシャツのボタンを外す。
135: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 21:05:01.33 ID:jxlzHrVZ0
服を全て取り去って、晒された白い肩に口付けた。
外からでは華奢に見える兎角の体は、本当は筋肉で出来ているからしっかりとしていて硬い。
本当はこんな風に晴を護るために作り込んだ体ではなかったはずだ。
何年も何年も訓練を繰り返して、辛い想いを乗り越えて出来上がった体を今独り占めしている。
心も体も全部、自分のものだ。
晴「っ——!!」
そう考えた時に突然泣きたくなった。
136: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 21:10:17.23 ID:jxlzHrVZ0
さっきまで溢れていた涙とは感情が違う。
辛い。
怖い。
泣き叫びたくなった。
なにが本物なのか分からない。
自分の気持ちも兎角の気持ちも行為の意味も。
本当はここに愛があるのかも分からない。
137: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 21:20:30.59 ID:jxlzHrVZ0
兎角「晴」
兎角が頬に触れた。
兎角「泣いてる?」
涙は出ていないし、顔も見られていない。
どうして気付かれたんだろう。
急に時間が止まったように教室内に静寂が満ちた。
切なくて苦しい気持ちが音を打ち消しているみたいだ。
138: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 21:28:39.38 ID:jxlzHrVZ0
兎角「どうした?辛いのか?痛い?怖い?」
矢継ぎ早に疑問を投げかけてくる。
声は穏やかだが相当に心配している。
優しさが染み渡ってくる。
顔を上げて兎角に口付ける。
兎角「大丈夫か?」
なんて顔をしているんだろう。
139: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 21:38:25.49 ID:jxlzHrVZ0
心配そうに眉を下げている。
いつも困った顔や呆れた顔をさせてばかりいる気がする。
晴「ありがとう。もう大丈夫」
不安は取り除かれていない。
信じられるものがあるのか分からないままでも、突き進むしかない。
晴「セックス、続けよ?」
そう誘うと兎角の下腹部にぐっと力が入った。
140: ◆P8QHpuxrAw 2015/07/27(月) 21:40:29.14 ID:jxlzHrVZ0
中でまた彼女自身が大きくなった。
もう中はぐちゃぐちゃだ。
溢れ出した愛液と精液が二人の股間をべたべたに濡らしている。
晴「あっ、あんっ、は、ぁ、あぅっ、ん」
腰を上げて、また下ろして。
速度を上げて兎角の体を貪る。
全て食い尽くして、搾り取りたい。
143: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 20:41:41.87 ID:/gXfCGw10
こんな醜い気持ちとプライマー能力が兎角の全てを奪い取るのかもしれない。
そうしたら彼女の本物の気持ちはどこを彷徨うんだろう。
兎角「うぅっ、く、晴っ、もう、出そっ」
晴「待って、晴も、イ、くっ、からぁっ」
腰を押し付け合い、体を密着させる。
晴は股間を擦り合わせて陰核の当たる部分を探した。
そのうちびりびりと背中に快感が走り始め、全身が震える。
144: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 20:53:43.88 ID:/gXfCGw10
晴「ああっ、あっ、あっ——んんんっ!!」
兎角「く、ぅ、うあぁっ」
晴が絶頂すると同時にびくびくと兎角の腰が揺れ、下腹部がどくどくと脈打った。
兎角の体を離し、受け止め切れなくて流れ出ていくそれをはっきりしない頭で呆然と眺めた。
晴「はぁっ……はっ、ぁん……」
出し切った兎角のそこがだんだんと小さくなり、晴の中からずるりと抜けていった。
それについていくようにどろどろに混ざり合った二人の体液が流れ出ていく。
145: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 21:10:11.87 ID:/gXfCGw10
白濁の汁を見ながら晴は下腹部に触れた。
熱い塊がこの中にはある。
晴「兎角さん大丈夫?」
なんとか体を支えてはいるがぐったりとした様子で息を切らせている。
兎角「ああ……ちょっと疲れた」
夕日に照らされているせいで顔色は分からないが、きっと白い肌をさらに青白くしているんじゃないかと思う。
晴「ごめ——」
146: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 21:19:35.06 ID:/gXfCGw10
兎角「やめろ。この間から一体何回目だ」
不機嫌に返してくる兎角。
兎角「もう謝らなくていい。私だって好きでやってる。晴の事もだが、性行為自体もだ」
兎角は晴を抱きかかえて机から降りた。
今になってこの場での乱れた格好に焦りを感じて、晴は兎角から離れると慌てて服を着た。
兎角「晴」
晴「ひあっ!?」
147: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 21:36:01.17 ID:/gXfCGw10
いきなり後ろから抱きとめられて妙な悲鳴を上げてしまう。
彼女の手が晴の下腹部を通り過ぎ、大事な部分へと伸びていった。
晴「とかっ……!ダメだよっ」
今更恥ずかしくなって制止の声を上げると兎角の体がびくりと跳ねた。
兎角「ちっ、違う!汚れたまま下着をつけるつもりか……!」
晴「あ……」
確かに下半身は今どろどろだ。
148: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 21:36:32.58 ID:/gXfCGw10
兎角「じっとしてろ」
ティッシュを使って兎角がそこに触れる。
羞恥心で顔が紅潮するのが分かる。
太ももを撫でられ、体液が拭い取られていく。
ぬるぬるとした感触が肌を刺激する。
股間に手を当てられた時、我慢できずに体がぴくんと反応した。
晴「んんっ」
149: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 21:56:18.64 ID:/gXfCGw10
思わず声が出てしまって、兎角がびくりと身を引く。
兎角「へ、変な声を出すな……!」
晴「だって、兎角さんの手がやらしいんだもん!」
兎角「やらしくないだろ!拭いてるだけだ!」
晴「分かってるけどー……」
兎角「大人しくしてろ」
もう一度密着して股に手を当てる。
150: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:01:04.61 ID:/gXfCGw10
こんな体勢になる時点でおかしいとは思わないのだろうか。
兎角の体温と吐息を感じながらそこに手を当てられたら、頭がどうかしてしまうことくらい彼女には分からないんだろうか。
なんとか別の事を考えながら兎角に触られている場所から意識を移そうとしていると局部に刺激を感じた。
晴「っ!」
指が入っている。
浅い部分とはいえ、今の晴の体には刺激が強すぎた。
晴「や、っ、指入って……っ!」
151: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:05:06.80 ID:/gXfCGw10
兎角「掻き出してるだけだ。落ち着け」
冷静な声。
こんな風に興奮しているのが自分だけだと思うとひどく恥ずかしくなる。
晴「んっ、ふ、ぅっ……!」
指が中でうごめく。
入り口を広げて器用に中から精液を掻き出している。
行為をしている時より動きは緩慢で、刺激を与えるのが目的ではない事は十分に分かっているが声を堪えても体が反応してしまう。
152: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:09:56.81 ID:/gXfCGw10
晴「もう少し」
耳元にかかる声で脳が痺れていく。
どろっと精液が流れ出していく感覚にぞわぞわと背中が震えた。
晴「んんっ」
体液の生臭さが鼻をつく。
兎角「もう大丈夫だ」
兎角が指を抜くと同時に膝がガクッと落ちた。
153: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:36:17.91 ID:/gXfCGw10
兎角「晴」
兎角の腕が晴の腰を支える。
全体重を預けても兎角の体はびくともしない。
その力強さに甘えて彼女の肩に頭を擦りつける。
晴「兎角のばか……」
兎角「どうして?」
晴「分かってやってたでしょ」
154: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:38:58.82 ID:/gXfCGw10
拗ねた声を出すと兎角の目が丸くなった。
気付いていないとでも思ったのだろうか。
指を入れるまではきっとただの気遣いだったはずだ。
兎角「うん」
素直に頷くからまた始末が悪い。
怒れない。
もっとも、始めから怒る気なんてなかったのだけれど。
155: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:54:31.13 ID:/gXfCGw10
兎角「足りない?」
晴「もう無理……」
疲れ切ってこのまま眠ってしまいたいくらいだ。
さっきまでの不安は、全くというわけではないがだいぶ取り除かれた気がする。
夕日に照らされて赤く燃えたこの教室内に、二人の心が満たされる。
いつまで続くか分からないこの幸せが今の全てだった。
晴「兎角さん」
向かい合って彼女の目をじっと見つめる。
澄んだ瞳は人の心を貫く力がある。
156: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:58:30.10 ID:/gXfCGw10
不器用な視線は心を見透かす事は出来なくて、愚直に自らの意思を示すのみ。
そんな未熟さが兎角の武器なのかもしれない。
初めて会った時からずっと彼女の視線には心があった。
好きだと何度言っても足りない。
心が零れるくらいに愛して、手を取って、彼女を見つめ続けたい。
そんな願いがいつか叶う事を信じて、ただ唇を重ねた。
——晴を、嫌いにならないでね……
終わり
157: ◆P8QHpuxrAw 2015/08/01(土) 22:59:18.96 ID:/gXfCGw10
以上となります。
長々とかかってしまってすみません。
今まで読んでくださってありがとうございました。
まだネタは決まっていませんが、これからもリドルSSを続けていきたいと思いますので、
今後ともどうかよろしくお願いします。
長々とかかってしまってすみません。
今まで読んでくださってありがとうございました。
まだネタは決まっていませんが、これからもリドルSSを続けていきたいと思いますので、
今後ともどうかよろしくお願いします。
158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/01(土) 23:48:14.50 ID:xu2+6NnSO
乙です
159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 02:36:35.78 ID:+FbxJ3Mwo
よかった
乙です
乙です
160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 04:13:08.69 ID:Z31hOHdRo
乙乙
161: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/02(日) 13:08:09.34 ID:mmTfXwO40
はえてないのも読みたいなぁ
162: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/08/03(月) 23:11:11.89 ID:bJUTrJDiO
乙
今度は晴ちゃんに生やしてくれ
今度は晴ちゃんに生やしてくれ
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435407020/
Entry ⇒ 2015.11.18 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
春紀「パートナー」
1: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:05:01.45 ID:DB44KJD10
悪魔のリドル 第5話辺りの妄想SSです。
エロ描写がありますのでご注意ください。
アニメとドラマCDを参考に作りました。
地の文が多いので読みにくいかもしれません。
エロ描写がありますのでご注意ください。
アニメとドラマCDを参考に作りました。
地の文が多いので読みにくいかもしれません。
2: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:05:41.21 ID:DB44KJD10
春紀「伊介様ー。こっち手伝ってよ」
大きめのベニヤ板を運びたくて辺りを見回した時、目に付いたのは伊介の姿だった。
伊介「はぁ?なんで伊介が力仕事なんてやらなきゃなんないのよー」
小道具の入った箱に座っていた彼女は面倒くさそうに立ち上がり、春紀のそばへと歩み寄った。
ヒールを履いていない伊介は春紀よりもいくらか身長が低いくせに見下ろす視線が異様に上手い。
春紀「あー……。ネイル、傷になっちゃうか。じゃあ剣持か東にでも声かけてみるよ」
伊介の整えられた爪を見て、呼び付けておいて悪いなと思いながら春紀は遠慮する事にした。
一旦抱えた板を置いて身を翻し、手が空いていそうな人間がいないか体育館内に視線を巡らせる。
大きめのベニヤ板を運びたくて辺りを見回した時、目に付いたのは伊介の姿だった。
伊介「はぁ?なんで伊介が力仕事なんてやらなきゃなんないのよー」
小道具の入った箱に座っていた彼女は面倒くさそうに立ち上がり、春紀のそばへと歩み寄った。
ヒールを履いていない伊介は春紀よりもいくらか身長が低いくせに見下ろす視線が異様に上手い。
春紀「あー……。ネイル、傷になっちゃうか。じゃあ剣持か東にでも声かけてみるよ」
伊介の整えられた爪を見て、呼び付けておいて悪いなと思いながら春紀は遠慮する事にした。
一旦抱えた板を置いて身を翻し、手が空いていそうな人間がいないか体育館内に視線を巡らせる。
3: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:13:02.64 ID:DB44KJD10
そう遠くない場所に兎角を見つけて、春紀は大きく息を吸った。
春紀「あず——」
兎角の名前を口にする前に、唐突に強い力で腕を掴まれた。
もちろんその手の主は伊介である。
伊介「待ちなさい♥もうちょっと食い下がらないの?」
春紀「頼んだら手伝ってくれんの?」
疑いのまなざしを向けると伊介はにっこりと満面の笑顔を作り、
4: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:18:49.66 ID:DB44KJD10
伊介「い・や♥」
はっきりと否定した。
春紀「いや意味分かんねーし」
予想通りの答えに思わず半笑いでため息をつく。
伊介「しつこく頼み込んで来たところに、期待を持たせて断るのが楽しいんじゃない♥」
春紀「なんであたしが伊介様の妙な性癖に付き合ってやらにゃならんのよ」
呆れた声を出すと、すぐさま伊介は春紀の頬を強くひねり、威圧的に顔を近付けてきた。
5: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:25:41.26 ID:DB44KJD10
伊介「性癖ってゆーな♥」
春紀は伊介の手を外し、ヒリヒリと痛む頬をさすった。
少しも手加減をする気のない容赦のなさに素直に感心する。
春紀「お前もやることあるんだろ?適当に暇そうなやつ捕まえてくるから大丈夫だよ」
背を向けて軽く手を振ると、伊介が不満げに息を吐いたのが聞こえた。
伊介「ったくもー……」
自分に素直な伊介が、不機嫌な顔をしながらも気にかけてくれている事が嬉しかった。
本当に我儘で、優しくないけど優しい。
春紀はそんな伊介の事が出会った当初から好きだった。
------------
6: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:36:20.01 ID:DB44KJD10
舞台裏で針と糸を持つ伊介を見つけて、春紀はにやりと笑った。
春紀「衣装作り?似合わないね」
伊介「うっさい。殺すわよ♥」
口ではそんな事を言っているが、随分と真面目に進めている。
そのうち耐えられなくなって投げ出すんじゃないかと思い、わざと煽ってみたが、やっぱり頑張っているなら褒めてやりたい。
伊介が触っていない裾の辺りを持ち上げて縫い目を見てみる。
春紀「うまく出来てんじゃん。あたしは力ばっかでこんなの出来ないからさ、すごいと思うよ」
7: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:43:10.72 ID:DB44KJD10
お世辞ではない。
本当に綺麗に縫えている。
家族想いなだけあって、家庭的な事が実は得意なのかもしれない。
一つ、伊介を知る事が出来た。
あとは根気がいつまで続くか、だろう。
伊介「こんなことで?まぁ、あんたはマニキュアの瓶を素手で割るくらいだから、細かい作業は向いてなさそうだものね♥」
春紀「仰る通りで……」
8: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:51:14.35 ID:DB44KJD10
愛嬌たっぷりの笑顔が胸にグサグサと刺さる。
先日破壊したマニキュアを思い出すと弁解の言葉もなかった。
弁償はしたが、二人の入れ違いで買ってしまった同じマニキュアは交換という形でお互いの手元にある。
肩を落とす春紀を気にしてか、伊介はちらりと春紀を見て、すぐに手元の衣装に視線を戻した。
伊介「いいんじゃない?さっきあんたのおかげでセットを配置出来たって喜んでる子がいたと思うけど」
口調はため息混じりだったが、きっとそれが慰めではない本音だという事は分かっている。
伊介「伊介にはあーいうの出来ないしー」
春紀「伊介様……」
10: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 21:59:26.40 ID:DB44KJD10
伊介の気遣いに口元がほころぶ。
春紀が穏やかな気持ちになると同時に伊介が顔を上げた。
そして得意の笑顔を向けてくる。
伊介「野蛮過ぎてって意味だけど♥」
春紀「そりゃどーも……」
軽い憎まれ口は照れ隠しだ。
分かってはいるが、春紀の顔には苦笑いが浮かんでいた。
------------
14: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 23:01:48.92 ID:DB44KJD10
陰鬱な気分で大浴場から部屋に戻り、後ろ手で扉を閉めると大きなため息が出た。
春紀「あー……やっちゃった……」
扉に寄り掛かり、頭を抱える。
時間が経つほどに胸の奥の罪悪感が大きくなっていく。
伊介「ちょっとやめてよ、辛気臭い空気持ち込むの。廊下に叩き出されるのとベランダにつまみ出されるのどっちがいいか今すぐ選びなさい♥」
壁の向こうから頭を覗かせた伊介が、あからさまにイラついた口調で言葉を叩きつけてくる。
春紀「伊介様すごいね……。たった一言に対してよくそんなに口が回るよな」
15: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 23:07:23.35 ID:DB44KJD10
春紀は言い返す気にもなれずにただ感心していた。
伊介「選べっつってんの♥」
春紀「選ぶもなにも、どっちにしても追い出されるじゃん」
半眼で睨むと、伊介は軽くため息をついて目を伏せた。
わざとらしくではなく、自然に出たため息。
それから二秒程経って伊介は顔を上げた。
伊介「で、なによ」
16: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 23:13:44.50 ID:DB44KJD10
伊介はソファに座り、足を組んだ。
春紀「なにが?」
伊介「その辛気臭い顔の原因よ」
今の彼女の目はなかなか見ることの出来ない穏やかさで、いつもの高圧的な口調もなりを潜めていた。
そんな風に言われるなんて思ってもみなかった。
素直ではない世話焼きな一面が見えた気がする。
伊介の隣に座って、臆する事のない彼女の視線を受け止める。
17: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 23:22:21.66 ID:DB44KJD10
春紀「聞く気あったんだ」
外に叩き出すと言っていた苛立ちは本気だったはず。
それでも気にかけてくれた事が嬉しくて口元が緩んでしまう。
そんな春紀の態度が気に入らないのか、伊介は口を尖らせて顎を少し上げた。
伊介「つまんなかったら殺すわよ♥」
春紀「辛気臭い空気を出してるやつから面白い話を聞き出す気なのかよ」
殺気の乗った声に春紀は苦笑した。
18: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/03(火) 23:29:02.71 ID:DB44KJD10
少し気遣いがあったかと思ったらすぐこれだ。
だがこちらの方が彼女らしいと思う。
伊介「別に笑わせろって言ってるわけじゃないのよ。楽しませろって言ってんの」
春紀「どっちも無理だろうけど……」
何か良い言い回しはないかと一瞬だけ考えたが、そんな雰囲気の内容でもない。
春紀「ちょっと1号室に絡んじゃってさ」
大浴場でのやり取りを思い出す。
23: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 20:21:22.70 ID:CE30Nk8E0
とにかく陰鬱だった。
兎角のように挑発に乗ってくるならまだ良かった。
晴の笑顔が浮かんで、春紀は眉をひそめる。
伊介「へぇ?珍しいわね。いつもヘラヘラ仲良しごっこしてんのに♥」
春紀「もうちょっとマシな言い方ないのかよ」
余計な一言に口を尖らせて噛み付いてみる。
本当に怒ったわけではなくて、流れで言い返しただけだった。
24: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 20:30:06.25 ID:CE30Nk8E0
伊介もそれに気を悪くした様子はない。
伊介「嫌がらせでもしたかったの?」
春紀「色々考えてたら、嫌な事ばっかり浮かぶんだよ」
家族を守りたい。
それだけを考えられたなら、どんなに楽かと何度も思い悩んだ。
殺したくて殺しているわけじゃない。
そんな言い訳がいつまでも引っ掛かっていて、割り切る事が出来ない。
25: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 20:37:15.06 ID:CE30Nk8E0
伊介「ただの八つ当たり?子供っぽいとこあんのね」
春紀「伊介様が言う?」
伊介「文句あんの♥」
春紀「いやないけどさ……」
伊介の物言いは高圧的であっても腹は立たなかった。
彼女は口が悪く、嫌味も悪態も驚くほどにすらすらと言い表す。
それでも嫌な気持ちにならないのは、伊介が相手に執着せず、人と自分の区別をはっきりとつけているからだろう。
26: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 20:48:34.59 ID:CE30Nk8E0
本当に大切なものと、それ以外を完全に隔離する覚悟は、きっと彼女の中だけにある心の闇なのだろうと、そう感じていた。
だから春紀は伊介に憧れた。
伊介「いいんじゃないの。人間なんだし八つ当たりもわがままも裏切りも、何したって構わないのよ」
慰めを含まない伊介の言葉には妙な安心感があった。
何をしても構わない。
それは、何をされても構わない、と言っているようなものだった。
そして何かをされたなら彼女は容赦なく反撃をするのだろう。
27: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 20:58:43.51 ID:CE30Nk8E0
大切な物以外に興味を示さない思い切りを、春紀は切望した。
春紀「……そっか。ありがとね、伊介様」
伊介からのアドバイスは、彼女が春紀を同等に思っている証拠だ。
それでも春紀には伊介の真似は出来ない。
大切なものはあっても、どこか自分を捨てきれない部分があって、春紀には全てを取るか失うかの極端な二択しかなかった。
自分のしている事が家族を守る為の犠牲だと自覚した時点で、無理をし続けている事は分かっていた。
伊介「なによ、気持ちわるっ」
28: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 21:07:00.98 ID:CE30Nk8E0
笑いもせず、眉をしかめる伊介の姿が印象的だった。
そんな風に普段から思った事を顔に出せるなら、こんなに苦しむ事はなかったのかもしれない。
春紀「あたしさ、伊介様が好きだよ」
今までにないくらい穏やかな気持ちだった。
いつの間にか大浴場での事なんて頭から抜けて、伊介の事しか考えられなくなっていた。
伊介「は?なにそれ」
春紀「そういう自由なとこ、いいなって思うんだ」
30: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 21:15:20.69 ID:CE30Nk8E0
何かが解決したわけではなかったが、春紀の気分を汲み取ったのか伊介は一瞬困ったように笑った。
そしてすぐに顎を上げて胸を張る。
伊介「ストレスは嫌いなんで♥」
春紀「あたしの事は?」
答えを分かっていて、わざとからかうように笑ってみせる。
伊介は優しくにっこりと笑い、愛想の良い高い声ではっきりと告げた。
伊介「ウザい♥」
-------------
31: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 21:26:37.06 ID:CE30Nk8E0
早めに目が覚めた。
いや。
実はうまく眠れなかったのかもしれない。
まだ登校時間までだいぶ時間がある。
春紀は眠っている伊介に気を遣ってゆっくりと起き上がった。
音を立てないよう、そのまま洗面所へ向かう。
そして扉を開く直前、
伊介「やるの?」
背後からの声にびくりと身を震わせた。
32: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 21:33:00.65 ID:CE30Nk8E0
春紀「起きてたのか。驚かせるなよ」
大きくなった心臓の音を押さえ込み、平静を装ってゆっくりと振り返る。
驚いたのは伊介が起きていた事ではなく、これからの行動を見透かされていたからだった。
春紀「なんでそう思うの?」
表情が強張らないように注意を払い、意識しながら口元を緩める。
伊介「あんたの殺気で寝不足なんだけどぉー♥」
身を起こして春紀を見るその目は、軽い口調に反して少しも笑っていなかった。
33: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 21:45:56.17 ID:CE30Nk8E0
そしてそれは春紀も同じだ。
無理をして笑顔を取り繕ったところで、自分には向いていないことくらい分かっている。
春紀「意外に鋭いんだな」
伊介「失礼ね♥普段から伊介は色んな事をちゃんと気にしてるもの」
口だけではない事は彼女の目が語っている。
隠しても誤魔化しても意味はない。
春紀「今日、やるよ」
34: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 21:51:19.63 ID:CE30Nk8E0
覚悟は決めた。
苦しい想いはまだ残っているが、これが最後だと思って心を抑え込むように拳を握りしめる。
伊介「結構強いわよー、東兎角」
春紀「うん。準備はしてる」
兎角についての噂は聞いていた。
彼女の方がずっと強い事も分かっている。
我流の体術を使う春紀にとって、兎角は出来る限り戦いたくないタイプだ。
35: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 21:58:47.95 ID:CE30Nk8E0
伊介「そう」
伊介は興味なさげに春紀から顔を逸らしたが、目を伏せた時に一瞬眉をしかめたのが見えた。
春紀「なぁ、伊介様」
ベッドに膝を乗せ、伊介の手首を掴むと力任せにぐっと引き寄せる。
伊介「こら近寄んな」
焦る様子はなく、ただ伊介は面倒臭そうに半眼で春紀を睨んだ。
春紀「嫌なら嫌でいいよ」
36: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/04(水) 22:00:18.61 ID:CE30Nk8E0
伊介「邪魔」
春紀「じゃあ殴っていいから」
冷たい言葉を無視して、春紀は伊介に顔を寄せた。
伊介が逃げられるようにゆっくりと近付いて様子を窺うが、彼女は抵抗も逃げる事もしない。
そのまま春紀は伊介の唇にキスをした。
殴られてもいいと思っていたのに、伊介からは嫌悪する様子は伝わってこない。
春紀「伊介様……」
41: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 20:17:07.05 ID:iDJLXE6I0
確認するように伊介の名前を呼び、もう一度口付ける。
伊介の口からわずかに漏れる吐息が艶めかしくて、春紀の思考はそこで止まった。
伊介「んっ……」
春紀の唇は伊介の顎の下から首へと這い、手は腰を撫でていく。
首に舌を当てて軽く舐めた後、そこを強く吸うと伊介の体がびくっと震えた。
伊介「このっ……、がっつくなっ!」
体を突き放され、春紀の体がよろめく。
42: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 20:25:50.01 ID:iDJLXE6I0
伊介が抵抗しないものだから、つい調子に乗りすぎてしまった。
伊介「もうちょっと相手の事考えなさいよ」
春紀「ごめん……」
申し訳なさに俯いていると、伊介が身を寄せてきた。
伊介「見える所に跡を付けるのはマナー違反よ?」
耳元で囁き、春紀の服の裾に手を差し込む。
春紀「い、伊介様……?」
43: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 20:30:40.64 ID:iDJLXE6I0
緊張に体を強張らせていると唇をぺろりと舐められた。
顔が一気に熱くなるのを感じる。
何が起こっているのか、まだ状況が飲み込めていない。
春紀「……怒ってないの?」
恐る恐る尋ねると伊介はにっこりと笑った。
この人は笑っている時が一番怖い。
伊介「怒ってるわよ。首に跡付けんな♥」
44: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 20:39:06.35 ID:iDJLXE6I0
春紀「それだけ?」
伊介「それだけって……。なによ、嫌がって欲しいわけ?」
春紀「そうじゃないけど……」
すんなり受け入れてもらえるなんて思っていなかったから拍子抜けをしてしまった。
戸惑いはあるものの、それでも欲求は自分の中で渦巻いていて、伊介の体から視線を外せないでいる。
伊介「続き、しないの?」
伊介の声に誘われて、春紀は彼女の太腿からスカートの中にかけて手を滑らせていった。
45: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 20:49:43.12 ID:iDJLXE6I0
春紀「伊介様のお尻、かわいい……」
女性らしい体付きを楽しみながら、春紀はもう一度首に口付けた。
今度は跡を付けないようにそっと舌を這わせる。
伊介「あ……っ」
春紀「伊介様……」
興奮に息が上がっていく。
もっと伊介の体を見たい。
46: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 20:57:58.26 ID:iDJLXE6I0
服を脱がしていくと、伊介も同じように春紀の服に手を掛けた。
伊介を押し倒して、愛撫を繰り返すうちにお互い纏うものはなくなっていた。
春紀「おっぱいでか……」
仰向けに寝た伊介を見下ろし、彼女の胸に触れる。
標準よりやや大きい春紀の手でも覆いきれない。
弾力で指が埋もれてしまいそうだった。
形のいいそれの先を口に含み、舌で押しつぶす。
47: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 21:13:50.27 ID:iDJLXE6I0
伊介「ん……ふ……」
始めは柔らかかったその部分はすぐに硬くなって春紀の舌を押し返してきた。
伊介「あ……あっ、んっ」
段々と艶のかかった声が漏れてくる。
伊介の鼓動が伝わってきて、彼女が興奮している事を知ると春紀の胸も高鳴った。
いつもはそっけない伊介と心が繋がっている事が嬉しくて仕方がない。
どうしても何かを残したくて、伊介の胸を持ち上げると付け根にキスをして強く吸った。
48: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 21:28:28.79 ID:iDJLXE6I0
伊介「んんっ……!」
この位置ならきっと簡単に見られる事はない。
春紀は伊介に馬乗りになって両手で胸を揉んだ。
少し強引に、次に優しく、根元から持ち上げて先まで撫で回した。
その度に伊介の表情が見える。
感じている姿が可愛くて、ずっと見ていたかった。
しかし、
伊介「……胸ばっ、か……触るな……っ!」
耳を引っ張られて春紀の体がよろめいた。
49: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 21:31:06.18 ID:iDJLXE6I0
春紀「いたたた……っ」
伊介「あんた胸フェチ?」
耳をさすっていると蔑んだ目で見られた。
実はそんな視線にもときめいているなんて言ったらまた怒られるだろうか。
春紀「ずっと触ってられる自信がある」
伊介「キモい♥」
春紀「伊介様のだけだよ」
50: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 21:45:41.19 ID:iDJLXE6I0
伊介「……じゃあ許す」
怒るわけでも笑うわけでもなく、素のままの表情が新鮮だった。
春紀「伊介様……」
覆い被さって静かに名前を呼ぶ。
軽く唇を重ねると、続けて舌を差し入れる。
春紀のぎこちない舌使いに対して、伊介はそれを可愛がるように優しく舌を絡ませた。
手は腰や背中を撫で、脚を擦り合わせて春紀を誘う。
51: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 21:52:27.16 ID:iDJLXE6I0
春紀の指先は伊介の思惑に沿って腿をなぞり、その根元へ触れた。
春紀「もうぬるぬるじゃん……」
粘りのある体液が指にまとわりつく。
伊介の体を確かめるように何度も入り口に指を這わせていると、彼女の腰が揺れた。
春紀「我慢できない?」
意地の悪い言い方をして伊介をからかい、焦らすつもりだった。
伊介「……早く……ぅ」
52: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 21:58:34.17 ID:iDJLXE6I0
伊介の素直な言葉に、単純な春紀の心は簡単に呑まれてしまった。
心臓の音が大きくなり、息苦しくなる。
焦らす余裕もない。
春紀「入れるよ……」
興奮を抑えてゆっくりと指を差し込む。
伊介「あ……ぅ……」
飲み込まれるように指が奥へ進んでいく。
53: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 22:04:02.17 ID:iDJLXE6I0
直接触れる粘膜は肌の体温よりずっと熱かった。
中指で伊介の中を探る。
春紀「すげー……、伊介様の中、気持ちいい……」
指を圧迫してくる肉壁をなぞり、伊介の反応を確認する。
伊介「は……、んっ」
頬を上気させて目を細める伊介はいつも以上に色気をまとっていて、春紀はこくりと喉を鳴らした。
春紀「痛かったら言ってくれよな……」
55: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 22:15:41.91 ID:iDJLXE6I0
自分が不器用で遠慮のない馬鹿力だと自覚している。
伊介を傷付けないようにゆっくりと指を往復させていくと、彼女の腰がまた揺れた。
伊介「もっとぉ……っ」
胸の奥から一瞬で全身に血が駆け巡るような感覚。
伊介のたった一言で、春紀の欲望が表面化する。
春紀「あたし、結構我慢強いタイプのはずなんだけどな……」
56: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 22:25:16.38 ID:iDJLXE6I0
ぽそりと呟き、春紀は指を強く突き入れた。
人差し指と中指で中をかき回す。
伊介「あぁんっ!……ァ、う……んっ!はぁ……っ!!」
春紀「ここ、一番声出てる……。イイの?」
伊介「ふぁっ!あっ!」
返事はなかったが、そこを攻め続けると中が狭くなってくるのを感じた。
空いた手で伊介の脚を広げ、さらに奥まで指を進めていく。
57: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 22:30:39.42 ID:iDJLXE6I0
溢れた体液が股をぐっしょりと濡らしている。
感じてくれている事が嬉しくて、心が張り裂けそうだった。
しかしどうやってそれを発散したらいいかが分からない。
春紀「伊介様っ……!」
好きだと叫んで、キスをして、抱きしめたら、きっと幸せなんだろうと思う。
きっと伊介もそれに応えてくれるだろう。
しかしそうなったら今の目的を見失ってしまいそうだった。
何も考えず激しく指を動かし続ける。
58: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 22:40:44.49 ID:iDJLXE6I0
伊介「ンんっ!ふぅ……っあ!あぅっ!」
伊介の嬌声と粘液が混ざる音が頭に強く響いた。
何度も名前を呼んで、その声と行為にただただ気持ちを乗せる。
指先にぐっと力を入れて伊介の奥を刺激すると、彼女の体が一瞬硬直した。
中が強く締まったかと思うと、緩くなって、またすぐに締まる。
ぐったりとする伊介を見て、彼女が達した事を悟った。
春紀「伊介様、大丈夫?」
59: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/05(木) 22:44:01.18 ID:iDJLXE6I0
顔を覗き込むと背中に手を回され、抱き寄せられた。
春紀「伊介様?」
声を掛けても伊介は何も言わないまま息を切らして春紀を抱きしめている。
心臓の音がとても温かい。
春紀は伊介の背中に手を回して、その温もりを逃さないようにぐっと抱きしめた。
体温も匂いも感情も、今全身で彼女を感じている。
このままずっと離れたくなかった。
------------
62: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/06(金) 21:39:04.06 ID:tYkpOMFX0
あいつは何も言わずに出て行った。
せっかくアドバイスをしてやったのに。
イライラするのは無視をされたからだと考えながら、落ち着きのない動作で時計を見た。
そろそろ23時になろうとしている。
気分転換だと自分に言い聞かせて、伊介は寮の外へと向かった。
確実な目的地があるわけではなくて、なんとなく気になる場所へと足が向いた。
その途中、向かい側から人が歩いてくる気配を感じて立ち止まる。
63: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/06(金) 21:47:46.28 ID:tYkpOMFX0
両足に均等に体重を預け、利き手を少し引いて相手の動きを見張った。
鳰「おぉおおっ!?伊介さん何してるっスか!」
暗がりの向こうから姿を見せたのは裁定者だった。
わざとらしく驚いたような仕草。
そういう態度にたまらなく苛立ったが、今はそんな事はどうでも良い。
伊介「たまたま通りかかったのよ。あいつは?」
鳰が歩いてきた方へと目を向ける。
64: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/06(金) 21:53:08.23 ID:tYkpOMFX0
街灯の建ち並ぶ道の向こう。
その先には体育館がある。
春紀が舞台のセットに色々と関わっていたから、準備というのはそのセットへの細工だと予想は付いていた。
それに彼女自身楽しそうに作業をしていたから、あの場所には暗殺以外にも思う事があったはずだ。
鳰「こんな時間にたまたまっスか……まぁいいっス。春紀さんは失敗したっスよ」
伊介「そんな事は分かってるわよ。あのバカはどうなったって聞いてんの」
鳰の態度を見るまでもなく、始めから暗殺が成功するとは思っていない。
65: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/06(金) 22:00:00.98 ID:tYkpOMFX0
むしろ成功しない方がいいと考えていた。
春紀が今後さらに苦しむ事が分かっていたからだ。
鳰「あちこち裂傷や骨折があるっスけど命に別状はないっス。さっき病院に運ばれたっスよ」
伊介「そう」
鳰には悟られないよう心の中で安堵の息を吐く。
東兎角なら春紀にとどめを刺すような事はしないだろうが、春紀自身が無茶をするんじゃないかと思っていた。
生きているならそれでいい。
66: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/06(金) 22:05:36.01 ID:tYkpOMFX0
伊介は体育館へは向かわず、鳰に背を向けた。
鳰「どこの病院か聞かないんですか?」
伊介「聞いてどうすんのよ。お見舞いにでも行けって?バカじゃないの♥」
顔だけ鳰に振り返り、思い切り嫌味に笑ってみせる。
そんな事で鳰を不愉快にさせる事は出来ないだろうが、威嚇くらいはしておかないと気が済まない。
鳰「それもそうっスね。さぁ、次は誰かなー」
尖った歯を見せて笑う姿に嫌悪を覚えて、伊介は歩き出した。
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70: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 20:49:37.48 ID:BU4AW2Fc0
何もする事がなくて病室の窓からぼーっと外を眺めていると、コツコツと偉そうなヒールの音が聞こえた。
今まではヒールの音といえば、仕事の出来る大人の女というイメージだった。
しかし人によって足音は大きく違って、ヒールはヒールでも踵を擦るような疲れた音が混じったり、つま先から着地して濁った音を立てている事も多い。
こんな音が気になってしまうのは伊介のせいだった。
今聞こえる姿勢の良さそうな、堂々としたヒールの音は彼女を連想してしまう。
伊介「結構いい部屋じゃない♥」
春紀「うわ本人だ」
71: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 20:57:15.91 ID:BU4AW2Fc0
開きっぱなしの個室の扉の方から入ってきたのは伊介だった。
伊介「挨拶もなしになによその態度」
春紀「伊介様こそ挨拶してないじゃん」
高圧的な態度が懐かしくて呆れながらも嬉しさが顔に出てしまう。
暗殺に失敗してから一週間。
伊介の事を考えない日はなかった。
伊介は扉を閉めると、春紀のそばに寄ってきた。
72: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:03:21.10 ID:BU4AW2Fc0
伊介「あんた、伊介があげたマニキュア置いてったでしょ。信じらんない♥」
以前交換したマニキュアをバッグから取り出してサイドテーブルに置く。
春紀「それは……」
荷物の事は何も考えていなかった。
荷物に限らず、後の事はどうでもいいと思っていたから。
伊介「死ぬつもりだったなんて言い出したら殺すわよ」
春紀「……ごめん」
73: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:09:39.31 ID:BU4AW2Fc0
本気で怒っている伊介を見て肩をすくめる。
それと同時に無性に嬉しくなった。
長女の春紀にとって上から叱られるのは新鮮だった。
伊介「馬鹿正直ね。適当に否定しとけばいいのに」
大きくため息をついて、伊介は春紀のベッドに腰掛けた。
椅子もあるのにわざわざここに座るのが伊介らしくて笑みがこぼれる。
さっきから嬉しくなってばかりだった。
74: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:17:51.36 ID:BU4AW2Fc0
春紀「でもなんでここが分かったんだ?」
伊介「ミョウジョウ学園に繋がってる病院なんてちょっと調べればすぐ分かるわよ」
ミョウジョウ学園は政治家や大企業との繋がりも深い。
不審な事故、事件に関しての対応をする施設は各所にある。
春紀がいる病院もその一つだった。
春紀「部屋は?」
伊介「貧乏には分かんないでしょうけど、そういうのは大体お金で解決できるの」
75: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:22:14.46 ID:BU4AW2Fc0
春紀「あたしのためにお金を使ったのか?」
伊介「そうよ。感謝してよね♥」
挑発するように伊介の指が顎にかかる。
伊介にとっての金銭は、家族への愛情の表れだった。
期待してしまいそうになる気持ちを必死で抑え込む。
春紀「かっこ悪い姿見られて、なんで感謝しなきゃならんのよ」
伊介「ほんと。完膚無きまでにやられたわね」
76: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:28:55.66 ID:BU4AW2Fc0
伊介は骨折した腕や、あちこちに巻かれた包帯に視線を移した。
打ち身や捻挫もあるから実はあまり動けない。
春紀「全くだよ。完敗」
伊介「すっきりした顔しちゃってさー。なんなのよ、ウザっ♥」
苛ついたような態度だったが、一瞬目を細めたのが見えた。
それだけで胸がいっぱいになる。
春紀「吹っ切れたっていうか、もう頑張るしかねーんだなって思ったんだよ」
77: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:34:03.38 ID:BU4AW2Fc0
伊介「仕事続けるの?」
春紀「いや。暗殺はやめる」
もう限界だった。
相手が誰であったとしても、もはや屍を踏み台にして立ち続ける堅忍さは春紀にはなかった。
伊介「あんた、まともな仕事であの人数を養って行けると思ってんの?」
春紀「まぁ……その辺も頑張るしか……」
伊介「あんただけが犠牲になるっていうところは全く変わらないって事ね?」
78: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:40:19.68 ID:BU4AW2Fc0
春紀「はい……」
伊介の一言一言が胸に痛い。
気持ちの整理はついたものの、現実的な問題は何一つ解決していない。
母親の治療費の工面だってまだ出来ていないのだから状況はより切迫している。
伊介「じゃあ伊介が仕事を紹介してあげるわ♥」
伊介はベッドから立ち上がり、わざわざ胸を張って春紀をさらに高い位置から見下ろした。
春紀「あたしはもう暗殺は……」
79: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:48:15.45 ID:BU4AW2Fc0
どんなに追い詰められても暗殺はしたくなかった。
危険な仕事でも、体を使った仕事でもいいから人を殺すのだけは心が追い付けない。
しかし春紀の言葉を無視して伊介は続けた。
伊介「伊介ね?暗殺以上に好きじゃない仕事があるの♥ママからやれって言われるからしょうがなくやってきたんだけどどうにも性に合わなくてさぁ♥大体クライアントと喧嘩するのよねー」
春紀「誰とでも喧嘩しそうだから今更驚きもしないけど……」
いつも上からの目線で、口を開けば嫌味が出てくるのだから怒る相手だって少なくはないだろう。
伊介が悪いとは言わないが、少しくらい慎ましくあったっていいんじゃないかという思いもある。
80: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 21:54:22.96 ID:BU4AW2Fc0
伊介「向いてないのよ。護衛とか警護って」
春紀「あー……そりゃ向いてなさそうだね……」
思い出すように宙を見ながら腹立たしげに口を尖らせていた伊介が、ふと表情を変えて春紀を見た。
そしてにっこりと笑い、肩を掴んでくる。
伊介「だから、あんたがやってよ♥」
春紀「はい?」
伊介「あんたは向いてんでしょ。そういうの」
81: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:00:29.63 ID:BU4AW2Fc0
何となく話の流れからそうなんじゃないかとは思っていた。
護衛だからといって人を殺さなくて済むわけではないかもしれない。
それでも殺す事が目的ではないなら、十分に救いはあった。
そして今まで助けてくれる人がいなかった中で、本当に自分を想ってくれる人がいた事が、春紀にとっては何よりの救いだった。
春紀「ありがとな」
伊介「うっさいわね。伊介は伊介の嫌いな仕事を押し付けただけ」
春紀「それでも助かるよ」
82: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:06:45.39 ID:BU4AW2Fc0
少しは照れるかなと思っていたのに、相変わらず伊介は不機嫌な顔をして冷たい態度を取る。
もしかしたら怒って誤魔化しているだけかもしれないと思って、今の伊介の顔は大事に心の中に留めておく事にした。
春紀「それにさ、これからも一緒にいられるならそれが一番嬉しいよ」
伊介「なにそれ。バカじゃないの♥」
春紀「バカじゃねーよ。あたし、伊介様と一緒にいるの好きなんだ」
ずっと伊介が好きだった。
自由で、高慢で、我儘で、家族想いの伊介にずっと憧れていた。
83: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:14:03.73 ID:BU4AW2Fc0
この人のそばにいられるならこんなに幸せな事はない。
伊介「ふーん……。伊介は別にどうでもいいんだけど~」
伊介は視線を逸らして呆れたようにため息をついた。
いつもと変わらない態度に見えたが、手の動きに落ち着きがない。
頬を掻いたかと思ったら首元をさすったり、爪の様子を見ていたり。
春紀「照れてんの?」
意地の悪い笑みを浮かべると、伊介の表情が一気に崩れた。
84: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:17:23.43 ID:BU4AW2Fc0
伊介「っ——!照れてないっ」
牙をむくように威嚇してくるが少しも迫力がない。
春紀「顔赤いじゃん」
首まで赤くなる伊介が可愛くてさらに突っ込んでみると、彼女の目が途端に鋭くなった。
伊介「春紀!殺すわよ!」
キレた。
襟首を乱暴に掴んでくる伊介の剣幕に、春紀は思わず両手を挙げた。
85: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:24:25.56 ID:BU4AW2Fc0
春紀「びょ、病院で物騒なこと叫ばないで!?」
伊介「あんたが変なからかい方するからよ!!」
掴んだ時と同じ勢いで春紀を投げ出すと、伊介はまた不機嫌に口を尖らせた。
笑ったり怒ったり忙しい人だ。
その割にきっと感情の起伏は激しくない。
伊介「とりあえず今日は帰るから。それと、あんたの家にお金送っておいたから仕事で返しなさいよ♥」
春紀「えっ……えぇぇっぁぐっ!?」
86: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:31:59.24 ID:BU4AW2Fc0
手加減なしに頭を叩かれて軽く舌を噛む。
けが人に対しても容赦がない辺りはさすがだと思う。
伊介「病院で大声を出すな♥」
春紀「伊介様、ありが——」
伊介「ただの前貸しよ。実質はあんたの金なんだから礼なんかいらないわ。さっさと治して働け♥」
春紀の言葉を遮り、伊介は背を向けた。
そしてそのまま扉へと向かって歩き出した。
87: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:38:52.95 ID:BU4AW2Fc0
春紀「また来てくれる?」
伊介「辛気臭いところは嫌いなの♥」
即答する伊介の背中からは名残惜しさが見えた。
ちらりと春紀を見やるその視線を受け止め、春紀は満面の笑みを向ける。
きっと次に伊介は素直ではない言葉を紡ぐはずだ。
伊介「気が、向いたらね」
この想いは自惚れではないと確信している。
勢いで名前を呼んだ彼女の声を心の大事な部分にしまい込む。
次に会える日を楽しみに思う事が、今の春紀の幸せだった。
------------
88: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:47:32.26 ID:BU4AW2Fc0
春紀「だからって翌日に来るとは思わないじゃん」
伊介「うっさい。嫌なら帰るわよ♥」
笑いながら睨んでみるが今の春紀には通用しそうにもない。
春紀の緩みっぱなしの頬を見れば、伊介がここへ来た事をバカみたいに喜んでいる事は分かっている。
伊介「気が向いたのが今日だったのよ」
別に理由などない。
驚かせようと思って続けて来てみたのに、春紀が隠そうともせずに喜ぶものだから伊介の悪戯心は引っ込んでしまった。
89: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:54:42.43 ID:BU4AW2Fc0
あんな風に屈託無く笑われたら、こちらだって嬉しい気持ちにくらいはなる。
春紀「明日も気が向く?」
調子に乗り始めた。
しかし彼女は実のところはきっと期待なんてしていない。
していても半分。
春紀は自分自身の欲に関して、いつも一歩引いた所から見ている気がした。
自分のために生きる事を我慢している子。
90: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 22:59:40.08 ID:BU4AW2Fc0
伊介「どうかしら。あたしがそんなに暇に見える?」
わざと気を持たせた言い方をする。
諦められるのではなく、諦めさせるように仕向けるのは得意だった。
春紀「暇じゃないのに来てくれたならもっと嬉しいよ」
しかし捻くれた伊介の発言は春紀には通用しない。
春紀の犬みたいにストレートな愛情表現は嫌いではなかった。
素直に笑う姿を見ていると嫌味や悪態は野暮だと思う。
91: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 23:04:13.84 ID:BU4AW2Fc0
伊介「……考えとくわ」
結局心を動かされたのは伊介の方だった。
春紀に背を向け、ベッドに腰を掛ける。
こうして近付くだけで春紀の体温が伝わってくる気がした。
春紀「伊介様……」
真剣な声に少しだけどきりと胸が高鳴る。
伊介「なによ」
92: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 23:10:26.91 ID:BU4AW2Fc0
それを隠したくて春紀を見ないまま低めに返事をした。
春紀「あたしさ……」
シーツを撫でる音が聞こえる。
動作に落ち着きがない。
迷いの吐息が微かに耳に届いて、もどかしい気持ちになった。
伊介「さっさと言え♥」
耐えられずに催促をする。
すると春紀が軽く息を吸ったのが聞こえた。
93: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 23:17:30.08 ID:BU4AW2Fc0
伊介は振り返って穏やかに笑う春紀と目を合わせる。
春紀「なんでもない」
彼女はまた我慢をした。
それはいつもの誰かのための我慢ではない。
前を向いてその先を考えられるようになったのなら、伊介はそれで良かった。
伊介「そう」
春紀「うん……」
春紀が言いかけた言葉は分かっている。
94: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 23:23:14.17 ID:BU4AW2Fc0
そしてその返事も用意してある。
伊介「言えるようになったら言いなさいよ」
春紀「うん」
伊介はベッドにそっと手を置いた。
すぐ隣には春紀の手がある。
ほんの数センチ。
この距離はまだ埋まらない。
終わり
95: ◆P8QHpuxrAw 2015/02/09(月) 23:23:40.60 ID:BU4AW2Fc0
以上となります。
お付き合い頂きましてありがとうございました。
2号室は難しくて、好き勝手書いてしまったのでしっくりこない部分も大いにあると思います。
春紀さんも伊介様も大好きなんで、また何か書けたらいいなと思っています。
見てくださった方、本当にありがとうございました
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/09(月) 23:44:13.45 ID:cqId5ZFgO
乙
凄い良かったよ
凄い良かったよ
97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/10(火) 00:37:52.91 ID:bKx/HpSAO
乙
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/10(火) 01:43:01.43 ID:rOwR1EjWo
やっぱクオリティ高いな犬の散歩野郎
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/10(火) 04:14:13.34 ID:k6RBjlzzO
流石ッスね
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/11(水) 00:35:18.78 ID:oy+kSSEKo
乙ッス
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422965101/
Entry ⇒ 2015.11.10 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
晴「飲酒注意」
1: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 20:35:46.54 ID:iYE6ZXkn0
悪魔のリドルSSです。
兎晴です。エロあります。
二人が一緒に住んでいる設定で、年齢を20歳にしていますのでキャラ崩壊などが気になる方はご注意ください。
兎晴です。エロあります。
二人が一緒に住んでいる設定で、年齢を20歳にしていますのでキャラ崩壊などが気になる方はご注意ください。
2: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 20:40:25.36 ID:iYE6ZXkn0
