学生「資格欲しいし、教習所通って勇者免許を取るとするか!」
友人「だったら勇者免許なんかどうだ?」
学生「勇者免許?」
友人「国や人々を守るための≪勇者≫を名乗るための国家資格だよ」
友人「もちろん履歴書には書けるし、勇者免許必須の職業も多い」
友人「教習所みっちり通えば、わりとすぐ取れるらしいし」
友人「優れた勇者は≪神勇者≫だなんて呼ばれて、すっげえ年収稼いでんだぜ」
学生「取って損はなさそうだな……よし、勇者免許を取るとするか!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
学生「わっ、混んでるなぁ~」
友人「みんな考えることは同じみたいだな」
学生「大学生活のうちに、勇者免許を取ってやろうってことか」
学生「さっそく、技能講習の予約をしたいけど……」
友人「うわぁ~、ほとんど満杯じゃん! 全然予約なんか取れないぞ!」
学生「毎日のように通って、なるべく早く取りたかったのに……」
女「教習所の講習は、朝早くか夜遅くの時間が予約取りやすいわよ」
学生「わっ!」
女「それと、予約を入れるだけ入れてキャンセルする人も多いから、それを狙うのもいいかもね」
友人「もしかして、君も勇者免許を取ろうとしてる人?」
女「うん! お互い頑張ろうね!」
学生(なるほど、こういう出会いもあるのか……)
教官「今日は剣の握り方を覚えましょう」
教官「こうです」ギュッ
学生「こ、こうですか?」ギュッ
教官「そうです! はい、合格! ハンコ押しておきますねー」ポンッ
学生(なんだ……楽勝じゃないか。この調子で、最短合格目指すぞ!)
学生(あれ? 今日の講習は昨日の人と違う……)
中年教官「今日は素振りをやってもらう!」
学生「は、はいっ!」
学生「たあっ!」ヒュオッ
中年教官「なぁーにやってんだ! そんなへっぴり腰で勇者になんかなれるかよォ!」
学生「ひっ!」
中年教官「もっと脇締めろ、脇をォ! オラ、そうじゃねえよォ!」
学生「くっ……」
学生(なんだこの教官……いちいち怒鳴りつけてくる……)
学生(こっちは金払ってんだぞ? なんでこんな扱いされなきゃならないんだよ!)
中年教官「オラ、もう一度だ!」
学生「一時間、おっさんにずっと怒鳴られっぱなし」
友人「災難だったなぁ。俺も素振りだったけど、俺の教官はメチャクチャ優しかったぜ」
女「教官って当たり外れ大きいからねえ」
女「私達でストレス解消でもしてるんじゃないのってくらい、厳しい教官もいるし」
学生「もう二度とあのおっさんには当たりたくない……」
馬「ヒヒィ~ン!」
学生「え、乗馬もやるんですか!?」
教官「そりゃそうさ。勇者たる者、馬くらいには乗れないとね」
教官「まず、ゆっくりと前進させてみようか」
学生「は、はいっ!」
パッカパッカ… パッカパッカ…
ピタッ
教官「さあ、坂道発進してもらおう」
学生(えぇと、ゆっくりと手綱を……)グイッ
馬「ヒヒヒヒィ~ン!」ブルルル…
学生「わわっ!」
教官「おっと失敗だ。さ、もう一度!」
学生(難しい……。これは時間がかかりそうだ……)
学生(実技だけじゃなく普通の授業もあるんだな……ま、そりゃそうか)
眼鏡教官「さて、本試験でも出る問題を紹介します」
眼鏡教官「『魔物に人間が捕らわれている時は、必ずすぐ人間を助けなければならない』……○か×か?」
学生(こんなもん、○に決まってるだろ)
眼鏡教官「答えは×です」
学生「え!?」
眼鏡教官「他にも、捕らわれている人間が、実は化けてる魔物というケースもありますからね」
眼鏡教官「まあ、問題文に『必ず』という言葉が出たら、まず×だと思っていいでしょう」
学生(こういう引っかけ問題もあるのか……メモメモ)カリカリ…
『勇者免許を取ったら、“剣保険”には必ず入りましょう!』
学生(剣を振ったら、人生を棒に振ることになるとは……)
学生(やたら生々しくて、トラウマになりそうなドラマだったな……)
学生(やっぱり勇者ってのは、帯剣が許されるんだからそれなりのリスクも背負うんだな……)
学生「乗馬で手こずってるよ。S字クランクもう一回だし。お前は?」
友人「俺は技能は余裕なんだけど、学科がなぁ~」
学生「学科なんか受けるだけでいいんだから、とっとと受けちゃえよ」
友人「俺、昔から授業受けるの嫌いだからさ~」
学生「んなこといってたら、免許どころか、大学卒業も危うくなるぞ」
友人「お、脅すなよ……」
……
教官「よし、仮免許試験合格だ!」
学生「ありがとうございます!」
教官「これからは、実際に剣で戦うような講習をしてもらうから、気を引き締めてくれ!」
学生「はいっ!」
学生(これでようやく折り返し地点ってとこか……)
学生(ひええ……よりによってこの教官に当たるなんて……)
中年教官「オラ、ビビってんじゃねえ! 剣を構えろ!」
学生「は、はいっ!」ジャキッ
スライム「プルルルルン…」
学生「だあっ!」
ザシュッ!
学生(あれ、全然強くない……。そりゃ教習所で戦わせられるスライムだしな)
中年教官「なかなかいい一撃だった。やるようになったな!」ニヤッ
学生「ありがとうございます!」
学生(他の生徒とも一緒に乗るんだよな……緊張する……)
女「あ、学生君と一緒なんだ! よろしくね!」
学生「よろしく!」
学生(ラッキー、まさか女さんと一緒だなんて!)
学生(もし、教習中にいいムードになったら、ちょっと口説いてみようかな……なんて)
女「イヤッホーッ!」
学生「ひいい……!」
教官「コ、コラ! もう少しスピードを緩めなさい!」
女「あ~……風が気持ちいい! さぁ、もっと走って!」バシッバシッ
学生「わわっ、まだスピード上げるの……!?」
女「ヒャッホーッ!」
学生(うん……百年の恋も冷めたな……)
学生「いよいよ最後の学科試験だな……」
友人「問題は○×とはいえ、落ちる奴結構いるらしいし、油断するなよ!」
学生「おう!」
女「みんなで合格しましょ!」
学生「う、うん……合格しよう」
女(学生君、なんだかちょっとよそよそしくなったな……)
女「私も!」
学生「これで晴れて、履歴書に≪第一種勇者免許≫って書けるわけだ」
学生「これからは、勇者免許を生かしてガンガン活躍しよう!」
女「うん!」
友人「……」
学生「どうした?」
友人「……」
学生「あの、もしかして……」
友人「やっちまった……さすがにノー勉じゃ無理だった……」
学生(油断するなっていってた奴がこれだよ!)
学生「ま、まあ、チャンスは一度きりじゃないし……」
女「今度は勉強し直して、頑張って!」
友人「またここに来るのめんどくせぇぇぇぇぇ!!!」
社会人(あれから時は流れ、学生だった俺も社会人になった)
社会人(今日は久しぶりに友人と女さんに会うんだ……楽しみだな)
社会人「お、来た来た!」
友人「オッス、久しぶり! お疲れ~!」
女「お疲れ様~!」
社会人「お疲れ~!」
社会人「さ、そこらの店で飲もうか!」
社会人「みんな、元気そうでなによりだ」
社会人「……ところで」
友人「ん?」
社会人「勇者免許って、使ってる?」
友人「いや……仕事でも必要ないし、ほぼ身分証明にしか使ってないな」
女「私も~、せっかく苦労して取ったのに。魔物と戦う機会なんてまるでなし」
社会人「実は俺もなんだよね……。正直、剣の振り方も馬の乗り方も忘れつつあるよ」
友人「こういうのを、あれだな。ペーパー免許っていうんだよな」
社会人「俺たちは神勇者どころか、≪紙勇者≫になっちゃったみたいだな」
― 終 ―
不思議な世界観だった
教習所あるある満載で面白かった
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523789730/
Entry ⇒ 2018.07.02 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
強盗「逃走中に自販機の中に隠れたら出られなくなっちまった」
強盗「ここまで来れば、もう安心なはずだ」
強盗「とりあえず、一休みするか……。お、ちょうどいいところに自販機があるじゃねえか」
≪あったか~い≫ ≪つめた~い≫
チャリンチャリン…
強盗「こんだけ走った上カイロ持っててもまだ寒いからな……温かいのを」ポチッ
強盗「ん?」ポチッポチッ
強盗「なんも出てこねえじゃねえか、この自販機!」
強盗「やっべ! 警察来た!」
強盗(どこかに隠れないと! ――ん!?)
ギィィ…
強盗(……この自販機、中身空なのか! どうりでなにも出てこないわけだ!)
強盗(よし、この中に隠れよう!)
バタンッ!
強盗「よし、出るか」グッ
強盗「……!?」
強盗「くっ! くっ!」グッグッ…
強盗「で、出れない……!?」
強盗「自販機の中に閉じ込められたなんてシャレに――」
強盗(誰か来た!)
強盗(閉じ込められるのはまずいが、隠れてるのがバレるのはもっとまずい!)
強盗(なんとかやり過ごすしかない……!)
強盗(ん? ここにある小さな隙間から、うっすら外を覗けるが――来たのは女か)
女「えいっ、えいっ」ポチッポチッ
女「あらぁ……?」
~
強盗(いくら押しても飲み物なんか出てこねえよ!)
強盗(この自販機は空っぽ……それどころか中身は強盗なんだからな!)
~
強盗(いくら押しても無駄だって)
強盗(なかなか粘るな……もう諦めてとっとと帰れよなぁ)
女「うわぁ~~~~~ん!」
女「そうなんだわ! 私はやっぱり自販機にも嫌われてるんだわぁ~~~~!」
~
強盗「!?」ギョッ
強盗(なんだこの女!? いきなり泣き出しやがった!)
女「あんなの……ひどすぎる……」
女「うえっ、うっ、うううっ……!」
女「私……もう生きてけない……」ヒック…
~
強盗「……」
女「?」
女「下にある取り出し口から何か出てきた……」
女「これは……ホッカイロ?」
女「あったかい……あたたかいわ……」ホカホカ…
女「ありがとう……自販機さん……」
~
強盗(ケッ、おかげでこっちはすっかり寒くなっちまったぜ!)
強盗(ま、泣いてる女を放っておくわけにもいくまいよ)
強盗「くっ! ……ぐっ!」グッグッ
強盗(くそぉ~、開きそうで開かねえ! もう少しなんだろうけどなぁ……どこか引っかかって……)
強盗「!」ピクッ
強盗(やべっ、また誰か来た!)
強盗(今度の客は……おっさんか! なんか酔っぱらってやがるなぁ……)
中年男「会社リストラされて昼間から散歩しながらビール……終わってんなぁ俺……」
中年男「でもそれでいいのだぁ~!」チャリンチャリン
中年男「おーい、自販機! ビール出してくれ、ビール!」ポチッポチッ
~
強盗(ビールだぁ!? ナメてんじゃねえぞ!)
強盗(こっちだってすぐ自販機脱出して安全なとこまで逃げてビール飲みたいんだよ!)
強盗「……う!?」モジ…
中年男「神様、仏様、自販機様~♪」
~
強盗(まずい……もよおしてきた!)モジモジ…
強盗(スーパーで店員脅して強盗してから、トイレ行くヒマなんかなかったもんなぁ)モジ…
強盗(しかもおっさんのヘタクソな歌が、余計尿意を刺激する!)モジモジ…
~
強盗(うるせえええええっ……!)
強盗(そんなに出して欲しいなら、出してやる!)
強盗(下の方にあるこの取り出し口から……)ジョロロロロロロ…
強盗(あぁ~……ぎもぢいい……)ジョロロロロロロ…
中年男「お、黄色い液体が出てきた出てきた……」
中年男「自販機の神様、どうもありがとぉ~♪」グビグビッ
中年男「……!」
中年男「ぶはぁぁぁぁぁっ!!!」
~
強盗(そりゃこうなるわな)
中年男「自販機の神様……なんつービールを出してくれたんだ……」
中年男「おかげで俺は目が覚めたよ!」
中年男「昼間からビール飲んでる場合じゃない! 仕事探さないと!」シャキンッ
中年男「うおおおおおおおっ!」タタタタタッ
~
強盗(よく分からんが、俺の小便も捨てたもんじゃないんだな)
強盗(……って、また誰か来やがった! 今度は……二人組か!?)
不良女「するわけないじゃん。アンタは~?」
不良「するわけねえだろ?」
不良女「だけど今度のテストでもオール赤点だったら、あたしら留年確定だよ?」
不良「いんじゃね? 二人揃って留年しようぜ~!」
不良女「だね~、いざとなったら中退しちゃえばいいし!」
~
強盗(なにが中退しちゃえばいい、だ)
強盗(お前らの学費出してる親のことも考えやがれ!)
強盗(俺でさえ高校卒業するまではわりとマトモだったんだから……)
不良女「ホントだ~? ボタン二つしかないけどなにか買う?」
不良「買うまでもねえよ。こういうのは……」
~
強盗(そうそう、金入れてももう小便も出せないから、さっさと失せろ!)
不良女「やだ、ウケる~!」
不良「オラァッ! オラァッ! オリャアッ!」
ドゴッ! ドカッ! ドカァッ!
不良女「もっと強く蹴らないと~!」
不良「おう!」
~
グラグラ… グラグラ…
強盗(こ、このクソガキども! なに考えてやがる!)
強盗(もう怒った!)
強盗「いてえだろうが、クソガキどもォォォォォ!!!」
強盗「とっとと帰って勉強しねえと、自販機ん中閉じ込めちまうぞォォォォォ!!!」
~
不良女「きゃあああっ! 自販機がっ!」
不良「ひええええっ! しゃべったっ!」
不良「べ、勉強しようぜ!」
不良女「うん!」
不良&不良女「失礼しましったぁぁぁぁぁっ!!!」タタタタタタタッ
強盗(――ん?)
~
幼女「ねえねえ! さっき、じはんきさん、しゃべったよね!」
幼女「しゃべってたよね!?」
強盗(怒鳴りつけて追い払ってもいいが、なぜかそんな気分にもならねえ)
強盗「ああ……しゃべってたよ」
~
幼女「やっぱり!」
幼女「ねえねえ、じはんきさん。おうたをうたってちょうだいな!」
強盗「いいよ」
~
幼女「わーいっ! やったーっ!」
強盗「もしもし亀よ、亀さんよ~♪」
強盗「真っ赤なお鼻の~、トナカイさんは~♪」
~
幼女「キャハハ、おもしろい! おうたおじょうず~!」パチパチパチ
幼女「あ、ママだ!」
幼女「じはんきさん、どうもありがと~!」トテトテ…
~
強盗「バイバイ……」
強盗「……」
強盗(俺は高校出てからやることなすこと上手くいかず)
強盗(らしくもなく他人に親切したら詐欺にあうわ、ヤバイ商売に巻き込まれるわで……)
強盗(俺は、自分が社会から見捨てられたと思って、ヤケクソになって、強盗をやった……)
強盗(だけど……)
強盗(女を励ましたり、おっさんの目ぇ覚まさせたり、不良どもを叱りつけたり、歌って拍手されたり)
強盗(こんな俺でも、たまには役に立つことができるんだな……)
強盗(なんか……ちょっと嬉しいぜ。俺だってまだまだ捨てたもんじゃない)
ギィィ…
強盗「お……!?」
強盗「自販機が勝手に開いた……」
強盗「そういや、この自販機って結局なんの自販機だったんだ?」
強盗「どこかに書いてないか……」キョロキョロ
強盗「お、あったあった。目立たないところにラベルが貼ってやがる。これじゃ分かんねーよ」
≪心の自販機≫
強盗「ぶはっ!」
強盗「俺は≪あったか~い≫を押したから、心があったまることができたってわけかい!」
強盗「まったく冗談みたいな話だ!」
強盗「おっと、そろそろ日が暮れる。一度決心したら、とっととやった方がいいな」
強盗「さぁ~て、自首しに行くかぁ~!」
― 終 ―
おっさんの件はきっと放送コードすれすれだろうが…
乙
乙
乙
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509971896/
Entry ⇒ 2018.05.21 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
後輩「先輩、呑みに連れてってください!」
友人「同僚とでしょ?」
男「お前も居たしな」
男「俺が友達とハートマーク作ったら中に入ってきたわ」
友人「ただ単に写真に写りたかっただけだろ」
友人「大体人間カメラ向けられてたら一緒にでも良いから入りたくなるだろ」
男「せやね」
男「恋愛トーク振ってきた」
友人「そりゃ会話の定番だしな」
男「女子に告白したことあるか、されたことあるか聞かれたりするの初めてだわ」
友人「童貞やね」
男「うっせうっせ」
男「そりゃ後は気になる人居るかとかよ」
友人「お前、タイプの子見たら直ぐに好きになるからな」
男「それ言ったわ」
友人「マジかよ」
男「面食いかって笑われたわ」
友人「お前の話はどうでもええねん」
男「アッハイ」
友人「後輩に好きな子は居ないのかとか聞かなかったん?」
男「自ら話してたわ」
友人「んで?」
友人「もうあきらめた?」
男「そう」
友人「好きな人を?」
男「いや、そういう訳じゃないらしい」
友人「要点を得ないな」
男「…想像してってさ」
友人「お前、想像力豊かだからな」
男「うるせえ」
男「ほら、他の人と仲が良いのを見てるからかなって」
友人「えぇ…」
男「…」
友人「馬鹿かな」
男「あ、後は…」
友人「なによ」
男「うーん、カメラ好きって言って媚びうってきた」
友人「売ってねえよ考えすぎだよ」
友人「てかさ、お前のこと信頼してるからそんな会話になるんじゃね?」
男「それなんですよ」
男「私は後輩の信頼を踏みにじってしまったのです!」
友人「声でけえわ」
男「うん」
友人「で?」
友人「それで?」
男「キヅヲエグラナイデクダサイ」
友人「いいから」
男「」
男「好きな人いるかって聞いたらさー」
男「もう諦めましたってさー」
男「どっちかは想像してってさー」
友人「で、想像して?」
男「いや、他の人と仲良いですねーって言われてたからさ」
友人「自分だと思っちゃったかー」
男「思っちゃったのですよー」
男「」
友人「聞けよ」
男「」
友人「お前ほぼ全てのライン5分以内に返すだろ!」
男「うるさいうるさい!」
男「ああああああ!」
友人「はいストップ」
男「」ピタッ
男「いや女子ラインしたことないし」
友人「いやたまにしてるだろ」
男「女子じゃないから」
友人「さいで」
男「さいです」
男「やかましいわ!」
男「ほぼ童貞やぞ!」
男「生中追加ぁ!」
友人「やめろぉ!」
男「サシ呑みの時点であれだよね」
男「てかちがうん?」
男「誘ってるのとちがうん?」
友人「そりゃ普通の関係ならそうだろうが、信頼できる先輩だぞ?」
友人「信頼できるさ」
男「ぐっ…」
男「呪いかよぉ…」
友人「んだね」
友人「でも信頼っていいじゃん」
男「信頼と信用両方されてる気がするンゴ」
友人「今じゃどっちもないけどな」ヘッ
男「うっせぇ」
男「勘違いしちゃうよなあ」
友人「ん、まあ確かに分からなくもない」
男「?やさしいじゃん」
友人「まあ童貞は引っ掛かるよなってはなしよ」
友人「確かになついてたもんな」
友人「ノリも良かったしさ」
男「…まあ引っ掛かる俺が悪いのよ」
友人「んー」
友人「正直ね?」
友人「無理とは思ったのよ」
男「でも止めないと」
友人「楽しかったからな」
男「やかましいわ」
友人「うーん。何だろうな」
友人「決め手になる好意ってこれまでの会話で出てきてないよね」
友人「そうだよ」
友人「ラインとかで会話する訳でもないし」
友人「普通に仲の良い先輩後輩だよね」
友人「まあ少し向こうはガード薄いけど」
男「まあ…舞い上がってたのかもな」
友人「いや、舞い上がってたよ」
友人「…」
男「…後悔はしてないのよね」
男「…まあしゃーない」
友人「…だからさ、お前わかってたでしょ?」
男「…」
友人「呑みに連れてってください!なんて社交辞令な訳でないけどさ」
男「…」
友人「別に、後輩の事裏切ったなんて正直思ってないしね」
友人「それなー」
男「地面から生えてこないかな、美少女」
友人「大根かよ」
男「えっろい大根」
友人「太ももが大根の間違えじゃね?」
男「うっせうっせ」
男「…まだ話さなきゃだめ?」
友人「別に話さなくても良いけどさ」
友人「んー、まあ今日はトコトン付き合うって決めたしね」
男「男が良ければってことか」
男「いかに後輩が素晴らしいかって話になるぞ」
友人「そんなのわかってるぞ」
男「しょうがないだろ」
友人「そうね」
男「…」
友人「…」
男「…」
友人「いやなんか喋れや」
男「お前の言う通り最初からわかってたから」
男「俺なりのケジメだったんだよね」
男「俺はもう良い先輩でいれなくなったんだよ」
男「だって屑だろ、後輩を女として見るなんて」
男「ありえないって」
男「でも後輩は慕ってくれて」
男「耐えられなくなった」
男「俺は疲れたんだよ」
男「良い先輩でいるのに」
男「だって後輩を後輩として見れなくなったから」
男「…ほんと俺最低」
男「…」
男「最初からめっちゃタイプでした!」
男「ほんとな!」
男「いつから後輩を後輩としてみてなかったって?」
男「馬鹿め!あった瞬間からだ!」
友人「めっちゃ知ってるわ!」
友人「お前の会ったときの後輩への目線」
友人「キモすぎだから!」
男「やかましいわ!」
男「だってタイプだから仕方ないじゃん!」
友人「ケジメはついて?」
男「ついた!」
友人「どうする?これから」
男「どうもこうもない」
友人「というと?」
男「いや、俺自身にもう信頼無いし」
男「信用もない」
男「だけど、先輩後輩は続く訳でしょ?」
男「だから俺は信頼も信用もない、ただの屑な先輩で行くよ」
友人「それで良いのか?」
男「他に何があるんだよ」
男「腰を落ち着けるさ」
男「どうせ何もないからな」
友人「…ん」
友人「そうだな」
男「…まあ次は手綱を握ってくれよ」
友人「しょうがないなぁ」
男「フラれたのはお前のせいでもあるんだしな!」
友人「私のねぇ…」
友人「でも私が居なきゃ、相談できる女友達は消えるぞ?」
友人「そんなこと言って良いのか?」
男「お前と俺の仲だからな」
友人「そんな関係やめたいよ…」
終わり
後輩を好きになったりしたら録な事にならないね。まあ惚れやすいのが悪いんだけどね。
ここで自分にこんなに後悔するぞ!と書き込んで耐え、取り合えずこの想いは心の中に閉まっていきたいですし、後輩に見せることは無いでしょう。
掲載元:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1502030314/
Entry ⇒ 2018.03.15 | Category ⇒ オリジナル | Comments (1)
夏休み小学生ぼくの一日
母「ラジオ体操の時間やで。起きて」ユサユサ
ぼく「ええ……眠いし……」
母「あーあ、これやと皆勤賞の賞品も無しやな」
ぼく「まあそれでも……」
母「行け」
ぼく「へいへい、行く行く、行けばええんやろ……ねむ」ポリポリ
ぼく「おはよう」
友達「眠そうやなあ」
ぼく「眠いんや……そこに座るか」
友達「もう始まるで」
ぼく「一番後ろに居ればバレへん」
友達「そういうこっすいことには頭回るな」
ぼく「なぐるぞ」
友達「始まっとるでおい」ユサユサ
ぼく「zzz」
友達「まあいいか」
……イチニサンシ、ゴロクシチハチ……
友達「zzz」
ぼく「……ん?」
おっちゃん「まじめにやらんとスタンプ押したらんぞ」
ぼく「ごめんごめん、ちゃんとやるから」
おっちゃん「お前もや」コツン
友達「いたっ」
イチニサンシ、ゴロクシチハチ……
ぼく「よっしゃ!」ダダダダ
おっちゃん「お前はちょっとは遠慮しろ」
友達「ほんとにな」
ぼく「うるさいわ!おばちゃん早く早く!」
おばちゃん「はいはい。元気やね」ポン
ぼく「ありがとう」
ぼく「きょう遊べるよな?」
友達「うん。10時からでいい?」
ぼく「オッケー。……なんで10時からしか遊んだらアカンのかなあ」
友達「そりゃあお前みたいなんが夏休みの宿題やらんからと違うか?」
ぼく「人聞き悪いな。いちおう毎年間に合っとるからな……一夜漬けやけど」
友達「ほら、そーゆーとこやぞ」
ぼく「だまれ」
ぼく「ただいま」ガチャ
母「朝ご飯できとるよ」
ぼく「ナイス。いただきまーす」
母「手え洗えや」
ぼく「はいはい」ジャバジャバ
母「はいは一回」
ぼく「はいはい」
母「バカにしとるんか?」
ぼく「はいはい」
ボカッ
ぼく「殴らんでもええやろ!」
ぼく「ただいま」ガチャ
母「朝ご飯できとるよ」
ぼく「ナイス。いただきまーす」
母「手え洗えや」
ぼく「はいはい」ジャバジャバ
母「はいは一回」
ぼく「はいはい」
母「バカにしとるんか?」
ぼく「はいはい」
ボカッ
ぼく「殴らんでもええやろ!」
母「今日も友達と遊ぶんやろ?その前に宿題やりな」
ぼく「へーい」
母「いっつも直前になって慌てるんやから、今やっときな」
ぼく「へいへい……でも何からやればええかな」
母「漢字は?手え動かすだけやぞ」
ぼく「そうやな。一番ラクかもしれん」
ぼく「ああ~だるいわ~」カリカリ
母「手だけ動かせ。口は今いらんぞ」
ぼく「はいよ……テレビ見ていい?」カリカリ
母「集中できるのならいい」
ぼく「やったー」プチ
キョウノウンセイハー
ぼく「うわふたご座最下位やん」カリカリ
母「大変やな。なんかあったらアカンで今日はうちに居ったら?」ニヤッ
ぼく「その手には乗らんぞ」カリカリ
母「どこまで進んだ?見せて」
ぼく「ヒアユーアー」ズイッ
母「やるやん。もうすぐ10時やから遊びに行ってもいいで」
ぼく「イエス!」
母「水筒入れたで忘れんといてな」
ぼく「サンクス」
母「外人か」
母「気いつけてな」
ぼく「はいよ……今日もあっついなー」ジリジリ
友達「迎えにきたでー」
ぼく「おう、じゃあ公園行こか」
友達「何する?」
ぼく「ドッチは昨日死ぬほどやったからな。野球でもするか」
ぼく「もう何人かおるやん。おーい!野球しよー!」
友達何人か「「「いいよー!」」」
ぼく「いい感じにその辺にベース書いて」
友達「へーい」ザーッ
ぼく「ルールはいつものやつな」
友達2「あ、グローブもってへんわ俺」
ぼく「かしたるわ。ほれ」
友達「さすが遊ぶのは本気やな」
ぼく「『は』とは何や。『は』とは」
ぼく「じゃあいくで」パアン!