携帯電話の着信音が鳴った。
伊介「電話?」
カウンター席の隣に座った伊介が、晴の手元をちらりと見た。
さらにその奥に座る春紀も伊介に身を寄せて晴へ視線を向ける。
黒組を卒業してからも晴は時々メンバーと会う事があった。
晴「ううん。メールだけ。お店の外にいるって」
差出人は東兎角だ。
3: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 20:55:19.76 ID:iYE6ZXkn0
仕事を済ませて帰るところだからと、いちいち前置きをしているのが兎角らしい。
普通に迎えに来たと正直になればいいのに。
「じゃあそろそろお開きね♥」
残り少なくなっていたカクテルを一気に飲み下し、伊介は席を立った。
それに合わせて春紀も席を立つ。
「晴ちゃん、大丈夫?飲み過ぎてない?」
春紀は椅子を降りる晴に手を差し出した。
4: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 21:02:49.60 ID:iYE6ZXkn0
晴「ありがとう、春紀さん」
その手を取って地に足を付けると視界がふわりと揺れた。
バランスを崩すほどではなくて、二度三度まばたきをすればすぐに違和感は消えた。
伊介「あんた、そんな事やってたら東に殺されるわよ」
春紀「そんなの気にするタイプかよ」
晴がしっかりと立ち上がったのを確認してから春紀は晴の手を離した。
その時ににっこりと人懐っこい笑顔を見せる彼女に心が和む。
5: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 21:07:49.12 ID:iYE6ZXkn0
暗殺業から足を洗った春紀からは幸せそうな雰囲気が出ていて、それは隣に立つ伊介の存在があるからだと晴は知っていた。
伊介「バカね。あーいう普段は無愛想なヤツが一番嫉妬深いんだから」
春紀「一番は伊介様じゃね?」
伊介「殺す♥」
二人のやり取りを横目に会計を済ませて外へと出る。
晴「兎角さん」
入口の脇に立つ兎角の姿を見て思わず笑みがこぼれた。
6: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 21:15:37.57 ID:iYE6ZXkn0
いつものように手を握ろうとして、後ろからの声に思わず動きを止める。
春紀「おう、東。久しぶり」
兎角「ああ」
春紀「相変わらずの無愛想だな!」
楽しそうに笑いながら春紀は兎角の肩をばしばしと叩いた。
兎角はそんな春紀に顔をしかめていたが、迷惑そうにするわけでもなく言葉を交わしている。
そういえば兎角は春紀を気に入っている節があったから内心は嬉しいのかもしれない。
7: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 21:28:02.03 ID:iYE6ZXkn0
二人の様子を眺めていると唐突に背中をぽんっと押された。
伊介「ほら、ちゃんと彼女連れて帰りなさいよ」
そのままの勢いで晴は兎角の胸にすっぽりと収まってしまう。
兎角「なんだ、彼女って」
伊介「それでしょ?」
からかうように笑って晴を指差すと、伊介は一歩兎角へ詰め寄った。
兎角「酒臭い」
8: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/19(月) 21:32:09.65 ID:iYE6ZXkn0
兎角が呟くと伊介の眉がぴくりと揺れた。
兎角は嫌悪したわけではなく率直な感想を言っただけなのだろう。
しかし伊介はそうは受け取らなかったようだ。
伊介「なによ、酒も飲めないガキのくせに♥」
兎角「年齢は問題ない」
伊介「そういう意味じゃなくて。お酒、飲んだことないんでしょ♥」
兎角が黙り込む。
13: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 20:38:16.77 ID:Eb8Sl00W0
食べ物に無頓着な兎角の事だから興味がないだけなのだろう。
春紀「ほら伊介様、いちいち絡まないの」
険悪な空気になる前に春紀が伊介の腕を引いた。
春紀「悪いね。酒癖良くなくて」
兎角「いや。いつも世話になっている」
兎角は晴の頭に手を乗せて、ぐしぐしと雑に撫でた。
今はもういがみ合う理由もなくて、兎角の対応は穏やかなものだった。
14: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 20:51:50.94 ID:Eb8Sl00W0
むしろ危害さえ加えなければ下手なボディガードよりよほど役に立つからと、積極的に晴を預けるほどだ。
幾つか言葉を交わして二人と別れ、家路につく。
兎角「犬飼のやつ、何か勘違いしてないか」
晴「してたね」
きっとあの二人は晴と兎角が恋愛関係にあると思っている。
兎角は出会った頃からそんなものに興味はなさそうだったから、晴もあまり意識をしてそれを進めようと思った事はなかった。
煌々と明かりの灯るコンビニの前を通り過ぎてから、晴はふと思い立って足を止めた。
兎角「晴?」
晴「ねぇ、買い物していっていいかな」
-------------
15: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 20:59:26.45 ID:Eb8Sl00W0
兎角は風呂上がりにリビングに戻った瞬間、ドアの前で立ち尽くし怪訝な顔をしていた。
その原因はテーブルに並べた缶や瓶のせいだ。
兎角「なんだこれは」
晴「お酒とおつまみだよ」
兎角「言い方が悪かった。なんのつもりだ」
さっき買ったばかりの物だが、今日飲むなんて思わなかったのだろう。
疲れた声を出した後に兎角が軽く咳払いをする。
16: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 21:06:17.16 ID:Eb8Sl00W0
晴「兎角さんと飲みたくて」
にっこりと笑って返すがやはり兎角は眉をひそめたままだ。
恐らく彼女は酒自体に興味もないし、今まで触れる機会もなかったのかもしれない。
兎角「酒なんて何が良いんだか」
そう言いながら晴の隣に腰掛け、酒を手に取る。
カクテルやサワーがどんな物なのかも兎角はきっと知らない。
無理に飲ませるつもりはなかったが突っぱねるような態度も見られない。
17: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 21:20:29.95 ID:Eb8Sl00W0
兎角「飲むのか」
じっと晴の目を見ながら彼女が何かを考えている事は分かった。
兎角「さっき飲んだばかりだろ」
晴「そんなには飲んでないし、もうほとんど抜けちゃったから大丈夫」
兎角は晴の頰に触れてその熱さを確かめた。
酔っていると思われたのだろう。
兎角「時々上機嫌で帰ってくる事があるよな。あれは酔ってるからなのか」
18: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 21:30:03.18 ID:Eb8Sl00W0
上機嫌と言われると語弊がありそうだが、少し饒舌になるくらいだ。
それから少しばかり甘えたような態度でスキンシップをしてしまうくらいだろうか。
兎角は考えるように数秒俯いて顔を上げた。
兎角「少しくらいなら」
その答えを聞いて、晴は自分でも驚くほどに胸が踊った。
-------------
19: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 21:43:00.09 ID:Eb8Sl00W0
兎角の飲み方は慎重だった。
少し口に入れてゆっくりと飲み下す。
表情が変わらないせいで、酒が美味しいのか不味いのかもうかがい知れない。
晴「……どう?」
晴が聞くと、兎角は視線だけを晴に向けた。
兎角「どうって……」
グラスに視線を戻して、兎角は小さな声で「よく分からない」と答えた。
20: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/20(火) 22:02:25.01 ID:Eb8Sl00W0
アルコールの苦味が気に入らなかったようで、兎角はもう一度酒を口に含んで眉をしかめた。
兎角の無愛想は知っているけれど、酒を飲んでも変わらないのかと思うと笑みがこぼれる。
兎角「どうした?」
晴「お酒飲んでも兎角さんって無愛想なんだなって」
冗談交じりに伝えると兎角が沈黙した。
いつもなら呆れたような顔をして「ほっとけ」などと返してくるはずなのに、今回はただ無言で手元の酒に視線を落としている。
晴「兎角さん?」
27: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/21(水) 20:29:53.34 ID:Z2HIVIjj0
傷付けただろうか。
もう付き合いも長くなって遠慮がなくなっているのは自覚していたけれど、配慮の足りない発言だったかもしれない。
そんな不安に駆られて兎角の顔を覗き込んで、晴は気が付いた。
晴「酔ってる?」
顔が赤い。
きっと兎角は酒に弱いタイプなのだ。
兎角の手を取ってみるとその熱が伝わってくる。
28: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/21(水) 20:30:30.68 ID:Z2HIVIjj0
兎角「なんだかふわふわする」
兎角の目は赤く充血してわずかに潤んで見えた。
心配になって身を寄せると、兎角は晴の腕に自分の腕を絡ませてきた。
いつもは晴からするくらいで、こんな風に触れてくる事なんて今までにはなかった。
しかし態度は相変わらず。
無愛想なまま酒を口に含んでは飲み下している。
無意識なのだろうか。
29: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/21(水) 20:40:15.94 ID:Z2HIVIjj0
今の雰囲気はどこか柔らかい。
珍しい空気に嬉しくなった晴は自分のグラスを取って口に運んだ。
テーブルに並んだ肴に手を伸ばし、二人で何でもない話を二言三言交わしてまた酒に口を付ける。
そんな事がなぜかたまらなく楽しくて、そして嬉しかった。
酒が回って顔が熱くなってきた頃、兎角の吐く息が短く切れている事に気が付いた。
晴「大丈夫?」
よく見れば顔だけでなく、首や腕の内側、手のひらまで、兎角に白い肌が真っ赤になっている。
30: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/21(水) 20:48:33.31 ID:Z2HIVIjj0
兎角「大丈夫だ」
言葉ははっきりしているが視線がぼうっとぼやけていてだいぶ酔いが回っているように見える。
飲ませ過ぎたかもしれない。
晴「少し横になる?気持ち悪くなってない?」
兎角「うん……平気」
手のひらで顔を擦り、いつもより高めの声色で兎角は返した。
そしてグラスを口に運ぼうとする手をそっと制止する。
31: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/21(水) 20:55:23.31 ID:Z2HIVIjj0
不思議そうにこちらを見る視線がどことなく幼い。
晴「もうやめておこう?」
これ以上の飲酒は体に障る。
兎角は返事はしなかったがグラスをテーブルに置いた。
眠そうに目をこする兎角の体をソファに横たわらせるとすぐに彼女は目を閉じた。
このまま眠ってしまいそうだったが今は仕方がない。
ソファから落ちないように兎角の体を支えた時、彼女はわずかに声を漏らして身をよじった。
32: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/21(水) 21:14:08.78 ID:Z2HIVIjj0
思わず肩や首に視線を向ける。
とくん、と胸がざわついた。
自分も酔っているのかもしれない。
苦しくないように兎角のシャツのボタンを緩め、首を撫でる。
兎角「ん……」
鼻にかかった声が耳の奥に響いた。
また胸がざわついた。
今度はもっと深い部分で。
33: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/22(木) 23:30:46.16 ID:SNZfrpaX0
晴「どうしよ……」
心が落ち着かない。
口の中が乾く。
少しくらいなら。
シャツの裾からそっと手を差し込んで、鍛えられた腹筋に触れる。
硬い。
へそのあたりを撫でると兎角の体がピクリと反応した。
34: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/22(木) 23:33:30.38 ID:SNZfrpaX0
声の代わりに息を吐くのが聞こえた。
くすぐったいだけかもしれない。
兎角の顔を見れば、潤んだ瞳と視線が交わった。
そのまま胸の方へと手を滑らせて肋骨を指でなぞるが兎角は抵抗しない。
もう少し。
欲が出て晴はシャツのボタンをまた一つ外した。
兎角「晴?」
35: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/22(木) 23:38:00.25 ID:SNZfrpaX0
不安げな声。
晴の手に添えられた兎角の手はひどく弱々しい。
いつもの凜とした兎角はここにはいない。
晴「大丈夫」
そう声色を高くして告げると兎角の手は降ろされた。
体が熱い。
息が短くなって、興奮が止まらない。
36: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/22(木) 23:45:40.30 ID:SNZfrpaX0
恐る恐る兎角の鎖骨を撫でて反応を見る。
くすぐったそうに息を吐く仕草が見えた。
嫌がってはいない。
もう一つボタンを外すと、もうそこは胸が覗く部分だった。
下着はつけていない。
見たい。
今まで入浴時に兎角の裸なんていつも見ていたのだからなんてことはないはずだった。
37: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/22(木) 23:56:34.19 ID:SNZfrpaX0
しかし今は状況が違い過ぎる。
熱を持った兎角の体が見たいのだ。
兎角「晴っ……!」
シャツを開こうとすると雰囲気に気付いた兎角が声を上げた。
晴「なにもしないから。少しだけ見せて」
しかし晴はそう言って強引に続ける。
見るだけ。
38: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 00:08:47.96 ID:f6/Y2TI00
ゆっくりとシャツを持ち上げて、少しずつ体が開けていく。
白い肌が酔いに赤く染まって、胸が大きく上下している。
汗ばんで湿った肌は余計に晴の脳を痺れさせた。
晴「かわいい……」
やっと覗いた兎角の胸は小ぶりで、引き締まった体にふさわしい綺麗な形をしていた。
何度も見た事はあったが、こんなに色気を感じたのは初めてだった。
直前に言った言葉なんてもう忘れた。
39: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 00:15:13.75 ID:f6/Y2TI00
こんな物を目の前にして見ているだけなんてできるはずもない。
晴はその胸に手を当てて何度か揉んだ後に形のいいピンク色の先を指先でなぞった。
兎角「んんっ!」
びくんっと大きく体が跳ねた。
晴「感じちゃったの?」
無意識に口の端が上がる。
声を上げたのが恥ずかしかったのか兎角は口元に手を当ててこちらを見た。
40: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 00:27:48.88 ID:f6/Y2TI00
兎角「なにもしないって……」
顔が赤いのはきっと酒のせいだけではなさそうだ。
自分勝手なのは分かっていたがもう理性でとめられそうにはなかった。
シャツのボタンを全て外して肌を晒す。
息が苦しい。
今、自分は兎角を女として見ている。
赤く染まった肌にどうしようもなく欲情していて、これをとめる事は何者にもできないと、そう思った。
41: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 00:39:06.85 ID:f6/Y2TI00
兎角の胸をぐっと掴んでその柔らかさを確かめる。
怯えたように震える兎角に思わず息を呑む。
愛しいと思った。
胸が高鳴る。
次の瞬間には、晴は兎角の胸の先に吸い付いていた。
兎角「ぅくっ!」
強い刺激に再び兎角の体が跳ねた。
42: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 22:42:36.41 ID:f6/Y2TI00
抵抗する様子はない。
舌先でそこを弄り、その度に兎角が声を堪えて呻くのを楽しんでいた。
もう片方の乳房にも手を当てて先を押し込む。
弾力をもつそれをくりくりと指先で撫でると、兎角の体は素直に反応した。
晴「気持ちいいの?」
兎角は答えない。
何が起こっているのか分かっていないのかもしれない。
43: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 22:46:26.51 ID:f6/Y2TI00
それでも晴は先へ進みたかった。
兎角「んっ!?」
腰から手を滑らせて兎角のズボンに手を差し込み、下着に触れる。
何をされるのか気付いた兎角が体をこわばらせた。
晴「大丈夫だよ」
首筋に軽く口付けて舌を当てると少しだけ体が緩んだ。
脚を開かせてその付け根をそっと指でなぞる。
44: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 22:51:27.19 ID:f6/Y2TI00
他人の大事な部分に触れるのは初めてで、どうしていいのかなんて晴にも分からない。
ただ興奮と興味に身を任せるだけで、頭は真っ白だった。
体が熱い。
兎角の女性部分に湿り気を感じてさらに思考が進んでいく。
強引にズボンを脱がせて体を起こすと、晴は下着の上から舌を当てた。
兎角「や……め——」
伸ばしてくるその手を掴んで指を絡める。
45: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 22:56:23.58 ID:f6/Y2TI00
晴「ごめんね。これ以上はしないから」
直接は触れず、下着を通して指で陰核の辺りを撫でながら割れ目の辺りに舌を這わせる。
石鹸の香りに混じる女の匂いに夢中になっていく。
兎角「ぅっ……んっく……あっ」
肌を晒して、顔を赤く染める兎角の体を見ながら頭がだんだんとぼやけて行くのが分かった。
もっと。
兎角が欲しい。
46: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 23:05:35.75 ID:f6/Y2TI00
そう思った次の瞬間には兎角の下半身は全てを晒していた。
自分を少しも抑えられない。
兎角「待っ――」
兎角が制止する間も無く、晴はそこへと口付けた。
初めて見る他人の中心。
真っ赤に充血したそこは生々しく思えたが、兎角の物ならば抵抗はなかった。
指で穴を広げて舌を差し込む。
47: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/23(金) 23:21:21.84 ID:f6/Y2TI00
そう思った次の瞬間には兎角の下半身は全てを晒していた。
自分を少しも抑えられない。
兎角「待っ――」
兎角が制止する間も無く、晴はそこへと口付けた。
初めて見る他人の中心。
真っ赤に充血したそこは生々しく思えたが、兎角の物ならば抵抗はなかった。
指で穴を広げて舌を差し込む。
49: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/26(月) 19:10:10.49 ID:5G+Bq4VX0
愛液の生臭さを鼻の奥に感じながらぐりぐりとその中を蹂躙していく。
兎角「あっあっ!ぅんっ!は……るっ!」
何も考えられない。
兎角を抱きたい。
彼女の体が欲しい。
晴「兎角さんかわいいよ……」
陰部を解放すると、兎角は安心したように息を吐いた。
50: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/26(月) 19:30:19.15 ID:5G+Bq4VX0
しかしすぐさまそこに指を当てると兎角の体がびくりと震えた。
兎角「晴……?」
愛しくて気が狂いそうだ。
好きで好きでたまらない。
全てに手を触れたい。
晴「ごめんね」
――兎角さんの処女は晴が貰うから
51: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/26(月) 19:33:18.19 ID:5G+Bq4VX0
兎角「っあぁ!」
兎角が悲鳴をあげる。
たまらない快感だった。
身をよじって逃げようとする兎角を上から押さえつけ、さらに指を奥へと進ませようとした時、
兎角「晴っ!痛……いっ!!」
兎角の訴えに思考が戻った。
やり過ぎた事に気付いて兎角の頬を撫で、気持ちを落ち着かせるため自分のこわばった肺にゆっくりと空気を送り込む。
52: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/26(月) 19:47:13.06 ID:5G+Bq4VX0
晴「兎角さん、力抜いて。ゆっくりするから」
兎角「ぅ……」
兎角の中はとても狭くて、指が強く締め付けられている事に気が付いた。
緊張をほぐすために兎角の体に触れ、下腹部から胸までそっと撫で上げる。
兎角「は……ぁ、ぅ」
指でなぞるだけで兎角の体はぴくりと震えた。
中に入った指を軽く動かすと兎角は眉を歪めて痛みを露わにした。
53: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/26(月) 19:49:21.88 ID:5G+Bq4VX0
もうこれ以上は無理かもしれない。
そう考えて体を撫でる手を引こうとした時に、兎角がそれを掴んだ。
晴「兎角さん?」
兎角「もっと触って……」
兎角は晴の手を自分の胸に当て、恥ずかしそうに目を逸らした。
晴「とっ、兎角さん、酔ってるの……?」
口の中に唾液が溜まっている気がして晴はこくりと喉を鳴らした。
54: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 19:40:55.95 ID:guo4fEyM0
兎角「分からない……」
全身がアルコールで赤く染まっている状態で酔っていないなんて事はないだろう。
それでも兎角が求めてくれている事が嬉しくて、晴は行為を続けた。
体に刺激を与えると中が緩んで動きやすくなったが痛みはまだ抜けないようだった。
出来るだけ指を動かさないようにして中の状態を確かめる。
一応は濡れているしさっきよりは穴が開いて圧迫感も落ち着いている。
兎角「ぅくっ……」
55: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 19:50:09.01 ID:guo4fEyM0
しかし動かすとやはり痛いらしい。
指には兎角から流れ出た愛液が絡んでいる。
兎角の体も心配だったがそれよりも興味と性欲が勝る。
ゆっくりと指を前後に動かすと兎角の手に力が入った。
晴「兎角さん、好きだよ。だからごめんね。止められないの……」
息が乱れる。
膣内の温かさに溶けてしまいそうだ。
56: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 19:55:16.71 ID:guo4fEyM0
自分の性器には触れてもいないのになぜかとても気持ち良かった。
きっとどうしようもないくらいに濡れているだろう。
兎角「あぅっ、んっ!」
兎角の声をもっと聞きたい。
アルコールの混じった吐息が晴に届いて、それだけで酔いが増していきそうだった。
兎角の体に触れていたくて強く抱きしめ、首や胸を撫でながら乳首に吸い付いた。
兎角「んんっ!」
57: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 20:07:07.16 ID:guo4fEyM0
反応がいい。
舌で転がすとさらに声が上がった。
もう片方の乳房に目を向けると、兎角は自分で先をいじっていた。
兎角「は、る……こっちも、んっ。触って……」
兎角の指先で形を変えるそこに引き寄せられるように指を当てる。
兎角が触っていた時の動きを真似て、指で先を曲げたり爪の先で擦った。
兎角「あっ、あっ、ぅんっ、ふあ」
58: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 20:12:03.97 ID:guo4fEyM0
兎角の声に快感が混じり始めると、中の締め付けが緩くなった。
ひくひくと肉壁が痙攣し始める。
晴「気持ち、いい?」
顔を上げて彼女を見ようとしたがすぐに首に腕を回されて抱き締められたせいで動けない。
照れているのだ。
目の前にある胸に舌を這わせると兎角の体がぴくんと跳ねて力が緩んだ。
体を起こして上から兎角の体を見下ろす。
59: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 20:20:26.93 ID:guo4fEyM0
上気した体に惹きつけられて目が離せない。
体の美しさももちろん、色付いた目や興奮に上下する胸の動きも、吐く吐息さえも全てに心が反応する。
兎角「あ!ぅうっ!」
気付けば兎角に入れた指が動き出していた。
中を傷付けないように配慮はしているがもう彼女の反応には構っていられる余裕はなかった。
奥からさらさらとした体液が溢れ出てくる。
60: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 20:50:57.05 ID:guo4fEyM0
それが指に絡んで卑猥な水音を立てた。
指の動きに合わせて兎角の体が震えている。
晴「兎角さん……兎角っ」
胸が張り裂けそうで、息苦しい。
今の兎角は女の子だった。
目を潤ませて、半開きの口からは喘ぎ声が漏れ続けている。
乱れた姿にどうしようもなく心が喚く。
61: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 21:02:32.45 ID:guo4fEyM0
こんなにも兎角を好きな事に気付いて涙が溢れそうだ。
もっと強く求めようと手元を見て息を呑んだ。
晴「血、出てる……」
うっすらと血が混じり体液がピンク色に染まっている。
膜の一部が破れたようだ。
初めての証に心が沸き立ったが、同時に彼女の体が心配になった。
晴「兎角さん、大丈夫?」
62: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 21:11:38.94 ID:guo4fEyM0
汗ばんだ体と乱れた息、紅潮した顔を見て限界を悟った。
指を抜いて兎角を抱き締める。
兎角の体温で気持ちが溶けていきそうだ。
それに合わせるように彼女も背中に腕を回してきた。
力ない抱擁に愛しさが溢れる。
63: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 21:23:15.64 ID:guo4fEyM0
離れたくなくて、数分ほどそのままでいると兎角から寝息が立ち始めた。
酒と疲れのせいだろう。
このままの姿でいると体が冷えてしまうかもしれない。
そう考えながらも頭の中にもやがかかったようにぼんやりと意識が薄れ始めた。
もう少しこのまま兎角のぬくもりを手放したくない。
ちょっとだけだと思っていたのにいつの間にか晴の意識は途切れていた。
-------------
64: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/27(火) 21:45:45.08 ID:guo4fEyM0
離れたくなくて、数分ほどそのままでいると兎角から寝息が立ち始めた。
酒と疲れのせいだろう。
このままの姿でいると体が冷えてしまうかもしれない。
そう考えながらも頭の中にもやがかかったようにぼんやりと意識が薄れ始めた。
もう少しこのまま兎角のぬくもりを手放したくない。
ちょっとだけだと思っていたのにいつの間にか晴の意識は途切れていた。
-------------
66: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/31(土) 23:42:33.24 ID:hmWviziW0
いつもより寝心地が悪い。
寝返りがうてなくて背中がびりびりと痛んだ。
うっすらと目を開けると部屋が昼間のように明るくて、眩しさにもう一度目を閉じる。
うつ伏せになった体の下に温かいものを感じて少しずつ覚醒していく。
――確か、昨夜は……いや、今は何時?
ぱっと目を見開く。
目前には眠る兎角の顔。
67: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/31(土) 23:45:31.96 ID:hmWviziW0
思わず声を上げそうになってすぐに口を噤んだ。
晴「やっちゃいました……」
小さく呟いて体を起こして自己嫌悪に陥る。
兎角をこんな姿にしたのは紛れもなく自分だ。
彼女の晒された肌に恥ずかしくなって思わず目を逸らす。
まだ兎角が起きる様子はない。
服を拾い上げて兎角を起こさないようにそっと着せていく。
68: ◆P8QHpuxrAw 2015/10/31(土) 23:58:28.39 ID:hmWviziW0
晴「起きない、よね……」
心臓が破裂しそうなくらいにどくどくと脈打つ。
兎角が目を覚ました時になんて言えばいいだろう。
酔った勢いで酷いことをしてしまった。
謝る以外になにをすればいいのか。
あわよくば兎角の記憶から消えてしまっていればいいのにと考えて頭を振る。
そんな事を願うのは最低だ。
70: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 00:11:50.74 ID:2XgrhxEk0
シャツのボタンに手を掛けながら、赤く滲んだ花を見つけた。
慣れない口付けで残した跡。
指先でそれをなぞる。
嬉しかった。
自分の痕跡が兎角に残っている。
ひとつずつボタンを掛け合わせながらその跡を隠していく。
乱れた服を整えると、まるで何事もなかったかのように思えた。
71: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 00:28:59.42 ID:2XgrhxEk0
しかし心はまだ落ち着かない。
罪悪感で胸が潰れそうだ。
そこから少し逃げたくて晴は立ち上がった。
とりあえずは兎角の体に掛けるものを用意したい。
兎角に背を向けた瞬間、服の裾を引かれてどくんっと鼓動が大きくなった。
反射的に振り返ると兎角と視線が交わった。
――起きてる?なんで……
72: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 00:35:29.18 ID:2XgrhxEk0
今まで考えた言い訳や想定が一気に真っ白になる。
兎角「どこに行くんだ……」
寝起きの声で放たれた言葉はまるで子どものようだった。
彼女の澄んだ瞳を見ていると、言い訳なんかより心配の方が先立ってしまう。
晴「体、大丈夫?」
兎角「ああ。もう酒は残ってないと思う……」
半身を起こして兎角は深呼吸をした。
73: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 00:44:40.47 ID:2XgrhxEk0
晴「兎角さん、お酒に弱いんだね」
晴が気になったのは酒の事ではなかったが、そう言われてはこうやって笑って返すしかない。
後ろめたさが胸の奥に渦巻いて声が裏返りそうだった。
兎角「そうかもな」
頭をくしゃっと掻いて兎角はため息をついた。
そのまま顔を隠すように俯く。
どう声を掛けていいか分からなくて、晴も俯いてしまう。
74: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 01:00:13.90 ID:2XgrhxEk0
ほんの数秒しか経っていないのにひどく気まずい。
兎角はごそごそと膝を抱えて頭を埋めた。
兎角「忘れて……」
消え入りそうな声で呟いた後、耳が赤く染まったのが見えた。
晴は胸の奥で蕾が開くみたいに真っ白い光が溢れ出すのを感じた。
晴「好きですっ」
次の瞬間には思わず叫んでいた。
75: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 01:05:09.16 ID:2XgrhxEk0
その声に驚いた兎角が顔を上げ、目を丸くして晴を見た。
膝をついて兎角に視線を合わせる。
晴「ずっと好きでした」
顔が熱い。
心臓がうるさくて、さらには耳鳴りがする。
たった一言だけなのに頭に中がそれでいっぱいになって、ごちゃごちゃと幾何学模様が刻まれる。
79: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 22:26:35.31 ID:2XgrhxEk0
物事を考えるスペースなんて残っていない。
もしかしたら、今何を言われても聞こえないんじゃないかとすら思えた。
それなのに。
「よく、分からない」
澄んだ声が突き抜ける。
顔を真っ赤に染めて、視点は定まらなくて、きっと無意識に手を重ねている。
80: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 22:30:11.98 ID:2XgrhxEk0
それはもう好きだと言っているのと同じだ。
晴「じゃあ教えてあげるね?」
兎角の手を握り返し、顔を上げた彼女の唇を奪う。
軽く重ねてすぐに離れると動揺する兎角の顔がはっきりと見えた。
晴「晴の事、好き?」
-------------
81: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 22:41:35.47 ID:2XgrhxEk0
兎角「珍しい面子だな」
半個室の扉を開いて顔を覗かせたのは兎角だ。
晴と向かい合うのは伊介。
その隣にはしえながいる。
晴が腰を浮かせて奥へと移動すると、兎角は空いたスペースにごく自然に腰かけた。
晴「何か飲む?」
兎角「お茶で良い」
82: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 22:51:38.52 ID:2XgrhxEk0
メニューを差し出す晴を片手で制止すると伊介があからさまに不満そうな顔を見せた。
伊介「酒でも入れて少しくらい無愛想直したら?」
兎角「うるさい」
半眼で睨む兎角を見ながら酔った状態の彼女を思い出す。
今と大差ない事を思い出して苦笑いをするが兎角は気付かない。
ただし、少し積極的になるところも知っている。
しえな「一ノ瀬。酒回ってる?」
83: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 23:00:19.58 ID:2XgrhxEk0
晴「あ、うんっ、ちょっと――」
しえなに言われて顔が赤くなっている事に気が付き、それを隠すために俯くと兎角が覗きこんできた。
兎角「大丈夫か?お前、そんなに酒に弱くはないだろう」
目の前に迫る澄んだ瞳と、頬に触れた冷たい手。
そんな事をしてくるからまた顔が熱くなるのだと思いながら彼女の手をそっと押しのける。
誰にも気付かれないようにわずかに手を握り返してくるところも胸が高鳴る原因だ。
伊介「仕方ないからあんた飲みなさいよ」
84: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 23:04:51.72 ID:2XgrhxEk0
つまらなそうにじろりと兎角を睨んだ後、伊介は標的をしえなに変えた。
しえな「ボクはあんまり飲まないって最初に言っただろ」
伊介「いいから飲め♥」
酒の入ったグラスを口元に押し付けてしえなを羽交い絞めにする。
何とか抵抗しようとするが見るからに非力そうなしえなが格闘タイプの伊介に敵うはずもなく、結局無理矢理酒を飲まされていた。
兎角「あんまり騒ぐな」
伊介「あんたが飲まないからよ」
85: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 23:09:49.38 ID:2XgrhxEk0
あまり関わりたくないと思ったのか、兎角はため息をついて椅子に背を預けた。
晴「飲まないの?」
自分のグラスをちらりと兎角に寄せる。
すると彼女は困ったように眉を下げて見せた。
兎角「晴。お前までそんな事を言うのか」
この反応が見たくてわざとそう言ってみたのだが、本当に予想通りで口元が緩んでしまう。
晴「帰ってからだったら?」
86: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 23:12:34.95 ID:2XgrhxEk0
肩をくっつけて声を潜めると、兎角は正面に座る二人をちらりと見た。
小競り合いに集中した伊介としえなにはきっと聞こえていない。
兎角「構わないけど」
落ち着いたトーンの声。
冷静そうに目を伏せて、相変わらずの無表情だったが今の彼女は何かを隠そうとしている。
テーブルの下でずっと握られていた手は急に熱くなって、わずかに力が込められていた。
その仕草は、飲むだけじゃ終わらない、そう予感させた。
終わり
87: ◆P8QHpuxrAw 2015/11/01(日) 23:13:21.59 ID:2XgrhxEk0
終わりました。
そんなに長くもないのにだいぶかかってしまってすみません。
お付き合い頂きまして本当にありがとうございました。
次の話も進めていますので、また気が向いたら見てやってください。
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/02(月) 00:20:03.79 ID:J8FOdUvWO
やだすごくえっちな終わり方
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/02(月) 02:18:54.84 ID:dHWdYYdoO
えっちいおつ
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/11/02(月) 07:27:40.25 ID:rS2u4sEs0
よきかなよきかな
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445254546/
Entry ⇒ 2015.11.07 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
晴「あかくさん!」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:50:59.15 ID:mHTgyamMo
1あかくさん
晴「とーかくさんっ!」犇っ!
兎角「おっ、おい!抱き付くな!」
晴「だってー、兎角さんが守るって言ってくれて、晴嬉しかったんだもん!」
兎角「だからってこんな人前で……」
伊介「あらあら、朝っぱらからお熱いのねぇ」ニヤニヤ
兎角「ちっ、違…!」
鳰「おんやぁー?兎角さん、赤くなってるっスかぁ?」ニヤニヤ
兎角「あ、赤くなんかなって…!」
晴「兎角さんっ、兎角さん!」犇っ、犇!
伊介「ニヤニヤ」ニヤニヤ
鳰「ニヤニヤ」ニヤニヤ
兎角「ああああ…!」
晴「とーかくさんっ!」犇っ!
兎角「おっ、おい!抱き付くな!」
晴「だってー、兎角さんが守るって言ってくれて、晴嬉しかったんだもん!」
兎角「だからってこんな人前で……」
伊介「あらあら、朝っぱらからお熱いのねぇ」ニヤニヤ
兎角「ちっ、違…!」
鳰「おんやぁー?兎角さん、赤くなってるっスかぁ?」ニヤニヤ
兎角「あ、赤くなんかなって…!」
晴「兎角さんっ、兎角さん!」犇っ、犇!
伊介「ニヤニヤ」ニヤニヤ
鳰「ニヤニヤ」ニヤニヤ
兎角「ああああ…!」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:52:00.65 ID:mHTgyamMo
2いかくさん
涼「お二人さん、ご飯ご一緒してもいいかの?」
晴「首藤さん!もちろんで……
兎角「ダメだ。気持ち悪いからあっち行け」
晴「もー兎角さん、どうして威嚇するの」
兎角「だってイカ臭いんだよ!」
晴「それはまあ……首藤さん、それ、何持ってるんです…?」
涼「イカの塩辛じゃ。首藤だけに」
涼「好物なんじゃが……香子ちゃんに臭いからあっち行けって言われてのう」
兎角「だからってなんでこっちに来るんだ……」
涼「一ノ瀬なら大丈夫と言ってくれると思って」
晴「はい!大丈夫です!」
兎角「ああもう……」
涼「お二人さん、ご飯ご一緒してもいいかの?」
晴「首藤さん!もちろんで……
兎角「ダメだ。気持ち悪いからあっち行け」
晴「もー兎角さん、どうして威嚇するの」
兎角「だってイカ臭いんだよ!」
晴「それはまあ……首藤さん、それ、何持ってるんです…?」
涼「イカの塩辛じゃ。首藤だけに」
涼「好物なんじゃが……香子ちゃんに臭いからあっち行けって言われてのう」
兎角「だからってなんでこっちに来るんだ……」
涼「一ノ瀬なら大丈夫と言ってくれると思って」
晴「はい!大丈夫です!」
兎角「ああもう……」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:53:06.02 ID:mHTgyamMo
3うかくさん
溝呂木「定期テスト、一人を除いて全員合格点だったんだが…」
溝呂木「犬飼……どうして名前しか書いてないんだ……」
伊介「だってぇ、伊介勉強とか興味ないしぃ」
溝呂木「……犬飼、合格点取れるまで放課後補習な」
伊介「イヤよぉ、誰が補習なんか」
溝呂木「犬飼、合格点取れるまで放課後補習な」
伊介「イヤだって言ってるでしょ…」
溝呂木「犬飼、合格点取れるまで放課後補習な」
伊介「だからイヤだって……」
溝呂木「補習」
伊介「わ……分かったわよぅ……」
晴「伊介さんが折れた……!?」
鳰「溝呂木センセ、教育熱心っスからねえ」
溝呂木「定期テスト、一人を除いて全員合格点だったんだが…」
溝呂木「犬飼……どうして名前しか書いてないんだ……」
伊介「だってぇ、伊介勉強とか興味ないしぃ」
溝呂木「……犬飼、合格点取れるまで放課後補習な」
伊介「イヤよぉ、誰が補習なんか」
溝呂木「犬飼、合格点取れるまで放課後補習な」
伊介「イヤだって言ってるでしょ…」
溝呂木「犬飼、合格点取れるまで放課後補習な」
伊介「だからイヤだって……」
溝呂木「補習」
伊介「わ……分かったわよぅ……」
晴「伊介さんが折れた……!?」
鳰「溝呂木センセ、教育熱心っスからねえ」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:54:05.30 ID:mHTgyamMo
4えかくさん
しえな「武智は絵描くのもうまいな」
乙哉「あはは、しえなちゃんに褒められちゃった!」
しえな「切り紙細工や生け花もうまいし」
しえな「身体能力も黒組トップクラス」
しえな「お前ならもっと社会の役に立てるだろうに」
乙哉「えー?そんなの興味ないなあ」
乙哉「でも、あえて趣味との両立を図るとしたら……」
乙哉「暗殺者を狙う正義の暗殺者とか…?」
しえな「こっちを見ながら言うな」
乙哉「はぁー…はぁー…」
しえな「息を荒げるな」
しえな「武智は絵描くのもうまいな」
乙哉「あはは、しえなちゃんに褒められちゃった!」
しえな「切り紙細工や生け花もうまいし」
しえな「身体能力も黒組トップクラス」
しえな「お前ならもっと社会の役に立てるだろうに」
乙哉「えー?そんなの興味ないなあ」
乙哉「でも、あえて趣味との両立を図るとしたら……」
乙哉「暗殺者を狙う正義の暗殺者とか…?」
しえな「こっちを見ながら言うな」
乙哉「はぁー…はぁー…」
しえな「息を荒げるな」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:54:54.11 ID:mHTgyamMo
5おかくさん
伊介「岡倉天心にフェノロサ…?ああもう、ワケわかんない!」
春紀「珍しいな伊介さま、勉強してるのか」
伊介「だって溝呂木のヤツ…!どこで知ったかママに連絡とって告げ口して」
伊介「合格点とるまで家族と電話禁止にしやがったのよ!?」
春紀「ああ…家族と電話できないのは辛いな…」
春紀(多分走りがおもしろがって教えたんだろうなあ)
伊介「うう…今さら勉強なんて……」
春紀「よし、任せろ伊介さま!あたしが勉強見てやるよ!」
春紀「ええと岡倉天心…?なんだそりゃ?」
伊介「そういやアンタ……この前のテスト、下から3番目じゃなかったっけ…?」
春紀「………」
伊介「………」
春紀「だ…大丈夫だ伊介さま!あたしがついてる!」
伊介「ホントに大丈夫…?」
伊介「岡倉天心にフェノロサ…?ああもう、ワケわかんない!」
春紀「珍しいな伊介さま、勉強してるのか」
伊介「だって溝呂木のヤツ…!どこで知ったかママに連絡とって告げ口して」
伊介「合格点とるまで家族と電話禁止にしやがったのよ!?」
春紀「ああ…家族と電話できないのは辛いな…」
春紀(多分走りがおもしろがって教えたんだろうなあ)
伊介「うう…今さら勉強なんて……」
春紀「よし、任せろ伊介さま!あたしが勉強見てやるよ!」
春紀「ええと岡倉天心…?なんだそりゃ?」
伊介「そういやアンタ……この前のテスト、下から3番目じゃなかったっけ…?」
春紀「………」
伊介「………」
春紀「だ…大丈夫だ伊介さま!あたしがついてる!」
伊介「ホントに大丈夫…?」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:55:37.59 ID:mHTgyamMo
6かかくさん
香子「ん…?パーツを切らしたか」
香子「仕方ない、新しく注文しよう」
涼「香子ちゃんや、そのパーツならこっちの店で買った方が低価格じゃぞ」
香子「本当だ。首藤、詳しいな」
涼「うむ…思えばあの日以来、情報を求めて駆け回って来たからのう」
涼「いわばおばあちゃんの知恵袋じゃな」
香子「何故おばあちゃん…?」
涼「IT化して後はその情報網も飛躍的に発達したからのう」
涼「まさにコンピューターおばあちゃんじゃ!」
香子「そのおばあちゃん推しは何だ…?」
香子「ん…?パーツを切らしたか」
香子「仕方ない、新しく注文しよう」
涼「香子ちゃんや、そのパーツならこっちの店で買った方が低価格じゃぞ」
香子「本当だ。首藤、詳しいな」
涼「うむ…思えばあの日以来、情報を求めて駆け回って来たからのう」
涼「いわばおばあちゃんの知恵袋じゃな」
香子「何故おばあちゃん…?」
涼「IT化して後はその情報網も飛躍的に発達したからのう」
涼「まさにコンピューターおばあちゃんじゃ!」
香子「そのおばあちゃん推しは何だ…?」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:56:52.82 ID:mHTgyamMo
7きかくさん
純恋子「お茶会を企画しましたわ!」
純恋子「みなさん、ふるってご参加ください!」
晴「わあ、お茶会だって!楽しみだね!」
兎角「別に興味ない」
純恋子「あの……番場さんも、これなら参加してくださる…?」
真昼「ごめんなさいムリです」
純恋子「中止!みなさん、お茶会は中止ですわ!」
晴「えー、残念だね」
兎角「何がしたかったんだ」
純恋子「お茶会を企画しましたわ!」
純恋子「みなさん、ふるってご参加ください!」
晴「わあ、お茶会だって!楽しみだね!」
兎角「別に興味ない」
純恋子「あの……番場さんも、これなら参加してくださる…?」
真昼「ごめんなさいムリです」
純恋子「中止!みなさん、お茶会は中止ですわ!」
晴「えー、残念だね」
兎角「何がしたかったんだ」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 00:58:59.40 ID:mHTgyamMo
8くかくさん
柩「あれ…?この区画、見たことない…?」
柩「どうしよう……また迷子になっちゃった……」
柩「グスッ…千足さん……」
千足「桐ケ谷!大丈夫か!?」
柩「千足さん!?」
柩「ああ…!ぼくのために!?ぼくを探して!?ぼくのところへ来てくれたんですね!?」
千足「ああ、一人で出て行ったから心配になってな」
柩「ああ…!千足さん…!」
千足「さあ寮に戻るぞ、迷わないように手を繋いで行こう」
柩「はい…!この手は何があっても絶対に離しません…!」
鳰(桐ケ谷の迷子ごっこ……何度もやられてんのに、まだ気付かないとは……)
鳰(生田目さん、なんとも純で鈍なお人っスねえ)
柩「うふふ……千足さん大好き……」
柩「あれ…?この区画、見たことない…?」
柩「どうしよう……また迷子になっちゃった……」
柩「グスッ…千足さん……」
千足「桐ケ谷!大丈夫か!?」
柩「千足さん!?」
柩「ああ…!ぼくのために!?ぼくを探して!?ぼくのところへ来てくれたんですね!?」
千足「ああ、一人で出て行ったから心配になってな」
柩「ああ…!千足さん…!」
千足「さあ寮に戻るぞ、迷わないように手を繋いで行こう」
柩「はい…!この手は何があっても絶対に離しません…!」
鳰(桐ケ谷の迷子ごっこ……何度もやられてんのに、まだ気付かないとは……)
鳰(生田目さん、なんとも純で鈍なお人っスねえ)
柩「うふふ……千足さん大好き……」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:00:16.26 ID:mHTgyamMo
9けかくさん
しえな「このままじゃ計画が立たない……」
乙哉「なあにしえなちゃん、暗殺計画?」
乙哉「そんな物騒なのやめやめ!どうせギャグSSなんだから、もっと楽しいこと考えようよ!」
しえな「それもそうだな……みんな脱落せず残ってることだしな」
乙哉「そうそう!あたしなんか毎日楽しいよ!」
しえな「武智が楽しいことってなんだ?」
乙哉「黒組は可愛い子がいっぱいだから!」
乙哉「晴っちで遊ぶのいいけど…その前に他の子で遊ぶのもいいかなとか…」
乙哉「もう、想像するだけでゾクゾクしちゃう…!」
しえな「ボクより武智の方が物騒なこと考えてるな」
乙哉「あ、もちろんしえなちゃんも可愛いから!しえなちゃんで遊ぶのも楽しみだなあ…!」
しえな「可愛いと言われたのに嬉しくないことってあるんだな」
しえな「このままじゃ計画が立たない……」
乙哉「なあにしえなちゃん、暗殺計画?」
乙哉「そんな物騒なのやめやめ!どうせギャグSSなんだから、もっと楽しいこと考えようよ!」
しえな「それもそうだな……みんな脱落せず残ってることだしな」
乙哉「そうそう!あたしなんか毎日楽しいよ!」
しえな「武智が楽しいことってなんだ?」
乙哉「黒組は可愛い子がいっぱいだから!」
乙哉「晴っちで遊ぶのいいけど…その前に他の子で遊ぶのもいいかなとか…」
乙哉「もう、想像するだけでゾクゾクしちゃう…!」
しえな「ボクより武智の方が物騒なこと考えてるな」
乙哉「あ、もちろんしえなちゃんも可愛いから!しえなちゃんで遊ぶのも楽しみだなあ…!」
しえな「可愛いと言われたのに嬉しくないことってあるんだな」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:02:03.85 ID:mHTgyamMo
10こかくさん
純恋子「いきますわよ!」
純恋子「広拡散水鉄砲!しゅびびび……」
真昼「キャッキャッ」
晴「プールでもあの二人は仲良しさんだねぇ」
兎角「いや……おかしいだろ」
晴「おかしいって何が?」
兎角「英の肘にホースが付いて、指先から水が出ているように見えるが…?」
晴「ああ……それってあれじゃない?水芸?」
兎角「水芸…?本当にそうなのか…?」
純恋子「しゅびびび……」
真昼「キャッキャッ……あっ虹です、虹が出ますた!」
純恋子「いきますわよ!」
純恋子「広拡散水鉄砲!しゅびびび……」
真昼「キャッキャッ」
晴「プールでもあの二人は仲良しさんだねぇ」
兎角「いや……おかしいだろ」
晴「おかしいって何が?」
兎角「英の肘にホースが付いて、指先から水が出ているように見えるが…?」
晴「ああ……それってあれじゃない?水芸?」
兎角「水芸…?本当にそうなのか…?」
純恋子「しゅびびび……」
真昼「キャッキャッ……あっ虹です、虹が出ますた!」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:03:27.75 ID:mHTgyamMo
11さかくさん
兎角A「はーるっ!」
晴「兎角さん……えっ、今、晴って呼んだ…?」
兎角A「そうっスよ、晴!」
兎角B「おい、お前は何者だ」
晴「えっ、えっ?兎角さんが二人…?」
兎角A「ありゃー、もうバレちゃったっスか」
晴「なに、どういうこと?」
兎角A「これが目の錯覚ってやつっス!」
晴「へえー、不思議だね」
兎角B「いや、どう考えても錯覚とかじゃないだろ」
兎角A「晴……好きだ……」
晴「ええっ!?そんな、心の準備が……」
兎角B「おい!?人の顔でおかしなことを言うな!」
兎角A「晴……」
晴「兎角……」
兎角B「やめろおおおおお!!」
兎角A「はーるっ!」
晴「兎角さん……えっ、今、晴って呼んだ…?」
兎角A「そうっスよ、晴!」
兎角B「おい、お前は何者だ」
晴「えっ、えっ?兎角さんが二人…?」
兎角A「ありゃー、もうバレちゃったっスか」
晴「なに、どういうこと?」
兎角A「これが目の錯覚ってやつっス!」
晴「へえー、不思議だね」
兎角B「いや、どう考えても錯覚とかじゃないだろ」
兎角A「晴……好きだ……」
晴「ええっ!?そんな、心の準備が……」
兎角B「おい!?人の顔でおかしなことを言うな!」
兎角A「晴……」
晴「兎角……」
兎角B「やめろおおおおお!!」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:05:18.75 ID:mHTgyamMo
12しかくさん
溝呂木「うーん……残念だが今回の追試も失格だ…」
伊介「……ああ……」
溝呂木「だけど合格点まで後少しだ!もうちょっとだけ頑張ろう!」
伊介「………」フラ…フラ…
春紀「伊介さま…辛そうだな…」
溝呂木「先生も胸が痛むが……でも、ここまで成績伸びたんだしな……」
溝呂木「それにしても寒河江、毎日補習に付き合うなんて友達想いなんだな」
春紀「ああ、先生と伊介さまに間違いがあるといけないからな」
溝呂木「ええっ!?先生そんなに信用ないか!?」
春紀「いや、そういう意味じゃなくて……」
伊介「溝呂木のやつをブチ殺せば……ママと電話してもいいかな…?」フラ…フラ…
春紀「早まるな伊介さま」
溝呂木「うーん……残念だが今回の追試も失格だ…」
伊介「……ああ……」
溝呂木「だけど合格点まで後少しだ!もうちょっとだけ頑張ろう!」
伊介「………」フラ…フラ…
春紀「伊介さま…辛そうだな…」
溝呂木「先生も胸が痛むが……でも、ここまで成績伸びたんだしな……」
溝呂木「それにしても寒河江、毎日補習に付き合うなんて友達想いなんだな」
春紀「ああ、先生と伊介さまに間違いがあるといけないからな」
溝呂木「ええっ!?先生そんなに信用ないか!?」
春紀「いや、そういう意味じゃなくて……」
伊介「溝呂木のやつをブチ殺せば……ママと電話してもいいかな…?」フラ…フラ…
春紀「早まるな伊介さま」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:06:30.05 ID:mHTgyamMo
13すかくさん
兎角(黒組の連中はどいつもこいつも腐った海の臭いがする……)
兎角(教室はまるでスカンクの檻のようだ……)
兎角(………)
兎角(……スカンクは好かんく……)
兎角「ぶふっww」
春紀「!?ど、どうした東サン!?」
兎角「な…!何でもない…!」プルプル…
乙哉「なになに?東さん笑ってんの?おもしろいことならあたしにも聞かせてよ!」
兎角「何でもないと言ったろ…!」プルプル…
しえな「おいお前らうるさいぞ」
香子「授業中だぞ、静かにしろ!」
兎角「くっ…!」プルプル…
晴(兎角さん楽しそうだなあ)
兎角(黒組の連中はどいつもこいつも腐った海の臭いがする……)
兎角(教室はまるでスカンクの檻のようだ……)
兎角(………)
兎角(……スカンクは好かんく……)
兎角「ぶふっww」
春紀「!?ど、どうした東サン!?」
兎角「な…!何でもない…!」プルプル…
乙哉「なになに?東さん笑ってんの?おもしろいことならあたしにも聞かせてよ!」
兎角「何でもないと言ったろ…!」プルプル…
しえな「おいお前らうるさいぞ」
香子「授業中だぞ、静かにしろ!」
兎角「くっ…!」プルプル…
晴(兎角さん楽しそうだなあ)
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:07:24.37 ID:mHTgyamMo
14せかくさん
乙哉「ねえねえ、せっかくだからお話しようよー」
乙哉「しえなちゃんは何か趣味とかあるの?」
しえな「ボクは……舞台とか、演劇とか好きだな」
乙哉「へえ、渋い趣味だね」
しえな「きっかけはお父さんに連れてってもらったところだからな」
しえな「オペラ座館っていう、劇場のついたホテルがあって」
しえな「そこで舞台を観たり、舞台裏を覗かせてもらったりして、すっかり虜になってしまったんだ」
乙哉「なんだかおもしろそう!あたしもちょっと興味がわいて……」
乙哉「ん…?お父さん……剣持……」
乙哉「ねえ…剣持なんて名字、珍しいよね…?」
しえな「ああ、そういえばうちの家族以外では知らないな」
乙哉「もしかして……しえなちゃんのお父さんて警察のひと…?」
しえな「そうだが……どうして知っている?」
乙哉「あははそうなんだー、世間って狭いねー?」
しえな「??」
乙哉(しえなちゃんがあのジジイの刑事の……)
乙哉「ねえねえ、せっかくだからお話しようよー」
乙哉「しえなちゃんは何か趣味とかあるの?」
しえな「ボクは……舞台とか、演劇とか好きだな」
乙哉「へえ、渋い趣味だね」
しえな「きっかけはお父さんに連れてってもらったところだからな」
しえな「オペラ座館っていう、劇場のついたホテルがあって」
しえな「そこで舞台を観たり、舞台裏を覗かせてもらったりして、すっかり虜になってしまったんだ」
乙哉「なんだかおもしろそう!あたしもちょっと興味がわいて……」
乙哉「ん…?お父さん……剣持……」
乙哉「ねえ…剣持なんて名字、珍しいよね…?」
しえな「ああ、そういえばうちの家族以外では知らないな」
乙哉「もしかして……しえなちゃんのお父さんて警察のひと…?」
しえな「そうだが……どうして知っている?」
乙哉「あははそうなんだー、世間って狭いねー?」
しえな「??」
乙哉(しえなちゃんがあのジジイの刑事の……)
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:08:38.50 ID:mHTgyamMo
14.5 前日譚
都下で起こる連続猟奇殺人
そのあまりにも凄惨な犯行に、人は皆口々にこう呟いた
「21世紀の切り裂きジャック」
警視庁の鬼警部・剣持勇は、高校生名探偵・金田一一の助力を得て、21世紀の切り裂きジャックを追う
しかし21世紀の切り裂きジャックの魔の手は、金田一の幼馴染・七瀬美雪に迫ろうとしていた――
一方、剣持の家庭も長女・しえなの不登校という問題を抱えていた
いじめにより学校に通えず引きこもる毎日
ネット上にしか居場所のない彼女が救いを求めた先とは――
悪魔のリドル前日譚『金田一少年VS21世紀の切り裂きジャック』
ジッチャンの名にかけて!
都下で起こる連続猟奇殺人
そのあまりにも凄惨な犯行に、人は皆口々にこう呟いた
「21世紀の切り裂きジャック」
警視庁の鬼警部・剣持勇は、高校生名探偵・金田一一の助力を得て、21世紀の切り裂きジャックを追う
しかし21世紀の切り裂きジャックの魔の手は、金田一の幼馴染・七瀬美雪に迫ろうとしていた――
一方、剣持の家庭も長女・しえなの不登校という問題を抱えていた
いじめにより学校に通えず引きこもる毎日
ネット上にしか居場所のない彼女が救いを求めた先とは――
悪魔のリドル前日譚『金田一少年VS21世紀の切り裂きジャック』
ジッチャンの名にかけて!