友達「……やっぱ球速いなあ」
ぼく「今度から様付けで呼んでもらってええで」
友達「」イラッ
ぼく「次いくで」
友達「死ね!」カキン!
ぼく「うっわ!友達3!捕れ!」
友達3「無理や!ごめーん!」ダダダダ
ぼく「あかん!もうホームやぞあいつ!」
友達「今度から様付けで呼んでもらってもええで」ニヤッ
友達「ちょっと休憩しよか」
ぼく「うん」ゴクゴク
友達「水筒のお茶くれ」
ぼく「いいよ」
友達「ありがとう」ゴクゴク
ぼく(変顔)
友達「」ブフッ
ぼく「吐くなよもったいない」
友達「しばくぞお前アホ」
ぼく「もう昼やからいったん解散でいい?」
友達「そうやな。飯食ってからまた集合しよか」
ぼく「昼から何する?」
友達4「ザリガニ捕りは?」
友達「いいやん。じゃあ2時に用水に集合な」
ぼく「オッケー」
ぼく「ただいま」
母「おかえり。ご飯食べてまたどっか行くんやろ?」
ぼく「うん。ザリガニ捕りに行く」
母「ちゃんと世話できる分しか持って帰ってきたらアカンで」
ぼく「わかっとる。昼ご飯は?」
母「冷や中」
ぼく「やった!」
ぼく「ちゃんと網持ってきた?」
友達3「うちなかったわ」
ぼく「じゃあバケツ持ち兼選別係な」
友達3「りょーかい」
友達4「選別って?」
友達「そういえばお前来たことないもんな。まあ見とればわかる」
友達3「バッチこーい」
友達4「すくったヘドロの中から生き物を取りだすんやな」
友達「そうそう。結構魚も捕れるで」
ぼく「次いくでー」ザバー
友達4「俺もー」ザバー
友達3「ちょっ……ヘドロ飛んできとるんやけど!くさいし!」
ぼく「見ろ、友達2。持たざる者は虐げられる運命なんや……」
友達2「かわいそうやなあ」
友達3「やかましいわ殺すぞ」
友達「帰る?」
友達3「そうしよか」
友達2「まあアホみたいに取れたしな。山分けタイムや」
ぼく「ドラフト制な」
友達「おっけー」
ぼく「ただいまー」ガチャ
母「おかえりー。シャワー浴びな。もうタオルも準備してあるし」
ぼく「ありがとう」
母「その後スイカあるで」
ぼく「よっしゃ」
母「はいスイカ」
ぼく「めっちゃ冷えとるやん!うまいわ」シャクシャク
母「……あのさ」
ぼく「なに?」
母「あんたさ、中学受験するやろ?」
ぼく「まあ兄ちゃんがやったからな。ぼくもするしかないやろ」
母「来年の夏はさ、こうはいかんでな。塾の夏期講習もあるし……」
ぼく「わかっとる。だから今楽しんどるんや」
母「じゃあいいけど……」
ぼく「来年から本気だす」
母「それアカンやつや」
ぼく「もう寝よかな」ウトウト
父「ただいま。ジュース買ってきたで」ガチャ
ぼく「なに?」
父「コーラ。あとアイスもある」
ぼく「さすがわが父」
父「へいへい。飲んだら寝ろよ」
ぼく「わーった」
ぼく(今日は楽しかったなあ)
ぼく(……来年な。そろそろまじめにやらんとアカンのやろうなあ)
ぼく(兄ちゃんは県一番の私立中高一貫に行った。……それも主席で)
ぼく(まあ……勉強できるに超したことはないやろうけど)
ぼく(まあ、今の……うちだけは……目一杯遊んでも……いい……やろ)
ぼく「zzz……」スヤスヤ
お目汚し失礼しました
急に小学生の頃が懐かしくなって書いた。だいたい実話です。
中学受験してよかったと思うけど、夏休みがつぶれるのはちょっと嫌だった……
という話を友達としていて思いついた。
小学生の夏休みというのは、人生の中でも本当に充実している時間だと思います。
本当にうらやましい。
そんな昔が懐かしい
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Entry ⇒ 2018.03.10 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
男「ライバルに禁止薬物飲ませて、競技を失格させてやる……!」
タッタッタ…
男「くっ……!」
ライバル「よし、一着だ!」
男(くそっ……また負けた!)
男(どうして俺はあいつに勝てないんだ……!)
男「おい! 俺はあんたの指示通り走ってるのに、なんであいつに勝てないんだ!」
監督「お前があいつに勝てないのは、練習不足だからだ!」
男「練習不足!? 俺はたくさん練習してるぞ! あんたの指示が悪いんだろう!」
監督「バカいえ、しょっちゅうサボってるじゃないか!」
監督「お前のバネは明らかに日本人離れしてるんだ! 本気で練習すれば世界とも戦える!」
男「もういい! あんたの指図は受けないぜ!」スタスタ
監督「まったく……!」
男(俺が練習してないだと? あの無能監督は分かっちゃいない)
男(オーバーワークを避けてるだけだ! 練習なんて三日に一度やればいい!)
男(とにかく……このままやってても俺はライバルに勝てない)
男(こうなったら、どうにかして奴を引きずり下ろす方法を考えるしかないな)
男「……そうだ」ニヤ…
男(今度の競技会で、ライバルに禁止薬物を飲ませて失格させれば……)
男(あいつは競技から永久追放、自動的に俺が日本一になる!)
男(薬物は……無味無臭のこの薬物でいいか!)
男(待ってろよライバル……お前の競技人生は残りあとわずかだ!)
競技会当日――
ライバル「今日はお互い正々堂々走ろうな!」
男「おう!」
男(バカめ……お前のスプリンターとしての人生は、今日終わるんだよ)
男(卑怯者としてな!)
男(あいつがトイレに行った時がチャンスだ! この薬物を水筒に入れてやる!)
ライバル「ちょっとトイレ行ってこようかな」スッ
男(――今だッ!!!)シュタタタタタッ
選手「おう、こんなとこでも走ってるなんて、ウォームアップか?」
男(うおっ!?)
男「ハ、ハハハ……まぁな」
男(ちっ、邪魔すんじゃねえよ!)
選手「俺もストレッチしてくるかな……」
男「そうしろ、そうしろ(早くどこか行け!)」
男(よし、今度こそ!)サササッ
ライバル「あ~……スッキリした」スタスタ
男「きゃうっ!?」
ライバル「おお、驚かせて悪かった」
男(くそぉ~……戻ってくるのが早いんだよ!)
男(あいつがいない! タイミング的にこれがラストチャンスだ!)
男「うおおおおおおおっ!」シュタタタタッ
男(よし……間に合う! この中に薬物を入れれば……)
記者「すみませーん! 取材よろしいですかー!?」
男「!」ドキッ
男「はい、どうぞどうぞ!」
男(ちくしょおおおおおおおおおお!!!)
男(こうして俺の計画は失敗に終わり、競技会では相変わらずの二位だった)
男(なぜ失敗したのか? それは俺のスピードが遅かったからだ)
男(特に三度目のチャンス、もう少し速く走れてれば、薬物入れることはできた!)
男(こうなったら……一から鍛え直すしかない!)
男「監督!」
監督「なんだ?」
男「俺を一から……一から鍛え直して下さい!」
監督「おお……やっとその気になってくれたか!」
監督「お前がその気になれば、今からでも世界トップクラスになれる!」
監督「さぁ、やるぞ!」
男「はいっ!」
男(全てはあいつに薬物を飲ませるために!)
男「はぁっ、はぁっ、はぁっ」タタタタタッ
監督「今日はここまでにしよう! オーバーワークになってしまう!」
男「いえ……もっと走らなきゃ……目標は達成できない……」
監督「分かった! お前がその気ならば、どんどんメニューを追加してやろう!」
ライオン「ガルルルッ!」タタタタタッ
男(これだ……これくらいの緊張感がなきゃ、あいつに禁止薬物は入れられない!)タタタタタッ
監督「うわああああ……!」
次の競技会――
男(今だッ! この水筒に……)シュタタタタタッ
ライバル「何してんだ?」
男(またダメだった!)キキッ
やがて――
男「だあああああああああああああああっ!」タタタタタッ
ライバル「くっ……!」タタタタタッ
監督「やったぞ! ついにライバルに勝った!」
男「……」
監督「嬉しくないのか?」
男「監督、俺はこんな勝敗はどうでもいいんです」
監督「なんと……! 陸上選手としてそんな域まで達していたとは……!」
男(俺に勝ちがあるとすれば、それはあいつに禁止薬物を飲ませた時だ!)
しかし――
シュタタタタタッ
男(入れてやるぅぅぅぅぅ!)
監督「お、走りすぎてケガするなよ!」
男(邪魔すんな、クソ監督ゥゥゥゥゥ!)
ある日――
ライバル「やぁ」
男「おお、お前か」
ライバル「昔はオレとお前は好敵手だなんていわれたけど、すっかり差がついちゃったな」
男「そんなことはないだろ」
ライバル「いや……オレにはもう分かってるんだ、自分の限界が」
ライバル「だからオレ……今度の競技会でドーピングしようと思うんだ。失格覚悟で」
男「!?」
ライバル「競技人生の最後に、禁止薬物の力を借りてでも最高の走りをしたいと思ってね」
ライバル「ただ、お前だけには打ち明けときたかった。止めないでくれよ」
男「バカヤロウ!!!」
バチンッ!
ライバル「ぐふっ!」
男「お前……自分で禁止薬物飲むなんてふざけるなよ……」
男「そんなことしたら……今までの俺の努力はどうなる!?」
ライバル「え……」
男「いいか、もしお前が自分でドーピングなんかやってみろ……」
男「俺はお前を絶対許さん! いや……ブッ殺してやる!!!」
ライバル「……」
ライバル「まさか、止められるとはね……」
男「当たり前だ!」
ライバル(オレはもうお前から相手にされてないと思ってたけど、精一杯やってみるよ……)
それからしばらくして――
実況『オリンピック100m決勝! なんと今大会では日本人選手が二人も残っています!』
実況『人種という絶対的な壁を突き破った二選手、果たして奇跡を起こせるか!?』
男(クソが……また禁止薬物入れるのに失敗した……!)
男(もうこうなりゃ、全力で走るだけだ!)
黒人選手「OH、ジャパニーズカミカゼ! キミと戦えることを楽しみにしてたよー!」
男(うるせえ……俺はこんなレースどうでもいいんだよ! 消化試合だ!)
ライバル「ここまでこれたのはお前のおかげだ……正々堂々勝負だ!」
男(そうだよ! 俺が禁止薬物を入れられなかったから、お前は失格しなかったんだ!)
セット… パァンッ!!!
タタタタタッ
黒人選手(どうやらボクの勝ちだね!)
男「ぐっ……!」
男(ライオンに追われた、あの緊張感を思い出せえっ!)
男(いつもいつも禁止薬物入れるのに失敗した、あの悔しさを思い出せえっ!)
男「怖いよおおおおおおおおおお! ちくしょおおおおおおおお!!!」ズドドドドドッ
黒人選手「!?」
黒人選手(これが……ジャパニーズ、カミカゼ……!)
男「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
記者「歴史に残る大快挙です! 100メートル走での金メダルおめでとうございます!」
記者「金メダルを獲得できた秘訣は、なんでしょうか?」
男「禁止……ゲホッ(薬物を水筒に入れることし)か……眼中に、なかった……」
記者「なるほど~! 金しか眼中になかったと!」
記者「ライバル選手も銅メダルと大健闘しましたが?」
男「(知らねえ、疲れてるんだ。ライバルなんか……)どうでもいい」
記者「銅でも素晴らしい、と! さすがです!」
記者「今後の目標は?」
男「そりゃもちろん、禁……(止薬物をライバルに飲ませることだ!)」ハァハァ…
記者「連覇というわけですね!」
記者「ありがとうございました! これからも頑張って下さい!」
男(ああ、頑張るさ……いつか必ずライバルの水筒に禁止薬物入れてやる!)
― 完 ―
これは読めなかったわ
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Entry ⇒ 2018.02.20 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
幼馴染「私のどこを好きになったの?」男「おっぱい」
男「なんでそこでため息なんだよ」
幼馴染「あのさぁ、女の子はおっぱいだけが全てじゃないんだよ?」
幼馴染「内面とかさぁ…他にもっとないの?」
男「うるせえなぁ。お前はおっぱいだろ」
幼馴染「…きらい」
男「えっ?」
幼馴染「もうやだ!!男なんて大嫌い!!!」
幼馴染「ばかああああああ!!!!!」
男「あっ、おい!どこいくんだよおっぱい!」
幼馴染「うわああああああああん」
ーーーーー
ーーー
ー
幼馴染「…ていうことがあってね」
女友「うわぁ…最低だねあいつ(でもあんたおっぱいじゃん)」
幼馴染「だよねだよね!本当にだいっきらい!!」
女友「なんでそんなのと一緒にいるおっぱいなの?」
幼馴染「わかんない。あいつとは子どものときからずっと一緒で…」
幼馴染「…えっ?」
女友「えっ?」
幼馴染「…とにかく、もう我慢の限界なの!セクハラだよセクハラ!!」
女友「はいはい、わかったわかった」
幼馴染「ふんっ…」
女友「(不機嫌おっぱいだなぁ)」
女友「…じゃあさ、もう一生関わるのやめたら?」
女友「なんで?」
幼馴染「えーっと…あの…そ、そう!いきなり絶縁したら、あいつの家族とも気まずくなっちゃうし」
幼馴染「男を毎朝起こすのは日課になっちゃってるし、一緒に登校したいし
…」
幼馴染「そ、それに…嫌いだけど…本当に嫌いじゃないというか…」
幼馴染「どちらかといえばす、すす好きって、みたいな…えへへ…///」
女友「なんだよ情緒不安定おっぱいか?」
幼馴染「ねえ怒るよ」
女友「冗談だよ、ごめんごめん(おっぱいぷるぷるでワロタwww)」
幼馴染「はぁ…」
女友「なんでおっぱいおっぱいが嫌なの?This is おっぱいなのに」
幼馴染「あからさまな体目当てなのがとにかく嫌。私はもっと純粋な少女漫画みたいな恋愛がしたいの」
女友「ブフっwww…アッハww…はぁ…w…少女漫画おっぱいねぇ…w」
幼馴染「い、いいじゃん別に!!憧れるもん!!///」
女友「ほんとあんたってかわいいわ美少女おっぱいだわ」
幼馴染「…ふん」
幼馴染「そのまんまじゃん。それでいいの」
女友「おっぱいだけが取り柄なおっぱい幼馴染のくせに…はぁ…」
幼馴染「そろそろ本気で怒るよ?私が柔道部だって知ってるよね」
女友「おっぱい投げ?」
幼馴染「そんなのない!」
女友「…まあ正直、男くんをゲットできるならなんでもいいじゃん」
女友「あいつのスペック化け物だよ?普通に羨ましいわ」
幼馴染「…うん」
幼馴染「優しい?」
女友「…あんた相手だと違うかもしれないけど」
幼馴染「ふざけんな」
女友「あははっ」
幼馴染「…よく見てるね。男のこと」
女友「まあねー。あれだと目立ってると嫌でも目に入るよ」
幼馴染「そっかぁ…」
女友「毎日好き好き言われてるのに、なんで付き合わないの?」
幼馴染「だから、体目当てなのが嫌で…」
幼馴染「そこだけは譲れないの」
女友「もし、男くんが違う女に取られたらどうするの?」
幼馴染「それは大丈夫でしょ。あいつ私にベタ惚れだし、一途だし」
女友「うぬぼれおっぱいすごいね。おっぱい誘惑の達人かしら」
幼馴染「やめてください」
女友「おほほ、冗談」
女友「まあ、がんばってね」
女友「(無理だと思うけど)」
幼馴染「今日は相談に乗ってくれてありがとう!じゃあね!」
女友「うん、またね~」
女友「ふぅ…本当にベタ惚れおっぱいなのはどっちなのかねぇ…」
ーーーーー
ーーー
ー
男「好きだ。おっぱいを前提に結婚してくれ」
幼馴染「…」
男「だめですか」
幼馴染「なにその顔。最低すぎて言葉が出ないんだけど」
男「おっぱいが、出ない…?」
幼馴染「こ・と・ば!」
男「勘弁してくれよ…俺のどこが最低なんだい?」
幼馴染「なんで胸ばっかり見てるの!?私を見てよ!!」
男「見てるよ」
幼馴染「…そこは胸!見てほしいのは私!」
幼馴染「頭おかしいの?」
男「ごめん」
幼馴染「…ねぇ、私のどこを好きになったの?」
男「おっぱい」
幼馴染「…」
男「聞こえなかったか。おっぱ」
幼馴染「聞こえた聞こえた!あああああもおおおおお!!」
幼馴染「おっぱいの何がそんなにいいの!?私には分からないよ!」
男「俺も分からねえよ。ただ一つ俺が分かるのは」
男「幼馴染が好きで好きでしょうがないってことだけだ…」
幼馴染「っ…」
幼馴染「(やっばどうしよ…めちゃくちゃカッコいい…)」
幼馴染「…なんでぶち壊すの?」
男「好きなんだ、おっぱい」
幼馴染「おっぱいおっぱいって…私は普通の恋愛がしたいの!」
幼馴染「あんまり言いたくないけど、そういうことは心に留めておけないの?」
幼馴染「表面上だけでもちゃんとした恋愛をしてくれるなら…私は…」
男「…なぁおっぱい、そんな恋愛おっぱいで楽しいと思うか?」
幼馴染「えっ」
幼馴染「…」
男「我慢することなく、お互いの全てをさらけ出せる関係に俺はなりたい」
男「幼馴染おっぱいはどう思う?」
幼馴染「…そうね。確かに付き合っていく上で隠し事はしたくないけど」
幼馴染「でもあんたの場合、それを前面に出しすぎなのよ」
幼馴染「そんなグイグイ下心全開で来られたら嫌われるよ、絶対」
男「えっ、幼馴染って俺のこと嫌いなの?」
幼馴染「嫌いに決まってるでしょ。だーいきらいよ!!」
男「…そうか」
男「…」
幼馴染「あっ…ち、違っ」
幼馴染「わ、私は胸しか見てない男に怒ってるわけで、ほ、本当は全然嫌いじゃないっていうか、むしろ…」
男「なんだよ。絶対おっぱいじゃないじゃん」
男「嘘つきは爆乳の始まりだぞ」
幼馴染「…投げ飛ばしていい?」
男「そんなことしたらおっぱいいっぱい触るからな」
男「…あ、間違えた。いっぱいおっぱい触るからな」
幼馴染「…」
男「…」
幼馴染「はぁ…とにかく、少しは頭を冷やしてきてね。今のままだったら付き合うなんてありえないから」
男「むぅ…どうしようか」
ーーーーー
ーーー
ー
~通話中~
幼馴染「…ていう感じですよ」
女友『ドンマイおっぱい』
幼馴染「もうやだ。普通のどうでもいいおっぱいが良かった」
女友『えー、それはもったいないよ』
幼馴染「そもそも私=おっぱいみたいになってるのがおかしいんだよ」
幼馴染「もういっそのこと切り落としてしまいたい」
女友『世界が破滅するからやめときなさい』
女友『いい加減認めなよ。おっぱいがあんたの魅力なんだって』
幼馴染「…」
女友『確かに幼馴染はおっぱい以外にもいいところがたくさんあるよ』
女友『かわいいし、おっぱいすごいし、めっちゃ勉強できるし、おっぱいはすごい』
女友『でもね、やっぱりあんたはおっぱいなの。最強おっぱいの持ち主なのよ』
幼馴染「最強おっぱい…」
女友『でもあんたは違うじゃん。好きな人から好かれている、両想いおっぱいになれてる』
女友『しかも相手はあの超モテ野郎。どれだけ男くんに片想いしてる女の子がいるか、知らないわけじゃないでしょ?』
女友『手段なんて選んでる場合じゃないのよ、あんたは』
幼馴染「…うん」
女友『…正直に言うとね、私も男くんが好きだった』
幼馴染「えっ!?う、嘘…」
女友『本当よ。でも私は、幼馴染のことも大切だから…親友のおっぱいを応援おっぱいしたいの』
幼馴染「女友…」
女友『本当にあんたと男くんはお似合いよ。前世の善行おっぱいに感謝することね』
幼馴染「…ありがとう女友。私、やっぱり男のことが大好き。誰にも渡したくない」
幼馴染「だから…どんな形でもいい。男と恋人になりたい!」
女友『うん、その意気だ。その自慢のおっぱいをぷるんぷるんさせてきな』
幼馴染「男のところに行ってくる!じゃあね、女友!」
女友『おう、がんばれ!』
ーーーーー
ーーー
ー
幼馴染「…っ」
ピンポーン
男「はーい、どちらさま…えっ」
幼馴染「こんばんは、男」
男「どうしたんだよ。こんな時間に」
幼馴染「話したいことがあるの。上がってもいい?」
男「ああ、いいぜ」
幼馴染「…」
幼馴染「あぁ…男の部屋、久しぶりにきた」
幼馴染「まあね」
男「それで、いきなりどうした?」
幼馴染「…私のおっぱいって、どう思う?」
男「女神おっぱい」
幼馴染「め、女神て…」
男「豊満な大きさ、芸術のように整った形、その圧倒的な存在感…三ツ星おっぱいでございます」
幼馴染「うわぁ…きも…」
男「何とでも言え。幼馴染のおっぱいは最強だ」
男「痛いところを突くね。俺に透視おっぱいしろとでも言いたいのか?」
幼馴染「…見せてあげるよ。全部」
男「えっ」
幼馴染「ん…しょ」
スルル…パサッ
男「ちょっ、はっ…えっ!?」
幼馴染「…ど、どう?私の裸、見せてあげたよ///」
男「うわあああああ!!!うおおおおおおおおおお!!!」
幼馴染「あっ!男!!」
男「見てない!俺は何も見てないおっぱい!」
男「違う!俺の知ってる幼馴染はそんな丸出しお乳痴女じゃねえ!!」
幼馴染「わ、私だって恥ずかしいんだよ!」
男「そういうのには順序ってものがあるだろ!!俺たちにはまだ早おっぱい!!!」
幼馴染「あっ…」
男「そ、そんな、女神の生乳なんてホイホイ見せるもんじゃねえんだよ!」
幼馴染「…」
男「だからとりあえず、その神乳はしまってもらえませんか…」
幼馴染「…ふふっ。ごめんごめん」
男「も、もういいか?服着たか?」
幼馴染「…うん、いいよ」
幼馴染「男ってさ、そういうところは意外と真面目なんだね」
幼馴染「普通の恋愛がどうとか…余計なこと心配して損しちゃった」
男「俺をなんだと思っているんだ」
幼馴染「…ねぇ男、彼女以外の胸はもう見ちゃダメだよ?」
幼馴染「浮気とか、絶対許さないからね」
男「おいおい、俺がおっぱい以外のおっぱいを見るわけ……えっ?」
幼馴染「私も男のことが好き。だからこれからは、恋人として…よろしくね」
男「つ、付き合ってくれるのか…?」
幼馴染「うんっ」
幼馴染「もう…あんたが一番のおっぱい星人でしょ」
男「ふっ、違うな。おっぱいならなんでもいい訳じゃない。幼馴染だから好きなんだ」
幼馴染「っ…!」
男「だいたい俺は、幼馴染が神乳になる前から好きだったんだからな」
幼馴染「…大好き。今日で惚れ直したよ、男」
男「俺も、おっぱいのおっぱいがでっかくなって惚れおっぱいしたよ」
幼馴染「だからぁ…なんでそうやってぶち壊すかなぁ…」
男「本当の俺は、嫌いか?」
幼馴染「ふふっ…ばーか」
ーーーーー
ーーー
ー
「ねぇパパ」
「ん?」
「ママのどこを好きになったの?」
「んーそうだなぁ…」
「…おっぱい、かな」
「子供に変なこと言うなボケェ!!」
「うおおぁぁぁ!!!」
「あはは!ママすごーい!!」
「素晴らしいおっぱい投げだ…」
「おっぱいよ、永遠なれ」
みんなもおっぱいは大切にしようね
いいおっぱいだった
乙
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1488692478/
Entry ⇒ 2018.02.14 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
男「金髪ヒロインのみのギャルゲーを作りたい」
ジャンル……アニメを見て思いついたギャグコメディ
この物語はフィクションです。現実のゲーム制作とは、これっぽっちも関係ありません。
とあるゲーム会社開発部
上司「……」
男 「……」
上司「……なんだこれは!?」
上司は目に見えて、イライラしている。
男「企画書っす」
上司「見ればわかる! ふざけているのか! 問題はコンセプトだ!」
男「金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーっす」
上司「貴様は何年ゲーム作っているんだ!」
男「十年ちょいっす」
上司「なら分かるだろう」
男「なにがっす? 主語を省いた会話を業務に用いるのは三流では?」
上司「くっ! いいだろう。はっきり言う!」
上司「こんなコンセプトの作品が売れるわけないだろう!!!」
男は突然、真面目な表情になる。
上司(顔つきが変わった!)
男「だが金髪ヒロインは、無限の可能性を秘めている」
上司「無限の可能性?」
男「過去のギャルゲーの歴史を振り返れば、たくさんの人気金髪ヒロインが登場する」
男「高貴なお姫様、高飛車なお嬢様、片言の留学生、イケイケギャル、そしてツンデレ幼馴染」
男「それら、すべてをこなす」
男「そんな金髪ヒロインに無限の可能性が無いといえるだろうか? いやそんなことはない」
男「金髪ヒロインを制する者こそが、ギャルゲーを制するのだ」
上司「……」
男 「……」
上司「カッコつけても、ダメなものはダメだ」
男 「え~、でもこの企画はやりたいっす」
上司「ダメだ」
男「絶対やりたい」
上司「……」
男 「……」
上司「いいだろう。何がダメなのかを具体的に説明してやる。貴様に分かるようにな」
上司「貴様は特撮が好きだったよな」
男「戦隊ヒーローとか大好きっす」
上司「なら戦隊ヒーローを例に説明してやる」
────────
戦隊ヒーロー達は窮地に立たされていた。ヒーロー達の攻撃が効かないのだ。
怪人「はっはっはっ無駄だ」
レッド「畜生! 負けるもんか!」
勇敢に敵に立ち向かう熱血漢のレッド。
ブルー「待て、レッド。ここは引くぞ」
冷静に分析するクールガイのブルー。
レッド「引くって逃げるってのか? 俺たちが戦わなかったら街の人々はどうなる!!!」
ピンク「やめて! 仲間同士で争わないで」
争いを止める紅一点のピンク。
イエロー「でもあんな敵どうすりゃいいんだよ」
思ったことをそのまま口にするお調子者のイエロー。
???「……ククク、そんなことで悪が倒せるものか」
レッド「お前は!?」
ブラック「今回だけは力を貸してやろう」
敵か味方か、謎のヒーローのブラック。
────────
────
上司「このようにイメージカラーとキャラクターの個性をリンクさせ、分かりやすくしているわけだ」
上司「貴様の企画はすべて同じイメージカラーで、キャラクターの個性を潰すのだ」
上司「三流以下の企画だよ」
男「……」
上司(大人しいな。言い過ぎたか?)
男「……上司さん」
男「上司さんも戦隊ヒーロー好きだったんっすね?」
上司「話聞けよ!!!」
上司「いいか、お前の企画は全員レッドなんだよ!」
男「ぷっ、全員レッドって、みんな退場したみたいっすね」
上司「黙って聞け!!」
────
────────
怪人「はっはっはっ無駄だ」
レッドA「畜生! 負けるもんか!」
レッドB「そうだ! 逃げるわけにはいかない!」
レッドC「俺たちが戦わなかったら街の人々が!」
レッドD「俺の力を受けてみろ!」
レッドE「平和は俺が守る!」
レッド達「うぉ~!、突撃ぃぃ!!」
怪人「うわ?! おい?! 無駄だって言ってるだろ?!!」
レッド達「うぉ~!」
怪人「話を聞けよ!!! ちょ?! 待てよ?!!」
レッド達「うぉ~!」
────────
────
男「……」
上司「分かったか。みんな同じレッドだと話が広がらないのだ」
上司「ワンパターンなんだよ。いつも突撃なんだ」
上司「個性が同じなら、複数人も登場する意味がない。つまらないんだよ」
男「……」
上司(やっと、分かってくれたか)
男「……上司さん」
男「上司さんもレッドが一番好きなんすか?」
上司「貴様もワンパターンかよ!!!」
男「いやー、やっぱり戦隊ヒーローで一番カッコいいのはレッドっす。レッド最高」
上司「黙れ! レッドだけで喜ぶのは、貴様みたいなレッド信者だけだ!!」
上司「いいか! 貴様の企画も同じだ! 金髪キャラが好きなユーザーしか喜ばないんだよ!!」
上司「はぁはぁ」
男 「……」
上司「……」
男「気になったんすけど、この場合」
男「やっぱり乗り込むメカも赤い色してて、五体合体で真っ赤なロボットができるんじゃ」
上司「どうでもいいんだよ! そんなシャア専用なロボに乗り込む戦隊は!!」
社長「どうしたのかね? 上司くん」
上司「社長!? 何故ここに!?」
社長「女子トイレ等でないのなら、わが社のどこにいようがワシの勝手だ」
社長「それよりも、随分と大きな声を出していたね」
上司「! それは……」
社長「部下を大きな声で怒鳴りつけるのは、十分にハラスメント行為だよ」
上司「……申し訳ありません」
社長「それで何の話をしていたのかね? シャア専用だとか聞こえたが」
社長「ワシもガンダムは好きだが、仕事中に私語はいかんよ」
上司「いえ、それは例え話で……」
男「新企画の話をしていましたっす」
上司「貴様は黙っていろ!」
社長「上司くん。君が黙りたまえ」
社長「本来は社を預かる身として、ハラスメント行為には減俸等の処罰を下さないといけないのだよ」
上司「くっ……」
社長「それでどんな企画なのかね?」
上司「くだらない企画ですよ」
社長「上司くん。わが社の最終決定権は私にある。くだらない企画かどうかはワシが決める」
男(最終決定権って必殺技みたい。奥義!最終決定拳! いや剣でもいける?)
上司「……」
社長「さて話の続きだ。企画の内容は?」
男「金髪ヒロイン(だけ)のギャルゲーっす」
社長「金髪ヒロイン(の登場する)のギャルゲー?」
社長「別にいいじゃないか」
上司「社長!? 金髪ヒロイン(のみ)ですよ!?」
社長「上司くん。特定のユーザーの嗜好を否定するような発言はいけないな」
社長「金髪ヒロインの何がいけないのかね?」
社長「今の業界に求められているのは多種多様なニーズに答えることだ」
男(ニーズとニーソって似てる)
上司「社長はこの企画(金髪ヒロインのみ)に需要があると?」
社長「もちろんだよ。この企画(金髪ヒロイン登場)の需要は必ずある」
社長「良し分かった。ワシの権限でこの企画を進めよう。プロジェクトリーダーは男くんだ」
社長「上司くんは彼の指示に従い、サポートしてあげたまえ」
上司「本気なんですね?」
社長「本気だ。なに心配するな。進捗状況はワシも確認させてもらうよ」
社長「新しい時代は老人が作るものではないよ」
上司「……」
社長「……」
男(金髪ヒロインのニーソはやっぱり黒)
こうして金髪ヒロインのみ登場のギャルゲー制作が始まった。
グラフィッカー「大変です! マップに各ヒロインの居場所をSDキャラで描写すると、誰が誰だか分かりません」
上司(それみろ、一目でキャラを見分けられるSDキャラの利点も、使えないではないか)
男「その表現方法はしなくていいと思うっす」
上司(馬鹿な!)
上司(それをしなかったら目当てのヒロインに会えるまで、リセットを繰り返す不毛な作業をプレイヤーに強いるだけだ)
上司(ありきたりな表現には、ありきたりになるだけの理由がある)
男「SDキャラアイコンにこだわる必要はないっす。このヒロインは陸上部だから、スパイクをアイコンにすればいいっす」
男「他のキャラもイメージアイテムをアイコンにして、その下にキャラ名を付けるっす」
上司「……」
男「普段、赤髪ヒロインとか青髪ヒロインが登場するゲーム作っていて、なに弱気になってるっす」
男「リアリティが、ゲームの面白さに直結するわけじゃないっす」
男「しかし世界観にある程度の説得力は必要」
男「主人公が通う学園には、国際教養科がある設定を追加するっす」
男「重視すべきなのは、ヒロインの可愛さ」
男「ヒロインが可愛ければ、多少の粗は気にならないっす」
上司「……」
シナリオライター「周りが金髪ヒロインばかりだから、メインヒロイン並みに目立ってます!」
男「なら隠しヒロインにするっす」
男「日本人に見えるけど実はクォーターで、地毛は金髪だけどコンプレックスで、黒髪に染めてた設定にするっす」
男「主人公は地毛が金髪という秘密を知ってしまい、さらにコンプレックスだった金髪を褒めるっす」
男「秘密の共有とコンプレックスの肯定から始まる隠しシナリオっす」
シナリオライター「そんな今からヒロイン追加なんて、納期に間に合いません」
男「……」
シナリオライター「……」
上司「……私が何とかしよう」
シナリオライター「上司さん!?」
上司「人員は他部署から、応援をもらう。これでなんとか納期に間に合うはずだ」
男「……」
男「……上司さん」
上司「勘違いするな。私は社長からの業務命令に従っているだけだ」
男「上司さんも金髪ヒロイン好きだったんっすね?」
上司「本当に勘違いするな!!!」
社長「ふ~」
秘書「お疲れ様です」
社長「まさか、我が社のスマホゲームに、不具合がでて炎上するとは」
社長「例の企画の進捗状況は?」
秘書「タイトルはまだ未定ですが、こちらが資料です」
社長「ふむふむ」
秘書「シナリオ及び原画作業は、ほぼ終了しています」
秘書「しかしスタッフにインフルエンザが流行り、着色作業に遅れが出ています」
社長は白黒の開発資料に目を通す。
社長「問題ない。これで進めるように伝えてくれ」
秘書「かしこまりました」
社員「しゃ、社長!」
突然、社長室に社員が入ってくる。
社長「どうした!?」
社員「ガチャの確率表記に誤りがあり、消費者センターを巻き込んで、返金騒ぎの大炎上です!!!」
社長「な~~に~~!!」
こうして社長は以後、企画の進捗状況を確認することなく、
金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーは発売された。
ギャルゲー発売後
どこかのゲームショップ
?「『きんいろメモリーズ』?」
?「とりあえず僕の好きなパッケージ裏を確認」
?「金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーなんてすごいなぁ」
またまた、とあるゲーム会社開発部
男「上司さん。新しい企画書っす」
上司「……見せろ」
男「タイトルはレッドオンリーコマンダーっす」
男「プレイヤーは司令官になって、レッドしかおらず突撃しかしないヒーロー達を導き、悪と戦う」
男「巨大化した怪人に対しても、猪突猛進で瞬く間に蹴散らされる」
男「だからドンドン、レッドを集めて、レッドを鍛える。レッドの通信対戦や交換もできる」
男「コンセプトはこんな感じっす」
上司「……」
男 「……」
上司「……レッドってなんだっけ?」
終わり