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:10:48.71 ID:mHTgyamMo
15そかくさん
涼「香子ちゃん、長を目指すということは行く行くは……」
香子「もちろん国の長、総理大臣だ」
涼「香子ちゃんやっぱりカッコいいのう…」
涼「しかし以前、長と言えばすべての長と言っておったが…だとすると組閣はどうする?」
香子「もちろんすべての長を兼任する」
涼「独裁者の香子ちゃん……考えるだに惚れ惚れするのう…!」
涼「なあなあ、ワシにも何か手伝わせてくれんかの?」
香子「そうだな……なら首藤の得意そうなやつ……」
香子「スポーツ担当大臣でも任せるとしようか」
涼「任されよ!」
涼「香子ちゃんの右腕として、千代に八千代に務め上げてみせようぞ!」
香子「そんなに長くはやれないだろう」
涼「…そうじゃな…」
涼「香子ちゃん、長を目指すということは行く行くは……」
香子「もちろん国の長、総理大臣だ」
涼「香子ちゃんやっぱりカッコいいのう…」
涼「しかし以前、長と言えばすべての長と言っておったが…だとすると組閣はどうする?」
香子「もちろんすべての長を兼任する」
涼「独裁者の香子ちゃん……考えるだに惚れ惚れするのう…!」
涼「なあなあ、ワシにも何か手伝わせてくれんかの?」
香子「そうだな……なら首藤の得意そうなやつ……」
香子「スポーツ担当大臣でも任せるとしようか」
涼「任されよ!」
涼「香子ちゃんの右腕として、千代に八千代に務め上げてみせようぞ!」
香子「そんなに長くはやれないだろう」
涼「…そうじゃな…」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:12:36.92 ID:mHTgyamMo
16たかくさん
柩「ぼく、もっと背が高くなったらいいのに」
千足「身長、気にしてるのか?」
柩「いいえ、コンプレックスというわけではなくて……」
柩「背が高ければ…背伸びしなくても千足さんの唇に届くでしょう…?」
千足「!?」
千足「う…?あ……その…」
千足「そ、そうだ!そろそろ訓練の時間だったな!い、行かなくては!」
柩「うふふ、そうでしたね」
柩「ぼく、お水の準備しておきますね」
千足「あ、ああ…すまない…」どきどき
柩(今はまだ…)
柩(このお水が、ぼくの唇を届けてくれるから……)
柩「うふふ」
柩「ぼく、もっと背が高くなったらいいのに」
千足「身長、気にしてるのか?」
柩「いいえ、コンプレックスというわけではなくて……」
柩「背が高ければ…背伸びしなくても千足さんの唇に届くでしょう…?」
千足「!?」
千足「う…?あ……その…」
千足「そ、そうだ!そろそろ訓練の時間だったな!い、行かなくては!」
柩「うふふ、そうでしたね」
柩「ぼく、お水の準備しておきますね」
千足「あ、ああ…すまない…」どきどき
柩(今はまだ…)
柩(このお水が、ぼくの唇を届けてくれるから……)
柩「うふふ」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:14:12.02 ID:mHTgyamMo
17ちかくさん
晴「兎角さん…?もっとそっちに寄ってもいい…?」
兎角「あ、ああ……」
兎角(錯覚以来、やけにくっついてこようとする…)
兎角(前から接触は多かったが…さらに密着度が増したというか…)
兎角(あれはわたしではないと納得させたはずなのに……)
晴「ねえ兎角さん……お願いがあるの……」
兎角「な、何だ…?」
兎角(うう……こんな近くでひなたの匂いをかいだら……)
晴「晴って……一ノ瀬じゃなくて、晴って呼んで…?」
兎角「…は……」
兎角「晴…」
晴「嬉しい……兎角……」
兎角(なんなんだ…?胸の奥のこの感じは……)どきどき
晴「兎角さん…?もっとそっちに寄ってもいい…?」
兎角「あ、ああ……」
兎角(錯覚以来、やけにくっついてこようとする…)
兎角(前から接触は多かったが…さらに密着度が増したというか…)
兎角(あれはわたしではないと納得させたはずなのに……)
晴「ねえ兎角さん……お願いがあるの……」
兎角「な、何だ…?」
兎角(うう……こんな近くでひなたの匂いをかいだら……)
晴「晴って……一ノ瀬じゃなくて、晴って呼んで…?」
兎角「…は……」
兎角「晴…」
晴「嬉しい……兎角……」
兎角(なんなんだ…?胸の奥のこの感じは……)どきどき
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:16:16.80 ID:mHTgyamMo
18つかくさん
ハンマー「ドゴッ!」
真夜「おおっと!?すまねえ手が滑った!足、大丈夫か!?」
純恋子「大丈夫ですわ」
純恋子「元より義足なので…頑丈ですし、痛覚もありませんもの」
純恋子「どうぞ、お気になさらず」
真夜「はいそうですか…ってわけにいかないだろ」
真夜「本当、悪かった!何か詫びを……」
純恋子「あら……なら、お茶に付き合っていただこうかしら…?」
純恋子「こんな機会でもなければ、真夜さんたらつれないんですもの」
真夜「う……分かったよ、お茶だけな」
純恋子「うふふ、すぐ用意しますわ」
純恋子「お話したいことが山ほどありますの!」
ハンマー「ドゴッ!」
真夜「おおっと!?すまねえ手が滑った!足、大丈夫か!?」
純恋子「大丈夫ですわ」
純恋子「元より義足なので…頑丈ですし、痛覚もありませんもの」
純恋子「どうぞ、お気になさらず」
真夜「はいそうですか…ってわけにいかないだろ」
真夜「本当、悪かった!何か詫びを……」
純恋子「あら……なら、お茶に付き合っていただこうかしら…?」
純恋子「こんな機会でもなければ、真夜さんたらつれないんですもの」
真夜「う……分かったよ、お茶だけな」
純恋子「うふふ、すぐ用意しますわ」
純恋子「お話したいことが山ほどありますの!」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:17:46.51 ID:mHTgyamMo
19てかくさん
香子「首藤は書道も嗜むのか」
涼「うむ、『手書く事、むねとする事はなくとも、これを習ふべし』というからのう」
香子「徒然草か……書道家でなくても書道を練習しておくべき、という意味だったか?」
涼「さすがじゃのう香子ちゃん」
涼「ところで……この書を見てどう思う…?」どきどき
涼「ワシの今の気持ちを書いたんじゃが……」どきどき
香子「達筆?すぎてまるで読めん」
涼「驚愕の事実」
香子「首藤は書道も嗜むのか」
涼「うむ、『手書く事、むねとする事はなくとも、これを習ふべし』というからのう」
香子「徒然草か……書道家でなくても書道を練習しておくべき、という意味だったか?」
涼「さすがじゃのう香子ちゃん」
涼「ところで……この書を見てどう思う…?」どきどき
涼「ワシの今の気持ちを書いたんじゃが……」どきどき
香子「達筆?すぎてまるで読めん」
涼「驚愕の事実」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:19:22.30 ID:mHTgyamMo
20とかくさん
晴「兎角、五十音SSもいよいよ3作目となったわけだけど」
兎角「そんなジャンルあるのか?」
晴「元の語が出た時点で終わりだと思う人がいるみたいなんだよね」
晴「大丈夫!スレが立ったからにはちゃんと『ん』までいくよ!」
晴「多分……」
兎角「えらく弱気だな」
晴「た行あたりまで考えて書き始めて、ま行あたりから苦しむというのがいつものパターンなんだよ…」
晴「今回3文字だし……登場人物多いし……」
晴「落とし所なんて現段階ではまだまるでノープランだし……」
兎角「愚痴ばっかりじゃないか」
晴(ここらでハードル下げておく作戦だよ)ひそひそ
兎角「姑息なやつ」
晴「兎角、五十音SSもいよいよ3作目となったわけだけど」
兎角「そんなジャンルあるのか?」
晴「元の語が出た時点で終わりだと思う人がいるみたいなんだよね」
晴「大丈夫!スレが立ったからにはちゃんと『ん』までいくよ!」
晴「多分……」
兎角「えらく弱気だな」
晴「た行あたりまで考えて書き始めて、ま行あたりから苦しむというのがいつものパターンなんだよ…」
晴「今回3文字だし……登場人物多いし……」
晴「落とし所なんて現段階ではまだまるでノープランだし……」
兎角「愚痴ばっかりじゃないか」
晴(ここらでハードル下げておく作戦だよ)ひそひそ
兎角「姑息なやつ」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:21:06.63 ID:mHTgyamMo
21なかくさん
柩「いなか暮らししたいなあ」
千足「田舎暮らし?」
柩「はい……誰もぼくたちのことなんか知らない遠い場所で……千足さんと二人、静かに暮らしたい……」
千足「悪くない話だが……今すぐには叶えられそうにないな」
千足「わたしの剣は、力弱き人たちを守るための正義の剣」
千足「わたしの体が動かなくなるまで戦って、戦い抜いて」
千足「田舎暮らしを考えるのはその後になってしまうかな……期待に添えなくてすまない」
柩「いいえ、それでこそ千足さんです!」
柩「ぼくのはちょっとした願望の話ですから」
柩「それに、まずはエンゼルトランペットを見つけないとですよね?」
千足「そうだ…先にやつとの決着をつけないと…!」
柩「捕まえたらひん剥いて、千足さん手ずから凌辱の限りを尽くし、それから殺しましょう!」
千足「そう……えっ、今何と?」
柩「うふふ、ちょっとした願望の話です」
柩「いなか暮らししたいなあ」
千足「田舎暮らし?」
柩「はい……誰もぼくたちのことなんか知らない遠い場所で……千足さんと二人、静かに暮らしたい……」
千足「悪くない話だが……今すぐには叶えられそうにないな」
千足「わたしの剣は、力弱き人たちを守るための正義の剣」
千足「わたしの体が動かなくなるまで戦って、戦い抜いて」
千足「田舎暮らしを考えるのはその後になってしまうかな……期待に添えなくてすまない」
柩「いいえ、それでこそ千足さんです!」
柩「ぼくのはちょっとした願望の話ですから」
柩「それに、まずはエンゼルトランペットを見つけないとですよね?」
千足「そうだ…先にやつとの決着をつけないと…!」
柩「捕まえたらひん剥いて、千足さん手ずから凌辱の限りを尽くし、それから殺しましょう!」
千足「そう……えっ、今何と?」
柩「うふふ、ちょっとした願望の話です」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:22:23.72 ID:mHTgyamMo
22にかくさん
仁鶴「四角い仁鶴がまぁ~るくおさめまっせぇ」
兎角「………」
晴(なんだか真剣に見てる…)
TV「おー せーいーかーつ しょうひゃっか~ るるるるるるる~るる~」
兎角「おー せーいーかーつ しょうひゃっか~ るるるるるるる~るる~」
晴(歌ってる…)
晴「兎角……生活笑百科、毎週観てるよね…?好きなの…?」
兎角「別に…そういうわけじゃない」
晴「そういえば、クイズの番組をよく観てるよね…?好きなの…?」
兎角「別に…そういうわけじゃない」
晴「そう…?」
兎角「そう」
晴「そうなんだ……」
兎角「………これは相談者が代金を支払うべきだろう」
晴「えっ?」
兎角「……よし、正解だ!はは、当たったぞ晴!」
晴(やっぱり好きなんだ…)
仁鶴「四角い仁鶴がまぁ~るくおさめまっせぇ」
兎角「………」
晴(なんだか真剣に見てる…)
TV「おー せーいーかーつ しょうひゃっか~ るるるるるるる~るる~」
兎角「おー せーいーかーつ しょうひゃっか~ るるるるるるる~るる~」
晴(歌ってる…)
晴「兎角……生活笑百科、毎週観てるよね…?好きなの…?」
兎角「別に…そういうわけじゃない」
晴「そういえば、クイズの番組をよく観てるよね…?好きなの…?」
兎角「別に…そういうわけじゃない」
晴「そう…?」
兎角「そう」
晴「そうなんだ……」
兎角「………これは相談者が代金を支払うべきだろう」
晴「えっ?」
兎角「……よし、正解だ!はは、当たったぞ晴!」
晴(やっぱり好きなんだ…)
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:23:58.81 ID:mHTgyamMo
23ぬかくさん
涼「お二人さん、ご飯ご一緒してもいいかの?」
晴「首藤さん!もちろんで……
兎角「ダメだ。気持ち悪いからあっち行け」
晴「もー兎角、どうして威嚇するの」
兎角「だってぬか臭いんだよ!」
兎角「どうせまた神長に嫌われてこっちに来たんだろ?」
涼「それはそうなんじゃが…」
涼「ぬか漬け、香子ちゃんにも食べてほしかったのう……香子だけに」
晴「晴が代わりにいただきますよ!」
兎角「おい晴!?」
晴「あっ、おいしい!首藤さん、これおいしいよ!」
涼「一ノ瀬…!お前はいいやつじゃのう…!」
兎角「だから臭いんだって…」
涼「お二人さん、ご飯ご一緒してもいいかの?」
晴「首藤さん!もちろんで……
兎角「ダメだ。気持ち悪いからあっち行け」
晴「もー兎角、どうして威嚇するの」
兎角「だってぬか臭いんだよ!」
兎角「どうせまた神長に嫌われてこっちに来たんだろ?」
涼「それはそうなんじゃが…」
涼「ぬか漬け、香子ちゃんにも食べてほしかったのう……香子だけに」
晴「晴が代わりにいただきますよ!」
兎角「おい晴!?」
晴「あっ、おいしい!首藤さん、これおいしいよ!」
涼「一ノ瀬…!お前はいいやつじゃのう…!」
兎角「だから臭いんだって…」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:25:24.19 ID:mHTgyamMo
24ねかくさん
乙哉「しえなちゃーん、どうして胸隠すのぉ?」
真夜「そうだぜェ剣持、デカい風呂なんだから堂々と行け、堂々と!」
しえな「お前らは奔放すぎる!もっと慎みをもってだな……」
乙哉「ところでしえなちゃん?」
乙哉「わざわざお風呂でメガネをかけて……誰の裸を見てるのかな~?」ニヤニヤ
真夜「犬飼かァ?それとも生田目かァ?」ニヤニヤ
しえな「なっ、なまたっ…!?じゃない、別に裸が見たくてメガネをかけてるんじゃない!」
乙哉「本当かな~?」ニヤニヤ
柩「………」ひた ひた ひた
乙哉「あれ?柩ちゃん」
真夜「どうしたァ?何か用か?」
柩「今度千足さんをいやらしい目で見たらそのメガネごと溶かしますよこのヒキコモリが」
しえな「……!?」
柩「それじゃ、お先に上がらせてもらいますね」ひた ひた ひた
しえな「ななな…?何だ今の…?」
乙哉「やっぱ真昼ちゃんと柩ちゃんとは趣味が合いそう」
真夜「みたいだなァ」
乙哉「でも、メガネを溶かすのはいただけないよねー?」
真夜「確かに、聖遺物(モノ)は残しとかないとなァ」
しえな「そろそろ本気で身の危険を感じる」
乙哉「しえなちゃーん、どうして胸隠すのぉ?」
真夜「そうだぜェ剣持、デカい風呂なんだから堂々と行け、堂々と!」
しえな「お前らは奔放すぎる!もっと慎みをもってだな……」
乙哉「ところでしえなちゃん?」
乙哉「わざわざお風呂でメガネをかけて……誰の裸を見てるのかな~?」ニヤニヤ
真夜「犬飼かァ?それとも生田目かァ?」ニヤニヤ
しえな「なっ、なまたっ…!?じゃない、別に裸が見たくてメガネをかけてるんじゃない!」
乙哉「本当かな~?」ニヤニヤ
柩「………」ひた ひた ひた
乙哉「あれ?柩ちゃん」
真夜「どうしたァ?何か用か?」
柩「今度千足さんをいやらしい目で見たらそのメガネごと溶かしますよこのヒキコモリが」
しえな「……!?」
柩「それじゃ、お先に上がらせてもらいますね」ひた ひた ひた
しえな「ななな…?何だ今の…?」
乙哉「やっぱ真昼ちゃんと柩ちゃんとは趣味が合いそう」
真夜「みたいだなァ」
乙哉「でも、メガネを溶かすのはいただけないよねー?」
真夜「確かに、聖遺物(モノ)は残しとかないとなァ」
しえな「そろそろ本気で身の危険を感じる」
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:27:32.59 ID:mHTgyamMo
25のかくさん
春紀(伊介さまは決死の覚悟だ…)
春紀(今日のテストの結果次第で……溝呂木チャンの命が終わる…!)
溝呂木「追試の結果を発表する」
溝呂木「……おめでとう犬飼!合格点だ!」
伊介「……!」
春紀「やったな伊介さま!よかったな先生!」
溝呂木「もう親御さんには報告してある、早速電話するといい!」
伊介「………ママ!?もしもしママ!?伊介、さみしかった……」
伊介「うん…伊介、とぉ~っても頑張ったのよぉ…?」
溝呂木「そうだ…!犬飼は本当によく頑張った!」
春紀「あんなに嬉しそうな伊介さま初めて見るよ……」
伊介「うん……溝呂木はいずれブチ[ピーーー]けど……そうそう、うふふふ」
溝呂木「あれ…?今ブチ[ピーーー]って聞こえたような気が…?」
春紀「そっ、空耳じゃないかな…?」
伊介「うん、うん……愛してるわ、ママ……」
春紀(伊介さまは決死の覚悟だ…)
春紀(今日のテストの結果次第で……溝呂木チャンの命が終わる…!)
溝呂木「追試の結果を発表する」
溝呂木「……おめでとう犬飼!合格点だ!」
伊介「……!」
春紀「やったな伊介さま!よかったな先生!」
溝呂木「もう親御さんには報告してある、早速電話するといい!」
伊介「………ママ!?もしもしママ!?伊介、さみしかった……」
伊介「うん…伊介、とぉ~っても頑張ったのよぉ…?」
溝呂木「そうだ…!犬飼は本当によく頑張った!」
春紀「あんなに嬉しそうな伊介さま初めて見るよ……」
伊介「うん……溝呂木はいずれブチ[ピーーー]けど……そうそう、うふふふ」
溝呂木「あれ…?今ブチ[ピーーー]って聞こえたような気が…?」
春紀「そっ、空耳じゃないかな…?」
伊介「うん、うん……愛してるわ、ママ……」
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:31:39.99 ID:mHTgyamMo
26はかくさん
春紀「伊介さまの着てる服カッコイイよなあ」
伊介「当然でしょお?伊介のお気に入りだモン」
春紀「なあそれ、いくらあれば揃えられるんだ?」
伊介「そんなにしないわよぉ……そうね、全部あわせて……」
伊介「ン十万くらい?」
春紀「高っか!とてもじゃないが手が出せないなあ……」
伊介「アンタ、こんな仕事してるくせに本当に貧乏よねえ」
伊介「でもまあ、値段でいったらあの女の方がすごいんじゃない?」
春紀「おお、それは興味あるな……おーい、英サン!」
純恋子「私の身に着けているもの?そうですわね、全部あわせて……」
純恋子「ン十億くらいでしょうか」
春紀「破格」
伊介「なーに…!?何がそんなにするの…!?」
純恋子「最先端技術が詰まってますから」
春紀「伊介さまの着てる服カッコイイよなあ」
伊介「当然でしょお?伊介のお気に入りだモン」
春紀「なあそれ、いくらあれば揃えられるんだ?」
伊介「そんなにしないわよぉ……そうね、全部あわせて……」
伊介「ン十万くらい?」
春紀「高っか!とてもじゃないが手が出せないなあ……」
伊介「アンタ、こんな仕事してるくせに本当に貧乏よねえ」
伊介「でもまあ、値段でいったらあの女の方がすごいんじゃない?」
春紀「おお、それは興味あるな……おーい、英サン!」
純恋子「私の身に着けているもの?そうですわね、全部あわせて……」
純恋子「ン十億くらいでしょうか」
春紀「破格」
伊介「なーに…!?何がそんなにするの…!?」
純恋子「最先端技術が詰まってますから」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:33:15.44 ID:mHTgyamMo
27ひかくさん
鳰「ヤバいっス」
鳰「他の連中と比較して、明らかに出番が少ないっス」
鳰「ウチだけパートナーがいないから…?」
鳰「こうしちゃいられないっス…!」脱兎!
百合「あら鳰さんどうしたの?」
鳰「理事長!ウチと一緒におもしろおかしいことをしてほしいっス!」
百合「……どういうことかしら…?」
鳰「ウチも出番が欲しいんスよ!」
百合「ああ、そういうこと?それなら……」つん
鳰「ひゃあ!?い、いきなり何するんスか!?」
百合「別にギャグをやるだけが耳目を集める方法じゃないでしょう?ほら……」さわ…さわ…
鳰「あッ、やッ、理事長!?こんなのじゃなくて……」
百合「どうして?鳰さんこういうの好きでしょう?」さわわ さわわ さわわ
百合「ほら、いつもみたいにおねだりしてご覧なさい?」
鳰「あッあッ、目一さん……ウチに……ウチに…!
(省略されました・・全てを読むにはプチメロプチメロと書き込んでくださいっス)
鳰「ヤバいっス」
鳰「他の連中と比較して、明らかに出番が少ないっス」
鳰「ウチだけパートナーがいないから…?」
鳰「こうしちゃいられないっス…!」脱兎!
百合「あら鳰さんどうしたの?」
鳰「理事長!ウチと一緒におもしろおかしいことをしてほしいっス!」
百合「……どういうことかしら…?」
鳰「ウチも出番が欲しいんスよ!」
百合「ああ、そういうこと?それなら……」つん
鳰「ひゃあ!?い、いきなり何するんスか!?」
百合「別にギャグをやるだけが耳目を集める方法じゃないでしょう?ほら……」さわ…さわ…
鳰「あッ、やッ、理事長!?こんなのじゃなくて……」
百合「どうして?鳰さんこういうの好きでしょう?」さわわ さわわ さわわ
百合「ほら、いつもみたいにおねだりしてご覧なさい?」
鳰「あッあッ、目一さん……ウチに……ウチに…!
(省略されました・・全てを読むにはプチメロプチメロと書き込んでくださいっス)
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:34:57.98 ID:mHTgyamMo
28ふかくさん
千足「くっ、不覚!」
兎角「これで終わりだな、生田目」
千足「さすが東……またしてもわたしの剣が届かなかったか……」
兎角「いいや、生田目の太刀筋もいつもながら見事なものだ」
兎角「実戦形式は互いにいい訓練になるな」ガシ!
千足「そう言ってもらえれば幸いだ」ガシ!
晴「えへへー、今日も兎角の勝ちだね!」
柩「むっ!でもでも、千足さんの方がカッコよかったです!」
晴「ええー?生田目さんもカッコいいけど、兎角の方がもっとカッコいいよ!」
柩「いいえ、千足さんです!」
晴「兎角だよ!」
柩「千足さん!」
晴「兎角!」
柩「千足!」
晴柩「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
千足「くっ、不覚!」
兎角「これで終わりだな、生田目」
千足「さすが東……またしてもわたしの剣が届かなかったか……」
兎角「いいや、生田目の太刀筋もいつもながら見事なものだ」
兎角「実戦形式は互いにいい訓練になるな」ガシ!
千足「そう言ってもらえれば幸いだ」ガシ!
晴「えへへー、今日も兎角の勝ちだね!」
柩「むっ!でもでも、千足さんの方がカッコよかったです!」
晴「ええー?生田目さんもカッコいいけど、兎角の方がもっとカッコいいよ!」
柩「いいえ、千足さんです!」
晴「兎角だよ!」
柩「千足さん!」
晴「兎角!」
柩「千足!」
晴柩「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:36:44.44 ID:mHTgyamMo
29へかくさん
涼「4二へ角を打って、これで詰みじゃな」
香子「打つ手なしか……参りました」
涼「いやしかし、さすがに筋がいいのう香子ちゃんは!ワシに追いつくのも時間の問題じゃな!」
涼「それにしても……どうしてまた将棋を覚えようと思ったんじゃ?」
香子「長として戦略的思考を養うためだ。それと……」
涼「それと?」
香子「首藤と遊ぶためだ」
涼「……!」
香子「なあ首藤、もう1局……」
香子「……どうした首藤?何を泣いている?」
涼「……少し、昔のことを思い出しての……」
涼「実は……」
涼「4二へ角を打って、これで詰みじゃな」
香子「打つ手なしか……参りました」
涼「いやしかし、さすがに筋がいいのう香子ちゃんは!ワシに追いつくのも時間の問題じゃな!」
涼「それにしても……どうしてまた将棋を覚えようと思ったんじゃ?」
香子「長として戦略的思考を養うためだ。それと……」
涼「それと?」
香子「首藤と遊ぶためだ」
涼「……!」
香子「なあ首藤、もう1局……」
香子「……どうした首藤?何を泣いている?」
涼「……少し、昔のことを思い出しての……」
涼「実は……」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:39:05.74 ID:mHTgyamMo
30ほかくさん
しえな「き、桐ケ谷!?生田目!助けてくれ!」
千足「どうした剣持、そんなに慌てて」
しえな「武智に追われているんだ!捕まってしまったらボクは…!」
柩「まああそれは大変」
柩「丁度ここに大きめのバッグがあります、これに入ってやり過ごしましょう!」
しえな「恩に着る…!」ごそごそ
乙哉「しーえーなーちゃーん、ど~こ~?」
乙哉「あ、千足さんに柩ちゃん!しえなちゃん見なかった?」
千足「ああ、剣持なら……」
柩「このバッグの中にいますよ」
バッグ「モガ!?」
千足「桐ケ谷!?」
乙哉「あははは、しえなちゃん捕獲ー!」ガッシ!
乙哉「ありがとねー、柩ちゃん!」ズルズル…
柩「どういたしまして」
バッグ「モガ!モガガガ!?モガガガガー!?」ズルズル…
千足「お、おい桐ケ谷!?なんてことを…」
柩「大丈夫ですよ!さっき武智さん、剣持さんのために料理するって言ってましたから」
千足「そ、そうなのか…?」
柩「うふふ……武智さん器用ですもん、きっとおいしく料理するんだろうなあ…!」
しえな「き、桐ケ谷!?生田目!助けてくれ!」
千足「どうした剣持、そんなに慌てて」
しえな「武智に追われているんだ!捕まってしまったらボクは…!」
柩「まああそれは大変」
柩「丁度ここに大きめのバッグがあります、これに入ってやり過ごしましょう!」
しえな「恩に着る…!」ごそごそ
乙哉「しーえーなーちゃーん、ど~こ~?」
乙哉「あ、千足さんに柩ちゃん!しえなちゃん見なかった?」
千足「ああ、剣持なら……」
柩「このバッグの中にいますよ」
バッグ「モガ!?」
千足「桐ケ谷!?」
乙哉「あははは、しえなちゃん捕獲ー!」ガッシ!
乙哉「ありがとねー、柩ちゃん!」ズルズル…
柩「どういたしまして」
バッグ「モガ!モガガガ!?モガガガガー!?」ズルズル…
千足「お、おい桐ケ谷!?なんてことを…」
柩「大丈夫ですよ!さっき武智さん、剣持さんのために料理するって言ってましたから」
千足「そ、そうなのか…?」
柩「うふふ……武智さん器用ですもん、きっとおいしく料理するんだろうなあ…!」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:41:52.85 ID:mHTgyamMo
31まかくさん
しえな「本当に手料理を振舞うために追っていたとは」
乙哉「やぁだぁ、何だと思ってたの?」
乙哉「そんなことより特製ハンバーグ、冷めないうちに召し上がれ!」
しえな「それじゃあ…いただきます」ぱく
しえな「……うまい!味もいいんだが、何より食感が一味違う!?」ぱく!ぱく!
乙哉「あはは、分かった?市販の挽肉じゃなくて、牛と豚と、塊肉から刻んで細かくしたの!」
しえな「ボクのためにそんな手間を掛けて…?」じーん
乙哉「そうそう!しえなちゃんのためにじょきじょきとね!」
しえな「じょ…じょきじょき…?」
乙哉「しえなちゃんのためにお肉をじょきじょき……しえなちゃんを思ってじょきじょき……」
乙哉「しえなちゃんをじょきぢょき…ぢょきぢょきしえなちゃんを肉」
乙哉「じょきじょきしえなちゃんの肉をぢょきぢょきぢょきしえなちゃんの肉ぢょきをぢょきじょきじょきじょき」
乙哉「ぢょきぢょきぢょきしえなちゃぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょ」
乙哉「あはっ、あははははははははははは!」
しえな「常軌を逸している」
乙哉「と、そんな風にしえなちゃんを思って丹精込めて作ったハンバーグだよ!」
乙哉「まだまだお肉あるからたくさん食べてね!」
しえな「食欲なくなってきた」
しえな「本当に手料理を振舞うために追っていたとは」
乙哉「やぁだぁ、何だと思ってたの?」
乙哉「そんなことより特製ハンバーグ、冷めないうちに召し上がれ!」
しえな「それじゃあ…いただきます」ぱく
しえな「……うまい!味もいいんだが、何より食感が一味違う!?」ぱく!ぱく!
乙哉「あはは、分かった?市販の挽肉じゃなくて、牛と豚と、塊肉から刻んで細かくしたの!」
しえな「ボクのためにそんな手間を掛けて…?」じーん
乙哉「そうそう!しえなちゃんのためにじょきじょきとね!」
しえな「じょ…じょきじょき…?」
乙哉「しえなちゃんのためにお肉をじょきじょき……しえなちゃんを思ってじょきじょき……」
乙哉「しえなちゃんをじょきぢょき…ぢょきぢょきしえなちゃんを肉」
乙哉「じょきじょきしえなちゃんの肉をぢょきぢょきぢょきしえなちゃんの肉ぢょきをぢょきじょきじょきじょき」
乙哉「ぢょきぢょきぢょきしえなちゃぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょきぢょ」
乙哉「あはっ、あははははははははははは!」
しえな「常軌を逸している」
乙哉「と、そんな風にしえなちゃんを思って丹精込めて作ったハンバーグだよ!」
乙哉「まだまだお肉あるからたくさん食べてね!」
しえな「食欲なくなってきた」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:44:09.10 ID:mHTgyamMo
32みかくさん
純恋子「今日こそ味覚を共にいたしましょう、真昼さん!」
真昼「あの…それは無理で……」
純恋子「抜かりはありませんわ!」
純恋子「真夜さんから、これなら食べてもいいというものを聞いておきましたの!」
純恋子「シェフ!ランチの用意を!」
~~ささみ(塩ゆで)・ブロッコリー(塩ゆで)・ゆで卵(黄身抜き)以上~~
純恋子「………本当にこれ?」
純恋子「いえ、レシピなんて聞いても分からないけれど……これはあまりに……」
真昼「お昼ご飯なんて何年ぶり…!?英さん、これ食べてもいいです…?」
純恋子「え、ええ……」
真昼「おいひい…!おいひいです、英さん…!」あむ!あむ!
真昼「ありがとう…!おいひい……ありがとう英さん…!」あむ!あむ!
真昼「おいひい…!」あむ!あむ!
純恋子「……ええ、おいしいですわね真昼さん!」
純恋子(ただの塩味も、その笑顔があれば!)
純恋子「今日こそ味覚を共にいたしましょう、真昼さん!」
真昼「あの…それは無理で……」
純恋子「抜かりはありませんわ!」
純恋子「真夜さんから、これなら食べてもいいというものを聞いておきましたの!」
純恋子「シェフ!ランチの用意を!」
~~ささみ(塩ゆで)・ブロッコリー(塩ゆで)・ゆで卵(黄身抜き)以上~~
純恋子「………本当にこれ?」
純恋子「いえ、レシピなんて聞いても分からないけれど……これはあまりに……」
真昼「お昼ご飯なんて何年ぶり…!?英さん、これ食べてもいいです…?」
純恋子「え、ええ……」
真昼「おいひい…!おいひいです、英さん…!」あむ!あむ!
真昼「ありがとう…!おいひい……ありがとう英さん…!」あむ!あむ!
真昼「おいひい…!」あむ!あむ!
純恋子「……ええ、おいしいですわね真昼さん!」
純恋子(ただの塩味も、その笑顔があれば!)
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:45:44.09 ID:mHTgyamMo
33むかくさん
春紀「ホントに焼肉奢ってくれんのか伊介さま!?」
伊介「いいわよぉー、補習の間世話になったしねぇ」
春紀「やったあ!」
春紀「しかしすごい店だな!こんなとこ来たことないよ!」
春紀「うわあ無角和牛ってなんだ?なあ伊介さま!」
伊介「頼んでみりゃいいじゃないの…アンタ、ちょっとはしゃぎすぎキモイ」
春紀「だってこんな高い肉初めてなんだよ!」
春紀「なんか思い出すなあ……初仕事の時、うちのチビどもに肉食わせてやったっけ……」
伊介「……アンタって結構ウェットよね」
伊介「この仕事、向いてないんじゃないのぉ?」
春紀「…だとしても」
春紀「家族のためにあたしがやらなきゃならないからな……」
伊介「家族のため、ねえ……」
伊介「ま、せいぜい東兎角に殺られないようにしなさいな……春紀」
春紀「ああ、伊介こそな!」
春紀「ホントに焼肉奢ってくれんのか伊介さま!?」
伊介「いいわよぉー、補習の間世話になったしねぇ」
春紀「やったあ!」
春紀「しかしすごい店だな!こんなとこ来たことないよ!」
春紀「うわあ無角和牛ってなんだ?なあ伊介さま!」
伊介「頼んでみりゃいいじゃないの…アンタ、ちょっとはしゃぎすぎキモイ」
春紀「だってこんな高い肉初めてなんだよ!」
春紀「なんか思い出すなあ……初仕事の時、うちのチビどもに肉食わせてやったっけ……」
伊介「……アンタって結構ウェットよね」
伊介「この仕事、向いてないんじゃないのぉ?」
春紀「…だとしても」
春紀「家族のためにあたしがやらなきゃならないからな……」
伊介「家族のため、ねえ……」
伊介「ま、せいぜい東兎角に殺られないようにしなさいな……春紀」
春紀「ああ、伊介こそな!」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:47:47.76 ID:mHTgyamMo
34めかくさん
ライト「カッ!」
真昼「あああ まぶしい まぶしいの きらい」
純恋子「眩しいのが嫌い?なら、私が目隠ししてあげますわ」
真昼「ううう くらい くらいの こわい」
純恋子「えっ…?じゃあ、目隠しを外しますわよ…?」
真昼「まぶしいの きらい」
純恋子「な、なら目隠しを…」
真昼「くらいの こわい」
純恋子「じゃ、じゃあ外すと…」
真昼「まぶしいの きらい」
純恋子「目隠し…」
真昼「くらいの こわい」
純恋子「外す…」
真昼「まぶしいの きらい」
しえな「おい英、番場をいじめるな!」
純恋子「ち、違……だって、どうすればいいんですの…!?」
真昼「まぶしいの きらい」
ライト「カッ!」
真昼「あああ まぶしい まぶしいの きらい」
純恋子「眩しいのが嫌い?なら、私が目隠ししてあげますわ」
真昼「ううう くらい くらいの こわい」
純恋子「えっ…?じゃあ、目隠しを外しますわよ…?」
真昼「まぶしいの きらい」
純恋子「な、なら目隠しを…」
真昼「くらいの こわい」
純恋子「じゃ、じゃあ外すと…」
真昼「まぶしいの きらい」
純恋子「目隠し…」
真昼「くらいの こわい」
純恋子「外す…」
真昼「まぶしいの きらい」
しえな「おい英、番場をいじめるな!」
純恋子「ち、違……だって、どうすればいいんですの…!?」
真昼「まぶしいの きらい」
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:49:30.56 ID:mHTgyamMo
35もかくさん
涼「『とにもかくにも、虚言多き世なり』というてな…」
香子「世の中嘘ばかりという意味だな…?首藤、何か嘘でもついているのか?」
涼「うむ…ワシは長の患いでの…」
香子「そうなのか?私よりも元気そうに見えるが…?」
涼「元気なままでい続けなければならない病気……」
涼「ワシはもう、かれこれ百年以上この姿のまま生きておる……」
香子「そんな馬鹿な……」
香子「……いや、ハイランダー症候群というやつか…?都市伝説かと思っていたが……」
涼「さすが香子ちゃん、よく知っておるのう」
涼「……ワシがこの姿相応の小娘であった頃……あるひとと遊びたくて、必死に将棋を覚えたんじゃ……」
涼「さっき香子ちゃんがワシと遊びたいと言ってくれたのが、その時のワシと重なって」
涼「なんだか嬉しいような…?懐かしいような…?切ないような…?」
涼「うまく言葉にできないが……なんだか色んなものが溢れてしまったんじゃ……」
香子「……首藤、もしかしてお前が黒組に参加したのは…」
涼「そうじゃ…この病を治してもらい…普通の人生を送りたいから……」
涼「本当にすまん……香子ちゃんにも事情があるだろうに、こんな話を……」
香子「そうだな……だが、一つだけ言わせてくれ」
香子「私が首藤と遊びたいと思ったのは、私が長になると宣言した時に、カッコいいと言ってくれたからだ」
涼「香子ちゃん……」
香子「私にも譲れない願いがある」
香子「だがすべてが終わり、私が国の長となった暁には……その病の研究予算をつけるくらいはしてやる」
涼「香子ちゃん…!」
香子「だから首藤よ、安心して……今は遊ぼう」
涼「…うん!」
涼「『とにもかくにも、虚言多き世なり』というてな…」
香子「世の中嘘ばかりという意味だな…?首藤、何か嘘でもついているのか?」
涼「うむ…ワシは長の患いでの…」
香子「そうなのか?私よりも元気そうに見えるが…?」
涼「元気なままでい続けなければならない病気……」
涼「ワシはもう、かれこれ百年以上この姿のまま生きておる……」
香子「そんな馬鹿な……」
香子「……いや、ハイランダー症候群というやつか…?都市伝説かと思っていたが……」
涼「さすが香子ちゃん、よく知っておるのう」
涼「……ワシがこの姿相応の小娘であった頃……あるひとと遊びたくて、必死に将棋を覚えたんじゃ……」
涼「さっき香子ちゃんがワシと遊びたいと言ってくれたのが、その時のワシと重なって」
涼「なんだか嬉しいような…?懐かしいような…?切ないような…?」
涼「うまく言葉にできないが……なんだか色んなものが溢れてしまったんじゃ……」
香子「……首藤、もしかしてお前が黒組に参加したのは…」
涼「そうじゃ…この病を治してもらい…普通の人生を送りたいから……」
涼「本当にすまん……香子ちゃんにも事情があるだろうに、こんな話を……」
香子「そうだな……だが、一つだけ言わせてくれ」
香子「私が首藤と遊びたいと思ったのは、私が長になると宣言した時に、カッコいいと言ってくれたからだ」
涼「香子ちゃん……」
香子「私にも譲れない願いがある」
香子「だがすべてが終わり、私が国の長となった暁には……その病の研究予算をつけるくらいはしてやる」
涼「香子ちゃん…!」
香子「だから首藤よ、安心して……今は遊ぼう」
涼「…うん!」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:51:12.04 ID:mHTgyamMo
36やかくさん
乙哉「しえなちゃん!?いじめられてたって本当!?」
しえな「……誰に聞いたか知らないが…お前がとやかく言うことじゃない」
乙哉「本当なんだね…!?」
乙哉「……許せない…!」
しえな「武智…?」
乙哉「こんなに可愛いしえなちゃんをいじめるなんて許せないよ!」
乙哉「あたしがその場にいたら、そんな奴らずたずたに切り刻んでやるのに…!」
しえな「武智……お前……」
乙哉「いや、今からでもあたし[ピーーー]よ!?だからしえなちゃん……」
乙哉「その中に刻み甲斐のある可愛い子がいたかどうか早急に教えて!」
しえな「そんなことだろうとは思った」
しえな「だが武智、あいつらをお前に殺らせるわけにいかない」
しえな「集団下校(ボクら)の手で[ピーーー]からこそ意味があるんだ」
乙哉「しえなちゃん…」
しえな「だけど……動機はどうあれ、お前の言葉は嬉しかったよ」
しえな「ありがとう、武智」
乙哉「あはは、なんくるないさー!」
しえな「な、なんくる…?」
しえな「しかしなんだな、黒組じゃなくて、もっと違うところでお前と出会えていたら……」
乙哉「本当だよね!こんなところじゃなかったら……」
乙哉「しえなちゃんみたいな可愛い子、出会って4秒で即じょきだったのにね!」
しえな「……お前とここで出会えて、本当によかったよ……」
乙哉「あはは、もうしえなちゃんてば~照れるよ~~」
乙哉「しえなちゃん!?いじめられてたって本当!?」
しえな「……誰に聞いたか知らないが…お前がとやかく言うことじゃない」
乙哉「本当なんだね…!?」
乙哉「……許せない…!」
しえな「武智…?」
乙哉「こんなに可愛いしえなちゃんをいじめるなんて許せないよ!」
乙哉「あたしがその場にいたら、そんな奴らずたずたに切り刻んでやるのに…!」
しえな「武智……お前……」
乙哉「いや、今からでもあたし[ピーーー]よ!?だからしえなちゃん……」
乙哉「その中に刻み甲斐のある可愛い子がいたかどうか早急に教えて!」
しえな「そんなことだろうとは思った」
しえな「だが武智、あいつらをお前に殺らせるわけにいかない」
しえな「集団下校(ボクら)の手で[ピーーー]からこそ意味があるんだ」
乙哉「しえなちゃん…」
しえな「だけど……動機はどうあれ、お前の言葉は嬉しかったよ」
しえな「ありがとう、武智」
乙哉「あはは、なんくるないさー!」
しえな「な、なんくる…?」
しえな「しかしなんだな、黒組じゃなくて、もっと違うところでお前と出会えていたら……」
乙哉「本当だよね!こんなところじゃなかったら……」
乙哉「しえなちゃんみたいな可愛い子、出会って4秒で即じょきだったのにね!」
しえな「……お前とここで出会えて、本当によかったよ……」
乙哉「あはは、もうしえなちゃんてば~照れるよ~~」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:53:03.71 ID:mHTgyamMo
37ゆかくさん
千足「………どうした桐ケ谷?ガスマスクなんかつけて……」
柩「ち、千足さん!?」コホー!?
柩「これは薬品をこぼし……じゃなくて、えっと、その……」コホー… コホー…
柩「そ、そう!床クリーニングをしようと洗剤をまいてそのあの……」コホー… コホー…
千足「なんだそういうことか、それならわたしも手伝おう」
柩「い、いえ!有害なアレがそのあれなんで、ここはぼく一人に任せて!」コホー… コホー…
柩「処理が終わるまで……四、五時間ほどどこかで時間をつぶしてきてください!」コホー…
千足「そう…?じゃあ、何かあったら呼んでくれ」
柩「はい!千足さん!」コホー… コホー…
柩「ふう…どうにか誤魔化せた…」コホー… コホー…
柩「まだぼくがエンゼルトランペットだってばれるわけにいかないから…」コホー… コホー…
柩「でも…?これは逆にチャンスなんじゃ…?」コホー… コホー…
柩「バス停で出会って以来、こんなに長時間離れることなんてなかったから…」コホー… コホー…
柩「ここは…千足さんの秘密を…!」コホー…!
千足「………どうした桐ケ谷?ガスマスクなんかつけて……」
柩「ち、千足さん!?」コホー!?
柩「これは薬品をこぼし……じゃなくて、えっと、その……」コホー… コホー…
柩「そ、そう!床クリーニングをしようと洗剤をまいてそのあの……」コホー… コホー…
千足「なんだそういうことか、それならわたしも手伝おう」
柩「い、いえ!有害なアレがそのあれなんで、ここはぼく一人に任せて!」コホー… コホー…
柩「処理が終わるまで……四、五時間ほどどこかで時間をつぶしてきてください!」コホー…
千足「そう…?じゃあ、何かあったら呼んでくれ」
柩「はい!千足さん!」コホー… コホー…
柩「ふう…どうにか誤魔化せた…」コホー… コホー…
柩「まだぼくがエンゼルトランペットだってばれるわけにいかないから…」コホー… コホー…
柩「でも…?これは逆にチャンスなんじゃ…?」コホー… コホー…
柩「バス停で出会って以来、こんなに長時間離れることなんてなかったから…」コホー… コホー…
柩「ここは…千足さんの秘密を…!」コホー…!
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:55:35.08 ID:mHTgyamMo
38よかくさん
柩「千足さんの荷物に、ぼくに中身を見せたがらない袋がある…」コホー… コホー…
柩「これは何かとんでもないのが入っている予覚がする…!」ごそごそ…
柩「あっ、千足さんのブラだ!やっぱりおっきい!憧れちゃうなあ…」ジャーン!
柩「…なんて他のことに気をとられてる場合じゃない、この袋を…」ごそごそ…
柩「こ……これは…!?」コホー…!?
柩「くまさんぱんつ…!」ジャジャーン!
柩「まさか…!?千足さんの本当の趣味はこういうのだった…!?」コホー…!?
柩「あああああ可愛い!可愛い!千足さん可愛い!可愛いです千足さん!」コホー…!
柩「ああ本当にあの人はぼくをどれだけ魅了してやまないのか!」コホー…!
柩「きっと自分には似合わなくなったと思って封印して」コホー…!
柩「でもやっぱり好きだから手放せないでいる…そうですよね千足さん!?」コホー…!
柩「分かりました千足さん…」コホー… コホー…
柩「ぼく……はきます!」コホー…!
百合「鳰さん、ちょっと見てもらえるかしら」
鳰「これは……桐ケ谷?ガスマスクと、ぶかぶかのブラと、くまさんぱんつ着用で一人遊びっスか…?」
百合「うふふ、なかなか素敵な趣味だと思わない?」
鳰「桐ケ谷のやつ、監視カメラのことなんか完全に忘れてるみたいっスねえ」
柩「ああ何という至福…!」コホー… コホー…
柩「今日千足さんに討たれても悔いはない!」コホー!
柩「千足さんの荷物に、ぼくに中身を見せたがらない袋がある…」コホー… コホー…
柩「これは何かとんでもないのが入っている予覚がする…!」ごそごそ…
柩「あっ、千足さんのブラだ!やっぱりおっきい!憧れちゃうなあ…」ジャーン!
柩「…なんて他のことに気をとられてる場合じゃない、この袋を…」ごそごそ…
柩「こ……これは…!?」コホー…!?
柩「くまさんぱんつ…!」ジャジャーン!
柩「まさか…!?千足さんの本当の趣味はこういうのだった…!?」コホー…!?
柩「あああああ可愛い!可愛い!千足さん可愛い!可愛いです千足さん!」コホー…!
柩「ああ本当にあの人はぼくをどれだけ魅了してやまないのか!」コホー…!
柩「きっと自分には似合わなくなったと思って封印して」コホー…!
柩「でもやっぱり好きだから手放せないでいる…そうですよね千足さん!?」コホー…!
柩「分かりました千足さん…」コホー… コホー…
柩「ぼく……はきます!」コホー…!
百合「鳰さん、ちょっと見てもらえるかしら」
鳰「これは……桐ケ谷?ガスマスクと、ぶかぶかのブラと、くまさんぱんつ着用で一人遊びっスか…?」
百合「うふふ、なかなか素敵な趣味だと思わない?」
鳰「桐ケ谷のやつ、監視カメラのことなんか完全に忘れてるみたいっスねえ」
柩「ああ何という至福…!」コホー… コホー…
柩「今日千足さんに討たれても悔いはない!」コホー!
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 01:58:35.96 ID:mHTgyamMo
39らかくさん
真夜「純恋子、ちょっと手ェ見せてくれ」
純恋子「ええ、どうぞ」
真夜「…純恋子の手は柔らかくないな」
純恋子「それはもう、義手ですから」
純恋子「うふふ、真夜さんの方は柔らかいですわね」
真夜「……なあ純恋子」
真夜「こんな体にされたこと…恨みや、辛みや、そんな風に思うことはないのか?」
純恋子「いいえ全然?」
純恋子「むしろこの手足のおかげで最強を目指せるんですもの、誇りにすら思いますわ!」
純恋子「まあその時の犯人は全員、私と同じく文字通り血だるまにして差し上げましたけどね!」
真夜「そうか…お前は前向きなんだな…」
純恋子「ええ!最強女王の座に就く日を、心待ちにしていますわ!」
真夜(真昼は……昔の殺しを気に病んで…それを覆い隠すようにまた殺して…)
真夜(それを繰り返して…繰り返して……)
真夜(同じ殺しのはずなのに、真昼と純恋子の向いている方向は正反対だ…)
真夜(…純恋子のように生きられたら…真昼ももっと笑顔になれるのか…?)
真夜(………)
真夜(なんか最近純恋子のことばっかり考えてる気がする…?)
真夜(オレが……純恋子のことを…?)
真夜「純恋子、ちょっと手ェ見せてくれ」
純恋子「ええ、どうぞ」
真夜「…純恋子の手は柔らかくないな」
純恋子「それはもう、義手ですから」
純恋子「うふふ、真夜さんの方は柔らかいですわね」
真夜「……なあ純恋子」
真夜「こんな体にされたこと…恨みや、辛みや、そんな風に思うことはないのか?」
純恋子「いいえ全然?」
純恋子「むしろこの手足のおかげで最強を目指せるんですもの、誇りにすら思いますわ!」
純恋子「まあその時の犯人は全員、私と同じく文字通り血だるまにして差し上げましたけどね!」
真夜「そうか…お前は前向きなんだな…」
純恋子「ええ!最強女王の座に就く日を、心待ちにしていますわ!」
真夜(真昼は……昔の殺しを気に病んで…それを覆い隠すようにまた殺して…)
真夜(それを繰り返して…繰り返して……)
真夜(同じ殺しのはずなのに、真昼と純恋子の向いている方向は正反対だ…)
真夜(…純恋子のように生きられたら…真昼ももっと笑顔になれるのか…?)
真夜(………)
真夜(なんか最近純恋子のことばっかり考えてる気がする…?)
真夜(オレが……純恋子のことを…?)
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:00:56.61 ID:mHTgyamMo
40りかくさん
晴「兎角!晴も、兎角が大好きなクイズを考えてきましたよ!」
兎角「別にクイズ好きじゃないけど……いいだろう、やってみろ」
晴「理科クーイズ!」
晴「さんに触れると赤くなるものなーんだ?」
兎角「なるほど、知識を問うクイズか」
兎角「授業でやったばかりのところを選ぶ辺り詰めが甘いが、初心者にしてはまあまあだな」
兎角「そして答えは…リトマス試験紙だ!」
晴「ぶっぶー、はずれです」
兎角「えっ!?リトマスで合ってるはず……」
兎角「まさか頓知の問題だったか…?答えは!?」
晴「正解は……」
晴「兎角さんに触れると赤くなる…晴でした……」犇…
兎角「なっ…?そん…そんなのズルい…」
晴「……ダメ?」
兎角「うっ……」
兎角(悪くないとか思ってしまった…)
晴「兎角!晴も、兎角が大好きなクイズを考えてきましたよ!」
兎角「別にクイズ好きじゃないけど……いいだろう、やってみろ」
晴「理科クーイズ!」
晴「さんに触れると赤くなるものなーんだ?」
兎角「なるほど、知識を問うクイズか」
兎角「授業でやったばかりのところを選ぶ辺り詰めが甘いが、初心者にしてはまあまあだな」
兎角「そして答えは…リトマス試験紙だ!」
晴「ぶっぶー、はずれです」
兎角「えっ!?リトマスで合ってるはず……」
兎角「まさか頓知の問題だったか…?答えは!?」
晴「正解は……」
晴「兎角さんに触れると赤くなる…晴でした……」犇…
兎角「なっ…?そん…そんなのズルい…」
晴「……ダメ?」
兎角「うっ……」
兎角(悪くないとか思ってしまった…)
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:04:47.09 ID:mHTgyamMo
41るかくさん
晴「五十音SSでネタに詰まった時、とりあえず検索してみるんだけどね」
兎角「ロメル・ルカク……サッカー選手だな」
晴「そう…こういう強力な固有名詞に検索結果を独占されると、途方に暮れちゃうんだよ……」
晴「ロメル・ルカクなんてどうネタにしたらいいんだか……」
兎角「サッカー選手なんだから、それにちなんで黒組でサッカーでもしてみればいいんじゃないか?」
晴「それおもしろそう!」
晴「鳰が審判で」
晴「晴に兎角、春紀さん、武智さん、生田目さん、首藤さんあたりが結構いい試合をして」
晴「運動苦手そうな柩ちゃん、しえなちゃん、真昼ちゃん、神長さんあたりもそこそこドラマがあって」
晴「伊介さんと英さんはやる気なくて」
晴「日が暮れたら真夜ちゃんが出てきて張り切って、英さんも呼応して本気出して」
晴「ボールかゴールが破壊されて、有耶無耶なままに終わりそうな感じだね!」
兎角「ダイジェストで済ませるのか」
晴「サッカーでもさせてみよう、を思いつくのに一週間は掛かってるから、これ以上は……」
兎角「末期だな…」
晴「五十音SSでネタに詰まった時、とりあえず検索してみるんだけどね」
兎角「ロメル・ルカク……サッカー選手だな」
晴「そう…こういう強力な固有名詞に検索結果を独占されると、途方に暮れちゃうんだよ……」
晴「ロメル・ルカクなんてどうネタにしたらいいんだか……」
兎角「サッカー選手なんだから、それにちなんで黒組でサッカーでもしてみればいいんじゃないか?」
晴「それおもしろそう!」
晴「鳰が審判で」
晴「晴に兎角、春紀さん、武智さん、生田目さん、首藤さんあたりが結構いい試合をして」
晴「運動苦手そうな柩ちゃん、しえなちゃん、真昼ちゃん、神長さんあたりもそこそこドラマがあって」
晴「伊介さんと英さんはやる気なくて」
晴「日が暮れたら真夜ちゃんが出てきて張り切って、英さんも呼応して本気出して」
晴「ボールかゴールが破壊されて、有耶無耶なままに終わりそうな感じだね!」
兎角「ダイジェストで済ませるのか」
晴「サッカーでもさせてみよう、を思いつくのに一週間は掛かってるから、これ以上は……」
兎角「末期だな…」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:06:35.70 ID:mHTgyamMo
42れかくさん
晴「兎角!兎角!」犇!犇!
兎角「だからそんなに抱き付くなって……」ふいっ
晴(これですよ!)
晴(兎角が照れ隠しで目を逸らす仕草)
晴(その後に見せる朱に染まった凛々しい横顔)
晴(かわいいなあ)
晴「というわけでもう一回!」犇!
兎角「何がというわけなんだ!?」ふいっ
晴(かわいいなあ、兎角かわいいなあ)
晴「兎角!兎角!」犇!犇!
兎角「だからそんなに抱き付くなって……」ふいっ
晴(これですよ!)
晴(兎角が照れ隠しで目を逸らす仕草)
晴(その後に見せる朱に染まった凛々しい横顔)
晴(かわいいなあ)
晴「というわけでもう一回!」犇!
兎角「何がというわけなんだ!?」ふいっ
晴(かわいいなあ、兎角かわいいなあ)
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:07:22.39 ID:mHTgyamMo
43ろかくさん
兎角「黒組の連中の使う武器を知っておきたい」
兎角「生田目は剣で間違いないだろう」
兎角「武智は前歴と持ち物からしてハサミを使ってくるんだろうな」
晴「武器を知るのってそんなに大事?」
兎角「ああ、知っていた方が格段に対策が立てやすくなるし、鹵獲して使うことも想定しておけるしな」
兎角「まあ暗殺に不測の事態はつきものだから過信は禁物だが」
晴「そうなんだ」
兎角「晴も何か知っていることがあったら教えてくれ」
晴「うん!………あっ」
兎角「何だ?」
晴「晴の武器はこの笑顔ですよ!」にこっ!
兎角「………」
晴「………」
兎角「…さすがにこういう事はまじめに取り組んでくれ」
晴「ごめんなさい……」
兎角「黒組の連中の使う武器を知っておきたい」
兎角「生田目は剣で間違いないだろう」
兎角「武智は前歴と持ち物からしてハサミを使ってくるんだろうな」
晴「武器を知るのってそんなに大事?」
兎角「ああ、知っていた方が格段に対策が立てやすくなるし、鹵獲して使うことも想定しておけるしな」
兎角「まあ暗殺に不測の事態はつきものだから過信は禁物だが」
晴「そうなんだ」
兎角「晴も何か知っていることがあったら教えてくれ」
晴「うん!………あっ」
兎角「何だ?」
晴「晴の武器はこの笑顔ですよ!」にこっ!
兎角「………」
晴「………」
兎角「…さすがにこういう事はまじめに取り組んでくれ」
晴「ごめんなさい……」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:09:30.42 ID:mHTgyamMo
44わかくさん
百合「私ももう若くないわね…」
鳰「嘘っス……目一さんは底なしっス……」
鳰「ウチはもう、散々イカされて足腰立たないっスよ…」
百合「それは困ったわねぇ……じゃあ、今日はここに泊まってく?」
鳰「いいんスか!?やったあ、お泊り嬉しいっス!」
百合「あら、そんなに嬉しい?」
鳰「はいっス!」
鳰「ウチ、目一さんに抱きしめられて、目一さんの匂いに包まれて眠る時が一番幸せっス!」
百合「あらあら、可愛いこと言ってくれるじゃない」
鳰「だって、とってもいい匂いなんスよ…?目一さんの……」
鳰「ひなたの匂いは」
百合「私ももう若くないわね…」
鳰「嘘っス……目一さんは底なしっス……」
鳰「ウチはもう、散々イカされて足腰立たないっスよ…」
百合「それは困ったわねぇ……じゃあ、今日はここに泊まってく?」
鳰「いいんスか!?やったあ、お泊り嬉しいっス!」
百合「あら、そんなに嬉しい?」
鳰「はいっス!」
鳰「ウチ、目一さんに抱きしめられて、目一さんの匂いに包まれて眠る時が一番幸せっス!」
百合「あらあら、可愛いこと言ってくれるじゃない」
鳰「だって、とってもいい匂いなんスよ…?目一さんの……」
鳰「ひなたの匂いは」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:10:59.25 ID:mHTgyamMo
45をかくさん
晴「スー…スー…」
兎角(よく寝ている…)
兎角(同室のわたしが命を狙ったら、寝首を掻くのは容易かったろう…)
晴「スー…スー…」
兎角(この細首に…ナイフを当てるだけで……)スッ…
晴「んッ、兎角…」ビクン
兎角「…!?」
兎角「こ、これは違う!そういう意味で触ったんじゃなくて、その…!」
晴「スー…スー…」
兎角(…寝ている…?)
兎角(なんだ…わたしは何を必死になって言い訳を……)
晴「……兎角なら別にいいのに……」
兎角「…!?」
晴「スー…スー…」
兎角(よく寝ている…)
兎角(同室のわたしが命を狙ったら、寝首を掻くのは容易かったろう…)
晴「スー…スー…」
兎角(この細首に…ナイフを当てるだけで……)スッ…
晴「んッ、兎角…」ビクン
兎角「…!?」
兎角「こ、これは違う!そういう意味で触ったんじゃなくて、その…!」
晴「スー…スー…」
兎角(…寝ている…?)
兎角(なんだ…わたしは何を必死になって言い訳を……)
晴「……兎角なら別にいいのに……」
兎角「…!?」
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:12:14.37 ID:mHTgyamMo
46んかくさん
晴「頭……耳……ほっぺた……」ぺたぺた
兎角「晴……今度は何をしている…?」ぺたぺた
晴「兎角の輪郭をなぞってるの」ぺたぺた
晴「目の錯覚でも、何があっても、絶対に兎角を見失わないように」ぺたぺた
兎角「だからってお前……何故そうわたしに触りたがる…?」ぺたぺた
晴「…だって…兎角は……」
晴「お母さんが死んでから、初めて触れたひとだったから……」
兎角「…!」
晴「兎角が守るって言ってくれて嬉しくて」
晴「兎角に触れたら温かくて」
晴「それで晴は、生きて、赦されて、ここにいるって実感できたの」
兎角「晴…」
晴「ごめんね?兎角…」
晴「本当は兎角が困ってるの知ってたのに、どうしてもやめられなくて……」
兎角「…いいや」犇…
晴「と、兎角…?」どきどき
兎角(困っていたのは確かだが、別に嫌だったわけじゃない)
兎角(晴はひなたのいい匂いがして)
兎角(ああ、晴は温かい)
兎角(そうだ……本当は、初めてひとに触れたのは……)
晴「あの…兎角…?」どきどき
兎角「大丈夫だ、晴」
兎角「晴はわたしが守る」
兎角「誰にも触らせない」
晴「兎角…」犇…
終
晴「頭……耳……ほっぺた……」ぺたぺた
兎角「晴……今度は何をしている…?」ぺたぺた
晴「兎角の輪郭をなぞってるの」ぺたぺた
晴「目の錯覚でも、何があっても、絶対に兎角を見失わないように」ぺたぺた
兎角「だからってお前……何故そうわたしに触りたがる…?」ぺたぺた
晴「…だって…兎角は……」
晴「お母さんが死んでから、初めて触れたひとだったから……」
兎角「…!」
晴「兎角が守るって言ってくれて嬉しくて」
晴「兎角に触れたら温かくて」
晴「それで晴は、生きて、赦されて、ここにいるって実感できたの」
兎角「晴…」
晴「ごめんね?兎角…」
晴「本当は兎角が困ってるの知ってたのに、どうしてもやめられなくて……」
兎角「…いいや」犇…
晴「と、兎角…?」どきどき
兎角(困っていたのは確かだが、別に嫌だったわけじゃない)
兎角(晴はひなたのいい匂いがして)
兎角(ああ、晴は温かい)
兎角(そうだ……本当は、初めてひとに触れたのは……)
晴「あの…兎角…?」どきどき
兎角「大丈夫だ、晴」
兎角「晴はわたしが守る」
兎角「誰にも触らせない」
晴「兎角…」犇…
終
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:13:37.95 ID:Co9DU5sgO
乙!
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/01(日) 02:50:17.19 ID:mHTgyamMo
杏子「四肢をもげ」 まどかSS
やすな「好きよあなたが殺したいほど」 キルミーSS
あぐ「ふんこ様のうんこ様ってどんなかしら…」 うぽってSS
マミ「アロ・フィナーレ!」 まどか五十音SS
澪「りつのあつ」 けいおん五十音SS
需要があるのか分からない過去描いたSS
諸事情によりあんまり書けなくて
諸事情により多分これが最後のSSになるので
これを期に興味持ってくれたら読んでみてください
過去作含め、読んでくれた人どうもありがとうございました
やすな「好きよあなたが殺したいほど」 キルミーSS
あぐ「ふんこ様のうんこ様ってどんなかしら…」 うぽってSS
マミ「アロ・フィナーレ!」 まどか五十音SS
澪「りつのあつ」 けいおん五十音SS
需要があるのか分からない過去描いたSS
諸事情によりあんまり書けなくて
諸事情により多分これが最後のSSになるので
これを期に興味持ってくれたら読んでみてください
過去作含め、読んでくれた人どうもありがとうございました
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/12(木) 01:51:28.70 ID:jtiW7pDDO
面白かった
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422719458/
Entry ⇒ 2015.10.16 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
【悪魔のリドル】 香子「暗殺者たちのクリスマス」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:28:43.69 ID:32tXqmrN0
幼い少女がベッドの上で窓の外を眺めていた。
香子「今日はクリスマス♪」
香子「サンタさん来るかな」ワクワク
香子「でも私、人を殺すための勉強なんかしてる悪い子だから、サンタさん来ないよね…」
香子「今日はクリスマス♪」
香子「サンタさん来るかな」ワクワク
香子「でも私、人を殺すための勉強なんかしてる悪い子だから、サンタさん来ないよね…」
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:29:29.81 ID:32tXqmrN0
コンコン
香子「え?誰かが窓を叩いてる?」
コンコン
香子「こんな夜中にいったい誰だろ」ドキドキ
「開けてくれんかー」
香子「は、はい!」
香子「え?誰かが窓を叩いてる?」
コンコン
香子「こんな夜中にいったい誰だろ」ドキドキ
「開けてくれんかー」
香子「は、はい!」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:30:14.50 ID:32tXqmrN0
香子「わっ!」
「すまぬの」
香子「も、も、もしかして…」
「赤い服に白い髭とくれば…」
香子「サンタさん!!」
サンタ「正解じゃよ!」
「すまぬの」
香子「も、も、もしかして…」
「赤い服に白い髭とくれば…」
香子「サンタさん!!」
サンタ「正解じゃよ!」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:31:08.75 ID:32tXqmrN0
香子「私にも来てくれたんだー!」
サンタ「香子ちゃんが良い子にしておるからじゃ」
サンタ「はい!香子ちゃんへのクリスマス・プレゼントじゃぞ」
香子「わー!綺麗な箱!リボンも可愛い!」
その箱には紫色のリボンがくくり付けられていた。
香子「開けてもいい?」
サタン「どうぞ」
香子「うわあ♪チョコレートがいっぱい入ってる!!」
香子「ありがとうサンタさん!!」
サンタ「香子ちゃんが良い子にしておるからじゃ」
サンタ「はい!香子ちゃんへのクリスマス・プレゼントじゃぞ」
香子「わー!綺麗な箱!リボンも可愛い!」
その箱には紫色のリボンがくくり付けられていた。
香子「開けてもいい?」
サタン「どうぞ」
香子「うわあ♪チョコレートがいっぱい入ってる!!」
香子「ありがとうサンタさん!!」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:32:34.62 ID:32tXqmrN0
・
・
・
「…ちゃん」
香子「…大切にするから」ムニャムニャ
「こうこちゃん!」
香子「…香子、すごく嬉しい!」
「香子ちゃん!」
香子「え!?サンタさん!」
涼「ワシがサンタか…髭を生やさんといかんのう」
香子「首藤!?」
・
・
「…ちゃん」
香子「…大切にするから」ムニャムニャ
「こうこちゃん!」
香子「…香子、すごく嬉しい!」
「香子ちゃん!」
香子「え!?サンタさん!」
涼「ワシがサンタか…髭を生やさんといかんのう」
香子「首藤!?」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:35:02.28 ID:32tXqmrN0
香子(夢だったのか?)
香子(いや、あれは昔ホームにいた時の記憶…昔の事をそのまま夢で見る事なんてあるんだな…)
涼「まさか、香子ちゃんがサンタを信じておったなんて…まだまだ幼子のようじゃな…ハッ!すまぬ香子ちゃん!夢を壊すような事を言ってしまって!」
香子「心配するな…サンタがいない事はもうすでに知っている」
涼「いつぐらいまで?」
香子「…8歳ぐらい」
涼「ふ~ん…」
香子(本当は13歳ぐらいまで信じてたけど…)
香子(いや、あれは昔ホームにいた時の記憶…昔の事をそのまま夢で見る事なんてあるんだな…)
涼「まさか、香子ちゃんがサンタを信じておったなんて…まだまだ幼子のようじゃな…ハッ!すまぬ香子ちゃん!夢を壊すような事を言ってしまって!」
香子「心配するな…サンタがいない事はもうすでに知っている」
涼「いつぐらいまで?」
香子「…8歳ぐらい」
涼「ふ~ん…」
香子(本当は13歳ぐらいまで信じてたけど…)
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:38:14.71 ID:32tXqmrN0
香子(黒組を退学した後、私はホームを脱走した)
香子(追跡者から終われる戦いに明け暮れる日々を過ごすだろうという事を私は覚悟していた)
香子(そういった日々を送る事こそ罪人たる私にふさわしいと思っていのだが…)
香子(よもや、死にかけていた時に首藤に助けられ、そのままなし崩し的に二人で生きていく事になるなんて…)
香子(これでいいのかと思いつつも数カ月が経ち、もう12月…)
香子(今日は12月24日、クリスマスか…)
香子(追跡者から終われる戦いに明け暮れる日々を過ごすだろうという事を私は覚悟していた)
香子(そういった日々を送る事こそ罪人たる私にふさわしいと思っていのだが…)
香子(よもや、死にかけていた時に首藤に助けられ、そのままなし崩し的に二人で生きていく事になるなんて…)
香子(これでいいのかと思いつつも数カ月が経ち、もう12月…)
香子(今日は12月24日、クリスマスか…)
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:38:57.07 ID:32tXqmrN0
涼「寝坊するなんて香子ちゃんにしては珍しいのぅ。やっぱりサンタさんが来るのが待ち遠しくて寝付けなかったか?」
香子「今日はクリスマスイブでサンタが来るなら明日だろ?」
涼「そうじゃったかな。歳をとると忘れっぽくなるみたいじゃ」
香子「はいはい」
香子「今日はクリスマスイブでサンタが来るなら明日だろ?」
涼「そうじゃったかな。歳をとると忘れっぽくなるみたいじゃ」
香子「はいはい」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:44:23.28 ID:32tXqmrN0
香子(ホームの追手から姿を隠しながら、私と首藤は何でも屋的な仕事をやっている)
香子(首藤は人を殺す事に抵抗が無いのだが、私がもう人殺しをやりたくないと言ったために基本的にはそれ以外の仕事だ)
香子(…本当に私は首藤に迷惑かけてばかりだな)
香子(今日は仕事の説明を受けるために早起きをするはずだったんだが、不覚にも寝坊してしまった)
香子(今までこんな事なかったんだが…)
香子(それにしても首藤は朝が早く寝坊をした事がない。老人は朝が早いというのは本当のようだ)
香子(首藤は人を殺す事に抵抗が無いのだが、私がもう人殺しをやりたくないと言ったために基本的にはそれ以外の仕事だ)
香子(…本当に私は首藤に迷惑かけてばかりだな)
香子(今日は仕事の説明を受けるために早起きをするはずだったんだが、不覚にも寝坊してしまった)
香子(今までこんな事なかったんだが…)
香子(それにしても首藤は朝が早く寝坊をした事がない。老人は朝が早いというのは本当のようだ)
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:45:05.43 ID:32tXqmrN0
香子「遅くなった」
涼「待ったか?」
「ううん、今来たところ♡…なわけないっスよ!」
鳰「ほんと遅すぎるっすよ!!!何分待たせてつもりッスか?」
香子「本当にすまない」
涼「いやあ、珍しく香子ちゃんが寝坊しおってのぅ」
鳰「首藤さんは何で嬉しそうなんスか」
涼「待ったか?」
「ううん、今来たところ♡…なわけないっスよ!」
鳰「ほんと遅すぎるっすよ!!!何分待たせてつもりッスか?」
香子「本当にすまない」
涼「いやあ、珍しく香子ちゃんが寝坊しおってのぅ」
鳰「首藤さんは何で嬉しそうなんスか」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:50:12.28 ID:32tXqmrN0
香子(私達に仕事を回してくれる人間となると限られてくる…こういう時頼りになるのは、やっぱり昔馴染みというわけだ。母校に仕事の斡旋を頼るなんてよくある話だ)
香子(しかも、私の事はホームに一切知らせない事も了承してくれる)
香子(ホームよりミョウジョウ学園を管理する組織の方が格が上だからこそできる事なのだろう)
香子(仕事は走りを通して、紹介してもらう事になっている。重要書類の奪取、要人警護、脱走の手引き、破壊工作、そういった裏稼業は元より、掃除、お菓子作り、学校の行事の準備、アニメの原画を書くなどの一般の仕事までやる事があった)
香子(別に私たちじゃなくて良いだろって事までやらされたなあ…)
香子(割と首藤は何でもノリノリでやっていたが)
香子(今回は願わくはまともな仕事であってほしいものだ)
香子(しかも、私の事はホームに一切知らせない事も了承してくれる)
香子(ホームよりミョウジョウ学園を管理する組織の方が格が上だからこそできる事なのだろう)
香子(仕事は走りを通して、紹介してもらう事になっている。重要書類の奪取、要人警護、脱走の手引き、破壊工作、そういった裏稼業は元より、掃除、お菓子作り、学校の行事の準備、アニメの原画を書くなどの一般の仕事までやる事があった)
香子(別に私たちじゃなくて良いだろって事までやらされたなあ…)
香子(割と首藤は何でもノリノリでやっていたが)
香子(今回は願わくはまともな仕事であってほしいものだ)
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:51:57.00 ID:32tXqmrN0
香子・涼「サンタ!!??」
鳰「そう!サンタクロースッスよ」
香子「どういう事なのか話が見えてこないんだが」
鳰「つまりクリスマスプレゼントを届けて欲しいんスよ」
涼「なるほど、それでサンタか」
鳰「届け先は黒組卒業生、しかもあの一ノ瀬晴がターゲットだった時のクラスッスよ!」
香子「つまり、私達を除く10人の黒組卒業生にというわけだな」
涼「あやつらと会うのも久しぶりじゃな。懐かしいのぅ」
鳰「そう!サンタクロースッスよ」
香子「どういう事なのか話が見えてこないんだが」
鳰「つまりクリスマスプレゼントを届けて欲しいんスよ」
涼「なるほど、それでサンタか」
鳰「届け先は黒組卒業生、しかもあの一ノ瀬晴がターゲットだった時のクラスッスよ!」
香子「つまり、私達を除く10人の黒組卒業生にというわけだな」
涼「あやつらと会うのも久しぶりじゃな。懐かしいのぅ」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/25(木) 23:52:50.77 ID:32tXqmrN0
香子「何でクリスマスプレゼントなんかあげるんだ?」
鳰「我が愛すべき黒組の卒業生にクリスマスプレゼントを贈る。なんか凄く貴婦人っぽくて素敵じゃない…って理事長が言ってたッス。まあ、単なる思い付きッスよ。あの人らしい」
涼「それだったら理事長自身が贈ればいいのに」
鳰「あの人は基本忙しいッスからね」
香子「じゃ、走りは?」
鳰「え?ウチ?ウチが誰かにプレゼントを贈るなんて柄にもないっしょ。不幸なら届けてもいいッスけど」
香子「相変わらず嫌な奴だな、お前」
鳰「我が愛すべき黒組の卒業生にクリスマスプレゼントを贈る。なんか凄く貴婦人っぽくて素敵じゃない…って理事長が言ってたッス。まあ、単なる思い付きッスよ。あの人らしい」
涼「それだったら理事長自身が贈ればいいのに」
鳰「あの人は基本忙しいッスからね」
香子「じゃ、走りは?」
鳰「え?ウチ?ウチが誰かにプレゼントを贈るなんて柄にもないっしょ。不幸なら届けてもいいッスけど」
香子「相変わらず嫌な奴だな、お前」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:04:21.08 ID:YH8tVTGu0
鳰「ここの袋に、みんなの欲しいものが書いてある紙が入ってるッス」
涼「何故、“欲しいものを書いた紙”なんじゃ?“欲しいもの”そのものを袋に入れない?」
鳰「“欲しいものを書いた紙”を見て、何をプレゼントするかはお二人の自由ッス。紙を見て、考えてプレゼントして欲しいッス。もちろんお金はこちらが用意するッスよ!」
香子「何故、そんな面倒な事を」
鳰「それは…」
鳰「そっちの方が面白いからに決まってるからじゃないっスか!」
鳰「それじゃあ、頼んだッスよ!あっ、それとカメラとマイクも持って行って欲しいッス。理事長と二人で視聴させてもらうッスから!」
香子「ほんっと嫌な奴だよな、お前」
涼「何故、“欲しいものを書いた紙”なんじゃ?“欲しいもの”そのものを袋に入れない?」
鳰「“欲しいものを書いた紙”を見て、何をプレゼントするかはお二人の自由ッス。紙を見て、考えてプレゼントして欲しいッス。もちろんお金はこちらが用意するッスよ!」
香子「何故、そんな面倒な事を」
鳰「それは…」
鳰「そっちの方が面白いからに決まってるからじゃないっスか!」
鳰「それじゃあ、頼んだッスよ!あっ、それとカメラとマイクも持って行って欲しいッス。理事長と二人で視聴させてもらうッスから!」
香子「ほんっと嫌な奴だよな、お前」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:10:24.26 ID:YH8tVTGu0
香子「やっぱり、まともな仕事じゃなかったか」
涼「まあまあ、給料も良いんじゃから仕方なかろう。せっかくのサンタの仕事なんじゃから楽しまねばな」
香子「まったく。お前はどんな仕事でも楽しそうにするな」
涼「おおっ!袋にサンタコスが入っておった!」
香子「着ないぞ」
涼「トナカイコスまである!香子ちゃんはどっちが良い?」
香子「だから着ないって言ってるだろ!!」
涼「まあまあ、給料も良いんじゃから仕方なかろう。せっかくのサンタの仕事なんじゃから楽しまねばな」
香子「まったく。お前はどんな仕事でも楽しそうにするな」
涼「おおっ!袋にサンタコスが入っておった!」
香子「着ないぞ」
涼「トナカイコスまである!香子ちゃんはどっちが良い?」
香子「だから着ないって言ってるだろ!!」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:21:04.87 ID:YH8tVTGu0
香子「さて、誰からプレゼントして行こうか?あんまり手間のかからなさそうな奴からやっていこうか」
涼「さあて、最初は誰じゃろうな♪」
涼は袋の中をゴソゴソかき混ぜた。
香子「人の話を聞いてないな首藤」
涼「最初のターゲットは…寒河江春紀じゃ!」
香子「寒河江か…確か家が貧乏だとか言ってたな」
涼「だとしたら欲しいものは庶民的なものか、それともだからこそ豪勢なものか…」
涼「さあて、最初は誰じゃろうな♪」
涼は袋の中をゴソゴソかき混ぜた。
香子「人の話を聞いてないな首藤」
涼「最初のターゲットは…寒河江春紀じゃ!」
香子「寒河江か…確か家が貧乏だとか言ってたな」
涼「だとしたら欲しいものは庶民的なものか、それともだからこそ豪勢なものか…」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:31:59.13 ID:YH8tVTGu0
春紀『実はあたし12月24日が誕生日なんだよね!誕生日プレゼントを貰うから、クリスマスプレゼントは貰わなくてもいいや!』
涼「…しょっぱなから予想外すぎる内容が出てきたぞ」
香子「…遠慮しなくてもいいのに」
涼「つつましく、あやつらしいとも思うな」
香子「どうする?本当にいらないと思うか?」
イマダッテー♪ コノヨノ ドコカデー♪
涼「はい!なんじゃ走りか」
香子(着信音か…)
涼「…しょっぱなから予想外すぎる内容が出てきたぞ」
香子「…遠慮しなくてもいいのに」
涼「つつましく、あやつらしいとも思うな」
香子「どうする?本当にいらないと思うか?」
イマダッテー♪ コノヨノ ドコカデー♪
涼「はい!なんじゃ走りか」
香子(着信音か…)
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:38:19.91 ID:YH8tVTGu0
鳰『言い忘れてたッスけど、プレゼントしないってのは絶対無しッスよー!何が何でも一つは一人にあげて欲しいッス!』
涼「だ、そうじゃ」
香子「うーむ。となると何を寒河江にプレゼントすればいいか…」
涼「とりあえず、寒河江は保留でいいんじゃなかろ」
香子「そうだな」
涼「というわけで次のにしよう。次は…こいつじゃ!」
涼が袋から取り出した紙に書かれていた名前は…
涼「だ、そうじゃ」
香子「うーむ。となると何を寒河江にプレゼントすればいいか…」
涼「とりあえず、寒河江は保留でいいんじゃなかろ」
香子「そうだな」
涼「というわけで次のにしよう。次は…こいつじゃ!」
涼が袋から取り出した紙に書かれていた名前は…
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:41:59.26 ID:YH8tVTGu0
『犬飼伊介』バーン!
香子「犬飼か」
涼「あっ!香子ちゃん、ちょっとめんどくさそうとか思わんかったか?」
香子「…まあ、な」
涼「ワガママ娘じゃったからのぅ」
香子「とりあえず内容を読んでみようか」
涼「えーと…」
香子「犬飼か」
涼「あっ!香子ちゃん、ちょっとめんどくさそうとか思わんかったか?」
香子「…まあ、な」
涼「ワガママ娘じゃったからのぅ」
香子「とりあえず内容を読んでみようか」
涼「えーと…」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:50:03.75 ID:YH8tVTGu0
ピンポーン!
ガチャッ
伊介「お邪魔するわよ」
「わー!」「伊介ねえちゃんだ!」
伊介「様をつけなさい。殺すわよ」
春紀「おお!入って入って!伊介様!!」
春紀「急にお肉が大量に宅配便で送ってきてな。しかも今日まで食べないといけないとか、こりゃ参ったよ。いやあ、ほんと伊介様が来てくれて助かったよ!」
ガチャッ
伊介「お邪魔するわよ」
「わー!」「伊介ねえちゃんだ!」
伊介「様をつけなさい。殺すわよ」
春紀「おお!入って入って!伊介様!!」
春紀「急にお肉が大量に宅配便で送ってきてな。しかも今日まで食べないといけないとか、こりゃ参ったよ。いやあ、ほんと伊介様が来てくれて助かったよ!」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 00:56:08.48 ID:YH8tVTGu0
伊介「別にー、伊介は来たくなかったんだけどー、春紀がどうしてもって言うからー」
春紀「ほんと、ありがとな。あたしも伊介様と一緒に飯が食えて嬉しいよ!」
伊介「な、な///ああ、そうなの!あたしは別に嬉しくないけど!!!」
「わー顔真っ赤ー!」「イスケ様リンゴみたい」
伊介「うっさいわよ!ガキども!!」
冬香「本当にいつも、姉がお世話になってます」
春紀「ほんと、ありがとな。あたしも伊介様と一緒に飯が食えて嬉しいよ!」
伊介「な、な///ああ、そうなの!あたしは別に嬉しくないけど!!!」
「わー顔真っ赤ー!」「イスケ様リンゴみたい」
伊介「うっさいわよ!ガキども!!」
冬香「本当にいつも、姉がお世話になってます」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 01:01:20.79 ID:YH8tVTGu0
伊介「えーと、春紀…た、誕生日おめでと…」
春紀「うわっ!プレゼントまであるのか!ありがとな!」
春紀「このバッグ、高いんじゃないの?!」
伊介「別に、こんなの安物よ」
春紀「本当にありがとな。大切にするよ!」
伊介「…あたりまえよ。あたしがあげたものなんだから!」
春紀「うわっ!プレゼントまであるのか!ありがとな!」
春紀「このバッグ、高いんじゃないの?!」
伊介「別に、こんなの安物よ」
春紀「本当にありがとな。大切にするよ!」
伊介「…あたりまえよ。あたしがあげたものなんだから!」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 01:18:35.19 ID:YH8tVTGu0
香子「まさか犬飼の欲しいものが『春紀と一緒にクリスマスをすごしたい』だったとはな」
涼「確かに言われてみれば、犬飼は寒河江が気になっておったかもしれんなぁ」
香子「一緒にクリスマスをすごしたいなら、声をかけたらいいのに」
涼「それができないから、わざわざ欲しいものにあんな事を書くんじゃろ?まったく犬飼は可愛い奴じゃわ。本人の前だとツンツンしてしまうとかベタじゃのぅ」
涼「犬飼から寒河江に誘いをかける事ができない。となると、寒河江から誘わせないといけない」
涼「しかし、寒河江は家族と一緒に自分の家で自身の誕生日パーティーとクリスマスパーティーをしなければいけない」
涼「そうなると寒河江は犬飼を自分の家に招待すればいいわけじゃが、貧乏だから余分な食事を出す事ができない」
香子「だから、大量の食料を寒河江の家に贈ればいいというわけだな。家族全員では食べ切れないし今日一日で食べないといけないとなると…」
涼「自然と犬飼に誘いがやってくるというわけじゃ」
涼「寒河江もどうやら本当は犬飼と一緒にクリスマスをすごしたいと思っておったみたいだら一石一鳥だったのぅ」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 01:22:19.54 ID:YH8tVTGu0
香子「さて、二人も一変に片付けたし次に行こうか」
涼「次は誰じゃろな」ゴソゴソ
涼「次は…」
『生田目千足』
香子「生田目か」
涼「次は誰じゃろな」ゴソゴソ
涼「次は…」
『生田目千足』
香子「生田目か」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 01:24:27.13 ID:YH8tVTGu0
涼「生田目の欲しいものは…」
千足『桐ヶ谷が欲しいもの』
涼「…う~ん、まあ、あやつらしいかのぅ」
香子「じゃあ、桐ヶ谷が欲しいものを見てみるか」
千足『桐ヶ谷が欲しいもの』
涼「…う~ん、まあ、あやつらしいかのぅ」
香子「じゃあ、桐ヶ谷が欲しいものを見てみるか」
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/26(金) 01:30:51.12 ID:YH8tVTGu0
柩『千足さんが欲しいもの』
涼「…」
香子「…」
涼「これは難問じゃのぅ…」
香子「何だこれは!?何かのパラドックスなのか!?」
涼「…」
香子「…」
涼「これは難問じゃのぅ…」
香子「何だこれは!?何かのパラドックスなのか!?」
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:45:14.61 ID:TBHiZHW10
涼「適当にお菓子でもあげるか?」
香子「いや、それは駄目だ。できたらちゃんと二人が欲しいものをあげたい」
涼「ふっ…(最初は乗り気じゃなかったのに、真面目じゃのぅ。そういうとこが香子ちゃんらしい)」
香子「生田目の欲しいものは、桐ヶ谷が欲しいもの。桐ヶ谷が欲しいものは、生田目の欲しいもの…難しい」
涼「妥協して考えよう香子ちゃん。二人が紙に書いたもの以外で欲しいものはなんじゃろう?」
香子「う~んー生田目の欲しいもの…桐ヶ谷」
涼「そうじゃ」
香子「そして、桐ヶ谷の欲しいものは生田目」
涼「そのとおりじゃよ」
香子「いや、それは駄目だ。できたらちゃんと二人が欲しいものをあげたい」
涼「ふっ…(最初は乗り気じゃなかったのに、真面目じゃのぅ。そういうとこが香子ちゃんらしい)」
香子「生田目の欲しいものは、桐ヶ谷が欲しいもの。桐ヶ谷が欲しいものは、生田目の欲しいもの…難しい」
涼「妥協して考えよう香子ちゃん。二人が紙に書いたもの以外で欲しいものはなんじゃろう?」
香子「う~んー生田目の欲しいもの…桐ヶ谷」
涼「そうじゃ」
香子「そして、桐ヶ谷の欲しいものは生田目」
涼「そのとおりじゃよ」
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:46:15.40 ID:TBHiZHW10
香子「しかし、あの二人は一緒に暮らしてると聞いているぞ。となると欲しいものも手に入っているという事になる」
涼「確かにそのとおりじゃな」
香子「となると、紙に書いたもの以外で欲しいものも無くなってしまうぞ」
涼「確かにそうじゃが、手に入ったものに+アルファを付け足す事ができる?例えば、その日限定のものとかな」
香子「??」
涼「ふふっ。紙に書かれた欲しいものも満たす事のできるものをやっと思いつく事ができたぞ」
涼「確かにそのとおりじゃな」
香子「となると、紙に書いたもの以外で欲しいものも無くなってしまうぞ」
涼「確かにそうじゃが、手に入ったものに+アルファを付け足す事ができる?例えば、その日限定のものとかな」
香子「??」
涼「ふふっ。紙に書かれた欲しいものも満たす事のできるものをやっと思いつく事ができたぞ」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:47:05.75 ID:TBHiZHW10
柩「クリスマスケーキも買ったし、買い物はこれで十分かな。さて、千足さんの待つぼくらの家に帰るとしますか♪」
「ちょっとそこの小学生のお嬢さん?」
柩「しょ、小学生!?ち、違いますぼくは高校生です///(元だけど)」
「こりゃあ失言じゃった、すまんのぅ。ところで福引をやってみんか?」
柩「福引ですか?でも、ぼく福引券持ってませんよ」
「無くてもいいんじゃよ。ワシの前を通ったものはみな一回福引をしていいという事になっておるんじゃ」
「ちょっとそこの小学生のお嬢さん?」
柩「しょ、小学生!?ち、違いますぼくは高校生です///(元だけど)」
「こりゃあ失言じゃった、すまんのぅ。ところで福引をやってみんか?」
柩「福引ですか?でも、ぼく福引券持ってませんよ」
「無くてもいいんじゃよ。ワシの前を通ったものはみな一回福引をしていいという事になっておるんじゃ」
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:48:29.40 ID:TBHiZHW10
柩「…どういう利益を得るためにやってる事なんですか?とても怪しいですね。っていうか会った事ありません?そのしゃべり方も聞き覚えありますし」
「べ、別に怪しいものじゃないぞ!(さすが元ダチュラのエース、勘が鋭い)」
「商店街のサービスじゃ」
柩「ふ~ん…まあ福引をしたからといってあまりデメリットも無さそうですし一度やらせてもらいます」
「さあ、どうぞ」
柩「よいっしょと」ガラガラ
柩「あっ!金色!」
「大当たり!!」
「べ、別に怪しいものじゃないぞ!(さすが元ダチュラのエース、勘が鋭い)」
「商店街のサービスじゃ」
柩「ふ~ん…まあ福引をしたからといってあまりデメリットも無さそうですし一度やらせてもらいます」
「さあ、どうぞ」
柩「よいっしょと」ガラガラ
柩「あっ!金色!」
「大当たり!!」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:49:24.51 ID:TBHiZHW10
柩「何が当たるんですか!」ワクワク
「ちょっと待っててな(最初は怪しんでた割に、当たると知ると嬉しそうじゃな)」
「はい!どうぞ」
柩「これは!!」
「ちょっと待っててな(最初は怪しんでた割に、当たると知ると嬉しそうじゃな)」
「はい!どうぞ」
柩「これは!!」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:51:02.31 ID:TBHiZHW10
千足「遅い…桐ヶ谷がケーキを買いに行ってから20分経ってるぞ…」
千足「駅前のケーキ屋までこのマンションから5分程度。買い物には5分と考えると、それに帰りの時間を足すと全部で15分でこの部屋まで帰ってこれるはず!なのに5分も過ぎているなんて!」
千足「いや、思ったより買い物に時間がかかった事も考えられる。どのケーキを買うのか迷っているのか、それとも客が多くて並ぶ事になってしまったのか…」
千足「ああ、やっぱり心配だ!何で桐ヶ谷一人に買い物なんてさせたんだ!あんなに小さくて可愛い桐ヶ谷だぞ!誘拐でもされたりしたら…」
千足「…よく考えたら桐ヶ谷は暗殺者集団ダチュラの元エースだった。彼女を誘拐できる凄腕の人間なんてそうそういないな…ふっ、心配しすぎだな私も」
ピンポーン!
千足「駅前のケーキ屋までこのマンションから5分程度。買い物には5分と考えると、それに帰りの時間を足すと全部で15分でこの部屋まで帰ってこれるはず!なのに5分も過ぎているなんて!」
千足「いや、思ったより買い物に時間がかかった事も考えられる。どのケーキを買うのか迷っているのか、それとも客が多くて並ぶ事になってしまったのか…」
千足「ああ、やっぱり心配だ!何で桐ヶ谷一人に買い物なんてさせたんだ!あんなに小さくて可愛い桐ヶ谷だぞ!誘拐でもされたりしたら…」
千足「…よく考えたら桐ヶ谷は暗殺者集団ダチュラの元エースだった。彼女を誘拐できる凄腕の人間なんてそうそういないな…ふっ、心配しすぎだな私も」
ピンポーン!
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:51:56.37 ID:TBHiZHW10
ガチャッ
千足「桐ヶ谷ッ!!!」
「宅配便でーす」
千足「何だ、宅配便か」
(滅茶苦茶がっかりしてる!)
千足「今、忙しいとこなんだが」
「サインお願いします」
千足「わかった」
「ありがとうございました!」
千足(どっかで見た事のあるツインテールだな)
千足「この荷物は!」
千足「桐ヶ谷ッ!!!」
「宅配便でーす」
千足「何だ、宅配便か」
(滅茶苦茶がっかりしてる!)
千足「今、忙しいとこなんだが」
「サインお願いします」
千足「わかった」
「ありがとうございました!」
千足(どっかで見た事のあるツインテールだな)
千足「この荷物は!」
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:53:35.23 ID:TBHiZHW10
ピンポーン!
ガチャッ
柩「ただいま帰りました!」
千足「おかえり。でもちょっと遅かった…え!?桐ヶ谷!!その格好は!?」
柩「ち、千足さん!?その服は!?」
千足(サンタの帽子が桐ヶ谷の小さな頭に乗っていて凄く可愛い!赤いドレスの胸元にはクリスマス用のベル!桐ヶ谷のぺったんこな胸によく似合っている!そして何より白いモコモコのついたスカートが良く似合っていて愛らしい…)
柩(男性が着るような普通のサンタクロースの衣装…だけどカッコイイ千足さんが着ればそれは極上のスーツとなる!赤い髪に赤い服が似合ってます!そして千足さんの女性らしさの象徴の大きな胸!ぴっちりした上着がそれを引き立てる…見てるだけでエクスタシーです!)
ガチャッ
柩「ただいま帰りました!」
千足「おかえり。でもちょっと遅かった…え!?桐ヶ谷!!その格好は!?」
柩「ち、千足さん!?その服は!?」
千足(サンタの帽子が桐ヶ谷の小さな頭に乗っていて凄く可愛い!赤いドレスの胸元にはクリスマス用のベル!桐ヶ谷のぺったんこな胸によく似合っている!そして何より白いモコモコのついたスカートが良く似合っていて愛らしい…)
柩(男性が着るような普通のサンタクロースの衣装…だけどカッコイイ千足さんが着ればそれは極上のスーツとなる!赤い髪に赤い服が似合ってます!そして千足さんの女性らしさの象徴の大きな胸!ぴっちりした上着がそれを引き立てる…見てるだけでエクスタシーです!)
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 04:54:24.45 ID:TBHiZHW10
柩「千足さん、どうしたんですかその服?」
千足「宅配便で送って来たんだ…クリスマスだから着てみようかなと思って」
柩「ぼくは福引で当たったんです…着たら千足さんが喜ぶかなと思って」
千足「う、うん。嬉しいよ///凄く可愛い」
柩「ありがとうございます///千足さんも凄くカッコイイです」
千足「ありがとう桐ヶ谷…さあ、料理もできたしケーキも桐ヶ谷が買ってきた。クリスマスパーティーを始めよう」
柩「はい!」
千足「宅配便で送って来たんだ…クリスマスだから着てみようかなと思って」
柩「ぼくは福引で当たったんです…着たら千足さんが喜ぶかなと思って」
千足「う、うん。嬉しいよ///凄く可愛い」
柩「ありがとうございます///千足さんも凄くカッコイイです」
千足「ありがとう桐ヶ谷…さあ、料理もできたしケーキも桐ヶ谷が買ってきた。クリスマスパーティーを始めよう」
柩「はい!」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:05:49.99 ID:TBHiZHW10
香子「なるほど、サンタコスの服がその日限定の+アルファというわけだな」
涼「そうじゃよ。生田目はサンタコスの桐ヶ谷を喜ぶだろうし、もちろん桐ヶ谷もサンタ衣装の生田目を喜ぶはずじゃ」
香子「二人にサンタの衣装を渡し、二人はそれを着る。そうする事で二人は“桐ヶ谷が欲しいもの”“千足さんが欲しいもの”を手に入れたわけだな」
香子「寒河江と犬飼の時といい、良いアイディアがよくも思い浮ぶものだな」
涼「伊達に歳はとってないというわけじゃよ」
香子「それにしても、変装は完璧だがしゃべり方は一緒なのはどうかと思うぞ…首藤を知ってる人にはばれるかもしれないだろ」
涼「香子ちゃんなんか、ただ宅配便の服を着て帽子を深く被って顔を隠してるだけじゃろ!ツインテールで普通ばれる」
涼「そうじゃよ。生田目はサンタコスの桐ヶ谷を喜ぶだろうし、もちろん桐ヶ谷もサンタ衣装の生田目を喜ぶはずじゃ」
香子「二人にサンタの衣装を渡し、二人はそれを着る。そうする事で二人は“桐ヶ谷が欲しいもの”“千足さんが欲しいもの”を手に入れたわけだな」
香子「寒河江と犬飼の時といい、良いアイディアがよくも思い浮ぶものだな」
涼「伊達に歳はとってないというわけじゃよ」
香子「それにしても、変装は完璧だがしゃべり方は一緒なのはどうかと思うぞ…首藤を知ってる人にはばれるかもしれないだろ」
涼「香子ちゃんなんか、ただ宅配便の服を着て帽子を深く被って顔を隠してるだけじゃろ!ツインテールで普通ばれる」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:12:26.01 ID:TBHiZHW10
涼「さて、次は誰がくるかのぅ」ゴソゴソ
『英純恋子』ジャーン!
香子「英か」
香子「何々、欲しいものは…」
『私、今、番場さんと暮らしおりますの!番場さんがいれば今は欲しいものなんてありませんわ!』
香子「こんなのばっかりだな!!」
涼「キレそうになる気持ちはわかるが紙を投げるな香子ちゃん。うん?紙に続きが書いてある…」
『英純恋子』ジャーン!
香子「英か」
香子「何々、欲しいものは…」
『私、今、番場さんと暮らしおりますの!番場さんがいれば今は欲しいものなんてありませんわ!』
香子「こんなのばっかりだな!!」
涼「キレそうになる気持ちはわかるが紙を投げるな香子ちゃん。うん?紙に続きが書いてある…」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:22:35.39 ID:TBHiZHW10
『…私自身が欲しいものはありませんが、番場さんに美味しいものを食べさせてあげたいと思っておりますの。私自身の手で作ったものを!しかし料理を始めたものの上手くいかないのです?どうすればいいのでしょうか?』
香子「欲しいものというより、まるで相談のお便りみたいだな」
涼「さっきの四人と比べたら簡単じゃな。料理の本やレシピが英へのプレゼントじゃ」
香子「本当に簡単だな。そんなもので英が納得できるのか?」
涼「英はプライドが高いから多分、誰かに教えてもらって料理なんてしてないんじゃろうな。もしかしたら料理の本やレシピを見るという事まで思いついてないかもしれない」
香子「なるほど。財閥のお嬢さまである事を考えれば少し世間ずれした事があってもおかしくないな」
香子「欲しいものというより、まるで相談のお便りみたいだな」
涼「さっきの四人と比べたら簡単じゃな。料理の本やレシピが英へのプレゼントじゃ」
香子「本当に簡単だな。そんなもので英が納得できるのか?」
涼「英はプライドが高いから多分、誰かに教えてもらって料理なんてしてないんじゃろうな。もしかしたら料理の本やレシピを見るという事まで思いついてないかもしれない」
香子「なるほど。財閥のお嬢さまである事を考えれば少し世間ずれした事があってもおかしくないな」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:32:29.06 ID:TBHiZHW10
香子「番場も一緒に住んでるみたいだから一緒に見ておこうか」
涼「そうじゃな」
『英さんのためにマフラーを編みたいので、編み方を知りたい…ます』
涼「ふふっ。こやつらもお互いの事を思っておる」
香子「ああ、微笑ましいな」
涼「番場は編み物の本で良いな」
香子「そうだな」
香子「…今回はこれまでのケースと違って、簡単にプレゼントを届ける事ができそうだな」
涼「そうじゃな」
『英さんのためにマフラーを編みたいので、編み方を知りたい…ます』
涼「ふふっ。こやつらもお互いの事を思っておる」
香子「ああ、微笑ましいな」
涼「番場は編み物の本で良いな」
香子「そうだな」
香子「…今回はこれまでのケースと違って、簡単にプレゼントを届ける事ができそうだな」
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:38:47.08 ID:TBHiZHW10
香子「寒河江に肉を届けた時間は5時…」
香子「桐ヶ谷と生田目にサンタ服を届けた時間が7時…」
香子「で、現在、英と番場の本を買った時間が8時」
涼「英の屋敷はこっから1時間というところじゃから、9時に着きそうじゃな」
香子「桐ヶ谷と生田目にサンタ服を届けた時間が7時…」
香子「で、現在、英と番場の本を買った時間が8時」
涼「英の屋敷はこっから1時間というところじゃから、9時に着きそうじゃな」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:44:48.99 ID:TBHiZHW10
純恋子「サンタクロースという者はいつに来られるんでしょうか?」
真夜「だいたい12時ぐらいじゃねえか?」
純恋子「サンタクロースという者を招待するために煙突を屋敷に取り付けましたわ」
真夜「流石、純恋子だぜ!サンタがどっから来るかちゃんと調べたとはな!」
純恋子「えっへん!」
真夜「だが、それだけじゃ駄目だぜ。サンタは家の人間がちゃんと寝てないと来ないんだ」
純恋子「それじゃあ、どうやってサンタクロースを捕まえますの?」
真夜「そこは俺に秘策がある。寝たふりをすればいいんだ!」
純恋子「流石、番場さんですわ!策士ですわ!」
真夜「えっへん!」
真夜「だいたい12時ぐらいじゃねえか?」
純恋子「サンタクロースという者を招待するために煙突を屋敷に取り付けましたわ」
真夜「流石、純恋子だぜ!サンタがどっから来るかちゃんと調べたとはな!」
純恋子「えっへん!」
真夜「だが、それだけじゃ駄目だぜ。サンタは家の人間がちゃんと寝てないと来ないんだ」
純恋子「それじゃあ、どうやってサンタクロースを捕まえますの?」
真夜「そこは俺に秘策がある。寝たふりをすればいいんだ!」
純恋子「流石、番場さんですわ!策士ですわ!」
真夜「えっへん!」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:53:35.66 ID:TBHiZHW10
香子「あの~本当に宅配便なんです」
「駄目だ!今夜は誰も通すなという事になっている」
香子「何でこんなに警備が厳重なんだ?」
涼「このままだとポストに本を入れる事さえできなさそうじゃな」
香子「仕方がない。屋敷に忍び込むしかないな」
「駄目だ!今夜は誰も通すなという事になっている」
香子「何でこんなに警備が厳重なんだ?」
涼「このままだとポストに本を入れる事さえできなさそうじゃな」
香子「仕方がない。屋敷に忍び込むしかないな」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:57:06.30 ID:TBHiZHW10
純恋子「楽しみですわ…サンタクロース。番場さん、サンタクロースの事教えて下さってありがとうございます」
真夜「オレも一度も本物を見た事がねえからな!いつかあいつの面をおがみたいと思っていたんだ」
純恋子「今夜はサンタクロース以外の人間は誰も屋敷に入れるなとみなに通告しております。警備も万全ですわ」
真夜「ぬかりねえな!」
ウー!ウー!ウー!
純恋子「これは屋敷に何者かが侵入してきた時になるサイレン!」
真夜「オレも一度も本物を見た事がねえからな!いつかあいつの面をおがみたいと思っていたんだ」
純恋子「今夜はサンタクロース以外の人間は誰も屋敷に入れるなとみなに通告しております。警備も万全ですわ」
真夜「ぬかりねえな!」
ウー!ウー!ウー!
純恋子「これは屋敷に何者かが侵入してきた時になるサイレン!」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 05:59:52.56 ID:TBHiZHW10
「侵入者だ!」
「捕まえろ!」
涼「何で、香子ちゃんあんなとこでスッ転んでレーザーセンターに引っかかるんじゃ!?」
香子「めんぼくない…」
「捕まえろ!」
涼「何で、香子ちゃんあんなとこでスッ転んでレーザーセンターに引っかかるんじゃ!?」
香子「めんぼくない…」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 06:03:59.08 ID:TBHiZHW10
純恋子「まさか9時という予想外の時間に来るなんて、怖ろしい男ですわサンタクロース!」
真夜「サンタクロースを捕まえるのが真昼の夢なんだよ!!!俺たちに捕まえられろ!!」
香子「うわあ!?あいつら向かってきたぞ!」
涼「後ろは警備の人間、前はあやつら。厄介な事になってきたおったな」
真夜「サンタクロースを捕まえるのが真昼の夢なんだよ!!!俺たちに捕まえられろ!!」
香子「うわあ!?あいつら向かってきたぞ!」
涼「後ろは警備の人間、前はあやつら。厄介な事になってきたおったな」
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 06:08:43.35 ID:TBHiZHW10
真夜「うらっ!!」
ブン!!真夜が香子に向けてハンマーを振り回した。
香子「危ないっ!」
香子、なんとか避ける。
純恋子「ふんっ!!」
純恋子が涼へ向けて拳を振り回した!
涼「よっと!」
涼、難なく避ける。
ドッゴーン!
涼(地面に大きな穴が!?なんつう威力じゃ!?)
ブン!!真夜が香子に向けてハンマーを振り回した。
香子「危ないっ!」
香子、なんとか避ける。
純恋子「ふんっ!!」
純恋子が涼へ向けて拳を振り回した!
涼「よっと!」
涼、難なく避ける。
ドッゴーン!
涼(地面に大きな穴が!?なんつう威力じゃ!?)
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 06:14:17.80 ID:TBHiZHW10
香子「どうする首藤?滅茶苦茶ピンチだぞ!」
涼「とりあえずプレゼントを渡して、退散じゃ!」
真夜「待てこらー!」
純恋子「待てこらですわー!」
香子・涼「ていっ!」
香子と涼は本を投げた。
真夜・純恋子「ぐえー」
本の角が真夜と純恋子の額に刺さった。
涼「とりあえずプレゼントを渡して、退散じゃ!」
真夜「待てこらー!」
純恋子「待てこらですわー!」
香子・涼「ていっ!」
香子と涼は本を投げた。
真夜・純恋子「ぐえー」
本の角が真夜と純恋子の額に刺さった。
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/30(火) 06:22:20.02 ID:TBHiZHW10
「大丈夫ですか、お嬢さま!!」
「くそー!逃げられた!」
純恋子「心配いりませんわ…軽傷です。番場さんは?」
真夜「いててて…まあ、大丈夫だ。いったい何が頭に当たったんだ?」
真夜「これは真昼が欲しがっていた編み物の本じゃねえか!」
純恋子「こっちはお料理の本!」
真夜「俺たちの欲しいものをプレゼントしておいて、まんまと逃げだすなんて…」
純恋子「怖ろしい男ですわ、サンタクロース…」
真夜「ああ…だが、それだからこそやる気が増すってもんだぜ!」
純恋子「来年こそサンタクロースに勝ちましょう!」
「くそー!逃げられた!」
純恋子「心配いりませんわ…軽傷です。番場さんは?」
真夜「いててて…まあ、大丈夫だ。いったい何が頭に当たったんだ?」
真夜「これは真昼が欲しがっていた編み物の本じゃねえか!」
純恋子「こっちはお料理の本!」
真夜「俺たちの欲しいものをプレゼントしておいて、まんまと逃げだすなんて…」
純恋子「怖ろしい男ですわ、サンタクロース…」
真夜「ああ…だが、それだからこそやる気が増すってもんだぜ!」
純恋子「来年こそサンタクロースに勝ちましょう!」
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:42:52.79 ID:sk5AmOzA0
香子「誰だ!今回は簡単そうとか言った奴は?」
涼「香子ちゃんじゃろ・・・」
香子「正直、今回が一番困難だった気がする…」
涼「次は簡単じゃと良いんだが」
涼「香子ちゃんじゃろ・・・」
香子「正直、今回が一番困難だった気がする…」
涼「次は簡単じゃと良いんだが」
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:44:41.15 ID:sk5AmOzA0
香子「それにしても、あの二人、まだサンタクロースを信じてるとは驚きだったな」
涼「最近まで信じておった香子ちゃんには言われとうないだろうな」
香子「最近じゃない!大昔にはサンタがいない事を知っていた!」
涼「本当かな?」
香子「…」
香子(今日見た夢のようにサンタが来る事がなければ、本当に大昔にサンタがいないと思えただろうな…)
香子(あの事件のせいで、長らくサンタがいる事を信じる事になってしまった…)
香子(そういえば、あの時のサンタはいったい誰だったんだろう?やっぱりイレーナ先輩か、それともホームのシスターか…)
涼「香子ちゃん?」
香子「ああ、すまない。少しぼーっとしてた。仕事を再開しよう」
涼「最近まで信じておった香子ちゃんには言われとうないだろうな」
香子「最近じゃない!大昔にはサンタがいない事を知っていた!」
涼「本当かな?」
香子「…」
香子(今日見た夢のようにサンタが来る事がなければ、本当に大昔にサンタがいないと思えただろうな…)
香子(あの事件のせいで、長らくサンタがいる事を信じる事になってしまった…)
香子(そういえば、あの時のサンタはいったい誰だったんだろう?やっぱりイレーナ先輩か、それともホームのシスターか…)
涼「香子ちゃん?」
香子「ああ、すまない。少しぼーっとしてた。仕事を再開しよう」
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:46:01.61 ID:sk5AmOzA0
涼「次は誰かな~?」ゴソゴソ
『武智乙哉』
香子「えーと、武智が今いる場所ってどこだっけ?」
涼「確か、刑務所で服役中らしい」
香子「次も難しそうじゃないか…」
涼「愚痴を言ってもせんない事じゃよ…」
『武智乙哉』
香子「えーと、武智が今いる場所ってどこだっけ?」
涼「確か、刑務所で服役中らしい」
香子「次も難しそうじゃないか…」
涼「愚痴を言ってもせんない事じゃよ…」
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:47:19.45 ID:sk5AmOzA0
涼「何々、欲しいものは…」
『かわいい女の子♡』
涼「あやつらしいな…手に入れたら殺してしまいそうでちと怖いが」
香子「これまた難しいものを…」
涼「武智は保留して次に行こうか」
『かわいい女の子♡』
涼「あやつらしいな…手に入れたら殺してしまいそうでちと怖いが」
香子「これまた難しいものを…」
涼「武智は保留して次に行こうか」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:49:58.45 ID:sk5AmOzA0
涼「お次はと…」ゴソゴソ
『剣持しえな』
香子「剣持か…なんとなく難しくなそうだな」
涼「それって剣持が平凡って意味か?酷いの香子ちゃん。わしも同じ事思ったが」
『剣持しえな』
香子「剣持か…なんとなく難しくなそうだな」
涼「それって剣持が平凡って意味か?酷いの香子ちゃん。わしも同じ事思ったが」
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:50:35.27 ID:sk5AmOzA0
香子「えーと欲しいものは…」
『友達』
香子「…」
涼「何故、黙る?」
香子「いや、色々切実だなと思って」
涼「さて、どうやって剣持の欲しいものを解決しようか?」
香子「私のメールアドレスと電話番号を剣持に教えよう」
涼「真面目かっ!」
『友達』
香子「…」
涼「何故、黙る?」
香子「いや、色々切実だなと思って」
涼「さて、どうやって剣持の欲しいものを解決しようか?」
香子「私のメールアドレスと電話番号を剣持に教えよう」
涼「真面目かっ!」
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:52:03.42 ID:sk5AmOzA0
涼「武智と剣持の欲しいもの両方を解決する方法を思いついたんじゃが、どうだろうかの?」
香子「…私も思いついた。だけどまた困難な仕事になるな」
涼「ふふっ。困難であれば困難であるほど仕事のしがいがあるというもんじゃろ?」
香子「…まったく、お前はいつでも楽しそうだな」
涼「何でも楽しまんと、人生は損じゃよ香子ちゃん」
香子「…私も思いついた。だけどまた困難な仕事になるな」
涼「ふふっ。困難であれば困難であるほど仕事のしがいがあるというもんじゃろ?」
香子「…まったく、お前はいつでも楽しそうだな」
涼「何でも楽しまんと、人生は損じゃよ香子ちゃん」
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:53:14.91 ID:sk5AmOzA0
しえな(…暗い。いつの間にか寝ちゃってお母さんが電気消したのかな?)