読んで頂きありがとうございました。
このゲーム『きんいろメモリーズ』が売れるかどうかは、想像に任せます。
ゲーマーズ絶賛放送中。
上司は関智一さんで再生したけど男や社長は誰で脳内再生すればわかりませんでした(笑)
ゲーマーズの作中に出たやつだったか
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Entry ⇒ 2018.01.29 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
男「そ、そんな……! 仮面の男の正体が兄さんだったなんて……!」
男「お前は……! たびたび俺の前に現れては、助言や手助けをしてくれた男!」
男「お前の正体はいったい何者なんだ!?」
仮面の男「オレの正体、それは――」カパッ
男「!!!」
兄「フフフ、オレのことを覚えていてくれたか」
兄「仮面など介さず、まともに顔を向き合わせるのは、いったい何年ぶりのことか……」
男「そ、そんな……! 仮面の男の正体が兄さんだったなんて……!」
男「お前は……! 俺の敵でありながら、たまに俺を助けてくれたりした妖艶な女幹部!」
男「なぜ、今このタイミングでここに!?」
女幹部「それは私の正体を教えてあげるためよ」
男「正体……!?」
女幹部「私の正体は――」
男「姉さん!?」
男「あの優しかった姉さんが、魔王配下の女幹部……!? ウソだ!」
姉「残念ながら、真実なのよ……」
男「どうして!? どうして姉さんが……!」
謎の少年「えへへ……」
男「お前たちは……! 時々俺の前に現れては、意味深な言葉を残していく子供たち!」
男「どことなく俺に似てる気もするが、いったい誰なんだ!?」
謎の幼女「お兄ちゃん」
謎の少年「お兄ちゃん」
男「え!?」
妹「あたちはね、お兄ちゃんの妹なのよ」
弟「ぼくはね、お兄ちゃんの弟なの」
男「そんな……! どうりで似てると思ったけど、俺に妹と弟がいたなんて……!」
男「女神様!?」
男「俺に魔王を倒すための力を授けて下さったあなたにも、秘密があるというのですか!?」
女神「もちろんじゃ」
男「どんな秘密があるというのですか!?」
女神「ふふふ……」
女神「一人の勇敢な若者が魔王を倒す、英雄物語を……」
男「!」
男「女神様……あなたは母さんなのか!?」
母「そうよ」
男「そんな、母さんはあの事件で亡くなったとばかり……!」
魔王「フハハハハ……!」
男「魔王ッ! まさかお前まで現れるとは! 今日こそ決着をつけてやる!」
魔王「フハハハ……まあそう焦るな」
魔王「今から貴様に面白いことを教えてやるのだからな」
男「面白いこと……?」
魔王「……我が息子よ」
男「!?」
男「ということは……魔王、お前は俺の父親……!?」
父「そうだ」
男「ウソだ……!」
父「残念ながら本当のことだ」
男「俺は信じない……! 絶対に信じないぞ!」
男「お前はいつも俺の近くにいる動物の精霊!」
精霊「ワン、ワン!」
男「まさか……お前も!?」
精霊「ワン!」
男「そうか……! お前は昔、俺が飼っていた犬か!」
犬「ワン!」
男「お前は死んだとばかり思っていたけど……」
男「精霊として転生して、ずっと俺のことを見守ってくれていたのか……」
男「なぜだ!? なぜこんな回りくどいことをして、俺に力を与えた!?」
父「フハハ、決まってるだろう?」
父「お前を覚醒させ、この世界全てを救う戦士に育て上げるためだ!」
兄「騙してて悪かったな」
姉「これも世界のためなの……許してね」
妹「キャハハ、がんばってね、お兄ちゃん」
弟「アハハハ、がんばってよ、お兄ちゃん」
母「これはあなたにしかできないことなのよ」
犬「ワン!」
男「これまでの戦いは全て……全て、仕組まれたものだったのか……!」
男「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
兄「ナイス演技だったぜ。お前、俳優になれるんじゃねえの?」
男「おだてるなよ、兄貴」
姉「やっぱり面白いわね。この『謎のキャラの正体は肉親だったごっこ』は」
妹「おもしろかったー!」
弟「ぼく、もっとセリフ欲しかったな」
父「たまには家族全員で、こういう大がかりなお遊びをやるのもいいもんだ」
父「ま、母さんが女神ってのはちょっと無理がある設定の気もするが――」
母「なんですって!?」
父「ごめんなさいっ!」
犬「ワン、ワン!」
男「ポチ、もう吠えなくていいんだぞ。ごっこ遊びは終わったんだから」
「あのー……」
一家「ドア開けっ放しだったーっ!!!!!」
おわり
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従姉妹「ママでちゅよ~!!」
従姉妹「よちよ~ち。いい子でちゅね~♪」
少年「いい子ではないです。普通です」
従姉妹「あばば!あばばば!ばぶぅ!」
少年「あなたが赤ちゃんになってどうするんですか」
従姉妹「がんばらなくていいんだよ~♪」スッ
少年「…」
従姉妹「ぐっ…」
従姉妹「とどかない…ナデナデできん…」
少年「…」
少年「…」プイ
従姉妹「も~!ママの言うことききなさーい!」
少年「…」
従姉妹「…」
従姉妹「おっ…おっ…」
従姉妹「お◯ぱい、ほしい?///」
少年(恥ずかしいなら言わなければいいのに)
従姉妹「おいでっ!///」
少年「やめておきます…」
従姉妹「なんで!この思春期中学生が!」
従姉妹「頭の中はお◯ぱいでいっぱいのはずでしょっ!!」
少年「ノーコメントで…」
従姉妹「もー!///」
少年「…」
従姉妹「ママがゲホッ」
従姉妹「ゲホッゲホッ!!オゥエエエエエッ!!」
少年「…」
従姉妹「…ママが甘えさせてあげるねっ☆」
少年「台無しだよ」
少年「おっさんみたいでした」
従姉妹「おっさんじゃない!」
少年「父が歯みがきしてる時みたいな声でした」
従姉妹「ひどい!いじわる!」
少年「…」
従姉妹「いじわるな子にはこうだーっ♪」
ギュウッ
少年「…」
従姉妹「…///」パッ
少年(恥ずかしいならやらなければいいのに)
少年「さみしくはないです」
従姉妹「ほんとう?」
少年「お姉ちゃんがいます」
従姉妹「お姉ちゃんじゃない!ママ!!」
少年「ママがいます」
従姉妹「…///」
少年(恥ずかしいなら言わせなければいいのに)
少年「あんなにお姉ちゃんと呼ばせたがっていたのに」
従姉妹「いっ今はママなの!」
少年「では洗濯物を入れ込むのでたたむのを手伝ってください」
従姉妹「かしこまりっ」
少年「ありがとうございます」
・・・
従姉妹「ちがうちがうちがう」
少年「え…」
従姉妹「そういう、そういうのじゃない」
少年「はぁ」
従姉妹「あるでしょ?『ママ』にしてほしいことっ」
従姉妹「いやまぁ、家事とかじゃなくてさ」
従姉妹「こう、心の隙間を埋めるような…」
少年「父も休日は一緒にいてくれます」
少年「お姉ちゃんや叔父さん、叔母さんも遊びに来てくれます」
従姉妹「うん…」
少年「さみしくはないです」
従姉妹「そっか」
少年「でもたまに…」
従姉妹「?」
少年「母親と一緒にいる友人を見ると羨ましくなったりします」
少年「時には一緒に作ったり」
少年「母が好きだったというガーデニングを手伝ったり」
少年「わがままを言って困らせたり」
少年「間違えた時には厳しく叱られたり」
少年「どうしようもなく悲しい時は甘えさせてもらったり」
少年「母の日にはバイト代で買ったカーネーションをプレゼントして喜んでもらえたり」
少年「来年の高校の入学式に、制服姿で父と母の間に挟まれて記念撮影をしたり」
少年「したいと思った事は、幾度かあります」
従姉妹「…」
少年「無い物ねだりなんですけどね」
ギュッ
従姉妹「私、無神経だったよね」グス
少年「いえ…」
従姉妹「…///」パッ
少年(恥ずかしいなら…)
少年(…やわらかかった)
従姉妹「なんでそんな冷めてるのさ!」
少年「え…」
従姉妹「こっちは顔から火が出そうだってのに…」パタパタ
従姉妹「シレッとしちゃってさ」
少年「決して冷めているわけではないです」
従姉妹「えぇ~うそだぁ」
少年「前の日の夜から家中の掃除をし、学校から帰ってからは意味もなく部屋を行ったり来たりしています」
少年「なんのお茶菓子を出そうか、紅茶かコーヒーどっちがいいか、なんて事で小一時間悩みます」
少年「夕食は食べていかれるのだろうか。聞けばいいのに聞けない。いつもとりあえず材料だけ揃えておきます」
少年「玄関のインターフォンが鳴っただけで心臓が飛び出そうになります」
少年「扉をあけて、お姉ちゃんがいつもの笑顔で『おっす』と言いながら入ってくると、どうしようもなく嬉しくなります」
少年「向かい合って他愛もない話をしているだけで、暖かな気持ちになります」
少年「今日一日母代わりになってくれると言われた時は、複雑ながらも、やっぱり胸の鼓動が早くなり窒息しそうになりました」
少年「さっき抱きつかれた時は、あまりの衝撃に意識を失いかけました」
少年「お姉ちゃんが…」
従姉妹「す、ストップストップ!!///」
少年「え…」
従姉妹「ほんと、ちょっと、わかった。わかったからっ///」
従姉妹「あんたが私のこと、すっ好きなのはよくわかったからっ///」
少年「…」
従姉妹「ああ!もうっ」
従姉妹「何なのよ!あんたは!」
少年「すいません」シュン
従姉妹「謝んな!」
少年「はい」
従姉妹「とりあえず後ろを向きなさい」
少年「はい」クルッ
従姉妹「そんで座りなさい」
少年「はい」スッ
従姉妹「なんで正座…まぁいいや」
少年「…」
ギュ
従姉妹「ん」
従姉妹(これなら、恥ずかしくないかな)
少年「年上には敬語を使えと教えられたので」
従姉妹「家族なんだからさ。いいじゃん別に」
少年「…」
従姉妹「そんなに年も離れてないし」
少年「…」
従姉妹「ねぇ」フ-ッ
少年「ヒャッ!?」ビク
少年「…」プルプル
従姉妹「耳、弱いの?」
少年「別に」
従姉妹「…」
従姉妹「」フ-ッ
少年「ウヒャ!?」ビク
従姉妹「…」ニヤア
少年「それは効きません」
従姉妹「なっ!」
従姉妹「」フ-ッ
少年「アッヒョ!?」ビク
従姉妹「おもしろーい!」ケラケラ
少年「…」
従姉妹「おこった?」
少年「いえ…」
従姉妹「♪」ギュ-
少年「はい」
従姉妹「頑張ってね」
少年「頑張ります」
従姉妹「合格したら一緒に登校できるねっ」
少年「一年だけですが…」
従姉妹「わっ私が留年すればっ」
少年「それはやめた方がいいと思います」
従姉妹「だよね…」
少年「いえ…ただ」
従姉妹「?」
少年「お姉ちゃんの胸が背中にあたっていて正気じゃいられなくなりそうです」
従姉妹「なっ!!///」バッ
従姉妹「やっやらしいなっ!」
少年「すいません」
従姉妹「そーいうことをさ!言うなよ!」
少年「すいませんすいません」
少年「すいませんすいませんすいません」
従姉妹「このエロまじんが!」
少年「いどまじんみたいに言わないで下さい」
従姉妹「…」ツ-ン
少年「お姉ちゃんに嫌われたら生きていけません」
少年「許して下さい。何でもしますから」
従姉妹「ほう?」
少年「そんな」
従姉妹「あんたが考えうる全ての手段でもって甘えてきなさい」
従姉妹「お姉ちゃんが受け止めてあげる」
少年「僕の、全力で…?」
従姉妹「そう」
少年「…」
従姉妹「できないの?」
従姉妹「あんたの好きって気持ちはその程度なの?」
少年「…っ」
父も、叔父さんも叔母さんも、あわただしく右往左往しながら僕らの引っ越し用の荷物を片付けていた。
思春期はまだまだ先だったけれど、僕はもうしっかりと大人のふるまい方を学んでいて、邪魔にならないよう隅っこで大人しくしていた。
ふいに、視界の端の方で、白い花柄のワンピースが揺れた。
「退屈?」
彼女が、いた。
当時は彼女の方が僕より背が少し高かった。
彼女は美しく大きな目をきらきらさせ、僕を見下ろし、素敵なえくぼを浮かべて微笑んでいた。
「きみ、いくつ?」
「ふーん。じゃあ私は今日からお姉ちゃんだね!」
彼女は、僕の手を引っ張ってぐんぐんと歩きはじめた。
初めて見る街並みに緊張していた僕に、彼女は色々と案内してくれた。
この公園はヘビが出るから危ない、この家の犬は人なつっこい、この駄菓子屋のおばあちゃんは優しいからおまけしてくれる…
人見知りだった僕は、何回も口を開きかけては閉じることを繰り返していた。
それでも、歩きながら僕が彼女の手をぎゅっと握ると彼女も握り返してきて、僕はとてもしあわせな気持ちになった。
汗をまとってきらめく彼女は、美しい宝石のようにみえた。
僕の視線に気づいた彼女は、身体を少し屈めて真っ赤な顔にいたずらな表情を浮かべて、食らいつかんばかりのまなざしで僕を見るので、僕はおどおどとしてしまった。
すると急に彼女はくすくすと笑い出し、再び僕の手を握りしめると、今度は走り出した。
僕は足をもつれさせながらも、彼女の速度についていこうと懸命に走った。
汗の結晶が、ふたりの体から雨のように降りそそいで、僕たちは馬鹿みたいに声を上げて笑った。
従姉妹「!?!?!?」
少年「ママーー!!甘えていい!?」
少年「僕、ママに甘えていいーー!?!?」
従姉妹「…ぃ」
従姉妹「いいわよ!!来てっ!!」バッ
従姉妹「いっぱいママに甘えてぇ!!///」
スリスリスリホオズリホオズリワシャワシャワシャ
従姉妹「ママよっ!///ママよっ!!///」
従姉妹「私がママよおおおおおッ!!」
少年「オギャアアアアアア!!!!」
少年「バブ-バブ-!!」
従姉妹「んんっ///もうっ!甘えんぼさんなんだからっ♪」
従姉妹「ママちゅき!?ママのことちゅきなんでちゅかぁーー!?」
少年「ジュギイイイイイイイイッ!!!!!」
少年「お◯ぱい」
従姉妹「…」
少年「…」
・・・
少年「ンアアアアアアアアアアア!!!!」
スリスリスリスリワショワショワショワショワショ
従姉妹「アアアアアアアアアアアア!!!!!」
少年「オギャ-!!オギャ-!!」
従姉妹「チャ-ン!!ハ-イ!!」
少年「バブ-!!!」
従姉妹「アババ!!アバババババババ!!!!!」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
従姉妹「…」ゼ-ゼ-
少年「これが、ぼくの全力です」ハァハァ
従姉妹「う、うん…よくわかったわ」ゼ-ゼ-
少年「…しにたい」
従姉妹「なんか、ごめん」
少年「いえ…」
従姉妹「すっきりした?」
少年「なんかよくわかりませんでした」
従姉妹「だよねー」
少年「はい」
従姉妹「のぞくなよっ♪」
少年「はい」
従姉妹「はいって…まぁいいや」スタスタ
少年「…」
従姉妹「一緒に入る?」ヒョイ
少年「はい」
従姉妹「なんちゃって…ええっ!?」
従姉妹「だっダメダメダメ!!
従姉妹「調子のんなっ!!」
ボカッ
従姉妹「このエロマジンガーZがっ!」
少年「すいませんすいませんすいません」
おわり
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Entry ⇒ 2018.01.20 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
大臣「あーあ、また失言しちゃった……」
記者「貧困層の救済については、どうお考えですか?」
大臣「ふむ……」
大臣「もちろん出来る限りのことはするつもりだが」
大臣「貧乏な人たちも自分で頑張ってもらいたいものだねえ」
大臣「餓死したくなければね」
記者「あっ、今の発言、まるで貧乏な人は努力してない、みたいな言い方ですね!」
大臣「え……!?」
記者「失言だー! 失言だーっ!」
大臣「あーあ、また失言しちゃった……」
秘書「まったく、大臣はどうもうっかり発言が多いですね」
秘書「他の人たちのように当たり障りのない発言をすればよろしいのに」
大臣「そんなこといったってなぁ」
大臣「貧しい人も頑張れってのは別に間違ってはいないだろ」
秘書「間違ってないことをいうのが常に間違っていない、とは限らないですわ」
秘書「いつも正直でいなければならない、は正論の一種といえるでしょうが」
秘書「じゃあ常に本音で話す人がいたとして、その人がどうなるかは察しがつきますよね?」
大臣「ろくなことにならんだろうなぁ」
大臣「にしても、マスコミもマスコミだ! 見ろ、この新聞を!」
『またまた大臣問題発言! 貧乏人は餓死しろ!』
『貧乏人は努力をしてない……失言王、またやらかす!』
『貧しい人は我が国にいらない! 大臣、貧困層切り捨て宣言!』
大臣「貧乏人は餓死しろとか、努力してないとか……」
大臣「こんなこと一言もいってないからね!? 歪曲にも程がある!」
秘書「マスコミとはえてしてそういうものですわ」
大臣「しかし、このままじゃまずい」
大臣「総理からも、いい加減かばいきれねえよ、って釘刺されちゃったし」
大臣「だけど、ついつい失言しちゃうんだよなぁ……」
大臣「どうすればいいと思う?」
秘書「そうですわね……」
秘書「失言という言葉を辞書で調べると、こうあります」
秘書「『言ってはいけないことを不注意で言ってしまうこと』であると」
大臣「うん、うっかりミスってやつだな」
秘書「ならば、いっそ――」
大臣「大臣の給料が高すぎる? 悔しかったら大臣になってみやがれ!」
大臣「投票所にバニーガールがいれば、投票率上がるんじゃないか?」
大臣「労働環境が悪い? 昔はもっと悪かったんだよ! ちったぁ我慢しやがれ!」
大臣「保育園に通わせられないなら、幼稚園に通わせればいいじゃない」
大臣「我が国も核武装すべきだ! 一家に一個核ミサイル!」
大臣「我が国は神の国! みんな神様!」
大臣「女は産む機械! どんどんどんどん産みまくれ!」
大臣「年増女の羊水は腐ってやがる……結婚が遅すぎたんだ!」
大臣「裏方の仕事やってる奴って、絶対仕方なくやってる奴ばかりだよねー」
大臣「文句がある奴はかかってきやがれ! バカヤローッ!!!」
秘書「大臣の人気がうなぎ上りですわ」
大臣「これも君のアイディアのおかげだ」
大臣「まともな発言をしつつたまに問題発言をすると、それは“失言”になってしまうが」
大臣「常にわざと問題発言ばかりしていれば、それは“失言”にならない……逆転の発想だな」
大臣「とはいえ、いくらなんでも上手くいきすぎな気もするが」
秘書「世の中、毒舌芸人がウケることもありますから、毒舌大臣がウケてもおかしくはありませんわ」
大臣「そういうものかな……」
大臣「――で、今日の予定は?」
秘書「先日発生した大地震の被災者の方々のお見舞いです」
大臣「死者は出なかったとはいえ、かなり大きい地震だったからな……」
大臣(さすがに今回ばかりは真面目にやらないとまずいだろうな)
被災地――
大臣「えー……被災された皆さま」
市民A「……」
市民B「……」
市民C「……」
記者「……」
大臣「このたびは誠にご愁傷様でございました」
大臣「崩れた建物も多く、元通りにするのは並大抵のことではありませんが」
大臣「私、この地域の復興に全力を注ぐ所存でございます」
ブーブーッ! ブーブーッ!
市民A「もっと毒吐いてくれるのを期待してたのにふざけんな!!!」
市民B「地震が起きるところに住んでた奴が悪い、くらいいってくれよ!!!」
市民C「何いわれるか楽しみにしてたのに……辞任しろーっ!!!」
記者「こりゃあ大失言だ。明日の一面は決まりだな……」
大臣「ええええええええ!!?」
― 終 ―
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493221243/
Entry ⇒ 2017.12.19 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
男「ひたすら好きって言い続ける」
男の娘「あのさ、悪ふざけもいい加減にしてくれないかな?からかってる事ぐらいバレバレだよ」
男の娘「それにボクの事男だってわかっててやってるのがムカつく」
男の娘「……本気?」
男の娘「フラれたからボクを代わりにしようってわけ?」
男の娘「ふーん、必死になって否定するのが怪しいけどね」
男の娘「……だからボクは最初からあんな女やめた方がいいって言ったのに」
男の娘「どうせ誰にでも言うくせに」
男の娘「いろいろ軽いんだよ、キミは」
男の娘「ボクは、嫌いじゃないけど……そんなキミは嫌い」
男の娘「好きだけじゃよくわからないんですけど?」
男の娘「……じゃあどこが好きなの。ボクの事好きなんだからそれくらい言えるでしょ?」
男の娘「……ほら、すぐ言えないじゃないか。キミの好きなんてそんなもんなんだよ」
男の娘「諦めなよ。ボクとキミは友達以上の関係にはなれないよ」
男の娘「なるつもりもないけどね」
男の娘「何か期待してたの?ふーん?」
男の娘「…キミが何を言ったって別にボクはどうもしないよ」
男の娘「好きになるのはキミの勝手だから、ボクには関係無いもの」
男の娘「だいたいなんでボクがキミに好きなんて言わなきゃいけないんだよ!」
男の娘「……はっそーの、ぎゃくてん?内なる英国紳士の囁き…?」
男の娘「ごめん頭が痛くなってきた」
男の娘「……恥ずかしいだけで言う事自体は嫌じゃないんだな、って?」
男の娘「……っ、キミはホントに自分に都合のいい脳味噌してるね!普通に嫌だし言いたく無いよ馬鹿!」
男の娘「……なにその無想転生みたいな顔。傷ついてますアピール?」
男の娘「好きの反対は無関心って言うからね」
男の娘「ふふ、キミが何を言おうとボクは平気だよ?だって無関心だもん」
男の娘「どうだい、傷つくだろう?無関心攻撃!容赦せん!」
男の娘「……全然無関心じゃないって?」
男の娘「これからやるんだよこれから」
男の娘「………」
男の娘「………」
男の娘「……何か話してくれないかな」
男の娘「うるさいな!だいたいなんでキミまで黙るんだよ!」
男の娘「キミはどうせ口だけだし、ボクにそういう趣味は無いし…だから嫌」
男の娘「…いい加減彼女作りなよ」
男の娘「そうだろうね、出来ないからこんな馬鹿な事してるんだよね」
男の娘「はいはい、さっさと行きましょうね」
男の娘「…手なんか繋がないよ。なんでそんな事しなきゃいけないの」
男の娘「いいから離して。そういう無理矢理なのは嫌いだよ」
男の娘「抱っこなんてしません、変態さん」
男の娘「もう、朝から元気だね…」