しえな(そういえば、友達や恋人とクリスマスパーティーをする事もなく、一人ぼっちでクリスマスを終えるなんて寂しいって泣いて寝ちゃったんだったかな…)
しえな(黒組にいた時は楽しかったな…そりゃあ、怖い事もあったけど)
しえな(例えば、武智とか…)
しえな「えっ!武智!?」
しえな「武智が何でぼくの目の前にいるんだ!?」
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:54:00.91 ID:sk5AmOzA0
乙哉「むにゃむにゃ…えっ?何でしえなちゃんが?」
しえな「それはこっちの台詞だよ!お前は刑務所にいるはずだろ?」
乙哉「そうだよ、しえなちゃんがこんなとこにいるはずない。これは夢か」
しえな「なんだ、夢か」
しえな「それはこっちの台詞だよ!お前は刑務所にいるはずだろ?」
乙哉「そうだよ、しえなちゃんがこんなとこにいるはずない。これは夢か」
しえな「なんだ、夢か」
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:54:47.26 ID:sk5AmOzA0
しえな「夢なら、もっとマシな夢が見たかったよ…」
乙哉「あたしはしえなちゃんが夢に出てきて嬉しいけどね」
しえな「えっ///」
乙哉「ちょっと、寂しいと思ってたところだから」
しえな「…うん。本当はぼくも寂しかったし、武智に会えて嬉しい」
乙哉「あたしはしえなちゃんが夢に出てきて嬉しいけどね」
しえな「えっ///」
乙哉「ちょっと、寂しいと思ってたところだから」
しえな「…うん。本当はぼくも寂しかったし、武智に会えて嬉しい」
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:55:28.47 ID:sk5AmOzA0
乙哉「抱きしめてもいい?」
しえな「はっ///急に何言い出すんだよ!?」
乙哉「だって寒いし、温め合おうよ」
しえな「駄目だ駄目だ!」
乙哉「夢だし、いいじゃん」
しえな「…そうだな、夢だしいいか」
しえな「はっ///急に何言い出すんだよ!?」
乙哉「だって寒いし、温め合おうよ」
しえな「駄目だ駄目だ!」
乙哉「夢だし、いいじゃん」
しえな「…そうだな、夢だしいいか」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:56:20.81 ID:sk5AmOzA0
乙哉「それじゃあ、しえなちゃんこっちきて」
しえな「…うん」
ギュッ
乙哉「しえなちゃんの体、割と冷たい…」
しえな「冷え性なんだよ…武智は暖かいな///」
乙哉「何だか気持ち良くなってきた…おさげ切っていい?」
しえな「それは駄目だ」
乙哉「夢なんだからいいじゃん!」
しえな「夢でも何となく怖いんだよ!」
しえな「…うん」
ギュッ
乙哉「しえなちゃんの体、割と冷たい…」
しえな「冷え性なんだよ…武智は暖かいな///」
乙哉「何だか気持ち良くなってきた…おさげ切っていい?」
しえな「それは駄目だ」
乙哉「夢なんだからいいじゃん!」
しえな「夢でも何となく怖いんだよ!」
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:57:27.62 ID:sk5AmOzA0
乙哉「このまま寝ちゃおっか?」
しえな「…うん」
乙哉「目が覚めたら、あたし達さよならだね」
しえな「夢だからな」
乙哉「ちょっと切ないね…」
しえな「…今度、刑務所へ会いに行ってやるよ」
乙哉「本当!ありがとう、しえなちゃん!!」
しえな(夢だけど、悪くないクリスマスだったかもな…)
しえな「…うん」
乙哉「目が覚めたら、あたし達さよならだね」
しえな「夢だからな」
乙哉「ちょっと切ないね…」
しえな「…今度、刑務所へ会いに行ってやるよ」
乙哉「本当!ありがとう、しえなちゃん!!」
しえな(夢だけど、悪くないクリスマスだったかもな…)
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:58:34.85 ID:sk5AmOzA0
涼「ふぅー。流石に、刑務所に侵入して武智のとこまで剣持を連れていくのは骨が折れたわ」
香子「この後が一番大変だぞ。どうやって、剣持を刑務所から連れ出そうか?」
涼「別にこのままで良くないかの?」
香子「えっ」
涼「朝になって刑務所に関係の無い人間がいるとわかったら、後は刑務所の人間が剣持を家に戻すじゃろう。時間が無いし、仕方がない事じゃ」
香子「剣持は毎回、貧乏くじ引かされるな…」
香子「この後が一番大変だぞ。どうやって、剣持を刑務所から連れ出そうか?」
涼「別にこのままで良くないかの?」
香子「えっ」
涼「朝になって刑務所に関係の無い人間がいるとわかったら、後は刑務所の人間が剣持を家に戻すじゃろう。時間が無いし、仕方がない事じゃ」
香子「剣持は毎回、貧乏くじ引かされるな…」
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:01:23.44 ID:5SeTgCOF0
涼「さて、次は誰かの?」
香子「後は東と一ノ瀬の二人だろう?確か、二人で一緒に住んでるから一緒に見たらいいんじゃないか?」
涼「それもそうじゃな」
涼「にしても、結局二人一緒にプレゼントを渡してばっかりじゃったな」
香子「それだけ黒組の時に一緒の部屋にいた奴らの縁が深いという事なんだろう」
涼「わしと香子ちゃんもか?」
香子「…さあ、どうだろうな」
香子「後は東と一ノ瀬の二人だろう?確か、二人で一緒に住んでるから一緒に見たらいいんじゃないか?」
涼「それもそうじゃな」
涼「にしても、結局二人一緒にプレゼントを渡してばっかりじゃったな」
香子「それだけ黒組の時に一緒の部屋にいた奴らの縁が深いという事なんだろう」
涼「わしと香子ちゃんもか?」
香子「…さあ、どうだろうな」
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:02:26.84 ID:5SeTgCOF0
涼「さて、東と一ノ瀬の欲しいものは何じゃろう?」
香子「東はカレーじゃないか?」
涼「あはははっ!それはありうるのぅ!」
香子「一ノ瀬は何が欲しいか予想しづらいな」
涼「さて、お二人の欲しいものは…」ガサゴソ
香子・涼「これは…」
香子「東はカレーじゃないか?」
涼「あはははっ!それはありうるのぅ!」
香子「一ノ瀬は何が欲しいか予想しづらいな」
涼「さて、お二人の欲しいものは…」ガサゴソ
香子・涼「これは…」
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:03:02.11 ID:5SeTgCOF0
「この家に一ノ瀬晴がいるというのは本当か?」
「ああ、確かな情報だ」
「やれやれ、見つけるのに苦労させられたな」
「さて、さっさと仕事にとりかかろうじゃないか…」
涼「そこまでじゃよ」
香子「一ノ瀬は殺させない」
「ああ、確かな情報だ」
「やれやれ、見つけるのに苦労させられたな」
「さて、さっさと仕事にとりかかろうじゃないか…」
涼「そこまでじゃよ」
香子「一ノ瀬は殺させない」
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:04:17.78 ID:5SeTgCOF0
「!」
男のうち一人が香子と涼に気づくと、すぐさま拳銃を取り出した。
パーン!
「うっ!」
香子の撃った銃弾が拳銃を持つ男の右足を貫いた。
香子は崩れ落ちる男にのしかかり、男の身体を押さえ込んだ。
「ちっ」
涼「逃げても無駄じゃよ」
「ギャアアア」
逃げようとした男の身体に電流が流れ込む。
涼「罠を仕掛けておいたんじゃ」
男のうち一人が香子と涼に気づくと、すぐさま拳銃を取り出した。
パーン!
「うっ!」
香子の撃った銃弾が拳銃を持つ男の右足を貫いた。
香子は崩れ落ちる男にのしかかり、男の身体を押さえ込んだ。
「ちっ」
涼「逃げても無駄じゃよ」
「ギャアアア」
逃げようとした男の身体に電流が流れ込む。
涼「罠を仕掛けておいたんじゃ」
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:05:22.85 ID:5SeTgCOF0
涼「二人ともたいした腕じゃない暗殺者だったの」
香子「後は、走りにこいつらを引き渡せばいいか」
涼「腕を上げたのぅ香子ちゃん。見事にあやつの足を撃ち抜いた」
香子「…本当はあいつの腕を狙ったんだ」
涼「えっ」
香子「後は、走りにこいつらを引き渡せばいいか」
涼「腕を上げたのぅ香子ちゃん。見事にあやつの足を撃ち抜いた」
香子「…本当はあいつの腕を狙ったんだ」
涼「えっ」
75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:06:25.82 ID:5SeTgCOF0
香子「一ノ瀬も大変だな。黒組を卒業しても命を狙われているなんて」
涼「そういう運命を背負っておるんじゃろう…」
晴「今の音は何?銃声?」
涼「噂をすれば出てきよったな」
涼「そういう運命を背負っておるんじゃろう…」
晴「今の音は何?銃声?」
涼「噂をすれば出てきよったな」
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:09:23.56 ID:5SeTgCOF0
晴「何で神長さんと首藤さんがこの家の前に!?」
香子「欲しいものを書いただろ一ノ瀬?」
涼「わしらはおぬしの欲しかったもの、『ボディーガード』じゃよ」
香子「今夜限定だけだがな」
香子「欲しいものを書いただろ一ノ瀬?」
涼「わしらはおぬしの欲しかったもの、『ボディーガード』じゃよ」
香子「今夜限定だけだがな」
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:10:46.43 ID:5SeTgCOF0
家の中
兎角「コホン…コホン…」
涼「だいぶしんどそうじゃな、東」
香子「それで東の欲しいものは『風邪薬』だったわけだな」
晴「うん。なのに、兎角さん私を守るために休もうとしないから…」
涼「それで一ノ瀬の欲しいものは『ボディーガード』か」
香子「安心しろ。もう仕事はこれで終わりだし朝までお前らのボディーガードをしてやる」
晴「わー!ありがとうございます!神長さん!首藤さん!」
兎角「コホン…コホン…」
涼「だいぶしんどそうじゃな、東」
香子「それで東の欲しいものは『風邪薬』だったわけだな」
晴「うん。なのに、兎角さん私を守るために休もうとしないから…」
涼「それで一ノ瀬の欲しいものは『ボディーガード』か」
香子「安心しろ。もう仕事はこれで終わりだし朝までお前らのボディーガードをしてやる」
晴「わー!ありがとうございます!神長さん!首藤さん!」
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:12:50.68 ID:5SeTgCOF0
香子「風邪薬はこの家に置いていなかったのか?」
涼「わかった!風邪薬などカレーがあればいらん!とか言ったんじゃろう!」
香子「流石の東でもそこまでは…」
晴「『カレーは完全食だ!これさえ食べれば、薬などいらん!』って最初は言ったんだけど…」
香子・涼(本当に言ったんだ!!)
晴「そんなの駄目です!って無理やり晴が風薬を飲ませました。だけど、すぐには治らないから兎角さん『風邪薬が足らないんだ!もっとくれ!』って言って」
涼「あはははっ!東らしいの!」
香子「ぷっ!笑ったら酷いぞ首藤、東は真剣だったんだから」
晴「しーっ」
香子・涼「あっ」
兎角「…うぅ」
涼「わかった!風邪薬などカレーがあればいらん!とか言ったんじゃろう!」
香子「流石の東でもそこまでは…」
晴「『カレーは完全食だ!これさえ食べれば、薬などいらん!』って最初は言ったんだけど…」
香子・涼(本当に言ったんだ!!)
晴「そんなの駄目です!って無理やり晴が風薬を飲ませました。だけど、すぐには治らないから兎角さん『風邪薬が足らないんだ!もっとくれ!』って言って」
涼「あはははっ!東らしいの!」
香子「ぷっ!笑ったら酷いぞ首藤、東は真剣だったんだから」
晴「しーっ」
香子・涼「あっ」
兎角「…うぅ」
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:13:44.26 ID:5SeTgCOF0
兎角「…晴、起きていたのか?」
晴「うん。追加の風邪薬だよ」
兎角「そうか、すまないな晴…コホン」
兎角「これで晴を守れるな…」
晴「ありがとう、兎角さん。でもいいんだよ、今日は休んで」
兎角「しかし…ゴホッ」
晴「大丈夫だよ、ボディーガードをしてくれる人が現れたから」
兎角「ボディーガード?誰だ?」
晴「サンタさん!」
兎角「えっ!?」
晴「うん。追加の風邪薬だよ」
兎角「そうか、すまないな晴…コホン」
兎角「これで晴を守れるな…」
晴「ありがとう、兎角さん。でもいいんだよ、今日は休んで」
兎角「しかし…ゴホッ」
晴「大丈夫だよ、ボディーガードをしてくれる人が現れたから」
兎角「ボディーガード?誰だ?」
晴「サンタさん!」
兎角「えっ!?」
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:14:40.63 ID:5SeTgCOF0
香子「私達がサンタか」
涼「実際そうじゃろう。サンタをやるというのがわしらの今回の仕事なんじゃから」
香子「それにしてはいつもどおりの服装で、サンタっぽくないなと思ってな」
涼「なら、着てみるか?サンタの服」
香子「示し合わせたように準備万端だな…まあいいかな、今夜かぎりだ」
涼「そうこなくっちゃの!」
涼「実際そうじゃろう。サンタをやるというのがわしらの今回の仕事なんじゃから」
香子「それにしてはいつもどおりの服装で、サンタっぽくないなと思ってな」
涼「なら、着てみるか?サンタの服」
香子「示し合わせたように準備万端だな…まあいいかな、今夜かぎりだ」
涼「そうこなくっちゃの!」
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:15:37.63 ID:5SeTgCOF0
香子「スカートが短い!何でこんなに寒いのに足が出るのを着るんだ!」
涼「だって、その方が見る人間も喜ぶじゃろ」
香子「誰が見るんだ、誰が」
涼「わしじゃよ」
香子「…お前のも短いな。寒くないのか?」
涼「なら、暖めてくれるか?」
香子「い、嫌だ///」
涼「可愛い反応じゃなー」ニヤニヤ
涼「だって、その方が見る人間も喜ぶじゃろ」
香子「誰が見るんだ、誰が」
涼「わしじゃよ」
香子「…お前のも短いな。寒くないのか?」
涼「なら、暖めてくれるか?」
香子「い、嫌だ///」
涼「可愛い反応じゃなー」ニヤニヤ
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:17:18.18 ID:5SeTgCOF0
香子「うー!やっぱり寒いな。こんな事ならサンタの服を着るなんて言わなきゃ良かった」
涼「髭もつかるか?」
香子「そっちは遠慮しとく」
涼「暖かいぞ」
香子「髭って暖かいからつけるものなのか?」
涼「わしはつけるとするか」
涼「どうじゃ?似合うかの?」
香子「え!?」
香子「あの時のサンタさん!!?」
涼「髭もつかるか?」
香子「そっちは遠慮しとく」
涼「暖かいぞ」
香子「髭って暖かいからつけるものなのか?」
涼「わしはつけるとするか」
涼「どうじゃ?似合うかの?」
香子「え!?」
香子「あの時のサンタさん!!?」
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:18:54.33 ID:5SeTgCOF0
(サンタ「はい!香子ちゃんへのクリスマス・プレゼントじゃ」)
香子「あの幼少の頃に会った白髭のサンタさん!いや、見間違いだ!そうに決まってる」
涼「見間違いじゃないぞ。わしが香子ちゃんがちっちゃい頃に会ったサンタじゃ」
香子「そんな馬鹿な!身長はもっと大きかったぞ!」
涼「簡単な事じゃ。ブーツじゃよ」
香子「スカートじゃなくあの時はズボンだった!」
涼「あの時はさすがに寒過ぎてな、スカートは止めたんじゃ」
香子「年齢が…ああ、そうだ首藤はハイランダー症候群だった」
香子「あの幼少の頃に会った白髭のサンタさん!いや、見間違いだ!そうに決まってる」
涼「見間違いじゃないぞ。わしが香子ちゃんがちっちゃい頃に会ったサンタじゃ」
香子「そんな馬鹿な!身長はもっと大きかったぞ!」
涼「簡単な事じゃ。ブーツじゃよ」
香子「スカートじゃなくあの時はズボンだった!」
涼「あの時はさすがに寒過ぎてな、スカートは止めたんじゃ」
香子「年齢が…ああ、そうだ首藤はハイランダー症候群だった」
84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:22:08.79 ID:5SeTgCOF0
香子「そもそも、何故、幼少時の私へホームまで来てクリスマスプレゼントを渡したんだ?面識は無かっただろうに」
涼「イレーナに頼まれたんじゃよ。『首藤に頼みがある。このクリスマスプレゼントを私の後輩に渡して欲しい。仕事のせいで当分ホームに帰れないんだ』とな…」
香子「イレーナ先輩と知り合いだったのか?」
涼「ああ。昔の黒組で同室だったんじゃよ。あの時の黒組も色々と面白かったのぅ…あの時は誰が生き残ったんじゃったかな」
香子「ああもう!衝撃の事実!が次々と明かされて頭が痛くなってきた!」
涼「イレーナに頼まれたんじゃよ。『首藤に頼みがある。このクリスマスプレゼントを私の後輩に渡して欲しい。仕事のせいで当分ホームに帰れないんだ』とな…」
香子「イレーナ先輩と知り合いだったのか?」
涼「ああ。昔の黒組で同室だったんじゃよ。あの時の黒組も色々と面白かったのぅ…あの時は誰が生き残ったんじゃったかな」
香子「ああもう!衝撃の事実!が次々と明かされて頭が痛くなってきた!」
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:23:49.01 ID:5SeTgCOF0
香子「何で、その事を今まで教えてくれなかったんだ?」
涼「クリスマスに教えようかと思っての。ちょうどあの時のようにこうしてクリスマス・プレゼントを渡したかったんじゃよ」
香子「クリスマス・プレゼント?」
涼「はい!香子ちゃんへのクリスマス・プレゼントじゃ」
涼「クリスマスに教えようかと思っての。ちょうどあの時のようにこうしてクリスマス・プレゼントを渡したかったんじゃよ」
香子「クリスマス・プレゼント?」
涼「はい!香子ちゃんへのクリスマス・プレゼントじゃ」
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:29:52.79 ID:5SeTgCOF0
香子「綺麗に包装された箱に、紫色の可愛いリボン…」
香子「あの時と一緒じゃないか…」
香子「開けていいか?」
涼「どうぞ」
香子「中身も一緒のチョコレート…ぱくっ。やっぱりあの時のように美味しい…」
チョコレートを口にした香子の目には、涙がにじんでいた。
香子「ありがとう、首藤…」
涼「ああ、どういたしましてじゃ」
香子「あの時と一緒じゃないか…」
香子「開けていいか?」
涼「どうぞ」
香子「中身も一緒のチョコレート…ぱくっ。やっぱりあの時のように美味しい…」
チョコレートを口にした香子の目には、涙がにじんでいた。
香子「ありがとう、首藤…」
涼「ああ、どういたしましてじゃ」
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:34:06.85 ID:5SeTgCOF0
香子「実は私もクリスマスプレゼントを用意してある」
涼「香子ちゃんもか?珍しい!」
香子「珍しいとは何だ。私だって色々と首藤に色々と恩を感じてるからお礼をしたい気持ちがあるんだ」
涼「そうか、そうか。何かの?楽しみじゃな」
香子「どうぞ」
涼「わしが渡したプレゼントの包装紙によく似ておるな。開けてもいいか?」
香子「ああ」
涼「これは手袋!まさか、香子ちゃんが?」
香子「うん、編んだ…」
涼「嬉しいな…着けてもいいか?」
香子「うん…」
涼「暖かい…」
香子「良かった…」
涼「香子ちゃんもか?珍しい!」
香子「珍しいとは何だ。私だって色々と首藤に色々と恩を感じてるからお礼をしたい気持ちがあるんだ」
涼「そうか、そうか。何かの?楽しみじゃな」
香子「どうぞ」
涼「わしが渡したプレゼントの包装紙によく似ておるな。開けてもいいか?」
香子「ああ」
涼「これは手袋!まさか、香子ちゃんが?」
香子「うん、編んだ…」
涼「嬉しいな…着けてもいいか?」
香子「うん…」
涼「暖かい…」
香子「良かった…」
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 00:52:14.34 ID:5SeTgCOF0
香子「首藤が今まで、私にしてくれた事を思えば全然足らないかもしれない」
涼「そんな事ないぞ香子ちゃん…プレゼントを貰って嬉しいと思えた事なんて何年ぶりじゃろうな」
涼(クリスマスを一緒にすごす相手も何年もいなかったし、誕生日プレゼントをもらっても病のせいで嬉しいと思えなくなっておったからな…)
涼「凄く暖かい…ありがとう香子ちゃん」
そう言った涼の顔は満面の笑みを浮かべていた。
こんな彼女を見るのは香子にとって初めての事だった。
涼「そんな事ないぞ香子ちゃん…プレゼントを貰って嬉しいと思えた事なんて何年ぶりじゃろうな」
涼(クリスマスを一緒にすごす相手も何年もいなかったし、誕生日プレゼントをもらっても病のせいで嬉しいと思えなくなっておったからな…)
涼「凄く暖かい…ありがとう香子ちゃん」
そう言った涼の顔は満面の笑みを浮かべていた。
こんな彼女を見るのは香子にとって初めての事だった。
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 01:17:57.01 ID:5SeTgCOF0
涼「縁とは不思議なもんじゃな…。あの時プレゼントをあげた幼子と一緒の学校で学び一緒の部屋ですごすようになり、学校を退学した後も一緒に生きていく事になるとは…。まったく予想できなかった」
香子「まったくだな」
涼「香子ちゃんと会えて良かった…」
香子「…私も首藤に会えて良かった」
涼「あの時、プレゼントを貰ったのは香子ちゃんだけじゃなかったんじゃな」
香子「えっ!」
涼「わしも『出会い』というクリスマス・プレゼントを貰ったんじゃよ」
香子「…なら、私は二つもクリスマス・プレゼントを貰ってた事になるな」
涼「サンタさんは香子ちゃんを贔屓しすぎじゃの」
香子「良い子にしてたって事だろう」
涼「ふふっ、そうじゃの。あの時の香子ちゃんは可愛いかったからなぁ。もちろん今も可愛いが」
香子「来年もこうやって二人でクリスマスをすごしたいな」
涼「ああ、もちろんじゃとも」
香子「まったくだな」
涼「香子ちゃんと会えて良かった…」
香子「…私も首藤に会えて良かった」
涼「あの時、プレゼントを貰ったのは香子ちゃんだけじゃなかったんじゃな」
香子「えっ!」
涼「わしも『出会い』というクリスマス・プレゼントを貰ったんじゃよ」
香子「…なら、私は二つもクリスマス・プレゼントを貰ってた事になるな」
涼「サンタさんは香子ちゃんを贔屓しすぎじゃの」
香子「良い子にしてたって事だろう」
涼「ふふっ、そうじゃの。あの時の香子ちゃんは可愛いかったからなぁ。もちろん今も可愛いが」
香子「来年もこうやって二人でクリスマスをすごしたいな」
涼「ああ、もちろんじゃとも」
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 01:23:28.60 ID:5SeTgCOF0
ミョウジョウ学園のとある部屋
百合「ふふっ。みんな喜んでくれているようね。おかげで良いものが何組も見れたわ…」
鳰「あの…お楽しみのとこ悪いんですが理事長?」
百合「何かしら鳰さん?」
鳰「黒組卒業生へのクリスマス・プレゼントもいいっスけど、ウチのクリスマス・プレゼントは?」
百合「あっ!忘れてたわ!」
終わり
百合「ふふっ。みんな喜んでくれているようね。おかげで良いものが何組も見れたわ…」
鳰「あの…お楽しみのとこ悪いんですが理事長?」
百合「何かしら鳰さん?」
鳰「黒組卒業生へのクリスマス・プレゼントもいいっスけど、ウチのクリスマス・プレゼントは?」
百合「あっ!忘れてたわ!」
終わり
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 01:31:00.09 ID:5SeTgCOF0
思ったより長く時間がかかってしまい、
クリスマスどころか12月までに終わらせる事ができなくてすいませんでした。
行事ものはこういうのがあるから難しいんだろうなあ。
悪魔のリドルで行事ものといえば
兎角「星に願うは□□」
兎角「トリック オア カレー!」
というSSを昔に書いたので読んでくれたら嬉しいッス!
最後まで読んでくれてありがとうございました。応援レスにも感謝です。
クリスマスどころか12月までに終わらせる事ができなくてすいませんでした。
行事ものはこういうのがあるから難しいんだろうなあ。
悪魔のリドルで行事ものといえば
兎角「星に願うは□□」
兎角「トリック オア カレー!」
というSSを昔に書いたので読んでくれたら嬉しいッス!
最後まで読んでくれてありがとうございました。応援レスにも感謝です。
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 02:26:09.15 ID:0r1F+Jugo
乙っスよ~
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 07:20:59.23 ID:YW+MLsyAO
乙ッス
94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/06(火) 12:53:56.62 ID:jk2dLoDb0
乙ッス
ほっこりしマシタワー
ほっこりしマシタワー
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419517713/
Entry ⇒ 2015.10.05 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
しえな「ボクの居場所」
1: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 20:27:39.75 ID:MsR9K0rH0
悪魔のリドル 第4話付近のSSです。若干時間軸がズレてるところがあります。
兎しえですので完全妄想です。キャラ崩壊はご容赦ください。
地の文です。
中盤にエロ描写がありますのでご注意ください。
>>2から始めますのでよろしくお願いします。
兎しえですので完全妄想です。キャラ崩壊はご容赦ください。
地の文です。
中盤にエロ描写がありますのでご注意ください。
>>2から始めますのでよろしくお願いします。
2: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 20:28:11.54 ID:MsR9K0rH0
一人でいるのが楽だった。
誰かに気を遣う必要もないし、なにより誰かに自分を見られる事が無かったから。
視線を感じたりひそひそと話している声を聞くだけで、自分の話をしているんじゃないかと思ってしまうのが苦痛だった。
黒組ではそんな事は気にならなかったが、暗殺者と仲良くするのも何か気が引けた。
空いている教室を見つけて、昼休みの度に勝手に使っているが今のところは咎められるような事はない。
今日もそうして一人で過ごしていたら、唐突に扉が開かれた。
兎角「剣持?」
驚いてそちらを見てみれば、そこにはターゲットの守護者が立っていた。
誰かに気を遣う必要もないし、なにより誰かに自分を見られる事が無かったから。
視線を感じたりひそひそと話している声を聞くだけで、自分の話をしているんじゃないかと思ってしまうのが苦痛だった。
黒組ではそんな事は気にならなかったが、暗殺者と仲良くするのも何か気が引けた。
空いている教室を見つけて、昼休みの度に勝手に使っているが今のところは咎められるような事はない。
今日もそうして一人で過ごしていたら、唐突に扉が開かれた。
兎角「剣持?」
驚いてそちらを見てみれば、そこにはターゲットの守護者が立っていた。
3: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 20:35:04.67 ID:MsR9K0rH0
思わず立ち上がり、しえなは兎角に警戒の視線を向けた。
しえな「な、なんでここに……」
兎角「別に。空き部屋みたいだったから入ってみただけだ」
もしかしたら兎角も暇を持て余して一人になる場所を探していたのかもしれないと思うと体の力が抜けた。
しえな「そうか……」
元々座っていた椅子に戻ると、兎角はその隣に座った。
なんのつもりか分からないので警戒は解かない。
4: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 20:41:29.51 ID:MsR9K0rH0
が、兎角を相手に警戒をしたところでなんとかなるわけでもない事も分かっている。
兎角「いつもここにいるのか?」
しえな「うん……」
覗き込んでくる兎角の目は綺麗に澄んでいて、目付きの悪さに似合わない。
一ノ瀬晴を護るなどと言い出す前は、常に機嫌悪そうにしていたのに、今は少し寛容になってきている気がする。
教室での座席は前後だったが、あまり兎角を近くで見た事はなかったから、案外肌が白くて、しなやかな身体付きをしている事に気付いて数秒見惚れた。
兎角「……邪魔なら出て行く」
5: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 20:51:20.54 ID:MsR9K0rH0
いつもの仏頂面で、声色も普段通りだったが少しばかり気遣いが窺えた。
しえなが黙り込んだ事を、兎角を疎ましく思っているからだと勘違いしたようだ。
しえな「そんなことはないけど」
しえながそう答えると、兎角がそっと息を吐くのが聞こえた。
話し相手を欲しがるようなタイプではなさそうに見えたから、その反応が意外だった。
しえな「一ノ瀬はいいのか?」
始めから気にはなっていた。
6: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 20:58:09.72 ID:MsR9K0rH0
武智乙哉の件以来、兎角を見かける時には必ずと言っていいほど隣に晴がいた。
兎角「あいつは図書室で勉強してる。怪談もしてたけど」
昼休み中の図書室ならば、周りには無関係な生徒がいるから黒組は手が出せない。
それにしたって守護対象者を放置して本校舎まで戻ってくるなんて、よほど暇を持て余していたんだろう。
しえな「走りだな。教室でもそんな話してたから」
兎角「口を挟んでいたら黙っていろと怒られてしまった」
なぜ怒られたのか分からないといった顔をしている。
7: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 21:05:20.93 ID:MsR9K0rH0
しえな「追い出されたわけか。怪談の矛盾にいちいち突っ込むなんて野暮だな」
あんなものは子供騙しで、怪談に限らず噂話や都市伝説のようなものは話自体を楽しむものだ。
しかし兎角にはそんなものに縁がなかったのだろう。
兎角「そうなのか?」
意外と素直な返答に少し驚く。
怪談に突っ込むくらいだから捻くれているものだと思っていた。
しえな「そうだよ」
なんだか楽しくなってきて、しえなが笑って返すと、驚いたように兎角が目を丸くした。
8: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 21:13:28.49 ID:MsR9K0rH0
無愛想だとばかり思っていたが、目に感情が出やすいのかもしれない。
兎角「剣持もそういう話が好きなのか?」
しえな「怪談に限らず物語は好きだよ。東は?」
兎角「教養程度だ」
兎角が暗殺者の家系のエリートだという話は知っている。
きっと今まで必要なこと以外は省いて生きてきたのだろう。
趣味なんて持ち合わせてもいないだろうから、話を広げるなんて出来そうもない。
9: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 21:25:45.22 ID:MsR9K0rH0
しえな「そっか」
しえなが返した後はしばらく沈黙が続いた。
気まずいと思ってチラリと視線だけを兎角に向けると、彼女は何かを気にすることもなく、ただ自然にそこに座っていた。
一人でいる時の独りと、人の中にいる時の疎外感のある独りとでは、孤独感が大きく違う。
兎角はきっとどこにいても何も気にしないんだろうなと、そんな事をふと思った。
人目ばかり気にして、塞ぎ込んでしまう自分とは根本的に違う気がする。
兎角「そろそろ図書室に一ノ瀬を迎えに行かないと」
ため息を漏らして立ち上がると、兎角はしえなを見ずにそのまま背を向けた。
普通は相手を見て、軽く挨拶はするものだが黒組にそんな人間関係は必要ない。
10: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 21:32:51.94 ID:MsR9K0rH0
しえな「お付きの人みたいになってるな」
執事とかSPとか、そういったものを思い浮かべて少し皮肉を込めて笑ってみる。
兎角「お前達が狙ってるからな」
兎角はこちらに振り返ると、口の端をわずかに上げて笑ったが、その目は鋭い。
眼光に気圧されて背中にビリビリとした緊張感が走った。
やはり東兎角は只者ではないと思う。
兎角が出て行って、扉が閉まるとしえなは大きくため息をついた。
しえな「ボクはな何をしてるんだ……」
兎角といる間は、不思議と息苦しさや圧迫感はなくて、居心地は悪くなかった。
------------
11: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 21:39:27.44 ID:MsR9K0rH0
今日も兎角が顔を覗かせた。
しえながいる事は分かっているはずなのに、わざわざ来るという事は何か目的があるのかもしれない。
そう思って兎角から視線を外さずに警戒するが、昨日と同じ場所に座るだけだった。
しえな「今日も一ノ瀬は勉強?」
兎角「ああ」
自分からやってきたくせに素っ気ない返事。
警戒心なんて全く感じられないことがかえって不愉快だった。
12: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 21:48:09.47 ID:MsR9K0rH0
していないわけではないのかもしれないが、大いに余裕が見える。
ここに来たのも、しえなを大した敵ではないと判断しているのだろうから。
しえな「お前は勉強しなくていいの?」
来週行われるテストに向けて、黒組のメンバーも何人か通っているとは聞いている。
今は一人部屋になってしまったしえなには、静かな環境は事欠かないのであえて図書室に行く必要はない。
兎角「ある程度点が取れればいい」
13: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 21:52:24.19 ID:MsR9K0rH0
さらりと答える兎角に感心する。
しえな「自信があっていいな」
よほど勉強しなくてはそれなりの点数が取れるかなんて分からない。
若干憂鬱な気分になって思わずため息をつくと、兎角が顔を覗き込んできた。
兎角「勉強は苦手か?」
しえな「得意ではない。平凡なタイプだよ、ボクは」
兎角「普通でいいじゃないか」
しえな「嫌味か」
14: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 22:01:04.77 ID:MsR9K0rH0
しえなは自分が突出したもののない人間だと自覚はしていた。
兎角には得意な事や、彼女にしか出来ない事もたくさんありそうで卑屈な気分になってくる。
兎角「そんなつもりはない」
そうだろうなと思う。
嫌味なんて言うほどしえなに興味はないのだろう。
でももしかしたら、普通じゃない人間は普通の生活に何か思うところがあるのかもしれない。
学校に通って、友達を作って、恋愛をして。
そう考えながら、しえなは苦い思い出を呼び出してしまった事に気が付いて嘆息した。
15: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/10(水) 22:16:42.75 ID:MsR9K0rH0
しえな「普通ってなんだろうな。普通にしてるのにイジメられたりさ」
何も悪い事なんてしていないのに、例え何か理由があったとしても、それは理不尽に開始される。
兎角「お前達が一ノ瀬にしている事も同じじゃないのか」
強い口調ではなかったが、視線はまっすぐで、責められているような気持ちになった。
しえな「イジメと暗殺は違うだろ」
兎角「イジメでも人は死んでるんだろ」
しえな「そうだけど……」
18: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 20:55:55.67 ID:MdyviBOs0
兎角「一ノ瀬はお前に迷惑をかけたか?」
しえな「一ノ瀬が暗殺される理由はないかもしれないが、ボクが暗殺する理由はある」
兎角「理不尽なのは同じだろ」
しえな「……」
言葉を返す事が出来なかった。
人を殺そうとしている事が、何を理由にしても間違っているのは分かっている。
しかし自分がイジメをしているなんて認めたくはない。
19: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:05:51.75 ID:MdyviBOs0
兎角「……私が言える筋合いではないんだけどな」
しえなの焦りを感じ取ったのか、兎角は視線を緩めて引き下がった。
なんだか負けたような気分になって、しえなは奥歯をぐっと噛みしめる。
しえな「なんだよ。気を遣っているのか」
兎角「別に」
兎角が何を考えているのか分からなかった。
責めるわけでも、呆れている訳でもなさそうで、かといって興味が無いわけでもない。
20: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:13:26.14 ID:MdyviBOs0
少なくともなだめられているのは分かった。
悔しくなって強く視線を返すが、それに反応はない。
しえな「ボクだってお前と同じ暗殺者だ」
はっきりとそう伝える。
兎角はしえなを一瞥し、一瞬暗殺者の目をした後にふっと顔を背けた。
兎角「分かってる。そろそろ行くよ」
時計を見れば昨日兎角が去って行ったのと同じ時間になっていた。
時間を気にして適当に切り上げられたのかと思うと腹立たしかったが、それが自分の現状だと思い知る。
去って行く兎角に声もかけられずに、ただ背中を見送る事しか出来なかった。
-------------
21: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:21:09.08 ID:MdyviBOs0
つい先日までは人がいたはずの窓際のベッドに目を向ける。
絡み方がしつこいところはあっても、人懐っこくて正直なタイプだったから別に嫌いだとは思っていなかった。
シリアルキラーだと知った時は驚いたが、性的快楽を求める相手が誰でもいいわけではないだろうし、もう少し一緒に過ごすのも悪くなかったかもしれない。
ただし、風呂には絶対に一緒に入りたくはなかった。
そんな風に考えながら、この黒組に一体何を求める気だろうかと苦笑する。
時間を見ながらそろそろ大浴場に行こうと思い、部屋の扉を開けるとちょうど人が通りかかったところだった。
晴「あっ……!」
22: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:27:04.43 ID:MdyviBOs0
晴の姿が見えて、扉がぶつかりかけた事に気が付く。
しえな「ごめ……!」
謝ろうかと顔を出すと、晴としえなの間に兎角が入り込み、ナイフを取り出すのが見えた。
しえな「うわわっ!待て!事故だ!」
攻撃的な兎角を前に、しえなは慌てて扉を盾にして身を隠した。
顔だけ覗かせて兎角と目を合わせると、彼女の険しい目付きは気が抜けたように緩くなった。
兎角「なんだ、剣持か」
23: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:33:34.02 ID:MdyviBOs0
しえな「なんだとはなんだ。ここは5号室なんだからボク以外誰がいるんだよ」
兎角がナイフをしまうのを確認して部屋の外へ出る。
兎角「部屋番号なんていちいち見ていない」
庇うように晴に添えられた手を見ながら、しえなは兎角がどれだけ晴を大事にしているかを知る。
晴「ごめんね、しえなちゃん」
しえな「いや、ボクが一ノ瀬を驚かせてしまったんだし」
片手をひらひらと振って軽く詫びると、晴が小さく「ほら、兎角さんも謝って」と兎角を小突いた。
24: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:43:56.30 ID:MdyviBOs0
兎角「こいつもお前の命を狙ってる暗殺者だぞ。いつ攻撃してくるかなんて分からないだろ」
しえな「予告票も無しに不意打ちなんかしないよ!」
ルールがある以上はそれに従うつもりでいる。
なによりルールを破ってしまったら報酬が得られなくなってしまうのだから。
晴「もー……兎角さん、なんでいつも喧嘩腰になっちゃうの?」
通常であれば兎角の気性が荒いように見えてしまうが、晴の立場を考えてみるとそちらの方がおかしいと分かる。
どうしてターゲットがそんな心配をしているのか不思議でしょうがない。
25: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:50:08.04 ID:MdyviBOs0
晴に怒られた兎角は拗ねたように眉根を寄せていた。
そんな顔を見るのは初めてだったから、驚くと同時に軽く笑ってしまった。
兎角「なんだ」
しえな「いや。お前、そんな顔するんだなって」
兎角「そんな顔って……」
自分では気付いていないのかもしれない。
26: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:56:23.85 ID:MdyviBOs0
初めて会った頃の、誰にでも噛みつくような態度はどこへいったのだろうか。
しえな「じゃあ、ボクはお風呂に行ってくるから。おやすみ」
そう言って軽く手を振ると、晴も愛想よく手を振り返してくれた。
兎角は相変わらず無愛想なままだったが、晴と一緒にいる時の一面が見られたのは収穫だった。
何に対しても動揺なんてしなさそうなのに、やはり晴に関する事なら感情的になってしまうようだ。
武智乙哉の時も、天井から降りてきた兎角は切羽詰まった様子で詰め寄ってきた。
27: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/11(木) 21:59:46.97 ID:MdyviBOs0
もし晴を暗殺する手段を決めるなら、弱みを見つける必要がある。
どう考えても正面きって相手をするのは無理だ。
しえな「そういえば……」
少し歩いて、ふと後ろを振り返る。
兎角と晴の姿はもう見えなかった。
しえな「なんであいつ、ボクだって分かった瞬間にナイフを下ろしたんだろう……」
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34: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/12(金) 23:57:16.10 ID:lmAB/ldz0
晴「兎角さん、しえなちゃんと仲良いんですか?」
兎角が扉を閉めると、先に部屋に入った晴がこちらへと振り向いた。
兎角「そんなわけないだろ」
双方暗殺者を相手にして何を言い出すのかと思ったが、晴は暗殺者だと分かった上でこの部屋に犬飼伊介を呼んでいた。
武智乙哉に対しても、出来る事なら仲良くなりたいと言っていたのだから、今更どうしようもないのかもしれない。
晴「しえなちゃんが部屋から出てきた時、なんだ剣持か、って言ったでしょ」
兎角は晴の目の前を通り過ぎ、自分のベッドへ腰掛けた。
35: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:08:38.38 ID:3Z2rwvsF0
兎角「だからどうした」
分かりやすくめんどくさげにため息をついてみる。
晴はそれを気にするような態度もなく続けた。
晴「しえなちゃんとよく顔を合わせるって事だよね」
そう指摘する晴の顔は嬉しそうだった。
兎角「……」
確かに考えてみれば、しえなの顔を見た瞬間に力が抜けたのは、昼休みのイメージが重なったからかもしれない。
36: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:12:44.63 ID:3Z2rwvsF0
晴「それに、しえなちゃんの声だけで警戒解いたじゃない。手に予告票や武器を持ってたかもしれないよ?」
兎角「……不注意だった。すまない」
そう言われて初めて気が付いた。
本来なら晴を下がらせて、安全が確保されるまでは警戒を解くべきではなかった。
申し訳なさに俯くと、晴が兎角の隣に座った。
晴「そういうことじゃなくって。友達じゃないの?」
兎角「違う。時々話をするんだ。見慣れた顔になったから油断してたのかもな」
昼休みの事を考えながら、感情を隠す気のないしえなの挙動を思い出す。
37: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:17:00.84 ID:3Z2rwvsF0
驚いた時には驚いた顔をするし、警戒する時には警戒した視線を向けてくる。
晴のように素直に声を上げる事はないが、分かりやすいところは似ているかもしれない。
晴「どんな話してるの?」
兎角「雑談だ。特に理由はない」
晴「理由もないのにしえなちゃんと話すんですか?兎角さんが?」
兎角「普通、雑談に理由なんかないだろ」
晴「そうですけど……」
38: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:23:09.20 ID:3Z2rwvsF0
兎角には晴の言いたい事が分からない。
晴は不思議そうな顔で考え込む仕草を見せると、続けて兎角を見てにこりと笑った。
兎角「なんだよ」
晴「いえ。明日も勉強頑張らなきゃね」
ぐっと拳を握り、気合を入れるようなポーズを取った後、晴は洗面所に入っていった。
また明日も図書室に行くのかと思うのと同時に、自分の行き先もすでに決まっていた。
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39: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:30:39.84 ID:3Z2rwvsF0
電話がかかってきた。
互助会の友達。
久しぶりだったのに話の内容は任務の進捗だけだった。
興味本位で色々と聞かれたが、黒組もまだ始まったばかりで大した話はできない。
話を続けるのも億劫になってきた頃、兎角がやってくるいつもの時間になった。
予想通り扉は開かれ、無愛想な美人が入ってくる。
兎角「……」
40: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:39:06.00 ID:3Z2rwvsF0
しえなが電話中だと気が付くと、扉を閉めてその場に佇んでいた。
どうするべきかと迷っているのかもしれない。
しえな「あ、ごめん。そろそろ……うん。じゃあね」
適当なところで電話を切ると、しえなは兎角に目を向けた。
兎角「別に切り上げる必要はなかったのに」
通話をしている時は居心地悪そうにしていた兎角が、安心したように目を細めて歩いてくる。
姿勢良く席に座る姿だけで、鍛えられた体の様子が窺えた。
41: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:45:06.16 ID:3Z2rwvsF0
こんな相手と戦わなければならないんだから嫌になる。
しえな「いいんだ。少し、催促されただけだから」
兎角「一ノ瀬の事か?」
しえな「うん……」
兎角「互助会なんだってな」
兎角がそんな事まで知っているとは思っていなくて、どきりと胸の奥がざわついた。
考えてみれば、暗殺のエリートならそのくらいの情報を持っていてもおかしくはない。
42: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:49:32.25 ID:3Z2rwvsF0
しえな「……あぁ」
兎角「命令されてきたのか」
しえな「自分の意志だよ」
しっかりとこちらを見据えてくる兎角の目は、冷たく澄んでいた。
しえなも視線を返すが、彼女の眼光に比べて自分の目は濁っている気がしてならなかった。
兎角「私が言えたことではないのは分かっているが、人に暗殺をさせるようなものがまともな互助会だと思ってるのか」
咎めるような、諭すような、それでいて淡々とした口調。
43: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:55:12.74 ID:3Z2rwvsF0
決して強い感情ではなかったが、今までに兎角からは聞いたことのない、訴えかけるような声が印象的だった。
しえな「そんなの関係ない。ボクがみんなのためにそうしたいって思ったんだ」
あそこには辛い時に支えてくれた人がいる。
互助会のためならなんでもやると決めてここへ来た。
兎角「お前の友達は、自分の為に剣持が人を殺すことを受け入れているのか」
少し声のトーンが下がる。
真剣な眼差しに気圧される感覚があったが、なんとかそれには耐えられた。
44: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 00:59:19.67 ID:3Z2rwvsF0
しえな「どういう意味だよ」
無意識に拳に力が入るのを感じた。
わずかに眉根を寄せて苛立ったような表情を見せる兎角。
兎角「そいつらの神経を疑うと言っているんだ」
かっと頭に血が上るのが自分でも分かった。
次の瞬間には机を強く叩いて立ち上がっていた。
しえな「そんなの東だって一緒だろ!一ノ瀬の為にお前はボクらを殺すんだから!」
45: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 01:03:34.21 ID:3Z2rwvsF0
兎角「殺す必要はない。私の目的は一ノ瀬を護ることだ」
怒鳴るしえなとは対照的に、兎角は静かな声ではっきりと告げた。
その声には強い意志が込められていて、後ろ暗い気持ちのあるしえなには分が悪い事は分かっていた。
しえな「それでも殺す可能性はあるんだ。それを一ノ瀬は平気で受け入れているんだろ。なにが違うんだよ」
兎角「平気なわけじゃない。自分が生きるための手段だ。それに一ノ瀬がどう思っていようと私には関係ない」
しえな「ボクだってそうだ。ボクはボクの居場所を守りたいだけだ」
それは紛れも無い、自分自身の意志だった。
46: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 01:07:00.83 ID:3Z2rwvsF0
兎角は数秒黙り込むと、しえなへの視線を緩めた。
兎角「本当にそいつらは剣持の居場所なのか」
しえな「そうだよ。一人で苦しんでいたボクを助けてくれたんだ」
手に持つ携帯電話を眺めながら、メールの内容や、会話を思い出す。
傷の舐め合いのようなものかもしれないが、今の自分にとってはそのくらいの事しか支えにはならない。
兎角「……そうか。それを否定しているわけじゃない。でも手段があまりに救われないだろう」
47: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 01:10:01.02 ID:3Z2rwvsF0
暗殺者が吐くセリフだろうかと、何か言い返してやるつもりで顔を上げるが、しえなはそこで押し黙った。
目を伏せる兎角から優しい空気を感じた。
兎角が自分を心配している事に気付いて、しえなは戸惑い、言葉をなくした。
しえな「……放っておいてくれ。ボクの決めたことだ」
突き放すような言葉しか出てこなくなって、しえなは兎角から目を逸らす。
椅子に座ると、俯いたまま顔を上げる事が出来なくなっていた。
48: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 01:13:38.90 ID:3Z2rwvsF0
兎角「時間だ。もう行くよ」
気まずくなったのか、もう嫌になってしまったのか、兎角は部屋を出て行った。
しえな「なんだって言うんだよ……!」
扉が閉まり、兎角の気配が消え去るとしえなは自分の襟元をぐっと掴んだ。
ひどく胸が痛む。
時計はまだ、いつもよりずっと早い時間を指していた。
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49: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:00:32.12 ID:3Z2rwvsF0
しえな「もう来ないかと思ってた」
同じ時間、同じ場所、向かい合う距離。
またこの状況になるなんて思っていなかった。
兎角「どうして?」
しえな「呆れたかと思って」
あんな風に言い合ったのに、何事もなかったみたいに入ってくる兎角が何を考えているのか全く分からなかった。
51: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:33:18.39 ID:3Z2rwvsF0
兎角「私はお前が怒ってると思ってたけどな」
しえな「じゃあなんで来たんだよ」
怒っている相手になぜ会いに来るのかと、ますます疑問が膨らむ。
兎角はいつもと同じようにしえなの隣に座っている。
兎角「日課だからじゃないか」
そう言う兎角の顔は至って真面目で、冷めた目元はやはりいつもと変わらない。
まるで無意識のうちにここへ来たような言い方だった。
52: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:35:34.07 ID:3Z2rwvsF0
しえな「なにそれ。お前、そんな冗談言うんだな」
どう反応していいか分からずに、素のまま返すと兎角が困ったように頬を掻いた。
兎角「別に冗談で言ったわけじゃないけど……。邪魔なら戻る」
兎角は立ち上がり、しえなに背を向けた。
しえな「お、おい。待てって……」
慌てて兎角の後を追って声をかけると、兎角が驚いたように振り返った。
兎角「剣持……?」
53: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:38:34.88 ID:3Z2rwvsF0
しえなは兎角のそばに寄り、目を伏せた。
少し手を伸ばせば十分に彼女の手に触れられる距離。
しえな「怒ってないよ。少し意地になってた。ボクだって、互助会がまともだなんて思ってないし、ボク自身を正当化する気もない。一ノ瀬を理不尽に暗殺しようとしているのも分かってる」
昨日は指摘されたのが気に入らなくて、自分の中で整理も出来ずに当たり散らしただけだった。
それでも目的は果たさなくてはならない。
みんなのために出来ることがあるなら喜んでやるつもりだった。
しかし、その捌け口である一ノ瀬晴にはなんの落ち度もない。
54: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:44:05.66 ID:3Z2rwvsF0
拳を強く握りしめると、手の平に爪が食い込むのを感じた。
兎角「……あまり思い詰めるな」
兎角の声は低く、優しかった。
目の奥が熱くなるが、ここで甘えるわけにはいかない。
人に優しくされる事に慣れていないだけだと言い聞かせて、頭に残る兎角の声を塗り潰す。
しえな「事実だよ。ボクは一ノ瀬を殺す事を選んだ。自分のことばかりで、一ノ瀬の事なんて考えてはいない」
兎角「暗殺者が相手の事情なんて考えるものか」
55: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:50:36.71 ID:3Z2rwvsF0
しえな「でもイジメが嫌いだなんて、矛盾してる」
もうどうしていいか分からなくて、頭を掻きむしりたくなるのをぐっとこらえた。
自身を両腕で抱いて歯を食いしばる。
しかし自分にはそれしか道がない事も分かっていた。
覚悟は決めなくてはならない。
兎角「もう考えなくていい」
正面から兎角が近づいてくる気配を感じ、顔を上げる間もなく、次の瞬間には抱きしめられていた。
56: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:53:55.55 ID:3Z2rwvsF0
驚きに体が硬直する。
殺されるんじゃないかとほんの一瞬考えたが、兎角の腕はしえなを優しく包んでいた。
数秒ほどで拘束は弱まり、密着した体が離れる。
ふと顔を上げると、兎角の顔が目の前にあった。
兎角から近付いてくるのを感じて目を閉じそうになる。
力が抜けてずり落ちた指先が、机に触れてこんっと小さな音を立てた。
兎角「あ……、すまないっ」
はっと我に返った兎角が大袈裟なくらいに身を引いた。
57: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/13(土) 23:57:16.67 ID:3Z2rwvsF0
戸惑ったように口元を手で押さえ、視点が定まっていない。
明らかに動揺している。
しえな「お前……ボクが好きなのか?」
率直に尋ねてみる。
回りくどく確認したって、時間と神経の無駄遣いだ。
兎角「は……?」
しえな「今キスをしようとしたんじゃないのか」
58: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 00:00:12.68 ID:18iRsMKw0
兎角は口元に置いた手を離し、しえなから体をずらして少し考え込んだ。
自分の行動の話なのに、何をそんなに迷っているのだろうかと思いながら、しえなは兎角の答えを待った。
兎角「……分からない。衝動的に動いてしまったから」
頼りない返答に溜息が漏れる。
しえなは兎角に身を寄せて、首筋に軽く噛み付いた。
兎角「け、剣持——!?」
しえな「抵抗するなよ。ボクの方が力弱いんだから」
耳元で息を多めに含ませて囁くと、兎角の体がぴくんと震えた。
59: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 00:03:10.79 ID:18iRsMKw0
続けて鎖骨のラインを指でなぞる。
兎角「なにを……っ」
しえな「いいから大人しくしてろ」
ネクタイを解き、シャツのボタンを外しながら体に口付けていく。
その度に兎角の体は反応し、行き場のない手はしえなのブレザーの裾を掴んでいた。
兎角「ぅっ……あ……」
兎角がもし本当にしえなを好きなのだとしたら、一ノ瀬晴の暗殺にこんなに有利な事はない。
60: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 00:08:08.92 ID:18iRsMKw0
暗殺に対する葛藤は今でも心を締め付けているが、それでも目的は果たさなければならない。
しかし今は兎角の感度の良さに、触れる事の楽しみを感じていた。
しえな「やっぱり、体付きがしっかりしてるんだな」
腰の辺りを撫で、背中に手を回す。
緩んだ部分がなくて、筋肉の付き方にも無駄がない。
素早さ重視の、細身でしなやかな体。
代わりに女性としての色気はあまりないようだが。
それでも引き締まったその体をなぞるだけで十分楽しむ事は出来た。
61: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 00:11:32.96 ID:18iRsMKw0
兎角が「やっ……めろ……っ」
体に触れるごとに兎角の声が跳ねる。
しえな「気持ち悪い?」
顔を上げて尋ねると、兎角は顔を赤くした。
兎角「そういうわけじゃ……っ」
当たり前だが、こんな兎角は初めてで、こちらを見る素直な目は驚くほどに綺麗だった。
しえな「じゃあ我慢して」
62: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 00:17:08.10 ID:18iRsMKw0
強引に行為を進め、しえなは兎角の胸に触れた。
下着を外し、現れた敏感な部分に口付けて舌で押し込む。
兎角「んっ……はっ……ぁ」
刺激に耐えられないのか、兎角は耳元に頭を寄せ、しえなの肩に顔を埋めた。
息遣いや、わずかに漏れる声が脳に響く。
しえな「東……」
耐える息遣いの中に混じった、女の子らしい声に興奮している事を自覚する。
66: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 19:12:51.83 ID:18iRsMKw0
しえなは兎角の下半身に手を伸ばした。
兎角「な、……どこ触っ……!」
下着の隙間から指を差し込み、大事な部分にあてる。
兎角「ぁっ……」
兎角の手がしえなの腕を掴む。
緊張のせいかまだ濡れてはいなかったが、穴の周りを撫でると中から体液が少しだけ溢れてくるのが分かった。
しえな「指入れるよ」
67: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 19:22:55.28 ID:18iRsMKw0
そう宣言して、指先を小さな穴に差し込んだ。
締め付けてくる肉壁の温かい弾力が気持ちよかった。
しかししえなの感覚とは逆に、兎角の体はこわばっている。
兎角「っ……!!」
しえな「痛いのか?」
加減がよく分からない。
いくらも入っていないはずなのに。
68: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 19:29:04.35 ID:18iRsMKw0
兎角の手に力が入り、痛いくらいに腕を握られている。
それでもきっと彼女が感じている痛みの方がずっと大きい。
しえな「力抜いて。余計痛くなるぞ」
兎角の様子に合わせて指の動きを止めているが、落ち着く気配はない。
暗殺者の訓練の方がよっぽど辛そうなのにと思いながら、兎角の女性の部分がとても愛しく感じた。
しえな「ほら、もう抜くから」
兎角「ぅっ……く……」
69: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 19:33:15.02 ID:18iRsMKw0
指を引き抜くと兎角の体が崩れ落ちそうになり、しえなはそれを支えた。
しえな「大丈夫か?」
上気した兎角の頬が首元に触れる。
余裕ぶった警戒心なんて、今はどこにもない。
触れた肌に気を取られそうになりながらもなんとか冷静に兎角を抱きとめ、このまま自分への気持ちを利用する方法を考えてみる。
兎角「あぁ……」
頼りない様子で自分の足で体を支えると、兎角はしえなの体から離れた。
二人の間に空気が入り込み、その温度はとても冷たく感じられた。
70: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 19:39:37.72 ID:18iRsMKw0
兎角は怒るわけでもなく、恥ずかしがるわけでもなく、乱れた服を整えている。
しかし、目を合わせないのはやはり照れているんだろうと思う。
しえな「少し抱きしめていい?」
これは鎖だ。
離れていく温もりと一緒に、兎角の想いが解けていかないように。
非力なしえなが目的を達成するためには、作戦とシナリオが必要だった。
兎角の気持ちを利用してでも任務は遂行しなくてはならない。
71: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 19:47:47.53 ID:18iRsMKw0
兎角「構わないけど……」
そう兎角が答えた時、しえなの中で胸が高鳴るのを自分でもしっかりと感じていた。
いつも平気で目を合わせて来るくせに今はしえなから少しだけ視線をずらしている。
平静を保とうとする不器用な仕草が可愛らしくて、しえなの心には罪悪感が湧き上がっていた。
しえな「時間は?」
兎角「もう少し、ある……」
もう一度感じた兎角の体温に、心が溢れそうになるのをしえなは必死で抑え込んでいた。
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72: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 19:56:43.04 ID:18iRsMKw0
遅い時間に、扉をノックする音が聞こえた。
点呼はもう終わったし、何か通達でもあるのだろうかと、しえなは扉に向かった。
しえな「はい……って、何してるんだ?」
扉を開いた先には兎角の姿があった。
兎角「入っていいか?」
しえな「あぁ……」
兎角を招き入れた後、廊下に目を向けるが、そこには他に誰もいなかった。
73: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:06:29.43 ID:18iRsMKw0
しえな「一ノ瀬は?」
兎角「部屋にいる」
しえな「一人にして大丈夫なの?」
扉を閉め、部屋に奥に進む兎角を追う。
興味ありげに部屋を軽く見回すと、兎角は立ち止まってしえなに体を向けた。
兎角「なにかあれば連絡するように伝えてある」
しえな「それにしたってなぁ……」
74: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:12:22.57 ID:18iRsMKw0
今の時間帯は人の多い場所なんてない。
昼休みのように黒組ルールを利用するのは難しいだろう。
しえな「……どうした?」
兎角がベッドや洗面所の方をじっと見ているのが気になった。
それにつられてしえなも同じ場所へと目を向けると、兎角が唐突に動いた。
咄嗟に反応する事が出来ず、両手首を掴まれ、壁に背中を押し付けられる。
しえな「ぃたっ……!!」
75: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:18:08.03 ID:18iRsMKw0
兎角「大人しくしてろ」
大人しくも何も、抵抗ならもうとっくに始まっていたが、腕なんてビクともしないし、威圧感があり過ぎて足も動かなかった。
隙が全くない。
下手に抵抗して痛い思いはしたくなかった。
しえな「ぅひゃっ……!?」
いきなり首筋に鼻先を押し付けられて、驚きとくすぐったさにしゃくり上げるような声を上げてしまった。
兎角「……変な声を出すな。こっちが驚く」
76: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:27:16.56 ID:18iRsMKw0
しえな「うるさいっ。不意打ちなんだからしょうがないだろ!」
兎角「じゃあもう驚かないな」
兎角はしえなの首と肩に口付けた。
しえな「お、おいっ、な……ぁっ!」
首に兎角の舌が這うのを感じる。
ぬるい感触に体が反応してしまう。
しえな「いきなり何をするんだ!」
77: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:35:05.96 ID:18iRsMKw0
抗議をするが返事はない。
しかし手首を押さえ付ける力が緩んだので、しえなはほっと息を吐いた。
しえな「どうし……」
声を掛けようとしたその時、兎角がしえなの体を抱えてベッドの方へ歩き出した。
しえな「えぇえええ!?」
兎角「暴れるな。落ちるぞ」
しえな「女が人一人抱えるなんてどんな力してるんだよ!?」
兎角「ちゃんと鍛えてるからだ」
78: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:40:56.43 ID:18iRsMKw0
それは昼に触れた時に気付いていた。
きっと彼女には力があるし、動きも素早くて、武器の扱いにも慣れている。
生活の一つ一つが一般的なものとは全く違うのだろう。
感心している間に、しえなはベッドに寝かされ、兎角が上から覆いかぶさってきた。
しえな「へ……?」
兎角はしえなの服に手をかけ、ボタンを外した。
しえな「ま、待って!お前これレイプだろ!?」
兎角「昼にあんなことしたお前が言うのか……」
79: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:46:24.38 ID:18iRsMKw0
ため息まじりに応える兎角の顔は今までに見た事がないくらい呆れていた。
忘れていたわけではないが、返す言葉がなくて口ごもると、兎角は引き続きしえなの服を脱がせにかかった。
兎角「嫌がってくれた方が興奮するからいいけど」
しえな「へ、変態!」
兎角「冗談だ」
兎角はしえなの鎖骨に軽く歯を立てた後、優しく舌でなぞった。
口付けられた場所に兎角の熱い吐息を感じる。
80: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:51:12.58 ID:18iRsMKw0
しえな「ぅ……、ふぁ……」
ぞくぞくと背筋が震える。
兎角「キスしていい?」
こんな事までしておいて、今更そんな事を聞いてくるのかと思う。
兎角なりの気遣いなのかもしれない。
しえな「……ダメだ」
兎角「どうして?」
81: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 20:56:57.68 ID:18iRsMKw0
しえな「お前は敵だから……」
兎角「どう関係があるんだ?」
理由を言いたくなくて、少しだけ黙ると兎角が心配そうな顔で覗き込んできた。
無愛想だと思っていたのに、野良猫でも懐いてしまえば可愛いところが見られるものだ。
しえな「……好きになっちゃうだろ……」
絞り出した声は少しかすれていた。
胸が苦しくて、息が詰まりそうになる。
82: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 21:03:31.66 ID:18iRsMKw0
兎角はしえなの様子を見ながら目を丸くしていた。
兎角「私はお前が好きだけど、お前もそうなんじゃないのか」
しえな「さらっと自意識過剰な告白をするんだな……」
これだけ苦しい思いをしている自分が馬鹿みたいだった。
兎角「剣持は好きじゃない相手にあんな事をするのか?」
しえな「暗殺者は殺したいから殺すわけじゃないだろ」
兎角「……確かにそうだな」
こんな馬鹿みたいな屁理屈に納得するなんて思っていなかった。
83: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 21:09:23.21 ID:18iRsMKw0
兎角「じゃあ好きになればいい」
しえな「すごいなお前」
納得したんじゃなくて、始めから聞く気がなかったらしい。
少しも引き下がる気配のない兎角の強引さが羨ましく思えた。
それでも顔を近付けてくる動作は緩慢で、逃げる隙は与えてくれている。
しえなはその隙には気付かない振りをした。
唇が重なって、数秒静止した後兎角から離れていった。
84: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 21:16:12.08 ID:18iRsMKw0
兎角「……好きになりそうか?」
そう聞いてくる兎角の顔は赤くて、不安そうに瞳を揺らしている。
自信があるんだかないんだか分からない子だ。
しえな「いや、まだ……」
兎角「じゃあもう一回……」
兎角がそう言うのを分かって嘘をついた。
もう一度。
出来るならばもっとたくさん。
何度でもキスをしたい。
86: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 22:15:29.51 ID:18iRsMKw0
本当はもう心臓の鼓動が体を突き破ってきそうなくらい兎角を好きになっていた。
それは今のキスからではなくて、もっと前から。
しえな「ん……ふ……」
兎角の舌がしえなの口内に進入してくる。
それに応えて舌を差し出すと、唇で舌を吸われた。
ちゅ、という音が聞こえて恥ずかしくなる。
何度か舌を絡ませていると、胸の先と下腹部が疼いてくるのを感じた。
87: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 22:19:14.37 ID:18iRsMKw0
そのタイミングを見計らったみたいに、兎角の手がしえなの体をなぞった。
しえな「んっ……」
腰に指先が触れると、勝手に体が震えた。
しえな「東の手、冷たいよ……」
兎角の手を取り、指を握るとその冷たさが伝わってきた。
さっきまでは触られても冷たいなんて思わなかったのに。
しえな「まさか、緊張してる?」
88: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 22:26:05.90 ID:18iRsMKw0
兎角「……」
意外だった。
いつも平気そうな顔をしたから。
しえな「全部余裕なんだと思ってた」
昼休みだって、あんな事をしたのに大きく動揺はしなかった。
今の告白にしても、こちらの都合なんて構いもしない。
そんな風に思っていたから、今の兎角に少し意地悪をしたくなった。
89: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 22:31:12.14 ID:18iRsMKw0
兎角「剣持?」
しえなは掴んだ兎角の指にそっと口付けた。
ぴくんとその指先が震えて、動揺を感じる。
指を甘噛みして軽く舌を這わせると、兎角が息を呑んで顔を赤くした。
その後こくりと喉を鳴らしたところで、ぐいっと腕を引っ張り、兎角の首に両腕を回して深く口付けた。
首の角度を変えて熱情のままに何度も唇を吸い、舌を絡ませる。
その勢いにのって、兎角はしえなの服をずらし、しえなもそれを脱ぎ捨てた。
90: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/14(日) 22:37:39.26 ID:18iRsMKw0
兎角の膝がしえなの両脚に入り込み、根元にある中心に触れる。
ぬるりとした感触が伝わり、しえなは恥ずかしさに顔を紅潮させた。
兎角は唇を離し、興奮に顔を上気させてしえなをじっと見下ろしていた。
まるで続きをせがむように。
しえな「いいよ……」
もう羞恥心はなかった。
抱かれたくて、気持ちよくなりたくて兎角を求めている。
91: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 21:27:17.19 ID:NiZVZkih0
兎角を敵だなんて思っていたのが嘘のように、彼女を愛してしまっていた。
兎角はゆっくりとしえなの中心に手を伸ばし、少し迷いながら局部を探り当てた。
しえな「……っ!」
手加減の足りない指は、しえなに痛みを与えた。
兎角が無遠慮なわけではない事は分かっている。
兎角「痛いか……?」
強張った体を感知して、兎角が優しく声をかけてくるが、しえなは首を振った。
92: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 21:30:33.29 ID:NiZVZkih0
兎角「私に気を遣うな。痛いなら少し緩めるから」
しえな「い、いいんだ……。このくらいの方が、東の事をちゃんと感じられるから……」
しえなは兎角の背中に手を回して、体を引き寄せた。
兎角の体温が痛みを和らげてくれる気がした。
兎角「剣持……」
心配そうな声。
今なら兎角の優しさを素直に感じる事ができる。
93: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 21:40:18.55 ID:NiZVZkih0
しえな「ボクは東が好きだから、いいんだ……」
兎角の体を離し、彼女の顔を見てはっきりと伝える。
そういえば告白をしたのは今が初めてだった。
ほんの1、2秒ほど兎角はぽかんとした顔を見せて、その後に頬を真っ赤に染めた。
それを隠すように片手で口元を覆い、しえなから顔を逸らす。
兎角の反応が素直すぎて、しえなは今更恥ずかしくなってきた。
94: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 21:44:30.19 ID:NiZVZkih0
しえな「ば、バカ!なに照れてるんだ!」
兎角「照れるに決まってるだろ!」
しえな「お前、ボクに好かれてると思ってたんだろ!?」
あんなに自信を持っていた兎角の目が、今は動揺に揺れている。
兎角「そうだけど、面と向かって言われたら……。なんて言うんだろうな、こういうの……」
顔を赤くしたまま、すっきりとしない表情で兎角は眉をひそめた。
自分の気持ちがよく分からないといった顔だ。
95: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 21:49:21.99 ID:NiZVZkih0
しえな「……嬉しいんじゃないのか?」
兎角「そうなのか?」
しえな「両想いだろ、ボク達」
兎角「両想い……」
しえなの言葉をゆっくりと飲み下すように呟くと、少し遅れて頬を緩めた。
兎角「……そうだな。嬉しい」
珍しく見せた兎角の笑顔に、しえなは見惚れていた。
96: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 21:57:49.56 ID:NiZVZkih0
時々兎角を見ながら美人だなと思う事はあったが、穏やかに笑う姿がこんなにも可愛いとは思わなかった。
しえな「お前、可愛い顔もするんだな」
兎角「からかうんじゃない」
しえな「か、からかってなんか……ぁっ!」
今まで大人しかった兎角の指がゆるゆると動き始めた。
しえな「ば……っ、いきなり、動かすな……っ」
兎角「変な事を言うからだ」
97: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 22:03:07.42 ID:NiZVZkih0
唇の端を上げて意地悪く笑う今の兎角に、可愛らしさなんてものは感じられなかった。
しえな「んんっ、はっ…ぁうっ」
浅いところにゆっくりと出入りする指先が、しえなの体を緩く刺激した。
気が付いたら痛みなんてほとんど感じられなくて、甘い感覚が下腹部にたまっていく。
温もりが欲しくて兎角に手を伸ばすと、彼女はそれに応えて指を絡めた。
そして指を入れたまま体を優しく抱きしめる。
兎角「痛くないか?」
98: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 22:12:49.87 ID:NiZVZkih0
しえな「だい、じょうぶ……っ、はぁ……っ、あぁっ……!」
兎角の指が動くたびに、しえなの体が反応する。
苦しさではなく、それが快感だという事は兎角にも分かったようだ。
兎角「悪い……、我慢できそうにない……」
彼女の熱い吐息は興奮で乱れ、貪るようにしえなに口付けた。
しえな「は……ふっ……!ぅ……んっ!」
兎角「ぁっ……は……、んくっ……」
99: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 22:23:07.28 ID:NiZVZkih0
激しく舌が絡み合い、漏れる息も声もどちらのものかなんて分からなくなっていった。
唇を離すのも惜しいほどに深く結びついた頃に、しえなの中で兎角が過激に動き出した。
しえな「んンっ!?んぐっ……!!ん……ぅう、っく!!」
声が出せなくて、息も苦しくて、もどかしくて兎角の背中を掻き抱いた。
こんなにも兎角が愛しくて、おかしくなりそうだった。
自分の中心から濡れた音が聞こえる。
100: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 22:45:05.13 ID:NiZVZkih0
兎角と混ざり合う音。
段々と頭の中が白いもやが懸かったようにぼーっと痺れて行くのが分かった。
自分の声も聞こえなくて、最後に体が大きく跳ねた事だけは理解できた。
しえな「……――――っ!!」
兎角の手がしえなの頬に触れ、温かさを感じると同時にしえなの意識が沈んだ。
-------------
101: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 22:48:30.12 ID:NiZVZkih0
次に目が覚めたのは深夜だった。
真っ暗で、何も見えない。
服は着ているし、眼鏡は外されていて、ベッドに目立った乱れはない。
何もなかったみたいに静かな室内だったが、下腹部には兎角の感覚がまだ残っている気がした。
唇の温もりと、優しい声を思い出して、心が溢れそうになると同時に激しい寂しさも感じた。
ずっと一人ならそんな気持ちにはならなかったのに、人の温もりを知った直後に孤独を感じるのは、心が砕かれる想いだった。
しえな「……はぁ」
102: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 22:57:49.18 ID:NiZVZkih0
ため息をついて身を起こすと、隣のベッドに黒い影が座っていた。
しえな「うわわわわ!!!お前何やってるんだ!?」
輪郭ははっきり見えないが、その影が兎角だという事くらいは分かる。
兎角「そ、そんなに驚かなくても……」
しえなの声に驚いたのか、兎角の声は若干上ずっていた。
しえなはサイドテーブルに置かれたスタンドのライトを点けると兎角に詰め寄った。
しえな「驚くよ!なんでここにいるんだよ!一ノ瀬は!?」
兎角「ちゃんと連絡は入れてる。大丈夫だ」
103: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 23:04:01.55 ID:NiZVZkih0
声を落ち着かせて、しえなの肩をそっと押し戻す。
兎角の体温を感じて、少し前に感じた愛しさを思い出した。
しえな「一度戻ったのか?」
なんとか平静を装って、自分のベッドに座り、サイドテーブルに置かれた眼鏡をかけた。
兎角「いや。ずっとここにいる」
しえな「は!?お前一ノ瀬の守護者だろ!?」
せっかくの平静もあっという間に崩れてしまって、少しも気持ちが休まらない。
104: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 23:17:50.25 ID:NiZVZkih0
そんなしえなの気持ちは全く伝わらないかのように兎角はぽかんとした顔で、しえなを見つめていた。
しえな「なんだよ」
不機嫌な顔で兎角を睨むが、兎角の表情は変わる事はない。
兎角「お前は、一ノ瀬の心配ばかりしているな」
気になっていたのはそんな事か。
昼休みにも、ここに入ってきた時も、いつもしえなが晴の名前を口にするからだろう。
しえな「別に一ノ瀬の心配をしているわけじゃない」
105: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 23:21:34.33 ID:NiZVZkih0
兎角「じゃあなんだ?」
しえな「東の心配をしてるんだ」
しえながそう答えると、兎角の表情は晴れるどころかますます怪訝になっていった。
兎角「……どこが?」
しえな「ボクを構うせいで一ノ瀬に何かあったら、結果として困るのは東だろ」
昼休みならまだしも、今の時間帯に兎角が1号室にいない事が黒組の誰かに知られたら、間違いなく晴を狙うだろう。
少しでも異変があればきっと兎角に連絡が入るようにはなっているのだろうが、それでも隙を見せる事自体が問題だ。
106: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 23:25:09.61 ID:NiZVZkih0
兎角「まぁ、その通りだな」
しえな「少なくとも、様子を見に戻るくらいはしたっていいんじゃないか」
しえなの理屈には納得しているようだったが、それはしえなに言われたからではなさそうだった。
元々分かってやっている、そういう顔だ。
しえな「なんで戻らなかったんだ?」
兎角「剣持の言う事はもっともだ。でも一ノ瀬は今までずっと一人で生きてきたんだし、私がいてもいなくてもきっとあいつは生きていく。あいつは私を縛り付ける気なんてない」
しえな「でもお前はあいつを護るんだろ」
107: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 23:32:39.68 ID:NiZVZkih0
兎角「そうだ。だが、一ノ瀬は100%私を頼っているわけじゃないという話だ」
少し晴の事を誤解していた気がする。
言われてみれば、晴は一人でここに来て、暗殺者と同じ部屋で寝泊まりするつもりで黒組に参加している。
護られるつもりなんて少しもなかったはずだ。
兎角「それに、お前が目を覚ました時に一人だったら、寂しくなかったか?」
驚きに目が見開いていくのを自分でも感じた。
しえな「は……!?そ、そんなわけ……!」
何か言い訳をして誤魔化そうと考えるが、何も言葉が出てこない。
108: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/15(月) 23:41:21.99 ID:NiZVZkih0
兎角「勘違いなら、別にいいんだが……」
しえなの微妙な反応に兎角が折れる。
気落ちした空気が伝わってきて、しえなはいたたまれない気持ちになった。
しえな「あー……それは……」
何とかして言葉を絞り出そうとするが、顔が熱くなっていくだけで、不快感が増していく。
それはきっと、兎角の思い通りになっている自分に対しての苛立ちだ。
110: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 22:38:18.51 ID:5DvgY43F0
しえな「……あぁもう!そうだよ!寂しいよ!もしそうだったら寂しかったと思うよ!!」
結局出てきたのは気の利いた言葉ではなくて、爆発した感情だった。
兎角「な、なんで怒るんだ」
しえな「うるさい!嬉しいんだよ!東のそういう優しいところが好きなんだよ!!」
兎角「あ、いや、そうか……すまない……」
どさくさに紛れて愛情表現をしてしまったが、気圧された兎角がそれに気付いたかどうかは分からない。
111: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 22:42:13.28 ID:5DvgY43F0
しえな「なんで謝ってるんだ」
兎角「よく分からんが、怒ってるから……」
しえな「ただの照れ隠しだ……。本当に怒ってるわけじゃない」
兎角「そうか。良かった」
そう言って笑う兎角の表情は本当にほっとしたような優しい顔で、それだけで愛されている事が伝わってきた。
そしてこちらから伝えた言葉もしっかりと伝わっていたようだ。
しえな「もう大丈夫だ。1号室に戻ってやれ」
112: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 22:47:47.44 ID:5DvgY43F0
兎角「本当に大丈夫なのか?」
まだしえなが寂しがっていると思っているのだろう。
真水みたいに澄んだ目がしえなをじっと見据える。
きっと兎角に嘘を吐いたら、それは通じてしまうのだろう。
馬鹿みたいに素直な事は分かっている。
確かにさっきまでは寂しいと感じていたが、今はそんな事は少しも考えていなかった。
113: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 23:15:33.78 ID:5DvgY43F0
しえな「朝には会えるんだろ」
時計をちらりと見やる。
あと数時間後には朝を迎える。
一緒に登校するかどうかは分からない。
でも教室では必ず会える。
授業を受けて、昼休みにも会えるかもしれない。
実際には一緒に過ごせるかどうかは分からないが、それでも会える機会はたくさんある。
学校が楽しみになるなんていつぶりだろう。
114: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 23:18:37.51 ID:5DvgY43F0
しえなが明日を思い描いて笑みを漏らすと、兎角も同じように目を細めた。
兎角「そうだな」
兎角はベッドから立ち上がると、しえなの目前で腰を屈めた。
何をしようとしているのかすぐに理解して、しえなは目を閉じる。
温かい唇が重なって、兎角の気持ちが伝わってきた。
初めてした時のような熱さとは違う優しい感覚。
幸せを形にしたものがここにはあった。
115: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 23:23:28.89 ID:5DvgY43F0
しえな「おやすみ」
兎角「おやすみ」
一度触れた温もりが離れていく。
しかしそれをいちいち憂いていては身がもたない。
兎角「ああそうだ」
部屋を出て行こうとする兎角が、扉の前で一度振り返り、冷たい声を放った。
暗くてほとんど彼女の姿は見えなかったが、今の兎角には甘さは感じられなかった。
116: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 23:37:52.77 ID:5DvgY43F0
兎角「お前、一ノ瀬を殺す気があるのか?」
しえな「当たり前だ。ボクはボクの目的を果たす」
即答した。
兎角からはこちらが見えている事が分かっているから、彼女から目を逸らさずに、彼女に負けないくらいのまっすぐな視線を返す。
兎角「わかった」
兎角にも動揺は感じられなかったが、実際のところはどう思っているかは分からない。
扉が開いて、兎角が出て行く気配を見送った後、しえなは少しだけ笑みをこぼしてベッドに入った。
------------
117: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 23:46:11.12 ID:5DvgY43F0
兎角「はぁっ!?昨夜と言ってる事が違うじゃないか!」
昼休みの屋上に兎角の甲高い声が響き渡る。
彼女のこんな素っ頓狂な声は初めて聞いた。
晴「しえなちゃんも晴達の味方だー」
本当に嬉しそうな顔をしてしえなの腕にしがみつく晴。
その姿を見た兎角の眉がピクリと動いたが、どちらに嫉妬しているのかはしえなには分かりかねた。
118: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 23:51:42.89 ID:5DvgY43F0
しえな「お、おい。一ノ瀬、あまりくっつくな」
明るいし、可愛いし、いい匂いがする。
兎角が入れ込んでしまう理由が分からなくもない。
しえなが二人に伝えたのは、晴を殺さないという決意だった。
兎角「あれから考えを変えたのか?」
しえな「いや。お前との……えっと、話の途中で……」
正確には行為の途中だったが、晴の手前でそんな事を言えるはずもなく少し濁す言い方になった。
119: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/17(水) 23:57:05.06 ID:5DvgY43F0
兎角「別れ際には迷いなく応えてたじゃないか」
しえな「迷ってなかったからな。暗殺を放棄する方に、だけど。あそこで本当の事言ったらまた話が長くなるだろ」
晴「兎角さん、すっごく辛そうだったのにね」
兎角「う、うるさい!余計なことを言うな!」
覗き込んでくる晴から思い切り顔を逸らし、兎角は怒ったように眉間に皺を寄せた。
やはり気にしていたのか。
平気そうな雰囲気はただのやせ我慢だったのかと思うと、内心微笑ましい。
121: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 21:44:56.46 ID:IGWiyhN40
晴「耳まで真っ赤だよ」
本当は怒っていない事を分かって、晴はわざと兎角を煽った。
隠しようのない恥ずかしさを誤魔化すように、兎角は頭を雑に掻いて仏頂面を作る。
しえな「からかうと面白いな」
素直な反応が兎角らしいと思う。
ほんの数日前までは、いつも不機嫌で愛想のない朴念仁だと思っていたのに。
兎角「この話はもういい……」
疲れたように大きくため息をついて、兎角は顔を上げた。
122: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 21:51:14.21 ID:IGWiyhN40
兎角「じゃあ剣持も守護者か」
その話になるのは予想していた。
それについてはあまり迷う事もなく、すぐに答えは出ていた。
しえな「いや。ボクは退場する」
晴と兎角の目が同時に見開く。
二人が口を開く前にしえなは続けた。
しえな「正直ボクは戦力にはならないし、他に片付けたい事がある」
123: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 21:57:01.09 ID:IGWiyhN40
兎角「互助会か?」
兎角は立ち上がり、しえなの側に寄った。
分かりやすく心配した顔でまっすぐ見つめてくる。
もうこの目にも慣れた気がする。
しえな「うん。東にはこれからのボクの居場所になってもらう」
兎角「いいのか?制裁なんてないだろうな」
しえな「たぶん。元々ボクが自分で決めてここへ来たんだから、これからの事もボクが勝手に決める」
124: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:00:43.98 ID:IGWiyhN40
兎角「すごいなお前」
きっと昨日同じセリフをしえなが言った事なんて、兎角は覚えていないだろうと思う。
しえな「強引なところはお前を見習う事にしたよ」
兎角の持っている強い意志と曲がりようのない信念は、自分にはない憧れだった。
兎角「いつ、出て行くんだ?」
そう聞いてくる兎角の声は少し低くて、怒っているみたいだった。
相談もなく決めた事は悪いとは思っていたが、本来は敵同士で、それぞれの事情があるのだから兎角はそんな事で怒ったりはしないだろう。
125: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:05:33.46 ID:IGWiyhN40
だからきっと怒っているのではなくて、緊張と不安を抱いているだけだ。
しえな「近いうち……」
気弱な声が出る。
名残惜しいのは兎角だけじゃない。
兎角「そうか……まだ少しくらい時間はあるんだな?」
しえな「うん……」
兎角「その後も連絡していいか?」
しえな「うん」
兎角「なら、いい」
126: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:17:31.08 ID:IGWiyhN40
兎角の目元が緩むのを確認すると、しえなの頬も緩んだ。
視界の端にごそごそと身じろぎする晴の姿が映る。
晴「あのー……晴、邪魔じゃありませんか……?」
兎角「そんなわけあるか」
しえな「気にするな」
それぞれ真顔で答えるが晴の表情は戸惑いを残したままだった。
晴「居心地があんまり良くないんですけど……」
127: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:22:45.28 ID:IGWiyhN40
兎角は一人離れた場所にいる晴に歩み寄り、そっと頭を撫でた。
そんな兎角を見て、不愉快な気持ちになるかと思いきや、そうでもなかった。
昨夜のように笑うのは、今のところはきっと自分の前でだけだろうから。
でも一応釘は刺しておこうと思う。
しえな「浮気、するなよ」
兎角の肩を拳でトンっと叩くと、彼女は自信満々に笑った。
兎角「ありえない。お前こそ」
128: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:29:48.88 ID:IGWiyhN40
しえな「そんな相手がいないよ」
兎角「……」
晴「……」
しえな「黙るなよ!!どうせボクには友達すらもいないよ!」
真顔で黙る二人に、思わずツッコミを入れるように手を振ってみせる。
兎角にとっての晴のような信頼出来る相手であったり、今心を揺さぶられているみたいに感情的になれる相手がいないという意味だったのに。
兎角「すまない。てっきり自虐ネタというものかと……」
しえな「そんな言葉どこで覚えたんだ」
129: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:33:27.42 ID:IGWiyhN40
兎角がお笑いやバラエティー番組を見るなんて想像もできない。
そもそもネタだと思うなら笑えばいいのにと思ったがそれはそれで腹が立つだろう。
晴「晴はもう友達だよ」
そう言って笑う晴の目はとても綺麗で、兎角の澄んだ目とは違う輝きがあった。
自分の弱さが反射してくるようで心苦しい想いもあったが、それはこれから拭い去っていこうと思う。
しえな「ああもう分かった分かった」
晴の言葉が嬉しくて素直になれない自分の心の狭さに嫌気が差す。
130: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:37:15.75 ID:IGWiyhN40
そんなしえなの態度に気を悪くする様子もなく、晴はしえなに微笑みを送っていた。
それは同情ではなくて好意だとは分かっている。
しえな「……ありがとう」
小さな声だったけれど、晴はちゃんと聞いていて、満面の笑顔を返してくれた。
その様子を眺めていた兎角の目は穏やかで、暗殺者が何をしているんだと思うと顔がほころんだ。
こんな風に笑うのは随分久しぶりだった。
晴「そろそろお昼休みが終わるね」
131: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:42:32.49 ID:IGWiyhN40
晴の声を合図に、兎角としえなが携帯電話を取り出して時間を確認する。
晴が校舎の入り口に足を向けると、それについて兎角が歩き出した。
少し間をおいてしえなが兎角の後ろを歩く。
兎角「剣持」
いきなり立ち止まって振り向いてくる兎角にぶつかりかけて、しえなは慌てて足を止めた。
しえな「っと……急に止ま——!」
身を引いて距離を取るつもりが、顔を上げた瞬間には兎角に唇を奪われていた。
声も出せず、目を閉じる時間もなくて、驚きにただ目を見開く。
132: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:45:47.90 ID:IGWiyhN40
唇が重なっていたのはほんのわずかな時間で、兎角は何も言わず、何事もなかったかのように、また晴について歩みを進めた。
晴は今の出来事に気付いていない。
しえなは高ぶる鼓動を抑えようとして心臓の辺りを一度だけ、とんっと叩いた。
そして、平静を装ってまた歩き出す。
前を見れば兎角の頭があって、そのさらさらとした髪の毛を見ていて気付いた。
耳が真っ赤だ。
133: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 22:55:10.27 ID:IGWiyhN40
しえな「っ、このバカ!!余計な事するからだろ!!」
必死で冷静になろうとするのがバカバカしくなって、しえなは兎角の背中に思い切り拳を叩き込んだ。
兎角「げほっ……おま、手、加減……っ!」
しえな「知るか!自業自得だ!!」
立ち止まって背中をさする兎角を置き去りに、しえなは晴の手を引いて歩幅を広げる。
始めは戸惑っていた晴だが、二人を交互に見つめた後にっこりと笑ってしえなに引かれるまま歩き続けた。
——自分の居場所は、自分で作ろう。
終わり
134: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/18(木) 23:00:29.97 ID:IGWiyhN40
終わりました。
長いしくどいしで色々と反省をしております。
ここまでお付き合い頂いて本当にありがとうございました。
BD最終巻が発売されましたね。終わってしまった事が寂しくてしょうがないです。
もうしばらくSSで発散していきたいので楽しんでもらえるものを作れたらいいなと思います。
またその時にはどうかよろしくお願い致します。
長いしくどいしで色々と反省をしております。
ここまでお付き合い頂いて本当にありがとうございました。
BD最終巻が発売されましたね。終わってしまった事が寂しくてしょうがないです。
もうしばらくSSで発散していきたいので楽しんでもらえるものを作れたらいいなと思います。
またその時にはどうかよろしくお願い致します。
135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/19(金) 05:45:03.82 ID:g6zIHGFco
おつおつ
136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/12/19(金) 22:09:09.83 ID:4IGNmtsG0
お疲れ様でしたー
137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/12/20(土) 05:08:16.98 ID:JYjMdX2AO
乙!
犬増えて大変だろうけど良かったらまたなんか書いてくれたらそれはとっても嬉しいなって。
犬増えて大変だろうけど良かったらまたなんか書いてくれたらそれはとっても嬉しいなって。
138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2014/12/22(月) 01:43:40.36 ID:Kwt7Nwzw0
いつも楽しみにしてます
次回も頑張ってください
次回も頑張ってください
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418210849/
Entry ⇒ 2015.10.04 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
兎角「ドッジボール」
1: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 20:55:34.29 ID:Kmb5SPPR0
悪魔のリドルSS
黒組がドッジボールをしているだけです。
ギャグ寄りなんで若干のキャラ崩壊はご容赦ください。
地の文です。
黒組がドッジボールをしているだけです。
ギャグ寄りなんで若干のキャラ崩壊はご容赦ください。
地の文です。
2: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 20:56:14.46 ID:Kmb5SPPR0
溝呂木「今日は体育の先生がお休みなので、みんなでドッジボールをするぞ!」
相変わらずの空回った爽やかさで担任の溝呂木が声を張り上げる。
初めて持ったクラスへの愛を惜しみなく表現しているが、そんな溝呂木とは裏腹に、揃いのジャージを纏った黒組のメンバーのほとんどからノリというものは感じられない。
伊介「伊介はパス~。爪に傷が付いちゃう♥」
早速整列を乱して伊介が立ち去ろうとしている。
兎角は特に興味もなく、伊介が横を通り過ぎるのを見送った。
鳰「はい、じゃあ伊介さんは負けっスね」
相変わらずの空回った爽やかさで担任の溝呂木が声を張り上げる。
初めて持ったクラスへの愛を惜しみなく表現しているが、そんな溝呂木とは裏腹に、揃いのジャージを纏った黒組のメンバーのほとんどからノリというものは感じられない。
伊介「伊介はパス~。爪に傷が付いちゃう♥」
早速整列を乱して伊介が立ち去ろうとしている。
兎角は特に興味もなく、伊介が横を通り過ぎるのを見送った。
鳰「はい、じゃあ伊介さんは負けっスね」
3: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:04:12.96 ID:Kmb5SPPR0
溝呂木「今日は体育の先生がお休みなので、みんなでドッジボールをするぞ!」
相変わらずの空回った爽やかさで担任の溝呂木が声を張り上げる。
初めて持ったクラスへの愛を惜しみなく表現しているが、そんな溝呂木とは裏腹に、揃いのジャージを纏った黒組のメンバーのほとんどからノリというものは感じられない。
伊介「伊介はパス~。爪に傷が付いちゃう♥」
早速整列を乱して伊介が立ち去ろうとしている。
兎角は特に興味もなく、伊介が横を通り過ぎるのを見送った。
鳰「はい、じゃあ伊介さんは負けっスね」
相変わらずの空回った爽やかさで担任の溝呂木が声を張り上げる。
初めて持ったクラスへの愛を惜しみなく表現しているが、そんな溝呂木とは裏腹に、揃いのジャージを纏った黒組のメンバーのほとんどからノリというものは感じられない。
伊介「伊介はパス~。爪に傷が付いちゃう♥」
早速整列を乱して伊介が立ち去ろうとしている。
兎角は特に興味もなく、伊介が横を通り過ぎるのを見送った。
鳰「はい、じゃあ伊介さんは負けっスね」
4: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:04:51.65 ID:Kmb5SPPR0
伊介が鳰の隣を通り抜けると、その後ろ姿に鳰が声をかけた。
鳰のニヤけた声に、伊介はあからさまに不機嫌な顔で振り返る。
伊介「なによ?負けって」
鳰「チーム分けをするんで、試合終了後に負けチームへ配置されるっス」
伊介「負けたら何が起こるのよ?」
伊介の足が鳰に向いた。
興味が湧いてきたようだ。
5: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:05:46.46 ID:Kmb5SPPR0
兎角を含め、他の黒組メンバーも同じように体を向けて鳰の話を聞こうとしている。
鳰「勝った方の言う事なんでも聞くっスよ」
にやりと笑う鳰に伊介も悪い笑みを返した。
伊介「土下座させるとか、犬になれとか?」
鳰「さすが伊介さん。いつでも威圧的っスねー」
しえな「じゃあ一ノ瀬と敵対して勝ったら好きにしていいって事?」
鳰と伊介の間に入ったのはしえなだった。
6: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:13:25.03 ID:Kmb5SPPR0
この黒組に目的を持つ者は、恐らく同じ事を考えている。
兎角「一ノ瀬」
兎角は晴の肩を引き寄せ、離れないように促した。
警戒する兎角とは反して、晴に危機感はない。
晴「大丈夫だよ、兎角さん」
むしろ、興奮を抑え込むように両手の平を上下に振って兎角をなだめようとしている。
そんなに喧嘩腰に見えるのだろうかと、兎角は眉根を寄せた。
7: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:21:47.62 ID:Kmb5SPPR0
鳰「命令はチーム単位っス」
兎角と晴の前に身を乗り出し、鳰はしえなに向いた。
鳰「晴のチームは全員同じ目に遭ってもらうっスよ?」
香子「凄惨だな、それは……」
香子が眉をひそめて腕を組んだ。
そうなった場合の様子を想像しているのだろう。
柩「命懸けですか……」
8: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:28:33.25 ID:Kmb5SPPR0
不安そうに柩が呟き、身を震わせた。
そんな柩に千足がそっと手を乗せ、微笑みを向ける。
私が守るから。
そう言いたげな視線だった。
数秒見つめ合うと柩は安心したように息を吐いて千足に笑顔を返した。
そんな小芝居のようなやり取りを見ているうちに、兎角の口からは無意識にため息が出ていた。
9: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:35:14.34 ID:Kmb5SPPR0
伊介「伊介は別にそれでも構わないけど~♥」
春紀「いや伊介様は殺される側だよ。参加しないって言ったの忘れてるでしょ」
春紀が冷静に突っ込むと、間髪入れず伊介が彼女の脇腹に拳を叩き込んだ。
春紀の口から小さなうめき声が漏れたが大したダメージはないようで、数秒後には口を尖らせて脇腹をさすっていた。
千足「しかしそれでは一ノ瀬のチームの負担が重すぎるだろう。今回は暗殺を絡めるのはやめておこう」
通る声で千足が提言すると、1号室を除く全員がそれぞれ顔を見合わせた。
溝呂木「おいおい、冗談でも物騒な言い方をするなよー。ダメだぞ。みんな仲良くな?」
10: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:46:42.26 ID:Kmb5SPPR0
優しくも空気の読めない溝呂木がまたも爽やかに口を挟む。
涼は軽く手招きをしてメンバーを集めると、溝呂木には聞こえないように声を潜めた。
涼「先生の手前、殺伐とした目で投げ合うのもどうかのう。まぁ今回はお遊びって事でよいのではないか」
落ち着いたその声に異論を唱える者もなく、涼は満足そうに笑った。
しえな「ところで言う事聞くってどのレベルまでOKなの?」
純恋子「常識の範疇でいくべきでしょうね」
誰にともなしにしえなが呟き、隣に立つ純恋子が応える。
11: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 21:52:54.50 ID:Kmb5SPPR0
するとしえなを挟んで反対側に立つ乙哉が不思議そうな顔をして首をかしげた。
乙哉「常識ってなに?」
春紀「少なくとも血が流れない程度な」
子供みたいな質問に呆れた声で即答する春紀。
暗殺者の言う常識と一般的な常識では、きっと見解が大きく違う。
今回の常識は一般人で言う常識である。
しえな「武智、鋏持ってないだろうな」
15: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 22:41:27.80 ID:Kmb5SPPR0
乙哉「持ってきた方がよかった?」
しえな「いやいらないよ」
乙哉の返答にしえなはほっと息を吐いた。
すでに彼女たちの目は暗殺者ではなく、普通の女子高生と変わらない様子だった。
香子「金銭絡みもなしで」
香子が軽く手を挙げて姿勢よく発言する。
遊びとするのならば妥当なところだろうと誰もが納得した表情を見せた。
16: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 22:47:46.70 ID:Kmb5SPPR0
伊介「屈辱的なのは~?」
真昼「伊介……様、こわ……」
伊介の高圧的な目に真昼が怯えた表情を見せる。
そんな真昼の頬を純恋子が撫でると、真昼は隠れるように彼女の背中に寄り添った。
鳰「心が壊れないくらいならOKっス」
しえな「なんでお前が基準なのかは分からないけど」
鳰「裁定者っスから!」
17: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 22:52:47.25 ID:Kmb5SPPR0
びしっとピースサインを決めるふざけた態度に、しえなはため息をついた。
乗り気になってきた伊介の様子を見て、春紀がそちらへと歩み寄る。
春紀「伊介様どうすんの?」
伊介「やるに決まってんでしょ」
期待通りの返答に春紀がニッと笑った。
乙哉「じゃあまずはチーム分けだね。どう分けるの?じゃんけん?」
しえな「その手やめてくれ」
ショキショキと動く乙哉の手はじゃんけんというより鋏を模しているようで、しえながその手を軽くはたき落とした。
18: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/25(木) 22:54:13.31 ID:Kmb5SPPR0
それに対して乙哉は怒るどころか嬉しそうにしえなに抱きついて、彼女の頭に頬を擦り付けている。
そんな二人のやり取りを眺めながら、晴は兎角の隣でくすくすと笑っていた。
晴「仲が良いよね、5号室」
兎角「そうなのか?」
一方的に乙哉がしえなに懐いているようにしか見えなくて、兎角は晴が穏やかに笑っている理由がよく分からなかった。
鳰「とりあえず、同室は今回分かれてもらうっス」
涼「えー……」
涼は不満そうに眉をひそめ、隣にいる香子の袖をくいっと引っ張った。
24: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 19:22:35.98 ID:iq6Kruzg0
鳰「秀逸なコンビネーションなんて見せられても困るっしょ?」
香子「そんなに言うほど同室の息は合っ——」
千足「なんだと!?それでは桐ヶ谷が危険な目に遭っても私が護れないじゃないか!」
千足は柩の肩を抱き寄せ、嘆いた。
鳰「ほら、こういう人がいるっスから……」
他のメンバーは揃って千足から鳰へと視線を移し、軽く頷いた。
全員が納得した様子を見せると千足も渋々訴えを下げ、苦しげに「くっ……」と呻いた。
25: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 19:30:56.97 ID:iq6Kruzg0
鳰「秀逸なコンビネーションなんて見せられても困るっしょ?」
香子「そんなに言うほど同室の息は合っ——」
千足「なんだと!?それでは桐ヶ谷が危険な目に遭っても私が護れないじゃないか!」
千足は柩の肩を抱き寄せ、嘆いた。
鳰「ほら、こういう人がいるっスから……」
他のメンバーは揃って千足から鳰へと視線を移し、軽く頷いた。
全員が納得した様子を見せると千足も渋々訴えを下げ、苦しげに「くっ……」と呻いた。
26: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 19:31:44.36 ID:iq6Kruzg0
それを慰めるように柩が何かを囁いているが、その辺りのドラマにはあえて全員が触れないようにしていた。
そんな中、兎角は不意に視線を感じて春紀に目を向ける。
春紀「東はいいのか?」
4号室のやり取りを見てからの反応だと、あれと同列だと思われているようで複雑な心境だった。
たかだか授業の試合だ。
怪我をしたとしても、捻挫か、酷ければ骨折くらいのもの。
その程度で心配なんてしていたら外を出歩く事も出来ない。
27: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 19:39:04.21 ID:iq6Kruzg0
兎角「別に。ただの遊びだろ。危険が無いなら構わない」
そう答えて晴を見れば、嬉しそうに両手の拳をぎゅっと握りしめる姿が目に映った。
晴「いつも飛んでくるのは銃弾とかナイフだったから、こういうの夢だったんです!チームプレイ!」
春紀「発言が重いな」
明るい笑顔で黒ずんだ発言をする晴に、春紀ですら真顔だった。
鳰「それじゃ、各部屋は別に分かれた上でじゃんけんで振り分けるっスよー」
28: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 19:50:10.57 ID:iq6Kruzg0
東兎角・犬飼伊介・神長香子・生田目千足・剣持しえな・英純恋子
(元外野:神長、英)
一ノ瀬晴・寒河江春紀・首藤涼・桐ヶ谷柩・武智乙哉・番場真昼
(元外野:首藤、番場)
29: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 19:50:49.63 ID:iq6Kruzg0
鳰「おー。戦力は均等に分かれた感じっスかね」
香子「どうして走りが入っていないんだ」
鳰「裁定者っスから!」
香子に向けて、またもびしっとピースサインを決める鳰。
伊介「じゃあ鳰は最終的に負けチームに入るって事ね♥」
鳰「えぇっ!?ひどいっス!審判っスよ!ウチ遊んでるわけじゃないんっスよ!?」
鳰の抗議には誰も反応せず、彼女は諦めてがっくりと肩を落とした。
30: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 19:57:57.19 ID:iq6Kruzg0
春紀「伊介様、覚悟しろよ」
伊介「十年早い♥」
純恋子「番場さん、ボールには近寄らないでくださいね。怪我をしては大変です」
真昼「は、はひ……頑張る、ます……」
それぞれが同室の相方に向けて宣戦布告、あるいは心配をして自分のコートへと移動をする。
兎角「一ノ瀬、気を付けるんだぞ」
晴「遊びなんじゃなかったの?」
31: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:07:03.98 ID:iq6Kruzg0
ため息交じりに晴は笑って返してきた。
今回は暗殺の危険がないのは分かっている。
兎角は単純に怪我の心配をしただけだった。
兎角「……そうだな」
過保護だろうかと考えて兎角は自分のコートへ足を向ける。
人数が揃ったかと辺りを見回すが、まだコートの外にいるメンバーを見つけた。
千足「桐ヶ谷。本当に大丈夫か?」
32: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:16:43.25 ID:iq6Kruzg0
柩「大丈夫ですよ。千足さんこそ、女の人なんですから無理はしないでくださいね」
伊介「全員女だっつーの。早く移動しろ♥」
にこにこしつつ眼光を送りながら伊介が威圧するが、二人の周りに設置された見えないバリケードのせいでそれは届くことはなかった。
そんな様子に気付いた香子が4号室に近付いて千足の襟首を鷲掴み、
香子「ルールを説明する。元外野は2人。一度だけ自由に内野に入れる。敵味方関係なくアシストキャッチは有効。危険行為を避けるため、顔面は無条件でセーフだ。それから、内野外野関係なく、味方同士のアタック以外のパス回しは4回までとする」
そう説明しながら千足をコートまで引きずった。
33: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:23:17.33 ID:iq6Kruzg0
後ろについてくる柩は案外冷静で、香子を見ながら授業でも受けるようにルールを聞いていた。
柩「正式なルールとは少し違うんですね」
香子「素人がやるお遊びだ。細か過ぎると混乱するだろう」
コートに入り千足を解放すると、鳰がニヤリと笑った。
鳰「それじゃ、試合開始っス!」
------------
34: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:29:58.87 ID:iq6Kruzg0
鳰「ジャンプボールっス!」
鳰がボールを担ぎ上げて声を張る。
春紀「身長考えたらあたしだな」
ずいっと前に出てくる春紀を一瞥し、兎角は千足に目を向けた。
兎角「なら、こちらは生田目か……」
千足「分かった。任せてくれ」
コートの中心で二人が向かい合う。
35: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:42:28.95 ID:iq6Kruzg0
鳰「じゃあ行くっスよー」
鳰は二人の間でぐっと腰を落としてボールを構えた。
春紀と千足の顔を交互に眺め、二人もそれに視線を返す。
準備は出来た。
ボールが宙に浮き、落下が始まるタイミングに合わせて二人がほぼ同時に地を蹴る。
千足の手がほんのわずか先に届き、ボールを自コートへと叩き落とした。
千足「よしっ」
36: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:45:10.11 ID:iq6Kruzg0
中ほどへと落下したボールを兎角が拾う。
春紀「みんな下がれ!」
即座に春紀達がアタックに備えてそれぞれ後方へと下がろうとするのが見えた。
伊介「ほら速攻——!!」
兎角「言われるまでも、ない!」
伊介の声と被せて、兎角は相手が身構える前に狙いを定め、助走は付けずに思い切り腕を振り抜いた。
咄嗟に狙ったのは、反応が遅れてコートの手前でもたつく柩だった。
37: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:52:32.24 ID:iq6Kruzg0
千足「桐ヶ谷!!」
兎角の手からボールが離れると同時に、二人の間に千足が割り込んだ。
千足「ぐあっ!」
ぼごんっと激しい音を立ててボールは千足の側頭部に直撃する。
柩「千足さん!!」
伊介「ちょぉっと!なにやってんのよ!」
悲鳴のような声を上げる柩と、怒りを露わにした伊介が同時に千足へと駆け寄った。
38: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 20:57:36.31 ID:iq6Kruzg0
柩は倒れ込んだ千足を抱き起し、膝に頭を乗せた。
千足「桐ヶ谷……無事か……」
柩「はい……!千足さんのおかげです!」
千足「それはよかった……」
目を潤ませる柩の頬をそっと撫で、千足は目を閉じた。
鳰「生田目さんリタイアー」
-------------
39: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 21:57:44.75 ID:iq6Kruzg0
あれだけ騒いだ割に大したダメージもなく、千足は外野に立っていた。
しえな「で、なんで桐ヶ谷まで外にいるんだ……」
センターラインを挟んで外野で隣り合う二人を見つめながら、しえなが半眼で呟く。
とりあえず深くは触れず、二人はアウトという扱いになっているらしかった。
鳰「はいそこ、手を繋がない」
鳰が二人の間を指差すと繋いだ手は渋々と解かれたが、場所を移動する気はさらさら無さそうだった。
千足「隣に立つくらいなら構わないだろう?」
40: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 22:04:38.99 ID:iq6Kruzg0
春紀「お前ら何しに来たんだよ……」
周りに熱を放つ4号室に春紀は呆れた表情を向け、ため息を漏らした。
鳰「はーい。気を取り直して続けるっスよー」
伊介「じゃあ伊介の番ね♥」
ボールを拾い、にっこりと笑って相手コートを眺める伊介。
春紀「伊介様。ほらほら」
春紀が前方に乗り出して挑発すると、伊介は笑顔のまま眉をピクリと歪めた。
41: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 22:13:19.22 ID:iq6Kruzg0
伊介「むかつくー。鼻血出させてやる♥」
春紀「顔面セーフだぞ」
伊介「うるさいっ」
苛立ちを掛け声にしてボールを力いっぱい投げつける。
春紀はそれに備えて両手を構えるが、思惑とは別の方向へとボールは飛んでいた。
乙哉「おっと!あっぶなー」
油断していた乙哉は一度伊介のアタックを取り落しそうになったが、持ち前の反射神経で体勢を立て直し、なんとか引き戻した。
42: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 22:20:41.67 ID:iq6Kruzg0
春紀「フェイントかよ……」
春紀はつまらなそうに呟くと口を尖らせた。
肉体派の彼女から闘争心を持て余している様子が窺える。
伊介「ちっ」
ボールを取られた伊介は舌打ちをして、即座に後方へと下がった。
兎角は既に後方でアタックに備えていたが、しえなが逃げ遅れている事に気が付いた。
乙哉「それっ」
43: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 22:25:57.52 ID:iq6Kruzg0
乙哉はステップを踏んで勢いを付け、全身のバネを使ってしえなへとボールを投げつける。
しえな「あいたっ!」
勢いのある高めのボールが肩に当たり、弧を描いて綺麗に相手コートへと戻って行った。
乙哉「はいキャッチ」
鳰「アシストキャッチ有効っス」
しえな「なんで武智が取るんだよ!?」
周りの驚きをよそに、満面の笑みを浮かべて乙哉はしえなへと向き戻った。
44: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/26(金) 22:37:23.04 ID:iq6Kruzg0
乙哉「はーい。もっかい!」
しえな「待て待て!!イジメか!?」
乙哉「違うよー。かわいがってるんだよー」
しえな「そういうのはイジメって言——いたーーっ!」
しえなが言い終わる前に乙哉はボールを投げつけ、それは慌てて屈み込んだ彼女の背中に当たった。
狙われているのを分かっていても取れないのかと、兎角は呆れるというよりは少しかわいそうな気持ちになった。
弾かれたボールは今度は外野へと飛んで行ってしまったため、乙哉はそれを唖然と見つめるしかない。
46: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 19:50:29.64 ID:rJFs5URi0
しかしその先にいた柩がボールをキャッチした。
鳰「またもアシストキャッチ有効っス」
柩「取っちゃいました」
しえな「なんで余計なことするんだよ!!」
柩「間違えたんですよ」
しえな「嘘だ!」
乙哉「ありがとー!パスパス!」
しえな「パスパスじゃない!武智はまたボクにぶつける気だろ!?だったら——!」
47: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:02:39.69 ID:rJFs5URi0
しえなは兎角の後ろへと回り込んで乙哉からは見えない位置に移動し、彼女を警戒した。
兎角もしえな同様に乙哉に目を向ける。
が、
しえな「どぁっ!!」
思わぬところからのアタックに、しえなは身構える暇もなく衝撃をまともに受けてしまう。
兎角「おっと」
しえな「おい桐ヶ谷!!」
すかさず兎角がアシストキャッチをするが、しえなはそれに気付かず、柩に怒りの視線を向けていた。
48: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:09:45.54 ID:rJFs5URi0
鳰「またまたアシストキャッチ有効っス」
しえな「東!なんでキャッチした!?」
アシストキャッチに気付いたしえなが激しく突っ込んできて、兎角は眉をひそめた。
兎角「いやするだろ。味方なんだから」
しえな「確かにそうだけど……」
今までの流れのせいで熱くなっていたしえなは、これが正常なプレイだということを思い出したのかすぐに押し黙った。
兎角「反撃開始だ!」
49: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:16:33.75 ID:rJFs5URi0
兎角は助走をつけて、一番厄介そうな相手をしっかりと見据えて思い切りボールを投げた。
高身長の春紀の足元を狙う鋭い球筋。
春紀はそれに怯む事もなく前に出て、低めに落ちる直前でボールをキャッチする。
春紀「あぶねっ!さすが東だ」
楽しそうに笑う春紀の表情には闘争心が満ちていた。
キャッチした際の勢いのまま、春紀は助走をつけて兎角に向けて力任せに腕を振る。
兎角「くっ…!」
抉るように低い位置から浮いてくるボールをギリギリのところで避け、ボールの行方を目で追う。
50: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:26:44.07 ID:rJFs5URi0
しえな「いったーーー!!」
春紀「あ、わりぃ、剣持……」
春紀の猛烈なアタックは、一連の行動で兎角の後ろに回り込んでいたしえなの腰に直撃していた。
鳰「剣持さんアウトー」
しえな「なんで避けるんだよ……」
腰を手で押さえ、泣きそうな顔で訴えかけるしえな。
兎角「いや避けるだろ……。人の後ろにいるのが悪い」
兎角は呆れてはいたものの、あまりに不憫でしえなとは目を合わせられないでいた。
51: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:38:48.43 ID:rJFs5URi0
春紀も敵とはいえ、哀れに思ったのかセンターラインまで出てしえなを心配そうに見ている。
春紀「お前もう早めに外野に出ておいた方が多分安全だぞ……」
しえな「ボクもそう思う……後は頼む」
伊介「後も何も、最初からあなた役に立ってないじゃない♥」
しえな「そういうこと言うなよ!!」
涼「不幸を呼ぶ体質か」
しえな「うるさいほっとけ!こっちは切実なんだよ!!」
涼に激しく言い返すしえなの捨て台詞には全員が同情した。
-------------
52: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:42:18.63 ID:rJFs5URi0
純恋子「わたくしが代わりに入りますわ」
しえなの代わりに純恋子が優雅に内野へと入る。
体が弱いはずの純恋子が体育に参加している事が誰にとっても意外だった。
兎角「大丈夫か?英」
純恋子「心配無用ですわ」
気遣う兎角を鋭利な視線で切り捨て、純恋子は自信ありげに口角を上げた。
しえなにぶつけられた後コート内に留まったこぼれ球を兎角が拾い、相手コートを見据える。
53: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:45:20.38 ID:rJFs5URi0
兎角「行くぞ、一ノ瀬」
晴「はい!」
晴に向けてボールを構え、助走をつける。
そして体は晴に向けたまま、腕を振り抜く直前に角度を変えた。
兎角から離れたボールはまっすぐに春紀へ向かい、勢いはあるものの工夫のないそれはいとも簡単に受け止められてしまう。
春紀「っと……。分かりやすいんだよ。お前が晴ちゃん狙うわけないもんな!」
兎角はすぐに後退し、春紀から距離を取るがアタックのモーションが思った以上に早い。
54: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:48:04.95 ID:rJFs5URi0
身をよじって何とか体には当たらなかったものの、浮いた指先をボールがわずかにかすめた。
鳰「兎角さんアウトー」
兎角「くそっ……!」
ボールは外野に流れ、涼がそれを拾った。
春紀「よし、パスくれ。一気に片を付ける」
外野からのパスを受け取り、春紀はもう一度アタックをするために左足を踏み込んだ。
腕から指先までをしならせて力強くボールを打ち出す。
渾身の一球が純恋子を襲った。
55: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 20:59:01.45 ID:rJFs5URi0
そのボールの勢いに伊介は焦りを露わにし、純恋子に視線を移す。
純恋子「あら」
ばちんっと痛そうな音を立てながらも、純恋子はそのボールをいとも簡単に両手で挟むように掴んでいた。
春紀「えっ」
伊介「えっ」
2号室はそろって目を点にして、呆然としていた。
純恋子「行きますわよ」
56: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:03:49.28 ID:rJFs5URi0
力強く、それでいて上品に、純恋子は一歩足を踏み出して女性らしく腕を振った。
しかしそんなモーションからのボールの勢いはあまりに予想外だった。
弾丸のような豪速球が春紀に襲いかかる。
春紀「だーーっ!!」
掴む事はできないと判断して避けようとした時には遅く、中途半端にしか身を交わす事が出来ずにボールは春紀の脇腹に快進撃を与えた。
鳰「春紀さんアウトー」
伊介「なにあれ。病弱の人の力じゃなくない……?」
57: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:08:36.95 ID:rJFs5URi0
伊介はぞっとした様子で純恋子を見つめ、にこやかに返してくる笑顔を体をずらして避ける。
春紀に当たったボールは外野に流れ、兎角がそれを手にしていた。
兎角「犬飼。確実に行くぞ」
兎角は片手をひらひらと振り、伊介に協力を仰いだ。
強敵である春紀をアウトに出来たのは大きいが、同時に外野の攻撃力が大幅に上がった事になる。
出来るならばこのままボールの所有権を得ていたい。
伊介「えー。伊介は一人でも大丈夫なんだけどぉ~♥」
兎角「絶対に勝つ」
58: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:15:16.16 ID:rJFs5URi0
伊介の見栄には耳を傾けず、強い視線を返すと伊介も渋々兎角のパスを受け取るために身構えた。
伊介「まぁいいわ。勝たなければ意味がないもの♥」
伊介は兎角のパスを受けると、続けてそれをしえなに送った。
ボールの動きに合わせて乙哉と晴が内野を動き回り、次のアタックに備えている。
なかなか隙を掴めず、しえなは兎角にボールを戻した。
晴「きゃっ」
乙哉「晴っち!」
しえなが兎角にパスを出した瞬間、晴の足がもつれてコートの真ん中に倒れこんだ。
59: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:19:40.77 ID:rJFs5URi0
伊介「チャンスよ、東さん!!」
兎角「……それっ……」
兎角の投げたボールはゆるゆると晴の足元に向かい、ぽむっと軽い音を立てて彼女の太ももに当たった。
伊介「ぬるっ!!おい東!!ボールが跳ね返ってこないじゃない!!」
コート内に留まるボールを指差し、伊介は足を踏みしだいた。
鳰「晴アウトー。そして兎角さん復活っス」
兎角「よし」
60: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:24:45.98 ID:rJFs5URi0
アウトを取った兎角は内野へと戻り、晴は外野へと移動する。
涼「では、一ノ瀬の代わりにわしが入ろう」
晴「首藤さん、お願いします」
すれ違いざまにタッチをしてお互いの場所を入れかえ、晴は外野のサイドに回った。
涼は軽快な足取りでコートに入ると、口元を緩めて全体を見回していた。
涼「たまにはこういうのも楽しいのう」
涼は同じコートに立つ乙哉に笑顔を向けた。
61: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:29:20.73 ID:rJFs5URi0
乙哉「そうだねー。悪くないね」
乙哉は落ちたボールを拾い、兎角達に向けてボールを構えた。
いつも以上に楽しそうに笑う乙哉に、春紀が外野の正面から手を振る。
春紀「武智。パス回しで隙を突くぞ」
乙哉「りょうかーい」
乙哉は勢いのあるパスを春紀に回し、春紀は内野の涼へとパスを回した。
そこから春紀にボールを戻すと見せかけて、サイドに立つ真昼へと回す。
62: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:36:13.19 ID:rJFs5URi0
意表を突かれた兎角達は一瞬反応が遅れ、コートの移動に手間取っていた。
武智「番場ちゃん!」
今がチャンスだと乙哉が声を掛けるが、真昼は動かない。
おどおどと瞳を揺らし、ボールを抱えたまま動けないでいる。
春紀「おい、こっち——」
速攻は諦め、春紀がパスを出すように片手を上げて合図を送る瞬間、純恋子が真昼に向けて足を進めた。
真昼「は、英さん……!」
63: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:51:33.58 ID:rJFs5URi0
純恋子「番場さん、いいんですのよ。さぁ、わたくしを攻撃してくださいな……!!」
自分の胸に手を当て、訴えかけるように身を乗り出す。
真昼は固く目を閉じ、両手でボールを抱え上げると、純恋子のいる場所へ向けて腕を振り下ろした。
真昼「えいっ……!!」
ボールの軌道は若干ずれていたが、純恋子はそこに手のひらを伸ばし、ボールを受けた。
べちんっと小気味いい音を立て、ボールがその場に落下して二度三度とバウンドする。
純恋子「あーれー……」
鳰「英さんアウト―」
64: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 21:59:48.58 ID:rJFs5URi0
伊介「待てこらぁぁああ!!!なにしてんのよ!?」
あまりの茶番に反応の遅れた伊介の声が体育館に響き渡る。
純恋子「番場さんのあんな必死な顔を見たら当たってあげないわけには行きませんわ!!あなただって黙って見ていらっしゃったではありませんの!」
伊介「誘い込んで実はキャッチする作戦だと思うじゃない!まさか本当にアウトになるなんて思わなかったわよ!」
伊介の文句には耳を傾けず、満足そうに外野へ向かう純恋子。
そして同じタイミングで真昼が内野へと戻っていく。
伊介「もう……っ!!神長さん!」
66: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 23:07:35.09 ID:rJFs5URi0
助走を付けた後軽くステップを踏んで、その勢いを全てボールへと乗せる動作は綺麗なものだった。
全身のバネが腕を伝い、香子の指先からボールが射出される。
香子「はぁっ!!」
——ぼごんっ!!