男の娘「うん、そりゃ同性から毎日好き好き言われりゃ普通の人は嫌がると思うよ」
男の娘「だからって何で他に好きな人が居るのかなんて方向に行くかなー」
男の娘「…いやいや、話は戻さなくて良いです」
男の娘「別に誰だっていいだろう?それを知ってキミに何か得でもあるわけ?」
男の娘「…本当キミってボクの気持ち掻き乱すの上手だよね」
男の娘「………そういうとこばっか鈍感なんだから」
男の娘「いいかい?ボクは男なの、恋人にはなれないの」
男の娘「何でそんな事言うのってそりゃそんな服持って迫られたら言うよ!」
男の娘「着ーまーせーんー!おーとーこーでーす!」
男の娘「は?触って確かめる…?」
男の娘「ごめんね、キミの頭の病気がここまで進んでるとは思わなかった…」
男の娘「だいたい小さい頃から一緒だったんだから普通わかるでしょ?」
男の娘「…だから、しないで」
男の娘「乱暴なのは嫌い…」
男の娘「はぁ…今日で何回目になるんだい?」
男の娘「なんでしっかり数えてるの…いつまで続ける気だよ」
男の娘「ボクが、キミの事を好きになるまで…?」
男の娘「そう、じゃあ終わる事はないね、ボクがキミの事好きになるわけないからね」
男の娘「…勝手にボクだけにずうっと好き好き言ってればいいんだよ、ずーっと…」
男の娘「…ボクに嫌いかなんてよく聞けるよね」
男の娘「嫌いだったらこうやって話したりしないよ」
男の娘「うるさい!じゃあ好きって事なんだなじゃないよ馬鹿!」
男の娘「……じゃあどこが好きなの」
男の娘「えっ即答…」
男の娘「そう、髪か、髪ね…」
男の娘「…やっぱり適当に答えてない?」
男の娘「え…うん…はい…」
男の娘「わかった、わかりました、もういいです、そんなマニアックな感想はいいです」
男の娘「ね、もっと伸ばした方が好き?」
男の娘「うん、考えておく…ふふっ」
男の娘「読まないよ。読めるけど読まないよ」
男の娘「しつこいなー」
男の娘「別に言ってもそういう意味じゃないから良いのかな…」
男の娘「……隙」
男の娘「にやけないの」
男の娘「別にどうもしないよ、キミはそういう人だったんだなぁって思うだけ」
男の娘「……嫌だからね」
男の娘「嫌…ボクの事、本当に好きなら…ちゃんと、ボクだけを見て…」
男の娘「ボクだけに、好きって言って…」
男の娘「そうじゃないと、ボク…何するかわからないから」
男の娘「……変な事言っちゃったね、ごめん忘れて」
男の娘「知ってどうするの」
男の娘「ふーん、参考に、ねぇ?」
男の娘「…言わなきゃいけないかな」
男の娘「ずっとボクと一緒に居てくれて、よく頭撫でてくれて…優しくていっつもボクに構ってくれて、ずっとボクを守ってくれるお兄ちゃんみたいな人……」
男の娘「……これで、いいかな」
男の娘「うん、知ってる。わかってるから。聞き飽きるくらいその言葉聞いてるから…」
男の娘「「大好き」は初めてだったけどね」
男の娘「っは、あ、ぁっ…はぁ…ねぇ…ずっと、ボクの、ボクだけのお兄ちゃんでいて…?」
男の娘「いいよね…いっぱい甘えても…ボク、ずっと我慢してたんだから…んっ…ふあ、ちゅう、んんっ…お兄ちゃん…」
男の娘「ふふ…ボクが今までキミ以外の人を好きになった事なんて無いよ…キミが初めてだし、これからもキミだけで良い」
男の娘「だから…ボクの初めての好き、全部、受け取って…っ」
男の娘「んー、眠い?」
男の娘「うん、昨日ずっとしてたからね…えへ」
男の娘「あーもーくっつかないの、歩きにくいでしょ」
男の娘「うん、知ってる…これからもずっと言って欲しいな」
男の娘「ボクも好き、大好きだよ」
乙。
よければまた書いてください。
乙
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1498332839/
Entry ⇒ 2017.12.04 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
先輩「手を繋げば分かるだろ」後輩「ダメです」
~文学部棟・ゼミ生用研究室~
ガチャリ
先輩「うーっす……」
後輩「どうも」
先輩「あれ、お前だけ?」
後輩「ええ、まぁ……」
先輩「ふーん」
後輩「……」ペラ
先輩「……」
後輩「……」
後輩「え?」
先輩「え、って」
後輩「先輩聞いてないです?」
先輩「何?」
後輩「今日ゼミお休みですよ?」
先輩「え」
後輩「えぇ」
先輩「えぇぇ~……」
後輩「えぇ、えぇ」
先輩「『え』だけで会話する部族みたいになってんじゃねえよ。……いやぁ~、なんだよもう、来ちゃったよ今日、ゼミだけだったのにさぁ」
後輩「あらら」
先輩「連絡しろよな誰かさぁ~」
後輩「LINE来てましたよ、グループで」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……私んとこ、来てない」
後輩「えぇ……」
後輩「いや、行ってますって先輩のとこにも、連絡」
先輩「来ーぃてねえ、っつってんだろぉー! ほら! LINEみてもメッセージ――……」
後輩「……」
先輩「……あ、来てた」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「や、あるじゃん? なんかiPhoneでさぁ、LINE通知こない現象? みたいなやつ。たまーにさぁ」
後輩「さぁ……、ないと思いますけど」
先輩「いいんだよそこは、ありますぅ~! って言っとけば。あるあるぅ~って言っときゃいいんだよ」
後輩「あるあるぅ~」
先輩「……お前、よくそんな無表情でそれ言えるな。すげえ」
後輩「……」
後輩「……一昨日のやつ?」
先輩「一昨日のやつ! なに『先輩夜暇?』って。四字熟語かよ」
後輩「気付いてなかったんですか……」
先輩「えぇ……何よぉ、もう、言ってよ後輩ちゃぁん」
後輩「既読つかないし、嫌われてウザくてハブかれてるヤツかと思いました」
先輩「そんなわけねーだろー、たかがLINEで。気にしすぎかよ」
後輩「……」
先輩「はぁー……、ま、いいや。ごめんね」
後輩「いえ……」ペラ
先輩「……」
後輩「……」ゴクゴク
先輩「……」
後輩「……帰らないんです?」
先輩「んー、なんか疲れちゃったから」
先輩「……」
後輩「……」ペラ
先輩「……」
後輩「……」ゴクゴク
先輩「……そういや、お前何しに来たん」
後輩「何って、普通に勉強ですけど」
先輩「うわ普通」
後輩「普通ですよ」
後輩「……」ペラ
先輩「後輩ちゃーん」
後輩「はい」
先輩「何読んでんのー?」
後輩「論文」ペラ
先輩「あー……、秋成だっけお前、来年」
後輩「えぇ」
先輩「キツいの選んだね」
後輩「まあ、好きですし、キツいの嫌いではないですし」
先輩「ふーん……」
後輩「……」ペラ
先輩「……」
後輩「……」ゴクゴク
先輩「後輩ちゃーん」
後輩「はい」
先輩「何飲んでんのー?」
後輩「水割り」
先輩「えっ? えっ?」
後輩「……」
先輩「えっ!?」
後輩「うひひひ」
先輩「は? 何お前、ペットボトルに午後ティー無糖っ! みたいな感じで水割り入れてんの!?」
後輩「好きですし」
先輩「はぁ!? え、ちょっと、一口!」
後輩「どうぞ」
後輩「……」
先輩「……濃く作ったなー、お前なー」
後輩「普通らと思いまひゅけろ」
先輩「呂律」
後輩「冗談です」
先輩「はぁ……」
後輩「……」ペラ
先輩「……ってか、ゼミ室で飲むなよ、お前」
後輩「どうせ誰も来ないと思って、今日」
先輩「来たじゃん」
後輩「来ましたけど」
後輩「お外出られないんですよ、素面だと」
先輩「大変ね」
後輩「大変です」ゴクゴク
先輩「……」
後輩「……」ペラ
先輩「……はぁ」ペラ
後輩「……」
先輩「……」ペラ
後輩「……先輩」
先輩「おー」
後輩「何読んでるんですー?」
先輩「ワンピ」
先輩「1巻」
後輩「1巻!?」
先輩「全巻読み返そうと思って」
後輩「全巻? 正気ですか?」
先輩「おう」
後輩「わぁー……」
先輩「……」ペラ
後輩「……またダブりますよ」
先輩「ほっとけ」
先輩「……」
後輩「……」ゴクリ
先輩「……」
後輩「……」スタ
先輩「……」
後輩「……」テクテク
先輩「……」
後輩「……」パサッ
先輩「……」
後輩「……」ポフッ
先輩「うおっ」
先輩「何だよお前、隣くんなよ」
後輩「いいじゃん」
先輩「そっちのソファで良かっただろ別に――……あっ、酒臭っ!」
後輩「別に先輩の隣に来たわけじゃないですぅ―、こっちのソファが良かったから移っただけですぅ―」
先輩「うざい。そして臭い」
後輩「むしろ先輩が邪魔なのでどいてください。あっち行って」
先輩「……」メリメリメリ
後輩「痛い痛い耳取れる痛いごめんなさいごめんごめん」
先輩「……ったく」
後輩「いてて……」
先輩「……」ペラ
後輩「……」ペラ
後輩「……」
先輩「……」ペラ
後輩「……」ペラ
先輩「……」
後輩「……」
テロテロテロン♪
テロテロテロン♪
後輩「……」
先輩「……」ピッ
後輩「……」
先輩「もしもーし、マコちゃんうぃーっす」
後輩「……」
先輩「えぇ? 今ゼミ室。あはは、そうそう。来ちゃってさぁ」
後輩「……」
後輩「……」
先輩「あ、リャオちゃんいるの? 今一緒? 飲むの? 今から? ああ夕方」
後輩「……」チラッ
先輩「『小まつ』か『ナイフラ』? うーん――……」
後輩「……」チラチラ
先輩「いや、今日後輩と飲みいくんだわー」
後輩「……!」
先輩「え? そうそう、あいつもいたよ。バカだから」
後輩「……」
先輩「そゆことー。うん、また今度なー、そんじゃー」
後輩「……」
後輩「……電話で人のことバカとか言わないでくださいよ」
先輩「事実だろ」
後輩「事実ですけど……」
先輩「事実じゃん」
後輩「……っていうか、何で飲みに行くことになってるんですか」
先輩「行こーぜー」
後輩「そういうことじゃなくて、本人に断る前に勝手に――」
先輩「行かないの?」
後輩「いっ――……」
先輩「……」
後輩「行きっ、ます、けどぉ……っ」
先輩「へっへっへ」
後輩「もう……」
先輩「じゃ、もうちょいしたらな」
後輩「はい」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……先輩」
先輩「おう」
後輩「アレ、やってください」
先輩「今ぁ?」
後輩「うん」
後輩「はい」スッ
先輩「……」ニギッ
後輩「……」
先輩「……ふぅー……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「寺町通り、『泉酒場』な。はいはい」
後輩「はい」
先輩「あと――……」
後輩「はい?」
先輩「……ばーか」
後輩「うひひ」
・
・
・
・
・
~少し前~
『それでは、我々の文学コースの、新たな仲間たちにー』
『カンパーイ!』
カンパーイ
ワイワイ
ガヤガヤ
・
・
・
後輩『て?』
先輩『うん、手』
先輩『だからな、手、握んの。ギュッて』
後輩『……や、その先』
先輩『そしたら、お前が何考えてるか、当てるから』
後輩『……えぇー』
先輩『いいから、ほら、出してみ』
後輩『はぁ……』スッ
先輩『ん』ニギ
後輩『……』
先輩『……はぁー……』
後輩(指細いな、この人)
先輩『……』
後輩『……』
後輩『……』
先輩『……すみませーん』
ハーイ
先輩『日本酒……えー、八海山。4合』
後輩『!!!』
先輩『以上で』
後輩『……っ』ニギッ
先輩『あっ、お猪口、えー……』
後輩『……』ニギニギ
先輩『……1つで』
ハーイ
後輩『……』
先輩『……』
先輩『……』
後輩『おっ』
先輩『”お猪口は2つって言ったじゃん”』
後輩『……っ』
先輩『日本酒飲めねぇからな、私』
後輩『……』
先輩『ってかすげぇ飲むのな、お前。変なヤツ』
後輩『せ、先輩に言われたくないです……』
先輩『あはは』
後輩『あははじゃなくて……。いや、あの……』
後輩『な、何ですか、今の』
先輩『特技』
後輩『特技で済むかなぁぁ!?』
先輩『他のみんなには、秘密だからな』
後輩『は、はぁ……』
先輩『……』ジッ
後輩『分かりました、けど……』
先輩『よしよし』
・
・
・
・
・
~居酒屋~
後輩「……あのとき」
先輩「うん?」
後輩「先輩なんで、アレしてくれたんですか?」
先輩「んー……」
後輩「……」
先輩「お前、なんか、つまんなそうにしてたから」
後輩「えぇー……」
先輩「ビックリさせてやろ、って思って」
後輩「そんな、しょうもない」
先輩「……あと」
後輩「はい?」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「?」
先輩「ま、色々」
後輩「何ですか、それぇ」
後輩「ん~……」
先輩「これは?」
後輩「これは、福井のお酒で……、こっちの方が、多分ちょっと甘口だと思います」
先輩「へぇ」
後輩「甘口でいいです?」
先輩「いいよー」
後輩「じゃ、これ2合で」
先輩「おう」
スイマセーン
ハイヨー
・
・
・
・
・
後輩「……」グビグビ
先輩「あんときまだ私、酒飲めなかったんだけどな」グビ
後輩「でしたね」
先輩「お前に、色々飲まされてな」
後輩「人聞きが悪い」
先輩「嫌がるアタシに、無理矢理酒の飲み方シツケて――……」
後輩「うへへへ、本当はスキなんだろぉ」トプトプ
先輩「いやぁんバカ――……あ、飲みやす」グビ
後輩「ですよね」
先輩「おー……、美味しいかも」グビ
後輩「あんまり飲みすぎないでくださいよ、先輩超弱いんですから」
先輩「分かってるっつーの! 舐めんな!」グビグビ
・
・
・
・
・
~2時間後~
後輩「……」グビ
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」グビ
先輩「……ぅ」
後輩「……先輩?」
先輩「……ぅー」カク
後輩「あー……」
先輩「……」クテン
後輩「あーあー」
後輩「だから言ったじゃないですかぁ」
先輩「……うるひゃいにゃあ」
後輩「呂律」
先輩「……よってねえもんー……」
後輩「嘘つきー」
先輩「ほんとだもん……」
後輩「そんなわけないでしょ」ニギッ
先輩「……」
後輩「ほらほら、分かります?」ニギニギ
先輩「……ふぅー、ぅ……」ギュ
先輩「ぅ……」
後輩「ベロベロになっちゃうと、使えないんですよねー、先輩はー」
先輩「うー……」
後輩「うひひ」
先輩「あぁ~……、やだぁ、わかんないよぉ……、なんでぇ……」ニギ
後輩「……」
先輩「分かんないよう、怖いよう」
後輩「大丈夫ですよー……」ナデナデ
先輩「……ふぁ」
後輩(……生あくび)
先輩「……うぅ」
後輩(耳真っ赤だし)
後輩(触ったら……)
先輩「……」
後輩(怒られるかな……?)
先輩「……う」
後輩「……っ」ビクッ
先輩「やば、ごめ、ちょっ――……」
後輩「あー、はいはい、トイレこっち、先輩、こっち」
先輩「……うぅぅぅっ」ヨロッ
後輩「我慢我慢、先輩、ほら」
・
・
・
ジャバー
先輩「……んぅぅ」ヨタヨタ
後輩「私のうちまで、がんばりましょうね。ほら、ゆっくりですよ」
先輩「うん……」
後輩「すみませーん、お会計ー」
・
・
・
・
・
~帰り道~
先輩「……」ヨタヨタ
後輩「……」ヨタヨタ
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」ヨタヨタ
後輩「……」ニギ
先輩「……」
後輩「……」ニギニギ
先輩「……うぅ~ん……」
先輩「……」
後輩「……本当はね」
先輩「……」
後輩「……私もう、本当は、もう駄目なんですよ」
先輩「……」
後輩「本当に駄目で、終わっちゃってて……」
先輩「……」
後輩「頭おかしくて……」
先輩「……」
後輩「……普通にできなくて、普通にしてるの、辛くて……」
先輩「……」
後輩「耐えられなくて……」
先輩「……」ヨタヨタ
後輩「……先輩、人来てますよ、危ない」
先輩「ん~……」ヨタヨタ
先輩「……」ヨロヨロ
後輩「どうしようもなくなって、飲んじゃって、私……」
先輩「……」
後輩「飲むとね……」
先輩「……」
後輩「よく分からなくなって、フワフワって」
先輩「……」
後輩「船で、どこか遠くの海を……」
先輩「……」
後輩「漂ってるみたいに……」
先輩「……」
先輩「……」
後輩「……本当の、本当に、終わっちゃうまで、こうして……」
先輩「……」
後輩「どんどん、駄目な方に流されて行ってるんです……」
先輩「……」
後輩「でも……」
先輩「……」
後輩「先輩といるのは、こうやって、一緒にいるのは……」
先輩「……」
後輩「ちょっとだけ……」
先輩「……」
後輩「好きです……」
先輩「……」
先輩「……こうはいぃ……」
後輩「……はいはい」
先輩「なんかぁ……」
後輩「はい」
先輩「寒い……」
後輩「……そうですね」
先輩「……」
後輩「……あっためてあげましょうか?」
先輩「……」
後輩「……冗談ですよ」
先輩「……」ヨタヨタ
後輩「……ふふ」ヨタヨタ
・
・
~数日後~
~講堂~
「――えー、では、本日はここまでー」
ガヤガヤ
ガヤガヤ
後輩「……ぅぅ」
コーハイチャーン!!
後輩「っ!」ビクッ
マタネー
バイバイー
後輩「あ……ぅ、ぇ、えっと……」オドオド
後輩「……」ペコリ
キャッキャ
後輩「……」
・
・
・
・
・
後輩「……うぅぅっ」
後輩(無理……)
後輩(無理無理……っ)
後輩「……」ガタ
後輩「……」トボトボ
後輩(ビール……ビールでいいか……)
後輩(2本も入れれば、午後のコマの間は、何とか……)
後輩「……」トボトボ
後輩(お昼食べる前に、コンビニ行って……)
後輩「……」
後輩(学食……、生ビール置いてくれ……)
後輩「……」トボトボ
先輩「おぉーっすぅ!!」ガシィ
後輩「ひあぁぁ!?」ビクーッ
後輩「せ、先輩……。びっくりしたぁ……」
先輩「へっへっへ」
後輩「はぁ……」
先輩「お、今日は飲んでねぇんだな。偉い偉い」
後輩「な、何で分かるんですか……」
先輩「いや、なんか、素面だとお前、挙動不審」
後輩「……、もっとオブラートに包んでくださいよ……」
先輩「今からメシ?」
後輩「コンビニ行くとこです」
先輩「学食でいいじゃん」
後輩「いや、あの……ガソリン……、買いに……」
先輩「……」
後輩「……」
後輩「な、なんですか」
先輩「ほんとダメ子だなぁ……」
後輩「ほっといてくださいよ……」
先輩「ダメダメの実の全身ダメ人間」
後輩「ムカつく……っ」
先輩「飴ちゃんやるから、ほれ、これで我慢しろって」ガサゴソ
後輩「無理ですよ……、午後から2コマもあるし……」
先輩「あ、私も2コマ」
後輩「文学棟です?」
先輩「いや、ハルちゃん先生の――……」
後輩「え……、もしかして、基礎教養……?」
先輩「おう」
後輩「……先輩、5年生にもなって、そんな……」
先輩「うーるせぇ。はい、飴ちゃん」
後輩「……、……もらいます、けど」
先輩「おう」
先輩「……」
後輩「……」コロコロ
先輩「……」
後輩「……」コロコロ
先輩「……」
後輩「……」ゴリリッ
先輩「……!?」
後輩「……」ゴリッ バリッ
先輩「…………」
後輩「……」バリ ボリ
先輩「………………」
後輩「……」ボリボリ
先輩「……早くない?」
後輩「えぇー?」ゴクン
・
・
・
・
・
~ゼミ生室~
先輩「お前パンの人だっけ?」
後輩「パンの人です」
先輩「ふーん」
後輩「先輩は?」
先輩「今日は弁当の人」
後輩「わ、ちゃんとしたやつだ……」
先輩「別に、ちゃんとはしてねぇけど」
後輩「自炊できるの、意外ですよね、先輩」
先輩「意外とか言うなバカ」
後輩「授業、終わったらどこか行きます?」
先輩「あー……、今日バイト」
後輩「あ、そうでしたか」
後輩「えー……」
先輩「『ナイトフライト』とか、開いてるだろ、普通に」
後輩「遅いのキツいです」
先輩「それは、まあ」
後輩「あと、元町通りとか、あっち知り合いいそうだし……」
先輩「いいじゃん、別に」
後輩「よくないです……」
先輩「あっそ。んじゃ、今日はパスだな」
後輩「はい……」
先輩「……あ、そうそう」
後輩「はい?」
先輩「ちょっと手、貸して」
後輩「なんです?」
先輩「いいから」グイ
先輩「どうでもいいこと、考えてろ」ニギ
後輩「どっ――……」
先輩「……スゥ――……」
後輩(札幌カニ食べ放題フリープラン、札幌カニ食べ放題フリープラン……)
先輩「はぁー……」ギュッ
後輩(札幌カニ――……)
先輩「……あ、やっぱダメだ」
後輩「――え?」
先輩「いや、いつものアレ、できなくなってるわ。はい、ありがと――……」
後輩「えっ、え、えぇぇぇっ!?」ガバッ
後輩「ど、どど、どういうことですかぁ!?」
先輩「あ? どうって……、別に普通に、見えなくなって、的な?」
後輩「い、い……いつから」
先輩「さぁ……? 今朝からかなぁ? なーんか、いつもと調子違う感じで」
後輩「な……っ」
先輩「今日は調子悪いみてーだなー」
後輩「今日は……って……、よ、よくあるんですか、そ、そういうの……」
先輩「いや? 生まれて初めて」
後輩「っ!?」
先輩「変な感じだったから、一応、確認したかったんだけど」
後輩「……」
先輩「でも試せる他人なんて、お前くらいだしなー」
後輩「……」
先輩「いやー、午前中モヤモヤしっぱなしでさぁ」
後輩「な、なんで……」
先輩「ん?」
後輩「なんで、そんな……、へ、平気そう……なんですか……」
後輩「……」
先輩「できないなら、できないで、影響ねーしさぁ」
後輩「う…………」
・
・
・
『あぁ~……、やだぁ、わかんないよぉ……、なんでぇ……』
『分かんないよう、怖いよう』
・
・
・
後輩(……嘘だ)
先輩「後輩、お茶一口もらうぞー」
先輩「……また水割りじゃねぇだろうな……」
後輩「……」
先輩「なぁ後輩……後輩ー……?」
後輩「……わ、私が」
先輩「あぁ?」
後輩「私が先輩に、いっぱいやらせすぎたから……」
先輩「はぁ? どうした急に?」
後輩「ど、どうでもいいことで、チカラ? みたいなの? 使わせすぎちゃってっ、それで……っ」
先輩「あっはは、何だそりゃ」
後輩「だって……っ、急にそんなの、おかしいじゃないですかっ」
先輩「いやぁ、関係ねぇと思うけどなぁ」
先輩「つーか、チカラってお前」
後輩「……じゃ、じゃあ私が、先輩にお酒、飲ませすぎて……それで……」
先輩「はぁ……、後輩ちゃーん……」
後輩「先輩の身体に、悪い影響あって、それでおかしくなっちゃって……、飲んだ時みたいに、先輩……」
先輩「お前なー……」ワシャワシャ
後輩「わぷ……っ」
先輩「なーんで、後輩ちゃんの方が切羽詰まってんのよ。えぇ?」
後輩「だって……、先輩がアレ、するの……私だけ……なんですよね?」
先輩「まあ、うん」
後輩「だったら、私が……、わたっ、わ、私の何か……」
先輩「だーからさぁ……、大した話じゃねーんだって」
先輩「あーもう、ウザったい」
後輩「もし先輩、治らなかったら……」
先輩「しつこいっての! いい加減怒るぞ」
後輩「ぅ……」
先輩「……」
後輩「……」シュン
先輩「……はぁ」
後輩「……」
先輩「……ま、そのうち治るんじゃねーかな」
先輩「それまではお前、言うことあったらな、ちゃんと口に出して言えよな」
後輩「……」
先輩「すーぐ面倒臭がって、手ぇ握らそうとするからなぁお前は」
後輩「分かりましたよぅ……」
先輩「あはは」ナデ
後輩「……」
先輩「……」ナデナデ
・
・
・
・
・
~数日後~
後輩(あれから……)
後輩(やっぱり先輩の、不思議な特技は、使えないままで……)
後輩(けれど先輩は……)
先輩「……えっ、嘘、今日私あたる番!?」
ゼミ生A「そうだよぉ、やってないの?」
先輩「うっわ、やってないやってない」
ゼミ生B「アハハ、先輩チャン、アカンやつ、アカンやつ」
先輩「やだぁ、マジかぁ……。誰かやってない? 見せてくれない?」
ゼミ生A「……はぁ、天気いーねー」
ゼミ生B「……そうネー」
先輩「露骨に目ぇそらすねアンタたち!」
後輩「……」
後輩(……いつもと変わらなくて)
後輩(……気にしていないっていうのも、虚勢でもなんでもない、様子で)
後輩(……でも、私は――……)
後輩「……」
後輩(私は……)
先輩「後輩ぃ!」ガッ
後輩「わっ」
先輩「ここ! ここの現代訳、やってある!?」
後輩「え……えぇ、やりました……、けど……」
先輩「あぁぁっ、神! 神いた!」
後輩「えぇ…………」
ゼミ生A「見て、年下に縋り付いてるよ」
ゼミ生B「悲しいセンパイだナー」
先輩「そこ! うるさい!」
後輩「……」
後輩(……先輩は、いつも通りなのに)
後輩(……いや、いつも通りだからこそ……)
後輩「……」
先輩「……後輩?」
後輩「……え」
先輩「……」
ゼミ生A「後輩ちゃーん、もうちょっと焦らしな」
ゼミ生B「そのうち靴舐めてくれるヨ、そのコ」
先輩「しゃらーっぷ!」
後輩「…………今度、一杯おごりですよ」
先輩「うぉぉ、奢る奢る! あーりがとーぉぉ!」
後輩(ぎこちなく、なっているのが、分かる……)
後輩「……」チラッ
先輩「……どうした?」
後輩「い、いえ……、何でもないです……」
先輩「……」
後輩「何でも……」
先輩「……」
・
・
・
・
・
~後輩のアパート~
後輩「……ふぅ」
後輩「……」カシュッ
後輩「……」グビ
後輩(……ふと思うのは)
後輩(……先輩にとって、私は……)
後輩(毒なのではないか、ということ……)
後輩「……」
後輩「……」
後輩(……先輩は優しいから)
後輩(きっとそんな風には、思わないのだろうけれど)
後輩(苦しめているのではないかということ……)
後輩「……」
後輩「……」
後輩(私自身が、転がり落ちている堕落に……)
後輩(先輩も……、巻き込んでしまっているのでは、ないか……)
後輩(とか)
後輩「……」
後輩「……ふぅ」
後輩(これ以上は、先輩に迷惑かけたくない……)
後輩(これ以上は、先輩の何も欠けさせたくない……)
後輩(私は――……)
後輩「しっかりしなくちゃ、なぁ……」
後輩「……」
後輩「……」スク
後輩「……お酒」
後輩「……」
後輩「……やめようか……」ジャー
後輩「……」ドポドポ
ザバッ
ジャバー
後輩「……先輩」
・
・
・
・
・
~数日後~
~大学構内~
先輩「おう、後輩じゃん」
後輩「……」
先輩「後輩? こーうはいちゃーん?」
後輩「……へ? あ、あぁ、先輩」
先輩「うわ、疲れた顔してんねぇ」
後輩「いえ、疲れてるわけじゃないですけど……」
先輩「そうなん?」
後輩「……お酒、我慢してて、最近」
先輩「あっはは、面白いこと言うね、お前も」
後輩「……、……本当ですよ」
先輩「えっ」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「えっえっ」
後輩「ガチのビックリの顔やめてください……」
後輩「……いや、別に……、何となく」
先輩「飲まないとシンドい、って言ってたじゃん」
後輩「……シンドいんですよ、だから……」グデー
先輩「あー」
後輩「周りの音、大きくないです……? 耳痛くて……」
先輩「大丈夫?」
後輩「だい……」ハッ
先輩「ん?」
後輩「……だいっ、だ、大丈夫ですっ」ガバ
先輩「わっ、そ、そう?」
後輩「ええ! 心配、ないですから!」
先輩「な、ならいいけど……。あ、そだ」
後輩「何です?」
後輩「!」サッ
先輩「はい、飴ちゃ――……」
後輩「……」ニギ
先輩「……」
後輩「……あ」ギュウ
先輩「……ん?」
後輩「あ……ご、ご――……」
先輩「……」
後輩「ごめんな、さい……」スッ
先輩「え、いや、別にいいけど……」
後輩「……」
先輩「……後輩?」
後輩「……」
先輩「……」
・
・
・
・
・
~ゼミ生室~
先輩「……」
先輩「……」
ゼミ生A「最近さー」
ゼミ生B「ン?」
ゼミ生A「後輩ちゃん、元気ないよねー」
ゼミ生B「そうナー」
先輩「……」
ゼミ生A「余裕さそうっていうか」
ゼミ生B「ハキなかったケドナ、前は」
ゼミ生A「ハキ?」
ゼミ生B「覇、の気」
ゼミ生A「あぁ」
ゼミ生B「でも、今の方が、アカンな」
ゼミ生A「ね」
ゼミ生B「先輩ヨー」
先輩「んー?」
ゼミ生B「何か聞いテルカ?」
先輩「んー」
ゼミ生A「先輩ちゃーん?」
先輩「おっ――……」
ゼミ生B「ドナイした?」
先輩「へっへっへ。ブラックバス釣れたー」
ゼミ生A「アンタねぇ……」
ゼミ生A「えっえっ」
ゼミ生B「えっえっ」
先輩「うん、まあ、そうなるよな」
ゼミ生A「そっかー」
ゼミ生B「ソラ余裕ないナ」
先輩「あっ、カブトムシ捕れた」
ゼミ生A「それ楽しい?」
ゼミ生B「何ソレ何ソレ」
先輩「んー? えーっと……」
・
・
・
・
・
『えーっと――……』
『いつのことだったか……、時期は、よく覚えていません』
『ただ、とても幼いころ……』
『日暮れ時の公園で、父の手を握ったときに、ソレが起こったことは、覚えています』
『私が何か問いかけ、父がそれに答えるより早く』
『伝わってきました、手のひらから』
『突然のことです』
『そのことで、父が私のことを、とても深く愛していると知れましたが』
『その喜びよりも、不可思議なことが起きた、奇異の念よりも……、私は……』
『ただ、恥ずかしかった』
『直感的な羞恥心に、私は襲われました』
『まるで、父の頭に噛みつき、舐め回し、その味で品定めをするような……』
『してはいけないこと、恥ずべきことをしたという感覚に、苛まれました』
『父に叱られると思い、ひどく泣きじゃくったと思います』
『ソレが何であるかも、理解していないのに……』
『本能にも、羞恥心というものは、備わっているのでしょうか』
『羞恥心、忌避感、罪悪感、生理的な嫌悪感――……』
『そういうものは、今でも……、強く、感じます』
『卑しい……、……淫らだとさえ……、思います……』
『幸い、目を閉じるように、耳をふさぐように……』
『ソレを感じないようにすることは、簡単にできました』
『気にしなければ、気にならない。そうやって、ソレと付き合うことができました』
『誰にも話さず、誰にも気づかれず、誰かの心を盗み見ることもせず……』
『そうしてきました』
『けれど――……』
『けれど、あのとき――……』
『あのとき、私は――……』
・
・
・
・
・
~別の日~
先輩(あのとき、私は――……)
先輩(私は――……)
教授「……――さん、先輩さん」
先輩「……へ? あ……え?」
教授「授業、始めますよ」
先輩「え、あ……あぁ」
教授「聞いてます?」
先輩「すみません……」
教授「ふぅ……、それで、後輩さんは?」
先輩「……」
教授「……?」
先輩「……え?」
教授「誰か聞いてませんか? 今日は、お休みでしょうか?」
ゼミ生A「……先輩ちゃん?」
先輩「…………」
・
・
・
・
・
~夕方~
先輩「……ハッ ハッ」
先輩(大学にもいねぇ)
先輩(……アパートも、気配なかったし)
先輩「ただのサボりだって……」
先輩「落ち着け私……」
先輩「……」プルルルル
先輩「……っ」
先輩「出ろやバカタレぇ……」タッ
タタッ
・
・
・
・
・
~居酒屋~
先輩「はぁ……、はぁ……」
先輩「……」
先輩「大将、あの、すんません」
大将「……」
先輩「あの、いっつもよく来る、ちっこいヤツ。あの、女で……」
大将「……」
先輩「今日って来てなかった――……」
大将「……」クイッ
先輩「……あ」
先輩「え、これアイツ一人で飲んだの?」
大将「……」コクン
先輩「うわぁ……、バカだぁ……」
バイト「あの子、今、あっちッスけど」
先輩「あっち――……、……トイレ?」
大将「……」
バイト「もうちょいしたら、救急車呼ぶかって、話してたんスけど」
先輩「大バカじゃぁん……もぉ……」
・
・
先輩「……」
コンコン
先輩「後輩ー」
コンコンコン
先輩「おーい、後輩、こ、う、は、い!」コンコン
ガチャ
先輩「お」
後輩「ぅー……」
先輩「後輩……」
後輩「しゅみましぇん……、いま、どきましゅから……」フラフラ ドサッ
後輩「え……あれぇ……? あっ」ヘタリ
先輩「後輩! ってかパンツ履けお前!」
後輩「あ……先輩……?」
先輩「そうだよ! 先輩だよ! 分かったらパンツ履け!」
後輩「あぁ……、先輩……私……」
先輩「なんだよ!」
後輩「……私、飲んじゃった」
先輩「パンツを! 履け!」
・
・
・
・
・
先輩「お前は……本当にもう……」
後輩「……ごめん、なしゃい……」
先輩「しっかりしろよなー」
後輩「……」
先輩「ほれ、立てるか?」
後輩「もう……」
先輩「……ん?」
後輩「私なんかにぃ……、構ってたら、ダメです、先輩はぁ……」
先輩「何だよ」
後輩「わたひ……もう、駄目で……、最低で……」
先輩「……」
後輩「いつだって、何だって、台無しにしちゃって……」
先輩「……」
後輩「先輩のことも……」
先輩「……」
先輩「後輩……」
後輩「私みたいなのぉ……触っちゃ、いけないんです……」
先輩「……」
後輩「ほっとかなきゃ、ダメなんですよぉ……」
先輩「……ほっといてほしいのか?」
後輩「……」
先輩「はぁ……」
後輩「ごめんなさ……うぅ、ぅ……」
先輩「とりあえず、行くぞ。ほら、立てるか?」グイ
後輩「優しくしないでよぉ……」フラフラ
先輩「うるせぇ、腰抜けるまで酔ってるやつが、何言ってんだ」
後輩「ぅぅぅ……」ヨタヨタ
・
・
・
・
・
・
バイト「あの……」
先輩「あ、すみませんね、どうも」ペコリ
後輩「……」
バイト「いえ。……大丈夫ッスか?」
先輩「大丈夫ッス」
後輩「ダメダメッス……」
先輩「……」ベシッ
バイト「」ビクッ
後輩「あぅっ」
先輩「一応、意識とかもあるっぽいんで。まぁ、私連れて帰りますから……」
バイト「あ、あはは……」
バイト「あ、じゃあこちら、お願いします」サッ
先輩「うぉっ」
後輩「……」
先輩「お、おぉぉ……マジか」
バイト「な、なんか、すみません」
先輩「ああ、いえ。……カードって使えます?」
バイト「はい、使えますよー」
後輩「……」
先輩「トロとか食ってんじゃねーよバカ!」バシッ
バイト「」ビクッ
後輩「……」フラフラ
・
・
・
・
・
~帰り道~
先輩「後輩ー……」ヨタヨタ
後輩「……」
先輩「……返事なくなったら、救急車呼ぶからな」
後輩「大丈夫、です……」
先輩「大丈夫だなー」
後輩「……いえ、大丈夫では、ないですけど」
先輩「あはは、どっちだよ」
後輩「……」ヨタヨタ
先輩「……」ヨタヨタ
後輩「……」
先輩「……」
先輩「……なあ、後輩」
後輩「……ひゃい」
先輩「お前にさ、話したことあったっけ?」
後輩「……」
先輩「何でお前に、アレしたか、って……」
後輩「……ビックリさせたいとか、なんか……」
先輩「……」
後輩「違いましたっけ?」
先輩「……いや」
後輩「……」
先輩「本当はさ……」
後輩「……え?」
先輩「本当は、私……アレすんの、すげー苦手でさ」
後輩「……」
後輩「……」
先輩「だから、誰にもしたことなかったし」
後輩「……」
先輩「……こんなの、できない方が良いって、ずっと思ってた」
後輩「……」ヨタヨタ
先輩「……人来てるぞ、危ない」
後輩「ぅ……」ヨタヨタ
後輩「……」
先輩「他人が、何を考えているかなんて……」
後輩「……」
先輩「考えたくもなかった」
後輩「……」
先輩「でも……でもな」
後輩「……」
先輩「あのとき……、お前に初めて会ったとき」
後輩「……」
先輩「思っちゃったんだよ」
後輩「……」
後輩「……」
先輩「『この子が思っていることを、知りたい』って」
後輩「……」
先輩「……生まれて初めてだったよ、そんなこと」
後輩「先輩……」
先輩「我慢しようと思ったんだけどさぁ、でも、我慢なんて……」
後輩「……」
先輩「後輩にさ、死ぬほど申し訳なくて、死ぬほど恥ずかしくて……」
後輩「……」
先輩「それでも、やっちゃったんだ」
後輩「……」
後輩「……はい」
先輩「私はさ……」
後輩「……」
先輩「どうしても知りたかったんだ、お前のこと」
後輩「……そんなの」
先輩「後輩は、お前は……、私をダメにするって言うけど」
後輩「……」
先輩「だから、構うなって言うけど……」
後輩「……」
先輩「違うんだよ」
後輩「……」
先輩「私が、お前といたいんだ」
後輩「……」
先輩「一緒に」
先輩「……」
後輩「私……ダメで、終わってて、もう……」
先輩「……」
後輩「生きていることも、不安なくらいダメで……」
先輩「ま、そこはさ、しっかりしろよ、とは思うけど」
後輩「……」
先輩「……いいさ。お前がしっかりできるまで」
後輩「……」
先輩「隣にいてやるよ」
後輩「……」
先輩「ダメになるのも、少しくらいなら、付き合ってやる」
後輩「……先輩」
後輩「……先輩、あの……」
先輩「うん?」
後輩「大事な、こと……」
先輩「……何だよ」
後輩「あの……」
先輩「言ーえーよー。言わなきゃ分からねぇんだぞ、今の私はー」
後輩「家の鍵、どっか行った」
先輩「……」
後輩「……」
・
・
・
・
・
~ありました~
・
・
・
・
・
~後輩のアパート~
先輩「いい加減にしろよお前……」
後輩「すびばぜん……」グスグス
先輩「泣くなよ……」
後輩「うぅ……」
先輩「はぁ」
後輩「……グスッ、……せんぱぁい」
先輩「おう」
後輩「……私、いっつも先輩に、アレで、手握らせてたの……」
先輩「……」
後輩「あれ、嫌だった?」
先輩「別に」
後輩「……」
先輩「お前以外のやつだったら、絶対嫌だったけどな」
後輩「……うへへ」
後輩「あ、ありがとう……ございます……」
先輩「おー」
後輩「……私も」
先輩「お?」
後輩「しっかりしなきゃ……ですね……」
先輩「あはは、無理すんな」
後輩「えぇー」
先輩「リバウンド? ぶり返し? っていうの? 耐えられなかった時、お前すごいじゃん。こんななってるじゃん」
後輩「こんなって、どんな」
先輩「鏡ごらんなさいよ」
後輩「むぅ……」
先輩「あはは」
先輩「うん?」
後輩「がんばり、ます……」
先輩「……」
後輩「がんばって、それで……ダメでも」
先輩「おう」
後輩「ダメでも、先輩は、隣にいてくれるんですよね?」
先輩「あー……」
後輩「……」
先輩「まあ……、うん」
後輩「……ふふ」
先輩「何だよぉ」
後輩「ねぇ、先輩」
先輩「ん?」
先輩「何よ」
後輩「いいから。ちょっと……座って、隣」
先輩「……うわ、酒臭」
後輩「うふふ」ニギ
先輩「ん」
後輩「……」ギュッ
先輩「何してんのさ」
後輩「……」
先輩「……別に、何も伝わらないよ」
後輩「違いますよ」
先輩「……」
後輩「先輩の手、握りたかっただけです」ギュウ
先輩「そっか」
先輩「どうしたー? 今度は何なくしたんだよ?」
後輩「そうじゃなくて! もう! いいから聞いてください!」
先輩「何だよ、もぉ……。分かったよ」
後輩「はぁ……」
先輩「手ぇ熱いぞ、お前」
後輩「いいから! ……――先輩、私……先輩のこt」
先輩「あっ――!!」
後輩「えっ?」
先輩「あっ、わ、待って! あ、あ、来てる」
後輩「ちょ、あの、先輩……、今大事な――……」
先輩「待てって! あああ、来た来た来た!」
後輩「な、何がですかぁ!」
後輩「はぁっ!?」
先輩「マジだって! いいかー見てろよ――……」
後輩「……」パッ
先輩「やっ、ちょ、何で離すの後輩ちゃん!」
後輩「ダメです!」
先輩「なーんでだよぉ! さっきなんか、言いかけてただろー!」
後輩「だからそれは、ちゃんと私が言いますから!」
先輩「何だよ、言えよ」
先輩「がぁぁっ! イラつく!」
後輩「こ、心の準備が……」
先輩「……」スッ
後輩「……」パッ
先輩「逃げんな!」
後輩「やーだぁーっ! ちゃんと伝えさせてくださいぃーっ!」
先輩「手を繋げば分かるだろ!」
後輩「ダメです!」
~おわり~
・
・
~アフター~
~先輩のアパート~
後輩「ねぇ、先輩ー」
先輩「おー?」
後輩「先輩、アレするの、嫌いって言ってたじゃないですかー」
先輩「あー、うん。まぁ」
後輩「アレしてるときって、どんな気持ちなんですか?」
先輩「どんな? えー、うぅーん……」
後輩「……」
先輩「なんか……なんだろ、ヘンタイになった気持ち」
後輩「えぇ……」
先輩「ちょっと嫌だろ」
後輩「ちょっと嫌ですね」
先輩「な」
先輩「うん?」
後輩「私にしてる時も、気持ち悪い感じだった?」
先輩「……」
後輩「正直に言ってくださいよ! 私、先輩が本当に嫌だったら、やりませんから!」
先輩「ぅーん……正直に……」
後輩「はい! 真剣に、正直に」
先輩「うん、あの……正直に言うよ?」
後輩「……はい」
先輩「正直言って――……」
後輩「……」
先輩「背徳感あって……」
後輩「……」
先輩「割と興奮する……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」スゥゥゥ
先輩「やめて! 無言でドン引きするのやめて!」
先輩「ごめんって! 悪かったって!」
後輩「はぁ……、でも、良かったです」
先輩「え?」
後輩「先輩も、私と手を繋いでる時、ドキドキしてくれてたんですね」
先輩「あの、えっと……私『も』?」
後輩「ふふ……」グイッ
先輩「ちょ、後は――……わっ」ドサッ
後輩「せんぱぁい……今私が、何考えてるか、分かります?」
先輩「やっ……ちょっと、後輩ちゃん、顔近っ……あっ、酒臭ぇ! また飲んでやがったコイツ!」
後輩「当ててみてください……」ギュッ
先輩「あっ……」
後輩「先輩……っ」ニギッ
先輩「ちょっ、ストップ! ウェイト! こうは――わ、わわわわっ、待っ――……
~(ほんとに)おわり~
お読みいただいた方、ありがとうございました
コメントくださった方、すごく嬉しかったです。ありがとうございました
お酒は飲んでも飲まれるな
それでは
最高だった
掲載元:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1511685256/
Entry ⇒ 2017.12.03 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
悪魔「へっへっへ!ぬす」天使「盗んじまえぇぇええ!!!」
ポト
男「あ、財布だ。どうしよう」
悪魔「盗っちゃえよ」
男「う、うーん。悪魔の囁きが・・・・・・」
悪魔「へっへっへ!財布をぬすん――」
天使「盗んじまえぇぇええ!!!」
悪魔「ちょ、え」
天使「ついでに女はレイプだ!!!ヒャアアアア!」
悪魔「や、あの」
天使「ぶっ殺して埋めればバレねぇよ!!!」
悪魔「やめなさい!」ベシ
天使「なんでしょうか」ニコニコ
天使「なにがですか?」ニコニコ
悪魔「なにがって、そういうのは私の役目でしょ?」
天使「殺せぇぇ!!!」
男「コロセェェェヒャァァァ!!」
悪魔「やめなさいって!!」
天使「もう。なんですか?」ニコニコ
悪魔「だからそういうのは私のや――」
天使「刺せぇぇぇぇ!!!」
男「サスゥゥゥゥウ!!!」
悪魔「やめい!」ベシ
天使「痛いです」ニコニコ
天使「なにをですか?」
悪魔「男に悪事を吹き込むことをだよ!」
天使「ちょっと、え? フフ」
悪魔「なに?」
天使「フフ、悪魔なのに、フッ、悪事を、やめろって」
悪魔「天使はやめろって言ってるの!」
天使「そんなの不公平じゃないですか」ニコニコ
悪魔「仮に私が突然男に善行を説いたら嫌でしょう!?」
天使「なにを言うんですか。天使にとってそれは喜ばしいことです」ニコニコ
悪魔「ぐぬぬ」
天使「はあ・・・・・・よし。ぶっころせぇぇぇ!!」
男「ブッコロスゥゥゥ!」
悪魔「やめい!」ベシ
天使「なんですか」ニコニコ
天使「もう。どうしてですか?」
悪魔「バランスが悪くなるでしょ!?」
天使「悪魔なのにバランスとか気にしてるんですか?」プークスクス
悪魔「腹立つぅぅぅ!」
天使「あらあら、怒りに囚われてはいけませんよ」ニコニコ
悪魔「なんだこいつぅぅ!!」バタバタ
天使「天使です」ニコニコ
悪魔「じゃあ悪いことするなよ!」
天使「それは不公平ですってば」
悪魔「じゃあ仮にわた・・・・・・いやいやまてまてまて。これはまずい流れだ」
天使「ちっ」
悪魔「そもそもなんで突然悪いことしようしたのさ」
天使「だってズルいじゃないですか。いつもあなたは好き勝手なことばかり男さんに言って、私はその後始末です」
悪魔「・・・・・・だってそれが悪魔の仕事なんだもの」
悪魔「天使とは思えないなぁ・・・・・・」
天使「良いじゃないですか。たまには私にも休暇を下さいよ」ニコニコ
悪魔「なにそれ! 私が毎日休んでるみたいじゃない!!」
天使「盗んじゃえー♪ にげちゃえー♪ なぐっちゃえー♪ ・・・・・・これが仕事だといえますか?」ニコニコ
悪魔「わ、私そんな言い方してないもん」
天使「盗んじゃうぇー♪ にげちゃうぇー♪ うぇー♪ うぇーい♪」