伊介「ぶっ!!」
ボールは思いがけないところに飛び、伊介の側頭部に直撃した。
跳ね返ったボールをそのまま兎角が冷静にキャッチする。
67: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 23:15:14.02 ID:rJFs5URi0
伊介「あんたなんで真横にいるあたしにぶつけられるのよ!?」
香子「先の未来など、どうなるのか分からないものだな……」
伊介の抗議に意味不明な言葉を返し、香子はメガネを指で押し上げた。
伊介「うるっさい!もういいお前外野行け!!」
兎角「おいおい。せっかくの戦力を……」
伊介「あれが戦力になるか!!」
香子の背中を突き飛ばして外野に叩き出す伊介を横目に、兎角は相手コートを見つめて人数を確認する。
68: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 23:27:15.64 ID:rJFs5URi0
乙哉と涼と真昼。
元外野はすでにお互いに使い果たしている。
こちらのメンバーを思えば戦力差に大きな差はない。
兎角「まぁいい。ボールの所有権はある。行くぞ!」
まずは数を減らすため、中でも非力な真昼に狙いを定める。
それに気付いた乙哉が真昼の前に出ようとするが、兎角のアタックがわずかに早かった。
真昼「きゃっ……!!」
キャッチするための動作に問題はなかったが、兎角の球の重さに耐えられず、ボールを取り落としてしまう真昼。
69: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 23:35:30.99 ID:rJFs5URi0
鳰「真昼さんアウトー」
純恋子「ちょっと東さん!番場さんに対して厳しすぎるんじゃありませんの!?」
兎角「黙れ。誰が相手でも、全力で倒すべきを倒す。それだけだ」
伊介「お前が言うな♥」
コートの外に流れかけたボールを涼が拾う。
兎角と伊介はすぐに距離を取り、アタックに備えた。
涼「こちらの番じゃの」
71: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 23:45:40.25 ID:rJFs5URi0
乙哉「あたしが投げようか?」
涼「心配するな、武智。力はあまりないが……」
軽く助走をつけて素早く腕を回し、肩よりも高い位置で指先からボールが離れた。
勢いはそれほどでもなく、伊介は迫り来る高めのボールを追い、手の届く範囲に近付いたところで抱えるように両腕を伸ばした。
腕の中にすっぽりと収まるはずのそれは、伊介の眼前で右に逸れた。
伊介「ぅわきゃっ!!」
予想した軌道から外れたボールは伊介の腕を弾く。
72: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/30(火) 23:55:31.27 ID:rJFs5URi0
大変なことに気付きました。
64から66の間が抜けてます。
大っ変申し訳ありません。
今更だとは思うんですけど追加しておきます。
-------------
香子「あぁ。そろそろだな」
伊介は元内野の香子にコートに戻るよう指示を出す。
コートに落ちたボールを拾うと、香子は背筋を伸ばし、堂々とまっすぐ正面を見据えた。
香子「私に任せろ」
伊介「神長さん、あなたこういうの得意そうには見えないけど……」
香子「まぁ見ていろ、犬飼」
自信満々の香子に伊介は懐疑心に満ちた目を向け、あまり期待しない程度に見守った。
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64から66の間が抜けてます。
大っ変申し訳ありません。
今更だとは思うんですけど追加しておきます。
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香子「あぁ。そろそろだな」
伊介は元内野の香子にコートに戻るよう指示を出す。
コートに落ちたボールを拾うと、香子は背筋を伸ばし、堂々とまっすぐ正面を見据えた。
香子「私に任せろ」
伊介「神長さん、あなたこういうの得意そうには見えないけど……」
香子「まぁ見ていろ、犬飼」
自信満々の香子に伊介は懐疑心に満ちた目を向け、あまり期待しない程度に見守った。
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73: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 19:01:27.18 ID:31V1xYrB0
鳰「伊介さんアウトー」
しえな「おー……カーブか……」
しえなが感嘆の声を漏らし、伊介をのぞいた他のメンバーも感心した様子で涼を見ていた。
涼はその反応に気を良くしたのか、周りにVサインを向けた。
兎角「ボールは外野か……」
春紀の持つボールを見ながら、兎角が眉根を寄せる。
残るは兎角一人。
74: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 19:06:48.75 ID:31V1xYrB0
鳰「ピンチっすねー」
兎角「黙れ」
ニヤニヤと嫌な笑い方をする鳰に対して、兎角は嫌悪感丸出しで睨み付けるとまた春紀に向き直った。
春紀「相手は東だ。慎重にパス回しで攻撃するぞ」
乙哉「はーい」
春紀はほぼアタックを放つ勢いで乙哉にパスを回し、乙哉も同じようにサイドにいる晴にボールを渡した。
しえな「うわ、球はやっ」
一連の動作を見てしえなが兎角を心配そうに見ていたが、外野には何も出来ない。
75: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 19:14:15.56 ID:31V1xYrB0
兎角は視線だけでボールを追い、相手の体の動きを見ながらアタックのタイミングを窺っていた。
次に晴からのパスを受け取った乙哉の足取りが力強くなる。
アタックが来る。
そう踏んだ兎角は一気にコートの後方へと下がった。
乙哉「それっ!!」
乙哉から離れたボールは一直線に兎角へと向かい、スピードはあっても十分にキャッチ出来るはずだった。
しかし、実際に放たれたボールはわずかに弧を描き、兎角の手元で急に失速した。
76: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 19:26:49.35 ID:31V1xYrB0
兎角「くっ……!」
涼の球を見様見真似で実践したのだろう。
涼ほどのキレはなかったが、ボールの勢いのせいで即座には反応できなかった。
タイミングを外された時点でキャッチは無理だと判断し、兎角はギリギリのところで回避した。
が、そのすぐ後ろには春紀がいて、兎角が避けたボールを受け止めている。
春紀「うわっ……と」
手から弾いて一旦取りこぼした隙に、兎角はコートの内側へ出来るだけ下がるが気休め程度にしかならなかった。
77: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 19:34:54.32 ID:31V1xYrB0
春紀「そらよっ!」
すぐに体勢を整えた春紀は腰を大きく捻り、体重移動を利用しながら力を溜めると、指先から全てを込めたボールを打ち出す。
至近距離からの大砲のようなアタックが兎角を襲い、重い一撃がその胸に叩き込まれた。
兎角「ぐぅっ!」
どんっという鈍い音が響くと同時に、兎角の体がわずかに浮いた。
晴「兎角さん!」
激しい攻撃に思わず晴が身を乗り出すが、兎角は勢いに押された体を立て直し、膝を着きながらもなんとか足を踏み留まらせた。
兎角「けほっ……。大丈夫だ。ボールも、落としていない……」
78: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 19:46:38.27 ID:31V1xYrB0
絞り出した声はかすれていた。
兎角は思った以上に今の状況を楽しんでいる事に気付いて、挑発も込めて春紀を見ながら口角を上げる。
そして渾身の一撃を受け止められた春紀は、戦慄した様子で兎角に応えるように笑っていた。
兎角「犬飼!剣持!行くぞ!」
コート中央に体を向け、兎角は外野に声を掛ける。
外野には千足と純恋子もいたが、二人とも相手コートとの境で相方と密着しているため放っておく事とした。
香子「私は?」
79: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 19:58:05.44 ID:31V1xYrB0
伊介「あんたは大人しくしてるのが一番いいのよ・」
香子「なんだと!?私は失敗するわけにはいかないんだ!」
伊介「だから何もするなっつってんのよ!!動かなきゃ失敗しないわよ!!」
取り込み中の香子と伊介も視界から外して、兎角はしえなにパスを送った。
兎角「剣持!!」
しえな「あぁ!!」
兎角からボールを受け取ると、しえなはサイドスローで涼の足元へと投げ込んだ。
80: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 20:05:46.40 ID:31V1xYrB0
涼「あいたっ」
低めに沈んだボールは涼の手に当たって、浮き球となる。
乙哉がアシストキャッチの体勢に入るが、届かずボールは兎角側のコートへと入り込んだ。
鳰「首藤さんアウトー」
涼「年寄りは大事にせい……」
香子「お前、私と同い年だろう」
香子が涼の独り言を拾って返すが、特に返答はなかった。
81: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 20:13:28.81 ID:31V1xYrB0
兎角「剣持、入るか?」
しえな「武智がいるから嫌だ」
しえなは乙哉に向けて思い切り嫌な顔をして見せた。
しかし乙哉は全く気にする様子もなく、しえなに向けて陽気に手を振っている。
乙哉「しえなちゃん遊ぼうよ~」
しえな「黙れド変態」
乙哉「そんなに言うんだったら晴っちと遊んじゃうよ?」
しえな「味方にまでボールをぶつける気か、お前は。東にしろ」
82: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 20:21:41.17 ID:31V1xYrB0
乙哉「うーん……じゃあそっちで我慢しようか」
わきわきと指を軽快に動かしながら、乙哉は兎角に向けて構えた。
兎角「失礼だとは思うが、好かれるのも嫌だからなんか複雑だな」
乙哉「兎角さーんうふふふふ」
兎角「素直に気持ち悪いんだが……」
上気する乙哉から目を逸らし、誰かに助けを求めるように辺りを見回す。
しえなと目が合うと、彼女は大きくため息をついた。
しえな「武智、帰ったら遊んでやるから今は大人しくしてろ」
83: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 20:31:41.73 ID:31V1xYrB0
そうしえなが声をかけると、乙哉はにこにこと嬉しそうに笑った。
乙哉「しえなちゃーん、大好きーー!」
しえな「余計なことを叫ぶな!」
乙哉の恥ずかしい発言に対して怒鳴りつけるしえなだったが、その頬はピンクに染まっていてまんざらでもない様子が窺えた。
鳰「……あれ?もしかしてみんな仲良しなんスか……」
全体を見渡しながら相方のいない鳰が生気の抜けた目をして呟いた。
-------------
84: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 21:16:34.18 ID:31V1xYrB0
乙哉「うーん……実はあたし大ピンチじゃん?」
改めて周りを見て、乙哉が緊張感のない声を出した。
乙哉はコートの角に立ち、兎角から距離を取る。
兎角「行くぞ、武智」
乙哉「あたし、攻められるよりは攻めたいタイプなんだよねー」
にやりと笑う乙哉の目が光る。
しかし兎角は気圧される事もなく、全力でボールを投げつけた。
85: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 21:22:50.29 ID:31V1xYrB0
乙哉「はーい。惜しいね」
兎角の攻撃は軽くかわされ、ボールは後ろにいたしえなに渡った。
しえな「このっ!」
サイドに移動したしえなからのアタックも容易にかわされ、今度は向かい側に立っていた純恋子がボールを拾う。
純恋子「えいっ」
乙哉「残念!」
純恋子の剛速球も、乙哉は始めから受ける気がないため飄々と避けられてしまった。
86: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 21:34:42.91 ID:31V1xYrB0
——ぼぐっ!!
しえな「いっだーーーー!!」
乙哉の避けたボールは鈍い音を立ててしえなの外腿に直撃した。
伊介「……あんた、ほんっとに運がないわね……」
うずくまるしえなに同情の視線が集まり、あまりに不憫で伊介ですらも彼女に声をかけている。
しえな「外野にいても……これだしさぁ……」
腿を激しくさすりながら、しえなは痛みに耐えていた。
87: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 21:38:44.63 ID:31V1xYrB0
それでもボールが流れないように抱え込む姿勢に兎角は感心した。
乙哉「しえなちゃん、基本的にトロいんだね」
しえな「はっきり言うなよ!!」
苛立ちまぎれにボールを乙哉に至近距離から投げつけるが、それも彼女にはヒットしない。
乙哉「当たんないよー」
相手を小馬鹿にするように乙哉は両手をぷらぷらと振り、コート内をちょこまかと駆け回った。
いい加減苛々も極まってきたようで、伊介は力任せにボールをぶん投げるが、それもさらっとかわされてしまう。
88: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 21:57:11.57 ID:31V1xYrB0
伊介「あぁもう!!早く死ねっ!!」
春紀「伊介様ー、言葉が物騒だよ」
伊介「あんたらの存在の方がよっぽど物騒よ♥」
暗殺者で構成されたチームを見回しながら伊介がこめかみを引きつらせる。
次にボールを取ったのはサイドに立つ香子だった。
香子「私の攻撃だな」
乙哉に向けてボールを構えると、兎角としえなが内野と外野でそれぞれ身を乗り出す。
89: ◆P8QHpuxrAw 2014/12/31(水) 21:59:01.70 ID:31V1xYrB0
兎角「気を付けろ!!神長が投げるぞ!」
しえな「前後左右どこに飛ぶか分からない!全員警戒して!!」
香子「お前ら味方だろう!!」
伊介「味方にぶつけておいて仲間ヅラかよ♥」
身内からの辛辣な言葉に香子は怯んだ様子を見せたが、持ち前の真面目さで名誉の挽回に臨む。
乙哉に焦点を合わせ、低めの位置を狙っているようだ。
たとえ外れたとしても、向かい側にはしえなが立っている。
相手にボールが取られなければ次のチャンスはある。
94: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 22:20:02.71 ID:KpejcEPX0
香子「はぁっ!!」
乙哉の足元に向けてまっすぐに腕を振り、ボールはその視線の先へ——。
真昼「ほぎゃっ!」
純恋子「番場さん!」
ボールはとんでもない勢いで飛び、向かい側外野サイドの真昼の脇腹にぶち当たった。
当たりどころが悪かったのか、倒れ込む真昼に純恋子が即座に駆け寄り、介抱を始めている。
鳰「真昼さんリタイアー……っスかね……」
95: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 22:37:20.56 ID:KpejcEPX0
純恋子を見れば、鳰に向けて親指をぐっと立てて合図を送っていた。
そのまま真昼を抱えて体育館の隅へと移動し、膝枕を始める。
鳰「どさくさに紛れて自分の欲求を満たしてるっスねー……」
兎角「結局ボールはあっちか……」
しえな「本当に役に立たないな」
しえなが半眼で香子を睨むと、彼女はその場にへたり込んで拳をぐっと握りしめた。
香子「くっ、ボールを奪われてしまっ——!」
伊介「いやあんたがそこに自ら投げたんだよ」
96: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 22:45:55.80 ID:KpejcEPX0
香子に被せて突っ込む伊介の声は今までに聞いたことのないほど低かった。
ボールの所有権がない今、外野にはなにも出来る事がなく、ただ兎角を見守った。
晴「さぁ兎角さん!覚悟してください!」
真昼からのこぼれ球は晴が拾っていた。
そしてそのボールは春紀へ渡り、次に乙哉へ回された。
兎角はボールを目で追いながら、乙哉と春紀の動きを見張っていた。
アタッカーはこの二人のどちらかになるはずだ。
97: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 22:58:33.71 ID:KpejcEPX0
乙哉から晴にパスが渡ると、春紀が軽く手を上げたのが見えた。
パス回しは4回まで。
晴から春紀へのパスが最後になるため、アタッカーは春紀となる。
兎角が春紀に体を向けようとすると、晴が兎角に向けて一歩踏み込んだのが視界に映った。
兎角「なっ……」
アタッカーは晴だ。
瞬時に判断して晴に向き戻り、なんとかボールが向かってくる前に正面に構える事が出来た。
98: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 23:06:48.55 ID:KpejcEPX0
十分キャッチできる間合いだ。
しかし晴の手から離れたボールは、意外な勢いを持って兎角へと飛んできた。
兎角「くっ……!」
ボールは一瞬反応の遅れた兎角の手の甲に当たり、宙へ高く舞い上がる。
しえな「まだだ!」
しえなが叫ぶが、着地点はサイドラインの外だ。
春紀達が勝利を確信した表情を見せる中、兎角は動いた。
99: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 23:13:40.81 ID:KpejcEPX0
サイドラインギリギリのところから高々とジャンプしてボールへと手を伸ばす。
しえな「うわ……」
会心の跳躍力にしえなが驚きの声を上げ、同様に他のメンバーの視線も感じる。
しかし、視界の端に移る春紀だけは自コートに目を向けていた。
春紀の視線の先には、感心した様子で兎角を見つめる乙哉の姿がある。
春紀「武智!下がれ!!」
乙哉「えっ!?」
100: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 23:24:23.93 ID:KpejcEPX0
その声に乙哉が反応し、センターラインから下がろうとするが兎角の狙いはすでに乙哉に向いている。
兎角「こ、のっ!!」
着地を待たず、兎角は乙哉へアタックを繰り出していた。
勢いはないものの、不意を突かれた乙哉に逃げ場はない。
乙哉「うわわわ!」
兎角の投げたボールは乙哉の膝に当たり、足元へと転がっていった。
鳰「乙哉さんアウトー!試合終了!兎角さんチームの勝利っス!!」
101: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 23:31:32.07 ID:KpejcEPX0
鳰の宣言とともにしえなが兎角に駆け寄る。
しえな「東!よくやった!」
急いではいないものの、同じように伊介と香子も兎角へ向けて歩みを進めていた。
伊介「まぁ当然よね。伊介が負けるなんてありえないもの♥」
香子「最後にボールを奪われた時にはどうなる事かと思ったが、辛勝といったところか」
伊介「疲れたからもう突っ込まないわよ♥」
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102: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/01(木) 23:44:59.48 ID:KpejcEPX0
しえなが千足がいない事に気付いて辺りを見渡していると、外野で向かい合う千足と柩を見つけた。
柩「千足さん、おめでとうございます!」
柩は千足の手を握り、子供のような笑顔を向けている。
自分の事のようにはしゃぐ柩に驚いて半ば呆然とする千足の頬が段々と緩んでいく。
千足「桐ヶ谷。お前は優しいな」
柩「ぼく、千足さんの言う事ならなんでも聞きます」
103: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 00:01:28.15 ID:tBErW8WK0
しえな「生田目じゃなくて、ボクらの言う事聞くんだぞ?」
二人の会話を内野から聞いていたしえなが口を挟むと柩の目がキラリと光った。
柩「反撃してもいいですか?」
しえな「ダメに決まってるだろ!?」
いつもよりはるかに低い声のトーンに、しえなは妙な危機感を覚えて身を震わせた。
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107: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 21:34:50.95 ID:tBErW8WK0
体育館の隅に座り込んでいた純恋子と真昼が立ち上がって、黒組メンバーの集まっている場所へと移動を始めた。
純恋子「番場さんには可愛いお洋服でも着てもらいましょうか」
上品に笑いながら、純恋子は真昼の全身に視線を巡らせた。
それに気付いた真昼の頬が赤く染まっていく。
真昼「は、恥ずかしい……ます……」
純恋子「真夜さんにもお願いしようかしら……。かっこいいお洋服もお似合いになりそうですわね。番場さんはどう思われますか?」
108: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 21:42:06.67 ID:tBErW8WK0
真昼「いい……思います……」
うっとりとした表情で純恋子に笑い返すと、純恋子はさらに楽しそうに笑った。
春紀「それ全員に着せるんだからな」
しえな「そういうのは個人的にやれ」
外野から二人の様子を見ていた春紀が水を差し、さらにそれに乗せてしえなも突っ込むが、二人が気にする様子はまったくなかった。
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109: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 21:52:18.58 ID:tBErW8WK0
春紀「あーあ。伊介様になんか命令したかったなー」
春紀は今更負けた事が悔しくなったのか、口を尖らせて伊介のそばに歩み寄ってきた。
伊介は勝ち誇った気持ちで顎を上げると、春紀に挑発的な視線を送った。
伊介「百年早い♥」
春紀「せっかくのチャンスだったのに」
春紀が小さくポツリと呟く。
ちらりとこちらを見る動作には気付いていた。
110: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 22:01:59.62 ID:tBErW8WK0
伊介はあえてそれを無視する。
春紀「……」
なのにそれ以上何も言ってこない事が気になって、結局は折れてため息をついてしまう。
仕方がない。
伊介「……なにして欲しかったのよ」
待っていたかのように春紀は笑った。
春紀「伊介様にさ、ネイルを綺麗にしてもらいたかったんだ」
伊介「馬鹿じゃないの♥」
114: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 22:59:02.18 ID:tBErW8WK0
にっこりと笑いながら春紀を罵倒すると、彼女はがっかりした様子で首をうな垂れた。
春紀「えー。本気なのにぃ……」
しかし別に否定したわけじゃない。
伊介「そんなの、いつでもしてあげるわよ……」
小さな小さな声で呟いてみるが、春紀の耳にはしっかり届いていて、次の瞬間には目を輝かせていた。
春紀「ほんと!?絶対だよ!」
伊介「子どもか」
あからさまにうんざりした顔をして見せたのに、すぐに春紀の人懐っこい笑顔につられて目を細めてしまった。
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115: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:07:54.31 ID:tBErW8WK0
涼「香子ちゃんはなにかあるか?」
周りの騒々しさを微笑ましく見守りながら、涼は香子に声を掛けた。
彼女も同じように黒組を眺め、前を向いたまま口を開く。
香子「別に何もない」
涼「そうじゃろうなあ」
無愛想に返してくる香子が可愛く思えて緩やかに目を伏せた。
116: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:13:42.42 ID:tBErW8WK0
すると、そんな様子が気になったかのように香子がこちらに向いた。
香子「首藤はなにかあったのか」
涼「いーや。特にはないかの」
涼にとってはみんなと遊べた事自体が、目的であり報酬だった。
正確には、香子と遊びたかった。
そしてとても楽しかったからそれ以上に望むものはない。
117: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:20:10.11 ID:tBErW8WK0
香子「そうか……。ところで首藤」
涼「んー?」
香子が軽く頬を掻いて目を逸らした。
香子「今度、温泉旅行に付き合え」
照れたように呟く言葉が嬉しくて、涼は満面の笑みを浮かべた。
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118: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:27:12.16 ID:tBErW8WK0
乙哉「しえなちゃんしえなちゃん!あたし今日はしえなちゃんの犬になるね!」
押し潰すくらいの勢いでいきなり乙哉が背中にのしかかってきた。
しえな「うわ重っ……!ばっ…やめろ!」
しえなが激しく鬱陶しがっても乙哉は全く気にしない。
伊介「あぁ、そういうプレイが好きなのね♥」
しえな「ご、誤解だ!そういうのじゃない!!」
香子「趣味はそれぞれだから否定するつもりはないぞ」
119: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:38:55.07 ID:tBErW8WK0
しえな「違うってば!!」
伊介と香子に否定を繰り返すが、聞いてくれる様子はない。
背中にいる乙哉はずっとしえなの頭に頬を擦り付けている。
引き剥がそうにも力が強すぎて腕を振りほどけない。
なんとかできないかと腕力のありそうな春紀に目を向ける。
春紀「今日は、って事はいつもは剣持が犬なのか」
しかし彼女も興味ありげにこちらを見ているだけだった
120: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:43:35.54 ID:tBErW8WK0
しえな「ちゃんと話を聞いてくれ!武智が勝手に懐いてくるだけでボクは別に——!!」
乙哉「しえなちゃん……。そっか、あたし邪魔だったんだ……。ごめんね?あたし空気読めないから……」
ふと背中の負担が軽くなる。
体は離されていなかったが、今は手を添える程度の重さしか感じない。
振り返れば寂しそうに笑う乙哉の姿が映る。
しえな「あ、そういう意味じゃ……。悪かったよ。言い過ぎた……」
121: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:49:11.92 ID:tBErW8WK0
そっと乙哉の手に触れると、彼女はにやりと笑った。
乙哉「やっぱり可愛いね、しえなちゃん!」
今度は正面から抱きつかれ、気落ちした様子を見せたのは乙哉の演技だと気付く。
しえな「あぁもう離れろ!!」
乙哉「えー……あたしのこと嫌いなの……?」
しえな「そういう話じゃなくて……!」
122: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/02(金) 23:57:55.58 ID:tBErW8WK0
きっとこれも演技だと思いながらも突き放せない。
どうしようかと考えて、もう諦めた。
春紀「剣持あれダメだわ。完全にオモチャだな」
伊介「お似合いだと思うけど♥」
2号室の会話は聞こえていたが、否定する気力もなかった。
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123: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 00:06:38.12 ID:nan7TTLq0
晴「兎角さんは?」
周りの様子を楽しそうに眺めていた晴がようやく口を開いた。
兎角「私は別になにも……」
晴「あんなに勝ちたがっていたのに?」
兎角「報酬のために勝ちたかったわけじゃない」
あまり気の利いた事が言えなくて、晴ががっかりするんじゃないかと少し心配になった。
勝ちたい、というよりは負けたくないという気持ちの方が強かった気がする。
124: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 00:12:29.22 ID:nan7TTLq0
なにより晴に無様な姿は見せたくはなかった。
晴「兎角さんらしいけど」
にっこりと返してくる晴の笑顔が眩しくて、どきりと胸の奥が熱くなる。
晴「兎角さん、手は大丈夫?」
晴が手元を覗き込んできた。
兎角「なにがだ」
125: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 00:22:13.87 ID:nan7TTLq0
しらばっくれてみるが、晴は構わず兎角の左手に手を添えてきた。
晴「春紀さんのボールを取った時だよね」
隠しても無駄なようだ。
兎角は長いため息を吐き出して、手首をくるくると回して見せる。
兎角「少し痛めただけで、一時的なものだ。今はなんともない」
少し当たり所が悪かっただけで、試合中は手首が素早く回らなかった。
126: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 00:29:20.06 ID:nan7TTLq0
それでも見た目で分かるような動きはしていないはずだった。
兎角「よく気付いたな」
晴「うん、だって晴はいつも兎角さんを見てるから……」
頬を染めて寄り添う晴の体温が伝わってくる。
ひなたの匂いで肺が満たされ、誘われるように兎角は晴の腰を抱き寄せた。
------------
129: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 21:20:34.53 ID:nan7TTLq0
しえな「なんかあそこの空気ぬるいけど」
春紀「あれは最初からだ」
遠くから1号室の二人を素の表情で眺めながら、しえなと春紀が低めに呟いた。
しえな「結局これどうなるんだ?みんなバラバラだぞ」
これではいつまで経っても決まらない。
しえなはため息交じりにぼやいて周りを見渡した。
誰の顔を見てもいい案があるようには思えない。
130: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 21:26:25.52 ID:nan7TTLq0
がっくりとうなだれる溝呂木を外野へ叩き出すと伊介はにっこり笑って向き戻った。
涼「これ。先生をいじめるでない」
溝呂木を哀れんだ涼が庇うが、溝呂木はすでにとぼとぼと体育館の隅に向かって歩いて行ってしまっていた。
春紀「まぁ罰ゲームできゃっきゃ言い合う間柄でもないわな」
純恋子「どうするんですの?」
春紀「最後まで残っていたのは東なんだし、東が決めたらいいんじゃないか?」
春紀が兎角のいた方を振り返るが、視線の先にはすでに彼女の姿はない。
一通りのやり取りが終わったのか、兎角と晴は春紀の真後ろまで寄ってきていた。
131: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 21:35:13.66 ID:nan7TTLq0
兎角「……私が決めるのか?」
春紀と目が合って、兎角はきょとんとした顔でわずかに首をかしげた。
兎角が望みは何もないと言っていたのは春紀も知っているはずだが、内容よりまず誰が決めるのかを決定しておきたいのだろう。
それだけで少しは話が進む。
伊介「東さんのセンスで面白い事が思い付くのかしら♥」
涼「別に面白い事をする必要はないじゃろう」
132: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 21:44:38.86 ID:nan7TTLq0
反発しそうに思えた伊介もいい加減面倒になってきたようだ。
文句を言いながらも反論はしない。
晴「そうですね。兎角さんが決めてください」
視線が集まり、兎角は居心地悪そうに考え込むと数秒後に顔を上げた。
兎角「……これは個人的に一ノ瀬に頼もうと思っていたんだが——」
春紀「そういうのパスパスパス!!破廉恥すぎてダメなやつだろ!!」
間髪入れず口を挟む春紀の反応に兎角が頬をわずかに染めた。
133: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 21:53:40.59 ID:nan7TTLq0
兎角「そんなわけあるか!!バカを言うな!!」
晴「とっ、兎角さん、誰でもいいんですか!?」
兎角「良くない!!」
伊介「あ、やっぱそういう意味なんだ♥」
兎角「そ、そうじゃない!今のは流れで……!!」
しえな「なんにも考えてなさそうで実はムッツリだったんだな」
兎角「黙れ剣持!」
134: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 22:05:01.06 ID:nan7TTLq0
反論する度に兎角の色白な顔がピンクから赤に染まっていく。
意外な反応が面白くなったのか、後ろから乙哉も参加してきた。
乙哉「ハーレム作りたいの?手伝うよ!」
しえな「どっちかというと、囲まれていたぶられるタイプじゃないか?東って。あとどさくさに紛れて自分の願望を晒すなよ、武智」
しえなは耳元で興奮する乙哉を押さえ付けるが、もはや離れてくれるとも思っていない。
涼「粋がってる割に返り討ちっていうのが面白いと思うんじゃが……」
涼が香子に振り返って話を振り、それにうんうんと頷く彼女を見て、兎角が怒りを爆発させた。
135: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 22:12:29.52 ID:nan7TTLq0
兎角「だからその話はもういい!カレーを作ってもらうつもりだったんだ!!」
春紀「個人的にやれよ」
兎角「だからそう言っただろうがっ!」
春紀「いでっ!」
兎角は目を吊り上げて春紀の背中を平手でぶっ叩いた。
その後春紀が背中をさすりながら伊介に寄って行くのが見えたが、その先でもなぜか伊介にぶっ叩かれている。
136: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 22:18:43.49 ID:nan7TTLq0
晴「晴達でカレー作るの?」
兎角「そうだ。嫌なら嫌で構わないが」
兎角は周りを見渡し、どうでもよさげにため息をついた。
伊介「まぁいいんじゃない♥」
春紀「相方への料理は定番中の定番だしな」
伊介「不味かったらコロすわよ♥」
137: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 22:24:29.30 ID:nan7TTLq0
伊介の威圧的な態度にすっかり慣れたのか、料理に自信があるのか、春紀は楽しそうに笑うだけだった。
乙哉「しえなちゃんのカレーかぁ」
しえな「いや違う。作るのはお前だろ。ボクを勝手に負け組に入れるんじゃない」
うっとりと浮いた目付きで宙を見つめる乙哉の頭を軽く小突くと、彼女は「えー」と不満そうな声を上げた。
それでも乙哉の目は輝いている。
なにか変なものでも入れる気なんじゃないかと考えながら、カレー作りには自分も参加しようと心に決めた。
138: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 22:33:11.91 ID:nan7TTLq0
伊介「しえなちゃんが負けてないってなんかおかしいわよね♥」
しえな「どうしてそうなるんだ。その考えがおかしい事に気付いてくれ」
ただの冗談だと思ったのに、伊介以外の人の目は笑っていなかった。
しえな「ボク、なにかしたっけ……」
鳰「なにもしてないからじゃないっスかね」
どういう意味だと問いただそうとしたが、
涼「カレーといえば……」
涼が口を開いてタイミングを逃してしまう。
139: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/03(土) 22:44:01.09 ID:nan7TTLq0
涼「家庭で手軽に食べられるようになった時には感動したものじゃ」
香子「いつの話だ。お前私と同い年だよな?」
懐かしそうに呟く涼の隣で香子が訝しんでいた。
涼はそれをにっこりと笑顔でかわし、別のメンバーへと目を向けた。
千足「桐ヶ谷、大丈夫なのか?包丁には気を付けるんだぞ?火傷なんてするんじゃないぞ?」
柩「大丈夫ですよ。ぼくは子どもじゃないんですから。千足さんのために一生懸命作ります!」
無邪気に笑う柩とは裏腹に、千足は彼女の心配ばかりしている。
144: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:08:08.37 ID:cu+AxlEe0
恋人同士、というよりは家族のような、それも父親が娘を心配するような口調だった。
千足「お前が怪我をしてしまっては素直に喜べない。私も手伝おう」
柩「だめですよ。ぼくが千足さんのために作るんです」
柩はそうきっぱりと言い切ってから少し俯いた。
柩「それに一緒に作るのは、二人きりの時がいいです……」
しえな「またか。またイチャつく気か」
冷たく吐き捨てると、しえなはそれ以上に冷たい視線を感じた。
145: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:16:00.74 ID:cu+AxlEe0
柩「なんですか?」
しえな「ひえっ……」
氷のように光る柩の目から逃れたくて、しえなは乙哉の後ろに隠れた。
そのまま4号室の方は見ないように視線を逸らすと、落ち着いた空気の漂う6号室の二人が見えた。
いつも通り、何か言いたそうなのに気弱にもじもじとする真昼。
もどかしさに苛立った様子もなく純恋子はじっと彼女が話し出すのを待っている。
真昼「英さんに……喜んで、もらえるカレーなんて……作れますん………」
しえな「え。それはどっち?」
146: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:22:16.80 ID:cu+AxlEe0
思わずぼそっと突っ込むが二人には聞こえていなかったのか、あえて無視をしているのか反応は返ってこなかった。
純恋子「番場さんが作ってくださるカレーならどの世界のカレーより美味しいに決まっていますわ」
真昼「でも……」
純恋子「わたくしの好きな食べ物は番場さんの作ってくれるカレーですのよ」
香子「確かマカロンだったはずだが」
すぐそばで口を挟む香子の声は届いているだろうに、やはり二人からの反応はない。
147: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:31:44.73 ID:cu+AxlEe0
純恋子は自分より少し低い位置にある真昼の頭をそっと抱き寄せた。
純恋子「わたくしのために作って下さいますか?」
真昼「は…、はひ……っ」
顔を真っ赤にしながら、固く目を閉じて真昼は声を震わせた。
鳰「あのー……ウチ、食べてくれる相手がいないっスけど、それでもやっぱり作るんですかね……?」
148: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:39:23.36 ID:cu+AxlEe0
兎角「じゃあ私が食べてやる」
鳰「ウチに気を遣ってるみたいな言い方っスけど、ただの食い意地っスよね」
そう言う鳰の表情は少しにやけていて、それはいつもの嫌な笑い方ではなかった。
そのままちゃっかりと晴と兎角のそばで楽しそうに並んでいる。
春紀「じゃあ、先生。放課後調理実習室借りていい?」
溝呂木「あぁ!みんなで仲良く料理だもんな!先生がちゃんと許可を取ってやる!!」
春紀が遠くで落ち込む溝呂木に声をかけると、彼は輝いた表情で駆け寄ってきた。
------------
149: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:42:55.23 ID:cu+AxlEe0
体育の授業が終わり、全員で教室に戻る途中、晴は後方を歩く兎角に並んだ。
晴「兎角さん、ありがと」
兎角「なんの話だ?」
晴が肩を寄せると、兎角はそっけない返事をしながら一旦合わせた目を逸らす。
その態度で何の話なのか察していることくらいは晴にも分かっていた。
晴「晴が喜ぶからでしょ?」
やはり兎角はこちらを見ない。
150: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:46:29.31 ID:cu+AxlEe0
兎角「……知らない。別にお前、みんなで料理したいなんて言ったことないだろ」
カレーの話なんてしていないのに、そう言って墓穴を掘る辺りが兎角らしいと思う。
みんなで何かをする事に憧れている晴の気持ちを、兎角はちゃんと理解していた。
命を守るだけでなく、他の事でも守られているのを自覚して晴は嬉しくなった。
晴「ほら、分かってくれてる。だからありがとう」
兎角「……置いていくぞ」
照れ隠しに歩幅を広げる兎角を駆け足で追いかけ、また彼女の隣に並んで腕を絡める。
151: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:51:24.46 ID:cu+AxlEe0
鬱陶しそうにするかと思って兎角の顔を覗き込むと、ため息をつきながらもちゃんと笑って返してくれた。
晴「兎角さん」
兎角「なんだ?」
晴「兎角さんが困ること言っていい?」
兎角「困るのならやめてくれ」
思い切り怪訝な顔で断られてしまった。
晴「そっか……。じゃあいいです……」
152: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 21:55:46.34 ID:cu+AxlEe0
わざとというわけではなかったが、落ち込んだ態度が素直に出てしまって兎角がさらにため息をつくのが聞こえた。
兎角「どっちにしても私が困るんじゃないか……」
ぼそりと呟いて、兎角は晴の手を握った。
兎角「言ってみろ。いくらでも困ってやるから」
諦めたように眉を下げて、兎角は息を吸った。
そういう自分の犠牲を厭わない態度がいつだって愛しかった。
153: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 22:02:27.40 ID:cu+AxlEe0
晴「大好き」
込められるだけの想いを声と笑顔にのせる。
兎角は瞬時に顔を赤く染めて、それを隠すように晴から顔を逸らした。
兎角「そういう困らせ方だとは思わなかった……」
晴「兎角さんも晴を困らせてみる?」
素直な反応が嬉しくて、思わず調子に乗ってしまった。
154: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 22:06:49.59 ID:cu+AxlEe0
どんな返事をくれるのか、少しばかり期待をしてみる。
兎角は数秒考え込んで、晴の顔を見た。
兎角「……お前は喜ぶだけだと思う」
やっぱりダメだった。
分かってはいたが、盛り上がりついでに少しくらいサービスしてくれるんじゃないかとも思っていた。
拗ねたような態度を取れば何か言ってくれるかもしれないが、そこまで困らせてしまうのもかわいそうな気がする。
155: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 22:15:04.31 ID:cu+AxlEe0
考え込んだ数秒の間、きっと兎角は頭の中で晴を困らせるための言葉を並べたはずだ。
晴「兎角さん、晴が喜ぶような事言おうとしたの?」
そう指摘すると兎角は、しまった、といった顔をしてまた顔を逸らした。
それ以降兎角は黙ってしまって、もう一度催促をしたけれど答えてはくれなかった。
本当は兎角が大切に想ってくれている事は分かっている。
だから今は握り返してくれるこの手のぬくもりだけで十分だった。
終わり
156: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/04(日) 22:25:23.37 ID:cu+AxlEe0
終わりました。
最後の方はだらっとしましてすみません。
お付き合い頂きましてありがとうございました。
以前書いたものについてお問い合わせを頂きましたのでリンクを張っておきます。
兎角「初恋」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408012659/
兎角「不安」(「初恋」の続き)※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416826366/
晴「やっちゃいます」※ふたなり注意
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410437420/
しえな「武智乙哉はシリアルキラー」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410871647/
兎角「新しい黒組」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412165049/
しえな「ボクの居場所」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418210849/
こうやって見るとエロばっかりですね。どうかしています。
そして何故か晴ちゃんがエロくなります。
ふたなりに関しては嫌悪感を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、私は内容によっては大好物でございます。
もう1、2本くらいは書きたいところです。
それでは、また別の話が出来たら書きこんでいこうと思いますのでその時に気が向いたら見てやってください。
今後とも犬の散歩野郎をよろしくお願い致します。
最後の方はだらっとしましてすみません。
お付き合い頂きましてありがとうございました。
以前書いたものについてお問い合わせを頂きましたのでリンクを張っておきます。
兎角「初恋」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408012659/
兎角「不安」(「初恋」の続き)※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416826366/
晴「やっちゃいます」※ふたなり注意
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410437420/
しえな「武智乙哉はシリアルキラー」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410871647/
兎角「新しい黒組」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412165049/
しえな「ボクの居場所」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418210849/
こうやって見るとエロばっかりですね。どうかしています。
そして何故か晴ちゃんがエロくなります。
ふたなりに関しては嫌悪感を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、私は内容によっては大好物でございます。
もう1、2本くらいは書きたいところです。
それでは、また別の話が出来たら書きこんでいこうと思いますのでその時に気が向いたら見てやってください。
今後とも犬の散歩野郎をよろしくお願い致します。
157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 22:31:39.28 ID:8dDAc1RE0
乙である
次も期待してるぜ
次も期待してるぜ
158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/04(日) 22:37:35.47 ID:jVyhh31V0
お疲れ様です
犬の散歩さんの兎晴楽しみ
犬の散歩さんの兎晴楽しみ
159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 22:56:38.25 ID:BtxtTuKcO
乙です
犬の散歩さん多作でホントに尊敬してる
次の作品も期待しています
犬の散歩さん多作でホントに尊敬してる
次の作品も期待しています
160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/01/05(月) 23:35:39.56 ID:uRvjBDG40
すごく面白かったです!
次回作も期待してます!
頑張ってくださいっ!
次回作も期待してます!
頑張ってくださいっ!