悪魔「そんな変な言い方してない!!」
天使「うぇーい♪ うぇうぇうぇうぇーい!」ニコニコ
悪魔「や、やめろ!!」ベシ
天使「・・・・・・」ニコニコ
悪魔「・・・・・・な、なによ」
天使「えい」ボコ
悪魔「痛い! 殴った! 天使が殴った!!」
天使「休暇ですので」ニコニコ
天使「痛みを知って、人は成長するのです」ニコニコ
悪魔「なにその加害者の理屈! あー痛いよう」ヒリヒリ
天使「・・・・・・」ニコニコ
悪魔「うぅ痛いよう・・・・・・え? なに?」
天使「もう一発ぶん殴ろうかなと」ニコニコ
悪魔「やめてよ!!」
天使「悪魔さんは本当に悪魔のようにワガママですね。死んでください」ニコニコ
悪魔「酷くない!?」
天使「今日は天使じゃないので」ニコニコ
悪魔「悪魔でもそこまで言わないよ・・・・・・」
天使「意気地無しー♪ ばーか♪ あーほ♪」プークスクス
悪魔「こ、このぉぉ!」ベシ
天使「・・・・・・」ニコニコ
悪魔「痛い痛い痛い!折れる折れる!」
悪魔「私の苦痛だよ。うぅ」
天使「とにかく私は今日天使ではないのです。だからなにをしても良いのです」ニコニコ
悪魔「恐ろしい生物が生まれてしまった」
天使「さて、今日はどんな銀行を強盗しましょうか」ニコニコ
悪魔「選択肢が狭まりすぎだよ!分かった、分かったよ!今日は天使じゃなくていいから」
天使「お前に言われなくてもそのつまりだこのクズ、ですよ」ニコニコ
悪魔「ひどいよぉ」ウルウル
天使「それでなんですか?」
悪魔「このままだとバランスが取れなくなるから、天使が悪いことをする分それを正す人が居ないと」
天使「お前がやれよこのカスが、ですよ」ニコニコ
天使「ダッテワタシタダシイコトシタコトナイモニョー♪」
悪魔「真似しないでっ!!」
天使「・・・・・・」ニコニコ
悪魔「黙って拳を振り上げないで!!」
天使「分かりました。ではバランスを取りましょう」ニコニコ
悪魔「うん。お願いします」
天使「まずは私が凶悪な悪事担当です」ニコニコ
悪魔「う、うん。笑顔で言うことじゃないけどね」
天使「で、お前が善行担当のクズ一号です」ニコニコ
悪魔「うう、ぐすっ。はい」ウルウル
天使「そして彼がバランサーです」
強○魔「ウヒヒィ、女ァァ」
悪魔「おかしいでしょ!」
天使「え?」ニコニコ
強姦○「お、おか、犯してェ。ぐふ、グフフ」
悪魔「ヒィ! ほ、ほら!」
天使「ええ。凶悪な悪行、悪行、善行。ほら、バランスが取れているじゃないですか」ニコニコ
悪魔「真ん中じゃなくて善行にもう一人欲しいの!」
天使「うるさい殺すぞ、ですよ」ニコニコ
悪魔「きょ、凶悪だ!」
○姦魔「殺すより犯せ!!ヒヒヒィ!」
悪魔「どっちも凶悪じゃない!?」
天使「はあ、分かりましたよ。あなたはもう帰りなさい」
悪魔「あ、消えた」
天使「では善行の一人増やしましょう。この方です」
右○団体構成員「俺が正義だぁぁぁ!!」
悪魔「なんか違う!!!」
○翼団体構成員「そうだ、俺達こそが正義なんだ!!!」
天使「ほら」ニコニコ
悪魔「正義が偏ってるよ!右側に!!」
天使「なにを言うのです、よく見なさい」ニコニコ
右翼団体構○員「○皇攘○!尊○○夷!」
悪魔「どう見てもだよ!!」
天使「はあ、消えなさい」ニコニコ
悪魔「ちゃんとした善行を出来る人を連れてきてよ・・・・・・」
天使「ちゃんとした善行、とはなんでしょうか」
悪魔「え?」
天使「正義とは常に偏った側が掲げるものなのです。真の正義など何処にもありはしないのです」ニコニコ
悪魔「一神教の使者が言うことじゃないよ・・・・・・」
天使「つまり、正義を得るには銀行強盗をしなければいけないのです」ニコニコ
悪魔「飛躍しすぎだよ!!」
女「どうされました?」
男「・・・・・・う、うううう」白目
女「あれ、私の財布・・・・・・ああ、拾って下さったんですね。ありがとう」ニコ
男「ううぅぅううブッコロスー!!」
女「ヒィ! な、なに!?」
男「駄目だぁぁそんなことしちゃ駄目だぁぁ!」白目
女「・・・・・・だ、大丈夫ですか?」
男「お、犯してやる。ヒヒヒ、犯してやる」白目
女「ヒィィッ!」
男「○○攘夷!尊皇○○!!」
女「な、なにこの人!!」
天使「ブッコロセェェ!!」ニコニコ
悪魔「やめてったら!! 殺さない殺さない!!」
天使「邪魔しないで下さい」ボコ
悪魔「痛い痛い痛い!直接攻撃するのは無しでしょ!?」
天使「悪にルールなどないのです」ニコニコ
悪魔「やめてよ!」
天使「やめません」ニコニコ
ボーン、ボーン
悪魔「あ、0時だ! ほら、これで終わり!もう終わり!!」
天使「仕方ありませんね」ニコニコ
悪魔「死ぬかと思ったよぉ」ウルウル
悪魔「も、もう二度と休まないでね。私もちょっとは反省するから」
天使「ええ、私も日頃の行いに反省しました」
悪魔「よし、じゃあいつもの仕事に戻ろう!おい男、その財布盗って逃げちゃえよ。ヒッヒッヒ」
天使「・・・・・・」ボコ
悪魔「痛いっ!ちょ、え?なんで!?」
天使「今回の経験で悪は本当に危険だということが分かりましたので、私も天使としてしっかり対抗しませんと」ニコニコ
悪魔「いや、いいって!やめて!痛いったら!」
天使「えい!悪め!死ね!死ね!正義の鉄槌!正義の鉄槌!」ニコニコ
悪魔「痛い痛い痛い!ごめん!やめて!やめてー!」
天使「今日も仕事が捗ります」ニコニコ
完
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Entry ⇒ 2017.12.03 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
【微胸糞】狼「人間は馬鹿だなぁ」
狼「そんなところで何してるんだい?人間。大根干しになるのかい?」
少年「ひなたぼっこだい!」
狼「君は実に馬鹿だな」
少年「なんでさ」
狼「ツバメが低く飛んでた。もうすぐ雨になるんだ。そこにいると濡れるよ」
少年「ふらないやい!」
ポツ ポツポツ
ザァッ
少年「わあ、ふってきた」
狼「降ってきた降ってきた」
少年「どうくつへいこう」
狼「だから濡れるって言ったのに」
少年「オオカミのくせになまいきな!くちごたえするなー」ワシャワシャ
狼「人間のくせに生意気な!巻き込んだなー」キャッキャ
少年「やあなまいきオオカミ」
狼「その子は?」
少年「出てきていいよ」
少女「こんにちは」ペコリ
狼「友達かい?」
少年「うん、とってもくさのかんむりを作るのがうまいんだ」
狼「大切にしなよ友達は」
少年「分かってるよ!オオカミのくせになまいきな!」ワシャワシャ
狼「生意気なー」キャッキャ
狼「おや、今日はどうしたんだい」
少年「口聞きたくない」
狼「黙ってたら何にも分からないじゃないか」
少年「むう」
狼「せめて意味の解る言葉を話してくれよ、馬鹿な人間」
少年「むう!」
狼「へえ、どうして?」
少年「お母さんもお父さんもぼくの本当のお母さんお父さんじゃないんだ」
狼「どういう事?」
少年「ぼくが生まれた時お父さんはいなかったんだ。お母さんはいたけど今のお父さんとケッコンしてお母さんが死んじゃって、お父さんは今のお母さんとケッコンした」
少年「ぼくだけ一人ぼっちなんだ。ぼくっていらない子なのかな……お母さんが育てるのしっぱいしたかしらって言ってたんだ」
狼「ねえ人間」
少年「少年だい」
狼「ねえ少年、僕の頭を触ってみてくれないかな?」
少年「さわったらかむでしょ」
狼「噛まない噛まない」
少年「本当に?」
狼「本当に」
少年「本当に本当に本当?」
狼「本当に本当に本当に本当!」
狼「少年にもお母さんがいて、お父さんがいるように僕にもお父さんお母さんがいるんだ」
狼「お父さんにもお父さんお母さんがいて、お母さんにもお父さんお母さんがいる」
狼「こうして今僕の体が温かいのは、いっぱいのお父さんお母さんが僕を寒い寒いさせないように温かく産んで育ててくれたおかげなんだ」
狼「君にもそれが言えるんだよ。君の体が温かいのはお父さんお母さんのおかげなんだ。だから君は必要な子なんだ」
少年「うむ?」
狼「産む!」
少年「うむむむむ!」
狼「そうだね。でも考えてみてよ、君は死んじゃった前のお母さんが産んでくれただろう?その死んだお母さんは君のことをいらないって思ってるのかな」
少年「うーん…」
狼「きっと思ってないはずだよ。それに、新しいお父さんお母さんも君が大切じゃなかったら何にもあげてないはずだよ」
少年「お父さんお母さんがごはんを作ってくれるのはぼくのため?」
狼「そう、君のため」
少年「お父さんお母さんがふくをつくってくれるのもぼくのため?」
狼「そう、君のため」
少年「…うん、分かった。頑張るよ!かわりにぼく、りょうしになっていつか君においしいお肉あげる」
狼「お肉は嬉しいけどそんな簡単なことにも今まで気づかなかったなんて人間は本当に馬鹿だな」プププ
少年「人間じゃなくて少年だい!オオカミのくせに!」ワシャワシャ
狼「人間のくせに!」キャッキャ
少年「やあ、生意気オオカミ。おじさんから今のうちに森に慣れておけって言われてさ、それで君のところにもついでに寄ってるんだ」
狼「間違えて狼を狩らないでくれよ」
少年「喰われそうになければね」
狼「ところで君は奥さんを持たないのかい」
少年「君は?」
狼「僕が質問してたんだけどな……僕にはとっくに可愛い子がいるぜ君。そっちはどうなんだい?」
少年「ううん、いい人がいなくて」
狼「何言ってるんだい、一人適任がいるじゃないか」
少年「ダメだよあの子は。村長の娘だから他の村の人と結婚するんだ」
狼「ふうん、そういうものなのか」
少年「そういうものなのだよ。最近はもっぱら狩り三昧さ」
狼「難しい言葉を使うようになったね、なんだか親になった気分だ」
少年「おやおや、本当に親なのにね」
少年「よくぞ聞いてくれたね! これは毒のビンの袋なんだ」ガサゴソ「このビンの毒は即効性があって摂取した生き物をすぐ殺しちゃうんだ。しかもこの毒を食べた動物を人間が食べても全く影響がないっていう素晴ら」
狼「あ、ああもういいよ、そいつはすごいね」
少年「だろう?僕が思うに毒は狩人の勲章なのさ」
狼「ポイって川に流さないでくれよ」
少年「そんなことしたら川魚が食べれなくなるだろう?」
狼「ジョークさ、水に流してくれ。そんなことにも気づかないなんて人間は馬鹿だなあ」
少年「気づいてたさ!オオカミのくせにー」ワシャワシャ
狼「人間のくせにー」キャッキャ
少年「そんな言葉まで知ってるんだね、狼」
狼「どうしたんだい少年」
少年「プレゼントをしたらいらないって言われちゃって、女心が分からないなぁ、って思って助言を聞きに」
狼「あ、それは僕でも無理だ」
少年「なんだよ、君は結婚してるんだろう?」
狼「結婚と女心が分かることは全く別だよ」
狼「それに僕は狼だよ?人間の価値感なんて知識の埒外さ。君のお父さんの方が詳しいよ」
少年「ふぅん、そういうものか」
狼「そういうものだよ」
少女「こんにちは」
狼「あっ、そういえば少年じゃないから話が通じないんだっけ」
少女「あのね、妹がオオカミさんにって」
少女妹「あげるー」
少女妹「花の首輪なのー」
狼「よしてくれよ、仮にも僕は野生なんだ。プライドを人間に狩られた記憶はない」グルル
少女妹「つーけーるー! 」グイ
狼「それにそんなのを首に着けてたら群れからも笑われるんだって、だからやめてくれよ頼むから」ガウ
少女妹「つーけーるーのー!!! 」
少女「わかったわかった、お姉ちゃんが着ければいいんでしょ? ほら」グイ
狼「だからやめろって言ってるだろ! 」ガウ!
ドン
少女妹「わっ」ガン
少女「わっ、ちょっと、大丈夫? 」
狼「あ、ごめんよ。でも君も嫌がってるの無理やりつけようとするから」
少女妹「う、う、えぇ」ジワ
少女「ああもう、お母さんにお薬塗ってもらおうね、よしよし」
村長妻「まあ! どうしたのそのたんこぶ! 」
少女妹「おくすり……」
村長「どうしたのかね」
少女「狼に体当たりされて岩に頭をぶつけちゃって」
村長妻「まあ! なんてことでしょう! 」
村長「最近家畜が食い荒らされてるが……まさか」
村長妻「あなた、いっそこの際狼なんて殺してしまいましょう全部」
村長「いや待て、自然は敬うべきなのが昔からの慣わしだろう? ここは自然を甘く見た子に育てた私達にも責任がある」
村長「それに我々の先祖が狼を飼いならしてできたのが犬なんだ。今滅ぼしてしまっていつか犬たちの血統が途絶えたらどうするんだ」
村長妻「まあまあまあ! 家畜を食い荒らす獣を野放しにしておくの? アナタ」
村長「いや、そうじゃなくてだな、生態系も」
村長妻「あなたは私たちの可愛い子供よりいつか来る犬の血統が途切れることの方が大切なの?!」
村長妻「私達家族と意地汚い狼とどっちが大切なの? 」
村長「しかしな……」
村長妻「いい? 私の可愛い可愛い少女ちゃん」グイ「このまま野放しにしておいたら駄目なの! 狼なんて未来に禍根しか残さないのよ? 」
少女「かこんって何? でも狼は」
村長妻「あなたは悪い事をする狼と」ギュ「私達のどっちが大事なの? 」
少女「……」
村人「どうしたどうした」「早くしてくれ」「もうすぐ来る収穫祭の話だろう」「酒もってこい」
村長「私の娘が狼に襲われて怪我をした」
村人「なんだって」「それは大変だ」「近頃の狼は野蛮だな」「酒が足りんぞ」
村長「最近の家畜を食い荒らしているのも狼のせいだろう」
村人「それは困る」「ウチは畑作だからなぁ」「娘をちゃんと見てなかった村長も悪いのでは」「酒だ酒! 」
村長「そこで提案だ、近隣一帯の狼を殺そう。収穫祭の前に山狩りをして狼を根絶やしにしよう」
村人「なんだって」「慣わしを忘れたか村長」「父親として見張らなかったのが悪い」「酒飲んで忘れろ村長!娘は生きてるんだから! 」
村長「あまりいい返事が聞こえないな」
村人「考え直せ」「いい案とは言えないな」「家畜を荒らしたのが本当に狼か慎重に調べないと賛成できないな」「そんなとこより酒飲もうぜ! 」
村長「ここはワシの村だ。ワシの提案が嫌なら出ていってもらおう」
村人「……」「……」「秋が終わったらすぐ冬なのに誰が出ていくんだ」「酒……おいこら……」
(~)
少年「……狼」
狼「仲間を皆殺しにされちゃったよ。おかげでビーバー一匹狩れなくて腹を空かせる始末さ。一匹狼ってカッコいいけどいつも空腹なんだぜ」
少年「ごめん、僕、みんなに狼は悪くないって言ったんだけど、みんなが聞かずに山狩りしだして」
狼「君はまだ子供だからね、意見が通らなくても仕方ないよ」
狼「村長の子供を突き飛ばした僕も悪いさ。むしろ子や妻の前に僕が真っ先に死ぬべきだったかもね」
狼「一つ言い訳させて欲しいなら、僕らは家畜なんて襲ってないぜ。全部君の村の犬が食べたんだよ。ちゃんとエサはあげようね今度から」
少年「本当に? 」
狼「ああそうか、君たち人間は動物のくせに鼻が利かないからなあ。分からないのか」
少年「それより狼、君も早く逃げないと。夜だからってこんなに村の近くにいたら」
狼「逃げたいんだけどね、生憎お腹が空いてもう立てないのさ。最後はみんなの骨が埋まっている場所の近く、君の家も見れるここで死なせてくれよ」
少年「ちょっと待って」ググ「よいしょ」
狼「ここは君んちの倉庫かい? 」
少年「うん、ここならお肉もたくさんあるしこっそり食べれるよ。夜にお水も僕がこっそり持ってこれるから」
狼「獣だし遠慮は出来ないよ」ガブ「ところで、なんで僕を庇うんだい?」ガツガツ
少年「こんなの絶対間違ってるよ。だって狼は一人怪我させただけなのに仲間をみんな殺されて、酷い目に遭わされて」
少年「だから体力回復して逃げないと」
狼「庇わなくても僕は妻も子供も仲間も異性も全部全部殺されたんだぜ、助けても無駄なのに」カクン カクン「馬鹿な人間……」コテ
父「夜目をきかす練習かな?熱心なのはいい事だよ。最近、狩りの仕方が上手くなってきた」
父「つい最近まで覚えが悪くて苦労させられたがな、ハハ」
母「最近といえば、うちよく食料が減るわね。あなた知らない? 」
父「さあ。子供が成長期だからじゃないか?」
母「そうかしら? おかしいわね」
狼「やあ、おかげでお腹も膨れてケガも治った。逃げる力は戻ったよ」
狼「扉を開けるのが僕には無理でね、壊すかどうか迷ってたところなんだ」
少年「危ない危ない、倉庫の戸がオシャカになるところだったよ」
少年「さて、じゃあもう逃げようか」ガチャ
狼「君には本当に感謝しているよ、いつか恩返しにでもくるよ」
少年「僕と君の仲だろ、照れくさい」
狼「はは」
少年・狼「!!! 」
父「うちの息子から離れろ害獣め」チャッ
少年「お父さん! やめてこれには」バッ
父「あっ」パン
少年「う、あ」バタ
狼「なんてことを……」グルル
父「ま、前に飛び出すなよ」
狼「! 」キッ
狼「自分で撃っておいて息子のせいにするのか!お前はそれでも父親か!」ガァッ
父「うわぁ」パン
父「む、息子が狼を匿っていた」ハァハァ
母「なんですって! 」
父「幸いうちは村はずれだから隣に今の銃声は聞こえてないみたいだ、それに息子も憎たらしい狼も息がある」
父「狼は始末して息子は再教育する。息子がこうなったのは我が家の責任だ」
母「あなた……」
母「本当にそれでいいの?」
母「私達の血がつながってない子なのよ。そんな子がもし再教育し間違えてうっかり『狼を匿っていた』なんて口を滑らせたらウチは滅茶苦茶よ」
母「ねえあなた、子供が欲しくない? 私達の血がつながっている子よ」
父「何を……」
母「森の中に代々受け継いでる洞窟があるわね」
父「ああ」
母「あそこに間違って迷い込んでこの子は洞窟に潜んでた狼に喰われる」
母「狼はそのまま洞窟内から出れずに餓死、この子の骨と狼の死体はその後洞窟の点検をしていた私たちに見つかり、村人に引き渡される」
母「銃殺だと他人に見られたら一目で誰かがやったか疑われるけど、狼に食われるなら問題なく埋葬されるはずよ」
母「どう?このシナリオ」
父「お前……」
父「閉じ込めて食事は与えずこの子、いやこいつを狼に食わせる。10日くらいしたら飲まず食わずでもう餓死してるだろうから死体を持ち出す」
父「実際は落盤なんか起きっこないがなんとかそこは言いくるめるよ。それに今の案だとオオカミを撃った傷を落盤の際の怪我だと上手く言い逃れできるかもしれない」
母「あなたって普段は冴えないけどピンチの時はやるわね、そうと決まれば弾を取り出してさっさと閉じ込めましょう」
父「ああ、その後に幸せな幸せな子作りタイムだな」サワッ
母「ぅんん♪まだお尻触らないで、あとのお・楽・し・み♪」ウフフ
父「ははは、今夜は寝かさないぞ」ニコ
狼「うん、上がれそうかい」
少年「全然ダメだ。上がれないよ。狼と僕の伸長を足してジャンプしてもギリギリ足りないくらいだし、扉がついてるから開いてないと上には上がれないよ」ザザ
狼「雪崩に空腹ってまさにこういうことだね」
少年「何それ」
狼「狼のことわざ。人間でいう万事休すって感じかな?」
少年「ああ……どうしよう、狼。僕この後処刑されちゃうのかな」
狼「この後って事はないと思うよ」
少年「どうして?狼を匿っていたんだよ?」
狼「今この状況から分かるのは気絶している間に罰を決められて今既に処刑が実行されてるか、息子の失態は周囲に話さずここに閉じ込めているかの2択だよ。じゃなきゃとっくに焼かれてるか吊られてるよ」
少年「一理あるかも。でも今既に処刑が実行されてるって……僕たちを餓死させようとしてるのかな」
狼「それもあるよ」
少年「も?」
狼「うん、狼を飢えさせて君を食べさせようとしてるんじゃないかな」
少年「えっ、それって……」
狼「僕が大切な君を食べる様に見えるかい?馬鹿だな」
少年「……」
狼「1日は経ったんじゃないかな。僅かに風が違うでしょ」
少年「風?」
狼「そう。今は秋だから寒暖の差は激しいんだ。洞窟内だから殆ど分からないかもしれないけど、風が冷たくなった時が夜で生暖かい時が昼」
狼「それから、少しだけ差し込む日の光も僅かに変わってるからそこからの判断だよ」
狼「ただ、雨が降っていない保証はないから正確な時間は分からない。雨が降ってたら風の暖かさは変わるし曇って日の光が消えて夜なのか分からないしね」
少年「そっかぁ」
狼「ん、大丈夫だよ。僕もちょっと退屈してた。僕の子供?そうだなぁ、一……いや二匹いるんだけどね」
狼「一匹は遠吠えが上手かった。群れで一番声が大きかったんだ。だから群れの見張り役を任されてた」
狼「いつも気丈に振る舞ってたけど、強くはなくてね。女の取り合いに何度も負けてた。結局群れの見張りだったから山狩りで真っ先に猟銃で撃たれてあの世へ行ったよ」
狼「もう一人は気が弱くてね、ちょっとのことでくよくよする子だった。だから何度も相談に乗ってあげたよ」
狼「狩りは上手かったけど、環境には恵まれなかった。狩りだけじゃなく詩も好き。小さい頃はよくじゃれ合ったよ」
少年「二匹目の子はどうなったの?」
狼「人間に追い込まれて檻に閉じ込められて結局、ね」
少年「ふぅん」
少年「狼ってみんな死んだ訳じゃないの?」
狼「誰が二匹とも狼って言ったんだい?」
少年「あ、そういうことか」
狼「そういうことだよ」
少年「狼って、狼以外の動物とも子作りができるんだね」
狼「…………君は実に馬鹿だな」
少年「?」
狼「何?」
少年「何日経ったの?」
狼「2日かな」
少年「喉乾いたよ。夜は寒いし背中は痛いし、僕このまま死ぬのかな」
狼「このままならね」
少年「骨になるまでほっておかれるのかぁ」
狼「そう思う?」
少年「思う」
狼「処刑だったら死んでるかもっと頻繁に確認しに来るはず。死んでる君を運び出して村に見せしめとして晒すためにね」
狼「とするとこの洞窟の持ち主の誰か…多分君の両親が君をここに閉じ込めている可能性の方が高い」
狼「もしこのまま僕らが死んだ後、放置されたらどうなると思う?」
少年「うーん」
狼「あんまりじめじめしてない洞窟だけど、何日か経ったら必ず蝿か蛆が湧く」
狼「それと死骸のにおいで洞窟がいっぱいになる。そんな洞窟には入りたくないだろうし、多分この洞窟の持ち主は洞窟に変なものが湧くのを嫌がると思う」
狼「だから蝿とか蛆が湧く前に餓死したくらいの日が経ってから君の死体を運び出しに来ると思う。僕の見立てだと1~2週間かな」
少年「そっかぁ」
狼「何?」
少年「水ない?」
狼「あるわけないだろ」
少年「辛いよ」
狼「僕もだよ。僕は空腹に強いから、まだ君よりは辛くないだろうけど」
少年「同士よ」
狼「はは」
狼「何?」
少年「そこにいるかい」
狼「いるよ」
少年「消えたかと思ったよ」
狼「消えられるわけないだろう、ここから」
少年「ねえ狼」
少年「僕を食べてくれ」
少年「辛いんだ、いっそ楽にしてくれ」
狼「駄目だ」
少年「狼、僕はね。君に生きてもらって、君の辛さを後世に残すべきなんだ。皆殺しの辛さを」
狼「それは君にも残せる」
少年「僕には無理だよ。狼と話せるなんて誰にも言ってない。狂人扱いされて終わりだよ。君の方が分かってるだろう」
狼「僕にも無理だ。こんなおいぼれの一匹狼、仮に出れても伝える前にすぐ死ぬよ」
少年「お願いだよ。僕の血を少しずつ飲めば、君はきっと生き残れるだろう?僕の代わりに生きてくれ」
狼「そんな辛いことを言わないでくれ」
少年「狼……」
少年「何を言ってるんだ、狼。僕は、僕は」
狼「君ならまだ、両親に謝れば許してもらえるかもしれないだろう」
少年「良心に訴えかけろって?」
狼「そう」
少年「僕は君を、僕の今の両親より大切に思ってるんだ。それを食べろなんて辛いこと、言わないでくれ」
狼「……もう寝よう、君は混乱してるんだ」
少年「……うん」
少年「ここまで酷い仕打ちをしてくるなら僕のお父さんもお母さんも僕を許すことはないと思う」
少年「それに僕の側もこんなひどい仕打ちをされて、両親を許すつもりはないよ」
少年「だからやっぱりどっちかがどっちかを食べて、死んだふりをしながら両親を待つんだ」
少年「二人とも降りてきた所を不意をつくか、一人だけ降りてきたら死んだふりを続ける」
少年「洞窟は暗いし、死んだすぐ後あたりなら多少体が温かいのも説明つくし、脈さえ一時的に止めてれば気が付かない可能性もある」
少年「そして二人揃ったところを殺して、この村から脱出しよう」
少年「君の方が空腹に強いし、両親を殺せるのも君の方が確率が高いし、死んだふりも君の方が上手いし」
少年「何より僕が骨だけになってる状況が理想だから、両親は疑わないと思うよ」
少年「僕の体であれ君の体であれ重いからね、死体でも一人だと運ぶのに苦労すると思うし二人とも降りてこないって事はないと思うから二人をやれるチャンスはあるよ」
少年「もっとも、どっちの場合でも死んだふりの最中念のためにって銃で撃たれたら終わりだけど」
少年「まだ寝てるのかい」
少年「起きてよ狼……狼?」ハッ
少年(首の小袋が……ない)ガバッ
少年「狼!」
少年「こんなのってないよ」
少年「お願いだから目を開けてよ」ボロボロ
少年「狼……狼……」
少年「え……?」
少年(地面に文字?何を……)グシ
少年(見えないけど触れば)
ぼくお おたべ
少年「……」
少年「……はは」
少年「そこは『お』じゃなくて『を』だろ」
少年「……馬鹿な狼」
青年「それからね」
大男「おーい、新入り」タッタッ
青年「あ、ごめんね」
青年「はーい!なんですか!」
大男「うちの作物を食い荒らしてた猪を退治してくれたんだって?」
青年「はい、家の玄関に置いてあります!」
大男「ありがとうな」
大男「お前いっつもそれじゃねぇか?」
青年「ははは、でも感謝してますよ」
大男「今夜は鍋だな!」
男児「鍋?」キラッ
大男「そうだ、母さんへ言って来い」
男児「わーい!」タッタッタッ
大男「また何か返します、そんじゃ」スッ
青年「はい、また」
青年(かなり遠くまで逃げた。俺を拾ってくれた村には感謝しきれないが、それと同時に殺人者を匿っていることが知られたらこの村にも迷惑をかけるだろう)
青年(この村もしばらくしたら出て、どこか人が寄り付かないような山奥にでも住もうと思う)
青年(後になって考えると、他にもやりようはあったと思う。でもあの時の俺には親を殺すという方法しか考えつかなかった)
青年(生きるため仕方なかったとはいえ、俺は殺人者だ)
青年(罪を背負って、俺は誰にも迷惑をかけず生き、子孫たちが自然との共存ができるよう、今までの事を書物に童話として書き記して残して死のうと思う)
青年(これで君の役割は引き継げただろうか、罪滅ぼしになっただろうか)
青年(狼……ん?)ゴウッ
青年(山に……狼?)ゴシゴシ
青年(……見間違いか)
終わり
たまには胸糞系書きたくなる時ってあるよね
まとめるスレに依頼してきます
ホントのホントに終わり
やりきれない
なぜ没になったかわらかない
少年は複数いたり狼の子が少年かと思ったがそんなことはなかったぜ
おつおつ
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1497623127/
Entry ⇒ 2017.12.03 | Category ⇒ オリジナル | Comments (0)
薬草屋「僕は薬草の可能性を信じる!」
一人の戦士だった……
戦士「僕も、ここまでか……」
傷付き倒れ……
死を覚悟したその時……
彼は救われた……
戦士「これは……」
無造作に生えていた……
一本の薬草に……
どうにか逃げ延びた……
だが彼は……
剣を捨てた……
なぜなら……
剣だけでは……
誰の命も救えないと気付いたから……
だが生きる以上は……
働かねばならない……
だから彼は……
薬草屋を始めた……
旅人「1つ貰うよ」
薬草屋「毎度あり!」
薬草屋「薬草ありますよ!」
冒険者「間に合ってるよ」
薬草屋「必要な時はいつでも言ってください!」
薬草屋「薬草ありますよ!」
僧侶「回復魔法がありますので」
薬草屋「そうですか……」
薬草屋は……
あまり儲からなかった……
回復量が少ないし……
かさばるし……
変な匂いするし……
ていうか薬草屋って何だよ……
道具屋じゃねえのかよ……
いいから聖水売ってくれよ……
キメラの翼ねえのかよハゲ……
ハゲてねえし……
とにかく薬草は……
人気がなかった……
薬草屋「俺が薬草の本当の力を引き出せてないから売れないんだ、ちくしょう!」
それ絶対違うから……
でも彼は……
薬草を研究し始めた……
とても長い道のりだった……
彼は……
毎日薬草を食べた……
生で食べて……
焼いて食べて……
煮て食べて……
蒸して食べた……
薬草は……
とても不味かった……
薬草を人気者に……
その想いが……
彼を動かしていた……
薬草屋「さあさあ! 美味しい薬草料理だよ!」
村人「ほう、ひとつ貰おうか」
薬草屋「毎度あり!」
薬草料理は……
大不評だった……
あまりの不味さに……
お客は嘔吐し……
彼に襲い掛かり……
末代まで呪ってやると叫んだ……
そう……
彼は毎日薬草を食べて……
既に味覚が……
完全に薬草に汚染されていた……
作る御飯は薬草料理……
外食には自作の薬草パウダー……
彼から漂う青臭い香りは
もはや歩く薬草……
それに薬草屋は……
元々戦士だし……
料理とか別に……
全然得意じゃなかった……
料理を諦めた……
でも……
夢は諦めなかった……
だって夢は……
諦めなければ……
いつか必ず……
叶うものだから……
るーらららー……
薬草屋は……
初心に帰った……
最初からそうしろよとか……
言ってはいけない……
だって……
人が夢のために頑張る姿は……
尊いものだから……
一生懸命頑張った……
西に伝説の薬師がいると聞けば……
土下座して弟子入り志願した……
薬師「孫が病気なのじゃ」
薬草屋「どうにかします!」
薬草屋は魔物が住む山脈を登り……
100年に1度咲くという……
万病の効く薬となる花を採取して……
花を守る守護獣と戦い……
3日3晩の死闘の最中……
絶え間なく薬草を食べ続け……
見事に勝利し……
その花を持ち帰った……
すぐに薬師が薬にした……
孫娘は無事助かり……
薬師は感謝した……
薬師「ありがとう薬草屋よ」
薬草屋「弟子入りを許してくれますか?」
薬師「もちろんじゃとも」
薬師は薬草屋に……
自分の技術の全てを……
余すことなく教えた……
薬師「うむ。精進するのじゃぞ」
孫娘「ばいばい、薬草屋さん!」
薬草屋「お世話になりました!」
去ってゆく薬草屋……
涙で見送る二人……
ただ薬師は思った……
あいつ薬草屋なのに……
わしに薬草売ったりしなかったな……
ガチバトルで守護獣倒してたし……
薬草屋なのに……
薬草屋なのに……
薬草をよく効く傷薬に変えた……
薬草屋「良い傷薬あるよ!」
旅人「1つ貰うよ」
薬草屋「毎度あり!」
薬草屋「良い傷薬あるよ!」
冒険者「人数分くれ」
薬草屋「ありがとうございます!」
薬草屋「良い傷薬あるよ!」
僧侶「予備に貰いましょう」
薬草屋「毎度です!」
傷薬は……
結構売れた……
薬草屋「うーん、これじゃ薬草の素材本来の素晴らしさが伝わったとは言えないんじゃないかな?」
薬草屋は……
意識高い系拗らせてた……
素材探しの旅に出た……
火山地帯の……
赤い薬草……
豪雪地帯の……
白い薬草……
海中に生える……
青い薬草……
薬草屋は……
様々な薬草を手に入れた……
やっぱり薬草は……
あまり売れなかった……
薬草屋「くそ!! なんでなんだ!? なんで皆は薬草の魅力が分からないんだ!!」
だってそれ……
色違うだけじゃん……
だけじゃん……
だが……
失意の薬草屋は……
ある日出会った……
薬草屋「これは!? ただの緑の薬草なのに回復量が違う!?」
運命の薬草に……
その薬草の産地を訪ねた……
薬草を愛する……
薬草屋だから気付けた……
僅かな回復量の差……
その秘密を知るために……
薬草屋「どうか私に教えてください!」
農夫「秘密って言われてもなあ。普通に育てただけだべ」
薬草屋「え?」
薬草を……
育てる……
その発想は……
無かった……
さす農……
森行けば生えてるし……
取り放題だし……
あえて畑で育てるとか……
悪魔的発想……
薬草屋は……
僕が馬鹿なんじゃない……
農夫さんが凄いんだって……
必至に自分に言い訳した……
薬草屋「どうか僕を弟子にしてください」
農夫「おう、手伝ってくれるんか。ええぞ、泊まってけ」
農夫は……
すごくいい人だった……
畑を見る……
水をやる……
農夫「やりすぎだべ」
薬草屋「え、でも昨日と同じ量ですよ」
農夫「昨日の薬草と今日の薬草は違うべさ」
確かに……
今日の薬草は……
ちょっと瑞々しい……
そうか……
昨日の薬草と今日の薬草は……
違うのか……
毎日新しい発見をした……
薬草は……
奥が深い……
やがて薬草屋は……
薬草の声が……
聞こえるようになった……
あの肥料が欲しいよ……
ちょっとお水が欲しいな……
薬草屋「薬草は、薬草は僕にこんなにも話しかけてくれてたんだ!!」
それは幻聴です……
農夫「おらが役に立てたなら良かったべ」
薬草屋は……
ようやく本当に薬草に向き合えた……
そう思った……
だからお礼に……
農夫に薬草料理を御馳走した……
農夫は……
薬草料理を完食した……
農夫は……
すごく……
すごく……
すごくいい人だったから……
上質な薬草を育て……
高級傷薬に変えた……
商人「馬車に積めるだけ仕入れさせていただきたい」
薬草屋「はい! 積むの手伝います!」
神官「神殿に常備したいのですが契約していただけますか?」
薬草屋「はい! 喜んで!」
冒険者「しばらく街を離れるんだ。多めに貰えるか?」
薬草屋「今お持ちします!」
薬草屋は……
ついに大繁盛した……
口コミだった……
あの薬草屋の傷薬は……
よく効くらしい……
値段も安い……
薬草屋はただ……
薬草の素晴らしさを……
多くの人に伝えたかったから……
値段も上げなかった……
だから売れた……
めちゃくちゃ売れた……
薬草農園……
薬草販売……
傷薬調合……
三足のわらじ……
薬草屋は……
人を雇った……
傷薬は……
少し値上がりした……
それでもまだ安かった……
順調に成長した……
多くの人を雇い……
薬草を育て……
傷薬を作り……
それを売り……
また人を雇う……
薬草屋印の傷薬……
それお前……
ほぼ傷薬屋やん……
薬草屋は満足していた……
薬草屋「薬草なしに傷薬はない。つまり傷薬とは薬草なんだ!」
素晴らしい傷薬は……
薬草の素晴らしさの証明なんだと……
薬草屋は信じていた……
だが……
薬草屋は……
傷薬の限界を知った……
戦士「あんたの所の傷薬を使ったのに俺の仲間が死んじまったじゃねえか!!」
薬草屋「も、申し訳ありません!」
傷薬でも……
救えない命はある……
圧倒的過大評価……
薬草さんも困惑……
薬草屋「最高の調合、最高の薬草、これ以上何をすればいいんだ僕は!!」
薬草屋は……
悩んだ……
毎日薬草に相談し……
毎日薬草神に祈りを捧げ……
毎日薬草風呂に入り……
毎日薬草料理を食べ……
毎日薬草布団で眠り……
毎日薬草の歌を歌った……
薬草神「薬草屋よ」
薬草屋「や、薬草神様!? 薬草神様なのですか!?」
薬草神「薬草屋よ、薬草の可能性を信じるのだ」
薬草屋「僕はどうすればいいのですか!?」
薬草神「薬草の可能性を信じるのだ……のだ……のだ……」
薬草屋は……
神託の夢から覚めて……
誓った……
薬草屋「薬草神様、わかりました! 僕は薬草の可能性を信じる!!」
ちなみに薬草神とは……
薬草屋が勝手に信じてるだけの……
存在しない神である……
旅に出る事にした……
今度の旅は……
長くなる……
薬草屋「後の事は任せたよ」
弟子「はい!」
もう事業に未練はない……
残りの人生はただ……
薬草の可能性を掴むために……
街から街へ歩き……
薬草の可能性を求めた……
冒険者「薬草屋か、奇遇だな」
冒険者「え、薬草の使い道?」
冒険者「傷を治す以外に思い付かないな」
可能性は……
簡単には見つからない……
農夫「久しぶりだべ!」
農夫「薬草? 虫除けに使えるべ!」
農夫「料理は、もう勘弁してけれ……」
それでも薬草屋は……
旅を続けた……
エルフ「薬草? そこらに生えてる雑草でしょう」
そんなものは……
獣人「臭ぇもん近づけるんじゃねえ!」
本当に……
衛兵「黙れ不審者! 一晩牢屋で頭を冷やしていけ!」
あるのだろうか……
少しずつ……
擦り切れていった……
薬師「おぬし、薬草屋か?」
薬草屋「う、ああ……」
孫娘「薬草屋さん、しっかりしてください!」
薬草屋は……
再会した薬師を前にして……
倒れた……
心も……
体も……
もう限界だった……
薬師に事情を話した……
薬師「薬草屋よ、薬草神などおらぬ。それはただの夢じゃ」
薬師「そもそも薬草は薬草じゃ、薬草で人は生き返らぬ」
あまりにも正論だった……
薬草屋は……
もしかして僕って……
思い込み激しいのかな……
と思った……
え……
今更すか……
薬師「お前さえ良ければ、婿に来てわしの跡を継がぬか?」
薬草屋は……
それも悪くないと思った……
思えば……
薬草に振り回されてばかりの人生……
選ぶべき道は……
他にあったのかもしれない……
そう思った……
でも……
薬草への愛が……
薬草屋の決意を……
鈍らせていた……
薬師「仕方あるまい、お前もこれを見れば諦めも付くじゃろう」
そして薬師は……
一枚の葉を取り出した……
薬師「これは死人を蘇らせると言われておる、世界樹の葉じゃ」
薬草屋「こ、これが!?」
薬師「ふぉっふぉ、そうじゃ。お前も薬師ならば分かるじゃろう、この価値が」
薬草屋は……
目が離せなかった……
薬師「薬草は薬草、世界樹の葉は世界樹の葉。薬草は世界樹の葉にはなれんのじゃ」
薬師の言葉を聞いた薬草屋は……
その世界樹の葉を奪い取り……
食べた……
もぐもぐ……
むしゃむしゃ……
もぐもぐ……
薬草屋は……
感動していた……
むしゃむしゃ……
もぐもぐ……
むしゃむしゃ……
もぐもぐ……
世界樹の葉が……
あんまりにも……
美味しかったから……
世界樹の葉は貴重だし……
おそろしく高価で……
食べ物じゃない……
世界樹の葉は……
食べ物じゃない……
薬師は……
思った……
え……
こいつ……
頭おかしいんとちゃう……
気付くのが……
ちょっと遅かった……
薬師は激怒した……
縁談話はブチ壊れたし……
師弟の縁も切られた……
薬草屋は……
お金だけはあるので……
世界樹の葉を弁償した……
そして……
薬草屋は……
一人叫んだ……
薬草屋「世界樹の葉は、薬草だ!!」
なんだってー……
毎日薬草を食べて……
薬草の味で……
薬草の全てを……
理解できるようになった……
世界樹の葉は……
薬草だった……
それも……
とても濃厚な薬草……
そう……
世界樹の葉は……
薬草の可能性だった……
つまり薬草は……
人を生き返らせられる……
ついに辿り着いた……
長い旅の末に……
薬草の可能性に……
薬草屋「僕はついに薬草の可能性に辿り着いたんだ!!」
コングラチュレーション……
コングラチュレーション……
そして薬草屋は……
この事実を大々的に発表したけど……
反響は薄かった……
世界樹の葉が量産できるわけでもないし……
だから何ってなりますよねー……
こうして薬草屋の物語は終わった……
魔王「なぜだ、なぜ貴様らは倒れぬのだ!? ぐぬおおおおおお!!?」
勇者「滅びろ、魔王!!」 ズドドドーン
魔王「グアアアアアアアアアッ!!?」 シュオオオオン
戦士「やったな、勇者!」
武闘家「ふん。魔王を名乗るには歯応えの無い奴だったな」
勇者「うーん、こんなに簡単に倒せちゃっていいのかな」
戦士「ま、楽な方がいいじゃねえか」
武闘家「さっさと『ヤクソウ』で回復して帰るとするぞ」 ゴクリ
勇者「でもこれ、凄く不味いんだよね……」
魔法使い「まあ、有難く使わせていただきましょう」 ゴクリ
戦士「HP・MPは全快する、死人も蘇る。こんな秘薬をくれるなんてよ」
戦士「それも魔王を倒すまでに使い切れねえほどの量だぜ?」
勇者「不思議だよね。武器も防具もお金も全然くれなかったのに」
勇者「なんでこんな便利な回復アイテムだけはくれたんだろ?」
勇者「おかげで魔王城まで一直線に来れちゃったけど」
武闘家「俺はこの秘薬を疑っているがな」
武闘家「これだけ便利なものだ、副作用があるに違いない」
武闘家「大体なぜ名前が『ヤクソウ』なのだ。意味が分からん」
魔法使い「まあ、そう思われるのも無理はないと思いますがね」
魔法使い「実は私、この秘薬の由来を知っているのですよ」
勇者「そうなの?」 戦士「ほう」 武闘家「聞かせろ」
魔法使い「王国に着くまでの時間潰しにお話しましょうか」
武闘家「当たり前だろう、何を言っているのだ?」
魔法使い「ははは。いえこれが数十年前まではマイナーな分野だったらしくて」
魔法使い「でも、ある時天才錬金術師が現れて、一気に錬金術を発展させたのですよ」
魔法使い「今ある錬金術の基礎は彼が一人で作り上げたと言っても過言ではないほどに」
勇者「へえ、全然知らなかったよ」
魔法使い「彼は地位や名誉に無頓着な人でしたから、あまり名前は知られていないんですよ」
魔法使い「彼は自分の技術や成果を一切隠さずに公表していましたから」
魔法使い「そのオリジナルが彼であるとは知らないままに使われているものが大半ですね」
武闘家「で、その錬金術師がこの秘薬を?」
魔法使い「というより、その秘薬を作るために彼は錬金術師になったんですよ」
戦士「ほう? それはどういう事だ?」
戦士「『ヤクソウ』の原料が薬草なのか……」
武闘家「……薬草が原料なのにMPが回復するのか?」
魔法使い「厳密には複数の種類の薬草が使われているんです」
魔法使い「属性の異なる薬草を調合する事でマナ反応が起きて」
魔法使い「MP回復の効果が生まれているそうですよ」
勇者「そ、そうなんだー」
魔法使い「あはは。私もよく分かっていません。ただそういうものらしいです」
魔法使い「そして魔法的工程も加えて濃縮、変化を繰り返した結果」
魔法使い「この『ヤクソウ』が完成するそうですよ」
武闘家「原料は、薬草だけなのか?」
魔法使い「いくつか触媒は必要らしいですが、ほぼ薬草だけですね」
武闘家「……なるほど」
魔法使い「理由は想像が付きますよね?」
武闘家「危険すぎるからだろうな」
勇者「え、なんで?」
戦士「原料がその辺で取れる薬草、そして死人すら蘇るほどの作用……」
武闘家「量産できるなら国家転覆、いや世界情勢すら変わりかねんな」
魔法使い「ええ。彼は秘薬の存在や製法を一切公開しないよう国に命令されました」
魔法使い「彼はその命令を受け入れる代わりにひとつの要求をしました」
戦士「要求とは?」
魔法使い「その秘薬の名前を、『ヤクソウ』として伝えること」
戦士「んん? なぜそうなる?」
魔法使い「あはは、話せば長くなるのですが……」
魔法使い「ですが瀕死の重傷で倒れた所を、1本の薬草に命を救われました」
魔法使い「それ以来、彼は薬草が素晴らしい物だと信じ、薬草を広める事に命を燃やしました」
魔法使い「最初は薬草を売りました。ですが薬草は役に立たないと人々に言われました」
魔法使い「次に薬草を傷薬にして売りました。ですが傷薬では救えない命があると知りました」
魔法使い「彼は薬草を素晴らしい物だと信じていたので、薬草で人の命を救う事にしたのです」
魔法使い「そうして彼は、錬金術の世界に飛び込みました。薬草で万能の秘薬を作り出すために」
魔法使い「ですから、完成した秘薬は薬草の素晴らしさを伝えるためのもの」
魔法使い「公表されないのならせめて薬草の偉大さが伝わるようにと」
魔法使い「彼は秘薬を『ヤクソウ』と呼ぶように取り引きしたのです」
戦士「……狂人じみているな」
魔法使い「あはは、本人は少し変わった優しいお爺さんなんですけどね」
勇者「え、知り合いなの?」
魔法使い「私の祖父です」
勇者「えええええええええええええ!?」
武闘家「……この『ヤクソウ』がなければ、俺達は世界を救えたろうか?
戦士「分からん。だがもっと苦労したのは確かだろうな」
戦士「そう考えると、本当に世界を救ったのは薬草の力なのかもしれんな……」
勇者「うーん、それは違うと思うな」
戦士「ん?」
勇者「旅立った時の僕達はスライムの群れにだって苦戦したけど」
勇者「今はこうやって魔王だって倒せてるでしょ?」
勇者「僕達がこうなれたのは、誰かが僕達を勇者だって信じてくれたからだよ」
勇者「まだ形のない可能性を信じる気持ち」
勇者「……希望なんじゃないかな」
おしまい
面白かったよ
掲載元:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1497015657/
Entry ⇒ 2017.12.01 | Category ⇒ オリジナル | Comments (1)