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419508524/
Entry ⇒ 2015.10.02 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
春紀「怖いの無理」
1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/15(火) 03:54:16.77
以前、純恋子「番場さんがいなくなって」と春紀「もしかして嫌われた?」を書いたものです。
今回で3回目です。まだ全然慣れないんで文章や口調がメチャクチャだったりキャラ崩壊も
あると思うので気になる方はご注意ください。今回はネタバレ要素はないと思います。
今回で3回目です。まだ全然慣れないんで文章や口調がメチャクチャだったりキャラ崩壊も
あると思うので気になる方はご注意ください。今回はネタバレ要素はないと思います。
2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 03:56:42.69
金星寮2号室
伊介「ねぇ春紀ー、退屈~、テレビ付けて♥」
春紀「いや、伊介様のが近いじゃん」
伊介「めんどくさい♥」
春紀「はいはい、分かったよ」ポチッ
伊介「リモコンも♥」
春紀「ほらよ伊介様」ヒョイ
伊介「ありがと~♥」カチ、カチ
伊介「あ、映画やってる。伊介このシリーズ好きなのよね」
春紀「ん?どんな映画?」
伊介「ホラー映画」
春紀「そ、そうなんだ」
伊介「そうだ、春紀も見よ?♥」
春紀「え?い、いいよあたしは・・・」
伊介「いいから見るわよ」グイッ
春紀「いや、マジでいいって・・・」
伊介「黙れ♥」ズルズル
春紀「いや、ホント、マジで勘弁」ググッ
伊介「春紀、もしかして怖いの苦手?♥」
春紀「そ、そんなことは・・・」
伊介「じゃあ決定~♥」ズルズル
伊介「ねぇ春紀ー、退屈~、テレビ付けて♥」
春紀「いや、伊介様のが近いじゃん」
伊介「めんどくさい♥」
春紀「はいはい、分かったよ」ポチッ
伊介「リモコンも♥」
春紀「ほらよ伊介様」ヒョイ
伊介「ありがと~♥」カチ、カチ
伊介「あ、映画やってる。伊介このシリーズ好きなのよね」
春紀「ん?どんな映画?」
伊介「ホラー映画」
春紀「そ、そうなんだ」
伊介「そうだ、春紀も見よ?♥」
春紀「え?い、いいよあたしは・・・」
伊介「いいから見るわよ」グイッ
春紀「いや、マジでいいって・・・」
伊介「黙れ♥」ズルズル
春紀「いや、ホント、マジで勘弁」ググッ
伊介「春紀、もしかして怖いの苦手?♥」
春紀「そ、そんなことは・・・」
伊介「じゃあ決定~♥」ズルズル
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 03:57:39.07
・・・
テレビ「ぎゃーーー!」
春紀「!」プルプル
テレビ「キャァーーーーー!」
春紀「ッ」ビクッ!
伊介 (ヤバッ、怖がってる春紀可愛い~)
春紀「も、もう寝るわ。お休み」スッ
伊介 (可愛過ぎwイジメてやろ♥)
春紀「・・・」ガタガタ
伊介「目開けたらいきなり出てくるのとかあったわねー」
春紀「!?」パチッ
伊介 (あ、目開けた)
春紀「やめてよ伊介様」バサッ
伊介 (と思ったら布団被りやがった)
春紀「」ブルブル
伊介「布団から出てくるのもいたっけー」
春紀「!?」ガバッ
伊介 (布団めくった~)ニヤニヤ
春紀「マジやめて・・・」
伊介「変な音聞こえてくるのとかもあったなー」
春紀「伊介様ホントやめて」ボフッ
伊介 (耳塞いでうつ伏せになりやがった、こうなったら♥)スクッ
伊介 (顔にメイクして)
伊介 (こうやって紐に色々くっ付けて)
伊介 (伊介のベッドの上に通して)
伊介 (春紀のベッド下に入ってと)
伊介 (あとは春紀が気づいたときに引っ張れば・・・)
テレビ「ぎゃーーー!」
春紀「!」プルプル
テレビ「キャァーーーーー!」
春紀「ッ」ビクッ!
伊介 (ヤバッ、怖がってる春紀可愛い~)
春紀「も、もう寝るわ。お休み」スッ
伊介 (可愛過ぎwイジメてやろ♥)
春紀「・・・」ガタガタ
伊介「目開けたらいきなり出てくるのとかあったわねー」
春紀「!?」パチッ
伊介 (あ、目開けた)
春紀「やめてよ伊介様」バサッ
伊介 (と思ったら布団被りやがった)
春紀「」ブルブル
伊介「布団から出てくるのもいたっけー」
春紀「!?」ガバッ
伊介 (布団めくった~)ニヤニヤ
春紀「マジやめて・・・」
伊介「変な音聞こえてくるのとかもあったなー」
春紀「伊介様ホントやめて」ボフッ
伊介 (耳塞いでうつ伏せになりやがった、こうなったら♥)スクッ
伊介 (顔にメイクして)
伊介 (こうやって紐に色々くっ付けて)
伊介 (伊介のベッドの上に通して)
伊介 (春紀のベッド下に入ってと)
伊介 (あとは春紀が気づいたときに引っ張れば・・・)
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 03:59:40.54
数分後
春紀 (ヤバイ、怖くて全然寝れねぇ)ガクブルガクブル
春紀 (なんか変な匂いするしちょっと寒すぎ、冷房効きすぎだろ)
シーン・・・
春紀 (あれ?そういや物音しなくなった気が・・・)
春紀「・・・」ムクッ
春紀 (テレビ消えてる、伊介様も寝たのかな?)
春紀「まあいいや寝よ」
伊介 (今よ)スルスル
カタカタカタカタ
春紀「!?」ビクッ
春紀 (え、何?伊介様?)
伊介 (ビビってるビビってるw)スルスル
カタカタカタカタ
春紀 (近づいて来てね?)カチッ
春紀 (は?ライト点かねぇ・・・)
春紀「い、伊介様?」
伊介 (伊介は春紀の真下よ♥)スルスル
カタカタカタカタ
春紀「なあ、伊介様だろ?」
春紀 (そういえば伊介様さっき『変な音聞こえてくるのとかもあったなー』)
カタカタカタカタ
春紀「マジふざけんな・・・」
伊介 (そろそろ伊介のベッドね)ピタッ
春紀 (ヤバイ、怖くて全然寝れねぇ)ガクブルガクブル
春紀 (なんか変な匂いするしちょっと寒すぎ、冷房効きすぎだろ)
シーン・・・
春紀 (あれ?そういや物音しなくなった気が・・・)
春紀「・・・」ムクッ
春紀 (テレビ消えてる、伊介様も寝たのかな?)
春紀「まあいいや寝よ」
伊介 (今よ)スルスル
カタカタカタカタ
春紀「!?」ビクッ
春紀 (え、何?伊介様?)
伊介 (ビビってるビビってるw)スルスル
カタカタカタカタ
春紀 (近づいて来てね?)カチッ
春紀 (は?ライト点かねぇ・・・)
春紀「い、伊介様?」
伊介 (伊介は春紀の真下よ♥)スルスル
カタカタカタカタ
春紀「なあ、伊介様だろ?」
春紀 (そういえば伊介様さっき『変な音聞こえてくるのとかもあったなー』)
カタカタカタカタ
春紀「マジふざけんな・・・」
伊介 (そろそろ伊介のベッドね)ピタッ
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 04:00:22.01
カタカタ・・・
春紀 (止まった?すぐそこだよな?)
シーン・・・
春紀 (無視して寝るか?いや気になるし無理だな)
シーン・・・
春紀 (とりあえず電気を付けに行くしか・・・)ムクッ
春紀 (今度はなんも聞こえねぇ・・・怖)ソロリソロリ
伊介 (よし、再開♥)スルスル
ゴソゴソ
春紀「!?」ビクッ
春紀 (伊介様のベッド?)
モゾモゾ
春紀「伊介様?」
モゾモゾ
春紀 (他にも『布団から出てくるのもいたっけー』とか言って気が)ブルッ
モゾモゾ
春紀 (またこっち来てないか?)
モゾモゾ
春紀「お願い伊介様、悪戯ならホントにやめて・・・」涙目
モゾ・・・
春紀 (止まった・・・)
伊介 (今のうち後ろに)
春紀「もう無理・・・」ポロッ
伊介 (今ね♥)ポチッ
春紀「あれ?電気が・・・」クルッ
伊介「ばあっ!」
春紀「うぎゃああああああああああっ!!!!!!!!!!」
ゴロゴロ、ドスンッ!
春紀 (止まった?すぐそこだよな?)
シーン・・・
春紀 (無視して寝るか?いや気になるし無理だな)
シーン・・・
春紀 (とりあえず電気を付けに行くしか・・・)ムクッ
春紀 (今度はなんも聞こえねぇ・・・怖)ソロリソロリ
伊介 (よし、再開♥)スルスル
ゴソゴソ
春紀「!?」ビクッ
春紀 (伊介様のベッド?)
モゾモゾ
春紀「伊介様?」
モゾモゾ
春紀 (他にも『布団から出てくるのもいたっけー』とか言って気が)ブルッ
モゾモゾ
春紀 (またこっち来てないか?)
モゾモゾ
春紀「お願い伊介様、悪戯ならホントにやめて・・・」涙目
モゾ・・・
春紀 (止まった・・・)
伊介 (今のうち後ろに)
春紀「もう無理・・・」ポロッ
伊介 (今ね♥)ポチッ
春紀「あれ?電気が・・・」クルッ
伊介「ばあっ!」
春紀「うぎゃああああああああああっ!!!!!!!!!!」
ゴロゴロ、ドスンッ!
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 04:01:18.28
伊介「あははははははははははっ!!!!!」
春紀「」
伊介「春紀ったらビビり過ぎだっつーのwwwww」
春紀「」
伊介「お、お腹痛ーいwwwww」
伊介 (そろそろ怒って飛び掛かってくるわね)
春紀「グスッ」
伊介 (あれ?)
伊介「えっと、春紀?」
春紀「グスッ、ひっく・・・」ボロボロ
伊介 (あ、嘘・・・)メイクごしごし
春紀「う、うえぇーーーーーん」
伊介「え、マジで泣いてるの?」アセ
春紀「えーーーーーーーーーーん」
伊介「ご、ごめん春紀」オロオロ
春紀「うぇーんえーーーーーん」
伊介「ご、ごめんねぇ~。は~いもう怖くないよ~怖くないよ~」ヨシヨシ
春紀「わーーーーーーーーーん」
伊介「は~い、春紀~?大丈夫~。もう大丈夫よ~」ギュッ
春紀「う、うぅ。グスッ」
伊介「ご、ごめん。ホントにごめんね春紀」ナデナデ
春紀「グスッ・・・」
春紀「」
伊介「春紀ったらビビり過ぎだっつーのwwwww」
春紀「」
伊介「お、お腹痛ーいwwwww」
伊介 (そろそろ怒って飛び掛かってくるわね)
春紀「グスッ」
伊介 (あれ?)
伊介「えっと、春紀?」
春紀「グスッ、ひっく・・・」ボロボロ
伊介 (あ、嘘・・・)メイクごしごし
春紀「う、うえぇーーーーーん」
伊介「え、マジで泣いてるの?」アセ
春紀「えーーーーーーーーーーん」
伊介「ご、ごめん春紀」オロオロ
春紀「うぇーんえーーーーーん」
伊介「ご、ごめんねぇ~。は~いもう怖くないよ~怖くないよ~」ヨシヨシ
春紀「わーーーーーーーーーん」
伊介「は~い、春紀~?大丈夫~。もう大丈夫よ~」ギュッ
春紀「う、うぅ。グスッ」
伊介「ご、ごめん。ホントにごめんね春紀」ナデナデ
春紀「グスッ・・・」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 04:01:50.27
伊介「ごめん、そんなに怖がると思わなくて」
春紀「や、やめてって言ったのに」グスッ
伊介「そ、その怖がる春紀が可愛くてつい・・・」
春紀「・・・」
伊介「ごめんね」
春紀「伊介様なんか嫌いだ・・・」
伊介「もう絶対しないから、ごめんね」ギュッ
春紀「もう二度と一緒に寝ない・・・」
伊介「ごめんね、ごめんね。二度と脅かしたりしないから」
春紀「・・・」
伊介「え~と、おさまった?」
春紀「」コクッ
春紀「や、やめてって言ったのに」グスッ
伊介「そ、その怖がる春紀が可愛くてつい・・・」
春紀「・・・」
伊介「ごめんね」
春紀「伊介様なんか嫌いだ・・・」
伊介「もう絶対しないから、ごめんね」ギュッ
春紀「もう二度と一緒に寝ない・・・」
伊介「ごめんね、ごめんね。二度と脅かしたりしないから」
春紀「・・・」
伊介「え~と、おさまった?」
春紀「」コクッ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 04:02:53.97
数分後
春紀「酷いよ伊介様」
伊介「ごめんねって♥」
春紀「もう腕枕してあげない」
伊介「お願いだから許して春紀♥」
春紀「あんな手の込んだ仕掛けまでして」
伊介「仕掛け?あの紐のこと?」
春紀「紐?それは見たよ。空調になんか匂い混ぜたりしたでしょ」
伊介「空調?何言ってんの?」
春紀「は?メッチャ寒かったし」
伊介「伊介点けてないわよ?変な匂いなんてしないし」
春紀「まだ脅かす気?ホントに許さないよ?」
伊介「ホントよ、現に今点いてないし、リモコンそっちだし・・・」
春紀「さっき消したんじゃ?」
伊介「ずっと春紀のベッドの下に居たのよ?どうやって点けんの?それに・・・」
春紀「それに?」
伊介「春紀にランプ点けさせないためにブレーカー落としてたんだけど」
春紀「うそぉ・・・」
伊介「天井の小さいのは電池式だし・・・」
春紀「マジ?」
伊介「マジよ・・・」
春紀「・・・」ゾッ
伊介「・・・」ゾッ
春紀「酷いよ伊介様」
伊介「ごめんねって♥」
春紀「もう腕枕してあげない」
伊介「お願いだから許して春紀♥」
春紀「あんな手の込んだ仕掛けまでして」
伊介「仕掛け?あの紐のこと?」
春紀「紐?それは見たよ。空調になんか匂い混ぜたりしたでしょ」
伊介「空調?何言ってんの?」
春紀「は?メッチャ寒かったし」
伊介「伊介点けてないわよ?変な匂いなんてしないし」
春紀「まだ脅かす気?ホントに許さないよ?」
伊介「ホントよ、現に今点いてないし、リモコンそっちだし・・・」
春紀「さっき消したんじゃ?」
伊介「ずっと春紀のベッドの下に居たのよ?どうやって点けんの?それに・・・」
春紀「それに?」
伊介「春紀にランプ点けさせないためにブレーカー落としてたんだけど」
春紀「うそぉ・・・」
伊介「天井の小さいのは電池式だし・・・」
春紀「マジ?」
伊介「マジよ・・・」
春紀「・・・」ゾッ
伊介「・・・」ゾッ
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 04:03:42.80
伊介「えっと、ホントに反省してるんで伊介のベッドで一緒に寝てください」
春紀「あ~、はい。もう許すんで一緒に伊介様のベッドで寝ます」
伊介「あ、是非よろしくお願いします」
春紀「いえ、こちらこそお願いします」
春紀「それじゃ失礼しま~す」
伊介「はい、どうぞ~」
春紀 (あ~伊介様やっぱいい匂いだな、でもまだ怖いや・・・)
伊介 (ん~春紀のいい匂い。でも正直怖い、どうしよ・・・)
春紀「ねぇ伊介様?」
伊介「何よ?」
春紀「えーとその、抱きしめながら寝てもらっていい?」
伊介「どうしてよ?」
春紀「まだ怖いんだ・・・」
伊介「いいわよ別に」
春紀「ありがと」テへへ
伊介「その代り」
春紀「ん?」
伊介「春紀も伊介のこと抱きしめろ♥」
春紀「何で?」
伊介「伊介も少し怖いの、悪い?」
春紀「ううん、うれしい」
伊介「ありがたく思いなさいよ♥」
春紀「うん、お休み伊介様」ギュ
伊介「お休み春紀♥」ギュ
というわけで二人は仲直りしてメッチャ抱き合いながら寝た。
春紀「あ~、はい。もう許すんで一緒に伊介様のベッドで寝ます」
伊介「あ、是非よろしくお願いします」
春紀「いえ、こちらこそお願いします」
春紀「それじゃ失礼しま~す」
伊介「はい、どうぞ~」
春紀 (あ~伊介様やっぱいい匂いだな、でもまだ怖いや・・・)
伊介 (ん~春紀のいい匂い。でも正直怖い、どうしよ・・・)
春紀「ねぇ伊介様?」
伊介「何よ?」
春紀「えーとその、抱きしめながら寝てもらっていい?」
伊介「どうしてよ?」
春紀「まだ怖いんだ・・・」
伊介「いいわよ別に」
春紀「ありがと」テへへ
伊介「その代り」
春紀「ん?」
伊介「春紀も伊介のこと抱きしめろ♥」
春紀「何で?」
伊介「伊介も少し怖いの、悪い?」
春紀「ううん、うれしい」
伊介「ありがたく思いなさいよ♥」
春紀「うん、お休み伊介様」ギュ
伊介「お休み春紀♥」ギュ
というわけで二人は仲直りしてメッチャ抱き合いながら寝た。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 04:04:26.47
オチ
鳰「あちゃ~、寝惚けて換気口とダストシュート間違えちゃったッスよ」
鳰「誰かの部屋に行ってなきゃ良いんすけど・・・」
鳰「あのドライアイスめっちゃ臭かったんスよねぇ・・・」
鳰「よし、もう気にすんのやめて鳰ちゃん寝るッス」
FIN
鳰「あちゃ~、寝惚けて換気口とダストシュート間違えちゃったッスよ」
鳰「誰かの部屋に行ってなきゃ良いんすけど・・・」
鳰「あのドライアイスめっちゃ臭かったんスよねぇ・・・」
鳰「よし、もう気にすんのやめて鳰ちゃん寝るッス」
FIN
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 04:06:49.03
見てくださった方ありがとうございます。黒組で誰がお化け苦手かなと思ってとりあえず一番好きな春伊にしました。
逆でも成り立つかとも思ったんですけど春紀が怖がる方が個人的に萌えたんでこっちにしました。
あとは途中に伊介様が失敗してギャグでも良いかなと思ったんですけど書いてる時に怖い思いしたんでどうせだから
突っ切っちゃえと思ってこっちにしました。
気分が乗るか良いの思いつけば他のカプでも怖がらせシリーズとか書くかもしれないです。
逆でも成り立つかとも思ったんですけど春紀が怖がる方が個人的に萌えたんでこっちにしました。
あとは途中に伊介様が失敗してギャグでも良いかなと思ったんですけど書いてる時に怖い思いしたんでどうせだから
突っ切っちゃえと思ってこっちにしました。
気分が乗るか良いの思いつけば他のカプでも怖がらせシリーズとか書くかもしれないです。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/15(火) 05:28:12.89
乙っすよおおおおおおおおお
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 05:56:46.21
ついつい怖がらせて遊んじゃう所が親密な感じで可愛い
気が向いたら他カプの怖がらせ話もまた書いて欲しいっス!乙
気が向いたら他カプの怖がらせ話もまた書いて欲しいっス!乙
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/07/15(火) 06:52:38.03
乙です
春伊かわいかった!
春伊かわいかった!
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/15(火) 06:59:19.31
リアルタイムで遭遇できた!!ご家族に怖がらせをされてそうな春伊乙です
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405364056/
Entry ⇒ 2015.09.29 | Category ⇒ 悪魔のリドル | Comments (0)
兎角「卒業前」
1: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 20:31:42.96 ID:y0Y8vSQe0
悪魔のリドル12話前の妄想SSです。
地の文です。
中盤から終盤にかけてエロ描写がありますのでご注意ください。
以前に書いた続きになってます。これで最後です。
兎角「初恋」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408012659/
兎角「不安」(「初恋」の続き)※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416826366/
少し長いですが、最後まで投げださないでやりますのでどうかよろしくお願いします。
地の文です。
中盤から終盤にかけてエロ描写がありますのでご注意ください。
以前に書いた続きになってます。これで最後です。
兎角「初恋」※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408012659/
兎角「不安」(「初恋」の続き)※エロあり
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416826366/
少し長いですが、最後まで投げださないでやりますのでどうかよろしくお願いします。
2: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 20:32:48.42 ID:y0Y8vSQe0
晴「久しぶりだね」
待ち合わせ場所に行くと、まだ約束より早い時間なのに彼女はそこにいた。
兎角「先週会ったばかりだ」
晴「一週間って長いよ?」
兎角「そうか?」
どう返していいか分からなくて、素の表情を向けると晴は楽しそうに笑った。
無邪気に見える笑顔だったが、彼女にしたたかな一面がある事も今は知っている。
3: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 20:40:49.20 ID:y0Y8vSQe0
晴「晴は毎日だって会いたいけどね」
兎角「少し前まで毎日会っていたからな」
実際には寮で一緒に過ごしたのはほんの数ヶ月だった。
それでいてどんな時間よりも濃密だった気がする。
場所を変えようと思って自然に歩き出すと、晴が付いてきて腕にしがみついた。
そして気が付いたように顔を上げる。
晴「兎角さん、怪我してる?」
4: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 20:50:33.01 ID:y0Y8vSQe0
兎角「……どうして?」
晴「薬の匂いがする」
意外に鼻がいいんだなと思いながら、立ち止まって晴に離れるよう手で促した。
兎角「昨日、少し引っ掛けたんだ」
二の腕に軽く手を添えて見せると、晴が心配そうに覗き込んできた。
晴「ひどいの?」
兎角「全然」
そっけない返事が気に入らないのか、晴に疑いの目を向けられた。
5: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 20:59:09.39 ID:y0Y8vSQe0
嘘じゃない。
任務中に目測を誤って尖った枝にぶつかっただけだった。
本当に大した怪我ではない。
兎角「放っておいたら、晴が怒ると思って」
晴に心配をかけないために善処すると、以前に約束をしている。
晴「そっか……ありがとう」
兎角「なんでお前が礼を言うんだ」
6: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 21:04:41.43 ID:y0Y8vSQe0
晴「晴が言ったこと、守ってくれてる」
晴はいつもこうやって穏やかに笑う。
だから少し困らせてみたくなった。
兎角「働き蜂だからな」
女王蜂を守るための道具にすぎない。
一度はそんな絶望に見舞われた事があった。
今まで他に大切なものなんてなかったから、どこまでが自分の意思なのかも分からなかった。
7: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 21:09:37.81 ID:y0Y8vSQe0
二人にとって働き蜂という言葉は、傷付け合ったわだかまりそのものだ。
晴「意地悪……」
そう言う晴の目は困ったように笑っていて、その表情からは色々な感情が読み取れる。
兎角「冗談だよ。自分の意思だ」
兎角が歩き始めると、晴もそれに並んだ。
今ではそんな風にふざけた言い方も出来るようになった。
兎角には解決済でも、プライマーである晴にとっては生き続ける限り抱えていかなければならない問題である。
8: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 21:17:16.46 ID:y0Y8vSQe0
かといって、腫れ物のように扱ってその部分だけ穴を作るのも嫌だった。
もうお互いを勘繰る必要はないし、言いたい事や聞きたい事を隠す意味もない。
晴「うん」
兎角は晴の全てを認めて、全てを受け入れたいと思っている。
出来る事ならこれから先も。
兎角「もう少しで卒業だな」
空を見上げると、真綿のような雲の隙間から澄んだ青色が覗いていた。
9: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 21:23:38.44 ID:y0Y8vSQe0
近頃は暖かくなって、昼間は上着を着込むと汗ばむ事もある。
春はすぐそこに感じられた。
晴「うん。兎角さんのおかげ」
兎角「お前の力だろ」
晴「そういう言い方する?」
晴は働き蜂の話の延長だと思ったようだ。
冗談交じりに拗ねた顔をして、指先を脇腹に押し付けてくる。
10: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 21:31:53.84 ID:y0Y8vSQe0
兎角「プライマーの力とは言っていない」
兎角にそんなつもりはなかった。
晴の生に対する強い想いや、時折見せる容赦のなさとその覚悟は、あの黒組の中でも鋭い光だったと思う。
晴「じゃあやっぱり兎角さんのおかげだよ」
兎角「どうして」
晴「兎角さんが晴を守ってくれたんだよ」
確かに助けた場面もあったが、晴は結局一人だったとしても生き残っていた気もしている。
11: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 21:32:38.95 ID:y0Y8vSQe0
晴は少しも弱くない。
とても強いから、独りだけ取り残されないように守りたかった。
兎角「……おめでとう」
1年にも満たない時間を思い出し、なけなしの表現力で心を込めて伝える。
晴「うん」
今、晴の笑顔が見られる事が奇跡だった。
------------
12: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 22:27:36.73 ID:y0Y8vSQe0
日が暮れ始め、赤く染まった空が濃紺に変わっていくのも時間の問題だった。
晴「キスしておく?」
別れ際の雑談の中、唐突に晴は言い出した。
どきりと心拍が高くなり、思わず目線だけを一瞬唇に向ける。
兎角「バカ。外だぞ」
晴は辺りを見回して、兎角に向き直る。
晴「誰もいないよ?」
13: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/14(水) 22:41:58.25 ID:y0Y8vSQe0
兎角「今は見えなくてもいつ人が通るか分かんないだろ」
決して人通りの多い道ではなかったが、全く人が通らないわけではない。
十分程度立ち話をしている間にも何人かが二人の近くを歩いて行った。
晴「けち……」
兎角「そういう問題じゃない」
口を尖らせる晴をなだめる為に頭を撫でるが、機嫌は直りそうにない。
晴「鳰と仲良くしちゃおうかな」
23: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 22:32:02.65 ID:m4ivKNLq0
兎角「あいつと会ってるのか?」
晴「同じ学校だもん。そりゃ会うよ」
そういえばそうだったと、鳰の制服姿を思い出してみる。
彼女の着ていた制服はミョウジョウ学園のものだ。
ついでに鳰の言動や態度も思い出した。
兎角「あいつ、お前の事気に入ってるだろ」
鳰はやたらに晴に構う事があった。
24: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 22:44:14.38 ID:m4ivKNLq0
嫌味に絡む事も含めて。
晴「え?そんなわけないよ」
兎角「懸想じゃなくても、何か思うところはあるんじゃないのか」
晴「どうだろ……。晴を殺すための嘘だったのかもしれないけど……」
思い当たる事もあるようだ。
地下へ向かった際に晴と鳰がどんな話をしたのかは分からない。
その時に吐露した鳰の気持ちがあるなら、晴はきっと鳰を嫌いにはならない。
25: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 22:52:38.80 ID:m4ivKNLq0
兎角「そうは思ってないんだろう」
晴「うん……。きっと鳰も明るい場所にいたいんじゃないかなって思うよ」
最後に鳰から聞いた言葉は、お互いが所詮腐った海の生き物である事。
あれは自分自身がそれを思い知ったからなんじゃないかと、後になってそう思うようになった。
兎角「じゃあ仲良くすれば」
晴「いいの?」
晴は嬉しそうに顔を上げた。
26: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 23:00:59.31 ID:m4ivKNLq0
そんな顔をされるなんて思っていなかった。
好き勝手に友達くらい作ってしまいそうなのに。
兎角「私の許可なんているのか?」
晴「そうなんだけど……」
歯切れの悪い返事をする晴。
何か言いたそうにしている彼女の言葉を兎角は待った。
晴「兎角さんはいいの?」
27: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 23:05:27.44 ID:m4ivKNLq0
兎角「なにがだ」
なぜ晴と鳰が仲良くする事に自分が関係するのかと思うと、素直に訝った表情が出てしまった。
晴「鳰と仲良くしてたよね?」
晴の表情は不機嫌で、以前責められた時の事を思い出した。
兎角「あ……。お前、まだ……」
いまだに根に持っているなんて思わなかった。
晴「キスされてた」
28: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 23:12:53.44 ID:m4ivKNLq0
兎角「さ、されてない!首だけだ!」
慌てて否定をするが、晴の表情は不機嫌なままだ。
むしろさらに怒っている気がする。
晴「首にはキスされたんだ?」
しまった。
カマをかけられた事に気付いて、兎角は頭から血の気が引いていくのを感じた。
確か、当時は抱きつかれた事しか指摘されなかったはずだ。
兎角「あ、あれはその、あいつが勝手に……」
29: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 23:22:12.47 ID:m4ivKNLq0
あの時も同じような言い訳をした気がする。
きっとそういう問題ではない事も分かっている。
晴「兎角さんのバカ……」
兎角「すまない……」
自分の油断で晴を不安にさせた事が情けない。
拗ねる晴に謝る事しか出来なくて、兎角は俯いた。
そんな兎角を見ながら晴は少し考え込んで、にこりと笑った。
晴「じゃあ、晴のお願い聞いてくれる?」
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30: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/15(木) 23:28:38.70 ID:m4ivKNLq0
金星寮。
兎角「まさかまたここへ来る事になるとはな……」
玄関に立ち、入り口を見ながら当時の事を思い出す。
初めて会ったその日から、晴は今と変わらないくらいに人懐っこい笑顔で寄ってきた。
自分を殺しに来た暗殺者だと分かっているはずなのに、どういう神経をしていたのか未だに理解できない。
ただ、それが晴の強さと優しさだという事は分かっている。
鳰「と、兎角さん!?なにしてるっスか!」
35: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 19:26:06.18 ID:h17nClvu0
聞き覚えのある声と口調を背中に受け、振り返るまでもなくその顔を思い浮かべる。
兎角「お前……。何してるんだ?」
声のした方に顔を向けると、予想通り見知った顔がそこに立っていた。
あんなに殺意をぶつけ合った相手なのに、なぜか懐かしい。
鳰「聞いてるのはこっちっス。なんでここにいるっスか」
兎角「……困ったな。お前に見つかってしまったら晴との約束は反故にするしかない」
以前に武智乙哉が出戻ってきた時には強制退場を食らっていた事を思い出す。
36: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 19:33:51.04 ID:h17nClvu0
きっと晴は残念がるだろうが、ここで揉め事を起こしてしまう方がよほど問題だろう。
鳰「なんスか?晴に呼ばれたんですか?」
警備員を呼ぶなり、幻術でも使うなり、何かしらのアクションがあるかと思いきや鳰の反応はどうという事はなかった。
性格の悪い笑い方や、おどけた態度も見られない。
裁定者なんて薄気味悪い立場でなければ案外まともに会話が出来るのかもしれない。
兎角「ああ。部屋の片付けをしたいんだそうだ」
鳰「え、そんなに汚いんスか?」
37: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 19:41:21.59 ID:h17nClvu0
兎角「もう卒業だろう。だから荷物をまとめるのを手伝えと言われた」
晴からのお願いというのはそれだけだった。
何か思うところがあるんじゃないかと、一度だけ聞いてみたが答えにくそうにするだけだった。
嘘や誤魔化しでなければ無理に聞く必要もなくて、兎角はまた晴の言う事を大人しく聞くしかない。
これは女王蜂と働き蜂という関係ではなく、単に性格の問題だろうと自覚していた。
晴には逆らえない。
恋をした呪いのようなものだ。
38: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 19:49:37.63 ID:h17nClvu0
鳰「あー、そういう事っスね」
鳰は納得すると黙り込んだ。
しかし立ち去る様子もなくて、兎角はもう少し話してみる事にした。
兎角「……晴とはよく話すのか?」
鳰「いえ?たまたま会った時に話すくらいっス。ウチは負け組っスからわざわざ連絡取ったりはしないっス」
急に機嫌悪そうに口を尖らせる鳰。
あの時の事でも思い出しているのか、胸の辺りに手を当てている。
39: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:01:28.37 ID:h17nClvu0
疎ましい感情があるのかもしれないが、こちらだって銃を向けられたしナイフを散々振り回されたのだからお互い様だ。
きっと鳰も分かっているはず。
そんな事を気にするよりも、鳰には聞きたいことがあった。
兎角「お前は晴が好きなのか?」
いきなりの問いかけに、鳰は目を丸くした。
ただ驚いているだけで慌てている様子もない。
その態度で答えは出ている。
鳰「兎角さんに言われるとどういう意味なのか悩むっスね」
41: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:07:59.11 ID:h17nClvu0
兎角「恋愛感情はあるのか?」
言い直すと鳰は笑うわけでもなく、呆れるわけでもなく、少し黙った後に、ふぅっと息を吐いた。
鳰「それはないっス。安心するといいっスよ」
兎角「……」
鳰「なんスかその顔。嘘だと思ってるっスか?」
別に訝って黙っているわけではない。
何も言わないだけでそんなに不機嫌に見えるのだろうか。
42: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:19:42.56 ID:h17nClvu0
兎角「そうじゃないが、前にお前が私にやたらちょっかい出してきてたのがどういう意味なのか気になったんだ」
ただでさえ裁定者として不審に思っていたが、変にすり寄ってきた事に関しては鳰にメリットがあるとは思えなかった。
鳰「単なる嫌がらせっス」
兎角「それだけか?」
さらっとした返答がかえって不自然で、兎角はまっすぐ鳰の目を見つめ返す。
人を騙すのが得意なはずの鳰がわずかに怯んだように後ずさり、視線を下に逸らした。
鳰「どうせ二人の関係がギクシャクするの分かってましたし、兎角さんと晴の仲違いがウチのせいだったら面白いなーって思っただけっスよ」
43: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:28:59.76 ID:h17nClvu0
兎角「それじゃお前が晴に嫌われるだけだろう」
鳰「それでいいっス。晴が嫌いなのがウチならいいんスよ」
そう言って笑う鳰の顔は少しも楽しんでいるようには見えない。
むしろ寂しそうにすら見えた。
それでもその目は今までに見た事がないくらいに穏やかで、晴が鳰を気に掛ける気持ちが分からなくもなかった。
彼女は誰かの記憶に残りたいのかもしれない。
ならば別に嫌われる必要はないはずだった。
兎角「お前、晴の友達になれ」
44: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:38:46.98 ID:h17nClvu0
次の瞬間、時間が止まったかのように鳰の動きが止まった。
目は真ん丸に見開かれ、びっくりした猫みたいに硬直している。
数秒経って、目が乾いてくる頃に鳰は何度か瞬きをして口を開いた。
鳰「正気っスか。ウチ暗殺者っスよ?」
兎角「私だってそうだ」
鳰「晴を殺す依頼があったらどうするっスか」
兎角「断ればいいだろ。別に全ての依頼を受ける必要はない」
鳰「そうもいかない事もあるっしょ」
45: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:43:30.32 ID:h17nClvu0
言い返せば言い返すほど、鳰の顔は不機嫌になっていった。
怒るというよりは呆れているような表情。
鳰の言い分はもっともだったが、晴の望むようにしてやりたいと思う。
それに兎角自身にも鳰を放っておけない想いがあった。
鳰「依頼があれば、ウチは晴を殺しに行くっスよ」
鳰の目は濁っていたが、腐った臭いはしなかった。
鳰は晴を殺す事を望んでいるわけではない。
それが分かれば十分だった。
47: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:49:01.04 ID:h17nClvu0
兎角「じゃあその時は私がお前を殺してやるから遠慮なく来い。一生負け犬扱いしてやる」
兎角が鳰の目をもう一度まっすぐに見据えると、今度は怯む事はなく興味ありげに見つめ返された。
鳰「一生か……。長いっスね」
そう言って兎角を見て笑う鳰の顔はとても清々しくて、きっと本人も気付いていない。
屈託なく笑う鳰なんて初めて見るものだから、兎角も釣られて口角を上げてしまっていた。
兎角「ああ。ずっとお前の事は覚えていてやる」
鳰「負ける気なしっスね。分かったっス。晴が良ければ友達になるっスよ」
鳰は少し照れくさそうに頭を掻いて、体を兎角から逸らした。
48: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:55:12.86 ID:h17nClvu0
そろそろ話も終わりか。
息をついて金星寮の奥を見る。
長話をするためにここに来たわけではない。
兎角「もう行くよ。晴が待ってる」
鳰「そうっスね」
一緒に寮に入るかと思いきや、鳰は兎角に背を向けた。
どこへ行くのか聞いてしまいそうになったがそんな事を気にする義理もなかったと思い直す。
49: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 20:59:49.68 ID:h17nClvu0
彼女の都合や考えている事なんてどうでもいいのだから。
なのに、
兎角「……またな」
そんな風に声を掛けてしまう自分が不思議だった。
そして鳰も同じ思いなのか、振り返ったその顔は恐らく本心から驚いていた。
鳰「また、会う気があるんスか」
兎角「そういう機会もあるかもしれないだろ。晴の友達なんだから」
50: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 21:10:14.17 ID:h17nClvu0
そう言いながら彼女に対する不思議な気持ちを、自分の言葉で納得させる。
鳰「兎角さんも友達っスか?」
兎角「私はお前が嫌いだ」
即答だった。
はっきり嫌いだと言える事が、こんなにも気持ちの良いものだとは思わなかった。
気付けば口元が緩んでいる。
51: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 21:16:06.07 ID:h17nClvu0
そして鳰も堪えきれずに小さく吹き出した。
鳰「はっきり言うっスね。まぁ、兎角さんは無愛想な方がいいっス」
ほんの数秒向かい合って視線を交わらせると、鳰が再度兎角に背を向ける。
鳰「じゃ、またいつか」
ひらひらと片手を振って歩き出す鳰の足取りは軽快で、楽しそうにも見えた。
そんな様子に目を細め、兎角も鳰に背を向けて金星寮へと入った。
------------
52: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 21:21:59.11 ID:h17nClvu0
1号室の前まで来ると、またさらに感慨深くなった。
誰もいない廊下は不気味に静まり返っている。
扉の色、形、辺りの匂い。
何気なく掴んでいたドアノブの冷たさも懐かしい。
兎角が生きてきた中で、この学園で過ごした時間がどんなに特別だったかを認識する。
それを噛みしめるようにゆっくりと扉を開くと、よく知った内装が目に入り、直後物音に気付いて顔を覗かせる晴の姿も映った。
晴「兎角さん。遅かったね」
53: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 21:30:38.37 ID:h17nClvu0
気付けば約束の時間はとっくに過ぎていた。
厳密には決めていなかったから催促の連絡はなかったが、きっと待ち遠しかったんだろう。
兎角「少し、人と話していた」
部屋に入り、ソファに座ると晴も隣に座った。
広いソファなのに肩の位置が近くて、わずかに胸の奥が熱くなる。
テーブルに用意された紅茶を淹れる晴の動作を眺めながら、彼女に見惚れている事に気が付く。
晴の匂いに引き寄せられそうになるのを堪え、視線を紅茶のポットに移した。
54: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 21:37:40.00 ID:h17nClvu0
晴「もしかして鳰?」
兎角「ああ。偶然会ったんだ」
晴「喧嘩しなかった?」
保護者のような物言いに兎角は眉をひそめた。
兎角「お前は私をなんだと思ってるんだ」
晴「自分の胸に聞いてみてください……」
初めて鳰に会ってから、彼女と仲良く話した事なんて一度もない。
55: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 21:44:05.71 ID:h17nClvu0
ずっと胡散臭い裁定者としか見ていなかったし、殺し合いまでした。
だから晴の言い分は十分に分かる。
それでもさっきは穏やかに話が出来たのだから言い返したい気持ちもあったけれど、仕方がないと思って兎角は諦めた。
兎角「お前と友達になればいいって話をしてきたんだ」
晴「なんで?」
心底不思議そうな顔をして晴は顔を近付けてきた。
少し意識してしまって、兎角は晴から顔を逸らす。
56: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 21:54:22.36 ID:h17nClvu0
兎角「余計な事だとは思ったんだが、あいつにも思うところがあったみたいだから……」
晴は自分の友達くらい、自分で作れる。
お節介だった事を自覚して、兎角は言い訳のようなものを軽くまくし立てながら晴を見た。
晴「晴と鳰はもうずっと友達だよ?」
そっちか。
てっきり、鳰になんでそんな話をしたのかと言いたいのだと思っていた。
もう友達なのに、という意味だったようだ。
57: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 22:04:17.41 ID:h17nClvu0
兎角「ああ、お前はそういうやつだったな……」
だから苦労をしてきたし、救われもした。
暗殺者に怯みもせず仲良くしようとする無防備さに何度も呆れて、何度も感心して、晴の温かさを感じた。
そんな事が兎角にとっての幸せだったのだと思う。
晴「兎角さんは?」
兎角「私は友達じゃない」
鳰のニヤついた顔を思い浮かべながら即座に否定してみせる。
59: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 23:23:07.64 ID:h17nClvu0
鳰のニヤついた顔を思い浮かべながら即座に否定してみせる。
晴は紅茶をカップに注ぐ動作を一旦止めて兎角を見た。
晴「でも気になってるでしょ」
嬉しそうに笑う晴の顔を見ていると、全部見透かされているみたいで居心地が悪かった。
鳰の事は好きでもないし、友達になりたいわけでもない。
でも気になったのは事実で、言い当てられたのが癪だったから兎角は表情を変えずに低い声で答えた。
60: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 23:27:30.96 ID:h17nClvu0
兎角「そんなことあるわけないだろ」
しかし晴は納得した様子は見せず、疑うようにじっとこちらを見ている。
目を逸らしたら負けだと言い聞かせて、泳ぎそうになる視線をなんとか固定させる。
晴「……浮気?」
兎角「それはもう勘弁してくれ……」
兎角は手で顔を覆うと、大きくため息をついてがっくりとうな垂れた。
------------
61: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 23:33:47.64 ID:h17nClvu0
晴「ありがとう。兎角さんのおかげでもうほとんど片付けられました」
荷造りは思った以上に早く済んでしまった。
晴が物を溜め込んだり散らかしたりするタイプではない事はよく知っている。
兎角「私が手伝う必要はあったのか?」
まとめられた荷物をポンポンと軽く叩きながら尋ねると、晴は寂しそうに笑った。
晴「うーん……。兎角さんと過ごした部屋で、一人で片付けるのつまんなくて……」
兎角「……そうか」
62: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 23:40:59.04 ID:h17nClvu0
普段からここで過ごす事も、授業を一人で受ける事にも寂しさを感じていたのかもしれない。
言いにくそうにしていたのは心配をかけたくなかったからなのだろう。
どうしたって兎角には何も出来ない。
晴「来てくれてありがと」
兎角「いや。私も来て良かったと思ってる」
少しでも晴の力になれた事もそうだが、鳰の事も思わぬ収穫だった。
晴「兎角さん、手が汚れてる」
63: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 23:48:44.42 ID:h17nClvu0
晴がこちらへ寄ってきて、兎角の手を取った。
言われて見てみれば、腕にも埃が付いている。
きっと机の隙間に落ちたものを拾った時についたのだろう。
兎角「晴も……」
よく見ると晴の頭にも細かい埃が乗っていた。
晴「シャワー浴びてくる?」
そんな一言で心臓の音が大きくなった気がする。
64: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/17(土) 23:55:27.82 ID:h17nClvu0
どうしようかと少しの間考えて、ここで断るのも変に意識しているみたいだったから兎角は頷いておくことにした。
それにせっかく片付けた部屋を汚したくはなかったし、汗をかいたからすっきりしたい気持ちもあった。
兎角「晴が先に使えばいい」
晴「兎角さんが先でいいよ。晴、荷物の再確認しておくから」
晴は兎角にタオルを渡すと、積まれた荷物のそばに座って中身の確認を始めた。
それならばと、兎角は洗面所に向かう。
扉を開く直前で晴の背中を見ながら兎角は一度息を吐き、緊張を解いた。
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65: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 00:00:20.60 ID:gY/u0Xt+0
浴室に入ってパネルに手を当て、操作方法を確認する。
ここの使い方もしっかり覚えている。
晴の事を思い浮かべながら、自分の心の全てがこの部屋に残っている事を思い知った。
部屋の何かに触れるたびに、その時に何を考えていたのかを思い出していた。
今もそうして少し苦い思い出が頭をよぎる。
左手を目の前に上げて陰鬱な気分で開いた時、同じタイミングで浴室の扉が開かれた。
入ってきたのは当然晴だ。
66: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 00:05:23.77 ID:gY/u0Xt+0
兎角「晴!?なんでっ……」
何もまとわない状態の晴を直視できずに背を向ける。
そんな様子に気付いているはずの晴は何も気にする事もなく兎角に並んだ。
晴「順番に入ってると、たぶん晴が入ってる間に兎角さん帰っちゃうかなーって」
どきりとした。
兎角「そっ、そんな事は!」
慌てて否定しようとするが、自分でも分かるくらいに声が上ずっている。
67: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 00:13:31.79 ID:gY/u0Xt+0
晴「あ、ちなみに、兎角さんの服は洗濯しておきました。乾くまでしばらくかかります」
兎角「なに勝手に——!」
晴「ほら。帰る気満々だ」
言い返す事が出来なくなって、兎角は押し黙った。
確かに、晴が言う通り適当に用事でも作って早々に帰るつもりではあった。
晴「ねぇ……分かるよね?晴、誘ってるんだよ……」
一歩近付いてくる晴の体に素直に目を向ける。
73: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 19:10:22.75 ID:gY/u0Xt+0
触れたいと思う気持ちはもちろんあった。
晴「抱いてくれないの?」
晴は手を伸ばしてパネルを操作し、シャワーを止めた。
静まり返った浴室内では、ちょっとした息遣いですら響いてしまいそうだった。
晴「キスもあんまりしてくれなくなったし……」
兎角「外で会う時は、そういうのよくないだろ」
晴「じゃあ今は?」
74: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 19:20:01.88 ID:gY/u0Xt+0
兎角「……」
後ろめたい気持ちが視線に出る。
晴はそれを察して、自身の胸元に手を当てた。
晴「傷が気になるの?」
兎角の付けた傷は今も残っている。
晴は兎角の左手を握り、胸に抱いた。
晴「この傷は兎角さんが晴を救ってくれた時のものだから、大事なものなんだよ」
75: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 19:27:34.03 ID:gY/u0Xt+0
まっすぐに見つめる晴の目は輝いていた。
柔らかな笑顔は慰めなどではなくて、晴の本心なのだろう。
兎角「傷が大事……」
晴「うん」
晴にしてみればきっとどの傷にも意味があるはず。
辛い記憶や忌まわしい気持ちもあるに違いない。
そんな中で言ってもらえる言葉があるなら、兎角にとってそれは救いだった。
76: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 19:41:09.09 ID:gY/u0Xt+0
兎角「痛かっただろ」
ゆっくりと指先で傷をなぞる。
晴「痛かったし、苦しかった。でも嬉しかったよ」
兎角「そう……か」
晴「兎角さんの手は?」
兎角「傷が少し残ってる」
手を開いてみると、晴に付いたものよりずっと薄い傷が残っていた。
77: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 19:53:17.27 ID:gY/u0Xt+0
晴のナイフを受け止めた時に付いた傷。
しばらく放置したせいで治りは遅かったが、段々と薄れて消えて行く程度の浅い傷だ。
晴「見ると辛い?」
兎角「あぁ……」
思い出しただけで手が震えそうだった。
胸が押しつぶされそうで息が詰まる。
晴「もう大丈夫だよ。ありがとう。こんなに想ってくれて」
78: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 19:57:44.14 ID:gY/u0Xt+0
兎角「晴……」
晴「兎角、大好き」
満面の笑みを向けられて、視界が明るくなった気がした。
ずっと自分の事ばかり考えていた。
今大切にするべきは目の前にいる女の子なのだ。
その笑顔に触れようとして、思いとどまる。
晴「兎角さん?」
79: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 20:03:38.68 ID:gY/u0Xt+0
少し息を呑んだだけなのに、晴はそんな変化にも敏感だった。
兎角「さっさと体洗って出るぞ」
不審な態度だとは自覚していたが、さっきまでの空気と違う事も分かっているのか晴は笑って「うん」と返事をするだけで、特には何も言ってこなかった。
いきなり性的な気持ちが湧いてきたなんて晴が知ったら呆れてしまうかもしれない。
晴に背を向けたまま無言で体を洗い、シャワーで泡を流していく。
晴と一緒にシャワーを浴びているから肩が触れ合っているのだが、今は無心を貫いた。
全ての泡が流れていく頃に、暖かい手が兎角の背中に触れる。
80: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 20:10:06.43 ID:gY/u0Xt+0
兎角「晴……?」
ゆっくりと背中から腰の辺りまでをなぞり、晴は胸を密着させてきた。
明らかに誘っている。
晴「兎角さん……」
耳元で囁く声に理性が持っていかれそうだった。
さっきまであんな態度取っておいて、いきなり襲いかかるのもどうだろうかという思いがある。
今日のところは抑えたくて、ぐっと目を閉じた。
82: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 20:18:42.49 ID:gY/u0Xt+0
晴「我慢できなくなってきちゃった……」
懇願するような声が脳の奥まで響いてくる。
早く振りほどいてここを出ればいいのにそんな事すらも出来ない。
晴「一人でしてても全然気持ち良くなかった……。兎角さんの指じゃないと気持ちよくなれないよ……」
一瞬で頭に血が昇るのを感じた。
こんな事を言われて無視できる余裕なんてなかった。
兎角「晴……っ」
83: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 20:29:06.35 ID:gY/u0Xt+0
乱暴にパネルを叩いてシャワーを止めると、兎角は晴の名前を呼んで彼女の首元に吸い付いた。
晴「んっ……」
濃く残った赤い跡を舐め、今度は胸の先を咥え込む。
もう片方の胸に手を這わせ、強く掴んで根元から押し上げるように揉みしだいた。
晴「あっ……!あ……ンっ!」
刺激を与えるたびに晴の体は崩れ落ちそうになるくらいに震えた。
強引にキスをして晴の体を抱きしめる。
84: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 20:47:18.37 ID:gY/u0Xt+0
優しくする気なんて毛頭ない。
あんな誘い方をする晴が悪いのだから。
舌を差し込んで口内を掻き回し、息をつく間もないほどに貪り続けた。
晴「んっ……ふ……ぅんッ」
晴の顔が上気していく。
下半身に手を伸ばして、指でそこを開く。
割れ目をなぞると、水とは違うぬるりとした液体が指にまとわりついた。
85: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 20:52:52.97 ID:gY/u0Xt+0
兎角「濡れてる」
晴「……やだ……」
晴は兎角の肩に顔を隠すように押し付けた。
恥ずかしがるその姿が可愛らしくて、兎角は意地の悪い質問をしてみる事にした。
その前に中心に当てた手を引く。
兎角「一人でって、どんな風に?」
晴の体がビクッと震えた。
86: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 21:00:27.34 ID:gY/u0Xt+0
兎角の腰に両手が回り、強く抱き寄せられる。
晴「聞かないでよー……」
きっと晴の顔は真っ赤なんだろう。
白い肌がほんのり赤く染まっている。
それが楽しくて、面白くて、嬉しくて、兎角はさらに攻め立てた。
兎角「指、入れるの?」
すぐそばにある晴の耳元に囁きかけて、そっと耳たぶを食む。
87: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 21:07:24.37 ID:gY/u0Xt+0
腰に回された腕に力が入り、晴が感じやすくなっている事に気付いた。
晴もきっと興奮で体が我慢できなくなっている。
晴「……うん……」
兎角「してみて」
晴「や、やだ……!恥ずかしい……」
兎角「このままでいいから。顔は見ない」
晴は少し迷ってから、兎角に回した片腕を解いて自分の中心へと移動させた。
88: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 21:16:03.47 ID:gY/u0Xt+0
晴「ん……」
息の混じった声が漏れる。
それを抑えるように晴は兎角の首に噛み付いた。
兎角からは晴の中心も、顔も見えなくて、本当に入っているのかも分からない。
声を出す代わりに、吐息と舌の動きが兎角の首をくすぐる。
兎角「自分の指じゃ気持ち良くない?」
晴「分かん……ないっ……」
89: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 21:26:53.43 ID:gY/u0Xt+0
これだけ艶かしい声を出しておいて、感じていないわけがない。
兎角は約束を破って、晴の体を離した。
晴「見ないって——!」
兎角「ごめん。やっぱり見たい。続けて」
理不尽な言い方だと自分でも思う。
しかしもう火がついた晴の体は止まらなかった。
晴「あっ……ぁ……!は……っん……」
90: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 21:49:44.97 ID:gY/u0Xt+0
だんだんと声に熱がこもる。
晴の前に膝をついて、指が出入りするところをじっと見つめる。
兎角「気持ちよさそうだけど?」
晴「だ……って、兎角さんが……ぁっ、見てる……っ!」
兎角「一人でしてるの見られて、興奮するんだ?」
晴の顔を見上げると泣きそうなくらいに目を潤ませていて、余計に兎角の加虐心を誘う。
晴「兎角さん、ひどい……」
91: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 22:07:15.77 ID:gY/u0Xt+0
兎角「うん……」
晴は兎角の前に濡れた指を差し出し、兎角はそれを舐めた。
久しぶりの晴の味が愛しくて、股に顔を寄せた。
兎角「脚、開いて」
晴は赤い顔をさらに紅潮させて、少しだけ脚に隙間を作る。
兎角は晴の割れ目に指を当てて、浅い部分をそっと撫でながら陰核に舌を這わせた。
晴「あっ……ふ……!やっ……ぁ!」
92: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/18(日) 22:14:12.07 ID:gY/u0Xt+0
少し刺激しただけなのに晴の膝が震えた。
なんとか兎角の肩に手を添えて崩れ落ちるのは我慢しているが、続けるのは難しそうだった。
兎角「やめるか?」
晴「やめたい……?」
兎角「やめたくない」
晴「じゃあ、ベッドいこ……?」
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103: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/22(木) 20:38:16.95 ID:RiwjkDM70
晴「んっ、く……」
兎角は晴の存在を確かめるように全身を手でなぞった。
そして胸にある新しい傷に視線を落とす。
鋭利な刃物でついたその傷跡は、他のものと比べると小さくて薄い。
それでも兎角にとってはどの傷よりも存在感があった。
兎角「痛くはないか?」
晴「もう大丈夫だよ。ちゃんと治ってるから」
104: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/22(木) 20:43:34.92 ID:RiwjkDM70
兎角「うん……」
ずっと避けていたその傷にそっと口付ける。
舌を当てて、動物が傷を癒すように何度も舐めた。
晴「……っ、くすぐったいよ……」
兎角「晴、好きだよ」
言葉が唐突過ぎて、晴が目を丸くしている。
しかしすぐに頬を染めて、嬉しそうに笑った。
105: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/22(木) 20:59:11.67 ID:RiwjkDM70
この気持ちはもう疑う必要はない。
晴の傷がその証明だった。
晴「……うん……」
晴の目の端から涙が流れた。
兎角「なんで泣くんだ?」
晴「幸せだから……」
よく分からなかった。
106: ◆P8QHpuxrAw 2015/01/22(木) 21:09:27.90